Nichijoyaku edition 1 — Japanese translation text and project-authored annotations
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日常訳第1版

創世記
1:1 初めに、神が天と地を創造した。
1:2 地にはまだ形も何もなく、暗闇が深い水の面をおおっていた。そして神の霊が、その水の面を静かに動いていた。
1:3 神は言った。「光あれ。」すると光ができた。
1:4 神はその光を見て、良かった。そして神は光と暗闇を分けた。
1:5 神は光を昼と呼び、暗闇を夜と呼んだ。こうして夕方になり、朝になった。これが最初の日である。
1:6 神は言った。「水の真ん中に大空があれ。水と水を分けるものになれ。」
1:7 神は大空を作り、大空の下の水と大空の上の水を分けた。すると、そのとおりになった。
1:8 神はその大空を天と呼んだ。こうして夕方になり、朝になった。これが二日目である。
1:9 神は言った。「天の下の水は一つの所に集まれ。乾いた地が現れよ。」すると、そのとおりになった。
1:10 神は乾いた地を地と呼び、集まった水を海と呼んだ。神はそれを見て、良かった。
1:11 神は言った。「地よ、草木を芽生えさせよ。種を持つ草や、実の中に種を持つ果樹を、種類ごとに地の上に生えさせよ。」すると、そのとおりになった。
1:12 地は草木を生やした。種を持つ草を種類ごとに、実の中に種を持つ木を種類ごとに芽生えさせた。神はそれを見て、良かった。
1:13 こうして夕方になり、朝になった。これが三日目である。
1:14 神は言った。「天の大空に光る物があり、昼と夜を分けよ。それらは季節や日、年を知らせるしるしとなれ。
1:15 天の大空にあって地を照らす光となれ。」すると、そのとおりになった。
1:16 神は二つの大きな光る物を造った。大きい方の光る物には昼を治めさせ、小さい方の光る物には夜を治めさせた。さらに星も造った。
1:17 神はそれらを天の大空に置き、地を照らすようにした。
1:18 昼と夜を治め、光と闇を分けるためである。神はそれを見て、良かった。
1:19 こうして夕方になり、朝になった。これが四日目である。
1:20 神は言われた。「水の中に、生き物が群れをなして満ちあふれよ。鳥は地の上、天の大空を飛べ。」
1:21 神は大きな海の生き物を創造した。そして、水の中に群がって動くすべての生き物を、種類ごとに創造した。さらに、翼のあるすべての鳥も、種類ごとに創造した。神はそれを見て、良しとした。
1:22 神はこれらを祝福して言った。「産めよ、増えよ、海の水を満たせ。鳥は地の上で増えよ。」
1:23 こうして夕方になり、朝になった。これが五日目である。
1:24 神は言われた。「地から生き物を種類ごとに生み出せ。家畜も、地を這うものも、野の獣も、それぞれの種類にしたがって。」すると、そのようになった。
1:25 神は地の獣を種類ごとに、家畜を種類ごとに、地を這うすべての生き物を種類ごとに造った。神はそれを見て、良かった。
1:26 神は言われた。「わたしたちのかたちに、わたしたちに似せて人を造ろう。そして、海の魚、天の鳥、家畜、地のすべての生き物、地を這うすべてのものを治めさせよう。」
1:27 神は自分のかたちに人を創造した。神のかたちに人を創造し、男と女に創造した。
1:28 神は彼らを祝福して、こう言った。「産めよ、増えよ、地に満ちて、地を支配しなさい。海の魚も、天の鳥も、地を動きまわるすべての生き物も、あなたたちが治めるのだ。」
1:29 神はこう言われた。「見なさい。わたしは地上のすべての場所にある、種を持つあらゆる草と、種を持つ実をつけるすべての木を、あなたたちに与える。これがあなたたちの食べ物になる。
1:30 また、地のすべての獣、天のすべての鳥、地を這うもの、つまり命あるものすべてには、食べ物としてすべての青草を与える。」すると、そのとおりになった。
1:31 神は自分が造ったすべてのものを見た。それは、とても良かった。こうして夕方になり、朝になった。第六の日である。
2:1 こうして天と地、そしてそこにあるすべてのものが完成した。
2:2 神は七日目に、それまで続けてきた仕事を終えた。そして七日目に、すべての仕事を離れて休んだ。
2:3 神は七日目を祝福し、この日を特別な日とした。神がすべての創造の仕事を終えて、この日に休んだからである。
2:4 これが天と地が創造されたときの由来である。主なる神が地と天を造ったとき、
2:5 地にはまだ野の低木も生えておらず、野の草も芽を出していなかった。主なる神が地に雨を降らせておらず、土を耕す人もまだいなかったからだ。
2:6 でも、地から水が湧き上がって、土の表面をすべて潤していた。
2:7 主なる神は土のちりで人を造り、命の息をその鼻に吹き込まれた。すると人は生きた魂となった。
2:8 主なる神は東の方、エデンに園をつくり、そこに、造った人を住まわせた。
2:9 主なる神は、見て美しく、食べるのに良いあらゆる木を土から生えさせた。そして園の中央には、命の木と、善悪を知る木を生えさせた。
2:10 一つの川がエデンから流れ出て、園を潤していた。そしてそこから四つに分かれて、四つの流れになっていた。
2:11 最初の川の名はピションといい、金のあるハビラの全域を巡って流れている。
2:12 その地の金は質が良い。そこではブドラクという樹脂や、しまめのうという宝石も取れる。
2:13 二番目の川の名はギホン。クシュの全土をめぐる川である。
2:14 三番目の川の名はチグリスといい、アッシリアの東を流れる川だ。四番目の川はユーフラテスだ。
2:15 主なる神は人を連れてきて、エデンの園に住まわせ、そこを耕し、守らせた。
2:16 主なる神は人にこう命じた。「園のどの木からでも、自由に取って食べていい。
2:17 でも、善悪を知る木からは食べてはいけない。それを食べたら、あなたは必ず死ぬ。」
2:18 主なる神は言われた。「人がひとりでいるのは良くない。その人にぴったり合う助け手を造ろう。」
2:19 主なる神は、野のすべての獣と空のすべての鳥を土から形づくり、人のところへ連れてきた。人がそれぞれをどう呼ぶのか、それを見るためだった。人が生き物の一つ一つをどう呼んでも、それがその名になった。
2:20 人はすべての家畜と、空の鳥と、野のすべての獣に名前をつけた。でも、人にはふさわしい助け手が見つからなかった。
2:21 それで主なる神は、人を深い眠りに落とした。人が眠ると、そのあばら骨の一つを取り出し、その部分を肉でふさいだ。
2:22 主なる神は、人から取ったあばら骨をひとりの女に造り上げ、その人のところへ連れてきた。
2:23 そのとき、人は言った。「これこそ、ついにわたしの骨からの骨、わたしの肉からの肉。男から取り出されたものだから、これを女と呼ぼう。」
2:24 だから男は父と母のもとを離れ、妻と結ばれて、二人は一つになる。
2:25 人とその妻は、二人とも裸だった。でも、恥ずかしいとは思わなかった。
3:1 蛇は、主なる神が造った野の生き物の中で、いちばん賢がしこかった。蛇は女に言った。「園のどの木からも食べてはいけないなんて、神は本当にそんなことを言ったの？」
3:2 女はへびに答えた。「園の木の実なら、わたしたちも食べていい。
3:3 でも園の真ん中にある木の実だけは、食べてはいけない、触れてもいけない、死んでしまうから、と神さまは言われたの」
3:4 すると蛇は女に言った。「いや、あなたたちは決して死んだりしない。
3:5 でも神は、それを食べると君たちの目が開けて、神のように善と悪を知る者になることを知っているんだ。」
3:6 女はその木を見た。実は食べるとおいしそうで、見た目も美しく、賢くなれそうで魅力的だった。それで実を取って食べ、一緒にいた夫にも渡し、夫も食べた。
3:7 すると二人の目が開けて、自分たちが裸だと気づいた。それで二人はいちじくの葉をつなぎ合わせて、腰に巻くものを作った。
3:8 その日、風の吹く涼しいころ、二人は主なる神が園を歩き回る音を聞いた。それでアダムと妻は、主なる神の前を避けて、園の木々の間に身を隠した。
3:9 主なる神は人に呼びかけて言った。「あなたは、どこにいるのか。」
3:10 彼は答えた。「園であなたの音が聞こえたのです。でも、わたしは裸だったので、こわくなって隠れました」
3:11 神は言われた。「あなたが裸だと、だれが教えたのか。食べてはいけないと命じておいた木から、あなたは取って食べたのか。」
3:12 その人は答えた。「あなたがわたしと一緒にしてくれたあの女が、あの木の実をわたしにくれたので、わたしは食べたのです」
3:13 神である主は女に言った。「あなたは何ということをしたのか。」女は答えた。「あのへびにだまされて、わたしは食べてしまったのです。」
3:14 主なる神はへびに言った。「おまえがこんなことをしたから、おまえはすべての家畜や野のすべての獣の中で、いちばん重いのろいを受ける。おまえは一生、腹ばいで動き、ちりを食べて生きる。
3:15 わたしは、おまえと女との間に、そしておまえの子孫と女の子孫との間に、憎しみを置く。彼はおまえの頭を砕き、おまえは彼のかかとを砕く。」
3:16 女にはこう言われた。「わたしは、あなたが子どもを産むときの苦しみをとても大きくする。あなたは苦しみながら子を産む。それでもあなたは夫を求め、夫はあなたを支配する。」
3:17 そして、アダムにはこう言われた。「あなたは妻の言葉に従って、食べてはいけないとわたしが命じた木から取って食べた。だから、あなたのために土地はのろわれる。あなたは生きているかぎり、苦しみながらそこから食べ物を得ることになる。
3:18 地はあなたのために、いばらとあざみを生えさせる。あなたは野の草を食べることになる。
3:19 あなたは額に汗を流してパンを食べ、ついに土に帰る。あなたはそこから取られたのだから。あなたはちりであり、ちりに帰るのだ。」
3:20 アダムは妻をエバと名づけた。彼女がすべての生きているものの母となるからである。
3:21 主なる神は、アダムとその妻のために皮の衣を作って、彼らに着せた。
3:22 主なる神は言われた。「人はわたしたちのひとりのようになり、善と悪を知る者になった。今、この人が手を伸ばして命の木からも取って食べ、いつまでも生きることのないように。」
3:23 それで主なる神は、人をエデンの園から追い出した。人が造られたその土を耕させるためだった。
3:24 神は人を追い出した。そしてエデンの園の東に、ケルビムと、ぐるぐると回る炎の剣を置いた。命の木へ行く道を守らせるためだった。
4:1 アダムは妻エバと交わった。エバは身ごもってカインを産み、こう言った。「わたしは主の助けによって、一人の男の子を授かった。」
4:2 エバはその後、弟のアベルを産んだ。アベルは羊飼いになり、カインは土を耕す者になった。
4:3 しばらくして、カインは畑でとれた作物を主への供え物として持ってきた。
4:4 アベルもまた、自分の羊の群れの中で最初に生まれた子羊を、その脂肪ごと持ってきた。主はアベルとその供え物に目を留めた。
4:5 でも、カインとそのささげ物には目を留めなかった。それでカインは激しく怒って、顔を伏せた。
4:6 主はカインに言った。「どうして怒っているんだ。どうして顔を伏せているんだ。
4:7 正しいことをしているなら、顔を上げられるはずだ。でも正しいことをしていないなら、罪が戸口で待ち伏せている。罪はあなたを求めているが、あなたはそれを支配しなければならない」
4:8 カインは弟アベルに言った。「野原に行こう。」二人が野原にいたとき、カインは弟アベルに襲いかかって、殺してしまった。
4:9 主はカインに言った。「弟のアベルはどこにいる?」カインは答えた。「知りません。わたしは弟の番人なんですか?」
4:10 主は言われた。「あなたは何をしたのか。あなたの弟の血が、土の中からわたしに叫んでいる。
4:11 だから今、あなたは呪われる。あなたの弟の血を受けとろうと口を開けたこの土地から、あなたは追い出されるのだ。
4:12 あなたが土地を耕しても、土地はもう実りをあなたに与えてはくれない。あなたは地上をさまよい歩く者になる。」
4:13 カインは主に言った。「わたしの罰は重すぎて、とても背負いきれません。
4:14 見てください。あなたは今日、わたしをこの土地から追い出されました。わたしはあなたのもとを離れ、地上をさまよう者となります。わたしを見つける人はだれでも、わたしを殺すでしょう。」
4:15 主はカインに言われた。「いや、そうではない。カインを殺す者は、だれであっても七倍の復讐を受ける。」そして主はカインに一つのしるしをつけられた。彼を見つける者が、だれも彼を打ち殺すことのないようにするためだった。
4:16 カインは主のもとを去って、エデンの東にあるノドの地に住んだ。
4:17 カインは妻と結ばれ、妻は身ごもってエノクを産んだ。カインは町を造り、その町に、息子と同じエノクという名をつけた。
4:18 エノクにはイラデが生まれた。イラデにはメホヤエル、メホヤエルにはメトサエル、メトサエルにはレメクが生まれた。
4:19 レメクは二人の妻をめとった。一人はアダ、もう一人はツィラという名だった。
4:20 アダはヤバルを産んだ。ヤバルは、テントで暮らして家畜を飼う人たちの先祖になった。
4:21 弟の名はユバル。竪琴や笛を演奏するすべての人の先祖になった人だ。
4:22 チラもトバル・カインを産んだ。トバル・カインは青銅や鉄の道具を作る、あらゆる職人の先祖となった。トバル・カインの妹はナアマといった。
4:23 レメクは妻たちに言った。「アダとチラよ、わたしの声を聞いてくれ。レメクの妻たちよ、わたしの言葉に耳を傾けてくれ。わたしは傷を負わされたから、その男を殺した。打たれたから、その若者を殺した。
4:24 カインのための復讐が七倍なら、レメクのための復讐は七十七倍だ。」
4:25 アダムは再び妻と交わった。妻は男の子を産み、「カインがアベルを殺してしまったけれど、神はそのアベルの代わりに、もう一人の子をわたしに授けてくださった」と言って、その子をセツと名づけた。
4:26 セツにも男の子が生まれた。セツはその子をエノスと名づけた。このころから、人々は主の名を呼び始めた。
5:1 これはアダムの子孫の記録である。神が人を創造したとき、神に似せて人を造り、
5:2 神は人を男と女に創造された。そして彼らを祝福し、彼らが創造されたその日に、二人を「人」と名づけられた。
5:3 アダムは百三十歳になったとき、自分に似た、自分と同じ姿の男の子をもうけ、その子をセツと名づけた。
5:4 アダムはセツが生まれたあと、八百年生きた。そして、ほかにも息子や娘が生まれた。
5:5 アダムは全部で九百三十年生きて、死んだ。
5:6 セツは百五歳のとき、エノスが生まれた。
5:7 セツはエノスが生まれた後も八百七年生き、ほかにも息子や娘をもうけた。
5:8 セツは全部で九百十二年生きて、死んだ。
5:9 エノスは九十歳のとき、カイナンをもうけた。
5:10 エノスはカイナンが生まれた後も八百十五年生き、ほかにも息子や娘をもうけた。
5:11 エノスは全部で九百五年生きて、死んだ。
5:12 カイナンは七十歳のとき、マハラレルが生まれた。
5:13 カイナンはマハラレルが生まれた後も八百四十年生き、ほかにも息子や娘をもうけた。
5:14 カイナンは全部で九百十年生きて、死んだ。
5:15 マハラルエルは六十五歳のとき、ヤレドが生まれた。
5:16 マハラレルはヤレドが生まれた後も八百三十年生き、ほかにも息子や娘をもうけた。
5:17 マハラレルは全部で八百九十五年生き、そして死んだ。
5:18 ヤレドは百六十二歳のとき、エノクが生まれた。
5:19 ヤレドはエノクが生まれた後も八百年生き、ほかにも息子や娘をもうけた。
5:20 ヤレドは全部で九百六十二年生きて、死んだ。
5:21 エノクは六十五歳のとき、メトシェラをもうけた。
5:22 エノクはメトシェラを生んだ後、三百年のあいだ神とともに歩み、息子や娘たちをもうけた。
5:23 エノクは全部で三百六十五年生きた。
5:24 エノクは神とともに歩んだ。そして、神が彼を取り去ったので、いなくなった。
5:25 メトシェラは百八十七歳のとき、レメクが生まれた。
5:26 メトシェラはレメクが生まれた後も七百八十二年生き、ほかにも息子や娘をもうけた。
5:27 メトシェラは全部で九百六十九年生きて、死んだ。
5:28 レメクは百八十二歳のとき、男の子が生まれた。
5:29 レメクはその子をノアと名づけて、こう言った。「主が土地を呪われたせいで、わたしたちは働き、苦労している。この子はそんなわたしたちを慰めてくれるだろう。」
5:30 レメクはノアが生まれた後も五百九十五年生き、ほかにも息子や娘をもうけた。
5:31 レメクは全部で七百七十七年生きて、死んだ。
5:32 ノアは五百歳になって、セム、ハム、ヤペテという息子たちをもうけた。
6:1 人が地上で増え始め、彼らに娘たちが生まれたころのことである。
6:2 神の子たちは、人の娘たちが美しいのを見て、その中から好きな者を選んで妻にした。
6:3 すると主は言われた。「わたしの霊は、いつまでも人の中にとどまることはない。人はしょせん肉にすぎないのだから。人の生きる年数は百二十年としよう。」
6:4 そのころ、地にはネフィリムがいた。その後も、神の子たちが人の娘たちのところに入り、娘たちが子どもを産んだときにも、彼らはいた。それは大昔の勇士たちで、名の知れた者たちだった。
6:5 主は、人の悪が地に広がり、その心に浮かぶ思いがいつも悪いことばかりなのを見た。
6:6 主は、地上に人を造ったことを後悔し、心を痛めた。
6:7 主は言われた。「わたしが創造した人を、地の表からぬぐい去ろう。人も動物も、地を這うものも、空の鳥も。わたしはこれらを造ったことを悔やんでいる。」
6:8 でも、ノアは主に気に入られた。
6:9 これがノアの物語である。ノアはその時代の人々の中で正しく、欠けのない人だった。ノアは神とともに歩んだ。
6:10 ノアには三人の息子がいた。セム、ハム、ヤペテである。
6:11 この地は神の前で堕落し、暴力で満ちていた。
6:12 神が地を見ると、地は堕落しきっていた。すべての生き物が、地の上で自分の生き方を堕落させていたからである。
6:13 神はノアに言った。「すべての生き物を終わらせることにした。人々のせいで地が暴力に満ちているからだ。わたしは彼らを地もろとも滅ぼす。
6:14 あなたは糸杉の木で箱舟を造りなさい。中にはいくつも部屋を作り、内側も外側もタールで塗りなさい。
6:15 箱舟の作り方はこうだ。長さは三百キュビト、幅は五十キュビト、高さは三十キュビト。
6:16 箱舟には屋根を造り、上のほうは一キュビトの高さで仕上げなさい。箱舟の入り口は横側に付ける。そして一階と二階と三階のある造りにしなさい。
6:17 わたしは今、地の上に大洪水を起こす。天の下に生きるもの、命の息をもつすべてのものを滅ぼすためだ。地上のものはすべて、息絶える。
6:18 でも、わたしはあなたと契約を結ぶ。あなたは、息子たちや妻、息子たちの妻といっしょに箱舟に入りなさい。
6:19 それから、すべての生き物、つまりあらゆる肉なるものの中から、二匹ずつを箱舟に入れ、あなたといっしょに生き延びさせなさい。それらはオスとメスでなければならない。
6:20 鳥はその種類ごとに、動物もその種類ごとに、地を這うものもみなその種類ごとに、それぞれ二匹ずつあなたのところに来る。こうして命を守りなさい。
6:21 それから、食べられる物をあらゆる種類集めて、たくわえておきなさい。それがあなたと動物たちの食料になる。」
6:22 ノアはこうして、神が命じたことをすべてそのとおりに行った。
7:1 主はノアに言われた。「あなたも家族もみんな、箱舟に入りなさい。今の時代の人々の中で、わたしの前に正しく生きているのはあなただと、わたしは認めたからだ。
7:2 きれいな動物はすべて、オスとメスを七組ずつ連れて行きなさい。きれいでない動物は、オスとメスを一組ずつ連れて行きなさい。
7:3 空を飛ぶ鳥も、雄と雌を七つがいずつ連れて行きなさい。そうすれば、その種類が地の全体で生き残る。
7:4 今から七日たったら、わたしは四十日四十夜、地に雨を降らせる。そして、わたしが造ったすべての生き物を、地の面からぬぐい去る。」
7:5 ノアは、主が命じたことをすべてそのとおりに行った。
7:6 洪水が地に押し寄せたとき、ノアは六百歳だった。
7:7 ノアは、洪水の水を避けて、息子たちや妻、息子たちの妻といっしょに箱舟に入った。
7:8 きれいな動物も、きれいでない動物も、鳥も、地をはうものもみな、
7:9 オス と メス が 二 匹 ずつ、ノア の ところ に やって来て、いっしょ に 箱舟 に 入った。神 が ノア に 命じた とおり だった。
7:10 そして七日が過ぎ、洪水が地を襲った。
7:11 ノアが六百歳になった年の二月十七日、その日に、大きな深い水の源がいっせいに割れ、天の窓が開いた。
7:12 雨は四十日四十夜、地に降り続いた。
7:13 まさにその日、ノアと、その息子のセム、ハム、ヤペテ、そしてノアの妻と、三人の息子の妻たちがいっしょに箱舟に入った。
7:14 彼らと、あらゆる種類の野の獣、あらゆる種類の家畜、地を這うあらゆる種類の生き物、あらゆる種類の鳥、翼を持つすべてのものが入った。
7:15 命の息があるすべての生き物が、二匹ずつノアのもとに来て、箱舟に入った。
7:16 中に入ったものは、あらゆる生き物のオスとメスで、神がノアに命じたとおりに入った。そして主は、ノアのうしろの戸を閉めた。
7:17 洪水は四十日のあいだ地の上に続いた。水がどんどん増えて箱舟を持ち上げ、箱舟は地から高く浮かび上がった。
7:18 水はますます勢いを増し、地の上でどんどん増えていった。そして箱舟は水の面を漂った。
7:19 水は地の上でますます勢いを増し、天の下にあるすべての高い山々が水におおわれた。
7:20 水はさらに七メートル以上も高くなり、山々をすっかりのみ込んだ。
7:21 すべての肉なるものは、地の上で動くものはみな死んだ。鳥も家畜も獣も、地に群がる小さな生き物も、そしてすべての人も。
7:22 鼻に命の息のあるすべてのもの、陸にいたものはみな死んだ。
7:23 地の面にいたすべての生き物は、人も家畜も、地を這うものも、空の鳥もみな、地からぬぐい去られた。残ったのは、ノアと、彼と共に箱舟にいたものだけだった。
7:24 水は百五十日のあいだ、地の上にみなぎった。
8:1 神はノアと、箱舟の中にいたすべての生き物、すべての家畜を心に留めていた。そして神が地の上に風を吹かせると、水は引いていった。
8:2 淵の源と天の窓が閉じられて、天から降っていた雨が止まった。
8:3 水はしだいに地の上から引いていき、百五十日たって減りはじめた。
8:4 箱舟は七月十七日、アララト山の上でとどまった。
8:5 水はだんだん引いていき、十月になった。その十月一日に、山々の頂が現れた。
8:6 四十日たって、ノアは自分で造った箱舟の窓を開けた。
8:7 カラスを放した。カラスは、地から水がすっかり乾くまで、あちこちを飛び回った。
8:8 ノアはまた、水が地の面から引いたかどうかを確かめようと、鳩を放した。
8:9 はとは足を休める場所を見つけられなかった。それで、箱舟のノアのところへ帰ってきた。水がまだ地の全体をおおっていたからだ。ノアは手を伸ばしてはとをつかまえ、箱舟の中の自分のところへ引き入れた。
8:10 それから七日待って、もう一度はとを箱舟から放した。
8:11 はとは夕方になって、ノアのもとに戻ってきた。見ると、そのくちばしには、むしり取ったばかりのオリーブの葉があった。ノアは、地から水がひいたことを知った。
8:12 さらに七日待って、もう一度はとを放した。でも、はとは二度と戻ってこなかった。
8:13 六百一年目の一月一日、地上の水はすっかり引いた。ノアが箱舟のおおいを取り外して見ると、地の面はもう乾いていた。
8:14 二月二十七日、地はすっかり乾いた。
8:15 この時、神はノアにこう言われた。
8:16 「箱舟から出なさい。あなたも、妻や息子たち、息子たちの妻も、みんな一緒に。
8:17 共にいるすべての生き物、つまり鳥や家畜、地を這うものすべてを連れて出なさい。これらが地に群がり、子を増やして、地に満ちていくように。」
8:18 ノアは、いっしょにいた息子たちと妻、そして息子たちの妻を連れて、船から出た。
8:19 すべての獣、すべての這うもの、すべての鳥、地の上を動くものはみな、種類ごとに箱舟を出た。
8:20 ノアは主のために祭壇を築いた。そして、清い家畜と清い鳥をそれぞれ選び、祭壇の上で焼き尽くすいけにえとしてささげた。
8:21 主はその心地よい香りをかいで、心の中でこう思った。「もう二度と、人のせいで大地をのろうことはしない。人の心が思い描くことは、幼いころから悪いのだから。もう二度と、今回のように、すべての生き物を滅ぼすことはしない。
8:22 地の続くかぎり、種まきと刈り入れ、寒さと暑さ、夏と冬、昼と夜がなくなることはない。」
9:1 神はノアとその息子たちを祝福して、こう言った。「子を産んで増えなさい。地に満ちなさい。
9:2 地のすべての獣、天のすべての鳥、地を這うすべてのもの、海のすべての魚は、あなたたちを恐れ、おののく。これらはみな、あなたたちの手にゆだねられている。
9:3 すべて生きて動くものは、あなたたちの食べ物になる。かつて緑の草を与えたように、わたしはそれらすべてをあなたたちに与える。
9:4 しかし、肉を、その命である血がついたまま食べてはならない。
9:5 あなたたちの命の血が流されたら、わたしは必ずその責任を問う。どんな獣にも責任を問い、人にも、つまり兄弟である人にも、わたしは人の命についてその責任を問う。
9:6 人の血を流す者は、人によって血を流される。神は人を、自分に似せて造ったからだ。
9:7 あなたがたは、生めよ、増えよ。地に満ちあふれ、その中で増えていきなさい。」
9:8 神はノアと、彼と一緒にいる息子たちにこう言われた。
9:9 わたしは、あなたたちと、そのあとに続く子孫と契約を結ぶ。
9:10 またあなたがたと一緒にいるすべての生き物、つまり鳥や家畜、地のすべての獣とも契約を立てる。箱舟から出たすべてのもの、地のすべての生き物とも。
9:11 わたしはあなたたちと契約を結ぶ。だから、もう二度と洪水で命あるすべてのものが絶ち滅ぼされることはない。もう二度と、大地をこわす洪水は起こらない。
9:12 神はさらに言われた。「これは、わたしと、あなたたち、そしてあなたたちと共にいるすべての生き物との間で、わたしが代々かぎりなく結ぶ契約のしるしである。
9:13 わたしは雲の中に虹を置く。これがわたしと地との間で交わした約束のしるしとなる。
9:14 わたしが地の上に雲を起こすとき、その雲の中に虹が現れる。
9:15 わたしはわたしとあなたがた、そしてすべての肉を持つあらゆる生き物との間で結んだこの約束を思い起こす。だから水がふたたび洪水となって、すべての肉を持つものを滅ぼすことはもうない。
9:16 にじが雲の中に現れると、わたしはそれを見て、神と、地上のすべての生き物、すべての肉なるものとの間に結んだ永遠の約束を思い出す。」
9:17 神はノアに言われた。「これが、わたしと、地上のすべての生き物との間に立てた契約のしるしである。」
9:18 箱舟から出たノアの息子たちは、セム、ハム、ヤペテだった。ハムはカナンの父である。
9:19 この三人がノアの息子たちで、全地の人々は彼らから広がっていった。
9:20 ノアは農夫となり、ぶどう畑を作り始めた。
9:21 ノアはぶどう酒を飲んで酔っぱらい、天幕の中で裸になっていた。
9:22 カナンの父ハムは、父の裸を見た。そして外にいる二人の兄弟にそれを話した。
9:23 セムとヤペテは着物を取ると、二人でそれを自分たちの肩にかけ、うしろ向きに歩いていって、父の裸をおおった。顔をそむけていたので、父の裸を見ることはなかった。
9:24 やがてノアは酔いがさめた。そして、末の息子が自分にした事を知った。
9:25 「カナンは呪われろ。兄弟たちの奴隷の中の奴隷になれ」と、ノアは言った。
9:26 「セムの神、主をほめたたえよ。カナンはセムの奴隷となれ。
9:27 神はヤペテの土地を広げ、セムの天幕に住まわせてくださるように。カナンはヤペテのしもべとなれ。」
9:28 ノアは洪水の後、なお三百五十年生きた。
9:29 ノアは全部で九百五十年生きた。そして死んだ。
10:1 ノアの子孫、セム、ハム、ヤペテの記録は次のとおりである。この三人には、洪水の後、子どもたちが生まれた。
10:2 ヤペテの子孫は、ゴメル、マゴグ、マダイ、ヤワン、トバル、メセク、テラス。
10:3 ゴメルの子孫は、アシュケナズ、リファト、トガルマ。
10:4 ヤワンの子孫は、エリシャ、タルシシ、キティム、ドダニムであった。
10:5 これらから海沿いの国々の民が分かれ出て、それぞれの土地に、それぞれの言葉、それぞれの氏族ごとに、国々に住んだ。
10:6 ハムの子孫は、クシュ、ミツライム、プト、カナン。
10:7 クシの子孫はセバ、ハビラ、サブタ、ラアマ、サブテカであった。ラアマの子孫はシバとデダンであった。
10:8 クシの子はニムロデ。彼はこの地で最初の勇士となった。
10:9 彼は主の前で力強い狩人だった。だから「ニムロデのような、主の前で力強い狩人だ」ということわざが生まれた。
10:10 最初シナルの地にあるバベル、エレク、アカデ、カルネから、彼の国は始まった。
10:11 彼はその地からアッシリアへ出て行き、ニネベ、レホボト・イル、カラを建てた。
10:12 ニネベとカラの間にあるレセン。これは大きな町である。
10:13 ミツライムからは、ルド族、アナミ族、レハビ族、ナフト族が生まれた。
10:14 パテロス族、カスル族、カフトル族。ペリシテ族はこのカスル族から出た。
10:15 カナンからは、長男のシドンが生まれ、ヘトも生まれた。
10:16 その他、エブス人、アモリ人、ギルガシ人、
10:17 ヒビ人、アルキ人、シニ人、
10:18 アルワド人、ツェマリ人、ハマテ人が出た。その後、カナン人の氏族は各地に広がっていった。
10:19 カナン人の住む地域は、シドンからゲラルの方へ向かってガザまで、さらにソドム、ゴモラ、アデマ、ゼボイムの方へ向かってレシャまで広がっていた。
10:20 これらはハムの子孫である。氏族ごと、言語ごとに分かれ、それぞれの土地と国々に住んでいた。
10:21 セムにも子が生まれた。セムはエベルのすべての子孫の先祖であり、ヤペテの兄であった。
10:22 セムの子孫は、エラム、アシュル、アルパクサデ、ルデ、アラムであった。
10:23 アラムの子孫はウツ、フル、ゲテル、マシュ。
10:24 アルパクサデの子はシャラ。シャラの子はエベルである。
10:25 エベルには二人の息子が生まれた。一人はペレグという名前だった。彼が生きていた時代に、地に住む人々が分かれたからだ。その弟はヨクタンといった。
10:26 ヨクタンには、アルモダデ、シャレフ、ハツァルマウェテ、エラが生まれた。
10:27 ハドラム、ウザル、ディクラ、
10:28 オバル、アビマエル、シバ。
10:29 オフル、ハビラ、ヨバブ。これらは皆ヨクタンの子である。
10:30 彼らが住んだ地域は、メシャから東の山地セファルの方へと広がっていた。
10:31 これらはセムの子孫である。氏族ごと、言語ごとに分かれ、それぞれの土地と国々に住んでいた。
10:32 これらはノアの子孫の氏族で、それぞれの家系と国ごとに分かれている。大洪水の後、この人たちから世界のさまざまな民族が広がっていった。
11:1 全地は同じ一つの言葉を話し、同じ言葉を使っていた。
11:2 でも人々は東の方から移動して、シナルの地で平野を見つけ、そこに住みついた。
11:3 さあ、レンガを作って、しっかり焼こう。」こうして彼らは石の代わりにレンガを、しっくいの代わりにアスファルトを使った。
11:4 街の人々はこう言った。「さあ、自分たちのために町を建てよう。それに、てっぺんが天に届く塔も建てよう。そうやって有名になるんだ。そうすれば、世界中に散らばらずにすむ。」
11:5 主は降りて来られた。人の子らが建てている、その町と塔を見るために。
11:6 主は言われた。「見なさい。彼らは一つの民で、みな同じ言葉を話している。そして、これはまだ彼らがやり始めたことにすぎない。これから彼らは、しようと思ったことを何でもやり遂げてしまう。もう誰にも止められない。
11:7 さあ、降りて行って、あそこで彼らの言葉を混乱させよう。互いの言葉が通じないようにするのだ。」
11:8 こうして主は彼らをそこから地の全体に散らした。それで、彼らは町を建てるのをやめた。
11:9 それによって、その町はバベルと呼ばれるようになった。主がそこで世界中の言葉を混乱させ、人々をそこから世界中に散らしたからである。
11:10 セムの系図は次のとおりである。セムは百歳のとき、洪水の二年後にアルパクサデが生まれた。
11:11 セムはアルパクサデが生まれたあと、五百年生きて、ほかにも息子や娘が生まれた。
11:12 アルパクサデは三十五歳のときに、シラをもうけた。
11:13 シラが生まれたあと、アルパクサデは四百三年生きて、ほかにも息子や娘が生まれた。
11:14 セラは三十歳のとき、エベルが生まれた。
11:15 シラはエベルが生まれたあと、四百三年生きて、ほかにも息子や娘が生まれた。
11:16 エベルは三十四歳のとき、ペレグが生まれた。
11:17 エベルはペレグが生まれたあと、四百三十年生きて、ほかにも息子や娘が生まれた。
11:18 ペレグは三十歳のとき、リウが生まれた。
11:19 ペレグはリウが生まれたあと、二百九年生きて、ほかにも息子や娘が生まれた。
11:20 リウは三十二歳のとき、セルグが生まれた。
11:21 リウはセルグが生まれたあと、二百七年生きて、ほかにも息子や娘が生まれた。
11:22 セルグは三十歳のとき、ナホルが生まれた。
11:23 セルグはナホルが生まれたあと、二百年生きて、ほかにも息子や娘が生まれた。
11:24 ナホルは二十九歳のとき、テラが生まれた。
11:25 ナホルはテラが生まれたあと、百十九年生きて、ほかにも息子や娘が生まれた。
11:26 テラは七十歳になったとき、アブラム、ナホル、ハランを生んだ。
11:27 テラの家系は次のとおりである。テラにはアブラム、ナホル、ハランという息子が生まれた。そしてハランにはロトが生まれた。
11:28 ハランは父テラより先に、生まれ故郷であるカルデアのウルで死んだ。
11:29 アブラムとナホルは、それぞれ妻をめとった。アブラムの妻はサライ、ナホルの妻はミルカといった。ミルカはハランの娘で、ハランはミルカとイスカの父である。
11:30 サライは子どもができない体で、子どもがいなかった。
11:31 テラは、息子アブラム、そしてハランの子で自分の孫にあたるロト、さらに息子アブラムの妻である嫁サライを連れて、カナンの地へ行こうとカルデアのウルを出発した。そしてハランまで来ると、そこに住みついた。
11:32 テラは二百五年生き、ハランで死んだ。
12:1 主はアブラムに言われた。「あなたは生まれ育った国を出て、親族と別れ、父の家を離れなさい。そして、わたしが示す地に行きなさい。
12:2 わたしはあなたを大きな民族にする。あなたを祝福し、あなたの名を大きくする。あなたは祝福となる。
12:3 あなたを祝福する人をわたしは祝福し、あなたを呪う者をわたしは呪う。地上のすべての民族が、あなたによって祝福される。」
12:4 アブラムは主に言われたとおりに旅立った。ロトも一緒に行った。アブラムがハランを出たときは、七十五歳だった。
12:5 アブラムは、妻のサライ、弟の子ロト、これまでに集めたすべての財産、そしてハランで得た魂を連れて、カナンの地を目指して出発した。そしてカナンの地に着いた。
12:6 アブラムはその地を通って、シケムの場所、モレの大きな木のところまで来た。そのころ、その地にはカナン人が住んでいた。
12:7 主はアブラムの前に現れて、こう言った。「わたしはあなたの子孫に、この地を与える。」アブラムは、自分の前に現れてくれた主のために、そこに祭壇を築いた。
12:8 ベテルの東の山に移り、そこに天幕を張った。西にはベテル、東にはアイがあった。彼はそこで主のために祭壇を築き、主の名を呼んだ。
12:9 アブラムはさらに旅を続け、南のネゲブへと移っていった。
12:10 さて、その地で食べ物がなくなった。アブラムはエジプトへ下って、しばらくそこで暮らすことにした。ききんがひどかったからだ。
12:11 エジプトに近づいたとき、アブラムは妻のサライに言った。「いいかい、あなたはとても美しい女性だ。
12:12 エジプトの人たちはあなたを見ると、「これはあの男の妻だ」と言って、わたしを殺し、あなたを生かしておくだろう。
12:13 どうか、わたしの妹だと言ってほしい。そうすれば、あなたのおかげでわたしはよくしてもらえるし、あなたのおかげでわたしの命も助かるから。
12:14 アブラムがエジプトに入ると、エジプト人たちはこの女性を見た。彼女はとても美しかったからだ。
12:15 パロの家臣たちも彼女を見て、パロの前でその美しさをほめた。それで彼女はパロの家に召し入れられた。
12:16 ファラオはサラのおかげでアブラムを手厚くもてなした。それでアブラムは、羊や牛、雄のろば、男女の奴隷、雌のろば、らくだをたくさん手に入れた。
12:17 主はアブラムの妻サライのことで、ファラオとその家族に激しい病気を次々と与えた。
12:18 ファラオはアブラムを呼びつけて言った。「あなたはわたしに、なんてことをしてくれたんだ。彼女があなたの妻だと、どうして言わなかったんだ。
12:19 ファラオはなぜ、彼女はわたしの妹ですと言ったのか。そのせいで、わたしは彼女を妻にしてしまった。さあ、あなたの妻はここにいる。連れて、行きなさい」
12:20 ファラオは部下にアブラムのことを命じた。すると彼らは、アブラムとその妻、そしてすべての持ち物を送り出した。
13:1 アブラムは妻とすべての持ち物を携えて、エジプトを出てネゲブに上った。ロトも一緒だった。
13:2 アブラムは家畜や金銀をたくさん持ち、とても豊かだった。
13:3 彼はネゲブから旅を続けてベテルへ向かった。そして、ベテルとアイの間の、はじめに天幕を張った場所にたどり着いた。
13:4 すなわち、彼が初めに築いた祭壇のある場所に行った。そしてアブラムは、そこで主の名を呼んだ。
13:5 アブラムと共に旅をしていたロトも、羊や牛の群れ、それに天幕を持っていた。
13:6 その地は、ふたりがいっしょに住むには十分ではなかった。財産があまりに多く、いっしょに住むことができなかったのだ。
13:7 アブラムの家畜の羊飼いたちと、ロトの家畜の羊飼いたちの間で争いが起きた。そのころ、その地にはカナン人とペリジ人が住んでいた。
13:8 アブラムはロトに言った。「わたしとあなたの間で争いはやめよう。わたしの羊飼いたちとあなたの羊飼いたちの間でも、争わせないようにしよう。わたしたちは身内なのだから。
13:9 全地はあなたの前に広がっている。どうかわたしと別れてほしい。あなたが左に行くなら、わたしは右に行く。あなたが右に行くなら、わたしは左に行く。」
13:10 ロトが目を上げると、ヨルダン川一帯の低地が見わたすかぎり水に潤っているのが見えた。主がソドムとゴモラを滅ぼす前のことで、その地はゾアルのほうまで、まるで主の園のように、エジプトの地のように豊かだった。
13:11 そこでロトはヨルダン川流域の低地をすべて選び取り、東へと移っていった。こうして二人は別々に暮らすようになった。
13:12 アブラムはカナンの地に住んだ。でもロトは低地の町々に住み、天幕をソドムの近くまで移していった。
13:13 ソドムの人々は、主の前でとても悪く、罪深い者たちだった。
13:14 ロトが別れて行った後、主はアブラムに言われた。「目を上げて、あなたが今いる場所から北、南、東、西を見わたしなさい。
13:15 すべてあなたが見わたす地を、永遠にあなたとあなたの子孫に与える。
13:16 わたしはあなたの子孫を、地のちりのように多くする。もし人が地のちりを数えきれるなら、あなたの子孫も数えきれるだろう。
13:17 立って、その地を縦横に歩き回りなさい。わたしはそれをあなたに与えるからだ。」
13:18 アブラムは天幕を移し、ヘブロンにあるマムレの樫の木のそばに来て住んだ。そしてそこに、主のための祭壇を築いた。
14:1 シナルの王アムラフェル、エラサルの王アリオク、エラムの王ケダルラオメル、ゴイムの王ティデアル。この四人の王が生きていた時代のことである。
14:2 ソドムの王ベラ、ゴモラの王ビルシャ、アデマの王シナブ、ゼボイムの王セメベル、それにベラすなわちゾアルの王と戦った。
14:3 これら五人の王はみな、シディムの谷、つまり塩の海のあたりで集結した。
14:4 十二年の間、彼らはケダルラオメルに従っていた。でも十三年目に、反抗した。
14:5 十四年目に、ケダラオメルは同盟した王たちと一緒にやって来た。そして、アシュテロト・カルナイムでレファイム人を、ハムでズジム人を、シャベ・キルヤタイムでエミム人を打ち破り、
14:6 セイルの山地に住むホリ人を打ち破り、荒野のそばにあるエル・パランにまで攻め込んだ。
14:7 彼らは引き返してエン・ミシパテ、つまりカデシュに来た。そしてアマレク人の土地をすべて撃ち、さらにハツァツォン・タマルに住むアモリ人も撃った。
14:8 ソドムの王、ゴモラの王、アデマの王、ゼボイムの王、そしてベラつまりゾアルの王が出てきた。そしてシディムの谷で彼らを迎え撃つ陣を敷いた。
14:9 エラムの王ケダルラオメル、ゴイムの王ティドアル、シナルの王アムラフェル、エラサルの王アリオクの四人だ。この四人の王が、五人の王と戦った。
14:10 シディムの谷にはアスファルトの穴がたくさんあった。ソドムの王とゴモラの王は逃げるとき、そこに落ちてしまった。残った者は山へ逃げた。
14:11 ソドムとゴモラの財産と食料をすべて奪い取って、彼らは去っていった。
14:12 ソドムに住んでいたアブラムの甥ロトと、その財産も奪って去った。
14:13 アブラムのもとに、逃げのびてきた者がやってきて、そのことを伝えた。アブラムはヘブライ人で、このときアモリ人マムレの樫の木のそばに住んでいた。マムレはエシュコルの兄弟で、アネルの兄弟でもあった。彼らはアブラムと同盟を結んでいた。
14:14 アブラムは、身内の者が捕虜になったと聞いた。それで、自分の家で生まれ育てた訓練済みの家来三百十八人を呼び集め、ダンまで敵を追いかけた。
14:15 その夜、アブラムは自分の家来たちをいくつかの隊に分け、彼らを攻めて打ち破った。そして、ダマスコの北にあるホバまで敵を追いかけた。
14:16 すべての財産を取り返した。身内のロトとその財産、それに女たちや人々も連れ戻した。
14:17 ソドムの王は、アブラムがケダラオメルとその味方の王たちを打ち破って帰ってくると、シャベの谷まで彼を迎えに出た。シャベの谷は、別名を王の谷という。
14:18 その時、サレムの王メルキゼデクがパンとぶどう酒を持ってきた。彼はいと高き神の祭司であった。
14:19 天地を造られた、いと高き神が、アブラムを祝福してくださいますように。」メルキゼデクはアブラムを祝福して、こう言った。
14:20 そして、あなたの敵をあなたの手に渡してくださった、いと高き神がたたえられますように。」アブラムは、すべての物の十分の一を彼に贈った。
14:21 ソドムの王はアブラムに言った。「魂はわたしにください。財産はあなたが取ってください。」
14:22 アブラムはソドムの王に言った。「わたしは、天と地をつくられたいと高き神、主に向かって手を上げて誓う。
14:23 糸一本、靴ひも一本さえ、あなたのものは何ひとつ受け取らない。「アブラムを豊かにしたのはわたしだ」と、あなたに言わせないためだ。
14:24 ただし、若者たちがすでに食べた分は別だ。それに、わたしと一緒に行った人たち、アネル、エシュコル、マムレには、それぞれの取り分を渡してほしい。」
15:1 これらの出来事の後、主の言葉が幻の中でアブラムに語られた。「アブラム、恐れることはない。わたしはあなたの盾だ。あなたが受ける報いはとても大きい。」
15:2 アブラムは言った。「主なる神よ、あなたはわたしに何をくださるのですか。わたしには子どもがいません。わたしの家を継ぐのは、ダマスコのエリエゼルです。」
15:3 アブラムは続けて言った。「あなたはわたしに子どもを与えてくださいません。だから、わたしの家で生まれた使用人が、あとを継ぐことになります。」
15:4 この時、主の言葉がアブラムに臨んだ。「その者があなたのあとつぎになるのではない。あなた自身から生まれる者が、あなたのあとつぎになる。」
15:5 わたしは彼を外に連れ出して言った。「空を見上げて、星を数えてごらん。数えられるなら数えてみなさい。」そして言った。「あなたの子孫は、あの星のようになる。」
15:6 アブラムは主を信じた。主はそれを彼の義と認めた。
15:7 主はさらにこう言った。「わたしは主である。あなたにこの地を与えて受け継がせようと、あなたをカルデアのウルから連れ出した者だ。」
15:8 主なる神よ、わたしがこの地を受け継ぐと、どうしてわかるのでしょうか。
15:9 主はアブラムに言われた。「三歳の雌牛と、三歳の雌やぎと、三歳の雄羊、それに山ばとと家ばとのひなを、わたしのところに連れてきなさい。」
15:10 彼はこれらすべてを取り、それぞれを真ん中で二つに切り裂き、その切ったものを互いに向かい合わせて置いた。ただし、鳥は切り裂かなかった。
15:11 死体の上に猛禽が舞い降りてきた。でも、アブラムはそれを追い払った。
15:12 日の入るころ、アブラムは深い眠りに引き込まれた。すると、大きな恐ろしい暗闇が彼を包み込んだ。
15:13 主はアブラムに言った。「これをはっきり覚えておきなさい。あなたの子孫は、自分たちのものではない国でよそ者として暮らすことになる。そこで奴隷として働かされ、四百年の間、苦しめられる。
15:14 でも、彼らが仕えたその国を、わたしはさばく。その後、彼らは多くの財産を持って出て来る。
15:15 あなたは安らかに先祖のもとへ行き、天寿をまっとうして葬られる。
15:16 四代目になって、彼らはこの地に帰って来る。アモリ人の悪がまだその限界に達していないからだ。」
15:17 やがて日が沈み、あたりが真っ暗になったとき、煙を上げるかまどと、燃えるたいまつが現れた。そしてそれが、二つに裂かれた動物の間を通り抜けていった。
15:18 その日、主はアブラムと契約を結んで、こう言った。「わたしはこの地をあなたの子孫に与える。エジプトの川から、あの大きな川ユーフラテスまでを。
15:19 ケニ人、ケニズ人、カドモニ人、
15:20 ヘテ人、ペリジ人、レパイム人、
15:21 アモリ人、カナン人、ギルガシ人、エブス人の地を与える。」
16:1 アブラムの妻サライは、彼に子どもを産んであげられなかった。サライにはエジプト人の召し使いがいて、名前をハガルといった。
16:2 サライはアブラムに言った。「主は、わたしが子どもを産めないようにしておられます。だから、わたしの女奴隷のところに入ってください。もしかしたら、彼女を通してわたしも子どもをもてるかもしれません。」アブラムはサライの言葉を聞き入れた。
16:3 サライはハガルを夫アブラムに妻として与えた。ハガルはサライに仕えるエジプト人の召し使いだった。これは、アブラムがカナンの地に住みはじめて十年たったころのことだ。
16:4 彼はハガルのところに入り、ハガルは身ごもった。ハガルは自分が身ごもったのを知ると、女主人を見下すようになった。
16:5 サライはアブラムに言った。「わたしがこんなひどい目にあうのは、あなたのせいよ。わたしは自分の召し使いをあなたの腕に抱かせた。それなのに彼女は、自分が身ごもったとわかったとたん、わたしを見下すようになった。主が、わたしとあなたの間をさばいてくださいますように。」
16:6 アブラムはサライに言った。「あなたの召使いだ。あなたの思いどおりにすればいい。」それでサライがハガルをひどく苦しめたので、ハガルはサライのもとから逃げ出した。
16:7 主の使いは、荒れ野の泉のほとりでハガルを見つけた。それはシュルへ向かう道沿いにある、あの泉のそばだった。
16:8 「サライの召使いのハガル、あなたはどこから来て、どこへ行くのか。」彼女は答えた。「女主人サライのもとから逃げているんです。」
16:9 主の使いはハガルに言った。「あなたの女主人のところに帰りなさい。そして、彼女に従いなさい。」
16:10 主の使いはさらに彼女に言った。「わたしはあなたの子孫を大いに増やす。数えきれないほど多くしよう。」
16:11 主の使いはさらに彼女に言った。「あなたは今、身ごもっている。男の子を産むことになる。その子をイシュマエルと名づけなさい。主が、あなたの苦しみを聞き入れてくださったからだ。
16:12 彼は野生のろばのような人になる。すべての人に手向かい、すべての人も彼に手向かう。彼はすべての兄弟と敵対して暮らすことになる」
16:13 そこでハガルは、自分に語りかけた主のことを、こう呼んだ。「あなたは、わたしを見ていてくださる神です。」ハガルはこう言った。「わたしは、わたしを見ていてくださる方の姿を、ここで見たのだ。」
16:14 それでその井戸は「ベエル・ラハイ・ロイ」と呼ばれた。これはカデシュとベレデの間にある。
16:15 ハガルはアブラムに男の子を産んだ。アブラムは、ハガルが産んだその子をイシマエルと名づけた。
16:16 ハガルがイシマエルを産んだとき、アブラムは八十六歳だった。
17:1 アブラムが九十九歳のとき、主がアブラムの前に現れて言った。「わたしは全能の神だ。わたしとともに歩み、心の欠けのない者でありなさい。
17:2 わたしはあなたと契約を結ぶ。そして、あなたの子孫を数えきれないほど増やす。」
17:3 アブラムはひれ伏した。すると神は彼にこう告げた。
17:4 わたしは、あなたと契約を結ぶ。あなたは多くの民族の父となる。
17:5 あなたの名は、もうアブラムとは呼ばれない。これからは、あなたの名はアブラハムだ。わたしがあなたを、多くの民の父とするからだ。
17:6 わたしはあなたに、たくさんの子孫を与える。あなたから多くの国民が生まれ、あなたの子孫から王たちも出てくる。
17:7 わたしはあなたと、あなたのあとに続く子孫との間に、わたしの契約を代々にわたって立てる。それは永遠の契約であり、わたしはあなたと、あなたのあとに続く子孫の神となる。
17:8 わたしはあなたと、あなたの後に続く子孫に、あなたが今よそ者として住んでいるこの地、つまりカナンの地すべてを、永遠に受け継ぐものとして与える。そしてわたしは、彼らの神となる。
17:9 神はまたアブラハムに言われた。「あなたも、わたしの契約を守らなければならない。あなたも、あなたの後に続く子孫も、代々にわたって守るのだ。」
17:10 これはわたしとあなたがた、そしてあなたの後に続く子孫との間で、あなたがたが守るべきわたしの契約である。あなたがたのうちの男子はみな、割礼を受けなければならない。
17:11 あなたがたは、包皮の肉を切り取って割礼を受けなさい。それが、わたしとあなたがたとの間の契約のしるしとなる。
17:12 八日目の男の子はみな、割礼を受けなければならない。これは代々守るべきことだ。家で生まれた者も、外国人からお金で買い取った、あなたの子孫でない者も、割礼を受けるのだ。
17:13 あなたの家で生まれた者も、あなたがお金で買い取った者も、必ず割礼を受けなければならない。こうしてわたしの契約は、あなたたちの体に刻まれ、永遠の契約となる。
17:14 割礼を受けていない男子、つまり体の包皮を切っていない者は、その魂は自分の民から断ち切られる。わたしとの契約を破ったからだ。
17:15 神はまた、アブラハムにこう言った。「あなたの妻サライのことだが、これからは彼女をサライと呼んではいけない。彼女の名前はサラだ。
17:16 わたしは彼女を祝福する。そして彼女によって、あなたに男の子を授けよう。わたしは彼女を祝福し、彼女は多くの国民の母となる。彼女から、いくつもの民の王たちが生まれる。」
17:17 アブラハムはひれ伏した。そして笑いながら、心の中でこう思った。「百歳の男に子どもが生まれるだろうか。九十歳のサラが産めるだろうか。」
17:18 アブラハムは神に言った。「どうかイシュマエルがあなたのそばで生きられますように。」
17:19 神は言われた。「いや、あなたの妻サラは、あなたに男の子を産む。その子をイサクと名づけなさい。わたしはその子と契約を結ぶ。それは、その後に続く子孫のための永遠の契約となる。
17:20 またイシマエルについては、あなたの願いを聞き入れた。わたしは彼を祝福し、子孫を増やして、非常に大きく増やそう。彼は十二人の指導者を生み、わたしは彼を大きな国民にする。
17:21 来年の今ごろ、サラがあなたに産むイサク、その子とわたしは契約を結ぶ。」
17:22 神はアブラハムと語り終えると、彼のもとを離れて上って行かれた。
17:23 アブラハムは、神に言われたとおりに、その日のうちに、息子のイシュマエルと、家で生まれた者や銀で買い取った者など、家の男たち全員を集めた。そして、その一人ひとりに割礼を施した。
17:24 アブラハムが体に割礼を受けたときは、九十九歳だった。
17:25 その子イシマエルが割礼を受けたときは、十三歳だった。
17:26 この日、アブラハムと息子のイシュマエルは割礼を受けた。
17:27 またイシュマエルだけでなく、家に生まれた者も、お金で外国人から買い取った者も、アブラハムの家の男たちはみな、彼といっしょに割礼を受けた。
18:1 主はマムレの木立のそばで、アブラハムの前に姿を現した。日ざかりのころ、アブラハムはテントの入り口にすわっていた。
18:2 目を上げて見ると、三人の人が向かいに立っていた。それを見た彼は、テントの入り口から走り出て彼らを迎え、地面にひれ伏して、
18:3 わたしは言った。「ご主人さま、もしよかったら、どうかこのしもべのところを、素通りせずに立ち寄ってください。
18:4 水を少し持ってこさせます。足を洗って、この木の下で休んでください。
18:5 わたしはパンを持ってきます。それを食べて、元気を取り戻してください。それからお進みください。せっかく、このしもべのところに立ち寄ってくださったのですから。」すると彼らは言った。「わかった。あなたの言うとおりにしてください。」
18:6 アブラハムは急いで天幕にいるサラのところへ行って言った。「早く上等な小麦粉を三セア用意して、こねてパンを焼いてくれ」
18:7 アブラハムは牛の群れのところへ走って行った。そして、柔らかくて良い子牛を一頭選んで若者に渡し、大急ぎで料理させた。
18:8 アブラハムは凝乳と乳、それに調理した子牛を取って、彼らの前に並べた。そして木の下で彼らのそばに立ち、給仕した。こうして彼らは食事をした。
18:9 彼らはアブラハムに言った。「あなたの妻サラはどこにいますか。」アブラハムは答えた。「天幕の中です。」
18:10 来年の同じころ、わたしはかならずあなたのところに戻ってくる。そのとき、あなたの妻サラには男の子が生まれている。」サラはその人のうしろにある天幕の入口で、これを聞いていた。
18:11 アブラハムとサラは年をとって、かなりの高齢になっていた。サラはもう、女性の月のものも止まっていた。
18:12 わたしはもう老いて衰えてしまった。夫も年をとっている。それなのに、わたしに楽しみなどあるだろうか。
18:13 主はアブラハムに言われた。「どうしてサラは笑ったのか。『わたしはもう年をとっているのに、本当に子どもを産めるのだろうか』と言って。
18:14 主にできないことが、何かあるだろうか。来年の今ごろ、わたしはまたあなたのところに戻ってくる。そのとき、サラには男の子が生まれている。」
18:15 サラは怖くなって打ち消した。「わたしは笑っていません。」でも主は言った。「いや、あなたは笑った。」
18:16 その人たちはそこを立ち、ソドムの方を見おろした。アブラハムは彼らを見送ろうと、いっしょに歩いて行った。
18:17 主は言われた。「わたしがしようとしていることを、アブラハムに隠しておいていいだろうか。
18:18 アブラハムは必ず大きく強い国民になる。そして地のすべての民が、彼を通して祝福を受けるのだ。
18:19 わたしがアブラハムを選んだのは、彼が後に続く自分の子どもたちや家の者に、正しく公正に生きて主の道を守るよう教えるためだ。そうすれば、わたしはアブラハムに約束したことを、そのとおりに実現させよう。」
18:20 ソドムとゴモラについて、たくさんの人が助けを求めて叫んでいる。その罪はあまりにも重い。だから主は言った。
18:21 わたしは今その町に下って行って、わたしに届いた叫びのとおりに、彼らが本当に悪いことをしているのか、確かめよう。もしそうでないなら、それも見きわめよう。
18:22 その人々はそこを立ち去り、ソドムの方へ向かった。でもアブラハムは、まだ主の前に立っていた。
18:23 アブラハムは近づいて言った。「正しい人を、悪い人と一緒に滅ぼしてしまうのですか。
18:24 たとえその町に正しい人が五十人いたとしても、あなたはそこを滅ぼし、その五十人の正しい人のために町を見逃すことはなさらないのですか。
18:25 正しい者を悪い者と一緒に殺すなんて、そんなことをあなたが絶対にするはずがない。正しい者を悪い者と同じように扱うなんて、絶対にありえない。全地をさばく方が、正しいことを行わないなんてことがあるだろうか。」
18:26 主は言われた。「もしソドムの町の中に正しい人が五十人見つかったら、その人たちのために町全体を見逃そう。」
18:27 アブラハムは答えて言った。「わたしはちりや灰にすぎない者ですが、思いきってわが主に申し上げます。
18:28 もし五十人の正しい人が五人足りなかったら、その五人のために町全体を滅ぼすのですか。」すると主は言われた。「そこに四十五人いれば、滅ぼさない。」
18:29 アブラハムはさらに続けて言った。「もしそこに四十人いたら、どうですか。」主は言われた。「その四十人のために、わたしはそれをしない。」
18:30 アブラハムは言った。「主よ、どうか怒らないでください。もう少しだけ言わせてください。もしそこに三十人いたら、どうでしょう。」主は答えた。「そこに三十人いたら、わたしはそれをしない。」
18:31 アブラハムは言った。「思いきって、わたしの主に申し上げます。もしそこに二十人いたら、どうでしょうか。」主は言われた。「その二十人のために、わたしは滅ぼさない。」
18:32 アブラハムは言った。「わたしの主よ、どうか怒らないでください。もう一度だけ言わせてください。もしそこに十人いたら、どうでしょうか。」主は言われた。「その十人のために、わたしは滅ぼさない。」
18:33 主はアブラハムと語り終えると、去って行かれた。アブラハムは自分の家に帰った。
19:1 そのふたりの使いは、夕方にソドムに着いた。そのときロトは、町の門のところにすわっていた。ロトは彼らを見ると、立ち上がって迎え、地面にひれ伏して、
19:2 「どうか皆さま、しもべの家に立ち寄ってください。足を洗い、一晩お泊まりください。朝早く起きて、旅を続けられたらいいでしょう。」すると彼らは言った。「いや、わたしたちは広場で夜を過ごします。」
19:3 ロトがしきりに勧めたので、二人はロトの家に立ち寄って入った。ロトは彼らのために食事を用意し、種を入れないパンを焼いた。こうして二人は食べた。
19:4 その家の人々がまだ寝ないうちに、町の人々、つまりソドムの男たちが、若い者から年寄りまで、遠くの者まで一人残らず、その家を取り囲んだ。
19:5 ロトに向かって叫んだ。「今夜おまえのところに来た男たちはどこだ。ここへ出せ。おれたちがその男たちを知るためだ」
19:6 ロトは戸口から彼らのところへ出て行き、後ろの戸を閉めた。
19:7 言った。「みんな、お願いだ。そんなひどいことはやめてくれ。
19:8 わたしにはまだ男を知らない娘が二人いる。その子たちをあなたたちに差し出すから、好きなようにすればいい。ただ、この人たちには何もしないでほしい。わたしの家の屋根の下に来た客なのだから。」
19:9 「どけ」と彼らは言った。そして続けた。「こいつはよそから来て住みついただけのくせに、いつも人を裁こうとする。だったら、あいつらより、おまえのほうをひどい目に遭わせてやる。」そう言って彼らはロトに激しく詰め寄り、戸を破ろうとして押し寄せた。
19:10 その時、ふたりは手を伸ばしてロトを家の中に引き入れ、戸を閉じた。
19:11 そして家の入口にいた人々を、老いも若きもみな打って目が見えなくした。人々は入口を探しあぐねてしまった。
19:12 「ほかにここに身内はいますか。娘婿でも、息子でも、娘でも、この町にいるあなたの家族はみんな、ここから連れ出しなさい。
19:13 わたしたちは、この町を滅ぼそうとしている。ここに住む人たちの叫びが主のもとに届き、あまりに大きくなったからだ。それで主は、この町を滅ぼすためにわたしたちを送られたのだ。
19:14 ロトは出て行って、娘たちの結婚相手であるむこたちに話した。「立って、この場所から出るんだ。主がこの町を滅ぼそうとしている。」でも、むこたちにはそれが冗談のように思えた。
19:15 夜が明けはじめたころ、天使たちはロトをせかして言った。「さあ、早く。妻とここにいる二人の娘を連れて逃げなさい。ぐずぐずしていると、この町の罪の巻き添えになって、あなたも滅ぼされてしまう。」
19:16 ロトはためらっていた。すると、その二人は、主のあわれみが彼に注がれていたので、彼の手と妻の手と二人の娘の手を取って、彼らを町の外へ連れ出し、そこに残した。
19:17 天使たちは彼らを外に連れ出すと、こう言った。「逃げなさい。自分の命を守るんだ。うしろを振り返ってはいけない。この低地のどこにも立ち止まってはいけない。山まで逃げなさい。そうしないと、あなたは滅んでしまう。」
19:18 ロトは彼らに言った。「主よ、どうかそんなことになさらないでください。
19:19 主はすでにあなたの前で恵みを受け、あなたはわたしの命を救うという大きな慈しみを示してくださいました。でも、わたしは山まで逃げのびることはできません。災いが追いついてきて、死んでしまうでしょう。
19:20 あの町を見てください。近くて、そこへ逃げ込めます。それに小さな町です。どうか、あそこへ逃げさせてください。ほんの小さな町でしょう。そうすれば、わたしの魂は生きのびられます。」
19:21 主は彼に言った。「わかった。あなたのその願いも聞き入れよう。あなたが言うその町は、滅ぼさないことにする。
19:22 急いでそこへ逃げなさい。あなたがそこに着くまで、わたしは何もできないのだから。」こういうわけで、その町はゾアルと呼ばれるようになった。
19:23 日は地の上にのぼり、ロトはゾアルに着いた。
19:24 主は硫黄と火を、天の主のもとからソドムとゴモラに降らせた。
19:25 これらの町と、低地全体と、その町々に住むすべての人と、地に生えているものを、ことごとく滅ぼした。
19:26 ロトの妻はうしろを振り返った。すると塩の柱になってしまった。
19:27 アブラハムは朝早く起きて、前に主の前に立ったあの場所へ行った。
19:28 ソドムとゴモラの方、そして低地全体を見わたした。すると、その土地から煙が立ちのぼっていた。まるで炉から出る煙のようだった。
19:29 神が低地の町々を滅ぼされたとき、神はアブラハムのことを心に留めていた。だからロトが住んでいた町々をひっくり返して滅ぼすそのとき、神はその破滅の中からロトを送り出して助けたのだ。
19:30 ロトはゾアルを出て山へ上り、ふたりの娘といっしょにそこで暮らした。ゾアルに住むのが怖かったからだ。それで彼は、ふたりの娘といっしょに、ほら穴の中で暮らした。
19:31 姉が妹に言った。「わたしたちの父さんはもう年をとっている。それに、この地には、世のならわしどおりにわたしたちのところに来てくれる男の人がいない。
19:32 さあ、お父さんにお酒を飲ませて、いっしょに寝よう。そうすれば、お父さんの血筋を残せるから」
19:33 彼女たちはその夜、父にぶどう酒を飲ませた。そして姉が入って、父と一緒に寝た。父は娘が横になったのも起き上がったのも気づかなかった。
19:34 あくる日、姉は妹に言った。「わたしは昨夜、父と寝た。今夜もまた父にお酒を飲ませよう。あなたが行って父と寝なさい。そうやって、わたしたちは父の血筋を絶やさずに残すの」
19:35 その夜も、娘たちは父にぶどう酒を飲ませた。そして妹が行って父と共に寝た。でも父は、娘が寝たのも起きたのも気づかなかった。
19:36 こうして、ロトのふたりの娘は父の子をみごもった。
19:37 姉娘は男の子を産み、モアブと名づけた。彼が今のモアブ人の先祖である。
19:38 妹も男の子を産んだ。彼女はその子をベン・アンミと名づけた。この子が、今のアンモン人の先祖である。
20:1 アブラハムはそこからネゲブの地に移り、カデシュとシュルの間に住んだ。そしてゲラルにしばらく滞在した。
20:2 アブラハムは妻サラのことを「これはわたしの妹です」と言った。それでゲラルの王アビメレクは、人を送ってサラを召し入れた。
20:3 神は夜、夢の中でアビメレクのところに来て、こう言った。「あなたは、自分のものにしたあの女のことで、必ず死ぬことになる。彼女は夫のある身だからだ。」
20:4 アビメレクは、まだ彼女に近づいていなかった。彼は言った。「主よ、あなたは正しい者たちの民までも滅ぼされるのですか。
20:5 彼はわたしに『この人はわたしの妹だ』と言ったではありませんか。それに彼女自身も『あの人はわたしの兄だ』と言ったのです。わたしはやましいところもなく、きれいな手でこのことをしたのです。」
20:6 神はまた夢の中で彼に言われた。「そう、あなたが正しい心でこれをしたことは、わたしも分かっている。だから、わたしに対して罪を犯さないよう、あなたを守ってきた。彼女に触れさせなかったのも、そのためだ。
20:7 いま、その人の妻を返しなさい。彼は預言者だから、あなたのために祈ってくれる。そうすれば、あなたは生きられる。でも、もし返さないなら、はっきり知っておきなさい。あなたも、あなたに属する者もみな、必ず死ぬことになる」
20:8 翌朝早く、アビメレクは起きて家来たちを全員呼び集め、こうしたことをすべて話して聞かせた。すると、彼らはとても怖くなった。
20:9 アビメレクはアブラハムを呼んで言った。「あなたは、わたしたちに何ということをしてくれたのか。わたしがあなたにどんな罪を犯したというのか。あなたはわたしと、わたしの国に、こんな大きな罪をもたらした。あなたは、してはならないことをわたしにしたのだ。」
20:10 アビメレクはアブラハムに言った。「どういうつもりで、こんなことをしたんだ。」
20:11 アブラハムは答えた。「この土地には神を恐れる心がまったくない。だから妻のことでわたしが殺されると思ったのです。
20:12 また、あの女は本当にわたしの妹なんだ。父は同じでも、母は違う。それで、わたしの妻になった。
20:13 神がわたしに父の家を離れてさまよい歩かせたとき、わたしは彼女に言ったんだ。「これがあなたのしてくれる慈しみだ。わたしたちが行く先々で、わたしのことを『この人はわたしの兄です』と言ってほしい」』」
20:14 そこでアビメレクは羊と牛、それに男女の奴隷を取ってアブラハムに与え、妻のサラを彼のもとに返した。
20:15 アビメレクは言った。「見てのとおり、わたしの国はあなたの前に広がっている。好きな場所に住むといい。」
20:16 またサラにこう言った。「あなたのお兄さんに、銀を千枚渡しました。これで、あなたと一緒にいるすべての人の前で、あなたに起きたことは償われ、あなたが正しかったと認められる。」
20:17 アブラハムが神に祈ると、神はアビメレクとその妻、それに女奴隷たちを癒やした。それで彼女たちは子どもを産めるようになった。
20:18 アブラハムの妻サラのことが原因で、主がアビメレクの家のすべての女性の胎を、固く閉じてしまっていたからである。
21:1 主はサラのことを、前に言われたとおりに心にかけてくださった。そして約束したとおりのことを、サラにしてくださった。
21:2 サラはみごもり、神が告げていたその時になって、年老いたアブラハムに男の子を産んだ。
21:3 アブラハムは、サラが産んでくれた男の子、その生まれた息子にイサクという名前をつけた。
21:4 アブラハムは、神に命じられたとおり、生まれて八日目の息子イサクに割礼を施した。
21:5 アブラハムは、その子イサクが生まれたとき、百歳だった。
21:6 サラは言った。「神はわたしを笑わせてくださった。これを聞く人はみんな、わたしといっしょに笑うだろう。」
21:7 「サラがいつか子どもに乳を飲ませるなんて、誰がアブラハムに言えただろう。それなのにわたしは、年をとった彼に男の子を産んだのだ。」
21:8 子どもは育って、乳離れした。イサクが乳離れした日に、アブラハムは盛大な祝いの席を設けた。
21:9 サラは、エジプト人ハガルがアブラハムに産んだ子が、イサクをからかっているのを見た。
21:10 「アブラハムにこう言った。『あの女奴隷とその子を追い出してください。あの女奴隷の子が、わたしの子イサクと一緒に跡を継ぐことなど、あってはなりません』」
21:11 この事で、アブラハムは息子のことをとても心配した。
21:12 神はアブラハムに言った。「その子とはしためのことで、そんなに心配しなくていい。サラの言うことは、すべてそのとおりにしなさい。イサクから生まれる者が、あなたの子孫と呼ばれるのだから。
21:13 しかし、はしための子もあなたの子だから、彼の子孫も一つの国民にする。」
21:14 アブラハムは翌朝早く起きて、パンと水の入った皮袋を用意した。それをハガルに渡し、肩に負わせ、その子といっしょに送り出した。ハガルはそこを去り、ベエルシバの荒れ野をさまよった。
21:15 やがて皮袋の水がなくなった。彼女はその子を、一本の低木の下に寝かせた。
21:16 ハガルは「この子が死ぬのを見るのは、とても耐えられない」と言って、矢が届くくらい離れた場所まで歩いて行き、子どものほうを向いてすわった。そして子どものほうを向いてすわったまま、声をあげて泣いた。
21:17 神は少年の泣き声を聞いた。すると神の使いが天からハガルに呼びかけた。「どうしたの、ハガル。こわがらなくていい。神は、あそこにいる少年の声を聞いたのだから。
21:18 立って、あの子を抱き起こしなさい。あなたの手でしっかり支えてあげなさい。わたしはあの子を大きな国民にするから。」
21:19 神がハガルの目を開いた。すると彼女は、水のわく井戸が見えた。彼女は行って皮袋に水を満たし、その子に飲ませた。
21:20 神は少年とともにいて、少年は成長した。彼は荒れ野に住み、弓を射る者となった。
21:21 彼はパランの荒野で暮らした。母は彼のために、エジプトの地から妻を迎えた。
21:22 そのころ、アビメレクは軍隊の長ピコルと一緒に、アブラハムにこう言った。「あなたが何をしても、神があなたとともにいる。
21:23 今、ここでわたしに、神にかけて誓ってほしい。わたしのことも、わたしの子や孫のことも、決してだまさないと。わたしがあなたに慈しみを尽くしたように、あなたもわたしに、そしてあなたが住んでいるこの地に、同じようにしてほしい。」
21:24 アブラハムは言った。「わたしは誓います。」
21:25 アブラハムは、アビメレクの家来たちが水の井戸を奪い取ったことで、アビメレクに抗議した。
21:26 アビメレクは言った。「だれがそんなことをしたのか、わたしは知らない。あなたも話してくれなかったし、わたしも今日まで聞いていなかった。」
21:27 そこでアブラハムは羊と牛を用意してアビメレクに贈り、二人は契約を結んだ。
21:28 アブラハムは、雌の子羊を七頭、群れから分けて別に置いた。
21:29 アビメレクはアブラハムに言った。「あなたがこの七頭の雌の子羊を別に分けて置いたのは、どういうわけですか。」
21:30 アブラハムは言った。「あなたは、わたしの手からこの雌の子羊七頭を受け取ってください。わたしがこの井戸を掘ったという証拠にするためです」
21:31 そこでその場所はベエル・シェバと名づけられた。二人がそこで誓いを立てたからである。
21:32 ベエルシバでこうして契約を結んだ。そして、アビメレクと軍の司令官ピコルは立ち上がり、ペリシテ人の地へ帰っていった。
21:33 アブラハムはベエルシバに一本のぎょりゅうの木を植えた。そしてそこで、永遠の神である主の名を呼んだ。
21:34 アブラハムは長い間、ペリシテ人の地で暮らした。
22:1 これらのことがあった後、神はアブラハムを試された。神が「アブラハム」と呼びかけると、彼は「はい、ここにいます」と答えた。
22:2 神は言われた。「あなたの息子を連れて行きなさい。あなたが愛するひとり子イサクだ。その子を連れてモリヤの地へ行き、わたしがこれから告げる山で、その子を焼き尽くすいけにえとしてささげなさい。」
22:3 アブラハムは朝早く起きて、ろばに鞍をつけた。そして、ふたりの若者と息子のイサクを連れ、焼き尽くすいけにえに使うたきぎを割ってから、神が示した場所へと出かけた。
22:4 三日目に、アブラハムは目を上げて、遠くにその場所を見た。
22:5 アブラハムは若者たちにこう言った。「あなたたちは、ろばと一緒にここで待っていてほしい。わたしと息子はあそこまで行って礼拝し、また戻ってくるから。」
22:6 アブラハムは焼き尽くすいけにえ用のたきぎを取って、息子のイサクに背負わせた。そして自分は火と刃物を手に持ち、二人は一緒に歩いて行った。
22:7 イサクは父アブラハムに声をかけた。「お父さん。」アブラハムは答えた。「ここにいるよ、わたしの子よ。」イサクは言った。「火とたきぎはあるけど、焼き尽くすいけにえにする子羊はどこにいるの。」
22:8 アブラハムは答えた。「わたしの子よ、神ご自身が、焼き尽くすいけにえの子羊を用意してくださるんだ。」こうして二人は一緒に歩き続けた。
22:9 彼らは、神が示した場所に着いた。アブラハムはそこに祭壇を作り、たきぎを並べた。そして息子のイサクを縛り、祭壇のたきぎの上に載せた。
22:10 アブラハムが手を伸ばして刃物を取り、わが子を殺そうとした。
22:11 主の使いが天から彼を呼んで言った。「アブラハム、アブラハム。」アブラハムは答えた。「はい、ここにいます。」
22:12 「その人は言った。『その子に手を出してはいけない。何もしてはいけない。あなたが神を本当に恐れ敬う者だと、今わかったからだ。あなたは自分の子、たったひとりの子さえ、わたしのために惜しまなかった』」
22:13 アブラハムが目を上げて見ると、後ろに一頭の雄羊がいた。角がやぶに引っかかって、動けなくなっていた。アブラハムは行ってその雄羊を捕まえ、自分の息子の代わりに、焼き尽くすいけにえとしてささげた。
22:14 それでアブラハムは、その場所を「主が備えてくださる」と名づけた。だから今でも、「主の山で備えられる」と言われている。
22:15 主は、天からもう一度アブラハムに呼びかけて、
22:16 「主はこう言われた。『わたしは自分にかけて誓う。あなたがこのことをして、自分の子、たったひとりの子さえ惜しまなかったのだから、
22:17 わたしはあなたを大いに祝福し、あなたの子孫を空の星のように、海辺の砂のように、とても多くする。あなたの子孫は敵の町の門を勝ち取る。
22:18 また、地上のすべての民族が、あなたの子孫によって祝福を受ける。あなたがわたしの言葉に従ったからだ』」
22:19 アブラハムは若者たちのところに戻った。そして一行は立ち上がり、いっしょにベエルシェバへ向かった。アブラハムはそのままベエルシェバに住んだ。
22:20 これらの出来事の後、アブラハムのもとに、こんな知らせが届いた。「あなたの兄弟ナホルにも、ミルカが子どもを産みました。
22:21 ウヅが長男、その弟がブズ、それからアラムの父ケムエル、
22:22 ケセデ、ハゾ、ピルダシ、エデラフ、そしてベトエルだった。」
22:23 ベトエルはリベカの父になった。この八人は、ミルカがアブラハムの兄弟ナホルとの間に産んだ子である。
22:24 ナホルのそばめで、ルマという女もまた、テバ、ガハム、タハシ、マアカを産んだ。
23:1 サラは百二十七年の生涯を生きた。これがサラの一生の年月である。
23:2 サラはカナンの地のキルヤト・アルバ、つまりヘブロンで死んだ。アブラハムはそこに来て、サラのために悲しみ、涙を流した。
23:3 アブラハムは亡くなった妻のそばから立ち上がり、ヘテの人々にこう言った。
23:4 「わたしは、あなたたちのところに身を寄せているよそ者です。どうか、わたしにお墓にする土地を分けてください。そうすれば、亡くなった妻をそこに葬れます」
23:5 ヘテの人々はアブラハムにこう答えた。
23:6 「わたしたちの主よ、聞いてください。あなたはわたしたちの間にいる、神のような偉大な指導者です。わたしたちの墓地の一番良い場所に、あなたの亡くなった方を葬ってください。あなたが亡くなった方を葬るのを、自分の墓を惜しんで断る者など、わたしたちの中には一人もいません。」
23:7 アブラハムは立ち上がり、その地の民であるヘテの人々に頭を下げて礼をした。
23:8 アブラハムは彼らにこう言った。「もしあなたがたが、わたしの亡くなった者をここで葬らせてくれる気持ちがあるなら、どうかわたしの願いを聞いて、ツォハルの子エフロンにわたしのために頼んでほしい。
23:9 彼が持っている畑の端にあるマクペラのほら穴を、わたしに譲ってください。あなたがたの前で、十分な代金を払います。そうすれば、それがわたしの墓地になります。」
23:10 エフロンはヘテ人たちのあいだにすわっていた。そこでヘテ人エフロンは、町の門に集まってきたヘテ人みんなが聞いているところで、アブラハムにこう答えた。
23:11 「いいえ、ご主人様、聞いてください。あの畑をあなたにさしあげます。そこにあるほら穴も、あなたにさしあげます。わたしの民のみんなが見ている前で、それをさしあげます。亡くなったあなたの方を葬ってください。」
23:12 アブラハムはその土地の人々の前で頭を下げ、
23:13 エフロンに、その土地の人たちが聞いている前で言った。「でも、聞いてください。もしあなたがいいと言ってくれるなら、わたしはこの畑の代金を払います。受け取ってください。そうすれば、わたしはそこに亡くなった人を葬れます。」
23:14 エフロンはアブラハムにこう答えた。
23:15 「ご主人さま、聞いてください。あの土地は銀四百シェケルですが、わたしとあなたの間で、それがどれほどのものでしょう。どうぞ、あなたの亡くなった方を葬ってください」
23:16 アブラハムはエフロンの言葉を受け入れた。そして、ヘトの人々が聞いているところでエフロンが言った銀を量って渡した。それは、商人のあいだで通用する銀四百シェケルだった。
23:17 マムレの東にあるマクペラのエフロンの畑、つまりその畑と、その中にある洞穴と、その畑の中と周りの境の内側にあるすべての木は、
23:18 ヘテの人々の前で、つまりその町の門を出入りするすべての人の前で、アブラハムの所有と決まった。
23:19 その後、アブラハムは妻サラを、カナンの地にあるマムレ、つまりヘブロンの東にあるマクペラの畑のほら穴に葬った。
23:20 このように、畑とその中にあるほら穴は、ヘテの人々によってアブラハムの墓地として正式に譲られた。
24:1 アブラハムは年を取り、すっかり老人になっていた。主はそのアブラハムを、すべてのことで祝福してこられた。
24:2 アブラハムは、自分の全財産を任せていた家の年長の使用人に言った。「わたしのももの下に手を入れてくれ。
24:3 わたしは、天の神であり地の神でもある主にかけて、あなたに誓わせる。わたしが今住んでいるこの土地のカナン人の娘を、わたしの息子の妻に迎えてはならない。
24:4 わたしの国へ行き、親族のところで、息子イサクのために妻を見つけてほしい。」
24:5 「もしその女の人がわたしについてこの地まで来るのを嫌がったら、どうすればいいでしょう。あなたのご子息を、あなたが出てきたあの土地へ連れ戻すべきでしょうか」と、しもべはアブラハムに言った。
24:6 わたしの息子を、決してあそこへ連れ戻してはならない。
24:7 主は天の神。わたしを父の家、生まれ故郷から連れ出し、こう約束して誓ってくださった。「あなたの子孫に、この地を与える」と。その主が、ご自分の使いをあなたの前に送ってくださる。だから、あなたはあそこからわたしの息子のために妻を連れて来られる。
24:8 でもその女があなたについて来たくないと言うなら、あなたはこの誓いから解かれる。ただ、わたしの息子だけは、決してあそこへ連れ戻してはならない。」
24:9 そこで召使いは、主人アブラハムの股の下に手を入れ、この件について彼に誓った。
24:10 しもべは、主人のらくだの中から十頭を連れて出発した。手には主人のさまざまな良い物を携えていた。こうして彼は旅立ち、アラム・ナハライムにあるナホルの町へ向かった。
24:11 彼はらくだを町の外の、水くみ場の井戸のそばにひざまずかせた。夕暮れどきで、女たちが水をくみに出てくる時間だった。
24:12 主人アブラハムの神、主よ。どうか今日、わたしをうまくいかせてください。主人アブラハムに慈しみを示してください。
24:13 わたしは今、泉のそばに立っています。町の人たちの娘が水をくみに出てくるでしょう。
24:14 こうお願いした娘がいたら――『どうか、水がめを傾けてわたしに飲ませてください』とわたしが言い、その娘が『どうぞお飲みください。あなたのらくだにも飲ませます』と答えたなら、その娘こそ、あなたがしもべイサクのために選んでくださった人だということにしてください。そうすれば、あなたがわたしの主人に慈しみを示してくださったと、わたしにも分かります」
24:15 彼がまだ話し終えないうちに、リベカが水がめを肩にのせて出てきた。彼女は、アブラハムの兄弟ナホルとその妻ミルカとの子ベトエルの娘だった。
24:16 その娘はとても美しく、まだ男の人を知らない処女だった。彼女は泉に下りていき、水がめを満たして、上がってきた。
24:17 しもべは走り寄って言った。「お願いです。あなたの水がめの水を、少し飲ませてください」
24:18 「わが主よ、どうぞお飲みください」と彼女は言った。そして急いで水がめを手もとに下ろし、彼に飲ませた。
24:19 飲ませ終えると、彼女は言った。「あなたのらくだにも、みんなが飲み終わるまで水をくんであげます」
24:20 彼女は急いでかめの水を水おけにあけ、もう一度水をくみに井戸へ走って行って、らくだ全部のために水をくんだ。
24:21 その間その人は、主が自分の旅を成功させてくださったのかどうかを知ろうと、黙って彼女を見つめていた。
24:22 らくだが水を飲み終わると、その人は重さ半シェケルの金の鼻輪を一つと、彼女の腕にはめる重さ十シェケルの金の腕輪を二つ取り出して、
24:23 「あなたはどなたの娘さんですか。教えてください。あなたのお父さんの家に、わたしたちが泊まれる場所はありますか」
24:24 わたしはナホルの妻ミルカが産んだ、ベトエルの娘です。
24:25 わたしどもには、わらも飼葉もたくさんあります。それに、泊まる場所もあります。
24:26 その人はひざまずき、主を礼拝した。
24:27 主人アブラハムの神、主がほめたたえられますように。主は、わたしの主人への慈しみと真実を絶やさなかった。旅を続けるわたしを、主は主人の親族の家へとまっすぐに導いてくださったのだ。
24:28 娘は走って行って、母の家の人たちにこのことを伝えた。
24:29 リベカには兄がいて、名をラバンといった。ラバンは、泉のそばにいるその人のところへ走って出て行った。
24:30 鼻輪と、妹の腕にある腕輪を見て、さらに妹リベカが「あの人はわたしにこう言った」と話すのを聞いて、ラバンはその人のところへ行った。すると、その人は泉のほとりで、らくだのそばに立っていた。
24:31 「主に祝福された人よ、どうぞお入りください。なぜ外に立っているのですか。わたしは家を整え、らくだのための場所も用意しておきました」と彼は言った。
24:32 その人は家に入った。ラバンはらくだの荷を解き、わらと餌をらくだに与えた。そして、その人とお供の者たちの足を洗うための水も用意した。
24:33 そして彼の前に食事が並べられた。でも彼は言った。「用件をお話しするまでは、食べません。」ラバンは言った。「どうぞ、話してください。」
24:34 わたしはアブラハムのしもべです。
24:35 主はわたしの主人を大いに祝福して、とても裕福な人にされました。主は主人に、羊や牛、銀や金、男女の使用人、らくだやろばを与えられました。
24:36 主人の妻サラは、年をとってから主人に男の子を産みました。主人はその子に、自分の持ち物をすべて譲りました。
24:37 ご主人様はわたしにこう誓わせました。『わたしが今住んでいるこの土地のカナン人の娘を、息子の妻に迎えてはいけない。
24:38 わたしの父の家、わたしの親族のところへ行って、わたしの息子のために妻を迎えなさい』。
24:39 わたしは主人に言いました。「もしその女の人がわたしについて来なかったら、どうしましょう」
24:40 主人はわたしにこう言いました。『わたしがずっと従ってきた主が、天使をあなたと一緒に送り、あなたの旅を成功させてくださる。そして、あなたはわたしの親族、わたしの父の家から、わたしの息子のために妻を迎えることになる。
24:41 そのとき、おまえはわたしの誓いから解かれる。わたしの親族のところへ行けば、それでいい。もし彼らがその娘をおまえに与えなくても、おまえはわたしの誓いから解かれるのだ。』
24:42 わたしはきょう、泉のところにやってきて、こう祈った。『主人アブラハムの神、主よ、どうか今、わたしが歩んでいるこの旅路を、うまくいくようにしてください。
24:43 わたしはこの泉のそばに立っています。水をくみに出てくる娘に、「あなたの水がめの水を少し飲ませてください」とお願いします。
24:44 「『どうぞお飲みください。あなたのらくだにも、わたしが水をくんできます』とわたしに言ったなら、その人こそ、主がわたしの主人の息子のために選んでくださった女性だ』。
24:45 わたしが心の中でそう言い終わらないうちに、リベカが水がめを肩に載せて出てきた。そして泉に降りて、水をくんだ。わたしは「どうか飲ませてください」と彼女に言った。
24:46 その人は急いで水がめを肩からおろして、「どうぞお飲みください。らくだにも水をあげますね」と言った。それでわたしが飲むと、その人はらくだにも水を飲ませてくれた。
24:47 わたしは彼女に「あなたはどなたの娘さんですか」と尋ねた。すると彼女は「わたしはベトエルの娘です。ベトエルは、ナホルとミルカの間に生まれた子です」と答えた。そこでわたしは彼女の鼻に鼻輪をつけ、両手に腕輪をはめた。
24:48 わたしは頭を下げて主を礼拝した。そして、主人アブラハムの神である主をたたえた。主は、わたしを正しい道に導いてくださり、主人の弟の娘をその息子の妻に迎えられるようにしてくださったからだ。
24:49 それで、もしあなたがたがわたしの主人に慈しみと誠実を尽くしてくださるなら、そう言ってください。そうでないなら、それも言ってください。そうすれば、わたしは右へ行くか左へ行くか、これからどうするか決められますから。
24:50 ラバンとベトエルは答えた。「これは主から出たことです。わたしどもは、あなたに良し悪しを言うことはできません。
24:51 リベカがここにいます。連れて行ってください。そして主が言われたとおり、彼女をあなたの主人の息子の妻にしてください。」
24:52 アブラハムのしもべは、彼らのこの言葉を聞いて、地にひれ伏し、主を礼拝した。
24:53 そしてしもべは、銀の飾りと金の飾り、それに衣装を取り出してリベカに贈った。また、彼女の兄と母にも高価な贈り物をした。
24:54 彼と、彼に同行した人たちは飲み食いして、そこに泊まった。翌朝起きると、そのしもべは言った。「わたしを主人のもとへ帰らせてください。」
24:55 リベカの兄と母は言った。「娘をあと十日ほど、わたしたちのところに置いてください。それから行かせます。」
24:56 主はわたしの旅を成功させてくださった。だから、引き止めないでほしい。わたしを送り出して、主人のもとへ帰らせてください。
24:57 彼らは言った。「娘を呼んで、本人に聞いてみよう」
24:58 彼らはリベカを呼んで、「あなたはこの人と一緒に行きますか」と聞いた。リベカは「行きます」と答えた。
24:59 彼らは妹リベカと、その乳母、それにアブラハムのしもべとその従者たちを送り出した。
24:60 人々はリベカを祝福して、こう言った。「わたしたちの妹よ、あなたが幾千万もの人の母となりますように。あなたの子孫が、憎む者たちの門を勝ち取りますように。」
24:61 リベカは侍女たちと立ち上がり、らくだに乗って、あの人の後について行った。こうして、しもべはリベカを連れて出発した。
24:62 イサクはベエル・ラハイ・ロイから戻ってきていた。彼はネゲブの地に住んでいたのだ。
24:63 イサクは夕暮れ時に、野原を歩いて物思いにふけっていた。ふと目を上げて見ると、らくだの群れがこちらに近づいてくるのが見えた。
24:64 リベカも目を上げてイサクを見ると、らくだから降りて、
24:65 リベカは召使いにたずねた。「野原をこっちに歩いてくる、あの人はだれ？」召使いは「あの方がわたしの主人です」と答えた。それを聞いてリベカはベールを取り、顔をおおった。
24:66 しもべは、自分がしてきたことをすべてイサクに話した。
24:67 イサクはリベカを母サラの天幕に連れて行き、リベカを妻としてめとった。イサクはリベカを愛し、母を亡くした悲しみから慰められた。
25:1 アブラハムはもう一度結婚した。相手はケトラという女性だった。
25:2 ケトラは、ジムラン、ヨクシャン、メダン、ミデアン、イシュバク、シュアを彼に産んだ。
25:3 ヨクシャンの子はシバとデダン。デダンの子孫は、アシュル人、レトシュ人、レウミム人である。
25:4 ミデアンの子孫はエファ、エフェル、ハノク、アビダ、エルダアである。これらは皆ケトラの子孫であった。
25:5 アブラハムは、自分の持ち物をすべてイサクに与えた。
25:6 またアブラハムは、そばめたちとの子らにも贈り物を与えた。そして、まだ生きている間に、彼らを息子イサクから引き離し、東へ、東の国へと送り出した。
25:7 アブラハムが生きた年月は、百七十五年である。
25:8 アブラハムは高齢に達し、年老いて満ち足りた生涯を終えて息を引き取った。そして先に亡くなった一族の元へ加えられた。
25:9 その子イサクとイシマエルは、彼をヘト人ツォハルの子エフロンの畑にあるマクペラのほら穴に葬った。そこはマムレの向かいにある。
25:10 畑は、アブラハムがヘテ人たちから買い取ったものだ。そこに、アブラハムと妻のサラは葬られた。
25:11 アブラハムが死んだ後、神はその子イサクを祝福した。イサクはベエル・ラハイ・ロイのそばに住んだ。
25:12 サラの女奴隷であるエジプト人ハガルが、アブラハムのために産んだ子、イシュマエル。これはその家系の記録である。
25:13 イシマエルの子どもたちの名前を、生まれた順に並べると次のとおりだ。長男はネバヨテ。続いてケダル、アドベエル、ミブサム、
25:14 ミシマ、ドマ、マサ、
25:15 ハダデ、テマ、エトル、ネフィシュ、ケデマ。
25:16 これはイシマエルの子たちである。それぞれの村と宿営につけられた名で、その部族ごとに十二人の族長がいた。
25:17 イシマエルは百三十七年の生涯を生きた。そして息を引き取って死に、自分の先祖のもとに加えられた。
25:18 イシマエルの子孫は、ハビラからシュルまでの地に住んだ。シュルはエジプトの東、アシュルへと向かう方角にある。イシマエルは、すべての兄弟と対立しながら暮らした。
25:19 アブラハムの子イサクの家系は、次のとおりである。アブラハムにはイサクが生まれた。
25:20 イサクは四十歳のとき、リベカを妻に迎えた。リベカはパダン・アラムに住むアラム人ベトエルの娘で、アラム人ラバンの妹だった。
25:21 イサクは、妻リベカに子どもができなかったので、彼女のために主に祈った。主はその祈りに答え、妻リベカは身ごもった。
25:22 子どもたちがおなかの中で押し合うので、リベカは「こんなことになるなんて、わたしはどうなってしまうの」と言った。そして主に尋ねるために出かけた。
25:23 主は彼女にこう言った。「あなたのお腹の中には、二つの国がいる。二つの民があなたの中から分かれて出て行く。一方の民はもう一方より強くなり、兄が弟に仕えることになる。」
25:24 出産の日がやってきた。おなかの中には、確かにふたごの子がいた。
25:25 赤くて、全身が毛皮の外套のようだった。それで、その子はエサウと名づけられた。
25:26 その後に弟が生まれた。その手はエサウのかかとをしっかりつかんでいた。それで彼はヤコブと名づけられた。二人が生まれたとき、イサクは六十歳だった。
25:27 エサウとヤコブは成長した。エサウは狩りが得意で、野を駆けめぐる人になった。でもヤコブは穏やかな人で、天幕で暮らしていた。
25:28 イサクはエサウを愛していた。エサウが狩ってくる獲物の肉が好きだったからだ。でも、リベカはヤコブを愛していた。
25:29 ヤコブが煮物を作っていた。そこへエサウが野原から帰ってきた。腹ぺこで、へとへとだった。
25:30 エサウはヤコブに言った。「お願いだ、その赤いもの、その赤いものを食べさせてくれ。もうへとへとなんだ。」エサウがエドムと呼ばれるようになったのは、これがきっかけだった。
25:31 ヤコブは言った。「今すぐ、あなたの長子の権利をわたしに売ってくれ」
25:32 エサウは言った。「わたしはもう死にそうなんだ。長男の権利なんて、何の役に立つ?」
25:33 ヤコブは言った。「まず、わたしに誓ってくれ。」エサウは誓って、長子の権利をヤコブに売った。
25:34 ヤコブはエサウにパンとレンズ豆の煮物を渡した。エサウは飲み食いすると、立ち上がって去っていった。こうしてエサウは長子の権利を軽んじたのだ。
26:1 アブラハムの時代にあった最初の飢きんとは別に、この地でまた飢きんが起こった。それでイサクは、ペリシテ人の王アビメレクのいるゲラルへ行った。
26:2 その時、主がイサクに現れて言われた。「エジプトへ下ってはいけない。わたしが示す地にとどまりなさい。
26:3 あなたがこの地にとどまるなら、わたしはあなたと共にいて、あなたを祝福する。わたしはあなたと、あなたの子孫に、これらの地をすべて与え、あなたの父アブラハムに立てた誓いを果たす。
26:4 またあなたの子孫を空の星のように増やし、これらの土地をすべてあなたの子孫に与える。そして地上のすべての民族は、あなたの子孫によって祝福を受ける。
26:5 アブラハムがわたしの声に聞き従い、わたしの言いつけを守り、わたしの命令と、おきてと、教えを守ったからだ。」
26:6 イサクはゲラルに住んだ。
26:7 その土地の人々がリベカのことを尋ねると、イサクは「彼女はわたしの妹だ」と答えた。「わたしの妻だ」と言うのが怖かったのだ。リベカがとても美しかったので、彼女のことでこの土地の人々に殺されるかもしれない、と思ったからである。
26:8 イサクは長いあいだそこで暮らしていた。ある日、ペリシテ人の王アビメレクが窓から外を見ると、イサクが妻リベカを愛おしそうに抱き寄せているのが目に入った。
26:9 アビメレクはイサクを呼んで言った。「あの女は、どう見てもあなたの妻じゃないか。それなのに、どうして『妹だ』なんて言ったんだ。」イサクは答えた。「あの人のせいで、わたしが殺されるかもしれないと思ったからです。」
26:10 アビメレクは言った。「あなたはどうしてこんなことをしてくれたのか。もう少しで民の誰かがあなたの妻と寝てしまうところだった。そうしたら、あなたはわたしたちに罪を負わせることになっていた。」
26:11 アビメレクはすべての民に命じた。「この人とその妻に手を出す者は、必ず殺されなければならない。」
26:12 イサクはその土地に種をまいた。そしてその年、まいた種の百倍の収穫を得た。主がイサクを祝福したのだ。
26:13 イサクはますます栄えていった。財産はどんどん増えて、やがて大金持ちになった。
26:14 羊の群れや牛の群れ、たくさんの使用人を持つようになった。それでペリシテ人は彼をねたんだ。
26:15 ペリシテ人は、イサクの父アブラハムが生きていたころに父のしもべたちが掘った井戸を、すべて土でふさいで埋めてしまっていた。
26:16 「アビメレクはイサクにこう言った。『わたしたちのところから出ていってくれ。あなたはわたしたちよりずっと強くなりすぎたのだから。』」
26:17 イサクはそこを去り、ゲラルの谷に天幕を張ってそこに住んだ。
26:18 イサクは、父アブラハムの時代に掘られた井戸を、もう一度掘り直した。この井戸は、アブラハムが死んだあと、ペリシテ人が土でふさいでしまったものだ。イサクは、それぞれの井戸に、父がつけていたのと同じ名前をつけた。
26:19 イサクのしもべたちが谷を掘ってみると、そこにわき出る水の井戸を掘り当てた。
26:20 ゲラルの羊飼いたちが「この水はおれたちのものだ」と言って、イサクの羊飼いたちと争った。それでイサクはその井戸をエセクと名づけた。彼らが争いをふっかけてきたからだ。
26:21 彼らはまた別の井戸を掘った。でも、この井戸をめぐっても争いが起きた。だからイサクは、その井戸をシテナと名づけた。
26:22 そこからさらに移動して、別の井戸を掘った。今度は争いが起きなかった。それでイサクはその井戸をレホボトと名づけて、こう言った。「今、主がわたしたちのために場所を広げてくださった。これでわたしたちは、この地で増えていける。」
26:23 ベエルシバへと上って行った。
26:24 その夜、主がイサクに現れて言った。「わたしは、あなたの父アブラハムの神だ。恐れることはない。わたしがあなたと共にいる。あなたを祝福し、わたしのしもべアブラハムのために、あなたの子孫を増やす。」
26:25 それで彼はその場所に祭壇を築き、主の名を呼んだ。そしてそこに天幕を張り、イサクの使用人たちはそこに井戸を掘った。
26:26 アビメレクが、友人アフザテと軍の司令官ピコルを連れて、ゲラルからイサクのところにやって来た。
26:27 イサクは彼らに言った。「なぜわたしのところに来たのですか。あなたたちはわたしを憎んで、自分たちのところから追い出したのに。」
26:28 わたしたちは言った。「主があなたと共におられるのを、わたしたちははっきりと見た。それで、わたしたちの間で、つまりわたしたちとあなたの間で誓いを立てよう。あなたと契約を結びたいのだ。
26:29 わたしたちがあなたに手を出さず、良いことだけをして、平和のうちに送り出したように、あなたもわたしたちに悪いことをしないでください。今やあなたは、主に祝福された人です」
26:30 そこでイサクは彼らのために食事を用意した。みんなで飲んだり食べたりした。
26:31 あくる朝、彼らは早く起きて、互いに誓い合った。それからイサクは彼らを送り出し、彼らはイサクのもとから穏やかに去っていった。
26:32 その日、イサクの使用人たちがやってきた。そして、自分たちが掘っていた井戸のことをイサクに報告した。「水が出ました」と。
26:33 イサクはその井戸をシバと名づけた。それで、この町の名は今もベエルシバと呼ばれている。
26:34 エサウは四十歳のとき、二人の女性を妻に迎えた。ヘト人ベエリの娘ユディトと、ヘト人エロンの娘バセマトだ。
26:35 彼女たちはイサクとリベカにとって、心の悩みの種となった。
27:1 イサクは年をとり、目がかすんで見えなくなっていた。そんなある日、彼は長男のエサウを呼んで言った。「息子よ。」エサウは「はい、ここにいます」と答えた。
27:2 イサクは言った。「わたしはもう年老いてしまった。いつ死ぬかもわからない。
27:3 それで、狩りの道具、矢筒と弓を持って野に出かけ、わたしのために獲物を狩ってきてほしい。
27:4 わたしの好きなおいしい料理を作って、持ってきてくれ。それを食べて、死ぬ前にお前を祝福したい。」
27:5 イサクが息子のエサウにこう話すのを、リベカは聞いていた。エサウがしかの肉をとって持ち帰ろうと野に出かけると、
27:6 リベカは、息子のヤコブにこう言った。「聞いてね。お父さんが、あなたのお兄さんのエサウにこう話していたの。
27:7 『わたしのために獲物をとってきて、おいしい料理を作ってくれ。それを食べたら、死ぬ前に、主の前でおまえを祝福しよう』
27:8 それで、息子よ、わたしの言うことを聞いて、わたしが命じるとおりにしなさい。
27:9 群れのところに行って、良いヤギの子を二頭、わたしのために取ってきて。それでお父さんのために、お父さんが好きなおいしい料理を作るから。
27:10 あなたはそれを持って行って、お父さんに食べさせてあげて。お父さんは死ぬ前に、あなたを祝福してくれるから」
27:11 兄エサウは毛深いのに、わたしの肌はつるつるだ。
27:12 おそらく父はわたしにさわってみるだろう。そうすれば、わたしは父をだます者だと思われてしまう。祝福どころか、のろいを受けることになる」
27:13 母は言った。「その呪いはわたしが引き受けるから、あなたは大丈夫。とにかくわたしの言うとおりに、行って取っておいで」
27:14 そこでヤコブは行って子やぎを取り、母のところに持ってきた。母は父の好きなおいしい料理を作った。
27:15 リベカは家にあった長男エサウのいちばん上等な服を取り出し、それを弟のヤコブに着せた。
27:16 子やぎの皮を、ヤコブの両手と、首のなめらかなところにかぶせた。
27:17 彼女は、自分が作ったおいしい料理とパンを、息子ヤコブの手に渡した。
27:18 ヤコブは父のところへ行って言った。「お父さん。」父は答えた。「ここにいるよ。おまえは誰だい、わたしの子よ。」
27:19 ヤコブは父に言った。「長男のエサウです。言われたとおりにしました。どうか起きて、わたしがとってきた獲物の肉を食べてください。そして、あなた自身の魂でわたしを祝福してください」
27:20 イサクは息子に言った。「どうしてこんなに早く見つけられたんだ、わたしの子よ。」彼は答えた。「あなたの神である主が、うまくいくようにしてくださったからです。」
27:21 イサクはヤコブに言った。「近くに来ておくれ、わが子よ。さわって確かめたいんだ。お前が本当にわたしの子エサウなのか、そうでないのか」
27:22 ヤコブが父イサクに近づくと、イサクは彼にさわってみて言った。「声はヤコブの声だが、手はエサウの手だ。」
27:23 ヤコブの手が兄エサウの手のように毛深かったので、イサクは彼を見分けられず、そのまま祝福した。
27:24 「あなたは本当にわたしの子エサウなのか。」彼は「そうです」と答えた。
27:25 イサクは言った。「わたしのところに持ってきておくれ。おまえが獲ってきた肉を食べて、この魂でおまえを祝福しよう。」ヤコブがそれを近くに持っていくと、イサクは食べた。それからぶどう酒を持っていくと、イサクは飲んだ。
27:26 父イサクは彼に言った。「わたしの子よ、さあ、近くに来て、わたしにキスしておくれ。」
27:27 彼が近寄ってイサクにキスをすると、イサクはその服の香りをかいだ。そして彼を祝福して言った。「ああ、わたしの子の香りは、主が祝福された野の香りのようだ。
27:28 どうか神が、天の露と、地の豊かな実りと、あふれるほどの穀物と新しいぶどう酒を、あなたに与えてくださるように。
27:29 もろもろの民はあなたに仕え、もろもろの国はあなたの前にひざまずく。あなたは兄弟たちを治める者となり、あなたの母の子らもあなたの前にひざまずく。あなたをのろう者はのろわれ、あなたを祝福する者は祝福される。」
27:30 イサクがヤコブを祝福し終えて、ヤコブが父イサクの前から出て行った、ちょうどそのときだった。兄のエサウが狩りから帰ってきた。
27:31 エサウもおいしい料理を作り、父のところに持ってきて言った。「お父さん、起きて、あなたの息子がしとめた獲物を食べてください。そして、あなた自身の魂で、わたしを祝福してください。」
27:32 父イサクは彼にたずねた。「あなたは、だれだ。」彼は答えた。「わたしはあなたの子、長男のエサウです。」
27:33 イサクは激しく震えて言った。「じゃあ、獲物をとって、わたしのところに持ってきたのは、いったい誰なんだ。おまえが来る前に、わたしはそれを全部食べて、あの子を祝福してしまった。もう、あの子が祝福を受けるんだ。」
27:34 エサウは父の言葉を聞くと、激しく大声で泣き叫んだ。そして父に言った。「お父さん、わたしも、わたしも祝福してください。」
27:35 イサクは言った。「弟が来て、お前をだましてお前の祝福を奪ってしまった」
27:36 エサウは言った。「ヤコブとは、よく名づけたものだ。あいつはこれで二度もわたしをだしぬいた。前にはわたしの長男の権利を奪い、今度はわたしへの祝福まで奪った。」そして続けた。「わたしのために、祝福を残してはくれなかったのですか。」
27:37 イサクは答えてエサウに言った。「わたしはヤコブをおまえの主人とし、その兄弟たちをみな彼のしもべとして与えた。穀物とぶどう酒も彼に授けた。わが子よ、今となって、おまえのために何をしてやれるだろうか」
27:38 エサウは父に言った。「お父さん、あなたの祝福はたった一つだけなの? お父さん、わたしも、このわたしも祝福してください。」そしてエサウは声をあげて泣いた。
27:39 「あなたの住む場所は、この地の豊かな恵みから遠く離れ、上から降る天の露からも遠く離れる。
27:40 エサウよ、おまえは剣で世を生きぬき、弟に仕えることになる。でも、おまえがもがいて力をつけたとき、その首から弟のくびきを振りほどくだろう」
27:41 エサウは、父がヤコブに与えたあの祝福のせいで、ヤコブを憎むようになった。エサウは心の中でこう思った。「父の喪の日も、もうすぐやってくる。そのときが来たら、弟のヤコブを殺してやる。」
27:42 リベカは、兄のほうであるエサウが言ったことを人づてに知った。それで、弟のヤコブを呼びにやって、こう言った。「聞きなさい。兄さんのエサウが、あなたを殺して仕返しをしようとしているの。
27:43 子よ、今わたしの言うことを聞いて、すぐにハランにいるわたしの兄ラバンのところへ逃げなさい。
27:44 兄の怒りが解けるまで、しばらくの間、兄さんのところで過ごしなさい。
27:45 兄さんの怒りがおさまって、あなたがしたことを忘れるようになるまでね。そうしたら、人を送ってあなたをそこから連れ戻すから。どうして一日のうちに、あなたたち二人ともを失わなきゃいけないの」
27:46 リベカはイサクに言った。「わたしはヘテ人の娘たちのことで、生きているのが嫌になった。もしヤコブが、この地のあの娘たちのようなヘテ人の娘を妻にするなら、わたしは何のために生きているのだろう。」
28:1 イサクはヤコブを呼び寄せ、彼を祝福した。そしてこう命じた。「カナンの娘を妻にしてはいけない。
28:2 立ってパダン・アラムへ行きなさい。あなたのお母さんの父ベトエルの家に行って、そこで母の兄ラバンの娘の一人を妻に迎えなさい。
28:3 全能の神があなたを祝福し、子どもをたくさん与えて増やし、多くの民の集まりとしてくださるように。
28:4 またアブラハムの祝福を、あなたと、あなたと共にいる子孫に与えてくださるように。そして、神がアブラハムに与えた、あなたが今よそ者として住んでいるこの地を、あなたが受け継げるようにしてくださるように。」
28:5 イサクはこうしてヤコブを送り出した。ヤコブはパダン・アラムへ向かい、アラム人ベトエルの子ラバンのところへ行った。ラバンは、ヤコブとエサウの母リベカの兄である。
28:6 エサウは、次のことを知った。イサクがヤコブを祝福し、彼をパダン・アラムに送って、そこから妻を迎えさせようとしたこと。そして祝福したとき、「カナンの娘を妻にしてはいけない」と命じたこと。
28:7 ヤコブが父と母の言うことを聞いて、パダン・アラムへ向かったことも。
28:8 エサウは、カナンの娘たちが父イサクの気に入らないことを知った。
28:9 エサウはイシマエルのところに行った。そして、すでにいる妻たちのほかに、アブラハムの子イシマエルの娘で、ネバヨテの妹にあたるマハラテを妻にした。
28:10 ヤコブはベエルシバを出て、ハランへ向かった。
28:11 一つの場所に着いたとき、日が沈んだので、そこで一夜を過ごすことにした。彼はその場所の石をいくつか取って枕にし、そこに横になって眠った。
28:12 夢を見た。すると、一つのはしごが地に立っていて、その先が天まで届いていた。そして、神の使いたちがそのはしごを上ったり下りたりしていた。
28:13 わたしは、あなたの父アブラハムの神、イサクの神、主である。あなたが今横になっているこの地を、あなたと、あなたの子孫に与えよう。
28:14 あなたの子孫は地のちりのように多くなり、西へ東へ、北へ南へと広がっていく。そして地上のすべての民族が、あなたとあなたの子孫によって祝福を受けるようになる。
28:15 わたしはあなたと共にいる。あなたがどこへ行っても守り、この土地へ必ず連れ帰る。わたしは決してあなたを見捨てない。あなたに約束したことを、すべて成しとげるまで、そばを離れない」
28:16 ヤコブは眠りからさめて言った。「本当だ。主がこの場所におられる。それなのに、わたしは気づかなかった。」
28:17 そして彼は恐れて言った。「なんて恐ろしい場所なんだ。ここは神の家だ。天の門だ。」
28:18 ヤコブは朝早く起きて、枕にしていた石を取り、それを立てて記念の柱とした。そして、その上に油を注いだ。
28:19 ベテルと名づけた。その町の名は、もとはルズといった。
28:20 ヤコブは誓いを立てて言った。「もし神がわたしと共にいて、わたしが行くこの旅の間わたしを守り、食べるパンと着る服を与えてくださり、
28:21 安らかに父の家に帰れたなら、主はわたしの神になる。
28:22 それに、わたしが記念の柱として立てたこの石は、神の家になる。そして、あなたがくださるすべてのものの十分の一を、わたしは必ずあなたにささげます」
29:1 ヤコブは旅を続けて、東の民の地へやって来た。
29:2 見ると、野に井戸があった。そのそばに、羊の群れが三つ、うずくまっていた。人々はこの井戸から群れに水を飲ませていたのだ。でも、井戸の口には大きな石がのせてあった。
29:3 群れがみんなそこに集まると、人々は井戸の口から石を転がして羊に水を飲ませる。そして石を井戸の口の元の場所に戻しておくのだった。
29:4 ヤコブは彼らに言った。「兄弟たち、あなたたちはどこから来たのですか。」彼らは答えた。「わたしたちはハランからです。」
29:5 ヤコブは彼らに聞いた。「ナホルの子ラバンを知っているか。」彼らは「知っている」と答えた。
29:6 ヤコブは「彼は元気ですか」と尋ねた。彼らは答えた。「元気だよ。ほら、あの人の娘ラケルが、羊を連れてこっちに来るよ。」
29:7 ヤコブは言った。「見なさい、日はまだ高い。家畜を集める時ではない。羊に水を飲ませて、また連れて行って草を食べさせなさい。」
29:8 彼らは答えた。「それはできないんだ。すべての群れが集まるまではね。みんなが集まったら、井戸の口から石を転がして、羊に水を飲ませるんだよ」
29:9 ヤコブが彼らとまだ話しているうちに、ラケルが父の羊たちを連れてやって来た。彼女は羊飼いをしていたからだ。
29:10 ヤコブは、母の兄ラバンの娘ラケルと、母の兄ラバンの羊の群れを見た。すると彼は進み出て、井戸の口の石をころがし、母の兄ラバンの羊に水を飲ませた。
29:11 ヤコブはラケルにキスをして、声をあげて泣いた。
29:12 ヤコブはラケルに、自分が彼女の父の親戚で、リベカの息子だと伝えた。すると彼女は走って行って、父に知らせた。
29:13 ラバンは、妹の子ヤコブが来たという知らせを聞くと、すぐに走って迎えに出た。そしてヤコブを抱きしめて口づけし、自分の家に連れて帰った。ヤコブは、これまでのいきさつをすべてラバンに話した。
29:14 ラバンは彼に言った。「あなたは本当にわたしと血のつながった家族だ。」こうしてヤコブは、ひと月の間ラバンのもとにとどまった。
29:15 ラバンはヤコブに言った。「いくら親戚だからといって、ただで働いてもらうわけにはいかない。どんな報酬がいいのか、言ってくれ。」
29:16 ラバンにはふたりの娘がいた。姉の名はレア、妹の名はラケルといった。
29:17 レアは目がやさしく、ラケルは姿も顔立ちも美しかった。
29:18 ヤコブはラケルを愛していた。だから彼はこう言った。「あなたの下の娘ラケルのために、七年間あなたのもとで働きます。」
29:19 ラバンは言った。「彼女を他の人にやるより、あなたにやるほうがいい。わたしのところにいなさい。」
29:20 こうしてヤコブは、ラケルのために七年間働いた。でも、彼女を愛していたから、それはほんの数日のように思えた。
29:21 ヤコブはラバンに言った。「約束の期間が終わりました。妻をください。彼女のところに入らせてください。」
29:22 ラバンはその土地の人たちをみんな集めて、宴会を開いた。
29:23 夕暮れになると、ラバンは娘のレアをヤコブのところへ連れてきた。ヤコブは彼女と床を共にした。
29:24 ラバンは自分の召し使いジルパを、娘レアの召し使いとして与えた。
29:25 朝になってみると、それはレアだった。ヤコブはラバンに言った。「どうしてこんなことをしたんですか。わたしはラケルのために働いてきたんじゃないですか。どうしてわたしをだましたんですか。」
29:26 ラバンは言った。「妹を姉より先に嫁がせることは、わたしたちの土地では行われないことだ。
29:27 まずレアとの一週間を過ごしなさい。そうすれば、あの娘もあなたにあげよう。ただし、そのためにさらに七年、わたしのもとで働いてもらう」
29:28 ヤコブはそのとおりにした。レアとの一週間が終わると、ラバンは娘のラケルも彼の妻として与えた。
29:29 ラバンは、自分の召使いの女ビルハを、娘ラケルに召使いとして与えた。
29:30 ヤコブはラケルの所にも入った。彼はレアよりもラケルを愛した。そしてさらに七年、ラバンのもとで働いた。
29:31 主はレアが愛されていないのを見て、レアが子どもを産めるようにされた。でも、ラケルは子どもができなかった。
29:32 レアは身ごもって男の子を産んだ。そして「主がわたしのつらさを見てくださった。これで夫もわたしを愛してくれるだろう」と言って、その子をルベンと名づけた。
29:33 彼女はまた身ごもって男の子を産んだ。そして「主は、わたしが嫌われていることを聞いて、この子もわたしに与えてくださった」と言って、その子をシメオンと名づけた。
29:34 レアはまた身ごもって、男の子を産んだ。そして「今度こそ、夫はわたしのそばにいてくれる。わたしは夫に三人も男の子を産んだのだから」と言った。だから、その子はレビと名づけられた。
29:35 彼女はまた身ごもって男の子を産んだ。そして「今度こそ主をほめたたえよう」と言った。だから、その子をユダと名づけた。それから、彼女が子を産むことはしばらくなくなった。
30:1 ラケルは、自分がヤコブに子どもを産めないことがわかると、姉をねたんだ。そしてヤコブに言った。「わたしに子どもをください。くれないなら、わたしは死んでしまいます。」
30:2 ヤコブはラケルに激しく怒って言った。「あなたのお腹に子どもができないようにしているのは神だ。わたしが神の代わりになれるとでもいうのか。」
30:3 ラケルは言った。「わたしの召使いのビルハがいる。この子のところに入って。彼女がわたしのひざの上で子を産めば、わたしもその子を通して家族を持てるから。」
30:4 ラケルは召し使いのビルハをヤコブに妻として与えた。ヤコブはビルハのところに入った。
30:5 ビルハはみごもり、ヤコブに男の子を産んだ。
30:6 ラケルは言った。「神はわたしの訴えを聞き入れ、わたしの声にも耳を傾けて、息子を与えてくださった。」そして、その子をダンと名づけた。
30:7 ラケルの召し使いビルハは、また身ごもって、ヤコブに二人目の子を産んだ。
30:8 ラケルは言った。「わたしは姉と激しく争って、ついに勝った。」それで彼女はその子をナフタリと名づけた。
30:9 レアは自分の出産が止まったことに気づくと、召し使いのジルパを連れてきて、妻としてヤコブに与えた。
30:10 レアのつかえめジルパも、ヤコブに男の子を産んだ。
30:11 レアは「幸運がやってきた」と言って、その子をガドと名づけた。
30:12 レアの召し使いジルパは、ヤコブに二人目の男の子を産んだ。
30:13 レアは言った。「なんて幸せなんだろう。女の人たちはわたしを幸せ者と呼ぶはずだ。」そして、その子をアシェルと名づけた。
30:14 ルベンは麦刈りのころ、野原に出かけて、そこで恋なすびを見つけ、それを母のレアのところに持ってきた。するとラケルがレアに言った。「あなたの息子が見つけた恋なすびを、少し分けてちょうだい。」
30:15 レアはラケルに言った。「あなたはわたしの夫を取った。それだけでも足りないの？その上、わたしの息子の恋なすびまで取ろうというの？」ラケルは言った。「わかった。それなら、あなたの息子の恋なすびと引きかえに、今夜あの人をあなたと寝させるわ」
30:16 夕方になって、ヤコブが野原から帰ってきた。レアは彼を出迎えて言った。「わたしのところに来てください。息子が見つけた恋なすびで、あなたを雇ったのですから。」それでその夜、ヤコブはレアと寝た。
30:17 神はレアの願いを聞き入れ、レアはみごもって、五人目の子をヤコブに産んだ。
30:18 レアは言った。「わたしが召し使いを夫に与えたから、神がその報酬をくださった。」そして、その子をイッサカルと名づけた。
30:19 レアはまた身ごもり、六人目の息子をヤコブに産んだ。
30:20 そこでレアは言った。「神がわたしにすばらしい贈り物をくださった。わたしは夫に六人の息子を産んだのだから、今度こそ夫はわたしを大事にしてくれるだろう。」そして、その子をゼブルンと名づけた。
30:21 その後、彼女は娘を産んで、ディナと名づけた。
30:22 神はラケルを心にかけ、彼女の願いを聞いて、その胎を開いた。
30:23 彼女はみごもって、男の子を産んだ。そして言った。「神はわたしの恥を取り去ってくださった。」
30:24 名をヨセフと名づけて言った。「主が、わたしにもう一人の子を加えてくださいますように。」
30:25 ラケルがヨセフを産んだ後、ヤコブはラバンに言った。「わたしを行かせてください。故郷の、自分の国へ帰らせてください。
30:26 わたしがあなたのために働いて得た妻や子どもたちを返してください。そうしたら、わたしは出て行きます。わたしがあなたのためにどれだけ働いたか、あなたはよく知っているはずです。」
30:27 ラバンは彼に言った。「よかったら、お願いだ、行かないでほしい。占いでわかったんだ。主はあなたのおかげで、わたしを祝福してくださったのだ。」
30:28 ヤコブに言った。「報酬をいくらにしてほしいか言ってくれ。わたしがそれを払おう」
30:29 ヤコブはラバンに言った。「わたしがどんなふうにあなたのために働き、あなたの家畜の世話をしてきたか、あなたはよく知っています。
30:30 わたしが来る前、あなたが持っていたものはわずかだった。それが今では大きくふえている。わたしが行くところどこでも、主はあなたを祝福された。でも、わたし自身はいつになったら自分の家族のために働けるのだろう。」
30:31 ヤコブは尋ねた。「何をあげればいい？」ヤコブは答えた。「何もいりません。ただ、一つだけお願いを聞いてくれるなら、わたしはもう一度あなたの群れの世話をし、守りましょう。
30:32 わたしは今日、あなたの群れをぜんぶ見て回る。そして、その中から羊のぶちのものとまだらのもの、黒いものをすべて取り分ける。やぎもまだらのものとぶちのものを取り分ける。それがわたしの報酬だ。
30:33 あとで、あなたが来てわたしの前で報酬を確かめるとき、わたしが正しいことがはっきりする。やぎの中にぶちやまだらでないものがあったり、羊の中に黒くないものがあれば、それはわたしが盗んだものということになる。」
30:34 ラバンは言った。「よろしい。あなたの言うとおりにしよう」
30:35 そこでラバンはその日、しまのある雄やぎとまだらの雄やぎ、それにぶちのある雌やぎとまだらの雌やぎ、つまり体のどこかに白いところがあるものを全部、それに羊の中の黒いものも全部より分けた。そして、それを自分の息子たちにあずけた。
30:36 ヤコブとの間に三日分の距離をあけた。ヤコブはラバンの残りの群れの世話をした。
30:37 ヤコブは、ポプラとアーモンドとプラタナスの木の若い枝を取った。そして皮をところどころはいで、枝の白い部分をむき出しにして、白い筋をつけた。
30:38 皮をはいだ枝を、群れが水を飲みに来る水おけ、つまり水ぶねの中に置いた。群れの正面に置いたのだ。すると群れは、水を飲みに来たときに身ごもった。
30:39 枝の前で群れは交尾し、しま模様やまだら、ぶちの子を産んだ。
30:40 ヤコブは子羊を別に分けた。そして、群れの顔を、ラバンの群れの中のしま模様のものと、黒いものすべてのほうに向けさせた。こうして自分の群れだけをまとめておき、ラバンの群れには入れなかった。
30:41 群れの中の強いものが発情すると、ヤコブは水ぶねの中の、群れの目の前に枝を置いた。枝の間で群れがはらむようにするためだ。
30:42 群れの弱いものには、その枝を置かなかった。だから弱いものはラバンのものになり、強いものはヤコブのものになった。
30:43 この人は非常に豊かになり、たくさんの羊や山羊の群れ、それに男女の召使いや、らくだ、ろばを持つようになった。
31:1 さてヤコブは、ラバンの息子たちがこう言っているのを耳にした。「ヤコブは、わたしたちの父の財産を全部奪い取った。父のものを使って、あんな富をぜんぶ手に入れたんだ。」
31:2 ヤコブがラバンの顔つきを見ると、これまでのように自分に好意を持ってはいなかった。
31:3 主はヤコブに言われた。「あなたの先祖の地に、親族のもとに帰りなさい。わたしはあなたと共にいる。」
31:4 それでヤコブは人をやって、野にいる自分の群れのところにラケルとレアを呼び寄せた。
31:5 わたしは彼女たちに言った。「お父さんの態度が、これまでとは変わってしまったのがわかる。でも、わたしの父の神は、ずっとわたしと共にいてくださった。
31:6 あなたがたも知っているとおり、わたしは力の限りあなたがたの父さんのために働いてきた。
31:7 あなたがたのお父さんはわたしをだまして、報酬を何度も変えてきた。でも神は、彼がわたしに害を与えることをお許しにならなかった。
31:8 もし彼が「ぶちのものがおまえの報酬だ」と言えば、群れはみんなぶちの子を産んだ。そして「しまのあるものがおまえの報酬だ」と言えば、群れはみんなしまのある子を産んだ。
31:9 こうして神はあなたがたの父の家畜を取り上げて、わたしに与えてくださった。
31:10 またこういうこともあった。群れが発情する季節に、わたしが夢の中で目を上げて見ると、群れに乗ろうとしている雄やぎは、みなしま模様や、ぶちや、まだらのものだった。
31:11 神の使いが夢の中でわたしに言った。「ヤコブよ。」わたしは答えた。「はい、ここにいます。」
31:12 神の使いは言った。「目を上げてよく見なさい。群れの中で雌やぎに乗っている雄やぎは、みんな筋のあるもの、ぶちのもの、まだらのものだ。ラバンがあなたにしてきたことを、わたしはすべて見ているのだから。
31:13 わたしはベテルの神だ。あなたはあそこで石の柱に油を注ぎ、わたしに誓いを立てた。さあ、立ってこの地を出て、あなたの生まれた国へ帰りなさい」
31:14 ラケルとレアは彼に答えた。「わたしたちの父の家に、まだわたしたちの受け取る分や相続財産が残っているでしょうか。
31:15 わたしたちは、父にとって他人も同然だと思われているんじゃない？だって父はわたしたちを売り払って、その代金までしっかり使い果たしてしまったんだから。
31:16 神がわたしたちの父から取り上げた富は、みんなわたしたちと、わたしたちの子どものものだから。さあ、神があなたに言ったことを、そのとおりにして」
31:17 ヤコブは立ち上がり、子どもたちと妻たちをらくだに乗せた。
31:18 すべての家畜と、これまでに築いたすべての財産を連れて出発した。パダン・アラムで手に入れた家畜、自分のものにした群れである。カナンの地にいる父イサクのもとへ向かうためだった。
31:19 その時ラバンは羊の毛を刈りに出かけていた。その間にラケルは、父の家にあった守り神の像を盗み出した。
31:20 ヤコブは、逃げ出すことをラバンに知らせなかった。こうしてアラム人ラバンを出し抜いたのだ。
31:21 こうして彼は全財産を持って逃げ出した。立ち上がって川を渡り、ギレアデの山地へ向かった。
31:22 三日目になって、ヤコブが逃げたことがラバンに伝わった。
31:23 ラバンは身内の者を率いて、七日の道のりを彼のあとを追い、ギレアデの山地で追いついた。
31:24 夜、神はアラム人ラバンの夢に現れて言った。「気をつけなさい。ヤコブに、よいことも悪いことも、いっさい言ってはならない。」
31:25 ラバンはついにヤコブに追いついた。そのときヤコブは山に天幕を張っていたので、ラバンも一族と共にギレアデの山に天幕を張った。
31:26 ラバンはヤコブに言った。「いったい何ということをしたんだ。わたしをだまして、娘たちをまるで戦争の捕虜みたいに連れ去ってしまうなんて。
31:27 なぜこっそり逃げ出して、わたしをだましたのか。どうして何も言ってくれなかったんだ。言ってくれれば、タンバリンや竪琴を鳴らし、喜びの歌でにぎやかに送り出したのに。
31:28 わたしの孫や娘に別れのキスをさせてもくれなかった。あなたはばかなことをしたものだ。
31:29 わたしにはあなたたちを痛い目にあわせる力がある。でも昨夜、あなたたちの父の神がわたしにこう言った。「ヤコブに良いことも悪いことも、いっさい言うな」と。
31:30 今、あなたが出て行くのは、父の家がたまらなく恋しくなったからだろう。でも、どうしてわたしの神々を盗んだのか。
31:31 ヤコブはラバンに答えた。「あなたが娘たちをわたしから無理やり奪い返すのではないかと思って、怖かったからです。
31:32 だれのところであれ、あなたの神々が見つかったら、その者を生かしてはおかない。わたしのところにあなたの物があるか、親族のみんなの前で確かめて、持って行ってくれ。」ラケルが神々を盗んだことを、ヤコブは知らなかったのだ。
31:33 ラバンはヤコブの天幕に入り、レアの天幕、二人の召し使いの天幕にも入ってみたが、見つからなかった。そしてレアの天幕を出て、ラケルの天幕に入った。
31:34 ラケルはすでに家の守り神の像を取って、らくだの鞍の下に入れ、その上にすわっていた。ラバンは天幕の中をくまなく探ったが、見つからなかった。
31:35 ラケルは父に言った。「ご主人、どうか怒らないでください。あなたの前で立ち上がれないのは、わたしに月のものが来ているからです。」ラバンはくまなく捜したが、あの像は見つからなかった。
31:36 ヤコブは怒って、ラバンを問いつめた。ヤコブはラバンに言った。「わたしにどんな過ちがあり、どんな罪があるというんですか。それなのに、あなたはわたしをこんなに激しく追いかけてきた。
31:37 あなたはわたしの荷物を全部調べたけど、あなたの家の物が何か見つかっただろうか。それをここに、わたしの親族とあなたの親族の前に置いてほしい。そして、二人のどちらが正しいか、みんなに判断してもらおう。
31:38 わたしはこの二十年、あなたのところにいた。その間、あなたの雌羊も雌やぎも子を産みそこねたことはないし、あなたの群れの雄羊をわたしが食べたこともない。
31:39 野獣にかみ裂かれた家畜は、あなたのところには持って行かず、自分で埋め合わせた。昼盗まれたものも、夜盗まれたものも、あなたはわたしに弁償させた。
31:40 わたし自身のことを言えば、昼は暑さに苦しめられ、夜は寒さに凍え、眠ることもできなかった。
31:41 わたしはこの二十年、あなたのもとで過ごしてきた。二人の娘のために十四年、あなたの家畜の群れのために六年、あなたのために働いた。それなのに、あなたは十回もわたしの給料を変えたのだ。
31:42 もし、わたしの父の神、アブラハムの神、イサクが敬うあの神がわたしの味方でなかったら、あなたはきっと、わたしを何も持たせずに追い返していただろう。でも神は、わたしの苦しみと、わたしが手を尽くして働いてきたことを見ていた。だから昨夜、あなたに注意したのだ。」
31:43 ラバンは答えて、ヤコブにこう言った。「娘たちはわたしの娘、その子どもたちはわたしの孫だ。群れもわたしの群れ。あなたが目にするものは、みなわたしのものだ。それなのに、わたしの娘たちや、娘たちが産んだ子どもたちに、きょうわたしが何をできるだろう。
31:44 さあ、それでは、わたしとあなたとで契約を結ぼう。それが、わたしとあなたの間の証拠になるように」
31:45 そこでヤコブは石を取り、それを立てて記念の柱とした。
31:46 ヤコブは一族の者に言った。「石を集めてくれ。」すると彼らは石を取ってきて、積み上げて塚を造った。そして、その塚のそばで食事をした。
31:47 ラバンはこれをエガル・サハドタと名づけ、ヤコブはこれをガルエドと名づけた。
31:48 ラバンは言った。「この石塚は、きょう、わたしとあなたの間の証人だ。」だから、その名はガルエドと呼ばれた。
31:49 ミズパとも呼ばれた。ラバンがこう言ったからだ。「わたしたちが互いに離れているときも、主がわたしとあなたの間を見守ってくださるように。
31:50 もしあなたがわたしの娘たちをひどく扱ったり、娘たちのほかに妻をめとったりするなら、たとえそばにだれもいなくても、神がわたしとあなたのあいだの証人なのだ。」
31:51 ラバンはさらにヤコブにこう言った。「わたしとあなたの間に、わたしはこの石塚を積み、この石の柱を立てた。よく見てほしい。
31:52 この石塚があかしとなり、この柱があかしとなる。わたしがこの石塚を越えてあなたに害を加えたり、あなたがこの石塚とこの柱を越えてわたしに害を加えたりしないためだ。
31:53 アブラハムの神、ナホルの神、彼らの父の神が、わたしたちの間をさばいてくださるように。」ヤコブは、父イサクが敬い畏れる神にかけて誓った。
31:54 ヤコブは山でいけにえをささげ、一族を招いて食事をした。みんなで食事をして、その夜は山で過ごした。
31:55 翌朝、ラバンは早く起きて、孫たちと娘たちにキスをし、彼らを祝福した。そしてラバンはその場を去り、自分の故郷へ帰って行った。
32:1 ヤコブがそのまま旅を続けていると、神の使いたちが彼と出会った。
32:2 ヤコブは彼らを見て、「これは神の陣営だ」と言った。そして、その場所をマハナイムと名づけた。
32:3 ヤコブは自分より先に、使者たちをセイルの地、つまりエドムの野にいる兄エサウのもとへ送った。
32:4 ヤコブは彼らにこう命じた。「わたしの主人エサウには、こう伝えてほしい。『あなたのしもべヤコブがこう申しています。わたしはラバンのもとに身を寄せ、今までそこで暮らしてきました。』」
32:5 「わたしには牛やろば、羊の群れ、男女の使用人がいます。こうしてご主人様に使いを送ってお知らせするのは、あなたに気に入っていただきたいからです。」
32:6 使いたちはヤコブのところに戻って、こう報告した。「わたしたちはあなたの兄さん、エサウのところへ行ってきました。すると、エサウはあなたに会おうと、こちらに向かっています。四百人もの男を引き連れています。」
32:7 ヤコブはひどくおびえ、追いつめられた気持ちになった。それで、いっしょにいる人々や、羊とやぎの群れ、牛の群れ、らくだを、二つの組に分けた。
32:8 そして彼は考えた。「もしエサウが来て、片方の組を襲っても、残ったもう片方の組は逃げのびられるだろう。」
32:9 ヤコブは言った。「父アブラハムの神、父イサクの神よ。かつてわたしに『あなたの国、あなたの生まれ故郷に帰りなさい。わたしはあなたを幸せにする』と言われた主よ、
32:10 わたしは、あなたがしもべであるわたしにしてくださった、数々の慈しみとまことを受けるには、あまりにも小さな者です。杖一本でこのヨルダン川を渡ったわたしが、今では二つの集団になるほどに増えました。
32:11 どうか、兄の手から、エサウの手から、わたしを助けてください。わたしは兄が怖いのです。兄がやって来て、わたしたちを、母も子どもも一緒に打ち殺すのではないかと、こわくてたまりません。
32:12 あなたはこう約束してくれました。「わたしは必ずあなたによくしてあげる。あなたの子孫を海の砂のように、数えきれないほど多くする」と。
32:13 その夜、ヤコブはそこで過ごした。そして、自分の手もとにあるものの中から、兄エサウへの贈り物を選び取った。
32:14 雌やぎ二百頭、雄やぎ二十頭、雌羊二百頭、雄羊二十頭。
32:15 乳を飲ませるらくだ三十頭とその子ら、雌牛四十頭と雄牛十頭、雌のろば二十頭と雄のろば十頭。
32:16 ヤコブは家畜をそれぞれの群れに分け、一群れずつ召使いたちに預けた。そして召使いたちに言った。「わたしの先を進んでいってくれ。群れと群れの間は、間隔をあけておくように。」
32:17 そして、先頭を行く者にこう命じた。「兄のエサウがあなたに出会って、『おまえはだれの家の者か。どこへ行くのか。この前を行く家畜はだれのものか』と尋ねてきたら、
32:18 エサウに会ったら、あなたたちも同じように言いなさい。『これはあなたのしもべヤコブのものです。わたしの主エサウへの贈り物です。ヤコブも、わたしたちのすぐ後ろから来ています。』」
32:19 ヤコブは二番目の者にも、三番目の者にも、群れのあとについて行くすべての者にも、同じように命じた。「エサウに会ったら、あなたたちも同じことを言いなさい。
32:20 「あなたのしもべヤコブも、わたしたちの後ろに来ています」と。ヤコブは、こう考えていた。「先に送る贈り物で兄をなだめて、それから顔を合わせよう。そうすれば、兄はわたしを受け入れてくれるかもしれない。」
32:21 こうして贈り物は彼より先に進んでいった。でも彼自身は、その夜は宿営にとどまった。
32:22 その夜のうちにヤコブは起き上がり、二人の妻と二人の召し使いの女、十一人の子どもたちを連れて、ヤボクの渡し場を渡った。
32:23 彼らを連れて川を渡らせ、自分の持ち物もすべて向こう岸へ送り出した。
32:24 ヤコブはひとり後に残った。すると、ひとりの男が夜明けまで彼と組み打ちをした。
32:25 その人は、ヤコブに勝てないとわかると、ヤコブの腰の関節に触れた。すると、取っ組み合っているうちに、ヤコブの腰の関節がはずれてしまった。
32:26 その人は言った。「もう行かせてくれ。夜が明けるから。」するとヤコブは答えた。「わたしを祝福してくれるまで、離しません。」
32:27 その人は「あなたの名前は何というのか」と尋ねた。彼は「ヤコブです」と答えた。
32:28 その人は言った。「あなたの名前は、もうヤコブではない。これからはイスラエルだ。あなたは神と、そして人々と力を争って、勝ったのだから。」
32:29 ヤコブは言った。「どうかあなたの名前を教えてください。」するとその人は言った。「どうしてわたしの名前を聞くのか。」そして、その場でヤコブを祝福した。
32:30 ヤコブはその場所をペヌエルと名づけた。「神と顔と顔を合わせて会ったのに、わたしの魂は救われた」と言ったからである。
32:31 ヤコブがペヌエルを過ぎたとき、太陽が彼の上に昇った。彼は腰を痛めて、足を引きずっていた。
32:32 そのため、イスラエルの人々は今日にいたるまで、腰の関節の上にある腰の筋肉を食べない。ヤコブの腰の関節、その筋肉のところが打たれたからである。
33:1 ヤコブが目を上げて見ると、エサウが四百人を連れて向かってくるところだった。そこでヤコブは、子どもたちをレアとラケルと二人の召し使いに分けて預けた。
33:2 しもべの女たちとその子供たちをいちばん前に、レアとその子供たちをその後ろに、ラケルとヨセフをいちばん後ろに置いた。
33:3 ヤコブ自身は彼らの前に進み出て、地に七回ひれ伏しながら、兄に近づいていった。
33:4 エサウは走って迎えに来た。ヤコブを抱きしめ、首に抱きついて口づけした。そして二人とも泣いた。
33:5 エサウは目を上げて、女たちと子どもたちを見て言った。「あなたと一緒にいるこの人たちは、だれなんだ?」ヤコブは答えた。「神がこのしもべに恵んでくださった子どもたちです」
33:6 つかえめたちも子供たちと一緒に近づいて、頭を下げてお辞儀した。
33:7 レアも子どもたちといっしょに近づいてきて、おじぎをした。そのあとで、ヨセフとラケルが近づいてきて、おじぎをした。
33:8 エサウは言った。「途中で出会ったあの群れは、みんなどういうことなんだ。」ヤコブは答えた。「あなたに、わが主に、よく思っていただくためです。」
33:9 エサウは言った。「弟よ、わたしは十分もっている。あなたの物はあなたのものにしておきなさい。」
33:10 ヤコブは言った。「いや、兄さん。もしわたしを受け入れてくれるなら、どうか、わたしからの贈り物を受け取ってほしい。あなたがこうしてわたしを喜んで迎えてくれたから、あなたの顔を見て、神の顔を見ているように思えるんだ。
33:11 どうかわたしが持ってきた贈り物を受け取ってください。神がわたしに恵みを与えてくださって、わたしには何もかも十分にあるのですから。」ヤコブがこう言って強くすすめたので、エサウはそれを受け取った。
33:12 さあ、旅を続けよう。わたしが先に立って行く。
33:13 ヤコブはエサウに言った。「ご存じのとおり、子どもたちはまだ幼く、乳を飲ませている羊や牛の世話もわたしがしています。もし一日でも歩かせ過ぎたら、群れはみんな死んでしまいます。
33:14 わたしの主よ、どうぞ先に進んでください。わたしは、前を行く家畜や子どもたちの歩みに合わせて、ゆっくり進みます。そしてセイルで、主のもとにたどり着きます。」
33:15 エサウは言った。「では、わたしと一緒にいる者たちのうち、何人かをあなたのそばに残しておこう。」でもヤコブは言った。「どうしてそんなことを。あなたに親切にしてもらえるだけで十分です。」
33:16 その日、エサウはセイルへの帰り道についた。
33:17 ヤコブはスコテへと旅を続けた。そして自分のために家を建て、家畜のために小屋を造った。だから、その場所はスコテと呼ばれている。
33:18 ヤコブはパダンアラムを出て、無事にカナンの地にあるシケムの町に着いた。そして町の前に天幕を張った。
33:19 彼は、天幕を張ったその野の一部を、シケムの父ハモルの子らから百ケシタで買い取った。
33:20 そこに祭壇を築いて、それを「エル・エロヘ・イスラエル」、つまりイスラエルの神なる神と名づけた。
34:1 レアがヤコブに産んだ娘のディナが、その地の女たちに会おうと出かけて行った。
34:2 その地の首長である、ヒビ人ハモルの子シケムがディナを見かけると、彼女を連れ去って、無理やり関係を持ち、辱めた。
34:3 彼の心は深くヤコブの娘ディナに引かれた。彼はこの娘を愛し、優しく語りかけた。
34:4 シケムは父ハモルにこう言った。「この娘をわたしの妻にもらってください」
34:5 ヤコブは、シェケムが自分の娘ディナを汚したことを聞いた。でも、息子たちは家畜を連れて野原にいた。だから、彼らが帰ってくるまで、ヤコブは何も言わずにいた。
34:6 シケムの父ハモルは、ヤコブと話し合うためにヤコブのところへ出向いた。
34:7 ヤコブの息子たちは、この知らせを聞いて野原から帰ってきた。彼らはひどく心を痛め、激しく怒った。シケムがヤコブの娘と寝て、イスラエルに恥ずべきことをしたからだ。それは、けっしてやってはならないことだった。
34:8 ハモルは彼らにこう話した。「わたしの息子シケムが、あなたがたの娘さんを心から愛しています。どうか彼女を彼の妻としてください。
34:9 あなたがたはわたしたちと縁組みをして、あなたがたの娘をわたしたちに嫁がせ、わたしたちの娘をあなたがたの妻に迎えてください。
34:10 こうして、あなたたちはわたしたちと一緒に住むことになる。この地はあなたたちの前に広がっている。ここに住んで、商売をし、土地を持ちなさい」
34:11 シケムはデナの父と兄弟たちにこう言った。「あなたたちに気に入ってもらえたら、望むものは何でもさしあげます。
34:12 たくさんの結納金と贈り物を求めてくれてかまわない。言われたとおりに払う。だから、この娘をわたしの妻にください。」
34:13 ヤコブの子たちは、シケムが妹のディナを汚したので、シケムと父ハモルにうそをついて、こう答えた。
34:14 わたしたちは言った。「割礼を受けていない人に妹を嫁がせることはできません。それはわたしたちにとって恥ずべきことだからです。
34:15 ただし、こういう条件でなら賛成する。あなたたちの男子がみな、わたしたちと同じように割礼を受けるなら、
34:16 わたしたちの娘をあなたがたに与え、あなたがたの娘をわたしたちにめとる。そして、あなたがたと一緒に住んで、一つの民になろう。
34:17 でも、もしあなたがたがわたしたちの言うことを聞かず、割礼を受けないなら、わたしたちは娘を連れて行きます。
34:18 彼らの言葉はハモルと、その子シケムの心にかなった。
34:19 若者はためらわずにそうした。ヤコブの娘を深く愛していたからだ。彼は父の家の中で誰よりも重んじられていた。
34:20 ハモルと息子シケムは町の門に行き、町の人々にこう語りかけた。
34:21 この人たちは、わたしたちに対して友好的だ。だから、この地に住まわせて、あちこちで商売をさせよう。見てのとおり、土地は広くて、彼らを受け入れるだけの十分な広さがある。わたしたちは彼らの娘を妻にめとり、わたしたちの娘を彼らに与えよう。
34:22 ただし、彼らがこの条件をのめば、わたしたちと一緒に住んで一つの民になることに同意してくれる。その条件とは、彼らが割礼を受けているように、わたしたちのうちの男子が皆、割礼を受けることだ。
34:23 彼らの家畜も財産も、すべての家畜も、みんなわたしたちのものになるじゃないか。だから彼らに同意しよう。そうすれば彼らはわたしたちと一緒に住むことになる。」
34:24 町の門を出入りする人たちはみな、ハモルとその子シケムの言うことを聞き入れた。そして、町の門を出入りする男子はみな割礼を受けた。
34:25 三日目、彼らがまだ傷の痛みに苦しんでいるとき、ヤコブの二人の息子、ディナの兄であるシメオンとレビは、それぞれ剣を手に取った。そして、油断している町に堂々と攻め込み、男という男をすべて殺した。
34:26 またハモルとその子シケムも剣で殺し、シケムの家からディナを連れ出して、去って行った。
34:27 ヤコブの息子たちは、殺された人々のところに来て、町を略奪した。自分たちの妹が汚されたからだ。
34:28 羊、牛、ろば、それに町にあったものも野にあったものも、すべて奪い取った。
34:29 その財産をすべて奪い、子どもたちと妻たちを皆とりこにし、家の中にある物もことごとくうばい取った。
34:30 ヤコブはシメオンとレビに言った。「お前たちはわたしを困った立場に追い込んだ。この地に住むカナン人やペリジ人に、わたしを嫌われ者にしてしまったんだ。わたしの側の者は数が少ない。もし彼らが集まってわたしを攻めてきたら、わたしも家族も皆殺しにされてしまう。」
34:31 「わたしたちの妹を、遊女みたいに扱っていいのか」と、彼らは言い返した。
35:1 神はヤコブに言われた。「さあ、ベテルへ上って行き、そこに住みなさい。そして、あなたが兄エサウのもとから逃げるとき、あなたに現れた神のために、そこに祭壇を造りなさい。」
35:2 ヤコブは家族と、いっしょにいるすべての人にこう言った。「あなたたちが持っている外国の神々を捨てなさい。身を清めて、着ている服を着替えなさい。
35:3 われわれは立ってベテルに上ろう。そして、わたしが苦しんでいたとき、わたしの願いにこたえ、歩む道のりでいつも一緒にいてくださった神のために、そこに祭壇を築こう。」
35:4 彼らは、自分たちが持っていた外国の神々の像と、耳につけていた耳輪をすべてヤコブに渡した。ヤコブはそれらを、シケムの近くにあるテレビンの木の下に埋めた。
35:5 こうして彼らは旅立った。すると、周りの町々は神への恐れに包まれ、だれもヤコブの子らを追ってこなかった。
35:6 ヤコブは、共にいたすべての人々と一緒に、カナンの地にあるルズ、すなわちベテルに着いた。
35:7 彼はそこに祭壇を築き、その場所をエル・ベテルと名づけた。兄から逃げるとき、神がそこで彼に現れたからだ。
35:8 デボラはリベカの乳母だった。そのデボラが死んで、ベテルの下手にある樫の木の下に葬られた。だから、その木はアロン・バクト（嘆きの樫）と呼ばれた。
35:9 神はヤコブがパダン・アラムから帰ってきたとき、もう一度彼に現れて、彼を祝福した。
35:10 神は彼に言われた。「あなたの名前はヤコブだ。でも、これからはもうヤコブと呼ばれることはない。あなたの名前はイスラエルになる。」こうして神は彼をイスラエルと名づけた。
35:11 神はまた彼に言われた。「わたしは全能の神である。子を生み、増えていきなさい。あなたから一つの国民が、いや、多くの国民の集まりが生まれる。あなたの子孫からは王たちが出てくる。
35:12 わたしはアブラハムとイサクに与えた地を、あなたに与える。あなたの後に続く子孫にも、その地を与えよう。」
35:13 神は、ヤコブと語っていたその場所を離れ、上って行かれた。
35:14 ヤコブは神が自分と語ったその場所に、石で記念の柱を立てた。そして、その上にぶどう酒の献げ物を注ぎ、さらに油を注いだ。
35:15 そしてヤコブは、神が自分と語ったその場所を、ベテルと名づけた。
35:16 一行はベテルを出発した。エフラタまではまだ少し道のりがあったが、そこでラケルが産気づき、ひどく苦しい出産になった。
35:17 その難産のさなか、助産師が彼女に言った。「こわがらないで。今度も男の子ですよ」
35:18 彼女は息を引き取ろうとしていた。死にゆくその時、彼女は子どもをベン・オニと名づけた。でも父親は、その子をベニヤミンと名づけた。
35:19 ラケルは死に、エフラタ、つまりベツレヘムへの道のかたわらに葬られた。
35:20 ヤコブはその墓に記念の柱を立てた。それがラケルの墓の柱で、今も残っている。
35:21 イスラエルはさらに旅を続け、ミグダル・エダルの向こうにテントを張った。
35:22 イスラエルがその地に住んでいたとき、ルベンは父のそばめビルハのところへ行き、彼女と寝た。イスラエルはそれを聞いた。さて、ヤコブの息子は十二人だった。
35:23 レアの子らはこうだ。ヤコブの長男ルベンと、シメオン、レビ、ユダ、イッサカル、ゼブルン。
35:24 ラケルの子はヨセフとベニヤミン。
35:25 ラケルの召し使いビルハの子は、ダンとナフタリ。
35:26 レアの召し使いジルパの子どもは、ガドとアシェル。以上がヤコブの子どもたちで、パダン・アラムで生まれた者たちである。
35:27 ヤコブは、キリアテ・アルバ、つまりヘブロンのマムレにいる父イサクのところへ行った。ここは、アブラハムとイサクが暮らした土地である。
35:28 イサクは百八十歳まで生きた。
35:29 イサクは年老いて、長く生きて満ち足りたところで、息を引き取って死に、先立った家族のもとに迎え入れられた。息子のエサウとヤコブが、彼を葬った。
36:1 エサウ、すなわちエドムの子孫は、次のとおりである。
36:2 エサウはカナンの娘たちの中から妻をめとった。ヒッタイト人エロンの娘アダと、ヒビ人ツィブオンの子アナの娘オホリバマである。
36:3 イシマエルの娘で、ネバヨテの妹バスマテもめとった。
36:4 アダはエサウにエリファズを産み、バスマテはレウエルを産んだ。
36:5 アホリバマはエウシュ、ヤラム、コラを産んだ。これらはエサウの息子たちで、カナンの地でエサウに生まれた子である。
36:6 エサウは妻たちと息子たち、娘たち、家のすべての者、それに家畜やすべての獣、カナンの地で手に入れたすべての財産を連れて、弟ヤコブから離れてほかの地へ移って行った。
36:7 二人の財産があまりに多くて、一緒に住むことができなかったからだ。飼っている家畜が多すぎて、住んでいた土地では二人を養いきれなかったのだ。
36:8 こうしてエサウはセイルの山地に住んだ。エサウとは、すなわちエドムのことである。
36:9 エサウはエドム人の先祖である。セイルの山地に住んだエサウの子孫は、次のとおりである。
36:10 エサウの息子たちの名前は、次のとおりである。エサウの妻アダの子はエリファズ。エサウの妻バスマトの子はレウエル。
36:11 エリパズの子はテマン、オマル、ゼポ、ガタム、ケナズである。
36:12 テムナはエサウの子エリファズのそばめだった。彼女はエリファズとの間にアマレクを産んだ。以上がエサウの妻アダの子孫である。
36:13 リウエルの子は、ナハテ、ゼラ、シャンマ、ミザである。彼らはエサウの妻バスマテの子である。
36:14 ヂベオンの子アナの娘で、エサウの妻アホリバマの子らは、次のとおりである。彼女はエウシュ、ヤラム、コラをエサウに産んだ。
36:15 エサウの子孫の中で、族長となった者は次のとおりである。エサウの長男エリファズの子らからは、テマン、オマル、ゼフォ、ケナズ、
36:16 コラの族長、ガタムの族長、アマレクの族長。これらはエドムの地に住んだ、エリファズから出た族長である。彼らはアダの子孫だ。
36:17 エサウの子リウエルの子たちは、次のとおりである。ナハテ族長、ゼラ族長、シャンマ族長、ミザ族長。これらはエドムの地にいた、リウエルから出た族長である。彼らはエサウの妻バスマテの子たちである。
36:18 エサウの妻アホリバマの子どもは、次のとおり。族長エウシ、族長ヤラム、族長コラ。この人たちは、アナの娘でエサウの妻であるアホリバマから出た族長である。
36:19 これらはエサウ、すなわちエドムの子孫であり、その氏族の長たちである。
36:20 この地に住んでいたホリ人セイルの子孫は、次のとおりである。ロタン、ショバル、ツィブオン、アナ、
36:21 デション、エツェル、ディシャン。これらはセイルの子孫であるホリ人の首長たちで、エドムの地に住んでいた。
36:22 ロタンの子はホリとヘマム。ロタンの妹はテムナだった。
36:23 ショバルの子は、次のとおり。アルワン、マナハテ、エバル、シフォ、オナム。
36:24 アヤの子孫は次のとおり。ツィブオンとアナである。このアナは、父ツィブオンのろばの世話をしていたとき、荒れ野で温泉を見つけた人である。
36:25 アナの子は次のとおりである。デションとアホリバマ。アホリバマはアナの娘である。
36:26 デションの子らは次のとおりである。ヘムダン、エシバン、イテラン、ケラン。
36:27 エゼルの子は次のとおり。ビルハン、ザワン、アカン。
36:28 デシャンの子らは、次のとおり。ウツとアラン。
36:29 ホリびとから出た族長は、次のとおりである。ロタンの族長、ショバルの族長、ヂベオンの族長、アナの族長、
36:30 デションの族長、エツェルの族長、ディシャンの族長。これらはホリ人の族長で、セイルの地で氏族ごとに立てられた族長である。
36:31 イスラエルの人々を治める王がまだいなかったころ、エドムの地を治めた王たちは、次のとおりである。
36:32 ベオルの子ベラがエドムを治めていた。彼の都の名はディンハバといった。
36:33 ベラが死んで、ボツラの人ゼラの子ヨバブが代わって王になった。
36:34 ヨバブが死んで、テマンの地のホシャムが代わって王となった。
36:35 ホシャムが死んで、ベダデの子ハダドが代わって王となった。彼はモアブの野でミデアンを打ち破った人である。その都の名はアビテといった。
36:36 ハダデが死に、マスレカ出身のサムラが代わって王となった。
36:37 サムラが死ぬと、ユーフラテス川のほとりにあるレホボテ出身のサウルが、代わって王になった。
36:38 サウルが死に、アクボルの子バアル・ハナンが代わって王となった。
36:39 アクボルの子バアル・ハナンが死に、代わってハダルが王になった。その都の名はパウ。妻の名はメヘタベルといい、メ・ザハブの娘マテレデの娘だった。
36:40 エサウから出た族長たちの名は、氏族ごと、住む土地ごとに、次のとおりである。テムナ族長、アルワ族長、エテテ族長、
36:41 アホリバマの族長、エラの族長、ピノンの族長、
36:42 ケナズの族長、テマンの族長、ミブザルの族長、
36:43 マグディエルの族長、イラムの族長。以上がエドムの族長たちで、それぞれの領地に住みついた氏族ごとの名である。エドム人の先祖はエサウである。
37:1 ヤコブは父が暮らした地、カナンの地に住んだ。
37:2 ヤコブの子孫は、次のとおりである。ヨセフは十七歳のとき、兄弟たちといっしょに羊の群れの世話をしていた。彼はまだ若く、父の妻ビルハとジルパの子どもたちのそばにいた。ある日、ヨセフは彼らの悪いうわさを父に告げた。
37:3 ヨセフはイスラエルが年をとってからできた子だった。だからイスラエルは、どの息子よりもヨセフを愛していた。そして彼のために、そでの長い美しい着物をつくってやった。
37:4 兄弟たちは、父がどの兄弟よりもヨセフを愛していることに気づいた。それで彼を憎むようになり、優しい言葉をかけることさえできなくなった。
37:5 ヨセフは夢を見た。それを兄弟たちに話すと、彼らはますますヨセフを憎むようになった。
37:6 ヨセフは兄弟たちに言った。「わたしが見た夢を聞いてほしい。
37:7 畑の中でわたしたちが束をたばねていた。すると、わたしの束が起き上がってまっすぐに立った。そして、あなたたちの束がまわりに集まってきて、わたしの束におじぎをしたんだ。」
37:8 兄弟たちはヨセフに言った。「お前はおれたちの王になるつもりか。おれたちを支配するつもりなのか。」こうして彼らは、彼の夢とその言葉のせいで、ますますヨセフを憎んだ。
37:9 ヨセフはまた別の夢を見た。そしてそれを兄弟たちに話して言った。「聞いてよ、わたしはまた夢を見たんだ。太陽と月と十一の星が、わたしにおじぎをしていたんだ。」
37:10 父はヨセフからその話を聞くと、彼を叱って言った。「おまえが見たその夢は、いったい何なんだ。このわたしと、おまえの母さんや兄さんたちが、みんなでおまえの前に行って、地面にひれ伏すとでもいうのか。」
37:11 兄弟たちはヨセフをねたんだ。でも父は、このことをずっと心に留めていた。
37:12 兄弟たちは、父の羊の群れの世話をするためにシケムへ行った。
37:13 イスラエルはヨセフに言った。「お前の兄さんたちは、シケムで羊の世話をしているだろう。さあ、お前を兄さんたちのところへ送ろう。」ヨセフは答えた。「はい、行きます。」
37:14 父はヨセフに言った。「ちょっと行って、兄さんたちが元気にやっているか、羊の群れは無事か、見てきてほしい。そして、わたしに知らせてくれ。」こうして父はヨセフをヘブロンの谷から送り出した。ヨセフはシケムに向かった。
37:15 ひとりの人がヨセフに出会った。ヨセフは野原をさまよっていた。その人は「何を探しているのですか」と尋ねた。
37:16 彼は答えた。「兄弟たちを捜しているんです。どこで羊を飼っているか、教えてもらえませんか。」
37:17 その人は言った。「あの人たちはここを離れました。『ドタンへ行こう』と話しているのを聞きましたよ。」そこでヨセフは兄弟たちを追いかけ、ドタンで彼らを見つけた。
37:18 ヨセフがまだ遠くにいるうちに、兄たちは彼に気づいた。そして彼が近づく前に、殺してやろうとたくらんだ。
37:19 「あの夢を見るやつがやって来た」と、彼らは互いに言った。
37:20 さあ、あいつを殺して、どこかの穴に投げ込もう。そして「悪い獣に食われた」と言うんだ。あいつの夢がどうなるか、見てやろうじゃないか。
37:21 ルベンはそれを聞いて、ヨセフを彼らの手から助け出そうとした。そして言った。「あいつの命を奪うのはやめよう。」
37:22 ルベンはさらに言った。「血を流してはいけない。あの子を荒れ野にあるこの穴に投げ込めばいい。でも、手を下してはいけない。」こう言ったのは、ヨセフを兄弟たちの手から助け出し、父のもとに帰してやるためだった。
37:23 ヨセフが兄弟たちのところへ来ると、彼らはヨセフの服を、彼が着ていた長そでの服をはぎ取った。
37:24 穴に落とし込んだ。その穴は空っぽで、水は入っていなかった。
37:25 彼らはすわってパンを食べた。ふと目を上げて見ると、イシュマエル人の隊商がギレアデからやって来るところだった。らくだに香料と乳香と没薬を積んで、エジプトへ運んで行く途中だった。
37:26 ユダは兄弟たちに言った。「弟を殺して、その血を隠したところで、何の得になるんだ。
37:27 さあ、あいつをあのイシュマエル人たちに売ろう。手を下すのはやめよう。だって、あいつはわたしたちの弟、同じ血を分けた身内なんだから。」兄弟たちはこの言葉を聞き入れた。
37:28 ミデアン人の商人たちが通りかかった。それで兄弟たちはヨセフを穴から引き上げ、銀貨二十枚でイシマエル人に売った。イシマエル人はヨセフをエジプトへ連れて行った。
37:29 ルベンは穴のところに戻った。でも、ヨセフは穴の中にいなかった。それでルベンは自分の服を引き裂いた。
37:30 兄弟たちのところへ戻って言った。「あの子がいない。ぼくはどこへ行けばいいんだ」
37:31 彼らはヨセフの服を取り、雄やぎを一頭殺して、その服を血に浸した。
37:32 その長そでの服を父のもとに持ち帰らせて、こう言った。「これを見つけました。あなたの息子さんの服かどうか、確かめてください。」
37:33 父はそれを見て言った。「これはわたしの息子の服だ。悪い獣に食われたのだ。ヨセフは間違いなく引き裂かれてしまった。」
37:34 ヤコブは服を引き裂き、腰に粗い布をまとった。そして、長い間その子のために嘆き悲しんだ。
37:35 子どもたちは息子も娘もみんな立って、ヤコブを慰めようとした。でも彼は慰めを受け入れようとせず、こう言った。「いや、わたしは泣きながら死んだ息子のもとへ、陰府に下って行くのだ。」こうして父はヨセフのために泣いた。
37:36 ミデアン人はエジプトで、ヨセフをファラオの役人で親衛隊長のポティファルに売った。
38:1 そのころ、ユダは兄弟たちのもとを離れて下って行き、ヒラという名のアドラム人のところに身を寄せた。
38:2 ユダはそこで、シュアという名のカナン人の娘を見かけた。そして彼女をめとり、彼女のところに入った。
38:3 彼女はみごもって男の子を産んだ。ユダはその子をエルと名づけた。
38:4 彼女はまた身ごもって男の子を産み、その子をオナンと名づけた。
38:5 また子を産んだ。男の子だった。彼女はその子をシラと名づけた。この子を産んだとき、ユダはクジブにいた。
38:6 ユダは長子エルのために妻を迎えた。その女性の名はタマル。
38:7 ユダの長子エルは、主の目に悪い者だった。それで主は、エルの命を取られた。
38:8 ユダはオナンに言った。「兄の妻のところに行き、彼女と結婚しなさい。そして兄のために子孫を残すのだ。」
38:9 オナンは、生まれてくる子どもが自分のものにならないと分かっていた。だから兄の妻のところに入るたびに、兄のために子どもを残さないよう、精を地面に漏らした。
38:10 彼のしたことは主の目に悪と映った。それで主は彼をも殺した。
38:11 ユダは嫁のタマルに言った。「わたしの息子シェラが大きくなるまで、あなたの父の家で未亡人のまま過ごしていなさい。」心の中では、シェラも兄たちのように死んでしまうかもしれない、と思っていたのだ。それでタマルは父の家に戻って暮らした。
38:12 日がたって、ユダの妻であるシュアの娘が死んだ。喪が明けると、ユダは友人でアドラム人のヒラといっしょに、羊の毛を刈る人たちのいるティムナへ上って行った。
38:13 タマルに、「あなたのしゅうとが羊の毛を刈りにティムナへ上って来る」と知らせる者があった。
38:14 彼女は寡婦の服を脱ぎ、ベールで顔を隠して身なりを変えた。そして、ティムナへ向かう道沿いにあるエナイムの入り口にすわった。シェラはもう大人になっていたのに、自分がその妻にしてもらえないと分かっていたからだ。
38:15 ユダは彼女を見て、遊女だと思った。顔を覆っていたからだ。
38:16 ユダは道のかたわらで彼女のところへ行き、こう言った。「さあ、あなたと寝させてくれ。」ユダは、彼女が自分の嫁だとは知らなかったのだ。彼女は言った。「わたしと寝るなら、何をくれるの。」
38:17 ユダは言った。「群れの中から子やぎを一頭、あなたに送るよ。」彼女は言った。「それを送ってくれるまで、保証の品を預けてくれる?」
38:18 ユダは尋ねた。「しるしとして、何を渡せばいい?」彼女は答えた。「あなたの印章と、そのひもと、手に持っているその杖を。」ユダはそれらを渡して、彼女のところに入った。こうして彼女はユダの子を身ごもった。
38:19 彼女は立ち上がって去り、顔をおおっていた布を取り、寡婦の衣を身につけた。
38:20 ユダは、預けたしるしをその女から取り戻そうと、友人のアドラム人にやぎの子を持たせて送った。でも、彼はその女を見つけられなかった。
38:21 そこでユダは、その土地の人たちに聞いた。「エナイムの道ばたにいた娼婦は、どこにいる?」すると、彼らは答えた。「ここにそんな娼婦はいなかった」
38:22 彼はユダのもとに帰って言った。「あの女は見つかりませんでした。それに土地の人たちも、『ここに娼婦なんていなかった』と言うんです」
38:23 ユダは言った。「あの品はあの女に持たせておけばいい。恥をかかされたくないからな。とにかく、わたしはこの子やぎを送ったのに、おまえは彼女を見つけられなかったんだ。」
38:24 三月ほどたったころ、ユダのもとにこんな知らせが届いた。「あなたの嫁のタマルが不品行を働きました。しかも、その不品行で身ごもっています。」ユダは言った。「その女を引き出して、焼き殺せ。」
38:25 彼女は引き出されたとき、しゅうとにこう言い送った。「わたしは、この品物の持ち主によって身ごもったのです。」そしてこう言った。「どうか、この印章と、そのひもと、杖が、だれのものか確かめてください。」
38:26 ユダはそれを見て、こう言った。「彼女の方がわたしより正しい。わたしが息子のシェラと彼女を結婚させなかったからだ。」ユダは、二度と彼女と関係を持つことはなかった。
38:27 さて、彼女の出産の時が来た。すると、おなかの中には双子がいた。
38:28 出産のとき、一人の子が手を先に出した。それで助産師は「この子が先に出た」と言って、赤い糸を取り、その手に結んだ。
38:29 手を引っ込めると、その兄弟が出てきた。「あなたはなんと勢いよく出てきたことか」と産婆が言った。それでその子はペレツと名づけられた。
38:30 その後、手に緋色の糸を巻いた兄が出てきた。それで、彼はゼラと名づけられた。
39:1 ヨセフはエジプトへ連れて行かれた。そして、ファラオの役人で親衛隊長だったエジプト人ポティファルが、彼をそこへ連れてきたイシュマエル人たちの手から、ヨセフを買い取った。
39:2 主がヨセフと共にいたので、ヨセフはうまくいく人になった。そして彼は、主人であるエジプト人の家で暮らした。
39:3 その主人は、主がヨセフと共におられ、彼のすることすべてを主が成功させてくださるのを見た。
39:4 ヨセフは主人に気に入られ、そば近くで仕えるようになった。主人はヨセフに家の管理をまかせ、自分の全財産をゆだねた。
39:5 彼をヨセフに家とすべての持ち物の管理を任せたときから、主はヨセフのおかげでそのエジプト人の家を祝福した。主の祝福は、家でも畑でも、彼が持っているすべてのものに及んだ。
39:6 そこで彼は、持ち物すべてをヨセフに任せた。自分が食べる物のほかは、何ひとつ気にかけなかった。ヨセフは体つきも顔立ちも美しかった。
39:7 これらの出来事の後、主人の妻はヨセフに目をとめて、「わたしと寝て」と言った。
39:8 ヨセフは断り、主人の妻にこう言った。「ご主人はわたしがいるから、家の中のことを何も気にかけません。持ち物すべてをわたしの手にゆだねてくださいました。
39:9 この家で、わたしより上の人はいない。ご主人はすべてをわたしにまかせ、何ひとつ惜しまなかった。ただ、あなただけは別だ。あなたはご主人の妻なのだから。それなのに、どうしてそんな大それた悪いことをして、神に罪を犯せるだろう。」
39:10 毎日ヨセフに言い寄ったが、ヨセフは彼女の言うことを聞かず、一緒に寝ることも、そばにいることもなかった。
39:11 ある日、ヨセフは仕事をするために家に入った。そのとき、家の使用人はだれ一人その場にいなかった。
39:12 彼女はヨセフの服をつかんで、「わたしと寝て」と言った。でもヨセフは服を彼女の手に残したまま、外へ逃げ出した。
39:13 彼女は、ヨセフが上着を自分の手に残したまま外へ逃げたのを見た。
39:14 家の男たちを呼んで、こう言った。「見て。夫がわたしたちのところに連れてきたヘブライ人が、わたしたちを笑いものにしようとしている。この男はわたしと寝ようとして部屋に入ってきた。だからわたしは大声で叫んだの。
39:15 彼が、わたしが声をあげて叫んだのを聞いて、着物をわたしのそばに残して外へ逃げ出したのを、彼女は見たのです。」
39:16 彼女はその服を自分のそばに置いて、主人が家に帰って来るのを待った。
39:17 「その男は、あなたがわたしたちのところに連れてきたヘブライ人の奴隷なのですが、わたしをもてあそぼうとして部屋に入ってきたのです。
39:18 わたしが大声をあげて叫んだので、彼は服をわたしのそばに残したまま、外へ逃げていったのです。」
39:19 主人はその妻が「あなたのしもべは、わたしにこんなことをしました」と話すのを聞いて、激しく怒った。
39:20 ヨセフの主人はヨセフを捕まえ、王の囚人たちがつながれる牢屋に入れた。こうしてヨセフは、その牢屋の中で過ごすことになった。
39:21 主はヨセフと共におられた。ヨセフを慈しみ、看守の心に、ヨセフを気に入らせてくださった。
39:22 獄長は、牢屋にいる囚人全員をヨセフに任せた。牢の中で行われることは、すべて彼が取りしきった。
39:23 獄屋の番人は、ヨセフに任せたことには何ひとつ目を配らなかった。主がヨセフとともにおられたからだ。そして、ヨセフのすることを、主はすべてうまくいくようにされた。
40:1 これらの出来事のあと、エジプト王の給仕役と料理役が、主君であるエジプト王に対して罪を犯した。
40:2 ファラオはふたりの側近、給仕役の長と料理役の長に激しく腹を立てた。
40:3 ヨセフが捕らえられている牢屋、つまり侍衛長の家にある監禁所に、二人を入れた。
40:4 侍衛長はヨセフに命じて、この二人につき添って世話をさせた。それでヨセフは二人の世話をした。こうして二人は、しばらくのあいだ拘置所で過ごした。
40:5 朝、獄舎につながれていたエジプト王の給仕役と料理役のふたりは、同じ夜にそれぞれ夢を見た。その夢にはどちらもちゃんと意味があった。
40:6 ヨセフが朝、彼らのところへ行ってみると、二人はふさぎ込んでいた。
40:7 ヨセフは、主人の家の監禁所に自分と一緒にいたファラオの役人たちにたずねた。「どうして今日は、あなたたちの顔色がそんなに悪いのですか。」
40:8 彼らは言った。「わたしたちは夢を見た。でも、その意味を解いてくれる人がいないんだ。」ヨセフは言った。「夢の意味を解くのは神のすることじゃないか。さあ、わたしに話してみて。」
40:9 ぶどう酒係の長は、ヨセフに自分の見た夢を話した。「夢の中で、わたしの前に一本のぶどうの木があった。
40:10 そのぶどうの木には枝が三本あった。その枝が芽を出し、花が咲き、そのぶどうのふさが実って熟していった。
40:11 わたしの手にはファラオの杯があって、わたしはそのぶどうを取ってファラオの杯にしぼり、その杯をファラオの手に渡しました。」
40:12 ヨセフは言った。「その意味はこうだ。三本の枝は三日を表している。
40:13 三日のうちに、ファラオはあなたを呼び出して、元の役目に戻してくれる。あなたは前と同じように、給仕役だったときのようにファラオの杯をその手に渡すことになる。
40:14 それで、あなたが幸せになれたら、わたしのことを思い出してほしい。どうかわたしに慈しみを示して、わたしのことをファラオに話してくれないか。そして、わたしをこの家から出してほしい。
40:15 わたしは、実はヘブライ人の土地からさらわれてきた者なんです。それに、ここでも牢屋に入れられるようなことは、何もしていません」
40:16 料理役の長は、その解き明かしが良かったのを見て、ヨセフに言った。「わたしも夢を見た。見ると、白いパンのかごが三つ、わたしの頭の上にあった。
40:17 一番上のかごには、ファラオのためにパン職人が作ったいろいろな食べ物が入っていた。でも、鳥がわたしの頭の上のかごから、それを食べていた」
40:18 ヨセフは答えた。「その意味はこうだ。三つのかごは三日を表している。
40:19 三日のうちに、ファラオはあなたの首をはねて、あなたを木にかける。そして鳥があなたの肉をついばむだろう」
40:20 三日目はファラオの誕生日だった。ファラオは家来全員のために宴会を開いた。そして家来たちが見ている前で、給仕役の長と料理役の長を呼び出した。
40:21 パロは給仕役の長をもとの職に戻した。それで給仕役の長は、パロの手に杯をささげた。
40:22 パロは料理役の長を木に掛けた。ヨセフが二人に解き明かしたとおりだった。
40:23 給仕役の長はヨセフのことを思い出さなかった。それどころか、すっかり忘れてしまった。
41:1 二年が過ぎたころ、ファラオは夢を見た。夢の中で、彼はナイル川のほとりに立っていた。
41:2 川から、美しく丸々と太った七頭の雌牛が上がってきた。そして、葦を食べはじめた。
41:3 その後、みすぼらしくやせ細った別の七頭の雌牛が、川から上がってきた。そして、さっきの雌牛のそばに、川岸に並んで立った。
41:4 その醜い、やせ細った雌牛が、あの美しい、太った七頭の雌牛を食い尽くした。そこでファラオは目を覚ました。
41:5 彼はまた眠り、二度目の夢を見た。すると、一本の茎から、太った良い七つの穂が伸びてきた。
41:6 その後、しなびて、東風に焼けた七つの穂が出てきた。
41:7 やせた穂が、あの太って実った七つの穂をのみ込んでしまった。そこでファラオは目が覚めた。それは夢だった。
41:8 朝になると、ファラオは心がざわついた。それでエジプト中の呪術師や賢者をみな呼び集め、彼らに夢を語った。しかし、その夢をファラオに解き明かせる者は一人もいなかった。
41:9 給仕役の長はファラオに言った。「今日、わたしは自分の過ちを思い出しました。
41:10 かつてファラオが家来たちに腹を立てて、わたしと料理長を親衛隊長の家の牢に入れたことがありました。
41:11 わたしも彼も、同じ夜にそれぞれ夢を見ました。しかも二人とも、その夢にはちゃんと意味があったのです。
41:12 そこには、護衛長の奴隷として仕えている、わたしたちと同じヘブライ人の若者がいました。それでわたしたちが夢を話すと、彼はその夢を解き明かしてくれたのです。二人それぞれの夢に合わせて、解き明かしてくれました。
41:13 そして、彼が解き明かしたとおりのことが起こりました。わたしは元の仕事に戻され、彼は木に掛けられたのです。」
41:14 ファラオはヨセフを呼びにやらせた。人々は急いで彼を地下牢から出した。ヨセフはひげをそり、服を着替えて、ファラオの前に出た。
41:15 ファラオはヨセフに言った。「わたしは夢を見た。でも、それを解き明かせる者がいない。聞いたところによると、あなたは夢を聞けば、それを解き明かせるそうだね。」
41:16 ヨセフはファラオに答えた。「いいえ、わたしにはできません。神がファラオに平安をお答えになります。」
41:17 ファラオはヨセフに話し始めた。「夢の中で、わたしはナイル川の岸に立っていた。
41:18 その川から、よく肥えた美しい七頭の雌牛が上がってきて、葦を食べていた。
41:19 その後、別のやせた雌牛が七頭、川から上がってきた。ひどく醜くやせ細っていて、こんな醜い牛はエジプト中どこでも見たことがないほどだった。
41:20 やせて醜い雌牛が、先に出てきた七頭の太った雌牛を食べてしまった。
41:21 腹に入っても、入ったとは分からなかった。相変わらず、最初と同じように醜いままだった。そこで、わたしは目が覚めた。
41:22 わたしはまた夢を見た。すると、一本の茎から、実がぎっしり詰まった良い穂が七つ出てきた。
41:23 その後に、実の入っていない、やせて、東風に焼けた七つの穂が生えてきた。
41:24 やせた穂が、あの七つのよい穂をのみ込んでしまった。わたしはこのことを魔術師たちに話した。でも、だれもその意味を説明できなかった」
41:25 ヨセフはファラオに言った。「ファラオの夢は一つです。神がこれからしようとしていることを、ファラオに知らせてくださったのです。
41:26 七頭の良い牛は七年のこと。七つのよく実った穂も七年のことで、これは同じ夢だ。
41:27 あとに続いて上がってきた七頭のやせた醜い牛は七年のこと、そして東風に焼かれて実の入らない七つの穂は、七年の飢きんを表している。
41:28 わたしがファラオに申し上げたとおりです。神はこれからしようとしていることを、ファラオにお見せになったのです。
41:29 七年のあいだ、エジプト全体が大豊作に恵まれる。
41:30 その後、七年の飢饉が続く。エジプト中の豊作はすっかり忘れ去られ、飢饉が地を食い尽くす。
41:31 あとに続くききんがあまりにひどいので、この地ではかつての豊作など覚えている人もいなくなる。
41:32 ファラオが同じ夢を二度も見たのは、この計画が神によって決まっていて、神がそれをすぐに実行しようとしているからだ。
41:33 ファラオは今すぐ、洞察力があって賢い人を見つけ、その人にエジプト全体を任せるといい。
41:34 ファラオはこうして国中に監督官を置き、豊作の七年間、エジプトの国の収穫の五分の一を集めさせるとよい。
41:35 続いて来るこの豊作の年々の食糧をすべて集めさせ、穀物をファラオの管理のもとに町々にたくわえ、食糧として守らせなさい。
41:36 こうすれば、この食糧はエジプトを襲う七年のききんに備えて、国のたくわえとなる。そうすれば、この国はききんで滅びることはない」
41:37 この事はファラオとその家来たち全員にとって良いことに思えた。
41:38 ファラオは家来たちに言った。「神の霊が宿るこんな人が、ほかに見つかるだろうか。」
41:39 神がこれをすべてあなたに示されたのだから、あなたほど聡明で賢い人はいない。
41:40 あなたはわたしの家を治める人になってほしい。わたしの民はみな、あなたの言葉に従う。わたしがあなたにまさるのは、王の位のことだけだ。
41:41 ファラオは続けてヨセフに言った。「いいか、わたしはあなたをエジプト全土を治める者に任命する。」
41:42 ファラオは自分の指輪を手から外して、ヨセフの手にはめた。そして亜麻布の服を着せ、金の首飾りを首にかけた。
41:43 ヨセフを自分の第二の車に乗せ、「みんな、ひざまずけ」とその前で叫ばせた。こうしてヨセフを、エジプト全土を治める者とした。
41:44 ファラオはヨセフに言った。「わたしがファラオだ。でも、あなたの許しがなければ、エジプト全土で誰も手足を上げることはできない。」
41:45 ファラオはヨセフに「ツァフェナテ・パネア」という名をつけた。そして、オンの祭司ポティ・フェラの娘アセナテを妻として彼に与えた。こうしてヨセフはエジプト全土を治めるために出て行った。
41:46 ヨセフがエジプトの王ファラオの前に立ったとき、彼は三十歳だった。ヨセフはファラオの前を離れ、エジプト全土をくまなく巡った。
41:47 七年の豊作の間、地はあり余るほど作物を実らせた。
41:48 ヨセフは、エジプト全土で取れた七年分の食糧をすべて集めた。そして、それぞれの町に食糧を蓄えさせた。町の周りの畑で取れた食糧を、その町の中に納めさせたのだ。
41:49 ヨセフは、海の砂のように大量の穀物をたくわえた。あまりにも多くて、量りきれなくなり、ついに量るのをやめてしまった。
41:50 ききんの年が来る前に、ヨセフに二人の息子が生まれた。オンの祭司ポティ・フェラの娘アセナテが産んだ子である。
41:51 ヨセフは長男をマナセと名づけた。「神が、わたしのすべての苦しみと父の家のすべてのことを忘れさせてくださった」と言ったのだ。
41:52 またヨセフは次の子をエフライムと名づけた。「わたしが苦しんだこの地で、神がわたしに子どもを与え、豊かにしてくれたからだ」と言った。
41:53 エジプトの国で続いた七年間の豊作が終わり、
41:54 ヨセフが言ったとおり、七年のききんが始まった。ききんはどこの国にも及んだが、エジプト全土には食べ物があった。
41:55 やがてエジプト全土が飢えると、人々は食べ物を求めてファラオに叫んだ。ファラオはすべてのエジプト人にこう言った。「ヨセフのところへ行きなさい。彼が言うとおりにするのだ。」
41:56 ききんは地の全面に広がっていた。ヨセフはすべての穀物倉を開いて、エジプトの人々に穀物を売った。ききんはエジプトの国でますますひどくなっていった。
41:57 ききんが全地でますますひどくなっていた。だから世界中の人々が、穀物を買おうとエジプトのヨセフのもとにやって来た。
42:1 ヤコブは、エジプトに穀物があると知って、息子たちに言った。「どうして、おまえたちは顔を見合わせてばかりいるんだ。」
42:2 エジプトに食糧があるらしい。だから、そこに下って行って、わたしたちのために買ってきてほしい。そうすればわたしたちは死なずに、生きのびられる」
42:3 ヨセフの十人の兄弟は、穀物を買うためにエジプトへ下って行った。
42:4 ヤコブは、ヨセフの弟ベニヤミンだけは兄弟たちと一緒に送り出さなかった。ベニヤミンの身に何か災いが起こるのを恐れたからだ。
42:5 イスラエルの子らは、食料を買いに来た人たちに交じってやってきた。カナンの地でも食べ物がなくなっていたからだ。
42:6 ヨセフはこの国を治める人で、国のすべての民に穀物を売っていた。ヨセフの兄弟たちはやって来て、彼の前で地にひれ伏した。
42:7 ヨセフは兄弟たちを見て、すぐに彼らだとわかった。でも、わざと知らないふりをして、きびしい口調で話しかけた。「おまえたちはどこから来た」と言うと、彼らは「食料を買うために、カナンの地から来ました」と答えた。
42:8 ヨセフは兄弟たちだと分かった。でも兄弟たちは、彼がヨセフだと気づかなかった。
42:9 ヨセフは、彼らについて見たあの夢を思い出した。そして彼らに言った。「お前たちはスパイだ。この地の弱いところを探りに来たんだろう。」
42:10 「いいえ、ご主人さま。わたしたち僕は、ただ食糧を買うために来たのです。
42:11 わたしたちはみな、同じひとりの父の子です。うそはつきません。あなたのしもべたちは、回し者ではありません」
42:12 ヨセフは言った。「いや、あなたたちはこの地の弱いところを探りに来たのだ。」
42:13 彼らは答えた。「わたしたちは十二人兄弟で、カナンの地に住むひとりの人の子です。末の弟は今、父のところにいますが、もうひとりはいなくなりました。」
42:14 ヨセフは彼らに言った。「わたしが言ったとおりだ。あなたたちはスパイだ。
42:15 ファラオの命にかけて誓う。こうしてあなたたちを試す。末の弟をここに連れてこないかぎり、あなたたちはここを出られない。
42:16 あなたたちの中から一人を送って、弟を連れて来させなさい。それまで、ほかの者は牢につないでおく。そうやって、あなたたちの言葉が本当かどうかを試すのだ。もし嘘なら、ファラオの命にかけて言うが、あなたたちは間違いなくスパイだ。」
42:17 ヨセフは彼ら全員を三日の間、牢に入れた。
42:18 三日目に、ヨセフは彼らに言った。「こうすればあなたたちは助かる。わたしは神を敬い、恐れているのだから。
42:19 もしあなたたちが正直な者なら、兄弟のひとりをこの牢に残しておけ。あとの者は穀物を持って行き、飢えている家族を助けなさい。
42:20 末の弟をわたしのところに連れてきなさい。そうすれば、あなたたちの言葉が本当だと証明されて、死なずにすむ。」彼らはそのとおりにした。
42:21 兄弟たちは互いに言った。「ああ、わたしたちは弟のことで本当に罪を犯した。あの子が必死に助けを求めてきたとき、その魂の苦しみを見ていながら、聞き入れなかった。だから、こんな苦しみが降りかかってきたんだ。」
42:22 ルベンが彼らに答えた。「だからあの子に手を出すなと言ったじゃないか。でもきみたちは聞かなかった。それで今、あの子の血の報いを受けることになるんだ。」
42:23 彼らは、ヨセフが自分たちの言葉を聞き取っているとは知らなかった。二人の間に通訳がいたからである。
42:24 ヨセフは彼らから離れて行って泣いた。それからまた戻ってきて、彼らに話しかけた。そして彼らの中からシメオンを取り、みんなの目の前でその手を縛った。
42:25 ヨセフは、彼らの袋に穀物をいっぱいに入れ、それぞれのお金を袋に戻し、道中の食料を持たせるよう指示した。そのとおりに、彼らのためにしてくれた。
42:26 彼らは穀物をろばに積んで、そこを出発した。
42:27 そのうちのひとりが、宿でろばにえさをやろうと袋を開けた。すると、袋の口に自分のお金があるのに気づいた。
42:28 兄弟たちに言った。「わたしの銀が返されている。ほら、袋の中にあるんだ。」彼らは気が動転し、たがいに震えながら言った。「神はわたしたちに、いったい何をなさったのだろう。」
42:29 彼らはカナンの地にいる父ヤコブのところに帰り着き、自分たちの身に起こったことをすべて話した。
42:30 「あの国を治めている人が、わたしたちに厳しい態度で話してきた。そして、わたしたちを国の様子を探るスパイだと決めつけたんだ。
42:31 わたしたちは彼にこう答えました。『わたしたちは正直な者で、スパイなんかじゃない。
42:32 わたしたちは十二人兄弟で、同じ父の子だ。ひとりはもういなくなり、末の弟は今、父といっしょにカナンの地にいる』
42:33 創世記の管理者である人はわたしたちにこう言いました。『お前たちが正直者かどうか、こうやって確かめる。兄弟のうち一人をわたしのところに残し、飢えている家族のために食料を持って行きなさい。
42:34 末の弟をわたしのところに連れてきなさい。そうすれば、あなたたちが回し者ではなく、正直な者だとわかる。そうしたら、あなたたちの兄弟を返し、この地で商売をさせてやろう』」
42:35 袋を開けると、それぞれの銀の包みが自分の袋の中にあった。彼らも父も、その銀の包みを見て恐ろしくなった。
42:36 父ヤコブは彼らに言った。「おまえたちは、わたしから子どもを奪っていく。ヨセフはいなくなった。シメオンもいなくなった。今度はベニヤミンまで連れて行こうとしている。何もかもわたしにふりかかってくるんだ。」
42:37 ルベンは父に言った。「わたしがベニヤミンをあなたのところに連れて帰らなかったら、わたしの二人の息子を殺してくれてかまいません。あの子をわたしにまかせてください。わたしが必ず、あなたのところに連れて帰ります。」
42:38 ヤコブは言った。「わたしの息子をあなたたちといっしょに行かせるわけにはいかない。この子の兄はもう死んでしまって、残っているのはこの子だけなんだ。もし行く道の途中でこの子が何かの災いにあったら、あなたたちは、白髪のこのわたしを悲しみの中で死の世界へ送り込むことになるんだ。」
43:1 ききんはその地に激しかった。
43:2 彼らがエジプトから持ち帰った穀物を食べ尽くしてしまったとき、父は息子たちに言った。「もう一度行って、少し食糧を買ってきてくれ。」
43:3 ユダは父にこう言った。「あの人はわたしたちにきびしく念を押して言ったのです。『弟を連れて来なければ、二度とわたしの顔を見ることはできない』と。
43:4 もしあなたが弟をわたしたちと一緒に行かせてくれるなら、わたしたちは下って行って、あなたのために食糧を買ってきます。
43:5 もし弟を一緒に行かせてくれないなら、わたしたちは行きません。あの人が「弟を連れて来なければ、わたしの前に顔を出すな」と、はっきり言ったのですから。
43:6 イスラエルは言った。「なぜ、もう一人弟がいるなんてあの人に言って、わたしを苦しめるようなことをしたんだ。」
43:7 彼らは言った。「あの人が、わたしたちのことや家族のことをしつこく聞いてきたんです。『父親はまだ生きているのか。ほかに兄弟はいるのか』と。だからその問いのとおりに答えただけです。まさか『弟を連れて来い』なんて言い出すなんて、どうしてわかったでしょうか」
43:8 ユダは父イスラエルに言った。「あの子をわたしと一緒に行かせてください。すぐに出発します。そうすれば、わたしたちもあなたも、子どもたちも、死なずに生きのびられるのです。
43:9 わたしが彼の身を引き受ける。わたしの手にその責任を求めてくれていい。もしわたしが彼をあなたのもとに連れ帰り、あなたの前に立たせなかったら、わたしは一生あなたに対して罪を負い続ける。
43:10 もしわたしたちがこんなにぐずぐずしていなかったら、今ごろはもう二度も行って帰ってきていたはずだ。」
43:11 父イスラエルは彼らに言った。「それなら、こうしなさい。この地のいちばんの名産を袋に入れて、あの人への贈り物として持って行きなさい。少しの香油と少しの蜂蜜、香料と没薬、ピスタチオとアーモンドだ。
43:12 そしてその上に、倍の額のお金を持って行きなさい。それに、袋の口に戻されていたお金も持って行って返しなさい。たぶん、何かの手違いだったのだろう。
43:13 弟も一緒に連れて、すぐに立って、あの人のところへもう一度行きなさい。
43:14 どうか全能の神が、あなたたちをその人の前であわれんでくださるように。そして、もう一人の兄弟とベニヤミンを返してくださるように。わたしのほうは、子を失うのなら、失うまでだ。」
43:15 その人たちは、この贈り物を持って行った。銀も倍の額を手に持ち、ベニヤミンも連れて行った。そして出発してエジプトへ下り、ヨセフの前に立った。
43:16 ヨセフは、彼らと一緒にいるベニヤミンを見た。そして家の管理をまかせている使用人に言った。「この人たちを家に案内してくれ。それから家畜をほふって、食事の用意をしてほしい。この人たちは、昼にわたしと一緒に食事をするから。」
43:17 その人はヨセフに言われたとおりにして、彼らをヨセフの家に案内した。
43:18 その人たちは、ヨセフの家に連れて行かれたので怖くなった。そして言った。「これは、最初のとき袋に戻されていたあのお金のせいだ。それを口実にわたしたちに襲いかかり、捕らえて奴隷にし、ろばまで奪おうとしているんだ。」
43:19 彼らはヨセフの家を管理する人のところへ行き、家の入り口で話しかけた。
43:20 「ああ、ご主人様。わたしたちは前回、食べ物を買うためにここへ下ってきました。
43:21 宿に着いて袋を開けてみると、それぞれの銀が袋の口に入っていたのです。しかも、わたしたちの銀は目方どおり、そっくりそのまま。それで、それを持って戻ってきました。
43:22 食糧を買うために、別のお金も持って下ってきました。わたしたちのお金を袋に入れたのが誰なのか、まったくわかりません」
43:23 「安心しなさい。恐れることはない。あなたたちの神、あなたたちの父の神が、あなたたちの袋に宝物を入れてくれたのだ。あなたたちのお金は、わたしがちゃんと受け取っている。」そう言って、彼はシメオンを連れて彼らのところに出てきた。
43:24 こうしてその人は、彼らをヨセフの家へ案内した。そして水を出し、彼らは足を洗った。ろばにも餌をやった。
43:25 彼らは、その家で食事をすることになったと聞いていた。それで、贈り物を用意して、昼にヨセフが来るのを待った。
43:26 ヨセフが家に帰ってくると、兄弟たちは手に持ってきた贈り物を家の中でヨセフに差し出し、地面にひれ伏して彼を拝んだ。
43:27 ヨセフは彼らの様子をたずねて言った。「あなたたちのお父さん、前に話していたあの年老いた人は元気ですか。まだ生きておられますか。」
43:28 彼らは答えた。「あなたのしもべであるわたしたちの父は元気で、まだ生きています。」そして頭を下げ、ひれ伏した。
43:29 ヨセフは目を上げて、同じ母から生まれた弟ベニヤミンを見て言った。「これが、前に話していた末の弟か。」そして言った。「わが子よ、神があなたを恵んでくださるように。」
43:30 ヨセフは弟がいとおしくてたまらなくなり、胸がいっぱいになった。込み上げるものをこらえきれず、急いでその場を離れて自分の部屋に入り、そこで泣いた。
43:31 やがて彼は顔を洗って出てきた。そして気持ちを抑えて、「食事にしよう」と言った。
43:32 ヨセフには一人分、兄弟たちには別に、そして一緒に食事をするエジプト人にもまた別にと、席が分けられた。エジプト人はヘブライ人と一緒に食事をすることができなかったからだ。それはエジプト人にとって、してはならないことだったのだ。
43:33 ヨセフの前には、長男が長男らしく、末の弟が末っ子らしく、年の順にすわらされた。それを見て、兄弟たちは互いに顔を見合わせて驚いた。
43:34 またヨセフは、自分の前から料理を取り分けて彼らに配った。でも、ベニヤミンの分はほかのだれの分よりも五倍も多かった。こうして彼らは飲み、ヨセフといっしょに楽しく過ごした。
44:1 ヨセフは家の管理をまかせている使用人にこう命じた。「この人たちの袋に、運べるだけたくさんの食料を詰めてやりなさい。そして、それぞれの銀を袋の口に入れておきなさい。
44:2 またわたしの杯、あの銀の杯を、いちばん年下の弟の袋の口に、穀物の代金と一緒に入れておきなさい。」家の管理人は、ヨセフが言ったとおりにした。
44:3 朝が明けると、その人たちはろばと一緒に送り出された。
44:4 町を出て、まだそれほど遠くまで行かないうちに、ヨセフは家の管理をまかせている使用人に言った。「立って、あの人たちを追いかけなさい。追いついたら、こう言うんだ。『なぜ親切にしてもらったのに、それを裏切るようなことをするのか。
44:5 これは、わたしの主人が飲むときに使い、占いにもいつも使っている大切なものではないか。あなたたちのしたことは、ひどいことだ。』」
44:6 家づかさは彼らに追いつき、この言葉をそのまま彼らに伝えた。
44:7 「あなたたちは、なぜご主人はそんなことをおっしゃるのですか。わたしたちは決してそんなことはいたしません。
44:8 袋の口の中に見つけたあのお金でさえ、わたしたちはカナンの地からあなたのところに持ち帰ったのです。それなのに、どうしてご主人の家から銀や金を盗んだりするでしょうか。
44:9 誰のところで見つかっても、その者は死にます。そしてわたしたちも、ご主人様の奴隷になります」
44:10 「では、あなたたちの言葉どおりにしよう。杯が見つかった者は、わたしの奴隷になる。ほかの者は無罪だ。」
44:11 彼らは急いで、めいめい自分の袋を地面に降ろし、一人ひとりその袋を開けた。
44:12 家づかさは年上から順に調べていき、いちばん年下で終わった。すると、あの杯がベニヤミンの袋から出てきた。
44:13 そこで彼らは服を引き裂いた。そしてそれぞれ荷物をろばに積み直し、町へ引き返した。
44:14 ユダは兄弟たちといっしょにヨセフの家に着いた。ヨセフはまだそこにいた。彼らはヨセフの前で地面にひれ伏した。
44:15 ヨセフは彼らに言った。「これはいったい何ということをしてくれたんだ。わたしのような者は、占いで何でも言い当てられると、知らなかったのか。」
44:16 ユダは言った。「わたしたちは、ご主人様に何と言えばいいのでしょう。どう説明すればいいのでしょう。どうやって身の潔白を示せばいいのでしょう。神が、わたしたちの罪を明らかにされたのです。さあ、わたしたちはご主人様の奴隷になります。わたしたちも、杯が見つかった者も、みんな一緒に。」
44:17 ヨセフは言った。「そんなことをするつもりはまったくない。杯が見つかったその人だけが、わたしの奴隷になる。ほかの者は安心して父のもとへ帰りなさい。」
44:18 ユダは彼に近づいて言った。「わが主よ、どうか、しもべにひとことだけあなたの前で言わせてください。しもべに対して怒らないでください。あなたはファラオと同じような、雲の上の方なのですから。
44:19 主が私たちに、『お前たちには父親か兄弟がいるのか』とお尋ねになりました。
44:20 わたしたちは、ご主人様にこう答えました。「わたしたちには年老いた父がいます。そして父が年をとってからできた末の弟がいます。その子の兄は死んでしまい、同じ母の子で残っているのはこの子だけなので、父はこの子をとても大切にしています。」
44:21 その時、あなたはしもべたちにこう言った。『その子をわたしのところへ連れてきなさい。わたしがこの目で見てやろう』
44:22 わたしたちはご主人さまに言いました。「あの子は父を離れることができません。もし離れたら、父は死んでしまいます。」
44:23 『でも、あなたはわたしたちにこう言われました。「末の弟を連れて来なければ、二度とわたしに会うことはできない」』
44:24 それで、あなたのしもべである父のところに戻って、ご主人であるあなたの言葉を伝えました。
44:25 父はこう言ったんだ。『もう一度行って、少しでいいから食べ物を買ってきてくれ』とね。
44:26 「無理です」とわたしたちは答えた。「末の弟が一緒なら行けます。でも末の弟が一緒でなければ、あの人に会うことはできません」
44:27 わたしたちの父、あなたのしもべはこう言いました。『おまえたちも知っているとおり、妻はわたしに二人の息子を産んでくれた。
44:28 兄弟のひとりは出かけたきり、わたしのところに戻らなかった。きっと獣に引き裂かれてしまったのだと思った。今もまだ、その子の姿を見ていない。
44:29 もしこの子まで、わたしのところから連れて行って、この子が災いにでもあえば、おまえたちは、白髪頭のわたしを、悲しみのうちに死の世界へ下らせることになる。』
44:30 わたしがあなたのしもべである父のところに帰ったとき、あの子が一緒にいなかったら、どうなるでしょう。父の魂は、あの子の魂としっかり結びついているのです。
44:31 この子供が一緒にいないと分かったとき、父は死んでしまいます。そうなれば、わたしたち僕は、白髪頭の年老いた父を、悲しみのうちに陰府へ下らせることになるのです。
44:32 わたしは父にこの子の身を引き受けて、「もしこの子をあなたのもとに連れて帰らなかったら、わたしは一生、父に対して罪を負い続けます」と言ったのです。
44:33 わたしのご主人よ、どうかこの子の代わりに、わたしがあなたの奴隷としてここに残らせてください。この子は、兄弟たちと一緒に帰らせてあげてください。
44:34 この子を連れずに、どうしてわたしは父のもとへ帰れるだろう。父が打ちのめされる姿を、わたしは見たくない。
45:1 ヨセフは、そばに仕えている人たちの前でこれ以上自分を抑えることができなくなった。それで、「みんな、ここから出て行ってくれ」と叫んだ。こうして、ヨセフが兄弟たちに自分のことを打ち明けたとき、そばには誰も残っていなかった。
45:2 ヨセフは声をあげて泣いた。その泣き声はエジプトの人たちに聞こえ、ファラオの家にも伝わった。
45:3 ヨセフは兄弟たちに言った。「わたしはヨセフだ。父はまだ生きているのか。」兄弟たちは答えることができなかった。ヨセフを前にして、ひどく動揺していたからだ。
45:4 ヨセフは兄弟たちに言った。「もっとこっちに来てください。」みんなが近づくと、ヨセフは言った。「わたしは、あなたたちがエジプトに売り飛ばした弟のヨセフです。
45:5 今、あなたたちがわたしをここへ売ったことで、悩んだり、自分を責めたりしないでほしい。神が命を救うために、あなたたちより先にわたしを送ってくださったのだから。
45:6 この二年の間、この地に飢きんが続いてきた。でも、これからまだ五年、耕すことも刈り入れることもできない。
45:7 神はわたしをあなたがたより先に送り出した。あなたがたの子孫をこの地に残し、大いなる救いによってあなたがたの命を助けて生き延びさせるためだ。
45:8 それゆえ、わたしをここに送ったのはあなたたちではなく、神なのだ。神はわたしをファラオの父とし、その家全体を治める者とし、エジプト全土を治める者としてくださった。
45:9 急いで父のところへ上って行き、こう伝えてほしい。『あなたの息子ヨセフが、こう言っています。神はわたしをエジプト全土の主にしてくださいました。だから、ためらわずにわたしのところへ下ってきてください。
45:10 あなたはゴセンの地に住むことになる。あなたも、あなたの子どもたちも孫たちも、羊や牛の群れも、あなたの持ち物すべてが、わたしのすぐ近くにいられるんだ。
45:11 ききんはこの先まだ五年も続く。だから、あなたも家族も、あなたのものすべてが困らないように、わたしがそこであなたを養おう』。
45:12 あなたがたも、弟のベニヤミンも、自分の目で見ているとおり、あなたがたに話しているのは、このわたし自身だ。
45:13 エジプトでのわたしの栄光のすべてと、あなたたちが見たすべてのことを父に伝えてほしい。そして急いで、父をここへ連れて来てほしい。」
45:14 ヨセフは弟ベニヤミンの首を抱いて泣いた。ベニヤミンも兄の首を抱いて泣いた。
45:15 ヨセフはすべての兄弟たちにキスをして、彼らを抱きしめて泣いた。それから、兄弟たちはヨセフと話し始めた。
45:16 ファラオの家に「ヨセフの兄弟たちが来た」という知らせが伝わった。ファラオも家来たちも、それを喜んだ。
45:17 ファラオはヨセフに言った。「兄弟たちにこう伝えなさい。『こうするといい。家畜に荷物を積んで、カナンの地へ帰りなさい。
45:18 父さんと家族を連れて、わたしのところに来なさい。エジプトで一番良い土地をあなたたちにあげよう。この国の最高の実りを食べさせてあげる』。
45:19 あなたがたはこう命じられている。『次のようにしなさい。エジプトの地から車を持って行き、幼い子どもたちや妻たちを乗せなさい。そして父を連れて来なさい。
45:20 家財に心を引かれることはない。エジプト中の良い物が、あなたたちのものになるのだから』」
45:21 イスラエルの子らはそのとおりにした。ヨセフはファラオの命令どおりに彼らへ車を渡し、道中の食料も持たせた。
45:22 それぞれに晴れ着を与えた。でもベニヤミンには、銀貨三百枚と晴れ着五着を与えた。
45:23 父にも、ヤコブはこういう物を送った。エジプトの良い産物を積んだろば十頭。それに、父の道中のための穀物とパンと食料を積んだ雌ろば十頭。
45:24 途中でいさかいを起こさないように。
45:25 彼らはエジプトを出発し、カナンの地にやってきた。そして父ヤコブのもとに着いた。
45:26 ヨセフはまだ生きていて、エジプト全土を治めているのです」と伝えた。でもヤコブは呆然とした。彼らの言うことが信じられなかったからだ。
45:27 ヤコブに、ヨセフが話したことをすべて残らず伝えた。そして、ヨセフが自分を迎えに送ってきた車を見て、父ヤコブは元気を取り戻した。
45:28 わたしたちのイスラエルは言った。「もう十分だ。息子のヨセフがまだ生きている。わたしは死ぬ前に、行って会おう。」
46:1 イスラエルはすべての持ち物を携えて旅立ち、ベエルシバに着くと、父イサクの神にいけにえをささげた。
46:2 この時、神は夜の幻の中でイスラエルに語りかけた。「ヤコブよ、ヤコブよ。」ヤコブは答えた。「はい、ここにいます。」
46:3 神は言われた。「わたしは神、あなたの父の神である。エジプトへ下るのを恐れなくていい。わたしはあそこで、あなたを大きな国民にする。
46:4 わたしはあなたと一緒にエジプトへ下って行く。そして、必ずあなたをそこから連れ戻す。あなたが息を引き取るとき、ヨセフがその手であなたのまぶたを閉じてくれる。」
46:5 ヤコブはベエルシバを出発した。イスラエルの子らは、父ヤコブと、子どもたちと、妻たちを、ファラオがヤコブを運ぶために送った車に乗せた。
46:6 ヤコブとその子孫は皆、家畜とカナンの地で手に入れた財産を携えて、エジプトへやって来た。
46:7 ヤコブはこうして、息子たちや孫の息子たち、娘たちや孫の娘たち、つまり自分の子孫みんなを連れて、エジプトへ下って行った。
46:8 これらは、エジプトへ行ったイスラエルの子らの名前である。ヤコブとその子らのことだ。ヤコブの長男はルベン。
46:9 ルベンの子らはハノク、パル、ヘツロン、カルミ。
46:10 シメオンの子はエムエル、ヤミン、オハデ、ヤキン、ゾハル、それとカナン人の女が産んだ子シャウル。
46:11 レビの子らはゲルション、コハト、メラリ。
46:12 ユダの子はエル、オナン、シラ、ペレツ、ゼラ。エルとオナンはカナンの地で死んだ。ペレツの子はヘツロンとハムル。
46:13 イッサカルの子らはトラ、プワ、ヨブ、シムロン。
46:14 ゼブルンの子はセレド、エロン、ヤフレエル。
46:15 これらはレアがパダン・アラムでヤコブに産んだ子たちで、娘のディナもいる。息子と娘は合わせて三十三人だった。
46:16 ガドの子はゼフォン、ハギ、シュニ、エツボン、エリ、アロディ、アルエリ。
46:17 アシェルの子どもたちは、イムナ、イシュワ、イシュビ、ベリア。それに妹のセラ。ベリアの子どもたちは、ヘベルとマルキエル。
46:18 これらはラバンが娘レアに与えたジルパの子である。彼女がヤコブに産んだのは、この十六人だった。
46:19 ヤコブの妻ラケルの子どもは、ヨセフとベニヤミンである。
46:20 エジプトで、ヨセフにマナセとエフライムが生まれた。この子たちは、オンの祭司ポティ・フェラの娘アセナテがヨセフに産んだのだった。
46:21 ベニヤミンの子はベラ、ベケル、アシュベル、ゲラ、ナアマン、エヒ、ロシュ、ムピム、フピム、アルデ。
46:22 これらはラケルがヤコブに産んだ子どもたちである。全部で十四人。
46:23 ダンの子はフシム。
46:24 ナフタリの子はヤジエル、グニ、エゼル、シレム。
46:25 これらはラバンが娘ラケルに与えたビルハの子である。ビルハがヤコブに産んだのは、この七人だった。
46:26 ヤコブと共にエジプトへ行った者、つまり彼の血を引く者は、ヤコブの子らの妻をのぞいて、全部で六十六の魂だった。
46:27 エジプトでヨセフに生まれた子が二人いた。エジプトへ来たヤコブの家の者は、全部で七十人だった。
46:28 ヤコブは、ゴセンで会えるように、先にユダをヨセフのもとへ送った。こうして彼らはゴセンの地に着いた。
46:29 ヨセフは馬車を用意して、父イスラエルを迎えるためにゴシェンへ上って行った。父に会うと、その首に抱きついて、いつまでも泣き続けた。
46:30 イスラエルはヨセフに言った。「お前がまだ生きていて、その顔をこの目で見ることができた。もう死んでもいい。」
46:31 ヨセフは兄弟たちと父の家族に言った。「わたしはこれからファラオのところへ行って、こう伝えます。『カナンの地にいたわたしの兄弟たちと父の家族が、わたしのところへ来ました。
46:32 この人たちは羊飼いで、家畜を飼って暮らしてきました。羊や牛など、持ち物をぜんぶ連れてきています』。
46:33 ファラオがあなたたちを呼び出して、「おまえたちの仕事は何か」とたずねたら、
46:34 『わたしたちは子どものころから今まで、ずっと家畜を飼って生きてきました。わたしたちも、先祖もそうです』と答えなさい。そうすれば、あなたたちはゴシェンの地に住むことができる。エジプト人は羊飼いをみんな嫌っているからだ。
47:1 ヨセフは行って、ファラオに伝えた。「わたしの父と兄弟たち、その羊や牛、それにすべての持ち物がカナンの地からやって来て、今はゴシェンの地にいます」と。
47:2 そしてヨセフは、兄弟のうちの五人を連れてきて、ファラオに引き合わせた。
47:3 ファラオは兄弟たちに「あなたたちの仕事は何か」と尋ねた。彼らはファラオに答えた。「わたしたち僕は羊飼いです。わたしたちも、わたしたちの先祖もそうでした」
47:4 ファラオにこう言った。「わたしたちは、この国にしばらく住まわせてもらおうと思って来ました。カナンの地はききんがひどく、しもべたちの羊の群れを飼う牧草がないのです。どうか、しもべたちをゴシェンの地に住まわせてください。」
47:5 パロはヨセフに言った。「あなたのお父さんと兄弟たちが、あなたのところにやって来た。
47:6 エジプトの地はあなたのものだ。その中でも一番良い土地に、あなたの父さんと兄弟たちを住まわせなさい。ゴセンの地に住まわせるといい。もし彼らの中に腕のいい者がいるとわかったら、その者にわたしの家畜の世話をまかせなさい。」
47:7 ヨセフは父ヤコブを連れてきて、ファラオの前に立たせた。ヤコブはファラオを祝福した。
47:8 ファラオはヤコブに言った。「あなたは何歳になるのか」
47:9 ヤコブはファラオに答えた。「わたしが旅を続けてきた年月は、百三十年になります。これまでの人生の日々は短く、つらいものでした。旅を続けた先祖たちが生きた年月には、とても及びません。」
47:10 ヤコブはファラオを祝福し、ファラオの前を去った。
47:11 ヨセフは父と兄弟たちの住む場所を用意した。そしてファラオが命じたとおり、エジプトで一番良い土地であるラメセスの地を、彼らのものとして与えた。
47:12 ヨセフは父と兄弟たち、そして父の家族全員に、家族の人数に応じて食べ物を届けて養った。
47:13 さて、ききんは非常に激しく、全地に食べ物がなかった。エジプトの地もカナンの地も、ききんで衰えていった。
47:14 ヨセフは、エジプトとカナンの人々が穀物を買った代金として、両方の地にあった銀をすべて集めた。そして、その銀をファラオの宮殿に納めた。
47:15 エジプトの地とカナンの地でお金が尽きた。すると、エジプトの人たちはみなヨセフのところに来て言った。「食べ物をください。お金がなくなったからといって、どうしてあなたの目の前で死ななければならないのですか。」
47:16 ヨセフは言った。「あなたたちの家畜を差し出しなさい。お金が尽きたのなら、その家畜と引き替えに食べ物をわたそう。」
47:17 彼らは家畜をヨセフのところへ引いてきた。ヨセフは、馬、羊の群れ、牛の群れ、ろばと引き替えに、彼らに食物を渡した。こうしてその年は、すべての家畜と引き替えの食物で、彼らを養った。
47:18 やがてその年も終わり、次の年になると、人々はまたヨセフのところにやって来て言った。「ご主人さま、隠しごとはしません。わたしたちのお金はもう尽きてしまいました。家畜の群れもすっかりご主人さまのものになりました。もうご主人さまの前には、わたしたちの体と土地のほかに、何も残っていません。
47:19 わたしたちが田畑もろとも、あなたの目の前で死んでいく理由がどこにありますか。わたしたちも土地も、食べ物と引き換えに買ってください。わたしたちは土地とともにファラオの奴隷になります。だから種をください。そうすればわたしたちは生きられます。死なずにすみ、土地も荒れ果てずにすみます。」
47:20 ヨセフはこうして、エジプトの土地をすべてファラオのために買い取った。エジプトの人々が、それぞれ自分の畑を売ったからだ。飢饉が厳しくのしかかっていたのだ。こうして土地はファラオのものとなった。
47:21 ヨセフは、エジプトの国境のこの端からあの端まで、民をあちこちの町へ移した。
47:22 ただし、祭司の土地は買い取らなかった。祭司にはファラオからの支給があり、ファラオが与えるその分で暮らしていたからだ。だから彼らは土地を売らなかった。
47:23 ヨセフは民に言った。「わたしは今日、あなたたちとその土地を買い取って、ファラオのものとした。さあ、種をあげるから、畑にまきなさい。
47:24 収穫の時には、その五分の一をファラオに納めなさい。残りの五分の四はあなたたちのものだ。畑にまく種として、また、あなたたちや家族、子どもたちの食糧として使えばいい。」
47:25 彼らは言った。「あなたはわたしたちの命を救ってくださいました。ご主人さま、これからもよくしてください。わたしたちはファラオの奴隷になります」
47:26 ヨセフはこれを、エジプトの土地についての決まりとした。収穫の五分の一をファラオに納めるのだ。この決まりは今も続いている。ただ、祭司たちの土地だけはファラオのものにならなかった。
47:27 イスラエルはエジプトの国、ゴシェンの地に住んだ。そこで彼らは土地を持ち、子を生んで、大いに数を増やしていった。
47:28 ヤコブはエジプトの地で十七年生きた。こうしてヤコブの一生は百四十七年になった。
47:29 イスラエルは死ぬ時が近づいた。そこで、息子のヨセフを呼んでこう言った。「もしわたしのことを思ってくれるなら、どうかわたしの腿の下に手を入れて誓ってほしい。慈しみと真実をもって、わたしに接してくれ。どうかわたしをエジプトには葬らないでくれ。
47:30 わたしが先祖たちのもとで眠りについたら、わたしをエジプトから運び出して、先祖たちの墓に葬ってほしい。」すると、ヨセフは言った。「あなたの言うとおりにします。」
47:31 ヤコブがまた、「わたしに誓ってくれ」と言った。それでヨセフは誓った。イスラエルはベッドの枕もとで頭を下げて拝んだ。
48:1 これらの出来事のあと、ヨセフに「あなたの父さんが病気です」と知らせる者があった。そこでヨセフは、ふたりの息子マナセとエフライムを連れて出かけた。
48:2 ヤコブに、「息子のヨセフさんが会いに来ましたよ」と伝える者がいた。すると、イスラエルは力をふりしぼって、寝床の上に起き上がって座った。
48:3 ヤコブはヨセフに言った。「全能の神が、カナンの地のルズでわたしに現れ、わたしを祝福して、こう言われた。
48:4 わたしにこう言われた。『わたしはおまえに多くの子を与え、その数を増やし、おまえを多くの民の集まりにする。そして、この地をおまえの後に続く子孫に与えて、永遠に受け継がせる。』
48:5 エジプトにいるあなたのところにわたしが来る前、エジプトの地であなたに生まれた二人の息子は、今はわたしの子だ。エフライムとマナセは、ルベンやシメオンと同じように、わたしの子とする。
48:6 彼らの後にあなたに生まれた子どもたちは、あなたのものとなる。だが、その相続地については、兄弟の名のもとに数えられることになる。
48:7 わたしがパダンから帰る途中、ラケルはカナンの地で死んでしまった。エフラタまではまだ道のりが残っていた。わたしはそこ、エフラタ、つまりベツレヘムへ向かう道のかたわらに彼女を葬った。」
48:8 ヤコブはヨセフの息子たちを見て言った。「この子たちはだれだい」
48:9 ヨセフは父に言った。「神がここでわたしにくださった息子たちです。」すると父は言った。「その子たちをわたしのそばに連れてきてくれ。祝福したいのだ。」
48:10 イスラエルの目は年をとってかすんでしまい、よく見えなくなっていた。だからヨセフは息子たちを父のそばに近づけた。すると父は二人にキスをして、抱きしめた。
48:11 イスラエルはヨセフに言った。「おまえの顔をもう一度見られるとは思っていなかった。それなのに神は、おまえの子どもたちまでわたしに見せてくださった。」
48:12 ヨセフは子どもたちをヤコブのひざの間から立たせ、地に伏して深く礼をした。
48:13 ヨセフはふたりを連れて、エフライムを右手に置いてイスラエルの左手の側に、マナセを左手に置いてイスラエルの右手の側に立たせ、ふたりを彼のそばに近づけた。
48:14 すると、イスラエルは右手を伸ばして、弟であるエフライムの頭に置いた。左手はマナセの頭に置いた。マナセが長男だったのに、わざと手をこう交差させたのだ。
48:15 そしてヨセフを祝福して言った。「わたしの先祖アブラハムとイサクが従って歩んだ神、生まれてから今日まで、わたしをずっと導き養ってくださった神、
48:16 すべての災いからわたしを救い出してくれた天使が、この子たちを祝福してくれますように。わたしの名と、先祖アブラハムとイサクの名が、この子たちに受け継がれますように。そして、この子たちが地の上で大いにふえ広がりますように。」
48:17 ヨセフは、父が右手をエフライムの頭に置いているのを見て、それを不満に思った。それで父の手を取り、エフライムの頭からマナセの頭へ移そうとした。
48:18 ヨセフは父に言った。「お父さん、そうじゃないよ。こっちが長男なんだ。右手はこの子の頭に置いて。」
48:19 父は断って言った。「分かっているよ、息子よ。わたしには分かっている。この子も一つの民となり、大きな者になる。でも、弟のほうがこの子より大きくなる。その子孫は多くの国民になるのだ。」
48:20 神はこの日、ふたりを祝福してこう言った。「イスラエルの人々は、祝福するときにあなたたちの名前を口にするだろう。『神が、あなたをエフライムやマナセのようにしてくださるように』とね。」こうして彼は、エフライムをマナセより先に置いた。
48:21 わたしはやがて死ぬ。でも神があなたたちと共にいて、あなたたちを先祖の地へ連れ戻してくださる。
48:22 わたしはさらに、あなたの兄弟たちより多く、一つの分をあなたに与える。これはわたしが剣と弓でアモリ人の手から奪い取ったものだ。
49:1 ヤコブは息子たちを呼んで言った。「集まりなさい。これから、この先の時代にあなたたちに起こることを話しておこう。
49:2 ヤコブの子らよ、集まって聞け。父イスラエルの言葉に耳を傾けよ。
49:3 ルベンよ、あなたはわたしの長男。わたしの力そのもの、わたしの精力の最初の実。誇り高く、力にすぐれた者。
49:4 沸き立つ水のように不安定なあなたは、もう一番上には立てない。あなたは父の寝床に上がり、それを汚したのだから。あなたはわたしの寝床に上がってしまった。
49:5 シメオンとレビは兄弟だ。二人の剣は暴力の道具。
49:6 わたしの魂よ、彼らの相談に加わってはならない。わたしの心よ、彼らの集まりに連なってはならない。彼らは怒りにまかせて人を殺し、気の向くままに雄牛の足の筋を切ったのだから。
49:7 のろわれよ、彼らの怒り。それは激しかった。のろわれよ、彼らの憤り。それは残酷だった。わたしは彼らをヤコブの中に分け、イスラエルの中に散らそう。
49:8 ユダよ、あなたは兄弟たちからほめたたえられる。あなたの手は敵の首をつかみ、父の子らはあなたの前にひざまずく。
49:9 ユダは、ししの子。わが子よ、あなたは獲物を仕留めて帰ってくる。ししのように身をかがめてうずくまり、雌じしのように伏せる。だれがこれを起こせるだろう。
49:10 ユダから王の杖が離れることはない。統治する者の杖が、その足の間から離れることはない。本当の王が来て、すべての民が彼に従うその時まで。
49:11 ぶどうの木に子ろばをつなぎ、良いぶどうの木に雌ろばの子をつなぐ。彼は自分の服をぶどう酒で洗い、着物をぶどうの汁で洗う。
49:12 その目はぶどう酒で赤く、その歯は乳で白い。
49:13 ゼブルンは海べに住む。船が行き交う港となり、その境はシドンにまで広がる。
49:14 イッサカルは骨太のろば。羊のおりの間に寝そべっている。
49:15 彼は休む場所を見て、それが良いと知った。その土地の心地よさも見た。だから彼は肩を下げて重荷を担ぎ、奴隷のように働かされる者となった。
49:16 ダンは自分の民をさばく。イスラエルのほかの部族のように。
49:17 ダンは道ばたのへび、道の上にひそむ毒へびだ。馬のかかとにかみつき、乗る人を後ろへ落とす。
49:18 主よ、わたしはあなたの救いを待ち望む。
49:19 ガドには略奪者の一団が襲いかかる。でも彼は逆に、その敵のかかとに襲いかかる。
49:20 アセルの産む食物は豊かで、王の食卓にふさわしいごちそうを生み出す。
49:21 ナフタリは放たれた雌鹿。美しい子鹿を産む。
49:22 ヨセフは実を結ぶ若木。泉のほとりに立つ、実を結ぶ若木。その枝は石垣を越えて伸びていく。
49:23 射る者たちは彼を激しく攻め、矢を射かけ、敵意をむき出しにした。
49:24 しかし、彼の弓は強さを保ち、彼の腕はしなやかに動いた。ヤコブの力強い神の手によって、イスラエルの岩なる羊飼いによって。
49:25 あなたを助けるあなたの父の神によって、そしてあなたを祝福する全能の神によって、その祝福があなたに注がれる。上なる天からの祝福、下に横たわる淵の祝福、乳房と胎の祝福が。
49:26 父の受けた祝福は、遠い昔からある山々の恵みにまさり、いつまでも変わらない丘の恵みにもまさっている。これらの祝福が、ヨセフの頭の上に、兄弟たちの中から選び分けられた者の頭の頂に、注がれるように。
49:27 ベニヤミンは獲物を引き裂くおおかみ。朝には獲物を食らい、夕方には奪い取ったものを分ける。」
49:28 すべてこれらはイスラエルの十二部族である。これは、父ヤコブが彼らに語った言葉だ。ヤコブは彼らを祝福した。それぞれにふさわしい祝福を与えたのだ。
49:29 彼はまた彼らに命じて言った。「わたしはもうすぐ死んで、自分の先祖たちのもとに集められる。ヘテ人エフロンの畑にあるあの洞穴に、わたしを先祖たちといっしょに葬ってほしい。
49:30 そのほら穴はカナンの地のマムレの東にあるマクペラの畑の中にある。アブラハムがこの畑を、墓地として使う土地にするために、ヘテ人エフロンから買い取ったものだ。
49:31 そこにアブラハムとその妻サラが葬られ、イサクとその妻リベカもそこに葬られた。そしてわたしも、そこにレアを葬った。
49:32 あの畑と、その中にあるほら穴は、ヘテの人々から買ったものだ。」
49:33 ヤコブは息子たちへの言い残しを終えると、両足を寝台の上に引き上げ、息を引き取って、自分の先祖のもとに迎え入れられた。
50:1 ヨセフは父の顔に伏して泣き、口づけした。
50:2 ヨセフは、自分の家来である医者たちに、父の遺体に薬を塗って防腐処理をするよう命じた。医者たちは、イスラエルの遺体にその処理をした。
50:3 四十日かかった。防腐処理にはそれだけの日数がかかるからだ。エジプトの人々は七十日のあいだ、彼のために泣いた。
50:4 彼のために泣く日々が過ぎると、ヨセフはファラオの家の者たちに言った。「もしわたしがあなたたちに気に入られているなら、どうかファラオに伝えてほしい。
50:5 「わたしの父はわたしにこう誓わせました。『わたしはもうすぐ死ぬ。カナンの地に、自分で掘っておいた墓がある。そこにわたしを葬ってほしい』。ですから、どうか行かせてください。父を葬ったら、また戻ってきます」
50:6 ファラオは言った。「あなたのお父さんがあなたに誓わせたとおり、上って行って葬りなさい。」
50:7 ヨセフは父を葬るために出発した。パロの家来たちみんなが彼と一緒に行った。パロの宮廷の長老たちも、エジプト全土の長老たちもみな一緒だった。
50:8 ヨセフの一族、その兄弟たち、そして父の一族もいっしょだった。ただ、子どもたちと羊や牛の群れだけはゴシェンの地に残していった。
50:9 戦車も騎兵も彼と一緒に上って行き、その行列はとても盛大なものになった。
50:10 彼らはヨルダン川の向こうにあるアタデの脱穀場に着いた。そこで彼らは大声で激しく泣き、深く悲しんだ。ヨセフは父のために七日間、喪に服した。
50:11 その地に住むカナン人たちは、アタデの脱穀場での嘆き悲しむ様子を見て、「これはエジプト人の激しい嘆きだ」と言った。それで、その場所はアベル・ミツライムと呼ばれるようになった。ヨルダン川の向こう側にある場所だ。
50:12 ヤコブの子らは、父に命じられたとおりにした。
50:13 その子らはヤコブをカナンの地へ運んで行き、マクペラの畑にあるほら穴に葬った。このほら穴は、マムレの前にある畑で、アブラハムが墓地にするために、ヘト人エフロンから畑ごと買い取ったものである。
50:14 ヨセフは父を葬った後、兄弟たちや、いっしょに父を葬るために上って来た人たちみんなと、エジプトに戻った。
50:15 ヨセフの兄弟たちは、父が死んだのを知って言った。「ヨセフはもしかしたら、まだわたしたちを恨んでいるかもしれない。そして、わたしたちが彼にした悪いことすべてに、きっと仕返しをするだろう」
50:16 そこで彼らはヨセフに、こう言づけを送った。「あなたのお父さんは、亡くなる前にこう言い残していました。
50:17 兄弟たちに、こう伝えてくれ。『どうか、あなたに悪いことをした兄弟たちの過ちと罪を、赦してやってほしい』と。だから今、あなたの父が信じてきた神に仕える者たちの過ちを、どうか赦してください。」ヨセフは、この言葉を聞いて泣いた。
50:18 兄弟たちもやって来て、ヨセフの前にひれ伏して言った。「このとおり、わたしたちはあなたの奴隷です」
50:19 ヨセフは彼らに言った。「怖がらなくていい。わたしが神の代わりになれるだろうか。
50:20 あなたがたはわたしに悪をたくらんだ。でも神は、それを良いことに変えてくださった。今日のように、多くの人の命を救うためだった。
50:21 それゆえ、恐れることはない。わたしがあなたたちと、あなたたちの子供たちを養おう。」こうしてヨセフは兄弟たちを慰め、優しく語りかけた。
50:22 ヨセフはエジプトで、父の一族とともに暮らした。そして百十歳まで生きた。
50:23 ヨセフはエフライムの三代の孫を見た。マナセの子マキルの子どもたちも、ヨセフのひざの上に生まれた。
50:24 ヨセフは兄弟たちに言った。「わたしはもうすぐ死ぬ。でも神は必ずあなたたちを心にかけて、この国から連れ出し、アブラハム、イサク、ヤコブに誓われた地へと導いてくださる。」
50:25 ヨセフはイスラエルの子らに誓わせて言った。「神はきっとあなたたちを心にかけてくださる。そのとき、わたしの骨をここから運び出してほしい。」
50:26 ヨセフは百十歳で死んだ。人々はその亡骸に防腐処理をほどこし、エジプトで棺に納めた。
出エジプト記
1:1 これは、ヤコブと一緒にエジプトへ来たイスラエルの子らの名前である。それぞれが自分の家族を連れて来た。
1:2 ルベン、シメオン、レビ、ユダ、
1:3 イッサカル、ゼブルン、ベニヤミン、
1:4 ダン、ナフタリ、ガド、アシェル。
1:5 ヤコブから生まれた者は、全部で七十人だった。ヨセフは、すでにエジプトにいた。
1:6 やがて、ヨセフも、その兄弟たちも、その時代の人々もみな死んだ。
1:7 でも、イスラエルの子孫は子どもをたくさん産み、どんどん増えていった。ますます強くなり、その国に満ちあふれた。
1:8 そのころ、ヨセフのことを知らない新しい王が、エジプトに立った。
1:9 王は自分の民に言った。「見ろ。イスラエルの民は、わたしたちよりも数が多く、強くなっている。
1:10 だから、うまく手を打とう。これ以上増えないようにするんだ。そうしないと、戦争が起きたとき、彼らが敵側について、わたしたちと戦い、この国から出て行ってしまうかもしれない。」
1:11 そこでエジプト人は、彼らを労役で苦しめるために、労働を監督する者たちを置いた。イスラエルの人々はファラオのために、物資をたくわえる町ピトムとラメセスを建てた。
1:12 ところが、苦しめれば苦しめるほど、彼らはますます増え、広がっていった。それでエジプト人は、イスラエルの人々を恐れるようになった。
1:13 エジプト人はイスラエルの人々を、容赦なくこき使った。
1:14 粘土をこね、れんがを作らせ、畑ではあらゆる仕事をさせて、つらい労働で彼らの生活を苦しめた。どんな仕事も、容赦なく無理やりやらせた。
1:15 エジプトの王は、ヘブライ人の出産を助ける助産婦たちに命じた。一人はシフラ、もう一人はプアという名前だった。
1:16 王は言った。「ヘブライ人の女たちのお産を助けるとき、産み台の上をよく見なさい。男の子だったら殺し、女の子だったら生かしておくように。」
1:17 しかし助産婦たちは神を畏れていたので、エジプトの王に言われたとおりにはせず、男の子を生かしておいた。
1:18 そこでエジプトの王は助産婦たちを呼びつけて言った。「なぜこんなことをしたのか。なぜ男の子を生かしておいたのだ。」
1:19 助産婦たちはファラオに答えた。「ヘブライ人の女たちは、エジプト人の女たちとは違うのです。彼女たちはとても丈夫で、助産婦が着く前に産んでしまうのです。」
1:20 神はこの助産婦たちに良くしてくださった。民はさらに増え、とても強くなっていった。
1:21 助産婦たちが神を畏れたので、神は彼女たちに家庭を与えられた。
1:22 そこでファラオは、すべての民に命じた。「生まれた男の子は、一人残らずナイル川に投げ込め。女の子はみな生かしておけ。」
2:1 あるレビ族の男が、同じレビ族の娘と結婚した。
2:2 その女は身ごもって、男の子を産んだ。かわいらしい元気な子だと見て、母親は三か月のあいだ隠していた。
2:3 でも、もうこれ以上は隠しきれなくなった。そこで母親はパピルスのかごを用意し、アスファルトとピッチを塗って水がしみ込まないようにした。その中に赤ちゃんを寝かせ、ナイル川の岸辺の葦の茂みにそっと置いた。
2:4 赤ちゃんの姉は、どうなるのか見届けようと、少し離れたところに立っていた。
2:5 そこへ、ファラオの娘が水浴びをしにナイル川へ下りてきた。侍女たちは川岸を歩いていた。すると彼女は、葦の茂みの中にかごがあるのに気づき、召し使いをやって取ってこさせた。
2:6 開けてみると、そこには赤ちゃんがいた。男の子が泣いていたのだ。彼女はかわいそうに思い、「これはヘブライ人の子どもの一人ね」と言った。
2:7 すると赤ちゃんの姉がファラオの娘に言った。「ヘブライ人の女の中から乳母を呼んできて、この子にお乳をあげさせましょうか。」
2:8 ファラオの娘が「そうしてちょうだい」と答えると、その少女は行って、赤ちゃんの母親を呼んできた。
2:9 ファラオの娘は母親に言った。「この子を連れていって、わたしの代わりに乳を飲ませて育ててね。ちゃんとお礼は払うから。」母親は赤ちゃんを引き取り、乳を飲ませて育てた。
2:10 その子が大きくなると、母親は彼をファラオの娘のところへ連れていった。こうして彼はファラオの娘の息子になった。彼女はその子をモーセと名づけた。「水の中から引き上げた子だから」と言って。
2:11 それから月日がたち、モーセは大人になった。ある日、彼は同胞のところへ出ていき、彼らが重労働で苦しんでいるのを見た。そのとき、一人のエジプト人が、同胞であるヘブライ人の一人を打ちたたいているのを目にした。
2:12 モーセはあたりを見回し、だれもいないのを確かめると、そのエジプト人を打ち殺し、死体を砂の中に埋めて隠した。
2:13 翌日、モーセがまた出ていくと、二人のヘブライ人が殴り合っていた。モーセは悪いほうの男に言った。「どうして仲間を殴るんだ」
2:14 すると男は言い返した。「だれがあんたをおれたちの支配者や裁判官にしたんだ。エジプト人を殺したように、おれも殺すつもりか」モーセは怖くなり、思った。「あのことは、やっぱり知られてしまったんだ」
2:15 ファラオもこのことを聞きつけ、モーセを殺そうとした。それでモーセはファラオのもとから逃げ、ミディアンの地に住みついた。彼はある井戸のそばに腰を下ろした。
2:16 ミディアンの祭司には、七人の娘がいた。娘たちはやってきて水をくみ、水おけを満たして、父の羊の群れに飲ませようとしていた。
2:17 そこへ羊飼いたちが来て、娘たちを追い払おうとした。すると、モーセは立ち上がって娘たちを助け、彼女たちの羊の群れに水を飲ませた。
2:18 娘たちが父レウエルのところへ帰ると、父は言った。「今日はどうしてこんなに早く帰ってきたんだ」
2:19 娘たちは答えた。「一人のエジプト人が、羊飼いたちの手からわたしたちを助けてくれたの。それに、水までくんで、羊の群れに飲ませてくれたのよ」
2:20 父は娘たちに言った。「その人はどこにいるんだ。どうして置いてきたりしたんだ。呼んできなさい。一緒に食事をしよう」
2:21 モーセはこの人のもとにとどまることにした。レウエルは娘のツィポラをモーセに妻として与えた。
2:22 彼女は男の子を産み、モーセはその子をゲルショムと名づけた。「わたしは外国の地で寄留者となった」と言って。
2:23 それから長い年月がたち、エジプトの王が死んだ。イスラエルの人々は重労働にうめき、助けを求めて叫んだ。その叫びは、労働の苦しみの中から神のもとへと立ちのぼった。
2:24 神は彼らのうめきを聞き、アブラハム、イサク、ヤコブと結んだ契約を思い起こした。
2:25 神はイスラエルの人々をご覧になり、そのことを心に留めた。
3:1 さて、モーセは妻の父であるミディアンの祭司イテロの羊の群れを飼っていた。ある時、彼は群れを荒れ野の奥へと導いて行き、神の山ホレブにたどり着いた。
3:2 すると、主の使いが柴の茂みの中の燃える炎の中から彼に現れた。モーセが見ると、柴は火に包まれて燃えているのに、燃え尽きることがなかった。
3:3 モーセは思った。「近づいて、この不思議な光景を見てみよう。どうして柴は燃え尽きないのだろう」
3:4 主は、モーセが近づいて見ようとするのをご覧になった。すると神は柴の中から彼に呼びかけた。「モーセ、モーセ。」モーセは答えた。「はい、ここにいます」
3:5 神は言った。「これ以上近づいてはいけない。足から履物を脱ぎなさい。あなたが立っているその場所は、聖なる地だからだ」
3:6 そして言った。「わたしは、あなたの父の神、アブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神である。」モーセは神を見るのが怖くて、顔を隠した。
3:7 主は言った。「わたしは、エジプトにいるわたしの民の苦しみをしっかりと見てきた。追い使う者たちのせいで上げる彼らの叫びも聞いた。その痛みを、わたしはよく知っている。
3:8 だから、わたしは彼らをエジプト人の手から救い出すために降りてきた。あの地から連れ出して、広くて良い地、乳と蜜の流れる地へと導くためだ。そこは、カナン人、ヒッタイト人、アモリ人、ペリジ人、ヒビ人、エブス人が住む場所である。
3:9 今、イスラエルの人々の叫びがわたしのもとに届いている。エジプト人が彼らをどれほど苦しめているか、わたしはこの目で見た。
3:10 さあ、行きなさい。わたしはあなたをファラオのもとへ送る。わたしの民イスラエルの人々を、エジプトから連れ出しなさい」
3:11 モーセは神に言った。「わたしのような者が、いったい何者でしょう。どうしてファラオのところへ行き、イスラエルの人々をエジプトから連れ出せるでしょうか」
3:12 神は言った。「わたしがあなたと共にいる。これが、わたしがあなたを送ったというしるしだ。あなたが民をエジプトから連れ出したとき、あなたたちはこの山で神に仕えることになる」
3:13 モーセは神に言った。「わたしがイスラエルの人々のところへ行って、『あなたたちの先祖の神が、わたしをあなたたちのもとへ送った』と言えば、きっとこう聞かれます。『その名は何というのか』と。そのとき、わたしは何と答えればいいのでしょうか」
3:14 神はモーセに言った。「わたしは『ある』という者だ。」そして言った。「イスラエルの人々にはこう言いなさい。『わたしはある』という方が、わたしをあなたたちのもとへ送った、と」
3:15 神はさらにモーセに言った。「イスラエルの人々にこう言いなさい。『あなたたちの先祖の神、アブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神である主が、わたしをあなたたちのもとへ送った』と。これが、いつまでも変わらないわたしの名。代々にわたって、わたしはこの名で呼ばれる。
3:16 さあ、行って、イスラエルの長老たちを集めて、こう言いなさい。『あなたたちの先祖の神、アブラハムとイサクとヤコブの神である主が、わたしに現れてこう言われた。わたしはあなたたちのことをしっかりと心にかけていて、エジプトであなたたちがどんな目にあっているかを見ていた。
3:17 だからわたしは決めた。あなたたちをエジプトでの苦しみから引き上げ、カナン人、ヘト人、アモリ人、ペリジ人、ヒビ人、エブス人の地へ、乳と蜜の流れる地へ連れて行く』と。
3:18 長老たちはあなたの言うことを聞くだろう。そうしたら、あなたとイスラエルの長老たちはエジプトの王のところへ行って、こう言いなさい。『ヘブライ人の神である主が、わたしたちに出会ってくださいました。どうか、わたしたちを荒れ野へ三日の道のりだけ行かせてください。わたしたちの神、主にいけにえをささげたいのです』と。
3:19 しかしわたしにはわかっている。エジプトの王は、強い力で迫られないかぎり、あなたたちを行かせようとはしない。
3:20 だからわたしは手を伸ばし、エジプトの中でさまざまな不思議なわざを行って、エジプトを打つ。そのあとで、王はあなたたちを行かせるだろう。
3:21 わたしはこの民が、エジプト人に好意を持たれるようにする。だから、あなたたちが出て行くとき、手ぶらで行くことはない。
3:22 女はみな、隣の女や家に住みついている女に、銀の飾りや金の飾り、それに衣服をもらいなさい。そしてそれをあなたたちの息子や娘に身につけさせなさい。こうして、あなたたちはエジプト人から奪い取ることになる」
4:1 モーセは答えた。「でも、みんなはわたしを信じないと思います。話を聞いてくれず、『主はおまえに現れてなんかいない』と言うでしょう」
4:2 すると主はモーセに言った。「おまえが手に持っているのは何だ。」「杖です」と彼は答えた。
4:3 主は言った。「それを地面に投げてみなさい。」モーセが地面に投げると、杖は蛇に変わった。モーセは驚いて逃げた。
4:4 主はモーセに言った。「手を伸ばして、その尾をつかみなさい。」モーセが手を伸ばして蛇をつかむと、それは彼の手の中でまた杖に戻った。
4:5 「これは、彼らの先祖の神、アブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神である主が、おまえに現れたことを、みんなが信じるためだ。」
4:6 さらに主はモーセに言った。「手をふところに入れてみなさい。」モーセが手をふところに入れて取り出すと、なんと手は雪のように白く、重い皮膚の病に冒されていた。
4:7 主は言った。「もう一度、手をふところに入れなさい。」モーセがもう一度手をふところに入れて取り出すと、手は元どおり、ほかの肌と同じに戻っていた。
4:8 「もし彼らがおまえを信じず、最初のしるしに耳を貸さなくても、次のしるしを見れば信じるだろう。
4:9 それでも、この二つのしるしを信じず、おまえの言うことを聞かないなら、ナイル川の水をくんで、かわいた地面に注ぎなさい。川からくんだその水は、地面の上で血に変わる。」
4:10 モーセは主に言った。「主よ、お願いです。わたしは話すのが得意ではありません。昔からそうですし、あなたがこのしもべに語りかけてくださった今も同じです。わたしは口が重く、舌が回らないのです。」
4:11 主はモーセに言った。「人に口を与えたのは誰だ。人を話せなくしたり、耳を聞こえなくしたり、目を見えるようにしたり、見えなくしたりするのは誰だ。この主であるわたしではないか。
4:12 さあ、行きなさい。わたしがおまえの口とともにいて、何を話すべきか教えよう。」
4:13 モーセは言った。「主よ、お願いです。どうか、ほかの誰かを送ってください。」
4:14 すると主はモーセに対して怒りを燃やして言った。「おまえの兄で、レビ人のアロンがいるではないか。あれが話し上手なのはわたしがよく知っている。それに、あれは今おまえを迎えに出てくるところだ。おまえに会えば、心から喜ぶだろう。
4:15 おまえはアロンに話し、その口に言葉を授けなさい。わたしはおまえの口とアロンの口とともにいて、二人が何をすべきか教えよう。
4:16 アロンがおまえに代わって民に話す。アロンはおまえの口の代わりとなり、おまえはアロンにとって神の代わりとなる。
4:17 そして、この杖を手に取りなさい。これでしるしを行うのだ。」
4:18 モーセは、しゅうとのエテロのところへ戻って言った。「どうか行かせてください。エジプトにいる同胞のところへ帰って、まだ生きているかどうか見てきたいのです。」エテロはモーセに言った。「安心して行きなさい。」
4:19 主はミディアンでモーセに言った。「エジプトへ帰りなさい。おまえの命をねらっていた者たちは、みな死んだ。」
4:20 そこでモーセは妻と子どもたちをろばに乗せ、エジプトの地へと帰って行った。モーセは神の杖を手に持っていた。
4:21 主はモーセに言った。「エジプトへ帰ったら、わたしがおまえの手に授けた不思議なわざを、必ずファラオの前で行いなさい。だが、わたしはファラオの心をかたくなにする。ファラオは民を去らせないだろう。
4:22 そのとき、おまえはファラオにこう言いなさい。『主はこう言われる。イスラエルはわたしの子、わたしの長男だ。
4:23 だから、わたしの子を去らせて、わたしに仕えさせよと、おまえに言ったはずだ。それなのに、おまえは去らせるのを拒んだ。だから今、わたしはおまえの子、おまえの長男を殺す。』」
4:24 その旅の途中、宿泊した場所で、主はモーセに会い、彼を殺そうとされた。
4:25 そのとき、妻のツィポラは火打ち石を取り、息子の包皮を切り取った。そしてそれをモーセの足につけて言った。「あなたは、わたしにとって血の花婿です。」
4:26 すると主は彼を放された。ツィポラが「血の花婿」と言ったのは、割礼のことだった。
4:27 主はアロンに言われた。「荒れ野へ行って、モーセを迎えなさい。」アロンは出かけて行き、神の山でモーセに会い、彼に口づけした。
4:28 モーセは、自分を遣わした主のことばのすべてと、命じられたしるしのすべてを、アロンに話した。
4:29 モーセとアロンは行って、イスラエルの人々の長老たちを全員集めた。
4:30 アロンは、主がモーセに語られたことばをすべて伝えた。そして人々の目の前で、しるしを行った。
4:31 すると人々は信じた。主がイスラエルの人々を心にかけ、その苦しみをご覧になったと聞いて、彼らはひざまずいて礼拝した。
5:1 その後、モーセとアロンはファラオのもとへ行って言った。「イスラエルの神、主はこう言われます。『わたしの民を去らせなさい。荒れ野でわたしのために祭りを行うためだ。』」
5:2 ファラオは言った。「主とは何者だ。なぜわたしがその声に従って、イスラエルを去らせなければならないのか。わたしは主など知らない。イスラエルを去らせるつもりもない。」
5:3 二人は言った。「ヘブライ人の神が、わたしたちに現れました。どうか、荒れ野へ三日の道のりを行かせてください。わたしたちの神、主にいけにえをささげるためです。そうしないと、神は疫病か剣で、わたしたちを打たれるかもしれません。」
5:4 エジプトの王は二人に言った。「モーセとアロンよ、なぜおまえたちは民の仕事の手を止めさせるのか。自分の労役に戻れ。」
5:5 ファラオはさらに言った。「見ろ、この地の民は今や大勢だ。それなのに、おまえたちは彼らの労役を休ませようとしている。」
5:6 その日、ファラオは民を追い立てる監督たちと、その下役たちに命じて言った。
5:7 「これからは、れんがを作るためのわらを、今までのように民に与えてはならない。彼らを自分で行かせて、わらを集めさせるのだ。
5:8 だが、これまで彼らが作っていたれんがの数はそのまま課し、減らしてはならない。彼らは怠けているのだ。だから『行って、わたしたちの神にいけにえをささげさせてくれ』と叫んでいる。
5:9 この者たちの労役を重くして、それに追われるようにしろ。うその言葉に気を取られないようにするのだ。」
5:10 監督たちとその下役たちは出て行き、民に言った。「ファラオはこう言っている。『おまえたちにわらは与えない。
5:11 自分で行って、見つけられる所からわらを取ってこい。だが、おまえたちの仕事は少しも減らさない。』」
5:12 そこで民はエジプト全土に散らばり、わらの代わりになる刈り株を集めた。
5:13 監督たちは彼らをせき立てて言った。「わらがあったときと同じように、毎日の分の仕事をやり遂げろ。」
5:14 そして、ファラオの監督たちが民の上に立てたイスラエルの人々の下役たちは打たれ、こう問い詰められた。「なぜおまえたちは、昨日も今日も、これまでのように決められた数のれんがを作り終えないのか。」
5:15 そこでイスラエルの人々の下役たちはファラオのところに行き、叫んで言った。「なぜあなたは、しもべたちにこんな仕打ちをなさるのですか。
5:16 しもべたちにはわらが与えられないのに、『れんがを作れ』と言われます。そのうえ、しもべたちは打たれています。悪いのはあなたの民のほうです。」
5:17 ファラオは言った。「おまえたちは怠け者だ、怠け者だ。だから『行って、主にいけにえをささげさせてくれ』と言うのだ。
5:18 さあ、行って働け。わらは与えられない。それでも、決められた数のれんがを納めるのだ。」
5:19 イスラエルの人々の監督たちは、自分たちが困った立場に立たされたことに気づいた。「日ごとのれんがの数を減らしてはならない」と言われたからだ。
5:20 彼らはファラオのところから出てきたところで、待ち構えていたモーセとアロンに出会った。
5:21 そして二人に言った。「主があなたたちを見て、さばいてくださるように。あなたたちのせいで、わたしたちはファラオとその家来たちに嫌われてしまった。彼らの手に剣を握らせて、わたしたちを殺させることになったのだ。」
5:22 モーセは主のもとに戻って言った。「主よ、どうしてこの民をひどい目にあわせるのですか。どうしてわたしを送ったのですか。
5:23 わたしがあなたの名によって語ろうとファラオのところへ行ってからというもの、彼はこの民をひどく扱うようになりました。それなのに、あなたはご自分の民を少しも救い出してくださいません。」
6:1 すると主はモーセに言った。「わたしがファラオにすることを、あなたは今に見るだろう。強い手で迫られて、ファラオは彼らを去らせる。強い手で迫られて、彼らを自分の国から追い出すのだ。」
6:2 神はモーセに語り、こう言った。「わたしは主である。
6:3 わたしはアブラハム、イサク、ヤコブに、全能の神として現れた。しかし、主というわたしの名は、彼らに知らせていなかった。
6:4 わたしはまた、彼らと契約を結び、彼らが寄留者として住んでいたカナンの地を与えると約束した。
6:5 さらにわたしは、エジプト人に奴隷として働かされているイスラエルの人々のうめき声を聞き、自分の契約を思い起こした。
6:6 だから、イスラエルの人々に言いなさい。『わたしは主である。わたしはあなたたちをエジプトの重い労働から連れ出し、奴隷の状態から救い出す。腕を伸ばし、大いなるさばきをもって、あなたたちをあがなう。
6:7 わたしはあなたたちをわたしの民として迎え、あなたたちの神となる。そのときあなたたちは、わたしがあなたたちの神、主であることを知る。エジプトの重い労働からあなたたちを連れ出す者だ。
6:8 そしてわたしは、アブラハム、イサク、ヤコブに与えると手を上げて誓ったあの地に、あなたたちを導き入れる。その地をあなたたちの所有として与える。わたしは主である。』」
6:9 モーセはこのことをイスラエルの人々に伝えた。でも彼らは、あまりのつらさと重い労働のせいで、モーセの言葉に耳を貸そうとしなかった。
6:10 主はモーセに言われた。
6:11 「エジプトの王ファラオのところへ行って、イスラエルの人々を国から去らせるように言いなさい。」
6:12 でもモーセは主に言った。「イスラエルの人々でさえ、わたしの言葉を聞いてくれませんでした。まして、口下手なわたしの言うことを、どうしてファラオが聞いてくれるでしょうか。」
6:13 こうして主はモーセとアロンに語り、イスラエルの人々とエジプトの王ファラオのもとへ行くよう命じた。イスラエルの人々をエジプトの地から連れ出すためだった。
6:14 以下は、彼らの家系の長たちである。イスラエルの長男ルベンの子は、ハノク、パル、ヘツロン、カルミ。これがルベンの諸氏族である。
6:15 シメオンの子は、エムエル、ヤミン、オハデ、ヤキン、ツォハル、それにカナン人の女が産んだサウル。これがシメオンの諸氏族である。
6:16 レビの子たちの名は、生まれた順に、ゲルション、ケハト、メラリ。レビは百三十七年生きた。
6:17 ゲルションの子は、氏族ごとに、リブニとシムイ。
6:18 ケハトの子は、アムラム、イツハル、ヘブロン、ウジエル。ケハトは百三十三年生きた。
6:19 メラリの子は、マフリとムシ。これらが、生まれた順に見たレビの氏族である。
6:20 アムラムは、父の姉妹ヨケベデを妻にした。彼女はアロンとモーセを産んだ。アムラムは百三十七年生きた。
6:21 イツハルの子は、コラ、ネフェグ、ジクリ。
6:22 ウジエルの子は、ミシャエル、エルツァファン、シトリ。
6:23 アロンは、アミナダブの娘でナフションの姉妹エリシェバを妻にした。彼女はナダブ、アビフ、エルアザル、イタマルを産んだ。
6:24 コラの子は、アシル、エルカナ、アビアサフ。これらがコラ人の氏族である。
6:25 アロンの子エルアザルは、プティエルの娘の一人を妻にした。彼女はピネハスを産んだ。以上が、氏族ごとに見たレビ人の家長たちである。
6:26 主が「隊列を組んで、イスラエルの人々をエジプトの地から導き出せ」と言われたのは、このアロンとモーセである。
6:27 イスラエルの人々をエジプトから導き出すために、エジプトの王ファラオに話をしたのも、このモーセとアロンである。
6:28 主がエジプトの地でモーセに語られた日のことである。
6:29 主はモーセにこう言われた。「わたしは主である。わたしがあなたに告げることを、すべてエジプトの王ファラオに伝えなさい。」
6:30 でもモーセは主の前で言った。「わたしは口下手です。ファラオがわたしの言うことに耳を貸すはずがありません。」
7:1 主はモーセに言われた。「見なさい。わたしはあなたを、ファラオにとって神のような存在にした。あなたの兄アロンは、あなたの預言者となる。
7:2 わたしが命じることを、あなたはすべて語りなさい。あなたの兄アロンがそれをファラオに伝え、イスラエルの人々を自分の国から去らせるように言う。
7:3 だが、わたしはファラオの心をかたくなにする。そしてエジプトの地で、わたしのしるしと不思議を何度も起こす。
7:4 それでもファラオはあなたたちの言うことを聞かない。だからわたしはエジプトに手を下し、大いなる裁きをもって、わたしの民、イスラエルの人々を軍団のようにエジプトの地から導き出す。
7:5 わたしがエジプトに向かって手を伸ばし、イスラエルの人々を彼らの中から導き出すとき、エジプト人はわたしが主であることを知るようになる。」
7:6 モーセとアロンは、主が命じられたとおりに行った。そのとおりにしたのだ。
7:7 二人がファラオに語ったとき、モーセは八十歳、アロンは八十三歳だった。
7:8 主はモーセとアロンにこう言われた。
7:9 「ファラオがあなたたちに『何か不思議なことをして見せろ』と言ったら、あなたはアロンに言いなさい。『杖を取って、ファラオの前に投げよ』と。すると杖は蛇になる。」
7:10 モーセとアロンはファラオのところへ行き、主が命じられたとおりにした。アロンが自分の杖をファラオとその家臣たちの前に投げると、杖は蛇になった。
7:11 するとファラオも、知恵ある者たちや呪術師たちを呼び寄せた。エジプトの魔術師である彼らも、秘術を使って同じことをした。
7:12 それぞれが自分の杖を投げると、それらは蛇になった。しかし、アロンの杖が彼らの杖を飲み込んでしまった。
7:13 しかしファラオの心はかたくなになり、二人の言うことを聞こうとしなかった。主が言われたとおりだった。
7:14 主はモーセに言われた。「ファラオの心はかたくなだ。民を行かせるのを拒んでいる。
7:15 朝、ファラオのところへ行きなさい。彼はナイル川へ出てくる。あなたは川岸で彼を待ち受けなさい。そして、蛇に変わったあの杖を手に持って行きなさい。
7:16 そして彼にこう言いなさい。『ヘブライ人の神、主がわたしをあなたのもとへ遣わして、こう言われました。「わたしの民を行かせなさい。荒れ野でわたしに仕えるためだ」と。だが、あなたは今までずっと聞き入れなかった。
7:17 主はこう言われる。あなたはこれによって、わたしが主であることを知る。見よ、わたしは手に持つこの杖でナイル川の水を打つ。すると水は血に変わる。
7:18 川の魚は死に、川は臭くなる。エジプト人は川の水を飲むのをいやがるようになる。』」
7:19 主はモーセに言われた。「アロンにこう言いなさい。『杖を取り、エジプトの水の上に、川の上に、流れの上に、池の上に、そしてあらゆる水のたまり場の上に手を差し伸べなさい。すると水は血になる。』こうしてエジプト全土に、木の器の中にも石の器の中にも血があふれる。」
7:20 モーセとアロンは、主が命じられたとおりにした。アロンはファラオとその家臣たちの目の前で杖を振り上げ、ナイル川の水を打った。すると川の水はすべて血に変わった。
7:21 川の魚は死に、川は臭くなり、エジプト人は川の水を飲むことができなくなった。エジプト全土に血があふれた。
7:22 しかしエジプトの魔術師たちも、秘術を使って同じことをした。それでファラオの心はかたくなになり、二人の言うことを聞こうとしなかった。主が言われたとおりだった。
7:23 ファラオは背を向けて自分の家に入り、このことも心に留めなかった。
7:24 エジプト人はみな、飲み水を求めてナイル川の周りを掘った。川の水が飲めなくなったからだ。
7:25 主がナイル川を打ってから、七日が過ぎた。
8:1 主はモーセに言われた。「ファラオのところへ行って、こう伝えなさい。主はこう言われる。わたしの民を行かせなさい。彼らがわたしに仕えられるように。
8:2 もし行かせるのを拒むなら、見よ、わたしはあなたの国じゅうをかえるで打つ。
8:3 ナイル川にかえるがあふれ、はい上がってきて、あなたの家に入り込む。寝室にも、寝台の上にも、家来たちの家にも、民の中にも、かまどの中にも、こね鉢の中にも入り込む。
8:4 あなたの体にも、あなたの民にも、すべての家来たちにも、かえるがはい上がってくる。」
8:5 主はモーセに言われた。「アロンにこう言いなさい。杖を持った手を川や運河や池の上に差し伸べて、エジプトの地にかえるをはい上がらせなさい。」
8:6 アロンがエジプトの水の上に手を差し伸べると、かえるがはい上がってきて、エジプトの地をおおった。
8:7 魔術師たちも秘術を使って同じことをし、エジプトの地にかえるをはい上がらせた。
8:8 ファラオはモーセとアロンを呼んで言った。「主に祈って、わたしとわたしの民のところからかえるを取り去ってくれ。そうすれば、わたしは民を行かせて、主にいけにえをささげさせよう。」
8:9 モーセはファラオに言った。「どうぞ、いつ祈ればよいか言ってください。あなたと家来たちと民のために、いつかえるをあなたとあなたの家々から絶ち去るよう祈りましょうか。かえるはナイル川だけに残ることになります。」
8:10 ファラオが「明日」と言うと、モーセは言った。「あなたの言うとおりにしましょう。わたしたちの神、主のような方はほかにいないと、あなたが知るためです。
8:11 かえるは、あなたとあなたの家々、家来たち、民のところから去っていく。かえるはナイル川だけに残ることになる。」
8:12 モーセとアロンはファラオのところから出て行った。そしてモーセは、主がファラオにもたらしたかえるのことで、主に向かって叫んだ。
8:13 主はモーセの言葉のとおりにされた。すると、かえるは家々や庭、畑で死んでいった。
8:14 人々はそれを山のように積み上げた。すると、その地はひどく臭くなった。
8:15 しかしファラオは、事態が楽になったのを見ると、心をかたくなにして、二人の言うことを聞かなかった。主が言われたとおりだった。
8:16 主はモーセに言った。「アロンにこう言いなさい。『杖を伸ばして地のちりを打て。』そうすれば、それがエジプト全土でぶよになる。」
8:17 二人はそのとおりにした。アロンが杖を持った手を伸ばして地のちりを打つと、ぶよが人と家畜に取りついた。エジプト全土で、地のちりがすべてぶよになった。
8:18 魔術師たちも秘術を使って、同じようにぶよを出そうとした。でも、できなかった。ぶよは人にも家畜にも取りついたままだった。
8:19 魔術師たちはファラオに言った。「これは神の指のしわざです。」しかしファラオの心はかたくなになり、二人の言うことを聞かなかった。主が言われたとおりだった。
8:20 主はモーセに言った。「朝早く起きて、ファラオの前に立ちなさい。見なさい、彼は水辺に出てくる。そして彼にこう言いなさい。『主はこう言われる。わたしの民を行かせ、わたしに仕えさせよ。
8:21 もし民を行かせないなら、わたしはあなたと家来たち、民、そして家々に、あぶの群れを送る。エジプト人の家々はあぶの群れでいっぱいになり、彼らのいる地面までもそうなる。
8:22 しかしその日、わたしは、わたしの民が住むゴシェンの地を特別に扱う。そこにはあぶの群れがいないようにする。こうして、この地の真ん中にわたし、主がいることを、あなたは知るようになる。
8:23 わたしはわたしの民とあなたの民とを区別する。明日、このしるしが起こる。』」
8:24 主はそのとおりにされた。おびただしいあぶの群れが、ファラオの家と家来たちの家に入り込んだ。エジプト全土で、あぶの群れのために地は荒れ果てた。
8:25 ファラオはモーセとアロンを呼んで言った。「行って、この地であなたたちの神にいけにえをささげなさい。」
8:26 モーセは言った。「そうするのは正しくありません。わたしたちが神である主にささげるいけにえは、エジプト人が忌み嫌うものだからです。もし彼らの目の前で、彼らが忌み嫌うものをささげたら、わたしたちは石で打ち殺されるのではないでしょうか。
8:27 わたしたちは荒れ野へ三日の道のりを行き、神である主が命じられるとおりに、主にいけにえをささげます。」
8:28 ファラオは言った。「あなたたちを行かせよう。荒れ野で、あなたたちの神である主にいけにえをささげるがよい。ただし、あまり遠くへ行ってはならない。わたしのために祈ってくれ。」
8:29 モーセは言った。「わたしは今あなたのところから出て行き、主に祈ります。そうすれば明日、あぶの群れがファラオからも、家来たちからも、民からも離れていくでしょう。ただ、もう二度とファラオがわたしたちをだますことのないようにしてください。民が主にいけにえをささげに行くのを、妨げないでください。」
8:30 モーセはファラオのもとを出て、主に祈った。
8:31 主はモーセの願ったとおりにされた。あぶの群れをファラオから、家来たちから、民から取り去られたので、一匹も残らなかった。
8:32 ファラオはこのときもまた強情になり、民を行かせようとしなかった。
9:1 主はモーセに言われた。「ファラオのところへ行って、こう伝えなさい。ヘブライ人の神である主はこう言われる。わたしの民を行かせなさい。彼らがわたしに仕えられるように。
9:2 もし行かせるのを拒んで、いつまでも引き止めるなら、
9:3 見よ、主の手が、野にいるあなたの家畜を襲う。馬、ろば、らくだ、牛、羊のすべてに、とても激しい疫病が起こる。
9:4 しかし主は、イスラエルの家畜とエジプトの家畜を区別される。イスラエルの人々のものは一頭も死なない。」
9:5 主は時を定めて言われた。「明日、主はこのことを国に起こす。」
9:6 翌日、主はこのことを実行された。エジプトの家畜はすべて死んだ。だが、イスラエルの人々の家畜は一頭も死ななかった。
9:7 ファラオは人をやって調べさせた。すると本当に、イスラエルの家畜は一頭も死んでいなかった。それでもファラオの心は頑なになり、民を行かせなかった。
9:8 主はモーセとアロンに言われた。「かまどのすすを両手いっぱいに取りなさい。そしてモーセは、ファラオの目の前でそれを空に向かってまき散らしなさい。
9:9 それはエジプト全土にわたって細かなちりとなり、人にも家畜にも付いて、エジプト中で膿を持ったできものとなって噴き出す。」
9:10 そこで二人はかまどのすすを取り、ファラオの前に立った。モーセがそれを空に向かってまき散らすと、人にも家畜にも、膿を持ったできものが噴き出した。
9:11 魔術師たちは、できもののためにモーセの前に立つことができなかった。できものが魔術師たちにも、すべてのエジプト人にもできていたからだ。
9:12 しかし主はファラオの心を頑なにされた。それでファラオは二人の言うことを聞かなかった。主がモーセに言われたとおりであった。
9:13 主はモーセに言われた。「朝早く起きて、ファラオの前に立ち、こう伝えなさい。ヘブライ人の神である主はこう言われる。わたしの民を行かせなさい。彼らがわたしに仕えられるように。
9:14 今度こそ、わたしはあなた自身にも、あなたの家来たちにも、あなたの民にも、わたしのすべての災いを送る。この地上にわたしのような者はいないと、あなたが知るためだ。
9:15 わたしはすでに手を伸ばし、あなたとあなたの民を疫病で打ち、地上から消し去ることもできたのだ。
9:16 しかしわたしがあなたを立たせておいたのは、わたしの力をあなたに見せるため、そしてわたしの名を全地に語り伝えさせるためだ。
9:17 それなのにあなたは、まだわたしの民に立ちはだかり、行かせようとしない。
9:18 だから、明日の今ごろ、わたしは非常に激しい雹を降らせる。エジプトが国として始まった日から今まで、一度もなかったほどの雹だ。
9:19 今すぐ人を送って、あなたの家畜も、野にいるすべてのものも避難させなさい。野に残されて家に入れられていない人や家畜には、雹が降りかかり、みな死んでしまう。』」
9:20 ファラオの家来たちのうち、主の言葉を恐れた者は、自分の使用人と家畜を急いで家に避難させた。
9:21 しかし主の言葉を心に留めなかった者は、自分の使用人と家畜を野に残しておいた。
9:22 主はモーセに言われた。「手を天に向かって伸ばしなさい。そうすれば、エジプト全土に雹が降る。人にも家畜にも、野のすべての草にも、エジプト中に降りかかる。」
9:23 モーセが杖を天に向かって伸ばすと、主は雷と雹を送られた。稲妻が地に走り、主はエジプトの地に雹を降らせた。
9:24 雹が降り、その雹の中で火が燃えさかった。それは非常に激しく、エジプトが国となって以来、その全土で一度もなかったほどのものだった。
9:25 雹はエジプト全土で、野にあるものすべてを打った。人も家畜も、野の草もことごとく雹に打たれ、野の木もみな折れてしまった。
9:26 ただ、イスラエルの人々が住むゴシェンの地にだけは、雹は降らなかった。
9:27 ファラオは人をやってモーセとアロンを呼び、こう言った。「今度こそ、わたしは罪を犯した。主は正しい。わたしとわたしの民が悪かったのだ。
9:28 主に祈ってくれ。神の雷と雹はもうたくさんだ。あなたたちを行かせよう。もう、ここに引き止めはしない。」
9:29 モーセは彼に言った。「わたしは町を出たら、両手を主に向かって広げます。そうすれば雷はやみ、雹ももう降りません。こうして、あなたは地が主のものだと知るのです。
9:30 でも、あなたもあなたの家臣たちも、まだ主なる神を恐れてはいない。わたしにはそれがわかっています。」
9:31 亜麻と大麦は打たれてしまった。大麦は穂を出し、亜麻はつぼみをつけていたからだ。
9:32 でも、小麦とスペルト小麦は打たれなかった。まだ芽が出ていなかったからだ。
9:33 モーセはファラオのもとを離れて町を出ると、両手を主に向かって広げた。すると雷と雹はやみ、雨も地に降らなくなった。
9:34 ところがファラオは、雨と雹と雷がやんだのを見ると、また罪を犯した。彼も家臣たちも、心をかたくなにした。
9:35 ファラオの心はかたくなになり、彼はイスラエルの人々を行かせなかった。主がモーセを通して語られたとおりだった。
10:1 主はモーセに言われた。「ファラオのところへ行きなさい。わたしが彼と家来たちの心をかたくなにした。それは、わたしがこれらのしるしを彼らの間で行うためだ。
10:2 また、わたしがエジプトで何をしたか、そこで行ったしるしを、あなたが子や孫に語り聞かせるためでもある。こうして、わたしが主であることをあなたたちは知るようになる。」
10:3 モーセとアロンはファラオのところへ行き、こう言った。「ヘブライ人の神、主がこう言われます。『いつまであなたは、わたしの前でへりくだるのを拒むのか。わたしの民を去らせなさい。彼らがわたしに仕えるためだ。
10:4 もし民を去らせるのを拒むなら、明日、わたしはあなたの領土にいなごを送り込む。
10:5 いなごは地の面をおおいつくし、地面が見えなくなるほどだ。そして、雹の害を免れて残ったものを食い尽くし、野に生えているすべての木も食い尽くす。
10:6 いなごは、あなたの家も、家来たちの家も、エジプト中の家をも満たす。それは、あなたの父祖も、そのまた父祖も、この地に生まれてから今日まで見たことのないものだ。』」こう言うと、モーセは背を向けてファラオのもとを去った。
10:7 ファラオの家来たちは彼に言った。「いつまであの男がわたしたちにとってわなであり続けるのですか。あの者たちを去らせて、彼らの神、主に仕えさせてください。エジプトが滅んでしまうのが、まだお分かりにならないのですか。」
10:8 そこで、モーセとアロンはファラオのもとに呼び戻された。ファラオは二人に言った。「行って、あなたたちの神、主に仕えるがよい。だが、行くのは誰と誰なのか。」
10:9 モーセは答えた。「わたしたちは、若い者も年寄りも一緒に行きます。息子も娘も、羊も牛も連れて行きます。わたしたちには主の祭りがあるからです。」
10:10 ファラオは二人に言った。「わたしがお前たちと、その子どもたちまで去らせるなら、主がお前たちと共におられるがいい。だが、気をつけろ。お前たちは悪いことをたくらんでいる。
10:11 そうはいかない。行きたければ、男たちだけで行って主に仕えろ。お前たちが求めていたのは、それだろう。」こうして二人はファラオの前から追い出された。
10:12 主はモーセに言われた。「エジプトの地の上に手を差し伸べて、いなごを来させなさい。いなごがエジプトの地を襲い、雹が残したこの地の草木をすべて食い尽くすように。」
10:13 モーセがエジプトの地の上に杖を差し伸べると、主はその日一日と一晩じゅう、東風をこの地に吹かせた。朝になると、東風がいなごを運んできた。
10:14 いなごはエジプト全土を襲い、国じゅうに降り立った。その数はものすごく、こんないなごの大群は今までなかったし、これから先も二度とないほどだった。
10:15 いなごは地の面をびっしり覆い、地は真っ暗になった。そして、雹が残していた草も、木になっていた実も、みんな食い尽くした。エジプト全土のどこを見ても、木にも野の草にも、緑のものは何ひとつ残らなかった。
10:16 ファラオは急いでモーセとアロンを呼んで言った。「わたしは、お前たちの神である主に対しても、お前たちに対しても罪を犯した。
10:17 だから、もう一度だけ、どうかわたしの罪を赦してくれ。そして、お前たちの神である主に祈って、この死のような災いだけでも、わたしから取り除いてほしい。」
10:18 モーセはファラオのもとを出て、主に祈った。
10:19 すると主は風の向きを変え、とても強い西風を吹かせた。この風がいなごを運び去り、葦の海へと吹き飛ばした。こうしてエジプト全土に、いなごは一匹も残らなくなった。
10:20 しかし主はファラオの心をかたくなにされ、ファラオはイスラエルの人々を去らせようとはしなかった。
10:21 主はモーセに言われた。「天に向かって手を差し伸べなさい。そうすれば、エジプトの地は闇に包まれる。手でさわれそうなほど濃い闇だ。」
10:22 モーセが天に向かって手を差し伸べると、エジプト全土は三日間、真っ暗な闇に包まれた。
10:23 三日の間、人々はたがいの顔も見えず、だれも自分のいる場所から動けなかった。しかし、イスラエルの人々の住む所には、どこにも光があった。
10:24 ファラオはモーセを呼んで言った。「行って、主に仕えるがいい。ただし、お前たちの羊や牛は置いていけ。子どもたちは連れて行ってかまわない。」
10:25 モーセは言った。「いいえ、主に捧げるいけにえと焼き尽くす供え物は、あなた自身が用意して、わたしたちに渡してください。それを、わたしたちの神である主に捧げるのです。
10:26 家畜も、わたしたちと一緒に連れて行きます。ひづめ一つ残していきません。その中から選んで、わたしたちの神である主に仕えるのです。どの家畜で主に仕えるのかは、その場所に着くまでわからないのですから。」
10:27 しかし主はファラオの心をかたくなにされた。それでファラオは、彼らを行かせようとしなかった。
10:28 ファラオはモーセに言った。「わたしの前から出て行け。二度とわたしの顔を見せに来るな。わたしの顔を見た日には、お前は死ぬのだ。」
10:29 モーセは答えた。「そのとおりです。もう二度と、あなたの顔を見に来ることはありません。」
11:1 主はモーセに言われた。「もう一つだけ、ファラオとエジプトに災いを下す。そのあとで、彼はお前たちをここから去らせる。いや、去らせるどころか、追い立てるようにして、お前たちをことごとくここから追い出すだろう。
11:2 さあ、人々にこう伝えなさい。男も女も、それぞれ隣の人から銀や金の品物を求めなさい、と。」
11:3 主は、エジプト人が民に好意を持つようにしてくださった。それに、モーセその人も、エジプトの地でとても大きな存在となっていた。ファラオの家来たちの目にも、民の目にも、そうだった。
11:4 モーセは言った。「主はこう言われる。真夜中ごろ、わたしはエジプトの中を進んで行く。
11:5 そして、エジプトの地の初子はみな死ぬ。王座に座るファラオの初子から、臼をひく召し使いの女の初子まで、そして家畜の初子もみな死ぬ。
11:6 エジプト全土に大きな叫び声が上がる。それは、これまでにも起きたことがなく、これからも決して起きることのないほどの叫びだ。
11:7 でも、イスラエルの人々に対しては、人にも家畜にも、犬一匹さえ吠えかからない。主がエジプトとイスラエルをはっきり区別されることを、あなたたちが知るためだ。
11:8 そして、あなたのこの家臣たちはみな、わたしのところに下りて来て、ひれ伏してこう言うだろう。『あなたも、あなたに従う民もみんな、出て行ってくれ』と。そのあとで、わたしは出て行く。」こう言うと、モーセは激しく怒りながらファラオのもとを去った。
11:9 主はモーセに言われた。「ファラオはあなたたちの言うことを聞かない。それは、わたしの不思議なわざがエジプトの地で数多く起こるためだ。」
11:10 モーセとアロンは、これらの不思議なわざをすべてファラオの前で行った。しかし主がファラオの心をかたくなにされたので、ファラオはイスラエルの人々を自分の国から去らせなかった。
12:1 主はエジプトの地で、モーセとアロンに言われた。
12:2 「この月を、あなたたちにとって月の始まりとしなさい。これがあなたたちにとって一年の最初の月となる。
12:3 イスラエルの全会衆にこう伝えなさい。この月の十日に、それぞれが家族ごとに羊を一頭、一家に一頭、用意する。
12:4 もし一家だけでは羊一頭に人数が足りないなら、その人は家のいちばん近い隣人と一緒に、人数に応じて羊を取る。それぞれが食べる量に合わせて、羊を分けなさい。
12:5 羊は傷のない、一歳の雄でなければならない。羊かやぎの中から取る。
12:6 それをこの月の十四日まで取っておき、イスラエルの会衆全体が夕暮れにそれをほふる。
12:7 その血を取って、羊を食べる家の入り口の二本の柱と、上のかもいに塗りなさい。
12:8 そしてその夜、肉を食べる。火で焼いた肉を、種を入れないパンと苦い菜と一緒に食べなさい。
12:9 生のままや、水で煮て食べてはいけない。頭も足も内臓も、火で焼いて食べなさい。
12:10 朝まで何も残してはいけない。朝まで残ったものは、火で焼き尽くしなさい。
12:11 食べるときは、腰に帯を締め、足に履き物をはき、手に杖を持っていなさい。急いで食べるのだ。これは主の過越である。
12:12 その夜、わたしはエジプトの地を通り抜け、人から家畜まで、エジプトのすべての初子を打つ。また、エジプトのすべての神々にさばきを下す。わたしは主である。
12:13 あなたたちのいる家に塗った血は、あなたたちのしるしとなる。わたしはその血を見て、あなたたちのところを過ぎ越す。わたしがエジプトの地を打つとき、あなたたちには滅びの災いが及ばない。
12:14 この日は、あなたたちにとって記念の日となる。あなたたちはこれを主の祭りとして祝いなさい。代々にわたって、いつまでも守るべき定めとして祝うのだ。
12:15 七日間、種を入れないパンを食べなさい。最初の日に、家からパン種を取り除きなさい。最初の日から七日目までの間に種の入ったパンを食べる者は、だれでもイスラエルから断たれる。
12:16 最初の日には聖なる集まりを開き、七日目にも聖なる集まりを開きなさい。この二日間は、いっさいの仕事をしてはいけない。ただし、みんなが食べるものを用意することだけはしてよい。
12:17 あなたたちは、種を入れないパンの祭りを守りなさい。まさにこの日に、わたしはあなたたちの集団をエジプトの地から導き出したからだ。だから、この日を代々にわたって、いつまでも守るべき定めとして守りなさい。
12:18 最初の月の十四日の夕方から、二十一日の夕方まで、種を入れないパンを食べなさい。
12:19 七日の間、家の中にパン種があってはいけない。パン種の入ったものを食べる者はだれでも、その魂はイスラエルの共同体から断ち切られる。よそから来た人でも、その土地に生まれた人でも同じだ。
12:20 パン種の入ったものは、いっさい食べてはいけない。あなたたちが住むところではどこでも、種を入れないパンを食べなさい。」
12:21 モーセはイスラエルの長老たちをみんな呼び寄せて、こう言った。「さあ、それぞれの家族のために羊か山羊を選んで、過越のいけにえとしてほふりなさい。
12:22 そして、ヒソプの束を用意し、鉢に入れた血に浸して、鴨居と二本の門柱に、その血を塗りなさい。朝まで、だれも家の入り口から外に出てはいけない。
12:23 主がエジプトを打つために通り過ぎるとき、鴨居と二本の門柱に血がついているのを見たら、主はその入り口を過ぎ越してくださる。滅ぼす者があなたたちの家に入って打つのを、主が許さないからだ。
12:24 あなたたちは、このことをあなたと子孫のための定めとして、いつまでも守りなさい。
12:25 主が約束したとおりに、あなたたちに与える地に入ったら、この儀式を守りなさい。
12:26 そして、あなたたちの子どもが『この儀式には、どんな意味があるの』と聞いてきたら、
12:27 こう答えなさい。『これは主への過越のいけにえだ。主がエジプトを打ったとき、エジプトにいたイスラエルの人々の家を過ぎ越して、わたしたちの家を救ってくださったのだ。』」すると民はひざまずいて、ひれ伏した。
12:28 イスラエルの人々は出かけて行って、そのとおりにした。主がモーセとアロンに命じたとおりに行った。
12:29 真夜中になって、主はエジプトの地の初子をすべて打った。王座に座るファラオの初子から、牢屋につながれた捕虜の初子まで、そして家畜の初子もすべてだった。
12:30 その夜、ファラオも家来たちもエジプトの人々もみんな起き上がった。エジプトには大きな叫び声が起こった。死人の出ていない家は、一つもなかったからだ。
12:31 その夜、ファラオはモーセとアロンを呼んで言った。「立て。わたしの民の中から出て行け。あなたたちもイスラエルの人々も、みんなだ。さあ行って、あなたたちが言ったとおり、主に仕えるがいい。
12:32 あなたたちが言ったとおり、羊も牛も連れて行け。そして、わたしのためにも祝福を祈ってくれ。」
12:33 エジプトの人々は、早くこの地から出て行ってほしいと、民をせき立てた。「このままでは、おれたちはみんな死んでしまう」と言ったのだ。
12:34 民は、まだ発酵していないパン生地を持って出た。こね鉢を衣に包み、肩にかついだ。
12:35 イスラエルの人々は、モーセが言ったとおりにした。エジプトの人々に、銀の品や金の品、それに衣類を求めた。
12:36 主が、エジプトの人々の心に民への好意を抱かせたので、彼らは求められるままに与えた。こうして民はエジプトの人々から品々を受け取った。
12:37 イスラエルの人々は、ラメセスを発ってスコトに向かった。子どもを別にして、歩いて行く男だけでおよそ六十万人だった。
12:38 そのほかにも、さまざまな人々の群れが一緒に上って行った。羊や牛など、たくさんの家畜も一緒だった。
12:39 民は、エジプトから持って出た生地を焼いて、種を入れないパンを作った。生地は発酵していなかった。エジプトから追い出され、ぐずぐずしていられず、食料の用意もできなかったからだ。
12:40 イスラエルの人々がエジプトで暮らした期間は、四百三十年だった。
12:41 四百三十年が終わったちょうどその日、主の民の群れはみな、エジプトの地から出て行った。
12:42 この夜は、主が彼らをエジプトの地から連れ出すために、見守ってくださった夜だ。だからこの夜は、代々のイスラエルの人々すべてが、主のために見守り続ける夜となる。
12:43 主はモーセとアロンに言われた。「これが過越の食事の決まりだ。よその国の者は、だれもそれを食べてはいけない。
12:44 だが、お金で買った奴隷なら、割礼を受けさせた後で、それを食べてよい。
12:45 一時的に滞在している者や、雇われて働く者は、それを食べてはいけない。
12:46 食事は一つの家の中でとらなければならない。その肉を家の外に持ち出してはいけない。また、その骨を折ってはいけない。
12:47 イスラエルの民全体が、これを行わなければならない。
12:48 あなたのところに一緒に暮らす外国人が、主のために過越を祝いたいときは、まず家の男子全員が割礼を受けなければならない。そうすれば、その人は近づいて過越を祝うことができ、その地に生まれた者と同じように扱われる。しかし、割礼を受けていない者は、だれもそれを食べてはいけない。
12:49 この決まりは、その地に生まれた者にも、あなたたちと一緒に暮らす外国人にも、同じように一つである。」
12:50 イスラエルの人々はみな、主がモーセとアロンに命じられたとおりに行った。まさにそのとおりにしたのだ。
12:51 そしてちょうどその日、主はイスラエルの人々を、その集団ごとに、エジプトの地から連れ出された。
13:1 主はモーセに言われた。
13:2 「イスラエルの人々の中で、最初に生まれた子をみな、わたしのために聖別しなさい。人であれ家畜であれ、母の胎を最初に開くものはすべて、わたしのものだ。」
13:3 モーセは民に言った。「この日を忘れてはいけない。あなたたちが奴隷として仕えていたエジプトから出てきた日だ。主が力強い手で、あなたたちをここから連れ出してくださったのだから。パン種の入ったものを食べてはいけない。
13:4 あなたたちが出てきたのは、アビブの月の今日だ。
13:5 主はあなたを、カナン人、ヒッタイト人、アモリ人、ヒビ人、エブス人の住む地へ連れて行ってくださる。それは、あなたに与えると先祖に誓われた、乳と蜜の流れる地だ。そこに入ったら、この月にこの儀式を守りなさい。
13:6 七日間、パン種の入っていないパンを食べなさい。そして七日目は、主のための祭りだ。
13:7 その七日間はパン種の入っていないパンを食べなさい。あなたのところに、パン種の入ったものがあってはならない。あなたの領地のどこにも、パン種があってはならない。
13:8 その日には、あなたの子にこう伝えなさい。『これは、わたしがエジプトから出てきたときに、主がわたしのためにしてくださったことを覚えるためだ。』
13:9 これを、あなたの手にしるしとして、額の間に覚えとして刻んでおきなさい。主の教えを、いつもあなたの口にとどめておくためだ。主が力強い手で、あなたをエジプトから連れ出してくださったのだから。
13:10 だから、この定めを毎年、決められた時期に守りなさい。
13:11 主はあなたと先祖に誓われたとおり、あなたをカナン人の地へ連れて行き、その地をあなたに与えてくださる。
13:12 そのとき、母の胎を最初に開くものはみな、主にささげなさい。あなたの家畜が最初に産むもののうち、雄はすべて主のものだ。
13:13 ロバが最初に産む子は、子羊を代わりにして買い戻しなさい。もし買い戻さないなら、その首を折らなければならない。あなたの息子のうち、最初に生まれた子はみな買い戻しなさい。
13:14 いつかあなたの息子が「これは、どういうことなの?」と聞いてきたら、こう答えなさい。「主が力強い手で、わたしたちを奴隷として使われていたエジプトから連れ出してくださったんだ。
13:15 ファラオが強情になって、わたしたちを行かせようとしなかったとき、主はエジプトの地の初子を、人の初子から家畜の初子まで、みな打ち殺された。だからわたしは、母の胎を最初に開く雄をみな主にささげ、自分の息子のうち最初に生まれた子は、みな買い戻すのだ。」
13:16 これは、あなたの手に付けるしるし、額の間に付ける記号となる。主が力強い手で、わたしたちをエジプトから連れ出してくださったからだ。
13:17 さて、ファラオが民を行かせたとき、神は彼らをペリシテ人の地を通る道へは導かれなかった。その道が近かったのにである。神はこう考えられたのだ。「民が戦いを目にして気が変わり、エジプトへ引き返すといけない。」
13:18 それで神は民を、葦の海に向かう荒れ野の道へと回らせた。イスラエルの人々は、武装してエジプトの地から上って行った。
13:19 モーセはヨセフの骨を持って行った。ヨセフが「神は必ずあなたたちを顧みてくださる。そのときは、わたしの骨をここから一緒に運び上げてほしい」と言って、イスラエルの人々に固く誓わせていたからだ。
13:20 彼らはスコトを出発し、荒れ野のはずれにあるエタムで野営した。
13:21 主は昼は雲の柱の中にいて、彼らの先に立って道を導き、夜は火の柱の中にいて、彼らを照らされた。こうして彼らは、昼も夜も進むことができた。
13:22 昼は雲の柱が、夜は火の柱が、民の前を離れることはなかった。
14:1 主はモーセに言われた。
14:2 「イスラエルの人々に伝えなさい。引き返して、ミグドルと海の間にあるピ・ハヒロトの前で、バアル・ツェフォンの向かい側に宿営するように。あなたたちは、その海のほとりに宿営するのだ。
14:3 ファラオはイスラエルの人々についてこう言うだろう。『あの者たちはこの地で行き場を失っている。荒れ野に閉じ込められてしまった』と。
14:4 わたしはファラオの心をかたくなにする。すると彼はイスラエルの人々を追いかけてくる。わたしはファラオとそのすべての軍勢を打ち破って、栄光を現す。こうしてエジプトの人々は、わたしが主であることを知る。」イスラエルの人々はそのとおりにした。
14:5 民が逃げ去ったと、エジプトの王に知らせが届いた。すると、ファラオとその家来たちの気持ちは民に対して一変した。彼らは言った。「なんということをしてしまったのか。イスラエルを行かせて、わたしたちのために働く者を失ってしまうとは。」
14:6 ファラオは戦車の用意を整え、自分の軍勢を引き連れた。
14:7 そして、えり抜きの戦車六百と、エジプトのすべての戦車を率いた。そのすべてに指揮官が乗っていた。
14:8 主はエジプトの王ファラオの心をかたくなにされた。それでファラオはイスラエルの人々を追いかけた。イスラエルの人々は堂々と胸を張って出て行くところだった。
14:9 エジプト軍は彼らを追いかけた。ファラオのすべての馬と戦車、騎兵、そして軍勢が、海のほとりで宿営していたイスラエルの人々に追いついた。それはピ・ハヒロトのそば、バアル・ツェフォンの前だった。
14:10 ファラオが近づいてきた。イスラエルの人々が目を上げて見ると、エジプト軍が自分たちのすぐ後ろに迫っていた。人々はひどくおびえ、主に向かって叫んだ。
14:11 そしてモーセに言った。「エジプトに墓がないから、わたしたちを連れ出してこの荒れ野で死なせるのですか。エジプトから連れ出すなんて、いったい何ということをしてくれたのですか。
14:12 エジプトにいたとき、あなたにこう言ったではありませんか。『わたしたちにかまわないでください。このままエジプトの人々に仕えさせてください』と。荒れ野で死ぬより、エジプトの人々に仕えているほうがずっとよかったのです。」
14:13 モーセは人々に言った。「こわがらなくていい。しっかり立って、主が今日あなたたちのためにしてくださる救いを見なさい。今日見ているエジプトの人々を、あなたたちは二度と、これから先ずっと見ることはない。
14:14 主があなたたちのために戦ってくださる。あなたたちはただ静かにしていればいい。」
14:15 主はモーセに言われた。「なぜわたしに叫び求めるのか。イスラエルの人々に、前へ進むように言いなさい。
14:16 あなたは杖を高く上げ、手を海に向かって差し出して、海を二つに分けなさい。そうすれば、イスラエルの人々は海の真ん中を、かわいた地面を歩いて渡ることができる。
14:17 わたしはエジプトの人々の心をかたくなにする。すると彼らはイスラエルの人々を追って、海に入ってくる。こうしてわたしは、ファラオとそのすべての軍勢、戦車と騎兵によって栄光を現す。
14:18 ファラオと戦車と騎兵によってわたしが栄光を現すとき、エジプトの人々は、わたしが主であることを知る。」
14:19 それまでイスラエルの陣営の前を進んでいた神の使いが、後ろに回って移った。雲の柱も彼らの前から離れ、後ろに立った。
14:20 雲の柱はエジプトの陣営とイスラエルの陣営の間に入った。雲は暗やみをもたらす一方で、夜を明るく照らした。こうして、一晩じゅう両者は近づけなかった。
14:21 モーセが手を海に向かって差し出すと、主は一晩じゅう激しい東風で海を押し返し、海を陸地に変えられた。水は二つに分かれた。
14:22 イスラエルの人々は海の真ん中を、かわいた地面を歩いて進んだ。水は彼らの右にも左にも壁のようにそびえ立っていた。
14:23 エジプトの人々は彼らを追って、ファラオのすべての馬と戦車と騎兵とともに、海の真ん中まで入ってきた。
14:24 明け方近く、主は火と雲の柱の中からエジプトの軍勢を見おろし、その軍勢を混乱に陥れられた。
14:25 主は戦車の車輪を外し、進むのを重くされた。エジプトの人々は言った。「イスラエルから逃げよう。主が彼らのために、わたしたちエジプトと戦っているのだ。」
14:26 そのとき主はモーセに言われた。「海に向かって手を伸ばしなさい。そうすれば水がエジプトの上に、その戦車と騎兵の上に戻ってくる。」
14:27 モーセが海に向かって手を伸ばすと、夜明けとともに海はもとの流れに戻った。エジプトの人々は逃げようとして海に向かったが、主は彼らを海の真ん中に投げ込まれた。
14:28 水は戻り、戦車と騎兵をのみ込んだ。イスラエルを追って海に入ってきたファラオの軍勢は、一人残らず消えてしまった。
14:29 けれどもイスラエルの人々は、海の真ん中をかわいた地面を歩いて渡った。水は彼らの右にも左にも壁のようにそびえ立っていた。
14:30 こうして主はその日、イスラエルをエジプトの手から救い出された。イスラエルは、海辺に死んで横たわるエジプトの人々を見た。
14:31 イスラエルは、主がエジプトに示された大きな力を見た。民は主を恐れ、主とそのしもべモーセを信じた。
15:1 そのとき、モーセとイスラエルの人々は、主にこの歌を歌った。「わたしは主に歌おう。主は輝かしく勝利された。馬もそれに乗る者も、主は海に投げ込まれた。
15:2 主はわたしの力、わたしの歌。主はわたしの救いとなられた。この方こそわたしの神。わたしはこの方をたたえる。わたしの父の神。わたしはこの方をあがめる。
15:3 主は戦う勇士。その名は主。
15:4 ファラオの戦車と軍勢を、主は海に投げ込まれた。えり抜きの将校たちも、葦の海に沈んだ。
15:5 深い水が彼らをおおった。彼らは石のように深みへ沈んでいった。
15:6 主よ、あなたの右の手は力に輝く。主よ、あなたの右の手は敵を打ち砕く。
15:7 あなたの輝かしい威光によって、立ち向かう者を打ち倒す。怒りを放てば、それは彼らを藁のように焼き尽くす。
15:8 あなたの鼻の息によって、水は積み上がった。流れは堤のようにそそり立ち、深い水は海の真ん中で固まった。
15:9 敵は言った。「追いかけて、追いついてやる。奪った物を分けよう。思う存分やってやる。剣を抜き、この手で滅ぼしてやる。」
15:10 あなたが息を吹きかけると、海は彼らをおおった。彼らは大水の中を、鉛のように沈んでいった。
15:11 主よ、神々の中で、あなたのような方がほかにいるだろうか。聖なることにおいて輝き、恐れられ、ほめたたえられる方。奇跡を行う方。あなたのような方が、どこにいるだろうか。
15:12 あなたが右の手を伸ばすと、地は彼らを飲み込んだ。
15:13 あなたは変わらぬ慈しみによって、あがなった民を導かれた。その力で、あなたの聖なる住まいへと導かれた。
15:14 諸国の民はそれを聞いて震えあがった。ペリシテに住む人々は、恐れにとらえられた。
15:15 エドムの首長たちはうろたえ、モアブの指導者たちは震えおののいた。カナンに住む人々はみな、力を失った。
15:16 恐れとおののきが彼らを襲う。あなたの大きな腕の前に、彼らは石のように動けなくなる。主よ、あなたの民が通り過ぎるまで、あなたが手に入れた民が通り過ぎるまで。
15:17 あなたは彼らを導き入れ、あなたが受け継ぐ山に植えられる。主よ、それはあなたが住まいとして造られた場所。あなたの手が築いた聖なる所。
15:18 主は世々かぎりなく、王として治められる。
15:19 ファラオの馬が戦車や騎兵とともに海に入って行くと、主は海の水を彼らの上に戻された。でもイスラエルの人々は、海の真ん中を歩いて渡った。乾いた地面の上を進んだのだ。
15:20 そのとき、アロンの姉で預言者のミリアムが、手にタンバリンを取った。すると女たちがみな、タンバリンを手に踊りながら、彼女のあとに続いて出て行った。
15:21 ミリアムは人々に応えて歌った。「主に向かって歌おう。主は輝かしい勝利をおさめられた。馬も乗り手も、海に投げ込まれた。」
15:22 モーセはイスラエルの人々を葦の海から連れて出発し、彼らはシュルの荒れ野へと出て行った。三日のあいだ荒れ野を歩いたが、水は見つからなかった。
15:23 やがて彼らはマラに着いた。でもマラの水は苦くて、飲むことができなかった。だからその場所はマラ（苦い）と呼ばれた。
15:24 人々はモーセに不平を言った。「わたしたちは何を飲めばいいんだ。」
15:25 モーセが主に叫び求めると、主は一本の木を示された。モーセがそれを水に投げ入れると、水は甘くなった。主はそこで人々に掟と定めを与え、そこで彼らを試された。
15:26 主は言われた。「もしあなたが、あなたの神である主の声によく聞き従い、主の目に正しいことを行い、その命令に耳を傾け、そのすべての掟を守るなら、わたしがエジプトに下したような病を、あなたには一つも下さない。わたしは主、あなたをいやす者だから。」
15:27 それから彼らはエリムに着いた。そこには十二の水の湧く泉と、七十本のなつめやしの木があった。人々はその水のほとりで宿営した。
16:1 イスラエルの人々は皆、エリムを出発して、エリムとシナイの間にあるシンの荒れ野にやって来た。エジプトの地を出てから二か月目の十五日のことだった。
16:2 その荒れ野で、イスラエルの人々は皆、モーセとアロンに不満をぶつけた。
16:3 イスラエルの人々は二人に言った。「エジプトにいたときに、いっそ主の手にかかって死んでいたらよかった。あそこでは肉の鍋を囲んで、パンを好きなだけ食べられたんだ。それなのにあなたたちは、わたしたちをこの荒れ野に連れ出して、この集団をみんな飢え死にさせようとしている。」
16:4 すると主はモーセに言われた。「見なさい。わたしはあなたたちのために、天からパンを降らせる。人々は出て行って、その日に必要な分を毎日集めなさい。こうしてわたしは、彼らがわたしの教えに従って歩むかどうかを試すのだ。
16:5 六日目には、集めて来たものを整えて調理しなさい。それは毎日集める分の二倍になる。」
16:6 モーセとアロンはイスラエルの人々全員に言った。「今日の夕方には、あなたたちをエジプトの地から導き出したのが主であることが分かる。
16:7 また朝には、主の栄光を見ることになる。主は、あなたたちが主に向けた不満を聞かれたのだ。わたしたちに不満をぶつけるとは、いったいわたしたちが何者だというのか。」
16:8 さらにモーセは言った。「主が夕方には食べる肉を、朝には満ち足りるほどのパンをあなたたちに与えてくださる。それは、あなたたちが主に向けてぶつけている不満を、主が聞かれたからだ。わたしたちが何者だというのか。あなたたちの不満はわたしたちに向けられたものではなく、主に向けられたものなのだ。」
16:9 モーセはアロンに言った。「イスラエルの人々全員にこう伝えなさい。『主の前に進み出なさい。主があなたたちの不満を聞かれたからだ。』」
16:10 アロンがイスラエルの人々全員に語っているとき、人々が荒れ野の方を振り向くと、なんと雲の中に主の栄光が現れた。
16:11 主はモーセに言われた。
16:12 「わたしはイスラエルの人々の不満を聞いた。彼らにこう伝えなさい。『あなたたちは夕方には肉を食べ、朝にはパンで満ち足りる。そしてあなたたちは、わたしがあなたたちの神、主であることを知る。』」
16:13 夕方になると、うずらが飛んできて宿営をおおった。朝には、宿営の周りに露が一面に降りていた。
16:14 その露が消えると、荒れ野の地面一面に、細かくて薄いもの、地の霜のように細かいものが残っていた。
16:15 イスラエルの人々はそれを見て、「これは何だろう」と互いに言い合った。それが何なのか分からなかったからだ。モーセは彼らに言った。「これは、主があなたたちに食べ物として与えてくださったパンだ。」
16:16 主が命じられたことはこうだ。『それぞれ食べる分だけ集めなさい。あなたたちの人数に合わせて、一人につき一オメルずつ、自分の天幕にいる人の分を取りなさい。』
16:17 イスラエルの人々はそのとおりにした。多く集める者もいれば、少なく集める者もいた。
16:18 オメルで量ってみると、多く集めた者も余ることがなく、少なく集めた者も足りないことがなかった。それぞれが食べる分だけ集めていたのだ。
16:19 モーセは彼らに言った。「だれも、それを朝まで残しておいてはいけない。」
16:20 しかし、彼らはモーセの言うことを聞かなかった。何人かは朝まで残しておいた。すると、それには虫がわいて臭くなった。モーセは彼らに怒った。
16:21 人々は毎朝、それぞれ食べる分だけそれを集めた。日が高くなって暑くなると、それは溶けてしまった。
16:22 六日目になると、人々はパンを二倍、一人につき二オメル集めた。すると、民の指導者たちがみなやって来て、モーセに報告した。
16:23 モーセは彼らに言った。「これは、主が言われたことだ。『明日は主のための休みの日、聖なる安息の日だ。焼くものは今日焼き、煮るものは今日煮ておきなさい。残った分はみな、朝まで取っておきなさい。』」
16:24 人々はモーセが命じたとおり、それを朝まで取っておいた。すると、それは臭くならず、虫もわかなかった。
16:25 モーセは言った。「今日はそれを食べなさい。今日は主のための安息の日、休みの日だから。今日は野原に出ても、それは見つからない。」
16:26 「六日の間は集めなさい。でも七日目は安息の日だから、その日には何もない。」
16:27 ところが七日目に、民の中には集めに出て行く者がいた。しかし、何も見つからなかった。
16:28 主はモーセに言われた。「あなたたちは、いつまでわたしの命令と教えを守るのを拒むのか。
16:29 よく見なさい。主はあなたたちに安息の日を与えた。だから六日目には、二日分のパンを与えるのだ。だれもが自分のところにとどまりなさい。七日目には、自分の場所から出てはならない。」
16:30 そこで民は七日目に休んだ。
16:31 イスラエルの人々は、それをマナと名づけた。それはコリアンダーの種のように白く、蜜を入れたウエハースのような味だった。
16:32 モーセは言った。「主が命じられたことはこうだ。『これを一オメル分、あなたたちの子孫のために取っておきなさい。わたしがあなたたちをエジプトの地から導き出したとき、荒れ野で食べさせたパンを、子孫が見られるようにするためだ。』」
16:33 モーセはアロンに言った。「壺を一つ取り、その中にマナを一オメル分入れなさい。そしてそれを主の前に置き、あなたたちの子孫のために取っておきなさい。」
16:34 主がモーセに命じられたとおり、アロンはそれを契約の箱の前に置いて保管した。
16:35 イスラエルの人々は、人が住む地に着くまで、四十年の間マナを食べた。カナンの地の境に着くまで、彼らはマナを食べ続けた。
16:36 なお、一オメルは一エファの十分の一である。
17:1 イスラエルの人々の集団はみな、主の命令にしたがって、シンの荒野を出発した。旅を重ねながら進み、レフィディムに着いて、そこに宿営した。ところが、人々が飲む水がなかった。
17:2 それで人々はモーセに食ってかかり、「飲み水をくれ」と言った。モーセは彼らに答えた。「どうしてわたしに食ってかかるのか。どうして主を試すようなことをするのか。」
17:3 しかし、人々はそこでのどが渇いて水を求め、モーセに不平を言った。「どうしてわたしたちをエジプトから連れ出したんだ。わたしも、子どもたちも、家畜も、のどが渇いて死なせるためか。」
17:4 モーセは主に叫んで言った。「わたしはこの人々をどうすればいいのですか。もう少しで、みんなにわたしは石で打ち殺されそうです。」
17:5 主はモーセに言われた。「人々の先に立って進みなさい。イスラエルの長老たちの何人かを連れて行きなさい。それから、あなたがナイル川を打ったあの杖を手に持って行きなさい。
17:6 見なさい。わたしはホレブで、あの岩の上であなたの前に立つ。あなたがその岩を打つと、そこから水が出て、人々はそれを飲むことができる。」モーセは、イスラエルの長老たちの見ている前で、そのとおりにした。
17:7 そしてモーセは、その場所をマサ、またメリバと名づけた。イスラエルの人々がそこで争い、「主はわたしたちの中におられるのか、いないのか」と言って主を試したからである。
17:8 そのころ、アマレクの人々がやって来て、レフィディムでイスラエルと戦った。
17:9 モーセはヨシュアに言った。「わたしたちのために男たちを選び、出て行ってアマレクと戦ってくれ。明日、わたしは神の杖を手に持って、丘の上に立つ。」
17:10 ヨシュアは、モーセが言ったとおりにして、アマレクと戦った。一方、モーセとアロンとフルは、丘の上に登った。
17:11 モーセが手を上げているときは、イスラエルが優勢になった。しかし、手を下ろすときは、アマレクが優勢になった。
17:12 やがてモーセの両手は重くなってきた。そこで彼らは石を取ってモーセの下に置き、モーセはその上にすわった。そして、アロンとフルが、ひとりはこちら側、もうひとりはあちら側から、モーセの両手を支えた。こうして彼の両手は、日が沈むまでしっかりと上がったままだった。
17:13 ヨシュアは、剣でアマレクとその軍勢を打ち破った。
17:14 すると主はモーセに言われた。「このことを、記録として書物に書きとめ、それをヨシュアの耳にしっかりと入れておきなさい。わたしは、アマレクの記憶を天の下から完全に消し去るからだ。」
17:15 モーセは一つの祭壇を築き、それを「主はわたしの旗」と名づけた。
17:16 そして彼は言った。「主の御座に向かって手が上げられた。主は、代々にわたってアマレクと戦われる。」
18:1 さて、モーセのしゅうとで、ミディアンの祭司であるイテロは、神がモーセとその民イスラエルのためにされたすべてのこと、そして主がイスラエルをエジプトから導き出されたことを聞いた。
18:2 モーセのしゅうとイテロは、モーセが実家に帰していた妻チッポラを引き取った。
18:3 また、彼女のふたりの息子も連れて来た。ひとりの名はゲルショムといった。モーセが「わたしは異国の地で寄留者となった」と言ったからである。
18:4 もうひとりの名はエリエゼルといった。モーセが「わたしの父の神がわたしを助け、ファラオの剣からわたしを救い出してくださった」と言ったからである。
18:5 モーセのしゅうとイテロは、モーセの息子たちと妻を連れて、荒れ野にいるモーセのもとにやって来た。そこは、モーセが宿営していた神の山のあたりだった。
18:6 イテロはモーセに伝えた。「あなたのしゅうとであるわたしイテロが、あなたの妻とそのふたりの息子を連れて、あなたのところへ来ました。」
18:7 モーセはしゅうとを迎えに出て行き、おじぎをして口づけした。ふたりはたがいの無事をたずね合い、それから天幕に入った。
18:8 モーセはしゅうとに、主がイスラエルのためにファラオとエジプトになさったことを、すべて語った。旅の途中で自分たちを襲ったあらゆる苦しみのことも、そのたびに主が救い出してくださったことも話した。
18:9 イテロは、主がイスラエルにしてくださったすべての良いことを聞いて喜んだ。主が彼らをエジプトの手から救い出してくださったからである。
18:10 イテロは言った。「主がたたえられますように。主はあなたたちをエジプトとファラオの手から救い出し、この民をエジプトの支配から助け出してくださった。
18:11 今こそわたしは分かった。主はどんな神々よりも偉大なお方だ。エジプトが高ぶってイスラエルにひどい仕打ちをしたそのことで、主はご自分の力を示されたのだから。」
18:12 モーセのしゅうとイテロは、神にささげる焼き尽くすいけにえと、ほかのいけにえを持って来た。そしてアロンとイスラエルの長老たちがみなやって来て、神の前でモーセのしゅうとといっしょに食事をした。
18:13 翌日、モーセは民をさばくために座についた。民は朝から夕方まで、モーセのそばに立ち続けた。
18:14 モーセのしゅうとは、モーセが民のためにしていることをすべて見て、こう言った。「あなたは民のために、いったい何をしているのか。どうしてあなたひとりで座って、民はみな朝から夕方まであなたのそばに立っているのか。」
18:15 モーセはしゅうとに答えた。「民が神のみこころをたずねようと、わたしのところへ来るからです。
18:16 何かもめごとがあると、みんなわたしのところに来ます。それでわたしがそれぞれの間をさばき、神のおきてと教えを知らせているのです。」
18:17 するとモーセのしゅうとは言った。「あなたのやり方は良くない。
18:18 あなたも、あなたといっしょにいるこの民も、きっと疲れ果ててしまう。この仕事はあなたには重すぎて、ひとりでは負いきれないからだ。
18:19 だから、わたしの言うことを聞きなさい。アドバイスをしよう。神があなたと共にいてくださるように。あなたは民のために神の前に立ち、彼らの問題を神のところへ持っていきなさい。
18:20 そして、おきてと教えを彼らにしっかり伝え、進むべき道と、なすべきことを教えてあげなさい。
18:21 それと、民全体の中から、力があって神を敬い、真実で、不正な利益を憎む人たちを選び出しなさい。その人たちを、千人、百人、五十人、十人の責任者として立てるのだ。
18:22 その人たちに、いつでも民をさばかせるといい。大きな問題はあなたのところに持ってこさせ、小さな問題は自分たちでさばかせる。そうすればあなたの負担は軽くなり、彼らがいっしょに担ってくれる。
18:23 もしこのようにして、神もそう命じられるなら、あなたはやり続けることができるし、この民もみんな、安心して自分の場所に帰れるだろう。」
18:24 モーセはしゅうとの言うことを聞き入れ、言われたとおりにすべて行った。
18:25 モーセはイスラエル全体の中から力のある人たちを選び、彼らを民の上に立つ長とした。千人、百人、五十人、十人の責任者である。
18:26 彼らはいつでも民をさばいた。難しい問題はモーセのところに持ってきたが、小さな問題は自分たちでさばいた。
18:27 それからモーセはしゅうとを見送り、しゅうとは自分の国へ帰っていった。
19:1 イスラエルの人々がエジプトを出てから三か月目、ちょうどその日に、彼らはシナイの荒れ野に着いた。
19:2 彼らはレフィディムを出発してシナイの荒れ野に入り、そこで宿営した。イスラエルは山の前に、そこにテントを張ったのだ。
19:3 モーセが神のもとへ登っていくと、主は山から彼に呼びかけて言われた。「ヤコブの家にこう伝え、イスラエルの人々に告げなさい。
19:4 『あなたたちは、わたしがエジプトに何をしたかを見た。そしてわたしが、あなたたちを鷲の翼に乗せるようにして、わたしのもとへ連れて来たことも見た。
19:5 だから今、もしあなたたちが本当にわたしの声に聞き従い、わたしとの契約を守るなら、あなたたちはすべての民の中で、わたしの特別な宝となる。地はすべてわたしのものだからだ。
19:6 あなたたちはわたしにとって、祭司の王国、聖なる国民となる。』これが、あなたがイスラエルの人々に語るべき言葉だ。」
19:7 モーセは戻ってきて、民の長老たちを呼び集め、主が命じられたこれらの言葉をすべて、彼らの前で伝えた。
19:8 民はみな声をそろえて答えた。「主が語られたことを、わたしたちはすべて行います。」モーセは民のこの言葉を、主のもとへ持ち帰って伝えた。
19:9 主はモーセに言われた。「わたしは濃い雲の中で、あなたのところへ行く。わたしがあなたと語るのを民が聞いて、これからもずっとあなたを信じるようになるためだ。」モーセは民の言葉を主に伝えた。
19:10 主はモーセに言われた。「民のところへ行き、今日と明日、彼らを聖なるものとしなさい。彼らに衣服を洗わせ、
19:11 三日目に備えさせなさい。三日目に、主が民全員の見ている前で、シナイ山に降りて来るからだ。
19:12 民の周りに境界を設けて、こう言いなさい。『山に登ったり、その端に触れたりしないように気をつけなさい。山に触れる者は、必ず死ぬことになる。
19:13 そのような者に手を触れてはならない。必ず石で打ち殺すか、矢で射殺さなければならない。獣であれ人であれ、生かしておいてはならない。』角笛が長く鳴り響いたら、彼らは山に登ってよい。」
19:14 モーセは山を下りて、民のところへ行った。そして民を聖なるものとし、彼らは自分の衣服を洗った。
19:15 モーセは民に言った。「三日目に備えなさい。女に近づいてはならない。」
19:16 三日目の朝になると、雷と稲妻が起こり、濃い雲が山にかかった。角笛の音がとても大きく鳴り響いた。宿営にいた民は皆、震え上がった。
19:17 モーセは、神に会わせるため、民を宿営から連れ出した。彼らは山のふもとに立った。
19:18 シナイ山は全体が煙に包まれていた。主が火の中を降りて来られたからだ。その煙はかまどの煙のように立ち上り、山全体が激しく震えた。
19:19 角笛の音は、ますます大きく鳴り響いていった。モーセが語りかけると、神は声で答えられた。
19:20 主はシナイ山の頂に降りて来られた。そして主はモーセを山の頂に呼ばれ、モーセは登って行った。
19:21 主はモーセに言われた。「下って行って、民に警告しなさい。彼らが主を見ようとして境界を破り、押し寄せて、多くの者が死ぬことのないようにするためだ。
19:22 主に近づく祭司たちも、身を聖なるものとしなければならない。主が彼らを打つことのないようにだ。」
19:23 モーセは主に言った。「民はシナイ山に登ることはできません。あなたご自身が、『山に境界を設けて、聖なるものとしなさい』と、わたしたちに警告されたからです。」
19:24 主はモーセに言われた。「下って行きなさい。そして、あなたとアロンと一緒に登って来なさい。しかし祭司たちと民は、境界を破って主のもとに登ろうとしてはならない。主が彼らを打つことのないようにだ。」
19:25 モーセは民のところへ下って行き、彼らにこう伝えた。
20:1 神はこれらすべての言葉を語られた。
20:2 「わたしは、あなたの神、主である。あなたをエジプトの地から、奴隷の家から連れ出した者だ。
20:3 あなたには、わたしのほかに、ほかの神々があってはならない。
20:4 自分のために偶像を造ってはならない。上の天にあるもの、下の地にあるもの、地の下の水の中にあるもの、その姿に似せたものは、どんなものも造ってはならない。
20:5 それらにひれ伏したり、それらに仕えたりしてはならない。わたしは、あなたの神、主であり、ねたむ神だからだ。わたしを憎む者には、父の罪を子に、三代、四代にまで問う。
20:6 けれども、わたしを愛し、わたしの命令を守る者には、幾千代にわたって慈しみを注ぐ。
20:7 あなたの神、主の名を、みだりに口にしてはならない。その名をみだりに口にする者を、主は罰せずにはおかないからだ。
20:8 安息日を覚えて、これを聖なる日としなさい。
20:9 六日の間働いて、あなたのすべての仕事をしなさい。
20:10 でも七日目は、あなたの神、主の安息日だ。その日には、どんな仕事もしてはならない。あなたも、あなたの息子も娘も、男女の召し使いも、家畜も、あなたの町にいる寄留者もだ。
20:11 主は六日の間に、天と地と海と、その中のすべてのものを造り、七日目に休まれたからだ。だから主は安息日を祝福し、これを聖なる日とされた。
20:12 あなたの父と母を敬いなさい。そうすれば、あなたの神、主が与えてくださる土地で、あなたは長く生きることができる。
20:13 人を殺してはならない。
20:14 不倫をしてはならない。
20:15 盗んではならない。
20:16 隣人について、嘘の証言をしてはならない。
20:17 隣人の家を欲しがってはならない。隣人の妻も、男女の召し使いも、牛やろばも、隣人のものは何一つ欲しがってはならない。」
20:18 民はみな、雷鳴と稲妻、角笛の音、そして山から立ちのぼる煙を目にした。それを見て、民は震え上がり、遠く離れて立った。
20:19 そして民はモーセに言った。「あなたがわたしたちに語ってください。そうすれば聞きます。でも、神が直接わたしたちに語りかけないでください。そんなことになったら、わたしたちは死んでしまいます。」
20:20 モーセは民に言った。「恐れることはない。神が来られたのは、あなたたちを試すためだ。そして、あなたたちが神を恐れる思いを持ち、罪を犯さないようにするためだ。」
20:21 民は遠く離れて立っていた。でもモーセは、神がおられる濃い暗闇に近づいて行った。
20:22 主はモーセに言われた。「イスラエルの人々にこう伝えなさい。あなたたちは、わたしが天からあなたたちに語りかけたのを、自分の目で見た。
20:23 あなたたちは、わたしと並べて銀の神々を造ってはならない。金の神々も、自分のために造ってはならない。
20:24 あなたはわたしのために土で祭壇を築きなさい。その上で、羊や牛を、焼き尽くすいけにえと和解のいけにえとしてささげなさい。わたしが自分の名を覚えさせるすべての場所で、わたしはあなたのもとに来て、あなたを祝福する。
20:25 もしわたしのために石で祭壇を築くなら、切り出した石で築いてはならない。石にのみを当てれば、その石を汚すことになるからだ。
20:26 わたしの祭壇には、階段で上ってはならない。その上で、あなたの裸が見えてしまわないためだ。
21:1 あなたが人々の前に示すべき決まりは、次のとおりである。
21:2 ヘブライ人の奴隷を買った場合、その人は六年間働き、七年目には自由の身となって、代金を払わずに出ていける。
21:3 独りで来たのなら、独りで出ていく。妻がいたのなら、妻もいっしょに出ていく。
21:4 主人がその人に妻を与え、妻が息子や娘を産んでいた場合、その妻と子どもたちは主人のものとなり、その人は独りで出ていく。
21:5 しかし、もしその奴隷が「わたしは主人と妻と子どもたちを愛しています。自由になって出ていきたくありません」とはっきり言うなら、
21:6 主人はその人を神のもとに連れて行く。そして戸口か柱のところに立たせ、きりで耳を刺し通す。こうして、その人は一生、主人に仕えることになる。
21:7 ある人が自分の娘を女奴隷として売った場合、その娘は男の奴隷のようには出ていけない。
21:8 もし、彼女を自分のものにと決めていた主人が、彼女を気に入らなくなったら、買い戻させなければならない。彼女を裏切ったのだから、外国の民に売る権利はない。
21:9 もし、彼女を自分の息子のものと決めたなら、娘に対する定めのとおりに扱わなければならない。
21:10 もし、主人がほかに妻をめとっても、彼女への食べ物と衣服と夫婦の務めを減らしてはならない。
21:11 もし、この三つを彼女にしないなら、彼女は代金を払わずに自由に出ていける。
21:12 人を打って死なせた者は、必ず死刑にされる。
21:13 しかし、わざと狙ったのではなく、神がその手にゆだねられて起きたことなら、わたしはその者が逃げ込める場所を定めておく。
21:14 だが、ある人が仲間を悪だくみで殺そうとして襲いかかったなら、たとえわたしの祭壇にすがっていても、そこから引き離して死刑にせよ。
21:15 自分の父や母を打つ者は、必ず死刑にされる。
21:16 人をさらった者は、その人を売っていても、まだ手もとに置いていても、必ず死刑にされる。
21:17 自分の父や母をののしる者は、必ず死刑にされる。
21:18 人々が争って、一方が石やこぶしで相手を打ち、相手が死なずに床に着いた場合、
21:19 でも、その人が起き上がり、杖をついて外を歩けるようになれば、打った者は罰を受けなくてよい。ただし、仕事を休んだ分を償い、完全に治るまで面倒を見なければならない。
21:20 人が自分の男の奴隷や女の奴隷を杖で打ち、その場で死なせてしまった場合、その者は必ず罰を受ける。
21:21 しかし、その奴隷が一日か二日生きのびたなら、罰は受けない。奴隷は主人の財産だからだ。
21:22 人々が争っていて、妊娠している女性を突き飛ばし、その子が流れ出てしまったが、それ以上の重い傷がなかった場合、その女性の夫が求めるとおりに罰金を払わなければならない。額は裁判官の判断による。
21:23 しかし、それ以上の重い傷が残った場合は、命には命で償う。
21:24 目には目、歯には歯、手には手、足には足、
21:25 やけどにはやけど、傷には傷、打ち身には打ち身で償う。
21:26 人が自分の男の奴隷や女の奴隷の目を打ち、それをだめにしてしまった場合、その目の代わりに、奴隷を自由にして去らせなければならない。
21:27 また、男の奴隷や女の奴隷の歯を打ち折った場合も、その歯の代わりに、奴隷を自由にして去らせなければならない。
21:28 牛が男または女を突いて死なせた場合、その牛は必ず石で打ち殺され、その肉を食べてはならない。ただし、牛の持ち主は罪に問われない。
21:29 しかし、その牛が以前から突く癖があり、持ち主が注意を受けていたのに閉じ込めておかず、男または女を死なせた場合は、その牛は石で打ち殺され、持ち主も死刑にされる。
21:30 もし持ち主に賠償金が課された場合は、命の償いとして、課された額をすべて払わなければならない。
21:31 男の子を突いても、女の子を突いても、この同じ規定に従って処理される。
21:32 牛が男の奴隷や女の奴隷を突いた場合は、その持ち主に銀貨三十シェケルを払い、牛は石で打ち殺される。
21:33 人が穴を開けたり掘ったりして、ふたをしないでおき、そこに牛やロバが落ちた場合、
21:34 その穴を掘った者が弁償し、家畜の持ち主にお金を払う。そして死んだ家畜は自分のものになる。
21:35 人の牛が隣人の牛を突いて死なせた場合は、生きている牛を売って、その代金を二人で分ける。死んだ牛も二人で分ける。
21:36 しかし、その牛が以前から突く癖があると知られていたのに、持ち主が閉じ込めておかなかった場合は、牛の代わりに牛で必ず償わなければならない。死んだ牛は自分のものになる。
22:1 牛または羊を盗んで、それをほふったり売ったりした場合は、牛一頭の代わりに五頭の牛を、羊一頭の代わりに四頭の羊を払わなければならない。
22:2 泥棒が家に押し入っているところを見つけられ、打たれて死んでも、その者を殺したことに血の責任はない。
22:3 しかし、日が昇ってからのことなら、その者には血の責任がある。泥棒は必ず償わなければならない。もし何も持っていなければ、盗んだ分の埋め合わせとして自分の身が売られる。
22:4 盗んだ物が牛でもロバでも羊でも、生きたまま彼の手もとで見つかった場合は、二倍にして払わなければならない。
22:5 人が畑やぶどう畑の作物を食べさせてしまい、自分の家畜を放して他人の畑で食べさせた場合は、自分の畑の一番良いものと、自分のぶどう畑の一番良いもので償わなければならない。
22:6 火が出て、いばらに燃え移り、積んである麦束や立っている作物、あるいは畑が焼けてしまった場合は、火を出した者が必ず償わなければならない。
22:7 人が隣人にお金や品物を預けて、それがその人の家から盗まれた場合、泥棒が見つかれば、泥棒は二倍にして払わなければならない。
22:8 泥棒が見つからない場合は、その家の主人が神の前に出て、隣人の持ち物に手を出していないことを示さなければならない。
22:9 牛でもろばでも羊でも衣服でも、なくなったものについて『これは自分のものだ』と言い張る争いがあれば、どちらの言い分も神の前に持ち出さなければならない。神が有罪とした者が、相手に二倍にして払う。
22:10 人が隣人にろばや牛や羊など、どんな家畜でも預けて、それが誰も見ていないうちに死んだり、傷ついたり、連れ去られたりした場合は、
22:11 二人の間で、預かった者が隣人の持ち物に手を出していないと主に誓う。持ち主はそれを受け入れ、預かった者は償わなくてよい。
22:12 しかし、その家畜が確かに預かった者のところから盗まれたのなら、持ち主に償わなければならない。
22:13 野獣に引き裂かれた場合は、その証拠を持って来れば、引き裂かれたものについては償わなくてよい。
22:14 人が隣人から家畜を借りて、それが持ち主のいないところで傷ついたり死んだりした場合は、必ず償わなければならない。
22:15 しかし持ち主がそばにいたのなら、償わなくてよい。それが雇ったものであれば、その借り賃でまかなわれる。
22:16 人がまだ婚約していない処女を誘惑して一緒に寝た場合は、その女性のために結納金を払い、妻としなければならない。
22:17 もし父親がその女性を彼に与えることを強く拒むなら、彼は処女の結納金と同じだけのお金を払わなければならない。
22:18 魔術を使う女を生かしておいてはならない。
22:19 動物と寝る者は、必ず死刑にしなければならない。
22:20 主おひとりのほかの神々にいけにえをささげる者は、滅ぼし尽くさなければならない。
22:21 よその国から来て住む人を、いじめたり苦しめたりしてはならない。あなたたち自身も、エジプトの地でよそ者だったのだから。
22:22 夫を亡くした女性や、親のない子どもを、決して苦しめてはならない。
22:23 もしあなたが彼らを苦しめ、彼らがわたしに叫び求めるなら、わたしは必ずその叫びを聞く。
22:24 わたしは激しく怒り、剣であなたたちを殺す。そうすれば、あなたたちの妻は夫を失い、子どもたちは父を失うことになる。
22:25 もしあなたが、わたしの民のうちの貧しい人にお金を貸すなら、取り立て屋のように扱ってはならない。その人から利子を取ってはならない。
22:26 もしあなたが、隣人の上着を借金のかたに取るなら、日が沈む前に返さなければならない。
22:27 それは彼の唯一の掛け物であり、肌を覆うただ一枚の服なのだ。ほかに何を掛けて眠ればいいのか。彼がわたしに叫び求めれば、わたしは聞く。わたしは情け深い者だからだ。
22:28 神をののしってはならない。あなたの民の指導者を呪ってはならない。
22:29 収穫した穀物や、しぼった果汁のささげ物を、遅らせてはならない。あなたの息子のうち、最初に生まれた子を、わたしにささげなければならない。
22:30 牛や羊についても、同じようにしなければならない。生まれてから七日間は母親のそばに置き、八日目にわたしにささげなさい。
22:31 あなたたちは、わたしにとって聖なる者でなければならない。だから、野で獣にかみ裂かれた動物の肉を食べてはいけない。それは犬に投げ与えなさい。
23:1 根拠のないうわさを広めてはいけない。悪いことをする人に手を貸して、うその証言をしてはいけない。
23:2 多くの人が悪いことをしていても、それに従ってはいけない。裁判で証言するとき、多数派に流されて事実を曲げてはいけない。
23:3 また、貧しい人だからといって、その人の裁判をえこひいきしてはいけない。
23:4 もし、あなたの敵の牛やろばが迷っているのを見かけたら、必ずその人のところへ連れ戻してやりなさい。
23:5 あなたを憎む人のろばが、重い荷物の下敷きになって倒れているのを見たら、放っておいてはいけない。必ずその人を助けて、いっしょに荷を降ろしてやりなさい。
23:6 貧しい人が訴えを起こしたとき、その裁判を不当に曲げてはいけない。
23:7 うその訴えには関わってはいけない。罪のない正しい人を殺してはいけない。わたしは、悪い者を正しいとは認めないからだ。
23:8 わいろを受け取ってはいけない。わいろは、目の見える人の目をくらませ、正しい人の言い分をゆがめてしまうからだ。
23:9 よそから来て住んでいる人を、しいたげてはいけない。あなたたち自身、エジプトの地でよそ者だったのだから、よそ者の気持ちがよくわかるはずだ。
23:10 六年の間は、あなたの土地に種をまき、その収穫を取り入れなさい。
23:11 でも七年目には、その土地を休ませ、そのままにしておきなさい。そうすれば、あなたの民の貧しい人たちがそこで食べ物を得られる。その残りは野の獣が食べる。ぶどう畑もオリーブ畑も、同じようにしなさい。
23:12 六日の間は自分の仕事をし、七日目には休みなさい。そうすれば、あなたの牛やろばも休むことができ、あなたの家で働く女奴隷の子や、よそから来て住んでいる人も、ひと息つける。
23:13 わたしがあなたたちに言ったことを、すべて守りなさい。ほかの神々の名を口にしてはならない。あなたの口からそれを聞かせてはならない。
23:14 年に三度、わたしのために祭りを行いなさい。
23:15 種を入れないパンの祭りを守りなさい。わたしが命じたとおり、アビブの月の決められた時期に、七日の間、種を入れないパンを食べなさい。あなたはこの月にエジプトを出たからだ。だれもわたしの前に手ぶらで出てはならない。
23:16 刈り入れの祭りも行いなさい。畑にまいて育てた作物の、最初の実りを祝う祭りだ。また、取り入れの祭りも行いなさい。年の終わりに、畑からその実りを取り入れるときの祭りだ。
23:17 年に三度、あなたの家の男はみな、主なる神の前に出なさい。
23:18 わたしにささげるいけにえの血を、種を入れたパンといっしょにささげてはならない。祭りでささげた脂を、朝まで残しておいてはならない。
23:19 あなたの土地の最初の実りの、いちばん良いものを、あなたの神、主の家に持って来なさい。子やぎを、その母の乳で煮てはならない。
23:20 見なさい。わたしは使いをあなたの前に送る。道であなたを守り、わたしが用意した場所へあなたを導くためだ。
23:21 その使いに気をつけ、その声に聞き従いなさい。逆らってはならない。彼はあなたたちの背きを見のがさないからだ。わたしの名が彼のうちにあるからだ。
23:22 もしあなたが本当にその声に聞き従い、わたしの語ることをすべて行うなら、わたしはあなたの敵の敵となり、あなたを苦しめる者を苦しめる。
23:23 わたしの使いはあなたの前を進み、あなたをアモリ人、ヘト人、ペリジ人、カナン人、ヒビ人、エブス人のところへ導く。そして、わたしは彼らを滅ぼす。
23:24 あなたは彼らの神々を拝んではならない。それに仕えてはならない。彼らのすることをまねてはならない。かえって、それらを徹底的に打ち壊し、彼らの石の柱を粉々に砕きなさい。
23:25 あなたが、あなたの神である主に仕えるなら、主はあなたのパンと水を祝福する。わたしはあなたの中から病気を取り除く。
23:26 あなたの土地では、流産する者も、子を産めない者もいなくなる。わたしはあなたの生きる日数を満たす。
23:27 わたしはあなたの前に、わたしへの恐れを送る。あなたが攻め込むすべての民を混乱させ、すべての敵があなたに背を向けて逃げるようにする。
23:28 わたしはあなたの前にスズメバチを送る。それがヒビ人、カナン人、ヘト人をあなたの前から追い払う。
23:29 わたしは彼らを一年のうちに追い払うことはしない。そんなことをすれば土地は荒れ果て、野の獣が増えてあなたを襲うからだ。
23:30 少しずつ、わたしは彼らをあなたの前から追い払う。あなたが増え広がって、その土地を受け継ぐまで。
23:31 わたしはあなたの境界を、葦の海からペリシテ人の海まで、また荒れ野からあの大河まで定める。わたしがその土地に住む者たちをあなたの手に渡すので、あなたは彼らを自分の前から追い払うことになる。
23:32 あなたは彼らとも、彼らの神々とも、契約を結んではならない。
23:33 彼らをあなたの土地に住まわせてはならない。彼らがあなたに、わたしへの罪を犯させるといけないからだ。もしあなたが彼らの神々に仕えれば、それは必ずあなたを捕らえるわなとなる。
24:1 主はモーセにこう言われた。「あなたは、アロン、ナダブ、アビフ、そしてイスラエルの長老七十人といっしょに、わたしのところへ登って来なさい。そして、離れたところから礼拝しなさい。
24:2 近づいてよいのはモーセ、あなただけだ。ほかの者は近づいてはならない。民もいっしょに登って来てはならない。」
24:3 モーセは戻って来て、主のすべての言葉と、すべての定めを民に伝えた。すると民はみな声をそろえて答えた。「主が語られた言葉を、わたしたちはすべて行います。」
24:4 モーセは主のすべての言葉を書き記した。そして翌朝早く起きて、山のふもとに祭壇を築き、イスラエルの十二の部族にちなんで十二の石の柱を立てた。
24:5 それから、イスラエルの若者たちを送り出した。彼らは主に焼き尽くすいけにえをささげ、雄牛を和解のいけにえとしてほふった。
24:6 モーセはその血の半分を取って鉢に入れ、残りの半分を祭壇に振りかけた。
24:7 そして契約の書を取り、民に読み聞かせた。民は言った。「主が語られたことを、わたしたちはすべて行い、従います。」
24:8 モーセは血を取って民に振りかけ、こう言った。「見なさい。これは、主がこれらすべての言葉に基づいてあなたたちと結ばれた契約の血だ。」
24:9 それから、モーセはアロン、ナダブ、アビフ、そしてイスラエルの長老七十人とともに登って行った。
24:10 彼らはイスラエルの神を見た。その足もとには、サファイアの石を敷きつめたような、澄みわたる空そのもののように輝くものがあった。
24:11 神はイスラエルの指導者たちに手を下されなかった。彼らは神を見て、食べたり飲んだりした。
24:12 主はモーセに言われた。「山に登って、わたしのところに来て、そこにとどまりなさい。わたしは、民を教えるために書き記した石の板、すなわち律法と戒めをあなたに授ける。」
24:13 モーセは、従者のヨシュアを連れて立ち上がった。そしてモーセは神の山に登った。
24:14 モーセは長老たちに言った。「わたしたちが戻ってくるまで、ここで待っていてほしい。アロンとフルがあなたたちと一緒にいる。もめごとのある人は、この二人のところへ行きなさい。」
24:15 モーセが山に登ると、雲が山をおおった。
24:16 主の栄光がシナイ山の上にとどまり、雲は六日間、山をおおっていた。七日目に、主は雲の中からモーセを呼ばれた。
24:17 主の栄光の現れは、イスラエルの人々の目には、山の頂で燃えさかる火のように見えた。
24:18 モーセは雲の中に入り、山に登っていった。モーセは四十日四十夜、山にとどまった。
25:1 主はモーセに言われた。
25:2 「イスラエルの人々に伝えなさい。わたしにささげ物を持ってくるように。心から進んでささげようとする人みんなから、わたしへのささげ物を受け取りなさい。
25:3 彼らから受け取るささげ物は、次のものだ。金、銀、青銅、
25:4 青、紫、緋色の糸、上質の亜麻布、やぎの毛、
25:5 赤くなめした雄羊の皮、じゅごんの皮、アカシアの木、
25:6 ともしびのための油、注ぎの油と香をたくための香料、
25:7 しまめのう、そしてエフォドと胸当てにはめ込むための宝石である。
25:8 そして、わたしのために聖所を造りなさい。そうすれば、わたしは彼らの中に住む。
25:9 わたしがあなたに示すとおり、幕屋のひな型と、そのすべての備品のひな型のとおりに、そっくり同じように造りなさい。
25:10 アカシアの木で箱を造りなさい。長さは二キュビト半、幅は一キュビト半、高さは一キュビト半とする。
25:11 それを純金でおおう。内側も外側もおおいなさい。そして、周りに金の縁飾りを作る。
25:12 金の環を四つ鋳造して、箱の四つの脚に取り付けなさい。片側に二つ、もう片側に二つの環を付ける。
25:13 アカシアの木で担ぎ棒を作り、金でおおいなさい。
25:14 その棒を箱の両側の環に通す。それで箱を担ぐためだ。
25:15 棒は箱の環に通したままにしておく。抜き取ってはならない。
25:16 そして、わたしがあなたに与えるあかしを、その箱に納めなさい。
25:17 純金で贖いのふたを作りなさい。長さは二キュビト半、幅は一キュビト半とする。
25:18 金で二つのケルビムを作る。槌で打ち出して、ふたの両端に作りなさい。
25:19 片方の端に一つのケルビムを、もう片方の端にもう一つのケルビムを作りなさい。ケルビムはふたと一つに、その両端に作る。
25:20 ケルビムは翼を上に広げ、その翼でふたを覆う。二つのケルビムは顔を向かい合わせ、ふたのほうに顔を向ける。
25:21 そのふたを箱の上にのせなさい。そして、わたしがあなたに与えるあかしを、その箱の中に納める。
25:22 わたしはそこであなたと会い、あかしの箱の上、二つのケルビムの間にあるふたの上から、あなたに語る。イスラエルの人々に伝えるべきことを、すべてそこであなたに命じる。
25:23 アカシアの木で机を作りなさい。長さは二キュビト、幅は一キュビト、高さは一キュビト半とする。
25:24 それを純金でおおい、周りに金の縁飾りを作りなさい。
25:25 机の周りには手のひらの幅の枠を作り、その枠の周りにも金の縁飾りを作りなさい。
25:26 机のために金の環を四つ作り、その四本の脚のところにある四つの角に取り付けなさい。
25:27 環は枠のすぐそばに付ける。机を担ぐための棒を通す差し込み口とするためである。
25:28 その棒はアカシアの木で作り、金でおおいなさい。それで机を担ぐ。
25:29 机で使う皿とひしゃく、注ぎのための壺と鉢も作りなさい。すべて純金で作る。
25:30 そして机の上には、供えのパンをのせ、いつもわたしの前に置いておきなさい。
25:31 純金で燭台を作りなさい。打ち出しの金一枚から作る。その台座と支柱、そしてアーモンドの花の形をした杯、丸い節、花の飾りは、すべて燭台と一体でなければならない。
25:32 燭台の両側からは、六本の枝が出ている。片側に三本、反対側に三本の枝が出る。
25:33 一本の枝には、アーモンドの花の形をした杯が三つあり、それぞれに丸い節と花がついている。もう一本の枝にも同じように、アーモンドの花の形をした杯が三つあり、丸い節と花がついている。燭台から出る六本の枝すべてを、こうして作る。
25:34 燭台の本体には、アーモンドの花の形をした杯が四つあり、それぞれに丸い節と花がついている。
25:35 燭台から出る六本の枝に合わせて、二本の枝の下に丸い節を一つ、次の二本の枝の下にも一つ、さらに次の二本の枝の下にも一つ置く。
25:36 これらの節と枝は、すべて燭台と一体でなければならない。燭台全体を、純金の打ち出し一枚で作る。
25:37 燭台のともしび皿を七つ作りなさい。そのともしび皿を上に載せ、燭台の前を照らすようにする。
25:38 芯を切るはさみと、その受け皿も純金で作る。
25:39 燭台とこれらの道具はすべて、純金一タラントで作りなさい。
25:40 山であなたに示された型のとおりに、よく見て作りなさい。
26:1 幕屋は、十枚の幕で作りなさい。撚り糸で織った上質な亜麻布に、青と紫と緋色の糸を使い、熟練した職人の手でケルビムの模様を織り込んで作る。
26:2 一枚の幕は、長さ二十八キュビト、幅四キュビト。どの幕もみな同じ大きさにする。
26:3 五枚の幕をつなぎ合わせて一つにし、残りの五枚も同じようにつなぎ合わせる。
26:4 一つ目のつなぎ合わせた幕の端に、青い糸で輪を作る。もう一方のつなぎ合わせた幕の端にも、同じように輪を作る。
26:5 一方の幕に五十個の輪を作り、もう一方のつなぎ合わせる幕の端にも五十個の輪を作る。輪と輪がちょうど向かい合うようにする。
26:6 そして金の留め金を五十個作り、それで幕を互いにつなぎ合わせて、幕屋を一つにする。
26:7 次に、幕屋を覆う天幕として、やぎの毛で作った幕を用意する。それは十一枚作る。
26:8 一枚の幕は、長さ三十キュビト、幅四キュビト。十一枚とも同じ大きさにする。
26:9 五枚の幕をつなぎ合わせて一組にし、残りの六枚をもう一組にする。六枚目の幕は、天幕の前で二つ折りにする。
26:10 一方の端になる幕の縁に五十個の輪を作り、もう一方のつなぎ合わせる幕の縁にも五十個の輪を作る。
26:11 そして青銅の留め金を五十個作り、それを輪に通して天幕をつなぎ合わせ、一つにする。
26:12 天幕の幕で余った部分、つまり余った幕の半分は、幕屋の後ろに垂らしておく。
26:13 天幕の幕は長さに余りが出るので、その余った部分を、こちら側に一キュビト、あちら側に一キュビトとして、幕屋の両側に垂らして覆いにする。
26:14 さらに天幕のために、赤く染めた雄羊の皮でおおいを作り、その上にもう一枚、じゅごんの皮のおおいをかける。
26:15 幕屋のために、アカシアの木で板を作り、それを立てて用いる。
26:16 板一枚の長さは十キュビト、幅は一キュビト半とする。
26:17 板一枚ごとに二つのほぞを作り、それを互いにかみ合うようにそろえる。幕屋の板はすべてこのように作る。
26:18 幕屋のために板を作りなさい。南側には二十枚の板を並べる。
26:19 その二十枚の板の下には、銀の台座を四十個作る。板一枚の下に、二つのほぞを受ける台座を二つ、次の板の下にも、二つのほぞを受ける台座を二つ置く。
26:20 幕屋のもう一方の側、北側にも二十枚の板を並べる。
26:21 その台座も銀で四十個作り、板一枚の下に二つ、次の板の下にも二つ置く。
26:22 幕屋の後ろ側、西側には六枚の板を作る。
26:23 幕屋の後ろの両隅のためには、板を二枚作る。
26:24 この二枚の板は下でぴったり合わせ、上も同じように合わせて、一つの環でとめる。二枚とも同じようにし、二つの隅のためのものとする。
26:25 こうして板は八枚になり、その銀の台座は十六個になる。板一枚の下に台座二つ、次の板の下にも台座二つを置く。
26:26 また、アカシアの木で横木を作る。幕屋の一方の側の板のために五本。
26:27 もう一方の側の板のためにも横木を五本、幕屋の後ろ、西側の板のためにも横木を五本作る。
26:28 板の真ん中を通す中央の横木は、端から端まで貫くようにする。
26:29 板は金でおおい、その環も金で作って、横木を通す差し口とする。横木も金でおおう。
26:30 そして、山であなたに示された設計のとおりに幕屋を建てる。
26:31 また、青、紫、緋色の糸と、より糸で織った上質の亜麻布で垂れ幕を作る。熟練した職人の手で、ケルビムの模様を織り込む。
26:32 この垂れ幕を、金でおおったアカシアの木の四本の柱に掛ける。柱の鉤は金で作り、銀の台座四つの上に立てる。
26:33 垂れ幕を留め金の下に掛け、その垂れ幕の奥に証しの箱を運び入れる。この垂れ幕が、聖所と最も聖なる場所とを分ける仕切りになる。
26:34 そして、最も聖なる場所にある証しの箱の上に、ふたを置く。
26:35 机は垂れ幕の外側に置き、燭台は机の向かい側、幕屋の南側に置く。机は北側に置く。
26:36 また、天幕の入り口には、青、紫、緋色の糸と、より糸で織った上質の亜麻布で幕を作る。刺繍を施した幕にする。
26:37 その幕のために、アカシアの木で柱を五本作り、金でおおう。留め金も金にする。そして、その柱のために青銅の台を五つ鋳造する。
27:1 祭壇はアカシアの木で作る。縦五キュビト、横五キュビトの正方形にし、高さは三キュビトにする。
27:2 その四隅に角を作る。角は祭壇と一つの木から続けて作り、全体を青銅でおおう。
27:3 灰を取り除くための壺のほか、十能、鉢、肉刺し、火皿を作る。これらの道具はすべて青銅で作る。
27:4 また、祭壇のために青銅の網で格子を作り、その網の四隅に青銅の輪を四つ付ける。
27:5 この格子は祭壇の下のふちの下に取り付け、網が祭壇の高さの半分まで届くようにする。
27:6 祭壇をかつぐための棒も作る。棒はアカシアの木で作り、青銅でおおう。
27:7 この棒を輪に通し、祭壇をかつぐときには、棒が祭壇の両側にくるようにする。
27:8 祭壇は板で組んで中を空洞にする。山の上であなたに示されたとおりに作らせなさい。
27:9 次に、幕屋の庭を作る。南側には、より糸で織った上質の亜麻布の幕を張る。その一辺の長さは百キュビトにする。
27:10 その柱は二十本、青銅の台も二十。柱の留め金と横木は銀にする。
27:11 北側も同じようにする。長さ百キュビトの幕を張り、柱は二十本、青銅の台も二十。柱の留め金と横木は銀にする。
27:12 庭の西側の幅には、五十キュビトの幕を張る。柱は十本、台も十にする。
27:13 庭の東側、日の昇る方の幅は五十キュビトにする。
27:14 門の片側には、十五キュビトの幕を張る。柱は三本、台も三。
27:15 もう一方の側にも、十五キュビトの幕を張る。柱は三本、台も三。
27:16 庭の門には、二十キュビトの幕を掛ける。青と紫と緋色の糸、それに撚り糸の亜麻布を使い、刺繍で織り上げる。柱は四本、台も四にする。
27:17 庭を囲む柱は、すべて銀の横木でつなぐ。留め金は銀、台は青銅にする。
27:18 庭の長さは百キュビト、幅はどこも五十キュビト、高さは五キュビト。幕は撚り糸の亜麻布で作り、台は青銅にする。
27:19 幕屋で使う道具は、どんな用途のものもすべて、幕屋の杭も庭の杭も、みな青銅で作る。
27:20 あなたはイスラエルの人々に命じなさい。明かりのために、オリーブを砕いて作った澄んだ油を持って来させ、ともし火をいつも絶やさず燃やし続けるようにする。
27:21 会見の天幕の中、掟の箱の前にある垂れ幕の外側で、アロンとその子らが、夕方から朝まで主の前でそのともし火を整える。これはイスラエルの人々が代々守るべき、永遠の定めである。
28:1 あなたは、イスラエルの人々の中から、兄のアロンとその息子たちを呼び寄せなさい。わたしに仕える祭司の務めを果たさせるためだ。息子たちとは、ナダブ、アビフ、エルアザル、イタマルのことだ。
28:2 そして、兄のアロンのために、聖なる装束を作りなさい。それは、栄光と美しさを表すためのものだ。
28:3 わたしが知恵の霊で満たした、心に技を持つ職人たちすべてに、こう伝えなさい。彼らはアロンの装束を作り、彼を聖別して、わたしに仕える祭司の務めに就かせる。
28:4 彼らが作る装束は、次のものだ。胸当て、エフォド、上着、織り模様のある長い服、ターバン、そして帯。彼らはこうして、あなたの兄アロンとその息子たちのために、わたしに仕える祭司の聖なる装束を作る。
28:5 そのために、金と、青、紫、緋色の糸、そして上質の亜麻布を使いなさい。
28:6 エフォドは、金と、青、紫、緋色の糸、そしてより糸で織った上質の亜麻布で作る。すぐれた職人の手で仕上げるのだ。
28:7 エフォドには、両端に二つの肩ひもをつけ、それでつなぎ合わせられるようにする。
28:8 エフォドの上を締める飾り帯も、同じ手法で、エフォドと一続きに作る。それも、金と、青、紫、緋色の糸、そしてより糸で織った上質の亜麻布で作る。
28:9 次に、しまめのうの石を二つ用意し、それにイスラエルの息子たちの名を刻みなさい。
28:10 彼らの名を、生まれた順に、六つを一方の石に、残りの六つをもう一方の石に刻む。
28:11 石に彫る職人の技で、印章を刻むように、二つの石にイスラエルの息子たちの名を刻みなさい。そして、それを金の台にはめ込む。
28:12 この二つの石を、エフォドの両肩の部分につけなさい。これは、イスラエルの人々を思い起こすための石だ。こうしてアロンは、主の前で、彼らの名を両肩に負い、彼らを覚えるしるしとするのだ。
28:13 金の台を作りなさい。
28:14 また、純金で二本の鎖を作る。ひも状にねじって編み、その編んだ鎖を金の台につなぐ。
28:15 さばきのための胸当てを、熟練した職人の技で作りなさい。エフォドと同じように作る。金の糸、青と紫と赤の糸、それに撚り糸で織った上質の亜麻布で作る。
28:16 胸当ては四角く、二重に折る。縦も横も、一あた（手のひらの幅）にする。
28:17 そこに宝石をはめ込み、四列に並べる。第一列は、ルビー、トパーズ、エメラルド。
28:18 第二列は、トルコ石、サファイア、ダイヤモンド。
28:19 第三列は、ヒヤシンス石、めのう、アメシスト。
28:20 第四列は、かんらん石、しまめのう、碧玉。これらを金の台にはめ込む。
28:21 宝石は十二個。イスラエルの息子たちの名にそって、一つずつ並べる。印章を彫るように、十二の部族それぞれの名を、一つの石に一つずつ刻む。
28:22 胸当てには、純金をひも状にねじって編んだ鎖をつけなさい。
28:23 また、胸当てに金の輪を二つ作り、その二つの輪を胸当ての両端につける。
28:24 そして、編んだ二本の金の鎖を、胸当ての両端にある二つの輪に通す。
28:25 編んだ二本の鎖の残りの二つの端は、二つの金の台につなぎ、エフォドの肩ひもの前面に取りつける。
28:26 また、金の輪を二つ作り、胸当ての両端、エフォドの内側に面するふちにつける。
28:27 さらに、金の輪を二つ作り、エフォドの二本の肩ひもの前面の下のほう、つなぎ目の近く、エフォドの帯の上につける。
28:28 そして、胸当ての輪とエフォドの輪を青いひもで結び合わせ、胸当てをエフォドの帯の上にとめる。こうすれば、胸当てがエフォドから外れることはない。
28:29 アロンは聖所に入るとき、さばきの胸当てにイスラエルの子らの名をつけて、それを胸の上にのせる。主の前でいつも彼らを覚えているためである。
28:30 さばきの胸当てには、ウリムとトンミムを入れる。アロンが主の前に出るとき、それが彼の胸の上にあるようにする。こうしてアロンは、主の前でいつもイスラエルの子らのさばきを胸の上にのせて負う。
28:31 エフォドの下に着る上着は、すべて青い糸で作りなさい。
28:32 その真ん中に、頭を通す口をあける。その口のまわりには、織って作ったふちをつける。よろいのえりのようにして、破れないようにする。
28:33 上着のすそのまわりには、青、紫、緋色の糸でざくろの飾りを作り、その間に金の鈴をつけていく。
28:34 金の鈴とざくろ、金の鈴とざくろというように、上着のすそのまわりにぐるりとつける。
28:35 アロンは務めを果たすとき、この上着を着る。彼が主の前の聖所に入るときも、出るときも、その音が聞こえるようにする。こうすれば、彼は死ぬことがない。
28:36 また、純金の板を作り、印章を彫るように、その上に「主に聖なるもの」と刻みなさい。
28:37 その板を青いひもで留めて、ターバンに付けなさい。ターバンの前の面に来るようにする。
28:38 これはアロンの額の上に来る。イスラエルの人々が聖なるささげ物としてささげる、そのすべての聖なる贈り物には過ちがともなうが、アロンがその過ちを引き受けるためだ。この板がいつも彼の額にあることで、ささげ物は主の前で受け入れられる。
28:39 亜麻糸で格子模様の長い服を織り、亜麻糸でターバンを作りなさい。帯は刺しゅうをして作る。
28:40 アロンの子たちのためにも長い服を作り、帯を作りなさい。また彼らのために頭に巻く布を作る。これは彼らを尊く、美しく見せるためだ。
28:41 これらを、あなたの兄弟アロンと、彼といっしょにいる子たちに着せなさい。そして彼らに油をそそぎ、任命し、聖なる者とする。こうして彼らはわたしに仕える祭司となる。
28:42 また、彼らのために亜麻布のズボンを作り、はだかの部分をおおいなさい。腰からももまでとどく長さにする。
28:43 アロンと子たちが、会見の幕屋に入るときや、聖所で務めをするために祭壇に近づくときには、いつもこれを身につける。そうすれば、彼らは過ちを負って死ぬことがない。これはアロンと、その後に続く子孫がいつまでも守るべき定めである。
29:1 彼らを聖なる者とし、わたしに仕える祭司とするために、あなたがすべきことは次のとおりだ。若い雄牛を一頭、それに傷のない雄羊を二頭用意する。
29:2 また、種を入れないパンと、油を混ぜて種を入れずに焼いたパンと、油をぬって種を入れずに焼いた薄いパンを用意する。これらは小麦の上等な粉で作りなさい。
29:3 それらを一つのかごに入れ、かごごと持って来る。雄牛と二頭の雄羊もいっしょに連れて来る。
29:4 アロンと子たちを会見の幕屋の入り口に連れて来て、水で彼らの体を洗いなさい。
29:5 そして衣服を取り、アロンに長い服とエフォドの上着を着せ、その上にエフォドと胸当てを付ける。エフォドは、その帯でしっかりと結びつける。
29:6 彼の頭にターバンをかぶらせ、そのターバンの上に聖なる冠を付けなさい。
29:7 注ぎの油を取り、彼の頭に注いで、彼に油を注ぎなさい。
29:8 それから彼の子たちを連れて来て、彼らに長い服を着せなさい。
29:9 アロンとその子たちに帯を締めさせ、頭に頭巾をかぶらせる。こうして祭司の務めは、いつまでも変わらない定めとして彼らのものとなる。あなたはこうしてアロンとその子たちを任職しなさい。
29:10 若い雄牛を会見の幕屋の前に連れて来なさい。アロンとその子たちは、その雄牛の頭に手を置く。
29:11 そして会見の幕屋の入り口で、主の前でその雄牛を屠りなさい。
29:12 その雄牛の血を少し取り、指で祭壇の角に付けなさい。残りの血は、すべて祭壇の土台に注ぎなさい。
29:13 内臓を覆っている脂肪をすべて取り、さらに肝臓に付いている部分と二つの腎臓、それに付いている脂肪を取って、祭壇の上で焼いて煙にしなさい。
29:14 しかし雄牛の肉と皮と汚物は、宿営の外で火で焼きなさい。これは罪を清めるためのささげ物である。
29:15 次に一頭の雄羊を取りなさい。アロンとその子たちは、その雄羊の頭に手を置く。
29:16 その雄羊を屠り、その血を取って、祭壇の周りに振りかけなさい。
29:17 その雄羊を部分ごとに切り分け、内臓と足を洗って、頭や他の部分と一緒に置きなさい。
29:18 そして雄羊を丸ごと祭壇の上で焼いて煙にしなさい。これは主にささげる焼き尽くすささげ物であり、主が喜ばれる香り、主にささげる火のささげ物である。
29:19 次に、もう一頭の雄羊を取りなさい。アロンとその子たちは、その雄羊の頭に手を置く。
29:20 その雄羊を屠り、その血を取って、アロンの右の耳たぶと、その子たちの右の耳たぶ、右手の親指、右足の親指に付けなさい。そして残りの血を、祭壇の周りに振りかけなさい。
29:21 また、祭壇の上の血と、注ぎの油を取って、アロンとその衣服、その子たちとその子たちの衣服に振りかけなさい。こうして、アロンとその衣服、その子たちとその子たちの衣服は聖なるものとなる。
29:22 この雄羊は任職のための雄羊だから、そこから脂肪と脂尾、内臓を覆う脂肪、肝臓の上の小葉、二つの腎臓とその上の脂肪、そして右のももを取りなさい。
29:23 さらに、主の前に置かれた種なしパンのかごから、パンを一つ、油を混ぜたパンを一つ、薄いパンを一枚取りなさい。
29:24 これらすべてを、アロンとその子たちの手に載せ、主の前で揺り動かして、揺り動かすささげ物としなさい。
29:25 それから、それらを彼らの手から受け取り、祭壇の上で焼き尽くすささげ物と一緒に焼いて煙にしなさい。これは主が喜ばれる香り、主にささげる火のささげ物である。
29:26 アロンの任職のための雄羊から胸の肉を取り、主の前で揺り動かして、揺り動かすささげ物としなさい。それはあなたの受け取る分となる。
29:27 こうして、揺り動かされた胸の肉と、ささげられたももを聖なるものとしなさい。これらは任職のための雄羊から取られたもので、揺り動かして、また高く上げてささげたものであり、アロンとその子たちのものである。
29:28 これは、イスラエルの人々がアロンとその子たちに与えるべき、永遠の定めによる分である。それはささげ物だからだ。イスラエルの人々は、和解のささげ物の中からこれをより分け、主にささげるささげ物としなければならない。
29:29 アロンの聖なる衣服は、彼の後を継ぐ子たちのものとなる。彼らはそれを着て油を注がれ、任職を受ける。
29:30 アロンに代わって祭司となる子は、会見の天幕に入って聖所で仕えるとき、七日間その衣服を着る。
29:31 あなたは任職の雄羊を取り、その肉を聖なる場所で煮なさい。
29:32 アロンとその子たちは、会見の天幕の入り口で、その雄羊の肉と、かごの中のパンを食べる。
29:33 彼らは、自分たちが任職され、聖別されるために、罪の償いに使われたこれらのものを食べる。ほかの者は食べてはならない。それは聖なるものだからだ。
29:34 もし任職の肉やパンが朝まで残ったら、その残りを火で焼きなさい。それは食べてはならない。聖なるものだからだ。
29:35 あなたはアロンとその子たちに、わたしが命じたことをすべてそのとおりに行いなさい。七日間かけて彼らを任職する。
29:36 また罪を償うために、毎日雄牛を一頭、罪のためのささげ物としてささげなさい。祭壇のために罪の償いをして、それを清めなさい。そして油を注いで聖別しなさい。
29:37 七日間、祭壇のために罪の償いをして、それを聖別しなさい。祭壇は最も聖なるものとなる。祭壇に触れるものはみな聖なるものとなる。
29:38 祭壇の上にささげるものは、次のとおりだ。一歳の子羊を毎日二頭、絶えずささげる。
29:39 一頭の子羊は朝にささげ、もう一頭の子羊は夕暮れにささげなさい。
29:40 また、一頭目の子羊には、上等の小麦粉十分の一エファに、砕いて採った油四分の一ヒンを混ぜたものと、注ぎのささげ物としてぶどう酒四分の一ヒンを添える。
29:41 もう一頭の子羊は夕暮れにささげる。朝と同じ穀物のささげ物と注ぎのささげ物を添えてささげなさい。これは主に香ばしいかおりとしてささげる、火によるささげ物だ。
29:42 これは、あなたがたが代々、会見の天幕の入り口、主の前で絶えずささげる、焼き尽くすささげ物だ。わたしはそこであなたがたと会い、あなたに語る。
29:43 わたしはそこでイスラエルの人々と会う。そして、わたしの栄光によって、そこは聖なる場所となる。
29:44 わたしは会見の天幕と祭壇を聖なるものとする。アロンとその子らも聖別し、わたしに仕える祭司とする。
29:45 わたしはイスラエルの人々の中に住み、彼らの神となる。
29:46 そして彼らは知る。わたしが彼らの神、主であることを。わたしは、彼らの中に住むために、彼らをエジプトの地から連れ出した者だ。わたしは彼らの神、主である。
30:1 香をたくための祭壇を作りなさい。アカシアの木で作る。
30:2 長さ一キュビト、幅一キュビトの正方形で、高さは二キュビトにする。角は祭壇と一体に作る。
30:3 その上面と、周りの側面、そして角を、純金でおおう。周りには金の縁飾りをつける。
30:4 縁飾りの下、両側に金の輪を二つ作る。これは、祭壇を担ぐための棒を通す受け口となる。
30:5 その棒はアカシアの木で作り、金でおおう。
30:6 この祭壇は、掟の箱の前を仕切る垂れ幕の前に置きなさい。それは掟の上にある贖いの蓋の前、わたしがあなたと会う場所だ。
30:7 アロンはその祭壇の上で、香り高い香をたく。毎朝、ともし火を整えるときに、それをたく。
30:8 夕暮れにともし火をともすときにも、それをたく。こうして主の前で、香を絶やさずにたき続ける。これはあなたたちが代々守るものだ。
30:9 その上で、定められていない香をたいてはならない。焼き尽くすささげ物も、穀物のささげ物もささげてはならない。注ぎのささげ物も、その上に注いではならない。
30:10 アロンは年に一度、この祭壇の角で贖いの儀式を行う。罪を償うためのいけにえの血を使い、年に一度、この祭壇のために贖いをする。これはあなたたちが代々守るものだ。この祭壇は、主にとって最も聖なるものだ。
30:11 主はモーセに言われた。
30:12 イスラエルの人々の人数を数えるときは、一人ひとりが自分の命の代償を主に納めなければならない。そうすれば、数えるときに彼らの間に災いが起こることはない。
30:13 数えられる者はみな、次のものを納める。聖所で使う基準の重さで、半シェケル。一シェケルは二十ゲラだ。その半シェケルを、主へのささげ物とする。
30:14 数えられる者、つまり二十歳以上の者はみな、主へのささげ物を納める。
30:15 豊かな者も半シェケルより多く納めてはならない。貧しい者も、それより少なく納めてはならない。あなたたちの魂の贖いのために、主へのささげ物を納めるのだ。
30:16 あなたはイスラエルの人々から、この贖いのお金を受け取り、会見の幕屋の務めのために使いなさい。それはイスラエルの人々のための記念となり、主の前で、あなたたちの魂の贖いとなる。
30:17 主はモーセに言われた。
30:18 洗いのための青銅の洗盤と、青銅の台を作りなさい。それを会見の幕屋と祭壇の間に置き、そこに水を入れなさい。
30:19 アロンとその子らは、この水で手と足を洗う。
30:20 彼らは会見の幕屋に入るとき、水で身を洗う。そうすれば死ぬことはない。主にささげる火の供え物を焼くため、祭壇に近づいて仕えるときも、同じようにする。
30:21 こうして彼らは手と足を洗い、死をまぬがれる。これはアロンとその子孫が代々守るべき、永遠の掟である。
30:22 主はモーセに言われた。
30:23 あなたは最上の香料を用意しなさい。上質な液状の没薬を五百シェケル、香りのよいシナモンをその半分の二百五十シェケル、香りのよい菖蒲を二百五十シェケル、
30:24 桂皮を聖所のシェケルで五百シェケル、そしてオリーブ油を一ヒン用意しなさい。
30:25 これらを香料作りの技で調合して、聖なる注ぎ油を作りなさい。これが聖なる注ぎ油となる。
30:26 この油を、会見の幕屋と契約の箱に注ぎなさい。
30:27 また、机とそのすべての器具、燭台とその器具、香をたく祭壇、
30:28 焼き尽くす供え物のための祭壇とそのすべての器具、そして洗盤とその台にも注ぎなさい。
30:29 こうしてそれらを聖なるものとしなさい。それらは最も聖なるものとなり、それに触れるものはみな聖なるものとなる。
30:30 また、アロンとその子らに油を注ぎ、彼らを聖なるものとして、わたしに仕える祭司としなさい。
30:31 そして、イスラエルの人々にこう伝えなさい。「これは代々にわたって、わたしのための聖なる注ぎの油となる。
30:32 これをただの人の体に注いではいけない。また、同じ調合でこれと同じものを作ってもいけない。これは聖なるものであり、あなたがたにとっても聖なるものでなければならない。
30:33 これと同じものを調合する者、また、資格のない者にこれを注ぐ者はだれでも、自分の民から断ち切られる。」
30:34 主はモーセに言われた。「香料を用意しなさい。樹脂の香料ナタフ、シェヘレト、ガルバナム、それに純粋な乳香を、それぞれ同じ分量ずつ用意する。
30:35 それらを調合して、香を作りなさい。調香師の技で作られ、塩を加え、混じり気のない、聖なるものとする。
30:36 その一部を細かく砕き、わたしがあなたと会う会見の天幕の中、あかしの箱の前に供えなさい。それはあなたがたにとって最も聖なるものとなる。
30:37 あなたが作るこの香は、同じ調合で自分のために作ってはいけない。それはあなたにとって、主のための聖なるものである。
30:38 これと同じものを、その香りを楽しむために作る者はだれでも、自分の民から断ち切られる。」
31:1 主はモーセに言われた。
31:2 「よく聞いてほしい。わたしはユダ族のフルの孫、ウリの子ベツァルエルを名指しで選んだ。
31:3 そして彼を神の霊で満たし、知恵と理解力と知識を与え、あらゆる技術を身につけさせた。
31:4 彼は工夫をこらしてデザインを考え、金や銀や青銅を使って形にする。
31:5 宝石を削ってはめ込み、木を彫り、ありとあらゆるものを作り上げる。
31:6 さらにわたしは、ダン族のアヒサマクの子オホリアブを彼の助け手として与える。また、腕のあるすべての人の心に知恵を授けた。こうして彼らは、わたしがあなたに命じたものをすべて作る。
31:7 会見の幕屋、証しの箱、その上に置くふた、幕屋のすべての用具、
31:8 机とその用具、純金の燭台とそのすべての用具、香をたく祭壇、
31:9 焼き尽くすいけにえをささげる祭壇とそのすべての用具、洗い場の水盤とその台、
31:10 そして祭司の務めのための編んだ式服、つまり祭司アロンのための聖なる装束と、その子らが着る装束、
31:11 さらに注ぎの油と、聖所で用いる香り高い香。これらすべてを、わたしがあなたに命じたとおりに彼らは作る。」
31:12 主はモーセに言われた。
31:13 「あなたはイスラエルの人々にこう伝えなさい。『あなたたちは必ずわたしの安息日を守りなさい。これは、代々にわたって、わたしとあなたたちの間のしるしだからだ。それは、わたしがあなたたちを聖なるものとする主であることを、あなたたちが知るためである。
31:14 だから安息日を守りなさい。それはあなたたちにとって聖なる日だからだ。これを汚す者は、必ず死ななければならない。この日に仕事をする者はだれでも、その魂は民の中から断ち切られる。
31:15 六日の間は仕事をしてよい。しかし七日目は、完全に休む安息の日であり、主にささげられた聖なる日だ。安息日に仕事をする者はだれでも、必ず死ななければならない。
31:16 イスラエルの人々は安息日を守り、代々にわたってこれを守り続けなければならない。これは永遠の契約だ。
31:17 これは、わたしとイスラエルの人々の間の、永遠のしるしである。主は六日で天と地を造り、七日目に仕事をやめて休まれたからだ。』」
31:18 主はシナイ山でモーセと語り終えると、二枚の掟の板を彼に授けられた。それは石の板で、神の指で書かれたものだった。
32:1 民は、モーセが山からなかなか下りてこないのを見て、アロンのもとに集まってこう言った。「さあ、わたしたちの先に立って進む神を、わたしたちのために作ってください。あのモーセ、わたしたちをエジプトの国から連れ出したあの人が、どうなったのか分からないのです。」
32:2 アロンは彼らに言った。「あなたたちの妻や息子や娘の耳にある金の耳輪を外して、わたしのところに持ってきなさい。」
32:3 そこで民はみな、自分たちの耳にある金の耳輪を外して、アロンのところに持ってきた。
32:4 アロンは彼らの手からそれを受け取り、道具で形を整えて、鋳物の子牛を作った。すると人々は言った。「イスラエルよ、これがあなたをエジプトの国から連れ出したあなたの神だ。」
32:5 アロンはそれを見ると、その前に祭壇を築いた。そして呼びかけて言った。「明日は主のための祭りだ。」
32:6 翌朝、人々は早く起きて、焼き尽くすいけにえをささげ、和解のいけにえを持ってきた。そして民は座って食べたり飲んだりし、立ち上がって騒ぎ楽しんだ。
32:7 主はモーセに言った。「下りて行きなさい。あなたがエジプトの国から連れ出したあなたの民が、堕落してしまったからだ。
32:8 彼らは、わたしが命じた道から、あっという間に外れてしまった。自分たちのために鋳物の子牛を作り、それを拝んで、いけにえをささげ、こう言っている。『イスラエルよ、これがあなたをエジプトの国から連れ出したあなたの神だ。』」
32:9 主はモーセに言った。「わたしはこの民を見た。まったく、強情な民だ。
32:10 だから今は、わたしを止めないでほしい。わたしの怒りが彼らに向かって燃え上がり、彼らを滅ぼし尽くそう。そして、あなたを大きな国民にする。」
32:11 モーセは自分の神である主に必死に願って言った。「主よ、どうして、大きな力と強い手でエジプトの国から連れ出したあなたの民に、こんなに激しく怒るのですか。
32:12 どうしてエジプト人に、『あの神は悪意で彼らを連れ出したのだ。山々で殺し、地の表から消し去るためだ』と言わせておくのですか。激しい怒りをおさめて、あなたの民に災いを下すのを思いとどまってください。
32:13 あなたのしもべ、アブラハム、イサク、イスラエルを思い出してください。あなたは彼らに、ご自身にかけて誓い、こう言われました。『わたしはあなたたちの子孫を天の星のように増やす。そして、わたしが約束したこの地をすべて、あなたたちの子孫に与え、彼らはそれを永遠に受け継ぐ。』」
32:14 すると主は、その民に下すと言っていた災いを思いとどまった。
32:15 モーセは向き直って、山を下りた。手には二枚のあかしの板があった。板は両面に、表にも裏にも文字が書かれていた。
32:16 その板は神が作ったもので、その文字は神の文字であり、板に刻みつけられていた。
32:17 ヨシュアは、民が叫んでいる声を聞いて、モーセに言った。「宿営から戦いの声がします。」
32:18 モーセは言った。「勝ちどきの声でもなく、負けた者の叫びでもない。わたしが聞いているのは、歌う声だ。」
32:19 モーセは宿営に近づくと、あの子牛と、踊っている人々を見た。それで激しく怒り、手にしていた板を投げつけ、山のふもとで砕いてしまった。
32:20 そして彼らが作った子牛を取り、火で焼いた。それを粉々にすりつぶし、水にまき散らして、イスラエルの人々に飲ませた。
32:21 モーセはアロンに言った。「この民があなたに何をしたというのか。あなたは、彼らにこんな大きな罪を犯させてしまったのか。」
32:22 アロンは答えた。「ご主人よ、どうか怒らないでください。あなたも知っているとおり、この民は悪いことに走りやすいのです。
32:23 彼らはわたしにこう言いました。『わたしたちの先頭に立って進んでくれる神を作ってください。わたしたちをエジプトから連れ出したあのモーセという人は、どうなってしまったのか分からないのですから。』
32:24 それでわたしは彼らに、『金を持っている者は、それを外しなさい』と言いました。彼らがそれをわたしに渡したので、火の中に投げ入れると、この子牛が出てきたのです。」
32:25 モーセは、民が勝手なふるまいをしているのを見た。アロンが彼らを放任し、敵の前で笑いものになるほど乱れさせていたのだ。
32:26 そこでモーセは宿営の入り口に立って言った。「主につく者は、わたしのところに来なさい。」すると、レビ族の者がみな彼のもとに集まった。
32:27 モーセは彼らに言った。「イスラエルの神、主はこう言われる。『それぞれ剣を腰につけ、宿営の中を入り口から入り口へと行き来して、兄弟も、友も、隣人も殺せ。』」
32:28 レビ族はモーセの言葉のとおりにした。その日、民のうち三千人ほどが倒れた。
32:29 モーセは言った。「あなたたちは今日、自分の子や兄弟に手をかけてまで、主に身をささげた。だから今日、主はあなたたちに祝福を与えてくださる。」
32:30 その翌日、モーセは民に言った。「あなたたちは大きな罪を犯してしまった。だから今から、わたしは主のところへ上って行く。もしかしたら、あなたたちの罪を償えるかもしれない。」
32:31 モーセは主のところへ戻って言った。「ああ、この民は大きな罪を犯してしまいました。金の神を造ってしまったのです。
32:32 でも、どうか彼らの罪を赦してください。もし赦せないのなら、あなたが書き記した書物から、どうかわたしの名を消してください。」
32:33 主はモーセに言われた。「わたしに対して罪を犯した者を、わたしは自分の書物から消す。
32:34 さあ、行きなさい。わたしが告げた場所へ、民を導いて行きなさい。見よ、わたしの使いがあなたの前を進んで行く。しかし、わたしが罰する日には、彼らの罪を罰する。」
32:35 こうして主は民を打たれた。彼らがあの子牛を造らせ、アロンがそれを造ったからである。
33:1 主はモーセに言われた。「さあ、ここを出て、上って行きなさい。あなたと、あなたがエジプトの地から導き出した民とで。わたしがアブラハム、イサク、ヤコブに『この地をあなたの子孫に与える』と誓ったあの地へ行くのだ。
33:2 わたしはあなたの前に使いを送り、カナン人、アモリ人、ヒッタイト人、ペリジ人、ヒビ人、エブス人を追い払う。
33:3 乳と蜜の流れる地へ導く。だが、わたし自身はあなたたちの中に上っては行かない。あなたたちは強情な民だから、途中であなたたちを滅ぼしてしまうかもしれないからだ。」
33:4 民はこの厳しい言葉を聞いて嘆き悲しんだ。だれ一人、飾りを身に着ける者はいなかった。
33:5 主はモーセにこう言われていた。「イスラエルの人々に言いなさい。『あなたたちは強情な民だ。もしわたしが一瞬でもあなたたちの中を進んで行けば、あなたたちを滅ぼしてしまう。だから今、身に着けている飾りを外しなさい。そうすれば、わたしはあなたたちをどうするか決めよう。』」
33:6 そこでイスラエルの人々は、ホレブの山を後にして以来、飾りを外したままでいた。
33:7 モーセはいつも天幕を取り、宿営地の外の、そこから遠く離れた所に張った。そしてそれを「会見の天幕」と呼んだ。主を求める者はみな、宿営地の外にあるこの会見の天幕へ出て行った。
33:8 モーセが天幕へ出て行くときはいつも、民はみな立ち上がり、それぞれ自分の天幕の入り口に立って、モーセが天幕に入るまで彼を見送った。
33:9 モーセが天幕に入ると、雲の柱が降りて来て天幕の入り口に立ち、主はモーセと語られた。
33:10 民はみな、雲の柱が天幕の入り口に立っているのを見ると、みな立ち上がり、それぞれ自分の天幕の入り口でひれ伏した。
33:11 主は、人が友と語り合うように、モーセと顔と顔を合わせて語られた。それからモーセは宿営地に戻った。しかし彼の従者で、ヌンの子である若者ヨシュアは、天幕を離れなかった。
33:12 モーセは主に言った。「ご覧ください。あなたはわたしに『この民を導き上れ』と言われます。それなのに、だれをわたしと一緒に送ってくださるのか、教えてくださっていません。しかもあなたは『わたしはあなたを名前で知っている。あなたはわたしの目にかなっている』と言われました。
33:13 ですから今、もしわたしがあなたの目にかなっているのなら、どうかあなたの道を教えてください。そうすればわたしはあなたを知り、これからもあなたの目にかない続けるでしょう。どうか、この国民があなたの民であることも心に留めてください。」
33:14 主は言われた。「わたし自身が一緒に行く。そしてあなたを休ませよう。」
33:15 モーセは主に言った。「もしあなた自身が一緒に行ってくださらないなら、わたしたちをここから導き上らないでください。
33:16 わたしとあなたの民が、あなたの目にかなっていると、いったいどうすれば分かるのでしょうか。それは、あなたがわたしたちと一緒に行ってくださることによるのではないでしょうか。そうすればわたしとあなたの民は、地上のすべての民の中で特別な存在となります。」
33:17 主はモーセに言われた。「あなたが言ったこのことも、わたしはしよう。あなたはわたしの目にかない、わたしはあなたを名前で知っているからだ。」
33:18 モーセは言った。「どうか、あなたの栄光をわたしに見せてください。」
33:19 主は言われた。「わたしは、わたしのすべての良さをあなたの前に通らせ、あなたの前で主の名を宣言する。わたしは、恵もうと思う者を恵み、あわれもうと思う者をあわれむ。」
33:20 また言われた。「だが、あなたはわたしの顔を見ることはできない。人はわたしを見て、なお生きていることはできないからだ。」
33:21 主は言われた。「見よ、わたしのそばに一つの場所がある。あなたはその岩の上に立ちなさい。
33:22 わたしの栄光が通り過ぎるとき、わたしはあなたを岩の裂け目に入れ、わたしが通り過ぎるまで、手であなたをおおう。
33:23 そして手をのけると、あなたはわたしのうしろを見る。だが、わたしの顔は見られてはならない。」
34:1 主はモーセに言われた。「前と同じ石の板を二枚、切り出しなさい。わたしは、あなたが砕いた前の板にあった言葉を、その板に書く。
34:2 朝までに準備をととのえ、朝になったらシナイ山に登り、その山の頂でわたしの前に立ちなさい。
34:3 だれもあなたと一緒に登ってはならない。山のどこにも人の姿があってはならない。羊や牛も、その山のふもとで草を食べてはならない。」
34:4 モーセは前と同じ石の板を二枚切り出し、朝早く起きて、主が命じられたとおりシナイ山に登った。手には二枚の石の板を持っていた。
34:5 すると主は雲の中を降りてきて、そこでモーセと共に立ち、主の名を宣言された。
34:6 主はモーセの前を通り過ぎながら、宣言された。「主、主、あわれみ深く、恵みに満ちた神。怒るのに遅く、慈しみとまことに富む。
34:7 慈しみを千代までも守り、悪も、背きも、罪も赦す。それでも罰すべき者を罰せずにおくことはなく、父の罪を子や孫に、三代、四代にまで問う神。」
34:8 モーセは急いで地にひざまずき、ひれ伏した。
34:9 そして言った。「主よ、もしわたしがあなたの目にかなうなら、どうか主よ、わたしたちと共に進んでください。確かにこれは頑固な民です。でも、わたしたちの悪と罪を赦し、わたしたちをあなたのものとしてください。」
34:10 すると主は言われた。「見よ、わたしはあなたと契約を結ぶ。あなたの民全員の前で、地上のどこでも、どの国でも、これまで一度も起こされたことのない不思議なわざを行う。あなたと共にいるこの民はみな、主のわざを見る。わたしがあなたのために行うことは、恐れを起こさせるものだからだ。
34:11 きょうわたしが命じることを、しっかり守りなさい。見よ、わたしはあなたの前から、アモリ人、カナン人、ヒッタイト人、ペリジ人、ヒビ人、エブス人を追い払う。
34:12 気をつけなさい。あなたがこれから入っていく土地の住民と契約を結んではならない。それがあなたの中で、わなとなるといけないからだ。
34:13 むしろ、彼らの祭壇を壊し、石の柱を砕き、アシェラ像を切り倒しなさい。
34:14 ほかの神を拝んではならない。主の名は「ねたむ」であり、まさにねたむ神だからだ。
34:15 その土地の住民と契約を結んではならない。彼らは自分たちの神々を慕って身を汚し、その神々にいけにえをささげている。そして、あなたを招く。あなたはそのいけにえを食べることになる。
34:16 また、あなたは彼らの娘たちを自分の息子たちの妻にめとる。その娘たちは自分たちの神々を慕って身を汚し、あなたの息子たちまでも、その神々を慕って身を汚させることになる。
34:17 自分のために、鋳物の神を造ってはならない。
34:18 種を入れないパンの祭りを守りなさい。わたしが命じたとおり、アビブの月の定めの時に、七日間、種を入れないパンを食べなさい。あなたがエジプトから出てきたのは、アビブの月だったからだ。
34:19 最初に胎を開くものはみな、わたしのものだ。あなたの家畜の初子、牛や羊の雄もみな、わたしのものだ。
34:20 ろばの初子は、羊で買い戻しなさい。もし買い戻さないなら、その首を折らなければならない。あなたの息子のうち、初めに生まれた子はみな買い戻しなさい。だれも、何も持たずにわたしの前に出てはならない。
34:21 六日間は働き、七日目には休みなさい。畑を耕す時も、刈り入れの時も休みなさい。
34:22 七週の祭りを行いなさい。これは小麦の刈り入れの初穂をささげる祭りだ。また、年の変わり目には取り入れの祭りを行いなさい。
34:23 年に三度、あなたがたの男子はみな、イスラエルの神である主の前に出なければならない。
34:24 わたしはあなたの前から他の民を追い払い、あなたの領土を広げる。だから、年に三度あなたが主の前に出るために上って行っても、あなたの土地を欲しがる者はだれもいない。
34:25 わたしにささげるいけにえの血を、種を入れたパンといっしょにささげてはならない。過越の祭りのいけにえを、朝まで残しておいてはならない。
34:26 あなたの土地の初穂の中で、最もよいものを、あなたの神である主の家に持って来なさい。子やぎを、その母親の乳で煮てはならない。
34:27 主はモーセに言われた。「これらの言葉を書き記しなさい。わたしはこれらの言葉に基づいて、あなたと、そしてイスラエルと契約を結んだからだ。」
34:28 モーセはそこで四十日四十夜、主とともにいた。その間、パンも食べず、水も飲まなかった。そしてモーセは、契約の言葉である十の戒めを、二枚の板に書き記した。
34:29 モーセは二枚の証しの板を手にして、シナイ山から下りて来た。山を下りるとき、モーセは自分の顔の肌が光を放っていることに気づかなかった。主と語り合ったからだった。
34:30 アロンとイスラエルの人々はみな、モーセを見た。すると、その顔の肌が光を放っていた。それで彼らは、モーセに近づくのを恐れた。
34:31 モーセが彼らに呼びかけると、アロンと集まりのすべての指導者たちが戻って来た。モーセは彼らに語りかけた。
34:32 その後、イスラエルの人々もみな近づいて来た。モーセは、主がシナイ山で語られたことを、すべて彼らに命じて伝えた。
34:33 モーセは彼らに話し終えると、自分の顔に覆いをかけた。
34:34 モーセは主の前に入って語り合うときには、外に出るまで覆いを外していた。そして外に出て来て、命じられたことをイスラエルの人々に伝えた。
34:35 イスラエルの人々は、モーセの顔の肌が光を放っているのを見た。それでモーセは、次に主と語り合うために入るまで、また顔に覆いをかけた。
35:1 モーセはイスラエルの人々の集まりをすべて集めて、こう言った。「これは、主が行うようにと命じられたことだ。
35:2 六日のあいだは働きなさい。でも七日目は、あなたたちにとって聖なる日、主のための完全な休息の安息日だ。この日に働く者はだれでも、死刑にされる。
35:3 安息日には、あなたたちの住まいのどこでも火をたいてはならない。」
35:4 モーセはイスラエルの人々の集まりすべてに、こう言った。「主が命じられたことは、こうだ。
35:5 あなたたちの中から、主にささげる物を集めなさい。心から進んでする人はみな、主へのささげ物を持って来なさい。それは金、銀、青銅、
35:6 青、紫、緋色の糸、上等な亜麻布、やぎの毛、
35:7 赤く染めた雄羊の皮、じゅごんの皮、アカシアの木、
35:8 ともし火のための油、注ぎの油や香をたくための香料、
35:9 エフォドと胸当てにはめ込むための、しまめのうやそのほかの宝石を持って来なさい。
35:10 あなたたちの中で、腕に覚えのある人はみな来て、主が命じられた物をすべて作りなさい。
35:11 幕屋とその天幕、その覆い、留め金、板、横木、柱、台座、
35:12 箱とそれをかつぐ棒、ふた、仕切りの垂れ幕、
35:13 机とそれをかつぐ棒、そのすべての器具、供えのパン、
35:14 ともし火のための燭台とその器具、ともし皿、ともし火のための油、
35:15 香をたく祭壇とそれをかつぐ棒、注ぎの油、香り高い香料、幕屋の入り口にかける垂れ幕、
35:16 焼き尽くすささげ物のための祭壇とその青銅の網、それをかつぐ棒、そのすべての器具、洗い鉢とその台、
35:17 庭を囲む幕とその柱、台座、庭の門にかける垂れ幕、
35:18 幕屋の杭と庭の杭、そしてそれらの張り綱。
35:19 また、聖所で仕えるための編んだ式服、つまり祭司アロンのための聖なる装束と、祭司として仕えるその子らの装束を作るためのものだった。」
35:20 こうして、イスラエルの人々の集まりはみな、モーセの前から立ち去った。
35:21 そして、心を動かされた者、進んでささげたいと思った者はみなやって来て、会見の天幕を造る仕事と、そのすべての務め、そして聖なる装束のために、主へのささげ物を持って来た。
35:22 男も女も、進んでささげたいと思う者はみなやって来て、飾りピンや耳輪、指輪、首飾りなど、あらゆる金の装身具を持って来た。こうして、金を主にささげようとする者はみな、それを差し出した。
35:23 青糸、紫糸、深紅の糸、上質の亜麻布、やぎの毛、赤く染めた雄羊の皮、じゅごんの皮を持っている者はみな、それを持って来た。
35:24 銀や青銅をささげる者はみな、それを主へのささげ物として持って来た。また、仕事に使うアカシアの木を持っている者はみな、それを持って来た。
35:25 手仕事の心得のある女たちはみな、自分の手で糸をつむぎ、その青糸、紫糸、深紅の糸、上質の亜麻布のつむいだ糸を持って来た。
35:26 また、心を動かされた女たちはみな、その心得を生かして、やぎの毛をつむいだ。
35:27 指導者たちは、しまめのうの石と、エフォドと胸当てにはめ込むための宝石を持って来た。
35:28 さらに、ともし火のための香料と油、注ぎの油、香りのよい香のための材料も持って来た。
35:29 こうして、モーセを通して主が命じたすべての仕事のために、進んでささげたいと心から思った男も女も、イスラエルの人々はみな、主への自発的なささげ物を持って来た。
35:30 モーセはイスラエルの人々に言った。「見なさい。主は、ユダ族のフルの子ウリの子ベツァルエルを名指しで選ばれた。
35:31 主は彼を神の霊で満たし、知恵と理解力と知識、そしてあらゆる技術を彼に与えた。
35:32 それは、デザインを考え出し、金や銀や青銅を加工し、
35:33 宝石を切ってはめ込み、木を彫り、あらゆる工夫を凝らした細工をするためだった。
35:34 主はまた、人に教える力も彼の心に授けた。彼と、ダン族のアヒサマクの子オホリアブにである。
35:35 主はこの二人を、あらゆる仕事をこなす知恵で満たした。彫刻や、デザイン、青や紫や緋色の糸と亜麻布での刺繍、機織り——どんな仕事もこなし、巧みなデザインを生み出せるようにしたのである。
36:1 こうしてベツァルエルとオホリアブ、そして主が知恵と理解力を与え、聖なる仕事のやり方を心得させたすべての人が、主が命じたとおりに、聖所のための仕事をすべて行うことになった。
36:2 モーセは、ベツァルエルとオホリアブ、そして主が心に知恵を授けたすべての人、つまりその仕事に進んで取りかかろうと心を動かされた者たちを呼び寄せた。
36:3 彼らはモーセのもとから、イスラエルの人々が聖所の仕事のために持って来たささげ物を、すべて受け取った。人々はそれでもなお、毎朝、自発的なささげ物をモーセのもとへ持って来続けた。
36:4 そこで、聖所の仕事をしていた熟練の職人たちはみな、それぞれ自分の仕事の手を止めてやって来て、
36:5 モーセに言った。「民が持って来る物が、主が命じた仕事に必要な量をはるかに超えています。」
36:6 そこでモーセは命じ、宿営中にこう触れ回らせた。「男も女も、これ以上、聖所へのささげ物のための仕事をしないでほしい。」こうして人々は、持って来るのをやめた。
36:7 材料は、すべての仕事をするのに十分で、余るほどだった。
36:8 仕事をする者たちの中で、心に知恵のある職人たちはみな、幕屋を作った。撚り糸で織った亜麻布と、青、紫、緋色の糸を使い、ケルビムの姿を織り込んで、十枚の幕を作った。
36:9 幕はどれも同じ大きさで、一枚の長さは二十八アンマ、幅は四アンマだった。
36:10 その幕を五枚ずつ一枚一枚つなぎ合わせ、残りの五枚も同じようにつなぎ合わせた。
36:11 そして、一方のつなぎ合わせた端の幕の縁に青い糸の輪を付け、もう一方のつなぎ合わせた端の幕の縁にも同じようにした。
36:12 一方の幕に輪を五十個付け、第二のつなぎ側の端の幕にも輪を五十個付けた。輪は互いに向かい合っていた。
36:13 さらに金の留め金を五十個作り、それで幕をつなぎ合わせた。こうして幕屋は一つになった。
36:14 次に、幕屋を覆う天幕のために、やぎの毛で幕を作った。全部で十一枚作った。
36:15 一枚の長さは三十アンマ、幅は四アンマで、十一枚とも同じ大きさだった。
36:16 その幕を五枚ずつ一組につなぎ合わせ、残りの六枚も一組につなぎ合わせた。
36:17 そして、一方のつなぎの端の幕の縁に輪を五十個付け、もう一方のつなぎの端の幕の縁にも輪を五十個付けた。
36:18 さらに青銅の留め金を五十個作り、天幕をつなぎ合わせて一つにした。
36:19 さらに天幕をおおうために、赤く染めた雄羊の皮でおおいを作り、その上にじゅごんの皮のおおいをかけた。
36:20 そして幕屋のために、アカシヤ材で板を作り、それを立てて用いた。
36:21 板の長さは一枚につき十キュビト、幅は一キュビト半だった。
36:22 どの板にも二つのほぞがあり、それぞれが互いに組み合わさるようになっていた。幕屋のすべての板を、このように作った。
36:23 幕屋のために板を作り、南側には二十枚の板を並べた。
36:24 その二十枚の板の下には、銀の台座を四十個作った。一枚の板の二つのほぞの下に二個ずつ、どの板にも二個ずつの台座を置いた。
36:25 幕屋のもう一方の側、北側にも、二十枚の板を作った。
36:26 そして銀の台座を四十個作り、一枚の板の下に二個ずつ置いた。
36:27 幕屋のうしろ側、西側には、六枚の板を作った。
36:28 さらに幕屋のうしろの両隅のために、二枚の板を作った。
36:29 この隅の板は下でぴったり合わさり、上でも一つの環にまとめられて、しっかりつながっていた。両方の隅とも、同じように作った。
36:30 こうして板は全部で八枚になり、その銀の台座は十六個で、どの板の下にも二個ずつ置かれた。
36:31 それから、アカシアの木で横木を作った。幕屋の一方の側の板のために五本。
36:32 もう一方の側の板のために五本、幕屋のうしろ、つまり西側の板のためにも五本を作った。
36:33 そして真ん中の横木を作り、板の中ほどを端から端まで通るようにした。
36:34 板には金をかぶせ、横木を通すための環も金で作り、横木にも金をかぶせた。
36:35 また、青と紫と緋色の糸、そしてより糸で織った亜麻布で仕切りの幕を作った。熟練した職人の技で、ケルビムの模様を織り込んだ。
36:36 その幕のために、アカシアの木で四本の柱を作って金をかぶせ、その掛け金も金で作った。さらに、その柱のために銀の台座を四個、鋳造した。
36:37 また、天幕の入り口のために、青と紫と緋色の糸、そしてより糸で織った亜麻布で幕を作った。刺繍をほどこした細工だった。
36:38 その幕のために五本の柱と掛け金を作り、柱の頭とそれをつなぐ帯には金をかぶせた。ただし、その五個の台座は青銅で作った。
37:1 ベツァルエルはアカシアの木で箱を造った。長さは二キュビト半、幅は一キュビト半、高さは一キュビト半だった。
37:2 彼はその箱を内側も外側も純金でおおい、周りに金の縁飾りを付けた。
37:3 そして金の輪を四つ鋳造して、箱の四隅に取り付けた。二つは片方の側面に、もう二つはもう片方の側面に付けた。
37:4 またアカシアの木で棒を作り、それを金でおおった。
37:5 その棒を箱の側面の輪に通して、箱を運べるようにした。
37:6 彼は純金で、箱のふたを造った。長さは二キュビト半、幅は一キュビト半だった。
37:7 そして金で、翼を持つケルビムという像を二体造った。槌で打ち出して、ふたの両端に造り出した。
37:8 一体は片方の端に、もう一体はもう片方の端に置いた。ケルビムはふたと一続きになるように、その両端に造り出した。
37:9 ケルビムは翼を上に広げ、その翼でふたをおおっていた。顔は互いに向き合い、ふたの方を向いていた。
37:10 彼はアカシアの木で机を造った。長さは二キュビト、幅は一キュビト、高さは一キュビト半だった。
37:11 それを純金でおおい、周りに金の縁飾りを付けた。
37:12 また周りに手の幅ほどの枠を付け、その枠の周りにも金の縁飾りを付けた。
37:13 彼は机のために金の環を四つ鋳造し、四本の脚のところにある四つの角に取り付けた。
37:14 その環は枠のすぐそばにあって、机を運ぶための棒を通す受けとなった。
37:15 机を運ぶための棒はアカシアの木で作り、金でおおった。
37:16 また、机の上に置く器を純金で作った。皿、杯、鉢、そして供え物を注ぐための水差しである。
37:17 彼は純金で燭台を作った。燭台は金を打ち出して作り、その台座と支柱、杯、節、花は一つに続いていた。
37:18 その両側から六本の枝が出ていた。片側から三本、もう一方の側から三本の枝が出ていた。
37:19 一本の枝には、アーモンドの花の形をした杯が三つあり、それぞれに節と花が付いていた。もう一本の枝も同じで、アーモンドの花の形をした杯が三つあり、節と花が付いていた。燭台から出る六本の枝は、すべて同じだった。
37:20 燭台の本体には、アーモンドの花の形をした杯が四つあり、節と花が付いていた。
37:21 そこから出る二本の枝の下に節が一つ、次の二本の枝の下にも節が一つ、さらに次の二本の枝の下にも節が一つあった。燭台から出る六本の枝に合わせたものだった。
37:22 節も枝も燭台と一体になっていた。全体が、純金を打ち出した一つの作品だった。
37:23 彼はその七つのともし火皿と、芯を切るはさみ、火を受ける皿を純金で作った。
37:24 燭台とそのすべての器は、純金一タラントで作った。
37:25 彼は香をたくための祭壇を、アカシア材で作った。縦一キュビト、横一キュビトの正方形で、高さは二キュビト。その四隅の角は、祭壇と一体になっていた。
37:26 そして、その上面と周りの側面、それに角を、純金でおおった。さらに、周りをぐるりと囲む金の飾り縁を作った。
37:27 飾り縁の下、両側の側面に、金の輪を二つ取り付けた。祭壇を運ぶための棒を通す受け口だった。
37:28 その棒はアカシア材で作り、金でおおった。
37:29 彼はまた、聖なる注ぎの油と、香料を混ぜた純粋な香を作った。香料職人の手による品だった。
38:1 彼はいけにえを焼くための祭壇を、アカシア材で作った。縦五キュビト、横五キュビトの正方形で、高さは三キュビト。
38:2 その四隅に角を作った。角は祭壇と一体になっていた。そして祭壇全体を青銅でおおった。
38:3 祭壇で使うすべての道具も作った。灰を取るなべ、シャベル、鉢、肉刺し、火を運ぶ皿。これらの道具はすべて青銅で作った。
38:4 祭壇のために、青銅の網を作った。それを祭壇の縁の下、下から中ほどの高さまで取り付けた。
38:5 青銅の網の四隅には、棒を通す受け口として、四つの輪を鋳造した。
38:6 その棒はアカシア材で作り、青銅でおおった。
38:7 その棒を祭壇の両側の輪に通し、それを担いで運べるようにした。祭壇は板で組んで中を空洞にした。
38:8 青銅の洗い鉢と、その青銅の台を作った。それは、会見の幕屋の入り口で仕えていた女たちの鏡を使って作られた。
38:9 さらに、庭を作った。南側には、より糸で織った亜麻布の掛け幕を張った。長さは百キュビトである。
38:10 その柱は二十本、青銅の台座は二十個。柱のかぎと横棒は銀でできていた。
38:11 北側も同じく、掛け幕は長さ百キュビト、柱は二十本、青銅の台座は二十個。柱のかぎと横棒は銀だった。
38:12 西側は、掛け幕が長さ五十キュビト、柱は十本、台座は十個。柱のかぎと横棒は銀だった。
38:13 東側、つまり日の出る方は、幅五十キュビトである。
38:14 門の一方の側には、長さ十五キュビトの掛け幕を張り、柱は三本、台座は三個とした。
38:15 門をはさんだもう一方の側も、庭の入り口の左右どちらにも、長さ十五キュビトの掛け幕を張り、柱は三本、台座は三個とした。
38:16 庭のまわりの掛け幕は、すべてより糸で織った亜麻布だった。
38:17 柱の台座は青銅、柱のかぎと横棒は銀、柱の頭をおおう板も銀だった。庭の柱はどれも銀の横棒でつながれていた。
38:18 庭の入り口の垂れ幕は、青と紫と赤の糸、それにより糸で織った亜麻布を使い、刺繍職人が模様を織り込んで作った。長さは二十キュビト、高さは庭の掛け幕とそろえて五キュビトだった。
38:19 柱は四本、その台座は青銅で四つ。柱のかぎは銀、柱の頭をおおう板と横棒も銀だった。
38:20 幕屋と庭をぐるりと囲む杭は、すべて青銅だった。
38:21 これは幕屋、すなわち掟を納めた幕屋のために使われた材料の記録である。モーセの命令によって数え上げられ、祭司アロンの子イタマルの指揮のもと、レビ人たちが担当した。
38:22 ユダ族の、フルの子ウリ、そのウリの子ベツァルエルは、主がモーセに命じたことをすべて作り上げた。
38:23 彼とともに働いたのは、ダン族のアヒサマクの子オホリアブ。彫刻や意匠に優れ、青と紫と赤の糸、それに亜麻布で刺繍をする職人だった。
38:24 聖所のすべての工事に使われた金、つまり奉納された金は、聖所のシェケルで量って二十九タラントと七百三十シェケルだった。
38:25 人口調査で数えられた民が納めた銀は、聖所のシェケルで量って百タラントと千七百七十五シェケルだった。
38:26 これは一人につき一ベカ、つまり聖所のシェケルで半シェケルにあたる。二十歳以上で登録された者すべてから集めたもので、その数は六十万三千五百五十人だった。
38:27 百タラントの銀は、聖所の台座と、仕切りの垂れ幕の台座を鋳造するのに使われた。百タラントで百の台座、一つの台座につき一タラントだった。
38:28 残りの千七百七十五シェケルで、柱のかぎを作り、柱の頭をおおう板を張り、横棒でつないだ。
38:29 奉納された青銅は、七十タラントと二千四百シェケルだった。
38:30 その青銅で、会見の幕屋の入り口の台座、青銅の祭壇とそれに付いていた青銅の格子、そして祭壇のすべての器具を作った。
38:31 さらに、庭の周りの台座と庭の門の台座、そして幕屋のすべての杭と庭の周りのすべての杭も作った。
39:1 そして、青と紫と緋色の糸で、聖なる場所で務めを行うための美しく織った衣を作った。また、アロンのための聖なる衣も作った。主がモーセに命じたとおりである。
39:2 エフォドを、金と青と紫と緋色の糸、それに撚った亜麻糸で作った。
39:3 金を薄く打ち延ばして細く切り、糸にした。それを青の糸と紫の糸、緋色の糸、そして亜麻糸に織り込んだ。巧みな職人の仕事である。
39:4 エフォドには肩当てを作り、その両端でつなぎ合わせた。
39:5 エフォドを締める帯も、エフォドと同じ織り方で一続きに作った。金と青と紫と緋色の糸、それに撚った亜麻糸で作った。主がモーセに命じたとおりである。
39:6 縞めのうを金の枠にはめ込み、印章を彫るように、イスラエルの子らの名を刻んだ。
39:7 それをエフォドの肩当てに取り付けた。イスラエルの子らを覚えておくための石である。主がモーセに命じたとおりである。
39:8 胸当ても、エフォドと同じように巧みに作った。金と青と紫と緋色の糸、それに撚った亜麻糸で作った。
39:9 胸当ては四角形で、二重にした。二つ折りにすると、縦も横も一あたの長さだった。
39:10 そこに宝石を四列にはめ込んだ。第一列はルビー、トパーズ、エメラルドだった。
39:11 第二列はトルコ石、サファイア、ダイヤモンド。
39:12 第三列はオパール、めのう、アメジスト。
39:13 第四列は、かんらん石、しまめのう、碧玉。これらはすべて金の台にはめ込まれていた。
39:14 宝石は全部で十二個。イスラエルの子らの名前に合わせて、一つずつあった。印章を彫るように、十二の部族それぞれの名前が刻まれていた。
39:15 彼らは胸当てのために、純金をひものようにより合わせた鎖を作った。
39:16 そして金の台を二つと、金の輪を二つ作った。その二つの輪を胸当ての上の両端に取り付けた。
39:17 金でより合わせた二本の鎖を、胸当ての両端にあるその二つの輪につないだ。
39:18 鎖のもう一方の端は、二つの台に結びつけ、その台をエフォドの肩ひもの前面に取り付けた。
39:19 さらに彼らは金の輪を二つ作り、胸当ての下の両端、エフォド側の内側の縁に取り付けた。
39:20 また金の輪をもう二つ作り、エフォドの二本の肩ひもの前面の下のほう、つなぎ目の近く、エフォドの帯の上に取り付けた。
39:21 そして胸当ての輪とエフォドの輪を青いひもで結び合わせ、胸当てがエフォドの帯の上に来て、エフォドから離れないようにした。主がモーセに命じたとおりである。
39:22 彼はエフォドと合わせる上着を作った。全部を青糸で織り上げたものだった。
39:23 その上着の真ん中には頭を通す開き口があり、その口のまわりには縁取りがつけられていた。破れないようにするためである。
39:24 上着のすそには、青糸、紫糸、緋糸をより合わせて、ざくろの形の飾りを作りつけた。
39:25 彼らは純金で鈴を作った。そして上着のすそのざくろとざくろの間に、その鈴を取りつけた。すそをぐるりと囲むように、ざくろの間に並べたのである。
39:26 鈴、ざくろ、鈴、ざくろと、上着のすそをぐるりと囲むように交互に並べた。務めを行うときに着るためである。主がモーセに命じたとおりだった。
39:27 彼らはアロンとその子たちのために、上質な亜麻糸で織った長い服を作った。
39:28 また、上質な亜麻布のかぶり物、亜麻布の美しい帽子、そしてより糸の亜麻布で作った下ばきも作った。
39:29 帯は、より糸の亜麻布に、青糸、紫糸、緋糸を織り込んで作った。刺しゅうをほどこしたものだった。主がモーセに命じたとおりだった。
39:30 彼らはまた、聖なる冠として、純金の飾り板を作った。そこに印章を彫るように、「主のために聖別されたもの」と刻みつけた。
39:31 そして、その板に青いひもを通し、かぶり物の上に結びつけた。主がモーセに命じたとおりだった。
39:32 こうして、幕屋、つまり出会いの天幕のすべての仕事が仕上がった。イスラエルの人々は、主がモーセに命じたことをすべてそのとおりに行った。まさに命じられたとおりに作り上げたのである。
39:33 彼らは幕屋をモーセのもとに運んできた。天幕とそのすべての付属品、留め金、板、横木、柱、そして台座も持ってきた。
39:34 また、赤く染めた雄羊の皮の覆いと、じゅごんの皮の覆い、それに仕切りとして垂らす幕も運んできた。
39:35 さらに、あかしの箱とそれを担ぐための棒、そしてそのふたも運んできた。
39:36 机とそのすべての器具、そして供えのパンも持ってきた。
39:37 純金の燭台とそのともし火皿、つまり一列に並べるともし火皿と、そのすべての付属品、そして明かりのための油。
39:38 さらに、金の祭壇、注ぎ用の油、香りのよい香、そして幕屋の入り口に垂らす幕。
39:39 青銅の祭壇と、それに付いた青銅の網、その担ぎ棒とすべての付属品、洗い用の水盤とその台。
39:40 庭を囲む幕と、その柱と土台、庭の門に垂らす幕、その張り綱と杭、そして幕屋、つまり会見の天幕で使うすべての道具。
39:41 また、聖所での務めのための美しく編んだ装束、つまり祭司アロンのための聖なる装束と、祭司として仕える息子たちの装束も運んできた。
39:42 こうしてイスラエルの人々は、主がモーセに命じたとおりに、すべての作業を成し遂げた。
39:43 モーセはそのすべての仕事を確かめた。すると、主が命じたとおりにちょうど造られていた。それでモーセは彼らを祝福した。
40:1 主はモーセにこう言われた。
40:2 「第一の月の一日に、あなたは幕屋、つまり会見の天幕を建てなさい。
40:3 その中にあかしの箱を置き、仕切りの幕でその箱を覆いなさい。
40:4 そして机を運び入れ、その上に並べるものを整えなさい。さらに燭台を運び入れ、そのともし火をともしなさい。
40:5 香をたくための金の祭壇を、あかしの箱の前に据え、幕屋の入り口に垂らす幕を掛けなさい。
40:6 焼き尽くすいけにえのための祭壇を、幕屋、つまり会見の天幕の入り口の前に据えなさい。
40:7 洗い場の水盤を、会見の天幕と祭壇の間に置き、そこに水を入れなさい。
40:8 その周りに庭を設け、庭の門に垂らす幕を掛けなさい。
40:9 そして注ぎの油を取り、幕屋とその中のすべてのものに注いで、聖なるものとしなさい。そうすれば、幕屋とそのすべての器具は聖なるものとなる。
40:10 焼き尽くすいけにえのための祭壇とそのすべての器具にも油を注ぎ、その祭壇を聖なるものとしなさい。祭壇は最も聖なるものとなる。
40:11 洗い場の水盤とその台にも油を注いで、聖なるものとしなさい。
40:12 それから、アロンとその子らを会見の天幕の入り口に連れて来て、水で彼らを洗いなさい。
40:13 アロンには聖なる装束を着せ、彼に油を注いで聖なるものとし、わたしに仕える祭司としなさい。
40:14 彼の子らも連れて来て、彼らに上着を着せなさい。
40:15 そして、その父に油を注いだのと同じように、彼らにも油を注ぎ、わたしに仕える祭司としなさい。こうして油を注がれることによって、彼らは代々にわたって永遠に祭司となるのである。」
40:16 モーセは、主が命じられたとおりに、すべてそのとおりに行った。
40:17 第二年目の第一の月、その一日に、幕屋が建てられた。
40:18 モーセは幕屋を建て、その台座を据え、その板を立て、その横木を通し、その柱を立てた。
40:19 モーセは幕屋の上に天幕を張り、その上にさらに天幕の覆いを掛けた。主がモーセに命じられたとおりであった。
40:20 そして証しの板を取って箱に納め、その箱に担ぎ棒を取り付け、箱の上に贖いの蓋を置いた。
40:21 その箱を幕屋に運び入れ、仕切りの垂れ幕を張って、証しの箱を隠した。主がモーセに命じられたとおりであった。
40:22 モーセは机を会見の天幕の中、幕屋の北側、垂れ幕の外に置いた。
40:23 そしてその上に、主の前にパンを整えて並べた。主がモーセに命じられたとおりであった。
40:24 燭台を会見の天幕の中、机の向かい側、幕屋の南側に置いた。
40:25 そして主の前にともし火をともした。主がモーセに命じられたとおりであった。
40:26 金の祭壇を会見の天幕の中、垂れ幕の前に置いた。
40:27 そしてその上で、かおりのよい香をたいた。主がモーセに命じられたとおりであった。
40:28 それから幕屋の入り口に幕を掛けた。
40:29 焼き尽くすささげ物の祭壇は、会見の天幕である幕屋の入り口に置いた。そしてその上で、焼き尽くすささげ物と穀物のささげ物をささげた。主がモーセに命じられたとおりであった。
40:30 洗い用の水盤を会見の天幕と祭壇の間に置き、そこに洗うための水を入れた。
40:31 モーセとアロン、そしてその息子たちは、そこで手と足を洗った。
40:32 会見の天幕に入るときや、祭壇に近づくときに、彼らは水で洗った。主がモーセに命じられたとおりであった。
40:33 それからモーセは、幕屋と祭壇の周りに庭を設け、庭の門に幕を掛けた。こうしてモーセはすべての仕事を終えた。
40:34 すると雲が会見の天幕をおおい、主の栄光が幕屋に満ちた。
40:35 モーセは会見の天幕に入ることができなかった。雲がその上にとどまり、主の栄光が幕屋に満ちていたからだ。
40:36 雲が幕屋の上から昇るときはいつも、イスラエルの人々は旅立った。旅のあいだずっとそうだった。
40:37 でも雲が昇らないときは、昇る日まで彼らは出発しなかった。
40:38 昼は主の雲が幕屋の上にあり、夜はその雲の中に火があった。旅のあいだずっと、イスラエルのすべての人々の目に見えていた。
レビ記
1:1 主はモーセを呼び、会見の天幕から彼にこう語りかけた。
1:2 「イスラエルの人々にこう伝えなさい。あなたがたの中でだれかが主にささげ物をするときは、家畜、つまり牛か羊やぎの群れの中から選んでささげなさい。
1:3 もし牛の群れから焼き尽くすささげ物をするなら、傷のない雄を選ぶこと。それを会見の天幕の入り口に引いてきなさい。そうすれば、主の前でそれは受け入れられる。
1:4 ささげる人は、その焼き尽くすささげ物の頭に手を置く。すると、それはその人のために受け入れられ、その人の罪をおおう。
1:5 その人は主の前でその牛をほふる。祭司であるアロンの子らは、その血を持ってきて、会見の天幕の入り口にある祭壇の四方に振りかける。
1:6 それから、その人は焼き尽くすささげ物の皮をはぎ、体を部分ごとに切り分ける。
1:7 祭司アロンの子らは祭壇に火を置き、その火の上に薪を並べる。
1:8 そして祭司であるアロンの子らは、その肉の部分と頭と脂肪を、祭壇の火の上にある薪の上に並べる。
1:9 内臓と足は水で洗う。祭司はそのすべてを祭壇の上で焼く。これは焼き尽くすささげ物であり、火によるささげ物、主に喜ばれる香りである。
1:10 もし羊やぎの群れから、羊またはやぎを焼き尽くすささげ物にするなら、傷のない雄を選んでささげなさい。
1:11 その人は、祭壇の北側で、主の前でそれをほふる。祭司であるアロンの子らは、その血を祭壇の四方に振りかける。
1:12 その人はそれを部分ごとに切り分け、頭と脂肪も分ける。祭司はそれらを、祭壇の火の上にある薪の上に並べる。
1:13 内臓と足は水で洗う。祭司はそのすべてを祭壇の上で焼く。これは焼き尽くすささげ物であり、火によるささげ物、主に喜ばれる香りである。
1:14 もし主にささげる焼き尽くすささげ物が鳥なら、山鳩か家鳩のひなをささげなさい。
1:15 祭司はそれを祭壇のところに持って行き、その頭を摘み取って祭壇の上で焼く。血は祭壇の壁に絞り出す。
1:16 そのう と羽は取り除き、祭壇の東側、灰を捨てる場所に投げ捨てる。
1:17 翼のところで引き裂くが、切り離してはならない。祭司はそれを祭壇の上、火の上の薪の上で焼く。これは焼き尽くすささげ物であり、火によるささげ物、主に喜ばれる香りである。
2:1 だれかが主に穀物のささげ物をするときは、上等な小麦粉をささげ物とし、その上に油を注ぎ、乳香を添える。
2:2 それを祭司であるアロンの子らのところに持って行く。祭司はその小麦粉と油をひとつかみ取り、乳香もすべて添えて、それを覚えの分として祭壇の上で焼く。これは火によるささげ物、主に喜ばれる香りである。
2:3 穀物のささげ物の残りは、アロンとその子らのものとなる。それは主への火によるささげ物のうちで、最も聖なるものである。
2:4 かまどで焼いた穀物のささげ物をするなら、上等な小麦粉で作りなさい。油を混ぜた種なしのパンか、油を塗った種なしの薄焼きパンにする。
2:5 もし鉄板で焼いた穀物のささげ物なら、油を混ぜた上等な小麦粉で、種なしのものにする。
2:6 それを細かくちぎり、その上に油を注ぐ。これは穀物のささげ物である。
2:7 もし平鍋で作った穀物のささげ物なら、油を混ぜた上等な小麦粉で作りなさい。
2:8 こうして作った穀物のささげ物を主のところに持って行きなさい。それを祭司に渡し、祭司はそれを祭壇へ運ぶ。
2:9 祭司はその穀物のささげ物の一部を記念の分として取り分け、祭壇で焼く。これは火で焼くささげ物で、その香りは主を喜ばせる。
2:10 穀物のささげ物の残りは、アロンとその子たちのものになる。それは主に火で焼いてささげたものの中でも、最も聖なるものである。
2:11 あなたたちが主にささげる穀物のささげ物は、どれもパン種を入れて作ってはならない。パン種も蜜も、主に火で焼くささげ物として燃やしてはならないからだ。
2:12 それらは初物のささげ物として主にささげることはできるが、香りが主を喜ばせるものとして祭壇の上で焼いてはならない。
2:13 穀物のささげ物にはどれも塩を加えなさい。あなたの神との契約を表す塩を、ささげ物から欠かしてはならない。すべてのささげ物に塩を添えてささげなさい。
2:14 もし初物の穀物をささげ物として主にささげるなら、火であぶった新しい穀物、つまり実った穂を砕いたものをささげなさい。
2:15 その上に油を注ぎ、乳香をのせなさい。これは穀物のささげ物である。
2:16 祭司は砕いた穀物と油の一部を、乳香をすべて添えて、記念の分として焼く。これは主に火で焼くささげ物である。
3:1 もし人がささげるのが、主との交わりを表す和解のいけにえなら、それを牛の中からささげる場合、雄でも雌でも、どこにも欠けのないものを主の前にささげなさい。
3:2 その人は自分がささげる動物の頭に手を置き、会見の天幕の入り口でそれをほふる。それからアロンの子である祭司たちが、その血を祭壇の周囲に振りかける。
3:3 そして和解のいけにえの中から、火によるささげ物を主にささげる。すなわち、内臓をおおっている脂肪と、内臓についているすべての脂肪、
3:4 二つの腎臓と、それについている腰のあたりの脂肪、そして腎臓といっしょに取り出す肝臓の上の脂肪の膜である。
3:5 アロンの子たちはそれを祭壇の上、すなわち火にかけた薪の上で焼いている全焼のいけにえの上で、煙にして焼く。これは主が喜ばれる香りを放つ、火によるささげ物である。
3:6 もし主にささげる和解のいけにえが羊の群れの中からのものなら、雄でも雌でも、どこにも欠けのないものをささげなさい。
3:7 もしささげるのが子羊なら、それを主の前に連れて行き、
3:8 自分がささげる動物の頭に手を置き、会見の天幕の前でそれをほふる。それからアロンの子たちが、その血を祭壇の周囲に振りかける。
3:9 そして和解のいけにえの中から、火によるささげ物を主にささげる。すなわち、その脂肪、背骨のあたりから取り出す尾の全体、内臓をおおっている脂肪と、内臓についているすべての脂肪、
3:10 二つの腎臓と、それについている腰のあたりの脂肪、そして腎臓といっしょに取り出す肝臓の上の脂肪の膜である。
3:11 祭司はそれを祭壇の上で煙にして焼く。これは主にささげる、火による食物のささげ物である。
3:12 もしささげるのが山羊なら、それを主の前に連れて行き、
3:13 その頭に手を置き、会見の天幕の前でそれをほふる。それからアロンの子たちが、その血を祭壇の周囲に振りかける。
3:14 その中から、主にささげる火によるささげ物として、内臓をおおう脂肪と、内臓についているすべての脂肪、
3:15 二つの腎臓と、それについている腰のあたりの脂肪、そして腎臓といっしょに取り出す肝臓の上の脂肪の膜をささげる。
3:16 祭司はこれらを祭壇の上で煙にして焼く。これは火によるささげ物、良い香りとしてささげる食物であり、脂肪はすべて主のものである。
3:17 脂肪と血は、いっさい食べてはならない。これは、あなたがたが住むすべての場所で、代々にわたって守るべき永遠のおきてである。
4:1 主はモーセにこう言われた。
4:2 「イスラエルの人々にこう伝えなさい。もし誰かが、主の命令のうち、してはならないことを、うっかり一つでもやってしまい、罪を犯したなら、次のようにする。
4:3 もし油を注がれた祭司が罪を犯し、民全体に責めを負わせることになったなら、その犯した罪のために、傷のない若い雄牛を、罪をきよめるささげ物として主にささげなければならない。
4:4 その雄牛を会見の天幕の入り口、主の前に連れて行き、雄牛の頭に手を置いて、主の前でそれをほふる。
4:5 油を注がれた祭司は、その雄牛の血を取り、会見の天幕の中に持って入る。
4:6 そして祭司は指を血に浸し、聖所の垂れ幕に向かって、主の前で七回その血を振りまく。
4:7 祭司はその血の一部を、会見の天幕の中にある、主の前の香をたく祭壇の角に塗る。雄牛の残りの血はすべて、会見の天幕の入り口にある焼き尽くすいけにえの祭壇の土台に注ぐ。
4:8 祭司は、罪のためのいけにえであるその雄牛から、脂肪をすべて取り除く。内臓を覆っている脂肪と、内臓についている脂肪のすべて、
4:9 二つの腎臓とその上の、腰のあたりにある脂肪、そして腎臓といっしょに取り除く肝臓についた小葉を取り除く。
4:10 これは、和解のいけにえの雄牛から取り除くのと同じようにする。祭司はこれらを焼き尽くすいけにえの祭壇の上で焼いて煙にする。
4:11 しかし雄牛の皮と、頭や足、内臓や汚物を含む肉のすべては、
4:12 つまり雄牛の全体を、宿営の外の、灰を捨てる清い場所に運び出す。そして薪の上に置き、火で焼く。灰を捨てる場所で焼くのである。
4:13 もしイスラエルの共同体全体があやまちを犯し、その事がらが集会の目から隠されていて、主の戒めのうち、してはならないことの一つを行い、罪を負ったとする。
4:14 その犯した罪が知られるようになったなら、集会は罪のためのいけにえとして若い雄牛を一頭ささげ、会見の天幕の前に連れて行く。
4:15 共同体の長老たちは主の前でその雄牛の頭に手を置き、主の前でその雄牛をほふる。
4:16 油を注がれた祭司は、その雄牛の血を会見の天幕の中に持って入る。
4:17 そして祭司は指を血に浸し、垂れ幕に向かって、主の前で七回その血を振りまく。
4:18 その血の一部を、会見の天幕の中にある、主の前の祭壇の角に塗り、残りの血はすべて、会見の天幕の入り口にある焼き尽くすいけにえの祭壇の土台に注ぐ。
4:19 その雄牛の脂肪をすべて取り出し、祭壇で焼いて煙にする。
4:20 こうして、罪のためのいけにえの雄牛にしたのと同じように、この雄牛にも行う。祭司はこうして人々のために罪を償い、彼らは赦される。
4:21 そして、その雄牛を宿営の外に運び出し、先ほどの雄牛と同じように焼く。これは会衆全体のための、罪のためのいけにえである。
4:22 指導者が罪を犯した場合、つまり、彼の神である主が「してはならない」と命じたことの一つをうっかり行い、責めを負ったとき、
4:23 自分が犯した罪に気づいたなら、その人は献げ物として、傷のない雄のやぎを引いてくる。
4:24 そして、そのやぎの頭に手を置き、焼き尽くすいけにえをほふる場所で、主の前でそれをほふる。これは罪のためのいけにえである。
4:25 祭司は、その罪のためのいけにえの血を指につけ、焼き尽くすいけにえの祭壇の角に塗り、残りの血は祭壇の土台に注ぐ。
4:26 脂肪はすべて、和解のいけにえの脂肪と同じように、祭壇で焼いて煙にする。こうして祭司はその人の罪を償い、その人は赦される。
4:27 また、一般の人の一人がうっかり罪を犯した場合、つまり、主が「してはならない」と命じたことの一つを行って、責めを負ったとき、
4:28 自分が犯した罪に気づいたなら、その人は自分の犯した罪のために、献げ物として傷のない雌のやぎを引いてくる。
4:29 そして、その罪のためのいけにえの頭に手を置き、焼き尽くすいけにえの場所でそれをほふる。
4:30 祭司は、その血を指につけ、焼き尽くすいけにえの祭壇の角に塗り、残りの血はすべて祭壇の土台に注ぐ。
4:31 その人は、和解のいけにえから脂肪を取り除くのと同じように、脂肪をすべて取り除く。そして祭司はそれを祭壇で焼いて煙にする。それは主が喜ぶ香りとなる。こうして祭司はその人のために罪を償い、その人は赦される。
4:32 もし罪のための献げ物として子羊を引いてくるなら、傷のない雌を引いてくる。
4:33 そして、その罪のためのいけにえの頭に手を置き、焼き尽くすいけにえをほふる場所で、それを罪のためのいけにえとしてほふる。
4:34 祭司は、その罪のためのいけにえの血を指につけ、焼き尽くすいけにえの祭壇の角に塗り、残りの血はすべて祭壇の土台に注ぐ。
4:35 その人は、和解のいけにえの子羊から脂肪を取り除くのと同じように、脂肪をすべて取り除く。そして祭司はそれを、主に献げる火のいけにえの上で祭壇で焼いて煙にする。こうして祭司は、その人が犯した罪のために償いをし、その人は赦される。
5:1 もし人が罪を犯す場合、こういうことがある。証言するよう命じる声を聞き、自分は見たか、知っているのに、それを話さないなら、その人は自分の罪の責任を負う。
5:2 また、汚れたものに触れてしまう場合もある。汚れた野の獣の死骸、汚れた家畜の死骸、汚れた地を這うものの死骸などだ。たとえ気づかなかったとしても、その人は汚れており、責めを負う。
5:3 また、人の汚れに触れる場合もある。人を汚すどんな汚れであれ、それに触れて、気づかないでいたとしても、後でそれを知ったなら、その人は責めを負う。
5:4 また、人が軽々しく口にする誓いをする場合もある。悪いことでも良いことでも、人が誓って口にするどんなことであれ、そのことを忘れていたとしても、後でそれを知ったなら、その人はそのどれか一つについて責めを負う。
5:5 これらのどれか一つについて責めを負うことになったなら、その人は自分が犯した罪を告白しなければならない。
5:6 そして、自分が犯した罪のために、償いの献げ物を主のもとに引いてくる。それは罪のためのいけにえとして、群れの中から雌の一頭、雌の子羊か雌のやぎだ。こうして祭司は、その人のために罪の償いをする。
5:7 でも、もし子羊を用意できないなら、その人は自分が犯した罪の償いとして、山鳩二羽か家鳩のひな二羽を主のもとに持ってくる。一羽は罪のためのいけにえに、もう一羽は焼き尽くすいけにえにするためだ。
5:8 その人はそれを祭司のところに持ってくる。祭司はまず、罪のためのいけにえのほうを献げる。その頭を首の付け根でひねり取るが、切り離してはならない。
5:9 そして、罪のためのいけにえの血の一部を祭壇の側面に振りかけ、残った血は祭壇の土台に絞り出す。これは罪のためのいけにえだ。
5:10 もう一羽は、定めのとおりに焼き尽くすいけにえとして献げる。こうして祭司は、その人が犯した罪のために償いをする。すると、その人は赦される。
5:11 もし山鳩二羽も家鳩のひな二羽も用意できないなら、罪を犯したその人は、自分の献げ物として上等の小麦粉を一エファの十分の一持ってくる。これは罪のためのいけにえだから、その上に油を注いではならないし、乳香をのせてもいけない。
5:12 その人はそれを祭司のところに持ってくる。祭司はそこから一つかみを取り、覚えの分として、主にささげる火の献げ物の上で祭壇で焼く。これは罪のためのいけにえだ。
5:13 こうして祭司は、その人がこれらのどれか一つについて犯した罪のために償いをする。すると、その人は赦される。残りは、穀物の献げ物と同じように祭司のものとなる。
5:14 主はモーセにこう告げられた。
5:15 「人が、主にささげられた聖なるものについて、うっかり不正をして罪を犯した場合、その人は償いの献げ物として、群れの中から傷のない雄羊を一頭、主のもとに持ってくる。それは聖所のシェケルで量った銀で、あなたの定める額に相当するもので、償いのためのものだ。
5:16 そして、その聖なるものについて損なった分を償い、それに五分の一を加えて祭司に渡す。祭司はその償いの雄羊で、その人のために罪の償いをする。すると、その人は赦される。
5:17 もし人が罪を犯し、主が「してはならない」と命じたことのどれか一つを、それと気づかずに行ったとしても、その人は責めを負い、自分の罪の重荷を負うことになる。
5:18 その人は、あなたの定める額に相当する、群れの中から傷のない雄羊を一頭、償いの献げ物として祭司のところに持ってくる。祭司は、その人がそれと知らずにうっかり犯した過ちのために償いをする。すると、その人は赦される。
5:19 これは償いの献げ物である。その人は確かに主に対して責めを負っているのだ。
6:1 主はモーセにこう告げた。
6:2 「もし人が罪を犯し、主に対して不誠実なことをした場合——たとえば、預かった物や手渡された物のことで隣人をだましたり、物を奪ったり、隣人からゆすり取ったりした場合、
6:3 あるいは、落とし物を拾ったのに知らないと偽ったり、偽って誓ったりした場合、つまり人がしてしまいがちな、こうした罪のどれか一つを犯した場合、
6:4 その人は罪を犯して責めを負ったのだから、奪った物、ゆすり取った物、預かっていた物、拾った落とし物、
6:5 あるいは偽って誓ったその物を、すべて返さなければならない。元の額をそのまま返した上に、五分の一を上乗せして加える。そして、責めを負ったその日に、それをもとの持ち主に渡す。
6:6 さらにその人は、償いの献げ物として、あなたの定める額に相当する、群れの中から傷のない雄羊を一頭、祭司のところに持ってくる。
6:7 祭司は主の前で、その人のために償いをする。すると、その人は、責めを負う原因となったどの行いについても赦される。」
6:8 主はモーセにこう告げた。
6:9 アロンとその子らにこう命じなさい。これは、焼き尽くすささげ物についての決まりである。焼き尽くすささげ物は、祭壇の上の炉で夜通し朝まで置いておき、祭壇の火は、その上で燃やし続けなさい。
6:10 祭司は亜麻布の服を着て、素肌に亜麻布の下着をつける。そして、祭壇の上で火が焼き尽くしたささげ物の灰を取り出し、祭壇のわきに置く。
6:11 それから、その服を脱いでほかの服に着替え、灰を宿営の外の、きよい場所へ運び出す。
6:12 祭壇の火は燃やし続け、消してはならない。祭司は毎朝その上でたきぎを燃やし、焼き尽くすささげ物を並べ、その上で交わりのささげ物の脂肪を焼いて煙にする。
6:13 火は絶えず祭壇の上で燃やし続け、消してはならない。
6:14 これは、穀物のささげ物についての決まりである。アロンの子らは、それを主の前、祭壇の正面にささげる。
6:15 祭司はそこから、穀物のささげ物の上等な小麦粉と油を一握りと、その上にある乳香をすべて取り、記念の分として祭壇で焼き、主の喜ばれる香りとする。
6:16 残りはアロンとその子らが食べる。それは種を入れないパンとして、聖なる場所で食べる。会見の天幕の庭で食べなさい。
6:17 それをパン種を入れて焼いてはならない。わたしは、火によってわたしにささげられたものの中から、それを彼らの受ける分として与えた。それは、罪のためのささげ物や償いのささげ物と同じように、最も聖なるものである。
6:18 アロンの子孫の男子はみな、それを食べることができる。これは、主に火によってささげられたものの中から、あなたがたが代々いつまでも守るべき定めである。それに触れるものはすべて、聖なるものとなる。
6:19 主はモーセにこう告げた。
6:20 これは、アロンとその子らが油を注がれる日に、主にささげるささげ物である。上等の小麦粉一エファの十分の一を、毎日欠かさずささげる穀物のささげ物とする。その半分を朝に、残りの半分を夕方にささげる。
6:21 それは油を混ぜて鉄板で焼き、よくこねてから持って来る。焼いた穀物のささげ物をいくつかに分けて、主が喜ぶ香りとしてささげる。
6:22 アロンの子らのうちから、彼に代わって油を注がれて祭司となる者が、これをささげる。これは主のために永遠に守るべき定めであり、全部を焼き尽くさなければならない。
6:23 祭司がささげる穀物のささげ物は、すべて完全に焼き尽くす。決して食べてはならない。
6:24 主はモーセに言われた。
6:25 アロンとその子たちにこう伝えなさい。「罪を清めるためのささげ物についての決まりは、次のとおりだ。焼き尽くすささげ物をほふる場所で、主の前でそのささげ物をほふりなさい。これはとても神聖なものだ。
6:26 罪の贖いのためにこのささげ物をする祭司が、それを食べる。神と会うための幕屋の庭、その聖なる場所で食べなければならない。
6:27 その肉に触れるものはすべて、聖なるものとなる。その血が衣服に飛び散ったなら、その飛び散ったものを聖なる場所で洗わなければならない。
6:28 それを煮た土の器は、割らなければならない。もし青銅の器で煮たのなら、その器を磨いて、水でよくすすぐこと。
6:29 祭司のうち男子はみな、これを食べることができる。これは最も聖なるものである。
6:30 しかし、その血を会見の幕屋の中に持ち込んで、聖なる場所で罪を償うために使った罪のためのささげ物は、食べてはいけない。それは火で焼き捨てなければならない。
7:1 これは、罪を償うためのささげ物についての決まりである。それは最も聖なるものだ。
7:2 焼き尽くすささげ物を殺す場所で、この償いのささげ物も殺す。そして、その血を祭壇の周りに振りかける。
7:3 脂肪はすべて主にささげる。太った尾と、内臓をおおっている脂肪、
7:4 二つの腎臓とその上の、腰のあたりの脂肪、それに腎臓といっしょに取り出す肝臓の上の部分を、ささげる。
7:5 祭司はそれらを祭壇の上で焼いて、主への火によるささげ物とする。これは償いのささげ物である。
7:6 祭司の家系の男子は、みなこれを食べてよい。ただし、聖なる場所で食べなければならない。それは最も聖なるものだからだ。
7:7 罪を清めるささげ物も、償いのささげ物も、決まりは一つで同じである。それをささげて罪の償いをする祭司のものとなる。
7:8 焼き尽くすささげ物をだれかのためにささげる祭司は、そのささげ物の皮を自分のものにできる。
7:9 また、かまどで焼いた穀物のささげ物や、深鍋や鉄板で作ったものはみな、それをささげる祭司のものとなる。
7:10 一方、油を混ぜたものも、油を混ぜていない乾いたものも、穀物のささげ物はすべて、アロンの子孫みんなのものとなる。だれもが等しく分ける。
7:11 これは、主にささげる感謝と交わりのささげ物についての決まりである。
7:12 もし感謝のしるしとしてささげるなら、その感謝のささげ物といっしょに、油を混ぜて種を入れずに焼いた輪パンと、油を塗って種を入れずに焼いた薄いせんべいと、上質の小麦粉に油をよく混ぜて焼いた輪パンをささげる。
7:13 それに加えて、種を入れて焼いた輪パンを、感謝の交わりのささげ物といっしょにささげる。
7:14 そのすべてのささげ物から一つずつを取り、主への奉納物としてささげる。それは、交わりのささげ物の血を振りかける祭司のものとなる。
7:15 感謝の交わりのささげ物の肉は、ささげたその日のうちに食べなければならない。翌朝まで残してはいけない。
7:16 でも、もし誓いを果たすためのささげ物か、自分から進んでするささげ物なら、ささげたその日に食べ、残りは翌日に食べてもよい。
7:17 しかし、そのささげ物の肉で三日目まで残ったものは、火で焼き捨てる。
7:18 もし交わりのささげ物の肉を三日目に食べたなら、そのささげ物は受け入れられず、ささげた人のために認められることもない。それは汚れたものとなり、それを食べた人は自分の罪を負う。
7:19 汚れたものに触れた肉は、食べてはいけない。火で焼き捨てる。肉は、汚れていない人ならだれでも食べてよい。
7:20 しかし、汚れた状態のまま、主のものである交わりのささげ物の肉を食べる人は、自分の民から断ち切られる。
7:21 また、人の汚れや、汚れた動物や、汚れて忌まわしいものなど、何であれ汚れたものに触れたのに、主のものである交わりのささげ物の肉を食べる人は、自分の民から断ち切られる。
7:22 主はモーセにこう告げられた。
7:23 「イスラエルの人々にこう伝えなさい。牛や羊ややぎの脂肪は、いっさい食べてはならない。
7:24 自然に死んだ動物の脂肪や、野獣にかみ裂かれた動物の脂肪は、ほかのどんな用途に使ってもよいが、決して食べてはならない。
7:25 主にささげる火による捧げ物の動物の脂肪を食べる者は、その民から断たれる。
7:26 どこに住んでいても、鳥のものであれ動物のものであれ、血はいっさい食べてはならない。
7:27 血を食べる者はだれでも、その民から断たれる。」
7:28 主はモーセにこう告げられた。
7:29 「イスラエルの人々にこう伝えなさい。主に和解の供え物をささげる者は、その和解の供え物の一部を主のもとに持って来なければならない。
7:30 その人は自分の手で、主にささげる火による捧げ物を持って来る。胸の肉の上に脂肪をのせて持って来て、その胸の肉を主の前で揺り動かして献げるのだ。
7:31 祭司は脂肪を祭壇で焼いて煙にする。胸の肉はアロンとその子らのものとなる。
7:32 また、和解の供え物の中から、右のももを贈り物として祭司に与えなさい。
7:33 アロンの子らのうち、和解の供え物の血と脂肪をささげる者が、その取り分として右のももを受け取る。
7:34 揺り動かして献げる胸の肉と、贈り物として差し出すももを、わたしはイスラエルの人々の和解の供え物から取り、祭司アロンとその子らに、永遠の定めとして与えたからである。」
7:35 これは、アロンとその子らが主に仕える祭司として立てられた日から、主にささげる火による捧げ物のうち、彼らに割り当てられた分である。
7:36 主が彼らに油を注いだ日に、イスラエルの人々がこれを彼らに与えるようにと命じられたものである。これは代々にわたって守るべき永遠の定めである。
7:37 以上が、焼き尽くす捧げ物、穀物の捧げ物、罪を償う捧げ物、償いの捧げ物、祭司を任職するための捧げ物、そして和解の捧げ物についての教えである。
7:38 これは、シナイの荒れ野で、主がイスラエルの人々に主への捧げ物をささげるように命じた日に、シナイ山でモーセに授けられたものである。
8:1 主はモーセにこう告げた。
8:2 「アロンとその子らを連れて来なさい。祭司の衣装と、注ぎ用の油、罪を償う捧げ物の若い雄牛一頭、雄羊二頭、種を入れないパンを入れたかごも用意しなさい。
8:3 そして、会衆全員を臨在の幕屋の入り口に集めなさい。」
8:4 モーセは主に命じられたとおりにした。すると会衆が臨在の幕屋の入り口に集まった。
8:5 モーセは会衆に言った。「これは、主が行うようにと命じられたことである。」
8:6 モーセはアロンとその子らを進み出させ、水で彼らを洗い清めた。
8:7 モーセはアロンに下着を着せ、帯を締め、上着を着せた。その上にエフォドを着せ、エフォドの帯で締めて、それをアロンの体に留めた。
8:8 さらに胸当てを付け、その胸当てにウリムとトンミムを入れた。
8:9 頭にはターバンをかぶらせ、その前面に金の札、つまり聖なる冠を付けた。主がモーセに命じられたとおりだった。
8:10 それからモーセは注ぎの油を取り、幕屋とその中のすべてのものに注いで、それらを聖別した。
8:11 その油を祭壇に七回振りかけ、祭壇とそのすべての器具、洗いのための水盤とその台にも注いで、それらを聖別した。
8:12 また注ぎの油をアロンの頭に注ぎ、彼を聖別した。
8:13 次にモーセはアロンの子らを進み出させ、下着を着せ、帯を締め、頭に布をかぶらせた。主がモーセに命じられたとおりだった。
8:14 それから罪のための供え物の雄牛を引いて来た。アロンとその子らは、その雄牛の頭に手を置いた。
8:15 モーセはそれをほふり、その血を取って、指で祭壇の四隅の角にすべて塗り、祭壇を清めた。残りの血は祭壇の土台に注いで、それを聖別し、罪を償うためのものとした。
8:16 また内臓を覆うすべての脂肪、肝臓の付け根、二つの腎臓とその脂肪を取って、祭壇の上で焼いた。
8:17 しかし雄牛そのものは、その皮も肉も汚物も、宿営の外で火で焼いた。主がモーセに命じられたとおりだった。
8:18 次にモーセは焼き尽くす供え物の雄羊を引いて来た。アロンとその子らは、その雄羊の頭に手を置いた。
8:19 モーセはその雄羊をほふり、その血を祭壇の四方に振りかけた。
8:20 雄羊をいくつかの部分に切り分け、その頭と切り分けた肉と脂肪を焼いた。
8:21 内臓と足は水で洗い、雄羊の全体を祭壇の上で焼いた。これは焼き尽くす供え物であり、主に良い香りとしてささげる、火で焼く供え物だった。主がモーセに命じられたとおりだった。
8:22 次にモーセはもう一頭の雄羊、任職のための雄羊を引いて来た。アロンとその子らは、その雄羊の頭に手を置いた。
8:23 モーセはそれをほふり、その血を取って、アロンの右の耳たぶと右手の親指、右足の親指に付けた。
8:24 また、モーセはアロンの子らを近づけ、その血を彼らの右の耳たぶと右手の親指、右足の親指に付けた。そしてモーセはその血を祭壇の四方に振りかけた。
8:25 モーセは脂肪と脂肪の尾、内臓を覆うすべての脂肪、肝臓の付け根、二つの腎臓とその脂肪、それに右のもも肉を取った。
8:26 また、主の前に置かれた種なしパンのかごから、種なしパンを一つ、油を混ぜたパンを一つ、薄焼きパンを一つ取り、それらを脂肪と右のもも肉の上に載せた。
8:27 それらすべてをアロンの手とその子らの手に載せ、主の前で揺り動かして供え物とした。
8:28 それからモーセはそれらを彼らの手から取り、祭壇の上で、焼き尽くす供え物の上に載せて焼いた。これは任職のための供え物であり、主に良い香りとしてささげる、火で焼く供え物だった。
8:29 モーセは胸の肉を取り、主の前で揺り動かして供え物とした。これは任職の雄羊のうち、モーセの受け取る分だった。主がモーセに命じられたとおりだった。
8:30 さらにモーセは注ぎの油と祭壇の上の血を取り、それをアロンとその衣、その子らとその子らの衣に振りかけた。こうしてモーセは、アロンとその衣、その子らとその子らの衣を聖別した。
8:31 モーセはアロンとその子らに言った。「その肉を会見の幕屋の入り口で煮て、そこで食べなさい。任職のためのかごに入っているパンも、そこで食べなさい。『アロンとその子らがそれを食べる』とわたしが命じたとおりに。
8:32 肉やパンで残ったものは、火で焼き捨てなさい。
8:33 あなたたちの任職の期間が終わる日まで、七日間は会見の幕屋の入り口から出てはいけない。あなたたちの任職には七日かかるからだ。
8:34 今日行ったことは、あなたたちの罪を償うために、主が行うようにと命じられたことだ。
8:35 あなたたちは七日間、昼も夜も会見の幕屋の入り口にとどまり、主から任された務めを守りなさい。そうすれば死ぬことはない。わたしはそのように命じられているのだ。」
8:36 アロンとその子らは、主がモーセを通して命じられたことを、すべてそのとおりに行った。
9:1 八日目に、モーセはアロンとその子ら、そしてイスラエルの長老たちを呼び集めた。
9:2 そしてアロンに言った。「若い雄牛を一頭、罪を償うための供え物として、また雄羊を一頭、焼き尽くす供え物として取りなさい。どちらも傷のないものだ。それを主の前にささげなさい。
9:3 そしてイスラエルの人々にこう伝えなさい。『雄やぎを一頭、罪を償うための供え物として取りなさい。また一歳の子牛と子羊を、どちらも傷のないものを、焼き尽くす供え物として取りなさい。
9:4 さらに雄牛と雄羊を、和解の供え物として主の前にささげなさい。そして油を混ぜた穀物の供え物も。今日、主があなたたちに姿を現されるからだ。』」
9:5 そこで人々は、モーセが命じたものを会見の幕屋の前に持って来た。会衆はみな近づいて、主の前に立った。
9:6 モーセは言った。「これが、主が行うようにと命じられたことだ。そうすれば、主の栄光があなたたちに現れる。」
9:7 モーセはアロンに言った。「祭壇に近づいて、あなたの罪の供え物と焼き尽くす供え物をささげなさい。そうして、あなた自身と民のために罪の償いをしなさい。それから民の供え物をささげて、彼らのために罪の償いをしなさい。主が命じられたとおりに。」
9:8 そこでアロンは祭壇に近づき、自分のための罪の供え物の子牛をほふった。
9:9 アロンの息子たちがその血を彼のところへ持って来た。アロンは指を血に浸し、それを祭壇の四隅の角に塗った。残りの血は祭壇の土台に注いだ。
9:10 そして罪の供え物の脂肪と腎臓、肝臓を覆う部分を祭壇の上で焼いて煙にした。主がモーセに命じられたとおりだった。
9:11 肉と皮は宿営の外で火で焼いた。
9:12 次にアロンは焼き尽くす供え物をほふった。息子たちがその血を彼に手渡すと、アロンはそれを祭壇の周りに振りかけた。
9:13 彼らは焼き尽くす供え物を切り分けたものと頭をアロンに手渡し、アロンはそれを祭壇の上で焼いて煙にした。
9:14 アロンは内臓と足を洗い、それを祭壇の上の焼き尽くす供え物とともに焼いて煙にした。
9:15 それからアロンは民の供え物をささげた。民のための罪の供え物の雄やぎを取ってほふり、さっきと同じように罪の供え物としてささげた。
9:16 続いて焼き尽くす供え物をささげ、定められたとおりに行った。
9:17 また穀物の供え物をささげ、その一握りを取って、朝の焼き尽くす供え物とは別に祭壇の上で焼いて煙にした。
9:18 さらにアロンは、民のための和解の供え物である雄牛と雄羊をほふった。息子たちがその血を彼に手渡すと、アロンはそれを祭壇の周りに振りかけた。
9:19 また、雄牛と雄羊の脂肪の部分——脂の尾、内臓をおおう脂、二つの腎臓、肝臓についた脂——も取り分けた。
9:20 彼らはその脂肪を胸の肉の上に載せ、アロンはその脂肪を祭壇の上で焼いて煙にした。
9:21 胸の肉と右のももは、アロンが主の前で揺り動かしてささげた。モーセが命じたとおりだった。
9:22 それからアロンは両手を上げて民を祝福し、罪の供え物と焼き尽くす供え物と和解の供え物をささげ終えて、降りてきた。
9:23 モーセとアロンは会見の幕屋に入り、また出てきて民を祝福した。すると主の栄光がすべての民に現れた。
9:24 主の前から火が出て、祭壇の上の焼き尽くす供え物と脂肪を焼き尽くした。それを見た民はみな喜びの声を上げ、ひれ伏した。
10:1 ところが、アロンの子ナダブとアビフは、それぞれ自分の火皿を取って火を入れ、その上に香を盛り、主が命じてもいない異質な火を主の前にささげた。
10:2 すると主の前から火が出て、二人を焼き尽くし、彼らは主の前で死んだ。
10:3 モーセはアロンに言った。「これこそ主が語られたことだ。『わたしに近づく者たちによって、わたしは聖なる者として示され、すべての民の前で栄光を現す。』」アロンは黙っていた。
10:4 モーセは、アロンのおじウジエルの子ミシャエルとエルツァファンを呼んで言った。「近づいて、あなたたちの身内を聖所の前から陣営の外へ運び出しなさい。」
10:5 二人は近づき、モーセが言ったとおり、彼らを長い服のまま陣営の外へ運び出した。
10:6 モーセはアロンとその子エルアザルとイタマルに言った。「髪を乱してはいけない。服を引き裂いてもいけない。そうしないとあなたたちは死に、主の怒りが会衆全体に及ぶことになる。あなたたちの身内であるイスラエルの全家が、主が焼き尽くされたこの死を嘆けばよい。
10:7 会見の天幕の入り口から出てはいけない。そうしないと死ぬことになる。主の注ぎの油があなたたちの上にあるからだ。」彼らはモーセが言ったとおりにした。
10:8 主はアロンに言われた。
10:9 「あなたも、あなたと一緒の息子たちも、会見の天幕に入るときは、ぶどう酒や強い酒を飲んではいけない。そうしないと死ぬことになる。これは代々にわたって守るべき、永遠のおきてである。
10:10 それは、聖なるものと俗なるもの、汚れたものと清いものを見分けるためであり、
10:11 また、主がモーセを通してイスラエルの人々に告げたすべての定めを、彼らに教えるためである。」
10:12 モーセはアロンと、残された息子エルアザルとイタマルに言った。「主にささげられた火による供え物のうち、残った穀物の供え物を取りなさい。そして、それを種を入れないパンとして祭壇のそばで食べなさい。それはとても聖なるものだからだ。
10:13 それを聖なる場所で食べなさい。それは、主にささげられた火による供え物のうち、あなたとあなたの息子たちの取り分だからだ。わたしはそう命じられている。
10:14 揺り動かしてささげた胸の肉と、差し出してささげたもも肉は、あなたと、あなたの息子や娘たちと一緒に、清い場所で食べなさい。それは、イスラエルの人々の和解の供え物のうちから、あなたとあなたの息子たちの取り分として与えられたものだからだ。
10:15 差し出してささげるもも肉と、揺り動かしてささげる胸の肉は、火によってささげる脂肪と一緒に持って来て、主の前で揺り動かしてささげなさい。それは、主が命じられたとおり、あなたとあなたの息子たちの永遠の取り分となる。」
10:16 さて、モーセが罪の供え物のやぎを念入りに探したところ、それはすでに焼かれてしまっていた。モーセは、アロンの残された息子エルアザルとイタマルに対して怒って言った。
10:17 「なぜあなたたちは、罪の供え物を聖なる場所で食べなかったのか。それはとても聖なるものだ。主はそれをあなたたちに与え、会衆の罪を負い、主の前で彼らのために罪を償わせようとされたのだ。
10:18 見なさい、その血は聖所の中に持ち込まれなかった。だから、わたしが命じたとおり、あなたたちはそれを聖なる場所で食べるべきだったのだ。」
10:19 アロンはモーセに言った。「見てください。今日、彼らは罪の供え物と焼き尽くす供え物を主の前にささげました。それなのに、こんなことがわたしの身に起きたのです。もし今日、わたしが罪の供え物を食べていたら、それは主の目にかなったでしょうか。」
10:20 モーセはこれを聞いて、もっともだと思った。
11:1 主はモーセとアロンにこう言われた。
11:2 「イスラエルの人々に伝えなさい。地上のすべての動物のうち、あなたたちが食べてよいのは次のものだ。
11:3 動物のうち、ひづめが完全に分かれていて、しかも反すうするものは、食べてよい。
11:4 ただし、反すうするものや、ひづめの分かれたもののうち、次のものは食べてはならない。らくだは、反すうはするが、ひづめが分かれていない。だから、あなたたちには汚れたものだ。
11:5 岩だぬきは、反すうはするが、ひづめが分かれていない。だから、あなたたちには汚れたものだ。
11:6 野うさぎは、反すうはするが、ひづめが分かれていない。だから、あなたたちには汚れたものだ。
11:7 豚は、ひづめが分かれていて、完全に割れているが、反すうしない。だから、あなたたちには汚れたものだ。
11:8 これらの肉を食べてはならない。その死骸に触れてもいけない。あなたたちには汚れたものだ。
11:9 水の中にいるもののうち、次のものは食べてよい。海でも川でも、ひれとうろこのあるものは、すべて食べてよい。
11:10 だが、海や川にいるもので、ひれとうろこのないものは、すべて避けなければならない。水の中で群がるものも、水の中に生きるものも、みな、あなたたちには忌み嫌うべきものだ。
11:11 これらは、あなたたちには忌み嫌うべきものだ。その肉を食べてはならない。その死骸も忌み嫌わなければならない。
11:12 水の中にいるもので、ひれとうろこのないものは、すべて、あなたたちには忌み嫌うべきものだ。
11:13 鳥のうち、次のものは忌み嫌わなければならない。食べてはならない。忌み嫌うべきものだからだ。すなわち、はげわし、ひげはげわし、みさご、
11:14 とび、はやぶさの類、
11:15 からすの類はすべて、
11:16 だちょう、よたか、かもめ、たかの類、
11:17 ふくろう、う、みみずく、
11:18 しろふくろう、ペリカン、はげたか。
11:19 こうのとり、さぎの類、やつがしら、こうもり。
11:20 羽があって、四本の足で歩き回る虫は、すべてあなたたちにとって忌まわしいものだ。
11:21 ただし、羽があって四本の足で歩き回る虫のうち、足のほかに地面を跳ねるための後ろ足を持つものは、食べてもいい。
11:22 その中でも、いなご、羽ばね、こおろぎ、ばったの類は食べてもいい。
11:23 でも、羽があって四本の足で歩き回る虫は、そのほかはすべてあなたたちにとって忌まわしいものだ。
11:24 次のものに触れると、あなたたちは汚れる。これらの死骸に触れた人は、夕方まで汚れる。
11:25 その死骸を運んだ人は、服を洗わなければならない。その人は夕方まで汚れる。
11:26 ひづめが分かれていても、その割れ目が完全に分かれていない動物、あるいは反すうしない動物は、すべてあなたたちにとって汚れたものだ。これらに触れた人は汚れる。
11:27 四本の足で歩く動物のうち、足の裏で歩くものは、すべてあなたたちにとって汚れたものだ。これらの死骸に触れた人は、夕方まで汚れる。
11:28 その死骸を運んだ人は、服を洗わなければならない。その人は夕方まで汚れる。これらはあなたたちにとって汚れたものだ。
11:29 地面を這い回る生き物のうち、あなたたちにとって汚れたものは次のとおりだ。もぐら、ねずみ、とかげの類、
11:30 やもり、大とかげ、いもり、すな鼠、カメレオン。
11:31 地面を這い回る生き物のうち、あなたたちにとって汚れたものはこれらだ。その死骸に触れた人は、夕方まで汚れる。
11:32 それらが死んで、何かの上に落ちると、その物は汚れる。それが木の器でも、衣類でも、皮でも、袋でも、どんな作業に使う道具でも同じだ。それは水に浸さなければならない。そして夕方まで汚れているが、その後で清くなる。
11:33 もし土の器の中にそれらが落ちたら、その中にあるものはすべて汚れる。その器は割ってしまわなければならない。
11:34 その器の水がかかった食べ物は、すべて汚れる。そういう器に入った飲み物も、すべて汚れる。
11:35 それらの死骸が何かの上に落ちれば、その物は汚れる。かまどでも、こんろでも、壊さなければならない。それらは汚れたものであり、あなたたちにとっても汚れたものであり続ける。
11:36 ただし、泉や、水のたまった穴は清いままだ。しかし、その死骸に触れた人は汚れる。
11:37 それらの死骸が、これからまく種の上に落ちても、その種は清い。
11:38 でも、種に水がかけてあって、その上に死骸が落ちたなら、その種はあなたたちにとって汚れたものになる。
11:39 あなたたちが食べてよい家畜が死んだ場合、その死骸に触れた人は夕方まで汚れる。
11:40 その死骸を食べた人は、服を洗わなければならない。その人は夕方まで汚れる。その死骸を運んだ人も、服を洗わなければならない。その人は夕方まで汚れる。
11:41 地面を這い回る生き物は、すべて忌まわしいものだ。食べてはならない。
11:42 腹で這うものも、四本足で歩くものも、たくさんの足で動くものも、地面を這い回る生き物はどれも食べてはならない。それらは忌まわしいものだからだ。
11:43 あなたがたは、地を這い回るどんな生き物によっても、自分自身を忌まわしいものにしてはならない。それらで身を汚してはならない。汚れてはならない。
11:44 わたしはあなたがたの神、主だからだ。あなたがたは自分を聖なるものとし、聖なる者になりなさい。わたしが聖なる者だからだ。地を這うどんな生き物によっても、自分自身を汚してはならない。
11:45 わたしは、あなたがたの神となるために、あなたがたをエジプトの地から導き出した主だからだ。だから、聖なる者になりなさい。わたしが聖なる者だからだ。」
11:46 これは、獣と鳥、水の中を動くすべての生き物、そして地を這い回るすべての生き物についての教えである。
11:47 汚れたものと清いものを区別し、食べてよい生き物と食べてはならない生き物を見分けるためである。
12:1 主はモーセにこう言われた。
12:2 「イスラエルの人々に伝えなさい。女性が身ごもって男の子を産んだ場合、その女性は七日間汚れる。月のもので汚れるときと同じように汚れる。
12:3 そして八日目に、その子は包皮に割礼を受ける。
12:4 それから、その女性は血からの清めのために三十三日間を過ごす。清めの期間が終わるまで、聖なるものに触れてはならず、聖所に入ってもならない。
12:5 もし女の子を産んだ場合は、その女性は月のもののときと同じように二週間汚れる。そして血からの清めのために六十六日間を過ごす。
12:6 男の子であれ女の子であれ、清めの期間が終わったら、その女性は焼き尽くすいけにえとして一歳の子羊を、罪のためのいけにえとして家鳩のひな一羽か山鳩一羽を、会見の天幕の入り口にいる祭司のところへ持って行く。
12:7 祭司はそれを主の前にささげ、その女性のために罪を償う。こうして彼女は出血による汚れから清められる。これが、男の子または女の子を産んだ女性についての定めである。
12:8 もし子羊を用意できない場合は、その女性は山鳩二羽か家鳩のひな二羽を持って行く。一羽を焼き尽くすいけにえとして、もう一羽を罪のためのいけにえとしてささげる。祭司がその女性のために罪を償うと、彼女は清くなる。」
13:1 主はモーセとアロンにこう告げた。
13:2 誰かの皮膚に、はれものや吹き出物、または白い斑点ができ、それが深刻な皮膚病になったときは、その人は祭司アロンのところか、その子である祭司たちのひとりのところに連れて行かれる。
13:3 祭司はその皮膚の患部を調べる。患部の毛が白く変わり、患部が皮膚より深く見えるなら、それは深刻な皮膚病である。祭司はそれを調べて、その人を汚れていると宣言する。
13:4 しかし、それが皮膚にできた白い斑点で、皮膚より深くは見えず、毛も白く変わっていないなら、祭司はその患部のある人を七日間隔離する。
13:5 七日目に祭司がその人を調べて、患部が変わらず、皮膚に広がっていないなら、祭司はさらに七日間隔離する。
13:6 七日目に祭司がもう一度その人を調べて、患部が薄くなり、皮膚に広がっていないなら、祭司はその人を清いと宣言する。それは単なる吹き出物である。その人は衣服を洗えば、清くなる。
13:7 しかし、その人が清めのために祭司に見せた後で、その吹き出物が皮膚に広がっていくなら、もう一度祭司に見せなければならない。
13:8 祭司が調べて、吹き出物が皮膚に広がっているなら、祭司はその人を汚れていると宣言する。それは重い皮膚病である。
13:9 重い皮膚病の患部が人にできたら、その人は祭司のところに連れて行かれる。
13:10 祭司が調べて、皮膚に白く盛り上がった部分があり、そこの毛が白く変わり、その盛り上がった部分に赤くただれた肉があるなら、
13:11 それは古くからある重い皮膚病だ。祭司はその人を汚れていると宣言する。もう汚れているのだから、隔離する必要はない。
13:12 もし重い皮膚病が皮膚全体に広がって、患部の皮膚を頭から足の先まで、祭司が見る限りすべて覆っているなら、
13:13 祭司が調べて、重い皮膚病がその人の全身を覆っているなら、祭司はその患部を清いと宣言する。全身が白く変わったのだから、その人は清い。
13:14 しかし、その人に赤くただれた肉が現れたら、その人は汚れている。
13:15 祭司はそのただれた肉を見て、その人を汚れていると宣言する。ただれた肉は汚れており、それは重い皮膚病である。
13:16 あるいは、そのただれた肉がもとに戻って白く変わったら、その人は祭司のところに来る。
13:17 祭司が調べて、患部が白く変わっているなら、祭司はその患部を清いと宣言する。その人は清い。
13:18 人の皮膚にできものができて、それが治った場合、
13:19 そのできものがあった場所に、白い腫れか、白くて少し赤みのある斑点ができたら、その人は祭司に見せる。
13:20 祭司が調べて、それが皮膚より低く見え、そこの毛が白く変わっているなら、祭司はその人を汚れていると宣言する。それはできものから広がった、重い皮膚病の患部だ。
13:21 でも祭司が調べて、そこに白い毛がなく、皮膚より低くもなく、色もうすいなら、祭司はその人を七日間隔離する。
13:22 もしそれが皮膚に広がっていくなら、祭司はその人を汚れていると宣言する。それは患部だからだ。
13:23 でも斑点がそのままで広がらないなら、それはできものの跡にすぎない。祭司はその人を清いと宣言する。
13:24 また、人の皮膚に火傷ができて、その火傷あとの生えぎわに、白くて少し赤みのある斑点か、白い斑点ができた場合、
13:25 祭司がそれを調べて、斑点のところの毛が白く変わり、皮膚より深く見えるなら、それは火傷から広がった重い皮膚病だ。祭司はその人を汚れていると宣言する。それは重い皮膚病の患部だ。
13:26 でも祭司が調べて、斑点のところに白い毛がなく、皮膚より低くもなく、色もうすいなら、祭司はその人を七日間隔離する。
13:27 祭司は七日目にその人を調べる。もしそれが皮膚に広がっているなら、祭司はその人を汚れていると宣言する。それは重い皮膚病の患部だ。
13:28 でも斑点がそのままで、皮膚に広がらず、色もうすいなら、それは火傷による腫れにすぎない。祭司はその人を清いと宣言する。それは火傷の跡だからだ。
13:29 男でも女でも、頭かあごひげに患部ができた場合、
13:30 祭司はその患部を調べる。もしそれが皮膚より深く見え、そこに黄色くて細い毛があるなら、祭司はその人を汚れていると宣言する。それはかいせんで、頭かあごひげにできた重い皮膚病だ。
13:31 祭司がそのかいせんの患部を調べて、それが皮膚より深くは見えず、そこに黒い毛もない場合、祭司はそのかいせんの患部がある人を七日間隔離する。
13:32 七日目に祭司はその患部を調べる。もしかいせんが広がっておらず、そこに黄色い毛もなく、皮膚より深くも見えないなら、
13:33 その人は毛をそる。ただし患部のところはそらない。そして祭司はもう一度、そのかいせんを七日間隔離する。
13:34 七日目に祭司はそのかいせんを調べる。もしかいせんが皮膚に広がっておらず、皮膚より深くも見えないなら、祭司はその人を清いと宣言する。その人は服を洗えば清くなる。
13:35 でも、清いと宣言されたあとで、そのかいせんが皮膚にどんどん広がったら、
13:36 祭司はその人を調べる。もしかいせんが皮膚に広がっているなら、祭司は黄色い毛を探すまでもない。その人は汚れている。
13:37 しかし、かいせんが変わらないままで、そこに黒い毛が生えてきたなら、そのかいせんは治っている。その人は清い。祭司はその人を清いと宣言する。
13:38 男でも女でも、皮膚に斑点、それも白い斑点ができた場合、
13:39 祭司はそれを調べる。もし皮膚の斑点がくすんだ白色なら、それは皮膚にできたただの湿疹だ。その人は清い。
13:40 頭の毛が抜けた人は、はげているだけで、その人は清い。
13:41 額の生えぎわから毛が抜けた人は、額がはげているだけで、その人は清い。
13:42 でも、そのはげた頭や額に、赤みをおびた白い患部ができたら、それははげた頭や額にできた重い皮膚病だ。
13:43 祭司はそれを調べる。もし、はげた頭や額の患部のはれが赤みをおびた白い色で、体の皮膚にできる重い皮膚病のように見えたら、
13:44 その人は重い皮膚病にかかっているのだから、汚れている。祭司はその人を汚れていると告げなければならない。患部は頭にある。
13:45 重い皮膚病にかかっている人は、服を引き裂き、髪を乱し、口ひげを覆って、「汚れている、汚れている」と叫ばなければならない。
13:46 患部があるあいだは、ずっと汚れている。その人は汚れているのだから、ひとりで、宿営の外に住まなければならない。
13:47 また、羊毛の服でも麻の服でも、服にカビのような患部ができたときや、
13:48 麻や羊毛の織物の縦糸や横糸にできたとき、また革や革でできたどんな品物にできたとき、
13:49 その服や革、縦糸や横糸、または革でできた品物の患部が緑がかっているか赤みをおびていたら、それは広がっていく患部だから、祭司に見せなければならない。
13:50 祭司はその患部を調べ、そのものを七日間、しまっておく。
13:51 七日目に患部を調べて、もし服や縦糸や横糸、革、または革で作られたどんな品物であれ、その患部が広がっていたら、それは悪性で広がっていく患部だから、そのものは汚れている。
13:52 その患部のある服、羊毛や麻の縦糸や横糸、また革でできたどんな品物も、焼かなければならない。それは悪性で広がっていく患部だから、火で焼く。
13:53 しかし祭司が調べて、もし服や縦糸や横糸、また革でできたどんな品物であれ、患部が広がっていなかったら、
13:54 祭司は命じて、その患部のあるものを洗わせ、さらに七日間、しまっておく。
13:55 洗ったあとで祭司がその患部を調べる。もし患部の色が変わらず、広がってもいなくても、それは汚れている。火で焼かなければならない。それは、生地の表であれ裏であれ、内側まで食い込んだ腐りだからだ。
13:56 しかし洗ったあとで祭司が調べて、患部の色が薄くなっていたら、その部分を服や革、縦糸や横糸から破り取る。
13:57 それでもまだ服や縦糸や横糸、また革でできたどんな品物にそれが現れたら、それは広がっていく患部だ。患部のあるものを火で焼かなければならない。
13:58 服や縦糸や横糸、また革でできたどんな品物でも、洗って患部が消えたら、もう一度洗う。そうすれば清くなる。
13:59 以上が、羊毛や麻の服、また縦糸や横糸、革でできたどんな品物にできる患部について、清いか汚れているかを見分けるための決まりである。
14:1 主はモーセに言われた。
14:2 「患部を持つ人が清くなる日についての決まりは、こうである。その人は祭司のところに連れて来られる。
14:3 祭司は宿営の外に出て調べる。もしその人の患部が治っていたら、
14:4 祭司は命じて、清くなろうとしている人のために、生きている清い鳥を二羽と、杉の木、緋色の糸、ヒソプを用意させる。
14:5 祭司は命じて、その鳥の一羽を、湧き水を入れた素焼きの器の上でほふらせる。
14:6 そして、生きているほうの鳥を、杉の木、緋色の糸、ヒソプといっしょに手に取り、それらと生きた鳥を、湧き水の上でほふった鳥の血に浸す。
14:7 そして、その血を、重い皮膚病から清くなろうとしている人に七回振りかけて、その人を清いと宣言する。それから、生きているほうの鳥を野に放してやる。
14:8 清くなろうとしている人は、自分の衣服を洗い、体じゅうの毛をそり落とし、水で体を洗う。こうしてその人は清くなる。そのあとで宿営の中に入ることができるが、七日間は自分の天幕の外で過ごさなければならない。
14:9 七日目に、その人は体じゅうの毛をそる。頭の毛も、ひげも、まゆも、すべての毛をそり落とす。そして衣服を洗い、水で体を洗う。こうしてその人は清くなる。
14:10 八日目に、その人は傷のない雄の子羊を二頭と、傷のない一歳の雌の子羊を一頭、それに穀物のささげ物として、油を混ぜた上等の小麦粉三十リットルと、油一ログを用意する。
14:11 清めの儀式を行う祭司は、清くなろうとしているその人と、これらのささげ物を、会見の天幕の入り口で、主の前に立たせる。
14:12 祭司は一頭の雄の子羊を取り、それを罪過を償うためのささげ物として、油一ログといっしょにささげる。そして、これらを主の前で揺り動かして、揺り動かすささげ物とする。
14:13 祭司は、罪のためのささげ物や焼き尽くすささげ物をほふる聖なる場所で、この子羊をほふる。罪のためのささげ物と同じように、罪過を償うためのささげ物も祭司のものとなるからだ。それは最も聖なるものである。
14:14 祭司は、罪過を償うためのささげ物の血を少し取り、清くなろうとしている人の右の耳たぶと、右手の親指と、右足の親指に付ける。
14:15 祭司は油一ログから油を少し取り、それを自分の左の手のひらに注ぐ。
14:16 そして、右手の指を、左の手のひらの油に浸し、その指で油を主の前に七回振りかける。
14:17 手のひらに残った油を、祭司は、清くなろうとしている人の右の耳たぶと、右手の親指と、右足の親指に、罪過を償うためのささげ物の血の上に重ねて付ける。
14:18 祭司は、手のひらにまだ残っている油を、清くなろうとしている人の頭に付ける。こうして祭司は、主の前でその人のために罪の償いをする。
14:19 祭司は罪の償いのためのささげ物をささげ、清くなろうとしている人のために、その汚れを取り除く償いをする。そのあとで、焼き尽くすささげ物の動物をほふる。
14:20 祭司はその焼き尽くすささげ物と穀物のささげ物を祭壇の上でささげる。こうして祭司はその人のために罪の償いをし、その人は清くなる。
14:21 もしその人が貧しくて、そこまで用意できない場合は、自分のための罪の償いとして、揺り動かしてささげる罪過のささげ物として、子羊を一頭用意する。また、穀物のささげ物として、油を混ぜた上等な小麦粉十分の一エファと、油一ログを用意する。
14:22 さらに、山鳩二羽か家鳩のひな二羽のうち、用意できるものを持って来る。一羽は罪の償いのためのささげ物、もう一羽は焼き尽くすささげ物とする。
14:23 その人は自分が清くなるための八日目に、それらを祭司のところ、つまり会見の天幕の入り口、主の前に持って来る。
14:24 祭司はその罪過のささげ物の子羊と油一ログを取り、それらを主の前で揺り動かしてささげる。
14:25 そして、その罪過のささげ物の子羊をほふる。祭司はその罪過のささげ物の血を取り、清くなろうとしている人の右の耳たぶと、右手の親指と、右足の親指に付ける。
14:26 祭司はその油を、自分の左の手のひらに注ぐ。
14:27 そして、右手の指で、左の手のひらの油を、主の前に七回振りかける。
14:28 祭司は、手のひらの油を、清くなろうとしている人の右の耳たぶと、右手の親指と、右足の親指に、罪過のささげ物の血を付けた場所に重ねて付ける。
14:29 祭司は、手のひらに残った油を、清くなろうとしている人の頭に付ける。こうして主の前でその人のために罪の償いをする。
14:30 それから、その人は用意できたほうの山鳩か家鳩のひなの一羽をささげる。
14:31 自分の用意できたもので、一羽を罪の償いのささげ物、もう一羽を焼き尽くすささげ物として、穀物のささげ物といっしょにささげる。こうして祭司は主の前で、清くなろうとしている人のために罪の償いをする。
14:32 以上が、重い皮膚病にかかり、清めのための費用を十分に用意できない人についての決まりである。」
14:33 主はモーセとアロンにこう告げた。
14:34 「あなたがたが、わたしが所有地として与えるカナンの地に入ったとき、わたしがその地にあるあなたがたの家に、カビのような症状を生じさせることがある。
14:35 その家の持ち主は祭司のところに来て、『家に何かカビのようなものが出ているようだ』と告げなさい。
14:36 祭司は、その症状を見に入る前に、家を空にするよう命じる。家の中の物がすべて汚れたものとされないためだ。その後で、祭司は家を調べに入る。
14:37 祭司がその症状を調べて、家の壁に緑がかった、あるいは赤みを帯びたくぼみがあり、それが壁の表面より低くくぼんでいるなら、
14:38 祭司は家の入り口から外に出て、その家を七日間閉じたままにしておく。
14:39 七日目に祭司はもう一度来て調べる。もし症状が家の壁に広がっていたら、
14:40 祭司は、症状のある石を取り除き、町の外の汚れた場所に捨てるように命じる。
14:41 そして家の中を壁じゅう削り取らせ、削り落とした土を町の外の汚れた場所に捨てる。
14:42 それから別の石を取ってきて、元の石のあった所にはめ込み、別の土を使って家を塗り直す。
14:43 石を取り除き、家を削って塗り直した後で、また症状が家に出て広がってきたら、
14:44 祭司はもう一度来て調べる。もし症状が家じゅうに広がっていたら、それは家をむしばむ悪い症状だ。その家は汚れている。
14:45 だから祭司は、その家を取り壊させ、石も木材も土もぜんぶ町の外の汚れた場所に運び出させる。
14:46 その家が閉鎖されている間に中に入った人は、夕方まで汚れた状態になる。
14:47 その家で寝た人は服を洗わなければならない。その家で食事をした人も服を洗わなければならない。
14:48 しかし、家を塗り直した後で祭司が来て調べ、症状が家に広がっていなかったら、症状は治まったのだから、祭司はその家を清いと認める。
14:49 そして家を清めるために、祭司は鳥を二羽と、杉の木、赤い糸、ヒソプの枝を用意する。
14:50 一羽の鳥を、湧き水を入れた素焼きの器の上でほふる。
14:51 それから杉の木、ヒソプ、赤い糸、そして生きているほうの鳥を取り、ほふった鳥の血と湧き水にひたして、その家に七回振りかける。
14:52 こうして鳥の血、湧き水、生きている鳥、杉の木、ヒソプ、赤い糸を使って、その家を清める。
14:53 そして生きているほうの鳥を町の外の野原に放してやる。こうして家のために罪を償い、家は清くなる。」
14:54 以上が、あらゆる症状、つまり皮膚やかさぶたに関するおきてである。
14:55 さらに、衣服や家に生じるカビ、
14:56 はれ、かさぶた、光る斑点についても定められている。
14:57 それが汚れているときと清いときを見分けるためである。以上が、こうした症状に関するおきてである。
15:1 主はモーセとアロンにこう言われた。
15:2 「イスラエルの人々にこう伝えなさい。『男の人の体から液が漏れ出ることがあれば、その漏れ出るものは汚れている。
15:3 その漏れによる汚れは、次のとおりである。体から液が流れ出ていても、あるいは流れが止まって詰まっていても、どちらも汚れている。
15:4 その漏れのある人が寝た寝床は、すべて汚れる。彼が座ったものも、すべて汚れる。
15:5 その寝床に触れた人は、衣服を洗い、水を浴びる。そして夕方まで汚れている。
15:6 その漏れのある人が座ったものに座る人も、衣服を洗い、水を浴びる。そして夕方まで汚れている。
15:7 その漏れのある人の体に触れた人は、衣服を洗い、水を浴びる。そして夕方まで汚れている。
15:8 その漏れのある人が、汚れていない人につばを吐きかけたら、その人は衣服を洗い、水を浴びる。そして夕方まで汚れている。
15:9 その漏れのある人が乗った鞍は、すべて汚れる。
15:10 彼の下にあったものに触れた人は、みな夕方まで汚れる。それらを運ぶ人は、衣服を洗い、水を浴びる。そして夕方まで汚れている。
15:11 その漏れのある人が、手を水で洗わないまま触れた相手は、衣服を洗い、水を浴びる。そして夕方まで汚れている。
15:12 その漏れのある人が触れた土の器は、割らなければならない。木の器はすべて、水で洗う。
15:13 その漏れのある人が、漏れから治ってきよくなったら、きよめのために七日を数える。そして衣服を洗い、体を新鮮な水で洗う。こうしてきよくなる。
15:14 八日目に、その人は山鳩二羽か、家鳩のひな二羽を用意する。そして主の前、会見の天幕の入り口に来て、それらを祭司に渡す。
15:15 祭司はそれをささげる。一羽を罪のためのいけにえ、もう一羽を焼き尽くすいけにえとする。こうして祭司は主の前で、その人の漏れのために、罪のつぐないをする。
15:16 男から精液が出たときは、その人は体全体を水で洗う。そして夕方まで汚れている。
15:17 精液がついた衣服や革は、すべて水で洗う。そして夕方まで汚れている。
15:18 男が女と寝て精液を漏らしたときは、二人とも水を浴びる。そして夕方まで汚れている。
15:19 女に出血があって、体から血が出るときは、七日の間、月経の期間として汚れている。そして彼女に触れる人はみな、夕方まで汚れている。
15:20 月経の間、彼女が寝た物はすべて汚れる。座った物もすべて汚れる。
15:21 彼女が寝た物に触れる人は、衣服を洗い、水を浴びる。そして夕方まで汚れている。
15:22 彼女が座った物に触れる人はみな、衣服を洗い、水を浴びる。そして夕方まで汚れている。
15:23 寝ていた物であれ、座っていた物であれ、それに触れた人は夕方まで汚れている。
15:24 男が彼女と寝て、その月経の汚れが男に及んだときは、その男は七日の間汚れる。そして彼が寝た寝床もすべて汚れる。
15:25 女に、月経の時期でないのに何日も出血が続くとき、または月経の期間を超えて出血が続くときは、その汚れた出血が続く間ずっと、月経の期間と同じように汚れている。
15:26 出血が続く間、彼女が寝た寝床はすべて、月経のときの寝床と同じ扱いになる。彼女が座った物もすべて、月経の汚れと同じように汚れる。
15:27 それらに触れる人はみな汚れる。衣服を洗い、水を浴びる。そして夕方まで汚れている。
15:28 彼女の出血が治まったら、そこから七日を数える。その後で清くなる。
15:29 八日目に、彼女は山鳩二羽か、家鳩のひな二羽を用意する。そしてそれを祭司のところ、会見の天幕の入り口へ持って行く。
15:30 祭司はそのうちの一羽を罪のためのいけにえとし、もう一羽を焼き尽くすいけにえとする。こうして祭司は、主の前で彼女のために、その汚れた出血の贖いをする。
15:31 あなたたちは、イスラエルの人々を彼らの汚れから遠ざけなさい。彼らの中にあるわたしの住まいを汚して、その汚れのために死ぬことがないようにするためだ。』」
15:32 これは、漏れの出る人、精を漏らして汚れる人についての決まりである。
15:33 また、月のさわりのある女、男でも女でも漏れの出る人、そして汚れた女と寝る男についての決まりである。
16:1 アロンの二人の息子が主の前に近づいて死んだ後、主はモーセに語られた。
16:2 主はモーセに言われた。「あなたの兄弟アロンに告げなさい。いつでも勝手に、垂れ幕の内側の聖所、箱の上にある贖いの座の前に入ってはならない。死ぬことがないようにするためだ。わたしは贖いの座の上、雲の中に現れるからだ。
16:3 アロンが聖所に入るときは、次のようにする。罪のためのいけにえとして若い雄牛を、焼き尽くすいけにえとして雄羊を用意する。
16:4 彼は聖なる亜麻布の長い服を着て、素肌には亜麻布の下着をつける。亜麻布の帯を締め、亜麻布のかぶり物をかぶる。これらは聖なる衣服である。彼は水で体を洗ってから、これらを身につける。
16:5 また、イスラエルの人々の集まりから、罪のためのいけにえとして雄山羊二頭を、焼き尽くすいけにえとして雄羊一頭を受け取る。
16:6 アロンは、自分のための罪のためのいけにえの雄牛をささげ、自分自身と自分の家族のために贖いをする。
16:7 そして、彼はその二頭の雄山羊を取り、会見の天幕の入り口で主の前に立たせる。
16:8 アロンは、その二頭の雄山羊のことでくじを引く。一つのくじは主のため、もう一つのくじはアザゼルのためである。
16:9 アロンは、主のためのくじが当たった雄山羊を引いてきて、罪のためのいけにえとしてささげる。
16:10 一方、アザゼルのためのくじが当たった雄山羊は、生きたまま主の前に立たせる。それは、これによって贖いをし、この山羊を荒れ野のアザゼルのもとへ送り出すためである。
16:11 アロンは、自分のための罪のためのいけにえの雄牛を引いてきて、自分自身と自分の家族のために贖いをする。そして、自分のための罪のためのいけにえの雄牛をほふる。
16:12 彼は、主の前の祭壇から燃える炭火を火皿いっぱいに取り、細かくひいた香り高い香を両手いっぱいに取って、垂れ幕の奥へ持って入る。
16:13 そして、主の前でその香を火にくべる。すると香の煙が、掟の箱の上の贖いの座を覆う。こうして彼は死なずにすむ。
16:14 彼は雄牛の血を取り、指で贖いの座の東側の面に振りかける。また、贖いの座の前に、指で七回その血を振りかける。
16:15 次に、彼は民のための罪のためのいけにえの雄山羊をほふり、その血を垂れ幕の奥へ持って入る。そして、雄牛の血にしたのと同じように、その血を贖いの座の上と、贖いの座の前に振りかける。
16:16 こうして彼は、イスラエルの人々の汚れと、彼らのすべての罪である背きのために、聖所の贖いをする。また、彼らの汚れの中にあって彼らと共にある会見の天幕のためにも、同じようにする。
16:17 彼が聖所で贖いをするために入ってから出てくるまで、だれも会見の天幕の中にいてはならない。こうして彼は、自分自身と自分の家族、そしてイスラエルの全会衆のために贖いをする。
16:18 それから彼は、主の前にある祭壇のところへ出て行き、その祭壇のために贖いをする。彼は雄牛の血と雄山羊の血を取り、祭壇の四方の角に塗る。
16:19 そして彼は、その血を指で七回、祭壇に振りかける。こうしてイスラエルの人々の汚れからそれを清め、聖別する。
16:20 聖所と会見の天幕と祭壇の贖いを終えると、彼は生きている雄山羊を引いて来る。
16:21 アロンは両手を、その生きている雄山羊の頭に置く。そして、イスラエルの人々のすべての過ちと、すべての背き、つまり彼らのすべての罪を、その山羊の上に告白する。こうして彼らの罪を山羊の頭に負わせ、係の者の手で荒れ野へ放つ。
16:22 山羊は彼らのすべての過ちを負って、人の住まない地へと運んで行く。彼はその山羊を荒れ野に放つ。
16:23 それからアロンは会見の天幕に入り、聖所に入るときに着ていた亜麻布の衣を脱いで、そこに置く。
16:24 彼は聖なる場所で体を水で洗い、自分の衣を着て、外に出る。そして、自分のための焼き尽くすいけにえと、民のための焼き尽くすいけにえをささげ、自分自身と民のために贖いをする。
16:25 罪のためのいけにえの脂肪は、祭壇で焼いて煙にする。
16:26 アザゼルのために雄山羊を放った者は、自分の衣を洗い、体を水で洗う。その後で宿営に戻ることができる。
16:27 罪のためのいけにえの雄牛と雄山羊、すなわちその血が聖所での贖いのために持ち込まれたものは、宿営の外に運び出す。そして、その皮と肉と汚物を火で焼く。
16:28 それらを焼いた者は、自分の衣を洗い、体を水で洗う。その後で宿営に戻ることができる。
16:29 これはあなたがたにとって、永遠に守るべき定めである。第七の月の十日には、あなたがたは自分自身を苦しめ、いっさいの仕事をしてはならない。これは、その土地に生まれた者にも、あなたがたの間に住む寄留者にも当てはまる。
16:30 この日に、あなたがたを清めるための贖いが行われるからだ。あなたがたは主の前で、すべての罪から清められる。
16:31 これは、あなたたちにとって、仕事を離れて完全に休む安息の日である。あなたたちは自分の身を苦しめなければならない。これは永遠に守るべき掟である。
16:32 罪の償いをするのは、油を注がれ、父の跡を継いで祭司の務めに就くよう任命された祭司である。その祭司は、亜麻布で作った聖なる衣を身に着ける。
16:33 彼は、最も聖なる場所のために償いをする。また、会見の幕屋と祭壇のためにも償いをする。さらに、祭司たちと、集まった民全体のためにも償いをする。
16:34 これはあなたたちにとって、永遠に守るべき掟となる。年に一度、イスラエルの人々のすべての罪のために償いをするためである。モーセは、主が命じられたとおりに行った。
17:1 主はモーセに言われた。
17:2 アロンとその子たち、そしてイスラエルのすべての人々に告げて、こう言いなさい。「主が命じられたことは、次のとおりである。
17:3 イスラエルの家に属する者が、牛や羊や山羊を、野営地の中で屠る場合、あるいは野営地の外で屠る場合、
17:4 その動物を会見の幕屋の入り口に連れて来ず、主の幕屋の前で主へのささげ物としてささげないなら、その人は血を流した者とみなされる。彼は血を流したのだ。その人は民の中から断ち切られる。
17:5 これは、イスラエルの人々が、これまで野原でささげていたいけにえを、主のもとに連れて来るためである。彼らはそれを、会見の幕屋の入り口にいる祭司のところへ持って来て、主への和解のいけにえとしてささげなければならない。
17:6 祭司はその血を、会見の幕屋の入り口にある主の祭壇に振りかける。そして脂肪を焼いて、主が喜ばれる香りとしてささげる。
17:7 そして彼らはもう、自分たちが慕い求めて身を汚してきた、あの山羊の偶像にいけにえをささげてはならない。これは彼らにとって、代々守るべき永遠の掟である。」
17:8 あなたは彼らにこう言いなさい。イスラエルの家の者であれ、彼らの中に寄留している外国人であれ、焼き尽くすいけにえや、その他のいけにえをささげる者が、
17:9 それを会見の幕屋の入り口に連れて来て、主にささげないなら、その人は民の中から断ち切られる。
17:10 イスラエルの家の者であれ、彼らの中に寄留している外国人であれ、どんな血であれ食べる者がいれば、わたしはその血を食べる者に敵対し、民の中から断ち切る。
17:11 なぜなら、肉の命は血の中にあるからだ。わたしはこの血を、あなたがたの罪を償うために、祭壇の上でささげるものとして与えた。血は、その中にある命によって罪を償うのだ。
17:12 だからわたしは、イスラエルの人々にこう言ったのだ。あなたがたのうち、だれも血を食べてはならない。あなたがたの中に寄留している外国人も、血を食べてはならない。
17:13 イスラエルの人々の者であれ、彼らの中に寄留している外国人であれ、食べてよい獣や鳥を狩る者は、その血を流し出し、土でおおわなければならない。
17:14 すべての生き物の命は、その血にあるからだ。だからわたしは、イスラエルの人々にこう言った。どんな生き物の血も食べてはならない。すべての生き物の命は、その血だからだ。それを食べる者はだれでも、断ち切られる。
17:15 死んだ動物や、野獣に引き裂かれた動物を食べた者は、イスラエルで生まれた者であれ、外国人であれ、自分の衣を洗い、水を浴びなければならない。その人は夕方まで汚れた状態であり、それから清くなる。
17:16 もし衣を洗わず、体も洗わないなら、その人は自分の罪の責めを負う。
18:1 主はモーセに言われた。
18:2 「イスラエルの人々にこう伝えなさい。わたしは、あなたたちの神、主である。
18:3 あなたたちがかつて住んでいたエジプトのやり方をまねてはいけない。これからわたしがあなたたちを連れて行くカナンのやり方もまねてはいけない。その土地のならわしに従って生きてはいけない。
18:4 わたしの定めを行い、わたしのおきてを守って、それに従って生きなさい。わたしは、あなたたちの神、主である。
18:5 わたしのおきてと定めを守りなさい。それを行う人は、それによって生きる。わたしは主である。
18:6 だれも、自分の血のつながった身内に近づいて、その裸を見てはならない。わたしは主である。
18:7 父の裸、つまり母の裸を見てはならない。その人はあなたの母なのだから、その裸を見てはならない。
18:8 父の妻の裸を見てはならない。それは父の裸だからだ。
18:9 あなたの姉妹の裸を見てはならない。父の娘であっても母の娘であっても、家で生まれた子でも、家の外で生まれた子でも、その裸を見てはならない。
18:10 あなたの息子の娘、または娘の娘の裸を見てはならない。それはあなた自身の裸なのだから。
18:11 父の妻が父との間にもうけた娘の裸を見てはならない。その人はあなたの姉妹だからだ。
18:12 父の姉妹の裸を見てはならない。その人は父の血を分けた身内だからだ。
18:13 母の姉妹の裸を見てはならない。その人は母の血を分けた身内だからだ。
18:14 父の兄弟の裸を見てはならない。その妻に近づいてはならない。その人はあなたのおばだからだ。
18:15 あなたの嫁の裸を見てはならない。その人は息子の妻だ。その裸を見てはならない。
18:16 あなたの兄弟の妻の裸を見てはならない。それはあなたの兄弟の裸だからだ。
18:17 ある女とその娘の裸を見てはならない。その女の息子の娘や娘の娘をめとって、裸を見てはならない。彼女たちは血を分けた身内だ。それは恥ずべき行いだ。
18:18 妻が生きている間に、その姉妹をもう一人の妻としてめとってはならない。妻を苦しめ、その姉妹の裸を見ることになるからだ。
18:19 月のさわりで汚れている間の女に近づいて、その裸を見てはならない。
18:20 隣人の妻と寝て、自分を汚してはならない。
18:21 自分の子どもをモレクにささげてはならない。あなたの神の名を汚してはならない。わたしは主である。
18:22 女と寝るように男と寝てはならない。それは忌み嫌うべきことだ。
18:23 どんな獣とも寝て、自分を汚してはならない。女も獣の前に立って交わってはならない。それは自然に反することだ。
18:24 これらのどれによっても身を汚してはならない。わたしがあなたたちの前から追い払おうとしている国々の民は、こうしたことすべてによって汚れているのだから。
18:25 その地は汚れた。だからわたしはその罪をとがめ、地はそこに住む者たちを吐き出した。
18:26 だからあなたたちは、わたしの掟と定めを守りなさい。この忌み嫌うべきことは、どれもしてはならない。生まれつきその地の者も、あなたたちの間に住む寄留者も、同じだ。
18:27 あなたたちより前にその地にいた人々が、こうした忌み嫌うべきことをすべて行った。それで地は汚れてしまった。
18:28 あなたたちがその地を汚せば、あなたたちより前にいた民を吐き出したように、地はあなたたちも吐き出すだろう。
18:29 この忌み嫌うべきことを一つでも行う者は、だれであれ、その民の中から断ち切られる。
18:30 だからあなたたちは、わたしの命じることを守りなさい。あなたたちより前に行われていた、あの忌み嫌うべき習わしをまねてはならない。それらによって身を汚してはならない。わたしはあなたたちの神、主である。」
19:1 主はモーセにこう告げられた。
19:2 イスラエルの人々の集まり全体にこう言いなさい。「あなたたちは聖なる者でありなさい。あなたたちの神、主であるわたしが聖なる者だからだ。
19:3 あなたたちはそれぞれ、自分の母と父を敬いなさい。そしてわたしの安息日を守りなさい。わたしはあなたたちの神、主である。
19:4 偶像に心を向けてはならない。鋳物の神々を造ってはならない。わたしはあなたたちの神、主である。
19:5 主に和解のいけにえをささげるときは、あなたたちが受け入れられるようにささげなさい。
19:6 それは、ささげたその日と翌日のうちに食べなさい。三日目まで残ったものは、火で焼き捨てなさい。
19:7 もし三日目に食べるなら、それは汚れたものだ。受け入れられない。
19:8 それを食べる人は、自分の罪を負う。主の聖なるものを汚したからだ。その人は民の中から断ち切られる。
19:9 あなたたちが畑の作物を刈り入れるときは、畑の隅まで刈り尽くしてはならない。刈り残した落ち穂を拾い集めてはならない。
19:10 ぶどう畑の実を取り尽くしてはならない。落ちた実を拾い集めてはならない。それらを貧しい人と旅の寄留者のために残しておきなさい。わたしはあなたたちの神、主である。
19:11 盗んではならない。だましてはならない。互いに嘘をついてはならない。
19:12 わたしの名にかけて偽って誓ってはならない。そんなことをすれば、あなたの神の名を汚すことになる。わたしは主である。
19:13 隣人をしいたげてはならない。物を奪ってはならない。雇った人の賃金を、翌朝まで手もとに留めておいてはならない。
19:14 耳の聞こえない人をののしってはならない。目の見えない人の前に、つまずきになるものを置いてはならない。あなたの神を畏れなさい。わたしは主である。
19:15 裁判で不正をしてはならない。弱い人だからとえこひいきをしてはならない。力のある人だからと特別に扱ってはならない。公正に隣人を裁きなさい。
19:16 民の間で人のうわさを言いふらして歩いてはならない。隣人の命を危険にさらしてはならない。わたしは主である。
19:17 心の中で兄弟を憎んではならない。隣人にはきちんと注意しなさい。そうすれば、その人のことで罪を負うことはない。
19:18 あなたの民の一人に、仕返しをしたり、恨みを抱いたりしてはならない。あなた自身を愛するように、あなたの隣人を愛しなさい。わたしは主である。
19:19 わたしの掟を守りなさい。あなたの家畜を、違う種類のものと交わらせてはならない。畑に二種類の種をまいてはならない。二種類の糸で織った服を身につけてはならない。
19:20 ある男が女と寝て交わったとする。その女がほかの男のものになると決まった女奴隷で、まだ買い戻されておらず、自由の身にもなっていない場合、二人は罰を受ける。だが、女がまだ自由の身ではなかったのだから、死刑にしてはならない。
19:21 その男は、自分の償いのささげ物として、雄羊一頭を、会見の幕屋の入り口にいる主のもとへ引いて来なさい。
19:22 祭司は、その償いの雄羊で、主の前でその男のためにあがないをする。こうして、その男が犯した罪は赦される。
19:23 あなたがたがその地に入り、実のなる木をどれでも植えたときは、その実を食べてはならないものとしなさい。三年の間、その実は食べてはならないものとする。食べてはならない。
19:24 四年目には、その実はすべて、主をたたえるための聖なるささげ物となる。
19:25 五年目になって、あなたがたはその実を食べてよい。そうすれば、木はもっと多くの実を実らせる。わたしはあなたがたの神、主である。
19:26 血のついたままの肉を食べてはならない。占いをしたり、まじないをしたりしてはならない。
19:27 頭の両側の髪を刈り込んではならない。ひげの両端をそり落としてはならない。
19:28 死んだ者のために体を傷つけてはならない。体に入れ墨をしてはならない。わたしは主である。
19:29 自分の娘を売春させて汚してはならない。そんなことをすれば、この地は淫らなことであふれ、堕落してしまう。
19:30 わたしの安息日を守りなさい。わたしの聖所を敬いなさい。わたしは主である。
19:31 口寄せや霊媒に頼ってはならない。彼らに教えを求めれば、身を汚すことになる。わたしは主、あなたたちの神である。
19:32 白髪の人の前では立ち上がり、お年寄りを敬いなさい。あなたの神を恐れなさい。わたしは主である。
19:33 あなたたちの土地で外国から来た人があなたと共に住むなら、その人を虐げてはならない。
19:34 あなたたちと共に住む外国の人を、自分たちと同じ国に生まれた者のように扱いなさい。自分自身のように愛しなさい。あなたたちもかつてエジプトの地で外国人だったのだから。わたしは主、あなたたちの神である。
19:35 裁きでも、長さや重さや量を測るときでも、不正をしてはならない。
19:36 正しいてんびん、正しい重り、正しい升、正しい量りを使いなさい。わたしは主、あなたたちの神、あなたたちをエジプトの地から導き出した者である。
19:37 だから、わたしのすべての掟とすべての定めを守り、それを実行しなさい。わたしは主である。」
20:1 主はモーセにこう告げられた。
20:2 「イスラエルの人々にこう言いなさい。イスラエルの人であれ、イスラエルに住む外国の人であれ、自分の子どもをモレクにささげる者は、必ず死ななければならない。その土地の人々が石で打ち殺す。
20:3 わたしはその者に敵として立ち向かい、民の中から絶ち去る。その者は自分の子どもをモレクにささげ、わたしの聖所を汚し、わたしの聖なる名を辱めたからだ。
20:4 もしその者が子どもをモレクにささげたのに、その土地の人々がわざと見ないふりをして、彼を殺さないなら、
20:5 わたし自身がその者とその一族に敵として立ち向かう。彼と、彼にならってモレクを慕い求める者たちを、みな民の中から絶ち去る。
20:6 口寄せや霊媒に頼り、彼らを慕い求める魂には、わたしが敵として立ち向かい、その者を民の中から絶ち去る。
20:7 あなたたちは自分を清く保ち、聖なる者でありなさい。わたしは、あなたたちの神、主だからだ。
20:8 わたしの掟を守り、それを行いなさい。あなたたちを聖なる者とするのは、わたし、主である。
20:9 自分の父や母をののしる者は、必ず死ななければならない。父母をののしったのだから、その血の責任は本人にある。
20:10 他人の妻と姦通する者、つまり隣人の妻と姦通する者は、その男も女も、必ず死ななければならない。
20:11 父の妻と寝る者は、父を辱めたことになる。二人とも必ず死ななければならない。その血の責任は本人たちにある。
20:12 息子の妻と寝る者は、二人とも必ず死ななければならない。彼らは道に外れたことをしたのだ。その血の責任は本人たちにある。
20:13 女と寝るように男と寝る者は、二人とも忌まわしいことをしたのだ。必ず死ななければならない。その血の責任は本人たちにある。
20:14 女と、その母親を共にめとる者は、恥ずべきことをしている。その男も女たちも火で焼かれる。あなたたちの間に、このような恥ずべきことがあってはならない。
20:15 獣と交わる者は、必ず死ななければならない。その獣も殺さなければならない。
20:16 獣に近づいて交わる女は、その女も獣も殺さなければならない。二人とも必ず死ななければならない。その血の責任は本人たちにある。
20:17 父の娘であれ母の娘であれ、自分の姉妹をめとって、互いの裸を見る者は、恥ずべきことをしている。二人は民の目の前で絶ち去られる。彼は自分の姉妹を辱めたのだから、その罪を負わなければならない。
20:18 月のさわりのある女と寝て、その裸をあらわにする者は、彼女の源をあらわにし、女もまた自分の血の源をあらわにしたことになる。二人とも民の中から絶ち去られる。
20:19 母の姉妹、また父の姉妹の裸をあらわにしてはならない。それは自分の血のつながった者を辱めることだからだ。二人ともその罪を負わなければならない。
20:20 おじの妻と寝る者は、おじを辱めたことになる。二人ともその罪を負い、子を残さずに死ぬ。
20:21 兄弟の妻をめとる者は、汚れたことをしている。兄弟を辱めたのだから、二人は子を残せない。
20:22 あなたたちは、わたしの掟と定めをすべて守り、それを行いなさい。そうすれば、わたしがあなたたちを住まわせようと導き入れる地が、あなたたちを吐き出すことはない。
20:23 わたしがあなたたちの前から追い払おうとしている民のならわしに従って歩んではならない。彼らはこうしたことをすべて行ったので、わたしは彼らを忌み嫌った。
20:24 だからわたしはあなたたちに言った。あなたたちは彼らの土地を受け継ぐ。乳と蜜の流れるその地を、わたしはあなたたちに与え、受け継がせる。わたしはあなたたちの神、主であり、あなたたちを他の民から区別した者だ。
20:25 だからあなたたちは、清い獣と汚れた獣、清い鳥と汚れた鳥を区別しなさい。わたしがあなたたちのために汚れたものとして分けた獣や鳥、地を這うすべてのもので、自分自身を汚してはならない。
20:26 あなたたちはわたしにとって聖なる者でありなさい。主であるわたしが聖なる者だからだ。わたしは、あなたたちがわたしのものとなるように、あなたたちを他の民から区別した。
20:27 男であれ女であれ、死者の霊を呼び出したり、占いをしたりする者は、必ず殺されなければならない。石で打ち殺しなさい。その血の責任は本人たちにある。」
21:1 主はモーセに言われた。「アロンの子である祭司たちに、こう伝えなさい。祭司は、自分の民の中で死んだ人のために身を汚してはならない。
21:2 ただし、近い血縁者のためなら別だ。母、父、息子、娘、兄弟、
21:3 それに、まだ結婚したことがなく、身近にいる未婚の姉妹のためなら、身を汚してもよい。
21:4 祭司は民の中で高い立場にある者だ。だから身を汚して、自分を俗なものにしてはならない。
21:5 祭司は、頭をそって禿げをつくったり、ひげの端をそり落としたり、体に傷をつけたりしてはならない。
21:6 彼らは自分の神にとって聖なる者でなければならず、神の名を汚してはならない。彼らは主にささげる火の供え物、つまり自分の神へのパンをささげるのだから、聖なる者でなければならない。
21:7 祭司は、遊女や汚れた女をめとってはならない。夫と離婚した女もめとってはならない。祭司は自分の神にとって聖なる者だからだ。
21:8 あなたは祭司を聖なる者としなさい。彼はあなたの神へのパンをささげるのだから。あなたにとって彼は聖なる者でなければならない。あなたがたを聖なる者とするわたし、主が聖なる者だからだ。
21:9 祭司の娘が身を売って自分を汚すなら、その娘は父を辱めることになる。娘は火で焼かれなければならない。
21:10 兄弟たちの中で大祭司となった者、その頭に注ぎの油を注がれ、祭司の装束を着るために任命された者は、髪を乱したり、衣を引き裂いたりしてはならない。
21:11 彼は、どんな死んだ人のところにも近づいてはならない。父のためでも母のためでも、身を汚してはならない。
21:12 彼は聖所から出てはならず、自分の神の聖所を汚してはならない。神の注ぎの油による聖別が、彼の上にあるからだ。わたしは主である。」
21:13 彼は、処女を妻にめとらなければならない。
21:14 やもめや離婚した女、汚された女、遊女、こうした女をめとってはならない。自分の民の中から処女を選び、妻にめとらなければならない。
21:15 自分の民の中で、自分の子孫を汚してはならない。わたしは、彼を聖別する主だからだ。
21:16 主はモーセに言われた。
21:17 「アロンにこう伝えなさい。あなたの子孫で、これから先の代々にわたって、体に欠陥のある者は、神へのささげ物をささげるために近づいてはならない。
21:18 体に欠陥のある者は、だれも近づいてはならない。目の見えない者、足の不自由な者、顔の傷ついた者、手足の釣り合わない者、
21:19 足の折れた者、手の折れた者、
21:20 背中の曲がった者、背の低い者、目に欠陥のある者、できものやかさぶたのある者、睾丸のつぶれた者である。
21:21 祭司アロンの子孫のうち、体に欠陥のある者はだれも、主への火によるささげ物をささげるために近づいてはならない。彼には欠陥があるのだから、神へのささげ物をささげるために近づいてはならない。
21:22 彼は、神へのささげ物を食べることはできる。最も聖なるものも、聖なるものも食べてよい。
21:23 ただし、垂れ幕の内側に入ってはならず、祭壇に近づいてはならない。彼には欠陥があるからだ。わたしの聖所を汚してはならない。わたしは、彼らを聖別する主だからだ。」
21:24 モーセはこのことを、アロンとその子ら、そしてすべてのイスラエルの人々に告げた。
22:1 主はモーセに言われた。
22:2 アロンとその子らにこう告げなさい。イスラエルの人々がわたしにささげる聖なるものを、彼らは慎んで扱い、わたしの聖なる名を汚してはならない。わたしは主である。
22:3 彼らにこう言いなさい。あなたたちの子孫代々にわたって、あなたたちの子孫のうち、体が汚れたままで、イスラエルの人々が主にささげる聖なるものに近づく者は、だれであっても、わたしの前から断ち切られる。わたしは主である。
22:4 アロンの子孫のうち、重い皮膚病にかかっている者や、体から液が漏れ出ている者は、清くなるまで聖なるものを食べてはならない。また、死体によって汚れたものに触れた者や、精を漏らした者、
22:5 あるいは、体を汚す這うものに触れた者、また、どんな汚れであっても、その汚れを持つ人に触れた者、
22:6 こうしたものに触れた者は、夕方まで汚れている。体を水で洗わないかぎり、聖なるものを食べてはならない。
22:7 日が沈めば清くなり、その後で聖なるものを食べることができる。それが彼の食べ物だからである。
22:8 自然に死んだものや、獣に裂き殺されたものを食べて、身を汚してはならない。わたしは主である。
22:9 祭司たちはわたしの命令を守らなければならない。それを汚して罪を負い、そのために死ぬことのないためである。わたしは彼らを聖なる者とする主である。
22:10 祭司以外の者は、だれも聖なるものを食べてはならない。祭司のもとに身を寄せている者も、雇われた者も、聖なるものを食べてはならない。
22:11 しかし、祭司が自分のお金で人を買い取った場合、その人はそれを食べることができる。祭司の家で生まれた者も、その食べ物を食べることができる。
22:12 祭司の娘が、祭司以外の男と結婚した場合、その娘は聖なるささげ物を食べてはならない。
22:13 祭司の娘が、夫を亡くしたり離婚したりして、子どもがなく、若いころのように父の家に戻ってきた場合、その娘は父の食べ物を食べることができる。しかし、祭司以外の者は、だれもそれを食べてはならない。
22:14 もし人がうっかり聖なるものを食べてしまったら、その分に五分の一を足して、聖なるものを祭司に返さなければならない。
22:15 祭司たちは、イスラエルの人々が主にささげる聖なるものを、汚してはならない。
22:16 聖なるものを勝手に食べさせて、人々に罪の責めを負わせてはならない。わたしは主であり、それを聖なるものとする者だからだ。
22:17 主はモーセに言われた。
22:18 「アロンとその子たち、そしてイスラエルのすべての人々に、こう伝えなさい。イスラエルの家の者でも、イスラエルに住む外国人でも、だれかが誓いを果たすため、あるいは進んでささげる物として、焼き尽くすいけにえを主にささげるなら、
22:19 それが受け入れられるためには、傷のない雄でなければならない。牛でも、羊でも、やぎでもよい。
22:20 傷のあるものはささげてはならない。それでは受け入れられないからだ。
22:21 また、だれかが誓いを果たすため、あるいは進んでささげる物として、牛か羊の群れの中から主に和解のいけにえをささげるなら、それが受け入れられるためには、傷のない完全なものでなければならない。少しの傷もあってはならない。
22:22 目の見えないもの、骨の折れたもの、傷ついたもの、できものやかさぶたのあるもの、皮膚のただれたもの、これらを主にささげてはならない。これらを祭壇の上で、火によるささげ物として主にささげてはならない。
22:23 手足が伸びすぎたり、縮んで足りなかったりする牛や羊は、進んでささげる物としてはささげてもよい。しかし、誓いを果たすためのささげ物としては受け入れられない。
22:24 睾丸がつぶれたもの、砕かれたもの、裂かれたもの、切り取られたものを、主にささげてはならない。あなたたちの国で、このようなことをしてはならない。
22:25 また、外国人の手から受け取ったものであっても、これらのどれ一つ、あなたたちの神にささげる食物としてささげてはならない。それらは傷つけられ、欠陥があるので、あなたたちのために受け入れられることはない。」
22:26 主はモーセに言われた。
22:27 牛、羊、あるいはやぎが生まれたら、それは七日の間、母親のそばに置いておかなければならない。八日目からあとは、主への火によるささげ物として受け入れられる。
22:28 牛であれ羊であれ、その母親とその子を同じ日に殺してはならない。
22:29 主に感謝のささげ物をするときは、あなたたちが受け入れられるようにささげなさい。
22:30 その肉は、その日のうちに食べなければならない。朝まで残してはならない。わたしは主である。
22:31 あなたたちはわたしの命令を守り、それを行いなさい。わたしは主である。
22:32 わたしの聖なる名を汚してはならない。わたしは、イスラエルの人々の間で聖なるものとされる。わたしは、あなたたちを聖なるものとする主である。
22:33 あなたたちの神となるために、あなたたちをエジプトの地から導き出した者である。わたしは主である。
23:1 主はモーセに言われた。
23:2 「イスラエルの人々にこう伝えなさい。あなたがたが聖なる集まりの日として定める、主の祭り。それがわたしの祭りである。
23:3 六日のあいだ働く。でも七日目は、完全に仕事を休む安息日であり、聖なる集まりの日だ。どんな仕事もしてはならない。それは、あなたがたの住む所すべてで守る、主の安息日である。
23:4 次のものが主の祭り、あなたがたがそれぞれの決められた時に聖なる集まりとして定める祭りである。
23:5 第一の月の十四日、その夕暮れは、主の過越である。
23:6 同じ月の十五日は、主のための、種を入れないパンの祭りだ。七日のあいだ、種を入れないパンを食べる。
23:7 最初の日には聖なる集まりを開き、いつもの仕事は何もしてはならない。
23:8 七日のあいだ、主に火によるささげ物をささげる。七日目にも聖なる集まりを開き、いつもの仕事は何もしてはならない。」
23:9 主はモーセに言われた。
23:10 「イスラエルの人々にこう伝えなさい。わたしがあなたがたに与える地に入り、そこで作物を刈り取ったら、最初に刈り取った束を祭司のところに持って来なさい。
23:11 祭司はその束を主の前で揺り動かす。そうすれば、あなたがたは主に受け入れられる。祭司は安息日の翌日にそれを揺り動かす。
23:12 その束を揺り動かす日には、傷のない一歳の雄の子羊を、主への焼き尽くすささげ物としてささげなさい。
23:13 それに添える穀物のささげ物は、オリーブ油を混ぜた上等の小麦粉、その十分の二エファを二つ分。これは主にささげる、火で焼くささげ物で、主が喜ぶ香りとなる。それに注ぐぶどう酒のささげ物は、四分の一ヒンとする。
23:14 あなたがたは、この日、つまり自分たちの神へのささげ物を持って来るその日まで、パンも、炒った穀物も、新しい穂も食べてはならない。これは、あなたがたが住むすべての場所で、代々守るべき変わらない定めである。
23:15 その安息日の翌日、つまり揺り動かすための束を持って来た日から、あなたがたは日を数えなさい。まるまる七週間を数えるのだ。
23:16 七回目の安息日の翌日まで、五十日を数えなさい。そしてその日に、新しい穀物のささげ物を主にささげなさい。
23:17 あなたがたの住まいから、揺り動かすためのパンを二つ持って来なさい。それぞれ上等の小麦粉、十分の二エファで作り、パン種を入れて焼く。これは、最初に収穫した実りとして主にささげるものである。
23:18 このパンとともに、傷のない一歳の子羊を七頭、若い雄牛を一頭、雄羊を二頭ささげなさい。これらは主への焼き尽くすささげ物とする。あわせて、それに添える穀物のささげ物と注ぐささげ物もささげる。これは火で焼くささげ物で、主が喜ぶ香りとなる。
23:19 また、雄やぎを一頭、罪を清めるためのささげ物としてささげなさい。さらに一歳の子羊を二頭、主との交わりを表すささげ物としてささげなさい。
23:20 祭司はそれらを、最初に収穫した実りのパンとともに、二頭の子羊を添えて、主の前で揺り動かす。これらは主にささげられた聖なるものであり、祭司のものとなる。
23:21 あなたがたはその日、聖なる集まりを開くと告げ知らせなさい。その日はどんな仕事もしてはならない。これは、あなたがたが住むすべての場所で、代々守るべき変わらない定めである。
23:22 あなたがたが自分の土地の作物を刈り取るときは、畑の隅まで刈り尽くしてはならない。刈り取ったあとの落ち穂も拾い集めてはならない。それらは貧しい人や、よそから来て住む人のために残しておきなさい。わたしはあなたがたの神、主である。」
23:23 主はモーセにこう言われた。
23:24 「イスラエルの人々にこう伝えなさい。七月の一日を、あなたがたは休みの日としなさい。角笛を吹き鳴らして記念する、聖なる集まりの日である。
23:25 その日は、仕事は何もしてはならない。主に火による献げ物をささげなさい。」
23:26 主はモーセにこう言われた。
23:27 「この七月の十日は、罪をゆるしてもらうための贖いの日である。あなたがたにとって聖なる集まりの日となる。その日は食を断ち、自分の心を苦しめて悔い、主に火による献げ物をささげなさい。
23:28 その日は仕事を何もしてはならない。それは、あなたがたの神、主の前で、あなたがたの罪をゆるしてもらうための贖いの日だからである。
23:29 その日に食を断って身を低くしない者は、だれであっても、自分の民から断ち切られる。
23:30 その日に何か仕事をする者は、だれであっても、わたしがその者を民の中から滅ぼす。
23:31 仕事は何もしてはならない。これは、あなたがたが住むすべての場所で、代々にわたって守るべき永遠の掟である。
23:32 それは、あなたがたにとって、完全に仕事を休む安息の日である。その月の九日の夕方から、次の日の夕方まで、あなたがたは食を断ち、この安息の日を守りなさい。」
23:33 主はモーセにこう言われた。
23:34 「イスラエルの人々にこう伝えなさい。この七月の十五日から、七日間、主のために仮庵の祭りを行う。
23:35 最初の日は聖なる集まりの日である。その日は仕事を何もしてはならない。
23:36 七日の間、主に火による献げ物をささげなさい。八日目もあなたがたにとって聖なる集まりの日となる。その日も主に火による献げ物をささげなさい。それは締めくくりの集まりの日である。その日は仕事を何もしてはならない。
23:37 以上が主の祭りである。あなたがたは、これらを聖なる集まりの日として宣言しなさい。そして、主に火による献げ物、すなわち焼き尽くす献げ物、穀物の献げ物、いけにえ、注ぎのささげ物を、それぞれの日に定められたとおりささげなさい。
23:38 これらは、主の安息日とは別に、また、あなたがたが主にささげる贈り物、誓って立てたすべての願かけの献げ物、進んでささげるすべての献げ物とは別に行うものである。
23:39 さて、七月の十五日、あなたがたがその地の収穫を取り入れたら、七日間、主の祭りを祝いなさい。最初の日は休みの日であり、八日目も休みの日である。
23:40 最初の日に、あなたがたは見事な木の実、なつめやしの葉、茂った木の枝、川辺の柳を取り、七日間、あなたがたの神である主の前で喜び祝いなさい。
23:41 毎年七日間、主のためにこの祭りを祝いなさい。これは代々にわたって守るべき、いつまでも変わらない定めである。あなたがたは七月にこの祭りを祝いなさい。
23:42 七日間、仮庵で過ごしなさい。イスラエルに生まれた者はみな、仮庵で過ごさなければならない。
23:43 これは、わたしがイスラエルの人々をエジプトの地から連れ出したとき、彼らを仮庵に住まわせたことを、あなたがたの子孫が知るためである。わたしはあなたがたの神、主である。」
23:44 こうしてモーセは、主の祭りについてイスラエルの人々に伝えた。
24:1 主はモーセに言われた。
24:2 「イスラエルの人々に命じなさい。灯火のために、オリーブを砕いて作った澄んだ油をあなたのところに持って来させ、いつも消えないように明かりをともし続けなさい。
24:3 アロンは会見の天幕の中、掟の箱を仕切る垂れ幕の外側で、夕方から朝まで、主の前でこの明かりを整え続ける。これは代々にわたって守るべき、いつまでも変わらない決まりである。
24:4 アロンは純金の燭台の上で、いつも主の前に明かりを整えなければならない。
24:5 また、上質の小麦粉を取り、それでパンを十二個焼きなさい。一個につき小麦粉を五リットルほど使う。
24:6 それを二列に、一列に六個ずつ、主の前にある純金の机の上に並べる。
24:7 それぞれの列の上には、澄んだ乳香を置く。これはパンに添える記念の分であり、主にささげる、火で焼くささげ物となる。
24:8 安息日ごとに、アロンはこれをいつも主の前に整えなければならない。これはイスラエルの人々のために、いつまでも変わらない契約である。
24:9 このパンはアロンとその子らのものとなり、彼らは聖なる場所でそれを食べる。主にささげる火のささげ物の中でも、これは最も聖なるものであり、彼らに与えられた、いつまでも変わらない分だからである。」
24:10 さて、母がイスラエル人で父がエジプト人である男が、イスラエルの人々の中に出て行った。そして宿営の中で、このイスラエル人の女の子どもと、あるイスラエル人の男が争いになった。
24:11 そのイスラエル人の女の子どもは、主の名をののしり、のろった。それで人々は彼をモーセのところに連れて来た。彼の母の名はシェロミトといい、ダン族のディブリの娘であった。
24:12 人々は、主の指示がはっきりするまで、彼を見張りのもとに留め置いた。
24:13 主はモーセに言われた。
24:14 「のろったあの者を宿営の外に連れ出しなさい。それを聞いた者はみな、彼の頭に手を置き、民全体で彼を石打ちにしなさい。
24:15 そして、イスラエルの人々にこう告げなさい。自分の神をのろう者は、だれであれ、その罪の責任を負わなければならない。
24:16 主の名を口にしてののしる者は、必ず死ななければならない。民全体で彼を石打ちにする。よそから来た人でも、その土地に生まれた人でも、主の名をののしる者は死ななければならない。
24:17 人を打ち殺した者は、必ず死ななければならない。
24:18 家畜を打ち殺した者は、それを償わなければならない。命には命をもって償うのだ。
24:19 隣人に傷を負わせた者は、自分がしたのと同じことを自分も受ける。
24:20 骨折には骨折を、目には目を、歯には歯を。人に傷を負わせたなら、その者も同じ傷を受けなければならない。
24:21 家畜を打ち殺した者はそれを償い、人を打ち殺した者は死ななければならない。
24:22 あなたたちには一つの同じ法がある。よそから来た人にも、その土地に生まれた人にも、同じように適用される。わたしはあなたたちの神、主だからだ。」
24:23 モーセがイスラエルの人々にこう告げると、人々はのろったあの者を宿営の外に連れ出し、石で打ち殺した。こうしてイスラエルの人々は、主がモーセに命じられたとおりに行った。
25:1 主はシナイ山でモーセにこう告げられた。
25:2 「イスラエルの人々にこう伝えなさい。あなたたちがこれから入る土地、わたしがあなたたちに与える土地に着いたら、その土地も主のために安息を守らなければならない。
25:3 六年の間は畑に種をまき、六年の間はぶどう畑の枝を手入れして、その実りを取り入れる。
25:4 でも七年目には、土地を完全に休ませなければならない。それは主のための安息の年だ。畑に種をまいてはいけないし、ぶどう畑の枝を手入れしてもいけない。
25:5 刈り入れのあとに自然に生えてきた作物を刈り取ってはいけないし、手入れをしなかったぶどうの実を摘み取ってもいけない。この年は土地を休ませる年だからだ。
25:6 土地が休んでいる間にできたものは、あなたたちみんなの食べ物になる。あなた自身も、男の使用人も、女の使用人も、雇い人も、あなたのもとに身を寄せている外国人も、
25:7 あなたの家畜も、あなたの土地にいる野の動物も、それを食べてよい。その年にできたものはすべて、食べ物にすることができる。
25:8 あなたは安息の年を七回、つまり七年を七回数えなさい。すると、七回の安息の年の日数は四十九年になる。
25:9 そして七月の十日、罪を償う日に、角笛を高く鳴り響かせなさい。あなたたちの土地じゅうで角笛を鳴らすのだ。
25:10 こうして五十年目を特別な聖なる年とし、この土地に住むすべての人に解放を宣言しなさい。それはあなたたちにとってヨベルの年となる。この年には、それぞれ自分の受け継いだ土地に戻り、それぞれ自分の家族のもとに帰る。
25:11 五十年目はあなたたちにとってヨベルの年だ。種をまいてはいけないし、自然に生えてきた作物を刈り取ってもいけない。手入れをしなかったぶどうの実を摘み取ってもいけない。
25:12 それはヨベルの年であり、あなたたちにとって聖なる年だからだ。あなたたちは畑に実ったものを、そのまま取って食べる。
25:13 このヨベルの年には、それぞれ自分の受け継いだ土地に戻る。
25:14 隣人に何かを売ったり、隣人から買ったりするときは、互いにだまし合ってはいけない。
25:15 ヨベルの年からの年数に応じて、隣人から買いなさい。相手も、これから収穫できる年数に応じて、あなたに売る。
25:16 年数が多ければ、その値段を高くし、年数が少なければ安くする。相手があなたに売るのは、収穫できる回数だからだ。
25:17 互いにだまし合ってはいけない。あなたの神を恐れなさい。わたしはあなたたちの神、主だからだ。
25:18 わたしの定めを行い、わたしの掟を守り、それを実行しなさい。そうすれば、安心してこの地に住むことができる。
25:19 地はその実りを与え、あなたたちは満ち足りるまで食べ、安心してそこに住む。
25:20 あなたたちはこう言うかもしれない。「七年目には何を食べればいいのか。種もまかず、作物も集めないのに。」
25:21 だが、わたしは六年目にあなたたちへの祝福を命じる。その年の畑は三年分の作物を実らせる。
25:22 あなたたちは八年目に種をまくが、それまでに取れた古い作物を食べ続ける。九年目になって新しい作物が実るまで、古いものを食べていける。
25:23 土地は永久に売り渡してはいけない。この地はわたしのものだからだ。あなたたちはわたしのもとに身を寄せる、よそから来た者、仮住まいの者にすぎない。
25:24 あなたたちが受け継ぐ土地のどこでも、その土地を買い戻せるようにしておかなければならない。
25:25 もし、あなたの同胞が貧しくなって、自分が受け継いだ土地の一部を売ったとしよう。そのときは、いちばん近い親族が来て、その売られた土地を買い戻す。
25:26 買い戻してくれる親族がいない場合でも、その人自身が豊かになって、買い戻すのに十分なお金を用意できたなら、
25:27 売ってからの年数を計算し、余った分を買い手に返せばいい。そうすれば、自分の土地に戻ることができる。
25:28 だが、返すだけのお金を用意できないなら、売った土地はヨベルの年まで買い手の手に残る。そしてヨベルの年になれば手放され、その人は自分の土地に戻る。
25:29 城壁のある町の中の家を売った場合は、売ってから満一年の間なら買い戻すことができる。買い戻す権利があるのは、その一年の間だけだ。
25:30 もし満一年たっても買い戻されなかったら、その城壁のある町の中の家は、買い手とその子孫のものとして永久に確定する。ヨベルの年になっても手放されない。
25:31 しかし、周りに城壁のない村の家は、その地の畑と同じように扱われる。だから買い戻すことができるし、ヨベルの年になれば手放される。
25:32 レビ人の町については別だ。彼らが受け継いだ町の中の家について、レビ人にはいつでも買い戻す権利があり、この権利は永久に続く。
25:33 レビ人から家が買われたときは、その売られた家も、彼らが受け継いだ町も、ヨベルの年になれば元に戻る。レビ人の町の中の家は、イスラエルの人々の間で彼らが受け継ぐ財産だからだ。
25:34 また、彼らの町の周りの放牧地を売ってはいけない。それは彼らが永久に受け継ぐものだからだ。
25:35 もし、あなたの同胞が貧しくなって、自分の力で暮らしていけなくなったら、あなたは彼を支えなければならない。よそから来た者や仮住まいの者と同じように、あなたのもとで生きていけるようにする。
25:36 彼から利子やもうけを取ってはいけない。あなたの神を恐れなさい。そうすれば、あなたの同胞はあなたのもとで生きていける。
25:37 あなたのお金を、利子を付けて彼に貸してはいけない。食べ物を、もうけを取って渡してもいけない。
25:38 わたしはあなたたちの神、主である。あなたたちをエジプトの地から導き出し、カナンの地を与え、あなたたちの神となるためだ。
25:39 もし、あなたのそばにいる同胞が貧しくなって、あなたに身を売ったとしても、奴隷のようにこき使ってはいけない。
25:40 雇い人や仮住まいの者と同じように、あなたのもとで過ごさせなさい。ヨベルの年まで、あなたのもとで働かせる。
25:41 そしてその年になれば、彼は子どもたちと一緒にあなたのもとを離れ、自分の一族のところへ戻り、先祖から受け継いだ土地に帰る。
25:42 彼らはわたしのしもべだからだ。わたしがエジプトの地から導き出した者たちだ。だから、奴隷として売り渡してはならない。
25:43 彼を厳しく支配してはいけない。あなたの神を恐れなさい。
25:44 あなたが持つ男女の奴隷は、周りの国々から得なさい。そうした国の者を、男も女も買うことができる。
25:45 また、あなたたちのところに仮住まいしている者の子どもたちや、あなたたちのところにいるその家族で、あなたたちの土地で生まれた者たちからも買うことができる。彼らはあなたたちのものとなる。
25:46 あなたたちは彼らを、後を継ぐ子どもたちに受け継がせ、財産として所有させることができる。彼らをいつまでも働かせてよい。しかし、あなたたちの同胞であるイスラエルの人々に対しては、たがいに厳しく支配してはいけない。
25:47 もし、あなたのそばに住むよそから来た者や仮住まいの者が豊かになり、その人のそばであなたの同胞が貧しくなって、そのよそ者や仮住まいの者、あるいはよそ者の一族の者に身を売ったとする。
25:48 身を売った後でも、彼を買い戻す道は残されている。彼の同胞の一人が、彼を買い戻すことができる。
25:49 あるいは、おじや、おじの息子が彼を買い戻してもよい。あるいは、その一族の中で血のつながった近しい親族が買い戻してもよい。あるいは、彼自身に余裕ができたなら、自分で自分を買い戻してもよい。
25:50 その場合、彼は自分を買った人と一緒に、身を売った年からヨベルの年までを計算する。売られた代金は、その年数に応じて決められ、雇い人の働いた日数として数えられる。
25:51 もしヨベルの年までまだ何年も残っているなら、その年数に応じて、買われた代金の中から買い戻しの金額を返す。
25:52 もしヨベルの年まで残りわずかな年数なら、それに合わせて計算し、その年数に応じて買い戻しの金額を返す。
25:53 彼は、年ごとに雇われる人のように、その人のもとで過ごす。その人が、あなたの目の前で彼を厳しく支配することがあってはならない。
25:54 もし、これらの方法で買い戻されなくても、彼はヨベルの年に自由の身となる。彼も、その子どもたちも一緒に。
25:55 なぜなら、イスラエルの人々はわたしのものであり、わたしに仕える者だからだ。わたしが彼らをエジプトの地から連れ出した。わたしはあなたたちの神、主である。
26:1 あなたたちは自分のために偶像を造ってはならない。彫像や石の柱を立ててもいけない。ひれ伏して拝むために、彫刻をほどこした石をあなたたちの地に置いてはならない。わたしはあなたたちの神、主だからだ。
26:2 わたしの安息日を守り、わたしの聖所を敬いなさい。わたしは主である。
26:3 もし、あなたたちがわたしの掟に従って歩み、わたしの命令を守り、それを実行するなら、
26:4 わたしは季節に合わせて雨を降らせる。すると地は作物を実らせ、野の木は実をつける。
26:5 麦の脱穀はぶどうの収穫まで続き、ぶどうの収穫は種まきの時まで続く。あなたたちは満ち足りるまでパンを食べ、自分たちの地で安心して暮らす。
26:6 わたしはこの地に平和を与える。あなたたちが横になって眠っても、おびえさせるものは何もない。わたしは危険な獣をこの地から取り除き、剣があなたたちの地を通り過ぎることもない。
26:7 あなたたちは敵を追いかける。敵はあなたたちの前で剣に倒れる。
26:8 あなたたちのうち五人が百人を追い、百人が一万人を追いかける。敵はあなたたちの前で剣に倒れる。
26:9 わたしはあなたたちに心を向け、あなたたちを豊かに増やし、その数を大きくする。そしてあなたたちとの約束を守り続ける。
26:10 あなたたちは古い年の作物を食べ続け、新しい作物のために古いものを運び出すことになる。
26:11 わたしは自分の住まいをあなたたちの中に置く。わたしはあなたたちを嫌うことはない。
26:12 わたしはあなたたちの間を歩き、あなたたちの神となる。そしてあなたたちはわたしの民となる。
26:13 わたしはあなたたちの神、主である。あなたたちがエジプトで奴隷にならずにすむように、その国から連れ出した者だ。わたしはあなたたちの肩にのしかかるくびきを砕き、あなたたちがまっすぐ胸を張って歩けるようにした。
26:14 しかし、もしあなたたちがわたしの言うことを聞かず、これらの命令をすべて守らないなら、
26:15 もしわたしの掟を退け、わたしの定めを嫌い、わたしの命令をすべて守らずに、わたしとの約束を破るなら、
26:16 わたしもあなたたちにこうする。あなたたちに突然の恐怖を送り、目を衰えさせ、心をむしばむ病と熱を臨ませる。あなたたちは種をまいてもむだになる。それを敵が食べてしまうからだ。
26:17 わたしはあなたたちに顔を向けて立ちはだかる。あなたたちは敵の前で打ち負かされる。あなたたちを憎む者があなたたちを支配し、あなたたちは追う者もいないのに逃げ出す。
26:18 それでもまだわたしの言うことを聞かないなら、わたしはあなたたちの罪のために、さらに七倍も重く懲らしめる。
26:19 わたしはあなたたちが誇りとする力を打ち砕く。あなたたちの上の空を鉄のように、地を青銅のように変えてしまう。
26:20 あなたたちの力はむだに尽き果てる。地は実りをもたらさず、木も実をつけない。
26:21 それでもあなたたちがわたしに逆らって歩み、わたしの言うことを聞こうとしないなら、わたしはあなたたちの罪に応じて、さらに七倍もの災いを重ねる。
26:22 わたしはあなたたちの中に野の獣を送り込む。獣はあなたたちの子どもを奪い、家畜を滅ぼし、あなたたちの数を減らしてしまう。こうして、あなたたちの道は荒れ果てる。
26:23 それでもあなたたちが、これらのことで思い直さず、わたしに逆らって歩むなら、
26:24 わたしもまた、あなたたちに逆らって歩む。わたし自身が、あなたたちの罪のために、さらに七倍も打ちのめす。
26:25 わたしはあなたたちの上に剣を送る。それは、契約を破ったことへの報いを果たす剣だ。あなたたちが町々に逃げ集まると、わたしはその中に疫病を送り込む。こうして、あなたたちは敵の手に渡される。
26:26 わたしがあなたたちのパンの支えを断つと、十人の女が一つのかまどでパンを焼くようになる。彼女たちはパンを目方で量って配り返す。あなたたちは食べても満たされない。
26:27 それでもあなたたちがわたしの言うことを聞かず、わたしに逆らって歩むなら、
26:28 わたしも怒りをもって、あなたたちに逆らって歩む。わたし自身が、あなたたちの罪のために、さらに七倍も懲らしめる。
26:29 あなたたちは自分の息子の肉を食べ、自分の娘の肉を食べるようになる。
26:30 わたしはあなたたちの高台の聖所を打ち壊し、香をたく祭壇を切り倒す。あなたたちの死体を、あなたたちの偶像の死体の上に投げ捨てる。わたしの魂はあなたたちを忌み嫌う。
26:31 わたしはあなたたちの町々を廃墟にし、あなたたちの聖所を荒れ果てさせる。あなたたちがささげる香りのよいささげ物のかおりも、わたしはもう受け入れない。
26:32 わたし自身が地を荒れ果てさせる。そこに住みつくあなたたちの敵も、それを見て驚き恐れる。
26:33 わたしはあなたたちを国々の中に散らし、剣を抜いてあなたたちを追う。あなたたちの地は荒れ果て、町々は廃墟となる。
26:34 そのとき、地は荒れ果てている間じゅう、その安息を取り戻す。あなたたちが敵の地にいる間、地は休み、その安息を取り戻すのだ。
26:35 荒れ果てている間じゅう、地は休む。あなたたちがそこに住んでいたとき、安息の年に休めなかった分を、地は取り返して休むのだ。
26:36 あなたたちのうち生き残った者には、敵の地で、心の中に恐れを送り込む。風に舞う一枚の葉の音にさえ追われ、剣から逃げるように逃げ、追う者もいないのに倒れる。
26:37 追う者もいないのに、剣の前から逃げるように、彼らは互いにつまずき合って倒れる。あなたたちには、敵の前に立ち向かう力がない。
26:38 あなたたちは国々の中で滅び、敵の地があなたたちを飲み込む。
26:39 あなたたちのうち生き残った者たちは、敵の地で自分の罪のために衰え果てる。しかも先祖の罪のためにも、彼らと共に衰え果てる。
26:40 しかし彼らが、自分の罪と先祖の罪を告白するなら――わたしに対して裏切りを重ね、わたしに逆らって歩んだことを認めるなら、
26:41 そのためにわたしも彼らに逆らって歩み、彼らを敵の地へ連れて行ったのだが――そのとき、かたくなな彼らの心が低くされ、自分の罪の罰を受け入れるなら、
26:42 わたしはヤコブとの契約を思い起こす。イサクとの契約も、アブラハムとの契約も思い起こす。そして、その地のことも思い起こす。
26:43 その間、地は彼らに捨てられ、人がいなくなって荒れ果てたまま、その安息の時を取り戻す。そして彼らは自分の罪の罰を受け入れる。彼らがわたしの定めを退け、心からわたしのおきてを嫌ったからだ。まさにそのためだ。
26:44 それでも、彼らが敵の地にいるときでさえ、わたしは彼らを退けず、嫌いもしない。彼らを滅ぼし尽くして、彼らとの契約を破ることはしない。わたしは彼らの神、主だからだ。
26:45 わたしは彼らのために、先祖たちとの契約を思い起こす。わたしが彼らの神となるために、国々の見ている前でエジプトの地から連れ出した、あの先祖たちとの契約を。わたしは主である。
26:46 これらは、主がシナイ山で、モーセを通して、ご自分とイスラエルの人々との間に定めたおきてと定めと律法である。
27:1 主はモーセに言われた。
27:2 「イスラエルの人々に告げなさい。だれかが特別な誓いを立てて、人を主にささげるときには、あなたが定める額に従ってこうする。
27:3 二十歳から六十歳までの男なら、その額は、聖所のシェケルで銀五十シェケルとする。
27:4 女なら、その額は三十シェケルとする。
27:5 五歳から二十歳までなら、男は二十シェケル、女は十シェケルとする。
27:6 生後一か月から五歳までなら、男は銀五シェケル、女は銀三シェケルとする。
27:7 六十歳以上なら、男は十五シェケル、女は十シェケルとする。
27:8 もしその人がその額を払えないほど貧しいなら、祭司の前に立たせる。祭司は、誓いを立てた人に払える範囲に合わせて、その額を定める。
27:9 もし主にささげる家畜なら、そのうち主にささげた分はすべて聖なるものとなる。
27:10 それを別のものと取り替えたり、差し替えたりしてはならない。良いものを悪いものと、悪いものを良いものと替えてはならない。もし家畜を別の家畜と替えたなら、もとのものも、替えたものも、どちらも聖なるものとなる。
27:11 もし主にささげられない汚れた家畜なら、その家畜を祭司の前に立たせる。
27:12 祭司はそれが良いか悪いかを見て、額を定める。祭司が定めた額のとおりとする。
27:13 もしその人がそれを買い戻したいなら、定められた額にその五分の一を加えて払う。
27:14 だれかが自分の家を主にささげて聖なるものとするなら、祭司はそれが良いか悪いかを見て、額を定める。祭司が定めたとおりの額とする。
27:15 もしささげた人がその家を買い戻したいなら、定められた額にその五分の一を加えて払う。そうすれば、その家は自分のものになる。
27:16 もしだれかが自分の所有する畑の一部を主にささげるなら、その額はまく種の量に応じて定める。大麦一ホメルの種をまく畑は、銀五十シェケルとする。
27:17 もしヨベルの年からその畑をささげるなら、定められた額のとおりとする。
27:18 しかしヨベルの年のあとにその畑をささげるなら、祭司は次のヨベルの年までに残っている年数を数えて額を計算し、その分を定められた額から差し引く。
27:19 もし畑をささげた人がそれを買い戻したいなら、定められた額に五分の一を加えて払う。そうすれば畑は自分のものになる。
27:20 しかしその畑を買い戻さず、ほかの人に売ってしまったなら、もう二度と買い戻すことはできない。
27:21 その畑はヨベルの年になって手放されるとき、主にささげられたものとなる。差し出された畑と同じように、祭司のものとなり、その所有地となる。
27:22 もしだれかが、自分がもともと持っていた畑ではなく、買った畑を主にささげるなら、
27:23 祭司は次のヨベルの年までの額を計算する。その人はその日のうちにその額を払い、それは主にささげられたものとなる。
27:24 ヨベルの年になると、その畑はそれを売った人、つまりその土地をもともと所有していた人のもとに戻る。
27:25 額はすべて聖所のシェケルで量る。一シェケルは二十ゲラである。
27:26 ただし、家畜の初子は主のものだから、だれもそれをささげてはならない。牛でも羊でも、それは主のものである。
27:27 もしそれが汚れた家畜なら、定められた額に五分の一を加えて買い戻す。買い戻さないなら、その定められた額で売られる。
27:28 しかし、人が自分の持ち物のうちから、人であれ家畜であれ自分の畑であれ、主に完全にささげたものは、売ることも買い戻すこともできない。ささげられたものはすべて、主にとって最も聖なるものだからである。
27:29 人のうちで完全にささげられた者は、買い戻すことができない。その者は必ず殺されなければならない。
27:30 地から取れるものの十分の一は、地の種であれ木の実であれ、すべて主のものである。それは主にささげられた聖なるものである。
27:31 もし人が自分の十分の一の一部を買い戻したいなら、それにさらに五分の一を加えなければならない。
27:32 牛や羊の十分の一、つまり羊飼いの杖の下を通って数えられるものはすべて、その十番目が主にささげられた聖なるものとなる。
27:33 それが良いか悪いかを調べてはならないし、ほかのものと取り替えてもならない。もし取り替えたなら、そのものも、取り替えたものも、両方とも聖なるものとなり、買い戻すことはできない。」
27:34 これらは、主がシナイ山でモーセに命じ、イスラエルの人々に伝えさせた命令である。
民数記
1:1 イスラエルの民がエジプトの地を出てから二年目の、第二の月の一日、主はシナイの荒れ野にある会見の幕屋で、モーセにこう語った。
1:2 「イスラエルの人々の全体を、氏族ごと、父の家ごとに調べて、男子全員の名前を一人ずつ数え、その総数を出しなさい。
1:3 二十歳以上で、軍隊に加われる者は、イスラエルの中から全員、部隊ごとに登録すること。あなたとアロンがそれを行いなさい。
1:4 その手伝いとして、各部族から一人ずつ、父の家の長である者を付けなさい。
1:5 あなたたちを助けて働く人たちの名前は、次のとおりである。ルベン族からはシェデウルの子エリツル。
1:6 シメオン族からはツリシャダイの子シェルミエル。
1:7 ユダ族からはアミナダブの子ナフション。
1:8 イッサカル族からはツアルの子ネタンエル。
1:9 ゼブルン族からはヘロンの子エリアブ。
1:10 ヨセフの子孫では、エフライム族からはアミフドの子エリシャマ、マナセ族からはペダツルの子ガムリエル。
1:11 ベニヤミン族からはギデオニの子アビダン。
1:12 ダン族からはアミシャダイの子アヒエゼル。
1:13 アシェル族からはオクランの子パグエル。
1:14 ガド族からはデウエルの子エルヤサフ。
1:15 ナフタリ族からはエナンの子アヒラ。」
1:16 以上が、共同体の中から選ばれた人たちである。彼らは父祖の部族の代表であり、イスラエルの氏族の長だった。
1:17 モーセとアロンは、名前を指名されたこの人たちを集めた。
1:18 そして第二の月の一日に、共同体全体を招集した。人々は氏族ごと、父祖の家ごとに登録され、二十歳以上の男子が一人ずつ名前で数えられた。
1:19 主がモーセに命じたとおり、モーセはシナイの荒れ野で彼らを数えた。
1:20 イスラエルの長男ルベンの子孫は、氏族ごと、父祖の家ごとに、名前を一人ずつ数えると、二十歳以上で兵役に就ける男子は全員、
1:21 ルベン族として数えられたのは、四万六千五百人だった。
1:22 シメオンの子孫は、氏族ごと、父祖の家ごとに、名前を一人ずつ数えると、二十歳以上で兵役に就ける男子は全員、
1:23 シメオン族として数えられたのは、五万九千三百人だった。
1:24 ガドの子孫は、氏族ごと、父祖の家ごとに、名前を数えると、二十歳以上で兵役に就ける男子は全員、
1:25 ガド族として数えられたのは、四万五千六百五十人だった。
1:26 ユダの子孫は、氏族ごと、父祖の家ごとに、名前を数えると、二十歳以上で兵役に就ける男子は全員、
1:27 ユダ族として数えられたのは、七万四千六百人だった。
1:28 イッサカルの子孫は、氏族ごと、父祖の家ごとに、名前を数えると、二十歳以上で兵役に就ける男子は全員、
1:29 イッサカル族として数えられたのは、五万四千四百人だった。
1:30 ゼブルンの子孫は、氏族ごと、父祖の家ごとに、名前を数えると、二十歳以上で兵役に就ける男子は全員、
1:31 ゼブルン族として数えられたのは、五万七千四百人だった。
1:32 ヨセフの子孫のうち、エフライムの子孫は、氏族ごと、父祖の家ごとに、名前を数えると、二十歳以上で兵役に就ける男子は全員、
1:33 エフライム族として数えられたのは、四万五百人だった。
1:34 マナセの子孫は、氏族ごと、父祖の家ごとに、名前を数えると、二十歳以上で兵役に就ける男子は全員、
1:35 マナセ族として数えられたのは、三万二千二百人だった。
1:36 ベニヤミンの子孫は、氏族ごと、父祖の家ごとに、名前を数えると、二十歳以上で兵役に就ける男子は全員、
1:37 ベニヤミン族として数えられたのは、三万五千四百人だった。
1:38 ダンの子孫は、氏族ごと、父祖の家ごとに、名前を数えると、二十歳以上で兵役に就ける男子は全員、
1:39 ダン族として数えられたのは、六万二千七百人だった。
1:40 アシェルの子孫は、氏族ごと、父祖の家ごとに、名前を数えると、二十歳以上で兵役に就ける男子は全員、
1:41 アシェル族として数えられたのは、四万千五百人だった。
1:42 ナフタリの子孫は、氏族ごと、父祖の家ごとに、名前を数えると、二十歳以上で兵役に就ける男子は全員、
1:43 ナフタリ族として数えられたのは、五万三千四百人だった。
1:44 以上が、モーセとアロン、そしてイスラエルの十二人の指導者たちが数えた人数である。指導者は父祖の家ごとに一人ずつだった。
1:45 こうして、イスラエルの人々のうち、父祖の家ごとに、二十歳以上で兵役に就ける男子は全員数えられた。
1:46 数えられた者は、合わせて六十万三千五百五十人だった。
1:47 ただし、レビ族は父祖の部族ごとには、この中に数えられなかった。
1:48 主はモーセにこう告げた。
1:49 「ただし、レビ族だけは登録せず、イスラエルの人々の中で数に入れてはならない。
1:50 あなたはレビ人を、掟の板を納めた幕屋と、そのすべての備品、それに付属するものすべての担当に任命しなさい。彼らはこの幕屋とすべての備品を運び、それに仕える。そして幕屋の周りに宿営する。
1:51 幕屋を移動させるときは、レビ人がそれを解体し、幕屋を張るときは、レビ人がそれを組み立てる。ほかの者が近づいたら、その者は死ななければならない。
1:52 イスラエルの人々は、それぞれ自分の宿営地に、それぞれ自分の旗のもとに、部隊ごとに宿営する。
1:53 しかしレビ人は、掟の板を納めた幕屋の周りに宿営する。そうすればイスラエルの人々の集まりに怒りが下ることはない。レビ人はこの幕屋を守る務めを果たすのだ。」
1:54 イスラエルの人々は、主がモーセに命じたとおりにすべてを行った。そのとおりに行ったのである。
2:1 主はモーセとアロンにこう告げた。
2:2 「イスラエルの人々は、それぞれ自分の旗のもと、自分の父祖の家のしるしのそばに宿営しなさい。会見の幕屋を囲むように、少し離れて宿営するのだ。
2:3 東側、日の昇る方に宿営するのは、ユダの宿営の旗のもとにある部隊ごとの人々である。ユダ族の長はアミナダブの子ナフション。
2:4 その部隊、数えられた者は七万四千六百人である。
2:5 その隣に宿営するのはイッサカル族。イッサカル族の長はツアルの子ネタンエル。
2:6 その部隊、数えられた者は五万四千四百人である。
2:7 次はゼブルン族。ゼブルン族の長はヘロンの子エリアブ。
2:8 その部隊、数えられた者は五万七千四百人である。
2:9 ユダの宿営に属して数えられた者は、部隊ごとに合わせて十八万六千四百人である。彼らが最初に出発する。
2:10 南側にはルベンの宿営の旗が、その部隊ごとに置かれる。ルベン族の長はシェデウルの子エリツル。
2:11 その部隊、数えられた者は四万六千五百人である。
2:12 その隣に宿営するのはシメオン族。シメオン族の長はツリシャダイの子シェルミエル。
2:13 その部隊、数えられた者は五万九千三百人である。
2:14 次はガド族。ガド族の長はレウエルの子エルヤサフ。
2:15 その部隊、数えられた者は四万五千六百五十人である。
2:16 ルベンの宿営に属して数えられた者は、部隊ごとに合わせて十五万一千四百五十人である。彼らが二番目に出発する。
2:17 それから会見の幕屋が、レビ人の宿営とともに、いくつもの宿営の真ん中を進む。宿営していたときと同じ順序で、それぞれが自分の位置につき、旗ごとに出発する。
2:18 西側にはエフライムの宿営の旗が、その部隊ごとに置かれる。エフライム族の長はアミフドの子エリシャマ。
2:19 その部隊、数えられた者は四万五百人である。
2:20 その隣にはマナセ族が置かれる。マナセ族の長はペダツルの子ガムリエル。
2:21 その部隊、数えられた者は三万二千二百人である。
2:22 次にベニヤミン族が置かれる。ベニヤミン族の長はギデオニの子アビダン。
2:23 その部隊、数えられた者は三万五千四百人である。
2:24 エフライムの宿営に属して数えられた者は、部隊ごとに合わせて十万八千百人である。彼らが三番目に出発する。
2:25 北側にはダンの宿営の旗が、その部隊ごとに置かれる。ダン族の長はアミシャダイの子アヒエゼル。
2:26 その部隊、数えられた者は六万二千七百人である。
2:27 その隣に宿営するのはアシェル族。アシェル族の長はオクランの子パグイエル。
2:28 その部隊、数えられた者は四万一千五百人である。
2:29 次にナフタリ族が置かれる。ナフタリ族の長はエナンの子アヒラ。
2:30 その部隊、数えられた者は五万三千四百人である。
2:31 ダンの陣営で数えられた者は、合わせて十五万七千六百人である。彼らは自分たちの旗のもと、最後に出発する。」
2:32 これがイスラエルの人々の、父祖の家ごとに数えられた者である。すべての陣営で部隊ごとに数えられた者は、合わせて六十万三千五百五十人だった。
2:33 ただしレビ族は、イスラエルの人々とともに数えられなかった。主がモーセに命じたとおりである。
2:34 イスラエルの人々は、主がモーセに命じたことをすべてそのとおりに行った。こうして彼らは自分たちの旗のもとに宿営し、それぞれの氏族と父祖の家ごとに出発した。
3:1 主がシナイ山でモーセと語った日の、アロンとモーセの家系は次のとおりである。
3:2 アロンの息子たちの名前は次のとおり。長男はナダブ、次にアビフ、エルアザル、イタマル。
3:3 これがアロンの息子たちの名前である。彼らは油を注がれ、祭司として仕えるために任命された祭司たちである。
3:4 しかしナダブとアビフは、シナイの荒れ野で、主の前に決められていない火をささげ、主の前で死んだ。彼らには子どもがいなかった。それでエルアザルとイタマルが、父アロンのもとで祭司として仕えた。
3:5 主はモーセにこう言った。
3:6 「レビ族を近くに連れて来て、祭司アロンの前に立たせ、彼を助けて仕えさせなさい。
3:7 彼らは、会見の天幕の前でアロンと全会衆のために果たすべき務めを守り、幕屋の仕事を行う。
3:8 また、会見の天幕のすべての備品を管理し、イスラエルの人々のために果たすべき務めを守って、幕屋の仕事を行うのだ。
3:9 レビ人はアロンとその子たちにゆだねなさい。彼らはイスラエルの人々の中から、アロンのために完全に差し出された者たちだ。
3:10 アロンとその子たちを任命しなさい。彼らは祭司の務めを守る。ほかの者が近づいたら、その者は殺されなければならない。」
3:11 主はモーセにこう言った。
3:12 「見なさい。わたしは、イスラエルの人々の中から、最初に胎を開くすべての長子の代わりに、レビ人を取った。レビ人はわたしのものとなる。
3:13 長子はみな、わたしのものだからだ。わたしはエジプトの地ですべての長子を打った日に、人から家畜まで、イスラエルのすべての長子を、自分のものとして聖別した。彼らはわたしのものとなる。わたしは主である。」
3:14 主はシナイの荒れ野で、モーセにこう言った。
3:15 「レビの人々を、その家系ごと、氏族ごとに数えなさい。生後一か月以上の男子をすべて数えるのだ。」
3:16 そこでモーセは、命じられたとおり、主の言葉に従って彼らを数えた。
3:17 レビの子たちの名は次のとおりである。ゲルション、ケハト、メラリ。
3:18 ゲルションの子たちの名は、氏族ごとに、リブニとシムイである。
3:19 ケハトの子たちは、氏族ごとに、アムラム、イツハル、ヘブロン、ウジエルである。
3:20 メラリの子たちは、氏族ごとに、マフリとムシである。以上が、父の家ごとのレビ人の氏族である。
3:21 ゲルションからは、リブニ人の氏族とシムイ人の氏族が出た。これがゲルション人の氏族である。
3:22 生後一か月以上の男子をすべて数えると、その数は七千五百人だった。
3:23 ゲルション人の氏族は、幕屋の後ろ、西側に宿営することになっていた。
3:24 ゲルション人の父の家の長は、ラエルの子エルヤサフだった。
3:25 会見の幕屋でゲルションの子たちが担当したのは、幕屋とその天幕、その覆い、会見の幕屋の入り口の垂れ幕、
3:26 庭の掛け幕、幕屋と祭壇を囲む庭の入り口の垂れ幕、そしてその綱である。これらに関わるすべての仕事を受け持った。
3:27 ケハトからは、アムラム人の氏族、イツハル人の氏族、ヘブロン人の氏族、ウジエル人の氏族が出た。これがケハト人の氏族である。
3:28 生後一か月以上の男子をすべて数えると、八千六百人で、彼らは聖所を守る務めを担った。
3:29 ケハトの子たちの氏族は、幕屋の側面、南側に宿営することになっていた。
3:30 ケハト人の氏族の父の家の長は、ウジエルの子エリツァファンだった。
3:31 彼らが担うのは、契約の箱、机、燭台、祭壇、礼拝に使う聖所の器具、そして仕切りの幕とそれに関わるすべての仕事だった。
3:32 レビ人の族長たちの上に立つ長は、祭司アロンの子エルアザルで、聖所を守る務めを担う者たちを監督した。
3:33 メラリからは、マフリの氏族とムシの氏族が出た。これがメラリの氏族である。
3:34 生後一か月以上の男子をすべて数えると、六千二百人だった。
3:35 メラリの諸氏族の父の家の長は、アビハイルの子ツリエルだった。彼らは幕屋の側面、北側に宿営することになっていた。
3:36 メラリの子たちに割り当てられた務めは、幕屋の板、横木、柱、台座、そのすべての器具、そしてそれに関わるすべての仕事だった。
3:37 さらに、周りを囲む庭の柱とその台座、釘と綱も彼らの務めだった。
3:38 幕屋の前、東側、つまり会見の天幕の前の東側に宿営するのは、モーセとアロン、そしてアロンの子たちだった。彼らはイスラエルの人々に代わって聖所を守る務めを担った。そこに近づく資格のない者は、だれでも殺されることになっていた。
3:39 主の命令によってモーセとアロンが氏族ごとに数えたレビ人は、生後一か月以上の男子をすべて合わせて二万二千人だった。
3:40 主はモーセに言われた。「イスラエルの人々のうち、生後一か月以上の長男をすべて数え、その名を記して人数を調べなさい。
3:41 そして、イスラエルの人々のすべての長男の代わりにレビ人をわたしのものとして取り分けなさい。わたしは主である。また、イスラエルの人々の家畜の初子の代わりに、レビ人の家畜を取り分けなさい。」
3:42 そこでモーセは、主が命じられたとおりに、イスラエルの人々のすべての長男を数えた。
3:43 生後一か月以上の長男を名簿に従って数えると、その総数は二万二千二百七十三人だった。
3:44 主はモーセに言われた。
3:45 「イスラエルの人々のすべての長男の代わりにレビ人を取り、彼らの家畜の代わりにレビ人の家畜を取りなさい。レビ人はわたしのものとなる。わたしは主である。
3:46 長男の数はレビ人の数より二百七十三人多い。この余った長男たちを買い戻すために、
3:47 一人につき五シェケルを取りなさい。聖所のシェケルで量るように。一シェケルは二十ゲラである。
3:48 そして、その余った人数分の買い戻しのお金を、アロンとその子らに渡しなさい。」
3:49 そこでモーセは、レビ人によって買い戻された数を超えて余った者たちから、買い戻しのお金を取った。
3:50 彼はイスラエルの人々の長男から、聖所のシェケルで千三百六十五シェケルのお金を集めた。
3:51 そしてモーセは、主が命じられたとおり、主の言葉に従って、その買い戻しのお金をアロンとその子らに渡した。
4:1 主はモーセとアロンにこう告げた。
4:2 「レビ族の中から、コハトの一族を選び出し、その氏族ごと、家族ごとに人数を数えなさい。
4:3 数えるのは、三十歳から五十歳までの者、つまり会見の幕屋の仕事に就いて働ける者すべてだ。
4:4 会見の幕屋におけるコハトの一族の務めは、次のとおりである。最も聖なるものを扱う仕事だ。
4:5 宿営が移動するとき、アロンとその子らは中に入り、仕切りの垂れ幕を取り外して、それで掟の箱をおおう。
4:6 その上にじゅごんの皮のおおいをかけ、さらにその上に、すべて青い布を広げてかぶせる。そして担ぎ棒を通す。
4:7 供えのパンを置く机の上には、青い布を広げる。その上に皿、小鉢、水差し、それに注ぎ物のための壺を並べる。いつも供えるパンも、その上に置いておく。
4:8 それらの上に緋色の布を広げ、さらにじゅごんの皮のおおいをかけて包み、担ぎ棒を通す。
4:9 また青い布を取って、明かりの燭台と、そのともし火皿、芯切りばさみ、火皿、そして燭台で使うすべての油の器をおおう。
4:10 燭台とそのすべての器具を、じゅごんの皮のおおいで包み、担ぎ台に載せる。
4:11 金の祭壇の上には青い布を広げ、じゅごんの皮のおおいをかけて包み、担ぎ棒を通す。
4:12 聖所での務めに使うすべての道具を取り、青い布に包んで、じゅごんの皮のおおいをかけ、担ぎ台に載せる。
4:13 祭壇からは灰を取り除き、その上に紫の布を広げる。
4:14 その上に、祭壇での務めに使うすべての器具を載せる。火皿、肉刺しのフォーク、灰用のシャベル、鉢など、祭壇のすべての器具だ。それからじゅごんの皮のおおいをかけて、担ぎ棒を通す。
4:15 宿営が出発するとき、アロンとその子たちが聖なるものとそのすべての器具をおおい終えたら、そのあとでコハトの一族が来て、それを運ぶ。ただし、聖なるものには触れてはならない。触れれば死ぬことになる。これが会見の天幕で、コハトの一族が担う荷だ。
4:16 祭司アロンの子エルアザルは、次のものを管理する。ともし火用の油、香りのよい香、毎日ささげる穀物のささげ物、そして注ぎの油だ。さらに幕屋全体と、その中にあるすべてのもの、つまり聖なる場所とその器具の管理も、彼の務めとなる。」
4:17 主はモーセとアロンにこう言われた。
4:18 コハトの諸家族の部族を、レビ族の中から絶やしてはならない。
4:19 彼らが最も聖なるものに近づくとき、死なずに生きられるように、こうしなさい。アロンとその子たちが入って行き、一人ひとりにそれぞれの務めと運ぶ荷を割り当てる。
4:20 しかし彼らは、聖なるものがおおわれるところを見に入って行ってはならない。見れば死ぬことになる。
4:21 主はモーセにこう言われた。
4:22 ゲルションの子たちも、その父祖の家ごと、氏族ごとに人数を数えなさい。
4:23 三十歳以上五十歳までの者、会見の天幕で務めを果たすために働きに加わる者を、みな登録しなさい。
4:24 ゲルションの諸家族の務めは、働くことと荷を運ぶことである。
4:25 彼らは、幕屋の幕、会見の天幕とその覆い、その上にかけるじゅごんの皮の覆い、会見の天幕の入り口の垂れ幕を運ぶ。
4:26 また、幕屋と祭壇を囲む庭の掛け幕、庭の門の入り口の垂れ幕、その張り綱、仕事に使うすべての道具も運ぶ。これらに関わるすべての作業は、彼らが行う。
4:27 ゲルションの子たちの働きは、荷を運ぶことも、そのほかの務めも、すべてアロンとその子たちの指示のもとで行う。彼らが運ぶすべての荷を、あなたたちは責任をもって割り当てなさい。
4:28 これが、会見の天幕におけるゲルションの子らの諸家族の務めである。彼らはアロンの子、祭司イタマルの監督のもとで働く。
4:29 メラリの子たちについても、氏族ごと、父祖の家ごとに人数を数えなさい。
4:30 三十歳以上五十歳までの者、会見の天幕で務めを果たすために働きに加わる者を、みな登録しなさい。
4:31 会見の天幕での務めとして彼らが運ぶ荷は、次のものである。幕屋の板、その横木、その柱とその台座、
4:32 庭を囲む柱とその台座、その杭とその張り綱、それに関わるすべての道具と、それらを扱うすべての作業である。彼らが運ぶ責任のある道具は、一つ一つ名前を挙げて割り当てなさい。
4:33 これが、会見の天幕におけるメラリの子らの諸家族の務めである。彼らはアロンの子、祭司イタマルの監督のもとで働く。
4:34 モーセとアロン、そして会衆の長たちは、コハトの子たちを氏族ごと、父祖の家ごとに数えた。
4:35 三十歳以上五十歳までの者、会見の天幕で務めを果たすために働きに加わる者をすべて数えた。
4:36 氏族ごとに登録された人数は、二千七百五十人であった。
4:37 以上が、コハトの氏族で登録された者たちである。会見の天幕で働くすべての者であり、主が命じたとおり、その言葉に従って、モーセとアロンが数えた者たちである。
4:38 ゲルションの子たちも、氏族ごと、父祖の家ごとに数えられた。
4:39 三十歳以上五十歳までの者、会見の天幕で務めを果たすために働きに加わる者をすべて数えた。
4:40 氏族ごと、父祖の家ごとに登録された人数は、二千六百三十人であった。
4:41 以上が、ゲルションの子たちの氏族で登録された者たちである。会見の天幕で働くすべての者であり、主の命令に従って、モーセとアロンが数えた者たちである。
4:42 メラリの子たちの氏族も、氏族ごと、父祖の家ごとに数えられた。
4:43 三十歳以上五十歳までの者、会見の天幕で務めを果たすために働きに加わる者をすべて数えた。
4:44 氏族ごとに登録された人数は、三千二百人であった。
4:45 以上が、メラリの子たちの氏族で登録された者たちである。主が命じたとおり、その言葉に従って、モーセとアロンが数えた者たちである。
4:46 モーセとアロン、そしてイスラエルの長たちが数えたレビ人の登録者は、氏族ごと、父祖の家ごとに、すべて合わせて次のとおりである。
4:47 三十歳以上五十歳までの者、会見の天幕で奉仕の務めと運搬の務めを果たすために働きに加わる者をすべて数えた。
4:48 登録された人数は、八千五百八十人であった。
4:49 主の命令によって、モーセを通して一人ひとりが登録された。それぞれの奉仕の務めと運搬の務めに応じてである。こうして、主がモーセに命じられたとおりに、彼らは数えられた。
5:1 主はモーセにこう告げられた。
5:2 「イスラエルの人々に命じなさい。重い皮膚病の人、体から漏れのある人、死体に触れて汚れた人は、みな宿営の外に出しなさい。
5:3 男も女も、宿営の外に出しなさい。わたしが彼らの中に住んでいる宿営を、汚さないためである。」
5:4 イスラエルの人々はそのとおりにして、彼らを宿営の外に出した。主がモーセに告げられたとおりに、イスラエルの人々は行った。
5:5 主はモーセにこう告げられた。
5:6 「イスラエルの人々に伝えなさい。男でも女でも、人が犯すどんな罪であれ、それを犯して主に背き、その人が責めを負うことになったときは、
5:7 自分の犯した罪を告白しなければならない。そして、与えた損害の全額を償い、さらにその五分の一を加えて、損害を与えた相手に渡さなければならない。
5:8 もしその相手に、償いを受け取る近親者がいない場合は、その償いは主のもの、つまり祭司のものとなる。それとは別に、その人のための贖いをする雄の羊をささげる。
5:9 イスラエルの人々が祭司のところに持って来る聖なる献げ物は、すべてその祭司のものとなる。
5:10 それぞれの人がささげる聖なるものは、その人自身のものとなる。しかし、祭司に渡したものは、祭司のものとなる。」
5:11 主はモーセにこう告げられた。
5:12 「イスラエルの人々に伝え、こう言いなさい。もし、ある人の妻が心を迷わせ、夫を裏切って不誠実なことをし、
5:13 ほかの男が彼女と関係を持ったのに、それが夫の目には隠れていて気づかれず、彼女は身を汚したが、それを証明する証人もなく、現場を押さえられてもいない、という場合。
5:14 そのとき、夫に嫉妬の思いが起こり、身を汚した妻を疑うことがある。あるいは、妻は身を汚していないのに、夫に嫉妬の思いが起こって妻を疑うこともある。
5:15 その場合、夫は妻を祭司のところに連れて行き、妻のためのささげ物として大麦の粉を一エファの十分の一持って行く。それには油を注いではならず、乳香もかけてはならない。これは嫉妬のためのささげ物であり、罪を思い起こさせる、覚えのためのささげ物だからである。
5:16 祭司はその女を進み出させ、主の前に立たせる。
5:17 そして祭司は、土の器に聖なる水をくみ、幕屋の床の土を取ってその水に入れる。
5:18 祭司はその女を主の前に立たせ、女の髪をほどき、覚えのためのささげ物、つまり嫉妬のためのささげ物を彼女の両手に載せる。祭司の手には、のろいをもたらす苦い水がある。
5:19 祭司は女に誓わせて、こう言う。「もし、ほかの男があなたと関係を持ったことがなく、あなたが夫のもとにありながら心を迷わせて身を汚したことがないなら、のろいをもたらすこの苦い水の害を受けずにすむ。
5:20 しかし、もしあなたが夫のもとにありながら心を迷わせて身を汚し、夫以外の男があなたと関係を持ったのなら――」
5:21 ――祭司は女にのろいの誓いを立てさせ、こう言う。「主があなたを、あなたの民の間でのろいと呪いの見本とされるように。主があなたのももをやせ衰えさせ、腹をふくれ上がらせるように。
5:22 のろいをもたらすこの水があなたの体に入り、腹をふくれ上がらせ、ももをやせ衰えさせるように。」すると女は「アーメン、アーメン」と答える。
5:23 祭司はこれらののろいの言葉を書き記し、それを苦い水で洗い落とす。
5:24 そして、のろいをもたらす苦い水を女に飲ませる。のろいをもたらすその水は彼女の中に入り、苦みとなる。
5:25 祭司は女の手からねたみのささげ物を受け取り、それを主の前で揺り動かして、祭壇に持って行く。
5:26 そして祭司はそのささげ物のうち、記念の分としてひとつかみを取り、祭壇の上で焼く。その後で、女にその水を飲ませる。
5:27 祭司が水を飲ませたとき、もし彼女が身を汚し、夫を裏切っていたなら、のろいをもたらすその水は彼女の中に入って苦みとなり、腹はふくれ上がり、ももはやせ衰える。こうして彼女は人々の間でのろいの見せしめとなる。
5:28 しかし、もし彼女が身を汚しておらず、汚れがなかったなら、彼女は無事で、子を宿すことができる。
5:29 これが、ねたみについての定めである。妻が夫のもとを離れて心を移し、身を汚した場合、
5:30 あるいは夫にねたみの心が起こり、妻を疑う場合に適用される。夫は妻を主の前に立たせ、祭司はこの定めのすべてを彼女に行う。
5:31 こうして夫は罪を問われず、その女は自分の罪を負うことになる。
6:1 主はモーセにこう言われた。
6:2 「イスラエルの人々に伝えなさい。男でも女でも、特別な誓いを立てて、主のために身をささげるナジル人となる場合、
6:3 その人はぶどう酒や強い酒を断たなければならない。ぶどう酒の酢も、強い酒の酢も飲んではならない。ぶどうの汁も飲まず、ぶどうの実も、生のものも干したものも食べてはならない。
6:4 身をささげている間は、ぶどうの木からできるものは、種から皮まで、いっさい食べてはならない。
6:5 身をささげる誓いの間は、頭にかみそりを当ててはならない。主のために身をささげた期間が終わるまで、その人は聖なる者であり、髪を伸ばし放題にしておく。
6:6 主のために身をささげている間は、死んだ人に近づいてはならない。
6:7 父や母、兄弟や姉妹が死んでも、そのために身を汚してはならない。神に身をささげたしるしが、その頭にあるからだ。
6:8 身をささげている間、その人はずっと主のために聖なる者である。
6:9 もしだれかがそのそばで突然死に、身をささげた頭を汚してしまったら、その人は身を清める日に頭をそる。七日目にそるのだ。
6:10 そして八日目に、山鳩二羽か家鳩のひな二羽を、祭司のところ、会見の天幕の入り口に持って行く。
6:11 祭司は一羽を罪を清めるためのささげ物とし、もう一羽を焼き尽くすささげ物とする。こうして、その人が死体のそばにいて犯した過ちを償い、その日、頭を改めて聖なるものとする。
6:12 その人は身をささげる期間を新たに主にささげ直し、一歳の雄の子羊を、償いのためのささげ物として持って行く。頭を汚してしまったので、前の期間は数えず、初めからやり直すのだ。
6:13 身をささげた人についての定めは、次のとおりである。身をささげる期間が終わったら、その人を会見の天幕の入り口に連れて行く。
6:14 そこでその人は、主にささげ物を持って行く。焼き尽くすささげ物として傷のない一歳の雄の子羊一頭、罪を清めるためのささげ物として傷のない一歳の雌の子羊一頭、そして交わりのささげ物として傷のない雄羊一頭である。
6:15 さらに、種を入れないパンのかごを一つ持って行く。中には、上等の粉に油を混ぜて作った輪型のパンと、油を塗った種なしの薄焼きパン、それにそえる穀物のささげ物と注ぎのささげ物を入れる。
6:16 祭司はそれらを主の前に持って行き、罪を清めるためのささげ物と焼き尽くすささげ物をささげる。
6:17 また、種を入れないパンのかごとともに、雄羊を交わりのささげ物として主にささげる。祭司は、それにそえる穀物のささげ物と注ぎのささげ物もささげる。
6:18 身をささげた人は、会見の天幕の入り口で、身をささげたしるしの頭をそる。そして、その髪を取り、交わりのささげ物の下で燃えている火の中に入れる。
6:19 祭司は、煮た雄羊の肩の肉と、かごから取った種を入れないパン一つ、そして種を入れない薄焼きのパン一枚を取る。そして、身をささげた人が身をささげたしるしの髪をそり終えたあと、それらをその両手にのせる。
6:20 祭司はそれらを主の前で揺り動かしてささげる。これは、揺り動かしてささげる胸の肉や、ささげ物として取り分けるももの肉とともに、祭司のものとなる聖なるものである。そのあと、身をささげた人はぶどう酒を飲んでよい。
6:21 以上が、誓いを立てて身をささげた人についての決まりである。その人は、身をささげたしるしとして、主にささげ物をする。これは、そのほかに自分でできるだけのものをささげることとは別である。立てた誓いのとおりに、身をささげることについての決まりにしたがって行わなければならない。」
6:22 主はモーセに言われた。
6:23 「アロンとその子らにこう伝えなさい。あなたたちは、イスラエルの人々をこう言って祝福しなさい。彼らにこう告げなさい。
6:24 主があなたを祝福し、あなたを守られるように。
6:25 主がその顔をあなたに向けて照らし、あなたを恵まれるように。
6:26 主がその顔をあなたに向けて、あなたに平安を与えられるように。
6:27 こうして彼らがわたしの名をイスラエルの人々の上に置くなら、わたしは彼らを祝福する。」
7:1 モーセが幕屋を建て終わった日、彼はそれに油を注いで聖なるものとした。幕屋とそのすべての備品、そして祭壇とそのすべての器具にも油を注ぎ、それらを聖なるものとした。
7:2 すると、イスラエルの各部族の長たち、つまり父祖の家のかしらたちが献げ物を持ってきた。彼らは各部族の長で、登録の調査を取り仕切っていた人たちだ。
7:3 彼らは主の前に自分たちの献げ物を持ってきた。それは屋根つきの車六台と牛十二頭で、長二人につき車一台、一人につき牛一頭の割合だった。彼らはそれを幕屋の前に献げた。
7:4 すると主はモーセにこう言われた。
7:5 「彼らからそれを受け取りなさい。それは会見の幕屋の務めに使うためのものだ。それぞれの務めに応じて、レビ人に渡しなさい。」
7:6 そこでモーセは車と牛を受け取り、それをレビ人に渡した。
7:7 ゲルションの子孫には、その務めに応じて車二台と牛四頭を渡した。
7:8 メラリの子孫には、その務めに応じて車四台と牛八頭を渡した。これは祭司アロンの子イタマルの指揮のもとで行われた。
7:9 しかしケハトの子孫には何も渡さなかった。彼らの受け持つ聖なる物の務めは、肩にかついで運ぶことだったからだ。
7:10 祭壇に油が注がれた日、長たちは祭壇の奉献のための献げ物を持ってきて、祭壇の前にそれを献げた。
7:11 主はモーセに言われた。「祭壇の奉献のための献げ物は、一日に一人ずつ、長たちが順番に献げるようにしなさい。」
7:12 最初の日に献げ物をしたのは、ユダ族のアミナダブの子ナフションだった。
7:13 彼の献げ物は次のとおりだった。銀の皿一枚、その重さは百三十シェケル。銀の鉢一つ、七十シェケル。どちらも聖所で使う基準のシェケルで量ったものだ。皿と鉢には、どちらも穀物の献げ物として、油を混ぜた上等な小麦粉がいっぱいに満たされていた。
7:14 香を満たした十シェケルの金の皿一つ。
7:15 焼き尽くす献げ物として、若い雄牛一頭、雄羊一頭、一歳の雄の子羊一頭。
7:16 罪を償うための献げ物として、雄山羊一頭。
7:17 そして和解の献げ物として、雄牛二頭、雄羊五頭、雄山羊五頭、一歳の雄の子羊五頭。これがアミナダブの子ナフションの献げ物だった。
7:18 二日目に献げ物をしたのは、イサカル族の長、ツアルの子ネタンエルだった。
7:19 彼が持ってきた献げ物は次のとおりだった。銀の皿一枚、その重さは百三十シェケル。銀の鉢一つ、七十シェケル。どちらも聖所で使う基準のシェケルで量ったものだ。皿と鉢には、どちらも穀物の献げ物として、油を混ぜた上等な小麦粉がいっぱいに満たされていた。
7:20 香を満たした十シェケルの金の皿一つ。
7:21 焼き尽くす献げ物として、若い雄牛一頭、雄羊一頭、一歳の雄の子羊一頭。
7:22 罪を償うための献げ物として、雄山羊一頭。
7:23 そして和解の献げ物として、雄牛二頭、雄羊五頭、雄山羊五頭、一歳の雄の子羊五頭。これがツアルの子ネタンエルの献げ物だった。
7:24 三日目に献げ物をしたのは、ゼブルン族の長、ヘロンの子エリアブだった。
7:25 彼の献げ物は次のとおりだった。銀の皿一枚、その重さは百三十シェケル。銀の鉢一つ、七十シェケル。どちらも聖所で使う基準のシェケルで量ったものだ。皿と鉢には、どちらも穀物の献げ物として、油を混ぜた上等な小麦粉がいっぱいに満たされていた。
7:26 金の杯一つ、十シェケルで、香がいっぱいに入っていた。
7:27 焼き尽くす献げ物として、若い雄牛一頭、雄羊一頭、一歳の雄の子羊一頭。
7:28 罪を償うための献げ物として、雄山羊一頭。
7:29 そして和解の献げ物として、雄牛二頭、雄羊五頭、雄山羊五頭、一歳の雄の子羊五頭。これがヘロンの子エリアブの献げ物だった。
7:30 四日目に献げ物をしたのは、ルベン族の長、シェデウルの子エリツルだった。
7:31 彼の献げ物は次のとおりだった。銀の皿一枚、その重さは百三十シェケル。銀の鉢一つ、七十シェケル。どちらも聖所で使う基準のシェケルで量ったものだ。皿と鉢には、どちらも穀物の献げ物として、油を混ぜた上等な小麦粉がいっぱいに満たされていた。
7:32 金の杯一つ、十シェケルで、香がいっぱいに入っていた。
7:33 焼き尽くす献げ物として、若い雄牛一頭、雄羊一頭、一歳の雄の子羊一頭。
7:34 罪を償うための献げ物として、雄山羊一頭。
7:35 そして和解の献げ物として、雄牛二頭、雄羊五頭、雄山羊五頭、一歳の雄の子羊五頭。これがシェデウルの子エリツルの献げ物だった。
7:36 五日目に献げ物をしたのは、シメオン族の長、ツリシャダイの子シェルミエルだった。
7:37 彼の献げ物は次のとおりだった。銀の皿一枚、その重さは百三十シェケル。銀の鉢一つ、七十シェケル。どちらも聖所で使う基準のシェケルで量ったものだ。皿と鉢には、どちらも穀物の献げ物として、油を混ぜた上等な小麦粉がいっぱいに満たされていた。
7:38 金の皿一枚、十シェケル。これには香がいっぱいに満たされていた。
7:39 焼き尽くす献げ物として、若い雄牛一頭、雄羊一頭、一歳の雄の子羊一頭。
7:40 罪を償うための献げ物として、雄山羊一頭。
7:41 そして和解の献げ物として、雄牛二頭、雄羊五頭、雄山羊五頭、一歳の雄の子羊五頭。これがツリシャダイの子シェルミエルの献げ物だった。
7:42 六日目に献げ物をしたのは、ガド族の長、デウエルの子エルヤサフだった。
7:43 彼の献げ物は次のとおりだった。銀の皿一枚、その重さは百三十シェケル。銀の鉢一つ、七十シェケル。どちらも聖所で使う基準のシェケルで量ったものだ。皿と鉢には、どちらも穀物の献げ物として、油を混ぜた上等な小麦粉がいっぱいに満たされていた。
7:44 金の皿一枚、十シェケル。これには香がいっぱいに満たされていた。
7:45 焼き尽くす献げ物として、若い雄牛一頭、雄羊一頭、一歳の雄の子羊一頭。
7:46 罪を償うための献げ物として、雄山羊一頭。
7:47 そして和解の献げ物として、雄牛二頭、雄羊五頭、雄山羊五頭、一歳の雄の子羊五頭。これがデウエルの子エルヤサフの献げ物だった。
7:48 七日目に献げ物をしたのは、エフライム族の長、アミフドの子エリシャマだった。
7:49 彼の献げ物は次のとおりだった。銀の皿一枚、その重さは百三十シェケル。銀の鉢一つ、七十シェケル。どちらも聖所で使う基準のシェケルで量ったものだ。皿と鉢には、どちらも穀物の献げ物として、油を混ぜた上等な小麦粉がいっぱいに満たされていた。
7:50 金の皿一つ、十シェケルで、香がいっぱいに満たされていた。
7:51 焼き尽くす献げ物として、若い雄牛一頭、雄羊一頭、一歳の雄の子羊一頭。
7:52 罪を償うための献げ物として、雄山羊一頭。
7:53 そして和解の献げ物として、雄牛二頭、雄羊五頭、雄山羊五頭、一歳の雄の子羊五頭。これがアミフドの子エリシャマの献げ物だった。
7:54 八日目に献げ物をしたのは、マナセ族の長、ペダツルの子ガムリエルだった。
7:55 彼の献げ物は次のとおりだった。銀の皿一枚、その重さは百三十シェケル。銀の鉢一つ、七十シェケル。どちらも聖所で使う基準のシェケルで量ったものだ。皿と鉢には、どちらも穀物の献げ物として、油を混ぜた上等な小麦粉がいっぱいに満たされていた。
7:56 金の皿一つ、十シェケルで、香がいっぱいに満たされていた。
7:57 焼き尽くす献げ物として、若い雄牛一頭、雄羊一頭、一歳の雄の子羊一頭。
7:58 罪を償うための献げ物として、雄山羊一頭。
7:59 そして和解の献げ物として、雄牛二頭、雄羊五頭、雄山羊五頭、一歳の雄の子羊五頭。これがペダツルの子ガムリエルの献げ物だった。
7:60 九日目に献げ物をしたのは、ベニヤミン族の長、ギデオニの子アビダンだった。
7:61 彼の献げ物は次のとおりだった。銀の皿一枚、その重さは百三十シェケル。銀の鉢一つ、七十シェケル。どちらも聖所で使う基準のシェケルで量ったものだ。皿と鉢には、どちらも穀物の献げ物として、油を混ぜた上等な小麦粉がいっぱいに満たされていた。
7:62 金の皿一枚、十シェケルで、香がいっぱいに入っていた。
7:63 焼き尽くす献げ物として、若い雄牛一頭、雄羊一頭、一歳の雄の子羊一頭。
7:64 罪を償うための献げ物として、雄山羊一頭。
7:65 そして和解の献げ物として、雄牛二頭、雄羊五頭、雄山羊五頭、一歳の雄の子羊五頭。これがギデオニの子アビダンの献げ物だった。
7:66 十日目に献げ物をしたのは、ダン族の長、アミシャダイの子アヒエゼルだった。
7:67 彼の献げ物は次のとおりだった。銀の皿一枚、その重さは百三十シェケル。銀の鉢一つ、七十シェケル。どちらも聖所で使う基準のシェケルで量ったものだ。皿と鉢には、どちらも穀物の献げ物として、油を混ぜた上等な小麦粉がいっぱいに満たされていた。
7:68 金の皿一枚、十シェケルで、香がいっぱいに入っていた。
7:69 焼き尽くす献げ物として、若い雄牛一頭、雄羊一頭、一歳の雄の子羊一頭。
7:70 罪を償うための献げ物として、雄山羊一頭。
7:71 そして和解の献げ物として、雄牛二頭、雄羊五頭、雄山羊五頭、一歳の雄の子羊五頭。これがアミシャダイの子アヒエゼルの献げ物だった。
7:72 十一日目に献げ物をしたのは、アシェル族の長、オクランの子パグイエルだった。
7:73 彼の献げ物は次のとおりだった。銀の皿一枚、その重さは百三十シェケル。銀の鉢一つ、七十シェケル。どちらも聖所で使う基準のシェケルで量ったものだ。皿と鉢には、どちらも穀物の献げ物として、油を混ぜた上等な小麦粉がいっぱいに満たされていた。
7:74 金の皿一枚、十シェケルで、香がいっぱいに入っていた。
7:75 焼き尽くす献げ物として、若い雄牛一頭、雄羊一頭、一歳の雄の子羊一頭。
7:76 罪を償うための献げ物として、雄山羊一頭。
7:77 そして和解の献げ物として、雄牛二頭、雄羊五頭、雄山羊五頭、一歳の雄の子羊五頭。これがオクランの子パグイエルの献げ物だった。
7:78 十二日目に献げ物をしたのは、ナフタリ族の長、エナンの子アヒラだった。
7:79 彼の献げ物は次のとおりだった。銀の皿一枚、その重さは百三十シェケル。銀の鉢一つ、七十シェケル。どちらも聖所で使う基準のシェケルで量ったものだ。皿と鉢には、どちらも穀物の献げ物として、油を混ぜた上等な小麦粉がいっぱいに満たされていた。
7:80 金の皿一枚、十シェケルで、香がいっぱいに入っていた。
7:81 焼き尽くす献げ物として、若い雄牛一頭、雄羊一頭、一歳の雄の子羊一頭。
7:82 罪を償うための献げ物として、雄山羊一頭。
7:83 そして和解の献げ物として、雄牛二頭、雄羊五頭、雄山羊五頭、一歳の雄の子羊五頭。これがエナンの子アヒラの献げ物だった。
7:84 以上が、祭壇に油が注がれてささげられた日に、イスラエルの長たちが献げた祭壇奉献の献げ物だった。銀の皿十二枚、銀の鉢十二個、金の皿十二枚。
7:85 銀の皿は一枚が百三十シェケル、鉢は一つが七十シェケルで、聖所のシェケルで量ると、銀の器の重さは合わせて二千四百シェケルだった。
7:86 香料で満たした金の皿は十二枚。聖所のシェケルで量ると、一枚が十シェケルで、皿の金は合わせて百二十シェケルだった。
7:87 焼き尽くす献げ物のための家畜は、雄牛十二頭、雄羊十二頭、一歳の雄の子羊十二頭で、これに穀物の献げ物が添えられた。そして罪を償うための献げ物として、雄山羊十二頭。
7:88 和解の献げ物のための家畜は、雄牛二十四頭、雄羊六十頭、雄山羊六十頭、一歳の雄の子羊六十頭。以上が、油が注がれた後にささげられた祭壇奉献の献げ物だった。
7:89 モーセは主と語るために臨在の幕屋に入ると、掟の箱の上の覆いの上、二つのケルビムの間から、自分に語りかける声を聞いた。主はこうしてモーセに語られた。
8:1 主はモーセに言われた。
8:2 「アロンにこう伝えなさい。ともし火をともすときは、七つのともし火が燭台の前を照らすようにしなさい。」
8:3 アロンはそのとおりにした。主がモーセに命じられたとおり、燭台の前を照らすようにともし火をともした。
8:4 燭台は、台座から花の飾りまで、金を打ち出して作られていた。主がモーセに示された型のとおりに、燭台は作られたのである。
8:5 主はモーセに言われた。
8:6 「イスラエルの人々の中からレビ人を取り分け、彼らを清めなさい。」
8:7 彼らを清めるには、こうしなさい。まず、清めの水を彼らに振りかける。そして彼らは全身の毛をそり、衣服を洗って、身を清める。
8:8 次に、若い雄牛を一頭と、その穀物のささげ物として油を混ぜた上等の小麦粉を用意させる。さらにもう一頭、若い雄牛を、罪のためのささげ物として取りなさい。
8:9 レビ人を会見の幕屋の前に連れて来て、イスラエルの人々の全会衆を集めなさい。
8:10 レビ人を主の前に立たせ、イスラエルの人々は彼らの上に手を置く。
8:11 アロンはレビ人を、イスラエルの人々からささげる奉納物として、主の前で揺り動かしてささげる。こうしてレビ人は、主のために働く務めに就くのである。
8:12 レビ人は、雄牛の頭に手を置く。あなたは一頭を罪のためのささげ物とし、もう一頭を主への焼き尽くすささげ物として、レビ人のために罪の償いをしなさい。
8:13 そしてレビ人をアロンとその子らの前に立たせ、彼らを主への奉納物として揺り動かしてささげなさい。
8:14 こうしてあなたは、イスラエルの人々の中からレビ人を取り分ける。レビ人はわたしのものとなる。
8:15 その後、レビ人は会見の幕屋に入って働くことができる。あなたは彼らを清め、奉納物として揺り動かしてささげなさい。
8:16 彼らは、イスラエルの人々の中からわたしに全くささげられた者だからだ。イスラエルの人々のすべての初子、母の胎を初めて開く者すべての代わりに、わたしは彼らをわたしのものとした。
8:17 イスラエルの人々の初子は、人であれ家畜であれ、すべてわたしのものだからである。わたしがエジプトの地ですべての初子を打った日に、わたしは彼らを聖なるものとしてわたしのものとした。
8:18 それで、わたしはイスラエルの人々のすべての初子の代わりに、レビ人を取ったのである。
8:19 そして、わたしはレビ人をイスラエルの人々の中から選び、アロンとその子らへの贈り物として与えた。彼らが会見の幕屋でイスラエルの人々に代わって務めを果たし、イスラエルの人々のために罪を償うためである。こうすれば、イスラエルの人々が聖所に近づくときに、彼らを打つ災いが起こることはない。」
8:20 モーセとアロン、そしてイスラエルの人々の全会衆は、主がレビ人について命じたとおりすべてを行った。主がモーセに命じたとおりに、イスラエルの人々はレビ人にそうした。
8:21 レビ人は身を清め、自分の衣服を洗った。アロンは彼らを主の前に揺り動かしてささげ、彼らのために罪を償い、彼らを清めた。
8:22 その後、レビ人はアロンとその子らのもとで、会見の幕屋で自分たちの務めを果たすために入って行った。主がレビ人についてモーセに命じたとおりに、人々は彼らにそうした。
8:23 主はモーセに言われた。
8:24 「これがレビ人についての定めである。二十五歳以上の者は、会見の幕屋の務めに就いて働きなさい。
8:25 しかし五十歳になったら、その務めから退き、もう働かなくてよい。
8:26 会見の幕屋で兄弟たちを助け、任務を守ることはできるが、務めそのものは行わない。レビ人の任務については、このようにしなさい。」
9:1 主はシナイの荒れ野で、モーセにこう告げた。イスラエルの人々がエジプトの地を出て二年目の、最初の月のことだった。
9:2 「イスラエルの人々は、決められた時に過越の祭りを行いなさい。
9:3 この月の十四日の夕暮れ、その決められた時にそれを行う。過越に関するすべての決まりとおきてに従って行いなさい。」
9:4 そこでモーセはイスラエルの人々に、過越の祭りを行うように告げた。
9:5 人々は最初の月の十四日の夕暮れに、シナイの荒れ野で過越の祭りを行った。主がモーセに命じたとおりに、イスラエルの人々はそのとおりに行った。
9:6 ところが、人の死体に触れて汚れていたため、その日に過越の祭りを行えない人たちがいた。彼らはその日、モーセとアロンの前に進み出て、
9:7 こう言った。「わたしたちは人の死体に触れて汚れています。でも、どうしてわたしたちだけが締め出されて、決められた時にイスラエルの人々と一緒に主への供え物をささげられないのですか。」
9:8 モーセは彼らに言った。「待ちなさい。主があなたたちについて何と命じるか、聞いてみよう。」
9:9 主はモーセに告げた。
9:10 「イスラエルの人々にこう伝えなさい。あなたたちの中に、あるいはその子孫の中に、死体に触れて汚れている者や、遠くへ旅に出ている者がいても、その人は主のために過越の祭りを行うことができる。
9:11 二番目の月の十四日の夕暮れに、それを行いなさい。種を入れないパンと苦菜を添えて、それを食べる。
9:12 それを朝まで残してはならない。その骨を折ってもならない。過越の祭りのすべての決まりに従って、それを行いなさい。」
9:13 でも、汚れてもいないし旅に出てもいないのに、過越の祭りを行わない者がいれば、その人は民の中から断ち切られる。定められた時に主への供え物をささげなかったからだ。その人は自分の罪の責任を負う。
9:14 あなたたちのところに寄留している外国人が、主のために過越の祭りを行いたいときは、過越の祭りの決まりとしきたりに従って行いなさい。あなたたちにも、寄留する外国人にも、その地で生まれた者にも、同じ一つの決まりが当てはまる。
9:15 幕屋を建てた日、雲が幕屋、つまり証の天幕をおおった。そして夕方になると、雲は朝まで幕屋の上で火のように見えた。
9:16 いつもこのようだった。昼は雲が幕屋をおおい、夜は火のように見えた。
9:17 雲が天幕の上から上がると、イスラエルの人々は旅立った。そして雲がとどまる場所に、彼らは宿営した。
9:18 イスラエルの人々は主の命令によって旅立ち、主の命令によって宿営した。雲が幕屋の上にとどまっている間は、ずっと宿営していた。
9:19 雲が幕屋の上に何日も長くとどまるときも、イスラエルの人々は主の命令を守り、旅立たなかった。
9:20 雲が幕屋の上にほんの数日しかとどまらないこともあった。そのときも、彼らは主の命令によって宿営し、主の命令によって旅立った。
9:21 雲が夕方から朝までとどまり、朝になって上がると、彼らは旅立った。昼でも夜でも、雲が上がれば旅立った。
9:22 二日でも、一か月でも、それ以上の長い間でも、雲が幕屋の上にとどまり続けている間は、イスラエルの人々は宿営して旅立たなかった。そして雲が上がると、旅立った。
9:23 彼らは主の命令によって宿営し、主の命令によって旅立った。モーセを通して与えられた主の命令に従って、彼らは主の務めを守ったのだった。
10:1 主はモーセにこう言った。
10:2 銀のラッパを二本作りなさい。打ち出して作るように。それを使って人々を呼び集めたり、宿営を出発させたりする。
10:3 二本とも吹き鳴らすと、民全員が会見の幕屋の入り口に、あなたのもとへ集まって来る。
10:4 一本だけ吹き鳴らすと、イスラエルの部族の長である指導者たちが、あなたのもとに集まって来る。
10:5 警報の吹き方をすると、東側に宿営している人たちが出発する。
10:6 二度目に警報の吹き方をすると、南側に宿営している人たちが出発する。出発の合図には、この警報の吹き方をする。
10:7 でも、みんなを集めるときは、ふつうに吹き鳴らし、警報の吹き方はしない。
10:8 ラッパを吹くのは、祭司であるアロンの子たちだ。これはあなたたちが代々ずっと守る、変わらない決まりとなる。
10:9 自分たちの国で、攻めて来る敵と戦うことになったら、ラッパで警報を吹き鳴らしなさい。そうすれば、あなたたちの神である主が心に留めてくださり、あなたたちは敵から救われる。
10:10 また、喜びの日や祭りの日、月の初めの日には、焼き尽くすいけにえや和解のいけにえをささげるときに、ラッパを吹き鳴らしなさい。それはあなたたちの神の前で、あなたたちを覚えるしるしとなる。わたしはあなたたちの神、主である。
10:11 第二年の第二の月の二十日、あかしの幕屋の上から雲が上った。
10:12 それでイスラエルの人々は、シナイの荒れ野を出発し、旅を続けた。そして雲はパランの荒れ野にとどまった。
10:13 こうして彼らは、モーセを通して示された主の命令に従って、初めて旅立った。
10:14 まず、ユダの宿営の旗のもとにいる部隊が、隊列を組んで進み出した。その部隊を率いていたのは、アミナダブの子ナフション。
10:15 イッサカル族の部隊を率いていたのは、ツアルの子ネタンエル。
10:16 ゼブルン族の部隊を率いていたのは、ヘロンの子エリアブ。
10:17 それから幕屋が取りはずされ、それを運ぶゲルションの一族とメラリの一族が進み出した。
10:18 次に、ルベンの宿営の旗のもとにいる部隊が、隊列を組んで進み出した。その部隊を率いていたのは、シェデウルの子エリツル。
10:19 シメオン族の部隊を率いていたのは、ツリシャダイの子シェルミエル。
10:20 ガド族の部隊を率いていたのは、デウエルの子エルヤサフ。
10:21 続いて、聖なる物を運ぶケハトの一族が進み出した。彼らが着くまでに、ほかの者たちは幕屋を建て終えていた。
10:22 次に、エフライムの宿営の旗のもとにいる部隊が、隊列を組んで進み出した。その部隊を率いていたのは、アミフドの子エリシャマ。
10:23 マナセ族の部隊を率いていたのは、ペダツルの子ガムリエル。
10:24 ベニヤミン族の部隊を率いていたのは、ギデオニの子アビダン。
10:25 最後に、ダン族の宿営の旗のもとにいる部隊が、隊列を組んで進み出した。この部隊は、すべての宿営のしんがりを務めた。その部隊を率いていたのは、アミシャダイの子アヒエゼル。
10:26 アシェル族の部隊を率いていたのは、オクランの子パグイエル。
10:27 ナフタリ族の部隊を率いていたのは、エナンの子アヒラ。
10:28 これがイスラエルの人々の進む順序で、部隊ごとにこうして出発した。
10:29 モーセは、義理の父の一族であるミディアン人レウエルの子ホバブにこう言った。「わたしたちは、主が『あなたたちに与える』と言われた場所へ向かっています。いっしょに来てください。よくしてあげます。主がイスラエルに良いことを約束してくださっているのですから。」
10:30 しかしホバブは答えた。「いや、行きません。わたしは自分の国、自分の生まれ故郷に帰ります。」
10:31 するとモーセは言った。「どうか、わたしたちを離れないでください。あなたは、荒れ野のどこに宿営すればいいかを知っています。わたしたちの目になってください。
10:32 もしいっしょに来てくださるなら、主がわたしたちにしてくださる良いことを、そのままあなたにもしてあげます。」
10:33 こうして彼らは、主の山を出発し、三日の道のりを進んだ。主の契約の箱は、彼らの休む場所を探すため、三日の道のりの間、先頭に立って進んだ。
10:34 彼らが宿営を出て進むとき、昼のあいだ、主の雲が彼らの上にあった。
10:35 契約の箱が出発するとき、モーセはこう言った。「主よ、立ち上がってください。あなたの敵は散らされ、あなたを憎む者たちは、あなたの前から逃げ去りますように。」
10:36 そして箱がとどまるとき、モーセはこう言った。「主よ、帰ってきてください。イスラエルの数えきれない民のもとへ。」
11:1 民は、つらいと言って不満をこぼした。それは主の耳にまで届いた。主はそれを聞いて怒りを燃やし、主の火が民の間に燃え上がって、野営地の端を焼き尽くした。
11:2 民はモーセに助けを求めて叫んだ。モーセが主に祈ると、火は消えた。
11:3 その場所はタブエラと呼ばれた。主の火が民の間で燃え上がったからだ。
11:4 民の中に混じっていた寄せ集めの人々が、むやみに食べ物を欲しがった。イスラエルの人々もまた、つられて泣き出して言った。「だれか肉を食べさせてくれないか。
11:5 エジプトでただで食べていた魚が思い出される。きゅうり、すいか、ねぎ、たまねぎ、にんにく。
11:6 でも今は、気力もすっかり萎えてしまった。目に入るのはこのマナばかりで、ほかには何もない。」
11:7 マナはコエンドロの種のようなもので、見た目は樹脂の粒のようだった。
11:8 民は歩き回ってそれを集め、臼でひいたり、鉢でついたりし、鍋で煮て、平たいパン菓子を作った。その味は、油で作ったお菓子のようだった。
11:9 夜、野営地に露が降りると、それと一緒にマナも降ってきた。
11:10 モーセは、民が家族ごとに、それぞれ自分の天幕の入り口で泣いているのを聞いた。主の怒りは激しく燃え上がり、モーセにとってもそれはつらいことだった。
11:11 モーセは主に言った。「どうして、あなたのしもべにこんなつらい思いをさせるのですか。なぜわたしはあなたの心にかなわず、この民全体の重荷を負わされるのですか。
11:12 この民全体を、わたしが身ごもったのですか。わたしが産んだのですか。それなのにあなたは、乳飲み子を抱く乳母のように、この民を胸に抱いて、あなたが先祖たちに誓った土地まで連れて行けと言われる。
11:13 この民全体に与える肉を、わたしはどこから手に入れればいいのですか。彼らはわたしに泣きついて、『肉を食べさせてくれ』と言うのです。
11:14 わたしひとりでは、この民全体を負いきれません。わたしには重すぎます。
11:15 もしこんなふうにわたしを扱われるのなら、どうかいっそ殺してください。あなたの心にかなうなら、そうしてください。もう、わたしがこんなみじめな目にあうのを見たくないのです。」
11:16 すると主はモーセに言われた。「イスラエルの長老たちの中から、民の長老、まとめ役だと、あなたが認める者を七十人集めなさい。彼らを会見の天幕に連れて来て、あなたと一緒にそこに立たせなさい。
11:17 わたしはそこに降りて行き、あなたと語る。そして、あなたに置かれている霊の一部を取って、彼らにも置く。彼らはあなたと一緒にこの民の重荷を負い、あなたひとりで負わなくてもよくなる。
11:18 民にはこう言いなさい。『明日のために身を清めなさい。あなたがたは肉を食べることになる。あなたがたは主の耳に届くほど泣いて、こう言った。だれかおれたちに肉を食べさせてくれないか、エジプトでは良い暮らしだったのに、と。だから主はあなたがたに肉を与える。あなたがたはそれを食べることになる。
11:19 食べるのは一日でも、二日でもない。五日でも、十日でも、二十日でもない。
11:20 まる一か月、鼻から出てきて、うんざりするまで食べることになる。あなたがたが、自分たちのただ中におられる主を拒み、その前で泣いて、なぜ自分たちはエジプトを出て来たのかと言ったからだ。』」
11:21 モーセは言った。「わたしが今いっしょにいるこの民は、歩ける男だけで六十万人もいます。それなのにあなたは、彼らに肉を与えて、まる一か月食べさせると言われます。
11:22 羊や牛の群れを彼らのためにほふっても、足りるでしょうか。海の魚を全部集めても、彼らには足りるでしょうか。」
11:23 主はモーセに言われた。「主の手が短くて届かないとでも思うのか。わたしの言葉がそのとおりになるかどうか、今にあなたは見ることになる。」
11:24 モーセは出て行き、主の言葉を民に伝えた。そして、民の長老の中から七十人を集め、天幕の周りに立たせた。
11:25 すると主は雲の中に降りて来て、モーセに語りかけた。そして、モーセの上にある霊の一部を取って、七十人の長老たちに授けた。霊が彼らの上にとどまると、彼らは預言を語り始めた。ただし、それはこのとき限りだった。
11:26 ところが、二人の男が宿営に残っていた。一人はエルダド、もう一人はメダドという名だった。彼らも名簿に記されていたが、天幕には出て行かなかった。それでも霊が彼らの上にとどまり、二人は宿営の中で預言を語り始めた。
11:27 一人の若者が走って行き、モーセに知らせた。「エルダドとメダドが、宿営の中で預言しています。」
11:28 すると、若いころからモーセに仕えてきたヌンの子ヨシュアが言った。「わが主モーセよ、二人をやめさせてください。」
11:29 しかしモーセは言った。「あなたはわたしのことでねたんでいるのか。主の民が皆、預言者になればいい。主がその霊をすべての人に授けてくださればいいのに。」
11:30 こうしてモーセは、イスラエルの長老たちとともに宿営に戻った。
11:31 さて、主のもとから風が起こり、海の方からうずらを運んで来た。そして宿営の周りに、こちらに一日の道のり、あちらに一日の道のりほどの広さで、地面の上およそ二キュビトの高さに降り積もらせた。
11:32 民はその日一日中、そして夜通し、さらに翌日も一日中立ち働いて、うずらを集めた。いちばん少なく集めた者でも十ホメルは集めた。彼らはそれを宿営の周りいっぱいに広げて干した。
11:33 しかし、その肉がまだ歯の間にあって、かみ終わらないうちに、主の怒りが民に向かって燃え上がった。そして主は、非常に激しい災いで民を打った。
11:34 そこでその場所は、キブロト・ハタアワ（欲望の墓）と名づけられた。欲望にかられた民が、そこに葬られたからである。
11:35 民はキブロト・ハタアワを出発してハツェロトに向かい、ハツェロトにとどまった。
12:1 ミリアムとアロンが、モーセのことを悪く言った。モーセがクシュ人の女性を妻にしていたからだ。モーセはクシュ人の女性と結婚していた。
12:2 二人は言った。「主はモーセを通してだけ語られたのだろうか。わたしたちを通しても語られたではないか。」主はこれを聞いていた。
12:3 モーセという人は、とても謙虚だった。地上のだれよりも謙虚な人だった。
12:4 主は突然、モーセとアロンとミリアムに言われた。「あなたたち三人、会見の天幕に出て来なさい。」三人は出て行った。
12:5 すると主は雲の柱の中を下って来て、天幕の入り口に立ち、アロンとミリアムを呼ばれた。二人が進み出ると、
12:6 主は言われた。「わたしの言葉を聞きなさい。あなたたちの間に預言者がいるなら、主であるわたしは幻の中でその者に自分を知らせ、夢の中でその者に語る。
12:7 だが、わたしのしもべモーセはそうではない。彼はわたしの家のすべてにおいて信頼できる者だ。
12:8 わたしは彼とは口と口で、はっきりと語る。なぞめいた言い方はしない。彼は主であるわたしの姿を見るのだ。それなのに、なぜあなたたちは、わたしのしもべモーセを悪く言うのを恐れなかったのか。」
12:9 主は二人に対して激しく怒り、去って行かれた。
12:10 雲が天幕の上から離れると、見よ、ミリアムは重い皮膚病にかかり、肌が雪のように白くなっていた。アロンがミリアムのほうを振り向くと、彼女は病にかかっていた。
12:11 アロンはモーセに言った。「わが主よ、お願いです。わたしたちが愚かにも犯してしまったこの罪を、わたしたちに負わせないでください。
12:12 どうか、彼女を、母の胎から出たときに体が半分腐り落ちた死産の子のようにしないでください。」
12:13 モーセは主に叫んで言った。「神よ、どうか、どうか彼女を癒してください。」
12:14 すると主はモーセに言われた。「もし彼女の父親が彼女の顔に唾を吐きかけたなら、彼女は七日間、恥じ入るのではないか。だから彼女を七日間、宿営の外に締め出しなさい。その後、また中に戻せばよい。」
12:15 こうしてミリアムは七日間、宿営の外に締め出された。民は、ミリアムが戻されるまで旅立たずに待った。
12:16 その後、民はハツェロトを出発し、パランの荒れ野に宿営した。
13:1 主はモーセに言われた。
13:2 「人を送って、わたしがイスラエルの人々に与えようとしているカナンの地を偵察させなさい。父祖の部族ごとに一人ずつ、それぞれの部族の長を送りなさい。」
13:3 モーセは主の命令のとおり、彼らをパランの荒れ野から送り出した。彼らはみな、イスラエルの人々の長である者たちだった。
13:4 彼らの名前は次のとおりである。ルベン族からはザクルの子シャムア。
13:5 シメオン族からはホリの子シャファト。
13:6 ユダ族からはエフネの子カレブ。
13:7 イッサカル族からはヨセフの子イガル。
13:8 エフライム族からはヌンの子ホシェア。
13:9 ベニヤミン族からはラフの子パルティ。
13:10 ゼブルン族からはソディの子ガディエル。
13:11 ヨセフ族、つまりマナセ族からはスシの子ガディ。
13:12 ダン族からはゲマリの子アミエル。
13:13 アシェル族からはミカエルの子セトル。
13:14 ナフタリ族からはウォフシの子ナフビ。
13:15 ガド族からはマキの子ゲウエル。
13:16 以上が、モーセがその地を偵察させるために送った人たちの名前である。モーセはヌンの子ホシェアをヨシュアと呼んだ。
13:17 モーセは彼らをカナンの地の偵察に送り出した。そして彼らにこう言った。「ネゲブの方へ上って行き、さらに山地へ登りなさい。
13:18 そして、その地がどんな所かをよく見てきなさい。そこに住む人々は強いのか弱いのか、少ないのか多いのか。
13:19 それから、住んでいる土地はどうか。良い土地なのか、悪い土地なのか。人々が住んでいる町はどんな様子か。ふつうの宿営地なのか、それとも城壁で守られた町なのか。
13:20 土地は肥えているのか、やせているのか。木は生えているのか、いないのか。しっかり見てきなさい。そして、その土地の実を取って持ち帰りなさい。」ちょうど、ぶどうが初めて実る季節だった。
13:21 そこで彼らは上って行き、ツィンの荒れ野からレホブまで、ハマトの入り口のあたりまで、その地を偵察した。
13:22 彼らはネゲブを通ってヘブロンまで来た。そこにはアナク人の子孫であるアヒマン、シェシャイ、タルマイがいた。ヘブロンは、エジプトのツォアンよりも七年前に建てられた町である。
13:23 彼らはエシュコルの谷まで来た。そこで一房のぶどうがついた枝を切り取り、それを二人で棒にかついで運んだ。ざくろやいちじくも持ち帰った。
13:24 イスラエルの人たちがそこでぶどうの房を切り取ったので、その場所はエシュコルの谷と呼ばれた。
13:25 四十日たって、彼らはその地の偵察から帰ってきた。
13:26 そして、パランの荒れ野にあるカデシュへ行き、モーセとアロン、そしてイスラエルの人たち全員のところに戻ってきた。彼らはモーセたちと集まった人たち全員に報告し、その地の実を見せた。
13:27 彼らはモーセにこう話した。「わたしたちは、あなたが送り出してくれた土地へ行ってきました。あそこは本当に、乳と蜜が流れる豊かな土地です。これがそこで採れた実です。
13:28 でも、その土地に住む人々は強く、町はとても大きくて城壁で守られています。しかも、そこでアナク人の子孫まで見ました。
13:29 ネゲブの地にはアマレク人が住み、山地にはヘト人、エブス人、アモリ人が住んでいます。そして海沿いとヨルダン川のほとりにはカナン人が住んでいます。」
13:30 すると、カレブはモーセの前で人々を静めて言った。「すぐに上って行って、その土地を自分たちのものにしよう。わたしたちなら、きっとできる。」
13:31 でも、いっしょに上って行った人たちは言った。「あの民のところへ攻め上るなんて無理だ。相手はわたしたちよりずっと強い。」
13:32 そして彼らは、偵察してきた土地について、悪いうわさをイスラエルの人々に流し始めた。「わたしたちが通り抜けて調べてきたあの土地は、住む者を食い尽くす土地だ。そこで見た人たちは、みんな体の大きな者ばかりだった。
13:33 しかもそこでネフィリムを見た。アナク人はそのネフィリムの子孫なのだ。わたしたちは自分でもバッタのように小さく思えたし、彼らの目にもきっとそう映っていた。」
14:1 すると、人々はみんな声をあげて、その夜、泣きさけんだ。
14:2 イスラエルの人々はみんな、モーセとアロンに不満をぶつけた。人々はみんな二人にこう言った。「いっそエジプトの地で死んでいればよかった。それか、この荒れ野で死んでいたらよかったのに。
14:3 どうして主は、わたしたちをあの土地へ連れて行こうとするのか。剣で殺されるためじゃないか。妻や子どもは奪われてしまう。エジプトに帰ったほうが、わたしたちにはずっといいのではないか。」
14:4 そして、たがいに言い合った。「リーダーを立てて、エジプトに帰ろう。」
14:5 モーセとアロンは、集まったイスラエルの人々みんなの前で、地にひれ伏した。
14:6 その土地を偵察してきた者のうち、ヌンの子ヨシュアとエフンネの子カレブは、くやしさのあまり自分の服を引き裂いた。
14:7 そして、集まったイスラエルの人々みんなに、こう言った。「わたしたちが通って偵察してきたあの土地は、本当にすばらしい土地だ。
14:8 もし主がわたしたちを喜んでくださるなら、主はわたしたちをあの土地に導き入れ、それをわたしたちにくださる。乳と蜜の流れる土地だ。
14:9 ただ、主に逆らってはいけない。あの土地の人々を恐れることもない。彼らはわたしたちの餌食にすぎない。彼らを守るものは、もう離れてしまった。でも、主はわたしたちとともにいてくださる。だから、彼らを恐れることはない。」
14:10 ところが、集まった人々はみんな、二人を石で打ち殺そうと言い出した。そのとき、主の栄光が会見の幕屋に現れ、イスラエルの人々みんながそれを見た。
14:11 主はモーセに言われた。「この民は、いつまでわたしを侮るのか。わたしが彼らの間であれほど多くのしるしを行ったのに、いつまでわたしを信じないのか。
14:12 わたしは疫病で彼らを打ち、滅ぼしてしまう。そして、あなたを彼らよりも大きく強い国民にしよう。」
14:13 モーセは主に言った。「でも、そんなことをすれば、エジプトの人たちがそれを聞きます。あなたはご自分の力で、この民を彼らの間から導き出されたのです。
14:14 そして、彼らはこの土地に住む人々にそれを話すでしょう。人々はもう聞いています。主よ、あなたがこの民の間におられること、主よ、あなたが顔と顔を合わせるように現れてくださること、あなたの雲が彼らの上にとどまり、昼は雲の柱、夜は火の柱となって、あなたが彼らの先頭を進んでおられることを。
14:15 もし、あなたがこの民を一人残らず殺してしまえば、あなたの評判を聞いた国々はこう言うでしょう。
14:16 『主は、彼らに誓ったあの土地に、この民を導き入れることができなかった。それで荒れ野で彼らを殺したのだ』と。
14:17 だから今、主よ、あなたの力を大きく示してください。あなたはこう言われたではありませんか。
14:18 『主は怒るのに遅く、慈しみに満ち、悪も背きも赦す。しかし、罪ある者を決してそのままにはせず、父の罪を子や孫、三代、四代にまで報いる』と。」
14:19 どうか、あなたの大きな慈しみのとおりに、この民の罪を赦してください。エジプトを出てから今まで、あなたがずっとこの民を赦してこられたように。」
14:20 すると主は言われた。「あなたの言葉のとおり、わたしは赦そう。
14:21 だが、わたしは生きている。これは確かだ。そして主の栄光は、この地全体に満ちる。
14:22 エジプトとこの荒れ野でわたしが行った栄光としるしを見ておきながら、この十回もわたしを試し、わたしの声に聞き従わなかった者たち——
14:23 その誰一人、わたしが彼らの先祖に誓ったあの地を見ることはない。わたしを侮った者は、一人もそこを見ない。
14:24 しかし、わたしの僕カレブは違う。彼には別の霊があり、心からわたしに従った。だからわたしは、彼が行ったあの地に彼を導き入れる。その土地は、彼の子孫のものになる。
14:25 ——アマレク人とカナン人が谷に住んでいる——明日、向きを変え、葦の海へ向かう道を通って、荒れ野へ出発しなさい。」
14:26 主はモーセとアロンに言われた。
14:27 「この悪い民は、いつまでわたしに向かって不平を言い続けるのか。イスラエルの人々がわたしに向かって言う不平を、わたしは聞いた。
14:28 彼らにこう言いなさい。『わたしは生きている——主の言葉である——。あなたたちがわたしの耳に語ったとおりに、わたしはあなたたちにする。
14:29 この荒れ野に、あなたたちの死体は倒れる。あなたたちのうち、二十歳以上で登録された者は皆、わたしに不平を言った者として、そうなる。
14:30 あなたたちは、わたしが手を上げて誓い、住まわせると約束したあの地に、決して入れない。ただ、エフネの子カレブと、ヌンの子ヨシュアだけは別だ。
14:31 あなたたちが『敵の餌食になる』と言った子供たちを、わたしは導き入れる。彼らは、あなたたちが見下したあの地を知るようになる。
14:32 だが、あなたたち自身は、この荒れ野に死体となって倒れる。
14:33 あなたたちの子供たちは、四十年の間、荒れ野で羊を飼う者となってさまよう。そしてあなたたちの死体が荒れ野で朽ち果てるまで、あなたたちの不忠の報いを負い続ける。
14:34 あなたたちがあの地を探った日数、すなわち四十日、その一日を一年として、あなたたちは四十年の間、自分の罪を負う。こうして、わたしに背を向けられるとはどういうことかを、あなたたちは思い知る。
14:35 わたしは主である。わたしは言った。わたしに逆らって集まったこの悪い民全体に、わたしは必ずこれを行う。彼らはこの荒れ野で滅び尽き、そこで死ぬ。」
14:36 さて、モーセがあの地を探らせるために送り出した者たち、戻ってきてその地について悪い噂を広め、民全体をモーセに不平を言わせるよう仕向けた者たち——
14:37 その地について悪い噂を広めたこの者たちは、主の前で疫病にかかって死んだ。
14:38 だが、あの地を探りに行った者たちの中で、ヌンの子ヨシュアとエフネの子カレブだけは生き残った。
14:39 モーセがこれらの言葉をイスラエルの人々みんなに告げると、民はひどく嘆き悲しんだ。
14:40 翌朝早く、彼らは起きて山の頂へ登ろうとして言った。「さあ、わたしたちはここにいる。主が約束された場所へ登って行こう。わたしたちは罪を犯したのだから。」
14:41 モーセは言った。「どうして今、あなたたちは主の命令に背くのか。そんなことをしてもうまくいかない。
14:42 登って行ってはならない。主があなたたちの中におられないからだ。行けば、敵に打ち負かされてしまう。
14:43 アマレク人とカナン人が、あなたたちの前に待ち構えているのだから。あなたたちは剣に倒れることになる。あなたたちが主に背を向けたので、主はもう共にいてくださらないのだ。」
14:44 それでも彼らは、無理をして山の頂へ登って行こうとした。しかし、主の契約の箱もモーセも、宿営の中から動かなかった。
14:45 すると、その山に住んでいたアマレク人とカナン人が下って来て、彼らを打ち破り、ホルマまで追い散らした。
15:1 主はモーセにこう言われた。
15:2 「イスラエルの人々にこう伝えなさい。あなたたちが、わたしが与える住まいの地に入ったとき、
15:3 主に火による献げ物をささげることがあるだろう。それは牛や羊の中から選んで、焼き尽くす献げ物やそのほかのいけにえとしてささげるものだ。特別な誓いを果たすため、あるいは進んでささげるため、あるいは祭りのときにささげ、主に喜ばれる香りとする。
15:4 そのとき、献げ物をささげる者は、主に穀物の献げ物もささげなさい。上等の小麦粉十分の一エファに、油四分の一ヒンを混ぜたものだ。
15:5 また、注ぎの献げ物として、ぶどう酒四分の一ヒンを用意しなさい。子羊一匹ごとに、焼き尽くす献げ物やそのほかのいけにえに添えてささげる。
15:6 雄羊の場合は、穀物の献げ物として、上等の小麦粉十分の二エファに、油三分の一ヒンを混ぜたものを用意しなさい。
15:7 また、注ぎの献げ物として、ぶどう酒三分の一ヒンをささげなさい。これは主が喜ばれる香りとなる。
15:8 焼き尽くす献げ物やそのほかのいけにえとして雄牛をささげるとき、それが特別な誓いを果たすためであれ、主への和解のいけにえであれ、
15:9 その雄牛には、穀物の献げ物として、上等の小麦粉十分の三エファに、油二分の一ヒンを混ぜたものを添えてささげなさい。
15:10 また、注ぎの献げ物として、ぶどう酒二分の一ヒンをささげなさい。これは火によってささげる、主が喜ばれる香りの献げ物だ。
15:11 雄牛一頭ごと、雄羊一匹ごと、あるいは子羊や子やぎ一匹ごとに、このようにささげなさい。
15:12 あなたがたがささげる数に応じて、その数だけ、一匹ごとにこのようにささげなさい。
15:13 この国に生まれた者はみな、火によってささげる、主が喜ばれる香りの献げ物をささげるとき、このようにしなさい。
15:14 また、あなたがたのもとに一時的に身を寄せる寄留者や、代々あなたがたの中に住む者が、火によってささげる、主が喜ばれる香りの献げ物をささげるときも、あなたがたと同じようにしなさい。
15:15 この集まりには、あなたがたにも、共に住む寄留者にも、同じ定めが一つある。これは代々続く、永遠の定めだ。主の前では、あなたがたも寄留者も同じである。
15:16 あなたがたにも、あなたがたと共に住む寄留者にも、同じ教えと同じ決まりが一つある。」
15:17 主はモーセに言われた。
15:18 「イスラエルの人々に伝えなさい。彼らにこう言うのだ。あなたがたは、わたしが導き入れようとしている地に入る。そのとき、
15:19 その地の食物を食べるようになったら、その一部を取り分けて、主への供え物としてささげなさい。
15:20 最初にこねた粉で作ったパンを、供え物としてささげるのだ。麦を打ち場から取り分けてささげるのと同じように、それをささげなさい。
15:21 あなたがたは代々、最初にこねた粉から、主への供え物をささげなければならない。
15:22 あなたがたが気づかないうちに過ちを犯し、主がモーセに告げられたこれらの命令をすべて守れなかったとき、
15:23 つまり、主がモーセを通してあなたがたに命じられたすべてのこと、主が命じられた日から後々の代まで守るべきことについてだが、そのときはこうしなさい。
15:24 もし民全体が気づかないうちに過ちが犯されたのなら、共同体みんなで若い雄牛を一頭、焼き尽くすささげ物としてささげなさい。それは主に喜ばれる香りとなる。それに、定めどおりの穀物のささげ物と注ぎのささげ物を添え、さらに雄やぎを一頭、罪を償うささげ物としてささげなさい。
15:25 祭司はイスラエルの人々の共同体全体のために、罪の償いをする。そうすれば彼らは赦される。それは気づかずに犯した過ちであり、彼らはそのために、主へのささげ物を火で焼くささげ物として持って来て、罪を償うささげ物を主の前にささげたからだ。
15:26 そうすれば、イスラエルの人々の共同体全体も、彼らの間に住む寄留者も赦される。民全体が気づかないうちに過ちを犯したのだから。
15:27 もし一人の人が気づかずに罪を犯したのなら、その人は生まれて一年の雌やぎを一頭、罪を償うささげ物として持って来なさい。
15:28 祭司は、気づかずに罪を犯したその人のために、主の前で罪の償いをする。こうしてその人のために償いをすれば、その人は赦される。
15:29 イスラエルの人々のうちの生まれながらの者にも、彼らの間に住む寄留者にも、同じ一つの教えがある。気づかずに過ちを犯した者は、みなこれに従うのだ。
15:30 しかし、生まれながらの者であれ寄留者であれ、わざと逆らって過ちを犯す者は、主を冒とくする者だ。その人は民の中から断ち切られる。
15:31 その人は主の言葉を軽んじ、その命令を破ったからだ。その人は必ず断ち切られる。その罪の責任は、自分自身が負うのだ。」
15:32 イスラエルの人々が荒れ野にいたとき、安息日に薪を集めている男を見つけた。
15:33 薪を集めていたその男を見つけた人々は、彼をモーセとアロン、そして共同体全体のところに連れて行った。
15:34 彼をどうすればよいのか、まだはっきり示されていなかったので、人々は彼を見張りのもとに留め置いた。
15:35 すると主はモーセに言った。「その男は必ず死刑にしなければならない。共同体全体で、宿営の外に連れ出し、石で打ち殺すのだ。」
15:36 そこで共同体全体は彼を宿営の外に連れ出し、石で打ち殺した。主がモーセに命じたとおりだった。
15:37 主はモーセに言った。
15:38 「イスラエルの人々に伝えなさい。あなたたちは代々、衣服のすそに房を作り、その房に青いひもを付けなさい。
15:39 それはあなたたちのための房となる。それを見るたびに、主のすべての命令を思い出し、それを守るためだ。そうすれば、自分の心や目の欲に引きずられ、それに従って身を汚すことがなくなる。
15:40 こうしてあなたたちは、わたしのすべての命令を思い出して守り、あなたたちの神のために聖なる者となる。
15:41 わたしはあなたたちの神、主である。わたしは、あなたたちの神となるために、あなたたちをエジプトの地から導き出した。わたしはあなたたちの神、主である。」
16:1 レビのひ孫でケハトの孫、イツハルの子であるコラは、行動を起こした。ルベンの子孫であるエリアブの子ダタンとアビラム、そしてペレテの子オンも、いっしょだった。
16:2 彼らはモーセに逆らって立ち上がった。イスラエルの人々のうち二百五十人も加わった。みんな共同体から選ばれた指導者で、名の知れた者たちだった。
16:3 彼らはモーセとアロンのところに集まって、こう言った。「あなたたちは、やりすぎだ。共同体はみんな聖なる者で、その中には主がおられる。それなのに、どうして自分たちを主の集まりの上に置こうとするのか。」
16:4 これを聞いたモーセは、地にひれ伏した。
16:5 そしてコラとその仲間みんなに、こう言った。「朝になれば、主はだれがご自分のものか、だれが聖なる者かを、はっきり示してくださる。そして、その人をご自分のそばに近づけてくださる。主が選ぶ人を、そばに近づけてくださるのだ。
16:6 だから、こうしなさい。コラも、その仲間みんなも、火皿を用意しなさい。
16:7 そして、あす、その中に火を入れ、主の前で香をたきなさい。主が選ぶ人、その人こそが聖なる者だ。レビの子らよ、あなたたちこそ、やりすぎだ。」
16:8 モーセはさらにコラに言った。「レビの子らよ、よく聞いてほしい。
16:9 イスラエルの神は、あなたたちをイスラエルの共同体から選び分けて、ご自分のそばに近づけてくださった。主の幕屋の仕事をさせ、共同体の前に立って人々に仕えさせるためだ。それだけでは、あなたたちには物足りないのか。
16:10 神はあなたと、あなたの兄弟であるレビの子ら全員を、そばに近づけてくださった。それなのに、あなたたちは祭司の務めまで求めるのか。
16:11 つまり、あなたとあなたの仲間みんなは、主に逆らって集まっているのだ。アロンが何だというのか。あなたたちが彼に不平を言うとは。」
16:12 モーセは人をやって、エリアブの子ダタンとアビラムを呼びにやらせた。ところが二人は言った。「わたしたちは行かない。
16:13 乳と蜜の流れる地からわたしたちを連れ出して、この荒れ野で死なせようとするだけでは足りないのか。その上、あなたはわたしたちを好きなように支配しようとまでするのか。
16:14 しかも、あなたはわたしたちを乳と蜜の流れる地に連れて来てもいないし、畑やぶどう畑を受け継ぐ地として与えてもくれない。あなたはこの人たちの目をくらまそうというのか。わたしたちは行かない。」
16:15 モーセは激しく怒り、主に言った。「どうか彼らのささげ物に目を留めないでください。わたしは彼らからろば一頭さえ取り上げたことはなく、彼らのうちのだれ一人も傷つけたことはありません。」
16:16 モーセはコラに言った。「あなたと、あなたの仲間みんなは、明日、主の前に出なさい。あなたも、彼らも、アロンもだ。
16:17 めいめい自分の香炉を取り、それに香をのせて、主の前に持って来なさい。香炉は全部で二百五十。めいめいが自分の香炉を持って来るのだ。あなたもアロンも、それぞれ自分の香炉を持って来なさい。」
16:18 そこで彼らは、めいめい自分の香炉を取り、それに火を入れ、その上に香をのせて、モーセとアロンとともに会見の幕屋の入り口に立った。
16:19 コラは彼らに逆らって、全会衆を会見の幕屋の入り口に集めた。すると、主の栄光が全会衆に現れた。
16:20 主はモーセとアロンに言われた。
16:21 「あなたたちは、この会衆の中から離れなさい。わたしは一瞬で彼らを滅ぼし尽くす。」
16:22 二人はひれ伏して言った。「神よ、すべての生き物の霊の神よ。一人の人が罪を犯したからといって、会衆全体に対して怒られるのですか。」
16:23 主はモーセに言われた。
16:24 「会衆にこう言いなさい。コラとダタンとアビラムの住まいの周りから離れなさい。」
16:25 モーセは立ち上がり、ダタンとアビラムのところへ向かった。イスラエルの長老たちも、その後について行った。
16:26 モーセは会衆にこう言った。「この悪い者たちのテントから離れなさい。彼らの物には何も触れてはいけない。そうしないと、彼らのすべての罪に巻き込まれて、一緒に滅ぼされてしまう。」
16:27 それで人々は、コラとダタンとアビラムの住まいの周りから離れた。ダタンとアビラムは、妻や子どもたち、幼い子らと一緒に、自分たちのテントの入り口に出て立っていた。
16:28 モーセは言った。「あなたたちは、これによって分かるだろう。これらすべてのことをするために主がわたしを送られたこと、そして、わたしが自分の考えでしたのではないことを。
16:29 もしこの者たちが、普通の人と同じように死に、すべての人に起こることがこの者たちにも起こるのなら、主がわたしを送られたのではない。
16:30 でも、もし主がまったく新しいことを創造され、地が口を開いて、彼らと彼らのすべての物をのみ込み、彼らが生きたまま死者の世界に下るなら、あなたたちは、この者たちが主を軽んじたことを知るだろう。」
16:31 モーセがこれらの言葉をすべて語り終えると、彼らの足もとの地面が裂けた。
16:32 地は口を開き、彼らとその家の者たち、コラに属するすべての人、そしてすべての財産をのみ込んだ。
16:33 彼らと、彼らに属するすべての者は、生きたまま死者の世界に下った。地が彼らの上をおおい、彼らは会衆の中から消え去った。
16:34 周りにいたイスラエルの人々はみな、彼らの叫び声を聞いて逃げ出した。「地がわたしたちまでのみ込んでしまう」と言ったのだ。
16:35 また、主のもとから火が出て、香をささげていた二百五十人を焼き尽くした。
16:36 主はモーセにこう言われた。
16:37 「祭司アロンの子エレアザルに伝えなさい。焼け跡の中から火皿を拾い集め、その中の火を遠くにまき散らすように。これらは聖なるものだからだ。
16:38 自分の命を失うほどの罪を犯した者たちの火皿を、打ち延ばして薄い板にし、祭壇を覆うものにしなさい。彼らはそれを主の前にささげたので、聖なるものとなった。それはイスラエルの人々へのしるしとなる。」
16:39 祭司エレアザルは、焼き殺された人たちがささげた青銅の火皿を取り、それを打ち延ばして祭壇をおおう板とした。
16:40 イスラエルの人々への戒めとするためである。アロンの子孫でない者が主の前に進み出て香をたくことがないように、そしてその者がコラやその仲間のようにならないようにするためだった。すべては、主がモーセを通してエレアザルに告げられたとおりである。
16:41 翌日、イスラエルの人々の会衆はみな、モーセとアロンに向かって不満をぶつけた。「あなたたちは主の民を殺したのだ」と。
16:42 会衆がモーセとアロンに逆らって集まったとき、人々が会見の幕屋のほうに目を向けると、雲がそれをおおっていた。そして、主の栄光が現れた。
16:43 モーセとアロンが会見の幕屋の前に来たとき、
16:44 主はモーセに言われた。
16:45 「あなたたちはこの人々のところから離れなさい。わたしは今すぐ彼らを滅ぼす。」すると二人はひれ伏した。
16:46 モーセはアロンに言った。「火皿を取って、それに祭壇の火を入れ、その上に香をのせなさい。急いでそれを人々のところへ持って行き、彼らの罪を償ってほしい。主の怒りが下って、疫病がもう始まっているからだ。」
16:47 アロンは、モーセが言ったとおりに火皿を取り、人々の中へ走って行った。見ると、すでに疫病が民の間に広がり始めていた。アロンは香をたいて、民のために罪の償いをした。
16:48 アロンが死んだ人々と生きている人々の間に立つと、疫病は治まった。
16:49 疫病で死んだ人は、コラの事件で死んだ人を別にして、一万四千七百人にのぼった。
16:50 アロンはモーセのところ、会見の天幕の入り口へ戻った。疫病はもう治まっていた。
17:1 主はモーセに言われた。
17:2 「イスラエルの人々に告げて、彼らから杖を集めなさい。父祖の家ごとに一本ずつ、すべての指導者から、父祖の家に従って十二本の杖を取るのだ。それぞれの名を、その杖に書きつけなさい。
17:3 レビの杖には、アロンの名を書きなさい。父祖の家の頭一人につき、一本の杖だからだ。
17:4 そして、それらを会見の天幕の中、わたしがあなたたちと会う掟の箱の前に置きなさい。
17:5 わたしが選ぶ者の杖は、芽を出す。こうしてわたしは、あなたたちに向かってつぶやくイスラエルの人々の不平を、わたしのもとから静める。」
17:6 モーセがイスラエルの人々に告げると、指導者たちは皆、父祖の家に従って一人につき一本ずつ、杖をモーセに渡した。全部で十二本の杖であり、その中にアロンの杖もあった。
17:7 モーセはその杖を、掟の天幕の中、主の前に置いた。
17:8 翌日、モーセが掟の天幕に入ると、なんと、レビの家のためのアロンの杖が芽を出していた。芽が出て、花が咲き、アーモンドの実が熟していたのだ。
17:9 モーセは主の前からすべての杖を取り出し、イスラエルの人々全員のところへ持って行った。彼らはそれを見て、それぞれ自分の杖を取った。
17:10 主はモーセに言われた。「アロンの杖を掟の箱の前に戻し、逆らう者たちへの警告のしるしとして保管しなさい。そうすれば、彼らがわたしに向ける不平は終わり、彼らは死なずにすむ。」
17:11 モーセはそのとおりにした。主が命じられたとおりに行った。
17:12 イスラエルの人々はモーセに言った。「ああ、わたしたちは死んでしまう。もう終わりだ。みんな滅んでしまう。
17:13 主の幕屋に近づく者は、だれでも死んでしまう。わたしたちはみな、死に絶えてしまうのか。」
18:1 主はアロンに言われた。「あなたと、あなたの息子たち、そしてあなたの父の家の者は、聖所に関わる過ちの責任を負う。また、あなたとあなたの息子たちは、祭司の務めに関わる過ちの責任を負う。
18:2 あなたの兄弟である、あなたの父祖の部族レビ族も、あなたと共に近づけなさい。彼らはあなたに連なり、あなたに仕える。そして、あなたとあなたの息子たちは、掟の天幕の前で仕える。
18:3 彼らはあなたの務めと、天幕全体の務めを果たす。ただし、聖なる祭具と祭壇には近づいてはならない。近づけば、彼らもあなたたちも死ぬことになる。
18:4 彼らはあなたに連なり、会見の天幕の務めを、天幕のすべての働きにおいて果たす。それ以外の者は、あなたたちに近づいてはならない。
18:5 あなたたちは、聖所の務めと祭壇の務めを果たしなさい。そうすれば、イスラエルの人々の上に、二度と怒りが下ることはない。
18:6 見よ、わたし自身が、あなたたちの兄弟であるレビ人を、イスラエルの人々の中から取り出した。彼らは主にささげられた者として、あなたたちへの贈り物である。会見の天幕の働きをするためだ。
18:7 あなたとあなたの子たちは、祭壇に関わるすべてのこと、そして垂れ幕の奥での務めについて、祭司としての務めを果たしなさい。わたしは祭司の務めを、贈り物としてあなたたちに与える。ほかの者が近づいたら、殺されなければならない。」
18:8 主はアーロンに言われた。「見よ、わたし自身が、わたしにささげられる献納物の管理をあなたにゆだねた。イスラエルの人々がささげる聖なるものすべてを、あなたに割り当てられた分として与え、あなたの子たちにも永遠の定めとして与える。
18:9 火にささげられる最も聖なるもののうち、次のものがあなたのものとなる。彼らがわたしに返してささげる献げ物、すなわちすべての穀物の供え物、すべての罪の供え物、すべての償いの供え物、それらはあなたとあなたの子たちにとって、最も聖なるものである。
18:10 それは最も聖なるものとして食べなさい。男子はみなそれを食べてよい。あなたにとって聖なるものとしなさい。
18:11 さらに、次のものもあなたのものとなる。イスラエルの人々がささげる、揺り動かして差し出す供え物である。わたしはそれを、あなたと、あなたと共にいる息子たち、娘たちに、永遠の定めとして与える。あなたの家で、汚れていない者はみなそれを食べてよい。
18:12 最上のオリーブ油、最上の新しいぶどう酒と穀物、彼らが主にささげるその初物を、わたしはあなたに与える。
18:13 彼らの土地で最初に実ったもので、主に持って来るものはみな、あなたのものとなる。あなたの家で、汚れていない者はみなそれを食べてよい。
18:14 イスラエルで主に献納されたものはみな、あなたのものとなる。
18:15 人でも家畜でも、母の胎を最初に開くもので、主にささげられるものはみな、あなたのものとなる。ただし、人の初子は必ず買い戻さなければならない。汚れた家畜の初子も買い戻しなさい。
18:16 買い戻す場合は、生後一か月のときに、聖所で使うシェケルにしたがって、銀五シェケルで買い戻す。一シェケルは二十ゲラである。
18:17 しかし、牛の初子、羊の初子、山羊の初子は買い戻してはならない。それらは聖なるものだからだ。その血を祭壇に注ぎかけ、その脂肪を焼いて煙にしなさい。それは主に喜ばれる香りの、火によるささげ物である。
18:18 その肉はあなたのものとなる。揺り動かして差し出す胸の肉や右のもも肉があなたのものであるのと同じである。
18:19 イスラエルの人々が主にささげる聖なる奉納物は、すべてあなたと、あなたと共にいる息子や娘に与える。これは永遠に続く決まりである。それは主の前で交わされた、あなたとあなたの子孫に対する、変わることのない塩の契約である。」
18:20 主はアロンに言われた。「あなたは彼らの土地を受け継いではならない。彼らの中に、あなたの取り分があってはならない。イスラエルの人々の中で、わたしこそがあなたの取り分であり、あなたが受け継ぐものである。
18:21 レビの子孫には、イスラエルの中のすべての十分の一のささげ物を、受け継ぐものとして与える。それは、彼らが果たす奉仕、つまり会見の幕屋での奉仕に対する報いである。
18:22 これからは、イスラエルの人々が会見の幕屋に近づいてはならない。近づけば罪を負って、死ぬことになる。
18:23 会見の幕屋の奉仕をするのはレビ人であり、彼らがその責任を負う。これはあなたがたが代々守るべき、永遠に続く決まりである。彼らはイスラエルの人々の中で、受け継ぐ地を持たない。
18:24 イスラエルの人々が主にささげる十分の一のささげ物を、わたしはレビ人に、受け継ぐものとして与えるからだ。だから彼らについて、『イスラエルの人々の中で受け継ぐ地を持たない』と言ったのである。」
18:25 主はモーセに言われた。
18:26 「レビ人に告げて、こう言いなさい。あなたがたは、わたしがイスラエルの人々から取って、あなたがたの受け継ぐものとして与えた十分の一を、彼らから受け取る。そのときは、その中から主へのささげ物として、十分の一の十分の一を差し出しなさい。
18:27 そうすれば、あなたがたのそのささげ物は、脱穀場から取れた穀物や、酒ぶねから取れたぶどう酒と同じように認められる。
18:28 このようにあなたがたもまた、イスラエルの人々から受け取るすべての十分の一の中から、主へのささげ物を差し出す。その中から、主へのささげ物を祭司アロンに渡しなさい。
18:29 あなたがたが受け取るすべての贈り物の中から、主へのささげ物をすべて差し出しなさい。そのいちばん良い部分を、聖なる分として取り分けなさい。
18:30 また、彼らにこう言いなさい。あなたがたがその中からいちばん良い部分を差し出すなら、それはレビ人にとって、脱穀場や酒ぶねから取れた収穫と同じように認められる。」
18:31 あなたがたはそれを、家族といっしょにどこででも食べてよい。それは、あなたがたが会見の天幕で働くことへの報酬だからだ。
18:32 その中からいちばん良い部分を差し出すなら、あなたがたはそれについて罪を負うことはない。イスラエルの人々の聖なるささげ物を汚してはならない。そうすれば、あなたがたは死なずにすむ。」
19:1 主はモーセとアロンに言われた。
19:2 「これは、主が命じた教えの定めである。イスラエルの人々にこう告げなさい。傷がなく、欠点もなく、まだくびきを負ったことのない赤い雌牛を、あなたのところに引いて来させなさい。
19:3 それを祭司エルアザルに渡しなさい。彼はそれを宿営の外に引き出し、自分の前でほふらせる。
19:4 祭司エルアザルは指でその血を取り、会見の天幕の正面に向かって、その血を七回振りかける。
19:5 そして、その雌牛は彼の目の前で焼かれる。皮も肉も血も、汚物といっしょに焼くのだ。
19:6 祭司は杉の木とヒソプと緋色の糸を取り、雌牛が焼かれている火の中に投げ入れる。
19:7 祭司は自分の衣を洗い、体を水で洗う。そのあとで宿営に入ることができる。しかし祭司は夕方まで汚れた者となる。
19:8 その雌牛を焼いた者も、衣を水で洗い、体を水で洗う。その者も夕方まで汚れる。
19:9 そして、清い人がその雌牛の灰を集め、宿営の外の清い場所に置く。それはイスラエルの人々のために、汚れを清める水の材料として保管される。これは罪を清めるためのものだ。
19:10 雌牛の灰を集めた者も、自分の衣を洗う。その者は夕方まで汚れる。これはイスラエルの人々と、その中に住む寄留者にとって、いつまでも守るべき決まりとなる。
19:11 どんな人であれ、その遺体に触れた者は、七日間汚れる。
19:12 その者は三日目と七日目に、その水で身を清める。そうすれば清くなる。でも三日目と七日目に身を清めなければ、清くならない。
19:13 死んだ人の遺体に触れながら身を清めない者は、主の幕屋を汚す。その人はイスラエルから断ち切られる。汚れを清める水が振りかけられていないので、その人は汚れたままだ。汚れがまだその身に残っている。
19:14 これは、人が天幕の中で死んだときの決まりだ。その天幕に入る者、また天幕の中にいる者はみな、七日間汚れる。
19:15 また、ふたがひもでしっかり固定されていない、開いたままの器はすべて汚れる。
19:16 野外で、剣で殺された者や遺体、また人の骨や墓に触れた者はみな、七日間汚れる。
19:17 汚れた者のためには、罪を清めるために焼いたあの雌牛の灰を取り、器に入れて、そこに湧き水を注ぐ。
19:18 そして清い人がヒソプを取り、その水に浸す。それを天幕や、すべての器や、そこにいた人々に振りかける。また、骨や殺された者、遺体、墓に触れた者にも振りかける。
19:19 清い人は、三日目と七日目に、汚れた者へ水を振りかける。そして七日目にその者を清める。汚れた者は自分の服を洗い、水を浴びる。すると夕方には清くなる。
19:20 しかし、汚れているのに身を清めない者は、その魂は共同体の中から断ち切られる。主の聖所を汚したからだ。清めの水を振りかけていないので、その人は汚れたままだ。
19:21 これは彼らにとって、いつまでも守るべき掟である。清めの水を振りかけた人も、自分の服を洗わなければならない。また、清めの水に触れた者は、夕方まで汚れる。
19:22 汚れた者が触れるものは、すべて汚れる。そして、それに触れた人も夕方まで汚れる。」
20:1 イスラエルの人々、つまり共同体全体が、第一の月にツィンの荒れ野にやって来た。民はカデシュに滞在した。そこでミリアムが死に、そこに葬られた。
20:2 共同体には水がなかった。それで人々はモーセとアロンのところに集まり、詰め寄った。
20:3 民はモーセと争って言った。「わたしたちの兄弟が主の前で死んだとき、いっそ一緒に死んでいればよかった。
20:4 なぜあなたたちは、主の共同体をこの荒れ野に連れて来たのか。わたしたちも家畜も、ここで死んでしまうではないか。
20:5 なぜわたしたちをエジプトから連れ出して、こんなひどい場所に連れて来たのか。ここは穀物も、いちじくも、ぶどうも、ざくろも育たない場所だ。おまけに飲む水さえない。」
20:6 モーセとアロンは、集まった人々の前を離れて会見の幕屋の入り口へ行き、ひれ伏した。すると主の栄光が彼らに現れた。
20:7 主はモーセに言われた。
20:8 「杖を取り、あなたと兄弟アロンとで共同体を集めなさい。そして彼らの目の前で岩に命じれば、岩は水を出す。あなたはその岩から水を出して、共同体と家畜に飲ませなさい。」
20:9 モーセは命じられたとおり、主の前から杖を取った。
20:10 モーセとアロンは、岩の前に人々を集めた。そしてモーセは彼らに言った。「反逆者たち、聞きなさい。わたしたちがこの岩から水を出さなければならないのか。」
20:11 モーセは手を上げ、杖で岩を二度打った。すると水がどっとあふれ出て、共同体も家畜もそれを飲んだ。
20:12 主はモーセとアロンに言われた。「あなたたちはわたしを信じず、イスラエルの人々の前でわたしを聖なる者としてあがめなかった。だから、あなたたちはこの人々を、わたしが与える地に導き入れることはできない。」
20:13 これがメリバの水である。イスラエルの人々がここで主と争い、主はご自分が聖なる者であることを示された。
20:14 モーセはカデシュから、エドムの王のもとに使者を送った。「あなたの兄弟イスラエルはこう言います。あなたは、わたしたちを襲ったすべての苦しみをご存じです。
20:15 わたしたちの先祖はエジプトに下り、わたしたちは長い間そこに住みました。エジプト人はわたしたちと先祖をひどく苦しめました。
20:16 わたしたちが主に叫び求めると、主はその声を聞き、使いを送ってわたしたちをエジプトから連れ出してくださいました。今わたしたちは、あなたの領土のはずれにある町カデシュにいます。
20:17 どうか、あなたの国を通らせてください。畑やぶどう畑には入りませんし、井戸の水も飲みません。王の道をまっすぐ進み、あなたの領土を通り過ぎるまで、右にも左にもそれません。」
20:18 しかしエドムはこう答えた。「わたしの国を通ってはならない。もし通れば、剣を持って迎え撃つ。」
20:19 イスラエルの人々はエドムにこう言った。「わたしたちは街道を通ります。もしあなたの水を、わたしも家畜も飲んだら、その代金を払います。ただ歩いて通らせてほしいだけです。ほかには何もしません。」
20:20 しかしエドムは「通ってはならない」と答えた。そして大勢の兵と強い力をもって、イスラエルを迎え撃とうと出てきた。
20:21 こうしてエドムは、イスラエルが自分の領土を通ることを拒んだ。それでイスラエルは向きを変え、エドムを避けて進んだ。
20:22 イスラエルの人々、その全体はカデシュを出発し、ホル山にやって来た。
20:23 エドムの地の境にあるホル山で、主はモーセとアロンにこう言われた。
20:24 「アロンは先に死んだ者たちのもとに集められる。彼はわたしがイスラエルの人々に与える地に入ることはできない。あなたたちがメリバの水のところで、わたしの命令に逆らったからだ。
20:25 アロンとその子エルアザルを連れて、ホル山に登りなさい。
20:26 そしてアロンの祭服を脱がせ、それを子のエルアザルに着せなさい。アロンはそこで、先に死んだ者たちのもとに集められ、命を終える。」
20:27 モーセは主が命じられたとおりにした。彼らは民全体が見守る中を、ホル山に登った。
20:28 モーセはアロンの祭服を脱がせ、それを子のエルアザルに着せた。アロンはその山の頂で命を終えた。モーセとエルアザルは山を下りた。
20:29 アロンが息を引き取ったのを見て、民全体は嘆き悲しんだ。イスラエルの家はみな、三十日のあいだアロンのために泣いた。
21:1 ネゲブに住むカナン人の王、アラドは、イスラエルがアタリムの道を通ってやって来ると聞いた。それで彼はイスラエルに戦いをしかけ、何人かを捕虜にした。
21:2 イスラエルは主に誓いを立てて言った。「もしこの民をわたしたちの手に渡してくださるなら、わたしたちは彼らの町々を主にささげ、すべて滅ぼし尽くします。」
21:3 主はイスラエルの願いを聞き入れ、カナン人を渡してくださった。イスラエルは彼らとその町々を残らず滅ぼし尽くした。それでその場所はホルマと呼ばれるようになった。
21:4 民はホル山を出発し、エドムの地を回り込むため、葦の海の方へ向かう道を進んだ。しかし旅の途中で、民は我慢できず、すっかり気力を失ってしまった。
21:5 民は神とモーセに逆らって言った。「なぜわたしたちをエジプトから連れ出したのか。この荒れ野で死なせるためか。パンもない、水もない。こんなみじめな食べ物には、もううんざりだ。」
21:6 すると主は、火のような毒蛇を民の中に送り込まれた。蛇は民をかみ、イスラエルの多くの人が死んだ。
21:7 民はモーセのところに来て言った。「わたしたちは罪を犯しました。主とあなたに逆らって文句を言ったのです。どうか主に祈って、この蛇をわたしたちから取り去ってください。」モーセは民のために祈った。
21:8 主はモーセに言われた。「燃えるような蛇を一つ作り、竿の先に掲げなさい。かまれた者はだれでも、それを見れば生きる。」
21:9 そこでモーセは青銅の蛇を作り、竿の先に掲げた。すると、蛇にかまれた者も、その青銅の蛇を見上げれば、生きた。
21:10 イスラエルの人々は旅を続け、オボトに宿営した。
21:11 彼らはオボトを出発し、モアブの東側、日の昇る方角にある荒れ野の、イエ・アバリムに宿営した。
21:12 そこを出発して、彼らはゼレドの谷に宿営した。
21:13 そこを出発して、彼らはアルノン川の向こう側に宿営した。この川はアモリ人の領土から流れ出て、荒れ野の中を通っている。アルノン川はモアブの国境で、モアブ人とアモリ人の間を分けていた。
21:14 だから「主の戦いの書」にはこう記されている。「スファのワヘブと、アルノンの谷、
21:15 そして谷の斜面。それはアルの町のほうへと下り、モアブの国境に沿っている。」
21:16 そこからさらに進んで、彼らはベエルに着いた。これは、主がモーセにこう言われた井戸のことだ。「民を集めなさい。わたしが彼らに水を与えよう。」
21:17 そのとき、イスラエルはこの歌を歌った。「井戸よ、湧き上がれ。さあ、この井戸に歌おう。
21:18 王たちが掘った井戸、民の指導者たちが、笏と杖で掘り起こした井戸。」そして彼らは荒れ野からマタナへ、
21:19 マタナからナハリエルへ、ナハリエルからバモトへと進んだ。
21:20 さらにバモトから、モアブの地にある谷へと進んだ。そこはピスガの頂で、荒れ地を見下ろす場所だった。
21:21 イスラエルは、アモリ人の王シホンのもとに使者を送って、こう伝えさせた。
21:22 「あなたの国を通らせてください。畑やぶどう畑には入りません。井戸の水も飲みません。あなたの領土を抜けるまで、王の道だけを通って行きます。」
21:23 しかしシホンは、イスラエルが自分の領土を通ることを許さなかった。それどころか全軍を集め、荒れ野に出てイスラエルを迎え撃った。彼はヤハツまで来て、イスラエルと戦った。
21:24 しかしイスラエルは彼を剣で討ち取り、その土地を占領した。アルノン川からヤボク川まで、アンモン人の国境までを手に入れた。アンモン人の国境が堅固だったからだ。
21:25 イスラエルはこれらの町をすべて奪い取った。そしてヘシュボンとその周りの村々をはじめ、アモリ人の町という町に住みついた。
21:26 ヘシュボンは、アモリ人の王シホンの都だった。シホンはかつてモアブの前の王と戦い、アルノン川までの土地をすべて奪い取っていたのだ。
21:27 だから、こう歌う詩人たちがいる。「ヘシュボンに来い。シホンの都を建て直し、固めよ。
21:28 ヘシュボンから火が出て、シホンの都から炎が燃え上がった。それはモアブのアルを焼き尽くし、アルノンの高台の主たちを飲み込んだ。
21:29 モアブよ、お前は災いだ。ケモシュの民よ、お前は滅びた。ケモシュは自分の息子たちを逃げ場のない身とし、娘たちを、アモリ人の王シホンの捕虜として引き渡した。
21:30 だが、わたしたちは彼らを射倒した。ヘシュボンはディボンまで滅び去った。わたしたちはノファまで荒らし尽くした。それはメデバにまで及んだ。」
21:31 こうしてイスラエルはアモリ人の地に住みついた。
21:32 モーセはヤゼルを偵察させるために人を送った。イスラエルはその周りの村々を攻め取り、そこにいたアモリ人を追い出した。
21:33 それから彼らは向きを変え、バシャンへの道を上って行った。すると、バシャンの王オグが全軍を率いて、エドレイで彼らを迎え撃とうと出て来た。
21:34 主はモーセに言われた。「彼を恐れてはならない。わたしは彼と、その全軍と、その土地をあなたの手に渡した。ヘシュボンに住むアモリ人の王シホンにしたように、彼にもそうしなさい。」
21:35 そこでイスラエルは、オグとその息子たち、そして全軍を討ち取った。一人も生き残る者がいなくなるまで討ち、その土地を占領した。
22:1 イスラエルの人々は旅を続けて、モアブの平野に宿営した。そこはヨルダン川の東側で、エリコの向かい側にあたる。
22:2 ツィポルの子バラクは、イスラエルがアモリ人にしたことを、すべて見ていた。
22:3 モアブは、その民があまりに多いので、ひどくおびえた。イスラエルの人々のことを思うと、恐ろしくてたまらなかった。
22:4 モアブはミディアンの長老たちに言った。「牛が野の草をなめ尽くすように、あの群れはわたしたちの周りのものを、みんななめ尽くしてしまう。」当時、モアブの王はツィポルの子バラクだった。
22:5 バラクは使者を送り、ベオルの子バラムを呼びに行かせた。バラムは、ユーフラテス川のほとりのペトルにいて、そこは彼の民の国だった。バラクは伝えさせた。「聞いてくれ。ある民がエジプトから出てきて、地の面をおおい、わたしのすぐ向かいに住みついている。
22:6 どうか今すぐ来て、わたしのためにこの民をのろってほしい。彼らはわたしより強すぎるのだ。そうすれば、わたしは彼らを打ち破り、この地から追い出せるかもしれない。あなたが祝福する者は祝福され、あなたがのろう者はのろわれる。わたしはそれを知っているのだ。」
22:7 モアブの長老たちとミディアンの長老たちは、うらないの謝礼を手にして出かけた。そしてバラムのところに着き、バラクの言葉を伝えた。
22:8 バラムは彼らに言った。「今夜はここに泊まってください。主がわたしに語られたとおりに、返事をしましょう。」それで、モアブの高官たちはバラムのもとにとどまった。
22:9 神がバラムのところに来て、言われた。「あなたといっしょにいる、この人たちは誰か。」
22:10 バラムは神に答えた。「モアブの王、ツィポルの子バラクが、わたしのところに使者を送ってきて、こう言いました。
22:11 『エジプトから出てきた民が、地の面をおおっている。今すぐ来て、わたしのために彼らをのろってほしい。そうすれば、わたしは彼らと戦って追い出せるかもしれない。』」
22:12 神はバラムに言われた。「あなたは彼らといっしょに行ってはならない。あの民をのろってはならない。彼らは祝福されているのだから。」
22:13 朝になって、バラムは起きあがり、バラクの使者たちに言った。「あなたたちの国へ帰りなさい。主が、わたしをあなたたちといっしょに行かせるのをこばまれたのだから。」
22:14 モアブの使者たちは立って、バラクのところへ帰り、こう言った。「バラムは、わたしたちといっしょに来るのをことわりました。」
22:15 それでもバラクは、前の者たちより数が多く、位の高い使者たちを、もう一度送った。
22:16 彼らはバラムのところに来て言った。「ツィポルの子バラクが、こう言っています。『どうか、わたしのところに来るのをためらわないでほしい。
22:17 わたしはあなたを、たいへん手あつくもてなす。あなたが言うことは何でもしよう。だからどうか来て、わたしのためにこの民をのろってほしい。』」
22:18 バラムはバラクの家来たちに答えた。「たとえバラクが、銀や金を家いっぱいにしてくれても、わたしは自分の神、主のことばにそむいて、大きなことも小さなことも、何一つできません。
22:19 ですから、どうかあなたたちも、今夜ここに泊まってください。主がこのうえ、わたしに何と言われるのか、知りたいのです。」
22:20 その夜、神はバラムのところに来て言われた。「あの人たちがあなたを呼びに来たのなら、起きて、いっしょに行きなさい。ただし、わたしがあなたに告げることだけを行いなさい。」
22:21 朝になって、バラムは起きあがり、ろばに鞍をつけて、モアブの使者たちといっしょに出かけた。
22:22 しかし、バラムが出かけたので、神の怒りが燃えあがった。主の使いが、彼を行かせまいとして、道に立ちふさがった。バラムはろばに乗り、二人の若者を連れていた。
22:23 ろばは、主の使いが抜き身の剣を手にして道に立っているのを見た。それで道からそれて、畑のほうへ入っていった。バラムは、ろばを道にもどそうとして、これを打った。
22:24 すると主の使いは、両側に石垣のある、ぶどう畑の間の細い道に立った。
22:25 ろばは、主の使いを見て、石垣に身を寄せた。そのとき、バラムの足を石垣に押しつけてしまった。それでバラムは、また、ろばを打った。
22:26 主の使いは、さらに先へ進んで、右にも左にもよけられないほど狭い場所に立った。
22:27 ろばは、主の使いを見て、バラムを乗せたまま、その場に伏せてしまった。バラムは激しく怒って、杖でろばを打った。
22:28 すると主が、ろばの口を開かれた。ろばはバラムに言った。「わたしがあなたに何をしたというのですか。これで三度も、わたしを打つなんて。」
22:29 バラムはろばに言った。「おまえがわたしを馬鹿にしたからだ。もし手に剣があったら、今すぐおまえを殺していたところだ。」
22:30 ろばはバラムに言った。「わたしは、あなたが昔から今日までずっと乗ってきた、あなたのろばではありませんか。これまで、あなたにこんなことをしたことがありましたか。」バラムは「なかった」と答えた。
22:31 そのとき主が、バラムの目を開かれた。すると、主の使いが抜き身の剣を手にして道に立っているのが見えた。バラムはひざまずき、地にひれ伏した。
22:32 主の使いは彼に言った。「なぜ、三度も、おまえのろばを打ったのか。おまえの行く道はわたしの前で無謀だから、わたしはおまえを止めに出てきたのだ。
22:33 ろばはわたしを見て、三度もわたしの前でよけた。もしよけていなかったら、わたしは今ごろおまえを殺し、ろばは生かしておいただろう。」
22:34 バラムは主の使いに言った。「わたしは罪を犯しました。あなたが道でわたしをはばもうとして立っておられたとは、知らなかったのです。もしお気に召さないなら、わたしは引き返します。」
22:35 主の使いはバラムに言った。「その人たちと一緒に行きなさい。ただし、わたしが告げる言葉だけを語りなさい。」そこでバラムは、バラクの高官たちと一緒に行った。
22:36 バラクは、バラムが来ると聞いて、アルノン川ぞいのモアブの町まで、これを迎えに出た。その町は領地のいちばん端にあった。
22:37 バラクはバラムに言った。「わたしはあなたを呼びに、何度も使いを送ったではないか。どうして来てくれなかったのか。わたしにはあなたを厚くもてなす力がないとでも思ったのか。」
22:38 バラムはバラクに答えた。「こうして、あなたのところに来ました。でも、わたしに何かを勝手に話す力があるでしょうか。神がわたしの口に授ける言葉、それだけをわたしは語ります。」
22:39 こうしてバラムはバラクと一緒に行き、二人はキルヤト・フツォトに着いた。
22:40 バラクは牛と羊をほふり、バラムと、彼と一緒にいた高官たちに贈った。
22:41 翌朝、バラクはバラムを連れて、バアルの高台に登らせた。そこからは、あの民の端の方が見えた。
23:1 バラムはバラクに言った。「ここに祭壇を七つ築いてください。そして、雄牛七頭と雄羊七頭を用意してください。」
23:2 バラクはバラムの言ったとおりにした。そして、バラクとバラムは、それぞれの祭壇の上で雄牛一頭と雄羊一頭をささげた。
23:3 バラムはバラクに言った。「あなたの焼き尽くすささげ物のそばに立っていてください。わたしは行ってきます。もしかしたら、主がわたしに会いに来てくださるかもしれません。そのとき示されたことを、あなたに伝えます。」こう言って、バラムは裸の丘に登って行った。
23:4 神はバラムに会いに来られた。バラムは神に言った。「わたしは七つの祭壇を整え、それぞれの祭壇の上で雄牛一頭と雄羊一頭をささげました。」
23:5 主はバラムの口に言葉を授けて言われた。「バラクのところに戻り、こう語りなさい。」
23:6 バラムがバラクのところに戻ると、バラクは自分の焼き尽くすささげ物のそばに立っていた。モアブの高官たちも皆、一緒にいた。
23:7 バラムは詩をうたって言った。「バラクはわたしをアラムから連れて来た。モアブの王が、東の山々からわたしを招いて言った。『さあ、わたしのためにヤコブを呪ってくれ。イスラエルをののしってくれ』と。
23:8 でも、神が呪わない者を、どうしてわたしが呪えるだろう。主がののしらない者を、どうしてわたしがののしれるだろう。
23:9 岩の頂からわたしは彼らを見る。丘の上から彼らを見わたす。見よ、これはただひとりで住む民。ほかの国々の中に数えられることのない民だ。
23:10 ヤコブの砂ぼこりを、だれが数えられるだろう。イスラエルの四分の一さえ、だれが数えきれるだろう。わたしも正しい人のように死にたい。わたしの最期も、彼らのようでありたい。」
23:11 バラクはバラムに言った。「わたしに何ということをしてくれたのだ。敵を呪ってもらおうとあなたを連れて来たのに、あなたはかえって祝福してしまった。」
23:12 バラムは答えて言った。「主がわたしの口に授けられたこと、それをそのまま語るしかないではありませんか。」
23:13 バラクは彼に言った。「では、別の場所へ一緒に来てほしい。そこからなら彼らが見える。とはいえ全体は見えず、その端の一部だけが見えるだろう。そこからわたしのために彼らを呪ってくれ。」
23:14 こうしてバラクはバラムをピスガの頂にある「見張りの野」へ連れて行った。そこに七つの祭壇を築き、それぞれの祭壇の上で雄牛一頭と雄羊一頭をささげた。
23:15 バラムはバラクに言った。「あなたの焼き尽くすささげ物のそばに、こうして立っていてください。わたしはあちらで主にお会いしてきます。」
23:16 主はバラムに会いに来られ、その口に言葉を授けて言われた。「バラクのところに戻り、こう語りなさい。」
23:17 バラムがバラクのところに戻ると、バラクは自分の焼き尽くすささげ物のそばに立っていた。モアブの高官たちも一緒にいた。バラクはバラムに尋ねた。「主は何と言われたのか。」
23:18 バラムは詩をうたって言った。「立ち上がれ、バラク、そして聞け。ツィポルの子よ、わたしに耳を傾けよ。
23:19 神は人ではないから、うそをつくことはない。人の子でもないから、思い直すこともない。神は語ったことを、実行しないだろうか。口にしたことを、成し遂げないだろうか。
23:20 見よ、わたしは祝福せよという命令を受けた。神が祝福されたのだ。わたしにはそれを取り消せない。
23:21 神はヤコブに不義を見いださず、イスラエルに苦しみを見られない。主である神が彼らと共におられ、王を迎える喜びの叫びが彼らのうちにある。
23:22 神は彼らをエジプトから導き出された。神は彼らにとって、野牛のような力なのだ。
23:23 ヤコブに立ち向かう呪術はなく、イスラエルに立ち向かう占いもない。今こそヤコブとイスラエルについて、こう語られる。「神は、なんということをなさったのか」と。
23:24 見よ、この民は雌獅子のように立ち上がり、獅子のように身を起こす。獲物を食らい、倒したものの血を飲むまでは、横たわることはない。
23:25 バラクはバラムに言った。「彼らを呪わないのなら、せめて祝福もしないでくれ。」
23:26 バラムは答えてバラクに言った。「主が語られることは、すべてそのとおりに行う、とあなたに言ったではありませんか。」
23:27 バラクはバラムに言った。「さあ、来てくれ。別の場所へ連れて行こう。もしかすると、神の目にかなって、そこから彼らを呪えるかもしれない。」
23:28 バラクはバラムを、荒れ野を見下ろすペオルの頂に連れて行った。
23:29 バラムはバラクに言った。「ここに七つの祭壇を築いてください。そして、ここに七頭の雄牛と七頭の雄羊を用意してください。」
23:30 バラクはバラムの言うとおりにして、それぞれの祭壇の上に雄牛一頭と雄羊一頭をささげた。
24:1 バラムは、主がイスラエルを祝福することをよしとしているのを見た。それで、これまでのように占いを求めに行くのをやめ、荒れ野の方へ顔を向けた。
24:2 バラムが目を上げると、部族ごとに宿営しているイスラエルが見えた。そのとき、神の霊が彼に臨んだ。
24:3 そして彼は詩のように語りはじめた。「これはベオルの子バラムの言葉。目の開かれた者の言葉。
24:4 神の言葉を聞く者、全能者の幻を見る者の言葉。わたしはひれ伏し、しかし目を開いている。
24:5 ヤコブよ、あなたの天幕はなんと美しいことか。イスラエルよ、あなたの住まいはなんと見事なことか。
24:6 それは遠くまで広がる谷のよう。川のほとりの園のよう。主が植えたアロエの木のよう。水辺に立つ杉の木のようだ。
24:7 その水おけからは水があふれ、まいた種は豊かな水に潤う。その王はアガグよりも高く上げられ、その王国は大いに栄える。
24:8 神は彼をエジプトから導き出した。神は彼にとって、野牛の角のような力だ。彼は敵の国々を食い尽くし、その骨を砕き、矢で射抜く。
24:9 彼は雄ライオンのように、雌ライオンのように身をかがめ、横たわる。だれが彼を起こそうとするだろうか。あなたを祝福する者は祝福され、あなたを呪う者は呪われる。」
24:10 するとバラクはバラムに激しく怒り、両手を打ち合わせて言った。「わたしは敵を呪ってもらうためにあなたを呼んだ。それなのに、あなたはもう三度も彼らを祝福した。
24:11 さあ、今すぐ自分の場所へ帰るがいい。あなたを手厚くもてなすつもりだった。それなのに、主はあなたからその誉れを取り上げてしまった。」
24:12 バラムはバラクに答えた。「わたしはあなたが送ってきた使いの者たちにも、こう言ったではありませんか。
24:13 「たとえバラクが銀や金で満たした家をわたしにくれたとしても、わたしは主の言葉に逆らって、自分勝手に良いことも悪いこともすることはできません。主が語られることを、そのまま話すのです。
24:14 今、わたしは自分の民のところへ帰ります。でもその前に、これから先の日々に、この民があなたの民に何をするのか、あなたに告げておきましょう。」
24:15 そしてバラムは、預言の言葉を語り始めた。「ベオルの子バラムの言葉。目の開かれた者の言葉。
24:16 神の言葉を聞く者、いと高き方の知識を知る者の言葉。全能者の幻を見る者、ひれ伏して、目を開かれた者の言葉。
24:17 わたしには彼が見える。でも、今ではない。わたしは彼を見つめる。でも、近くではない。ヤコブから一つの星が昇り、イスラエルから一本の杖が起こる。それはモアブの額を打ち砕き、シェトのすべての子らを打ち倒す。
24:18 エドムは占領され、その敵セイルも占領される。でも、イスラエルは力強く働く。
24:19 ヤコブから一人の支配者が出て、町に生き残った者を滅ぼす。」
24:20 それからバラムはアマレクを見て、預言の言葉を語った。「アマレクは諸国の中で最初の国だった。でも、その終わりは滅びだ。」
24:21 またバラムはケニ人を見て、預言の言葉を語った。「あなたの住まいは堅固で、あなたの巣は岩の上に置かれている。
24:22 それでも、カインは焼き払われる。アシュルがあなたを捕らえて連れ去るまで、あとどれだけもたないだろう。」
24:23 さらにバラムは預言の言葉を語った。「ああ、神がこれを行うとき、誰が生き残れるだろう。
24:24 船がキティムの岸からやって来て、アシュルを苦しめ、エベルを苦しめる。でも、その者もまた滅びに向かう。」
24:25 それでバラムは立ち上がり、自分の故郷へ帰って行った。バラクも自分の道を行った。
25:1 イスラエルはシティムに滞在した。そのあいだに、民はモアブの女たちと性的な関係を持ち始めた。
25:2 女たちは、自分たちの神々にささげるいけにえの祭りに民を誘った。民はそれを食べ、彼女たちの神々を拝んだ。
25:3 こうしてイスラエルはバアル・ペオルに従うようになった。それで主の怒りがイスラエルに向かって燃え上がった。
25:4 主はモーセに言った。「民の頭たちを全員捕らえ、日の光のもと、主の前でさらしものにせよ。そうすれば、主の燃える怒りはイスラエルから去る。」
25:5 モーセはイスラエルの裁判官たちに言った。「あなたがたはそれぞれ、自分の配下でバアル・ペオルに従った者たちを殺せ。」
25:6 すると、ひとりのイスラエル人が、モーセと全会衆の目の前で、ミディアン人の女を自分の身内のところに連れて来た。人々は会見の天幕の入り口で泣いていた。
25:7 祭司アロンの孫、エルアザルの子ピネハスがこれを見て、会衆の中から立ち上がり、手に槍を取った。
25:8 そして、そのイスラエル人の男を追って寝室に入り、ふたりを刺し貫いた。イスラエル人の男と、その女の腹を突き通したのだ。すると、イスラエルに広がっていた疫病はやんだ。
25:9 その疫病で死んだ者は、二万四千人だった。
25:10 主はモーセに言った。
25:11 「祭司アロンの孫、エルアザルの子ピネハスは、彼らの間でわたしのねたみを自分のねたみとして抱き、わたしの憤りをイスラエルから去らせた。それで、わたしはねたみのうちにイスラエルを滅ぼし尽くさずにすんだ。
25:12 だから、こう伝えよ。『見よ、わたしは彼にわたしの平和の契約を与える。』」
25:13 これは彼と、その後に続く子孫のための契約となる。それは、いつまでも祭司の務めを果たすという契約だ。彼が自分の神のために熱心になり、イスラエルの人々のために罪の償いをしたからである。」
25:14 ミディアン人の女といっしょに殺されたイスラエル人の男の名前は、ジムリといった。サルの子で、シメオン族のある家系の長だった。
25:15 殺されたミディアン人の女の名前は、コズビといった。ツルの娘で、ツルはミディアンにある家系の、いくつもの部族の長だった。
25:16 主はモーセに言った。
25:17 「ミディアン人を敵とみなして、討ち取れ。
25:18 彼らはたくらみをめぐらせて、あなたたちを敵として苦しめたからだ。ペオルの一件でも、また彼らの姉妹であるコズビの一件でも、あなたたちをだました。コズビはミディアンの長の娘で、ペオルのことで起きた疫病の日に殺された女だ。」
26:1 こうして、疫病は終わった。その後、主はモーセと、祭司アロンの子エルアザルに言った。
26:2 「イスラエルの人々の全体について、二十歳以上の者を家系ごとに数えて、その総数を調べよ。イスラエルで戦いに出られる者すべてだ。」
26:3 そこでモーセと祭司エルアザルは、エリコの近く、ヨルダン川のほとりにあるモアブの平野で、人々にこう告げた。
26:4 「二十歳以上の者を数えよ。」主がモーセと、エジプトの地から出てきたイスラエルの人々に命じたとおりである。
26:5 イスラエル、つまりヤコブの長男はルベンである。ルベンの子孫は次のとおり。ハノクからハノク族、パルからパル族、
26:6 ヘツロンからヘツロン族、カルミからカルミ族が出た。
26:7 これがルベン族である。数えられた者は四万三千七百三十人だった。
26:8 パルの子はエリアブ。
26:9 エリアブの子はネムエル、ダタン、アビラムである。このダタンとアビラムは、会衆の中で選ばれた者だったが、コラの仲間となって、モーセとアロンに逆らって争った。それは主に逆らうことだった。
26:10 すると地が口を開いて、彼らを飲み込んだ。コラも、その仲間もいっしょに死んだ。火が二百五十人を焼き尽くしたときのことである。こうして彼らは、みんなへの見せしめとなった。
26:11 しかし、コラの子たちは死ななかった。
26:12 シメオンの子孫は氏族ごとに次のとおり。ネムエルからネムエル族、ヤミンからヤミン族、ヤキンからヤキン族、
26:13 ゼラからゼラ族、シャウルからシャウル族が出た。
26:14 これがシメオン族である。その数は二万二千二百人だった。
26:15 ガドの子孫は氏族ごとに次のとおり。ツェフォンからツェフォン族、ハギからハギ族、シュニからシュニ族、
26:16 オズニからオズニ族、エリからエリ族、
26:17 アロドからアロド族、アルエリからアルエリ族が出た。
26:18 これがガドの子孫の氏族である。数えられた者は四万五百人だった。
26:19 ユダの子はエルとオナンである。エルとオナンはカナンの地で死んだ。
26:20 ユダの子孫を氏族ごとに見ると、シェラからシェラ族、ペレツからペレツ族、ゼラからゼラ族が出た。
26:21 ペレツの子は次のとおりで、ヘツロンからヘツロン族、ハムルからハムル族が出た。
26:22 これがユダの氏族である。数えられた者は七万六千五百人だった。
26:23 イッサカルの子孫を氏族ごとに見ると、トラからトラ族、プワからプワ族、
26:24 ヤシュブからヤシュブ族、シムロンからシムロン族が出た。
26:25 これがイッサカルの氏族である。数えられた者は六万四千三百人だった。
26:26 ゼブルンの子孫を氏族ごとに見ると、セレドからセレド族、エロンからエロン族、ヤフレエルからヤフレエル族が出た。
26:27 これがゼブルンの氏族である。数えられた者は六万五百人だった。
26:28 ヨセフの子孫を氏族ごとに見ると、マナセとエフライムである。
26:29 マナセの子孫はこうである。マキルからマキル族が出た。マキルはギレアデをもうけ、ギレアデからギレアデ族が出た。
26:30 これがギレアデの子孫である。イエゼルからイエゼル族、ヘレクからヘレク族、
26:31 アスリエルからアスリエル族、シェケムからシェケム族、
26:32 シェミダからシェミダ族、ヘフェルからヘフェル族が出た。
26:33 ヘフェルの子ツェロフハドには息子がなく、娘だけがいた。ツェロフハドの娘たちの名は、マフラ、ノア、ホグラ、ミルカ、ティルツァである。
26:34 これがマナセの氏族である。登録された人数は五万二千七百人だった。
26:35 エフライムの子孫を氏族ごとに見ると、こうである。シュテラからシュテラ族、ベケルからベケル族、タハンからタハン族が出た。
26:36 そして、これがシュテラの子孫である。エランからエラン族が出た。
26:37 これがエフライムの子孫の氏族で、登録された人数は三万二千五百人だった。以上がヨセフの子孫を氏族ごとに見たものである。
26:38 ベニヤミンの子孫を氏族ごとに見ると、こうである。ベラからベラ族、アシュベルからアシュベル族、アヒラムからアヒラム族、
26:39 シェフファムからシェフファム族、フファムからフファム族が出た。
26:40 ベラの子はアルドとナアマンであった。アルドからアルド族、ナアマンからナアマ族が出た。
26:41 これがベニヤミンの子孫を氏族ごとに見たもので、登録された人数は四万五千六百人だった。
26:42 これがダンの子孫を氏族ごとに見たものである。シュハムからシュハム族が出た。以上がダンの氏族である。
26:43 シュハム族全体で、登録された人数は六万四千四百人だった。
26:44 アシェルの子孫を氏族ごとに見ると、イムナからイムナ族、イシュビからイシュビ族、ベリアからベリア族が出た。
26:45 ベリアの子孫では、ヘベルからヘベル族、マルキエルからマルキエル族が出た。
26:46 アシェルの娘の名はセラといった。
26:47 これがアシェルの子孫の氏族で、登録された人数は五万三千四百人だった。
26:48 ナフタリの子孫を氏族ごとに見ると、ヤフツェエルからヤフツェエル族、グニからグニ族が出た。
26:49 イェツェルからイェツェル族、シレムからシレム族が出た。
26:50 これがナフタリの氏族で、登録された人数は四万五千四百人だった。
26:51 以上がイスラエルの人々の登録された総数で、六十万一千七百三十人だった。
26:52 主はモーセに言われた。
26:53 「これらの部族に、登録された名前の数に応じて、地を受け継ぐ分として分け与えなさい。
26:54 人数の多い部族には多くの土地を、少ない部族には少ない土地を与えなさい。それぞれの部族に、登録された人数に応じて土地を分け与えるのだ。
26:55 ただし、土地はくじで分けること。それぞれの部族の名前に応じて、受け継ぐ土地を割り当てるのだ。
26:56 土地を分けるときは、人数の多い部族にも少ない部族にも、くじの結果に従って受け継ぐ分を決めなさい。」
26:57 レビ族で登録された人たちは、氏族ごとに次のとおりである。ゲルションからはゲルション人の氏族、ケハトからはケハト人の氏族、メラリからはメラリ人の氏族が出た。
26:58 レビ族の氏族はこれらである。リブニ人の氏族、ヘブロン人の氏族、マフリ人の氏族、ムシ人の氏族、コラ人の氏族。ケハトはアムラムの父であった。
26:59 アムラムの妻の名はヨケベドといい、レビの娘だった。彼女はエジプトでレビの子として生まれた。ヨケベドはアムラムとの間に、アロンとモーセ、そして姉妹のミリアムを産んだ。
26:60 アロンには、ナダブ、アビフ、エルアザル、イタマルが生まれた。
26:61 しかしナダブとアビフは、主の前で規定に反した火をささげたために死んだ。
26:62 レビ族で登録された男子は、生後一か月以上のすべてを数えて二万三千人だった。彼らはほかのイスラエルの人たちと一緒には登録されなかった。イスラエルの中で、受け継ぐ土地が彼らには与えられなかったからである。
26:63 以上が、モーセと祭司エルアザルによって登録された人たちである。二人は、エリコの近く、ヨルダン川のほとりにあるモアブの平原でイスラエルの人々を数えた。
26:64 その中には、かつてモーセと祭司アロンがシナイの荒れ野でイスラエルの人々を数えたときに登録された者は、一人もいなかった。
26:65 というのも、主が彼らについて「彼らは必ずこの荒れ野で死ぬ」と言われたからである。そのため、エフンネの子カレブとヌンの子ヨシュアのほかは、一人も生き残らなかった。
27:1 ツェロフハドの娘たちが進み出た。ツェロフハドはヘフェルの子、ヘフェルはギルアドの子、ギルアドはマキルの子、マキルはヨセフの子マナセの子で、彼女たちはマナセの一族に属していた。娘たちの名前は、マフラ、ノア、ホグラ、ミルカ、ティルツァである。
27:2 彼女たちは会見の幕屋の入り口で、モーセと祭司エルアザル、それに指導者たちと人々全員の前に立って、こう言った。
27:3 「わたしたちの父は荒れ野で亡くなりました。でも父は、主に逆らって集まったコラの仲間の中にはいませんでした。父は自分自身の罪で死んだのです。そして息子はいませんでした。
27:4 息子がいないからといって、どうして父の名前が一族の中から消されなければならないのでしょうか。父の親族と同じように、わたしたちにも土地を与えてください。」
27:5 モーセは彼女たちの訴えを主の前に持って行った。
27:6 すると主はモーセに言われた。
27:7 「ツェロフハドの娘たちの言うことは正しい。あなたは必ず、父の親族と同じように、彼女たちにも受け継ぐ土地を与えなさい。父の相続地を彼女たちに引き継がせなさい。
27:8 そしてイスラエルの人々にこう伝えなさい。『ある人が死んで息子がいない場合は、その相続地を娘に引き継がせなさい。
27:9 もし娘もいなければ、その相続地を兄弟に与えなさい。
27:10 もし兄弟もいなければ、その相続地を父の兄弟に与えなさい。
27:11 もし父にも兄弟がいなければ、その相続地を一族の中で最も近い親族に与えなさい。その人がそれを受け継ぐ。これはイスラエルの人々にとって、主がモーセに命じたとおりの、守るべき定めとなる。』」
27:12 主はモーセに言われた。「このアバリムの山に登り、わたしがイスラエルの人々に与える地を見なさい。
27:13 それを見たら、あなたも兄弟アロンと同じように、自分の民のもとへ集められる。
27:14 あなたたち二人が、ツィンの荒れ野で、人々が争ったときにわたしの命令に逆らったからだ。あなたたちは人々の目の前で、水によってわたしが聖なる者であることを示さなかった。それがツィンの荒れ野にあるカデシュの、メリバの水での出来事だ。」
27:15 モーセは主に言った。
27:16 「すべての生き物に命の息を与える神、主よ。どうか、この人々の上に一人の人を立ててください。
27:17 その人が先頭に立って人々を導き、出るときも帰るときも導き出し、また導き入れてくれますように。そうすれば、主の民は、羊飼いのいない羊の群れのようにならずにすみます。」
27:18 すると主はモーセに言われた。「ヌンの子ヨシュアを連れて来なさい。彼は霊を宿した人だ。その上にあなたの手を置きなさい。
27:19 そして彼を、祭司エルアザルと人々全体の前に立たせ、みんなの見ている前で任命しなさい。
27:20 あなたの権威の一部を彼に分け与えなさい。そうすれば、イスラエルの人々全体が彼に従うようになる。
27:21 彼は祭司エルアザルの前に立つ。エルアザルは主の前で、ウリムを用いて主のお考えを求め、彼のために伺いを立てる。その言葉に従って、ヨシュアとイスラエルの人々全体、つまりすべての人が出て行き、また帰って来る。」
27:22 モーセは主が命じたとおりにした。ヨシュアを連れて来て、祭司エルアザルと人々全体の前に立たせ、
27:23 その上に両手を置いて彼を任命した。主がモーセを通して語られたとおりに。
28:1 主はモーセにこう言われた。
28:2 イスラエルの人々に命じて、こう言いなさい。「わたしへのささげ物、わたしのために火で焼く食べ物、わたしの心を和ませる香りを、決められた時に欠かさずわたしにささげなさい。」
28:3 彼らにこう言いなさい。「あなたたちが主にささげる火のささげ物はこれである。一歳の傷のない子羊二頭を、毎日、焼き尽くすささげ物として絶やさずささげなさい。
28:4 一頭の子羊は朝にささげ、もう一頭の子羊は夕暮れにささげなさい。
28:5 また、穀物のささげ物として、上等の小麦粉一エファの十分の一に、砕いて絞った油一ヒンの四分の一を混ぜて添えなさい。
28:6 これは、シナイ山で定められた、絶やしてはならない焼き尽くすささげ物である。主の心を和ませる香り、主にささげる火のささげ物である。
28:7 それに添える注ぎのささげ物は、子羊一頭につき一ヒンの四分の一とする。聖なる所で、強い酒を注ぎのささげ物として主に注ぎなさい。
28:8 もう一頭の子羊は夕暮れにささげなさい。朝の穀物のささげ物と注ぎのささげ物と同じようにしてささげる。これは主の心を和ませる香り、火のささげ物である。
28:9 安息日には、一歳の傷のない子羊二頭と、油を混ぜた上等の小麦粉十分の二を穀物のささげ物とし、それに注ぎのささげ物を添える。
28:10 これは安息日ごとにささげる焼き尽くすささげ物である。毎日の焼き尽くすささげ物とその注ぎのささげ物に加えてささげなさい。
28:11 毎月の初めには、焼き尽くすささげ物を主にささげなさい。若い雄牛二頭、雄羊一頭、一歳の傷のない子羊七頭である。
28:12 雄牛一頭につき、油を混ぜた上等の小麦粉十分の三を穀物のささげ物とし、雄羊一頭につき、油を混ぜた上等の小麦粉十分の二を穀物のささげ物とする。
28:13 子羊一頭につき、油を混ぜた上等の小麦粉十分の一を穀物のささげ物とする。これは焼き尽くすささげ物であり、主が喜ばれる香り、火によってささげるささげ物である。
28:14 注ぎのささげ物は、雄牛一頭にぶどう酒一ヒンの半分、雄羊一頭に一ヒンの三分の一、子羊一頭に一ヒンの四分の一とする。これは一年の月々、毎月ささげる焼き尽くすささげ物である。
28:15 また、雄やぎ一頭を罪のためのささげ物として主にささげる。これは毎日の焼き尽くすささげ物とその注ぎのささげ物に加えてささげる。
28:16 第一の月の十四日は、主の過越である。
28:17 この月の十五日からは祭りである。七日間、種を入れないパンを食べる。
28:18 最初の日には聖なる集まりを開く。労働の仕事はいっさいしてはならない。
28:19 火によってささげるささげ物、すなわち焼き尽くすささげ物を主にささげなさい。若い雄牛二頭、雄羊一頭、一歳の子羊七頭で、どれも傷のないものでなければならない。
28:20 穀物のささげ物は、油を混ぜた上等の小麦粉で、雄牛一頭には十分の三、雄羊一頭には十分の二をささげる。
28:21 子羊一頭につき十分の一を、七頭の子羊それぞれにささげる。
28:22 また、雄やぎ一頭を罪のためのささげ物とし、あなたがたのために罪を償う。
28:23 朝の焼き尽くすささげ物、すなわち毎日の焼き尽くすささげ物に加えて、これらをささげなさい。
28:24 このように七日間、毎日、主が喜ばれる香り、火によってささげる食物をささげなさい。これは毎日の焼き尽くすささげ物とその注ぎのささげ物に加えてささげる。
28:25 七日目には聖なる集まりを開く。労働の仕事はいっさいしてはならない。
28:26 初穂の日、すなわち七週の祭りに、新しい穀物のささげ物を主にささげるときにも、聖なる集まりを開く。労働の仕事はいっさいしてはならない。
28:27 そのとき、主が喜ばれる香りとして焼き尽くすささげ物をささげなさい。若い雄牛二頭、雄羊一頭、一歳の雄の子羊七頭である。
28:28 それに添える穀物のささげ物は、油を混ぜた上等の小麦粉。雄牛一頭につき十分の三エファ、雄羊一頭につき十分の二エファ、
28:29 七頭の子羊には、一頭につき十分の一エファとする。
28:30 また、雄やぎ一頭をささげ、あなたがたのために罪を償う。
28:31 これらは、毎日の焼き尽くすささげ物とその穀物のささげ物に加えてささげなさい。すべて傷のないものとし、それに注ぎのささげ物も添えなさい。
29:1 第七の月の一日には、聖なる集まりを開く。労働の仕事はいっさいしてはならない。この日は角笛を吹き鳴らす日である。
29:2 主が喜ばれる香りとして焼き尽くすささげ物をささげなさい。若い雄牛一頭、雄羊一頭、一歳の雄の子羊七頭で、すべて傷のないものとする。
29:3 それに添える穀物のささげ物は、油を混ぜた上等の小麦粉。雄牛には十分の三エファ、雄羊には十分の二エファ、
29:4 七頭の子羊には、一頭につき十分の一エファとする。
29:5 また、雄やぎ一頭を罪のためのささげ物とし、あなたがたのために罪を償う。
29:6 これらは、毎月の焼き尽くすささげ物とその穀物のささげ物、毎日の焼き尽くすささげ物とその穀物のささげ物、そしてそれぞれの注ぎのささげ物に加えてささげる。定めのとおりにささげれば、主が喜ばれる香り、火によってささげる食物となる。
29:7 この第七の月の十日には、聖なる集まりを開く。あなたがたは自分の魂を苦しめ、いっさいの仕事をしてはならない。
29:8 主に焼き尽くすささげ物をささげる。それは主が喜ばれる香りとなる。若い雄牛一頭、雄羊一頭、一歳の雄の子羊七頭で、すべて傷のないものとする。
29:9 その穀物のささげ物は、油を混ぜた上等の小麦粉で、雄牛一頭につき十分の三エファ、雄羊一頭につき十分の二エファ、
29:10 七頭の子羊には、一頭につき十分の一エファとする。
29:11 また、雄やぎ一頭を罪のためのささげ物とする。これは、罪を償うための罪のためのささげ物、毎日の焼き尽くすささげ物とその穀物のささげ物、そしてそれぞれの注ぎのささげ物に加えてささげる。
29:12 第七の月の十五日には、聖なる集まりを開く。いっさいの労働の仕事をしてはならない。七日間、主のために祭りを祝う。
29:13 主に焼き尽くすささげ物、火によってささげる食物をささげる。それは主が喜ばれる香りとなる。若い雄牛十三頭、雄羊二頭、一歳の雄の子羊十四頭で、すべて傷のないものとする。
29:14 その穀物のささげ物は、油を混ぜた上等の小麦粉で、十三頭の雄牛には一頭につき十分の三エファ、二頭の雄羊には一頭につき十分の二エファ、
29:15 十四頭の子羊には、一頭につき十分の一エファとする。
29:16 また、雄やぎ一頭を罪のためのささげ物とする。これは、毎日の焼き尽くすささげ物とその穀物のささげ物、その注ぎのささげ物に加えてささげる。
29:17 第二の日には、若い雄牛十二頭、雄羊二頭、一歳の雄の子羊十四頭で、すべて傷のないものをささげる。
29:18 その雄牛、雄羊、子羊のための穀物のささげ物と注ぎのささげ物は、定めのとおり、その数に応じてささげる。
29:19 また、雄やぎ一頭を罪のためのささげ物とする。これは、毎日の焼き尽くすささげ物とその穀物のささげ物、それぞれの注ぎのささげ物に加えてささげる。
29:20 第三の日には、若い雄牛十一頭、雄羊二頭、一歳の雄の子羊十四頭で、すべて傷のないものをささげる。
29:21 その雄牛、雄羊、子羊のための穀物のささげ物と注ぎのささげ物は、定めのとおり、その数に応じてささげる。
29:22 また、雄やぎ一頭を罪のためのささげ物とする。これは、毎日の焼き尽くすささげ物とその穀物のささげ物、その注ぎのささげ物に加えてささげる。
29:23 第四の日には、若い雄牛十頭、雄羊二頭、一歳の雄の子羊十四頭で、すべて傷のないものをささげる。
29:24 その雄牛、雄羊、子羊のための穀物のささげ物と注ぎのささげ物は、定めのとおり、その数に応じてささげる。
29:25 また、雄やぎ一頭を罪のためのささげ物とする。これは、毎日の焼き尽くすささげ物とその穀物のささげ物、その注ぎのささげ物に加えてささげる。
29:26 第五の日には、若い雄牛九頭、雄羊二頭、一歳の雄の子羊十四頭で、すべて傷のないものをささげる。
29:27 その雄牛、雄羊、子羊のための穀物のささげ物と注ぎのささげ物は、定めのとおり、その数に応じてささげる。
29:28 また、雄やぎ一頭を罪のためのささげ物とする。これは、毎日の焼き尽くすささげ物とその穀物のささげ物、その注ぎのささげ物に加えてささげる。
29:29 第六の日には、若い雄牛八頭、雄羊二頭、一歳の雄の子羊十四頭で、すべて傷のないものをささげる。
29:30 その雄牛、雄羊、子羊のための穀物のささげ物と注ぎのささげ物は、定めのとおり、その数に応じてささげる。
29:31 また、雄やぎ一頭を罪のためのささげ物とする。これは、毎日の焼き尽くすささげ物とその穀物のささげ物、その注ぎのささげ物に加えてささげる。
29:32 第七の日には、若い雄牛七頭、雄羊二頭、一歳の雄の子羊十四頭で、すべて傷のないものをささげる。
29:33 その雄牛、雄羊、子羊のための穀物のささげ物と注ぎのささげ物は、定めのとおり、その数に応じてささげる。
29:34 また、雄やぎ一頭を罪のためのささげ物とする。これは、毎日の焼き尽くすささげ物とその穀物のささげ物、その注ぎのささげ物に加えてささげる。
29:35 第八の日には、あなたがたのために聖なる集まりを開く。その日には、いっさいの仕事をしてはならない。
29:36 あなたがたは焼き尽くすささげ物をささげる。それは火によるささげ物で、主が喜ばれる香りとなる。若い雄牛一頭、雄羊一頭、一歳の雄の子羊七頭で、すべて傷のないものをささげる。
29:37 その雄牛、雄羊、子羊のための穀物のささげ物と注ぎのささげ物は、定めのとおり、その数に応じてささげる。
29:38 また、雄やぎ一頭を罪のためのささげ物とする。これは、毎日の焼き尽くすささげ物とその穀物のささげ物、その注ぎのささげ物に加えてささげる。
29:39 以上のものを、あなたがたは定められた祭りのときに主にささげなさい。これは、あなたがたが誓って立てるささげ物や自分から進んでするささげ物とは別のものである。焼き尽くすささげ物、穀物のささげ物、注ぎのささげ物、そして交わりのささげ物として、これらをささげる。
29:40 モーセはイスラエルの人々に、主がモーセに命じたことをすべて伝えた。
30:1 モーセはイスラエルの部族の長たちに言った。「主が命じたのは、次のことだ。
30:2 男が主に何かを誓ったり、自分に義務を課そうと誓約したりしたときは、その言葉を破ってはならない。口にしたことは、すべてそのとおりに実行しなければならない。
30:3 また、女性がまだ若く、父の家にいるときに、主に何かを誓ったり、自分に義務を課したりして、
30:4 それを父が聞いても何も言わなかったなら、彼女の誓いはすべて有効になり、自分に課した義務もすべて効力を持つ。
30:5 でも、父がそれを聞いた日にやめさせたなら、彼女の誓いも、自分に課した義務も、いっさい効力を持たない。父がやめさせたのだから、主は彼女を赦してくださる。
30:6 また、女性が誓いを負ったまま、あるいは軽はずみに口にした言葉で自分に義務を課したまま、だれかと結婚した場合、
30:7 夫がそれを聞いても、聞いた日に何も言わなかったなら、彼女の誓いは有効になり、自分に課した義務も効力を持つ。
30:8 でも、夫がそれを聞いた日にやめさせたなら、夫は彼女が負っている誓いと、軽はずみに口にして自分に課した義務を無効にする。そして主は彼女を赦してくださる。
30:9 一方、夫と死別した女性や離婚した女性の誓いは、自分に課したことがすべてそのまま効力を持つ。
30:10 また、女性が夫の家で誓いを立てたり、誓約によって自分に義務を課したりして、
30:11 夫がそれを聞いても何も言わず、やめさせなかったなら、彼女の誓いはすべて有効になり、自分に課した義務もすべて効力を持つ。
30:12 でも、夫がそれを聞いた日に取り消したなら、彼女が口にした誓いも、自分に課した義務も、すべて効力を失う。夫が取り消したのだから、主は彼女を赦してくださる。
30:13 どんな誓いでも、自分を苦しめて節制するという誓約でも、夫はそれを有効にすることも、取り消すこともできる。
30:14 でも、夫が来る日も来る日も何も言わずにいたなら、彼女の誓いも、彼女が負っている義務も、すべてそのまま有効になる。夫は聞いた日に何も言わなかったのだから、それらを認めたことになるのだ。
30:15 でも、夫が聞いてからしばらくたって取り消したなら、彼女の誓いを破らせた責任は、夫が負うことになる。」
30:16 以上が、主がモーセに命じた決まりである。夫と妻の間、また父親と、まだ若くて父の家にいる娘との間について定められたものだ。
31:1 主はモーセにこう言われた。
31:2 「イスラエルの人々のために、ミディアン人に報復しなさい。それが済んだら、あなたは自分の先祖の民のもとに召されることになる。」
31:3 そこでモーセは民にこう言った。「あなたたちの中から男たちを選んで武装させ、戦いに送り出しなさい。ミディアンに攻め込み、主の報復をミディアンに果たすのだ。
31:4 イスラエルのすべての部族から、一つの部族につき千人ずつ、戦いに送り出しなさい。」
31:5 こうしてイスラエルの大勢の中から、一つの部族につき千人、合わせて一万二千人が武装して戦いに備えた。
31:6 モーセは、この一つの部族につき千人を戦いに送り出した。祭司エルアザルの子ピネハスも一緒に送り出した。ピネハスは聖なる祭具と、合図を鳴らすラッパを手にしていた。
31:7 彼らは主がモーセに命じたとおり、ミディアンと戦い、男を一人残らず殺した。
31:8 そのとき殺された者のほかに、ミディアンの王たちも殺した。エビ、レケム、ツル、フル、レバというミディアンの五人の王である。ベオルの子バラムも剣で殺した。
31:9 イスラエルの人々は、ミディアンの女たちとその子どもたちを捕虜にした。そして家畜や群れ、財産をすべて奪い取った。
31:10 彼らが住んでいた町々と、すべての宿営地を火で焼き払った。
31:11 人も家畜も含めて、奪ったものと捕らえたものをすべて持ち帰った。
31:12 そして捕虜と、奪ったものすべてを、モーセと祭司エルアザル、そしてイスラエルの人々の集まりのところへ運んで来た。それは、エリコの向かい、ヨルダン川のほとりにあるモアブの平原の宿営だった。
31:13 モーセと祭司エルアザル、そして集まりのすべての指導者たちは、彼らを迎えるために宿営の外へ出て行った。
31:14 モーセは、戦いから帰って来た軍の責任者たち、つまり千人隊の長や百人隊の長たちに怒った。
31:15 モーセは彼らに言った。「女たちをみな生かしておいたのか。
31:16 この女たちこそ、バラムのそそのかしに従って、ペオルでの出来事のときにイスラエルの人々を主から離れさせ、主に背かせた張本人だ。そのために、主の集まりの中に災いが起こったのだ。
31:17 だから今、子どもたちの中の男の子をみな殺しなさい。男と寝たことのある女もみな殺しなさい。
31:18 ただし、男と寝たことのない女の子は、みな自分たちのために生かしておきなさい。
31:19 あなたたちは七日の間、宿営の外にとどまりなさい。人を殺した者も、殺された人に触れた者もみな、三日目と七日目に、自分自身と捕虜たちを清めなさい。
31:20 すべての衣服、革でできた物、やぎの毛で作った物、木でできた物も、みな清めなさい。」
31:21 祭司エルアザルは、戦いに出た兵士たちに言った。「これは、主がモーセに命じた掟だ。
31:22 金、銀、青銅、鉄、すず、鉛、
31:23 火に耐える物はみな、火の中を通しなさい。そうすればきれいになる。ただし、それでも清めの水で清めなければならない。火に耐えない物はみな、水の中を通しなさい。
31:24 七日目に自分の衣服を洗いなさい。そうすればきれいになる。その後で、宿営に戻ってきてよい。」
31:25 主はモーセに言われた。
31:26 「あなたとエルアザル祭司、そして民の一族の長たちは、捕らえた分捕り物の数を、人も家畜も数え上げなさい。
31:27 そして、その分捕り物を二つに分けなさい。戦いに出て戦った者たちと、民全体との間で分けるのだ。
31:28 戦いに出た兵士たちからは、主への税として、人・牛・ろば・羊のそれぞれ五百のうち一つを取り分けなさい。
31:29 それは彼らが受け取る半分の中から取り、主への献納物として祭司エルアザルに渡しなさい。
31:30 また、イスラエルの人々が受け取る半分の中からは、人・牛・ろば・羊など、すべての家畜の五十のうち一つを取り、主の幕屋の務めを守るレビ人に渡しなさい。」
31:31 モーセと祭司エルアザルは、主がモーセに命じたとおりに行った。
31:32 兵士たちが奪い取った物のうち、分け前として残ったのは次のとおりだった。羊は六十七万五千頭。
31:33 牛は七万二千頭。
31:34 ろばは六万一千頭。
31:35 そして、まだ男を知らない女の人が、全部で三万二千人いた。
31:36 戦いに出た者たちが受け取る半分は、羊が三十三万七千五百頭で、
31:37 そのうち主への税となる羊は、六百七十五頭だった。
31:38 牛は三万六千頭で、そのうち主への税は七十二頭。
31:39 ろばは三万五百頭で、そのうち主への税は六十一頭。
31:40 人は一万六千人で、そのうち主への税は三十二人だった。
31:41 モーセは、主への献納物であるこの税を、主が命じたとおりに祭司エルアザルに渡した。
31:42 一方、イスラエルの人々が受け取る半分は、モーセが戦いに出た兵士たちの分から取り分けたものだった。
31:43 共同体が受け取るこの半分は、羊が三十三万七千五百頭、
31:44 牛が三万六千頭、
31:45 ロバが三万五百頭、
31:46 人が一万六千人だった。
31:47 モーセは、イスラエルの人々のこの半分の中から、人でも家畜でも五十ごとに一つを取り分け、主の幕屋の務めを守るレビ人に渡した。主がモーセに命じたとおりだった。
31:48 そのとき、軍の部隊を率いる者たち、つまり千人隊の長と百人隊の長がモーセのところに来て、
31:49 こう言った。「あなたのしもべであるわたしたちは、指揮下にある戦いの兵士たちを数えました。一人も欠けていませんでした。
31:50 それで、わたしたちはそれぞれが手に入れた金の品々を、主への供え物として持ってきました。腕輪、腕飾り、指輪、耳輪、首飾りです。わたしたちの魂のために、主の前で罪を償っていただくためです。」
31:51 モーセと祭司エルアザルは、彼らから金を、細工を施したあらゆる品を受け取った。
31:52 千人隊の長と百人隊の長が主にささげた献納の金は、全部で一万六千七百五十シェケルだった。
31:53 兵士たちは、それぞれ自分のために戦利品を奪っていたのだ。
31:54 モーセと祭司エルアザルは、千人隊の長と百人隊の長から金を受け取り、それを会見の幕屋に運び入れた。イスラエルの人々のための、主の前での記念とするためだった。
32:1 ルベン族とガド族は、非常に多くの家畜を持っていた。彼らはヤゼルの地とギレアデの地を見て、そこが家畜を飼うのにぴったりの場所だと気づいた。
32:2 そこでガド族とルベン族はやって来て、モーセと祭司エルアザル、そして共同体の指導者たちに、こう言った。
32:3 「アタロト、ディボン、ヤゼル、ニムラ、ヘシュボン、エルアレ、セバム、ネボ、ベオン——
32:4 主がイスラエルの共同体の前で打ち破ってくださったこの地は、家畜を飼うのにぴったりの土地です。わたしたちには家畜がいます。
32:5 もしよろしければ、どうかこの土地をわたしたちに与えて、わたしたちのものとしてください。わたしたちにヨルダン川を渡らせないでください」
32:6 するとモーセはガド族とルベン族に言った。「あなたたちの兄弟が戦いに出て行くのに、あなたたちはここに座っているつもりか。
32:7 どうしてあなたたちは、イスラエルの人々の心をくじいて、主が与えてくださった地へ渡って行けなくするのか。
32:8 あなたたちの父祖も、同じことをした。わたしがあの土地を偵察させようとして、彼らをカデシュ・バルネアから送り出したときのことだ。
32:9 彼らはエシュコルの谷まで上って行き、その地を見た。ところが彼らはイスラエルの人々の心をくじいて、主が与えてくださった地へ入らせないようにした。
32:10 その日、主は激しく怒り、こう誓われた。
32:11 『エジプトから出て来た者たちのうち、二十歳以上の者は一人も、わたしがアブラハム、イサク、ヤコブに誓った土地を見ることはない。彼らはわたしに心から従わなかったからだ。
32:12 ただし、ケナズ人エフンネの子カレブと、ヌンの子ヨシュアは別だ。この二人は主に心から従ったからである。』
32:13 主はイスラエルに激しく怒り、彼らを四十年もの間、荒れ野をさまよわせた。主の目に悪いことをしたその世代が、みな死に絶えるまでだった。
32:14 それなのに、あなたたちは父親たちの後を継いで、罪深い者たちの一族として立ち上がっている。イスラエルに対する主の激しい怒りを、さらにあおろうとしているのだ。
32:15 もしあなたたちが主に背いて離れるなら、主は再びこの民を荒れ野に置き去りにされる。あなたたちは、この民すべてを滅ぼすことになるのだ。」
32:16 すると彼らはモーセに近づいて言った。「わたしたちはここに、家畜のための囲いを造り、子どもたちのために町を建てさせてください。
32:17 そのうえで、わたしたち自身は武装して、イスラエルの人々の先頭に立って進みます。彼らをそれぞれの場所に導き入れるまでです。その間、わたしたちの子どもたちは、この地の住民から身を守るため、城壁のある町に住まわせます。
32:18 イスラエルの人々がそれぞれの相続地を受け取るまで、わたしたちは自分の家には帰りません。
32:19 わたしたちは、ヨルダン川の向こう側やその先で、彼らと一緒に土地を受け取ろうとは思いません。わたしたちの相続地は、ヨルダン川のこちら側、東の方にあるからです。」
32:20 モーセは彼らに言った。「もしあなたたちがこのとおりにするなら、つまり主の前で武装して戦いに出るなら、
32:21 あなたたちの中で武装した者がみな、主の前でヨルダン川を渡り、主がその敵を追い払われるまで戦うなら、
32:22 そして、この地が主の前に征服されたなら、その後であなたたちは帰ってよい。主に対しても、イスラエルに対しても、責めを負うことはない。この地は、主の前であなたたちのものとなる。
32:23 しかし、もしそのとおりにしないなら、あなたたちは主に対して罪を犯すことになる。そして、その罪は必ずあなたたちを見つけ出すと覚えておきなさい。
32:24 さあ、子どもたちのために町を建て、羊のために囲いを造りなさい。そして、自分の口で言ったとおりに実行しなさい。」
32:25 ガド族とルベン族はモーセに言った。「わたしたちは、あなたが命じるとおりにします。
32:26 わたしたちの子どもも妻も、羊も家畜もみんな、このギルアドの町々に残しておきます。
32:27 そして、わたしたちは、あなたが言うとおりに、戦いの武装をした者がみな、主の前で川を渡って戦いに行きます。」
32:28 そこでモーセは、彼らのことで、祭司エルアザルと、ヌンの子ヨシュア、それにイスラエルの各部族の長たちに指示を与えた。
32:29 モーセは彼らに言った。「もしガド族とルベン族が、戦いの武装をした者みなで、あなたたちと一緒に主の前でヨルダン川を渡り、その地があなたたちの前で征服されたなら、彼らにギルアドの地を所有地として与えなさい。
32:30 しかし、もし彼らが武装してあなたたちと一緒に渡らないなら、彼らはあなたたちの間で、カナンの地に所有地を得ることになる。」
32:31 すると、ガド族とルベン族は答えた。「主があなたのしもべであるわたしたちに言われたとおりに、わたしたちはそうします。
32:32 わたしたちは武装して、主の前でカナンの地へ渡って行きます。そして、ヨルダン川のこちら側にある所有地は、わたしたちのものとしてください。」
32:33 そこでモーセは、ガド族とルベン族、それにヨセフの子マナセの半部族に、アモリ人の王シホンの王国と、バシャンの王シホン、いや、バシャンの王オグの王国とを与えた。その地と、その中の町々、そして周りの地一帯の町々を与えたのである。
32:34 ガド族は、ディボン、アタロト、アロエルを建て直し、
32:35 アトロト・ショファン、ヤゼル、ヨグボハ、
32:36 ベト・ニムラ、ベト・ハランを建てた。これらは城壁のある町であり、また羊のための囲いも造った。
32:37 ルベン族は、ヘシュボン、エルアレ、キルヤタイム、
32:38 それにネボ、バアル・メオン（これらの名前は後で変えられた）、シブマを建て直し、建てた町には新しい名前をつけた。
32:39 マナセの子マキルの一族はギレアドに攻め込み、そこを占領して、住んでいたアモリ人を追い出した。
32:40 そこでモーセは、このギレアドをマナセの子マキルに与え、マキルはそこに住んだ。
32:41 マナセの子ヤイルは出て行って、いくつかの村を占領し、それらをハボト・ヤイル（ヤイルの村々）と名づけた。
32:42 また、ノバも出て行って、ケナトとその周りの村々を占領し、その町を自分の名にちなんでノバと名づけた。
33:1 これは、イスラエルの人々がモーセとアロンに導かれ、部隊ごとにエジプトの地を出てから旅をした道のりの記録である。
33:2 モーセは主の命令によって、彼らが宿営地を出発するたびに、その旅の記録を書き留めた。彼らの旅は、次のような道のりだった。
33:3 彼らは第一の月の十五日、過越の祭りの翌日にラメセスを出発した。イスラエルの人々は、すべてのエジプト人が見ている前を、堂々と胸を張って出て行った。
33:4 そのときエジプト人は、主に打たれて死んだ自分たちの初子をみな葬っているところだった。主はエジプトの神々にもさばきを下したのである。
33:5 イスラエルの人々はラメセスを出発し、スコトに宿営した。
33:6 スコトを出発して、荒れ野のはずれにあるエタムに宿営した。
33:7 エタムを出発して、バアル・ツェフォンの手前にあるピ・ハヒロトへ引き返し、ミグドルの前に宿営した。
33:8 ピ・ハヒロトを出発して、海の中を通り抜けて荒れ野に入り、エタムの荒れ野を三日行って、マラに宿営した。
33:9 マラを出発して、エリムに着いた。エリムには水の湧く泉が十二と、なつめやしの木が七十本あった。彼らはそこに宿営した。
33:10 エリムを出発して、葦の海のほとりに宿営した。
33:11 葦の海を出発して、シンの荒れ野に宿営した。
33:12 シンの荒れ野を出発して、ドフカに宿営した。
33:13 ドフカを出発して、アルシュに宿営した。
33:14 アルシュを出発して、レフィディムに宿営した。そこには民が飲む水がなかった。
33:15 レフィディムを出発して、シナイの荒れ野に宿営した。
33:16 シナイの荒れ野を出発して、キブロト・ハタアワに宿営した。
33:17 キブロト・ハタアワを出発して、ハツェロトに宿営した。
33:18 ハツェロトを出発して、リトマに宿営した。
33:19 リトマを出発して、リンモン・ペレツに宿営した。
33:20 リンモン・ペレツを出発して、リブナに宿営した。
33:21 リブナを出発して、リサに宿営した。
33:22 リサを出発して、ケヘラタに宿営した。
33:23 ケヘラタを出発して、シェフェル山に宿営した。
33:24 シェフェル山を出発して、ハラダに宿営した。
33:25 ハラダを出発して、マクヘロトに宿営した。
33:26 マクヘロトを出発して、タハトに宿営した。
33:27 タハトを出発して、テラに宿営した。
33:28 テラを出発して、ミトカに宿営した。
33:29 ミトカを出発して、ハシュモナに宿営した。
33:30 ハシュモナを出発して、モセロトに宿営した。
33:31 モセロトを出発して、ベネ・ヤアカンに宿営した。
33:32 ベネ・ヤアカンを出発して、ホル・ハギドガドに宿営した。
33:33 ホル・ハギドガドを出発して、ヨトバタに宿営した。
33:34 ヨトバタを出発して、アブロナに宿営した。
33:35 アブロナを出発して、エツヨン・ゲベルに宿営した。
33:36 エツヨン・ゲベルを出発して、ツィンの荒れ野に宿営した。ここはカデシュのことである。
33:37 カデシュを出発して、エドムの地のはずれにあるホル山に宿営した。
33:38 祭司アロンは、主の命令によってホル山に登り、そこで死んだ。イスラエルの人々がエジプトの地を出てから四十年目の第五の月の一日のことだった。
33:39 アロンがホル山で死んだとき、彼は百二十三歳だった。
33:40 カナンの地の南部、ネゲブに住んでいたアラドの王、カナン人は、イスラエルの人々が来ることを聞いた。
33:41 ホル山を出発して、ツァルモナに宿営した。
33:42 ツァルモナを出発して、プノンに宿営した。
33:43 プノンを出発して、オボテに宿営した。
33:44 オボテを出発して、モアブの境にあるイイエ・ハアバリムに宿営した。
33:45 イイムを出発して、ディボン・ガドに宿営した。
33:46 ディボン・ガドを出発して、アルモン・ディブラタイムに宿営した。
33:47 アルモン・ディブラタイムを出発して、ネボの手前にあるアバリムの山地に宿営した。
33:48 アバリムの山地を出発して、エリコに近いヨルダン川のほとり、モアブの平野に宿営した。
33:49 こうして彼らは、モアブの平野のヨルダン川沿い、ベト・エシモテからアベル・シティムまでの一帯に宿営した。
33:50 主はエリコに近いヨルダン川のほとり、モアブの平野で、モーセにこう告げた。
33:51 「イスラエルの人々に伝えなさい。あなたたちはこれからヨルダン川を渡って、カナンの地に入る。
33:52 そのときは、その地に住む者をすべてあなたたちの前から追い払いなさい。彼らの石の像をすべて壊し、鋳て造った像もすべて壊し、彼らが拝む丘の祭壇もすべて取り壊しなさい。
33:53 その地を自分たちのものとして、そこに住みなさい。わたしはその地をあなたたちに与え、所有させるからだ。
33:54 その地は、くじを引いて、氏族ごとに相続地として分けなさい。人数の多い部族には広い土地を、人数の少ない部族には狭い土地を与えなさい。くじで当たった場所が、それぞれの部族のものとなる。あなたたちは父祖の部族にしたがって、その地を受け継ぎなさい。
33:55 しかし、もしその地に住む者をあなたたちの前から追い払わないなら、生き残らせた者たちは、あなたたちの目に刺さるとげとなり、わき腹を突く針となる。そして、あなたたちが住むその地で、あなたたちを苦しめることになる。
33:56 そうなれば、わたしが彼らにしようと考えていたことを、あなたたちにすることになる。」
34:1 主はモーセに言われた。
34:2 「イスラエルの人々にこう命じなさい。あなたたちがこれから入っていくカナンの地、その地こそ、あなたたちに相続地として与えられる。これがカナンの地の、その境界だ。
34:3 あなたたちの南側は、ツィンの荒れ野からエドムに沿って広がる。南の境界線は、東は塩の海の端から始まる。
34:4 境界線はそこから南に回ってアクラビムの坂へ向かい、ツィンを通り過ぎる。そしてカデシュ・バルネアの南に達する。さらにハツァル・アダルへ延び、アツモンを通り過ぎる。
34:5 境界線はアツモンから折れてエジプトの川に向かい、その終わりは海に達する。
34:6 西の境界は、大海がそのままあなたたちの境界となる。これがあなたたちの西の境界だ。
34:7 これがあなたたちの北の境界だ。大海からホル山に向かって線を引く。
34:8 ホル山からはレボ・ハマトに向かって境界線を引き、その終わりはツェダドに達する。
34:9 境界線はジフロンへ延び、その終わりはハツァル・エナンに達する。これがあなたたちの北の境界だ。
34:10 東の境界は、ハツァル・エナンからシェファムに向かって線を引く。
34:11 境界線はシェファムから、アインの東側にあるリブラへ下る。さらに下って、キネレト湖の東の斜面に達する。
34:12 そして境界線はヨルダン川へ下り、その終わりは塩の海に達する。これが、周りをぐるりと境界で囲まれたあなたたちの地だ。」
34:13 モーセはイスラエルの人々にこう命じた。「これが、あなたたちがくじで受け継ぐ地だ。主が九つの部族と半分の部族に与えるようにと命じられた地だ。
34:14 というのも、ルベン族とガド族は、それぞれ父祖の家ごとに、そしてマナセの半分の部族も、すでに自分たちの受け継ぐ地を受け取ったからだ。
34:15 この二つの部族と半分の部族は、エリコの向かい、ヨルダン川の東側、日の昇る方角で、自分たちの受け継ぐ地を受け取った。」
34:16 主はモーセに言われた。
34:17 「あなたたちに土地を分け与える人たちの名は、次のとおりだ。祭司エルアザルと、ヌンの子ヨシュア。
34:18 さらに、土地を分けさせるために、各部族から一人ずつ指導者を選び取りなさい。
34:19 その人たちの名は、次のとおりだ。ユダ部族からは、エフンネの子カレブ。
34:20 シメオン部族からは、アミフドの子シェムエル。
34:21 ベニヤミン部族からは、キスロンの子エリダド。
34:22 ダン部族の指導者は、ヤグリの子ブキ。
34:23 ヨセフの子孫のうち、マナセ部族の指導者は、エフォドの子ハニエル。
34:24 エフライム部族の指導者は、シフタンの子ケムエル。
34:25 ゼブルン部族の指導者は、パルナクの子エリツァファン。
34:26 イッサカル部族の指導者は、アザンの子パルティエル。
34:27 アシェル部族の指導者は、シェロミの子アヒフド。
34:28 ナフタリ部族の指導者は、アミフドの子ペダフエル。」
34:29 以上が、カナンの地でイスラエルの人々に土地を分け与えるよう、主が命じた人たちである。
35:1 主はエリコに近いヨルダン川のほとり、モアブの平野で、モーセにこう告げた。
35:2 イスラエルの人々に命じなさい。彼らが受け継ぐ土地の中から、レビ族に住むための町を与えるのだ。その町々の周りにある放牧地も、いっしょにレビ族に与えなさい。
35:3 その町々はレビ族が住むための場所となる。周りの放牧地は、彼らの家畜や財産、すべての動物のためのものとなる。
35:4 レビ族に与える町々の放牧地は、町の壁から外へ向かって、周囲千キュビトの広さとする。
35:5 さらに町の外を測りなさい。東側を二千キュビト、南側を二千キュビト、西側を二千キュビト、北側を二千キュビトとし、町をその真ん中に置く。これがレビ族の町々の放牧地となる。
35:6 レビ族に与える町々のうち、六つは避難のための町としなさい。人を殺してしまった者が逃げ込めるようにするためだ。そのほかに、四十二の町を与える。
35:7 こうしてレビ族に与える町は、放牧地も合わせて全部で四十八になる。
35:8 これらの町は、イスラエルの人々が受け継いだ土地の中から出す。多くを持つ部族からは多く、少しだけ持つ部族からは少なく取る。それぞれが受け継いだ土地の大きさに応じて、自分たちの町の一部をレビ族に与えるのだ。
35:9 主はモーセにこう告げた。
35:10 イスラエルの人々に伝えなさい。あなたたちがヨルダン川を渡ってカナンの地に入ったら、
35:11 いくつかの町を選んで、避難のための町としなさい。うっかり人を殺してしまった者が、そこへ逃げ込めるようにするためだ。
35:12 その町々は、復讐する者から逃れるための避難場所となる。こうして、人を殺してしまった者は、皆の前で裁きを受けるまで殺されずにすむ。
35:13 あなたたちが用意するこれらの町、その六つが、あなたたちのための避難の町となる。
35:14 三つの町はヨルダン川の東側に、もう三つの町はカナンの地に用意しなさい。これらが避難の町となる。
35:15 この六つの町は、イスラエルの人々のためだけでなく、あなたたちの間に住む外国人や滞在者のための避難場所ともなる。うっかり人を殺してしまった者は、だれでもそこへ逃げ込むことができる。
35:16 しかし、もし鉄の道具で相手を打って死なせたのなら、その人は人殺しだ。人殺しは必ず死刑にしなければならない。
35:17 また、人が死ぬほどの石を手に持って相手を打って死なせたのなら、その人は人殺しだ。人殺しは必ず死刑にしなければならない。
35:18 あるいは、人が死ぬほどの木の道具を手に持って相手を打って死なせたのなら、その人は人殺しだ。人殺しは必ず死刑にしなければならない。
35:19 血の復讐をする者が、その人殺しを殺す。出会ったとき、その者が人殺しを殺すのだ。
35:20 また、もし憎しみから相手を突き飛ばしたり、待ち伏せして物を投げつけたりして死なせたのなら、
35:21 あるいは敵意から手で相手を打って死なせたのなら、打った者は必ず死刑にしなければならない。その人は人殺しだからだ。血の復讐をする者は、出会ったときにその人殺しを殺す。
35:22 しかし、もし敵意もなく、とっさに相手を突き飛ばしたり、待ち伏せする気もなく何かの物を投げつけたりして死なせたのなら、
35:23 あるいは、相手が見えないまま、人が死ぬほどの石を落として死なせたのなら――しかもその人が相手の敵でなく、危害を加えようとしたのでもないなら、
35:24 会衆は、打った者と血の復讐をする者との間を、これらの定めに従って裁かなければならない。
35:25 会衆は、打った者を血の復讐をする者の手から救い出し、彼が逃げ込んでいた逃れの町へ連れ戻さなければならない。そして彼は、聖なる油を注がれた大祭司が死ぬまで、その町に住むことになる。
35:26 しかし、もし打った者が、逃げ込んだ逃れの町の境界の外に出て、
35:27 血の復讐をする者が逃れの町の境界の外で彼を見つけ、その打った者を殺したとしても、彼には血の責任はない。
35:28 打った者は、大祭司が死ぬまで逃れの町に住んでいなければならないからだ。だが、大祭司が死んだ後なら、打った者は自分の所有地に帰ってよい。
35:29 これらは、あなたがたが代々、住むすべての場所で守るべき裁きの定めである。
35:30 人を殺した者はだれでも、証人の証言によって、殺人者として死刑にされる。しかし、一人の証人の証言だけで、人を死刑にしてはならない。
35:31 死刑に当たる殺人者の命について、身代金を受け取ってはならない。彼は必ず死刑にされなければならない。
35:32 また、逃れの町に逃げ込んだ者から身代金を受け取って、大祭司が死ぬ前に自分の地に帰って住むことを許してはならない。
35:33 あなたがたは、自分たちのいる地を汚してはならない。流された血は地を汚すからだ。地に流された血は、それを流した者の血によらなければ、贖うことはできない。
35:34 あなたがたが住む地、わたしがその中に住む地を汚してはならない。主であるわたしが、イスラエルの人々の中に住んでいるからだ。
36:1 ヨセフの子孫の氏族のうち、マナセの子マキルの子ギルアデの一族から、家長たちが進み出た。そして、モーセと、イスラエルの人々の家長である指導者たちの前でこう話した。
36:2 「主はわたしの主人に、くじで土地をイスラエルの人々に受け継ぐ財産として分け与えるよう命じられました。また主人は、わたしたちの兄弟ツェロフハドの受け継ぐ財産を、その娘たちに与えるようにと、主から命じられました。
36:3 でも、もし彼女たちがイスラエルのほかの部族の男性と結婚したら、彼女たちの受け継ぐ財産は、わたしたちの先祖の財産から取り分けられ、嫁いだ先の部族の財産に加えられてしまいます。こうして、その分はわたしたちがくじで受けた財産から減ってしまうのです。
36:4 そして、イスラエルの人々にヨベルの年が巡ってきても、彼女たちの財産は嫁ぎ先の部族の財産に加えられたままになります。こうして彼女たちの財産は、わたしたちの父祖の部族の財産から取り去られてしまうのです。」
36:5 そこでモーセは、主の言葉に従ってイスラエルの人々に命じて言った。「ヨセフの子孫の部族の言うことは正しい。
36:6 ツェロフハドの娘たちについて、主はこう命じられる。彼女たちは、自分が良いと思う相手と結婚してよい。ただし、結婚するのは父方の部族の氏族の中に限る。
36:7 イスラエルの人々の受け継ぐ財産が、部族から部族へと移ってはならない。イスラエルの人々は、それぞれ自分の父祖の部族の財産を、しっかり守り続けなければならないからだ。
36:8 イスラエルの人々のどの部族であっても、財産を受け継ぐ娘はみな、父方の部族の氏族の男性と結婚しなければならない。そうすれば、イスラエルの人々はそれぞれ自分の父祖の財産を受け継いでいける。
36:9 財産が一つの部族から別の部族へ移ってはならない。イスラエルの人々の各部族は、それぞれ自分の財産をしっかり守り続けなければならないからだ。」
36:10 ツェロフハドの娘たちは、主がモーセに命じられたとおりにした。
36:11 ツェロフハドの娘たち、マフラ、ティルツァ、ホグラ、ミルカ、ノアは、父方のいとこたちと結婚した。
36:12 彼女たちはヨセフの子マナセの子孫の氏族の中で結婚した。こうして彼女たちの財産は、父方の氏族の部族の中にとどまった。
36:13 以上が、主がモアブの平野、エリコに近いヨルダン川のほとりで、モーセを通してイスラエルの人々に命じられた戒めと定めである。
申命記
1:1 これは、モーセがヨルダン川の東側で、イスラエルのすべての人に語った言葉である。荒れ野、スフの向かいのアラバでのこと、パランとトフェル、ラバン、ハツェロト、ディ・ザハブの間でのことだった。
1:2 ホレブからセイル山を通ってカデシュ・バルネアまでは、十一日の道のりである。
1:3 第四十年の第十一の月の一日に、モーセはイスラエルの人々に語った。それは、主が彼らのためにお命じになったことを、すべてそのまま伝えたものだった。
1:4 それは、モーセがヘシュボンに住むアモリ人の王シホンと、アシュタロテに住むバシャンの王オグをエドレイで討ち取った後のことだった。
1:5 ヨルダン川の東側、モアブの地で、モーセはこの教えを説き明かし始めた。こう言った。
1:6 「わたしたちの神、主はホレブでわたしたちにこう言われた。『あなたたちは、もう十分に長くこの山にとどまった。
1:7 向きを変えて出発し、アモリ人の山地と、その周りのすべての土地へ行きなさい。アラバ、山地、低地、ネゲブ、海沿いの地、カナン人の地、そしてレバノン、あの大きな川、ユーフラテス川までの一帯だ。
1:8 見なさい。わたしはこの地をあなたたちの前に置いた。入って行って、この地を自分のものとしなさい。これは、主があなたたちの先祖アブラハム、イサク、ヤコブに、彼らとその後の子孫に与えると誓われた地だ。』」
1:9 あのとき、わたしはあなたたちにこう言った。「わたしひとりでは、あなたたちを背負いきれない。
1:10 あなたたちの神、主があなたたちを増やしてくださったので、あなたたちは今日、空の星のように数が多い。
1:11 あなたたちの先祖の神、主が、あなたたちを今の千倍にも増やし、約束どおりに祝福してくださいますように。
1:12 それなのに、あなたたちの面倒や重荷、争いを、どうしてわたしひとりで背負えるだろうか。」
1:13 あなたたちの部族から、知恵があり、思慮深く、人に認められている人たちを選びなさい。わたしがその人たちを、あなたたちのかしらに立てよう。」
1:14 すると、あなたたちはわたしに答えて言った。「あなたが言われたとおりにするのは良いことです。」
1:15 そこでわたしは、あなたたちの部族のかしらである、知恵があり人に認められている人たちを選び、あなたたちのかしらに任命した。千人隊長、百人隊長、五十人隊長、十人隊長、そして部族ごとの役人にした。
1:16 そのとき、わたしはあなたたちの裁判官にこう命じた。「あなたたちの同胞の間の訴えをよく聞き、その人とその兄弟、また一緒に暮らす寄留者との間を、公正に裁きなさい。
1:17 裁くときに、えこひいきをしてはならない。身分の低い者にも高い者にも、同じように耳を傾けなさい。人を恐れてはならない。裁きは神のものだからだ。あなたたちには難しすぎる問題は、わたしのところに持ってきなさい。わたしがそれを聞こう。」
1:18 そのとき、わたしはあなたたちがすべきことを、すべて命じた。
1:19 それから、わたしたちはホレブを出発した。あなたたちが見たあの大きく恐ろしい荒れ野を通り、エモリ人の山地へと向かう道を進んだ。わたしたちの神、主が命じられたとおりだ。そしてカデシュ・バルネアまで来た。
1:20 わたしはあなたたちに言った。「あなたたちは、わたしたちの神、主が与えてくださるエモリ人の山地まで来た。
1:21 見なさい。あなたの神、主が、その地をあなたの前に差し出してくださった。あなたの先祖の神、主が言われたとおりに、上って行って、それを自分のものにしなさい。恐れてはならない。おじけづいてはならない。」
1:22 すると、あなたたちは皆わたしのところに来て言った。「わたしたちより先に人を送り、その地を偵察させましょう。どの道を上って行けばよいか、どんな町に入ることになるのかを報告してもらいましょう。」
1:23 わたしはこの提案を良いと思い、あなたたちの中から十二人を選んだ。部族ごとにひとりずつだ。
1:24 その人たちは向きを変えて山地に上って行き、エシュコルの谷まで来て、その地を偵察した。
1:25 彼らはその地の実をいくつか手に取ってわたしたちのところへ持って帰り、こう報告した。「わたしたちの神、主が与えてくださる地は、良い土地です。」
1:26 それなのに、あなたたちは上って行こうとせず、あなたたちの神、主の命令に逆らった。
1:27 そして自分の天幕でこう不平を言った。「主はわたしたちを憎んでいるんだ。だからエジプトから連れ出して、アモリ人の手に渡し、滅ぼそうとしているんだ。
1:28 いったいどこへ上って行けというのか。兄弟たちの報告で、わたしたちはすっかり気力をなくしてしまった。彼らはこう言ったのだ。『あそこの人々はわたしたちより大きくて背が高い。町は大きく、城壁は天まで届いている。しかもそこでアナク人の子孫まで見た。』」
1:29 そこでわたしはあなたたちに言った。「おびえてはいけない。彼らを恐れてはいけない。
1:30 あなたたちの先を進んで行かれるあなたたちの神、主が、あなたたちのために戦ってくださる。あなたたちの目の前で、エジプトでしてくださったのと同じようにだ。
1:31 荒れ野でも、あなたはそれを見た。人が自分の子を抱きかかえて運ぶように、あなたたちの神、主が、ここに着くまでの道中ずっとあなたを運んでくださったのだ。」
1:32 それでも、あなたたちはこの件で、あなたたちの神、主を信じようとしなかった。
1:33 主は、あなたたちが宿営する場所を探すために、あなたたちの先を進んで行かれた。夜は火の中に、昼は雲の中にいて、あなたたちの進むべき道を示してくださったのだ。
1:34 主はあなたたちの言葉を聞いて怒り、こう誓った。
1:35 「この悪い世代の者たちの中で、わたしがあなたたちの先祖に与えると誓ったあの良い地を見る者は、ひとりもいない。
1:36 ただエフンネの子カレブだけは別だ。彼はその地を見る。彼は心から主に従ったから、わたしは彼が歩き回った地を、彼とその子孫に与える。」
1:37 主はあなたたちのせいで、わたしにも怒ってこう言った。「あなたもそこには入れない。」
1:38 あなたのそばに仕えるヌンの子ヨシュア、彼がそこに入る。彼を励ましなさい。彼こそがイスラエルにその地を受け継がせるのだから。
1:39 そして、あなたたちが「奪われてしまう」と言った幼い子どもたち、まだ良い悪いの区別も知らないあなたたちの子どもたち、彼らがそこに入る。わたしはその地を彼らに与え、彼らがそれを受け継ぐ。
1:40 でも、あなたたちは向きを変え、葦の海に向かう道を通って荒れ野へ進みなさい。
1:41 すると、あなたたちはわたしにこう答えた。「わたしたちは主に対して罪を犯しました。これから上って行って、わたしたちの神、主が命じられたとおりに戦います。」そして、めいめい武器を身につけ、山地へ上るくらい簡単だと思った。
1:42 でも、主はわたしに言った。「彼らにこう言いなさい。『上って行くな。戦うな。わたしはあなたたちの中にいない。敵に打ち負かされてしまうから。』」
1:43 わたしはあなたたちにそう告げた。でも、あなたたちは聞かなかった。主の言葉に逆らい、思い上がって山地へ上って行った。
1:44 すると、その山地に住むアモリ人が、あなたたちに立ち向かって出て来た。彼らは蜂のようにあなたたちを追いかけ、セイルからホルマまであなたたちを打ち破った。
1:45 あなたたちは帰って来て、主の前で泣いた。でも、主はあなたたちの声を聞かず、耳を傾けなかった。
1:46 こうして、あなたたちは長い間カデシュにとどまった。そこにとどまっていた日々は、それほど長かった。
2:1 わたしたちは向きを変え、主がわたしに告げたとおり、葦の海の方角へ、荒れ野へと旅立った。そして長い間、セイルの山地の周りを回り続けた。
2:2 主はわたしにこう言われた。
2:3 「この山地の周りを回るのは、もう十分だ。北へ向かいなさい。
2:4 そして民にこう命じなさい。『あなたたちは、セイルに住む、あなたたちの兄弟であるエサウの子孫の領地を通ろうとしている。彼らはあなたたちを恐れるだろう。だから、よく気をつけなさい。
2:5 彼らに争いを仕掛けてはならない。わたしは彼らの土地を、足の裏で踏むほどのわずかな場所さえ、あなたたちに与えない。セイルの山地は、エサウのものとして与えたからだ。
2:6 食べ物は彼らからお金で買って食べ、水も彼らからお金で買って飲みなさい。』
2:7 あなたの神、主は、あなたの手がすることすべてを祝福してきた。あなたがこの広い荒れ野を歩いてきたのを、主は見守ってきた。この四十年の間、あなたの神、主はずっと共にいて、あなたには何一つ足りないものがなかった。」
2:8 それでわたしたちは、セイルに住む兄弟であるエサウの子孫のもとを通り過ぎ、エラトとエツヨン・ゲベルから続くアラバの道を離れた。そして向きを変え、モアブの荒れ野の方へ進んだ。
2:9 主はわたしに言われた。「モアブを苦しめてはならない。彼らに戦いを仕掛けてはならない。わたしは彼らの土地を、あなたのものとして与えない。アルは、ロトの子孫のものとして与えたからだ。」
2:10 ――かつて、そこにはエミム人が住んでいた。アナク人のように背が高く、数も多い、強大な民だった。
2:11 彼らもアナク人と同じように、レファイム人と見なされていた。モアブ人は彼らをエミム人と呼んでいる。
2:12 また、かつてセイルにはホリ人が住んでいた。しかしエサウの子孫が彼らを追い出し、滅ぼして、その地に住みついた。イスラエルが、主から与えられた自分たちの地でしたのと同じである。――
2:13 「さあ、立って、ゼレド川を渡りなさい。」そこでわたしたちはゼレド川を渡った。
2:14 カデシュ・バルネアを出てからゼレド川を渡るまで、三十八年かかった。その間に、戦える年齢の男たちはみな、主が誓われたとおり、宿営の中から一人残らず死に絶えた。
2:15 実際、主の手が彼らを打ち、宿営の中から彼らが絶え果てるまで滅ぼしていったのだ。
2:16 戦える男たちが民の中からすべて死に絶えると、
2:17 主はわたしにこう言われた。
2:18 「あなたは今日、モアブの領地、アルのそばを通り過ぎる。
2:19 そしてアンモン人の住む地に近づく。しかし彼らを苦しめてはならない。争いをしかけてもいけない。アンモン人の地は、あなたに与える所有地ではないからだ。わたしはそこをロトの子孫に、彼らの所有地として与えたのだ。
2:20 ――この地もまた、レファイム人の地と見なされていた。かつてはレファイム人がそこに住んでいたが、アンモン人は彼らをザムズミム人と呼んでいた。
2:21 彼らはアナク人のように背が高く、数も多い、強大な民だった。しかし主は、アンモン人の前で彼らを滅ぼされた。それでアンモン人は彼らを追い出し、その地に住みついた。
2:22 主は、セイルに住むエサウの子孫のためにも、同じことをされた。彼らの前でホリ人を滅ぼされたので、エサウの子孫は彼らを追い出し、その地に住みついた。今日までそうである。
2:23 また、ガザのあたりまでの村々に住んでいたアビム人については、カフトルから出て来たカフトル人が彼らを滅ぼし、その地に住みついた。――
2:24 「さあ、立って旅を続け、アルノン川を渡りなさい。見よ、わたしはヘシュボンの王、アモリ人のシホンと、その地をあなたの手に渡す。それを奪い取りにかかり、彼と戦いを交えなさい。
2:25 今日、わたしは天の下のすべての民に、あなたへの恐れとおののきを与え始める。彼らはあなたのうわさを聞いて、あなたの前で震え上がり、身もだえするだろう。」
2:26 それでわたしは、ケデモテの荒れ野から、ヘシュボンの王シホンのもとへ使者を送り、平和を求めてこう伝えた。
2:27 「あなたの国を通らせてください。わたしは街道だけを通ります。右にも左にもそれません。
2:28 食べ物はお金を払って売ってください。それを食べます。水もお金を払って分けてください。それを飲みます。ただ歩いて通らせてくれるだけでいいのです。
2:29 セイルに住むエサウの子孫や、アルに住むモアブ人がわたしにしてくれたようにしてください。わたしはただ、ヨルダン川を渡って、わたしたちの神、主が与えてくださる地へ行きたいのです。」
2:30 しかし、ヘシュボンの王シホンは、わたしたちが通ることを許さなかった。あなたの神、主が彼の霊をかたくなにし、その心を強情にされたからだ。それは、今日のとおり、彼をあなたの手に渡すためであった。
2:31 主はわたしに言われた。「見よ、わたしはシホンとその地をあなたに渡し始めた。さあ、彼の地を奪い取りにかかりなさい。」
2:32 シホンは、すべての民を率いてわたしたちを迎え撃とうと出て来て、ヤハツで戦いを挑んできた。
2:33 しかし、わたしたちの神、主が彼をわたしたちに渡してくださった。それでわたしたちは、彼とその子らと、すべての民を討ち取った。
2:34 そのとき、わたしたちは彼のすべての町を占領し、どの町でも、男も女も子供も、一人残らず滅ぼし尽くした。生き残った者は一人もいなかった。
2:35 ただ家畜と、占領した町々の分捕り物だけは、自分たちのものとした。
2:36 アルノン川のほとりのアロエルと、谷にある町から、ギレアデに至るまで、わたしたちには攻め落とせないほど堅固な町は一つもなかった。主が、そのすべてをわたしたちに渡してくださったのだ。
2:37 ただ、アンモン人の地にだけは近づかなかった。ヤボク川沿いの一帯も、山地の町々も、わたしたちの神、主が近づくなと命じられた場所には、すべて手を出さなかった。
3:1 それから、わたしたちは向きを変えてバシャンへの道を上って行った。すると、バシャンの王オグが、全軍を率いてエドレイでわたしたちを迎え撃とうと出て来た。
3:2 主はわたしに言われた。「彼を恐れてはならない。わたしは彼と、その民全体と、その地をあなたの手に渡した。ヘシュボンに住んでいたアモリ人の王シホンにしたのと同じように、彼にもしなさい。」
3:3 こうして、わたしたちの神、主は、バシャンの王オグとその民全体をも、わたしたちの手に渡してくださった。わたしたちは彼らを討ち、生き残った者は一人もいなかった。
3:4 そのとき、わたしたちは彼のすべての町を占領した。奪い取らなかった町は一つもなかった。バシャンにあるオグの王国、アルゴブ全域の六十の町すべてである。
3:5 これらはみな、高い城壁と門と、かんぬきで守られた堅固な町だった。そのほかに、城壁のない村もとても多くあった。
3:6 わたしたちは、ヘシュボンの王シホンにしたのと同じように、これらの町を滅ぼし尽くした。どの町でも、男も女も子供も、一人残らず滅ぼした。
3:7 ただ家畜と、町々の分捕り物だけは、自分たちのものとして奪い取った。
3:8 こうしてそのとき、わたしたちはヨルダン川の東側にいた二人のアモリ人の王の手から、その地を奪い取った。アルノン川からヘルモン山までの地である。
3:9 ――シドン人はヘルモンをシルヨンと呼び、アモリ人はこれをセニルと呼んでいた――
3:10 高原のすべての町、ギレアデ全域、そしてサルカとエドレイに至るまでのバシャン全域、これらはみな、バシャンにあるオグの王国の町々だった。
3:11 バシャンの王オグは、あの巨人族レファイムの生き残りで、ただ一人残っていた者だった。彼の寝台は鉄でできていた。それは今もアンモン人の町ラバにあるではないか。普通の人の腕を基準にして、長さは九キュビト、幅は四キュビトもあった。
3:12 そのとき、わたしたちはこの地を自分たちのものとした。そのうち、アルノン川のほとりのアロエルから、ギレアデの山地の半分と、そこにある町々を、わたしはルベン族とガド族に与えた。
3:13 残りのギレアデと、オグの王国だったバシャン全域は、わたしはマナセ族の半分に与えた。アルゴブ全域、つまりバシャン全体は、レファイムの地と呼ばれている。
3:14 マナセの子ヤイルは、ゲシュル人とマアカ人の境界に至るまでのアルゴブ全域を占領した。そして、バシャンのその地方を自分の名にちなんでハボテ・ヤイルと名づけた。それは今日までそう呼ばれている。
3:15 マキルには、わたしはギレアデを与えた。
3:16 ルベン族とガド族には、ギレアデからアルノン川までの地を与えた。川の真ん中が境界で、アンモン人の境界であるヤボク川まで及んでいた。
3:17 さらに、アラバの低地とヨルダン川も与えた。ヨルダン川が境界で、キネレテから、アラバの海、つまり塩の海まで、東側のピスガの山のふもとに至る一帯だ。
3:18 そのとき、わたしはあなたたちに命じた。「あなたたちの神、主は、この地をあなたたちに与えて、自分のものとさせてくださった。だから、戦える男たちは全員、武装して、兄弟であるイスラエルの人々の先に立って川を渡りなさい。
3:19 ただし、あなたたちの妻と子どもたち、それに家畜は、わたしが与えた町々にとどまらせておきなさい。あなたたちがたくさんの家畜を持っているのは、わたしも知っている。
3:20 主があなたたちと同じように、あなたたちの兄弟にも安らぎの地を与えてくださり、彼らもまた、ヨルダン川の向こうで、あなたたちの神、主が与えようとしている地を自分のものとするまで、そうしていなさい。それがすんだら、それぞれ、わたしが与えた自分の土地に帰ってよい。」
3:21 そのとき、わたしはヨシュアにも命じた。「あなたは、あなたたちの神、主がこの二人の王にされたことを、すべてその目で見てきた。主は、あなたがこれから渡っていくすべての国にも、同じようにされる。
3:22 彼らを恐れてはならない。あなたたちの神、主ご自身が、あなたたちのために戦ってくださるのだから。」
3:23 そのとき、わたしは主に願い求めた。
3:24 「主なる神よ、あなたはこのしもべに、あなたの偉大さと力強い御手を示し始めてくださいました。天にも地にも、あなたのような業を行い、あなたのような力ある働きができる神が、ほかにいるでしょうか。
3:25 どうか渡らせてください。そして、ヨルダン川の向こうにあるあの良い地を、この目で見させてください。あの見事な山々と、レバノンを。」
3:26 しかし主は、あなたたちのせいでわたしに怒り、わたしの願いを聞いてはくださらなかった。主はわたしに言われた。「もう十分だ。このことについて、これ以上わたしに話してはならない。
3:27 ピスガの頂に登り、目を上げて西と北と南と東を見渡し、その目でよく見ておきなさい。あなたは、このヨルダン川を渡ることはできないのだから。
3:28 そして、ヨシュアに命じ、彼を励まし、力づけなさい。この民の先頭に立って渡っていくのは彼であり、あなたが見るその地を彼らに受け継がせるのも彼なのだから。」
3:29 こうして、わたしたちはベト・ペオルに向かい合う谷にとどまった。
4:1 さて、イスラエルよ。わたしがあなたたちに教える掟と定めをよく聞き、それを行いなさい。そうすれば、あなたたちは生き、あなたたちの先祖の神、主が与えてくださる地に入って、それを自分のものとすることができる。
4:2 わたしが命じる言葉に、何も付け加えてはならない。また、そこから何も取り去ってはならない。わたしが命じる、あなたたちの神、主の命令をしっかり守るためだ。
4:3 あなたたちは、主がバアル・ペオルで行われたことを、この目で見た。バアル・ペオルに従った者を、あなたの神、主は、あなたたちの中から一人残らず滅ぼされたのだ。
4:4 しかし、あなたたちの神、主にしっかりつき従ったあなたたちは、今日、皆こうして生きている。
4:5 見なさい。わたしは、わたしの神、主が命じられたとおりに、あなたたちに掟と定めを教えた。あなたたちがこれから入って自分のものとする地で、それを行うためだ。
4:6 これを守り、行いなさい。そうすれば、それが多くの民の前で、あなたたちの知恵となり、賢さとなる。彼らはこれらすべての掟を聞いて、こう言うだろう。「この大きな国民は、本当に知恵と分別のある民だ。」
4:7 わたしたちの神、主は、わたしたちが呼び求めるといつも近くにいてくださる。これほど神を近くに持つ大きな国民が、ほかにどこにあるだろうか。
4:8 今日わたしがあなたたちの前に示すこの律法のように、正しい掟と定めを持つ大きな国民が、ほかにどこにあるだろうか。
4:9 ただ、気をつけなさい。自分の魂をよく守りなさい。あなたが自分の目で見たことを忘れないように。生きているかぎり、それが心から離れないように。それを子どもたちや孫たちに教えなさい。
4:10 ホレブで、あなたたちの神、主の前に立ったあの日のことを、忘れてはならない。その日、主はわたしにこう言われた。「わたしのために民を集めなさい。わたしの言葉を聞かせよう。そうすれば、彼らは地上で生きるかぎりわたしを畏れることを学び、子どもたちにも教えるようになる。」
4:11 あなたたちは近づいて、山のふもとに立った。山は火で燃え上がり、その炎は天の中心にまで達し、あたりは暗闇と雲と濃い闇に包まれていた。
4:12 主は火の中からあなたたちに語りかけられた。あなたたちは語る声を聞いたが、姿は何も見えなかった。ただ声だけがあった。
4:13 主は、あなたたちに守るよう命じた契約、すなわち十の戒めをあなたたちに告げ、それを二枚の石の板に書き記された。
4:14 そのとき主はわたしに命じて、あなたたちに掟と定めを教えるようにされた。あなたたちがこれから渡って行って自分のものとする地で、それを行うためだ。
4:15 だから、自分の魂をよくよく守りなさい。主がホレブで火の中からあなたたちに語りかけられた日、あなたたちはどんな姿も見なかったのだから。
4:16 堕落して、自分のために偶像を造ることのないようにするためだ。どんな形の像であれ、男や女の姿であれ、
4:17 地上のどんな獣の姿であれ、空を飛ぶどんな翼のある鳥の姿であれ、
4:18 地を這うどんなものの姿であれ、地の下の水にいるどんな魚の姿であれ、それをまねて造ってはならない。
4:19 また、目を天に向けて、太陽や月や星々、天のすべての万象を見て、それにひかれてひれ伏し、それに仕えることのないようにしなさい。それらは、あなたの神である主が、天の下のすべての民に分け与えられたものだ。
4:20 しかし主は、あなたたちを取り、鉄を溶かす炉のようなエジプトから連れ出された。それは、今日あるように、あなたたちを主ご自身のものである民とするためだった。
4:21 主は、あなたたちのことでわたしに怒り、わたしがヨルダン川を渡れず、あなたの神である主が受け継ぐ地として与えてくださる良い地に入れないと誓われた。
4:22 わたしはこの地で死ぬ。ヨルダン川を渡ることはない。でも、あなたたちは渡って行き、あの良い地を自分のものとする。
4:23 気をつけなさい。あなたたちの神である主が結ばれた契約を忘れて、主が禁じられたどんな形の像であれ、自分のために偶像を造ることのないように。
4:24 あなたの神である主は、焼き尽くす火であり、ねたむ神だからだ。
4:25 あなたたちに子どもが生まれ、孫が生まれ、その地に長く住むようになったとき、堕落してどんな形であれ偶像を造り、あなたの神である主の目に悪とされることをして主を怒らせるなら、
4:26 わたしは今日、天と地をあなたたちに対する証人として呼ぶ。あなたたちは、ヨルダン川を渡って自分のものにしようとしているあの地から、たちまち完全に滅び去る。その地で長く生きることはなく、必ず滅ぼし尽くされる。
4:27 主はあなたたちを諸国の民の中に散らされる。主が導いて行かれる国々の中で、あなたたちはわずかな数だけ残される。
4:28 そこであなたたちは、人の手が造った神々、見ることも聞くことも食べることも嗅ぐこともできない木や石に仕えることになる。
4:29 しかし、あなたたちがそこから、あなたの神である主を求めるなら、あなたは主を見いだす。心を尽くし、魂を尽くして主を捜し求めるなら、きっと見つかる。
4:30 あなたが苦しみの中にあって、これらすべてのことがあなたに降りかかるとき、終わりの日に、あなたはあなたの神である主に立ち帰り、その声に聞き従う。
4:31 あなたの神である主は、あわれみ深い神だからだ。主はあなたを見捨てたりしないし、滅ぼしたりもしない。あなたの先祖たちと結んだ約束、彼らに誓った約束を忘れることもない。
4:32 ためしに、昔のことをたずねてみるといい。あなたが生まれるずっと前、神が人をこの地に創造したその日までさかのぼって、天の端から端まで見わたしてみるといい。こんなに大きな出来事が、かつて起きただろうか。こんな話を聞いたことがあるだろうか。
4:33 火の中から語る神の声を聞いて、それでも生きていた民が、ほかにいるだろうか。あなたはその声を聞いたのに、生きている。
4:34 あるいは、ある民をほかの民の中から取り出して自分のものにしようと、乗り出してきた神が、ほかにいるだろうか。あなたの神である主は、まさにそれをした。試練を与え、しるしと不思議なわざを行い、戦いをし、力強い手と伸ばした腕をもって、大きな恐れを起こしながら、エジプトであなたたちのために、あなたの見ている前で、すべてをやってのけたのだ。
4:35 あなたがこれを見せられたのは、主こそが神であり、ほかに神はいないと知るためだ。
4:36 主は天からあなたに声を聞かせて、あなたを教え導いた。地の上では、あの大きな火をあなたに見せた。そしてあなたは、その火の中から主の言葉を聞いた。
4:37 主はあなたの先祖たちを愛し、その後に続く子孫を選んだ。だからみずから、大いなる力をもって、あなたをエジプトから連れ出した。
4:38 あなたよりも大きくて強い国々を、あなたの前から追い払うためだ。そしてあなたをその地に導き入れ、彼らの土地を受け継ぐ財産として、あなたに与えるためだ。今日のとおりに。
4:39 だから今日、このことをよく知り、心に刻みなさい。主こそが神であり、上は天でも、下は地でも、ほかに神はいない。
4:40 そして、わたしが今日あなたに命じる主の定めと戒めを守りなさい。そうすれば、あなたも、あなたの後に続く子どもたちもうまくいく。そして、あなたの神である主が与えてくださるこの土地で、あなたはいつまでも長く生きることができる。
4:41 それからモーセは、ヨルダン川の東側、日の昇るほうに、三つの町を選び分けた。
4:42 人を殺してしまった者が、そこへ逃げ込めるようにするためだ。前々から相手を憎んでいたわけでもなく、知らないうちに隣人を殺してしまった場合、その者はこれらの町の一つに逃げ込めば、生きのびることができる。
4:43 その三つの町とは、荒れ野の高原の地にあるベツェル。これはルベン族のため。ギレアドにあるラモト。これはガド族のため。バシャンにあるゴランで、これはマナセ族のためだった。
4:44 これが、モーセがイスラエルの人々の前に示した律法である。
4:45 これらは、イスラエルの人々がエジプトを出たあとで、モーセが彼らに語った教えと、定めと、掟である。
4:46 それは、ヨルダン川の東側、ベト・ペオルに向かい合った谷でのことだった。そこはヘシュボンに住んでいたアモリ人の王シホンの地だった。モーセとイスラエルの人々は、エジプトを出たあと、この王を打ち破った。
4:47 そして、彼らはシホンの地と、バシャンの王オグの地を自分たちのものとした。この二人はアモリ人の王で、ヨルダン川の東側、日の昇るほうにいた。
4:48 その地は、アルノン川のほとりにあるアロエルから、シオン山、つまりヘルモン山までと、
4:49 ヨルダン川の東側にある平地すべて、ピスガの山のふもとにあるアラバの海までを含んでいた。
5:1 モーセはイスラエルのすべての人を呼び集めて、こう言った。「イスラエルよ、聞きなさい。今日、わたしがあなたたちに語る定めと掟を。それをしっかり学び、守り、実際に行いなさい。
5:2 わたしたちの神である主は、ホレブでわたしたちと契約を結ばれた。
5:3 主がこの契約を結ばれたのは、わたしたちの先祖とではない。今日ここに生きているわたしたち、まさにこのわたしたちと結ばれたのだ。
5:4 主は山の上で、火の中から、あなたたちと顔と顔を合わせて語られた。
5:5 そのとき、わたしは主とあなたたちの間に立って、主の言葉をあなたたちに伝えた。あなたたちが火を恐れて、山に登らなかったからだ。主はこう言われた。
5:6 「わたしは、あなたをエジプトの地、奴隷の家から連れ出した、あなたの神、主である。
5:7 「わたしのほかに、ほかの神々を持ってはならない。
5:8 自分のために、刻んだ像を造ってはならない。上の天にあるもの、下の地にあるもの、地の下の水の中にあるもの、どんな形も造ってはならない。
5:9 それらを拝んではならない。それらに仕えてはならない。わたしは、あなたの神、主であり、ねたむ神だからだ。わたしを憎む者には、父の罪を子に、三代、四代にまで問う。
5:10 でも、わたしを愛し、わたしの命令を守る者には、幾千代にわたって慈しみを注ぐ。
5:11 あなたの神、主の名を、軽々しく口にしてはならない。主は、その名を軽々しく口にする者を、罰せずにはおかない。
5:12 安息日を守り、これを聖なる日としなさい。あなたの神、主が命じられたとおりに。
5:13 六日の間働いて、すべての仕事をしなさい。
5:14 でも七日目は、あなたの神、主の安息日である。その日には、どんな仕事もしてはならない。あなたも、息子も娘も、男女の奴隷も、牛もろばも、どんな家畜も、あなたの町にいる寄留者もだ。あなたの男女の奴隷が、あなたと同じように休むためである。
5:15 あなたは、エジプトの地で奴隷だったことを思い出しなさい。あなたの神、主が、力強い手と伸ばした腕で、あなたをそこから連れ出した。だから、あなたの神、主は、安息日を守るようにと、あなたに命じられた。
5:16 あなたの父と母を敬いなさい。あなたの神、主が命じられたとおりに。そうすれば、あなたの神、主が与える土地で、あなたは長く生き、幸せに暮らせる。
5:17 人を殺してはならない。
5:18 姦淫してはならない。
5:19 盗んではならない。
5:20 隣人について、うその証言をしてはならない。
5:21 隣人の妻を欲しがってはならない。隣人の家をむさぼってはならない。その畑も、男の召使いも女の召使いも、牛もろばも、隣人のものは何一つ欲しがってはならない。
5:22 主はこれらの言葉を、山で、火と雲と濃い闇の中から、あなたたちの全会衆に大きな声で告げられた。それ以上は何も加えられなかった。そして二枚の石の板にそれを書いて、わたしに渡された。
5:23 山が火で燃えている中、あなたたちは闇の中から聞こえるその声を聞いた。すると、あなたたちの部族の長たちと長老たちがみな、わたしのところに近づいてきて、
5:24 こう言った。「見てください。わたしたちの神、主は、その栄光と偉大さをわたしたちに示し、火の中からその声を聞かせてくださいました。今日わたしたちは、神が人に語りかけても、人が生きていられることを知りました。
5:25 でも今、どうしてわたしたちは死ななければならないのでしょう。この大きな火がわたしたちを焼き尽くしてしまいます。これ以上わたしたちの神、主の声を聞き続ければ、わたしたちは死んでしまいます。
5:26 生きている神が火の中から語られる声を、わたしたちのように聞いて、なお生きていられた者が、いったいだれかいるでしょうか。
5:27 あなたが近づいて行って、わたしたちの神、主が言われることをすべて聞いてください。そして、わたしたちの神、主があなたに語られることを、すべてわたしたちに伝えてください。わたしたちはそれを聞いて、行います。」
5:28 あなたたちがわたしに語ったとき、主はその言葉を聞かれた。そして主はわたしに言われた。「わたしは、この民があなたに語った言葉を聞いた。彼らの言ったことは、すべてもっともだ。
5:29 彼らがいつもこのような心を持ち、わたしを畏れ、わたしのすべての命令を守ってくれたらいい。そうすれば、彼らも彼らの子孫も、いつまでも幸せに暮らせるのだから。
5:30 行って、彼らに言いなさい。『自分たちの天幕に帰りなさい』と。
5:31 でも、あなたはここに、わたしのそばに立っていなさい。わたしはあなたに、すべての命令と掟と定めを告げる。あなたはそれを彼らに教えなさい。彼らがそれを、わたしが与えて受け継がせる地で行うためだ。」
5:32 だから、あなたたちの神、主が命じられたとおりに、しっかり守って行いなさい。右にも左にもそれてはいけない。
5:33 あなたたちの神、主が命じられた道を、まっすぐに歩みなさい。そうすれば、あなたたちは生きることができ、幸せに暮らし、受け継ぐ地で長く生きられる。
6:1 これが、あなたたちの神、主があなたたちに教えるようにと命じられた命令と掟と定めである。あなたたちが渡って行って受け継ぐ地で、これを行うためだ。
6:2 それは、あなたが生きているかぎり、あなたも、あなたの子も孫も、あなたたちの神、主を畏れ、わたしが命じるそのすべての掟と命令を守るためであり、また、あなたが長く生きられるためだ。
6:3 イスラエルよ、聞きなさい。しっかり守って行いなさい。そうすれば、あなたは幸せになり、あなたたちの父祖の神、主が約束されたとおり、乳と蜜の流れる地で大いに増える。
6:4 イスラエルよ、聞きなさい。わたしたちの神、主は唯一の主である。
6:5 あなたは心を尽くし、魂を尽くし、力を尽くして、あなたの神、主を愛しなさい。
6:6 きょうわたしがあなたに命じるこれらの言葉を、心に留めておきなさい。
6:7 それを子どもたちにしっかり教えなさい。家にいるときも、道を歩くときも、寝るときも、起きるときも、そのことを語りなさい。
6:8 それをしるしとしてあなたの手に結びつけ、額の間につけるしるしとしなさい。
6:9 また、それをあなたの家の戸口の柱や門に書き記しなさい。
6:10 あなたの神、主は、あなたの先祖アブラハム、イサク、ヤコブに誓われた地へ、あなたを導き入れてくださる。それは、あなたが建てたのではない大きくて立派な町々や、
6:11 あなたが満たしたのではない、良い物であふれる家々、あなたが掘ったのではない井戸、あなたが植えたのではないぶどう畑やオリーブの木のある地だ。あなたはそれを食べて満ち足りるだろう。
6:12 そのとき気をつけなさい。あなたをエジプトの地、奴隷の家から連れ出してくださった主を、忘れてはいけない。
6:13 あなたの神、主を畏れ、主に仕え、主の名にかけて誓いなさい。
6:14 ほかの神々、あなたの周りにいる民の神々に、ついて行ってはいけない。
6:15 あなたの神、主は、あなたのただ中におられる、ねたむ神だからだ。あなたの神、主の怒りが燃え上がり、あなたを地の面から滅ぼしてしまわないようにしなさい。
6:16 あなたたちがマサでしたように、あなたたちの神、主を試してはいけない。
6:17 あなたたちの神、主が命じられた戒めと、定めと、掟を、しっかり守りなさい。
6:18 主が見て正しく良いとされることを行いなさい。そうすれば、あなたは幸せになり、主が先祖に誓われたあの良い地に入って、それを受け継ぐことができる。
6:19 そして主が言われたとおり、あなたの敵をすべてあなたの前から追い払ってくださる。
6:20 将来、あなたの子どもが「わたしたちの神、主があなたたちに命じられたこの定めや掟、決まりには、どんな意味があるの?」と尋ねたら、
6:21 あなたはその子にこう答えなさい。「わたしたちはエジプトでファラオの奴隷だった。でも主が力強い御手で、わたしたちをエジプトから連れ出してくださった。
6:22 主はわたしたちの目の前で、エジプトとファラオ、そしてその家のすべての者に、大きくて恐ろしいしるしと不思議を行われた。
6:23 そしてわたしたちをそこから連れ出し、先祖に誓われた地に導き入れて、それをわたしたちに与えようとされた。
6:24 主はわたしたちに、これらの掟をすべて守るよう命じられた。それは、わたしたちの神、主を敬い、いつまでも幸せに過ごし、今日のように生き続けるためだ。
6:25 そして、わたしたちの神、主が命じられたとおり、この戒めをすべてしっかり守って行うなら、それがわたしたちの義となる。」
7:1 あなたの神、主は、あなたが入って受け継ごうとしている地にあなたを導き入れ、多くの民族をあなたの前から追い払われる。ヘト人、ギルガシ人、アモリ人、カナン人、ペリジ人、ヒビ人、エブス人という、あなたより数が多く強い七つの民族だ。
7:2 あなたの神、主が彼らをあなたに渡し、あなたが彼らを打ち破ったなら、彼らを必ず滅ぼし尽くしなさい。彼らと契約を結んではいけない。彼らを憐れんではいけない。
7:3 彼らと縁組みをしてはいけない。あなたの娘を彼らの息子に嫁がせたり、彼らの娘をあなたの息子の妻に迎えたりしてはいけない。
7:4 彼らはあなたの子をわたしから引き離し、ほかの神々に仕えさせてしまうからだ。そうなれば、主の怒りがあなたたちに燃え上がり、あなたをたちまち滅ぼしてしまう。
7:5 むしろ、あなたたちは彼らにこうしなさい。彼らの祭壇を壊し、石の柱を砕き、アシェラの像を切り倒し、偶像を火で焼き払いなさい。
7:6 あなたは、あなたの神、主にとって聖なる民だからだ。主は地上のすべての民の中からあなたを選び、ご自分の宝の民とされた。
7:7 主があなたたちに心を寄せ、あなたたちを選んでくださったのは、あなたたちがどの民よりも数が多かったからではない。むしろ、あなたたちはどの民よりもいちばん数が少なかった。
7:8 そうではなく、主があなたたちを愛し、あなたたちの先祖に誓った約束を守ってくださったからこそ、主は力強い御手であなたたちを導き出し、奴隷の家から、エジプトの王ファラオの手から、あなたを買い戻してくださったのだ。
7:9 だから、知っておきなさい。あなたの神、主こそが神である。主は真実の神であり、ご自分を愛し、その命令を守る者には、千代までも契約と慈しみを守ってくださる。
7:10 しかし、ご自分を憎む者には、その顔に向かって報い、これを滅ぼす。主は、ご自分を憎む者への報いをためらわず、その顔に向かって必ず報いる。
7:11 だから、わたしが今日あなたに命じるこの命令と掟と定めを、しっかり守って行いなさい。
7:12 あなたたちがこれらの定めに聞き従い、守り行うなら、あなたの神、主は、あなたの先祖に誓った契約と慈しみを、あなたに守ってくださる。
7:13 主はあなたを愛し、祝福し、その数を増やしてくださる。主はあなたに与えると先祖に誓ったその土地で、あなたの子孫を祝福し、畑の実り、穀物、新しいぶどう酒、オリーブ油、牛の子、羊の群れを増やしてくださる。
7:14 あなたはどの民よりも祝福される。あなたたちの中にも、家畜の中にも、子を産めないものは一つもいなくなる。
7:15 主はあなたからすべての病を取り除いてくださる。あなたが知っているエジプトのあの恐ろしい病を、あなたには一つもかからせず、あなたを憎むすべての者に下される。
7:16 あなたの神、主が渡してくださるすべての民を、あなたは滅ぼし尽くさなければならない。彼らを見て情けをかけてはならない。また、彼らの神々に仕えてはならない。それはあなたにとって罠となるからだ。
7:17 あなたは心の中でこう言うかもしれない。「これらの民はわたしより多い。どうして彼らを追い払えるだろうか」と。
7:18 しかし、彼らを恐れてはならない。あなたの神、主がファラオとエジプト全体になさったことを、しっかりと思い起こしなさい。
7:19 あなたが自分の目で見たあの大きな試練、しるしと不思議、力ある御手と伸ばされた腕を思い起こしなさい。あなたの神、主はそれらによって、あなたを導き出された。あなたが恐れているすべての民に対しても、あなたの神、主は同じようにしてくださる。
7:20 それだけではない。あなたの神、主は彼らの中にすずめ蜂を送り、あなたの前から逃げ隠れて生き残った者たちが滅びるまで、そうし続けられる。
7:21 彼らを恐れておののいてはならない。あなたの神、主があなたのただ中におられるからだ。主は偉大で、畏るべき神である。
7:22 あなたの神、主は、これらの民をあなたの前から少しずつ追い払われる。あなたは一気に彼らを滅ぼし尽くすことはできない。そんなことをすれば、野の獣が増えて、あなたを襲うことになるからだ。
7:23 しかし、あなたの神、主は彼らをあなたの手に渡し、彼らが滅ぼされるまで、大きな混乱に陥れてくださる。
7:24 主は彼らの王たちをあなたの手に渡される。あなたは彼らの名を天の下から消し去る。あなたが彼らを滅ぼし尽くすまで、あなたに立ち向かえる者は一人もいない。
7:25 彼らの神々の像は火で焼き払いなさい。その像にかぶせてある銀や金を欲しがってはならない。それを自分のものにしてはならない。それが罠となって、あなたを捕らえるからだ。それはあなたの神、主が忌み嫌われるものだ。
7:26 忌むべきものを自分の家に持ち込んではならない。そうすれば、あなたもそれと同じように、滅ぼし尽くされるものとなってしまう。それをとことん嫌い、とことん忌み嫌いなさい。それは滅ぼし尽くされるべきものだからだ。
8:1 わたしが今日あなたに命じるこの戒めを、しっかり守って行いなさい。そうすればあなたたちは生きて増え広がり、主が先祖に誓われた地に入って、それを自分のものにできる。
8:2 この四十年の間、主があなたを荒れ野で導いてこられた道のりを、すべて思い起こしなさい。それは、あなたを苦しめて試し、あなたの心の中にあるもの、つまりあなたが主の戒めを守るかどうかを知るためだった。
8:3 主はあなたを苦しめ、飢えさせ、そして、あなたも先祖も知らなかったマナを食べさせてくださった。人はパンだけで生きるのではなく、主の口から出るすべての言葉によって生きる。それをあなたに教えるためだった。
8:4 この四十年の間、あなたの着ている服はすり切れず、足がはれることもなかった。
8:5 だから心にとめておきなさい。人が自分の子を教え導くように、あなたの神、主もあなたを教え導いておられるのだ。
8:6 あなたの神、主の戒めを守り、その道を歩み、主を敬いなさい。
8:7 あなたの神、主は、あなたを良い地に導き入れようとしておられる。そこは、谷にも山にもわき出て流れる川と、泉と、地下水のある地。
8:8 小麦と大麦、ぶどうといちじくとざくろのある地。オリーブの油と蜂蜜のとれる地だ。
8:9 そこでは、乏しさを感じることなくパンを食べられ、何一つ足りないものはない。その石は鉄で、山からは銅を掘り出せる地だ。
8:10 あなたは食べて満ち足りたとき、あなたの神、主が与えてくださったこの良い地について、主をほめたたえなさい。
8:11 気をつけなさい。今日わたしが命じる主の戒めと定めと掟を守らず、あなたの神、主を忘れてしまわないように。
8:12 あなたが食べて満ち足り、りっぱな家を建てて住むようになったとき、
8:13 牛や羊の群れが増え、銀や金がたまり、持ち物がすべて増えていく。
8:14 そのとき、あなたの心はおごり高ぶり、あなたの神、主を忘れてしまうかもしれない。エジプトの地、奴隷の家からあなたを連れ出してくださった主を。
8:15 主は、燃えるような蛇やさそりがいて、水のない、あの大きくて恐ろしい荒れ野を、あなたに歩ませてくださった。そして硬い岩から水を出してくださった。
8:16 また荒れ野では、あなたの先祖も知らなかったマナを食べさせてくださった。それは、あなたを低くし、試して、あなたの将来に幸いを与えるためだった。
8:17 あなたは心の中で、「自分の力、自分のこの手の働きで、この富を手に入れたのだ」と言うかもしれない。
8:18 でも、あなたの神、主を思い出しなさい。富を得る力をあなたに与えてくださるのは、主だからだ。それは、主が先祖に誓った約束を、今日のとおりに果たすためなのだ。
8:19 もし、あなたの神、主を忘れて、ほかの神々に従い、それに仕えてひれ伏すなら、わたしは今日、あなたたちにはっきり告げる。あなたたちは必ず滅びる。
8:20 主があなたたちの前で滅ぼそうとしている国々のように、あなたたちも滅びる。あなたたちの神、主の声に聞き従わなかったからだ。
9:1 イスラエルよ、聞いてほしい。あなたは今日、ヨルダン川を渡ろうとしている。そこに入って、あなたより大きくて強い国々を追い出し、その地を自分のものにするためだ。その町々は大きく、城壁は天まで届くほど高い。
9:2 そこに住むのは、アナク人という背が高くて強い人々だ。あなたも知っているとおり、「アナク人の前に、だれが立ち向かえるだろう」と言われている。
9:3 だから今日、はっきり知ってほしい。あなたの神、主ご自身が、焼き尽くす火となって、あなたの先を進んでくださる。主が彼らを滅ぼし、あなたの前で打ち倒してくださる。だからあなたは、主が約束したとおり、すぐに彼らを追い出し、滅ぼすことになる。
9:4 主があなたの前から彼らを追い払ったとき、心の中でこう思ってはいけない。「わたしが正しいから、主はこの地を手に入れさせるために連れてきてくれたのだ」と。実際は、この国々が悪いことをしていたから、主が彼らをあなたの前から追い出すのだ。
9:5 あなたがこの地を手に入れられるのは、あなたが正しいからでも、心がまっすぐだからでもない。この国々が悪いことをしていたから、あなたの神、主が彼らをあなたの前から追い出すのだ。そしてそれは、主があなたの先祖、アブラハム、イサク、ヤコブに誓った約束を果たすためでもある。
9:6 だから知ってほしい。あなたの神、主がこの良い地をあなたに与えて自分のものにさせるのは、あなたが正しいからではない。あなたは強情な民だからだ。
9:7 忘れないで、覚えておいてほしい。あなたは荒れ野で、あなたの神、主を怒らせた。エジプトの地を出た日から、この場所に来るまで、あなたたちはずっと主に逆らい続けてきた。
9:8 ホレブでも、あなたたちは主を怒らせた。主は激しく怒り、あなたたちを滅ぼそうとされたほどだった。
9:9 わたしが石の板、つまり主があなたたちと結んだ契約の板を受け取るために山に登ったとき、わたしは四十日四十夜そこにとどまった。その間、パンも食べず、水も飲まなかった。
9:10 主はわたしに、二枚の石の板を渡してくださった。その板には、神の指で文字が刻まれていた。そこには、あの集まりの日に、主が山で火の中からあなたたちに語ったすべての言葉が記されていた。
9:11 四十日四十夜が終わったとき、主はわたしに、二枚の石の板、つまり契約の板を渡してくださった。
9:12 そして主はわたしに言った。「すぐに立って、ここから下りなさい。あなたがエジプトから連れ出したあなたの民が、堕落してしまったからだ。彼らはあっという間に、わたしが命じた道からそれてしまった。自分たちのために、金属を溶かして偶像を造ったのだ。」
9:13 主はさらにわたしに言った。「わたしはこの民を見た。まったく、強情な民だ。
9:14 わたしを止めるな。彼らを滅ぼし、その名を天の下から消し去る。そして、あなたを彼らよりも強く、数の多い国民にする。」
9:15 そこでわたしは向きを変えて、山から下りた。山は火で燃えていた。わたしの両手には、契約の二枚の板があった。
9:16 見ると、あなたたちは自分の神である主に対して罪を犯していた。金属を溶かして子牛の像を造り、主が命じた道から、あっという間にそれてしまっていたのだ。
9:17 わたしは二枚の板をつかみ、両手から投げつけて、あなたたちの目の前で砕いた。
9:18 そしてわたしは、前のときと同じように、主の前にひれ伏した。四十日四十夜、パンも食べず、水も飲まなかった。あなたたちが主の目に悪いことをして主を怒らせ、あれほどの罪をすべて犯したからだ。
9:19 主があなたたちを滅ぼそうと激しく怒っていた、その怒りが、わたしは怖かったのだ。でも、主はこのときも、わたしの願いを聞いてくださった。
9:20 主はアロンにも激しく怒り、彼を滅ぼそうとした。だからわたしは、そのときアロンのためにも祈った。
9:21 そして、あなたたちが造ったあの罪の子牛を取り、火で焼いた。それを打ち砕き、細かくすりつぶして、ちりのようになるまでにした。そのちりを、山から流れ下る谷川に投げ捨てた。
9:22 あなたたちはタベラでも、マサでも、キブロト・ハタアワでも、主を怒らせた。
9:23 主があなたたちをカデシュ・バルネアから送り出したとき、こう言った。「上って行って、わたしが与えた地を自分のものにしなさい。」ところがあなたたちは、自分の神である主の命令に逆らった。主を信じず、その声に聞き従わなかったのだ。
9:24 わたしがあなたたちを知ったその日から、あなたたちはずっと主に逆らい続けてきた。
9:25 こうしてわたしは、四十日四十夜、主の前にひれ伏していた。主があなたたちを滅ぼすと言われたからだ。だからわたしはずっとひれ伏し続けた。
9:26 わたしは主に祈って、こう言った。「わたしの主、神よ。どうかあなたの民を、あなたのものである民を滅ぼさないでください。あなたはその大いなる力で彼らを買い戻し、強い手でエジプトから連れ出してくださったのです。
9:27 あなたのしもべ、アブラハム、イサク、ヤコブのことを思い出してください。この民の頑固さや、悪や、罪に目を留めないでください。
9:28 そうしないと、あなたがわたしたちを連れ出したあの国の人々がこう言うでしょう。『主は、約束した地へ彼らを連れて行くことができなかったのだ。それに、彼らを憎んでいたから、荒れ野で死なせるために連れ出したのだ』と。
9:29 でも彼らは、あなたの民、あなたのものである民です。あなたが大きな力と伸ばした腕で連れ出された民なのです。」
10:1 そのとき、主はわたしにこう言われた。「前と同じような石の板を二枚、切り出しなさい。そして山に登って、わたしのところに来なさい。木の箱も作りなさい。
10:2 その板には、あなたが砕いた前の板に書いてあった言葉を、わたしが書く。それを箱に納めなさい。」
10:3 そこでわたしはアカシアの木で箱を作り、前と同じような石の板を二枚切り出して、その二枚の板を手に持って山に登った。
10:4 すると主は、前と同じように板に書いてくださった。あなたたちが集まったあの日、主が山で火の中からあなたたちに語った十の言葉である。主はそれをわたしに渡された。
10:5 わたしは向きを変えて山を下り、その板を、自分が作った箱に納めた。板は今もそこにある。主が命じられたとおりだ。
10:6 イスラエルの人々は、ベエロト・ベネ・ヤアカンを出発してモセラに向かった。アロンはそこで死に、そこに葬られた。そして息子のエルアザルが、父に代わって祭司を務めた。
10:7 そこを出発してグドゴダに向かい、グドゴダからヨトバタへ進んだ。ヨトバタは水の流れる川の多い地だ。
10:8 あのとき、主はレビ族を選び分けた。主の契約の箱を運び、主の前に立って主に仕え、主の名によって祝福するためだ。それは今日まで続いている。
10:9 だからレビには、ほかの兄弟たちのような割り当ての地はない。主ご自身がレビの受け継ぐものだからだ。あなたの神、主がそう告げられたとおりだ。
10:10 わたしは前と同じように、四十日四十夜、山にとどまった。主はそのときもわたしの願いを聞き入れ、あなたたちを滅ぼすことをよしとされなかった。
10:11 そして主はわたしに言われた。「立って、民の先頭に立って進みなさい。彼らが入って、その地を自分のものとするためだ。それは、わたしが彼らの先祖に与えると誓った地だ。」
10:12 さあ、イスラエルよ。あなたの神、主があなたに求めておられることは何だろう。それは、あなたの神、主を畏れ、そのすべての道を歩み、主を愛し、心をつくし、魂をつくして、あなたの神、主に仕えることだ。
10:13 そして、あなたのために今日わたしが命じる主の戒めと定めを守ることだ。それはあなたが幸せになるためだ。
10:14 見なさい。天も、天の天も、地も、そこにあるすべてのものも、あなたの神、主のものだ。
10:15 それでも主は、あなたの先祖を心にかけて愛し、その後に続く子孫であるあなたたちを、すべての民の中から選ばれた。それは今日のとおりだ。
10:16 だから、あなたたちの心を覆っているものを取り除きなさい。もう強情になってはいけない。
10:17 あなたたちの神、主は、神々の神、主人たちの主だ。偉大で力強く、畏れ多い神であり、えこひいきをせず、わいろを受け取らない。
10:18 主は、みなしごややもめのために正しくさばき、寄留者を愛して、食べ物と着る物を与えてくださる。
10:19 だから、あなたたちも寄留者を愛しなさい。あなたたち自身、エジプトの地で寄留者だったのだから。
10:20 あなたたちの神、主を畏れなさい。主に仕え、主にしっかりと結びつき、主の名によって誓いなさい。
10:21 主こそ、あなたたちがたたえるべき方であり、あなたたちの神だ。あなたたちがこの目で見た、あの偉大で畏れ多いことを、あなたたちのためにしてくださった。
10:22 あなたたちの先祖は、七十人でエジプトへ下って行った。それが今では、あなたたちの神、主は、あなたたちを天の星のように数多くしてくださった。
11:1 だから、あなたたちの神、主を愛しなさい。そして、主が守れと言われたこと、すなわちその掟、定め、命令を、いつも守り続けなさい。
11:2 今日、はっきりと考えてみなさい。あなたたちの神、主の訓練を知り、その目で見たのは、あなたたち自身であって、子どもたちではない。子どもたちは、それを知らず、見てもいない。あなたたちは、主の偉大さ、その力強い手、伸ばされた腕を見た。
11:3 主がエジプトのただ中で、エジプトの王ファラオとその国全体に対して行われた、しるしと業も見た。
11:4 エジプトの軍勢、その馬と戦車に対して行われたことも見た。主は、あなたたちを追ってきた彼らの上に葦の海の水をあふれさせ、今日に至るまで彼らを滅ぼされた。
11:5 主が荒れ野で、あなたたちがこの場所にたどり着くまでの間、あなたたちのためにしてくださったことも見た。
11:6 主が、ルベンの子エリアブの息子ダタンとアビラムに対して行われたことも見た。全イスラエルが見ている前で、大地が口を開き、彼らとその家族、天幕、そして彼らに従うすべてのものを飲み込んでしまった。
11:7 あなたたちは、主がなさったこれらすべての偉大な業を、自分の目で見てきたのだ。
11:8 だから、わたしが今日あなたたちに命じることを、すべて守りなさい。そうすれば力を得て、これから入って自分のものにする地に入り、それを手に入れることができる。
11:9 そして、主があなたたちの先祖に、彼らとその子孫に与えると誓われた地、乳と蜜の流れる地で、長く生きることができる。
11:10 あなたたちがこれから入って手に入れる地は、あなたたちが出てきたエジプトの地とは違う。エジプトでは、種をまいたあと、まるで野菜畑のように、足で水をやらなければならなかった。
11:11 でも、あなたたちがこれから入って手に入れる地は、山や谷のある地で、天から降る雨で潤される。
11:12 それは、あなたの神である主が心にかけている地だ。あなたの神である主の目は、年の初めから終わりまで、いつもその地に注がれている。
11:13 もし、わたしが今日あなたたちに命じることによく聞き従い、あなたたちの神である主を愛し、心を尽くし、魂を尽くして主に仕えるなら、
11:14 わたしはあなたたちの地に、季節にかなった雨、秋の雨と春の雨を降らせる。あなたは穀物とぶどう酒とオリーブ油を取り入れることができる。
11:15 また、あなたの家畜のために野に草を生えさせる。あなたは食べて満ち足りる。
11:16 気をつけなさい。心が惑わされて道をそれ、ほかの神々に仕え、それらを拝むことがないように。
11:17 そんなことをすれば、主の怒りがあなたたちに向かって燃え上がる。主は天を閉ざして雨を降らせず、大地は実りを与えなくなる。そしてあなたたちは、主が与えてくださる良い地から、たちまち滅んでしまう。
11:18 だから、わたしのこれらの言葉を心に納め、魂に刻みなさい。それをしるしとして手に結び、額に付ける記章としなさい。
11:19 それを子どもたちに教えなさい。家にいるときも、道を歩くときも、寝るときも、起きるときも、そのことを語りなさい。
11:20 それを家の戸口の柱に書き、門にも書きなさい。
11:21 そうすれば、あなたたちも子どもたちも、主が先祖たちに与えると誓われたあの地で、長く生きられる。天が地の上にある限り、その日々は続くのだ。
11:22 もしあなたたちが、わたしの命じるこのすべての命令をしっかり守って行い、あなたたちの神、主を愛し、そのすべての道を歩み、主に固く結びつくなら、
11:23 主はこれらすべての国民をあなたたちの前から追い払われる。そしてあなたたちは、自分たちより大きく強い国々を追い出して、その地を受け継ぐ。
11:24 あなたたちの足の裏が踏むところは、すべてあなたたちのものになる。荒れ野からレバノンまで、あの川、ユーフラテス川から西の海まで、それがあなたたちの領土となる。
11:25 だれもあなたたちの前に立ちはだかることはできない。主が約束されたとおり、あなたたちの神、主が、あなたたちの踏み入るすべての地に、あなたたちへの恐れとおののきを置かれるからだ。
11:26 見なさい。わたしは今日、あなたたちの前に祝福とのろいを置く。
11:27 祝福は、わたしが今日命じるあなたたちの神、主の命令に聞き従うなら、与えられる。
11:28 のろいは、あなたたちの神、主の命令に聞き従わず、わたしが今日命じる道からそれて、あなたたちの知らないほかの神々に従っていくなら、下る。
11:29 あなたたちの神、主が、あなたたちが入って受け継ごうとしている地に導き入れてくださったとき、あなたたちはゲリジム山で祝福を、エバル山でのろいを告げなさい。
11:30 この二つの山は、ヨルダン川の向こう側、日の沈む方の道の先、アラバに住むカナン人の地にあり、ギルガルの向かい、モレの樫の木のそばにあるではないか。
11:31 あなたたちは今、ヨルダン川を渡ろうとしている。あなたたちの神、主が与えてくださる地に入って、それを受け継ぐためだ。あなたたちはその地を手に入れ、そこに住むことになる。
11:32 だから、わたしが今日あなたたちの前に示すすべての掟と定めを、しっかり守って行いなさい。
12:1 これは、あなたの先祖の神、主が受け継ぐようにと与えてくださる地で、あなたたちが守り行うべき掟と定めである。あなたたちが地上で生きるかぎり、ずっと守りなさい。
12:2 あなたたちが追い出そうとしている国々の民は、高い山の上でも、丘の上でも、茂った木の下でも、自分たちの神々を礼拝していた。その場所をすべて、必ず取り壊しなさい。
12:3 彼らの祭壇を打ち壊し、石の柱を砕き、アシェラ像を火で焼き、神々の彫像を切り倒しなさい。そうして、その場所から彼らの神々の名を消し去りなさい。
12:4 あなたたちの神、主に対しては、そんなことをしてはならない。
12:5 そうではなく、あなたたちの神、主が、すべての部族の中から選んで、ご自分の名を置く場所とされるところ、主が住まわれるその所を尋ね求め、そこに行きなさい。
12:6 そこに、あなたたちの焼き尽くすいけにえと、ほかのいけにえ、十分の一の献げ物、手で献げるささげ物、誓って献げるものと進んで献げるもの、そして牛や羊の初子を持って行きなさい。
12:7 そして、あなたたちはそこで、あなたたちの神、主の前で食事をし、あなたたちも家族も、手がけたことすべてを喜び祝いなさい。それは、あなたの神、主があなたを祝福してくださったものだ。
12:8 わたしたちが今日ここでしているようなことを、あなたたちはしてはならない。今は各自が、自分の目に正しいと思うままに勝手なことをしている。
12:9 あなたたちはまだ、あなたの神、主が与えてくださる安住の地、受け継ぐべき土地に入っていないからだ。
12:10 しかし、あなたたちはヨルダン川を渡り、あなたたちの神、主が受け継がせてくださる土地に住むようになる。主は周りのすべての敵からあなたたちを守って安らぎを与えてくださり、あなたたちは安心して暮らせるようになる。
12:11 そのとき、あなたたちの神、主がご自分の名を置くために選ばれる場所、そこに、わたしが命じるものをすべて持って行きなさい。焼き尽くすいけにえと、ほかのいけにえ、十分の一の献げ物、手で献げるささげ物、そして主に誓って献げるえり抜きのものすべてを持って行きなさい。
12:12 そして、あなたたちの神、主の前で喜び祝いなさい。あなたたちも、息子や娘、男女の使用人も、あなたたちの町にいるレビ人も、みなでともに喜びなさい。レビ人には、あなたたちと分け合う割り当ても受け継ぐ土地もないからだ。
12:13 気をつけなさい。目に留まったどんな場所でも焼き尽くすいけにえを献げてはならない。
12:14 そうではなく、主があなたの部族の一つの中から選ばれる場所、そこで焼き尽くすいけにえを献げ、わたしが命じることをすべてそこで行いなさい。
12:15 ただし、あなたの神、主が与えてくださった祝福に応じて、あなたの町ではどこでも、思う存分、家畜をほふって肉を食べてよい。かもしかや鹿を食べるときと同じように、汚れた人も清い人も食べることができる。
12:16 ただし、血だけは食べてはならない。水のように地面に注ぎ出しなさい。
12:17 あなたの穀物やぶどう酒、オリーブ油の十分の一、牛や羊の初子、あなたが誓って献げるもの、進んで献げるもの、手で献げるささげ物は、あなたの町で食べてはならない。
12:18 それらは、あなたの神、主が選ばれる場所で、あなたの神、主の前で食べなさい。あなたも、息子や娘、男女の使用人も、あなたの町にいるレビ人も、みなでともに食べなさい。そして、手がけたことすべてを、あなたの神、主の前で喜び祝いなさい。
12:19 気をつけなさい。あなたが自分の土地で生きているかぎり、レビ人を見捨ててはならない。
12:20 あなたの神、主が約束どおりあなたの領土を広げてくださったとき、あなたは「肉を食べたい」と言うだろう。肉を食べたくてたまらなくなったら、そのときは心ゆくまで肉を食べてよい。
12:21 あなたの神、主がご自分の名を置くために選ばれる場所が、あなたから遠すぎるなら、主が与えてくださった牛や羊を、わたしが命じたとおりにほふりなさい。そして、あなたの町で、心ゆくまで食べてよい。
12:22 かもしかや鹿を食べるのと同じように、それを食べてよい。汚れた人も清い人も、いっしょに食べることができる。
12:23 ただし、血だけは決して食べないようにしなさい。血はいのちだからだ。いのちを肉といっしょに食べてはならない。
12:24 それを食べてはならない。水のように地面に注ぎ出しなさい。
12:25 それを食べてはならない。そうすれば、主の目に正しいことを行うあなたも、あなたに続く子どもたちも、幸せに過ごせる。
12:26 ただし、あなたがささげる聖なるものや、誓って献げるものは、主が選ばれる場所へ持って行きなさい。
12:27 焼き尽くすささげ物は、肉も血も、あなたの神、主の祭壇の上で献げなさい。ほかのいけにえの血は、あなたの神、主の祭壇に注ぎ出し、肉は食べてよい。
12:28 わたしが命じるこれらの言葉を、すべてしっかり守って聞きなさい。そうすれば、あなたの神、主の目に良いこと、正しいことを行うあなたも、あなたに続く子どもたちも、いつまでも幸せに過ごせる。
12:29 あなたの神、主は、あなたがこれから入って追い払おうとしている国々を、あなたの前から断ち滅ぼされる。あなたは彼らの地を受け継いで、そこに住むようになる。
12:30 そのとき、気をつけなさい。彼らがあなたの前で滅ぼされた後、彼らのまねをして罠にかからないようにしなさい。また、「この国々はどうやって自分たちの神々を拝んでいたのだろう。わたしも同じようにしよう」と言って、彼らの神々を求めてはならない。
12:31 あなたの神、主に対して、そんなことをしてはならない。彼らは、主が憎み、忌み嫌うことをすべて、自分たちの神々のために行ったからだ。自分の息子や娘さえも、神々のために火で焼いたのだ。
12:32 わたしが命じるこのすべてのことを、しっかり守って行いなさい。それに何かを付け加えたり、そこから減らしたりしてはならない。
13:1 あなたの中に預言者や、夢によって告げる者が現れて、しるしや不思議なことをあなたに示すことがあるかもしれない。
13:2 そして、その者が告げたとおりにしるしや不思議なことが実際に起こり、その者が「さあ、あなたの知らなかったほかの神々に従い、それらに仕えよう」と言ったとしても、
13:3 その預言者や、夢によって告げる者の言葉に聞き従ってはならない。あなたの神、主は、あなたが心を尽くし、魂を尽くして主を愛しているかどうかを知ろうと、あなたを試しておられるのだ。
13:4 あなたの神、主にこそ従い、主を恐れなさい。主の命令を守り、その声に聞き従い、主に仕え、主にしっかりと寄りすがりなさい。
13:5 そのような預言者や、夢によって告げる者は、殺されなければならない。彼は、あなたの神、主に逆らうことを語ったからだ。主は、あなたをエジプトの地から導き出し、奴隷の家からあがない出してくださった方だ。その者は、主が歩むように命じた道から、あなたを引き離そうとしたのだ。あなたは、自分の中からこの悪を取り除かなければならない。
13:6 あなたの兄弟、つまり同じ母から生まれた者や、あなたの息子や娘、愛する妻、自分自身のように大切な友が、ひそかにあなたを誘って、「さあ、ほかの神々に仕えよう」と言うことがあるかもしれない。それは、あなたも先祖も知らなかった神々、
13:7 あなたの周りにいる、近くの民や遠くの民、地の果てから果てまでの民が拝む神々だ。
13:8 そんなとき、その者に従ってはならない。耳を貸してもいけない。その者を惜しんだり、あわれんだり、かばったりしてはならない。
13:9 あなたは必ずその者を殺さなければならない。まずあなたの手が最初にその者にかかり、それから民全員の手がかかる。
13:10 あなたはその者を石で打ち殺さなければならない。彼は、あなたをエジプトの地、奴隷の家から導き出してくださった、あなたの神、主から、あなたを引き離そうとしたからだ。
13:11 そうすれば、イスラエルのすべての人がそれを聞いて恐れ、あなたの中で二度とこのような悪を行わなくなる。
13:12 もし、あなたの神、主があなたに与えて住まわせてくださる町の一つで、こんなうわさを聞いたとする。
13:13 あなたたちの中からならず者たちが現れて、自分たちの町の住民をそそのかし、『さあ、これまで知らなかったほかの神々のところへ行って、それに仕えよう』と言っている、というのだ。
13:14 そのときは、よく調べ、探り、ていねいに問いただしなさい。そして、それが本当のことで、あなたの中でそんな忌まわしいことが確かに行われたと分かったら、
13:15 あなたは必ず、その町の住民を剣で討たなければならない。その町と、そこにいるすべての者、そして家畜まで剣にかけ、すべてを滅ぼし尽くすのだ。
13:16 奪い取った物はすべて広場の真ん中に集め、その町と奪った物すべてを、あなたの神、主にささげる焼き尽くすささげ物として、火で焼き払いなさい。その町は永遠に廃墟となり、二度と建て直されることはない。
13:17 滅ぼし尽くすべきものは、何一つあなたの手もとに残してはならない。そうすれば、主は燃える怒りを収め、あなたにあわれみをかけ、あなたを愛して、先祖に誓われたとおり、あなたを増やしてくださる。
13:18 あなたが、あなたの神、主の声に聞き従い、わたしが今日あなたに与えるすべての命令を守って、あなたの神、主の目に正しいことを行うなら、そうしてくださるのだ。
14:1 あなたたちは、あなたたちの神、主の子どもである。死んだ人のために自分の体を傷つけたり、額をそり上げたりしてはならない。
14:2 あなたは、あなたの神、主にとって聖なる民だからだ。主は地上のすべての民の中からあなたを選び、ご自分の宝の民とされた。
14:3 忌まわしいものは、いっさい食べてはならない。
14:4 あなたたちが食べてよい動物は、次のとおりである。牛、羊、やぎ、
14:5 鹿、ガゼル、のろ鹿、野やぎ、アイベックス、レイヨウ、野羊。
14:6 動物のうち、ひづめが分かれて完全に二つに割れていて、しかも反すうするものは、すべて食べてよい。
14:7 ただし、反すうするものでも、ひづめが分かれているものでも、次のものは食べてはいけない。らくだ、野うさぎ、岩だぬき。これらは反すうするが、ひづめが分かれていない。だから、あなたたちにとって汚れたものだ。
14:8 豚も同じだ。ひづめは分かれているが、反すうしない。だから、あなたたちにとって汚れたものだ。その肉を食べてはいけないし、その死がいに触れてもいけない。
14:9 水の中にいるものについては、次のものを食べてよい。ひれとうろこのあるものは、すべて食べてよい。
14:10 しかし、ひれとうろこのないものは食べてはいけない。それはあなたたちにとって汚れたものだ。
14:11 清い鳥は、どれも食べてよい。
14:12 しかし、次の鳥は食べてはいけない。はげわし、ひげわし、みさご、
14:13 とび、はやぶさ、それぞれの種類のたか、
14:14 あらゆる種類のからす、
14:15 だちょう、よたか、かもめ、それぞれの種類のたか、
14:16 ふくろう、みみずく、白ふくろう、
14:17 ペリカン、はげたか、う、
14:18 こうのとり、それぞれの種類のさぎ、やつがしら、こうもり。
14:19 羽のある虫はすべて、あなたたちには汚れたものだ。食べてはいけない。
14:20 でも、清い鳥ならどれでも食べてよい。
14:21 自然に死んだものは食べてはいけない。それは、あなたの町に寄留している人に与えて食べさせるか、外国人に売ってもよい。あなたは、あなたの神、主のために取り分けられた、聖なる民だからだ。子やぎを、その母の乳で煮てはいけない。
14:22 毎年、畑から取れる収穫のすべてから、必ず十分の一をささげなさい。
14:23 そして、あなたの神、主がご自分の名を置くために選ばれる場所で、主の前で、穀物とぶどう酒とオリーブ油の十分の一、それに牛や羊の初子を食べなさい。こうしてあなたは、いつも、あなたの神、主を畏れ敬うことを学ぶのだ。
14:24 もし道が遠すぎて運びきれない場合、つまり、あなたの神、主がご自分の名を置くために選ばれる場所があまりに遠く離れていて、しかも、あなたの神、主の祝福で収穫がとても多い場合には、
14:25 その収穫をお金に換え、そのお金を持って、あなたの神、主が選ばれる場所へ行きなさい。
14:26 そして、そのお金で、あなたが欲しいものは何でも買いなさい。牛でも羊でも、ぶどう酒でも強い酒でも、あなたが望むものは何でもよい。そこで、あなたの神、主の前でそれを食べ、あなたも家族もみな喜び祝いなさい。
14:27 また、あなたの町に住むレビ人を見捨ててはいけない。彼には、あなたと一緒に受け取る割り当ても、受け継ぐ土地もないからだ。
14:28 三年ごとに、その年の収穫の十分の一をすべて持ち出し、あなたの町に蓄えておきなさい。
14:29 そうすれば、あなたと一緒に割り当ても受け継ぐ土地も持たないレビ人や、あなたの町に住む寄留者、みなしご、やもめがやって来て、食べて満ち足りる。こうして、あなたの神、主は、あなたが手がけるすべての働きにおいて、あなたを祝福してくださる。
15:1 七年ごとに、借金を帳消しにしなければならない。
15:2 帳消しのやり方はこうだ。貸した人はみな、仲間に貸したものを帳消しにする。仲間や同胞に返済を迫ってはならない。主が「帳消しにせよ」と告げられたからだ。
15:3 外国人になら返済を迫ってもいい。でも、仲間に貸したものは帳消しにしなさい。
15:4 とはいえ、あなたたちの中に貧しい人がいてはならない。あなたの神である主が、受け継ぐ地として与えるその地で、あなたを豊かに祝福してくださるからだ。
15:5 ただしそれは、あなたの神である主の声にしっかり聞き従い、きょうわたしが命じるこの命令をすべて守り行うなら、の話だ。
15:6 あなたの神である主は、約束どおりあなたを祝福してくださる。あなたは多くの国に貸すが、借りることはない。多くの国を治めるが、支配されることはない。
15:7 あなたの神である主が与える地の、どこかの町に、仲間の一人で貧しい人がいたら、心をかたくなにして、その貧しい仲間に手を閉じてはならない。
15:8 むしろ、その人に手を大きく開いて、足りないものを必要なだけ貸してあげなさい。
15:9 気をつけなさい。「七年目、帳消しの年が近い」などと、心の中でよこしまなことを考えて、貧しい仲間に冷たい目を向け、何も与えないでいてはいけない。その人が主に訴えたら、あなたは罪に問われる。
15:10 惜しまず与えなさい。与えるとき、心を痛めてはいけない。そうすれば、あなたの神である主は、あなたのすべての働き、手がけるすべてのことを祝福してくださる。
15:11 貧しい人が地からいなくなることはない。だからわたしはあなたに命じる。あなたの地にいる仲間、困っている人、貧しい人に、手を大きく開きなさい。
15:12 同胞のヘブライ人の男か女があなたに売られ、六年間あなたに仕えたら、七年目には自由の身にして去らせなさい。
15:13 その人を自由の身にして去らせるとき、手ぶらで行かせてはいけない。
15:14 あなたの羊の群れ、麦の脱穀場、ぶどうを搾る所から、惜しまず分けてあげなさい。あなたの神である主があなたを祝福して与えてくださった物を、その人に分けてあげなさい。
15:15 あなたも、かつてエジプトの地で奴隷だったこと、そして、あなたの神である主があなたを買い戻して救い出してくださったことを思い出しなさい。だからわたしは、今日このことをあなたに命じるのだ。
15:16 でも、もしその人が「あなたのもとを離れたくない」と言うなら――あなたと、あなたの家族を愛し、あなたのもとでの暮らしが良いと思っているからだが――
15:17 そのときは、きりを取り、その人の耳をあなたの家の戸につけて刺し通しなさい。そうすれば、その人はずっとあなたに仕える者となる。女の奴隷にも、同じようにしなさい。
15:18 その人を自由の身にして去らせるとき、それをつらいと思ってはいけない。その人は六年間、雇い人の二倍も働いて、あなたに仕えてくれたのだ。そうすれば、あなたの神である主は、あなたがすることすべてを祝福してくださる。
15:19 あなたの牛や羊の群れに生まれた最初の雄は、すべてあなたの神である主にささげなさい。最初に生まれた牛を働かせてはいけない。最初に生まれた羊の毛を刈ってもいけない。
15:20 それは毎年、あなたとあなたの家族が、主が選ばれる場所で、あなたの神である主の前で食べなさい。
15:21 もしその家畜に欠陥があって、足が悪かったり、目が見えなかったり、何か悪いところがあるなら、あなたの神である主にささげてはいけない。
15:22 それは、あなたの町の中で食べなさい。汚れている人も清い人も、いっしょに食べてよい。かもしかや鹿の肉を食べるのと同じだ。
15:23 ただし、その血だけは口にしてはいけない。血は水のように地面に流しなさい。
16:1 アビブの月を守り、あなたの神である主のために過越を祝いなさい。アビブの月のある夜、あなたの神である主が、あなたをエジプトから連れ出してくださったからだ。
16:2 あなたの神である主が、その名を置くために選ぶ場所で、羊や牛を過越のいけにえとして主にささげなさい。
16:3 そのいけにえといっしょに、パン種の入ったパンを食べてはいけない。七日の間は、パン種を入れないパンを食べなさい。それは苦しみのパンだ。あなたはエジプトの地から、あわてて出て来た。だから、エジプトの地を出たあの日を、生きているかぎりずっと忘れないためだ。
16:4 七日の間、あなたの領地のどこにも、パン種があってはならない。最初の日の夕方にささげた肉を、朝まで残しておいてはいけない。
16:5 あなたの神である主が与えてくださる町のどれか一つで、過越のいけにえをささげてはいけない。
16:6 そうではなく、あなたの神である主がその名を置くために選ぶ場所で、過越のいけにえをささげなさい。夕方、日が沈むころ、あなたがエジプトを出たあの時刻にささげるのだ。
16:7 あなたの神である主が選ぶその場所で、それを煮て食べなさい。そして朝になったら、あなたは自分の天幕へ帰りなさい。
16:8 六日の間は、パン種を入れないパンを食べなさい。七日目は、あなたの神である主のための集まりの日だ。どんな仕事もしてはいけない。
16:9 七週間を数えなさい。刈り入れの鎌を立ち穂に入れ始めるときから、七週間を数え始めるのだ。
16:10 そして、あなたの神である主のために七週の祭りを祝いなさい。あなたの神である主が祝福してくださったのに応じて、自分から進んでささげる贈り物を用意しなさい。
16:11 あなたの神である主がその名を置くために選ぶ場所で、あなたは主の前で喜び祝いなさい。あなたも、あなたの息子や娘も、男女の召し使いも、あなたの町にいるレビ人も、あなたのところにいる寄留者や、みなしごや、やもめも、みんなでいっしょに喜ぶのだ。
16:12 あなたはエジプトで奴隷だったことを思い出しなさい。そして、これらの定めをしっかり守り行いなさい。
16:13 収穫を終えて、脱穀場と酒ぶねから作物を取り入れたら、七日間、仮庵の祭りを祝いなさい。
16:14 この祭りでは、みんなで喜び楽しみなさい。あなたも、あなたの息子や娘も、男女の召し使いも、あなたの町にいるレビ人や、寄留者や、みなしごや、やもめもいっしょにだ。
16:15 主が選ぶ場所で、あなたの神である主のために七日間、祭りを祝いなさい。あなたの神である主は、あなたの作物のすべてと、あなたの手が行うすべてのことを祝福してくださる。だから、あなたは心から喜ぶことができる。
16:16 年に三度、あなたの男子はみな、種なしパンの祭りと、七週の祭りと、仮庵の祭りに、主が選ぶ場所で、あなたの神である主の前に出なさい。ただし、手ぶらで主の前に出てはならない。
16:17 それぞれ、あなたの神である主が与えてくださった祝福に応じて、自分にできるだけのささげ物を持って行きなさい。
16:18 あなたの神である主が与えてくださる、あなたのすべての町に、部族ごとに裁判官と役人を置きなさい。彼らは正しい裁きで人々をさばくのだ。
16:19 裁きを曲げてはならない。人をえこひいきしてはならない。わいろを受け取ってはならない。わいろは賢い人の目をくらませ、正しい人の言い分をゆがめてしまうからだ。
16:20 ただひたすら正義を追い求めなさい。そうすれば、あなたは生きることができ、あなたの神である主が与えてくださる地を受け継ぐことができる。
16:21 あなたの神である主のために築く祭壇のそばに、アシェラの木の柱を立ててはならない。どんな木も立ててはならない。
16:22 また、石の柱を立ててはならない。それはあなたの神である主が憎まれるものだ。
17:1 あなたの神、主には、傷のある牛や羊、どこかに欠陥のある家畜をささげてはならない。それは、あなたの神、主が忌み嫌われることだからだ。
17:2 あなたの神、主が与えてくださる町のどこかで、こんな人が見つかることがあるかもしれない。男でも女でも、主が結んだ契約を破り、あなたの神、主の目に悪とされることをする人だ。
17:3 つまり、わたしが命じてもいないのに、ほかの神々のところへ行って仕え、それにひれ伏したり、太陽や月や星空の万象を拝んだりする人のことだ。
17:4 そのことがあなたに知らされ、あなたがそれを聞いたなら、しっかり調べなさい。それが本当のことで、確かにそのような忌むべきことがイスラエルで行われたと分かったなら、
17:5 その悪いことをした男、あるいは女を町の門の外に連れ出し、石で打ち殺しなさい。
17:6 人を死刑にするときは、二人か三人の証人の証言がなければならない。一人の証人の証言だけで死刑にしてはならない。
17:7 まず証人たちが手を下してその人を殺し、そのあとで民全員が手を下す。こうして、あなたたちの間から悪を取り除きなさい。
17:8 あなたの町で起こる裁判の中に、あなたには判断が難しすぎる問題が出てくるかもしれない。殺人に関する争いや、権利をめぐる争い、暴行に関する争いなどだ。そのときは、立って、あなたの神、主が選ばれる場所に上って行きなさい。
17:9 そして、レビ人の祭司たちと、そのときに任にある裁判官のもとへ行き、意見を求めなさい。彼らはあなたに、どう裁くべきかを告げてくれる。
17:10 主が選ばれるその場所で彼らが告げることに従って、あなたは行動しなさい。彼らが教えることすべてを、忠実に守って行いなさい。
17:11 彼らが教える律法と、彼らが言い渡す裁きのとおりに行いなさい。彼らが告げることから、右にも左にもそれてはならない。
17:12 もし、あなたの神、主に仕えてそこに立つ祭司や、裁判官の言うことを聞かず、思い上がって勝手にふるまう者がいたら、その者は死刑にしなさい。こうして、イスラエルから悪を取り除きなさい。
17:13 民はみなこれを聞いて恐れ、二度と思い上がって勝手にふるまうことはなくなる。
17:14 あなたの神、主が与えてくださる地に入り、それを自分のものとして住むようになったとき、あなたは「周りのすべての国々のように、自分たちの上に王を立てよう」と言うだろう。
17:15 そのときは、あなたの神、主が選ばれる者を、必ず王として立てなさい。あなたの同胞の中から王を立てなさい。同胞ではない外国人を王にしてはならない。
17:16 ただし、王は自分のために馬を増やしてはならない。馬を増やそうとして、民をエジプトへ連れ戻してはならない。主はあなたたちに、「二度とあの道を引き返してはならない」と言われたからだ。
17:17 また、王は多くの妻を持ってはならない。心が主から離れてしまうからだ。自分のために銀や金をため込みすぎてもならない。
17:18 王は、その王国の王座に着いたら、レビ人の祭司たちの前にあるこの律法を、自分のために巻物に書き写しなさい。
17:19 それを手もとに置き、生きているかぎり毎日それを読みなさい。そうすれば、自分の神、主を恐れることを学び、この律法のすべての言葉と、これらの定めを守って行うようになる。
17:20 そうすれば、王の心が同胞よりも高ぶることなく、命令から右にも左にもそれることもない。そして、王も、その子孫も、イスラエルの中で長く王国を治めることができる。
18:1 祭司であるレビ人、つまりレビ族全体は、ほかのイスラエルの人々のような割り当ての土地を持ってはならない。彼らは主にささげられたささげ物、つまり主の受け取り分を食べて生活する。
18:2 レビ族は、ほかの部族のように受け継ぐ土地を持たない。主が約束されたとおり、主ご自身が彼らの受け継ぐものだからだ。
18:3 祭司が民から受け取る分は、こう決められている。人々が牛か羊をいけにえとしてささげるとき、その前足と両あご、胃袋を祭司に渡さなければならない。
18:4 また、あなたが最初に収穫した穀物、新しいぶどう酒、オリーブ油、それに最初に刈った羊の毛も、祭司に渡しなさい。
18:5 あなたの神、主が、すべての部族の中から彼らを選んだのだ。主の名によって仕える者として、いつまでもその務めに立たせるためである。彼と、その子孫がそうする。
18:6 あるレビ人が、イスラエルのどこかの町、つまり自分が住んでいる場所を離れて、主が選ぶ場所に来ることがある。心から望んでそこに来たなら、
18:7 彼はそこで主の前に仕えている仲間のレビ人と同じように、自分の神、主の名によって仕えることができる。
18:8 そのとき彼は、ほかのレビ人と同じだけの食べ物の分を受け取る。先祖から受け継いだ財産を売って得たものは、それとは別に自分のものとなる。
18:9 あなたの神、主が与えてくださる地に入ったら、そこの国々がしている、主に嫌われることを見習ってはならない。
18:10 あなたたちの中に、自分の息子や娘を火の中を通らせる者がいてはならない。占いをする者、まじないをする者、まじない師、魔術を使う者、
18:11 人にのろいをかける者、死者の霊に問いかける者、霊媒、死んだ人に語りかけて答えを求める者、こういう者が一人もいてはならない。
18:12 こうしたことをする者はみな、主に嫌われるからだ。まさにこの嫌われる行いのために、あなたの神、主は、これらの国々をあなたの前から追い払われるのだ。
18:13 あなたは、あなたの神、主の前で、まっすぐな心で生きなさい。
18:14 あなたが追い払おうとしているこれらの国々は、まじないをする者や占いをする者に耳を傾ける。でも、あなたはそうであってはならない。あなたの神、主は、それを許してはおられない。
18:15 あなたの神、主は、あなたたちの中から、あなたの同胞の中から、わたしのような預言者を立てられる。あなたたちは、その人の言葉に聞き従いなさい。
18:16 これは、あの集まりの日に、ホレブであなたたちが、あなたの神、主に願ったとおりのことだ。あなたたちはこう言った。「もう二度と、わたしの神、主の声を聞きたくありません。この大きな火も、これ以上見たくありません。死んでしまわないように。」
18:17 すると主は、わたしにこう言われた。「彼らの言うことはもっともだ。
18:18 わたしは、彼らの同胞の中から、あなたのような預言者を立てる。わたしの言葉をその口に授け、わたしが命じることをすべて、彼らに語らせる。
18:19 わたしの名によってその預言者が語る言葉に聞き従わない者がいれば、わたし自身がその者に責任を問う。
18:20 ただし、わたしが命じてもいないのに、勝手にわたしの名によって語る預言者や、ほかの神々の名によって語る預言者は、死ななければならない。」
18:21 あなたは心の中で、「主が語られたのではない言葉を、どうやって見分ければいいのか」と思うかもしれない。
18:22 預言者が主の名によって語っても、その言葉が実現せず、そのとおりにならなければ、それは主が語られた言葉ではない。その預言者が勝手に語っただけだ。だから、その者を恐れることはない。
19:1 あなたの神、主は、あなたに与えようとしている土地に住む国々を滅ぼす。あなたはその国々を追い払って、彼らの町や家に住むようになる。
19:2 そうなったら、あなたの神、主が与えて所有させる土地の中に、三つの町を選び分けておきなさい。
19:3 その町へ行く道を整え、主が受け継がせる土地を三つの地域に分けなさい。人を殺してしまった者がみな、そこへ逃げ込めるようにするためだ。
19:4 そこへ逃げ込んで生き延びられるのは、こういう人だ。前から相手を憎んでいたわけではなく、うっかり隣人を殺してしまった場合である。
19:5 たとえば、隣人と一緒に森へ木を切りに行ったとする。木を切ろうと斧を振り上げたとき、斧の頭が柄から外れて飛び、隣人に当たって死なせてしまう。そういう人は、これらの町の一つに逃げ込んで生き延びることができる。
19:6 そうしないと、血の復讐をする者が怒りに燃えて、殺した者を追いかけるかもしれない。そして道が遠いために追いつき、彼を打ち殺してしまう。前から憎んでいたわけではないのだから、その人は死刑にあたる罪を犯してはいないのに、である。
19:7 だから、わたしはあなたに命じる。三つの町を選び分けておきなさい。
19:8 もしあなたの神、主が、先祖に誓ったとおりあなたの領土を広げ、先祖に与えると約束したすべての土地をあなたに与えたなら、
19:9 つまり、今日わたしが命じるこの命令をすべて守り、あなたの神、主を愛して、いつもその道を歩むなら、あなたはこの三つの町に、さらに三つの町を加えなさい。
19:10 そうすれば、あなたの神、主が受け継ぐ財産として与える土地の中で、罪のない人の血が流されることはない。その血の責任があなたに降りかかることもない。
19:11 しかし、もしある人が隣人を憎んで待ち伏せし、襲いかかって打ち殺し、これらの町の一つに逃げ込んだ場合は、こうしなさい。
19:12 その町の長老たちが人をやって、彼をそこから連れ戻し、血の復讐をする者の手に引き渡して、死刑にしなければならない。
19:13 その者に情けをかけてはならない。罪のない人の血を流した責任を、イスラエルから取り除くのだ。そうすれば、あなたは幸せに暮らせる。
19:14 あなたの神、主が受け継ぐ財産として与える土地、あなたがこれから受け継ぐその土地で、隣人の地境を勝手に動かしてはならない。それは昔の人たちが定めたものだ。
19:15 だれかの罪や過ちを問うとき、証人が一人だけで訴えを成り立たせてはならない。どんな罪であっても、二人か三人の証人の証言があって初めて、その訴えは成り立つ。
19:16 もし悪意のある証人が立って、ある人が悪いことをしたと偽って訴えたなら、こうしなさい。
19:17 争っている二人は、ともに主の前に、つまりそのとき任にある祭司たちと裁判官たちの前に立たなければならない。
19:18 裁判官たちはよく調べなさい。もしその証人が偽りの証人で、仲間について嘘の証言をしていたなら、
19:19 その証人が仲間にしようとたくらんでいたことを、そのまま彼に返しなさい。こうして、あなたたちの中から悪を取り除くのだ。
19:20 残りの人々はこれを聞いて恐れ、あなたたちの中で二度とこのような悪いことをしなくなる。
19:21 情けをかけてはならない。命には命を、目には目を、歯には歯を、手には手を、足には足を返すのだ。
20:1 あなたが敵と戦うために出て行くとき、馬や戦車、そして自分たちよりも多くの兵を見ることがある。でも、彼らを恐れてはいけない。あなたをエジプトの地から導き出した、あなたの神である主が、あなたと共におられるからだ。
20:2 戦いが近づいたら、祭司が前に進み出て、民に語りかける。
20:3 祭司はこう言う。「イスラエルよ、聞きなさい。あなたたちは今日、敵と戦うために進んで行く。気持ちがくじけてはいけない。恐れてはいけない。おびえてはいけない。彼らの前でふるえてはいけない。
20:4 あなたたちの神である主が、あなたたちと共に進んでくださるからだ。主が、あなたたちのために敵と戦い、あなたたちを救ってくださる。」
20:5 次に、指揮する役人たちが民にこう語りかける。「新しい家を建てて、まだそこに住み始めていない人はいないか。その人は家に帰りなさい。戦いで死んで、ほかの人がその家に住むことになったら困るからだ。
20:6 ぶどう畑を作って、まだその実を味わっていない人はいないか。その人は家に帰りなさい。戦いで死んで、ほかの人がその実を味わうことになったら困るからだ。
20:7 婚約したのに、まだ結婚していない人はいないか。その人は家に帰りなさい。戦いで死んで、ほかの人がその相手と結婚することになったら困るからだ。」
20:8 役人たちはさらに民にこう語りかける。「恐れて気持ちがくじけている人はいないか。その人は家に帰りなさい。仲間の心まで、その人と同じようにくじけてしまわないためだ。」
20:9 役人たちが民に語り終えると、軍の指揮官たちを立てて、民の先頭に置く。
20:10 ある町を攻めようと近づくときは、まずその町に和平を呼びかけなさい。
20:11 もしその町が和平に応じ、門を開くなら、その町にいるすべての人はあなたのために働く者となり、あなたに仕えることになる。
20:12 しかし、もし和平に応じず、あなたと戦おうとするなら、その町を包囲しなさい。
20:13 あなたの神、主がその町をあなたの手に渡してくださったら、そこにいる男はすべて剣で討ち取りなさい。
20:14 ただし、女と子ども、家畜、そして町にあるものはすべて、戦利品として自分のものにしてよい。あなたの神、主が与えてくださった敵の戦利品を、あなたは使ってよいのだ。
20:15 遠く離れた町は、すべてこのように扱いなさい。ここにあげた近くの民族の町は別だ。
20:16 しかし、あなたの神、主が受け継ぐ地として与えてくださる、これらの民の町では、息のあるものを一つも生かしておいてはならない。
20:17 ヒッタイト人、アモリ人、カナン人、ペリジ人、ヒビ人、エブス人は、あなたの神、主が命じたとおり、必ず滅ぼし尽くしなさい。
20:18 そうしないと、彼らが自分たちの神々に対して行ってきたあらゆる忌まわしいことを、あなたに教え、あなたはあなたの神、主に対して罪を犯すことになるからだ。
20:19 ある町を攻め落とそうと、長い間包囲して戦うときは、そこの木を切り倒してはならない。斧を向けてはいけない。その実はあなたが食べられるのだから、切り倒すな。野の木が人間のように、あなたの前で包囲されるわけではないのだ。
20:20 ただし、実のならない木だとわかっているものは、切り倒してよい。それを使って、あなたと戦っているその町が落ちるまで、包囲用の設備を築きなさい。
21:1 あなたの神、主が与えて自分のものにさせようとしている土地で、だれかが殺されて野に倒れているのが見つかり、だれがその人を殺したのか分からないことがあるかもしれない。
21:2 そのときは、あなたたちの長老と裁判官が出て行き、殺された人のまわりにある町々までの距離を測る。
21:3 そして、殺された人にいちばん近い町が決まったら、その町の長老たちは、まだ使われたことがなく、くびきを引いたこともない若い雌牛を用意する。
21:4 その町の長老たちは、その雌牛を、耕したことも種をまいたこともない、水の絶えない谷へ引いて行く。そして、その谷でその雌牛の首を折る。
21:5 次に、レビの子である祭司たちが進み出る。あなたの神、主は、彼らを選んで自分に仕えさせ、主の名によって祝福を告げさせ、また、あらゆる争いや傷害の裁きを彼らの言葉にゆだねているからだ。
21:6 殺された人にいちばん近いその町の長老たちは全員、谷で首を折られた雌牛の上で手を洗い、
21:7 こう告げる。「わたしたちの手は、この血を流していません。わたしたちの目も、それを見ていません。
21:8 主よ、あなたが買い戻したあなたの民イスラエルを、どうか赦してください。罪のない者の血を流した責任を、あなたの民イスラエルに負わせないでください。」こうして、その血の責任は彼らから取り除かれる。
21:9 このようにして、あなたは主が正しいと見ることを行い、罪のない者の血の責任を自分たちの間から取り除くのだ。
21:10 あなたが敵と戦うために出て行き、あなたの神、主が敵をあなたの手に渡し、あなたがその人々を捕虜にすることがある。
21:11 その捕虜の中に美しい女性を見て、心を引かれ、その人を妻にしたいと思ったなら、
21:12 あなたはその人を自分の家に連れて帰る。彼女は頭をそり、爪を切る。
21:13 彼女は捕虜だったときの服を脱ぎ、あなたの家に住んで、一か月の間、父と母のために泣く。その後、あなたは彼女のところに入って夫となり、こうして彼女はあなたの妻となる。
21:14 もし彼女を気に入らなくなったら、自由にして、行きたいところへ行かせる。決してお金で売ってはならない。奴隷のように扱ってもならない。あなたが彼女をはずかしめたのだから。
21:15 ある男に二人の妻がいて、一人は愛され、もう一人は疎まれているとする。二人とも息子を産み、その長男が疎まれている妻の子である場合、
21:16 その男が自分の財産を息子たちに分け与える日に、疎まれている妻の子である本当の長男を差しおいて、愛されている妻の子を長男として扱ってはならない。
21:17 彼は疎まれている妻の子を長男として認め、自分の持ち物すべての中から二倍の分をその子に与えなければならない。その子は父の力の初めであり、長男としての権利を持っているからだ。
21:18 ある男に、頑固で反抗的な息子がいて、父の言うことも母の言うことも聞かず、両親が注意しても言うことを聞かないとする。
21:19 父と母はその息子を捕まえ、町の長老たちのところ、その町の門へ連れて行く。
21:20 そして長老たちにこう言う。「わたしたちのこの息子は頑固で反抗的で、わたしたちの言うことを聞きません。大食いで大酒飲みです。」
21:21 すると、町の男たち全員が石を投げてその息子を殺す。こうして、あなたは自分たちの中から悪を取り除く。イスラエルのすべての人がこれを聞いて恐れるだろう。
21:22 ある人が死刑にあたる罪を犯して処刑され、あなたがその死体を木にかけた場合、
21:23 その死体を夜通し木の上に残してはならない。必ずその日のうちに埋めなければならない。木にかけられた者は神にのろわれた者だからだ。あなたの神、主が受け継ぐ地としてあなたに与える土地を、汚してはならない。
22:1 あなたの仲間の牛や羊が迷い出ているのを見かけたら、見て見ぬふりをしてはいけない。必ず連れ帰って、その仲間に返しなさい。
22:2 もしその仲間が近くにいなかったり、だれのものか分からなかったりしたら、その家畜を自分の家に連れて帰り、あずかっておきなさい。仲間がそれを探しに来たら、返してあげるのだ。
22:3 ろばでも、服でも、同じようにしなさい。仲間がなくして、あなたが見つけたものは、何であっても同じだ。見て見ぬふりをしてはいけない。
22:4 あなたの仲間のろばや牛が道で倒れているのを見かけたら、見て見ぬふりをしてはいけない。必ず手を貸して、起こしてあげなさい。
22:5 女は男の身につけるものを着てはいけない。男も女の服を着てはいけない。こういうことをする人はみな、あなたの神、主が忌み嫌うものだからだ。
22:6 道を歩いていて、木の上や地面に鳥の巣を見つけたとしよう。もし母鳥がひなや卵の上にうずくまっていたら、その母鳥をひなといっしょに取ってはいけない。
22:7 母鳥は必ず逃がしてやり、ひなだけをもらいなさい。そうすれば、あなたは幸せになり、長く生きられる。
22:8 新しい家を建てるときは、屋根に囲いをつけなさい。だれかがそこから落ちて、あなたの家が人の血で汚れることのないようにするためだ。
22:9 ぶどう畑に二種類の種をまいてはいけない。まいた種の実りも、ぶどう畑の収穫も、すべて取り上げられてしまうからだ。
22:10 牛とろばをいっしょにつないで畑を耕してはいけない。
22:11 羊毛と亜麻を織り混ぜた服を着てはいけない。
22:12 身にまとう上着の四すみに、房を作って付けなさい。
22:13 男が妻をめとり、その女と関係を持ったあと、彼女を嫌うようになったとする。
22:14 そして、あらぬ非難を並べ立て、悪い評判を広め、「この女をめとって関係を持ったが、処女のしるしはなかった」と言い出したとする。
22:15 そのときは、娘の父と母が、娘が処女であったことのしるしを持って、町の門にいる長老たちのところへ差し出す。
22:16 娘の父は長老たちにこう言う。「わたしはこの男に娘を妻として与えました。ところが、この男は娘を嫌い、
22:17 あらぬ非難を並べ立てて、『あなたの娘に処女のしるしはなかった』と言っています。でも、これが娘の処女のしるしです。」こう言って、両親は長老たちの前にその布を広げる。
22:18 すると、その町の長老たちはその男を捕らえ、罰する。
22:19 さらに銀貨百枚の罰金を科し、それを娘の父に渡す。イスラエルの処女に悪い評判を立てたからだ。娘はそのままその男の妻となり、男は生きているかぎり、彼女を離縁することはできない。
22:20 しかし、もしこの訴えが本当で、娘が処女であったしるしが見つからなかったなら、
22:21 娘を父の家の入り口に連れ出し、町の男たちが石を投げつけて彼女を殺す。父の家にいながら淫らなことをして、イスラエルで恥ずべきことをしたからだ。こうして、あなたたちの中から悪を取り除きなさい。
22:22 ほかの男の妻と寝ているところを見つかったら、その女と寝た男も、その女も、二人とも死ななければならない。こうして、イスラエルから悪を取り除きなさい。
22:23 ある男と婚約している処女の娘がいて、別の男が町の中で彼女に出会い、関係を持ったなら、
22:24 あなたたちは二人ともその町の門に連れ出し、石を投げつけて殺す。娘は町の中にいながら助けを求めて叫ばなかったから、男は隣人の妻を辱めたからだ。こうして、あなたたちの中から悪を取り除きなさい。
22:25 しかし、婚約している娘に野原で出会い、男が彼女をつかまえて関係を持った場合は、その男だけが死ななければならない。
22:26 娘には何もしてはならない。娘には死に当たる罪はない。これは、人が隣人に襲いかかって殺すのと同じことだからだ。
22:27 男は野原で彼女に出会ったのであり、婚約していた娘は助けを求めて叫んだが、彼女を救う者はいなかったからだ。
22:28 まだ婚約していない処女の娘に、ある男が出会い、彼女をつかまえて関係を持ち、それが見つかった場合は、
22:29 彼女と寝た男は、娘の父親に銀五十シェケルを払い、彼女を妻にしなければならない。彼女を辱めたのだから、生きているかぎり離縁することはできない。
22:30 父の妻をめとってはならない。父の妻に手を出して、父を辱めてはならない。
23:1 睾丸をつぶされた者や、陰茎を切り取られた者は、主の集会に加わってはならない。
23:2 正しくない関係から生まれた子は、主の集会に加わってはならない。十代目に至るまで、その子孫は主の集会に加わってはならない。
23:3 アンモン人とモアブ人は、主の集会に加わってはならない。十代目に至るまで、彼らはいつまでも主の集会に加わってはならない。
23:4 あなたたちがエジプトを出て来たとき、彼らは道中でパンと水を持って迎えることをせず、さらに、あなたを呪わせるために、アラム・ナハライムのペトルからベオルの子バラムを雇ったからだ。
23:5 しかし、あなたの神、主はバラムの言うことを聞き入れず、あなたの神、主はその呪いを祝福に変えてくださった。あなたの神、主が、あなたを愛しておられたからだ。
23:6 彼らの平和も繁栄も、あなたが生きているかぎり、いつまでも求めてはならない。
23:7 エドム人を忌み嫌ってはならない。彼はあなたの兄弟だからだ。エジプト人を忌み嫌ってはならない。あなたはかつて、その国で寄留者だったからだ。
23:8 彼らから生まれた子どもは、三代目になれば主の集会に加わることができる。
23:9 敵に向かって陣営を出て行くときは、どんな悪いことからも身を守りなさい。
23:10 あなたたちの中に、夜のうちに漏れがあって汚れた者がいたら、その人は陣営の外に出て、陣営の中に入ってはならない。
23:11 夕方になったら水で体を洗い、日が沈むころに陣営の中に戻ってきなさい。
23:12 陣営の外に、用を足すための場所を決めておき、そこへ出て行きなさい。
23:13 武器と一緒に、くいのような道具を持っていなさい。外で用を足すときは、それで穴を掘り、出た物を埋め戻しなさい。
23:14 あなたの神、主が、あなたを救い、敵をあなたの前に引き渡そうとして、陣営の中を歩き回っておられるからだ。だから、あなたの陣営は聖なるものでなければならない。主があなたの中に恥ずべきものを見て、あなたから離れ去ることのないようにするためだ。
23:15 主人のもとから逃げて、あなたのところに来た奴隷を、その主人に引き渡してはならない。
23:16 その奴隷は、あなたのところに、あなたたちの中に住まわせなさい。あなたの町のどれか一つの、彼が選ぶ場所、彼が良いと思う所に住まわせ、彼を虐げてはならない。
23:17 イスラエルの娘のうちに、神殿で体を売る女がいてはならない。イスラエルの息子のうちに、神殿で体を売る男がいてはならない。
23:18 体を売る女がかせいだお金や、体を売る男がかせいだお金を、どんな誓いのためであっても、主なるあなたの神の家に持って来てはならない。その両方とも、主なるあなたの神が忌み嫌うものだからだ。
23:19 同胞に利子をつけて貸してはならない。お金の利子も、食べ物の利子も、貸すものすべての利子もだ。
23:20 外国人には利子をつけて貸してもよい。でも同胞には利子をつけて貸してはならない。そうすれば、これから入って自分のものにしようとしている地で、あなたが手がけるすべてのことを、主なるあなたの神が祝福してくれる。
23:21 主なるあなたの神に誓いを立てたなら、それを果たすのを遅らせてはならない。主なるあなたの神は必ずそれをあなたに求めるからだ。果たさなければ、あなたは罪を負うことになる。
23:22 でも、誓いを立てるのをやめておけば、あなたは罪を負うことはない。
23:23 自分の口から出た言葉は守り、実行しなさい。あなたが自分の口で約束したとおり、主なるあなたの神に進んでささげると誓ったものを果たしなさい。
23:24 隣人のぶどう畑に入ったときは、好きなだけぶどうを食べて満腹になってもよい。でも、自分の入れ物に入れてはならない。
23:25 隣人の麦畑に入ったときは、手で穂を摘んでもよい。でも、隣人の麦畑に鎌を入れてはならない。
24:1 男の人が女の人をめとって夫婦になったとする。でも、その女性に何か恥ずべきことを見つけて、彼女が気に入らなくなったら、男は離縁状を書いて彼女の手に渡し、家から送り出す。
24:2 家を出た彼女は、別の男の人のところへ行って、その人の妻になる。
24:3 ところが、後の夫も彼女を嫌いになり、離縁状を書いて手に渡し、家から送り出したとする。あるいは、彼女を妻にした後の夫が死んだとする。
24:4 その場合、彼女を送り出した最初の夫は、彼女が汚れた後で、もう一度彼女を妻に迎えることはできない。それは主の前で忌み嫌われることだからだ。あなたの神、主が財産として与えてくださる地を、罪で汚してはならない。
24:5 男の人が新しく妻をめとったら、その人は戦争に行かなくてよい。どんな務めも課してはならない。一年の間は家で自由に過ごし、めとった妻を幸せにしてあげなさい。
24:6 ひき臼を質に取ってはならない。その上の石だけでも取ってはならない。それは人の命そのものを質に取ることだからだ。
24:7 仲間であるイスラエルの人をさらって、奴隷のように扱ったり売ったりした者が見つかったら、そのさらった者は死ななければならない。こうして、あなたたちの間から悪を取り除きなさい。
24:8 ひどい皮膚病が出たときは、よく気をつけて、レビ人の祭司たちが教えるとおりにすべて行いなさい。わたしが彼らに命じたとおり、忠実に守って行いなさい。
24:9 あなたたちがエジプトを出て旅をしていたとき、あなたの神、主がミリアムにされたことを思い出しなさい。
24:10 隣人に何かを貸すときは、担保を受け取るために、その人の家に入ってはならない。
24:11 あなたは外に立っていなさい。あなたが貸す相手が、担保を外まで持ってきてくれる。
24:12 もしその人が貧しかったら、その担保を持ったまま眠ってはならない。
24:13 日が沈むころには、必ずその担保を返しなさい。そうすれば、その人は自分の服にくるまって眠り、あなたを祝福してくれる。それはあなたにとって、主の前での正しい行いとなる。
24:14 貧しくて困っている雇い人を、不当に扱ってはならない。それがあなたの同胞であっても、あなたの町に住む外国人であっても、同じだ。
24:15 賃金はその日のうちに払いなさい。日が沈むまで持ち越してはならない。その人は貧しく、その賃金を頼りに生きているからだ。そうしないと、その人はあなたのことで主に訴え、あなたは罪を負うことになる。
24:16 父が子の代わりに死刑にされてはならないし、子が父の代わりに死刑にされてもならない。人はそれぞれ、自分の罪のために死ぬのだ。
24:17 外国人や、親のない子の裁判を、ゆがめてはならない。やもめの服を担保に取ってもいけない。
24:18 あなたはかつてエジプトで奴隷だったこと、そして主があなたをそこから救い出してくれたことを思い出しなさい。だからわたしは、あなたにこのことを行うよう命じるのだ。
24:19 畑で作物を刈り取るとき、束をひとつ畑に忘れても、それを取りに戻ってはならない。それは外国人や、親のない子や、やもめのために残しておきなさい。そうすれば、主があなたのすべての仕事を祝福してくれる。
24:20 オリーブの木を打って実を落とすとき、後からもう一度枝を打ってはならない。残った実は、外国人や、親のない子や、やもめのために残しておきなさい。
24:21 ぶどう畑でぶどうを収穫するとき、後から取り残しを拾い集めてはならない。それは外国人や、親のない子や、やもめのために残しておきなさい。
24:22 あなたはかつてエジプトの地で奴隷だったことを思い出しなさい。だからわたしは、あなたにこのことを行うよう命じるのだ。
25:1 人と人の間で争いが起きて、裁判に持ち込まれたとき、裁判官はその争いを裁く。正しい方を正しいと認め、悪い方を有罪とする。
25:2 もし悪いことをした人が打たれるべきなら、裁判官はその人をうつ伏せにさせ、自分の目の前で、罪の重さに応じた回数だけ打たせる。
25:3 打つのは四十回までで、それを超えてはならない。もしそれ以上に何度も打てば、あなたの仲間があなたの目の前でひどくはずかしめられることになるからだ。
25:4 脱穀をしている牛に、口かせをはめてはならない。
25:5 兄弟が一緒に暮らしていて、そのうちの一人が息子を残さずに死んだ場合、死んだ人の妻は、家族以外のよその男と結婚してはならない。夫の兄弟が彼女のところに入り、妻として迎え、兄弟としての務めを果たす。
25:6 そして彼女が産む長男は、死んだ兄弟の名を継ぐ。こうして、その名がイスラエルから消えてしまわないようにする。
25:7 しかし、もしその男が兄弟の妻を迎えることを望まないなら、妻は町の門にいる長老たちのところへ行って、こう言う。「夫の兄弟が、イスラエルで兄弟の名を残そうとしません。わたしを妻に迎える務めを果たそうとしないのです。」
25:8 すると町の長老たちは彼を呼び出して話をする。それでも彼が「彼女を迎えたくない」と言い張るなら、
25:9 兄弟の妻は長老たちの前で彼に近づき、その足からサンダルを脱がせ、顔につばを吐きかけて、こう言う。「兄弟の家を建てようとしない者は、こうされるのだ。」
25:10 そしてイスラエルでは、その家は「サンダルを脱がされた者の家」と呼ばれるようになる。
25:11 二人の男が兄弟どうしで争っているとき、一方の妻が、殴っている相手から自分の夫を助けようとして近づき、手を伸ばして相手の急所をつかんだ場合、
25:12 あなたはその女の手を切り落とさなければならない。あわれみをかけてはならない。
25:13 袋の中に、大小二種類の重りを入れておいてはいけない。
25:14 家の中に、大小二種類のますを置いておいてはいけない。
25:15 正確で公正な重りを使いなさい。ますも、正確で公正なものを使いなさい。そうすれば、あなたの神である主が与えてくださる地で、あなたは長く生きることができる。
25:16 こうした不正をする者はみな、あなたの神である主が忌みきらう者だからだ。
25:17 あなたがたがエジプトを出て来たとき、その道でアマレクがあなたにしたことを思い出しなさい。
25:18 彼らは道であなたを襲い、あなたが疲れきって弱っているときに、後ろにいた落ちこぼれた人たちをみな討った。彼らは神を恐れなかった。
25:19 だから、あなたの神である主が、あなたに与えて受け継がせる地で、周りのすべての敵から解放して安らぎを与えてくださったとき、あなたはアマレクの記憶を天の下から消し去らなければならない。このことを忘れてはならない。
26:1 あなたの神である主が受け継ぐ地としてあなたに与える地に入り、それを自分のものとして住みついたとき、
26:2 あなたの神である主が与えてくださる地で取れた作物の、そのすべての初物をかごに入れなさい。そして、あなたの神である主がご自分の名を置くために選ぶ場所へ持って行きなさい。
26:3 その時に仕える祭司のところへ行って、こう言いなさい。「わたしは今日、あなたの神である主に申し上げます。わたしは、主がわたしたちの先祖に与えると誓われた地に入りました。」
26:4 祭司はあなたの手からそのかごを受け取り、あなたの神である主の祭壇の前に置く。
26:5 そして、あなたの神である主の前で、あなたはこう唱えなさい。「わたしの先祖は、さすらいのアラム人でした。彼はわずかな人数でエジプトに下り、そこに寄留しました。そしてそこで、大きく強く、人数の多い国民となりました。
26:6 ところがエジプト人はわたしたちをひどく扱い、苦しめ、つらい労働を負わせました。
26:7 わたしたちが先祖の神である主に叫び求めると、主はわたしたちの声を聞き、わたしたちの苦しみと労苦と抑圧をご覧になりました。
26:8 そして主は、力強い御手と伸ばした御腕をもって、また大いなる恐るべき力と、しるしと不思議をもって、わたしたちをエジプトから導き出してくださいました。
26:9 こうしてこの場所に導き入れ、この地を、乳と蜜の流れる地をわたしたちに与えてくださいました。
26:10 だから今、主よ、あなたがわたしに与えてくださったこの地の実りの初物を、わたしはここに持ってきました。」こう言って、それをあなたの神である主の前に供え、あなたの神である主の前にひれ伏しなさい。
26:11 そして、あなたの神である主があなたとあなたの家族に与えてくださったすべての良いものを、あなたはレビ人や、あなたのもとにいる寄留者とともに喜び祝いなさい。
26:12 三年目、すなわち十分の一を納める年に、あなたの収穫のすべての十分の一を納め終えたら、それをレビ人、寄留者、孤児、やもめに与えなさい。彼らがあなたの町で食べて満ち足りるためである。
26:13 そして、あなたの神である主の前でこう言いなさい。「わたしは聖なる献げ物を家から取り分け、あなたがわたしに命じられたすべての命令のとおりに、それをレビ人、寄留者、孤児、やもめに与えました。わたしはあなたの命令を破らず、忘れもしませんでした。
26:14 わたしは喪に服している間にそれを食べたことも、汚れた身でそれを取り分けたことも、死者のためにそれを供えたこともありません。わたしはわたしの神である主の声に従い、あなたが命じられたすべてのとおりに行いました。
26:15 どうか、あなたの聖なる住まいである天から見下ろして、あなたの民イスラエルと、あなたがわたしたちに与えてくださった地を祝福してください。先祖に誓われたとおり、乳と蜜の流れるこの地を。」
26:16 今日、あなたの神である主は、これらの掟と定めを行うようにあなたに命じられる。だからあなたは心を尽くし、魂を尽くして、それらを守り行いなさい。
26:17 あなたは今日、主があなたの神であることを認め、主の道を歩み、主の掟と命令と定めを守り、主の声に従うと宣言した。
26:18 そして主も今日、約束されたとおり、あなたを主のものである宝の民とすると宣言された。あなたが主のすべての命令を守るためである。
26:19 そして主は、造られたすべての国民の上にあなたを高く上げ、称賛と名誉と輝きを与えてくださる。また、約束されたとおり、あなたを主のために聖別された民としてくださる。
27:1 モーセはイスラエルの長老たちとともに、民に命じて言った。「わたしが今日あなたたちに命じるこの命令を、すべて守りなさい。
27:2 あなたたちがヨルダン川を渡り、あなたの神である主が与えてくださる地に入る日に、大きな石を何個か立て、それにしっくいを塗りなさい。
27:3 そして川を渡ったら、その石にこの律法の言葉をすべて書き記しなさい。あなたの父祖の神である主が約束されたとおり、乳と蜜の流れる地、あなたの神である主が与えてくださるその地に、あなたが入るためである。
27:4 ヨルダン川を渡ったら、わたしが今日あなたたちに命じるこれらの石をエバル山に立て、それにしっくいを塗りなさい。
27:5 またそこに、あなたの神である主のために祭壇を築きなさい。石の祭壇である。その石に鉄の道具を当ててはならない。
27:6 あなたの神である主の祭壇は、切り出したままの石で築きなさい。その上で、あなたの神である主に焼き尽くすいけにえをささげなさい。
27:7 また、和解のいけにえをささげ、そこで食事をして、あなたの神である主の前で喜び祝いなさい。
27:8 そして、その石にこの律法の言葉をすべて、はっきりと分かるように書き記しなさい。」
27:9 モーセと祭司であるレビ人は、イスラエルのすべての人に語りかけて言った。「イスラエルよ、静かにして聞きなさい。今日あなたは、あなたの神である主の民となった。
27:10 だから、あなたの神である主の声に従い、わたしが今日あなたに命じる主の命令と掟を守り行いなさい。」
27:11 その日、モーセは民に命じて言った。
27:12 「あなたたちがヨルダン川を渡ったら、次の部族はゲリジム山に立って、民を祝福しなさい。シメオン、レビ、ユダ、イッサカル、ヨセフ、ベニヤミンである。
27:13 また、次の部族は呪いのためにエバル山に立ちなさい。ルベン、ガド、アシェル、ゼブルン、ダン、ナフタリである。
27:14 レビ族は大きな声で、イスラエルのすべての人に向かってこう告げなさい。
27:15 「彫った像や鋳た像を造る者は呪われる。それは主が忌み嫌うもの、職人の手で造られたもの。そういうものをこっそり据える者は呪われる。」民は全員こう答えなさい。「アーメン。」
27:16 「父や母を軽んじる者は呪われる。」民は全員こう言いなさい。「アーメン。」
27:17 「隣人の土地の境界を勝手に動かす者は呪われる。」民は全員こう言いなさい。「アーメン。」
27:18 「目の見えない人を道で迷わせる者は呪われる。」民は全員こう言いなさい。「アーメン。」
27:19 「外国から来た人や、父のない子や、夫を亡くした女性の権利を曲げる者は呪われる。」民は全員こう言いなさい。「アーメン。」
27:20 「父の妻と寝る者は呪われる。それは父の恥をさらすことだからだ。」民は全員こう言いなさい。「アーメン。」
27:21 「どんな動物とでも寝る者は呪われる。」民は全員こう言いなさい。「アーメン。」
27:22 「自分の姉妹、つまり父の娘や母の娘と寝る者は呪われる。」民は全員こう言いなさい。「アーメン。」
27:23 「妻の母と寝る者は呪われる。」民は全員こう言いなさい。「アーメン。」
27:24 「こっそり隣人を殺す者は呪われる。」民は全員こう言いなさい。「アーメン。」
27:25 「賄賂を受け取って、罪のない人を殺す者は呪われる。」民は全員こう言いなさい。「アーメン。」
27:26 「この教えの言葉をすべて守り、そのとおりに行わない者は呪われる。」民は全員こう言いなさい。「アーメン。」
28:1 あなたの神、主の声によく聞き従い、わたしが今日あなたに命じる戒めをすべて守り行うなら、あなたの神、主はあなたを地上のすべての国々の上に高く上げてくださる。
28:2 あなたの神、主の声に聞き従うなら、これらの祝福がすべてあなたのもとに来て、あなたに追いつく。
28:3 あなたは町にいても祝福され、畑にいても祝福される。
28:4 あなたの子どもも、畑の実りも、家畜の産むものも祝福される。牛の子も羊の群れも増える。
28:5 あなたのかごも、こね鉢も祝福される。
28:6 あなたは入るときにも祝福され、出るときにも祝福される。
28:7 あなたに立ち向かってくる敵を、主はあなたの前で打ち負かしてくださる。彼らは一つの道から攻めてきても、七つの道に散らばって逃げていく。
28:8 主はあなたの倉にも、あなたの手がけるすべてのことにも、祝福を与えてくださる。あなたの神、主が与えてくださる地で、あなたを祝福してくださる。
28:9 主はあなたに誓われたとおり、あなたをご自分のための聖なる民として立ててくださる。あなたが、あなたの神、主の命令を守り、その道を歩むならそうなる。
28:10 すると地上のすべての民は、あなたが主の名で呼ばれる民であることを知り、あなたを恐れるようになる。
28:11 主はあなたに豊かな恵みを与えてくださる。あなたの子どもも、家畜の産むものも、畑の実りも増える。主が先祖たちに誓って与えると約束された地で、そうしてくださる。
28:12 主は天という良い宝の倉を開いて、季節ごとにあなたの土地に雨を降らせ、あなたの手がけるすべてのことを祝福してくださる。あなたは多くの国々に貸すが、借りることはない。
28:13 主はあなたを尾ではなく頭とし、下ではなく上に置いてくださる。きょうわたしがあなたに命じる、あなたの神、主の命令に聞き従い、それを守り行うならそうなる。
28:14 きょうわたしが命じるすべての言葉から、右にも左にもそれてはならない。ほかの神々に従い、それに仕えてはならない。
28:15 しかし、あなたの神、主の声に聞き従わず、きょうわたしが命じるすべての命令とおきてを守り行わないなら、こうしたのろいがすべてあなたに降りかかり、あなたに追いつく。
28:16 あなたは町でものろわれ、畑でものろわれる。
28:17 あなたのかごも、こね鉢ものろわれる。
28:18 あなたの子どもも、畑の実りものろわれる。牛の子も羊の群れも、増えなくなる。
28:19 あなたは入るときにものろわれ、出るときにものろわれる。
28:20 主は、あなたのすることすべてに、のろいと混乱と叱責を送る。それは、あなたが滅び、たちまち消えてなくなるまで続く。あなたが悪いことをして、わたしを捨てたからだ。
28:21 主は疫病をあなたに取りつかせる。そして、あなたが手に入れようと入っていく土地から、あなたを消し去るまで離さない。
28:22 主はあなたを、肺をむしばむ病、高熱、炎症、ひどいほてり、剣、立ち枯れ、黒穂病で打つ。それらはあなたが消えてなくなるまで、あなたを追いかける。
28:23 あなたの頭の上の天は青銅のようになり、足の下の地は鉄のようになる。
28:24 主は、あなたの地に降る雨を、粉やほこりに変える。それは天からあなたの上に降りかかり、あなたが滅びるまで続く。
28:25 主はあなたを、敵の前で打ち負かす。あなたは一つの道から敵に向かって出ていくが、七つの道に散らばって逃げる。そしてあなたは、世界中の国々にぞっとされる存在になる。
28:26 あなたの死体は、空のすべての鳥や地の獣のえさになる。しかも、それを追い払う者は誰もいない。
28:27 主はあなたを、エジプトのはれものや、腫瘍や、かさぶたや、かゆみで打つ。それらは決して治らない。
28:28 主はあなたを、狂気と、目の見えなくなる病と、心の混乱で打つ。
28:29 あなたは真昼でも、目の見えない人が暗闇で手さぐりするように、手さぐりして歩く。何をしてもうまくいかない。あなたはいつも虐げられ、奪われ続けるが、助けてくれる者は誰もいない。
28:30 あなたは女と婚約するが、別の男がその女と寝る。家を建てても、そこに住めない。ぶどう畑を作っても、その実を味わうことはできない。
28:31 あなたの牛は、目の前で殺される。でも、あなたはその肉を食べられない。あなたのろばは、目の前で奪い取られ、二度と戻ってこない。あなたの羊は敵に渡され、助けてくれる者は誰もいない。
28:32 あなたの息子や娘は、別の民族に引き渡される。あなたは一日中、その姿を目で追い、会いたくてたまらなくなる。でも、あなたには何もできない。
28:33 あなたの畑の実りも、あなたが苦労して手に入れたものも、見たこともない民族に食い尽くされる。あなたはいつも虐げられ、押しつぶされ続ける。
28:34 その目で見る光景のせいで、あなたは気が狂ってしまう。
28:35 主はあなたの膝と足を、治すことのできないひどい腫れ物で打つ。それは足の裏から頭のてっぺんまで広がる。
28:36 主はあなたと、あなたが立てた王を、あなたも先祖も知らない民族のところへ連れて行く。そこであなたは、木や石でできた、ほかの神々に仕えることになる。
28:37 主があなたを追いやる先の、あらゆる民族の間で、あなたは驚きの的となり、笑いものにされ、あざけられる。
28:38 あなたは畑にたくさんの種をまく。でも、収穫はわずかしかない。いなごが食い荒らすからだ。
28:39 あなたはぶどう畑を作り、手をかけて育てる。でも、そのぶどう酒を飲むことも、実をたくわえることもできない。虫が食べてしまうからだ。
28:40 あなたの土地のどこにでもオリーブの木は生えている。でも、その油を体に塗ることはできない。オリーブの実が落ちてしまうからだ。
28:41 あなたは息子や娘をもうける。でも、その子たちはあなたのものにならない。捕らえられて連れ去られてしまうからだ。
28:42 あなたのすべての木と、畑の実りは、いなごの群れのものとなる。
28:43 あなたのところに住んでいる寄留者は、どんどん上へ上へと高くなっていく。でも、あなたはどんどん下へ下へと落ちていく。
28:44 その人があなたに貸すのであって、あなたが貸すことはない。その人が頭となり、あなたは尻尾となる。
28:45 これらののろいがすべてあなたに襲いかかり、あなたを追いつめ、追いついて、ついにあなたを滅ぼしてしまう。あなたの神、主の声に聞き従わず、主が命じた戒めや掟を守らなかったからだ。
28:46 それらは、あなたと、あなたの子孫にとって、いつまでも消えないしるしとなり、見せしめとなる。
28:47 何もかも豊かに与えられていたのに、あなたは喜びと満ちた心で、あなたの神、主に仕えようとしなかった。
28:48 だからあなたは、主が送り込む敵に仕えることになる。飢え、渇き、裸で、何もかも足りないまま、その敵に仕えるのだ。敵はあなたの首に鉄のくびきをはめ、ついにあなたを滅ぼしてしまう。
28:49 主は遠くから、地の果てから、一つの国を引き寄せて、あなたに向かわせる。それは鷲が飛びかかるように攻めてくる、あなたには言葉も通じない国だ。
28:50 その国は荒々しい顔つきで、年寄りを敬うこともなく、若者にも情けをかけない。
28:51 その国はあなたの家畜が生むものと、畑の実りを食い尽くし、ついにあなたを滅ぼしてしまう。穀物も、新しいぶどう酒も、オリーブ油も、牛の子も羊の群れも、何一つ残さず、あなたを滅び去らせる。
28:52 その国は、あなたの国じゅうのすべての町を攻め囲む。あなたが頼りにしていた高く堅固な城壁が崩れ落ちるまで。あなたの神、主が与えてくれた国じゅう、すべての町であなたを攻め囲む。
28:53 包囲され、敵に追いつめられて苦しくなると、あなたは自分の腹の実、つまりあなたの神、主が与えてくれた息子や娘の肉を食べるようになる。
28:54 あなたの中でいちばん優しく、いちばん贅沢に暮らしていた男でさえ、自分の兄弟や、愛する妻や、生き残った子どもたちにさえ、けちけちした冷たい目を向けるようになる。
28:55 その男は、自分が食べている子どもの肉を、その中の誰にも分け与えようとしない。包囲され、敵に追いつめられて、何もかも尽きてしまうからだ。あなたの町という町で、敵があなたを苦しめる、そのときに。
28:56 あなたの中でいちばん優しく、いちばん贅沢に暮らしていた女——上品でか弱く、足の裏を地面につけるのさえいやがっていた女でさえ、愛する夫や、自分の息子や娘にさえ、けちけちした冷たい目を向けるようになる。
28:57 自分の股から出てくる後産や、産んだばかりの子どもにさえ、その目を向ける。包囲され、敵に追いつめられて何もかも足りなくなり、こっそりそれを食べてしまうからだ。あなたの町で、敵があなたを苦しめる、そのときに。
28:58 もしあなたが、この書物に記されたこの律法のことばをすべて守り行わず、あなたの神、主というこの栄光に満ちた恐るべき名を恐れないなら、
28:59 主はあなたと、あなたの子孫に、驚くような災いを下す。大きく、いつまでも続く災いと、重く、いつまでも続く病気を下す。
28:60 主はまた、あなたがかつて恐れていたエジプトのあらゆる病気をあなたに返す。それはあなたから離れなくなる。
28:61 それだけではない。この律法の書物に記されていないあらゆる病気や災いも、主は、あなたが滅ぼされるまで、あなたに送り続ける。
28:62 空の星のように数多くいたあなたたちも、わずかしか残らなくなる。あなたが、あなたの神、主の声に聞き従わなかったからだ。
28:63 かつて主が、あなたたちに良くし、あなたたちを増やすことを喜んだように、こんどは主が、あなたたちを滅ぼし、絶やすことを喜ぶようになる。あなたは、これから入って自分のものにしようとしている土地から、引き抜かれる。
28:64 主はあなたを、地の果てから果てまで、すべての民の中に散らす。そこであなたは、あなたも先祖も知らなかったほかの神々、木や石で造った神々に仕えることになる。
28:65 それらの国々の中で、あなたは安らぐことができず、足を休める場所もない。主はそこで、おびえて震える心と、見えなくなるほど弱った目と、絶望した魂を、あなたに与える。
28:66 あなたのいのちは、目の前で糸にぶら下がっているようになる。あなたは昼も夜もおびえ、自分が生きていられるかどうかも信じられなくなる。
28:67 朝には「早く夕方になればいい」と言い、夕方には「早く朝になればいい」と言う。心を襲うおびえと、目の前に見えるものへの恐れのためだ。
28:68 主はあなたを船に乗せて、エジプトへ連れ戻す。「あなたは二度とここを見ることはない」と、わたしが言ったあの道を通ってだ。そこであなたたちは、敵に自分を男女の奴隷として売ろうとする。しかし、買おうとする者さえいない。
29:1 これらは、主がモアブの地でモーセに命じて、イスラエルの人々と結ばせた契約の言葉である。ホレブで彼らと結んだ契約とは別のものだ。
29:2 モーセは全イスラエルを呼び集めて、こう言った。「あなたたちは、主がエジプトの地で、ファラオとそのすべての家臣、そして国全体に対してなさったことを、その目で残らず見てきた。
29:3 あの大きな試練も、あの大きなしるしと不思議も、あなたはその目で見た。
29:4 しかし主は今日まで、悟る心も、見る目も、聞く耳も、あなたたちにお与えにならなかった。
29:5 わたしは四十年の間、あなたたちを荒れ野で導いてきた。あなたたちが身にまとう服はすり切れず、足のはき物もすり減らなかった。
29:6 あなたたちはパンを食べず、ぶどう酒も強い酒も飲まなかった。それは、わたしがあなたたちの神、主であることを、あなたたちが知るためだった。
29:7 そしてあなたたちはこの場所にたどり着いた。すると、ヘシュボンの王シホンと、バシャンの王オグが、わたしたちを迎え撃とうと出てきた。だが、わたしたちは彼らを打ち破った。
29:8 そして、わたしたちは彼らの地を奪い取り、それをルベン族、ガド族、そしてマナセの半部族に、受け継ぐ土地として与えた。
29:9 だから、あなたたちはこの契約の言葉を守り、そのとおりに実行しなさい。そうすれば、することすべてがうまくいく。
29:10 今日、あなたたちは皆、あなたたちの神、主の前に立っている。あなたたちの部族の長たち、長老たち、役人たち、イスラエルのすべての人がそうだ。
29:11 幼い子どもたちも、妻たちも、あなたの宿営の中にいる寄留者も、あなたのために薪を割る者から水を汲む者まで、皆そこにいる。
29:12 それは、あなたが、あなたの神、主の契約に入るためだ。今日、あなたの神、主があなたと結ぶ、その誓いに入るためだ。
29:13 こうして主は今日、あなたをご自分の民として立て、あなたの神となられる。主があなたに約束し、あなたの先祖であるアブラハム、イサク、ヤコブに誓われたとおりにだ。
29:14 わたしがこの契約とこの誓いを結ぶのは、あなたたちだけとではない。
29:15 今日、ここでわたしたちと共に、わたしたちの神、主の前に立っている者とだけでなく、今日ここにいない者とも結ぶのだ。
29:16 あなたたちは、わたしたちがエジプトの地でどのように暮らしていたか、そして通り抜けてきた国々の間をどのように過ぎてきたかを、よく知っている。
29:17 あなたたちは、彼らのいまわしいものや、木や石、銀や金でできた偶像を見た。それらは彼らのところにあった。
29:18 あなたたちの中に、今日、わたしたちの神、主から心が離れ、あの国々の神々に仕えに行こうとする男や女、家族や部族がいてはならない。あなたたちの中に、毒草やにがよもぎを生えさせる根があってはならない。
29:19 そのような者は、この誓いの言葉を聞いても、心の中で自分は安全だと思い込み、こう言うだろう。「わたしは大丈夫だ。かたくなな心のままに進んでも、無事でいられる」と。しかし、それは潤った地も渇いた地も、共に滅ぼすことになる。
29:20 主はその者を決して赦さない。それどころか、主の怒りとねたみがその者に向かって燃え上がり、この書に記されたすべての呪いがその者にのしかかる。そして主は、その者の名を天の下から消し去る。
29:21 主はその者を、イスラエルのすべての部族の中から選び分けて災いに定める。この律法の書に記された、契約のすべての呪いのとおりに。
29:22 後の世代、あなたたちの後に立つ子孫や、遠い国からやって来る外国人は、この地に下された災いと、主が引き起こした病を目にするだろう。
29:23 その地は一面、硫黄と塩に覆われた焼け跡となる。種もまけず、作物も実らず、草一本さえ生えない。それは、主が怒りと憤りをもって滅ぼしたソドムとゴモラ、アドマとツェボイムがひっくり返されたときのようだ。
29:24 すべての国々は問うだろう。「なぜ主はこの地に、こんなことをしたのか。この激しい怒りは、いったい何なのか」と。
29:25 そして、こう答えが返る。「彼らが、自分たちの先祖の神、主の契約を捨てたからだ。主が彼らをエジプトの地から連れ出したときに、彼らと結んだ契約を。
29:26 彼らは行って、ほかの神々に仕え、それにひれ伏した。それは彼らの知らない神々であり、主が彼らに割り当てたものでもなかった。
29:27 だから主の怒りはこの地に向かって燃え上がり、この書に記されたすべての呪いをこの地に下した。
29:28 主は激しい怒りと憤りをもって、彼らをその土地から引き抜き、ほかの国へ投げ捨てた。今日あるとおりに」と。
29:29 隠れた事は、わたしたちの神である主のものだ。でも、明らかにされた事は、いつまでもわたしたちとわたしたちの子孫のもの。この律法のすべての言葉を、わたしたちが守り行うためだ。
30:1 わたしがあなたの前に置いたこれらすべてのこと、つまり祝福とのろいがあなたの上に実際に起こり、あなたが主に追いやられて行った先の国々で、それを心に思い返すようになったとき、
30:2 そしてあなたとあなたの子どもたちが、心を尽くし、魂を尽くしてあなたの神、主のもとに立ち返り、きょうわたしが命じるすべてのことに従って、その声に聞き従うなら、
30:3 あなたの神、主はあなたを元の状態に戻し、あわれんでくださる。そしてもう一度、あなたが追い散らされて行ったすべての民の中から、あなたを集めてくださる。
30:4 たとえあなたが天の果てまで追いやられていても、あなたの神、主はそこからあなたを集め、そこからあなたを連れ戻してくださる。
30:5 あなたの神、主は、あなたの先祖が受け継いだ地にあなたを連れて行き、あなたはそれを自分のものとする。主はあなたを幸せにし、あなたを先祖よりも数多くしてくださる。
30:6 あなたの神、主は、あなたの心と、あなたの子孫の心を新しくしてくださる。それは、あなたが心を尽くし、魂を尽くしてあなたの神、主を愛し、生きるためだ。
30:7 あなたの神、主は、これらすべてののろいを、あなたの敵、あなたを憎み、追いかけてきた者たちの上に下される。
30:8 あなたは再び主の声に聞き従い、きょうわたしが命じる主の戒めをすべて行うようになる。
30:9 そのとき、あなたの神、主は、あなたの手のすべての働きにおいて、あなたを豊かにあふれさせてくださる。あなたの子ども、あなたの家畜、あなたの畑の実りを豊かにし、あなたを幸せにしてくださる。主が、あなたの先祖を喜ばれたように、もう一度あなたを喜んでくださるからだ。
30:10 それは、あなたがこの律法の書に記されている主の戒めと定めを守って、あなたの神、主の声に聞き従い、心を尽くし、魂を尽くしてあなたの神、主のもとに立ち返るからだ。
30:11 きょうわたしがあなたに命じるこの戒めは、あなたにとって理解できないものでもなければ、手の届かないほど遠いものでもない。
30:12 それは天にあるのではない。だから「だれがわたしたちのために天に上り、それを取ってきて聞かせてくれるのか。そうすればわたしたちはそれを行えるのに」と言う必要はない。
30:13 それはまた海の向こうにあるのでもない。だから「だれがわたしたちのために海を渡り、それを取ってきて聞かせてくれるのか。そうすればわたしたちはそれを行えるのに」と言う必要もない。
30:14 むしろ、その言葉はあなたのすぐそばにある。あなたの口にあり、あなたの心にある。だからあなたはそれを行うことができる。
30:15 見なさい。きょうわたしは、あなたの前に命と幸い、死と災いを置く。
30:16 きょうわたしがあなたに命じるのは、あなたの神、主を愛し、その道を歩み、その戒めと定めと掟を守ることだ。そうすればあなたは生きて数を増し、これから入って自分のものとする地で、あなたの神、主はあなたを祝福してくださる。
30:17 しかし、もしあなたの心が離れ、聞き従わず、誘われてほかの神々にひれ伏し、それに仕えるなら、
30:18 きょうわたしはあなたたちに告げる。あなたたちは必ず滅びる。ヨルダン川を渡って入り、自分のものとする地で、長く生きることはできない。
30:19 きょうわたしは、天と地をあなたたちに対する証人として呼ぶ。わたしはあなたの前に命と死、祝福とのろいを置いた。だから命を選びなさい。そうすれば、あなたもあなたの子孫も生きる。
30:20 あなたの神、主を愛し、その声に聞き従い、主に堅くつき従いなさい。主こそあなたの命であり、あなたの日々を長くしてくださる方だ。そうすればあなたは、主があなたの先祖アブラハム、イサク、ヤコブに与えると誓われた地に住むことができる。
31:1 モーセは出て行き、イスラエルのすべての人々にこれらの言葉を語った。
31:2 モーセは彼らに言った。「わたしは今日で百二十歳になる。もう自由に動き回ることはできない。それに主はわたしに、『あなたはこのヨルダン川を渡ってはならない』と言われた。
31:3 あなたの神、主ご自身が、あなたの先に立って川を渡られる。主がこれらの国々をあなたの前から滅ぼし、あなたはその地を受け継ぐ。ヨシュアもあなたの先に立って渡る。主が言われたとおりだ。
31:4 主は、アモリ人の王シホンとオグ、そして彼らの地に対してなさったのと同じことを、これらの国々にもなさる。主は彼らを滅ぼされたのだ。
31:5 主が彼らをあなたたちの前に渡してくださる。だからあなたたちは、わたしが命じたすべてのとおりに、彼らに対して行いなさい。
31:6 強く、雄々しくありなさい。彼らを恐れたり、おびえたりしてはならない。あなたの神、主ご自身が、あなたと共に進んでくださるからだ。主はあなたを見放すことも、見捨てることもない。」
31:7 それからモーセはヨシュアを呼び、イスラエルのすべての人々が見ている前で、彼に言った。「強く、雄々しくありなさい。あなたはこの民と共に、主が先祖たちに与えると誓われた地へ入る。そして、あなたがその地を彼らに受け継がせるのだ。
31:8 主ご自身が、あなたの先に立って進んでくださる。主はあなたと共にいて、あなたを見放すことも、見捨てることもない。恐れてはならない。おびえてはならない。」
31:9 モーセはこの律法を書き記し、主の契約の箱を担ぐレビ族の祭司たちと、イスラエルのすべての長老たちに手渡した。
31:10 そしてモーセは彼らにこう命じた。「七年ごとの終わり、負債を免除する年の定めの時、仮庵の祭りに、
31:11 イスラエルのすべての人々が、あなたの神、主が選ばれる場所で主の前に出るとき、あなたはこの律法を、すべてのイスラエルの人々の前で、みなに聞こえるように読み上げなさい。
31:12 民を集めなさい。男も女も子どもも、あなたの町にいる外国人も集めるのだ。それは、みなが聞いて学び、あなたたちの神、主を畏れ敬い、この律法のすべての言葉を守り行うためだ。
31:13 そして、まだ知らない彼らの子どもたちも聞いて、あなたたちの神、主を畏れ敬うことを学ぶためだ。あなたたちがヨルダン川を渡って手に入れる、その土地で生きているかぎり、ずっとそうするのだ。」
31:14 主はモーセに言われた。「見よ、あなたが死ぬ日が近づいている。ヨシュアを呼び、二人で会見の幕屋に立ちなさい。わたしは彼に命令を与える。」そこでモーセとヨシュアは行って、会見の幕屋に立った。
31:15 すると主が、雲の柱の中に現れて幕屋に臨まれた。雲の柱は幕屋の入り口の上にとどまった。
31:16 主はモーセに言われた。「見よ、あなたはもうすぐ先祖のもとで眠りにつく。すると、この民は立ち上がり、これから入っていく土地の異国の神々を追い求めて身を汚す。彼らはわたしを捨て、わたしが彼らと結んだ契約を破るだろう。
31:17 その日、わたしの怒りは彼らに向かって燃え上がる。わたしは彼らを見捨て、彼らから顔を隠す。彼らは食い尽くされ、多くの災いと苦しみが彼らを襲う。その日、彼らは言うだろう。『わたしたちの神がわたしたちの中にいないから、こんな災いが襲ってきたのではないか』と。
31:18 だがわたしは、その日、彼らのしたすべての悪のゆえに、必ず顔を隠す。彼らがほかの神々のほうを向いてしまったからだ。
31:19 だから今、あなたたちはこの歌を書き取り、イスラエルの人々に教えなさい。彼らの口ずさむものとしなさい。この歌が、イスラエルの人々に対するわたしの証人となるためだ。
31:20 わたしは、彼らの先祖に誓った、乳と蜜の流れる土地に彼らを導き入れる。彼らはそこで食べて満ち足り、豊かになる。だが、そのときほかの神々のほうを向いて仕え、わたしを侮り、わたしの契約を破るだろう。
31:21 そして、多くの災いと苦しみが彼らを襲うとき、この歌が彼らの前で証人となって語る。この歌は、彼らの子孫の口から忘れ去られることがないからだ。わたしは、彼らを、誓った土地に導き入れる前から、今日この日に彼らが心に抱いている思いを知っているのだ。」
31:22 その日、モーセはこの歌を書き取り、イスラエルの人々に教えた。
31:23 そして主は、ヌンの子ヨシュアに命じて言われた。「強く、雄々しくあれ。あなたはイスラエルの人々を、わたしが彼らに誓った土地へ導き入れるからだ。わたしはあなたと共にいる。」
31:24 モーセが、この律法の言葉を最後まで一つ残らず巻物に書き終えたとき、
31:25 そしてモーセは、主の契約の箱を担ぐレビ人たちに、こう命じた。
31:26 「この律法の巻物を取って、あなたたちの神、主の契約の箱のわきに置きなさい。それはそこで、あなたたちに対する証人となる。
31:27 わたしは、あなたたちがどれほど反抗的で、頑固かをよく知っている。今日、わたしがまだ生きて一緒にいる間でさえ、あなたたちは主に逆らっている。わたしが死んだ後は、なおさらだろう。
31:28 あなたたちの部族の長老たちと役人たちを、みなわたしのところに集めなさい。彼らに、これらの言葉を直接語って聞かせ、天と地を証人として呼び出そう。
31:29 わたしにはわかっている。わたしが死んだ後、あなたたちはすっかり堕落し、わたしが命じた道からそれてしまう。そして終わりの日に、わざわいがあなたたちに降りかかる。あなたたちが自分の手で作ったもので主を怒らせ、主の目に悪とされることを行うからだ。」
31:30 こうしてモーセは、イスラエルの全会衆に、この歌の言葉を最後まで語り聞かせた。
32:1 天よ、耳を傾けよ。わたしは語る。地よ、聞け。わたしの口の言葉を。
32:2 わたしの教えは雨のように降り注ぎ、わたしの言葉は露のように滴り落ちる。若草に降る小雨のように、青草に降るにわか雨のように。
32:3 わたしは主の名を告げ知らせる。わたしたちの神の偉大さをほめたたえよ。
32:4 主は岩。そのわざは完全で、その道はどれも正しい。まことの神であり、偽りがない。正義そのものであり、真っすぐなお方だ。
32:5 それなのに、この人々は主に背いて堕落した。もはや主の子ではない。それが彼らの汚点だ。ねじ曲がった、よこしまな世代。
32:6 主にこんな仕打ちで報いるのか。愚かで、知恵のない民よ。主はあなたの父ではないか。あなたを造り、しっかりと立たせてくださったお方ではないか。
32:7 昔の日々を思い出せ。代々の年月を考えてみよ。父に尋ねてみよ、教えてくれるだろう。長老たちに聞いてみよ、話してくれるだろう。
32:8 いと高き方が国々に受け継ぐ地を分け、人の子らを振り分けたとき、イスラエルの子らの数に合わせて、それぞれの民の境を定めた。
32:9 主の分け前は、ご自分の民。ヤコブこそ、主が受け継ぐ財産だ。
32:10 主は荒れ野で彼を見つけた。獣の吠える、何もない荒地で。主は彼を囲んで守り、気を配り、自分の瞳のように大切に守った。
32:11 鷲が巣を揺り動かし、雛の上に羽ばたくように。主は翼を広げて彼を受けとめ、その翼に乗せて運んだ。
32:12 主はただひとりで彼を導いた。ともにいる外国の神など、いなかった。
32:13 主は彼を地の高い所に乗せ、畑の実りを食べさせた。岩から蜜を、硬い岩から油を吸わせた。
32:14 牛の凝乳と羊の乳、子羊の脂、バシャン産の雄羊と雄やぎ、それに最良の小麦。あなたはぶどうの血、泡立つぶどう酒を飲んだ。
32:15 だが、エシュルンは太ると、蹴り返した。あなたは太り、肥え、つややかになった。そして自分を造った神を捨て、自分を救う岩を軽んじた。
32:16 彼らはよその神々で主のねたみを引き起こし、忌まわしいもので主を怒らせた。
32:17 彼らは神ではない悪霊にいけにえをささげた。知りもしない神々、最近現れたばかりの新しい神々、先祖たちが恐れもしなかった神々に。
32:18 あなたは自分を生んだ岩を顧みず、あなたを産んだ神を忘れた。
32:19 主はこれを見て、彼らを退けた。息子や娘たちが主を怒らせたからだ。
32:20 主は言った。「わたしは彼らから顔を隠す。彼らの行き着く先を見てやろう。彼らはねじ曲がった世代、真実のかけらもない子どもたちだ。
32:21 彼らは神でもないものでわたしのねたみを引き起こし、むなしい偶像でわたしを怒らせた。だからわたしも、民でもないものを使って彼らのねたみを引き起こし、愚かな国民を使って彼らを怒らせる。
32:22 わたしの怒りは火となって燃え上がり、地の底の陰府にまで燃えていく。地とその実りを焼き尽くし、山々の土台まで焼き払う。
32:23 わたしは彼らの上に災いを積み重ね、わたしの矢を彼らに向けて射尽くす。
32:24 彼らは飢えでやせ衰え、熱病と激しい疫病に食い尽くされる。わたしは獣の牙を彼らに送り込み、地を這うものの毒を浴びせる。
32:25 外では剣が子どもを奪い、家の中では恐怖が襲う。若い男も若い女も、乳飲み子も白髪の老人も、みな滅びる。
32:26 わたしはこう思った。彼らを吹き散らし、人々の記憶から彼らの名を消し去ってしまおう、と。
32:27 だが、敵が高ぶるのが気がかりだった。敵がこれを見誤り、『勝ったのは自分たちの力だ。主がしたのではない』と言うといけないからだ。」
32:28 彼らは思慮を失った国民で、何一つ分かっていない。
32:29 彼らに知恵があれば、これを悟るだろうに。自分たちの行く末を見抜くだろうに。
32:30 もし彼らの岩が彼らを売り渡し、主が彼らを引き渡したのでなければ、どうして一人が千人を追い、二人が一万人を敗走させられるだろうか。
32:31 彼らの岩は、わたしたちの岩とは違う。敵たちでさえ、それを認めている。
32:32 彼らのぶどうの木は、ソドムのぶどうの木から出て、ゴモラの畑から生えたものだ。そのぶどうは毒を含み、その房は苦い。
32:33 彼らのぶどう酒は蛇の毒、コブラの恐ろしい毒だ。
32:34 これは、わたしのもとにたくわえられ、わたしの倉に封じられているではないか。
32:35 復讐はわたしのもの、報いもわたしがする。彼らの足がよろめくその時に。彼らの災いの日は近く、待ち受ける破滅が急いでやって来る。
32:36 主は自分の民をさばき、そのしもべたちを憐れむ。彼らの力が尽き果て、束縛された者も自由な者も、もう誰も残っていないのを見るからだ。
32:37 そのとき主は言う。「彼らの神々はどこにいるのか。彼らが頼りにした岩はどこか。
32:38 いけにえの脂を食べ、注ぎのぶどう酒を飲んでいた神々はどこだ。さあ、その神々に立ち上がってお前たちを助けさせよ。お前たちの隠れ場になってもらえ。」
32:39 今こそ見よ。わたしこそが、そのわたしだ。わたしのほかに神はいない。わたしが殺し、わたしが生かす。わたしが傷つけ、わたしが癒す。わたしの手から救い出せる者は、誰もいない。
32:40 わたしは天に手を上げて誓う。「わたしは永遠に生きている。」
32:41 わたしがきらめく剣を研ぎ、この手に裁きを握るとき、わたしは敵に復讐し、わたしを憎む者に報いる。
32:42 わたしは矢を血に酔わせ、剣に肉を食わせる。殺された者と捕らわれた者の血、敵の指導者たちの頭から流れる血で。
32:43 国々よ、主の民とともに喜び歌え。主はご自分のしもべたちの血の復讐を果たし、敵に報復し、ご自分の地とその民の罪を償ってくださるからだ。
32:44 モーセはヌンの子ホシェアとともに来て、この歌のすべての言葉を民に聞こえるように語った。
32:45 モーセはこれらすべての言葉をイスラエルのすべての人に語り終えると、
32:46 彼らにこう言った。「わたしが今日あなたたちに命じるこのすべての言葉を、心にしっかり刻みなさい。そして、あなたたちの子どもにも命じ、この教えのすべての言葉を守って行わせなさい。
32:47 これはあなたたちにとって、どうでもいい言葉ではない。これこそあなたたちのいのちなのだ。この言葉によって、あなたたちはヨルダン川を渡って手に入れる地で、長く生きることができる。」
32:48 ちょうどこの日、主はモーセにこう告げた。
32:49 「エリコの向かいにあるモアブの地、このアバリムの山に登り、ネボ山に立ちなさい。そして、わたしがイスラエルの人々に所有地として与えるカナンの地を見なさい。
32:50 あなたは登るその山で死に、自分の先祖のもとに集められる。あなたの兄弟アロンがホル山で死んで、その先祖のもとに集められたのと同じように。
32:51 それは、あなたたちがツィンの荒れ野のメリバ・カデシュの水のほとりで、イスラエルの人々の間でわたしに背き、彼らの間でわたしを聖なる者としてあがめなかったからだ。
32:52 だから、あなたはその地を目の前に見るが、そこには入れない。わたしがイスラエルの人々に与える地には入れないのだ。」
33:1 神の人モーセは、死ぬ前にイスラエルの人々を祝福した。その祝福の言葉はこうだ。
33:2 「主はシナイから来て、セイルから彼らの上に光のように昇り、パランの山から輝き出た。무数の聖なる者たちとともに来られ、その右の手には彼らのために燃える炎があった。
33:3 本当に、主は民を愛している。聖なる者たちはみな、あなたの手の中にある。彼らはあなたの足もとにひれ伏し、あなたの言葉を受け取る。
33:4 モーセはわたしたちに律法を与えた。それはヤコブの共同体が受け継ぐ宝だ。
33:5 民の指導者たちが集まり、イスラエルの部族がひとつになったとき、主はエシュルンの王となった。
33:6 ルベンよ、生きて死なないように。その人数が少なくならないように。」
33:7 ユダについては、こう言った。「主よ、ユダの声を聞いてください。ユダをその民のもとへ導いてください。ユダは自分の手で自分を守り、あなたが敵からユダを助けてください。」
33:8 レビについては、こう言った。「あなたのトンミムとウリムは、あなたに忠実な人のものだ。あなたはマサでその人を試し、メリバの水のほとりでその人と争った。
33:9 レビは自分の父にも母にも『わたしは知らない』と言い、兄弟たちを親しい者と認めず、自分の子どもたちも気にかけなかった。あなたの言葉を守り、あなたとの契約を大切に守ったからだ。
33:10 彼らはあなたの定めをヤコブに、あなたの律法をイスラエルに教える。あなたの前で香をたき、祭壇の上で全焼のささげ物をささげる。
33:11 主よ、レビの力を祝福し、その手の働きを喜んで受け入れてください。レビに立ち向かう者、レビを憎む者の腰を打ち、二度と立ち上がれないようにしてください。」
33:12 ベニヤミンについては、こう言った。「主に愛されている者。ベニヤミンは主のそばで安心して住む。主は一日中ベニヤミンを守り、その肩の間に住まわれる。」
33:13 ヨセフについては、こう言った。「主がその土地を祝福してくださるように。天からの尊い恵み、露をもって、また地の底に横たわる深い水をもって、
33:14 太陽が実らせる尊い実りをもって、月が生み出す尊い産物をもって、
33:15 昔からある山々の最も良いものをもって、いつまでも変わらない丘の尊い恵みをもって、
33:16 地とそれを満たすすべての尊いものをもって、そして柴の中に住まわれる方の恵みをもって。これらの祝福が、ヨセフの頭の上に、兄弟たちの中から選ばれた者の頭の上に降りますように。
33:17 ヨセフには、雄牛の長子のような威厳がある。その角は野牛の角のようだ。彼はそれで諸国の民を突き、地の果てまで押しやる。それがエフライムの数万の民であり、マナセの数千の民だ。」
33:18 ゼブルンについては、こう言った。「ゼブルンよ、外に出て行くときに喜べ。イッサカルよ、自分の天幕の中で喜べ。
33:19 彼らは人々を山に呼び集め、そこで正しいささげ物をささげる。彼らは海の豊かさを吸い、砂の中に隠された宝を取り出すからだ。」
33:20 ガドについては、こう言った。「ガドの領土を広げてくださる方に、祝福があるように。ガドは雌獅子のように身を伏せ、獲物の腕をも頭をも引き裂く。
33:21 彼は自分のために最良の地を選び取った。そこには指導者の受ける分が取り分けられていたからだ。彼は民の先頭に立って進み、主の正しさを行い、イスラエルと共に主の定めを守った。」
33:22 ダンについては、こう言った。「ダンは獅子の子。バシャンから躍り出る。」
33:23 ナフタリについては、こう言った。「ナフタリは深く満ち足り、主の祝福に満たされている。西と南の土地を受け継ぐがよい。」
33:24 アシェルについては、こう言った。「アシェルは子らの中で最も祝福されるように。兄弟たちに愛され、その足を油に浸すように。
33:25 あなたの門のかんぬきは鉄と青銅。あなたの力は、生きる日々のかぎり続く。」
33:26 「エシュルンよ、神のような方はどこにもいない。あなたを助けるために天を駆け、雲に乗って堂々と進まれる。
33:27 永遠の昔からおられる神が、あなたの隠れ場。とこしえの腕が、あなたを下から支える。神は敵をあなたの前から追い払い、『滅ぼせ』と言われた。
33:28 こうしてイスラエルは安心して住み、ヤコブの泉は穀物とぶどう酒に恵まれた地にひとりで湧く。その天は露を滴らせる。
33:29 イスラエルよ、あなたは幸せだ。あなたのような民がどこにいるだろう。主に救われた民よ。主はあなたを守る盾、あなたに勝利を与える剣。敵はあなたにへつらい、あなたは敵の背を踏みつける。」
34:1 モーセはモアブの平原からネボ山に登り、エリコの向かいにあるピスガの頂に立った。すると主は、彼にすべての土地を見せた。ギルアデからダンまで、
34:2 ナフタリの全土、エフライムとマナセの土地、ユダの全土から西の海まで、
34:3 南の地、そしてやしの木の町エリコの谷の低地からツォアルまで、その一つ一つを見せた。
34:4 そして主はモーセに言った。「これが、わたしがアブラハム、イサク、ヤコブに『あなたの子孫に与える』と誓った土地だ。あなたにこの目で見せた。だが、あなたはそこに渡って行くことはできない。」
34:5 こうして主のしもべモーセは、主の言葉のとおり、モアブの地で死んだ。
34:6 主は彼をモアブの地の谷、ベト・ペオルの向かいに葬った。しかし、その墓がどこにあるのかは、今日にいたるまでだれも知らない。
34:7 モーセは死んだとき、百二十歳だった。それでも目はかすまず、体力も衰えていなかった。
34:8 イスラエルの人々は、モアブの平野で三十日のあいだモーセのために泣いた。こうしてモーセを悼んで泣く日々は終わった。
34:9 ヌンの子ヨシュアは、知恵の霊に満ちていた。モーセが彼の上に手を置いたからだ。イスラエルの人々は彼に従い、主がモーセに命じたとおりに行った。
34:10 その後、イスラエルには、モーセのような預言者は現れなかった。主が顔と顔を合わせて知った人は、ほかにいない。
34:11 主はモーセを送り、エジプトの地で、ファラオとそのすべての家来、そして国全体に対して、あらゆるしるしと不思議を行わせた。
34:12 また、モーセはすべてのイスラエルの目の前で、力強い御手のわざと、大いなる恐るべきわざのすべてを行った。
ヨシュア記
1:1 主のしもべモーセが死んだ。その後、主はモーセの世話をしてきたヌンの子ヨシュアに、こう語りかけた。
1:2 「わたしのしもべモーセは死んだ。だから今、立ち上がりなさい。あなたと、この民のすべてで、このヨルダン川を渡りなさい。わたしがイスラエルの人々に与えようとしている地へ入るのだ。
1:3 あなたたちが足で踏むところは、どこでもあなたたちに与える。モーセに約束したとおりだ。
1:4 荒れ野からあのレバノンまで、そして大河ユーフラテスまで、ヒッタイト人の全土から、日の沈む西の大海まで、そこがあなたたちの領土となる。
1:5 あなたが生きているかぎり、あなたの前に立ちはだかれる者は一人もいない。わたしはモーセと共にいたように、あなたと共にいる。あなたを見放さず、見捨てない。
1:6 強く、雄々しくありなさい。あなたはこの民を導いて、わたしが彼らの先祖に必ず与えると誓ったあの地を、彼らに受け継がせるからだ。
1:7 ただ、強く、とても雄々しくありなさい。わたしのしもべモーセがあなたに命じた教えを、すべてそのまま守り行いなさい。そこから右にも左にもそれてはいけない。そうすれば、あなたはどこへ行っても、すべてうまくいく。
1:8 この教えの書を、あなたの口から離してはいけない。昼も夜もそれを口ずさみなさい。そこに書かれていることを、すべてそのまま守り行うためだ。そうすれば、あなたの歩む道は栄え、すべてうまくいく。
1:9 わたしはあなたに命じたではないか。強く、雄々しくありなさい。おびえてはいけない。おじけづいてはいけない。あなたがどこへ行っても、あなたの神、主が共にいるからだ。」
1:10 そこでヨシュアは、民の役人たちにこう命じた。
1:11 「宿営の中を回って、民にこう伝えなさい。『食料を用意しておきなさい。三日のうちに、あなたたちはこのヨルダン川を渡る。あなたたちの神、主が与えようとしている地に入り、そこを受け継ぐためだ。』」
1:12 また、ヨシュアはルベン族とガド族、そしてマナセ族の半分に向かって、こう言った。
1:13 「主に仕えたモーセが、あなたたちに命じた言葉を思い出しなさい。彼はこう言った。『あなたたちの神、主は、あなたたちを安らげる地に落ち着かせ、この地を与えてくださる。』
1:14 あなたたちの妻や子どもたち、家畜は、モーセがヨルダン川の東側であなたたちに与えたこの地にとどまっていてよい。でも、戦える者はみな武装して、兄弟たちの先頭に立って川を渡り、彼らを助けなさい。
1:15 主が、あなたたちと同じように兄弟たちにも安らぎを与え、彼らも、あなたたちの神、主が与えようとしている地を受け継ぐ。そのときまでだ。それがすんだら、あなたたちは自分の受け継いだ地に帰ってよい。それは、主に仕えたモーセが、ヨルダン川の東側、日の昇るほうであなたたちに与えた地だ。」
1:16 すると彼らはヨシュアに答えた。「わたしたちは、あなたが命じることを、すべて行います。あなたが送り出す所へは、どこへでも行きます。
1:17 モーセにすべて従ったように、あなたにも従います。ただ、あなたの神、主が、モーセと共におられたように、あなたと共にいてくださいますように。
1:18 あなたの命令に逆らい、あなたの命じる言葉に従わない者は、だれであっても死刑になります。ただ、どうか強く、勇敢でいてください。」
2:1 さて、ヌンの子ヨシュアは、シティムから二人の男をひそかに偵察に送り出し、こう言った。「行って、あの地を、特にエリコを調べてきなさい。」二人は出かけて行き、ラハブという名の遊女の家に入って、そこに泊まった。
2:2 ところが、エリコの王にこう告げる者があった。「今夜、イスラエルの者たちが、この地を探るためにここへやって来ました。」
2:3 そこでエリコの王は、ラハブのところに使いを送って言った。「あなたのところに来て、家に入った男たちを引き渡しなさい。あの者たちは、この地のすべてを探りに来たのだ。」
2:4 しかし、その女は二人の男をかくまっていた。彼女はこう言った。「確かに、その男たちはわたしのところに来ました。でも、どこから来たのかは知りませんでした。
2:5 門が閉まるころ、暗くなってから、あの男たちは出て行きました。どこへ行ったのかは知りません。急いで追いかければ、追いつけるはずです。」
2:6 実は、彼女は二人を屋上に上げ、屋上に並べてあった亜麻の茎の中に隠していたのだった。
2:7 追っ手たちは、ヨルダン川へ向かう道を、渡し場のほうまで二人を追いかけて行った。追っ手が出て行くと、門はすぐに閉じられた。
2:8 二人の男がまだ横にならないうちに、彼女は屋上に上がって来た。
2:9 そして二人に言った。「主がこの地をあなたたちに与えたことを、わたしは知っています。あなたたちへの恐れがわたしたちを襲い、この地に住む人はみな、あなたたちの前でおびえきっています。
2:10 あなたたちがエジプトを出たとき、主がどうやって葦の海の水をあなたたちの前で干上がらせたか、わたしたちは聞きました。それに、ヨルダン川の向こう側にいたアモリ人の二人の王、シホンとオグにあなたたちがしたこと、二人を滅ぼし尽くしたことも聞きました。
2:11 それを聞いて、わたしたちの心はくじけ、あなたたちを前にして立ち向かう気力は、もうだれにも残っていません。あなたたちの神である主こそ、上は天でも下は地でも、神だからです。
2:12 だから今、主にかけてわたしに誓ってください。わたしはあなたたちに慈しみを尽くしました。だから、あなたたちも同じように、わたしの家族に慈しみを尽くしてください。そして、確かなしるしをください。
2:13 わたしの父と母、兄弟姉妹、そして彼らのものすべてを生かし、わたしたちの命を死から救い出してください。」
2:14 男たちは彼女に言った。「わたしたちの命に代えても、あなたたちを守る。ただし、このことをだれにも漏らさなければだ。主がこの地をわたしたちに与えるとき、わたしたちはあなたに慈しみと真実を尽くそう。」
2:15 そこで彼女は、綱を使って二人を窓から降ろした。彼女の家は城壁の中に組み込まれていて、彼女はその壁の上に住んでいたのだ。
2:16 彼女は二人に言った。「山のほうへ行ってください。そうすれば追っ手に出くわしません。三日間そこに隠れて、追っ手が戻るのを待ってから、自分たちの道を進んでください。」
2:17 男たちは彼女に言った。「あなたがわたしたちに誓わせたこの誓いについて、わたしたちに責任はない。ただし、次のことを守ってくれればだ。
2:18 いいか、わたしたちがこの地に攻め込むとき、あなたはこの赤いひもを、わたしたちを降ろした窓に結びつけておくのだ。そして、あなたの父と母、兄弟たち、あなたの父の家族みんなを、あなたの家に集めておきなさい。
2:19 もし、あなたの家の戸口から外へ出て行く者がいれば、その人の血の責任はその人自身にある。わたしたちに責任はない。でも、あなたと一緒に家の中にいる人に手をかける者がいれば、その血の責任はわたしたちにある。
2:20 それに、もしあなたがこのわたしたちのことを誰かに漏らせば、あなたが誓わせたこの誓いについて、わたしたちに責任はなくなる。」
2:21 彼女は言った。「あなたたちの言うとおりにします。」こうして彼女は二人を送り出し、二人は去って行った。そして彼女は、あの赤いひもを窓に結びつけた。
2:22 二人は出発して山に着き、追っ手が戻るまで三日間そこにとどまった。追っ手は道という道を探し回ったが、二人を見つけられなかった。
2:23 それから二人は引き返し、山を下りて川を渡り、ヌンの子ヨシュアのところに戻った。そして自分たちに起きたことを、すべて彼に話した。
2:24 二人はヨシュアに言った。「主が、あの地をすべてわたしたちの手に渡してくださいました。しかも、あの地に住む人たちはみんな、わたしたちを前にして怖じ気づいています。」
3:1 翌朝早く、ヨシュアはイスラエルの人みんなと一緒にシティムを出発し、ヨルダン川まで来た。そして川を渡る前に、そこで一晩を過ごした。
3:2 三日たったとき、指揮官たちが宿営の中を回って、
3:3 人々にこう命じた。「あなたたちの神、主の契約の箱を、レビ人の祭司たちが担いで進むのを見たら、あなたたちも自分のいる場所を出発して、そのあとについて行きなさい。
3:4 ただし、箱との間には、およそ二千キュビト（約一キロ）の距離をあけておくこと。箱に近づいてはいけない。そうすれば、あなたたちは進むべき道が分かる。あなたたちは、これまでこの道を通ったことがないのだから。」
3:5 ヨシュアは人々に言った。「身を清めなさい。明日、主があなたたちの間で不思議なわざを行われるのだから。」
3:6 そしてヨシュアは祭司たちに言った。「契約の箱を担いで、人々の先に立って渡りなさい。」祭司たちは契約の箱を担ぎ、人々の先に立って進んだ。
3:7 主はヨシュアに言われた。「今日から、わたしはイスラエルのみんなの前で、あなたを大きな存在にしていく。わたしがモーセと共にいたように、あなたとも共にいることを、みんなに分からせるためだ。
3:8 あなたは、契約の箱を担ぐ祭司たちにこう命じなさい。『ヨルダン川の水ぎわまで来たら、川の中で立ち止まりなさい。』」
3:9 ヨシュアはイスラエルの人々に言った。「ここに集まって、あなたたちの神、主の言葉を聞きなさい。」
3:10 そしてヨシュアは言った。「これで、生きておられる神があなたたちの中におられることが分かる。神はあなたたちの前から、カナン人、ヒッタイト人、ヒビ人、ペリジ人、ギルガシ人、アモリ人、エブス人を必ず追い払ってくださる。
3:11 見なさい。全地の主である方の契約の箱が、あなたたちの先に立ってヨルダン川を渡る。
3:12 だから今、イスラエルの各部族から一人ずつ、十二人を選びなさい。
3:13 全地の主である主の箱を担ぐ祭司たちの足の裏が、ヨルダン川の水に触れて止まると、川の水はせき止められる。上流から流れてくる水が、壁のように盛り上がって立つのだ。」
3:14 こうして人々は、ヨルダン川を渡ろうと、自分たちの天幕をたたんで出発した。契約の箱を担ぐ祭司たちは、人々の先に立って進んだ。
3:15 箱を担ぐ者たちがヨルダン川まで来て、その足が水ぎわに浸ったときのことだった。ヨルダン川は、刈り入れの時期にはいつも、岸いっぱいにあふれるほど水がみなぎっている。
3:16 ところが、上流から流れてくる水が止まった。それははるか遠く、ツァレタンのそばにあるアダムという町のあたりで、壁のように盛り上がって立った。アラバの海、つまり塩の海へと流れ下る水は、すっかり途切れてしまった。こうして人々は、エリコの正面で川を渡った。
3:17 主の契約の箱を担ぐ祭司たちは、ヨルダン川の真ん中の乾いた地面に、しっかりと立ち続けた。イスラエルの人々がみな渡り終えるまで、そこに立っていた。こうして民は全員、乾いた地面を歩いてヨルダン川を渡り切った。
4:1 民がみんなヨルダン川を渡り終えると、主はヨシュアにこう言われた。
4:2 「民の中から十二人を選びなさい。部族ごとに一人ずつだ。
4:3 そして、その人たちにこう命じなさい。『ヨルダン川の真ん中、祭司たちが立っていた足元から、石を十二個拾い上げなさい。それを一緒に運んで、今夜泊まる場所に置くのだ』」
4:4 そこでヨシュアは、イスラエルの人々の中から選んでおいた十二人を呼び寄せた。部族ごとに一人ずつだった。
4:5 ヨシュアは彼らに言った。「あなたがたの神、主の箱の前を進んで、ヨルダン川の真ん中まで行きなさい。そして、イスラエルの部族の数のとおり、一人ずつ石を一つ肩にかついで運びなさい。
4:6 これはあなたがたの間で、しるしとなる。いつか子どもたちが『この石にはどんな意味があるの?』と聞いてきたら、
4:7 こう答えなさい。『主の契約の箱がヨルダン川を渡ったとき、川の水がせき止められたのだ。この箱の前で、ヨルダン川の水がせき止められた。だからこの石は、イスラエルの人々にとって、いつまでも忘れないための記念なのだ』」
4:8 イスラエルの人々は、ヨシュアが命じたとおりにした。主がヨシュアに告げたとおり、イスラエルの部族の数のとおりに、ヨルダン川の真ん中から石を十二個運び出した。そして、それを泊まる場所まで持って行き、そこに置いた。
4:9 またヨシュアは、契約の箱をかつぐ祭司たちの足が立っていたヨルダン川の真ん中にも、石を十二個立てた。その石は、今日もそこにある。
4:10 箱をかつぐ祭司たちは、主がヨシュアに民へ伝えるよう命じたことがすべて終わるまで、ヨルダン川の真ん中に立っていた。それは、モーセがヨシュアに命じたとおりだった。民は急いで渡って行った。
4:11 民がみんな渡り終えると、主の箱と祭司たちも、民の見ている前を渡った。
4:12 ルベン族とガド族、それにマナセの半部族は、モーセが命じていたとおり、武装してイスラエルの人々の先頭に立って渡った。
4:13 戦いのために武装した約四万人が、主の前を進み、エリコの平野へと戦いに向かって渡って行った。
4:14 その日、主はすべてのイスラエルの人々の前で、ヨシュアを偉大な者とした。人々は、モーセを敬ったように、ヨシュアを生涯ずっと敬うようになった。
4:15 主はヨシュアに言った。
4:16 「証しの箱をかつぐ祭司たちに命じて、ヨルダン川から上がってこさせなさい。」
4:17 それでヨシュアは祭司たちに命じた。「ヨルダン川から上がってきなさい。」
4:18 主の契約の箱をかつぐ祭司たちがヨルダン川の真ん中から上がり、その足の裏が乾いた地に着くと、ヨルダン川の水はもとの場所に戻り、前と同じように岸いっぱいにあふれて流れた。
4:19 民は第一の月の十日にヨルダン川から上がり、エリコの東のはずれにあるギルガルに宿営した。
4:20 ヨシュアは、ヨルダン川から取り出したあの十二個の石を、ギルガルに立てた。
4:21 そしてイスラエルの人々に言った。「いつか、あなたたちの子どもが父親に『この石には、どんな意味があるの』と尋ねたら、
4:22 子どもたちにこう教えなさい。『イスラエルは、この ヨルダン川を、乾いた地の上を歩いて渡ったのだ。』
4:23 あなたたちの神である主が、あなたたちが渡り終えるまで、目の前でヨルダン川の水をかわかしてくださったのだ。それは、あなたたちの神である主が、葦の海でしてくださったのと同じだ。主は、わたしたちが渡り終えるまで、その海を目の前でかわかしてくださった。
4:24 それは、地のすべての民が、主の手が力強いことを知るためであり、また、あなたたちがいつまでも、あなたたちの神である主を敬うためだ。」
5:1 アモリ人の王たちはみなヨルダン川の西側におり、カナン人の王たちはみな海沿いにいた。主がイスラエルの人々の前でヨルダン川の水を干上がらせ、彼らが渡り終えるまでそうしてくださった、と彼らは聞いた。すると彼らの心はくじけ、イスラエルの人々を前にして、もう立ち向かう気力も残っていなかった。
5:2 そのころ、主はヨシュアに言われた。「石の小刀を作りなさい。そしてもう一度、イスラエルの人々に割礼を施しなさい。」
5:3 ヨシュアは石の小刀を作り、「包皮の丘」と呼ばれる場所でイスラエルの人々に割礼を施した。
5:4 ヨシュアが割礼を施したのには、こういう理由があった。エジプトを出て来た男子は、つまり戦える男たちはみな、エジプトを出た後、荒れ野を進む途中で死んでしまった。
5:5 エジプトを出て来た民はみな割礼を受けていた。しかし、エジプトを出てから荒れ野を進む途中で生まれた者たちは、だれも割礼を受けていなかった。
5:6 イスラエルの人々は四十年の間、荒れ野をさまよった。その間に、エジプトを出て来た戦える男たちは、一人残らず死に絶えた。彼らが主の声に従わなかったからだ。それで主は彼らに、こう誓われた。乳と蜜の流れる地、わたしたちに与えると先祖たちに誓われたあの地を、彼らには決して見せない、と。
5:7 主は彼らに代わって、その子どもたちを立てられた。ヨシュアはこの子どもたちに割礼を施した。旅の途中で割礼を受けていなかったので、彼らは割礼のないままだったからだ。
5:8 民全体が割礼を受け終えると、彼らは傷が癒えるまで、宿営地のそれぞれの場所にとどまった。
5:9 主はヨシュアに言われた。「今日わたしは、エジプトでのあの恥をあなたたちから取り除いた。」それで、その場所は今日まで「ギルガル」と呼ばれている。
5:10 イスラエルの人々はギルガルに宿営し、その月の十四日の夕方、エリコの平野で過越の祭りを祝った。
5:11 過越の翌日、彼らはまさにその日、その地の産物を食べた。種を入れないパンと、炒った麦だった。
5:12 彼らがその地の産物を食べた翌日、マナは降らなくなった。イスラエルの人々には、もうマナはなかった。その年、彼らはカナンの地の実りを食べた。
5:13 さて、ヨシュアがエリコの近くにいたときのことである。ふと目を上げて見ると、一人の人が抜き身の剣を手に持ち、彼の前に立っていた。ヨシュアはその人に近づいて言った。「あなたは味方ですか、それとも敵ですか。」
5:14 するとその人は答えた。「いや、わたしは主の軍勢の司令官として、今、来たのだ。」ヨシュアは地にひれ伏して拝み、こう言った。「わが主は、しもべに何とおっしゃるのですか。」
5:15 主の軍勢の司令官はヨシュアに言った。「あなたの足から履き物を脱ぎなさい。あなたが立っているその場所は聖なる場所だからだ。」ヨシュアはそのとおりにした。
6:1 さて、エリコの町はイスラエルの人々のために、固く閉ざされていた。出て行く者もなく、入る者もなかった。
6:2 主はヨシュアに言われた。「見よ、わたしはエリコとその王、勇敢な戦士たちを、あなたの手に渡した。
6:3 あなたたち戦う者は皆で町の周りを回り、一周しなさい。これを六日間、毎日行いなさい。
6:4 七人の祭司は、それぞれ雄羊の角笛を持ち、箱の前を進みなさい。七日目には、七回町の周りを回り、祭司たちは角笛を吹き鳴らしなさい。
6:5 そして雄羊の角笛が長く鳴り響き、あなたたちがその音を聞いたら、民は皆いっせいに大声でときの声をあげなさい。すると町の城壁はその場に崩れ落ちる。民はそれぞれ、まっすぐ町へ攻め上るのだ。」
6:6 ヌンの子ヨシュアは祭司たちを呼んで言った。「契約の箱を担ぎなさい。そして七人の祭司は、それぞれ雄羊の角笛を持ち、主の箱の前を進みなさい。」
6:7 そしてヨシュアは民に言った。「進んで町の周りを回りなさい。武装した者たちは主の箱の前を進みなさい。」
6:8 ヨシュアがこう民に告げると、七人の祭司はそれぞれ雄羊の角笛を持ち、主の前を進みながら角笛を吹き鳴らした。主の契約の箱は、そのあとに続いた。
6:9 武装した者たちは、角笛を吹く祭司たちの前を進んだ。後ろを守る者たちは箱のあとに続いた。こうして角笛は鳴り響き続けた。
6:10 ヨシュアは民にこう命じていた。「ときの声をあげてはいけない。声を出してはいけない。一言も口にしてはいけない。わたしが『あげろ』と言う、その日までは。そう言ったら、ときの声をあげなさい。」
6:11 こうして主の箱は町を一周した。人々は宿営に戻り、そこで夜を過ごした。
6:12 翌朝、ヨシュアは早く起きた。祭司たちは主の箱を担いだ。
6:13 七人の祭司はそれぞれ雄羊の角笛を持ち、主の箱の前を進みながら角笛を吹き鳴らした。武装した者たちはその前を進み、後ろを守る者たちは主の箱のあとに続いた。こうして角笛は鳴り響き続けた。
6:14 二日目も、彼らは町を一周して宿営に戻った。こうして六日間、同じことを繰り返した。
6:15 七日目には、夜明けとともに早く起き、これまでと同じように町を回った。ただしこの日は、七回町の周りを回った。
6:16 七回目に祭司たちが角笛を吹き鳴らすと、ヨシュアは民に言った。「ときの声をあげろ。主がこの町をあなたたちに与えてくださったのだ。
6:17 この町と、その中にあるすべては、主のものとして滅ぼし尽くさなければならない。ただし遊女ラハブと、彼女とともに家にいる者だけは生かしておきなさい。彼女は、わたしたちが送った使いの者たちをかくまってくれたからだ。
6:18 あなたたちは、滅ぼし尽くすと定められたものに、決して手を出してはいけない。それを取れば、あなたたち自身が滅びに定められてしまう。イスラエルの宿営を滅びに巻き込み、災いをもたらすことになるのだ。
6:19 銀や金、青銅や鉄の器はすべて、主のものとして聖別されている。それらは主の宝物庫に納めなければならない。」
6:20 そこで民はときの声をあげ、祭司たちは角笛を吹き鳴らした。民は角笛の音を聞くと、いっせいに大きなときの声をあげた。すると城壁がその場に崩れ落ちた。民はそれぞれ、まっすぐ町に攻め上がり、町を占領した。
6:21 そして町の中にいるものを、男も女も、若者も年寄りも、牛も羊もろばも、すべて剣にかけて滅ぼし尽くした。
6:22 ヨシュアは、その地を探ってきた二人の男に言った。「あの遊女の家に行き、彼女とその家族をみんな連れ出しなさい。あなたたちが彼女に誓ったとおりに。」
6:23 偵察に行っていた若者たちは中に入り、ラハブと、その父母、兄弟、そして彼女に連なる者たちをみな連れ出した。親族全員を連れ出して、イスラエルの宿営の外に住まわせた。
6:24 こうして彼らは町とその中のすべてを火で焼き払った。ただし銀や金、青銅や鉄の器だけは、主の家の宝物庫に納めた。
6:25 ヨシュアは、遊女ラハブとその一族、そして彼女に連なる者たちをみな生かしておいた。ラハブは、ヨシュアがエリコを探るために送った使いの者たちをかくまってくれたからだ。彼女は今日まで、イスラエルの人々の中で暮らしている。
6:26 そのときヨシュアは、こう誓って言った。「この町エリコを建て直そうとする者は、主の前でのろわれる。その者は、土台を築くときに長男を失い、門を建てるときに末の子を失うことになる。」
6:27 主はヨシュアとともにおられた。そしてヨシュアの名は、この地のすべてに知れわたった。
7:1 ところが、イスラエルの人々は、滅ぼし尽くしてささげるべきものについて、主を裏切る罪を犯した。ユダ族のアカンが、そのものの一部を自分のものにしてしまったのだ。アカンはカルミの子、カルミはザブディの子、ザブディはゼラの子である。それで主の怒りが、イスラエルに向かって燃え上がった。
7:2 ヨシュアはエリコから、ベテルの東、ベト・アベンのそばにあるアイという町へ、何人かの人を送った。そして、こう言った。「行って、あの地を偵察してきてほしい。」人々は上って行き、アイを偵察した。
7:3 彼らはヨシュアのところに戻って来て、こう言った。「民全員が行く必要はありません。二千人か三千人ほどが上って行けば、アイを討てます。民全部をあそこまで行かせて疲れさせることはありません。相手は少人数ですから。」
7:4 そこで、民のうち三千人ほどが上って行った。ところが、彼らはアイの人々の前から逃げ出してしまった。
7:5 アイの人々は、そのうち三十六人ほどを討ち取った。町の門の前からシェバリムまで追いかけ、下り坂で討ったのだ。これで民の心はくじけ、水のようになってしまった。
7:6 ヨシュアは自分の服を引き裂き、主の箱の前で夕方まで地にひれ伏した。イスラエルの長老たちも同じようにし、みな頭に土をかぶった。
7:7 ヨシュアは言った。「ああ、主なる神よ。どうしてこの民にヨルダン川を渡らせたのですか。わたしたちをアモリ人の手に渡して、滅ぼすためだったのですか。こんなことなら、ヨルダン川の向こう側にそのまま留まっていればよかったのです。
7:8 主よ、イスラエルが敵に背を向けて逃げてしまった今、わたしは何と言えばいいのでしょう。
7:9 カナン人や、この地に住むすべての者がこれを聞けば、わたしたちを取り囲み、わたしたちの名をこの地から消し去ってしまうでしょう。そうなれば、あなたはご自分の偉大な名のために、どうなさるおつもりですか。」
7:10 すると主はヨシュアに言われた。「立ち上がれ。なぜそんなふうにひれ伏しているのか。
7:11 イスラエルは罪を犯した。わたしが命じた契約を破ったのだ。彼らは滅ぼし尽くしてささげるべきものの一部を取り、盗み、それをごまかして、自分の持ち物の中に隠した。
7:12 だから、イスラエルの人々は敵の前に立つことができず、敵に背を向けて逃げるのだ。彼ら自身が、滅ぼし尽くされるべきものとなってしまったからだ。そのささげるべきものをあなたがたの中から取り除かないかぎり、わたしはもう、あなたがたと共にいることはない。
7:13 立って、民を聖め、こう言いなさい。『明日に備えて、自分自身を聖めなさい。イスラエルの神、主はこう言われる。イスラエルよ、あなたの中に、滅ぼし尽くしてささげるべきものがある。それをあなたがたの中から取り除くまで、あなたは敵の前に立つことができない。』
7:14 朝になったら、あなたがたは部族ごとに前に進み出なさい。主が取り分ける部族は、氏族ごとに進み出る。主が取り分ける氏族は、家族ごとに進み出る。そして主が取り分ける家族は、一人ずつ進み出るのだ。
7:15 そのささげるべきものを持っていて取り分けられた者は、その持ち物すべてと共に、火で焼かれる。主の契約を破り、イスラエルの中で恥ずべきことをしたからだ。」
7:16 翌朝、ヨシュアは早く起き、イスラエルを部族ごとに進み出させた。すると、ユダの部族が取り分けられた。
7:17 ヨシュアがユダの諸氏族を進み出させると、ゼラの氏族が取り分けられた。ゼラの氏族を家族ごとに進み出させると、ザブディの家族が取り分けられた。
7:18 その家族を一人ずつ進み出させると、ユダ族のゼラの子ザブディ、そのザブディの子カルミ、そのカルミの子アカンが取り分けられた。
7:19 ヨシュアはアカンに言った。「わが子よ、イスラエルの神、主に栄光を帰し、主をたたえて、自分のしたことをわたしに話しなさい。何も隠さないでくれ。」
7:20 アカンはヨシュアに答えた。「本当です。わたしはイスラエルの神、主に対して罪を犯しました。わたしがしたことはこうです。
7:21 戦利品の中に、バビロニア産の美しい上着が一枚と、銀が二百シェケル、それに重さ五十シェケルの金の延べ棒が一本あるのを見ました。それがほしくなって、取ってしまったのです。今、それは天幕の中の地面に埋めてあり、銀はいちばん下にあります。」
7:22 ヨシュアは使いの者たちを送った。彼らが天幕へ走って行くと、確かにそれはアカンの天幕の中に埋められていて、銀はいちばん下にあった。
7:23 彼らはそれを天幕の中から取り出し、ヨシュアとすべてのイスラエルの人々のところへ持って来て、主の前に並べた。
7:24 ヨシュアは、すべてのイスラエルの人々と共に、ゼラの子アカンを連れて行った。そして、あの銀と上着と金の延べ棒、さらにアカンの息子たちや娘たち、彼の牛やろばや羊、天幕、そして彼の持ち物すべても一緒に、アコルの谷へ引いて行った。
7:25 ヨシュアは言った。「なぜ、お前はわたしたちに災いをもたらしたのか。今日、主がお前に災いをもたらされる。」すると、すべてのイスラエルの人々は彼を石で打ち殺した。そして彼らを火で焼き、石を投げつけた。
7:26 人々は彼の上に石を高く積み上げた。それは今日まで残っている。こうして主は激しい怒りをおさめられた。だから、その場所は今日まで「アコル（災い）の谷」と呼ばれている。
8:1 主はヨシュアに言われた。「恐れてはならない。おびえてはならない。戦える者すべてを連れて、立ってアイに攻め上れ。見よ、わたしはアイの王とその民、その町とその土地をお前の手に渡した。
8:2 エリコとその王にしたように、アイとその王にもせよ。ただし、分捕り品と家畜は自分たちのものにしてよい。町の裏手に伏兵を置け。」
8:3 そこでヨシュアと戦える者すべては、アイに攻め上ろうと立ち上がった。ヨシュアは三万人のすぐれた勇士を選び、夜のうちに送り出した。
8:4 そして彼らに命じて言った。「よく聞け。お前たちは町の裏手に回って、待ち伏せをするのだ。町からあまり遠く離れず、みな準備を整えておけ。
8:5 わたしと、わたしと共にいる民はみな、町に近づく。彼らが前のようにわたしたちを迎え撃とうと出て来たら、わたしたちは彼らの前から逃げる。
8:6 彼らは、『あいつらは前のように逃げていく』と言って、わたしたちを追って出て来るだろう。こうして彼らを町からおびき出す。それから、わたしたちは彼らの前から逃げるのだ。
8:7 そのとき、お前たちは待ち伏せの場所から一気に立ち上がり、町を占領するのだ。あなたたちの神、主が、町をお前たちの手に渡してくださる。
8:8 町を取ったら、それに火を放て。主が言われたとおりにするのだ。いいか、わたしはお前たちにこう命じたぞ。」
8:9 こうしてヨシュアは彼らを送り出した。彼らは待ち伏せの場所へ行き、ベテルとアイの間、アイの西側に身をひそめた。ヨシュアはその夜、民と共に過ごした。
8:10 翌朝、ヨシュアは早く起きて民を集め、点呼をとった。そして彼とイスラエルの長老たちは、民の先頭に立ってアイへ上って行った。
8:11 彼と共にいた戦いのための民もみな上って行き、町の正面まで進んで、アイの北側に陣を敷いた。彼らとアイの間には谷があった。
8:12 ヨシュアはおよそ五千人を取り、ベテルとアイの間、町の西側に待ち伏せとして配置した。
8:13 こうして民は、町の北側にいる本隊と、町の西側にいる後方の部隊とを配置した。ヨシュアはその夜、谷の真ん中まで進んで行った。
8:14 アイの王はこれを見ると、急いで早朝に起き、町の者たちと共にイスラエルを迎え撃とうと出て行った。王とそのすべての民は、決めた場所、荒れ地に面したところへ向かった。だが王は、町の裏手に待ち伏せがいるとは知らなかった。
8:15 ヨシュアとイスラエルはみな、彼らに打ち負かされたふりをして、荒れ野の方へ逃げた。
8:16 アイにいた民はみな、彼らを追えと呼び集められ、ヨシュアを追って行き、町からおびき出されていった。
8:17 アイとベテルには、イスラエルを追って出て行かなかった者は一人も残らなかった。彼らは町を開けたまま残して、イスラエルを追いかけた。
8:18 そのとき主はヨシュアに言われた。「お前の手にある投げ槍をアイに向けて差し伸べよ。わたしがその町をお前の手に渡す。」ヨシュアは手にした投げ槍を町に向けて差し伸べた。
8:19 伏せていた者たちは、ヨシュアが手を差し伸べると同時に、すばやく自分の場所から立ち上がって走り出した。そして町に入り、これを占領すると、すぐに火を放った。
8:20 アイの人たちが振り返って見ると、町の煙が空へ立ちのぼっていた。彼らはもう、どちらへ逃げる力も残っていなかった。荒れ野へ逃げていたイスラエルの民も、追ってくる者たちのほうへ向き直った。
8:21 ヨシュアとイスラエルの全軍は、伏せていた者たちが町を占領し、町の煙が立ちのぼるのを見た。そこで引き返して、アイの人たちを討った。
8:22 伏せていた者たちも町から出て来て、彼らに向かった。こうしてアイの人たちは、両側からイスラエルにはさまれた。イスラエルは彼らを討ち、生き残る者も逃げのびる者も一人も残さなかった。
8:23 ただアイの王だけは生け捕りにして、ヨシュアのところへ連れて来た。
8:24 イスラエルは、自分たちを追って野や荒れ野に出て来たアイの住民を、一人残らず剣で討ち取った。そして全軍がアイの町へ引き返し、そこにいた者も剣で討った。
8:25 その日に倒れた者は、男も女も合わせて一万二千人。アイの住民すべてであった。
8:26 ヨシュアは、アイの住民をことごとく滅ぼし尽くすまで、投げ槍を差し伸べた手を引っ込めなかった。
8:27 ただし、その町の家畜と分捕り品だけは、イスラエルが自分たちのものとして奪い取った。主がヨシュアに命じられたとおりであった。
8:28 ヨシュアはアイを焼き払い、いつまでも廃墟となる荒れ地とした。それは今日までそのままである。
8:29 ヨシュアはアイの王を夕方まで木にかけておいた。そして日が沈むと、命じてその死体を木から降ろさせ、町の門の入り口に投げ捨てさせた。その上に石を高く積み上げたが、それは今日まで残っている。
8:30 それからヨシュアは、エバル山に、イスラエルの神である主のために祭壇を築いた。
8:31 これは、主のしもべモーセがイスラエルの人々に命じたとおり、モーセの律法の書に記されているとおりの祭壇だった。切り出したままの石で築かれ、鉄の道具はいっさい当てられていなかった。人々はその上で、主に焼き尽くすいけにえをささげ、和解のいけにえもささげた。
8:32 そしてヨシュアはそこで、モーセが書き記した律法を、イスラエルの人々の前で石に書き写した。
8:33 イスラエルのすべての人と、その長老たち、役人たち、裁判官たちは、契約の箱の両側に立った。主の契約の箱を担ぐ祭司たち、つまりレビ人たちと向かい合って、そこには他国から来た者も、生まれながらのイスラエル人もいた。その半分はゲリジム山の方を、もう半分はエバル山の方を向いて立った。主のしもべモーセが以前に、こうしてイスラエルの民を祝福するようにと命じていたからである。
8:34 そのあとでヨシュアは、律法のすべての言葉を、祝福も、のろいも、律法の書に記されているとおりに読み上げた。
8:35 モーセが命じたことのうち、ヨシュアが読み上げなかった言葉は一つもなかった。イスラエルの全会衆の前で、女たちも子どもたちも、彼らの中で暮らす他国の人も、みなの前で読み上げたのである。
9:1 さて、ヨルダン川の西側にいた王たちがみな、このことを聞いた。山地にも、低地にも、レバノンに面した大海の沿岸一帯にもいた王たちである。ヒッタイト人、アモリ人、カナン人、ペリジ人、ヒビ人、エブス人の王たちだ。
9:2 彼らは心を一つにして集まり、ヨシュアとイスラエルに戦いをいどもうとした。
9:3 しかしギブオンの住民は、ヨシュアがエリコとアイにしたことを聞くと、
9:4 自分たちも策略をめぐらした。使者になりすまして出かけて行くことにしたのだ。彼らはすり切れた袋をろばに載せ、古くて破れ、繕ってあるぶどう酒の革袋を持ち、
9:5 足には古びて継ぎの当たった履き物をはき、すり切れた服を着た。持って来た食料のパンも、みな乾いてぼろぼろになっていた。
9:6 彼らはギルガルの宿営にいるヨシュアのところへ行き、ヨシュアとイスラエルの人々にこう言った。「わたしたちは遠い国から来ました。どうか、わたしたちと同盟を結んでください。」
9:7 イスラエルの人々はヒビ人にこう言った。「もしかすると、あなたたちはわたしたちのすぐ近くに住んでいるのかもしれない。それなら、どうしてあなたたちと同盟を結べるだろうか。」
9:8 彼らはヨシュアに言った。「わたしたちはあなたのしもべです。」するとヨシュアは尋ねた。「あなたたちは何者か。どこから来たのか。」
9:9 彼らは答えた。「しもべであるわたしたちは、あなたの神、主の名を聞いて、はるか遠い国からやって来ました。主のうわさと、主がエジプトでなさったことを、すべて聞いたからです。
9:10 また、ヨルダン川の向こう側にいた二人のアモリ人の王、つまりヘシュボンの王シホンと、アシュタロテにいたバシャンの王オグに主がなさったことも、すべて聞きました。
9:11 それで、わたしたちの長老や国の住民みんなが、こう言ったのです。『旅の食料を持って、彼らを迎えに行きなさい。そして「わたしたちはあなたたちのしもべです。どうか、わたしたちと同盟を結んでください」と言いなさい。』
9:12 このパンを見てください。あなたたちのところへ行こうと家を出た日には、まだ温かかったのに、今ではこのとおり乾いて、ぼろぼろになっています。
9:13 このぶどう酒の革袋も、詰めたときは新しかったのに、ほら、こんなに裂けてしまいました。わたしたちの服も履き物も、あまりに長い旅のせいで、すっかりすり切れています。」
9:14 イスラエルの人々は、彼らの食料を少し受け取った。しかし、主の判断を仰ごうとはしなかった。
9:15 ヨシュアは彼らと和を結び、彼らを生かしておくという同盟を結んだ。民の指導者たちも、彼らに誓った。
9:16 ところが、同盟を結んでから三日たったとき、イスラエルの人々は、その相手が実は自分たちのすぐ近くの者で、すぐそばに住んでいることを知った。
9:17 イスラエルの人々は旅立って、三日目に彼らの町々に着いた。その町とは、ギブオン、ケフィラ、ベエロト、キルヤト・エアリムである。
9:18 しかし、イスラエルの人々は彼らを討たなかった。民の指導者たちが、イスラエルの神、主にかけて彼らに誓っていたからだ。それで民全体が指導者たちに向かって不平を言った。
9:19 すると、指導者たちは全員、集まった民全体にこう言った。「わたしたちは、イスラエルの神、主にかけて彼らに誓ってしまった。だから今、彼らに手出しはできない。
9:20 そこで、彼らにはこうしよう。彼らを生かしておくのだ。そうすれば、彼らに立てた誓いを破って、主の怒りがわたしたちに下ることもない。」
9:21 さらに指導者たちは、「彼らを生かしておこう」と言った。こうして彼らは、指導者たちが言ったとおり、民全体のために薪を割り、水をくむ者となった。
9:22 ヨシュアは彼らを呼び寄せて、こう言った。「あなたたちは、本当はすぐそばに住んでいるのに、『わたしたちはあなたたちからずっと遠くの者だ』と言って、なぜわたしたちをだましたのか。
9:23 だから今、あなたたちはのろわれる。あなたたちの中から、奴隷として働く者が絶えることはない。わたしの神の家のために、いつまでも薪を割り、水をくむのだ。」
9:24 彼らはヨシュアに答えて言った。「わたしたちは、あなたの神、主がそのしもべモーセに、この地をすべてあなたたちに与え、この地に住む者を皆あなたたちの前から滅ぼし尽くすようにと命じられたことを、はっきりと知らされていました。それであなたたちのことがとても怖くて、命が危ないと思い、このようなことをしたのです。
9:25 今、わたしたちはあなたの手の中にいます。あなたが良いと思い、正しいと思うように、どうぞわたしたちにしてください。」
9:26 ヨシュアは彼らにそのようにした。彼らをイスラエルの人々の手から救い、殺させなかったのである。
9:27 その日、ヨシュアは彼らを、民全体のため、また主の祭壇のために、薪を割り、水をくむ者とした。主が選ばれる場所で、それは今日まで続いている。
10:1 エルサレムの王アドニ・ツェデクは、ある知らせを聞いた。ヨシュアがアイを攻め取り、それを徹底的に滅ぼしたこと、そしてエリコとその王にしたのと同じことを、アイとその王にもしたということだ。さらに、ギブオンの住民がイスラエルと和を結び、彼らのただ中で暮らすようになったことも聞いた。
10:2 王はひどくおびえた。ギブオンは大きな町で、王のいる町々に劣らない規模だったからだ。アイよりも大きく、住む男たちはみな戦士だった。
10:3 そこでエルサレムの王アドニ・ツェデクは、ヘブロンの王ホハム、ヤルムトの王ピルアム、ラキシュの王ヤフィア、エグロンの王デビルに、こう言い送った。
10:4 「わたしのところに上って来て、力を貸してほしい。いっしょにギブオンを討とう。あの町がヨシュアとイスラエルの人々と和を結んでしまったのだ。」
10:5 こうしてアモリ人の五人の王、つまりエルサレムの王、ヘブロンの王、ヤルムトの王、ラキシュの王、エグロンの王が集まった。彼らは全軍を率いて上って来て、ギブオンに向かって陣を敷き、この町を攻撃した。
10:6 ギブオンの人々は、ギルガルの陣営にいるヨシュアのもとに使いを送って言った。「あなたのしもべである私たちを、どうか見捨てないでください。すぐに上って来て、私たちを助け、救ってください。山地に住むアモリ人の王たちがみんな集まって、私たちを攻めようとしています。」
10:7 そこでヨシュアは、すべての戦う民と勇敢な戦士たちを率いて、ギルガルから上って行った。
10:8 主はヨシュアに言われた。「彼らを恐れるな。わたしは彼らをあなたの手に渡した。彼らのうち、だれ一人あなたの前に立ちはだかることはできない。」
10:9 ヨシュアは一晩じゅうギルガルから進み続け、いきなり彼らに襲いかかった。
10:10 主は彼らをイスラエルの前でかき乱された。イスラエルはギブオンで彼らを大いに打ち破り、ベテ・ホロンへの上り坂の道を通って追いかけ、アゼカとマケダまで彼らを討った。
10:11 彼らがイスラエルの前から逃げ、ベテ・ホロンの下り坂にさしかかったとき、主は天から彼らの上に大きな石を降らせられた。アゼカに至るまでそれは続き、多くの者が死んだ。イスラエルが剣で殺した者よりも、この雹の石で死んだ者のほうが多かった。
10:12 主がアモリ人をイスラエルの人々の前に引き渡されたあの日、ヨシュアは主に語りかけた。そしてイスラエルの見ている前で、こう言った。「太陽よ、ギブオンの上で止まれ。月よ、アヤロンの谷で動くな。」
10:13 太陽は止まり、月も動かなかった。民が敵に復讐を果たすまで、そうだった。このことは「ヤシャルの書」に書かれているとおりだ。太陽は空の真ん中で止まり、まる一日ほど、沈もうと急がなかった。
10:14 主が人の願いを聞き入れられたこんな日は、これまでにも、これからも一度もない。主がイスラエルのために戦ってくださったのだ。
10:15 こうしてヨシュアは、すべてのイスラエルとともにギルガルの陣営に引き上げた。
10:16 さて、あの五人の王は逃げ出し、マケダの洞穴に隠れた。
10:17 「あの五人の王が見つかりました。マケダの洞穴に隠れています」とヨシュアに知らせがあった。
10:18 するとヨシュアは言った。「大きな石を転がして洞穴の入り口をふさげ。そして見張りの者を置いて、王たちを閉じ込めておけ。
10:19 だが、おまえたちは立ち止まるな。敵を追いかけて、後ろから討て。彼らを自分たちの町に逃げ帰らせるな。あなたたちの神、主が、彼らをおまえたちの手に渡してくださったのだ。」
10:20 ヨシュアとイスラエルの人々は、敵を徹底的に討ち、ほとんど滅ぼし尽くした。それでも生き延びた者たちは、城壁のある町へと逃げ込んだ。
10:21 民はみな無事に、マケダの陣営にいるヨシュアのもとへ帰って来た。だれ一人、イスラエルの人々に向かって文句一つ言う者はいなかった。
10:22 ヨシュアは言った。「洞穴の入り口を開けて、あの五人の王を、洞穴からわたしのところへ連れ出せ。」
10:23 人々はそのとおりにして、五人の王を洞穴から彼のところへ連れ出した。エルサレムの王、ヘブロンの王、ヤルムトの王、ラキシュの王、エグロンの王である。
10:24 この王たちがヨシュアのところへ連れ出されると、ヨシュアはイスラエルのすべての人を呼び集めた。そして、いっしょに出陣した兵士たちの隊長たちに言った。「近くに来て、この王たちの首を足で踏みつけよ。」彼らは近づき、王たちの首を足で踏みつけた。
10:25 ヨシュアは彼らに言った。「恐れるな。おびえるな。強く、勇ましくあれ。あなたたちが戦うすべての敵に、主はこうしてくださるのだ。」
10:26 そのあとヨシュアは彼らを討って殺し、五本の木にかけた。王たちは夕方まで、木にかけられたままだった。
10:27 日が沈むころ、ヨシュアが命じると、人々は死体を木から降ろし、彼らが隠れていた洞穴に投げ込んだ。そして洞穴の入り口に大きな石を置いた。その石は今日まで残っている。
10:28 その日、ヨシュアはマケダを攻め取った。町を剣で討ち、その王も、町の中のすべての人も、一人残らず滅ぼし尽くした。エリコの王にしたのと同じことを、マケダの王にもしたのだ。
10:29 ヨシュアと、彼といっしょにいたイスラエルのすべての人は、マケダからリブナへ進み、リブナと戦った。
10:30 主はこの町も、その王も、イスラエルの手に渡された。ヨシュアは町を剣で討ち、その中のすべての人を一人残らず滅ぼした。エリコの王にしたのと同じことを、リブナの王にもした。
10:31 ヨシュアと、彼といっしょにいたイスラエルのすべての人は、リブナからラキシュへ進み、そこに陣を敷いてラキシュと戦った。
10:32 主はラキシュをイスラエルの手に渡された。ヨシュアは二日目にこの町を攻め取り、剣で討った。町の中のすべての人も、リブナにしたのとまったく同じようにした。
10:33 そのとき、ゲゼルの王ホラムがラキシュを助けに上って来た。しかしヨシュアは彼とその民を討ち、一人も生き残らせなかった。
10:34 ヨシュアと、彼といっしょにいたイスラエルのすべての人は、ラキシュからエグロンへ進み、そこに陣を敷いてエグロンと戦った。
10:35 彼らはその日のうちにエグロンを攻め取り、剣で討った。町の中のすべての人も、その日のうちに、ラキシュにしたのとまったく同じように滅ぼし尽くした。
10:36 ヨシュアと、彼といっしょにいたイスラエルのすべての人は、エグロンからヘブロンへ上って行き、ヘブロンと戦った。
10:37 彼らはヘブロンを攻め取り、その王と、それに属するすべての町と、町の中のすべての人を剣で討った。エグロンにしたのとまったく同じように、一人も生き残らせず、町とその中のすべての人を滅ぼし尽くした。
10:38 それからヨシュアと、彼といっしょにいたイスラエルのすべての人は、向きを変えてデビルへ進み、デビルと戦った。
10:39 彼らはデビルと、その王と、それに属するすべての町を攻め取り、剣で討った。町の中のすべての人を滅ぼし尽くし、一人も生き残らせなかった。ヘブロンにしたのと同じことをデビルとその王にもし、リブナとその王にしたのと同じようにした。
10:40 こうしてヨシュアは、山地、ネゲブ、低地、傾斜地の全域と、そのすべての王を討ち、一人も生き残らせなかった。イスラエルの神、主が命じたとおり、息のあるものはすべて滅ぼし尽くした。
10:41 ヨシュアは、カデシュ・バルネアからガザまで、またゴシェンの全地からギブオンまでを討った。
10:42 ヨシュアはこれらすべての王とその地を一度に攻め取った。イスラエルの神、主が、イスラエルのために戦ったからである。
10:43 そしてヨシュアと、彼といっしょにいたイスラエルのすべての人は、ギルガルの陣営に帰った。
11:1 このことを聞いて、ハツォルの王ヤビンは、マドンの王ヨバブと、シムロンの王と、アクシャフの王のもとに使いを送った。
11:2 また、北の山地や、キネレテの南のアラバや、低地や、西のドルの高地にいる王たちにも使いを送った。
11:3 東と西にいるカナン人、山地にいるアモリ人、ヘテ人、ペリジ人、エブス人、そしてミツパの地でヘルモンのふもとにいるヒビ人にも送った。
11:4 彼らは、それぞれの全軍を率いて出て来た。その数は、海辺の砂のように多く、馬や戦車も非常に多かった。
11:5 これらの王たちはみな集まり、いっしょに進んで来て、イスラエルと戦うためにメロムの水のほとりに陣を敷いた。
11:6 すると主はヨシュアに言われた。「彼らを恐れてはならない。明日の今ごろ、わたしは彼らをみな、イスラエルの前で討たれた者とする。あなたは彼らの馬の足の筋を切り、戦車を火で焼き払え。」
11:7 ヨシュアは全軍を率いて、メロムの水のほとりにいる彼らのところへ突然襲いかかった。
11:8 主は彼らをイスラエルの手に渡された。イスラエルは彼らを討ち、大シドン、ミスレフォト・マイム、そして東のミツパの谷まで追いかけて討ち、ひとりも生き残らせなかった。
11:9 ヨシュアは主が命じられたとおりにした。彼らの馬の足の筋を切り、戦車を火で焼き払ったのだ。
11:10 そのとき、ヨシュアは引き返してハツォルを攻め取り、その王を剣で討った。ハツォルは、以前これらすべての王国の盟主だったからだ。
11:11 彼らは、その中にいた者をひとり残らず剣で討ち、滅ぼし尽くした。息のある者は一人も残らなかった。そしてヨシュアはハツォルを火で焼き払った。
11:12 ヨシュアは、これらの王たちのすべての町と、その王たちをみな攻め取り、剣で討って滅ぼし尽くした。主に仕えたモーセが命じたとおりだった。
11:13 ただし、丘の上に立つ町々を、イスラエルは焼かなかった。ヨシュアが焼いたのは、ハツォルだけだった。
11:14 これらの町の分捕り物と家畜を、イスラエルの人々は自分たちのものとして奪い取った。しかし人はみな剣で討って滅ぼし尽くし、息のある者を一人も残さなかった。
11:15 主がしもべモーセに命じられたとおり、モーセはヨシュアに命じ、ヨシュアもそのとおりにした。主がモーセに命じられたことを、ヨシュアは一つも残さず実行した。
11:16 こうしてヨシュアは、この地のすべてを手に入れた。山地、ネゲブ全域、ゴシェンの全土、低地、アラバ、そしてイスラエルの山地とその低地である。
11:17 セイルへと上るハラク山から、ヘルモン山のふもと、レバノンの谷にあるバアル・ガドまでだ。ヨシュアはそこの王たちをみな捕らえて討ち、殺した。
11:18 ヨシュアは、これらすべての王たちと長い間戦った。
11:19 イスラエルの人々と和を結んだ町は、一つもなかった。ただ、ギブオンに住むヒビ人だけは別だった。ほかはすべて、戦いによって攻め取った。
11:20 こうなったのは、主が彼らの心をかたくなにして、イスラエルに戦いを挑ませたからだ。それは彼らを容赦なく滅ぼし、あわれみを受けることのないようにするためだった。主がモーセに命じたとおり、彼らを絶ち滅ぼすためだったのだ。
11:21 そのころ、ヨシュアは進み出て、山地からアナク人を討ち滅ぼした。ヘブロン、デビル、アナブから、またユダの山地とイスラエルの山地のすべてから、彼らを一掃した。ヨシュアは彼らを、その町々もろとも滅ぼし尽くした。
11:22 こうして、イスラエルの人々の地に、アナク人は一人も残らなかった。ただガザ、ガテ、アシュドドにだけ、彼らは残った。
11:23 ヨシュアは、主がモーセに告げたとおり、この地のすべてを手に入れた。そして、部族ごとの割り当てに従って、それをイスラエルに受け継ぐ地として分け与えた。そして、この地から戦いはやみ、平和になった。
12:1 イスラエルの人々が討ち取り、その地を手に入れた王たちは、次のとおりである。ヨルダン川の東側、日の昇る方の地で、アルノン川から北のヘルモン山まで、そして東側のアラバ全域である。
12:2 まず、ヘシュボンに住んでいたアモリ人の王シホン。彼はアルノン川のほとりにあるアロエルから、その谷の真ん中を含み、ギレアデの半分を経て、アンモン人との境であるヤボク川までを治めていた。
12:3 さらに東側は、アラバから、東のキンネレテの海まで、また東のアラバの海、すなわち塩の海まで、ベテ・エシモテへの道沿いの一帯、そして南はピスガのふもとまでを治めていた。
12:4 次に、バシャンの王オグ。彼はレファイム人の生き残りで、アシュタロテとエドレイに住んでいた。
12:5 そしてヘルモン山とサルカ、バシャン全域を、ゲシュル人とマアカ人との境まで治め、さらにギレアデの半分、すなわちヘシュボンの王シホンとの境までを支配していた。
12:6 主のしもべモーセとイスラエルの人々は、これらの王たちを討ち取った。そして主のしもべモーセは、その地をルベン人、ガド人、マナセの半部族に、受け継ぐ地として与えた。
12:7 さて、次に挙げるのは、ヨルダン川の西側でヨシュアとイスラエルの人々が討ち取った、その地の王たちである。その範囲は、レバノンの谷にあるバアル・ガドから、セイルへと上っていくハラク山までに及んだ。ヨシュアはこの地を、それぞれの割り当てにしたがって、イスラエルの諸部族に受け継ぐ地として与えた。
12:8 それは、山地、低地、アラバ、山の斜面、荒れ野、ネゲブにわたる地であり、ヒッタイト人、アモリ人、カナン人、ペリジ人、ヒビ人、エブス人が住む土地だった。
12:9 エリコの王、一人。ベテルのそばにあるアイの王、一人。
12:10 エルサレムの王、一人。ヘブロンの王、一人。
12:11 ヤルムトの王、一人。ラキシュの王、一人。
12:12 エグロンの王、一人。ゲゼルの王、一人。
12:13 デビルの王、一人。ゲデルの王、一人。
12:14 ホルマの王、一人。アラドの王、一人。
12:15 リブナの王、一人。アドラムの王、一人。
12:16 マケダの王、一人。ベテルの王、一人。
12:17 タプアの王、一人。ヘフェルの王、一人。
12:18 アフェクの王、一人。ラシャロンの王、一人。
12:19 マドンの王、一人。ハツォルの王、一人。
12:20 シムロン・メロンの王、一人。アクシャフの王、一人。
12:21 タアナクの王、一人。メギドの王、一人。
12:22 ケデシュの王、一人。カルメルのふもとのヨクネアムの王、一人。
12:23 ドルの高地にあるドルの王、一人。ギルガルのゴイイムの王、一人。
12:24 ティルツァの王、一人。王は全部で三十一人だった。
13:1 ヨシュアは年をとり、かなりの高齢になっていた。主は彼に言われた。「あなたは年をとり、かなりの高齢になった。それなのに、これから手に入れるべき土地がまだたくさん残っている。
13:2 残っているのは次の土地だ。ペリシテ人の全地域と、ゲシュル人のすべての土地。
13:3 エジプトの東にあるシホル川から、北のエクロンの境まで。そこはカナン人の地とされている。ペリシテ人の五人の領主、すなわちガザ、アシュドド、アシュケロン、ガト、エクロンの領主たち。それにアビム人。
13:4 南のほうでは、カナン人の全土。それにシドン人のメアラから、アモリ人の境にあるアフェクまで。
13:5 さらにゲバル人の地と、東側のレバノン全体。ヘルモン山のふもとのバアル・ガドから、ハマトの入り口まで。
13:6 レバノンからミスレフォト・マイムまでの山地に住む者たち、つまりシドン人すべてを、わたし自身がイスラエルの人々の前から追い払う。あなたは、わたしが命じたとおりに、この地をくじで分け、イスラエルの相続地としなさい。
13:7 さあ、この地を九つの部族と、マナセの半部族に、相続地として分けなさい。」
13:8 マナセの残り半分の部族とともに、ルベン族とガド族は、すでに相続地を受け取っていた。それは、ヨルダン川の東側でモーセが彼らに与えた土地であり、主のしもべモーセが与えたとおりである。
13:9 その地は、アルノン川のほとりにあるアロエルから、谷の真ん中にある町、それにメデバからディボンまでの高原全体、
13:10 また、ヘシュボンで治めていたアモリ人の王シホンのすべての町から、アンモン人の境までを含んでいた。
13:11 さらにギルアデと、ゲシュル人とマアカ人の領土、ヘルモン山の全体、それにサルカまでのバシャン全体、
13:12 つまり、アシュタロテとエドレイで治めていた、バシャンの王オグの王国全体である。オグはレファイム人の生き残りだった。モーセは彼らを討ち、その地から追い出した。
13:13 でも、イスラエルの人々はゲシュル人とマアカ人を追い出さなかった。だからゲシュルとマアカは、今日までイスラエルの中に住んでいる。
13:14 ただし、レビ族には相続地を与えなかった。主が彼らに告げたとおり、イスラエルの神である主にささげる火の供え物、それが彼らの相続地だからである。
13:15 モーセは、ルベン族に氏族ごとに相続地を与えた。
13:16 その領地は、アルノン川のほとりにあるアロエルから、谷の真ん中にある町、それにメデバのそばの高原全体を含み、
13:17 ヘシュボンと、高原にあるそのすべての町、ディボン、バモト・バアル、ベテ・バアル・メオン、
13:18 ヤハツ、ケデモト、メファアト、
13:19 キルヤタイム、シブマ、それに谷の丘にあるツェレト・ハシャハル、
13:20 ベテ・ペオル、ピスガの山の斜面、ベテ・エシモト、
13:21 そして高原にあるすべての町、さらにヘシュボンで王だったアモリ人の王シホンの王国全体が含まれていた。モーセはこのシホンと、ミディアンの首長たちを討ち取った。それはエビ、レケム、ツル、フル、レバで、みなその地に住むシホンの家臣だった。
13:22 イスラエルの人々は、討ち取った者たちに加えて、占い師であるベオルの子バラムも剣で殺した。
13:23 ルベン族の領地の境はヨルダン川で、その岸が境界だった。これがルベン族の氏族ごとの相続地であり、それらの町々と、それに属する村々である。
13:24 モーセはガド族、つまりガドの人々にも、その氏族ごとに相続地を与えた。
13:25 彼らの領地はこうである。ヤゼルと、ギレアドのすべての町、それにアンモン人の地の半分で、ラバの近くにあるアロエルまで、
13:26 またヘシュボンからラマト・ミツパとベトニムまで、さらにマハナイムからデビルの境まで、
13:27 そして谷にあるベテ・ハラム、ベテ・ニムラ、スコト、ツァフォン、すなわちヘシュボンの王シホンの王国の残りの部分である。ヨルダン川がその境界で、ヨルダン川の東側、キネレトの湖の端までを含んでいた。
13:28 これがガドの人々の氏族ごとの相続地であり、それらの町々と、それに属する村々である。
13:29 モーセはマナセの半部族にも相続地を与えた。それはマナセの子孫の半部族が、その氏族ごとに受けたものである。
13:30 彼らの領地はこうである。マハナイムから始まり、バシャン全体、すなわちバシャンの王オグの王国全体と、バシャンにあるヤイルの村里すべて、合わせて六十の町を含んでいた。
13:31 また、ギレアデの半分と、バシャンにあるオグの王国の町々であるアシュタロテとエドレイは、マナセの子マキルの子孫、つまりマキルの子孫の半分に、その氏族ごとに与えられた。
13:32 以上が、モーセがヨルダン川の東側、エリコの向かいにあるモアブの平野で、相続地として分け与えたものである。
13:33 ただし、レビ族にはモーセは相続地を与えなかった。イスラエルの神、主ご自身が彼らの相続地だからである。主が彼らに約束されたとおりである。
14:1 次に挙げるのは、イスラエルの人々がカナンの地で受け継いだ相続地である。それを彼らに分け与えたのは、祭司エルアザルと、ヌンの子ヨシュア、そしてイスラエルの各部族の氏族の長たちであった。
14:2 その相続地は、主がモーセを通して命じられたとおり、くじによって九つの部族と半部族に割り当てられた。
14:3 というのも、二つの部族と半部族には、モーセがすでにヨルダン川の東側で相続地を与えていたからである。しかしレビ族には、彼らの間に相続地を与えなかった。
14:4 ヨセフの子孫はマナセとエフライムという二つの部族になっていた。それで人々は、レビ族にはこの地で相続地を割り当てなかった。ただ、住むための町々と、その家畜や財産のための放牧地は与えた。
14:5 こうしてイスラエルの人々は、主がモーセに命じられたとおりに行い、この地を分け合った。
14:6 さて、ユダの人々がギルガルにいるヨシュアのもとにやって来た。そのとき、ケナズ人エフンネの子カレブがヨシュアに言った。「主がカデシュ・バルネアで、神の人モーセに、わたしとあなたのことについて語られたことを、あなたは知っているはずだ。
14:7 わたしは、主のしもべモーセがわたしをカデシュ・バルネアから遣わして、この地を偵察させたとき、四十歳だった。そして、わたしは自分の心に思ったとおりを、そのまま報告した。
14:8 わたしと一緒に上って行った仲間たちは、民の心をくじけさせてしまった。でも、わたしは、わたしの神である主に、どこまでも従い通した。
14:9 その日、モーセはこう誓ってくれた。『あなたの足で踏んだ土地は、必ずあなたとあなたの子孫の相続地となる。いつまでもそうだ。あなたが、わたしの神である主に、どこまでも従い通したからだ。』
14:10 そして今、主はその言葉のとおり、わたしを生かしてくださった。主がこのことをモーセに語られてから、もう四十五年になる。その間、イスラエルは荒れ野を歩き続けた。そして今、わたしはここに、八十五歳になっている。
14:11 でも、わたしは今も、モーセがわたしを遣わしたあの日と同じように、力に満ちている。あのときの力も、今の力も変わらない。戦いにも、外に出て入りするどんな働きにも耐えられる。
14:12 だから、主があの日に約束されたこの山地を、わたしに与えてほしい。あの日あなたも聞いたはずだ。そこにはアナク人がいて、町々は大きく、城壁に囲まれている、と。しかし、主が共にいてくださるなら、わたしは主が語られたとおり、彼らを追い払うことができるだろう。」
14:13 そこでヨシュアはカレブを祝福し、エフンネの子カレブに、ヘブロンを相続地として与えた。
14:14 こうしてヘブロンは、今日に至るまで、ケナズ人エフンネの子カレブの相続地となった。カレブが、イスラエルの神である主に、どこまでも従い通したからである。
14:15 ヘブロンは、以前はキルヤト・アルバと呼ばれていた。アルバはアナク人の中でいちばん偉大な人だった。こうして、この地は戦いがやんで、穏やかになった。
15:1 ユダ族が家族ごとにくじで受け取った土地は、次のとおりである。その南のはずれはエドムの境に達し、ツィンの荒れ野の、いちばん南までひろがっていた。
15:2 南の境は、塩の海の南端の入り江から始まる。
15:3 そこから南のアクラビム坂に向かい、ツィンを通り、カデシュ・バルネアの南から上っていく。さらにヘツロンを通ってアダルへ上り、そこで折れてカルカに向かう。
15:4 そしてアツモンを通り、エジプトの谷川に出て、この境は海で終わる。これがあなたたちの南の境である。
15:5 東の境は、塩の海で、ヨルダン川の河口まで達する。北の境は、その塩の海の入り江、つまりヨルダン川の河口から始まる。
15:6 境はそこからベト・ホグラに上り、ベト・アラバの北を通り、さらにルベンの子ボハンの石まで上っていく。
15:7 そして境はアコルの谷からデビルへ上り、北に向かってギルガルの方を目指す。ギルガルは谷川の南にあるアドミム坂の向かいにある。境はエン・シェメシュの水へと進み、エン・ロゲルで終わる。
15:8 境はさらにベン・ヒノムの谷を上り、エブス人の町、つまりエルサレムの南の尾根に達する。それから境は、ヒノムの谷の西の向かいにある山の頂へ上っていく。その山は、レファイムの谷の北のはずれにある。
15:9 境はその山の頂から、ネフトアの泉の水へと伸び、エフロン山の町々に出る。そして境はバアラ、つまりキルヤト・エアリムへと伸びていく。
15:10 境はバアラから西に折れてセイル山に向かい、エアリム山、つまりケサロンの北の尾根を通る。それからベト・シェメシュへ下り、ティムナを過ぎていく。
15:11 さらに境はエクロンの北の尾根に出て、シコロンへと伸び、バアラ山を通ってヤブネエルに出る。この境は海で終わる。
15:12 西の境は、大海とその海岸である。以上が、家族ごとに分けられたユダ族の土地を囲む境である。
15:13 主がヨシュアに命じたとおり、エフンネの子カレブには、ユダ族の中で一つの割り当て地が与えられた。それはキルヤト・アルバ、つまりヘブロンである。アルバはアナクの先祖だった。
15:14 カレブはそこから、アナクの三人の子孫、シェシャイ、アヒマン、タルマイを追い出した。彼らはアナクの子孫だった。
15:15 カレブはそこからデビルの住民に向かって攻め上った。デビルは、以前はキルヤト・セフェルと呼ばれていた。
15:16 カレブはこう言った。「キルヤト・セフェルを討って攻め取る者には、わたしの娘アクサを妻として与えよう。」
15:17 それを攻め取ったのは、カレブの兄弟ケナズの子オトニエルだった。カレブは娘アクサを彼の妻として与えた。
15:18 アクサが嫁いで来るとき、彼女はオトニエルに、父から畑をもらうよう勧めた。そしてろばから降りると、カレブは彼女に「何が望みか」と尋ねた。
15:19 彼女は答えた。「贈り物をください。あなたはわたしにネゲブの乾いた土地を与えられたのですから、水の湧く泉もください。」そこでカレブは、上の泉と下の泉を彼女に与えた。
15:20 以上が、家族ごとに分けられたユダ族の相続地である。
15:21 ユダ族の町々のうち、南のはずれ、エドムとの境の方にあったのは、カブツエル、エデル、ヤグル、
15:22 キナ、ディモナ、アドアダ、
15:23 ケデシュ、ハツォル、イトナン、
15:24 ジフ、テレム、ベアロト、
15:25 ハツォル・ハダタ、ケリヨト・ヘツロン（すなわちハツォル）、
15:26 アマム、シェマ、モラダ、
15:27 ハツァル・ガダ、ヘシュモン、ベト・ペレト、
15:28 ハツァル・シュアル、ベエル・シェバ、ビジヨトヤ、
15:29 バアラ、イイム、エツェム、
15:30 エルトラド、ケシル、ホルマ、
15:31 ツィクラグ、マドマナ、サンサナ、
15:32 レバオト、シルヒム、アイン、リモン。町は全部で二十九、それにそれぞれの村々。
15:33 低地では、エシュタオル、ツォルア、アシュナ、
15:34 ザノアハ、エン・ガニム、タプアハ、エナム、
15:35 ヤルムト、アドラム、ソコ、アゼカ、
15:36 シャアライム、アディタイム、ゲデラ、ゲデロタイム。十四の町、それにそれぞれの村々。
15:37 ツェナン、ハダシャ、ミグダル・ガド、
15:38 ディルアン、ミツペ、ヨクテエル、
15:39 ラキシュ、ボツカト、エグロン、
15:40 カボン、ラフマス、キトリシュ、
15:41 ゲデロト、ベト・ダゴン、ナアマ、マケダ。十六の町、それにそれぞれの村々。
15:42 リブナ、エテル、アシャン、
15:43 イフタフ、アシュナ、ネツィブ、
15:44 ケイラ、アクジブ、マレシャ。九つの町、それにそれぞれの村々。
15:45 エクロン、その周辺の町々と村々。
15:46 エクロンから西の海まで、アシュドドのそばにあるすべての町、それにそれぞれの村々。
15:47 アシュドドとその周辺の町々と村々、ガザとその周辺の町々と村々。そしてエジプトの川と、大きな海の岸まで。それが境界だった。
15:48 山地では、シャミル、ヤティル、ソコ、
15:49 ダナ、キルヤト・サンナ、つまりデビル、
15:50 アナブ、エシュテモア、アニム、
15:51 ゴシェン、ホロン、ギロ。全部で十一の町と、それぞれの村々。
15:52 アラブ、ルマ、エシュアン、
15:53 ヤヌム、ベト・タプア、アフェカ、
15:54 フムタ、キルヤト・アルバ、つまりヘブロン、そしてツィオル。全部で九つの町と、それぞれの村々。
15:55 マオン、カルメル、ジフ、ユタ、
15:56 イズレエル、ヨクデアム、ザノア、
15:57 カイン、ギブア、ティムナ。全部で十の町と、それぞれの村々。
15:58 ハルフル、ベト・ツル、ゲドル、
15:59 マアラト、ベト・アノト、エルテコン。全部で六つの町と、それぞれの村々。
15:60 キルヤト・バアル、つまりキルヤト・エアリム、そしてラバ。全部で二つの町と、それぞれの村々。
15:61 荒れ野では、ベト・アラバ、ミディン、セカカ、
15:62 ニブシャン、塩の町、エン・ゲディ。全部で六つの町と、それぞれの村々。
15:63 ユダの人々は、エルサレムに住むエブス人を追い出すことができなかった。それで今日まで、エブス人はユダの人々といっしょにエルサレムに住んでいる。
16:1 ヨセフの子孫が受け取る土地も、くじで決められた。その境界は、エリコのそばのヨルダン川から始まる。エリコの水の東側を通り、エリコから上って荒れ野を抜け、ベテルの山地へと続く。
16:2 そしてベテル、つまりルズから出て、アルキ人の領土を通り、アタロトに至る。
16:3 そこから西へ下り、ヤフレト人の領土、さらに下ベト・ホロン、ゲゼルへと至り、地中海で終わる。
16:4 こうして、ヨセフの子孫であるマナセとエフライムは、自分たちの土地を受け継いだ。
16:5 エフライムの子孫が氏族ごとに受け取った土地の境界は、次のとおり。東側の境界は、アタロト・アダルから上ベト・ホロンまで。
16:6 その境界は、西の地中海へと延びていく。北側にはミクメタトがある。境界はそこから東へ折れ、タアナト・シロに至り、その東側を通ってヤノアハへと続く。
16:7 境界はヤノアハからアタロトとナアラへと下り、エリコに達して、ヨルダン川で終わる。
16:8 タプアからは西へと延び、カナの谷に至って、地中海で終わる。これが、エフライム族が氏族ごとに受け継いだ土地である。
16:9 このほかに、マナセの子孫の土地の中に、エフライムの子孫のための町々が別に割り当てられた。それらすべての町と、そこに属する村々である。
16:10 ただし、彼らはゲゼルに住むカナン人を追い出さなかった。それで今日まで、カナン人はエフライムの人々の中に住み、労役につかされている。
17:1 マナセ族もくじで土地を割り当てられた。マナセはヨセフの長男だったからである。マナセの長男でギレアデの父であるマキルは、勇敢な戦士だったので、ギレアデとバシャンの地を受け取った。
17:2 マナセの残りの子孫も、氏族ごとに土地を受け取った。すなわち、アビエゼル、ヘレク、アスリエル、シェケム、ヘフェル、シェミダの一族である。これらは、ヨセフの子マナセの男の子孫たちで、氏族ごとに数えられた。
17:3 ところが、マナセの子マキル、その子ギレアデ、その子ヘフェルの子ツェロフハドには、息子がなく、娘だけがいた。娘たちの名は、マフラ、ノア、ホグラ、ミルカ、ティルツァである。
17:4 彼女たちは、祭司エルアザル、ヌンの子ヨシュア、そして指導者たちの前に進み出て言った。「主はモーセに、わたしたちにも兄弟たちと並んで土地を与えるようにと命じられました。」そこでヨシュアは、主の命令のとおり、彼女たちに、父の兄弟たちと並んで土地を与えた。
17:5 こうしてマナセには、ヨルダン川の向こうにあるギレアデとバシャンの地とは別に、十の割り当て地が与えられた。
17:6 マナセの娘たちが、息子たちと並んで土地を受け継いだからである。ギレアデの地は、マナセの残りの子孫のものとなった。
17:7 マナセの境界線は、アシェルからシェケムの東にあるミクメタトまで伸びていた。そこから境界線は南へ進み、エン・タプアに住む人々のところまで達した。
17:8 タプアの周りの土地はマナセのものだったが、境界にあるタプアの町そのものは、エフライムの子孫のものだった。
17:9 境界線はカナ川へと下り、その川の南側に出た。このあたりの町々はマナセの町々の中にあったが、エフライムのものだった。マナセの境界は川の北側を通り、そのまま西の海で終わっていた。
17:10 南側はエフライム、北側はマナセの土地で、海がその西の境だった。北ではアシェルと接し、東ではイッサカルと接していた。
17:11 イッサカルとアシェルの領内にも、マナセのものとなった町があった。ベト・シェアンとその周りの村々、イブレアムとその村々、ドルに住む人々とその村々、エン・ドルに住む人々とその村々、タアナクに住む人々とその村々、メギドに住む人々とその村々である。これら三つは高地地帯だった。
17:12 しかしマナセの子孫は、これらの町々を自分たちのものにすることができなかった。カナン人がその土地に住み続けたからである。
17:13 その後イスラエルの人々が強くなると、彼らはカナン人を働かせて貢ぎ物を納めさせた。それでも、完全に追い出すことはしなかった。
17:14 ヨセフの子孫はヨシュアに言った。「どうしてあなたは、わたしたちに一つのくじ、一区画の土地しか受け継ぎとして与えなかったのですか。主がここまで祝福してくださったおかげで、わたしたちはこんなに人数が多いのに。」
17:15 ヨシュアは彼らに答えた。「そんなに人数が多いのなら、森へ上って行きなさい。そして、ペリジ人とレファイム人の土地で、自分たちのために木を切り開けばいい。エフライムの山地が狭すぎるというなら。」
17:16 ヨセフの子孫は言った。「あの山地だけでは、わたしたちには足りません。それに、平野に住むカナン人はみな鉄の戦車を持っています。ベト・シェアンとその村々にいる者たちも、イズレエルの平野にいる者たちもそうです。」
17:17 ヨシュアはヨセフの家、つまりエフライムとマナセに言った。「あなたたちは人数が多く、大きな力を持っている。だから、一つのくじの土地だけで終わってはならない。
17:18 山地もあなたたちのものになる。そこは森だが、切り開けば、その隅々まであなたたちのものになる。カナン人が鉄の戦車を持ち、どんなに強くても、あなたたちは必ず彼らを追い出せるのだから。」
18:1 イスラエルの人々はみな、シロに集まった。そして、そこに会見の幕屋を立てた。この地は、すでに彼らの前に征服されていた。
18:2 しかしイスラエルの人々の中には、まだ自分たちの割り当て地を受けていない部族が、七つ残っていた。
18:3 ヨシュアはイスラエルの人々に言った。「あなたたちの先祖の神、主が与えてくださったこの地を、あなたたちはいつまでぐずぐずして、入って自分のものにしようとしないのか。
18:4 各部族から三人ずつ選び出しなさい。わたしが彼らを送り出そう。彼らは出て行って地を歩き回り、それぞれの割り当てに応じて地の様子を書き記し、わたしのところに戻って来る。
18:5 彼らはその地を七つの部分に分ける。ユダは南にある自分の領地にとどまり、ヨセフの家は北にある自分の領地にとどまる。
18:6 あなたたちはこの地を七つの部分に書き記して、ここのわたしのところに持って来なさい。そうすれば、わたしたちの神、主の前で、わたしがここであなたたちのためにくじを引こう。
18:7 レビ人には、あなたたちの間に割り当て地はない。主に仕える祭司の務めこそが、彼らの受け継ぐものだからだ。また、ガドとルベン、そしてマナセの半部族は、すでにヨルダン川の向こう側、東の方で自分たちの割り当て地を受け取っている。主のしもべモーセが、彼らに与えたものだ。」
18:8 その人たちは立って出かけて行った。ヨシュアは、地を書き記しに行く者たちに命じて言った。「行って地を歩き回り、その様子を書き記して、わたしのところに戻って来なさい。わたしはここシロで、主の前で、あなたたちのためにくじを引こう。」
18:9 その人たちは出かけて行き、地を通り抜けて、町ごとに七つの部分に分け、それを巻物に書き記した。そして、シロの陣営にいるヨシュアのところに戻って来た。
18:10 ヨシュアはシロで、主の前で彼らのためにくじを引いた。そしてそこで、それぞれの区分に従って、イスラエルの人々にこの地を分け与えた。
18:11 ベニヤミン族のくじが、その氏族ごとに引き当てられた。彼らのくじで定まった領地は、ユダの人々とヨセフの人々の間にあった。
18:12 彼らの北側の境界線は、ヨルダン川から始まっていた。境界線はエリコの北の斜面へと上り、さらに山地を西の方へと上って行き、ベト・アベンの荒れ野で終わっていた。
18:13 境界線はそこからルズ、すなわちベテルの南側の斜面へと進んだ。それから境界線はアタロト・アダルへと下り、下ベト・ホロンの南にある山を通った。
18:14 境界線はそこで向きを変え、西側を南に回り込んで、ベト・ホロンの南に面した山から進んだ。そしてユダの人々の町キルヤト・バアル、すなわちキルヤト・エアリムで終わっていた。これが西側の境界だった。
18:15 南側の境界は、キルヤト・エアリムのはずれから始まっていた。境界線はそこから西へ進み、ネフトアの水の泉へと出て行った。
18:16 境界線は、ベン・ヒノムの谷に面した山のはずれへと下った。この山は、レファイムの谷の北側にある。境界線はさらにヒノムの谷を下り、エブス人の町の南側の斜面を通って、エン・ロゲルへと下った。
18:17 そこから境界線は北へ向きを変えてエン・シェメシュへ出て、アドミムの坂に面したゲリロトへと出て行き、ルベンの子ボハンの石へと下った。
18:18 境界線はさらにアラバに面した北側の斜面へと進み、アラバへと下った。
18:19 境界線はベト・ホグラの北側の斜面へと進み、塩の海の北の入り江、ヨルダン川の南の端で終わっていた。これが南側の境界だった。
18:20 東側は、ヨルダン川が境界となっていた。これが、ベニヤミンの人々が氏族ごとに受け継いだ領地で、その周りをぐるりと囲む境界だった。
18:21 ベニヤミン族が氏族ごとに受け取った町は、次のとおりである。エリコ、ベト・ホグラ、エメク・ケツィツ、
18:22 ベト・アラバ、ツェマライム、ベテル、
18:23 アビム、パラ、オフラ、
18:24 ケファル・アモニ、オフニ、ゲバ。これで十二の町と、それに属する村々である。
18:25 ギブオン、ラマ、ベエロト、
18:26 ミツパ、ケフィラ、モツァ、
18:27 レケム、イルペエル、タルアラ、
18:28 ツェラ、エレフ、エブス人の町、すなわちエルサレム、ギブア、キルヤト。これで十四の町と、それに属する村々である。これがベニヤミンの人々の、氏族ごとの相続地である。
19:1 二番目のくじは、シメオン、すなわちシメオンの部族に、氏族ごとに当たった。彼らの相続地は、ユダの人々の相続地の中にあった。
19:2 彼らの相続地となったのは、ベエル・シェバ、シェバ、モラダ、
19:3 ハツァル・シュアル、バラ、エツェム、
19:4 エルトラド、ベトル、ホルマ、
19:5 ツィクラグ、ベト・マルカボト、ハツァル・スサ、
19:6 ベト・レバオト、シャルヘン。これで十三の町と、それに属する村々である。
19:7 アイン、リンモン、エテル、アシャン。これで四つの町と、それに属する村々である。
19:8 さらに、これらの町の周りにあるすべての村々が、南のラマ、すなわちバアラト・ベエルまで含まれる。これがシメオン族の、家族ごとに分けられた相続地である。
19:9 シメオン族の相続地は、ユダ族の割り当てのなかから取られたものだった。ユダ族の取り分が彼らには大きすぎたので、シメオン族はユダ族の相続地の中に自分たちの相続地を得たのである。
19:10 三番目のくじはゼブルン族に、その家族ごとに当たった。彼らの相続地の境界線はサリドまで達していた。
19:11 その境界線は西のほうへ上ってマルアラに至り、ダバシェトに届き、さらにヨクネアムの前を流れる谷川に達した。
19:12 サリドからは向きを変えて、東の日の昇る方へ、キスロト・タボルの境まで進み、ダベラトへ出て、ヤフィアへ上っていった。
19:13 そこからさらに東のほうへ進んでガト・ヘフェルとエト・カツィンに至り、リンモンへ出て、ネアのほうへ曲がった。
19:14 境界線はその北側を回ってハナトンに至り、イフタ・エルの谷で終わっていた。
19:15 そのほかに、カタト、ナハラル、シムロン、イドアラ、ベツレヘムがあった。これで十二の町と、それに属する村々である。
19:16 これがゼブルン族の、家族ごとに分けられた相続地である。これらの町々と、それに属する村々である。
19:17 四番目のくじはイッサカルに、すなわちイッサカル族に、その家族ごとに当たった。
19:18 彼らの境界線はイズレエル、ケスロト、シュネム、
19:19 ハファライム、シオン、アナハラト、
19:20 ラビト、キション、エベツ、
19:21 レメト、エン・ガニム、エン・ハダ、ベト・パツェツを通っていた。
19:22 境界線はさらにタボル、シャハツマ、ベト・シェメシュに達し、その終わりはヨルダン川だった。町は全部で十六。それに属する村々もあった。
19:23 これがイッサカル族の、家族ごとに分けられた相続地である。これらの町々と、それに属する村々である。
19:24 五番目のくじはアシェル族に、その家族ごとに当たった。
19:25 彼らの境界線はヘルカト、ハリ、ベテン、アクシャフ、
19:26 アラメレク、アムアド、ミシュアルで、西のカルメルとシホル・リブナトに達していた。
19:27 そこから日の昇る方へ向かってベト・ダゴンに折れ、ゼブルンとイフタフ・エルの谷に達し、北へ進んでベト・ハエメクとネイエルに至り、さらに左手のカブルへと出ていた。
19:28 そしてエブロン、レホブ、ハモン、カナを経て、大シドンにまで至った。
19:29 境界線はラマに折れ、城壁の町ツロにまで達した。それからホサに折れ、その終わりはアクジブの地方から海に至っていた。
19:30 さらにウマ、アフェク、レホブがあった。町は全部で二十二。それに属する村々もあった。
19:31 これがアシェル族の、家族ごとに分けられた相続地である。これらの町々と、それに属する村々である。
19:32 六番目のくじはナフタリ族に当たった。ナフタリ族の家族ごとの相続地である。
19:33 その境界線はヘレフから始まり、ツァアナニムの樫の木、アダミ・ネケブ、ヤブネエルを通ってラクムに至り、その終わりはヨルダン川であった。
19:34 境界線はそこから西に折れてアズノト・タボルに向かい、さらにフコクへと延びていた。南でゼブルンに接し、西でアシェルに接し、日の昇る東ではヨルダン川に接していた。
19:35 城壁のある町々は、ツィディム、ツェル、ハマト、ラカト、キネレト、
19:36 アダマ、ラマ、ハツォル、
19:37 ケデシュ、エドレイ、エン・ハツォル、
19:38 イルオン、ミグダル・エル、ホレム、ベト・アナト、ベト・シェメシュ。町は全部で十九。それに属する村々もあった。
19:39 これがナフタリ族の、家族ごとに分けられた相続地である。これらの町々と、それに属する村々である。
19:40 七番目のくじはダン族に当たった。ダン族の家族ごとの相続地である。
19:41 その相続地の境界線の中には、ツォルア、エシュタオル、イル・シェメシュ、
19:42 シャアラビン、アヤロン、イトラ、
19:43 エロン、ティムナ、エクロン、
19:44 エルテケ、ギベトン、バアラト、
19:45 エフド、ベネ・ベラク、ガト・リモン、
19:46 メ・ヤルコン、ラコン、それにヤフォの向かいの一帯だった。
19:47 でも、ダン族の領地は彼らには狭すぎた。そこでダン族は攻め上り、レシェムと戦った。彼らはこの町を攻め取り、剣で討ち、自分たちのものにしてそこに住んだ。そして先祖ダンの名にちなんで、レシェムをダンと名づけた。
19:48 以上が、ダン族の家族ごとの相続地である。これらの町々と、その周りの村々だ。
19:49 こうしてイスラエルの人々は、境界線に従って土地を分ける作業を終えた。それから彼らは、自分たちの中でヌンの子ヨシュアに相続地を与えた。
19:50 主の命令のとおり、彼らはヨシュアが求めた町を与えた。エフライムの山地にあるティムナト・セラである。ヨシュアはその町を築き直し、そこに住んだ。
19:51 以上が、祭司エルアザルと、ヌンの子ヨシュアと、イスラエルの人々の各部族の一族の長たちが、シロで主の前、会見の幕屋の入り口でくじを引いて分けた相続地である。こうして、彼らは土地を分ける作業をすべて終えた。
20:1 主はヨシュアにこう言われた。
20:2 「イスラエルの人々にこう伝えなさい。わたしがモーセを通してあなたたちに命じた、逃れのための町を選び定めなさい。
20:3 過って、うっかり人を殺してしまった者が、そこへ逃げ込めるようにするためだ。そうすれば、その町は血の復讐をする者からあなたたちを守る逃れ場になる。
20:4 その者は、これらの町の一つに逃げ込み、町の門の入り口に立って、その町の長老たちに自分の事情を話す。すると長老たちは彼を町に迎え入れ、住む場所を与えて、共に住まわせる。
20:5 もし血の復讐をする者が追ってきても、長老たちはその人を引き渡してはならない。彼はうっかり隣人を殺してしまったのであって、前々から憎んでいたわけではないからだ。
20:6 その者は、集まった人々の前に立って裁きを受けるまで、そしてその時の大祭司が死ぬまで、その町に住む。それから、その者は自分の町、自分の家、つまり逃げてきた元の町へ戻ることができる。」
20:7 そこで人々は、ナフタリの山地にあるガリラヤのケデシュ、エフライムの山地にあるシケム、ユダの山地にあるキルヤト・アルバ、すなわちヘブロンを、逃れの町として定めた。
20:8 また、ヨルダン川の東側、エリコの向こう側では、ルベン族の地から荒れ野の高原にあるベツェルを、ガド族の地からギレアドのラモトを、マナセ族の地からバシャンのゴランを定めた。
20:9 これらが、すべてのイスラエルの人々と、彼らの間に住む寄留者のために定められた町である。過って人を殺してしまった者は皆、そこへ逃げ込むことができた。そして、集まった人々の前に立つまで、血の復讐をする者の手にかかって死ぬことはなかった。
21:1 レビ人の一族の長たちが、祭司エルアザルと、ヌンの子ヨシュア、そしてイスラエルの各部族の一族の長たちのところにやって来た。
21:2 そしてカナンの地のシロで、彼らにこう言った。「主はモーセを通して、わたしたちに住むための町々と、家畜のための放牧地を与えるようにと命じられました。」
21:3 そこでイスラエルの人々は、主の命令のとおり、自分たちの受け継いだ土地の中から、次の町々とその放牧地をレビ人に与えた。
21:4 まずくじがコハト人の諸氏族に当たった。レビ人のうち、祭司アロンの子孫には、くじによってユダ族、シメオン族、ベニヤミン族の中から十三の町が与えられた。
21:5 そのほかのコハトの子孫には、くじによってエフライム族の諸氏族、ダン族、それにマナセの半部族の中から十の町が与えられた。
21:6 ゲルションの子孫には、くじによってイサカル族の諸氏族、アシェル族、ナフタリ族、それにバシャンにいるマナセの半部族の中から十三の町が与えられた。
21:7 メラリの子孫には、氏族ごとに、ルベン族、ガド族、ゼブルン族の中から十二の町が与えられた。
21:8 こうしてイスラエルの人々は、主がモーセを通して命じられたとおり、くじによってこれらの町々とその放牧地をレビ人に与えた。
21:9 彼らはまず、ユダの部族とシメオンの部族の中から、次に名前を挙げる町々を与えた。
21:10 それらはレビの子孫であるコハト人の諸氏族のうち、アロンの子孫のものとなった。最初のくじが彼らに当たったからである。
21:11 彼らはアロンの子孫に、ユダの山地にあるキルヤト・アルバ、すなわちヘブロンと、その周りの放牧地を与えた。アルバはアナクの父である。
21:12 ただし、その町の畑と周辺の村々は、エフンネの子カレブの所有地として与えられた。
21:13 彼らは祭司アロンの子孫に、人を殺した者が逃げ込むための町ヘブロンと、その放牧地を与えた。さらにリブナとその放牧地、
21:14 ヤティルとその放牧地、エシュテモアとその放牧地、
21:15 ホロンとその放牧地、デビルとその放牧地、
21:16 アインとその放牧地、ユタとその放牧地、ベト・シェメシュとその放牧地である。これらはこの二つの部族から出された九つの町だった。
21:17 また、ベニヤミン族からはギブオンとその放牧地、ゲバとその放牧地、
21:18 アナトトとその放牧地、アルモンとその放牧地、合わせて四つの町が与えられた。
21:19 祭司であるアロンの子孫の町は、放牧地を含めて全部で十三の町だった。
21:20 残りのコハトの子孫、つまりコハト人の諸氏族には、エフライム族から町がくじで割り当てられた。
21:21 彼らに与えられたのは、エフライムの山地にある、人を殺した者が逃げ込むための町シェケムとその放牧地、それにゲゼルとその放牧地、
21:22 キブツァイムとその放牧地、ベト・ホロンとその放牧地、合わせて四つの町だった。
21:23 また、ダン族からはエルテケとその放牧地、ギベトンとその放牧地、
21:24 アヤロンとその放牧地、ガト・リモンとその放牧地、合わせて四つの町が与えられた。
21:25 また、マナセの半部族からはタアナクとその放牧地、ガト・リモンとその放牧地、合わせて二つの町だった。
21:26 こうしてケハト族の残りの人々には、放牧地つきの町が全部で十あった。
21:27 レビ族の一つであるゲルション族には、マナセの半部族から次の町が与えられた。人を殺してしまった者が逃げ込める避難の町であるバシャンのゴランとその放牧地、それにベエシュテラとその放牧地、合わせて二つの町である。
21:28 また、イッサカル族からはキシュオンとその放牧地、ダベラトとその放牧地、
21:29 ヤルムトとその放牧地、エン・ガニムとその放牧地、合わせて四つの町。
21:30 また、アシェル族からはミシュアルとその放牧地、アブドンとその放牧地、
21:31 ヘルカトとその放牧地、レホブとその放牧地、合わせて四つの町。
21:32 また、ナフタリ族からは、人を殺してしまった者が逃げ込める避難の町であるガリラヤのケデシュとその放牧地、ハモト・ドルとその放牧地、カルタンとその放牧地、合わせて三つの町。
21:33 こうしてゲルション族には、その一族ごとに、放牧地つきの町が全部で十三あった。
21:34 レビ族の残りであるメラリ族には、ゼブルン族から次の町が与えられた。ヤクネアムとその放牧地、カルタとその放牧地、
21:35 ディムナとその放牧地、ナハラルとその放牧地、合わせて四つの町。
21:36 また、ルベン族からはベツェルとその放牧地、ヤハツとその放牧地、
21:37 ケデモテとその放牧地、メファアトとその放牧地、合わせて四つの町。
21:38 また、ガド族からは、人を殺した者が逃げ込める避難の町ギレアデのラモテとその放牧地、そしてマハナイムとその放牧地、
21:39 ヘシュボンとその放牧地、ヤゼルとその放牧地、合わせて四つの町。
21:40 レビ族の諸氏族のうち、残っていたメラリ族が氏族ごとにくじで受け取った町は、全部で十二の町だった。
21:41 イスラエルの人々の所有地の中でレビ族が受け取った町は、放牧地も含めて全部で四十八の町だった。
21:42 これらの町はどれも、まわりに放牧地がついていた。すべての町がそうだった。
21:43 こうして主は、先祖たちに与えると誓っていた地をすべてイスラエルに与えられた。イスラエルはその地を自分のものとし、そこに住んだ。
21:44 そして主は、先祖たちに誓われたとおり、まわりのすべての敵から守り、彼らを安らかに住まわせた。敵は一人も彼らの前に立ちはだかることができなかった。主が敵をみな、彼らの手に渡されたからだ。
21:45 主がイスラエルの家に約束された良いことは、一つもたがわなかった。すべてそのとおりになった。
22:1 そのときヨシュアは、ルベン族とガド族、そしてマナセの半部族を呼び集めた。
22:2 そして彼らに言った。「あなたたちは、主のしもべモーセが命じたことをすべて守り、わたしが命じたことにもすべて聞き従ってくれた。
22:3 長い間、今日に至るまで、あなたたちは仲間を見捨てることなく、あなたたちの神、主の命令をしっかり守り続けてきた。
22:4 そして今、あなたたちの神、主は、約束のとおり、あなたたちの仲間に安息を与えてくださった。だから、もう自分の天幕に帰りなさい。ヨルダン川の向こう側にある、あなたたちの所有の地、主のしもべモーセが与えてくれた地へ帰るのだ。
22:5 ただし、主のしもべモーセが命じた命令と律法を、よく気をつけて守り行いなさい。あなたたちの神、主を愛し、そのすべての道を歩み、その命令を守り、主に寄りすがり、心を尽くし、魂を尽くして主に仕えなさい。」
22:6 こうしてヨシュアは彼らを祝福して送り出し、彼らは自分の天幕へと帰っていった。
22:7 マナセの半部族には、モーセがすでにバシャンで所有地を与えていた。もう半分には、ヨシュアがヨルダン川の西側で、その仲間たちとともに所有地を与えた。ヨシュアは彼らを自分の天幕へ送り出すとき、彼らを祝福して、
22:8 こう言った。「あなたたちは多くの富を持って、自分の天幕へ帰りなさい。おびただしい数の家畜、銀と金、青銅と鉄、そしてたくさんの衣服も持って帰るのだ。そして、敵から奪った戦利品を、仲間たちと分け合いなさい。」
22:9 ルベンの人々とガドの人々、そしてマナセの半部族は、カナンの地にあるシロを出て、イスラエルの人々のもとを離れ、帰っていった。主がモーセを通して命じたとおりに自分たちのものとなった所有の地、ギレアドの地へ向かうためだった。
22:10 彼らはカナンの地にあるヨルダン川の一帯にやってきた。そこでルベンの人々とガドの人々、マナセの半部族は、ヨルダン川のほとりに祭壇を築いた。それは遠くからでも目を引く、大きな祭壇だった。
22:11 イスラエルの人々は、こう伝え聞いた。「見よ、ルベンの人々とガドの人々、マナセの半部族が、カナンの地に面したヨルダン川の一帯、イスラエルの人々の側に祭壇を築いたぞ」と。
22:12 これを聞いたイスラエルの人々は、彼らと戦うために、全会衆がシロに集まった。
22:13 イスラエルの人々は、ギレアドの地にいるルベンの人々とガドの人々、マナセの半部族のもとに、祭司エルアザルの子ピネハスを送った。
22:14 ピネハスには、十人の指導者が同行した。イスラエルのすべての部族から、父祖の家ごとに一人ずつ選ばれた指導者で、彼らはみなイスラエルの氏族の長だった。
22:15 彼らはギレアドの地にいるルベンの人々とガドの人々、マナセの半部族のもとにやってきて、こう語った。
22:16 「主の全会衆はこう言っている。『あなたがたがイスラエルの神に対して犯した、この裏切りはいったい何なのか。自分たちのために祭壇を築いて、今日、主に背を向け、主に反逆しようというのか。
22:17 ペオルで犯した罪だけでも、まだ足りないというのか。わたしたちは今日まで、その罪から清められていない。そのために、主の会衆に疫病が下ったのだ。
22:18 それなのに、あなたがたは今日、主に背を向けようとしている。あなたがたが今日、主に反逆すれば、明日、主はイスラエルの全会衆に怒りを向けられるのだ。
22:19 もし、あなたがたの所有する地が汚れているというなら、主の所有する地、主の幕屋があるこちら側に渡ってきて、わたしたちの間で土地を得るがいい。ただ、主に反逆してはならない。わたしたちの神、主の祭壇のほかに、自分たちのための祭壇を築いて、わたしたちにまで反逆してはならない。
22:20 ゼラの子アカンは、滅ぼし尽くすべきものに手をつけて、裏切りを犯したではないか。そのために、イスラエルの全会衆に怒りが下った。彼はたった一人の男だったが、その罪で命を落としたのは、彼だけではなかったのだ。』」
22:21 これに対して、ルベンの人々とガドの人々、マナセの半部族は、イスラエルの氏族の長たちにこう答えた。
22:22 「力ある神、主。力ある神、主。主こそが、すべてをご存じだ。イスラエルよ、あなたがたも知るがいい。もし、これが主への反逆や裏切りのためなら、今日、わたしたちを助けないでほしい。
22:23 もし、主に背を向けるために自分たちの祭壇を築いたのなら、あるいはその上で焼き尽くすささげ物や穀物のささげ物をささげ、和解のいけにえをささげるためだったのなら、主ご自身が責めを問われるがいい。
22:24 いや、むしろわたしたちがこうしたのは、ある心配があったからだ。いつの日か、あなたがたの子孫がわたしたちの子孫にこう言うのではないか、と思ったのだ。『あなたがたに、イスラエルの神、主と、いったい何の関わりがあるのか。
22:25 主が、わたしたちとあなたがた、ルベン族とガド族との間に、ヨルダン川という境を定められた。だから、あなたがたには主との関わりはない』と。こうして、あなたがたの子孫が、わたしたちの子孫に主を敬うのをやめさせてしまうのではないか、と。
22:26 だから、わたしたちは言い合ったのだ。『さあ、自分たちのために祭壇を築こう。焼き尽くすささげ物のためでも、いけにえのためでもない。
22:27 これは、わたしたちとあなたがた、そしてこれから続くわたしたちの子孫との間で、証しとなるためだ。わたしたちが焼き尽くすささげ物やいけにえ、和解のいけにえをもって、主の前でその務めを果たしていることの証しだ。こうすれば、いつの日か、あなたがたの子孫がわたしたちの子孫に「あなたがたに、主との関わりはない」とは言えなくなる。
22:28 だから、わたしたちはこう考えた。もし将来、あなたがたやその子孫がわたしたちにそう言ったときには、こう答えよう。「見よ、これは主の祭壇の模型だ。わたしたちの先祖が造ったものだ。焼き尽くすささげ物のためでも、いけにえのためでもない。わたしたちとあなたがたの間の証しなのだ」と。
22:29 わたしたちが主に反逆するなど、とんでもないことだ。今日、主に背を向けて離れ去るなど、絶対にしない。わたしたちの神、主の幕屋の前にある祭壇のほかに、焼き尽くすささげ物や穀物のささげ物、いけにえのための祭壇を築くつもりなど、まったくないのだ。」
22:30 祭司ピネハスと、彼と共にいた民の指導者たち、イスラエルの氏族のかしらたちは、ルベン族とガド族とマナセ族が語った言葉を聞いた。すると、それを聞いて満足した。
22:31 祭司エルアザルの子ピネハスは、ルベン族とガド族とマナセ族に言った。「今日、わたしたちは分かった。主がわたしたちの間におられることが。あなたがたは、主に対してこのような裏切りをしなかったのだから。こうしてあなたがたは、イスラエルの人々を主の手から救ったのだ。」
22:32 祭司エルアザルの子ピネハスと指導者たちは、ルベン族とガド族のもとを離れ、ギレアデの地からカナンの地へ、イスラエルの人々のところに帰った。そして、この一部始終を報告した。
22:33 その報告を聞いて、イスラエルの人々は満足した。そしてイスラエルの人々は神をほめたたえた。彼らはもう、ルベン族とガド族が住む地を滅ぼすために攻め上ろうとは言わなくなった。
22:34 ルベン族とガド族は、その祭壇をこう名づけた。「これは、わたしたちの間の証し。主こそが神であることの証し」と。
23:1 主がイスラエルを取り囲むすべての敵から解放し、平穏を与えてから、長い年月がたった。そのころ、ヨシュアは年をとり、老いていた。
23:2 ヨシュアはイスラエルの全員を呼び集めた。長老、リーダー、裁判をする者、役人たちだ。そして彼らに言った。「わたしは年をとり、すっかり老いてしまった。
23:3 あなたたちは、あなたたちの神である主が、この国々すべてに何をしてくれたかを、自分の目で見てきた。あなたたちのために戦ってくれたのは、あなたたちの神である主なのだ。
23:4 見なさい。まだ残っているこれらの民の土地を、わたしはあなたたちの部族に、受け継ぐ地として割り当てた。すでにわたしが滅ぼした国々の土地とともに、ヨルダン川から西の大きな海までをだ。
23:5 あなたたちの神である主が、彼らをあなたたちの前から追い払い、あなたたちの目の前から追い出してくれる。そしてあなたたちは、主が約束したとおり、彼らの土地を受け継ぐことになる。
23:6 だから、しっかりと踏ん張りなさい。モーセの律法の書に書かれていることをすべて守り、そのとおりに行いなさい。右にも左にも、そこからそれてはいけない。
23:7 あなたたちの中に残っているこれらの民に、決して近づいてはいけない。彼らの神々の名を口にしてはいけないし、その名にかけて誓ってもいけない。彼らに仕えたり、ひれ伏して拝んだりしてはいけない。
23:8 ただ、今日までしてきたように、あなたたちの神である主にしっかりとすがりつきなさい。
23:9 主は、大きくて強い国々をあなたたちの前から追い出してくれた。今日まで、あなたたちの前に立ちはだかれる者は一人もいなかった。
23:10 あなたたちのうちの一人が、千人を追い散らす。あなたたちの神である主が、約束したとおり、あなたたちのために戦ってくれるからだ。
23:11 だから、あなたたちの神である主を愛するよう、自分の魂をよくよく気をつけて守りなさい。
23:12 もし、あなたたちが背を向けて、あなたたちの中に残っているこれらの民の生き残りにすがりつき、彼らと結婚してたがいに行き来するようなことがあれば、
23:13 はっきりと知っておきなさい。あなたたちの神である主は、もうこれらの民をあなたたちの前から追い払ったりはしない。彼らはあなたたちにとって、わなとなり、落とし穴となり、脇腹を打つむちとなり、目に刺さるとげとなる。ついにはあなたたちは、あなたたちの神である主が与えてくれたこの良い土地から滅び去ることになる。
23:14 見なさい。わたしは今日、この世のすべての人がたどる道を行こうとしている。あなたたちは、心を尽くし、魂を尽くして知っている。あなたたちの神である主が約束してくれた良いことは、一つも実現しなかったものはない。すべてがそのとおりになった。一つもかなわなかったことはなかった。
23:15 だが、良いことがすべてそのとおりに実現したように、あなたたちの神である主は、悪いこともすべてあなたたちの上に下す。ついにはあなたたちを、あなたたちの神である主が与えてくれたこの良い土地から滅ぼし尽くすことになる。
23:16 あなたたちの神である主が結んだ契約、あなたたちに命じたその契約を破って、ほかの神々のところへ行き、それに仕え、ひれ伏すなら、主の怒りがあなたたちに向かって燃え上がる。あなたたちは、主が与えてくれたこの良い土地から、たちまち滅び去ることになる。」
24:1 ヨシュアはイスラエルのすべての部族をシケムに集めた。そしてイスラエルの長老たち、かしらたち、裁判官たち、役人たちを呼び寄せると、彼らは神の前に進み出た。
24:2 ヨシュアはすべての民に言った。「イスラエルの神である主は、こう言われる。『昔、あなたたちの先祖は大河の向こう側に住んでいた。アブラハムとナホルの父テラもそうだ。彼らはほかの神々に仕えていた。
24:3 わたしは、あなたたちの先祖アブラハムを大河の向こう側から連れ出し、カナンの全土を歩かせた。そして彼の子孫を増やし、彼にイサクを与えた。
24:4 イサクにはヤコブとエサウを与えた。エサウにはセイルの山地を与えて自分のものとさせた。ヤコブとその子たちはエジプトへ下って行った。
24:5 わたしはモーセとアロンを送り、エジプトのただ中で行ったことによって、エジプトを打った。そのあとで、あなたたちを連れ出した。
24:6 こうして、わたしはあなたたちの先祖をエジプトから連れ出した。あなたたちが海のところまで来ると、エジプト人は戦車と騎兵を率いて、あなたたちの先祖を葦の海まで追いかけてきた。
24:7 先祖が主に助けを求めて叫ぶと、主はあなたたちとエジプト人との間を暗闇でさえぎり、海をエジプト人の上にかぶせて、彼らをおおった。わたしがエジプトで行ったことを、あなたたちは自分の目で見た。そのあと、あなたたちは長いあいだ荒れ野で暮らした。
24:8 それから、わたしはあなたたちを、ヨルダン川の東に住むアモリ人の地に導き入れた。彼らはあなたたちと戦ったが、わたしは彼らをあなたたちの手に渡した。あなたたちは彼らの地を自分のものとし、わたしは彼らをあなたたちの前から滅ぼした。
24:9 モアブの王、ツィポルの子バラクが立ち上がり、イスラエルと戦った。彼は人を送って、ベオルの子バラムを呼び寄せ、あなたたちを呪わせようとした。
24:10 でも、わたしはバラムの言うことを聞き入れなかった。それどころか、彼はあなたたちを祝福した。こうして、わたしはあなたたちを彼の手から救い出した。
24:11 あなたたちはヨルダン川を渡り、エリコに来た。エリコの住民、そしてアモリ人、ペリジ人、カナン人、ヒッタイト人、ギルガシ人、ヒビ人、エブス人があなたたちと戦ったが、わたしは彼らをあなたたちの手に渡した。
24:12 わたしはあなたたちの前にスズメバチを送り、アモリ人の二人の王をあなたたちの前から追い払った。それは、あなたの剣や弓によるものではなかった。
24:13 わたしはあなたたちに、自分では耕さなかった地と、自分では建てなかった町々を与えた。あなたたちは今そこに住んでいる。そして、自分では植えなかったぶどう畑やオリーブ畑から取って食べている。
24:14 だから今、主を敬い、真心と真実をもって主に仕えなさい。あなたたちの先祖が川の向こうやエジプトで仕えていた神々を捨て去り、主に仕えなさい。
24:15 もし主に仕えるのが気に入らないなら、今日、誰に仕えるかを自分で選びなさい。川の向こうで先祖が仕えていた神々か、それとも、あなたたちが今住んでいる地のアモリ人の神々か。でも、わたしとわたしの家は、主に仕える。
24:16 すると、民は答えた。「主を捨てて、ほかの神々に仕えるなんて、わたしたちには絶対にありえないことです。
24:17 わたしたちの神、主こそが、わたしたちとわたしたちの先祖を、奴隷の家であるエジプトの地から導き上ってくださった方です。主は、わたしたちの目の前であの大きなしるしを行い、わたしたちが歩んできた道すべてで、また通り過ぎたすべての民の間で、わたしたちを守ってくださいました。
24:18 主は、この地に住んでいたアモリ人をはじめ、すべての民をわたしたちの前から追い払ってくださいました。だから、わたしたちも主に仕えます。主こそ、わたしたちの神だからです。」
24:19 ヨシュアは民に言った。「あなたたちには、主に仕えることはできない。主は聖なる神だからだ。ねたむ神であり、あなたたちの背きや罪を見のがしてはくださらない。
24:20 もしあなたたちが主を捨てて、外国の神々に仕えるなら、主は向きを変えて、あなたたちにわざわいを下し、あなたたちを滅ぼしつくす。これまであなたたちに良くしてくださったのに、そうなるのだ。」
24:21 すると、民はヨシュアに言った。「いいえ。わたしたちは主に仕えます。」
24:22 ヨシュアは民に言った。「あなたたち自身が、自分たちのことの証人だ。あなたたちは、主を選んで仕えると決めたのだから。」民は言った。「わたしたちが証人です。」
24:23 「それなら、あなたたちの中にある外国の神々を取り除きなさい。そして、心をイスラエルの神、主に向けなさい。」
24:24 民はヨシュアに言った。「わたしたちは、わたしたちの神、主に仕えます。その声に従います。」
24:25 その日、ヨシュアは民のために契約を結び、シケムで彼らのおきてと定めを立てた。
24:26 ヨシュアは、これらの言葉を神の律法の書に書き記した。そして大きな石を取り、主の聖所にある樫の木の下に、それを立てた。
24:27 ヨシュアはすべての民に言った。「見なさい。この石が、わたしたちの証人となる。この石は、主がわたしたちに語られた言葉をすべて聞いたのだから。だからこの石は、あなたたちの証人となる。あなたたちが自分の神を裏切らないためだ。」
24:28 こうしてヨシュアは民を送り出し、それぞれ自分の受け継いだ土地へ帰らせた。
24:29 これらのことの後、主のしもべ、ヌンの子ヨシュアは、百十歳で死んだ。
24:30 人々は彼を、その受け継いだ土地の境にあるティムナト・セラに葬った。そこはエフライムの山地にあり、ガアシュ山の北側だった。
24:31 イスラエルは、ヨシュアが生きている間ずっと主に仕えた。さらに、ヨシュアより長く生きた長老たちが生きている間も、そうだった。彼らは、主がイスラエルのためにしてくださったすべてのわざを、自分の目で知っていた。
24:32 イスラエルの人々がエジプトから運んできたヨセフの骨は、シェケムに葬られた。そこは、ヤコブが銀百枚でシェケムの父ハモルの子らから買い取った、あの畑の一区画だった。この土地は、ヨセフの子孫が受け継ぐものとなった。
24:33 アロンの子エルアザルも死んだ。人々は彼を、エフライムの山地にある、その子ピネハスに与えられた土地、ギブアに葬った。
士師記
1:1 ヨシュアが亡くなったあと、イスラエルの人々は主にたずねた。「わたしたちのうち、だれが最初に攻め上って、カナン人と戦えばいいのでしょうか。」
1:2 主は言われた。「ユダが攻め上りなさい。わたしはこの地を、すでにユダの手に渡している。」
1:3 ユダは兄弟のシメオンに言った。「わたしに割り当てられた土地へ、いっしょに攻め上ってほしい。カナン人と戦おう。そうすれば、あなたに割り当てられた土地へも、わたしがいっしょに行く。」こうしてシメオンはユダとともに行った。
1:4 ユダが攻め上ると、主はカナン人とペリジ人を彼らの手に渡された。彼らはベゼクで敵一万人を討ち取った。
1:5 彼らはベゼクでアドニ・ベゼクを見つけ、彼と戦って、カナン人とペリジ人を討ち取った。
1:6 アドニ・ベゼクは逃げたが、彼らは追いかけて捕まえ、その両手の親指と両足の親指を切り落とした。
1:7 アドニ・ベゼクは言った。「かつて七十人の王たちが、手足の親指を切り落とされ、わたしの食卓の下で食べ残しを拾っていた。わたしがしたことを、神はそのまま、わたしに返されたのだ。」人々は彼をエルサレムへ連れて行き、彼はそこで死んだ。
1:8 ユダの人々はエルサレムを攻めて占領し、剣でその町を討ち、火を放った。
1:9 そのあと、ユダの人々は山地とネゲブ、それに低地に住むカナン人と戦うために下って行った。
1:10 ユダはヘブロンに住むカナン人に向かって進んだ。ヘブロンはもともとキルヤト・アルバと呼ばれていた。彼らはシェシャイ、アヒマン、タルマイを討ち取った。
1:11 彼らはそこからさらに、デビルの住民のところへ進んだ。デビルはもともとキルヤト・セフェルと呼ばれていた。
1:12 カレブは言った。「キルヤト・セフェルを攻めて占領した者には、わたしの娘アクサを妻として与えよう。」
1:13 それを占領したのは、カレブの弟でケナズの子オテニエルだった。カレブは娘アクサを彼の妻として与えた。
1:14 アクサはオテニエルのもとに来るとき、父に畑を求めるよう彼にすすめた。そしてろばから降りると、カレブは彼女に言った。「どうしたのか。」
1:15 アクサは答えた。「わたしに贈り物をください。あなたはネゲブの乾いた地をわたしにくださいました。だから水の湧く泉もください。」すると、カレブは上の泉と下の泉を彼女に与えた。
1:16 モーセのしゅうとであるケニ人の子孫は、ユダの人々といっしょに、なつめやしの町からユダの荒れ野へ上って行った。そこはアラドのネゲブにあった。彼らはそこへ行き、その地の民とともに住んだ。
1:17 ユダは兄弟シメオンといっしょに進み、ツェファトに住むカナン人を討ち取り、その町を滅ぼし尽くした。それでこの町はホルマと呼ばれた。
1:18 ユダはさらに、ガザとその周辺、アシュケロンとその周辺、エクロンとその周辺を占領した。
1:19 主がユダとともにおられたので、ユダは山地を自分のものとした。しかし谷に住む民は追い出せなかった。彼らが鉄の戦車を持っていたからだ。
1:20 モーセが約束したとおり、人々はヘブロンをカレブに与えた。カレブはそこからアナクの三人の子を追い出した。
1:21 一方、ベニヤミンの人々は、エルサレムに住むエブス人を追い出さなかった。それで今日まで、エブス人はエルサレムでベニヤミンの人々とともに住んでいる。
1:22 ヨセフの一族もまた、ベテルへ攻め上った。主が彼らとともにおられた。
1:23 ヨセフの一族はベテルを探るために偵察を送った。この町はもともとルズと呼ばれていた。
1:24 偵察の者たちは、一人の男が町から出て来るのを見て言った。「町の入り口を教えてくれ。そうすれば、あなたに慈しみを示そう。」
1:25 その男が町の入り口を教えると、彼らは町を剣で討った。でも、その男と一族はみな逃がした。
1:26 その男はヘテ人の地へ行き、町を建てて、ルズと名づけた。今日までそう呼ばれている。
1:27 マナセは、ベテ・シャンとその周辺の村々、タナクとその村々、ドルの住民とその村々、イブレアムの住民とその村々、メギドの住民とその村々を追い出さなかった。カナン人はどうしてもこの地に住み続けようとした。
1:28 イスラエルが強くなると、カナン人を労役につかせた。でも、完全に追い出すことはしなかった。
1:29 エフライムも、ゲゼルに住むカナン人を追い出さなかった。カナン人はゲゼルで、彼らのただ中に住み続けた。
1:30 ゼブルンも、キトロンの住民とナハロルの住民を追い出さなかった。カナン人は彼らのただ中に住み、労役につかされた。
1:31 アシェルも、アコの住民、シドンの住民、アフラブ、アクジブ、ヘルバ、アフィク、レホブの住民を追い出さなかった。
1:32 アシェル人は、その地の住民であるカナン人のただ中に住んだ。彼らを追い出さなかったからだ。
1:33 ナフタリも、ベテ・シェメシュの住民とベテ・アナトの住民を追い出さなかった。その地の住民であるカナン人のただ中に住んだ。でも、ベテ・シェメシュとベテ・アナトの住民は、彼らのために労役につかされた。
1:34 アモリ人は、ダンの人々を山地へ押し込めた。平地へ降りて来るのを許さなかったからだ。
1:35 アモリ人はどうしても、ハル・ヘレス、アヤロン、シャアルビムに住み続けようとした。でも、ヨセフの一族の力が強くなると、彼らは労役につかされた。
1:36 アモリ人の境界は、アクラビムの坂から、セラを越えて、さらに上の方へと延びていた。
2:1 主の使いがギルガルからボキムに上って来て、こう告げた。「わたしはあなたたちをエジプトから連れ出し、あなたたちの先祖に誓った地へ導き入れた。そしてわたしは、あなたたちと結んだ約束を決して破らないと言った。
2:2 だからあなたたちも、この地に住む人々と契約を結んではならない。彼らの祭壇は壊さなければならない。それなのに、あなたたちはわたしの言うことを聞かなかった。いったい何ということをしたのか。
2:3 だから、今わたしは言う。わたしは彼らをあなたたちの前から追い払わない。彼らはあなたたちのわき腹に刺さるとげとなり、彼らの神々はあなたたちを縛るわなとなる。」
2:4 主の使いがこの言葉をイスラエルのすべての人々に語ると、人々は声をあげて泣いた。
2:5 それで彼らはその場所をボキムと名づけた。そしてそこで主にいけにえをささげた。
2:6 ヨシュアが人々を送り出すと、イスラエルの人々はそれぞれ自分の割り当ての地へ行き、その土地を自分のものにしていった。
2:7 人々はヨシュアが生きているあいだも、その後まで長く生き残った長老たちのあいだも、ずっと主に仕えた。彼らは、主がイスラエルのためになさった大きな働きをすべて見た人々だった。
2:8 主のしもべ、ヌンの子ヨシュアは、百十歳で死んだ。
2:9 人々は彼を、自分の割り当ての地であるティムナト・ヘレスに葬った。そこはエフライムの山地にあり、ガアシュ山の北側だった。
2:10 その世代の人々もみな、先祖のもとに集められて死んでいった。そして彼らの後に、別の世代が起こった。その世代は主を知らず、主がイスラエルのためにされた働きも知らなかった。
2:11 イスラエルの人々は主の目に悪とされることを行い、バアルの神々に仕えた。
2:12 彼らは、自分たちをエジプトの地から連れ出してくれた、先祖の神である主を捨てた。そして周りの民の神々、ほかの神々に従い、それらを拝んで、主を怒らせた。
2:13 こうして彼らは主を捨て、バアルやアシュタロテに仕えた。
2:14 それで主はイスラエルに激しく怒り、彼らを略奪者の手に渡された。略奪者たちは彼らを奪い取った。主は彼らを、周りの敵の手に売り渡された。もう彼らは、敵の前に立ち向かうことができなくなった。
2:15 彼らがどこへ出て行っても、主の手は彼らに向かってわざわいをもたらした。主が前もって語り、彼らに誓われたとおりだった。彼らはひどく追いつめられた。
2:16 それでも主は、さばきづかさを立てて、彼らを略奪する者の手から救い出された。
2:17 ところが彼らは、そのさばきづかさにも聞き従わなかった。かえってほかの神々を慕って身を任せ、それらを拝んだ。彼らは、先祖が主の命令に従って歩んだ道から、すぐにそれてしまった。先祖のようには生きなかったのだ。
2:18 主が彼らのためにさばきづかさを立てられると、主はそのさばきづかさとともにおられた。そして、そのさばきづかさが生きているあいだ、彼らを敵の手から救い出された。彼らを苦しめ、しいたげる者たちのために、彼らがうめき苦しむのを見て、主が心を痛められたからだ。
2:19 ところが、そのさばきづかさが死ぬと、彼らはまた先祖よりもひどく堕落した。ほかの神々に従ってそれに仕え、それを拝んだのだ。彼らは自分たちの悪い行いも、頑固な生き方も、まったくやめようとしなかった。
2:20 そこで主はイスラエルに激しく怒って言われた。「この民は、わたしが先祖に命じておいた契約を破り、わたしの声に聞き従わなかった。
2:21 だからわたしも、ヨシュアが死んだとき残しておいた国々を、これ以上彼らの前から追い払わない。
2:22 それは、これらの国々によってイスラエルを試すためだ。彼らが先祖のように、主の道を守ってそこを歩むかどうか、確かめるためである。」
2:23 こうして主は、これらの国々をすぐには追い払わず、そのまま残しておかれた。ヨシュアの手に渡すこともされなかったのである。
3:1 主は、いくつかの民をそのまま残しておかれた。それは、カナンでの戦いを一度も経験したことのないイスラエルの人々を、その民によって試すためだった。
3:2 それはまた、戦いを知らなかったイスラエルの新しい世代に、戦いを教えて経験させるためでもあった。
3:3 残された民とは、ペリシテ人の五人の領主たち、すべてのカナン人、シドン人、そしてバアル・ヘルモン山からハマトの入り口まで、レバノン山地に住むヒビ人である。
3:4 この民は、イスラエルを試すために残された。主がモーセを通して先祖に与えた命令に、イスラエルが従うかどうかを知るためだった。
3:5 イスラエルの人々は、カナン人、ヒッタイト人、アモリ人、ペリジ人、ヒビ人、エブス人の間に住んでいた。
3:6 彼らはその娘たちを妻にめとり、また自分の娘たちを彼らの息子に与えた。そして、彼らの神々に仕えた。
3:7 イスラエルの人々は、主の目に悪とされることを行った。自分たちの神である主を忘れ、バアルやアシェラの神々に仕えたのだ。
3:8 すると主の怒りがイスラエルに向かって燃え上がった。主は彼らを、アラム・ナハライムの王クシャン・リシュアタイムの手に売り渡した。イスラエルの人々は八年間、クシャン・リシュアタイムに仕えた。
3:9 イスラエルの人々が主に叫び求めると、主は彼らを救う者を立てて、救い出した。それはカレブの弟、ケナズの子オテニエルである。
3:10 主の霊がオテニエルに臨んだ。彼はイスラエルを治め、戦いに出て行った。主はアラムの王クシャン・リシュアタイムを彼の手に渡し、彼はクシャン・リシュアタイムを打ち負かした。
3:11 こうして国は四十年の間、平穏だった。その後、ケナズの子オテニエルは死んだ。
3:12 イスラエルの人々は、再び主の目に悪とされることを行った。彼らがこの悪を行ったので、主はモアブの王エグロンを強くして、イスラエルに立ち向かわせた。
3:13 エグロンはアンモン人とアマレク人を呼び集め、進軍してイスラエルを打ち破った。そして「なつめやしの町」を占領した。
3:14 こうしてイスラエルの人々は、十八年の間、モアブの王エグロンに仕えることになった。
3:15 やがてイスラエルの人々が主に助けを求めて叫ぶと、主は彼らを救う者を立てた。それはベニヤミン族のゲラの子エフドで、左利きの男だった。イスラエルの人々は彼に貢ぎ物を持たせ、モアブの王エグロンのもとへ送った。
3:16 エフドは、両刃の短剣を作った。長さは一ゴメド（およそ五十センチ）。それを服の下、右の太ももにくくりつけた。
3:17 そして貢ぎ物をモアブの王エグロンのところへ持って行った。エグロンはとても太った男だった。
3:18 エフドは貢ぎ物を差し出し終えると、それを運んできた人々を先に帰らせた。
3:19 しかし彼自身は、ギルガルの近くにある石像のところから引き返した。そして言った。「王よ、あなたに内密のお話があります。」王が「静かに」と言うと、そばに仕えていた者たちはみな出て行った。
3:20 エフドが近づくと、王は自分専用の涼しい屋上の部屋に一人で座っていた。エフドは言った。「あなたに神からのお告げがあります。」王は席から立ち上がった。
3:21 その瞬間、エフドは左手を伸ばして右の太ももから短剣を抜き取り、王の腹に突き刺した。
3:22 刃に続いて柄まで入り込み、脂肪が刃をふさいだ。エフドは短剣を腹から抜かなかった。刃は背中まで突き抜けた。
3:23 エフドは廊下に出ると、屋上の部屋の戸を閉めて、鍵をかけた。
3:24 彼が出て行ったあと、王の家来たちがやって来た。見ると、屋上の部屋の戸には鍵がかかっている。彼らは言った。「きっと涼しい部屋で用を足しているのだろう。」
3:25 家来たちは、気まずくなるほど長いこと待った。それでも戸は開かない。とうとう鍵を取って開けてみると、主君が床に倒れて死んでいた。
3:26 彼らがぐずぐずしている間に、エフドは逃げた。石像の並ぶ場所を通り過ぎ、セイラまで逃げ延びた。
3:27 エフドはそこに着くと、エフライムの山地で角笛を吹き鳴らした。すると、イスラエルの人たちが山から下りてきて、彼のあとに従った。エフドが先頭に立っていた。
3:28 彼は言った。「わたしについて来い。主が敵のモアブを、あなたたちの手に渡してくださったのだ。」人々はエフドについて下って行き、モアブへ通じるヨルダン川の渡し場を押さえ、だれ一人渡らせなかった。
3:29 このとき彼らは、モアブの兵を約一万人打ち倒した。みな屈強で力のある者たちだったが、一人も逃げられなかった。
3:30 その日、モアブはイスラエルに屈服した。そして国は八十年のあいだ、平穏だった。
3:31 エフドのあとにはアナトの子シャムガルが現れた。彼は牛追いの棒でペリシテ人六百人を打ち倒し、この人もまたイスラエルを救った。
4:1 エフドが死ぬと、イスラエルの人々はまた、主の目に悪いことを繰り返した。
4:2 そこで主は彼らを、ハツォルで王位にあったカナンの王ヤビンの手に売り渡した。ヤビンの軍の司令官はシセラで、異邦人の町ハロシェトに住んでいた。
4:3 シセラは鉄の戦車を九百台も持ち、二十年のあいだイスラエルの人々を激しく苦しめた。それでイスラエルの人々は主に叫び求めた。
4:4 そのころ、イスラエルを導いていたのは、預言者である女性、ラピドトの妻デボラだった。
4:5 彼女はエフライムの山地の、ラマとベテルの間にある「デボラのナツメヤシ」の木の下にいつも座っていた。イスラエルの人々は、争いごとの裁きを求めて彼女のもとに上ってきた。
4:6 デボラは使いをやって、ナフタリのケデシュからアビノアムの子バラクを呼び寄せ、こう言った。「イスラエルの神、主はこう命じているではありませんか。『さあ、タボル山へ向かって進みなさい。ナフタリ族とゼブルン族から一万人を率いて行きなさい。
4:7 わたしはヤビンの軍の司令官シセラを、その戦車や大軍もろとも、キション川へと引き寄せる。そして彼をあなたの手に渡す。』」
4:8 バラクはデボラに言った。「あなたが一緒に行ってくれるなら、わたしは行きます。でも、一緒に行ってくれないなら、わたしは行きません。」
4:9 デボラは言った。「わかりました。必ず一緒に行きましょう。でも、この戦いであなたが名誉を受けることはありません。主はシセラを一人の女の手に渡されるからです。」こうしてデボラは立ち上がり、バラクと一緒にケデシュへ向かった。
4:10 バラクはゼブルン族とナフタリ族をケデシュに呼び集めた。一万人が彼に従って上っていき、デボラも一緒に上った。
4:11 さて、ケニ人ヘベルは、モーセの義理の父ホバブの子孫であるほかのケニ人たちと別れ、ケデシュの近くのツァアナニムにある大きな木のところまで来て、天幕を張っていた。
4:12 バラクがタボル山に上ったという知らせが、シセラのもとに届いた。
4:13 そこでシセラは、鉄の戦車九百台をはじめ、すべての戦車と、彼と一緒にいた全軍を、ハロシェト・ハゴイムからキション川へと呼び集めた。
4:14 デボラはバラクに言った。「さあ、立ってください。今日こそ、主がシセラをあなたの手に渡される日です。主があなたの先頭に立って進んでくださるではありませんか。」バラクは一万人を率いてタボル山を下っていった。
4:15 主はシセラと、そのすべての戦車と全軍を、バラクの前で混乱させられた。シセラは戦車から降り、走って逃げた。
4:16 バラクは戦車と軍を、ハロシェト・ハゴイムまで追いかけた。シセラの全軍は剣にかかって倒れ、一人も生き残らなかった。
4:17 一方、シセラは走って、ケニ人ヘベルの妻ヤエルの天幕へ逃げ込んだ。ハツォルの王ヤビンとケニ人ヘベルの一族との間には、友好関係があったからだ。
4:18 ヤエルは出てきてシセラを迎え、こう言った。「どうぞこちらへ、ご主人さま。こちらへおいでください。心配はいりません。」シセラが彼女の天幕に入ると、ヤエルは彼を毛布で覆った。
4:19 シセラはヤエルに言った。「すまないが、水を少し飲ませてくれ。のどが渇いたんだ。」ヤエルは乳の入った皮袋を開けて彼に飲ませ、また彼を覆った。
4:20 シセラはさらに言った。「天幕の入り口に立っていてくれ。もしだれかが来て『ここに男がいるか』と尋ねたら、『いない』と答えてほしい。」
4:21 ところがヘベルの妻ヤエルは、天幕の杭を取り、手に槌を持って、そっと彼に近づいた。そして、その杭を彼のこめかみに打ち込み、地面まで突き通した。シセラは疲れきって深く眠っていた。こうして彼は死んだ。
4:22 ちょうどそのとき、バラクがシセラを追ってやって来た。ヤエルは出ていって彼を迎え、こう言った。「来てください。あなたが探している男を見せてあげましょう。」バラクが天幕に入ると、シセラはこめかみに杭を刺されたまま、死んで倒れていた。
4:23 こうしてその日、神はカナンの王ヤビンを、イスラエルの人々の前で打ち負かした。
4:24 イスラエルの人々の力はますます強まり、カナンの王ヤビンに打ち勝ち、ついにカナンの王ヤビンを滅ぼした。
5:1 その日、デボラとアビノアムの子バラクは、こう歌った。
5:2 イスラエルの指導者たちが先頭に立ち、民が進んで身をささげたとき。主をほめたたえよ。
5:3 王たちよ、聞け。君主たちよ、耳を傾けよ。わたしは主に向かって歌う。わたしはイスラエルの神、主をほめ歌う。
5:4 主よ、あなたがセイルを出て、エドムの野を進んで行かれたとき、地は揺れ、天からは雨が降り、雲は水を注いだ。
5:5 山々は主の前で溶け去った。あのシナイの山も、イスラエルの神、主の前で。
5:6 アナトの子シャムガルの時代、ヤエルの時代には、道は途絶え、旅人は曲がりくねった脇道を通った。
5:7 イスラエルでは村に住む者が絶え、途絶えてしまった。わたし、デボラが立ち上がるまで、イスラエルの母として立ち上がるまで。
5:8 人々は新しい神々を選んだ。すると戦いが町の門に押し寄せた。イスラエルの四万人の中に、盾や槍が一つでも見えただろうか。
5:9 わたしの心は、イスラエルの指導者たちと共にある。民の中で進んで身を投げ出した者たちと。主をたたえよ。
5:10 白いろばに乗る者よ、鞍の敷物に座る者よ、道を行く者よ、語り伝えよ。
5:11 水くみ場のほとりで、水を分ける人々の声がする。そこで人々は主の正しい行いを語り告げる。イスラエルの村に住む者たちへの、主の正しい行いを。そのとき、主の民は町の門へと下って行った。
5:12 目を覚ませ、目を覚ませ、デボラよ。目を覚ませ、目を覚ませ、歌をうたえ。立ち上がれ、バラクよ。捕虜を引いて行け、アビノアムの子よ。
5:13 そのとき、生き残った者たちが名だたる者たちのもとへ下って行き、主の民が勇士たちと共に、わたしのもとへ下って来た。
5:14 エフライムからは、アマレクに根を張る者たちが出た。あなたに続いてベニヤミンが、あなたの民と共に。マキルからは指揮官たちが下って来て、ゼブルンからは指揮者の杖を執る者たちが出た。
5:15 イッサカルの長たちはデボラと共にいた。イッサカルはバラクと同じく、谷へと足早に突き進んだ。だが、ルベンの氏族の間では、心に思い悩むことばかりが多かった。
5:16 なぜあなたは羊の囲いの間にとどまり、群れに笛を吹く音を聞いていたのか。ルベンの氏族の間では、心に思い悩むことばかりが多かった。
5:17 ギルアデはヨルダン川の向こうにとどまった。ダンはなぜ船のそばに居残ったのか。アシェルは海辺に座り込み、入り江のほとりにとどまった。
5:18 ゼブルンは命を惜しまず、死を覚悟した民。ナフタリもまた、野の高台で。
5:19 王たちがやって来て、戦った。カナンの王たちが、タアナクで、メギドの水のほとりで戦った。だが、銀の分捕り物は何ひとつ手にできなかった。
5:20 天から星々が戦った。その通り道から、シセラに向かって戦った。
5:21 キションの川が彼らを押し流した。あの古い川、キションの川が。わたしの魂よ、力強く進み行け。
5:22 そのとき、馬のひづめが激しく地を打った。たくましい馬たちが、駆けに駆けたからだ。
5:23 「メロズをのろえ」と、主の使いは言った。「そこに住む者を、きびしくのろえ。彼らは主を助けに来なかった。勇士たちに立ち向かう主を、助けに来なかったからだ。」
5:24 女たちの中で、いちばん祝福されるのは、ケニ人ヘベルの妻ヤエル。天幕に住む女たちの中で、いちばん祝福される人。
5:25 シセラが水を求めると、彼女は乳を与えた。りっぱな鉢に、凝乳を差し出した。
5:26 彼女は手を天幕の杭に伸ばし、右手を職人の槌に伸ばした。そしてシセラを打ち、その頭を砕いた。こめかみを打ち抜き、貫いた。
5:27 彼女の足もとで、シセラはくずおれ、倒れ、横たわった。彼女の足もとで、くずおれ、倒れた。くずおれたその場所で、彼は倒れて息絶えた。
5:28 窓から外をのぞいて、シセラの母は叫んだ。格子ごしに。「なぜ、あの子の戦車は帰りが遅いのか。なぜ、戦車の馬の足音がこんなに遅れているのか。」
5:29 いちばん賢い侍女たちが答える。彼女自身も、同じ言葉を繰り返してこう言う。
5:30 「きっと分捕り物を見つけて、分け合っているのよ。男ひとりにつき、女がひとりふたり。シセラには、染めた布の分捕り物。染めて刺繍をほどこした布。両面に刺繍をした染め布が、分捕った者たちの首を飾るのよ。」
5:31 主よ、あなたの敵がみな、こうして滅びますように。でも、主を愛する人たちは、力にあふれて昇る太陽のようでありますように。こうして、その地は四十年のあいだ、平穏だった。
6:1 イスラエルの人々は、また主の目に悪とされることをした。それで主は、彼らを七年のあいだ、ミディアン人の手に渡した。
6:2 ミディアン人の力は、イスラエルを押さえつけた。イスラエルの人々は、ミディアン人を恐れて、山の中に隠れ場をつくり、洞穴やとりでにこもった。
6:3 イスラエルが種をまくたびに、ミディアン人やアマレク人、東の人々が攻め上ってきた。
6:4 彼らはイスラエルに向かって陣を張り、地の作物を、ガザのあたりまで荒らしつくした。イスラエルには、食べ物も、羊も牛もろばも、何ひとつ残さなかった。
6:5 彼らは家畜も天幕も持って攻め上ってきた。その数はいなごの群れのように多く、彼らもらくだも数えきれないほどだった。こうして彼らは地に押し寄せ、そこを荒らした。
6:6 イスラエルはミディアン人のせいでひどく衰えた。それでイスラエルの人々は、主に助けを求めて叫んだ。
6:7 イスラエルの人々が、ミディアン人のことで主に叫び求めたとき、
6:8 主はひとりの預言者をイスラエルの人々に送った。その人は彼らにこう言った。「イスラエルの神、主はこう言われる。わたしはあなたたちをエジプトから導き上り、奴隷の家から連れ出した。
6:9 わたしはあなたたちを、エジプトの手から、そしてあなたたちを苦しめるすべての者の手から救い出した。彼らをあなたたちの前から追い払い、その地をあなたたちに与えた。
6:10 そしてわたしはあなたたちに言った。『わたしはあなたたちの神、主である。あなたたちが今住んでいる地の、アモリ人の神々を恐れてはならない』と。それなのに、あなたたちはわたしの声に聞き従わなかった。」
6:11 主の使いがやって来て、オフラにある樫の木の下にすわった。その木は、アビエゼル人ヨアシュのものだった。ヨアシュの子ギデオンは、ミディアン人の目からかくすため、酒ぶねの中で麦を打っていた。
6:12 主の使いはギデオンに現れて、こう言った。「主があなたとともにおられる。勇ましい戦士よ。」
6:13 ギデオンは答えた。「ああ、ご主人さま。もし主がわたしたちとともにおられるなら、どうしてこんなことがすべて起きたのですか。わたしたちの先祖は、『主がわたしたちをエジプトから導き上ってくださったのだ』と語り伝えてくれました。でも、その数々のすばらしい行いは、いったいどこにあるのですか。今では主はわたしたちを見捨て、ミディアン人の手に渡してしまわれたのです。」
6:14 すると主はギデオンのほうを向いて言った。「あなたのその力で行きなさい。そしてイスラエルをミディアン人の手から救うのだ。わたしがあなたを送るのだから。」
6:15 ギデオンは答えた。「ああ、主よ。わたしにどうしてイスラエルを救えるでしょうか。わたしの一族はマナセの中でいちばん弱く、わたし自身は父の家でいちばん年下なのです。」
6:16 主はギデオンに言った。「わたしがあなたとともにいる。だからあなたは、ミディアン人をまるでひとりの人を打つように打ち破るだろう。」
6:17 ギデオンは言った。「もしわたしがあなたに気に入られているのでしたら、わたしに語っておられるのが本当にあなたなのだと分かるしるしを見せてください。
6:18 わたしがあなたのところに戻り、供え物を持って来てあなたの前に供えるまで、どうかここを離れないでください。」主は言った。「あなたが戻るまで待っていよう。」
6:19 ギデオンは家に入り、子やぎを一頭料理し、小麦粉一エファでパン種を入れないパンを作った。肉はかごに入れ、煮汁はなべに入れて、樫の木の下にいるその方のところへ持って行き、差し出した。
6:20 神の使いはギデオンに言った。「その肉とパン種の入っていないパンを取って、この岩の上に置きなさい。そして煮汁を注ぎかけなさい。」ギデオンはそのとおりにした。
6:21 すると主の使いは、手に持っていた杖の先を伸ばして、肉とパンに触れた。すると岩から火が燃え上がり、肉とパンを焼き尽くした。そして主の使いは、ギデオンの目の前から消えた。
6:22 ギデオンは、その方が主の使いだったと気づいた。そしてこう言った。「ああ、主なる神よ。わたしは主の使いを顔と顔を合わせて見てしまいました。」
6:23 主はギデオンに言った。「安心しなさい。恐れることはない。あなたは死なない。」
6:24 ギデオンはそこに主のための祭壇を築き、それを「主は平安」と名づけた。それは今日まで、アビエゼル人のオフラに残っている。
6:25 その夜、主はギデオンに言った。「あなたの父の雄牛、七歳になる二頭目の雄牛を取りなさい。そして、あなたの父が持っているバアルの祭壇を壊し、そのそばに立っているアシェラの柱を切り倒しなさい。
6:26 そして、この砦の頂に、石をきちんと整えて、あなたの神である主のための祭壇を築きなさい。それから、あの二頭目の雄牛を取り、切り倒したアシェラの柱を薪にして、焼き尽くすいけにえとしてささげなさい。」
6:27 それでギデオンは、自分の使用人の中から十人を連れて、主が命じたとおりに行った。ただ、父の家の者たちや町の人々を恐れていたので、昼間ではなく夜のうちにそれを行った。
6:28 町の人々が朝早く起きてみると、バアルの祭壇は壊され、そばにあったアシェラの柱は切り倒され、新しく築かれた祭壇の上には二頭目の雄牛がささげられていた。
6:29 人々は互いに言い合った。「いったいだれがこんなことをしたんだ。」そして調べて問いただすと、こう分かった。「ヨアシュの子ギデオンがやったのだ。」
6:30 町の人々はヨアシュに言った。「あんたの息子を引き出せ。殺してやる。あいつはバアルの祭壇を壊し、そばのアシェラの柱を切り倒したんだ。」
6:31 ヨアシュは、自分に詰め寄る者たちみんなに言った。「あなたたちがバアルのために争おうというのか。あなたたちがバアルを助けるというのか。バアルのために争う者は、朝までに殺されればいい。バアルが本当に神なら、自分の祭壇を壊されたのだから、自分で争えばいいのだ。」
6:32 こうしてその日、人々はギデオンを「エルバアル」と呼んだ。「彼が祭壇を壊したのだから、バアルが自分で彼と争えばいい」という意味である。
6:33 さて、ミディアン人とアマレク人、それに東方の民がみな一つに集まり、川を渡ってイズレエルの谷に陣を敷いた。
6:34 すると、主の霊がギデオンをおおった。ギデオンが角笛を吹き鳴らすと、アビエゼルの人々が彼のもとに集まってきた。
6:35 さらにギデオンがマナセ全土に使者を送ると、マナセの人々も彼のもとに集まった。またアシェル、ゼブルン、ナフタリにも使者を送ると、その人々も上ってきて彼らを迎えた。
6:36 ギデオンは神に言った。「あなたが言われたとおり、わたしの手でイスラエルを救おうとしておられるなら、
6:37 今からわたしは、刈り取った羊の毛を脱穀場に置きます。もし露が羊の毛だけに降りて、地面がすべて乾いていたら、あなたが言われたとおり、わたしの手でイスラエルを救ってくださるのだと分かります。」
6:38 すると、そのとおりになった。ギデオンが翌朝早く起きて羊の毛をしぼると、露がしたたり落ち、鉢いっぱいの水になった。
6:39 ギデオンはまた神に言った。「どうか怒らないでください。もう一度だけ言わせてください。羊の毛でもう一度だけ試させてください。今度は羊の毛だけを乾いたままにして、地面全体には露を降らせてください。」
6:40 その夜、神はそのとおりにしてくださった。羊の毛だけが乾いていて、地面全体には露が降りていた。
7:1 エルバアル、つまりギデオンは、彼といっしょにいた民全員とともに朝早く起き、ハロデの泉のほとりに陣を張った。ミデヤンの陣営は、その北側、谷の中のモレの丘のところにあった。
7:2 主はギデオンに言われた。「あなたといっしょにいる民は多すぎる。このままミデヤンを彼らの手に渡すと、イスラエルはわたしに向かって『自分の手で勝ったのだ』と誇るだろう。
7:3 だから今、民に聞こえるように呼びかけて言いなさい。『こわくて震えている者は、ギレアデの山を離れて帰りなさい。』」すると、民のうち二万二千人が帰り、一万人が残った。
7:4 主はまたギデオンに言われた。「民はまだ多すぎる。彼らを水のほとりに連れて下りなさい。そこであなたのために、わたしが彼らをふるいにかける。わたしが『この者はあなたといっしょに行く』と言う者は、あなたといっしょに行く。『この者はあなたといっしょに行かない』と言う者は、行かない。」
7:5 そこでギデオンは民を水のほとりに連れて下りた。すると主はギデオンに言われた。「犬がなめるように、舌で水をなめる者はみな、別にしておきなさい。ひざをついて水を飲む者もみな、別にしておきなさい。」
7:6 手で水をすくって口に運び、なめた者の数は三百人だった。残りの民はみな、ひざをついて水を飲んだ。
7:7 主はギデオンに言われた。「水をなめたこの三百人によって、わたしはあなたたちを救い、ミディアンをあなたの手に渡す。ほかの民はみな、それぞれ自分の場所へ帰らせなさい。」
7:8 そこで三百人は民の食料とラッパを手に取った。ギデオンはイスラエルのほかの者たちをみな、それぞれの天幕へ帰らせ、この三百人だけを残した。ミディアンの陣営は、彼のいる場所より下の谷にあった。
7:9 その夜、主はギデオンに言われた。「立って、敵の陣営に攻め下りなさい。わたしはそれをあなたの手に渡したのだ。
7:10 でも、もし下って行くのが怖いなら、まず従者のプラといっしょに陣営まで下って行きなさい。
7:11 そこで彼らが何を話しているかを聞けば、あなたは勇気づけられて、陣営に攻め下って行けるだろう。」そこでギデオンは従者のプラといっしょに、陣営の端にいる武装した者たちのすぐそばまで下って行った。
7:12 ミディアン人とアマレク人、それに東の民はみな、いなごの大群のように谷を埋めつくしていた。そのらくだは数えきれず、海辺の砂のように多かった。
7:13 ギデオンが着くと、ちょうど一人の男が仲間に夢の話をしていた。その男は言った。「こんな夢を見たんだ。大麦のパンのかたまりが一つ、ミディアンの陣営に転がり込んできて、天幕にぶつかった。すると天幕は倒れ、ひっくり返って、ぺしゃんこになったんだ。」
7:14 すると仲間が答えた。「それはイスラエル人、ヨアシュの子ギデオンの剣にちがいない。神がミディアンと、この陣営のすべてを彼の手に渡されたんだ。」
7:15 ギデオンはこの夢とその解き明かしを聞くと、ひざまずいて神を礼拝した。そしてイスラエルの陣営に戻って言った。「立ち上がれ。主がミディアンの陣営をあなたたちの手に渡してくださった。」
7:16 ギデオンは三百人を三つの隊に分けた。そして全員の手にラッパを持たせ、さらに空の壺と、その中に入れたたいまつを持たせた。
7:17 彼は皆に言った。「わたしを見て、同じようにしなさい。いいか、わたしが陣営の端に着いたら、わたしがするとおりに、あなたたちもするのだ。
7:18 わたしと、わたしといっしょにいる者たちがみなラッパを吹いたら、あなたたちも陣営のまわりのあちこちでラッパを吹き鳴らし、『主のために、ギデオンのために』と叫べ。」
7:19 ギデオンと、彼といっしょにいた百人は、真夜中の見張りが始まったばかりのころ、陣営の端にたどり着いた。ちょうど見張りが立てられたばかりだった。彼らはラッパを吹き鳴らし、手に持っていた壺を打ち割った。
7:20 三つの隊はいっせいにラッパを吹き、壺を割った。そして左手にたいまつを、右手には吹くためのラッパを持って、「剣を、主のために、ギデオンのために」と叫んだ。
7:21 彼らは陣営を囲んで、それぞれの持ち場に立っていた。すると陣営全体が走り出し、わめきながら逃げていった。
7:22 三百人がラッパを吹き鳴らすと、主は陣営じゅうで、彼らが同士討ちをするようにされた。剣が仲間に向けられたのだ。陣営の者たちはツェレラのほうのベト・シタまで、さらにタバトのそばのアベル・メホラのあたりまで逃げていった。
7:23 イスラエルの人々は、ナフタリと、アシェルと、マナセの全域から呼び集められ、ミディアン人を追いかけた。
7:24 ギデオンはエフライムの山地全体に使いを送って言った。「下って来て、ミディアン人を迎え撃て。ベト・バラまでの水場と、ヨルダン川を先に押さえてしまえ。」エフライムの人々はみな呼び集められ、ベト・バラまでの水場と、ヨルダン川を押さえた。
7:25 そして彼らはミディアンの二人の将軍、オレブとゼエブを捕らえた。オレブは「オレブの岩」で、ゼエブは「ゼエブの酒ぶね」で討ち取った。こうしてミディアン人を追いながら、オレブとゼエブの首を、ヨルダン川の向こう側にいたギデオンのもとに持って来た。
8:1 エフライムの人々はギデオンに言った。「どうしてこんな仕打ちをするのか。ミディアンと戦いに行くとき、なぜわたしたちを呼ばなかったのだ。」こう言って、彼らは激しく食ってかかった。
8:2 ギデオンは彼らに答えた。「あなたたちがしたことに比べたら、わたしのしたことなど何でもない。エフライムの落ち穂拾いのほうが、アビエゼルのぶどうの収穫よりも良いくらいではないか。
8:3 神はミディアンの将軍オレブとゼエブを、あなたたちの手に渡してくださった。それに比べたら、わたしに何ができただろう。」こう言うと、彼に対する彼らの怒りはおさまった。
8:4 ギデオンはヨルダン川まで来て、それを渡った。彼と、いっしょにいた三百人は、疲れきっていたが、なお敵を追い続けていた。
8:5 彼はスコトの人々に言った。「どうか、わたしについて来る者たちにパンをいくつか分けてほしい。みな疲れきっているのだ。わたしはミディアンの王ゼバとツァルムナを追っている。」
8:6 するとスコトの将軍たちは言った。「ゼバとツァルムナは、もうあなたの手の中にいるとでもいうのか。それもないのに、どうしてあなたの軍隊にパンを渡さなければならないのだ。」
8:7 ギデオンは言った。「よし。主がゼバとツァルムナをわたしの手に渡してくださったら、わたしはあなたたちの体を、荒れ野のいばらととげで引き裂いてやる。」
8:8 ギデオンはそこからペヌエルに上って行き、そこの人々にも同じことを言った。ペヌエルの人々も、スコトの人々と同じように答えた。
8:9 そこで彼はペヌエルの人々にも言った。「わたしが無事に帰って来たら、このやぐらを壊してやる。」
8:10 ゼバとツァルムナは軍勢とともにカルコルにいた。その数はおよそ一万五千人。これは東の民の全軍のうち、生き残った者すべてだった。すでに、剣を使う戦士十二万人が倒れていたのだ。
8:11 ギデオンはノバとヨグボハの東、天幕に住む者たちの道を上って行き、その軍勢を討った。軍勢は油断していた。
8:12 ゼバとツァルムナは逃げたが、ギデオンは追いかけ、ミディアンの二人の王ゼバとツァルムナを捕らえた。そして全軍をおびえさせ、散らした。
8:13 ヨアシュの子ギデオンは、ヘレスの坂を通って戦いから帰って来た。
8:14 彼はスコトの人々の中から一人の若者を捕まえて問いただした。すると若者は、スコトの将軍たちと長老たち、七十七人の名を書き出した。
8:15 ギデオンはスコトの人々のところに来て言った。「見ろ。ゼバとツァルムナだ。あなたたちはこの二人のことで、わたしをばかにしてこう言った。『ゼバとツァルムナは、もうあなたの手の中にいるとでもいうのか。それもないのに、どうして疲れたあなたの部下たちにパンを渡さなければならないのだ』と。」
8:16 そして彼は町の長老たちを捕らえ、荒れ野のいばらととげを使って、スコトの人々を思い知らせた。
8:17 また彼はペヌエルのやぐらを壊し、その町の人々を殺した。
8:18 それからギデオンはゼバとツァルムナに言った。「あなたたちがタボルで殺したのは、どんな男たちだったのか。」二人は答えた。「あなたにそっくりだった。みな、王の子のような姿をしていた。」
8:19 ギデオンは言った。「あれはわたしの兄弟、わたしの母の子どもたちだった。主は生きておられる。もしあなたたちがあの者たちを生かしておいたなら、わたしはあなたたちを殺しはしなかったのに。」
8:20 そして長男のエテルに言った。「立って、この二人を殺せ。」しかしその子は剣を抜かなかった。まだ若く、こわかったからだ。
8:21 するとゼバとツァルムナは言った。「あなたが自分で立って、わたしたちを打て。人は一人前になってこそ、その力を出せるものだ。」そこでギデオンは立ち上がり、ゼバとツァルムナを殺した。そして、彼らのらくだの首にかけられていた三日月の飾りを取った。
8:22 イスラエルの人々はギデオンに言った。「あなたが、わたしたちを治めてください。あなたも、あなたの子も、孫も。あなたがわたしたちをミディアンの手から救ってくれたのですから。」
8:23 しかしギデオンは彼らに答えた。「わたしはあなたたちを治めない。わたしの子も、あなたたちを治めない。あなたたちを治めるのは主だ。」
8:24 ギデオンはさらに言った。「一つ、あなたたちに頼みがある。分捕った品の中から、それぞれ耳輪を一つずつわたしにくれないか。」敵はイシュマエル人だったので、みな金の耳輪を持っていたのだ。
8:25 人々は言った。「よろこんで差し上げます。」そして一枚の上着を広げ、それぞれ分捕った耳輪をその上に投げ入れた。
8:26 ギデオンが求めた金の耳輪の重さは、金で千七百シェケルあった。そのほかにも、三日月の飾りや耳飾り、ミディアンの王たちが身につけていた紫の衣、それに彼らのらくだの首にかけられていた鎖もあった。
8:27 ギデオンはその金でエフォドという祭具を作り、自分の町オフラに置いた。イスラエルの人々はみな、そこでそれを慕い、主を捨ててそれを拝んだ。こうしてそれは、ギデオンとその一族にとってわなとなった。
8:28 ミディアンはイスラエルの人々に屈服し、二度と頭をもたげることはなかった。そしてこの地は、ギデオンの生きている間、四十年のあいだ穏やかだった。
8:29 ヨアシュの子エルバアルは帰って行き、自分の家に住んだ。
8:30 ギデオンにはたくさんの妻がいたので、彼自身から生まれた息子が七十人いた。
8:31 また、シェケムにいたそばめも彼に男の子を産んだ。ギデオンはその子をアビメレクと名づけた。
8:32 ヨアシュの子ギデオンは、幸せな長寿をまっとうして死んだ。そして、アビエゼル人のオフラにある父ヨアシュの墓に葬られた。
8:33 ギデオンが死ぬと、イスラエルの人々はまた心変わりして、バアルの神々を追い求めて身を汚した。そしてバアル・ベリトを自分たちの神とした。
8:34 イスラエルの人々は、まわりのすべての敵の手から自分たちを救い出してくれた、彼らの神、主のことを思い出さなかった。
8:35 また、ギデオン、つまりエルバアルの家に対して、慈しみを尽くすこともなかった。ギデオンがイスラエルにしてくれた、あのすべての良いことに応えなかったのだ。
9:1 エルバアルの子アビメレクはシェケムにいる母の兄弟たちのところへ行き、彼らと、母の父の家に連なる一族すべてに、こう言った。
9:2 「シェケムの人たち全員に、こう伝えてほしい。『あなたたちにとって、どちらがいいだろうか。エルバアルの息子七十人みんなに治められるのと、たった一人に治められるのと。』それに、わたしがあなたたちと同じ骨肉であることも忘れないでほしい。」
9:3 母の兄弟たちが、アビメレクについてのこの言葉をすべて、シェケムの人たち全員に伝えた。すると、人々の心はアビメレクになびいた。「彼はおれたちの身内だ」と言ったのだ。
9:4 そして人々は、バアル・ベリトの神殿から銀七十枚を取ってアビメレクに与えた。アビメレクはその金で、ならず者や無鉄砲な連中を雇い、彼らは彼につき従った。
9:5 アビメレクはオフラにある父の家に行き、自分の兄弟であるエルバアルの息子七十人を、一つの石の上で殺した。しかし、エルバアルの末の子ヨタムは隠れていたので、生き残った。
9:6 シェケムの人たち全員と、ベト・ミロの人々みんなが集まった。そして出て行き、シェケムにある柱のそばの樫の木のところで、アビメレクを王とした。
9:7 そのことがヨタムに伝えられると、彼はゲリジム山の頂上に立ち、声を張り上げて叫んだ。そして人々に言った。「シェケムの人たち、わたしの言うことを聞いてくれ。そうすれば神も、あなたたちの言うことを聞いてくださる。
9:8 あるとき、木々が出かけて行って、自分たちを治める王に油を注ごうとした。木々はオリーブの木に言った。『わたしたちの王になってください。』
9:9 でもオリーブの木は答えた。『わたしの油は、神も人もそれで敬われるのに、それを捨ててまで、木々の上でゆらゆら揺れに行けというのか。』
9:10 そこで木々はいちじくの木に言った。『あなたが来て、わたしたちの王になってください。』
9:11 でもいちじくの木は答えた。『わたしの甘さや、おいしい実を捨ててまで、木々の上でゆらゆら揺れに行けというのか。』
9:12 それから木々はぶどうの木に言った。『あなたが来て、わたしたちの王になってください。』
9:13 でもぶどうの木は答えた。『わたしのぶどう酒は、神も人も喜ばせるのに、それを捨ててまで、木々の上でゆらゆら揺れに行けというのか。』
9:14 とうとう木々はみな、いばらに言った。『あなたが来て、わたしたちの王になってください。』
9:15 するといばらは木々に答えた。『もしあなたたちが本気でわたしに油を注いで王にするなら、来て、わたしの陰に身を寄せなさい。でも、そうでないなら、いばらから火が出て、レバノンの杉を焼き尽くすだろう。』
9:16 さて、あなたたちがアビメレクを王にしたことが、本当に誠実で正しい行いだったのなら——エルバアルとその一族に良くしてやり、彼のしたことにふさわしく報いたのなら——
9:17 わたしの父はあなたたちのために戦い、自分の命を投げ出して、ミディアンの手からあなたたちを救い出した。それなのに、
9:18 あなたたちは今日、わたしの父の家に立ち向かい、その息子七十人を一つの石の上で殺した。そして、女奴隷の子であるアビメレクを、あなたたちの身内だからといって、シェケムの人たちの王にしたのだ。
9:19 もし今日、あなたたちがエルバアルとその一族に対して、本当に誠実に、正しく行動したのなら、アビメレクを喜べばいい。彼もあなたたちを喜ぶだろう。
9:20 でも、そうでないなら、アビメレクから火が出て、シェケムの人たちとベト・ミロを焼き尽くすがいい。そして、シェケムの人たちとベト・ミロからも火が出て、アビメレクを焼き尽くすがいい。」
9:21 こう言うと、ヨタムは逃げ去り、ベエルへ行って、そこに住んだ。兄弟のアビメレクを恐れたからだ。
9:22 アビメレクは三年間、イスラエルを治めた。
9:23 そのとき神は、アビメレクとシェケムの人たちの間に悪い霊を送った。すると、シェケムの人たちはアビメレクを裏切った。
9:24 これは、エルバアルの七十人の息子たちに振るわれた残虐な行いの報いが下り、彼らの血の責任が、彼らを殺した兄弟アビメレクと、その兄弟殺しに手を貸したシェケムの人たちに返されるためだった。
9:25 シェケムの人たちは、山の頂に彼を待ち伏せする者を置き、その道を通りかかる者すべてから奪い取った。これがアビメレクに伝えられた。
9:26 そこへ、エベドの子ガアルが兄弟たちと一緒にやって来て、シェケムに移り住んだ。シェケムの人たちは彼を信頼した。
9:27 彼らは畑に出て、ぶどう畑の実を集め、それを踏んでぶどう酒を作り、祭りを開いた。そして自分たちの神の宮に入り、飲み食いして、アビメレクを呪った。
9:28 エベドの子ガアルは言った。「アビメレクとは何者だ。シェケムとは何者なんだ。どうしてわたしたちが彼に仕えなきゃいけない。あれはエルバアルの子で、ゼブルはその部下じゃないか。シェケムの父ハモルの一族にこそ仕えるべきだ。なんでわたしたちが彼に仕えるんだ。
9:29 この民がわたしの手にあればいいのに。そうすれば、アビメレクを追い払ってやる。」そしてガアルはアビメレクに向かって言った。「軍勢を増やして、かかって来い。」
9:30 町の長ゼブルは、エベドの子ガアルのこの言葉を聞いて、激しく怒った。
9:31 そしてゼブルは、こっそりアビメレクのもとに使者を送って言った。「エベドの子ガアルとその兄弟たちがシェケムに来ています。そして町の人たちをあおって、あなたに反抗させようとしています。
9:32 だから今夜のうちに、あなたと連れの兵たちで出て、野に隠れて待ち伏せてください。
9:33 そして朝、日が昇るころに早く起きて、町に攻めかかるのです。ガアルと連れの者たちが向かって出て来たら、思いのままに討ち取ってください。」
9:34 そこでアビメレクと連れの兵たちはみな、夜のうちに出て、四つの隊に分かれてシェケムの近くで待ち伏せた。
9:35 エベドの子ガアルが出て来て、町の門の入り口に立った。すると、アビメレクと連れの兵たちが待ち伏せの場所から立ち上がった。
9:36 ガアルはその兵たちを見て、ゼブルに言った。「見ろ、山々の頂から人が下りて来る。」でもゼブルは答えた。「あなたが人と見ているのは、山の影だよ。」
9:37 ガアルはさらに言った。「見ろ、人が地の中央のあたりから下りて来る。もう一隊は占い師の木の方から来ているぞ。」
9:38 するとゼブルは言った。「『アビメレクとは何者だ、どうして彼に仕えるんだ』と言っていた、その大きな口はどうした。ほら、あれがおまえのばかにした者たちだ。さあ、出て行って戦ってみろ。」
9:39 そこでガアルはシェケムの人たちの先頭に立って出て行き、アビメレクと戦った。
9:40 だがアビメレクが追いかけると、ガアルは彼の前から逃げ出した。そして門の入り口まで、多くの者が傷ついて倒れた。
9:41 アビメレクはアルマに留まった。ゼブルはガアルとその兄弟たちを追い出し、シェケムに住めないようにした。
9:42 その翌日、町の人々が野に出て行った。それがアビメレクに知らされた。
9:43 アビメレクは兵を集め、三つの隊に分けて野に伏せさせた。すると町から人々が出て来るのが見えた。そこでアビメレクは立ち上がって彼らに襲いかかり、討ち取った。
9:44 アビメレクと彼のいる隊は突き進み、町の門の入り口に陣取った。ほかの二隊は野にいるすべての者に襲いかかり、討ち取った。
9:45 アビメレクはその日一日じゅう町を攻め、ついに町を占領した。そして中にいた人々を殺し、町を壊し、そこに塩をまいた。
9:46 これを聞いて、シェケムのやぐらにいた者たちはみな、エル・ベリトの神殿の砦に逃げ込んだ。
9:47 シェケムのやぐらにいた者たちが集まっていることが、アビメレクに知らされた。
9:48 そこでアビメレクは、連れていた兵をみな引き連れてツァルモンの山に登った。アビメレクは手に斧を取り、木の枝を切り落とすと、それを担いで肩に載せた。そして連れていた兵に言った。「わたしがするのを見ただろう。急いで、わたしと同じようにしろ。」
9:49 兵もみな、それぞれ枝を切り落としてアビメレクのあとに続いた。彼らはその枝を砦に積み上げ、砦もろとも火をつけて彼らを焼いた。こうしてシェケムのやぐらにいた者たちも、男女あわせて千人ほどがみな死んだ。
9:50 それからアビメレクはテベツへ行き、テベツに陣を敷いて、これを占領した。
9:51 町の中には堅固なやぐらがあった。男も女も、町の者たちはみなそこへ逃げ込み、中に閉じこもって、やぐらの屋上に上がった。
9:52 アビメレクはやぐらまで攻め寄せて戦い、火をつけて焼こうと、やぐらの入り口まで迫った。
9:53 そのとき、一人の女がひき臼の上石をアビメレクの頭めがけて投げつけ、その頭蓋骨を砕いた。
9:54 アビメレクは急いで、武具を持つ従者を呼んで言った。「剣を抜いて、わたしを殺してくれ。『女に殺された』と言われたくない。」従者が彼を突き刺すと、アビメレクは死んだ。
9:55 イスラエルの人々は、アビメレクが死んだのを見て、それぞれ自分の場所へ帰って行った。
9:56 こうして神は、アビメレクが七十人の兄弟を殺して父にした悪の報いを、彼に返された。
9:57 また神は、シェケムの人々のすべての悪も彼らの頭上に返された。こうして、エルバアルの子ヨタムののろいが彼らに降りかかったのだ。
10:1 アビメレクの後に立って、イスラエルを救ったのは、イッサカル出身で、ドドの子であるプアの子トラだった。彼はエフライムの山地のシャミルに住んでいた。
10:2 トラは二十三年の間イスラエルを治め、やがて死んでシャミルに葬られた。
10:3 彼の後には、ギレアド出身のヤイルが立ち、二十二年の間イスラエルを治めた。
10:4 ヤイルには三十人の息子がいて、それぞれ三十頭のろばに乗り、三十の町を持っていた。それらの町はギレアドの地にあり、今日でもハボテ・ヤイルと呼ばれている。
10:5 ヤイルは死んで、カモンに葬られた。
10:6 イスラエルの人々は、またも主の目に悪とされることを行った。彼らはバアルやアシュタロテの神々、さらにアラムの神々、シドンの神々、モアブの神々、アンモン人の神々、ペリシテ人の神々に仕えた。こうして主を捨て、主に仕えようとしなかった。
10:7 主はイスラエルに対して激しく怒り、彼らをペリシテ人とアンモン人の手に売り渡した。
10:8 その年、彼らはイスラエルの人々を打ち砕き、苦しめた。ヨルダン川の東、ギレアドにあるアモリ人の地に住むイスラエルの人々はみな、十八年の間、痛めつけられた。
10:9 アンモン人はさらに、ユダやベニヤミン、エフライムの家とも戦うためにヨルダン川を渡って来た。イスラエルはひどく苦しんだ。
10:10 そこでイスラエルの人々は主に叫び求めて言った。「わたしたちはあなたに罪を犯しました。自分たちの神を捨てて、バアルの神々に仕えてしまいました。」
10:11 主はイスラエルの人々に言った。「わたしは、エジプト人からも、アモリ人、アンモン人、ペリシテ人からも、あなたたちを救い出したではないか。
10:12 シドン人、アマレク人、マオン人があなたたちを圧迫したときも、あなたたちがわたしに叫び求めると、わたしはその手からあなたたちを救い出した。
10:13 それなのに、あなたたちはわたしを捨てて、ほかの神々に仕えた。だから、わたしはもう二度とあなたたちを救わない。
10:14 行って、自分たちで選んだ神々に叫び求めるがいい。あなたたちが苦しむときには、その神々に救ってもらえ。」
10:15 イスラエルの人々は主に言った。「わたしたちは罪を犯しました。あなたが良いと思われることを、どうかわたしたちにしてください。ただ、今日だけは、どうかわたしたちを助け出してください。」
10:16 そして彼らは、自分たちの中から外国の神々を取り除いて、主に仕えた。主は、イスラエルの苦しみをもう見ていられなくなった。
10:17 アンモン人は召集され、ギレアドに陣を敷いた。イスラエルの人々も集まって、ミツパに陣を敷いた。
10:18 ギレアドの人々、その指導者たちは、互いに言い合った。「アンモン人との戦いを始める者はだれか。その人が、ギレアドに住むすべての人の頭になるのだ。」
11:1 ギレアデ人のエフタは、勇敢な戦士だった。でも彼は遊女が産んだ子どもだった。エフタの父はギレアデである。
11:2 ギレアデには妻との間にも息子たちがいた。その息子たちは大きくなると、エフタを追い出してこう言った。「お前は別の女が産んだ子だ。父さんの家の財産を受け継ぐ資格はない。」
11:3 それでエフタは兄弟たちのもとから逃げ、トブという土地に住んだ。すると、ならず者たちがエフタのまわりに集まり、彼と行動を共にするようになった。
11:4 それからしばらくして、アンモン人がイスラエルに戦いをしかけてきた。
11:5 アンモン人がイスラエルと戦いを始めたとき、ギレアデの長老たちはエフタを連れ戻そうと、トブの土地へ出かけて行った。
11:6 そしてエフタに言った。「来て、わたしたちの指揮官になってくれ。一緒にアンモン人と戦おう。」
11:7 エフタはギレアデの長老たちに答えた。「あなたたちはわたしを憎んで、父の家から追い出したじゃないか。それなのに、どうして今、困ったときになってわたしのところに来るんだ。」
11:8 ギレアデの長老たちはエフタに言った。「だからこそ、今あなたのところに戻って来たんだ。一緒に来てアンモン人と戦ってほしい。そうすれば、あなたはわたしたちギレアデに住む者すべてのかしらになれる。」
11:9 エフタはギレアデの長老たちに言った。「もしあなたたちがわたしを連れ戻して、アンモン人と戦わせ、主が彼らをわたしの手に渡してくださるなら、わたしはあなたたちのかしらになろう。」
11:10 ギレアデの長老たちはエフタに言った。「主がわたしたちの間で聞いていてくださる。あなたの言うとおりにきっとするから。」
11:11 そこでエフタはギレアデの長老たちと一緒に行った。人々は彼を自分たちのかしら、また指揮官とした。そしてエフタはミツパで、自分の言い分をすべて主の前で述べた。
11:12 エフタはアンモン人の王のもとに使者を送って、こう伝えた。「あなたとわたしの間に何のいさかいがあるというのか。どうしてわたしの国に攻め込んで来るのか。」
11:13 アンモン人の王はエフタの使者たちにこう答えた。「イスラエルがエジプトから上って来たとき、わたしの地を奪ったからだ。アルノン川からヤボク川、そしてヨルダン川までの土地だ。今、それを穏やかに返してくれ。」
11:14 エフタは、もう一度アンモン人の王のもとに使者を送って、
11:15 こう伝えた。「エフタはこう言う。イスラエルはモアブの地も、アンモン人の地も奪ってはいない。
11:16 イスラエルはエジプトから上って来たとき、荒れ野を通って葦の海まで行き、カデシュに着いた。
11:17 そしてイスラエルはエドムの王のもとに使者を送って、こう頼んだ。『どうか、あなたの地を通らせてほしい。』でもエドムの王は聞き入れなかった。モアブの王にも使いを送ったが、彼も承知しなかった。それでイスラエルはカデシュにとどまった。
11:18 それからイスラエルは荒れ野を進み、エドムの地とモアブの地を回り込んで、モアブの地の東側にやって来た。そしてアルノン川の向こう側に宿営した。モアブの領内には入らなかった。アルノン川がモアブの境だったからだ。
11:19 イスラエルはアモリ人の王シホン、すなわちヘシュボンの王のもとに使者を送って、こう頼んだ。『どうか、あなたの地を通って、わたしたちの向かう場所まで行かせてほしい。』
11:20 しかしシホンは、イスラエルが自分の領内を通ることを信用しなかった。シホンは自分の民をみな集め、ヤハツに宿営して、イスラエルと戦った。
11:21 だが、イスラエルの神である主は、シホンとそのすべての民をイスラエルの手に渡された。イスラエルは彼らを打ち破り、その地に住んでいたアモリ人の地をすべて手に入れた。
11:22 こうしてイスラエルは、アルノン川からヤボク川まで、そして荒れ野からヨルダン川まで、アモリ人の領土をすべて手に入れたのだ。
11:23 このように、イスラエルの神である主が、御自分の民イスラエルの前からアモリ人を追い払ってくださったのだ。それなのに、あなたがその地を取ろうというのか。
11:24 あなたの神ケモシュがあなたに取らせてくれるものを、あなたは自分のものにするだろう。それと同じように、わたしたちの神である主がわたしたちの前から追い払ってくださったものは、すべてわたしたちが自分のものにするのだ。
11:25 今、あなたはモアブの王、ツィポルの子バラクよりも優れているとでもいうのか。バラクがイスラエルと争ったことがあったか。イスラエルと戦ったことがあったか。
11:26 イスラエルがヘシュボンとその周りの村々、アロエルとその周りの村々、それにアルノン川沿いのすべての町々に住みついてから、三百年になる。それなのに、なぜあなたたちはその間に取り返さなかったのか。
11:27 わたしはあなたに何も悪いことをしてなどいない。それなのに、あなたはわたしに戦いをしかけて、ひどいことをしようとしている。裁き主である主が、今日、イスラエルの人々とアンモンの人々のあいだを裁いてくださるように。」
11:28 しかしアンモン人の王は、エフタが送ったこの言葉に耳を貸さなかった。
11:29 そのとき、主の霊がエフタに下った。エフタはギレアドとマナセを通り抜け、さらにギレアドのミツパを通り抜けて、そこからアンモン人のところへ進んで行った。
11:30 エフタは主に誓いを立てて言った。「もしあなたがアンモン人をわたしの手に渡してくださるなら、
11:31 わたしが無事にアンモン人のところから帰るとき、家の戸口からわたしを迎えに出て来るものを、主にささげます。それを焼き尽くすいけにえとしてささげます。」
11:32 こうしてエフタはアンモン人のところへ渡って行き、彼らと戦った。主は彼らをエフタの手に渡された。
11:33 エフタはアロエルからミンニトのあたりまで、二十の町を、さらにアベル・ケラミムまで攻め、非常に大きな打撃を与えた。こうしてアンモン人はイスラエルの人々の前に屈服した。
11:34 エフタがミツパにある自分の家に帰って来ると、なんと、娘が太鼓を打ち鳴らし、踊りながら迎えに出て来た。娘は彼のひとりっ子だった。彼にはこの娘のほかに、息子も娘もいなかった。
11:35 エフタは娘を見ると、自分の服を引き裂いて言った。「ああ、わたしの娘よ。お前はわたしを打ちのめし、わたしを苦しめる者となってしまった。わたしは主に向かって口を開いて誓ってしまった。もう取り消すことはできないのだ。」
11:36 娘は父に言った。「お父さん、あなたは主に向かって口を開いて誓ったのですね。それなら、その口から出た言葉のとおりに、わたしにしてください。主が、あなたの敵であるアンモン人にあだを討ってくださったのですから。」
11:37 娘は父に言った。「一つだけお願いがあります。二か月の間、わたしをそっとしておいてください。友だちと一緒に山へ行き、結婚できないまま死んでいくわたしのことを泣かせてください。」
11:38 父は「行きなさい」と言って、娘を二か月の間送り出した。娘は友だちと一緒に山へ行き、結婚できないまま死んでいく自分のことを泣いた。
11:39 二か月が終わって、娘は父のもとに帰って来た。父は自分が誓ったとおりのことを娘にした。娘は男を知らないままだった。これはイスラエルのしきたりとなった。
11:40 それで毎年、イスラエルの娘たちは家を出て、ギレアド人エフタの娘をしのび、年に四日間、嘆くようになった。
12:1 エフライムの人々が呼び集められ、川を渡って北へ進んだ。そしてエフタに言った。「どうしてあなたは、わたしたちを呼んで一緒に行かせもせず、アンモン人と戦いに渡って行ったのか。わたしたちはあなたの家を、あなたごと火で焼いてしまうぞ。」
12:2 エフタは彼らに言った。「わたしとわたしの民は、アンモン人と激しく争っていた。わたしはあなたたちを呼んだのに、あなたたちはわたしを彼らの手から救ってくれなかった。
12:3 あなたたちが助けてくれないと分かったので、わたしは命がけでアンモン人のところへ渡って行った。すると主は、彼らをわたしの手に渡してくださった。それなのに、どうして今日わたしのところに上って来て、わたしと戦おうとするのか。」
12:4 そこでエフタはギレアドの人々をみな集め、エフライムと戦った。ギレアドの人々はエフライムを打ち破った。エフライムが「ギレアドの者よ、お前たちはエフライムから逃げ出した者にすぎない。エフライムとマナセの中に紛れ込んでいるだけだ」と言ったからである。
12:5 ギレアドはエフライムへ通じるヨルダン川の渡し場を押さえた。エフライムの逃げてきた者が「渡らせてくれ」と言うと、ギレアドの人々は「お前はエフライム人か」と尋ねた。その者が「違う」と答えると、
12:6 彼らは言った。「では『シボレテ』と言ってみろ。」その者は正しく発音できず、「スィボレテ」と言った。すると彼らはその者を捕らえ、ヨルダン川の渡し場で殺した。こうしてそのとき、エフライムの人々のうち四万二千人が倒れた。
12:7 エフタは六年の間、イスラエルを治めた。そしてギレアド人エフタは死に、ギレアドの町の一つに葬られた。
12:8 エフタのあと、ベツレヘム出身のイブツァンがイスラエルを治めた。
12:9 彼には三十人の息子と三十人の娘がいた。娘たちはみなよそへ嫁がせ、息子たちにはよそから三十人の娘を迎えた。イブツァンは七年の間、イスラエルを治めた。
12:10 そしてイブツァンは死に、ベツレヘムに葬られた。
12:11 彼のあと、ゼブルン人エロンがイスラエルを治めた。エロンは十年の間、イスラエルを治めた。
12:12 そしてゼブルン人エロンは死に、ゼブルンの地のアヤロンに葬られた。
12:13 彼のあと、ピルアトン出身のヒレルの子アブドンがイスラエルを治めた。
12:14 彼には四十人の息子と三十人の孫がいて、みな七十頭のろばに乗っていた。アブドンは八年の間、イスラエルを治めた。
12:15 そしてピルアトン出身のヒレルの子アブドンは死に、エフライムの地、アマレク人の山地にあるピルアトンに葬られた。
13:1 イスラエルの人たちは、また主の目に悪いことをしてしまった。それで主は、彼らを四十年のあいだ、ペリシテ人の手に渡した。
13:2 ツォルアという町に、ダン族に属するひとりの男がいた。名前をマノアといった。彼の妻は子どもができない体で、これまで一度も出産したことがなかった。
13:3 そんなある日、主の使いがこの女のところに現れて、こう言った。「あなたは子どもができない体で、まだ一度も産んだことがない。でも、あなたはみごもって、男の子を産むことになる。
13:4 だから、これから気をつけてほしい。ぶどう酒や強い酒を飲んではいけない。汚れたものは何ひとつ食べてはいけない。
13:5 いいか、あなたはみごもって、男の子を産む。その子の頭に、かみそりを当ててはならない。その子は、生まれる前から神にささげられた者、ナジル人になるからだ。そしてこの子が、イスラエルをペリシテ人の手から救い出す働きを始めるのだ。」
13:6 女は家に戻り、夫にこう伝えた。「神の人がわたしのところに来ました。その姿は神の使いのようで、とても恐ろしいほどでした。わたしは、その人がどこから来たのか聞きませんでしたし、その人も自分の名前を教えてくれませんでした。
13:7 その人はわたしにこう言ったのです。『あなたはみごもって、男の子を産む。だからこれからは、ぶどう酒や強い酒を飲んではいけない。汚れたものは何ひとつ食べてはいけない。その子は、生まれる前から死ぬ日まで、神にささげられたナジル人になるのだから。』」
13:8 そこでマノアは主に祈って言った。「主よ、お願いします。あなたが送ってくださったあの神の人を、もう一度わたしたちのところに来させてください。生まれてくる子のために、わたしたちが何をすればいいのか教えてもらいたいのです。」
13:9 神はマノアの願いを聞き入れた。それで神の使いは、もう一度あの女のところに来た。女は野原にすわっていて、夫のマノアはそばにいなかった。
13:10 女は急いで走って行き、夫に知らせた。「あの人が、また来てくれました。この前わたしのところに来た、あの人です。」
13:11 マノアは立ち上がって、妻のあとについて行った。そしてその人のところに来て、こうたずねた。「あなたが、妻に話しかけたあの方ですか。」その人は「そうだ」と答えた。
13:12 マノアは言った。「では、あなたの言葉のとおりになったとき、その子はどんなふうに生き、何をすればいいのでしょうか。教えてください。」
13:13 主の使いはマノアに言った。「わたしが妻に伝えたことを、すべてそのとおり守らせなさい。
13:14 ぶどうの木からできるものは、何一つ口にしてはいけない。ぶどう酒も、強い酒も飲んではいけない。汚れたものも、いっさい食べてはいけない。わたしが命じたことを、すべて守るように。」
13:15 マノアは主の使いに言った。「どうか、もう少しいてください。子やぎを一頭料理して、お出ししたいのです。」
13:16 主の使いはマノアに答えた。「引き止めてくれても、あなたの食事はいただかない。もし焼き尽くすいけにえをささげたいなら、それは主にささげなさい。」マノアは、その人が主の使いだとは気づいていなかったのだ。
13:17 マノアは主の使いにたずねた。「お名前を教えてください。あなたの言葉のとおりになったら、あなたをたたえたいのです。」
13:18 主の使いは答えた。「なぜ、わたしの名を聞くのか。それは、人には計り知れないものだ。」
13:19 マノアは子やぎと穀物のささげ物を取り、岩の上で主にささげた。すると、不思議なことが起こった。マノアと妻がそれを見つめていると、
13:20 祭壇から炎が天に向かって燃え上がり、主の使いはその炎の中を上っていった。マノアと妻はそれを見て、地にひれ伏した。
13:21 主の使いは、それきりマノアと妻の前に現れなかった。そのときマノアは、あの人が主の使いだったと悟った。
13:22 マノアは妻に言った。「わたしたちは死んでしまう。神を見てしまったのだから。」
13:23 けれども妻は答えた。「もし主がわたしたちを殺そうとされているなら、わたしたちの手から焼き尽くすいけにえも穀物のささげ物も受け取られなかったはずです。それに、こんなことをすべて見せてはくださらなかったし、今このようなことを聞かせてもくださらなかったでしょう。」
13:24 やがて妻は男の子を産み、その子をサムソンと名づけた。子どもは成長し、主はその子を祝福された。
13:25 主の霊が、ツォルアとエシュタオルの間にあるダンの陣営で、サムソンを動かし始めた。
14:1 サムソンはティムナに下って行き、そこで一人の女性を見かけた。ペリシテ人の娘だった。
14:2 彼は帰ると、父と母にこう言った。「ティムナでペリシテ人の娘を一人見かけたんだ。あの人をぼくの妻にもらってきてほしい。」
14:3 すると父と母は言った。「おまえの親族の娘や、わたしたちの民の中に、女性がいないとでもいうのか。それなのに、割礼を受けていないペリシテ人のところへ妻をもらいに行くのか。」でもサムソンは父にこう言った。「あの人をもらってきてほしい。ぼくはあの人がとても気に入ったんだ。」
14:4 父と母は、これが主のなさることだとは知らなかった。主はペリシテ人と事を起こすきっかけを求めておられたのだ。そのころ、ペリシテ人はイスラエルを支配していた。
14:5 サムソンは父と母と一緒にティムナへ下って行った。ティムナのぶどう畑まで来たとき、一頭の若いライオンがうなり声をあげて彼に向かってきた。
14:6 そのとき主の霊がサムソンに激しく下り、彼はまるで子やぎを引き裂くように、素手でそのライオンを引き裂いた。手には何も持っていなかった。でも彼は、自分のしたことを父にも母にも話さなかった。
14:7 それからサムソンは下って行って、その女性と話をした。彼女はサムソンをとても気に入らせた。
14:8 しばらくして、サムソンは彼女を妻に迎えるために戻ってきた。その途中、あのライオンの死骸を見ようと道をそれた。すると、ライオンの死骸の中に蜂の群れと蜜があった。
14:9 彼はその蜜を手にすくい取り、歩きながら食べた。そして父と母のところへ行き、蜜を分け与えると、二人も食べた。でも彼は、その蜜をライオンの死骸から取ったことは話さなかった。
14:10 サムソンの父は、その女性のところへ下って行った。サムソンはそこで祝宴を開いた。若い男たちはそうするのが習わしだったからだ。
14:11 人々はサムソンを見ると、三十人の付き添いを連れてきて、彼と一緒にいさせた。
14:12 サムソンは彼らに言った。「一つなぞなぞを出そう。もし祝宴の七日の間にその答えを解いて、わたしに言い当てることができたら、亜麻布の着物を三十着と、着替えの衣を三十着あげよう。
14:13 でも、もし解けなかったら、君たちのほうがわたしに、亜麻布の着物を三十着と、着替えの衣を三十着くれ。」すると彼らは言った。「なぞなぞを出してくれ。ぜひ聞かせてほしい。」
14:14 サムソンは言った。「食べる者から食べ物が出て、強い者から甘い物が出た。」彼らは三日たっても、そのなぞなぞを解けなかった。
14:15 七日目になって、彼らはサムソンの妻に言った。「夫をうまく言いくるめて、なぞなぞの答えをわたしたちに教えさせてくれ。そうしないと、あなたもあなたの父の家も火で焼いてしまうぞ。わたしたちの物を取り上げるために、ここへ呼んだのか。」
14:16 サムソンの妻は夫にすがって泣いた。「あなたはわたしを憎んでいるだけで、少しも愛していないのね。わたしの同胞になぞなぞを出したのに、その答えをわたしには教えてくれない。」サムソンは言った。「わたしは父にも母にも教えていないんだ。どうして君に教えられるだろう。」
14:17 妻は、祝宴が続く七日の間ずっと、夫にすがって泣き続けた。そして七日目に、あまりにせがまれたので、サムソンは答えを教えてしまった。すると妻は、そのなぞなぞを自分の同胞に教えた。
14:18 七日目、日が沈む前に、町の人々はサムソンに言った。「蜂蜜より甘い物は何か。ライオンより強い物は何か。」サムソンは言った。「もし君たちがわたしの雌牛で耕さなかったら、わたしのなぞなぞは解けなかっただろう。」
14:19 すると主の霊が激しくサムソンに下った。彼はアシュケロンへ下って行き、その町の三十人を打ち殺した。そして彼らの衣をはぎ取り、なぞなぞを解いた者たちに着替えの衣を与えた。サムソンは怒りに燃えて、自分の父の家へ上って行った。
14:20 サムソンの妻は、付き添いをしていた彼の友人のものになった。
15:1 しばらくして、小麦の刈り入れの時期のことだった。サムソンは子やぎを一頭持って、妻のところを訪ねた。「妻の部屋に入りたい」とサムソンが言うと、妻の父は中に入れてくれなかった。
15:2 父はこう言った。「あんたは妻を心底きらったんだとばかり思っていた。それであの子は、あんたの友だちにやってしまったんだ。妹のほうがきれいだろう。姉さんの代わりに、あの子をもらってくれないか。」
15:3 サムソンは言った。「今度こそ、ペリシテ人に何をしても、わたしは責められない。あいつらにひどい目をみせてやる。」
15:4 サムソンは出かけていって、きつねを三百匹つかまえた。そしてたいまつを用意し、きつねの尾と尾をつなぎ合わせ、二本の尾のあいだにたいまつを一本ずつはさんだ。
15:5 たいまつに火をつけると、ペリシテ人の麦畑にきつねを放った。こうして、積み上げた麦の束も、立っている麦も、ぶどう畑もオリーブ畑も、みんな焼きつくした。
15:6 ペリシテ人たちは「だれがこんなことをしたんだ」と言い合った。そして「ティムナ人の婿のサムソンだ。妻を取り上げられ、友だちにやられたからだ」とわかった。すると、ペリシテ人たちは押しかけて、その女とその父を火で焼き殺した。
15:7 サムソンは彼らに言った。「そんなことをするなら、おまえたちに仕返しをするまで、わたしは絶対にやめない。」
15:8 そしてサムソンは彼らに襲いかかり、片っ端からたたきのめして、大勢を打ち倒した。それから山を下って、エタムの岩の割れ目に住みついた。
15:9 ペリシテ人たちは攻め上ってきて、ユダの地に陣を張り、レヒのあたりに広がった。
15:10 ユダの人たちは言った。「どうしてわたしたちに攻め上ってきたのか。」彼らは答えた。「サムソンをしばり上げるためだ。あいつがおれたちにしたことを、そのままやり返してやる。」
15:11 そこでユダから三千人が、エタムの岩の割れ目に下っていき、サムソンに言った。「ペリシテ人がおれたちを支配しているのを知らないのか。いったい何てことをしてくれたんだ。」サムソンは答えた。「あいつらがわたしにしたとおり、わたしもあいつらにやり返しただけだ。」
15:12 彼らは言った。「おまえをしばって、ペリシテ人に引き渡すために下りてきたんだ。」するとサムソンは言った。「それなら、おまえたち自身がわたしに手を出さないと誓ってくれ。」
15:13 彼らは言った。「いや、殺しはしない。ただ、しっかりしばって、あいつらの手に引き渡すだけだ。」そう言って、彼らは新しい二本の縄でサムソンをしばり、岩から連れ上がった。
15:14 サムソンがレヒまで来ると、ペリシテ人が大声をあげて向かってきた。そのとき、主の霊が激しくサムソンに下った。すると、腕にかかっていた縄は火で焼けた麻糸のようになり、手からするりとほどけ落ちた。
15:15 サムソンは、ろばのあごの骨がまだ乾いていないのを見つけた。それを手に取ると、それで千人を打ち倒した。
15:16 そしてサムソンは言った。「ろばのあごの骨で、山また山と積み上げた。ろばのあごの骨で、わたしは千人を打ち倒した。」
15:17 言い終えると、サムソンはあごの骨を手から投げ捨てた。そして、その場所をラマト・レヒと名づけた。
15:18 サムソンはひどくのどが渇いた。そこで主に呼び求めて言った。「あなたはこのしもべの手で、こんなに大きな勝利を与えてくださいました。それなのに今、わたしはのどの渇きで死に、あの神を知らない者たちの手に落ちるのですか。」
15:19 すると神は、レヒにあるくぼんだ地を裂かれた。そこから水が湧き出た。サムソンはそれを飲むと元気を取り戻し、生き返った。だから彼はその泉をエン・ハコレと名づけた。それは今日もレヒにある。
15:20 サムソンは、ペリシテ人の時代に二十年の間、イスラエルを導いた。
16:1 サムソンはガザへ行った。そこで一人の遊女を見かけ、その女のところに入った。
16:2 「サムソンがここに来た」と、ガザの人たちに知らせが伝わった。それで彼らは町の門のあたりを取り囲み、一晩中サムソンを待ち伏せした。「朝が明けたら殺そう」と言って、その夜はずっと静かにしていた。
16:3 サムソンは夜中まで寝ていたが、真夜中に起き上がった。そして町の門の扉を二本の柱ごとつかみ、かんぬきもろとも引き抜いた。それを肩にかつぎ、ヘブロンを見おろす丘の頂上まで運び上げた。
16:4 それからしばらくして、サムソンはソレクの谷に住む一人の女を愛するようになった。その女の名はデリラといった。
16:5 ペリシテ人の領主たちがデリラのところに来て言った。「あの男をうまく丸め込んで、どこにあれほどの力があるのか探ってくれ。どうすれば勝てるのかもだ。おれたちはあの男を縛り上げて、抑え込みたいんだ。そうしてくれたら、一人ずつ銀千百枚をあんたに渡そう。」
16:6 そこでデリラはサムソンに言った。「教えてよ。あなたのその強さは、どこから来るの？　どうすればあなたを縛って、抑え込めるの？」
16:7 サムソンは答えた。「まだ乾いていない新しい弓の弦を七本持ってきて、それでわたしを縛れば、わたしは弱くなって、ほかのだれとも変わらない普通の人間になるよ。」
16:8 ペリシテ人の領主たちは、まだ乾いていない新しい弦を七本デリラのところに持ってきた。デリラはそれでサムソンを縛った。
16:9 奥の部屋には待ち伏せの者たちがひそんでいた。デリラが「サムソン、ペリシテ人が来たわよ！」と叫ぶと、サムソンは弦を引きちぎった。それはまるで、火に近づけた麻糸がぷつんと切れるようだった。こうして、彼の力の秘密は分からずじまいだった。
16:10 デリラはサムソンに言った。「ねえ、あなたはわたしをからかって、うそをついたのね。今度こそ教えて。どうすればあなたを縛れるの？」
16:11 サムソンは答えた。「まだ一度も使っていない新しい綱でしっかり縛れば、わたしは弱くなって、ほかのだれとも変わらない普通の人間になるよ。」
16:12 デリラは新しい綱を取ってサムソンを縛り、「サムソン、ペリシテ人が来たわよ！」と叫んだ。奥の部屋には待ち伏せの者たちがひそんでいた。ところがサムソンは、その綱を糸のように腕から引きちぎってしまった。
16:13 デリラはサムソンに言った。「今まであなたはわたしをからかって、うそばかりついてきたのね。どうすれば縛れるのか、本当のことを教えて。」サムソンは答えた。「わたしの髪の七つの房を、機（はた）の縦糸と一緒に織り込めばいい。」
16:14 そこでデリラは、その髪を織り込んでくいで留め、「サムソン、ペリシテ人が来たわよ！」と叫んだ。サムソンは眠りから覚め、機のくいも縦糸も引き抜いてしまった。
16:15 デリラは言った。「心がわたしのそばにないのに、どうして『愛している』なんて言えるの？もう三回もわたしをからかって、あなたの大きな力がどこにあるのか、教えてくれないじゃない。」
16:16 こうしてデリラが毎日しつこく言葉で責め立て、せがみ続けたので、サムソンの魂は死ぬほど疲れ果ててしまった。
16:17 とうとうサムソンは、心のうちをすべて打ち明けた。「わたしの頭には一度もかみそりが当てられたことがない。わたしは母の胎にいたときから、神にささげられた特別な者だからだ。もし髪をそり落とされたら、わたしの力は抜けてしまう。そうなればわたしは弱くなって、ほかのだれとも変わらない普通の人間になってしまう。」
16:18 デリラは、サムソンが心のうちをすべて打ち明けたのを見て取った。そして人をやってペリシテ人の領主たちを呼び、「もう一度来てください。あの人が心のうちを全部話してくれました」と伝えた。領主たちは、手に銀を持って彼女のところへやって来た。
16:19 デリラはサムソンを自分のひざの上で眠らせ、一人の男を呼んで、その髪の七つの房をそり落とさせた。こうして彼女はサムソンを苦しめ始め、その力は彼から抜けていった。
16:20 デリラは「サムソン、ペリシテ人が来たわよ！」と叫んだ。サムソンは眠りから覚め、「いつものように出て行って、体を振りほどこう」と思った。しかし彼は、主が自分から離れてしまったことに気づいていなかった。
16:21 ペリシテ人はサムソンを捕らえ、その両目をえぐり出した。そしてガザへ連れ下り、青銅の鎖で縛って、牢の中で臼を引かせた。
16:22 しかし、そり落とされたサムソンの髪は、また伸び始めていた。
16:23 ペリシテ人の領主たちは、自分たちの神ダゴンに大きないけにえをささげ、祝おうとして集まった。彼らは言った。「わたしたちの神が、敵のサムソンをわたしたちの手に渡してくださった。」
16:24 民はサムソンを見て、自分たちの神をたたえた。こう言ったのだ。「わたしたちの神が、敵をわたしたちの手に渡してくださった。この男はわたしたちの国を荒らし、大勢の仲間を殺した者だ。」
16:25 彼らは上機嫌になって、こう言った。「サムソンを呼び出せ。おれたちを楽しませてくれ。」そこで牢からサムソンが連れ出され、彼は人々の前で見せ物にされた。人々は、彼を柱と柱の間に立たせた。
16:26 サムソンは、自分の手を引いていた少年に言った。「この建物を支えている柱にさわらせてくれ。そこに寄りかかりたいんだ。」
16:27 建物の中は、男も女もいっぱいだった。ペリシテ人の領主たちも、みなそこにいた。屋根の上にも三千人ほどの男女がいて、サムソンが見せ物にされるのを見ていた。
16:28 サムソンは主に呼びかけて言った。「主なる神さま、どうかわたしを思い出してください。神さま、どうか、もう一度だけ力を与えてください。この両目を奪われた仕返しを、ペリシテ人に一度で果たさせてください。」
16:29 そしてサムソンは、建物を支えている真ん中の二本の柱をつかんだ。右手で一本、左手でもう一本を押さえ、その柱に力をこめた。
16:30 サムソンは言った。「わたしの魂を、ペリシテ人もろとも死なせてくれ。」そして力いっぱい押すと、建物は領主たちと、中にいたすべての人の上に崩れ落ちた。こうしてサムソンが死ぬときに殺した者は、生きている間に殺した者よりも多かった。
16:31 サムソンの兄弟たちと父の家の者がみな下って来て、彼を引き取った。そして運び上げ、ツォルアとエシュタオルの間にある、父マノアの墓に葬った。サムソンは二十年の間、イスラエルを治めていた。
17:1 エフライムの山地に、ミカという名の男がいた。
17:2 彼は母親に言った。「あなたから取られた銀千百枚のことで、あなたはのろいの言葉を口にしましたね。わたしもこの耳で聞きました。その銀は、わたしのところにあります。わたしが取ったのです。」すると母親は言った。「息子よ、あなたが主に祝福されますように。」
17:3 彼が銀千百枚を母親に返すと、母親は言った。「わたしはこの銀を、息子のために、自分の手で主にささげます。彫像と鋳物の像を作るためです。だから今、これをあなたに返しましょう。」
17:4 彼が銀を母親に返すと、母親はそのうち二百枚を取って、銀細工師に渡した。細工師はそれで彫像と鋳物の像を作り、その像はミカの家に置かれた。
17:5 このミカという男は、自分の神の宮を持っていた。彼はエフォドと、テラフィムという像を作り、息子の一人を任命して、自分の祭司とした。
17:6 そのころ、イスラエルには王がいなかった。それぞれが、自分の目に正しいと思うことを行っていた。
17:7 さて、ユダのベツレヘムに、ユダの氏族に属する一人の若者がいた。彼はレビ人で、そこに寄留していた。
17:8 この男はユダのベツレヘムの町を出て、住む場所を探して旅に出た。そして途中、エフライムの山地にあるミカの家までやって来た。
17:9 ミカが彼に「どこから来たのか」と尋ねると、彼は答えた。「わたしはユダのベツレヘム出身のレビ人です。住める場所を探して旅をしています。」
17:10 するとミカは言った。「うちにいてくれ。わたしの父となり、祭司となってほしい。毎年、銀十枚と衣一そろい、それに食べ物をあげよう。」こうしてレビ人は中に入った。
17:11 レビ人はこの男のもとに住むことを承知した。そして若者は、ミカにとって自分の息子の一人のようになった。
17:12 ミカはこのレビ人を任命し、若者は彼の祭司となって、ミカの家に住んだ。
17:13 ミカは言った。「これで分かった。主はきっとわたしをよくしてくださる。レビ人がわたしの祭司になったのだから。」
18:1 そのころ、イスラエルには王がいなかった。そしてそのころ、ダン族は自分たちの住む土地を探し求めていた。その日まで、イスラエルの諸部族の中で、彼らには受け継ぐ土地がまだ与えられていなかったからだ。
18:2 そこでダンの人々は、自分たちの氏族の中から、ツォルアとエシュタオル出身の勇敢な者五人を選んで送り出し、土地を偵察して調べさせた。彼らは「行って、土地を調べてこい」と言った。五人はエフライムの山地に入り、ミカの家まで来て、そこで一晩泊まった。
18:3 ミカの家のそばにいたとき、彼らはあの若いレビ人の声に聞き覚えがあった。そこで立ち寄って、彼に尋ねた。「だれがあなたをここに連れて来たのか。ここで何をしているのか。ここに何の用があるのか。」
18:4 彼は答えた。「ミカがこれこれのことをしてくれたのです。彼はわたしを雇い、わたしは彼の祭司になりました。」
18:5 彼らは言った。「では、神に尋ねてください。わたしたちが行こうとしているこの旅がうまくいくかどうか、知りたいのです。」
18:6 祭司は彼らに言った。「安心して行きなさい。あなたがたが行こうとしている旅を、主が見守っておられます。」
18:7 五人はライシュに着いた。そこに住む人々を見ると、シドン人のように安心して暮らしていた。穏やかで、何の心配もなく、その地には人々を辱める者も、支配する権力者もいなかった。彼らはシドン人から遠く離れていて、ほかのだれとも関わりを持っていなかった。
18:8 彼らがツォルアとエシュタオルにいる兄弟たちのところへ帰ると、兄弟たちは「どうだった」と尋ねた。
18:9 五人は答えた。「さあ、あの人たちのところへ攻め上ろう。わたしたちはあの地を見てきた。とても良い土地だ。ぐずぐずしている場合ではない。ためらわずに行って、あの地を手に入れよう。
18:10 行けば、何の警戒もしていない人々のところに着く。土地は広々としている。神はそこをあなたがたの手に渡してくださった。地上にあるどんなものにも不足のない場所だ。」
18:11 それで、ダンの一族のうちから、武器を身につけた六百人がツォルアとエシュタオルを出発した。
18:12 彼らは上って行き、ユダのキルヤト・エアリムに宿営した。そのため、その場所は今日まで「ダンの陣営」と呼ばれている。それはキルヤト・エアリムの西にある。
18:13 彼らはそこからエフライムの山地へ進み、ミカの家に着いた。
18:14 あの地ライシュを偵察しに行った五人は、兄弟たちに言った。「知っているか。この家々には、エフォドやテラフィム、彫像や鋳物の像があるんだ。だから、どうすればいいかよく考えてくれ。」
18:15 そこで彼らはそちらへ寄り道して、あの若いレビ人の家、つまりミカの家に入り、彼に挨拶した。
18:16 武器を身につけたダン族の六百人は、門の入り口に立っていた。
18:17 あの地を偵察しに行った五人は上って行き、家の中に入って、彫像、エフォド、テラフィム、鋳物の像を持ち出した。祭司は、武器を身につけた六百人といっしょに門の入り口に立っていた。
18:18 この五人がミカの家に入り、彫像、エフォド、テラフィム、鋳物の像を取り出すと、祭司は彼らに言った。「何をしているんだ。」
18:19 五人は言った。「黙って。口に手を当てて、いっしょに来てくれ。おれたちの父となり、祭司になってほしい。一人の家の祭司でいるのと、イスラエルの一つの部族、一つの氏族の祭司になるのと、どっちがいい。」
18:20 祭司は心から喜んだ。そしてエフォド、テラフィム、彫像を受け取り、人々の中に加わった。
18:21 彼らは向きを変えて出発した。子どもたちや家畜、大事な持ち物を先に立てて進んだ。
18:22 ミカの家からかなり離れたころ、ミカの家の近くの家々にいた男たちが呼び集められ、ダン族に追いついた。
18:23 彼らがダン族に呼びかけると、ダン族は振り返ってミカに言った。「こんなに大勢で追いかけてきて、どうしたんだ。」
18:24 ミカは言った。「わたしが作った神々を、あんたたちは持って行った。祭司まで連れて行った。もうわたしには何も残っていない。それなのに『どうしたんだ』とはどういうことだ。」
18:25 ダン族は彼に言った。「これ以上おれたちに口を出すな。気の荒い連中がお前に襲いかかって、お前も家族も命を落とすことになるぞ。」
18:26 そしてダン族は自分たちの道を進んで行った。ミカは、相手が自分より強いのを見て、向きを変えて家に帰った。
18:27 ダン族は、ミカが作った物と、ミカが抱えていた祭司を連れて、ライシュへ攻め込んだ。そこは平和で安心して暮らす民の町だった。彼らは剣で人々を打ち倒し、町を火で焼いた。
18:28 助ける者は一人もいなかった。町はシドンから遠く離れ、ほかのだれとも関わりを持っていなかったからだ。町はベト・レホブの近くの谷にあった。ダン族はその町を建て直し、そこに住んだ。
18:29 そして、この町をダンと名づけた。イスラエルに生まれた自分たちの先祖ダンの名にちなんでのことだ。もともとこの町の名はライシュだった。
18:30 ダン族は自分たちのためにその彫像を立てた。そして、モーセの孫、ゲルショムの子ヨナタンとその子孫が、この地の人々が捕らえられて連れ去られる日まで、ダン族の祭司を務めた。
18:31 彼らは、ミカが造ったその彫像を自分たちのために立てておいた。神の家がシロにあった間、ずっとそうしていた。
19:1 そのころ、イスラエルには王がいなかった。エフライムの山地の奥に、一人のレビ人が住んでいた。彼はユダのベツレヘムから一人の女をそばめとして迎えた。
19:2 ところが、そのそばめは彼を裏切って浮気をし、彼のもとを離れて、ユダのベツレヘムにある父の家に帰ってしまった。そして、四か月ほどそこにいた。
19:3 夫は立ち上がり、彼女をやさしく説得して連れ戻そうと、後を追って行った。若者と二頭のろばを連れていた。彼女は彼を父の家に案内した。娘の父は彼を見て、喜んで迎えた。
19:4 娘の父である舅は彼を引き止めた。そこで彼は三日間その家に滞在した。二人は食べたり飲んだりして、そこに泊まった。
19:5 四日目、彼らは朝早く起きた。彼が出発しようと立ち上がると、娘の父は婿に言った。「少し何か食べて元気をつけてから、出かけたらいい。」
19:6 そこで二人は座って、一緒に食べたり飲んだりした。娘の父はその人に言った。「どうか、もう一晩泊まって、ゆっくり楽しんでいってくれ。」
19:7 それでも彼が出かけようと立ち上がると、舅がしきりに引き止めた。それで彼はもう一晩そこに泊まった。
19:8 五日目、彼は朝早く起きて出発しようとした。すると娘の父は言った。「どうか何か食べて元気をつけてくれ。」そして二人は、日が傾くまでぐずぐずして、一緒に食べた。
19:9 彼が、そばめと若者を連れて出発しようと立ち上がると、娘の父である舅は言った。「見なさい、もう日が暮れかかっている。どうか泊まっていきなさい。ほら、一日も終わろうとしている。ここに泊まってゆっくり過ごし、明日の朝早く出発して、家に帰ればいい。」
19:10 けれども、その人は泊まろうとせず、立ち上がって出発した。そして、エブス、つまりエルサレムの向かいまで来た。彼は鞍をつけた二頭のろばを連れ、そばめも一緒だった。
19:11 彼らがエブスの近くまで来たとき、日はすっかり傾いていた。若者は主人に言った。「さあ、このエブス人の町に立ち寄って、そこに泊まりましょう。」
19:12 すると主人は答えた。「いや、イスラエル人ではない、よその者の町には立ち寄らない。ギブアまで行こう。」
19:13 そして若者に言った。「さあ、あの町のどれかに近づいて、ギブアかラマに泊まろう。」
19:14 彼らはそのまま進んで行った。すると、ベニヤミンに属するギブアの近くまで来たところで、日が沈んだ。
19:15 彼らはギブアに入って泊まろうと、そこへ立ち寄った。町の広場まで来て腰を下ろしたが、だれも彼らを家に迎えて泊めてくれる者はいなかった。
19:16 そこへ、一人の老人が夕方、畑の仕事から帰って来た。この人はエフライムの山地の出身で、ギブアに身を寄せて住んでいた。土地の人々はベニヤミン人だった。
19:17 老人は目を上げて、町の広場にいるその旅人を見た。そして言った。「どこへ行くのですか。どこから来たのですか。」
19:18 その人は答えた。「わたしたちは、ユダのベツレヘムから、エフライムの山地の奥へ向かう途中です。わたしはそこの者で、ユダのベツレヘムまで行ってきました。今は主の家へ向かっています。でも、だれもわたしを家に泊めてくれないのです。
19:19 ろばのためのわらも飼葉もありますし、わたしと、あなたのはしためと、しもべたちと一緒にいる若者のためのパンとぶどう酒もあります。何一つ足りないものはありません。」
19:20 すると老人は言った。「安心しなさい。あなたに必要なものは、みなわたしが引き受けよう。ただ、広場では泊まらないでほしい。」
19:21 こうして老人は彼を家に連れて行き、ろばに飼葉を与えた。彼らは足を洗い、食べたり飲んだりした。
19:22 彼らが楽しく過ごしていると、その町の男たち、ならず者たちが家を取り囲み、戸を激しくたたいた。そして家の主人である老人に言った。「お前の家に来たあの男を外に出せ。その男を犯してやる。」
19:23 家の主人であるその人は、外に出て彼らに言った。「いや、兄弟たち、どうか悪いことはしないでくれ。この人はわたしの家に来た客だ。そんなひどいことはやめてくれ。
19:24 ここにわたしの処女の娘と、あの人のそばめがいる。この二人を外に出そう。二人を辱め、好きなようにするがいい。だが、この人にはそんなひどいことをしないでくれ。」
19:25 だが、その男たちは彼の言うことを聞こうとしなかった。それでその人は自分のそばめをつかんで、彼らのところへ外に出した。男たちは彼女を犯し、朝まで一晩中もてあそんだ。そして夜が明けるころ、彼女を解放した。
19:26 夜明けごろ、その女は戻ってきて、主人がいる家の入り口で倒れた。そして明るくなるまで、そこに倒れていた。
19:27 彼女の主人は朝起きて、家の戸を開け、出かけようとした。すると、そばめである女が家の入り口で倒れていて、その手は敷居にかかっていた。
19:28 彼は女に「起きなさい、行こう」と言った。だが、返事はなかった。そこで彼は彼女をロバに乗せ、立ち上がって自分の家へ向かった。
19:29 家に着くと、彼は刃物を取り、そばめの体をつかんで、骨ごと十二の部分に切り分けた。そしてそれをイスラエルの全土に送った。
19:30 それを見た人はみな言った。「イスラエルの人々がエジプトの地から出てきた日から今日まで、こんなことは起きたことも、見たこともない。よく考え、話し合って、意見を言おう。」
20:1 それでイスラエルのすべての人々が出てきた。北のダンから南のベエル・シェバまで、さらにギレアデの地からも、全会衆が一人の人のように集まり、ミツパで主のもとに集った。
20:2 民全体の指導者たち、つまりイスラエルの全部族の者が、神の民の集まりに集結した。剣を抜く歩兵は四十万人だった。
20:3 ベニヤミンの人々は、イスラエルの人々がミツパに上ってきたことを聞いた。イスラエルの人々は言った。「話してくれ。この悪い事件はどうして起きたのか。」
20:4 殺された女の夫である、あのレビ人が答えて言った。「わたしとそばめは、泊まるためにベニヤミンにあるギブアに来た。
20:5 すると、ギブアの住民がわたしを襲い、夜、わたしのいる家を取り囲んだ。彼らはわたしを殺そうとし、わたしのそばめを犯した。それで彼女は死んでしまった。
20:6 そこでわたしはそばめの体を取って切り分け、イスラエルが受け継いだ地の全土に送った。彼らがイスラエルで、みだらで恥ずべきことをしたからだ。
20:7 さあ、あなたたちはみなイスラエルの人々だ。ここで意見と考えを出してほしい。」
20:8 すると民はみな、一人の人のように立ち上がって言った。「わたしたちは誰も、自分の天幕には帰らない。誰も自分の家には戻らない。
20:9 でも今、わたしたちがギブアにすることはこうだ。くじを引いて、あの町に攻め上ろう。
20:10 イスラエルのすべての部族から、百人につき十人、千人につき百人、一万人につき千人を選び、民のために食料を集めさせよう。そして軍がベニヤミンのギブアに着いたら、彼らがイスラエルでした恥ずべき行いのすべてに、ふさわしく報いるためだ。」
20:11 こうしてイスラエルの人々はみな、一人の人のように団結して、その町に集まった。
20:12 イスラエルの各部族はベニヤミン部族の全域に人を送って、こう言わせた。「あなたたちの間で起きたこの悪事は、いったい何なのか。
20:13 さあ、ギブアにいるあのならず者たちを引き渡せ。わたしたちは彼らを殺し、イスラエルから悪を取り除く。」しかしベニヤミンの人々は、同胞であるイスラエルの人々の言うことを聞こうとしなかった。
20:14 それどころかベニヤミンの人々は、イスラエルの人々と戦うため、町々からギブアに集まった。
20:15 その日、ベニヤミンの人々は町々から集められ、剣を持つ者が二万六千人いた。そのほかに、ギブアの住民の中から選ばれた精鋭が七百人いた。
20:16 この全軍の中に、左利きの選ばれた精鋭が七百人いた。彼らはみな、石を投げれば髪の毛一本ほどの的もはずさなかった。
20:17 一方、ベニヤミンを除くイスラエルの人々は、剣を持つ者が四十万人集められた。みな戦いに慣れた者たちだった。
20:18 イスラエルの人々は立ち上がってベテルに上り、神に尋ねた。「ベニヤミンの人々と戦うのに、わたしたちのうち、だれが最初に攻め上るべきでしょうか。」すると主は言われた。「ユダが最初に上りなさい。」
20:19 イスラエルの人々は朝早く起きて、ギブアに向かって陣を敷いた。
20:20 イスラエルの人々はベニヤミンと戦うために出て行き、ギブアを攻めようと戦いの陣を整えた。
20:21 すると、ベニヤミンの人々がギブアから出て来て、その日、イスラエルの二万二千人を討ち倒した。
20:22 それでもイスラエルの人々は奮い立ち、初日に陣を敷いたのと同じ場所で、もう一度戦いの陣を整えた。
20:23 イスラエルの人々はベテルに上り、夕方まで主の前で泣いた。そして主に尋ねた。「わたしたちの兄弟であるベニヤミンの人々と、また戦いに出るべきでしょうか。」すると主は言われた。「攻め上りなさい。」
20:24 こうしてイスラエルの人々は、二日目もベニヤミンの人々に近づいて行った。
20:25 ベニヤミンも二日目にギブアから出て来て、彼らを迎え撃ち、またもイスラエルの人々一万八千人を討ち倒した。これはみな剣を持つ者たちだった。
20:26 そこでイスラエルの人々は、全軍そろってベテルに上った。彼らはそこで泣きながら主の前に座り込み、その日は夕方まで断食した。そして主の前に焼き尽くすいけにえと交わりのいけにえをささげた。
20:27 そしてイスラエルの人々は主に尋ねた。当時、そこには神の契約の箱があった。
20:28 アロンの子エルアザルの子ピネハスが、当時その箱の前に仕えていた。イスラエルの人々は尋ねた。「わたしたちの兄弟であるベニヤミンの人々と、これからも戦いに出るべきでしょうか。それともやめるべきでしょうか。」すると主は言われた。「攻め上りなさい。明日、わたしは彼らをあなたの手に渡す。」
20:29 そこでイスラエルは、ギブアの周りに伏兵を配置した。
20:30 そしてイスラエルの人々は三日目もベニヤミンの人々に向かって攻め上り、これまでと同じようにギブアに向かって陣を整えた。
20:31 ベニヤミンの人々は、イスラエルの人々を迎え撃とうと町から出て来て、町からおびき出されていった。そして前と同じように、道でイスラエルの人々を討ち始めた。その道は、一つはベテルへ上り、もう一つは野を通ってギブアへ向かう道で、そこでイスラエルのおよそ三十人が討たれた。
20:32 ベニヤミンの人々は「彼らは最初のときと同じように、わたしたちの前で打ち負かされている」と言った。しかしイスラエルの人々は言っていた。「逃げよう。そうして彼らを町からおびき出し、あの道までさそい込もう。」
20:33 そこでイスラエルの人々はみな自分の場所から立ち上がり、バアル・タマルで陣を整えた。一方、待ち伏せしていたイスラエルの伏兵も、ゲバの西の草地から一斉に飛び出した。
20:34 イスラエル全体から選ばれた一万人の精鋭がギブアに向かって攻めかかり、戦いは激しくなった。しかしベニヤミンの人々は、自分たちに災いが迫っていることに気づいていなかった。
20:35 主はイスラエルの前でベニヤミンを打ち破られた。その日、イスラエルの人々はベニヤミンの二万五千百人を討ち取った。これはみな剣を持って戦う者たちだった。
20:36 こうしてベニヤミンの人々は、自分たちが打ち負かされたことを知った。イスラエルの人々は、ギブアのそばに配置しておいた伏兵を頼みにして、ベニヤミンに場所を譲って退いていたのだ。
20:37 伏兵は急いでギブアに突入した。そして一気に攻め広がり、町中の者を剣で討ち取った。
20:38 イスラエルの人々と伏兵の間には、あらかじめ合図が決められていた。それは、町から煙を高く立ち上らせることだった。
20:39 それでイスラエルの人々は戦いの中で向きを変えた。ベニヤミンは、イスラエルのおよそ三十人を討ち始め、「間違いなく、最初の戦いと同じように、彼らはわたしたちの前で打ち負かされている」と言っていた。
20:40 ところが、町から煙の柱が立ち上り始めた。ベニヤミンが後ろを振り返ると、町全体が炎に包まれ、煙が天まで上っていた。
20:41 そのとき、イスラエルの人々が向き直った。ベニヤミンの人々は、自分たちに災いが降りかかったのを見て、うろたえた。
20:42 彼らはイスラエルの人々の前から、荒れ野へ向かう道の方へ逃げた。しかし戦いは彼らに追いついた。さらに、町々から出て来た者たちが、彼らを間にはさんで討ち滅ぼした。
20:43 彼らはベニヤミンを包囲して追いつめ、休む間も与えずに追い立て、日の出る方角にあるギブアの向かいまで踏みにじった。
20:44 ベニヤミンからは一万八千人が倒れた。みな勇敢な戦士だった。
20:45 生き残った者は向きを変え、荒れ野の方へ、リンモンの岩を目指して逃げた。イスラエルは街道でそのうち五千人を討ち取り、なおもギデオムまで激しく追いつめて、さらに二千人を討ち取った。
20:46 こうしてこの日、ベニヤミンで倒れた者は、剣を取る者が合わせて二万五千人になった。みな勇敢な戦士だった。
20:47 しかし六百人は向きを変え、荒れ野の方へ、リンモンの岩を目指して逃げ、そこで四か月間とどまった。
20:48 イスラエルの人々はベニヤミンの人々のところへ引き返し、剣で討った。町の人も家畜も、見つかったものはすべて討ち、さらに行き着いた町々をことごとく火で焼き払った。
21:1 イスラエルの人々は、かつてミツパでこう誓っていた。「わたしたちはだれも、自分の娘をベニヤミンの者に嫁がせない。」
21:2 民はベテルへ行き、夕方まで神の前にとどまり、声をあげて激しく泣いた。
21:3 そして言った。「イスラエルの神、主よ。どうしてこんなことがイスラエルに起きたのですか。今日、イスラエルから一つの部族が欠けてしまうなんて。」
21:4 翌日、民は早く起きて、そこに祭壇を築き、焼き尽くすいけにえと和解のいけにえをささげた。
21:5 イスラエルの人々は言った。「イスラエルの全部族の中で、主のもとに集まらなかったのはだれか。」というのも、ミツパの主のもとに上って来なかった者は必ず殺されると、彼らは重々しく誓っていたからだ。
21:6 イスラエルの人々は、兄弟であるベニヤミンのことで心を痛め、こう言った。「今日、イスラエルから一つの部族が断ち切られてしまった。」
21:7 「残った者たちの妻は、どうすればいいのか。わたしたちは、自分の娘をベニヤミンに妻として与えないと、主に誓ってしまったのに。」
21:8 そこで彼らは言った。「イスラエルの部族の中で、ミツパの主のもとに集まらなかったのはどこか。」調べてみると、ヤベシュ・ギルアデからは、だれもその集まりの陣営に来ていなかった。
21:9 民を数えてみると、ヤベシュ・ギルアデの住民は、ひとりもそこにいなかった。
21:10 そこで会衆は、勇敢な戦士一万二千人をそこへ送り、こう命じた。「行って、ヤベシュ・ギルアデの住民を、女も子どもも剣で討ち取れ。
21:11 あなたがたは、こうしなければならない。男はみな、そして男と寝たことのある女はみな、滅ぼし尽くせ。」
21:12 彼らはヤベシュ・ギルアデの住民の中に、男と寝たことのない若い処女を四百人見つけた。そして、その娘たちを、カナンの地にあるシロの陣営に連れて来た。
21:13 それから会衆全体は、リモンの岩にいるベニヤミンの人々のもとに使いを送り、和解を呼びかけた。
21:14 そのとき、ベニヤミンの人々は帰って来た。人々は、生かしておいたヤベシュ・ギルアデの女たちを彼らに与えた。それでも、人数は足りなかった。
21:15 民はベニヤミンのことで心を痛めた。主がイスラエルの諸部族の間に裂け目を生じさせたからだ。
21:16 会衆の長老たちは言った。「女がベニヤミンから絶えてしまった今、残った者たちの妻は、どうすればいいのか。
21:17 生き残ったベニヤミンの人々には、跡を継ぐ者がいなければならない。イスラエルから一つの部族が消えてしまわないためだ。
21:18 だが、わたしたちは、自分の娘を彼らの妻として与えることはできない。イスラエルの人々が『ベニヤミンに妻を与える者はのろわれる』と誓ってしまったからだ。」
21:19 そこで、長老たちは言った。「見なさい、シロでは毎年、主の祭りが行われている。シロは、ベテルの北、ベテルからシェケムへ上る道の東、レボナの南にある。
21:20 行って、ぶどう畑に隠れていなさい。
21:21 そして、よく見ていなさい。シロの娘たちが踊りに出てきたら、ぶどう畑から出て、それぞれシロの娘の中から自分の妻をさらい、ベニヤミンの地へ帰りなさい。
21:22 もし娘たちの父親や兄弟が、わたしたちに文句を言いに来たら、こう言おう。『どうか、彼らを大目に見てやってほしい。戦いのとき、わたしたちは彼ら一人ひとりに妻を取ってやれなかったのだ。それに、あなたたち自身が娘を与えたわけではないのだから、罪に問われることはない。』」
21:23 ベニヤミンの人々は、そのとおりにした。彼らは、踊っていた娘たちをさらい、自分たちの人数に合わせて妻とした。そして、自分たちの受け継ぐ地へ帰り、町々を建て直して、そこに住んだ。
21:24 そのとき、イスラエルの人々もそこを去り、それぞれ自分の部族と家族のもとへ帰って行った。こうして、みなそこからそれぞれの受け継ぐ地へ出て行った。
21:25 その頃、イスラエルには王がいなかった。人はみな、自分が正しいと思うことを行っていた。
ルツ記
1:1 士師たちが世を治めていたころ、その地に飢きんが起こった。それでユダのベツレヘムに住むひとりの男が、妻とふたりの息子を連れて、モアブの地へ移り住んだ。
1:2 その男の名はエリメレク、妻の名はナオミ、ふたりの息子の名はマフロンとキルヨンといった。彼らはユダのベツレヘム出身のエフラタ人だった。こうしてモアブの地に着き、そこで暮らすことになった。
1:3 ところが、ナオミの夫エリメレクが死んでしまった。あとにはナオミとふたりの息子が残された。
1:4 息子たちはモアブの女性を妻に迎えた。ひとりの名はオルパ、もうひとりの名はルツといった。彼らはそこで十年ほど暮らした。
1:5 しかし、マフロンとキルヨンのふたりも死んでしまった。ナオミは、ふたりの子どもも夫も失って、ひとり残された。
1:6 そんなとき、主がご自分の民を心にかけ、食べる物をお与えになった、という知らせがモアブの地に届いた。それを聞いてナオミは、嫁たちとともにモアブの地を離れ、故郷へ帰ることにした。
1:7 こうしてナオミは、今まで住んでいた場所を出て、ふたりの嫁とともにユダの地へ帰る道を歩き始めた。
1:8 その道で、ナオミはふたりの嫁に言った。「さあ、それぞれ自分のお母さんの家へお帰りなさい。あなたたちは、亡くなった息子たちにも、わたしにも、よくしてくれた。どうか主が、あなたたちにも同じ慈しみを注いでくださいますように。
1:9 どうか主が、あなたたちそれぞれに新しい夫の家庭と、安らげる場所をお与えくださいますように。」そう言ってナオミが嫁たちに口づけすると、ふたりは声をあげて泣いた。
1:10 そして言った。「いいえ、わたしたちはあなたといっしょに、あなたの民のところへ帰ります。」
1:11 でもナオミは言った。「娘たち、帰りなさい。どうしてわたしについて来るの。あなたたちの夫になれる息子が、まだこのお腹にいるとでも言うの。
1:12 娘たち、帰りなさい。さあ、行きなさい。わたしはもう年をとって、夫を持てる歳ではないのよ。たとえまだ望みがあると思って、今夜にでも夫を持ち、息子を産んだとしても、
1:13 そのために、あなたたちはあの子たちが大きくなるまで待つの。そのために、夫も持たずにいるつもりなの。だめよ、娘たち。あなたたちよりも、わたしのほうがずっとつらいのよ。主の手がわたしを打ったのだから。」
1:14 二人はまた声をあげて泣いた。オルパはしゅうとめに別れの口づけをした。でもルツは、彼女にすがりついて離れなかった。
1:15 ナオミは言った。「ほら、あなたの義理の姉さんは、自分の民と神々のところへ帰って行った。あなたも義理の姉さんについて帰りなさい。」
1:16 でもルツは言った。「あなたを残して引き返せなんて、言わないでください。あなたが行くところへ、わたしも行きます。あなたが泊まるところに、わたしも泊まります。あなたの民はわたしの民、あなたの神はわたしの神です。
1:17 あなたが死ぬところで、わたしも死に、そこに葬られます。もし死によってではなく、わたしがあなたと別れるようなことがあれば、主がわたしをどれほどでも罰してくださいますように。」
1:18 ナオミは、ルツがいっしょに行こうと固く決心しているのを見て、それ以上何も言わなくなった。
1:19 こうして二人は歩き続け、ベツレヘムに着いた。二人がベツレヘムに着くと、町中が二人のことで騒ぎ立ち、女たちは言った。「これが、あのナオミなの。」
1:20 ナオミは彼女たちに言った。「わたしをナオミと呼ばないで。マラと呼んでください。全能の神が、わたしをひどく苦しめたのだから。
1:21 わたしは満ち足りて出て行ったのに、主は何も持たないまま、わたしを帰らせた。どうしてわたしをナオミと呼ぶの。主がわたしを責め、全能の神がわたしに災いを下したのに。」
1:22 こうしてナオミは、モアブの野から、嫁でモアブ人のルツをともなって帰って来た。二人がベツレヘムに着いたのは、大麦の刈り入れが始まるころだった。
2:1 ナオミの夫エリメレクの一族に、有力で裕福な親族がいた。名をボアズといった。
2:2 モアブの女ルツがナオミに言った。「畑に行かせてください。親切にしてくれる人の後について、落ちた麦の穂を拾い集めたいのです。」ナオミは答えた。「行っておいで、娘や。」
2:3 ルツは出かけて行き、刈り入れをする人たちの後について畑で穂を拾い集めた。すると、たまたまそこはエリメレクの一族のボアズの畑だった。
2:4 ちょうどそのとき、ボアズがベツレヘムからやって来た。彼は刈り入れをする人たちに言った。「主があなたたちとともにいてくださるように。」すると彼らは答えた。「主があなたを祝福してくださいますように。」
2:5 ボアズは、刈り入れの人たちを監督している若者に尋ねた。「あの若い女性は、どこの人だろう。」
2:6 刈り入れの人たちを監督している若者は答えた。「あれはナオミといっしょにモアブの地から帰って来た、モアブの若い女性です。
2:7 彼女は『刈り入れの人たちの後について、束のあいだに落ちた穂を拾い集めさせてください』と言って、朝からずっとここで働いています。少し小屋で休んだだけです。」
2:8 ボアズはルツに言った。「よく聞きなさい、娘や。ほかの畑へ穂を拾いに行ってはいけない。ここから離れず、うちの女性たちのそばにいなさい。
2:9 みんなが刈り入れをしている畑をよく見て、その後についていきなさい。若い者たちには、あなたに手を出さないように言っておいた。喉が渇いたら水がめのところへ行って、若い者たちがくんだ水を飲みなさい。」
2:10 ルツは地にひれ伏し、深くおじぎをして言った。「わたしはよそ者なのに、どうしてこんなに親切にして、気にかけてくださるのですか。」
2:11 ボアズは答えた。「あなたが夫を亡くしてから、しゅうとめのためにしてきたことは、すべて聞いている。あなたは自分の父母や生まれ故郷を離れ、それまで知らなかった民のところへやって来たのだ。
2:12 主があなたのしたことに報いてくださるように。あなたはイスラエルの神である主のもとに、その翼の下に身を寄せに来た。その主が、あなたに豊かな報いをくださるように。」
2:13 ルツは言った。「ご主人さま、こんなによくしていただいて、本当にありがとうございます。あなたはわたしを慰め、しもべのわたしにやさしく声をかけてくださいました。わたしはあなたのはしための一人にも及ばない者なのに。」
2:14 食事のとき、ボアズはルツに言った。「こちらに来て、いっしょにパンを食べなさい。パンを酢につけて食べるといい。」ルツが刈り入れをする人たちのそばにすわると、ボアズは炒った麦を分けてくれた。ルツはそれを食べて満腹し、余りも出た。
2:15 ルツがまた麦を拾おうと立ち上がると、ボアズは若者たちに命じた。「あの人には束のあいだからでも拾わせてやりなさい。恥をかかせてはいけない。
2:16 それどころか、束から穂をわざと抜き取って落としておき、彼女に拾わせなさい。しかってはいけない。」
2:17 こうしてルツは夕方まで畑で麦を拾った。そして拾い集めたものを打つと、大麦がおよそ一エファ（二十キロほど）にもなった。
2:18 ルツはそれをかついで町へ帰った。しゅうとめは、ルツが拾い集めてきたものを見た。ルツは、満腹したあとに残しておいた分も取り出して、しゅうとめに渡した。
2:19 しゅうとめは言った。「今日はどこで拾ったの。どこで働いたの。あなたに目をかけてくれた人に、祝福があるように。」ルツは、だれのところで働いたかをしゅうとめに話して言った。「今日わたしが働いた人は、ボアズさんという方です。」
2:20 ナオミは嫁に言った。「その人に、主の祝福があるように。主は、生きている者にも死んだ者にも、変わらぬ慈しみをやめずにいてくださる。」そしてナオミはこう続けた。「その人はわたしたちの近い親戚で、わたしたちを助け、買い戻す権利のある人の一人なのよ。」
2:21 モアブの女ルツは言った。「その方はこうも言ってくれました。『刈り入れがすっかり終わるまで、わたしのところの若者たちのそばを離れずにいなさい。』」
2:22 ナオミは嫁のルツに言った。「それはいいことよ。あの人のところの若い女たちといっしょに出かけなさい。そうすれば、ほかの畑でひどい目にあわされずにすむから。」
2:23 こうしてルツはボアズのところの若い女たちのそばを離れず、大麦と小麦の刈り入れが終わるまで麦を拾い続けた。そして、しゅうとめといっしょに暮らした。
3:1 しゅうとめのナオミがルツに言った。「わたしの娘よ、あなたが安心して落ち着ける場所を、わたしが探してあげなくてはね。あなたが幸せになれるように。
3:2 ねえ、ボアズはわたしたちの親戚でしょう。あなたはあの人のところで、若い女たちと一緒に働いてきた。そのボアズが、今夜、麦打ち場で大麦をふるい分けるのよ。
3:3 だから体を洗って、香油をつけて、いちばんいい服を着なさい。そして麦打ち場に下りていくの。でも、あの人が食べたり飲んだりし終えるまでは、気づかれないようにね。
3:4 あの人が横になったら、寝る場所をよく見ておきなさい。そうしたら、そっと近づいて足もとの覆いをめくり、そこに横になるの。あとは、あの人があなたのすることを教えてくれるから。」
3:5 ルツは答えた。「言われたとおり、全部します。」
3:6 そしてルツは麦打ち場に下りていき、しゅうとめに言われたとおりにした。
3:7 ボアズは食べて飲んで、気分がよくなると、積み上げた麦の端のところに横になった。ルツはそっと近づき、足もとの覆いをめくって、そこに横になった。
3:8 真夜中になって、ボアズはびくっとして寝返りを打った。すると、一人の女が足もとに横になっているではないか。
3:9 「あなたは誰だ」と彼が言うと、女は答えた。「わたしは、あなたに仕えるルツです。どうか、あなたの衣の裾をこのわたしの上に広げてください。あなたは、わたしを引き受ける責任のある親戚なのですから。」
3:10 ボアズは言った。「娘よ、主があなたを祝福してくださるように。あなたは、以前にもまして今、深い慈しみを示してくれた。貧しい若者にも裕福な若者にも走らず、こうしてくれたのだから。
3:11 だから娘よ、心配しなくていい。あなたが言うことは、何でもしてあげよう。この町の人はみな、あなたが立派な女性だと知っているのだから。
3:12 確かにわたしは、あなたを引き受ける責任のある親戚だ。でも、わたしより近い親戚が、もう一人いる。
3:13 今夜はここで休みなさい。朝になって、もしあの人があなたを引き受けてくれるなら、それでいい。引き受けてもらえばいい。でも、もしあの人にその気がないなら、主が生きておられることにかけて、わたしがあなたを引き受けよう。朝まで休んでいなさい。」
3:14 ルツは朝まで彼の足もとで休み、人の見分けがつかないうちに起き上がった。ボアズは言った。「女がこの脱穀場に来たことを、だれにも知られてはいけない。」
3:15 そして言った。「着ている上着を広げて、しっかり持っていなさい。」ルツがそれを持つと、ボアズは大麦を六杯量ってのせてやり、彼女は町に帰っていった。
3:16 ルツが姑のところに戻ると、ナオミは言った。「娘よ、どうだったの。」ルツは、あの人がしてくれたことを何もかも話した。
3:17 そして言った。「あの人はこの大麦を六杯もくださったんです。『姑さんのところへ手ぶらで帰ってはいけない』と言って。」
3:18 ナオミは言った。「娘よ、ことがどうなるか分かるまで、じっと待っていなさい。あの人は、今日のうちにこの件を片づけてしまわないと、落ち着かないだろうから。」
4:1 さて、ボアズは町の門のところに上っていって、そこに座った。すると、彼が話していた例の親戚が通りかかった。ボアズは声をかけた。「そこの人、ちょっとこっちに来て、座ってくれ。」その人は寄ってきて座った。
4:2 ボアズは町の長老を十人呼び集めて、「ここに座ってください」と言った。彼らは座った。
4:3 それからボアズは、その親戚に言った。「モアブの地から戻ってきたナオミが、わたしたちの親族エリメレクの畑を手放そうとしている。
4:4 それで、あなたの耳に入れておこうと思ったんだ。ここに座っている人たちと、わたしの民の長老たちの前で、それを買い取ってほしい。引き受けるつもりなら、引き受けてくれ。でも、引き受けないなら、そう言ってくれ。はっきりさせておきたいんだ。それを引き受けられるのは、あなたのほかにはいない。その次がわたしだからね。」すると、その人は言った。「わたしが引き受けよう。」
4:5 ボアズは言った。「あなたがナオミの手からその畑を買い取る日には、亡くなった人の妻であるモアブの女ルツも引き受けることになる。亡くなった人の名を、その相続地に残すためにね。」
4:6 すると、その親戚は言った。「それなら、わたしには引き受けられない。自分の相続地をだめにしてしまうかもしれないからね。わたしが引き受けるはずのものを、あなたが引き受けてくれ。わたしには引き受けられないんだ。」
4:7 昔、イスラエルでは、買い戻しや権利の譲渡について、こうする習わしがあった。すべてを確かなものにするために、一方が自分の履き物を脱いで、相手に渡すのだ。これがイスラエルでの証明の仕方だった。
4:8 そこで、その親戚はボアズに「あなたが買い取ってくれ」と言い、自分の履き物を脱いだ。
4:9 ボアズは長老たちと、そこにいたすべての人に言った。「今日、あなたがたは証人だ。わたしはエリメレクのものだったすべてと、キルヨンとマフロンのものだったすべてを、ナオミの手から買い取った。
4:10 それだけでなく、マフロンの妻だったモアブの女ルツも、わたしの妻として引き受ける。亡くなった人の名を、その相続地に残すためだ。こうすれば、亡くなった人の名が、その一族からも、故郷の町の門からも消え去ることはない。今日、あなたがたはその証人だ。」
4:11 すると、門にいたすべての人と長老たちは言った。「わたしたちは証人だ。どうか主が、あなたの家に来るこの女性を、イスラエルの家を築いたラケルとレアのようにしてくださるように。あなたがエフラタで栄え、ベツレヘムでその名が知れわたりますように。
4:12 主がこの若い女性を通してあなたに与える子どもによって、あなたの家が、タマルがユダに産んだペレツの家のようになりますように。」
4:13 こうして、ボアズはルツを妻として迎えた。彼が彼女のもとに入ると、主が彼女を身ごもらせ、彼女は男の子を産んだ。
4:14 女たちはナオミに言った。「主をほめたたえよう。主は今日、あなたを買い戻してくれる人がいないままにはしなかった。どうか、その子の名がイスラエルで知れわたりますように。
4:15 その子は、あなたの魂を生き返らせ、年老いたあなたを養ってくれる。あなたを愛し、七人の息子にもまさるあなたの嫁が、この子を産んだのだから。」
4:16 ナオミはその子を抱き取り、胸に抱いて、その子を育てる母親となった。
4:17 近所の女たちは「ナオミに男の子が生まれた」と言って、その子に名をつけた。彼女たちはその子をオベデと名づけた。オベデはエッサイの父で、エッサイはダビデの父である。
4:18 さて、これがペレツの家系である。ペレツにはヘツロンが生まれ、
4:19 ヘツロンにはラムが生まれ、ラムにはアミナダブが生まれた。
4:20 アミナダブにはナフションが生まれ、ナフションにはサルマが生まれた。
4:21 サルモンにはボアズが生まれ、ボアズにはオベデが生まれた。
4:22 オベデにはエッサイが生まれ、エッサイにはダビデが生まれた。
サムエル記上
1:1 エフライムの山地にあるラマタイム・ツォフィムに、一人の男がいた。名前をエルカナといい、エロハムの子で、エリフの子、トフの子、エフライム人ツフの子だった。
1:2 エルカナには二人の妻がいた。一人はハンナ、もう一人はペニンナという名だった。ペニンナには子どもがいたが、ハンナには子どもがいなかった。
1:3 この男は毎年、自分の町から出かけて、シロで万軍の主を礼拝し、いけにえをささげていた。そこにはエリの二人の息子、ホフニとピネハスがいて、主に仕える祭司だった。
1:4 いけにえをささげる日になると、エルカナは妻のペニンナと、その息子たち、娘たち全員に、それぞれの分を渡した。
1:5 でもハンナには、特別に良い分を渡した。彼はハンナを愛していたからだ。主が彼女の胎を閉ざしておられたのに、そうした。
1:6 しかも、もう一人の妻はハンナをひどく苦しめ、いらだたせた。主が彼女の胎を閉ざしていたからだ。
1:7 これは毎年くり返された。ハンナが主の家に上るたびに、ペニンナは彼女を苦しめた。それでハンナは泣いて、何も食べなかった。
1:8 夫のエルカナは彼女に言った。「ハンナ、どうして泣くんだ。どうして食べないんだ。どうしてそんなに心を痛めているんだ。わたしは、きみにとって十人の息子よりも良い存在じゃないか。」
1:9 シロで食事をし、飲み終えたあと、ハンナは立ち上がった。そのとき祭司エリは、主の神殿の入り口の柱のそばで、席に座っていた。
1:10 ハンナは魂が深く苦しみ、激しく泣きながら、主に祈った。
1:11 そして、こう誓いを立てた。「万軍の主よ。あなたのしもべであるわたしの苦しみに目を留め、わたしを覚えて、忘れないでください。もし、あなたのしもべに男の子を与えてくださるなら、わたしはその子を、一生のあいだ主にささげます。その子の頭には、決してかみそりを当てません。」
1:12 ハンナが主の前で祈り続けているあいだ、エリは彼女の口もとを見ていた。
1:13 ハンナは心の中で祈っていた。唇は動いていたが、声は聞こえなかった。それでエリは、彼女が酔っているのだと思った。
1:14 エリは彼女に言った。「いつまで酔っているのか。酒はもうやめなさい。」
1:15 するとハンナは答えた。「いいえ、ご主人さま。わたしは深く思い悩んでいる女です。ぶどう酒も強い酒も飲んでいません。ただ、自分の魂を主の前に注ぎ出していたのです。
1:16 わたしを、どうしようもない女だと思わないでください。あまりの嘆きと苦しみのために、わたしはこれまで祈っていたのです。」
1:17 エリは答えた。「安心して行きなさい。イスラエルの神が、あなたの願いをかなえてくださるように。」
1:18 ハンナは言った。「あなたのしもべである、このわたしに、どうか目をかけてください。」そして彼女は帰って行き、食事をした。その顔は、もう悲しげではなかった。
1:19 翌朝早く、彼らは起きて主を礼拝し、それからラマの自分の家に帰って行った。エルカナは妻ハンナと結ばれ、主は彼女を心に留められた。
1:20 月日がめぐって、ハンナは身ごもり、男の子を産んだ。そして「わたしが主に願い求めたのだから」と言って、その子をサムエルと名づけた。
1:21 夫のエルカナは、家族みんなを連れて、毎年のいけにえと、自分の誓いのささげ物を主にささげるために上って行った。
1:22 けれども、ハンナは行かなかった。夫にこう言ったのだ。「この子が乳離れするまで待ちます。そうしたら連れて行き、主の前に立たせて、その子をずっとそこにとどまらせます。」
1:23 夫のエルカナは彼女に言った。「あなたが良いと思うようにしなさい。乳離れさせるまで待つといい。ただ、主がその約束を実現してくださるように。」こうしてハンナは家にとどまり、乳離れするまでその子に乳を飲ませた。
1:24 そして乳離れさせると、ハンナは三歳の雄牛一頭と、小麦粉一エファ、それにぶどう酒の皮袋一つを持って、その子を連れて上って行き、シロにある主の家に連れて来た。子どもはまだ幼かった。
1:25 彼らは雄牛をほふり、その子をエリのところに連れて来た。
1:26 ハンナは言った。「ご主人さま、お願いです。あなたが生きておられるのと同じくらい確かなことですが、わたしは、ここであなたのそばに立って主に祈っていた、あの女です。
1:27 わたしはこの子のために祈りました。すると主は、わたしが願い求めたことをかなえてくださったのです。
1:28 だから、わたしもこの子を主にお渡しします。この子が生きているかぎり、ずっと主のものです。」そして、その子はそこで主を礼拝した。
2:1 ハンナは祈って言った。「わたしの心は、主にあって喜びおどる。主がわたしの角を高く上げてくださった。わたしは敵に向かって大きく口を開く。あなたの救いを、わたしは喜んでいるから。
2:2 主のように聖なる方はいない。あなたのほかに神はいない。わたしたちの神のような岩は、どこにもない。
2:3 もう高ぶって語ってはならない。おごり高ぶった言葉を口にしてはならない。主はすべてを知る神。人の行いを、はかりにかける方だから。
2:4 勇士たちの弓は折られ、つまずいた者は力を帯びる。
2:5 満ち足りていた者は、パンのために雇われる。飢えていた者は、もう飢えることがない。子を産めなかった女は七人の子を産み、多くの子を持つ女は力を失う。
2:6 主は命を取り、また命を与える。人を死の世界へ下し、また引き上げてくださる。
2:7 主は貧しくもし、豊かにもする。低くし、また高く上げてくださる。
2:8 主は弱い者をちりの中から立ち上がらせ、貧しい者をごみの山から引き上げる。高貴な人々と並んで座らせ、栄光の座を受け継がせるためだ。地を支える柱は主のものであり、その上に世界を据えられたからだ。
2:9 主は忠実な人々の歩みを守り、悪い者たちは暗闇の中で沈黙する。人は自分の力で勝つのではないからだ。
2:10 主に逆らう者は、打ち砕かれる。主は天から彼らに雷を轟かせる。主は地の果てまでを裁き、ご自分の王に力を与え、油を注がれた者の角を高く上げてくださる。」
2:11 エルカナはラマの自分の家へ帰った。その子は祭司エリのもとで、主に仕えた。
2:12 エリの息子たちは、ろくでもない者たちだった。主を知ろうともしなかった。
2:13 祭司たちが人々に対してしていたことは、こうだ。だれかがいけにえをささげると、肉を煮ている間に、祭司の使用人が三つ又のフォークを手にしてやって来る。
2:14 そして、それを鉢や釜、大鍋や壺に突き刺し、フォークで引き上がってくるものを、祭司がみな自分のものにした。シロにやって来るイスラエルの人みなに、彼らはこうしていた。
2:15 それだけではない。脂肪を焼いて煙にする前に、祭司の使用人がやって来て、いけにえをささげる人にこう言うのだ。「焼く肉を祭司に渡せ。煮た肉は受け取らない。生の肉をよこせ。」
2:16 その人が「まず脂肪を焼かせてくれ。そのあとで、好きなだけ取ればいい」と言っても、使用人はこう答えた。「いや、今すぐよこせ。さもないと、力ずくで奪う。」
2:17 こうして、その若者たちの罪は、主の前でとても重いものとなった。彼らが主へのささげ物を軽んじたからだ。
2:18 一方、サムエルは主の前で仕えていた。まだ幼い子で、亜麻布のエポデを身に着けていた。
2:19 母親は毎年、小さな上着を作ってやり、夫といっしょに毎年のいけにえをささげに上って来るたびに、それをサムエルに届けた。
2:20 エリはエルカナと妻を祝福して、こう言った。「この女が主にささげた子の代わりに、主がこの人によってあなたに子どもを授けてくださいますように。」そして二人は自分の家に帰って行った。
2:21 主はハンナを心にかけてくださった。彼女は身ごもって、三人の息子と二人の娘を産んだ。少年サムエルは主のもとで成長していった。
2:22 エリはすっかり年老いていた。彼は、息子たちがイスラエルのすべての人にしていること、また会見の天幕の入り口で仕える女たちと寝ていることを、みな聞いた。
2:23 エリは息子たちに言った。「どうしてこんなことをするのか。おまえたちの悪い行いを、わたしはこの民みんなから聞いているのだ。
2:24 いけない、息子たちよ。わたしの耳に入る評判は良くない。おまえたちは主の民をそそのかして、罪を犯させている。
2:25 人が人に対して罪を犯すなら、神が仲裁してくださる。だが、人が主に対して罪を犯すなら、だれがその人のためにとりなせるだろうか。」しかし、息子たちは父の言うことを聞こうとしなかった。主が彼らを死なせようとしておられたからだ。
2:26 少年サムエルはますます成長し、主にも人々にも愛された。
2:27 一人の神の人がエリのところに来て、こう言った。「主はこう言われる。『あなたの先祖の家がエジプトでファラオの家にいたとき、わたしは彼らにはっきりと姿を現したではないか。
2:28 わたしはイスラエルの全部族の中から彼を選び、わたしの祭司とした。わたしの祭壇に上って香をたき、わたしの前でエポデを身に着けるためだ。そして、イスラエルの人々がささげる火のいけにえをすべて、あなたの先祖の家に与えた。
2:29 それなのに、なぜあなたがたは、わたしが住まいで命じたいけにえとささげ物を踏みつけるのか。なぜあなたは、わたしよりも自分の息子たちを重んじ、わたしの民イスラエルのささげ物の最も良い部分で、自分たちを太らせるのか。』
2:30 だから、イスラエルの神、主はこう言われる。わたしは確かに、あなたの家とあなたの先祖の家が、いつまでもわたしの前を歩むと言った。しかし今、主はこう言われる。断じてそうはしない。わたしを重んじる者を、わたしは重んじる。わたしを軽んじる者は、軽んじられる。
2:31 見よ、その日が来る。わたしはあなたの力と、あなたの先祖の家の力を断ち切る。あなたの家には、年老いるまで生きる者がいなくなる。
2:32 あなたは、神がイスラエルに与えるすべての恵みのただ中で、住まいの苦しみを見ることになる。あなたの家には、いつまでも年老いるまで生きる者がいなくなる。
2:33 わたしがあなたの家の者を、わたしの祭壇から絶やさずに残すことがあっても、それはあなたの目を泣き枯らし、あなたの魂を嘆かせるためだ。あなたの家に生まれる者はみな、働き盛りで死ぬ。
2:34 あなたの二人の息子、ホフニとピネハスの身に起こることが、あなたへのしるしとなる。二人は同じ日に死ぬ。
2:35 わたしは自分のために、忠実な祭司を立てる。彼はわたしの心と思いのままに行う。わたしは彼のために揺るがない家を建てる。彼はいつまでも、わたしが油を注いだ者の前を歩む。
2:36 あなたの家に残った者はみな、彼のところに来て、わずかな銀一枚とパン一切れのためにひれ伏す。そして言う。『どうか、わたしを祭司の務めのどれかに加えてください。パンにありつけるように』と。」
3:1 少年サムエルは、エリのもとで主に仕えていた。その頃、主の言葉はまれで、幻もほとんど見られなかった。
3:2 ある日のことだった。エリは自分の場所で横になっていた。彼の目はかすみ始め、もう見えなくなっていた。
3:3 神のともし火は、まだ消えていなかった。サムエルは、神の箱が置かれている主の神殿で横になっていた。
3:4 そのとき、主はサムエルを呼ばれた。サムエルは「はい、ここにいます」と答えた。
3:5 そしてエリのところに走って行き、「はい、呼ばれたので来ました」と言った。でもエリは「わたしは呼んでいない。戻って、もう一度おやすみ」と言った。サムエルは戻って横になった。
3:6 主はもう一度、「サムエル」と呼ばれた。サムエルは起きてエリのところに行き、「はい、呼ばれたので来ました」と言った。エリは「わたしは呼んでいないよ、わが子よ。戻って、もう一度おやすみ」と言った。
3:7 サムエルはまだ主を知らなかった。主の言葉が彼に示されたこともまだなかった。
3:8 主は三度目にまた、「サムエル」と呼ばれた。サムエルは起きてエリのところに行き、「はい、呼ばれたので来ました」と言った。それでエリは、主がこの子を呼んでいるのだと気づいた。
3:9 エリはサムエルに言った。「戻っておやすみ。もしまた呼ばれたら、『主よ、お話しください。しもべは聞いています』と言いなさい。」サムエルは戻って、自分の場所に横になった。
3:10 すると主が来て、そこに立ち、これまでと同じように、「サムエル、サムエル」と呼ばれた。サムエルは答えた。「お話しください。しもべは聞いています。」
3:11 主はサムエルに言われた。「見よ、わたしはイスラエルで一つのことをしようとしている。それを聞く者はみな、両方の耳が鳴るほど驚くだろう。
3:12 その日、わたしはエリの家について語ったことを、初めから終わりまで、すべてそのとおりに行う。
3:13 わたしは彼に告げていた。彼の息子たちが自らに罰を招くことをしているのを彼は知っていながら、それを止めさせなかった。その罪のために、わたしは彼の家をいつまでも裁く。
3:14 だからわたしはエリの家に誓った。エリの家の罪は、いけにえによっても、ささげ物によっても、いつまでも償われることはない。」
3:15 サムエルは朝まで横になっていた。そして主の家の扉を開けた。でもサムエルは、この幻をエリに伝えるのが怖かった。
3:16 エリはサムエルを呼んで言った。「サムエル、わが子よ。」サムエルは「はい、ここにいます」と答えた。
3:17 エリは言った。「主はあなたに何を言われたのか。どうか、わたしに隠さないでくれ。もし言われたことを一つでも隠したら、神があなたを厳しく罰してくださるように。」
3:18 そこでサムエルは、何も隠さず、すべてを彼に話した。エリは言った。「その方は主だ。主が良いと思われることをなさるように。」
3:19 サムエルは成長していった。主が彼と共におられ、彼の語る言葉を一つも無駄にされることはなかった。
3:20 ダンからベエル・シェバまで、イスラエルのすべての人が、サムエルは主の預言者として確かに立てられた者だと知った。
3:21 その後も主はシロで姿を現し続けた。主がシロで、御言葉によってサムエルにご自分を示されたからだ。
4:1 こうしてサムエルの言葉は、イスラエル全体に届いた。イスラエルはペリシテ人と戦うために出て行き、エベン・エゼルのそばに陣を敷いた。ペリシテ人はアフェクに陣を敷いた。
4:2 ペリシテ人はイスラエルに向かって陣を構えた。戦いが広がると、イスラエルはペリシテ人に打ち負かされ、戦場でおよそ四千人が討ち取られた。
4:3 民が陣営に戻ると、イスラエルの長老たちは言った。「なぜ主は今日、わたしたちをペリシテ人の前で打ち負かされたのか。シロから主の契約の箱をここに運んで来よう。それがわたしたちのところに来れば、敵の手から救ってくれるだろう。」
4:4 そこで民はシロに人を送り、ケルビムの上に座す万軍の主の契約の箱を、そこから運んで来た。エリの二人の息子、ホフニとピネハスも、神の契約の箱と共にそこにいた。
4:5 主の契約の箱が陣営に着くと、イスラエルはみな大きな歓声を上げ、その響きで地がどよめいた。
4:6 ペリシテ人はその歓声を聞いて言った。「ヘブライ人の陣営から聞こえるこの大きな歓声は、いったい何だろう。」そして、主の箱が陣営に来たことを知った。
4:7 ペリシテ人は恐れて言った。「神が陣営に来てしまった」と思ったからだ。そして彼らは言った。「ああ、わたしたちはもうおしまいだ。こんなことは、これまで一度もなかった。」
4:8 「ああ、もうだめだ。だれがこの力ある神々の手から、わたしたちを救い出せるだろう。荒れ野でエジプトをありとあらゆる災いで打った、あの神々なのだ。」
4:9 「ペリシテ人よ、強くあれ。男らしくあれ。さもないと、ヘブライ人がこれまでわたしたちに仕えてきたように、今度はわたしたちが彼らに仕えることになる。男らしく、戦え。」
4:10 こうしてペリシテ人は戦い、イスラエルは打ち負かされ、それぞれ自分の天幕へと逃げた。討たれた者はきわめて多く、イスラエルの歩兵三万人が倒れた。
4:11 神の箱は奪われ、エリの二人の息子ホフニとピネハスも死んだ。
4:12 一人のベニヤミン人が戦場から走り、その日のうちにシロにやって来た。服は引き裂かれ、頭には土をかぶっていた。
4:13 彼が着くと、エリは道のわきの席に座って、見張っていた。神の箱のことで、心が震えていたのだ。その男が町に着いて知らせると、町中が叫び声をあげた。
4:14 エリはその叫び声を聞いて言った。「このざわめきは、いったい何の声だ。」男は急いでやって来て、エリに告げた。
4:15 エリは九十八歳で、目はかすんで、もう見えなくなっていた。
4:16 男はエリに言った。「わたしは戦場から来た者です。今日、そこから逃げて来ました。」エリは言った。「わが子よ、何があったのか。」
4:17 その知らせを持って来た者は答えた。「イスラエルはペリシテ人の前から逃げ、民のうちに多くの死者が出ました。あなたの二人の息子、ホフニとピネハスも死に、神の箱も奪われました。」
4:18 彼が神の箱のことを口にしたとたん、エリは門のわきで席から後ろに倒れ、首を折って死んだ。年老いて、体が重かったからである。エリは四十年の間、イスラエルを治めていた。
4:19 彼の嫁、ピネハスの妻は身ごもっていて、もうすぐ出産するところだった。彼女は、神の箱が奪われ、しゅうとと夫が死んだという知らせを聞いた。すると急に産気づき、体をかがめて子を産んだ。
4:20 彼女が死にかけているとき、そばにいた女たちが言った。「恐れることはない。男の子が生まれたのよ。」でも彼女は答えず、心を留めなかった。
4:21 彼女はその子をイカボドと名づけて言った。「栄光はイスラエルを去った。」神の箱が奪われ、しゅうとと夫が死んだからである。
4:22 そして彼女は言った。「栄光はイスラエルを去った。神の箱が奪われたからだ。」
5:1 ペリシテ人は神の箱を奪い、エベン・エゼルからアシュドドへ運んで行った。
5:2 ペリシテ人は神の箱を取り、ダゴンの神殿に運び入れて、ダゴンのわきに置いた。
5:3 翌朝、アシュドドの人々が早く起きてみると、ダゴンが主の箱の前で、うつ伏せに地に倒れていた。彼らはダゴンを起こして、元の場所に戻した。
5:4 その次の朝も早く起きてみると、ダゴンはまた主の箱の前で、うつ伏せに地に倒れていた。しかも、ダゴンの頭と両手のひらは切り取られて敷居の上にあり、胴体だけが残っていた。
5:5 そのため、ダゴンの神官たちも、ダゴンの神殿に入る者もみな、今日に至るまで、アシュドドにあるダゴンの敷居を踏まない。
5:6 主の手がアシュドドの人々に重くのしかかった。主は彼らを荒れ果てさせ、アシュドドとその周辺の人々を腫れ物で打たれた。
5:7 アシュドドの人々は、こうした成り行きを見て言った。「イスラエルの神の箱を、わたしたちのところに置いておくわけにはいかない。神の手が、わたしたちにも、わたしたちの神ダゴンにも、重くのしかかっているのだから。」
5:8 そこで彼らは使いを送り、ペリシテ人の領主たちをみな呼び集めて言った。「イスラエルの神の箱を、どうしたらいいだろう。」すると領主たちは言った。「イスラエルの神の箱をガトへ移そう。」こうして人々は、イスラエルの神の箱を移した。
5:9 ところが、箱を移したあとで、主の手がその町に下り、とても大きな混乱が起こった。主は町の人々を、身分の低い者から高い者まで打たれ、彼らの体には腫れ物ができた。
5:10 そこで人々は、神の箱をエクロンへ送った。ところが、神の箱がエクロンに着くと、エクロンの人々は叫んで言った。「わたしたちと民を殺すために、イスラエルの神の箱をこちらに移してきたのか。」
5:11 彼らは使いを送り、ペリシテ人の領主たちをみな呼び集めて言った。「イスラエルの神の箱を送り返し、元の場所に戻してくれ。そうすれば、わたしたちも民も死なずにすむ。」町中に死の混乱が広がり、神の手がそこに非常に重くのしかかっていたからである。
5:12 死なずにすんだ人々も腫れ物で打たれ、町の叫びは天にまで上っていった。
6:1 主の箱は、七か月の間、ペリシテ人の地にあった。
6:2 ペリシテ人は祭司たちと占い師たちを呼んで言った。「主の箱を、どうしたらいいだろう。どうやって元の場所に送り返せばよいか、教えてくれ。」
6:3 彼らは言った。「イスラエルの神の箱を送り返すなら、何もつけずに送り返してはいけない。必ず、罪の償いの供え物を添えて返しなさい。そうすれば、あなたたちは癒やされ、なぜ神の手があなたたちから離れないのかも分かるだろう。」
6:4 「では、返すべき償いの供え物とは何か」と尋ねると、彼らは答えた。「ペリシテ人の領主の数に合わせて、金の腫れ物を五つ、金のねずみを五つだ。同じ一つの災いが、あなたたち全員と領主たちの上に下ったのだから。
6:5 あなたたちの腫れ物の形と、地を荒らすねずみの形を作り、イスラエルの神をあがめなさい。そうすれば、神はあなたたちからも、あなたたちの神々からも、あなたたちの地からも、その手を軽くしてくださるかもしれない。
6:6 どうしてあなたたちは、エジプトとファラオが心をかたくなにしたように、自分の心をかたくなにするのか。神が彼らを厳しく扱ったとき、彼らはついに民を去らせ、民は出て行ったではないか。」
6:7 だから、新しい荷車を一台用意しなさい。それに、まだ一度もくびきをつけたことのない乳牛を二頭つなぐ。そして、その子牛たちは母牛から引き離して、小屋に戻しておきなさい。
6:8 主の箱を取って、その荷車に載せる。償いとして返す金の品々は、箱のわきに別の入れ物を置いて、その中に入れなさい。それから荷車を送り出して、行くにまかせるのだ。
6:9 そして、よく見ているといい。もし箱が自分の国の方へ、ベテ・シェメシュへの道を上って行くなら、この大きな災いをわたしたちに下したのは、あの神だ。でも、そうでなければ、わたしたちを打ったのはあの神の手ではなく、たまたま起きたことだったとわかる。」
6:10 人々はそのとおりにした。乳牛を二頭連れてきて荷車につなぎ、その子牛たちは小屋に閉じ込めておいた。
6:11 そして主の箱を荷車に載せ、金のねずみと腫れ物の形を入れた入れ物も、いっしょに載せた。
6:12 すると牛たちは、ベテ・シェメシュへの道をまっすぐ進んで行った。鳴きながら一本の街道をたどり、右にも左にもそれなかった。ペリシテ人の領主たちは、ベテ・シェメシュの境まで牛のあとについて行った。
6:13 そのころ、ベテ・シェメシュの人々は谷で小麦の刈り入れをしていた。ふと目を上げると、あの箱が見えた。彼らはそれを見て喜んだ。
6:14 荷車は、ベテ・シェメシュの人ヨシュアの畑まで来て、そこで止まった。そこには大きな石があった。人々は荷車の木を割ってたきぎにし、牛を焼き尽くすいけにえとして主にささげた。
6:15 レビ人たちは主の箱を降ろし、その横にあった金の品々の入った入れ物もいっしょに降ろして、あの大きな石の上に置いた。ベテ・シェメシュの人々は、その日、焼き尽くすいけにえをささげ、ほかのいけにえもいくつか主にささげた。
6:16 ペリシテ人の五人の領主は、これを見届けると、その日のうちにエクロンへ帰って行った。
6:17 ペリシテ人が償いとして主に返した金の腫れ物は、次のとおりである。アシュドドのために一つ、ガザのために一つ、アシュケロンのために一つ、ガテのために一つ、エクロンのために一つ。
6:18 金のねずみは、五人の領主に属するペリシテ人の全部の町の数に合わせて作られた。城壁のある町から城壁のない村まで、すべての町の分である。彼らが主の箱を置いたあの大きな石は、今日もベテ・シェメシュの人ヨシュアの畑にあって、その証しとなっている。
6:19 ところが主は、ベテ・シェメシュの人々を打たれた。彼らが主の箱の中をのぞき込んだからである。主は民のうち七十人を打たれた。それで民は、主がこれほど大きな打撃を与えられたことを嘆き悲しんだ。
6:20 ベテ・シェメシュの人々は言った。「この聖なる神、主の前に、いったいだれが立てるだろう。わたしたちのところから、主はどこへ移って行かれるのか。」
6:21 そこで彼らはキルヤト・エアリムの住民のところに使いを送って言った。「ペリシテ人が主の箱を返してきました。下って来て、あなたがたのところへ運び上げてください。」
7:1 キルヤト・エアリムの人々がやって来て、主の箱を運び上げ、丘の上のアビナダブの家に運び入れた。そして、その子エルアザルを聖別して、主の箱を守らせた。
7:2 箱がキルヤト・エアリムに置かれてから、長い年月がたち、二十年になった。イスラエルの人々はみな、主を慕い求めて嘆いた。
7:3 そのとき、サムエルはイスラエルのすべての人々に言った。「もしあなたがたが心のすべてを尽くして主に立ち帰るなら、よその神々やアシュタロテを自分たちの中から取り除きなさい。心を定めて主に向かい、ただ主だけに仕えなさい。そうすれば、主はあなたがたをペリシテ人の手から救い出してくださる。」
7:4 そこでイスラエルの人々は、バアルの神々やアシュタロテを取り除き、ただ主だけに仕えた。
7:5 サムエルは言った。「イスラエルをみなミツパに集めなさい。わたしはあなたがたのために主に祈ろう。」
7:6 人々はミツパに集まり、水をくんで主の前に注ぎ、その日は断食した。そしてそこで、「わたしたちは主に対して罪を犯しました」と言った。こうしてサムエルは、ミツパでイスラエルの人々をさばいた。
7:7 ペリシテ人は、イスラエルの人々がミツパに集まったと聞いた。すると、ペリシテの領主たちがイスラエルに攻め上ってきた。イスラエルの人々はそれを聞いて、ペリシテ人を恐れた。
7:8 そしてイスラエルの人々はサムエルに言った。「わたしたちの神、主に叫び続けてください。どうかやめないで、わたしたちのために祈ってください。主がわたしたちをペリシテ人の手から救ってくださるように。」
7:9 そこでサムエルは、乳を飲んでいる子羊を一頭取り、丸ごと焼き尽くすいけにえとして主にささげた。そしてサムエルはイスラエルのために主に叫び求めた。すると主は答えてくださった。
7:10 サムエルがいけにえをささげているとき、ペリシテ人はイスラエルと戦おうと近づいてきた。しかしその日、主はペリシテ人の上に大きな雷を鳴りとどろかせ、彼らを混乱させた。彼らはイスラエルの前で打ち破られた。
7:11 イスラエルの人々はミツパから出てペリシテ人を追い、ベテ・カルの下のあたりまで彼らを打ち倒した。
7:12 サムエルは一つの石を取り、ミツパとシェンの間に置いて、それをエベン・エゼル（助けの石）と名づけた。そして、「ここまで主がわたしたちを助けてくださった」と言った。
7:13 こうしてペリシテ人は屈服し、二度とイスラエルの領地に攻め込んでこなかった。サムエルの生きているあいだ、主の手はずっとペリシテ人に対して働いた。
7:14 ペリシテ人がイスラエルから奪っていた町々は、エクロンからガテまで、イスラエルに返された。イスラエルはその周辺の地も、ペリシテ人の手から取り返した。そしてイスラエルとアモリ人の間には平和があった。
7:15 サムエルは生きているかぎり、ずっとイスラエルをさばいた。
7:16 彼は毎年、ベテルとギルガル、そしてミツパを巡り、それらすべての場所でイスラエルをさばいた。
7:17 それから彼はラマに帰った。そこに彼の家があったからだ。彼はそこでもイスラエルをさばき、また、そこに主のための祭壇を築いた。
8:1 サムエルは年をとると、自分の息子たちをイスラエルの裁判官にした。
8:2 長男はヨエル、次男はアビヤという名で、二人はベエル・シェバで裁判官を務めた。
8:3 でも息子たちは父の生き方には従わなかった。お金もうけに走り、わいろを受け取って、裁判を曲げたのだ。
8:4 そこでイスラエルの長老たちがみな集まり、ラマにいるサムエルのところへやって来た。
8:5 そして彼に言った。「あなたは年をとり、息子さんたちもあなたのようには歩んでいません。だから、ほかのどの国もそうしているように、わたしたちを治める王を立ててください。」
8:6 「わたしたちを治める王を立ててほしい」という彼らの言葉を、サムエルは悪いことだと思った。それでサムエルは主に祈った。
8:7 すると主はサムエルに言われた。「民が言うことすべてに耳を貸しなさい。彼らが退けたのはあなたではない。王として認めようとしないのは、このわたしなのだ。
8:8 わたしが彼らをエジプトから導き出した日から今日まで、彼らはずっと同じことをしてきた。わたしを捨て、ほかの神々に仕えてきたのだ。今、彼らはあなたにも同じことをしている。
8:9 だから、彼らの言うことを聞きなさい。ただし、はっきりと警告し、自分たちを治める王がどんなやり方をするのかを教えてやりなさい。」
8:10 サムエルは、王を求めてきた民に、主の言葉をすべて伝えた。
8:11 そして言った。「あなたたちを治める王のやり方はこうだ。王はあなたたちの息子を取り上げ、自分の戦車や騎兵にし、戦車の前を走らせる。
8:12 また、千人隊の長や五十人隊の長に任命し、王の畑を耕させ、刈り入れをさせ、武器や戦車の装備を作らせる。
8:13 王はあなたたちの娘を取り上げ、香油を作らせ、料理をさせ、パンを焼かせる。
8:14 また、あなたたちの畑やぶどう畑、オリーブ畑の一番良いものを取り上げ、自分の家来に与える。
8:15 穀物やぶどうの収穫から十分の一を取り立て、役人や家来に与える。
8:16 あなたたちの男女の奴隷や、一番良い若者、そしてろばを取り上げ、自分の仕事に使う。
8:17 羊の群れからも十分の一を取り立てる。そしてあなたたち自身も、王の奴隷になるのだ。
8:18 その日になって、あなたたちは自分で選んだ王のことで泣き叫ぶ。でも、主はその日、あなたたちに答えてはくださらない。」
8:19 それでも民は、サムエルの言うことを聞き入れようとしなかった。そして言った。「いや、どうしても王がほしい。わたしたちを治める王が。
8:20 わたしたちも、ほかのすべての国々のようになりたいのだ。王がわたしたちを治め、先頭に立って進み、わたしたちの戦いを戦ってくれる。」
8:21 サムエルは民の言葉をすべて聞き、それを主に伝えた。
8:22 すると主はサムエルに言われた。「彼らの言うとおりにして、王を立ててやりなさい。」サムエルはイスラエルの人々に言った。「それぞれ自分の町へ帰りなさい。」
9:1 ベニヤミン族に、キシュという名の男がいた。キシュはアビエルの子で、アビエルはツェロルの子、ツェロルはベコラトの子、ベコラトはアフィアの子だった。アフィアはベニヤミンの人で、キシュは力のある有力者だった。
9:2 キシュには息子がいた。名前はサウルといい、若くて見た目のよい青年だった。イスラエルの人々の中に、彼ほど見た目のよい者はいなかった。背が高く、ほかのだれもが彼の肩までしか届かなかった。
9:3 ある日、サウルの父キシュの雌ロバがいなくなった。キシュは息子のサウルに言った。「使用人を一人連れて、ロバを探しに行ってくれ。」
9:4 サウルはエフライムの山地を通り、シャリシャの地を通ったが、ロバは見つからなかった。シャアリムの地も通ってみたが、そこにもいなかった。ベニヤミンの地も通ったが、やはり見つからなかった。
9:5 ツフの地まで来たとき、サウルは連れていた使用人に言った。「もう帰ろう。このままだと、父さんはロバのことより、わたしたちのことを心配し始めてしまう。」
9:6 すると使用人は答えた。「待ってください。この町には神の人がいます。とても尊敬されている人で、その人が言うことは、みんな必ずそのとおりになるんです。だから、そこへ行ってみましょう。もしかしたら、これから進む道を教えてくれるかもしれません。」
9:7 サウルは使用人に言った。「でも、行くとしても、その人に何を持っていけばいいんだ。袋の中のパンはもうないし、神の人に渡す贈り物もない。何か持っているか。」
9:8 使用人はもう一度サウルに答えた。「ここに銀貨が四分の一シェケルあります。これを神の人に渡しましょう。そうすれば、進む道を教えてくれるはずです。」
9:9 昔、イスラエルでは、神に尋ねようとする人はこう言ったものだ。「さあ、先見者のところへ行こう。」今、預言者と呼ばれている人が、昔は先見者と呼ばれていたのだ。
9:10 サウルは使用人に言った。「それはいい。さあ、行こう。」こうして二人は、神の人がいる町へ向かった。
9:11 二人が町へ上る坂を登っていくと、水をくみに出てきた娘たちに出会った。二人は娘たちに尋ねた。「先見者はここにいますか。」
9:12 娘たちは答えた。「います。ほら、すぐ先にいますよ。急いでください。今日はちょうど町に来ていて、高台で民のためのいけにえの儀式があるんです。」
9:13 「町に入れば、すぐに彼が見つかるでしょう。ちょうど食事をしに高台へ上る前です。彼が来るまで、人々は食べ始めません。彼がいけにえを祝福してから、招かれた人たちが食べるんです。だから急いで上ってください。今ならちょうど会えますよ。」
9:14 そこで二人は町へ上っていった。町の中へ入ろうとしたそのとき、ちょうど高台へ上ろうとするサムエルが、二人のほうへ出てきた。
9:15 実は主は、サウルが来る一日前に、サムエルにこう告げていた。
9:16 「明日の今ごろ、わたしはベニヤミンの地から一人の男をあなたのもとへ送る。あなたはその人に油を注ぎ、わたしの民イスラエルの指導者に立てなさい。彼はわたしの民をペリシテ人の手から救い出す。わたしは自分の民に目を留めた。彼らの叫びがわたしのもとに届いたからだ。」
9:17 サムエルがサウルを見たとき、主は彼に告げた。「見よ、わたしが話しておいた男だ。この人がわたしの民を治めることになる。」
9:18 サウルは門の中でサムエルに近づき、こう尋ねた。「先見者の家はどこか、教えてください。」
9:19 サムエルはサウルに答えた。「わたしがその先見者だ。わたしの先に立って高台へ上りなさい。今日はわたしと一緒に食事をしてほしい。明日の朝には送り出そう。あなたの心にあることは、すべて話してあげよう。
9:20 三日前にいなくなったろばのことは、もう気にしなくていい。もう見つかったのだから。それに、イスラエルが待ち望むものはすべて、だれのものになると思う。あなたと、あなたの父の家のすべての人のものではないか。」
9:21 サウルは答えた。「わたしはベニヤミン人で、イスラエルの部族の中でいちばん小さな部族の出です。しかもわたしの家族は、ベニヤミン部族のどの家族よりも小さいのです。それなのに、どうしてわたしにそんなことを言うのですか。」
9:22 サムエルはサウルとその使用人を広間へ連れて行き、招かれた人たちの中でいちばん上の席に座らせた。招かれた客は三十人ほどだった。
9:23 サムエルは料理人に言った。「あなたに渡して、取り分けておくようにと言っておいた肉を持ってきてくれ。」
9:24 料理人はもも肉と、その上にのっているものを取り上げ、サウルの前に置いた。サムエルは言った。「ほら、あなたのために取っておいたものだ。さあ、あなたの前に置いて食べなさい。『民を招いた』と決めたときから、この時のために取っておいたのだから。」こうしてサウルは、その日サムエルと一緒に食事をした。
9:25 彼らは高台の聖所から町へ下りて行った。そしてサムエルは屋上でサウルと語り合った。
9:26 翌朝、二人は早く起きた。夜明けの頃、サムエルは屋上にいるサウルに呼びかけた。「起きなさい。あなたを送り出そう。」サウルは起き上がり、二人、サウルとサムエルは連れ立って外へ出た。
9:27 町のはずれまで下りて来たとき、サムエルはサウルに言った。「使用人に、先に行くように言いなさい。」使用人が先に行くと、サムエルは続けた。「あなたはここに立ち止まっていなさい。神の言葉を聞かせよう。」
10:1 それからサムエルは油の入った小さな壺を取り、サウルの頭に油を注ぎ、彼に口づけして言った。「主があなたに油を注ぎ、ご自分の民を治める指導者となさったのだ。
10:2 きょう、あなたがわたしのもとを離れて行くと、ベニヤミンの領地のツェルツァ、ラケルの墓のそばで二人の人に出会う。その人たちはあなたにこう言うだろう。『あなたが探しに行ったろばは見つかりました。あなたの父上はもうろばのことは気にかけず、あなたたちのことを心配して、「息子のために何をしてやれるだろう」と言っています。』
10:3 あなたはそこからさらに進み、タボルの樫の木のところまで来る。すると、ベテルにいる神のもとへ上って行く三人の人に出会う。一人は子やぎを三頭、一人はパンを三つ、一人はぶどう酒の革袋を一つ持っている。
10:4 その人たちはあなたにあいさつし、パンを二つ差し出す。あなたはそれを受け取りなさい。
10:5 そのあと、あなたは神の丘へ着く。そこにはペリシテ人の守備隊がいる。町に入ると、あなたは高台の聖所から下りて来る預言者の一団に出会う。彼らの先頭では琴や太鼓、笛や竪琴が奏でられ、預言者たちは預言を語っている。
10:6 すると、主の霊があなたに激しく降り、あなたも彼らと一緒に預言を語りだす。そしてあなたは別人のように変えられる。
10:7 これらのしるしがあなたに起こったら、そのときに応じて自分がすべきことをしなさい。神があなたと共にいるからだ。
10:8 あなたはわたしより先にギルガルへ下って行きなさい。わたしもあなたのところへ下って行く。焼き尽くすいけにえをささげ、和解のいけにえをささげるためだ。わたしが行くまで、七日のあいだ待っていなさい。そこであなたのすべきことを教える。」
10:9 サウルがサムエルのもとを去ろうと背を向けたとき、神は彼に新しい心を与えられた。そしてこれらのしるしは、みなその日のうちに起こった。
10:10 彼らがギブアに着くと、預言者の一団が彼を迎えた。すると神の霊がサウルに激しく降り、彼も彼らの中で預言を語りだした。
10:11 以前から彼を知っていた人たちはみな、彼が預言者たちと一緒に預言を語っているのを見た。人々は互いに言い合った。「キシュの息子にいったい何が起きたんだ。サウルも預言者の仲間なのか。」
10:12 すると、その場にいた一人がこう言い返した。「じゃあ、彼らの父親は誰なんだ。」こうして「サウルも預言者の仲間なのか」ということわざが生まれた。
10:13 サウルは預言を語り終えると、高台の聖所へ上って行った。
10:14 サウルのおじが、サウルとその若者に言った。「どこへ行っていたのか。」サウルは答えた。「ろばを探しにです。でも見つからなかったので、サムエルのところへ行きました。」
10:15 おじは言った。「サムエルが何と言ったのか、ぜひ話してくれ。」
10:16 サウルはおじに答えた。「ろばは見つかったと、はっきり教えてくれました。」しかし、サムエルが話した王位のことは、おじに告げなかった。
10:17 サムエルは民をミツパに呼び集め、主の前に立たせた。
10:18 そしてイスラエルの人々に言った。「イスラエルの神、主はこう言われる。わたしはイスラエルをエジプトから導き出し、あなたたちをエジプトの手から、またあなたたちを苦しめるすべての国々の手から救い出した。
10:19 でも、あなたたちは今日、自分たちの神を捨てた。あらゆる災いや苦しみからあなたたちを救ってきた神を、だ。そして神に、『いいえ、わたしたちの上に王を立ててください』と言った。だから今、部族ごと、氏族ごとに、主の前に出なさい。」
10:20 サムエルがイスラエルのすべての部族を進み出させると、くじでベニヤミン族が選ばれた。
10:21 続いてベニヤミン族を氏族ごとに進み出させると、マトリの氏族が選ばれた。そしてキシュの子サウルが選ばれた。しかし、みんなで捜しても、彼は見つからなかった。
10:22 そこで人々は、もう一度主に尋ねた。「あの人はもうここに来ているのですか。」主は答えられた。「見よ、彼は荷物の間に隠れている。」
10:23 人々は走って行き、そこから彼を連れ出した。サウルが民の中に立つと、彼は肩から上の分だけ、ほかのだれよりも背が高かった。
10:24 サムエルはすべての民に言った。「主が選ばれたこの人を見なさい。民の中に、この人のような者はいない。」すると民はみな歓声を上げ、「王様、万歳」と叫んだ。
10:25 サムエルは王としての決まりを民に語り、それを書物に書き記して、主の前に納めた。そしてサムエルは民をみな、それぞれの家に帰らせた。
10:26 サウルもまた、ギブアの自分の家に帰った。神に心を動かされた勇士たちも、彼と一緒に行った。
10:27 しかし、ならず者たちは「こんな男が、どうやってわたしたちを救えるのか」と言った。彼らはサウルを見下し、贈り物も持って来なかった。けれども、サウルは黙っていた。
11:1 アンモン人のナハシュが攻め上ってきて、ヤベシュ・ギルアデを包囲した。ヤベシュの人たちはみなナハシュに言った。「わたしたちと条約を結んでください。そうすれば、あなたに従います。」
11:2 でもアンモン人のナハシュはこう答えた。「一つ条件がある。おまえたち全員の右目をえぐり出させてもらう。それでイスラエル全体に恥をかかせるのだ。それを飲むなら条約を結ぼう。」
11:3 ヤベシュの長老たちは言った。「七日間だけ待ってくれ。その間にイスラエル全土に使者を送る。もし誰もわたしたちを助けに来なければ、あなたのところへ降参して出ていく。」
11:4 使者たちはサウルの町ギブアに来て、この話を人々に伝えた。すると人々はみな声をあげて泣いた。
11:5 ちょうどそのとき、サウルは畑から牛を追って帰ってきた。サウルは言った。「みんな、どうして泣いているんだ。」人々はヤベシュの人たちの話をサウルに伝えた。
11:6 その話を聞いたとき、神の霊がサウルに激しく降った。サウルは怒りに燃えた。
11:7 彼は一組の牛を取って切り分け、使者たちに持たせてイスラエル全土に送り、こう言わせた。「サウルとサムエルのあとに従って出てこない者は、その牛もこうされる。」主への恐れが人々を包み、彼らは一人残らず立ち上がった。
11:8 サウルがベゼクで人数を数えると、イスラエルの兵は三十万人、ユダの兵は三万人だった。
11:9 彼らは来ていた使者たちに言った。「ヤベシュ・ギルアデの人たちにこう伝えよ。『明日、日が高くのぼるころには、あなたたちは救われる。』」使者たちが戻ってヤベシュの人たちにそれを告げると、みんな喜んだ。
11:10 そこでヤベシュの人たちはアンモン人に言った。「明日、あなたたちのところへ出ていく。そうしたら、あなたたちの好きなようにしてくれていい。」
11:11 翌日、サウルは兵を三つの部隊に分けた。夜明け前に敵の陣営に攻め込み、日が高くなるまでアンモン人を討った。生き残った者は散り散りになり、二人一緒にいる者さえいなくなった。
11:12 そこで人々はサムエルに言った。「『サウルがわたしたちの王になるものか』と言ったのは誰だ。その者たちを引き出してくれ。殺してやる。」
11:13 サウルは言った。「今日は誰一人殺してはならない。今日、主がイスラエルを救ってくださったのだから。」
11:14 サムエルは人々に言った。「さあ、ギルガルへ行こう。そこで改めて王を立てよう。」
11:15 そこで民はみなギルガルへ行った。そして主の前で、そこでサウルを王とした。彼らは主の前で和解のいけにえをささげ、サウルとイスラエルの人々はみな、大いに喜んだ。
12:1 サムエルはイスラエルのすべての人に言った。「見なさい、わたしはあなたたちの言うことをすべて聞き入れ、あなたたちの上に王を立てた。
12:2 今、その王があなたたちの先頭に立っている。わたしはもう年老いて、髪も白くなった。息子たちもあなたたちと共にいる。わたしは若いころから今日まで、あなたたちの先頭に立って歩んできた。
12:3 さあ、わたしはここにいる。主の前で、そして主が油を注がれた王の前で、わたしについて証言してくれ。わたしは誰の牛を取っただろうか。誰のろばを取っただろうか。誰かをだましたか。誰かを虐げたか。誰かの手から賄賂を受け取り、見て見ぬふりをしたか。もしそうなら、あなたたちに返そう。」
12:4 人々は答えた。「あなたはわたしたちをだましたことも、虐げたこともない。誰の手から何かを取ったこともない。」
12:5 サムエルは言った。「今日、主があなたたちに対する証人だ。主が油を注がれた王も証人だ。あなたたちはわたしの手に何も見いだせなかった。」人々は答えた。「そのとおり、主が証人です。」
12:6 サムエルは民に言った。「モーセとアロンを立て、あなたたちの先祖をエジプトの地から導き上ったのは、主だ。
12:7 だから今、ここに立ちなさい。主の前で、あなたたちに問いただそう。主があなたたちと、あなたたちの先祖のためにしてくださった、正しい行いのすべてについてだ。
12:8 ヤコブがエジプトに行ったとき、あなたたちの先祖は主に助けを求めて叫んだ。すると主はモーセとアロンを送り、二人はあなたたちの先祖をエジプトから導き出して、この地に住まわせた。
12:9 ところが人々は、自分たちの神である主を忘れてしまった。それで主は彼らを、ハツォルの軍の司令官シセラの手に、そしてペリシテ人の手に、モアブの王の手に売り渡された。彼らはあなたたちの先祖と戦った。
12:10 そこで人々は主に助けを求めて叫び、こう言った。『わたしたちは罪を犯しました。主を捨てて、バアルやアシュタロテの神々に仕えてしまいました。でも今、敵の手から救い出してください。そうすれば、わたしたちはあなたに仕えます。』
12:11 すると主は、エルバアル、ベダン、エフタ、そしてサムエルを送り、周りの敵の手からあなたたちを救い出してくださった。それであなたたちは安心して暮らせるようになった。
12:12 ところが、アンモン人の王ナハシュが攻めてくるのを見ると、あなたたちはわたしに言った。『いやだ、わたしたちを治める王がほしい』と。あなたたちの神である主が、あなたたちの王であったのに。
12:13 だから今、あなたたちが選び、求めた王がここにいる。見なさい、主はあなたたちの上に王を立ててくださった。
12:14 もしあなたたちが主を敬い、主に仕え、その声に聞き従い、主の命令にそむかないなら、あなたたちも、あなたたちを治める王も、あなたたちの神である主に従っていくことになる。
12:15 しかし、もし主の声に聞き従わず、主の命令にそむくなら、主の手は、かつて先祖に下ったように、あなたたちの上に下るだろう。
12:16 さあ、ここに立って、主が今、あなたたちの目の前でなさる大きなことを見なさい。
12:17 今は小麦の刈り入れの時だろう。わたしが主に呼びかければ、主は雷と雨を送られる。それを見れば、王を求めたことが、主の目にどれほど大きな悪だったか、あなたたちにも分かるはずだ。」
12:18 サムエルが主に呼びかけると、主はその日、雷と雨を送られた。民はみな、主とサムエルをひどく恐れた。
12:19 民はみなサムエルに言った。「あなたの神、主に、わたしたちのために祈ってください。死なずにすむように。王を求めたことで、わたしたちは今までの罪の上に、さらに悪を重ねてしまいました。」
12:20 サムエルは民に言った。「恐れなくていい。あなたたちは、この悪をすべて行った。それでも、主から離れてはいけない。心を尽くして主に仕えなさい。
12:21 主から離れて、むなしいものを追ってはいけない。それは何の役にも立たず、あなたたちを救うこともできない。ただむなしいものだからだ。
12:22 主は、その大いなる名のために、ご自分の民を見捨てたりはしない。あなたたちをご自分の民とすることを、主はよしとされたのだから。
12:23 わたしもまた、あなたたちのために祈るのをやめて、主に対して罪を犯すようなことは決してしない。わたしは、良い正しい道をあなたたちに教えよう。
12:24 ただ、主を恐れ、心を尽くし、真実をもって主に仕えなさい。主があなたたちのために、どれほど大きなことをしてくださったか、よく考えてみなさい。
12:25 しかし、もしあなたたちが悪を続けるなら、あなたたちも、あなたたちの王も、ともに滅ぼされる。」
13:1 サウルは王となったとき一歳であった。そして二年の間、イスラエルを治めた。
13:2 サウルはイスラエルから三千人を選んだ。二千人はサウルとともにミクマスとベテルの山地におり、千人はヨナタンとともにベニヤミンのギブアにいた。残りの民は、それぞれ自分の天幕に帰した。
13:3 ヨナタンは、ゲバにあったペリシテ人の守備隊を討った。ペリシテ人はそれを聞きつけた。サウルは国じゅうで角笛を吹き鳴らして言った。「ヘブライ人よ、聞け。」
13:4 イスラエルはみな、「サウルがペリシテ人の守備隊を討った。イスラエルはペリシテ人に憎まれるようになった」と聞いた。そこで民は呼び集められ、サウルに従ってギルガルに集まった。
13:5 ペリシテ人は、イスラエルと戦うために集まった。戦車三万、騎兵六千、それに海辺の砂のように数え切れないほどの兵だった。彼らは上ってきて、ベテ・アベンの東のミクマスに陣を張った。
13:6 イスラエルの人々は、自分たちが追いつめられ、危機に陥ったのを見た。そして民は、洞穴や茂み、岩場、地下の穴、水ための中に身を隠した。
13:7 ヘブライ人の中には、ヨルダン川を渡ってガドやギレアデの地へ逃げる者もいた。サウルはまだギルガルにいて、民はみな、おびえながら彼につき従っていた。
13:8 サウルは、サムエルが決めた期日どおり七日間待った。でも、サムエルはギルガルに来なかった。そのため、民はサウルのもとから散り始めた。
13:9 そこでサウルは言った。「焼き尽くすいけにえと、和解のいけにえをここへ持ってきなさい。」こうして彼は、焼き尽くすいけにえをささげた。
13:10 彼が焼き尽くすいけにえをささげ終えたちょうどそのとき、サムエルがやって来た。サウルは、あいさつをしようと出迎えに出た。
13:11 サムエルは言った。「あなたは何ということをしたのか。」サウルは答えた。「民がわたしのもとから散っていくのを見たからです。あなたも約束の日までに来られず、ペリシテ人はミクマスに集まっていました。
13:12 それでわたしは思ったのです。『このままではペリシテ人がギルガルにいるわたしのところへ攻め下ってくる。それなのに、まだ主のごきげんをうかがっていない』と。だから、思い切って焼き尽くすいけにえをささげたのです。」
13:13 サムエルはサウルに言った。「あなたは愚かなことをした。あなたの神、主が命じられたことを守らなかった。もし守っていたなら、主はあなたの王国をイスラエルの上に永遠に堅く立ててくださったはずだ。
13:14 しかし今、あなたの王国は続かない。主は、ご自分の心にかなう人を探し出し、その人をご自分の民の指導者に任命された。あなたが、主の命じられたことを守らなかったからだ。」
13:15 こうしてサムエルは立ち上がり、ギルガルからベニヤミンのギブアへ上って行った。サウルは、自分のもとに残っている民を数えた。およそ六百人だった。
13:16 サウルと、その子ヨナタン、そして彼らのもとに残っている民は、ベニヤミンのゲバにとどまっていた。一方、ペリシテ人はミクマスに陣を張っていた。
13:17 ペリシテ人の陣営から、略奪隊が三つの部隊に分かれて出てきた。一つの部隊は、シュアルの地に向かうオフラへの道を進んだ。
13:18 もう一つの部隊はベテ・ホロンへの道を進み、さらにもう一つの部隊は、荒れ野に面したツェボイムの谷を見下ろす境界の道を進んだ。
13:19 そのころ、イスラエルの地のどこにも鍛冶屋がいなかった。ペリシテ人が「ヘブライ人に剣や槍を作らせてはならない」と言っていたからだ。
13:20 それでイスラエルの人々はみな、すきの刃やくわ、おの、鎌を研いでもらうために、ペリシテ人のところへ下って行った。
13:21 研ぎの料金は、すきの刃やくわには一ピム、三つ又のフォークやおの、それに突き棒の先を直すには三分の一シェケルだった。
13:22 こうして戦いの日には、サウルとヨナタンについていた民の誰も、手に剣も槍も持っていなかった。ただサウルとその子ヨナタンだけが、それを持っていた。
13:23 そして、ペリシテ人の先陣がミクマスの渡し場へと出て行った。
14:1 ある日、サウルの子ヨナタンは、自分の武器を持つ若者にこう言った。「さあ、向こう側にいるペリシテ人の陣地へ渡って行こう。」だが、彼はこのことを父には話さなかった。
14:2 サウルは、ギブアのはずれ、ミグロンにあるざくろの木の下にとどまっていた。彼と一緒にいる民は、六百人ほどだった。
14:3 そこには、アヒヤもいた。アヒヤはアヒトブの子で、イ・カボドの兄弟にあたる。父はピネハス、その父は、かつてシロで主の祭司だったエリだった。アヒヤはこのとき、エフォドを身につけていた。民は、ヨナタンが出て行ったことを知らなかった。
14:4 ヨナタンがペリシテ人の陣地へ渡ろうとした渡し場の間には、両側にそれぞれ切り立った岩があった。一方の岩はボツェツ、もう一方はセネと呼ばれていた。
14:5 一方の岩はミクマスに面して北側にそびえ、もう一方はゲバに面して南側にあった。
14:6 ヨナタンは、武器を持つ若者に言った。「さあ、割礼を受けていないあの者たちの陣地へ渡って行こう。きっと主がわたしたちのために働いてくださる。主が救うのに、人数の多い少ないは関係ないのだから。」
14:7 武器を持つ若者は答えた。「あなたの思うとおりにしてください。さあ、行きましょう。わたしはあなたと同じ気持ちで、ずっとそばにいます。」
14:8 ヨナタンは言った。「よし、あの者たちのところへ渡って行って、こちらの姿を見せよう。
14:9 もし彼らが『こちらが着くまでそこで待て』と言うなら、わたしたちはその場にとどまって、彼らのところへは上って行かない。
14:10 でも『こちらへ上って来い』と言うなら、上って行こう。それは、主が彼らをわたしたちの手に渡してくださったしるしだ。それがわたしたちへの合図なのだ。」
14:11 二人がペリシテ人の陣地に姿を現すと、ペリシテ人は言った。「見ろ、ヘブライ人が、隠れていた穴から出て来たぞ。」
14:12 陣地の兵士たちはヨナタンと武器を持つ若者に呼びかけた。「こっちへ上って来い。思い知らせてやる。」ヨナタンは武器を持つ若者に言った。「わたしについて上って来い。主が彼らをイスラエルの手に渡してくださったのだ。」
14:13 ヨナタンは手と足を使ってよじ登り、武器を持つ若者も後に続いた。ペリシテ人はヨナタンの前に倒れ、後ろから武器を持つ若者がとどめを刺していった。
14:14 ヨナタンと武器を持つ若者がこうして与えた最初の打撃で、およそ二十人が倒れた。それは、一組の牛が耕す畑の半分ほどの狭い範囲でのことだった。
14:15 すると陣営にも、野にも、すべての民の間にも恐怖が広がった。守備隊も略奪隊も震え上がった。地は揺れ動き、それは神が起こした恐怖となった。
14:16 ベニヤミンのギブアにいたサウルの見張りが見ると、ペリシテ人の大軍が崩れ、あちこちへ散り散りになっていた。
14:17 サウルは、共にいた民に言った。「人数を調べて、だれがここからいなくなったのか見てくれ。」調べてみると、ヨナタンと武器を持つ若者がいなかった。
14:18 サウルはアヒヤに言った。「神の箱をここに持って来てくれ。」その頃、神の箱はイスラエルの人々のもとにあったからだ。
14:19 サウルが祭司と話している間にも、ペリシテ人の陣営の騒ぎはますます大きくなっていった。それでサウルは祭司に言った。「もういい。手を引いてくれ。」
14:20 サウルと共にいた民はみな集まり、戦いの場へと突き進んだ。すると、ペリシテ人たちは剣を互いに向け合い、ひどく混乱していた。
14:21 それまでペリシテ人の側についていたヘブライ人たち、彼らと共に周りの陣営に上って来ていた者たちも、今はサウルとヨナタンの側にいるイスラエルの人々に加わった。
14:22 エフライムの山地に隠れていたイスラエルの人々もみな、ペリシテ人が逃げていると聞いて、戦いに加わり、彼らを追い立てた。
14:23 こうして主はその日、イスラエルを救われた。戦いはベト・アベンを越えて広がっていった。
14:24 その日、イスラエルの人々は追い詰められて苦しんだ。サウルが民にこう誓わせていたからだ。「夕方まで、わたしが敵に復讐を果たすまで、食べ物を口にする者はのろわれる。」それで民はだれも食べ物を口にしなかった。
14:25 その地の者はみな森に入って行った。すると、地面には蜜があった。
14:26 民が森に入ると、蜜が流れ出ていた。それでも、だれも手を口に運ぼうとはしなかった。民が誓いを恐れていたからだ。
14:27 ところがヨナタンは、父が民に誓わせたことを聞いていなかった。それで手に持っていた杖の先を伸ばして蜜の巣に浸し、その手を口に運んだ。すると、彼の目は輝いた。
14:28 すると民の一人が言った。「あなたのお父上は民にこう固く誓わせました。『きょう、食べ物を食べる者はのろわれる』と。」民は疲れきっていた。
14:29 ヨナタンは言った。「父はこの地を苦しめてしまった。見てくれ。この蜜を少し味わっただけで、わたしの目はこんなに輝いたのだ。
14:30 もし民が、見つけた敵の分捕り物を今日きょう自由に食べていたら、どれほどよかっただろう。そうすれば、ペリシテ人をもっと多く打ち倒せたはずなのに。」
14:31 その日、彼らはミクマスからアヤロンまでペリシテ人を打ち倒した。民はひどく疲れきっていた。
14:32 そこで民は分捕り物に飛びついた。羊や牛や子牛を取り、その場で殺して、血のついたまま食べてしまった。
14:33 人々はサウルに知らせた。「ご覧ください。民は血のついたまま肉を食べて、主に対して罪を犯しています。」サウルは言った。「あなたたちは裏切ったのだ。今すぐ、大きな石をわたしのところに転がしてこい。」
14:34 さらにサウルは言った。「民の中に行き渡って、こう伝えよ。『それぞれ自分の牛や羊をわたしのところに引いてきて、ここで殺して食べなさい。血のついたまま食べて、主に対して罪を犯してはならない』と。」その夜、民はみな、それぞれ自分の牛を引いてきて、そこで殺した。
14:35 サウルは主のために祭壇を築いた。これが、彼が主のために築いた最初の祭壇だった。
14:36 サウルは言った。「夜のうちにペリシテ人を追って下って行き、朝の光がさすまで略奪しよう。彼らを一人も残してはならない。」民は答えた。「あなたが良いと思うことを、何でもしてください。」しかし祭司が言った。「その前に、ここで神に近づいて伺いましょう。」
14:37 そこでサウルは神に尋ねた。「ペリシテ人を追って下って行くべきでしょうか。彼らをイスラエルの手に渡してくださいますか。」しかし神は、その日は答えてくださらなかった。
14:38 サウルは言った。「民の指導者たちよ、みなここに来なさい。きょう、どこでこの罪が犯されたのか、よく調べて突きとめよ。
14:39 イスラエルを救ってくださる主は生きておられる。たとえそれがわたしの息子ヨナタンのことであっても、彼は必ず死ななければならない。」だが、民の中にはだれ一人、彼に答える者はいなかった。
14:40 サウルはイスラエルのすべての人に言った。「あなたたちは一方に立て。わたしと息子のヨナタンはもう一方に立つ。」民はサウルに答えた。「あなたが良いと思うようにしてください。」
14:41 サウルは、イスラエルの神、主に言った。「どうか、正しい答えをお示しください。」すると、くじはヨナタンとサウルに当たり、民は外れた。
14:42 サウルは言った。「わたしと息子ヨナタンとの間で、くじを引け。」すると、くじはヨナタンに当たった。
14:43 サウルはヨナタンに言った。「何をしたのか、話しなさい。」ヨナタンは答えた。「手に持っていた杖の先で、蜂蜜を少しなめただけです。それで、わたしは死ななければならないのですね。」
14:44 サウルは言った。「もしお前を死なせなかったら、神がわたしをどんなにでも罰してくださるように。ヨナタン、お前は必ず死ななければならない。」
14:45 すると民はサウルに言った。「ヨナタンが死ぬのですか。イスラエルにこんな大きな勝利をもたらした人が。とんでもない。主は生きておられる。その髪の毛一本さえ地に落ちてはならない。今日、彼は神とともに戦ったのだから。」こうして民はヨナタンを救い出し、彼は死なずにすんだ。
14:46 サウルはペリシテ人を追うのをやめて引き上げ、ペリシテ人も自分たちの土地へ帰って行った。
14:47 サウルはイスラエルの王位をしっかりと手に入れ、周りのすべての敵と戦った。モアブ、アンモン人、エドム、ツォバの王たち、そしてペリシテ人と戦い、どこに向かっても敵を打ち負かした。
14:48 サウルは勇ましく戦ってアマレク人を打ち、イスラエルを略奪する者たちの手から救い出した。
14:49 サウルの息子は、ヨナタン、イシュビ、マルキ・シュアだった。二人の娘の名は、姉がメラブ、妹がミカルといった。
14:50 サウルの妻の名はアヒノアムで、アヒマアツの娘だった。軍の司令官はアブネルといい、サウルのおじであるネルの息子だった。
14:51 サウルの父はキシュ、アブネルの父ネルはアビエルの息子だった。
14:52 サウルが生きているあいだ、ペリシテ人との戦いは激しく続いた。サウルは強い男や勇敢な男を見つけると、みな自分のもとに集めた。
15:1 サムエルはサウルに言った。「わたしを送って、あなたに油を注ぎ、主の民イスラエルの王にお立てになったのは主だ。だから今、主の言葉に耳を傾けてほしい。
15:2 万軍の主はこう言われる。『わたしは、アマレクがイスラエルにしたことを問いただす。イスラエルがエジプトから上ってくる途中で、アマレクは道の途中で待ち伏せをした。
15:3 さあ、行ってアマレクを討て。彼らのものをすべて滅ぼし尽くし、少しも惜しんではならない。男も女も、子どもも乳飲み子も、牛も羊も、らくだもろばも殺せ。』」
15:4 サウルは民を呼び集め、テライムで数を調べた。歩兵は二十万人、それにユダの兵が一万人いた。
15:5 サウルはアマレクの町まで来て、谷に身をひそめて待った。
15:6 サウルはケニ人に言った。「さあ、離れて、アマレク人の中から下って行ってくれ。あなたたちまで一緒に滅ぼしてしまわないためだ。あなたたちは、イスラエルの人々がエジプトから上ってきたとき、みんなに慈しみを示してくれたのだから。」そこでケニ人はアマレクの中から離れて行った。
15:7 サウルはアマレクを討ち、ハビラからエジプトの東にあるシュルまで攻めた。
15:8 そしてアマレクの王アガグを生きたまま捕らえ、民はみな剣で滅ぼし尽くした。
15:9 しかしサウルと民は、アガグと、羊や牛の中でも上等なもの、肥えた家畜、子羊、つまり良いものはみな惜しんで、滅ぼそうとはしなかった。滅ぼし尽くしたのは、値打ちのない、役に立たないものだけだった。
15:10 そのとき、主の言葉がサムエルに臨んだ。
15:11 「わたしはサウルを王にしたことを悔やんでいる。彼はわたしに背を向け、わたしの言葉を実行しなかったからだ。」サムエルは心を痛め、一晩じゅう主に叫び求めた。
15:12 翌朝、サムエルは早く起きてサウルに会いに行った。すると、サムエルにこう知らせる者があった。「サウルはカルメルに来て、自分のために記念碑を建てました。それから向きを変えて、ギルガルへ下って行きました。」
15:13 サムエルがサウルのところに来ると、サウルは言った。「主があなたを祝福してくださいますように。わたしは主の言葉を実行しました。」
15:14 するとサムエルは言った。「では、わたしの耳に聞こえるこの羊の鳴き声は何だ。わたしが聞いているこの牛の声は何なのだ。」
15:15 サウルは答えた。「それはアマレク人のところから連れて来たものです。兵たちが、あなたの神である主にささげるために、いちばん良い羊と牛を惜しんで残したのです。残りはすべて滅ぼし尽くしました。」
15:16 サムエルはサウルに言った。「やめなさい。ゆうべ主がわたしに告げられたことを、あなたに知らせよう。」サウルは言った。「話してください。」
15:17 サムエルは言った。「あなたは自分では取るに足りない者だと思っていた。それでも、イスラエルの諸部族の頭ではないか。主はあなたに油を注ぎ、イスラエルの王とされた。
15:18 その主が、あなたを任務に送り出してこう言われた。『行って、罪深いアマレク人を滅ぼし尽くせ。彼らを全滅させるまで戦え。』
15:19 それなのに、なぜあなたは主の言葉に従わなかったのか。戦利品に飛びついて、主の目に悪とされることをしたのだ。」
15:20 サウルはサムエルに言った。「わたしは主の言葉に従いました。主が送り出された任務に出て行き、アマレクの王アガグを連れて来て、アマレク人を滅ぼし尽くしました。
15:21 ただ兵たちが、滅ぼし尽くすはずだった戦利品の中から、いちばん良い羊と牛を取ったのです。ギルガルで、あなたの神である主にささげるためでした。」
15:22 するとサムエルは言った。「主は、その声に従うことよりも、焼き尽くすいけにえや供え物を喜ばれるだろうか。いや、従うことはいけにえにまさり、耳を傾けることは雄羊の脂肪にまさる。
15:23 逆らうことは占いの罪と同じであり、背くことは偶像を拝む悪と同じだ。あなたが主の言葉を退けたので、主もあなたを退け、王の座から遠ざけられたのだ。」
15:24 サウルはサムエルに言った。「わたしは罪を犯しました。主の命令とあなたの言葉に背いたのです。兵たちを恐れて、その言うことに従ってしまいました。
15:25 どうか今、わたしの罪を赦してください。そして一緒に戻ってください。わたしは主を拝みたいのです。」
15:26 するとサムエルはサウルに言った。「あなたとは一緒に戻らない。あなたが主の言葉を退けたので、主もあなたを退け、イスラエルの王の座から遠ざけられたのだ。」
15:27 サムエルが立ち去ろうと背を向けたとき、サウルはその上着のすそをつかんだ。すると、すそが裂けた。
15:28 サムエルは彼に言った。「主は今日、イスラエルの王国をあなたから引き裂き、あなたよりもすぐれた、あなたのそばにいる人にそれをお与えになった。
15:29 イスラエルの栄光であるお方は、偽ることも、心を変えることもない。人ではないのだから、考えを変えることはないのだ。」
15:30 サウルは言った。「わたしは罪を犯しました。それでも、どうか民の長老たちとイスラエルの前で、わたしの顔を立ててください。そして一緒に戻ってください。あなたの神、主を拝ませてください。」
15:31 そこでサムエルはサウルについて戻った。サウルは主を拝んだ。
15:32 サムエルは言った。「アマレクの王アガグを、わたしのところに連れて来なさい。」アガグは晴れやかな様子で彼のところへ来て、こう言った。「きっと、死の苦しみはもう過ぎ去った。」
15:33 サムエルは言った。「あなたの剣が多くの女から子どもを奪ったように、あなたの母も女たちの中で子を失うのだ。」こうしてサムエルはギルガルで、主の前でアガグを切り刻んだ。
15:34 サムエルはラマへ行き、サウルは自分の家のあるサウルのギブアへ上って行った。
15:35 サムエルは死ぬ日まで、二度とサウルに会わなかった。それでもサムエルはサウルのことを嘆き悲しんだ。そして主は、サウルをイスラエルの王にしたことを悔やまれた。
16:1 主はサムエルに言った。「あなたはいつまでサウルのことを悲しんでいるのか。わたしは、彼がイスラエルの王であることを退けたのだ。角の器に油を満たして、出かけなさい。あなたをベツレヘムのエッサイのもとに送る。わたしは、彼の息子たちの中に、王となる者を見つけたのだ。」
16:2 サムエルは言った。「どうして行けるでしょう。サウルがそれを聞いたら、わたしを殺します。」主は言った。「若い雌牛を一頭引いて行きなさい。そして、『主にいけにえをささげるために来ました』と言えばいい。
16:3 エッサイをそのいけにえの席に招きなさい。あなたがすべきことは、わたしが教える。わたしが告げる者に、油を注ぎなさい。」
16:4 サムエルは主が言ったとおりにして、ベツレヘムにやって来た。すると町の長老たちは、震えながら彼を迎えて言った。「あなたが来られたのは、平和なことのためですか。」
16:5 サムエルは答えた。「平和なことのためだ。わたしは主にいけにえをささげるために来た。身を清めて、いっしょにいけにえの席に来なさい。」こうしてサムエルはエッサイとその息子たちを清め、彼らをいけにえの席に招いた。
16:6 彼らが来たとき、サムエルはエリアブを見て思った。「きっとこの人だ。主の前に立つ、油を注がれる者は。」
16:7 しかし主はサムエルに言った。「彼の外見や背の高さを見てはいけない。わたしは彼を選ばない。人が見るようには、わたしは見ないからだ。人は目に映るところを見るが、主は心を見る。」
16:8 エッサイはアビナダブを呼んで、サムエルの前を通らせた。だがサムエルは言った。「この人も、主は選ばれない。」
16:9 次にエッサイはシャンマを通らせた。サムエルは言った。「この人も、主は選ばれない。」
16:10 こうしてエッサイは七人の息子をサムエルの前に通らせた。だがサムエルはエッサイに言った。「主はこの中のだれも選ばれない。」
16:11 サムエルはエッサイに尋ねた。「息子はこれで全員ですか。」エッサイは答えた。「まだ末の子が残っています。今、羊の番をしています。」サムエルはエッサイに言った。「人をやって、その子を連れて来なさい。その子がここに来るまで、わたしたちは席に着かない。」
16:12 エッサイは人をやって、その子を連れて来させた。その子は血色がよく、目が美しく、姿の良い少年だった。主は言った。「立って、この子に油を注ぎなさい。この子がその人だ。」
16:13 サムエルは油の入った角を取り、兄たちの真ん中でその子に油を注いだ。するとその日から、主の霊がダビデの上に激しく働くようになった。それからサムエルは立って、ラマへ帰って行った。
16:14 一方、主の霊はサウルを離れていた。そして主から送られた悪い霊が、サウルを苦しめるようになった。
16:15 サウルの家来たちは彼に言った。「ご覧ください。神から送られた悪い霊が、あなたさまを苦しめています。
16:16 どうか、ここにいるわたしたち家来にご命令ください。竪琴の上手な人を探させましょう。神からの悪い霊があなたさまに来たとき、その人が竪琴を弾けば、あなたさまは楽になります。」
16:17 サウルは家来たちに言った。「では、上手に弾ける人を探して、わたしのところに連れて来なさい。」
16:18 すると、若者の一人が答えた。「ベツレヘムのエッサイに、竪琴の上手な息子がいます。その人は勇敢な戦士で、話も的確です。姿もよく、しかも主が共におられます。」
16:19 そこでサウルは使いをエッサイのもとに送り、こう言った。「羊の番をしているあなたの息子ダビデを、わたしのところによこしなさい。」
16:20 エッサイはロバにパンを積み、ぶどう酒の革袋一つと子やぎ一頭を用意した。そしてそれを息子ダビデに持たせ、サウルのもとへ送った。
16:21 ダビデはサウルのもとに来て、その前に仕えた。サウルはダビデをとても気に入り、ダビデは彼の武器を持つ係になった。
16:22 サウルはエッサイにこう言い送った。「ダビデをわたしのそばに置かせてほしい。彼はわたしの気に入ったのだから。」
16:23 神からの悪い霊がサウルに来るたびに、ダビデは竪琴を取って弾いた。するとサウルは気分が晴れて楽になり、悪い霊は彼を離れていった。
17:1 ペリシテ人が軍隊を集めて戦いの準備をした。彼らはユダのソコに集まり、ソコとアゼカのあいだにあるエフェス・ダミムに陣を張った。
17:2 一方、サウルとイスラエルの兵たちも集まり、エラの谷に陣を張った。そしてペリシテ人に向かって戦いの陣を整えた。
17:3 ペリシテ人はこちら側の山に、イスラエルは反対側の山に立っていた。その二つのあいだには谷があった。
17:4 そのとき、ペリシテ人の陣営から一人の戦士が進み出てきた。名はゴリアテ、ガト出身の男だ。身長はおよそ三メートルもあった。
17:5 頭には青銅のかぶとをかぶり、うろこ状の青銅のよろいを身につけていた。よろいの重さは青銅でおよそ五十七キロもあった。
17:6 足には青銅のすねあてをつけ、背中には青銅の投げ槍を負っていた。
17:7 槍の柄は機織りの棒のように太く、鉄の穂先だけでおよそ七キロもあった。そして盾持ちが彼の前を進んでいた。
17:8 ゴリアテは立ち止まると、イスラエルの陣に向かって叫んだ。「なぜおまえたちは出てきて戦いの陣を整えるのか。わたしはペリシテ人、おまえたちはサウルの家来ではないか。だれか一人を選んで、わたしのところへ下りてこさせろ。
17:9 もしそいつがわたしと戦って倒せたら、わたしたちがおまえたちの奴隷になろう。だが、わたしが勝ってそいつを倒したら、おまえたちがわたしたちの奴隷となって、わたしたちに仕えるのだ。」
17:10 さらにこのペリシテ人は言った。「わたしは今日、イスラエルの陣に挑む。だれか一人よこせ。二人で勝負しようじゃないか。」
17:11 サウルとイスラエルの全軍は、このペリシテ人の言葉を聞いてすっかりおじけづき、ひどくおびえた。
17:12 さて、ダビデは、ユダのベツレヘム出身であのエフラテ人と呼ばれた、エッサイという人の息子だった。エッサイには八人の息子がいた。彼はサウルの時代にはもう年をとり、人々のあいだで老人となっていた。
17:13 エッサイの年長の三人の息子は、サウルについて戦いに出て行った。戦いに出た三人の名は、長男がエリアブ、次がアビナダブ、三番目がシャンマだった。
17:14 ダビデはいちばん下の子だった。年長の三人はサウルについて行った。
17:15 ダビデはサウルのもとと家とを行き来しながら、ベツレヘムで父の羊の世話をしていた。
17:16 あのペリシテ人は、朝も夕も進み出ては身構えた。それが四十日も続いた。
17:17 さて、エッサイは息子のダビデに言った。「この炒り麦一エファと、このパン十個を持って、すぐ兄さんたちのいる陣地へ走って行きなさい。
17:18 それに、このチーズ十個を千人隊の隊長に届けなさい。兄さんたちが元気にしているか様子を見て、無事の証しになるものを預かってきなさい。
17:19 サウルと兄さんたち、それにイスラエルの全軍は、エラの谷でペリシテ人と戦っている。」
17:20 ダビデは翌朝早く起き、羊を番人にあずけると、エッサイに言われたとおりに荷物を持って出かけた。彼が陣地に着くと、ちょうど軍勢がときの声をあげて戦いの列に出て行くところだった。
17:21 イスラエルとペリシテは、隊列と隊列とを向かい合わせて構えていた。
17:22 ダビデは持ってきた荷物を荷物番にあずけると、戦いの列のほうへ走って行った。そして兄たちのところに着き、無事かどうかをたずねた。
17:23 ダビデが兄たちと話していると、ちょうどそのとき、あの代表の戦士、ガテ出身のペリシテ人ゴリアテが、ペリシテの隊列から進み出てきた。そしていつもと同じ言葉を口にした。ダビデはそれを聞いた。
17:24 イスラエルの兵たちはみな、その男を見ると、彼の前から逃げ出し、ひどくおびえた。
17:25 イスラエルの兵たちはこう言っていた。「あそこに出てきた男を見たか。イスラエルに挑もうとして出てくるんだ。あの男を倒した者には、王が大きな富を与え、自分の娘を嫁がせ、その父の家をイスラエルで自由の身にしてくれるそうだ。」
17:26 ダビデはそばに立っている人たちに言った。「あのペリシテ人を倒して、イスラエルから恥をぬぐい去る者には、どんな報いがあるんですか。あの割礼も受けていないペリシテ人は、いったい何者なんですか。生きている神の軍勢を、よくもばかにできたものです。」
17:27 兵たちは同じように答えた。「あの男を倒した者には、こういうことがしてもらえるんだ。」
17:28 長兄のエリアブは、ダビデが人々と話しているのを聞いて、彼に激しく腹を立てた。そして言った。「何のために下りてきたんだ。あの荒れ野の、わずかばかりの羊は、だれに預けてきた。おまえの高慢さも、心の悪さもわかっているぞ。戦いを見たくて下りてきたんだろう。」
17:29 ダビデは言った。「わたしが何をしたっていうんですか。ただ話していただけじゃないですか。」
17:30 ダビデは兄から離れ、別の人のほうを向いて、同じことをたずねた。すると兵たちは前と同じように答えた。
17:31 ダビデが話した言葉は人々の耳に入り、サウルの前に伝えられた。サウルは彼を呼び寄せた。
17:32 ダビデはサウルに言った。「あの男のことで、だれも気落ちしないでください。このしもべが行って、あのペリシテ人と戦います。」
17:33 サウルはダビデに言った。「おまえには、あのペリシテ人のところへ行って戦うなんて無理だ。おまえはまだ若いが、あいつは若いころからずっと戦ってきた戦士なんだ。」
17:34 ダビデはサウルに言った。「このしもべは、父の羊の番をしていました。ライオンや熊が来て、群れから羊をさらっていくと、
17:35 わたしはそのあとを追いかけ、打ちかかって、その口から羊を助け出しました。向かってきたときには、たてがみをつかんで打ち倒し、殺しました。
17:36 このしもべは、ライオンも熊も倒してきました。あの割礼も受けていないペリシテ人も、そのうちの一匹と同じようになります。生きている神の軍勢を、ばかにしたのですから。」
17:37 ダビデはさらに言った。「主は、ライオンの手からも熊の手からもわたしを救い出してくださいました。その主が、あのペリシテ人の手からも、わたしを救い出してくださいます。」すると、サウルはダビデに言った。「行きなさい。主があなたと共におられますように。」
17:38 サウルは自分の服をダビデに着せ、青銅のかぶとを頭にかぶらせ、よろいを着せた。
17:39 ダビデはその服の上に剣を帯びて、歩いてみようとした。でも、慣れていなかった。ダビデはサウルに言った。「こんなものを着けては歩けません。慣れていないのです。」そう言って、ダビデはそれを脱いだ。
17:40 ダビデは杖を手に取り、川からなめらかな石を五つ選んで、持っていた羊飼いの袋、つまり石入れに入れた。そして、石投げのひもを手にして、ペリシテ人へと近づいていった。
17:41 ペリシテ人も、盾を持つ従者を先に立てて、ダビデのほうへどんどん近づいてきた。
17:42 ペリシテ人はダビデを見て、ばかにした。まだ若く、血色がよくて、顔立ちの整った少年だったからだ。
17:43 ペリシテ人はダビデに言った。「おれは犬か。杖なんかを持って向かってくるとは。」そして、自分の神々にかけて、ダビデをのろった。
17:44 さらにペリシテ人はダビデに言った。「かかってこい。おまえの肉を、空の鳥や野の獣にくれてやる。」
17:45 ダビデはペリシテ人に言った。「おまえは剣や槍や投げ槍を持って向かってくる。でも、わたしは万軍の主の名によって、おまえに立ち向かう。おまえがばかにした、イスラエルの軍勢の神の名によってだ。
17:46 きょう、主はおまえをわたしの手に渡してくださる。わたしはおまえを打ち倒し、その首をはねる。そして、きょう、ペリシテ人の陣営の死体を、空の鳥や地の獣にくれてやる。こうして、イスラエルに神がおられることを、地のすべての人が知るようになる。
17:47 そして、ここに集まったすべての者も知るだろう。主が救うのは、剣や槍によるのではない。戦いは主のものだ。主はおまえたちを、わたしたちの手に渡してくださる。」
17:48 ペリシテ人が立ち上がり、ダビデを迎え撃とうと近づいてきた。すると、ダビデは急いで、ペリシテ人に立ち向かおうと、戦列のほうへ走っていった。
17:49 ダビデは袋に手を入れて、そこから石を一つ取り出した。そして石投げひもで放つと、ペリシテ人の額に命中した。石は額にめり込み、彼はうつ伏せに地面に倒れた。
17:50 こうしてダビデは、石投げひもと石だけで、ペリシテ人に打ち勝った。ダビデは剣を持っていなかったのに、ペリシテ人を打ち倒し、しとめたのだ。
17:51 ダビデは走り寄って、ペリシテ人のそばに立った。そして相手の剣をつかんで鞘から抜き、それでとどめを刺し、その首をはねた。ペリシテ人たちは、自分たちの英雄が死んだのを見て、逃げ出した。
17:52 イスラエルとユダの兵士たちは立ち上がり、ときの声をあげて、ペリシテ人を追いかけた。谷の入り口まで、そしてエクロンの門まで追い詰めた。ペリシテ人たちは倒れ、その死体はシャアライムへの道に、ガテやエクロンにまで及んだ。
17:53 イスラエルの人々は、ペリシテ人を激しく追うのをやめて引き返し、彼らの陣営を略奪した。
17:54 ダビデはあのペリシテ人の首を取ってエルサレムに持っていった。そして相手の武具は自分の天幕に置いた。
17:55 ダビデがペリシテ人に立ち向かおうと出ていくのを見て、サウルは軍の司令官アブネルに言った。「アブネル、あの若者はだれの息子だ。」アブネルは答えた。「王よ、あなたの魂にかけて誓いますが、わたしにはわかりません。」
17:56 王は言った。「では、あの少年がだれの息子か、調べてくれ。」
17:57 ダビデがペリシテ人を打ち倒して戻ってくると、アブネルは彼を連れて、サウルの前に導いた。ダビデはあのペリシテ人の首を手にしていた。
17:58 サウルは彼にたずねた。「若者よ、おまえはだれの息子だ。」ダビデは答えた。「わたしは、あなたのしもべ、ベツレヘムのエッサイの息子です。」
18:1 ダビデがサウルと話し終えたとき、ヨナタンの魂はダビデの魂と固く結ばれた。ヨナタンはダビデを、自分自身のように愛した。
18:2 その日、サウルはダビデを自分のもとに引き止め、父の家に帰らせようとはしなかった。
18:3 ヨナタンはダビデを自分自身のように愛していたので、彼と契りを結んだ。
18:4 そしてヨナタンは、着ていた上着を脱いでダビデに与えた。自分の武具も、剣も、弓も、帯までも渡した。
18:5 ダビデはサウルに遣わされるとどこへでも出て行き、うまくやりとげた。それでサウルは彼を兵士たちの指揮官に任命した。ダビデは民全体にも、サウルの家来たちにも好かれた。
18:6 ダビデがあのペリシテ人を討ち取って帰るとき、人々が戻ってくると、イスラエルのすべての町から女たちが出てきた。彼女たちはタンバリンを打ち鳴らし、喜びながら歌い踊って、サウル王を迎えた。
18:7 女たちは踊りながら、代わる代わる歌った。「サウルは千を討ち、ダビデは万を討った。」
18:8 これを聞いてサウルは激しく怒り、この歌が気に入らなかった。彼は言った。「ダビデには万を与え、わたしには千しか与えていない。あとはもう、王の座を与えるだけではないか。」
18:9 その日から、サウルはダビデに疑いの目を向けるようになった。
18:10 その翌日、神からの悪い霊がサウルに激しく降りかかり、彼は家の中で我を忘れて叫び出した。ダビデはいつものように竪琴を弾いていた。サウルの手には槍があった。
18:11 サウルは「ダビデを壁に突き刺してやる」と思い、槍を投げつけた。しかしダビデは二度とも、その前から身をかわした。
18:12 サウルはダビデを恐れた。主がダビデとともにいて、サウルからは離れてしまっていたからだ。
18:13 そこでサウルはダビデを自分のそばから離し、千人隊の隊長に任命した。ダビデは兵士たちの先頭に立って出陣し、また帰ってきた。
18:14 ダビデは何をやってもうまくいった。主が彼とともにいたからだ。
18:15 サウルは、ダビデが目立ってうまくやっているのを見て、ますます彼を恐れるようになった。
18:16 でもイスラエルとユダの人々はみな、ダビデを愛した。彼が先頭に立って戦いに出て、また帰ってきたからだ。
18:17 サウルはダビデに言った。「わたしの長女のメラブを、おまえの妻にやろう。だからわたしのために勇敢に戦い、主の戦いを戦ってくれ。」サウルは、こう考えていたのだ。「自分の手ではなく、ペリシテ人の手でダビデを倒させよう。」
18:18 ダビデはサウルに答えた。「わたしなど何者でしょう。わたしの家柄も、父の一族も、イスラエルの中で何ほどのものでもありません。それなのに、どうして王の婿になれましょうか。」
18:19 ところが、サウルの娘メラブがダビデに与えられるはずのそのとき、彼女はメホラ人アドリエルの妻にされてしまった。
18:20 一方、サウルの娘ミカルはダビデを愛していた。それがサウルに伝わると、彼はこれを好都合だと思った。
18:21 サウルは考えた。「ミカルをダビデにやろう。そうすれば、彼女がダビデを陥れるわなとなり、ペリシテ人の手がダビデにおよぶだろう。」そしてサウルはダビデに言った。「今日こそ、おまえはもう一つの縁組でわたしの婿になれるのだ。」
18:22 サウルは家来たちに命じた。「こっそりダビデにこう言え。『いいか、王はあなたを気に入っておられる。家来たちもみな、あなたを慕っている。だから今こそ、王の婿になりなさい。』」
18:23 サウルの家来たちは、この言葉をそのままダビデの耳に伝えた。するとダビデは言った。「王の婿になるなんて、そんなに簡単なことだと思っているのですか。わたしは貧しく、取るに足りない者なのに。」
18:24 サウルの家来たちは、「ダビデはこう言っていました」とサウルに報告した。
18:25 サウルは言った。「ダビデにこう伝えろ。『王は結納金など望んではいない。ただ、王の敵への仕返しとして、ペリシテ人の包皮を百欲しいのだ。』」サウルは、ダビデをペリシテ人の手にかけて倒そうと考えていたのだ。
18:26 家来たちがこの言葉をダビデに伝えると、王の婿になれることが、ダビデにはうれしく思えた。そして、まだ約束の期日が来ないうちに、
18:27 ダビデは立ち上がり、部下たちと出て行って、ペリシテ人を二百人討ち取った。そしてその包皮を持ち帰り、王の婿になるために、それをすべて王に納めた。サウルは娘ミカルを、ダビデの妻として与えた。
18:28 サウルは、主がダビデとともにおられること、そして娘ミカルがダビデを愛していることを、はっきりと知った。
18:29 それでサウルは、ますますダビデを恐れるようになった。こうしてサウルは、いつまでもダビデの敵であり続けた。
18:30 ペリシテ人の隊長たちが攻めて来た。彼らが出て来るたびに、ダビデはサウルのどの家来よりもうまく戦った。それで、彼の名は大いに知られるようになった。
19:1 サウルは、息子ヨナタンと家来全員に、ダビデを殺すようにと話した。しかし、サウルの息子ヨナタンは、ダビデをとても慕っていた。
19:2 ヨナタンはダビデに知らせた。「父サウルはあなたを殺そうとしている。だから明日の朝は気をつけてくれ。どこか隠れた場所にいて、身を潜めていてほしい。
19:3 わたしは出て行って、あなたのいる野原で父のそばに立ち、あなたのことを父に話してみる。そして何かわかったら、あなたに知らせる。」
19:4 ヨナタンは父サウルに、ダビデのことを良く言った。「王よ、家来のダビデに罪を犯さないでください。彼は王に対して、何も悪いことをしていません。それどころか、彼のしたことは、王にとってとても良いことばかりでした。
19:5 彼は命がけであのペリシテ人を討ち取り、主はイスラエル全体に大きな救いをもたらされました。あなたもそれを見て喜んだではありませんか。それなのに、なぜ罪のない者の血を流し、理由もなくダビデを殺して、罪を犯そうとするのですか。」
19:6 サウルはヨナタンの言葉に聞き従い、こう誓った。「主は生きておられる。ダビデは決して殺されはしない。」
19:7 ヨナタンはダビデを呼び、これらのことをすべて話した。そしてダビデをサウルのもとへ連れて行くと、ダビデは以前と同じようにサウルに仕えるようになった。
19:8 また戦いが起こった。ダビデは出て行ってペリシテ人と戦い、彼らに大きな打撃を与えた。ペリシテ人はダビデの前から逃げ去った。
19:9 ある時、主から来た悪い霊がサウルに臨んだ。サウルは家の中で、槍を手にして座っていた。ダビデは竪琴を奏でていた。
19:10 サウルは槍でダビデを壁に突き刺そうとした。しかしダビデはサウルの前から身をかわし、槍は壁に突き刺さった。ダビデは逃げ、その夜のうちに難を逃れた。
19:11 サウルはダビデの家に使いの者を送り、家を見張らせ、朝になったら彼を殺そうとした。すると妻のミカルがダビデに知らせて言った。「今夜のうちに逃げて命を守らないと、明日には殺されてしまうわ。」
19:12 ミカルはダビデを窓からつり降ろした。ダビデは逃げ去り、難を逃れた。
19:13 ミカルは家の守り神の像を取って寝床に横たえ、その頭のところに山羊の毛の織物を置き、衣で覆った。
19:14 サウルがダビデを捕らえようと使いの者を送ると、ミカルは「あの人は病気です」と言った。
19:15 サウルはもう一度使いの者を送り、ダビデを確かめさせようとしてこう命じた。「あの男を寝床のままわたしのところへ運んで来い。殺してやる。」
19:16 使いの者たちが入って来ると、なんと寝床にあったのは守り神の像で、その頭のところには山羊の毛の織物が置かれていた。
19:17 サウルはミカルに言った。「どうしてこんなふうにわたしをだまし、わたしの敵を逃がしたのか。」ミカルはサウルに答えた。「あの人が『逃がしてくれ。さもないとお前を殺す』とわたしに言ったのです。」
19:18 ダビデは逃げて難を逃れ、ラマにいるサムエルのところへ行った。そして、サウルが自分にしたことをすべて話した。それからダビデはサムエルと一緒に行き、ナヨトに住んだ。
19:19 さて、サウルにこう知らせる者があった。「ダビデがラマのナヨトにいます。」
19:20 サウルはダビデを捕らえるため、使いの者たちを送った。すると彼らは、預言者の一団が預言していて、サムエルがその先頭に立って指導しているのを見た。そのとき、サウルの使いの者たちにも神の霊が臨み、彼らもまた預言しはじめた。
19:21 このことがサウルに知らされると、彼はほかの使いの者たちを送った。ところが彼らもまた預言した。サウルはさらに三度目の使いの者たちを送ったが、彼らもまた預言した。
19:22 ついにサウル自身もラマへ向かった。セクにある大きな井戸まで来て、彼は尋ねた。「サムエルとダビデはどこにいるのか。」すると、ある人が言った。「ラマのナヨトにいます。」
19:23 そこでサウルはそこ、ラマのナヨトへ向かった。すると彼にも神の霊が臨み、彼は歩きながらずっと預言し続けて、ラマのナヨトに着いた。
19:24 彼もまた服を脱ぎ、サムエルの前で預言した。そして一日中、一晩中、裸のまま倒れていた。だから人々は「サウルもまた預言者の仲間なのか」と言うようになった。
20:1 ダビデはラマのナヨトから逃げ、ヨナタンのところへ来て言った。「わたしが何をしたというのか。わたしにどんな過ち、どんな罪があって、あなたの父はわたしの命を狙うのか。」
20:2 ヨナタンは言った。「とんでもない。あなたが死ぬことはない。父は大きなことでも小さなことでも、わたしに打ち明けずに行うことはない。それなのに、どうして父がこのことだけをわたしに隠すだろうか。そんなことはない。」
20:3 ダビデはさらに誓って言った。「あなたの父は、わたしがあなたに気に入られていることをよく知っている。だから『ヨナタンを悲しませないように、このことは知らせないでおこう』と思っているのだ。しかし、主が生きておられ、あなたの魂が生きているのと同じように確かに、わたしと死との間はほんの一歩しかない。」
20:4 ヨナタンはダビデに言った。「あなたが望むことは何でも、あなたのためにしよう。」
20:5 ダビデはヨナタンに言った。「明日は新月の祭りで、わたしは王と一緒に食事の席に着かなければならない。でも、わたしを行かせてほしい。三日目の夕方まで野に隠れているから。
20:6 もしあなたの父がわたしのことを気にかけて尋ねたら、こう言ってほしい。『ダビデは自分の町ベツレヘムへ急いで帰りたいと、わたしにしきりに願い出ました。そこで一族全体のための、毎年のいけにえがあるのです。』
20:7 もし父が『それはいい』と言うなら、あなたのしもべは安心だ。でも、もし父がひどく怒るようなら、父はあなたに害を加えようと決めている、ということだ。
20:8 だから、あなたのしもべに慈しみを示してほしい。あなたは主の前での契約を結んで、わたしを仲間にしてくれたのだから。もしわたしに罪があるなら、あなた自身の手で殺してくれ。どうしてわざわざあなたの父のところへ、わたしを引き渡す必要があるだろうか。」
20:9 ヨナタンは言った。「そんなことは絶対にさせない。もしわたしの父があなたに害を加えようと決めているとわかったら、必ずあなたに知らせる。」
20:10 ダビデはヨナタンに言った。「あなたの父があなたに冷たく答えたとしたら、だれがそれをわたしに知らせてくれるのだろう。」
20:11 ヨナタンはダビデに言った。「さあ、野に出よう。」二人は野に出た。
20:12 ヨナタンはダビデに言った。「イスラエルの神、主が証人だ。明日か明後日の今ごろ、わたしは父の気持ちを探ってみる。もし父があなたに好意を持っているとわかれば、必ず人を送ってあなたに知らせる。
20:13 でも、もし父があなたに害を加えようとしているなら、それをあなたに知らせて、あなたを逃がしてやる。そして、あなたが無事に去れるようにする。もしそうしなかったら、主がこのヨナタンをどれほど厳しく罰してもかまわない。どうか主が、かつてわたしの父とともにいたように、あなたとともにいてくださるように。
20:14 そして、わたしがまだ生きているあいだ、主の慈しみをわたしに示してほしい。わたしが殺されずにすむように。
20:15 また、いつまでもわたしの家族への慈しみを絶やさないでほしい。主があなたの敵を一人残らずこの地から絶ち滅ぼすときにも、変わらずに。」
20:16 こうしてヨナタンはダビデの家と契約を結んで言った。「主がダビデの敵に、その責任を問われるように。」
20:17 ヨナタンはダビデを愛していたので、もう一度ダビデに誓わせた。自分の魂と同じほどにダビデを愛していたからだ。
20:18 ヨナタンはダビデに言った。「明日は新月の祭りだ。あなたの席が空いているから、いないことに気づかれるだろう。
20:19 三日目には、急いで下って行って、前に事があったとき隠れた場所へ行き、エゼルという石のそばにいてほしい。
20:20 わたしはその石のそばに、的を狙うふりをして三本の矢を射る。
20:21 そして若者を送って、『行って矢を探してこい』と言う。もしわたしがその若者に、『矢はおまえの手前にある。それを拾え』とはっきり言ったら、出てきなさい。主が生きておられるように、あなたは無事で、何の心配もない。
20:22 でも、もしその若者に、『矢はおまえの向こうにある』と言ったら、去りなさい。主があなたを行かせるのだ。
20:23 わたしとあなたが話し合ったことについては、主がいつまでも、あなたとわたしの間の証人だ。」
20:24 こうしてダビデは野に隠れた。新月の祭りになると、王は食事の席に着いた。
20:25 王はいつものように壁ぎわの自分の席に着いた。ヨナタンは立ち上がり、アブネルはサウルの横に座った。でも、ダビデの席は空いていた。
20:26 その日、サウルは何も言わなかった。「何かあって、身が清くないのだろう。きっと汚れているのだ」と思ったからだ。
20:27 翌日、その月の二日目にも、ダビデの席は空いていた。サウルは息子ヨナタンに言った。「どうしてエッサイの息子は、昨日も今日も食事に来ないのだ。」
20:28 ヨナタンはサウルに答えた。「ダビデは、ベツレヘムへ行かせてほしいと、わたしにしきりに願ったのです。
20:29 彼はこう言いました。『どうか行かせてください。町でわたしたちの一族のいけにえの祭りがあって、兄がぜひ来るようにと言っているのです。あなたに気に入っていただけるなら、どうか行かせてください。兄弟たちに会いたいのです。』だから、彼は王の食卓に来なかったのです。」
20:30 すると、サウルはヨナタンに怒りを燃やして言った。「反抗ばかりする、ねじけた女の息子め。おまえがエッサイの息子の味方をしているのは分かっているぞ。それはおまえ自身の恥、おまえを産んだ母の恥になるだけだ。
20:31 エッサイの息子がこの地に生きているかぎり、おまえもおまえの王位も安泰ではないのだ。今すぐ人をやって、あれをわたしのところへ連れて来い。あれは死ななければならない。」
20:32 ヨナタンは父サウルに答えた。「どうして殺さなければならないのですか。彼が何をしたというのですか。」
20:33 すると、サウルはヨナタンを打とうとして槍を投げつけた。それでヨナタンは、父がダビデを殺すと本気で決めているのだと分かった。
20:34 ヨナタンは激しく怒って食卓を立ち、その月の二日目には何も食べなかった。父にひどく辱められたダビデのことで、心を痛めていたからだ。
20:35 朝になって、ヨナタンはダビデと約束したとおり野原へ出て行った。小さな召し使いの少年も一緒だった。
20:36 ヨナタンは少年に言った。「走って、わたしが射る矢を探してくれ。」少年が走り出すと、ヨナタンはその向こうへ矢を射た。
20:37 少年がヨナタンの射た矢のあるところまで来ると、ヨナタンは少年の後ろから叫んだ。「矢はもっと向こうだろう。」
20:38 ヨナタンはさらに少年の後ろから叫んだ。「急げ、早くしろ、止まるな。」少年は矢を拾い集めて、主人のところへ戻って来た。
20:39 少年は何も気づいていなかった。このことを知っていたのは、ヨナタンとダビデだけだった。
20:40 ヨナタンは自分の武具を少年に渡して言った。「これを町へ持って行ってくれ。」
20:41 少年が行ってしまうと、ダビデは南側の隠れ場から立ち上がり、地にひれ伏して三度おじぎをした。二人は互いに口づけし、抱き合って泣いた。ダビデはとりわけ激しく泣いた。
20:42 ヨナタンはダビデに言った。「安心して行きなさい。わたしたちは二人とも、主の名にかけて誓い合ったのだから。『主が、わたしとあなたの間、わたしの子孫とあなたの子孫の間に、いつまでもいてくださる』と。」ダビデは立ち上がって出て行った。ヨナタンは町へ帰って行った。
21:1 ダビデはノブへ行き、祭司アヒメレクのところに来た。アヒメレクは震えながらダビデを迎え、「どうして一人なのですか。誰も連れていないのですか」と言った。
21:2 ダビデは祭司アヒメレクに答えた。「王からある任務を命じられているのです。王はこう言いました。『おまえを送り出す用件も、命じたことも、誰にも知られてはならない。』だから供の若者たちとは、ある場所で落ち合うことにしています。
21:3 それで今、手もとに何かありますか。パンを五つ、いや、あるものを分けてください。」
21:4 祭司はダビデに答えた。「普通のパンは手もとにありません。神にささげた聖なるパンならあります。供の若者たちが女性を遠ざけているなら、それでいいのですが。」
21:5 ダビデは祭司に答えた。「もちろんです。いつも通り、女性はわたしたちから遠ざけてあります。出かけるときはそうしているのです。普通の旅でも供の者たちの体は清く保たれています。まして今日は、なおさら清いはずです。」
21:6 そこで祭司は彼に聖なるパンを渡した。そこには、主の前から下げられた供えのパンのほかに、パンがなかったからである。それは、下げる日に温かいパンと取り替えるためのものだった。
21:7 ところで、その日、サウルの家来の一人がそこにいて、主の前にとどめられていた。名はドエグ、エドム人で、サウルに仕える羊飼いたちの長だった。
21:8 ダビデはアヒメレクに言った。「ここに槍か剣はありませんか。王の用件が急ぎだったので、剣も武器も持ってこなかったのです。」
21:9 祭司は答えた。「あなたがエラの谷で討ち取ったペリシテ人ゴリアテの剣、あれなら、エフォドの後ろに布に包んで置いてあります。それでよければ、持って行きなさい。ここには、それ以外にはありません。」ダビデは言った。「あれに勝るものはありません。ください。」
21:10 ダビデは立ち上がり、その日サウルを逃れて、ガトの王アキシュのところへ行った。
21:11 アキシュの家来たちは王に言った。「これはあの国のダビデではありませんか。人々が踊りながら歌い交わして、『サウルは千を討ち、ダビデは万を討った』と言っていた、あのダビデでしょう。」
21:12 ダビデはこの言葉を心に留め、ガトの王アキシュをひどく恐れた。
21:13 そこで彼は人々の前でふるまいを変え、皆の目の前で気が変になったふりをした。門の扉に落書きのような傷をつけ、よだれをひげに垂らし流した。
21:14 アキシュは家来たちに言った。「見ろ、この男は気が変になっているじゃないか。どうしてこんな者をわたしのところに連れてきたのだ。
21:15 わたしのまわりには気の変な者が足りないとでもいうのか。それなのに、この男を連れてきて、わたしの前で暴れさせるのか。こんな者をわたしの家に入れるものか。」
22:1 ダビデはそこを去り、アドラムのほら穴に逃げ込んだ。それを聞いた兄弟たちや父の家の者みんなが、そこにいる彼のもとへ下ってきた。
22:2 さらに、困っている者、借金を抱えた者、心に不満を抱く者たちがみな、彼のもとに集まってきた。ダビデは彼らのかしらとなった。その数はおよそ四百人になった。
22:3 ダビデはそこからモアブのミツパへ行き、モアブの王に願い出た。「神がわたしをどうされるのか、それがわかるまでの間、どうか父と母をあなたのもとに身を寄せさせてください。」
22:4 こうして彼は両親をモアブの王のもとに預けた。二人は、ダビデが要害にいる間ずっと、王のもとにとどまった。
22:5 預言者ガドがダビデに言った。「要害にとどまってはいけない。ここを出て、ユダの地へ行きなさい。」そこでダビデは出発し、ハレテの森にたどり着いた。
22:6 さて、ダビデと彼に従う者たちの居どころが知れた、とサウルの耳に入った。そのときサウルはギブアの高台のぎょりゅうの木の下にすわり、手には槍を握り、家来たちはみなそのまわりに立っていた。
22:7 サウルは、まわりに立っている家来たちに言った。「よく聞け、ベニヤミンの者たちよ。あのエッサイの息子が、お前たちみんなに畑やぶどう畑をくれるとでもいうのか。お前たちをみな、千人隊の長や百人隊の長にしてくれるとでも思っているのか。
22:8 それなのに、お前たちはみなでわたしに背き、手を結んでいる。わたしの息子があのエッサイの息子と手を組んでも、だれもわたしに教えてくれない。お前たちのうちだれ一人、わたしのことを気づかって、わたしの息子が家来をそそのかし、今日のようにわたしを狙わせていると知らせてくれる者もいない。」
22:9 すると、サウルの家来たちの上に立っていたエドム人ドエグが答えた。「わたしは、エッサイの息子がノブに来て、アヒトブの息子アヒメレクのところに行くのを見ました。
22:10 アヒメレクは彼のために主に伺いを立て、食料を与え、さらにペリシテ人ゴリアテの剣まで渡しました。」
22:11 そこで王は、アヒトブの息子である祭司アヒメレクと、その父の家の者みな、つまりノブにいる祭司たちを呼び寄せた。彼らはみな王のもとにやって来た。
22:12 サウルは言った。「聞け、アヒトブの息子よ。」アヒメレクは答えた。「はい、我が主。」
22:13 サウルは言った。「なぜお前は、エッサイの息子と組んでわたしに背いたのか。お前は彼にパンと剣を与え、彼のために神に伺いを立てた。そのせいで彼は、今日のようにわたしに逆らって立ち上がり、わたしを狙っているではないか。」
22:14 アヒメレクは王に答えた。「あなたの家来の中で、ダビデほど忠実な者がほかにいるでしょうか。彼は王の婿であり、あなたの護衛隊の長を務め、あなたの家で重んじられている人です。
22:15 わたしが彼のために神に伺いを立てたのは、今日が初めてだったとでもいうのですか。いいえ、決してそんなことはありません。どうか王は、この僕にも、わたしの父の家のだれにも、罪を着せないでください。この僕は、今度のことについて、大きなことも小さなことも、何一つ知らなかったのです。」
22:16 王は言った。「アヒメレク、お前は必ず死ぬ。お前も、お前の父の家の者もみなだ。」
22:17 そして王は、そばに立っている護衛兵たちに命じた。「向き直って、主の祭司たちを殺せ。彼らもダビデに手を貸し、あの男が逃げたのを知っていながら、わたしに知らせなかったのだ。」しかし王の家来たちは、主の祭司たちに手を下して打ち殺そうとはしなかった。
22:18 そこで王はドエグに言った。「お前が向き直って、祭司たちを打て。」エドム人ドエグは向き直り、祭司たちを打った。その日、彼は亜麻布の祭服エフォドを身につけた者、八十五人を殺した。
22:19 また祭司たちの町ノブも、剣で打ち滅ぼした。男も女も、子どもも乳飲み子も、牛もろばも羊も、みな剣にかけて殺した。
22:20 しかし、アヒトブの子アヒメレクの息子のひとりだけが逃げ延びた。名をアビアタルといい、彼はダビデのもとへ逃げてきた。
22:21 アビアタルはダビデに、サウルが主の祭司たちを殺したことを知らせた。
22:22 ダビデはアビアタルに言った。「あの日、エドム人ドエグがあそこにいたから、きっとサウルに知らせると、わたしにはわかっていた。お前の父の家の者みんなの命を奪う原因を作ったのは、このわたしだ。
22:23 わたしのところにいなさい。こわがることはない。わたしの命をねらう者は、お前の命もねらっている。でも、わたしと一緒にいれば、お前は守られる。」
23:1 さて、ダビデにこんな知らせが届いた。「今、ペリシテ人がケイラを攻めています。麦打ち場を荒らしているのです。」
23:2 そこでダビデは主にたずねた。「行って、このペリシテ人を打つべきでしょうか。」すると主はダビデに答えた。「行きなさい。ペリシテ人を打って、ケイラを救うのだ。」
23:3 しかしダビデの部下たちは彼に言った。「わたしたちは、このユダにいてさえこわいのです。ましてケイラへ、ペリシテ人の陣に向かって行くなんて。」
23:4 そこでダビデは、もう一度主にたずねた。すると主は彼に答えた。「立って、ケイラへ下って行きなさい。わたしがペリシテ人をお前の手に渡すのだ。」
23:5 そこでダビデは部下たちとケイラへ行き、ペリシテ人と戦った。彼らの家畜を奪い取り、ペリシテ人を大きく打ち破った。こうしてダビデはケイラの住民を救った。
23:6 アヒメレクの子アビアタルがダビデのもとへ、ケイラへ逃げてきたとき、彼は手にエフォドを持って下ってきていた。
23:7 ダビデがケイラに入ったことが、サウルに伝えられた。サウルは言った。「神は彼をわたしの手に渡してくださった。ダビデは門とかんぬきのある町に入り込んで、自分から閉じこもったのだから。」
23:8 そこでサウルは兵をすべて呼び集め、戦いのために動き出した。ケイラへ下って行き、ダビデとその部下たちを包囲するためだった。
23:9 ダビデは、サウルが自分に害を加えようとひそかに企てていることに気づいた。それで祭司アビアタルに言った。「エフォドをここへ持ってきてくれ。」
23:10 そしてダビデは祈った。「イスラエルの神、主よ。あなたのしもべははっきり聞きました。サウルがこのケイラに攻めてきて、わたしのためにこの町を滅ぼそうとしているのです。
23:11 ケイラの人々は、わたしを彼の手に引き渡すでしょうか。あなたのしもべが聞いたとおり、サウルは下ってくるでしょうか。イスラエルの神、主よ、どうかあなたのしもべに教えてください。」すると主は言われた。「彼は下ってくる。」
23:12 ダビデはさらにたずねた。「ケイラの人々は、わたしと部下たちをサウルの手に引き渡すでしょうか。」主は言われた。「彼らは引き渡す。」
23:13 そこでダビデは、六百人ほどの部下たちとともに立ち上がり、ケイラを出て、行けるところへと移り歩いた。ダビデがケイラから逃げ出したことがサウルに伝えられると、サウルは出て行くのをやめた。
23:14 ダビデは荒れ野の要害にとどまり、ジフの荒れ野の山地に身を置いた。サウルは来る日も来る日もダビデを捜し求めたが、神は彼をサウルの手に渡さなかった。
23:15 ダビデは、サウルが自分の命をねらって出てきたことを知った。そのときダビデはジフの荒れ野のホレシュにいた。
23:16 サウルの子ヨナタンは立ち上がり、ホレシュにいるダビデのもとへ行って、神によってダビデを力づけた。
23:17 ヨナタンは言った。「恐れることはない。わたしの父サウルの手が、お前に届くことはない。お前はイスラエルの王となり、わたしはお前に次ぐ者となる。父サウルも、そのことを知っているのだ。」
23:18 こうして二人は主の前で契りを結んだ。ダビデはホレシュにとどまり、ヨナタンは自分の家へ帰って行った。
23:19 さて、ジフの人たちがギブアにいるサウルのもとに上って行って、こう言った。「ダビデはわたしたちのところに隠れているのです。荒れ野の南にあるハキラの丘、ホレシュの山あいの隠れ場にひそんでいます。
23:20 王よ、いつでもお望みのときに下って来てください。ダビデを王の手に引き渡すのは、わたしたちにお任せください。」
23:21 サウルは言った。「お前たちが、わたしのことを思ってくれるとは。主の祝福があるように。
23:22 どうかもっと調べて、あいつの居場所を確かめてくれ。だれがそこであいつを見たのかもだ。あいつはとても抜け目ないと聞いている。
23:23 あいつが隠れそうな場所を、一つ残らず調べて突き止めてくれ。確かなことがわかったら、わたしのところに戻れ。そうしたら、わたしもお前たちと一緒に行こう。もしあいつがこの地にいるなら、ユダの民をすべて当たってでも、必ず捜し出す。」
23:24 彼らは立ち上がり、サウルより先にジフへ向かった。そのころダビデと部下たちは、荒れ野の南にあるアラバのマオンの荒れ野にいた。
23:25 サウルは部下たちと共に、ダビデを捜しに出かけた。それを知らせる者がいたので、ダビデは岩山を下り、マオンの荒れ野にとどまった。サウルはそれを聞いて、マオンの荒れ野までダビデを追った。
23:26 サウルは山の一方の側を、ダビデと部下たちはもう一方の側を進んだ。ダビデはサウルから逃げようと急いだ。サウルと部下たちが、ダビデたちを捕まえようと回り込んで来たからだ。
23:27 そこへ、一人の使者がサウルのもとに来て言った。「急いで戻ってください。ペリシテ人がこの地に攻め込んで来ました。」
23:28 それでサウルはダビデを追うのをやめ、引き返してペリシテ人に立ち向かった。このことから、人々はその場所を「別れの岩」と呼ぶようになった。
23:29 ダビデはそこを離れて上り、エン・ゲディの要害にとどまった。
24:1 サウルはペリシテ人を追うのをやめて戻ってきた。すると、「ダビデがエン・ゲディの荒れ野にいます」と知らせる者がいた。
24:2 そこでサウルは、イスラエル全体から選りすぐった三千人を率いて、野やぎのいる岩場のあたりへ、ダビデとその部下を捜しに出かけた。
24:3 道のそばにある羊の囲いのところまで来ると、そこに洞穴があった。サウルは用を足すために中に入った。ちょうどそのとき、ダビデとその部下は洞穴の奥に座っていた。
24:4 ダビデの部下は彼に言った。「今日こそ、主があなたに言われた日です。『わたしはお前の敵をお前の手に渡す。お前は思うままにその者を扱ってよい』と。」ダビデは立ち上がり、サウルの上着のすそをこっそり切り取った。
24:5 だがそのあとで、ダビデは自分がサウルの上着のすそを切ったことに、心が痛んだ。
24:6 そして部下に言った。「わたしの主君、主が油を注がれた方に、そんなことをして手をかけるなど、主の前に決してあってはならない。この方は主が油を注がれた方なのだから。」
24:7 ダビデはこう言って部下を押しとどめ、サウルに襲いかからせなかった。サウルは洞穴を出て、道を進んで行った。
24:8 それからダビデも立ち上がって洞穴を出て、サウルの後ろから呼びかけた。「王様、わたしの主君よ。」サウルが振り返ると、ダビデは地にひれ伏して、深く頭を下げた。
24:9 ダビデはサウルに言った。「なぜあなたは、『ダビデはあなたを害しようとしています』という人々の言葉に耳を貸すのですか。
24:10 今日、あなたは自分の目で見たはずです。洞穴の中で、主があなたをわたしの手に渡されたことを。人々はあなたを殺せと言いました。でもわたしはあなたを惜しみ、こう言ったのです。『わたしは主君に手をかけない。この方は主が油を注がれた方なのだから』と。
24:11 わが父よ、どうか見てください。わたしの手にある、あなたの上着のすそを。わたしはあなたの上着のすそを切りましたが、あなたを殺しはしませんでした。これで知って、分かってください。わたしの手には悪も背きもなく、あなたに罪を犯していないことを。それなのにあなたは、わたしの命をつけ狙って奪おうとしている。
24:12 どうか主が、わたしとあなたの間を裁いてくださいますように。主がわたしのために、あなたに仕返しをしてくださいますように。でも、わたしの手をあなたに向けることはしません。
24:13 昔の人のことわざにあるとおりです。『悪は悪人から出る』と。だから、わたしの手をあなたに向けることはしません。
24:14 イスラエルの王は、いったい誰を追って出てきたのですか。あなたは誰を追いかけているのですか。死んだ犬を、一匹のノミを追っているだけなのです。
24:15 どうか主が裁く方となって、わたしとあなたの間を裁いてくださいますように。主がご覧になり、わたしの訴えを取り上げて、あなたの手からわたしを救い出してくださいますように。」
24:16 ダビデがこれらの言葉をサウルに語り終えると、サウルは言った。「わが子ダビデよ、これはお前の声か。」そしてサウルは声を上げて泣いた。
24:17 そしてダビデに言った。「お前はわたしよりも正しい。お前はわたしに良いことをしてくれたのに、わたしはお前に悪いことをした。
24:18 今日お前は、自分がわたしにどれほど良くしてくれたかを見せてくれた。主がわたしをお前の手に渡されたのに、お前はわたしを殺さなかった。
24:19 人が自分の敵を見つけて、無事に去らせることなどあるだろうか。今日お前がわたしにしてくれたことに対して、主がお前に良い報いをくださるように。
24:20 今、わたしにはよく分かった。お前は必ず王になる。イスラエルの王国は、お前の手で確かなものになるのだ。
24:21 だから今、主にかけてわたしに誓ってくれ。わたしの後で、わたしの子孫を絶やさず、わたしの父の家からわたしの名を消し去らないと。」
24:22 ダビデはサウルに誓った。するとサウルは家に帰り、ダビデと部下たちは要害へと上っていった。
25:1 サムエルが亡くなった。イスラエルの人々はみな集まって彼のために嘆き悲しみ、ラマにある彼の家に葬った。その後、ダビデは立って、パランの荒れ野へ下って行った。
25:2 マオンに一人の男がいた。彼はカルメルに仕事の拠点を持っていて、とても裕福だった。羊を三千頭、やぎを千頭飼っていて、そのときちょうどカルメルで羊の毛を刈っていた。
25:3 その男の名はナバル、妻の名はアビガイルといった。妻は賢く、美しい女性だった。でも夫のほうは冷たくて、やることも意地が悪かった。彼はカレブの一族だった。
25:4 羊の毛を刈っているという知らせは、荒れ野にいたダビデの耳にも届いた。
25:5 そこでダビデは若者を十人送り出し、こう言った。「カルメルへ上って、ナバルのところへ行きなさい。そして、わたしの名であいさつを伝えてほしい。
25:6 こう言うんだ。『いつまでもお元気で。あなたにも、あなたの家にも、あなたのすべてのものにも、平安がありますように。
25:7 さて、あなたのところで羊の毛を刈っていると聞きました。あなたの羊飼いたちがわたしたちと一緒にいた間、わたしたちは彼らに手荒なことは一切せず、彼らのものが何一つなくなることもありませんでした。カルメルにいた間じゅう、ずっとそうでした。
25:8 あなたの若者たちに聞いてみてください。きっと話してくれます。どうか、わたしの若者たちに親切にしてやってください。ちょうどおめでたい日に伺ったのですから。何でも手もとにあるものを、あなたのしもべたちと、あなたの息子ともいえるこのダビデに分けてください。』」
25:9 ダビデの若者たちは着くと、ダビデの名で、この言葉をそのままナバルに伝えた。そして返事を待った。
25:10 ところがナバルは、ダビデのしもべたちにこう言い返した。「ダビデって誰だ。エッサイの息子とは何者だ。近ごろは、主人のもとから逃げ出すしもべが多いからな。
25:11 自分のパンや水、それに毛を刈る者たちのためにほふった肉を、どこの馬の骨とも分からない連中にくれてやれというのか。」
25:12 ダビデの若者たちは来た道を引き返し、戻って来て、この言葉をそっくりそのままダビデに伝えた。
25:13 ダビデは部下たちに言った。「それぞれ剣を身に着けろ。」みんなは剣を身に着け、ダビデも自分の剣を身に着けた。そして四百人ほどがダビデについて上って行き、二百人は荷物のところに残った。
25:14 一人の若者が、ナバルの妻アビガイルに知らせた。「ダビデが荒れ野から使いの者を送って、ご主人にあいさつをさせたのに、ご主人は彼らをどなりつけました。
25:15 あの人たちは、わたしたちにとても良くしてくれました。野原で一緒に過ごしている間、わたしたちはひどい目にあうこともなく、何一つなくすこともありませんでした。
25:16 わたしたちが羊の群れを飼って彼らと一緒にいた間、彼らは昼も夜も、わたしたちを守る城壁のようでした。
25:17 ですから今、どうすればいいか、よく考えてください。ご主人にも、その家の者すべてにも、災いがふりかかろうとしています。ご主人はどうしようもない人で、誰も話しかけることができないのです。」
25:18 アビガイルは急いで、パンを二百個、ぶどう酒の皮袋を二つ、料理した羊を五頭、炒った麦を五セア、干しぶどうを百房、干しいちじくの菓子を二百個用意し、ろばに積んだ。
25:19 そして若者たちに言った。「先に行きなさい。わたしはあとから行きます。」だが、夫のナバルには何も言わなかった。
25:20 アビガイルがろばに乗り、山の陰を下って行くと、ちょうどダビデとその部下たちが彼女のほうへ下って来た。こうして彼女は彼らと出会った。
25:21 ダビデはこう言っていた。「あの男のものを荒れ野で守ってやったのは、まったく無駄だった。あいつのものは何一つなくならなかったのに、あの男は、良くしてやった恩を仇で返した。
25:22 もしわたしが、夜明けまでに、あの男に属する者のうち男を一人でも残しておくなら、神がダビデの敵にどんな厳しい罰でも下されますように。」
25:23 アビガイルはダビデを見ると、急いでろばから降り、ダビデの前で顔を地につけてひれ伏した。
25:24 そして彼の足もとにひれ伏して言った。「わが主よ、その罪はどうか、このわたしに負わせてください。どうか、このわたしに話をさせてください。わたしの言うことを聞いてください。
25:25 わが主よ、どうかあの卑劣な男ナバルのことは、気にかけないでください。彼は名前のとおりの人なのです。ナバルという名前は『愚か者』という意味で、まさにその名のとおり、彼はいつも愚かなことばかりしています。このわたしは、あなたが送った若い人たちに会えませんでした。
25:26 わが主よ、今、主が生きておられ、あなたが生きておられるのと同じように確かなこととして申し上げます。血を流すことも、自分の手で復讐することも、主があなたを引き止めてくださいました。どうか、あなたの敵も、あなたに害を加えようとする者たちも、みなナバルのようになりますように。
25:27 そして、このしもべがわが主のために持ってまいりました贈り物を、どうか、あなたに従う若い人たちにお与えください。
25:28 どうか、このしもべの過ちをお赦しください。主は必ずわが主のために、揺るがない家を築いてくださいます。あなたが主の戦いを戦っておられるからです。あなたには、生きているかぎり悪いところは見つからないでしょう。
25:29 だれかが立ち上がってあなたを追い、命をねらったとしても、わが主の命は、あなたの神である主のもとで、いのちの袋にしっかりと包まれて守られます。でも、あなたの敵の命は、石投げの袋から石を投げ飛ばすように、投げ捨てられてしまうでしょう。
25:30 主は約束された良いことをすべて、わが主のために実現してくださり、あなたをイスラエルの指導者に任命してくださいます。
25:31 その時になって、わが主が理由もなく血を流したことや、自分の手で復讐したことが、あなたの心の重荷やつまずきになってはいけません。主がわが主に良くしてくださったなら、どうかこのしもべのことを思い出してください。」
25:32 ダビデはアビガイルに言った。「今日、あなたをわたしのところへ送ってくださった、イスラエルの神、主がほめたたえられますように。
25:33 あなたの判断もほめたたえられますように。そして、あなた自身もほめたたえられますように。あなたは今日、わたしが血を流すことも、自分の手で復讐することも止めてくれた。
25:34 確かに、あなたに害を加えることからわたしを引き止めてくださった、イスラエルの神、主が生きておられるとおり、もしあなたが急いで会いに来てくれなかったら、夜明けまでにナバルのところには、男が一人も残っていなかっただろう。」
25:35 こうしてダビデは、彼女が持ってきた物を彼女の手から受け取り、こう言った。「安心して家に帰りなさい。ほら、わたしはあなたの言うことを聞き入れ、あなたの願いを受け入れた。」
25:36 アビガイルがナバルのところに戻ると、彼は家で王の宴のような盛大な宴会を開いていた。ナバルはすっかり上機嫌で、ひどく酔っていた。そこで彼女は、夜が明けるまで、何ひとつ彼に話さなかった。
25:37 朝になって、ナバルの酔いがさめたころ、妻が彼にこれらのことをすべて話した。すると彼の心臓は止まったようになり、彼は石のようになってしまった。
25:38 それから十日ほどたって、主がナバルを打たれ、彼は死んだ。
25:39 ナバルが死んだと聞いて、ダビデは言った。「主をほめたたえよう。主は、ナバルから受けた侮辱について、わたしの訴えを取り上げてくださった。そして、しもべであるわたしが悪に手を染めないよう、引き止めてくださった。主は、ナバルの悪を彼自身の頭に返されたのだ。」それからダビデは人をやって、アビガイルを自分の妻に迎えたいと申し入れさせた。
25:40 ダビデの家来たちはカルメルにいるアビガイルのところに来て、こう言った。「ダビデ様が、あなたをご自分の妻に迎えたいと、わたしたちを遣わされました。」
25:41 すると彼女は立ち上がり、地にひれ伏して言った。「はい、このはしためは、ご主人様の家来たちの足を洗う女中にでもなります。」
25:42 アビガイルは急いで立ち上がり、ろばに乗った。付き添いの五人の若い女たちを従えて、ダビデの使いの者たちの後について行き、彼の妻となった。
25:43 ダビデはまた、イズレエル出身のアヒノアムをめとっていた。こうして二人とも彼の妻となった。
25:44 一方、サウルは、ダビデの妻であった自分の娘ミカルを、ガリム出身のライシュの子パルティに与えていた。
26:1 ジフの人たちがギブアにいるサウルのところへ来て、こう告げた。「ダビデは、荒れ野を見おろすハキラの丘に隠れているんです。」
26:2 そこでサウルは、イスラエルからえりすぐった三千人の兵を連れて、ジフの荒れ野へ下って行った。ダビデを追ってジフの荒れ野を捜すためだった。
26:3 サウルは、荒れ野を見おろすハキラの丘の道ぞいに陣を張った。ダビデは荒れ野にとどまっていたが、サウルが自分を追って荒れ野に来たことに気づいた。
26:4 そこでダビデは偵察を送り出し、サウルが本当に来たことを確かめた。
26:5 ダビデは立って、サウルが陣を張っている場所へ行った。そして、サウルと、その軍の司令官であるネルの子アブネルが寝ている場所を見つけた。サウルは陣地の真ん中で横になり、兵たちはその周りで眠っていた。
26:6 ダビデは、ヒト人アヒメレクと、ヨアブの兄弟でツェルヤの子アビシャイに声をかけた。「だれか、サウルのいる陣営まで一緒に下りて行く者はいるか。」すると、アビシャイが答えた。「わたしが一緒に行きます。」
26:7 こうしてダビデとアビシャイは、夜のうちに兵たちのところへ入り込んだ。見ると、サウルは陣地の真ん中で横になって眠っていて、その槍は枕もとの地面に突き立ててあった。アブネルと兵たちもその周りで眠っていた。
26:8 アビシャイはダビデに言った。「神が今日、あなたの敵をあなたの手に渡してくださいました。さあ、槍で一突きにして、地面に刺し止めさせてください。二度は突きません、一突きで仕留めます。」
26:9 しかしダビデはアビシャイに言った。「殺してはいけない。主が油を注いで選ばれた人に手をかけて、罪に問われない者などいるだろうか。」
26:10 そしてダビデは言った。「主は生きておられる。主ご自身が必ずサウルを打たれるか、寿命が来て死ぬか、戦いに出て倒れるかだ。
26:11 主が油を注いで選ばれた人に、わたしが手をかけるなど、主の前では決してあってはならないことだ。さあ、枕もとの槍と水差しを取って、行こう。」
26:12 ダビデはサウルの枕もとから槍と水差しを取り、二人は立ち去った。だれ一人それを見た者も、気づいた者も、目を覚ました者もいなかった。みな眠り込んでいたのだ。主が深い眠りを彼らの上に下されたからだ。
26:13 ダビデは反対側へ渡り、遠く離れた丘の上に立った。二人の間にはかなりの距離があった。
26:14 ダビデは兵たちと、ネルの子アブネルに向かって叫んだ。「アブネル、返事をしないのか。」アブネルは答えて言った。「王に呼びかけるお前は、いったい何者だ。」
26:15 ダビデはアブネルに言った。「お前は男ではないか。イスラエルにお前ほどの者がいるか。それなのに、なぜ主君である王を守らなかったのか。お前の主君である王を殺そうと、一人の者が入り込んだのだぞ。
26:16 お前のしたことは良くない。主は生きておられる。お前たちは死んで当然だ。主が油を注いで選ばれた自分たちの主君を守らなかったのだから。さあ、王の槍と、枕もとにあった水差しがどこにあるか、見てみろ。」
26:17 サウルはダビデの声だと気づいて言った。「わたしの子ダビデよ、それはお前の声か。」ダビデは言った。「そうです、わたしの声です、わたしの主君、王よ。」
26:18 そして言った。「わたしの主君は、どうしてこの僕を追いかけるのですか。わたしが何をしたというのですか。わたしの手に、どんな悪があるというのですか。
26:19 どうか今、わたしの主君である王よ、この僕の言葉を聞いてください。もし主があなたをわたしに立ち向かわせたのなら、主は供え物を喜んで受け入れてくださるでしょう。しかし、もしそれが人のしわざなら、彼らは主の前でのろわれよ。彼らは今日、主のものである地に加わることからわたしを追い出し、『行って、ほかの神々に仕えろ』と言っているのですから。
26:20 どうか、わたしの血が主の前を離れて地に落ちることのないようにしてください。イスラエルの王が一匹のノミを探して出て来られたのです。まるで山でうずらを追う人のように。」
26:21 サウルは言った。「わたしは罪を犯した。帰って来い、わたしの子ダビデよ。もう二度とお前に害を加えたりしない。今日、お前がわたしの命を大切に思ってくれたのだから。ああ、わたしは愚かなことをした。ひどく道を誤ってしまった。」
26:22 ダビデは答えて言った。「ここに王の槍があります。若者の一人をよこして、取りに来させてください。
26:23 主は、それぞれの正しさと真実に報いてくださいます。今日、主はあなたをわたしの手に渡してくださいましたが、わたしは主が油を注いで選ばれた方に手をかけようとはしませんでした。
26:24 今日、わたしがあなたの命を大切にしたように、主もわたしの命を大切にし、あらゆる苦しみからわたしを救い出してくださいますように。」
26:25 サウルはダビデに言った。「わたしの息子ダビデよ、あなたに祝福があるように。あなたはきっと大きなことをなしとげ、必ず勝利するだろう。」こうしてダビデは自分の道を進み、サウルは自分のところへ帰って行った。
27:1 ダビデは心の中で思った。「このままでは、いつかサウルの手にかかって殺されてしまう。いちばんいいのは、すぐにペリシテ人の地へ逃げ込むことだ。そうすればサウルも、イスラエルじゅうを探し回るのをあきらめるだろう。こうして、わたしは彼の手から逃れられる。」
27:2 そこでダビデは立ち上がり、共にいる六百人の部下を連れて、ガトの王、マオクの子アキシュのもとへ渡って行った。
27:3 ダビデは部下たちと共に、ガトでアキシュのもとに住んだ。それぞれが家族を連れており、ダビデも二人の妻、イズレエル人アヒノアムと、カルメル人ナバルの妻だったアビガイルを連れていた。
27:4 ダビデがガトへ逃げたと知らされると、サウルはもう彼を探そうとはしなくなった。
27:5 ダビデはアキシュに言った。「もしわたしがあなたに気に入られているなら、地方の町のどこか一つを、わたしに住む場所として与えてください。この僕が、王都であなたと一緒に住む必要はないでしょう。」
27:6 その日、アキシュは彼にツィクラグを与えた。それで、ツィクラグは今日に至るまでユダの王たちのものとなっている。
27:7 ダビデがペリシテ人の地に住んだ期間は、一年と四か月だった。
27:8 ダビデは部下たちと共に出て行き、ゲシュル人、ギルジ人、アマレク人を襲った。彼らは昔からその地に住んでいた民で、その地はシュルからエジプトの地にまで広がっていた。
27:9 ダビデはその地を攻め、男も女も一人も生かしておかず、羊、牛、ろば、らくだ、それに衣類を奪って、アキシュのもとへ帰って来た。
27:10 アキシュが「今日はどこを襲ったのか」と尋ねると、ダビデは「ユダのネゲブと、エラフメエル人のネゲブと、ケニ人のネゲブです」と答えた。
27:11 ダビデは、ガトに連れて来るために男も女も一人も生かしておかなかった。「わたしたちのことを、『ダビデはこうした』と言って告げ口されてはいけない」と思ったからだ。ペリシテ人の地に住んでいる間、彼はずっとこのようにしていた。
27:12 アキシュはダビデを信用して、こう思った。「彼は自分の民イスラエルに、すっかり忌み嫌われるようになった。だから、いつまでもわたしの僕でいるだろう。」
28:1 その頃、ペリシテ人は戦いのために軍を集め、イスラエルと戦おうとしていた。アキシュはダビデに言った。「よく分かっているだろうが、おまえも部下たちも、わたしといっしょに軍に加わって出てもらうぞ。」
28:2 ダビデはアキシュに答えた。「これで、このしもべに何ができるか、あなたにも分かるでしょう。」アキシュは言った。「それなら、おまえをずっとわたしの護衛にしよう。」
28:3 さて、サムエルはすでに死んでいた。イスラエルの人々はみな彼のために嘆き悲しみ、彼の町ラマに葬った。サウルは、死者の霊を呼び出す者や占い師を、この地から追い払っていた。
28:4 ペリシテ人は集まって来て、シュネムに陣を敷いた。サウルもイスラエルをみな集め、ギルボアに陣を敷いた。
28:5 サウルはペリシテ人の陣を見て、恐ろしくなり、心は激しく震えた。
28:6 サウルは主に尋ねた。しかし主は、夢によっても、ウリムによっても、預言者によっても、彼に答えなかった。
28:7 そこでサウルは家来たちに言った。「死者の霊を呼び出す女を探してくれ。その女のところへ行って、尋ねてみたい。」家来たちは答えた。「エン・ドルに、そういう女がいます。」
28:8 サウルは変装して別の服を着ると、二人の供を連れて出かけた。夜、その女のところに着くと、こう言った。「頼む、霊を呼び出して占ってくれ。わたしの言う人を呼び上げてほしいのだ。」
28:9 女は言った。「あなたもご存じでしょう。サウルが、死者の霊を呼び出す者や占い師を、この地から絶やしたことを。それなのに、どうしてわたしの命をわなにかけて、殺そうとするのですか。」
28:10 サウルは主にかけて彼女に誓った。「主は生きておられる。このことであなたが罰を受けることは、決してない。」
28:11 女は尋ねた。「だれを呼び上げましょうか。」サウルは答えた。「サムエルを呼び上げてくれ。」
28:12 女はサムエルを見ると、大声で叫んだ。そしてサウルに言った。「どうしてわたしをだましたのですか。あなたはサウルではありませんか。」
28:13 王は言った。「こわがらなくていい。何が見えたのか。」女はサウルに言った。「神のような者が地の中から上がってくるのが見えます。」
28:14 サウルが「どんな姿だ」と尋ねると、女は答えた。「年をとった人が上がってきます。上着をまとっています。」サウルはそれがサムエルだと分かり、顔を地につけて深くひれ伏した。
28:15 サムエルはサウルに言った。「どうしてわたしを呼び起こして、わずらわせるのか。」サウルは答えた。「わたしはひどく苦しんでいます。ペリシテ人が攻めてきているのに、神はわたしを離れ、もう答えてくださいません。預言者を通しても、夢によっても答えてくださらないのです。だから、どうすればいいのか教えてほしくて、あなたを呼んだのです。」
28:16 サムエルは言った。「主はあなたを離れ、あなたの敵となられた。それなのに、どうしてわたしに尋ねるのか。
28:17 主は、わたしを通して語られたとおりのことをなさった。主は王国をあなたの手から引き裂き、あなたの隣人ダビデにお与えになった。
28:18 あなたは主の声に従わず、アマレクに対する主の激しい怒りを実行しなかった。だから主は今日、あなたにこのことをなさったのだ。
28:19 主はあなたといっしょにイスラエルをもペリシテ人の手に渡される。あすには、あなたも息子たちもわたしのところに来る。主はイスラエルの陣営もペリシテ人の手にお渡しになる。」
28:20 サウルはすぐさま、その長い体を地に投げ出して倒れた。サムエルの言葉を聞いて、ひどくおびえたのだ。体には力も残っていなかった。まる一日、まる一晩、何も食べていなかったからだ。
28:21 女はサウルのそばに来て、彼がひどく取り乱しているのを見た。そして言った。「ごらんください。このはしためは、あなたの言うことを聞きました。命がけであなたの言葉に従ったのです。
28:22 ですから今度は、あなたもこのはしための言うことを聞いてください。パンをひと切れ差し上げますから、食べてください。そうすれば力がついて、道を進んで行けます。」
28:23 サウルは断って、「食べない」と言った。けれども家来たちも女もしきりに勧めたので、サウルはその言葉に従った。そして地から起き上がり、寝台に腰かけた。
28:24 女は家に肥えた子牛を飼っていた。急いでそれをほふり、粉をとってこね、種を入れないパンを焼いた。
28:25 女はそれをサウルと家来たちの前に出した。彼らはそれを食べた。そして立ち上がり、その夜のうちに去って行った。
29:1 ペリシテ人は軍勢をすべてアフェクに集めた。イスラエルはイズレエルにある泉のほとりに陣を張っていた。
29:2 ペリシテ人の領主たちは、百人、千人の隊を率いて進んで行った。ダビデとその部下たちは、アキシュとともにいちばん後ろを進んで行った。
29:3 ペリシテ人の将軍たちは言った。「このヘブライ人たちは何なのだ。」するとアキシュは将軍たちに答えた。「これはイスラエルの王サウルの家来だったダビデではないか。もう何日も、いや何年もわたしのところにいるが、わたしのもとに来た日から今日まで、彼には何の落ち度も見つからなかった。」
29:4 ペリシテ人の将軍たちはアキシュに腹を立てて言った。「その男を帰らせて、あなたが割り当てた場所に戻らせてほしい。わたしたちと一緒に戦いに下って行かせてはならない。戦いの最中に、わたしたちの敵になるかもしれないからだ。あの男が主君と仲直りするのに、わたしたちの兵の首を差し出す以上のことがあるだろうか。
29:5 これはあのダビデではないか。人々が踊りながら歌い交わして、『サウルは千を討ち、ダビデは万を討った』と言った、あのダビデだ。」
29:6 アキシュはダビデを呼んで言った。「主は生きておられる。あなたは正直な人だ。あなたが陣営でわたしと一緒に出入りするのを、わたしはうれしく思ってきた。あなたがわたしのところに来た日から今日まで、あなたに悪いところは何も見つからなかった。しかし領主たちの目には、あなたは気に入られていない。
29:7 だから、どうか穏やかに帰って行ってほしい。ペリシテ人の領主たちの気にさわることをしないでくれ。」
29:8 ダビデはアキシュに言った。「でも、わたしが何をしたというのですか。あなたのもとに来た日から今日まで、このしもべに何か落ち度がありましたか。どうしてわたしの主君である王の敵と戦いに行ってはいけないのですか。」
29:9 アキシュはダビデに答えた。「あなたが神の使いのように、わたしの目に良い人であることは、よく分かっている。だが、ペリシテ人の将軍たちが、『彼をわたしたちと一緒に戦いに上らせてはならない』と言っているのだ。
29:10 だから、あなたも、あなたと一緒に来た主君の家来たちも、朝早く起きてくれ。朝早く起きて、明るくなったらすぐに出発してほしい。」
29:11 そこでダビデと部下たちは、ペリシテ人の地へ帰るため、朝早く起きて出発した。一方、ペリシテ人はイズレエルへ上って行った。
30:1 三日目に、ダビデと部下たちがツィクラグに着いた。ところが、その前にアマレク人がネゲブ地方とツィクラグを襲っていた。彼らはツィクラグを攻め、火をつけて焼き払っていた。
30:2 町にいた女たちを、身分の低い者から高い者まで、みな捕虜として連れ去っていた。だれ一人殺さず、そのまま引き連れて去っていったのだ。
30:3 ダビデと部下たちが町に着くと、町は焼け落ちていた。そして自分たちの妻や息子、娘は連れ去られていた。
30:4 ダビデも、いっしょにいた者たちも、声をあげて泣いた。もう泣く力も残らないほど、泣き続けた。
30:5 ダビデの二人の妻も連れ去られていた。イズレエル出身のアヒノアムと、カルメル人ナバルの妻だったアビガイルである。
30:6 ダビデは非常に苦しい立場に追い込まれた。民が彼を石で打ち殺そうと言い出したからだ。みな、自分の息子や娘のことで気持ちがすさみきっていた。でもダビデは、自分の神である主によって、自分を奮い立たせた。
30:7 ダビデは、アヒメレクの子である祭司エブヤタルに言った。「エフォドをここに持ってきてくれ。」エブヤタルはエフォドをダビデのところに持ってきた。
30:8 ダビデは主にたずねた。「あの略奪隊を追いかけるべきでしょうか。追いつけるでしょうか。」主は答えた。「追いかけなさい。きっと追いつき、必ず取り返せる。」
30:9 そこでダビデは、いっしょにいる六百人の部下を連れて出発し、ベソル川までやってきた。あとに残る者たちはそこにとどまった。
30:10 ダビデは四百人を率いて追撃を続けた。二百人は疲れきってベソル川を渡れず、そこに残ったのだ。
30:11 彼らは野原で一人のエジプト人を見つけ、ダビデのところに連れてきた。そしてパンを与えると、その男は食べ、水も飲ませてもらった。
30:12 さらに、干しいちじくのかたまり一つと、干しぶどうのふさを二つ与えた。それを食べると、男は元気を取り戻した。三日三晩、何も食べず、水も飲んでいなかったからだ。
30:13 ダビデはその男に聞いた。「おまえは誰の家の者だ。どこから来た。」男は答えた。「わたしはエジプト人で、あるアマレク人の召使いです。三日前に病気になったので、主人にここへ置き去りにされました。
30:14 わたしたちはケレト人の南の地や、ユダの領地、カレブの南の地を襲いました。そしてツィクラグを焼き払ったのです。」
30:15 ダビデは言った。「その略奪隊のところまで案内してくれるか。」男は答えた。「わたしを殺さない、主人にも引き渡さない、と神にかけて誓ってください。そうすれば、あなたをその隊のところまで案内します。」
30:16 男がダビデを案内していくと、アマレク人たちは一面に散らばっていた。彼らはペリシテ人の地とユダの地から奪った大量の戦利品を前に、飲んだり食べたり、大騒ぎをしていた。
30:17 ダビデは夕暮れどきから翌日の夕方まで彼らを討った。らくだに乗って逃げた四百人の若者のほかは、一人も逃げ延びられなかった。
30:18 こうしてダビデは、アマレク人が奪ったものをすべて取り返した。二人の妻も助け出した。
30:19 小さいものから大きいものまで、息子も娘も、戦利品も、彼らが奪っていったものは何一つ欠けていなかった。ダビデはすべてを取り戻したのだ。
30:20 ダビデは羊も牛もすべて取り返した。人々はそれらの家畜を先に立てて追い、「これはダビデの戦利品だ」と言った。
30:21 ダビデは、疲れきってついて来られず、ベソル川に残っていた二百人のところに戻ってきた。彼らはダビデと、いっしょにいた人々を迎えに出てきた。ダビデは近づいて、彼らにあいさつをした。
30:22 ところが、ダビデといっしょに行った者の中の、たちの悪い者たちが口をそろえて言った。「あいつらはわたしたちといっしょに行かなかった。だから、取り返した戦利品は分けてやらない。それぞれ自分の妻と子どもだけ連れて、出て行けばいい。」
30:23 でもダビデは言った。「兄弟たち、そんなことをしてはいけない。これは主がわたしたちに与えてくださったものだ。主はわたしたちを守り、攻めてきた略奪隊をわたしたちの手に渡してくださった。
30:24 こんなことを言って、誰がおまえたちに耳を貸すだろうか。戦いに出た者の分け前も、荷物のそばに残った者の分け前も同じだ。みな平等に分け合うのだ。」
30:25 その日から後、ダビデはこれをイスラエルのおきてとして定めた。それは今日まで続いている。
30:26 ダビデはツィクラグに帰ると、戦利品の一部を、友人であるユダの長老たちに送ってこう言った。「これは、主の敵から取り上げた戦利品です。あなたがたへの贈り物です。」
30:27 ダビデは、ベテル、南のラモテ、ヤティルにいる人たちに、
30:28 アロエル、シフモテ、エシュテモアにいる人たちに、
30:29 ラカル、エラフメエル人の町々、ケニ人の町々にいる人たちに、
30:30 ホルマ、ボル・アシャン、アタクにいる人たちに、
30:31 ヘブロンにいる人たちに、それにダビデと部下たちが行き来したすべての場所にいる人たちに、贈り物を送った。
31:1 さて、ペリシテ人がイスラエルと戦った。イスラエルの兵士たちはペリシテ人の前から逃げ、ギルボア山で討たれて倒れた。
31:2 ペリシテ人はサウルとその息子たちに追いついた。そして、サウルの息子ヨナタン、アビナダブ、マルキ・シュアを討ち取った。
31:3 戦いはサウルに激しく迫った。弓を射る者たちがサウルを見つけ、彼はひどい傷を負った。
31:4 サウルは、武器を持つ従者に言った。「剣を抜いて、わたしを刺してくれ。あの割礼のない者たちがやって来て、わたしを刺し、なぶりものにするといけないから。」でも、従者はひどく恐れて、そうしようとしなかった。それでサウルは自分で剣を取り、その上に身を投げた。
31:5 従者はサウルが死んだのを見て、彼も自分の剣の上に倒れ、サウルとともに死んだ。
31:6 こうしてサウルと三人の息子、武器を持つ従者、そして部下たちも皆、その日いっしょに死んだ。
31:7 谷の向こう側やヨルダン川の向こう側にいたイスラエルの人たちは、イスラエルの兵が逃げたこと、そしてサウルと息子たちが死んだことを知った。それで彼らは町を捨てて逃げ、そこにペリシテ人がやって来て住みついた。
31:8 翌日、ペリシテ人は倒れた者たちから武器や持ち物をはぎ取ろうとやって来た。すると、ギルボア山で倒れているサウルと三人の息子を見つけた。
31:9 彼らはサウルの首を切り落とし、よろいをはぎ取った。そして、この知らせを自分たちの偶像の神殿や人々に伝えようと、ペリシテの地のあちこちに使いを送った。
31:10 彼らはサウルのよろいをアシュタロテの神殿に納め、その遺体をベテ・シャンの城壁にさらしものにして打ちつけた。
31:11 ヤベシュ・ギルアデに住む人たちは、ペリシテ人がサウルにしたことを聞いた。
31:12 すると勇敢な男たちがみな立ち上がり、一晩じゅう歩いて、サウルの遺体と息子たちの遺体をベテ・シャンの城壁から取り下ろした。そしてヤベシュに帰り、そこで彼らを火で葬った。
31:13 それから、その骨を拾い、ヤベシュにあるタマリスクの木の下に葬った。そして七日間、断食した。
サムエル記下
1:1 サウルが死んだあとのことだ。ダビデはアマレク人を打ち破って戻り、ツィクラグに二日間とどまっていた。
1:2 三日目のことだった。ひとりの男が陣営から、サウルのところからやって来た。服は破れ、頭には土がかぶせてあった。彼はダビデのところに来ると、地にひれ伏して敬意を表した。
1:3 ダビデは彼に聞いた。「どこから来たのか。」男は答えた。「イスラエルの陣営から逃げてきました。」
1:4 ダビデはさらに聞いた。「何があったんだ。教えてくれ。」男は答えた。「兵たちは戦いから逃げ出し、多くが倒れて死にました。サウルと息子のヨナタンも死にました。」
1:5 ダビデは、知らせを伝えるその若者に聞いた。「サウルと息子のヨナタンが死んだと、どうしてわかったんだ。」
1:6 知らせを伝える若者は言った。「わたしはたまたまギルボア山にいました。すると、サウルが自分の槍にすがって立っていて、戦車と騎兵がすぐそこまで迫っていたんです。
1:7 サウルはうしろを振り向いてわたしを見つけ、呼びました。わたしは『はい、ここにいます』と答えました。
1:8 サウルは『お前はだれだ』と聞きました。わたしは『アマレク人です』と答えました。
1:9 するとサウルはわたしに言いました。『わたしのそばに立って、とどめを刺してくれ。まだ息はあるが、苦しくてたまらないんだ。』
1:10 そこでわたしはサウルのそばに立ち、とどめを刺しました。倒れたあとでは、もう助からないとわかっていたからです。それから、その頭にあった王冠と腕につけていた腕輪を取り、こうしてご主人さまのところにお持ちしました。」
1:11 すると、ダビデは自分の服をつかんで引き裂いた。一緒にいた者たちもみな同じようにした。
1:12 彼らはサウルのために、その息子ヨナタンのために、そして主の民とイスラエルの家のために嘆き、泣き、夕方まで断食した。みんなが剣に倒れて死んだからだ。
1:13 ダビデは、報告に来たその若者に尋ねた。「おまえはどこの出身だ。」若者は答えた。「わたしはこの地に住む外国人、アマレク人の子です。」
1:14 ダビデは言った。「どうして手を伸ばして主が選んだ王を殺すのを恐れなかったのだ。」
1:15 そしてダビデは若者たちの一人を呼んで言った。「近づいて、この男を打て。」その者は若者を打ち、若者は死んだ。
1:16 ダビデは彼に言った。「おまえの血の責任は、おまえ自身の頭にふりかかる。おまえの口が、『わたしが主の選んだ王を殺した』と、自分に不利な証言をしたからだ。」
1:17 ダビデは、サウルとその息子ヨナタンのために、この哀歌をうたった。
1:18 そして、ユダの人々にこの弓の歌を教えるようにと命じた。これは「ヤシャルの書」に記されている。
1:19 イスラエルよ、おまえの誉れが、高台で討たれて倒れている。ああ、勇士たちが倒れてしまった。
1:20 このことをガトで告げるな。アシュケロンの通りで知らせるな。ペリシテ人の娘たちが喜ばないように。神を知らない者たちの娘たちが勝ち誇らないように。
1:21 ギルボアの山々よ、おまえたちの上に露も降るな、雨も降るな。ささげ物を実らせる畑も現れるな。そこで勇士たちの盾が汚され、サウルの盾が、油も塗られないまま捨てられたからだ。
1:22 討たれた者たちの血を浴び、勇士たちの脂を切り裂いて、ヨナタンの弓は退くことがなかった。サウルの剣も、むなしく引き返すことはなかった。
1:23 サウルとヨナタン、愛され、慕われた二人。生きているときも、死ぬときも、離れることはなかった。二人は鷲よりも速く、獅子よりも強かった。
1:24 イスラエルの娘たちよ、サウルのために泣け。サウルはおまえたちに真っ赤な晴れ着を着せ、その衣を金の飾りで彩ってくれたのだ。
1:25 あぁ、勇士たちは戦いのただ中で倒れてしまった。ヨナタン、おまえは高台の上で討たれた。
1:26 兄弟ヨナタン、おまえのことを思うと、胸が張り裂けそうだ。おまえはわたしにとって、本当にかけがえのない人だった。おまえがわたしに向けてくれた愛は、女の愛にもまさる、すばらしいものだった。
1:27 あぁ、勇士たちは倒れてしまった。戦いの武器も、失われてしまった。
2:1 その後、ダビデは主に尋ねた。「ユダの町のどこかへ、上って行くべきでしょうか。」主は彼に「上って行け」と答えた。ダビデが「どこへ上ればよいのでしょう」と尋ねると、主は「ヘブロンへ」と言われた。
2:2 そこでダビデはヘブロンへ上って行った。二人の妻、イズレエルの女アヒノアムと、カルメルの人ナバルの妻だったアビガイルも一緒だった。
2:3 ダビデは、共にいた部下たちも、それぞれの家族と一緒に連れて上った。彼らはヘブロンの町々に住みついた。
2:4 ユダの人々がやって来て、そこでダビデに油を注ぎ、ユダの家の王とした。人々はダビデに、「サウルを葬ったのは、ヤベシュ・ギルアデの人々です」と伝えた。
2:5 ダビデはヤベシュ・ギルアデの人々に使者を送り、こう伝えた。「あなたがたが主君サウルにこの慈しみを示し、彼を葬ってくれたことを、主が祝福してくださるように。
2:6 今、主があなたがたに慈しみとまことを示してくださるように。あなたがたがこのことをしてくれたのだから、わたしもあなたがたに良くしよう。
2:7 だから今、あなたがたは強く、勇敢であってほしい。あなたがたの主君サウルは死んだ。そしてユダの家は、わたしに油を注いで自分たちの王としてくれたのだ。」
2:8 さて、サウルの軍の司令官だったネルの子アブネルは、サウルの子イシュ・ボシェトを連れ出し、マハナイムに渡らせた。
2:9 そして彼を、ギルアデ、アシュル人、イズレエル、エフライム、ベニヤミン、イスラエル全体の王とした。
2:10 サウルの子イシュ・ボシェトは、イスラエルの王になったとき四十歳で、二年の間王だった。しかしユダの家はダビデに従った。
2:11 ダビデがヘブロンでユダの家の王だった期間は、七年六か月だった。
2:12 ネルの子アブネルと、サウルの子イシュ・ボシェトの家来たちは、マハナイムを出てギブオンへ向かった。
2:13 ツェルヤの子ヨアブとダビデの家来たちも出て行き、ギブオンの池のほとりで彼らと出くわした。そして一方は池のこちら側に、もう一方は向こう側に座った。
2:14 アブネルはヨアブに言った。「若者たちを立たせて、わたしたちの前で勝負をさせよう。」ヨアブは言った。「立たせよう。」
2:15 そこで若者たちは立ち上がり、数えられて進み出た。ベニヤミンとサウルの子イシュ・ボシェトのために十二人、ダビデの家来から十二人だった。
2:16 彼らはそれぞれ相手の頭をつかみ、剣を相手のわき腹に突き刺した。そして共に倒れた。それでその場所は、ギブオンにあるヘルカテ・ハツリムと呼ばれた。
2:17 その日の戦いはとても激しかった。アブネルとイスラエルの兵士たちは、ダビデの家来たちに打ち負かされた。
2:18 そこにはツェルヤの三人の息子、ヨアブ、アビシャイ、アサエルがいた。アサエルは、野のかもしかのように足が速かった。
2:19 アサエルはアブネルを追いかけた。右にも左にもそれず、まっすぐアブネルを追い続けた。
2:20 アブネルはうしろを振り返って言った。「お前はアサエルか。」アサエルは「そうだ」と答えた。
2:21 アブネルは言った。「右か左にそれて、若い兵士の一人を捕まえろ。そいつの装備をはぎ取れ。」でもアサエルは、アブネルを追うのをやめようとしなかった。
2:22 アブネルはもう一度アサエルに言った。「わたしを追うのをやめてくれ。どうしてお前を打ち倒さなきゃならないんだ。そんなことをしたら、お前の兄ヨアブに、どう顔向けできるだろう。」
2:23 それでもアサエルは、それようとしなかった。そこでアブネルは槍の石突きで彼の腹を突いた。槍は背中まで突き抜け、アサエルはその場に倒れて、そこで死んだ。アサエルが倒れて死んだその場所に来る者はみな、立ち止まった。
2:24 しかしヨアブとアビシャイはアブネルを追いかけた。日が沈むころ、彼らはアマの丘までたどり着いた。その丘は、ギブオンの荒れ野へ向かう道沿いの、ギアの東にある。
2:25 ベニヤミンの人々はアブネルのもとに集まり、一つの隊列を組んで、一つの丘の頂に立った。
2:26 アブネルはヨアブに呼びかけて言った。「いつまでも剣で殺し合うつもりか。この先には苦い結末しか待っていないと、分からないのか。仲間を追うのをやめるよう、いつになったら兵士たちに命じるんだ。」
2:27 ヨアブは答えた。「神は生きておられる。もしお前が声をかけなかったら、兵士たちは朝までずっと、それぞれ自分の仲間を追い続けていただろう。」
2:28 そしてヨアブが角笛を吹くと、兵士たちはみな立ち止まった。もうイスラエルを追うことも、戦うこともなかった。
2:29 アブネルとその部下たちは、その夜どおしアラバを通って歩き、ヨルダン川を渡った。そしてビトロンの地をずっと進んで、マハナイムに着いた。
2:30 ヨアブはアブネルを追うのをやめて引き返し、兵士たちをみな集めた。人数を数えると、ダビデの家来のうち、アサエルのほかに十九人が失われていた。
2:31 一方、ダビデの家来たちは、ベニヤミンの兵とアブネルの部下を討ち取っていた。三百六十人が死んだ。
2:32 人々はアサエルを運んで、ベツレヘムにある父の墓に葬った。ヨアブとその部下たちは夜どおし歩き、ヘブロンに着いたころ夜が明けた。
3:1 サウルの家とダビデの家の戦いは、長く続いた。ダビデはますます強くなっていったが、サウルの家はしだいに弱くなっていった。
3:2 ダビデには、ヘブロンで息子たちが生まれた。長男はアムノンで、イズレエル出身のアヒノアムが母だった。
3:3 次男はキルアブで、カルメル出身のナバルの妻だったアビガイルが母だった。三男はアブサロムで、ゲシュルの王タルマイの娘マアカが母だった。
3:4 四男はアドニヤで、ハギテが母だった。五男はシェファテヤで、アビタルが母だった。
3:5 六男はイテレアムで、ダビデの妻エグラが母だった。この息子たちはみな、ヘブロンでダビデに生まれた。
3:6 サウルの家とダビデの家の戦いが続いているあいだ、アブネルはサウルの家で勢力を強めていった。
3:7 サウルには側女がいて、名をリツパといい、アヤの娘だった。ある時イシュ・ボシェテがアブネルに言った。「どうしてあなたは、わたしの父の側女と寝たのか。」
3:8 この言葉にアブネルは激しく怒り、イシュ・ボシェテに言った。「わたしはユダに味方する犬の頭だとでもいうのか。わたしは今日まで、あなたの父サウルの家に、その兄弟や仲間たちに変わらぬ真心を尽くしてきた。あなたをダビデの手に渡すこともしなかった。それなのに、あなたは今日、この女のことでわたしを責めるのか。
3:9 もしわたしが、主がダビデに誓われたとおりにしないなら、神がこのアブネルをどんなにひどく罰してもかまわない。
3:10 わたしは王国をサウルの家から取り上げ、ダビデの王座を、ダンからベエル・シェバまでのイスラエルとユダの上に立てる。」
3:11 イシュ・ボシェテはアブネルが怖くて、もう一言も返せなかった。
3:12 アブネルは自分の使いをダビデのもとに送り、こう言わせた。「この地はいったい誰のものですか。わたしと契約を結んでください。そうすれば、わたしがあなたに味方して、全イスラエルをあなたのもとに引き寄せます。」
3:13 ダビデは答えた。「よろしい。あなたと契約を結ぼう。ただし一つだけ求めることがある。わたしに会いに来るとき、まずサウルの娘ミカルを連れて来なさい。そうでなければ、あなたはわたしの顔を見ることはできない。」
3:14 そしてダビデは、サウルの子イシュ・ボシェテのもとにも使いを送って言った。「わたしの妻ミカルを返してくれ。わたしはペリシテ人の包皮百枚を払って、あの女を妻に迎えたのだ。」
3:15 イシュ・ボシェテは人をやって、ミカルを夫のライシュの子パルティエルから取り上げた。
3:16 夫は泣きながら、バフリムまでずっとミカルのあとについて行った。すると、アブネルが彼に「帰れ」と言ったので、彼は帰って行った。
3:17 アブネルはイスラエルの長老たちに話を持ちかけて言った。「あなたがたは前々から、ダビデを自分たちの王にしたいと望んでいた。
3:18 さあ、今こそ実行してほしい。主はダビデについて、こう言われたのだから。『わたしはしもべダビデの手によって、わたしの民イスラエルを、ペリシテ人とすべての敵の手から救い出す。』」
3:19 アブネルはベニヤミンの人々にも直接話をした。それからアブネルは、イスラエルとベニヤミンの家のすべての人が望んでいることを、ヘブロンにいるダビデに直接伝えに行った。
3:20 アブネルは二十人の部下を連れて、ヘブロンのダビデのもとにやって来た。ダビデはアブネルと連れの者たちのために宴会を開いた。
3:21 アブネルはダビデに言った。「わたしはすぐに出かけて、イスラエルのすべての人を、王であるあなたのもとに集めます。彼らはあなたと契約を結び、あなたは思いのままにすべてを治める王となるのです。」ダビデがアブネルを送り出すと、彼は無事に帰って行った。
3:22 ちょうどそのとき、ダビデの家来たちとヨアブが、略奪から戻ってきた。彼らはたくさんの戦利品を持っていた。でも、アブネルはもうヘブロンのダビデのもとにはいなかった。ダビデが彼を送り出し、彼が無事に帰って行ったあとだったからだ。
3:23 ヨアブと、連れの軍勢がみな戻ってくると、人々はヨアブに知らせて言った。「ネルの子アブネルが王のところに来ていました。王は彼を送り出し、彼は無事に帰って行きました。」
3:24 そこでヨアブは王のところへ行って言った。「何ということをなさったのですか。アブネルがあなたのところに来たのに、どうして送り出して、行かせてしまったのですか。
3:25 ネルの子アブネルがどんな男か、ご存じでしょう。彼はあなたをだますために来たのです。あなたの動きをすべて探り、何をしているのか、すっかり知るために来たのですよ。」
3:26 ヨアブはダビデのもとを出ると、アブネルのあとを追って使いの者を送った。彼らはシラの井戸のところからアブネルを連れ戻した。ダビデはそれを知らなかった。
3:27 アブネルがヘブロンに戻ってくると、ヨアブは内緒の話があるふりをして、彼を門の中に呼び入れた。そして、弟アサエルの血の復讐として、その場でアブネルの腹を刺し、殺してしまった。
3:28 後になってこれを聞いたダビデは言った。「わたしも、わたしの王国も、ネルの子アブネルの血について、主の前で永遠に罪はない。
3:29 その責任は、ヨアブとその一族すべての頭に降りかかるように。ヨアブの家には、うみを流す者、重い皮膚病の者、杖にすがって歩く者、剣に倒れる者、パンに事欠く者が絶えないように。」
3:30 ヨアブとその弟アビシャイがアブネルを殺したのは、アブネルがギブオンでの戦いで、彼らの弟アサエルを殺したからだった。
3:31 ダビデはヨアブと、彼と共にいたすべての民に言った。「服を引き裂き、喪服を身につけ、アブネルのために嘆き悲しめ。」そしてダビデ王自身も、棺の後ろを歩いていった。
3:32 人々はアブネルをヘブロンに葬った。王は声をあげ、アブネルの墓の前で泣いた。民もみな泣いた。
3:33 王はアブネルのために嘆きの歌をうたった。「アブネルは、愚か者が死ぬように死ななければならなかったのか。
3:34 お前の手は縛られてもいなかった。足も鎖につながれていなかった。それなのにお前は、悪人の前に倒れるように倒れた。」民はみな、また彼のために泣いた。
3:35 まだ日のあるうちに、民はみなダビデにパンを食べさせようとやって来た。でもダビデは誓って言った。「日が沈む前にパンでも何でも口にするようなら、神がわたしをどれほどでも罰してくださるように。」
3:36 民はみなそれに気づき、それを良いことと思った。王がすることはすべて、民みなの目に良いと映った。
3:37 その日、民もみな、イスラエルもみな、ネルの子アブネルを殺したのは王の意志ではなかったと知った。
3:38 王は家臣たちに言った。「今日、イスラエルで一人の指導者、偉大な人物が倒れたのを、あなたがたは知らないのか。
3:39 わたしは油を注がれて王となったのに、今日はまだ力が弱い。ツェルヤの子であるあの者たちは、わたしよりも手ごわい。主が、悪を行う者にその悪に応じて報いてくださるように。」
4:1 サウルの子イシュ・ボシェテは、アブネルがヘブロンで死んだと聞いて、力が抜けてしまった。イスラエルの人々もみな不安に襲われた。
4:2 サウルの子イシュ・ボシェテには、略奪隊の隊長が二人いた。一人はバアナ、もう一人はレカブといい、ベエロテ出身のリモンの息子たちで、ベニヤミン族に属していた。ベエロテもベニヤミンの一部と数えられていたからだ。
4:3 ベエロテの人々はギタイムに逃げ、今もそこでよそ者として暮らしている。
4:4 サウルの子ヨナタンには、足の不自由な息子がいた。サウルとヨナタンの知らせがイズレエルから届いたとき、この子は五歳だった。乳母は彼を抱え上げて逃げたが、あわてて逃げる途中で子どもを落としてしまい、それで足が不自由になった。名をメフィボシェテといった。
4:5 さて、ベエロテ出身のリモンの息子レカブとバアナは出かけて行き、日の暑いころにイシュ・ボシェテの家に着いた。イシュ・ボシェテは昼の休息で横になっていた。
4:6 二人は小麦を取りに来たふりをして家の奥まで入り込み、イシュ・ボシェテの腹を刺した。そしてレカブと兄弟バアナは逃げ去った。
4:7 二人が家に入ったとき、イシュ・ボシェテは寝室のベッドで横になっていた。二人は彼を刺して殺し、首をはねた。そしてその首を持って、一晩じゅうアラバの道を進んで行った。
4:8 二人はイシュ・ボシェテの首をヘブロンにいるダビデのもとへ運び、王に言った。「ご覧ください。あなたの命をねらった敵、サウルの子イシュ・ボシェテの首です。主は今日、王さまのために、サウルとその子孫に報復してくださいました。」
4:9 ダビデはベエロテ出身のリモンの息子レカブと兄弟バアナに答えて言った。「わたしの魂をあらゆる苦しみから救い出してくださった主は生きておられる。
4:10 かつて、『サウルが死にました』とわたしに告げた者がいた。その男は自分では良い知らせを伝えたつもりだった。しかしわたしは彼を捕らえ、ツィクラグで殺した。それが、知らせを持って来た彼に与えた報いだった。
4:11 まして、悪人どもが正しい人をその家の中で、しかもベッドの上で殺したのだ。今わたしが、その血の責任をお前たちに問い、お前たちを地上から除き去らないはずがあろうか。」
4:12 そしてダビデは若者たちに命じ、二人を殺させた。若者たちは二人の手足を切り落とし、ヘブロンの池のそばにさらした。人々はイシュ・ボシェテの首を取り、ヘブロンにあるアブネルの墓に葬った。
5:1 イスラエルの全部族がヘブロンにいるダビデのもとにやって来て、こう言った。「わたしたちは、あなたと同じ血を分けた身内です。
5:2 以前、サウルがわたしたちの王だったときも、イスラエルを率いて戦いに出て、また連れ帰ってくれたのはあなたでした。それに主はあなたに、『あなたがわたしの民イスラエルを羊飼いのように導き、イスラエルの指導者となる』と言われました。」
5:3 こうしてイスラエルの長老たちがみな、ヘブロンにいる王のもとにやって来た。ダビデ王はヘブロンで、主の前で彼らと契約を結び、彼らはダビデに油をそそいでイスラエルの王とした。
5:4 ダビデが王になったのは三十歳のときで、四十年のあいだ王であった。
5:5 ヘブロンでは七年六か月のあいだユダを治め、エルサレムでは三十三年のあいだ、全イスラエルとユダを治めた。
5:6 王とその部下たちは、エルサレムに住むエブス人を攻めに向かった。すると彼らはダビデに言った。「おまえはここには入れない。目の見えない者や足の不自由な者でも、おまえを追い返せるさ。」ダビデはここに入れない、と思っていたのだ。
5:7 しかしダビデは、シオンの要塞を攻め取った。これがダビデの町である。
5:8 その日ダビデは言った。「エブス人を討とうとする者は、みな水路をよじ登って、ダビデが憎むあの足の不自由な者や目の見えない者を討て。」だから人々は、「目の見えない者や足の不自由な者は、この家に入ってはならない」と言うのだ。
5:9 ダビデはその要塞に住み、それをダビデの町と名づけた。そしてダビデは、ミロから内側にかけて、まわりに町を築いていった。
5:10 ダビデはますます力を増していった。万軍の神である主が、ともにいてくださったからである。
5:11 ティルスの王ヒラムは、ダビデのもとに使者を送り、杉の木材と、大工や石工を送ってきた。彼らはダビデのために宮殿を建てた。
5:12 ダビデは、主が自分をイスラエルの王として確かに立て、その王国を、主の民イスラエルのために栄えあるものとしてくださったことを知った。
5:13 ダビデはヘブロンから移ってきたあと、エルサレムでさらに多くの妻やそばめを迎えた。そしてダビデには、さらに多くの息子や娘が生まれた。
5:14 エルサレムで生まれた子どもたちの名前は、次のとおりである。シャムア、ショバブ、ナタン、ソロモン、
5:15 イブハル、エリシュア、ネフェグ、ヤフィア、
5:16 エリシャマ、エルヤダ、エリフェレテである。
5:17 さて、ペリシテ人は、ダビデが油を注がれてイスラエルの王になったと聞いた。すると、ペリシテ人はこぞってダビデを捜しに攻め上ってきた。それを聞いたダビデは、要害に下っていった。
5:18 ペリシテ人は攻めてきて、レファイムの谷いっぱいに広がった。
5:19 ダビデは主に尋ねた。「ペリシテ人のところへ攻め上ってもいいでしょうか。彼らをわたしの手に渡してくださいますか。」主はダビデに答えられた。「上っていけ。わたしは必ずペリシテ人をあなたの手に渡す。」
5:20 ダビデはバアル・ペラツィムへ攻め上り、そこで彼らを打ち破った。そして言った。「主は、堤を切って水があふれ出るように、わたしの目の前で敵を打ち破ってくださった。」そこで、その場所はバアル・ペラツィムと呼ばれるようになった。
5:21 ペリシテ人はその場に自分たちの偶像を置き去りにした。ダビデと部下たちは、それを運び去った。
5:22 ペリシテ人は、またもや攻め上ってきて、レファイムの谷いっぱいに広がった。
5:23 ダビデが主に尋ねると、主は答えられた。「まっすぐ攻め上ってはならない。彼らのうしろに回り込み、バルサムの木立の正面から向かっていけ。
5:24 バルサムの木々の上のほうから、行進するような足音が聞こえたら、そのときは一気に動け。主が、あなたの先に立って進み出て、ペリシテ人の陣営を打ち破ってくださるからだ。」
5:25 ダビデは、主が命じられたとおりにした。そしてペリシテ人を、ゲバからゲゼルまで打ち破った。
6:1 ダビデは、イスラエルの選りすぐりの兵をふたたび集めた。その数は三万人だった。
6:2 そしてダビデは、いっしょにいた民をみな連れて、バアレ・ユダへ向かった。そこから神の箱を運び上げるためだ。この箱は、ケルビムの上に座す万軍の主の名で呼ばれるものだった。
6:3 人々は神の箱を新しい車に載せ、丘の上にあるアビナダブの家から運び出した。アビナダブの息子ウザとアフヨが、その新しい車を進めていた。
6:4 こうして彼らは、神の箱を載せたまま、丘の上のアビナダブの家から運び出した。アフヨは箱の前を歩いていた。
6:5 ダビデとイスラエルの人々はみな、主の前で力いっぱい喜び祝った。糸杉で作ったさまざまな楽器や、竪琴、琴、太鼓、鈴、シンバルを鳴らしながら。
6:6 一行がナコンの脱穀場までやって来たとき、牛がよろめいた。それでウザは神の箱に手を伸ばし、箱を押さえた。
6:7 すると主の怒りがウザに向かって燃え上がった。神は、彼のこの過ちのゆえに、その場で彼を打たれた。ウザは神の箱のそばで死んだ。
6:8 ダビデは、主がウザを打ち倒されたことに、心を痛めて怒った。そしてその場所を、今日までペレツ・ウザ（ウザへの打ち倒し）と呼ぶようになった。
6:9 その日、ダビデは主を恐れて言った。「どうして主の箱を、わたしのところに迎えられるだろう。」
6:10 ダビデは、主の箱を自分のところ、つまりダビデの町に運び入れるのをやめた。その代わりに、ガト人オベデ・エドムの家へ運び込んだ。
6:11 主の箱は、ガト人オベデ・エドムの家に三か月とどまった。その間、主はオベデ・エドムとその家の者すべてを祝福された。
6:12 「主は、神の箱のゆえに、オベデ・エドムの家と、彼のすべてのものを祝福された」と、ダビデ王に知らせが届いた。そこでダビデは出かけていき、喜びのうちに、神の箱をオベデ・エドムの家からダビデの町へ運び上げた。
6:13 主の箱を担ぐ人たちが六歩進むと、ダビデは雄牛と肥えた子牛をいけにえとしてささげた。
6:14 ダビデは、主の前で力の限り踊った。彼は亜麻布のエフォドという祭服を身につけていた。
6:15 こうしてダビデとイスラエルの人々はみな、歓声をあげ、角笛を鳴らしながら、主の箱を運び上げた。
6:16 主の箱がダビデの町に入って来たとき、サウルの娘ミカルは窓から見下ろしていた。そして、主の前で跳ねまわり踊っているダビデ王を見て、心の中で彼を軽蔑した。
6:17 人々は主の箱を運び入れ、ダビデが箱のために張った天幕の中の、決められた場所に安置した。それからダビデは、主の前で焼き尽くすいけにえと和解のいけにえをささげた。
6:18 ダビデは焼き尽くすいけにえと和解のいけにえをささげ終えると、万軍の主の名によって民を祝福した。
6:19 そして民全員に、イスラエルの群衆みなに、男にも女にも、一人ひとりに、パン一個、なつめやしの菓子一つ、干しぶどうの菓子一つを分け与えた。それから民はみな、それぞれ自分の家に帰っていった。
6:20 ダビデが自分の家族を祝福しようと戻ってくると、サウルの娘ミカルが出迎えて言った。「今日のイスラエルの王は、なんとご立派なことでしょう。家来の召し使いの女たちの目の前で、恥知らずな軽薄者が裸をさらすように、自分をさらけ出したりして。」
6:21 ダビデはミカルに言った。「主の前でのことだ。主は、あなたの父やその一族すべてを差し置いて、このわたしを選び、主の民イスラエルを治める指導者に任命してくださった。だから、そのわたしが主の前で喜び踊るのだ。
6:22 わたしはこれよりもっと自分をおとしめ、自分でも取るに足りない者となろう。それでも、あなたの言うその召し使いの女たちからは、わたしは敬われるのだ。」
6:23 こうして、サウルの娘ミカルには、死ぬ日まで子どもができなかった。
7:1 王が自分の宮殿に住むようになり、主が周りのすべての敵から守って、彼を安らかにされたころのことである。
7:2 王は預言者ナタンに言った。「見てほしい。わたしはこうして立派な杉材の宮殿に住んでいる。それなのに、神の箱は天幕の中に置かれたままなのだ。」
7:3 ナタンは王に答えた。「心に思っていることを、何でも実行してください。主があなたとともにおられますから。」
7:4 ところが、その夜、主の言葉がナタンに臨んだ。
7:5 「行って、わたしのしもべダビデに伝えなさい。主はこう言われる。あなたが、わたしの住む家を建ててくれるというのか。
7:6 わたしは、イスラエルの人々をエジプトから導き上った日から今日まで、家に住んだことはない。ずっと天幕を住まいとして、あちこちを移り歩いてきた。
7:7 イスラエルのすべての人々とともに歩んできた間、わたしは、民イスラエルを牧するように命じた部族の長の一人にでも、『なぜ、わたしに杉材の家を建てないのか』と、そんなことを言ったことがあっただろうか。
7:8 だから今、わたしのしもべダビデにこう伝えなさい。万軍の主はこう言われる。わたしは、あなたを牧場から、羊の群れを追う仕事から引き上げ、わたしの民イスラエルを治める指導者とした。
7:9 あなたがどこへ行くときも、わたしはいつもともにいて、あなたの前からすべての敵を断ち滅ぼした。そして、地上の偉大な人たちに並ぶほど、あなたの名を大きなものにする。
7:10 また、わたしは民イスラエルのために一つの場所を定め、彼らをそこに植える。彼らはその場所に安らかに住み、もう脅かされることはない。以前のように、悪を行う者たちが彼らを苦しめることも、二度とない。
7:11 わたしが、わたしの民イスラエルの上にさばきつかさを立てた日から、ずっとそうだった。わたしは、あなたをすべての敵から守り、安らかにする。さらに主はあなたに告げる。この主が、あなたのために一つの家を建てる。
7:12 あなたの生涯が終わり、先祖のもとで眠りにつくとき、わたしは、あなたの体から出るあなたの子孫を、あなたに代えて立て、その王国を確かなものとする。
7:13 彼こそが、わたしの名のために家を建てる。わたしは、その王国の王座を、永遠に確かなものとする。
7:14 わたしは彼の父となり、彼はわたしの子となる。もし彼が過ちを犯したなら、わたしは人の使う杖で、人の子らの打つ鞭で、彼を正す。
7:15 だが、わたしの慈しみが彼から離れることはない。あなたの前から退けたサウルから、それを取り去ったようなことはしない。
7:16 あなたの家と王国は、あなたの前で永遠に続く。あなたの王座は、永遠に揺るがない。」
7:17 ナタンは、これらの言葉のすべてを、この幻のすべてを、そのままダビデに語った。
7:18 すると、ダビデ王は入って行き、主の前に座って言った。「主なる神よ、このわたしが何者でしょう。わたしの家が何だというのでしょう。それなのに、あなたはここまで、わたしを導いてくださいました。
7:19 主なる神よ、それだけでもあなたの目には小さなことでした。あなたはさらに、このしもべの家の遠い先のことまで語ってくださいました。主なる神よ、こんなことが人へのおきてなのでしょうか。
7:20 このダビデが、あなたにこれ以上、何を言えるでしょう。主なる神よ、あなたはこのしもべを知り尽くしておられます。
7:21 あなたはご自分の言葉のとおり、ご自分の心のままに、この大いなることをすべて成し遂げ、このしもべに知らせてくださいました。
7:22 だから、主なる神よ、あなたは大いなる方です。わたしたちがこの耳で聞いたかぎり、あなたのような方はなく、あなたのほかに神はいません。
7:23 あなたの民イスラエルのような民が、地上のどこにいるでしょう。神みずから出向いて、これを買い戻し、ご自分の民とされました。そして、その名をあげ、大いなる恐るべきわざを行われました。あなたはエジプトから、もろもろの国々とその神々から、ご自分のためにこの民を買い戻されたのです。
7:24 あなたは、あなたの民イスラエルを、永遠にあなたの民として揺るがぬものとされ、主よ、あなたは彼らの神となってくださいました。
7:25 主なる神よ、今、あなたがしもべとその家について語ってくださった言葉を、永遠に揺るがぬものとしてください。そして、語られたとおりに行ってください。
7:26 そうすれば、あなたの名は永遠にあがめられ、人々は「万軍の主こそイスラエルの神だ」と言うでしょう。そして、あなたのしもべダビデの家は、あなたの前にしっかりと立ち続けます。
7:27 万軍の主、イスラエルの神よ、あなたはしもべの耳に、「わたしがあなたのために家を建てる」と告げてくださいました。だからしもべは、この祈りをあなたにささげる勇気を得たのです。
7:28 主なる神よ、今、あなたこそ神であり、あなたの言葉は真実です。あなたはこの良い約束を、しもべに語ってくださいました。
7:29 だから今、どうかしもべの家を祝福し、あなたの前に永遠に続くようにしてください。主なる神よ、あなたが語ってくださったのですから。あなたの祝福によって、しもべの家はいつまでも祝福されます。
8:1 その後、ダビデはペリシテ人を討って屈服させた。そして、ペリシテ人の手からメテグ・アンマを奪い取った。
8:2 またダビデはモアブを討った。人々を地面に伏せさせ、綱で長さを測り、二本分の長さの者を死なせ、一本分の長さの者を生かした。こうしてモアブはダビデのしもべとなり、みつぎ物を納めるようになった。
8:3 ダビデはまた、ツォバの王レホブの子ハダドエゼルを討った。ハダドエゼルが、ユーフラテス川のほとりで自分の勢力を取り戻そうと出て行ったときのことだ。
8:4 ダビデは彼から騎兵千七百人と歩兵二万人を捕らえた。そして戦車の馬をすべて足の筋を切って使えなくし、そのうち百台分だけを残した。
8:5 ダマスコのアラム人が、ツォバの王ハダドエゼルを助けに来た。しかしダビデは、アラム人を二万二千人討ち取った。
8:6 ダビデはダマスコのアラムに守備隊を置き、アラム人はダビデのしもべとなって、みつぎ物を納めるようになった。主は、ダビデの行くところどこででも、彼に勝利を与えられた。
8:7 ダビデは、ハダドエゼルの家来たちが身につけていた金の盾を奪い取り、エルサレムに持ち帰った。
8:8 さらにダビデ王は、ハダドエゼルの町ベタとベロタイから、非常にたくさんの青銅を手に入れた。
8:9 ハマトの王トイは、ダビデがハダドエゼルの軍勢をすべて討ち破ったと聞いた。
8:10 そこでトイは、息子のヨラムをダビデ王のもとに送り、あいさつをして、彼を祝福させた。ダビデがハダドエゼルと戦って討ち破ったからだ。ハダドエゼルは、以前からトイと戦い続けてきた相手だった。ヨラムは、銀や金や青銅の器を持って来た。
8:11 ダビデ王は、それらの器も主にささげた。征服したすべての国々から取り、すでに主にささげていた銀や金と一緒にである。
8:12 それは、アラム、モアブ、アンモン人、ペリシテ人、アマレクから取ったものであり、またツォバの王、レホブの子ハダドエゼルから奪った戦利品でもあった。
8:13 ダビデは、塩の谷でアラム人一万八千人を討ち破って帰ったとき、その名をとどろかせた。
8:14 ダビデはエドムに守備隊を置いた。エドム全土に守備隊を置き、エドムの人々はみなダビデのしもべとなった。主は、ダビデの行くところどこででも、彼に勝利を与えられた。
8:15 こうしてダビデは、イスラエル全体を治める王となった。そしてダビデは、すべての民のために、公正で正しい政治を行った。
8:16 ツェルヤの子ヨアブは軍の司令官、アヒルドの子ヨシャファトは記録係だった。
8:17 アヒトブの子ツァドクとエブヤタルの子アヒメレクは祭司、セラヤは書記官だった。
8:18 エホヤダの子ベナヤはケレト人とペレテ人を率い、ダビデの息子たちは祭司だった。
9:1 ダビデは言った。「サウルの家の者で、まだ生き残っている人はいないだろうか。ヨナタンのために、その人に慈しみを示したいのだ。」
9:2 サウルの家には、ツィバという名の使用人がいた。人々は彼をダビデのところに呼び出した。王は彼に言った。「あなたがツィバか。」彼は答えた。「はい、あなたのしもべです。」
9:3 王は言った。「サウルの家に、まだ誰か残っていないか。その人に神の慈しみを示したいのだ。」ツィバは王に答えた。「ヨナタンの息子がまだ一人います。両足の不自由な人です。」
9:4 王は尋ねた。「その人はどこにいるのか。」ツィバは答えた。「その人は、ロ・デバルにある、アミエルの子マキルの家にいます。」
9:5 そこでダビデ王は人を送って、ロ・デバルにあるアミエルの子マキルの家から、彼を連れて来させた。
9:6 サウルの子ヨナタンの子メフィボシェトは、ダビデのところに来ると、ひれ伏して礼をした。ダビデが「メフィボシェト」と呼びかけると、彼は「はい、あなたのしもべです」と答えた。
9:7 ダビデは彼に言った。「恐れることはない。わたしはあなたの父ヨナタンのために、必ずあなたに慈しみを示す。あなたの祖父サウルの土地を、すべて返そう。そしてあなたはいつも、わたしの食卓で食事をするのだ。」
9:8 メフィボシェトはひれ伏して言った。「このしもべが何者だというのでしょう。わたしのような、死んだ犬にすぎない者に、目を留めてくださるとは。」
9:9 王はサウルの使用人ツィバを呼んで言った。「サウルとその一族のものだったすべてを、わたしはあなたの主人の孫に与えた。
9:10 あなたは息子たちや使用人たちと一緒に、その人のために土地を耕し、収穫を運んで来なさい。そうすれば、あなたの主人の孫に食べる物ができる。だが、あなたの主人の孫メフィボシェト自身は、いつもわたしの食卓で食事をするのだ。」ツィバには十五人の息子と二十人の使用人がいた。
9:11 ツィバは王に答えた。「わたしの主君である王が、このしもべにお命じになるとおりに、すべていたします。」こうしてメフィボシェトは、王の息子たちの一人のように、ダビデの食卓で食事をするようになった。
9:12 メフィボシェトには、ミカという名の幼い息子がいた。ツィバの家に住む者はみな、メフィボシェトのしもべとなった。
9:13 こうしてメフィボシェトはエルサレムに住み、いつも王の食卓で食事をするようになった。彼は両足が不自由だった。
10:1 その後、アンモン人の王が死に、その子ハヌンが跡を継いで王となった。
10:2 ダビデは言った。「ナハシュの子ハヌンには、慈しみを示そう。父のナハシュがわたしに慈しみを示してくれたからだ。」そして父を失った彼を慰めるため、ダビデは家臣たちを送った。ダビデの家臣たちがアンモン人の地に着くと、
10:3 アンモン人の高官たちは、主君ハヌンに言った。「ダビデがあなたに慰めの使いをよこしたのは、亡くなった父君を敬っているからだとお思いですか。ダビデが家臣たちを送ってきたのは、この町を調べ、探り、滅ぼすためではありませんか。」
10:4 そこでハヌンはダビデの家臣たちを捕らえ、ひげを半分そり落とし、衣を尻のあたりまで半分に切り取って、彼らを追い返した。
10:5 このことがダビデに伝えられると、彼は使者を送って彼らを迎えさせた。この人たちは深く辱められていたからである。王は言った。「ひげが伸びるまでエリコにとどまり、それから帰って来なさい。」
10:6 アンモン人は、自分たちがダビデに憎まれる者となったのを知った。そこでアンモン人は人を送り、ベト・レホブのアラム人とツォバのアラム人の歩兵二万、マアカの王の兵千人、それにトブの人一万二千人を雇い入れた。
10:7 これを聞いたダビデは、ヨアブと勇士たちの全軍を送り出した。
10:8 アンモン人は出て来て、町の門の入り口で戦いの陣を敷いた。一方、ツォバとレホブのアラム人、トブの人、マアカの兵は、別に野に陣を構えた。
10:9 ヨアブは、前からも後ろからも戦いを仕掛けられているのを見て、イスラエルのえり抜きの兵をすべて選び出し、アラム軍に向かって陣を敷いた。
10:10 残りの兵は、弟のアビシャイの指揮に任せ、アンモン人に向かって陣を敷かせた。
10:11 そしてヨアブは言った。「もしアラム軍がわたしに手ごわければ、あなたが助けに来てくれ。もしアンモン人があなたに手ごわければ、わたしが助けに行こう。
10:12 強くあれ。わたしたちの民のため、わたしたちの神の町々のため、勇敢に戦おう。あとは主が、その目に良いと見えることをしてくださる。」
10:13 ヨアブとその率いる兵が、アラム軍に攻めかかった。すると、アラム軍はヨアブの前から逃げ出した。
10:14 アンモン人は、アラム軍が逃げたのを見て、自分たちもアビシャイの前から逃げ、町の中へ逃げ込んだ。それでヨアブは、アンモン人との戦いをやめてエルサレムへ戻った。
10:15 アラム軍は、自分たちがイスラエルに打ち負かされたのを見て、再び兵を集めた。
10:16 ハダドエゼルは使いを送り、川の向こう側にいたアラム人を呼び寄せた。彼らはヘラムにやって来た。ハダドエゼルの軍の司令官ショバクが、その先頭に立っていた。
10:17 このことがダビデに伝えられると、ダビデはイスラエルの全軍を集め、ヨルダン川を渡ってヘラムに着いた。アラム軍はダビデを迎え撃つ陣を敷き、戦いを始めた。
10:18 しかしアラム軍は、イスラエルの前から逃げ出した。ダビデはアラム軍の戦車兵七百、騎兵四万を討ち取った。さらに司令官ショバクを討ち、彼はその場で死んだ。
10:19 ハダドエゼルに従っていた王たちはみな、自分たちがイスラエルに打ち負かされたのを見て、イスラエルと和を結び、その支配下に入った。こうしてアラム人は、もう二度とアンモン人を助けようとはしなくなった。
11:1 年が改まり、王たちが戦いに出て行く季節になった。ダビデはヨアブと家来たち、そしてイスラエルの全軍を送り出した。彼らはアンモン人を打ち破り、ラバの町を包囲した。だが、ダビデ自身はエルサレムにとどまっていた。
11:2 ある夕暮れのこと、ダビデは寝床から起き上がり、王宮の屋上を歩いていた。すると屋上から、一人の女が体を洗っているのが見えた。とても美しい女だった。
11:3 ダビデは人をやって、その女のことを調べさせた。すると、こう報告があった。「あれはバト・シェバではありませんか。エリアムの娘で、ヒッタイト人ウリヤの妻です。」
11:4 ダビデは使いをやって、その女を連れて来させた。女がダビデのところに来ると、ダビデは彼女と寝た。女は月のけがれから身を清めたばかりだった。それから女は自分の家に帰った。
11:5 女は身ごもった。そして人をやってダビデに知らせ、こう伝えた。「わたしは子を宿しました。」
11:6 そこでダビデはヨアブのもとに使いを送り、「ヒッタイト人ウリヤをわたしのところへよこせ」と伝えた。ヨアブはウリヤをダビデのもとへ送った。
11:7 ウリヤがダビデのところに来ると、ダビデはヨアブの様子や兵士たちの様子、それに戦いの状況をたずねた。
11:8 そしてダビデはウリヤに言った。「家に帰って、足を洗ってゆっくり休むといい。」ウリヤが王宮を出ると、王からの贈り物が後を追って届けられた。
11:9 ところがウリヤは、自分の家には帰らず、主君の家来たちといっしょに王宮の入り口で寝た。
11:10 ウリヤが家に帰らなかったと人々がダビデに知らせた。するとダビデはウリヤに言った。「旅から帰ってきたばかりだろう。どうして家に帰らなかったのか。」
11:11 ウリヤはダビデに答えた。「神の箱も、イスラエルもユダも、仮小屋で過ごしています。わたしの主君ヨアブも、主君の家来たちも、野原で野営しています。それなのに、わたしだけが家に帰って、食べたり飲んだり、妻と寝たりできるでしょうか。あなたの命と魂にかけて誓います。わたしは決してそんなことはしません。」
11:12 ダビデはウリヤに言った。「今日もここにとどまれ。明日、送り返そう。」それでウリヤは、その日と翌日、エルサレムにとどまった。
11:13 ダビデは彼を招き、いっしょに食べたり飲んだりさせて、酔わせた。夕方になると、ウリヤは出て行き、主君の家来たちといっしょに自分の寝床で寝た。だが、家には帰らなかった。
11:14 朝になると、ダビデはヨアブへの手紙を書き、それをウリヤに持たせて送った。
11:15 手紙にはこう書いてあった。「ウリヤを、戦いのいちばん激しい最前線に立たせろ。そして彼を残して後ろに引け。彼が討たれて死ぬようにするのだ。」
11:16 ヨアブはその町を攻め囲んでいる間に、敵の強い戦士たちがいるとわかっている場所にウリヤを配置した。
11:17 町の者たちが出て来て、ヨアブの軍と戦った。ダビデの家来である兵士の何人かが倒れ、ヒッタイト人ウリヤも死んだ。
11:18 ヨアブは使いを送り、戦いのすべてのいきさつをダビデに知らせた。
11:19 ヨアブはその使いにこう命じた。「戦いのいきさつを全部王に話し終えたとき、
11:20 もし王が怒って、こう言うかもしれない。『どうしてそんなに町の近くまで行って戦ったのか。城壁の上から射かけてくるとわからなかったのか。
11:21 エルベシェトの子アビメレクを殺したのは誰だ。女が城壁の上から石臼の上石を投げつけ、それでアビメレクはテベツで死んだのではないか。どうして城壁にそんなに近づいたのか。』もし王がそう言ったら、こう答えるのだ。『あなたの家来、ヒッタイト人ウリヤも死にました。』」
11:22 使いは出かけて行き、ダビデのもとに着くと、ヨアブに言いつけられたことをすべて伝えた。
11:23 使いはダビデに言った。「敵は勢いを増してわたしたちに攻めかかり、野に出て来ました。でもわたしたちは敵を押し返し、城門の入り口まで迫りました。
11:24 すると城壁の上から射手たちがあなたの家来を射て、王の家来の何人かが死にました。あなたの家来、ヒッタイト人ウリヤも死にました。」
11:25 ダビデは使いに言った。「ヨアブにこう伝えなさい。『このことで心を痛めるな。剣はこちらの者もあちらの者も同じように飲み込むものだ。町への攻撃をさらに強めて、これを攻め落とせ。』こう言って、ヨアブを励ましなさい。」
11:26 ウリヤの妻は、夫のウリヤが死んだと聞いて、夫のために嘆き悲しんだ。
11:27 喪の期間が過ぎると、ダビデは人をやって彼女を自分の家に迎え入れ、彼女はダビデの妻となって、男の子を産んだ。しかし、ダビデがしたことは、主の目に悪と映った。
12:1 主はナタンをダビデのもとに送った。ナタンはダビデのところに来て、こう言った。「ある町に、二人の男がいました。一人は金持ちで、もう一人は貧しい人でした。
12:2 金持ちのほうは、羊も牛もたくさん持っていました。
12:3 でも貧しいほうには、買ってきた小さな雌の子羊が一匹いるだけでした。彼はその子羊を育て、子羊は彼の子どもたちといっしょに大きくなりました。子羊は彼の食べ物を食べ、彼の杯から飲み、彼のふところで眠りました。まるで自分の娘のようでした。
12:4 あるとき、金持ちの家に旅人がやって来ました。金持ちは、自分の羊や牛を使って客をもてなすのが惜しくなりました。それで、あの貧しい人の子羊を取り上げ、それをさばいて客に出したのです。」
12:5 これを聞いて、ダビデはその男に激しく怒った。そしてナタンに言った。「主は生きておられる。そんなことをした男は死んで当然だ。
12:6 その子羊の償いに、四倍にして返さなければならない。あんなことをして、少しも情けをかけなかったのだから。」
12:7 すると、ナタンはダビデに言った。「その男とは、あなたのことだ。イスラエルの神、主はこう言われる。『わたしはあなたに油を注いで、イスラエルの王とした。そして、あなたをサウルの手から救い出した。
12:8 あなたに主人の家を与え、主人の妻たちをあなたのふところに渡した。イスラエルとユダの家もあなたに与えた。もしそれでも足りないというなら、もっと多くのものを加えてやっただろう。
12:9 それなのに、なぜあなたは主の言葉を軽んじ、わたしの目に悪とされることをしたのか。あなたはヒッタイト人ウリヤを剣で討ち、その妻を自分の妻として奪い取った。ウリヤ自身は、アンモン人の剣で殺したのだ。
12:10 だから今、剣がいつまでもあなたの家から離れることはない。あなたがわたしを軽んじ、ヒッタイト人ウリヤの妻を奪って自分の妻としたからだ。』
12:11 主はこう言われる。『見よ、わたしはあなた自身の家から、あなたに災いを起こす。あなたの目の前で、あなたの妻たちを取り上げ、あなたの隣人に与える。その者は、この太陽の光の下で、あなたの妻たちと寝るだろう。
12:12 あなたは隠れてこれをしたが、わたしはこのことを、全イスラエルの前で、太陽の光の下で行う。』」
12:13 ダビデはナタンに言った。「わたしは主に対して罪を犯した。」ナタンはダビデに言った。「主もまた、あなたの罪を取り除いてくださった。あなたは死なない。
12:14 だが、あなたはこのことで、主の敵が主をあざける機会を与えてしまった。だから、あなたに生まれた子は必ず死ぬ。」
12:15 こうしてナタンは自分の家に帰った。主は、ウリヤの妻がダビデに産んだ子を打たれた。すると、その子は重い病気になった。
12:16 ダビデはその子のために神に願い求めた。ダビデは断食し、部屋にこもって、一晩中地面に横たわった。
12:17 家の年長者たちが彼のそばに立ち、地面から起こそうとした。でも彼は応じず、彼らと一緒に食事をしようともしなかった。
12:18 七日目に、その子は死んだ。ダビデの家来たちは、子が死んだことを彼に告げるのを恐れた。彼らはこう思ったからだ。「子が生きていたときでさえ、話しかけても王は耳を貸さなかった。どうして子が死んだと告げられるだろう。王が自分を傷つけてしまうかもしれない。」
12:19 ダビデは、家来たちがひそひそ話しているのを見て、子が死んだのだと悟った。ダビデは家来たちに尋ねた。「子は死んだのか。」彼らは答えた。「死にました。」
12:20 ダビデは地面から起き上がり、体を洗い、油を塗り、服を着替えた。そして主の家に行き、礼拝した。それから自分の家に戻り、食事を求めると、人々が食事を出したので、彼は食べた。
12:21 家来たちは彼に言った。「これはどういうことですか。子が生きている間は断食して泣いておられたのに、子が死ぬと、起き上がって食事をなさるとは。」
12:22 ダビデは言った。「子が生きている間は、断食して泣いた。『もしかしたら主が憐れんでくださって、子が生きるかもしれない』と思ったからだ。
12:23 でも今、子は死んだ。どうして断食する必要があるだろう。もう一度、子を連れ戻せるだろうか。わたしが子のところへ行くことはあっても、子がわたしのところへ戻ってくることはない。」
12:24 ダビデは妻バテ・シェバを慰め、彼女のところに入り、共に寝た。彼女は男の子を産み、ダビデはその子をソロモンと名づけた。主はその子を愛された。
12:25 主は預言者ナタンを通して言葉を送り、主がその子を愛されたので、その子をエディドヤ（主に愛される者）と名づけさせた。
12:26 ヨアブはアンモン人のラバと戦い、その王の町を攻め取った。
12:27 ヨアブはダビデのもとに使者を送って言った。「わたしはラバと戦い、水の町も攻め取りました。
12:28 今、残りの兵を集めて町を包囲し、攻め取ってください。わたしが取ってしまうと、わたしの名がその町につけられてしまいますから。」
12:29 ダビデは全軍を集めてラバに行き、町を攻めて取った。
12:30 ダビデは彼らの王の冠をその頭から取った。それは金一タラントの重さで、宝石がはめ込まれていた。その冠はダビデの頭に置かれた。ダビデはまた、町から非常に多くの戦利品を運び出した。
12:31 町にいた住民を連れ出し、のこぎりや鉄のつるはし、鉄の斧を使う労働につかせ、れんが作りの仕事をさせた。ダビデはアンモン人のすべての町に同じようにした。それからダビデと全軍はエルサレムに帰った。
13:1 それからしばらくして、こんなことがあった。ダビデの子アブサロムには、タマルという美しい妹がいた。ダビデのもう一人の子アムノンが、彼女に恋をした。
13:2 アムノンは妹タマルのことで思い悩み、病気になるほどだった。タマルは処女であり、アムノンには彼女に何かをすることなど、とてもできそうになかったからだ。
13:3 アムノンには友人がいた。名をヨナダブといい、ダビデの兄シムアの子だった。ヨナダブはとても抜け目のない男だった。
13:4 ヨナダブはアムノンに言った。「王子なのに、どうして朝ごとにそんなにやつれているんだ。わたしに話してくれないか。」アムノンは答えた。「わたしは、兄弟アブサロムの妹タマルを愛しているんだ。」
13:5 ヨナダブは言った。「床について、病気のふりをしろ。父上が見舞いに来たら、こう言うんだ。『どうか妹のタマルをよこして、食べ物を作らせてください。わたしの目の前で料理を作ってくれれば、それを見て、彼女の手から食べられますから』と。」
13:6 そこでアムノンは床につき、病気のふりをした。王が見舞いに来ると、アムノンは王に言った。「どうか妹のタマルをよこして、わたしの目の前で二つの菓子を作らせてください。彼女の手から食べたいのです。」
13:7 ダビデは家にいるタマルのところに使いを送って言った。「兄さんのアムノンの家に行って、食べ物を作ってあげなさい。」
13:8 タマルは兄アムノンの家に行った。アムノンは床についていた。タマルは粉を取ってこね、彼の目の前で菓子の形にととのえ、それを焼いた。
13:9 そして鍋を取り、彼の前にあけた。ところがアムノンは食べようとせず、こう言った。「みんな、ここから出て行ってくれ。」すると、みんなが彼のそばから出て行った。
13:10 アムノンはタマルに言った。「食べ物を奥の部屋に持って来てくれ。おまえの手から食べたいんだ。」タマルは、作った菓子を持って、奥の部屋にいる兄アムノンのところに入って行った。
13:11 タマルが食べさせようと差し出すと、アムノンは彼女をつかんで言った。「妹よ、こっちに来て、わたしと寝てくれ。」
13:12 タマルは言った。「だめよ、兄さん。わたしをはずかしめないで。イスラエルでそんなことをしてはいけないの。こんなひどいことはやめて。
13:13 わたしは、この恥をどこへ持って行けばいいの。兄さんだって、イスラエルで恥知らずの一人になってしまう。お願いだから、王に話してみて。きっと、わたしを兄さんに嫁がせるのを拒まないはずよ。」
13:14 しかしアムノンは彼女の言うことを聞こうとしなかった。そして力ずくで彼女を組み伏せ、はずかしめて、共に寝た。
13:15 そのあとアムノンは、タマルをひどく憎んだ。その憎しみは、それまで抱いていた愛よりもさらに大きかった。アムノンは彼女に言った。「起きろ。出て行け。」
13:16 タマルは言った。「だめよ。わたしを追い出すなんて、さっきわたしにしたことよりも、もっとひどい仕打ちだわ。」しかしアムノンは、彼女の言うことを聞こうとしなかった。
13:17 そして、自分に仕える若い召使いを呼んで言った。「この女を外に追い出して、あとから戸に鍵をかけてしまえ。」
13:18 タマルは、そでの長い上着を着ていた。王の娘で、まだ結婚していない者は、そういう上着を着ていたのだ。召使いは彼女を外に出し、あとから戸に鍵をかけた。
13:19 タマルは頭に灰をかぶり、着ていたそでの長い上着を引き裂いた。そして頭に手を当てて、大声で泣きながら歩いて行った。
13:20 兄のアブサロムは彼女に言った。「兄さんのアムノンが、おまえに何かしたのか。妹よ、今はだまっていなさい。相手はおまえの兄さんだ。このことを、そんなに思いつめるな。」こうしてタマルは、兄アブサロムの家で、打ちひしがれたまま暮らした。
13:21 ダビデ王はこのことをすべて聞いて、激しく怒った。
13:22 アブサロムはアムノンに、良いことも悪いことも、いっさい話しかけなかった。妹のタマルが辱められたことで、アムノンを憎んでいたからだ。
13:23 それから二年たった。アブサロムは、エフライムの近くにあるバアル・ハツォルで羊の毛を刈らせていた。そのとき彼は、王の息子たちをみんな招いた。
13:24 アブサロムは王のところに来て言った。「ちょうど今、わたしのところで羊の毛を刈っています。どうか王も家来たちも、わたしといっしょに来てください。」
13:25 王はアブサロムに言った。「いや、息子よ。みんなで行くのはやめておこう。おまえの負担になるといけない。」アブサロムは強くすすめたが、王は行こうとせず、彼を祝福して送り出した。
13:26 するとアブサロムは言った。「では、せめて兄のアムノンを、わたしたちといっしょに行かせてください。」王は言った。「どうしてアムノンを、おまえといっしょに行かせる必要があるのか。」
13:27 それでもアブサロムが強くすすめたので、王はアムノンと、ほかの息子たちみんなを、彼といっしょに行かせた。
13:28 アブサロムは、若い家来たちにこう命じておいた。「よく見ていろ。アムノンが酒で気分よく酔ってきて、わたしが『アムノンを打て』と言ったら、彼を殺せ。こわがるな。命じているのはこのわたしだ。強くあれ、勇敢にやれ。」
13:29 若い家来たちは、アブサロムの命令どおりにアムノンを殺した。すると王の息子たちはみな立ち上がり、それぞれ自分のらばに乗って逃げ出した。
13:30 彼らがまだ道の途中にいるとき、ダビデのもとに知らせが届いた。「アブサロムが王の息子たちをみんな殺してしまい、一人も生き残っていません。」
13:31 王は立ち上がり、着ていた服を引き裂いて地面に倒れ伏した。家来たちもみな、服を引き裂いてそばに立っていた。
13:32 すると、ダビデの兄シムアの子ヨナダブが口を開いた。「王よ、王子たちが、若者たちがみんな殺されたとは思わないでください。死んだのはアムノンだけです。アブサロムは、アムノンが妹タマルを辱めたあの日から、ずっとこうしようと決めていたのです。
13:33 ですから王よ、王子たちがみんな死んでしまったという知らせを、どうか気に病まないでください。死んだのはアムノンだけなのですから。」
13:34 アブサロムは逃げ去った。見張りに立っていた若者が目を上げて見ると、大勢の人が、うしろの丘の斜面の道をこちらへやって来るのが見えた。
13:35 ヨナダブは王に言った。「ごらんください。王子たちが帰って来ました。このしもべが申し上げたとおりでした。」
13:36 彼が話し終えると同時に、王子たちが着いた。そして声をあげて泣いた。王も家来たちもみな、激しく泣いた。
13:37 一方、アブサロムは逃げて、ゲシュルの王アミフドの子タルマイのもとへ行った。ダビデは来る日も来る日も、死んだ息子アムノンのために嘆き悲しんだ。
13:38 こうしてアブサロムは逃げてゲシュルへ行き、そこで三年を過ごした。
13:39 やがてダビデ王は、アムノンの死について心が慰められ、アブサロムに会いに行きたいと強く思うようになった。
14:1 ツェルヤの息子ヨアブは、王の心がアブサロムに向いていることに気づいた。
14:2 そこでヨアブはテコアに使いをやって、そこから賢い女性を一人呼び寄せた。そして彼女にこう言った。「喪に服しているふりをしてほしい。喪服を着て、肌に油をつけず、長いあいだ死者を悼んでいる女性のようにしてくれ。
14:3 そのまま王のところへ行って、これから教える言葉を伝えるんだ。」こうしてヨアブは、彼女が話すべき言葉を口に授けた。
14:4 テコアの女性は王のところへ行くと、顔を地面につけてひれ伏し、こう言った。「王さま、どうかお助けください。」
14:5 王は彼女に尋ねた。「どうしたのだ。」彼女は答えた。「わたしは夫を亡くした未亡人です。
14:6 このはしためには、二人の息子がいました。ところが二人が野原で争いになり、止める者もいなかったので、一方がもう一方を打って殺してしまったのです。
14:7 すると一族の者みんなが、このはしために向かって立ち上がり、こう言うのです。『弟を打ち殺した者を引き渡せ。殺された弟の命の代わりに、その男を殺すのだ。』こうして跡取りまで滅ぼそうとしています。彼らはわたしに残されたただ一つの燃え残りの炭火まで消し、夫の名も、この地上に残る子孫も、断ち切ろうとしているのです。」
14:8 王は女性に言った。「家に帰りなさい。あなたのことは、わたしが命じて取りはからおう。」
14:9 テコアの女性は王に言った。「王さま、その罪はわたしと、わたしの父の家がすべて負います。王さまとその王座には、いっさい責めがありませんように。」
14:10 王は言った。「もしあなたに何か言ってくる者がいたら、その者をわたしのところへ連れて来なさい。二度とあなたに手出しできないようにしよう。」
14:11 彼女は言った。「どうか王さま、あなたの神である主に誓ってください。復讐しようとする者がこれ以上人を滅ぼすことのないように、わたしの息子が殺されることのないように、と。」王は言った。「主は生きておられる。あなたの息子の髪の毛一本さえ、地に落ちることはない。」
14:12 女性は言った。「どうか、このはしために、王さまへもう一言だけ話させてください。」王は言った。「話しなさい。」
14:13 女性は言った。「では、どうしてあなたは神の民に対してそんなことを考えておられるのですか。王さまがこう言われるのは、ご自分を責めることになります。追放されたご自分の息子を、呼び戻そうとなさらないからです。
14:14 わたしたちはみな必ず死にます。地面にこぼれた水を集められないのと同じです。でも神は、いのちを取り去っておられるのに、追放された者を退けたままにしないよう、いろいろな手立てを考えてくださいます。
14:15 わたしが王さまにこのことを申し上げに来たのは、人々がわたしを恐れさせたからです。このはしためは思いました。『王さまに話してみよう。もしかしたら、王さまはこのはしための願いをかなえてくださるかもしれない』と。
14:16 きっと王さまは耳を傾け、わたしと息子をいっしょに神が与えてくださった相続地から絶とうとする者の手から、このはしためを救ってくださるでしょう。
14:17 このはしためは思いました。『王さまのお言葉が、わたしに安心を与えてくださいますように』と。王さまは神の使いのように、善も悪も聞き分けてくださるからです。あなたの神である主が、あなたとともにいてくださいますように。」
14:18 王は答えて、その女性に言った。「これから尋ねることを、わたしに隠さないでほしい。」女性は言った。「王さま、どうぞおっしゃってください。」
14:19 王は言った。「このすべてのことに、ヨアブの手が関わっているのではないか。」女性は答えて言った。「王さま、あなたのいのちにかけて誓います。王さまが言われたことから、右にも左にもそれることはできません。そうです、あなたの家来ヨアブがわたしに命じ、このはしための口にこれらの言葉をすべて授けたのです。
14:20 あなたの家来ヨアブがこうしたのは、事の成り行きを変えるためでした。でも王さまは、神の使いのように賢く、地上のすべてを見抜いておられます。」
14:21 王はヨアブに言った。「よし、わたしはこのことを行おう。行って、あの若者アブサロムを連れ戻しなさい。」
14:22 ヨアブは地にひれ伏して礼をし、王を祝福して言った。「王さま、今日、この家来は、あなたに気に入られたことを知りました。王さまがこの家来の願いをかなえてくださったからです。」
14:23 ヨアブは立ち上がってゲシュルへ行き、アブサロムをエルサレムに連れて来た。
14:24 しかし王は言った。「アブサロムは自分の家に戻らせよ。わたしの顔を見てはならない。」こうしてアブサロムは自分の家に戻り、王の顔を見ることはなかった。
14:25 イスラエル全体を見ても、アブサロムほど美しいと評判の男はいなかった。足の裏から頭のてっぺんまで、彼には欠点が一つもなかった。
14:26 彼は毎年、年の終わりに髪を切っていた。あまりに重くなるからだ。切った髪の毛の重さを量ると、王の基準で二百シェケルもあった。
14:27 アブサロムには三人の息子と、タマルという一人の娘が生まれた。タマルは美しい女性だった。
14:28 アブサロムはエルサレムで丸二年暮らしたが、王の顔を見ることはなかった。
14:29 そこでアブサロムは、自分を王のもとへ取り次いでもらおうとヨアブを呼びにやった。しかしヨアブは来ようとしなかった。もう一度、二度目に呼びにやったが、それでも来なかった。
14:30 それでアブサロムは家来たちに言った。「見ろ、ヨアブの畑がわたしの畑の隣にあって、そこに大麦が実っている。行って火をつけてこい。」アブサロムの家来たちは、その畑に火をつけた。
14:31 するとヨアブは立ち上がり、アブサロムの家に来て言った。「なぜあなたの家来たちは、わたしの畑に火をつけたのですか。」
14:32 アブサロムはヨアブに答えた。「わたしはあなたにこう伝えたはずだ。『ここに来てくれ。あなたを通して王にこう申し上げたいのだ。「なぜわたしはゲシュルから戻って来たのでしょう。あそこにいたほうがよかった」と。』今、わたしは王の顔を見たい。もしわたしに罪があるなら、王に殺してもらってかまわない。」
14:33 ヨアブは王のところへ行き、このことを伝えた。王がアブサロムを呼ぶと、アブサロムは王のもとに来て、王の前で顔を地につけてひれ伏した。そして王はアブサロムに口づけした。
15:1 その後、アブサロムは自分のために戦車と馬をそろえ、自分の前を走る五十人の家来を持つようになった。
15:2 アブサロムは朝早く起き、町の門へ通じる道のわきに立った。そして、争いごとを抱えて王のところへ裁きを求めに来る人がいると、アブサロムはその人に声をかけて言った。「あなたはどこの町の人ですか。」その人が「あなたのしもべは、イスラエルの◯◯部族の者です」と答えると、
15:3 アブサロムはこう言った。「あなたの言い分はもっともで、正しい。でも、王のところには、あなたの話を聞いてくれる人がいないのです。」
15:4 さらにアブサロムは言った。「ああ、わたしがこの国の裁判官だったらよかったのに。そうすれば、争いごとや訴えを抱えた人はみんなわたしのところに来て、わたしが公平に裁いてあげられるのに。」
15:5 そして、だれかが近づいてきておじぎをしようとすると、アブサロムは手を伸ばしてその人を抱き寄せ、口づけした。
15:6 アブサロムは、裁きを求めて王のところに来るすべてのイスラエル人に、いつもこのようにした。こうしてアブサロムは、イスラエルの人々の心をひそかに自分のものにしていった。
15:7 四十年が過ぎたころ、アブサロムは王に言った。「どうか、ヘブロンへ行かせてください。わたしが主に立てた誓いを果たしたいのです。
15:8 わたしがアラムのゲシュルに住んでいたとき、あなたのしもべはこう誓いました。『もし主がわたしをエルサレムに帰らせてくださるなら、わたしは主に仕えます。』」
15:9 王は「安心して行きなさい」と言った。そこでアブサロムは立ち上がり、ヘブロンへ向かった。
15:10 ところがアブサロムは、イスラエルのすべての部族にひそかに使いの者を送って、こう伝えさせた。「角笛の音を聞いたら、『アブサロムがヘブロンで王になった』と言え。」
15:11 アブサロムといっしょに、エルサレムから二百人の男たちが行った。彼らは招かれて、何も知らずについて行っただけで、この計画のことは何も知らなかった。
15:12 アブサロムはいけにえをささげているとき、ダビデの相談役だったギロ人アヒトフェルを、彼の町ギロから呼び寄せた。こうして反乱の勢いは強まり、アブサロムに従う人々はますます増えていった。
15:13 そこへ、知らせを持った者がダビデのところに来て言った。「イスラエルの人々の心は、アブサロムについてしまいました。」
15:14 ダビデは、エルサレムでいっしょにいた家来たち全員にこう言った。「立て。逃げるんだ。急がないと、アブサロムから逃げきれない。すぐに出発しよう。ぐずぐずしていると、あいつに追いつかれて、ひどい目にあわされる。この町も剣で撃たれてしまうぞ。」
15:15 家来たちは王に言った。「王さま、どうぞご命令のとおりに。わたしたちはご主人さまのお望みどおりにいたします。」
15:16 こうして王は、家族全員を連れて歩いて出て行った。ただ、王は十人のそばめを残して、宮殿の留守番をさせた。
15:17 王は民全員を連れて歩いて出て行き、町はずれの家のところで立ち止まった。
15:18 家来たちはみな、王のそばを通り過ぎて行った。ケレテ人もペレテ人もみな、そしてガテからついて来た六百人のガテ人もみな、王の前を通り過ぎて行った。
15:19 王はガテ人イタイに言った。「どうして君まで、わたしたちといっしょに来るのか。引き返して、新しい王のところにとどまりなさい。君は外国人で、故郷を離れて来た人なのだから。
15:20 君が来たのは昨日のことだ。それなのに、行き先も定まらないわたしといっしょに、今日から連れ回してよいものか。引き返しなさい。仲間も連れて帰るといい。慈しみとまことが、君とともにあるように。」
15:21 しかしイタイは王に答えて言った。「主は生きておられます。そして王さま、あなたも生きておられます。それにかけて誓います。ご主人さまである王のおられるところ、それが死であれ、生であれ、このしもべも必ずそこにおります。」
15:22 ダビデはイタイに言った。「わかった。それなら進むがいい。」こうしてガテ人イタイは、部下全員と、いっしょにいた子どもたちみんなを連れて進んで行った。
15:23 国じゅうの人が声をあげて泣いた。民がみな通り過ぎて行き、王もキドロンの谷川を渡って行った。民はみな、荒れ野へ向かう道を通り過ぎて行った。
15:24 見ると、ツァドクも来ていた。神の契約の箱をかつぐレビ人たちも、みな彼といっしょだった。彼らは神の箱を降ろした。そして、民が全員町を出終わるまで、アビアタルもそこにいた。
15:25 王はツァドクに言った。「神の箱を町へ戻してくれ。もし主がわたしを喜んでくださるなら、主はわたしを連れ帰り、この箱と、それが置かれる場所とをもう一度見せてくださる。
15:26 でも、もし主が『わたしはお前を喜ばない』と言われるなら、わたしはここにいる。主が良いと思われるとおりに、わたしにしてくださればいい。」
15:27 王はさらに、祭司ツァドクに言った。「あなたは先を見通す人ではないか。安心して町へ帰りなさい。あなたの息子アヒマアツと、アビアタルの息子ヨナタン、二人の息子もいっしょに連れて。
15:28 いいか、わたしは荒れ野の渡し場で待っている。あなたたちから知らせが届いて、様子がわかるまではね。」
15:29 こうしてツァドクとアビアタルは、神の箱をエルサレムへ戻し、そこにとどまった。
15:30 ダビデはオリーブ山の坂を登って行った。泣きながら登り、頭を覆い、はだしで歩いていた。いっしょにいた民もみな、それぞれ頭を覆い、泣きながら登って行った。
15:31 そのとき、「アヒトフェルもアブサロムの謀反に加わっています」とダビデに知らせる者があった。ダビデは言った。「主よ、どうかアヒトフェルの助言を愚かなものに変えてください。」
15:32 ダビデが、人々が神を礼拝する山の頂に着いたとき、アルキ人フシャイが上着を引き裂き、頭に土をかぶって、彼を迎えに来た。
15:33 ダビデは彼に言った。「あなたがわたしといっしょに行っても、わたしの重荷になるだけだ。
15:34 でも、もし町へ帰って、アブサロムに『王よ、わたしはあなたに仕えます。これまであなたの父上に仕えてきたように、今度はあなたに仕えます』と言えば、あなたはわたしのために、アヒトフェルの助言をくじいてくれる。
15:35 祭司ツァドクとアビアタルも、あなたといっしょにそこにいるだろう。王の家で聞いたことは何もかも、祭司ツァドクとアビアタルに伝えてほしい。
15:36 見なさい、二人の息子、ツァドクの子アヒマアツと、アビアタルの子ヨナタンも、彼らといっしょにそこにいる。あなたたちが聞いたことはすべて、その二人に持たせて、わたしのところへ送ってくれ。」
15:37 こうして、ダビデの友フシャイは町に入った。ちょうどそのころ、アブサロムもエルサレムに入ろうとしていた。
16:1 ダビデが丘の頂を少し越えたころ、メフィボシェテの家来ツィバが、彼を出迎えにやって来た。二頭のろばに鞍を置き、その背にはパン二百個、干しぶどうの束百個、夏の果物百個、それにぶどう酒の革袋を積んでいた。
16:2 王はツィバに尋ねた。「これはどうするつもりだ。」ツィバは答えた。「ろばは王家の方々が乗るため、パンと果物は供の若者たちが食べるため、ぶどう酒は荒れ野で疲れた人が飲むためです。」
16:3 王は言った。「お前の主人の孫はどこにいるのだ。」ツィバは王に答えた。「エルサレムにとどまっています。『今日こそイスラエルの民が、祖父の王国をわたしに返してくれる』と言っているのです。」
16:4 王はツィバに言った。「では、メフィボシェテのものはすべて、お前のものだ。」ツィバは言った。「おそれ入ります。王さま、これからもあなたに気に入っていただけますように。」
16:5 ダビデ王がバフリムまで来たとき、そこからサウル家の一族の者が出て来た。名をシムイといい、ゲラの子だった。彼は出て来ながら、ずっとのろいの言葉を浴びせた。
16:6 民も勇士たちもみな、ダビデの右と左を固めていたが、シムイはダビデにも、王の家来たち全員にも石を投げつけた。
16:7 シムイはのろって、こう言った。「出て行け、出て行け。人殺しめ、ろくでなしめ。
16:8 お前がサウル家に代わって王になったが、その一族の血を、主はすべてお前に報いられたのだ。主は王国を、お前の息子アブサロムの手に渡された。ざまを見ろ。お前は人殺しなのだから。」
16:9 ツェルヤの子アビシャイが王に言った。「なぜ、あの死んだ犬のような男に、王さまをのろわせておくのですか。行って、あいつの首をはねさせてください。」
16:10 王は言った。「ツェルヤの子らよ、お前たちに何の関係があるのか。あの者がのろうのは、主が『ダビデをのろえ』と彼に命じられたからだ。それなら、だれが『なぜこんなことをするのか』と言えるだろうか。」
16:11 ダビデはさらに、アビシャイと家来たち全員に言った。「見なさい。わたしの実の息子でさえ、わたしの命をねらっているのだ。まして、このベニヤミン族の者ならなおさらだ。放っておきなさい。のろわせておけばいい。主がそう命じられたのだから。
16:12 もしかすると主は、わたしの苦しみに目を留めてくださるかもしれない。そして今日のこののろいに代えて、良いものをわたしに返してくださるだろう。」
16:13 こうしてダビデと家来たちは道を進んで行った。一方、シムイは山の斜面をダビデと並ぶように歩きながら、のろい続け、ダビデに向かって石を投げつけ、土をまき散らした。
16:14 王と、彼と一緒にいた民は皆、疲れ切ってその場所に着いた。そして、そこで一息ついた。
16:15 その頃、アブサロムとイスラエルの民は皆、エルサレムに入っていた。アヒトフェルも彼と一緒だった。
16:16 ダビデの友であるアルキ人フシャイがアブサロムのところに来ると、彼はアブサロムに言った。「王様、万歳。王様、万歳。」
16:17 アブサロムはフシャイに言った。「これがお前の友への忠義なのか。どうして友と一緒に行かなかったのだ。」
16:18 フシャイはアブサロムに言った。「いいえ。主と、この民と、イスラエルの人すべてが選んだ方にこそ、わたしは仕えます。その方と一緒にいます。
16:19 それに、わたしはいったいだれに仕えるべきでしょうか。その方の息子であるあなたにお仕えするのが当然ではありませんか。わたしはあなたの父に仕えたように、あなたにもお仕えします。」
16:20 アブサロムはアヒトフェルに言った。「これからどうすればいいか、みんなで考えを出してくれ。」
16:21 アヒトフェルはアブサロムに言った。「あなたの父が宮殿を守るために残しておいた側女たちのところに入りなさい。そうすれば、あなたが父に憎まれる者となったことをイスラエル中が聞くでしょう。そして、あなたに味方する者たちは皆、力づけられます。」
16:22 そこで人々は屋上にアブサロムのために天幕を張った。アブサロムはイスラエル中が見ている前で、父の側女たちのところに入った。
16:23 その頃、アヒトフェルが与える助言は、まるで神に尋ねて得た言葉のように受け止められていた。アヒトフェルの助言は、ダビデにとっても、アブサロムにとっても、すべてそういうものだった。
17:1 アヒトフェルはアブサロムに言った。「わたしに一万二千の兵を選ばせてください。今夜のうちに出発して、ダビデを追いかけます。
17:2 まだ疲れて気力を失っているうちに襲いかかり、彼をおびえさせます。そうすれば、一緒にいる兵はみんな逃げ出すので、わたしは王ひとりだけを討ち取ります。
17:3 そして、民をみんなあなたのもとに連れ戻します。あなたが狙っているのは、あの一人だけ。彼さえ片づけば、みんなが戻ってきて、民全体が安らかになります。」
17:4 この提案は、アブサロムにも、イスラエルの長老たちみんなにも良いと思われた。
17:5 それでもアブサロムは言った。「アルキ人フシャイも呼んでくれ。彼の意見も聞いてみよう。」
17:6 フシャイが来ると、アブサロムは言った。「アヒトフェルはこう言っている。彼の言うとおりにすべきだろうか。だめだと思うなら、君の考えを聞かせてくれ。」
17:7 フシャイはアブサロムに言った。「今回に限っては、アヒトフェルの立てた作戦は良くありません。」
17:8 フシャイは続けた。「あなたもご存じのとおり、あなたの父上とその部下は勇敢な戦士たちです。しかも今は、野で子を奪われた熊のように気が立っています。父上は戦い慣れた人ですから、夜を兵たちと一緒に過ごすようなことはしません。
17:9 今ごろはもう、どこかの洞穴か、別の場所に身を隠しているはずです。もし最初の攻撃でこちらの兵が何人か倒れれば、それを聞いた人はこう言うでしょう。『アブサロムに従う兵が討たれた』と。
17:10 そうなれば、獅子のように勇ましい心を持つ者でも、すっかり気力をなくしてしまいます。イスラエルはみんな、あなたの父上が力ある戦士で、その部下たちも勇敢な者だと知っているからです。
17:11 そこで、わたしはこう勧めます。ダンからベエルシェバまで、海辺の砂のように数えきれないイスラエル全体をあなたのもとに集め、あなた自身が先頭に立って戦いに出るのです。
17:12 そして、彼がどこにいても見つけ出し、地に降りる露のように一気に襲いかかります。彼も、一緒にいる兵も、ただの一人も残しません。
17:13 もし彼が町に立てこもったら、イスラエル全体でその町に綱を持ち寄り、みんなでそれを谷まで引きずり降ろします。小石ひとつ残らないほど、きれいにやってしまいます。」
17:14 アブサロムとイスラエルの人々はみな言った。「アルキ人フシャイの意見のほうが、アヒトフェルの意見よりいい。」実は主が、アヒトフェルのすぐれた意見をくじくよう仕向けておられたのだ。アブサロムに災いをもたらすためだった。
17:15 フシャイは祭司ツァドクとアビアタルに言った。「アヒトフェルはアブサロムとイスラエルの長老たちに、こうこうと勧めました。でもわたしは、こうこうと勧めておきました。
17:16 だから今すぐ使いを送って、ダビデにこう伝えてください。『今夜は荒れ野の渡し場で泊まらず、必ず川を渡ってください。そうしないと、王も一緒にいる人たちもみんな、のみ込まれてしまいます。』」
17:17 ヨナタンとアヒマアツはエン・ロゲルで待っていた。町に入る姿を見られるわけにはいかなかったからだ。そこで一人の女中が出て行って知らせを伝え、二人はそれを持ってダビデ王のもとへ向かうことになっていた。
17:18 ところが、ある若者が二人を見つけ、アブサロムに知らせてしまった。それで二人は急いでその場を離れ、バフリムのある人の家に着いた。その家の中庭には井戸があり、二人はそこに降りて隠れた。
17:19 家の女は覆いを取って井戸の口の上に広げ、その上に麦をまき散らした。だから、何も気づかれなかった。
17:20 アブサロムの家来たちが女のいる家にやって来て言った。「アヒマアツとヨナタンはどこだ。」女は答えた。「あの人たちなら、水の流れを渡って行きましたよ。」家来たちは捜したが見つからず、エルサレムへ引き返した。
17:21 彼らが去ったあと、二人は井戸から上がって出て行き、ダビデ王に知らせた。二人はダビデに言った。「すぐに立って川を渡ってください。アヒトフェルがあなたたちを狙って、こういう作戦を勧めたのです。」
17:22 そこでダビデと、一緒にいた人々はみな立ち上がり、ヨルダン川を渡った。夜が明けるころには、川を渡っていない者は一人もいなかった。
17:23 アヒトフェルは、自分の意見が取り上げられなかったのを知ると、ろばに鞍を置いて立ち上がり、自分の町の家へ帰って行った。そして家の中を整えたあと、首をつって死んだ。彼は父の墓に葬られた。
17:24 ダビデはマハナイムに着いた。一方アブサロムは、イスラエルの人々みんなを引き連れて、ヨルダン川を渡った。
17:25 アブサロムは、ヨアブに代えてアマサを軍の指揮官に任命した。アマサは、イテラというイスラエル人の息子だった。イテラは、ナハシュの娘アビガイルと結ばれてアマサをもうけた。アビガイルは、ヨアブの母ツェルヤの姉妹である。
17:26 イスラエルとアブサロムは、ギレアドの地に陣を張った。
17:27 ダビデがマハナイムに着いたとき、アンモン人のラバから来たナハシュの子ショビ、ロ・デバルから来たアミエルの子マキル、そしてロゲリムから来たギレアド人バルジライが、
17:28 寝具や鉢や土の器を持って来た。また、小麦、大麦、小麦粉、炒った麦、そら豆、レンズ豆、
17:29 はちみつ、乳を固めたもの、羊、それに牛の乳で作ったチーズを、ダビデと、一緒にいる人々の食べ物として差し出した。「みんなは荒れ野で腹をすかせ、疲れ、のどが渇いているだろう」と思ったからだ。
18:1 ダビデは、一緒にいる人々の数を調べ、千人隊の隊長や百人隊の隊長を立てて、彼らの上に置いた。
18:2 そしてダビデは軍を三つに分けて送り出した。三分の一をヨアブに、三分の一をヨアブの兄弟でツェルヤの子アビシャイに、三分の一をガテ人イタイにゆだねた。王は人々に言った。「わたしも必ず、あなたたちと一緒に出て行く。」
18:3 しかし人々は言った。「あなたは出て行ってはいけません。わたしたちが逃げても、敵はわたしたちのことなど気にとめません。わたしたちの半分が死んでも、気にとめないでしょう。でも、あなたはわたしたちの一万人に値する方です。ですから、あなたは町にいて、わたしたちを助けられるようにしていてくださるほうがいいのです。」
18:4 王は彼らに言った。「あなたたちが良いと思うようにしよう。」こうして王は門のわきに立ち、人々はみな、百人、千人と隊を組んで出て行った。
18:5 王はヨアブとアビシャイとイタイに命じて言った。「わたしのために、あの若者アブサロムを手荒に扱わないでほしい。」王がアブサロムのことで隊長たち全員に命じるのを、人々はみな聞いていた。
18:6 人々はイスラエルを迎え撃つために野に出て行った。戦いはエフライムの森で起こった。
18:7 そこでイスラエルの軍勢はダビデの家来たちに打ち破られた。その日、そこで多くの者が倒れ、二万人が死んだ。
18:8 戦いはその地一帯に広がっていった。そしてその日、剣にのまれた者よりも、森にのまれた者のほうが多かった。
18:9 アブサロムはダビデの家来たちと出くわした。彼はらばに乗っていたが、らばが大きな樫の木の茂った枝の下を通ったとき、アブサロムの頭が樫の枝に引っかかってしまった。彼は宙づりになり、乗っていたらばはそのまま走り去った。
18:10 それを見た一人の兵士がヨアブに告げた。「たった今、アブサロムが樫の木にぶら下がっているのを見ました。」
18:11 ヨアブは告げに来た兵士に言った。「見たのなら、なぜその場で彼を打ち倒さなかったのだ。そうすれば、わたしは銀十枚と帯一本をおまえに与えたのに。」
18:12 しかしその兵士はヨアブに答えた。「たとえこの手に銀千枚を受け取ったとしても、わたしは王の息子に手を出しません。わたしたちの耳で、王があなたとアビシャイとイタイに、『わたしのために、若者アブサロムを守ってくれ』と命じるのを聞いたのですから。
18:13 もしわたしが命がけで裏切るようなまねをすれば、どんなことも王に隠しきれるものではありません。あなたも、わたしから離れて知らんぷりを決め込むでしょう。」
18:14 ヨアブは言った。「おまえと、こうしてぐずぐずしてはいられない。」そして手に三本の槍を取り、まだ樫の木の中で生きているアブサロムの心臓に突き刺した。
18:15 さらにヨアブの武器を持つ十人の若者が取り囲み、アブサロムを打って、とどめを刺した。
18:16 それからヨアブが角笛を吹き鳴らすと、人々はイスラエルを追うのをやめて引き返した。ヨアブが人々を押しとどめたからである。
18:17 人々はアブサロムを取り上げ、森の中の大きな穴に投げ込み、その上に非常に大きな石の山を積み上げた。イスラエルの者はみな、それぞれ自分の天幕へ逃げ帰った。
18:18 アブサロムは生きている間に、王の谷にある一本の石柱を立てて自分のものとしていた。「わたしには名を覚えてもらうための息子がいない」と言っていたからである。彼はその石柱を自分の名で呼んだ。それは今日まで「アブサロムの記念碑」と呼ばれている。
18:19 さて、ツァドクの子アヒマアツが言った。「走って行かせてください。主が王を敵の手から救い出してくださったことを、王に知らせたいのです。」
18:20 ヨアブは彼に言った。「今日はおまえが知らせを運ぶ日ではない。別の日に運べばいい。今日は知らせてはならない。王の息子が死んだのだから。」
18:21 そしてヨアブは一人のクシュ人に言った。「行って、見たことを王に伝えなさい。」クシュ人はヨアブにおじぎをして、走り出した。
18:22 それでもツァドクの子アヒマアツは、もう一度ヨアブに言った。「どうなってもかまいません。わたしもあのクシュ人のあとから走らせてください。」ヨアブは言った。「息子よ、どうしておまえが走るのか。知らせを届けても、何の報いもないのだぞ。」
18:23 「どうなってもかまいません。走らせてください。」ヨアブは彼に言った。「では走れ。」アヒマアツは低地の道を走って行き、クシュ人を追い越した。
18:24 ダビデは二つの門の間にすわっていた。見張りが門の屋根の上、城壁のところへ登り、目を上げて見ると、一人の男がひとりで走って来るのが見えた。
18:25 見張りは大声で王に知らせた。すると王は言った。「一人だけなら、その口に知らせがある。」その男はどんどん近づいて来た。
18:26 見張りはもう一人の男が走って来るのを見た。そして門番に呼びかけて言った。「見よ、もう一人の男がひとりで走って来る。」王は言った。「その者も知らせを運んで来るのだ。」
18:27 見張りは言った。「先頭の走りぶりは、ツァドクの子アヒマアツの走りぶりのようです。」王は言った。「あれは良い者だ。良い知らせを持って来るだろう。」
18:28 アヒマアツは呼ばわって、王に言った。「無事です。」そして王の前で顔を地につけて伏し拝み、言った。「あなたの神、主をほめたたえます。わが主、王に手を上げた者たちを、主が引き渡してくださいました。」
18:29 王は言った。「あの若者、アブサロムは無事か。」アヒマアツは答えた。「ヨアブが王の家来であるわたしを送り出したとき、大きな騒ぎが見えましたが、何であったかはわかりません。」
18:30 王は言った。「わきへ寄って、そこに立っていなさい。」彼はわきへ寄って立った。
18:31 そこへ、あのクシュ人がやって来た。クシュ人は言った。「わが主、王に、よい知らせがあります。主が今日、あなたに立ち向かったすべての者を裁いて、あなたを救ってくださいました。」
18:32 王はクシュ人に尋ねた。「あの若者、アブサロムは無事か。」クシュ人は答えた。「わが主、王の敵、そしてあなたを害しようと立ち向かう者たちが、みなあの若者のようになりますように。」
18:33 王は激しく心を揺さぶられ、門の上の部屋に上って行って泣いた。歩きながら、こう言った。「わたしの子アブサロム、わたしの子、わたしの子アブサロム。ああ、お前の代わりにわたしが死ねばよかった。アブサロム、わたしの子、わたしの子よ。」
19:1 ヨアブに知らせが届いた。「王が泣いて、アブサロムのために嘆いておられます。」
19:2 その日の勝利は、民全体にとって嘆きに変わった。王が息子のために悲しんでいると、その日、民が聞いたからだ。
19:3 その日、民は、戦いで逃げて恥じ入る者がこっそり隠れるように、こっそりと町に入った。
19:4 王は顔をおおって、大声で叫んだ。「わたしの子アブサロム。アブサロム、わたしの子、わたしの子よ。」
19:5 ヨアブは家に入って王のもとに来て、言った。「あなたは今日、家来たち全員に恥をかかせました。彼らは今日、あなたの命を救い、あなたの息子や娘たちの命、妻たちの命、そばめたちの命を救ったのです。」
19:6 あなたは自分を憎む者を愛し、自分を愛してくれる者を憎んでいます。今日あなたは、指揮官も家来も自分にはどうでもいいと、はっきり示したのです。今日わたしにはよくわかりました。もしアブサロムが生きていて、わたしたち全員が今日死んでいたなら、あなたはそのほうが良かったのでしょう。
19:7 さあ、立ち上がって外に出て、家来たちに心を込めて語りかけてください。主にかけて誓いますが、もしあなたが出て行かなければ、今夜あなたのそばに残る者は一人もいないでしょう。それはあなたが若いころから今まで受けてきたどんな災いよりも、ひどいことになります。
19:8 王は立ち上がって、門のところに座った。「王が門に座っている」と民全員に伝えられると、みんなは王の前にやって来た。一方、イスラエルの者たちは、それぞれ自分の天幕へ逃げ帰っていた。
19:9 イスラエルの全部族の間で、民は互いに言い争っていた。「王はわたしたちを敵の手から救い、ペリシテ人の手から助け出してくれた。それなのに今、王はアブサロムを避けて、この国から逃げ出したままだ。
19:10 しかも、わたしたちが王として油を注いだアブサロムは、戦いで死んでしまった。それなのに、なぜあなたたちは王を連れ戻そうとせず、黙っているのか。」
19:11 ダビデ王は祭司ツァドクとアビアタルのもとに人を送って言った。「ユダの長老たちにこう伝えてくれ。『イスラエル全体の声が王のもとに、王の家にまで届いているのに、なぜあなたたちは王を宮殿に連れ戻すのに、いちばん遅れているのか。
19:12 あなたたちはわたしの兄弟、わたしの骨肉ではないか。それなのに、どうして王を連れ戻すのに、いちばん遅れているのか。』
19:13 また、アマサにはこう言え。『あなたはわたしの骨肉ではないか。もしあなたを、ヨアブに代えて、これからずっとわたしの軍の司令官にしなかったら、神がわたしをどんなにでも罰してくださるように。』」
19:14 こうしてダビデは、ユダの人々全員の心を、一人の人のように動かした。彼らは王に使いを送って言った。「あなたも、あなたの家来たちも、みんな帰って来てください。」
19:15 そこで王は帰路につき、ヨルダン川まで来た。ユダの人々は、王を迎え、王にヨルダン川を渡らせるために、ギルガルへとやって来た。
19:16 バフリム出身のベニヤミン人、ゲラの子シムイは、急いでユダの人々といっしょに下って行き、ダビデ王を迎えた。
19:17 彼といっしょに、ベニヤミンの人が千人いた。また、サウルの家の召使いツィバも、その十五人の息子と二十人の家来を連れて来ていた。彼らは王より先にヨルダン川に駆けつけた。
19:18 渡し舟が、王の家族を渡らせ、王の望むことをするために行き来していた。王がヨルダン川を渡ろうとしたとき、ゲラの子シムイは王の前にひれ伏した。
19:19 そして王に言った。「わたしの主よ、どうかわたしの罪を責めないでください。王であるわたしの主がエルサレムを出られたあの日、このしもべがしてしまったひどいことを、思い出さないでください。どうか心にとめないでください。
19:20 このしもべは、自分が罪を犯したことをよく分かっています。だから今日、ヨセフの家のすべての者の中で真っ先に下って来て、王であるわたしの主をお迎えするのです。」
19:21 すると、ツェルヤの子アビシャイが口をはさんで言った。「シムイは、主が油を注いで立てられた王を呪ったのです。そのために殺されるべきではありませんか。」
19:22 ダビデは言った。「ツェルヤの子らよ、あなたたちとわたしと、何の関わりがあるのか。今日、あなたたちはわたしに逆らう者になろうというのか。今日、イスラエルの中で人が殺されてよいはずがない。わたしが今日、イスラエルの王であることを、わたしが知らないとでもいうのか。」
19:23 そして王はシムイに言った。「あなたは死ぬことはない。」王はそう誓った。
19:24 サウルの子メフィボシェテも、王を迎えに下って来た。彼は、王が去った日から無事に帰る日まで、足の手入れもせず、ひげも整えず、衣も洗っていなかった。
19:25 彼がエルサレムに出て来て王を迎えたとき、王は彼に言った。「メフィボシェテ、どうしてあなたはわたしといっしょに行かなかったのか。」
19:26 彼は答えた。「王であるわたしの主よ、わたしの召使いがわたしをだましたのです。このしもべは足が不自由なので、『ろばに鞍をつけ、それに乗って王といっしょに行こう』と思っていました。ところが召使いは用意してくれなかったのです。
19:27 そのうえ召使いは、王であるわたしの主に、このしもべのことを悪く言いつけました。でも、王であるわたしの主は、神の使いのような方です。どうか、あなたの目に良いと思われることをしてください。
19:28 王であるわたしの主にとって、わたしの父の家の者は皆、死んで当然の者ばかりでした。それなのにあなたは、このしもべをあなたの食卓で食事をする者の中に加えてくださいました。これ以上、わたしに何の権利があって、王に訴えることができるでしょうか。」
19:29 王は彼に言った。「なぜ、まだそんなことを言い続けるのか。わたしはもう決めた。あなたとツィバとで、その土地を分けなさい。」
19:30 メフィボシェテは王に言った。「王であるわたしの主が、無事に家へ帰ってこられたのですから、ツィバが全部を取ってもかまいません。」
19:31 ギレアデ人バルジライも、ログリムから下ってきた。そして、ヨルダン川まで王を見送るために、王と一緒に川を渡った。
19:32 バルジライは八十歳の、とても年老いた人だった。王がマハナイムに滞在していたとき、彼は王に必要なものを届けていた。とても裕福な人だったからだ。
19:33 王はバルジライに言った。「わたしと一緒に渡って来なさい。エルサレムで、わたしがあなたの面倒を見よう。」
19:34 バルジライは王に言った。「わたしに残された人生は、いったいどれくらいでしょう。王と一緒にエルサレムへ上って行くほどのものではありません。
19:35 わたしは今日で八十歳です。良いものと悪いものの区別さえつきません。このしもべが、食べるものや飲むものの味を分かるでしょうか。歌う男や女の声が、まだ聞こえるでしょうか。それなのに、どうしてこのしもべが、王であるわたしの主のお荷物になってよいでしょう。
19:36 このしもべは、王のお供をして、ほんの少しヨルダン川を渡るだけです。それなのに、どうして王は、こんなに大きな報いをくださるのですか。
19:37 どうか、このしもべを帰らせてください。自分の町で、父と母の墓のそばで死なせてください。でも、ここにあなたのしもべキムハムがいます。この者を、王であるわたしの主と一緒に渡らせてください。そして、あなたの目に良いと思うことを、この者にしてあげてください。」
19:38 王は言った。「キムハムはわたしと一緒に渡ろう。あなたの目に良いと思うことを、わたしが彼にしてあげよう。あなたがわたしに望むことは、何でもあなたのためにしよう。」
19:39 こうして民は皆、ヨルダン川を渡り、王も渡った。王はバルジライに口づけして祝福し、バルジライは自分の家へ帰って行った。
19:40 王はギルガルへ進んで行き、キムハムも王と一緒に渡った。ユダの民は皆、王を送り渡し、イスラエルの民の半分もそうした。
19:41 すると、イスラエルの人たちが皆、王のところにやって来て言った。「どうして、わたしたちの兄弟であるユダの人たちは、あなたをこっそり連れ出し、王とその家族、それにダビデの部下たちみんなを、ヨルダン川を渡らせたのですか。」
19:42 ユダの人たちは皆、こう答えた。「王はわたしたちの身内なんだ。どうしてそんなことで怒るのか。わたしたちは王のものを食べたわけじゃないし、何かをもらったわけでもない。」
19:43 すると、イスラエルの人たちがユダの人たちに答えた。「王については、わたしたちのほうが十倍もの分け前がある。ダビデについても、あなたたちよりわたしたちのほうが権利があるんだ。それなのに、どうしてわたしたちを軽く見るのか。王を連れ戻そうと最初に言い出したのは、わたしたちじゃないか。」しかし、ユダの人たちの言い分は、イスラエルの人たちの言い分よりも激しかった。
20:1 ちょうどそこに、一人のならず者がいた。名をシェバといい、ビクリの子で、ベニヤミン族の者だった。彼は角笛を吹き鳴らして言った。「わたしたちには、ダビデとの関わりなんてない。エッサイの子と分け合う財産もない。イスラエルよ、それぞれ自分の家に帰れ。」
20:2 それで、イスラエルの人たちは皆、ダビデのもとを離れて、ビクリの子シェバに従った。しかし、ユダの人たちは、ヨルダン川からエルサレムまで、自分たちの王にしっかりと付き従った。
20:3 ダビデはエルサレムの自分の家に戻った。王は、家を守らせるために残しておいた十人のそばめを引き取り、見張りをつけた家に入れた。生活の面倒はみたが、彼女たちのところには入らなかった。こうして彼女たちは、死ぬ日まで閉じ込められ、夫のいない女として一生を過ごした。
20:4 王はアマサに言った。「三日のうちに、ユダの人たちをわたしのところに集めてくれ。あなた自身も、ここに戻って来るように。」
20:5 アマサはユダの人たちを集めに行った。しかし、定められた期限より遅れてしまった。
20:6 ダビデはアビシャイに言った。「今度は、ビクリの子シェバが、アブサロム以上にわたしたちを苦しめることになる。あなたは、わたしの部下たちを連れて、彼を追いかけてくれ。城壁のある町を見つけて逃げ込まれたら、わたしたちの目の前から逃げ切られてしまう。」
20:7 こうして、ヨアブの部下たち、そしてケレト人とペレト人、それにすべての勇士たちがアビシャイのあとについて出て行った。彼らはビクリの子シェバを追いかけるため、エルサレムを出発した。
20:8 一行がギブオンにある大きな岩のところまで来たとき、アマサが彼らを迎えるようにやって来た。ヨアブは戦いの服を着て、その上に帯を締め、剣を鞘に収めて腰に着けていた。ヨアブが進み出ると、その剣が滑り落ちた。
20:9 ヨアブはアマサに言った。「元気にしていたか、兄弟。」そう言いながら、右手でアマサのひげをつかんで、口づけしようとした。
20:10 アマサは、ヨアブのもう一方の手にある剣に気づかなかった。ヨアブはその剣でアマサの腹を刺し、はらわたを地面にえぐり出した。もう一度刺すまでもなく、アマサは死んだ。それから、ヨアブと弟のアビシャイは、ビクリの子シェバを追いかけて行った。
20:11 ヨアブの若い部下の一人が、アマサのそばに立って叫んだ。「ヨアブを慕う者、ダビデにつく者は、ヨアブのあとについて行け。」
20:12 アマサは血にまみれて、道の真ん中に転がっていた。その若者は、通りかかる人がみな立ち止まってしまうのを見た。それで彼は、アマサを道から畑のほうへ移し、その上に一枚の布をかけた。近づいて来る者がみな立ち止まるのを見たからだ。
20:13 アマサが道から片づけられると、人々はみなヨアブのあとについて進み、ビクリの子シェバを追いかけて行った。
20:14 シェバは、イスラエルのすべての部族の間を通り抜けて、アベル・ベト・マアカまで来た。ベリ人もみな集まって、彼のあとについて行った。
20:15 ヨアブたちは到着すると、アベル・ベト・マアカでシェバを包囲した。彼らは町に向かって攻めの土手を築き、それが城壁の外側の防壁にまで届いた。ヨアブとともにいた者たちはみな、城壁を突きくずして倒そうとしていた。
20:16 そのとき、一人の賢い女性が町の中から呼びかけた。「聞いてください、聞いてください。どうかヨアブに伝えてください。『ここまで近づいてください。あなたにお話ししたいことがあります』と。」
20:17 ヨアブが彼女のところに近づくと、女性は尋ねた。「あなたがヨアブさんですか。」ヨアブは「そうだ」と答えた。すると彼女は言った。「わたしの言うことを聞いてください。」ヨアブは「聞いている」と答えた。
20:18 彼女は言った。「昔から人々はこう言ってきました。『相談ごとはアベルで尋ねよ』と。そうやって、もめごとを解決してきたのです。
20:19 わたしは、イスラエルの中でも平和を愛し、忠実に生きてきた者です。それなのにあなたは、イスラエルの母とも言える町を滅ぼそうとしています。どうして主の受け継がれた民を、のみ込もうとするのですか。」
20:20 ヨアブは答えた。「とんでもない。わたしがこの町をのみ込んだり、滅ぼしたりするなんて、決してあってはならないことだ。
20:21 そういうことではないんだ。エフライムの山地出身で、ビクリの子シェバという男が、ダビデ王に手向かったのだ。その男さえ引き渡してくれれば、わたしはこの町から引き上げよう。」女性はヨアブに言った。「わかりました。では、あの男の首を、城壁越しにあなたのところへ投げ落としましょう。」
20:22 そして女性は、その知恵をもって町のすべての人のところへ行った。人々はビクリの子シェバの首をはねて、ヨアブのところへ投げ落とした。ヨアブが角笛を吹き鳴らすと、みんなは町から離れて、それぞれ自分の家へ帰っていった。ヨアブはエルサレムの王のもとへ戻った。
20:23 ヨアブはイスラエルの全軍を率いていた。エホヤダの子ベナヤはケレト人とペレト人の部隊を率いていた。
20:24 アドラムは労役の民をまとめる役目についていた。アヒルデの子ヨシャファトは記録をつかさどる役目についていた。
20:25 シェワは書記官で、ツァドクとエブヤタルは祭司だった。
20:26 また、ヤイル人イラも、ダビデに仕える祭司だった。
21:1 ダビデの時代に、飢きんが三年も続いた。一年また一年と作物が実らない。それでダビデは主に助けを求めた。すると主は言われた。「これはサウルと、その一族が流した血のせいだ。サウルがギブオンの人々を殺したからだ。」
21:2 そこで王はギブオンの人々を呼んで話をした。ギブオンの人々はもともとイスラエル人ではなく、アモリ人の生き残りだった。イスラエルはかつて彼らを守ると誓っていた。それなのにサウルは、イスラエルとユダのためを思うあまり、彼らを滅ぼそうとしたのだ。
21:3 ダビデはギブオンの人々にたずねた。「あなたたちのために、わたしは何をすればいいだろう。どうすればこの罪を償えるだろうか。そうすれば、あなたたちも主のものであるこの民を祝福してくれるだろう。」
21:4 ギブオンの人々は答えた。「わたしたちがサウルやその一族に求めるのは、金や銀ではありません。また、イスラエルの中のだれかを勝手に殺したいわけでもありません。」ダビデは言った。「では、あなたたちの望みは何か。そのとおりにしよう。」
21:5 彼らは王に言った。「わたしたちを滅ぼそうとした男がいます。イスラエルのどこにも住めないように、わたしたちを絶やそうとたくらんだ男です。
21:6 その男、サウルの子孫の中から、男を七人わたしたちに引き渡してください。主に選ばれた者サウルの町ギブアで、彼らを主の前でさらし者にします。」王は言った。「引き渡そう。」
21:7 しかし王は、ヨナタンの子でサウルの孫にあたるメフィボシェテだけは助けた。ダビデとサウルの子ヨナタンとの間には、主にかけて交わした誓いがあったからだ。
21:8 王は、アヤの娘リツパがサウルとの間に産んだ二人の息子アルモニとメフィボシェテ、そしてサウルの娘ミカルがメホラ人バルジライの子アドリエルとの間にもうけた五人の息子を引き取った。
21:9 そして彼らをギブオンの人々に引き渡した。ギブオンの人々は、彼らを山の上で主の前にさらした。七人はともに倒れて死んだ。それは刈り入れの始まる時期、大麦の刈り入れが始まったばかりのころだった。
21:10 アヤの娘リツパは、粗布を取って岩の上に自分のために敷いた。刈り入れの始まりから、天から雨が降り注ぐ日まで、彼女はそこにとどまった。昼は空の鳥が、夜は野の獣が遺体に近づかないように、ずっと見張っていた。
21:11 サウルのそばめ、アヤの娘リツパがしたことは、ダビデに伝えられた。
21:12 そこでダビデは出かけて行き、ヤベシュ・ギレアデの人々から、サウルとその子ヨナタンの骨を受け取った。この骨は、ペリシテ人がギルボアでサウルを討ち取った日にベト・シャンの広場でさらした遺体を、ヤベシュ・ギレアデの人々がひそかに持ち去ったものだった。
21:13 そこでダビデは、その場所からサウルの骨とその子ヨナタンの骨を運び上げた。人々は、さらされた者たちの骨も集めた。
21:14 そして、サウルとその子ヨナタンの骨を、ベニヤミンの地ツェラにある父キシュの墓に葬った。人々は王が命じたことをすべて行った。その後、神はこの地のための祈りに答えられた。
21:15 ペリシテ人とイスラエルの間で、また戦いが起こった。ダビデは家来たちを連れて下って行き、ペリシテ人と戦った。しかし、ダビデは疲れ果てた。
21:16 巨人ラファの子孫の一人、イシュビ・ベノブがダビデを討ち取ろうとした。彼の槍の穂先は青銅で、その重さは三百シェケルあり、腰には新しい剣を帯びていた。
21:17 しかし、ツェルヤの子アビシャイがダビデを助けに来て、そのペリシテ人を討ち殺した。そのときダビデの部下たちは、彼にこう誓った。「あなたはもう、わたしたちと一緒に戦いに出てはいけません。イスラエルの灯を消してしまわないように。」
21:18 その後、ゴブでペリシテ人と、また戦いが起こった。そのとき、フシャ人シベカイが、巨人ラファの子孫のサフを討ち取った。
21:19 ゴブで、ペリシテ人とまた戦いが起こった。ベツレヘム出身のヤレ・オレギムの子エルハナンが、ガト人ゴリアテを討ち取った。ゴリアテの槍の柄は、機織りの巻き棒のように太かった。
21:20 ガトで、さらに戦いが起こった。そこに、体の大きな一人の男がいた。彼は両手にそれぞれ六本、両足にそれぞれ六本の指があり、合わせて二十四本だった。彼もまた、巨人ラファの子だった。
21:21 彼がイスラエルを侮ったので、ダビデの兄弟シムアの子ヨナタンが彼を討ち取った。
21:22 この四人は、ガトで巨人ラファに生まれた者たちだった。彼らは、ダビデとその家来たちの手によって倒された。
22:1 主がダビデを、すべての敵の手から、またサウルの手から救い出したその日、ダビデはこの歌を主に向けて歌った。
22:2 そしてこう言った。「主はわたしの岩、わたしのとりで、わたしを助け出す方。
22:3 わたしの神、わたしの岩。わたしはこの方のもとに身を隠す。主はわたしの盾、わたしを救う力の角、わたしの高いやぐら、わたしの逃げ場。わたしを救う方。あなたは暴力からわたしを救ってくれる。
22:4 ほめたたえるべき主に、わたしは呼び求める。そうすれば、敵からわたしは救われる。
22:5 死の波がわたしを取り囲み、滅びの激流がわたしを飲みこもうとした。
22:6 死の国の綱がわたしに巻きつき、死のわながわたしの前に立ちはだかった。
22:7 苦しみの中で、わたしは主を呼んだ。わたしの神に叫び求めた。主はその神殿からわたしの声を聞き、わたしの叫びはその耳に届いた。
22:8 すると地は揺れ動き、震えた。天の基が激しく揺らいだ。主が怒りに燃えたからだ。
22:9 その鼻から煙が立ちのぼり、その口から出る火がすべてを焼き尽くす。そこから炭火が燃え上がった。
22:10 主は天を押し曲げて降りてきた。その足の下には厚い闇があった。
22:11 主はケルビムに乗って飛び、風の翼に乗って現れた。
22:12 主は自分のまわりに闇を置き、それを覆いとした。水を含んだ黒雲、空の厚い雲を張りめぐらせた。
22:13 御前に輝く光から、燃える炭火が飛び散った。
22:14 主は天から雷を轟かせ、いと高き方はその声を響かせた。
22:15 主は矢を放って敵を追い散らし、稲妻を放って彼らをかき乱した。
22:16 主の叱る声と、その鼻から吹き出す息によって、海の底があらわになり、大地の土台がむき出しになった。
22:17 主は高い所から手を伸ばしてわたしをつかみ、深い水の中から引き上げてくれた。
22:18 強い敵から、わたしを憎む者たちから、主はわたしを助け出した。彼らはわたしより手ごわかったのに。
22:19 災いの日、彼らはわたしに襲いかかった。でも主がわたしの支えとなってくれた。
22:20 主はわたしを広い所へ導き出し、助け出してくれた。わたしを喜んでくれたからだ。
22:21 主はわたしの正しさに応えて報いてくれた。わたしの手が汚れていないから、それに見合うものを返してくれた。
22:22 わたしが主の道を守り、悪を行って自分の神から離れることをしなかったからだ。
22:23 主の定めはすべてわたしの前にあり、その掟からわたしは離れなかった。
22:24 わたしは主の前に欠けのない者であり、自分の罪から身を守り続けた。
22:25 主はわたしの正しさに応じて報いてくださった。御目に映るわたしの清さに応じて。
22:26 あなたは、慈しみ深い人には慈しみ深く、欠けのない人には欠けなく向き合ってくださる。
22:27 清い人には清く向き合い、ねじ曲がった人にはその曲がりのままに向き合われる。
22:28 苦しむ民をあなたは救い、高ぶる者をその目で見つめて低くされる。
22:29 主よ、あなたはわたしの灯だ。主はわたしの闇を照らしてくださる。
22:30 あなたと共になら、わたしは敵の群れに突っ込んでいける。わたしの神と共になら、城壁だって飛び越えられる。
22:31 神の道には欠けがない。主の言葉は混じり気なく磨かれている。主は、身を寄せるすべての人の盾となってくださる。
22:32 主のほかに、だれが神だろうか。わたしたちの神のほかに、だれが岩だろうか。
22:33 この神こそ、わたしの力強い砦。主はわたしの道を欠けのないものにしてくださる。
22:34 わたしの足を鹿のように速くし、高い所にわたしを立たせてくださる。
22:35 わたしの手に戦いを教えてくださる。だからわたしの腕は、青銅の弓さえ引き絞る。
22:36 あなたは救いの盾をわたしに与え、あなたの優しさがわたしを大きくしてくださった。
22:37 あなたはわたしの歩みを広くしてくださる。だからわたしの足首はぐらつかない。
22:38 わたしは敵を追いかけて、滅ぼす。滅ぼし尽くすまで引き返さない。
22:39 わたしは彼らを打ち砕き、粉々にする。彼らは二度と立ち上がれず、わたしの足もとに倒れる。
22:40 あなたは戦いのためにわたしに力をまとわせ、立ち向かう者をわたしの下に屈ませてくださる。
22:41 あなたは敵の背をわたしに向けさせる。わたしを憎む者を、わたしは滅ぼす。
22:42 彼らは助けを求めた。でも救う者はいなかった。主に叫んでも、答えはなかった。
22:43 わたしは彼らを地のちりのように細かく打ち砕き、道の泥のように踏みつけ、踏みにじる。
22:44 あなたはわたしの民の争いからわたしを救い出し、諸国の民の頭としてわたしを守ってくださる。わたしの知らなかった民が、わたしに仕える。
22:45 外国の人々がわたしにこびへつらう。耳にしたとたん、わたしに従う。
22:46 外国の人々は気を失い、震えながら砦から出てくる。
22:47 主は生きておられる。わたしの岩をほめたたえよう。わたしを救う岩、神が高くあげられるように。
22:48 この神は、わたしのために報復し、もろもろの民をわたしの下に従わせてくださる。
22:49 主は、わたしを敵の中から連れ出してくださる。立ち向かう者たちの上に、わたしを高くあげ、乱暴な者からわたしを救い出してくださる。
22:50 だからわたしは、国々の中で主をたたえ、あなたの名をほめ歌う。
22:51 主は、立てた王に大きな救いを与え、油を注いだ者に慈しみを注いでくださる。ダビデとその子孫に、いつまでも。」
23:1 これは、ダビデの最後の言葉である。エッサイの子ダビデの告げる言葉。高くあげられた者、ヤコブの神に油を注がれた者、イスラエルの麗しい歌をうたう者の言葉。
23:2 主の霊が、わたしを通して語られた。その言葉が、わたしの舌の上にある。
23:3 イスラエルの神が語られた。イスラエルの岩が、わたしに告げられた。人を治める者が正しく、神を恐れて治めるなら、
23:4 それは朝の光のようだ。雲一つない朝、太陽が昇るように。雨のあとの輝きの中で、地から若草が芽吹くように。
23:5 わたしの家は、神の前に正しく立っているではないか。神はわたしと、永遠の契約を結んでくださった。すべてが整えられ、確かなものとされている。神は、わたしの救いのすべてと、わたしの願いのすべてを、必ずかなえてくださるのだ。
23:6 だが、よこしまな者たちはみな、投げ捨てられるいばらのようだ。手で拾い上げることはできない。
23:7 そんないばらに触れようとする者は、鉄の武器や槍の柄を手にする。いばらは、その場で火にかけられ、焼き尽くされるのだ。
23:8 ダビデに仕えた勇士たちの名前は、次のとおりだ。まず、タフケモニ人ヨシェブ・バシェベト。彼は三勇士の筆頭だった。一度の戦いで八百人を槍で突き倒した。
23:9 その次は、アホア人ドドの子エルアザル。彼はダビデとともにいた三勇士のひとりだった。ペリシテ人が戦いのために集まってきたとき、三勇士はペリシテ人に立ち向かった。イスラエルの兵たちが退いていくなかでのことだ。
23:10 エルアザルは踏みとどまり、手が疲れきって剣にはりついて離れなくなるまで、ペリシテ人を討ち続けた。その日、主は大きな勝利をもたらしてくださった。兵たちは、倒れた敵から奪い取るためだけに、彼のもとへ戻ってきた。
23:11 その次は、ハラル人アゲの子シャンマ。ペリシテ人がレンズ豆でいっぱいの畑のある所に集まってきたとき、兵たちはペリシテ人の前から逃げ出した。
23:12 だがシャンマは畑の真ん中に踏みとどまって、その畑を守り抜き、ペリシテ人を討ち取った。こうして主は大きな勝利をもたらしてくださった。
23:13 収穫の時期のことだった。三十人の勇士の中の三人が、アドラムのほら穴にいたダビデのもとに下ってきた。そのころペリシテ人の軍勢は、レファイムの谷に陣を敷いていた。
23:14 ダビデはそのとき砦にいて、ペリシテ人の守備隊はベツレヘムにいた。
23:15 ダビデは、ふと飲みたくなって言った。「だれか、ベツレヘムの門のそばにある井戸の水を、飲ませてくれないだろうか。」
23:16 すると三勇士は、ペリシテ人の陣営を突き破って、ベツレヘムの門のそばにある井戸から水をくみ、ダビデのもとへ運んできた。だがダビデは、その水を飲もうとせず、主にささげて注いだ。
23:17 そして言った。「主よ、こんなことをするなど、わたしには決してできません。これは、命がけで行った者たちの血ではありませんか。」こうしてダビデは、その水を飲もうとしなかった。三勇士は、このようなことをやってのけたのだ。
23:18 ヨアブの兄弟で、ツェルヤの子アビシャイは、この三人の頭だった。彼は槍を振るって三百人を突き倒し、三勇士に並ぶ名をあげた。
23:19 彼は三十人の中では一番の誉れを受け、彼らの指揮官になった。ただ、あの三勇士には及ばなかった。
23:20 エホヤダの子ベナヤは、カブツェエル出身の勇敢な男で、数々の手柄を立てた。彼はモアブの二人の勇士を討ち取った。また、雪の降る日に穴の中まで下りていって、ライオンを打ち倒した。
23:21 彼はまた、堂々とした体格のエジプト人を討ち取った。そのエジプト人は手に槍を持っていたが、ベナヤは棒一本で立ち向かい、相手の手から槍をもぎ取って、その槍でエジプト人を殺した。
23:22 エホヤダの子ベナヤは、こうしたことをやってのけ、三勇士に並ぶ名をあげた。
23:23 彼は三十人の中でも誉れを受けたが、あの三勇士には及ばなかった。ダビデは彼を、自分の護衛長に任命した。
23:24 三十人の中には、次の者たちがいた。ヨアブの兄弟アサエル、ベツレヘム出身のドドの子エルハナン、
23:25 ハロデ出身のシャンマ、ハロデ出身のエリカ、
23:26 パルティ出身のヘレツ、テコア出身のイケシュの子イラ、
23:27 アナトト出身のアビエゼル、フシャ出身のメブナイ、
23:28 アホア出身のツァルモン、ネトファ出身のマハライ、
23:29 ネトファ出身のバアナの子ヘレブ、ベニヤミン族のギブア出身のリバイの子イタイ、
23:30 ピルアトン出身のベナヤ、ガアシュの谷出身のヒダイ、
23:31 アラバ出身のアビ・アルボン、バフルム出身のアズマベト、
23:32 シャアルボン出身のエルヤフバ、ヤシェンの子ら、ヨナタン、
23:33 ハラル出身のシャンマ、ハラル出身のシャラルの子アヒアム、
23:34 マアカ出身の人の子アハスバイの子エリフェレト、ギロ出身のアヒトフェルの子エリアム、
23:35 カルメル出身のヘツライ、アラブ出身のパアライ、
23:36 ツォバ出身のナタンの子イグアル、ガド出身のバニ、
23:37 アンモン出身のツェレク、ツェルヤの子ヨアブの武器を持つ従者だった、ベエロト出身のナハライ、
23:38 イテル出身のイラ、イテル出身のガレブ、
23:39 ヘト出身のウリヤ。以上、全部で三十七人だった。
24:1 主はまたイスラエルに対して怒りを燃やし、ダビデを動かしてこう言わせた。「行って、イスラエルとユダの人口を数えよ。」
24:2 王は、そばにいた軍の司令官ヨアブに命じた。「イスラエルの全部族の間を、北のダンから南のベエル・シェバまで回って、民を数えてくれ。その総数を知りたいのだ。」
24:3 しかしヨアブは王に答えた。「あなたの神、主が民をどうか百倍にも増やしてくださり、それを王さまご自身の目で見られますように。それにしても王さま、なぜこんなことを望まれるのですか。」
24:4 それでも王の命令はヨアブと軍の司令官たちを押し切った。こうしてヨアブと司令官たちは、民、つまりイスラエルを数えるために王の前を離れて出て行った。
24:5 彼らはヨルダン川を渡り、アロエルの町の南、谷の真ん中にある町のそばに陣を敷いた。それからガドを通ってヤゼルへと進んだ。
24:6 さらにギレアドに入り、タフティム・ホドシの地に行き、ダン・ヤアンに着き、シドンのあたりを回った。
24:7 そしてツロの要塞や、ヒビ人とカナン人のすべての町々に行き、最後にユダの南部、ベエル・シェバへと出た。
24:8 こうして彼らは国じゅうを回り、九か月と二十日たってエルサレムに帰り着いた。
24:9 ヨアブは民を数えた総数を王に報告した。イスラエルには剣を取れる勇敢な男が八十万人、ユダの男は五十万人いた。
24:10 ところが、民を数えたあとで、ダビデは心に責められた。ダビデは主に言った。「わたしは大きな罪を犯しました。こんなことをしてしまったのです。主よ、どうかこのしもべの過ちを取り去ってください。本当に愚かなことをしました。」
24:11 ダビデが朝起きると、主の言葉が、ダビデの先見者である預言者ガドに臨んで、こう告げた。
24:12 「行ってダビデに伝えよ。主はこう言われる。『わたしはあなたに三つのことを差し出す。その中から一つを選べ。わたしはそれをあなたに行う。』」
24:13 ガドはダビデのところに来て、主の言葉を伝えた。ガドは言った。「あなたの国に七年のききんが来るのと、敵に追われて三か月逃げ回るのと、あなたの国に三日間の疫病がはやるのと、どれがいいですか。今、よく考えて決めてください。わたしを送った方に、どう答えればいいか教えてください。」
24:14 ダビデはガドに言った。「わたしは今、ひどく苦しい。どうか主の手に委ねさせてほしい。主のあわれみはとても深いから。人の手には委ねたくない。」
24:15 そこで主は、朝から定められた時まで、イスラエルに疫病を送られた。ダンからベエル・シェバまで、民のうち七万人が死んだ。
24:16 天使がエルサレムに手を伸ばして、町を滅ぼそうとしたとき、主はその災いを思い直された。そして、民を滅ぼしている天使に言われた。「もう十分だ。今、手を引きなさい。」そのとき、主の天使は、エブス人アラウナの打ち場のそばにいた。
24:17 ダビデは、民を打っている天使を見て、主に言った。「ああ、罪を犯したのはわたしです。悪いことをしたのはわたしです。でも、この羊のような民が、いったい何をしたというのですか。どうか、あなたの手をわたしと、わたしの一族に向けてください。」
24:18 その日、ガドはダビデのところに来て言った。「上って行って、エブス人アラウナの打ち場に、主のための祭壇を築いてください。」
24:19 ダビデは、主が命じられたとおり、ガドの言葉に従って上って行った。
24:20 アラウナが見下ろすと、王と家来たちが自分の方へ向かってくるのが見えた。アラウナは出て行って、地にひれ伏し、王を拝んだ。
24:21 アラウナは言った。「王さま、どうしてこのしもべのところにおいでになったのですか。」ダビデは答えた。「あなたから打ち場を買い取るためだ。主のための祭壇を築いて、民への疫病がやむようにするためだ。」
24:22 アラウナはダビデに言った。「王さま、どうぞよいと思われるものを取って、ささげてください。ご覧ください、焼き尽くすささげ物のための牛がここにいます。脱穀用のそりや牛の道具は、たきぎに使えます。」
24:23 これらすべてを、アラウナは王に差し上げた。そしてアラウナは王に言った。「あなたの神、主が、あなたを喜んで受け入れてくださいますように。」
24:24 しかし王はアラウナに言った。「いや、代金を払って、必ずあなたから買い取る。ただで手に入れたものを、わたしの神、主に、焼き尽くすささげ物としてささげたくない。」こうしてダビデは、銀五十シェケルで打ち場と牛を買い取った。
24:25 ダビデはそこに主のための祭壇を築き、焼き尽くすささげ物と、和解のささげ物をささげた。すると主はこの地のための祈りにこたえてくださり、イスラエルを襲っていた災いは、こうして止められた。
列王紀上
1:1 ダビデ王は年をとり、すっかり老いていた。服を何枚もかけても、体は温まらなかった。
1:2 家来たちは王に言った。「王様のために、若い未婚の娘を探させてください。その娘が王様のおそばに仕え、お世話をします。ふところに寝れば、王様の体も温まるでしょう。」
1:3 そこで彼らは、イスラエル全土で美しい娘を探し、シュネム出身のアビシャグという娘を見つけて、王のもとに連れてきた。
1:4 その娘はとても美しかった。彼女は王のお世話係となって仕えたが、王が彼女と関係を持つことはなかった。
1:5 さて、ハギテの子アドニヤは思い上がり、「わたしが王になる」と言い出した。そして自分のために戦車と騎兵をそろえ、自分の前を走らせる者を五十人も従えた。
1:6 父ダビデは、これまで一度も彼を叱ったことがなかった。「どうしてこんなことをするのか」と問いただすこともなかった。アドニヤは見た目もとても良く、アブサロムの次に生まれた子だった。
1:7 彼はツェルヤの子ヨアブや祭司アビヤタルと相談し、二人はアドニヤを支持して協力した。
1:8 しかし、祭司ツァドク、エホヤダの子ベナヤ、預言者ナタン、シムイ、レイ、そしてダビデに仕える勇士たちは、アドニヤの側につかなかった。
1:9 アドニヤは、エン・ロゲルのそばにあるゾヘレテの石のところで、羊や牛、肥えた家畜をいけにえとしてささげた。そして自分の兄弟である王子たち全員と、王に仕えるユダの人々をみな招いた。
1:10 しかし、預言者ナタンやベナヤ、勇士たち、そして弟のソロモンは招かなかった。
1:11 そこで、ナタンはソロモンの母バト・シェバに言った。「ハギテの子アドニヤが王になったのを、知っていますか。しかも、わたしたちの主君ダビデは、それを知らないのです。
1:12 さあ、あなたに一つ助言をさせてください。あなた自身と、息子ソロモンの命を救うためです。」
1:13 さあ、ダビデ王のところへ行って、こう言ってください。『王様、あなたはこの召し使いのわたしに、こう誓ってくださったではありませんか。「あなたの息子ソロモンが、わたしのあとを継いで王になる。わたしの王座に座るのは彼だ」と。それなのに、どうしてアドニヤが王になっているのですか。』
1:14 あなたがまだそこで王様と話しているうちに、わたしもあとから入って行って、あなたの言葉を裏づけます。」
1:15 そこで、バト・シェバは王の寝室に入って行った。王はとても年老いていて、シュネムの女アビシャグが王の世話をしていた。
1:16 バト・シェバが身をかがめて王にひれ伏すと、王は「何か願いでもあるのか」と言った。
1:17 彼女は答えた。「王様、あなたはあなたの神、主にかけて、この召し使いのわたしにこう誓ってくださいました。『あなたの息子ソロモンが、わたしのあとを継いで王になる。わたしの王座に座るのは彼だ』と。
1:18 ところが今、アドニヤが王になっています。王様、あなたはそれをご存じないのです。
1:19 アドニヤは牛や肥えた家畜、たくさんの羊をほふって、王子たちをみな招き、祭司エブヤタルや軍の司令官ヨアブも招きました。でも、あなたの家来ソロモンは招きませんでした。
1:20 王様、今、イスラエル中の人々の目があなたに注がれています。王様のあとを継いで、だれがその王座に座るのか、みなに告げてほしいのです。
1:21 そうしないと、王様が先祖のもとに眠りにつかれたとき、わたしと息子ソロモンは罪人として扱われてしまいます。」
1:22 彼女がまだ王と話しているうちに、預言者ナタンが入って来た。
1:23 人々が王に「預言者ナタンが参りました」と告げた。ナタンは王の前に進み出て、顔を地につけてひれ伏した。
1:24 そして、ナタンは言った。「王様、あなたは『アドニヤがわたしのあとを継いで王になり、わたしの王座に座る』と言われたのですか。
1:25 アドニヤは今日、牛や肥えた家畜、それにたくさんの羊をほふって、王子たち全員と軍の指揮官たち、それに祭司アビアタルを招きました。今ごろ彼らはアドニヤの前で飲み食いしながら、『アドニヤ王、ばんざい』と言っています。
1:26 でも、あなたの家来であるこのわたしや、祭司ツァドク、それにエホヤダの子ベナヤ、そしてあなたの家来ソロモンは招かれませんでした。
1:27 これは王様が命じられたことなのですか。それなのに、あなたのあとにだれが王座に座るのか、この家来たちにお知らせくださらなかったのですか。」
1:28 すると、ダビデ王は答えて言った。「バト・シェバをここに呼んでくれ。」彼女は王の前に来て、王の前に立った。
1:29 王は誓って言った。「わたしをあらゆる苦しみから救い出してくださった、生きておられる主にかけて誓う。
1:30 『あなたの子ソロモンがわたしのあとを継いで王になり、わたしに代わって王座に座る』と、イスラエルの神、主にかけてあなたに誓ったとおり、わたしは今日、そのとおりにする。」
1:31 バト・シェバは顔を地につけて王にひれ伏し、こう言った。「わたしの主、ダビデ王が、いつまでも生きられますように。」
1:32 ダビデ王は言った。「祭司ツァドクと預言者ナタン、それにエホヤダの子ベナヤをここに呼んでくれ。」彼らは王の前に来た。
1:33 王は彼らに言った。「あなたたちの主君の家来たちを連れて行きなさい。そして、わたしの息子ソロモンをわたしのらばに乗せ、ギホンへ連れて下りなさい。
1:34 そこで祭司ツァドクと預言者ナタンが、彼にイスラエルの王として油を注ぐのだ。それから角笛を吹き鳴らして、『ソロモン王、ばんざい』と言いなさい。
1:35 そのあと、あなたたちは彼のあとについて上って来なさい。彼は来て、わたしの王座に座り、わたしに代わって王となる。わたしは彼を、イスラエルとユダを治める者に任命したのだ。」
1:36 エホヤダの子ベナヤは王に答えて言った。「そのとおりになりますように。わたしの主、王様の神、主が、そう言ってくださいますように。
1:37 主がわたしの主、王様と共におられたように、ソロモンとも共にいてくださいますように。そして、彼の王座を、わたしの主ダビデ王様の王座よりも大きくしてくださいますように。」
1:38 こうして祭司ツァドク、預言者ナタン、エホヤダの子ベナヤ、それにケレト人とペレト人が下って行った。彼らはソロモンをダビデ王のラバに乗せ、ギホンへ連れて行った。
1:39 祭司ツァドクは幕屋から油の入った角を取り出し、ソロモンに油を注いだ。そして角笛が吹き鳴らされ、民はみな「ソロモン王、ばんざい」と叫んだ。
1:40 民はみな彼のあとについて上って行った。人々は笛を吹き鳴らし、大喜びに沸いた。その声で地面が裂けるほどだった。
1:41 アドニヤと、彼と一緒にいた客たちは、ちょうど食事を終えたところで、それを聞いた。ヨアブは角笛の音を聞いて言った。「どうして町がこんなに騒がしいのだ。」
1:42 彼がまだ話しているうちに、祭司アブヤタルの子ヨナタンがやって来た。アドニヤは言った。「入りなさい。あなたは立派な人だ。きっと良い知らせを持って来たのだろう。」
1:43 ヨナタンはアドニヤに答えた。「いいえ、わたしたちの主、ダビデ王がソロモンを王になさいました。
1:44 王はソロモンと一緒に、祭司ツァドク、預言者ナタン、エホヤダの子ベナヤ、それにケレト人とペレト人を送り出されました。彼らはソロモンを王様のラバに乗せ、
1:45 祭司ツァドクと預言者ナタンは、ギホンで彼に油を注いで王としました。人々はそこから喜びながら上って来て、町中がわきかえっています。あなたたちが聞いたのは、その声です。
1:46 それだけではありません。ソロモンはもう王座に着いています。
1:47 そのうえ、王様の家来たちも来て、わたしたちの主、ダビデ王様を祝福して言いました。『あなたの神が、ソロモンの名をあなたの名よりも輝かせ、彼の王座をあなたの王座よりも大きくしてくださいますように。』すると王様は寝床の上で頭を下げて拝み、
1:48 こうも言われました。『イスラエルの神、主をほめたたえよ。主は今日、わたしの王座に着く者を与えてくださった。しかも、わたしはこの目でそれを見ることができた。』」
1:49 アドニヤの招待客たちはみな震え上がり、立ち上がって、それぞれ自分の道へと去って行った。
1:50 アドニヤもソロモンを恐れ、立ち上がって行き、祭壇の角にすがりついた。
1:51 ソロモンにこう伝える者があった。「ご覧ください。アドニヤがソロモン王を恐れて、祭壇の角にすがりついています。そして、『ソロモン王が今日、わたしを剣で殺したりしないと誓ってください』と言っています。」
1:52 ソロモンは言った。「アドニヤが立派な人物であるなら、彼の髪の毛一本も地に落ちることはない。だが、彼に悪いところが見つかれば、彼は死ぬことになる。」
1:53 そこでソロモン王は人をやり、彼を祭壇から連れ降ろさせた。アドニヤは来て、ソロモン王の前にひれ伏した。ソロモンは彼に言った。「家に帰りなさい。」
2:1 ダビデの死ぬ日が近づいた。ダビデは息子ソロモンに、こう言い残した。
2:2 「わたしは今、この世のすべての人が行く道を行こうとしている。強くあれ。そして、一人前の男になりなさい。
2:3 あなたの神、主の務めを守りなさい。主の道を歩み、モーセの律法に書かれているとおり、主の掟と命令と定めと証しを守るのだ。そうすれば、何をしても、どこへ向かっても、うまくいく。
2:4 そうすれば主は、わたしについて語られた約束を実現してくださる。主はこう言われた。『もしあなたの子孫が自分の生き方に気をつけ、心を尽くし、魂を尽くして、真実をもってわたしの前を歩むなら、イスラエルの王座に着く者が絶えることはない。』
2:5 それに、あなたも知っているだろう。ツェルヤの子ヨアブがわたしにしたことを。彼はイスラエルの二人の軍の司令官、ネルの子アブネルとエテルの子アマサを殺した。平和なときに、戦いのときのように血を流したのだ。そして、その血を腰の帯と足の履物につけた。
2:6 だから、あなたの知恵に従って対処しなさい。彼を、白髪の頭のまま安らかに陰府へ下らせてはならない。
2:7 ギレアデ人バルジライの子たちには慈しみを示しなさい。彼らをあなたの食卓につく者に加えなさい。あなたの兄弟アブサロムから逃げていたわたしに、彼らはそうやって寄り添ってくれたのだから。
2:8 それから、あなたのそばにはバフリム出身のベニヤミン人、ゲラの子シムイがいる。彼は、わたしがマハナイムへ行った日に、激しくわたしをのろった。でも、その後ヨルダン川までわたしを迎えに下って来たので、わたしは主にかけて『あなたを剣で殺しはしない』と誓った。
2:9 だが今、彼を罰せずにおいてはならない。あなたは知恵のある人だ。彼にどう対処すべきか、あなたには分かっているはずだ。彼を、白髪の頭のまま血にまみれさせて陰府へ下らせなさい。」
2:10 こうしてダビデは先祖のもとに眠りにつき、ダビデの町に葬られた。
2:11 ダビデがイスラエルを治めた期間は四十年だった。ヘブロンで七年、エルサレムで三十三年、王であった。
2:12 ソロモンは父ダビデの王座に着き、その王国はしっかりと固められた。
2:13 さて、ハギテの子アドニヤが、ソロモンの母バト・シェバのところに来た。バト・シェバは「穏やかな用件で来たのですか」と尋ねた。彼は「穏やかな用件です」と答えた。
2:14 そして彼は言った。「あなたに話したいことがあります。」バト・シェバは「話しなさい」と言った。
2:15 彼は言った。「ご存じのとおり、王位はわたしのものでした。イスラエルの民はみな、わたしが王になるものと思っていました。ところが、王位は移って、弟のものになりました。主がそう定められたからです。
2:16 さて、あなたに一つだけお願いがあります。どうか断らないでください。」バト・シェバは彼に「話しなさい」と言った。
2:17 彼は言った。「どうかソロモン王に頼んでください。王はあなたの願いを断らないでしょう。シュネム出身のアビシャグを、わたしの妻にくださるように、と。」
2:18 バト・シェバは「よいでしょう。あなたのために王に話してあげましょう」と言った。
2:19 こうしてバト・シェバは、アドニヤのことを話すためにソロモン王のところへ行った。王は立ち上がって彼女を迎え、頭を下げてあいさつした。それから自分の王座に座り、母のためにも席を用意させた。母は王の右側に座った。
2:20 バト・シェバは言った。「あなたに一つ、小さなお願いがあります。どうか断らないでください。」王は答えた。「お母さん、言ってください。断ったりしません。」
2:21 彼女は言った。「シュネム出身のアビシャグを、あなたの兄アドニヤの妻にさせてあげてください。」
2:22 すると、ソロモン王は母に答えた。「どうしてアドニヤのためにシュネム出身のアビシャグを求めるのですか。それなら、いっそ彼のために王国も求めてください。彼はわたしの兄なのですから。そう、彼のためにも、祭司アビアタルのためにも、ツェルヤの子ヨアブのためにも。」
2:23 そしてソロモン王は、主にかけてこう誓った。「アドニヤがこんなことを言ったからには、自分の命をかけたも同然だ。もしそうでなければ、神がわたしをどんなに罰してもかまわない。
2:24 わたしをしっかりと立て、父ダビデの王座に座らせ、約束どおりわたしのために家を築いてくださった主は生きておられる。その主にかけて言う。アドニヤは今日、必ず死ぬことになる。」
2:25 こうしてソロモン王は、エホヤダの子ベナヤに命じて手を下させた。ベナヤはアドニヤを討ち、彼は死んだ。
2:26 また王は、祭司アビアタルに言った。「アナトトにある自分の畑へ帰れ。おまえは死んで当然の身だ。だが今日は殺さない。おまえが父ダビデの前で主なる神の箱を担ぎ、父が苦しんだときにいつもともに苦しんでくれたからだ。」
2:27 こうしてソロモンは、アビアタルを主の祭司の職から追い出した。それは、主がシロでエリの家について語られた言葉が、その通りになるためだった。
2:28 この知らせはヨアブの耳にも届いた。ヨアブはアドニヤの側についていたが、アブサロムの側にはついていなかった。ヨアブは主の幕屋に逃げ込み、祭壇の角にしがみついた。
2:29 ヨアブが主の幕屋に逃げ込み、祭壇のそばにいる、とソロモン王に知らせが入った。そこでソロモンはエホヤダの子ベナヤを送り、「行って、彼を討て」と命じた。
2:30 ベナヤは主の幕屋に行き、ヨアブに言った。「王がこう言っている。『出て来い。』」しかしヨアブは答えた。「いや、わたしはここで死ぬ。」ベナヤは王のところへ戻り、「ヨアブはこう言い、こう答えました」と報告した。
2:31 王はベナヤに言った。「ヨアブの言うとおりにしろ。彼を討ち、葬れ。ヨアブが理由もなく流した血の責任を、わたしと父の家から取り除くのだ。
2:32 主は、ヨアブが流した血を彼自身の頭に返される。ヨアブは、自分より正しく優れた二人の男を剣で殺した。父ダビデの知らないうちにだ。イスラエル軍の司令官ネルの子アブネルと、ユダ軍の司令官エテルの子アマサ、この二人を。
2:33 こうして、その血の責任はヨアブとその子孫の頭に永遠にとどまる。でも、ダビデとその子孫、その家とその王座には、主から永遠の平和が与えられる。」
2:34 そこでエホヤダの子ベナヤは上って行き、ヨアブを討って殺した。ヨアブは荒れ野にある自分の家に葬られた。
2:35 王はエホヤダの子ベナヤをヨアブに代えて軍の長とし、祭司ツァドクをアビアタルに代えて祭司とした。
2:36 それから王は人をやってシムイを呼び寄せ、こう言った。「エルサレムに自分の家を建てて、そこに住め。そこからどこへも出て行ってはならない。
2:37 いいか、もしお前がそこを出てキドロンの谷を渡ったら、その日、お前は必ず死ぬ。よく覚えておけ。その血の責任はお前自身にある。」
2:38 シムイは王に答えた。「わかりました。王様のおっしゃるとおり、このしもべはいたします。」こうしてシムイは長い間、エルサレムに住んだ。
2:39 ところが三年たったころ、シムイの二人の奴隷が、ガトの王でマアカの子アキシュのところへ逃げ出した。シムイに、「あなたの奴隷がガトにいます」と知らせが入った。
2:40 シムイは立ち上がってろばに鞍を置き、奴隷を捜しにガトのアキシュのところへ向かった。そしてガトへ行き、奴隷を連れ戻した。
2:41 シムイがエルサレムからガトへ行って戻って来たことが、ソロモンに知らされた。
2:42 王は人をやってシムイを呼び寄せ、こう言った。「わたしはお前に主にかけて誓わせ、こう警告したはずだ。『そこを出てどこかへ行ったら、その日、お前は必ず死ぬ。よく覚えておけ』と。お前も『わかりました、聞き従います』と答えたではないか。
2:43 それなのに、なぜ主にかけた誓いと、わたしが命じた言いつけを守らなかったのだ。」
2:44 王はさらにシムイに言った。「お前は、わたしの父ダビデにした悪事を、すべて心の中で分かっているはずだ。主は、その悪をお前自身の頭に返される。
2:45 だがソロモン王は祝福され、ダビデの王座は主の前でいつまでも揺るがずに続く。」
2:46 そして王がエホヤダの子ベナヤに命じると、ベナヤは出て行ってシムイを打ち倒し、シムイは死んだ。こうして王国はソロモンの手にしっかりと固まった。
3:1 ソロモンはエジプトの王ファラオと縁組みし、ファラオの娘を妻に迎えた。そして自分の宮殿と主の神殿、それにエルサレムを囲む城壁を建て終えるまで、彼女をダビデの町に住まわせた。
3:2 ただ、民は高台の祭壇でいけにえをささげていた。その頃はまだ、主の名のための神殿が建てられていなかったからだ。
3:3 ソロモンは主を愛し、父ダビデの定めに従って歩んだ。ただ、彼も高台の祭壇でいけにえをささげ、香をたいていた。
3:4 王はいけにえをささげるためにギブオンへ行った。そこが最も大きな高台の祭壇だったからだ。ソロモンはその祭壇の上で、千頭もの焼き尽くすいけにえをささげた。
3:5 そのギブオンで、夜、夢の中に主がソロモンに現れた。神は言った。「何でも願うがよい。あなたに与えよう。」
3:6 ソロモンは答えた。「あなたは、わたしの父ダビデがあなたに誠実に、正しく、まっすぐな心で歩んだので、あなたの僕である父に大きな慈しみを示してくださいました。そしてその大きな慈しみを注ぎ続け、今日このように父の王座に座る子を与えてくださいました。
3:7 今、わたしの神、主よ。あなたはこの僕を、父ダビデに代わって王としてくださいました。でも、わたしはまだ小さな子どもで、どう振る舞えばいいのかも分かりません。
3:8 そしてこの僕は、あなたが選ばれた民の中にいます。それは、多すぎて数えることも数え上げることもできない、大きな民です。
3:9 どうか、この僕に、聞き分ける心を与えてください。あなたの民を正しく裁き、善と悪を見分けられるように。これほど多くのあなたの民を、いったい誰が裁けるでしょうか。」
3:10 ソロモンがこう願ったことは、主の目にかなった。
3:11 神は彼に言った。「あなたはこれを願い、自分のために長生きも、富も、敵の命も願わなかった。ただ、正しく裁くための聞き分ける力を願った。
3:12 だから、わたしはあなたの願いどおりにする。見なさい、わたしはあなたに、知恵と分別のある心を与える。あなたのような者は、これまでにもいなかったし、これからも現れることはない。
3:13 それだけではない。あなたが願わなかったものも与えよう。富も誉れもだ。あなたが生きているあいだ、王たちの中であなたに並ぶ者は一人もいない。
3:14 そして、もしあなたが父ダビデのように、わたしの道を歩み、わたしの定めと命令を守るなら、あなたの命を長くしよう。」
3:15 ソロモンが目を覚ますと、それは夢だった。彼はエルサレムに行き、主の契約の箱の前に立って、焼き尽くすいけにえと和解のいけにえをささげた。そして、家来たちみんなのために祝宴を開いた。
3:16 そのころ、二人の遊女が王のところに来て、王の前に立った。
3:17 一人の女が言った。「王さま、お願いです。わたしとこの女は、同じ家に住んでいます。わたしは、この女がいるその家で、子どもを産みました。
3:18 わたしが産んで三日目に、この女も子どもを産みました。わたしたちは一緒にいて、家にはほかに誰もいません。家にいたのは、わたしたち二人だけでした。
3:19 ところが、この女の子どもが夜のあいだに死んでしまったのです。この女が、寝ているあいだに子どもの上になって押しつぶしたのです。
3:20 すると、この女は真夜中に起きて、あなたの召使いであるわたしが眠っているあいだに、わたしのそばから子どもを取り上げ、自分のふところに寝かせました。そして、自分の死んだ子どもをわたしのふところに寝かせたのです。
3:21 朝、わたしが子どもにお乳をあげようと起きてみると、その子は死んでいました。でも、朝の明かりでよく見てみると、それはわたしが産んだ子どもではありませんでした。」
3:22 すると、もう一人の女が言った。「違います。生きている子がわたしの子で、死んだ子があなたの子です。」でも、最初の女は言った。「違う。死んだ子があなたの子で、生きている子がわたしの子よ。」こうして二人は王の前で言い争った。
3:23 王は言った。「一人は『生きているのがわたしの子で、死んだのがあなたの子だ』と言い、もう一人は『違う、死んだのがあなたの子で、生きているのがわたしの子だ』と言う。」
3:24 そして王は言った。「剣を持って来なさい。」人々は王の前に剣を持って来た。
3:25 王は言った。「生きている子を二つに切り分けて、半分をこちらの女に、半分をもう一人の女に与えなさい。」
3:26 すると、生きている子の本当の母親は、わが子への思いで胸が締めつけられ、王に言った。「王さま、お願いです。どうかその生きている子をあの女にあげてください。決して殺さないでください。」でも、もう一人の女は言った。「その子はわたしのものにも、あなたのものにもならなくていい。切り分けてしまいなさい。」
3:27 すると王は答えて言った。「生きている子を、最初の女に与えなさい。決して殺してはならない。その女がこの子の母親だ。」
3:28 イスラエルのすべての人は、王が下したこの裁きを聞いて、王を畏れ敬った。神の知恵が王のうちにあって、正しい裁きを行わせているのを見たからである。
4:1 こうしてソロモン王は、イスラエル全体を治める王となった。
4:2 彼のもとで働いた高官たちは次のとおりである。ツァドクの子アザルヤは祭司。
4:3 シシャの子エリホレフとアヒヤは書記官。アヒルドの子ヨシャファトは記録官。
4:4 エホヤダの子ベナヤは軍の指揮官。ツァドクとエブヤタルは祭司。
4:5 ナタンの子アザルヤは知事たちを取りまとめる長。ナタンの子ザブドは祭司で、王の相談役だった。
4:6 アヒシャルは宮殿を管理する長。アブダの子アドニラムは労役を取りしきる長だった。
4:7 ソロモンはイスラエル全体に十二人の知事を置いた。彼らは王と王の家に必要な食料を届けた。それぞれが一年のうち一か月分を受け持ち、その供給にあたった。
4:8 その名前は次のとおりである。まずベン・フルは、エフライムの山地を担当した。
4:9 ベン・デケルは、マカツ、シャアルビム、ベト・シェメシュ、エロン・ベト・ハナンを担当した。
4:10 ベン・ヘセドは、アルボトを担当した。ソコと、ヘフェルの地すべても彼のもとにあった。
4:11 ベン・アビナダブは、ドルの高地一帯を担当した。彼はソロモンの娘タファトを妻にしていた。
4:12 アヒルドの子バアナは、タアナク、メギド、そしてツェレタンのそば、イズレエルの下手にあるベト・シェアン一帯を担当した。その範囲はベト・シェアンからアベル・メホラを経て、ヨクメアムの向こう側にまで及んだ。
4:13 ベン・ゲベルは、ラモト・ギルアドを担当した。マナセの子ヤイルの村々でギルアドにあるものも、彼のもとにあった。バシャンにあるアルゴブの地域も彼の担当で、そこには城壁と青銅のかんぬきを備えた大きな町が六十あった。
4:14 イドの子アヒナダブは、マハナイムを担当した。
4:15 アヒマアツは、ナフタリを担当した。彼もソロモンの娘バスマトを妻にしていた。
4:16 フシャイの子バアナは、アシェルとベアロトを担当した。
4:17 パルアの子ヨシャファトは、イッサカルを担当した。
4:18 エラの子シムイは、ベニヤミンを担当した。
4:19 ウリの子ゲベルは、ギルアドの地を担当した。そこは、かつてアモリ人の王シホンとバシャンの王オグが治めていた地だ。この地の担当者は、彼ひとりだった。
4:20 ユダとイスラエルの人々は、海辺の砂のように数え切れないほど多かった。人々は食べ、飲み、喜びに満ちていた。
4:21 ソロモンは、ユーフラテス川からペリシテ人の地、そしてエジプトの国境まで、すべての王国を治めていた。これらの国々はみつぎ物を納め、ソロモンが生きているあいだずっと彼に仕えた。
4:22 さてソロモンの一日分の食料は、上等な小麦粉が三十コル、並の小麦粉が六十コル、
4:23 肥えた牛十頭、放牧の牛二十頭、羊百頭。そのほかに、雄鹿、かもしか、のろじか、よく肥えた鳥もあった。
4:24 というのも、ソロモンはユーフラテス川の西側全体を、ティフサからガザまで、川の西のすべての王を支配していたからだ。そして周りのどことも平和だった。
4:25 ソロモンが生きているあいだ、ユダとイスラエルの人々は、ダンからベエル・シェバまで、それぞれ自分のぶどうの木といちじくの木の下で、安心して暮らした。
4:26 ソロモンには、戦車を引く馬のための馬屋が四万、騎兵が一万二千いた。
4:27 これらの地方長官たちは、それぞれ自分の担当の月に、ソロモン王と、王の食卓に集まるすべての人のための食糧を用意した。何一つ足りないものがないようにした。
4:28 また、馬や早馬のための大麦とわらも、それぞれの決まりに従って、必要な場所に運んだ。
4:29 神はソロモンに、知恵と、とても豊かな理解力を与え、海辺の砂のように広い心を与えた。
4:30 ソロモンの知恵は、東の国々のすべての人の知恵よりも、エジプトのどんな知恵よりもまさっていた。
4:31 彼はだれよりも知恵があった。エズラ人エタンよりも、またマホルの子であるヘマン、カルコル、ダルダよりも知恵があった。彼の名は、周りのすべての国々に知れ渡った。
4:32 彼は三千の格言を語り、その歌は千五にのぼった。
4:33 ソロモンは草や木について語った。レバノンの杉から、石垣に生えるヒソプにいたるまで語った。また、獣や鳥、地をはうものや魚についても語った。
4:34 ソロモンの知恵を聞こうと、あらゆる民が集まってきた。その知恵のうわさを聞いた世界中の王たちのもとから、人々がやって来たのだ。
5:1 ツロの王ヒラムは、ソロモンのもとに家来たちを送った。ソロモンが父に代わって王として油を注がれた、と聞いたからだ。ヒラムは以前からずっとダビデを愛していた。
5:2 ソロモンはヒラムに、こう言い送った。
5:3 「ご存じのとおり、わたしの父ダビデは、周りの戦いのために、その神、主の名のための神殿を建てることができませんでした。主が敵をダビデの足の下に置かれるまで、戦いが続いたのです。
5:4 でも今、わたしの神、主は、周りのすべての敵から離れて、わたしを安らかにしてくださいました。敵対する者もなく、わざわいもありません。
5:5 そこでわたしは、わたしの神、主の名のための神殿を建てようと思っています。主は、わたしの父ダビデにこう言われました。『あなたに代わってあなたの王座に就かせるあなたの子、その者がわたしの名のための神殿を建てる。』
5:6 ですから、レバノンの杉をわたしのために切り出すよう命じてください。わたしの家来たちは、あなたの家来たちと一緒に働きます。あなたの家来たちへの賃金は、あなたの言うとおりに何でもお支払いします。ご存じのとおり、わたしたちの中には、シドン人のように木を切ることを心得た者がいないのです。」
5:7 ヒラムはソロモンの言葉を聞くと、とても喜んで言った。「きょう、主がほめたたえられますように。主は、この大いなる民を治める知恵ある子を、ダビデにお与えになったのだから。」
5:8 ヒラムはソロモンに、こう言い送った。「あなたが送ってくださった言葉を聞きました。杉の木と糸杉の木について、あなたの望みをすべてかなえましょう。
5:9 わたしの家来たちが、レバノンから海へと木を運び下ろします。わたしはそれをいかだに組んで、海路であなたの指示する場所まで送り、そこでばらします。あなたはそれを受け取ってください。そしてあなたは、わたしの家の食糧を与えて、わたしの望みをかなえてください。」
5:10 こうしてヒラムは、ソロモンに杉の木と糸杉の木を、その望みのままにすべて与えた。
5:11 一方、ソロモンはヒラムに、その家の食糧として小麦二万コル、それに上等のオリーブ油二十コルを与えた。ソロモンは毎年、このようにヒラムに与えた。
5:12 主は、約束したとおりソロモンに知恵を与えた。ヒラムとソロモンの間には平和があり、二人は契約を結んだ。
5:13 ソロモン王は、イスラエル全体から働き手を徴用した。その数は三万人だった。
5:14 王は彼らを交替でレバノンに送った。一か月に一万人ずつで、一か月はレバノンにいて、二か月は自分の家にいた。アドニラムがこの労役を監督した。
5:15 ソロモンには、荷を担いで運ぶ者が七万人、山で石を切り出す者が八万人いた。
5:16 このほかに、工事を監督するソロモンの役人の長が三千三百人いて、働く人々を指揮していた。
5:17 王が命じると、彼らは大きな石、高価な石を切り出した。神殿の土台を切り石で据えるためだった。
5:18 ソロモンの職人とヒラムの職人、そしてゲバルの人たちがそれらの石を切りそろえ、神殿を建てるために木材と石を用意した。
6:1 イスラエルの人々がエジプトの地を出てから四百八十年目、ソロモンがイスラエルの王になって四年目のジウの月、つまり第二の月に、ソロモンは主の神殿を建て始めた。
6:2 ソロモン王が主のために建てたこの神殿は、長さ六十キュビト、幅二十キュビト、高さ三十キュビトだった。
6:3 神殿の広間の前にある玄関の間は、神殿の幅に合わせて幅二十キュビト、神殿の前に張り出す奥行きは十キュビトだった。
6:4 また神殿には、外に向かって狭くなる格子窓を造った。
6:5 さらに神殿の壁に沿って、その周りに何階もの脇部屋を建てた。広間も奥の間も含めて、神殿の壁をぐるりと囲むように脇の部屋を造ったのだ。
6:6 いちばん下の階は幅五キュビト、真ん中の階は六キュビト、三階は七キュビトだった。神殿の外壁を段々に細くして、脇部屋の梁が壁に食い込まないようにしたからである。
6:7 神殿を建てるときには、切り出す場所で仕上げた石を使った。だから工事の間、神殿では槌も斧も、どんな鉄の道具の音も聞こえなかった。
6:8 真ん中の階の入り口は神殿の右側にあった。そこかららせん階段を上って真ん中の階へ、さらにそこから三階へと上れるようになっていた。
6:9 こうしてソロモンは神殿を建て、完成させた。神殿の天井は、杉の梁と羽目板で覆った。
6:10 神殿全体に沿って脇部屋を建てた。その高さは五キュビトで、杉の木材で神殿につなぎ留めた。
6:11 そのとき、主の言葉がソロモンにこう告げられた。
6:12 「あなたが建てているこの神殿について言おう。もしあなたがわたしの掟に従って歩み、わたしの定めを行い、わたしのすべての命令を守ってそのとおりに生きるなら、わたしはあなたの父ダビデに語った約束を、あなたに対して果たそう。
6:13 わたしはイスラエルの人々の中に住み、わたしの民イスラエルを見捨てることはない。」
6:14 こうしてソロモンは神殿を建て、完成させた。
6:15 彼は神殿の内側の壁を、床から天井の壁まで杉の板で張り、内側を木で覆った。そして神殿の床には糸杉の板を張った。
6:16 神殿の奥の部分には、床から壁まで杉の板で二十キュビトの仕切りを造った。こうして神殿の中に内陣、つまり至聖所を設けた。
6:17 その手前にある本堂は、長さ四十キュビトだった。
6:18 神殿の内側はすべて杉で、うり形の飾りと花模様が彫ってあった。すべてが杉で、石はまったく見えなかった。
6:19 彼は神殿の奥に内陣を設け、そこに主の契約の箱を置くようにした。
6:20 内陣は、長さ二十キュビト、幅二十キュビト、高さ二十キュビトだった。彼はそれを純金で覆い、杉の祭壇も金で覆った。
6:21 ソロモンは神殿の内側を純金で覆い、内陣の前には金の鎖を渡し、内陣も金で覆った。
6:22 こうして神殿全体を、すべて仕上がるまで金で覆った。内陣にある祭壇もすべて金で覆った。
6:23 彼は内陣の中に、オリーブの木で二体のケルビムを造った。それぞれの高さは十キュビトだった。
6:24 ケルビムの一方の翼は五キュビト、もう一方の翼も五キュビトで、翼の端から端まで十キュビトあった。
6:25 もう一方のケルビムも十キュビトだった。二体のケルビムは、同じ寸法で同じ形だった。
6:26 一方のケルビムの高さは十キュビト。もう一方のケルビムも同じだった。
6:27 彼はそのケルビムを、神殿の奥の内陣の中に置いた。ケルビムが翼を広げると、一方の翼は片方の壁に触れ、もう一方のケルビムの翼はもう片方の壁に触れた。そして神殿の中央では、翼と翼が触れ合っていた。
6:28 彼はそのケルビムを金で覆った。
6:29 そして神殿のすべての壁には、ぐるりと周りに、ケルビムとナツメヤシの木と、開いた花の模様を彫った。奥の部屋も手前の部屋も、そうした。
6:30 神殿の床も金で覆った。奥の部屋も手前の部屋も、そうした。
6:31 内陣の入り口には、オリーブの木で扉を造った。その入り口の枠と柱は、五角形だった。
6:32 その二枚の扉はオリーブの木でできていた。彼はその上に、ケルビムとナツメヤシの木と、開いた花の模様を彫り、金で覆った。ケルビムとナツメヤシの木の上にも、金を延べ広げた。
6:33 同じように、本堂の入り口にも、オリーブの木で柱を造った。その枠は四角形だった。
6:34 二枚の扉は糸杉の木でできていた。一方の扉は二枚の折れ戸で、もう一方の扉も二枚の折れ戸だった。
6:35 彼はそこにケルビムとナツメヤシの木と、開いた花の模様を彫り、彫った模様にぴったり合わせて金で覆った。
6:36 彼は内側の庭を、切り石三段と、杉の角材一段を重ねて築いた。
6:37 主の神殿の土台が据えられたのは、第四年のジウの月だった。
6:38 そして第十一年、ブルの月、つまり第八の月に、神殿はそのすべての部分が仕様どおりに完成した。ソロモンは七年かけてこれを建てた。
7:1 一方、ソロモンは自分の宮殿を建てるのに十三年かかり、宮殿全体を完成させた。
7:2 彼は「レバノンの森の宮殿」を建てた。長さ百キュビト、幅五十キュビト、高さ三十キュビトで、杉の柱が四列に並び、その柱の上に杉の梁がのっていた。
7:3 柱の上にわたされた梁のさらに上は、杉の板で覆われていた。柱は全部で四十五本あり、一列に十五本ずつ並んでいた。
7:4 窓枠は三列に並び、窓と窓が三段になって向かい合っていた。
7:5 戸口と柱はみな四角い枠でできていて、窓と窓が三段になって向かい合っていた。
7:6 彼は「柱の広間」を造った。長さ五十キュビト、幅三十キュビトだった。その前には玄関の間があり、その前に柱とひさしがあった。
7:7 彼は「裁きの広間」も造った。そこで裁判を行うための、王座を置く広間である。床から天井まで、すべてレバノン杉の板で覆われていた。
7:8 彼が住む家は、その広間の奥のもう一つの中庭にあって、同じような造りだった。ソロモンは、妻に迎えたファラオの娘のためにも、この広間と同じような家を建てた。
7:9 これらはみな、内側も外側も、寸法どおりに切り出し、のこぎりで挽いた高価な石でできていた。土台から軒まで、また外側は大きな中庭に至るまで、そうだった。
7:10 土台には高価な石、大きな石が使われ、十キュビトの石や八キュビトの石もあった。
7:11 その上には、寸法どおりに切り出した高価な石とレバノン杉が用いられた。
7:12 大きな中庭の周りには、切り石を三段積み、その上にレバノン杉の角材を一段並べてあった。主の神殿の内庭も、神殿の玄関の間も、同じ造りだった。
7:13 ソロモン王は人を送って、ツロからヒラムを呼び寄せた。
7:14 彼はナフタリ族の出で、母は未亡人、父はツロの人で、青銅を扱う職人だった。彼は青銅であらゆる仕事をする知恵と理解力と知識に満ちていた。彼はソロモン王のもとに来て、その仕事をすべて成し遂げた。
7:15 彼は青銅の柱を二本鋳造した。一本の柱の高さは十八キュビトで、どちらの柱も、周りを測ると十二キュビトあった。
7:16 そして、柱の頭に載せる柱頭を、青銅を鋳て二つ造った。一つの柱頭の高さは五キュビト、もう一つの柱頭の高さも五キュビトだった。
7:17 柱の頭にある柱頭のために、格子状の網細工と鎖状の飾りを造った。一つの柱頭に七つ、もう一つの柱頭にも七つ付けた。
7:18 こうして彼は柱を造り、柱の頭にある柱頭を覆うために、一つの網の周りにざくろを二段めぐらせた。もう一つの柱頭にも同じようにした。
7:19 柱の頭に載っている柱頭は、玄関の間にあって、ゆりの花の形をしていた。その高さは四キュビトだった。
7:20 二つの柱の柱頭には、網細工のそばのふくらみのすぐ上にも飾りが付いていた。ざくろは、もう一つの柱頭の周りにも二百個、段になってめぐらされていた。
7:21 彼は神殿の玄関の間に柱を立てた。右側の柱を立てて、それをヤキンと名づけた。左側の柱を立てて、それをボアズと名づけた。
7:22 柱の頭にはゆりの花の形の飾りがあった。こうして柱の仕事は仕上がった。
7:23 彼は鋳物の「海」を造った。縁から縁まで十キュビトあり、全体が円い形をしていた。高さは五キュビトで、周りは測ると三十キュビトあった。
7:24 縁の下には、まわりをぐるりと取り巻くひょうたんの形の飾りがあった。一キュビトごとに十個あって、海を囲んでいた。この飾りは二段になっていて、海を鋳るときに一緒に鋳込まれた。
7:25 海は十二頭の牛の上に載っていた。三頭は北を、三頭は西を、三頭は南を、三頭は東を向いていた。海はその上に載せられ、牛の尻はみな内側を向いていた。
7:26 厚さは手のひらほどで、縁は杯の縁のように、ゆりの花のように開いていた。水は二千バテ入った。
7:27 彼は青銅の台を十個造った。一つの台は長さ四キュビト、幅四キュビト、高さ三キュビトだった。
7:28 台の造りはこうだった。台には鏡板があり、鏡板は枠組みの間にはめ込まれていた。
7:29 枠組みの間の鏡板には、ライオンと牛とケルビムが彫られていた。枠組みの上には台座があった。ライオンと牛の下には、打ち出し細工の花輪飾りがあった。
7:30 一つの台には、青銅の車輪が四つと青銅の軸が付いていた。その四隅には支柱があり、洗盤の下でそれを支えていた。支柱は鋳物で、それぞれの脇には花輪飾りが付いていた。
7:31 台の口は、冠のような縁の内側から上へ一アンマあった。その口は丸く、台座と同じ造りで、大きさは一アンマ半だった。口の周りにも彫り物があった。鏡板は四角で、丸くはなかった。
7:32 四つの車輪は鏡板の下にあり、車輪の軸は台に取り付けられていた。それぞれの車輪の高さは一アンマ半だった。
7:33 車輪の造りは、戦車の車輪のようだった。その軸も、こしきも、輪も、スポークも、すべて鋳物だった。
7:34 四つの支柱が、一つ一つの台の四隅にあった。支柱は台と一続きになっていた。
7:35 台の上には、高さ半アンマの丸い縁が周りを取り巻いていた。台の上の支えと鏡板は、台と一体に作られていた。
7:36 彼はその支えと鏡板の表面に、ケルビムとライオンとなつめやしを、それぞれの空いた場所に合わせて彫り、周りに花輪飾りを施した。
7:37 このようにして、彼は十個の台を作った。すべて同じ鋳型、同じ寸法、同じ形だった。
7:38 彼は青銅の洗盤を十個作った。一つの洗盤は四十バト入りで、それぞれ四アンマの大きさだった。十個の台の一つ一つに、洗盤が一つずつ載せられた。
7:39 彼は台のうち五つを神殿の右側に、五つを左側に置いた。海は神殿の右側、南東の方に据えた。
7:40 ヒラムは洗盤と、灰を取るシャベルと、鉢を作った。こうしてヒラムは、ソロモン王のために主の神殿で行ったすべての仕事を仕上げた。
7:41 すなわち、二本の柱。柱の上の柱頭にある、二つの丸い鉢形の飾り。柱の上の柱頭、その二つの鉢形の飾りを覆う、二つの網目模様。
7:42 その二つの網目模様のための、四百個のざくろ。一つの網目模様に二列のざくろがあり、柱の上の柱頭、その二つの鉢形の飾りを覆っていた。
7:43 十個の台と、その台の上に載せる十個の洗盤。
7:44 一つの「海」と、その海を支える下の十二頭の牛の像。
7:45 壺と、灰を取るシャベルと、鉢。ヒラムがソロモン王のために主の神殿で作ったこれらの器具は、すべて磨いた青銅でできていた。
7:46 王はこれらを、ヨルダン川沿いの低地で鋳造した。スコトとツァレタンの間にある、粘土質の地面でのことだった。
7:47 その器具はあまりにも数が多かったので、ソロモンは重さを量らずにそのままにしておいた。使われた青銅の重さはわからなかった。
7:48 ソロモンは、主の神殿で使うすべての器具も作った。金の祭壇と、供えのパンを載せる金の机。
7:49 純金の燭台。至聖所の前に、右に五つ、左に五つ置かれた。花の飾りと、ともし火皿と、芯を切る火ばさみも金でできていた。
7:50 純金の皿と、芯切りばさみと、鉢と、さじと、火皿。さらに、神殿の奥の部屋である至聖所の扉と、本堂の扉のちょうつがいも金でできていた。
7:51 こうして、ソロモン王が主の神殿のために行ったすべての仕事が完成した。ソロモンは、父ダビデが主にささげた品々、すなわち銀と金と器具を運び入れ、主の神殿の宝物庫に納めた。
8:1 それから、ソロモンはイスラエルの長老たちと、すべての部族の長、イスラエルの各家系の代表者たちを、エルサレムの王ソロモンのもとに集めた。主の契約の箱を、ダビデの町、つまりシオンから運び上げるためだった。
8:2 第七の月、つまりエタニムの月の祭りのとき、イスラエルの人々はみな、ソロモン王のもとに集まった。
8:3 イスラエルの長老たちがみな集まると、祭司たちが箱をかつぎ上げた。
8:4 そして、主の箱と会見の幕屋、そして幕屋の中にあった聖なる道具をすべて運び上げた。それらを運んだのは祭司たちとレビ人だった。
8:5 ソロモン王と、彼のもとに集まったイスラエルの人々はみな、箱の前に立ち、羊と牛をいけにえとしてささげた。その数はあまりに多く、数え切れないほどだった。
8:6 祭司たちは主の契約の箱を、定められた場所、つまり神殿の奥の部屋、最も聖なる場所に運び入れ、ケルビムの翼の下に置いた。
8:7 ケルビムは箱の場所の上に翼を広げていて、その翼が箱と、箱をかつぐ棒を上からおおっていた。
8:8 棒はとても長く、その先が奥の部屋の前の聖所から見えたが、外からは見えなかった。それは今日までそこにある。
8:9 箱の中には、二枚の石の板のほかには何もなかった。それは、イスラエルの人々がエジプトの地を出たとき、主が彼らと契約を結んだ場所、ホレブで、モーセが納めたものだった。
8:10 祭司たちが聖所から出たとき、雲が主の神殿に満ちた。
8:11 雲のために、祭司たちは立って務めを果たすことができなかった。主の栄光が主の神殿に満ちたからだ。
8:12 そのとき、ソロモンは言った。「主は、暗やみの中に住むと言われた。
8:13 わたしはあなたのために、りっぱな神殿を建てました。あなたがいつまでも住まわれる場所です。」
8:14 それから王は振り返り、そこに立っているイスラエルの人々全員を祝福した。
8:15 王は言った。「イスラエルの神、主をほめたたえよう。主はわたしの父ダビデに、こう約束された。そして、その約束を自分の手で実現してくださった。
8:16 『わたしが自分の民イスラエルをエジプトから導き出した日から、わたしは自分の名を置くための神殿を建てる町を、イスラエルのどの部族の中からも選んでこなかった。しかし、わたしの民イスラエルを治める者として、ダビデを選んだ。』
8:17 わたしの父ダビデは、イスラエルの神、主の名のために神殿を建てたいと心に思っていた。
8:18 けれども主は、父ダビデにこう言われた。『あなたはわたしの名のために神殿を建てたいと心に思っている。その思いはよいことだ。
8:19 ただ、その神殿を建てるのはあなたではない。あなたから生まれるあなたの子が、わたしの名のために神殿を建てる。』
8:20 主は語られたとおりに、その約束を実現された。わたしは父ダビデに代わって立ち、主が言われたとおり、イスラエルの王座についた。そして、イスラエルの神、主の名のために神殿を建てた。
8:21 その中に、箱を置く場所を設けた。この箱には、主がわたしたちの先祖をエジプトの地から導き出したときに、彼らと結ばれた契約が納められている。」
8:22 それからソロモンは、イスラエルの人々全員の前で、主の祭壇の前に立った。そして、両手を天に向けて広げ、
8:23 こう祈った。「イスラエルの神、主よ。上は天にも、下は地にも、あなたのような神はいません。あなたは、心を尽くしてあなたの前を歩む家来たちに対して、契約を守り、変わらぬ慈しみを注いでくださいます。
8:24 あなたは、あなたの家来であるわたしの父ダビデに約束されたことを守ってくださいました。あなたは自分の口で語り、今日このとおり、自分の手でそれを実現してくださいました。
8:25 だから今、イスラエルの神、主よ。あなたの家来であるわたしの父ダビデに約束されたことを、どうか守ってください。あなたはこう言われました。『あなたの子孫がその道を守り、あなたがわたしの前を歩んだように、わたしの前を歩むなら、イスラエルの王座に座る者が、わたしの前で絶えることはない』と。
8:26 だから今、イスラエルの神よ。あなたの家来であるわたしの父ダビデに語られたその約束を、どうか本当のものとしてください。
8:27 でも、神が本当にこの地に住まわれるのでしょうか。天も、天の天も、あなたを包みきることはできません。ましてや、わたしが建てたこの神殿など、なおさらです。
8:28 それでも、あなたの家来の祈りと願いに、どうか目を向けてください。わたしの神、主よ。今日、あなたの家来があなたの前でささげる叫びと祈りを、どうか聞いてください。
8:29 この神殿に向かって、夜も昼もあなたの目が開かれていますように。ここは、あなたが『わたしの名をそこに置く』と言われた場所です。あなたの家来がこの場所に向かって祈る、その祈りを、どうか聞いてください。
8:30 あなたの家来と、あなたの民イスラエルが、この場所に向かって祈るとき、その願いを聞いてください。あなたのお住まいである天から聞いてください。そして、聞いて、赦してください。
8:31 もし人が隣人に対して罪を犯し、誓いを立てさせられ、この神殿のあなたの祭壇の前でその誓いを立てるなら、
8:32 あなたは天から聞いて、行動してください。あなたの家来たちを裁いてください。悪い者にはその行いの報いをその頭に返して罪を明らかにし、正しい者にはその正しさに応じて報いてください。
8:33 あなたの民イスラエルが、あなたに対して罪を犯したために敵の前で打ち負かされ、それでもあなたのもとに立ち返り、あなたの名をたたえ、この神殿であなたに祈り願うなら、
8:34 あなたは天から聞いて、あなたの民イスラエルの罪を赦し、彼らの先祖にお与えになった土地へと、彼らを連れ戻してください。
8:35 彼らがあなたに罪を犯したために天が閉ざされ、雨が降らなくなったとき、彼らがこの場所に向かって祈り、あなたの名をたたえ、あなたに苦しめられて自分の罪から立ち返るなら、
8:36 あなたは天から聞いて、あなたの家来たちと、あなたの民イスラエルの罪を赦してください。彼らが歩むべき良い道を教えてください。そして、あなたが民に受け継ぐ土地としてお与えになったあなたの地に、雨を降らせてください。
8:37 この地に飢饉が起こったとき、あるいは疫病や、立ち枯れや、カビや、いなごや、バッタが起こったとき、また敵がこの地の町々で彼らを包囲したとき、どんな災いでも、どんな病気でも、
8:38 あなたの民イスラエルのだれであれ、どの人であれ、自分の心の痛みを知って、この神殿に向かって両手を広げ、祈りや願いをささげるなら、
8:39 あなたは、あなたの住まいである天から聞いて、赦し、こたえてください。一人ひとりに、その心のとおりに報いてください。あなたはその心をご存じだからです。人の子らすべての心を知っているのは、あなただけです。
8:40 そうすれば人々は、あなたがわたしたちの先祖にお与えになったこの地に生きているかぎり、いつもあなたを敬うでしょう。
8:41 また、あなたの民イスラエルに属さない外国人が、あなたの名を慕って遠い国からやって来たときも、
8:42 人々はあなたの偉大な名と、力ある御手、伸ばされた御腕のことを聞くでしょう。そのような人がやって来て、この神殿に向かって祈るなら、
8:43 あなたは、あなたの住まいである天から聞いて、その外国人があなたに求めることを、すべてかなえてください。そうすれば、地上のすべての民があなたの名を知り、あなたの民イスラエルと同じようにあなたを敬うようになります。そして、わたしが建てたこの神殿があなたの名で呼ばれていることを知るでしょう。
8:44 あなたの民が、あなたが送り出す道を通って敵との戦いに出て行き、あなたがお選びになった町と、わたしがあなたの名のために建てたこの神殿に向かって主に祈るなら、
8:45 あなたは天から彼らの祈りと願いを聞いて、彼らの訴えを正しく裁いてください。
8:46 彼らがあなたに罪を犯したとき——罪を犯さない人は一人もいませんから——あなたが怒って彼らを敵に渡し、敵が彼らを捕らえて、遠い、あるいは近い敵の国へ連れて行ったとしても、
8:47 連れて行かれた国で彼らが我に返り、立ち返って、自分たちを捕らえた者たちの国であなたに願い、「わたしたちは罪を犯し、悪いことをし、背きました」と言うなら、
8:48 自分を捕らえた敵の国で、心を尽くし、魂を尽くしてあなたに立ち返り、あなたが彼らの先祖にお与えになった地、あなたがお選びになった町、そしてわたしがあなたの名のために建てた神殿に向かって祈るなら、
8:49 あなたが住まわれる天から、彼らの祈りと願いを聞いて、彼らの訴えを正しく裁いてください。
8:50 あなたに罪を犯したあなたの民を赦し、あなたに背いて犯したすべての背きを赦してください。そして、彼らを捕らえて連れて行った者たちが、彼らをあわれむように、その心を動かしてください。
8:51 彼らはあなたの民、あなたが受け継がれる大切な民だからです。あなたが鉄を溶かす炉のようなエジプトの中から連れ出された民なのです。
8:52 どうか、あなたのしもべの願いと、あなたの民イスラエルの願いに目を向けてください。彼らがあなたを呼び求めるときはいつでも、その声を聞いてください。
8:53 主なる神よ、あなたは彼らを、地のすべての民の中から選び分けて、あなたご自身が受け継がれる民とされました。わたしたちの先祖をエジプトから連れ出されたとき、あなたのしもべモーセを通して告げられたとおりです。
8:54 ソロモンは、主へのこの祈りと願いをすべて祈り終えると、主の祭壇の前で立ち上がった。それまで、天に向かって両手を広げ、ひざまずいていたのだ。
8:55 そして立って、大きな声でイスラエルの全会衆を祝福して言った。
8:56 「主をほめたたえよう。主は約束されたとおり、その民イスラエルに安らぎをお与えになった。しもべモーセを通して告げられた良い約束は、一つも実現しないままにはならなかった。
8:57 わたしたちの神、主が、わたしたちの先祖と共におられたように、わたしたちとも共にいてくださいますように。わたしたちを見放さず、見捨てないでくださいますように。
8:58 そして、わたしたちの心を主に向けさせ、そのすべての道を歩ませ、わたしたちの先祖にお命じになった命令と掟と定めを守らせてくださいますように。
8:59 わたしが主の前で願ったこの言葉が、昼も夜も、わたしたちの神、主のそばにありますように。そして、そのしもべの訴えと、その民イスラエルの訴えを、日々そのときの必要に応じて正しく裁いてくださいますように。
8:60 それは、地のすべての民が、主こそが神であり、ほかに神はいないことを知るためだ。
8:61 だから、あなたたちの心を、わたしたちの神、主にすっかり明け渡し、今日のようにその掟に従って歩み、その命令を守りなさい。」
8:62 それから、王と、王とともにいたイスラエルの人々みんなは、主の前でいけにえをささげた。
8:63 ソロモンは、和解のいけにえとして、牛二万二千頭、羊十二万頭を主にささげた。こうして王とイスラエルの人々みんなは、主の神殿を神にささげた。
8:64 その日、王は主の神殿の前にある庭の中央を聖なる場所とした。そこで、焼き尽くすいけにえと穀物のささげ物、それに和解のいけにえの脂肪をささげたからだ。というのも、主の前にある青銅の祭壇は小さすぎて、焼き尽くすいけにえと穀物のささげ物、和解のいけにえの脂肪を載せきれなかったのだ。
8:65 そのとき、ソロモンは祭りを行った。イスラエルの人々みんなも彼とともにいた。北はハマトの入り口から南はエジプトの川まで、各地から集まった大きな群れだった。彼らはわたしたちの神、主の前で、七日、そしてさらに七日、合わせて十四日間祝った。
8:66 八日目に、ソロモンは民を家に帰らせた。人々は王を祝福し、主がそのしもべダビデと、その民イスラエルにしてくださったすべての恵みを喜び、心を弾ませて、それぞれの家へと帰っていった。
9:1 ソロモンは、主の神殿と王宮、そして自分が造りたいと願っていたものをすべて建て終えた。
9:2 すると主は、かつてギブオンで現れたときのように、もう一度ソロモンに現れた。
9:3 主は彼にこう言われた。「わたしは、あなたがわたしの前で祈り、願い求めたことを聞いた。あなたが建てたこの神殿を、わたしは聖なるものとした。ここにいつまでもわたしの名を置くためだ。わたしの目と心は、いつもここにある。
9:4 あなたも、父ダビデが歩んだように、まっすぐな心で正しくわたしの前を歩み、わたしが命じたことをすべて行い、わたしの掟と定めを守るなら、
9:5 わたしは、あなたの王座をイスラエルの上にいつまでも堅く立てる。かつてわたしが父ダビデに、『あなたの家系からイスラエルの王座に座る者が絶えることはない』と約束したとおりに。
9:6 しかし、もしあなたたちやあなたたちの子孫がわたしに背を向け、わたしがあなたたちに与えた命令と掟を守らず、ほかの神々のところへ行って仕え、それにひれ伏すなら、
9:7 わたしはイスラエルを、彼らに与えたこの地の面から断ち滅ぼす。そして、わたしの名のために聖別したこの神殿も、わたしの前から投げ捨てる。イスラエルは、すべての民の間で笑いぐさとなり、あざけりの的となる。
9:8 そして、この神殿がどれほど立派であっても、そのそばを通る者はみな驚いて息をのみ、あざ笑ってこう言う。『主はなぜ、この地とこの神殿にこんなことをなさったのだろう。』
9:9 すると人々はこう答える。『彼らが、自分たちの先祖をエジプトの地から導き出した神、主を捨て、ほかの神々にすがって、それにひれ伏し、仕えたからだ。だから主は、彼らにこのすべての災いを下されたのだ。』」
9:10 それから二十年が過ぎた。その間にソロモンは二つの建物、すなわち主の神殿と王宮を建て上げた。
9:11 ティルスの王ヒラムは、ソロモンが望むだけの杉やいとすぎの木材と金を提供していた。そこでソロモン王は、ガリラヤの地にある二十の町をヒラムに与えた。
9:12 ヒラムは、ソロモンから与えられた町々を見ようとティルスから出て来たが、それらは彼の気に入らなかった。
9:13 そして言った。『兄弟よ、あなたがくれたこの町々は何なのだ。』ヒラムはそれらを『カブルの地』と呼んだ。今日までそう呼ばれている。
9:14 ヒラムは王に、金百二十タラントを送っていた。
9:15 ソロモン王が労役を課したのは、次のものを建てるためだった。主の神殿、王宮、ミロの塁、エルサレムの城壁、そしてハツォル、メギド、ゲゼルである。
9:16 かつてエジプトの王ファラオが攻め上ってゲゼルを占領し、火で焼き払い、その町に住むカナン人を殺して、この町を娘への贈り物とした。その娘はソロモンの妻であった。
9:17 それでソロモンはゲゼルと下ベト・ホロンを建て直し、
9:18 さらに、荒れ野にあるバアラトとタドモルを、この地に建てた。
9:19 また、ソロモンが持っていた倉庫の町という倉庫の町、戦車を置く町、騎兵を置く町も建てた。そのほか、エルサレムやレバノン、そして自分が治める国じゅうで、建てたいと思ったものはすべて建てた。
9:20 さて、イスラエルの人々ではない民、つまりアモリ人、ヒッタイト人、ペリジ人、ヒビ人、エブス人のうち、生き残っていた者たち、
9:21 その地に残った彼らの子孫、イスラエルの人々が滅ぼしきれなかった者たちを、ソロモンは強制労働の働き手として集めた。それは今日まで続いている。
9:22 しかしソロモンは、イスラエルの人々をだれも奴隷にはしなかった。彼らは戦う兵士であり、ソロモンに仕える者、役人、隊長、そして戦車隊や騎兵隊の指揮官だったからだ。
9:23 ソロモンの工事を取り仕切る監督の長は五百五十人いて、働く人々を指揮していた。
9:24 ファラオの娘は、ダビデの町から、ソロモンが彼女のために建てた宮殿に移り住んだ。そのあとソロモンはミロを築いた。
9:25 ソロモンは年に三度、自分が主のために築いた祭壇の上で、焼き尽くすいけにえと交わりのいけにえをささげ、主の前でその祭壇に香をたいた。こうして、神殿は完成した。
9:26 ソロモン王はまた、エドムの地の紅海のほとり、エラトに近いエツヨン・ゲベルで船団を造った。
9:27 ヒラムは、その船団に自分の家来である海を知り尽くした船乗りたちを送り、ソロモンの家来たちと一緒に働かせた。
9:28 彼らはオフィルへ行き、そこから金四百二十タラントを手に入れて、ソロモン王のもとに持ち帰った。
10:1 シェバの女王は、主の名にかかわるソロモンの評判を聞いていた。それで、難しいなぞかけでソロモンを試そうと、彼のもとへやって来た。
10:2 女王はとても大きな一行を連れてエルサレムにやって来た。らくだには香料や大量の金、宝石が積まれていた。女王はソロモンに会うと、心に思っていたことをすべて彼に話した。
10:3 ソロモンは彼女の問いのすべてに答えた。王にわからないことは何もなく、答えられないものは一つもなかった。
10:4 シェバの女王は、ソロモンの知恵のすべてと、彼が建てた宮殿を見た。
10:5 食卓に並ぶ料理、居並ぶ家来たち、きちんと仕える者たちとその服装、給仕たち、そして主の神殿でささげる焼き尽くすいけにえ。それらを見て、女王は息をのんだ。
10:6 女王は王に言った。「わたしが自分の国で聞いた、あなたの行いと知恵についての話は本当でした。
10:7 でも、ここに来てこの目で見るまでは、その話を信じていませんでした。実際は、聞いていたことの半分も伝えられていなかったのです。あなたの知恵と豊かさは、わたしが聞いていた評判をはるかに超えています。
10:8 あなたの人々は幸せです。いつもあなたのそばに仕え、あなたの知恵を聞くことのできる家来たちは、なんと幸せなことでしょう。
10:9 あなたの神、主がたたえられますように。主はあなたを喜び、イスラエルの王座につけてくださいました。主はイスラエルをいつまでも愛しておられます。だからあなたを王とし、正義と公正を行わせてくださったのです。」
10:10 女王は王に、金百二十タラントと、非常に大量の香料、そして宝石を贈った。シェバの女王がソロモン王に贈ったほど多くの香料は、その後二度と入ってこなかった。
10:11 また、オフィルから金を運んできたヒラムの船団は、オフィルから大量の白檀の木材と宝石も運んできた。
10:12 王はその白檀の木材で、主の神殿と王宮の手すりを作り、また歌い手たちのために竪琴や琴を作った。これほどの白檀の木材は、その後二度と入ってこなかったし、今日まで見られていない。
10:13 ソロモン王は、シェバの女王が望んだものを何でも、求めるままにすべて与えた。それとは別に、王は自らすすんで彼女に多くの贈り物をした。こうして女王は家来たちを連れて、自分の国へ帰っていった。
10:14 ソロモンのもとには、一年間に六百六十六タラントの金が入ってきた。
10:15 これは、行商人や貿易商人がもたらすもの、アラビアのすべての王や地方の総督が納めるものとは別の額だった。
10:16 ソロモン王は、打ち延ばした金で大きな盾を二百個作った。盾一つに金六百シェケルを使った。
10:17 また、打ち延ばした金で小さな盾を三百個作った。盾一つに金三ミナを使った。王はこれらを「レバノンの森の家」に納めた。
10:18 さらに王は、象牙で大きな王座を作り、それを純金で覆った。
10:19 王座には六つの段があり、背もたれの上部は丸くなっていた。座席の両側にはひじ掛けがあり、そのわきには二頭のライオンが立っていた。
10:20 六つの段の上には、両側に一頭ずつ、合わせて十二頭のライオンが立っていた。こんなものは、どこの国でも作られたことがなかった。
10:21 ソロモン王が飲み物に使う器はすべて金でできていて、「レバノンの森の家」の器もすべて純金だった。銀のものは一つもなかった。ソロモンの時代には、銀など価値のないものと見なされていたのだ。
10:22 王はヒラムの船団とともに、タルシシュの船団を海に持っていた。三年に一度、タルシシュの船団が金や銀、象牙、猿やひひを積んで帰ってきた。
10:23 こうしてソロモン王は、富においても知恵においても、地上のどの王よりもまさっていた。
10:24 世界中の人々が、神がソロモンの心に授けた知恵を聞こうとして、彼に会いに来た。
10:25 人々は年ごとに、それぞれの贈り物を持ってやって来た。銀の器や金の器、衣服や武器、香料、それに馬やらばだった。
10:26 ソロモンは戦車と騎兵を集めた。戦車は千四百台、騎兵は一万二千人になった。彼はそれらを戦車の町々に置き、また自分のいるエルサレムにも置いた。
10:27 王はエルサレムで、銀を石ころのように多くした。レバノン杉も、低地に生えるいちじく桑のように、いくらでもあるほど多くした。
10:28 ソロモンの馬はエジプトから輸入されたものだった。王の商人たちが、決まった値段で買い付けてきた。
10:29 エジプトから運ばれてくる戦車は一台が銀六百枚、馬は一頭が百五十枚だった。そうやって商人たちは、ヒッタイトのすべての王やアラムの王のためにも、それらを運び出した。
11:1 ソロモン王は、多くの外国の女性を愛した。エジプトの王ファラオの娘をはじめ、モアブ人、アンモン人、エドム人、シドン人、ヒッタイト人の女性たちだ。
11:2 彼女たちは、主がイスラエルの人々にこう言われた民の出身だった。「その民と交わってはならない。彼らも、あなたたちと交わらせてはならない。きっと、あなたたちの心を、自分たちの神々のほうへ引き寄せるからだ。」それなのにソロモンは、彼女たちを深く愛し、離れられなかった。
11:3 ソロモンには、王妃となった女性が七百人、そばめが三百人いた。そして彼女たちが、彼の心を迷わせた。
11:4 年をとると、ソロモンの心は妻たちによってほかの神々のほうへ向けられていった。彼の心は、父ダビデの心のようには、その神である主に真っすぐではなくなった。
11:5 ソロモンは、シドン人の女神アシュトレトや、アンモン人の忌まわしい神ミルコムに従うようになった。
11:6 こうしてソロモンは、主の目に悪とされることを行った。父ダビデのようには、主に真っすぐ従わなかった。
11:7 そのころソロモンは、エルサレムの東の山に、モアブの忌まわしい神ケモシュのための祭壇を築いた。アンモン人の忌まわしい神モレクのための祭壇も築いた。
11:8 外国から来た妻たちみんなのために、彼は同じことをした。妻たちはそれぞれ自分の神々に香をたき、いけにえをささげた。
11:9 主はソロモンに怒った。ソロモンの心が、イスラエルの神である主から離れてしまったからだ。主は二度も彼の前に姿を現していた。
11:10 そして主は、ほかの神々に従ってはならないと、このことについて彼に命じていた。それなのにソロモンは、主が命じたことを守らなかった。
11:11 そこで主はソロモンに言った。「あなたはこういうことをして、わたしの契約と、わたしが命じた掟を守らなかった。だからわたしは、必ずこの王国をあなたから引き裂いて取り上げ、あなたの家来に与える。
11:12 ただし、あなたの父ダビデのために、それをあなたの時代には行わない。あなたの息子の手から、王国を引き裂く。
11:13 とはいえ、王国のすべてを引き裂くわけではない。わたしのしもべダビデのため、そしてわたしが選んだエルサレムのために、あなたの息子に一つの部族を与える。」
11:14 主はソロモンに敵対する者を立てた。エドム人ハダドである。彼はエドムの王家の血を引く者だった。
11:15 以前、ダビデがエドムを攻めたとき、軍の司令官ヨアブは戦死者を葬るために上って行き、エドムの男をすべて討ち取った。
11:16 ヨアブとイスラエルの全軍は、エドムの男を一人残らず滅ぼすまで、六か月間そこにとどまったのだ。
11:17 そのとき、ハダドはまだ幼い子どもだった。彼は、父に仕えていた何人かのエドム人とともに逃げ、エジプトへ向かった。
11:18 彼らはミディアンを出発してパランに着き、パランで何人かの男を仲間に加えて、エジプトのファラオのもとへ着いた。ファラオはハダドに家を与え、食べ物も約束し、土地も与えた。
11:19 ハダドはファラオにとても気に入られた。それでファラオは、自分の妻タフペネス王妃の妹を、ハダドの妻として与えた。
11:20 タフペネスの妹は、ハダドに男の子を産んだ。その子はゲヌバトと名づけられた。タフペネスは、この子をファラオの宮殿で育てた。こうしてゲヌバトは、ファラオの子どもたちに混じって、宮殿で暮らすようになった。
11:21 やがてハダドは、エジプトにいながら、ダビデが先祖のもとに眠り、軍の司令官ヨアブも死んだと聞いた。そこでハダドはファラオに言った。「わたしを行かせてください。自分の国へ帰りたいのです。」
11:22 するとファラオは言った。「わたしのもとで、何か足りないものでもあるのか。どうして自分の国へ帰りたがるのだ。」ハダドは答えた。「いいえ。それでも、どうか行かせてください。」
11:23 神はさらに、もう一人の敵をソロモンに立てられた。エルヤダの子レゾンである。彼は、主君であるツォバの王ハダドエゼルのもとから逃げ出していた。
11:24 ダビデがツォバの人々を討ったとき、レゾンは自分のもとに人々を集め、その一団の頭となった。彼らはダマスコへ行ってそこに住みつき、ダマスコで王となった。
11:25 ソロモンが生きているあいだ、レゾンはずっとイスラエルの敵だった。ハダドがもたらした害に加えて、レゾンもイスラエルを苦しめた。彼はイスラエルを憎み、アラムの王となった。
11:26 また、ネバトの子ヤロブアムも、王に反旗をひるがえした。彼はツェレダ出身のエフライム人で、母はツェルヤという名の未亡人だった。ヤロブアムはソロモンに仕える者だった。
11:27 彼が王に反抗するようになったいきさつは、こうである。ソロモンはミロを築き、父ダビデの町の城壁の壊れた箇所を修復していた。
11:28 ヤロブアムは有能な男だった。ソロモンは、この若者がよく働くのを見て、ヨセフの家に課せられたすべての労役を彼に任せた。
11:29 そのころのことである。ヤロブアムがエルサレムを出たとき、シロ出身の預言者アヒヤが道で彼に出会った。アヒヤは新しい上着を身にまとっていた。野原には二人のほかにだれもいなかった。
11:30 アヒヤは、自分が着ていた新しい上着をつかむと、それを十二切れに引き裂いた。
11:31 そしてアヒヤはヤロブアムに言った。「この十切れを自分のために取りなさい。イスラエルの神、主がこう言われるからだ。『わたしは今、この王国をソロモンの手から引き裂き、あなたに十の部族を与える。
11:32 ただし、一つの部族は彼のものとして残る。わたしのしもべダビデのため、そしてイスラエルのすべての部族の中からわたしが選んだ町エルサレムのためだ。
11:33 こうするのは、彼らがわたしを捨て、シドン人の女神アシュトレト、モアブの神ケモシュ、アンモン人の神ミルコムを拝んだからだ。彼らはわたしの道を歩まず、父ダビデのようにわたしの目にかなう正しいことを行わず、わたしのおきてと定めを守らなかった。
11:34 とはいえ、わたしは王国をすべて彼の手から取り上げはしない。わたしが選んだしもべダビデのために、彼を生きているかぎり君主のままにしておく。ダビデはわたしの戒めとおきてを守ったからだ。
11:35 しかしわたしは、その子の手から王国を取り上げ、その十の部族をあなたに与える。
11:36 そして、その子には一つの部族を与える。わたしのしもべダビデが、わたしの前でいつまでも灯火を保てるようにするためだ。それは、わたしが自分の名を置くために選んだ町エルサレムでのことだ。
11:37 わたしはあなたを取り立てる。あなたは思いのままに治め、イスラエルの王となる。
11:38 もしあなたが、わたしの命じるすべてに聞き従い、わたしの道を歩み、わたしのしもべダビデがしたように、わたしの目にかなう正しいことを行い、わたしのおきてと戒めを守るなら、わたしはあなたとともにいる。そして、ダビデのために建てたように、あなたのためにも揺るがない家を建て、イスラエルをあなたに与える。
11:39 こうしてわたしは、このことのゆえにダビデの子孫を苦しめる。しかし、いつまでもというわけではない。』」
11:40 それでソロモンはヤロブアムを殺そうとした。だがヤロブアムは立ち上がってエジプトへ逃げ、エジプトの王シシャクのもとに身を寄せた。そしてソロモンが死ぬまでエジプトにとどまった。
11:41 ソロモンのその他の出来事、彼が行ったすべてのこと、そしてその知恵は、『ソロモンの言行録』という書物に記されているではないか。
11:42 ソロモンがエルサレムでイスラエル全体を治めた期間は、四十年であった。
11:43 こうしてソロモンは死んで先祖の列に加えられ、父ダビデの町に葬られた。そして息子のレハブアムが跡を継いで王となった。
12:1 レハブアムはシケムへ行った。イスラエルの人々がみな、彼を王にするためにシケムに集まっていたからだ。
12:2 ネバトの子ヤロブアムがこれを聞いたとき、彼はまだエジプトにいた。ソロモン王のもとから逃げて、エジプトに住んでいたのだ。
12:3 人々は使いを送って、ヤロブアムを呼び寄せた。そしてヤロブアムとイスラエルの民全体がやって来て、レハブアムにこう言った。
12:4 「あなたの父上は、わたしたちに重い負担を負わせました。今、父上が課した厳しい労役と重い負担を軽くしてください。そうすれば、わたしたちはあなたに仕えます。」
12:5 レハブアムは彼らに言った。「三日たったら、もう一度わたしのところに戻ってきなさい。」こうして民は帰って行った。
12:6 レハブアム王は、父ソロモンが生きている間に仕えていた長老たちに相談した。「この民に、どう答えたらよいと思うか。」
12:7 長老たちは答えた。「もし今日、あなたがこの民に仕える者となり、彼らに仕え、良い言葉で答えるなら、彼らはいつまでもあなたに仕える者となるでしょう。」
12:8 しかしレハブアムは、長老たちがくれたこの助言を捨てた。そして、自分といっしょに育ち、自分に仕えている若者たちに相談した。
12:9 彼は若者たちに言った。「この民は『父上が課した重い負担を軽くしてください』とわたしに言ってきた。彼らに何と答えたらよいと思うか。」
12:10 いっしょに育った若者たちは、こう答えた。「『あなたの父上はわたしたちに重い負担を負わせました。どうかそれを軽くしてください』と言ってきた民には、こう言ってやりなさい。『わたしの小指は、父の腰よりも太い。
12:11 父はあなたたちに重い負担を負わせたが、わたしはその負担をもっと重くする。父はあなたたちをむちで懲らしめたが、わたしはさそりで懲らしめる。』」
12:12 三日目に、ヤロブアムと民全体がレハブアムのところに戻ってきた。王が「三日目に戻ってきなさい」と言っていたとおりである。
12:13 王は民に厳しく答え、長老たちの助言を退けた。
12:14 そして若者たちの助言のとおりに、こう言った。「父はあなたたちに重い負担を負わせたが、わたしはその負担をもっと重くする。父はあなたたちをむちで懲らしめたが、わたしはさそりで懲らしめる。」
12:15 こうして王は民の願いを聞き入れなかった。これは主が仕組まれたことだった。かつて主がシロ人アヒヤを通してネバトの子ヤロブアムに告げた言葉を、そのとおりに実現するためである。
12:16 王が自分たちの願いを聞き入れないのを見て、イスラエルの民はみな、王にこう言い返した。「ダビデに、わたしたちがもらう分などあるものか。エッサイの子に受け継ぐものなどない。イスラエルよ、自分の家に帰ろう。ダビデよ、これからは自分の家のことは自分でやれ。」こうしてイスラエルの民は、それぞれ自分の家へ帰って行った。
12:17 ただし、ユダの町々に住んでいたイスラエルの人々に対しては、レハブアムが王として治めた。
12:18 レハブアム王は、労役を取り仕切っていたアドラムを民のもとへ送った。すると、イスラエルの民はみなでアドラムに石を投げつけ、彼を殺してしまった。レハブアム王はあわてて戦車に乗り込み、エルサレムへ逃げ帰った。
12:19 こうしてイスラエルは、ダビデの家に背いたまま今日に至っている。
12:20 ヤロブアムが戻ってきたと聞くと、イスラエルの民はみな人をやって彼を集会に招き、全イスラエルの王とした。ダビデの家に従ったのは、ユダ族だけだった。
12:21 エルサレムに着いたレハブアムは、ユダの家全体とベニヤミン族を召集した。その数は、戦いに慣れた精鋭十八万人。ソロモンの子レハブアムのもとに王国を取り戻すため、イスラエルの家と戦おうというのである。
12:22 そのとき、神の言葉が神の人シェマヤに臨んだ。
12:23 「ソロモンの子でユダの王レハブアム、そしてユダとベニヤミンの家全体、さらに残りの民に、こう伝えなさい。
12:24 主はこう言われる。『攻め上ってはならない。あなたたちの兄弟であるイスラエルの人々と戦ってはならない。それぞれ自分の家に帰りなさい。この出来事は、わたしが起こしたことなのだから。』」彼らは主の言葉に従い、主の言葉のとおりに引き返して行った。
12:25 ヤロブアムはエフライムの山地にシケムの町を築いて、そこに住んだ。そして、そこから出て行って、ペヌエルを築いた。
12:26 ヤロブアムは心の中でこう考えた。「このままでは、王国はダビデの家に戻ってしまう。
12:27 もしこの民が、エルサレムにある主の神殿でいけにえをささげに上って行けば、その心はまた自分たちの主君、ユダの王レハブアムに戻ってしまう。そうなれば、彼らはわたしを殺し、ユダの王レハブアムのもとに帰ってしまうだろう。」
12:28 そこで王は相談したうえで、金の子牛を二つ造った。そして民に言った。「あなたたちは、もうエルサレムに上らなくていい。イスラエルよ、見なさい。これが、あなたたちをエジプトの地から導き上ってくれた神々だ。」
12:29 彼は一つをベテルに置き、もう一つをダンに置いた。
12:30 このことは罪となった。民はその一つの子牛を拝むために、ダンにまで出かけて行くようになったからだ。
12:31 彼はまた、高き所に礼拝所を建て、レビ族の出身ではない者たちを、民の中から祭司に任命した。
12:32 ヤロブアムは、八月の十五日に祭りを定めた。それは、ユダで行われていた祭りをまねたものだった。彼は祭壇に上って、いけにえをささげた。ベテルでもそのようにして、自分が造った子牛にいけにえをささげた。また彼はベテルに、自分が設けた高き所の礼拝所の祭司たちを立てた。
12:33 彼は、自分がベテルに造った祭壇に、八月の十五日に上って行った。それは、彼が勝手に決めた月だった。こうして彼はイスラエルの人々のために祭りを定め、祭壇に上って香をたいた。
13:1 そのとき、一人の神の人が、主の言葉に従ってユダからベテルにやって来た。ちょうどヤロブアムが祭壇のそばに立って、香をたこうとしていたときだった。
13:2 その人は主の言葉に従い、祭壇に向かって叫んだ。「祭壇よ、祭壇よ、主はこう言われる。見よ、ダビデの家に一人の男の子が生まれる。名をヨシヤという。彼はおまえの上で、おまえに香をたく高台の祭司たちをいけにえとしてささげ、人の骨をおまえの上で焼く。」
13:3 その日、彼はしるしを示してこう言った。「これが主の告げられたしるしだ。見よ、この祭壇は裂け、その上の灰はこぼれ落ちる。」
13:4 ベテルの祭壇に向かって神の人がこう叫ぶのを聞くと、ヤロブアム王は祭壇の上から手を伸ばして「その男を捕らえろ」と言った。すると、彼が伸ばした手はそのまま動かなくなり、もう引き戻すことができなくなった。
13:5 祭壇も裂け、その灰がこぼれ落ちた。神の人が主の言葉に従って示したしるしのとおりだった。
13:6 王は神の人に言った。「どうか、あなたの神である主の顔をなだめ、わたしのために祈ってほしい。わたしの手が元に戻るように。」神の人が主の顔をなだめると、王の手は元に戻り、前のようになった。
13:7 王は神の人に言った。「わたしと一緒に家に来て、食事をしてくれ。お礼の品を差し上げよう。」
13:8 けれども神の人は王に答えた。「たとえあなたが家の半分をくださっても、わたしはあなたとは行きません。この場所ではパンも食べず、水も飲みません。
13:9 主の言葉によって、こう命じられているからです。『パンを食べてはならない。水を飲んでもならない。来た道を通って帰ってもならない。』」
13:10 そこで彼は別の道を通り、ベテルに来たときの道を通っては帰らなかった。
13:11 さて、ベテルには一人の年老いた預言者が住んでいた。その息子たちが帰って来て、その日、神の人がベテルでしたことをすべて父に話した。神の人が王に語った言葉も、父に伝えた。
13:12 父は息子たちに尋ねた。「その人はどの道を通って行ったのか。」息子たちは、ユダから来たあの神の人が通って行った道を見ていた。
13:13 老預言者は息子たちに言った。「ロバに鞍をつけてくれ。」息子たちがロバに鞍をつけると、彼はそれに乗った。
13:14 そして神の人の後を追って行き、樫の木の下に座っているその人を見つけた。彼は尋ねた。「あなたが、ユダから来た神の人ですか。」その人は「そうです」と答えた。
13:15 老預言者は言った。「わたしと一緒に家に来て、食事をしてください。」
13:16 しかし神の人は答えた。「わたしはあなたと一緒に引き返すことも、あなたの家に行くこともできません。この場所で、あなたと一緒にパンを食べることも、水を飲むこともできません。
13:17 主の言葉によって、こう告げられているからです。『そこでパンを食べても、水を飲んでもいけない。来た道を通って帰ってもいけない。』」
13:18 すると老預言者は言った。「わたしもあなたと同じ預言者です。天使が主の言葉によって、わたしにこう告げました。『その人を連れて自分の家に戻り、パンを食べさせ、水を飲ませなさい。』」しかし、これは嘘だった。
13:19 そこで神の人は老預言者と一緒に引き返し、その家でパンを食べ、水を飲んだ。
13:20 二人が食卓に着いていると、主の言葉が、彼を連れ戻した預言者に臨んだ。
13:21 老預言者は、ユダから来た神の人に向かって叫んだ。「主はこう言われる。あなたは主の言葉に逆らい、あなたの神、主が命じたことを守らなかった。
13:22 引き返して、主が『パンを食べても、水を飲んでもいけない』と告げた、その場所でパンを食べ、水を飲んだ。だから、あなたの遺体は先祖の墓に入ることはない。」
13:23 神の人が食事を終えると、老預言者は、連れ戻したその神の人のためにロバに鞍をつけた。
13:24 神の人が出て行くと、途中でライオンが彼に出くわし、彼を殺した。その遺体は道に投げ出され、ロバはそのそばに立ち、ライオンも遺体のそばに立っていた。
13:25 そこへ、人々が通りかかった。彼らは道に投げ出された遺体と、そのそばに立っているライオンを見た。それで町に来て、このことを話した。その町には、あの老預言者が住んでいた。
13:26 彼を道から連れ戻したあの預言者は、それを聞いてこう言った。「あれは神の人だ。主の言いつけにそむいた人だ。だから主は彼をライオンに引き渡された。ライオンは彼を引き裂いて殺したのだ。主が彼に告げていたとおりに。」
13:27 それから彼は息子たちに言った。「ロバに鞍をつけてくれ。」息子たちは鞍をつけた。
13:28 彼は出かけて行き、道に投げ出された遺体を見つけた。ロバとライオンが遺体のそばに立っていた。ライオンは遺体を食べてもいなかったし、ロバを引き裂いてもいなかった。
13:29 老預言者は神の人の遺体を持ち上げ、ロバに載せて連れ帰った。そして嘆き悲しみ、葬るために、自分の町に戻った。
13:30 彼はその遺体を自分の墓に納めた。人々は「ああ、わたしの兄弟よ」と言って、彼のために嘆き悲しんだ。
13:31 葬り終えると、彼は息子たちに言った。「わたしが死んだら、神の人が葬られているあの墓に、わたしを葬ってくれ。わたしの骨を彼の骨のそばに置いてほしい。
13:32 彼が主の言葉によって、ベテルの祭壇に向かって、またサマリアの町々にある高台の神殿すべてに向かって叫んだあの言葉は、必ず実現するのだから。」
13:33 こんなことがあっても、ヤロブアムは自分の悪い道から引き返さなかった。それどころか、また民の中からだれかれ構わず高台の祭司を立てた。望む者はだれでも、彼がその職に就かせ、高台の祭司にしたのだ。
13:34 このことが、ヤロブアムの家にとって罪となった。そのために、この家は地の面から消し去られ、滅ぼされることになった。
14:1 そのころ、ヤロブアムの息子アビヤが病気になった。
14:2 ヤロブアムは妻に言った。「立って、変装してくれ。だれもきみがヤロブアムの妻だと気づかないようにね。それからシロへ行ってほしい。あそこに預言者アヒヤがいる。わたしがこの民の王になると告げたのは、あの人だ。
14:3 パンを十個と、焼き菓子と、はちみつのつぼを持って、あの人のところへ行きなさい。あの子がどうなるか、あの人が教えてくれる。」
14:4 ヤロブアムの妻はそのとおりにした。立ってシロへ行き、アヒヤの家に着いた。アヒヤは年をとって目がかすみ、見ることができなくなっていた。
14:5 主はアヒヤにこう言っていた。「いいか、ヤロブアムの妻が、病気の息子のことをたずねにやって来る。彼女にはこれこれのことを言いなさい。彼女は来るとき、別人のふりをしているだろう。」
14:6 彼女が戸口に入ってくる足音を聞くと、アヒヤは言った。「入りなさい、ヤロブアムの妻よ。どうして別人のふりをしているのか。わたしは、あなたにつらい知らせを伝えるために送られてきた。
14:7 行って、ヤロブアムに伝えなさい。イスラエルの神、主はこう言われる。『わたしはあなたを民の中から引き上げ、わたしの民イスラエルの指導者にした。
14:8 ダビデの家から王国を裂き取って、あなたに与えた。それなのにあなたは、わたしのしもべダビデのようではなかった。ダビデはわたしの命令を守り、心をつくしてわたしに従い、わたしの目にかなう正しいことだけを行った。
14:9 ところがあなたは、あなたより前にいただれよりも悪いことをした。ほかの神々や鋳物の像を造ってわたしを怒らせ、わたしを背中のうしろに投げ捨てた。
14:10 だから、わたしはヤロブアムの家に災いをもたらす。イスラエルにいるヤロブアムの男は、奴隷も自由な者も、ひとり残らず断ち切る。人が糞を焼きつくすように、わたしはヤロブアムの家を焼きつくし、跡形もなくする。
14:11 ヤロブアムの家の者で、町で死ぬ者は犬に食われ、野で死ぬ者は空の鳥に食われる。主がそう語られたのだ。』
14:12 さあ、あなたは立って、自分の家に帰りなさい。あなたが町に足を踏み入れると、その子は死ぬ。
14:13 そして、イスラエルのすべての人が彼のために嘆き、彼を葬る。ヤロブアムの家の中で、まともに墓に入れるのは彼だけだ。ヤロブアムの家の中で、ただ彼だけに、イスラエルの神である主の前で良いと言えるものが見いだされたからだ。
14:14 主はご自分のために、イスラエルを治める王を立てる。その王は、ヤロブアムの家を断ち切る。それが今日だ。いや、もう始まっている。
14:15 主はイスラエルを打たれる。水の中で葦が揺れ動くように。そして主は、この良い地からイスラエルを引き抜かれる。彼らの先祖に与えられた地からだ。そして彼らを川の向こうに散らされる。彼らがアシェラ像を造って、主を怒らせたからだ。
14:16 ヤロブアムが犯した罪、そしてイスラエルに犯させた罪のために、主はイスラエルを見捨てられる。」
14:17 ヤロブアムの妻は立ち上がり、出かけて、ティルツァに帰った。彼女が家の敷居をまたいだそのとき、その子は死んだ。
14:18 人々はその子を葬り、イスラエルのすべての人が彼のために嘆いた。主が、その僕である預言者アヒヤを通して語られたとおりだった。
14:19 ヤロブアムのその他の出来事、どのように戦い、どのように国を治めたかは、イスラエルの王たちの歴代誌に書かれている。
14:20 ヤロブアムが王であった期間は二十二年だった。彼は先祖と共に眠りにつき、その子ナダブが代わりに王となった。
14:21 一方、ソロモンの子レハブアムはユダで王となった。レハブアムは王になったとき四十一歳で、エルサレムで十七年間、王であった。エルサレムは、主がご自分の名を置くために、イスラエルのすべての部族の中から選ばれた町だ。彼の母の名はナアマといい、アンモン人だった。
14:22 ユダの人々は主の目に悪とされることを行った。彼らは自分たちの犯した罪によって、先祖のだれよりも激しく主のねたみを引き起こした。
14:23 彼らもまた、すべての高い丘の上や、すべての茂った木の下に、祭壇のある高台を築き、石柱やアシェラ像を立てた。
14:24 その地には男の神殿娼婦までいた。彼らは、主がイスラエルの人々の前から追い払われた異国の民の、あらゆる忌まわしい行いをまねた。
14:25 レハブアム王の第五年に、エジプトの王シシャクがエルサレムを攻めてきた。
14:26 彼は主の神殿の宝物と王宮の宝物を奪い取った。すべてを持ち去り、ソロモンが造った金の盾もすべて奪った。
14:27 そこでレハブアム王は、その代わりに青銅の盾を造り、王宮の門を守る近衛兵の隊長たちに預けた。
14:28 王が主の神殿に入るたびに、近衛兵はその盾を持ち、また近衛兵の詰め所に戻すのだった。
14:29 レハブアムのその他の事績と、彼が行ったすべてのことは、ユダの王たちの年代記に記されている。
14:30 レハブアムとヤロブアムの間には、絶えず戦いが続いた。
14:31 レハブアムは先祖と共に眠りにつき、ダビデの町に先祖と共に葬られた。彼の母は、アンモン人の女ナアマといった。そして、その子アビヤムが王位を継いだ。
15:1 ネバトの子ヤロブアム王の第十八年に、アビヤムがユダの王となった。
15:2 彼はエルサレムで三年間、王位にあった。彼の母は、アビシャロムの娘マアカといった。
15:3 アビヤムは、彼より前に父が犯したすべての罪をそのまま繰り返した。彼の心は、父ダビデの心のようには、その神である主に忠実ではなかった。
15:4 それでも、ダビデのために、その神である主は、エルサレムに一つのともし火を与えられた。アビヤムの後に子を立て、エルサレムを守り続けるためであった。
15:5 ダビデが主の目にかなう正しいことを行い、ヘト人ウリヤの一件を除いては、生涯、主が命じられたことから何一つそれなかったからである。
15:6 レハブアムとヤロブアムの間には、レハブアムの生涯を通じて戦いが続いた。
15:7 アビヤムのその他の事績、彼が行ったすべてのことは、ユダの王たちの歴代誌に書かれているのではないだろうか。アビヤムとヤロブアムの間にも戦いがあった。
15:8 アビヤムは先祖のもとに眠りにつき、ダビデの町に葬られた。そして、その子アサが代わって王となった。
15:9 イスラエルの王ヤロブアムの第二十年に、アサがユダの王となった。
15:10 彼はエルサレムで四十一年間、王であった。彼の祖母の名はマアカといい、アビシャロムの娘であった。
15:11 アサは、先祖ダビデのように、主の目にかなう正しいことを行った。
15:12 彼は神殿男娼をこの地から追い出し、先祖たちが造ったすべての偶像を取り除いた。
15:13 また、祖母マアカが忌まわしいアシェラ像を造ったので、その王母の位から退けた。アサはその忌まわしい像を切り倒し、キドロンの谷で焼き払った。
15:14 高き所は取り除かれなかった。それでも、アサの心は生涯、主に対してまっすぐであった。
15:15 彼は、父がささげた物と、自分がささげた物を主の神殿に運び入れた。それは銀と金と器であった。
15:16 アサとイスラエルの王バシャの間には、彼らの生涯を通じて戦いが続いた。
15:17 イスラエルの王バシャはユダに攻め上り、ラマを築いた。ユダの王アサのもとに、だれも出入りできないようにするためであった。
15:18 そこでアサは、主の神殿の宝物庫と王宮の宝物庫に残っていた銀と金をすべて取り出し、家来たちの手に渡した。そして、アサ王は彼らを、ダマスコに住むアラムの王ベン・ハダドのもとへ送った。ベン・ハダドはタブリモンの子で、ヘズヨンの孫である。アサはこう言い送った。
15:19 「わたしの父とあなたの父が結んだように、わたしとあなたの間にも同盟を結びましょう。ここに、銀と金の贈り物をお送りします。どうか、イスラエルの王バシャとの同盟を破棄してください。そうすれば、彼はわたしのもとから引き上げるでしょう。」
15:20 ベン・ハダドはアサ王の願いを聞き入れた。そして、自分の軍隊の指揮官たちをイスラエルの町々へ差し向けた。彼らはイヨン、ダン、アベル・ベト・マアカ、キネレト全域、ナフタリの全土を攻め落とした。
15:21 これを聞いたバシャは、ラマを築くのをやめ、ティルツァにとどまった。
15:22 そこでアサ王は、ユダ全体に呼びかけた。一人も例外はなかった。人々は、バシャがラマを築くのに使った石材と木材を運び去った。アサ王はそれを使って、ベニヤミンのゲバとミツパを築いた。
15:23 アサのその他の事績、その功績のすべて、彼が行ったことのすべて、そして彼が築いた町々は、すべて『ユダの王たちの歴代誌』に記されている。ただ、彼は年を取ってから、足を病んだ。
15:24 アサは先祖と共に眠りにつき、父ダビデの町に先祖と共に葬られた。そして、その子ヨシャファトが跡を継いで王となった。
15:25 ユダの王アサの治世第二年に、ヤロブアムの子ナダブがイスラエルの王となり、二年間イスラエルを治めた。
15:26 彼は主の目に悪とされることを行い、父の道を歩んだ。父はイスラエルに罪を犯させたが、ナダブもその同じ罪を重ねた。
15:27 イッサカル族に属するアヒヤの子バシャが、ナダブに対して謀反を企てた。ナダブとイスラエルの全軍がペリシテ人の町ギベトンを包囲していたとき、バシャはそのギベトンでナダブを討ち取った。
15:28 こうしてバシャは、ユダの王アサの治世第三年にナダブを殺し、その跡を継いで王となった。
15:29 王となったバシャは、ヤロブアムの一族をことごとく討った。息のある者は一人も残さず、ヤロブアムに連なる者を滅ぼし尽くした。これは、主がしもべであるシロ人アヒヤを通して語られたとおりであった。
15:30 それは、ヤロブアムが自ら犯し、またイスラエルに犯させた罪のためであった。彼はそうして、イスラエルの神である主を怒らせたのである。
15:31 ナダブのその他の事績と、彼が行ったすべてのことは、イスラエルの王たちの年代記に記されている。
15:32 アサとイスラエルの王バシャの間には、その生涯を通してずっと戦いが続いた。
15:33 ユダの王アサの治世第三年に、アヒヤの子バシャがティルツァで全イスラエルの王となり、二十四年間その座にあった。
15:34 バシャは主の目に悪とされることを行い、ヤロブアムと同じ道を歩んだ。ヤロブアムがイスラエルに犯させた、あの罪を彼も犯したのである。
16:1 そのとき、ハナニの子エフーに、バシャについての主の言葉が臨んだ。
16:2 「わたしはあなたを塵の中から引き上げ、わたしの民イスラエルの指導者とした。それなのに、あなたはヤロブアムと同じ道を歩み、わたしの民イスラエルに罪を犯させて、彼らの罪でわたしを怒らせた。
16:3 だから、わたしはバシャとその一族をきれいに一掃する。あなたの家を、ネバトの子ヤロブアムの家と同じようにする。
16:4 バシャに連なる者は、町で死ねば犬に食われ、野で死ねば空の鳥に食われる。」
16:5 バシャのその他の事績と、彼が行ったことや、その武勲は、イスラエルの王たちの年代記に記されている。
16:6 バシャは先祖と共に眠りにつき、ティルツァに葬られた。そして、その子エラが跡を継いで王となった。
16:7 また、主の言葉は預言者、ハナニの子イエフを通してもバシャとその一族に告げられた。それはバシャが主の目に悪とされることをすべて行い、自分の手のわざで主を怒らせ、ヤロブアムの一族と同じようになったからであり、また彼がその一族を討ち滅ぼしたからでもあった。
16:8 ユダの王アサの第二十六年に、バシャの子エラがティルツァでイスラエルの王となり、二年間王であった。
16:9 エラの家来で、戦車隊の半分を率いる隊長ジムリが、彼に対して謀反を企てた。エラはティルツァで、王宮を管理するアルツァの家にいて、酒を飲んで酔っていた。
16:10 そのときジムリが押し入り、エラを討ち殺した。ユダの王アサの第二十七年のことである。そしてジムリが跡を継いで王となった。
16:11 ジムリは王となって王座に着くやいなや、バシャの一族をことごとく討ち滅ぼした。彼の身内も友人も含め、男は一人も残さなかった。
16:12 こうしてジムリはバシャの一族をすべて滅ぼした。これは、主が預言者イエフを通してバシャに告げていた言葉のとおりであった。
16:13 それはバシャと、その子エラの犯したすべての罪のためだった。二人は自ら罪を犯し、イスラエルにも罪を犯させ、価値のない偶像によってイスラエルの神、主を怒らせたのである。
16:14 エラのその他の事績と、彼が行ったことはすべて、イスラエルの王たちの年代記に記されている。
16:15 ユダの王アサの第二十七年に、ジムリはティルツァで七日間王であった。そのころ、民はペリシテ人の町ギベトンに向かって陣を敷いていた。
16:16 陣を敷いていた民は、「ジムリが謀反を起こし、王を討ち殺した」と伝え聞いた。そこで、その日、陣営にいたイスラエルの人々は皆、軍の司令官オムリをイスラエルの王とした。
16:17 オムリは、イスラエルの全軍を率いてギベトンから上り、ティルツァを包囲した。
16:18 ジムリは町が占領されるのを見ると、王宮の奥の堅固な部屋に入り、王宮に火を放って自らを焼き、死んだ。
16:19 これは、ジムリが犯した罪のためだった。彼は主の目に悪とされることを行い、ヤロブアムと同じ道を歩んだ。そして自らも罪を犯し、イスラエルにも罪を犯させたのだ。
16:20 ジムリのその他の出来事や、彼が起こした謀反については、『イスラエルの王たちの歴代誌』に記されている。
16:21 そのころ、イスラエルの民は二つに分かれた。半分はギナテの子ティブニについて、彼を王にしようとし、もう半分はオムリについた。
16:22 しかし、オムリについた人々のほうが、ギナテの子ティブニについた人々より強かった。こうしてティブニは死に、オムリが王となった。
16:23 ユダの王アサの治世第三十一年に、オムリはイスラエルの王となり、十二年間治めた。そのうち六年はティルツァで治めた。
16:24 オムリは銀二タラントでシェメルからサマリアの丘を買い取り、その丘に町を築いた。そして、築いた町の名を、丘の持ち主シェメルにちなんでサマリアと名づけた。
16:25 オムリは主の目に悪とされることを行い、彼より前のだれよりもひどいことをした。
16:26 彼はネバトの子ヤロブアムと同じ道をすべて歩み、イスラエルに罪を犯させたその罪を重ねた。こうして、価値のない偶像によって、イスラエルの神、主を怒らせた。
16:27 オムリのその他の出来事や、彼が成し遂げたこと、その力については、『イスラエルの王たちの歴代誌』に記されている。
16:28 オムリは先祖と共に眠りにつき、サマリアに葬られた。そして、その子アハブが代わって王となった。
16:29 オムリの子アハブは、ユダの王アサの治世第三十八年にイスラエルの王となった。オムリの子アハブは、サマリアで二十二年間イスラエルを治めた。
16:30 オムリの子アハブは主の目に悪とされることを行い、彼より前のだれよりもひどいことをした。
16:31 アハブは、ネバトの子ヤロブアムの罪をそのまま続けるだけでは足りなかった。シドン人の王エトバアルの娘イゼベルを妻に迎え、さらにバアルという神のもとへ行って、これに仕え、ひれ伏して拝んだ。
16:32 そして、サマリアに建てたバアルの神殿の中に、バアルのための祭壇を築いた。
16:33 アハブはアシェラ像も造った。こうしてアハブは、彼より前のイスラエルのどの王よりも、イスラエルの神である主を怒らせることをした。
16:34 アハブの時代に、ベテル出身のヒエルがエリコの町を建て直した。彼はその礎を据えたとき長男アビラムを失い、門を建てたとき末の子セグブを失った。これは、主がヌンの子ヨシュアを通して語られたとおりだった。
17:1 ギレアデの住民の一人、ティシュベ出身のエリヤが、アハブにこう言った。「わたしが仕えているイスラエルの神、主は生きておられる。その主にかけて言う。これから数年の間、わたしが言うまで、露も雨も降らない。」
17:2 すると、主の言葉がエリヤに届いた。
17:3 「ここを出て、東へ向かいなさい。そして、ヨルダン川の東にあるケリト川のほとりに身を隠しなさい。
17:4 その川の水を飲むといい。わたしはカラスに命じて、そこであなたに食べ物を運ばせる。」
17:5 エリヤは主の言葉のとおりにした。出かけて行って、ヨルダン川の東にあるケリト川のほとりに住んだ。
17:6 カラスは朝にパンと肉を、夕方にもパンと肉を運んできた。エリヤはその川の水を飲んだ。
17:7 しばらくして、その川が枯れてしまった。この地に雨が降らなかったからだ。
17:8 すると、主の言葉がエリヤにあった。
17:9 「立って、シドンに属するツァレファテへ行き、そこに住みなさい。わたしはその町の一人のやもめに、あなたを養うよう命じてある。」
17:10 エリヤは立って、ツァレファテへ行った。町の入り口まで来ると、そこで一人のやもめが薪を拾い集めていた。エリヤは彼女に呼びかけて言った。「すみません、器に少し水を汲んで来てくれませんか。飲みたいのです。」
17:11 彼女が水を取りに行こうとすると、エリヤはまた呼びかけて言った。「パンも一切れ、手に持って来てくれませんか。」
17:12 彼女は答えた。「あなたの神、主は生きておられます。その主にかけて言いますが、わたしにはパンなど焼いてありません。かめの中にひとつかみの粉と、つぼに少しの油があるだけです。今、こうして薪を二、三本拾っているところです。家に帰ってそれを息子と自分のために作り、それを食べて、あとは死ぬのを待つだけなのです。」
17:13 エリヤは彼女に言った。「こわがらなくていい。家に帰って、あなたの言うとおりにしなさい。でも、まずそれで小さなパンを一つ作って、わたしに持って来てください。あなたと息子のためのものは、そのあとで作ればいい。
17:14 イスラエルの神、主はこう言われるからです。『主がこの地に雨を降らせるその日まで、かめの粉は尽きず、つぼの油もなくならない。』」
17:15 彼女は行って、エリヤの言葉のとおりにした。すると、彼女もエリヤも、その家の者も、来る日も来る日も食べることができた。
17:16 かめの粉は尽きず、つぼの油もなくならなかった。エリヤを通して語られた主の言葉のとおりだった。
17:17 そんなことがあってしばらくして、その家の主人であるこの女の息子が病気になった。病はとても重く、ついに息をしなくなってしまった。
17:18 女はエリヤに言った。「神の人よ、あなたとわたしの間に、いったい何があるというのですか。あなたはわたしの罪を思い出させ、息子を死なせるために来たのですか。」
17:19 エリヤは女に言った。「あなたの息子をわたしに渡してください。」そして子どもを女のふところから受け取り、自分が泊まっている屋上の部屋へ抱え上げ、自分の寝床に寝かせた。
17:20 そして主に呼びかけて言った。「わたしの神、主よ。あなたはわたしが世話になっているこの未亡人にまで、わざわいを下し、その息子を死なせるのですか。」
17:21 エリヤは三度、子どもの上に身を重ね、主に呼びかけて言った。「わたしの神、主よ。どうか、この子の魂をもとに戻し、生き返らせてください。」
17:22 主はエリヤの声を聞き入れてくださった。子どもの魂はもとに戻り、その子は生き返った。
17:23 エリヤはその子を抱え、屋上の部屋から下の家へ連れて下り、母親に渡した。そしてエリヤは言った。「ほら、あなたの息子は生きています。」
17:24 女はエリヤに言った。「今わかりました。あなたは本当に神の人です。あなたの口から出る主の言葉は真実なのですね。」
18:1 それから長い月日がたった。三年目に、主の言葉がエリヤに臨んで言った。「行って、アハブの前に姿を見せなさい。わたしは地に雨を降らせる。」
18:2 そこでエリヤは、アハブに姿を見せるために出かけて行った。そのころ、サマリアではききんがひどくなっていた。
18:3 アハブは、宮廷を管理していたオバデヤを呼び寄せた。オバデヤは主をとても深く敬う人だった。
18:4 以前、イゼベルが主の預言者たちを殺そうとしたとき、オバデヤは百人の預言者を連れ出し、五十人ずつ洞穴にかくまって、パンと水を与えて養っていた。
18:5 アハブはオバデヤに言った。「国じゅうの水のわき出るところと、すべての谷川を回ってくれ。もしかしたら草が見つかるかもしれない。そうすれば馬やらばを生かしておけるし、家畜を一頭も失わずにすむ。」
18:6 二人は回るために国を二手に分けた。アハブは一人である道を進み、オバデヤは一人で別の道を進んだ。
18:7 オバデヤが道を歩いていると、なんと、エリヤが向こうからやって来た。オバデヤは彼だと気づき、地にひれ伏して言った。「エリヤ様、本当にあなたなのですか。」
18:8 エリヤは答えた。「そうだ、わたしだ。行って、あなたの主人にこう伝えなさい。『エリヤが来ています』と。」
18:9 オバデヤは言った。「わたしがいったい何の罪を犯したというのでしょう。あなたはこのしもべをアハブの手に引き渡して、殺させようとなさるのですか。
18:10 あなたの神、主は生きておられます。その主に誓って言いますが、わたしの主人アハブは、あなたを捜すために人をやらなかった国も王国も一つもありません。『ここにはいない』と言われると、その王国や国に、あなたを見つけられなかったという誓いまで立てさせたのです。
18:11 それなのに今、あなたは『行って、あなたの主人にエリヤが来ていると伝えなさい』と言われる。
18:12 わたしがあなたのもとを離れたとたん、主の霊があなたを、わたしの知らないどこかへ運び去ってしまうかもしれません。そうなれば、わたしがアハブに知らせに行っても、彼はあなたを見つけられず、わたしを殺してしまいます。このしもべは、若いころからずっと主を敬ってきたのに。
18:13 イゼベルが主の預言者たちを殺したとき、わたしがしたことは、あなたにお聞きになっていないのですか。わたしは主の預言者百人を、五十人ずつ洞穴にかくまい、パンと水を与えて養ったのです。
18:14 それなのに今、あなたは『行って、あなたの主人にエリヤが来ていると伝えなさい』と言われる。そんなことをすれば、彼はわたしを殺してしまいます。」
18:15 エリヤは言った。「わたしが仕えている万軍の主は生きておられる。その主に誓う。わたしは今日、必ずアハブの前に姿を現す。」
18:16 そこでオバデヤはアハブに会いに行き、このことを伝えた。するとアハブはエリヤに会おうと出て行った。
18:17 アハブはエリヤを見ると、こう言った。「お前か、イスラエルを苦しめている者は。」
18:18 エリヤは答えた。「イスラエルを苦しめているのは、わたしではない。あなたと、あなたの父の家だ。あなたたちは主の命令を捨てて、バアルの神々に従ってきたのだから。
18:19 だから今、人を送って、全イスラエルをカルメル山のわたしのところへ集めてほしい。それに、イゼベルの食卓で食べているバアルの預言者四百五十人と、アシェラの預言者四百人も呼び集めてくれ。」
18:20 そこでアハブは全イスラエルに使いを送り、預言者たちをカルメル山に集めた。
18:21 エリヤは民全員の前に進み出て言った。「あなたたちは、いつまで二つの間で迷っているのか。もし主が神なら、主に従いなさい。もしバアルが神なら、バアルに従いなさい。」でも、民は一言も答えなかった。
18:22 エリヤは民に言った。「主の預言者としてただ一人残っているのは、このわたしだ。でも、バアルの預言者は四百五十人もいる。
18:23 だから、雄牛を二頭用意してほしい。バアルの預言者に一頭を選ばせて、それを切り分け、薪の上に載せる。でも、火はつけない。わたしももう一頭を同じようにして薪の上に載せ、やはり火はつけない。
18:24 そして、あなたたちは自分の神の名を呼びなさい。わたしは主の名を呼ぶ。火をもって答えてくれる神、その方こそが本当の神だ。」すると民はみな、「それはいい」と答えた。
18:25 エリヤはバアルの預言者たちに言った。「あなたたちは大勢だから、まず先に一頭を選んで、支度をしなさい。そして自分の神の名を呼びなさい。でも、火はつけてはいけない。」
18:26 彼らは渡された雄牛を受け取り、支度をした。そして朝から昼まで、「バアルよ、答えてください」とバアルの名を呼び続けた。でも、何の声もなく、答える者もいなかった。彼らは自分たちが作った祭壇の周りで踊り続けた。
18:27 昼になると、エリヤは彼らをからかって言った。「もっと大きな声で呼びなさい。なにしろ神なんだから。考え事でもしているのか、用足しに行っているのか、旅にでも出ているのか。それとも眠っていて、起こしてもらわないといけないのかもしれない。」
18:28 彼らは大きな声で呼び、いつものやり方で、剣や槍で自分の体を傷つけた。血が流れ出るほどだった。
18:29 昼が過ぎても、彼らは夕方のささげ物の時まで叫び続けた。でも、何の声もなく、答える者もなく、耳を傾ける者もいなかった。
18:30 エリヤは民全員に言った。「わたしのところに近づきなさい。」民がみな彼のところに近づくと、エリヤは壊れていた主の祭壇を築き直した。
18:31 エリヤは十二個の石を取った。これはヤコブの子孫の部族の数と同じだった。ヤコブには主の言葉があって、こう告げられていた。「あなたの名はイスラエルとなる。」
18:32 エリヤはその石を積んで、主の名のために祭壇を築いた。そして祭壇のまわりに、種二セアをまけるほどの広さの溝を掘った。
18:33 彼はたきぎを並べ、雄牛を切り分けて、そのたきぎの上に載せた。そして言った。「水を四つの水がめいっぱいに入れて、いけにえとたきぎの上に注ぎなさい。」
18:34 エリヤは「もう一度」と言い、彼らはもう一度そうした。さらに「三度目を」と言うと、彼らは三度目もそうした。
18:35 水は祭壇のまわりに流れ、溝もいっぱいに満たされた。
18:36 夕方のささげ物をする時になると、預言者エリヤは進み出て言った。「アブラハム、イサク、イスラエルの神である主よ。あなたこそイスラエルの神であり、わたしがあなたのしもべであること、そしてわたしがこれらすべてをあなたの言葉のとおりに行ったことを、きょう、みんなに知らせてください。
18:37 答えてください、主よ。わたしに答えてください。そうすれば、この民は、あなた、主こそが神であり、あなたが彼らの心をあなたのほうへ引き戻してくださったことを知るでしょう。」
18:38 すると主の火が下って、いけにえも、たきぎも、石も、土も焼き尽くし、溝の中の水までなめ尽くした。
18:39 民はみなこれを見て、ひれ伏して言った。「主こそ神だ。主こそ神だ。」
18:40 エリヤは彼らに言った。「バアルの預言者たちを捕まえろ。一人も逃がすな。」彼らが預言者たちを捕まえると、エリヤは彼らをキション川へ連れ下り、そこで殺した。
18:41 エリヤはアハブに言った。「上って行って、飲み食いしてください。大雨の音がしていますから。」
18:42 アハブは飲み食いするために上って行った。一方エリヤはカルメル山の頂に登り、地にかがみこんで、顔を両ひざの間にうずめた。
18:43 そしてエリヤは従者に言った。「上って行って、海の方を見てくれ。」従者は上って行って見たが、「何もありません」と言った。エリヤは「もう一度、七回まで行ってくれ」と言った。
18:44 七回目になったとき、従者は言った。「見てください。人の手のひらくらいの小さな雲が、海から上ってきます。」エリヤは言った。「上って行って、アハブにこう伝えなさい。『雨に降り込められないうちに、馬車の用意をして下って行ってください』と。」
18:45 そうこうするうちに、空は雲と風でみるみる暗くなり、大雨が降ってきた。アハブは馬車に乗ってイズレエルへ向かった。
18:46 主の力がエリヤに臨んだ。彼は腰の帯を締め直し、イズレエルの入り口まで、アハブの先に立って走った。
19:1 アハブはイゼベルに、エリヤがしたことすべてと、彼が預言者たちを一人残らず剣で殺したことを、そっくり話した。
19:2 するとイゼベルはエリヤのもとに使いを送って言わせた。「もし明日の今ごろまでに、おまえの命をあの預言者たちと同じ目にあわせなかったら、神々がわたしをどんなにでも罰してくださるように。」
19:3 エリヤは恐ろしくなり、立ち上がって命からがら逃げ出した。そしてユダに属するベエル・シェバまで来ると、従者をそこに残し、
19:4 自分は一日分の道のりを荒れ野へと進んで行った。そして、一本のえにしえの木の下まで来て腰を下ろすと、死なせてほしいと願って言った。「主よ、もう十分です。どうかわたしの命を取ってください。わたしは先祖たちよりましな者ではありません。」
19:5 そう言って、彼は一本のえにしえの木の下に横になって眠った。すると、一人の御使いが彼にふれて言った。「起きて、食べなさい。」
19:6 エリヤが見ると、頭のそばに焼き石で焼いたパンと、水の入った瓶があった。彼はそれを食べて飲み、また横になった。
19:7 主の御使いがもう一度戻ってきて、彼にふれて言った。「起きて、食べなさい。この旅はあなたには長すぎるから。」
19:8 彼は起きて食べて飲み、その食べ物の力で四十日四十夜歩き続けて、神の山ホレブまでたどり着いた。
19:9 そこで彼は洞穴に入り、その中で夜を過ごした。すると、主の言葉が彼に臨んで言った。「エリヤよ、ここで何をしているのか。」
19:10 エリヤは答えた。「わたしは万軍の神、主のために激しく熱心に励んできました。でも、イスラエルの人々はあなたとの契約を捨て、あなたの祭壇を壊し、あなたの預言者たちを剣で殺しました。残ったのはわたし一人だけです。その上、人々はわたしの命をねらって、奪おうとしています。」
19:11 主は言った。「外に出て、山の上で主の前に立ちなさい。」すると、主が通り過ぎて行った。激しく強い風が山々を引き裂き、岩を砕きながら、主の前を進んで行った。でも、主は風の中にはいなかった。風のあとに地震が起きた。でも、主は地震の中にもいなかった。
19:12 地震のあとに火が起こった。でも、主は火の中にもいなかった。火のあとに、かすかにささやくような声がした。
19:13 エリヤはそれを聞くと、外套で顔を覆い、外に出て洞穴の入り口に立った。すると、その声が彼に語りかけた。「エリヤよ、ここで何をしているのか。」
19:14 エリヤは答えた。「わたしは万軍の神、主のために激しく熱心に励んできました。でも、イスラエルの人々はあなたとの契約を捨て、あなたの祭壇を壊し、あなたの預言者たちを剣で殺しました。残ったのはわたし一人だけです。その上、人々はわたしの命をねらって、奪おうとしています。」
19:15 主は彼に言った。「行け。来た道を戻り、ダマスコの荒れ野へ向かいなさい。そこに着いたら、ハザエルに油を注いで、アラムの王としなさい。
19:16 また、ニムシの子エフーに油を注いで、イスラエルの王としなさい。そして、アベル・メホラ出身のシャファトの子エリシャに油を注いで、あなたに代わる預言者としなさい。
19:17 ハザエルの剣から逃れる者はエフーが殺し、エフーの剣から逃れる者はエリシャが殺す。
19:18 だが、わたしはイスラエルに七千人を残しておく。バアルにひざをかがめず、その像に口づけもしなかった者すべてだ。」
19:19 エリヤはそこを去り、シャファトの子エリシャを見つけた。エリシャは畑を耕していた。彼の前には十二くびきの牛がいて、彼自身は十二番目のくびきといっしょにいた。エリヤは彼のそばを通りながら、自分の上着を彼に投げかけた。
19:20 エリシャは牛を置いて、エリヤのあとを追って走り、こう言った。「どうか、父と母に別れの口づけをさせてください。そのあと、あなたについて行きます。」エリヤは彼に言った。「行って来なさい。わたしがあなたに何をしたというのか。」
19:21 エリシャはエリヤのもとから引き返し、一くびきの牛を取ってほふった。そして牛の道具を燃やして肉を煮ると、それを人々に分け与え、みんなで食べた。それから彼は立ち上がり、エリヤについて行って、その世話をするようになった。
20:1 アラムの王ベン・ハダドは、全軍を集めた。彼のもとには三十二人の王がつき、馬も戦車もあった。彼は攻め上ってサマリアを包囲し、この町を攻めた。
20:2 そして彼は、町の中にいるイスラエルの王アハブのもとに使者を送って、こう伝えた。「ベン・ハダドはこう言う。
20:3 あなたの銀と金はわたしのものだ。あなたの妻たちも、いちばん良い子どもたちも、わたしのものだ。」
20:4 イスラエルの王は答えて言った。「王よ、ご主人様、おっしゃるとおりです。わたしも、わたしのものもすべて、あなたのものです。」
20:5 使者たちは戻って来て、こう言った。「ベン・ハダドはこう言う。わたしはあなたに、こう言い送った。あなたの銀と金、妻たちと子どもたちをわたしに差し出せ、と。
20:6 そのうえ、明日の今ごろ、わたしは家来たちをあなたのもとに送る。彼らはあなたの家と家来たちの家を探し回り、あなたの目に好ましいものをすべて手に取って、持ち去るだろう。」
20:7 イスラエルの王は国じゅうの長老たちを呼び集めて言った。「よく見て、分かってほしい。この男は明らかに面倒を起こそうとしている。妻たちも子どもたちも、銀も金もよこせと言ってきた。それでもわたしは断らなかったのに。」
20:8 長老たちも民もみな、王に言った。「聞いてはいけません。承知してはいけません。」
20:9 そこで王はベン・ハダドの使者たちに言った。「わたしの主君である王にこう伝えてくれ。『最初に言ってこられたことは、すべてお受けします。でも、今度のことはできません』と。」使者たちは帰って行き、この返事を伝えた。
20:10 するとベン・ハダドはまた王のもとに使者を送って言った。「サマリアの土くれは、わたしに従う兵たちが一人ひとかみずつ取るにも足りないほどだ。もし足りるようなことがあれば、神々がわたしをどんな目にあわせてくださっても構わない。」
20:11 イスラエルの王は答えて言った。「こう伝えよ。『武具を身につける者が、それを脱ぐ者のように勝ち誇ってはならない』と。」
20:12 ベン・ハダドは、ほかの王たちと仮小屋で酒を飲んでいるときに、この言葉を聞いた。彼は家来たちに「配置につけ」と命じ、彼らは町に向かって攻撃の配置についた。
20:13 そのとき、一人の預言者がイスラエルの王アハブのところに来て言った。「主はこう言われる。『あの大軍をすべて見たか。わたしは今日、それをあなたの手に渡す。あなたは、わたしが主であることを知るようになる。』」
20:14 アハブは尋ねた。「だれによってですか。」預言者は言った。「主はこう言われる。『地方の高官たちの若者たちによってだ。』」アハブが「だれが戦いを始めるのですか」と聞くと、預言者は「あなただ」と答えた。
20:15 そこでアハブは地方の高官たちの若者たちを召集した。その数は二百三十二人だった。そのあと、彼はすべての民、イスラエルの人々すべてを召集した。その数は七千人だった。
20:16 彼らは真昼に出て行った。そのころベン・ハダドは仮小屋で、彼を助けに来た三十二人の王たちといっしょに、酔うまで酒を飲んでいた。
20:17 地方の高官たちの若者たちが先に出て行った。ベン・ハダドは物見を出していたので、彼らはベン・ハダドに報告した。「サマリアから人が出て来ました。」
20:18 ベン・ハダドは言った。「和平のために出て来たのなら、生け捕りにせよ。戦いのために出て来たのなら、それでも生け捕りにせよ。」
20:19 こうして彼らは町から出て行った。地方の高官たちの若者たちと、そのうしろに続く軍勢である。
20:20 彼らはそれぞれ自分の相手を討ち取った。アラムの兵は逃げ出し、イスラエルはそれを追いかけた。アラムの王ベン・ハダドは、馬に乗り、騎兵たちとともに逃げのびた。
20:21 イスラエルの王も出て行って、馬と戦車を打ち、アラムに大きな打撃を与えた。
20:22 すると預言者がイスラエルの王のところに来て言った。「さあ、力をたくわえなさい。自分のすべきことをよく考えて備えなさい。年が改まるころ、アラムの王がまたあなたを攻めに上って来るからだ。」
20:23 一方、アラムの王の家臣たちは王に言った。「彼らの神は山の神です。だから彼らはわたしたちより強かったのです。でも平地で戦えば、きっとわたしたちのほうが強いはずです。
20:24 そこで、こうなさってください。王たちをそれぞれの持ち場から外し、代わりに総督たちを立てるのです。
20:25 そして、失った軍勢と同じだけの軍勢を、馬は馬で、戦車は戦車で、あなたご自身のために集めてください。そうして平地で彼らと戦えば、きっとわたしたちのほうが強いはずです。」王は彼らの言うことを聞き入れ、そのとおりにした。
20:26 年が改まると、ベン・ハダドはアラムの兵を召集し、イスラエルと戦うためにアフェクへ上って行った。
20:27 イスラエルの人々も召集され、食料を整えて、彼らを迎え撃ちに出て行った。イスラエルの人々は、二つの小さな山羊の群れのように、アラムの前に陣を敷いた。一方、アラムは地を埋め尽くすほどだった。
20:28 神の人が近づいて来て、イスラエルの王に言った。「主はこう言われる。『アラムは、主は山の神であって谷の神ではない、と言った。だからわたしは、この大軍をすべてあなたの手に渡す。そうすればあなたがたは、わたしが主であることを知るだろう。』」
20:29 両軍は七日間、向かい合って陣を敷いた。七日目になって戦いが始まり、イスラエルの人々は一日でアラムの歩兵十万人を討ち取った。
20:30 生き残った者たちはアフェクの町へ逃げ込んだ。しかしその城壁が崩れ落ち、生き残っていた二万七千人の上に倒れた。ベン・ハダドも逃げ、町の中の奥の部屋へ逃げ込んだ。
20:31 家来たちがベン・ハダドに言った。「聞くところによると、イスラエルの王たちは情け深い王だそうです。ですから、腰に粗い布を巻き、頭に縄をかけて、イスラエルの王のところへ行かせてください。もしかしたら、あなたの命を助けてくれるかもしれません。」
20:32 そこで彼らは腰に粗い布を巻き、頭に縄をかけて、イスラエルの王のところへ行き、こう言った。「あなたのしもべ、ベン・ハダドが『どうかわたしの命を助けてください』と申しております。」王は言った。「まだ生きているのか。彼はわたしの兄弟だ。」
20:33 この言葉を、家来たちは良い前兆と受け取り、すぐにそれをとらえて言った。「そうです、あなたの兄弟ベン・ハダドです。」王は言った。「行って、彼を連れて来なさい。」ベン・ハダドが出て来ると、王は彼を自分の戦車に乗せた。
20:34 ベン・ハダドは王に言った。「わたしの父があなたの父から取った町々をお返しします。また、わたしの父がサマリアにしたように、あなたはダマスコに商業の区域を設けてかまいません。」アハブは言った。「その約束のもとに、あなたを帰らせよう。」こうしてアハブはベン・ハダドと契約を結び、彼を帰らせた。
20:35 さて、預言者の仲間の一人が、主の言葉に従って仲間に言った。「どうか、わたしを打ってくれ。」しかしその人は打つのを断った。
20:36 すると彼は言った。「あなたは主の言葉に従わなかった。だから、わたしのそばを離れたとたん、獅子があなたを襲うだろう。」その人が彼のもとを離れると、獅子が彼を見つけて襲った。
20:37 預言者はまた別の人を見つけて言った。「どうか、わたしを打ってくれ。」その人は彼を打って傷を負わせた。
20:38 預言者は行って、道のそばで王を待った。そして、目に包帯を当てて変装した。
20:39 王が通りかかると、彼は王に叫んで言った。「あなたのしもべは戦いの真っただ中に出て行きました。すると、一人の兵士が退いて来て、わたしのところに一人の男を連れて来て言いました。『この男を見張っておけ。もし逃がしたら、お前の命が彼の命の代わりになる。さもなければ、銀一タラントを払うことになる。』
20:40 ところが、あなたのしもべがあちこち手を取られているうちに、その男はいなくなってしまいました。」イスラエルの王は彼に言った。「それがお前への裁きだ。お前自身がそう決めたのだ。」
20:41 そこで彼は急いで目から包帯を取り去った。すると、イスラエルの王は、彼が預言者の一人であることに気づいた。
20:42 彼は王に言った。「主はこう言われる。『わたしが滅ぼすと定めた者を、あなたは自分の手から逃がした。だから、あなたの命が彼の命の代わりとなり、あなたの民が彼の民の代わりとなる。』」
20:43 イスラエルの王は不機嫌で腹を立てたまま、自分の家に向かい、サマリアに帰った。
21:1 こんなことがあった後の話である。イズレエルの人ナボトが、イズレエルにぶどう畑を持っていた。それはサマリアの王アハブの宮殿のすぐそばにあった。
21:2 アハブはナボトにこう言った。「あなたのぶどう畑をわたしにゆずってくれないか。わたしの家のすぐそばにあるから、野菜畑にしたいんだ。代わりに、もっと良いぶどう畑をあげよう。もしそのほうがよければ、その分のお金を払ってもいい。」
21:3 しかしナボトはアハブに言った。「先祖から受け継いだこの土地をあなたにゆずるなんて、主の前でとんでもないことです。」
21:4 イズレエルの人ナボトに「先祖から受け継いだ土地はゆずれません」と言われて、アハブは不機嫌で腹を立てたまま家に帰った。そして寝台に横になり、顔を背けて、食事もとろうとしなかった。
21:5 妻のイゼベルが来て、彼に言った。「どうしてそんなに不機嫌なの。食事もとらないなんて。」
21:6 アハブは答えた。「イズレエルの人ナボトに、『あなたのぶどう畑をお金で売ってくれ。もし望むなら、代わりに別のぶどう畑をあげよう』と言ったんだ。でも彼は『わたしのぶどう畑はゆずれません』と言うんだ。」
21:7 妻のイゼベルは彼に言った。「あなたは今、イスラエルの王でしょう。さあ、起きて食事をとって、元気を出しなさい。あのイズレエルの人ナボトのぶどう畑は、わたしがあなたに手に入れてあげます。」
21:8 そこでイゼベルはアハブの名で手紙を書き、彼の印を押した。そして、ナボトと同じ町に住む長老たちや有力者たちに、その手紙を送った。
21:9 手紙にはこう書いてあった。「断食を呼びかけ、ナボトを人々の上座にすわらせなさい。
21:10 そして、ならず者を二人、彼の前にすわらせ、こう証言させなさい。『お前は神と王を呪った』と。それから彼を町の外に連れ出し、石を投げつけて殺しなさい。」
21:11 その町の人々、つまり同じ町に住む長老たちや有力者たちは、イゼベルが送ってきた手紙に書かれていたとおりに実行した。
21:12 彼らは断食を呼びかけ、ナボトを人々の上座にすわらせた。
21:13 そこへ、ならず者が二人やって来て、ナボトの向かいにすわった。そしてこのならず者たちは、人々の前でナボトについてこう証言した。「ナボトは神と王を呪った。」人々は彼を町の外に連れ出し、石を投げつけて殺した。
21:14 それから彼らはイゼベルに、「ナボトは石で打たれて死にました」と伝えた。
21:15 ナボトが石で打たれて死んだと聞くと、イゼベルはアハブに言った。「さあ、立って、あのイズレエルの人ナボトのぶどう畑を自分のものにしなさい。お金を出しても売らないと断った、あの畑です。ナボトはもう生きていません。死んだのです。」
21:16 ナボトが死んだと聞くと、アハブは立ち上がり、イズレエルの人ナボトのぶどう畑を自分のものにするために、そこへ下って行った。
21:17 そのとき、主の言葉がティシュベの人エリヤにこう告げられた。
21:18 「立って、サマリアにいるイスラエルの王アハブを迎えに、下って行きなさい。彼は今、ナボトのぶどう畑にいる。それを自分のものにするために、そこへ下って行ったのだ。
21:19 彼にこう言いなさい。『主はこう言われる。お前は人を殺した上に、その財産まで奪うのか』と。さらにこう言いなさい。『主はこう言われる。犬がナボトの血をなめたその場所で、犬はお前の血もなめるだろう』と。」
21:20 アハブはエリヤに言った。「わたしの敵よ、とうとうわたしを見つけたのか。」エリヤは答えた。「見つけた。お前は主が見て悪とすることを、進んで行ってきたからだ。
21:21 主はこう言われる。『わたしはお前に災いをもたらす。お前を根こそぎにし、アハブの家の男を、イスラエルから一人残らず断ち切る。奴隷も自由な者も、みな断ち切る。
21:22 わたしはお前の家を、ネバトの子ヤロブアムの家のように、またアヒヤの子バシャの家のようにする。お前がわたしを怒らせ、イスラエルに罪を犯させたからだ。』
21:23 イゼベルについても、主はこう言われた。『犬がイズレエルの城壁のそばでイゼベルを食い尽くす。』
21:24 アハブの一族で町の中で死ぬ者は犬が食い、野で死ぬ者は空の鳥が食う。」
21:25 実際、アハブほどひどい者はいなかった。彼は主が悪と見なすことに、自分をすっかり売り渡してしまった。妻イゼベルにそそのかされてのことだった。
21:26 彼はとても忌まわしいことをした。偶像を追い求めたのだ。それは、主がイスラエルの人々の前から追い払ったアモリ人がしていたことと、そっくり同じだった。
21:27 アハブはこの言葉を聞くと、自分の服を引き裂いた。そして肌に粗い布をまとって断食し、その布を着たまま横になり、しずかに歩んだ。
21:28 そのとき、主の言葉がティシュベ出身のエリヤに臨んだ。
21:29 「見たか。アハブがわたしの前でへりくだったのを。彼がわたしの前でへりくだったので、わたしは彼の生きているうちには災いをくださない。だが、その子の時代に、彼の家に災いをくだす。」
22:1 それから三年の間、アラムとイスラエルの間に戦争はなかった。
22:2 三年目のこと、ユダの王ヨシャファトがイスラエルの王のもとに下って来た。
22:3 イスラエルの王は家臣たちに言った。「知っているか。ラモト・ギレアドはもともと私たちのものだ。それなのに、私たちはそれをアラムの王の手から取り返そうともせず、じっとしている。」
22:4 そして王はヨシャファトに言った。「ラモト・ギレアドとの戦いに、私といっしょに行ってくれないか。」ヨシャファトはイスラエルの王に答えた。「わたしもあなたも同じ、わたしの民もあなたの民も同じ、わたしの馬もあなたの馬も同じです。」
22:5 さらにヨシャファトはイスラエルの王に言った。「でも、まず主の言葉を求めてください。」
22:6 そこでイスラエルの王は預言者たちを集めた。その数はおよそ四百人だった。王は彼らに尋ねた。「ラモト・ギレアドとの戦いに行くべきか、それともやめるべきか。」彼らは答えた。「行ってください。主が王の手にお渡しになります。」
22:7 でもヨシャファトは言った。「ほかに、主にたずねられる主の預言者はいませんか。」
22:8 イスラエルの王はヨシャファトに答えた。「もう一人、主にたずねられる者がいる。イムラの子ミカヤだ。でも、わたしは彼が嫌いだ。わたしについて良いことは何も預言せず、悪いことばかり言うからだ。」ヨシャファトは言った。「王よ、そんなふうに言わないでください。」
22:9 そこでイスラエルの王は一人の家来を呼んで言った。「急いでイムラの子ミカヤを連れて来い。」
22:10 イスラエルの王とユダの王ヨシャファトは、王の衣をまとって、それぞれ自分の王座にすわっていた。場所はサマリアの門の入り口にある広場だった。そして預言者たちはみな、二人の前で預言していた。
22:11 ケナアナの子ゼデキヤは鉄の角を作って言った。「主はこう言われます。『あなたはこの角でアラムを突き倒し、滅ぼしつくす。』」
22:12 預言者たちもみな同じように預言して言った。「ラモト・ギレアドに攻め上ってください。きっと勝てます。主が王の手にお渡しになります。」
22:13 ミカヤを呼びに行った使いの者は、彼にこう言った。「いいですか、預言者たちは口をそろえて王に良いことを告げています。どうかあなたの言葉も、彼らのうちの一人と同じようにして、良いことを言ってください。」
22:14 しかしミカヤは言った。「主は生きておられる。その主がわたしに告げられることを、わたしはそのまま語る。」
22:15 ミカヤが王のところに来ると、王は彼に尋ねた。「ミカヤよ、ラモト・ギレアドとの戦いに行くべきか、それともやめるべきか。」ミカヤは答えた。「攻め上ってください。きっと勝てます。主が王の手にお渡しになります。」
22:16 すると王は彼に言った。「いったい何度言わせれば気がすむのだ。主の名によって、本当のことだけをわたしに告げよ、と。」
22:17 そこでミカヤは言った。「わたしは、イスラエルのすべての民が羊飼いのいない羊のように山々に散らされているのを見ました。すると主は言われました。『この者たちには主人がいない。それぞれ無事に自分の家に帰らせよ。』」
22:18 イスラエルの王はヨシャファトに言った。「言ったとおりだろう。あの男はわたしについて良いことは預言せず、悪いことばかり言うのだ。」
22:19 ミカヤはさらに言った。「では、主の言葉を聞いてください。わたしは、主が王座に座っておられ、天の万軍がその右と左に立っているのを見ました。
22:20 すると主は言われました。『だれが、アハブをそそのかして、ラモト・ギレアドに攻め上らせ、そこで倒れさせるだろうか。』ある者はこう言い、別の者はああ言いました。
22:21 そのとき、一つの霊が進み出て、主の前に立ち、こう言いました。『わたしがあの者をそそのかしましょう。』
22:22 主がその霊に『どうやってか』と尋ねると、その霊は答えました。『わたしが出ていって、あの者のすべての預言者たちの口で偽りを語る霊になります。』すると主は言われました。『お前はうまくそそのかせる。行って、そのとおりにせよ。』
22:23 だから、今、主はここにいるあなたのすべての預言者たちの口に、偽りを語る霊を入れられたのです。主はあなたに災いを下すと言っておられます。」
22:24 すると、ケナアナの子ゼデキヤが近づいてきて、ミカヤの頬を打ち、こう言った。「主の霊が、どうやってわたしを離れて、お前に語ったというのだ。」
22:25 ミカヤは答えた。「あなたは、奥の部屋に逃げ込んで隠れるその日に、それを思い知るだろう。」
22:26 イスラエルの王は命じた。「ミカヤを捕らえて、町の長官アモンと、王子ヨアシュのところへ連れ戻せ。
22:27 そしてこう言え。『王はこう言われる。この男を牢に入れ、わたしが無事に帰ってくるまで、わずかなパンと水だけを与えておけ。』」
22:28 ミカヤは言った。「もしあなたが本当に無事に帰ってくるなら、主はわたしを通して語られなかったことになる。」そして彼は言った。「民のみなさん、これを聞いてください。」
22:29 こうして、イスラエルの王とユダの王ヨシャファトは、ラモト・ギレアドに攻め上った。
22:30 イスラエルの王はヨシャファトに言った。「わたしは変装して戦いに出る。あなたは自分の王服を着ていてください。」そうして、イスラエルの王は変装して戦いに出た。
22:31 アラムの王は、自分の三十二人の戦車隊の隊長たちにこう命じていた。「身分の低い者とも高い者とも戦うな。ただイスラエルの王とだけ戦え。」
22:32 戦車隊の隊長たちはヨシャファトを見ると、「あれこそイスラエルの王だ」と思い、向きを変えて彼に攻めかかった。ヨシャファトは叫び声をあげた。
22:33 しかし隊長たちは、彼がイスラエルの王ではないと分かると、追うのをやめて引き返した。
22:34 ところが、一人の兵が何気なく弓を引くと、その矢がイスラエルの王に当たった。鎧のつなぎ目のすき間を射抜いたのだ。王は自分の戦車を操る者に言った。「向きを変えて、わたしを戦場から連れ出してくれ。傷を負ってしまった。」
22:35 その日、戦いは激しくなった。王は戦車の中で体を起こしたまま、アラム軍と向かい合っていた。そして夕方になって死んだ。傷口の血は戦車の底に流れ落ちた。
22:36 日が沈むころ、軍の中に叫び声が広がった。「みんな、自分の町へ帰れ。みんな、自分の国へ帰れ。」
22:37 こうして王は死に、その遺体はサマリアに運ばれた。人々は王をサマリアに葬った。
22:38 サマリアの池で戦車を洗うと、犬が王の血をなめ、遊女たちがそこで体を洗った。すべては主が語られたとおりになった。
22:39 アハブのその他の出来事、彼が行ったすべてのこと、彼が建てた象牙の宮殿や、築いたすべての町のことは、イスラエルの王たちの歴史の書に記されているとおりである。
22:40 アハブは先祖のもとに眠りにつき、その子アハズヤが代わって王となった。
22:41 アサの子ヨシャファトがユダの王になったのは、イスラエルの王アハブの治世第四年のことだった。
22:42 ヨシャファトは三十五歳で王となり、二十五年間エルサレムで王位にあった。彼の母はシルヒの娘アズバといった。
22:43 ヨシャファトは父アサとまったく同じ道を歩み、そこからそれることなく、主の目にかなう正しいことを行った。ただ、丘の上の祭壇だけは取り除かれなかった。民は相変わらずそこでいけにえをささげ、香をたいていた。
22:44 ヨシャファトはイスラエルの王と和解し、平和を保った。
22:45 ヨシャファトのその他の出来事、彼が示した力、彼が戦ったことは、ユダの王たちの歴代の記録に記されている。
22:46 彼は、父アサの時代に生き残っていた、神殿で身を売る男たちを、この地から一掃した。
22:47 そのころ、エドムには王がいなかった。代理の者が王の役目を果たしていた。
22:48 ヨシャファトは金を手に入れるためオフィルへ行こうと、タルシシュの船団を造った。しかし船はエツヨン・ゲベルで難破し、出航できなかった。
22:49 そのとき、アハブの子アハズヤがヨシャファトに、「わたしの家来たちを、あなたの家来たちといっしょに船に乗せてほしい」と言った。しかしヨシャファトは承知しなかった。
22:50 ヨシャファトは先祖のもとに眠りにつき、父ダビデの町に先祖とともに葬られた。そして、その子ヨラムが代わって王となった。
22:51 アハブの子アハズヤがサマリアでイスラエルの王になったのは、ユダの王ヨシャファトの治世第十七年のことだった。彼は二年間イスラエルを治めた。
22:52 彼は主の目に悪とされることを行い、父の道、母の道、そしてイスラエルに罪を犯させたネバトの子ヤロブアムの道を歩んだ。
22:53 彼はバアルに仕えてこれを拝み、父がしたことをそっくり繰り返して、イスラエルの神である主を怒らせた。
列王紀下
1:1 アハブが死んだあと、モアブはイスラエルに反逆した。
1:2 アハズヤは、サマリアにある屋上の部屋の格子窓から落ちて、けがをした。それで使いの者たちを送って、こう言った。「エクロンの神バアル・ゼブブのところへ行って、わたしがこの病気から回復できるかどうか聞いてきてくれ。」
1:3 しかし主の使いは、ティシュベの人エリヤに言った。「さあ、立って、サマリアの王の使いたちを迎えに行きなさい。そして、こう言うのだ。『イスラエルには神がいないとでもいうのか。それで、わざわざエクロンの神バアル・ゼブブに尋ねに行くのか。
1:4 だから、主はこう言われる。おまえは、上ったその寝台から、もう降りることはない。おまえは必ず死ぬ。』」こう告げて、エリヤは去って行った。
1:5 使いたちが戻ってくると、王は言った。「どうして戻ってきたのか。」
1:6 彼らは答えた。「一人の男が、わたしたちを迎えに上ってきて、こう言ったのです。『あなたたちを送った王のところへ帰って、こう伝えよ。主はこう言われる。イスラエルには神がいないとでもいうのか。それで、エクロンの神バアル・ゼブブに尋ねさせるのか。だから、おまえは上ったその寝台から、もう降りることはない。おまえは必ず死ぬ。』」
1:7 王は尋ねた。「おまえたちを迎えに上ってきて、そんなことを言ったのは、どんな男だったのか。」
1:8 彼らは答えた。「毛深い人で、腰には革の帯を締めていました。」王は言った。「それはティシュベの人エリヤだ。」
1:9 王は、五十人隊の隊長を、部下の五十人とともにエリヤのもとへ送った。隊長が上っていくと、エリヤは山の頂に座っていた。隊長は言った。「神の人よ、王が『降りてこい』と言っています。」
1:10 エリヤは五十人隊の隊長に答えた。「わたしが神の人であるなら、天から火が降ってきて、おまえとおまえの五十人を焼き尽くすだろう。」すると、天から火が降ってきて、隊長と部下の五十人を焼き尽くした。
1:11 王はまた、別の五十人隊の隊長を、部下の五十人とともにエリヤのもとへ送った。隊長は言った。「神の人よ、王が『すぐに降りてこい』と言っています。」
1:12 エリヤは彼らに答えた。「わたしが神の人であるなら、天から火が降ってきて、おまえとおまえの五十人を焼き尽くすだろう。」すると、神の火が天から降ってきて、隊長と部下の五十人を焼き尽くした。
1:13 王は三人目の五十人隊の隊長を、部下の五十人とともに送った。この隊長は上ってくると、エリヤの前にひざまずいて願った。「神の人よ、どうかわたしの命と、あなたの僕であるこの五十人の命を、大切なものと思ってください。
1:14 天から火が降ってきて、前の二人の隊長と、その部下の五十人ずつを焼き尽くしました。でも、どうか今、わたしの命を大切なものと思ってください。」
1:15 すると、主の使いがエリヤに言った。「彼といっしょに降りて行きなさい。彼を恐れることはない。」そこでエリヤは立ち上がり、隊長といっしょに王のもとへ降りて行った。
1:16 エリヤは王にこう言った。「主はこう言われる。『おまえはエクロンの神バアル・ゼブブにおうかがいを立てようと、使いを送った。イスラエルに、その言葉を求めるべき神がいないとでもいうのか。だから、おまえは上って寝込んだその寝床から、もう降りることはない。おまえは必ず死ぬ。』」
1:17 王は、エリヤが伝えた主の言葉のとおりに死んだ。彼には息子がいなかったので、代わってヨラムが王となった。それは、ユダの王ヨシャファトの子ヨラムの治世の第二年のことである。
1:18 アハズヤが行ったそのほかの出来事は、イスラエルの王たちの歴史を記した書に書かれているとおりである。
2:1 主がエリヤをつむじ風に乗せて天に上げようとされたとき、エリヤはエリシャといっしょにギルガルを出て歩いていた。
2:2 エリヤはエリシャに言った。「おまえはここに残っていてくれ。主がわたしをベテルへ送られるのだ。」だがエリシャは答えた。「主が生きておられ、あなたご自身が生きておられるかぎり、わたしはあなたから離れません。」こうして二人はベテルへ下って行った。
2:3 ベテルにいた預言者の仲間たちがエリシャのところへ出てきて言った。「今日、主があなたの師をあなたのもとから天に取り去られるのを、知っていますか。」エリシャは答えた。「ええ、わたしも知っています。だから黙っていてください。」
2:4 エリヤはエリシャに言った。「エリシャよ、おまえはここに残っていてくれ。主がわたしをエリコへ送られるのだ。」だがエリシャは答えた。「主が生きておられ、あなたご自身が生きておられるかぎり、わたしはあなたから離れません。」こうして二人はエリコに着いた。
2:5 エリコにいた預言者の仲間たちがエリシャのそばに来て言った。「今日、主があなたの師をあなたのもとから天に取り去られるのを、知っていますか。」エリシャは答えた。「ええ、わたしも知っています。だから黙っていてください。」
2:6 エリヤはエリシャに言った。「おまえはここに残っていてくれ。主がわたしをヨルダン川へ送られるのだ。」だがエリシャは答えた。「主が生きておられ、あなたご自身が生きておられるかぎり、わたしはあなたから離れません。」こうして二人は歩き続けた。
2:7 預言者の仲間たち五十人も出て来て、少し離れた所に向かい合って立った。エリヤとエリシャの二人はヨルダン川のほとりに立った。
2:8 エリヤは自分の上着を取って丸め、それで川の水を打った。すると水は左右に分かれた。二人は乾いた地面の上を渡って行った。
2:9 渡り終えると、エリヤはエリシャに言った。「わたしがおまえのもとから取り去られる前に、おまえのために何をしてやれるか、言ってくれ。」エリシャは答えた。「あなたの霊を、二倍受け継がせてください。」
2:10 エリヤは言った。「おまえはむずかしいことを求めるものだ。もし、わたしがおまえのもとから取り去られるのを、おまえが見ることができれば、その願いはかなえられる。だが見えなければ、かなえられない。」
2:11 二人が歩きながら話し続けていると、突然、火の戦車と火の馬が現れて、二人の間を分けた。そしてエリヤは、つむじ風に乗って天へ上って行った。
2:12 エリシャはそれを見て叫んだ。「わたしの父よ、わたしの父よ。イスラエルの戦車よ、その騎兵よ。」そして、もうエリヤの姿は見えなくなった。エリシャは自分の服をつかんで、二つに引き裂いた。
2:13 そして、エリヤの体から落ちた上着を拾い上げ、引き返してヨルダン川の岸に立った。
2:14 エリシャは、エリヤの体から落ちたその上着を取って川の水を打ち、「エリヤの神、主はどこにおられるのですか」と言った。彼が水を打つと、水は左右に分かれ、エリシャは渡って行った。
2:15 エリコにいた預言者の仲間たちは、向かい側からそれを見て言った。「エリヤの霊がエリシャの上にとどまっている。」そして彼らは迎えに来て、地にひれ伏した。
2:16 彼らはエリシャに言った。「わたしたち、あなたの僕には、力のある者が五十人います。どうか彼らを行かせて、あなたの師を捜させてください。主の霊があの方を運び去り、どこかの山か谷に落とされたかもしれません。」エリシャは言った。「行かせてはならない。」
2:17 しかし彼らがしつこく頼むので、エリシャは断りきれなくなり、「行かせなさい」と言った。そこで彼らは五十人を送り出した。彼らは三日間捜したが、エリヤを見つけられなかった。
2:18 彼らがエリコにとどまっていたエリシャのもとに戻って来ると、エリシャは言った。「行くなと、あなたたちに言ったではないか。」
2:19 町の人たちがエリシャに言った。「ご覧のとおり、この町の立地はいいのです。でも、水が悪くて、土地は作物も実らず、流産も絶えません。」
2:20 エリシャは言った。「新しい鉢を持って来て、その中に塩を入れなさい。」人々はそれを持って来た。
2:21 エリシャは水の湧き出るところへ出て行き、そこに塩を投げ入れて言った。「主はこう言われる。わたしはこの水を良くした。ここからもう、死も流産も起こらない。」
2:22 こうして水は良くなり、それは今日まで続いている。エリシャの語ったとおりだった。
2:23 エリシャはそこからベテルへ上って行った。道を上っている途中、小さな子どもたちが町から出て来て、彼をからかった。「上って行け、はげ頭。上って行け、はげ頭。」
2:24 エリシャは振り返って彼らを見つめ、主の名によって彼らをのろった。すると森の中から二頭の雌熊が出て来て、子どものうち四十二人を引き裂いた。
2:25 エリシャはそこからカルメル山へ行き、そこからサマリアへ帰った。
3:1 アハブの子ヨラムは、ユダの王ヨシャファトの第十八年に、サマリアでイスラエルの王となり、十二年間王であった。
3:2 彼は主の目に悪とされることを行った。ただ、父や母ほどではなかった。彼は、父が造ったバアルの石柱を取り除いたからだ。
3:3 それでも彼は、イスラエルに罪を犯させたネバトの子ヤロブアムの罪から離れず、それにしがみついていた。
3:4 モアブの王メシャは羊を飼う者で、イスラエルの王に、子羊十万頭と雄羊十万頭分の羊毛を納めていた。
3:5 ところがアハブが死ぬと、モアブの王はイスラエルの王に反旗をひるがえした。
3:6 そこでヨラム王はその日、サマリアを出て、イスラエルの全軍を召集した。
3:7 そして彼は使いを送り、ユダの王ヨシャファトにこう伝えた。「モアブの王がわたしに反旗をひるがえしました。いっしょにモアブと戦いに行ってもらえませんか。」ヨシャファトは答えた。「行きましょう。わたしはあなたと一つ、わたしの民はあなたの民、わたしの馬はあなたの馬です。」
3:8 ヨシャファトはさらに尋ねた。「どの道を通って攻め上りましょうか。」ヨラムは答えた。「エドムの荒れ野を抜ける道です。」
3:9 こうしてイスラエルの王とユダの王とエドムの王は出発した。だが、七日間まわり道をして進むうちに、軍勢にも連れていた家畜にも飲む水がなくなってしまった。
3:10 イスラエルの王は言った。「ああ、主はこの三人の王を呼び集めて、モアブの手に渡そうとしておられるのか。」
3:11 しかしヨシャファトは言った。「ここには、主に尋ねてもらえる主の預言者はいないのですか。」すると、イスラエルの王の家来の一人が答えた。「ここにシャファトの子エリシャがいます。かつてエリヤに仕えて、その手に水を注いだ人です。」
3:12 ヨシャファトは言った。「その人には主の言葉があります。」そこでイスラエルの王とヨシャファトとエドムの王は、エリシャのもとへ下って行った。
3:13 エリシャはイスラエルの王に言った。「あなたとわたしと、何の関わりがあるのですか。あなたの父の預言者や母の預言者のところへ行けばいいでしょう。」イスラエルの王は言った。「いや、そう言わないでください。主がこの三人の王を呼び集めて、モアブの手に渡そうとしておられるのですから。」
3:14 エリシャは言った。「わたしが仕えている、万軍の主は生きておられる。その主にかけて言う。もしユダの王ヨシャファトに敬意を払うのでなければ、わたしはあなたに目を向けることも、あなたを見ることもしなかっただろう。
3:15 さあ、竪琴を弾く者を連れてきてくれ。」そして、その人が竪琴を弾くと、主の力がエリシャに臨んだ。
3:16 エリシャは言った。「主はこう言われる。『この谷に、たくさんの穴を掘れ。』
3:17 主はこう言われるからだ。『あなたがたは風も見ず、雨も見ない。それでもこの谷は水で満たされる。あなたがたも、あなたがたの家畜も群れも、それを飲むことになる。』
3:18 これは主にとって、たやすいことにすぎない。主はモアブをもあなたがたの手に渡される。
3:19 あなたがたは、城壁のある町も、主だった町もことごとく打ち破る。良い木はすべて切り倒し、水の湧く泉はすべてふさぎ、良い畑という畑を石で台なしにするのだ。」
3:20 翌朝、いつも穀物のささげ物をする時刻になると、エドムの方角から水が流れて来た。そして地は水で満ちあふれた。
3:21 一方、モアブの人々はみな、王たちが自分たちと戦うために攻め上って来たと聞いていた。それで、武器を取れる年ごろの男から上の者まで全員が呼び集められ、国境に立ちはだかった。
3:22 朝早く起きると、太陽が水を照らしていた。モアブの人々が向こう側を見ると、水が血のように赤く見えた。
3:23 彼らは言った。「これは血だ。王たちはきっと切り合って、仲間どうしで討ち合ったんだ。さあ、モアブよ、戦利品を奪いに行こう。」
3:24 ところが、彼らがイスラエルの陣営に来ると、イスラエルは立ち上がってモアブを討った。モアブは彼らの前から逃げ出したが、イスラエルはその地に攻め入り、モアブを打ち続けた。
3:25 彼らは町々を壊し、良い畑という畑には一人ひとりが石を投げ入れて埋めつくした。水の湧く泉はすべてふさぎ、良い木はすべて切り倒した。こうしてキル・ハラセテだけが石垣を残すばかりとなったが、石を投げる兵たちがこれを取り囲んで攻め立てた。
3:26 モアブの王は、戦いが自分の手に負えないほど激しくなったのを見た。そこで剣を抜く兵七百人を率いて、エドムの王のところへ突き破って出ようとしたが、できなかった。
3:27 そこで王は、自分の跡を継ぐはずの長男を連れて来て、城壁の上で焼き尽くすささげ物としてささげた。すると、イスラエルに対して激しい怒りが起こった。それで彼らはモアブの王から引き上げ、自分たちの国へ帰って行った。
4:1 ある女の人が、エリシャに助けを求めて叫んだ。彼女は預言者の仲間の一人の妻だった。「あなたに仕えていたわたしの夫が亡くなりました。夫が主を敬っていたことは、あなたもご存じのはずです。それなのに、お金を貸していた人がやって来て、二人の子どもを奴隷として連れて行こうとしているのです。」
4:2 エリシャは彼女に言った。「わたしに何ができるだろう。家に何があるのか教えてほしい。」彼女は答えた。「家には何もありません。少しの油が入ったつぼが一つあるだけです。」
4:3 エリシャは言った。「近所の人みんなのところへ行って、空のつぼを借りてきなさい。できるだけたくさん借りるんだ。」
4:4 「そうしたら家に入って、あなたと子どもたちだけになって戸を閉めなさい。そして、その全部のつぼに油を注ぎ、いっぱいになったものから横に置いていきなさい。」
4:5 彼女はエリシャのもとを離れ、子どもたちといっしょに家に入って戸を閉めた。子どもたちがつぼを運び、彼女は油を注ぎ続けた。
4:6 つぼが全部いっぱいになると、彼女は息子に言った。「もう一つつぼを持ってきて。」でも息子は「もうつぼはないよ」と答えた。すると、油が止まった。
4:7 彼女は神の人のところへ行って、そのことを伝えた。エリシャは言った。「行って、その油を売り、借金を返しなさい。残ったお金で、あなたと子どもたちは暮らしていける。」
4:8 ある日、エリシャはシュネムに立ち寄った。そこに一人の裕福な女の人がいて、ぜひ食事をしていってほしいと、エリシャを強く引き止めた。それからエリシャは、その町を通るたびに、そこに寄って食事をするようになった。
4:9 彼女は夫に言った。「ねえ、いつもうちの前を通っていくあの方は、きっと神の人で、聖なる方だと思うの。」
4:10 「屋上に小さな部屋を作りましょう。そこにベッドと机と椅子と明かりを置いておけば、あの方がうちに来たとき、そこで休んでもらえるわ。」
4:11 ある日、エリシャがやって来て、その屋上の部屋に上がり、そこで横になった。
4:12 エリシャは召使いのゲハジに言った。「あのシュネムの女の人を呼んでくれ。」ゲハジが呼ぶと、彼女はエリシャの前に来て立った。
4:13 エリシャはゲハジに言った。「あの人にこう伝えてくれ。『あなたは、わたしたちのためにこれほど心を配ってくれた。何かお礼をしたい。あなたのことを王や軍の司令官に話してあげようか。』」すると彼女は答えた。「いいえ、わたしは自分の民の中で不自由なく暮らしています。」
4:14 エリシャは言った。「それなら、あの人のために何ができるだろう。」ゲハジは言った。「そういえば、あの人には子どもがいません。夫も年を取っています。」
4:15 エリシャは「彼女を呼んでくれ」と言った。ゲハジが呼ぶと、彼女は入り口のところに立った。
4:16 エリシャは言った。「来年の今ごろ、あなたは男の子を胸に抱いているだろう。」彼女は言った。「いいえ、神の人よ、わたしのご主人さま。どうか、わたしにうそを言わないでください。」
4:17 やがて彼女は身ごもり、エリシャが言ったとおり、翌年のその季節に男の子を産んだ。
4:18 その子は大きくなった。ある日、その子は刈り入れをしている父親のところへ出て行った。
4:19 そして父親に言った。「頭が、頭が痛い。」父親は召使いに言った。「この子を母親のところへ運んでやりなさい。」
4:20 召使いはその子を抱え、母親のところへ連れて行った。子どもは昼まで母親のひざの上にいたが、そのまま死んでしまった。
4:21 彼女は屋上に上がり、その子を神の人のベッドに寝かせ、戸を閉めて出て行った。
4:22 そして夫を呼んで言った。「召使いを一人と、ろばを一頭、貸してください。急いで神の人のところへ行って、すぐに戻ってきますから。」
4:23 夫は言った。「どうして今日、あの方のところへ行くんだ。新月でも安息日でもないのに。」彼女は「大丈夫です」と答えた。
4:24 彼女はろばに鞍を置き、召使いに言った。「さあ、進んで。わたしが言うまでは、手綱をゆるめずに走らせて。」
4:25 こうして彼女は出発し、カルメル山の神の人のところへ着いた。神の人は遠くに彼女の姿を見つけると、召使いのゲハジに言った。「見ろ、あのシュネムの女だ。
4:26 さあ、走って行って迎えてやりなさい。そして『あなたは元気ですか。ご主人は元気ですか。お子さんは元気ですか』と聞くんだ。」彼女は「元気です」と答えた。
4:27 でも山にいる神の人のところまで来ると、彼女はその足にすがりついた。ゲハジが彼女を引き離そうと近づくと、神の人は言った。「そのままにしておきなさい。この人はひどく苦しんでいる。それなのに主はそのわけをわたしに隠して、教えてくださらなかった。」
4:28 彼女は言った。「わたしがあなたに、息子をくださいと願ったでしょうか。がっかりさせないでくださいと言ったではありませんか。」
4:29 エリシャはゲハジに言った。「腰に帯を締めて、わたしの杖を手に取り、行きなさい。だれかに会っても、あいさつをしてはいけない。だれかがあいさつしてきても、返事をしてはいけない。そして、わたしの杖を子どもの顔の上に置きなさい。」
4:30 でも子どもの母親は言った。「主が生きておられ、あなたが生きておられるかぎり、わたしはあなたを離しません。」そこでエリシャは立ち上がり、彼女について行った。
4:31 ゲハジは先回りして進み、杖を子どもの顔の上に置いた。でも、声もなく、反応もなかった。それでゲハジは引き返してエリシャを迎え、こう告げた。「子どもは目を覚ましませんでした。」
4:32 エリシャが家に着くと、そこには子どもが死んで、寝台の上に横たわっていた。
4:33 エリシャは中に入り、二人だけになるように戸を閉め、主に祈った。
4:34 それから寝台に上がり、子どもの上に身を重ねた。自分の口を子どもの口に、目を目に、手を手に重ね、その上にかがみこんだ。すると子どもの体が温かくなってきた。
4:35 エリシャはいったん降りて、家の中をあちこち歩き回った。それからまた上がって、子どもの上にかがみこんだ。すると子どもは七回くしゃみをして、目を開けた。
4:36 エリシャはゲハジを呼んで言った。「あのシュネムの女を呼んできなさい。」ゲハジが彼女を呼ぶと、彼女はエリシャのところへ来た。エリシャは言った。「あなたの息子を抱き上げなさい。」
4:37 彼女は入って来て、エリシャの足もとにひれ伏し、地にひざまずいた。それから息子を抱き上げて、出て行った。
4:38 エリシャはギルガルに戻った。そのころ、その地はききんに見舞われていた。預言者の仲間たちがエリシャの前に座っていた。エリシャは召使いに言った。「大きな鍋をかけて、この仲間たちのために煮物を作りなさい。」
4:39 一人が野草を摘みに畑へ出て、野生のつるを見つけた。そこから野生の瓜を服いっぱいに摘み取り、戻って来て煮物の鍋に刻み入れた。だれもそれが何か知らなかったのだ。
4:40 それをみんなに注いで食べさせた。ところが、その煮物を口にしたとたん、彼らは叫んだ。「神の人よ、鍋の中に死が入っています!」そして、それを食べることができなかった。
4:41 エリシャは言った。「では、粉を持って来なさい。」エリシャはそれを鍋に投げ入れて言った。「みんなに注いで、食べさせなさい。」すると、鍋の中に害になるものはなくなっていた。
4:42 一人の男がバアル・シャリシャからやって来て、神の人に初物のパンを持って来た。大麦のパン二十個と、新しい穀物の粒を袋に入れて持って来たのだ。エリシャは言った。「みんなに分けて、食べさせなさい。」
4:43 召使いは言った。「これだけで、どうして百人もの人に出せるでしょうか。」エリシャは言った。「みんなに分けて、食べさせなさい。主はこう言われる。『彼らは食べて、なお余る。』」
4:44 そこで召使いはそれをみんなの前に出した。彼らは食べて、なお余った。主が言われたとおりだった。
5:1 アラムの王の軍を率いる司令官ナアマンは、主君に重んじられ、高く評価される人物だった。主が彼を通してアラムに勝利を与えたからだ。彼は勇敢な戦士だったが、重い皮膚病をわずらっていた。
5:2 以前、アラム軍が略奪に出たとき、イスラエルの地から一人の少女を捕らえてきた。彼女はナアマンの妻に仕えていた。
5:3 少女は女主人に言った。「ご主人さまが、サマリアにいる預言者のところに行けたらいいのに。そうすれば、あの重い皮膚病を治してもらえるはずです。」
5:4 そこでナアマンは主君のところへ行き、イスラエルの地から来た少女がこう話していました、と伝えた。
5:5 アラムの王は言った。「では行くがよい。わたしがイスラエルの王に手紙を送ろう。」ナアマンは出発した。銀十タラント、金六千シェケル、それに着替えの服を十着持って行った。
5:6 彼はイスラエルの王に手紙を届けた。そこにはこう書かれていた。「この手紙が届いたら、家来のナアマンをあなたのもとに送ります。どうか彼の重い皮膚病を治してください。」
5:7 イスラエルの王は手紙を読むと、服を引き裂いて言った。「わたしは人を殺したり生かしたりできる神だとでもいうのか。それなのにこの男は、人の皮膚病を治せと言ってくる。どう見ても、わたしに言いがかりをつけようとしているのだ。」
5:8 神の人エリシャは、イスラエルの王が服を引き裂いたと聞いて、王に使いを送った。「なぜ服を引き裂いたのですか。あの人をわたしのところによこしてください。そうすれば、イスラエルに預言者がいることを知るでしょう。」
5:9 そこでナアマンは、馬と戦車を連れてやって来て、エリシャの家の入り口に立った。
5:10 エリシャは使いを送って、こう言わせた。「ヨルダン川に行って、七回身を洗いなさい。そうすれば、あなたの体は元どおりになり、きれいになる。」
5:11 ところがナアマンは怒って立ち去った。「わたしはこう思っていた。あの預言者が自分から出てきて、目の前に立ち、自分の神である主の名を呼び、患部の上で手を振り動かして、この病を治してくれるものと。
5:12 ダマスコの川、アバナやパルパルのほうが、イスラエルのどの水よりもずっと良いではないか。あの川で洗って、きれいになれないというのか。」こうして彼は向きを変え、怒って去って行った。
5:13 すると家来たちが近づいてきて、ナアマンにこう言った。「ご主人さま、あの預言者が何か大きなことをせよと言ったなら、あなたはそのとおりにしなかったでしょうか。まして『体を洗って、きれいになりなさい』と言っているのですから、なおさらではありませんか。」
5:14 そこでナアマンは川に下りて行き、神の人の言葉のとおり、ヨルダン川に七回身を浸した。すると彼の体は元どおりになり、小さな子どもの肌のようになって、きれいになった。
5:15 ナアマンは供の者たち全員を連れて、神の人のところへ引き返した。そして彼の前に立って言った。「今、わたしにはよくわかりました。イスラエルのほかには、世界中どこにも神はいません。どうか今、このわたしからの贈り物を受け取ってください。」
5:16 しかしエリシャは言った。「わたしが仕えている主は生きておられる。その主にかけて、わたしは何も受け取らない。」ナアマンはぜひ受け取ってほしいと願ったが、エリシャは断った。
5:17 ナアマンは言った。「それなら、どうか、らば二頭に載せられるだけの土を、このわたしにください。わたしはこれからもう、主のほかのどんな神にも、焼き尽くすいけにえも、そのほかのいけにえもささげません。ただ主にだけささげます。
5:18 ただ、一つのことについては、どうか主がこのわたしをお赦しくださいますように。わたしの主君がリモンの神殿に入って拝むとき、主君はわたしの腕に寄りかかります。それでわたしも、リモンの神殿でひざまずくのです。リモンの神殿でわたしがひざまずくとき、どうか主がこのわたしをお赦しくださいますように。」
5:19 エリシャは言った。「安心して行きなさい。」こうしてナアマンはエリシャのもとを去り、いくらか道を進んで行った。
5:20 ところが、神の人エリシャの若い従者ゲハジは、こう思った。「ご主人さまは、あのアラム人ナアマンが持ってきた物を受け取らずに、彼を見逃してしまった。主は生きておられる。わたしは彼を追いかけて、何か受け取ってこよう。」
5:21 そこでゲハジはナアマンのあとを追った。ナアマンは自分のほうへ走ってくる者に気づくと、戦車から降りて迎え、「何かあったのですか」と言った。
5:22 ゲハジは答えた。「大丈夫です。ただ、主人がこう言って、わたしを送ってよこしました。『今ちょうど、エフライムの山地から、預言者の仲間の若者が二人、わたしのところに来た。どうか彼らに、銀一タラントと、着替えの服を二着あげてほしい。』」
5:23 ナアマンは言った。「喜んで。どうか二タラント受け取ってくれ。」そして彼はぜひにと勧め、銀二タラントを二つの袋に包み、着替えの服二着とともに、二人の若い従者に渡した。従者たちはそれをかついで、ゲハジの前を歩いた。
5:24 ゲハジは丘まで来ると、それを彼らの手から受け取り、家の中にしまい込んだ。そして従者たちを帰らせ、彼らは去って行った。
5:25 ゲハジが入って来て、主人の前に立つと、エリシャは彼に言った。「ゲハジ、どこへ行っていたのか。」ゲハジは答えた。「しもべはどこにも行っていません。」
5:26 エリシャは言った。「あの人が馬車を降りて、おまえを迎えに引き返したとき、わたしの心もそこに一緒にいたのではないか。今は銀を受け取ったり、服やオリーブ畑やぶどう畑、羊や牛、男女の奴隷を受け取ったりするような時か。
5:27 だから、ナアマンの重い皮膚病が、いつまでもおまえと、おまえの子孫にまとわりつくことになる。」ゲハジはエリシャの前から出て行った。その体は雪のように白くなり、重い皮膚病にかかっていた。
6:1 預言者の仲間たちがエリシャに言った。「ご覧ください。わたしたちがあなたと一緒に住んでいるこの場所は、もう狭すぎます。
6:2 どうか、わたしたちをヨルダン川まで行かせてください。そこで一人ひとりが材木を一本ずつ切り出し、住むための場所を造りたいのです。」エリシャは言った。「行きなさい。」
6:3 すると一人が言った。「どうか、しもべたちと一緒に来てください。」エリシャは答えた。「わたしも行こう。」
6:4 そしてエリシャは彼らと一緒に行った。彼らはヨルダン川に着くと、木を切り始めた。
6:5 ところが、一人が材木を切り倒しているとき、斧の頭が水の中に落ちてしまった。彼は叫んで言った。「ああ、ご主人さま。あれは借り物だったのに。」
6:6 神の人は言った。「どこに落ちたのか。」その人が場所を示すと、エリシャは木を一本切って、そこへ投げ込んだ。すると斧の頭は水に浮かんできた。
6:7 神の人は言った。「拾い上げなさい。」その人は手を伸ばして、それを取った。
6:8 さて、アラムの王がイスラエルと戦っていた。王は家来たちと相談して言った。「これこれの場所に陣を敷こう。」
6:9 すると神の人はイスラエルの王に使いを送って言った。「あの場所を通らないように気をつけてください。アラムの軍がそこに下ってきますから。」
6:10 そこでイスラエルの王は、神の人が告げて警告してくれた場所に人をやって、警戒した。こうして王は、一度や二度ならず、そこで無事だった。
6:11 このことでアラムの王は心をかき乱された。王は家来たちを呼んで言った。「わたしたちのうち、だれがイスラエルの王に通じているのか、教えてくれないか。」
6:12 すると家来の一人が言った。「いいえ、わが主、王さま。だれも通じてなどいません。イスラエルにいる預言者エリシャが、あなたが寝室で話す言葉まで、イスラエルの王に告げているのです。」
6:13 王は言った。「行って、彼がどこにいるのか見てこい。人をやって捕らえよう。」すると、「エリシャはドタンにいます」と知らされた。
6:14 そこで王は、馬と戦車、そして大軍をそこへ送った。彼らは夜のうちに来て、町を取り囲んだ。
6:15 神の人の召し使いが朝早く起きて外に出ると、馬と戦車の軍勢が町を取り囲んでいた。若者はエリシャに言った。「ああ、ご主人さま。どうしたらいいのでしょう。」
6:16 エリシャは言った。「恐れることはない。わたしたちと共にいる者のほうが、彼らと共にいる者より多いのだから。」
6:17 そしてエリシャは祈って言った。「主よ、どうかこの若者の目を開いて、見えるようにしてください。」主が若者の目を開かれると、彼は見た。すると、火の馬と戦車が山いっぱいにエリシャを取り囲んでいた。
6:18 アラムの軍がエリシャのほうへ下ってくると、エリシャは主に祈って言った。「どうか、この者たちの目をくらませてください。」すると主は、エリシャの言葉のとおり、彼らの目をくらませた。
6:19 エリシャは彼らに言った。「ここは目指す道ではない。町でもない。わたしについて来なさい。あなたたちが探している人のところへ連れて行こう。」そう言って、エリシャは彼らをサマリアへ導いて行った。
6:20 サマリアに着くと、エリシャは言った。「主よ、この者たちの目を開いて、見えるようにしてください。」主が彼らの目を開かれると、彼らは見た。すると、自分たちがサマリアのただ中にいることに気づいた。
6:21 イスラエルの王は彼らを見て、エリシャに言った。「わが父よ、撃ち殺しましょうか。撃ち殺しましょうか。」
6:22 エリシャは答えた。「撃ってはいけません。自分が剣や弓で捕らえた者でもないのに、どうして撃つのですか。彼らにパンと水を出して食べさせ、飲ませ、それぞれの主君のもとへ帰らせなさい。」
6:23 そこで王は彼らのために盛大な食事を用意した。彼らは食べて飲むと、王は彼らを送り出し、彼らは主君のもとへ帰って行った。こうしてアラムの略奪隊は、二度とイスラエルの地に攻め入ることはなくなった。
6:24 その後のことである。アラムの王ベン・ハダドは全軍を集め、攻め上って、サマリアを包囲した。
6:25 サマリアはひどい飢饉に襲われた。包囲が続いたため、ろばの頭一つが銀八十枚、鳩のふん四分の一カブが銀五枚にもなった。
6:26 イスラエルの王が城壁の上を歩いていると、ひとりの女が王に向かって叫んだ。「王さま、どうか助けてください。」
6:27 王は言った。「主がお前を助けてくださらないのに、このわたしがどこから助けられるというのか。麦打ち場からか。それとも、ぶどうの搾り場からか。」
6:28 それから王は彼女に尋ねた。「いったいどうしたのだ。」女は答えた。「この女がわたしにこう言ったのです。『あなたの子どもを渡しなさい。今日はその子を食べ、明日はわたしの子を食べましょう』と。
6:29 それでわたしたちは、わたしの子を煮て食べました。ところが次の日、わたしがその女に『さあ、あなたの子どもを渡しなさい。食べましょう』と言うと、その女は自分の子を隠してしまったのです。」
6:30 王は女の言葉を聞くと、着ている服を引き裂いた。ちょうど城壁の上を歩いているときだった。民が見ると、王は肌に直接、粗布をまとっていた。
6:31 王は言った。「シャファトの子エリシャの首が今日そのまま残っているなら、神がわたしをどんなにでも罰してくださってかまわない。」
6:32 エリシャは家に座っていて、長老たちも一緒に座っていた。王は自分より先に使いの者を送った。だがその使いがエリシャのところに着く前に、エリシャは長老たちに言った。「あの人殺しが、わたしの首をはねようと使いをよこしたのが分かるか。いいか、その使いが来たら戸を閉め、戸を押さえて中に入れるな。すぐ後ろには、主人である王の足音がしているはずだ。」
6:33 エリシャがまだ彼らと話しているうちに、その使いが下りてきた。そして王は言った。「見ろ、このわざわいは主から来たものだ。これ以上、主に何を期待すればいいのか。」
7:1 エリシャは言った。「主の言葉を聞きなさい。主はこう言われる。『明日の今ごろ、サマリアの門で、上等の小麦粉一セアが一シェケル、大麦二セアが一シェケルで売られる。』」
7:2 すると、王が寄りかかっている侍従が、神の人エリシャに答えて言った。「たとえ主が天に窓を開けても、そんなことが起こるものか。」エリシャは言った。「あなたは自分の目でそれを見る。だが、それを食べることはない。」
7:3 さて、門の入り口に、重い皮膚病を患う四人の男がいた。彼らは互いに言い合った。「どうしてわたしたちは、死ぬまでここに座っているのだろう。
7:4 町に入ろうとしても、町は飢えていて、そこで死んでしまう。ここに座っていても、やはり死ぬ。それなら、アラムの陣営へ行こう。生かしてくれれば生きられるし、殺されるなら、どうせ死ぬだけだ。」
7:5 そこで彼らは、夕暮れどきに立ち上がり、アラムの陣営へ向かった。ところが、アラムの陣営の端まで来てみると、そこには誰もいなかった。
7:6 主が、アラムの陣営に戦車の音、馬の音、大軍の音を聞かせておられたのだ。それで彼らは互いに言った。「大変だ、イスラエルの王が、ヒッタイトの王たちやエジプトの王たちを雇って、わたしたちを攻めに来させたのだ。」
7:7 彼らは立ち上がり、夕闇の中を逃げ出した。天幕も馬もろばも、陣営をそっくりそのままにして置き去りにし、命からがら逃げていった。
7:8 この重い皮膚病の人たちは、陣営の端まで来ると、一つの天幕に入り、飲み食いした。そして、そこから銀や金や衣類を持ち出し、どこかに隠しに行った。また戻って来て別の天幕に入り、そこからも持ち出して隠しに行った。
7:9 それから彼らは互いに言った。「わたしたちのしていることは正しくない。今日は良い知らせの日なのに、黙っているなんて。朝まで待っていたら、きっと罰を受けることになる。さあ、今すぐ行って、王の家の人たちに知らせよう。」
7:10 そこで彼らは行って、町の門番を呼び、こう伝えた。「アラムの陣営に行ってみたら、そこには誰もいませんでした。人の声ひとつしません。ただ、馬とろばがつながれたままで、天幕もそのまま残っているだけでした。」
7:11 門番たちは大声でそれを伝え、その知らせは王の家の奥まで届いた。
7:12 王は夜のうちに起き上がり、家臣たちに言った。「アラムがわたしたちに何をしようとしているのか、教えてやろう。やつらは、わたしたちが飢えているのを知っているのだ。それでわざと陣営を出て野に隠れ、『イスラエル人が町から出て来たら、生け捕りにして町に攻め込もう』と考えているのだ。」
7:13 すると、家臣の一人が答えた。「どうか、町に残っている馬のうち五頭を連れて行かせてください。どうせ、この町に残っているイスラエルの人々も、すでに死んでいった大勢の人々と同じ運命です。とにかく人をやって、確かめてみましょう。」
7:14 そこで彼らは、馬をつけた戦車を二台用意した。王は、それをアラムの軍の後を追わせ、「行って見て来い」と命じた。
7:15 彼らはアラムの軍を追って、ヨルダン川まで行った。すると、道はどこもかしこも、アラムの人々が慌てて投げ捨てた衣類や武具でいっぱいだった。使いの者たちは戻って来て、王に報告した。
7:16 民は出て行って、アラムの陣営を略奪した。こうして、上等の小麦粉一セアが一シェケル、大麦二セアが一シェケルで売られるようになった。主が言われたとおりだった。
7:17 王は、自分が頼りにしていた侍従に、門の管理を任せていた。ところが、その侍従は、門に押し寄せる民に踏みつけられて死んでしまった。王が神の人のところに下って行ったとき、神の人が告げていたとおりだった。
7:18 それは、神の人が王にこう言っていたとおりだった。「明日の今ごろ、サマリアの門で、大麦二セアが一シェケル、上等の小麦粉一セアが一シェケルになる。」
7:19 すると、その侍従は神の人に答えて言った。「たとえ主が天に窓を開けても、そんなことが起こるものか。」神の人は言った。「あなたは自分の目でそれを見る。だが、それを食べることはない。」
7:20 そして、そのとおりのことが彼に起こった。門に押し寄せる民に踏みつけられて、彼は死んでしまった。
8:1 エリシャは、以前に息子を生き返らせてやったあの女に言った。「さあ、家族を連れて出て行き、どこでもいいから住める土地に身を寄せなさい。主が飢饉を呼び寄せられたのだ。それはこの地に七年間続く。」
8:2 女は立って、神の人が言ったとおりにした。家族を連れて出て行き、ペリシテ人の地に七年間身を寄せた。
8:3 七年が終わると、女はペリシテ人の地から戻ってきた。そして、自分の家と土地を返してほしいと、王に訴え出るために出かけた。
8:4 ちょうどそのとき、王は神の人の召使いゲハジと話していて、こう言っていた。「エリシャが行った大きな出来事を、全部わたしに話してくれ。」
8:5 ゲハジが、エリシャが死んだ子を生き返らせたことを王に話していると、ちょうどそこへ、あの息子を生き返らせてもらった女が、自分の家と土地のことで王に訴え出てきた。ゲハジは言った。「王様、この人がその女です。そして、これがエリシャに生き返らせてもらった、その息子です。」
8:6 王が女に尋ねると、女は事情を話した。そこで王は一人の役人をつけて、こう命じた。「この女のものをすべて返してやりなさい。彼女がこの土地を離れた日から今日までの、畑の収穫もすべてだ。」
8:7 エリシャがダマスコに来たとき、アラムの王ベン・ハダドは病気だった。「神の人がここまで来ている」と、王に知らせが届いた。
8:8 そこで王はハザエルに言った。「贈り物を持って、神の人を迎えに行ってくれ。そして、その人を通して主に尋ねてほしい。『わたしはこの病気から回復するだろうか』と。」
8:9 ハザエルはエリシャを迎えに出た。ダマスコのあらゆる良い品を贈り物として、らくだ四十頭に積んで持って行った。そして彼の前に立って、こう言った。「あなたの子、アラムの王ベン・ハダドが、わたしをあなたのもとに遣わしました。『わたしはこの病気から回復するだろうか』とお尋ねです。」
8:10 エリシャは彼に言った。「行って、王にこう伝えなさい。『あなたは必ず回復します』と。しかし、主はわたしに、王が必ず死ぬことを示された。」
8:11 そして神の人は、ハザエルが恥じ入るほど、じっと顔を見つめて動かなかった。それから、彼は泣き出した。
8:12 ハザエルは言った。「わたしの主よ、どうして泣いておられるのですか。」エリシャは答えた。「あなたがイスラエルの人々にしようとしている、ひどいことを知ってしまったからだ。あなたは彼らの砦に火を放ち、若者たちを剣で殺し、幼い子どもたちを地面に叩きつけ、身ごもった女たちの腹を引き裂く。」
8:13 ハザエルは言った。「犬にすぎないこのわたしが、どうしてそんな大それたことをするでしょうか。」エリシャは答えた。「主はわたしに、あなたがアラムの王になることを示された。」
8:14 ハザエルはエリシャのもとを去り、自分の主君のところへ戻った。王は彼に尋ねた。「エリシャはお前に何と言ったのか。」ハザエルは答えた。「あなたは必ず回復する、と言いました。」
8:15 ところが翌日、ハザエルは布を取って水に浸し、それを王の顔にかぶせた。こうして王は死に、ハザエルが代わって王となった。
8:16 イスラエルの王アハブの子ヨラムの治世第五年、ユダの王はヨシャファトだったが、ユダの王ヨシャファトの子ヨラムが王となった。
8:17 彼は三十二歳で王となり、エルサレムで八年間、王であった。
8:18 彼はアハブの家がしたように、イスラエルの王たちの道を歩んだ。アハブの娘を妻にしていたからである。こうして彼は主の目に悪とされることを行った。
8:19 それでも主は、ユダを滅ぼそうとはされなかった。しもべダビデのためである。主はダビデに、その子孫にいつまでも一つのともしびを与えると約束していたからだ。
8:20 ヨラムの時代に、エドムがユダの支配に背いて反乱を起こし、自分たちの上に王を立てた。
8:21 そこでヨラムは、すべての戦車を率いてツァイルへ渡って行った。彼は夜のうちに立ち上がり、自分を囲んでいたエドム軍と戦車隊の隊長たちを討った。しかし兵たちは自分の天幕へ逃げ去ってしまった。
8:22 こうしてエドムは、今日までユダの支配に背いたままである。同じころ、リブナも反乱を起こした。
8:23 ヨラムのその他の出来事と、彼がしたことはすべて、ユダの王たちの歴代誌に記されているとおりである。
8:24 ヨラムは先祖と共に眠りにつき、ダビデの町に先祖と共に葬られた。そして息子のアハズヤが代わって王となった。
8:25 イスラエルの王アハブの子ヨラムの治世第十二年に、ユダの王ヨラムの子アハズヤが王となった。
8:26 アハズヤは二十二歳で王となり、エルサレムで一年間、王であった。彼の母は名をアタルヤといい、イスラエルの王オムリの孫娘であった。
8:27 彼はアハブの家の道を歩み、アハブの家と同じように、主の目に悪とされることを行った。アハブの家の婿だったからである。
8:28 アハズヤはアハブの子ヨラムと共に、アラムの王ハザエルと戦うためにラモト・ギルアドへ出て行った。そこでアラム軍がヨラムを傷つけた。
8:29 ヨラム王は、アラムの王ハザエルと戦ったときにアラム軍からラマで受けた傷を治すため、イズレエルへ戻った。ユダの王ヨラムの子アハズヤは、病気になっていたアハブの子ヨラムを見舞うために、イズレエルへ下って行った。
9:1 預言者エリシャは、預言者の仲間の一人を呼んで言った。「身支度をして、この油の入った瓶を持ち、ラモト・ギレアデへ行きなさい。
9:2 そこに着いたら、ニムシの孫でヨシャファトの子であるイエフを探しなさい。中に入って、仲間たちの中から彼を立たせ、奥の部屋へ連れて行きなさい。
9:3 そして油の瓶を取り、彼の頭に注いでこう言いなさい。『主はこう言われる。わたしはあなたに油を注ぎ、イスラエルの王とする。』それから戸を開けて逃げなさい。ぐずぐずしてはいけない。」
9:4 こうして、その若者、若い預言者はラモト・ギレアデへ出かけた。
9:5 彼が着くと、軍の指揮官たちが集まって座っていた。若者は言った。「指揮官、あなたにお伝えしたいことがあります。」イエフは尋ねた。「わたしたちの中の誰にだ。」若者は答えた。「あなたにです、指揮官。」
9:6 イエフは立ち上がって家の中へ入った。若者は彼の頭に油を注いで言った。「イスラエルの神、主はこう言われる。わたしはあなたに油を注ぎ、主の民イスラエルの王とする。
9:7 あなたは、あなたの主人アハブの一族を討ち取りなさい。こうしてわたしは、わたしに仕えた預言者たちの血と、主に仕えたすべての者の血の復讐を、イゼベルに果たす。
9:8 アハブの一族はすべて滅びる。わたしはアハブに連なる男を、奴隷であろうと自由な者であろうと、イスラエルから一人残らず断ち切る。
9:9 わたしはアハブの一族を、ネバトの子ヤロブアムの一族のように、またアヒヤの子バアシャの一族のようにする。
9:10 イゼベルは、イズレエルの野で犬に食われる。彼女を葬る者は誰もいない。」そう言うと、若者は戸を開けて逃げ去った。
9:11 イエフが主人の家臣たちのところへ出て行くと、一人が彼に言った。「変わりはないか。あの気のふれた男は、何のために来たのだ。」イエフは答えた。「あの男が誰で、何を言うかは、あなたたちもわかっているだろう。」
9:12 彼らは言った。「ごまかすな。さあ、話してくれ。」イエフは言った。「あの男はわたしに、あれこれとこう言ったのだ。『主はこう言われる。わたしはあなたに油を注ぎ、イスラエルの王とする。』」
9:13 すると彼らは急いで、それぞれ自分の上着を取り、階段のむき出しの段の上、イエフの足もとに敷いた。そして角笛を吹き鳴らし、「イエフが王だ」と叫んだ。
9:14 こうしてニムシの子ヨシャファトの子イエフは、ヨラムに反逆した。ヨラムは全イスラエルとともに、アラムの王ハザエルに備えてラモト・ギレアドを守っていた。
9:15 しかしヨラム王は、アラムの王ハザエルと戦ったときにアラム人から受けた傷を治すため、イズレエルに戻っていた。イエフは言った。「あなたたちにその気があるなら、一人もこの町から逃がすな。イズレエルに知らせに行かせるな。」
9:16 そしてイエフは戦車に乗り、イズレエルへ向かった。ヨラムがそこで床に伏していたからだ。ユダの王アハズヤも、ヨラムを見舞うために下って来ていた。
9:17 イズレエルの塔の上に立っていた見張りは、近づいて来るイエフの一団を見て言った。「一団が見えます。」ヨラムは言った。「騎兵を一人、彼らを迎えにやれ。『変わりはないか』と聞かせるのだ。」
9:18 騎兵はイエフを迎えに行き、こう言った。「王が『変わりはないか』とおっしゃっています。」イエフは言った。「おまえに変わりも何もあるものか。回れ、わたしの後ろに続け。」見張りは知らせた。「使いは彼らのところまで行きましたが、戻って来ません。」
9:19 そこでヨラムは二人目の騎兵を送った。彼は彼らのところに行き、こう言った。「王が『変わりはないか』とおっしゃっています。」イエフは言った。「おまえに変わりも何もあるものか。回れ、わたしの後ろに続け。」
9:20 見張りは知らせた。「使いは彼らのところまで行きましたが、戻って来ません。あの走らせ方は、ニムシの子イエフの走らせ方のようです。狂ったように走らせていますから。」
9:21 ヨラムは言った。「戦車の用意をせよ。」彼の戦車の用意が整えられた。イスラエルの王ヨラムとユダの王アハズヤは、それぞれ自分の戦車に乗って出て行き、イエフを迎えに向かった。そしてイズレエル人ナボトの畑で彼と出会った。
9:22 ヨラムはイエフを見ると言った。「イエフよ、変わりはないか。」イエフは答えた。「変わりも何もあるものか。おまえの母イゼベルの淫らな行いと、あの数々の魔術が続いているかぎりは。」
9:23 ヨラムは手綱を返して逃げ出し、アハズヤに叫んだ。「裏切りだ、アハズヤ。」
9:24 イエフは弓を目いっぱい引き絞り、ヨラムの両腕の間を射た。矢は彼の心臓を貫いて出て、彼は自分の戦車の中に崩れ落ちた。
9:25 イエフは側近のビドカルに言った。「彼を持ち上げて、イズレエル人ナボテの畑に投げ捨てろ。思い出せ。おまえとわたしが、彼の父アハブのうしろに並んで馬に乗っていたとき、主はアハブについてこう告げられたのだ。
9:26 「わたしは昨日、ナボテの血と、その子らの血をたしかに見た、と主は言われる。わたしはこの畑で、おまえに必ず報いる、と主は言われる。」だから今、彼を持ち上げて、主の言葉のとおり、この畑に投げ捨てろ。」
9:27 これを見たユダの王アハズヤは、園の家のほうへ逃げた。イエフは追いかけて言った。「彼も討て。」こうして、イブレアムの近くのグルの坂で、戦車の上の彼を討った。アハズヤはメギドまで逃げて、そこで死んだ。
9:28 家来たちは彼を戦車に乗せてエルサレムに運び、ダビデの町にある彼の墓に、先祖たちとともに葬った。
9:29 アハブの子ヨラムの治世の第十一年に、アハズヤはユダの王になっていた。
9:30 イエフはイズレエルに来た。イゼベルはそれを聞くと、目を化粧し、髪を整えて、窓から見下ろした。
9:31 イエフが門を入ってくると、彼女は言った。「変わりはないか。主人を殺したジムリよ。」
9:32 イエフは窓を見上げて言った。「わたしの味方はだれだ。だれかいるか。」すると、二、三人の宦官が彼を見下ろした。
9:33 イエフは言った。「彼女を突き落とせ。」彼らは彼女を突き落とした。彼女の血が壁と馬にはねかかり、イエフは彼女を踏みつけた。
9:34 イエフは中に入って食べたり飲んだりし、それから言った。「あの呪われた女を引き取って、葬ってやれ。王の娘なのだから。」
9:35 彼らは彼女を葬ろうと行ったが、頭蓋骨と足と両手のひらのほかは、何も見つからなかった。
9:36 彼らは戻ってそのことを伝えた。イエフは言った。「これは主が、その僕、ティシュベ人エリヤを通して告げられた言葉のとおりだ。『イズレエルの畑で、犬がイゼベルの肉を食らう。』
9:37 イゼベルの死体は、イズレエルの畑で、地面にまかれた肥やしのようになる。だから『これがイゼベルだ』と言える者はいなくなる。」
10:1 さて、アハブにはサマリアに七十人の息子がいた。イエフは手紙を書き、サマリアに送った。あて先は、イズレエルの高官たち、長老たち、そしてアハブの息子たちを育てている養育係たちだった。手紙にはこうあった。
10:2 「この手紙が届いたら、すぐに動いてほしい。あなたたちのもとには、主君の息子たちがいる。戦車も馬も、城壁で囲まれた町も、武器もそろっている。
10:3 だから、主君の息子たちの中でいちばん優れた、ふさわしい者を選び、その父の王座に着かせなさい。そして、主君の家のために戦いなさい。」
10:4 しかし彼らはひどく恐れて、こう言った。「二人の王でさえ、あの男の前で持ちこたえられなかった。それなのに、どうしてわたしたちが立ち向かえるだろう。」
10:5 そこで、宮廷をつかさどる者と町をつかさどる者、それに長老たちと養育係たちは、イエフにこう伝えた。「わたしたちはあなたの家来です。あなたが命じることは、何でもいたします。だれも王には立てません。あなたが良いと思うようにしてください。」
10:6 すると、イエフは二通目の手紙を書いて送った。「もしあなたたちがわたしの味方で、わたしの言うことを聞くなら、主君の息子たちの首を取り、明日の今ごろ、イズレエルにいるわたしのところへ持って来なさい。」王の息子たち七十人は、彼らを育てている町の有力者たちのもとにいた。
10:7 手紙が届くと、彼らは王の息子たちを捕らえ、七十人を殺した。そしてその首をかごに入れ、イズレエルのイエフのもとへ送った。
10:8 使いの者が来て、イエフに伝えた。「王の息子たちの首を持って来ました。」イエフは言った。「それを二つの山にして、朝まで町の門の入り口に積んでおけ。」
10:9 朝になると、イエフは出て行って立ち、すべての民に言った。「あなたたちには何の罪もない。主君に背く陰謀を企て、彼を殺したのはこのわたしだ。だが、この者たちみんなを殺したのはだれだ。
10:10 だから、これをよく心に留めておきなさい。主がアハブの家について語られた言葉は、一つも地に落ちることはない。主は、その僕エリヤを通して告げられたことを、こうして成し遂げられたのだ。」
10:11 こうしてイエフは、イズレエルに残っていたアハブの家の者たちをすべて討ち、彼の有力者たちも、親しい者たちも、祭司たちも、一人残らず殺した。
10:12 それからイエフは立って、サマリアへ向かった。その途中、羊飼いたちが羊の毛を刈る家、ベト・エケドにさしかかったとき、
10:13 イエフは、ユダの王アハズヤの身内の者たちに出会った。「お前たちは何者だ」と尋ねると、彼らは「わたしたちはアハズヤの身内だ。王の子たちと王母の子たちにあいさつをするために下って来た」と答えた。
10:14 イエフは「その者たちを生け捕りにしろ」と命じた。人々は彼らを生きたまま捕らえ、ベト・エケドの穴のそばで殺した。その数は四十二人で、一人も生き残らせなかった。
10:15 イエフはそこを出て、迎えに来たレカブの子ヨナダブに出会った。イエフは彼にあいさつをして言った。「わたしの心があなたに向かっているように、あなたの心もまっすぐにわたしと一つだろうか。」ヨナダブが「そうだ」と答えると、イエフは「それなら、あなたの手を差し出しなさい」と言った。ヨナダブが手を差し出すと、イエフは彼を引き上げ、自分の戦車に乗せた。
10:16 そしてイエフは言った。「わたしと一緒に来て、わたしが主のためにどれほど熱心か見てほしい。」こうして人々は彼を戦車に乗せて進んだ。
10:17 サマリアに着くと、イエフはサマリアに残っていたアハブの一族を、一人残らず討ち滅ぼした。主がエリヤに告げられた言葉のとおりだった。
10:18 それからイエフは民をみな集めて言った。「アハブはバアルに少ししか仕えなかった。だが、このイエフは大いに仕えるつもりだ。
10:19 だから今、バアルのすべての預言者、すべての信者、すべての祭司をわたしのもとに呼び集めよ。一人も欠けてはならない。わたしはバアルに盛大ないけにえをささげるのだ。来ない者は生かしておかない。」しかし、これはイエフの策略だった。バアルを拝む者たちを滅ぼすためだったのだ。
10:20 イエフは「バアルのために聖なる集会を開け」と命じ、人々はそれを告げ知らせた。
10:21 イエフはイスラエル全土に使いを送った。すると、バアルを拝む者たちが残らずやって来て、来ない者は一人もいなかった。彼らがバアルの神殿に入ると、神殿は端から端まで人で埋め尽くされた。
10:22 イエフは衣装係に「バアルを拝む者たち全員に祭服を出してやれ」と言った。すると係の者は彼らに祭服を出した。
10:23 イエフはレカブの子ヨナダブと共にバアルの神殿に入り、バアルを拝む者たちに言った。「よく調べて確かめよ。ここに主に仕える者が混じっていてはならない。いるのはバアルを拝む者だけにするのだ。」
10:24 そして彼らは、いけにえと焼き尽くすささげ物をささげるために中に入った。一方イエフは、外に八十人の兵を配置してこう言っていた。「わたしがお前たちの手に引き渡す者を一人でも逃がしたら、その者の命で償わせるぞ。」
10:25 焼き尽くすささげ物をささげ終えると、イエフは護衛兵と補佐官たちに言った。「入って、彼らを打て。一人も逃がすな。」そこで兵たちは彼らを剣で切り倒した。護衛兵と補佐官たちは死体を投げ出し、バアルの神殿の奥へと進んで行った。
10:26 そして彼らはバアルの神殿から石柱を運び出して、焼き払った。
10:27 さらにバアルの石像を打ち砕き、バアルの神殿も取り壊して、そこを便所とした。それは今日まで変わらない。
10:28 こうしてイエフは、イスラエルからバアルを一掃した。
10:29 ただし、イエフはネバトの子ヤロブアムの罪からは離れなかった。ヤロブアムはイスラエルに罪を犯させた張本人だった。ベテルとダンにある金の子牛の像を、イエフは取り除かなかったのである。
10:30 主はイエフに言った。「あなたは、わたしの目にかなう正しいことをよくやり遂げた。アハブの家に対して、わたしの思いどおりのことをすべて行った。だから、あなたの子孫は四代にわたってイスラエルの王座に着く。」
10:31 しかしイエフは、イスラエルの神である主の教えに心を尽くして従おうとはしなかった。イスラエルに罪を犯させたヤロブアムの罪から離れなかったのだ。
10:32 そのころ、主はイスラエルの領土を削り取り始めた。ハザエルがイスラエルの国境地帯のいたるところで彼らを打ち破ったのである。
10:33 ヨルダン川の東側、ギレアドの全土がその手に落ちた。ガド族、ルベン族、マナセ族の地、アルノン川のほとりのアロエルから、ギレアドとバシャンにいたるまでだった。
10:34 イエフのその他の事績、彼が行ったすべてのこと、そのすべての功績は、イスラエルの王たちの歴代誌に記されているとおりである。
10:35 イエフは先祖のもとに眠りにつき、サマリアに葬られた。そして息子のエホアハズが代わって王となった。
10:36 イエフがサマリアでイスラエルを治めた期間は、二十八年であった。
11:1 アハズヤの母アタルヤは、息子が死んだのを知った。すると立ち上がり、王家の血を引く者を一人残らず殺し始めた。
11:2 でも、ヨラム王の娘でアハズヤの姉妹だったヨシェバが、アハズヤの子ヨアシュをこっそり連れ出した。殺されようとしていた王子たちの中から助け出したのだ。ヨシェバは彼と乳母を寝室にかくまい、アタルヤの目から隠した。こうしてヨアシュは殺されずにすんだ。
11:3 ヨアシュは乳母とともに主の神殿に隠れて、六年間そこで過ごした。その間、アタルヤが国を治めていた。
11:4 七年目に、祭司エホヤダは人をやって、近衛兵と護衛兵の百人隊長たちを呼び寄せた。そして彼らを主の神殿にいる自分のもとに集め、契約を結び、主の神殿で誓わせた。それから、王の子を彼らに見せた。
11:5 エホヤダは彼らにこう命じた。「あなたたちにしてほしいのは、次のことだ。安息日に勤務につく三分の一は、王宮の警備につけ。
11:6 別の三分の一はスル門に、もう三分の一は護衛兵の後ろにある門に立て。こうして交替で神殿を守るのだ。
11:7 安息日に勤務を離れるあなたたちの残り三分の二は、主の神殿を守り、王のそばを固めよ。
11:8 それぞれ武器を手に持って、王を囲むように立て。列の中に踏み込んでくる者がいたら、殺してかまわない。王が出入りするときは、いつもそばを離れずに付き従うのだ。」
11:9 百人隊長たちは、祭司エホヤダが命じたことをすべてそのとおりに実行した。それぞれ自分の部下を連れて、安息日に勤務につく者も、勤務を離れる者もいっしょに、祭司エホヤダのもとに集まった。
11:10 祭司は、主の神殿にあった、かつてダビデ王のものだった槍と盾を百人隊長たちに渡した。
11:11 護衛兵たちは、それぞれ武器を手に持ち、神殿の右の端から左の端まで、祭壇と神殿を背にして、王を囲むように立ち並んだ。
11:12 そしてエホヤダは王の子を連れ出し、彼に王冠をかぶせ、律法の書を手渡した。人々は彼を王とし、油を注いだ。そして手をたたいて、「王さま、ばんざい」と叫んだ。
11:13 アタルヤは、護衛兵たちと民の声を聞いて、主の神殿にいる民のところへやって来た。
11:14 見ると、王が慣例どおり柱のそばに立っていた。隊長たちとラッパを吹く者たちが王のそばにいて、地の民はみな喜び、ラッパを吹き鳴らしていた。アタルヤは自分の服を引き裂いて、「反逆だ、反逆だ」と叫んだ。
11:15 祭司エホヤダは、軍を率いる百人隊長たちに命じて言った。「彼女を隊列の間から連れ出せ。彼女について行く者は剣で殺せ。」祭司は「彼女を主の神殿の中で殺してはならない」と言っていたからだ。
11:16 そこで人々は彼女を捕らえた。彼女が馬の通る道から王宮に入ると、そこで殺された。
11:17 エホヤダは、主と王と民との間で契約を結んだ。民が主のものとなるためだ。また、王と民との間でも契約を結んだ。
11:18 地の民はみな、バアルの神殿へ行き、それを打ち壊した。祭壇と偶像を粉々に砕き、バアルの祭司マタンを祭壇の前で殺した。そして祭司は主の神殿に見張りを置いた。
11:19 エホヤダは、百人隊長たち、近衛兵、護衛兵、そして地の民をみな引き連れ、王を主の神殿から導き下ろした。彼らは護衛兵の門を通って王宮へ行き、王は王たちの王座に着いた。
11:20 地の民はみな喜び、町は静かになった。アタルヤは王宮で剣で殺されたのだった。
11:21 ヨアシュは七歳で王になった。
12:1 イエフの治世第七年にヨアシュは王となり、エルサレムで四十年間、王であった。母の名はツィブヤといい、ベエル・シェバの出身だった。
12:2 ヨアシュは生きているかぎり、主の目にかなう正しいことを行った。祭司ヨヤダが彼を教え導いたからである。
12:3 ただし、高き所は取り除かれなかった。民は相変わらず、高き所で動物をささげ、香をたいていた。
12:4 ヨアシュは祭司たちに言った。「主の神殿に納められる聖なる献金、つまり登録される人ひとりひとりに定められたお金、それぞれの人の値に応じたお金、そして進んで主の神殿に持ってこようと思うお金――
12:5 そのすべてを、祭司たちはそれぞれ知り合いの人から受け取りなさい。そして神殿のいたんだところを見つけしだい、どこでも修理するように。」
12:6 ところが、ヨアシュ王の治世第二十三年になっても、祭司たちは神殿のいたんだところを修理していなかった。
12:7 そこでヨアシュ王は祭司ヨヤダとほかの祭司たちを呼んで言った。「どうしてあなたたちは神殿のいたんだところを修理しないのか。もう知り合いからお金を受け取ってはいけない。それを神殿の修理のために渡しなさい。」
12:8 祭司たちは、民からお金を受け取らないこと、そして自分たちで神殿を修理しないことに同意した。
12:9 祭司ヨヤダは一つの箱を取り、そのふたに穴をあけて、主の神殿に入る人の右手側、祭壇のそばに置いた。入り口を守る祭司たちは、主の神殿に納められるお金をすべてその中に入れた。
12:10 箱の中にお金がたくさんたまったのを見ると、王の書記官と大祭司が来て、主の神殿にあるお金を袋にまとめて数えた。
12:11 数え終えたお金は、主の神殿の工事を任された監督たちの手に渡された。彼らはそれを、主の神殿で働く大工や建築職人たちに支払い、
12:12 石を切り出す職人や石工にも支払った。また、主の神殿の傷んだ箇所を直すための木材や切り石を買い、神殿の修理にかかるすべての費用にあてた。
12:13 ただし、主の神殿に納められたお金で、銀の鉢や、しんを切るはさみ、注ぎの鉢、ラッパなど、金や銀の器具が作られることはなかった。
12:14 そのお金は、工事をする人たちに渡され、それで主の神殿が修理されたからだ。
12:15 お金を工事をする人たちに支払うために預かった人たちには、その使い道の報告を求めなかった。彼らが誠実に仕事をしていたからだ。
12:16 罪を償うために納められたお金や、罪の許しを願って納められたお金は、主の神殿には入れられず、祭司たちのものとなった。
12:17 そのころ、アラムの王ハザエルが攻め上ってきて、ガテと戦い、これを占領した。そしてハザエルは、エルサレムにも攻め上ろうと狙いを定めた。
12:18 そこでユダの王ヨアシュは、先祖であるユダの王たち、ヨシャファテ、ヨラム、アハズヤがささげた聖なるものすべてと、自分がささげた聖なるもの、そして主の神殿と王宮の宝物庫にあった金をすべて取り、アラムの王ハザエルに送った。するとハザエルはエルサレムから引き上げていった。
12:19 ヨアシュのその他の事績と、彼が行ったすべてのことは、ユダの王たちの歴代誌に記されている。
12:20 家臣たちが立ち上がって陰謀を企て、シラへ下る道にあるベテ・ミロでヨアシュを討った。
12:21 彼を討ったのは、家臣であるシムアテの子ヨザバドと、ショメルの子ヨホザバドだった。ヨアシュはこうして死に、人々は彼をダビデの町に、その先祖たちと共に葬った。そして、その子アマツヤが代わって王となった。
13:1 ユダの王アハズヤの子ヨアシュの治世の第二十三年に、イエフの子エホアハズがイスラエルの王となり、サマリアで十七年間、国を治めた。
13:2 彼は主の目に悪とされることを行った。イスラエルに罪を犯させた、ネバトの子ヤロブアムの罪をそのまま受け継ぎ、そこから離れようとしなかった。
13:3 そのため主の怒りがイスラエルに向かって燃え上がり、主は彼らを、アラムの王ハザエルの手に、またハザエルの子ベン・ハダドの手に、長い間ずっと渡された。
13:4 しかしエホアハズが主に願い求めると、主はその願いを聞き入れられた。アラムの王がイスラエルを苦しめ、その苦しみを主がご覧になったからである。
13:5 主はイスラエルに、彼らを救い出す者を送られた。こうして彼らはアラムの支配から抜け出し、イスラエルの人々は前のように自分たちの家で安心して暮らせるようになった。
13:6 それでも彼らは、イスラエルに罪を犯させたヤロブアムの家の罪から離れず、その中を歩み続けた。アシェラ像もサマリアに立ったままだった。
13:7 アラムの王がエホアハズの軍を打ち滅ぼし、脱穀のときの土くれのように踏みにじってしまったので、エホアハズに残された兵は、騎兵五十、戦車十、歩兵一万だけになっていた。
13:8 エホアハズのその他の事績、彼が行ったすべてのこと、そしてその功績は、『イスラエルの王たちの歴代誌』に記されているとおりである。
13:9 エホアハズは先祖たちと同じように眠りにつき、サマリアに葬られた。そして彼に代わって、その子ヨアシュが王となった。
13:10 ユダの王ヨアシュの治世の第三十七年に、エホアハズの子ヨアシュがイスラエルの王となり、サマリアで十六年間、国を治めた。
13:11 彼は主の目に悪とされることを行った。イスラエルに罪を犯させた、ネバトの子ヤロブアムのすべての罪から離れず、その中を歩み続けた。
13:12 ヨアシュのその他の事績、彼が行ったすべてのこと、そしてユダの王アマツヤと戦ったときの功績は、『イスラエルの王たちの歴代誌』に記されているとおりである。
13:13 ヨアシュは先祖たちと共に眠りについた。そしてヤロブアムがその王座に着いた。ヨアシュはサマリアで、イスラエルの王たちと共に葬られた。
13:14 そのころ、エリシャは病気にかかっていた。やがて命を落とすことになる病だった。イスラエルの王ヨアシュは彼のところに下って行き、その顔の上に身をかがめて泣きながら言った。「わたしの父よ、父よ。あなたはイスラエルの戦車、その騎兵でした。」
13:15 するとエリシャは彼に言った。「弓と矢を取りなさい。」王は弓と矢を手に取った。
13:16 エリシャはイスラエルの王に言った。「その弓に手をかけなさい。」王が手をかけると、エリシャは自分の両手を王の手の上に重ねた。
13:17 そして言った。「東の窓を開けなさい。」王が窓を開けると、エリシャは「射なさい」と言った。王が矢を射ると、エリシャは言った。「これは主による勝利の矢、アラムに打ち勝つ勝利の矢だ。あなたはアフェクでアラムを打ち、これを全滅させるまで戦うことになる。」
13:18 さらにエリシャは言った。「矢を取りなさい。」王が矢を取ると、エリシャはイスラエルの王に言った。「地面を射なさい。」王は三回射て、それでやめた。
13:19 すると神の人は王に対して怒って言った。「五回、六回と射るべきだった。そうすれば、アラムを全滅させるまで打ち破ることができたのに。だが今となっては、あなたがアラムを打ち破るのは三回だけだ。」
13:20 こうしてエリシャは死に、人々は彼を葬った。その年、モアブの略奪隊が毎年のように地に攻め込んで来ていた。
13:21 ある人を葬ろうとしていたとき、人々はその略奪隊を目にした。それで彼らはその遺体をエリシャの墓に投げ込んだ。すると、その人はエリシャの骨に触れたとたんに生き返り、自分の足で立ち上がった。
13:22 アラムの王ハザエルは、エホアハズが生きているあいだずっと、イスラエルを苦しめ続けた。
13:23 しかし主は、アブラハム、イサク、ヤコブと結んだ契約のゆえに、彼らを恵み、あわれみ、彼らに顔を向けられた。主は彼らを滅ぼそうとはせず、また今に至るまで、御前から捨て去ることもされなかった。
13:24 やがてアラムの王ハザエルが死に、その子ベン・ハダドが代わって王となった。
13:25 エホアハズの子エホアシュは、父エホアハズが戦いで奪われた町々を、ハザエルの子ベン・ハダドの手から取り返した。エホアシュは三度彼を打ち破り、イスラエルの町々を取り戻した。
14:1 イスラエルの王、エホアハズの子エホアシュの第二年に、ユダの王ヨアシュの子アマツヤが王となった。
14:2 彼は二十五歳で王となり、エルサレムで二十九年間、王であった。母の名はエホアダンといい、エルサレムの出身だった。
14:3 彼は主の目にかなう正しいことを行った。ただ、先祖ダビデのようではなく、父ヨアシュがしたとおりのことをすべて行った。
14:4 ただし、高台の祭壇は取り除かれなかった。民は相変わらず、そこでいけにえをささげ、香をたいていた。
14:5 王権が自分の手にしっかり握られると、彼は、父である王を殺した家臣たちを打ち殺した。
14:6 しかし、その殺害者たちの子どもは死刑にしなかった。モーセの律法の書に、主がこう命じて記されているとおりである。「親は子どものせいで死刑にされてはならない。子どもも親のせいで死刑にされてはならない。人はそれぞれ、自分の罪によって死刑にされる。」
14:7 彼は塩の谷でエドム人一万人を打ち破り、戦いでセラを攻め取った。そしてその町をヨクテエルと名づけた。それは今日まで、そう呼ばれている。
14:8 そのころアマツヤは、エフーの孫でエホアハズの子である、イスラエルの王エホアシュのもとに使者を送って言った。「さあ、顔を合わせよう。」
14:9 イスラエルの王エホアシュは、ユダの王アマツヤにこう答えて送った。「レバノンのあざみが、レバノンの杉にこう言って使いを送った。『あなたの娘を、わたしの息子の嫁にくれ。』ところが、レバノンの野の獣が通りかかり、そのあざみを踏みつけてしまった。
14:10 確かにあなたはエドムを打ち破った。それで心がおごっている。だが、その手柄を誇って、家にとどまっていろ。なぜわざわざ災いを招いて、あなたも、あなたと一緒にユダも倒れようとするのか。」
14:11 しかしアマツヤは聞き入れなかった。それでイスラエルの王エホアシュは攻め上り、彼とユダの王アマツヤは、ユダに属するベテ・シェメシュで顔を合わせた。
14:12 ユダはイスラエルに打ち負かされ、人々はそれぞれ自分の天幕へ逃げ去った。
14:13 イスラエルの王エホアシュは、アハズヤの子ヨアシュの子であるユダの王アマツヤを、ベテ・シェメシュで捕らえた。そしてエルサレムに攻め込み、エフライムの門から角の門まで、エルサレムの城壁を四百キュビトにわたって打ち壊した。
14:14 さらに彼は、主の神殿と王宮の宝物庫にあった金銀と器をすべて奪い取り、人質も取って、サマリアへ引き揚げた。
14:15 エホアシュのその他の行いと、その武勲、そしてユダの王アマツヤと戦ったことは、イスラエルの王たちの歴代誌に記されている。
14:16 エホアシュは先祖と共に眠りにつき、サマリアでイスラエルの王たちと共に葬られた。そして、その子ヤロブアムが代わって王となった。
14:17 ユダの王、ヨアシュの子アマツヤは、イスラエルの王、エホアハズの子エホアシュが死んだ後も、なお十五年生きた。
14:18 アマツヤのその他の行いは、ユダの王たちの歴代誌に記されている。
14:19 エルサレムで人々が彼に対して謀反を起こしたので、彼はラキシュへ逃げた。しかし彼らは追っ手をラキシュに送り、そこで彼を殺した。
14:20 人々は彼を馬に乗せて運び、エルサレムのダビデの町で、先祖と共に葬った。
14:21 ユダの民は皆、まだ十六歳だったアザルヤを立て、父アマツヤの代わりに王とした。
14:22 アマツヤ王が先祖と共に眠りについた後、このアザルヤはエラトを建て直し、ユダに取り戻した。
14:23 ユダの王、ヨアシュの子アマツヤの治世第十五年に、イスラエルの王、ヨアシュの子ヤロブアムがサマリアで王となり、四十一年間王位にあった。
14:24 彼は主の目に悪とされることを行い、イスラエルに罪を犯させた、ネバトの子ヤロブアムの罪から、ひとつも離れようとしなかった。
14:25 彼はイスラエルの領土を、ハマトの入り口からアラバの海まで回復した。これは、イスラエルの神、主が、その僕であるガト・ヘフェル出身の預言者、アミタイの子ヨナを通して語られたとおりだった。
14:26 主は、イスラエルの苦しみがとてもひどいのをご覧になったからだ。奴隷も自由な者も残らず、イスラエルを助ける者はだれもいなかった。
14:27 しかし主は、イスラエルの名を天の下から消し去るとは言われなかった。それで、ヨアシュの子ヤロブアムの手によって彼らを救われた。
14:28 ヤロブアムのその他の事績、彼が行ったすべてのこと、その武勇、どのように戦ったか、そしてかつてユダのものだったダマスコとハマトをイスラエルのために取り戻したこと、これらはすべて『イスラエルの王の歴代誌』に記されているではないか。
14:29 ヤロブアムは先祖と共に、イスラエルの王たちと共に眠りについた。そして、その子ゼカルヤが代わって王となった。
15:1 イスラエルの王ヤロブアムの治世第二十七年に、ユダの王アマツヤの子アザルヤが王となった。
15:2 彼は十六歳で王となり、エルサレムで五十二年間王位にあった。彼の母は名をエコルヤといい、エルサレムの出身だった。
15:3 彼は、父アマツヤが行ったとおり、すべて主の目にかなうことを行った。
15:4 ただし、高き所は取り除かれなかった。民は依然として、その高き所でいけにえをささげ、香をたいていた。
15:5 主がこの王を打たれたので、彼は死ぬ日まで重い皮膚病を患い、隔離された家に住んだ。そして、王の子ヨタムが宮廷を取りしきり、その地の民を治めた。
15:6 アザルヤのその他の事績、彼が行ったすべてのことは、『ユダの王の歴代誌』に記されているではないか。
15:7 アザルヤは先祖と共に眠りにつき、ダビデの町に先祖と共に葬られた。そして息子のヨタムが代わって王となった。
15:8 ユダの王アザルヤの治世第三十八年に、ヤロブアムの子ゼカルヤがサマリアでイスラエルの王となり、六か月間王であった。
15:9 彼は先祖たちがしたように、主の目に悪とされることを行った。イスラエルに罪を犯させた、ネバトの子ヤロブアムの罪から離れなかった。
15:10 ヤベシュの子シャルムが彼に対してたくらみを企て、民の前で彼を打ち殺し、代わって王となった。
15:11 ゼカルヤのその他の事績は、『イスラエルの王の歴代誌』に記されている。
15:12 これは、主がイエフに告げられた言葉のとおりだった。主はこう言われた。「あなたの子孫は四代にわたってイスラエルの王座に着く。」そのとおりになったのだ。
15:13 ユダの王ウジヤの治世第三十九年に、ヤベシュの子シャルムが王となり、サマリアで一か月間王であった。
15:14 ガディの子メナヘムがティルツァから上ってサマリアに攻め込み、ヤベシュの子シャルムをサマリアで打ち殺し、代わって王となった。
15:15 シャルムのその他の事績、彼が企てたたくらみは、『イスラエルの王の歴代誌』に記されている。
15:16 そのころメナヘムは、ティルツァから進んでティフサと、その中にいるすべての者、その周辺の地域を打った。町が門を開かなかったので、彼はそこを打ち、妊娠している女たちをみな切り裂いたのだ。
15:17 ユダの王アザルヤの治世第三十九年に、ガディの子メナヘムがイスラエルの王となり、サマリアで十年間王であった。
15:18 彼は主の目に悪とされることを行った。その生涯を通じて、イスラエルに罪を犯させた、ネバトの子ヤロブアムの罪から離れなかった。
15:19 アッシリアの王プルがこの国に攻めてきた。メナヘムは銀千タラントをプルに贈った。プルの力を味方につけて、自分の王位を確かなものにするためだった。
15:20 メナヘムはこの銀を、イスラエルのすべての裕福な有力者たちから取り立てた。一人あたり銀五十シェケルを集め、アッシリアの王に渡すためだった。こうしてアッシリアの王は引き返し、この国にはとどまらなかった。
15:21 メナヘムのその他の事績と、彼が行ったすべてのことは、イスラエルの王たちの歴代誌に記されている。
15:22 メナヘムは先祖のもとに眠り、その子ペカフヤが跡を継いで王となった。
15:23 ユダの王アザルヤの治世第五十年に、メナヘムの子ペカフヤがイスラエルの王となり、サマリアで二年間王であった。
15:24 彼は主の目に悪とされることを行った。イスラエルに罪を犯させた、ネバトの子ヤロブアムの罪から離れなかった。
15:25 彼の側近であったレマルヤの子ペカが、彼に対して謀反を起こした。そしてサマリアの王宮の奥で、ギレアドの人五十人を率いて、アルゴブとアルエもろとも彼を討ち、殺した。ペカは跡を継いで王となった。
15:26 ペカフヤのその他の事績と、彼が行ったすべてのことは、イスラエルの王たちの歴代誌に記されている。
15:27 ユダの王アザルヤの治世第五十二年に、レマルヤの子ペカがイスラエルの王となり、サマリアで二十年間王であった。
15:28 彼は主の目に悪とされることを行った。イスラエルに罪を犯させた、ネバトの子ヤロブアムの罪から離れなかった。
15:29 イスラエルの王ペカの時代に、アッシリアの王ティグラト・ピレセルが攻めてきた。彼はイヨン、アベル・ベト・マアカ、ヤノア、ケデシュ、ハツォル、ギレアド、ガリラヤ、ナフタリの全土を奪い取り、その住民をアッシリアへ連れ去った。
15:30 ウジヤの子ヨタムの治世第二十年に、エラの子ホセアがレマルヤの子ペカに対して謀反を起こした。彼はペカを討って殺し、跡を継いで王となった。
15:31 ペカのその他の事績と、彼が行ったすべてのことは、イスラエルの王たちの歴代誌に記されている。
15:32 イスラエルの王、レマルヤの子ペカの治世第二年に、ユダの王ウジヤの子ヨタムが王となった。
15:33 彼は二十五歳で王となり、エルサレムで十六年間、王として治めた。母の名はエルシャといい、ツァドクの娘だった。
15:34 彼は主の目にかなう正しいことを行った。父ウジヤが行ったことをすべて、そのとおりに行った。
15:35 ただし、高き所は取り除かれなかった。民は相変わらず、その高き所でいけにえをささげ、香をたいていた。彼は主の宮の上の門を建てた。
15:36 ヨタムのその他の事績と、彼が行ったことは、ユダの王たちの歴代誌に記されている。
15:37 そのころ、主はアラムの王レツィンと、レマルヤの子ペカをユダに向けて送り始めた。
15:38 ヨタムは先祖と共に眠りにつき、父ダビデの町に先祖と共に葬られた。そして、その子アハズが跡を継いで王となった。
16:1 レマルヤの子ペカが王になって十七年目に、ユダの王ヨタムの子アハズが王になった。
16:2 アハズは二十歳で王になり、エルサレムで十六年間、国を治めた。でも彼は、先祖ダビデとは違って、その神である主の目にかなう正しいことをしなかった。
16:3 彼はイスラエルの王たちと同じ道を歩んだ。それどころか、自分の息子を火の中を通らせて、いけにえにささげた。これは、主がイスラエルの人々の前から追い払った異国の民がやっていた、忌まわしい風習だった。
16:4 そして彼は、丘の上の祭壇や、高い場所や、茂った木の下で、いけにえをささげ、香をたいた。
16:5 そのころ、アラムの王レツィンと、レマルヤの子でイスラエルの王ペカが、エルサレムに攻め上ってきた。二人はアハズを取り囲んだが、攻め落とすことはできなかった。
16:6 そのとき、アラムの王レツィンはエラトを取り戻してアラムのものとし、ユダの人々をエラトから追い出した。それからエドムの人々がエラトに移り住み、今日までそこに住んでいる。
16:7 そこでアハズは、アッシリアの王ティグラト・ピレセルに使者を送って、こう伝えた。「わたしはあなたのしもべ、あなたの子です。どうか攻め上ってきて、わたしに立ち向かってくるアラムの王とイスラエルの王の手から、わたしを救ってください。」
16:8 そしてアハズは、主の神殿と王宮の宝物庫にあった金銀を取り出し、贈り物としてアッシリアの王に送った。
16:9 アッシリアの王はこれを聞き入れた。王はダマスコに攻め上って、これを占領し、その住民を捕らえてキルに連れ去り、レツィンを殺した。
16:10 アハズ王は、アッシリアの王ティグラト・ピレセルに会うためダマスコへ行き、そこにあった祭壇を見た。そこでアハズ王は、その祭壇の形と、作り方の細かい部分まですべてを、祭司ウリヤに送り届けた。
16:11 祭司ウリヤは、アハズ王がダマスコから送ってきた指示のとおりに祭壇を築いた。ウリヤは、アハズ王がダマスコから帰ってくる前に、そのすべてを仕上げた。
16:12 王はダマスコから帰ってくると、その祭壇を見た。そして王は祭壇に近づき、その上でいけにえをささげた。
16:13 そして王は、自分の焼き尽くすいけにえと穀物のささげ物をその上で焼き、注ぎのささげ物を注ぎ、和解のいけにえの血を祭壇に振りかけた。
16:14 また王は、主の前にあった青銅の祭壇を、神殿の正面から移した。それは新しい祭壇と主の神殿との間にあったが、王はそれを新しい祭壇の北側に置いた。
16:15 そしてアハズ王は祭司ウリヤにこう命じた。「この大きな祭壇の上で、朝の焼き尽くすいけにえと、夕方の穀物のささげ物を焼きなさい。王の焼き尽くすいけにえと穀物のささげ物も、この国のすべての民の焼き尽くすいけにえと穀物のささげ物、そして注ぎのささげ物も、同じようにささげなさい。焼き尽くすいけにえの血も、ほかのいけにえの血も、すべてこの祭壇に振りかけなさい。青銅の祭壇のほうは、わたしが神の意向をうかがうために取っておく。」
16:16 祭司ウリヤは、アハズ王が命じたとおりに、すべてを行った。
16:17 アハズ王は、台の側面の飾り板を切り取り、その上にあった洗盤を外した。また、青銅の海を、その下で支えていた青銅の牛の上から下ろし、石畳の上に置いた。
16:18 さらに王は、神殿の中に造られていた安息日用の屋根つきの通路と、王が使う外側の入り口を、アッシリアの王に配慮して、主の神殿から取り除いた。
16:19 アハズが行ったその他のことは、ユダの王たちの歴代誌に記されている。
16:20 アハズは先祖と共に眠りについて、ダビデの町に先祖と共に葬られた。そして、その子ヒゼキヤが代わって王となった。
17:1 ユダの王アハズの治世の十二年に、エラの子ホシェアがサマリアでイスラエルの王となり、九年のあいだ王だった。
17:2 彼は主の目に悪とされることをした。ただ、それまでのイスラエルの王たちほどではなかった。
17:3 アッシリアの王シャルマヌエセルがホシェアを攻めに上ってきた。ホシェアは彼に服従し、みつぎ物を納めるようになった。
17:4 ところがアッシリアの王は、ホシェアが裏切りをたくらんでいるのに気づいた。ホシェアはエジプトの王ソに使者を送り、毎年のようにアッシリアの王へみつぎ物を納めることをやめていたのだ。それでアッシリアの王はホシェアを捕らえ、鎖につないで牢に入れた。
17:5 アッシリアの王は国じゅうに攻め込み、サマリアにも攻め上って、三年のあいだこの町を包囲した。
17:6 ホシェアの治世の九年に、アッシリアの王はサマリアを攻め落とした。そしてイスラエルの人々をアッシリアへ連れ去り、ハラフ、ゴザン川のほとりのハボル、そしてメディアの町々に住まわせた。
17:7 こうなったのは、イスラエルの人々が、自分たちの神である主に対して罪を犯したからだ。主は彼らをエジプトの国から、エジプトの王ファラオの支配から連れ出してくださった。それなのに彼らはほかの神々を拝んだ。
17:8 主がイスラエルの人々の前から追い払われた異民族のならわしや、イスラエルの王たちが始めたやり方に従って歩んだのだ。
17:9 イスラエルの人々は、自分たちの神である主に対して、正しくないことをこっそりと行った。見張りのやぐらから城壁のある町まで、どの町にも高い所の祭壇を築き、
17:10 どの高い丘の上にも、どの茂った木の下にも、石の柱やアシェラの柱を立てた。
17:11 そして主が彼らの前から追い払われた異民族と同じように、すべての高い所の祭壇で香をたいた。こうして彼らは悪いことを重ね、主を怒らせた。
17:12 彼らは偶像に仕えた。主は彼らに「こんなことをしてはならない」と言っておられたのに。
17:13 主はイスラエルとユダに対して、すべての預言者や先見者を通して警告した。「悪い道から立ち返りなさい。わたしの命令と掟を守りなさい。わたしがあなたたちの先祖に命じ、わたしに仕える預言者たちを通してあなたたちに送ったすべての律法のとおりにしなさい。」
17:14 でも彼らは聞かなかった。主である神を信じなかった先祖たちと同じように、かたくなになって聞き入れなかった。
17:15 彼らは主の掟と、主が先祖と結んだ契約、そして主が彼らに与えた戒めを退けた。むなしい偶像を追い求め、自分たちもむなしくなった。そして、まねてはならないと主が命じていた周りの異民族の生き方に従った。
17:16 彼らは主である神のすべての命令を捨て、自分たちのために鋳物の像、二頭の子牛の像を造った。さらにアシェラの像を造り、天のすべての星々を拝み、バアルに仕えた。
17:17 息子や娘を火の中を通らせ、占いやまじないをした。彼らは主の目に悪とされることをしようと自分を売り渡し、主を怒らせた。
17:18 それで主はイスラエルにひどく怒り、彼らを自分のそばから退けた。残ったのはユダ族だけだった。
17:19 しかしユダも主である神の命令を守らなかった。イスラエルが作り出した習わしに従って歩んだ。
17:20 主はイスラエルの子孫すべてを退け、彼らを苦しめ、略奪する者の手に渡した。そしてついに、彼らを自分の前から投げ捨てた。
17:21 イスラエルはダビデの王家から離れ、ネバトの子ヤロブアムを王にした。ヤロブアムはイスラエルを主から引き離し、大きな罪に引き込んだ。
17:22 イスラエルの人々はヤロブアムが犯したすべての罪をそのまま続け、そこから離れようとしなかった。
17:23 ついに主は、主に仕える預言者たちすべてを通して告げていたとおり、イスラエルを自分の前から取り除いた。こうしてイスラエルは自分の土地からアッシリアへ連れ去られ、今日に至っている。
17:24 アッシリアの王は、バビロン、クタ、アワ、ハマト、セファルワイムから人々を連れて来て、イスラエルの人々に代わってサマリアの町々に住まわせた。彼らはサマリアを自分のものとし、その町々に住み着いた。
17:25 彼らがそこに住み始めたころ、彼らは主を敬わなかった。それで主は彼らのところにライオンを送り、ライオンは何人かをかみ殺した。
17:26 人々はアッシリアの王にこう伝えた。「あなたが移住させ、サマリアの町々に住まわせた民族は、この地の神のしきたりを知りません。それでその神が彼らのところにライオンを送り、ライオンは彼らを殺しています。彼らがこの地の神のしきたりを知らないからです。」
17:27 そこでアッシリアの王は命じた。「あそこから連れて来た祭司の一人を送り返せ。その者がそこへ行って住み、この地の神のしきたりを人々に教えるようにせよ。」
17:28 それで、サマリアから連れ去られた祭司の一人が来て、ベテルに住み、どのように主を敬えばよいかを人々に教えた。
17:29 しかし、それぞれの民族は自分たちの神を造り、サマリア人が造った高台の礼拝所に置いた。どの民族も、自分たちが住む町々でそうした。
17:30 バビロンの人々はスコト・ベノトを造り、クタの人々はネルガルを造り、ハマトの人々はアシマを造った。
17:31 アワの人々はニブハズとタルタクを造った。セファルワイムの人々は、自分の子どもたちを火で焼いて、セファルワイムの神々であるアドラムメレクとアナムメレクにささげた。
17:32 彼らは主を敬う一方で、自分たちの中から高台の礼拝所の祭司を立て、その者たちが礼拝所で彼らのためにいけにえをささげるようにした。
17:33 彼らは主を敬いながら、同時に、連れて来られる前の民族のしきたりのとおりに、自分たちの神々にも仕えていた。
17:34 今日に至るまで、彼らは以前のしきたりのとおりに行っている。彼らは主を敬わず、主がヤコブの子らに命じたおきてや定め、律法や命令のとおりには行わない。ヤコブとは、主がイスラエルと名づけた者である。
17:35 主はこの人々と契約を結び、こう命じていた。「ほかの神々を敬ってはならない。それらを拝んではならない。それらに仕えてはならない。それらにいけにえをささげてはならない。
17:36 ただ、大きな力と伸ばした腕であなたたちをエジプトの地から導き出した主、その方だけを敬いなさい。その方を拝み、その方にいけにえをささげなさい。
17:37 また、主があなたたちのために書き記したおきてや定め、律法や命令を、いつまでも守って行いなさい。ほかの神々を敬ってはならない。
17:38 わたしがあなたたちと結んだ契約を忘れてはならない。ほかの神々を敬ってはならない。
17:39 ただ、あなたたちの神、主だけを敬いなさい。そうすれば、主がすべての敵の手からあなたたちを救い出してくれる。」
17:40 しかし、彼らは聞き従わず、以前のしきたりのとおりに行っていた。
17:41 こうして、この民は主を敬いながら、自分たちの偶像にも仕えていた。彼らの子や孫も、先祖がしたとおりに、今日まで同じことをしている。
18:1 イスラエルの王、エラの子ホシェアの治世の第三年に、ユダの王アハズの子ヒゼキヤが王となった。
18:2 彼は二十五歳で王となり、エルサレムで二十九年間、王であった。母の名はアビといい、ゼカリヤの娘であった。
18:3 彼は、先祖ダビデが行ったことにすべてならい、主が見て正しいと認めることを行った。
18:4 彼は高台の祭壇を取り除き、石の柱を打ち砕き、アシェラ像を切り倒した。また、モーセが作った青銅の蛇も打ち砕いた。それまでイスラエルの人々は、この蛇に香をたいていたからである。人々はそれをネフシュタンと呼んでいた。
18:5 彼はイスラエルの神、主に信頼した。ユダのすべての王の中で、彼の後にも先にも、彼のような王はいなかった。
18:6 彼は主にしっかりと結びつき、主に従うことをやめなかった。そして、主がモーセに命じた戒めを守った。
18:7 主は彼とともにおられた。彼はどこへ出て行っても成功した。彼はアッシリアの王に反逆し、その支配に従わなかった。
18:8 彼はペリシテ人を打ち破り、ガザとその周辺の地にまで攻め入った。見張りのやぐらから城壁のある町まで、すべてを打ち倒した。
18:9 ヒゼキヤ王の第四年、それはイスラエルの王、エラの子ホシェアの第七年にあたる。その年、アッシリアの王シャルマヌエセルがサマリアに攻め上り、町を包囲した。
18:10 そして三年の終わりに、彼らはこの町を攻め落とした。ヒゼキヤの第六年、すなわちイスラエルの王ホシェアの第九年に、サマリアは陥落した。
18:11 アッシリアの王はイスラエルの人々を捕らえてアッシリアへ連れて行き、ハラフ、ゴザン川のほとりのハボル、そしてメディアの町々に住まわせた。
18:12 これは、彼らが自分たちの神、主の声に聞き従わず、主の契約を破ったからである。彼らは主のしもべモーセが命じたすべてのことに耳を貸さず、それを行わなかった。
18:13 ヒゼキヤ王の第十四年、アッシリアの王センナケリブがユダの城壁のある町々すべてに攻め上り、それらを占領した。
18:14 ユダの王ヒゼキヤは、ラキシュにいるアッシリアの王のもとに使者を送って言った。「わたしが間違っていました。どうか引き揚げてください。あなたが課すものは何でも負担します。」アッシリアの王はユダの王ヒゼキヤに、銀三百タラントと金三十タラントを要求した。
18:15 ヒゼキヤは、主の神殿と王宮の宝物庫にあった銀をすべて渡した。
18:16 そのときユダの王ヒゼキヤは、主の神殿の扉と、自分が金で覆っていた柱から金をはぎ取り、アッシリアの王に渡した。
18:17 アッシリアの王は、タルタン、ラブ・サリス、ラブ・シャケを大軍とともにラキシュからエルサレムのヒゼキヤ王のもとへ送った。彼らは上って行き、エルサレムに着くと、布さらしの野へ通じる道沿いにある、上の池の水路のそばに立った。
18:18 彼らが王を呼び出すと、宮廷を取り仕切るヒルキヤの子エルヤキム、書記官シェブナ、記録官アサフの子ヨアフが彼らのところに出て来た。
18:19 ラブ・シャケは彼らに言った。「ヒゼキヤにこう伝えろ。偉大な王、アッシリアの王がこう言っている。『お前がそんなに頼みにしているものは、いったい何なのだ。
18:20 戦いには作戦も力もある、とお前は言うが、それはただの口先だけの言葉だ。今、お前はいったい誰を頼りにして、わたしに逆らったのか。
18:21 見ろ、お前が頼りにしているのは、あのエジプトだ。だがそれは、折れかけた葦の杖のようなものだ。それに寄りかかる者がいれば、葦は手に突き刺さって、貫いてしまう。エジプトの王ファラオは、頼る者みんなにとって、そういうものなのだ。
18:22 それとも、「わたしたちは自分たちの神、主を頼りにしている」と言うつもりか。だがその主こそ、ヒゼキヤが高台の聖所と祭壇を取り払ってしまった相手ではないか。しかもヒゼキヤはユダとエルサレムの人々に、「エルサレムにあるこの祭壇の前でだけ拝め」と命じたのだ。
18:23 さあ、わたしの主君、アッシリアの王と賭けをしてみろ。馬に乗せる者をそろえられるなら、わたしが馬を二千頭やろう。
18:24 それもできないのに、どうしてわたしの主君の家来のうち、いちばん身分の低い隊長ひとりさえ追い返せるというのか。それなのにお前は、戦車と騎兵を当てにしてエジプトに頼っている。
18:25 そもそも、わたしがこの場所を滅ぼすために攻め上って来たのは、主の許しなしにだと思うのか。主がわたしに、「あの地に攻め上って、滅ぼせ」と言われたのだ。』」
18:26 すると、ヒルキヤの子エルヤキム、シェブナ、ヨアフがラブ・シャケに言った。「どうか、このしもべたちにはアラム語で話してください。わたしたちはそれがわかります。城壁の上にいる民に聞こえるように、ユダの言葉で話さないでください。」
18:27 しかしラブ・シャケは彼らに答えた。「わたしの主君がこの言葉を伝えるために、お前の主君とお前だけにわたしを送ったと思うのか。いや、城壁の上に座っている、あの人々にもだ。彼らはお前たちと一緒に、自分の糞を食べ、自分の小便を飲むことになるのだから。」
18:28 そしてラブ・シャケは立ち上がり、ユダの言葉で大声で叫んだ。「偉大な王、アッシリアの王の言葉を聞け。
18:29 王はこう言っている。ヒゼキヤにだまされるな。ヒゼキヤはお前たちを王の手から救い出すことなどできない。
18:30 また、ヒゼキヤが「主が必ずわたしたちを救い出してくださる。この都がアッシリアの王の手に渡ることは決してない」と言って、お前たちに主を頼らせようとしても、その言葉に乗せられるな。」
18:31 ヒゼキヤの言うことを聞くな。アッシリアの王はこう言っている。わたしと和解して、降参して出てこい。そうすれば、それぞれ自分のぶどうやいちじくを食べ、自分の井戸の水を飲むことができる。
18:32 わたしがやって来て、お前たちを、自分の国のようなよい地へ連れて行くまでのことだ。そこは穀物とぶどう酒の地、パンとぶどう畑の地、オリーブの木と蜜の地だ。そうすればお前たちは死なずに生きられる。ヒゼキヤが『主が救い出してくださる』と言ってそそのかしても、その言葉を聞くな。
18:33 どこかの国の神々が、自分の国をアッシリアの王の手から救い出したことがあったか。
18:34 ハマトやアルパドの神々はどこにいる。セファルワイム、ヘナ、イワの神々はどこにいる。彼らはサマリアをわたしの手から救い出しただろうか。
18:35 これらの国々の神々のうち、いったいどの神が自分の国をわたしの手から救い出したというのか。それなのに、主がエルサレムをわたしの手から救い出せるはずがない。」
18:36 しかし人々は黙って、ひと言も答えなかった。「彼に答えるな」という王の命令があったからだ。
18:37 そして宮廷長官ヒルキヤの子エルヤキム、書記官シェブナ、記録官アサフの子ヨアが、衣を引き裂いてヒゼキヤのもとへ行き、ラブ・シャケの言葉を伝えた。
19:1 これを聞いたヒゼキヤ王は、自分の衣を引き裂き、粗布を身にまとって、主の神殿に入った。
19:2 そして宮廷長官エルヤキム、書記官シェブナ、それに年長の祭司たちを、粗布を身にまとわせて、アモツの子である預言者イザヤのもとへ送った。
19:3 彼らはイザヤにこう言った。「ヒゼキヤはこう言っています。今日は苦しみと懲らしめと辱めの日です。子どもが生まれようとしているのに、産み出す力がないようなものです。
19:4 アッシリアの王が生きておられる神をののしるために送り込んだラブ・シャケ、その言葉のすべてを、あなたの神である主が聞いてくださるかもしれません。そして主がその言葉を聞いて、罰してくださるかもしれません。どうか、生き残っている者たちのために祈ってください。」
19:5 ヒゼキヤ王の家来たちがイザヤのもとに来ると、
19:6 イザヤは彼らに言った。「主人にこう伝えなさい。主はこう言われる。お前が聞いた言葉を恐れるな。アッシリアの王の家来たちがわたしをののしった、あの言葉を恐れるな。
19:7 見よ、わたしは彼にある霊を送り込む。彼はうわさを聞いて、自分の国へ帰って行く。そしてわたしは、その国で彼を剣にかけて倒す。」
19:8 ラブ・シャケは引き返し、アッシリアの王がリブナを攻めているところにたどり着いた。王がラキシュを発ったと聞いたからである。
19:9 そのころアッシリアの王は、クシュの王ティルハカについて「あなたと戦うために出てきた」という知らせを聞いた。そこで彼は、もう一度ヒゼキヤのもとに使者を送り、こう言わせた。
19:10 「ユダの王ヒゼキヤにこう言え。お前が頼りにしている神にだまされるな。『エルサレムはアッシリアの王の手に渡されることはない』などという言葉を信じるな。
19:11 アッシリアの王たちが、すべての国々に何をしてきたか、どのように滅ぼし尽くしたか、お前も聞いているだろう。それなのに、お前だけが助かるというのか。
19:12 わたしの先祖たちが滅ぼした国々を、その神々が救い出しただろうか。ゴザン、ハラン、レツェフ、それにテラサルにいたエデンの人々を、救えたか。
19:13 ハマトの王、アルパドの王、セファルワイムの町の王、そしてヘナやイワの王は、今どこにいるのか。」
19:14 ヒゼキヤは使者たちの手から手紙を受け取って読んだ。そして主の神殿に上って行き、それを主の前に広げた。
19:15 ヒゼキヤは主の前で祈って言った。「イスラエルの神、主よ。ケルビムの上に座しておられる方よ。あなただけが、地上のすべての国を治める神です。あなたが天と地を造られました。
19:16 主よ、耳を傾けて聞いてください。主よ、目を開いて見てください。生きておられる神をののしるために使者を送ってきた、センナケリブのあの言葉を聞いてください。
19:17 主よ、確かにアッシリアの王たちは、国々とその土地を滅ぼしました。
19:18 そして、その国々の神々を火の中に投げ込みました。それらは神ではなく、人の手が造ったもの、木や石にすぎません。だから滅ぼすことができたのです。
19:19 今、わたしたちの神、主よ、どうかセンナケリブの手からわたしたちを救ってください。そうすれば、地上のすべての国が、あなただけが主であり、神であることを知るでしょう。」
19:20 すると、アモツの子イザヤはヒゼキヤのもとに人をやって、こう伝えた。「イスラエルの神、主はこう言われます。『あなたがアッシリアの王センナケリブのことでわたしに祈った願いを、わたしは聞いた。』
19:21 主が彼について語られた言葉はこうです。『おとめである娘シオンは、あなたを見下し、あざ笑う。娘エルサレムは、あなたの後ろ姿に頭を振る。
19:22 あなたはいったい誰をののしり、汚したのか。誰に向かって声を張り上げ、高慢な目を上げたのか。それはイスラエルの聖なる方に向かってだ。
19:23 あなたは使者たちを通してわたしをののしり、こう言った。『わたしは多くの戦車を率いて、山々の頂きへ、レバノンの奥深くまで登った。そびえ立つ杉を切り倒し、最も良いいとすぎを切り、その果ての宿、緑豊かな森にまで踏み込んだ。
19:24 わたしは井戸を掘って、よその国の水を飲んだ。足の裏で、エジプトのすべての川を踏んで干上がらせた。』
19:25 あなたは聞いていなかったのか。これはずっと昔にわたしが定めたことだ。大昔にわたしが計画したことを、今、実現させたのだ。だからあなたは、堅固な町々をがれきの山に変えることになった。
19:26 その町に住む人々は力を失い、おののき、恥をかいた。彼らは野の草や若い芽、屋根に生える草、育つ前に焼けてしまう青葉のようになった。
19:27 しかし、あなたが座るのも、出て行くのも、入って来るのも、わたしは知っている。あなたがわたしに向かって怒り狂うことも、みな知っている。
19:28 あなたがわたしに怒り狂い、傲慢に叫ぶ声が、わたしの耳に届いた。だからわたしは、あなたの鼻に鉤をかけ、口にくつわをはめて、あなたが来た道を通って、もと来た所へ引き返させる。』
19:29 ヒゼキヤよ、あなたへのしるしはこうだ。今年はこぼれ落ちた種から生えたものを食べ、来年もひとりでに実ったものを食べる。しかし三年目には、種をまいて刈り取り、ぶどう畑を作ってその実を食べるようになる。
19:30 ユダの家で生き残り、逃れた者たちは、再び下に根を張り、上に実を結ぶ。
19:31 エルサレムから、生き残った者が出て来る。シオンの山から、逃れた者が出て来る。万軍の主の熱い思いが、これをなし遂げる。
19:32 だから、アッシリアの王について、主はこう言われる。『彼はこの都に入らない。ここに矢を射かけることもない。盾を持って攻め寄せることも、土塁を築くこともない。
19:33 来た道を通って、彼はもと来た所へ引き返す。この都に入ることはない』と主は言われる。
19:34 わたしはこの都を守り、救い出す。わたし自身のため、そしてわたしのしもべダビデのためだ。」
19:35 その夜、主の使いが出て行き、アッシリアの陣営で十八万五千人を打ち倒した。朝早く人々が起きてみると、そこにあるのはすべて死体だった。
19:36 アッシリアの王センナケリブは陣を引き払って帰って行き、ニネベにとどまった。
19:37 ある日、彼が自分の神ニスロクの神殿で拝んでいると、息子のアドラメレクとサルエツェルが剣で彼を打ち殺し、アララトの地へ逃げた。そして息子のエサル・ハドンが代わりに王となった。
20:1 そのころ、ヒゼキヤは死ぬほどの病気になった。預言者、アモツの子イザヤが彼のところに来て言った。「主はこう言われる。家のことを整えておきなさい。あなたは死ぬ。もう回復しない。」
20:2 ヒゼキヤは顔を壁のほうに向けて、主に祈った。
20:3 「ああ、主よ、どうか思い出してください。わたしが真実な心で、心を尽くしてあなたの前を歩み、あなたの目に良いことを行ってきたことを。」そしてヒゼキヤは激しく泣いた。
20:4 イザヤがまだ中庭を出ないうちに、主の言葉がイザヤに下った。
20:5 「引き返して、わたしの民の指導者ヒゼキヤに言いなさい。あなたの父ダビデの神、主はこう言われる。わたしはあなたの祈りを聞き、あなたの涙を見た。見よ、わたしはあなたを癒やす。三日目には、あなたは主の神殿に上る。
20:6 わたしはあなたの寿命に十五年を加える。そしてあなたとこの都を、アッシリアの王の手から救い出す。わたしはこの都を守る。わたし自身のため、そしてわたしのしもべダビデのためだ。」
20:7 イザヤは言った。「干しいちじくのかたまりを持ってきなさい。」人々がそれを持ってきて、腫れ物に当てると、ヒゼキヤは回復した。
20:8 ヒゼキヤはイザヤに言った。「主がわたしを癒やし、三日目にわたしが主の神殿に上れる、そのしるしは何ですか。」
20:9 イザヤは言った。「主は語られたことを必ず行われる。その主からのしるしはこれだ。影を十段進ませようか、それとも十段戻らせようか。」
20:10 ヒゼキヤは答えた。「影が十段のびるのは簡単なことです。そうではなく、影が十段後戻りするようにしてください。」
20:11 預言者イザヤが主に呼びかけると、主はアハズの日時計で下っていた影を、十段後戻りさせた。
20:12 そのころ、バビロンの王バルアダンの子ベロダク・バルアダンが、ヒゼキヤが病気だったと聞いて、手紙と贈り物をヒゼキヤに送ってきた。
20:13 ヒゼキヤは使者たちの話を聞き入れ、宝物庫のすべてを彼らに見せた。銀、金、香料、上等の油、武器の倉、そして倉庫にあるすべてのものを見せた。ヒゼキヤが自分の家と国じゅうで彼らに見せなかったものは、何一つなかった。
20:14 預言者イザヤが王ヒゼキヤのところに来て言った。「あの人たちは何と言いましたか。どこから来たのですか。」ヒゼキヤは言った。「遠い国から来ました。バビロンからです。」
20:15 イザヤは言った。「彼らはあなたの家で何を見たのですか。」ヒゼキヤは答えた。「わたしの家にあるものを、彼らはすべて見ました。倉庫の中で見せなかったものは、何一つありません。」
20:16 イザヤはヒゼキヤに言った。「主の言葉を聞きなさい。
20:17 見よ、こういう日が来る。あなたの家にあるすべてのもの、そしてあなたの先祖が今日までたくわえてきたものが、バビロンへ運び去られる。何一つ残らない、と主は言われる。
20:18 またあなたから生まれる息子たち、あなたがもうける子たちのうち、何人かは連れ去られ、バビロンの王の宮殿で宦官となる。」
20:19 ヒゼキヤはイザヤに言った。「あなたが伝えてくれた主の言葉は、良いものだ。」そして彼は思った。「わたしが生きている間、平和と安全が続くのなら、それでいいではないか。」
20:20 ヒゼキヤのその他の出来事、彼が成し遂げたすべての働き、そして池と水路を造り、水を町に引き入れたことは、ユダの王たちの歴史を記した書に書かれている。
20:21 ヒゼキヤは先祖のもとに眠りについた。そして息子のマナセが、代わって王となった。
21:1 マナセは十二歳で王となり、エルサレムで五十五年間、王として治めた。母の名はヘフツィバといった。
21:2 マナセは主の目に悪とされることを行った。主がイスラエルの民の前から追い払われた異民族の、あの忌まわしい習わしをそっくりまねたのだ。
21:3 彼は、父ヒゼキヤが壊した高台の礼拝所をふたたび建て直した。さらにバアルのための祭壇をいくつも築き、イスラエルの王アハブがしたように、アシェラの柱を作った。そして天の星の群れすべてにひれ伏し、それらに仕えた。
21:4 主が「エルサレムにわたしの名を置く」と言われた、その主の神殿の中にまで、彼は祭壇をいくつも築いた。
21:5 また彼は、主の神殿の二つの庭に、天の星の群れすべてのための祭壇を築いた。
21:6 さらに彼は、自分の息子を火の中を通らせていけにえとしてささげ、占いやまじないを行い、霊媒や口寄せに頼った。こうしてマナセは、主の目に悪とされることをいくつも重ね、主を激しく怒らせた。
21:7 彼は、自分で造ったアシェラ像を、その神殿の中に据えた。この神殿について、主はダビデとその子ソロモンにこう言われていた。「この神殿、そしてイスラエルの全部族の中からわたしが選んだエルサレムに、わたしは自分の名をとこしえに置く。
21:8 もしイスラエルが、わたしが命じたことすべてを守り、わたしのしもべモーセが彼らに与えた律法のすべてを守り行うなら、わたしはもう二度と、彼らの先祖に与えたこの地からイスラエルの足をさまよわせることはしない。」
21:9 しかし彼らは聞き従わなかった。マナセが彼らを迷わせ、主がイスラエルの人々の前から滅ぼし去った異邦の民よりも、さらにひどい悪を行わせたのだ。
21:10 そこで主は、しもべである預言者たちを通してこう告げられた。
21:11 「ユダの王マナセは、これらの憎むべきことを行った。彼より前にいたアモリ人がしたどんなことよりも悪いことをし、その偶像によってユダにも罪を犯させた。
21:12 だから、イスラエルの神である主はこう言われる。見よ、わたしはエルサレムとユダに災いをくだす。それを聞く者はみな、両耳が鳴りひびくほどの災いだ。
21:13 わたしはエルサレムに、サマリアを測ったのと同じ測りなわを張り、アハブの家を量ったのと同じ下げ振りをあてる。そして、皿をぬぐって裏返すように、わたしはエルサレムをぬぐい去る。
21:14 わたしは自分のものとして残った民を見捨て、敵の手に渡す。彼らはすべての敵に略奪され、奪い取られるものとなる。
21:15 彼らが、わたしの目に悪とされることを行い、先祖がエジプトを出た日から今日に至るまで、ずっとわたしを怒らせ続けてきたからだ。」
21:16 さらにマナセは、罪のない人の血を非常に多く流し、エルサレムを端から端まで満たすほどだった。これは、彼が主の目に悪とされることを行ってユダに罪を犯させた、その罪に加えてのことである。
21:17 マナセのその他の出来事、彼が行ったことすべて、そして彼が犯した罪は、『ユダの王の歴代誌』に記されているのではないだろうか。
21:18 マナセは先祖と共に眠りにつき、自分の家の庭、すなわちウザの庭に葬られた。そして、その子アモンが代わって王となった。
21:19 アモンは二十二歳で王となり、エルサレムで二年間、王として治めた。母の名はメシュレメトといい、ヨトバ出身のハルツの娘だった。
21:20 アモンは、父マナセと同じように、主の目に悪とされることを行った。
21:21 父が歩んだのと同じ道をすべてたどり、父が仕えた偶像に仕え、それらを拝んだ。
21:22 こうして彼は、先祖の神である主を捨て、主の道を歩まなかった。
21:23 やがてアモンの家臣たちが彼に対して謀反を企て、この王を宮殿の中で殺した。
21:24 しかし国の民は、アモン王に謀反を起こした者たちを全員討ち取った。そして国の民は、その子ヨシヤを代わりの王とした。
21:25 アモンのその他の出来事、彼が行ったことは、『ユダの王の歴代誌』に記されているのではないだろうか。
21:26 アモンはウザの庭にある自分の墓に葬られた。そして、その子ヨシヤが代わって王となった。
22:1 ヨシヤは八歳で王になり、エルサレムで三十一年間、王として治めた。母はボツカテ出身のアダヤの娘で、名をエディダといった。
22:2 ヨシヤは主が見て正しいと認めることを行い、父祖ダビデの歩んだ道をそのまま歩み、右にも左にもそれなかった。
22:3 ヨシヤ王の治世の十八年目のこと。王は書記官シャファンを主の神殿に送った。シャファンはアツァルヤの子で、アツァルヤはメシュラムの子である。王はこう命じた。
22:4 「大祭司ヒルキヤのところへ行ってくれ。主の神殿に納められた銀を集計させるのだ。それは入り口を守る者たちが民から集めたものだ。
22:5 その銀を、主の神殿の工事を任されている監督たちに渡してほしい。監督たちはそれを、神殿で働く職人たちに払って、神殿の傷んだところを直させるのだ。
22:6 つまり、大工や建築の職人、石工に払い、また神殿を直すための木材や切り出した石を買うために使うのだ。
22:7 ただし、彼らに渡した銀の使い道をいちいち問いただす必要はない。彼らは誠実に働いているからだ。」
22:8 大祭司ヒルキヤは書記官シャファンに言った。「主の神殿で律法の書を見つけました。」そしてヒルキヤはその書をシャファンに渡し、シャファンはそれを読んだ。
22:9 書記官シャファンは王のもとに来て報告した。「あなたの家臣たちは神殿にあった銀を集め、主の神殿の工事を任された監督たちに渡しました。」
22:10 さらに書記官シャファンは王に告げた。「祭司ヒルキヤがわたしに一つの書を渡しました。」そしてシャファンはそれを王の前で読み上げた。
22:11 王はその律法の書の言葉を聞くと、自分の服を引き裂いた。
22:12 そして王は、祭司ヒルキヤ、シャファンの子アヒカム、ミカヤの子アクボル、書記官シャファン、王の家臣アサヤに、こう命じた。
22:13 「行って、この見つかった書の言葉について、わたしのため、民のため、ユダのすべての人のために、主に尋ねてほしい。この書に書かれていることを、わたしたちの先祖は聞き従わなかった。だから、わたしたちに向かって燃え上がった主の怒りは大きいのだ。」
22:14 そこで祭司ヒルキヤ、アヒカム、アクボル、シャファン、アサヤは、女預言者フルダのところへ行った。フルダは、衣装を管理していたハルハスの子ティクワの子シャルムの妻で、エルサレムの第二区に住んでいた。彼らは彼女に話しかけた。
22:15 すると彼女は言った。「イスラエルの神、主はこう言われる。あなたたちをわたしのもとに送った人に、こう伝えなさい。
22:16 主はこう言われる。見よ、わたしはこの場所と、そこに住む人々に災いをもたらす。ユダの王が読んだあの書の言葉のとおりに。
22:17 彼らはわたしを捨てて、ほかの神々に香をたき、その手で造ったものによって、ことごとくわたしを怒らせた。だから、わたしの怒りはこの場所に向かって燃え上がり、消えることはない。
22:18 しかし、主に尋ねようとあなたたちを送ったユダの王には、こう伝えなさい。イスラエルの神、主はこう言われる。あなたが聞いた言葉について、
22:19 あなたの心は素直で、わたしがこの場所と、そこに住む人々について、荒れ果てて、のろわれる場所になると告げたのを聞いたとき、あなたは主の前で身を低くした。そして自分の服を引き裂き、わたしの前で泣いた。だから、わたしもあなたの願いを聞いた、と主は言われる。
22:20 だから見よ、わたしはあなたを先祖のもとに集める。あなたは安らかに墓に葬られ、わたしがこの場所にもたらすすべての災いを、その目で見ることはない。」彼らは王にこの言葉を持ち帰った。
23:1 王は使いを送り、ユダとエルサレムの長老たちを全員、自分のもとに集めた。
23:2 そして王は主の神殿に上って行った。ユダの人々、エルサレムに住むすべての人、祭司たち、預言者たち、そして身分の低い者から高い者まで、民全員がいっしょだった。王は、主の神殿で見つかった契約の書の言葉を、すべて彼らに読んで聞かせた。
23:3 王は柱のそばに立ち、主の前で契約を結んだ。それは、心を尽くし、魂を尽くして主に従い、主の命令と定めとおきてを守り、この書に記された契約の言葉を実行する、という約束だった。そして民は全員、その契約に加わった。
23:4 王は大祭司ヒルキヤと、それに次ぐ祭司たち、そして神殿の入り口を守る者たちに命じた。バアルやアシェラ像、天のすべての星々のために作られた道具を、すべて主の神殿から運び出させたのだ。王はそれらをエルサレムの外、キドロンの野で焼き、その灰をベテルへ運ばせた。
23:5 そして王は、ユダの王たちが任命した、偶像に仕える祭司たちを辞めさせた。彼らはユダの町々やエルサレム周辺の高台の祭壇で香をたいていた者たちだ。また、バアルや太陽、月、星座、天のすべての星々に香をたいていた者たちも辞めさせた。
23:6 王はアシェラ像を主の神殿から運び出し、エルサレムの外のキドロン川へ持って行った。そしてキドロン川のほとりでそれを焼き、粉々にすりつぶして、その粉を庶民の墓に投げ捨てた。
23:7 さらに王は、主の神殿の中にあった男娼たちの家を取り壊した。そこは、女たちがアシェラ像のための布を織っていた場所だった。
23:8 王はユダの町々から祭司たちを全員呼び集め、祭司たちが香をたいていた高台の祭壇を、ゲバからベエル・シェバまで汚した。また、町の長ヨシュアの門の入り口にあった、門の祭壇も取り壊した。その祭壇は、町の門を入って左側にあった。
23:9 ただし、高台の祭壇に仕えていた祭司たちは、エルサレムにある主の祭壇には上らなかった。彼らは仲間の祭司たちとともに、種を入れないパンを食べるだけだった。
23:10 また王は、ヒノムの子の谷にあるトフェトを汚した。だれも自分の息子や娘を火の中を通らせて、モレクにささげることがないようにするためだ。
23:11 王は、ユダの王たちが太陽にささげた馬を取り除いた。その馬は、主の神殿の入り口、境内にある宦官ナタン・メレクの部屋のそばにいた。また、太陽にささげられた戦車も火で焼いた。
23:12 王は、アハズの屋上の部屋の上にあった祭壇、つまりユダの王たちが作った祭壇と、マナセが主の神殿の二つの庭に作った祭壇を取り壊した。そして、それらを砕いて、その粉をキドロン川に投げ捨てた。
23:13 また王は、エルサレムの東、破壊の山の南にあった高き所も汚した。そこは、イスラエルの王ソロモンが、シドン人の忌まわしい神アシュトレテのため、モアブの忌まわしい神ケモシュのため、アンモン人の憎むべき神ミルコムのために造った場所だった。
23:14 王は石の柱を打ち砕き、アシェラの柱を切り倒し、その跡を人の骨で満たした。
23:15 さらに王は、ベテルにあった祭壇、つまりイスラエルに罪を犯させたネバトの子ヤロブアムが造った高き所も取り壊した。その祭壇と高き所を壊し、高き所を焼き、粉々に砕いて塵にし、アシェラの柱も焼いた。
23:16 ヨシヤは振り返って、その山にある墓に目を留めた。そして人をやって墓から骨を取り出させ、それを祭壇の上で焼いて、祭壇を汚した。これは、かつて神の人がこのことを叫んで告げた、主の言葉のとおりだった。
23:17 王は尋ねた。「あそこに見える墓標は何なのか。」町の人々は答えた。「あれは、ユダから来た神の人の墓です。その人は、あなたがベテルの祭壇にしたこのことを、前もって叫んで告げた人です。」
23:18 王は言った。「そのままにしておきなさい。だれもその骨を動かしてはならない。」そこで人々はその骨を、サマリアから来た預言者の骨とともに、そのまま残した。
23:19 またヨシヤは、サマリアの町々にあった高き所の神殿もすべて取り除いた。それは、イスラエルの王たちが主を怒らせるために造ったものだった。王は、ベテルでしたのとまったく同じことを、それらにも行った。
23:20 そして、そこにいた高き所の祭司たちを、みな祭壇の上でほふり、その上で人の骨を焼いた。それから王はエルサレムに帰った。
23:21 王は民全体に命じて言った。「この契約の書に書かれているとおり、あなたがたの神、主のために過越の祭りを行いなさい。」
23:22 実は、イスラエルをさばいた士師たちの時代からずっと、また、イスラエルの王たちやユダの王たちの時代を通しても、このような過越の祭りは一度も行われたことがなかった。
23:23 この過越の祭りが、主のためにエルサレムで行われたのは、ヨシヤ王の第十八年のことだった。
23:24 さらにヨシヤは、死者の霊に問う者や霊媒、家の守り神の像、偶像、そしてユダの地とエルサレムで見られたすべての忌まわしいものを一掃した。それは、祭司ヒルキヤが主の神殿で見つけた書に書かれている律法の言葉を、実現するためだった。
23:25 ヨシヤのように、モーセの律法のすべてに従い、心を尽くし、魂を尽くし、力を尽くして主に立ち返った王は、彼より前にはいなかった。彼のあとにも、彼のような王は現れなかった。
23:26 それでも主は、燃えるような激しい怒りを収めることはなかった。マナセが数々のことで主を怒らせたので、その怒りはユダに向かって燃え続けていた。
23:27 主はこう言われた。「イスラエルを退けたように、わたしはユダも自分の前から退ける。わたしが選んだこの都エルサレムも、『わたしの名をそこに置く』と言ったあの神殿も、わたしは捨てる。」
23:28 ヨシヤのその他の行いと、彼がしたことはすべて、『ユダの王たちの歴代誌』に書かれている。
23:29 ヨシヤの時代に、エジプトの王ファラオ・ネコが、アッシリアの王を攻めようとユーフラテス川へ上って行った。ヨシヤ王はこれを迎え撃とうと出て行ったが、ファラオはヨシヤを見るとすぐに、メギドで彼を討ち取った。
23:30 家臣たちはヨシヤの遺体を戦車に乗せ、メギドからエルサレムへ運び、彼の墓に葬った。国の民は、ヨシヤの子エホアハズを立て、油を注ぎ、父に代わって王とした。
23:31 エホアハズは二十三歳で王となり、エルサレムで三か月間、王として治めた。彼の母はリブナ出身のエレミヤの娘で、名をハムタルといった。
23:32 彼は先祖たちがしたことをすべてまねて、主が悪と見なすことを行った。
23:33 ファラオ・ネコは、エホアハズがエルサレムで王であり続けられないように、ハマトの地のリブラで彼を捕らえて縛った。そして、この国に銀百タラント、金一タラントの罰金を科した。
23:34 ファラオ・ネコは、ヨシヤの子エルヤキムを父ヨシヤに代わって王とし、名をエホヤキムと改めさせた。一方、エホアハズは連れ去られ、エジプトへ行き、そこで死んだ。
23:35 エホヤキムは銀と金をファラオに渡した。しかしその銀を納めるために、彼はファラオの命令どおり国に税を課した。国の民一人ひとりに割り当てを決め、銀と金を取り立てて、ファラオ・ネコに渡した。
23:36 エホヤキムは二十五歳で王となり、エルサレムで十一年間、王として治めた。彼の母はルマ出身のペダヤの娘で、名をゼブダといった。
23:37 エホヤキムは、先祖たちがしたことをすべてまねて、主が悪と見なすことを行った。
24:1 彼の時代に、バビロンの王ネブカドネザルが攻め上ってきた。エホヤキムは三年の間、彼に服従した。しかしその後、心を変えて反逆した。
24:2 すると主は、カルデア人の略奪隊、アラム人の略奪隊、モアブ人の略奪隊、アンモン人の略奪隊を彼のもとに送り込んだ。ユダを滅ぼすために彼らをこの地に送ったのである。それは、主がしもべである預言者たちを通して告げていたとおりだった。
24:3 確かにこれは、主の命令によってユダに起こったことだった。マナセが犯したすべての罪のために、主はユダを御前から取り除こうとされたのだ。
24:4 マナセが流した罪のない者の血のためでもあった。彼はエルサレムを、罪のない者の血で満たした。主はそれを赦そうとはされなかった。
24:5 エホヤキムのその他の事績と、彼が行ったことはすべて、『ユダの王の歴代誌』に記されているではないか。
24:6 エホヤキムは先祖たちと共に眠りについた。そして、その子エホヤキンが代わって王となった。
24:7 エジプトの王は、二度と自分の国から出て来ることはなかった。バビロンの王が、エジプト川からユーフラテス川まで、かつてエジプトの王のものだった領土をすべて奪い取ったからである。
24:8 エホヤキンは十八歳で王となり、エルサレムで三か月間、王として治めた。彼の母はエルサレム出身のエルナタンの娘で、名をネフシュタといった。
24:9 エホヤキンは、父がしたことをすべてまねて、主が悪と見なすことを行った。
24:10 そのころ、バビロンの王ネブカドネザルの家来たちがエルサレムに攻め上ってきて、町は包囲された。
24:11 家来たちが町を囲んでいるところに、バビロンの王ネブカドネザル自身もやって来た。
24:12 ユダの王エホヤキンは、母や家来、高官、宮廷の役人たちと共にバビロンの王のもとへ出て行き、降伏した。こうしてバビロンの王は、自分の治世の第八年に、彼を捕らえた。
24:13 そしてバビロンの王は、主の神殿と王宮にあった財宝をすべて運び出した。また、イスラエルの王ソロモンが主の神殿のために作った金の器具を、すべて切り壊した。これは主が前もって告げていたとおりだった。
24:14 彼はエルサレムの人々を、みな捕虜として連れ去った。役人たちも、力ある兵士たちも、その数は一万人。さらに職人や鍛冶職人もすべて連れて行った。あとに残されたのは、その地でいちばん貧しい人々だけだった。
24:15 こうしてバビロンの王は、エホヤキンをバビロンへ連れて行った。王の母や王の妻たち、宮廷の役人たち、そして国の有力者たちも、エルサレムから捕虜としてバビロンへ移した。
24:16 さらに、力ある兵士七千人と、職人や鍛冶職人千人、つまり戦いのできる屈強な者たちを、バビロンの王はみな捕虜としてバビロンへ連れて行った。
24:17 バビロンの王は、エホヤキンのおじマタニヤを代わりに王とし、その名をゼデキヤと改めさせた。
24:18 ゼデキヤは二十一歳で王となり、エルサレムで十一年間、王であった。母の名はハムタルといい、リブナの出身で、エレミヤの娘だった。
24:19 彼は、エホヤキムがしたことをすべてまねて、主の目に悪とされることを行った。
24:20 主がエルサレムとユダに怒りを向けられたので、こうしたことが起こり、ついに主は彼らをご自分の前から追い払われた。そしてゼデキヤは、バビロンの王に反逆した。
25:1 ゼデキヤが王になって九年目の第十の月の十日、バビロンの王ネブカドネザルが全軍を率いてエルサレムに攻めてきた。彼らは町の前に陣を敷き、周りを取り囲むように攻撃用の土塁を築いた。
25:2 こうして町は包囲され、ゼデキヤ王の十一年目まで続いた。
25:3 その第四の月の九日、町の中では飢えがひどくなり、住民の食べる物がまったくなくなった。
25:4 ついに町の城壁が破られた。すると兵士たちは夜のうちに、王の庭園のそばにある二つの城壁の間の門を通って、みな逃げ出した。カルデア人が町を包囲していたが、王はアラバの方へと落ちのびていった。
25:5 しかしカルデアの軍は王を追いかけ、エリコの平原で追いついた。その時には王の兵はみな散り散りになり、王のそばを離れていた。
25:6 彼らは王を捕らえ、リブラにいるバビロンの王のもとへ連れて行った。そこで王は裁きを受けた。
25:7 彼らはゼデキヤの子たちを、本人の目の前で殺した。そしてゼデキヤの両目をつぶし、青銅の鎖でつないで、バビロンへ連れて行った。
25:8 第五の月の七日、これはバビロンの王ネブカドネザルの十九年目にあたる。その日、バビロンの王に仕える親衛隊長ネブザルアダンがエルサレムにやって来た。
25:9 彼は主の神殿と王の宮殿を焼き払った。さらにエルサレムのすべての家、とりわけ大きな建物をことごとく火で焼いた。
25:10 親衛隊長の率いるカルデアの全軍は、エルサレムを取り囲む城壁をすべて壊した。
25:11 親衛隊長ネブザルアダンは、町に残っていた人々、すでにバビロンの王に降伏していた者たち、そして残りの民をみな捕虜として連れ去った。
25:12 ただし親衛隊長は、その地の最も貧しい人々を残し、ぶどう畑や畑を耕す者とした。
25:13 カルデア人は、主の神殿にあった青銅の柱、台座、そして主の神殿にあった青銅の「海」と呼ばれる大きな水盤を打ち砕き、その青銅をバビロンへ運んで行った。
25:14 また彼らは、鍋、灰用のシャベル、芯切りばさみ、皿など、神殿の務めに使うすべての青銅の器を持ち去った。
25:15 火皿と鉢も、金でできた物は金として、銀でできた物は銀として、親衛隊長が持ち去った。
25:16 ソロモンが主の神殿のために造った二本の柱、一つの「海」、そして台座――これらすべての器に使われた青銅の重さは、量りきれないほどだった。
25:17 柱は一本の高さが十八キュビトあり、その上に青銅の柱頭が載っていた。柱頭の高さは三キュビトで、そのまわりには網目模様とざくろの飾りがあり、すべて青銅でできていた。もう一本の柱も、網目模様も含めてこれと同じだった。
25:18 親衛隊長は、祭司長セラヤ、次席の祭司ゼファニヤ、そして三人の門番を捕らえた。
25:19 さらに町から、兵士たちを指揮していた役人一人、町にいた王の側近五人、その地の民を兵として集めていた軍司令官の書記官、そして町にいたその地の民六十人を捕らえた。
25:20 親衛隊長ネブザルアダンは彼らを捕らえ、リブラにいるバビロンの王のもとへ連れて行った。
25:21 バビロンの王はハマトの地のリブラで彼らを打ち殺した。こうしてユダは自分の地から捕らえ移された。
25:22 バビロンの王ネブカドネツァルは、ユダの地に残した人々の上に、シャファンの子アヒカムの子ゲダルヤを任命して治めさせた。
25:23 バビロンの王がゲダルヤを任命したと聞いて、軍の指揮官たちとその部下は、みなミツパにいるゲダルヤのもとへ来た。それはネタンヤの子イシュマエル、カレアの子ヨハナン、ネトファ人タンフメトの子セラヤ、マアカ人の子ヤアザンヤと、その部下たちだった。
25:24 ゲダルヤは彼らとその部下に誓って言った。「カルデア人の役人たちを恐れることはない。この地に住み、バビロンの王に仕えなさい。そうすれば、あなたたちはうまくいく。」
25:25 ところが第七の月に、王家の血を引くエリシャマの子ネタンヤの子イシュマエルが、十人の部下を連れてやって来た。そしてゲダルヤを討ち、殺してしまった。ミツパでゲダルヤと共にいたユダの人々とカルデア人も殺した。
25:26 すると、身分の低い者から高い者まで、民はみな、軍の指揮官たちと一緒に立ち上がり、エジプトへ逃げていった。カルデア人を恐れたからである。
25:27 ユダの王エホヤキンが捕らえられて連れて行かれてから三十七年目のこと。その年の第十二の月の二十七日、バビロンの王エビル・メロダクは、王位についたその年に、ユダの王エホヤキンを牢から出して、その頭を上げさせた。
25:28 そして彼にやさしく語りかけ、バビロンで共にいたほかの王たちよりも高い位を与えた。
25:29 エホヤキンは牢の服を脱ぎ、それからは生きているかぎり、いつも王の前で食事をとった。
25:30 彼の食事は、生きているかぎり毎日欠かさず、王から日ごとに与えられた。
歴代志上
1:1 アダム、セツ、エノス、
1:2 ケナン、マハラルエル、エレド。
1:3 エノク、メトシェラ、レメク。
1:4 ノア、セム、ハム、ヤペテ。
1:5 ヤペテの子はゴメル、マゴグ、マダイ、ヤワン、トバル、メシェク、ティラス。
1:6 ゴメルの子どもたちは、アシュケナズ、リファテ、トガルマ。
1:7 ヤワンの子孫は、エリシャ、タルシシュ、キティム、ロダニム。
1:8 ハムの子孫は、クシュ、ミツライム、プト、カナン。
1:9 クシュの子孫は、セバ、ハビラ、サブタ、ラマ、サブテカ。ラマの子孫は、シェバとデダン。
1:10 クシュにはニムロドという子も生まれた。ニムロドは地上で最初の勇者となった人だ。
1:11 ミツライムからは、ルデ人、アナム人、レハブ人、ナフト人、
1:12 パテロス人、カスルヒム人、カフトル人が生まれた。ペリシテ人はこのカスルヒム人から出た。
1:13 カナンには、長男シドンとヘトが生まれた。
1:14 さらにエブス人、アモリ人、ギルガシ人、
1:15 ヒビ人、アルキ人、シニ人、
1:16 アルワド人、ツェマリ人、ハマト人が生まれた。
1:17 セムの子孫はエラム、アシュル、アルパクサデ、ルデ、アラム、ウズ、ホル、ゲテル、メシェク。
1:18 アルパクサデはシラを生み、シラはエベルを生んだ。
1:19 エベルには二人の息子が生まれた。一人の名はペレグ。彼の時代に地上の人々が分かれたからだ。その弟の名はヨクタンといった。
1:20 ヨクタンからはアルモダデ、シャレフ、ハザル・マベテ、エラが生まれた。
1:21 ハドラム、ウザル、デクラ。
1:22 エバル、アビマエル、シバ。
1:23 オフィル、ハビラ、ヨバブ。これらはみなヨクタンの子である。
1:24 セム、アルパクサド、シェラ、
1:25 エベル、ペレグ、レウ、
1:26 セルグ、ナホル、テラ、
1:27 アブラム、すなわちアブラハムである。
1:28 アブラハムの子どもは、イサクとイシュマエルである。
1:29 イシマエルの子孫は次のとおり。長男はネバヨト、次にケダル、アドベエル、ミブサム、
1:30 ミシュマ、ドマ、マッサ、ハダド、テマ。
1:31 エトル、ナフィシュ、ケデマ。これらはイシュマエルの子孫である。
1:32 アブラハムのそばめケトラが産んだ子どもたちは、ジムラン、ヨクシャン、メダン、ミデアン、イシバク、シュアである。ヨクシャンの子どもたちは、シェバとデダンである。
1:33 ミデアンの子孫はエファ、エフェル、ハノク、アビダ、エルダア。これらはみなケトラの子孫である。
1:34 アブラハムはイサクを生んだ。イサクの子はエサウとイスラエル。
1:35 エサウの子は、エリファズ、レウエル、エウシ、ヤラム、コラ。
1:36 エリパズの子らはテマン、オマル、ゼピ、ガタム、ケナズ、テムナ、アマレク。
1:37 リウエルの子はナハト、ゼラ、シャンマ、ミザ。
1:38 セイルの子孫は、ロタン、ショバル、ツィブオン、アナ、ディション、エツェル、ディシャン。
1:39 ロタンの子はホリとホマム。ロタンの妹はティムナ。
1:40 ショバルの子はアルヤン、マナハテ、エバル、シェフィ、オナム。ツィブオンの子はアヤとアナ。
1:41 アナの子はディション。ディションの子らはハムラン、エシュバン、イテラン、ケラン。
1:42 エゼルの子孫はビルハン、ザワン、ヤアカン。ディションの子孫はウツとアラン。
1:43 ベオルの子ベラ。その都の名はディンハバといった。これは、イスラエルの人々を治める王がまだいなかったころ、エドムの地を治めた王たちである。
1:44 ベラが死んで、ボツラの人ゼラの子ヨバブが代わって王になった。
1:45 ヨバブが死んで、テマン人の地のホシャムが代わって王となった。
1:46 ホシャムが死ぬと、ベダデの子ハダデが代わって王になった。彼はモアブの野でミディアンを打ち破った人だ。彼の町の名はアビテといった。
1:47 ハダデが死んで、マスレカのサムラが代わって王となった。
1:48 サムラが死ぬと、ユーフラテス川のほとりのレホボテ出身のサウルが代わって王になった。
1:49 サウルが死んで、アクボルの子バアル・ハナンが代わって王となった。
1:50 バアル・ハナンが死ぬと、代わってハダドが王になった。その都はパイといった。妻の名はメヘタブエル。マテレデの娘で、マテレデはメ・ザハブの娘だった。
1:51 ハダドも死んだ。エドムの族長は、テムナ侯、アルワ侯、エテテ侯、
1:52 アホリバマ侯、エラ侯、ピノン侯、
1:53 ケナズ侯、テマン侯、ミブザル侯、
1:54 マグデエル侯、イラム侯。これらがエドムの族長である。
2:1 イスラエルの子どもたちは次のとおり。ルベン、シメオン、レビ、ユダ、イッサカル、ゼブルン、
2:2 ダン、ヨセフ、ベニヤミン、ナフタリ、ガド、アシェル。
2:3 ユダの子はエル、オナン、シラの三人で、カナン人シュアの娘がユダに産んだ子である。ユダの長男エルは主の目に悪とされることをしたので、主は彼を殺した。
2:4 ユダの嫁タマルは、ユダとの間にペレツとゼラを産んだ。ユダの息子は全部で五人である。
2:5 ペレヅの子はヘヅロンとハムル。
2:6 ゼラの子はジムリ、エタン、ヘマン、カルコル、ダラの五人。
2:7 カルミの子はアカル。アカルは、神にささげるべき物に手を出して罪を犯し、イスラエルに災いをもたらした者である。
2:8 エタンの子はアザルヤ。
2:9 ヘツロンに生まれた息子は、エラフメエル、ラム、ケルバイである。
2:10 ラムはアミナダブを生んだ。アミナダブはユダ族のリーダー、ナフションを生んだ。
2:11 ナションはサルマをもうけ、サルマはボアズをもうけた。
2:12 ボアズはオベデをもうけ、オベデはエッサイをもうけた。
2:13 エッサイは、長男エリアブ、次にアビナダブ、三番目にシムア、
2:14 第四にナタンエル、第五にラダイ。
2:15 第六にオゼム、第七にダビデが生まれた。
2:16 彼らの姉妹はゼルヤとアビガイル。ゼルヤの子はアビシャイ、ヨアブ、アサヘルの三人だ。
2:17 アビガイルはアマサを産んだ。アマサの父は、イシュマエル人エテルである。
2:18 ヘツロンの子カレブには、妻アズバとエリオテとのあいだに子どもが生まれた。その子どもたちは、エシェル、ショバブ、アルドンである。
2:19 カレブは妻アズバに死なれ、エフラタをめとった。エフラタはカレブとの間にホルを産んだ。
2:20 ホルはウリを生み、ウリはベツァルエルを生んだ。
2:21 そののち、ヘツロンはギレアデの父マキルの娘のところに通った。彼女をめとったとき、ヘツロンは六十歳だった。彼女はヘツロンとの間にセグブを産んだ。
2:22 セグブはヤイルの父となった。ヤイルはギレアデの地に二十三の町を持っていた。
2:23 ゲシュルとアラムは、彼らからハボテ・ヤイルを奪い取った。さらにケナテとその周辺の村々も奪い、あわせて六十の町を手に入れた。これらはみな、ギレアデの父マキルの子孫のものだった。
2:24 ヘヅロンが死んだあと、カレブは父ヘヅロンの妻エフラタと結ばれた。彼女はカレブに、テコアの父アシュルを産んだ。
2:25 ヘツロンの長子エラフメエルの子らは、長子ラム、それにブナ、オレン、オツェム、アヒヤである。
2:26 エラフメエルにはもう一人の妻がいた。名前をアタラといい、オナムの母である。
2:27 ラムはエラフメエルの長男で、その子らはマアツ、ヤミン、エケルである。
2:28 オナムの子はシャンマイとヤダ。シャンマイの子はナダブとアビシュル。
2:29 アビシュルの妻の名はアビハイルといって、アバンとモリデを産んだ。
2:30 ナダブの子はセレデとアッパイム。セレデは子を残さずに死んだ。
2:31 アッパイムの子はイシ。イシの子はセシャン。セシャンの子はアハライである。
2:32 エテルとヨナタン。これはシャンマイの兄弟ヤダの子たちだ。エテルは子どもを残さずに死んだ。
2:33 ヨナタンの子はペレテとザザである。以上がエラフメエルの子孫だ。
2:34 セシャンには男の子がなく、娘だけがいた。セシャンにはヤルハという名のエジプト人の奴隷がいた。
2:35 セシャンは娘を奴隷のヤルハと結婚させた。彼女はヤルハとの間にアッタイを産んだ。
2:36 アッタイはナタンを生み、ナタンはザバドを生み、
2:37 ザバデはエフラルを、エフラルはオベデを生んだ。
2:38 オベデはエヒウを生み、エヒウはアザリヤを生み、
2:39 アザリヤはヘレツを生み、ヘレツはエルアサを生んだ。
2:40 エルアサはシスマイを生み、シスマイはシャルムを生み、
2:41 シャルムはエカムヤを生み、エカムヤはエリシャマを生んだ。
2:42 カレブの子らは、エラフメエルの兄弟である。長男はメシャで、彼はジフの父である。マレシャの子らは、ヘブロンの父である。
2:43 ヘブロンの子らはコラ、タプア、レケム、シェマである。
2:44 シェマはラハムを生んだ。ラハムはヨルコアムの父である。またレケムはシャンマイを生んだ。
2:45 シャンマイの子はマオン。マオンはベテ・ツルの父である。
2:46 カレブのそばめエファは、ハラン、モザ、ガゼズを産んだ。ハランはガゼズをもうけた。
2:47 エダイの子らは、レゲム、ヨタム、ゲシャン、ペレテ、エパ、シャアフである。
2:48 マアカはカレブのそばめで、シェベルとティルハナを産んだ。
2:49 またマデマンナの父シャフを産んだ。それにマクベナの父、ギベアの父であるシワも産んだ。カレブの娘はアクサである。
2:50 これらはカレブの子孫だった。エフラタの長男ホルの子らのうち、ショバルはキルヤト・エアリムを興した人、
2:51 ベツレヘムの父サルマ、ベテガデルの父ハレフである。
2:52 キリアテ・エアリムの父ショバルには、息子たちがいた。ハロエと、メヌコテ人の半分である。
2:53 キリアテ・エアリムの氏族は、イテル人、プト人、シュマ人、ミシラ人だった。この人たちからツォルア人とエシュタオル人が出た。
2:54 ベツレヘムはサルマの子孫だ。ネトファの人々、アタロテ・ベテ・ヨアブ、マナハトの人々の半分、それにツォルアの人々もそうだ。
2:55 またヤベツに住んでいた書記の一族、ティルア人、シメア人、スカ人である。この人たちは、レカブの家の先祖ハマトから出たケニ人である。
3:1 ヘブロンで生まれたダビデの息子たちは、次のとおりである。長男はアムノン。母はイズレエル出身のアヒノアム。次男はダニエル。母はカルメル出身のアビガイル。
3:2 第三はアブサロム。ゲシュルの王タルマイの娘マアカが産んだ子だ。第四はアドニヤ。ハギテが産んだ子だ。
3:3 第五はシパテヤで、母はアビタル。第六はイテレアムで、母は妻のエグラだった。
3:4 この六人はヘブロンでダビデに生まれた。ダビデはそこで七年六か月、エルサレムで三十三年、王として国を治めた。
3:5 エルサレムで生まれた子どもは次のとおり。シメア、ショバブ、ナタン、ソロモンの四人で、みなアミエルの娘バト・シュアから生まれた。
3:6 イブハル、エリシャマ、エリフェレト。
3:7 ノガ、ネペグ、ヤフィア、
3:8 エリシャマ、エルヤダ、エリフェレテの三人。合わせて九人だった。
3:9 これらはみな、ダビデの息子である。このほかに、そばめたちが産んだ息子たちがいた。タマルは彼らの姉妹である。
3:10 ソロモンの子はレハブアム、その子はアビヤ、その子はアサ、その子はヨシャファト、
3:11 その子はヨラム、その子はアハジヤ、その子はヨアシ。
3:12 その子はアマツヤ、その子はアザルヤ、その子はヨタム。
3:13 アハズ、その子はヒゼキヤ、その子はマナセ、
3:14 その子はアモン、その子はヨシヤ。
3:15 ヨシヤの息子たちは、長男がヨハナン、次がエホヤキム、三番目がゼデキヤ、四番目がシャルムである。
3:16 エホヤキムの子孫。その子はエコニア、その子はゼデキヤである。
3:17 エコニヤの子孫。その子アシル、アシルの子シャルティエル、
3:18 マルキラム、ペダヤ、シェンアツァル、エカムヤ、ホシャマ、ネダブヤである。
3:19 ペダヤの子はゼルバベルとシメイ。ゼルバベルの子はメシュラムとハナニヤ。その姉妹はシェロミテ。
3:20 ハシュバ、オヘル、ベレクヤ、ハサドヤ、ユシャブ・ヘセドの五人。
3:21 ハナニヤの子らはペラテヤとエシャヤ。その子はレファヤ、その子はアルナン、その子はオバデヤ、その子はシカニヤである。
3:22 シェカンヤの子はシェマヤ。シェマヤの子はハトシュ、イグアル、バリアハ、ネアルヤ、シャファトの六人である。
3:23 ネアリヤの子は、エルヨエナイ、ヒゼキヤ、アズリカムの三人である。
3:24 エルヨエナイの子はホダウヤ、エルヤシブ、ペラヤ、アックブ、ヨハナン、デラヤ、アナニで、この七人である。
4:1 ユダの子孫はペレツ、ヘツロン、カルミ、フル、ショバル。
4:2 ショバルの子レアヤはヤハテの父、ヤハテはアフマイとラハデの父となった。これらはツォルア人の一族である。
4:3 エタムの子らは、エズレル、イシマ、イデバシ。彼らの姉妹の名はハツェレルポニである。
4:4 ゲドルの父はペヌエル、ホシャの父はエゼルである。これらはベツレヘムの父エフラタの長子ホルの子孫である。
4:5 テコアの父アシュルには、ヘラとナアラという二人の妻がいた。
4:6 ナアラはアシュルとの間に、アフザム、ヘフェル、テメニ、ハアハシュタリを産んだ。これらはナアラの子である。
4:7 ヘラの子らはゼレテ、エゾアル、エテナン。
4:8 コヅはアヌブとゾベバを生んだ。ハルムの子アハルヘルの一族も、彼から出た。
4:9 ヤベツは、その兄弟たちの中でいちばん重んじられる人だった。母親は「わたしは苦しみながらこの子を産んだ」と言って、この子をヤベツと名づけた。
4:10 ヤベツはイスラエルの神に呼びかけて、こう祈った。「どうか、わたしを豊かに祝福してください。わたしの土地を広げ、あなたの手をわたしとともに置いてください。わたしを災いから守り、苦しみを受けさせないでください。」神は、彼が求めたことをかなえてくださった。
4:11 ケルブはシュハの兄弟で、メヒルの父。メヒルはエシトンの父。
4:12 エシュトンは、ベテ・ラファとパセアフ、それにイル・ナハシの父テヒナをもうけた。この人たちがレカの住民である。
4:13 ケナズの子はオテニエルとセラヤ。オテニエルの子はハタテ。
4:14 メオノタイはオフラをもうけた。セラヤはヨアブをもうけた。ヨアブはゲ・ハラシムの父で、この地の人たちは職人だったから、そう呼ばれた。
4:15 エフンネの子カレブの息子たちは、イル、エラ、ナアム。エラの息子はケナズ。
4:16 エハレルエルの子らはジフ、ジファ、ティルヤ、アサルエルである。
4:17 エズラの子らはエテル、メレデ、エペル、ヤロン。そしてメレデの妻はミリアム、シャンマイ、そしてエシテモアの父となるイシバを産んだ。
4:18 マレデのユダヤ人の妻は、ゲドルの父エレデ、ソコの父ヘベル、ザノアの父エクテエルを産んだ。これらは、マレデがめとったファラオの娘ビテヤの子どもたちである。
4:19 ナハムの姉妹であるホデヤの妻が産んだ子らは、ガルム人でケイラの父となった者と、マアカ人エシテモアである。
4:20 シモンの子らはアムノン、リンナ、ベン・ハナン、ティロン。イシの子らはゾヘテと、ゾヘテの子ベン・ゾヘテである。
4:21 ユダの子シラの子孫は次のとおり。レカの父エル、マレシャの父ラダ。それにベテアシベアの、上等な亜麻布を織る職人の一族。
4:22 モアブを支配してレヘムに帰った、ヨキム、コゼバの人々、ヨアシュ、サラフも彼の子孫である。これは古い時代の記録だ。
4:23 これらの人々は陶器を作る職人だった。ネタイムとゲデラに住み、王のもとでその仕事をするために、そこに暮らしていた。
4:24 シメオンの子らは、ネムエル、ヤミン、ヤリブ、ゼラ、シャウル。
4:25 シャルムの子はミブサム、その子はミシマ。
4:26 ミシマの子孫。その子はハムエル、その子はザックル、その子はシメイ。
4:27 シメイには男の子が十六人、女の子が六人いた。でも、その兄弟たちには子どもが多くなかった。彼らの一族はみな、ユダの子孫ほどには数が増えなかった。
4:28 ベエルシバ、モラダ、ハツァル・シュアルに住んだ。
4:29 ビルハ、エゼム、トラデ、
4:30 ベトエル、ホルマ、チクラグ、
4:31 ベテ・マルカボテ、ハザル・スシム、ベテ・ビルイ、シャアライム。ダビデが王になるまで、これらが彼らの町だった。
4:32 エタム、アイン、リンモン、トケン、アシャン。それに、その村々。合わせて五つの町だ。
4:33 またこれらの町の周りには、バアルにいたるまで多くの村があった。これが彼らの住んだところで、彼らはそれぞれ自分の家系の記録を持っていた。
4:34 メショバブ、ヤムレク、アマツヤの子ヨシャ。
4:35 ヨエル。ヨシブヤの子エフ。ヨシブヤはセラヤの子、セラヤはアシエルの子である。
4:36 エルヨエナイ、ヤコバ、エショハヤ、アサヤ、アディエル、エシミエル、ベナヤ、
4:37 およびシピの子ジザ。シピはアロンの子、アロンはエダヤの子、エダヤはシムリの子、シムリはシマヤの子である。
4:38 これらの名を挙げた者たちは、それぞれの氏族の長だった。彼らの家系は大いに増え広がっていった。
4:39 彼らは羊の群れのために牧草地を探して、ゲドルの入口へ向かい、谷の東側まで進んだ。
4:40 豊かで良い牧場を見つけた。その土地は広々として、静かで、平和だった。以前そこに住んでいたのはハムの子孫だったのだ。
4:41 ヒゼキヤがユダの王だった時代に、名前を記された者たちがそこへ行った。そして、そこに住んでいたハム人の天幕と、居合わせたメウニム人を打ち破り、彼らを完全に滅ぼした。それは今日まで続いている。そこには羊の群れのための牧草地があったので、彼らはその地に住み着いた。
4:42 またシメオン族の中から五百人がセイル山へ向かった。イシの子ペラテヤ、ネアリヤ、レパヤ、ウジエルがその先頭に立っていた。
4:43 アマレク人で、逃げのびて残っていた者たちを討ち、彼らは今日までそこに住んでいる。
5:1 ルベンはイスラエルの長男だった。彼の子らについては、こうである。ルベンは確かに長男だったが、父の寝床を汚したので、長男の権利はイスラエルの子ヨセフの子らに移された。だから系図では、長男としては記されていない。
5:2 ユダは兄弟たちの中でいちばん力を持つようになり、その一族から指導者が出た。でも長男としての権利はヨセフのものとなった。
5:3 すなわちイスラエルの長男ルベンの子らは、ハノク、パル、ヘツロン、カルミ。
5:4 ヨエルの子孫。その子はシェマヤ、その子はゴグ、その子はシムイ、
5:5 その子はミカ、その子はレアヤ、その子はバアル、
5:6 ベエラはその子である。このベエラは、アッシリアの王ティグラト・ピレセルが捕えて連れ去った者だ。彼はルベン族のかしらだった。
5:7 兄弟たちは、その氏族ごとに、家系の記録によれば、次のとおりだ。かしらはエイエル、それにゼカリヤ、
5:8 ベラはアザズの子で、アザズはシェマの子、シェマはヨエルの子である。ベラはアロエルに住み、その領地はネボやバアル・メオンにまで広がっていた。
5:9 ギレアデの地で家畜がふえたので、彼らは東の方、ユーフラテス川からその向こうの荒野の入口にまで住んだ。
5:10 またサウルの時代に、彼らはハガル人と戦って勝った。ハガル人は彼らの手にかかって倒れた。こうして彼らはギレアデの東側一帯で、ハガル人の天幕に住むようになった。
5:11 ガドの子孫は、彼らと向かい合ってバシャンの地に、サルカまで広がって住んでいた。
5:12 ヨエルがかしら、次がシャパム、そしてヤアナイとシャパテ。みんなバシャンに住んでいた。
5:13 ミカエル、メシュラム、シェバ、ヨライ、ヤカン、ジア、エベル。彼らの兄弟は、家系でいえばこの七人だった。
5:14 これらはアビハイルの子らである。アビハイルはフリの子、フリはヤロアの子、ヤロアはギレアデの子、ギレアデはミカエルの子、ミカエルはエシシャイの子、エシシャイはヤフドの子、ヤフドはブズの子である。
5:15 アヒはアブディエルの子、アブディエルはグニの子で、彼らの一族の長である。
5:16 ギレアデとバシャン、その周りの村々、そしてシャロンの放牧地の隅々にまで、彼らは住んでいた。
5:17 これらはみな、ユダの王ヨタムの時代と、イスラエルの王ヤロブアムの時代に、系図に登録された。
5:18 ルベン族とガド族、そしてマナセの半部族には、戦いに出られる勇士が四万四千七百六十人いた。彼らはみな盾と剣を取り、弓を引く、戦いに慣れた者たちだった。
5:19 彼らはハガル人、エトル、ネフィシュ、ノダブと戦った。
5:20 戦いに勝つことができ、ハガル人とその味方をすべて打ち破った。彼らが戦いのさなかに神に助けを求めて叫び、神に信頼していたので、神はその願いを聞き入れてくださったのだ。
5:21 彼らは相手の家畜を奪い取った。らくだが五万頭、羊が二十五万頭、ろばが二千頭、そして人が十万人だった。
5:22 多くの兵が討ち取られて倒れた。この戦いは神によるものだったからだ。そして彼らは、捕らえ移されるときまで、その地に代わって住みついた。
5:23 マナセの半部族の人々はこの地に住んだ。そして人口が増え、その勢力はバシャンからバアル・ヘルモン、セニル、ヘルモン山にまで広がった。
5:24 エペル、イシ、エリエル、アズリエル、エレミヤ、ホダウヤ、ヤフディエル──これがその家系の長たちである。彼らは力ある勇士であり、名の知れた者たちで、それぞれの家系の長であった。
5:25 彼らは先祖の神に背いて罪を犯した。そして、神が彼らの前から滅ぼした、その地の民の神々を追い求めて、まるで浮気をするようにこれを慕った。
5:26 イスラエルの神は、アッシリアの王プルの心を、いや、アッシリアの王ティグラト・ピレセルの心を奮い立たせた。それで王は、ルベン族とガド族、そしてマナセの半部族を捕らえて連れ去り、ハラフ、ハボル、ハラ、ゴザン川のほとりに移した。彼らは今もそこにいる。
6:1 レビの子孫はゲルション、ケハト、メラリ。
6:2 コハトの子は、アムラム、イツハル、ヘブロン、ウジエル。
6:3 アムラムの子はアロン、モーセ、そしてミリアム。アロンの子はナダブ、アビフ、エルアザル、イタマル。
6:4 エルアザルからピネハスが生まれ、ピネハスからアビシュアが生まれた。
6:5 アビシュアはブキをもうけ、ブキはウジをもうけた。
6:6 ウジはゼラフヤの父、ゼラフヤはメラヨトの父となった。
6:7 メラヨトはアマルヤを生み、アマルヤはアヒトブを生んだ。
6:8 アヒトブはツァドクの父。ツァドクはアヒマアツの父。
6:9 アヒマアツはアザルヤを生み、アザルヤはヨハナンを生んだ。
6:10 ヨハナンにはアザルヤという子がいた。このアザルヤは、ソロモンがエルサレムに建てた神殿で祭司を務めた人である。
6:11 アザルヤはアマルヤを生み、アマルヤはアヒトブを生んだ。
6:12 アヒトブはツァドクの父。ツァドクはシャルムの父。
6:13 シャルムはヒルキヤを生み、ヒルキヤはアザルヤを生んだ。
6:14 アザルヤはセラヤの父、セラヤはヨツァダクの父となった。
6:15 ヨツァダクは、主がネブカドネツァルの手によってユダとエルサレムの人々を捕らえて連れ去られたとき、共に連れて行かれた。
6:16 レビの子らはゲルショム、コハト、メラリ。
6:17 ゲルショムの子は、リブニとシメイ。
6:18 コハテの子らはアムラム、イヅハル、ヘブロン、ウジエル。
6:19 マフリの子孫はマフリとムシ。これがレビ人の一族で、その先祖をたどると次のようになる。
6:20 ゲルショムの子はリブニ、その子はヤハト、その子はジンマ、
6:21 その子はヨア、その子はイド、その子はゼラ、その子はヤテライ。
6:22 コハテの子はアミナダブ、その子はコラ、その子はアシル、
6:23 エルカナはその子。エブヤサフはその子。アシルはその子。
6:24 その子はタハテ、その子はウリエル、その子はウジヤ、その子はシャウル。
6:25 エルカナの子はアマサイとアヒモテ。
6:26 その子はエルカナ、その子はゾパイ、その子はナハテ、
6:27 その子はエリアブ、その子はエロハム、その子はエルカナ。
6:28 サムエルの子らは、長子ヨエル、次はアビヤ。
6:29 メラリの子はマフリ。その子はリブニ、その子はシムイ、その子はウザである。
6:30 シメアはその子、ハギヤはその子、アサヤはその子である。
6:31 次に挙げるのは、契約の箱が安置されたあと、ダビデが主の神殿での歌の務めを任せた人たちである。
6:32 彼らは、ソロモンがエルサレムに主の神殿を建てるまで、会見の幕屋の前で歌をもって仕えた。そして定められた決まりに従って務めを果たした。
6:33 コハテ族の子孫で、聖歌隊を指揮したのは、次の人たちとその子孫である。ヨエルの子ヘマン。ヨエルはサムエルの子である。
6:34 エルカナの子、エロハムの子、エリエルの子、トアの子。
6:35 ゼフの子はエルカナ、その子はマハト、その子はアマサイ。
6:36 その子はエルカナ、その子はヨエル、その子はアザルヤ、その子はゼパニヤ。
6:37 ゼパニヤはタハテの子、タハテはアシルの子、アシルはエビアサフの子、エビアサフはコラの子、
6:38 コラはイヅハルの子、イヅハルはコハテの子、コハテはレビの子、レビはイスラエルの子である。
6:39 その兄弟アサフは、彼の右に立っていた。アサフはベレクヤの子、ベレクヤはシムアの子である。
6:40 彼はミカエルの子、ミカエルはバアセヤの子、バアセヤはマルキヤの子である。
6:41 エテニの子。エテニはゼラの子、ゼラはアダヤの子。
6:42 アダヤはエタンの子、エタンはジンマの子、ジンマはシメイの子、
6:43 シメイはヤハテの子、ヤハテはゲルションの子、ゲルションはレビの子である。
6:44 メラリの子孫。彼らはアサフの兄弟で、左側に立った。エタン。エタンはキシの子、キシはアブディの子、アブディはマルクの子である。
6:45 ダビデの子孫はハシャブヤ、その子はアマツヤ、その子はヒルキヤである。
6:46 ヒルキヤはアムジの子、アムジはバニの子、バニはセメルの子、
6:47 マフリの子であった。マフリはムシの子、ムシはメラリの子、メラリはレビの子である。
6:48 彼らの兄弟であるレビ人たちは、神の家である幕屋のすべての務めを任されていた。
6:49 アロンとその子たちは、焼き尽くすささげ物の祭壇と、香をたく祭壇で、ささげ物をささげた。こうして最も聖なる場所のすべての務めを行い、イスラエルのために罪の償いをした。すべては、神に仕えたモーセが命じたとおりだった。
6:50 アロンの子孫は次のとおりである。アロンの子はエレアザル、その子はピネハス、その子はアビシュア、
6:51 ボヌキはウジの子、ウジはゼラフヤの子。
6:52 メラヨト、その子はアマルヤ、その子はアヒトブ。
6:53 ツァドクはその子、アヒマアズはその子である。
6:54 アロンの子孫、つまりコハト族の一族が住んだ場所は、次のとおりである。彼らの領地の中の集落ごとに記されている。最初のくじが彼らに当たったからだ。
6:55 人々は、ユダの地にあるヘブロンと、その周りの放牧地を彼らに与えた。
6:56 町の畑と周辺の村々は、エフンネの子カレブに与えられた。
6:57 アロンの子孫には、逃れの町々が与えられた。ヘブロンと、リブナとその放牧地、ヤティルと、エシュテモアとその放牧地である。
6:58 デビルとその放牧地、そしてアシャンとその放牧地。
6:59 アシャンとその放牧地、ベト・シェメシュとその放牧地である。
6:60 また、ベニヤミン族からは、ゲバとその放牧地、アレメテとその放牧地、アナトテとその放牧地が与えられた。彼らの町は、一族ごとに合わせて十三の町だった。
6:61 そのほかのコハトの一族には、くじによって、マナセの半部族の中から十の町が与えられた。
6:62 ゲルショムの子孫には、氏族ごとに、イサカル族、アシェル族、ナフタリ族、それにバシャンにいるマナセ族の中から、十三の町が与えられた。
6:63 メラリの子孫には、氏族ごとに、ルベン族、ガド族、ゼブルン族の中から、くじによって十二の町が与えられた。
6:64 イスラエルの人々は、レビ族に町々と、その周りの放牧地を与えた。
6:65 ユダの子孫の部族、シメオンの部族、そしてベニヤミンの部族から、ここに名前をあげた町々を、くじで割り当てて与えた。
6:66 コハト族の子孫の氏族の一部には、割り当てられた町々がエフライム部族の領地の中にあった。
6:67 人々は彼らに、人を殺した者が逃げ込むための町を与えた。エフライムの山地にあるシケムとその放牧地、それにゲゼルとその放牧地である。
6:68 ヨクメアムとその放牧地、ベテ・ホロンとその放牧地、
6:69 アヤロンとその放牧地、ガト・リモンとその放牧地である。
6:70 マナセの半部族からは、アネルとその放牧地、ビレアムとその放牧地を、コハテの子孫のうち残りの氏族に与えた。
6:71 ゲルションの子孫には、マナセの半部族の中から、バシャンのゴランとその放牧地、アシュタロテとその放牧地が与えられた。
6:72 イッサカル族からはケデシュとその放牧地、ダベラテとその放牧地、
6:73 ラモテとその放牧地、アネムとその放牧地。
6:74 アシェルの部族からはマシャルとその放牧地、アブドンとその放牧地、
6:75 ホコクとその放牧地、レホブとその放牧地。
6:76 ナフタリの部族からは、ガリラヤにあるケデシュとその放牧地、ハンモンとその放牧地、キルヤタイムとその放牧地である。
6:77 残りの人々、つまりメラリの子孫には、ゼブルン族の中からリモノとその放牧地、タボルとその放牧地が与えられた。
6:78 エリコに近いヨルダン川の向こう側、つまりヨルダン川の東側では、ルベンの部族の中から、荒野にあるベツェルとその放牧地、ヤハツとその放牧地、
6:79 ケデモテとその放牧地、メファアテとその放牧地。
6:80 ガドの部族の中からは、ギレアデのラモテとその放牧地、マハナイムとその放牧地、
6:81 ヘシュボンとその放牧地、ヤゼルとその放牧地である。
7:1 イッサカルの子どもたちは、トラ、プア、ヤシュブ、シムロンの四人。
7:2 トラの子は、ウジ、レパヤ、エリエル、ヤフマイ、イブサム、サムエル。彼らはそれぞれ、トラの家系につながる家の長だった。その子孫には力ある勇士が多く、ダビデの時代の記録では、その数は二万二千六百人だった。
7:3 ウジの子はイズラヒヤ。イズラヒヤの子はミカエル、オバデヤ、ヨエル、イシアの五人で、みな一族の長だった。
7:4 その子孫は、氏族ごとに家系をたどると、戦いに出る兵士が三万六千人いた。彼らには妻や子どもが多かったからである。
7:5 イッサカルのすべての氏族のうちの、彼らの親族。系図に登録された勇士は、合わせて八万七千人だった。
7:6 ベニヤミンの子はベラ、ベケル、エディアエルの三人。
7:7 ベラの子はエツボン、ウジ、ウジエル、エリモテ、イリの五人。みんな父祖の家の長で、力ある勇士だった。系図に登録された者は二万二千三十四人いた。
7:8 ベケルの子らは、ゼミラ、ヨアシュ、エリエゼル、エリオエナイ、オムリ、エレモテ、アビヤ、アナトテ、アラメテ。これらはみな、ベケルの子らである。
7:9 彼らは家系ごとに系図に登録された。一族の長たちであり、勇敢な戦士で、その数は二万二百人だった。
7:10 ビルハンの子らはエウシュ、ベニヤミン、エフデ、ケナアナ、ゼタン、タルシシュ、アヒシャハル。
7:11 これらはみな、イデアエルの子孫だった。彼らは氏族の長で、勇敢な戦士たちだった。その中には、戦いに出て行ける兵士が一万七千二百人いた。
7:12 またイルの子らはシュピムとホピム。アヘルの子はホシム。
7:13 ナフタリの子はヤハジエル、グニ、エゼル、シャルム。みなビルハの子である。
7:14 マナセの子らのこと。アスリエルは、そのそばめであるアラムの女が産んだ子である。彼女はまた、ギレアデの父マキルを産んだ。
7:15 マキルはホパムとシュパムの妹で、マアカという女性を妻にした。二番目の子はゼロペハデといい、ゼロペハデには娘だけがいた。
7:16 マキルの妻マアカは男の子を産んで、ペレシと名づけた。その弟の名はシャレシ。シャレシの子はウラムとレケムである。
7:17 ウラムの子はベダン。この人たちは、マナセの子マキルの子であるギレアデの子孫である。
7:18 その姉妹ハンモレケテはイシュホデ、アビエゼル、マフラを産んだ。
7:19 セミダの子らはアフヤン、シェケム、リクヒ、アニアムである。
7:20 エフライムの子はシュテラ。その子はベレデ、その子はタハテ、その子はエラダ、その子はタハテ、
7:21 ザバデはその子、シュテラはその子である。エゼルとエレアデは、その地に生まれたガテの人たちに殺された。彼らが下って行って、その家畜を奪おうとしたからである。
7:22 父エフライムは長い間、そのことを嘆き悲しんだ。それで兄弟たちが来て、彼を慰めた。
7:23 エフライムは妻のもとへ行った。妻は身ごもって男の子を産んだ。エフライムはその子をベリアと名づけた。この家に不幸が起こったからだ。
7:24 エフライムの娘セラは、上と下のベテ・ホロン、そしてウゼン・セラを建てた。
7:25 ベリアの子はレパ。その子はレセフとテラ。その子はタハン。
7:26 ラダンはその子。アミフデはその子。エリシャマはその子。
7:27 その子はヌン、その子はヨシュア。
7:28 エフライムの子孫の領地と住まいは、ベテルとその周りの村々。東の方にはナアラン、西の方にはゲゼルとその村々、シケムとその村々、そしてアワとその村々まで広がっていた。
7:29 マナセの子孫の領地に沿っては、ベテシャンとその周りの村々、タアナクとその周りの村々、メギドとその周りの村々、ドルとその周りの村々があった。ここに、イスラエルの子ヨセフの子孫が住んだ。
7:30 アセルの子どもたちは、イムナ、イシワ、イシュビ、ベリア。そして、彼らの姉妹セラ。
7:31 ベリアの子はヘベルとマルキエル。マルキエルはビルザヒテの父である。
7:32 ヘベルはヤフレテ、ショメル、ホタム、そして姉妹のシュアの父となった。
7:33 ヤフレテの子らはパサク、ビムハル、アシワテ。これらはヤフレテの子らである。
7:34 ショメルの子らはロガ、ホバ、アラム。彼はヘレムの兄弟である。
7:35 ヘレムの子らは、ゾファ、イムナ、シェレシュ、アマル。
7:36 ゾパの子はスア、ハルネフェル、シュアル、ベリ、イムラ、
7:37 ベゼル、ホド、シャンマ、シルシャ、イテラン、ベエラ。
7:38 エテルの子らは、エフンネ、ピスパ、アラ。
7:39 ウラの子はアラ、ハニエル、リヂア。
7:40 これらはみな、アセルの子孫だった。彼らは氏族の長であり、えりぬきの勇士であり、リーダーたちのかしらだった。系図に登録された者のうち、戦いに出て戦える者の数は、二万六千人だった。
8:1 ベニヤミンが生んだ子は、長男がベラ、次男がアシュベル、三男がアハラ。
8:2 第四はノハ、第五はラパ。
8:3 ベラの子らは、アダル、ゲラ、アビフデ、
8:4 アビシュア、ナアマン、アホア。
8:5 ゲラ、シフパム、フラム。
8:6 エホデの子らは、次のとおりである。この人たちはゲバに住む人々の家系の長で、のちにマナハテへ捕らえ移された。
8:7 ナアマン、アヒヤ、ゲラ。このゲラが彼らを捕らえ移し、ウザとアヒフデの父となった。
8:8 シャハライムは、妻ホシムとバアラを離縁したあと、モアブの地で子どもたちをもうけた。
8:9 ヨバブ、ツィブヤ、メシャ、マルカムを妻ホデシとの間にもうけた。
8:10 エウヅ、シャクヤ、ミルマ。これらはシャハライムの子であり、氏族の長である。
8:11 ホシムによって、アビトブとエルパアルをもうけた。
8:12 エルパアルの子はエベル、ミシュアム、シェメド。シェメドはオノとロド、その周りの村々を建てた人である。
8:13 ベリアとシェマもいた。彼らはアヤロンに住む一族の長で、ガテの住民を追い払った者たちである。
8:14 アヒオ、シャシャク、エレモテ、
8:15 ゼバデヤ、アラデ、エデル、
8:16 ミカエル、イシパ、ヨハは、ベリアの子であった。
8:17 ゼバデヤ、メシュラム、ヘゼキ、ヘベル、
8:18 イシメライ、イズリア、ヨバブはエルパアルの子である。
8:19 ヤキム、ジクリ、ザブディ、
8:20 エリエナイ、ツィルタイ、エリエル。
8:21 アダヤ、ベラヤ、シムラテはシムイの子である。
8:22 イシュパン、エベル、エリエル。
8:23 アブドン、ジクリ、ハナン、
8:24 ハナニヤ、エラム、アントテヤ、
8:25 イペデヤとペヌエル。これらはシャシャクの子であった。
8:26 シャムシェライ、シェハルヤ、アタルヤ、
8:27 ヤレシャ、エリヤ、ジクリはエロハムの子たちだった。
8:28 これらは、系図に記された一族の長たちで、指導者だった。彼らはエルサレムに住んでいた。
8:29 ギベオンには、ギベオンの父エイエルが住んでいた。妻の名はマアカといった。
8:30 その長男はアブドン。次にツル、キシ、バアル、ナダブ、
8:31 ゲドル、アヒオ、ザケル。
8:32 ミクロテはシメアを生んだ。彼らもまた、ほかの親族と向かいあって、親族とともにエルサレムに住んだ。
8:33 ネルはキシを生んだ。キシはサウルを生んだ。サウルはヨナタン、マルキ・シュア、アビナダブ、エシュバアルを生んだ。
8:34 ヨナタンの子はメリブ・バアル。メリブ・バアルはミカを生んだ。
8:35 ミカの子はピトン、メレク、タルエア、アハズである。
8:36 アハズはエホアダをもうけた。エホアダはアレメテ、アズマウェテ、ジムリをもうけた。ジムリはモザをもうけた。
8:37 モザはビネアを生んだ。ビネアの子はラファ、ラファの子はエルアサ、エルアサの子はアツェルである。
8:38 アゼルには六人の息子がいた。その名は、アズリカム、ボケル、イシマエル、シェアルヤ、オバデヤ、ハナン。彼らはみなアゼルの息子である。
8:39 その兄弟エセクの子らはこうだ。長男はウラム、次男はエウシュ、三男はエリフェレテである。
8:40 ウラムの子たちは勇敢な戦士で、弓の名手だった。息子や孫がたくさんいて、その数は百五十人にもなった。これらはみな、ベニヤミンの子孫である。
9:1 すべてのイスラエルの人々は系図に登録された。その記録はイスラエルの列王の書にしるされている。一方、ユダの人々は神に背いたため、バビロンへ捕らえ移された。
9:2 その領地の町々に最初に住んだのは、イスラエルの人々、祭司、レビ人、そして神殿に仕える奉仕者たちだった。
9:3 エルサレムには、ユダ族の子孫、ベニヤミン族の子孫、そしてエフライムとマナセの子孫が住んでいた。
9:4 ユダの子ペレヅの子孫のうちでは、アミフデの子ウタイがいた。アミフデはオムリの子、オムリはイムリの子、イムリはバニの子である。
9:5 シロの人では、長男のアサヤとその子たち。
9:6 ゼラの子孫では、エウエルとその親族六百九十人。
9:7 ベニヤミン族のうちでは、ハセヌアの子ホダビヤの、その子メシュラムの子であるサル。
9:8 エロハムの子イブネヤ。ミクリの子ウジ、そのウジの子エラ。そしてイブニヤの子レウエル、そのレウエルの子シパテヤ、そのシパテヤの子メシュラム。
9:9 ならびに彼らの兄弟たちで、系図によれば合わせて九百五十六人。これらの人々は皆、その一族の長であった。
9:10 祭司のうちでは、エダヤ、ヨヤリブ、ヤキン。
9:11 ヒルキヤの子アザリヤ。ヒルキヤはメシュラムの子、メシュラムはザドクの子、ザドクはメラヨテの子、メラヨテはアヒトブの子である。アザリヤは神の宮を管理する責任者だった。
9:12 またエロハムの子アダヤ。エロハムはパシュフルの子、パシュフルはマルキヤの子である。またアデエルの子はマアサイ。アデエルはヤフゼラの子、ヤフゼラはメシュラムの子、メシュラムはメシレミテの子、メシレミテはインメルの子である。
9:13 そのほかに、彼らの兄弟たちがいた。一族の長で、合わせて千七百六十人。みな神の宮の務めを果たすための、すぐれた力を持つ人たちだった。
9:14 レビ族では、ハシュブの子シェマヤ。ハシュブはアズリカムの子、アズリカムはハシャブヤの子で、メラリの子孫にあたる。
9:15 バクバカル、ヘレシュ、ガラル、それにアサフの子ジクリの子であるミカの子マタンヤ。
9:16 オバデヤは、シェマヤの子で、シェマヤはガラルの子、ガラルはエドトンの子だった。そしてベレクヤは、アサの子で、アサはエルカナの子だった。エルカナは、ネトファ人の村々に住んでいた。
9:17 門を守る役目の者は、シャルム、アックブ、タルモン、アヒマン。彼らの兄弟たちもいた。そして、シャルムが責任者だった。
9:18 東の門のところにいた。彼らは今日まで、王の東の門を守っていた。彼らはレビ族のもとで宿営の門を守る者だった。
9:19 シャルムはコレの子であり、コレはエビヤサフの子、エビヤサフはコラの子である。シャルムとその一族、つまり父祖の家に属するコラの一族の兄弟たちは、聖なる幕屋の門を守るという務めを担っていた。彼らの先祖もまた、主の宿営を守り、その入り口を守る者だった。
9:20 エルアザルの子ピネハスが、むかし彼らのリーダーだった。主は彼とともにおられた。
9:21 メシレミヤの子ゼカリヤは、会見の幕屋の入り口を守る門番であった。
9:22 これらはみな、門を守る係として選ばれた人たちで、全部で二百十二人いた。彼らはそれぞれの村で系図に登録されていた。ダビデと先見者サムエルが、彼らをこの務めに任命したのである。
9:23 こうして彼らとその子孫は、主の家である幕屋を守る門番として、その門を管理した。
9:24 門を守る者たちは、東、西、北、南の四方に配置された。
9:25 村々に住む親族たちは、七日ごとに交代でやって来て、彼らと一緒に務めることになっていた。
9:26 門を守る人たちの長である四人のレビ人は、こうして忠実に任務を果たした。彼らは神の家の部屋と宝物を管理する責任を負っていた。
9:27 神の家を守るのは彼らの務めだった。だから彼らは神の家の周りに泊まり、朝ごとにその戸を開けた。
9:28 務の器具の管理を任された者たちもいた。彼らは数を数えて持ち込み、数を数えて持ち出した。
9:29 またある者たちは、器具、つまり聖なる用具のすべてを管理していた。さらに、小麦粉、ぶどう酒、油、乳香、香料も任されていた。
9:30 祭司の一族の中には、香料を調合して香を作る者たちもいた。
9:31 コラ人シャルムの長男で、レビ族のひとりであるマティテヤは、平たいパンを焼く仕事を任されていた。
9:32 コハト族の一族に属する兄弟たちの中には、供えのパンを任され、安息日ごとにそれを整える者たちもいた。
9:33 歌をうたう者たち、レビ族の家系の長たちである。彼らは神殿の部屋に住み、ほかの務めはしなかった。昼も夜も自分の務めにあたっていたからだ。
9:34 これらはレビ人の氏族の長たちで、代々の長であった。彼らはエルサレムに住んでいた。
9:35 ギブオンの父エヒエルはギブオンに住んでいた。その妻の名はマアカといった。
9:36 彼の長男はアブドン、続いてツル、キシュ、バアル、ネル、ナダブ。
9:37 ゲドル、アヒオ、ゼカリヤ、ミクロテである。
9:38 ミクロテはシメアムをもうけた。彼らもまた、その親族とともにエルサレムで、その親族と向かい合って住んでいた。
9:39 ネルはキシを生んだ。キシはサウルを生んだ。サウルはヨナタン、マルキ・シュア、アビナダブ、エシュバアルを生んだ。
9:40 ヨナタンの子はメリブ・バアル。メリブ・バアルはミカを生んだ。
9:41 ミカの子らはピトン、メレク、タレア、アハズである。
9:42 アハズはヤラをもうけた。ヤラはアレメテ、アズマウェテ、ジムリをもうけた。ジムリはモザをもうけた。
9:43 モザはビネアを生んだ。ビネアの子はレファヤ、その子はエルアサ、その子はアツェルである。
9:44 アゼルには六人の息子がいた。その名は、アズリカム、ボケル、イシマエル、シェアルヤ、オバデヤ、ハナン。彼らはみなアゼルの息子である。
10:1 ペリシテ人がイスラエルと戦った。イスラエルの兵士たちはペリシテ人の前から逃げ、ギルボア山で討たれて倒れた。
10:2 ペリシテ人はサウルとその子たちを激しく追撃し、サウルの子ヨナタン、アビナダブ、マルキ・シュアを討ち取った。
10:3 戦いはサウルに激しくのしかかった。射手たちがついにサウルを見つけ、彼は射手たちに射られて深く傷を負った。
10:4 そこでサウルは自分の武器を持つ従者に言った。「剣を抜いて、それでわたしを刺してくれ。そうしないと、あの神を知らない連中がやって来て、わたしをなぶりものにするだろう。」でも従者は、ひどく怖がって引き受けなかった。それでサウルは剣を取り、その上に倒れ込んだ。
10:5 武器を持つ従者は、サウルが死んだのを見て、自分も剣の上に倒れ込んで死んだ。
10:6 サウルはこうして死んだ。三人の息子も、彼の家の者もみな、いっしょに死んだ。
10:7 谷にいたイスラエルの兵たちはみな、味方が逃げ出し、サウルとその子らが死んだのを見た。それで彼らは町々を捨てて逃げた。すると、ペリシテ人がやって来て、そこに住みついた。
10:8 翌日、ペリシテ人は倒れた者たちから武具をはぎ取ろうとやって来た。すると、ギルボア山に倒れているサウルとその息子たちが見つかった。
10:9 サウルの死体から装備をはぎ取り、その首とよろい・かぶとを持ち去った。そして、ペリシテ人の国のあちこちに使いを送り、自分たちの偶像と民にこの知らせを伝えさせた。
10:10 サウルのよろいかぶとを自分たちの神々の神殿に置き、その首をダゴンの神殿にさらした。
10:11 ヤベシ・ギレアデの人々は皆、ペリシテ人がサウルにしたことをすべて聞いた。
10:12 勇士たちは皆立ち上がり、サウルと息子たちの遺体を運び出した。それをヤベシュに持ち帰り、遺骨をヤベシュにある樫の木の下に葬った。そして七日間、断食した。
10:13 こうしてサウルは、主に対して犯した罪のために死んだ。彼は主の言葉を守らず、しかも霊媒に頼って教えを求め、
10:14 主に問うことをしなかった。だから主はサウルを殺し、王の位をエッサイの子ダビデに移された。
11:1 イスラエルの人々はみな、ヘブロンにいるダビデのもとに集まって来て、こう言った。「わたしたちは、あなたと同じ骨肉です。
11:2 先にサウルが王であったころも、イスラエルを率いて戦いに出入りしていたのは、あなたでした。そして、あなたの神、主はあなたにこう言われました。『あなたはわたしの民イスラエルを羊飼いのように導く。あなたがわたしの民イスラエルの指導者となる』」
11:3 すべてのイスラエルの長老たちがヘブロンにいる王のもとにやって来た。ダビデはヘブロンで、主の前で彼らと契約を結んだ。そして彼らは、サムエルを通して告げられた主の言葉のとおりに、ダビデに油を注いでイスラエルの王とした。
11:4 ダビデとイスラエルのすべての人々はエルサレムへ向かった。エルサレムとは、つまりエブスのことだ。そこにはその地の住民であるエブス人が住んでいた。
11:5 エブスの住民はダビデに言った。「ここには入れないぞ。」でも、ダビデはシオンの要害を攻め取った。これがダビデの町である。
11:6 ダビデは言った。「だれでも真っ先にエブス人を討ち取る者を、軍の長とする。」ゼルヤの子ヨアブが真っ先に攻め上ったので、彼が長となった。
11:7 ダビデがその要害に住んだので、人々はこの町をダビデの町と呼んだ。
11:8 ダビデは町の周りを、ミロから四方の囲いまで築いた。ヨアブは町の残りの部分を建て直した。
11:9 こうして、ダビデはますます強く大きくなっていった。天の軍勢を率いる主が、ともにいてくれたからだ。
11:10 これがダビデの勇士たちの主な者である。彼らは、主がイスラエルについて語った言葉のとおりダビデを王にするため、イスラエルのすべての人とともに、その王国で彼を強く支えた者たちだ。
11:11 ダビデに仕えた勇士たちの名簿は次のとおりだ。まずハクモニ人の子ヤショブアム。三勇士の筆頭で、彼は槍をふるって一度に三百人を討ち取った。
11:12 彼の次は、アホ人ドドの子エレアザル。三勇士のひとりだった。
11:13 彼はダビデとともにパス・ダミムにいた。ペリシテ人がそこに集まって、戦おうとしていた。そこには大麦がいちめんに実った畑があった。兵士たちはペリシテ人の前から逃げ出した。
11:14 彼らはその畑の中に踏みとどまってそこを守り、ペリシテ人を討ち取った。こうして主は大きな勝利をもたらして人々を救った。
11:15 ダビデが避難していたアドラムの洞窟の岩場へ、三十人の勇士のうちの三人が下って来た。そのころペリシテ軍はレファイムの谷に陣を張っていた。
11:16 その時ダビデは要害の中におり、ペリシテ人の守備隊はベツレヘムにいた。
11:17 ダビデは無性に飲みたくなって言った。「だれか、ベツレヘムの門のそばにある井戸の水を、わたしに飲ませてくれないだろうか」
11:18 そこで三人はペリシテ人の陣を突き破って進み、ベツレヘムの門のそばにある井戸から水をくみ、ダビデのところへ運んできた。でもダビデはそれを飲もうとせず、主の前に注いで、
11:19 「わたしの神よ、どうかこんなことはさせないでください。命をかけて水をとってきたこの人たちの血を、わたしが飲めるでしょうか。彼らは命がけでこれを持ってきたのです。」こうしてダビデはその水を飲もうとしなかった。三人の勇士は、こうしたことをやってのけた。
11:20 ヨアブの兄弟アビシャイは、その三人の勇士の長だった。彼は槍をふるって三百人に立ち向かい、みんな討ち取った。それでこの三人と並ぶ名声を得た。
11:21 彼は三十人のうちでとくに名を知られ、彼らのリーダーになった。でも、あの三人には届かなかった。
11:22 エホヤダの子ベナヤは、カブツェエル出身の勇士で、数々の手柄を立てた人だ。彼はモアブのアリエルの二人の息子を討ち取った。さらに雪の日には、穴の中に下りて行って、ライオンを討ち取った。
11:23 彼はまた、身長二・二メートルほどもある大男のエジプト人を打ち倒した。そのエジプト人は、機織りの巻き棒のように太い槍を手にしていた。だがベナヤは杖一本で立ち向かい、エジプト人の手から槍をもぎ取ると、その槍で相手を殺した。
11:24 エホヤダの子ベナヤは、こうした働きをして、三勇士に並ぶほどの名声を得た。
11:25 三十人の中では有名だったが、あの三人には及ばなかった。ダビデは彼を護衛の長にした。
11:26 軍団の勇士たちの中には、ヨアブの兄弟アサヘル、ベツレヘム出身のドドの子エルハナン。
11:27 シャモテ、ハロデの人。ヘレツ、ペロンの人。
11:28 テコア出身のイッケシの子イラ。アナトテ出身のアビエゼル。
11:29 シベカイ。フシャ出身。イライ。アホア出身。
11:30 ネトファ出身のマハライ。ネトファ出身のバアナの子ヘレド。
11:31 ベニヤミン族のギベア出身のリバイの子イタイ。ピルアトン出身のベナヤ。
11:32 ガアシの谷のホライ。アルバテ人アビエル。
11:33 バハルム出身のアズマウェテ。シャアルボン出身のエリヤバ。
11:34 ハラルびとシャゲの子ヨナタン。
11:35 ハラル人サカルの子アヒアム。ウルの子エリパル。
11:36 メケラト人ヘフェル。ペロン人アヒヤ。
11:37 カルメル出身のヘツロ。エズバイの子ナアライ。
11:38 ナタンの兄弟ヨエル。ハグリの子ミブハル。
11:39 アンモン人ゼレク。ゼルヤの子ヨアブの武器を持つ者、ベエロテ出身のナハライ。
11:40 イテル人イラ。イテル人ガレブ。
11:41 ヘテ人ウリヤ。アハライの子ザバデ。
11:42 ルベン族シザの子アディナ。彼はルベン族の長で、三十人を率いていた。
11:43 マアカの子ハナン、ミテニ人ヨシャファテ。
11:44 ウジヤ。アシテラテの人。ホタムの子らシャマとエイエル。ホタムはアロエルの人。
11:45 シムリの子エデアエル、およびその兄弟でティツびとのヨハ。
11:46 エリエル、これはマハブ人。エルナアムの子たち、エリバイとヨシャブヤ。イテマ、これはモアブ人。
11:47 エリエル、オベデ、そしてメゾバ出身のヤシエル。
12:1 ダビデがキシの子サウルを避けて、まだチクラグに身をひそめていたころ、彼のもとに来たのは次の人々である。彼らはダビデを助けて戦った勇士たちの一員だった。
12:2 弓を巧みに使う者たちだった。右手でも左手でも、石を投げたり矢を射たりできた。みなベニヤミン族の出身で、サウルと同じ一族だった。
12:3 アヒエゼルを筆頭に、次はヨアシュ。ふたりともギベア出身のシェマアの子である。次にエジエルとペレテ。このふたりはアズマウェテの子である。それからベラカと、アナトテ出身のエヒウ。
12:4 ギベオン出身のイシュマヤ。彼は三十人衆の勇士で、その三十人を率いる者だった。それからエレミヤ、ヤハジエル、ヨハナン、ゲデラ出身のヨザバデ。
12:5 エルアザイ、エリモテ、ベアルヤ、シェマルヤ、それにハルフ人シェファテヤ。
12:6 エルカナ、イシヤ、アザルエル、ヨエゼル、ヤショブアム。以上はコラ人である。
12:7 ヨエラとゼバデヤ。彼らはゲドルの出身で、エロハムの子である。
12:8 ガド族からも、荒れ野の砦にいるダビデのもとへ移ってきた者たちがいた。みな勇敢な戦士で、戦いのために鍛えられた兵士だった。盾と槍を手に、その顔はライオンのようで、山を駆けるカモシカのように素早かった。
12:9 第二はオバデヤ、第三はエリアブ、
12:10 第四はミシュマンナ、第五はエレミヤ、
12:11 第六はアタイ、第七はエリエル。
12:12 ヨハナンは八番目、エルザバデは九番目である。
12:13 ヤコブの子孫では十番目がエレミヤ、十一番目がマクバナイである。
12:14 これらはガドの子孫で、軍隊の長たちである。その最も小さい者でも百人に匹敵し、最も大いなる者は千人に匹敵した。
12:15 これは、第一の月にヨルダン川を渡った者たちだ。そのときヨルダン川は、岸いっぱいにあふれていた。それでも彼らは川を渡り、谷にいる者たちを東へ西へとことごとく追い散らした。
12:16 ベニヤミンとユダの子孫の中の人々が、要害にいるダビデのもとにやって来た。
12:17 ダビデは彼らを迎えに出て、こう言った。「もしあなたたちが、わたしを助けようと友好的に来てくれたのなら、わたしは心からあなたたちと一つになろう。でも、もしわたしを裏切って敵に売り渡すために来たのなら、わたしには何もやましいことはない。だから、わたしたちの先祖の神が見て、さばいてくださるように。」
12:18 すると、霊がアマサイに宿った。彼は三十人の長だった。アマサイはこう言った。「ダビデよ、わたしたちはあなたのものです。エッサイの子よ、わたしたちはあなたと共にいます。あなたに平安がありますように、平安がありますように。あなたを助ける人たちにも平安がありますように。あなたの神が、あなたを助けてくださっているのだから。」ダビデは彼らを迎え入れ、部隊の長にした。
12:19 マナセ族からも、ダビデのもとに寝返って来た者たちがいた。ダビデがペリシテ人といっしょにサウルと戦おうとやって来たときのことだ。でも、この者たちはペリシテ人を助けはしなかった。ペリシテ人の領主たちが相談して、ダビデを送り返したからだ。彼らはこう言った。「あいつは、わたしたちの首をかけてでも、主人サウルのもとに寝返るだろう。」
12:20 ダビデがチクラグへ向かっていたとき、彼のもとに来たのだ。彼らはマナセ族の千人隊の長たち、アデナ、ヨザバデ、エディアエル、ミカエル、ヨザバデ、エリフ、ジルタイである。
12:21 彼らはダビデを助けて敵の略奪隊に立ち向かった。彼らはみな勇敢な戦士で、軍隊の長となった。
12:22 ダビデを助ける者が日ごとに増えていき、ついに神の軍勢のような大軍になった。
12:23 主の言葉どおりサウルの王位をダビデに移そうとして、ヘブロンのダビデのもとに来た、戦いのために武装した軍勢の数は次のとおりである。
12:24 ユダの子孫で、盾とやりを持って戦いに備えた者は、六千八百人。
12:25 シメオンの子孫からは、戦いに強い勇士が七千百人。
12:26 レビの子孫からは、四千六百人。
12:27 ヨヤダはアロンの家系の指導者で、彼とともに三千七百人がいた。
12:28 ザドクは勇敢な若い戦士だった。彼の一族からは、二十二人の隊長が加わった。
12:29 サウルの同族であるベニヤミンの子孫からは三千人。彼らの多くは、それまでサウルの家に仕えて忠義を守っていた。
12:30 エフライムの子孫からは二万八百人。みんな勇士で、それぞれの一族で名の知られた人たちだった。
12:31 マナセの半部族からは一万八千人。みな、ダビデを王に立てるために来るよう、名指しで選ばれた者たちだった。
12:32 イッサカルの子孫からは、時代の流れをよく読み、イスラエルが何をすべきかを知っていた人々が来た。そのかしらは二百人で、その兄弟たちはみな彼らの指図に従った。
12:33 ゼブルンからは、あらゆる武器を手にして戦いに出る、戦いに慣れた者が五万人。彼らは心を一つにして隊列を組んだ。
12:34 ナフタリからは、指揮官が千人。盾と槍を持つ兵が三万七千人、彼らとともにいた。
12:35 ダンからは、戦いの構えを整えた者が二万八千六百人。
12:36 アシェルからは、戦いの備えをして出陣できる者、四万人。
12:37 ヨルダン川の向こう側からは、ルベン族、ガド族、マナセの半部族が来た。彼らはあらゆる戦いの武器を身につけ、その数は十二万人だった。
12:38 これらはみな、戦い慣れた兵士たちで、隊列を組んで戦うことができた。彼らは心をひとつにしてヘブロンに集まった。ダビデを全イスラエルの王にするためだ。そしてイスラエルの残りの人々もみな、心をひとつにしてダビデを王にしようとしていた。
12:39 三日の間、彼らはそこでダビデと共に過ごし、飲み食いした。親族の者たちが彼らのために食料を用意していたからだ。
12:40 それだけでなく、近くに住む人たちも、遠くイッサカル、ゼブルン、ナフタリの地からも、ろばやらくだ、らば、牛に食べ物を積んでやって来た。小麦粉やいちじくの菓子、干しぶどう、ぶどう酒、オリーブ油、それに牛や羊をたくさん運んできた。イスラエルに喜びがあふれていたからだ。
13:1 ダビデは、千人の隊長や百人の隊長、すべての指導者たちと相談した。
13:2 ダビデはイスラエルの人々全員にこう言った。「もしあなたたちがそれを良いと思い、わたしたちの神である主もそれを望んでおられるなら、イスラエルの各地に残っているわたしたちの同胞、そしていっしょに、放牧地のある町々にいる祭司やレビ人たちのところへ使いを送ろう。そして、みんなをわたしたちのところに呼び集めよう。
13:3 神の箱をわたしたちのところに取り戻そう。サウルの時代には、わたしたちはそれをおろそかにしていたのだから。」
13:4 会衆はみな「そうしよう」と言った。それがすべての民にとって正しいことだと思えたからだ。
13:5 ダビデはエジプトのシホルからハマトの入り口まで、イスラエルの人々をみな呼び集めた。キリアト・エアリムから神の箱を運んでくるためだ。
13:6 ダビデとすべてのイスラエルの人々は、バアラ、つまりユダにあるキリアト・エアリムへ上って行った。ケルビムの上に座っておられる主、神の箱をそこから運び上げるためだった。その箱は主の名で呼ばれている。
13:7 神の箱を新しい車に載せて、アビナダブの家から運び出した。ウザとアヒヨがその車を導いた。
13:8 ダビデとイスラエルのすべての人は、歌をうたい、竪琴、琴、タンバリン、シンバル、ラッパを鳴らして、力のかぎり神の前で喜び踊った。
13:9 キドンの脱穀場まで来たとき、牛がつまずいた。それでウザは手を伸ばして、箱をつかもうとした。
13:10 ウザが箱に手を伸ばしたので、主は彼に怒りを燃やして彼を打たれた。彼はその場で神の前に死んだ。
13:11 主がウザを打ち倒したことで、ダビデは怒った。それでその場所は今も「ペレツ・ウザ(ウザを打つ)」と呼ばれている。
13:12 その日ダビデは神を恐れて言った。「これでは、どうやって神の箱をわたしのところへ運べるだろうか」
13:13 それでダビデは、その箱を自分のところ、ダビデの町へは移さなかった。かわりに、ガテ人オベデ・エドムの家に運ばせた。
13:14 神の箱は三か月の間、オベデ・エドムの家に、彼の家族とともにとどまった。主はオベデ・エドムの家族と、彼が持っているものすべてを祝福した。
14:1 ツロの王ヒラムはダビデのもとに使者を送った。そして、ダビデのために家を建てようと、レバノン杉の材木と、石工と大工を送った。
14:2 ダビデは悟った。主が自分をイスラエルの王として堅く立ててくださったこと、そして民イスラエルのために自分の王国を大きく栄えさせてくださったことを。
14:3 ダビデはエルサレムでさらに何人もの妻をめとった。そしてダビデには、息子や娘がまた生まれた。
14:4 ダビデがエルサレムで得た子どもたちの名は、次のとおりである。シャムア、ショバブ、ナタン、ソロモン、
14:5 イブハル、エリシュア、エルペレト、
14:6 ノガ、ネペグ、ヤフィア。
14:7 エリシャマ、ベエルヤダ、エリフェレテである。
14:8 ペリシテ人は、ダビデが油を注がれて全イスラエルの王になったと聞いた。それで彼らは総出でダビデを探しに攻め上ってきた。ダビデはそれを聞いて、彼らを迎え撃とうと出ていった。
14:9 ペリシテ人が攻めてきて、レファイムの谷に広がった。
14:10 ダビデは神に尋ねた。「ペリシテ人に攻め込んでもいいでしょうか。彼らをわたしの手に渡してくださいますか。」すると主はダビデに言われた。「攻め上りなさい。わたしが彼らをあなたの手に渡そう。」
14:11 ダビデたちはバアル・ペラツィムに上って行った。そこでダビデは敵を打ち破った。そしてダビデは言った。「神は、堤防を破って噴き出す水のように、わたしの手で敵を破ってくださった。」だから人々は、その場所をバアル・ペラツィム（破りの主）と呼んでいる。
14:12 ダビデはその場所を火で焼くよう命じた。ペリシテ人が自分たちの神々をそこに置き去りにしていたからだ。
14:13 ペリシテ人がまた、その谷に攻め込んできた。
14:14 ダビデはもう一度神に尋ねた。すると神は言われた。「彼らを追って攻め上ってはいけない。回り込んで、バルサムの木の前から彼らに向かえ。
14:15 バルサムの木のこずえに、行進する足音が聞こえてくる。それが合図だ。そうしたら、戦いに出ていけ。神があなたの先に立って進み出て、ペリシテ軍を討つのだから。」
14:16 ダビデは神が命じたとおりにした。そして彼らはペリシテ人の軍勢を、ギベオンからゲゼルまで撃ち破った。
14:17 ダビデの名声はすべての国々に広まった。そして主は、あらゆる国民が彼を恐れるようにされた。
15:1 ダビデはダビデの町に自分のための家を建てた。そして神の箱を置く場所を用意して、そこに天幕を張った。
15:2 ダビデはこう言った。「神の箱を運んでいいのは、レビ族の人たちだけだ。主が彼らを選んで、主の箱を運ばせ、いつまでも主に仕えさせることにされたからだ。」
15:3 ダビデは、主の箱をそのために用意しておいた場所に運び上げるため、イスラエルの人々をみなエルサレムに集めた。
15:4 ダビデは、アロンの子孫とレビ族を集めた。
15:5 コハテの子孫からは、指導者ウリエルとその兄弟百二十人。
15:6 メラリの子孫からはアサヤを長として、その兄弟二百二十人。
15:7 ゲルショムの子孫からは、ヨエルを長として、その兄弟百三十人。
15:8 エリザパンの子孫からは、シェマヤを長として、その兄弟二百人。
15:9 ヘブロンの子孫からは、エリエルをかしらとして、その兄弟八十人。
15:10 ウジエルの一族からは、族長アミナダブとその兄弟百十二人。
15:11 ダビデは、祭司のザドクとアビヤタル、そしてレビ人のウリエル、アサヤ、ヨエル、シェマヤ、エリエル、アミナダブを呼び寄せた。
15:12 「あなたたちはレビ族の家系の長だ。あなたたちも、あなたたちの兄弟も身を清めなさい。そしてイスラエルの神、主の箱を、わたしが用意した場所へ運び上げるのだ。
15:13 さきにこれを運んだのがあなたがたレビ人でなかったので、わたしたちの神、主はわたしたちを撃たれた。決められたやり方で主を求めなかったからだ。
15:14 祭司たちとレビ人たちは、イスラエルの神である主の箱を運び上げるために、身を清めた。
15:15 レビ人たちは神の箱をかつぎ棒で肩にかついだ。主の言葉にしたがってモーセが命じたとおりに。
15:16 ダビデはレビ人の長たちに、歌い手である仲間を立てるようにと命じた。彼らは竪琴と琴とシンバルの楽器を鳴らし、喜びの声を高らかに響かせるのだ。
15:17 そこでレビ族は、ヨエルの子ヘマンを選んだ。その仲間からはベレクヤの子アサフを、そしてメラリの子孫である仲間からはクシャヤの子エタンを選んだ。
15:18 ゼカリヤ、ヤジエル、シェミラモテ、エヒエル、ウンニ、エリアブ、ベナヤ、マアセヤ、マティテヤ、エリフェレフ、ミクネヤ、そして門番のオベデ・エドムとエイエル。彼らに次ぐ地位にある兄弟たちだ。
15:19 歌う者ヘマン、アサフ、エタンは、青銅のシンバルを打ち鳴らす担当だった。
15:20 ゼカリヤ、アジエル、シェミラモテ、エヒエル、ウンニ、エリアブ、マアセヤ、ベナヤは、アラモテに合わせて竪琴を奏でた。
15:21 マティテヤ、エリフェレフ、ミクネヤ、オベデ・エドム、エイエル、アザズヤは、竪琴を弾いて第八の調子で先導した。
15:22 ケナニヤはレビ人の中で歌をとりしきる長だった。歌の指導をした。それがとても上手だったからだ。
15:23 ベレキヤとエルカナは、箱を守る門番だった。
15:24 祭司シバニヤ、ヨシャファテ、ネタンエル、アマサイ、ゼカリヤ、ベナヤ、エリエゼルは、神の箱の前でラッパを吹き鳴らした。オベデ・エドムとエヒヤは、箱を守る門番だった。
15:25 ダビデとイスラエルの長老たち、そして千人隊の隊長たちは、オベデ・エドムの家から主の契約の箱を運び上げるために出かけた。喜びにあふれながら。
15:26 神が主の契約の箱を担ぐレビ人たちを助けてくださった。それで彼らは雄牛七頭と雄羊七頭をささげた。
15:27 ダビデは亜麻布の上着をまとっていた。箱をかつぐレビ人たち、歌う者たち、そして歌の責任者ケナニヤも同じだった。ダビデは亜麻布のエポデも身につけていた。
15:28 そしてイスラエルの人々はみな、喜びの声をあげ、角笛を吹き鳴らし、ラッパとシンバルを響かせ、竪琴と琴を奏でながら、主の契約の箱をかつぎ上げていった。
15:29 主の契約の箱がダビデの町に入ってきたとき、サウルの娘ミカルが窓から見下ろしていた。そして、ダビデ王が踊りはしゃいでいるのを見て、心の中で彼を軽蔑した。
16:1 人々は神の箱をかつぎ入れ、ダビデがそのために張った天幕の中に安置した。そして、焼き尽くすいけにえと和解のいけにえを神の前にささげた。
16:2 ダビデは、焼き尽くすいけにえと感謝のいけにえをささげ終えると、主の名によって民を祝福した。
16:3 イスラエルの人々みんなに、男にも女にも、一人ひとりにパンを一つと、なつめやしの菓子と、干しぶどうの菓子を分け与えた。
16:4 ダビデはまた、レビ族の中から主の箱の前で仕える者たちを立てた。そして、イスラエルの神である主をたたえ、感謝し、ほめ歌わせた。
16:5 アサフが楽長で、その次がゼカリヤ。エイエル、シェミラモト、エヒエル、マティテヤ、エリアブ、ベナヤ、オベデ・エドム、エイエルも一緒だった。彼らは琴やハープを奏で、アサフはシンバルを打ち鳴らした。
16:6 神の契約の箱の前では、祭司のベナヤとヤハジエルがいつもラッパを吹き鳴らしていた。
16:7 その日、ダビデはアサフと仲間たちを初めて立てて、主に感謝をささげる務めを任せた。
16:8 主に感謝しよう。その名を呼び求めよう。主が成し遂げたことを、いろんな国の人々に伝えよう。
16:9 主に向かって歌おう。主をほめたたえて歌おう。主のすばらしい行いをすべて語り伝えよう。
16:10 その聖なる名を誇りとしよう。主を求める人の心よ、喜べ。
16:11 主とその力を求めよ。いつもその顔を慕い求めよ。
16:12 その方が行った素晴らしいわざを思い出そう。数々の奇跡と、その口から出たさばきを。
16:13 イスラエルの子孫よ、神に仕える者たちよ。ヤコブの子らよ、神に選ばれた者たちよ。
16:14 主はわたしたちの神。その裁きは全地に及ぶ。
16:15 永遠に神の契約を心に留めよ。それは、千代にわたって命じられた約束だ。
16:16 主はアブラハムと結んだ契約、イサクに立てた誓いを、いつまでも心に留めておられる。
16:17 ヤコブのためにこれを定めとして立て、イスラエルのために永遠の契約とした。
16:18 「あなたに、カナンの地を与える。あなたたちが受け継ぐ地として」と言われた。
16:19 わたしたちがまだ数えるほど少なく、その地に身を寄せる旅人だったころに。
16:20 主は彼らを、この国からあの国へ、この王国からほかの民のもとへとさすらわせた。
16:21 神はだれにも彼らを苦しめさせず、彼らのために王たちを叱った。
16:22 主に触れられた者に触れるな。わたしの預言者に危害を加えるな。
16:23 もろもろの民よ、主に向かって歌え、全地よ。日ごとに、主が救ってくださることを伝えよ。
16:24 もろもろの民の中で主の栄光を語り伝え、すべての人々の中でその奇しいわざを語り告げよ。
16:25 主は偉大で、あがめられるべき方。すべての神々を超えて、おそれ敬われる方だ。
16:26 すべての民の神々はむなしい偶像にすぎない。でも、主は天を造られた。
16:27 栄光と輝きが主の御前にあり、力と喜びが主のおられる所にある。
16:28 主よ、諸国の民のすべての家族よ、主をたたえよ。その栄光と力を主に帰せよ。
16:29 主よ、その名にふさわしい栄光を主にささげよ。ささげ物を携えて、そのみ前に進み出よ。聖なる装いをまとって、主にひれ伏せ。
16:30 地よ、そのすべてが主の前でおののけ。世界は堅く据えられ、揺らぐことはない。
16:31 天よ、喜べ。地よ、喜び踊れ。「主が王となられた」と、国々の中で告げよ。
16:32 海と、そこに満ちるものよ、とどろけ。野と、そこにあるすべてのものよ、喜び躍れ。
16:33 それで、森の木々も主の前で喜び歌う。主が地を裁くために来られるからだ。
16:34 主に感謝しよう。主は良い方だから。その慈しみはいつまでも続く。
16:35 そして、こう言おう。「わたしたちを救う神よ、わたしたちを救い、国々の中から集め、助け出してください。あなたの聖なる名に感謝し、あなたをほめたたえることを誇りとするためです。」
16:36 イスラエルの神、主をたたえよう。永遠から永遠まで。すると民はみな「アーメン」と言い、主をほめたたえた。
16:37 ダビデはアサフとその兄弟たちを、そこ、主の契約の箱の前に残した。箱の前でいつも仕え、毎日その日の務めを果たすためである。
16:38 オベド・エドムとその兄弟たちも残した。全部で六十八人だった。エドトンの子オベド・エドムとホサは、門を守る者とされた。
16:39 そして、祭司ツァドクとその仲間の祭司たちを、ギブオンの高台にある主の幕屋の前に残した。
16:40 主に焼き尽くすいけにえをささげるためだった。祭壇の上で、朝と夕方、毎日欠かさずささげた。主の律法に記されたことすべて、主がイスラエルに命じたことのとおりに行うためだった。
16:41 ヘマンとエドトン、そして名指しで選ばれた残りの者たちも彼らとともにいた。主に感謝をささげるためである。その慈しみはとこしえに続くからだ。
16:42 彼らとともにヘマンとエドトンがいた。二人は、音を鳴らす者たちのためにラッパとシンバル、そして神をたたえる楽器を用意していた。エドトンの子たちは門を守る役目についていた。
16:43 みんなそれぞれ自分の家に帰って行った。ダビデも自分の家族を祝福するために家に戻った。
17:1 ダビデが自分の家に住み始めたころ、ダビデは預言者ナタンにこう言った。「見てほしい。わたしはレバノン杉でできた家に住んでいる。それなのに、主の契約の箱は天幕の下に置かれたままだ。」
17:2 ナタンはダビデに言った。「あなたが心に思っていることを、何でもやりなさい。神があなたとともにいるのだから。」
17:3 その夜、神の言葉がナタンに臨んだ。
17:4 「行って、わたしのしもべダビデに伝えなさい。主はこう言われる。わたしが住むための家を建てるのは、あなたではない。
17:5 わたしはイスラエルを導き上ったその日から今日まで、家に住んだことがない。天幕から天幕へ、幕屋から幕屋へと移り歩いてきた。
17:6 わたしはイスラエルのすべての人々と共に、どこを歩んできただろうか。その間に、わたしが自分の民を導くよう命じたイスラエルの指導者の一人にでも、「どうしてわたしのために杉の家を建てないのか」と、ひと言でも言ったことがあるだろうか。
17:7 それゆえ、あなたはわたしのしもべダビデにこう伝えなさい。万軍の主はこう言われる。「わたしはあなたを牧場から、羊を追っていた場所から取り上げ、わたしの民イスラエルを治める者とした。
17:8 わたしはあなたがどこへ行くときも共にいて、あなたの前からすべての敵を消し去った。そして、この地の偉大な人たちの名に並ぶ名を、あなたに与えよう。
17:9 わたしは、わたしの民イスラエルのために一つの場所を用意し、彼らをそこに根づかせる。彼らは自分の土地に安心して住み、もう脅かされることはない。悪い者たちが以前のように彼らを苦しめることも、二度と起こらない。
17:10 わたしがわが民イスラエルの上に指導者たちを立てた時からずっと、そうだった。わたしはあなたの敵をすべて従わせる。そして、主があなたのために家を建てることを、いま告げておく。
17:11 あなたの生涯が終わり、先祖たちのもとへ行くときが来たら、わたしはあなたの息子の一人を、あなたの跡を継ぐ子として立てる。そして、その子の王国をゆるがないものにする。
17:12 彼はわたしのために家を建てる。わたしは彼の王座をいつまでも堅く立てる。
17:13 わたしは彼の父となり、彼はわたしの子となる。わたしの慈しみを彼から取り去ることはしない。あなたの前にいた者から取り去ったようには、決してしない。
17:14 わたしは彼を、わたしの家とわたしの王国にいつまでも置く。彼の王座は永遠に固く立つ。」
17:15 すべてこれらの言葉のとおり、またこの幻のすべてのとおりに、ナタンはダビデに語った。
17:16 ダビデ王は主の前に進み出て座り、こう言った。「主なる神よ、わたしは何者なのでしょう。わたしの家系は何なのでしょう。それなのに、あなたはわたしをここまで導いてくださいました。
17:17 神よ、これでもあなたの目には小さなことでした。あなたはこのしもべの家について、はるか先のことまで語ってくださいました。そして主なる神よ、あなたはわたしを、高い位についた人のように見てくださったのです。
17:18 ダビデはあなたのしもべを、これ以上どんな栄誉あることばで語れるだろう。あなたはこのしもべを知っておられるのだから。
17:19 主よ、あなたはこのすべての偉大なことをなさいました。あなたのしもべのため、あなたの思いのままに。そして、これらすべての大いなることを知らせてくださったのです。
17:20 主よ、あなたのような方はほかにいません。あなた以外に神はいません。わたしたちが自分の耳で聞いてきたすべてのことからも、それははっきりしています。
17:21 地上のどの国が、あなたの民イスラエルのようだろうか。神みずから出て行って、この民を買い戻し、ご自分の民とされた。あなたはエジプトから買い戻したその民の前から、いくつもの国を追い払い、偉大で恐るべきことを行って、あなたの名を上げられたのだ。
17:22 あなたはあなたの民イスラエルを、いつまでもあなたの民とされた。主よ、あなたは彼らの神となられたのだ。
17:23 主よ、今あなたが、僕とその家についてくださった約束を、いつまでも変わらないものとしてください。そして、約束のとおりにしてください。
17:24 そうすれば、あなたの名はとこしえに揺るがず、大いなるものとされる。人々はこう言うだろう。「イスラエルの神、万軍の主こそ、イスラエルの神だ」と。そして、あなたに仕えるダビデの家は、あなたの前で揺るぎなく立ち続ける。
17:25 わたしの神よ、あなたはこのしもべのために家を建てると、わたしに示してくださいました。だからこのしもべは、あなたの前で祈る勇気を持つことができたのです。
17:26 主よ、あなたは神だ。そして、このすばらしいことを、あなたのしもべに約束してくれた。
17:27 主よ、今、あなたはこのしもべの家を祝福してくださいました。それがいつまでもあなたの前に続くためです。主よ、あなたが祝福してくださったのだから、それはいつまでも祝福されるのです。
18:1 この後、ダビデはペリシテ人を攻めて征服した。そして、ペリシテ人の手からガテとその周辺の村々を奪い取った。
18:2 彼はまたモアブを打ち破った。モアブの人々はダビデに従い、みつぎ物を納めるようになった。
18:3 ダビデはツォバの王ハダドエゼルを、ハマテのあたりで打ち破った。ハダドエゼルがユーフラテス川のほとりに自分の支配を打ち立てようとして進軍したときのことである。
18:4 ダビデはハダドエゼルから戦車千台、騎兵七千、歩兵二万を奪い取った。そして戦車を引く馬はすべて足の筋を切ったが、そのうち百台分の馬は残しておいた。
18:5 ダマスコのアラムびとがゾバの王ハダドエゼルを助けるためにやって来た。しかしダビデは、そのアラムびと二万二千人を討ち取った。
18:6 ダビデはダマスコを含むアラムに守備隊を置いた。アラムの人々はみつぎ物を納めてダビデに仕える者となった。主はダビデが行くところどこででも勝利を与えた。
18:7 ダビデはハダドエゼルの家来たちが持っていた金の盾を奪い取り、エルサレムに持ち帰った。
18:8 ハダドエゼルの町テブハテとクンから、ダビデはとても大量の青銅を手に入れた。ソロモンはそれを使って、青銅の海と柱、そして青銅の器を造った。
18:9 ハマテの王トイは、ダビデがゾバの王ハダドエゼルの軍をすべて打ち破ったことを聞いた。
18:10 ハドラムという息子をダビデ王のもとに送り、あいさつと祝いの言葉を伝えさせた。ダビデがハダドエゼルと戦って彼を打ち破ったからである。ハダドエゼルは以前からトウとたびたび戦っていた。ハドラムは金や銀や青銅でできたさまざまな品を持ってきた。
18:11 ダビデ王はこれらを、エドム、モアブ、アンモンの人々、ペリシテ人、アマレクなど、すべての国々から奪ってきた金銀とともに、主にささげた。
18:12 ゼルヤの子アビシャイは、塩の谷でエドム人一万八千人を討ち取った。
18:13 ダビデはエドムに守備隊を置いた。エドムの人々はみなダビデに仕える者となった。主はダビデが行くところどこででも、彼に勝利を与えた。
18:14 こうしてダビデはイスラエル全体を治めた。そして、すべての民のために公正で正しい政治を行った。
18:15 ゼルヤの子ヨアブは軍の司令官、アヒルデの子ヨシャパテは記録官。
18:16 ザドクはアヒトブの子、アビメレクはアビヤタルの子で、この二人は祭司だった。シャウシャは書記官だった。
18:17 ベナヤはエホヤダの子で、ケレテ人とペレテ人を率いていた。そしてダビデの子たちは、王のそばで最も高い地位に就いていた。
19:1 この後、アンモン人の王ナハシュが死んで、その子が代わって王になった。
19:2 ダビデはこう言った。「ナハシの子ハヌンには慈しみを示そう。彼の父がわたしに慈しみを示してくれたのだから。」そしてダビデは、父親を亡くしたハヌンを慰めようと使者たちを送った。ダビデの家来たちは、ハヌンを慰めるためにアンモン人の地にやって来た。
19:3 アンモン人の指導者たちはハヌンに言った。「ダビデがあなたに悔やみを伝える者を送ってきたのは、あなたの父を敬っているからだと思いますか。ダビデの家来たちが来たのは、この地を調べ、探り、偵察して、滅ぼすためではありませんか」
19:4 ハヌンはダビデの家来たちを捕まえた。そしてひげをそり落とし、服を腰のあたりで真ん中から切り落とし、彼らを送り返した。
19:5 ある人たちが来て、この人たちのことをダビデに伝えた。彼らがとても恥ずかしい思いをしていたからだ。それを聞いてダビデは、彼らを迎えに人を送った。そして王は言った。「ひげがのびるまでエリコにとどまって、それから帰ってきなさい。」
19:6 アンモン人は、自分たちがダビデに憎まれるようなことをしてしまったと気づいた。そこでハヌンとアンモン人は、銀千タラントを送って、メソポタミアとアラム・マアカ、そしてツォバから戦車と騎兵を雇い入れた。
19:7 そうして彼らは、戦車三万二千と、マアカの王とその軍隊を雇い入れた。彼らはやって来て、メデバの前に陣を敷いた。一方、アンモン人も自分たちの町々から集まり、戦いに出て来た。
19:8 ダビデはこれを聞くと、ヨアブと勇士たちの全軍を送り出した。
19:9 アンモン人は出て来て、町の入り口に戦いの陣を整えた。応援に来た王たちは、別に野に構えていた。
19:10 ヨアブは、戦いが前からも後ろからも自分に迫っているのを見た。それで、イスラエルのえり抜きの兵士の中から精鋭を選び、アラムの軍に立ち向かうよう配置した。
19:11 そのほかの兵をアビシャイに任せた。アビシャイは自分の兄弟だ。彼らはアンモン人と戦うために陣を整えた。
19:12 もし言った。「もしアラムがわたしより強かったら、あなたが助けに来てほしい。もしアンモンの人たちがあなたより強かったら、わたしが助けに行く。
19:13 勇ましく戦おう。わたしたちの民のため、わたしたちの神の町々のために。そして、主が良いと思われることをなさるように。」
19:14 ヨアブと、彼と一緒にいた兵たちは、アラムの軍に向かって戦おうと進んで行った。すると、アラムの兵たちは彼の前から逃げ出した。
19:15 アンモンの人々は、アラムが逃げたのを見て、彼らもヨアブの兄弟アビシャイの前から逃げ、町に入った。それでヨアブはエルサレムに帰った。
19:16 アラムは、自分たちがイスラエルに打ち負かされたのを見た。それで使者を送り、川の向こう側にいるアラムの軍を呼び寄せた。彼らは、ハダドエゼルの軍の司令官ショファクに率いられていた。
19:17 この事がダビデに伝えられた。ダビデは全イスラエルを集め、ヨルダン川を渡って彼らのところに来て、戦いの陣を整えた。こうしてダビデがアラムに向かって戦いの備えをすると、彼らはダビデと戦った。
19:18 スリヤびとはイスラエルの前から逃げ出した。ダビデはスリヤの戦車の兵七千と歩兵四万を討ち取り、軍の司令官ショパクも打ち殺した。
19:19 ハダドエゼルの家来たちは、自分たちがイスラエルに打ち負かされたのを見て、ダビデと和解し、彼に仕えるようになった。こうしてアラムは、二度とアンモン人を助けようとしなかった。
20:1 春になって、王たちが戦いに出る季節になった。ヨアブは軍を率いてアンモン人の地を荒らし、進軍してラバを包囲した。でもダビデはエルサレムにとどまっていた。ヨアブはラバを攻め落とし、これを破壊した。
20:2 ダビデは彼らの王の頭から冠を取り上げた。その冠は金で、重さは一タラント、宝石もはめ込まれていた。それがダビデの頭に置かれた。ダビデはまた、その町から大量の戦利品を運び出した。
20:3 ダビデは町の住民を連れ出し、のこぎりや鉄のつるはし、おので働かせた。アンモン人のすべての町に、ダビデはこうした。それからダビデと兵たちはみな、エルサレムに帰った。
20:4 この後、ゲゼルでペリシテ人との戦いが起こった。そのとき、フシャ人シベカイが巨人族の末裔のひとりシパイを討ち取り、彼らは屈服させられた。
20:5 ペリシテ人とふたたび戦いが起こった。ヤイルの子エルハナンは、ガテ人ゴリアテの兄弟ラフミを討ち取った。ラフミの槍の柄は、機織りの巻き棒のように太かった。
20:6 ガテでまた戦いが起きた。そこに体の大きな男がいて、その手足の指は六本ずつ、合わせて二十四本あった。この男もあの巨人の子孫だった。
20:7 彼はイスラエルを侮辱した。すると、ダビデの兄弟シムアの子ヨナタンが彼を討ち取った。
20:8 これらはガテで巨人の子として生まれた者たちだった。そして、ダビデとその家来たちの手にかかって倒れた。
21:1 サタンが立ち上がり、イスラエルに敵対した。そしてダビデをそそのかし、イスラエルの人口を数えさせようとした。
21:2 ダビデはヨアブと軍の指揮官たちに言った。「さあ、ベエルシバからダンまでのイスラエルの人々を数えてきてほしい。その数をわたしに報告してくれ。わたしはその数を知りたいのだ。」
21:3 ヨアブは答えた。「主が、その民を今の百倍にも増やしてくださいますように。でも、王わが主よ、彼らはみんな、あなたの家来ではありませんか。どうしてわが主は、こんなことをお求めになるのですか。どうしてイスラエルに罪を負わせようとなさるのですか。」
21:4 しかし王の命令がヨアブの反対を押し切った。それでヨアブは出て行き、イスラエル全土を巡り歩いて、エルサレムに帰って来た。
21:5 ヨアブは民を数えた結果をダビデに報告した。剣を使える兵士は、イスラエルに百十万人、ユダに四十七万人いた。
21:6 ヨアブは王の命令に納得していなかった。だから、その数の中にレビ族とベニヤミン族は入れなかった。
21:7 この事は神の目に悪と映った。それで神はイスラエルを打たれた。
21:8 ダビデは神に言った。「わたしはこんなことをして、大きな罪を犯してしまいました。どうか今、このしもべの罪を取り除いてください。わたしは本当に愚かなことをしました。」
21:9 主はダビデにつく預言者ガドに、こう告げた。
21:10 「行ってダビデにこう伝えなさい。主はこう言われる。わたしはあなたに三つのことを示す。その中から一つを選びなさい。わたしはそれをあなたにしよう。」
21:11 ガドはダビデのところに来て言った。「主はこう言われる。三つのうちから選びなさい。
21:12 三日の間、主の剣、すなわち疫病がこの地に襲いかかり、主の使いがイスラエル全土で滅ぼしてまわる。さあ、わたしを送った方に何と答えればいいか、よく考えて決めてほしい」
21:13 ダビデはガドに言った。「わたしは本当に苦しい。でも、主のあわれみはとても大きいから、主の手に任せたい。人の手には落ちたくない。」
21:14 そこで主はイスラエルに疫病を送られた。イスラエルの人々のうち、七万人が倒れた。
21:15 神はエルサレムを滅ぼすために天使を送った。でも天使が滅ぼそうとしたそのとき、主はそれをご覧になり、この災いを思い直された。そして、滅ぼそうとしていた天使に言われた。「もう十分だ。今、その手を止めなさい。」そのとき、主の天使はエブス人オルナンの脱穀場のそばに立っていた。
21:16 ダビデが目を上げて見ると、主の使いが天と地の間に立っていた。手には抜いた剣を持ち、それをエルサレムの上にかざしている。ダビデと長老たちは、荒布をまとってひれ伏した。
21:17 わたしは神に言った。「民を数えよと命じたのは、このわたしではありませんか。罪を犯し、悪いことをしたのは、このわたしです。でも、この羊たちが何をしたというのでしょう。わたしの神、主よ、どうかあなたの手を、わたしと、わたしの一族に向けてください。あなたの民には、災いを下さないでください。」
21:18 時に主の使いはガドに命じ、ダビデにこう伝えさせた。「ダビデよ、上って行き、エブス人オルナンの麦打ち場に、主のための祭壇を築きなさい。」
21:19 ダビデは、ガドが主の名によって告げた言葉のとおりに上って行った。
21:20 そのときオルナンは麦を打っていた。ふと振り返ると、あの天使が見えた。いっしょにいた四人の息子たちは身を隠した。
21:21 ダビデがオルナンのところへ来ると、オルナンは目を上げてダビデに気づいた。そして脱穀場から出て来て、地面にひれ伏してダビデにおじぎをした。
21:22 ダビデはオルナンに言った。「この脱穀場の土地をわたしに譲ってほしい。ここに主のための祭壇を建てたいのだ。ちゃんとした値段で、全額を払って譲ってくれ。そうすれば、民に下る災いが止まるだろう。」
21:23 オルナンはダビデに言った。「どうぞ、お取りください。王であるわたしの主君が、良いと思われるとおりになさってください。ご覧のとおり、この牛は焼き尽くすいけにえ用に、脱穀機はたきぎに、小麦は穀物のささげ物用に差し上げます。すべて差し上げます。」
21:24 ダビデ王はオルナンに言った。「いや、わたしはきちんとした代金を払って買う。あなたのものを主のために取り上げたりしないし、ただで焼き尽くすいけにえをささげることもしない。」
21:25 それでダビデは、その土地の代金として金六百シケルをはかってオルナンに払った。
21:26 ダビデはその場所に主のための祭壇を築き、焼き尽くすいけにえと交わりのいけにえをささげて、主に祈った。すると主は天から祭壇の上に火を下して、その祈りに答えられた。
21:27 主が天使に命じると、天使は剣をさやに納めた。
21:28 その時ダビデは、エブス人オルナンの脱穀場で主が自分に答えてくれたのを見て、そこでいけにえをささげた。
21:29 モーセが荒野で造った主の幕屋と、焼き尽くすいけにえをささげる祭壇は、そのときギブオンの高台にあった。
21:30 しかしダビデは、その前に行って神に求めることができなかった。主の使いの剣を恐れていたからだ。
22:1 それでダビデは言った。「これが主なる神の家だ。そしてこれが、イスラエルのための焼き尽くすいけにえをささげる祭壇だ。」
22:2 ダビデは命じて、イスラエルの地に住む外国人を集めさせた。そして、神の家を建てるための切り石を切り出す石工を配置した。
22:3 ダビデはまた、門のとびらのくぎやかすがいに使う鉄を、たくさん用意した。さらに、量りきれないほど大量の青銅も用意した。
22:4 また、レバノン杉も数えきれないほど用意した。シドンの人々とツロの人々が、ダビデのところにレバノン杉を大量に運んできたからだ。
22:5 ダビデは言った。「わたしの子ソロモンはまだ若く、経験も足りない。だが主のために建てる神殿は、この上なく壮大で、世界中に名が知れわたり、輝きを放つものでなければならない。だから、わたしが今その準備をしておこう。」こうしてダビデは、死ぬ前に多くの物資を用意した。
22:6 ダビデはその子ソロモンを呼び、イスラエルの神である主のために神殿を建てるよう命じた。
22:7 ダビデはソロモンに言った。「わが子よ、わたしは神である主の名のために神殿を建てたいと、ずっと心に思ってきた。
22:8 ダビデよ、主の言葉がわたしにこう告げられた。『あなたは多くの血を流し、大きな戦いをいくつも行ってきた。あなたはわたしの目の前で、地に多くの血を流した。だから、わたしの名のために家を建ててはならない。
22:9 見よ、あなたに男の子が生まれる。その子は安らぎの人となる。わたしは彼を、周りのすべての敵から守り、安らぎを与える。彼の名はソロモンと呼ばれる。彼の世に、わたしはイスラエルに平和と穏やかさを与えるからだ。
22:10 彼はわたしの名のために神殿を建てる。彼はわたしの子となり、わたしは彼の父となる。わたしは彼の王国の位を、いつまでもイスラエルの上に堅く立てる。』
22:11 それでわが子よ、どうか主が共にいてくださるように。そしてあなたが栄えて、主が約束されたとおり、あなたの神、主の家を建てられるように。
22:12 主があなたに思慮と知恵を授け、イスラエルを治める権威を与えてくださるように。そして、あなたの神である主の教えを守らせてくださるように。
22:13 あなたがもし、主がイスラエルについてモーセに命じた定めと掟を守り行うなら、あなたは栄える。強く、雄々しくあれ。恐れてはならない。おののいてはならない。
22:14 見よ、わたしは苦しみのなかで、主の家のために金を十万タラント、銀を百万タラント用意した。青銅と鉄は、量りきれないほどたくさんある。木材と石も用意した。あなたはこれに、さらに加えていけばいい。
22:15 あなたには大勢の職人がいる。石を切り出す者、石や木を加工する職人、あらゆる作業に熟練した者たちだ。
22:16 金、銀、青銅、鉄も数えきれないほどある。さあ、立ち上がって取りかかりなさい。主があなたと共にいてくださるように」
22:17 ダビデはまた、イスラエルのすべての指導者たちに、その子ソロモンを助けるように命じて言った。
22:18 主はあなたがたの神。その主が、あなたがたと共にいてくれるではないか。まわりのすべての敵からあなたがたを守り、休ませてくれたではないか。主はこの地に住む者たちを、わたしの手に引き渡してくれた。だからこの地は、主とその民の前に屈服したのだ。
22:19 今、心と魂のすべてを注いで、あなたがたの神、主を求めなさい。立ち上がって、神である主の聖なる場所を建てなさい。主の名のために建てるその宮に、主の契約の箱と、神の聖なる器具の数々を運び入れるためだ。
23:1 ダビデは年老いて、じゅうぶんに長く生きた。そして息子のソロモンをイスラエルの王とした。
23:2 ダビデはイスラエルのすべての指導者たちと、祭司とレビ人を集めた。
23:3 レビ族で三十歳以上の者を数えると、その男たちの数は、一人ひとり数えて三万八千人だった。
23:4 ダビデはこう言った。「そのうち二万四千人は主の神殿の仕事を受け持つ。六千人は役人と裁判官になる。
23:5 四千人は門を守り、また四千人は主をたたえるためにわたしが造った楽器で主をほめたたえる。」
23:6 ダビデは彼らをレビの子であるゲルション、コハト、メラリの家系にしたがって、それぞれの組に分けた。
23:7 ゲルションの子はラダンとシメイ。
23:8 ラダンの子らは、かしらのエヒエルと、ゼタムと、ヨエルの三人。
23:9 シメイの子はシェロミテ、ハジエル、ハランの三人。この人たちはラダンの氏族の長だった。
23:10 シメイの子らはヤハテ、ジザ、エウシュ、ベリアの四人だった。彼らはシメイの子である。
23:11 ヤハテはかしら、ジザは二番目だった。エウシとベリアには息子が多くなかった。だから二人はまとめて数えられ、一つの家系となった。
23:12 コハテの子はアムラム、イツハル、ヘブロン、ウジエルの四人。
23:13 アムラムの子はアロンとモーセである。アロンは、いと聖なるものを聖別する務めのために選び分けられた。アロンとその子孫は、いつまでも主の前で香をたき、主に仕え、主の名によって祝福することになった。
23:14 神の人モーセの子らは、レビ族の一員として数えられた。
23:15 モーセの子らはゲルショムとエリエゼル。
23:16 ゲルションの子らのかしらは、シブエル。
23:17 エリエゼルの子は、かしらのレハブヤ。エリエゼルにはほかに子がいなかった。でも、レハブヤの子はとても多かった。
23:18 イヅハルの子らは、そのかしらはシェロミテ。
23:19 ヘブロンの子らは、長男がエリヤ、次がアマリヤ、三番目がヤハジエル、四番目がエカムアム。
23:20 ウジエルの子らは、かしらがミカ、次がイシア。
23:21 メラリの子はマフリとムシ。マフリの子はエルアザルとキシ。
23:22 エルアザルは、息子がなく娘だけを残して死んだ。それで、彼女たちの親族であるキシの息子たちが、彼女たちを妻に迎えた。
23:23 ムシの子はマフリ、エデル、エレモテの三人。
23:24 これらは氏族ごとに分けられたレビの子孫である。名簿に名前と人数が記録され、氏族の長とされた者たちで、主の神殿の仕事にあたる二十歳以上の者だった。
23:25 ダビデはこう言っていた。「イスラエルの神、主はご自分の民に安らぎを与え、いつまでもエルサレムに住まわれる。
23:26 レビびとはもう、幕屋やそのために使う道具を運ぶ必要がない。
23:27 ダビデの最後の指示によって、レビ族は二十歳以上の者が数えられた。
23:28 彼らの務めは、アロンの子孫を助けて主の家の働きをすることだった。庭やへやの仕事をし、聖なるものすべてを清め、そのほか神の家のあらゆる働きをするのである。
23:29 また、供え物として並べるパン、穀物のささげ物に使う上等の小麦粉、種を入れずに焼いた薄いパン、鉄板で焼いたささげ物、油を練り込んだささげ物を用意する仕事も受け持った。さらに、あらゆる分量やサイズを量る仕事も担当した。
23:30 朝ごとに立って主に感謝し、賛美をささげる。夕方にも同じようにする。
23:31 安息日、新月の祭り、そのほかの祭りのときには、主に焼き尽くすいけにえをささげる。決められた数のとおりに、いつも主の前でささげ続けるのだ。
23:32 会見の幕屋の務めと聖所の務め、そして親族であるアロンの子らへの務めを果たし、主の宮の働きに仕えるのだ。」
24:1 アロンの子孫の組分けは次のとおり。アロンの子はナダブ、アビフ、エレアザル、イタマルである。
24:2 ナダブとアビフは父より先に死に、子どもがいなかった。それで、エルアザルとイタマルが祭司を務めた。
24:3 ダビデはエレアザルの子孫ザドクと、イタマルの子孫アヒメレクの助けを借りて、彼らを組に分け、それぞれの務めにつかせた。
24:4 エレアザルの子孫にはイタマルの子孫よりも、リーダーとなる人が多く見つかった。それで、彼らはこう分けられた。エレアザルの子孫からは家系の長が十六人、イタマルの子孫からはその家系の長が八人だった。
24:5 このように、彼らはエレアザルの子孫もイタマルの子孫も、みなくじで分けられた。聖なる務めをつかさどる者も、神に仕える者たちの長も、どちらの家系からも出ていたからだ。
24:6 ダビデの前で、レビ人ネタネルの子である書記シマヤが、彼らの名を書き記した。王とその高官たち、祭司ザドク、アビヤタルの子アヒメレク、そして祭司とレビ人の家系の長たちの前でのことだった。エレアザルの家系から一つ取ると、次はイタマルの家系から一つ取る、というように順番に分けていった。
24:7 第一のくじはヨヤリブに、第二はエダヤに当たった。
24:8 第三はハリムに、第四はセオリムに、
24:9 第五はマルキヤに、第六はミヤミンに、
24:10 第七はハコツに、第八はアビヤに。
24:11 第九はエシュアに、第十はシェカニヤに。
24:12 第十一はエリアシブに、第十二はヤキムに、
24:13 第十三はフパに、第十四はエシブアブに。
24:14 第十五はビルガに、第十六はインメルに、
24:15 第十七のグループはヘジルに、第十八はハピツェツに割り当てられた。
24:16 第十九はペタフヤに、第二十はエゼキエルに。
24:17 第二十一はヤキンに、第二十二はガムルに。
24:18 第二十三はデラヤに、第二十四はマアジヤに当たった。
24:19 これは、彼らの先祖アロンによって定められたやり方にしたがって、主の家に入って務めを果たすための順番である。イスラエルの神である主がアロンに命じたとおりだ。
24:20 このほかのレビの子孫は次のとおり。アムラムの子らのうちではシュバエル。シュバエルの子らのうちではエフデヤ。
24:21 レハブヤについて。レハブヤの子らの中では、長男のイシア。
24:22 イヅハルの子孫のうちではシェロモテ。シェロモテの子孫のうちではヤハテ。
24:23 ヘブロンの子らは、長男がエリヤ、次がアマリヤ、三番目がヤハジエル、四番目がエカムアム。
24:24 ウジエルの子らのうちではミカ。ミカの子らのうちではシャミル。
24:25 ミカの兄弟はイシア。イシアの子孫の中ではゼカリヤ。
24:26 メラリの子はマフリとムシ。ヤアジヤの子はベノ。
24:27 メラリの子孫のうち、ヤアジヤから出た者はベノ、ショハム、ザックル、イブリ。
24:28 マヘリの子はエレアザル。エレアザルには息子がいなかった。
24:29 キシについては、キシの子はエラフメエル。
24:30 ムシの子らはマフリ、エデル、エリモテ。これらはレビ族の子孫で、氏族ごとに分けられた者たちである。
24:31 これらの者もまた、アロンの子孫である兄弟たちと同じように、くじを引いた。ダビデ王、ザドク、アヒメレク、それに祭司とレビ人の氏族の長たちの前でのことだ。氏族の長も末の弟も、みな同じようにくじを引いた。
25:1 ダビデと軍の指揮官たちは、アサフ、ヘマン、エドトンの子らを、特別な務めのために選び分けた。彼らは竪琴や琴、シンバルに合わせて預言する者たちだった。この務めにあたった人々の数は、次のとおりである。
25:2 アサフの子たちはザックル、ヨセフ、ネタニヤ、アサレラで、アサフの指揮のもとにいた。アサフは、王の指示によって預言する務めを果たしていた。
25:3 エドトンについては、その子たちはゲダルヤ、ツェリ、エシャヤ、ハシャブヤ、マティテヤの六人で、父エドトンの指揮のもとにいた。エドトンは琴を弾きながら、主に感謝し、賛美して預言した。
25:4 ヘマンについては、その子たちはブッキヤ、マタンヤ、ウジエル、シェブエル、エリモト、ハナンヤ、ハナニ、エリアタ、ギダルティ、ロマムティ・エゼル、ヨシュベカシャ、マロティ、ホティル、マハジオトである。
25:5 これらはみな、ヘマンの子たちだった。ヘマンは、神の言葉によって王に仕える先見者で、神は彼の角を高く上げると約束されていた。神はヘマンに、男の子十四人と女の子三人を与えた。
25:6 これらの者は皆、父親の指揮のもとで、主の神殿で歌をうたった。シンバルや竪琴や琴を奏でて、神の神殿の礼拝の務めを果たしたのだ。彼らは王と、アサフ、エドトン、ヘマンの指揮のもとにあった。
25:7 二百八十八人。彼らは主に歌をささげるために訓練を受けた、兄弟姉妹たちみんなだ。全員が歌の名手だった。
25:8 彼らは、小さい者も大きい者も、教師も生徒も、みな同じように、務めを果たすためにくじを引いた。
25:9 第一のくじは、アサフの家系のヨセフに当たった。二番目はゲダルヤに当たった。彼と、その兄弟たち、息子たちで、合わせて十二人だった。
25:10 第三の組はザックル。その子たちと兄弟たち、合わせて十二人。
25:11 第四の組はイヅリ。その子たちと兄弟たち、合わせて十二人。
25:12 第五の組はネタニヤ。その子たちと兄弟たち、合わせて十二人。
25:13 第六の組はブッキヤ。その子たちと兄弟たち、合わせて十二人。
25:14 第七の組はエサルエラ。その子たちと兄弟たち、合わせて十二人。
25:15 第八の組はエサヤ。その子たちと兄弟たち、合わせて十二人。
25:16 第九の組はマッタニヤ。その子たちと兄弟たち、合わせて十二人。
25:17 第十の組はシメイ。その子たちと兄弟たち、合わせて十二人。
25:18 第十一の組はアザルエル。その子たちと兄弟たち、合わせて十二人。
25:19 第十二の組はハシャビヤ。その子たちと兄弟たち、合わせて十二人。
25:20 第十三の組はシュバエル。その子たちと兄弟たち、合わせて十二人。
25:21 第十四の組はマティテヤ。その子たちと兄弟たち、合わせて十二人。
25:22 第十五の組はエレモテ。その子たちと兄弟たち、合わせて十二人。
25:23 第十六の組はハナニヤ。その子たちと兄弟たち、合わせて十二人。
25:24 第十七の組はヨシベカシャ。その子たちと兄弟たち、合わせて十二人。
25:25 第十八の組はハナニ。その子たちと兄弟たち、合わせて十二人。
25:26 第十九の組はマロテ。その子たちと兄弟たち、合わせて十二人。
25:27 第二十の組はエリアタ。その子たちと兄弟たち、合わせて十二人。
25:28 第二十一の組はホティル。その子たちと兄弟たち、合わせて十二人。
25:29 第二十二の組はギダルティ。その子たちと兄弟たち、合わせて十二人。
25:30 第二十三の組はマハジオテ。その子たちと兄弟たち、合わせて十二人。
25:31 第二十四の組はロマムテ・エゼル。その子たちと兄弟たち、合わせて十二人。
26:1 門を守る係の組分けは、次のとおり。コラの一族では、アサフの子孫のうちのコレの子メシェレムヤ。
26:2 メシェレムヤの子たちは、長男がゼカリヤ、次がエディアエル、三男がゼバデヤ、四男がヤテニエル、
26:3 第五はエラム、第六はヨハナン、第七はエリヨエナイである。
26:4 オベデ・エドムにも息子たちがいた。長男はシェマヤ、次男はエホザバド、三男はヨア、四男はサカル、五男はネタンエル、
26:5 第六はアンミエル、第七はイッサカル、第八はペウレタイ。神がオベド・エドムを祝福したからである。
26:6 シェマヤの子であるその子にも息子たちが生まれた。彼らは力のある勇士だったので、一族の中で指導者となった。
26:7 シェマヤの子たちは、オテニ、レファエル、オベデ、エルザバデ。エルザバデの兄弟のエリフとセマクヤも力のある人たちだった。
26:8 これらは皆オベデ・エドムの子孫である。彼ら自身も、その子たちや親族も、任務を果たす力を備えた人たちで、オベデ・エドムに属する者は全部で六十二人いた。
26:9 メシェレムヤにも、子たちと兄弟たちが合わせて十八人いた。みんな力のある人たちだった。
26:10 メラリの子孫のホサにも息子たちがいた。かしらはシムリ。長男ではなかったが、父が彼をかしらにしたのだ。
26:11 次はヒルキヤ、三番目はテバルヤ、四番目はゼカリヤ。ホサの息子と兄弟は、全部で十三人だった。
26:12 これらは門を守る者たちの組であり、その組の長たちは、同じ仕事をする仲間の兄弟たちと同じように、主の神殿で仕える務めを受け持った。
26:13 彼らは、小さい者も大きい者も同じように、氏族ごとに、それぞれの門を守る担当をくじで決めた。
26:14 東の門のくじはシェレムヤに当たった。彼の息子で、賢い相談役だったゼカルヤのためにもくじを引くと、北の門のくじが当たった。
26:15 オベデ・エドムには南の門のくじが、その子たちには倉のくじが当たった。
26:16 シュパムとホサには西の門を守るくじが当たった。それは坂道に通じる大路にあるシャレケテの門のそばにあった。守る者たちが交代で向かい合って任務についた。
26:17 東の方には毎日六人、北の方には毎日四人、南の方には毎日四人、倉には二人ずつ。
26:18 西の方のパルバルには大路に四人、パルバルに二人。
26:19 門を守る組は以上のとおりで、コラの子孫とメラリの子孫だった。
26:20 レビ人のうちアヒヤは、神の宮の倉と、神にささげられた聖なる物の倉を管理していた。
26:21 ラダンの子孫。ゲルションびとのラダンから出た一族で、ラダンの一族の長はエヒエリである。
26:22 エヒエリの子たち。そしてゼタムと、その兄弟ヨエルが、主の神殿の宝物庫を管理した。
26:23 アムラム族、イヅハル族、ヘブロン族、ウジエル族については、次のとおりである。
26:24 モーセの子ゲルショムの子シェブエルは、宝物倉の責任者だった。
26:25 その兄弟でエリエゼルの子孫は、その子はレハブヤ、その子はエシャヤ、その子はヨラム、その子はジクリ、その子はシェロミテである。
26:26 このシロミテとその兄弟たちが、聖なる物をおさめたすべての倉を管理していた。それは、ダビデ王や氏族の長たち、千人隊や百人隊の隊長たち、軍の指揮官たちがささげた物である。
26:27 戦いで得た戦利品の中から、主の神殿を建て直すためにささげたものである。
26:28 またサムエル――先見者だ――と、キシの子サウル、ネルの子アブネル、ゼルヤの子ヨアブが奉納した物すべて。こうして奉納された物はみな、シェロミテとその兄弟たちが管理した。
26:29 イツハル族では、ケナンヤとその子たちが、イスラエルの外の仕事を任され、役人や裁判官として働いた。
26:30 ヘブロン族では、ハシャブヤとその兄弟たち、力ある勇士千七百人がいた。彼らはヨルダン川の西側でイスラエルを管理し、主のすべての仕事と王への務めにあたった。
26:31 ヘブロン族では、家系と氏族の記録によればエリヤが長だった。ダビデの治世の第四十年に彼らを調べたところ、ギレアデのヤゼルで、その中にすぐれた勇士たちが見つかった。
26:32 ダビデ王は、彼の一族の勇士二千七百人と氏族の長たちを、ルベン族、ガド族、マナセの半部族の監督に任命した。神に関するすべてのことと、王に関することを任せるためである。
27:1 イスラエルの人々の数は、次のとおりである。氏族の長たち、千人隊の長たち、百人隊の長たち、そして彼らのもとで働く役人たち――これらの人々は、月ごとに交替して務めにつき、一年のすべての月にわたって、あらゆる務めで王に仕えた。各組はそれぞれ二万四千人だった。
27:2 第一の組は正月を担当し、ザブディエルの子ヤショブアムが率いた。この組には二万四千人がいた。
27:3 彼はペレツの子孫で、第一の月を受け持つすべての軍団の長たちのかしらだった。
27:4 二月の組はアホア人ドダイと、その組を助けたミクロテがこれを率いた。その組には二万四千人いた。
27:5 三月の第三の将は祭司エホヤダの子ベナヤで、彼が長だった。その組には二万四千人がいた。
27:6 このベナヤは三十人の勇士の一人で、その三十人を率いていた。その組には、彼の子アミザバデがいた。
27:7 四月の第四の将はヨアブの兄弟アサヘル。その子ゼバデヤが後を継いだ。その組には二万四千人がいた。
27:8 五月の第五の将は、イズラの家のシャンモテだった。その組には二万四千人がいた。
27:9 六月の第六の将は、テコア出身のイラで、イケシュの子である。その組には二万四千人がいた。
27:10 七月の第七の将は、エフライムの子孫であるペロン人ヘレツ。その組には二万四千人がいた。
27:11 八月の第八の将は、ゼラの家のフシャ人シベカイだった。その組には二万四千人がいた。
27:12 九月の第九の将は、ベニヤミンの子孫であるアナトテ人アビエゼルだった。その組には二万四千人がいた。
27:13 十月の第十の将は、ゼラの家のネトパ人マハライだった。その組には二万四千人がいた。
27:14 十一の月の第十一の将は、エフライムの子孫であるピルアトン人ベナヤ。その組には二万四千人がいた。
27:15 十二の月、第十二の将軍はオテニエルの家系のネトファ人ヘルダイで、その組には二万四千人がいた。
27:16 ルベン族を治めたのはジクリの子エリエゼル。シメオン族はマアカの子シェファテヤ。
27:17 レビ族はケムエルの子ハシャブヤ。アロンの子孫はザドク。
27:18 ユダの指導者はダビデの兄弟の一人エリフ。イッサカルの指導者はミカエルの子オムリ。
27:19 ゼブルンのつかさはオバデヤの子イシマヤ。ナフタリのつかさはアズリエルの子エレモテ。
27:20 エフライムの子孫を率いたのは、アザジヤの子ホセア。マナセの半部族を率いたのは、ペダヤの子ヨエル。
27:21 ギレアデにいるマナセの半部族の長はゼカリヤの子イド。ベニヤミンの長はアブネルの子ヤシエル。
27:22 ダンのつかさはエロハムの子アザルエル。以上がイスラエルの部族の長たちである。
27:23 ダビデは二十歳以下の者は数えなかった。主がかつて、イスラエルを天の星のように多くすると言われたからである。
27:24 ゼルヤの子ヨアブは数え始めたが、最後までやり通さなかった。この人口調査のせいで、神の怒りがイスラエルに下ったからだ。だからその数は、ダビデ王の歴代誌に載せられなかった。
27:25 アデエルの子アズマウテは、王の宝物庫を管理していた。ウジヤの子ヨナタンは、地方の畑や町や村や塔にある倉庫を管理していた。
27:26 ケルブの子エズリは、畑を耕して農作業をする人たちを取りしきった。
27:27 ぶどう畑を管理したのは、ラマ出身のシムイ。ぶどう畑から取れたぶどう酒を蔵に納める仕事を管理したのは、シフミ出身のザブディだった。
27:28 ゲデルの人バアル・ハナンは、低地にあるオリーブの木といちじく桑の木を管理した。ヨアシは油の倉を管理した。
27:29 シャロンで草を食む牛の群れの世話をしたのは、シャロン人シテライ。谷にいる牛の群れの世話をしたのは、アデライの子シャファテ。
27:30 らくだの世話をしたのは、イシュマエル人のオビル。ろばの世話をしたのは、メロノテ人のエフデヤ。
27:31 ハガル人ヤジズは羊の群れを管理した。以上の者たちは皆、ダビデ王の財産を管理する役人だった。
27:32 ダビデのおじヨナタンは、王の相談役だった。知恵があり、ものごとをよく理解していて、書記官でもあった。ハクモニの子エヒエルは、王の子たちの世話をしていた。
27:33 アヒトフェルは王の顧問だった。アルキ人フシャイは王の相談相手だった。
27:34 アヒトペルの次を継いだのは、ベナヤの子エホヤダとアビヤタルだった。王の軍隊の司令官はヨアブだった。
28:1 ダビデはイスラエルのすべての指導者をエルサレムに呼び集めた。各部族の長、王に仕える組の長、千人の長、百人の長、王とその子たちのすべての財産と家畜を管理する者、そして宮廷の役人、勇士、力ある戦士たちだ。
28:2 ダビデ王は立ち上がって言った。「兄弟たち、わたしの民よ、聞いてほしい。わたしは、主の契約の箱、つまりわたしたちの神の足台を安置する家を建てたいと、ずっと心に思ってきた。そしてそれを建てる準備も整えてきた。
28:3 神はこうおっしゃった。「あなたは、わたしの名のための家を建ててはならない。あなたは戦いの人であり、多くの血を流してきたからだ。」
28:4 イスラエルの神である主は、わたしの父の家系すべての中からこのわたしを選び、いつまでもイスラエルの王としてくださった。主はまずユダ族を指導者として選び、そのユダ族の中からわたしの父の家を選び、父の子どもたちの中からわたしを喜んで選び、全イスラエルの王としてくださったのだ。
28:5 主はわたしに多くの息子を授けてくださった。でも、そのすべての息子の中から、主はわたしの息子ソロモンを選ばれた。イスラエルを治める主の王国の座に、彼を着かせるためだ。
28:6 主はわたしにこう言われた。「あなたの子ソロモンが、わたしの神殿とその庭を建てる。わたしは彼を選んで、わたしの子としたからだ。わたしは彼の父となる。
28:7 もし彼が、今日のようにわたしの命令と定めを変わらず守り行うなら、わたしは彼の王国をいつまでも揺るがないものにする。
28:8 いま、主の会衆であるイスラエルのすべての人々の前で、そして、わたしたちの神が聞いておられる中で、あなたがたに命じる。あなたがたの神、主の命令をすべて守り、それを求めなさい。そうすれば、あなたがたはこの良い地を自分のものとし、後に続く子孫にいつまでも受け継がせることができる。
28:9 息子のソロモンよ、あなたも父の神を知り、真心のこもった心と、喜んで従う魂をもって、神に仕えなさい。主は、すべての人の心を探り、思いのすべてを見抜かれるからだ。あなたが主を求めるなら、主はあなたに見いだされる。でも、あなたが主を捨てるなら、主はあなたを永遠に見捨てられる。
28:10 主はあなたを選び、聖なる住まいとして神殿を建てさせようとしている。さあ、心を強くして、それをやりとげなさい。」
28:11 ダビデは、神殿の玄関、その建物、宝物庫、階上の部屋、奥の部屋、そして贖いのふたを置く部屋の設計図を、息子ソロモンに渡した。
28:12 またその心にあったすべてのものの構想も渡した。それは主の神殿の庭、周りにあるすべての部屋、神の家の宝物庫、そして神にささげられた物を納める宝物庫についての構想だった。
28:13 また、祭司とレビ人の組分けについて、主の神殿でのすべての奉仕の務めについて、そして主の神殿の奉仕で使うすべての器についても、その指示を与えた。
28:14 金の器を造るための金は、それぞれの用途に応じて重さを量って渡し、銀の器を造るための銀も、それぞれの用途に応じて重さを量って渡した。
28:15 金の燭台とそのともし火の皿については、金の重さを量って、燭台一つ一つとそのともし火の皿にそれぞれの重さを定めた。また銀の燭台については、燭台一つ一つの使い方に合わせて、燭台とそのともし火の皿に量る銀の重さを定めた。
28:16 供えのパンの机のために、机一つ一つに金の重さを定めた。銀の机には銀を定めた。
28:17 肉刺し、鉢、水差しには純金を用いる。金の大杯にはそれぞれの重さに合わせて金を、銀の大杯にもそれぞれの重さに合わせて銀を割り当てた。
28:18 香をたくための祭壇のためには、量って定めた純金。主の契約の箱の上に翼を広げてそれをおおうケルビム、その戦車の型のためには金を定めた。
28:19 すべては主の御手から出た書きものにわたしに示された。それは、この設計図が示すすべての仕事のためだった。
28:20 ダビデは息子のソロモンにこう言った。「強く、たくましくあれ。そして、この仕事をやり遂げなさい。恐れることも、おののくこともない。わたしの神である主が、あなたとともにいてくださるからだ。主は、あなたを見放すことも、見捨てることもない。主の宮を建てるすべての仕事を、あなたが終えるまで、そばにいてくださる。
28:21 神の宮のすべての務めのために、祭司とレビ人の組がそろっている。またあらゆる仕事のために、それぞれの作業を喜んで進んで行う技術のある者たちが、みなあなたと共にいる。指導者たちも民のみんなも、あなたの命じることにすべて従うだろう。」
29:1 ダビデ王は、集まったすべての人々に言った。「わたしの子ソロモンを、神はただひとり選ばれた。でも彼はまだ若く、経験も足りない。それなのに、この仕事はとても大きい。この建物は人のためではなく、主なる神のためのものだからだ。
29:2 わたしは全力で、わたしの神の家のために準備をした。金の物には金を、銀の物には銀を、青銅の物には青銅を、鉄の物には鉄を、木の物には木を用意した。そのほかにも、しまめのう、はめ込み用の石、彩り豊かな飾り石、いろいろな宝石、そして大理石を、どれもたくさん用意した。
29:3 わたしはまた、わたしの神の宮を心から愛しているので、聖なる宮のために用意したすべてのものに加えて、自分が持っている金銀の宝を、わたしの神の宮にささげる。
29:4 オフルの金三千タラント、精製した銀七千タラント。これらは建物の壁をおおうために使う。
29:5 金の物には金を、銀の物には銀を、また職人の手で造られるあらゆる仕事のために使う。では、今日、進んで身をささげ、主のために手を満たそうとする者はだれか。」
29:6 氏族の長たち、イスラエルの部族の長たち、千人隊長、百人隊長、そして王の工事を取り仕切る者たちは、進んでささげ物をした。
29:7 神殿での仕事のために、彼らは金五千タラントと一万ダリク、銀一万タラント、青銅一万八千タラント、鉄十万タラントをささげた。
29:8 宝石を持っている者は、それをゲルション人エヒエルの手に託し、主の神殿の宝物庫に納めた。
29:9 民は喜んだ。指導者たちが真心から、進んで主にささげたからだ。そしてダビデ王も大いに喜んだ。
29:10 ダビデは全会衆の前で主をほめたたえた。ダビデは言った。「わたしたちの先祖イスラエルの神、主よ。あなたはとこしえに、たたえられるべきお方です。
29:11 主よ、偉大さも力も栄光も勝利も威光も、すべてあなたのものだ。天にあるものも地にあるものも、みんなあなたのものだから。主よ、この国もあなたのもの。あなたはすべてのものの上に立つ、いちばん上の方だ。
29:12 富と誉れは、あなたから来る。あなたはすべてを治めている。あなたの手には力と勢いがあり、すべてを大きくし、強くするのも、あなたの手による。
29:13 わたしたちの神よ、いま、わたしたちはあなたに感謝し、あなたの輝かしい名をたたえます。
29:14 わたしたちがこんなふうに喜んでささげることができたとしても、わたしは何者だろう。わたしの民も何者だろう。すべてはあなたから出てくるのだから。わたしたちは、あなたの手からいただいたものを、あなたにお返ししただけなのだ。
29:15 わたしたちは、あなたの前ではすべての先祖たちと同じように、旅人であり、よそからの寄留者です。この地での日々は影のようにはかなく、とどまることはできません。
29:16 わたしたちの神、主よ。あなたの聖なる名のためにあなたの家を建てようと、わたしたちが用意したこの多くの物は、すべてあなたの手からいただいたものです。すべてはあなたのものです。
29:17 わたしの神よ。あなたが人の心を調べ、正しさを喜ばれることを、わたしは知っています。わたしは正直な心で、これらすべてを進んでささげました。そして今、ここに集まったあなたの民が、喜んで進んであなたにささげているのを見ました。
29:18 主よ、わたしたちの先祖アブラハム、イサク、イスラエルの神よ。あなたの民の心にこの思いをいつまでも保たせ、彼らの心をあなたに向けさせてください。
29:19 わたしの子ソロモンにも、まっすぐな心を与えてください。あなたの命令、教え、おきてを守り、そのすべてを実行して、わたしが準備をしてきた神殿を建てることができるように。」
29:20 ダビデが全会衆に「あなたたちの神、主をたたえよう」と呼びかけると、会衆はみんなで先祖の神である主をたたえた。そして頭を下げ、主とその王の前にひれ伏した。
29:21 その翌日、人々は全イスラエルのために主にいけにえをささげた。主にささげる焼き尽くすいけにえとして、雄牛千頭、雄羊千頭、子羊千頭を、それに添える飲み物のささげ物とともにささげた。さらに、数えきれないほど多くのいけにえもささげた。
29:22 その日、人々は大きな喜びに包まれ、主の前で食べたり飲んだりした。そしてダビデの子ソロモンを、あらためて王とした。彼らはソロモンに油を注いで主のもとで人々を治める者とし、ザドクを祭司とした。
29:23 ソロモンは父ダビデに代わって、主の王座に着いて王となり、大いに栄えた。イスラエルはみな、彼に従った。
29:24 すべての高官と勇士たち、それにダビデ王の息子たちもみな、ソロモン王に従うことを誓った。
29:25 主は全イスラエルが見ている前で、ソロモンを大いに高められた。そして、それまでイスラエルのどの王も受けたことのない、王としての輝かしい威光を彼に与えられた。
29:26 エッサイの子ダビデは、こうしてイスラエル全体を治めた。
29:27 彼がイスラエルを治めた期間は四十年だった。ヘブロンで七年、エルサレムで三十三年、王として国を治めた。
29:28 彼は年老いて長生きし、富と誉れに満ち足りて死んだ。その子ソロモンが跡を継いで王となった。
29:29 ダビデ王の始めから終わりまでの働きは、先見者サムエルの記録、預言者ナタンの記録、先見者ガドの記録に書かれている。
29:30 ダビデの治世のすべてと、その力、そして彼とイスラエル、また各地のすべての王国に降りかかった出来事が記されている。
歴代志下
1:1 ダビデの子ソロモンは、自分の王国をしっかりと固めていった。彼の神である主が共にいて、彼をとても偉大な者にしたからだ。
1:2 ソロモンはイスラエルのすべての人々に語りかけた。千人隊や百人隊の長たち、裁判をつかさどる者たち、そしてイスラエル全体を率いる者たち、各家系の長たちに向かってである。
1:3 それからソロモンは、集まった人々みんなを連れて、ギブオンにある高台へ向かった。そこには、主のしもべモーセが荒れ野で造った、神の会見の幕屋があったからだ。
1:4 一方、神の箱のほうは、すでにダビデがキルヤト・エアリムから運び上げていた。ダビデがエルサレムにそのための天幕を張り、置き場所を用意していたのだ。
1:5 また、フルの子ウリの子ベツァルエルが造った青銅の祭壇も、主の幕屋の前に据えられていた。ソロモンと人々は、そこで主を求めた。
1:6 ソロモンはそこで、会見の幕屋の前にある主の青銅の祭壇に上り、その上で千頭のいけにえをささげて焼いた。
1:7 その夜、神がソロモンに現れて言った。「何でも願いなさい。あなたに与えよう。」
1:8 ソロモンは神に答えた。「あなたは、わたしの父ダビデに大きな慈しみを示してくださいました。そして、その後を継ぐ王として、わたしを立ててくださいました。
1:9 主なる神よ、どうか父ダビデへの約束を、そのとおりに果たしてください。あなたはわたしを、地のちりのように数えきれない民の王としてくださったのですから。
1:10 どうか、わたしに知恵と知識を与えてください。この民の先頭に立って、行き来できるようにするためです。これほど大きなあなたの民を、いったいだれが治められるでしょうか。」
1:11 神はソロモンに言った。「あなたの心にそういう思いがあり、富や財産や名誉を求めず、敵の命を求めることもなく、長生きさえ願わなかった。その代わりに、わたしがあなたを王とした、この民を治めるための知恵と知識を願った。
1:12 だから、その知恵と知識をあなたに与えよう。そのうえ、富も財産も名誉も、あなたに与える。あなたより前の王たちがだれも持たなかったほどのものを。そして、あなたより後の王も、これほどのものを持つことはない。」
1:13 こうしてソロモンは、ギブオンにある高台の礼拝所を離れた。会見の幕屋の前を後にして、エルサレムに戻り、イスラエルを治めた。
1:14 ソロモンは戦車と騎兵を集めた。戦車は千四百、騎兵は一万二千いた。彼はそれらを戦車隊の町々に置き、また一部を王のいるエルサレムに置いた。
1:15 王のもとでは、エルサレムの銀も金も石ころのように豊富だった。レバノン杉も、低地に生えるいちじく桑のように、いくらでもあった。
1:16 ソロモンの馬はエジプトから輸入された。王の商人たちが、決まった値段で買い付けてきたのだ。
1:17 彼らはエジプトから、戦車を一台銀六百枚で、馬を一頭百五十枚で仕入れ、運び上げた。同じようにして、ヒッタイトのすべての王やアラムの王のためにも、商人たちが仕入れて運び出した。
2:1 ソロモンは、主の名のための神殿と、自分の王宮を建てようと決めた。
2:2 ソロモンは、荷を運ぶ者七万人、山で石を切り出す者八万人を集め、その監督として三千六百人を置いた。
2:3 ソロモンはツロの王フラムに使者を送って、こう伝えた。「あなたはかつて、わたしの父ダビデが住む宮殿を建てるため、レバノン杉を送ってくれました。どうか、わたしにも同じようにしてください。
2:4 ご覧のとおり、わたしはわたしの神、主の名のために神殿を建てようとしています。それを主にささげ、御前で香り高い香をたき、いつも供えのパンを並べ、朝ごとに夕ごとに、また安息日、新月の祭り、わたしたちの神、主の定めの祭りごとに、焼き尽くすいけにえをささげるためです。これはイスラエルが永遠に守るべき定めです。
2:5 わたしが建てようとしている神殿は大きなものです。わたしたちの神は、どんな神々よりも偉大なお方だからです。
2:6 とはいえ、いったいだれに、主のために神殿を建てる力があるでしょうか。天も、天の天も、主をお入れすることはできないのに。このわたしが何者だというのでしょう。主のために神殿を建てるといっても、ただ御前で香をたくためにすぎません。
2:7 ですから、金・銀・青銅・鉄の細工ができ、紫や紅や青の布を扱え、彫刻の技にもたけた職人を、わたしのもとに送ってください。わたしの父ダビデが備えておいた、ユダとエルサレムにいる熟練の職人たちと、一緒に働かせるためです。
2:8 だから、レバノンから杉や糸杉、ビャクダンの木を送ってください。あなたの家来たちがレバノンの木を切ることに慣れているのを、わたしはよく知っています。わたしの家来たちも、あなたの家来たちと一緒に働かせます。
2:9 木材をたくさん用意するためです。わたしが建てようとしている神殿は、とても大きくて、すばらしいものになるからです。
2:10 木を切り出す働き手たちには、あなたの家来たちのための食料として、小麦二万コル、大麦二万コル、ぶどう酒二万バト、油二万バトを届けます。」
2:11 すると、ティルスの王フラムは手紙にこう書いて、ソロモンに送ってきた。「主はご自分の民を愛しておられます。だからこそ、あなたを彼らの王とされたのです。」
2:12 フラムはさらにこう言った。「天と地を造られたイスラエルの神、主をほめたたえます。主はダビデ王に、知恵に富み、思慮と分別を備えた子をお与えになりました。その子が、主のための神殿と、王国のための宮殿を建てるのです。
2:13 そこで今、わたしは熟練した、知恵ある職人を送ります。フラム・アビという者です。
2:14 彼は、ダン族出身の女性を母に持ち、父はティルスの人です。金・銀・青銅・鉄・石・木の細工にたけ、紫や青や紅の布、上質の亜麻布も扱えます。どんな彫刻もこなし、任された図案は何でも考え出せます。この者を、あなたの職人たちや、あなたの父、わたしの主君ダビデの職人たちと一緒に働かせてください。
2:15 ですから、わたしの主君が言われた小麦・大麦・油・ぶどう酒を、家来たちに送ってください。
2:16 わたしたちは、あなたが必要とするだけの木をレバノンから切り出し、いかだに組んで海路ヤッファまで運びます。そこから先は、あなたがエルサレムへ運び上げてください。」
2:17 ソロモンは、父ダビデが行った人口調査にならって、イスラエルの地にいる寄留者をすべて数えた。すると、その数は十五万三千六百人であった。
2:18 ソロモンはそのうちの七万人を荷物を運ぶ者に、八万人を山で石を切り出す者に、三千六百人を人々を働かせる監督にした。
3:1 ソロモンは、エルサレムのモリヤ山に主の神殿を建て始めた。そこは、父ダビデに主が現れた場所であり、ダビデがエブス人オルナンの脱穀場に用意しておいた所である。
3:2 彼が建て始めたのは、その治世の第四年、第二の月の二日だった。
3:3 ソロモンが神の神殿を建てるために定めた基礎の寸法はこうである。長さは昔の尺度で六十キュビト、幅は二十キュビトだった。
3:4 神殿の正面にある玄関の間は、神殿の幅に合わせて長さ二十キュビト、高さは百二十キュビトあった。彼はその内側を純金で覆った。
3:5 大広間には糸杉の板を張り、それを上質な金で覆い、その上になつめやしの木と鎖の飾りを施した。
3:6 さらに神殿を美しくするために宝石で飾った。使った金はパルワイムの金だった。
3:7 彼は神殿全体、つまり梁も敷居も壁も扉も金で覆い、壁にはケルビムを彫り込んだ。
3:8 彼はまた、最も聖なる部屋を造った。その長さは神殿の幅に合わせて二十キュビト、幅も二十キュビトあった。彼はそこを上質な金で覆った。その金は六百タラントに上った。
3:9 釘の重さは金で五十シェケルだった。彼は上の部屋も金で覆った。
3:10 最も聖なる部屋の中には、彫り物のケルビムを二体造り、それらを金で覆った。
3:11 ケルビムの翼は、合わせて長さ二十キュビトあった。一体の片方の翼は五キュビトで神殿の壁に届き、もう片方の翼も五キュビトで、もう一体のケルビムの翼に届いていた。
3:12 もう一体のケルビムの片方の翼も五キュビトで神殿の壁に届き、もう片方の翼も五キュビトで、隣のケルビムの翼にくっついていた。
3:13 これらのケルビムの翼は、広げると二十キュビトになった。二体は足で立ち、顔は神殿の奥のほうを向いていた。
3:14 彼は青、紫、深紅の糸と上質の亜麻布で垂れ幕を作り、その上にケルビムの模様を織り込んだ。
3:15 神殿の正面には、二本の柱を立てた。柱の長さは三十五キュビトで、その頭にのせた柱頭は五キュビトあった。
3:16 彼は鎖を作って柱の頭に飾り、ざくろの実を百個作って、その鎖に取りつけた。
3:17 そして、この柱を本殿の正面に立てた。一本は右側、もう一本は左側で、右側の柱をヤキン、左側の柱をボアズと名づけた。
4:1 彼は青銅の祭壇を作った。長さ二十キュビト、幅二十キュビト、高さ十キュビトだった。
4:2 また、鋳物で「海」と呼ばれる大きな水盤を作った。縁から縁まで十キュビトの丸い形で、高さは五キュビト、周りをはかると三十キュビトあった。
4:3 その下には、水盤を取り囲むように牛の形が並んでいた。牛は一キュビトごとに十頭ずつ、水盤の周りをぐるりと囲んでいた。この牛は二列で、水盤と一体に鋳造されていた。
4:4 水盤は十二頭の牛の上にのっていた。三頭は北を、三頭は西を、三頭は南を、三頭は東を向き、水盤はその上にのせられ、牛の後ろの部分はすべて内側を向いていた。
4:5 水盤の厚さは手のひらの幅ほどで、その縁は杯の縁のように、ゆりの花のような形に作られていた。中には三千バテの水が入った。
4:6 彼はさらに洗い鉢を十個作り、五個を右側に、五個を左側に置いた。これは物を洗うためのもので、焼き尽くすいけにえに使う物をこの中で洗った。一方、「海」と呼ばれる水盤は、祭司が身を洗うためのものだった。
4:7 彼は定められた様式に従って、金の燭台を十個作り、神殿の中に置いた。五個を右側に、五個を左側に置いた。
4:8 彼はまた机を十個作り、神殿の中に置いた。五個を右側に、五個を左側に置いた。そして金の鉢を百個作った。
4:9 彼は祭司の庭と大きな庭を造り、庭のための扉を取り付け、その扉を青銅で覆った。
4:10 「海」と呼ばれる水盤は、神殿の右側、東寄りで南に面した場所に置いた。
4:11 フラムは壺とシャベルと鉢を作った。こうしてフラムは、ソロモン王のために神の家で行った仕事をすべて完成させた。
4:12 すなわち、二本の柱、柱の頭にある二つの丸い柱頭、そしてその二つの丸い柱頭を覆う二つの網目模様の飾り、
4:13 二つの網目模様の飾りのための四百個のざくろ。網目模様一つにつき二列のざくろがあり、柱の前面にある二つの丸い柱頭を覆っていた。
4:14 彼は台を作り、その台の上に洗い鉢を作った。
4:15 一つの水盤と、その下にある十二頭の牛。
4:16 壺とシャベルと肉刺しと、それらすべての器具を、フラム・アビはソロモン王のために、主の家のために、磨いた青銅で作った。
4:17 王はこれらを、ヨルダン川の低地、スコトとツェレダの間の粘土質の地で鋳造した。
4:18 ソロモンはこれらの器をすべて非常に多く作ったので、青銅の重さは量りきれなかった。
4:19 ソロモンは神の家のための器具をすべて作った。金の祭壇、供えのパンをのせる机、
4:20 純金の燭台とそのともし火皿。これらは決まりのとおり、至聖所の前で火をともすためのものだった。
4:21 花の飾りと、ともし火皿と、芯切りばさみも作った。これらはすべて、最高の金でできていた。
4:22 芯切りばさみ、鉢、皿、火皿も純金だった。神殿の入り口の扉、つまり至聖所の内側の扉も、本堂に通じる扉も金でできていた。
5:1 こうして、ソロモンが主の家のために行った工事はすべて終わった。ソロモンは、父ダビデが神にささげた品々、つまり銀と金とすべての器具を運び入れ、神の家の宝物庫に納めた。
5:2 それからソロモンは、主の契約の箱をダビデの町、つまりシオンから運び上げるために、イスラエルの長老たち、全部族の長、イスラエルの人々の一族の長たちをエルサレムに集めた。
5:3 第七の月の祭りのとき、イスラエルの人々はみな、王のもとに集まった。
5:4 イスラエルの長老たちがみな来ると、レビ人が箱を担ぎ上げた。
5:5 そして、彼らはその箱と、会見の幕屋と、幕屋の中にあった聖なる器具をすべて運び上げた。これらを運び上げたのは、祭司とレビ人だった。
5:6 ソロモン王と、そのもとに集まったイスラエルの人々はみな、箱の前で、数えきれないほど多くの羊や牛をいけにえとしてささげた。
5:7 祭司たちは主の契約の箱を、その場所である神殿の奥の内陣、至聖所へと運び入れ、ケルビムの翼の下に安置した。
5:8 ケルビムはその箱の場所の上に翼を広げ、上から箱とその担ぎ棒をおおっていた。
5:9 担ぎ棒は長く、その先端は箱から突き出ていて、内陣の前からは見えたが、外からは見えなかった。それは今日までそこにある。
5:10 箱の中には二枚の石の板のほかには何もなかった。それは、イスラエルの人々がエジプトを出たとき、主が彼らと契約を結んだ場所ホレブで、モーセが納めたものだった。
5:11 祭司たちが聖所から出て来た。居合わせた祭司はみな、組み分けにかかわらず、身を清めていた。
5:12 歌い手であるレビ人、アサフ、ヘマン、エドトンと、その子たちや兄弟たちはみな、白い亜麻布をまとい、シンバルや竪琴や琴を手にして、祭壇の東側に立っていた。彼らとともに、ラッパを吹く祭司が百二十人いた。
5:13 ラッパを吹く者と歌い手が心を一つにし、声を合わせて主をたたえ、感謝をささげた。そしてラッパやシンバル、さまざまな楽器とともに声を張り上げ、「主は良い方、その慈しみはとこしえに続く」と主を賛美したとき、雲が神殿を、主の神殿を満たした。
5:14 雲のために、祭司たちは立って務めを果たすことができなかった。主の栄光が神の神殿を満たしたからである。
6:1 そのときソロモンは言った。「主は、深い暗闇の中に住むと言われました。
6:2 でも、わたしはあなたのために立派な家を建てました。あなたがいつまでも住むための場所です。」
6:3 それから王は振り返り、イスラエルの人々みんなを祝福した。人々はみんな立っていた。
6:4 王は言った。「イスラエルの神、主をほめたたえよう。主は、父ダビデに口で約束したことを、その手で成し遂げてくださった。主はこう言われた。
6:5 『わたしが自分の民をエジプトの地から連れ出した日から、わたしは自分の名を置く家を建てるための町を、イスラエルのどの部族の中からも選ばなかった。わたしの民イスラエルを治める者となる人も選ばなかった。
6:6 けれども今、わたしは自分の名を置くためにエルサレムを選び、わたしの民イスラエルを治める者としてダビデを選んだ。』
6:7 父ダビデは、イスラエルの神、主の名のために家を建てたいと心から願っていた。
6:8 すると主は父ダビデに言われた。『わたしの名のために家を建てたいと、あなたが心に願ったのは良いことだ。
6:9 ただし、その家を建てるのはあなたではない。あなたから生まれるあなたの子、その子がわたしの名のために家を建てる。』
6:10 こうして主は、約束した言葉を実現してくださった。わたしは父ダビデに代わって立ち、主が言われたとおりイスラエルの王座に着いた。そして、イスラエルの神、主の名のために家を建てた。
6:11 その家の中に、わたしは箱を安置した。その箱の中には、主がイスラエルの人々と結んだ契約がある。」
6:12 それからソロモンは、イスラエルの人々みんなの前で、主の祭壇の前に立ち、両手を広げた。
6:13 ソロモンは青銅の台を作っていた。長さ五キュビト、幅五キュビト、高さ三キュビトのその台を、庭の真ん中に据えていた。ソロモンはその上に立つと、イスラエルの人々みんなの前でひざまずき、天に向かって両手を広げて、
6:14 こう言った。「イスラエルの神、主よ。天にも地にも、あなたのような神はいません。あなたは、心を尽くしてあなたの前を歩むしもべたちに、契約を守り、慈しみを注いでくださいます。
6:15 あなたは、わたしの父ダビデに約束したことを、そのとおり守ってくださいました。ご自分の口で語り、その手で実現してくださった。今日、こうしてそのとおりになっています。
6:16 イスラエルの神、主よ。今、わたしの父ダビデにこう約束されたことも、どうか守ってください。『あなたの子孫が、あなたがわたしの前を歩んだように、わたしの教えに従って自分の道を守るなら、イスラエルの王座に着く者が、わたしの前で絶えることはない』と。
6:17 イスラエルの神、主よ。今、あなたがしもべダビデに語られたその約束が、確かなものとなりますように。
6:18 しかし、神が本当に、人と共に地上に住まわれるのでしょうか。ご覧ください。天も、天の天も、あなたを収めることはできません。まして、わたしが建てたこの家など、なおさらです。
6:19 それでも、わたしの神、主よ。しもべの祈りと願いに、心を向けてください。しもべがあなたの前でささげる叫びと祈りを、聞いてください。
6:20 どうか、この家に、昼も夜も目を注いでください。ここは、あなたが『わたしの名をそこに置く』と言われた場所です。しもべがこの場所に向かってささげる祈りを、聞いてください。
6:21 しもべと、あなたの民イスラエルが、この場所に向かって祈るとき、その願いを聞いてください。あなたの住まいである天から聞いてください。そして、聞いて、赦してください。
6:22 だれかが隣人に対して罪を犯し、誓いを立てさせられて、この家のあなたの祭壇の前に来て誓うとき、
6:23 あなたは天から聞いて、事を行い、しもべたちをさばいてください。悪い者には、その行いを頭上に返して報い、正しい者には、その正しさに応じて報いてください。
6:24 あなたの民イスラエルが、あなたに罪を犯したために敵の前で打ち破られても、彼らが立ち帰ってあなたの名をたたえ、この家であなたの前に祈り願うなら、
6:25 あなたは天から聞いて、あなたの民イスラエルの罪を赦してください。そして、彼らとその先祖に与えた土地に、彼らを連れ戻してください。
6:26 彼らがあなたに罪を犯したために、天が閉じて雨が降らなくなったとき、彼らがこの場所に向かって祈り、あなたの名をたたえ、あなたに懲らしめられて自分の罪から立ち帰るなら、
6:27 あなたは天で聞いて、あなたのしもべたち、あなたの民イスラエルの罪を赦してください。彼らが歩むべき正しい道を教え、あなたの民に受け継ぐ地として与えたあなたの土地に、雨を降らせてください。
6:28 国に飢きんが起こったとき、疫病や、立ち枯れや、黒穂病や、いなごや、ばったが発生したとき、また敵が国の町々を包囲したとき、どんな災いでも、どんな病気でも、
6:29 あなたの民イスラエルのだれか一人でも、あるいは民全体でも、それぞれ自分の災いと痛みを知って、この家に向かって手を広げ、どんな祈りでも、どんな願いでもささげるなら、
6:30 あなたは、住まいである天から聞いて、赦してください。そして一人ひとりに、そのすべての行いに応じて報いてください。あなたはその心をご存じだからです。人の子らの心を知っているのは、あなただけだからです。
6:31 そうすれば、あなたがわたしたちの先祖に与えた土地で生きるかぎり、彼らはずっとあなたを敬い、あなたの道を歩むようになります。
6:32 また、あなたの民イスラエルの者ではなく、遠い国からやって来る外国人についても——彼らはあなたの偉大な名と、力ある御手と、伸ばされた御腕のことを聞いて来るのです——彼らが来て、この家に向かって祈るなら、
6:33 あなたは、住まいである天から聞いて、その外国人があなたに求めることを、すべてかなえてください。そうすれば、地上のすべての民があなたの名を知り、あなたの民イスラエルのようにあなたを敬うようになります。そして、わたしが建てたこの家が、あなたの名で呼ばれていることを知るようになります。
6:34 あなたの民が、あなたの送り出す道を通って敵と戦いに出て行くとき、彼らがあなたの選んだこの町と、わたしがあなたの名のために建てたこの家に向かってあなたに祈るなら、
6:35 あなたは天から彼らの祈りと願いを聞いて、彼らのために正しくさばいてください。
6:36 彼らがあなたに罪を犯すとき——罪を犯さない人は一人もいないのですから——あなたが彼らに怒って、敵に引き渡し、敵が彼らを遠い国、あるいは近い国へ捕らえて行っても、
6:37 でも、捕らえられて行ったその地で、彼らが心を入れかえ、立ち返って、その捕らわれの地であなたに願い、『わたしたちは罪を犯しました。悪いことをし、逆らってきました』と言うなら、
6:38 捕らえられて行ったその地で、心をつくし、魂をつくしてあなたに立ち返り、あなたが彼らの先祖に与えた地、あなたが選んだ町、そしてわたしがあなたの名のために建てたこの家に向かって祈るなら、
6:39 あなたの住まいである天から、彼らの祈りと願いを聞いて、彼らのために正しくさばき、あなたに罪を犯したあなたの民を赦してください。
6:40 わたしの神よ、どうか、この場所でささげられる祈りに、あなたの目を開き、耳を傾けてください。
6:41 主なる神よ、今、立ち上がって、あなたの安らぎの場所にお入りください。あなたと、あなたの力を示す箱もいっしょに。主なる神よ、あなたの祭司たちに救いをまとわせ、あなたに従う人たちを、あなたの恵みに喜ばせてください。
6:42 主なる神よ、あなたが油をそそいで選んだ者を退けないでください。あなたのしもべダビデへの慈しみを思い起こしてください。」
7:1 ソロモンが祈り終えると、天から火が降ってきて、焼き尽くすいけにえと、ほかのいけにえを焼き尽くした。そして主の栄光がその家を満たした。
7:2 主の栄光が主の家を満たしたので、祭司たちは主の家に入ることができなかった。
7:3 イスラエルの人たちはみな、火が降ってくるのと、主の栄光がその家の上にあるのを見て、敷石の上にひれ伏し、顔を地につけて礼拝した。そして主に感謝して言った。「主は良いお方。その慈しみはとこしえに変わらない。」
7:4 そして王と民はみな、主の前でいけにえをささげた。
7:5 ソロモン王は、牛二万二千頭、羊十二万頭をいけにえとしてささげた。こうして王と民はみな、神の家を奉献した。
7:6 祭司たちはそれぞれの持ち場に立ち、レビ人は、ダビデ王が主に感謝するために作った楽器を手にして立った。ダビデがそれを使って賛美したときに歌われた、「その慈しみはとこしえに変わらない」という歌のためだった。祭司たちは彼らの向かいでラッパを吹き鳴らし、イスラエルの人たちはみな立っていた。
7:7 ソロモンは、主の家の前にある庭の中央を聖なる場所とした。そこで焼き尽くすいけにえと、和解のいけにえの脂肪をささげたからだ。というのも、ソロモンが作った青銅の祭壇では、焼き尽くすいけにえと穀物のささげ物と脂肪をすべて載せきれなかったからである。
7:8 そのとき、ソロモンはイスラエルのすべての人たちとともに、七日間、祭りを行った。北のレボ・ハマトから南のエジプトの川まで、とても大きな集まりだった。
7:9 八日目には、彼らは特別な集会を開いた。祭壇を奉献するために七日間、さらに祭りのために七日間を過ごしたからだ。
7:10 そして七月の二十三日、ソロモンは民をそれぞれの家に帰らせた。主がダビデとソロモン、そして主の民イスラエルにしてくださった良いことを喜び、心から満ち足りていた。
7:11 こうしてソロモンは、主の家と王宮を完成させた。主の家と自分の家について、ソロモンが心に思い描いてやろうとしたことは、すべて見事にやり遂げられた。
7:12 ある夜、主がソロモンに現れて言われた。「わたしはあなたの祈りを聞いた。そして、この場所をいけにえをささげる家として、わたしのために選んだ。
7:13 わたしが天を閉じて雨を降らせないことがあっても、いなごに命じて地の作物を食い荒らさせることがあっても、また、わたしの民の間に疫病を送ることがあっても、
7:14 わたしの名を掲げるわたしの民が、へりくだって祈り、わたしを求め、その悪い歩みから立ち帰るなら、わたしは天からそれを聞き、彼らの罪を赦し、彼らの地をいやそう。
7:15 今、わたしの目は開かれ、わたしの耳は、この場所でささげられる祈りに向けられている。
7:16 今、わたしはこの家を選び、聖なるものとした。わたしの名がいつまでもここにあるためだ。わたしの目とわたしの心は、いつもここにある。
7:17 あなたも、父ダビデが歩んだように、わたしの前を歩み、わたしが命じたことをすべて行い、わたしのおきてと定めを守るなら、
7:18 わたしはあなたの王座を確かなものにする。父ダビデと結んだ約束のとおりに。わたしはこう言ったのだ。『イスラエルを治める者が、あなたの家から絶えることはない。』」
7:19 でも、もしあなたたちが背を向けて、わたしが与えたおきてと命令を捨て、ほかの神々のところへ行って仕え、それにひれ伏すなら、
7:20 わたしは彼らを、与えたこの地から引き抜く。そして、わたしの名のために聖なるものとしたこの家も、わたしの前から投げ捨てる。すべての民の間で、あざけりとなり、笑いものとなるようにする。
7:21 そびえ立つこの家も、そばを通る者はみな驚いて、こう言うだろう。『主はどうして、この地とこの家をこんなふうにされたのか。』
7:22 そして人々は答える。『彼らは、自分たちの先祖をエジプトの地から導き出した主、その神を捨てて、ほかの神々にすがり、それにひれ伏して仕えた。だから主は、このすべての災いを彼らに下されたのだ。』
8:1 ソロモンが主の家と自分の家を建てるのに、二十年かかった。それが終わると、
8:2 ソロモンは、フラムから譲り受けた町々を建て直し、そこにイスラエルの人々を住まわせた。
8:3 それからソロモンはハマト・ツォバに攻め上り、これを征服した。
8:4 彼は荒れ野にタドモルを建て、ハマトには倉庫の町をすべて建てた。
8:5 上ベト・ホロンと下ベト・ホロンも建てた。城壁と門とかんぬきを備えた、守りの固い町だ。
8:6 さらにバアラト、ソロモンが持っていた倉庫の町々すべて、戦車の町々、騎兵の町々、そしてエルサレムやレバノン、自分が治めるすべての地に建てたいと望んだものを、ことごとく建てた。
8:7 イスラエル人ではない、生き残った民、つまりヒト人、アモリ人、ペリジ人、ヒビ人、エブス人がいた。
8:8 彼らのあともこの地に残っていた子孫で、イスラエルの人々が滅ぼしきれなかった者たちを、ソロモンは強制労働に就かせた。それは今日まで続いている。
8:9 しかしイスラエルの人々は、ソロモンが自分の仕事のために奴隷にすることはなかった。彼らは兵士となり、部隊の指揮官、戦車隊や騎兵の隊長となったからだ。
8:10 ソロモン王の下で民を監督する現場の長は、二百五十人いた。
8:11 ソロモンはファラオの娘を、ダビデの町から、彼女のために建てた宮殿へ移した。こう考えたからだ。「わたしの妻を、イスラエルの王ダビデの家に住まわせてはならない。主の箱が入った場所は、どこも聖なるところだから。」
8:12 それからソロモンは、神殿の玄関の前に建てた主の祭壇の上で、主に焼き尽くすいけにえをささげた。
8:13 モーセの命令にしたがって、毎日決められた分をささげ、さらに安息日、新月の祭り、そして年に三度の祭り、つまり種なしパンの祭り、七週の祭り、仮庵の祭りにもささげた。
8:14 彼は父ダビデの定めにしたがって、祭司の組を務めごとに配置し、レビ人にはその役目を割りあてた。レビ人は日々の決まりにしたがって、祭司のそばで賛美し、奉仕した。また門番も組ごとに、それぞれの門に配置した。神の人ダビデがそう命じていたからだ。
8:15 祭司とレビ人に対する王の命令は、宝物倉のことも含め、どんなことでも一つも破られなかった。
8:16 こうしてソロモンのすべての工事は、主の神殿の土台が据えられた日から、完成の日まで、きちんと成し遂げられた。主の神殿はこうして仕上がった。
8:17 それからソロモンは、エドムの地の海辺にあるエツヨン・ゲベルとエラトへ行った。
8:18 フラムは家来を通して、船と海をよく知る船乗りたちを彼のもとに送った。彼らはソロモンの家来とともにオフィルへ行き、そこから金四百五十タラントを手に入れて、ソロモン王のもとへ持ち帰った。
9:1 シェバの女王は、ソロモンの評判を聞いた。それで彼女は難しい問いでソロモンを試そうと、エルサレムにやって来た。とても大勢の従者を連れ、香料や大量の金、宝石を積んだらくだを引いていた。彼女はソロモンのところに来ると、心に思っていたことをすべて彼に語った。
9:2 ソロモンは彼女のどの問いにも答えた。ソロモンにわからないことは何もなく、彼女に説明できないことは一つもなかった。
9:3 シェバの女王は、ソロモンの知恵と、彼が建てた宮殿を見た。
9:4 食卓に並ぶ料理、居並ぶ家臣たち、控える給仕たちとその服装、また杯を運ぶ者たちとその服装、そして彼が主の神殿に上っていく階段を見た。彼女は息をのんで、言葉も出なかった。
9:5 彼女は王に言った。「わたしが自分の国で聞いたあなたの業績と知恵についての話は、本当だったのですね。
9:6 でも、実際にここに来て自分の目で見るまでは、その話を信じられませんでした。ところが、あなたの知恵のすばらしさは、その半分も知らされていませんでした。あなたは、わたしが聞いていた評判をはるかに超えています。
9:7 あなたの人々は幸せです。いつもあなたのそばに仕え、あなたの知恵を聞いている家臣たちは、なんと幸せなことでしょう。
9:8 あなたの神、主がほめたたえられますように。主はあなたを喜び、ご自分の王座に着かせて、あなたの神である主のために王とされました。あなたの神はイスラエルを愛し、この国をいつまでも堅く立てようとされました。だからあなたを彼らの王とし、公正と正義を行わせるのです。」
9:9 彼女は金百二十タラントと、非常に大量の香料、そして宝石を王に贈った。シェバの女王がソロモン王に贈ったような香料は、ほかにはなかった。
9:10 オフィルから金を運んできたフラムの家臣たちとソロモンの家臣たちは、白檀の木材と宝石も運んできた。
9:11 王はその白檀の木材で、主の神殿と王宮の階段を作り、また歌い手たちのために竪琴や琴を作った。これほどのものは、それまでユダの地で見られたことがなかった。
9:12 ソロモン王は、シェバの女王が求めたものは何でも、彼女の望みどおりすべて贈った。それは、彼女が王に持ってきた贈り物への返礼をはるかに超えるものだった。こうして彼女は帰っていき、家臣たちとともに自分の国へ戻った。
9:13 ソロモンのもとに一年で入ってくる金の重さは、六百六十六タラントに達した。
9:14 これは、行商人や貿易商が持ってくるものとは別だった。さらに、アラビアのすべての王や地の総督たちも、金や銀をソロモンのもとに持ってきた。
9:15 ソロモン王は、打ち延ばした金で大きな盾を二百作った。盾一つに、打ち延ばした金六百シェケルを使った。
9:16 また、打ち延ばした金で小さな盾を三百作った。盾一つに、金三百シェケルを使った。王はこれらを「レバノンの森の家」に置いた。
9:17 さらに王は、象牙で大きな王座を作り、それを純金でおおった。
9:18 王座には六つの段があり、金の足台が王座に取りつけられていた。座席の両側にはひじ掛けがあり、そのそばに二頭の獅子が立っていた。
9:19 六つの段の上には、左右に十二頭の獅子が立っていた。こんなものは、どんな国でも作られたことがなかった。
9:20 ソロモン王の飲み物の器はすべて金でできていた。「レバノンの森の家」の器もすべて純金だった。銀は、ソロモンの時代には何の価値もないものとされていた。
9:21 王の船団がフラムの家臣たちとともにタルシシュへ通っていたからだ。三年に一度、タルシシュの船団は金や銀、象牙、猿、くじゃくを積んで帰ってきた。
9:22 こうしてソロモン王は、富においても知恵においても、地のすべての王にまさっていた。
9:23 地のすべての王は、神がソロモンの心に授けた知恵を聞こうとして、彼に会いたがった。
9:24 そして彼らはそれぞれ、贈り物を持ってきた。銀の器や金の器、衣、武具、香料、馬やらばを、毎年欠かさず持ってきたのである。
9:25 ソロモンには馬と戦車のための馬屋が四千あり、騎兵は一万二千いた。彼はそれらを戦車の町々に置き、一部は王のいるエルサレムに置いた。
9:26 彼はユーフラテス川からペリシテ人の地、さらにエジプトの境に至るまで、すべての王を治めていた。
9:27 王はエルサレムで銀を石ころのように、レバノン杉を低地に生えるいちじく桑のように、たくさん行きわたらせた。
9:28 ソロモンのための馬は、エジプトやあらゆる国から運ばれてきた。
9:29 ソロモンのそのほかの出来事は、初めから終わりまで、預言者ナタンの記録、シロ人アヒヤの預言、そして先見者イドがネバトの子ヤロブアムについて見た幻の記録に、書かれているのではないか。
9:30 ソロモンはエルサレムで、イスラエル全体を四十年間治めた。
9:31 そしてソロモンは先祖のもとに眠り、父ダビデの町に葬られた。その跡を継いで、彼の子レハブアムが王となった。
10:1 レハブアムはシケムへ行った。イスラエルの人々がみな、彼を王にしようとしてシケムに集まっていたからである。
10:2 ネバトの子ヤロブアムはそのことを聞いた。彼はソロモン王を逃れてエジプトにいたのだが、その知らせを聞いてエジプトから帰ってきた。
10:3 人々は人をやってヤロブアムを呼び寄せた。そしてヤロブアムとイスラエルのすべての人々が来て、レハブアムにこう言った。
10:4 「あなたの父上は、わたしたちに重い軛を負わせました。今、その父上の課したつらい労役と重い軛を軽くしてください。そうすれば、わたしたちはあなたにお仕えします。」
10:5 レハブアムは彼らに言った。「三日たったら、もう一度わたしのところに来なさい。」それで民は帰っていった。
10:6 レハブアム王は、父ソロモンの存命中に仕えていた長老たちに相談して言った。「この民に答えるのに、あなたがたはどうするのがよいと思うか。」
10:7 彼らは王に言った。「もしあなたがこの民に対して良くしてやり、彼らを喜ばせ、優しい言葉をかけてやれば、彼らはいつまでもあなたに仕える家来となるでしょう。」
10:8 しかしレハブアムは、長老たちがくれた助言を退けた。そして、自分といっしょに育ち、そばに仕えている若者たちに相談した。
10:9 彼は若者たちに言った。「あの民は、『父上がわたしたちに負わせた軛を軽くしてください』と言ってきた。彼らに何と答えたらいいか、あなたがたはどう思うか。」
10:10 いっしょに育った若者たちは彼に言った。「あの民はあなたに、『父上はわたしたちの軛を重くしました。だからあなたはそれを軽くしてください』と言ってきました。彼らにはこう答えてやりなさい。『わたしの小指は、父の腰よりも太い。
10:11 父はあなたたちに重い軛を負わせたが、わたしはもっと重くする。父はあなたたちを鞭で懲らしめたが、わたしはさそりのついた鞭で懲らしめる。』」
10:12 王が「三日たったら、もう一度わたしのところに来なさい」と言ったとおり、三日目にヤロブアムと民全員がレハブアムのところにやって来た。
10:13 王は彼らに厳しく答えた。レハブアム王は長老たちの助言を退け、
10:14 若者たちの助言どおりにこう言った。「父はあなたたちの軛を重くしたが、わたしはそれをもっと重くする。父はあなたたちを鞭で懲らしめたが、わたしはさそりのついた鞭で懲らしめる。」
10:15 こうして王は民の願いを聞き入れなかった。これは神から出た成り行きだった。主が、シロの人アヒヤを通してネバトの子ヤロブアムに告げた言葉を実現するためであった。
10:16 イスラエルの全員は、王が自分たちの願いを聞き入れないのを見て、王にこう言い返した。「ダビデに、わたしたちがもらう分などあるか。エッサイの子から受け継ぐものなど何もない。イスラエルよ、みんな自分の天幕に帰れ。ダビデよ、これからは自分の家のことだけ見ていろ。」そしてイスラエルの全員は、それぞれの天幕に帰っていった。
10:17 ただし、ユダの町々に住んでいたイスラエルの人々に対しては、レハブアムが引き続き王となった。
10:18 レハブアム王は、労役を取り仕切っていたハドラムを送った。しかしイスラエルの人々は彼に石を投げつけ、彼は死んでしまった。レハブアム王はあわてて戦車に乗り込み、エルサレムへ逃げ帰った。
10:19 こうしてイスラエルは、ダビデの家に背いた。それは今日まで続いている。
11:1 レハブアムはエルサレムに戻ると、ユダとベニヤミンの人々を呼び集めた。その数は、えり抜きの兵士十八万人。イスラエルと戦って、王国をふたたびレハブアムのものにするためだった。
11:2 しかし、神の人シェマヤに主の言葉が下った。
11:3 「ユダの王、ソロモンの子レハブアムと、ユダとベニヤミンにいるすべてのイスラエルの人々にこう伝えなさい。
11:4 主はこう言われる。攻め上ってはならない。あなたたちの兄弟と戦ってはならない。それぞれ自分の家に帰りなさい。このことは、わたしから起こったのだ。」人々は主の言葉に従い、ヤロブアムに攻め込むのをやめて引き返した。
11:5 レハブアムはエルサレムにとどまり、ユダに防備の町々を築いた。
11:6 彼が築いたのは、ベツレヘム、エタム、テコア、
11:7 ベツ・ツル、ソコ、アドラム、
11:8 ガト、マレシャ、ジフ、
11:9 アドライム、ラキシュ、アゼカ、
11:10 ツォルア、アヤロン、ヘブロン。これらはユダとベニヤミンにある、城壁を備えた町々である。
11:11 彼はこれらの砦を強化し、それぞれに指揮官を置いた。そして食料と油とぶどう酒をたくわえた。
11:12 また、どの町にも盾と槍をそなえて、町々をとても堅固なものにした。こうして、ユダとベニヤミンは彼のものとなった。
11:13 イスラエル全土にいた祭司たちとレビ人たちは、それぞれの住む地方から、こぞってレハブアムのもとに集まってきた。
11:14 レビ人たちは、自分たちの牧草地も財産も捨てて、ユダとエルサレムへ移ってきたのだ。ヤロブアムとその息子たちが、彼らを主に仕える祭司の務めから追い出したからである。
11:15 ヤロブアムは、自分で作った高台の祭壇や、やぎの偶像や子牛の像のために、勝手に祭司を任命した。
11:16 また、イスラエルのすべての部族の中で、イスラエルの神である主を心から求めようとする人々も、レビ人たちに続いてエルサレムへやってきた。先祖の神である主にいけにえをささげるためである。
11:17 こうして彼らはユダの王国を支え、ソロモンの子レハブアムを三年の間、力づけた。三年の間、彼らがダビデとソロモンの道を歩んだからである。
11:18 レハブアムはマハラトを妻にめとった。彼女はダビデの子エリモテの娘で、母はエッサイの子エリアブの娘アビハイルであった。
11:19 マハラトは彼にエウシュ、シェマルヤ、ザハムという息子たちを産んだ。
11:20 その後、レハブアムはアブサロムの娘マアカをめとった。マアカは彼にアビヤ、アタイ、ジザ、シェロミトを産んだ。
11:21 レハブアムは、妻たちやそばめたちの中で、アブサロムの娘マアカを一番愛した。彼は十八人の妻と六十人のそばめをめとり、二十八人の息子と六十人の娘をもうけた。
11:22 レハブアムは、マアカの子アビヤを兄弟たちの上に立つ指導者として、かしらに任命した。アビヤを王にしようと考えていたからである。
11:23 レハブアムは賢く立ち回り、息子たちをユダとベニヤミンの全土に、すべての城壁のある町々に分けて住まわせた。そして彼らに食料をたっぷり与え、多くの妻をめとらせた。
12:1 レハブアムは王としての地位を固め、力をつけた。すると彼は主の教えを捨ててしまった。イスラエルの人々もみな、彼といっしょに主から離れた。
12:2 彼らが主に背いたので、レハブアム王の第五年に、エジプトの王シシャクがエルサレムに攻め上ってきた。
12:3 シシャクは戦車千二百台と騎兵六万を率いていた。エジプトから彼といっしょに来た兵の数は数えきれないほどで、リビア人、スキ人、クシュ人がいた。
12:4 彼はユダに属する城壁のある町々を攻め取り、エルサレムにまで迫った。
12:5 そのとき、預言者シェマヤが、シシャクを恐れてエルサレムに集まっていたレハブアムとユダの高官たちのところに来て、こう言った。「主はこう言われる。『あなたたちはわたしを捨てた。だからわたしも、あなたたちをシシャクの手に渡して見捨てる。』」
12:6 すると、イスラエルの高官たちと王は身を低くして、こう言った。「主は正しい。」
12:7 彼らが身を低くしたのを見て、主の言葉がシェマヤに臨んだ。「彼らは身を低くした。だからわたしは彼らを滅ぼさない。まもなく彼らを救い出す。わたしの怒りは、シシャクの手によってエルサレムに注がれることはない。
12:8 しかし彼らはシシャクの家来となる。こうして彼らは、わたしに仕えることと、各地の国々の王に仕えることの違いを思い知るだろう。」
12:9 エジプトの王シシャクはエルサレムに攻め上り、主の神殿の宝物と王宮の宝物を奪った。彼はすべてを奪い取り、ソロモンが作った金の盾も持ち去った。
12:10 そこでレハブアム王は、その代わりに青銅の盾を作らせ、王宮の入り口を守る親衛隊の隊長たちに預けた。
12:11 王が主の神殿に入るたびに、親衛隊はその盾を持って行き、また親衛隊の詰め所に戻した。
12:12 レハブアムが身を低くしたので、主の怒りは彼から離れ、彼を完全には滅ぼさなかった。ユダには、まだ良いこともあった。
12:13 レハブアム王はエルサレムで勢いを取り戻し、王として国を治めた。王位についたとき彼は四十一歳で、エルサレムで十七年間王であった。この町は、主がイスラエルのすべての部族の中から選び、ご自分の名を置くとされた場所である。彼の母はアンモン人のナアマといった。
12:14 しかし彼は悪を行った。心を定めて主を求めようとしなかったからだ。
12:15 レハブアムの行ったことは、初めから終わりまで、預言者シェマヤの記録と、先見者イドの記録に、家系の記録とともに書かれているではないか。レハブアムとヤロブアムの間には、その間ずっと戦いが続いていた。
12:16 レハブアムは先祖と共に眠りにつき、ダビデの町に葬られた。そして息子のアビヤが代わって王となった。
13:1 ヤロブアム王の第十八年に、アビヤがユダの王となった。
13:2 彼はエルサレムで三年間王であった。彼の母はギブア出身のウリエルの娘、ミカヤといった。アビヤとヤロブアムの間には戦いがあった。
13:3 アビヤは四十万の精鋭からなる勇士の軍を率いて戦いにのぞんだ。ヤロブアムも八十万の選び抜かれた勇士を率いて、アビヤに向かって陣を敷いた。
13:4 アビヤはエフライムの山地にあるツェマライム山の上に立ち、こう言った。「ヤロブアムと、すべてのイスラエルの者よ、わたしの言うことを聞け。
13:5 イスラエルの神である主が、イスラエルの王権をダビデとその子孫に永遠に与えられたことを、あなたがたは知らないのか。それは、塩の契約による、変わることのない約束なのだ。
13:6 ところが、ダビデの子ソロモンの家来であったネバトの子ヤロブアムが立ち上がり、自分の主君に背いた。
13:7 そこに、ろくでもない連中、たちの悪い者たちが彼のまわりに集まり、ソロモンの子レハブアムに立ち向かった。レハブアムはまだ若く、気も弱かったので、彼らに立ち向かうことができなかった。
13:8 そして今、あなたがたは、ダビデの子孫の手にある主の王国に立ち向かおうとしている。あなたがたは大軍で、ヤロブアムがあなたがたのために神として造った金の子牛も一緒にいる。
13:9 あなたがたは、主の祭司であるアロンの子らやレビ人を追い出したではないか。そして、ほかの国の民のように、自分たちのために勝手な祭司を立てた。若い雄牛一頭と雄羊七頭を持って来て身を清める者なら、だれでも、神でもないものに仕える祭司になれるのだ。
13:10 でも、わたしたちにとっては、主がわたしたちの神であり、わたしたちは主を捨ててはいない。主に仕える祭司はアロンの子らであり、レビ人もそれぞれの務めを果たしている。
13:11 彼らは毎朝、毎晩、主に焼き尽くすいけにえと香りのよい香をささげ、清いテーブルの上に供えのパンを並べ、金の燭台とそのともし火を毎晩ともしている。わたしたちは、わたしたちの神である主の務めをきちんと守っている。しかし、あなたがたは主を捨ててしまった。
13:12 見よ、神ご自身が先頭に立って、わたしたちと共にいてくださる。その祭司たちも、あなたがたに向かって鳴らす合図のラッパを手にしている。イスラエルの人々よ、あなたがたの先祖の神である主と戦ってはならない。勝てるはずがないからだ。」
13:13 ところがヤロブアムは、伏兵を回り込ませて、ユダの後ろから襲わせようとした。こうして本隊はユダの前にいて、伏兵は後ろに回った。
13:14 ユダが振り返ると、前からも後ろからも攻撃を受けていた。そこで彼らは主に叫び求め、祭司たちはラッパを吹き鳴らした。
13:15 そしてユダの人々はときの声を上げた。ユダの人々がときの声を上げたそのとき、神はアビヤとユダの前でヤロブアムとすべてのイスラエルを打ち破られた。
13:16 イスラエルの人々はユダの前から逃げ出し、神は彼らをユダの手に渡された。
13:17 アビヤとその軍勢は、彼らに大きな打撃を与えた。イスラエルでは、えり抜きの兵士五十万人が倒れて死んだ。
13:18 こうして、そのときイスラエルの人々は屈服し、ユダの人々が勝利を収めた。彼らが、自分たちの先祖の神である主に頼っていたからである。
13:19 アビヤはヤロブアムを追撃し、彼からいくつかの町を奪い取った。ベテルとその周辺の村々、エシャナとその周辺の村々、エフロンとその周辺の村々である。
13:20 ヤロブアムはアビヤの在世中、二度と勢力を取り戻すことはなかった。そして主が彼を打たれ、彼は死んだ。
13:21 一方、アビヤは強くなっていった。彼は十四人の妻をめとり、二十二人の息子と十六人の娘をもうけた。
13:22 アビヤのその他の事績、その歩みと言葉は、預言者イドの注解書に記されている。
14:1 アビヤは先祖のもとに眠り、ダビデの町に葬られた。そして、その子アサが代わって王となった。アサの時代には、国は十年のあいだ穏やかだった。
14:2 アサは、自分の神である主の目に良いこと、正しいことを行った。
14:3 彼は外国の神々の祭壇と高き所を取り除き、石の柱を打ち砕き、アシェラ像を切り倒した。
14:4 そしてユダの人々に、先祖の神である主を求め、律法と戒めを守り行うようにと命じた。
14:5 また彼は、ユダのすべての町から高き所と香をたく祭壇を取り除いた。こうして、彼のもとで王国は穏やかだった。
14:6 国が穏やかだったので、彼はユダに城壁で囲った町々を築いた。主が彼に安らぎを与えられたので、この数年のあいだ戦いはなかった。
14:7 彼はユダの人々に言った。「これらの町を築こう。周りを城壁で囲み、やぐらと門と、かんぬきを設けよう。国はまだわたしたちのものだ。わたしたちが自分たちの神である主を求めたからだ。求めたので、主はまわりのすべてから安らぎを与えてくださった。」こうして彼らは町を築き、栄えた。
14:8 アサには軍隊があった。ユダからは大盾と槍を持つ者が三十万人、ベニヤミンからは盾を持ち弓を引く者が二十八万人。これらはみな勇敢な戦士だった。
14:9 そこへ、クシュ人ゼラが百万の軍勢と三百台の戦車を率いて攻めてきて、マレシャまで進んできた。
14:10 アサは迎え撃つために出て行き、マレシャのツェファタの谷で戦いの陣を整えた。
14:11 アサは自分の神である主に呼び求めて言った。「主よ、強い者と力のない者のあいだにあって、助けることができるのはあなただけです。わたしたちの神、主よ、わたしたちを助けてください。わたしたちはあなたに頼り、あなたの名によって、この大軍に立ち向かいます。主よ、あなたはわたしたちの神です。人があなたに勝つことがないようにしてください。」
14:12 すると主は、アサとユダの前でクシュ人を打たれた。クシュ人は逃げ出した。
14:13 アサと彼に従う民は、彼らをゲラルまで追いかけた。クシュ人は倒れ、生き残る者はいなかった。彼らは主とその陣営の前で打ち砕かれたのだ。こうして人々は非常に多くの戦利品を奪い取った。
14:14 彼らはゲラルの周りのすべての町を打った。主への恐れが町々を包んでいたからだ。彼らはすべての町を略奪した。そこには奪うものがたくさんあったからだ。
14:15 家畜を飼う者の天幕も襲い、たくさんの羊とらくだを奪って、エルサレムに帰った。
15:1 神の霊が、オデドの子アザルヤに降った。
15:2 アザルヤはアサを迎えに出て、こう言った。「アサ王、そしてユダとベニヤミンのみなさん、聞いてください。あなたたちが主とともにいるなら、主もあなたたちとともにいてくださる。あなたたちが主を求めるなら、主を見いだすことができる。でも、あなたたちが主を捨てるなら、主もあなたたちを捨てられる。」
15:3 イスラエルは長い間、まことの神もなく、教える祭司もなく、律法もない状態が続いていた。
15:4 けれども、苦しみのなかでイスラエルの神である主に立ち返り、主を求めたとき、彼らは主を見いだすことができた。
15:5 その頃は、出て行く者にも入って来る者にも、平安はなかった。あちこちの国に住む人たちみんなが、大きな混乱に襲われていたからだ。
15:6 国と国、町と町が、互いに砕き合った。神があらゆる苦難で彼らを混乱させたからだ。
15:7 でも、あなたたちは強くありなさい。手を弱らせてはいけない。あなたたちの働きには報いがあるのだから。
15:8 アサはこの言葉、つまり預言者オデドの預言を聞くと、勇気を出した。そして、ユダとベニヤミンの全土から、また自分が攻め取ったエフライムの山地の町々から、忌まわしい偶像を取り除いた。さらに、主の神殿の玄関の前にある主の祭壇を建て直した。
15:9 そしてアサは、ユダとベニヤミンのすべての人、さらにエフライム、マナセ、シメオンから来て彼らとともに住んでいた人たちを集めた。というのも、アサの神である主が彼とともにおられるのを見て、イスラエルから多くの人が彼のもとに移ってきていたからだ。
15:10 彼らはアサの治世の第十五年、第三の月に、エルサレムに集まった。
15:11 その日、彼らは持ち帰った戦利品の中から、牛七百頭と羊七千匹を主にささげた。
15:12 そして、心を尽くし、魂を尽くして、先祖の神である主を求めるという契約を結んだ。
15:13 そして、イスラエルの神である主を求めない者は、身分の低い者も高い者も、男も女も、すべて死刑にする、と決めた。
15:14 彼らは大きな声で叫び、ラッパと角笛を鳴らして、主に誓った。
15:15 ユダの人々は皆、この誓いを喜んだ。心を尽くして誓い、心から主を求めたので、主は彼らに見いだされた。そして主は、周りのすべての敵から彼らを守り、安らぎを与えた。
15:16 アサ王は、自分の母マアカが忌まわしい偶像を作ったので、彼女を王母の位から退けた。アサはその偶像を切り倒し、粉々に砕いて、キドロンの谷で焼いた。
15:17 高台の礼拝所はイスラエルから取り除かれなかったが、アサの心は生涯、主に対してまっすぐだった。
15:18 彼は、父がささげた物と自分がささげた物、すなわち銀や金、そして器具を神の宮に運び入れた。
15:19 アサの治世の第三十五年まで、戦争はなかった。
16:1 アサの治世の第三十六年、イスラエルの王バアシャがユダに攻め上ってきた。そして、ユダの王アサのもとへ人が出入りできないように、ラマの町を築いた。
16:2 そこでアサは、主の宮と王宮の宝物庫から銀と金を取り出し、ダマスコに住むアラムの王ベン・ハダドのもとへ送って、こう言った。
16:3 「わたしの父とあなたの父が結んでいたように、わたしとあなたの間で同盟を結びましょう。今、あなたに銀と金を送ります。どうか、イスラエルの王バアシャとの同盟を破り、彼をわたしのもとから引き上げさせてください。」
16:4 ベン・ハダドはアサ王の願いを聞き入れ、自分の軍隊の隊長たちをイスラエルの町々に送った。そして彼らは、イヨン、ダン、アベル・マイム、それにナフタリの倉庫の町々をすべて打ち破った。
16:5 これを聞いたバアシャは、ラマの町を築くのをやめ、その工事を中止した。
16:6 アサ王はユダの人々を全員動員し、バアシャがラマを築くのに使っていた石と木材を運び出させた。そして、それらでゲバとミツパを築いた。
16:7 そのころ、預言者ハナニがユダの王アサのところに来て、こう言った。「あなたはアラムの王に頼り、あなたの神である主に頼らなかった。だから、アラムの王の軍はあなたの手から逃げてしまったのだ。
16:8 クシュ人とリビア人は、戦車も騎兵もとても多い大軍ではなかったか。それでも、あなたが主に頼ったとき、主は彼らをあなたの手に渡してくださった。
16:9 主の目は全地を巡っていて、心から主に向かう人を力づけてくださる。あなたは今回、愚かなことをした。だから、これからあなたには戦いが絶えないだろう。」
16:10 するとアサはこの預言者に腹を立て、彼を牢につないだ。このことで激しく怒ったのだ。またそのころ、アサは民の一部をひどく苦しめた。
16:11 アサの事績は、初めから終わりまで、ユダとイスラエルの王たちの書に記されている。
16:12 アサは治世の第三十九年に足を病み、その病はとても重くなった。しかし彼は病のときも主を求めず、医者に頼った。
16:13 そしてアサは先祖と共に眠りにつき、治世の第四十一年に死んだ。
16:14 人々は、彼がダビデの町に自分のために掘っておいた墓に彼を葬った。そして、香料やさまざまな練り薬を調香の技で調合して満たした寝床に彼を横たえ、彼のために非常に大きな火をたいて弔った。
17:1 アサの息子ヨシャファトが、父に代わって王になった。そして、イスラエルに対抗して自分の国を強くしていった。
17:2 彼はユダの城壁で囲まれたすべての町に軍隊を置いた。さらに、ユダの地と、父アサが占領したエフライムの町々に守備隊を配置した。
17:3 主はヨシャファトとともにいた。彼が先祖ダビデが初めに歩んだ道を歩み、バアルの神々に頼らなかったからだ。
17:4 そうではなく、彼は父祖の神に頼り、その戒めに従って歩んだ。イスラエルのやり方には従わなかった。
17:5 だから主は、彼の手の中で王国を確かなものにした。ユダの人々はみなヨシャファトに贈り物を持ってきた。こうして彼は、あり余るほどの富と栄誉を手にした。
17:6 彼は主の道を歩むことに、心から誇りを持っていた。そして、ユダから丘の上の祭壇と女神アシェラの柱を取り除いた。
17:7 王になって三年目、彼は家臣のベン・ハイル、オバデヤ、ゼカリヤ、ネタンエル、ミカヤを送り、ユダの町々で教えさせた。
17:8 彼らとともに、レビ人のシェマヤ、ネタンヤ、ゼバデヤ、アサエル、シェミラモト、ヨナタン、アドニヤ、トビヤ、トブ・アドニヤも行った。さらに祭司のエリシャマとヨラムも一緒だった。
17:9 彼らは主の律法の書を持って、ユダで教えた。ユダのすべての町を回って、人々に教えたのだ。
17:10 すると、ユダの周りにあるすべての国々に、主への恐れが広がった。それで、どの国もヨシャファトと戦おうとはしなかった。
17:11 ペリシテ人の一部はヨシャファトに贈り物と、税として銀を納めた。アラビア人も彼に、雄羊七千七百頭と雄やぎ七千七百頭を持ってきた。
17:12 こうしてヨシャファトは、ますます強く大きくなっていった。彼はユダに要塞や、物資をたくわえる町を建てた。
17:13 ヨシャファトはユダの町々に多くの物資をたくわえ、エルサレムには強い兵士たちを置いていた。
17:14 その兵士たちを、父祖の家ごとに数えると、次のとおりである。ユダの千人隊長たちのうち、まず隊長アドナがいて、その下に強い兵士が三十万人いた。
17:15 その次は隊長ヨハナンで、その下に二十八万人がいた。
17:16 その次はジクリの子アマスヤで、彼は自分から進んで主にささげられた者だった。その下に強い兵士が二十万人いた。
17:17 ベニヤミンからは、強い兵士エルヤダがいて、弓と盾で武装した者が二十万人、彼とともにいた。
17:18 その次はエホザバドで、戦いの備えを整えた者が十八万人、彼とともにいた。
17:19 これらの者が王に仕えていた。このほかにも、王はユダ全土の要塞の町々に兵を配置していた。
18:1 ヨシャファトは富と誉れをあり余るほど手にした。そして彼はアハブと縁組みを結んだ。
18:2 数年後、彼はサマリアのアハブのところへ下って行った。アハブは彼と、彼に従う人々のために、羊や牛をたくさんほふってもてなした。そして、いっしょにラモト・ギルアデを攻めようとヨシャファトをそそのかした。
18:3 イスラエルの王アハブは、ユダの王ヨシャファトに言った。「わたしといっしょにラモト・ギルアデへ行ってくれるか。」ヨシャファトは答えた。「わたしはあなたと同じ、わたしの民はあなたの民と同じです。わたしたちは戦いであなたとともに戦います。」
18:4 しかしヨシャファトはイスラエルの王に言った。「まず今日、主のことばを求めてください。」
18:5 そこでイスラエルの王は預言者たちを集めた。その数は四百人だった。王は彼らに尋ねた。「ラモト・ギルアデへ戦いに行くべきか、それともやめるべきか。」彼らは答えた。「行ってください。神が王の手にその町を渡されます。」
18:6 だがヨシャファトは言った。「ここには、ほかに主の預言者はいないのですか。その人にも尋ねてみたいのです。」
18:7 イスラエルの王はヨシャファトに言った。「主に尋ねられる者が、もう一人います。でも、わたしはその男が嫌いです。わたしについて良いことは一度も預言せず、いつも悪いことばかり言うからです。イムラの子ミカヤという者です。」ヨシャファトは言った。「王よ、そんなふうに言わないでください。」
18:8 そこでイスラエルの王は一人の家来を呼び、「イムラの子ミカヤを急いで連れて来い」と命じた。
18:9 イスラエルの王とユダの王ヨシャファトは、王服を着て、それぞれの王座に座っていた。二人はサマリアの城門の入り口にある広場に座り、預言者たちはみな、その前で預言していた。
18:10 ケナアナの子ゼデキヤは鉄の角を作って、こう言った。「主はこう言われます。『あなたはこの角でアラムを突き、彼らを滅ぼし尽くす。』」
18:11 ほかの預言者たちもみな同じように預言して言った。「ラモト・ギルアデへ攻め上ってください。きっと勝てます。主が王の手にその町を渡されます。」
18:12 ミカヤを呼びに行った使いの者は、彼にこう言った。「いいですか、預言者たちはみな口をそろえて、王に良いことを告げています。あなたも彼らと同じように、良いことを言ってください。」
18:13 だがミカヤは言った。「主は生きておられる。その主にかけて言う。わたしの神が言われることだけを、わたしは告げる。」
18:14 ミカヤが王のところに来ると、王は彼に尋ねた。「ミカヤ、わたしたちはラモト・ギルアデへ戦いに行くべきか、それともやめるべきか。」ミカヤは答えた。「攻め上ってください。きっと勝てます。彼らはあなたがたの手に渡されます。」
18:15 すると王は言った。「わたしは何度、おまえに誓わせればいいのか。主の名によって、真実だけを話せと。」
18:16 ミカヤは言った。「わたしは、イスラエルのすべての人が羊飼いのいない羊のように山々に散っているのを見ました。すると主は言われました。『この者たちには主人がいない。それぞれ無事に自分の家へ帰らせよ。』」
18:17 イスラエルの王はヨシャファトに言った。「わたしはあなたに言ったでしょう。この男はわたしについて良いことは預言せず、悪いことばかり言うと。」
18:18 ミカヤはさらに言った。「それなら、主のことばを聞いてください。わたしは、主が王座に座っておられるのを見ました。天の万軍がみな、その右と左に立っていました。」
18:19 主は言われた。「だれがイスラエルの王アハブを誘い出して、ラモト・ギルアデへ攻め上らせ、そこで倒れさせるだろうか。」すると、ある者はこう言い、ほかの者はああ言った。
18:20 すると、一つの霊が進み出て、主の前に立って言った。「わたしが彼を誘い出します。」主はその霊に言われた。「どうやってだ。」
18:21 霊は言った。「わたしが出て行って、彼の預言者たちみんなの口に宿る、偽りの霊となります。」主は言われた。「おまえなら彼を誘い出せる。きっとうまくいく。出て行って、そうしなさい。」
18:22 だから今、主はここにいるあなたの預言者たちの口に、偽りの霊を入れられたのです。主はあなたに災いを告げられました。」
18:23 すると、ケナアナの子ゼデキヤが近づいてきて、ミカヤの頬を打って言った。「主の霊が、このわたしを離れて、どの道を通っておまえに語ったというのか。」
18:24 ミカヤは言った。「おまえが奥の部屋に逃げ込んで隠れる、その日に思い知るだろう。」
18:25 イスラエルの王は言った。「ミカヤを捕らえて、町の長官アモンと、王子ヨアシュのところへ連れ戻せ。
18:26 そしてこう言え。『王はこう命じる。この男を牢に入れ、わたしが無事に帰ってくるまで、わずかなパンと水だけを与えておけ。』」
18:27 ミカヤは言った。「もしあなたが本当に無事に帰ってくるなら、主はわたしを通して語られなかったことになる。」そして言った。「すべての民よ、聞け。」
18:28 こうして、イスラエルの王とユダの王ヨシャファトは、ラモト・ギルアデへ攻め上った。
18:29 イスラエルの王はヨシャファトに言った。「わたしは姿を変えて戦いに出る。でも、あなたは自分の王服を着ていてください。」そう言って、イスラエルの王は姿を変え、二人は戦いに出た。
18:30 さて、アラムの王は自分の戦車隊の隊長たちに、こう命じていた。「身分の低い者とも高い者とも戦うな。ただイスラエルの王とだけ戦え。」
18:31 戦車隊の隊長たちはヨシャファトを見て、「あれがイスラエルの王だ」と言い、彼を囲んで攻めかかった。でも、ヨシャファトが叫び求めると、主は彼を助け、神は敵を彼から引き離された。
18:32 戦車隊の隊長たちは、彼がイスラエルの王ではないと分かると、追うのをやめて引き返した。
18:33 ところが、ある男が何気なく弓を引くと、その矢はイスラエルの王のよろいの合わせ目に当たった。王は御者に言った。「向きを変えて、わたしを戦場から連れ出してくれ。傷を負ったのだ。」
18:34 その日、戦いは激しくなった。イスラエルの王は夕方まで、アラム軍と向き合って戦車の中で体を支えていた。そして日が沈むころ、息を引き取った。
19:1 ユダの王ヨシャファトは、無事にエルサレムの自分の家へ帰った。
19:2 すると、預言者ハナニの子エフーが出て来て、ヨシャファト王に言った。「悪い者を助け、主を憎む者を愛してよいのですか。これによって、主の怒りがあなたに向けられています。
19:3 でも、あなたには良いところもあります。あなたはこの地からアシェラ像を取り除き、心を定めて神を求めてきたからです。」
19:4 ヨシャファトはエルサレムに住んだ。そして再び、ベエル・シェバからエフライムの山地まで民の間を巡り、彼らを先祖の神である主のもとへ立ち返らせた。
19:5 彼はこの地の、ユダのすべての城壁のある町に、町ごとに裁判をする者を立てた。
19:6 そして、その者たちに言った。「自分が何をしているのか、よく考えなさい。あなたたちが裁くのは人のためではなく、主のためだ。裁きを行うとき、主があなたたちと共におられる。
19:7 だから、主を恐れる心をあなたたちの内に保ちなさい。気をつけて、そのとおりに行いなさい。わたしたちの神、主には不正がなく、えこひいきもなく、わいろを受け取ることもないからだ。」
19:8 エルサレムでも、ヨシャファトはレビ人と祭司、それにイスラエルの家長たちの中から人を立て、主の裁きと争いごとの解決に当たらせた。そして彼らはエルサレムに戻った。
19:9 そして、その者たちに命じて言った。「あなたたちは主を恐れ、誠実に、心を尽くしてこのことを行いなさい。
19:10 それぞれの町に住むあなたたちの同胞から持ち込まれる争いは、どんなものでも——流血の事件でも、律法と命令、掟と定めに関することでも——彼らに警告しなさい。そうすれば、彼らが主に対して罪を犯すことも、その怒りがあなたたちや同胞に及ぶこともない。このようにすれば、あなたたちは罪を犯さずにすむ。
19:11 主に関するすべてのことについては、祭司長アマルヤがあなたたちの上に立つ。王に関するすべてのことについては、ユダの家の指導者、イシュマエルの子ゼバデヤが立つ。レビ人は役人としてあなたたちに仕える。勇気をもって行いなさい。主が良い者と共におられますように。」
20:1 その後、モアブ人とアンモン人が、さらにアンモン人の中の一部の者も加わって、ヨシャファトと戦うために攻めて来た。
20:2 人々が来て、ヨシャファトに告げた。「海の向こう、アラムから、大軍があなたに向かって攻めて来ています。今、彼らはハツァツォン・タマル、すなわちエン・ゲディにいます。」
20:3 ヨシャファトは恐れ、主に助けを求めようと心を定めた。そして、ユダ全体に断食を呼びかけた。
20:4 ユダの人々は主に助けを求めて集まった。ユダのすべての町からも、人々は主を求めてやって来た。
20:5 ヨシャファトは、主の神殿の新しい庭の前で、ユダとエルサレムの人々の集まりの中に立って、
20:6 こう言った。「わたしたちの先祖の神、主よ。あなたは天におられる神ではありませんか。あなたはすべての国々の王国を治めておられます。あなたの手には力と勢いがあり、だれもあなたに立ち向かうことはできません。
20:7 わたしたちの神よ。あなたは、あなたの民イスラエルの前から、この地に住んでいた人々を追い払ったではありませんか。そして、この地をあなたの友アブラハムの子孫に、永遠に与えてくださいました。
20:8 人々はここに住みつき、ここにあなたの名のための聖なる場所を建てて、こう言いました。
20:9 「もし、わたしたちに災いがふりかかっても、たとえば戦争や裁き、疫病や飢饉が来ても、わたしたちはこの神殿の前、つまりあなたの前に立ちます。あなたの名は、この神殿にあるからです。そして、苦しみの中からあなたに叫び求めます。あなたはそれを聞いて、救ってくださいます。」
20:10 今、ご覧ください。アンモン人、モアブ人、そしてセイル山の人々のことです。イスラエルがエジプトの地から出て来たとき、あなたは彼らの国に攻め込むことをお許しになりませんでした。それでイスラエルは彼らを避けて通り、滅ぼしませんでした。
20:11 ところが今、彼らはそのお返しに、あなたがわたしたちに受け継がせてくださったあなたの領地から、わたしたちを追い出そうと攻めて来るのです。
20:12 わたしたちの神よ。あなたは彼らを裁いてくださらないのですか。攻めて来るこの大軍を前にして、わたしたちには立ち向かう力がありません。どうすればいいのか分かりません。ただ、わたしたちの目はあなたに向けられています。」
20:13 ユダの人々はみな、幼い子どもも、妻も、子どもたちも、主の前に立っていた。
20:14 そのとき、集まった人々の真ん中で、主の霊がヤハジエルに降った。彼はゼカルヤの子で、ゼカルヤはベナヤの子、ベナヤはエイエルの子、エイエルはマタンヤの子であり、アサフの子孫であるレビ人だった。
20:15 ヤハジエルは言った。「ユダのみなさん、エルサレムに住むみなさん、そしてヨシャファト王よ、聞いてください。主はあなたがたにこう言われます。『恐れてはならない。この大軍を前にして、おじけづいてはならない。この戦いは、あなたがたのものではなく、神のものだからだ。
20:16 明日、彼らのところへ下って行きなさい。見なさい、彼らはツィツの坂を上って来る。あなたがたは、エルエルの荒れ野に面した谷の果てで、彼らと出会うだろう。
20:17 この戦いで、あなたがたは戦う必要はない。持ち場について、じっと立ち、あなたがたとともにある主の救いを見なさい。ユダとエルサレムのみなさん、恐れてはならない。おじけづいてはならない。明日、彼らに立ち向かって出て行きなさい。主があなたがたとともにおられる。』」
20:18 ヨシャファトは顔を地につけて伏し拝んだ。ユダの人々とエルサレムに住む人々もみな、主の前にひれ伏して、主を礼拝した。
20:19 そして、コハト族とコラ族のレビ人たちが立ち上がり、大きな声を張り上げて、イスラエルの神である主をほめたたえた。
20:20 翌朝、彼らは早起きして、テコアの荒れ野へ出て行った。出発するとき、ヨシャファトは立ってこう言った。「ユダの人々、エルサレムに住む人々、わたしの言うことを聞いてください。あなたがたの神である主を信頼しなさい。そうすれば、あなたがたは揺るがない。主の預言者たちを信じなさい。そうすれば、あなたがたはうまくいく。」
20:21 そして彼は民に相談したうえで、主のために歌う者たちを任命した。彼らは聖なる装いを身につけ、軍隊の前を進みながら主をほめたたえ、こう歌った。「主に感謝しよう。その慈しみはいつまでも続くのだから。」
20:22 彼らが喜びの歌と賛美を歌い始めたそのとき、主はユダに攻めて来たアンモン人、モアブ人、セイル山の者たちに対して伏兵を仕掛けられた。こうして彼らは打ち破られた。
20:23 というのも、アンモン人とモアブ人がセイル山の住民に立ち向かい、彼らを皆殺しにして滅ぼそうとしたのだ。そしてセイルの住民を滅ぼし尽くすと、今度は仲間同士で殺し合い、たがいに滅ぼし合った。
20:24 ユダの人々が荒れ野を見渡せる物見の場所まで来て、あの大軍のほうを見ると、なんと、みな地に倒れた死体になっていた。逃げのびた者は一人もいなかった。
20:25 ヨシャファトと彼の民が戦利品を奪い取ろうとやって来ると、そこには家畜や財宝、それに高価な品々がおびただしくあった。彼らはそれを、運びきれないほど自分たちのものにした。あまりに多かったので、戦利品を集めるのに三日もかかった。
20:26 四日目に、彼らはベラカの谷に集まった。そこで主をほめたたえたので、その場所をベラカ（祝福）の谷と呼ぶようになった。今日までそう呼ばれている。
20:27 それから、ユダとエルサレムのすべての人が、ヨシャファトを先頭に、喜びにあふれてエルサレムへ帰って行った。主が彼らを、敵に打ち勝つ喜びで満たしてくださったからだ。
20:28 彼らは竪琴や琴、ラッパを奏でながらエルサレムに入り、主の神殿へ向かった。
20:29 主がイスラエルの敵と戦われたと聞いて、周りの国々はみな神を恐れるようになった。
20:30 こうしてヨシャファトの王国は穏やかになった。彼の神が、周りのすべてから守って安らぎを与えてくださったからである。
20:31 ヨシャファトはユダを治めた。王になったのは三十五歳のときで、エルサレムで二十五年間王であった。母の名はアズバといい、シルヒの娘であった。
20:32 彼は父アサの道を歩み、そこからそれることなく、主が正しいと見られることを行った。
20:33 ただし、高き所は取り除かれなかった。民はまだ、先祖の神に心を向けきってはいなかったのだ。
20:34 ヨシャファトのその他の出来事は、初めから終わりまで、ハナニの子エフーの記録に書かれている。それはイスラエルの王たちの書に収められている。
20:35 その後、ユダの王ヨシャファトは、イスラエルの王アハズヤと手を組んだ。アハズヤは悪いことばかりする王だった。
20:36 ヨシャファトは彼と組んで、タルシシュへ行くための船を造ろうとした。そして二人はエツヨン・ゲベルで船を造った。
20:37 すると、マレシャの人ドダワの子エリエゼルが、ヨシャファトに向けてこう預言した。「あなたがアハズヤと手を組んだので、主はあなたの造ったものを壊される。」その船は壊れ、タルシシュへ行くことはできなかった。
21:1 ヨシャファトは先祖のもとに眠り、ダビデの町に先祖とともに葬られた。そして息子のヨラムが代わって王になった。
21:2 ヨラムには兄弟がいた。ヨシャファトの息子であるアザルヤ、エヒエル、ゼカルヤ、アザルヤ、ミカエル、シェファトヤである。これらはみな、イスラエルの王ヨシャファトの息子だった。
21:3 父は彼らに、銀や金や高価な品々をたくさん与え、ユダの城壁のある町々も与えた。しかし王国はヨラムに与えた。彼が長男だったからである。
21:4 ヨラムは父の王国を継いで力をつけると、兄弟たちを一人残らず剣で殺し、イスラエルの高官たちの何人かも殺した。
21:5 ヨラムが王になったのは三十二歳のときで、エルサレムで八年間王であった。
21:6 彼はイスラエルの王たちの道を歩み、アハブの家がしたのと同じことをした。アハブの娘を妻にしていたからである。こうして彼は、主が悪いと見られることを行った。
21:7 でも主は、ダビデの家を滅ぼそうとはされなかった。ダビデと結んだ契約があったからであり、ダビデとその子孫にいつまでも消えることのない灯を与えると約束しておられたからである。
21:8 ヨラムの時代に、エドムがユダの支配に反抗して、自分たちの王を立てた。
21:9 そこでヨラムは、自分の高官たちと全戦車を率いて出て行った。そして夜のうちに立ち上がり、彼を包囲していたエドム軍と、その戦車隊の指揮官たちを討った。
21:10 こうしてエドムは、今日までユダの支配に反抗し続けている。同じころ、リブナもヨラムの支配に反抗した。ヨラムが、先祖の神である主を捨てたからである。
21:11 さらにヨラムは、ユダの山々に高き所を造り、エルサレムの住民を主から引き離して偶像に走らせ、ユダを迷わせた。
21:12 あるとき、預言者エリヤから一通の手紙がヨラムに届いた。そこにはこう書かれていた。「あなたの父祖ダビデの神、主はこう言われる。あなたは父ヨシャファトの道を歩まず、ユダの王アサの道も歩まなかった。
21:13 むしろイスラエルの王たちの道を歩み、アハブの家がしたように、ユダとエルサレムの住民を主から引き離して偶像に走らせた。おまけに、あなたより善良だった兄弟たち、父の家の者たちを殺した。
21:14 だから主は、あなたの民と、あなたの子どもたち、妻たち、そしてすべての財産を、大きな災いで打たれる。
21:15 あなた自身も、内臓の重い病にかかる。その病のために、日ごとに腸が出てくるほど、ひどく苦しむことになる。」
21:16 主はヨラムに対して、ペリシテ人と、クシュ人の近くに住むアラブ人を奮い立たせ、彼に立ち向かわせた。
21:17 彼らはユダに攻め上って国に侵入し、王宮にあった財産をすべて奪い去った。さらに、ヨラムの子どもたちや妻たちも連れ去った。こうして、末の子エホアハズのほかには、彼に息子が一人も残らなかった。
21:18 こうしたことがすべて起こった後、主はヨラムを、治ることのない内臓の病で打たれた。
21:19 それから時が過ぎ、二年の終わりごろになって、その病のために内臓が飛び出し、ヨラムは激しい苦しみの中で死んだ。民は先祖たちのときのように、彼のために火をたいて弔うことをしなかった。
21:20 ヨラムは三十二歳で王となり、エルサレムで八年間、王であった。彼は誰にも惜しまれずにこの世を去った。人々は彼をダビデの町に葬ったが、王たちの墓には葬らなかった。
22:1 エルサレムの住民は、ヨラムの末の子アハズヤを彼に代わって王とした。アラブ人とともに陣営に攻め込んできた略奪隊が、上の兄たちをみな殺してしまったからである。こうして、ユダの王ヨラムの子アハズヤが王となった。
22:2 アハズヤは四十二歳で王となり、エルサレムで一年間、王であった。彼の母の名はアタルヤといい、オムリの孫娘であった。
22:3 彼もまたアハブの家と同じ道を歩んだ。彼の母が、悪いことをするようにと彼に助言していたからである。
22:4 こうして彼は、アハブの家と同じように、主の目に悪とされることを行った。父の死後、アハブの家の者たちが彼の相談役となり、それが彼の破滅を招いたのである。
22:5 彼は彼らの助言に従って、アハブの子であるイスラエルの王ヨラムとともに、アラムの王ハザエルと戦うためラモト・ギルアデへ出て行った。ところが、アラム人はヨラムを傷つけた。
22:6 ヨラムは、アラムの王ハザエルと戦ったとき、ラマで受けた傷をいやすためにイズレエルへ引き返した。ユダの王ヨラムの子アハズヤは、アハブの子ヨラムが病にかかっていたので、彼を見舞おうとイズレエルへ下って行った。
22:7 アハズヤがヨラムのもとを訪ねて滅びを迎えたのは、神によることであった。アハズヤはそこに着くと、ヨラムとともに、ニムシの子エフーを迎えに出て行った。エフーは、アハブの家を絶ち滅ぼすために主が油を注いだ人物である。
22:8 エフーがアハブの家をさばいていたとき、彼はユダの高官たちや、アハズヤに仕えていたアハズヤの兄弟の子たちを見つけ出し、彼らを殺した。
22:9 それからエフーは、アハズヤを捜させた。アハズヤはサマリアに隠れていたが、捕らえられてエフーのもとに連れて来られ、殺された。人々は「この人は、心を尽くして主を求めたヨシャファトの子だ」と言って、彼を葬った。こうしてアハズヤの家には、王国を保つ力が残らなくなった。
22:10 アハズヤの母アタルヤは、自分の息子が死んだのを見ると、立ち上がって、ユダの家の王家の血を引く者たちを一人残らず殺してしまった。
22:11 しかし、王の娘エホシャブアトは、アハズヤの子ヨアシュを、殺されようとしている王子たちの中からひそかに連れ出し、彼を乳母とともに寝室に入れた。王ヨラムの娘であり、祭司エホヤダの妻でもあったエホシャブアトは——彼女はアハズヤの姉妹であった——こうしてヨアシュをアタルヤから隠し、殺されないようにした。
22:12 ヨアシュは彼らとともに、神の家に六年間隠れていた。その間、アタルヤが国を治めていた。
23:1 七年目になって、エホヤダは奮い立ち、百人隊の長たちと盟約を結んだ。エロハムの子アザルヤ、エホハナンの子イシュマエル、オベデの子アザルヤ、アダヤの子マアセヤ、そしてジクリの子エリシャファトである。
23:2 彼らはユダの中を巡り、ユダのすべての町からレビ人を集め、イスラエルの一族の長たちも集めて、エルサレムにやって来た。
23:3 そして全会衆は、神の家で王と盟約を結んだ。エホヤダは彼らに言った。「見なさい。主がダビデの子孫について語られたとおり、王の子が王となるのだ。
23:4 あなたがたがすることは、こうだ。安息日に務めに就く祭司とレビ人の三分の一は、門を守る者となりなさい。
23:5 三分の一は王宮に、三分の一は土台の門に就きなさい。そして民はみな、主の家の庭にいなさい。
23:6 祭司と、務めをするレビ人のほかは、だれも主の家に入ってはならない。彼らは聖別されているので、入ることができる。民はみな、主への務めを守りなさい。
23:7 レビ人は、それぞれ武器を手に持って、王を囲むように立ちなさい。この場所に入ろうとする者は、だれでも殺しなさい。王がどこへ行くにも、そばを離れず一緒にいなさい。」
23:8 レビ人とユダの人々はみな、祭司エホヤダが命じたとおりにした。それぞれ自分の部下を率いて集まった。安息日に務めに就く者も、務めを終えて帰る者も、みなそろっていた。祭司エホヤダが、どの組も帰さなかったからだ。
23:9 祭司エホヤダは、神の家にあったダビデ王の槍と大小の盾を、百人隊の隊長たちに渡した。
23:10 そして民をみな、それぞれ武器を手に持たせて、神殿の右側から左側まで、祭壇と神殿に沿って、王を囲むように配置した。
23:11 こうして彼らは王子を連れ出し、頭に冠をかぶせ、律法の書を手渡して、彼を王とした。エホヤダとその子たちは彼に油を注ぎ、「王さま、ばんざい」と叫んだ。
23:12 アタルヤは、民が走り回り、王をたたえる声を聞いた。それで、主の家にいる民のところへ来た。
23:13 見ると、王が入り口の柱のそばに立っていた。そばには指揮官たちとラッパを吹く者たちがいた。国の民はみな喜び、ラッパを吹き鳴らしていた。歌い手たちは楽器を鳴らし、賛美の音頭をとっていた。それを見てアタルヤは自分の服を引き裂き、「反逆だ、反逆だ」と叫んだ。
23:14 祭司エホヤダは、軍を指揮する百人隊の隊長たちを呼び出して、こう命じた。「この女を列の間から外へ連れ出せ。あとを追ってくる者は、剣で殺せ。」祭司が「主の家では彼女を殺すな」と言っていたからだ。
23:15 そこで彼らはアタルヤを捕らえ、王宮の馬の門の入り口まで連れて行き、そこで殺した。
23:16 エホヤダは、自分と民全体と王との間で契約を結んだ。主の民となるという契約だった。
23:17 そこで民はみな、バアルの神殿へ行き、それを壊した。祭壇と偶像も打ち砕き、バアルの祭司マタンを祭壇の前で殺した。
23:18 エホヤダは、主の家の務めを、レビ人である祭司たちの手にゆだねた。彼らは、モーセの律法に書かれているとおりに主にささげる焼き尽くすいけにえをささげるため、ダビデが主の家に組み分けした人々だった。ダビデの定めに従い、喜びと歌をもってこれを行った。
23:19 また、主の家の門には門番を置いた。どんなことであれ、汚れた者が入らないようにするためだった。
23:20 エホヤダは、百人隊の隊長たち、有力者たち、民を治める者たち、そして地のすべての民を率いて、王を主の家から連れ下った。彼らは上の門を通って王宮に入り、王を王座に着かせた。
23:21 地の民はみな喜び、町は静けさを取り戻した。アタルヤは剣で殺されたのだった。
24:1 ヨアシュは七歳で王になり、エルサレムで四十年間、王として治めた。母の名はツィブヤといい、ベエル・シェバの出身だった。
24:2 ヨアシュは、祭司エホヤダが生きている間はずっと、主の目にかなう正しいことを行った。
24:3 エホヤダはヨアシュのために二人の妻を迎えた。ヨアシュには息子や娘が生まれた。
24:4 その後、ヨアシュは主の家を建て直そうと心に決めた。
24:5 彼は祭司とレビ人を集めて、こう言った。「ユダの町々へ出て行き、あなたたちの神の家を毎年修理するための銀を、イスラエル全体から集めなさい。この仕事を急いでほしい。」しかし、レビ人は急がなかった。
24:6 そこで王は、かしらであるエホヤダを呼んで言った。「どうしてあなたは、レビ人にこう求めなかったのか。主のしもべモーセと、イスラエルの会衆が定めたとおり、あかしの幕屋のための献金を、ユダとエルサレムから集めて納めるようにと。」
24:7 悪い女アタルヤの息子たちが神の家に押し入って壊し、主の家にささげられた聖なる物まで、みなバアルの神々のために使ってしまったからである。
24:8 そこで王が命じ、人々は一つの箱を作って、主の家の門の外に置いた。
24:9 そして、ユダとエルサレムに触れを出し、神のしもべモーセが荒れ野でイスラエルに定めた献金を、主のもとに納めるよう呼びかけた。
24:10 すると、すべての高官と民はみな喜んで、その献金を持って来て、箱がいっぱいになるまで投げ入れた。
24:11 レビ人が箱を王の役人のところへ運ぶたびに、そして銀が多いのを見ると、王の書記官と祭司長の役人が来て箱を空にし、それを元の場所へ戻した。彼らは毎日このようにして、たくさんの銀を集めた。
24:12 王とエホヤダは、その銀を主の家の工事をする者たちに渡した。彼らは主の家を新しくするために石工や大工を雇い、また主の家を補強するために鉄や青銅の職人も雇った。
24:13 こうして工事をする者たちが働き、その手によって修理は順調に進んだ。彼らは神の家を元の形に建て直し、しっかりと補強した。
24:14 工事を終えると、彼らは残りの銀を王とエホヤダのところへ持って来た。それで主の家のための器具、すなわち礼拝と焼き尽くすささげ物のための器具、皿、金や銀の器が作られた。エホヤダが生きている間、人々は絶えず主の家で焼き尽くすささげ物をささげた。
24:15 エホヤダは年を重ね、長寿をまっとうして死んだ。死んだとき、彼は百三十歳だった。
24:16 人々は彼をダビデの町に、王たちとともに葬った。彼がイスラエルで、また神とその家のために良いことを行ったからである。
24:17 エホヤダが死んだ後、ユダの高官たちが来て、王にひれ伏した。すると王は彼らの言うことに耳を傾けた。
24:18 そして彼らは、先祖の神である主の家を捨て、アシェラ像や偶像に仕えた。この罪のために、ユダとエルサレムに神の怒りが下った。
24:19 それでも主は、人々を主のもとへ立ち返らせようと、預言者たちを送った。預言者たちは彼らを戒めて警告したが、人々は耳を貸そうとしなかった。
24:20 そのとき、神の霊が祭司エホヤダの子ゼカリヤに臨んだ。彼は民の前に立ち、こう言った。「神はこう言われる。なぜあなたたちは主の命令を破るのか。そんなことでは、うまくいくはずがない。あなたたちが主を捨てたから、主もあなたたちを捨てられたのだ。」
24:21 すると人々は彼に対してたくらみ、王の命令によって、主の家の庭で彼を石で打ち殺した。
24:22 ヨアシュ王は、ゼカリヤの父エホヤダが自分に尽くしてくれた慈しみを思い出そうともせず、その子を殺したのだ。ゼカリヤは死にぎわにこう言った。「主がこれを見て、責任を問われますように。」
24:23 年が改まったころ、アラムの軍勢がヨアシュに攻め上ってきた。彼らはユダとエルサレムに攻め入り、民の指導者たちをことごとく滅ぼし、奪った物をすべてダマスコの王のもとへ送った。
24:24 アラムの軍はわずかな人数で攻めてきたのに、主は非常に大きな軍勢を彼らの手に渡された。ユダの人々が、先祖の神である主を捨てたからだ。こうして主は、ヨアシュにさばきを下されたのである。
24:25 アラム軍が去ったとき、ヨアシュは深い傷を負ったまま残された。すると彼の家臣たちが、祭司エホヤダの子らの血の報いのためにたくらみ、寝床にいた彼を殺した。こうしてヨアシュは死んだ。人々は彼をダビデの町に葬ったが、王たちの墓には葬らなかった。
24:26 彼に対してたくらんだのは、アンモン人の女シムアトの子ザバドと、モアブ人の女シムリトの子ヨザバドである。
24:27 ヨアシュの子らのこと、彼に告げられた数々の預言、そして神の家を建て直したことについては、「列王記」の注解書に記されている。そして、その子アマツヤが代わって王となった。
25:1 アマツヤは二十五歳で王になり、エルサレムで二十九年間、国を治めた。母はエルサレム出身のエホアダンといった。
25:2 アマツヤは主の目にかなう正しいことをした。でも、心をすべてささげてそうしたわけではなかった。
25:3 王としての支配がしっかり固まると、アマツヤは、父である前の王を殺した家来たちを処刑した。
25:4 だが、その家来たちの子どもまでは殺さなかった。モーセの律法の書にこう記されていたからだ。主はこう命じている。「父が子の罪で死ぬことはなく、子が父の罪で死ぬこともない。人はそれぞれ、自分の罪のために死ぬ。」
25:5 アマツヤはユダの人々を集め、家系ごとにまとめて、千人隊長や百人隊長を立てた。ユダとベニヤミンの全域からだ。そして二十歳以上の者を数えると、槍と盾を持って戦いに出られるえり抜きの兵が三十万人いた。
25:6 さらにアマツヤは、銀百タラントを払って、イスラエルから勇敢な戦士十万人を雇い入れた。
25:7 すると一人の神の人が彼のところに来て、こう言った。「王よ、イスラエルの軍を一緒に連れて行ってはいけません。主はイスラエルとともにおられないのです。あのエフライムの人々のだれとも、ともにはおられません。
25:8 たとえあなたが出て行って、戦いに向けて全力で備えても、神はあなたを敵の前で倒れさせるでしょう。神には、助ける力も、打ち倒す力もあるのですから。」
25:9 アマツヤは神の人に言った。「では、イスラエルの部隊に払った銀百タラントは、どうすればいいのか。」神の人は答えた。「主は、それよりずっと多くのものを、あなたに与えることがおできになります。」
25:10 そこでアマツヤは、エフライムから来ていた部隊を切り離し、故郷へ帰らせた。すると彼らはユダに対して激しく怒り、怒りに燃えたまま故郷へ帰って行った。
25:11 アマツヤは勇気を奮い起こし、自分の民を率いて塩の谷へ進軍した。そこでセイルの人々一万人を討ち取った。
25:12 さらにユダの人々は、一万人を生け捕りにした。そして彼らを崖の上まで連れて行き、そこから突き落とした。落とされた者はみな、体が砕けてしまった。
25:13 一方、アマツヤが自分と一緒に戦いに行かせず帰らせた部隊の兵士たちは、サマリアからベト・ホロンにかけてのユダの町々を襲った。そして三千人を討ち取り、大量の物を奪った。
25:14 アマツヤはエドム人を討ち取って帰って来た後、セイルの人々の神々を持ち帰った。そしてそれを自分の神々として立て、その前にひれ伏し、香をたいた。
25:15 これに主はアマツヤに対して激しく怒り、一人の預言者を彼のもとに送った。預言者は言った。「なぜあなたは、あの民の神々に頼ったのか。その神々は、自分の民さえあなたの手から救えなかったではないか。」
25:16 預言者がこう話していると、王は彼に言った。「わたしたちがいつあなたを王の相談役にしたのか。やめておけ。討たれたいのか。」預言者は話すのをやめたが、こう言い残した。「わたしにはわかる。あなたはこんなことをして、わたしの忠告を聞かなかった。だから神はあなたを滅ぼそうと決めておられる。」
25:17 ユダの王アマツヤは相談した上で、イスラエルの王、エフーの孫でエホアハズの子ヨアシュのもとに使いを送り、こう伝えた。「さあ、正面から顔を合わせて戦おう。」
25:18 イスラエルの王ヨアシュは、ユダの王アマツヤにこう答えた。「レバノンのあざみが、レバノンの杉に使いを送ってこう言った。『あなたの娘をわたしの息子の妻にください。』ところが、レバノンの野の獣が通りかかり、そのあざみを踏みつけてしまった。
25:19 あなたは『自分はエドムを討ち取った』と言って、思い上がり、得意になっている。だが、家にじっとしていろ。なぜわざわざ災いを招くようなことをするのか。あなたも、あなたと一緒にユダも倒れることになるぞ。」
25:20 しかしアマツヤは聞き入れなかった。これは神から出たことだった。彼らがエドムの神々に頼ったので、神は彼らを敵の手に渡そうとされたのである。
25:21 そこでイスラエルの王ヨアシュは攻め上り、彼とユダの王アマツヤは、ユダに属するベト・シェメシュで顔を合わせて戦った。
25:22 ユダはイスラエルに打ち破られ、みなそれぞれ自分の家へ逃げ帰った。
25:23 イスラエルの王ヨアシュは、エホアハズの孫でヨアシュの子であるユダの王アマツヤを、ベト・シェメシュで捕らえた。そして彼をエルサレムへ連れて行き、エルサレムの城壁を、エフライムの門から角の門まで四百キュビトにわたって取り壊した。
25:24 さらに彼は、オベド・エドムの管理のもとで神の宮にあった金や銀とすべての器具、王宮の宝物、そして人質を奪い、サマリアへ帰って行った。
25:25 ユダの王、ヨアシュの子アマツヤは、イスラエルの王、エホアハズの子ヨアシュが死んだあと、なお十五年生きた。
25:26 アマツヤのその他の出来事は、初めから終わりまで、ユダとイスラエルの王たちの書に記されている。
25:27 アマツヤが主に背を向けたときから、エルサレムでは彼に対する陰謀が起こった。彼はラキシュへ逃げたが、人々はラキシュまで追っ手を送り、そこで彼を殺した。
25:28 そして人々は彼を馬に乗せて運び、ユダの町で先祖たちと共に葬った。
26:1 ユダの民はみな、十六歳のウジヤを立てて、父アマツヤに代わる王とした。
26:2 王が先祖たちと共に眠りについたあと、ウジヤはエラトを建て直し、ユダに取り戻した。
26:3 ウジヤは十六歳で王となり、エルサレムで五十二年間、王であった。彼の母はエルサレム出身で、名をエコルヤといった。
26:4 彼は父アマツヤがしたことにすべて見ならい、主の目にかなう正しいことを行った。
26:5 神を示す幻を悟るゼカリヤが生きていた間、彼は神を求めた。彼が主を求めている間、神は彼を栄えさせた。
26:6 彼は出て行ってペリシテ人と戦い、ガトの城壁、ヤブネの城壁、アシュドドの城壁を取り壊した。そしてアシュドドの周辺やペリシテ人の中に町々を築いた。
26:7 神は、ペリシテ人や、グル・バアルに住むアラブ人、そしてメウニム人と戦う彼を助けた。
26:8 アンモン人はウジヤに貢ぎ物を納めた。彼はますます強くなり、その名はエジプトの入り口まで届くほどになった。
26:9 ウジヤはエルサレムに、隅の門と谷の門、そして城壁の曲がり角に塔を築き、それらを堅固にした。
26:10 彼は荒れ野にも塔を築き、多くの水ためを掘った。低地にも平野にもたくさんの家畜を持っていたからだ。また山々や肥えた畑には、農夫やぶどう作りがいた。彼は土を耕すのが好きだったからだ。
26:11 ウジヤには、部隊ごとに戦いに出る軍隊があった。その人数は、書記官エイエルと役人マアセヤが数え上げ、王の高官の一人ハナニヤの指揮のもとに置かれていた。
26:12 勇士である一族の長たちの総数は、二千六百人だった。
26:13 彼らの指揮下には、三十万七千五百人の軍隊があった。強い力で戦い、敵に対して王を助けるための軍だ。
26:14 ウジヤは全軍のために、盾、槍、かぶと、よろい、弓、そして投石用の石を用意した。
26:15 彼はエルサレムで、腕のいい職人が考え出した仕掛けを作らせた。それを塔や城壁の角に置き、矢や大きな石を放つためだ。彼の名は遠くまで広まった。目覚ましく助けられて、強くなったからだ。
26:16 しかし強くなると、彼の心は高ぶり、それが身を滅ぼすことになった。彼は自分の神、主を裏切り、香をたくために主の神殿に入り、香の祭壇で香をたこうとした。
26:17 祭司アザルヤが彼のあとについて入った。主に仕える勇敢な祭司八十人も一緒だった。
26:18 彼らは王ウジヤに立ちはだかり、こう言った。「ウジヤよ、主に香をたくのはあなたの務めではない。それは、そのために聖別された祭司たち、アロンの子孫の務めだ。神殿から出て行きなさい。あなたは主を裏切ったのだ。このことで主なる神から誉れを受けることはない。」
26:19 ウジヤは怒った。手には香をたくための香炉を持っていた。彼が祭司たちに向かって怒っているそのとき、主の神殿の香の祭壇のそばで、祭司たちの目の前で、彼の額に規定の皮膚病が現れた。
26:20 祭司長アザルヤとほかの祭司たちみんなが彼のほうを向くと、その額に皮膚病が出ていた。それで彼らは急いでウジヤをそこから追い出した。主が彼を打たれたので、彼自身も出て行こうと急いだ。
26:21 こうして王ウジヤは、死ぬ日まで皮膚病にかかったままだった。皮膚病のせいで主の神殿から締め出され、隔離された家に住んだ。そのあいだ、息子ヨタムが王宮を取りしきり、国の民をおさめた。
26:22 ウジヤのその他の出来事は、初めから終わりまで、預言者であるアモツの子イザヤが書き記した。
26:23 ウジヤは先祖とともに眠りについた。人々は「彼は皮膚病だから」と言って、王たちの墓地の中にある畑に、先祖と並べて葬った。そして息子ヨタムが代わりに王となった。
27:1 ヨタムは二十五歳で王となり、エルサレムで十六年間治めた。母の名はエルシャで、ツァドクの娘だった。
27:2 彼は父ウジヤがしたとおりに、主の目にかなう正しいことをおこなった。ただし、主の神殿の中には入らなかった。しかし民は、相変わらず悪いことを続けていた。
27:3 彼は主の神殿の上の門を建て、オフェルの城壁も大きく築いた。
27:4 さらにユダの山地に町々を建て、森の中には要塞やものみの塔を築いた。
27:5 彼はアンモン人の王と戦って勝った。その年、アンモン人は銀百タラント、小麦一万コル、大麦一万コルを彼に納めた。アンモン人は二年目も三年目も、同じだけ彼に納めた。
27:6 ヨタムは強くなっていった。自分の神、主の前で、まっすぐに歩んだからだ。
27:7 ヨタムのその他の出来事、彼が戦ったすべての戦い、そして彼の歩みは、イスラエルとユダの王たちの書に記されている。
27:8 彼は二十五歳で王となり、エルサレムで十六年間、王として治めた。
27:9 ヨタムは先祖たちのもとに眠り、ダビデの町に葬られた。そして息子のアハズが跡を継いで王となった。
28:1 アハズは二十歳で王となり、エルサレムで十六年間、王として治めた。しかし彼は、先祖のダビデとは違い、主の目にかなう正しいことをしなかった。
28:2 彼はイスラエルの王たちと同じ道を歩んだ。それだけでなく、バアルの神々のために金属を溶かして像まで造った。
28:3 さらに彼は、ベン・ヒノムの谷で香をたき、自分の息子たちを火で焼いてささげた。これは、主がイスラエルの人々の前から追い払われた異民族の、忌まわしい行いをまねたものだった。
28:4 また彼は、高台や丘の上、そして茂った木の下ならどこでも、いけにえをささげ、香をたいた。
28:5 そこで、彼の神、主は彼をアラムの王の手に渡された。アラム軍は彼を打ち破り、大勢の人を捕虜にしてダマスコへ連れ去った。彼はまた、イスラエルの王の手にも渡され、大きな打撃を受けた。
28:6 レマルヤの子ペカは、ユダで一日のうちに十二万人を殺した。これはみな勇敢な兵士たちだった。彼らが先祖の神、主を捨てたからである。
28:7 エフライムの勇士ジクリは、王の子マアセヤと、王宮の長アズリカム、そして王に次ぐ地位の者エルカナを殺した。
28:8 イスラエルの人々は、同胞であるユダの人々の中から、女や息子、娘を合わせて二十万人を捕虜にした。さらに多くの物を奪い取り、その戦利品をサマリアへ持ち帰った。
28:9 そこに、オデドという名の主の預言者がいた。彼はサマリアに戻ってくる軍隊を出迎えて、こう言った。「よく聞きなさい。あなたたちの先祖の神、主はユダに怒って、彼らをあなたたちの手に渡された。でも、あなたたちは天に届くほどの激しさで彼らを殺した。
28:10 そして今、あなたたちはユダとエルサレムの人々を、自分たちの男女の奴隷にしようと言っている。だが、あなたたち自身こそ、あなたたちの神、主に対して罪を犯しているのではないか。
28:11 だから、わたしの言うことを聞きなさい。同胞から捕らえてきた捕虜を返しなさい。主の激しい怒りが、あなたたちに向かっているのだ。」
28:12 すると、エフライムの人々の頭たちのうち何人かが立ち上がった。ヨハナンの子アザルヤ、メシレモテの子ベレクヤ、シャルムの子エヒズキヤ、ハドライの子アマサである。彼らは戦いから戻ってきた者たちの前に立ちはだかって、
28:13 こう言った。「その捕虜をここに連れて来てはならない。あなたたちがしようとしていることは、わたしたちに主の前での責めを負わせることだ。わたしたちの罪と過ちをさらに増やそうとしている。わたしたちの罪はもう十分に大きく、激しい怒りがイスラエルに向かっているのだから。」
28:14 そこで武装した兵士たちは、指導者たちと全会衆の前で、捕虜と奪った物を手放した。
28:15 名指しされた者たちが立ち上がり、捕虜を引き取った。そして、その中の裸の者たちに戦利品の中から服を着せ、履物をはかせ、食べさせ、飲ませ、傷に油を塗ってやった。弱って歩けない者はみなろばに乗せ、なつめやしの町エリコまで送り届けて、同胞のもとに帰した。それから自分たちはサマリアへ戻った。
28:16 そのころ、アハズ王はアッシリアの王たちに、助けを求めて使いを送った。
28:17 というのも、エドムの人々がまた攻めて来て、ユダを打ち破り、人々を捕虜にして連れ去ったからである。
28:18 また、ペリシテの人々もユダの低地とネゲブの町々に攻め込み、ベト・シェメシュ、アヤロン、ゲデロテ、ソコとその周辺の村々、ティムナとその周辺の村々、ギムゾとその周辺の村々を奪い取り、そこに住みついた。
28:19 こうなったのは、主がイスラエルの王アハズのせいでユダを低くされたからだ。アハズはユダで好き勝手にふるまい、主を裏切ったのだ。
28:20 アッシリアの王ティグラト・ピレセルはアハズのところに攻めて来た。しかし助けるどころか、彼を苦しめた。
28:21 アハズは主の神殿と、王宮と、高官たちから宝を取り出し、アッシリアの王に贈った。それでも王は助けてくれなかった。
28:22 苦しめられているそのときにも、アハズ王はますます主を裏切っていった。この王アハズは、そういう人物だった。
28:23 彼は自分を打ち破ったダマスコの神々にいけにえをささげて、こう言った。「アラムの王たちの神々が彼らを助けているのだから、わたしもその神々にいけにえをささげよう。そうすれば助けてくれるはずだ。」しかしその神々は、アハズにとっても、イスラエル全体にとっても、つまずきのもとになっただけだった。
28:24 アハズは神の神殿の器具を集め、それらを打ち壊した。そして主の神殿の扉を閉ざし、エルサレムのあちこちの角に自分のための祭壇を造った。
28:25 さらにユダのどの町にも、ほかの神々に香をたくための高台を造り、先祖の神である主を怒らせた。
28:26 アハズのその他の行いや、初めから終わりまでのすべてのやり方は、ユダとイスラエルの王たちの記録の書にしるされている。
28:27 アハズは先祖のもとに眠り、人々は彼をエルサレムの町に葬った。しかしイスラエルの王たちの墓には入れなかった。そして息子のヒゼキヤが、代わって王となった。
29:1 ヒゼキヤは二十五歳で王となり、エルサレムで二十九年間、国を治めた。母の名はアビヤといい、ゼカリヤの娘だった。
29:2 ヒゼキヤは、先祖ダビデがしたことすべてにならって、主の目に正しいことを行った。
29:3 彼は王となった最初の年の第一の月に、主の神殿の扉を開けて、それを修理した。
29:4 そして祭司たちとレビ人たちを呼び集め、東の広場に集めて、
29:5 こう言った。「レビ人のみんな、わたしの言うことを聞いてほしい。今、自分自身を清め、先祖の神である主の神殿を清めなさい。そして聖なる場所から汚れたものを運び出すのだ。
29:6 わたしたちの先祖は主に背き、わたしたちの神である主の目に悪いことを行い、主を捨ててしまった。主の住まいから顔をそむけ、背を向けたのだ。
29:7 それだけでなく、彼らは玄関の扉を閉ざし、ともし火を消し、イスラエルの神に香をたくことも、聖なる場所で焼き尽くすいけにえをささげることもしなかった。
29:8 だから主の怒りがユダとエルサレムに下った。主は彼らを、あなたがたが自分の目で見ているとおり、恐れとおののき、そしてあざけりの的とされたのだ。
29:9 見てのとおり、わたしたちの先祖はこのために剣で倒れ、息子や娘や妻たちは捕らえられて連れ去られてしまった。
29:10 だから今、わたしは心に決めている。イスラエルの神である主と契約を結び、主の燃える怒りがわたしたちから離れるようにしたいのだ。
29:11 わたしの子たちよ、今、怠けていてはいけない。主はあなたがたを選び、御前に立って主に仕え、主に奉仕して香をたく者とされたのだから。」
29:12 すると、レビ人たちが立ち上がった。ケハトの子孫からはアマサイの子マハトとアザルヤの子ヨエル。メラリの子孫からはアブディの子キシュとエハレルエルの子アザルヤ。ゲルションの子孫からはジマの子ヨアフとヨアフの子エデン。
29:13 エリツァファンの子孫からはシムリとエイエル。アサフの子孫からはゼカルヤとマタンヤ。
29:14 ヘマンの子孫からはエヒエルとシムイ。エドトンの子孫からはシェマヤとウジエル。
29:15 彼らは仲間のレビ人たちを集めて身を清め、主の言葉にもとづく王の命令どおり、主の神殿を清めるためにやって来た。
29:16 祭司たちは主の神殿の奥に入って清めを始め、主の神殿の中で見つけた汚れたものをすべて外に運び出し、神殿の庭に持って行った。レビ人たちはそれを受け取り、町の外のキドロンの谷まで運び出した。
29:17 彼らは第一の月の一日に清めを始め、八日目には主の神殿の玄関まで進んだ。こうして八日間かけて主の神殿を清め、第一の月の十六日にすべてを終えた。
29:18 それから彼らはヒゼキヤ王のところへ入って行き、こう言った。「わたしたちは主の神殿をすべて清めました。焼き尽くすいけにえをささげる祭壇とそのすべての器具、供えのパンを置く机とそのすべての器具も清めました。
29:19 アハズ王がその治世に、主への背きのために投げ捨てた器具も、わたしたちはすべて整えて清めました。ごらんください、それらは今、主の祭壇の前に置いてあります。」
29:20 ヒゼキヤ王は朝早く起き、町の高官たちを集めて、主の神殿に上って行った。
29:21 彼らは雄牛七頭、雄羊七頭、子羊七頭、雄やぎ七頭を引いて来た。これは王国のため、聖所のため、ユダのために罪を償ういけにえだった。王はアロンの子孫である祭司たちに、これらを主の祭壇の上でささげるよう命じた。
29:22 そこで彼らは雄牛をほふり、祭司たちはその血を受けて祭壇に注ぎかけた。次に雄羊をほふり、その血を祭壇に注ぎかけた。さらに子羊をほふり、その血を祭壇に注ぎかけた。
29:23 それから、罪を償うための雄やぎを王と会衆の前に引いて来ると、人々はその上に手を置いた。
29:24 祭司たちはそれをほふり、その血を祭壇にささげて、イスラエル全体のために罪を償った。焼き尽くすいけにえも罪を償ういけにえも、イスラエル全体のためにささげるようにと、王が命じていたからである。
29:25 王はレビ人を主の宮に立たせ、ダビデと、王付きの先見者ガド、そして預言者ナタンの命令どおり、シンバルや琴や竪琴を持たせた。この指示は、預言者たちを通して主が与えたものだったからである。
29:26 こうしてレビ人はダビデの定めた楽器を持ち、祭司たちはラッパを持って立った。
29:27 そしてヒゼキヤは、焼き尽くすいけにえを祭壇にささげるよう命じた。いけにえがささげられ始めると、それに合わせて主への歌が始まり、ラッパが鳴り、イスラエルの王ダビデの楽器も奏でられた。
29:28 会衆はみなひれ伏し、歌い手は歌い、ラッパ手はラッパを吹き鳴らした。これらはすべて、焼き尽くすいけにえが終わるまで続いた。
29:29 ささげ物が終わると、王も、そこにいた者たちもみな、ひざまずいてひれ伏した。
29:30 それからヒゼキヤ王と高官たちは、ダビデと先見者アサフの言葉を使って主を賛美するよう、レビ人に命じた。レビ人は喜びにあふれて賛美し、頭を下げてひれ伏した。
29:31 ヒゼキヤはこう言った。「あなたがたは今、自分を主にささげた。さあ、近づいて、いけにえと感謝のささげ物を主の宮に持って来なさい。」すると会衆はいけにえと感謝のささげ物を持って来た。そして心から進んでする者はみな、焼き尽くすいけにえも持って来た。
29:32 会衆が持って来た焼き尽くすいけにえの数は、雄牛七十頭、雄羊百頭、子羊二百頭で、これらはすべて主への焼き尽くすいけにえだった。
29:33 また、ささげ物として聖別された家畜は、牛六百頭と羊三千頭だった。
29:34 ただ、祭司の数が少なく、焼き尽くすいけにえの皮をすべてはぐことができなかった。そこで、仲間であるレビ人が、その仕事が終わるまで、また祭司たちが身を清め終えるまで彼らを助けた。レビ人のほうが、祭司たちよりも心正しく身を清めていたからである。
29:35 さらに、焼き尽くすいけにえは多く、和解のいけにえの脂肪や、焼き尽くすいけにえに添える飲み物のささげ物もあった。こうして、主の宮での礼拝の務めが整えられた。
29:36 ヒゼキヤも民もみな、神が民のために備えてくださったことを喜んだ。この事があっという間に実現したからである。
30:1 ヒゼキヤはイスラエルとユダの全体に使いを送り、さらにエフライムとマナセにも手紙を書いて、エルサレムにある主の神殿に来て、イスラエルの神である主のために過越の祭りを行うよう呼びかけた。
30:2 王は高官たちやエルサレムに集まった人々全員と相談し、過越の祭りを第二の月に行うことにした。
30:3 本来の時期に行えなかったからだ。祭司たちが十分に身を清めておらず、民もまだエルサレムに集まっていなかった。
30:4 この案は、王にとっても集まった人々全員にとっても良いことだと思えた。
30:5 そこで彼らは、ベエル・シェバからダンまでイスラエル全土に触れを回し、エルサレムに来てイスラエルの神である主のために過越の祭りを行うよう、布告することに決めた。定めのとおりに大勢でこの祭りを祝うことが、長い間なかったからだ。
30:6 飛脚たちは王とその高官たちからの手紙を持って、イスラエルとユダの全土を回り、王の命令どおりにこう伝えた。「イスラエルの人々よ、アブラハム、イサク、イスラエルの神である主に立ち帰りなさい。そうすれば主も、アッシリアの王たちの手を逃れて生き残ったあなたがたのもとへ帰ってこられる。
30:7 あなたがたの先祖や兄弟たちのようになってはいけない。彼らは先祖の神である主に背いた。だから主は彼らを、あなたがたも今見ているとおりの荒れ果てた姿にされたのだ。
30:8 だから今、あなたがたの先祖のように強情になってはいけない。主に従い、主が永遠に聖なるものとされた聖所に来て、あなたがたの神である主に仕えなさい。そうすれば、主の激しい怒りはあなたがたから去っていく。
30:9 あなたがたが主に立ち帰るなら、あなたがたの兄弟や子どもたちは、捕らえて連れ去った者たちのもとであわれみを受け、この地に帰ってくることができる。あなたがたの神である主は、恵み深く、あわれみに富んだ方だからだ。あなたがたが立ち帰るなら、主は決して顔を背けたりはされない。」
30:10 飛脚たちはエフライムとマナセの地を、ゼブルンに至るまで町から町へと巡り歩いた。しかし人々は彼らを笑いものにし、あざけった。
30:11 それでも、アシェル、マナセ、ゼブルンの何人かは、へりくだってエルサレムにやって来た。
30:12 ユダでも神の手が働き、人々に一つの心を与えて、主の言葉に従って王と高官たちの命令を行わせた。
30:13 第二の月、多くの人々が種なしパンの祭りを行うためにエルサレムに集まった。実に大勢の群衆だった。
30:14 人々は立ち上がり、エルサレムにあった祭壇を取り除いた。香をたくための祭壇もすべて取り払い、キドロンの谷に投げ捨てた。
30:15 そして第二の月の十四日に、過越の子羊をほふった。祭司とレビ人は恥じ入り、身を清めて、焼き尽くすいけにえを主の神殿に運び入れた。
30:16 彼らは神の人モーセの律法の定めどおり、それぞれの持ち場に着いた。祭司はレビ人の手から血を受け取り、それを振りかけた。
30:17 群衆の中には身を清めていない者が多かった。それでレビ人が、清くない人たちのために過越の子羊をほふり、主にささげる務めを果たした。
30:18 民の多く、とりわけエフライム、マナセ、イッサカル、ゼブルンから来た大勢の人々は、身を清めていなかった。それでも彼らは、定めに反して過越の食事をとった。ヒゼキヤは彼らのために祈って言った。「恵み深い主よ、どうか赦してください。
30:19 たとえ聖所の清めの決まりどおりに清くなくても、心を尽くして神を、父祖の神である主を求めようとする者を、みな赦してください。」
30:20 主はヒゼキヤの祈りを聞き入れ、民を癒やされた。
30:21 エルサレムにいたイスラエルの人々は、七日間、大きな喜びのうちに種なしパンの祭りを祝った。レビ人と祭司は毎日、力強い楽器を鳴らして主を賛美した。
30:22 ヒゼキヤは、主に仕える良い理解を示したすべてのレビ人を励まし、心に語りかけた。人々は七日間の祭りのあいだ食事をとり、和解のいけにえをささげ、父祖の神である主に罪を告白した。
30:23 その後、群衆全体で相談し、さらに七日間祝うことにした。こうして彼らは、もう七日間を喜びのうちに過ごした。
30:24 ユダの王ヒゼキヤが群衆のために雄牛千頭と羊七千頭を提供し、高官たちも群衆のために雄牛千頭と羊一万頭を提供したからである。多くの祭司が身を清めた。
30:25 ユダの会衆全体、祭司たち、レビ人たち、イスラエルから来た群衆全体、そしてイスラエルの地から来た外国人や、ユダに住む人々も、みな喜んだ。
30:26 エルサレムは大きな喜びに包まれた。イスラエルの王、ダビデの子ソロモンの時代からこのかた、エルサレムでこのようなことはなかったからである。
30:27 それから祭司とレビ人が立ち上がり、民を祝福した。その声は聞き入れられ、彼らの祈りは主の聖なる住まいである天に届いた。
31:1 これらすべてが終わると、そこにいたイスラエルの人々はみなユダの町々へ出て行き、石の柱を砕き、アシェラの柱を切り倒し、ユダとベニヤミン、さらにエフライムとマナセの全域から高台の礼拝所と祭壇を取り壊して、すべて壊し尽くした。それからイスラエルの人々はみな、それぞれ自分の所有地である町々へ帰って行った。
31:2 ヒゼキヤは、祭司とレビ人をそれぞれの組に分け、任務につかせた。祭司もレビ人も、それぞれの務めに応じて、焼き尽くすいけにえや和解のいけにえをささげ、主の宿営の門で仕え、感謝をささげ、賛美するためであった。
31:3 王は自分の財産の中から、焼き尽くすいけにえのための分を差し出した。それは朝と夕の焼き尽くすいけにえ、また安息日や新月の祭り、定められた祭りのための焼き尽くすいけにえで、主の律法に記されているとおりであった。
31:4 また王は、エルサレムに住む人々に、祭司とレビ人が受け取る分を渡すよう命じた。彼らが主の律法に専念できるようにするためである。
31:5 この命令が広まるとすぐに、イスラエルの人々は、穀物、新しいぶどう酒、油、蜜、畑のすべての収穫の初物を豊かにささげ、あらゆるものの十分の一をたくさん持って来た。
31:6 また、ユダの町々に住むイスラエルとユダの人々も、牛や羊の十分の一と、彼らの神、主にささげられた聖なるものの十分の一を持って来て、山のように積み上げた。
31:7 三か月目に、人々はその山を積み始め、七か月目に積み終えた。
31:8 ヒゼキヤと高官たちが来て、その山を見たとき、彼らは主と、その民イスラエルをたたえた。
31:9 ヒゼキヤが、その山について祭司とレビ人に尋ねると、
31:10 ツァドク家の大祭司アザルヤが彼にこう答えた。「人々が主の宮に献げ物を持って来始めてから、わたしたちは十分に食べて満ち足り、たくさん余るほどになりました。主がその民を祝福してくださったからです。この山ほどの残りが、その余りなのです。」
31:11 そこでヒゼキヤは、主の宮に部屋を用意するよう命じ、人々はそれを用意した。
31:12 そして、献げ物、十分の一のささげ物、聖なるものを忠実に運び入れた。それらを管理する長はレビ人コナンヤで、その兄弟シムイが次の位にあった。
31:13 また、エヒエル、アザズヤ、ナハト、アサエル、エリモト、ヨザバド、エリエル、イスマクヤ、マハト、ベナヤは、コナンヤとその兄弟シムイのもとで監督を務めた。これは、ヒゼキヤ王と、神の宮のつかさアザルヤの命令によるものだった。
31:14 東の門を守るレビ人、イムナの子コレは、神への自発のささげ物をつかさどり、主への献げ物と、最も聖なるものを配る役目を負った。
31:15 彼を助けたのは、エデン、ミニヤミン、エシュア、シェマヤ、アマルヤ、シェカンヤで、祭司たちの町々で忠実に働き、その兄弟たちに、組ごとに、身分の高い者にも低い者にも同じように分け与えた。
31:16 これは、系図に登録された三歳以上の男子とは別であった。彼らはみな、日ごとの務めのために主の宮に入り、それぞれの職務と組に従って奉仕する者たちだった。
31:17 また、祭司は父祖の家ごとに、レビ人は二十歳以上の者が、それぞれの職務と組に従って登録された。
31:18 さらに、彼らの幼い子どもや、妻、息子、娘もみな、共同体全体とともに系図に登録された。彼らが忠実に、自分の身を聖なるものとして保っていたからである。
31:19 また、アロンの子孫である祭司たちは、それぞれの町の放牧地の畑に住んでいた。その町ごとに、名前を指名された人たちがいて、祭司のうちのすべての男子と、系図に登録されたすべてのレビ人に、割り当ての食物を渡す役目を担っていた。
31:20 ヒゼキヤはユダ全体でこのようにした。彼は自分の神、主の前で、良いこと、正しいこと、真実なことを行った。
31:21 神殿での奉仕であれ、律法や戒めであれ、彼が神を求めて始めたすべての働きを、彼は心を尽くして行い、うまくいった。
32:1 こうした真実な出来事の後、アッシリアの王センナケリブが攻めてきた。彼はユダに侵入し、城壁のある町々を包囲して、そこを自分のものにしようとした。
32:2 ヒゼキヤは、センナケリブが攻めてきて、エルサレムに戦いをしかけようとしているのを見た。
32:3 それで彼は、町の外にある泉の水をふさぐことについて、家臣や勇士たちと相談した。彼らはヒゼキヤに協力した。
32:4 大勢の人が集まり、すべての泉と、その地を流れる川をふさいだ。彼らはこう言った。「どうしてアッシリアの王たちが来て、豊かな水を見つけられるようにしておくのか。」
32:5 ヒゼキヤは力を尽くして、崩れていた城壁をすべて建て直し、その上にやぐらを築いた。さらに外側にもう一つの城壁を築き、ダビデの町のミロを補強した。また、武器と盾をたくさん造った。
32:6 そして彼は、民の上に軍の指揮官たちを任命した。彼らを町の門の広場に集め、彼らを励ましてこう言った。
32:7 「強くあれ、勇敢であれ。アッシリアの王も、彼が率いる大軍も恐れるな。おじけづくな。わたしたちの味方は、彼らの側よりも多いのだから。
32:8 彼の側にあるのは、人間の力にすぎない。でもわたしたちの側には、わたしたちの神、主がついている。主がわたしたちを助け、わたしたちの戦いを戦ってくださる。」民は、ユダの王ヒゼキヤのこの言葉を頼りにした。
32:9 その後、アッシリアの王センナケリブは、家臣たちをエルサレムに送った。王自身は全軍を率いてラキシュを攻めていた。家臣たちは、ユダの王ヒゼキヤと、エルサレムにいるすべてのユダの人々に向けて、こう告げた。
32:10 「アッシリアの王センナケリブは、こう言う。お前たちは何を頼りにして、包囲されたエルサレムに閉じこもっているのか。
32:11 ヒゼキヤは、『わたしたちの神、主が、アッシリアの王の手からわたしたちを救い出してくださる』などと言って、お前たちを飢えと渇きで死なせようと、そそのかしているのではないか。
32:12 ほかでもないヒゼキヤ自身が、その神を拝むための高台と祭壇を取り除いたではないか。そしてユダとエルサレムに、『一つの祭壇の前でだけひれ伏し、その上で香をたきなさい』と命じたのだ。
32:13 お前たちは知らないのか。わたしと先祖たちが、各地のあらゆる民に何をしてきたかを。それらの国々の神々は、自分たちの国をわたしの手から救い出すことができただろうか。
32:14 先祖たちが滅ぼし尽くした国々の神々のうち、いったいどの神が、自分の民をわたしの手から救い出せただろうか。それなのに、お前たちの神が、お前たちをわたしの手から救い出せるというのか。
32:15 だから今、ヒゼキヤにだまされるな。こんなふうにそそのかされるな。彼を信じるな。どんな国、どんな王国の神も、自分の民をわたしの手からも、わたしの先祖たちの手からも救い出せなかったのだ。ましてお前たちの神が、お前たちをわたしの手から救い出せるはずがない。」
32:16 家臣たちは、さらに主なる神と、主に仕えるヒゼキヤをののしる言葉を続けた。
32:17 センナケリブはまた、イスラエルの神、主をあざける手紙を書き、こう言ってののしった。「各地の国々の神々が、自分の民をわたしの手から救い出せなかったように、ヒゼキヤの神も、その民をわたしの手から救い出せはしない。」
32:18 彼らは、城壁の上にいるエルサレムの人々に向かって、ユダの言葉で大声で叫んだ。人々を恐れさせ、おびえさせて、町を攻め落とすためだった。
32:19 彼らは、この世の国々の神々をあざけるのと同じように、エルサレムの神のこともあざけった。その神々は、人の手が造ったものにすぎなかった。
32:20 これに対して、ヒゼキヤ王とアモツの子である預言者イザヤは祈り、天に向かって叫び求めた。
32:21 すると主は一人の御使いを送り、アッシリアの王の陣営にいる勇士たちや指揮官、隊長をことごとく討ち滅ぼした。それで王は、恥をかいて自分の国へ引き上げた。そして自分の神の宮に入ったとき、彼の実の子たちが、そこで剣で彼を切り倒した。
32:22 こうして主は、ヒゼキヤとエルサレムの人々を、アッシリアの王センナケリブの手からも、ほかのすべての者の手からも救い出し、四方から彼らを守り導いた。
32:23 多くの人が、主にささげる供え物をエルサレムに持って来て、ユダの王ヒゼキヤにも贈り物を届けた。それ以来、ヒゼキヤはすべての国々から高く評価されるようになった。
32:24 そのころ、ヒゼキヤは死ぬほどの重い病にかかった。彼が主に祈ると、主は彼に答え、しるしを与えた。
32:25 しかしヒゼキヤは、受けた恵みにふさわしく応えなかった。心が高ぶったのである。それで、彼と、ユダとエルサレムの上に主の怒りが下った。
32:26 だがヒゼキヤは、自分の心の高ぶりを認めてへりくだり、エルサレムの人々も同じようにした。そのため、ヒゼキヤの生きている間は、主の怒りが彼らに下ることはなかった。
32:27 ヒゼキヤは、非常に多くの富と誉れを手に入れた。彼は自分のために宝物庫を造り、銀や金、宝石、香料、盾、あらゆる高価な品物を収めた。
32:28 また、穀物やぶどう酒、オリーブ油の収穫を納める倉を造り、あらゆる家畜のための小屋や、羊の群れのための囲いも造った。
32:29 さらに自分のために町々を建て、羊や牛の群れを数多く持った。神が彼に、非常に多くの財産を与えたからである。
32:30 このヒゼキヤは、ギホンの泉の上の水の出口をふさぎ、その水をダビデの町の西側の下の方へまっすぐに引いた。ヒゼキヤは、行うことすべてで成功を収めた。
32:31 しかし、バビロンの王たちの使者が、この地で起こった不思議なしるしについて尋ねようとして彼のもとに送られてきたとき、神はヒゼキヤの心の中にあるものをすべて知ろうとして、彼を試すために、彼をひとりにされた。
32:32 ヒゼキヤのその他の行いと、その真心のこもった行いは、アモツの子である預言者イザヤの幻の中に、また、ユダとイスラエルの王たちの書に記されている。
32:33 ヒゼキヤは先祖と共に眠りについた。人々は彼を、ダビデの子孫の墓のうち上の方に葬った。彼が死んだとき、ユダのすべての人々とエルサレムの住民は、彼に敬意をささげた。そして、その子マナセが代わって王となった。
33:1 マナセは十二歳で王となり、エルサレムで五十五年間、王であった。
33:2 彼は主が見て悪とすることを行った。主がイスラエルの人々の前から追い払われた異邦の民の、忌まわしい行いをまねたのである。
33:3 彼は再び、父ヒゼキヤが取り壊した高台の祭壇を築き直し、バアルたちのために祭壇を築き、アシェラ像を造った。そして天の万象すべてにひれ伏し、それらに仕えた。
33:4 主が「エルサレムに、わたしの名をとこしえに置く」と言われた主の神殿の中にまで、彼は祭壇を築いた。
33:5 彼は主の神殿の二つの庭に、天の万象すべてのための祭壇を築いた。
33:6 彼はベン・ヒノムの谷で自分の子どもたちを火の中を通らせ、占いやまじない、魔術を行い、口寄せや霊媒に伺いを立てた。こうして彼は、主が見て悪とすることを数多く行い、主を怒らせた。
33:7 彼は自分が造った偶像の像を、神の神殿の中に据えた。その神殿について、神はダビデとその子ソロモンにこう言われていた。「この神殿と、イスラエルの全部族の中からわたしが選んだエルサレムに、わたしの名をとこしえに置く。
33:8 そして、わたしが先祖たちに与えたこの土地から、イスラエルの足を二度と離れさせることはない。ただし、彼らがわたしの命じたことすべて、モーセを通して与えた律法と掟と定めをことごとく守り行うならば。」
33:9 しかしマナセはユダとエルサレムの住民を惑わせ、主がイスラエルの人々の前で滅ぼした異民族よりも、もっと悪いことを行わせた。
33:10 主はマナセと民に語りかけたが、彼らは耳を貸そうとしなかった。
33:11 そこで主は、アッシリアの王の軍の指揮官たちを彼らに向かわせた。彼らはマナセをかぎで捕らえ、青銅の鎖でつなぎ、バビロンへ引いて行った。
33:12 苦しみの中で、マナセは自分の神である主にすがり、先祖の神の前で深くへりくだった。
33:13 彼が祈ると、主はその願いを受け入れ、彼の訴えを聞き入れて、彼をエルサレムの王座に戻された。こうしてマナセは、主こそが神であることを知った。
33:14 その後、彼はダビデの町の外壁を築いた。谷にあるギホンの西側から、魚の門の入り口まで、オフェルの周りを巡らせ、とても高く積み上げた。そしてユダのすべての城壁の町に、軍の指揮官を置いた。
33:15 彼は異国の神々と偶像を主の神殿から取り除き、主の神殿の山とエルサレムに築いたすべての祭壇を取り払って、町の外へ投げ捨てた。
33:16 そして主の祭壇を築き直し、その上で和解のいけにえと感謝のいけにえをささげた。さらにユダに、イスラエルの神である主に仕えるように命じた。
33:17 それでも民は、まだ高き所でいけにえをささげていた。ただし、それは彼らの神である主に対してだけであった。
33:18 マナセのその他の事績、彼の神への祈り、そしてイスラエルの神である主の名によって彼に語った預言者たちの言葉は、イスラエルの王たちの記録に記されている。
33:19 また、彼の祈り、そして神がその祈りにこたえてくださったこと、彼のすべての罪と背き、へりくだる前に彼が高き所を築き、アシェラ像や彫像を立てたその場所については、預言者たちの記録に記されている。
33:20 マナセは先祖たちとともに眠りにつき、自分の家に葬られた。そして息子のアモンが、代わって王となった。
33:21 アモンは二十二歳で王となり、エルサレムで二年間、王であった。
33:22 彼は父マナセと同じように、主の目に悪とされることを行った。アモンは、父マナセが造ったすべての偶像にいけにえをささげ、それらに仕えた。
33:23 彼は、父マナセがへりくだったようには、主の前でへりくだらなかった。それどころか、このアモンは罪をますます重ねていった。
33:24 彼の家臣たちは謀反を企て、王を自分の家で殺した。
33:25 しかし、この地の民は、アモン王に謀反を起こした者たちをすべて討ち取った。そして、この地の民は、彼の息子ヨシヤを代わって王とした。
34:1 ヨシヤは八歳で王となり、エルサレムで三十一年間、王であった。
34:2 彼は主の目にかなう正しいことを行い、父祖ダビデの歩んだ道を歩んで、右にも左にもそれなかった。
34:3 王となって八年目、まだ若かったころ、彼は父祖ダビデの神を求めはじめた。そして十二年目には、ユダとエルサレムから高き所やアシェラ像、彫像、鋳物の偶像を取り除いて、きよめはじめた。
34:4 人々は彼の見ている前で、バアルの祭壇を打ちこわした。彼はその上にあった香をたく祭壇を切りたおし、アシェラ像や彫像、鋳物の偶像を砕いて粉々にし、それらにいけにえをささげていた者たちの墓の上にまき散らした。
34:5 また彼は、祭司たちの骨をその祭壇の上で焼いた。こうして彼は、ユダとエルサレムをきよめた。
34:6 マナセ、エフライム、シメオンの町々、さらにナフタリにまで及ぶ町々でも、その周囲の廃墟の中で、彼は同じことを行った。
34:7 彼はイスラエルの全土で、祭壇を打ちこわし、アシェラ像を切りたおし、彫像を砕いて粉々にし、香をたく祭壇をすべて切りたおした。それからエルサレムに帰った。
34:8 王となって十八年目に、彼はこの地と神殿をきよめるため、アツァルヤの子シャファンと、町の長官マアセヤと、記録係であるヨアハズの子ヨアハを送り、彼の神、主の宮を修復させた。
34:9 彼らは大祭司ヒルキヤのところへ行き、神の宮に運び込まれた献金を渡した。これは、入口を守るレビ人が、マナセやエフライムの人々、イスラエルの残りの民すべて、それにユダとベニヤミンのすべての人々から集めたもので、彼らはそれを持ってエルサレムに帰っていた。
34:10 彼らはその金を、主の宮の工事を任された監督たちの手に渡した。すると、主の宮で働く職人たちは、その金を使って宮を点検し、修復した。
34:11 また彼らは、それを大工や石工にも渡した。ユダの王たちが荒れるにまかせていた建物のために、切り出した石や、継ぎ材と梁にする木材を買わせるためである。
34:12 人々は誠実に仕事をした。彼らを監督したのは、メラリ族のレビ人ヤハトとオバデヤ、それにコハト族のゼカリヤとメシュラムで、この人たちが工事を指揮した。ほかのレビ人はみな、楽器の演奏にたくみな者たちだった。
34:13 彼らはまた、荷を運ぶ人夫たちを監督し、あらゆる種類の作業をする者すべてを指図した。ほかのレビ人には、書記や役人、門を守る者もいた。
34:14 主の宮に運び込まれた金を運び出したとき、祭司ヒルキヤは、モーセを通して与えられた主の律法の書を見つけた。
34:15 ヒルキヤは書記のシャファンに言った。「主の宮で律法の書を見つけました。」そしてヒルキヤはその書をシャファンに渡した。
34:16 シャファンはその書を王のもとに持って行き、あわせて王に報告して言った。「あなたのしもべたちは、任されたことをすべて行っています。
34:17 彼らは主の宮で見つかった金を集めて、それを監督たちと職人たちの手に渡しました。」
34:18 さらに書記のシャファンは、王に告げて言った。「祭司ヒルキヤが、わたしに一つの書を渡しました。」そしてシャファンは、王の前でそれを読み上げた。
34:19 王は律法の言葉を聞くと、自分の服を引き裂いた。
34:20 そして王は、ヒルキヤ、シャファンの子アヒカム、ミカの子アブドン、書記のシャファン、王の家来アサヤに命じて言った。
34:21 「行って、わたしのため、そしてイスラエルとユダに残っている人たちのために、この見つかった書の言葉について主に尋ねてほしい。わたしたちの先祖は、主の言葉を守らず、この書に書かれているとおりに行わなかった。だから、わたしたちに注がれる主の怒りは激しいのだ。」
34:22 そこでヒルキヤと王が遣わした者たちは、女預言者フルダのところへ行った。彼女は、衣装係だったハスラの子トクハトの子シャルムの妻で、エルサレムの第二区に住んでいた。彼らは、このことを彼女に話した。
34:23 すると彼女は言った。「イスラエルの神、主はこう言われる。あなたたちをわたしのもとに遣わした人に、こう伝えなさい。
34:24 主はこう言われる。見よ、わたしはこの場所と、そこに住む人々に、わざわいを下す。ユダの王の前で読まれた、あの書に書かれているすべての呪いを下す。
34:25 彼らはわたしを捨て、ほかの神々に香をたいて、その手が造ったすべてのもので、わたしを怒らせた。だから、わたしの怒りはこの場所に注がれ、消えることはない。
34:26 しかし、主に尋ねるためにあなたたちを遣わしたユダの王には、こう伝えなさい。イスラエルの神、主はこう言われる。あなたが聞いた言葉について、
34:27 あなたの心は柔らかく、この場所とそこに住む人々について神の言葉を聞いたとき、あなたは神の前でへりくだった。わたしの前でへりくだり、服を引き裂いて、わたしの前で泣いた。だから、わたしもあなたの願いを聞いた、と主は言われる。
34:28 見よ、わたしはあなたを先祖のもとに集める。あなたは安らかに墓に葬られる。わたしがこの場所と、そこに住む人々に下すすべてのわざわいを、あなたの目が見ることはない。」彼らは、この言葉を王に持ち帰った。
34:29 そこで王は人を遣わして、ユダとエルサレムの長老たちをみな集めた。
34:30 そして王は、ユダのすべての人、エルサレムに住む人々、祭司たち、レビ人たち、身分の高い者から低い者まで、すべての民とともに、主の宮へ上って行った。そして王は、主の宮で見つかった契約の書の言葉をすべて、彼らに読んで聞かせた。
34:31 王は自分の場所に立ち、主の前で契約を結んだ。心を尽くし、魂を尽くして主に従い、その戒めと定めとおきてを守り、この書に記された契約の言葉を実行すると誓ったのだ。
34:32 そして王は、エルサレムとベニヤミンにいるすべての人に、この契約に加わらせた。エルサレムに住む人々は、先祖の神である神との契約のとおりに行った。
34:33 ヨシヤは、イスラエルの人々に属するすべての地から、忌まわしい偶像をことごとく取り除いた。そして、イスラエルにいるすべての人に、彼らの神である主に仕えさせた。ヨシヤが生きているあいだ、人々は先祖の神である主に従うことをやめなかった。
35:1 ヨシヤはエルサレムで、主のために過越の祭りを行った。人々は最初の月の十四日に、過越の子羊をほふった。
35:2 王は祭司たちをそれぞれの務めにつかせ、主の宮での奉仕にあたるよう励ました。
35:3 そして、イスラエルのすべての人を教え、主にささげられたレビ人たちに言った。「聖なる箱を、イスラエルの王ダビデの子ソロモンが建てた宮に納めなさい。もう、それを肩にかついで運ぶ必要はない。今からは、あなたたちの神である主と、その民イスラエルに仕えなさい。
35:4 イスラエルの王ダビデが書き記したものと、その子ソロモンが書き記したものに従って、それぞれの家系ごと、組ごとに準備を整えなさい。
35:5 そして、あなたたちの兄弟である一般の民の家系の区分に応じて、聖所に立ちなさい。レビ人も家系ごとに分かれて立つのだ。
35:6 過越の子羊をほふり、自分の身を清め、あなたたちの兄弟のために準備を整えなさい。モーセを通して伝えられた主の言葉のとおりに行うためである。」
35:7 ヨシヤは民のために、自分の家畜の群れから子羊や子やぎを用意した。すべて過越のいけにえのためで、その場にいた人々みんなに配るものだった。その数は三万頭。さらに牛を三千頭。これらはすべて王の財産から出したものである。
35:8 王の高官たちも、民や祭司やレビ人のために進んでささげた。神殿の責任者であるヒルキヤ、ゼカルヤ、エヒエルは、過越のいけにえのために子羊や子やぎ二千六百頭と牛三百頭を祭司たちに贈った。
35:9 また、レビ人の長であるコナンヤ、その兄弟のシェマヤとネタンエル、それにハシャブヤ、エイエル、ヨザバドは、過越のいけにえのために子羊や子やぎ五千頭と牛五百頭をレビ人たちに贈った。
35:10 こうして準備が整い、祭司たちはそれぞれの持ち場に立ち、レビ人も組ごとに分かれて立った。すべて王の命令のとおりである。
35:11 過越の子羊がほふられると、祭司たちはレビ人から受け取った血を振りかけ、レビ人は皮をはいでいった。
35:12 そして、焼き尽くすいけにえの分を取り分けた。民の家系の区分ごとに渡し、モーセの書に記されているとおりに主にささげるためである。牛についても同じようにした。
35:13 彼らは定めのとおり、過越の子羊を火で焼いた。ほかの聖なるささげ物はなべや大がまや平なべで煮て、民みんなに手早く配っていった。
35:14 その後、レビ人は自分たちのためと祭司たちのために用意をした。アロンの子孫である祭司たちが、焼き尽くすいけにえと脂肪をささげるのに夜まで忙しかったからだ。それでレビ人が、自分たちとアロンの子孫である祭司たちのために用意したのである。
35:15 アサフの一族である歌い手たちは、ダビデと、アサフ、ヘマン、それに王に仕える預言者エドトンの命令どおり、それぞれの持ち場についていた。門番たちもそれぞれの門についていた。彼らは自分の務めを離れる必要がなかった。兄弟であるレビ人が、彼らのために用意してくれたからである。
35:16 こうしてその日、過越を祝い、主の祭壇の上で焼き尽くすいけにえをささげるという、主に仕えるすべての務めが整えられた。すべて王ヨシヤの命令のとおりである。
35:17 その時、集まっていたイスラエルの人々は過越を祝い、続いて七日間、種を入れないパンの祭りを行った。
35:18 預言者サムエルの時代からこのかた、イスラエルでこれほどの過越が祝われたことはなかった。イスラエルのどの王も、ヨシヤが祭司やレビ人、その場にいたユダとイスラエルのすべての人々、そしてエルサレムの住民とともに祝ったような過越を行ったことはなかった。
35:19 この過越が祝われたのは、ヨシヤが王となって十八年目のことである。
35:20 ヨシヤが神殿を整えるこのすべてのことを終えたあと、エジプトの王ネコが、ユーフラテス川のほとりのカルケミシュで戦うために攻め上ってきた。ヨシヤは彼を迎え撃とうと出て行った。
35:21 ネコはヨシヤに使者を送って言った。「ユダの王よ、あなたとわたしの間に何の関わりがあるのか。今日わたしが攻めるのはあなたではなく、わたしが戦っている相手の家だ。神はわたしに急ぐようにと言われた。わたしの側におられる神に逆らうのはやめなさい。神があなたを滅ぼすことのないように。」
35:22 しかしヨシヤは彼から引き返そうとせず、変装してまで戦おうとした。彼はネコの言葉、つまり神の口から出た言葉に耳を貸さず、メギドの平野に戦いに出て行った。
35:23 射手たちがヨシヤ王を射た。王は家来たちに言った。「わたしを連れ出してくれ。ひどい傷を負ってしまった。」
35:24 家来たちは王を戦車から降ろし、彼のもう一台の車に乗せてエルサレムに運んだ。しかしヨシヤは死に、先祖の墓に葬られた。ユダとエルサレムのすべての人々はヨシヤのために嘆き悲しんだ。
35:25 預言者エレミヤはヨシヤのために哀歌を作った。歌い手の男たちも女たちもみな、今日に至るまで、その哀歌の中でヨシヤをしのんで歌っている。これはイスラエルのならわしとなり、その言葉は哀歌集に書き記されている。
35:26 ヨシヤのそのほかの事績と、主の律法に記されているとおりに彼が行った慈しみのわざ、
35:27 その初めから終わりまでの行いは、イスラエルとユダの王たちの書に記されている。
36:1 国の民は、ヨシヤの子ヨアハズを選び、父に代わってエルサレムで王とした。
36:2 ヨアハズが王になったのは二十三歳のときで、エルサレムで三か月のあいだ王だった。
36:3 エジプトの王は、エルサレムで彼を王の座から下ろした。そしてこの国に、銀百タラントと金一タラントの罰金を課した。
36:4 エジプトの王は、ヨアハズの兄弟エルヤキムをユダとエルサレムの王にし、その名をエホヤキムと改めさせた。そして、その兄弟ヨアハズをネコは連れて、エジプトへ引いて行った。
36:5 エホヤキムが王になったのは二十五歳のときで、エルサレムで十一年のあいだ王だった。彼は、自分の神である主が見て悪とされることを行った。
36:6 そこへ、バビロンの王ネブカドネツァルが攻め上ってきた。そして彼を青銅の足かせでつなぎ、バビロンへ引いて行った。
36:7 ネブカドネツァルは、主の神殿の器物の一部もバビロンへ運び去り、バビロンにある自分の神殿に納めた。
36:8 エホヤキムのその他の事績、彼が行った忌まわしい行い、そして彼について明らかになったことは、イスラエルとユダの王たちの書に記されている。彼に代わって、その子エホヤキンが王となった。
36:9 エホヤキンが王になったのは八歳のときで、エルサレムで三か月と十日のあいだ王だった。彼は、主が見て悪とされることを行った。
36:10 年が改まると、ネブカドネツァル王は人をやって彼を捕らえ、主の神殿の貴重な器物とともにバビロンへ連れて行った。そして、その兄弟ゼデキヤをユダとエルサレムの王とした。
36:11 ゼデキヤが王になったのは二十一歳のときで、エルサレムで十一年のあいだ王だった。
36:12 彼は、自分の神である主が見て悪とされることを行った。そして、主の言葉を告げる預言者エレミヤの前でへりくだろうとはしなかった。
36:13 彼はまた、ネブカドネツァル王に反逆した。ネブカドネツァルは、神にかけて忠誠を誓わせていたのに、である。ゼデキヤは強情になり、心をかたくなにして、イスラエルの神である主に立ち帰ろうとはしなかった。
36:14 祭司長たちも民も、みな同じように主への裏切りを重ねていった。彼らは周りの国々の忌まわしい行いをすべてまね、主がエルサレムで聖なるものとされた神殿を汚した。
36:15 彼らの先祖の神である主は、たびたび使者を送って彼らに語りかけた。ご自分の民と、その住まいである神殿を惜しむ気持ちがあったからだ。
36:16 ところが彼らは、神の使者たちをばかにし、その言葉を軽んじ、預言者たちをあざ笑った。とうとう主の怒りは民に向かって燃え上がり、もう手の施しようがなくなった。
36:17 そこで主は、カルデアの王を攻め上らせた。王は彼らの若者たちを、聖所の中で剣にかけて殺した。若い男も娘も、年寄りも老人も、だれ一人容赦しなかった。主はすべてを彼の手に渡したのだ。
36:18 そして王は、大小を問わず神殿のすべての器物、主の神殿の宝物、王とその高官たちの宝物を、残らずバビロンへ運び去った。
36:19 彼らは神殿を焼き払い、エルサレムの城壁を打ち壊し、その宮殿をことごとく火で焼き、貴重なものをすべて壊してしまった。
36:20 王は、剣を逃れて生き残った人々をバビロンへ連れて行った。彼らは、ペルシア帝国が支配するようになるまで、王とその子孫の奴隷となった。
36:21 こうして、エレミヤを通して語られた主の言葉が実現した。地がその安息の年を取り戻すまで、荒れ果てたそのあいだじゅう、地は安息を守り、七十年が満ちた。
36:22 ペルシアの王キュロスの治世の第一年、エレミヤを通して語られた主の言葉が実現するために、主はペルシアの王キュロスの心を動かした。キュロスは王国全体に、口頭でも文書でも、次のように布告した。
36:23 「ペルシアの王キュロスは、こう言う。天の神である主は、地上のすべての国をわたしにお与えになった。そして、ユダにあるエルサレムに、主のための神殿を建てるよう、わたしに命じられた。あなたたちのうち、主の民である者はだれでも、その神である主が共にいてくださるように。さあ、上って行きなさい。」
エズラ記
1:1 ペルシアの王キュロスの第一年のこと。主が預言者エレミヤを通して語った言葉が実現するために、主はペルシアの王キュロスの心を動かした。それでキュロスは、国じゅうに次のようなおふれを出し、文書にも書き記した。
1:2 「ペルシアの王キュロスはこう言う。天の神、主は、地上のすべての国をわたしに与えてくださった。そしてわたしに、ユダにあるエルサレムで、神のための神殿を建てるよう命じられた。
1:3 あなたたちの中で、主の民に属する者は誰でも、その神が共にいてくださるように。その者はユダにあるエルサレムへ上って行き、イスラエルの神、主の神殿を建てなさい。この方こそ、エルサレムにおられる神である。
1:4 そして、生き残った者がどこに住んでいても、その土地の人々は、彼を銀や金、財産や家畜で援助しなさい。エルサレムにある神の神殿への、進んでささげるものも添えて。」
1:5 すると、ユダとベニヤミンの一族の長たち、それに祭司とレビ人たちが立ち上がった。神に心を動かされた者は皆、エルサレムにある主の神殿を建てるために上って行こうとしたのだ。
1:6 周りの人々は皆、銀の器や金、財産や家畜、それに高価な品々を贈って、彼らを支えた。そのほかにも、進んでささげられたものがたくさんあった。
1:7 また、キュロス王は、主の神殿の器を取り出した。それは、かつてネブカドネツァルがエルサレムから持ち去り、自分の神々の神殿に納めていたものだった。
1:8 ペルシアの王キュロスは、それらを会計係ミトレダテに命じて取り出させ、数えてユダの指導者シェシュバツァルに渡した。
1:9 その数は次のとおりである。金の皿三十枚、銀の皿千枚、ナイフ二十九本、
1:10 金の鉢三十個、二番目の種類の銀の鉢四百十個、その他の器千個。
1:11 金と銀の器は、全部で五千四百個あった。捕らわれていた人々がバビロンからエルサレムへ帰るとき、シェシュバツァルはこれらすべてを携えて上って行った。
2:1 バビロンの王ネブカドネツァルによってバビロンへ連れ去られ、捕らわれの身となっていた人々がいた。その子孫たちが、この州から自分の町へと帰って来た。エルサレムとユダに、それぞれ自分のもとの町へと戻ったのである。彼らの名前は次のとおりだ。
2:2 彼らはゼルバベルといっしょに帰って来た。指導者はゼルバベル、イエシュア、ネヘミヤ、セラヤ、レエラヤ、モルデカイ、ビルシャン、ミスパル、ビグワイ、レフム、バアナである。帰って来たイスラエルの民の人数は、次のとおりだ。
2:3 パルオシュの一族が二千百七十二人。
2:4 シェファテヤの一族が三百七十二人。
2:5 アラフの一族が七百七十五人。
2:6 パハト・モアブの一族、つまりイエシュアとヨアブの子孫が二千八百十二人。
2:7 エラムの一族が千二百五十四人。
2:8 ザトの一族が九百四十五人。
2:9 ザカイの一族が七百六十人。
2:10 バニの一族が六百四十二人。
2:11 ベバイの一族が六百二十三人。
2:12 アズガドの一族が千二百二十二人。
2:13 アドニカムの一族が六百六十六人。
2:14 ビグワイの一族が二千五十六人。
2:15 アディンの一族が四百五十四人。
2:16 ヒゼキヤ系のアテルの一族が九十八人。
2:17 ベツァイの一族が三百二十三人。
2:18 ヨラの一族が百十二人。
2:19 ハシュムの一族が二百二十三人。
2:20 ギバルの一族が九十五人。
2:21 ベツレヘムの一族が百二十三人。
2:22 ネトファの人々が五十六人。
2:23 アナトトの人々が百二十八人。
2:24 アズマベテの一族が四十二人。
2:25 キルヤト・アリム、ケフィラ、ベエロトの一族が七百四十三人。
2:26 ラマとゲバの一族が六百二十一人。
2:27 ミクマスの人々が百二十二人。
2:28 ベテルとアイの人々が二百二十三人。
2:29 ネボの一族が五十二人。
2:30 マグビシュの一族が百五十六人。
2:31 もう一つのエラムの一族が千二百五十四人。
2:32 ハリムの一族が三百二十人。
2:33 ロド、ハディド、オノの一族が七百二十五人。
2:34 エリコの一族が三百四十五人。
2:35 セナアの一族が三千六百三十人。
2:36 祭司たち。イエシュアの家系のエダヤの一族が九百七十三人。
2:37 インメルの一族が千五十二人。
2:38 パシュフルの一族が千二百四十七人。
2:39 ハリムの一族が千十七人。
2:40 レビ人。ホダウヤの家系にあたる、イエシュアとカドミエルの一族が七十四人。
2:41 歌い手たち。アサフの一族が百二十八人。
2:42 門を守る人たち。シャルム、アテル、タルモン、アクブ、ハティタ、ショバイの一族で、合わせて百三十九人。
2:43 神殿で働く奉仕者たち。ツィハの一族、ハスファの一族、タバオトの一族、
2:44 ケロスの一族、シアハの一族、パドンの一族、
2:45 レバナの一族、ハガバの一族、アクブの一族、
2:46 ハガブの一族、シャルマイの一族、ハナンの一族、
2:47 ギデルの一族、ガハルの一族、レアヤの一族、
2:48 レツィンの一族、ネコダの一族、ガザムの一族、
2:49 ウザの一族、パセアハの一族、ベサイの一族、
2:50 アスナの一族、メウニムの一族、ネフシムの一族、
2:51 バクブクの一族、ハクファの一族、ハルフルの一族、
2:52 バツルトの一族、メヒダの一族、ハルシャの一族、
2:53 バルコスの一族、シセラの一族、テマの一族、
2:54 ネツィアの一族、ハティファの一族。
2:55 ソロモンの家来たちの子孫。ソタイの一族、ソフェレトの一族、ペルダの一族、
2:56 ヤアラの一族、ダルコンの一族、ギデルの一族、
2:57 シェファトヤの一族、ハティルの一族、ツェビイムのポケレトの一族、アミの一族。
2:58 神殿の雑用をする者たちと、ソロモンの家来たちの子孫は、合わせて三百九十二人だった。
2:59 次の人たちは、テル・メラ、テル・ハルシャ、ケルブ、アダン、イメルから上って来た。でも、自分の家系や血筋がイスラエルの出身かどうかを、はっきり示すことができなかった。
2:60 デラヤの一族、トビヤの一族、ネコダの一族で、合わせて六百五十二人だった。
2:61 祭司の一族の中には、ハバヤの一族、ハコツの一族、バルジライの一族がいた。バルジライの一族は、ギレアド人バルジライの娘の一人を妻にしたので、その名で呼ばれるようになった。
2:62 この人たちは、家系を記した名簿を探したが、見つからなかった。それで、汚れているとされ、祭司の務めから外された。
2:63 総督は彼らに、ウリムとトンミム（神の意思を問う道具）を扱える祭司が現れるまでは、最も聖なる食べ物を口にしてはならないと言った。
2:64 帰って来た人々は、全員合わせて四万二千三百六十人だった。
2:65 このほかに、男女の使用人が七千三百三十七人、それに男女の歌い手が二百人いた。
2:66 馬は七百三十六頭、らばは二百四十五頭、
2:67 らくだは四百三十五頭、ろばは六千七百二十頭だった。
2:68 一族の長たちの中には、エルサレムにある主の神殿に着いたとき、その神殿を元の場所に建て直すために、進んで献げ物をした人たちがいた。
2:69 彼らは力に応じて、この工事の資金として献げた。金は六万一千ダリク、銀は五千ミナ、それに祭司の衣を百着だった。
2:70 こうして、祭司、レビ人、一般の人々、歌い手、門を守る者、神殿の雑用をする者たちは、それぞれ自分たちの町に住んだ。イスラエルの人々はみな、自分たちの町で暮らした。
3:1 第七の月になった。イスラエルの人々はそれぞれの町に住んでいたが、みんな一つになってエルサレムに集まってきた。
3:2 そして、ヨツァダクの子ヨシュアと、その仲間の祭司たち、それにシャルティエルの子ゼルバベルとその仲間が立ち上がり、イスラエルの神の祭壇を築いた。神の人モーセの律法に書かれているとおり、その上で焼き尽くすいけにえをささげるためだった。
3:3 彼らはまわりの国々の人々を恐れていた。それでも、もとの土台の上に祭壇をしっかりと据え、その上で主に焼き尽くすいけにえをささげた。朝も夕もささげたのだ。
3:4 また、書かれているとおりに仮庵の祭りを行い、毎日決められた数の焼き尽くすいけにえを、その日ごとの定めどおりにささげた。
3:5 そのあとは、絶えずささげる焼き尽くすいけにえや、新月の祭り、主の聖なる祭りのすべてでささげるいけにえ、さらに、みずから進んで主にささげ物をする人のいけにえをささげた。
3:6 第七の月の一日から、彼らは主に焼き尽くすいけにえをささげ始めた。ただし、主の神殿の土台はまだ据えられていなかった。
3:7 そこで彼らは石切り職人や大工にお金を払い、シドンとティルスの人々には食べ物と飲み物と油を渡した。レバノンから杉の木を切り出し、海路でヤフォまで運んでもらうためだ。これはペルシアの王キュロスが彼らに許可したことに従っていた。
3:8 エルサレムの神の家に帰り着いた次の年の第二の月、シャルティエルの子ゼルバベルとヨツァダクの子ヨシュア、そして残りの仲間である祭司とレビ人、さらに捕らわれの地からエルサレムに帰ってきたすべての人が、工事を始めた。彼らは二十歳以上のレビ人を立てて、主の家の工事を監督させた。
3:9 そして、ヨシュアとその子らと仲間、カデミエルとその子らユダの一族が一つになって立ち、神の家で働く人たちを監督した。ヘナダドの一族と、その子らと仲間のレビ人もいっしょだった。
3:10 建てる者たちが主の神殿の土台を据えたとき、祭司たちは礼服を着てラッパを持ち、アサフの一族であるレビ人はシンバルを手に持って立った。イスラエルの王ダビデの定めに従って、主をたたえるためだった。
3:11 彼らは主をほめたたえ、感謝して、こう歌い交わした。「主は良いお方。その慈しみはイスラエルに、いつまでも尽きることがない。」主の家の土台が据えられたので、民はみな声をあげ、主をたたえて大きな喜びの声で叫んだ。
3:12 しかし、祭司やレビ人、一族の長老たちの中には、以前の神殿を見たことのある年配の人が大勢いた。彼らは、この神殿の土台が目の前で据えられるのを見て、大声で泣いた。その一方で、多くの人は喜んで声を張り上げて叫んだ。
3:13 民は、喜びの叫び声と泣き声を聞き分けることができなかった。民がとても大きな声で叫んでいたからだ。その音は遠くまで響き渡った。
4:1 ユダとベニヤミンの敵たちは、捕らわれの地から戻ってきた人々が、イスラエルの神、主のために神殿を建てていると聞いた。
4:2 そこで彼らはゼルバベルと一族の長たちのところに来て、こう言った。「わたしたちもいっしょに建てさせてほしい。あなたたちと同じように、わたしたちもあなたたちの神を求めているのだから。わたしたちをここに連れてきたアッシリアの王エサル・ハドンの時代から、わたしたちはこの神にいけにえをささげてきたのだ。」
4:3 しかし、ゼルバベルとヨシュア、そのほかのイスラエルの一族の長たちは答えた。「わたしたちの神のために家を建てるのは、あなたたちの仕事ではない。わたしたちだけで、イスラエルの神、主のために建てる。ペルシアの王キュロスがそう命じたからだ。」
4:4 すると、その地の住民はユダの人々の気力をくじき、建てるのをやめさせようと脅しはじめた。
4:5 さらに彼らは、ユダの人々の計画をつぶそうと役人を買収した。それはペルシアの王キュロスの治世のあいだずっと続き、ペルシアの王ダレイオスの治世にまで及んだ。
4:6 アハシュエロスの治世の初めには、彼らはユダとエルサレムの住民を訴える手紙を書いた。
4:7 また、アルタクセルクセスの時代には、ビシュラム、ミトレダテ、タブエルとその仲間たちが、ペルシアの王アルタクセルクセスに手紙を書いた。その手紙はアラム語で書かれ、アラム語に訳されていた。
4:8 司令官レフムと書記官シムシャイは、エルサレムのことでアルタクセルクセス王に、次のような手紙を書いた。
4:9 司令官レフム、書記官シムシャイ、そのほかの仲間たち、すなわち裁判官や役人、そしてエレク、バビロン、スサ、つまりエラムなど、各地の人々。
4:10 さらに、偉大で名高いオスナパルが移り住まわせ、サマリアの町やユーフラテス川の西側の各地に置いた、ほかの民族もいた。
4:11 彼らが王に送った手紙の写しは、次のとおりである。「アルタクセルクセス王へ。ユーフラテス川の西側に住む、あなたのしもべたちより申し上げます。
4:12 王にお知らせします。あなたのもとからわたしたちのところに上ってきたユダヤ人が、エルサレムに着きました。彼らはあの反逆的で邪悪な町を建て直し、城壁を築き上げ、土台を修復しています。
4:13 王にお知らせします。もしこの町が建て直され、城壁が完成すれば、彼らは貢ぎ物も税も関税も納めなくなり、王の収入が損なわれることになります。
4:14 わたしたちは王宮に仕える身ですから、王が辱められるのを黙って見ているわけにはいきません。それで、こうして王にお知らせするのです。
4:15 どうか、あなたの先祖の記録の書を調べてみてください。その記録を調べれば、この町が反逆的な町であり、昔から王たちや諸州に害を与え、町の中で反乱を起こしてきたことがおわかりになるでしょう。この町が滅ぼされたのも、そのためなのです。
4:16 わたしたちは王にお知らせします。もしこの町が建て直され、城壁が完成すれば、あなたはユーフラテス川の西側を治める力を失うことになるでしょう。」
4:17 王は返事を送った。「町の長官レフムと書記官シムシャイ、およびサマリアとユーフラテス川の西側に住む、その仲間たちへ。あいさつを送る。さて、
4:18 あなたがたが送ってきた手紙は、わたしの前で翻訳して読み上げられた。
4:19 そこでわたしが命じて調べさせたところ、この町が昔から王たちに逆らって立ち上がり、町の中で反乱や暴動が起こされてきたことがわかった。
4:20 かつてはエルサレムに強い王たちがいて、ユーフラテス川の西側全体を治め、人々は彼らに貢ぎ物や税や関税を納めていた。
4:21 だから今、命令を出して、あの者たちの工事をやめさせよ。わたしが改めて命じるまで、この町を建て直してはならない。
4:22 このことを怠りなく行うよう、くれぐれも気をつけよ。どうして被害を大きくして、王たちが損害を受けてよいだろうか。」
4:23 アルタクセルクセス王の手紙の写しが、レフムと書記官シムシャイ、そしてその仲間たちの前で読み上げられると、彼らは急いでエルサレムのユダヤ人のところへ行き、力ずくで工事をやめさせた。
4:24 こうして、エルサレムにある神の家の工事は中断された。そして、ペルシアの王ダレイオスの治世の第二年まで、それは中断されたままであった。
5:1 そのころ、預言者ハガイと、イドの子である預言者ゼカリヤが、ユダとエルサレムにいるユダヤ人たちに向けて預言した。イスラエルの神の名によって語ったのだ。
5:2 すると、シェアルティエルの子ゼルバベルと、ヨツァダクの子ヨシュアが立ち上がり、エルサレムにある神の家を建て始めた。神の預言者たちもそばにいて、彼らを支えた。
5:3 ちょうどそのとき、川向こうの地方の総督タテナイと、シェタル・ボズナイ、そして仲間たちが彼らのところにやって来て、こう言った。「だれの許可を得て、この家を建て、この壁を仕上げているのか。」
5:4 さらに彼らはこう尋ねた。「この建物を建てている者たちの名前は何というのか。」
5:5 しかし、彼らの神の目はユダヤ人の長老たちの上に注がれていた。だから、この件がダレイオス王に報告され、その返事が届くまで、工事が止められることはなかった。
5:6 これは、川向こうの地方の総督タテナイと、シェタル・ボズナイ、そして川向こうにいる仲間の役人たちが、ダレイオス王に送った手紙の写しである。
5:7 彼らが王に送った報告には、こう書かれていた。「ダレイオス王へ。ご平安がすべてにありますように。
5:8 王にお知らせします。わたしたちはユダの州へ行き、大いなる神の家を見てきました。それは大きな切り石で建てられ、壁には木材が組み込まれています。この工事はきびきびと進められ、彼らの手で順調にはかどっています。
5:9 そこで、わたしたちはその長老たちにこう尋ねました。『だれの許可を得て、この家を建て、この壁を仕上げているのか。』
5:10 また、王にお知らせするため、彼らの名前も尋ねました。指導者たちの名を書き記すためです。
5:11 彼らはこう答えました。『わたしたちは、天と地の神に仕える者です。そして、ずっと昔に建てられていた家を建て直しているのです。それは、イスラエルの偉大な王が建てて、仕上げたものでした。
5:12 しかし、わたしたちの先祖が天の神を怒らせたので、神は彼らをバビロンの王、カルデア人ネブカドネツァルの手に渡されました。彼はこの家を壊し、民をバビロンへ連れ去ったのです。
5:13 でも、バビロンの王キュロスの第一年に、キュロス王がこの神の家を建て直すよう命令を出しました。
5:14 それに、神の家の金や銀の器についても命じました。それは、ネブカドネツァルがエルサレムの神殿から持ち出し、バビロンの神殿へ運んだものでした。キュロス王は、それらをバビロンの神殿から取り出し、シェシュバツァルという人に渡しました。王はこの人を総督に任命したのです。
5:15 そして王は彼にこう言いました。『これらの器を持って行き、エルサレムの神殿に納めなさい。そして神の家を元の場所に建て直しなさい。』
5:16 それでこのシェシュバツァルはやって来て、エルサレムにある神の家の土台を据えました。それから今まで、ずっと工事が続いていて、まだ完成していません。』
5:17 そこで今、もし王がよいと思われるなら、バビロンにある王の宝物庫をお調べください。キュロス王がエルサレムのこの神の家を建てるよう命令を出したのか、どうかを確かめるためです。そして、この件について王のお考えを、わたしたちに知らせてください。」
6:1 それで、ダレイオス王は命令を出しました。そして人々は、バビロンにある、宝物を保管した文書庫を調べました。
6:2 すると、メディア州にあるアクメタの城で、一つの巻物が見つかりました。そこには、次のような記録が書かれていました。
6:3 「キュロス王の第一年に、キュロス王はエルサレムの神の家についてこう命じた。いけにえをささげる場所として、この家を建て直せ。その土台を据えよ。高さは六十キュビト、幅は六十キュビトとする。
6:4 大きな石を三段、新しい木材を一段で積め。費用は王の宮廷から支払う。
6:5 それに、神の家の金や銀の器も返しなさい。それは、ネブカドネツァルがエルサレムの神殿から持ち出し、バビロンへ運んだものだ。それをエルサレムの神殿に戻し、それぞれ元の場所に返して、神の家に納めよ。」
6:6 そこで今、川向こうの地方の総督タテナイよ、シェタル・ボズナイよ、そして川向こうにいるあなたたちの同僚の役人たちよ、そこから手を引きなさい。
6:7 この神の家の工事には手を出すな。ユダヤ人の総督と長老たちに、この神の家を元の場所に建てさせなさい。
6:8 さらにわたしは命じる。この神の家を建てるユダヤ人の長老たちに、あなたたちが何をすべきかを命じる。川向こうの税収から出る王の財産で、その費用を遅れることなくこの人たちに支払いなさい。工事を止めさせてはならない。
6:9 彼らに必要なもの、つまり天の神へのささげ物とする若い雄牛、雄羊、子羊、それに小麦、塩、ぶどう酒、油は、エルサレムの祭司たちの求めに従って、毎日欠かさず渡しなさい。
6:10 そうすれば、彼らは天の神が喜ぶささげ物をささげ、王とその子らの命のために祈ることができる。
6:11 さらにわたしは命じる。この命令を変える者があれば、だれであっても、その家から梁を引き抜き、それを立てて、その者をそれに掛けて処刑せよ。そしてその家は、このために、ごみの山とせよ。
6:12 そして、その名をそこに住まわせている神が、この命令を変えようとし、エルサレムにあるこの神の家を壊そうと手を出す王や民を、だれであっても滅ぼしてくださるように。わたしダレイオスが命じる。すみやかに実行せよ。
6:13 そこで、川向こうの地方の総督タテナイ、シェタル・ボズナイ、そして彼らの同僚たちは、ダレイオス王が送ったとおりに、すみやかにそれを実行した。
6:14 ユダヤ人の長老たちは、預言者ハガイと、イドの子ゼカリヤの預言に励まされて、工事を進め、うまく運んだ。彼らはイスラエルの神の命令と、ペルシアの王キュロス、ダレイオス、アルタクセルクセスの命令によって、建て上げ、完成させた。
6:15 この神殿は、ダレイオス王の治世第六年、アダルの月の三日に完成した。
6:16 そしてイスラエルの人々、つまり祭司、レビ人、それに捕囚から帰ってきた残りの人々は、喜びのうちに、この神の家を神にささげる式を行った。
6:17 この神の家をささげる式では、雄牛百頭、雄羊二百頭、子羊四百頭をささげた。さらに、イスラエル全体の罪のためのささげ物として、イスラエルの部族の数にちなんで雄やぎ十二頭をささげた。
6:18 そして、エルサレムでの神への奉仕のために、モーセの書に記されているとおり、祭司をその組に、レビ人をその班に配置した。
6:19 捕囚から帰ってきた人々は、第一の月の十四日に過越の祭りを行った。
6:20 祭司とレビ人は、みんなそろって身を清めていた。全員が清くなっていたので、捕囚から帰ってきたすべての人のため、また仲間の祭司たちのため、そして自分たちのために、過越の子羊をほふった。
6:21 こうして、捕囚から帰ってきたイスラエルの人々と、この地の異民族の汚れから離れ、イスラエルの神である主を求めて彼らに加わったすべての人が、それを食べた。
6:22 そして七日間、種を入れないパンの祭りを喜びのうちに祝った。主が彼らを喜びで満たし、アッシリアの王の心を彼らに向けさせて、イスラエルの神である神の家の工事を進める力を与えてくださったからだ。
7:1 こうしたことがあった後、ペルシアの王アルタクセルクセスの時代に、一人の人がいた。エズラである。エズラはセラヤの子で、セラヤはアザルヤの子、アザルヤはヒルキヤの子、
7:2 ヒルキヤはシャルムの子、シャルムはツァドクの子、ツァドクはアヒトブの子、
7:3 アヒトブはアマルヤの子、アマルヤはアザルヤの子、アザルヤはメラヨトの子、
7:4 メラヨトはゼラフヤの子、ゼラフヤはウジの子、ウジはブキの子、
7:5 ブキはアビシュアの子、アビシュアはピネハスの子、ピネハスはエルアザルの子、エルアザルは大祭司アロンの子である。
7:6 このエズラがバビロンから上ってきた。エズラは、イスラエルの神である主がお与えになったモーセの律法に詳しい学者だった。彼の神である主が彼を助けてくださったので、王は彼が求めるものをすべて与えた。
7:7 アルタクセルクセス王の第七年に、イスラエルの人々の一部、祭司、レビ人、歌い手、門番、そして神殿の使用人たちがエルサレムへ上ってきた。
7:8 エズラがエルサレムに着いたのは、王の第七年の第五の月だった。
7:9 彼は第一の月の一日にバビロンを発って上り始め、第五の月の一日にエルサレムに着いた。彼の神の恵み深い助けが彼の上にあったからである。
7:10 エズラは、主の律法を学び、それを実行し、イスラエルに掟と定めを教えることに心を定めていた。
7:11 次に記すのは、アルタクセルクセス王が、祭司であり学者でもあるエズラに渡した手紙の写しである。エズラは、主がイスラエルにお与えになった命令と掟の言葉に詳しい学者だった。
7:12 「王の中の王アルタクセルクセスから、天の神の律法に通じた学者、祭司エズラへ。あいさつを送る。さて、
7:13 わたしは次のように命じる。わたしの国にいるイスラエルの民、その祭司やレビ人のうち、自分から進んでエルサレムへ行きたいと思う者は、だれでもあなたと一緒に行ってよい。
7:14 あなたは、王とその七人の顧問によって送り出される。あなたの手にあるあなたの神の律法に従って、ユダとエルサレムの様子を調べるためである。
7:15 また、王とその顧問たちが、エルサレムに住まいを置くイスラエルの神に進んでささげた銀と金を運ぶためでもある。
7:16 さらに、あなたがバビロン州全体で集めるすべての銀と金、そして民や祭司たちがエルサレムにある自分たちの神の家のために進んでささげる献げ物も、あわせて運ぶためだ。
7:17 だからこの金で、雄牛、雄羊、子羊、それに添える穀物の供え物と注ぎの供え物を、しっかりと買い求めなさい。そして、エルサレムにあるあなたたちの神の家の祭壇の上で、それらをささげなさい。
7:18 残った銀と金については、あなたとあなたの兄弟たちがよいと思うことを、あなたたちの神の望みに従って行いなさい。
7:19 そして、あなたの神の家での礼拝のためにあなたに渡される器は、エルサレムの神の前に納めなさい。
7:20 それ以外にも、あなたの神の家のために必要になって支払うものがあれば、王の宝物庫から支払えばよい。
7:21 またわたし、アルタクセルクセス王は、川向こうの州のすべての会計官に命じる。天の神の律法の学者である祭司エズラがあなたたちに求めることは、何でもきちんと果たしなさい。
7:22 銀は百タラント、小麦は百コル、ぶどう酒は百バト、オリーブ油は百バトまで、それに塩は制限なしに与えなさい。
7:23 天の神が命じることは何でも、天の神の家のためにきちんと行いなさい。そうしなければ、王とその子らが治める国に神の怒りが下るかもしれない。
7:24 さらにあなたたちに知らせておく。祭司、レビ人、歌い手、門番、神殿の使用人、そしてこの神の家で働く者たち、その誰にも、税や貢ぎ物や通行料を課してはならない。
7:25 そしてあなた、エズラよ。あなたの手にある、あなたの神から授かった知恵に従って、役人や裁判官を任命しなさい。彼らが川向こうにいるすべての民、つまりあなたの神の律法を知っている者たちみんなを裁くためだ。まだ知らない者には、あなたたちが教えなさい。
7:26 あなたの神の律法と王の律法を守らない者は誰でも、すぐに裁きを受けなければならない。死刑であれ、追放であれ、財産の没収であれ、投獄であれ。」
7:27 わたしたちの先祖の神、主をほめたたえよ。主は、エルサレムにある主の家を美しく整えようという思いを、王の心に与えてくださった。
7:28 そして王とその顧問たち、王の力ある高官たちみんなの前で、わたしに慈しみを示してくださった。わたしの神、主の御手がわたしの上にあったので、わたしは力づけられ、わたしと一緒に上って行く指導者たちをイスラエルから集めた。
8:1 次に挙げるのは、アルタクセルクセス王の時代に、わたしといっしょにバビロンから上って来た家系の長たちと、その系図である。
8:2 ピネハスの一族からはゲルショム。イタマルの一族からはダニエル。ダビデの一族からはハトシュ。
8:3 シェカンヤの一族、つまりパルオシュの一族からはゼカルヤ。彼とともに系図に登録された男子は百五十人。
8:4 パハト・モアブの一族からはゼラフヤの子エルヨエナイ。彼とともに男子は二百人。
8:5 シェカンヤの一族からはヤハジエルの子。彼とともに男子は三百人。
8:6 アディンの一族からはヨナタンの子エベド。彼とともに男子は五十人。
8:7 エラムの一族からはアタルヤの子エシャヤ。彼とともに男子は七十人。
8:8 シェファトヤの一族からはミカエルの子ゼバドヤ。彼とともに男子は八十人。
8:9 ヨアブの一族からはエヒエルの子オバドヤ。彼とともに男子は二百十八人。
8:10 シェロミトの一族からはヨシフヤの子。彼とともに男子は百六十人。
8:11 ベバイの一族からはベバイの子ゼカルヤ。彼とともに男子は二十八人。
8:12 アズガドの一族からはハカタンの子ヨハナン。彼とともに男子は百十人。
8:13 アドニカムの一族からは、後になって加わった者たち。その名はエリフェレト、エイエル、シェマヤ。彼らとともに男子は六十人。
8:14 ビグワイの一族からはウタイとザブド。彼らとともに男子は七十人。
8:15 わたしは彼らをアハワへ流れる川のほとりに集め、そこで三日間、野営した。そのあいだに民と祭司たちを調べてみると、レビ人が一人もいなかった。
8:16 そこでわたしは、指導者であるエリエゼル、アリエル、シェマヤ、エルナタン、ヤリブ、エルナタン、ナタン、ゼカルヤ、メシュラムを呼び寄せた。また、人を教える力のあるヨヤリブとエルナタンも呼んだ。
8:17 そして彼らを、カシフヤという場所の長イドのもとへ送り出した。カシフヤにいるイドとその同胞である神殿の奉仕者たちに、何と言えばよいかも教えた。わたしたちの神の家で仕える者を連れて来てもらうためだった。
8:18 わたしたちを守る神の恵み深い御手によって、彼らはひとりの賢明な人を連れて来た。その人はイスラエルの子レビの子マフリの一族の者だった。またシェレブヤと、その子ら、兄弟たち、合わせて十八人も来た。
8:19 さらにハシャブヤと、彼とともにメラリの一族のエシャヤも来た。その兄弟たちとその子ら、合わせて二十人だった。
8:20 そのほかに、ダビデと高官たちがレビ人の働きを助けるために定めた神殿の奉仕者たちがいた。その数は二百二十人。全員が名前を記されていた。
8:21 それからわたしは、アハワ川のほとりで断食を呼びかけた。神の前でへりくだり、わたしたち自身と子どもたち、そしてすべての持ち物のために、安全な道を神に求めるためだった。
8:22 というのも、道中で敵から守ってもらうために兵士や騎兵を王に願い出るのが、わたしには恥ずかしかったからだ。わたしたちは前もって王にこう言っていた。「わたしたちの神を求める者すべてには、その御手が恵みとなって及びます。でも、神を捨てる者すべてには、その力と怒りが向けられます。」
8:23 そこでわたしたちは断食し、このことについて神に祈り求めた。すると神は、その願いを聞き入れてくださった。
8:24 それからわたしは、祭司の長たちの中から十二人を選び分けた。シェレブヤ、ハシャブヤと、彼らとともにその兄弟たち十人だった。
8:25 そしてわたしは、彼らのために銀と金と器を量って渡した。これらは、王とその顧問たち、その高官たち、そしてそこにいたすべてのイスラエルの人々が、わたしたちの神の神殿のためにささげた奉納物だった。
8:26 わたしが量って彼らの手に渡したのは、銀六百五十タラント、銀の器百タラント分、金百タラント、
8:27 金の鉢二十個で千ダリク相当、それに金のように貴重な、みがき上げられた上等な青銅の器二個だった。
8:28 そしてわたしは彼らに言った。「あなたがたは主にささげられた聖なる者だ。この器も聖なるものだ。銀と金は、あなたがたの先祖の神である主への、心からのささげ物だ。
8:29 しっかり見張って、大切に守っていてほしい。エルサレムで、祭司の長たちとレビ人、それにイスラエルの一族の長たちの前で量り渡すまでは。渡す場所は主の神殿の部屋だ。」
8:30 そこで祭司とレビ人は、量り分けられた銀と金と器を受け取った。エルサレムのわたしたちの神の神殿に運ぶためだった。
8:31 わたしたちは、第一の月の十二日にアハワ川を出発し、エルサレムへ向かった。わたしたちの神の御手がわたしたちの上にあり、道中の敵や待ち伏せする者の手から守ってくださった。
8:32 こうしてわたしたちはエルサレムに着き、そこで三日間過ごした。
8:33 四日目に、銀と金と器は、わたしたちの神の神殿で、祭司ウリヤの子メレモトの手に量り渡された。彼のそばにはピネハスの子エルアザルがいて、さらにレビ人であるエシュアの子ヨザバドと、ビヌイの子ノアデヤもいた。
8:34 すべてが数と重さで確認され、その総重量はそのとき書き記された。
8:35 捕囚から帰って来た人々、つまり捕らえ移されていた人々は、イスラエルの神に焼き尽くすいけにえをささげた。全イスラエルのために雄牛十二頭、雄羊九十六頭、子羊七十七頭、それに罪をあがなうためのいけにえとして雄やぎ十二頭。これらはすべて主にささげる焼き尽くすいけにえだった。
8:36 そして彼らは、王の命令書を、王の総督たちやユーフラテス川の西側の地方長官たちに渡した。すると彼らは、この民と神の神殿を支援してくれた。
9:1 これらのことが済んだあと、指導者たちがわたしのところに来て、こう言った。「イスラエルの民も、祭司たちも、レビ人たちも、周りの国々の民から離れようとしていません。カナン人、ヒト人、ペリジ人、エブス人、アンモン人、モアブ人、エジプト人、アモリ人がしている、忌まわしい習わしをまねているのです。
9:2 彼らはその娘たちを自分や息子たちの妻に迎え、聖なる血筋を周りの国々の民と混ぜてしまいました。しかも、この裏切りの先頭に立っていたのが、ほかでもない指導者や役人たちなのです。」
9:3 これを聞いて、わたしは着ていた服と上着を引き裂き、髪もひげもかきむしって、呆然と座り込んだ。
9:4 すると、イスラエルの神の言葉におののく人たちが、みなわたしのところに集まってきた。捕囚から帰った者たちの裏切りを知ったからだ。わたしは夕方のささげ物の時まで、呆然と座り続けた。
9:5 夕方のささげ物の時、わたしは打ちひしがれた状態から立ち上がった。服と上着を引き裂いたまま、ひざまずいて、わたしの神、主に向かって両手を広げた。
9:6 そして、こう祈った。「わたしの神よ。わたしは恥ずかしくて、あなたに顔を上げることもできません。わたしたちの罪は頭を越えるほど積み重なり、その負い目は天にまで届いているからです。
9:7 先祖の時代から今日まで、わたしたちの負い目は大きなものでした。その罪のために、わたしたちも、王たちも、祭司たちも、周りの国々の王の手に渡され、剣にかけられ、捕らえられ、奪われ、恥をさらしてきました。今日もそのままです。
9:8 それなのに今、ほんのわずかな間だけ、わたしたちの神、主は恵みをくださいました。わたしたちに生き残る者を残し、聖なる場所にしっかりとした足場を与えてくださったのです。それは、わたしたちの神がわたしたちの目を輝かせ、奴隷のような暮らしの中で少しだけ息をつかせてくださるためでした。
9:9 わたしたちは奴隷の身です。それでも、その奴隷の暮らしの中で、わたしたちの神はわたしたちを見捨てませんでした。ペルシアの王たちの前で、わたしたちに慈しみを注いでくださったのです。こうしてわたしたちは息を吹き返し、神の家を建て直し、その廃墟を復興し、ユダとエルサレムに守りの囲いを得ることができました。
9:10 わたしたちの神よ。こんなことのあとで、わたしたちは何と言えるでしょう。わたしたちはあなたの命令を捨ててしまったのです。
9:11 あなたはしもべである預言者たちを通して、こう命じられました。『あなたたちがこれから入って自分のものにしようとしている地は、周りの国々の民の汚れでけがれた地だ。彼らの忌まわしい習わしが、端から端までその地を満たし、汚してしまった。
9:12 だから、あなたたちの娘を彼らの息子に与えてはならない。彼らの娘をあなたたちの息子の妻に迎えてもならない。彼らの平和も繁栄も、いつまでも求めてはならない。そうすれば、あなたたちは強くなり、その地の良い実りを食べ、それをいつまでも子孫に受け継がせることができる。』」
9:13 わたしたちの悪い行いと大きな罪のせいで、これほどのことがすべてわたしたちに降りかかってきました。それでもあなた、わたしたちの神は、わたしたちの罪が受けて当然の罰よりもずっと軽くしてくださり、このように生き残る者を残してくださいました。
9:14 それなのに、わたしたちはまたあなたの命令を破り、こんな忌まわしいことをする民と縁組みをしてよいのでしょうか。そんなことをすれば、あなたはわたしたちに怒り、ついには一人も残らず、逃れる者もいなくなるまで滅ぼしてしまわれるのではないでしょうか。
9:15 イスラエルの神、主よ。あなたは正しい方です。今日このように、わたしたちは生き残った者として残されています。ご覧ください。わたしたちは罪を負ったまま、あなたの前に立っています。こんなありさまでは、だれもあなたの前に立つことはできません。」
10:1 エズラが神の宮の前にひれ伏し、泣きながら祈り、罪を言い表していると、イスラエルの人々が、男も女も子どもも、非常に大勢、彼のもとに集まってきた。民もまた激しく泣いていたからである。
10:2 すると、エラムの子孫の一人、エヒエルの子シェカンヤがエズラに答えて言った。「わたしたちは自分たちの神に背き、この地の民から外国人の女を妻に迎えてしまいました。でも、それでもなお、イスラエルには望みがあります。
10:3 今こそ、わたしたちの神と契約を結びましょう。あなたの助言と、わたしたちの神の命令を畏れおののく人々の指示に従って、すべての外国人の妻と、その女たちから生まれた子どもを追い出すのです。すべては律法どおりに行いましょう。
10:4 立ってください。これはあなたが担うべきことです。わたしたちもあなたと一緒にいます。勇気を出して、実行してください。」
10:5 そこでエズラは立ち上がり、祭司長たちとレビ人、そしてすべてのイスラエルに、この言葉のとおりに行うと誓わせた。彼らは誓った。
10:6 それからエズラは神の宮の前を離れ、エルヤシブの子ヨハナンの部屋に入った。そこに行っても、彼はパンも食べず、水も飲まなかった。捕囚から帰った人々の背きを嘆き悲しんでいたからである。
10:7 そして、ユダとエルサレムの全域に、捕囚から帰ったすべての人々に向けて、エルサレムに集まるようにという知らせが伝えられた。
10:8 指導者たちと長老たちの決定により、三日以内に来ない者は、その財産をすべて没収され、その者自身も捕囚から帰った人々の集まりから除かれることになった。
10:9 それで、ユダとベニヤミンのすべての人々は、三日のうちにエルサレムに集まった。それは第九の月の二十日のことだった。人々はみな、神の宮の前の広場に座った。この件のこと、そして激しい雨のために、みな震えていた。
10:10 祭司エズラは立ち上がって、彼らに言った。「あなたがたは神に背き、外国人の女性を妻にして、イスラエルの罪をさらに重くした。
10:11 だから今、あなたがたの先祖の神である主に罪を告白し、その御心を行いなさい。この地の民から、そして外国人の妻たちから離れなさい。」
10:12 すると、集まった人々はみな大声で答えて言った。「そのとおりです。あなたの言われたとおり、わたしたちは実行しなければなりません。
10:13 でも、ここには大勢の人がいますし、今は雨の季節です。外に立っていることはできません。それに、これは一日や二日で終わる仕事ではありません。わたしたちの多くが、この件で大きな罪を犯してしまったのですから。
10:14 どうか、わたしたちの指導者たちが、集まった人々全体の代表として立ってください。そして、外国人の女性を妻にした者は、それぞれの町の長老や裁判官と一緒に、決められた時に来るようにしてください。こうして、この件についてのわたしたちの神の激しい怒りが、わたしたちから離れ去るまで続けるのです。」
10:15 これに反対したのは、アサヘルの子ヨナタンとティクワの子ヤフゼヤだけだった。そしてメシュラムとレビ人シャベタイが、彼らを支持した。
10:16 捕囚から帰った人々は、そのとおりにした。祭司エズラは、父祖の家の長である人たちを、その家ごとに、みな名前を指定して選び出した。彼らは第十の月の一日に、この件を調べるために席についた。
10:17 そして第一の月の一日までに、外国人の女性を妻にしていたすべての男たちの調べを終えた。
10:18 祭司の一族の中にも、外国人の女性を妻にした者がいることがわかった。ヨツァダクの子ヨシュアとその兄弟たちの一族から、マアセヤ、エリエゼル、ヤリブ、ゲダルヤであった。
10:19 彼らは妻を離縁することを誓って手を差し出した。そして、罪を犯した者として、その罪のために群れの中から雄羊を一頭ささげた。
10:20 イメルの一族からは、ハナニとゼバデヤ。
10:21 ハリムの一族からは、マアセヤ、エリヤ、シェマヤ、エヒエル、ウジヤ。
10:22 パシュフルの一族からは、エルヨエナイ、マアセヤ、イシュマエル、ネタンエル、ヨザバデ、エルアサ。
10:23 レビ人からは、ヨザバデ、シムイ、ケラヤ、すなわちケリタ、ペタフヤ、ユダ、エリエゼル。
10:24 歌い手からは、エルヤシブ。門番からは、シャルム、テレム、ウリ。
10:25 イスラエルの人々のうち、パルオシュの一族からは、ラムヤ、イジヤ、マルキヤ、ミヤミン、エルアザル、マルキヤ、ベナヤ。
10:26 エラムの一族からは、マタンヤ、ゼカリヤ、エヒエル、アブデ、エレモテ、エリヤ。
10:27 ザトの一族からは、エルヨエナイ、エルヤシブ、マタンヤ、エレモテ、ザバデ、アジザ。
10:28 ベバイの一族からは、エホハナン、ハナンヤ、ザバイ、アテライ。
10:29 バニの一族からは、メシュラム、マルク、アダヤ、ヤシュブ、シェアル、ラモテ。
10:30 パハト・モアブの一族からは、アドナ、ケラル、ベナヤ、マアセヤ、マタンヤ、ベツァルエル、ビヌイ、マナセ。
10:31 ハリムの一族からは、エリエゼル、イシヤ、マルキヤ、シェマヤ、シメオン、
10:32 ベニヤミン、マルク、シェマルヤ。
10:33 ハシュムの一族からは、マタナイ、マタタ、ザバド、エリフェレテ、エレマイ、マナセ、シムイ。
10:34 バニの一族からは、マアダイ、アムラム、ウエル、
10:35 ベナヤ、ベデヤ、ケルフ、
10:36 ワンヤ、メレモテ、エルヤシブ、
10:37 マタンヤ、マタナイ、ヤアサイ、
10:38 バニ、ビヌイ、シムイ、
10:39 シェレムヤ、ナタン、アダヤ、
10:40 マクナデバイ、シャシャイ、シャライ、
10:41 アザルエル、シェレムヤ、シェマルヤ、
10:42 シャルム、アマルヤ、ヨセフ。
10:43 ネボの一族からは、エイエル、マティトヤ、ザバデ、ゼビナ、ヤダイ、ヨエル、ベナヤ。
10:44 この人たちはみな、外国人の女性を妻にしていた。その中には、妻との間に子どもをもうけた者もいた。
ネヘミヤ記
1:1 ハカルヤの子ネヘミヤの記録である。第二十年のキスレウの月のこと、わたしは王城スサにいた。
1:2 そこへ、わたしの兄弟の一人ハナニが、ユダから来た人たちといっしょにやって来た。わたしは、捕らわれをのがれて生き残ったユダヤ人のこと、そしてエルサレムのことをたずねた。
1:3 すると彼らはこう言った。「捕らわれをのがれて生き残った人たちは、あの州で大きな苦しみと恥の中にいます。エルサレムの城壁はくずされ、門は焼き払われたままです。」
1:4 わたしはこの言葉を聞くと、すわり込んで泣いた。そして何日も嘆き悲しみ、断食をして、天の神の前で祈り続けた。
1:5 わたしはこう祈った。「ああ、主よ、天の神。偉大で、畏れ多い神。あなたを愛し、その戒めを守る者には、契約を守り、変わらぬ慈しみを注いでくださる方。
1:6 どうか耳を傾け、目を開いて、しもべであるわたしの祈りを聞いてください。わたしは今、昼も夜も、あなたのしもべであるイスラエルの人々のために、あなたの前で祈っています。そして、わたしたちイスラエルの民があなたに対して犯した罪を告白します。わたしも、わたしの家族も、罪を犯しました。
1:7 わたしたちはあなたに対してひどく悪いことをしました。あなたがしもべモーセに命じた戒めも、掟も、定めも守りませんでした。
1:8 どうか、あなたがしもべモーセに命じて言われた言葉を思い出してください。あなたはこう言われました。『もしあなたたちがわたしに背くなら、わたしはあなたたちを国々の中に散らす。
1:9 しかし、もしあなたたちがわたしのもとに帰り、わたしの戒めを守って行うなら、たとえ天の果てに追いやられていても、わたしはそこから集め、わたしの名を置くために選んだ場所へ連れて帰る。』
1:10 この人たちは、あなたのしもべ、あなたの民です。あなたが大きな力と強い手で救い出してくださった民です。
1:11 ああ、主よ、どうか耳を傾けて、しもべであるわたしの祈りと、あなたの名を心から畏れ敬いたいと願うしもべたちの祈りを聞いてください。どうか今日、このしもべに成功をお与えください。そして、あの人の前であわれみを受けられるようにしてください。」わたしは王に酒をつぐ者だった。
2:1 アルタクセルクセス王の第二十年、ニサンの月のことだ。王の前にぶどう酒が出された。わたしはそのぶどう酒を取って、王に手渡した。それまでわたしは、王の前で暗い顔を見せたことは一度もなかった。
2:2 すると王がわたしに言った。「どうしてそんなに暗い顔をしているのだ。病気でもないのに。これは心に悲しみがあるとしか思えない。」わたしはひどく怖くなった。
2:3 そしてわたしは王に言った。「王よ、いつまでも生きられますように。わたしの父祖たちが眠る町が荒れ果て、その門が火で焼き尽くされているのです。どうして暗い顔をせずにいられるでしょうか。」
2:4 王はわたしに言った。「それで、あなたは何を願っているのか。」わたしは天の神に祈ってから、
2:5 王にこう答えた。「もし王がよろしければ、そしてこのしもべが王のお気に召しているのでしたら、どうかわたしをユダに、父祖たちが眠る町に送ってください。その町を建て直したいのです。」
2:6 王のかたわらには王妃が座っていた。王はわたしに尋ねた。「旅にはどれくらいかかるのか。いつ戻ってくるのか。」王はわたしを送り出すことをよしとしてくれた。そこでわたしは期限を伝えた。
2:7 さらにわたしは王に言った。「もし王がよろしければ、ユーフラテス川の向こう側の地方を治める長官たちへの手紙をいただけないでしょうか。わたしがユダに着くまで、彼らが通らせてくれるように。
2:8 また、王の森林を管理するアサフあての手紙もいただけないでしょうか。神殿に付属する城郭の門や、町の城壁、それにわたしが住むことになる家のために、材木を分けてもらえるように。」わたしの神の恵みの手がわたしの上にあったので、王はこれらを聞き入れてくれた。
2:9 こうしてわたしは、ユーフラテス川の向こう側の地方の長官たちのところに着き、王の手紙を渡した。王はわたしといっしょに、軍の指揮官たちと騎兵を送ってくれていた。
2:10 ホロン人サンバラテと、アンモン人の家臣トビヤは、このことを聞いて、ひどく腹を立てた。イスラエルの人々のために力を尽くそうとする者がやって来たからだ。
2:11 わたしはエルサレムに着き、そこで三日間過ごした。
2:12 わたしは夜のうちに起き出した。ごくわずかの者だけを連れて。わたしの神がエルサレムのためにするようにとわたしの心に授けてくれたことは、まだだれにも話していなかった。連れていた動物は、わたしが乗っていた一頭だけだった。
2:13 わたしは夜のうちに谷の門から出て、竜の井戸の方へ、そして糞の門へと向かった。歩きながらエルサレムの城壁を見て回ると、城壁はあちこち崩され、門は火で焼き払われていた。
2:14 それから泉の門と王の池の方へ進んだ。でも、乗っていた動物が通れる場所はなかった。
2:15 それでわたしは夜のうちに谷川沿いに登って行き、城壁を見て回った。そして引き返し、谷の門から入って戻った。
2:16 役人たちは、わたしがどこへ行き、何をしているのか知らなかった。ユダヤ人にも、祭司にも、有力者にも、役人にも、その他の工事に携わる人たちにも、この時までまだ何も話していなかったからだ。
2:17 そこでわたしは彼らに言った。「わたしたちがどれほど苦しい状況にあるか、あなたがたも見ているとおりだ。エルサレムは荒れ果て、門は焼き払われている。さあ、エルサレムの城壁を建て直そう。もう恥をさらしたままでいるのはやめよう。」
2:18 そして、わたしの神の恵みの手がわたしを支えていてくれたこと、また王がわたしに語ってくれた言葉を話した。すると彼らは言った。「さあ、立ち上がって建てよう。」こうして彼らは、この良い働きのために力を奮い立たせた。
2:19 ところが、ホロン人サンバラテ、アンモン人の家臣トビヤ、アラブ人ゲシェムはこれを聞くと、わたしたちをあざ笑い、見下してこう言った。「あなたがたは何をしているのか。王に反逆するつもりか。」
2:20 わたしは彼らにこう答えた。「天の神が、わたしたちを成功させてくださる。そのしもべであるわたしたちは、立ち上がって建てる。だが、あなたがたにはエルサレムに何の分け前も、権利も、記録もない。」
3:1 大祭司エルヤシブは、仲間の祭司たちと立ち上がって、羊の門を建て直した。彼らはその門を神にささげ、扉を取りつけた。そして百の塔からハナンエルの塔まで、城壁を建てて神にささげた。
3:2 その隣ではエリコの人たちが工事をした。さらにその隣ではイムリの子ザクルが工事をした。
3:3 魚の門は、ハセナアの一族が建て直した。彼らは梁を渡し、扉を取りつけ、かんぬきと横木もつけた。
3:4 その隣ではハコツの孫でウリヤの子メレモトが修理した。その隣ではメシェザブエルの孫でベレクヤの子メシュラムが修理した。さらにその隣ではバアナの子ツァドクが修理した。
3:5 その隣ではテコアの人たちが修理した。ただし、彼らの有力者たちは、自分たちの主人の仕事に手を貸そうとしなかった。
3:6 古い門は、パセアの子ヨヤダとベソデヤの子メシュラムが修理した。彼らは梁を渡し、扉を取りつけ、かんぬきと横木もつけた。
3:7 その隣では、ギブオン出身のメラテヤと、メロノテ出身のヤドンが修理した。彼らはギブオンとミツパの人たちで、ユーフラテス川の西側を治める総督の管轄にあたる場所を担当した。
3:8 その隣では、金細工職人であるハルハヤの子ウジエルが修理した。その隣では、香料職人の一人ハナンヤが修理した。こうして彼らは、幅の広い城壁のところまでエルサレムを建て直した。
3:9 その隣では、エルサレム地区の半分を治めるフルの子レファヤが修理した。
3:10 その隣では、ハルマフの子エダヤが、自分の家の前の部分を修理した。その隣では、ハシャブネヤの子ハトシュが修理した。
3:11 ハリムの子マルキヤと、パハト・モアブの子ハシュブは、もう一つの区画と、かまどの塔を修理した。
3:12 その隣では、エルサレム地区の半分を治めるハロヘシュの子シャルムが、娘たちとともに修理した。
3:13 谷の門は、ハヌンとザノアの住民が修理した。彼らはこれを建て直し、扉と錠前とかんぬきを取り付けた。そして城壁を、そこから糞の門まで千キュビト分修理した。
3:14 糞の門は、ベト・ハケレム地区を治めるレカブの子マルキヤが修理した。彼はこれを建て直し、扉と錠前とかんぬきを取り付けた。
3:15 泉の門は、ミツパ地区を治めるコル・ホゼの子シャルンが修理した。彼はこれを建て直し、屋根をかけ、扉と錠前とかんぬきを取り付けた。さらに、王の園のそばにあるシェラの池の城壁を、ダビデの町から下る階段のところまで修理した。
3:16 その隣では、ベト・ツル地区の半分を治めるアズブクの子ネヘミヤが、ダビデの墓の向かいから、造られた池と勇士たちの家のあたりまで修理した。
3:17 その隣では、レビ人たちが修理した。バニの子レフムである。その隣では、ケイラ地区の半分を治めるハシャブヤが、自分の地区の分を修理した。
3:18 その隣では、彼らの同胞が修理した。ケイラ地区のもう半分を治めるヘナダドの子バワイである。
3:19 その隣では、ミツパを治めるヨシュアの子エゼルが、武器庫へ上る坂の向かい、城壁の曲がり角のところで、もう一つの区画を修理した。
3:20 その隣では、ザバイの子バルクが、熱心に、城壁の曲がり角から大祭司エルヤシブの家の入り口まで、もう一つの区画を修理した。
3:21 その隣では、ハコツの子ウリヤの子メレモトが、エルヤシブの家の入り口からその家の端まで、もう一つの区画を修理した。
3:22 その隣では、周辺地域に住む祭司たちが修理した。
3:23 その隣では、ベニヤミンとハシュブが、自分たちの家の前を修理した。その隣では、アナニヤの子マアセヤの子アザルヤが、自分の家のそばを修理した。
3:24 その隣では、ヘナダドの子ビヌイが、アザルヤの家から城壁の曲がり角、さらに角のところまで、もう一つの区画を修理した。
3:25 ウザイの子パラルは、城壁の曲がり角の向かい、そして王の宮殿の上の方から突き出した塔の向かいを修理した。この塔は牢の中庭のそばにあった。その次は、パルオシュの子ペダヤが修理した。
3:26 神殿に仕える人々はオフェルに住んでいて、東側にある水の門の向かい、そして突き出した塔のところまでを受け持った。
3:27 その次は、テコアの人々が、突き出した大きな塔の向かいからオフェルの城壁まで、もう一つの区画を修理した。
3:28 馬の門の上のところは、祭司たちが、それぞれ自分の家の前を修理した。
3:29 その次は、イメルの子ザドクが、自分の家の前を修理した。その次は、東の門の番人であるシェカニヤの子シェマヤが修理した。
3:30 その次は、シェレムヤの子ハナニヤと、ツァラフの六番目の子ハヌンが、もう一つの区画を修理した。その次は、ベレクヤの子メシュラムが、自分の部屋の前を修理した。
3:31 その次は、金細工師の一人マルキヤが、神殿に仕える人々と商人たちの家まで、点検の門の向かいを通って、角の二階の部屋のところまで修理した。
3:32 そして、角の二階の部屋と羊の門の間は、金細工師たちと商人たちが修理した。
4:1 わたしたちが城壁を建て直していると聞いて、サンバラテはひどく腹を立て、激しく怒って、ユダヤ人たちをあざ笑った。
4:2 彼は仲間たちとサマリアの軍勢の前で、こう言った。「あの弱々しいユダヤ人たちは、いったい何をしているのか。自分たちだけで城壁を建て直すつもりか。いけにえをささげるつもりか。一日で終わらせるつもりか。焼けてがれきの山になった石を、生き返らせるつもりなのか。」
4:3 そばにいたアンモン人トビヤも言った。「あんなもの、建てたところで、キツネが一匹上っただけで、その石の壁は崩れてしまうさ。」
4:4 わたしたちの神よ、聞いてください。わたしたちは見下されています。彼らの侮辱を、彼ら自身の頭に返してください。彼らを、捕らわれの地で略奪される者としてください。
4:5 彼らの悪を覆い隠さないでください。彼らの罪を、あなたの前から消し去らないでください。彼らは、城壁を建てる者たちの前で、あなたを怒らせたのですから。
4:6 こうして、わたしたちは城壁を建て直した。城壁は全体が、高さの半分までつながった。民が心を込めて働いたからだ。
4:7 サンバラテとトビヤ、それにアラブ人、アンモン人、アシュドド人は、エルサレムの城壁の修復が進み、崩れた箇所がふさがれ始めたと聞いた。すると、彼らはひどく腹を立てた。
4:8 そして彼らは皆で示し合わせ、エルサレムに攻めてきて戦い、町を混乱させようとした。
4:9 でも、わたしたちは神に祈った。そして彼らに備えて、昼も夜も見張りを置いた。
4:10 ユダの人々は言った。「荷を運ぶ者たちの力は尽きてしまった。がれきはあまりにも多い。わたしたちだけでは、とても城壁を建てられない。」
4:11 一方、敵はこう言っていた。「あいつらが気づかず、見てもいないうちに、その真ん中に踏み込んで殺してやろう。そうすれば工事は止まる。」
4:12 すると、敵のそばに住んでいたユダヤ人たちがやって来て、何度もくり返しわたしたちに言った。「あなたたちは、どこにいても、四方八方から攻められることになる。」
4:13 そこでわたしは、城壁の後ろの低い所、むき出しになった場所に人を配置した。そして民を一族ごとに、剣や槍や弓を持たせて立たせた。
4:14 わたしは見回してから立ち上がり、有力者や役人たち、そのほかの民に言った。「彼らを恐れてはいけない。偉大で、恐るべき主を思い起こしなさい。そして、あなたたちの兄弟のため、息子や娘のため、妻のため、家のために戦いなさい。」
4:15 敵は、自分たちのたくらみがわたしたちに知られ、神がその計画をくじいたと聞いた。それで、わたしたちはみな城壁に戻り、それぞれ自分の仕事に取りかかった。
4:16 その日から、わたしの部下の半分は工事にあたり、もう半分は槍と盾と弓を持ち、よろいを身につけた。そして指揮官たちは、ユダの人々みんなの後ろに控えていた。
4:17 城壁を建てる者も、荷を運ぶ者も、片手で仕事をし、もう一方の手で武器を握っていた。
4:18 築き上げる者は、みな腰に剣を帯びて工事をした。ラッパを吹き鳴らす者は、わたしのそばにいた。
4:19 わたしは有力者たちや役人たち、そのほかの民に言った。「工事は大きく、広い範囲に広がっている。だからわたしたちは城壁の上であちこちに散らばり、たがいに遠く離れている。
4:20 ラッパの音が聞こえたら、その音がする場所にいるわたしたちのところへ集まってほしい。わたしたちの神が、わたしたちのために戦ってくださる。」
4:21 こうしてわたしたちは工事を進めた。その間、半数の者は、夜が明けてから星が出るまで、槍を手に持っていた。
4:22 そのときわたしは、人々にもこう言った。「みんな、自分の使用人といっしょにエルサレムの中に泊まってほしい。そうすれば、夜はわたしたちの見張りとなり、昼は工事を進めることができる。」
4:23 こうして、わたしも、わたしの兄弟たちも、部下たちも、わたしを守る護衛の者たちも、だれ一人服を脱がなかった。みんな、水をくみに行くときも武器を手放さなかった。
5:1 そのころ、民とその妻たちが、同胞のユダヤ人に対して激しく声を上げた。
5:2 ある者たちはこう言った。「わたしたちには息子も娘もいて、大勢だ。食べて生きていくために、穀物を手に入れなければならない。」
5:3 また、こう言う者たちもいた。「わたしたちは、飢饉のあいだ穀物を手に入れるために、畑もぶどう畑も家も抵当に入れている。」
5:4 さらに、こう言う者たちもいた。「わたしたちは、王に納める税のために、畑やぶどう畑を担保にしてお金を借りた。
5:5 わたしたちの体も同胞の体と同じだし、子どもたちも彼らの子どもと変わらない。それなのに、わたしたちは息子や娘を奴隷に売らなければならない。娘の中には、もう奴隷にされた者もいる。でも、どうすることもできない。畑もぶどう畑も、すでに他人のものになっているからだ。」
5:6 わたしは、彼らの叫びとこの訴えを聞いて、激しく怒った。
5:7 わたしは心の中でよく考えたうえで、有力者たちや役人たちを問いただした。そして彼らに言った。「あなたたちは、それぞれ自分の同胞から利息を取り立てているじゃないか。」こうして、彼らに対して大きな集会を開いた。
5:8 そして彼らに言った。「わたしたちは、異邦人に売られた同胞のユダヤ人を、できるかぎり買い戻してきた。それなのに、あなたたちは自分の同胞を売り、その人たちをまたわたしたちに売りつけるのか。」彼らは黙り込み、返す言葉がなかった。
5:9 わたしはさらに言った。「あなたたちのしていることは良くない。わたしたちの敵である異邦人にあざけられないためにも、わたしたちの神を畏れて生きるべきではないか。
5:10 わたしも、わたしの兄弟や部下たちも、彼らにお金や穀物を貸している。もう、この利息の取り立てはやめようではないか。
5:11 今日にでも、彼らの畑、ぶどう畑、オリーブ畑、家を返してやりなさい。そして、あなたたちが取り立てている、お金、穀物、新しいぶどう酒、オリーブ油の百分の一も返しなさい。」
5:12 彼らは答えた。「返します。もう彼らから何も求めません。あなたの言うとおりにします。」そこでわたしは祭司たちを呼び、この約束どおりに行うと彼らに誓わせた。
5:13 わたしは着物の裾を振り払って、こう言った。「この約束を守らない者は、みな神がこのように、その家からも財産からも振り落としてくださるように。その人はこうして振り落とされ、すべてを失うのだ。」すると集まった人々はみな「アーメン」と言い、主をほめたたえた。そして人々はこの約束どおりに行った。
5:14 それだけではない。わたしがユダの地の総督に任じられた日から、つまりアルタクセルクセス王の第二十年から第三十二年までの十二年間、わたしも兄弟たちも、総督に与えられる食事を受け取らなかった。
5:15 わたしより前の総督たちは、民に重い負担をかけていた。パンとぶどう酒のほかに、銀四十シェケルを取り立てたのだ。その部下たちまで、民の上で威張っていた。しかしわたしは、神を恐れていたので、そうはしなかった。
5:16 それどころか、わたしはこの城壁の工事に力を注いだ。わたしたちは畑を買い集めることもしなかった。そして、わたしの部下たちもみなそこに集まって、工事にあたった。
5:17 わたしの食卓には、ユダの人々と役人たち百五十人がついていた。そのほかに、周りの国々からわたしたちのもとに来た人たちもいた。
5:18 一日に用意されたのは、牛一頭、えり抜きの羊六頭、それに鳥だった。十日ごとには、あらゆる種類のぶどう酒がたくさん用意された。それでもわたしは、総督に与えられる食事を求めなかった。この民にのしかかる労働が、とても重かったからだ。
5:19 神よ、わたしがこの民のためにしたすべてのことを、どうか良いこととして心に留めてください。
6:1 さて、サンバラテとトビヤ、アラブ人ゲシェム、そのほかのわたしたちの敵は、わたしが城壁を建て直し、もう崩れた所が残っていない、と聞いた。ただ、その時にはまだ、門に扉を取りつけてはいなかった。
6:2 そこでサンバラテとゲシェムは、わたしに人を送ってこう言った。「さあ、オノの平野にある村で一緒に会おう。」しかし彼らは、わたしに危害を加えようとたくらんでいた。
6:3 わたしは彼らに使いを送って、こう答えた。「わたしは大きな仕事をしている。だから、そちらへ下って行くことはできない。仕事を放り出して、あなたたちのところへ下って行き、工事を止めるわけにはいかないのだ。」
6:4 彼らは同じことで四度もわたしに使いを送ってきたが、わたしは同じように答えた。
6:5 すると五度目に、サンバラテは同じようにして、部下をわたしのもとに送ってきた。その手には、封をしていない手紙があった。
6:6 そこにはこう書かれていた。「あなたとユダの人たちが反乱を起こそうとしている、と国々の間でうわさになっている。ゲシェムもそう言っている。だからあなたは城壁を築いているのだ。しかもあなたは、そのうわさのとおり、彼らの王になろうとしている。」
6:7 しかもあなたは、エルサレムで自分についてこう言い広める預言者たちまで立てている。『ユダに王がいる』とね。このことは、いずれ王の耳にも入るだろう。だから来なさい。いっしょに相談しようではないか。」
6:8 そこでわたしは、彼にこう返事を送った。「あなたが言っているようなことは、何一つ起きていない。あなたが自分の頭の中でつくり上げているだけだ。」
6:9 彼らはみな、わたしたちを怖がらせようとしていた。「工事から手を引かせれば、城壁は完成しない」と考えていたのだ。だから神よ、どうかわたしの手を強めてください。
6:10 その後わたしは、デラヤの子で、メヘタブエルの孫にあたるシェマヤの家に行った。彼は家に閉じこもっていた。彼はこう言った。「神の家、つまり神殿の中で会おう。そして神殿の扉を閉ざそう。あいつらがあなたを殺しに来るからだ。夜、あなたを殺しに来るのだ。」
6:11 でもわたしは言った。「わたしのような者が逃げていいものか。わたしのような立場の者が、いのち惜しさに神殿へ逃げ込んだりするだろうか。わたしは入らない。」
6:12 わたしには分かった。神が彼を送ったのではない。彼がわたしに向かってこの預言を語ったのは、トビヤとサンバラテに雇われていたからだ。
6:13 彼が雇われたのは、わたしを怖がらせ、そのとおりに動かせて罪を犯させるためだった。そうすればわたしの悪いうわさを流し、わたしをはずかしめることができるからだ。
6:14 神よ、トビヤとサンバラテのこうした仕業を、どうか忘れないでください。また、女預言者ノアデヤや、わたしを怖がらせようとした他の預言者たちのことも覚えていてください。
6:15 こうして城壁は、エルルの月の二十五日に完成した。かかった日数は五十二日だった。
6:16 これを敵がみな聞き、まわりの国々がみなこれを見て、すっかり自信を失った。この工事がわたしたちの神によって成し遂げられたことを、彼らは思い知ったのだ。
6:17 そのころ、ユダの有力者たちはトビヤに何度も手紙を送っていた。トビヤからの手紙も、彼らのもとに届いていた。
6:18 ユダには、トビヤと誓いを立てて結ばれている者が多かったからだ。彼はアラの子シェカヌヤの婿であり、彼の息子ヨハナンも、ベレクヤの子メシュラムの娘をめとっていた。
6:19 彼らはまた、トビヤの良い行いをわたしの前で言いふらし、わたしの言葉を彼に伝えていた。そしてトビヤは、わたしを怖がらせようと手紙を送ってきた。
7:1 城壁が築き終わり、扉を取り付けると、門番と歌い手とレビ人が任命された。
7:2 わたしは兄弟のハナニと、城の司令官ハナヌヤに、エルサレムを任せた。ハナヌヤは信頼できる人で、多くの人以上に神を畏れていたからだ。
7:3 わたしは二人に言った。「日が高くのぼるまで、エルサレムの門を開けてはならない。門番がまだ立っているうちに、扉を閉めてかんぬきをかけなさい。そして、エルサレムに住む人々を見張りに立て、それぞれを自分の持ち場に、また自分の家の前に置きなさい。」
7:4 町は広くて大きかった。でも、その中に住む人は少なく、家もまだ建てられていなかった。
7:5 わたしの神は、身分の高い人々や役人、民を集めて家系を登録させようという思いを、わたしの心に授けた。そこでわたしは、最初に帰ってきた人々の系図を見つけた。そこには、こう書かれていた。
7:6 これは、バビロンの王ネブカドネツァルによって捕らえ移された、あの捕囚から帰ってきたこの州の人々である。彼らはエルサレムとユダに、それぞれ自分の町へ戻った。
7:7 彼らはゼルバベル、イエシュア、ネヘムヤ、アザルヤ、ラアムヤ、ナハマニ、モルデカイ、ビルシャン、ミスペレテ、ビグワイ、ネフム、バアナと共に帰ってきた。イスラエルの民の男たちの数は、次のとおりである。
7:8 パルオシュの子孫、二千百七十二人。
7:9 シェファテヤの子孫、三百七十二人。
7:10 アラの子孫、六百五十二人。
7:11 パハト・モアブの子孫、すなわちイエシュアとヨアブの子孫、二千八百十八人。
7:12 エラムの子孫、千二百五十四人。
7:13 ザトの子孫、八百四十五人。
7:14 ザッカイの子孫、七百六十人。
7:15 ビヌイの子孫、六百四十八人。
7:16 ベバイの子孫、六百二十八人。
7:17 アズガドの子孫、二千三百二十二人。
7:18 アドニカムの子孫、六百六十七人。
7:19 ビグワイの子孫、二千六十七人。
7:20 アディンの子孫、六百五十五人。
7:21 アテルの子孫、すなわちヒゼキヤの子孫、九十八人。
7:22 ハシュムの子孫、三百二十八人。
7:23 ベツァイの子孫、三百二十四人。
7:24 ハリフの子孫、百十二人。
7:25 ギブオンの子孫、九十五人。
7:26 ベツレヘムとネトファの人々、百八十八人。
7:27 アナトテの人々、百二十八人。
7:28 ベト・アズマベテの人々、四十二人。
7:29 キルヤト・エアリムとケフィラとベエロトの人々、七百四十三人。
7:30 ラマとゲバの人々、六百二十一人。
7:31 ミクマスの人々、百二十二人。
7:32 ベテルとアイの人々、百二十三人。
7:33 もう一つのネボの人々、五十二人。
7:34 もう一つのエラムの子孫、千二百五十四人。
7:35 ハリムの子孫、三百二十人。
7:36 エリコの子孫、三百四十五人。
7:37 ロド、ハディド、オノの子孫、七百二十一人。
7:38 セナアの子孫、三千九百三十人。
7:39 祭司。イエシュアの家系にあたるエダヤの子孫、九百七十三人。
7:40 イメルの子孫、千五十二人。
7:41 パシュフルの子孫、千二百四十七人。
7:42 ハリムの子孫、千十七人。
7:43 レビ人。イエシュアとカドミエルの一族、すなわちホデワの子孫、七十四人。
7:44 歌い手。アサフの子孫、百四十八人。
7:45 門番。シャルム、アテル、タルモン、アクブ、ハティタ、ショバイの子孫、百三十八人。
7:46 神殿で働く者たち。ツィハの子孫、ハスファの子孫、タバオトの子孫、
7:47 ケロスの子孫、シアの子孫、パドンの子孫、
7:48 レバナの子孫、ハガバの子孫、シャルマイの子孫、
7:49 ハナンの子孫、ギデルの子孫、ガハルの子孫、
7:50 レアヤの子孫、レツィンの子孫、ネコダの子孫、
7:51 ガザムの子孫、ウザの子孫、パセアの子孫、
7:52 ベサイの子孫、メウニムの子孫、ネフィシェシムの子孫、
7:53 バクブクの子孫、ハクファの子孫、ハルフルの子孫、
7:54 バツリテの子孫、メヒダの子孫、ハルシャの子孫、
7:55 バルコスの子孫、シセラの子孫、テマの子孫、
7:56 ネツィアの子孫、ハティファの子孫。
7:57 ソロモンの家臣たちの子孫。ソタイの子孫、ソフェレテの子孫、ペリダの子孫、
7:58 ヤアラの子孫、ダルコンの子孫、ギデルの子孫、
7:59 シェファテヤの子孫、ハティルの子孫、ポケレト・ハツェバイムの子孫、アモンの子孫。
7:60 神殿で働く者たちと、ソロモンの家臣たちの子孫は、合わせて三百九十二人だった。
7:61 次の人たちは、テル・メラ、テル・ハルシャ、ケルブ、アダン、イメルから上って来た。でも、自分の家系や血筋がイスラエルの出身かどうかを、はっきり示すことができなかった。
7:62 デラヤの子孫、トビヤの子孫、ネコダの子孫で、合わせて六百四十二人だった。
7:63 祭司の中では、ホバヤの子孫、ハコツの子孫、バルジライの子孫がいた。このバルジライは、ギレアド人バルジライの娘の一人を妻にして、その家の名で呼ばれるようになった人だ。
7:64 この人たちは、自分の名が家系の記録に載っていないか探したが、見つからなかった。それで、汚れているとされ、祭司の務めから外された。
7:65 総督は彼らにこう言った。ウリムとトンミムで神の答えを聞ける祭司が立つまで、最も聖なる食べ物を口にしてはならない、と。
7:66 集まった人々は全部で、四万二千三百六十人だった。
7:67 これとは別に、男女の使用人が七千三百三十七人いた。また、男女の歌い手が二百四十五人いた。
7:68 馬は七百三十六頭、らば二百四十五頭、
7:69 らくだは四百三十五頭、ろばは六千七百二十頭だった。
7:70 一族の長たちの中には、工事のために献げ物をした人もいた。総督は宝物庫に、金一千ダリク、鉢五十個、祭司の衣五百三十着を納めた。
7:71 一族の長たちの中には、工事のための宝物庫に、金二万ダリク、銀二千二百ミナを納めた者もいた。
7:72 残りの民が納めたのは、金二万ダリク、銀二千ミナ、祭司の衣六十七着だった。
7:73 祭司、レビ人、門番、歌い手、民の一部の人たち、神殿で働くしもべたち、そしてすべてのイスラエルの人々は、それぞれの町に住んだ。こうして七月になったとき、イスラエルの人々はそれぞれの町で暮らしていた。
8:1 民はみな、一人の人のように集まって、「水の門」の前の広場にやって来た。そして学者エズラに、主がイスラエルに命じた、モーセの律法の書を持ってくるように頼んだ。
8:2 第七の月の一日、祭司エズラは律法を、集まった人たちの前に持ってきた。男も女も、聞いて理解できる人はみなそこにいた。
8:3 エズラは「水の門」の前の広場で、夜明けから昼まで、その書を読んで聞かせた。男も女も、理解できる人はみなその前にいた。民はみな、律法の書に耳を傾けていた。
8:4 学者エズラは、このために作られた木の壇の上に立った。その右側にはマティトヤ、シェマ、アナヤ、ウリヤ、ヒルキヤ、マアセヤが立ち、左側にはペダヤ、ミシャエル、マルキヤ、ハシュム、ハシュバダナ、ゼカリヤ、メシュラムが立った。
8:5 エズラは民全員が見ている前でその書を開いた。彼は民全員より高いところにいたからだ。彼が書を開くと、民はみな立ち上がった。
8:6 エズラが偉大な神、主をたたえると、民はみな手を上げて「アーメン、アーメン」と答えた。そして地にひれ伏し、顔を地につけて主を礼拝した。
8:7 また、イエシュア、バニ、シェレブヤ、ヤミン、アクブ、シャベタイ、ホディヤ、マアセヤ、ケリタ、アザルヤ、ヨザバド、ハナン、ペラヤらレビ人たちが、その場に立っている民に律法を説明して聞かせた。
8:8 彼らは神の律法の書を読み、はっきりと意味を解き明かした。こうして民は読まれた言葉を理解した。
8:9 総督ネヘミヤと、祭司で学者のエズラ、そして民に教えていたレビ人たちは、民全員にこう言った。「今日は、あなたたちの神、主にささげられた聖なる日だ。悲しんではいけない。泣いてはいけない。」民はみな、律法の言葉を聞いて泣いていたからだ。
8:10 さらにエズラは彼らに言った。「さあ、行きなさい。おいしいものを食べ、甘い飲み物を飲みなさい。何も用意できない人には、その分を分けてあげなさい。今日はわたしたちの主にささげられた聖なる日だから。悲しんではいけない。主を喜ぶことこそ、あなたたちの力なのだから。」
8:11 レビ人たちも民全員を静めて言った。「静かにしなさい。今日は聖なる日だ。悲しんではいけない。」
8:12 そこで民はみな、行って食べたり飲んだりし、その分を分け合い、大いに喜び祝った。自分たちに教えられた言葉を理解したからだ。
8:13 二日目には、すべての民の氏族の長たち、祭司たち、レビ人たちが、学者エズラのもとに集まった。律法の言葉をもっとよく理解するためだった。
8:14 そのとき彼らは、律法にこう書かれているのを見つけた。主がモーセを通して命じたことで、イスラエルの人々は七月の祭りのあいだ、仮小屋に住まなければならない、というものだった。
8:15 そしてすべての町とエルサレムで、こう知らせ、触れ回るようにと書かれていた。「山に出て行って、オリーブの枝、野生のオリーブの枝、ミルトスの枝、なつめやしの枝、葉の茂った木の枝を取ってきなさい。そして、書かれているとおりに仮小屋を作りなさい。」
8:16 そこで民は出て行って枝を取ってきて、それぞれ自分の家の屋根の上や庭に、また神の宮の庭や、水の門の広場、エフライムの門の広場に、仮小屋を作った。
8:17 捕らわれの地から帰ってきた人たちはみな仮小屋を作り、その中に住んだ。ヌンの子ヨシュアの時代から、その日まで、イスラエルの人々はこんなことをしていなかった。だから、とても大きな喜びにあふれた。
8:18 エズラは、最初の日から最後の日まで、毎日、神の律法の書を読んだ。人々は七日間その祭りを祝い、八日目には、定めのとおりに集会を開いた。
9:1 この月の二十四日、イスラエルの人々は集まった。断食し、粗布をまとい、頭に土をかぶっていた。
9:2 イスラエルの血を引く者たちは、外国人すべてから離れて立ち、自分たちの罪と、先祖たちの過ちを告白した。
9:3 彼らはその場に立って、一日の四分の一のあいだ、彼らの神、主の律法の書を読んだ。そしてさらに四分の一のあいだ、罪を告白し、彼らの神、主を礼拝した。
9:4 レビ人の階段の上には、ヨシュア、バニ、カデミエル、シェバンヤ、ブニ、シェレブヤ、バニ、ケナニが立ち、大きな声で、彼らの神、主に叫び求めた。
9:5 そしてレビ人たち、つまりヨシュア、カデミエル、バニ、ハシャブネヤ、シェレブヤ、ホディヤ、シェバンヤ、ペタフヤが言った。「立ち上がって、あなたたちの神、主をたたえなさい。永遠から永遠まで。あなたの栄光に満ちた名がたたえられますように。その名は、あらゆる祝福と賛美をはるかに超えて高くあげられています。」
9:6 あなただけが主です。あなたは天を、いちばん高い天を、そしてそこにあるすべてのものを造りました。地と、その上にあるすべてのもの、海と、その中にあるすべてのものも造りました。あなたは、それらすべてに命を与えています。天のすべてのものが、あなたを礼拝しています。
9:7 あなたこそが主、その神です。あなたはアブラムを選び、カルデアのウルから連れ出し、その名をアブラハムとつけました。
9:8 あなたは、彼の心があなたの前で真実であることを認め、彼と契約を結びました。それは、カナン人、ヒッタイト人、アモリ人、ペリジ人、エブス人、ギルガシ人の土地を、彼の子孫に与えるという契約でした。そしてあなたは、その約束を果たしました。あなたは正しい方だからです。
9:9 あなたは、エジプトでのわたしたちの先祖の苦しみを見て、葦の海のほとりで、彼らの叫びを聞きました。
9:10 そして、ファラオと、そのすべての家来、その国のすべての民に、しるしと不思議なわざを行いました。彼らがわたしたちの先祖を高慢にあつかったのを、あなたが知っていたからです。こうしてあなたは、今日まで残る名を、自分のものとしました。
9:11 あなたは、彼らの前で海を二つに分け、彼らは海の真ん中を、かわいた地の上を通って行きました。追いかけて来た者たちを、あなたは激しい水の中へ、石のように深みへ投げ込みました。
9:12 あなたは、昼は雲の柱で彼らを導き、夜は火の柱で、彼らが進む道を照らしました。
9:13 あなたはシナイ山に下り、天から彼らと語りました。そして、正しい定めと、まことの教え、良いおきてと戒めを、彼らに与えました。
9:14 また、あなたの聖なる安息日を彼らに知らせ、あなたのしもべモーセを通して、戒めとおきてと教えを命じました。
9:15 彼らが飢えたときには、天からパンを与え、渇いたときには、岩から水を出してやりました。そして、彼らに与えると誓った土地に入り、それを自分のものとするように、と告げました。
9:16 けれども、彼らとわたしたちの先祖は高慢になり、強情になって、あなたの戒めに聞き従いませんでした。
9:17 彼らは聞くことを拒み、あなたが彼らのために行った数々の奇跡を思い出しませんでした。強情になり、自分たちのかしらを立てて、もとの奴隷の身にもどろうと反抗しました。でも、あなたは赦しの神、恵み深く、あわれみに満ち、怒るのに遅く、慈しみにあふれた方です。だから、あなたは彼らを見捨てませんでした。
9:18 彼らは、鋳物の子牛を造り、『これがあなたをエジプトから連れ出した神だ』と言い、あなたをひどく侮るようなことまでしたのに、あなたは彼らを見捨てなかったのです。
9:19 それでも、あなたはあふれるあわれみのゆえに、荒野で彼らを見捨てませんでした。昼は雲の柱が彼らから離れず、進むべき道を導きました。夜は火の柱が離れず、彼らを照らして、歩む道を示しました。
9:20 あなたは良い霊を与えて、彼らを教えさとしました。あなたのマナを彼らの口から絶やすことなく、渇いた彼らに水を与えました。
9:21 四十年ものあいだ、あなたは荒野で彼らを養い、彼らは何も足りないものがありませんでした。着る物はすり切れず、足がはれることもありませんでした。
9:22 あなたは彼らに国々と民々を与え、それを分け与えて割り当てました。こうして彼らはシホンの地、ヘシュボンの王の地、そしてバシャンの王オグの地を自分のものとしました。
9:23 あなたは彼らの子孫を空の星のように増やし、先祖に『入って自分のものとせよ』と約束したあの地へ、彼らを連れて入りました。
9:24 その子孫は入って行き、その地を自分のものとしました。あなたは彼らの前で、その地に住むカナン人を従わせ、彼らの手に渡しました。王たちも、その地の民も、彼らの思うままにできるようにしたのです。
9:25 彼らは城壁のある町々と肥えた土地を攻め取り、あらゆる良い物で満ちた家々、掘ってある井戸、ぶどう畑、オリーブ畑、たくさんの果樹を手に入れました。彼らは食べて満ち足り、豊かに肥え、あなたの大いなる恵みを心ゆくまで楽しみました。
9:26 それなのに、彼らはあなたに逆らい、反抗しました。あなたの律法を背後に投げ捨て、彼らをあなたのもとへ立ち返らせようと戒めた預言者たちを殺し、あなたをひどく侮ることをしました。
9:27 そこであなたは彼らを敵の手に渡し、敵は彼らを苦しめました。それでも、苦しみのときに彼らがあなたに叫ぶと、あなたは天からそれを聞き、あふれるあわれみのゆえに、救う者たちを彼らに与えました。その人たちは、敵の手から彼らを救い出しました。
9:28 ところが、彼らは安らぎを得ると、また、あなたの前で悪を行いました。それであなたは彼らを敵の手に見捨て、敵は彼らを支配しました。それでも彼らが立ち返ってあなたに叫ぶと、あなたは天からそれを聞き、あわれみのゆえに、幾度も彼らを助け出しました。
9:29 あなたは彼らを戒めて、あなたの律法へ立ち返らせようとしました。しかし彼らは高慢になり、あなたの命令に聞き従わず、あなたのおきてに背いて罪を犯しました。それを守れば人は生きられるおきてなのに、彼らは肩を背けてこばみ、うなじをこわばらせて、聞こうとしませんでした。
9:30 それでもあなたは、長い年月のあいだ彼らに忍耐しました。あなたの霊により、預言者たちを通して彼らを戒めましたが、彼らは耳を傾けませんでした。そこであなたは彼らを、周りの国々の民の手に渡したのです。
9:31 それでも、あなたは豊かなあわれみのゆえに、彼らを滅ぼし尽くすことなく、見捨てもしませんでした。あなたは恵み深く、あわれみに満ちた神だからです。
9:32 今、わたしたちの神よ。契約と慈しみを守られる、偉大で力強く、恐るべき神よ。アッシリアの王たちの時代から今日まで、わたしたちを、わたしたちの王や指導者たち、祭司たち、預言者たち、先祖たち、そしてあなたの民すべてを襲ってきたこのすべての苦しみを、どうか小さなものと見なさないでください。
9:33 わたしたちに起こったすべてのことについて、あなたは正しいのです。あなたは真実をもって行われたのに、わたしたちは悪を行いました。
9:34 わたしたちの王や指導者たち、祭司たち、先祖たちは、あなたの律法を守らず、あなたの命令にも、あなたが彼らに示した戒めにも、耳を傾けませんでした。
9:35 彼らは自分たちの国にいながら、あなたが与えてくださった豊かな恵みの中にいながら、あなたが彼らの前に広げてくださった広く豊かな地にいながら、あなたに仕えず、その悪い行いから立ち返りませんでした。
9:36 見てください。わたしたちは今日、奴隷です。あなたが先祖たちに与え、その実りと恵みを食べさせようとしてくださったこの地で、わたしたちは奴隷になっているのです。
9:37 この地の豊かな産物は、わたしたちの罪のために、あなたがわたしたちの上に立てた王たちのものになっています。彼らはわたしたちの体も家畜も思いのままに支配し、わたしたちは大きな苦しみの中にいます。
9:38 こうしたことすべてを踏まえて、わたしたちは固い約束を結ぶ。それを文書にし、わたしたちの指導者たち、レビ人たち、祭司たちが、それに印を押す。
10:1 その文書に署名したのは、ハカルヤの子で総督のネヘミヤ、それにゼデキヤ、
10:2 セラヤ、アザルヤ、エレミヤ、
10:3 パシュフル、アマルヤ、マルキヤ、
10:4 ハトシュ、シェバヌヤ、マルク、
10:5 ハリム、メレモト、オバデヤ、
10:6 ダニエル、ギンネトン、バルク、
10:7 メシュラム、アビヤ、ミヤミン、
10:8 マアズヤ、ビルガイ、シェマヤ。これらは祭司である。
10:9 レビ人は、アザヌヤの子ヨシュア、ヘナダドの子孫のビヌイ、カドミエル、
10:10 そして彼らの兄弟であるシェバヌヤ、ホディヤ、ケリタ、ペラヤ、ハナン、
10:11 ミカ、レホブ、ハシャブヤ、
10:12 ザクル、シェレブヤ、シェバヌヤ、
10:13 ホディヤ、バニ、ベニヌ。
10:14 民の頭たちは、パルオシュ、パハト・モアブ、エラム、ザト、バニ、
10:15 ブニ、アズガド、ベバイ、
10:16 アドニヤ、ビグワイ、アディン、
10:17 アテル、ヒゼキヤ、アズル、
10:18 ホディヤ、ハシュム、ベツァイ、
10:19 ハリフ、アナトト、ネバイ、
10:20 マグピアシュ、メシュラム、ヘジル、
10:21 メシェザブエル、ツァドク、ヤドア、
10:22 ペラテヤ、ハナン、アナヤ、
10:23 ホシェア、ハナンヤ、ハシュブ、
10:24 ハロヘシュ、ピルハ、ショベク、
10:25 レフム、ハシャブナ、マアセヤ、
10:26 アヒヤ、ハナン、アナン、
10:27 マルク、ハリム、バアナ。
10:28 そのほかの民、つまり祭司、レビ人、門番、歌い手、神殿で働く人々、それに神の律法のために周りの国々の民から離れたすべての人、さらにその妻や息子、娘たち、物事をわきまえて理解できる者はみな、
10:29 指導者である同胞と固く手を結び、のろいを含む誓いを立ててこう約束した。神のしもべモーセを通して与えられた神の律法に従って生きること、そして、わたしたちの主である主のすべての命令と定めと掟を守り行うこと。
10:30 また、この地の民に自分たちの娘を嫁がせず、彼らの娘を自分たちの息子の嫁に迎えないこと。
10:31 この地の民が安息日に品物や穀物を売ろうと持ってきても、安息日や聖なる日には彼らから買わないこと。そして、七年目には畑を休ませ、すべての借金を帳消しにすること。
10:32 また、わたしたちは自分たちに義務を課した。毎年、一シェケルの三分の一を、わたしたちの神の神殿の務めのために納めることだ。
10:33 それは、供えのパン、毎日の穀物のささげ物と焼き尽くすささげ物のため、安息日や新月や祭りのため、聖なるささげ物や、イスラエルの罪を償うための罪のためのささげ物のため、そして、わたしたちの神の神殿のすべての仕事のためだ。
10:34 また、祭司もレビ人も民も、くじを引いて、たきぎを納める当番を決めた。それは、律法に書いてあるとおり、家ごとに毎年決められた時に、たきぎをわたしたちの神の神殿へ運び込み、わたしたちの神である主の祭壇で燃やすためだ。
10:35 さらに、毎年、わたしたちの畑の最初の収穫と、あらゆる木の実の初物を、主の神殿へ運ぶこと。
10:36 また、律法に書いてあるとおり、わたしたちの息子や家畜のういごを、そして牛や羊の初子を、わたしたちの神の神殿へ運び、そこで仕える祭司たちに渡すこと。
10:37 また、最初に練った粉と、ささげ物、あらゆる木の実、新しいぶどう酒や油を、祭司たちのところ、つまりわたしたちの神の神殿の部屋へ持って行くこと。そして、畑の収穫の十分の一はレビ人に渡す。レビ人は、わたしたちが働くすべての町で、その十分の一を集める者だからだ。
10:38 レビ人が十分の一を集めるときには、アロンの子孫である祭司が一緒にいる。そして、レビ人はその十分の一のさらに十分の一を、わたしたちの神の神殿へ、宝物庫の部屋へと運び上げる。
10:39 イスラエルの人々とレビの子らは、穀物や新しいぶどう酒や油のささげ物を、これらの部屋に運び込むからだ。そこには聖所の器があり、仕える祭司たち、門番、歌い手たちがいる。こうして、わたしたちは自分たちの神の神殿を見捨てない。
11:1 民の指導者たちはエルサレムに住んだ。ほかの民はくじを引いて、十人に一人を聖なる都エルサレムに住まわせ、残りの九人はほかの町々に住むことにした。
11:2 そして民は、進んでエルサレムに住むことを申し出た人たちみんなを祝福した。
11:3 エルサレムに住んだこの州の頭たちは、次のとおりである。ユダの町々では、それぞれが自分の所有地のある自分の町に住んでいた。イスラエルの人々、祭司、レビ人、神殿で働く人たち、そしてソロモンの家来だった者たちの子孫である。
11:4 エルサレムには、ユダの子孫とベニヤミンの子孫の一部が住んだ。ユダの子孫では、アタヤ。アタヤはウジヤの子で、ウジヤはゼカリヤの子、ゼカリヤはアマルヤの子、アマルヤはシェファテヤの子、シェファテヤはマハラルエルの子で、ペレツの子孫である。
11:5 また、マアセヤ。マアセヤはバルクの子で、バルクはコル・ホゼの子、コル・ホゼはハザヤの子、ハザヤはアダヤの子、アダヤはヨヤリブの子、ヨヤリブはゼカリヤの子で、ゼカリヤはシロの人の子である。
11:6 エルサレムに住んだペレツの子孫は、合わせて四百六十八人で、みな力ある人たちだった。
11:7 ベニヤミンの子孫は次のとおりである。サル。サルはメシュラムの子で、メシュラムはヨエドの子、ヨエドはペダヤの子、ペダヤはコラヤの子、コラヤはマアセヤの子、マアセヤはイティエルの子、イティエルはエシャヤの子である。
11:8 彼に続いて、ガバイとサライがおり、合わせて九百二十八人だった。
11:9 ジクリの子ヨエルが彼らの監督で、ハセヌアの子ユダが町の副責任者だった。
11:10 祭司のうちでは、ヨヤリブの子エダヤ、そしてヤキン。
11:11 神殿を治める者セラヤ。セラヤはヒルキヤの子で、ヒルキヤはメシュラムの子、メシュラムはツァドクの子、ツァドクはメラヨトの子、メラヨトはアヒトブの子である。
11:12 神殿の仕事をする彼らの仲間は、合わせて八百二十二人だった。また、アダヤ。アダヤはエロハムの子で、エロハムはペラルヤの子、ペラルヤはアムツィの子、アムツィはゼカリヤの子、ゼカリヤはパシュフルの子、パシュフルはマルキヤの子である。
11:13 一族の長である彼の仲間は二百四十二人だった。また、アマシュサイ。アマシュサイはアザルエルの子で、アザルエルはアフザイの子、アフザイはメシレモトの子、メシレモトはインメルの子である。
11:14 彼らの仲間である勇敢な戦士は百二十八人だった。彼らを取りまとめていたのはザブディエルで、ザブディエルはハゲドリムの子である。
11:15 レビ人のうちでは、シェマヤ。シェマヤはハシュブの子で、ハシュブはアズリカムの子、アズリカムはハシャブヤの子、ハシャブヤはブンニの子である。
11:16 シャベタイとヨザバドは、レビ人の長たちのひとりで、神殿の外回りの仕事を任されていた。
11:17 マタンヤは、祈りの中で感謝の歌を歌い始める役目の長だった。マタンヤはミカの子で、ミカはザブディの子、ザブディはアサフの子である。バクブクヤはその仲間の中で次の位にあった。また、アブダ。アブダはシャムアの子で、シャムアはガラルの子、ガラルはエドトンの子である。
11:18 聖なる都にいたレビ人は、合わせて二百八十四人だった。
11:19 門番は、アクブとタルモン、そして門を守るその仲間たちで、合わせて百七十二人だった。
11:20 そのほかのイスラエルの人々、祭司、レビ人は、それぞれ自分の受け継いだ土地に住み、ユダのすべての町に散らばっていた。
11:21 神殿の雑用を務める者たちはオフェルに住み、ツィハとギシュパが彼らを取りまとめていた。
11:22 エルサレムにいるレビ人を取りまとめていたのはウジで、ウジはバニの子、バニはハシャブヤの子、ハシャブヤはマタンヤの子、マタンヤはミカの子である。ウジは、神殿の仕事を担当する歌い手アサフの一族の出だった。
11:23 というのも、彼らについては王の命令があり、歌い手たちには毎日の分が定められていたからである。
11:24 また、ペタフヤは、民に関するあらゆる事について王を補佐した。ペタフヤはメシェザブエルの子で、ユダの子ゼラの子孫である。
11:25 村々とその周りの畑には、ユダの人々の一部が住んだ。彼らはキルヤト・アルバとその周辺の村々、ディボンとその周辺の村々、エカブツェエルとその周辺の村々に住み、
11:26 さらにイエシュア、モラダ、ベト・ペレト、
11:27 ハツァル・シュアル、ベエル・シェバとその周辺の村々、
11:28 ツィクラグ、メコナとその周辺の村々、
11:29 エン・リモン、ツォルア、ヤルムト、
11:30 ザノア、アドラムとその村々、ラキシュとその畑、アゼカとその周辺の村々に住んだ。こうして彼らは、ベエル・シェバからヒノムの谷まで、各地に住みついた。
11:31 ベニヤミンの人々は、ゲバから始まって、ミクマス、アヤ、ベテルとその周辺の村々、
11:32 アナトト、ノブ、アナンヤ、
11:33 ハツォル、ラマ、ギタイム、
11:34 ハディド、ツェボイム、ネバラト、
11:35 ロド、オノ、そして職人たちの谷に住んだ。
11:36 また、レビ人のうちには、もとユダに属していたが、ベニヤミンに割り当てられた組もあった。
12:1 これは、シェアルティエルの子ゼルバベルとイエシュアと一緒に帰ってきた祭司とレビ人たちである。セラヤ、エレミヤ、エズラ、
12:2 アマルヤ、マルク、ハトシュ、
12:3 シェカンヤ、レフム、メレモト、
12:4 イド、ギネトイ、アビヤ、
12:5 ミヤミン、マアデヤ、ビルガ、
12:6 シェマヤ、ヨヤリブ、エダヤ、
12:7 サル、アモク、ヒルキヤ、エダヤ。これらが、イエシュアの時代の祭司とその仲間たちの長である。
12:8 レビ人は次のとおりである。イエシュア、ビヌイ、カドミエル、シェレブヤ、ユダ、そしてマタンヤ。マタンヤは仲間とともに感謝の歌を受け持った。
12:9 彼らの仲間バクブクヤとウニは、務めの当番として彼らと向かい合って立った。
12:10 イエシュアはヨヤキムの父、ヨヤキムはエルヤシブの父、エルヤシブはヨヤダの父、
12:11 ヨヤダはヨナタンの父、ヨナタンはヤドアの父である。
12:12 ヨヤキムの時代、一族の長である祭司たちは次のとおりである。セラヤの家はメラヤ、エレミヤの家はハナンヤ、
12:13 エズラの家はメシュラム、アマルヤの家はヨハナン、
12:14 マルキの家はヨナタン、シェバンヤの家はヨセフ、
12:15 ハリムの家はアデナ、メラヨテの家はヘルカイ、
12:16 イドの家はゼカルヤ、ギネトンの家はメシュラム、
12:17 アビヤの家はジクリ、ミニヤミンの家とモアデヤの家はピルタイ、
12:18 ビルガの家はシャムア、シェマヤの家はヨナタン、
12:19 ヨヤリブの家はマテナイ、エダヤの家はウジ、
12:20 サライの家はカライ、アモクの家はエベル、
12:21 ヒルキヤの家はハシャブヤ、エダヤの家はネタンエルである。
12:22 エルヤシブ、ヨヤダ、ヨハナン、ヤドアの時代に、レビ人の一族の長たちは記録された。祭司たちも、ペルシアの王ダレイオスの治世まで記録された。
12:23 レビの子孫のうち一族の長たちは、エルヤシブの子ヨハナンの時代まで、歴代誌に書き記された。
12:24 レビ人の長たちは、ハシャブヤ、シェレブヤ、カデミエルの子イエシュアであった。彼らは兄弟たちと向かい合って立ち、神の人ダビデの命令のとおり、組と組が交互に賛美し、感謝をささげた。
12:25 門番はマタンヤ、バクブクヤ、オバデヤ、メシュラム、タルモン、アクブで、門のそばの倉庫を守る役目を務めた。
12:26 これは、ヨツァダクの子イエシュアの子ヨヤキムの時代のこと、そして総督ネヘミヤと、祭司であり学者でもあったエズラの時代のことである。
12:27 エルサレムの城壁を神にささげる祝いのとき、人々はレビ人をそれぞれの住まいから呼び集め、エルサレムに連れて来た。喜びのうちにこの祝いを行い、感謝の歌をうたい、シンバルや竪琴や琴を奏でるためである。
12:28 歌い手たちも集まって来た。エルサレム周辺の地方からも、ネトファ人の村々からも来た。
12:29 また、ベト・ギルガルからも、ゲバやアズマベテの野からも来た。歌い手たちは、エルサレムの周りに自分たちの村を建てていたのである。
12:30 祭司とレビ人は自分の身を清め、それから民と、門と、城壁を清めた。
12:31 わたしはユダの指導者たちを城壁の上に登らせ、感謝をささげる二つの大きな聖歌隊を立てた。一つは城壁の上を右へ、糞の門のほうへ進んだ。
12:32 そのうしろにホシャヤと、ユダの指導者たちの半数が続いた。
12:33 さらにアザルヤ、エズラ、メシュラム、
12:34 ユダ、ベニヤミン、シェマヤ、エレミヤが続いた。
12:35 また祭司の子らのうち、ラッパを手にした者たちもいた。ゼカルヤである。彼はヨナタンの子、ヨナタンはシェマヤの子、シェマヤはマタンヤの子、マタンヤはミカヤの子、ミカヤはザクルの子、ザクルはアサフの子であった。
12:36 そして彼の兄弟たち、シェマヤ、アザルエル、ミラライ、ギラライ、マアイ、ネタンエル、ユダ、ハナニもいて、神の人ダビデの定めた楽器を手にしていた。学者エズラは彼らの先頭を進んだ。
12:37 泉の門のところまで来ると、二つ目の隊は正面の階段を上って、ダビデの町の階段、城壁へ上る坂道を進んだ。そしてダビデの家の上を通り、東にある水の門まで行った。
12:38 感謝をささげるもう一つの隊は、反対の方向、左へ進んだ。わたしはそのあとに続き、民の半分もいっしょだった。彼らは城壁の上を歩き、かまどの塔の上を通って、幅の広い城壁まで進んだ。
12:39 さらにエフライムの門の上、古い門の上、魚の門の上を通り、ハナヌエルの塔と百の塔を過ぎて、羊の門まで進んだ。そして見張りの門のところで立ち止まった。
12:40 こうして、感謝をささげる二つの隊は神の宮に着いて、そこに立った。わたしも、いっしょにいた役人の半分もそこにいた。
12:41 また祭司たちもいた。エルヤキム、マアセヤ、ミニヤミン、ミカヤ、エルヨエナイ、ゼカルヤ、ハナンヤで、みなラッパを手にしていた。
12:42 さらにマアセヤ、シェマヤ、エルアザル、ウジ、エホハナン、マルキヤ、エラム、エゼルもいた。歌い手たちは声を張り上げて歌い、イズラフヤがその指揮をとった。
12:43 その日、人々はたくさんのいけにえをささげ、大いに喜んだ。神が彼らを大きな喜びで満たしてくださったからだ。女たちも子どもたちも喜んだ。エルサレムの喜びの声は、遠くまで響きわたった。
12:44 その日、宝物や、ささげ物、初物、十分の一の献げ物をおさめる倉を管理する人々が任命された。彼らは町々の畑から、律法で定められた祭司とレビ人の受け取り分を集めて、この倉に納める役目を負った。仕えている祭司やレビ人がいることを、ユダの人々は喜んでいたからだ。
12:45 歌い手たちと門番たちは、ダビデとその子ソロモンの命令にしたがって、神に仕える務めと、きよめの務めを果たした。
12:46 というのも、はるか昔、ダビデとアサフの時代から、歌い手たちをまとめる指導者がいて、神をたたえ、感謝をささげる歌があったからだ。
12:47 ゼルバベルの時代にも、ネヘミヤの時代にも、イスラエルのすべての人は、歌い手たちと門番たちの受け取り分を毎日きちんと渡した。また彼らはレビ人のために献げ物を取り分け、レビ人はアロンの子孫のために取り分けた。
13:1 その日、モーセの書が民の前で読み上げられた。すると、その中にこう書かれているのが見つかった。「アンモン人とモアブ人は、決して神の集まりに加わってはならない。」
13:2 彼らはかつて、パンと水を持ってイスラエルの人々を迎えなかった。それどころか、バラムを雇って彼らを呪わせようとした。でも、わたしたちの神はその呪いを祝福に変えてくださった。
13:3 人々はこの律法を聞くと、外国の血を引く者をみなイスラエルから引き離した。
13:4 これより前のことだ。神殿の部屋の管理を任されていた祭司エルヤシブは、トビヤと親しい間柄だった。
13:5 エルヤシブはトビヤのために大きな部屋を用意した。そこはもともと、穀物のささげ物や乳香、器、そして律法で定められたレビ人・歌い手・門番のための穀物・新しいぶどう酒・油の十分の一、さらに祭司へのささげ物を納めておく場所だった。
13:6 こうしたことが起きている間、わたしはエルサレムにいなかった。バビロンの王アルタクセルクセスの治世第三十二年に、王のもとへ行っていたからだ。しばらくたってから、わたしは王に願い出て許しをもらった。
13:7 そしてエルサレムに戻ると、エルヤシブがトビヤのためにした悪事を知った。神殿の庭に、彼のための部屋を用意していたのだ。
13:8 わたしはひどく腹が立った。それでトビヤの家財道具をすべて、その部屋の外へ放り出した。
13:9 そして命じて部屋をきよめさせ、神殿の器やささげ物、乳香をそこに戻した。
13:10 さらにわたしは、レビ人への分け前が渡されていないことを知った。そのため、務めを担っていたレビ人や歌い手たちは、それぞれ自分の畑へ帰ってしまっていた。
13:11 そこでわたしは役人たちを問いただして言った。「どうして神殿がおろそかにされているのか。」そして彼らを集め、持ち場に立たせた。
13:12 するとユダの人々はみな、穀物・新しいぶどう酒・油の十分の一を倉に運び入れた。
13:13 そこでわたしは、祭司シェレムヤと書記官ツァドク、それにレビ人のペダヤを倉の管理者に任命した。その下には、ザクルの子でマタンヤの孫にあたるハナンをつけた。彼らは信頼できる人たちだと見なされていたからだ。その務めは、仲間たちに分け前を配ることだった。
13:14 わたしの神よ、このことを覚えていてください。神殿とその務めのためにわたしが真心を込めて行ったことを、どうか消し去らないでください。
13:15 そのころわたしはユダで、安息日にぶどうを搾っている人たちを見た。彼らは麦の束を運び入れ、それをろばに積み、ぶどう酒やぶどう、いちじく、あらゆる荷物まで、安息日にエルサレムへ運び込んでいた。わたしは、彼らが食べ物を売っているその日に警告した。
13:16 またそこに住んでいたティルスの人々は、魚やあらゆる商品を持ち込み、安息日にユダの人々やエルサレムで売っていた。
13:17 そこでわたしはユダの有力者たちを問いただして言った。「あなたたちがしているこの悪いことは、いったい何だ。安息日を汚しているではないか。
13:18 あなたたちの先祖も同じことをして、そのために神は、わたしたちとこの町に、これほどの災いをすべて下されたのではないか。それなのにあなたたちは、安息日を汚して、イスラエルへの怒りをさらに増している。」
13:19 安息日の前に、エルサレムの城門のあたりが暗くなりはじめたとき、わたしは戸を閉じるように命じ、安息日が終わるまで開けてはならないと言いつけた。そして、わたしの家来たちを門に立たせ、安息日に荷物が運び込まれないようにした。
13:20 すると、商人やあらゆる品物を売る者たちが、一度ならず二度までも、エルサレムの外で夜を明かした。
13:21 わたしは彼らに警告して言った。「どうしておまえたちは城壁の前で夜を明かすのか。もう一度こんなことをすれば、おまえたちに手を出すぞ。」それ以来、彼らは安息日には来なくなった。
13:22 またわたしはレビ人に、身を清めて門の番に来るように命じた。安息日を聖なる日として守るためである。わたしの神よ、このこともわたしのために覚えていてください。そして、あなたの豊かな慈しみによって、わたしを憐れんでください。
13:23 そのころわたしはまた、アシュドドやアンモン、モアブの女性をめとったユダの人々を見た。
13:24 その子どもたちの半分はアシュドドの言葉を話し、ユダの言葉を話すことができなかった。それぞれの民族の言葉しか話せなかったのだ。
13:25 わたしは彼らを問いただし、責め立てた。何人かを打ち、その髪を引き抜いた。そして彼らに神の名にかけて誓わせた。「あなたたちの娘を彼らの息子に嫁がせてはならない。彼らの娘を自分の息子のためにも、自分のためにもめとってはならない。」
13:26 イスラエルの王ソロモンも、まさにこのことで罪を犯したではないか。多くの民族の中に、彼のような王はいなかった。彼は神に愛され、神は彼を全イスラエルの王とされた。それなのに、その彼さえも外国の女性たちが罪へと引きずり込んだのだ。
13:27 それなのに、あなたたちがこんな大きな悪を行い、外国の女性をめとってわたしたちの神を裏切るのを、わたしたちは黙って見ていろというのか。
13:28 大祭司エルヤシブの子ヨヤダの息子の一人は、ホロン人サンバラテの婿になっていた。だからわたしは彼をわたしのもとから追い払った。
13:29 わたしの神よ、彼らのことを覚えていてください。彼らは祭司の務めを汚し、祭司とレビ人の契約を汚したのです。
13:30 こうしてわたしは、外国のものすべてから彼らを清めた。そして祭司とレビ人のために務めを定め、それぞれに自分の仕事を割り当てた。
13:31 また、決まった時にささげる薪の供え物と、初物の供え物についても定めた。わたしの神よ、わたしを覚えて、良くしてください。
エステル記
1:1 アハシュエロス王の時代のことである。このアハシュエロスは、インドからクシュまで、百二十七の州を治めていた王だ。
1:2 そのころ、アハシュエロス王は、首都スサの城で王座に着いていた。
1:3 王は即位して三年目に、家来や役人たち全員のために宴会を開いた。ペルシアとメディアの軍の指揮官、貴族、各州の高官たちが王の前に集まった。
1:4 王は、豊かで輝かしい自分の国と、そのすばらしく堂々とした威光を、長い間、百八十日にわたって見せびらかした。
1:5 その期間が終わると、王は、首都スサにいたすべての人のために、身分の高い者から低い者まで招いて、王宮の庭園の中庭で七日間の宴会を開いた。
1:6 そこには、白と青の布が張られ、白い麻と紫のひもで銀の輪や大理石の柱に留められていた。金と銀の長いすが、赤・白・黄・黒の大理石を敷きつめた床の上に置かれていた。
1:7 飲み物は金の杯で出され、その杯はどれもみな違う形をしていた。王ならではの気前のよさで、王室のぶどう酒がたっぷりふるまわれた。
1:8 酒を飲むのに、無理じいはしなかった。それぞれが好きなだけ楽しめるように、王が宮廷の給仕係全員にそう命じていたからだ。
1:9 王妃ワシュティもまた、アハシュエロス王の王宮で、女性たちのために宴会を開いた。
1:10 七日目、王がぶどう酒で上機嫌になったとき、王はそばで仕える七人の宦官、メフマン、ビゼタ、ハルボナ、ビグタ、アバグタ、ゼタル、カルカスに命じた。
1:11 王妃ワシュティに王冠をかぶらせて、王の前に連れて来るように、と。集まった人々や役人たちに、彼女の美しさを見せるためだ。彼女はとても美しかったのだ。
1:12 ところが王妃ワシュティは、宦官を通して伝えられた王の命令に従うことを拒み、来ようとしなかった。王はこれに激しく怒り、腹の中で怒りが燃え上がった。
1:13 王は、時代の流れに通じた賢者たちに相談した。何かを決めるとき、法律や裁判に詳しい者たちに意見を求めるのが、王の常のやり方だったからだ。
1:14 王のいちばん近くにいたのは、カルシェナ、シェタル、アドマタ、タルシシュ、メレス、マルセナ、メムカンの七人だった。彼らはペルシアとメディアの高官で、王に直接会うことができ、国で最も高い地位についていた。
1:15 王はこう尋ねた。「王妃ワシュティは、宦官を通して伝えたアハシュエロス王の命令に従わなかった。法律に照らせば、彼女をどう処分すべきだろうか。」
1:16 すると、メムカンが王と役人たちの前で言った。「王妃ワシュティが背いた相手は、王おひとりではありません。アハシュエロス王が治めるすべての州の、すべての役人と民に対しても、彼女は罪を犯したのです。
1:17 王妃のこの振る舞いは、やがてすべての女性の耳に入るでしょう。そうなれば、女性たちは自分の夫を見下すようになります。『アハシュエロス王が王妃ワシュティを呼び寄せたのに、彼女は来なかった』と言い合ってです。
1:18 今日にも、王妃のことを聞いたペルシアとメディアの高官の妻たちが、王のすべての役人に同じ態度をとるでしょう。こうして、侮りと怒りがいくらでもあふれ出すのです。
1:19 もし王がよろしければ、王の命令をお出しください。そして決して変えられないように、ペルシアとメディアの法律に書き記してください。その内容は、ワシュティは二度とアハシュエロス王の前に出てはならない、というものです。そして王は、彼女の王妃の位を、彼女よりふさわしい別の女性にお与えください。
1:20 王が出すこの決定が、広大な王国のすみずみまで伝われば、身分の高い者から低い者まで、すべての女性が自分の夫を敬うようになるでしょう。」
1:21 この意見は、王にも役人たちにも良いと思えた。それで王は、メムカンの言うとおりにした。
1:22 王は、王国のすべての州に手紙を送った。それぞれの州にはその文字で、それぞれの民にはその言葉で書き送った。すべての男が自分の家の主人となり、自分の民の言葉で語るように、という内容だった。
2:1 これらの出来事のあと、アハシュエロス王の怒りがおさまると、王はワシュティのこと、彼女がしたこと、そして彼女についてどう決められたのかを思い出した。
2:2 そこで、王に仕える若い家来たちが言った。「王さまのために、美しい若い娘たちを探しましょう。
2:3 王さまは国じゅうのすべての州に役人を任命して、美しい若い娘たちをみな首都スサの後宮に集めさせてください。娘たちを、女性たちの世話をする王の宦官ヘガイに預け、美容の手入れを受けさせるのです。
2:4 そして、王さまの目にかなった娘を、ワシュティに代わる新しい王妃にすればよいのです。」この案は王の気に入り、王はそのとおりにした。
2:5 さて、首都スサに、一人のユダヤ人がいた。名をモルデカイといった。彼はヤイルの子で、ヤイルはシムイの子、シムイはキシュの子であり、ベニヤミン族の人だった。
2:6 モルデカイは、バビロンの王ネブカドネツァルによって、ユダの王エコンヤとともに捕らえられ、エルサレムから連れ去られた人々の一人だった。
2:7 モルデカイは、おじの娘ハダサ、つまりエステルを育てていた。彼女には父も母もいなかったからだ。この娘は姿も顔立ちもとても美しかった。エステルの父と母が亡くなったとき、モルデカイは彼女を自分の娘として引き取ったのだった。
2:8 王の命令とおふれが伝えられ、多くの娘たちが首都スサに集められて、ヘガイに預けられた。エステルも王の宮殿に連れて行かれ、女性たちの世話をするヘガイに預けられた。
2:9 この娘はヘガイの気に入り、彼の慈しみを受けた。ヘガイはすぐに、彼女に美容の手入れと食事を与え、王の宮殿から選んだ七人の侍女をつけた。そして、彼女と侍女たちを、後宮でいちばん良い場所に移した。
2:10 エステルは、自分がどの民族の出で、どこの生まれかを明かさなかった。モルデカイが、それを話してはいけないと命じていたからだ。
2:11 モルデカイは毎日、後宮の庭の前を歩き回った。エステルがどうしているか、彼女の身に何が起きているかを知ろうとしたのだ。
2:12 娘たちは一人ずつ順番に、アハシュエロス王のもとへ行くことになっていた。その番が来るのは、女性のための決まりに従って十二か月の手入れを終えたあとだった。美容の期間はこう定められていた。六か月は没薬の香油で、あとの六か月は香料や女性用の化粧品で手入れをするのである。
2:13 こうして娘は王のもとへ行くことになるのだが、その際、後宮から王の宮殿へ持って行きたいものは、何でも望みどおり与えられた。
2:14 娘は夕方に王のもとへ行き、朝になると第二の後宮へ戻され、側室たちを管理する王の宦官シャアシュガズの監督のもとに置かれた。王が彼女を気に入って名前で呼ばないかぎり、二度と王のもとへ行くことはなかった。
2:15 さて、モルデカイのおじアビハイルの娘で、モルデカイが自分の娘として引き取ったエステルの番が来て、王のもとへ行くことになった。彼女は、女性たちを管理する王の宦官ヘガイが勧めるもののほかは、何も求めなかった。エステルは、彼女を見る人みなに好かれた。
2:16 エステルは、アハシュエロス王の治世第七年、第十の月、すなわちテベトの月に、王宮にいる王のもとへ迎え入れられた。
2:17 王は、どの女性よりもエステルを愛した。エステルは、ほかのどの娘よりも王に気に入られ、慈しみを受けた。王は王冠を彼女の頭にのせ、ワシュティに代えて彼女を王妃とした。
2:18 そして王は、すべての高官や家来のために盛大な宴会を開いた。これはエステルのための宴会だった。王は諸州の税を免除し、王にふさわしい気前よさで贈り物を配った。
2:19 娘たちが二度目に集められたとき、モルデカイは王の門に座っていた。
2:20 エステルは、モルデカイに命じられたとおり、自分がどこの生まれで、どの民族の出かを明かさなかった。エステルは、モルデカイに育てられていたころと同じように、彼の言葉に従っていたのだ。
2:21 そのころ、モルデカイが王の門に座っていると、門の見張りをしていた王の二人の宦官ビグタンとテレシュが怒り、アハシュエロス王に手をかけようとねらっていた。
2:22 しかし、そのことがモルデカイに知れた。彼はそれを王妃エステルに伝え、エステルはモルデカイの名で王に告げた。
2:23 調べてみると、それは事実だとわかった。二人は木にかけられた。そしてこのことは、王の前で年代記の書に記された。
3:1 こうしたことがあってから、アハシュエロス王はハメダタの子で、アガグ人のハマンを取り立てた。王は彼を高い位につけ、その席を、いっしょにいるどの高官よりも上に置いた。
3:2 王の門にいる王の家来たちはみな、ひざをかがめてハマンにひれ伏した。王がそう命じたからだ。でも、モルデカイはひざもかがめず、ひれ伏そうともしなかった。
3:3 王の門にいる家来たちはモルデカイに言った。「どうしてあなたは王の命令にそむくのか。」
3:4 彼らは毎日そう言い続けたが、モルデカイは聞き入れなかった。それで、モルデカイの態度が通るものかどうか見ようと、彼らはハマンに知らせた。モルデカイが自分はユダヤ人だと話していたからだ。
3:5 ハマンは、モルデカイが自分にひざもかがめず、ひれ伏さないのを見て、怒りでいっぱいになった。
3:6 しかし、モルデカイ一人に手を下すだけでは気がすまなかった。彼らがモルデカイの民族のことを知らせていたからだ。そこでハマンは、アハシュエロスの王国全体にいるユダヤ人、つまりモルデカイの同胞をすべて滅ぼそうとねらった。
3:7 アハシュエロス王の第十二年、第一の月、つまりニサンの月に、ハマンの前でプル、すなわちくじが投げられた。日ごと、月ごとにくじが引かれ、第十二の月、つまりアダルの月に決まった。
3:8 ハマンはアハシュエロス王に言った。「あなたの王国のすべての州で、いろいろな民族の間に散らばって暮らしている、ある一つの民族がいます。彼らのおきてはどの民族とも違い、王のおきては守りません。彼らをそのままにしておくのは、王のためになりません。
3:9 もしよろしければ、彼らを滅ぼすよう命令書を出してください。わたしは銀一万タラントを量って、この仕事にあたる者たちに渡し、王の宝物庫に納めさせます。」
3:10 すると王は自分の指輪を手から外し、ユダヤ人の敵である、ハメダタの子でアガグ人のハマンに渡した。
3:11 そして王はハマンに言った。「その銀はあなたのものだ。あの民族も、あなたの思いどおりにするがよい。」
3:12 第一の月の十三日に、王の書記官たちが呼び集められた。そして、ハマンが命じたとおりのことがすべて書き記された。それは、王の総督たち、各州を治める長官たち、それぞれの民族の首長たちにあてたもので、州ごとにその文字で、民族ごとにその言葉で書かれた。それはアハシュエロス王の名で書かれ、王の指輪で封印された。
3:13 そして飛脚たちの手によって、王の全州に手紙が送られた。それは、十二の月、つまりアダルの月の十三日、その一日のうちに、すべてのユダヤ人を、若者も老人も、子どもも女も、皆殺しにし、滅ぼし、絶やせ、そして彼らの財産を奪い取れ、という内容だった。
3:14 この文書の写しは、それぞれの州で法として布告され、すべての民族に知らされた。その日に備えておくためである。
3:15 飛脚たちは王の命令によって、大急ぎで出て行った。この法令は首都スサでも布告された。王とハマンは腰を下ろして酒を飲んでいたが、都スサは混乱に包まれていた。
4:1 モルデカイは、行われたことすべてを知った。すると彼は自分の服を引き裂き、粗布をまとって灰をかぶり、町の中へ出て行って、大声で激しく泣き叫んだ。
4:2 そして王の門の前まで来た。粗布をまとったままでは、王の門の中に入ることが許されていなかったからだ。
4:3 王の命令と法令が届いたどの州でも、ユダヤ人の間に大きな嘆きが起こった。人々は断食し、泣き、悲しみ叫んだ。多くの者が粗布をまとって灰の中に横たわった。
4:4 エステルに仕える侍女たちと宦官たちが来て、このことを彼女に告げた。すると王妃は激しく心を痛めた。そしてモルデカイに着せて、その体から粗布を取り去らせようと服を送った。しかし彼は受け取らなかった。
4:5 そこでエステルは、王が自分のそばに仕えさせていた宦官の一人、ハタクを呼び、モルデカイのところへ行かせた。いったい何が、なぜ起こっているのかを知るためだった。
4:6 ハタクは、王の門の前にある町の広場にいるモルデカイのところへ出て行った。
4:7 モルデカイは、自分の身に起こったことをすべてハタクに話した。さらにハマンが、ユダヤ人を滅ぼすために、いくらの銀を王の宝物庫に量り入れると約束したのか、その金額まで伝えた。
4:8 また彼は、ユダヤ人を滅ぼすためにスサで出された法令の文書の写しをハタクに渡した。それをエステルに見せて事情を伝え、王のところへ行って自分の民のために王にひざまずいて願い、助けを求めるよう、エステルに頼んでほしかったのだ。
4:9 ハタクは戻って来て、モルデカイの言葉をエステルに伝えた。
4:10 するとエステルはハタクに命じて、モルデカイにこう言わせた。
4:11 「王に仕える者たちも、王の各州の民も、みんな知っています。男でも女でも、呼ばれていないのに王のいる内庭に入る者は、だれであれ死刑になる、というただ一つの法があるのです。ただ、王が金の笏を差し伸べた者だけは生きられます。でもわたしは、この三十日、王に呼ばれていません」
4:12 人々は、エステルの言葉をモルデカイに伝えた。
4:13 するとモルデカイは、エステルにこう返事をした。「あなたは王宮にいるから、ユダヤ人の中で自分だけは助かる、などと思ってはいけない。
4:14 もし、あなたが今このときに黙っているなら、ユダヤ人には別のところから助けと救いが起こるだろう。でも、あなたとあなたの父の家は滅びる。それに、あなたが王妃の位に就いたのは、まさにこのときのためだったのかもしれないのだ。」
4:15 エステルは、モルデカイにこう返事をした。
4:16 「行って、スサにいるユダヤ人をみんな集めてください。そして、わたしのために断食をしてください。三日のあいだ、昼も夜も、食べも飲みもしないでください。わたしも侍女たちと同じように断食します。そのうえで、法に反してでも王のところへ行きます。もし死ぬのなら、死ぬまでです。」
4:17 モルデカイは立ち去り、エステルが命じたとおりのことをすべて行った。
5:1 三日目に、エステルは王妃の衣装を身につけ、王宮の内庭に立った。そこは王の広間の正面だった。王は宮殿の中で王座に座り、入り口のほうを向いていた。
5:2 王は、王妃エステルが庭に立っているのを見た。すると彼女がとても気に入り、手にしていた金の杖を差し出した。エステルは近づいて、その杖の先に触れた。
5:3 王は彼女に言った。「どうしたのだ、王妃エステルよ。願いは何だ。この国の半分でも、あなたに与えよう。」
5:4 エステルは答えた。「王さえよろしければ、今日、王とハマンをわたしが用意した宴会にお招きしたいのです。」
5:5 王は言った。「エステルの言うとおりにできるよう、すぐにハマンを呼べ。」こうして王とハマンは、エステルが用意した宴会に来た。
5:6 ぶどう酒の宴の席で、王はエステルに言った。「あなたの望みは何だ。かなえてあげよう。願いは何だ。この国の半分でも、そのとおりにしよう。」
5:7 エステルは答えて言った。「わたしの望み、わたしの願いはこうです。
5:8 もし王に気に入っていただけて、わたしの望みをかなえ、願いを聞き入れてくださるなら、明日もう一度、王とハマンをわたしが用意する宴会にお招きします。そのときに、王のおっしゃったとおりお答えします。」
5:9 その日、ハマンは喜び、上機嫌で出て行った。ところが、王の門のところにいるモルデカイを見ると、モルデカイは立ち上がりもせず、身動きひとつしなかった。それでハマンはモルデカイへの怒りでいっぱいになった。
5:10 それでもハマンは怒りをおさえて家に帰った。そして人をやって、友人たちと妻ゼレシュを呼び寄せた。
5:11 ハマンは彼らに、自分の富がどれほど輝かしいか、子どもがどれほど多いか、そして王が自分をどれほど取り立て、家来や役人たちの上に高く引き上げてくれたかを、すっかり話して聞かせた。
5:12 さらにハマンは言った。「それだけじゃない。王妃エステルが用意した宴会に、王といっしょに招かれたのは、このわたしだけなんだ。しかも明日も、王といっしょに来るようにと招かれている。
5:13 でも、あのユダヤ人モルデカイが王の門にすわっているのを見るたびに、こんなものは全部、わたしには何の意味もなくなってしまうんだ。」
5:14 すると妻ゼレシュと友人たちがみな、こう言った。「高さ五十キュビトの柱を立てさせなさい。そして朝になったら、王にモルデカイをそこへつるすよう頼めばいいのです。そのあとで、王といっしょに気分よく宴会へ行けばいい。」ハマンはこの考えが気に入って、その柱を立てさせた。
6:1 その夜、王はどうしても眠れなかった。それで、宮廷の記録が書かれた年代記を持ってこさせ、王の前で読み上げさせた。
6:2 すると、こんな記録が見つかった。かつてモルデカイが、王の門番をしていた二人の宦官ビグタナとテレシュのことを告発していた、というのだ。この二人は、アハシュエロス王を殺そうとねらっていた。
6:3 王は言った。「このことで、モルデカイにはどんな栄誉や褒美が与えられたのか。」王に仕える家来たちは答えた。「何もされていません。」
6:4 王は言った。「庭にだれかいるか。」ちょうどそのとき、ハマンが王宮の外庭に入ってきていた。自分が用意した柱にモルデカイをつるすよう、王に願い出るためだった。
6:5 家来たちは王に言った。「ハマンが庭に立っています。」王は「入らせよ」と言った。
6:6 ハマンが入ってくると、王は彼にたずねた。「王が名誉を与えたいと思っている者には、何をしてやるのがよいだろうか。」ハマンは心の中で思った。「王が名誉を与えたいと思う相手が、このわたし以外にいるだろうか。」
6:7 ハマンは王に言った。「王が名誉を与えたいと思っている人には、こうなさってください。
6:8 王がお召しになった王の衣装を持ってこさせ、王がお乗りになった馬、その頭に王冠をいただいた馬を引いてこさせてください。
6:9 その衣装と馬を、王の高官のひとりに預けます。そして、王が名誉を与えたいと思っている人にその衣装を着せ、馬に乗せて町の広場を練り歩かせ、その前でこう叫ばせるのです。『王が名誉を与えたいと思う人は、このようにしていただけるのだ。』」
6:10 すると王はハマンに言った。「急いで、おまえが言ったとおり、その衣装と馬を取ってこい。そして、王の門にすわっているユダヤ人モルデカイに、そのとおりにしてやれ。おまえが言ったことを、一つも省くな。」
6:11 そこでハマンは衣装と馬を取り、モルデカイにその衣装を着せ、馬に乗せて町の広場を練り歩かせた。そして、その前でこう叫んだ。「王が名誉を与えたいと思う人は、このようにしていただけるのだ。」
6:12 モルデカイは王の門に戻った。しかしハマンは、悲しみに沈み、頭をおおって、急いで家に帰った。
6:13 ハマンは、自分の身に起こったことをすべて、妻ゼレシュと友人たちみんなに話した。すると、知恵ある者たちと妻ゼレシュは彼に言った。「あなたが今、その前で崩れ始めているモルデカイが、もしユダヤ人の血を引く者なら、あなたは彼に勝てません。きっと、その前で倒れることになるでしょう。」
6:14 彼らがまだハマンと話しているうちに、王の宦官たちが着いた。そして、エステルが用意した宴会に、ハマンを急いで連れて行った。
7:1 王とハマンは、王妃エステルと酒を飲むためにやって来た。
7:2 この二日目も、ワインを楽しむ席で王はエステルに言った。「王妃エステル、あなたの願いは何だろう。かなえてあげよう。求めることは何だろう。この国の半分でも、その通りにしてあげよう。」
7:3 王妃エステルは答えて言った。「王よ、もしわたしがあなたに気に入られているなら、そして王がよいと思ってくださるなら、どうかわたしの命を助けてください。それがわたしの願いです。わたしの民族も助けてください。それがわたしの求めです。
7:4 わたしも、わたしの民族も、根絶やしにされ、殺され、滅ぼされるために売り渡されたのです。もしただ奴隷として、男も女も売られるだけなら、わたしは黙っていたでしょう。そんな苦しみは、王をわずらわせるほどのことではありませんから。」
7:5 アハシュエロス王は王妃エステルに言った。「それはいったい誰だ。そんなことをしようとたくらむ者は、どこにいるのだ。」
7:6 エステルは言った。「その敵、そのかたきは、この悪いハマンです。」ハマンは、王と王妃の前で恐れおののいた。
7:7 王は激しく怒り、ワインの席を立って庭園へ出て行った。ハマンは、王妃エステルに自分の命を助けてほしいと願うために残った。王が自分に災いを下すと決めたのを見て取ったからだ。
7:8 王が庭園から酒宴の部屋へ戻ってくると、ハマンはエステルのいる長いすの上に倒れ込んでいた。王は言った。「こいつは、わたしの家の中で、わたしの目の前で王妃を襲おうとまでするのか。」王の口からこの言葉が出るやいなや、人々はハマンの顔を覆った。
7:9 王のそばにいた宦官の一人、ハルボナが言った。「ちょうど、ハマンの家に高さ五十キュビトの柱が立っています。ハマンが、王のために良いことを告げたモルデカイをつるそうとして作ったものです。」王は言った。「ハマンをそれにつるせ。」
7:10 こうして人々は、ハマンがモルデカイのために用意した柱に、ハマン自身をつるした。すると、王の怒りはおさまった。
8:1 その日、アハシュエロス王は、ユダヤ人の敵だったハマンの家を、王妃エステルに与えた。そしてモルデカイは王の前に出るようになった。エステルが、モルデカイは自分とどういう関係なのかを打ち明けていたからだ。
8:2 王は、ハマンから取り上げた自分の印章の指輪を外し、それをモルデカイに与えた。エステルはモルデカイを、ハマンの家の管理者に立てた。
8:3 エステルはもう一度、王に語りかけた。王の足もとにひれ伏し、泣きながら訴えたのだ。アガグ人ハマンがユダヤ人に対してたくらんだ悪だくみを、取り消してほしいと願った。
8:4 王が金の笏をエステルの方に差し伸べると、エステルは立ち上がり、王の前に立った。
8:5 そして言った。「もし王さまがよろしければ、そしてわたしが王さまに気に入られているなら、この願いが王さまにとって正しいと思われ、わたしがお目にかなうなら、どうか命令書を書いてください。アガグ人ハンメダタの子ハマンが書いた手紙、つまり王の全州にいるユダヤ人を滅ぼそうとして送ったあの手紙を、取り消してください。
8:6 だって、わたしの民族に降りかかる災いを、どうして黙って見ていられるでしょう。わたしの同胞が滅ぼされるのを、どうして見ていられるでしょう。」
8:7 そこでアハシュエロス王は、王妃エステルとユダヤ人モルデカイに言った。「わたしはハマンの家をエステルに与えた。彼自身も、ユダヤ人に手を出したから、木にかけられた。
8:8 だから、あなたたちがユダヤ人のために、良いと思うとおりに王の名で書き、王の指輪で印を押しなさい。王の名で書かれ、王の指輪で印が押された文書は、取り消すことができないのだから。」
8:9 そこで、その時、第三の月、つまりシワンの月の二十三日に、王の書記官たちが呼ばれた。そして、モルデカイが命じたとおりに、すべてが書き記された。それはユダヤ人と、インドからエチオピアまでの百二十七州の総督や長官や役人たちに宛てたものだった。各州にはその文字で、各民族にはその言葉で、そしてユダヤ人にはその文字とその言葉で書かれた。
8:10 モルデカイはアハシュエロス王の名で書き、王の指輪で印を押した。そして、王室の早馬を乗りこなす急使たちの手で、その手紙を送り出した。
8:11 手紙には、こう書かれていた。王は、どの町にいるユダヤ人にも、こう認める。集まって、自分たちの命を守れ。もし、どの民族であれどの州であれ、彼らを襲う武装した者がいれば、その者たちを、子どもも女も含めて滅ぼし、殺し、絶やしてよい。そして、その財産を奪ってよい。
8:12 それを行うのは、アハシュエロス王の全州で同じ一日、第十二の月、つまりアダルの月の十三日とする。
8:13 この手紙の写しは、どの州でも法として発せられ、すべての民族に公示された。ユダヤ人がその日に備えて、敵に仕返しできるようにするためだ。
8:14 急使たちは、王の早馬にまたがり、王の命令に急かされて出て行った。この法令は、首都スサでも発布された。
8:15 モルデカイは、青と白の王の衣をまとい、大きな金の冠をかぶり、上質の亜麻と紫の長い衣を着て、王の前から出て行った。町スサは喜びの声をあげ、沸き立った。
8:16 ユダヤ人にとって、それは光と喜び、楽しみと誇りに満ちた日となった。
8:17 どの州でも、どの町でも、王の命令と法令が届いたところでは、ユダヤ人に喜びと楽しみがあふれ、祝宴が開かれ、祝日となった。そして、その地の民族の多くが、ユダヤ人になった。ユダヤ人への恐れが、彼らを襲ったからだ。
9:1 第十二の月、つまりアダルの月の十三日、王の命令と法令が実行される日が来た。それは、ユダヤ人の敵が彼らを支配しようと望んでいた日だった。でも、事態はひっくり返り、ユダヤ人のほうが、彼らを憎む者たちを支配することになった。
9:2 ユダヤ人は、アハシュエロス王の全州で、自分たちの町に集まった。自分たちに害を加えようとする者に、手を下すためだ。だれも彼らの前に立ちはだかれなかった。すべての民族が、ユダヤ人への恐れに襲われたからだ。
9:3 州の高官たち、太守や総督、王に仕える役人たちはみな、ユダヤ人を支えた。モルデカイへの恐れが、彼らを襲ったからだ。
9:4 モルデカイは王宮で大きな力を持ち、その名声はすべての州に広がっていった。この人モルデカイは、ますます力を増していったのだ。
9:5 ユダヤ人は、すべての敵を剣で討ち、殺し、滅ぼした。自分たちを憎む者たちを、思いのままにあつかった。
9:6 首都スサでは、ユダヤ人は五百人を殺し、滅ぼした。
9:7 パルシャンダタ、ダルフォン、アスパタ、
9:8 ポラタ、アダルヤ、アリダタ、
9:9 パルマシュタ、アリサイ、アリダイ、ワイザタ。
9:10 この十人は、ユダヤ人の敵ハマン——ハメダタの子——の息子たちだった。ユダヤ人は彼らを殺した。しかし、その財産には手を出さなかった。
9:11 その日、首都スサで殺された者の数が、王に報告された。
9:12 王は王妃エステルに言った。「首都スサだけで、ユダヤ人は五百人を殺し、ハマンの十人の息子も殺した。ほかの王の州では、いったいどれほどのことをしたのだろう。さあ、あなたの願いは何か。かなえてあげよう。ほかに望みがあれば、それも聞き入れよう。」
9:13 エステルは答えた。「もしよろしければ、スサにいるユダヤ人に、明日も今日と同じように行うことをお許しください。そして、ハマンの十人の息子を柱にかけて、さらしてください。」
9:14 王は、そうするように命じた。スサで法令が出され、人々はハマンの十人の息子をさらしものにした。
9:15 スサにいるユダヤ人は、アダルの月の十四日にも集まり、スサで三百人を殺した。しかし、その財産には手を出さなかった。
9:16 王の各州にいるほかのユダヤ人も集まり、自分たちの命を守るために立ち上がった。こうして敵から解放され、自分たちを憎む者、七万五千人を殺した。しかし、その財産には手を出さなかった。
9:17 これはアダルの月の十三日のことだった。そして十四日には休み、その日を祝宴と喜びの日とした。
9:18 一方、スサにいるユダヤ人は、十三日と十四日に集まり、十五日に休んだ。そして、その日を祝宴と喜びの日とした。
9:19 だから、城壁のない町々に住む地方のユダヤ人は、アダルの月の十四日を喜びと祝宴の日、祝日とし、たがいに贈り物を送り合う。
9:20 モルデカイはこれらのことを書き記し、アハシュエロス王の全州にいるユダヤ人に、近くの者にも遠くの者にも手紙を送った。
9:21 それは、毎年アダルの月の十四日と十五日を祝う日として守るよう、彼らに定めるためだった。
9:22 この二日間は、ユダヤ人が敵から解放された日であり、悲しみが喜びに、嘆きが祝いの日に変わった月だった。だからこの日々を、祝宴と喜びの日、たがいに贈り物を送り合い、貧しい人々に施しをする日とするよう定めたのだ。
9:23 こうしてユダヤ人は、自分たちがすでに始めていたこと、そしてモルデカイが書き送ったことを、これからも守ることにした。
9:24 というのも、すべてのユダヤ人の敵であるアガグ人ハンメダタの子ハマンが、ユダヤ人を滅ぼそうとたくらみ、彼らを絶やして滅ぼすためにプル、つまりくじを引いたからだ。
9:25 しかし、エステルが王の前に出ると、王は手紙で命じ、ハマンがユダヤ人に向けてめぐらした悪だくみを、彼自身の頭に返した。こうしてハマンとその息子たちは木にかけられた。
9:26 だから、この日々は「プル」という言葉にちなんで「プリム」と呼ばれるようになった。この手紙のすべての言葉と、彼らがこの出来事で見たこと、身に起こったことのために、
9:27 ユダヤ人は、自分たちと子孫、そして自分たちに加わるすべての人のために、この二日間を毎年、定められたとおり、決められた時に必ず守ることを、堅く決意し受け入れた。
9:28 この日々は、どの世代でも、どの家族、どの州、どの町でも、思い起こされ、守られる。このプリムの日々がユダヤ人の間からなくなることはなく、その記憶が子孫から消えることもない。
9:29 アビハイルの娘である王妃エステルと、ユダヤ人モルデカイは、このプリムについての二通目の手紙を確かなものとするため、あらゆる権威をもって書き記した。
9:30 そしてモルデカイは、アハシュエロスの王国の百二十七州にいるすべてのユダヤ人に、平和と真実の言葉をもって手紙を送った。
9:31 それは、このプリムの日々を決められた時に守り続けるためだった。ユダヤ人モルデカイと王妃エステルがユダヤ人のために定め、また彼ら自身と子孫のために断食と嘆きのことを定めたとおりに、守り続けるためである。
9:32 エステルの命令によって、このプリムについての事柄は確かなものとされ、そして書物に記された。
10:1 アハシュエロス王は、国じゅうと海の島々に税を課した。
10:2 王の力と勇ましい働きのすべて、そして王が高い地位に引き上げたモルデカイの偉大さについての詳しい話は、メディアとペルシアの王たちの歴代誌に記されているとおりである。
10:3 ユダヤ人モルデカイは、アハシュエロス王に次ぐ第二の人物であり、ユダヤ人の間で大いに重んじられ、多くの同胞に好かれていた。彼は自分の民の幸せを願い、すべての同胞のために平和を語ったのである。
ヨブ記
1:1 ウツの地にヨブという名の人がいた。彼はまっすぐで正しく、神を敬い、悪から遠ざかって生きていた。
1:2 彼には七人の息子と三人の娘が生まれた。
1:3 その家畜は羊七千頭、らくだ三千頭、牛五百くびき、雌ろば五百頭にのぼり、使用人もたくさんいた。こうして彼は、東の国の人々の中でだれよりも大きな者となった。
1:4 その息子たちは、それぞれ自分の日に自分の家で宴会を開き、三人の姉妹も招いて一緒に食べたり飲んだりしていた。
1:5 ふるまいの日が一巡りするたびに、ヨブは息子たちを呼び寄せて聖別した。そして朝早く起き、彼ら一人ひとりの数だけ焼き尽くすいけにえをささげた。ヨブはこう考えていたからだ。「もしかしたら息子たちは罪を犯し、心の中で神をのろったかもしれない。」ヨブはいつもこうしていた。
1:6 ある日、神の子たちがやって来て、主の前に立った。サタンも彼らに混じってやって来た。
1:7 主はサタンに言った。「おまえはどこから来た。」サタンは主に答えた。「地上を歩き回り、あちこち行き来していました。」
1:8 主はサタンに言った。「わたしのしもべヨブに気づいたか。地上に彼のような者はいない。彼は正しくて誠実な人だ。神を敬い、悪を避けて生きている」
1:9 サタンは主に答えた。「ヨブが理由もなく神を敬うと思いますか。
1:10 あなたは彼と彼の家、そして彼が持っているすべてのものを、まわりからぐるりと守ってきたのではありませんか。彼の手がすることを祝福したから、その家畜は地に増え広がったのです。
1:11 しかし今、あなたの手を伸ばして、彼の持ち物すべてを撃ってみてください。彼はきっと、あなたに面と向かってあなたをのろうでしょう。」
1:12 主はサタンに言った。「いいか、彼の持ち物はすべておまえの手にゆだねる。ただし、彼自身には手を出すな。」こうしてサタンは主の前から出て行った。
1:13 ある日のこと、ヨブの息子や娘たちは、いちばん上の兄の家で食事をし、ぶどう酒を飲んでいた。
1:14 使者がヨブのもとに来て言った。「牛が畑を耕し、そのそばでろばが草を食べていました。
1:15 シバ人が襲ってきて牛やろばを奪い、若者たちを剣で切り殺した。わたしだけが逃げのびて、こうしてあなたに知らせている」
1:16 彼がまだ話している間に、もう一人がやって来て言った。「神の火が天から降ってきて、羊と羊飼いたちを焼き尽くしてしまいました。逃げ延びたのはわたしひとりだけです。それをあなたに伝えに来ました」
1:17 そのとき、彼がまだ話している間に、また別の一人が来て言った。「カルデヤ人が三つの組に分かれて、らくだを襲って奪って行きました。若者たちは剣で切り殺されました。わたしだけが逃げのびて、こうしてあなたに知らせに来たのです。」
1:18 彼がまだ話しているうちに、また別の人が来て言った。「あなたの息子さんと娘さんたちが、いちばん上の兄さんの家で食事をし、ぶどう酒を飲んでいました。
1:19 荒れ野の方から激しい風が吹いてきて、家の四隅を襲ったのです。家は若い人たちの上に崩れ落ち、みんな死んでしまいました。わたしだけが逃げのびて、こうしてあなたに知らせに来ました」
1:20 ヨブは立ち上がると、上着を引き裂き、頭をそり落とした。そして地面にひれ伏して、こう言った。
1:21 わたしは裸で母の胎から出てきた。そして裸でそこへ帰る。主が与え、主が取られた。主の名がたたえられますように。
1:22 すべてのことが起きても、ヨブは罪を犯さなかった。神を非難するような愚かなことも言わなかった。
2:1 ある日、神の子たちがやって来て、主の前に立った。サタンも彼らに混じってやって来て、主の前に立った。
2:2 主はサタンに言った。「おまえはどこから来た。」サタンは主に答えた。「地上を歩き回り、あちこち行き来していました。」
2:3 主はサタンに言った。「わたしのしもべヨブに目を留めたか。地上に彼のような人はいない。ヨブは誠実でまっすぐな人だ。神を恐れ、悪から遠ざかっている。あなたは、理由もなく彼を滅ぼそうとわたしをそそのかした。それでも彼は、今も変わらずまっすぐに生きている。」
2:4 サタンは主に答えた。「皮には皮を、だ。人は自分の命を守るためなら、持っているものすべてを差し出す。
2:5 しかし、あなたの手を伸ばして、彼の骨と肉に触れてみてください。彼はきっと、あなたに面と向かってあなたをのろうでしょう。」
2:6 主はサタンに言った。「よし、彼はおまえの手の中だ。ただし、彼の命は奪うな。」
2:7 サタンは主の前から出て行った。そしてヨブを打った。足の裏から頭のてっぺんまで、ひどい腫れ物ができた。
2:8 ヨブは陶器のかけらを取って、それで体をかきむしった。そして灰の中にすわり込んでいた。
2:9 妻は彼に言った。「あなたはまだ、自分の正しさにしがみついているの? 神を呪って死んでしまいなさい」
2:10 ヨブは彼女に言った。「まるで愚かな女みたいなことを言うんだな。わたしたちは神から良いものを受け取っている。それなら、悪いものも受け取るべきじゃないか。」こうしたすべてのことの中でも、ヨブは口で罪を犯すことはなかった。
2:11 ヨブの三人の友人は、ヨブに降りかかったこの災難のことをすべて聞きつけた。そして、それぞれ自分の住む所からやって来た。テマン人エリファズ、シュア人ビルダデ、ナアマ人ツォファルである。彼らは示し合わせて、いっしょにヨブを見舞い、慰めようとやって来たのだ。
2:12 彼らは遠くから目を上げて見たが、それがヨブだとはわからないほどだった。それで声をあげて泣き、それぞれ自分の上着を引き裂き、天に向かってちりをまき上げ、自分たちの頭にふりかけた。
2:13 七日七夜、彼らは彼とともに地面に座っていた。だれも彼に一言も声をかけなかった。彼の苦しみがあまりにも深いのを見たからだ。
3:1 この後、ヨブは口を開き、自分の生まれた日をのろった。
3:2 ヨブは口を開いて言った。
3:3 わたしが生まれた日は、消えてなくなればいい。「男の子が宿った」と告げた夜も、そうなればいい。
3:4 その日は、闇になればいい。神が上からその日を気にかけることもなく、光がその日を照らすこともないように。
3:5 やみと暗黒がその日を奪い返すように。雲がその上に垂れこめるように。日を暗くするものが、その日をおびえさせるように。
3:6 その夜は、闇に飲み込まれてしまえ。一年のどの日にも数えられず、どの月にも入れられませんように。
3:7 また、その夜が実りのない夜となるように。喜びの声がそこに聞こえないように。
3:8 日をのろう者たちよ、その日をのろえ。レビヤタンを呼び起こすことができる者たちよ。
3:9 その夕暮れの星は暗くなればいい。夜が明けるのを待っても光は差さず、あけぼののまぶたを見ることもないように。
3:10 これは、わたしの母の胎の戸を閉じることなく、この苦しみをわたしの目から隠してくれなかったからだ。
3:11 なぜ、わたしは母の胎から出て、そのとき死ななかったのか。腹から出たとき、どうして息絶えなかったのか。
3:12 なぜ、ひざがわたしを受けとめたのか。なぜ、乳房があって、わたしはそれを吸ったのか。
3:13 そうすれば今ごろ、わたしは横になって静かに眠り、安らかに休んでいただろうに。
3:14 王たち、地の参議たち、自分のために廃墟を築き直した人たちとともに。
3:15 金や銀を持ち、それを家いっぱいに満たした君主たちと一緒に。
3:16 胎児として隠されたまま、わたしはこの世にいなかったならよかった。光を見ることのなかった赤ん坊のように。
3:17 そこでは、悪人も乱暴をやめる。疲れ果てた者も、そこで安らぐ。
3:18 捕らわれ人も共に安らかにいて、追い立てる者の声を聞くこともない。
3:19 小さい者も大きい者も、みんなそこにいる。奴隷も、主人から解き放たれて自由になる。
3:20 なぜ、苦しむ人に光が与えられ、心の痛む人に命が与えられるのか。
3:21 死を待ち望んでも死は来ない。隠された宝を探すよりも必死に、死を求めているのに。
3:22 彼らは墓を見つけると、大喜びして小躍りする。
3:23 わたしはなぜ、道を閉ざされ、神に周りを囲まれた人間に、光が与えられるのか。
3:24 わたしはパンを食べるより先に、ため息が出てくる。うめき声が水のようにあふれ出るのだ。
3:25 わたしが恐れていたことが、現実になった。おびえていたことが、わたしの身にふりかかった。
3:26 わたしは安らかでなく、穏やかでもない。休むこともできず、ただ苦しみだけがやってくる。
4:1 その時、テマン人エリファズが口を開いて答えた。
4:2 もし誰かがあなたに話しかけたら、うるさく感じるだろうか。でも、黙っていられる人などいるだろうか。
4:3 見よ、あなたは多くの人を励まし、弱った手を強くしてきた。
4:4 あなたの言葉はつまずく人を助け起こし、くずおれる膝を強くした。
4:5 今、それがあなたにふりかかると、あなたは弱り果てる。それがあなたに触れると、あなたはおじけづく。
4:6 あなたが神を敬っていること、それがあなたの支えではないか。あなたの生き方がまっすぐであること、それがあなたの希望ではないか。
4:7 だれか思い出してみてほしい。罪のない人が滅ぼされたことがあるだろうか。正しい人が絶たれたことが、どこにあっただろうか。
4:8 わたしが見てきたところ、悪をたがやし、災いの種をまく者は、それを刈り取ることになる。
4:9 神の吹きかける息で彼らは滅び、その怒りの風で消えうせる。
4:10 ライオンのほえる声、猛るライオンのうなり声、それも消える。若いライオンの牙は折られる。
4:11 獲物を得られずに、雄ライオンは死んでいく。雌ライオンの子どもたちも、散り散りになる。
4:12 さて、わたしのところに、ひとつの言葉がひそかに届いた。わたしの耳は、そのささやきをかすかに聞き取った。
4:13 夜、人が深い眠りに落ちるころ、幻を見て思い乱れていた時、
4:14 恐れとおののきがわたしを襲い、骨という骨が震えあがった。
4:15 そのとき、霊がわたしの顔の前を通り過ぎた。わたしの体の毛は逆立った。
4:16 そのものは立ち止まったが、姿をはっきり見分けることはできなかった。ただ、一つの形がわたしの目の前にあった。あたりは静まりかえり、わたしは一つの声を聞いた。
4:17 人は神の前に正しくあることができるだろうか。造り主の前に清くあることができるだろうか。
4:18 見よ、神はそのしもべたちさえ信頼せず、天使たちにさえ落ち度を見いだす。
4:19 まして、泥の家に住む者はどうだろう。ちりを土台とし、しみのように押しつぶされてしまう者たちだ。
4:20 彼らは朝から夕までの間に打ち砕かれ、気づく者もないまま、永遠に消え去っていく。
4:21 その天幕の綱が引き抜かれてしまえば、彼らは死んでしまう。それも、悟りを得ないまま。
5:1 試みに呼んでみるがいい。だれかあなたに答えてくれるだろうか。どの聖なる者に、あなたは助けを求めるつもりなのか。
5:2 確かに、怒りは愚かな者を殺し、ねたみは考えの浅い者の命を奪う。
5:3 わたしは、愚かな者が根を張っていくのを見た。でも、そのすみかはあっという間にのろわれた。
5:4 その子どもたちは安全から遠ざけられ、町の門で打ちのめされても、助けてくれる者はいない。
5:5 その収穫は飢えた人が食べ、いばらの中からさえ奪い取る。かわいた者は彼らの財産をむさぼり求める。
5:6 苦しみは、ちりから起こるものではない。悩みは、土から生えてくるものでもない。
5:7 人が生まれて苦しみを負うのは、火の粉が上へ飛んでいくのと同じだ。
5:8 しかし、わたしなら神に求める。わたしのことは神にゆだねる。
5:9 彼は大いなることをなさる方だ。その働きは、はかり知れない。数えきれないほどの不思議なわざを行う。
5:10 雨で地をうるおし、野に水を送ってくださる。
5:11 彼は低い者を高く引き上げ、悲しむ者を安全な高い場所へ導く。
5:12 彼は悪賢い者のたくらみをくじく。だから彼らは何一つやり遂げられない。
5:13 彼は賢い者を、その悪知恵ごと捕らえる。ずる賢い者のたくらみを、あっけなく打ち砕く。
5:14 昼間なのに、彼らは暗やみにぶつかる。真昼にも、夜のように手探りする。
5:15 貧しい者を、彼らの口の剣から救い、力ある者の手から救い出す。
5:16 乏しい者に望みが生まれ、不正はその口を閉じる。
5:17 見よ、神に正される人は幸せだ。だから、全能者の懲らしめを軽く見てはいけない。
5:18 彼は傷つけるが、また包んでくれる。打つが、その手で治してくれる。
5:19 六つの苦しみからあなたを救い出し、七つ目でも、災いがあなたに触れることはない。
5:20 ききんの時には、あなたを死から救い出し、戦いの時には、剣の力から救い出してくださる。
5:21 舌のむちで打たれるときも、あなたは守られる。破滅が襲ってくるときも、恐れることはない。
5:22 滅びとききんを笑い飛ばし、地の獣を恐れることもない。
5:23 野の石はあなたと同盟を結び、野の獣もあなたと仲良く暮らすからだ。
5:24 あなたは自分の天幕が安全なことを知る。自分の家畜のおりを見回っても、欠けているものは何もない。
5:25 あなたの子孫が多くなり、その末が地の草のように増えるのを、あなたは知る。
5:26 あなたは十分に年を重ねてから墓に入る。麦の束がその季節になって運び込まれるように。
5:27 見よ、わたしたちが調べたところ、これはこのとおりだ。だから聞いて、あなた自身のものにしなさい。
6:1 ヨブは答えて言った。
6:2 どうかわたしの怒りがきちんと量られ、わたしの災いもいっしょにはかりに乗せられますように。
6:3 そうすれば、それは海の砂よりも重いだろう。だから、わたしの言葉は乱れてしまった。
6:4 全能者の矢がわたしに突き刺さっている。わたしの霊はその毒を飲みほし、神がもたらす恐怖がわたしに襲いかかる。
6:5 野ろばは、草があるのに鳴くだろうか。牛は飼い葉があるのに、うなるだろうか。
6:6 味のないものは塩なしで食べられるだろうか。卵の白身に味なんてあるだろうか。
6:7 わたしの魂はそれに触れることさえ拒む。それはわたしの吐き気を催す食べ物のようだ。
6:8 どうかわたしの願いがかなえられますように。どうか神が、わたしの望むものをくださいますように。
6:9 どうか神が、わたしを打ち砕こうと決めてくださるように。その手を伸ばして、わたしを断ち切ってくださるように。
6:10 そうすれば、わたしはまだ慰めを得られる。この激しい苦しみの中でも、喜び踊れる。わたしは聖なる方の言葉を、隠したことがないのだから。
6:11 わたしにいったいどんな力があって、これ以上待ちつづけられるだろう。どんな終わりが待っているというので、耐えつづけられるだろう。
6:12 わたしの力は石の力のようだろうか。わたしの体は青銅でできているのか。
6:13 わたしのうちに、もう頼れる力なんてない。立ち直る望みも、わたしから追いやられてしまった。
6:14 友を思いやることをやめる者は、全能者を敬う心も捨ててしまう。
6:15 わたしの兄弟たちは、涸れた谷川のように裏切った。雨で水があふれても、すぐに消えてしまう流れのように。
6:16 これは氷のために黒くにごり、その上に雪が積もって見えなくなる。
6:17 暑くなると溶けて消え、暑さの中で跡形もなくなる。
6:18 隊商はその道をそれ、荒れ地へさまよい出て、消えていく。
6:19 テマの隊商はそれを探し求め、シバの旅人たちはそれを待ち望む。
6:20 彼らはこの流れを頼りにして、来てみると失望した。
6:21 あなたがたは今、まさにそんな存在になった。わたしの災難を見て、恐れているのだ。
6:22 わたしはこう言ったことがあるか。「わたしに何かをくれ」とか、「君たちの財産の中からわたしのために賄賂を贈ってくれ」などと。
6:23 敵の手からわたしを救い出せ、暴虐な者の手からわたしを助け出せ』と言ったか。
6:24 わたしに教えてほしい。そうすれば、わたしは黙る。どこで間違ったのか、はっきり教えてくれ。
6:25 正しい言葉には、なんと力があることか。でも、あなたたちの議論は何を証明するのだろう。
6:26 あなたがたは、言葉じりをとらえて責め立てようというのか。追いつめられた者の言葉を、風のように受け流すのか。
6:27 孤児のためにくじを引き、友さえも売り飛ばそうとする。
6:28 今、どうか、わたしをまっすぐ見てほしい。あなたたちに面と向かって、わたしは嘘をついたりしない。
6:29 どうぞ、考え直してほしい。まちがってはいけない。もう一度考え直してくれ。わたしは正しいのだから。
6:30 わたしの舌に不正があるだろうか。わたしの口は、悪いことを見分けられないのだろうか。
7:1 地上での人の一生は、つらい戦いのようなものではないか。その日々は、雇われて働く人の日々と同じではないか。
7:2 奴隷が夕暮れの日陰を待ち望み、雇い人が自分の賃金を待ち望むように。
7:3 わたしは、むなしい月を持たされ、つらい夜を割り当てられる。
7:4 わたしは横になると思う。「早く起きる時間にならないかな」と。でも夜は長い。夜明けまで、わたしは寝返りばかり打っている。
7:5 わたしの肉はうじ虫と土くれをまとっている。皮膚は固まり、そしてまた崩れていく。
7:6 わたしの日々は機織りの杼よりも速く過ぎ、望みもないまま尽きていく。
7:7 記憶しておいてほしい。わたしの命は風のようにはかない。わたしの目は二度と幸せを見ることがないのだ。
7:8 わたしを見ていた人の目も、もうわたしを見ることはない。あなたがわたしに目を向けても、わたしはもういない。
7:9 雲が消えて、なくなっていく。同じように、死んだ者の世界に下る者は、二度と戻って来ない。
7:10 彼は二度と自分の家に戻らない。住んでいた場所も、もう彼を覚えていない。
7:11 わたしももう黙ってはいない。心が苦しいから、口を開いて話す。魂がつらいから、嘆きをぶつける。
7:12 わたしは海か、あるいは怪物なのか。どうしてあなたは、わたしに見張りをつけるのか。
7:13 「ベッドがわたしを慰めてくれる、寝床がわたしの嘆きを軽くしてくれる」とわたしが思っても、
7:14 あなたは夢でわたしをおびえさせ、幻でわたしを恐れさせる。
7:15 わたしは首を絞められて死ぬほうがましだと思う。この骨のままで生きるより、死んだほうがいい。
7:16 わたしは命がいやになった。いつまでも生きていたいとは思わない。もう、わたしにかまわないでほしい。わたしの日々は、はかない息にすぎないのだから。
7:17 人は何者なのか。あなたはそれをこれほど大きく扱い、心に留める。
7:18 朝ごとにその人を見張り、絶え間なく試すのか。
7:19 いつまであなたは、わたしから目をそらしてくれないのか。つばを飲みこむ間さえ、わたしをそっとしておいてくれないのか。
7:20 わたしは罪を犯した。でも、人を見張るあなたに、いったい何ができるというのか。どうしてわたしを的にして狙うのか。どうしてわたしは、自分で自分の重荷になってしまったのか。
7:21 どうして、わたしのそむきを赦し、わたしの過ちを取り除いてくださらないのか。わたしはもうすぐ土の中に横たわる。あなたが探しても、わたしはもういないのだ。
8:1 シュヒ人ビルダデが答えて言った。
8:2 「いつまでそんなことを言い続けるのか。あなたの口から出る言葉は激しい風のようだ。
8:3 神は正しい裁きを曲げたりしない。全能者が正義を曲げることなどあるだろうか。
8:4 あなたの子供たちが神に罪を犯したのなら、神は彼らをその罪の報いに引き渡されたのだ。
8:5 もしあなたが神を真剣に求め、全能の方にすがって祈るなら、
8:6 あなたがもし清く正しいなら、神は必ずあなたのために立ち上がり、あなたの正しい住まいを豊かにしてくれる。
8:7 あなたの始まりはささやかでも、あなたの終わりはとても大きくなる。
8:8 先の世代の人たちに聞いてみるといい。先祖たちが調べ上げてきたことに、耳を傾けてみよう。
8:9 われわれは、ほんの昨日生まれたばかりで、何も知らない。この地上で生きる日々は、影のようにはかないのだから。
8:10 彼らこそが、あなたに教え、あなたに語りかけ、その心の奥から言葉を出してくれるのではないか。
8:11 泥のない所でパピルスは育つだろうか。水のない所で葦は生い茂るだろうか。
8:12 これはまだ若く、緑のまま、刈られてもいないのに、どの草よりも先に枯れてしまう。
8:13 すべて神を忘れる者の行き着く先は、これと同じだ。神を信じない者の望みは消えてなくなる。
8:14 その頼みは断ち切られ、寄りかかるところは、くもの巣のようだ。
8:15 その家に寄りかかろうとしても、家は立たない。それにすがりついても、それは持ちこたえない。
8:16 日の光を受けて青々と茂り、その若枝を園いっぱいに伸ばしていく。
8:17 その根は石の山にからみつき、石だらけの場所に生きている。
8:18 もしその場所から引き抜かれてしまえば、その場所は彼を知らないと言う。「お前など見たこともない」と。
8:19 見よ、これがその生き方の喜びだというのか。そして、そのあとには別の者が土から生えてくる。
8:20 見よ、神は正しい人を見捨てたりしない。悪を行う者に力を貸すこともしない。
8:21 笑いであなたの口を満たし、あなたの唇を喜びの叫びで満たしてくださる。
8:22 あなたを憎む者は恥に包まれ、悪しき者の住まいは消えてなくなる。
9:1 ヨブは答えて言った。
9:2 まことにわたしは、それがそのとおりだと知っている。でも、人はどうして神の前に正しくあれるだろうか。
9:3 よし神と争おうとしても、千に一つも答えることはできない。
9:4 彼は心が知恵に満ち、力もみなぎっている。神に逆らって、無事だった者などいるだろうか。
9:5 彼は山を動かすが、山はそれに気づかない。彼は怒って山をひっくり返す。
9:6 彼は大地を揺さぶって、その場所から動かす。すると大地を支える柱が激しく震える。
9:7 日は昇るなと命じれば、日は昇らない。星々を閉じ込めて、光らせない。
9:8 天を張ったのは、ただひとりその方だけ。海の高波を踏みつけて歩く。
9:9 彼は北斗七星、オリオン座、すばるを造り、南の星々をちりばめた。
9:10 大いなることを行われる方だ。それは、はかり知れない。数えきれないほどの不思議なわざを行う。
9:11 見よ、彼がわたしのそばを通り過ぎても、わたしには見えない。過ぎ去って行かれても、わたしはそれに気づかない。
9:12 見よ、彼が奪い去っても、だれがそれを引き止められるだろう。だれが彼に「何をしているのか」と言えるだろう。
9:13 神はその怒りをおさめない。ラハブに味方する者たちも、神の前にひれ伏したのだ。
9:14 どうしてわたしが神に言い返し、言葉を選んで議論などできるだろうか。
9:15 たとえわたしが正しくても、言い返すことはできない。わたしを裁く方に、ただあわれみを願うしかない。
9:16 もしわたしが呼びかけて、神が答えてくださったとしても、わたしの声に耳を傾けてくれたとは信じられない。
9:17 彼は嵐でわたしを打ち砕き、理由もないのにわたしの傷を増やす。
9:18 わたしに息をつく間も与えず、苦い物でわたしを満たす。
9:19 力の争いなら、見よ、彼は強い。裁きのことなら、だれが彼を呼び出せるだろう。
9:20 もしわたしが「自分は正しい」と言っても、わたしの口がわたしを罪ある者にしてしまう。たとえ落ち度がなくても、その口はわたしを曲がった者と決めつける。
9:21 わたしには落ち度はない。それでも、自分が自分でわからなくなる。こんな命など、もういやだ。
9:22 皆同じことだ。だから、わたしはこう言う。「神は正しい人も悪い人も、区別なく滅ぼしてしまう」と。
9:23 災いが突然人を襲って殺すとき、神は罪のない者の苦しみをあざ笑う。
9:24 地は悪人の手に渡されている。地の裁判官たちは目をおおわれている。そうでないなら、いったい誰のしわざなのか。
9:25 わたしの日々は、走る使者よりも速く過ぎ去っていく。幸せを見ることもなく、飛ぶように去っていく。
9:26 わしは獲物めがけて飛びかかる。わたしの一生はそんなふうに、葦の小舟のように速く過ぎ去っていく。
9:27 たとえわたしが「嘆くのはやめよう。暗い顔をやめて、元気を出そう」と言っても、
9:28 わたしは苦しみのすべてを恐れている。あなたがわたしを罪のない者としないことを、わたしは知っているからだ。
9:29 わたしは悪い者とされている。だったら、どうしてむだに苦労するのだろう。
9:30 雪で身を洗い、灰汁で手を洗ってきれいにしても、
9:31 わたしを汚水の中に投げ込むので、着ている服さえもわたしをきらうようになる。
9:32 神はわたしのような人間ではない。だから、わたしは反論できないし、二人でいっしょに裁きの場に立つこともできない。
9:33 わたしたちの間には、二人の上に手を置いて仲裁してくれる人がいない。
9:34 わたしを打つその鞭を、わたしから取り去ってほしい。神への恐れで、わたしをおびえさせないでほしい。
9:35 わたしは何も恐れず、彼に語りかけるだろう。でも今のわたしは、そんな状態ではない。
10:1 わたしは自分の命がいやになった。だから、思いのたけを吐き出そう。この魂の苦しみのままに語ろう。
10:2 わたしは神に言おう。わたしを罪ある者と決めつけないでください。なぜわたしと争うのか、それを教えてください。
10:3 あなたは人を苦しめ、自分の手で造ったものを見捨て、悪人の企てには光を当てる。それがあなたには良いことなのか。
10:4 あなたの目は肉の目なのか。あなたは人が見るようにしか見ないのか。
10:5 あなたの日々は人の一生ほど短いのか。あなたの年月は人の年月のように限りがあるのか。
10:6 わたしの過ちを探し出し、わたしの罪を調べ上げようとするのか。
10:7 あなたはわたしが悪くないことを知っている。それでも、あなたの手から救い出せる者はいない。
10:8 あなたの手がわたしをかたどり、わたしを造り上げた。それなのに今、あなたはわたしを滅ぼそうとしている。
10:9 わたしを土くれのように造ったことを、どうか思い出してほしい。それなのに、わたしをちりに帰らせようとするのか。
10:10 乳のように、わたしを注ぎ出したではないか。そしてチーズのように、固まらせたではないか。
10:11 あなたは肉と皮とをわたしに着せ、骨と筋とでわたしを組み立ててくれた。
10:12 命といつくしみをわたしに与え、心にかけてわたしの霊を守ってくださった。
10:13 わたしはわかっている。あなたはこれらのことを心の奥にしまい込んでいた。この思いが、ずっとあなたの中にあったのだ。
10:14 わたしが罪を犯せば、あなたはそれを見張っていて、わたしを罪から解き放してはくださらない。
10:15 もしわたしが悪いのなら、ああ、わたしはもうおしまいだ。でも、たとえ正しくても、頭を上げることはできない。わたしは恥にまみれ、自分の苦しみに沈んでいる。どうか、わたしの苦しみを見てください。
10:16 もしわたしが頭を上げれば、あなたはライオンのようにわたしを追いつめ、ふたたびわたしに向かって恐ろしい力を見せつける。
10:17 あなたは証人を次々と立ててわたしを責め、わたしへの怒りをますます強くする。次から次へと軍勢を送り込んでわたしを攻めるのだ。
10:18 わたしをお母さんのお腹から出したのは、どうしてなのか。いっそ、だれの目にも触れないまま、息絶えていればよかったのに。
10:19 胎から墓に運ばれて、初めから存在しなかったようであったなら。
10:20 わたしの生きる日々は、あとほんの少しではないか。だから、そっとしておいてほしい。少しでもほっとできるように。
10:21 わたしは、二度と戻れないあの場所へ行く。暗く、死の陰に包まれた地へ。
10:22 これは暗闇の地。真っ暗で、死の陰に包まれ、秩序もない。光さえも闇のようだ。」
11:1 ゾパルはこう答えた。
11:2 言葉が多ければ、それだけで正しいと認められるのか。口の達者な人が、それで正しいとされるのか。
11:3 あなたのむだ話を聞いて、人は黙り込むだろうか。あなたがあざけっても、だれもたしなめないというのか。
11:4 あなたは言う。「わたしの主張は正しい。神の目から見て、わたしは潔白だ」と。
11:5 神がぜひ口を開いて、あなたに語ってくれたらいい。
11:6 知恵の奥深さをあなたに示してくださるように。知恵には、人には見えない両面があるからだ。だから知っておくといい。神はあなたの罪に見合うよりも軽く罰しておられるのだ。
11:7 神の深いところを、あなたは究めることができるだろうか。全能者の限界まで、あなたは知り尽くすことができるだろうか。
11:8 天よりも高い。あなたに何ができるだろう。よみよりも深い。あなたに何がわかるだろう。
11:9 その大きさは地よりも長く、海よりも広い。
11:10 もし神が通りかかって人を捕らえ、裁きの場に呼び集めたら、だれがそれを止められるだろう。
11:11 彼は偽りの人間を見抜いておられる。悪を見のがすことは決してない。
11:12 中身のない人間が賢くなるなんて、野ろばの子が人として生まれるようなものだ。
11:13 もしあなたが心を正しく整え、神に向かって手を差し出すなら、
11:14 もしあなたの手に不正があるなら、それを遠くに投げ捨てなさい。そして、あなたの家に悪を住まわせてはならない。
11:15 そうすれば、あなたは恥じることなく顔を上げられる。しっかりと立って、何も恐れない。
11:16 あなたは自分の苦しみを忘れる。それは流れ去った水のように思い出される。
11:17 真昼よりも明るく輝き、たとえ暗いときも朝のようになる。
11:18 あなたには希望がある。だから安心できる。まわりを見わたして、安心して休むことができる。
11:19 あなたは身を横たえて休み、あなたを脅かすものは何もない。多くの人があなたの好意を求めてやってくる。
11:20 悪しき者の目は衰えていく。逃げ場は失われ、その望みは、息絶えることでしかない。
12:1 ヨブは答えて言った。
12:2 ヨブは答えた。「たしかに、あなたたちこそ人間だ。知恵はあなたたちと一緒に死ぬのだろう。
12:3 わたしにも、あなたたちと同じように考える力がある。あなたたちに劣ってなんかいない。こんなことは、いったいだれが知らないだろう。
12:4 わたしは神に呼びかけ、答えてもらえた者だ。それなのに、友だちの笑いものになっている。正しく、非のうちどころのない人間が、笑いものにされているんだ。
12:5 何不自由なく暮らす人は、心の中で不幸な人を見下している。足をすべらせかけている人を、待ちかまえているのだ。
12:6 かすめ奪う者の天幕は栄え、神を怒らせる者は安全に暮らす。自分の手で神を好きにできると思っている者さえも。
12:7 獣に聞いてみるといい。彼らがあなたに教えてくれる。空の鳥に聞いてみるといい。それがあなたに告げてくれる。
12:8 地に問いかけてみればいい。地はあなたに教えてくれる。海の魚たちも、あなたに語ってくれる。
12:9 これらすべてのことを見て、それが主の手によることを知らない者などいるだろうか。
12:10 すべての生き物の命も、すべての人の息も、神の手のなかにある。
12:11 口が食べ物を味わうように、耳は言葉を聞き分けるのではないか。
12:12 老いた者には知恵があり、長く生きた者には物事を見通す力がある。
12:13 知恵と力は神のもとにあり、深い考えと物事を見抜く力も神のものである。
12:14 彼が壊せば、二度と建て直せない。彼が人を閉じ込めれば、誰も外に出せない。
12:15 彼が水をせき止めれば、水は干上がる。水を放てば、地をひっくり返す。
12:16 力と知恵は神とともにある。だまされる者もだます者も、神のものだ。
12:17 彼は策士たちを裸にして引いて行き、裁判官たちを愚か者にする。
12:18 王たちが縛りつけていた鎖を解き、逆に王たちの腰に縄を巻きつける。
12:19 祭司たちを裸で引いて行き、力ある者を倒す。
12:20 信頼されていた人から発言力を奪い、老人から判断力を取り去る。
12:21 高い地位の人たちに恥を注ぎ、強い者の帯をゆるめて弱らせる。
12:22 暗闇の奥に隠れたことを明るみに出し、深い闇を光の中へ導き出す。
12:23 国々を大きくし、また滅ぼす。国々を広げ、また散らす。
12:24 地の民の指導者たちの理性を奪い、道のない荒れ地でさまよわせる。
12:25 暗闇の中を、光もなく手探りさせる。酔っぱらいのようによろめかせる。
13:1 見よ、わたしの目はこれをすべて見た。わたしの耳はそれを聞いて、理解した。
13:2 あなたがたが知っていることは、わたしも知っている。わたしはあなたがたに劣らない。
13:3 わたしは全能者にこそ話したい。神と論じ合いたいのだ。
13:4 あなたがたは偽りで塗り固める者たちだ。みんな、役に立たない医者ばかりだ。
13:5 沈黙してくれないか。それがあなたたちの知恵になるだろうに。
13:6 わたしのいうことを聞いてほしい。わたしがどう訴えるか、しっかり耳を傾けてほしい。
13:7 神のために間違ったことを語ろうというのか。神をかばって偽りを述べるのか。
13:8 あなたがたは神の顔色をうかがおうとするのか。神のために弁護しようとするのか。
13:9 神があなたたちを調べるとき、あなたたちは無事でいられるだろうか。人をだますように神をだませると思っているのか。
13:10 もしあなたたちがこっそりえこひいきをするなら、神はきっとあなたたちを責めるだろう。
13:11 神の輝かしい威厳が、あなたたちを恐れさせないだろうか。神への恐れが、あなたたちを襲わないだろうか。
13:12 あなたがたの格言は灰にすぎない。あなたがたの盾は土くれの盾だ。
13:13 黙って、わたしに話をさせてくれ。そのあとは、何がわたしに降りかかってもかまわない。
13:14 わたしは自分の肉を歯にくわえ、自分の魂を手に握っている。
13:15 見よ、彼はわたしを殺すだろう。もう望みはない。それでも、わたしは自分の歩みを彼の前で貫き通す。
13:16 これこそがわたしの救いとなる。神を信じない者は、神の前に出ることができないからだ。
13:17 わたしの言葉をよく聞いてほしい。わたしの語ることに耳を傾けてほしい。
13:18 見よ、わたしはすでに自分の言い分を並べ終えた。わたしは自分が正しいと認められると分かっている。
13:19 だれか、わたしと言い争える者がいるだろうか。もしいるなら、わたしは黙って死んでいこう。
13:20 わたしにお願いがある。二つのことをしないでほしい。そうすれば、あなたの前から身を隠すことはしない。
13:21 あなたの手をわたしから離してください。あなたの恐ろしさで、わたしをおびえさせないでください。
13:22 そしてあなたが呼びかけてください。わたしが答えます。それとも、わたしに話をさせて、あなたが答えてください。
13:23 わたしの過ちや罪は、どれくらいあるのだろう。わたしのそむきと罪を、はっきり教えてください。
13:24 なぜあなたは顔を隠し、わたしを敵とみなすのか。
13:25 木の葉のように吹き飛ばされるものを、あなたはおどすのか。乾ききったもみ殻を、あなたは追いかけるのか。
13:26 あなたは苦い罪状をわたしに書きつけ、若いころの過ちの責任をわたしに負わせる。
13:27 わたしの足を足かせにはめ、わたしの歩む道をすべて見張り、わたしの足の裏に印をつける。
13:28 このような人は、腐った物のように朽ち果てていく。虫に食われた服のように、ぼろぼろになっていく。
14:1 女から生まれる人は、生きる日々は短く、悩みに満ちている。
14:2 花のように咲いては枯れ、影のように過ぎ去って、とどまることがない。
14:3 そんな者にまで、あなたは目を向けるのか。わたしを引き出して、あなたの前でさばくのか。
14:4 誰が汚れたものの中から清いものを取り出せるだろうか。そんなことは、誰にもできない。
14:5 その日数は定められ、その月の数もあなたが握っている。あなたが越えられない限界を定めたのだから、
14:6 彼から目をそらし、そっとしておいてください。そうすれば彼は、雇われた働き手のように、その一日を終えられるのだから。
14:7 木には望みがある。切り倒されても、また芽を出し、その若い枝は絶えることがない。
14:8 たとえその根が地の中で古くなり、幹が土の中で枯れても、
14:9 水の香りをかいだだけで芽を出し、若木のように枝を伸ばす。
14:10 わたしたちは死ねば、力を失って倒れる。息を引き取れば、もうどこにもいない。
14:11 水が湖から消え、川が枯れて干上がるように。
14:12 人は横になったら、二度と起き上がらない。天がなくなるまで、目を覚ますことはない。眠りから引き上げられることもない。
14:13 どうぞ、わたしを死者の世界に隠してください。あなたの怒りがおさまるまで、そこにかくまってほしい。そして、わたしのために時を決めて、もう一度わたしを思い出してください。
14:14 人がもし死んだら、また生きられるのだろうか。わたしはこの苦役の日々のあいだ、解放の時が来るまで待ち続けよう。
14:15 あなたが呼んでくだされば、わたしは答える。あなたはご自分の手で造ったものを、いとおしんでくださる。
14:16 その時あなたはわたしの一歩一歩を数え、わたしの罪を見張っておられる。
14:17 わたしの罪は袋に封じられ、あなたはわたしのとがを覆い隠される。
14:18 山は崩れ落ち、岩もその場所から動かされる。
14:19 水は石をすり減らし、洪水は地の土を流し去る。こうしてあなたは、人の望みを打ち砕く。
14:20 あなたは彼にいつまでも勝ちつづけ、彼は去っていく。あなたは彼の顔かたちを変え、彼を追いやる。
14:21 彼の子らが尊敬されても、彼はそれを知らない。子らが落ちぶれても、彼はそれに気づかない。
14:22 ただ、その身に痛みだけを感じ、その魂は自分のために嘆くのだ。」
15:1 テマン出身のエリファズが答えて言った。
15:2 知者はむなしい知識で答えたりするだろうか。東風でおなかを満たしたりするだろうか。
15:3 議論は無益な言葉でするものだろうか。役に立たない言葉で何かの役に立つだろうか。
15:4 あなたは神を恐れることさえやめ、神の前で祈ることもしなくなっている。
15:5 あなたの罪があなたの口にそう言わせ、あなたはずる賢い人の語り方を選んでいる。
15:6 あなたの口が、あなたを罪に定める。わたしではない。あなたの唇が、あなたに不利な証言をする。
15:7 あなたは最初に生まれた人間なのか。丘よりも先に生まれたのか。
15:8 神の会議を、あなたは立ち聞きしたのか。知恵を、あなただけのものにしているのか。
15:9 あなたが知っていて、わたしたちが知らないことがあるだろうか。あなたにわかって、わたしたちにわからないことがあるだろうか。
15:10 われわれの中には、白髪の人も年老いた人もいる。あなたの父よりも年上なのだ。
15:11 神の慰めや、あなたにやさしく語られた言葉は、あなたには物足りないというのか。
15:12 どうしてあなたの心は乱れてしまうのか。どうしてあなたの目はぎらぎらするのか。
15:13 神に向かって怒りをぶつけ、口からこんな言葉を吐き出すとは。
15:14 人はいったい何者なのか。どうして清くいられるだろう。女から生まれた者が、どうして正しくいられるだろう。
15:15 見よ、神は聖なる者たちさえ信頼しない。天でさえ、神の目には清くないのだ。
15:16 まして、憎むべき汚れた者、水のように不正を飲む人間はどうなのか。
15:17 わたしはあなたに語ろう。だから聞いてほしい。わたしが見たことを話そう。
15:18 これは知恵ある者たちが先祖から受け継ぎ、隠さずに語り伝えてきたことだ。
15:19 彼らだけにこの地は与えられ、よそ者が彼らの中を通り過ぎることはなかった。
15:20 悪い人は、生きているかぎりずっと、もだえ苦しむ。むごい人に残された年数は、はじめから決まっている。
15:21 その耳には恐ろしい物音が響く。平和なときにも、襲う者が突然おそってくる。
15:22 彼は、暗やみから戻れるとは思っていない。剣にねらわれる身なのだ。
15:23 彼は食物を求めてさまよう。「どこにあるのか」と。そして自分に暗闇の日が待っていることを、彼は知っている。
15:24 悩みと苦しみが彼を怯えさせる。戦いに備えた王のように、それが彼を襲って打ち負かす。
15:25 神に向かって手を振り上げ、全能者に立ち向かおうとしたからだ。
15:26 首を突き出し、分厚い盾を構えて、神に向かって突進する。
15:27 脂肪で顔をおおい、腰にはたっぷりと肉をたくわえた。
15:28 滅ぼされた町々に住み、だれも住まない家、石くれの山となる家に住むからだ。
15:29 彼が豊かになることはない。その富も長くは続かない。財産が地に広がることもない。
15:30 彼は暗闇から逃れられない。炎はその若枝を枯らし、神の口の息が彼を吹き払う。
15:31 だまされて、むなしいものに頼ってはいけない。それがむなしいものだからだ。むなしさこそが、その人の受け取る報いになる。
15:32 彼の時が来る前にそれは全うされ、その枝は緑にならない。
15:33 ぶどうの木が熟す前に実を落とすように、彼も実を落とす。オリーブの木が花を落とすように、彼も花を散らす。
15:34 神を信じない者の群れは何も生み出さず、わいろで手に入れた家は火に焼き尽くされるからだ。
15:35 彼らは悪だくみをはらみ、罪を生み、腹の中では偽りを準備している。
16:1 ヨブは答えた。
16:2 わたしはこういう話を何度も聞いてきた。あなたたちは皆、人を慰めるどころか苦しめる者だ。
16:3 むなしい言葉に終わりはないのか。何にいらだって、あなたは言い返すのか。
16:4 わたしも、あなたたちと同じように語ることはできる。もし立場が逆で、あなたたちがわたしの側にいたら、わたしだって、言葉を並べてあなたたちを責め、頭を振って見せることができるのだ。
16:5 口によってあなたたちを励まし、くちびるの慰めであなたたちの苦しみを和らげることもできる。
16:6 たとえ語っても、わたしの苦しみは和らがない。たとえ黙っていても、この痛みが消えていくわけではない。
16:7 まことに神は今、わたしを疲れ果てさせた。わたしの一族をことごとく荒らし尽くした。
16:8 あなたはわたしをやせ細らせた。それがわたしを責める証拠になっている。やつれ果てたこの姿が立ち上がり、面と向かってわたしを訴えるのだ。
16:9 彼は怒ってわたしを引き裂き、わたしを憎んだ。わたしに向かって歯を食いしばり、敵は鋭い目でわたしをにらみつける。
16:10 彼らはわたしに向かって大きく口を開ける。あざけって、わたしのほおを打つ。そして一緒になって、わたしに襲いかかってくる。
16:11 神はわたしを不義な者に引き渡し、悪人の手に投げ入れる。
16:12 わたしは平穏に暮らしていた。でも神はわたしを打ち砕いた。首をつかんで、わたしを粉々にした。そしてわたしを立たせ、的にした。
16:13 その射手たちがわたしを取り囲む。容赦なくわたしの内臓を射抜き、わたしの胆汁を地面に流し出す。
16:14 彼はわたしを次々に打ち破り、破れに破れを重ねる。勇士のようにわたしめがけて突進してくる。
16:15 わたしは荒布を肌に縫いつけ、誇りを地の塵にうずめた。
16:16 わたしの顔は泣きはらして赤くなり、まぶたには死の暗いかげがある。
16:17 わたしの手は誰も傷つけていないし、わたしの祈りは清いのに。
16:18 地よ、わたしの血を覆い隠さないでくれ。わたしの叫びが行き場を失わないように。
16:19 見よ、今でも、わたしの証人は天にいる。わたしを弁護してくれる者は高い所にいる。
16:20 わたしの友はわたしをあざ笑う。でも、わたしの目は神に向かって涙を流す。
16:21 どうか、だれかが神の前で人のために訴えてくれますように。 人が友のために訴えるように。
16:22 数年が過ぎれば、わたしは二度と戻れない旅路へ行くのだから。
17:1 わたしの息は絶えようとし、わたしの日々は尽き、墓がわたしを待っている。
17:2 まことに、わたしのまわりには、あざける者ばかり。わたしの目は、その侮りを見つめながら夜を過ごす。
17:3 どうか、あなた自身がわたしの保証人になってほしい。ほかにだれが、わたしのために保証を引き受けてくれるだろうか。
17:4 あなたが彼らの心を閉ざし、悟ることができないようにされたからだ。だから、彼らに勝利を与えるはずがない。
17:5 分け前を得るために友を売る者は、その子どもたちの目もつぶれてしまう。
17:6 神はわたしを人々の笑いものにした。わたしは顔につばを吐きかけられる者になった。
17:7 わたしの目は悲しみでかすんでしまった。わたしの体はすべて影のようだ。
17:8 正しい人はこれを見て驚き、罪のない人は神を無視する者に対して立ち上がる。
17:9 それでも正しい人は自分の道を歩み続ける。手のきれいな人は、ますます力を増していく。
17:10 しかし、あなたたちは皆もう一度戻って来なさい。それでも、あなたたちの中に賢い者を見つけることはできない。
17:11 わたしの日々は過ぎ去った。計画も、心が望んでいたことも、すべて断ち切られてしまった。
17:12 夜を昼に変えようとし、闇が迫っているのに「光は近い」と言う。
17:13 陰府をわたしの家として望んでも、暗やみの中に寝床をのべても、
17:14 穴に向かって『あなたはわたしの父だ』と呼び、うじ虫に向かって『あなたはわたしの母、わたしの姉妹だ』と呼ぶのなら、
17:15 わたしの望みは、どこにあるのか。だれがそれを見つけられるだろうか。
17:16 陰府の関門に下って行くのか。それとも一緒に、ちりの中で休むのか。
18:1 そこで、シュアの人ビルダデが答えて言った。
18:2 「いつまで言葉に罠をしかけているんだ。まず考えてくれ。話はそれからだ。
18:3 なぜ、わたしたちは獣のように見られるのか。なぜ、あなたたちの目に愚かな者と映るのか。
18:4 怒りにまかせて自分を引き裂く者よ。あなたのために地は見捨てられ、岩はその場所から動かされるとでもいうのか。
18:5 悪しき者の光は消え、その火の炎はもう輝かない。
18:6 その天幕の中の光は暗くなり、彼を照らすともし火も消える。
18:7 その足取りの力は弱まり、みずからの企みが自分を倒す。
18:8 彼は自分の足で網に追い込まれ、落とし穴の上を歩く。
18:9 わなが彼のかかとをつかみ、罠が彼をしっかり捕らえる。
18:10 地には彼を捕らえる縄が隠され、その道には罠が仕掛けられている。
18:11 恐ろしいことが四方から彼を襲って脅かし、その一歩ごとに追い立てる。
18:12 その力は飢えでやせ衰え、破滅がすぐそばで彼を待ち構えている。
18:13 皮膚は病に食い尽くされ、死の初子が彼の手足を食い尽くす。
18:14 恐れの王のもとに。彼が頼りにしていたものは、住んでいた天幕から引き抜かれる。彼はその王のもとへと引き立てられていく。
18:15 彼のものでない者が彼の天幕に住み、彼の住まいの上に硫黄がまき散らされる。
18:16 下ではその根が枯れ、上ではその枝が枯れる。
18:17 彼の記憶は地から消え去り、その名は通りに残らない。
18:18 彼は光からやみへと追いやられ、この世から追い出される。
18:19 彼にはその民の中に子も孫もなく、住んでいた場所には生き残る者もいない。
18:20 西の者は彼の運命に恐れおののき、東の者は震え上がる。
18:21 まさに、これが悪を行う者の住まいだ。神を知らない者のいる場所は、こうなるのだ。」
19:1 ヨブは答えた。
19:2 あなたがたは、いつまでわたしを苦しめ、言葉でわたしを打ち砕くのか。
19:3 あなたがたはもう十回もわたしを侮辱した。恥ずかしげもなく、わたしにひどい仕打ちをする。
19:4 たとえわたしが本当にあやまちを犯したとしても、その責任はわたし一人にとどまる。
19:5 もし、あなたたちが本当にわたしより上に立とうとして、わたしの受けたこの恥を証拠にわたしを責めるのなら、
19:6 神がわたしを陥れ、その網でわたしを取り囲んだのだ、と知ってほしい。
19:7 見よ、わたしが「暴力を振るわれた」と叫んでも、答えはない。助けを求めて叫んでも、正しい裁きはない。
19:8 わたしの道には壁がめぐらされ、通り抜けることができない。わたしの行く道を、神は暗やみで閉ざした。
19:9 わたしの栄光は、はぎ取られてしまった。頭にあった冠も、奪い取られた。
19:10 四方からわたしを打ち壊し、わたしは去りゆく。木を引き抜くように、わたしの望みを根こそぎにされた。
19:11 わたしに向かって怒りを燃やし、わたしを敵の一人のように見なした。
19:12 その軍勢はいっせいに攻めてくる。土を盛り上げて道を築き、わたしのテントを囲んで陣を張った。
19:13 わたしの兄弟たちを、神はわたしから引き離してしまった。わたしを知る人たちも、すっかりわたしから離れていった。
19:14 わたしの親戚は去っていき、親しい友もわたしを忘れてしまった。
19:15 わたしの家に住む者も、召し使いの女たちも、わたしをよそ者と見なす。わたしは彼らの目に、知らない人になってしまった。
19:16 わたしが召使いを呼んでも、返事はない。自分の口で頼み込まなければならない。
19:17 わたしの息は妻に嫌がられ、同じ腹から生まれたきょうだいにも疎まれる。
19:18 わらべたちさえもわたしをばかにする。わたしが立ち上がると、悪口を言ってくる。
19:19 親しい仲間はみんなわたしを嫌い、愛した人たちはわたしに背を向けた。
19:20 わたしの骨は皮と肉にはりつき、かろうじて歯の皮だけで生きのびた。
19:21 友よ、わたしをあわれんでくれ。どうか、わたしをあわれんでくれ。神の手がわたしを打ったのだから。
19:22 なぜあなたがたは、神のようにわたしを追いつめるのか。わたしの肉を食らってもまだ満足しないのか。
19:23 どうか、わたしの言葉が書き留められますように。どうか、それが書物に記されますように。
19:24 鉄の筆と鉛で、いつまでも残るように岩に刻みつけられたらいいのに。
19:25 わたしは知っている。わたしをあがなう方は生きておられる。その方は最後に、この地の上に立たれるのだ。
19:26 わたしの皮膚がこんなふうに壊されてしまったあとで、わたしは自分の肉から神を見る。
19:27 わたし自身がこの目で神を見る。ほかのだれかではなく、わたし自身が見るのだ。わたしの心は、そのときを待ちこがれて、はりさけそうだ。
19:28 わたしたちは彼をどう責めようか、問題の根は彼自身にあるのに、とあなたがたが言うのなら、
19:29 つるぎを恐れよ。怒りはつるぎの罰を招くからだ。これであなたたちは、さばきがあることを知る。」
20:1 ゾパルは答えて言った。
20:2 これによって、わたしは考えを言い返そうという気持ちになる。心の中がざわめいて、じっとしていられないからだ。
20:3 わたしは自分を辱める非難を聞いた。でも、わたしの内にある悟りの霊が、答えるようにわたしをうながす。
20:4 昔から知っているだろう。人が地の上に置かれたときからずっと、
20:5 悪しき者の勝ち誇る声は長くは続かない。神を信じない者の楽しみも、ほんの一瞬で消えてしまう。
20:6 天に届くほど高くそびえ立ち、その頭が雲にとどいても、
20:7 彼は自分の糞のように、永遠に滅びる。彼を見たことのある者は言う。「あいつはどこに行った」と。
20:8 夢のように飛び去って、二度と見つからない。夜に見る幻のように、追い払われてしまう。
20:9 目に見ていた者も、もう二度と彼を見ることはない。彼がいた場所も、二度と彼を見ることはない。
20:10 その子らは貧しい人たちに許しを請い、その手は奪った財産を返さなければならない。
20:11 その骨は若さの力に満ちている。でも、それも彼と一緒に、ちりの中に横たわることになる。
20:12 たとえ悪がその口に甘く、彼がそれを舌の下に隠しても、
20:13 これを惜しんで手放さず、口の中にいつまでも含んでいても、
20:14 その食物は腹の中で変わり、体の中で毒蛇の毒となる。
20:15 彼は財産をのみ込んでも、また吐き出す。神がそれを彼の腹から追い出すからだ。
20:16 彼は毒蛇の毒を吸い込み、その舌が彼を殺すことになる。
20:17 彼は、蜜と乳の流れる谷川、その豊かな流れを見ることはない。
20:18 苦労して手に入れたものを、彼は返さなければならない。それを飲み込むことはできない。商売でもうけた富があっても、それを楽しむことはできない。
20:19 貧しい人たちを踏みつけ、見捨ててきたからだ。自分で建てもしない家を、力ずくで奪い取ったからだ。
20:20 彼は腹の中で安らぎを知らなかった。だから、いくら欲しがっても、何ひとつ自分のものにはできない。
20:21 食べ残された物は何もない。だから、その繁栄は長く続かない。
20:22 その勢いの絶頂にあるとき、彼は苦しみに追い込まれる。悩む者の手が、ことごとく彼に襲いかかる。
20:23 彼が腹を満たそうとするそのとき、神は燃える怒りを彼に送り、それを食物のように彼の上に降り注ぐ。
20:24 鉄の武器から逃げても、青銅の弓が彼を射抜く。
20:25 彼がそれを引き抜けば、それは体から出てくる。きらめく矢じりが胆から抜け出て、恐怖が彼を襲う。
20:26 暗黒がことごとく彼の宝のためにたくわえられる。人が起こしたのではない火が彼を焼き尽くし、その天幕に残った者をものみ込む。
20:27 天は彼の罪をあばき、地は立ち上がって彼を責める。
20:28 その家の財産は流れ去り、神の怒りの日に押し流されてしまう。
20:29 これが、悪い人が神から受け取る分だ。神が定めた、その報いなのだ。
21:1 ヨブは答えた。
21:2 わたしの言葉を、じっくり聞いてほしい。それがあなたたちの慰めになるように。
21:3 まずわたしに話をさせてほしい。わたしが話し終わったら、あざければいい。
21:4 わたしの訴えは、人に向けたものだろうか。だとしても、どうしていらだたずにいられるだろう。
21:5 わたしを見て、あきれるがいい。手で口をふさぐがいい。
21:6 わたしはこのことを思い出すと恐ろしくなる。体が震えて、止まらなくなる。
21:7 なぜ悪人が生きながらえるのか。年老いてもなお、力を増していくのか。
21:8 その子たちは、親のそばでしっかりと生き、その孫たちも、目の前でたくましく育っていく。
21:9 その家は平和で、恐れるものは何もない。神の罰の鞭が下ることもない。
21:10 その雄牛は種を付け、しくじることがない。その雌牛は子を産んで、流産することがない。
21:11 彼らは子どもたちを羊の群れのように外へ送り出し、その子らは飛びはねて遊ぶ。
21:12 彼らは太鼓や竪琴に合わせて歌い、笛の音に合わせて楽しむ。
21:13 その日々を幸せに過ごし、安らかに死んでいく。
21:14 彼らは神に言う。「わたしたちから離れてくれ。あなたの生き方など知りたくもない」と。
21:15 全能者とは何者なのか。なぜわたしたちが仕えなければならないのか。祈ったところで、何の得があるというのか」と。
21:16 見よ、彼らの繁栄は自分の手の力によるものではないか。悪人の考えなど、わたしからは遠くかけ離れている。
21:17 悪い者の明かりが消されることなど、どれほどあるだろう。彼らに災いが降りかかることなど、どれほどあるだろう。神が怒って苦しみを分け与えることなど、どれほどあるだろうか。
21:18 彼らは風に飛ばされるわらのようになる。嵐がさらっていくもみがらのようになる。
21:19 「神は悪人の罪を、その子どもたちのために取っておく」と、あなたたちは言う。でも、神はその罰を本人に返して、本人に思い知らせるべきだ。
21:20 彼は自分の目で自分の滅びを見て、全能者の怒りを飲むことになる。
21:21 その後に残る家族のことなど、彼にとって何の意味があるだろう。自分に定められた月日は、もう断ち切られているのだから。
21:22 神は天にいる者さえもさばく。そんな神に、だれが知識を教えられるだろうか。
21:23 ある者は力に満ちあふれ、まったく安らかで、心配ひとつなく死んでいく。
21:24 その体は脂肪で満ち、骨の髄はみずみずしく潤っている。
21:25 ある者は心を苦しめたまま死に、良いものを何一つ味わうことがない。
21:26 彼らは共にちりの上に横たわり、うじに覆われる。
21:27 見よ、わたしはあなたがたの考えを知っている。わたしを陥れようとするたくらみも、ちゃんとわかっている。
21:28 あなたがたはこう言う。『あの権力者の家はどこにある。悪人たちの住む家はどこにある』と。
21:29 道行く人たちに聞いてみなかったのか。彼らの話をあなたたちは信じようとしないのか。
21:30 災いの日に、悪い者は生き残る。怒りの日に、彼は逃げ延びる。
21:31 だれが彼に向かって、その行いを面と向かって告げるだろうか。彼のしたことに、だれが仕返しをするだろうか。
21:32 彼はやがて墓へ運ばれ、その塚は見張られる。
21:33 谷の土くれさえ、彼には心地よい。すべての人が彼の後に続き、彼の前に行った人も数えきれない。
21:34 それなのに、どうしてむなしい言葉でわたしを慰めようとするのか。あなたたちの答えには、偽りしか残っていない。
22:1 テマン出身のエリファズが答えて言った。
22:2 人は神の役に立てるだろうか。賢い人も、結局は自分の役に立つだけだ。
22:3 全能者にとって、あなたが正しいことに何の喜びがあるだろう。あなたが自分の生き方を正しく保っても、それが彼に何の得になるだろう。
22:4 神を恐れているからといって、神はあなたを責め、さばくだろうか。
22:5 あなたの悪は大きいのではないか。あなたの罪にはきりがない。
22:6 あなたはわけもなく兄弟から担保を取り立て、裸の人から服をはぎ取った。
22:7 疲れた者に水を飲ませず、飢えた者に食べ物を与えなかった。
22:8 力ある者が土地を占め、名のある者がそこに住んだ。
22:9 やもめを何も持たせずに追い返し、みなしごの腕を折ってきた。
22:10 それだから、あなたのまわりには罠が張りめぐらされ、突然おそってくる恐怖におびえることになる。
22:11 暗闇に包まれ、何も見えなくなる。大水があなたをのみ込む。
22:12 天は空高くにあるだろう？ 見てみろ、いちばん高い星を。あんなに高いところにあるのだから。
22:13 神は何を知っているというのか。こんな濃い雲を通して、さばくことなんてできるのか。
22:14 濃い雲が神をおおい隠すから、神には見えない。神は天のアーチの上を歩いているのだ』と。
22:15 あなたは、悪い者たちが歩んできた、あの古い道を、これからも守っていくつもりなのか。
22:16 彼らは時が来ないうちに取り去られ、その土台は洪水に押し流された。
22:17 彼らは神に向かってこう言っていた。「わたしたちから離れてくれ。全能者がわたしたちに何をできるというのか」と。
22:18 神は彼らの家を良いもので満たされた。でも、悪事をたくらむ者の考えは、わたしからは遠く離れている。
22:19 正しい者はそれを見て喜び、罪のない者は彼らをあざ笑う。
22:20 「わたしたちの敵は本当に滅ぼされた。残ったものも、火が焼き尽くした」
22:21 あなたは神と和解して、平安を得なさい。そうすれば、あなたに良いものが訪れる。
22:22 どうか、彼の口から教えを受け取り、その言葉を心に納めなさい。
22:23 もしあなたが全能者のもとに立ち返るなら、あなたは元どおりに立て直される。あなたの家から不正を遠ざけなさい。
22:24 金を土のちりの中に置き、オフィルの金を谷川の石の中に置きなさい。
22:25 全能者があなたの金となり、あなたにとって最上の銀となる。
22:26 その時、あなたは全能者を心から喜び、神に向かって顔を上げることができる。
22:27 あなたが神に祈れば、神は聞いてくれる。そしてあなたは、自分の誓いを果たすことになる。
22:28 あなたが何かを決めれば、それは実現する。あなたの進む道には光が輝く。
22:29 高ぶる者を低くし、うつむく者を救ってくださるからだ。
22:30 神は、潔白でない者さえ救い出してくださる。あなたの手がきれいなら、その人も救われるのだ。
23:1 ヨブは答えた。
23:2 きょうもまた、わたしの訴えは激しい。うめきにもかかわらず、神の手はわたしに重くのしかかる。
23:3 どうか、神がどこにいるかを知り、会いに行けたらいいのに。神のいるところまでたどり着けたらいいのに。
23:4 わたしは神の前に自分の訴えを並べ、口いっぱいに言い分を語るだろう。
23:5 わたしに答えるその言葉を知り、わたしに何が語られるのかを悟りたい。
23:6 わたしを相手に、大きな力を振りかざして争うだろうか。いや、むしろわたしに心を向けてくれるはずだ。
23:7 そこでは、正しい人がその方と論じ合える。そうすれば、わたしはわたしをさばく方から永遠に解き放たれるのだ。
23:8 見よ、前に進んでも、神はそこにいない。後ろに下がっても、その姿を見つけられない。
23:9 左を探しても、見つからない。右に向かっても、見えない。
23:10 彼はわたしの歩む道を知っている。わたしを試すとき、わたしは金のように出て来る。
23:11 わたしの足は神の歩みにしっかりついて行った。その道を守り、わたしはそこから離れなかった。
23:12 わたしは神のくちびるの命令にそむかず、その口の言葉を、自分に定めた分よりも大切に胸にたくわえてきた。
23:13 彼の思いは一つだから、だれも変えることはできない。彼は望んだことを、そのまま行う。
23:14 彼はわたしのために定めたことを成し遂げる。こうしたことが、ほかにもたくさん彼の中にある。
23:15 それゆえ、わたしは神の前でおののく。考えれば考えるほど、神が恐ろしくなる。
23:16 神はわたしの心をくじけさせた。全能者はわたしを恐れさせた。
23:17 やみに包まれても、わたしは黙って消えたりしない。この濃い闇が顔をおおっても、消えはしない。
24:1 なぜ、全能者は裁きの時を定めておかないのだろう。なぜ、神を知る人たちは、その日を見ることができないのだろう。
24:2 世には地境を移す者、群れを奪って、平気で飼う者がいる。
24:3 みなしごのろばを奪い取り、やもめの牛を担保として取り上げる。
24:4 貧しい者たちは道から追い払われ、この地の弱い者たちはみな身を隠すしかない。
24:5 見よ、彼らは荒れ野の野ろばのように、獲物を探して働きに出かける。荒れ地が、彼らと子どもたちの食べ物を生み出すのだ。
24:6 畑では、貧しい者が自分のものでない作物を刈り取らされ、悪人のぶどう畑で残った実を拾い集める。
24:7 裸で、着る物もなく夜を過ごす。寒さをしのぐ物も何もない。
24:8 山の雨にぬれ、身を守る場所もなくて、岩にしがみつく。
24:9 みなしごを母のふところから奪い取り、貧しい人の子どもを借金のかたに取り上げる。
24:10 裸で、着る物もなく歩き回り、飢えながら麦束を運ぶ。
24:11 畑の中で油をしぼり、酒ぶねを踏みながら、それでも渇きに苦しむ。
24:12 町の中から、死にゆく人たちのうめきが上がる。傷つき倒れた人たちの魂が助けを求めて叫ぶ。それなのに、神はその訴えに目を留めない。
24:13 光にそむく者たちがいる。彼らは光の道を知らない。光の道にとどまることもない。
24:14 暗いうちに人殺しは起き出し、弱い人や貧しい人を殺す。夜になると盗人になる。
24:15 姦淫する者は夕暮れを待ち、「だれもわたしを見ていない」と言って、顔を覆い隠す。
24:16 暗やみの中で家々に押し入る。昼のうちに目星をつけておいた家に。彼らは光を知らない。
24:17 彼らにとっては、闇こそが朝だ。彼らは深い闇の恐ろしさをよく知っているからだ。
24:18 彼は水の面をすばやく流れ去る。地での彼らの取り分はのろわれ、もうぶどう畑への道に向かうことはない。
24:19 ひでりと暑さが雪どけの水を奪い去るように、陰府は罪を犯した者を奪い去る。
24:20 母の胎さえ彼を忘れ、うじが彼をむさぼり食う。彼はもう誰にも思い出されない。悪は木のように折られる。
24:21 子を産めない女性を食い物にし、夫を亡くした女性にも情けをかけない。
24:22 しかし神は、その力で強い者たちを長く生かす。生きる望みを失ったときでも、彼らは立ち上がるのだ。
24:23 神は彼らに安全を与え、彼らはそれに支えられて生きる。でも神の目は、いつも彼らの歩みを見つめている。
24:24 彼らはしばらくの間だけ高く上げられる。でも、すぐにいなくなる。低くされ、ほかのみんなと同じように取り去られ、麦の穂先のように刈り取られるのだ。
24:25 もし、そうでないというなら、だれがわたしをうそつきだと証明できるだろう。だれがわたしの言葉を無意味だと示せるだろうか。」
25:1 そこで、シュアの人ビルダデが答えて言った。
25:2 大権と恐れは神とともにある。神は天の高い所で平和を造る。
25:3 その軍勢は数えきれるだろうか。その光が届かない者などいるだろうか。
25:4 わたしたち人間が、どうして神の前で正しいと認められるだろうか。女から生まれた者が、どうして清くいられるだろうか。
25:5 見よ、月でさえ輝かず、星も神の目には清く見えない。
25:6 うじ虫のような人間、虫けらのような人の子なら、なおさらだ。
26:1 ヨブは答えて言った。
26:2 あなたは力のない者をどれほど助けたことか。強くない腕をどれほど救ったことか。
26:3 知恵のない者に、あなたはなんと見事に助言したことか。すぐれた知識を、なんと惜しみなく示したことか。
26:4 あなたはいったい、だれの力を借りてそんな言葉を語ったのか。だれの霊があなたから出てきたのか。
26:5 亡霊たちは震える。水の下で、そこに住むものたちも。
26:6 陰府も神の前では裸だ。滅びの世界も、覆い隠すものはない。
26:7 北の空を何もない空間に張り、地を何もない所に掛ける。
26:8 彼は水を厚い雲の中に包み込むが、その下の雲は裂けない。
26:9 彼は月のおもてをおおい隠し、その上に雲を広げる。
26:10 水の面に円を描いて、光とやみの境とされた。
26:11 天の柱は揺れ動き、神の叱る声におびえる。
26:12 彼はその力で海を静め、その知恵でラハブを打ち砕いた。
26:13 その霊によって天は美しく晴れわたり、その手は逃げ去るへびを貫かれた。
26:14 見よ、これらは神のなさることのほんの一端にすぎない。わたしたちが神について聞くのは、かすかなささやきほどでしかない。だとしたら、神の力がとどろく音を、いったいだれが理解できるだろうか。
27:1 ヨブはさらに話を続けた。
27:2 神は生きておられる。でも、その神がわたしの正しさを認めず、全能者がわたしの心を苦しめている。
27:3 わたしの息がまだわたしの中にあり、神の霊がわたしの鼻にある間は、
27:4 わたしのくちびるが不正を語ることは決してない。わたしの舌が偽りを口にすることもない。
27:5 わたしは決して、あなたたちを正しいとは認めない。死ぬまで、自分にやましいところはないと言い張り続ける。
27:6 わたしは自分の正しさをしっかり握って、決して手放さない。生きているかぎり、良心がわたしを責めることはない。
27:7 わたしの敵は悪人のようになりますように。わたしに逆らう者は不正な者のようになりますように。
27:8 神を信じない者に、どんな望みがあるだろう。財産を築いても、神がその魂を取り去るとき、何が残るのか。
27:9 災いが彼を襲うとき、神はその叫びを聞いてくれるだろうか。
27:10 彼は全能者を喜びとするだろうか。いつも神を呼び求めるだろうか。
27:11 わたしは神の力について、あなたたちに教えよう。全能者のもとにあるものを、隠しはしない。
27:12 見よ、あなたがたは皆、それを自分の目で見てきたはずだ。それなのに、どうしてそんなにむなしいことを言うのか。
27:13 これは、神が悪人に定めた分。横暴な者たちが全能者から受け取る取り分だ。
27:14 その子らが増えても、剣で殺される。子孫は食べ物に飽きることがない。
27:15 その残された者は疫病で死んで葬られ、そのやもめたちが泣くこともない。
27:16 銀をちりのように積み上げ、服を土のように山ほど用意しても、
27:17 その備えを、正しい人が身につける。その銀を、罪のない人が分け合うのだ。
27:18 彼が建てる家は、蛾のまゆのようにもろい。見張り人がつくる仮小屋のようなものだ。
27:19 富める者は、富をかかえたまま眠りにつく。でも、それが最後になる。目を開けたときには、その富はもう消えている。
27:20 恐ろしい出来事が大水のように彼を襲う。夜には、つむじ風が彼をさらっていく。
27:21 東の風が彼を巻き上げて、運び去る。その場所から吹き飛ばしてしまう。
27:22 それは彼を容赦なく襲いかかる。彼はその手から必死に逃げようとする。
27:23 彼に向かって手を打ち鳴らし、あざ笑いながら、その場所から追い払う。
28:1 銀を取り出すには鉱山があり、金を精錬する場所がある。
28:2 鉄は土から取り出され、銅は石から溶かして取り出される。
28:3 闇に終わりをもたらし、人はその果てまで、暗黒と死の闇にある鉱石を探し求める。
28:4 彼らは人の住む場所から遠く離れて縦穴を掘る。道を行く人に忘れられ、人けのない所で綱にぶら下がり、揺れ動く。
28:5 地はそこから食物を生み出す。だがその地下は、火で焼かれたようにひっくり返される。
28:6 その石にはサファイアがあり、そこには金塊もある。
28:7 猛禽も知らない道がある。タカの目もそこを見たことがない。
28:8 猛獣の子もそこを踏んだことはなく、獅子もそこを通ったことがない。
28:9 岩に手をかけ、山を根元から掘りくずす。
28:10 岩の中に水路を切り開き、目はあらゆる宝物を見つけ出す。
28:11 彼は川の流れをせき止めて漏れないようにし、隠れたものを光の中へ取り出す。
28:12 知恵はどこで見つかるのか。理解のある場所はどこにあるのか。
28:13 人はその価値を知らない。それは命ある者の地には見つからない。
28:14 淵は言う、『それはわたしの中にはない』と。海も言う、『わたしのところにはない』と。
28:15 精金もこれと引き換えにはできない。銀を量ってその代金とすることもできない。
28:16 オフルの金をもってしても、その価値は量れない。高価なしまめのうも、サファイアも同じだ。
28:17 金も水晶もこれには及ばない。純金の器と引き換えることもできない。
28:18 さんごも水晶も、口にする値打ちさえない。知恵を手に入れることは、真珠を手に入れるよりもすばらしい。
28:19 エチオピアのトパズも、これに並ぶことはできない。純金をもってしても、その価値を量ることはできない。
28:20 知恵はどこから来るのか。理解のある場所はどこにあるのか。
28:21 すべての生き物の目から隠され、空の鳥からも見えない。
28:22 滅びも死も言う、「その噂を耳にしたことがあるだけだ」と。
28:23 神は知恵に至る道を知っておられる。知恵のある場所を知っておられるのは神だ。
28:24 彼は地の果てまで見渡し、天の下すべてを見ておられるからだ。
28:25 霊に重さを与え、水をますで量ったのは、この方だ。
28:26 雨のために雨量を定め、稲妻をともなう雷のために道をつくったとき、
28:27 彼は知恵を見て、それを言い表した。それを確かなものとし、また深く探り極めた。
28:28 見よ、主を恐れることこそ知恵であり、悪を離れることこそ悟りである。」
29:1 ヨブはさらに話を続けた。
29:2 過ぎ去った月日のようであったなら。神がわたしを守ってくださったあの日々のようであったなら。
29:3 あの頃は、彼のともしびがわたしの頭の上で輝いていた。その光に導かれて、わたしは暗やみの中を歩いた。
29:4 わたしの働き盛りのころのようであってほしい。あの時は、神との親しい交わりがわたしの家を包んでいた。
29:5 あの頃は、全能者がまだわたしと一緒にいて、わたしの子どもたちもわたしのまわりにいた。
29:6 あの頃、わたしの足はミルクで洗われ、岩からはわたしのためにオリーブ油が川のように流れ出した。
29:7 わたしが町の門へ出て行き、広場に自分の席を整えたとき。
29:8 若い者はわたしを見ると身を引き、年老いた者は立ち上がって迎えた。
29:9 君主たちも話すのをやめて、口に手を当てた。
29:10 尊い人々も声をひそめ、その舌は上あごに張りついた。
29:11 耳で聞いた人はわたしを幸せ者と呼び、目で見た人はわたしをほめた。
29:12 助けを求めて叫ぶ貧しい人を、わたしは救い出した。みなしごや、だれも助ける人のいない者も救い出した。
29:13 滅びかけていた人がわたしを祝福してくれた。わたしは未亡人の心を喜びで歌わせた。
29:14 わたしは正義を身にまとった。正義もわたしを包んでくれた。わたしの公正さは、上着のように、また冠のようにわたしを覆った。
29:15 わたしは目の見えない人の目となり、足の不自由な人の足となった。
29:16 貧しい人の父となり、見知らぬ人の訴えでも、その事情をよく調べてやった。
29:17 わたしは悪い者のあごを砕き、その歯の間から獲物を奪い取った。
29:18 だからわたしはこう思っていた。「わたしは自分の巣で死ぬまで、砂のように数え切れないほど多くの日々を重ねられるだろう」
29:19 わたしの根は水のほとりにまで伸び、露は夜通しわたしの枝におりる。
29:20 わたしの輝きはいつも新しく、わたしの弓はわたしの手の中で新しい力を取り戻す』と。
29:21 人々はわたしの言葉に耳を傾け、黙って待ち、わたしの助言を求めた。
29:22 わたしが話したあとは、だれも二度と口を開かなかった。わたしの言葉は、しずくのように彼らの上に落ちていった。
29:23 彼らはわたしを雨のように待ち望み、春の雨を求めるように口を大きく開けた。
29:24 わたしがほほえみかけても、彼らはそれを信じられないほどだった。わたしの顔の輝きを、彼らは曇らせることはなかった。
29:25 わたしは彼らのために道を選び、リーダーとして先頭に座った。軍隊を率いる王のようであり、悲しむ人たちを慰める者のようだった。
30:1 でも今は、わたしより年下の者たちがわたしをあざ笑う。その父親たちは、わたしが群れの番犬と一緒に働かせることさえ嫌がったような連中だ。
30:2 彼らの腕の力さえ、わたしに何の役に立っただろう。彼らは気力がすっかり衰え果てた者たちだ。
30:3 貧しさと激しい飢えでやせ細った彼らは、干からびた地面をかじる。荒れ果てて何もない土地をさまよっていた。
30:4 彼らは、低木のところでアカザを摘み、れだまの根を食べ物にしていた。
30:5 彼らは人々の中から追い出される。まるで盗人を追い払うように、みんなが大声を上げて彼らを追い立てる。
30:6 急流の谷間の中に住み、土や岩の穴で暮らしていた。
30:7 灌木の間でわめき、いらくさの下に身を寄せ合う。
30:8 彼らは愚か者の子、名もない者の子だ。むち打たれて、この地から追い出された。
30:9 それなのに今、わたしは彼らの歌のネタになり、笑い草にされてしまった。
30:10 彼らはわたしを嫌い、遠ざかっていく。それでいて、平気でわたしの顔につばを吐きかける。
30:11 神がわたしの綱を解いてわたしを苦しめたので、彼らもわたしの前で遠慮をかなぐり捨てた。
30:12 このともがらはわたしの右側から立ち上がり、わたしの足をすくって追い払い、わたしに向かって滅びの道を築こうとする。
30:13 彼らはわたしの行く道を掘り崩し、わたしを破滅へと追い込む。それを止める者は、だれもいない。
30:14 彼らは広い破れ口から押し寄せるように迫り、がれきの中を転がりながら襲いかかる。
30:15 恐怖がわたしに襲いかかる。わたしの尊厳は風に吹き飛ばされ、わたしの繁栄は雲のように消えていった。
30:16 今は、わたしの魂はわたしの内で尽きようとしている。苦しみの日々がわたしをとらえて離さない。
30:17 夜になると骨が身を刺すように痛み、わたしをかむ痛みは休むことがない。
30:18 激しい力で、わたしの衣は形を変えられ、下着の襟のように、わたしを締めつける。
30:19 神はわたしを泥の中に投げ込んだ。だからわたしは、ちりや灰のようになった。
30:20 わたしがあなたに叫んでも、あなたは答えてくれない。わたしが立っていても、あなたはただ見ているだけだ。
30:21 あなたは変わってしまい、わたしに冷たく無情な者となった。その強い手でわたしを攻めてくる。
30:22 わたしを吹き上げ、風に乗せ、嵐の中でもみくちゃにする。
30:23 わたしにはわかっている。あなたはわたしを死へ、すべての生き物が集まるあの家へと帰らせるのだ。
30:24 さりながら、廃墟の中にいる者は手を伸べて助けを求めないだろうか。災いの中にいる者は叫び声をあげないだろうか。
30:25 わたしは、つらい日々を過ごす人のために泣いたのではなかったか。貧しい人のために、わたしの魂は悲しんだのではなかったか。
30:26 しかしわたしは幸せを望んだのに、災いがやって来た。光を待ち望んだのに、闇がやって来た。
30:27 わたしのはらわたは煮えたぎって、少しも治まらない。苦しみの日々がわたしに襲いかかってきた。
30:28 わたしは日の光もないのに、黒ずんだ姿で歩き回った。集まりの中に立ち上がって、助けを求めて叫ぶ。
30:29 わたしは山犬の兄弟となり、ダチョウの仲間になった。
30:30 わたしの肌は黒くなって、はがれ落ちる。わたしの骨は熱で焼けつくようだ。
30:31 わたしの琴は悲しみの音となり、笛は泣く人の声となった。
31:1 わたしは自分の目と約束を交わした。だから、どうして若い女に見とれたりできるだろうか。
31:2 上から神が与える分け前は、いったいどんなものだろう。高い所にいる全能者が受け継がせるものは、どんなものだろう。
31:3 不義な者には災いが下るではないか。悪を行う者には不幸が降りかかるではないか。
31:4 わたしの歩む道を、神はすべて見ている。わたしの足取りを一つ残らず数えているのではないか。
31:5 もし、わたしがうそと共に歩み、この足が人をだまそうと急いだことがあるなら、
31:6 正しいはかりでわたしを量ってほしい。そうすれば神は、わたしにやましいところがないことを知ってくれるはずだ。
31:7 もしわたしの歩みが正しい道からそれ、心が目の欲するままに動き、手が何かの汚れで汚されていたのなら、
31:8 わたしがまいた種を、ほかの人が食べればいい。わたしの育てた作物は、根こそぎ引き抜かれてしまえばいい。
31:9 もし、わたしの心が女に迷わされ、隣人の家の戸口で待ち伏せしたことがあるなら、
31:10 わたしの妻がほかの男のために麦をひき、ほかの男たちが彼女の上に身をかがめてもかまわない。
31:11 これは重い罪だ。裁判官によって罰せられるべき悪事なのだから。
31:12 これは滅びに至るまで焼きつくす火だ。わたしの収穫をすべて根こそぎにしてしまう。
31:13 わたしの召使いや女中がわたしに訴えを起こしたとき、その言い分を退けたことがあっただろうか。
31:14 神が立ち上がるとき、わたしはどうすればいいのか。神が問いただすとき、何と答えればいいのか。
31:15 わたしを母の胎内で造った方が、彼をも造ったのではないか。わたしたちを母の腹の中で形づくったのは、同じ方ではないか。
31:16 わたしがもし、貧しい人たちの願いを退け、未亡人の目を絶望で曇らせたことがあるなら。
31:17 たとえ自分のパンを独り占めして、みなしごに分けてやらなかったことがあるとすれば、
31:18 わたしは彼が幼いころから、父親のように彼を育ててきた。母の胎から出たときから、彼を導いてきたのだ。
31:19 もし着物がないために死にそうな人や、身を包むもののない貧しい人を見かけたのに、
31:20 その腰がわたしに感謝せず、わたしの羊の毛で暖まらなかったことがあるなら、
31:21 もしわたしが、町の門で自分に味方する人たちがいるのを頼りにして、みなしごに手を上げたことがあるなら、
31:22 わたしの肩骨が肩から抜け落ち、腕がつけ根から折れてもいい。
31:23 災いは神から来る。わたしはそれを恐れた。神の輝きの前では、わたしは何もできない。
31:24 わたしがもし金を頼りにし、純金にお前こそわたしの安心だと言ったことがあるなら、
31:25 わたしがもし、財産が多いことや、自分の手で大きな富を築いたことを喜んだとしたら、
31:26 わたしがもし、輝く太陽を見て、あるいは明るく空を渡っていく月を見て、
31:27 心ひそかに惑わされ、手に口づけを送ったことがあるなら、
31:28 これもまた、裁判官に罰せられるべき罪だっただろう。天におられる神を裏切ることになるからだ。
31:29 わたしを憎む者が滅びるのを喜んだり、彼に災いがふりかかったのを見て勝ち誇ったりしたことがあるだろうか。
31:30 わたしは口に罪を犯させなかった。彼の魂に呪いをかけて、その命を求めるようなことはしなかった。
31:31 わたしの家の者たちはこう言っていたはずだ。「あの人の肉で腹を満たせなかった者などいるだろうか」と。
31:32 他国人が路上で夜を明かすことはなかった。わたしは旅人に自分の家の戸を開いた。
31:33 わたしがもし、人がよくやるように自分の罪を隠し、やましいことを胸の奥にしまい込んでいたなら——
31:34 大衆を恐れたことがあるだろうか。一族に見下されるのを怖がって、口を閉ざし、家の外に出られなくなったことがあるだろうか。
31:35 ああ、だれかわたしの言うことを聞いてくれたらいいのに。これがわたしの署名だ。全能者よ、どうかわたしに答えてほしい。わたしを訴える相手が、その告訴状を書いてくれたらいいのに。
31:36 わたしは必ずそれを肩にかつぎ、冠のように身につける。
31:37 わたしは自分の歩みの一歩一歩を神に申し上げ、君主のように堂々と神に近づくのに。
31:38 わたしの畑がわたしを責めて叫び、その畝が声をそろえて泣いたことがあるなら、
31:39 もしその産物を金も払わずに食べ、その持ち主を死なせたことがあるなら、
31:40 小麦の代わりにいばらが生え、大麦の代わりに雑草が生えてもいい。」ヨブの言葉はここで終わる。
32:1 このようにして、三人はヨブに答えるのをやめた。ヨブが自分は正しいと思い込んでいたからだ。
32:2 ラム族の出身で、ブズ人バラクエルの子エリフが怒った。彼はヨブに対して怒りを燃やした。ヨブが神よりも自分のほうが正しいと言い張ったからだ。
32:3 またエリフは、三人の友に対しても怒りに燃えた。彼らはヨブに反論できないのに、ヨブを悪いと決めつけていたからだ。
32:4 エリフは、彼らがみんな自分より年上だったので、ヨブに話すのを控えて待っていた。
32:5 エリフは、この三人がもう何も答えられなくなったのを見て、怒りがこみ上げてきた。
32:6 ブズ人バラクエルの子エリフが口を開いて言った。「わたしは若く、あなたたちは年をとっている。だから遠慮して、自分の意見を言うのをためらってきた。
32:7 わたしはこう思っていた。「年を重ねた人が語るべきだ。長く生きてきた人が知恵を教えるべきだ」と。
32:8 しかし、人の中には霊があり、全能者の息が人に理解する力を与える。
32:9 年を重ねた人が、みな賢いわけではない。長く生きた人が、みな正しい判断をわきまえているわけではない。
32:10 「だから、わたしは言う。わたしの話を聞いてほしい。わたしも自分の考えを述べよう。」
32:11 見よ、わたしはあなたがたの言葉を待っていた。あなたがたの説明に耳を傾け、言うべきことを探しているあいだ、じっと聞いていた。
32:12 わたしはあなたたちの話にじっくり耳を傾けた。でも、ヨブを言い負かせた人は一人もいない。だれも彼の主張に答えられなかった。
32:13 おそらくあなたがたはこう言うだろう。「わたしたちは知恵を見つけた。彼を打ち負かせるのは神だけで、人ではない」と。
32:14 彼はわたしに向かって議論をしかけたわけではない。だから、わたしはあなたたちの言葉で彼に言い返すつもりはない。
32:15 彼らはうろたえて、もう何も答えられない。言うべき言葉が、彼らからは消えてしまった。
32:16 わたしは待った。でも、彼らは何も言わない。ただ立ちつくすばかりで、もう答えようとしない。
32:17 わたしもまた、わたしの意見を答えたい。自分の考えを述べよう。
32:18 わたしのうちには言葉が満ちている。わたしの内なる霊が、わたしに語れと迫っている。
32:19 見よ、わたしの内には出口のないぶどう酒がたまっている。今にも、新しい皮袋のように張り裂けそうだ。
32:20 わたしは語りたい。そうすれば気が晴れる。口を開いて、答えよう。
32:21 わたしは、だれかをえこひいきすることもないし、だれにもお世辞を言ったりしない。
32:22 わたしはお世辞を言うことを知らないからだ。もしそんなことをすれば、わたしを造った方が、すぐにわたしを滅ぼしてしまうだろう。
33:1 ヨブよ、どうか今わたしの言葉を聞いてほしい。わたしの語ることすべてに耳を傾けてくれ。
33:2 見よ、わたしは今、口を開いた。口の中の舌が語りだす。
33:3 わたしの言葉は、まっすぐな心から出たものだ。わたしの唇は、知っていることを偽りなく語る。
33:4 神の霊がわたしを造り、全能者の息がわたしに命を与える。
33:5 わたしにできるなら、答えてくれ。言葉を整えて、わたしの前に立ってみろ。
33:6 見よ、神の前では、わたしもあなたと同じだ。わたしも土から形づくられた者なのだ。
33:7 見よ、わたしの威厳があなたをおびえさせることはない。わたしの力があなたを押さえつけることもない。
33:8 確かに、あなたはわたしの聞いているところで言った。あなたの言葉をこの耳で聞いたのだ。
33:9 わたしは潔白で、罪を犯していない。わたしは清く、とがもない。
33:10 見よ、神はわたしを責める口実を見つけ、わたしを自分の敵とみなす。
33:11 わたしの足をかせにはめ、わたしの歩む道をすべて見張っている』と。
33:12 見よ、あなたはこの点で正しくない。わたしはあなたに答えよう。神は人よりも大いなる方なのだから。
33:13 なぜあなたは神に食ってかかるのか。神はご自分のなさることを、いちいち説明されないというのに。
33:14 神は一度、いや二度でも語りかける。でも人はそれに気づかない。
33:15 夢の中で、夜の幻の中で、人が深い眠りに落ちるとき、寝床でまどろむときに——
33:16 彼はそのとき人々の耳を開き、警告を与えて彼らを戒める。
33:17 こうして人にその悪い行いをやめさせ、高ぶりを人から取り除くためだ。
33:18 魂を守って滅びの穴に落ちないようにし、その命を守って剣にかかって死なないようにされる。
33:19 床の上で痛みに苦しめられ、骨は絶えずうずき続ける。
33:20 その命はパンを受けつけなくなり、魂はごちそうさえ嫌がる。
33:21 その肉はやせ落ちて見えなくなり、見えなかった骨まで浮き出てくる。
33:22 その魂は墓に近づき、その命は死をもたらす者に近づく。
33:23 もしその人のそばに、ひとりの天使がいるなら。千人にひとりの、間に立ってとりなす者がいて、その人に正しい生き方を告げるなら。
33:24 神は彼をあわれんで言う。「この人を助けて、死の穴に落ちるのを免れさせてやれ。わたしは身代金を見つけた」と。
33:25 その体は子どものころよりもみずみずしくなり、若かったころの元気を取り戻す。
33:26 その時、彼が神に祈ると、神は彼を受け入れてくださる。彼は喜びの声をあげて神の顔を仰ぎ見て、神はその人を再び正しい者としてくださる。
33:27 わたしは人々の前でこう歌う。「わたしは罪を犯し、正しいことを曲げてしまった。でも神はそれに見合った罰をわたしに下さなかった。
33:28 神はわたしの魂を救い出し、墓に落ちるのを止めてくださった。わたしの命は光を見ることができる。
33:29 見よ、神はこれらすべてのことを、人に二度も三度も繰り返し行う。
33:30 魂を穴から引き戻し、命の光で照らすためだ。
33:31 ヨブよ、耳を傾けてわたしの言うことを聞いてほしい。黙っていなさい。わたしが語ろう。
33:32 あなたがもし言うべきことがあるなら、答えてほしい。話してくれ。わたしはあなたを正しいと認めたいのだから。
33:33 もし言うことがないなら、わたしの言葉を聞きなさい。黙っていなさい。わたしがあなたに知恵を教えよう。」
34:1 エリフはさらに続けて言った。
34:2 知恵ある人たち、わたしの言葉を聞いてほしい。知識のある人たち、わたしに耳を傾けてほしい。
34:3 口が食べ物を味わうように、耳は言葉を聞き分けるからだ。
34:4 わたしたちは、正しいことを見きわめよう。何が良いことなのか、みんなで一緒に学んでいこう。
34:5 ヨブはこう言った。「わたしは正しい。それなのに神はわたしの正しさを認めてくれない」と。
34:6 わたしは正しいのに、うそつき呼ばわりされる。罪もないのに、わたしの受けた矢傷は治らない。
34:7 ヨブのような人がほかにいるだろうか。彼はあざけりを水のように飲む。
34:8 悪事を働く者たちと連れ立ち、悪人と共に歩む。
34:9 ヨブはこう言った。『神と親しくしても、人には何の得もない』と。
34:10 それだから、理解ある人たちよ、わたしに聞いてほしい。神が悪を行うことなど決してない。全能者が不正を行うことも決してない。
34:11 神は人の行いに応じて報い、それぞれの生き方に応じてその身に返す。
34:12 まことに、神が悪を行うことなど決してない。全能者が正しい裁きをゆがめることも、決してない。
34:13 だれがこの地を神にゆだねたのか。だれが全世界を神に負わせたのか。
34:14 神がもし、そう心に決めて、御自分の霊と息を引き上げてしまわれるなら、
34:15 すべての肉なるものはひとつに滅び、人は塵に帰る。
34:16 もし、あなたに理解する力があるなら、これを聞いてほしい。わたしの言葉に耳を傾けてほしい。
34:17 正しさを憎む者が世を治められるだろうか。正しく力ある方を、あなたは悪者呼ばわりするのか。
34:18 王に向かって「あなたは役立たずだ」と言い、力ある者たちに向かって「悪い者だ」と言えるだろうか。
34:19 君主をえこひいきすることもなく、金持ちを貧しい人より特別に扱うこともない。みんな、神の手が造ったものだからだ。
34:20 彼らは一瞬にして死ぬ。真夜中に人々は揺さぶられ、消えていく。力ある者も、人の手によらずに取り除かれる。
34:21 神の目は人の道を見ている。その一歩一歩を、すべて見ているのだ。
34:22 悪を行う者が身を隠せるような暗やみも、深い闇も、どこにもない。
34:23 人がさばきを受けるために神の前に出るとき、神は前もってその時を定めておく必要はない。
34:24 彼は数え切れないほどの力ある者たちを打ち砕く。そして、その代わりに他の者たちを立てる。
34:25 このように、神は彼らの行いを見抜いている。そして夜のうちに彼らをくつがえし、彼らは滅ぼされる。
34:26 彼を悪人として、人々の見ている前で撃たれる。
34:27 これらの者が神に背を向け、その道をまったく顧みなかったからだ。
34:28 貧しい人の叫びを神のもとに届かせ、苦しんでいる人の叫びを神に聞かせる。
34:29 彼が静かにしておられるとき、だれが罪に定められるだろう。彼が顔を隠されるとき、だれが彼を見ることができるだろう。国に対しても、一人の人に対しても、それは同じだ。
34:30 これは、神を無視する者が国を治めることのないように、そして民をわなにかけることのないようにするためだ。
34:31 神に向かってこう言った者がいるだろうか。「わたしは罰を受けました。もう悪いことはしません。
34:32 わたしが見ていないことを教えてほしい。もしわたしが悪いことをしたのなら、もう二度としない。
34:33 あなたが拒むからといって、彼はあなたの思いどおりに報いるべきだろうか。選ぶのはわたしではなく、あなた自身だ。だから、あなたの考えていることを言いなさい。
34:34 悟りある人たちはわたしにこう言うだろう。わたしの言葉を聞いた賢い人はこう言うだろう。
34:35 ヨブの語ることには知識がなく、その言葉には理解がない。
34:36 どうかヨブが最後まで問いただされてほしい。彼は悪人のような答え方をしているのだから。
34:37 ヨブは自分の罪の上に、さらに反逆を重ねている。わたしたちの前で手を打ち鳴らし、神に逆らってあれこれ言葉を並べ立てているのだ。
35:1 エリフはさらに続けて言った。
35:2 あなたはこれが正しいことだと思っているのか。「わたしは神より正しい」と言うのか。
35:3 あなたは言う、『それがあなたに何の得になるのか。罪を犯さないでいて、わたしに何の益があるのか』と。
35:4 わたしはあなたに答えよう。あなたといっしょにいる、あなたの仲間たちにも答えよう。
35:5 天を見上げてみよう。そして、あなたよりはるか高いところにある雲をよく見てみよう。
35:6 あなたが罪を犯したとしても、神にどんな害を与えられるだろうか。あなたの背きがいくら重なっても、神に何ができるというのか。
35:7 またあなたが正しくても、それが神に何を与えることになるだろう。あなたの手から神が受け取るものなど、何もない。
35:8 あなたの悪はあなたのような人間に関わり、あなたの正しさもまた人の子に関わるだけだ。
35:9 しいたげが多いために、人々は叫び声をあげる。力ある者の腕におさえつけられて、助けてくれと叫ぶ。
35:10 わたしの造り主である神は、どこにいるのか。夜の間に歌を与えてくれる神は。だれもそう問いかける者はいない。
35:11 地の獣にもまさってわたしたちを教え、空の鳥にもまさってわたしたちを賢くしてくださる方だ』と。
35:12 彼らは叫んでも、答えてもらえない。悪い者たちが高ぶっているからだ。
35:13 まことに、神はむなしい叫びを聞かない。全能者はそれを気にとめない。
35:14 あなたが彼を見えないと言うなら、なおさらだ。さばきは神の前にある。あなたはそれを待つべきだ。
35:15 今、神は怒って罰することをせず、罪の深さも気にとめていない。
35:16 ヨブは口を開いて、むなしいことを話している。何もわかっていないのに、言葉ばかりを重ねているのだ。
36:1 エリフはさらに続けて言った。
36:2 しばらく待ってほしい。あなたに教えたいことがある。神のために、まだ言うべきことが残っているんだ。
36:3 わたしは遠くから知識を汲んでくる。そして、わたしを造った方が正しいことを明らかにする。
36:4 まことに、わたしの言葉に偽りはない。あなたの前にいるのは、知識の欠けたところのない者だ。
36:5 神は力強い。だが、だれをも見下したりはしない。その理解する力は、はかり知れないほど大きい。
36:6 悪しき者を生かしてはおかない。でも、苦しむ人には正しい裁きを与える。
36:7 彼は正しい人から目を離さない。王たちと共に、彼らを永遠に位に着かせて、高く上げてくださる。
36:8 もし彼らが足かせにつながれ、苦しみの綱に縛られているとしても、
36:9 彼らの行いと、高ぶって犯した罪を彼らに突きつける。
36:10 彼らの耳を開いて教えを聞かせ、悪から離れて立ち帰るように命じられる。
36:11 もし彼らが聞き従い、神に仕えるなら、残りの日々を幸せに過ごし、その歳月を心地よく生きることができる。
36:12 しかし彼らが聞き従わないなら、剣で滅び、何もわからないまま死んでいく。
36:13 心に神を信じない者たちは、怒りをためこむ。神に縛られても、助けを求めようとしない。
36:14 彼らは若くして死に、その命は恥のうちに終わる。
36:15 神は苦しむ人を、その苦しみをとおして救い出す。逆境の中で、その耳を開いてくれる。
36:16 神はあなたを苦しみから、束縛のない広々とした場所へと導き出してくださる。そこにはもう窮屈さはない。あなたの食卓には、豊かな料理があふれるほど並べられる。
36:17 悪しき者への裁きを、あなたは存分に受けている。裁きと正義があなたをとらえて離さない。
36:18 怒りにそそのかされて、あざけりに走らないよう気をつけなさい。多額の賠償金でも、あなたを救い出すことはできないのだから。
36:19 あなたの叫びは、あなたを苦しみから守ってくれるだろうか。どんなに力をふりしぼっても、役には立たない。
36:20 夜を慕ってはならない。人々がいる場所から消し去られる、その夜を。
36:21 悪へ心を向けないよう、気をつけなさい。あなたは苦しみよりも、そちらを選んでしまったのだから。
36:22 見よ、神はその力によって高く上げられる。神のように教える者が、どこにいるだろうか。
36:23 神のために道を定めた者がいるだろうか。「あなたは悪いことをした」と言える者がいるだろうか。
36:24 神のすばらしいわざをたたえることを忘れてはいけない。人々はそれを歌にしてほめてきた。
36:25 すべての人はこれを見つめる。人は遠くからそれを眺めるだけだ。
36:26 神は偉大だが、わたしたちはそれを知りつくせない。神が何年生きているのか、その年数さえ数えきれない。
36:27 彼は水のしずくを集め、それを霧から雨として降らせる。
36:28 空はこれを降らせ、多くの人の上に豊かに注ぐ。
36:29 雲の広がっていくさまや、その幕屋がとどろくさまを、いったいだれが理解できるだろうか。
36:30 見よ、神はいなずまを周りにひろげ、海の底までもおおわれる。
36:31 彼はこれらをもって民をさばき、豊かに食物を与える。
36:32 稲妻をもろ手で包み、それに命じて標的を撃たせる。
36:33 その雷鳴は、悪に怒りを燃やす神のことを告げ知らせる。
37:1 これがために、わたしの心もまた震え、その場所から飛び上がる。
37:2 聞け、神の声のとどろきを。その口から出るうなりを聞け。
37:3 天の下いっぱいにこれを放ち、その光を地の果てまで届かせる。
37:4 その後で、とどろく声がする。神は威厳ある声でとどろき渡る。その声が聞こえるとき、神はいなずまを引きとどめない。
37:5 神は驚くような声を響かせ、雷を轟かせる。わたしたちには理解できない大いなることを行う。
37:6 雪に向かって「地に降れ」と言い、夕立ちにも大雨にも「激しく降れ」と命じる。
37:7 神はすべての人の手を止めてしまう。それは、造られたすべての人が、神のわざを知るためだ。
37:8 そのとき、獣は隠れ家に入り、自分のすみかにとどまる。
37:9 つむじ風は嵐の部屋から吹き出し、寒さは北風とともにやってくる。
37:10 神の息によって氷が張り、広々とした水も凍りつく。
37:11 神は厚い雲に水をたっぷり含ませ、その雲はいなずまをまき散らす。
37:12 それは神の導きで、あちこちへと向きを変える。神が世界じゅうで命じることを、すべて成しとげるためだ。
37:13 神がこれらを送るのは、人を正すためであったり、その地のためであったり、慈しみを示すためであったりする。
37:14 ヨブよ、これに耳を傾けてほしい。立ち止まって、神が行う驚くべきわざをじっくり考えてみるといい。
37:15 あなたは知っているだろうか。神がどのように雲に命じ、その雲を光で輝かせるのかを。
37:16 あなたは知っているだろうか。雲がどう浮かんでバランスを保つのかを。すべてを知り尽くした方の、驚くべきわざを。
37:17 南風によって地が静まり、あなたの着物が熱くなる、そのわけを、あなたは知っているのか。
37:18 あなたは神とともに、鋳た金属の鏡のように硬い大空を、張り広げることができるのか。
37:19 われわれが神に何と言うべきか、教えてほしい。わたしたちは暗闇の中にいて、言葉をととのえることができない。
37:20 わたしが話したいと、だれかが神に告げるだろうか。人はのみ込まれることを望んだりするだろうか。
37:21 今、人は空に輝くまぶしい光を見ることができない。でも風が吹き渡ると、空は澄みわたる。
37:22 北から黄金の輝きがやってくる。神は恐ろしいほどの輝きをまとっている。
37:23 全能者を、わたしたちは見つけ出すことができない。その力は圧倒的で、正義と豊かな公正に満ちている。それでも、人を痛めつけたりはしない。
37:24 それゆえ、人々は神を恐れる。神は、自分を賢いと思い込んでいる人には目を留めない。
38:1 そのとき、主は嵐の中からヨブに答えた。
38:2 「知恵もないくせに、勝手な言葉でわたしの計画を暗くするのは、いったい誰だ。
38:3 さあ、男らしく腰に帯を締めろ。これからお前に尋ねる。わたしに答えてみろ。
38:4 わたしが地の基を築いたとき、お前はどこにいた。分かるというなら、言ってみろ。
38:5 地の大きさを定めたのは誰だ。知っているなら答えてみろ。その上に測り縄を張ったのは誰だ。
38:6 地の土台は、何の上に据えられたのか。その隅の石を置いたのは誰だ。
38:7 明けの星々がいっせいに歌い、神の子たちがみな喜びの声をあげた、あのときに。
38:8 海が母の胎から吹き出すように湧き出たとき、それを扉で閉じ込めたのは誰だ。
38:9 わたしは雲をその衣とし、深い闇をその産着とした。
38:10 わたしは海のために境を定め、かんぬきと戸を取りつけて、
38:11 ここまでは来てもいい。でも、ここから先はだめだ。おまえの高ぶる波は、ここで止まるのだ。
38:12 あなたは生まれてから一度でも、朝に命令したことがあるか。夜明けに、自分の昇る場所を教えたことがあるか。
38:13 地の果てをつかんで、悪人たちをそこから振り落とすように。
38:14 地は粘土に印章が押されて形が浮かび上がるように姿を変え、すべてが衣のようにくっきりと現れる。
38:15 悪人からはその光が奪われ、振り上げた腕は折られる。
38:16 あなたは海の底の水がわき出るところまで行ったことがあるか。深い海の底を歩いたことがあるか。
38:17 死の門はおまえに開かれたことがあるか。暗闇の門を見たことがあるか。
38:18 あなたは地の果てまで見わたしたことがあるだろうか。そのすべてを知っているなら、言ってみなさい。
38:19 光の住む所へは、どの道を行けばいいのか。闇のある場所はどこなのか。
38:20 光の住みかにあなたはそれを連れて行けるのか。その家へ帰る道を知っているのか。
38:21 あなたは知っているはずだ。あの時にはもう生まれていて、生きてきた日数もそれほど多いのだから。
38:22 あなたは雪がたくわえられた倉に入ったことがあるだろうか。ひょうがしまわれた倉を見たことがあるだろうか。
38:23 これらは、苦しみの時のため、戦いと争いの日のために、わたしがたくわえておいたものだ。
38:24 光が分かれ広がる道はどこにあるのか。東風が地の上に吹き渡る道はどこにあるのか。
38:25 だれが豪雨のために水路を切り開き、雷鳴とともに光る稲妻のために道を切り開いたのか。
38:26 人のいない地に、だれもいない荒野に雨を降らせる。
38:27 荒れ果てた土地のすみずみまで水を行き渡らせ、そこに若草を芽生えさせるためだ。
38:28 雨に父親はいるだろうか。露のしずくは、だれが生んだのか。
38:29 氷はだれの胎から生まれるのか。空から降りる霜は、だれが産むのか。
38:30 水は石のように固まり、深い淵の表面も凍りつく。
38:31 あなたはプレアデスの星々を結び合わせることができるか。オリオンの綱を解くことができるか。
38:32 あなたは星座を時期にしたがって導き出せるか。おおぐま座を子星とともに導けるか。
38:33 あなたは天のルールを知っているだろうか。天が地を治めるしくみを、地の上で定めることができるだろうか。
38:34 あなたは雲に向かって声をあげ、あふれる大水で自分をおおわせることができるか。
38:35 稲妻を送り出して、走らせることができるか。稲妻はあなたに『はい、ここにいます』と言うだろうか。
38:36 雲に知恵を授け、霧に悟りを与えたのは誰か。
38:37 だれが知恵をもって雲を数えられるだろう。だれが天の水がめを傾けて空にできるだろう。
38:38 ちりが固まって塊になり、土くれが互いにくっつくとき、そんなことができるか。
38:39 ライオンのために獲物をしとめてやれるか。若いライオンの腹を満たしてやれるか。
38:40 彼らはほら穴にうずくまり、茂みの中に身をひそめて獲物を待つ。そんな時、あなたはこれをしてやれるだろうか。
38:41 からすにえさを与えるのは誰だろう。ひなが神に向かって鳴き、食べ物がなくてさまよっているとき。
39:1 あなたは、岩場に住む野やぎがいつ子を産むか知っているだろうか。雌鹿が子を産むときを、あなたは見守ったことがあるだろうか。
39:2 その月数を数えて、生まれる時を知ることができるだろうか。
39:3 かがんで子を産み落とし、産みの苦しみを終える。
39:4 子は丈夫に育ち、野で大きくなる。やがて出て行き、二度と親のもとには戻らない。
39:5 だれが野ろばを放って自由にしたのか。だれが野ろばの綱を解いたのか。
39:6 荒れ野をその家として、塩の地をそのすみかとして与えたのはわたしだ。
39:7 町の喧騒をあざ笑い、追い立てる者の声にも耳を貸さない。
39:8 山々を歩き回って牧草地とし、あらゆる緑の草を探し求める。
39:9 野牛が、よろこんでおまえに仕えるだろうか。おまえの飼い葉おけのそばでおとなしくしているだろうか。
39:10 野牛にひもをつけて、畝を歩かせられるだろうか。あなたのあとについて、谷を耕させることができるだろうか。
39:11 その力が強いからといって、あなたはこの動物を頼りにするだろうか。あなたの仕事をこの動物に任せるだろうか。
39:12 あなたはこの牛を信じて、収穫した穀物を運んで来させ、脱穀場に集めさせるだろうか。
39:13 だちょうは翼を勢いよく羽ばたかせる。でも、こうのとりのような立派な翼や羽があるわけではない。
39:14 卵を地面に置き去りにし、砂の上で温める。
39:15 卵が足で踏みつぶされることも、野の獣に踏み荒らされることも、ダチョウは忘れてしまう。
39:16 ダチョウは自分のひなに冷たく、まるでわが子でないかのように扱う。その苦労がむだになっても、気にとめない。
39:17 神がこれに知恵を与えず、悟りを分け与えなかったからだ。
39:18 でも、いざ立ち上がって走りだせば、馬も、その乗り手さえも笑いとばす。
39:19 馬に力を与えるのは、あなたなのか。その首をたてがみで包むのは、あなたなのか。
39:20 あなたはこの馬を、いなごのように跳ねさせられるのか。その鼻息のとどろきは恐ろしい。
39:21 馬は谷を勢いよくかき立て、自分の力を誇り、武器の待つ戦場へ向かって駆け出していく。
39:22 恐怖をあざ笑い、おびえることもない。剣の前からも引き返さない。
39:23 矢筒は背で音を立て、槍と投げ槍がきらめく。
39:24 荒々しく、猛り立って、地を飲みこむように駆ける。ラッパが鳴り響いても、じっとしてはいられない。
39:25 ラッパが鳴るたびに、いななきをあげる。遠くから戦いのにおいをかぎつけ、指揮官たちの号令と、ときの声を聞き取るのだ。
39:26 たかが空に舞い上がり、翼を広げて南へ向かうのは、あなたの知恵によるものなのか。
39:27 わしが空高く舞い上がるのは、あなたの命令なのか。高い所に巣を作るのも、そうなのか。
39:28 岩の上に住みつき、そこをすみかにする。切り立った岩のとがり、そびえる崖の上で暮らすのだ。
39:29 そこから獲物を探し、その目は遠くまで見通す。
39:30 そのひなも血を吸う。殺された者がいる所には、この鳥もいる。」
40:1 主はヨブに答えて言われた。
40:2 わたしのような者が全能者と言い争おうというのか。神を責めるのなら、それに答えてみるがいい。
40:3 ヨブは主に答えた。
40:4 「見よ、わたしは取るに足りない者です。どうやってあなたに答えられるでしょう。ただ手で口をふさぐばかりです。
40:5 わたしはもう一度話しました。でも、もう答えません。二度話しました。でも、もう繰り返しません」
40:6 嵐の中から、主はまたヨブに答えた。
40:7 さあ、男らしく腰に帯を締めろ。これからお前に尋ねる。わたしに答えてみろ。
40:8 あなたはわたしの正しさをくつがえそうとするのか。わたしを悪者にして、自分が正しいと言おうとするのか。
40:9 あなたは神のような力強い腕を持っているのか。神のような声で雷をとどろかせることができるのか。
40:10 威光と気高さを身にまとってみよ。栄光と輝きを身に着けてみよ。
40:11 あふれ出る怒りをぶちまけよ。高ぶる者をすべて見つけ出し、その者を低くせよ。
40:12 すべての高ぶる者を見つけて、抑えつけよ。悪人をその場で踏みつけよ。
40:13 彼らをすべてちりの中に埋めてしまえ。その顔を、隠れた所に閉じ込めてしまえ。
40:14 そうすれば、わたしもあなたをたたえよう。あなた自身の右の手が、あなたを救えるのだと。
40:15 見よ、ベヘモットを。わたしがあなたと同じように造ったものだ。牛のように草を食べる。
40:16 見よ、その力は腰にあり、みなぎる勢いは腹の筋肉にある。
40:17 尾を杉の木のようにしならせ、ももの筋はたがいに絡み合っている。
40:18 その骨は青銅の管のようで、その体は鉄の棒のようだ。
40:19 これは神が造ったものの最高傑作だ。造り主だけが、それに剣で近づける。
40:20 山も彼のために食物を差し出し、野の獣たちはみな、そこで戯れる。
40:21 葦の茂みの下に横たわり、葦や沼のかげに身をひそめている。
40:22 川べりの柳がその陰でこれをおおい、谷川の柳が周りを取り囲む。
40:23 見よ、川が荒れ狂っても、彼はあわてない。ヨルダン川が口に流れ込んできても、彼は動じない。
40:24 だれがこの獣を目の前で捕まえられるだろうか。だれがわなでその鼻を貫けるだろうか。
41:1 つり針でレビヤタンを釣り上げることができるか。糸でその舌を押さえつけることができるか。
41:2 ワニのように、鼻に綱を通したり、あごを釣り針で刺し貫いたりできるだろうか。
41:3 それがおまえに何度も命ごいをするだろうか。おまえにやさしい言葉をかけるだろうか。
41:4 この生き物があなたと契約を結ぶだろうか。あなたはこれを、いつまでも奴隷にできるだろうか。
41:5 鳥と遊ぶように、この生き物と遊べるだろうか。ひもでつないで、あなたの召使いの娘たちのペットにできるだろうか。
41:6 商人たちはそれを取引の品にするだろうか。仲買人たちはそれを分け合うだろうか。
41:7 おまえは、そいつの皮をもりで、頭を魚用のやすで埋め尽くせるか。
41:8 ワニに手を置いてみろ。戦いのことを思い出せば、二度とやろうとは思わないはずだ。
41:9 見よ、それを捕らえようという望みは裏切られる。その姿を見ただけで、人は打ちのめされる。
41:10 それを起こす勇気のある者など、だれもいない。ならば、わたしの前に立ち向かえる者などいるだろうか。
41:11 だれがわたしに先に何かを与え、わたしがそれに報いなければならないというのか。天の下にあるものはすべて、わたしのものだ。
41:12 わたしは、その手足のことも、その並外れた力のことも、その体の見事な造りのことも、黙ってはいられない。
41:13 だれがその外皮をはぎ取れるだろう。だれがその二重のあごの間に入り込めるだろう。
41:14 だれがその顔の扉を開けられるだろう。ぐるりと並んだ歯は、見る者を恐怖で震え上がらせる。
41:15 その体は硬いうろこが盾のように連なり、すきまなくぴったり閉じている。
41:16 うろこは互いにぴったりとくっついていて、その間には空気さえ入り込めない。
41:17 どれも隣り合うものとぴったりくっつき合い、固く組み合わさって、離れることがない。
41:18 くしゃみをすると光がひらめき、その目は夜明けの光のようだ。
41:19 その口からは燃えるたいまつが飛び出し、火の粉が飛び散る。
41:20 その鼻からは煙が噴き出す。煮えたぎる釜のように、燃える葦のように。
41:21 その息は炭火を燃え立たせ、口からは炎が噴き出す。
41:22 首の下には力が宿り、その顔の前では恐れが踊る。
41:23 その肉のひだはぴたりと重なり合い、固く張りついて動かない。
41:24 その心臓は石のように硬く、臼の下石のように硬い。
41:25 彼が身を起こすと、力ある者たちもおびえる。その激しい暴れように、みな取り乱す。
41:26 剣で切りつけても歯が立たない。槍も投げ槍も、もりも役に立たない。
41:27 鉄をわらのように、青銅を腐った木のように思っている。
41:28 矢が飛んできても逃げ出しはしない。石投げの石も、彼にとってはわらくずのようなものだ。
41:29 こん棒も、わらくず同然にしか思わない。投げやりがうなりを上げても、笑い飛ばすだけだ。
41:30 腹の下は、とがった土器のかけらのようだ。泥の上を、脱穀機みたいに引きずって進んでいく。
41:31 その怪物は深い海を鍋のように煮え立たせ、海を香油のつぼのようにかき回す。
41:32 それが通ったあとには、光る筋が残る。深い海は、まるで白髪のように見える。
41:33 地上に、これに並ぶものはない。恐れを知らないものとして造られた。
41:34 それは高ぶるものすべてを見下し、誇り高いものすべてを支配する王なのだ。
42:1 ヨブは主に答えた。
42:2 「わたしは知っています。あなたはすべてのことができ、あなたが計画したことは、どんなことでも妨げられることがない、と。
42:3 『知識もないのに、わたしの計画を覆い隠すこの者はだれか』。そう、わたしは自分でも分からないことを、理解できないほど不思議なことを、知りもしないのに口にしていました。
42:4 『聞いてほしい。わたしが話す。わたしが尋ねるから、あなたが教えてほしい』
42:5 わたしはあなたのことを、耳で聞いて知っているだけだった。でも今、この目であなたを見たのだ。
42:6 それで、わたしは自分を憎み、ちりと灰の中で悔い改める。」
42:7 主はこれらの言葉をヨブに語り終えると、テマン人エリファズに言った。「わたしは、あなたとあなたの二人の友に対して怒っている。あなたたちは、わたしのしもべヨブのように、わたしについて正しいことを語らなかったからだ。
42:8 それで今、あなたたちは雄牛七頭と雄羊七頭を用意し、わたしの僕ヨブのところへ行って、自分たちのために焼き尽くすいけにえをささげなさい。わたしの僕ヨブがあなたたちのために祈ってくれる。わたしは彼の祈りを聞き入れ、あなたたちの愚かなおこないを罰しないことにする。あなたたちは、わたしの僕ヨブのように、わたしについて正しいことを語らなかったからだ。」
42:9 テマン人エリファズ、シュフ人ビルダデ、ナアマ人ツォファルは、主に言われたとおりにした。すると主は、ヨブの願いを聞き入れた。
42:10 ヨブが友のために祈ると、主はヨブをもとの幸せな暮らしに戻した。そして主は、ヨブが前に持っていたすべての財産を、二倍にして返した。
42:11 ヨブのすべての兄弟姉妹と、以前からの知り合いみんなが、彼のところに集まってきた。そして家でいっしょに食事をし、主がヨブに下したすべての災いのことで、彼をなぐさめ、はげました。それからそれぞれが、お金一枚と金の輪一つを彼に贈った。
42:12 主はヨブの晩年を、はじめのころよりも豊かに祝福した。ヨブは羊を一万四千頭、らくだを六千頭、牛を一千くびき、雌ろばを一千頭持つようになった。
42:13 彼には七人の息子と三人の娘がいた。
42:14 彼は最初の娘をエミマ、二番目をケジア、三番目をケレン・ハプクと名づけた。
42:15 全国のどこにも、ヨブの娘たちほど美しい女性はいなかった。父は彼女たちにも、その兄弟たちと同じように財産を分け与えた。
42:16 このあと、ヨブは百四十年生きた。息子たちや孫たち、四代先までを見ることができた。
42:17 ヨブは年老い、人生を全うして死んだ。
詩篇
1:1 幸いなのは、悪い者のはかりごとに従って歩まず、罪人の道に立たず、人をあざける者たちの中にすわらない人。
1:2 主のおしえを喜びとして、昼も夜もそれを口ずさむ。
1:3 流れのほとりに植えられた木のように、その人は時が来ると実を結び、葉も枯れることがない。何をしても、すべてうまくいく。
1:4 悪しき者はそうではない。彼らは風に吹き飛ばされるもみ殻のようだ。
1:5 それゆえ、悪い者は裁きに耐えられない。罪ある者は、正しい人たちの集まりに加わることができない。
1:6 主は正しい者の歩む道を見守ってくださる。でも、悪い者の道は行き止まりで、やがて滅びてしまう。
2:1 なぜ、国々は騒ぎ立ち、人々はむなしいことを企てるのか。
2:2 地の王たちは立ち上がり、支配者たちは集まって、主とその選ばれた者に逆らって、たくらむ。
2:3 「あの縄を引きちぎろう。あの綱を投げ捨ててしまおう」と。
2:4 天に座している方は笑う。主は彼らをあざ笑う。
2:5 そして主は怒りに燃えて彼らに語りかけ、激しい憤りで彼らをおののかせる。
2:6 「わたしは、わたしの王を、聖なる山シオンに立てた」
2:7 わたしは主のお告げを語り伝えよう。主はわたしにこう言われた。「あなたはわたしの子。きょう、わたしがあなたを生んだ。
2:8 わたしに求めよ。わたしは国々をあなたの受け継ぐ財産として与え、地の果てまでもあなたのものとして与える。
2:9 鉄の杖で彼らを打ち砕き、陶器のように粉々に砕く。
2:10 もろもろの王よ、今、賢くなれ。地を治める者たちよ、教えを受け入れよ。
2:11 恐れをもって主に仕えなさい。おののきながら喜べ。
2:12 その足に口づけしなさい。そうしないと主は怒り、あなたたちは道の途中で滅んでしまう。その怒りは、あっという間に燃え上がるからだ。主に身を寄せる人は、みな幸いだ。
3:1 主よ、わたしに敵する者がなんと多いことか。わたしに立ち向かってくる者が、こんなにも大勢いる。
3:2 多くの人がわたしの魂に言う。「神による救いなど、この人にはない」と。セラ
3:3 でも主よ、あなたはわたしを囲む盾。わたしの栄光、わたしの頭を高く上げてくださる方。
3:4 わたしが声をあげて主を呼ぶと、主は聖なる山から答えてくださる。〔セラ〕
3:5 わたしは横になって眠り、また目を覚ます。主がわたしを支えてくださるからだ。
3:6 何万もの民が周りを取り囲んでも、わたしは恐れない。
3:7 主よ、立ち上がってください。 わたしの神よ、わたしを救ってください。 あなたはわたしの敵をみな、その頬を打ち 悪い者たちの歯を砕いてくださったのですから。
3:8 主よ、救いはあなたのものだ。あなたの祝福が、あなたの民の上にありますように。セラ
4:1 神よ、わたしの正しさを守ってくださる方よ。わたしが呼ぶとき、答えてください。苦しみの中にいたわたしを、あなたは楽にしてくださった。どうかわたしをあわれみ、わたしの祈りを聞いてください。
4:2 あなたたち人よ、いつまでわたしの名誉を辱めるのか。むなしいものを愛し、偽りを求め続けるのか。セラ
4:3 心に留めておいてほしい。主は、ご自分に忠実な人を特別に選び分けられた。主は、わたしが呼び求めるとき、それを聞いてくださる。
4:4 おののけ。でも、罪を犯すな。 寝床では、自分の心に語りかけて、静まれ。セラ
4:5 正しいささげ物をささげ、主に信頼しなさい。
4:6 多くの人は言う。「だれが幸せを見せてくれるのか」と。主よ、あなたの顔の光をわたしたちの上に照らしてください。
4:7 あなたはわたしの心を喜びで満たしてくださった。それは、彼らの穀物や新しいぶどう酒が豊かに実るときの喜びにもまさっている。
4:8 わたしは安らかに横になり、すぐ眠りにつく。主よ、あなただけが、わたしを安全に住まわせてくださるから。
5:1 主よ、わたしの言葉に耳を傾けてください。わたしの嘆きに気づいてください。
5:2 主よ、わたしの叫びに耳を傾けてください。わたしの王、わたしの神よ、あなたに祈ります。
5:3 主よ、朝ごとにあなたはわたしの声を聞いてくださる。朝ごとに、わたしはあなたに願いを申し上げ、待ち望む。
5:4 あなたは悪を喜ぶような神ではない。悪はあなたのそばに住むことができない。
5:5 高ぶる者はあなたの目の前に立つことができない。あなたは悪を行う者をみな憎む。
5:6 あなたは偽りを語る者を滅ぼす。血を流す者、人をだます者を、主は憎む。
5:7 主よ、わたしはあなたの豊かな慈しみによって、あなたの家に入ります。あなたを畏れつつ、あなたの聖なる宮に向かってひれ伏します。
5:8 主よ、あなたの正しさで、わたしを導いてほしい。わたしを狙う者たちがいるから。わたしの前に、あなたの道をまっすぐにしてほしい。
5:9 彼らの口に、真実はない。 腹の中は、破滅で満ちている。 喉は、口を開けた墓。 舌で、甘い言葉をささやくだけだ。
5:10 神よ、彼らを罪ある者と定めてください。 彼らのたくらみが、彼ら自身を倒しますように。 その多くの罪のために、彼らを追い払ってください。 あなたに背いたのですから。
5:11 主よ、あなたに身を寄せる人はみな喜び、いつまでも喜びの声をあげる。あなたが彼らを守ってくださるからだ。あなたの名を愛する人たちは、あなたを喜び誇る。
5:12 主よ、あなたは正しい人を祝福する。大きな盾のように、恵みでその人を包んでくれる。
6:1 主よ、怒りにまかせてわたしを責めないでください。激しい怒りでわたしを罰しないでください。
6:2 主よ、わたしをあわれんでください。わたしは弱り果てています。主よ、わたしを癒やしてください。骨まで苦しんでいるのです。
6:3 わたしの魂もひどくおびえています。主よ、いつまでなのですか。
6:4 主よ、帰ってきて、わたしの魂を助け出してください。あなたの変わらない愛のために、わたしを救ってください。
6:5 死んでしまえば、あなたを思い出すことはできない。死の世界で、だれがあなたに感謝するだろうか。
6:6 わたしは嘆きつづけて疲れ果てた。夜ごとに涙で寝床を漂わせ、涙で床をぬらす。
6:7 悲しみのあまり、わたしの目は弱り、 すべての敵のために、かすんでしまった。
6:8 悪を行う者はみんな、わたしから離れて行け。主はわたしの泣き声を聞いてくださった。
6:9 わたしの願いを、主は聞いてくださった。主はわたしの祈りを受け入れてくださる。
6:10 敵はみな、恥を受けて激しくうろたえる。彼らは退き、たちまち恥に沈む。
7:1 主 わたしの神よ、わたしはあなたのもとに身を寄せる。追いかけてくる者すべてから、わたしを救い出してほしい。助け出してほしい。
7:2 さもないと、敵はライオンのようにわたしの魂を引き裂き、助け出す者もいないまま、ばらばらに引きちぎってしまう。
7:3 主よ、わたしの神よ。もしわたしがこんなことをしたのなら。もしわたしの手が不正を犯したのなら。
7:4 もしわたしが、仲よくしていた人に悪を返したのなら。理由もなく敵から奪い取ったのなら。
7:5 敵がわたしの魂を追いかけ、追いつき、わたしのいのちを地に踏みつけ、わたしの誉れを土に横たえるがいい。セラ
7:6 主よ、怒って立ち上がってください。敵の激しい怒りに立ち向かってください。目を覚まし、わたしのために来てください。あなたは正しい裁きを命じられたのですから。
7:7 諸国の民が、あなたを囲んで集まりますように。その上で、あなたは高い所へ戻り、位についてください。
7:8 主よ、あなたは多くの民をさばく。主よ、わたしの正しさと、わたしの心のまっすぐさにしたがって、わたしをさばいてください。
7:9 悪い者の悪事が、どうか終わりますように。 そして、正しい人を堅く立たせてください。 神は正しく、人の心も思いも見抜くお方だから。
7:10 わたしを守る盾は神だ。神は心のまっすぐな人を救ってくださる。
7:11 神は正しい裁判官だ。そして毎日、悪を怒る神である。
7:12 剣を研ぎ、弓を引きしぼって構える。
7:13 神は死をもたらす武器を用意し、その矢を燃える火矢とされる。
7:14 見よ、悪人は悪をはらみ、災いを身ごもり、偽りを産み落とす。
7:15 彼は穴を掘り、深く掘り下げた。そして、自分が作ったその落とし穴に落ちる。
7:16 悪だくみは自分の頭にはね返り、その暴力は自分の頭の上に降りかかる。
7:17 主に感謝しよう。主は正しいお方だから。いと高き主の名をほめ歌おう。
指揮者のために。ギティトの調べに合わせて。ダビデの詩。
8:1 主 わたしたちの主よ。あなたの名は全地にわたって、なんと力強いことか。あなたはその輝きを天の上に置かれた。
8:2 幼子や乳飲み子の口を通して、あなたは力のとりでを築いた。あなたに逆らう者たちに立ち向かい、敵と、仕返しをする者を黙らせるために。
8:3 あなたの指が造った天を、あなたが置かれた月や星をながめると、
8:4 人とは何なのか、あなたが心に留めてくださるとは。人の子とは何なのか、あなたが目をかけてくださるとは。
8:5 あなたは人を神よりほんの少し低いものとし、栄光と誉れの冠を授けた。
8:6 あなたは、自分の手で造ったすべてのものを人に治めさせ、すべてを彼の足もとに置いた。
8:7 羊も牛もすべて、そして野の獣たちも。
8:8 天の鳥、海の魚、そして海の道を行き交うものすべてを。
8:9 主 わたしたちの主よ。あなたの名は全地でなんと力強いことか。
指揮者のために。ムト・ラベンの調べに合わせて。ダビデの詩。
9:1 主よ、心を尽くしてあなたに感謝します。あなたの驚くべき御業をすべて語り伝えます。
9:2 あなたのうちにあって、わたしは喜び、心をおどらせる。いと高き方よ、わたしはあなたの名をほめ歌う。
9:3 敵は退いて、あなたの前でつまずき、滅びていった。
9:4 あなたはわたしの正しさを認め、わたしの訴えを聞き入れてくださった。正しく裁く方として、王座に着かれたのだ。
9:5 敵をしかりつけ、悪しき者を滅ぼし、その名を永遠に消し去った。
9:6 敵は滅び去り、いつまでも廃墟となった。あなたが引き抜いた町々は、その記憶さえ消えてしまった。
9:7 でも主は、いつまでも王座におられる。さばきのために、その座を整えられた。
9:8 主は義によって世界を裁き、公平に諸国の民を治める。
9:9 主はしいたげられている人のとりで。苦しみのときの、とりでとなってくださる。
9:10 あなたの名を知る人は、あなたに信頼する。主よ、あなたを求める人を、あなたは決して見捨てないから。
9:11 シオンに住む主をほめ歌おう。主がなさったことを、人々の間で語り伝えよう。
9:12 流された血の責任を問うその方は、殺された人たちを心に留めている。苦しむ人の叫びを、決して忘れない。
9:13 主よ、わたしを憎む者からわたしが受ける苦しみを見てください。わたしをあわれんでください。死の門からわたしを引き上げてくださる方よ。
9:14 シオンの娘の門で、あなたのすばらしい行いをすべて語り伝えるために。わたしはあなたの救いを喜び歌う。
9:15 国々は自分で掘った穴に落ち込み、自分で隠した網に足を取られる。
9:16 主は、正しいさばきを行うことで、ご自分がどんな方かを示された。悪人は、自分の手でしたことのために、わなにかかる。ヒガヨン。セラ
9:17 悪人は死の世界へ帰って行く。神を忘れるすべての国々も同じだ。
9:18 貧しい者が永遠に忘れられることはない。苦しむ人の望みが消えてなくなることも、決してない。
9:19 主よ、立ち上がってください。人間に思い上がらせないでください。あなたの前で、すべての国が裁かれますように。
9:20 主よ、彼らに恐れを起こさせてください。人間にすぎないと、諸国の民に思い知らせてください。セラ
10:1 主よ、なぜ遠くに立っているのですか。なぜ苦しみのときに、身を隠すのですか。
10:2 悪しき者は高ぶって、貧しい者を追い詰める。どうか、彼らが自分でたくらんだ悪だくみに、自分から捕らわれますように。
10:3 悪しき者は自分の欲望を誇り、貪欲な者は主をたたえながら、主を侮っている。
10:4 悪しき者は高慢な顔をして、神を求めない。「神などいない」というのが、その考えのすべてだ。
10:5 彼のやることは、いつもうまくいく。あなたのさばきは高すぎて、彼の目には入らない。敵をみんな、鼻で笑ってばかにする。
10:6 彼は心の中でこう思っている。「わたしは決してぐらつかない。どんな時代になっても、災いに遭うことはない」と。
10:7 その口は、のろいと嘘とおどしでいっぱいだ。舌の下には、人を苦しめる悪意が隠れている。
10:8 村里の隠れ場に潜み、こっそりと罪のない人を殺す。その目は、身寄りのない人をひそかに狙っている。
10:9 隠れ場にひそむライオンのように、こっそり待ち伏せする。貧しい人を捕まえようと待ち伏せし、網にかけて引きずり込むのだ。
10:10 寄るべない人は打ちのめされ、うずくまり、力の前に倒れる。
10:11 「神は忘れた。顔を隠して、いつまでも見ることはない」と、彼は心の中で思っている。
10:12 主よ、立ち上がってください。神よ、その手を高くあげてください。苦しむ人たちを忘れないでください。
10:13 なぜ、悪い者は神をあなどるのか。心の中で「神はとがめたりしない」と思っているのか。
10:14 あなたは苦しむ人の悩みと痛みをちゃんと見ていて、その手で助けてくださる。だから頼りない者はあなたに身をゆだねる。あなたはずっと、親のない子を助けてこられた。
10:15 悪しき者、悪を行う者の腕を折ってください。その悪をとことん探し出して、少しも残さないでください。
10:16 主はとこしえに、いつまでも王だ。国々は主の地から消え去った。
10:17 主よ、あなたは苦しむ人たちの願いを聞いてくださる。あなたはその心を強くし、耳を傾けてくださる。
10:18 みなしごと、しいたげられている人のために正しくさばくためです。地に生きる人が、もう二度と人をおびえさせることのないように。
11:1 主に、わたしは身を寄せる。それなのに、どうしてあなたたちはわたしにこう言うのか。「鳥のように山へ逃げなさい」と。
11:2 見よ、悪しき者が弓を引きしぼっている。弦に矢をつがえ、暗やみから、心のまっすぐな人を射ようとねらっている。
11:3 基が壊されてしまったら、正しい人に何ができるだろう。
11:4 主はその聖なる神殿にいる。主の王座は天にある。その目は人の子らをじっと見つめ、まなざしは人の子らを調べている。
11:5 主は正しい人を見極める。だが悪人と、暴力を好む者を、主はその心から憎む。
11:6 主は悪しき者の上に、火と硫黄を降らせる。焼けつく風。それが、彼らの受け取る杯となる。
11:7 主は正しい方だ。だから正しいことを愛される。心のまっすぐな人は、その御顔を仰ぎ見るだろう。
指揮者のために。第八調に合わせて。ダビデの詩。
12:1 主よ、助けてください。神を愛する人がいなくなりました。人々のあいだから、誠実な人が消えてしまいました。
12:2 その口先で人はたがいにうそをつく。おだてを口にしながら、心では別のことを考えている。
12:3 主は、なめらかにへつらう唇を、大げさに語る舌を、ことごとく断ち切る。
12:4 「舌の力でわたしたちは勝つ。唇はわたしたちのもの。だれがわたしたちの主人だというのか」——そう言い放つ者たちだ。
12:5 「苦しむ人たちが踏みにじられ、貧しい人たちがうめいている。『今こそ、わたしは立ち上がる』と主は言われる。『わたしは彼らを、待ち望んでいた安全な場所に置く。』」
12:6 主のことばは清らかだ。土の炉で精錬された銀のように、七度も精錬されて澄みきっている。
12:7 主よ、あなたは彼らを守ってくださる。この時代の中から、いつまでも彼らを守り抜いてくださる。
12:8 あちこちで悪者たちが大手を振って歩き回っている。人々の間で下劣なことがもてはやされているからだ。
指揮者のために。ダビデの詩。
13:1 主よ、いつまでですか。わたしをずっと忘れたままにされるのですか。いつまで、わたしから顔を隠されるのですか。
13:2 いつまで、わたしは心の中で思い悩み、来る日も来る日も悲しみを抱えていなければならないのですか。いつまで、敵はわたしを見下し、勝ち誇っているのですか。
13:3 主、わたしの神よ、こちらを見て、答えてください。わたしの目に光を与えてください。わたしが死の眠りにつかないように。
13:4 敵に「あいつに勝った」と言わせないでください。わたしがよろめけば、敵たちは大喜びするのだから。
13:5 わたしはあなたの変わらぬ愛に信頼してきた。あなたが救ってくれることを、わたしの心は喜ぶ。
13:6 わたしは主に歌おう。主がわたしに豊かに良くしてくれたから。
14:1 愚かな者は心の中で「神なんていない」と言う。彼らは腐りきっていて、やることは最低だ。正しいことをする人は、ひとりもいない。
14:2 主は天から人の子らを見おろした。神を求める賢い者がいるかどうかを見るために。
14:3 みんな道を外れ、そろって腐ってしまった。正しいことをする人はいない。ひとりもいない。
14:4 すべて悪を行う者は、何もわかっていないのか。彼らはパンを食べるように、わたしの民を食い尽くす。そして主に祈ることをしない。
14:5 そのとき、彼らは激しい恐怖におそわれた。神は、正しい人たちの側にいるからだ。
14:6 あなたがたは貧しい者の計画を打ち砕こうとする。でも主は、その人の逃げ場だ。
14:7 シオンからイスラエルの救いが来ますように。主がその民の繁栄を回復するとき、ヤコブは喜び、イスラエルは楽しむ。
15:1 主よ、あなたの天幕にとどまれるのは、だれですか。あなたの聖なる山に住めるのは、だれですか。
15:2 わたしの前を正しく歩み、正しいことを行い、心から真実を語る人。
15:3 舌で人をけなさず、友を傷つけず、隣人をそしることもしない。
15:4 その目には神に見捨てられた者を退けるが、主を敬う人を尊ぶ。損をしても、いったん誓ったことは変えない。
15:5 利息を取ってお金を貸したりせず、罪のない人を陥れるためにわいろを受け取ったりしない。こういう生き方をする人は、決して揺らぐことがない。
16:1 神よ、わたしをお守りください。わたしはあなたのもとに身を寄せているのですから。
16:2 あなたは主に言う。「あなたはわたしの主。あなたのほかに、わたしの幸せはない」と。
16:3 地に住む聖なる人々、わたしが心から慕う立派な人たちのことだ。
16:4 ほかの神を追い求める者は、悲しみをどんどん増やしていく。わたしは彼らがささげる血の献げ物を注がない。その神々の名を口にすることもしない。
16:5 主はわたしに与えられた分け前、わたしの杯。あなたがわたしの受ける割り当てを守ってくださる。
16:6 測りなわは、わたしのために良い場所に落ちた。そう、わたしはすばらしい相続地を受け継いだ。
16:7 わたしに助言をくださる主をたたえる。夜になると、わたしの心がわたしを導く。
16:8 わたしはいつも主を目の前に置いている。主がわたしの右にいてくださるから、わたしは揺らぐことがない。
16:9 このゆえに、わたしの心は喜び、たましいは喜びおどる。わたしのからだも安らかにいこう。
16:10 あなたはわたしを死者の世界に置き去りにはしない。あなたに従う者を、墓の中で朽ちさせることもない。
16:11 いのちに至る道を、あなたはわたしに教えてくれる。あなたのそばには、あふれるほどの喜びがある。あなたの右手には、いつまでも続く楽しみがある。
17:1 主よ、正しい訴えを聞いてください。わたしの叫びに耳を向け、偽りのない唇から出るわたしの祈りに耳を傾けてください。
17:2 どうかわたしへの裁きが、あなたのもとから下されますように。あなたの目が、何が正しいかを見きわめてくれますように。
17:3 あなたはわたしの心をためした。夜、わたしのところに来て、調べつくした。それでも、悪いものは何ひとつ見つからない。わたしは心に決めている。口で罪を犯すことはしない、と。
17:4 人のふるまいについて言えば、わたしはあなたのくちびるの言葉に従って、乱暴な者の道を避けてきた。
17:5 わたしの歩みがあなたの道からそれないように、しっかり支えてください。わたしの足がすべることはありませんでした。
17:6 神よ、わたしはあなたを呼びます。あなたは必ず答えてくださるから。どうか耳を傾けて、わたしの言うことを聞いてください。
17:7 寄り頼む者を、あなたに逆らう者から右の手で救うあなた。その変わらぬ愛を、驚くばかりに示してほしい。
17:8 ひとみのようにわたしを守ってほしい。あなたの翼の陰に、わたしをかくまってほしい。
17:9 悪人がわたしを襲ってくる。わたしを取り囲む、命を狙う敵から守ってほしい。
17:10 彼らは自分の脂肪に包まれて、あわれみの心を閉ざしている。その口は高ぶって語る。
17:11 彼らは今、わたしの歩みを取り囲む。地に打ち倒そうと、その目を光らせている。
17:12 ライオンのように獲物を求め、隠れ場所にひそむ若いライオンのようだ。
17:13 主よ、立ち上がってください。彼らに立ち向かい、打ち倒してください。あなたの剣で、悪い者からわたしの魂を救い出してください。
17:14 主よ、あなたの手で、この世の人々からわたしを救ってください。彼らはこの世でごほうびを受け取り、あなたがたくわえた宝で腹を満たしている。子どもがたくさんいて満ち足り、その財産を孫たちにまで残していくのです。
17:15 わたしは正しさのうちに、あなたの顔を見る。目が覚めるとき、あなたの姿を見て、満ち足りる。
18:1 主よ、あなたを愛します。あなたはわたしの力。
18:2 主はわたしの岩、わたしのとりで、わたしを助け出す方。わたしの神、身を寄せる岩。主はわたしの盾、わたしを救う力、わたしの砦。
18:3 主を呼び求めれば、ほめたたえるにふさわしいその方が、わたしを敵から救ってくださる。
18:4 死の綱がわたしを取り巻き、滅びの激流がわたしを襲って、恐れさせた。
18:5 陰府の綱がわたしを取り巻き、死のわながわたしに襲いかかった。
18:6 苦しみの中で、わたしは主を呼び、わたしの神に叫び求めた。主はその神殿からわたしの声を聞き、助けを求める叫びはその耳に届いた。
18:7 そのとき地は揺れ動き、山々の基も震え動いた。主が怒りに燃えられたからだ。
18:8 鼻からは煙が立ちのぼり、口からはすべてを焼き尽くす火が出た。燃える炭が、そこから飛び散った。
18:9 主は天を傾けて、降りてきた。その足もとには、厚い闇があった。
18:10 神はケルビムに乗って飛び、風の翼に乗って舞い上がった。
18:11 主は闇を身を隠す覆いとして、自分のまわりに置いた。水を含んだ黒い雲を天幕とされた。
18:12 主のまばゆい輝きの前で、雲は切れた。ひょうと燃える炭が降ってきた。
18:13 主は天で雷を轟かせ、いと高き方はその声を響かせた。雹と燃える炭とともに。
18:14 主は矢を放って、敵を散らした。 いくつものいなずまを放って、彼らをかき乱した。
18:15 主よ、あなたの叱る声と、その鼻から吹く息で、海の底があらわになり、世界の基がむき出しになった。
18:16 主は高い所から手を伸ばし、わたしをつかんで、深い水の中から引き上げてくださった。
18:17 わたしを力ある敵から助け出してくれた。わたしを憎む者たちからも。彼らはわたしよりずっと強かったからだ。
18:18 彼らは災いの日にわたしに襲いかかった。でも、主がわたしの支えとなってくださった。
18:19 主はわたしを広い所へ連れ出し、救い出してくださった。わたしを喜んでくださるからだ。
18:20 主はわたしの正しさに報い、わたしの手のきよさに応えてくださった。
18:21 わたしは主の道を守り、悪を行って自分の神から離れることはなかったからだ。
18:22 わたしは主の定めをいつも心に置き、その掟から離れることはなかった。
18:23 わたしは主の前に完全な者であり、自分の罪から離れて身を守った。
18:24 だから主は、わたしの正しさに報い、その目の前でのわたしの手のきよさに応えてくださった。
18:25 あなたは、正しく生きる人には正しい方として応え、欠けたところのない人には欠けたところのない方として応える。
18:26 清い者には清い者として応え、心のねじれた者には手ごわい相手として向き合われる。
18:27 あなたは苦しむ人々を救い、高ぶる目を低くする。
18:28 主よ、あなたはわたしのともし火をともし、わたしの闇を明るく照らしてくださる。
18:29 あなたがいれば、わたしは敵の一団に突き進める。わたしの神がいれば、城壁だって飛び越えられる。
18:30 神の道は完全だ。主の言葉は混じり気がなく、確かだ。主は、身を寄せるすべての人を守る盾となる。
18:31 主のほかに、だれが神だろうか。わたしたちの神のほかに、だれが岩だろうか。
18:32 主はわたしを力で包み、わたしの歩む道を確かなものにしてくださる。
18:33 神はわたしの足をしかのように速くし、高い所に安全に立たせてくれる。
18:34 神はわたしの手に戦い方を教えてくれる。わたしの腕は青銅の弓さえ引き絞る。
18:35 あなたは救いの盾をわたしに与え、右の手でわたしを支えてくださった。あなたが身をかがめて、わたしを大きな者にしてくださった。
18:36 わたしの歩む道を広げ、足がよろけないようにしてくださった。
18:37 わたしは敵を追いかけ、追いついた。彼らを滅ぼし尽くすまで、引き返さなかった。
18:38 わたしが彼らを打ち砕くと、彼らはもう立ち上がれず、わたしの足もとに倒れる。
18:39 あなたはわたしに戦いのための力をまとわせ、わたしに立ち向かう者たちをわたしの足もとにひざまずかせた。
18:40 わたしを憎む敵を、あなたは背を向けて逃げるようにし、わたしは彼らを滅ぼした。
18:41 彼らは助けを求めて叫んだ。でも、助ける者はいない。主に叫んでも、主は答えなかった。
18:42 わたしは彼らを打ち砕き、風に舞うちりのようにした。道の泥のように、彼らを投げ捨てた。
18:43 わたしを民の争いから助け出し、諸国の民のかしらとしてくださった。わたしの知らなかった民が、わたしに仕える。
18:44 わたしのことを耳にするだけで、人々はわたしに従う。 よその国の民は、わたしの前にひれ伏す。
18:45 よその国の人々は力を失い、震えながら砦から出てくる。
18:46 主は生きておられる。わたしの岩となってくださる方に、祝福あれ。わたしを救ってくださる神は、あがめられますように。
18:47 わたしのために敵を討ち、もろもろの民をわたしの下に従わせてくださる神。
18:48 神はわたしを敵から助け出してくださる。わたしに逆らって立つ者たちの上にわたしを高く上げ、暴力をふるう者からわたしを救い出してくださる。
18:49 主よ、だからわたしは国々の中であなたに感謝し、あなたの名をほめ歌う。
18:50 主はご自分の王に大いなる勝利を与え、油を注いだ人に慈しみを注いでくださる。ダビデとその子孫に、いつまでも変わることなく。
19:1 天は神の栄光を語り、大空はその手のわざを告げる。
19:2 昼は昼へと語り伝え、夜は夜へと知識を告げる。
19:3 語りもなく、言葉もない。その声が聞こえるわけでもない。
19:4 その響きは全地に広がり、その言葉は世界の果てにまで届く。神は天に、太陽のためのテントを張った。
19:5 それは花婿が部屋から出てくるように、勇士が喜んで道を走るように、
19:6 天の果てから昇り、もう一方の果てまでめぐっていく。その熱から隠れられるものは、何一つない。
19:7 主のおしえは完全で、魂を生き返らせる。主の証しは確かで、経験の浅い者を賢くする。
19:8 主のおきては正しく、心を喜ばせる。主の命令は澄んでいて、目を明るくする。
19:9 主を敬う心は清らかで、いつまでも変わらない。主の裁きは真実で、どれもみな正しい。
19:10 これらは金よりも、多くの純金よりも慕わしく、蜜よりも、蜂の巣のしたたりよりも甘い。
19:11 あなたのしもべも、それらによって注意を受ける。それらを守れば、大きな報いがある。
19:12 自分のあやまちに、だれが気づけるだろう。わたしも気づかない罪から、わたしを清めてください。
19:13 それに、思い上がってわざと犯す罪から、あなたのしもべを守ってください。そんな罪にわたしを支配させないでください。そうすれば、わたしは責められるところのない者となり、大きな過ちから清められます。
19:14 わたしの口の言葉と心の思いが、あなたに喜ばれますように。主よ、わたしの岩、わたしをあがなう方よ。
指揮者のために。ダビデの詩。
20:1 主が苦しみの日にあなたに答えてくださいますように。ヤコブの神の名があなたを高く守ってくださいますように。
20:2 主が聖なる所から助けを送り、シオンからあなたを支えてくださいますように。
20:3 主があなたのささげ物をすべて心に留め、あなたの焼き尽くすいけにえを喜んで受け入れてくださるように。セラ
20:4 あなたの心の願いをかなえ、 あなたの計画をすべて実現させてくださいますように。
20:5 わたしたちは、あなたの救いを喜び、わたしたちの神の名によって旗をかかげる。主が、あなたの願いをすべてかなえてくださるように。
20:6 今、わたしにはわかった。主は、ご自分が選んで油を注いだ王を救ってくださる。聖なる天から彼にこたえ、その右手の力強い救いのわざで助けてくださる。
20:7 ある者は戦車に頼り、ある者は馬に頼る。でもわたしたちは、わたしたちの神、主の名を呼ぶ。
20:8 彼らは膝をつき、倒れる。でもわたしたちは起き上がり、まっすぐに立つ。
20:9 主よ、勝利を。王よ、わたしたちが呼び求める日に、答えてください。
21:1 主よ、王はあなたの力を喜びます。あなたが救ってくれるから、こんなにも大きな喜びにあふれるのです。
21:2 あなたは彼の心の願いをかなえ、その唇の求めを退けはしなかった。セラ
21:3 あなたは豊かな祝福をもって彼を迎え、その頭に純金の冠を授けた。
21:4 あなたは彼にいのちを求められた。あなたはそれをお与えになった。永遠に続く、限りない日々を。
21:5 あなたの救いによって、彼の栄光は大きくなった。あなたは彼に、輝きと気高さを与えられる。
21:6 まことに、あなたは彼をいつまでも祝福で満たし、あなたの前で喜びにあふれさせる。
21:7 王は主に信頼を置いている。だから、いと高き方の慈しみに支えられて、決して揺らぐことはない。
21:8 あなたの手は、すべての敵を見つけ出す。 あなたの右手は、あなたを憎む者たちを捜し出す。
21:9 主よ、あなたが姿を現すとき、あなたは彼らを燃えさかる炉のようにする。主は怒りに燃えて彼らを飲み込み、火が彼らを焼き尽くす。
21:10 あなたは彼らの子孫を地から滅ぼし、その末を人々の中から消し去る。
21:11 彼らはあなたに悪をたくらみ、悪だくみを練った。でも、それが実現することはない。
21:12 あなたは彼らを背中を見せて逃げさせ、弓の弦をその顔にねらい定めるからだ。
21:13 主よ、あなたの力によって立ち上がってください。わたしたちは歌います。あなたの偉大な力を歌でたたえます。
指揮者のために。「暁の雌鹿」の調べに合わせて。ダビデの詩。
22:1 わたしの神、わたしの神、なぜわたしを見捨てたのですか。なぜ遠く離れて、わたしを救ってくれないのですか。わたしの嘆きの叫びを聞いてくれないのですか。
22:2 わたしの神よ、昼に呼び求めても、あなたは答えてくれない。夜に叫んでも、わたしは静まることができない。
22:3 でも、あなたは聖なる方。イスラエルの人々の賛美を住まいとして座っておられる。
22:4 わたしたちの先祖は、あなたに信頼した。信頼して、救い出された。
22:5 彼らはあなたに叫び求めて、救い出された。あなたに信頼して、恥を受けることはなかった。
22:6 わたしは虫けらだ。人間ではない。みんなにののしられ、見下されている。
22:7 わたしを見る人はみな、わたしをあざ笑う。唇を突き出し、頭を振って言う。
22:8 「あいつは主に頼っていた。それなら助けてもらえばいい。神に気に入られているなら、救ってもらえばいいさ」と。
22:9 でも、あなたこそ、わたしを母の胎から取り出してくださった方。母の乳房にすがるころから、わたしを安心させてくださった方だ。
22:10 わたしは生まれた時から、あなたにゆだねられてきた。母の胎を出たその時から、あなたはわたしの神だ。
22:11 わたしから遠く離れないでください。苦しみがすぐそこまで来ているのに、助けてくれる人が誰もいないのです。
22:12 多くの雄牛がわたしを取り囲む。バシャンの強い雄牛がわたしを囲い込む。
22:13 彼らは大きく口を開けて、わたしに襲いかかる。獲物を引き裂き、ほえたけるライオンのように。
22:14 わたしは水のように注ぎ出され、骨はすべてバラバラになった。心は蝋のように、胸の中で溶けてしまった。
22:15 わたしの力は、素焼きのかけらのように干からびてしまった。舌は上あごにはりついている。あなたはわたしを、死のちりの中に横たえる。
22:16 犬の群れがわたしを取り囲む。 悪者の一団がわたしを囲んでいる。 ライオンのように、わたしの手と足に襲いかかる。
22:17 骨を、わたしは一つ残らず数えられる。彼らはわたしをじっと見て、目を離さない。
22:18 わたしの服を分け合い、着ているものをくじ引きで取り合う。
22:19 わたしよ、主よ、遠く離れないでください。わたしの力である主よ、急いで助けに来てください。
22:20 わたしを剣から救い出してください。わたしのただ一つの命を、犬の力から。
22:21 ライオンの口から、わたしを救い出してください。野牛の角から、あなたはわたしに答えてくださった。
22:22 兄弟たちに、あなたの名を語り伝えよう。集会の中で、あなたをほめたたえよう。
22:23 主を恐れる者たちよ、主をたたえよ。ヤコブの子孫よ、みな主をあがめよ。イスラエルの子孫よ、みな主の前におそれかしこめ。
22:24 主は苦しむ人の苦しみを見下さず、いやがることもなかった。その人から顔をそむけず、助けを求める叫びを聞いてくださったのだ。
22:25 大いなる集会でわたしがあなたをたたえるのは、あなたから出たものだ。主を敬う人たちの前で、わたしは誓いを果たす。
22:26 苦しむ人たちは食べて、満ち足りる。主を求める人たちは、主をたたえる。あなたたちの心が、いつまでも生きますように。
22:27 すべての地の果ての人々は、これを思い起こして主のもとに帰る。すべての国の民が、あなたの前にひざまずいて礼拝する。
22:28 主は王だからだ。国々を治めるのは主だ。
22:29 地の裕福な者たちはみな、食べて主を礼拝する。土に下る者たちもみな、主の前にひざまずく。自分の魂を生かしておけない者も、みな。
22:30 子孫が主に仕える。主のことは、後に来る世代へと語り伝えられていく。
22:31 彼らは来て、主がなさったことを、これから生まれてくる民に語り伝えるだろう。神がこれを成し遂げたのだと。
23:1 主はわたしの羊飼い。だから、わたしには足りないものがない。
23:2 主はわたしを緑の草原に休ませ、静かな水のほとりに導いてくれる。
23:3 主はわたしの魂を生き返らせ、その名にふさわしく、正しい道を歩ませてくれる。
23:4 たとえ死の影におおわれた谷を歩いても、わたしは悪を恐れない。あなたがそばにいてくれるから。あなたの鞭と杖が、わたしを守り、支えてくれる。
23:5 あなたはわたしを苦しめる者たちの前で、わたしのために食卓を整えてくれる。わたしの頭に油をそそぎ、わたしの杯を、あふれるほど満たしてくれる。
23:6 本当に、良いものと変わらぬ慈しみが、生きているかぎりずっとわたしを追いかけてくる。そしてわたしは、いつまでも主の家で暮らすのだ。
24:1 地とそこに満ちるすべてのもの、世界とそこに住むすべての人は、主のものだ。
24:2 主はその大地を海の上に築き、川の流れの上にすえられた。
24:3 主の山に登れる人は誰か。その聖なる場所に立てる人は誰か。
24:4 手が清く、心が澄んだ人。むなしいものに魂を向けず、偽って誓わない人。
24:5 このような人は、主から祝福を受ける。その救いの神から、義を受ける。
24:6 これこそ、神を慕い求める人々。ヤコブの神よ、あなたの顔を求める人々である。〔セラ
24:7 門よ、頭を上げよ。永遠の戸よ、開け。栄光の王が入って来られる。
24:8 栄光の王とはだれか。強く、力ある主。戦いに強い主だ。
24:9 門よ、頭を上げよ。永遠の戸よ、開け。栄光の王が入って来られる。
24:10 この栄光の王とは、いったいだれなのか。天の軍勢を率いる主。この方こそ、栄光の王。セラ
25:1 主よ、わたしはあなたに魂を捧げます。
25:2 わたしの神よ、わたしはあなたに信頼しています。どうか、わたしが恥をかくことがないように、敵に勝ち誇られることがないようにしてください。
25:3 すべてあなたを待ち望む人が、恥をかくことはない。裏切る者こそ、理由もなく恥を受けるのだ。
25:4 主よ、あなたの道をわたしに知らせ、あなたの進む道をわたしに教えてください。
25:5 あなたのまことによって、わたしを導き、教えてください。あなたはわたしを救う神だから。わたしは一日中、あなたに望みをかけている。
25:6 主よ、あなたのあわれみと慈しみを思い出してください。それらは、はるか昔から変わらずに続いてきたのですから。
25:7 わたしが若いころに犯した罪も、過ちも、思い出さないでください。主よ、あなたの変わらぬ愛によって、あなたのいつくしみのゆえに、わたしを心にかけてください。
25:8 主は恵み深く、正しい方だ。だから、道を踏み外した人にも生き方を教えてくれる。
25:9 へりくだる人を正しい道に導き、その道を教えてくださる。
25:10 主のすべての道は、その契約と定めを守る人にとって、慈しみとまことに満ちている。
25:11 主よ、あなたの名にかけて、わたしの罪を赦してください。わたしの罪は大きいのですから。
25:12 主を敬い、大切に思う人は、どこにいるだろう。主はその人に、選ぶべき道を教えてくださる。
25:13 彼の魂は幸せの中で過ごし、その子孫は地を受け継ぐ。
25:14 主を敬う人には、主は心を打ち明けてくださる。そして、ご自分の契約を教えてくださる。
25:15 わたしの目はいつも主に向いている。主がわたしの足を網から救い出してくれるからだ。
25:16 わたしに顔を向けて、あわれんでください。わたしはひとりぼっちで、苦しんでいるのです。
25:17 わたしの心の悩みは大きくなるばかりです。どうか、この苦しみから連れ出してください。
25:18 わたしの苦しみと悩みを見て、わたしのすべての罪を赦してください。
25:19 わたしの敵がどれほど多いか、どうか見てください。彼らは激しい憎しみをもって、わたしを憎んでいます。
25:20 わたしの魂を守り、助け出してください。恥をかかせないでください。わたしはあなたを頼りにしているのですから。
25:21 誠実と潔白がわたしを守ってくれますように。わたしはあなたに望みをかけているのだから。
25:22 神よ、イスラエルをすべての苦しみから救い出してください。
26:1 主よ、わたしを正しく裁いてください。わたしは誠実に歩んできました。主に信頼して、迷うことはありません。
26:2 主よ、わたしを調べ、わたしを試してください。わたしの心の奥底も思いも、火で練り清めてください。
26:3 あなたの慈しみはいつもわたしの目の前にあり、わたしはあなたの真実に従って歩んできた。
26:4 わたしは偽る者と一緒に座らない。うわべを飾る者とも関わらない。
26:5 悪を行う者たちの集まりを憎み、悪人たちと共に座ることはしない。
26:6 主よ、わたしは手を洗って、自分に罪がないことを表す。そして、あなたの祭壇の周りを回る。
26:7 感謝の歌を声高くうたい、あなたの驚くべきわざを残らず語り伝えるために。
26:8 主よ、わたしはあなたの住まいのある家を愛している。あなたの栄光がとどまる場所を。
26:9 わたしの魂を、罪を犯す人たちと一緒に取り去らないでください。わたしのいのちを、血を流す人たちと一緒に奪わないでください。
26:10 彼らの手は悪だくみにまみれ、その右手はわいろで満ちている。
26:11 わたしはまっすぐに生きていく。だから、わたしを救い出し、あわれんでください。
26:12 わたしの足は平らな地に立っている。集まった人々の中で、わたしは主をたたえよう。
27:1 主はわたしの光、わたしの救い。だからわたしは、だれも恐れない。主はわたしの命の砦。だからわたしは、だれにもおびえない。
27:2 わたしを襲い、この身を食い尽くそうとする悪者たち、わたしに敵対する者たちは、みなつまずき、倒れる。
27:3 たとえ大軍がわたしを囲んで陣を張っても、わたしの心はおびえない。たとえ戦いが起こってわたしを襲っても、わたしは動じない。わたしは神に信頼しているからだ。
27:4 わたしは主にただ一つのことを願い、それだけを求めている。生きているかぎり、いつも主の家に住み、主の美しさを見つめ、その神殿で主を尋ね求めることを。
27:5 主が悩みの日に、その仮の宿にわたしをかくまってくれる。天幕の奥深くにわたしを隠し、岩の上に高く引き上げてくれるからだ。
27:6 今わたしの頭は、まわりを囲む敵の上に高く上げられる。だからわたしは、主の幕屋で喜びの声をあげていけにえをささげ、歌い、主をほめたたえる。
27:7 主よ、わたしが声をあげて呼ぶとき、聞いてください。わたしをあわれみ、答えてください。
27:8 あなたはこう言われました。「わたしの顔を求めなさい」と。だからわたしの心はあなたに答えます。「主よ、わたしはあなたの顔を求めます」と。
27:9 み顔をわたしから隠さないでください。怒ってこのしもべを退けないでください。あなたはこれまでわたしの助けでした。わたしを見放さないでください、見捨てないでください。わたしを救う神よ。
27:10 たとえ父も母もわたしを見捨てても、主がわたしを受け入れてくださる。
27:11 主よ、あなたの道をわたしに教えてください。敵が待ち構えているから、平らな道へと導いてください。
27:12 わたしを、敵の思いのままに引き渡さないでください。うその証言をする者たちがわたしに立ち向かい、乱暴なことを言っているのです。
27:13 わたしは信じている。命ある者の地で、主の恵み深さを見ることを。
27:14 主を待ち望め。強く、雄々しくあれ。主を待ち望め。
28:1 主よ、わたしはあなたを呼び求める。わたしの岩よ、どうか耳をふさがないでほしい。もしあなたが黙ったままなら、わたしは墓に下る者と同じになってしまう。
28:2 わたしがあなたに助けを求めて叫ぶとき、あなたの聖なる至聖所に向かって手を上げるとき、わたしの願いの声を聞いてください。
28:3 わたしを、悪い者や悪事を働く者たちと一緒に引きずり出さないでください。彼らは隣人には穏やかに話しかけるけれど、その心の中には悪意を隠しているのです。
28:4 わたしの願いを聞いてください。彼らがしてきたこと、その悪い行いにふさわしく、彼らに報いてください。その手のわざにふさわしく、彼らに返してください。彼らが受けるべき罰を、彼らに与えてください。
28:5 彼らは主の働きにも、その手のわざにも目を向けない。だから主は彼らを打ち倒し、二度と建て直されることはない。
28:6 主はほめたたえられる。わたしの願いの声を聞いてくださったのだから。
28:7 主はわたしの力、わたしの盾。心から主に信頼したら、助けてもらえた。だからわたしの心は喜びおどる。歌って主をほめたたえる。
28:8 主はその民の力。油そそがれた王を守り、救うとりでである。
28:9 どうぞ、あなたの民を救い、あなたのものとされた人々を祝福してください。彼らの羊飼いとなり、いつまでも彼らを背負って導いてください。
29:1 主に帰せよ、神の子らよ。栄光と力を主に帰せよ。
29:2 み名の栄光を主にささげよ。聖なる装いをまとって主を礼拝せよ。
29:3 主のみ声は水の上に響く。栄光の神が雷をとどろかせ、主は大水の上におられる。
29:4 主の声は力に満ち、主の声は威厳に満ちている。
29:5 主のみ声は杉の大木をへし折る。主はレバノンの杉の木をへし折る。
29:6 主はレバノンを子牛のように跳ねさせ、シリオンを野牛の子のように跳ねさせる。
29:7 主のみ声は炎の炎を切り分ける。
29:8 主の声は荒れ野を揺るがす。主はカデシュの荒れ野を揺るがす。
29:9 主の声は雌鹿に子を産ませ、森の木々を丸裸にする。その神殿では、すべてのものが「栄光あれ」と叫ぶ。
29:10 主は洪水の上に座す方。主は王として、永遠にその座に着いておられる。
29:11 主はその民に力を与え、平和をもってその民を祝福される。
30:1 主よ、わたしはあなたをあがめます。あなたはわたしを引き上げ、敵がわたしのことで勝ち誇るのを、お許しにならなかったからです。
30:2 主よ、わたしの神よ。わたしはあなたに助けを求めて叫んだ。すると、あなたはわたしを癒やしてくださった。
30:3 主よ、あなたはわたしの魂を死の世界から引き上げ、墓穴に下る者の中から、わたしを生き返らせてくださった。
30:4 主を信じる人たちよ、主をほめ歌おう。その聖なる御名を思い起こして、感謝をささげよう。
30:5 主の怒りはほんの一瞬、でもその恵みは生涯続く。夕暮れには涙のうちに眠っても、朝には喜びの歌がある。
30:6 わたしは順調なとき、こう思っていた。「わたしは決してゆらがない」と。
30:7 主よ、あなたが恵んでくれたとき、わたしを揺るがない山のように立たせてくれた。でも、あなたが顔を隠すと、わたしは打ちのめされた。
30:8 わたしはあなたに呼びかける、主よ。わたしの主に、あわれみを求めて願う。
30:9 「わたしが死んで墓に下ったとして、それが何の得になるでしょう。ちりとなったわたしが、あなたをたたえられるでしょうか。あなたのまことを、語り伝えられるでしょうか。
30:10 主よ、聞いてください。わたしをあわれんでください。主よ、わたしの助けとなってください」と。
30:11 あなたはわたしの嘆きを踊りに変え、悲しみの粗布を脱がせて、喜びをまとわせてくださった。
30:12 主よ、わたしの魂があなたをほめ歌い、黙ることのないためです。わたしの神、主よ、わたしはとこしえにあなたに感謝します。
31:1 主よ、わたしはあなたのもとに逃げ込む。だから、どうか決してわたしに恥をかかせないでください。あなたは正しい方だから、わたしを助け出してください。
31:2 わたしに耳を傾けて、急いで助け出してください。わたしの逃げ場となる岩、わたしを救う堅い城となってください。
31:3 主よ、あなたはわたしの岩、わたしの砦だ。だから、あなたの名にかけて、わたしを導き、支えてほしい。
31:4 わたしを、彼らが仕掛けた網から引き出してください。あなたこそ、わたしの避け所だから。
31:5 わたしは自分の霊をあなたの手にゆだねます。主よ、真実の神よ、あなたはわたしを救い出してくださった。
31:6 わたしは、むなしい偶像にすがる者たちを憎む。わたしは主に信頼する。
31:7 わたしはあなたの慈しみを喜び、楽しむ。あなたはわたしの苦しみを見つめ、わたしの魂の悩みを知ってくれたのだから。
31:8 あなたはわたしを敵の手に引き渡さず、わたしの足を広々とした場所に立たせてくれた。
31:9 主よ、わたしをあわれんでください。わたしは苦しみの中にいます。悲しみのあまり目は弱り、心も体も衰えてしまいました。
31:10 わたしのいのちは苦しみのなかで尽きていき、わたしの年月は嘆きのなかで消えていく。わたしの罪のせいで力は弱りはて、骨まで衰えてしまった。
31:11 わたしは敵という敵からさげすまれ、隣人からはなおさげすまれた。知り合いにとっては恐怖の的となり、道で見かけると、みんなわたしを避けて逃げていった。
31:12 わたしは死んだ人のように、人々の心から忘れ去られた。壊れた器のようになってしまった。
31:13 大勢がひそひそとわたしの悪口を言うのが聞こえる。どこを見ても恐怖ばかりだ。彼らは集まってわたしに敵対し、わたしの命を奪おうとたくらんでいる。
31:14 わたしは、主よ、あなたに信頼します。「あなたはわたしの神」とわたしは言う。
31:15 わたしの時は、あなたの手の中にある。敵の手から、追い迫る者たちから、わたしを助け出してください。
31:16 み顔をあなたのしもべの上に輝かせ、あなたの慈しみによって、わたしを救ってください。
31:17 主よ、わたしはあなたを呼び求めました。だから、恥をかかせないでください。悪人たちこそ恥を受け、黙って死の世界に落ちますように。
31:18 うそをつく口を黙らせてください。正しい人に向かって、おごり高ぶり、見下しながら、ひどいことを言う口を。
31:19 あなたの良さは、なんて豊かなんだろう。あなたを敬う人たちのために、それをたくわえておいてくれた。あなたに身を寄せる人たちのために、みんなが見ている前で、そうしてくれた。
31:20 あなたは彼らを、あなたのそばにかくまい、人のたくらみから隠してくれる。 あなたは彼らを隠れ家にかくまい、舌の争いから守ってくれる。
31:21 主よ、あなたをたたえます。あの囲まれた町の中で、あなたはわたしに驚くほどの慈しみを示してくれた。
31:22 わたしはあわてて、こう思ってしまった。「わたしは、あなたの目の届かないところへ追いやられてしまった」と。でも、わたしが助けを求めて叫んだとき、あなたはその願いの声をちゃんと聞いてくれた。
31:23 すべて主を愛する者よ、主に忠実であれ。主は真実な人を守り、高ぶる者にはそのおごりに応じて報いる。
31:24 主を待ち望む人よ、みな強くあれ。心を強くもて。
32:1 そのそむきを赦され、その罪をおおい消される人は幸いだ。
32:2 主によって罪を数えられず、心にいつわりのない人は幸いだ。
32:3 わたしが黙っていたときは、一日じゅう苦しみうめいて、骨まで衰えてしまった。
32:4 あなたのみ手が昼も夜もわたしを重く押さえつけていた。わたしの力は、真夏の日照りで乾ききるように、干からびてしまった。〔セラ
32:5 わたしは自分の罪をあなたに打ち明けた。悪いことを隠さなかった。「自分のそむきを主に告白しよう。」そう決めたとき、あなたはわたしの罪を赦してくれた。セラ
32:6 このゆえに、あなたを信じる人はみな、あなたに出会えるうちに祈る。大水が押し寄せても、その人には届かない。
32:7 あなたはわたしの隠れ場。あなたはわたしを守り、苦しみから救い出してくれる。そして、救いの喜びの歌でわたしを包んでくれる。〔セラ
32:8 わたしはあなたに教え、進むべき道を示そう。あなたに目を注ぎ、助言を与えよう。
32:9 あなたは、わけの分からない馬やラバのようであってはならない。それらは、くつわや手綱で口を押さえつけなければ、あなたのそばに近づいてこないのだから。
32:10 悪しき者には多くの苦しみがある。でも主に信頼する者は、慈しみに囲まれる。
32:11 正しい人よ、主を喜び、楽しめ。心のまっすぐな人よ、みんなで喜びの声をあげよう。
33:1 正しい人たちよ、主を喜び歌え。まっすぐな心の人には、賛美がよく似合う。
33:2 琴を鳴らして主をたたえよう。十弦の立琴を奏でて、主をほめ歌おう。
33:3 新しい歌を主に向かって歌おう。巧みに弦をかき鳴らし、喜びの声をあげよう。
33:4 主のことばはまっすぐで、そのすべてのわざには誠実さがある。
33:5 主は正義と公平を愛される。地は主の慈しみで満ちている。
33:6 主のことばによって、天は造られた。主の口から出る息によって、天の万物は造られた。
33:7 海の水をせきとめて山のように積み上げ、深い海を貯蔵庫にたくわえる。
33:8 全地は主を恐れよ。世界に住むすべての人よ、主の前におののけ。
33:9 主が語られると、そのとおりになった。主が命じられると、すべてはその場に立った。
33:10 主はもろもろの国の計画をくじき、もろもろの民のたくらみを打ち砕く。
33:11 主のはかりごとはとこしえに変わらない。その心にある思いは、代々にわたって続いていく。
33:12 主をおのれの神とする国民は幸いだ。神が自分のものとして選んだ民は幸いだ。
33:13 主は天から見おろす。すべての人の子らをじっと見つめる。
33:14 その御座から地に住むすべての人を見つめておられる。
33:15 主はすべての人の心をつくり、彼らのすることすべてに心を配っている。
33:16 王が大軍を頼りに勝つことはない。勇士がありあまる力で助かることもない。
33:17 馬に頼っても勝利は得られない。どれほど力が強くても、救い出すことはできない。
33:18 見よ、主の目は主を敬う者に注がれている。その慈しみを待ち望む者に。
33:19 主は彼らの命を死から救い出し、ききんのときにも生かしてくださる。
33:20 わたしたちの魂は、主を待ち望んでいる。主はわたしたちの助け、わたしたちを守る盾だ。
33:21 わたしたちの心は主にあって喜ぶ。主の聖なる名に、わたしたちは信頼してきたから。
33:22 主よ、わたしたちがあなたを待ち望んできたように、あなたの慈しみをわたしたちの上に注いでください。
34:1 わたしはいつも主をほめたたえる。その賛美がわたしの口から絶えることはない。
34:2 わたしの魂は主を誇りにする。それを苦しむ人たちが聞いて、喜ぶように。
34:3 わたしと一緒に、主がどんなにすばらしいかを伝えよう。ともにその名をたたえよう。
34:4 主を仰ぎ求めると、主は答えてくださった。そして、わたしのすべての恐れから救い出してくださった。
34:5 主を見上げた人たちは、その顔が輝いた。恥をかくことは決してない。
34:6 この貧しい人が叫ぶと、主は聞いてくださった。そして、すべての苦しみから救い出してくださった。
34:7 主の使いは、主を敬う人たちのまわりに陣を張り、彼らを助け出す。
34:8 味わい、そして見よ。主が良い方だと分かる。主に身を寄せる人は幸いだ。
34:9 主を恐れよ、主のものとされた人たちよ。主を恐れる者には、足りないものは何もないのだから。
34:10 若いライオンでも、獲物がなくて飢えることがある。でも主を求める人には、良いものが何一つ欠けることはない。
34:11 子どもたちよ、来てわたしに聞きなさい。主を恐れることを教えよう。
34:12 命を大切にしたいと願う人は、だれだろう。長く生きて、良いものを見たいと望む人は。
34:13 舌を守って悪を言わないようにし、くちびるを守って偽りを語らないようにしなさい。
34:14 悪を離れて、良いことをしなさい。平和を求めて、どこまでも追い求めなさい。
34:15 主の目は正しい人たちに注がれ、その耳は彼らの叫びに傾けられている。
34:16 主は悪を行う者に敵として立ち向かい、その名を地上から消し去られる。
34:17 彼らが叫び求めると、主は聞いてくださった。そして、すべての苦しみから彼らを救い出してくださった。
34:18 主は、心の傷ついた人のそばにいる。打ちのめされた人を救ってくれる。
34:19 正しい人には苦しみが多い。しかし主は、そのすべてから助け出してくださる。
34:20 主は正しい人の骨をすべて守ってくださる。その一本さえ折られることはない。
34:21 悪は悪人の命を奪い、正しい人を憎む者は罪に問われる。
34:22 主は、仕えるしもべたちの魂を救い出す。主のもとに身を寄せる者は、だれも罪に定められることはない。
35:1 主よ、わたしと争う者と争ってください。わたしと戦う者と戦ってください。
35:2 盾と大盾を手に取り、立ち上がってわたしを助けてください。
35:3 やりと投げやりを抜いて、わたしを追い迫る者に立ちはだかってほしい。そして、「わたしはおまえを救う者だ」と、わたしに言ってください。
35:4 わたしの命をねらう者たちが、恥をかき、はずかしめられますように。わたしを傷つけようとたくらむ者たちが、追い返され、うろたえますように。
35:5 彼らを風に吹かれるもみ殻のようにしてください。主の使いが彼らを追い払いますように。
35:6 彼らの道を暗く、滑りやすくしてください。主の使いに、彼らを追いかけさせてください。
35:7 理由もないのに、彼らはわたしを落とそうと網を隠し、わけもなくわたしの魂を狙って穴を掘ったのだから。
35:8 不意に滅びが彼らを襲いますように。自分で仕掛けた網に自分でかかり、その滅びに落ちますように。
35:9 わたしの魂は主によって喜び踊り、その救いを喜び楽しむ。
35:10 わたしの骨はすべてこう言う。「主よ、あなたのような方は、ほかにいません。弱い人を、その人より強い者から助け出し、弱い人と貧しい人を、その人からうばい取ろうとする者から救い出してくださる方です」
35:11 偽りの証人が立ち上がり、身に覚えのないことでわたしを問いただす。
35:12 彼らは、わたしの善意に悪で報い、わたしの魂を孤独に突き落とす。
35:13 わたしは、彼らが病気のとき、荒布をまとった。断食して、自分を苦しめた。祈りは、頭を胸にたれてささげた。
35:14 わたしの友、わたしの兄弟のために悲しむように、わたしは沈んでいた。母を失って嘆く人のように、うなだれて歩き回った。
35:15 わたしがつまずくと、彼らは喜んで集まってきた。わたしが知りもしないうちに、ならず者たちが集まってわたしを責め立て、絶え間なくわたしを引き裂いた。
35:16 彼らは神を信じない者のように、宴の席でわたしをあざけり、わたしに向かって歯ぎしりした。
35:17 主よ、いつまで見ているだけなのですか。わたしを彼らの破壊から、わたしの大切な命を若いライオンから救い出してください。
35:18 わたしは大勢の集まりの中で、あなたに感謝する。多くの人々の中で、あなたをほめたたえる。
35:19 わたしを理由もなく敵とする者たちに、勝ち誇る喜びを与えないでください。理由もなくわたしを憎む者たちに、目くばせさせないでください。
35:20 彼らは平和を語らない。この地で穏やかに暮らす人たちを陥れようと、だます言葉をたくらんでいるからだ。
35:21 「あいつら、わたしに向かって大きく口を開けて言うんだ。『ざまあみろ、ざまあみろ。この目でしっかり見たぞ』って。」
35:22 主よ、あなたはこれを見ました。だから、黙っていないでください。主よ、わたしから遠く離れないでください。
35:23 わたしの神、わたしの主よ。立ち上がって、目を覚ましてください。わたしのために裁きを、わたしの訴えを取り上げてください。
35:24 わが神、主よ。あなたの正しさにしたがって、わたしを正しく裁いてください。あの人たちを、わたしのことで勝ち誇らせないでください。
35:25 彼らに心の中で「してやった、思いどおりだ」と言わせないでください。「あいつを飲み込んでやった」とも言わせないでください。
35:26 わたしの不幸を喜ぶ者たちが、みんな恥をかき、うろたえますように。わたしに対して威張っている者たちが、恥と屈辱で覆われますように。
35:27 わたしの正しさを願う人たちが、喜びの声をあげて楽しみますように。そして、いつもこう言いますように。「主は大いなる方。そのしもべの幸せを喜んでくださる」と。
35:28 わたしの舌は、あなたの正しさを語り続ける。一日じゅう、あなたをたたえる。
指揮者のために。主のしもべダビデの詩。
36:1 悪を行う者の罪が、わたしの心の奥でこう語りかける。その人の目には、神を恐れる思いがまったくない。
36:2 彼は自分で自分をおだてている。だから自分の罪に気づくことも、それを憎むこともない。
36:3 彼の口から出るのは、悪意と偽りの言葉ばかりだ。もう賢く生きることも、善いことをすることもやめてしまった。
36:4 その人は寝床の上で悪だくみをする。良くない道に自分から立ち、悪を退けようとしない。
36:5 主の慈しみは天に、あなたの真実は雲にまで届く。
36:6 あなたの義は神の山々のよう。あなたの裁きは深い海の底のよう。主よ、あなたは人も動物も救ってくださる。
36:7 神よ、あなたの慈しみはなんと尊いことか。人の子らは、あなたの翼の陰に身を寄せる。
36:8 あなたの家の豊かさで人々は満ち足りる。あなたは楽しみの流れる川から彼らに飲ませてくださる。
36:9 いのちの泉はあなたのもとにあり、あなたの光の中で、わたしたちは光を見る。
36:10 慈しみを、あなたを知る者たちに注ぎ続けてください。あなたの義を、心のまっすぐな人たちに。
36:11 高ぶる者の足にわたしが踏みつけられませんように。悪い者の手にわたしが追い払われませんように。
36:12 そこに、悪を行う者たちは倒れた。突き落とされて、もう立ち上がれない。
37:1 悪を行う者のことで、いらだつな。不正を働く者を、うらやむな。
37:2 草はすぐに枯れ、青草のようにしおれてしまうからだ。
37:3 主に信頼して、善を行え。この地に住み、誠実を糧として生きよ。
37:4 主を心から喜びなさい。そうすれば、あなたの心の願いをかなえてくださる。
37:5 あなたの道を主にゆだねよう。主に信頼しよう。そうすれば、主がすべてをかなえてくださる。
37:6 あなたの義を光のように輝かせ、あなたの正しさを真昼の日のように明らかにしてくださる。
37:7 主の前で静かにして、主を待ち望め。思いどおりに人生を進める者や、悪だくみを実行する人のことで、いらだってはいけない。
37:8 怒りをやめて、いらだちを捨てよう。悩むのはやめよう。それは悪いことにしかつながらない。
37:9 悪を行う者は断ち滅ぼされ、主を待ち望む者は地を受け継ぐからだ。
37:10 悪い者はもうすぐいなくなる。その場所を探しても、もうそこにはいない。
37:11 柔和な人たちは地を受け継ぎ、豊かな平和の中で心から満ち足りる。
37:12 悪い者は正しい者をたくらんで陥れようとし、歯ぎしりして憎む。
37:13 主は彼を笑う。その日が来るのを見ているからだ。
37:14 悪い者たちは剣を抜き、弓を引きしぼる。貧しい人や困っている人を倒し、まっすぐに生きる人たちを殺すために。
37:15 その剣は自分の胸を突き刺し、その弓は折られる。
37:16 正しい人のわずかな持ち物は、多くの悪い者の豊かさよりも良い。
37:17 悪しき者の腕は折られる。でも主は、正しい者を支えてくださるからだ。
37:18 主は正しい人たちの日々を心にかけている。彼らが受け継ぐものは、いつまでも続く。
37:19 災いの時にも彼らは恥をかかず、飢えの日にも満ち足りる。
37:20 しかし悪しき者は滅びる。主に敵対する者は、牧場を彩る花のように、消えていく。煙のように、あとかたもなく消えていく。
37:21 悪人は物を借りても返さない。でも、正しい人は惜しみなく人に分け与える。
37:22 主に祝福された人は地を受け継ぎ、主にのろわれた人は断ち滅ぼされる。
37:23 人の歩みは主によって定まる。主はその人の行く道を喜ばれる。
37:24 たとえ倒れても、そのまま倒れたきりにはならない。主がその手をしっかり支えてくださるからだ。
37:25 わたしは若かった時も、年老いた今も、正しい人が見捨てられたり、その子どもたちが食べ物を求めて歩き回ったりするのを見たことがない。
37:26 正しい人はいつも惜しみなく人に貸し与える。その子孫は祝福を受ける。
37:27 悪から離れ、善を行え。そうすれば、いつまでもその地に住むことができる。
37:28 主は正しい裁きを愛し、自分を信じて従う人たちを見捨てない。彼らはいつまでも守られる。でも、悪い者の子孫は断ち滅ぼされる。
37:29 義に生きる人は地を受け継ぎ、そこにいつまでも住みつづける。
37:30 正しい人の口は知恵を語り、その舌は正しい裁きを口にする。
37:31 その心には神の教えがある。だから歩みがぐらつくことはない。
37:32 悪い者は正しい人をねらって、殺そうとしている。
37:33 主は正しい人を悪い者の手に見捨てたりしない。裁判にかけられても、罪に定められることはない。
37:34 主を待ち望め。その道を守り続けよ。そうすれば、主はあなたを高く引き上げ、この地を受け継がせてくださる。悪者たちが断ち滅ぼされるのを、あなたは見ることになる。
37:35 わたしは、悪い者が権力をふるい、生き生きと茂る木のように大きく広がっていくのを見た。
37:36 わたしが通りかかると、彼はもういなかった。探してみたが、どこにも見つからなかった。
37:37 全き人を見つめ、正しい人に目を向けよう。穏やかに生きる人には、未来があるのだから。
37:38 しかし、罪を犯す者たちはみな滅ぼされ、悪い者の未来は断ち切られる。
37:39 正しい人の救いは主から来る。主は苦しみのときの逃げ場となってくれる。
37:40 主は彼らを助け、救い出す。悪しき者たちの手から助け出して救ってくださる。彼らが主のもとに身を寄せるからだ。
ダビデの詩。思い起こすために。
38:1 主よ、怒りのままにわたしを責めないでください。激しい憤りのままに、わたしを懲らしめないでください。
38:2 あなたの矢がわたしに突き刺さり、あなたの手が重くわたしにのしかかっている。
38:3 あなたの怒りのために、わたしの体には健やかなところがない。わたしの罪のために、わたしの骨には安らぎがない。
38:4 わたしの罪は、頭の上まで越えてしまった。それは重い荷物のように、わたしには背負いきれない。
38:5 わたしの傷は悪臭を放ち、うみただれている。わたしが愚かだったからだ。
38:6 わたしは背を曲げ、ひどくうなだれている。一日じゅう、悲しみに沈んで歩きまわっている。
38:7 わたしの腰は焼けるように熱く、体には健やかなところがない。
38:8 わたしは疲れ果て、打ちのめされている。心の激しいうめきのために、わたしはうめき叫ぶ。
38:9 わたしの願いはすべて、あなたの前にあります。わたしのうめきも、あなたから隠れてはいません。
38:10 わたしの心臓は激しく打ち、力は抜けていく。目の光さえ、もうわたしには残っていない。
38:11 わたしを愛する人も友も、わたしの傷を前にして離れて立ち、身内の者たちも遠くに立っている。
38:12 わたしの命をねらう者たちは、わなを仕掛ける。わたしを傷つけようとする者たちは、破滅をたくらんで語り、一日中だますことばかり考えている。
38:13 わたしは、耳の聞こえない人のように、何も聞かない。口のきけない人のように、何も言い返さない。
38:14 わたしは、耳の聞こえない人のようになり、口で言い返すこともしない人のようになった。
38:15 主よ、わたしはあなたを待ち望んでいる。わたしの主、わたしの神よ、あなたが答えてくださる。
38:16 わたしはこう思っているからだ。「あの人たちに、わたしのことで喜ばせてはならない。わたしの足がぐらついたとき、彼らはわたしに対して勝ち誇る」と。
38:17 わたしは今にも倒れそうで、痛みはいつもわたしの前にある。
38:18 わたしは自分の悪を打ち明ける。自分の罪を思って、心を痛めている。
38:19 わたしの敵は生き生きとして、力にあふれている。理由もなくわたしを憎む者が、次々と増えていく。
38:20 善意に悪意で返す者たちが、わたしを責め立てる。わたしが良いことを追い求めているからだ。
38:21 主よ、わたしを見捨てないでください。わたしの神よ、わたしから遠く離れないでください。
38:22 助けに来て。早く。主よ、わたしを救う方よ。
39:1 わたしはこう決めた。「舌で罪を犯さないよう、自分の歩みに気をつけよう。悪者が目の前にいる間は、口にくつわをはめておこう。」
39:2 わたしは黙り込み、口を閉ざして、良いことさえ言わなかった。だが、わたしの痛みはますますひどくなった。
39:3 わたしの心は内で熱くなり、思いを巡らすほどに火が燃えた。そしてわたしは口を開いて語った。
39:4 主よ、わたしの終わりを教えてください。わたしの日々がどれだけ残っているのか。わたしの人生がどれほどはかないのかを、知らせてください。
39:5 見よ、あなたはわたしの日々を手の幅ほどの短さにされた。わたしの一生も、あなたの前では無いに等しい。ああ、どんな人も、しっかり立っているように見えて、しょせんは息のようにはかない。セラ
39:6 人はただ影のように歩き回る。あくせく動き回っても、すべてはむなしい。財産を積み上げても、それを誰が受け取るのかは分からない。
39:7 主よ、では今、わたしは何を待ち望んでいるのか。わたしの望みは、あなたにある。
39:8 わたしを、すべての罪から救い出してください。愚かな者にあざけられるようにはしないでください。
39:9 わたしは黙って、口を開かない。あなたがなさったことだから。
39:10 あなたが下す罰を、わたしから取り除いてください。あなたの手に打たれて、わたしはもう力尽きています。
39:11 あなたは罪を責めて人を懲らしめる。その人が大切にしていたものを、虫が食うように消し去ってしまう。ああ、どんな人も息のようにはかない。セラ
39:12 主よ、わたしの祈りを聞いてください。助けを求める叫びに耳を傾けてください。わたしの涙を前に、黙っていないでください。わたしはあなたのもとに身を寄せる旅人。すべての先祖たちと同じように、この地に仮に住む者にすぎません。
39:13 わたしから目をそらしてください。少しでも元気を取り戻せるように。わたしが去って、いなくなってしまう前に。
40:1 わたしは、じっと待ち続けた。主を待ち望んでいた。すると主はわたしに心を向け、叫びを聞いてくださった。
40:2 主はわたしを滅びの穴から、泥沼から引き上げてくれた。わたしの足を岩の上に立たせ、わたしの歩みを確かにしてくれた。
40:3 主はわたしの口に新しい歌を授けてくれた。わたしたちの神をたたえる歌を。多くの人がこれを見て、恐れを抱き、主に信頼するようになる。
40:4 幸いなのは、主を頼りにする人だ。高ぶる者たちや、偽りに走る者たちの方を向かない人だ。
40:5 主よ、わたしの神よ。あなたが行った奇跡、わたしたちへの思いは、あまりにも多い。あなたに並ぶものはない。それを語り伝えようとしても、多すぎて数えきれない。
40:6 いけにえも供え物も、あなたは望まなかった。 あなたはわたしの耳を開いてくれた。 焼き尽くすささげ物も、罪を償ういけにえも、あなたは求めなかった。
40:7 そのとき、わたしは言った。「ご覧ください、わたしはここに来ました。巻物の書に、わたしについて書かれています。
40:8 わたしの神よ、わたしはあなたの望みを行うことを喜びとします。あなたの教えは、わたしの心の奥にあります」
40:9 わたしはあなたの正しさを、大勢の集まりの前で伝えてきた。ほら、わたしは口を閉じたりしない。主よ、あなたはそれを知っている。
40:10 あなたの義を、わたしは心の奥にしまい込んだりしなかった。あなたの真実と救いを、わたしは語ってきた。あなたの慈しみとまことを、大勢の人の集まりの中で隠したりしなかった。
40:11 主よ、あなたはわたしへの憐れみを惜しまないでください。あなたの慈しみとまことが、いつもわたしを守ってくれますように。
40:12 数えきれないほどの災いが、わたしを取り囲んだ。自分の犯した罪がわたしに追いつき、顔を上げることもできない。その数は頭の髪の毛よりも多く、わたしの心はくじけてしまった。
40:13 主よ、どうかわたしを助け出してください。主よ、急いでわたしを助けに来てください。
40:14 わたしの命をねらい、滅ぼそうとする者たちが、みなそろって恥を受け、うろたえますように。わたしに災いを望む者たちが、退けられ、はずかしめを受けますように。
40:15 わたしに「ざまあみろ、ざまあみろ」と言う者たちが、自分の恥のために打ちのめされますように。
40:16 あなたを求める人たちがみな、あなたのおかげで喜び、楽しみますように。あなたの救いを愛する人たちが、いつも「主は偉大だ」と言いますように。
40:17 わたしは苦しみ、貧しい者だ。でも、主はわたしを心にかけてくださる。あなたはわたしの助け、わたしを救い出す方。わたしの神よ、どうか遅れないでください。
41:1 貧しい人に心を配る人は幸せだ。苦しみの日に、主はその人を助け出してくれる。
41:2 主はその人を守り、生かしてくださる。その人はこの地で幸せな者と呼ばれる。あなたは彼を敵の思うままにはさせない。
41:3 主は病の床にあるその人を支えてくださる。その人が病で伏せっているとき、あなたはそのすべてをいやしてくださる。
41:4 わたしは言った。「主よ、わたしをあわれんでください。わたしの魂をいやしてください。あなたに罪を犯してしまったのです」と。
41:5 敵はわたしについて悪口を言う。「あいつはいつ死ぬのか。名前も消えてなくなればいい」と。
41:6 わたしを見に来る者は、心にもないことを言う。心の中で悪意をかき集め、外に出ると言いふらす。
41:7 わたしを憎む者はみな、集まってひそひそささやき合う。わたしを傷つけようと、たくらんでいる。
41:8 「あいつには、ひどい病がとりついた。寝込んだまま、もう二度と起き上がれないだろう」と彼らは言う。
41:9 わたしが信頼していた親しい友、わたしのパンを食べた友までもが、わたしに向かってかかとを上げた。
41:10 でも、主よ、わたしをあわれんで、立ち上がらせてください。そうすれば、わたしは彼らに仕返しができます。
41:11 わたしにはわかる。あなたがわたしを喜んでくださっていることが。敵がわたしに勝ち誇ることはないのだから。
41:12 そしてあなたは、まっすぐに生きるわたしを支え、いつまでもあなたの前に立たせてくださる。
41:13 主よ、イスラエルの神よ、あなたはたたえられる。永遠の昔から永遠の未来まで。アーメン、アーメン。
42:1 神よ、鹿が谷川の水を求めてあえぐように、わたしの魂もあなたを求めてあえいでいる。
42:2 わたしの魂は神を求めて渇いている。生きておられる神を。いつになったら、わたしは行って、神の顔を仰ぐことができるのだろう。
42:3 わたしは昼も夜も、涙ばかりを食べ物にしてきた。人々は一日中「おまえの神はどこにいるんだ」と、わたしに言い続けるのだから。
42:4 これらのことを思い出すと、わたしは胸の内で魂を注ぎ出す。 かつてわたしは大勢の人とともに進み、 彼らを導いて神の家へと向かった。 喜びと感謝の声をあげ、 祭りを祝う群衆とともに。
42:5 わたしの魂よ、どうしてそんなに沈んでいるのか。どうしてわたしの中で思い乱れるのか。神を待ち望め。わたしはまた神をたたえる。そばにいて、わたしを救ってくださる神を。
42:6 わたしの神よ。わたしの魂は、うちに沈みこんでいる。だから、わたしはあなたを思い起こす。ヨルダンの地から、ヘルモンの峰々から、ミツァルの山から。
42:7 あなたの滝の轟きに、深い淵が淵へと呼び合う。あなたの波、あなたの大波が、すべてわたしの上を越えていった。
42:8 昼には、主はその慈しみを送ってくださる。夜には、その歌がわたしとともにあり、わたしのいのちの神への祈りとなる。
42:9 わたしを守る岩、わたしの神に、わたしはこう言う。「どうしてわたしを忘れてしまったのですか。どうしてわたしは、敵に苦しめられ、嘆きながら歩き回らなければならないのですか。」
42:10 骨が砕けるほど、敵はわたしをののしる。一日中、わたしに言い続ける。「お前の神はどこにいるんだ」と。
42:11 わたしの魂よ、どうしてそんなに沈んでいるのか。どうしてわたしの中で思い乱れるのか。神を待ち望め。わたしはまた神をたたえる。わたしを救ってくださる方、わたしの神を。
43:1 神よ、わたしを正しく裁いてください。神を敬わない民に対して、わたしの訴えを弁護してください。だます者、不正を働く者から、わたしを救い出してください。
43:2 あなたはわたしの力の神。それなのに、なぜわたしを見捨てたのですか。なぜわたしは敵に虐げられて、悲しみながら歩かなければならないのですか。
43:3 あなたの光とまことを送ってわたしを導いてください。それらがわたしを、あなたの聖なる山、あなたの住まいへと連れて行ってくれますように。
43:4 そのとき、わたしは神の祭壇へ行く。わたしの最高の喜びである神のもとへ行く。神よ、わたしの神よ、わたしは竪琴を鳴らしてあなたをたたえる。
43:5 わたしの魂よ、どうしてそんなに沈んでいるのか。どうしてわたしの中で思い乱れるのか。神を待ち望め。わたしはまた神をたたえる。わたしを救ってくださる方、わたしの神を。
指揮者のために。コラの子たちの詩、マスキール。
44:1 神よ、わたしたちはこの耳で聞いた。父祖たちが語ってくれたのだ。あなたが彼らの時代、その昔の日々に成し遂げたわざを。
44:2 あなたは自らの手で国々を追い払い、そこにわたしたちの先祖を植えた。あなたは諸国の民を打ち砕き、先祖を大きく広がらせた。
44:3 先祖たちは自分の剣でこの地を得たのではない。自分の腕で勝ったのでもない。それはあなたの右の手、あなたの腕、あなたの顔の光によるものだった。あなたが彼らを愛してくださったからだ。
44:4 あなたこそ、わたしの王、わたしの神。ヤコブに勝利を命じてください。
44:5 あなたによってわたしたちは敵を突き倒す。あなたの名によって、立ち向かう者を踏みつける。
44:6 わたしは自分の弓に頼らない。わたしの剣がわたしを救うのでもない。
44:7 あなたがわたしたちを敵から救い、わたしたちを憎む者たちに恥をかかせてくれたからだ。
44:8 わたしたちは一日中、神を誇りとしてきた。あなたの名に、いつまでも感謝をささげる。セラ
44:9 でも、あなたはわたしたちを見捨てて、恥を負わせた。わたしたちの軍とともに出て行ってはくださらなかった。
44:10 あなたはわたしたちを敵の前から退かせた。わたしたちを憎む者たちは、思うままに略奪した。
44:11 あなたはわたしたちを、食用の羊のように渡し、諸国民の中に散らした。
44:12 あなたは自分の民をただ同然で売り、その代価で少しも利益を得なかった。
44:13 あなたはわたしたちを、隣人たちにさげすまれる存在にした。周りの人たちからは、あざけられ、笑いものにされる者にした。
44:14 あなたはわたしたちを、国々の間の笑い草にし、もろもろの民の間で頭を振られる者にした。
44:15 一日中、わたしの受けた恥が目の前から離れない。顔を覆いつくすほどの恥に、わたしは包まれている。
44:16 あなたを恐れる者の声、復讐しようとする敵の声のせいだ。
44:17 これらのことがみな、わたしたちに降りかかった。それでもわたしたちはあなたを忘れず、あなたとの契約を裏切ることもなかった。
44:18 わたしたちの心は、あなたに背を向けなかった。わたしたちの歩みも、あなたの道からそれることはなかった。
44:19 あなたはわたしたちを打ち砕いて、ジャッカルのすむ荒れ地に追いやり、死の闇でわたしたちを覆った。
44:20 わたしたちが自分の神の名を忘れ、ほかの神に向かって手を差し伸べたことがあっただろうか。
44:21 神はそれを見抜くはずだ。心の奥に隠された秘密まで知っているのは、神なのだから。
44:22 わたしたちは、あなたのために一日中殺され、ほふられる羊のように見なされている。
44:23 目を覚ましてください。主よ、どうして眠っているのですか。立ち上がって、わたしたちをいつまでも見捨てないでください。
44:24 どうして顔を背けるのですか。わたしたちの苦しみと、しいたげられている姿を忘れてしまうのですか。
44:25 わたしたちの魂はちりに伏し、わたしたちの体は地にへばりついている。
44:26 立ち上がって、わたしたちを助けてください。あなたの慈しみのゆえに、わたしたちを救い出してください。
45:1 わたしの心は、すばらしい言葉であふれている。わたしはこの詩を王にささげる。わたしの舌は、腕のいい書記が走らせる筆だ。
45:2 王よ、あなたは人の子らのだれよりも美しい。その口には優しさがあふれている。だから神は、あなたをいつまでも祝福される。
45:3 剣を腰に帯びよ、勇士よ。それがあなたの輝き、あなたの威厳だ。
45:4 栄光をまとって、真実と、へりくだりと、正義のために、馬を駆って勝ち進め。あなたの右手が、恐るべきわざを見せてくれる。
45:5 あなたの矢は鋭く、王の敵の心を突き刺す。もろもろの民はあなたの足もとに倒れる。
45:6 神よ、あなたの王座はいつまでも続く。あなたの国を治める杖は、まっすぐな正しさの杖だ。
45:7 あなたは正義を愛し、悪を憎む。だから神は、あなたの神は、喜びの油をあなたに注ぎ、あなたを仲間の誰よりも高く立てた。
45:8 あなたの衣はどれも、ミルラとアロエとシナモンの香りに包まれている。象牙の宮殿から流れる弦の調べが、あなたを喜ばせる。
45:9 王の娘たちが、あなたの大切な女性たちの中にいる。王妃はオフィルの金を身につけて、あなたの右に立っている。
45:10 娘よ、聞きなさい。よく見て、耳を傾けなさい。あなたの民と、父の家を忘れなさい。
45:11 王はあなたの美しさを慕う。王はあなたの主人なのだから、彼をあがめなさい。
45:12 ツロの娘は贈り物を持ってやって来る。民の中の富んだ者たちが、あなたの好意を求める。
45:13 王の娘は、奥の間で輝くばかりに美しい。 その衣は金で織り上げられている。
45:14 王のもとへ、彼女は美しい衣装を着て導かれていく。付き添う乙女たちも、彼女に従ってあなたのもとへ連れてこられる。
45:15 彼女たちは喜びと歓声に包まれて導かれ、王の宮殿へと入っていく。
45:16 あなたの子孫が、あなたの先祖に代わって立つ。あなたは彼らを、この地のすべてを治める君主とするだろう。
45:17 わたしはあなたの名を、代々にわたって覚えられるようにする。だから人々は、あなたをいつまでも、永遠にたたえる。
46:1 神はわたしたちの逃げ場、わたしたちの力。苦しみのとき、すぐそばで助けてくれる。
46:2 でもわたしたちは恐れない。たとえ地が崩れ去っても、山々がゆらいで海の底に沈んでも。
46:3 たとえその水が鳴りとどろき、泡立っても、そのうねりで山々が揺れ動いても。セラ
46:4 川がある。その流れが、神の都をよろこびで満たす。そここそ、いと高き神が住む聖なる場所だ。
46:5 神はその中にいる。だから都は揺るがない。夜が明けるころ、神が助けてくれる。
46:6 国々は荒れ狂い、王国はぐらつく。神が声をとどろかせると、地は溶けていく。
46:7 天の軍勢を率いる主が、わたしたちと共におられる。ヤコブの神は、わたしたちの逃れ場だ。セラ
46:8 主が行った偉大なわざを見よ。主は地を荒れ果てさせた。
46:9 主は地の果てまで戦いをやめさせる。弓を折り、槍を打ち砕き、戦いの車を火で焼き払う。
46:10 「静まりなさい。わたしが神であることを知りなさい。わたしは国々の中であがめられ、地の上であがめられる。」
46:11 天の軍勢を率いる主が、わたしたちと共におられる。ヤコブの神は、わたしたちの逃れ場だ。セラ
47:1 すべての民よ、手をたたけ。喜びの声をあげて、神に叫べ。
47:2 主はいと高く、畏れ多い方。全地を治める偉大な王だ。
47:3 神はもろもろの民をわたしたちの下に従わせ、国々をわたしたちの足もとに置く。
47:4 神はわたしたちのために、受け継ぐ地を選んでくださる。それは、神が愛したヤコブの誇り。セラ
47:5 神は喜びの叫びとともに上られた。主はラッパの音とともに上られた。
47:6 神をほめ歌おう。わたしたちの王をほめ歌おう。
47:7 神は全地を治める王だ。神をほめ歌え、心を込めて。
47:8 神は国々を治めている。神は聖なる王座に座っている。
47:9 諸国の民の高貴な人々が集まる。アブラハムの神の民として。地の盾はすべて神のものだから。神は大いに高く上げられている。
48:1 主は偉大な方。心からたたえられるにふさわしい方。わたしたちの神の都で、その聖なる山で。
48:2 シオンの山は美しくそびえ、世界中の喜び。北のはずれにある、偉大な王の都。
48:3 神はその宮殿の中で、砦として自らを知らせた。
48:4 王たちが集まり、そろって攻め寄せてきた。
48:5 彼らは都を見た。すると驚き、うろたえ、あわてて逃げ去った。
48:6 そこで彼らは震えおののき、子を産む女のような激しい痛みに襲われた。
48:7 あなたは東の風で、タルシシュの船を打ち砕く。
48:8 聞いていたとおりのことを、わたしたちは自分の目で見た。天の軍勢を率いる主の都で、わたしたちの神の都で。神はこの都をいつまでも堅く立たせてくださる。セラ
48:9 神よ、わたしたちはあなたの神殿で、あなたの慈しみを思い巡らした。
48:10 あなたの名の通り、神よ、あなたへの賛美は地の果てにまで及ぶ。あなたの右の手は義に満ちている。
48:11 あなたのさばきのゆえに、シオンの山は喜び、ユダの娘たちは喜び踊る。
48:12 シオンのまわりを歩いて、ぐるりとめぐってみよう。その塔を数えてごらん。
48:13 その城壁に心を向け、宮殿の一つ一つをじっくり見てまわろう。それを次の世代へ語り伝えるために。
48:14 神こそわたしたちの神。世々かぎりなく、この神がわたしたちを死を越えて導いてくださる。
49:1 すべての民よ、これを聞け。この世に生きるすべての人よ、耳を傾けよ。
49:2 身分の低い人も高い人も、お金持ちも貧しい人も、だれもがみんな一緒に。
49:3 わたしの口は知恵を語り、心に浮かぶのは深い洞察だ。
49:4 わたしはたとえに耳を傾け、竪琴に合わせてなぞを解き明かす。
49:5 災いの日に、なぜわたしは恐れるのか。わたしを追いつめる者の悪意が取り囲んでも。
49:6 自分の財産に頼り、あり余る富を誇る者たち。
49:7 兄弟を、人は決してあがなうことができない。神に、その身代金を払うことはできない。
49:8 魂を買い戻す代価はあまりに高く、どんなに払っても永遠に足りることはない。
49:9 いつまでも生き続けて、朽ち果てる墓を見ずにすむように。
49:10 賢い人も死んでいくのを、だれもが目にする。愚かな者も、分別のない者も、同じように滅びる。そして自分の財産を、あとに残る人たちに残していくのだ。
49:11 彼らは心の中で、自分の家はいつまでも続き、住まいは代々残ると思っている。そして自分の名を土地につけて呼ぶ。
49:12 だが、人はどんなに栄えても、そのままでは続かない。滅んでいく獣と、何も変わらないのだ。
49:13 これが、愚かにも自分を頼る者たちの歩む道だ。 その後に続く者たちも、彼らの言葉をよしとする。 セラ
49:14 羊のように、彼らは死の世界へと追いやられ、死が彼らを飼う羊飼いとなる。だが朝が来れば、正しい人たちが彼らを支配する。彼らの姿は朽ち果て、立派な住まいを遠く離れて、死の世界へと消えていく。
49:15 でも、神はわたしの魂を死の力から救い出してくれる。神がわたしを迎え入れてくれるからだ。セラ
49:16 恐れることはない。だれかが金持ちになっても、その家の栄華がどれほど増しても。
49:17 死ぬときには、何ひとつ持っていくことはできない。その栄光も、あとを追って下っていくことはないのだから。
49:18 生きている間、その人は自分の魂を祝福する。うまくやっていれば、人はあなたをほめたたえる。
49:19 あなたは先祖たちのもとへ行き 彼らは永遠に、光を見ることがない。
49:20 人はどんなに栄えても、それがわからないなら、滅んでいく獣と何も変わらないのだ。
50:1 全能の神、主が語りかけ、日の昇るところから沈むところまで、地の全体に呼びかけられた。
50:2 神は、この上なく美しいシオンから光を放つ。
50:3 わたしたちの神は来られる。黙ってはおられない。神の前では火が燃えつくし、そのまわりでは嵐が激しく吹き荒れる。
50:4 神は、自分の民をさばくために、上にある天と、下にある地に呼びかける。
50:5 「いけにえをささげて、わたしと契約を結んだ者たち。わたしに忠実な人たちを、わたしのもとに集めよ」
50:6 天は神の正しさを告げ知らせる。神ご自身が裁く方だからだ。セラ
50:7 「わたしの民よ、聞きなさい。わたしは語る。イスラエルよ、わたしはあなたに証言する。わたしは神、あなたの神なのだ。
50:8 わたしがあなたを責めるのは、いけにえのことではない。焼き尽くすいけにえは、いつもわたしの前にあるのだから。
50:9 わたしは、あなたの家から雄牛を取ることはない。囲いから雄やぎを取ることもない。
50:10 森のすべての獣は、わたしのものだ。数えきれない丘にいる家畜も、わたしのものだ。
50:11 山の鳥をすべて知っている。野に群れるものも、みなわたしのそばにいる。
50:12 たとえわたしが飢えても、あなたに言うことはない。世界も、その中に満ちるものも、みんなわたしのものだからだ。
50:13 わたしが雄牛の肉を食べ、雄やぎの血を飲むとでもいうのか。
50:14 感謝のいけにえを神にささげなさい。いと高き方に、あなたの誓いを果たしなさい。
50:15 苦しみの日にわたしを呼べ。わたしはあなたを助け出す。そしてあなたはわたしをあがめる。」
50:16 でも神は、悪を行う者にこう言われる。「おまえがわたしの決まりを語るとは、どういうつもりだ。わたしの契約を口にするとは。
50:17 あなたは教えられることを嫌い、わたしの言葉を放り捨てた。
50:18 泥棒を見ればすぐに仲間になり、浮気をする者となかまになる。
50:19 あなたは口を悪事に走らせ、舌でうそを組み立てる。
50:20 座ったまま、あなたは兄弟の悪口を言い、自分の母の子をおとしめる。
50:21 あなたはこういうことをしてきた。それでもわたしは黙っていた。だからあなたは、わたしを自分と同じような者だと思い込んだ。でも、わたしはあなたを問いただす。あなたの目の前に、その罪を並べてみせる。
50:22 神を忘れてしまったあなたたち、このことをよく考えてほしい。そうしないと、わたしはあなたを引き裂く。だれも助けられない。
50:23 感謝のいけにえをささげる人は、わたしをあがめる。その道を正す人に、わたしは神の救いを見せよう。」
預言者ナタンがダビデのもとに来たとき。ダビデがバト・シェバのところに行ったあとのことである。
51:1 神よ、あなたの慈しみによって、わたしをあわれんでください。あふれるほどの深い思いやりで、わたしの背きをぬぐい去ってください。
51:2 わたしの汚れをすっかり洗い流し、わたしの罪からわたしを清めてください。
51:3 わたしは自分の背きを、よくわかっている。 犯した罪は、いつもわたしの目の前にある。
51:4 わたしが罪を犯した相手は、あなた、ただあなただけだ。わたしはあなたの目の前で、悪いことをした。だから、あなたが語る言葉はいつも正しく、あなたが下すさばきには少しの非もない。
51:5 見てください。わたしは生まれたときから罪を負っていた。母がわたしを宿したときから、すでに罪の中にいたのだ。
51:6 そう、あなたは心の奥に真実を求めておられる。隠れた深みで、わたしに知恵を教えてくださる。
51:7 ヒソプでわたしを清めてください。そうすれば、わたしはきよくなる。わたしを洗ってください。そうすれば、雪よりも白くなる。
51:8 喜びと楽しさの声を、わたしに聞かせてください。 あなたが打ち砕いたこの骨が、喜び躍りますように。
51:9 わたしの罪から顔を背け、わたしのすべての過ちを消し去ってください。
51:10 神よ、清い心をわたしのうちに創造してください。揺るがない霊を、わたしの内に新しくしてください。
51:11 わたしをあなたの前から追い払わないでください。あなたの聖なる霊をわたしから取り去らないでください。
51:12 あなたに救われる喜びを、もう一度わたしに返してください。すすんで従おうとする心で、わたしを支えてください。
51:13 わたしは、背いた人たちにあなたの道を教えよう。そうすれば、罪を犯した人たちはあなたのもとに帰ってくる。
51:14 神よ、血を流した罪からわたしを救い出してください。わたしの救いの神よ。そうすれば、わたしの舌はあなたの義を喜び歌います。
51:15 主よ、わたしのくちびるを開いてください。そうすれば、わたしの口はあなたをたたえる言葉を語ります。
51:16 あなたはいけにえを望まない。望むなら、わたしはささげるのに。あなたは焼き尽くすささげ物を喜ばない。
51:17 神が求めるいけにえは、打ち砕かれた霊。打ち砕かれ、うちひしがれた心を、神よ、あなたは見下したりしない。
51:18 シオンに、あなたの深い恵みを注いでください。エルサレムの城壁を築いてください。
51:19 そのとき、あなたは正しいささげ物を、焼き尽くすいけにえや全焼のささげ物を、喜んで受け入れてくださる。そのとき、あなたの祭壇の上に雄牛がささげられる。
指揮者のために。ダビデのマスキール。エドム人ドエグがサウルのところに来て、「ダビデがアヒメレクの家に来た」と告げたときのもの。
52:1 力ある者よ、どうして悪を誇るのか。神の慈しみは一日中、絶えることがないのに。
52:2 おまえの舌は人を滅ぼすことばかり企てている。人をだますおまえの舌は、研ぎすまされたかみそりのようだ。
52:3 あなたは、良いことより悪いことを愛し、 正しいことを語るより、うそを愛する。セラ
52:4 お前は人を破滅させる言葉ばかりを愛している。人をだます舌よ。
52:5 でも、神はおまえを永遠に打ち砕く。 おまえをつかみ、住まいから引きずり出し、 命ある者の地から根こそぎにする。セラ
52:6 正しい人たちはそれを見て恐れる。そして彼をあざ笑って言う。
52:7 見よ、これがあの男だ。神を自分の力の源とせず、ありあまる富に頼り、自分の欲望を支えにして強がっていた。
52:8 わたしは、神の家に茂る青々としたオリーブの木のようだ。わたしは、神の慈しみをいつまでも、永遠に信頼している。
52:9 わたしはいつまでもあなたに感謝します。あなたがそれをしてくださったから。そして、あなたの名を待ち望みます。あなたを慕う人たちの前で、その名はすばらしいから。
指揮者のために。マハラトの調べに合わせて。ダビデの詩、マスキール。
53:1 愚かな者は心の中で「神なんていない」と言う。彼らは腐りきっていて、目をそむけたくなるほど不正なことをする。正しいことをする人は、ひとりもいない。
53:2 神は天から人の子らを見おろした。神を求める賢い者がいるかどうかを見るために。
53:3 みんな悪いことばかりして、そろって腐ってしまった。正しいことをする人はいない。ひとりもいない。
53:4 悪を行う者たちは、何もわかっていないのか。彼らはパンを食べるように、わたしの民を食い尽くす。そして神に祈ろうとはしない。
53:5 彼らは、恐れるものなど何もないのに、ひどくおびえた。あなたを囲んで攻める者の骨を、神がまき散らしたからだ。あなたは彼らに恥をかかせた。神が彼らを退けたからだ。
53:6 シオンからイスラエルを救う者が来ますように。神が自分の民をもとの暮らしへ連れ戻すとき、ヤコブは喜びおどり、イスラエルは楽しむ。
ジフの人たちがサウルのところに来て、「ダビデはわたしたちのところに隠れているではありませんか」と告げたときに。
54:1 神よ、あなたの名によってわたしを救い、あなたの力によってわたしを弁護してください。
54:2 神よ、わたしの祈りを聞いてください。わたしの口が語る言葉に耳を傾けてください。
54:3 よそ者たちがわたしに立ち向かい、情け容赦のない者たちがわたしの魂をねらっている。彼らは神のことなど気にもかけない。セラ
54:4 見よ、神はわたしを助けてくださる。主はわたしの魂を支えてくださる方だ。
54:5 わたしを狙う者たちに、その悪が返っていきますように。あなたの真実によって、彼らを滅ぼしてください。
54:6 喜んで、わたしはあなたにいけにえをささげる。主よ、あなたの名に感謝する。その名は良いものだから。
54:7 神は、あらゆる苦しみからわたしを救い出してくれた。わたしはこの目で、敵が倒れるのを見たのだ。
55:1 神よ、わたしの祈りに耳を傾けてください。わたしの願いから身を隠さないでください。
55:2 わたしに心を向けて、答えてほしい。わたしは嘆きのなかで落ち着かず、うめきつづけている。
55:3 敵の声におびえ、悪い者たちの圧迫に苦しんでいる。 あいつらはわたしに災いを浴びせ、 怒りに燃えてわたしを憎むからだ。
55:4 わたしの心は内側でもだえ苦しみ、死の恐ろしさがわたしに襲いかかった。
55:5 恐れと震えがわたしを襲い、恐怖がわたしをのみ込む。
55:6 わたしは言う。「ああ、鳩のような翼があればいい。そうすれば飛び去って、安らかに住めるのに。
55:7 そう、遠くまで逃げて行って、荒れ野で夜を過ごそう。セラ
55:8 わたしは急いで逃げ場に向かう。荒れ狂う風から、吹きすさぶ嵐から。
55:9 主よ、彼らを滅ぼし、その言葉をばらばらにしてください。わたしはこの町で、暴力と争いを見てきたからです。
55:10 昼も夜も、彼らは町の城壁の上を歩き回る。町の中には悪意と苦しみが満ちている。
55:11 町の中では人を破滅させることが行われ、広場からは暴力とだましが消えることがない。
55:12 わたしをののしるのは、敵ではない。敵なら、まだ耐えられる。わたしに立ち向かって高ぶるのは、わたしを憎む者ではない。もしそうなら、身を隠して逃げることもできる。
55:13 でも、それはあなただった。わたしと対等な人、親しい仲間、心を許した友だったのだ。
55:14 一緒に楽しく語り合い、大勢の仲間と神の家へ通った仲だったのに。
55:15 どうか、死が彼らを襲いますように。生きたまま陰府に下りますように。彼らの住まいにも、その心の中にも、悪が満ちているからだ。
55:16 でも、わたしは神に呼びかける。そうすれば、主がわたしを救ってくださる。
55:17 夕べも、朝も、真昼も、わたしは嘆き、うめく。すると、神はわたしの声を聞いてくださる。
55:18 神はわたしの魂を、わたしに向けられた戦いから安らかに救い出してくださった。わたしに立ち向かう者は多かったからだ。
55:19 神は聞いて、彼らを懲らしめる。大昔からずっと王座におられる方が。セラ。彼らは生き方を変えようとせず、神を恐れることもないからだ。
55:20 その男は、仲のよかった友に手を上げ、交わした約束を破った。
55:21 彼の口はバターよりなめらかだった。でも心の中は戦いだった。 その言葉は油よりやわらかかった。でもそれは抜き身の剣だった。
55:22 あなたの重荷を主にゆだねなさい。そうすれば、主があなたを支えてくれる。主は、正しく生きる人を決して倒れさせることはない。
55:23 でも神よ、あなたは彼らを滅びの穴へ突き落とす。人の血を流す者、人をだます者は、その人生を半分も生きられない。でもわたしは、あなたに信頼する。
指揮者のために。「遠くにいる、もの言わぬ鳩」の調べに合わせて。ダビデのミクタムの歌。ペリシテ人がガテでダビデを捕らえたときに。
56:1 神よ、わたしをあわれんでください。人がわたしを飲み込もうとしているからです。一日中、敵が攻め立て、わたしを苦しめます。
56:2 敵はわたしを一日中つけねらう。高ぶって、大勢でわたしに襲いかかってくる。
56:3 恐れを感じるとき、わたしはあなたに信頼する。
56:4 神によって、わたしはその言葉をたたえる。神に信頼しているから、わたしは恐れない。ただの人間に、わたしをどうすることができるだろう。
56:5 彼らは一日中、わたしの言葉をねじ曲げる。その頭の中は、わたしを傷つけることでいっぱいだ。
56:6 彼らは寄り集まっては身を潜め、わたしの足取りをうかがう。わたしの魂をねらって、待ち構えているのだ。
56:7 悪事を重ねる彼らを、どうか逃がさないでください。神よ、怒りをもって、もろもろの民を倒してください。
56:8 あなたはわたしのさすらいを数えてくださった。わたしの涙をあなたの革袋にためてください。それはみな、あなたの書に記されているではないか。
56:9 わたしが呼び求めるその日、敵は退いていく。わたしにはわかっている。神はわたしの味方だ、と。
56:10 神によって、わたしはことばをたたえる。主によって、わたしはことばをたたえる。
56:11 わたしは神に信頼している。だから恐れない。人がわたしに何をできるだろうか。
56:12 神よ、わたしはあなたに誓いを立てました。だから、感謝のささげ物をあなたにささげます。
56:13 あなたはわたしの魂を死から救い出してくださった。わたしの足がつまずかないように守ってくださった。だからわたしは、命の光の中で、神の前を歩いていける。
指揮者のために。「滅ぼさないで」の調べに合わせて。ダビデのミクタム。サウルから逃げて、洞穴に隠れていたときの歌。
57:1 神よ、わたしをあわれんでください。どうか、あわれんでください。わたしの魂はあなたに身を寄せています。あなたの翼の陰に、わたしは逃げ込みます。この災いが過ぎ去るまで。
57:2 わたしはいと高き神に呼び求める。わたしのためにすべてを成し遂げてくださる神に。
57:3 神は天から手を差し伸べ、わたしを救ってくださる。 わたしを呑み込もうとする者に、恥をかかせてくださる。セラ 神はその慈しみとまことを送ってくださる。
57:4 わたしの魂はライオンの中にいる。燃え立つ人々の間に、わたしは横たわる。彼らの歯は槍と矢、その舌は鋭い剣だ。
57:5 神よ、天よりも高くあがめられますように。あなたの栄光が地のすべてを覆いますように。
57:6 彼らはわたしの行く道に網を張り わたしの魂は打ちひしがれた。 彼らはわたしの前に落とし穴を掘った。 だが、自分がその中に落ちた。 セラ
57:7 神よ、わたしの心は揺るがない。わたしの心は揺るがない。わたしは歌おう、あなたをたたえて歌おう。
57:8 目を覚ませ、わたしの魂よ。目を覚ませ、竪琴よ、琴よ。わたしは夜明けを呼び起こそう。
57:9 主よ、わたしは多くの民の中であなたをたたえ、さまざまな国々であなたをほめ歌う。
57:10 天よりも高くまでとどく、あなたの変わらぬ愛。空のかなたにまで広がる、あなたのまこと。
57:11 神よ、天よりも高くあがめられますように。あなたの栄光が地のすべてを覆いますように。
指揮者のために。「滅ぼすな」の調べにあわせて。ダビデのミクタムの歌。
58:1 本当にお前たちは、正しいことを語っているのか。人々を公平に裁いているのか。
58:2 いや、あなたたちは心の中で不正をたくらみ、この地で、その手の暴力を量り分ける。
58:3 悪者は生まれたときから正しい道を外れている。母の胎を出たときから迷い出て、うそばかり口にする。
58:4 彼らの毒は、ヘビの毒のようだ。まるで、耳をふさぐ、耳の聞こえないコブラのように。
58:5 蛇使いの声に耳を貸そうとしない。どんなに巧みに呪文を唱える者の声にも、耳をふさいでいる。
58:6 神よ、彼らの口の中の歯を砕いてください。主よ、若い獅子のきばを打ち砕いてください。
58:7 彼らを、流れ去る水のように消えうせさせてください。弓を引いても、その矢は先が折れてしまいますように。
58:8 はいながら溶けて消えていくかたつむりのように、日の光を見ることなく終わる死産の子のように、彼らを消え去らせてください。
58:9 あなたがたの鍋がいばらの火の熱を感じるより早く、青い枝も燃える枝もつむじ風に吹き払われるように、彼らを吹き払ってください。
58:10 正しい人は、悪が罰せられるのを見て喜ぶ。悪者の血で足を洗う。
58:11 そして人々は言うだろう。「やはり、正しい人には報いがある。確かに、この地で裁きを行う神がいるのだ」と。
指揮者のために。「滅ぼさないで」という調べに合わせて。ダビデのミクタム。サウルが人を送り、ダビデを殺そうと家を見張らせたときに。
59:1 わたしの神よ、敵からわたしを助け出してください。わたしに立ち向かう者から、わたしを高い所に守ってください。
59:2 悪を行う者たちから、わたしを助け出してください。血に飢えた者たちから、わたしを救ってください。
59:3 見よ、彼らはわたしの魂をねらって待ち伏せしている。荒々しい者たちがわたしに襲いかかろうと集まってくる。主よ、わたしには背きも罪もないのに。
59:4 わたしには何の落ち度もないのに、彼らは走り寄って身構える。目を覚まし、わたしを迎えに来て、この有様を見てください。
59:5 あなたは主、万軍の神、イスラエルの神。目を覚まして、すべての国々を罰してください。悪をたくらむ裏切り者を、だれ一人あわれまないでください。セラ
59:6 夕方になると、彼らは戻ってくる。犬のようにうなり、町をうろつき回る。
59:7 見よ、彼らは口から言葉をまくし立てる。その唇には剣がある。「どうせ誰も聞いていない」と思っているのだ。
59:8 でも主よ、あなたは彼らを笑いとばす。すべての民をあざ笑うのだ。
59:9 わたしの力であるあなたを、わたしは待ち望む。神はわたしを守る砦だから。
59:10 慈しみ深いわたしの神は、わたしを迎えに来てくださる。神は、わたしを狙う敵が倒れるのを、この目に見せてくださる。
59:11 彼らを殺さないでください。わたしの民が忘れてしまわないように。あなたの力で彼らをさまよわせ、引きずり降ろしてください。わたしたちの盾である主よ。
59:12 彼らの口が犯す罪、その唇が語る言葉のために、高ぶったまま彼らを捕らえてください。彼らが口にする呪いと偽りのために。
59:13 怒りをもって彼らを滅ぼしてください。跡形もなくなるまで滅ぼしてください。そうすれば人々は、神がヤコブを、いや地の果てまでを治めていることを知る。セラ
59:14 夕方になると、彼らは戻ってくる。犬のようにうなり、町をうろつき回る。
59:15 彼らは食べ物を求めてうろつき、満ち足りなければ、夜通しうなり続ける。
59:16 でも、わたしはあなたの力を歌う。朝には、あなたの慈しみを高らかに歌う。あなたはわたしの高いとりで、苦しみの日の逃げ場だったから。
59:17 わたしの力よ、あなたにこそ歌おう。神はわたしのとりで、変わらぬ愛を注いでくださる神なのだから。
指揮者のために。「あかしのゆり」の調べに合わせて。ダビデのミクタム。人々に教えるための歌。
60:1 神よ、あなたはわたしたちを見捨て、その守りを打ち破った。あなたは怒った。どうか、わたしたちを元に戻してほしい。
60:2 あなたは地を揺さぶり、引き裂いた。その裂け目を直してください。地はぐらついているのだから。
60:3 あなたは自分の民に厳しい現実を見せ、よろめかせるぶどう酒をわたしたちに飲ませた。
60:4 あなたを敬う人たちに、あなたは旗を与えた。真理のために、それを高くかかげるように。セラ
60:5 あなたを愛する人たちが救い出されるように、右の手で救い、わたしに答えてください。
60:6 神は聖なるところで語られた。「わたしは喜びにあふれ、シケムを分け与え、スコテの谷を測って配ろう。
60:7 ギレアデはわたしのもの、マナセもわたしのもの。エフライムはわたしの頭を守るかぶと、ユダはわたしの王の杖。
60:8 モアブはわたしの洗い桶。エドムにはわたしの履き物を投げつける。ペリシテよ、わたしのことで勝ちどきをあげろ。
60:9 だれがわたしを城壁の町へ導いてくれるのか。だれがわたしをエドムまで連れて行ってくれるのか。
60:10 神よ、あなたはわたしたちを見捨てたではありませんか。神よ、あなたはもうわたしたちの軍と共に出てくださらない。
60:11 神よ、苦しみの中にいるわたしたちを助けてほしい。人の力にすがっても、何の助けにもならないのだから。
60:12 神とともに、わたしたちは力を尽くして戦う。神が、わたしたちの敵を踏みつけてくださる。
指揮者のために。弦楽器に合わせて。ダビデの詩。
61:1 神よ、わたしの叫びを聞いてください。わたしの祈りに耳を傾けてください。
61:2 地の果てから、わたしはあなたを呼び求める。 心が弱り果てるとき、 わたしよりも高くそびえる岩へ、わたしを導いてください。
61:3 あなたはわたしの隠れ家、敵から守ってくれる堅固なとりでだから。
61:4 あなたの天幕に、わたしはいつまでも住みたい。あなたの翼の陰に身を寄せて、守られていたい。セラ
61:5 神よ、あなたはわたしの誓いを聞いてくださった。あなたの名を敬う人たちが受け継ぐものを、わたしに与えてくださった。
61:6 王の日々に、さらに多くの日を加えてください。 その歳月が、幾世代にもわたって続きますように。
61:7 彼がいつまでも神の前にとどまりますように。慈しみとまことを送って、彼を守ってください。
61:8 だから、わたしはいつまでもあなたの名をほめ歌う。日ごと、わたしの誓いを果たしていく。
指揮者のために。エドトンにしたがって。ダビデの詩。
62:1 神だけがわたしの魂の安らぎ。わたしの救いは神から来る。
62:2 神こそわたしの岩、わたしの救い。わたしの高いとりで。だからわたしは、大きく揺らぐことはない。
62:3 いつまで、あなたたちは一人の人を攻め立てるのか。よってたかって、その人を打ち倒そうとする。だがあなたたちはみな、傾いた壁、崩れかけた塀のようなものだ。
62:4 彼らはただ、人をその高い場所から突き落とそうと企てている。偽りを喜び、口では祝福しながら、心の中では呪っている。セラ
62:5 わたしの魂よ、ただ神の前で静まっていよう。わたしの望みは神から来るのだから。
62:6 神こそわたしの岩、わたしの救い、わたしのとりで。わたしは揺るがされない。
62:7 神にわたしの救いと誉れがある。わたしの力の岩、わたしの逃れ場は神のうちにある。
62:8 どんなときも、神に信頼しよう。民よ、心を神の前で注ぎ出そう。神はわたしたちの逃げ場だ。セラ
62:9 たしかに、身分の低い人はただの息にすぎず、身分の高い人も偽りにすぎない。天秤に載せれば軽く浮き上がり、みな合わせても一息より軽い。
62:10 しぼり取ったものに頼ってはいけない。奪い取ったもので、むなしい望みをいだいてはいけない。財産が増えても、それに心を奪われてはいけない。
62:11 神はひとつのことを語られた。わたしはそれを二度、聞いた。力は神のものだということを。
62:12 主よ、慈しみもまたあなたのもの。あなたは一人ひとりに、その行いに応じて報いてくださるからだ。
ダビデの歌。ユダの荒れ野にいたときのもの。
63:1 神よ、あなたはわたしの神。 わたしは切にあなたを求める。 水もない、かわききった大地で、 わたしの魂はあなたに渇き、 わたしの体はあなたを慕い求める。
63:2 だから、わたしは聖なる場所であなたを仰ぎ見てきた。あなたの力と栄光を、この目で見るために。
63:3 あなたの慈しみは命にまさる。だから、わたしの唇はあなたをほめたたえる。
63:4 だから、わたしは生きているかぎりあなたをたたえる。あなたの名を呼びながら、両手を上げる。
63:5 わたしの魂は、脂の乗ったごちそうを味わったように満たされる。喜びの歌をうたう唇で、わたしの口はあなたをたたえる。
63:6 寝床であなたを思い出し、夜通しあなたのことを思いめぐらす。
63:7 わたしを助けてくださったからだ。あなたの翼の陰で、わたしは喜び歌う。
63:8 わたしの魂はあなたにすがりつく。あなたの右手がわたしを支えてくれる。
63:9 わたしの魂をねらって滅ぼそうとする者たちは、地の底へと落ちていく。
63:10 彼らは剣に引き渡され、山犬の餌食となる。
63:11 でも、王は神を喜ぶ。神にかけて誓う人はみな、胸を張って誇る。うそをつく者たちの口は、ふさがれるからだ。
指揮者のために。ダビデの詩。
64:1 神よ、わたしの訴えを聞いてください。敵の脅かしから、わたしの命を守ってください。
64:2 悪をたくらむ者たちの秘密の相談から、わたしを隠してほしい。悪事を働く者たちのざわめきから、わたしを隠してほしい。
64:3 彼らは舌を剣のように研ぎ、毒のある言葉を矢のようにつがえて放つ。
64:4 隠れた場所から、罪のない人を射るためだ。彼らは突然その人を射て、少しも恐れない。
64:5 彼らは悪い企てを固く心に決め、罠をひそかに仕掛けようと相談し合う。そして言う。「だれにも見られはしない」と。
64:6 彼らは悪事を企む。「完璧な計画を練り上げた」と言う。人の思いも心も、底知れず深い。
64:7 でも神は、彼らに矢を放つ。すると突然、彼らは傷を負う。
64:8 彼らは自分の舌のせいでつまずき、倒される。それを見る人はみな、頭を振る。
64:9 人はみな恐れを抱き、神のなさったことを語り伝え、そのわざに深く思いをめぐらす。
64:10 義に生きる人は、主のうちで喜び、主に身を寄せる。心のまっすぐな人はみな、誇り歌う。
65:1 神よ、シオンでは静けさこそあなたへの賛美。あなたへの誓いは果たされる。
65:2 あなたは祈りを聞いてくださる方。すべての人があなたのもとに来る。
65:3 悪の数々がわたしを圧倒する。でも、わたしたちの背きは、あなたがぬぐい去ってくださる。
65:4 あなたが選び、そばに引き寄せる人は幸せだ。その人はあなたの庭に住む。わたしたちは、あなたの家、あなたの聖なる神殿の良いもので満たされる。
65:5 あなたは義をもって、恐れを起こさせるほど力強いわざでわたしたちに答えてくださる。わたしたちを救う神よ。あなたは地の果てのすべての人、そして遠い海のかなたにいる人々の、頼みの綱だ。
65:6 山々を力で堅く据え、ちからをまとっておられる方。
65:7 海のとどろきを静め、その波のとどろきを静め、国々の民のざわめきを静める方。
65:8 地の果てに住む人々は、あなたのしるしを見て畏れる。あなたは朝と夕べが出て来る所を、喜びの歌で満たす。
65:9 神は地に目を注ぎ、水を注いで、豊かに実らせる。神の川は水で満ちている。あなたはこうして地を整え、人々に穀物を実らせる。
65:10 畑のうねに水をたっぷり注ぎ、盛り上がった土をならす。降る雨で土をやわらかくし、芽ばえを祝福される。
65:11 畑は良い実りの年を冠のように与えられ、あなたの通り道は豊かな恵みをしたたらせる。
65:12 荒野の牧場もしたたり、丘は喜びを身にまとう。
65:13 牧場は羊の群れをまとい、谷は麦におおわれる。彼らは喜びの声をあげ、歌をうたう。
66:1 全地よ、神に向かって喜びの声をあげよ。
66:2 そのみ名の栄光をほめ歌おう。輝かしい賛美をささげよう。
66:3 神にこう言おう。「あなたがすることは、なんて恐ろしいのだろう。あなたの力があまりに強いので、敵はあなたの前で屈服する。
66:4 全地はあなたにひれ伏し、あなたをほめ歌う。あなたの名をほめ歌う。セラ
66:5 来て、神のみわざを見よ。人の子らになされることは、恐ろしいほどだ。
66:6 神は海を変えて、かわいた地とされた。人々は歩いて川を渡った。その場所で、わたしたちは神を喜んだ。
66:7 神は力を持って、いつまでも世界を治める。その目は国々を見張っている。だから、反抗する者は、思い上がってはいけない。セラ
66:8 もろもろの民よ、わたしたちの神をたたえよ。神をほめたたえる声を響かせよ。
66:9 神はわたしたちを生かし続け、わたしたちの足がすべり倒れないように守ってくださる。
66:10 神よ、あなたはわたしたちを試された。銀を火で精錬するように、わたしたちを練り上げられた。
66:11 われらを網に引き入れ、腰に重荷を負わせた。
66:12 火の中も水の中もくぐり抜けてきた。人々にわたしたちの頭を踏みつけにされ、火の中や水の中を通ってきた。でもあなたは、わたしたちを豊かな場所へと導き出してくださった。
66:13 わたしは焼き尽くすいけにえを持ってあなたの家に行く。そしてあなたに誓ったことを果たす。
66:14 わたしが苦しみのなかにいたとき、この口びるが誓い、この口が語った約束です。
66:15 わたしは、肥えた家畜を焼き尽くすいけにえとしてあなたにささげる。雄羊を焼く煙とともに。雄牛と雄やぎもささげる。セラ
66:16 すべて神を恐れる人よ、来て聞いてほしい。神がわたしのために何をしてくださったか、語ろう。
66:17 わたしは声をあげて神に呼び求めた。そして舌で神をほめたたえた。
66:18 もしわたしが心に悪を抱いていたなら、主は聞いてくださらなかっただろう。
66:19 確かに神は聞いてくださった。わたしの祈りの声に耳を傾けてくださった。
66:20 神はほめたたえられますように。神はわたしの祈りを退けず、その慈しみをわたしから取り去らなかった。
67:1 神がわたしたちをあわれみ、祝福してくださるように。その顔の光をわたしたちに向けてくださるように。セラ
67:2 あなたの道がこの地で知られ、あなたの救いがすべての国々に届きますように。
67:3 もろもろの民よ、神をほめたたえよ。すべての民よ、神をほめたたえよ。
67:4 民よ、喜べ。喜びの声をあげて歌え。あなたが人々を公平に裁き、地の国々を導いてくださるからだ。セラ
67:5 もろもろの民よ、あなたをほめたたえますように。神よ、すべての民があなたをほめたたえますように。
67:6 地は作物を実らせた。神が、わたしたちの神が、わたしたちを祝福してくださる。
67:7 神がわたしたちを祝福してくださる。地の果ての人々がみな、神を畏れるように。
68:1 神よ、立ち上がってください。敵を追い散らし、あなたを憎む者を、その前から逃げ去らせてください。
68:2 煙が吹き払われるように、彼らを吹き払ってください。ろうが火の前で溶けるように、悪い者たちは神の前で滅びていく。
68:3 神に向かって、正しい人たちは喜べ。神の前で大喜びし、喜びおどれ。
68:4 神に向かって歌おう。その名をほめ歌おう。 雲に乗って進む方をたたえよう。その名は主。 その方の前で喜びおどろう。
68:5 父なき子の父、やもめの訴えを聞く方。神は聖なる住まいにおられる。
68:6 神は、ひとりぼっちの人に家族を与え、捕らわれていた人を解き放って、幸せへと導き出す。でも、神に逆らう者は、干からびた地に住むことになる。
68:7 神よ、あなたが民の先頭に立って進み、荒れ野を歩んで行かれたとき、（セラ）
68:8 地は揺れ動き、天も雨を降らせた。神の前で。シナイ山さえも震えた。神の前で、イスラエルの神の前で。
68:9 あなたは豊かな雨を降らせてくださった。神よ、疲れ果てたあなたの民に、あなたは力を取り戻させてくださった。
68:10 あなたの民はその地に住みついた。神よ、あなたは豊かな恵みで、貧しい人のために備えてくださった。
68:11 主はことばを賜った。それを伝える女たちの群れは大きかった。
68:12 「軍勢の王たちは逃げた、逃げ去った。」家にいた女たちは、その戦利品を分け合う。
68:13 たとえ羊のおりの間に伏していても、あなたたちは銀で覆われた鳩の翼のようになり、その羽は輝く黄金に包まれる。
68:14 全能の神がそこで王たちを追い散らしたとき、ツァルモンの山に雪が降った。
68:15 神の山、それはバシャンの山。峰がいくつも連なる山、バシャンの山。
68:16 峰を連ねる山々よ、なぜうらやむように見つめるのか。神が住まいに選んだのは、この山だ。主はここに、永遠に住まわれる。
68:17 神の戦車は幾万、数えきれない幾千の大軍。主はその中におられる。かつてシナイにおられたように、この聖なる所に。
68:18 あなたは高いところへ上り、捕らわれ人を引き連れて行った。人々から贈り物を受け取った。反逆する者たちからさえも。主なる神が、そこに住むためだった。
68:19 主をほめたたえよう。日ごとにわたしたちの重荷を担ってくださる、わたしたちを救う神を。セラ
68:20 わたしたちの神は救いの神。死からの逃れ道は、主なる神のもとにある。
68:21 確かに、神は敵の頭を打ち砕く。罪を重ねて歩み続ける者の、毛深い頭を打ち砕く。
68:22 主は言われた。「わたしはバシャンから連れ戻す。海の深みからも連れ戻す。」
68:23 あなたは敵の血に足を浸し、あなたの犬たちも舌でその分け前をなめる。
68:24 神よ、人々はあなたの行進を見た。わたしの神、わたしの王が聖なる所を進む、その行進を。
68:25 歌う者たちが先を行き、竪琴を奏でる者たちが続く。その間では、おとめたちが太鼓を打ち鳴らす。
68:26 大いなる集会で神をたたえよ。イスラエルの泉から出たあなたたち、主をたたえよ。
68:27 そこには、いちばん年下のベニヤミンが先頭を進み、ユダの指導者たちがその一団を率いている。ゼブルンの指導者たち、ナフタリの指導者たちもいる。
68:28 あなたの神は、あなたに力を与えると定められた。 神よ、その力を示してください。わたしたちのために働いてくださった、あなたの力を。
68:29 エルサレムにそびえるあなたの神殿へ。王たちはあなたに贈り物を運んでくる。
68:30 葦の茂みにひそむ獣を叱ってください。雄牛の群れを、諸国の民という子牛たちを。彼らが銀を差し出してひれ伏すまで。戦いを好む民を、追い散らしてください。
68:31 エジプトから使者たちがやって来る。クシュは急いで、神に向かって手を差し伸べる。
68:32 地上の国々よ、神に向かって歌おう。主をほめたたえて歌おう。セラ
68:33 いにしえの昔からある、天の天を駆けめぐる方に向かって歌おう。その方は声を響かせる。力強い、とどろくような声を。
68:34 神に力があることをたたえよう。その輝きはイスラエルの上にあり、その力は大空にみなぎっている。
68:35 神は聖なる場所から、畏れられる方。イスラエルの神こそ、その民に力と強さを与えてくださる。神はほめたたえられますように。
指揮者のために。「ゆり」の調べにあわせて。ダビデの歌。
69:1 神よ、わたしを救ってください。水が首まで押し寄せてきました。
69:2 わたしは深い泥に沈み、足を置く場所もない。深い水に入り込み、激しい流れがわたしを押し流していく。
69:3 叫び続けて、わたしは疲れ果てた。のどは渇いてかれてしまった。神を待ち望むうちに、目はかすんでいく。
69:4 わけもなくわたしを憎む者は、髪の毛よりも多い。偽りでわたしを陥れる敵、わたしを滅ぼそうとする者は強い。奪ってもいないものを、わたしは返さなければならない。
69:5 神よ、あなたはわたしの愚かさを知っている。わたしの罪も、あなたには隠されていない。
69:6 万軍の主、神よ、あなたを待ち望む人たちが、わたしのことで恥を受けることのないようにしてください。イスラエルの神よ、あなたを求める人たちが、わたしのことではずかしめられることのないようにしてください。
69:7 あなたのために、わたしはそしりを受け、恥がわたしの顔をおおったのだ。
69:8 わたしは兄弟にとってよそ者になり、母の子どもたちにとって見知らぬ人になった。
69:9 あなたの家を思う熱い思いが、わたしを焼き尽くしたからだ。あなたをののしる者たちのののしりが、わたしに降りかかった。
69:10 わたしは泣き、断食して魂を苦しめた。でも、それがかえって、わたしへの侮辱になった。
69:11 わたしが粗布を身にまとうと、人々はわたしを笑いものにした。
69:12 門に座る人たちはわたしをうわさの種にし、酒におぼれる者たちはわたしを歌のネタにする。
69:13 でもわたしは、主よ、あなたに祈ります。神よ、どうか恵みのときに、あなたの豊かな慈しみによって、まことの救いで、わたしに答えてください。
69:14 わたしを泥から救い出してください。もう沈んでしまわないように。わたしを憎む者たちから、深い水の底から、助け出してください。
69:15 大水がわたしを押し流すことのないように。深い淵がわたしをのみ込むことのないように。穴がその口を閉じて、わたしを閉じ込めることのないように。
69:16 主よ、答えてください。あなたの慈しみは深いのだから。あふれる憐れみとともに、わたしに顔を向けてください。
69:17 あなたのしもべから顔を背けないでください。わたしは苦しんでいるのです。どうか早く答えてください。
69:18 わたしの魂に近づいて、それを救い出してください。敵がいるのですから、わたしを助け出してください。
69:19 あなたは、わたしが受けている侮辱も、恥も、屈辱も知っている。わたしを苦しめる者たちは、みなあなたの前にいる。
69:20 侮辱がわたしの心を打ち砕き、わたしは打ちのめされた。同情してくれる人を待ったが、だれもいなかった。慰めてくれる人を探したが、見つからなかった。
69:21 彼らはわたしの食べ物に毒を混ぜ、渇いたわたしに酢を飲ませた。
69:22 彼らの前の食卓が、彼ら自身の罠となりますように。彼らの安らかな暮らしが、落とし穴となりますように。
69:23 彼らの目は暗くなり、何も見えなくなりますように。その腰は、いつまでも震え続けますように。
69:24 彼らの上にあなたの怒りを注いでください。あなたの燃える怒りが、彼らに追いつきますように。
69:25 彼らの住まいは荒れ果てるがいい。そのテントには、だれも住まなくなればいい。
69:26 あなたが打った者を、彼らはさらに追いつめ、あなたが傷つけた者の痛みを、言いふらすからだ。
69:27 彼らの罪の上に、さらに罪を加えてください。あなたに正しいと認められることが、彼らにありませんように。
69:28 彼らの名を命の書から消し去ってください。正しい人たちと共に、記されることがありませんように。
69:29 でも、わたしは苦しみ、痛んでいる。神よ、あなたの救いがわたしを高く上げてくださるように。
69:30 わたしは歌をもって神の名をたたえ、感謝をもって神をあがめる。
69:31 それは、雄牛よりも、角とひづめのある若い雄牛よりも、主に喜ばれる。
69:32 苦しむ人たちはそれを見て喜ぶ。神を求める人たちよ、あなたたちの心よ、生き返れ。
69:33 主は貧しい人たちの声を聞き、捕らわれている自分の民をさげすんだりしないからだ。
69:34 天も地も主をたたえよ。海も、その中で動くすべてのものも。
69:35 神はシオンを救い、ユダの町々を建て直す。人々はそこに住み、その地を自分のものとする。
69:36 彼のしもべたちの子孫がその地を受け継ぎ、その名を愛する人たちがそこに住む。
指揮者に。ダビデの詩。思い起こすために。
70:1 神よ、わたしを助け出してください。主よ、急いでわたしを助けに来てください。
70:2 わたしの命をねらう者たちが、恥を受け、うろたえますように。わたしに災いを望む者たちが、追い返され、はずかしめられますように。
70:3 「ざまあみろ、ざまあみろ」と言う者たちが、自分の恥を報いとして、しりぞいていきますように。
70:4 あなたを求める人たちがみな、あなたのおかげで喜び、楽しみますように。あなたの救いを愛する人たちが、いつも「神は偉大だ」と言いますように。
70:5 わたしは苦しみ、貧しい者だ。神よ、急いでわたしのところに来てください。あなたはわたしの助け、わたしを救い出す方。主よ、どうか遅れないでください。
71:1 主よ、わたしはあなたのもとに身を寄せる。どうか、いつまでもわたしが恥をかくことのないように。
71:2 あなたの正しさによって、わたしを助け、救い出してください。耳を傾けて、わたしを救ってください。
71:3 わたしの避け所の岩となってください。いつでも逃げ込める場所に。あなたはわたしを救おうと決めてくださった。あなたこそ、わたしの岩、わたしの砦だから。
71:4 わたしの神よ、悪い者の手からわたしを助け出してください。不正で残酷な者の力から、わたしを救い出してください。
71:5 主なる神よ、あなたはわたしの希望です。若い頃から、わたしはあなたに信頼してきました。
71:6 わたしは生まれる前から、あなたに支えられてきた。母のおなかからわたしを取り出してくれたのは、あなただ。だから、いつもあなたをほめたたえる。
71:7 わたしは多くの人にとって、不思議な見ものとなってしまった。でもあなたは、わたしの力強い避け所だ。
71:8 わたしの口は、あなたへの賛美でいっぱいになる。一日じゅう、あなたのすばらしさをたたえる。
71:9 わたしが年老いても、見捨てないでください。力が尽きても、わたしを見放さないでください。
71:10 わたしの敵はわたしのことを言いふらし、わたしの命をねらう者たちが集まって相談している。
71:11 「神があいつを見捨てたんだ。追いかけて捕まえろ。助ける者なんていないんだから」と言うのだ。
71:12 神よ、わたしから離れないでください。わたしの神よ、急いで助けに来てください。
71:13 わたしの魂を責める者たちが、恥を受けて滅びますように。わたしを傷つけようとする者たちが、非難と辱めに包まれますように。
71:14 わたしは絶えず望みを抱き、あなたをこれまで以上にほめたたえよう。
71:15 わたしの口は、一日中あなたの正しさと救いを語る。わたしにはその数が数えきれないからだ。
71:16 わたしは主なる神の力ある働きをもって進み、ただあなたの義だけをたたえよう。
71:17 神よ、あなたはわたしが若い時からわたしを教えてくださった。そして今も、わたしはあなたのすばらしい働きを語り続ける。
71:18 神よ、わたしが年老いて、白髪になっても、どうか見捨てないでください。あなたの力を次の世代に、あなたの偉大なわざをこれから生まれるすべての人に伝えるまで。
71:19 神よ、あなたの義は高い天にまで届く。あなたは大いなることをなしとげた。神よ、あなたに並ぶ者などいるだろうか。
71:20 あなたはわたしを、多くのつらく苦しい目にあわせた。でも、あなたはわたしをもう一度生かし、地の深い底から、また引き上げてくれる。
71:21 あなたはわたしをこれまで以上に大きな者としてくれる。そして、もう一度わたしを慰めてくれる。
71:22 わたしの神よ、わたしは琴を奏でて、あなたと、あなたの真実をほめたたえる。イスラエルの聖なる方よ、わたしは竪琴を鳴らして、あなたに歌う。
71:23 あなたをほめ歌うとき、わたしのくちびるは喜びの声をあげる。あなたが救い出してくださったこの魂も、喜びにあふれる。
71:24 わたしの舌も一日中あなたの正しさを語り続ける。わたしを傷つけようとした者たちが、恥を受けて打ちのめされたからだ。
72:1 神よ、あなたの正しい裁きを王に授け、あなたの義を王の子に与えてください。
72:2 義をもって、あなたの民を正しくさばき、あなたの苦しむ人々を公平にさばくように。
72:3 山々は民に平和をもたらし、丘は義をもたらしますように。
72:4 貧しい人々の訴えを聞いて正しくさばき、困っている人たちを救い、しいたげる者を打ち砕く。
72:5 彼らが太陽のあるかぎり、月のあるかぎり、あなたを敬いますように。世々限りなく。
72:6 彼は、刈り取った草に降る雨のように、地を潤す夕立ちのように、やって来る。
72:7 彼の世に義が栄え、平和が満ちあふれる。月がなくなるまで、いつまでも。
72:8 彼は海から海まで、大河から地の果てまで治める。
72:9 敵は彼の前にひざまずき、その敵は地のちりをなめる。
72:10 タルシシュと島々の王たちは貢ぎ物を納め、シェバとセバの王たちは贈り物を持って来る。
72:11 すべての王が彼の前にひれ伏し、すべての国が彼に仕えるように。
72:12 貧しい人が助けを求めて叫ぶとき、彼を救い出すからだ。だれも助けてくれない、苦しむ人を救うからだ。
72:13 弱く貧しい人をあわれみ、貧しい人たちのいのちを救う。
72:14 彼らの命を、しいたげと暴力から救い出す。その血は彼の目に尊い。
72:15 彼が生きながらえますように。シバの黄金がささげられ、いつも彼のために祈りがささげられ、一日中その祝福が求められますように。
72:16 地には穀物がゆたかに実り、山々の頂にまでみのる。その実りはレバノンの木々のように風にそよぎ、人々は野の草のように町々でさかえる。
72:17 彼の名は永遠に続く。太陽がある限り、その名は語り継がれる。人々は彼によって祝福され、すべての国民が彼を幸いな者と呼ぶ。
72:18 イスラエルの神、主をたたえよう。ただ主だけが、驚くべきわざを行われる。
72:19 その栄光に満ちた名は、永遠にほめたたえられますように。その栄光が全地に満ちわたりますように。アーメン、アーメン。
72:20 エッサイの子ダビデの祈りは、これで終わる。
73:1 神は、心の清い人にとって、そしてイスラエルにとって、本当に良いお方だ。
73:2 わたしは、あやうく足がすべり、もう少しで歩みを踏みはずすところだった。
73:3 わたしが高ぶる者をねたんだからだ。悪い者たちが栄えていくのを見て、うらやましくなったのだ。
73:4 彼らは死ぬときも苦しまず、体は健康そのものだ。
73:5 ほかの人のような苦しみがなく、ほかの人のように打たれることもない。
73:6 だから、彼らは高慢を首飾りのように身につけ、暴力を衣のようにまとっている。
73:7 肥え太って、その目は飛び出している。心にわき上がる思いは、あふれ出るほどだ。
73:8 彼らはあざ笑い、悪意をこめて語る。高みから見下すように、人をしいたげる言葉を吐く。
73:9 彼らは口を天に向けて開き、その舌は地を歩きまわる。
73:10 それゆえ、民は彼らのほうへ立ち返り、あふれる水を飲み干すように彼らの言葉を鵜呑みにする。
73:11 彼らはこう言う。「神が知るものか。いと高き方に、そんなことがわかるものか」と。
73:12 見よ、これが悪い者たちの姿だ。いつも安らかで、どんどん豊かになっていく。
73:13 ほんとうに、わたしが心を清く保ってきたのも、手を洗って正しく生きてきたのも、むだだったのだ。
73:14 わたしは一日中打ちのめされ、朝ごとに罰を受けた。
73:15 もし「わたしもこんなふうに語ろう」と言っていたら、あなたの子らの世代を裏切ることになっていただろう。
73:16 これを理解しようと考えてみたが、それはわたしにはとてもつらいことだった。
73:17 神の聖所に入って、ようやく彼らの行き着く先を悟るまでは。
73:18 たしかにあなたは、彼らを滑りやすい場所に立たせ、そして滅びへと突き落とす。
73:19 あっという間に、彼らは滅ぼされてしまった。恐怖にのみ込まれ、消え去ってしまうのだ。
73:20 夢から覚めれば、それが消えるように、主よ、あなたが立ち上がれば、彼らの幻はさげすまれて消える。
73:21 わたしの心は苦しみに満ち、はらわたは刺すように痛んだ。
73:22 わたしは愚かで、何もわかっていなかった。あなたの前で、まるで獣のようだった。
73:23 わたしはいつもあなたと共にいる。あなたはわたしの右手をしっかりつかんでいてくださる。
73:24 あなたは助言をもってわたしを導き、その後、わたしを迎え入れて栄光にあずからせてくださる。
73:25 天でわたしが求めるのは、あなただけ。地でも、あなたのほかに慕うものは何もない。
73:26 わたしの身も心も朽ちていく。でも神はとこしえに、わたしの心の岩、わたしに与えられた分。
73:27 見よ、あなたから遠く離れる者は滅びる。あなたは、あなたを裏切って離れていく者をみな滅ぼされる。
73:28 わたしにとって、神のそばにいることこそが幸せだ。わたしは主なる神を逃げ込む場所とした。あなたのなさったすべてのことを語り伝えるために。
74:1 神よ、なぜわたしたちをいつまでも見捨てるのですか。あなたが育てる羊の群れに、なぜそんなに怒りを燃やすのですか。
74:2 あなたが昔から手に入れ、ご自分の民として選んだこの群れを思い出してください。あなたが買い戻し、ご自分の宝として受け継いだこの部族を。そして、あなたが住まいとされたこのシオンの山を思い出してください。
74:3 とこしえに廃墟となった場所へ、あなたの足を向けてください。敵は聖なる神殿を、何もかも破壊したのです。
74:4 敵はあなたの聖所のただ中でほえ猛った。彼らは自分たちのしるしを立て、それを目印とした。
74:5 彼らは、木々の茂みで斧を振るう者のように見えた。
74:6 斧や金づちを振り上げて、聖所の彫り物をことごとく打ち砕いた。
74:7 彼らはあなたの聖所に火をつけ、あなたの名が住む場所を地に倒して汚した。
74:8 彼らは心の中で言った。「あいつらをまとめて叩きつぶそう」と。そして、この地にある神を礼拝する場所を、一つ残らず焼き払った。
74:9 わたしたちには、しるしが見えない。預言者ももういない。これがいつまで続くのか、知っている者はだれもいない。
74:10 神よ、いつまで敵はあざけり続けるのか。相手はとこしえにあなたの名をののしり続けるのか。
74:11 なぜあなたは手を引いてしまうのか。なぜ右手をふところに入れたままにしておくのか。さあ、その手を取り出して、彼らを滅ぼしてください。
74:12 神は、いにしえからわたしの王だ。この地にあって、救いをもたらしてくださる。
74:13 あなたは強い力で海を切り開き、水の上にいた竜の頭を打ち砕いた。
74:14 あなたは巨大な怪物レビヤタンの頭を打ち砕き、それを荒野に住む者たちの食べ物として与えた。
74:15 あなたは泉と谷川を開き、絶えず流れる川を干上がらせた。
74:16 昼はあなたのもの、夜もあなたのもの。あなたが光と太陽をつくった。
74:17 あなたが地上のすべての境界を定め、夏と冬を造った。
74:18 主よ、思い出してください。敵はあなたをばかにし、愚かな者たちがあなたの名をののしっているのです。
74:19 あなたの山鳩の魂を、野の獣に渡さないでください。苦しめられた者たちのいのちを、いつまでも忘れないでください。
74:20 あなたの契約を心に留めてください。この地の暗い場所は、暴力の住みかで満ちているのです。
74:21 しいたげられている人が、恥をかいたまま追い返されることがありませんように。貧しい人や弱い立場の人が、あなたの名をほめたたえることができますように。
74:22 神よ、立ち上がって、あなた自身の訴えを訴えてください。愚か者が一日中あなたをあざけっているのを、どうか忘れないでください。
74:23 あなたに敵対する者たちの叫びを忘れないでください。あなたに立ち向かう者たちの騒ぎは、絶えず大きくなっているのです。
指揮者のために。「滅ぼすな」の調べにあわせて。アサフの詩。歌。
75:1 神よ、わたしたちはあなたに感謝する。感謝する。あなたの名は近くにあり、人々はあなたの驚くべき行いを語り伝える。
75:2 わたしが定めの時を選ぶ。そのとき、わたしは公正に裁く。
75:3 地とそこに住むすべての者が揺らいでも、その柱をしっかり据えたのは、わたしだ。セラ
75:4 わたしは高慢な者たちに言う。「思い上がるな。」悪しき者たちには「力を誇示するな。」
75:5 角を高々と上げるな。首を突き出して、偉そうに語るな。
75:6 人を高く引き上げるものは、東からでも西からでも、山あいの荒れ野からでもない。
75:7 神が裁く方だからだ。ある人を低くし、ある人を高く上げる。
75:8 主の手には杯がある。よく混ぜた、赤く泡立つぶどう酒がなみなみと満ちている。主はそれを注ぎ出す。地の悪人たちはみな、底に沈んだ澱まで飲み干すことになる。
75:9 でも、わたしはいつまでも語り続ける。ヤコブの神をほめ歌う。
75:10 わたしは悪者の角をすべて折る。だが、正しい者の角は高く上げられる。
指揮者のために。弦楽器に合わせて。アサフの詩。歌。
76:1 神はユダで知られ、その名はイスラエルで大いなるものとされている。
76:2 サレムには神の宿るところがあり、シオンには神の住まいがある。
76:3 そこで神は、弓から飛ぶ燃える矢を打ち砕いた。盾も、剣も、戦いそのものも。セラ
76:4 あなたは光り輝いている。獲物であふれる山々よりも、あなたは堂々としている。
76:5 勇ましい者たちは奪い取られ、深い眠りに落ちた。力ある戦士たちも、だれ一人その手を動かせなかった。
76:6 ヤコブの神よ、あなたが叱りつけると、戦車も馬も深い眠りに沈む。
76:7 あなたは、恐れられる方。あなたが怒れば、だれがあなたの前に立っていられるだろう。
76:8 天から、あなたは裁きを告げた。地は恐れ、静まりかえった。
76:9 神が裁きのために立ち上がったとき、地で苦しむ人々をすべて救うために。セラ
76:10 人の怒りさえ、あなたをたたえることになる。残った怒りも、あなたは帯のように身にまとう。
76:11 あなたがたの神、主に誓いを立て、それを果たしなさい。主を囲むすべての人よ、恐れられるべき方に贈り物を持って来なさい。
76:12 神は君主たちの意気をくじく。地の王たちは、神を恐れずにはいられない。
指揮者のために。エドトンにしたがって。アサフの歌。
77:1 わたしは神に向かって声をあげ、叫ぶ。わたしは神に向かって声をあげる。神よ、わたしに耳を傾けてください。
77:2 苦しみの日に、わたしは主を求めた。夜通し手を差し伸べ、その手はゆるむことがなかった。それでもわたしの魂は、慰めを受け入れようとしなかった。
77:3 神のことを思い出すと、わたしはうめいてしまう。あれこれ考えると、心が弱り果てていく。セラ
77:4 あなたはわたしのまぶたを閉じさせなかった。わたしは思い乱れて、口を開くこともできなかった。
77:5 わたしは昔の日々を思い返し、遠い昔の年月に思いをはせる。
77:6 夜、わたしは自分の歌を思い出す。心の中で思いめぐらし、わたしの霊は問い続ける。
77:7 「主はいつまでも見捨てられるのか。もう二度と、心にかけてはくださらないのか。
77:8 その慈しみは、もう永遠に絶えてしまったのか。その約束は、代々にわたって尽きてしまったのか。
77:9 神は恵みを注ぐことを忘れてしまったのか。怒って、あわれみを閉ざしてしまったのか」と。セラ
77:10 そして、わたしは言った。「これがわたしの苦しみだ。いと高き方の右の手が、変わってしまったことが」
77:11 わたしは主のなさったことを思い起こす。そう、遠い昔からのあなたの不思議なわざを思い起こす。
77:12 あなたのなさったことすべてを、わたしは思い巡らす。あなたの力強い働きを、わたしは語る。
77:13 神よ、あなたの道は聖なる道だ。神のように偉大な神が、ほかにいるだろうか。
77:14 あなたこそ、奇跡を行う神。その力を、もろもろの民に示された。
77:15 あなたは力強い腕で、あなたの民を救い出した。ヤコブとヨセフの子孫を。セラ
77:16 水はあなたを見た、神よ。水はあなたを見て、もだえた。深い淵もふるえた。
77:17 雲は水を注ぎ、空は雷を鳴らした。あなたの矢は、四方を飛びかった。
77:18 あなたの雷鳴はつむじ風の中に響き、いなずまは世界を照らした。地は震え、揺れ動いた。
77:19 あなたの道は海の中を通り、あなたの通り道は大水の中にあった。それでも、あなたの足跡はだれにも見えなかった。
77:20 あなたは羊の群れを導くように、自分の民を導いた。モーセとアロンの手によって。
78:1 わたしの民よ、わたしの教えを聞いてほしい。わたしの口から出る言葉に耳を傾けてほしい。
78:2 わたしは口を開いてたとえを語り、大昔からの謎を解き明かそう。
78:3 わたしたちがこれまで聞いて知ってきたこと、先祖たちがわたしたちに語り伝えてくれたことだ。
78:4 われわれはそれを子孫に隠さない。主をたたえるにふさわしい行い、その力、そして主がなさった驚くべきわざを、次の世代に語り伝えていく。
78:5 神はヤコブに教えを立て、イスラエルにおきてを定めた。それは、わたしたちの先祖に命じて、その子どもたちに伝えさせるためだった。
78:6 次の世代、これから生まれてくる子どもたちがそれを知り、自分もまた立ち上がって、自分の子どもたちに語り伝えるためである。
78:7 神に望みをおき、神がしてきたことを忘れず、神の命令を守るためだ。
78:8 そうすれば、先祖たちのようにはならない。頑固で、逆らってばかりの世代。心を神に向けず、その霊が神に忠実でなかった世代のようには。
78:9 エフライムの人たちは弓を持った射手として武装していた。だが、戦いの日には引き返してしまった。
78:10 彼らは神との契約を守らず、その教えにしたがって歩むことを拒んだ。
78:11 神がなさった数々のことを、彼らは忘れてしまった。神が見せてくれた驚くべきわざも。
78:12 神は彼らの先祖たちの目の前で、驚くべきわざを行った。エジプトの地、ゾアンの野でのことだ。
78:13 神は海を二つに分けて、彼らを渡らせた。水を壁のように立たせた。
78:14 昼は雲で彼らを導き、夜はひと晩じゅう火の光で導いた。
78:15 神は荒野で岩を割り、深い淵から出るように、たっぷりと水を飲ませた。
78:16 岩から流れを引き出し、水を川のように流れさせた。
78:17 彼らはなお神に罪を重ね、荒れ地でいと高き方に逆らった。
78:18 それなのに彼らは心の中で神を試した。自分の食い気を満たす食べ物を求めたのだ。
78:19 彼らは神に逆らって言った。「神は荒野で食卓を整えることなどできるのだろうか」と。
78:20 見よ、神が岩を打つと、水があふれ出て、川のように流れた。でも、パンも与えられるだろうか。自分の民のために肉を用意できるだろうか」と。
78:21 だから、主はこれを聞いて激しく怒った。火はヤコブに向かって燃えあがり、怒りはイスラエルに向かって立ちのぼった。
78:22 神を信じなかったからだ。神が救ってくれることを信じなかったのだ。
78:23 天の高いところに命じて、天の戸を開いた。
78:24 天から降ってくるマナを彼らに食べさせ、天の穀物を彼らに与えた。
78:25 人は天使のパンを食べた。神は彼らに、あきるほど十分な食べ物を送った。
78:26 神は天に東風を吹かせ、力で南風を吹き寄せた。
78:27 神は彼らの上に、肉をちりのように降らせた。翼のある鳥を、海辺の砂のようにたくさん降らせた。
78:28 その宿営のただ中、すまいのまわりに落とした。
78:29 彼らは食べて、すっかり満腹した。神が、彼らの欲しがったものを与えたからだ。
78:30 彼らの欲望はまだおさまっていなかった。食べ物がまだ口の中にあるうちに、
78:31 神の怒りが彼らに向かって燃え上がった。神は彼らの中の最も血気盛んな者たちを殺し、イスラエルのえり抜きの若者たちを打ち倒した。
78:32 これほどのことがあっても、彼らはなお罪を犯し続け、神の驚くべきわざを信じなかった。
78:33 それで神は、彼らの日々を息のように消し去り、彼らの年を恐怖のうちに終わらせた。
78:34 神が彼らを殺すと、人々は神を求めた。悔い改めて、熱心に神を慕い求めた。
78:35 彼らは、神が自分たちの岩であり、いと高き神が自分たちを救い出してくれることを思い出した。
78:36 だが彼らは口先だけで神にすり寄り、その舌で神に嘘をついていた。
78:37 彼らの心は神から離れていて、神との約束に真実であろうとしなかった。
78:38 でも神は情け深く、彼らの罪をゆるして滅ぼさなかった。何度も怒りをおさえ、その憤りをすべて燃え上がらせることはしなかった。
78:39 神は、彼らがただの人間にすぎないことを思い出した。過ぎ去ってもう二度と戻らない風のような存在なのだと。
78:40 何度、彼らは荒れ野で神に逆らい、何もない荒地で神を悲しませたことか。
78:41 彼らは何度も神を試し、イスラエルの聖なる神を怒らせた。
78:42 彼らは神の力を忘れてしまった。神が敵から自分たちを救い出してくれた日のことも。
78:43 神はエジプトでしるしを行い、ゾアンの野で数々の不思議なわざを行った。
78:44 彼らの川を血に変え、流れる水を飲めなくした。
78:45 神は彼らのところに、あぶの大群を送って刺し、かえるを送って土地を荒らした。
78:46 神は彼らの作物をバッタに与え、汗して得た実りをイナゴに渡した。
78:47 神はひょうでぶどうの木をだめにし、霜でいちじく桑の木を枯らした。
78:48 神は彼らの家畜をひょうに打たせ、彼らの群れを稲妻に打たせた。
78:49 神は彼らに、燃えるような怒りを送った。憤りと、激しい怒りと、苦しみと、災いをもたらす使者の群れを。
78:50 神は怒りの通り道を作った。彼らの魂を死から守ることなく、そのいのちを疫病に引き渡した。
78:51 エジプトのすべての長子を、神は打った。ハムの天幕で、彼らの力の初めの実りを。
78:52 神はご自分の民を羊のように連れ出し、荒れ野で群れを導く羊飼いのように導いた。
78:53 神は彼らを安全に導かれた。だから彼らは恐れなかった。しかし、彼らの敵は海にのみ込まれた。
78:54 神は彼らを聖なる地へ導き入れた。ご自分の右の手で勝ち取ったこの山へと連れて来られた。
78:55 神は彼らの前から他の国々を追い出し、その土地を分けてイスラエルの人々に受け継ぐ財産として与え、彼らの部族をそこに住まわせた。
78:56 しかし彼らは、いと高き神を試し、逆らった。神が示した教えを守らなかったのだ。
78:57 彼らは背を向け、先祖たちと同じように裏切った。使いものにならない弓のようにねじ曲がってしまったのだ。
78:58 彼らは高台に礼拝所を築いて神を怒らせ、偶像を刻んで神のねたみを引き起こした。
78:59 神はそれを聞いて激しく怒り、イスラエルを完全に見放した。
78:60 神は人々の中に建てた住まい、シロの幕屋を捨て去った。
78:61 神は自分の民の力を捕らわれの身とならせ、その誇りを敵の手に渡した。
78:62 神は自分の民を剣に渡し、御自分の受け継ぐものに激しく怒った。
78:63 火は若者たちを焼き尽くし、おとめたちは結婚を祝う歌を歌えなかった。
78:64 彼らの祭司たちは剣に倒れ、そのやもめたちは泣くことさえできなかった。
78:65 主は眠りから覚めるように、ぶどう酒の酔いから叫ぶ勇士のように立ち上がった。
78:66 敵を追い返し、いつまでも消えない恥を彼らに負わせた。
78:67 神はヨセフの家をしりぞけ、エフライムの部族を選ばなかった。
78:68 ユダの部族を選び、愛するシオンの山を選んだ。
78:69 神は聖なる住まいを、高くそびえる山のように築き、とこしえに固く据えた大地のように建てられた。
78:70 神は、しもべダビデを選んだ。羊の囲いから彼を連れ出した。
78:71 乳を飲ませる母羊の世話をしていたダビデを、神は連れ出した。そして、ご自分の民ヤコブ、ご自分の宝であるイスラエルを飼う牧者とされた。
78:72 ダビデは真心をこめて彼らを牧し、巧みな手で導いた。
79:1 神よ、異国の民があなたの土地に攻め込んできました。あなたの聖なる神殿をけがし、エルサレムを瓦礫の山にしてしまいました。
79:2 彼らはあなたのしもべたちの死体を空の鳥のえさとして与え、あなたに従う人たちの肉を地の獣に与えた。
79:3 彼らはエルサレムの周りで、その血を水のように流した。埋めてくれる人は、だれもいなかった。
79:4 隣人からは見下され、まわりの人々からは笑われ、ばかにされる者となってしまった。
79:5 主よ、いつまでですか。いつまでも怒りつづけるのですか。あなたのねたみは、いつまで火のように燃えるのですか。
79:6 あなたを知らない国々や、あなたの名を呼び求めない王国に、あなたの怒りを注いでください。
79:7 彼らはヤコブを食い尽くし、その住みかを荒らしたからだ。
79:8 先祖たちの犯した罪を、わたしたちに問わないでください。あなたのあわれみで、すぐにわたしたちを迎えに来てください。わたしたちは、ひどく打ちのめされているのだから。
79:9 わたしたちを救う神よ、あなたの輝かしい名のために、わたしたちを助けてください。あなたの名のために、わたしたちを救い出し、わたしたちの罪をゆるしてください。
79:10 どうして周りの国々は「あいつらの神はどこにいるんだ」と言うのか。あなたのしもべたちが流された血の復讐を、わたしたちの目の前で、国々に思い知らせてください。
79:11 捕らわれた人のうめきが、あなたの前に届きますように。あなたの大きな力で、死を宣告された人たちを生かしてください。
79:12 主よ、わたしたちの隣人があなたを侮辱したその侮辱を、七倍にして彼らのふところに返してください。
79:13 わたしたちは、あなたの民、あなたが飼う羊の群れ。だから、いつまでもあなたに感謝し、代々あなたのすばらしさを語り伝えていく。
指揮者のために。「ゆり」の調べにのせて。アサフの詩。証しの歌。
80:1 イスラエルの羊飼いよ、耳を傾けてください。ヨセフを羊の群れのように導く方よ。ケルビムの上におられる方よ、光を放ってください。
80:2 エフライムとベニヤミン、マナセの前で、あなたの力を奮い起こしてください。わたしたちを救うために来てください。
80:3 神よ、わたしたちを立ち直らせてください。あなたの顔を輝かせてください。そうすれば、わたしたちは救われます。
80:4 主なる神、万軍の主よ。あなたはいつまで、あなたの民の祈りに怒りを燃やし続けるのですか。
80:5 あなたは彼らに涙のパンを食べさせ、あふれるほどの涙を飲ませた。
80:6 あなたはわたしたちを、隣人たちの争いの種にした。敵はわたしたちをあざ笑う。
80:7 万軍の神よ、わたしたちを立ち直らせてください。あなたの顔を輝かせてください。そうすれば、わたしたちは救われます。
80:8 あなたはエジプトから一本のぶどうの木を運び出した。いくつもの国を追い払い、その木を植えた。
80:9 あなたはその前の土地を切り開いた。ぶどうの木は深く根を張り、地いっぱいに広がった。
80:10 山々はその陰におおわれ、その枝は力強い杉の木のようだった。
80:11 枝を海まで伸ばし、若枝を大河まで広げた。
80:12 どうして、あなたはこのぶどうの木の囲いを壊してしまったのですか。道を通る人がみな、その実をもぎ取っていきます。
80:13 森から出てきた猪がそれを食い荒らし、野を駆ける獣がそれをむさぼり食う。
80:14 万軍の神よ、どうか帰ってきてください。天から見下ろして、ご覧ください。このぶどうの木を心にかけてください。
80:15 あなたの右の手が植えたこの若木を、ご自分のために強く育てあげた子を、どうか心にかけてください。
80:16 ぶどうの木は火で焼かれ、切り倒された。あなたが顔を向けて叱れば、彼らは滅びる。
80:17 あなたの手を、あなたの右にいる人の上に置いてください。あなたが自分のために強くした、人の子の上に。
80:18 そうすれば、わたしたちはあなたから離れません。わたしたちを生かしてください。そうすれば、あなたの名を呼び求めます。
80:19 主よ、万軍の神よ、わたしたちを立ち直らせてください。あなたの顔を輝かせてください。そうすれば、わたしたちは救われます。
指揮者のために。ギティトの調べに合わせて。アサフの詩。
81:1 神、わたしたちの力である方に向かって、喜びの声をあげよう。ヤコブの神に向かって、歓声をあげよう。
81:2 歌声を上げ、タンバリンを打ち鳴らそう。よく響く竪琴と、琴を奏でよう。
81:3 新月に角笛を吹き鳴らせ。満月に、わたしたちの祭りの日に。
81:4 これはイスラエルへの定めであり、ヤコブの神が命じた掟だからだ。
81:5 神はこれを、ヨセフの民への定めとして立てた。神がエジプトの地に向かって出て行ったとき、わたしは知らない言葉を耳にした。
81:6 わたしは彼の肩から重荷を下ろし、その手をかごから解き放った。
81:7 苦しいとき、あなたはわたしを呼んだ。だからわたしは助け出した。雷の隠れ場から、わたしはあなたに答えた。メリバの水のほとりで、わたしはあなたを試した。セラ
81:8 わたしの民よ、聞け。わたしはあなたに警告する。イスラエルよ、わたしに聞き従ってほしい。
81:9 あなたの中に、ほかの神があってはならない。よその神を拝んではならない。
81:10 わたしは、あなたをエジプトの国から連れ出した、あなたの神、主である。口を大きく開けなさい。わたしがそれを満たそう。
81:11 でも、わたしの民はわたしの声を聞こうとしなかった。イスラエルはわたしを受け入れようとしなかった。
81:12 だから、わたしは彼らを頑なな心のままに突き放した。彼らは自分勝手な考えのままに歩んだ。
81:13 わたしの民がわたしに聞き従い、イスラエルがわたしの道を歩んでくれたなら。
81:14 すぐにでも、わたしは彼らの敵を打ち負かし、彼らを苦しめる者たちに手を向けるのに。
81:15 主を憎む者たちは、おびえて主にひれ伏す。彼らの受ける罰は、いつまでも終わらない。
81:16 わたしは最高の小麦をあなたに食べさせ、岩から出る蜜であなたを満ち足らせる。
82:1 神は神々の集まりの中に立ち、その中でさばきを行う。
82:2 いつまであなたたちは不正な裁きをして、悪い者の味方をするのか。セラ
82:3 弱い者やみなしごを守り、苦しむ者や貧しい者の権利を守りなさい。
82:4 弱い人や貧しい人を救い出せ。悪い者たちの手から助け出せ。
82:5 彼らは知ろうとせず、悟ろうともしない。暗やみの中を歩き回っている。地の土台はことごとく揺らいでいる。
82:6 わたしは言った。「あなたたちは神々だ。みな、いと高き方の子だ」と。
82:7 でも、あなたたちは人間として死に、ひとりの支配者のように倒れる。
82:8 神よ、立ち上がって、地をさばいてください。すべての民はあなたのものなのだから。
83:1 神よ、黙っていないでください。口を閉ざさず、じっとしたままでいないでください、神よ。
83:2 見よ、あなたの敵が騒ぎ立てている。あなたを憎む者たちが、頭を高く上げている。
83:3 彼らはあなたの民に対して悪だくみを企て、あなたが心にかける人々を陥れようと相談している。
83:4 彼らは言う。「さあ、あの民を消し去ってしまおう。イスラエルという名が、もう二度と思い出されないように。」
83:5 彼らは心を一つにして相談し、あなたに逆らって同盟を結んだ。
83:6 エドムの天幕とイシュマエルの人々、モアブとハガルの人々。
83:7 ゲバル、アンモン、アマレク、ペリシテ、そしてツロに住む人々。
83:8 アッシリアも彼らに加わり、ロトの子孫を支える力となった。セラ
83:9 どうか彼らを、あのミディアンのようにしてください。キションの川で倒れた、シセラやヤビンのように。
83:10 彼らはエン・ドルで滅ぼされ、地の肥やしとなった。
83:11 彼らの指導者たちを、オレブやゼエブのようにしてください。彼らの君主たちをみな、ゼバやツァルムナのようにしてください。
83:12 彼らはこう言った。「神の牧場を、自分たちのものにしてしまおう」と。
83:13 わたしの神よ、彼らを風に転がる枯れ草のように、風に吹かれるもみ殻のようにしてください。
83:14 火が森を焼き、炎が山々を燃やすように。
83:15 そのように、あなたの嵐で彼らを追い立て、つむじ風で彼らをおびえさせてください。
83:16 彼らの顔を恥でいっぱいにしてください。そうすれば、彼らはあなたの名を求めるでしょう、主よ。
83:17 彼らが恥を受け、いつまでもおびえますように。辱められ、滅び去りますように。
83:18 そして人々は知る。あなただけが、その名を主という方。全地の上に立つ、いと高き方だと。
指揮者のために。ギティトの調べに合わせて。コラの子たちの詩。
84:1 万軍の主よ、あなたの住まいは、なんて慕わしいのだろう。
84:2 わたしの魂は主の庭を慕い、恋しさのあまり弱り果てる。心も体も、生きておられる神に向かって喜びの声をあげる。
84:3 雀でさえ住む家を見つけ、つばめもひなを置く巣を手に入れた。あなたの祭壇のそばに。万軍の主、わたしの王、わたしの神よ。
84:4 あなたの家に住む人たちは、なんと幸せだろう。彼らはいつまでも、あなたをほめたたえる。セラ
84:5 あなたを力とする人は幸いだ。その心には、あなたのもとへ向かう道がある。
84:6 涙の谷を通っていく人たちは、そこを泉に変える。秋の雨も、そこをいくつもの池で満たす。
84:7 彼らは力から力へと進み、シオンで神の前に姿を現す。
84:8 主なる神、万軍を率いる方よ、わたしの祈りを聞いてください。ヤコブの神よ、耳を傾けてください。セラ
84:9 神よ、わたしたちの盾であるあなたが、ご覧ください。あなたが選んだ王の顔を、目に留めてください。
84:10 あなたの庭で過ごす一日は、よそでの千日よりもすばらしい。悪者の天幕で暮らすよりも、わたしは神の家の戸口に立つことを選ぶ。
84:11 主なる神は太陽であり、盾だ。主は恵みと栄光を与え、正しく歩む人には良いものを惜しまない。
84:12 主よ、万軍の主よ。あなたに信頼する人は幸いだ。
指揮者のために。コラの子たちの詩。
85:1 主よ、あなたはご自分の地を喜び迎え、ヤコブを元の幸せに立ち返らせてくださった。
85:2 あなたはご自分の民の罪を赦し、その過ちをすべて覆われた。セラ
85:3 あなたは激しい怒りをすべて収め、燃える怒りを静めてくださった。
85:4 わたしたちを立ち直らせてください、わたしたちを救う神よ。わたしたちへの怒りを解いてください。
85:5 あなたはいつまでも、わたしたちに怒っているのですか。何代にもわたって、怒り続けるのですか。
85:6 あなたは、わたしたちをもう一度生き返らせてくださらないのですか。そうすれば、あなたの民は、あなたを喜ぶでしょう。
85:7 主よ、あなたの慈しみをわたしたちに見せてください。そして、わたしたちを救ってください。
85:8 神である主が語られることを、わたしは聞こう。主はご自分の民に、忠実に従う人たちに、平和を告げてくださる。どうか彼らが、もう二度と愚かな道へ戻りませんように。
85:9 確かに、神を敬う人に、救いはすぐ近くにある。栄光がわたしたちの地に宿るためだ。
85:10 慈しみと真実は出会い、義と平和は口づけをかわした。
85:11 真実は地から芽生え、義は天から見おろす。
85:12 主は良いものを与えてくださり、わたしたちの地は豊かな実りをもたらす。
85:13 義が神の前を進み、その足どりのために道を備える。
86:1 主よ、耳を傾けて、わたしに答えてください。わたしは苦しみ、貧しい者だからです。
86:2 わたしの魂を守ってください。わたしはあなたを信じて生きる者だからです。あなたはわたしの神。あなたに信頼するこのしもべを救ってください。
86:3 主よ、わたしをあわれんでください。わたしは一日中、あなたに呼びかけているのです。
86:4 あなたのしもべであるわたしの魂を、喜びで満たしてください。主よ、わたしはあなたを見上げているのです。
86:5 主よ、あなたは恵み深く、すぐに赦してくださる。あなたに呼びかけるすべての人に、あふれるほどの慈しみを注いでくださる。
86:6 主よ、わたしの祈りに耳を傾けてください。わたしの願いの声を聞いてください。
86:7 わたしは苦しみの日にあなたを呼び求める。あなたが答えてくださるからだ。
86:8 主よ、神々の中にあなたのような方はいません。あなたのわざに並ぶものもありません。
86:9 主よ、あなたが造ったすべての国の人々が、あなたのもとに来て、ひざまずいて礼拝し、あなたの名をたたえます。
86:10 あなたは偉大な神で、驚くべきことを行う。ただあなただけが神なのだ。
86:11 主よ、あなたの道をわたしに教えてください。わたしはあなたの真実に従って歩みます。心を一つにして、あなたの名を畏れさせてください。
86:12 わたしの神、主よ。心をつくしてあなたに感謝します。いつまでもあなたの名をあがめます。
86:13 あなたの慈しみはわたしにとって大きく、わたしの魂を深い陰府から救い出してくださったからだ。
86:14 神よ、高慢な者たちがわたしに襲いかかってきます。乱暴な者たちの一団がわたしの命をねらい、あなたを眼中に置こうともしません。
86:15 しかし主よ、あなたはあわれみと思いやりに満ちた神。怒るのに遅く、慈しみとまことに富んでいる。
86:16 わたしに顔を向けて、あわれんでください。あなたのしもべに力を与え、あなたのはしための子を救ってください。
86:17 わたしに、あなたの恵みのしるしを見せてください。そうすれば、わたしを憎む者たちはそれを見て恥じ入るでしょう。主よ、あなたがわたしを助け、慰めてくださったからです。
87:1 コラの子たちの歌、賛美の歌。主はその都の土台を、聖なる山の上に据えられた。
87:2 主はヤコブのすべての住まいにまさって、シオンの門を愛される。
87:3 神の都よ、あなたについて栄光に満ちたことが語られている。セラ
87:4 わたしを知る人々の中に、わたしはラハブとバビロンの名を挙げる。見よ、ペリシテ、ツロ、そしてクシュ。「この者はここで生まれた」と言われる。
87:5 シオンについてはこう言われる。「この人もあの人も、ここで生まれた」と。いと高き神みずからが、この都をゆるがない場所として建てるからだ。
87:6 主がもろもろの民を書き記すとき、「この人はここで生まれた」と登録される。〔セラ
87:7 歌う人も踊る人も声をそろえて言う。「わたしの泉はみな、あなたの中にある」と。
88:1 わたしの救いの神、主よ。わたしは昼も夜もあなたの前で叫び求めています。
88:2 わたしの祈りが、あなたのもとに届きますように。わたしの叫びに、耳を傾けてください。
88:3 わたしの魂は苦しみで満ち、いのちは死の国にまで近づいている。
88:4 わたしは墓穴に下っていく者の仲間とみなされ、力の尽きた人のようになった。
88:5 死んだ人たちの中に、わたしは見捨てられている。墓に横たわる、殺された者のように。あなたはもう、彼らを思い出さない。彼らは、あなたの手から切り離されてしまった。
88:6 あなたはわたしを、一番深い穴の底に置いた。暗闇の中に、深い淵の中に。
88:7 あなたの怒りが、わたしに重くのしかかる。押し寄せる波のすべてで、あなたはわたしを打ちのめした。セラ
88:8 あなたは、親しい人たちをわたしから引き離した。彼らにとって、わたしを見るのもいやな存在にした。わたしは閉じ込められ、外に出ることができない。
88:9 わたしの目は苦しみのために弱りはてた。主よ、わたしは毎日あなたを呼び求め、あなたへ両手を差し伸べている。
88:10 死んだ人に、あなたは奇跡を起こすのだろうか。死者は起き上がって、あなたをたたえるだろうか。セラ
88:11 墓の中で、あなたの慈しみは語られるだろうか。滅びの世界で、あなたの真実は告げられるだろうか。
88:12 暗やみの中で、あなたの奇跡が知られるだろうか。すべてが忘れ去られる地で、あなたの義が知られるだろうか。
88:13 主よ、わたしはあなたに助けを求めて叫ぶ。朝ごとに、わたしの祈りがあなたのもとへ届きます。
88:14 主よ、なぜわたしの魂を退けるのですか。なぜわたしから顔を隠すのですか。
88:15 わたしは若い頃から苦しみ、死にそうだ。あなたの恐ろしさを背負ってきて、もう途方に暮れている。
88:16 あなたの燃える怒りがわたしに襲いかかり、あなたのもたらす恐怖がわたしを滅ぼした。
88:17 一日中、それは水のようにわたしを取り囲む。四方からいっせいに、わたしへ押し寄せてくる。
88:18 あなたはわたしから、愛する人も友も引き離した。親しい人たちは、今は暗やみの中にいる。
89:1 主の慈しみを、わたしはいつまでも歌う。あなたの真実を、わたしの口で代々の人に語り伝えよう。
89:2 わたしはこう言った。「慈しみは、いつまでも築き上げられていく。あなたの真実は、天にしっかりと据えられている。」
89:3 わたしは自分が選んだ者と契約を結び、わたしに仕えるダビデにこう誓った。
89:4 あなたの子孫をいつまでも絶えないようにし、あなたの王座を代々にわたって築き上げる。セラ
89:5 主よ、天はあなたの驚くべきわざをたたえます。聖なる者たちの集まりの中で、あなたの真実がたたえられます。
89:6 天のなかに、主とならぶものがいるだろうか。神の子らのなかに、主のような者がいるだろうか。
89:7 神は聖なる者たちの集いで、深く恐れられる。まわりにいるすべての者にまさって、恐るべき方だ。
89:8 主、万軍の神よ。あなたのように力強い方が、ほかにいるでしょうか。あなたの真実が、あなたを包んでいます。
89:9 あなたは荒れ狂う海を治めている。波が高く逆巻くとき、あなたはそれを静める。
89:10 あなたはラハブを、討ち取られた者のように打ち砕いた。その力強い腕で、敵を散らした。
89:11 天はあなたのもの。地もあなたのもの。世界も、そこに満ちるものもすべて、あなたが造り上げた。
89:12 北も南も、あなたが創造した。タボル山もヘルモン山も、あなたの名を喜び歌う。
89:13 あなたの腕は力に満ちている。あなたの手は強く、あなたの右手は高く上げられている。
89:14 義と公正が、あなたの王座を支える土台。慈しみとまことが、あなたの前を進んでいく。
89:15 その民は幸いだ。喜びの声で主をたたえることを知り、主よ、あなたの顔の光の中を歩む民は。
89:16 あなたの名によって、彼らは一日中喜びおどり、あなたの正しさによって、高く引き上げられる。
89:17 あなたはわたしたちの力、その栄光であり、あなたの恵みによってわたしたちの角は高く上げられる。
89:18 わたしたちの盾は主のもの、わたしたちの王はイスラエルの聖なる方のもの。
89:19 あるとき、あなたは幻の中で、あなたに従う人たちに語りかけて、こう言われた。「わたしは一人の勇者に力を授け、民の中から選び出した若者を高く引き上げた。
89:20 わたしはわたしのしもべダビデを見つけ出し、聖なる油を注いだ。
89:21 わたしの手はいつも彼とともにあり、わたしの腕が彼を強くする。
89:22 敵が彼を打ち負かすことはない。悪しき者が彼を苦しめることもない。
89:23 わたしは彼の敵を、彼の目の前で打ち砕く。彼を憎む者たちを、討ち倒す。
89:24 わたしの真実と慈しみは彼と共にある。わたしの名によって、彼の力は高く上げられる。
89:25 わたしは彼の手を海の上に、その右手を川の上に置く。
89:26 彼はわたしに呼びかける。「あなたはわたしの父、わたしの神、わたしを救う岩」
89:27 わたしはまた、彼をわたしの長男とし、地上のどの王よりも高い位につける。
89:28 わたしは彼のために、いつまでも慈しみを注ぎ続ける。彼と結んだ約束は、決して揺らがない。
89:29 わたしは彼の子孫をとこしえに絶えないものとし、その王座を天のある限り保つ。
89:30 もし彼の子どもたちがわたしの教えを捨て、わたしの定めに従って歩まないなら、
89:31 もし彼らがわたしのおきてを破り、わたしの命令を守らないなら、
89:32 わたしは彼らの背きを むちで罰し、その罪を 打ちたたいて責める。
89:33 わたしは自分の慈しみを彼から取り去らない。わたしの真実を裏切ることはない。
89:34 わたしは自分の契約を破らない。一度口にしたことを、変えることはない。
89:35 わたしは聖なる自分にかけて、一度こう誓った。ダビデを裏切って嘘をつくことは、決してない。
89:36 彼の家系は永遠に続き、その王座は太陽のようにわたしの前で続いていく。
89:37 それは月のように、いつまでも揺るがずに立ち続ける。空にかかるその証人は、決して変わらない。セラ
89:38 あなたは、あなたが選んだ王を見捨て、退けた。彼に対して激しく怒った。
89:39 あなたは、しもべとの契約を投げ捨て、彼の冠を地に打ち捨てて汚された。
89:40 あなたは彼の石垣をすべて打ち壊し、そのとりでを廃墟にした。
89:41 道を通る人はみな、彼のものを奪っていく。彼は近くに住む人たちの笑いものになった。
89:42 あなたは彼の敵の右手を高く上げ、彼の敵をみな喜ばせた。
89:43 あなたは彼の剣の刃を鈍らせ、戦いで彼を立たせてはくれなかった。
89:44 あなたは彼の輝きを終わらせ、その王座を地に投げ倒された。
89:45 あなたは彼の若い日々を短くし、恥で彼を包んだ。セラ
89:46 主よ、いつまでですか。いつまでも身を隠しておられるのですか。あなたの怒りは、いつまで火のように燃えるのですか。
89:47 わたしの人生がどんなに短いか、心に留めてください。あなたはいったい何のために、すべての人をこんなにむなしい者として創造したのですか。
89:48 生きていて、死を見ずにすむ人などいるだろうか。自分の魂をよみの手から救い出せる者などいるだろうか。セラ
89:49 主よ、あなたの昔の変わらぬ愛はどこへ行ったのですか。あなたは真実をもって、ダビデに誓われたのに。
89:50 主よ、あなたに仕える者たちが受けている侮辱を、思い出してください。多くの民からのあざけりを、わたしはこの胸に抱えているのです。
89:51 主よ、あなたの敵はこうしてののしってきました。あなたが選んだ王の一歩一歩までも、彼らはあざけったのです。
89:52 主はとこしえにたたえられますように。アーメン、アーメン。
90:1 主よ、あなたは代々、わたしたちの住まいでした。
90:2 山々が生まれる前から、あなたが大地と世界を生み出す前から、そして永遠の昔から永遠の未来まで、あなたは神。
90:3 あなたは人をちりに帰らせて、「人よ、帰れ」と言われる。
90:4 あなたの目には、千年もきのう過ぎ去った一日のよう。夜のひとときのようだ。
90:5 あなたは人々を眠りのように押し流す。彼らは朝に生えてくる草のようだ。
90:6 朝には花を咲かせ、生き生きとしている。でも夕方にはしおれて枯れてしまう。
90:7 あなたの怒りによって、わたしたちは消え去る。あなたの憤りに、わたしたちはおびえる。
90:8 あなたはわたしたちの罪をご自分の前に並べ、隠された過ちをみ顔の光の中にさらけ出された。
90:9 われらの日々は、あなたの怒りの前に消えていく。人生は、ため息ひとつのように終わってしまう。
90:10 わたしたちの一生は七十年ほど。元気であっても八十年ほどだろう。でも、その日々の多くは苦労と痛みで、あっという間に過ぎ去り、わたしたちは飛び去っていく。
90:11 だれがあなたの怒りの激しさを知っているだろう。あなたを恐れる思いにふさわしく、その憤りを知る人がいるだろうか。
90:12 われらに自分の日を数えることを教えてください。そうすれば、知恵ある心を得られます。
90:13 主よ、戻ってきてください。いつまで待たせるのですか。あなたのしもべたちを、あわれんでください。
90:14 朝ごとに、あなたの変わらぬ慈しみでわたしたちを満たしてほしい。そうすれば、わたしたちは生きるかぎり毎日、喜びおどることができる。
90:15 わたしたちを苦しめたその日々の分だけ、わたしたちが災いにあったその年月の分だけ、今度はわたしたちを喜ばせてほしい。
90:16 あなたのなさることを、あなたのしもべたちに見せてください。あなたの輝きを、その子たちに。
90:17 わたしたちの神、主のいつくしみが、わたしたちの上にありますように。わたしたちの手のわざを、確かなものにしてください。わたしたちの手のわざを、確かなものにしてください。
91:1 いと高き方の隠れ場に住み、全能者の陰に身を寄せる人は
91:2 わたしは主に言う。「あなたはわたしの隠れ場、わたしの砦。わたしが信頼するわたしの神」と。
91:3 主はあなたを、狩人のわなから、恐ろしい疫病から救い出してくださる。
91:4 主はその翼であなたをおおってくださる。あなたはその羽の下に逃げこんで守られる。神の真実は、あなたを守る大盾、小盾となる。
91:5 夜の恐怖におびえることはない。昼に飛んでくる矢にも、おびえることはない。
91:6 暗やみの中を歩き回る疫病も、真昼に襲いかかる災いも、恐れることはない。
91:7 たとえ千人があなたのそばで倒れ、一万人があなたの右側で倒れても、その災いがあなたに近づくことはない。
91:8 あなたはただ、自分の目で見るだけだ。悪い者たちがどんな報いを受けるかを、その目で見る。
91:9 あなたが主を、避け所である方を、いと高き方を、住まいとしたから、
91:10 わざわいがあなたにふりかかることはない。苦しみがあなたの家に近づくこともない。
91:11 神は天使たちに命じて、あなたの歩むすべての道であなたを守らせてくださるからだ。
91:12 天使たちは手であなたを支え、あなたの足が石にぶつからないように守ってくれる。
91:13 あなたは獅子と毒蛇を踏みつける。若い獅子と大蛇を足の下に踏みにじる。
91:14 わたしを愛して離れないから、わたしは彼を助け出す。わたしの名を知っているから、わたしは彼を守る。
91:15 彼がわたしを呼べば、わたしは答える。苦しみのとき、わたしは彼と共にいる。わたしは彼を救い出し、彼に誉れを与える。
91:16 わたしは彼を長い人生で満ち足らせ、わたしの救いを彼に見せる。
安息日のための歌。賛美の歌。
92:1 主に感謝をささげ、いと高き方であるあなたの名をほめ歌うのは、すばらしいことだ。
92:2 朝にはあなたの慈しみを、夜には あなたの真実を語り告げること。
92:3 十弦の楽器とハープを奏で、竪琴の調べに合わせて。
92:4 主よ、あなたのなさったことが、わたしを喜ばせてくれた。わたしはあなたの手のわざを喜び歌う。
92:5 主よ、あなたのなさることは、なんと偉大なのだろう。あなたの思いは、どこまでも深い。
92:6 愚かな人にはわからない。おろかな者には、このことが理解できない。
92:7 悪い者が草のように芽を出し、悪事を働く者がみな花を咲かせても、それは永遠に滅ぼされるためなのだ。
92:8 でも主よ、あなたはとこしえに高いところにおられる。
92:9 主よ、見よ、あなたの敵を。見よ、あなたの敵は滅びる。悪を行う者はみな、散らされていく。
92:10 しかしあなたは、野牛のようにわたしの角を高く上げ、みずみずしい油をわたしに注いでくださった。
92:11 わたしの目は、敵が倒れるのを見た。わたしに襲いかかる悪者たちの最期を、この耳は聞いた。
92:12 正しい人はナツメヤシのように生い茂り、レバノン杉のように大きく育つ。
92:13 主の家に植えられ、わたしたちの神の庭で青々と茂る。
92:14 年老いてもなお実を結び、みずみずしく、生き生きとしている。
92:15 主が正しい方だと告げるために。主はわたしの岩。主には不正など少しもない。
93:1 主は王として立ち、堂々とした輝きを身にまとっている。主は身をよろいで固め、力を帯として締めている。だから世界はしっかりと据えられ、揺らぐことがない。
93:2 あなたの王座は、はるか昔からゆるがない。あなたは永遠の昔からおられる。
93:3 川は声をあげた、主よ。川は声をあげた。川はとどろく声をあげる。
93:4 主は高い所にいて、力にあふれている。たくさんの水がとどろく音よりも、海の大波よりも力強い。
93:5 あなたの証しは、まったく揺るがない。主よ、あなたの家には、いつまでも聖なることがふさわしい。
94:1 復讐の神である主よ、復讐の神よ、その光を放ってください。
94:2 地をさばく者よ、立ち上がってください。高ぶる者に、その報いをお与えください。
94:3 主よ、悪い者はいつまで、悪い者はいつまで勝ち誇るのか。
94:4 彼らは尊大な言葉を吐き散らし、悪事を働く者たちはみな、いい気になって威張っている。
94:5 主よ、彼らはあなたの民を打ちのめし、あなたが受け継がせた人々を苦しめています。
94:6 やもめや、よその土地から来た人を殺し、身寄りのない子を手にかける。
94:7 彼らはこう言う。「主は見ていない。ヤコブの神は気づかない」と。
94:8 民の中の分からず屋よ、よく考えてみろ。愚か者よ、いつになったら賢くなるのか。
94:9 耳を造った方が、聞こえないはずがあるだろうか。目を形づくった方が、見えないはずがあるだろうか。
94:10 国々を懲らしめる方が、罰しないでいるだろうか。人に知識を教える方に、知識がないだろうか。
94:11 主は人の思いを知っている。それがむなしいことを。
94:12 主よ、あなたに導き正され、あなたの教えを学ぶ人は幸せだ。
94:13 災いの日々から救い出して、その人を守ってくださる。悪い者のために落とし穴が掘られる、その日まで。
94:14 主はご自分の民を見放さない。ご自分のものとした人たちを見捨てはしない。
94:15 さばきは再び正義にかなうものとなり、心のまっすぐな人はみな、それに従う。
94:16 だれがわたしのために立ち上がって、悪を行う者に立ち向かってくれるだろうか。だれがわたしのために立って、不正を働く者に立ち向かってくれるだろうか。
94:17 もし主が助けてくれなかったら、わたしの魂は今ごろ沈黙の中に横たわっていただろう。
94:18 「わたしの足がすべりそうだ」とわたしが言ったとき、主よ、あなたの慈しみがわたしを支えてくれた。
94:19 わたしの心が不安でいっぱいになるとき、あなたの慰めがわたしの魂を喜ばせてくれる。
94:20 法律を盾にして人を苦しめる、悪にまみれた権力が、あなたと手を組めるだろうか。
94:21 彼らは団結して正しい人の命をねらい、罪のない人に死を宣告する。
94:22 主はわたしのとりでとなり、わたしの神はわたしの逃げ込む岩となってくださった。
94:23 主は彼らの悪を彼らに返し、彼らの悪事のために彼らを滅ぼす。わたしたちの神、主は彼らを滅ぼす。
95:1 さあ、主に向かって喜びの歌を歌おう。わたしたちを救ってくれた岩に向かって、喜びの声をあげよう。
95:2 わたしたちは感謝の心をたずさえて、神の前に進み出よう。賛美の歌をもって、喜びの声をあげよう。
95:3 主は偉大な神、すべての神々を超えて君臨する偉大な王だからだ。
95:4 地の深い所は神の手の中にあり、山々の頂もまた神のものである。
95:5 海は主のもの、主がお造りになった。かわいた地も、主の手が形づくった。
95:6 さあ、身をかがめて拝もう。わたしたちを造った主の前にひざまずこう。
95:7 主はわたしたちの神。わたしたちはその牧場の民、その手が導く羊だ。どうか今日、その声を聞いてほしい。
95:8 あなたたちは心をかたくなにしてはいけない。あの荒れ野で、メリバやマッサで神に逆らったあの日のように。
95:9 あなたがたの先祖は、そこでわたしを試した。わたしのしたことを見ていたのに、わたしをためした。
95:10 四十年の間、わたしはこの世代にうんざりして言った。「彼らは心が迷っている民だ。わたしの道を知らない」と。
95:11 わたしは怒って、こう誓った。「彼らをわたしの安息の地に、決して入らせない。」
96:1 新しい歌を主に向かって歌おう。全地よ、主に向かって歌え。
96:2 主に向かって歌おう。その名をたたえよう。日ごとに、主がもたらす救いを伝え続けよう。
96:3 諸国の中で神の栄光を語り伝えよう。すべての民の中で、神がなさった驚くべきことを伝えよう。
96:4 主は偉大で、心からたたえるべき方だ。どんな神々よりも恐れ敬うべき方だ。
96:5 すべての民の神々はむなしい。でも主は、あの天を造られた。
96:6 誉れと威厳が主の前にあり、力と美しさがその聖所にある。
96:7 もろもろの民の氏族よ、主をあがめよ。栄光と力を主に帰せよ。
96:8 そのみ名にふさわしい栄光を主にささげよう。ささげ物を持って、その庭に入ろう。
96:9 聖なる輝きをまとって主を礼拝せよ。全地よ、その前でおののけ。
96:10 諸国民の中で言い広めよう。「主が王となられた」と。世界はしっかりと据えられ、揺らぐことはない。主は公平にもろもろの民をさばかれる。
96:11 天よ、喜べ。地よ、喜び踊れ。海よ、そこに満ちるものすべてよ、とどろけ。
96:12 野と、その中のすべてのものよ、喜び躍れ。そのとき、森の木々もいっせいに喜びの歌を歌う。
96:13 主が来られるからだ。地をさばくために来られるからだ。主は正しさをもって世界をさばき、真実をもって人々をさばく。
97:1 主が王となられた。地は喜び踊れ。海に囲まれた多くの島々は喜べ。
97:2 雲と厚い暗やみが、神を取り囲んでいる。正義と公正が、その王座を支える土台だ。
97:3 火は主の前を進んで行き、まわりの敵を焼きつくす。
97:4 主のいなずまは世界を照らし、地はそれを見ておののく。
97:5 山々は主の前で、全地の主の前で、ろうのように溶けていった。
97:6 天はその義を告げ知らせ、すべての民はその栄光を見た。
97:7 すべての偶像を拝む者、むなしい神々を誇る者は、恥をかく。すべての神々よ、主の前にひれ伏せ。
97:8 主よ、あなたの正しい裁きを聞いて、シオンは喜び、ユダの娘たちは大喜びする。
97:9 主よ、あなたは全地の上に立つ、いと高き方。すべての神々をはるかに超えて、あがめられる方だ。
97:10 主を愛する人たちよ、悪を憎みなさい。主は、主に従う人たちの命を守り、悪い者たちの手から助け出してくださる。
97:11 光は正しい人のために蒔かれ、喜びは心のまっすぐな人のために蒔かれる。
97:12 正しい人たちよ、主を喜べ。その聖なる名を思って、感謝をささげよう。
98:1 新しい歌を主に向かって歌おう。主はすばらしいことをなしとげた。その右の手と聖なる腕が、勝利をもたらしたのだから。
98:2 主はその救いを知らせ、正しさをすべての国々の前に示された。
98:3 主はその慈しみと真実を、イスラエルの家に向けて心に留めてくださった。地の果てのすべての人が、わたしたちの神の救いを見た。
98:4 全地よ、主に向かって喜びの声をあげよう。喜びを爆発させ、歌え、ほめ歌え。
98:5 琴を鳴らして、主をたたえよう。琴の調べと歌声で、主をほめたたえよう。
98:6 ラッパと角笛を吹き鳴らし、王である主の前で喜びの声をあげよう。
98:7 海よ、とどろけ。そこに満ちるものよ。世界よ、そこに住むすべてのものよ、とどろけ。
98:8 大河は手を打ち鳴らし、山々も声をそろえて喜び歌え。
98:9 主が来られるからだ。地をさばくために来られるからだ。主は正しさをもって世界をさばき、公平をもって人々をさばく。
99:1 主は王となられた。国々の民よ、おののけ。主は翼を広げた天使たちの上に座っておられる。地よ、揺れ動け。
99:2 主はシオンにおられて偉大な方。すべての民の上に高くそびえる方だ。
99:3 あなたの偉大で畏れ多い名を、人々はほめたたえるように。その名は聖なるものだ。
99:4 あなたは力ある王でありながら、正しい裁きを愛する。あなたは公正を揺るがず打ち立て、ヤコブの民の間に正義と義を行われた。
99:5 われらの神、主をあがめよう。その足もとにひれ伏そう。主は聖なる方だ。
99:6 その祭司の中にはモーセとアロンがいた。主の名を呼ぶ人の中にはサムエルがいた。彼らが主を呼び求めると、主は答えてくださった。
99:7 主は雲の柱の中から彼らに語りかけた。彼らは主の教えと、授けられたおきてを守った。
99:8 わたしたちの神、主よ、あなたは彼らに答えてくれた。あなたは彼らを赦す神だった。それでも、彼らの悪い行いには罰を与えた。
99:9 われらの神、主をあがめよう。その聖なる山にひれ伏して礼拝しよう。わたしたちの神、主は聖なる方だから。
100:1 全地よ、主に向かって喜びの声をあげよ。
100:2 喜びをもって主に仕えよう。喜びの歌をうたいながら、主の前に進み出よう。
100:3 主こそ神だと知ってほしい。わたしたちを造ったのは主であって、わたしたち自身ではない。わたしたちは主のもの、その民、主が飼う羊の群れだ。
100:4 感謝しながら、その門をくぐろう。賛美しながら、その庭に入ろう。神に感謝し、その名をほめたたえよう。
100:5 主は恵み深い方だから。その慈しみはいつまでも変わらず、その真実はどの時代にも及ぶ。
101:1 慈しみと正義について、わたしは歌う。主よ、あなたに向かって歌う。
101:2 わたしは全き道に心を向ける。あなたはいつ、わたしのところに来てくれるのか。わたしは家の中で、まっすぐな心で歩んでいく。
101:3 わたしは卑しいことに目を向けない。道を外れた者の行いを、わたしは憎む。それがわたしに付きまとうことはない。
101:4 ひねくれた心はわたしから離れていく。わたしは悪事を知ろうともしない。
101:5 こっそりと隣人の悪口を言う者を、わたしは黙らせる。高ぶるまなざしと、思い上がった心を持つ者を、わたしは我慢できない。
101:6 わたしは、この地の誠実な人たちに目をとめ、わたしのそばに住まわせる。正しい道を歩む人が、わたしに仕えてくれる。
101:7 だます者はわたしの家に住まわせない。うそをつく者はわたしの前にいられない。
101:8 わたしは朝ごとに、この地の悪人をひとり残らず滅ぼす。悪事を働く者をすべて、主の町から断ち切るために。
102:1 主よ、わたしの祈りを聞いてください。わたしの叫びをあなたのもとに届かせてください。
102:2 苦しみの日に、わたしから顔をそむけないでください。あなたの耳をわたしに傾けてください。わたしが呼ぶときには、すぐに答えてください。
102:3 わたしの日々は煙のように消えていき、骨は炉のように焼けているのだから。
102:4 わたしの心は草のように打ちのめされ、しおれてしまった。パンを食べることさえ忘れるほどに。
102:5 嘆きの声をあげ続けて、わたしの骨は肉にくっついてしまった。
102:6 わたしは荒れ野のペリカンのようだ。廃墟に住むふくろうのようになった。
102:7 わたしは眠れないまま、夜を過ごす。屋根の上にただ一羽でとまる鳥のようだ。
102:8 敵は一日中、わたしをののしる。わたしをあざける者たちは、わたしの名を呪いの言葉に使う。
102:9 わたしは灰をパンのように食べ、飲み物に涙をまぜて飲んだ。
102:10 それは、あなたの怒りと憤りのためだ。あなたはわたしを持ち上げ、そして投げ捨てたからだ。
102:11 わたしの日々は、のびて消えていく影のよう。わたしは草のように枯れていく。
102:12 でも主よ、あなたは永遠に王座におられる。あなたの名は、代々に語り継がれる。
102:13 あなたは立ち上がり、シオンをあわれんでくださる。今こそ、シオンをいつくしむとき。定められた時が来たのだから。
102:14 あなたに仕える人たちは、シオンの石を愛おしみ、その塵さえいとおしんでいるからだ。
102:15 こうして、国々は主の名を恐れ、地のすべての王は、あなたの栄光を恐れるようになる。
102:16 主がシオンを建て直し、その栄光の姿を現されるからだ。
102:17 神は、何もかも失った人の祈りに耳を傾け、その祈りをないがしろにはしない。
102:18 このことは、後の世代のために書き記される。まだ創造されていない民が、主をほめたたえるように。
102:19 主は聖なる高い所から見下ろし、天から地を見わたされた。
102:20 捕らわれた人のうめきを聞き、死を宣告された人々を解き放つためだ。
102:21 シオンで主の名を語り伝え、エルサレムでその栄誉をたたえるために。
102:22 もろもろの民が共に集まり、国々が主に仕えるために。
102:23 神はわたしの力を道の途中でくじき、わたしの日々を短くされた。
102:24 わたしは言う。「わたしの神よ、人生の半ばでわたしを連れ去らないでください。あなたの年は、代々かぎりなく続くのですから。」
102:25 大昔、あなたは地の土台を据えた。天も、あなたの手が造ったものだ。
102:26 それらは滅びる。でも、あなたは変わらずに立ち続ける。すべては衣のようにすり切れていく。あなたが着る物のように取り替えると、それらは消え去っていく。
102:27 でも、あなたは変わらない。あなたの年月には終わりがない。
102:28 かつてあなたに仕えた人たちの子孫は、安心して暮らす。その子孫は、あなたの前でしっかりと立ち続ける。
103:1 わたしの魂よ、主をたたえよ。わたしの内側にあるすべてのものよ、その聖なる名をたたえよ。
103:2 わたしの魂よ、主をほめたたえよ。主がしてくれたことを、何ひとつ忘れるな。
103:3 あなたのすべての罪をゆるし、あなたのすべての病をいやしてくれる。
103:4 あなたのいのちを滅びから救い出し、変わらぬ愛とあわれみを冠のようにあなたにかぶせてくださる。
103:5 あなたが生きるかぎり、良いもので満たしてくださる。だから、わたしはわしのように若返り、新しくされる。
103:6 主は、しいたげられているすべての人のために、正義と公正を行う。
103:7 主は自分のやり方をモーセに示し、そのわざをイスラエルの人々に見せた。
103:8 主は情け深く、優しい。怒るのに遅く、慈しみに満ちている。
103:9 主はいつまでも責め立てることはしない。いつまでも怒り続けることもない。
103:10 主はわたしたちの罪に応じてわたしたちをあしらうことはせず、わたしたちの過ちに応じて報いることもしなかった。
103:11 天が地よりもはるかに高いように、神を敬う人々に注がれる慈しみも、それほどに大きい。
103:12 東が西から遠く離れているように、主はわたしたちの罪をわたしたちから遠く引き離してくださる。
103:13 父が自分の子どもを深く思いやるように、主も、ご自分を敬う者を深く思いやってくださる。
103:14 主はわたしたちがどう造られたかを知っておられる。わたしたちが土くれにすぎないことを覚えていてくださる。
103:15 人の一生は草のようだ。野に咲く花のように咲く。
103:16 風がその上を吹き過ぎると、草は消えてなくなる。そこがどこだったのかも、もうわからなくなる。
103:17 主の慈しみは、主を敬う人たちの上に、永遠の昔から永遠の未来まで注がれる。その義は、子々孫々にまで及ぶ。
103:18 その契約を守り、命令を心に留めて実行する人たちにまで及ぶのだ。
103:19 主は天に御座を築き、そのご支配はすべてのものに及ぶ。
103:20 主の使いたちよ、主をたたえよ。力あふれる勇士たちよ、主の言葉を実行し、その言葉の声に聞き従う者たちよ。
103:21 主のすべての軍勢よ、そのみこころのままに仕える者たちよ、主をたたえよ。
103:22 主が造られたすべてのものよ、主が治めるすべての場所で、主をたたえよ。わたしの魂よ、主をたたえよ。
104:1 主よ、わたしの魂よ、主をたたえよ。わたしの神、主よ、あなたはとてつもなく偉大です。栄光と輝きを身にまとい、
104:2 光を衣のようにまとい、天を幕のように張る。
104:3 水の上に自分の高殿の梁をかけ、雲を戦車とし、風の翼に乗って進む。
104:4 風を自分の使者とし、燃える火を自分の仕える者とされる。
104:5 あなたは地をその土台の上にしっかりと据えた。だから地は、いつまでも決して揺らぐことがない。
104:6 大水が衣のようにこの地をおおっていた。水は山々の上にまであふれていた。
104:7 あなたが叱りつけると、水は引いた。あなたの雷の声に、水は慌てて逃げていった。
104:8 山々はそびえ立ち、谷は沈んでいった。あなたが定めておいた場所へと。
104:9 あなたは水に境界を定めた。水はそこを越えることも、二度と地をおおうこともない。
104:10 泉を谷にわき出させ、山々の間を流れさせる。
104:11 野の獣はみな水を飲み、野ろばも渇きをうるおす。
104:12 空の鳥もその水辺に住み、枝々の間でさえずる。
104:13 神は天の高い部屋から山々に水を注ぐ。地はあなたの働きが生んだ実りで満たされる。
104:14 家畜のために草を生えさせ、人が育てる作物を育ててくださる。こうして地から食べ物を生み出させる。
104:15 ぶどう酒は人の心を喜ばせ、油は顔をつややかに輝かせ、パンは人の心を支えて力づける。
104:16 主の木々は豊かに潤う。主ご自身が植えたレバノンの杉の木も。
104:17 鳥たちはその木に巣をかけ、こうのとりはもみの木をすみかにする。
104:18 高い山は野やぎのすみか。岩は岩だぬきの隠れ場だ。
104:19 あなたは月を造って季節のしるしとした。太陽は沈む時を知っている。
104:20 あなたが暗やみを造ると、夜になる。すると、森の獣たちがみなうごめき出てくる。
104:21 若いライオンは獲物を求めてほえ、神に食べ物を求める。
104:22 日が昇ると、彼らは帰っていき、それぞれの巣穴に横たわる。
104:23 人は自分の仕事に出かけ、夕方まで働き続ける。
104:24 主よ、あなたが造ったものは、なんて数え切れないほど多いのだろう。あなたはそのすべてを知恵によって造った。地はあなたが造ったもので満ちている。
104:25 見よ、そこには大きく広い海がある。数えきれない生き物が動きまわり、大きなものも小さなものもいる。
104:26 そこには船が行き交い、あなたが造られたレビヤタンが、その中で戯れている。
104:27 すべての生き物は、あなたが時に応じて食べ物を与えてくださるのを待っている。
104:28 あなたが与えると、彼らはそれを集める。あなたが手を開くと、彼らは良い物で満たされる。
104:29 あなたが顔を隠すと、彼らはおびえる。あなたが彼らの息を取り上げると、彼らは死んで、もとの土に帰っていく。
104:30 あなたが霊を送ると、彼らは造られる。あなたは地の面を新しくする。
104:31 主の栄光が、いつまでも続きますように。主が、その造られたすべてを喜ばれますように。
104:32 主が地を見つめると、地は震える。山に触れると、山は煙を上げる。
104:33 わたしは生きるかぎり、主に向かって歌う。命ある限り、わたしの神をほめ歌おう。
104:34 どうか、わたしの思いが主に喜ばれますように。わたしは主にあって喜ぶ。
104:35 罪ある者が地から消え去り、悪を行う者がもういなくなりますように。わたしの魂よ、主をたたえよ。主をほめたたえよ。
105:1 主に感謝しよう。その名を呼び、その素晴らしい行いを、いろんな民族に伝えよう。
105:2 主に向かって歌おう。主をほめたたえて歌おう。主のすばらしい行いのすべてを語り伝えよう。
105:3 その聖なる名を誇りに思おう。主を求める人の心は喜びに満ちる。
105:4 主とその力を求めよ。絶えず主の顔を慕い求めよ。
105:5 主が行われた不思議なわざを思い出そう。その奇跡と、主の口が下したさばきを。
105:6 神に仕えたアブラハムの子孫よ、神が選んだヤコブの子らよ。
105:7 主はわたしたちの神。その裁きは世界のすべてに及んでいる。
105:8 主が永遠にご自分の契約を心に留めておられる。それは、千代にわたって命じられた約束だ。
105:9 アブラハムと結んだ契約であり、イサクに立てた誓いである。
105:10 神はそれをヤコブのために掟として定め、イスラエルのために永遠の契約とした。
105:11 こう言われた。「あなたにカナンの地を与えよう。それがあなたたちの受け継ぐ分だ。」
105:12 彼らはほんのわずかな人数で、その地に身を寄せる旅人にすぎなかった。
105:13 彼らは国から国へ、この王国からあの民のもとへとさまよい歩いた。
105:14 だれにも彼らを虐げさせず、彼らのために王たちを戒めた。
105:15 わたしが選んだ者たちに手を出すな。わたしが立てた語り手たちを傷つけるな。
105:16 神はその地にききんを呼び寄せ、人々を支えるパンをすべて断ち切った。
105:17 神は彼らの先に、ひとりの人を送った。奴隷として売られたヨセフを。
105:18 彼らは足かせで彼の足を傷つけ、彼自身は鉄につながれた。
105:19 彼の語ったことが実現するときまで、主のことばが彼を試し、鍛え続けた。
105:20 王が命令を出して、彼を自由にした。多くの民を治める者が、彼を牢から出したのだ。
105:21 王は彼を家の主人とし、持ち物のすべてを治めさせた。
105:22 思いのままに高官たちを縛り、長老たちに知恵を教えた。
105:23 イスラエルはエジプトへやって来た。ヤコブはハムの地に身を寄せて暮らした。
105:24 主はご自分の民をとても増やし、その敵よりも強くされた。
105:25 神はエジプト人の心を変え、ご自分の民を憎ませた。神に仕える者たちを、たくらみで陥れるようにした。
105:26 神は僕モーセを送り、自ら選んだアロンをつかわした。
105:27 主は彼らの間で数々のしるしを行い、ハムの地で奇跡を起こした。
105:28 主は闇を送り、あたりを暗くされた。彼らは主の言葉に逆らわなかった。
105:29 彼らの川の水を血に変え、魚を死なせた。
105:30 蛙が国じゅうにあふれ、王の寝室にまで入り込んだ。
105:31 主は命じられた。すると、あぶの群れがやってきた。ぶよも、国じゅうにわいた。
105:32 主は雨のかわりに雹を降らせ、彼らの国に燃えさかる火を送った。
105:33 主はぶどうの木といちじくの木を打ち倒し、国じゅうの木々を折られた。
105:34 命じると、いなごがやって来た。若いいなごも、数え切れないほどに。
105:35 彼らの国の草をすべて食い尽くし、大地の実りを食い尽くした。
105:36 そして神は、その国で最初に生まれた子を、ひとり残らず打ち倒した。彼らの力の最初の実りである子らを。
105:37 神は銀と金を持たせて、彼らを連れ出した。どの部族にも、よろめく者は一人もいなかった。
105:38 エジプトは、彼らが出て行くのを喜んだ。イスラエルへの恐れが、エジプトを襲っていたからだ。
105:39 主は雲を広げて覆いとし、火を与えて夜を照らされた。
105:40 人々が求めると、神はうずらを送り、天からのパンで彼らを満ち足らせた。
105:41 岩を開かれると、水がわき出た。それは川となって、乾いた地を流れていった。
105:42 神が、その聖なる約束を思い出したからだ。ご自分に仕えたアブラハムとの約束を。
105:43 主は喜びとともに自分の民を導き出した。選んだ人々を、歓喜の声とともに連れ出した。
105:44 神は彼らに、多くの国々の土地を与えた。ほかの民が汗して築いたものを、彼らに受け継がせた。
105:45 彼らが主の定めを守り、その教えを大切に守るためだった。主をたたえよ。
106:1 主をほめたたえよう。主に感謝しよう。主は良いお方。その慈しみはいつまでも変わらない。
106:2 だれが主の力あるわざを語り尽くせるだろう。だれがそのすべての誉れを言い表せるだろうか。
106:3 公正を守り、いつも正しいことを行う人は幸いだ。
106:4 主よ、あなたが自分の民を喜んで受け入れるとき、わたしを思い出してください。あなたが彼らを救うとき、わたしにも目を向けてください。
106:5 あなたに選ばれた人たちが幸せに暮らすのを見て、あなたの民の喜びをともに喜び、あなたのものとされた人たちと一緒に誇ることができるように。
106:6 わたしたちは先祖と同じように罪を犯しました。まちがったことをし、悪いことをしてきました。
106:7 わたしたちの先祖は、エジプトにいたとき、あなたが起こした数々の不思議を理解しなかった。あなたの豊かな慈しみを思い出そうともせず、海のほとり、あの葦の海で神に逆らった。
106:8 それでも主は、自分の力を見せるために、その名にかけて彼らを救った。
106:9 主は葦の海をしかりつけると、海は干上がった。そして荒れ地を進むように、人々を深い水の底を通らせた。
106:10 主は彼らを憎む者の手から救い、敵の手から助け出した。
106:11 水が敵たちをのみ込み、ひとりも生き残らなかった。
106:12 このとき彼らは神の言葉を信じ、その栄光をたたえて歌った。
106:13 でも、彼らはすぐにそのわざを忘れ、神の教えを待とうとしなかった。
106:14 荒野で激しい欲望にかられ、砂漠で神を試した。
106:15 主は彼らが求めるものを与えた。でも同時に、彼らの魂をやせ衰えさせる病を送り込んだ。
106:16 彼らは宿営の中でモーセをねたみ、主に仕える聖なる人アロンをねたんだ。
106:17 地が裂けてダタンを飲み込み、アビラムの仲間をのみ込んだ。
106:18 火はこの一団の中で燃え上がり、炎は悪い者たちを焼き尽くした。
106:19 彼らはホレブで子牛の像を造り、その金属の像を拝んだ。
106:20 彼らは自分たちの栄光を、草を食べる牛の像と取り替えた。
106:21 彼らは自分たちを救った神を忘れた。その神は、エジプトで大きな働きをし、
106:22 ハムの地での数々の奇跡、紅海でのおそろしいわざを。
106:23 それで神は、彼らを滅ぼすと言った。だが、神が選んだモーセが、破れ口に立って神の前に立ちはだかった。神の怒りをなだめ、滅びを食い止めるために。
106:24 彼らは慕わしいその地を見下し、神の約束を信じなかった。
106:25 自分の天幕でつぶやき、主の声に聞き従わなかった。
106:26 だから神は手を上げ、彼らに誓った。荒れ野で彼らを倒すと。
106:27 また、彼らの子孫を国々のあいだで倒し、さまざまな土地に散らそうとされた。
106:28 彼らはペオルのバアルにつき従い、死んだ神々へのいけにえを食べた。
106:29 彼らはこうした行いで神を怒らせた。すると、彼らの間に疫病が広がった。
106:30 ピネハスが立ち上がり、とりなしの祈りをささげた。すると、疫病はやんだ。
106:31 それは彼の正しい行いとして認められた。代々、いつまでも。
106:32 民はメリバの水のほとりで主を怒らせた。そのせいで、モーセまでとばっちりを受けることになった。
106:33 彼らが神の霊に逆らったので、モーセは軽はずみに口走ってしまった。
106:34 彼らは、主が命じられたとおりに、その土地の民を滅ぼさなかった。
106:35 それどころか、彼らは異教の民と交わり、その行いを見習ってしまった。
106:36 彼らは偶像を拝み、それが彼らを捕らえる罠となった。
106:37 彼らは自分の息子や娘を悪霊たちにいけにえとしてささげた。
106:38 彼らは罪のない血を流した。自分の息子や娘の血を、カナンの偶像へのいけにえとして流したのだ。こうして地は血で汚れた。
106:39 彼らは自分たちの行いで汚れ、そのふるまいで神を裏切った。
106:40 主はご自分の民に激しく怒り、ご自分が受け継いだ宝である彼らを忌み嫌われた。
106:41 神は彼らを異国の民の手に渡された。彼らを憎む者たちが、彼らを支配するようになった。
106:42 敵は彼らを苦しめ、彼らはその力の下に屈服させられた。
106:43 主は幾度も彼らを助け出した。それなのに彼らは自分たちの思いのままにさからい、その罪によって沈んでいった。
106:44 神は彼らの苦しみを目に留め、その叫びを聞いた。
106:45 神は彼らのために自分の契約を思い起こし、その豊かな慈しみのゆえに、思い直された。
106:46 そして、彼らを捕らえていった者すべての心に、彼らへのあわれみを起こさせた。
106:47 主よ、わたしたちの神よ、わたしたちを救い、国々の中から集めてください。あなたの聖なる名に感謝し、あなたをほめたたえて誇るために。
106:48 主イスラエルの神をたたえよう。今も、これからもずっと。すべての民が「アーメン」と言った。主をほめたたえよ。
107:1 主に感謝しよう。主は良いお方。その慈しみはいつまでも変わらない。
107:2 主に救い出された者はそう言おう。主が敵の手から救い出してくださったのだ。
107:3 もろもろの国から、東から西から、北から南から、彼らを集められた。
107:4 彼らは荒れ果てた砂漠をさまよい、住むための町にたどり着く道を見つけられなかった。
107:5 彼らは飢え、渇いて、その魂は体の中で弱り果てていった。
107:6 彼らが苦しみの中で主に叫び求めると、主は彼らをその悩みから救い出してくれた。
107:7 まっすぐな道を通り、住むべき町へと導いてくださった。
107:8 主の慈しみと、人々になしてくださった素晴らしいわざのために、みんなが主に感謝しますように。
107:9 主はかわいた心を満たし、飢えた魂を良いもので満たしてくださるからだ。
107:10 暗やみと死の陰にすわる者、苦しみと鉄の鎖につながれた者たち。
107:11 彼らが神の言葉に逆らい、いと高き方の教えをないがしろにしたからだ。
107:12 彼らを重労働で苦しめ、その心をくじいた。彼らは倒れても、助けてくれる者はいなかった。
107:13 彼らが苦しみの中で主に叫び求めると、主は彼らをその悩みから救い出してくれた。
107:14 暗やみと死の陰から彼らを連れ出し、その鎖を断ち切ってくださった。
107:15 主の慈しみと、人々になしてくださった素晴らしいわざのために、みんなが主に感謝しますように。
107:16 主は青銅の扉を打ちこわし、鉄のかんぬきを断ち切ったからだ。
107:17 愚かな者たちは、背いた罪のせいで病み、その過ちのせいで苦しんだ。
107:18 食べ物はどれも受けつけなくなり、死の門に近づいていった。
107:19 彼らが苦しみの中で主に叫び求めると、主は彼らをその悩みから救い出してくれた。
107:20 主を呼び求めると、神は言葉を送って彼らをいやし、滅びから救い出された。
107:21 主の慈しみと、人々になしてくださった素晴らしいわざのために、みんなが主に感謝しますように。
107:22 感謝のいけにえをささげ、喜びの歌でその働きを語り伝えるように。
107:23 船で海に出て行く人たちがいる。広い海で仕事をする人たちが。
107:24 彼らは主のわざを見た。深い海で、その驚くべきみわざを見たのだ。
107:25 主が命じられると、激しい嵐が起こり、海の波が高く上がった。
107:26 彼らは天まで上り、また深みへと下っていく。あまりの苦しさに、その心は溶けてしまう。
107:27 酔っぱらったようにふらふらとよろめき、なすすべを失う。
107:28 彼らが苦しみの中で主に叫び求めると、主は彼らをその悩みから救い出してくれた。
107:29 主があらしを静めると、海の波は穏やかになった。
107:30 こうして彼らは静けさが戻ったことを喜び、神は彼らを目指す港へと導いてくださった。
107:31 主の慈しみと、人々になしてくださった素晴らしいわざのために、みんなが主に感謝しますように。
107:32 民の集まりの中で神をあがめ、長老たちの集まりで神をほめたたえるように。
107:33 主は川を荒れ野に変え、湧き出る水を、かわいた地に変える。
107:34 実り豊かな土地も、そこに住む人々の悪のせいで、塩におおわれた不毛の地に変えられる。
107:35 主は荒れ野を池に変え、かわいた土地を水の湧く所に変える。
107:36 飢えた人たちをそこに住まわせる。こうして彼らは住む町を築き、
107:37 畑に種をまき、ぶどう畑を作った。そうしてたくさんの実りを収穫した。
107:38 主が彼らを祝福したので、彼らは大きく増えていった。その家畜が減ることもなかった。
107:39 彼らは、しいたげと苦しみと悲しみによって減らされ、打ちひしがれた。
107:40 主は身分の高い人たちに侮りを注ぎ、道もない荒れ地をさまよわせる。
107:41 でも主は貧しい人を苦しみの中から高く引き上げ、その家族を羊の群れのように増やされた。
107:42 正しい人はそれを見て喜び、不正はみな口を閉ざす。
107:43 すべて賢い人はこれらのことを心に留めてほしい。そうすれば、主の慈しみが分かるようになる。
歌。ダビデの賛歌。
108:1 神よ、わたしの心は揺るがない。歌おう、音楽を奏でよう。わたしの心のすべてを込めて。
108:2 目を覚ませ、竪琴よ、琴よ。わたしは夜明けを呼び起こす。
108:3 主よ、わたしは多くの民の中であなたをたたえ、さまざまな国々であなたをほめ歌う。
108:4 天よりも高くまでとどく、あなたの変わらぬ愛。空のかなたにまで広がる、あなたのまこと。
108:5 天よ、あなたの栄光が天よりも高く、地のすべてに満ちますように。
108:6 あなたを愛する人たちが救い出されるように、右の手で救い、わたしに答えてください。
108:7 神は聖なるところで語られた。「わたしは喜びにあふれ、シケムを分け与え、スコテの谷を測って配ろう。
108:8 ギレアデはわたしのもの。マナセもわたしのもの。エフライムはわたしの頭を守るかぶと、ユダはわたしの杖。
108:9 モアブはわたしの洗い桶。エドムにはわたしの履き物を投げつける。ペリシテには勝ちどきをあげる。」
108:10 だれがわたしを城壁の町へ導いてくれるのか。だれがわたしをエドムまで連れて行ってくれるのか。
108:11 神よ、あなたはわたしたちを見捨てたのではないか。神よ、あなたはもう、わたしたちの軍と共に出て行ってはくれない。
108:12 敵に立ち向かう力を、わたしたちに与えてください。人の助けなど、むなしいのだから。
108:13 神とともに、わたしたちは力を尽くして戦う。神が、わたしたちの敵を踏みつけてくださる。
109:1 わたしがたたえる神よ、どうか黙っていないでください。
109:2 わたしに向かって、悪意の口とうそつきの口を開いた。うそをつく舌でわたしのことを語る。
109:3 恨みに満ちた言葉でわたしを取り囲み、理由もないのにわたしを攻めてくる。
109:4 彼らはわたしの愛にこたえて、わたしを敵のように責める。それでもわたしは、ただ祈る。
109:5 彼らは、わたしが良くしたのに悪を返し、愛したのに憎しみを返してきた。
109:6 彼の上に悪い者を立ててください。訴える者を、彼の右側に立たせてください。
109:7 彼が裁かれるとき、有罪とされますように。その祈りさえ、罪となりますように。
109:8 その日々は短くされ、その務めはほかの人が奪う。
109:9 その子どもたちは父を失い、妻は夫を失いますように。
109:10 その子どもたちは家を追われてさまよい、物乞いをする。荒れ果てた住まいから追い立てられる。
109:11 彼が持っているすべての物を貸し主に取り上げられ、働いて得たものを他人に奪われますように。
109:12 彼に慈しみを示す者が、だれもいなくなればいい。父を亡くした子どもたちを、あわれむ者もいなくなればいい。
109:13 その子孫は絶え、次の代でその名は消し去られる。
109:14 その父たちの罪が主の前で忘れられず、その母の罪も消し去られませんように。
109:15 それらをいつも主の前に置き、彼らの記憶を地から消し去ってください。
109:16 彼が慈しみを示すことを心にとめず、かえって貧しい人、乏しい人を追い立て、心の打ちひしがれた人を殺そうとしたからだ。
109:17 彼は人をのろうことを好んだ。だから、そののろいが自分にふりかかりますように。人を祝福することを喜ばなかった。だから、祝福が自分から遠ざかりますように。
109:18 彼はのろいを衣のように身にまとった。だからのろいは水のように彼の中にしみ込み、油のように骨にしみ込んでいく。
109:19 それを自分がまとうマントのように、いつも締める帯のように、その身につけさせてください。
109:20 これがわたしを訴える者たちへの、主からの報いだ。わたしに逆らって悪口を言う者たちへの報いだ。
109:21 主よ、わたしの神よ、あなたの名のために、わたしを助けてください。あなたの慈しみは深いのだから、わたしを救い出してください。
109:22 わたしは貧しく、助けを必要としている。心は打ちのめされ、内側から傷ついている。
109:23 わたしは夕日の影のように消えていく。いなごのように振り払われる。
109:24 わたしのひざは断食でふらつき、体はやせ細ってしまった。
109:25 わたしは彼らにとって、あざけりの的になった。わたしを見ると、彼らは頭を振る。
109:26 わたしの神、主よ、わたしを助けてください。あなたの変わらぬ愛のとおりに、わたしを救ってください。
109:27 主よ、これがあなたの手のわざであること、あなたがそれをなさったことを、彼らにわからせてください。
109:28 彼らは呪う。でも、あなたは祝福してくださる。彼らは立ち上がっても、恥をかく。あなたのしもべは喜ぶ。
109:29 わたしを訴える者に恥をまとわせてください。自分の恥を上着のように身にまとわせてください。
109:30 わたしはこの口で、主に心からの感謝をささげる。大勢の人の中で、主をほめたたえる。
109:31 主は貧しい人の右に立ってくださる。この人の命を罪に定めようとする者から、彼を救い出すためだ。
110:1 主はわたしの主にこう言われた。「わたしがあなたの敵をあなたの足台とするまで、わたしの右に座っていなさい。」
110:2 主はあなたの力の杖をシオンから伸ばされる。あなたは敵のただ中で治めよ。
110:3 あなたの民は、あなたが戦いに出る日に、喜んで進んで集まる。聖なる輝きをまとい、夜明けの胎から生まれる露のように、あなたの若者たちがあなたのもとに来る。
110:4 主は誓いを立てた。その心が変わることはない。「あなたはメルキゼデクの流れを受け継ぐ祭司として、永遠に祭司であり続ける。」
110:5 主はあなたの右に立ち、怒りの日に王たちを打ち砕く。
110:6 主はもろもろの国々をさばき、いたるところを死体で満たす。広い地を治める者たちの頭を打ち砕く。
110:7 彼は道のほとりの谷川の水を飲む。だから、頭を高く上げる。
111:1 主をほめたたえよう。わたしは心をつくして主に感謝する。正しく生きる人たちの集まりで、みんなの前で。
111:2 主のわざは偉大だ。それを喜ぶ人はみな、そのわざを深く探し求める。
111:3 そのわざには栄光と気高さがあふれ、その正しさは永遠に変わることがない。
111:4 主は、その奇跡を人々の記憶に刻まれた。主は恵み深く、あわれみに満ちている。
111:5 主はご自分を敬う人に食べ物を与える。そして、ご自分の約束をいつまでも忘れない。
111:6 主はご自分の民に、力ある働きを示された。国々の土地を、彼らに与えるために。
111:7 そのみ手のわざは真実で正しい。その教えはすべて信頼できる。
111:8 これらは世々かぎりなく堅く立ち、真実と正しさによって成し遂げられた。
111:9 主はご自分の民を救い出し、契約を永遠のものと定められた。その名は聖なるもの、畏れかしこむべきものである。
111:10 主を恐れることは、知恵の始まりだ。主の教えを守る人はみな、すぐれた判断力を身につける。主への賛美は、いつまでも消えることがない。
112:1 主をほめたたえよう。主を敬い、その教えを心から喜ぶ人は幸いだ。
112:2 その子孫は地で強くなる。正しい人たちの世代は祝福される。
112:3 繁栄と富がその家にあり、その正しさは永遠に変わることがない。
112:4 光は正しい人たちのために、暗やみの中に輝き出る。恵み深く、あわれみに満ち、正しい人が。
112:5 恵みを施し、惜しみなく貸す人は幸せだ。そういう人は自分のことも正しく進めていく。
112:6 正しい人は決して倒れることがない。いつまでも人々の記憶に残る。
112:7 彼は悪い知らせを恐れない。その心は主に信頼して、しっかりと揺るがない。
112:8 その心は揺るがず、恐れることがない。ついに、自分を苦しめる者たちが敗れるのを見る。
112:9 彼は惜しみなく分け与え、貧しい人たちに施した。その正しさはいつまでも消えることがない。その角は誉れを受けて高く上げられる。
112:10 悪しき者はそれを見て怒り、歯ぎしりしながら消えていく。悪しき者の望みはついえるのだ。
113:1 主をほめたたえよう。主に仕える人たちよ、たたえよう。主の名をたたえよう。
113:2 今より、とこしえに至るまで、主のみ名がたたえられますように。
113:3 日の昇るところから日の沈むところまで、主の名がたたえられる。
113:4 主はすべての国々の上に高く、その栄光は天よりも高い。
113:5 主にくらべられる者がいるだろうか。わたしたちの神、主は。高い所に座り、
113:6 天と地を、身をかがめてご覧になる方。
113:7 主は貧しい人を土のちりから起こし、乏しい人をごみの山から引き上げる。
113:8 もろもろの君主たちと、その民の君主たちと、共に座らせてくださる。
113:9 また、子を産めなかった女に家庭を与え、子どもたちに囲まれた幸せな母にする。主をほめたたえよ。
114:1 イスラエルがエジプトを出て、ヤコブの家が言葉の通じない民のもとを離れたとき、
114:2 ユダは神の聖なる住まいとなり、イスラエルは神が治める国となった。
114:3 海はそれを見て逃げ、ヨルダン川は引き返した。
114:4 山々は雄羊のように跳ね、丘は子羊のように跳ねた。
114:5 海よ、どうして逃げるのか。ヨルダン川よ、どうして後ろに引き返すのか。
114:6 山よ、おまえたちはなぜ雄羊のように跳ねるのか。丘よ、おまえたちはなぜ子羊のように跳ねるのか。
114:7 地よ、主の前におののけ。ヤコブの神の前におののけ。
114:8 岩を池に変え、硬い岩を水のわく泉に変えた方だ。
115:1 主よ、栄光をわたしたちにではなく、わたしたちにではなく、ただあなたの名にこそ帰してください。あなたの変わらぬ愛と、あなたの真実のゆえに。
115:2 神々を信じる国々に、こう言わせておいていいのか。「あいつらの神は、いったいどこにいるんだ」と。
115:3 われらの神は天におられる。そして、みこころのままに、すべてを行われる。
115:4 偶像は銀と金でできている。人の手が造ったものだ。
115:5 口があっても語れない。目があっても見えない。
115:6 耳があっても聞こえない。鼻があってもかげない。
115:7 手があっても、つかむことができない。足があっても、歩くことができない。のどからは、声ひとつ出せない。
115:8 偶像を造る者も、それに頼る者もみな、偶像と同じになる。
115:9 イスラエルよ、主に信頼せよ。主はあなたたちの助け、その盾となってくださる方だ。
115:10 アロンの家よ、主に信頼せよ。主はあなたたちの助け、その盾となってくださる方だ。
115:11 主を敬う人たちよ、主に信頼しなさい。主はあなたたちの助け、その盾となってくださる方だ。
115:12 主はわたしたちを心に留め、祝福してくださる。イスラエルの家を祝福し、アロンの家を祝福し、
115:13 主を恐れる者を、主は祝福される。小さい者も、大いなる者も。
115:14 主があなたがたを増やしてくださるように。あなたがたも、その子どもたちも増えるように。
115:15 天地を造られた主が、あなたがたを祝福してくださるように。
115:16 天は主のもの。でも地は人に与えられた。
115:17 死んだ者は主をほめたたえない。沈黙の国に下る者も、だれもほめたたえない。
115:18 わたしたちは、今このときから永遠まで、主をたたえよう。主をほめたたえよ。
116:1 わたしは主を愛する。主がわたしの声、わたしの願いを聞いてくれたからだ。
116:2 主はわたしに耳を傾けてくれた。だから、生きているかぎり、わたしは主を呼び求める。
116:3 死の綱がわたしを取り巻き、よみの苦しみがわたしに襲いかかった。わたしは苦しみと悲しみの中にいた。
116:4 詩を呼んだそのとき、わたしは主の名を呼んだ。「主よ、お願いです。わたしの魂を助け出してください。」
116:5 主は恵み深く、正しい方。わたしたちの神は、あわれみに満ちている。
116:6 主は素朴な人を守ってくださる。わたしが打ちのめされたとき、主はわたしを救ってくださった。
116:7 わたしの魂よ、おまえの安らぎに帰りなさい。主がおまえに、豊かに良くしてくださったのだから。
116:8 あなたはわたしの魂を死から、わたしの目を涙から、わたしの足をつまずきから助け出してくれた。
116:9 わたしは命ある者の地で、主の前を歩む。
116:10 「わたしは信じている」とわたしは言った。深く苦しんでいたときも。
116:11 わたしは慌てふためいて言った。「人はみんな当てにならない」と。
116:12 わたしにこれほどよくしてくださった主に、わたしはどう応えたらいいのだろう。
116:13 わたしは救いの杯をかかげ、主の名を呼ぶ。
116:14 わたしは、すべての民の前で、主にささげた誓いを果たす。
116:15 主の慈しみに生きる人の死は、主の目に尊いものだ。
116:16 主よ、わたしはあなたのしもべです。わたしはあなたのしもべ、はしための子です。あなたはわたしの縄目を解いてくださいました。
116:17 わたしは感謝のいけにえをあなたにささげ、主の名を呼び求めます。
116:18 わたしは、すべての民の前で、主にささげた誓いを果たす。
116:19 エルサレムよ、主の家の庭で、あなたのただ中でそれを果たす。主をほめたたえよ。
117:1 もろもろの国よ、主をほめたたえよう。すべての民よ、主をたたえよう。
117:2 主のわたしたちへの慈しみは大きく、主のまことはとこしえに変わらない。主をほめたたえよ。
118:1 主に感謝せよ。主は良いお方。その慈しみはいつまでも変わらない。
118:2 イスラエルは言え、「その慈しみはとこしえに変わらない」と。
118:3 アロンの家は言え、「その慈しみはとこしえに変わらない」と。
118:4 主を敬う人たちは言おう、「その慈しみはとこしえに変わらない」と。
118:5 わたしは苦しみの中から主を呼び求めた。すると主はわたしに答えて、広やかな場所へと導き出してくださった。
118:6 主がわたしの味方だ。だから恐れることはない。人がわたしに何をできるだろう。
118:7 主はわたしの味方となって、助けてくださる。だから、わたしを憎む者たちが敗れるのを、わたしはこの目で見る。
118:8 主に身を寄せるほうが、人に頼るよりも安全だ。
118:9 主に身を寄せるほうが、力ある人々に頼るよりも安全だ。
118:10 もろもろの国々がわたしを取り囲んだ。でも、わたしは主の名によって彼らを打ち破る。
118:11 彼らはわたしを囲んだ、何度も囲んだ。でも、わたしは主の名によって彼らを打ち破る。
118:12 蜂のように、彼らはわたしを取り囲んだ。でも、いばらの燃える火のようにすぐ消えてしまった。わたしは主の名によって、彼らを打ち破る。
118:13 わたしは激しく突き飛ばされ、倒れそうになった。でも、主が助けてくれた。
118:14 主はわたしの力、わたしの歌。そして、わたしの救いとなってくださった。
118:15 正しい者の天幕には、喜びと勝利の歌が響く。「主の右の手は力ある働きをする。
118:16 主の右手は高くあげられ、主の右手は力強く働く。」
118:17 わたしは死なない。生きて、主がなさったことを語り伝える。
118:18 主はわたしを厳しく懲らしめた。でも、死にわたすことはしなかった。
118:19 わたしのために、正義の門を開けてほしい。わたしはそこから入って、主に感謝をささげる。
118:20 これは主の門。正しい者はこの門を通って入る。
118:21 わたしはあなたに感謝します。あなたはわたしに答え、わたしの救いとなってくださった。
118:22 家を建てる人たちが捨てた石。それが、いちばん大切な土台の石になった。
118:23 これは主がなさったこと。わたしたちの目には驚くべきことだ。
118:24 これは主が造られた日。この日を喜び楽しもう。
118:25 主よ、どうかわたしたちを救ってください。主よ、どうかわたしたちを栄えさせてください。
118:26 主のみ名によって来られる方に、祝福がありますように。わたしたちは主の家から、あなたがたを祝福する。
118:27 主は神。わたしたちを照らしてくださった。さあ、祭りのいけにえを綱で縛り、祭壇の角に引いていこう。
118:28 あなたはわたしの神。だから、あなたに感謝する。あなたはわたしの神。だから、あなたをあがめる。
118:29 主に感謝せよ。主は良いお方。その慈しみはいつまでも変わらない。
119:1 幸いなのは、正しい道を歩む人たち。主の教えのままに生きる人たちだ。
119:2 主のあかしを守り、心をつくして主を求める人は、幸いだ。
119:3 またその人たちは悪を行わず、主の道を歩んでいる。
119:4 あなたは自分のさとしを命じ、それを固く守るようにと言われた。
119:5 どうかわたしの歩む道が定まって、あなたの教えを守れますように。
119:6 あなたのすべての命令から目をそらさなければ、わたしは恥をかくことはない。
119:7 わたしは正しい心であなたに感謝します。あなたの正しい定めを学ぶときに。
119:8 わたしはあなたのおきてを守ります。わたしを見捨てないでください。決して。
119:9 若い人はどうすれば自分の生き方をきれいに保てるだろう。あなたの言葉のとおりに生きることによってだ。
119:10 わたしは心をこめてあなたを求めてきた。どうか、あなたの命令からわたしを迷い出させないでください。
119:11 わたしは、あなたに対して罪を犯さないように、あなたの言葉を心の中に大切にしまってきた。
119:12 主よ、あなたはたたえられる存在です。あなたのおきてをわたしに教えてください。
119:13 わたしはくちびるで、あなたの口から出るすべての定めを語り伝えます。
119:14 わたしは、たくさんの富を手にしたときのように、あなたの教えの道を喜ぶ。
119:15 わたしはあなたの戒めを深く思い、あなたの道から目を離さない。
119:16 あなたの定めを、わたしは楽しむ。あなたの言葉を、決して忘れない。
119:17 あなたのしもべに豊かに報いてください。そうすれば、わたしは生きて、あなたの言葉を守ります。
119:18 わたしの目を開いてください。そうすれば、あなたの教えの中にある驚くべきことを見ることができます。
119:19 わたしはこの地では旅人です。あなたの戒めを、わたしから隠さないでください。
119:20 わたしの魂は、いつもあなたの定めを慕い焦がれて、くだけるほどです。
119:21 あなたは、あなたの教えからそれてしまう、高ぶった者、のろわれた者を叱る。
119:22 わたしへの悪口や見下しを取り去ってほしい。わたしはあなたの教えを守ってきたのだから。
119:23 もろもろの君主が居並び、わたしのことを話していても、あなたのしもべは、あなたのおきてを深く思う。
119:24 あなたのあかしは、わたしの喜び。わたしに助言をくれる友だ。
119:25 わたしの魂はちりに伏している。あなたの言葉のとおりに、わたしを生き返らせてください。
119:26 わたしは自分の歩んできた道を打ち明けた。すると、あなたは答えてくれた。あなたのおきてをわたしに教えてほしい。
119:27 あなたの命令の道をわきまえさせてください。わたしはあなたの驚くべきわざを深く思います。
119:28 わたしの魂は悲しみで溶けていく。あなたの言葉のとおりに、わたしを強くしてください。
119:29 偽りの道をわたしから遠ざけてください。あなたの教えを、恵みとして与えてください。
119:30 わたしは真実の道を選んだ。あなたの定めをいつも自分の前に置いている。
119:31 主よ、わたしはあなたの教えにしっかりとしがみついています。どうか、わたしに恥をかかせないでください。
119:32 わたしはあなたの命令の道を走ります。あなたがわたしの心を広くしてくださるからです。
119:33 主よ、あなたの定めの道をわたしに教えてください。わたしは最後までそれを守ります。
119:34 わたしに理解する力をください。そうすれば、あなたの教えを守り、心をつくしてそれに従います。
119:35 わたしをあなたの命令の道に歩ませてください。わたしはそれを喜ぶからです。
119:36 わたしの心を、あなたの教えに向けさせてください。自分の利益をむさぼる方へ向かわないように。
119:37 わたしの目を、むなしいものから遠ざけてください。あなたの道の中で、わたしを生かしてください。
119:38 あなたを敬うわたしに、あなたの約束を果たしてください。
119:39 わたしが恐れているそしりを取り除いてください。あなたの定めは正しいのだから。
119:40 見よ、わたしはあなたの教えを慕い求めている。あなたの義によって、わたしを生かしてください。
119:41 主よ、あなたの約束のとおりに、あなたの慈しみと救いをわたしに届けてください。
119:42 そうすれば、わたしをそしる者に答えることができる。わたしはあなたの言葉に信頼しているからだ。
119:43 またあなたの真実の言葉を、わたしの口から取り去らないでください。わたしはあなたの裁きに望みをかけているからです。
119:44 わたしはいつも、あなたの教えを守り続ける。いつまでも、永遠に。
119:45 わたしは自由に歩むことができる。あなたの教えを追い求めてきたからだ。
119:46 わたしは王たちの前でもあなたの教えを語り、恥じることはない。
119:47 わたしはあなたの命令を愛していて、それを心から喜びとする。
119:48 わたしは愛するあなたの命令に向かって手を上げる。そして、あなたのおきてを心に思いめぐらす。
119:49 わたしはあなたのしもべです。どうか、わたしに約束してくれた言葉を思い出してください。あなたはその言葉で、わたしに希望を持たせてくれたのです。
119:50 あなたの約束がわたしを生かしてくれる。だから、これが苦しみの中でのわたしの慰めだ。
119:51 高ぶる者はわたしをひどくばかにする。それでもわたしは、あなたの教えから離れない。
119:52 主よ、わたしは昔からのあなたの裁きを思い出し、それに慰められる。
119:53 あなたのおきてを捨てる悪い者たちのことで、わたしは激しい怒りに包まれる。
119:54 あなたの定めは、わたしの旅の住まいで歌となった。
119:55 主よ、わたしは夜の間にあなたの名を思い出し、あなたの教えを守ります。
119:56 わたしがこの祝福を得たのは、あなたの教えを守ってきたからだ。
119:57 主はわたしの受けるべき分。わたしはあなたの言葉を守ると約束した。
119:58 わたしは心を込めて、あなたに願い求める。約束のとおり、わたしをあわれんでください。
119:59 わたしは自分の生き方をふり返り、あなたの教えのほうへと足を向け直しました。
119:60 わたしはあなたの命令を守るために、すぐに行動した。ためらいはしなかった。
119:61 悪しき者の縄がわたしを縛りつけても、わたしはあなたの教えを忘れなかった。
119:62 わたしは真夜中に起きて、あなたに感謝する。あなたの正しい裁きのゆえに。
119:63 わたしは、あなたを恐れるすべての人、あなたの教えを守る人たちの仲間だ。
119:64 主よ、地はあなたの慈しみで満ちている。あなたの定めをわたしに教えてください。
119:65 主よ、あなたは約束のとおり、このしもべに良くしてくださいました。
119:66 わたしに正しい判断力と知識を教えてください。あなたの命令を信じているからです。
119:67 わたしは苦しみを受ける前は、迷ってばかりいた。でも今は、あなたの言葉を守っている。
119:68 あなたは善そのものであり、良いことをなさる方だ。あなたのおきてをわたしに教えてください。
119:69 高ぶる者は偽りでわたしを塗りたくる。でもわたしは心を尽くして、あなたの戒めを守る。
119:70 彼らの心は脂肪のように鈍っている。でもわたしは、あなたの教えを喜ぶ。
119:71 苦しみにあったことは、わたしにとって良かった。それによって、あなたのおきてを学ぶことができたからだ。
119:72 あなたの口から出る教えは、わたしにとって、何千もの金や銀よりも尊い。
119:73 あなたのその手がわたしを造り、形づくってくれた。どうか、あなたのおきてを学べるように、わたしに理解する力をください。
119:74 あなたを敬う人たちは、わたしを見て喜ぶ。わたしがあなたの言葉に望みをかけてきたからだ。
119:75 主よ、あなたのさばきが正しいことを、わたしは知っています。あなたが真実な思いから、わたしを苦しめられたことも。
119:76 あなたのしもべに約束してくださったとおり、あなたの慈しみで、わたしを慰めてください。
119:77 あなたのあわれみをわたしに注いでください。そうすれば、わたしは生きられる。あなたの教えこそ、わたしの喜びだから。
119:78 高ぶる者たちが恥を受けますように。彼らは理由もなく、偽りでわたしを陥れたのだから。でもわたしは、あなたの教えを深く思う。
119:79 あなたを敬う人たちを、わたしのところに帰らせてください。あなたの教えを知る人たちを。
119:80 わたしの心が、あなたの掟にまっすぐ従いますように。そうすれば、恥をかくことはない。
119:81 わたしの魂は、あなたの救いを待ち焦がれて力尽きそうだ。でも、あなたの言葉に望みをかけている。
119:82 わたしの目は、あなたの約束を待ち続けて疲れきった。「いつになったら、わたしを慰めてくれるのですか」と。
119:83 わたしは煙の中の革袋のようになってしまった。それでも、あなたの定めを忘れはしなかった。
119:84 あなたのしもべの日々は、あとどれくらいなのか。わたしを追い回す者を、あなたはいつ裁いてくれるのか。
119:85 高ぶる者はわたしを落とし入れようと穴を掘った。あなたの教えに従わない者たちだ。
119:86 あなたの命令はすべて真実だ。でも人々は偽りでわたしを追いつめる。どうか助けてほしい。
119:87 彼らはこの地から、わたしをもう少しで滅ぼすところだった。それでもわたしは、あなたの教えを捨てなかった。
119:88 あなたの慈しみにしたがって、わたしを生かしてください。そうすれば、あなたの口から出るあかしを守ります。
119:89 主よ、あなたの言葉はとこしえに天でしっかりと立っている。
119:90 世代から世代へ、あなたの真実は続く。あなたが大地を造り、それはしっかりと立っている。
119:91 これらは今日もあなたの定めに従って立ち続けている。すべてのものが、あなたに仕える者だからだ。
119:92 あなたのおしえがわたしの喜びでなかったら、わたしは苦しみの中で滅びていただろう。
119:93 わたしはあなたの教えを決して忘れない。あなたはそれによって、わたしを生かしてくださったからだ。
119:94 あなたのものです。わたしを救ってください。わたしはあなたの教えを大切に守ってきたのだから。
119:95 悪しき者はわたしを滅ぼそうと待ち構えている。でも、わたしはあなたの教えをよく考える。
119:96 わたしはすべての完全なものに限りがあるのを見た。でも、あなたの命令はどこまでも広い。
119:97 わたしはあなたの教えを、どれほど愛していることか。一日中、それを深く思いめぐらせている。
119:98 あなたの教えは、いつもわたしのそばにある。だから敵よりも、わたしを賢くしてくれる。
119:99 わたしはあなたの教えをいつも心にかけている。だから、わたしを教えるどの師よりも深く物事がわかる。
119:100 わたしはあなたの教えを守ってきた。だから、年老いた人たちよりも深く物事を理解している。
119:101 わたしは、あなたの言葉を守るために、すべての悪い道から足を引きもどした。
119:102 わたしはあなたの定めから離れていない。あなたがわたしに教えてくださったからだ。
119:103 あなたの言葉は、わたしの口にとても甘い。蜜よりも甘く感じる。
119:104 あなたのおきてからわたしは悟りを得る。だから、偽りの道をすべて憎む。
119:105 あなたのことばは、わたしの足もとを照らすともしび。わたしの道を照らす光。
119:106 わたしはあなたの正しい定めを守ると誓い、そのとおりに実行した。
119:107 わたしはひどく苦しんでいます。主よ、あなたの言葉のとおりに、わたしを生かしてください。
119:108 主よ、わたしが心から捧げる感謝のことばを、どうか受け取ってください。そして、あなたの定めを教えてください。
119:109 わたしの魂はいつも危険にさらされている。それでも、あなたの教えを忘れることはない。
119:110 悪しき者はわたしのために罠を仕掛けた。でも、わたしはあなたの戒めから外れなかった。
119:111 あなたの教えを、わたしはいつまでも受け継ぐ財産とする。それはわたしの心の喜びだから。
119:112 わたしはあなたのおきてを守ろうと決めた。いつまでも、最後まで。
119:113 わたしは、どっちつかずの心の人を憎む。でも、あなたの教えを愛している。
119:114 あなたはわたしの隠れ家、わたしの盾。わたしはあなたの言葉に望みをおいています。
119:115 悪をなす者たちよ、わたしから離れていけ。わたしは自分の神の命令を守るのだから。
119:116 あなたの約束のとおり、わたしをささえて生かしてください。この望みが裏切られて、恥をかくことのないように。
119:117 わたしを支えてください。そうすれば、わたしは救われます。そして、いつもあなたのおきてに目を注ぎます。
119:118 すべて、あなたの掟から迷い出る者を、あなたは退けられる。彼らの欺きは、むなしい偽りだから。
119:119 さばき去られた金かすのように、あなたは地上のすべての悪しき者を取り除く。だから、わたしはあなたの教えを愛する。
119:120 わたしの体はあなたを恐れて震える。わたしはあなたの裁きを恐れる。
119:121 わたしは正しく公平なことを行ってきた。だから、わたしを虐げる者たちの手に、わたしを引き渡さないでください。
119:122 主のしもべであるわたしのために保証人となってください。高ぶる者たちに、わたしを苦しめさせないでください。
119:123 わたしの目は、あなたの救いと、正しい約束を待ち焦がれて、疲れ果てている。
119:124 あなたの慈しみのとおりに、僕であるわたしを扱い、あなたの掟をわたしに教えてください。
119:125 わたしはあなたのしもべです。どうか、わたしに理解する力を与えてください。あなたの教えを、わたしが深く知るために。
119:126 彼らはあなたの律法を破りました。今こそ、主が動かれるときです。
119:127 それゆえ、わたしはあなたの命令を、金よりも、純金よりも愛する。
119:128 それゆえ、わたしはあなたの命令すべてを正しいと考え、偽りの道をすべて憎む。
119:129 あなたのさとしは驚くほどすばらしい。だからわたしの魂は、それを守る。
119:130 み言葉が開かれると光が差し込み、何も知らない人に知恵を与える。
119:131 わたしはあなたの命令を強く求めて、口を大きく開けてあえいだ。
119:132 み名を愛する者にいつもしてくださるように、わたしに顔を向けて、あわれんでください。
119:133 あなたの約束のとおりに、わたしの歩みを確かにしてください。どんな悪にも、わたしを支配させないでください。
119:134 わたしを人の抑圧から救い出してください。そうすれば、あなたの教えを守ります。
119:135 み顔をあなたのしもべの上に照らし、あなたのおきてをわたしに教えてください。
119:136 人々があなたの教えを守らないので、わたしの目からは涙が川のように流れる。
119:137 主よ、あなたは正しい方。あなたのさばきも正しい。
119:138 あなたの定めは正しく、この上なく信頼できる。あなたはそれを命じられた。
119:139 わたしの熱心さがわたしを焼き尽くす。敵があなたの言葉を忘れてしまったからだ。
119:140 あなたの言葉は完全に純粋だ。だから、あなたのしもべはそれを愛している。
119:141 わたしは取るに足りない者で、人に見下される。それでも、あなたの教えを忘れない。
119:142 あなたの義は永遠に正しく、あなたの教えは真実だ。
119:143 悩みと苦しみがわたしを襲った。それでも、あなたの命令はわたしの喜びだ。
119:144 あなたの教えは永遠に正しい。わたしに理解する力を与えてください。そうすれば、わたしは生きられる。
119:145 わたしは心を尽くして呼び求めます。主よ、答えてください。わたしはあなたの掟を守ります。
119:146 わたしはあなたを呼び求めます。どうかわたしを救ってください。わたしはあなたの教えを守ります。
119:147 朝早く、まだ暗いうちにわたしは起き出して、あなたに助けを求めて叫ぶ。あなたの言葉に望みをかけているから。
119:148 わたしの目は夜通し、寝ずに開いている。あなたの言葉を深く思うために。
119:149 あなたのその変わらぬ愛によって、わたしの声を聞いてください。主よ、あなたの正しい裁きによって、わたしを生かしてください。
119:150 わたしを苦しめようとたくらむ者たちが、すぐそこまで近づいている。彼らはあなたの教えから遠く離れてしまっている。
119:151 主よ、あなたは近くにいてくれる。あなたの命令はすべて、真実だ。
119:152 わたしは昔から知っていた。あなたの教えは、あなたが永遠に立てたものだと。
119:153 わたしの苦しみを見て、助け出してください。わたしはあなたの教えを忘れていないからです。
119:154 わたしのために戦い、わたしを救い出してください。あなたの約束のとおりに、わたしを生かしてください。
119:155 救いは悪い者から遠く離れている。彼らはあなたの定めを求めようとしないからだ。
119:156 主よ、あなたのあわれみは深い。あなたの正しい裁きのとおりに、わたしを生かしてください。
119:157 多くの者がわたしを追い回し、苦しめる。それでもわたしは、あなたの教えから離れない。
119:158 わたしは裏切る者たちを見て、うんざりする。あなたの言葉を守らないからだ。
119:159 主よ、わたしがあなたの戒めをどれほど愛しているか、見てください。あなたの慈しみにしたがって、わたしを生かしてください。
119:160 あなたの言葉はすべて真実だ。あなたの正しい定めは、どれもいつまでも変わらない。
119:161 君たちはわけもなくわたしを追いつめる。でもわたしの心は、あなたの言葉におそれを抱く。
119:162 わたしは、大きな戦利品を見つけた人のように、あなたの言葉を喜んでいる。
119:163 わたしは偽りを憎み、嫌う。でも、あなたの教えを愛している。
119:164 わたしはあなたの正しい定めのゆえに、一日に七度あなたをたたえる。
119:165 あなたのおしえを愛する人には大きな平安がある。彼らをつまずかせるものは何もない。
119:166 主よ、わたしはあなたの救いを待ち望み、あなたの命令を守り行ってきました。
119:167 わたしの魂は、あなたの教えを守ってきた。わたしはそれを心から愛している。
119:168 わたしはあなたの戒めと定めを守ってきた。わたしの歩む道はすべて、あなたの前にあるからだ。
119:169 主よ、わたしの叫びをあなたのもとに届かせてください。あなたの言葉のとおり、わたしに知恵をお与えください。
119:170 わたしの願いがあなたの前に届きますように。あなたの言葉のとおり、わたしを助けてください。
119:171 わたしのくちびるは、あなたをたたえる歌を口にする。あなたが自分のおきてをわたしに教えてくれるからだ。
119:172 あなたのすべての命令は正しい。だから、わたしの舌はあなたの言葉を歌う。
119:173 あなたのみ手を、わたしの助けとしてください。わたしはあなたの戒めを選んだのだから。
119:174 主よ、わたしはあなたの救いを待ち望んでいます。あなたの教えは、わたしの喜びです。
119:175 わたしを生かしてください。そうすれば、わたしはあなたをほめたたえます。あなたの定めが、わたしを助けてくれますように。
119:176 わたしは、迷い出た羊のようにさまよってしまった。あなたのしもべを、どうか捜し出してほしい。わたしは、あなたの戒めを忘れたりしないから。
120:1 わたしが苦しみの中で主に呼びかけると、主は答えてくださった。
120:2 主よ、うそをつく唇から、人をだます舌から、わたしを助け出してください。
120:3 偽りの舌よ、おまえに何が与えられ、何が加えられるのだろうか。
120:4 ますらおの鋭い矢と、えにしだの燃える炭のようだ。
120:5 わたしはなんて不幸なんだ。メシェクに身を寄せ、ケダルの天幕のそばで暮らしている。
120:6 わたしの魂は、平和を憎む者たちのところに、もう長いこと住んできた。
120:7 わたしは平和を願っている。でも、わたしが口を開くと、彼らは戦いたがる。
121:1 山に向かって、わたしは目を上げる。わたしの助けは、どこから来るのだろう。
121:2 わたしの助けは、天と地を造られた主から来る。
121:3 主はあなたの足がぐらつかないようにしてくれる。あなたを守る方が、うとうとすることはない。
121:4 見よ、イスラエルを守る方は、まどろむこともなく、眠ることもない。
121:5 主はあなたを守る方。主はあなたのすぐ右にいて、日差しをさえぎる陰となってくれる。
121:6 昼は太陽があなたを打つことはなく、夜は月があなたを打つこともない。
121:7 主はあらゆる災いからあなたを守り、あなたの魂を守ってくれる。
121:8 主は、あなたが出て行くのも帰って来るのも、今から永遠に至るまで守ってくださる。
122:1 人々がわたしに「主の家に行こう」と言ったとき、わたしはうれしかった。
122:2 エルサレムよ、わたしたちの足は今、あなたの門の内に立っている。
122:3 エルサレムは、しっかりとつながった一つの町として建てられている。
122:4 そこには数々の部族が上って行く。主の部族が。それはイスラエルへの定め。主の名に感謝するためだ。
122:5 そこには裁きの座、ダビデの家の王座が置かれていた。
122:6 エルサレムの平和を祈ろう。「あなたを愛する人たちが栄えますように。」
122:7 「城壁のうちに平和があり、宮殿のうちに安らぎがありますように。」
122:8 わたしの兄弟や友のために、わたしは「あなたのうちに平和があるように」と言おう。
122:9 主の家、わたしたちの神の家のために、わたしはあなたの幸いを求めよう。
123:1 天に住んでおられるあなたに、わたしは目を上げます。
123:2 主に目を注ぐ僕たちが主人の手もとを見つめるように、召し使いの女が女主人の手もとを見つめるように、わたしたちの目は、わたしたちの神、主に注がれる。主がわたしたちをあわれんでくださるまで。
123:3 主よ、わたしたちをあわれんでください。あわれんでください。わたしたちは、さげすみを受けすぎて、もううんざりです。
123:4 わたしたちの魂は、もう限界だ。のんきに暮らす者たちのあざけり、おごり高ぶる者たちの見下しで、いっぱいになっている。
124:1 主が味方でいてくれなかったら――さあ、イスラエルよ、こう言おう。
124:2 主がわたしたちの味方でなかったら、人々がわたしたちに襲いかかってきたとき、
124:3 怒りがわたしたちに向かって燃え上がったとき、彼らはわたしたちを生きたまま丸のみにしていただろう。
124:4 大水がわたしたちを押し流し、激流がわたしたちの魂の上を越えていたはずだ。
124:5 われらの魂の上を、荒れ狂う水が越えていっただろう。
124:6 主はほめたたえられますように。主はわたしたちを、あいつらの歯のえじきにはされなかった。
124:7 わたしたちは、鳥をねらう猟師のわなから、逃げ出した鳥のように助かった。わなは壊れ、わたしたちは逃げ出したのだ。
124:8 われらの助けは、天と地を造られた主の名にある。
125:1 主に信頼する人は、シオンの山のようだ。決して揺るがず、いつまでも動じることがない。
125:2 山々がエルサレムを囲んでいるように、主も、今この時からいつまでも、ご自分の民を囲んでくださる。
125:3 悪しき者の杖が、正しい人たちに与えられた土地に居すわることはない。正しい人たちが、悪に手を染めてしまわないためだ。
125:4 主よ、善良な人たちに、心のまっすぐな人たちに、幸せを与えてください。
125:5 転じて自分の曲がった道に進む者たちを、主は悪を行う者たちと一緒に去らせる。イスラエルの上に、平和がありますように。
126:1 主がシオンを元どおりに回復してくださったとき、わたしたちは夢を見ている人のようだった。
126:2 その時、わたしたちの口は笑いで満たされ、舌は喜びの歌であふれた。そしてほかの国々の人たちはこう言った。「主はこの人たちのために、すばらしいことをされた」と。
126:3 主はわたしたちのために大きなことをしてくださった。だから、わたしたちは喜んだ。
126:4 主よ、わたしたちを元どおりにしてください。ネゲブに川がよみがえるように。
126:5 涙を流しながら種をまく人は、喜びの声をあげながら刈り取る。
126:6 種を携え、泣きながら出て行く人は、束を抱え、喜びの声をあげて帰ってくる。
127:1 主が家を建てるのでなければ、建てる人がどれだけ働いてもむだになる。主が町を守るのでなければ、見張りがどれだけ起きていてもむだになる。
127:2 あなたたちが朝早く起き、夜おそくまで休まず、苦労してパンを食べても、それはむだだ。神は愛する者に、眠っている間に眠りを与えてくださるのだから。
127:3 子供たちは、主が与えてくださった宝物だ。母の胎からの実は、主からのごほうびなのだ。
127:4 矢が戦士の手にあるように、若いころに授かる子どもたちもそうだ。
127:5 矢筒をその矢で満たしている人は幸いだ。彼らは、町の門で敵と論じ合っても、恥をかくことはない。
128:1 すべて主を畏れ、主の道を歩む人は幸いだ。
128:2 あなたは自分の手で働いて得たものを食べる。あなたは幸せで、恵まれている。
128:3 あなたの妻は家の奥で豊かに実をつけるぶどうの木のよう。あなたの子どもたちは食卓を囲むオリーブの若木のようだ。
128:4 見よ、主を敬う人は、このように祝福される。
128:5 主はシオンからあなたを祝福してくださるように。あなたが生きているかぎりずっと、エルサレムの繁栄を見ることができるように。
128:6 またあなたは、自分の孫の顔を見るだろう。イスラエルに平和がありますように。
129:1 今、イスラエルはこう言え。「彼らは、わたしが若い頃から何度もわたしを苦しめてきた。
129:2 わたしが若い時から、彼らは何度もわたしを苦しめてきた。でも、わたしに勝つことはできなかった。
129:3 耕す人たちがわたしの背中を畑のように耕し、長いうねを刻みつけた。
129:4 主は正しい。悪人たちの縄を断ち切ってくれた。
129:5 シオンを憎む者はみな、恥を受けて退くがいい。
129:6 屋根に生えた草のようにしてください。まだ伸びないうちに枯れてしまう草のように。
129:7 これを刈る者はその手をいっぱいにできない。束ねる者もそのふところを満たせない。
129:8 かたわらを通り過ぎる人たちも、「主の恵みがあなたにありますように。わたしたちは主の名によってあなたを祝福します」とは言わない。
130:1 深い淵から、わたしはあなたに叫びます、主よ。
130:2 主よ、わたしの声を聞いてください。わたしの願いの声に耳を傾けてください。
130:3 主よ、もしあなたが罪を一つ残らず記録するなら、主よ、だれが耐えられるだろうか。
130:4 あなたには赦しがある。だから人はあなたを畏れ敬う。
130:5 わたしは主を待ち望む。わたしの魂は待ち望む。そのみ言葉に、わたしは望みをかける。
130:6 わたしの魂は主を待ち望む。夜明けを待つ夜回りよりも、いや、夜明けを待つ夜回りよりもずっと強く、主を待ち望む。
130:7 イスラエルよ、主に望みを置け。主には変わらぬ愛があり、あふれるほどの救いがあるからだ。
130:8 主はイスラエルを、そのすべての罪から救い出してくださる。
131:1 主よ、わたしの心は高ぶっていません。目もおごっていません。わたしは、手の届かない大それたことや、自分にはとても及ばないすばらしいことに、深入りしたりしません。
131:2 むしろわたしは、自分の魂を落ち着かせ、静かにさせた。乳離れした子が母のそばで安心しているように。わたしの魂は、乳離れした子のように、わたしの中で安らいでいる。
131:3 イスラエルよ、今からとこしえに主に望みをおけ。
132:1 主よ、ダビデのことを、そして彼が受けたすべての苦しみを心にとめてください。
132:2 ダビデは主に誓い、ヤコブの力強い神に誓いを立てた。
132:3 わたしは自分の家には入らない。寝台にも上がらない。
132:4 わたしは目を眠らせず、まぶたを閉じることもしない。
132:5 わたしは主のための場所を見つけよう。ヤコブの力ある神のための住まいを。
132:6 エフラタで、わたしたちはそれを聞いた。ヤアルの野で、それを見つけた。
132:7 あなたの住まいに行き、その足台の前にひざまずこう。
132:8 主よ、立ち上がって、あなたの憩いの場所へ。あなたと、あなたの力を示す箱とともに。
132:9 あなたの祭司たちが義を身にまとい、あなたに従う人たちが喜びの声をあげますように。
132:10 ダビデをあなたに仕える者として、そのことに免じて、あなたが選んで油を注いだ王を退けないでください。
132:11 主はダビデにこう誓われた。その約束は真実で、決して取り消されることはない。「あなたの子孫の一人を、あなたの王座に就かせる。」
132:12 あなたの子どもたちがわたしの契約を守り、わたしが教えるおきてを守るなら、彼らの子どもたちもまた、いつまでもあなたの王座に座る。
132:13 シオンを選んだのは主だからだ。主はそこを自分の住む場所として選んだ。
132:14 「これがわたしの安らぎの場所。永遠にここにいる。わたしがここを望んだのだから」
132:15 わたしはこの都に必要な食べ物をたっぷり与えて祝福する。貧しい人々をパンで満たす。
132:16 わたしはその祭司たちに救いを着せる。神を信じる人たちは、大声で喜びの声をあげる。
132:17 そこにダビデのために一つの角を生えさせ、わたしが油を注いだ者のために一つのともし火を用意した。
132:18 敵には恥をまとわせる。だが彼の頭には、輝く冠がきらめく。
133:1 見よ、兄弟姉妹が心を一つにして共に生きる。それはなんと良いことだろう。なんと美しいことだろう。
133:2 それは、頭に注がれた上等な油のようだ。その油はひげに、アロンのひげに流れ落ち、さらに衣のえりにまで流れていく。
133:3 ヘルモン山の露が、シオンの山々に降りるようだ。主がそこで祝福を約束し、永遠の命を与えてくださったからだ。
134:1 見よ、主に仕える人たちよ、主をたたえよ。夜ごとに主の家に立つ、すべての人たちよ。
134:2 聖所に向かって手を上げ、主をたたえよ。
134:3 主が、あなたを祝福してくれますように。天と地を造った主が、シオンからそうしてくれますように。
135:1 主をほめたたえよう。主の名をたたえよう。主に仕える人たちよ、たたえよう。
135:2 主の家、わたしたちの神の家の庭に立つあなたたち。
135:3 主は恵み深い。だから主をほめたたえよう。その名をほめ歌おう。主は麗しい方だから。
135:4 主はヤコブを選び、自分のものとされた。イスラエルを、自分の大切な宝として選ばれたのだ。
135:5 わたしは知っている。主は偉大な方で、わたしたちの主はどんな神々よりも上にいる。
135:6 主はお望みになったことを、すべて行われる。天でも地でも、海でも、あらゆる深い淵でも。
135:7 主は地の果てから雲を立ちのぼらせ、雨のために稲妻をつくり、その倉から風を送り出す。
135:8 主は、人から家畜にいたるまで、エジプトの初子を打たれた。
135:9 エジプトよ、主はおまえの中に、しるしと不思議を送り、ファラオとその家来たちすべてに臨まれた。
135:10 主は多くの国々を撃ち、力ある王たちを殺された。
135:11 すなわちアモリ人の王シホン、バシャンの王オグ、それにカナンのすべての王国を。
135:12 主は彼らの土地を受け継ぐ財産とした。ご自分の民イスラエルへの、受け継ぐ財産として。
135:13 主よ、あなたの名は永遠に変わらない。主よ、あなたの名は代々に語り継がれる。
135:14 主はその民をさばき、その僕たちをあわれんでくださるからだ。
135:15 もろもろの国々の偶像は銀と金でできている。人の手が造ったものだ。
135:16 口があっても語れない。目があっても見えない。
135:17 耳があっても、聞くことはできない。その口には、息もない。
135:18 偶像を造る者も、それに頼る者もみな、偶像と同じになる。
135:19 イスラエルの家よ、主をたたえよ。アロンの家よ、主をたたえよ。
135:20 レビの家よ、主をたたえよ。主を恐れる者よ、主をたたえよ。
135:21 シオンにいる主が、たたえられますように。エルサレムに住む主が。主をほめたたえよ。
136:1 主に感謝せよ。主は良いお方。その慈しみはいつまでも変わらない。
136:2 神々の神に感謝せよ。その慈しみはとこしえに変わらない。
136:3 主の主に感謝せよ。その慈しみはとこしえに変わらない。
136:4 大いなる不思議なわざを、ただひとりで行われる方に感謝せよ。その慈しみはとこしえに続く。
136:5 天を知恵によって造られた方に、感謝しよう。その慈しみはとこしえに続く。
136:6 地を水の上に広げた方に感謝せよ。その慈しみはとこしえに変わらない。
136:7 大いなる光を造られた方に、感謝しよう。その慈しみはとこしえに続く。
136:8 昼を治めさせるために太陽を、そのために。慈しみはいつまでも変わらない。
136:9 月と星を造り、夜を治めさせた。その慈しみはとこしえに変わらない。
136:10 エジプトの初子を撃たれた方に感謝せよ。その慈しみはとこしえに絶えることがない。
136:11 イスラエルを彼らの中から導き出した方に感謝せよ。その慈しみはとこしえに続くのだから。
136:12 力強い手と、伸ばした腕をもって導いてくださった方に。その慈しみはとこしえに。
136:13 紅海を二つに分けた方に感謝せよ。その慈しみはとこしえに続くのだから。
136:14 イスラエルにその中を通らせた方に感謝せよ。その慈しみはとこしえに続くのだから。
136:15 ファラオとその軍勢を葦の海の中に投げ込んだ方に。その慈しみはとこしえに変わらない。
136:16 その民を導いて荒れ野を通らせた方に。その慈しみはいつまでも絶えることがない。
136:17 大いなる王たちを撃たれた方に感謝しよう。その慈しみはとこしえに続く。
136:18 名ある王たちを殺された方に感謝しよう。その慈しみはとこしえに続く。
136:19 アモリ人の王シホンを打ち倒した方に感謝せよ。その慈しみはとこしえに続く。
136:20 バシャンの王オグを打ち倒した方に感謝せよ。その慈しみはとこしえに続く。
136:21 彼らの地を受け継ぐ財産として与えてくださった。その慈しみは永遠に続くから。
136:22 そのしもべイスラエルに、受け継ぐ財産としてその地を与えた方に。その慈しみはいつまでも変わらない。
136:23 われらが打ちのめされていたとき、わたしたちを心にかけてくださった方に。その慈しみはとこしえに続く。
136:24 われらを敵の手から助け出してくださった。慈しみはとこしえに変わらないから。
136:25 すべての生き物に食べ物を与えてくださる。その慈しみはとこしえに変わらない。
136:26 天の神に感謝せよ。その慈しみはとこしえに変わらない。
137:1 バビロンの川のほとりに、わたしたちは座り込んだ。そして、シオンを思い出して泣いた。
137:2 わたしたちは、その柳の木々に自分たちの琴をかけた。
137:3 われらを捕らえた者たちが、そこで歌を求めてきたからだ。われらを苦しめる者たちが、楽しもうとして言った。「シオンの歌を、ひとつ歌ってみせろ」と。
137:4 どうして主の歌を歌えるだろう、この異国の地で。
137:5 エルサレムよ、もしわたしがあなたを忘れるなら、わたしの右手はその働きを忘れてしまえばいい。
137:6 もしあなたを思い出さないなら、エルサレムを一番の喜びとしないなら、わたしの舌が上あごに張りついてしまいますように。
137:7 主よ、エルサレムが倒れたあの日、エドムの人たちが何をしたか忘れないでください。彼らはこう叫んでいた。「壊せ、壊せ、土台まで壊してしまえ」と。
137:8 バビロンの娘よ、おまえは滅ぼされる。わたしたちにひどいことをしたおまえに、同じことを仕返しする人は幸いだ。
137:9 あなたの幼な子をつかまえ、岩に打ちつける者は幸いだ。
138:1 主よ、わたしは心を尽くしてあなたに感謝します。神々の前で、あなたをほめ歌います。
138:2 わたしはあなたの聖なる神殿に向かって伏し拝み、あなたの慈しみとまことのゆえに、あなたの名に感謝する。あなたはご自分のすべての名にまさって、あなたの言葉を高くされたからだ。
138:3 あなたはわたしが呼んだその日に答えてくれた。そして、わたしの心に力を与え、強くしてくれた。
138:4 主よ、地のすべての王が、あなたに感謝するだろう。あなたが語った言葉を聞いたからだ。
138:5 主の道について歌う。主の栄光は大きいのだから。
138:6 主は高くにおられる。でも、身分の低い者に目を留めてくださる。一方、高ぶる者のことは遠くから見抜いておられる。
138:7 たとえ悩みの中を歩いていても、あなたはわたしを生かしてくださる。あなたは手を伸ばして敵の怒りを抑え、あなたの右の手がわたしを救ってくださる。
138:8 主はわたしのために、すべてを成し遂げてくださる。主よ、あなたの慈しみは永遠に絶えることがない。あなたが手がけたものを、どうか見捨てないでください。
139:1 主よ、あなたはわたしを調べ、すべてを知っておられる。
139:2 あなたはわたしが座るのも立つのも知っている。遠くからでも、わたしの考えを見抜いている。
139:3 あなたはわたしの歩みも横になる姿も見抜き、わたしのすべての道を知り尽くしておられる。
139:4 わたしの舌にまだ言葉が上っていなくても、主よ、あなたはそのすべてを知っている。
139:5 あなたはわたしの後ろからも前からも取り囲み、わたしの上に手を置いてくれる。
139:6 このような知識はわたしにとって不思議すぎて、とても理解できない。あまりに高くて、とても手が届かない。
139:7 わたしはどこへ行けば、あなたの霊から離れられるだろう。どこへ逃げれば、あなたの前から隠れられるだろう。
139:8 わたしが天に上っても、あなたはそこにいる。死者の世界に横になっても、あなたはそこにいる。
139:9 わたしが明け方の翼を広げて、海のかなたに住んでも、
139:10 あなたのみ手はそこでもわたしを導き、あなたの右のみ手はわたしをしっかりつかんでくれる。
139:11 「闇がわたしを包み、まわりの光も夜に変わってしまえ」とわたしが言ったとしても、
139:12 あなたには闇も暗くない。夜も昼のように明るく輝く。あなたにとっては、闇も光も同じなのだ。
139:13 あなたはわたしの内臓を造り、母の胎内でわたしを組み立ててくださった。
139:14 わたしはあなたをたたえる。わたしは畏れを起こさせるほど、驚くべきものに造られたのだから。あなたのわざはすばらしい。わたしの魂は、それをよく知っている。
139:15 わたしが隠れた所で造られ、地の深い所で織り上げられたとき、わたしの体はあなたから隠されてはいなかった。
139:16 あなたの目は、まだ形になる前のわたしを見ていた。わたしのために定められた日々は、その一日も始まらないうちに、すべてあなたの書に記されていた。
139:17 神よ、あなたの思いは、わたしにとってどれほど尊いことか。その数はなんと多いことか。
139:18 わたしがこれを数えようとしても、その数は砂粒よりも多い。目を覚ましても、わたしはまだあなたと共にいる。
139:19 神よ、悪者を殺してください。人殺したちよ、わたしから離れて行け。
139:20 彼らは悪意をもってあなたのことを語り、あなたに逆らう者たちは、あなたの名をむなしく口にする。
139:21 主よ、あなたを憎む者を、わたしも憎むではありませんか。あなたに立ち向かう者を、わたしはうとむのです。
139:22 わたしは彼らを心の底から憎みます。彼らはわたしの敵です。
139:23 神よ、わたしを調べて、わたしの心を知ってください。わたしを試して、わたしの思いを知ってください。
139:24 わたしの中に悪い道がないかを見て、わたしを永遠の道へと導いてください。
140:1 主よ、悪い者からわたしを助け出してください。乱暴な者からわたしを守ってください。
140:2 彼らは心の中で悪だくみをたくらみ、毎日のように戦いをしかけてくる。
140:3 毒蛇のように舌を鋭くとがらせ、その唇にはまむしの毒がある。セラ
140:4 主よ、悪い者からわたしを守り、暴力をふるう者からわたしを救ってほしい。彼らはわたしを転ばせようとたくらんでいる。
140:5 高ぶる者たちは、わたしを捕らえようと罠を隠した。縄で網を張り、道のわきに広げた。わたしの行く道には、いくつものわなを仕掛けた。セラ
140:6 わたしは主に言った。あなたはわたしの神です。主よ、わたしの願う声に耳を傾けてください。
140:7 主なる神、わたしを救う力よ。あなたは戦いの日に、わたしの頭を守ってくださった。
140:8 主よ、悪い者の望みをかなえないでください。その企みを成功させないでください。彼らが高ぶることのないように。セラ
140:9 わたしを取り囲む者たちが頭をもたげるとき、その口のもたらす害悪が、彼ら自身をおおいますように。
140:10 燃える炭を彼らの上に降らせてください。彼らを火の中に、二度と上がれない深い穴に投げ込んでください。
140:11 舌で人を傷つける者は、この地に根を下ろせない。暴力をふるう者は、災いに追われ、次々と倒されていく。
140:12 わたしは知っている。主は貧しい人のために正しく裁き、苦しむ人の訴えを取り上げてくださる。
140:13 義とされた人たちは、あなたの名に感謝をささげる。心のまっすぐな人たちは、あなたのそばで生きていく。
141:1 主よ、わたしはあなたを呼びます。急いで来てください。あなたを呼ぶこの声を、どうか聞いてください。
141:2 わたしの祈りを、あなたの前に立ちのぼる香として受け取ってください。上げるわたしの両手を、夕方のささげ物として受け取ってください。
141:3 主よ、わたしの口に見張りを置いてください。くちびるの戸を守ってください。
141:4 わたしの心を悪いことへ向けさせないでください。悪事を働く者たちと一緒に、わたしが罪を犯すことのないように。彼らのごちそうを、わたしに食べさせないでください。
141:5 正しい者がわたしを打つなら、それは慈しみだ。わたしを責めるなら、それは頭に注がれる油。わたしの頭はそれを拒まない。わたしはこれからも、悪を行う者たちのしわざに立ち向かって祈り続ける。
141:6 彼らを裁く者たちが岩から突き落とされるとき、人々はわたしの言葉が心地よいと聞き入れるだろう。
141:7 岩を裂いて地面に打ち砕くように、わたしたちの骨は死の国の入り口にまき散らされる。
141:8 主なる神よ、わたしの目はあなたに向いている。あなたのもとに身を寄せる。わたしを無防備なまま見捨てないでください。
141:9 わたしを守ってください。あの者たちがわたしのために張った罠から、悪を行う者たちが仕掛けた落とし穴から。
141:10 悪しき者は自分が仕掛けた網にかかればいい。わたしは無事にそこを通り抜ける。
142:1 主に向かって、わたしは声をあげて叫ぶ。主に向かって、わたしは声をあげて助けを求める。
142:2 わたしは神の前で嘆きを注ぎ出す。自分の苦しみを、神の前で打ち明ける。
142:3 わたしの心が弱り果てるとき、あなたはわたしの歩む道を知っていてくださる。わたしが進むこの道に、彼らはわたしを捕らえようとわなを仕掛けた。
142:4 右を見て、確かめてほしい。わたしに気づいてくれる人は、だれもいない。逃げ場はどこにもなくなり、わたしの魂を気にかけてくれる人もいない。
142:5 主よ、わたしはあなたに叫んだ。「あなたはわたしの逃げ場、命ある者の地でわたしが受ける分です」と、わたしは言った。
142:6 わたしの叫びを聞いてください。わたしはすっかり弱り果てています。追いかけてくる者たちから助け出してください。彼らはわたしよりも強いのです。
142:7 わたしの魂を牢から出してください。そうすれば、わたしはあなたの名をほめたたえます。あなたがわたしに豊かに報いてくださるから、正しい人たちがわたしを囲みます。
143:1 主よ、わたしの祈りを聞いてください。わたしの願いに耳を傾けてください。あなたは真実な方だから、わたしに答えてください。あなたの正しさで、わたしを助けてください。
143:2 あなたのしもべを裁きにかけないでください。生きている者は、だれ一人あなたの前で正しいと認められないからです。
143:3 敵がわたしを追いつめ、わたしのいのちを地面に踏みつけた。もう死んで長い時が経った人のように、わたしを暗闇の中に住まわせた。
143:4 わたしの霊はうちで弱りはて、心はうちで打ちのめされている。
143:5 わたしは昔の日々を思い出す。あなたがしてきたすべてのことを思いめぐらし、あなたの手のわざを深く考える。
143:6 わたしはあなたに向かって両手を広げる。わたしの魂は、かわいた大地のようにあなたを求めている。〔セラ
143:7 主よ、今すぐ答えてほしい。わたしの心は限界だ。あなたの顔をわたしから隠さないでほしい。そんなことになれば、わたしは墓に下る者と同じになってしまう。
143:8 朝、あなたの慈しみを聞かせてほしい。わたしはあなたに信頼しているから。歩むべき道を教えてほしい。わたしの魂はあなたを仰いでいるから。
143:9 主よ、わたしを敵から助け出してください。わたしはあなたのもとに逃げこみます。
143:10 わたしにあなたの望みを行うことを教えてください。あなたはわたしの神だから。あなたの霊は良い。わたしを平らな地へと導いてください。
143:11 主よ、あなたの名にかけて、わたしを生かしてください。あなたの正しさによって、わたしの魂を苦しみから救い出してください。
143:12 あなたのその変わらぬ愛によって、わたしの敵を絶ち、わたしの魂を苦しめる者をすべて滅ぼしてください。わたしはあなたのしもべなのだから。
144:1 わたしの岩である主に、感謝をささげよう。主はわたしの手に戦い方を教え、わたしの指にいくさのわざを教えてくださる。
144:2 主はわたしの慈しみ、わたしの砦、わたしの高いやぐら、わたしを助け出す方。わたしの盾、わたしが身を寄せる方。主はもろもろの民をわたしに従わせてくださる。
144:3 主よ、人間とはいったい何なのか。あなたはそれを気にかけてくださる。人の子とは何なのか。あなたはそれを心に留めてくださる。
144:4 人は、はかない息のようなもの。その日々は、過ぎ去っていく影のようだ。
144:5 主よ、あなたの天を引き裂いて降りてきてください。山に触れると、山は煙を上げる。
144:6 いなずまを走らせて、彼らを追い散らしてください。あなたの矢を放って、彼らを打ち破ってください。
144:7 高い所からみ手を伸ばし、わたしを助け出してください。大水から、異国の民の手から、わたしを救い出してください。
144:8 彼らの口は偽りを語り、その右手は嘘の右手だ。
144:9 神よ、わたしはあなたに新しい歌を歌う。十弦の琴に合わせて、あなたをほめ歌う。
144:10 わたしは、王たちに勝利を与え、そのしもべダビデを悪の剣から救い出す。
144:11 わたしを助け出してください。他国の民の手から救い出してください。彼らは口ではうそをつき、右手で誓っても、それは偽りの誓いです。
144:12 息子たちは、若いうちからすくすく育つ植物のように。娘たちは、宮殿を飾るために刻まれた角の柱のように。
144:13 われらの倉は満ちあふれ、あらゆる産物を蓄え、羊は野で数えきれないほど、幾千、幾万と子を産む。
144:14 われらの牛は重い荷を負い、城壁が破られることもなく、連れ去られることもない。われらの広場に叫び声はあがらない。
144:15 このような恵みを受ける民は幸せだ。主を自分の神とする民は幸せだ。
145:1 わたしの神、王よ、わたしはあなたをあがめる。世々かぎりなく、あなたの名をたたえます。
145:2 わたしは日ごとにあなたをたたえ、そのお名前を永遠にほめ続ける。
145:3 主は偉大で、大いにほめたたえられるべき方。その偉大さは、はかり知ることができない。
145:4 この代は次の代にあなたのなさったことをたたえ、あなたの力あるわざを語り伝える。
145:5 わたしはあなたの輝くばかりの威光を語る。その素晴らしい奇跡の数々を語り伝える。
145:6 人々はあなたの恐ろしいわざの力について語る。わたしはあなたの偉大さを伝えていく。
145:7 彼らはあなたの豊かな恵みを思い起こして語り、あなたの義を喜び歌う。
145:8 主は恵み深く、あわれみに満ちている。怒るのに遅く、慈しみにあふれている。
145:9 主はすべてのものにやさしく、造られたすべてのものをあわれんでくださる。
145:10 主よ、あなたが造ったすべてのものがあなたに感謝し、あなたに従う人たちがあなたをたたえる。
145:11 彼らはあなたの王国の栄光を語り、あなたの力を宣べ伝える。
145:12 あなたの力ある働きと、輝かしく威厳に満ちた王国とを、すべての人に知らせるためだ。
145:13 あなたの国は永遠に続く国。あなたの支配は代々限りなく続く。
145:14 主はすべて倒れそうな人を支え、うずくまる人をみな立たせてくださる。
145:15 すべての目はあなたに望みを置く。あなたは時が来ると、みんなに食べ物を与える。
145:16 あなたはみ手を開いて、生きるものすべての願いを満たしてくださる。
145:17 主はどんなときも正しく、すべてのわざに変わらぬ愛を注ぐ。
145:18 すべて主を呼ぶ人に、主は近くにいる。心から主を呼ぶ人には、いつもそばにいる。
145:19 主を敬う人の願いを、主はかなえてくれる。その叫びを聞いて、彼らを救ってくれる。
145:20 主はご自分を愛する人をみな守り、悪い者をことごとく滅ぼす。
145:21 わたしの口は主をたたえる。すべての生きるものは、その聖なる名を、いつまでも永遠にほめたたえる。
146:1 主をほめたたえよう。わたしの魂よ、主をほめたたえよ。
146:2 わたしは生きているかぎり、主をほめたたえる。命のある間、わたしの神をほめ歌おう。
146:3 君主に頼ってはいけない。人の子に頼ってはいけない。彼らに人を救う力はないのだから。
146:4 その息が出ていけば、その人は土に帰る。その日、彼のあらゆる計画は消えてなくなる。
146:5 ヤコブの神を助けとし、自分の神である主に望みを置く人は幸いだ。
146:6 天と地、海、そしてその中のすべてのものを造った方。その方は、いつまでも真実を守り続ける。
146:7 しいたげられている人のために正しい裁きを行い、飢えている人に食べ物を与える。主は捕らわれている人を解き放つ。
146:8 主は目の見えない人の目を開く。主は身をかがめている人を立ち上がらせる。主は正しい人を愛する。
146:9 主は他国から来た寄留者を守り、みなしごや、やもめを支えてくださる。でも、悪い者の歩む道は行きづまらせる。
146:10 主はとこしえに王として治められる。シオンよ、あなたの神は代々かぎりなく治められる。主をほめたたえよ。
147:1 主をほめたたえよう。わたしたちの神をたたえて歌うのは、良いことだ。それは心地よく、賛美はふさわしい。
147:2 主はエルサレムを建て直し、追い散らされたイスラエルの人々を集めてくださる。
147:3 心の打ち砕かれた人をいやし、その傷を包んでくれる。
147:4 星の数を数えて定め、すべての星に名前をつけて呼ばれる。
147:5 わたしたちの主は偉大で、その力は計り知れない。その知恵に限りはない。
147:6 主は苦しむ人を支え、悪しき者を地に投げ倒す。
147:7 主に感謝の歌をささげよう。琴を鳴らして、わたしたちの神をほめ歌おう。
147:8 主は雲で天をおおい、地のために雨を用意し、山々に草を生えさせる。
147:9 食物を獣に与え、鳴いて求めるカラスの子にも与えてくださる。
147:10 主は馬の力を喜ばない。人の足の速さを頼りにすることもない。
147:11 主は、主を敬い、その慈しみに望みをかける人を喜ばれる。
147:12 エルサレムよ、主をほめたたえよ。シオンよ、あなたの神をたたえよ。
147:13 主はあなたの門のかんぬきを堅くし、あなたの中に住む子らを祝福してくださるからだ。
147:14 主はあなたの国境を平和で満たし、最高の小麦であなたを満ち足りさせてくださる。
147:15 主はそのことばを地に送られる。そのことばは地を目ざして、すみやかに走る。
147:16 主は羊の毛のように雪を降らせ、灰をまくように霜をふらせる。
147:17 氷を細かなかけらのようにばらまく。だれがその寒さの前に立っていられるだろうか。
147:18 主はみ言葉を送って、それらを溶かす。風を吹かせると、水が流れ出す。
147:19 主はそのみ言葉をヤコブに伝え、その定めと裁きをイスラエルに示す。
147:20 主はどの国にも、こんなふうにはなさらなかった。ほかの国々は、主のおきてを知らない。主をほめたたえよう。
148:1 主をほめたたえよう。天から主をほめたたえよう。高い天で主をほめたたえよう。
148:2 天使たちよ、みな主をほめたたえよ。天の軍勢よ、みなでほめたたえよ。
148:3 日よ、月よ、主をほめたたえよ。輝く星よ、みな主をほめたたえよ。
148:4 天よ、いちばん高い天よ、天の上にある水よ、主をほめたたえよ。
148:5 これらのものに主の名をほめたたえさせよう。主が命じると、それらは創造されたのだから。
148:6 主はこれらを永遠に、いつまでも動かないように定めた。境を定め、それは決して変わることがない。
148:7 海の獣よ、すべての深い海よ、地から主をほめたたえよ。
148:8 火よ、雹よ、雪よ、霧よ、み言葉を実行する暴風よ、
148:9 山々よ、すべての丘よ、実をつける木よ、すべての杉の木よ。
148:10 野の獣も家畜もみな、地を這うものも翼のある鳥も、
148:11 地の王たちよ、すべての民よ。君主たちよ、地のすべての裁く者たちよ。
148:12 若い男たちも若い女たちも、お年寄りも子どもたちも。
148:13 主のその名をたたえよ。主の名だけが高く、その輝きは地と天を超えているのだから。
148:14 主はその民の角を高く上げられた。これは主に従うすべての人の誇り、主のそばにいる民、イスラエルの人々の誇りである。主をほめたたえよ。
149:1 主をたたえよ。主に向かって新しい歌をうたおう。神を愛する人々の集まりで、主をほめたたえよう。
149:2 イスラエルよ、自分を造った方を喜べ。シオンの子らよ、自分たちの王を喜び歌え。
149:3 踊りをもって主の名をたたえよう。タンバリンと竪琴で、主に歌をささげよう。
149:4 主はご自分の民を喜んでくださる。だから、謙虚な人たちを勝利で美しく飾ってくださる。
149:5 聖なる人たちよ、この栄光を喜べ。寝床でも、喜びの歌を歌え。
149:6 その口には神をたたえる歌があり、その手には両刃の剣がある。
149:7 もろもろの国に復讐し、もろもろの民を懲らしめるために。
149:8 彼らの王たちを鎖でつなぎ、身分の高い者たちを鉄の足かせでつなぐためだ。
149:9 しるされた裁きを彼らに下すためだ。これは神を信じるすべての人に与えられる誉れである。神をほめたたえよ。
150:1 主をほめたたえよう。神の聖なる場所で神をたたえよう。神の力があらわれる大空で、神をたたえよう。
150:2 その力ある働きのゆえに、主をほめたたえよ。並ぶものがないほど偉大なお方だから、主をほめたたえよ。
150:3 ラッパを吹き鳴らして主をたたえよ。琴や竪琴をかき鳴らして主をたたえよ。
150:4 鼓と踊りで神をたたえよう。弦楽器と笛で神をたたえよう。
150:5 鳴りひびくシンバルで神をほめたたえよう。高く鳴りわたるシンバルで神をほめたたえよう。
150:6 息のあるものすべてよ、主をほめたたえよ。主をほめたたえよ。
箴言
1:1 これは、イスラエルの王、ダビデの子ソロモンの格言集である。
1:2 知恵と教えを身につけ、深い言葉を理解するために。
1:3 正しい行い、公正、公平を学び、賢く生きるための教えを受け取るために。
1:4 経験の浅い人には賢さを、若者には知識と思慮を与えるために。
1:5 賢い人はこれを聞いて、さらに学びを深める。分別のある人は、生きる導きを得る。
1:6 格言やたとえ、賢い人たちの言葉やその謎を、読み解けるようになるために。
1:7 主を畏れること、それが知識の始まりだ。でも愚か者は、知恵と教えをばかにする。
1:8 息子よ、父の教えを聞きなさい。母の教えを捨ててはいけない。
1:9 それは、あなたの頭を飾る美しい花輪、首にかける飾りとなるからだ。
1:10 息子よ、悪い者たちが誘ってきても、その話に乗ってはいけない。
1:11 彼らはこう言うかもしれない。「一緒に来いよ。待ち伏せして、人の血を流そう。罪のない人を、理由もなく襲おう。
1:12 陰府のように、あの連中を生きたまま丸のみにしよう。健やかな者も、墓穴に落ちていく者のように、丸ごとのみ込もう。
1:13 高価なものを何でも手に入れて、奪った物で家をいっぱいにしよう。
1:14 おまえもわたしたちの仲間に入れ。財布は一つ、みんなで山分けだ。」
1:15 息子よ、そんな連中と一緒に歩いてはいけない。彼らの道に足を踏み入れるな。
1:16 彼らの足は、悪いことへとまっしぐらに走り、血を流そうと急ぐからだ。
1:17 鳥が見ている前で網を張っても、何の役にも立たない。
1:18 ところが彼らは、自分の血を流そうと待ち伏せし、自分の魂を狙って隠れているのだ。
1:19 不当な利益をむさぼる者の行き着く先は、みなこうだ。その利益は、持ち主の魂を奪ってしまう。
1:20 知恵は、町なかで大声で呼びかけ、広場で声を上げる。
1:21 にぎわう通りの角で叫び、町の門の入り口で、こう語りかける。
1:22 「浅はかな者たちよ、いつまで浅はかさを愛しているのか。人をあざける者はあざけりを楽しみ、愚か者は知ることを嫌っている。
1:23 わたしがたしなめる言葉に、立ち返れ。そうすれば、わたしの霊をおまえたちに注ぎ、わたしの言葉を教えよう。
1:24 わたしが呼びかけても、おまえたちは拒んだ。手を差し伸べても、だれも心を留めなかった。
1:25 おまえたちはわたしの助言をすべて無視し、たしなめる言葉を受け入れようとしなかった。
1:26 だから、おまえたちに災いが降りかかるとき、わたしも笑ってやる。恐れがやって来るとき、あざ笑おう。
1:27 おまえたちの恐れが嵐のように襲い、災いが竜巻のように押し寄せるとき、苦しみと悩みがおまえたちに降りかかるときに。
1:28 そのとき、彼らはわたしを呼ぶが、わたしは答えない。必死に探しても、わたしを見つけられない。
1:29 彼らは知ることを嫌い、主を恐れ敬うことを選ばなかったからだ。
1:30 わたしの助言を受け入れず、たしなめる言葉をすべてさげすんだからだ。
1:31 だから彼らは、自分の歩んできた道の実を食べ、自分の企ての報いで満たされる。
1:32 浅はかな者は背を向けて自らを滅ぼし、愚か者は安穏に浸って自らを破滅させる。
1:33 でも、わたしに聞き従う者は安らかに暮らし、災いを恐れることなく穏やかに過ごせる。」
2:1 わたしの子よ。わたしの言葉を受け入れ、わたしの命令を心にしまっておきなさい。
2:2 知恵に耳を傾け、理解しようと心を向けなさい。
2:3 そう、見分ける力を求めて呼びかけ、理解を求めて声を上げなさい。
2:4 銀を探すようにそれを求め、隠された宝を探すように探し求めなさい。
2:5 そうすれば、主を畏れるとはどういうことかが分かり、神を知ることができる。
2:6 知恵を与えるのは主だからだ。その口から知識と理解が生まれる。
2:7 主は正しく生きる人のために、確かな知恵をたくわえる。まっすぐに歩む人の盾となる。
2:8 主は正義の道を守り、自分を慕う人の歩む道を見守る。
2:9 そうすればあなたは、義と正義と公正を、すべての良い道を理解できる。
2:10 知恵があなたの心に入り、知識があなたの魂を喜ばせるようになる。
2:11 思慮があなたを守り、理解があなたを見守る。
2:12 それは、悪の道から、ゆがんだことを語る者から、あなたを救い出すためだ。
2:13 彼らは正しい道を捨てて、暗い道を歩む者たちだ。
2:14 悪を行うことを喜び、悪のよこしまさを楽しむ者たちだ。
2:15 その歩む道は曲がっていて、その足取りはねじれている。
2:16 それはまた、あなたを誘惑する女から、甘い言葉ですり寄ってくるよその女から、あなたを救い出すためだ。
2:17 その女は、若い頃からの連れ合いを捨て、神と結んだ約束を忘れてしまった。
2:18 その女の家は、死へと傾いていく。その歩む道は、死者たちのもとへ向かう。
2:19 彼女のもとへ行く者は、だれも帰って来ない。命の道にたどり着くこともない。
2:20 こうしてあなたは、善い人たちの道を歩み、正しい人たちの道を守るようになる。
2:21 正しい人たちは地に住み、非のない人たちはそこにとどまる。
2:22 でも悪い者たちは地から断ち切られ、裏切る者たちはそこから引き抜かれる。
3:1 わたしの子よ、わたしの教えを忘れてはいけない。わたしが命じることを、心にしっかりとどめておきなさい。
3:2 そうすれば、あなたの日々は長く伸び、生きる年月が増し、平安が加えられるからだ。
3:3 慈しみとまことを手放してはいけない。それを首に結び、心の板に書き記しなさい。
3:4 そうすれば、あなたは神と人の前で好意を受け、良い評価を得る。
3:5 心を尽くして主に信頼しなさい。自分の考えだけに頼ってはいけない。
3:6 どんな道を歩むときも、主を心に留めなさい。そうすれば、主があなたの進む道をまっすぐにしてくださる。
3:7 自分を賢いと思い込んではいけない。主を畏れ、悪から離れなさい。
3:8 それがあなたの体を癒やし、骨に力を与える。
3:9 自分の財産で主をあがめなさい。収穫の最初の分を主にささげなさい。
3:10 そうすれば、あなたの倉は豊かに満たされ、搾り場は新しいぶどう酒であふれる。
3:11 わたしの子よ、主が教え導くのを拒んではいけない。主に正されても、うんざりしてはいけない。
3:12 主は愛する者を正すからだ。それは、父が大切に思う我が子を正すのと同じだ。
3:13 知恵を見つける人は幸せだ。理解を手に入れる人は幸せだ。
3:14 知恵から得るものは、銀を商って得るものよりも良く、それがもたらす実りは純金にまさるからだ。
3:15 知恵は宝石よりも尊い。あなたが望むどんなものも、これには及ばない。
3:16 その右の手には長い命があり、左の手には富と名誉がある。
3:17 知恵の道は心地よく、その通り道はどれも平安だ。
3:18 知恵は、それをつかむ人にとって命の木だ。それを握り続ける人は幸せだ。
3:19 主は知恵によって地の基を据え、理解によって天を固く築かれた。
3:20 その知識によって深い水は分かれ出て、雲は露をしたたらせる。
3:21 わたしの子よ、これらを見失ってはいけない。確かな知恵と思慮を守りなさい。
3:22 それらはあなたの魂に命を与え、あなたの首を飾る美しさとなる。
3:23 そうすれば、あなたは安心して自分の道を歩み、足をつまずかせることはない。
3:24 横になっても、あなたは恐れない。横になれば、心地よく眠れる。
3:25 突然おそってくる恐ろしいことにも、悪い者たちを飲み込む破滅にも、おびえることはない。
3:26 主があなたのそばにいて、あなたを支えてくれるからだ。あなたの足を、わなにかからないように守ってくれる。
3:27 良いことをしてあげられる力があるなら、それを求めている人に、出し惜しみしてはいけない。
3:28 今あなたの手元にあるのに、隣の人に「また出直してくれ、あげるのは明日だ」と言ってはいけない。
3:29 隣の人が安心してあなたのそばで暮らしているのに、その人に悪いことをたくらんではいけない。
3:30 何もされていないのに、理由もなく人と争ってはいけない。
3:31 暴力をふるう者をうらやんではいけない。その生き方を、どれ一つ選んではいけない。
3:32 ねじ曲がった者を、主は忌みきらう。でも、まっすぐな人とは親しく心を通わせる。
3:33 主ののろいは、悪い者の家にくだる。でも、正しい人の住まいは祝福される。
3:34 人をあざける者を、主はあざけり返す。でも、へりくだる人には、恵みを与える。
3:35 知恵ある人は誉れを受け継ぐ。でも、愚かな者は恥をさらすだけだ。
4:1 子供たちよ、父の教えを聞きなさい。しっかり耳を傾けて、物事を見きわめる力を身につけなさい。
4:2 わたしがあなたたちに与えるのは、良い教えだ。わたしの教えを捨ててはいけない。
4:3 わたしも、かつては父の子供だった。母にとっては、まだ幼い、大切なひとり息子だった。
4:4 父はわたしに教えて、こう言った。「わたしの言葉を心にしっかり留めなさい。わたしの命じることを守れば、あなたは生きる。
4:5 知恵を手に入れなさい。見きわめる力を手に入れなさい。わたしの言葉を忘れず、そこからそれてはいけない。
4:6 知恵を捨てなければ、知恵があなたを守ってくれる。知恵を愛せば、知恵があなたを見守ってくれる。
4:7 何よりもまず、知恵を手に入れなさい。どんなものを手に入れるより、見きわめる力を手に入れなさい。
4:8 知恵を大切にすれば、知恵があなたを高めてくれる。知恵をしっかり抱きしめれば、知恵があなたに誉れを与えてくれる。
4:9 知恵はあなたの頭に美しい飾りを授け、輝く冠をかぶせてくれる。」
4:10 息子よ、聞きなさい。わたしの言葉を受け入れなさい。そうすれば、あなたの人生は長くなる。
4:11 わたしはあなたに知恵の道を教えてきた。まっすぐな道を歩けるように導いてきた。
4:12 その道を歩くとき、あなたの歩みがさまたげられることはない。走っても、つまずくことはない。
4:13 その教えをしっかりつかんで、手放してはいけない。それを守りなさい。それがあなたの命だから。
4:14 悪い者たちの道に入ってはいけない。悪人の歩む道を進んではいけない。
4:15 その道を避けなさい。そこを通ってはいけない。そこから離れて、先へ進みなさい。
4:16 悪人たちは、悪いことをしないと眠れない。だれかをつまずかせないと、眠りが奪われてしまう。
4:17 彼らは悪というパンを食べ、暴力というぶどう酒を飲んでいるからだ。
4:18 でも、正しい人の道は、朝の光のようだ。真昼になるまで、ますます明るく輝いていく。
4:19 悪人の道は暗やみのようだ。自分が何につまずくのかも分からない。
4:20 息子よ、わたしの言葉に耳を傾けなさい。わたしの語ることをよく聞きなさい。
4:21 それを見失ってはいけない。心の奥深くにしまっておきなさい。
4:22 それを見つける人にとって、それは命であり、体全体をいやすものだから。
4:23 何よりもまず、あなたの心を守りなさい。そこから命が流れ出るからだ。
4:24 ゆがんだ言葉を口から取り除きなさい。ねじれた話し方を、あなたから遠ざけなさい。
4:25 あなたの目は、まっすぐ前を見つめなさい。視線を、あなたの前にまっすぐ向けなさい。
4:26 足を踏み出す道をよく見きわめなさい。そうすれば、あなたの歩む道はすべて確かなものになる。
4:27 右にも左にもそれてはいけない。あなたの足を、悪から遠ざけなさい。
5:1 わたしの子よ、わたしの知恵に耳を傾けなさい。わたしの見きわめる力に、耳を近づけなさい。
5:2 そうすれば、あなたは深く考える力を保ち、あなたの唇は知識を守る。
5:3 よその女の唇からは、蜜がしたたる。その口は油よりもなめらかだ。
5:4 でも、行き着く先はにがよもぎのように苦く、両刃の剣のように鋭い。
5:5 彼女の足は死へと下って行き、その歩みは死の世界へまっすぐ向かう。
5:6 彼女は命の道に心を向けない。その歩む道はさまよっているのに、彼女はそれに気づかない。
5:7 だから今、息子たちよ、わたしの言うことを聞きなさい。わたしの言葉から離れてはいけない。
5:8 彼女から遠く離れた道を行きなさい。その家の入り口には近づいてはいけない。
5:9 さもないと、あなたは自分の誉れを他人に渡し、自分の年月を無慈悲な者に明け渡すことになる。
5:10 よその者があなたの力を食い尽くし、あなたが汗して稼いだものは、知らない誰かの家のものになってしまう。
5:11 そして人生の終わりに、あなたはうめくことになる。体も肉も衰え果てたそのときに。
5:12 あなたは言うだろう。「どうしてわたしは教えを憎み、心の中で注意を見下していたのか。
5:13 先生たちの声に従わず、教えてくれた人たちに耳を傾けなかった。
5:14 わたしは人々の集まりのただ中で、もう少しで完全に破滅するところだった」と。
5:15 自分の水ためから水を飲みなさい。自分の井戸から湧き出る水を飲みなさい。
5:16 あなたの泉が外へあふれ出て、水の流れが広場に注いでよいものか。
5:17 それはあなただけのものとしなさい。他人に分け合ってはいけない。
5:18 あなたの泉が祝福されるように。若いときに結ばれた妻と共に喜びなさい。
5:19 彼女は愛らしい雌鹿、優雅なかもしか。その胸がいつもあなたを満たし、その愛にいつも酔いしれていなさい。
5:20 わが子よ、どうして他人の妻に心を奪われるのか。どうしてよその女の胸を抱くのか。
5:21 人の歩む道は、主の目の前にすべてさらされている。主はその一歩一歩をすべて見きわめている。
5:22 悪い者は自分の罪に捕らえられ、自分の過ちの縄に縛られる。
5:23 その人は教えを受けないまま死に、あまりの愚かさゆえに迷い続ける。
6:1 わが子よ、もしあなたが友人の借金の保証人になり、見知らぬ人のために手を打って約束したのなら、
6:2 あなたは自分の口にした言葉のわなにかかり、自分の口にした言葉に捕らえられている。
6:3 わが子よ、それならこうして自分を救い出しなさい。あなたは友人の手中に落ちたのだから、すぐに行って、身を低くして、その友人にしつこく頼み込みなさい。
6:4 自分の目を眠らせてはいけない。まぶたをまどろませてはいけない。
6:5 狩人の手から逃れる鹿のように、わなをしかける者の手から逃れる鳥のように、自分を救い出しなさい。
6:6 怠け者よ、ありのところへ行きなさい。そのやり方をよく見て、賢くなりなさい。
6:7 ありには、指図する者も、監督する者も、支配する者もいない。
6:8 それでも夏のうちに食べ物を用意し、刈り入れの時に蓄えを集める。
6:9 怠け者よ、いつまで寝ているのか。いつになったら眠りから起き上がるのか。
6:10 「もう少し眠りたい、もう少しまどろみたい、もう少し腕を組んで休みたい」——
6:11 そう言っているうちに、貧しさが強盗のように襲いかかり、乏しさが武器を持った男のように迫ってくる。
6:12 ろくでなし、つまり悪人は、ゆがんだ言葉を口にして歩き回る。
6:13 目でウインクし、足で合図し、指で示す。
6:14 その心はねじ曲がっていて、いつも悪いことを企み、争いをまき散らす。
6:15 だから、災いが突然その身に降りかかる。あっという間に打ち砕かれ、もう治しようがない。
6:16 主が憎むものが六つある。いや、心から嫌うものが七つある。
6:17 高慢な目、うそをつく舌、罪のない人の血を流す手、
6:18 悪いことをたくらむ心、悪へと走るのにすばやい足、
6:19 うそを並べる偽りの証人、兄弟の間に争いをまき散らす者だ。
6:20 わたしの子よ、父の命令を守りなさい。母の教えを捨ててはいけない。
6:21 それをいつも心に結びつけ、首に巻きつけておきなさい。
6:22 歩くときには、それがあなたを導き、眠るときには、あなたを守り、目を覚ますときには、あなたに語りかけてくれる。
6:23 命令はともし火、教えは光。しつけのための注意は、命へと続く道だ。
6:24 それはあなたを悪い女から、なめらかな言葉で誘う他人の妻から守ってくれる。
6:25 その美しさを心の中で欲しがってはいけない。まなざしに引き込まれてはいけない。
6:26 遊女に関われば、パン一切れしか残らないほど落ちぶれる。人の妻は、尊い魂をねらうのだ。
6:27 火を懐に抱えて、服を焼かずにいられる人がいるだろうか。
6:28 燃える炭の上を歩いて、足をやけどしない人がいるだろうか。
6:29 隣人の妻と関係を持つ者も同じだ。彼女に触れる者はだれも、罰を免れない。
6:30 盗人が空腹を満たそうとして盗んでも、人はそれほど責めない。
6:31 でも、見つかったら七倍にして返さなければならない。家の財産を全部差し出すことになる。
6:32 人妻と関係を持つ者は、考えが足りない。それをする者は、自分の魂を滅ぼしているのだ。
6:33 待っているのは傷と恥。その汚名は消えることがない。
6:34 夫の嫉妬は激しく燃え上がるからだ。復讐のときには、彼は少しも手加減しない。
6:35 どんな償い金を積まれても、彼は受け入れない。どれだけ贈り物を増やしても、納得しないのだ。
7:1 わが子よ、わたしの言葉を守りなさい。わたしの命じることを、心の中にしまっておきなさい。
7:2 わたしの命じることを守れば、あなたは生きる。わたしの教えを、自分の目のひとみのように大切にしなさい。
7:3 それを指に結びつけ、心の板に書き記しなさい。
7:4 知恵に向かって「あなたはわたしの姉妹だ」と言い、見抜く力を身近な友と呼びなさい。
7:5 そうすれば、それがあなたを守ってくれる。よその女、甘い言葉でそそのかす見知らぬ女から。
7:6 あるとき、わたしは家の窓辺に立ち、格子ごしに外をながめていた。
7:7 わたしは、分別のない者たちの中に、まだ未熟な若者たちの中に、思慮の足りない一人の若者を見つけた。
7:8 その若者は通りを歩き、あの女の家の角を通り過ぎ、彼女の家のほうへと足を進めていた。
7:9 夕暮れどき、日が暮れて、夜のやみがだんだん濃くなっていくころだった。
7:10 すると、一人の女が彼を迎えに出てきた。遊女のような身なりをして、心には企みを隠していた。
7:11 その女は声が騒がしく、勝手気ままで、家にじっとしていられない。
7:12 あるときは表通り、あるときは広場、あちこちの角にひそんで、待ちかまえている。
7:13 女は若者をつかまえて口づけし、平然とした顔でこう言った。
7:14 「今日は、お礼のいけにえをささげて、誓っていたことを果たしてきたところなの。
7:15 だから、あなたを迎えに出てきたのよ。あなたに会いたくて探して、こうして見つけた。
7:16 寝床には敷物を広げてあるの。エジプトの色あざやかな亜麻布よ。
7:17 寝床には没薬やアロエ、シナモンの香りをふりまいてあるわ。
7:18 さあ、朝まで思うぞんぶん愛し合いましょう。二人で愛を交わして楽しみましょう。
7:19 だって、あの人は家にいないの。遠くへ旅に出ているのよ。
7:20 お金の袋を持って出かけたから、満月の日まで帰ってこないわ。」
7:21 女はあれこれ言葉巧みに若者を誘い込み、なめらかな口先で彼を引きずり込んだ。
7:22 若者はすぐに女のあとをついて行った。屠り場へ引かれる牛のように、足かせをはめられる愚か者のように。
7:23 やがて矢が肝臓を貫くまで。まるで罠へまっすぐ飛び込む鳥のように、自分の命がかかっているとも知らずに。
7:24 さあ、息子たちよ、わたしの言うことを聞きなさい。わたしの言葉に耳を傾けなさい。
7:25 心を彼女の道へ向けてはいけない。彼女の通り道に迷い込んではいけない。
7:26 彼女は大勢の男を傷つけ倒してきた。殺された者の数は計り知れない。
7:27 彼女の家は死の世界へ続く道。死の部屋へと下って行く。
8:1 知恵が呼びかけているのが聞こえないだろうか。英知が声を上げているのが。
8:2 知恵は高い丘の上、道のかたわらに立つ。いくつもの道が交わるところに立っている。
8:3 町の入り口、門のそば、戸口のところで、知恵は大声で呼びかける。
8:4 「人よ、わたしはあなたたちに呼びかける。すべての人に、わたしは声をかける。
8:5 世間知らずな者よ、賢さを身につけなさい。愚かな者よ、物事のわかる心を持ちなさい。
8:6 聞きなさい。わたしは値打ちのあることを語る。わたしの口が開けば、正しいことが出てくる。
8:7 わたしの口は真実を語り、わたしのくちびるは悪を嫌う。
8:8 わたしの言葉はどれも正しい。そこにはゆがみも、ねじれもない。
8:9 わかる人には、どれもまっすぐで、知識を得た人には、すべて正しく思える。
8:10 銀よりも、わたしの教えを受け取りなさい。上等な金よりも、知識を選びなさい。
8:11 知恵は宝石よりも良いものだ。どんなに欲しいものも、知恵にはかなわない。
8:12 わたしは知恵。わたしは賢さとともに住み、知識と、物事を見きわめる力を持っている。
8:13 主を恐れることは、悪を憎むことだ。わたしは、高ぶりや思い上がり、悪い生き方、ねじ曲がった言葉が大きらいだ。
8:14 良い助言も、確かな知恵も、わたしのものだ。わたしには物事を理解する力があり、強さもある。
8:15 わたしによって、王たちは国を治め、支配者たちは正しい定めを立てる。
8:16 わたしによって、君主たちは民を治める。身分の高い人も、正しく裁く者はみなそうだ。
8:17 わたしは、わたしを愛する人を愛する。わたしを探し求める人は、わたしを見つける。
8:18 富も誉れも、わたしとともにある。尽きることのない財産も、義もそうだ。
8:19 わたしの実りは、金よりも、上等な金よりも良い。わたしの収穫は、えり抜きの銀にまさる。
8:20 わたしは義の道を歩み、正しさの道の真ん中を進む。
8:21 わたしを愛する人に財産を受け継がせ、その倉を満たすためだ。
8:22 主は、その道の初めに、大昔のわざに先立って、わたしを造り出された。
8:23 とこしえの昔から、地が始まるよりも前から、わたしは立てられていた。
8:24 深い海がまだなかったとき、水をたたえる泉がまだなかったとき、わたしは生み出された。
8:25 山々がまだ据えられないうちに、丘が生まれるよりも前に、わたしは生み出された。
8:26 主が地も野原も、この世界の最初の土くれも、まだ造らないうちに。
8:27 主が天を整えたとき、わたしはそこにいた。深い海の面に地平線の輪を描いたときも。
8:28 主が上空に雲を固め、深い海の泉を勢いよくあふれさせたときも。
8:29 主が海に境を定め、水がその命令を越えないようにし、地の土台を据えたときも、わたしはそこにいた。
8:30 わたしは主のそばにいて、腕のいい職人のようだった。日ごとに主の喜びとなり、いつも主の前で楽しくはしゃいでいた。
8:31 主が造ったこの世界で遊び、人の子らと共にいることが、わたしの喜びだった。
8:32 だから今、子どもたちよ、わたしの言うことを聞きなさい。わたしの道を守る人は幸いだ。
8:33 教えを聞いて、賢くなりなさい。それを拒んではいけない。
8:34 わたしに聞き従う人は幸いだ。毎日わたしの戸口で見張り、門のわきで待っている人は。
8:35 わたしを見つける人は、命を見つける。そして主に喜ばれるからだ。
8:36 でも、わたしに背く人は、自分の魂を傷つける。わたしを憎む人はみな、死を愛しているのだ。」
9:1 知恵は自分の家を建て、七本の柱を切り出した。
9:2 ごちそうの肉を用意し、ぶどう酒を混ぜ合わせ、食卓を整えた。
9:3 そして召し使いの娘たちを送り出し、町の一番高い所から呼びかける。
9:4 「世間知らずの人は、だれでもこちらへおいで。」考えの足りない人に、知恵はこう言う。
9:5 「さあ、わたしのパンを食べ、わたしが混ぜ合わせたぶどう酒を飲みなさい。
9:6 浅はかさを捨てて、生きなさい。ものごとが分かる者の道を歩みなさい。」
9:7 人をあざ笑う者を正そうとすれば、侮辱を受ける。悪人を注意すれば、自分が傷を負う。
9:8 あざ笑う者を注意してはいけない。憎まれるだけだ。でも、知恵ある人を注意すれば、その人はあなたを慕うようになる。
9:9 知恵ある人に教えれば、その人はさらに知恵を増す。正しい人に教えれば、学びをいっそう深める。
9:10 主を恐れることが、知恵の始まりだ。聖なる方を知ることが、ほんとうの分別だ。
9:11 わたしによって、あなたの生きる日々は増し、いのちの年月が加えられるからだ。
9:12 あなたが知恵を持つなら、その恵みはあなた自身のものになる。あなたがあざ笑うなら、その報いはあなた一人が負うことになる。
9:13 愚かさという女は、うるさく騒ぎ立てる。何もわきまえず、何ひとつ知らない。
9:14 彼女は自分の家の戸口に座り、町の高台に置かれた席に腰かけている。
9:15 そして、道を通り過ぎていく人たち、まっすぐ自分の道を進む人たちに呼びかける。
9:16 「経験の浅い人は、こっちへおいで」と。分別のない人には、こう言う。
9:17 「盗んだ水は甘く、こっそり食べるパンはおいしい。」
9:18 でもその人は気づかない。そこには死んだ者たちがいて、彼女の客は陰府の底にいることを。
10:1 ソロモンの箴言。知恵のある子は父を喜ばせ、愚かな子は母を悲しませる。
10:2 悪で手に入れた宝は、何の役にも立たない。でも正しさは、人を死から救い出す。
10:3 主は、正しい人を飢えさせない。でも悪い者たちの欲望は、はねのける。
10:4 怠けた手で働く人は貧しくなり、勤勉な人の手は富をもたらす。
10:5 夏のうちに集める子は、賢い。刈り入れの時に眠りこける子は、恥をかかせる。
10:6 正しい人の頭には、祝福が注がれる。でも悪い者たちの口は、暴力を覆い隠す。
10:7 正しい人は、思い出されるたびに祝福になる。でも悪い者たちの名前は、腐って消えていく。
10:8 心の賢い人は、教えを素直に受け入れる。でも口ばかりの愚か者は、つまずいて倒れる。
10:9 まっすぐに歩む人は、安心して歩ける。でも道を曲げて歩く人は、いつか正体がばれる。
10:10 こっそり目くばせする人は、まわりに苦しみを引き起こす。そして口ばかりの愚か者は、つまずいて倒れる。
10:11 正しい人の口は、いのちの湧き出る泉だ。でも悪い者たちの口は、暴力を覆い隠す。
10:12 憎しみは、争いをかき立てる。でも愛は、すべての過ちを覆う。
10:13 分かっている人のくちびるには、知恵がある。でも考えの足りない人の背中には、むちが待っている。
10:14 賢い人は、知識をたくわえていく。でも愚か者の口は、破滅をすぐそばに招く。
10:15 金持ちの財産は、その人を守る堅い城になる。でも貧しい人の破滅は、その貧しさそのものだ。
10:16 正しい人の働きは、いのちにつながる。でも悪い者の稼ぎは、罪につながる。
10:17 教えを守る人は、いのちへの道を歩む。でも注意を無視する人は、道に迷わせる。
10:18 憎しみを隠す人は、うそをつくくちびるを持っている。そして人の悪口を言いふらす人は、愚か者だ。
10:19 言葉が多いと、罪が絶えない。でもくちびるを抑える人は、賢い。
10:20 正しい人の舌は、選び抜かれた銀のようだ。でも悪い者の心は、ほとんど値打ちがない。
10:21 正しい人のくちびるは、多くの人を養う。でも愚か者は、思慮が足りなくて死ぬ。
10:22 主の祝福こそが、人を豊かにする。しかもそれに、苦しみが加わることはない。
10:23 愚か者は、悪だくみを遊びのようにする。でも分別のある人は、知恵を喜びとする。
10:24 悪い者が恐れていることは、その身にふりかかる。でも正しい人の願いは、かなえられる。
10:25 嵐が過ぎ去ると、悪い者は消えていなくなる。でも正しい人は、いつまでも変わらない土台だ。
10:26 歯にしみる酢のように、目にしみる煙のように、なまけ者は、使いに出す人をいらだたせる。
10:27 主を恐れることは、いのちの日を延ばす。でも悪い者の年月は、短くなる。
10:28 正しい人の望みは、喜びになる。でも悪い者の期待は、消えてなくなる。
10:29 主の道は、まっすぐに生きる人にはとりでとなる。でも悪を行う者には、滅びとなる。
10:30 正しい人は、いつまでも揺るがない。でも悪い者は、地に住み続けられない。
10:31 正しい人の口は、知恵を実らせる。でも曲がったことを語る舌は、切り取られる。
10:32 正しい人の唇は、何が喜ばれるかを知っている。でも悪い者の口は、曲がったことばかり語る。
11:1 ごまかしのはかりを、主はひどく嫌う。でも正確なおもりを、主は喜ぶ。
11:2 高ぶりが来れば、恥もついて来る。でもへりくだる人には、知恵がある。
11:3 まっすぐに生きる人は、その誠実さに導かれる。でも裏切る者は、その曲がった心に滅ぼされる。
11:4 怒りの日には、富は役に立たない。でも義は、人を死から救い出す。
11:5 正しく生きる人は、その義によって道がまっすぐになる。でも悪い者は、自分の悪によって倒れる。
11:6 まっすぐに生きる人は、その義によって救われる。でも裏切る者は、自分の欲に捕らえられる。
11:7 悪い者が死ぬと、その望みは消える。力をあてにした期待も、消えてなくなる。
11:8 正しい人は苦しみから救い出される。そして悪い者が、代わりにその苦しみに落ちる。
11:9 神を敬わない者は、口で隣人を破滅させる。でも正しい人たちは、知識によって救い出される。
11:10 正しい人たちがうまくいくと、町は喜ぶ。悪い者たちが滅びると、歓声が上がる。
11:11 まっすぐに生きる人たちの祝福によって、町は栄える。でも悪い者たちの口によって、町は壊される。
11:12 隣人を見下す者は、考えが足りない。でも分別のある人は、黙っている。
11:13 うわさを言いふらす者は、秘密をばらす。でも信頼できる人は、物事を胸にしまっておく。
11:14 導きがなければ、民は倒れる。でも助言する人が多ければ、安全は保たれる。
11:15 知らない人の保証人になる者は、ひどい目にあう。でも保証を嫌う人は、安心していられる。
11:16 品のある女性は誉れを保ち、荒々しい者たちは富を握る。
11:17 慈しみのある人は、自分の魂に良いことをする。でも残酷な者は、自分の身を傷つける。
11:18 悪い者が得る稼ぎは、うわべだけのもの。でも義の種をまく人は、確かな報いを受ける。
11:19 こうして、正しさは命へと向かう。でも悪を追い求める者は、自分の死へと向かう。
11:20 主は、心のねじれた者を忌み嫌う。でも、まっすぐな道を歩む人を喜ばれる。
11:21 悪い者は、必ず罰を受ける。でも正しい人の子孫は、救い出される。
11:22 豚の鼻についた金の輪。分別のない美しい女性は、それと同じだ。
11:23 正しい人の願いは、ただ良いものだけに向かう。でも悪い者の望みは、怒りに終わる。
11:24 惜しみなく分け与えて、かえって豊かになる人がいる。当然出すべきものを出し惜しんで、かえって貧しくなる者もいる。
11:25 人を潤す者は、豊かに満たされる。人を潤す者は、自分もまた潤される。
11:26 穀物を売り惜しむ者を、人々はののしる。でも、それを売る人の頭の上には祝福がある。
11:27 良いことを熱心に求める人は、好意を得る。でも悪を探し求める者には、悪が返ってくる。
11:28 自分の富に頼る者は倒れる。でも正しい人は、緑の葉のように生き生きと茂る。
11:29 自分の家をかき乱す者は、風を受け継ぐだけ。愚かな者は、心の賢い人の召し使いになる。
11:30 正しい人が結ぶ実は、命の木。人の魂を勝ち取る人は、賢い。
11:31 そう、正しい人でさえ、この地で報いを受ける。まして悪人や罪人は、なおさらだ。
12:1 教えを受け入れるのを愛する人は、知識を愛している。でも、叱られるのを嫌う人は愚かだ。
12:2 良い人は、主に喜ばれる。でも、悪だくみをする人を、主は罪に定める。
12:3 人は、悪によってはしっかり立てない。でも、正しい人の根は揺るがない。
12:4 しっかりした妻は、夫の冠だ。でも、夫に恥をかかせる妻は、その骨を腐らせる病のようなものだ。
12:5 正しい人の思いは、公正だ。でも、悪人のたくらみは、人をだますものだ。
12:6 悪人の言葉は、人の血を狙って待ち伏せする。でも、正しい人の口は、人を救い出す。
12:7 悪人は倒されて、いなくなる。でも、正しい人の家は、立ち続ける。
12:8 人は、その賢さに応じてほめられる。でも、心のねじ曲がった人は、さげすまれる。
12:9 低く見られていても召し使いがいる人のほうが、偉そうにしていてパンにも困る人よりましだ。
12:10 正しい人は、自分の家畜の命も気づかう。でも、悪人は、あわれみさえも残酷だ。
12:11 自分の畑を耕す人は、パンに満ち足りる。でも、空しいものを追い求める人は、思慮が足りない。
12:12 悪人は、悪者たちの獲物を欲しがる。でも、正しい人の根は、実を結ぶ。
12:13 悪人は、自分の口の罪で、わなにかかる。でも、正しい人は、苦しみから抜け出す。
12:14 人は、その口が生み出すもので、良いものに満ち足りる。そして、その手の働きは、自分に返ってくる。
12:15 愚かな人は、自分のやり方が正しいと思っている。でも、忠告を聞く人は、賢い。
12:16 愚かな人は、すぐに怒りをあらわにする。でも、賢い人は、侮辱されても平気でいる。
12:17 真実を語る人は、正しいことを述べる。でも、うその証人は、人をだます。
12:18 思いつくままに話す人の言葉は、剣のように人を刺す。でも、賢い人の言葉は、人を癒す。
12:19 真実を語るくちびるは、いつまでも変わらない。でも、うそをつく舌は、ほんの一瞬だ。
12:20 悪をたくらむ人の心には、偽りがある。でも、平和をすすめる人には、喜びがある。
12:21 正しい人には、どんな災いもふりかからない。でも、悪人は、わざわいでいっぱいになる。
12:22 偽りを語るくちびるを、主は忌みきらう。でも、真実を行う人を、主は喜ばれる。
12:23 賢い人は、知っていることをむやみに口にしない。でも、愚かな人の心は、愚かさをさらけ出す。
12:24 勤勉な人の手は、人を治めるようになる。でも、怠け者は、他人にこき使われる。
12:25 心の中の不安は、人を沈ませる。でも、優しい一言は、その人を元気にする。
12:26 正しい人は、友を慎重に選ぶ。でも、悪い者の生き方は、自分を迷わせる。
12:27 なまけ者は、獲物をとっても料理しない。でも、勤勉な人は、価値ある富を手に入れる。
12:28 正しい道には、いのちがある。その道を歩めば、死はない。
13:1 賢い子は、父の教えを聞く。でも、人をばかにする者は、しかられても聞かない。
13:2 人は、自分の口から出る言葉の実で、良いものを味わう。でも、裏切り者の魂は、暴力を求める。
13:3 口を慎む人は、自分のいのちを守る。でも、軽々しく話す人は、身を滅ぼす。
13:4 なまけ者の魂は、ほしがっても何も手に入らない。でも、勤勉な人の魂は、満ち足りる。
13:5 正しい人は、うそを憎む。でも、悪い者は、恥ずべきことをして、はずかしめを受ける。
13:6 正しさは、まっすぐに歩む人を守る。でも、悪は、罪を犯す者を破滅させる。
13:7 金持ちのふりをしても、何も持っていない人がいる。でも、貧しいふりをしても、たくさんの富を持っている人がいる。
13:8 富は、命の身代金になることもある。でも、貧しい人は、おどしの言葉を聞くこともない。
13:9 正しい人の光は、明るく輝く。でも、悪い者のともし火は、消えてしまう。
13:10 高ぶりからは、争いしか生まれない。でも、助言に耳をかたむける人には、知恵がある。
13:11 あわてて手に入れた富は、減っていく。でも、こつこつ働いて集める人は、それを増やしていく。
13:12 かなわないままの望みは、心を病ませる。でも、願いがかなうことは、命の木だ。
13:13 教えをばかにする人は、身をほろぼす。でも、その命令を大切にする人は、報いを受ける。
13:14 知恵ある人の教えは、命の泉だ。それは、死のわなから人を遠ざける。
13:15 すぐれた分別は、人から好かれる。でも、裏切る者の道は、けわしい。
13:16 かしこい人は、みな考えてから行動する。でも、愚かな者は、自分の愚かさをさらけ出す。
13:17 悪い使者は、わざわいに落ちる。でも、信頼できる使いは、いやしをもたらす。
13:18 教えを無視する人には、貧しさと恥が待っている。でも、注意を受け入れる人は、うやまわれる。
13:19 かなえられた願いは、魂に心地よい。でも、悪から離れることを、愚かな者はひどく嫌がる。
13:20 かしこい人と歩む者は、かしこくなる。でも、愚かな者と付き合う者は、痛い目にあう。
13:21 わざわいは、罪人を追いかける。でも、正しい人には、良いものが報いとして返ってくる。
13:22 善い人は、孫の代まで受け継がれる財産を残す。でも、罪人の富は、正しい人のためにたくわえられる。
13:23 貧しい人の畑も、豊かな実りをもたらす。でも、不正のせいで、それが奪われてしまうこともある。
13:24 むちを惜しむ者は、自分の子を憎んでいる。でも、子を愛する者は、早いうちからきちんとしつける。
13:25 正しい人は、満足するまで食べられる。でも、悪い者の腹は、満たされない。
14:1 かしこい女は、自分の家を築く。でも、愚かな女は、自分の手でそれを壊してしまう。
14:2 まっすぐに歩む人は、主を敬う。でも、曲がった道を行く人は、主を見下している。
14:3 愚かな者の口は、高ぶりのむちを招く。でも、かしこい人のくちびるは、その身を守る。
14:4 牛がいなければ、飼い葉おけはきれいなままだ。でも、豊かな実りは、牛の力によって生まれる。
14:5 誠実な証人は、うそをつかない。でも、偽りの証人は、うそばかり口にする。
14:6 あざける者は、知恵を求めても見つけられない。でも、分かっている人には、知識はたやすく手に入る。
14:7 愚かな者からは離れなさい。その口から、知識を得ることはないのだから。
14:8 賢い人の知恵は、自分の進む道をわきまえることだ。でも、愚かな者の愚かさは、人をだますことだ。
14:9 愚かな者は、罪をあざ笑う。でも、正しい人たちの間には、受け入れがある。
14:10 心は、自分だけの苦しみを知っている。その喜びに、他人が入り込むことはできない。
14:11 悪い者の家は、滅ぼされる。でも、正しい人の住まいは、栄える。
14:12 人には正しく見える道がある。でも、その行き着く先は、死の道だ。
14:13 笑っていても、心は痛むことがある。その楽しさの終わりは、悲しみだ。
14:14 心の離れた者は、自分の行いの報いをたっぷり受ける。でも、良い人は、自分の行いで満たされる。
14:15 考えの浅い人は、どんな言葉も信じてしまう。でも、賢い人は、自分の一歩一歩をよく考える。
14:16 賢い人は、恐れて悪を避ける。でも、愚かな者は、かっとなって、自分を過信する。
14:17 すぐ怒る人は、愚かなことをしてしまう。悪いたくらみをする人は、憎まれる。
14:18 考えの浅い人が受け継ぐのは、愚かさだ。でも、賢い人は、知識を冠として受ける。
14:19 悪い者は、良い人の前で身をかがめる。悪事を働く者は、正しい人の門の前でひれ伏す。
14:20 貧しい人は、隣人からさえ嫌われる。でも、お金持ちには、たくさんの友だちがいる。
14:21 隣人を見下す人は、罪を犯している。でも、苦しんでいる人にやさしくする人は、幸せだ。
14:22 悪いことをたくらむ人は、道に迷うのではないか。でも、良いことを計画する人には、慈しみとまことがある。
14:23 どんな仕事にも、必ず実りがある。でも、口先だけの話は、貧しさを招くだけだ。
14:24 賢い人にとって、その富は冠となる。でも、愚かな者が持っているのは、ただの愚かさだ。
14:25 正直に証言する人は、いくつもの命を救う。でも、うそをつく証人は、人を欺く。
14:26 主を恐れ敬うところには、強い安心がある。その子どもたちにも、逃げ込める場所がある。
14:27 主を恐れ敬うことは、命の泉だ。それは、死の罠から人を遠ざける。
14:28 民が多ければ、それは王の輝きとなる。でも、民がいなければ、支配者は滅びる。
14:29 怒るのが遅い人は、深い知恵を持っている。でも、すぐにいらだつ人は、愚かさをさらけ出す。
14:30 穏やかな心は、体に命を与える。でも、ねたみは、骨を腐らせる。
14:31 弱い人を虐げる人は、その人を造った神を侮っている。でも、貧しい人に親切にする人は、神を敬っている。
14:32 悪い人は、自分の悪によって滅ぼされる。でも、正しい人は、死のときにも安心して身を寄せられる。
14:33 知恵は、分別のある人の心の中で静かに宿っている。でも、愚かな人たちの間では、その正体がすぐに知れわたる。
14:34 正しさは、国を高く引き上げる。でも、罪は、どんな民にとっても恥となる。
14:35 王は、賢く働く家来を喜ぶ。でも、恥ずべきことをする者には、激しく怒る。
15:1 やわらかい返事は、怒りをしずめる。でも、きつい言葉は、怒りをかき立てる。
15:2 知恵ある人の舌は、知識を上手に伝える。でも、愚かな人の口は、愚かさをまき散らす。
15:3 主の目は、どんな場所にもそそがれている。悪い者も善い者も、すべて見ている。
15:4 人をいやす言葉は、命の木のようだ。でも、ねじ曲がった言葉は、心を打ち砕く。
15:5 愚かな者は、父の教えをばかにする。でも、注意を素直に受け入れる人は、かしこくなる。
15:6 正しい人の家には、豊かな蓄えがある。でも、悪い人の稼ぎには、災いがついてくる。
15:7 かしこい人の口は、知識を広める。でも、愚かな者の心は、そうではない。
15:8 悪い人のささげ物を、主はきらう。でも、まっすぐな人の祈りを、主は喜ぶ。
15:9 悪い人の生き方を、主はきらう。でも、正しさを追い求める人を、主は愛する。
15:10 正しい道を捨てる者には、きびしい罰が待っている。注意されるのをきらう者は、死ぬことになる。
15:11 死の世界も、滅びの底も、主の目の前ではむき出しだ。まして、人の心はなおさらだ。
15:12 人をばかにする者は、注意されるのをきらう。だから、かしこい人のところへは行こうとしない。
15:13 心が喜んでいると、顔は明るくなる。でも、心が痛んでいると、気持ちは沈んでいく。
15:14 かしこい人の心は、知識を求める。でも、愚かな者の口は、くだらないことばかり食べている。
15:15 苦しむ人の毎日は、つらいことばかりだ。でも、心が明るい人には、毎日がごちそうのようだ。
15:16 少ししか持っていなくても、主を敬って生きるほうがいい。たくさんの財産を持っていても、不安がついてくるよりは。
15:17 野菜だけの食事でも、愛があるほうがいい。よく肥えた牛の肉があっても、憎しみがあるよりは。
15:18 怒りっぽい人は、争いを引き起こす。でも、気の長い人は、もめごとを静める。
15:19 怠け者の歩む道は、いばらでふさがれている。でも、まっすぐに生きる人の道は、平らに整えられている。
15:20 賢い子は、父を喜ばせる。でも、愚かな者は、母を見下す。
15:21 考えの足りない人は、愚かなことを楽しむ。でも、分別のある人は、まっすぐに歩む。
15:22 相談する相手がいなければ、計画は失敗する。でも、助言してくれる人が多ければ、うまくいく。
15:23 うまく答えられると、人は嬉しい。ちょうどいいときに出る一言は、なんてすばらしいのだろう。
15:24 賢い人の歩む道は、上へと続く命の道。だから、下にある死者の世界に引き込まれずにすむ。
15:25 主は、高ぶる者の家を取り壊す。でも、未亡人の土地の境界は、しっかり守ってくださる。
15:26 悪いたくらみを、主は忌み嫌う。でも、やさしい言葉は清らかだ。
15:27 不正な利益をむさぼる者は、自分の家庭を壊す。でも、わいろを嫌う人は生きる。
15:28 正しい人は、心でよく考えてから答える。でも、悪い者の口は、悪意をまき散らす。
15:29 主は、悪い者からは遠く離れている。でも、正しい人の祈りは、聞いてくださる。
15:30 明るいまなざしは、心を喜ばせる。よい知らせは、体のすみずみまで元気にする。
15:31 命につながる注意に耳を傾ける人は、知恵ある人たちの中で暮らすようになる。
15:32 しつけを無視する人は、自分の魂を粗末にしている。でも、注意に耳を傾ける人は、考える力を身につける。
15:33 主を恐れることが、知恵を学ぶ第一歩だ。人から敬われる前に、まず謙虚さがある。
16:1 心の中で計画を立てるのは人だが、それを言葉にして答えるのは、主から与えられる。
16:2 人は自分のやり方をどれも正しいと思っている。でも、主はその心の奥を量られる。
16:3 あなたのすることを、主にゆだねなさい。そうすれば、あなたの計画はしっかりと立てられる。
16:4 主は、すべてのものをそれぞれの目的のために造られた。悪い者さえ、災いの日のために。
16:5 心のおごった人は、みな主に嫌われる。手を組んで頼り合っても、罰をまぬがれることはない。
16:6 慈しみとまことによって、罪はゆるされる。主を恐れることで、人は悪から離れる。
16:7 主が人の歩む道を喜ぶとき、その人の敵さえも和解させてくださる。
16:8 正しく得たわずかなものの方が、不正に得た多くの実りよりも良い。
16:9 人は心の中で自分の道を思い描く。でも、その一歩一歩を定めるのは主だ。
16:10 王の言葉には神の判断が宿る。裁きのとき、その口は誤らない。
16:11 正しいはかりと天びんは主のもの。袋の中の分銅も、みな主が造られた。
16:12 悪を行うことは、王にとって忌むべきことだ。王座は正しさによって固く立つのだから。
16:13 正しい言葉は王に喜ばれる。まっすぐに語る人を、王は愛する。
16:14 王の怒りは、死の使いのようだ。でも、知恵ある人はそれをなだめる。
16:15 王の顔が明るく輝くとき、そこにいのちがある。その恵みは、春の雨をもたらす雲のようだ。
16:16 知恵を得ることは、金よりもずっと良い。分別を得ることは、銀にまさって選ぶべきものだ。
16:17 まっすぐな人の歩む道は、悪から離れること。自分の道を守る人は、その魂を守る。
16:18 高ぶりは、破滅の前に来る。おごった心は、つまずきの前に来る。
16:19 貧しい人とともに、へりくだった心でいるほうがいい。高ぶる者たちと戦利品を分け合うよりも、ずっと良い。
16:20 物事に心を配る人は、良いものを見つける。主に信頼する人は、幸いだ。
16:21 心に知恵のある人は、分別があると言われる。優しい言葉は、人を動かす力を増す。
16:22 分別は、それを持つ人にとって命の泉だ。でも愚か者にとっての戒めは、自分の愚かさそのものだ。
16:23 知恵ある人の心は、その口を賢くし、その唇に説得力を添える。
16:24 親切な言葉は、蜂の巣の蜜のようだ。魂に甘く、骨を癒やす。
16:25 人の目には、まっすぐに見える道がある。でもその終わりは、死へと向かう道だ。
16:26 働く人の食欲は、その人のために働く。空腹が、その人を駆り立てるからだ。
16:27 ろくでもない者は、悪を掘り起こす。その唇には、焼けつく火のようなものがある。
16:28 ひねくれた者は、争いをまき散らす。陰口をたたく者は、親しい友を引き裂く。
16:29 乱暴な者は、隣人を誘い込み、良くない道へと連れて行く。
16:30 目くばせする者は、ひねくれたことを企てている。唇を固く結ぶ者は、悪事をやり遂げる。
16:31 白髪は輝く冠。正しい生き方を歩むなかで得られるものだ。
16:32 怒りをおさえられる人は、勇士よりも優れている。自分の心を抑えられる人は、町を攻め落とす者よりも強い。
16:33 くじはひざの上で投げられる。でも、その結果を決めるのはすべて主だ。
17:1 乾いたパン一切れでも、心が穏やかならそのほうがいい。ごちそうであふれていても、争いの絶えない家より、ずっといい。
17:2 賢く立ち回る召使いは、恥をもたらす息子を治めるようになる。そして兄弟たちに交じって、財産を分け合うことになる。
17:3 銀を精錬するにはるつぼ、金には炉。でも、人の心を試すのは主だ。
17:4 悪事を働く者は、人を傷つける言葉に耳を傾ける。うそつきは、人を破滅させる言葉に聞き入る。
17:5 貧しい人をあざ笑う者は、その人を造った方を侮辱している。人の不幸を喜ぶ者は、罰を逃れられない。
17:6 孫は年老いた人の冠。子どもにとっての誇りは、その親だ。
17:7 気の利いた言葉は、愚かな者に似合わない。まして、うそをつく口が、りっぱな人に似合うはずもない。
17:8 わいろは、それを持つ者の目には魔法の石のように見える。どこへ持って行っても、うまくいくと思っている。
17:9 過ちを見逃してあげる人は、愛を育てる。でも、そのことを蒸し返す者は、親しい友を引き裂く。
17:10 分別のある人には、一度の忠告のほうが、愚かな者への百回の打ちよりも深くしみる。
17:11 悪い者は、逆らうことばかりを求める。だから、容赦のない使いが送り込まれる。
17:12 愚か者の愚かさに出くわすくらいなら、子を奪われた熊に出会うほうがまだましだ。
17:13 良いことに悪いことで返す者、その家から災いは去らない。
17:14 争いの始まりは、堤から水がもれ出すようなもの。もめ事が広がる前に、やめておきなさい。
17:15 悪い者を正しいとし、正しい人を悪いと決めつける——そのどちらも、主がひどく嫌うことだ。
17:16 何のために、愚か者の手に知恵を買うお金があるのか。学ぶ心などないのに。
17:17 友は、どんなときも愛してくれる。兄弟は、苦しみのときのために生まれる。
17:18 分別のない人は、軽く手を打って約束し、隣人の借金の保証人になってしまう。
17:19 争いを好む人は、罪を好んでいる。門を高く構える人は、身の破滅を招く。
17:20 心のねじれた人は、良いものを手に入れられない。舌でごまかす人は、災いに落ちる。
17:21 愚か者を子に持つと、親は嘆くことになる。愚かな者の父に、喜びはない。
17:22 心が晴れやかだと、体まで元気になる。気持ちが沈むと、骨まで枯れていく。
17:23 悪人はこっそり賄賂を受け取り、公正なさばきを曲げてしまう。
17:24 分別のある人は、すぐ目の前の知恵を見つめる。でも愚か者の目は、地の果てをさまよっている。
17:25 愚かな息子は、父を怒らせ、産んだ母を苦しめる。
17:26 正しい人に罰を与えるのは、良くない。まっすぐな人を打つのも、間違っている。
17:27 言葉を控える人は、本当の知識を持っている。落ち着いた心の人は、物事がよくわかっている。
17:28 愚か者でも、黙っていれば賢く見える。口を閉じていれば、分別があると思われる。
18:1 人と離れて一人になる者は、自分の欲望だけを追い求める。そして、どんな正しい知恵にも食ってかかる。
18:2 愚かな者は、物事を理解することに関心がない。ただ自分の考えをまくし立てたいだけだ。
18:3 悪が入り込むと、さげすみもいっしょに入ってくる。そして、恥とともに、そしりがついてくる。
18:4 人の口から出る言葉は、深い水のようだ。知恵の泉は、こんこんとわき出る流れのようだ。
18:5 悪い者をひいきにするのは良くない。正しい人を、裁きの場で退けてしまうからだ。
18:6 愚かな者の言葉は、争いを引き起こす。その口は、殴られることを自分から招く。
18:7 愚かな者の口は、自分自身を滅ぼす。その唇は、自分の魂をとらえるわなだ。
18:8 うわさ話をする者の言葉は、おいしいごちそうのようだ。それは腹の奥深くまですっと入っていく。
18:9 自分の仕事を怠ける者は、すべてを壊してしまう者の兄弟だ。
18:10 主の名は、堅固なやぐらだ。正しい人はそこに走り込み、安全に守られる。
18:11 金持ちにとって、財産は堅固な町のようなものだ。彼はそれを、高くそびえる城壁のように思い込んでいる。
18:12 滅びの前に、人の心は高ぶる。しかし、ほまれの前には、へりくだりがある。
18:13 よく聞かないうちに答えてしまうのは、愚かで恥ずかしいことだ。
18:14 人の心は、病のときでも自分を支えてくれる。でも、その心が折れてしまったら、だれが耐えられるだろう。
18:15 賢い人の心は知識を身につけ、知恵ある人の耳は知識を求める。
18:16 贈り物は、その人のために道を開き、身分の高い人の前へと導いてくれる。
18:17 最初に訴え出た人は、正しく見える。でも、相手が来て問いただすと、そうとは限らない。
18:18 くじを引けば争いはおさまり、力のある者同士も引き離される。
18:19 傷つけられた兄弟の心は、堅固な町よりも手ごわい。争いは、城のかんぬきのように固く閉ざされる。
18:20 人は、自分の口から出た実によって満ち足りる。くちびるの実りで、お腹いっぱいになるのだ。
18:21 死も生も、舌の力しだいだ。舌を大切にする人は、その実を味わうことになる。
18:22 良い妻を見つける人は、幸せを見つける。そして、主から恵みを受けるのだ。
18:23 貧しい人はあわれみを乞い、金持ちはそっけなく答える。
18:24 友達が多くても、身を滅ぼすことがある。でも、兄弟よりも親しく寄り添ってくれる友もいる。
19:1 貧しくても正直に生きる人のほうが、口のねじ曲がった愚か者よりも良い。
19:2 熱意があっても知識がなければ、それは良くない。あわてて足を急がせる者は、道を踏み外す。
19:3 人は自分の愚かさで人生をだめにする。それなのに心の中では、主に腹を立てる。
19:4 富があれば、友はどんどん増える。でも貧しい人は、たった一人の友からも引き離される。
19:5 偽りの証言をする者は、罰を免れない。うそをまき散らす者は、逃げきれない。
19:6 多くの人が、気前のいい人の機嫌をとろうとする。贈り物をくれる人には、だれもが友になる。
19:7 貧しい人は、兄弟姉妹みんなからさえ嫌われる。まして友だちなら、なおさら遠ざかっていく。言葉をかけて追いかけても、返ってくるものはない。
19:8 分別を身につける人は、自分の魂を愛している。判断力を大切にする人は、良いものを手に入れる。
19:9 偽りの証言をする者は、罰を免れない。うそをまき散らす者は、滅びる。
19:10 愚か者にぜいたくは似合わない。まして召使いが君主を支配するなど、なおさらだ。
19:11 分別のある人は、怒りをおさえる。人の過ちを見のがすことが、その人の誇りだ。
19:12 王の怒りは、ライオンのうなり声のようだ。でも王の好意は、草におりる露のようだ。
19:13 愚かな息子は、父にとって災いだ。妻とのいさかいは、絶え間なく落ちる雨だれのようだ。
19:14 家や財産は、先祖から受け継ぐもの。でも、賢い妻は主から与えられる。
19:15 怠けていると、深い眠りに落ちる。何もしない人は、腹をすかせることになる。
19:16 命令を守る人は、自分の命を守る。自分の生き方を軽んじる人は、死ぬことになる。
19:17 貧しい人にあわれみをかける人は、主に貸しているのと同じだ。主がその行いに報いてくださる。
19:18 望みがあるうちに、息子をしつけなさい。でも、死なせてしまうほど厳しくしてはいけない。
19:19 怒りっぽい人は、その報いを受ける。一度助けても、また助けるはめになるだけだ。
19:20 助言を聞き、教えを受け入れなさい。そうすれば、この先、知恵ある人になれる。
19:21 人の心には、たくさんの計画がある。でも、実現するのは主の計画だ。
19:22 人に望まれるのは、その人の変わらぬ慈しみだ。貧しい人でも、うそをつく人よりましだ。
19:23 主を恐れることは、命へと導く。それを持つ人は満ち足りて休み、災いに見舞われることがない。
19:24 怠け者は、皿に手を突っ込んでも、それを口に運ぼうともしない。
19:25 あざける者を打てば、考えの浅い人が賢くなる。分かっている人を注意すれば、その人はさらに知識を身につける。
19:26 父から奪い、母を追い出す者。それは恥をもたらし、はずかしめを招く子だ。
19:27 わたしの子よ、教えに耳を傾けるのをやめれば、お前は知識の言葉から迷い出てしまう。
19:28 たちの悪い証人は、正しい裁きをあざ笑う。悪い者の口は、不正を次々とのみ込む。
19:29 あざける者には裁きが用意され、愚かな者の背中にはむちが待っている。
20:1 酒は人をあざける者にし、強い酒は人を騒がしくする。それに酔ってふらつく者は、賢くなれない。
20:2 王の怒りは、ライオンのうなり声のようだ。王を怒らせる者は、自分の命を危険にさらす。
20:3 争いを避けることは、人にとって名誉だ。でも、愚かな者はすぐにいさかいを起こす。
20:4 怠け者は寒さを理由に耕さない。だから収穫のときに求めても、何も得られない。
20:5 人の心にある考えは、深い水のようだ。でも、分かっている人は、それをくみ出す。
20:6 自分は変わらず慈しみ深いと言う人は多い。でも、本当に信頼できる人を、だれが見つけられるだろう。
20:7 正しい人は、まっすぐな心で歩む。その後を継ぐ子どもたちは幸せだ。
20:8 裁きの座に着く王は、その目ですべての悪を見分けて追い払う。
20:9 「わたしは心をきれいにした。罪から清くなった」と、だれが言えるだろう。
20:10 二種類の分銅、二種類のます。そのどちらも、主が忌み嫌うものだ。
20:11 子どもでさえ、その行いでどんな人か分かる。清く正しいかどうかは、することに表れる。
20:12 聞く耳と見る目。そのどちらも、主が造られた。
20:13 眠りを愛してはいけない。貧しくなってしまうからだ。目を開けていなさい。そうすればパンに満ち足りる。
20:14 買う人は「よくない、よくない」と言う。でも、その場を立ち去ってから自慢する。
20:15 金もたくさんの宝石もある。でも、知識を語る唇こそ、値打ちのある宝だ。
20:16 他人の保証人になった者からは、その着物を取り上げよ。見知らぬ女のために保証したのなら、それを担保に取れ。
20:17 だまして手に入れたパンは、その人には甘い。でも後で、口の中は砂利でいっぱいになる。
20:18 計画は、相談して初めて固まる。戦いをするなら、よく助言を得てからにせよ。
20:19 うわさ話を広める人は、秘密を漏らす。だから、ぺらぺらとよくしゃべる人には近づくな。
20:20 父や母をののしる者は、その明かりが、真っ暗な闇の中で消される。
20:21 初めに急いで手に入れた財産は、最後まで祝福されない。
20:22 「悪いことをされたから、仕返ししてやる」と言ってはいけない。主を待ち望め。主があなたを救ってくれる。
20:23 重さをごまかす二種類のおもりを、主は憎まれる。いんちきなはかりは、良いものではない。
20:24 人の歩みは、主が定める。それなら人は、自分の行く道をどうして分かるだろう。
20:25 よく考えずに「これは主にささげます」と誓い、後になって考え直すのは、自分を罠にかけることだ。
20:26 知恵ある王は、悪い者たちをふるい分け、その上に車輪を回して打ち砕く。
20:27 人の心は、主がともす明かり。腹の奥のすみずみまで探り出す。
20:28 慈しみとまことが、王を守る。その王座は、慈しみによって支えられる。
20:29 若者の輝きは、その力。老人の美しさは、その白髪だ。
20:30 傷つくほどの打ち身は悪を洗い流し、打たれた痛みは腹の奥まで清める。
21:1 王の心は主の手の中にある。水路の水のように、主は望むままにその心を導かれる。
21:2 人は自分のやり方がどれも正しいと思っている。でも主は心の中まで見て、量られる。
21:3 正しいことと公正なことを行う。それは主にとって、いけにえよりも喜ばれる。
21:4 見下すまなざしと、思い上がった心。悪い者のすることは、どれも罪だ。
21:5 こつこつ働く人の計画は、必ず豊かさにつながる。でも焦って動く人は、必ず足りなくなる。
21:6 うそをついて財産を築いても、それは吹き飛ぶ煙のように消え、死をもたらすだけだ。
21:7 悪い者は自分の暴力に引きずり倒される。正しく公正に生きることを、こばんだからだ。
21:8 後ろ暗い人の歩む道は曲がっている。でも心のきれいな人のすることは、まっすぐだ。
21:9 争ってばかりの妻と広い家で暮らすより、屋根のすみっこで暮らすほうがましだ。
21:10 悪い者は心の底から悪を求める。だから隣の人にも、まるで情けをかけない。
21:11 人を見下す者が罰せられると、それを見た未熟な人は賢くなる。賢い人が教えを受ければ、さらに深く学びとる。
21:12 正しい神は、悪い者の家をじっと見ておられる。そして悪い者を、その悪ゆえに滅ぼされる。
21:13 貧しい人の叫びに耳をふさぐ者は、自分が叫ぶときにも答えてもらえない。
21:14 こっそり贈り物を渡せば、怒りはおさまる。ふところにそっと握らせる金は、激しい怒りさえしずめる。
21:15 正しいことが行われるのは、正しい人には喜びだ。でも悪事を働く者には、それが破滅となる。
21:16 分別の道からさまよい出る人は、死んだ者たちの集まりの中で休むことになる。
21:17 遊びが好きな人は、貧しくなる。酒や上等な油を好む者は、豊かにはなれない。
21:18 悪い者は、正しい人の身代わりとなる。裏切る者は、まっすぐな人の代わりに罰を受ける。
21:19 争ってばかりで怒りっぽい妻と暮らすより、荒れ野に住むほうがましだ。
21:20 賢い人の家には、値打ちのある宝と上等な油がある。でも愚かな者は、それを食いつぶす。
21:21 義と慈しみを追い求める人は、命と義と誉れを手に入れる。
21:22 賢い人は、勇士たちの町にも攻め上る。そして彼らが頼みにしていた砦を、打ち崩す。
21:23 口と舌に気をつける人は、自分の魂を苦しみから守る。
21:24 高ぶって偉そうにする者、その名は「人を見下す者」。あふれる高慢さのままにふるまう。
21:25 怠け者の欲望は、彼を殺す。その手が働くことを拒むからだ。
21:26 怠け者は一日中、欲しがってばかりいる。でも正しい人は、惜しまずに与える。
21:27 悪人のささげ物は、主に嫌われる。ましてよこしまな思いでささげるなら、なおさらだ。
21:28 偽りの証言をする者は滅びる。でも、よく聞いて語る人の言葉は、いつまでも残る。
21:29 悪人は厚かましい顔をする。でも正しい人は、自分の進む道をよく考える。
21:30 主に立ち向かえる知恵も、悟りも、はかりごともない。
21:31 戦いの日のために馬は備えられる。でも勝利は主から来る。
22:1 良い評判は、あり余る富よりも選ぶ価値がある。人に好かれることは、金や銀にまさる。
22:2 富む者も貧しい者も、同じ世で出会う。そのすべてを造ったのは主だ。
22:3 賢い人は危険を見て、身を隠す。でも考えの浅い人はそのまま進み、痛い目にあう。
22:4 謙遜と、主を敬うことの報いは、富と誉れといのちだ。
22:5 曲がった人の道には、とげとわながある。自分の魂を守る人は、それらから遠く離れている。
22:6 子どもを、進むべき道に沿って育てなさい。そうすれば年をとっても、その道から外れることはない。
22:7 富む者は貧しい人を支配する。金を借りる人は、貸す人の奴隷になる。
22:8 不正の種をまく人は、災いを刈り取る。その怒りのむちも、いつか折れてなくなる。
22:9 気前のよい人は祝福される。自分のパンを、貧しい人に分けるからだ。
22:10 人をあざける者を追い出せば、争いも出て行く。もめごとも侮辱も、なくなる。
22:11 心の清さを愛し、話しぶりに品のある人。その友となるのは王だ。
22:12 主の目は知識を守る。でも、裏切り者の言葉はくつがえす。
22:13 なまけ者は言う。「外にライオンがいる。通りに出たら殺されてしまう。」
22:14 よその女の口は、深い落とし穴だ。主に見放された者が、そこに落ちる。
22:15 愚かさは、子どもの心に結びついている。でも、しつけのむちが、それを遠くへ追いやる。
22:16 貧しい人をしいたげて自分の富を増やす者も、金持ちに贈り物をする者も、行き着く先は貧しさだけだ。
22:17 耳を傾けて、知恵ある人たちの言葉を聞きなさい。わたしの教えに、心を向けなさい。
22:18 それを心にしっかり収めておけば、心地よい。そのすべてが、あなたの唇にいつでも備わる。
22:19 あなたが主に信頼を置くように、わたしは今日、あなたに教える。そう、あなたに教えるのだ。
22:20 わたしはあなたのために、三十の言葉を書いたではないか。助言と知識に満ちた言葉を。
22:21 それは、真実の言葉がどれほど確かかを、あなたに知ってもらうためだ。そして、あなたを送り出した人たちに、確かな答えを返せるようにするためだ。
22:22 弱い人を、弱いからといって奪い取ってはいけない。苦しんでいる人を、裁きの場でふみつけてはいけない。
22:23 なぜなら、主が彼らに代わって訴えを起こし、彼らから奪う者の命を奪うからだ。
22:24 怒りっぽい人と、友になってはいけない。すぐにかっとなる人と、一緒に歩んではいけない。
22:25 その人のやり方が身についてしまい、自分の身を罠にかけることになるからだ。
22:26 手を打って保証人になったり、人の借金を肩代わりしたりする者になってはいけない。
22:27 もし返すものがなければ、あなたが寝ている下の寝床まで取り上げられてしまう。どうしてそんな目にあうのか。
22:28 昔から立っている境界の石を、動かしてはいけない。あなたの先祖が定めたものだ。
22:29 自分の仕事に熟練した人を見たことがあるか。その人は王の前に立つ。名もない人たちの前に立つのではない。
23:1 権力者と同じ食卓に着いたら、目の前にあるものをよく見きわめよう。
23:2 もし食欲を抑えられない人なら、自分ののどにナイフを当てるくらいの気持ちでいなさい。
23:3 そのごちそうを欲しがってはいけない。それは人をだます食べ物だから。
23:4 金持ちになろうとして、あくせくするな。自分の知恵に頼るのはやめなさい。
23:5 富に目をとめても、それはもう消えている。富は自分で翼を生やし、わしのように天へ飛び去っていくのだから。
23:6 けちな人のパンを食べてはいけない。その人のごちそうを欲しがるな。
23:7 その人は心の中で損得ばかり計算している。口では「食べて、飲んで」と言うが、心はあなたに向いていない。
23:8 あなたは食べた一口を吐き出すことになり、せっかくのやさしい言葉もむだになる。
23:9 愚かな人の耳に語りかけるな。あなたの賢い言葉を、その人はばかにするだけだ。
23:10 昔からある土地の境界を動かしてはいけない。親のない子の畑に入り込むな。
23:11 その子たちを守る方は強い。あなたを相手に、その子たちのために争ってくださるからだ。
23:12 教えに心を向けなさい。知識のある言葉に耳を傾けなさい。
23:13 子どもをしつけることをためらってはいけない。むちで打っても、その子が死ぬわけではない。
23:14 あなたがむちで打つなら、その子の魂を死の世界から救い出すことになる。
23:15 わたしの子よ、あなたの心が賢くなれば、わたしの心も喜ぶ。
23:16 あなたの口が正しいことを語るとき、わたしの心の底から喜びがあふれる。
23:17 罪を犯す者をうらやんではいけない。一日中、いつも主を敬って生きなさい。
23:18 きっと未来がある。あなたの望みが断たれることはない。
23:19 わたしの子よ、聞きなさい。そして賢くなり、あなたの心を正しい道へ進ませなさい。
23:20 酒を飲みすぎる者や、肉をむさぼり食う者の仲間になってはいけない。
23:21 大酒飲みや大食いは貧しくなる。眠りをむさぼる者は、ぼろを着ることになる。
23:22 あなたを生んでくれた父の言葉を聞きなさい。年老いた母を見下してはいけない。
23:23 真理を買い求めなさい。決して手放してはいけない。知恵も、教えも、分別も、同じようにしなさい。
23:24 正しい子の父は大いに喜ぶ。賢い子を持つ人は、その子を誇りに思う。
23:25 あなたの父と母は喜び、あなたを産んだ母は喜びにあふれる。
23:26 息子よ、心をわたしに向けなさい。あなたの目が、わたしの歩む道を喜んで見つめるように。
23:27 遊女は深い落とし穴、よその女は狭い井戸のようなものだからだ。
23:28 彼女は獲物を狙う者のように待ち伏せて、多くの人を裏切り者にしてしまう。
23:29 災いを抱えるのはだれか。嘆くのはだれか。争うのはだれか。不平を言うのはだれか。理由もなく傷を負うのはだれか。目を赤く濁らせているのはだれか。
23:30 それは、いつまでも酒を飲み続ける者、混ぜ合わせた酒を求めて集まる者だ。
23:31 ぶどう酒が赤く色づくのを、じっと見てはいけない。杯の中で輝き、するりと喉を通っていくときも。
23:32 それは最後には蛇のように噛みつき、毒蛇のように刺す。
23:33 あなたの目は奇妙なものを見て、あなたの心はねじれた言葉を口にする。
23:34 あなたは海の真ん中で横たわる者のように、帆柱のてっぺんで寝そべる者のようになる。
23:35 あなたはこう言うだろう。「殴られたのに、痛くもない。叩かれたのに、気づきもしなかった。いつ目が覚めるのか。目が覚めたら、また一杯やろう。」
24:1 悪い人たちをうらやんではいけない。彼らの仲間になりたいと思ってもいけない。
24:2 彼らの心は人を傷つけることばかり考えている。その口は人を苦しめることばかり話している。
24:3 家は知恵によって建てられ、思慮によってしっかりと支えられる。
24:4 そして知識があれば、部屋という部屋は貴重ですばらしい宝で満たされていく。
24:5 知恵のある人は強く、知識のある人はますます力を増していく。
24:6 戦いに勝つには、よく練った作戦がいるからだ。多くの助言者がいれば、勝利は近い。
24:7 愚かな者にとって、知恵は高すぎて手が届かない。だから人が集まる広場でも、口を開くことができない。
24:8 悪いことをたくらむ人は、陰謀家と呼ばれる。
24:9 愚かなたくらみは罪であり、人をばかにする者はみんなに嫌われる。
24:10 苦しみのときに弱気になってしまうなら、あなたの力はその程度でしかない。
24:11 殺されそうな人を助け出しなさい。死に引かれていく人を、なんとか救いなさい。
24:12 「そんなこと、わたしたちは知らなかった」と言うかもしれない。でも、人の心を見抜く方は、ちゃんと分かっているのではないか。あなたの魂を見守る方は、すべてを知っているのではないか。その方は、一人ひとりに、その行いにふさわしく報いる。
24:13 息子よ、蜜を食べなさい。それは良いものだ。蜂の巣からとれた蜜は、あなたの口に甘い。
24:14 知恵も、あなたの魂にとって、それと同じだと知りなさい。知恵を見つければ、あなたには未来があり、その望みが絶たれることはない。
24:15 悪者よ、正しい人の住まいを狙って待ち伏せするな。その人が休む場所を襲うな。
24:16 正しい人は七度倒れても、そのたびに立ち上がる。でも悪者は、災いのなかに倒れたままだ。
24:17 あなたの敵が倒れても、喜ぶな。その人がつまずいても、心のなかで喜んではいけない。
24:18 主がそれを見て、良くないと思い、その怒りを敵からそらしてしまうといけないからだ。
24:19 悪を行う者のことで、いらいらするな。悪者をうらやむな。
24:20 悪い者に未来はない。悪者のともしびは、消されてしまう。
24:21 息子よ、主と王を恐れなさい。それに逆らおうとする者たちと、関わってはいけない。
24:22 彼らの災いは、突然おそってくる。主と王、その二人がくだす破滅を、いったい誰が知っているだろう。
24:23 これらもまた、知恵ある者たちの言葉だ。裁きのときに人をえこひいきするのは、良くない。
24:24 悪者に「あなたは正しい」と言う者を、人々は呪い、国々は憎む。
24:25 でも、悪者をしっかり正す人には、喜びがある。そういう人の上には、良い祝福がやってくる。
24:26 誠実な答えを返すのは、くちびるにキスをするように、心のこもった行いだ。
24:27 まず外の仕事を整えて、畑の準備をしなさい。自分の家を建てるのは、そのあとにしなさい。
24:28 理由もないのに、隣人に不利な証言をしてはいけない。くちびるで人をだましてはいけない。
24:29 「あいつがやったように、わたしもやり返す。あいつのしたことに、仕返ししてやる」と言ってはいけない。
24:30 わたしは、なまけ者の畑のそばと、思慮のない人のぶどう畑のそばを通った。
24:31 すると、そこは一面にイバラが生い茂り、雑草が地面をおおい、石の垣根はくずれ落ちていた。
24:32 わたしはそれを見て、心にとめた。よく見て、そこから教訓を受け取った。
24:33 「もう少し眠ろう、もう少しまどろもう、もう少し手を組んで横になろう。」
24:34 そうしているうちに、貧しさが強盗のようにおそってくる。乏しさが、武器を持った男のようにやってくる。
25:1 これもソロモンの箴言である。ユダの王ヒゼキヤに仕えた人たちが書き写したものだ。
25:2 物事を隠すことは神の栄光であり、物事を探り究めることは王の誉れである。
25:3 天は高く、地は深い。それと同じで、王の心は測り知れない。
25:4 銀から不純物を取り除けば、細工師の手で器ができあがる。
25:5 王の前から悪い者を取り除けば、その王座は正義によって固く立つ。
25:6 王の前で自分を大きく見せてはいけない。身分の高い人たちの場所に立とうとしてはいけない。
25:7 「もっと上へどうぞ」と言われるほうがずっといい。あなたが見ている貴族の前で、下座へ下げられるよりも。
25:8 急いで争いに飛び出してはいけない。あとで相手に恥をかかされたとき、どうすることもできなくなるからだ。
25:9 争いごとは相手と二人のあいだで片づけなさい。ほかの人の秘密を漏らしてはいけない。
25:10 それを聞いた人にあなたが責められ、悪い評判がいつまでも消えなくなるからだ。
25:11 ふさわしいときに語られた言葉は、銀の飾りにはめ込まれた金のりんごのようだ。
25:12 耳を傾ける人にとって、知恵ある人の忠告は、金の耳輪や純金の飾りのようなものだ。
25:13 収穫のときに冷たい雪があるとうれしいように、信頼できる使者は、自分を送り出した人にとってそういうものだ。主人の心を生き返らせてくれる。
25:14 雨も降らないのに、雲と風だけがある。ありもしない贈り物を自慢する人は、それと同じだ。
25:15 辛抱強く待てば、力ある者の心も動かせる。やわらかい言葉は、骨さえ砕く。
25:16 はちみつを見つけたら、ちょうどいい分だけ食べなさい。食べすぎると、吐いてしまうから。
25:17 隣の人の家に、あまり足しげく通ってはいけない。うんざりされて、嫌われてしまうから。
25:18 隣人について嘘の証言をする人は、こん棒や剣、鋭い矢のようなものだ。
25:19 苦しいときに裏切り者を頼るのは、折れた歯や、くじいた足のようなものだ。
25:20 寒い日に服を脱がせるように、重曹に酢をかけるように、沈んだ心の人に歌を歌って聞かせるのは場違いなことだ。
25:21 あなたを憎む人が飢えているなら、食べ物を与えなさい。渇いているなら、水を飲ませなさい。
25:22 そうすれば、あなたは燃える炭を彼の頭に積むことになり、主があなたに報いてくださる。
25:23 北風が雨をもたらすように、陰口をたたく舌は、人の顔を怒りでゆがませる。
25:24 争ってばかりの妻と広い家で暮らすより、屋根の隅にいるほうがましだ。
25:25 疲れきった人に冷たい水がしみわたるように、遠い国から届く良い知らせは心をうるおす。
25:26 正しい人が悪人の前で崩れ落ちるのは、踏み荒らされた泉、汚された水源のようだ。
25:27 はちみつを食べすぎるのは良くない。同じように、自分の名誉ばかり求めるのも、名誉ではない。
25:28 自分の心を抑えられない人は、城壁を破られ、守りを失った町のようだ。
26:1 夏に雪が降り、刈り入れ時に雨が降るのがふさわしくないように、愚か者に名誉は似合わない。
26:2 すずめがあてもなく飛びまわり、つばめが舞うように、理由のない呪いは相手には届かない。
26:3 馬にはむち、ろばにはくつわ、そして愚か者の背には棒がいる。
26:4 愚か者に、その愚かさに合わせて答えてはいけない。あなたまで同じようになってしまうから。
26:5 いや、愚か者には、その愚かさに合わせて答えなさい。自分は賢いと思い込ませないために。
26:6 愚か者に用事を託して送る者は、自分の足を切り落とし、災いを飲むようなものだ。
26:7 足の不自由な人の両足がだらりと垂れて役に立たないように、愚か者の口から出ることわざも役に立たない。
26:8 石を投石器に結びつけるようなもの。愚か者に名誉を与えるのは、それと同じだ。
26:9 酔っぱらいの手に握られたとげの枝のように、愚か者の口から出ることわざは危なっかしい。
26:10 手当たりしだいに射る射手のように、愚か者を雇ったり、通りすがりの人を雇ったりする者は危ない。
26:11 犬が自分の吐いたものにまた戻ってくるように、愚か者は同じ愚かさを何度も繰り返す。
26:12 自分を賢いと思い込んでいる人を見たことがあるか。そんな人よりも、愚か者のほうがまだ望みがある。
26:13 怠け者は言う。「道にライオンがいる。大通りに獅子がいる」と。
26:14 扉がちょうつがいの上でくるくる回るように、怠け者は寝床の上で寝返りを打つばかりだ。
26:15 怠け者は皿に手を突っ込んでも、それを口まで持っていくことさえ面倒がる。
26:16 それでも怠け者は、うまく受け答えできる七人よりも、自分のほうが賢いと思い込んでいる。
26:17 自分には関係のない争いに、通りすがりに首を突っ込む者は、犬の耳をつかむようなものだ。
26:18 火矢や矢、そして死を射かける狂った人のように、
26:19 隣人をだましておいて「ただの冗談だよ」と言う人は、まさにそれと同じだ。
26:20 薪がなくなれば火は消える。陰口を言う人がいなくなれば、争いはやむ。
26:21 炭が燃える炭火をあおり、薪が火を燃え立たせるように、争い好きな人は争いをあおり立てる。
26:22 陰口を言う人の言葉は、おいしいごちそうのようだ。それは腹の奥底まですっと入り込んでいく。
26:23 燃えるような優しい言葉と、悪い心。それは、銀めっきをかけただけの素焼きの器のようなものだ。
26:24 人を憎む者は、口先では本心を隠す。でも心の中では、だまそうとたくらんでいる。
26:25 だから、その人が優しく話しかけてきても、信じてはいけない。その心の中には、七つもの忌まわしいものがあるからだ。
26:26 憎しみをうまく覆い隠していても、その悪は人々の前で明るみに出る。
26:27 落とし穴を掘る者は、自分がそこに落ちる。石を転がす者には、その石が転がり戻ってくる。
26:28 偽りを言う舌は、自分が傷つけた人を憎む。へつらう口は、人を破滅させる。
27:1 明日のことを自慢するな。一日のうちに何が起こるか、あなたには分からないのだから。
27:2 自分をほめるのは自分の口ではなく、他人にほめてもらいなさい。あなたの唇ではなく、よその人の口に。
27:3 石は重く、砂も重い。でも、愚か者がいらだたせるほうが、その両方より重い。
27:4 怒りは残酷で、憤りは洪水のように押し流す。でも、ねたみの前には誰が立っていられるだろう。
27:5 はっきり叱ってくれるほうが、隠された愛よりも良い。
27:6 友がつける傷には真心がこもっている。でも、敵が何度もするキスは信じられない。
27:7 満腹の人は蜂蜜さえ踏みつける。でも、腹をすかせた人には、苦いものもみんな甘い。
27:8 巣を離れてさまよう鳥のように、自分の居場所を離れてさまよう人もそうだ。
27:9 油と香りは心を喜ばせる。友の親身な助言の甘さも、それと同じだ。
27:10 あなたの友も、父の友も見捨てるな。苦しみに会う日には、兄弟の家へ行くな。遠くにいる兄弟より、近くにいる隣人のほうが良い。
27:11 わが子よ、賢くなって、わたしの心を喜ばせてくれ。そうすれば、わたしをばかにする者に言い返すことができる。
27:12 賢い人は危険を見て身を隠す。でも、考えの浅い人はそのまま進んで、痛い目にあう。
27:13 他人の保証人になった者からは、その着物を取り上げよ。見知らぬ女のために保証したのなら、それを担保に取れ。
27:14 朝早くから大声で友にあいさつをする者は、かえってのろいと受け取られる。
27:15 雨降りの日に、ぽたぽた落ち続ける雨だれ。争い好きな妻も、それと同じだ。
27:16 そんな妻を抑えようとするのは、風を抑えようとするようなもの。右手で油をつかもうとするようなものだ。
27:17 鉄が鉄を研ぐように、人は互いに研ぎ合って、鋭くなる。
27:18 いちじくの木を大事に育てる人は、その実を食べられる。主人に忠実に仕える人は、大切にされる。
27:19 水にうつる顔が、その人の顔とそっくりなように、人の心もまた、その人自身を映し出す。
27:20 死の世界も滅びの淵も、決して満ち足りることがない。人の目も、同じように満ち足りることがない。
27:21 銀は炉で、金はるつぼで試される。人は、まわりの評判によって試される。
27:22 愚か者を臼に入れ、麦と一緒に杵でついても、その愚かさは、その人から離れていかない。
27:23 あなたの羊の様子をしっかり知っておきなさい。群れのことに、よく心を配りなさい。
27:24 富はいつまでも続くわけではない。王の冠でさえ、代々続くとはかぎらないのだから。
27:25 干し草が刈り取られると、新しい草が芽を出し、山の草も集められる。
27:26 子羊はあなたの服になり、雄やぎは畑を買う代金になる。
27:27 やぎの乳はたっぷりあって、あなたと家族の食べ物になり、召使いの娘たちも養ってくれる。
28:1 悪い人は、追いかけてくる者がいなくても逃げ出す。でも正しい人は、若いライオンのように堂々としている。
28:2 国に罪があると、支配者が次々と入れ替わる。でも、物事をわきまえた賢い人がいれば、その秩序は長く続く。
28:3 弱い人を虐げる貧しい者は、作物を流し去って何も残さない激しい雨のようだ。
28:4 律法を捨てる人は悪い者をほめる。でも律法を守る人は、悪い者に立ち向かう。
28:5 悪い人は正義がわからない。でも主を求める人は、すべてを理解する。
28:6 貧しくてもまっすぐに歩む人のほうが、金持ちでも曲がった道を行く人よりも良い。
28:7 律法を守る人は、かしこい子だ。でも遊び歩く仲間とつるむ者は、父親に恥をかかせる。
28:8 高い利子をとってお金を増やす人。その財産は、いつか貧しい人に親切にする人の手に集まっていく。
28:9 律法に耳を貸さず、聞こうとしない人。その人の祈りさえ、神には嫌われる。
28:10 まっすぐな人を悪い道へ誘い込む者は、自分の掘った落とし穴に自分で落ちる。でも心の正しい人は、良いものを受け継ぐ。
28:11 金持ちは自分を賢いと思い込んでいる。でも貧しくても物事のわかる人は、その正体を見抜く。
28:12 正しい人が喜ぶとき、みんなが輝く。でも悪い者が力を持つと、人々は身をひそめる。
28:13 自分の罪を隠す人は、うまくいかない。でも罪を認めて、そこから離れる人は、あわれみを受ける。
28:14 いつも神を畏れる人は、幸せだ。でも心をかたくなにする者は、災いに落ちる。
28:15 うなる獅子や、襲いかかる熊。それと同じだ。貧しい民を支配する悪い者は。
28:16 物事のわからない支配者は、人を苦しめてばかりいる。でも不正な儲けを憎む人は、長く生きる。
28:17 人の血を流して重荷を背負った者は、墓穴まで逃げ続ける。だれも助けの手を出してはいけない。
28:18 まっすぐに歩む人は救われる。でも曲がった道を行く者は、たちまち倒れる。
28:19 自分の畑を耕す人は、食べ物に満ち足りる。でも、むなしいものを追いかける者は、貧しさでいっぱいになる。
28:20 誠実な人には、たくさんの祝福がある。でも、急いで金持ちになろうとする者は、罰を逃れられない。
28:21 人をえこひいきするのは良くない。パンひと切れのために、人は罪を犯してしまう。
28:22 けちで欲深い人は、急いで金持ちになろうとする。でも、貧しさが自分に襲いかかることに気づかない。
28:23 人を注意する者は、あとになって、口先でへつらう者よりも好かれる。
28:24 父や母のものを奪っておいて、「悪いことじゃない」と言う者は、人を滅ぼす者の仲間だ。
28:25 欲張りな人は争いを引き起こす。でも、主に信頼する人は豊かにされる。
28:26 自分の考えだけを頼りにする者は愚か者だ。でも、知恵をもって歩む人は救われる。
28:27 貧しい人に分け与える人は、何も不足しない。でも、見て見ぬふりをする者は、たくさんの呪いを受ける。
28:28 悪人が力を持つと、人々は身を隠す。でも、悪人が滅びると、正しい人が増えていく。
29:1 何度注意されても、頑固に耳を貸さない人がいる。そんな人は突然壊されて、もう立ち直れない。
29:2 正しい人が増えれば、みんなが喜ぶ。でも悪い人が支配すると、みんなが嘆く。
29:3 知恵を愛する人は、父を喜ばせる。でも遊女と付き合う人は、財産を使い果たす。
29:4 王は公正な裁きで国を安定させる。でもわいろをむさぼる者は、国を壊してしまう。
29:5 隣人にへつらう者は、その足元に網を張っているのと同じだ。
29:6 悪い人は自分の罪で、わなにかかる。でも正しい人は、歌って喜ぶ。
29:7 正しい人は、貧しい人の言い分をちゃんと理解する。でも悪い人は、そんなことを気にかけようともしない。
29:8 人をあざける者たちは、町全体をあおって騒ぎを起こす。でも知恵ある人は、怒りをしずめる。
29:9 知恵ある人が愚かな人と言い争っても、相手は怒ったり笑ったりするだけで、話は少しも落ち着かない。
29:10 血に飢えた者たちは、正直な人を憎む。でも心のまっすぐな人は、その人の命を守ろうとする。
29:11 愚かな人は、思っていることを全部ぶちまける。でも知恵ある人は、それをそっと胸におさめておく。
29:12 支配者が偽りの言葉に耳を貸すなら、その家来はみんな悪人になる。
29:13 貧しい人と、しいたげる者。この二人は同じ世界で出会う。そして主は、その両方の目に光を与えている。
29:14 弱い人たちを、まっすぐ公正にさばく王。その王座は、いつまでも揺るがない。
29:15 むちと叱ることは、子どもに知恵を与える。でも放っておかれた子は、母親に恥をかかせる。
29:16 悪人が増えると、罪も増えていく。でも正しい人は、その悪人たちが倒れるのを見る。
29:17 息子をきちんとしつけなさい。そうすれば、あなたに安らぎを与え、あなたの魂を喜ばせてくれる。
29:18 神からの示しがなければ、人々は好き勝手にふるまう。でも神のおしえを守る人は、幸せだ。
29:19 召使いは、言葉だけでは直らない。わかっていても、応じようとしないからだ。
29:20 軽々しく早口でしゃべる人を見たことがあるか。そんな人より、愚かな人のほうがまだ望みがある。
29:21 召使いを子どものころから甘やかして育てると、しまいには息子のようにのさばるようになる。
29:22 怒りっぽい人は、争いを引き起こす。すぐにかっとなる人は、多くの罪を犯す。
29:23 高ぶりは、人を低くする。でも心のへりくだった人は、誉れを受ける。
29:24 泥棒の仲間になる者は、自分の魂を憎んでいる。証言を求める呪いの声を聞いても、何も明かそうとしない。
29:25 人を恐れることは、わなになる。でも主に信頼する人は、守られる。
29:26 支配者の顔色をうかがう人は多い。でも人が正しく裁かれるかどうかは、主による。
29:27 正しい人は、不正を行う者を嫌う。そして悪い人は、まっすぐに歩む者を嫌う。
30:1 ヤケの子アグルの言葉。これは託宣である。この人はイティエルに、イティエルとウカルにこう語った。
30:2 わたしは、だれよりも愚かだ。人としての分別も持っていない。
30:3 わたしは知恵を学んでこなかった。聖なる方を知る知識もない。
30:4 天に上って、また下ってきたのはだれか。風をその手のひらに集めたのはだれか。水を衣に包んだのはだれか。地の果てのすべてを立てたのはだれか。その名は何というのか。その子の名は何というのか。知っているなら、言ってみよ。
30:5 神の言葉は、どれも混じりけがない。神は、身を寄せる人の盾となる。
30:6 神の言葉に、何もつけ加えてはならない。さもないと、神があなたを責め、あなたは嘘つきにされてしまう。
30:7 わたしは、あなたに二つのことを願う。わたしが死ぬ前に、どうか断らないでほしい。
30:8 偽りと嘘を、わたしから遠ざけてください。貧しさも豊かさも、わたしに与えないでください。ただ、わたしに必要なだけの食べ物を与えてください。
30:9 満ち足りて、あなたを知らないと言い、「主とはだれか」と言ってしまわないように。また、貧しくなって盗みをはたらき、わたしの神の名を汚してしまわないように。
30:10 使用人のことを、その主人に告げ口してはならない。さもないと、その人があなたを呪い、あなたは罪を負うことになる。
30:11 父をののしり、母を祝福しない者たちがいる。
30:12 自分では清いと思っているのに、その汚れを洗い落としていない者たちがいる。
30:13 なんと目を高く上げ、まぶたを高くつり上げる者たちがいる。
30:14 歯は剣、あごの歯は刃物のようで、地から貧しい人を、人々の中から乏しい人を食い尽くす者たちがいる。
30:15 ヒルには二人の娘がいて、「くれ、くれ」と叫ぶ。決して満足しないものが三つある。「もう十分だ」と言わないものが四つある。
30:16 死者の世界と、子を宿さない胎と、水に満たされることのない地と、「もう十分だ」と言わない火である。
30:17 父をあざ笑い、母に従うことを見下す目は、谷のからすがえぐり出し、若いはげわしが食べてしまう。
30:18 わたしにとって不思議でならないものが三つある。理解できないものが四つある。
30:19 天を行くわしの道、岩の上を行く蛇の道、海のただ中を行く船の道、そして若い女といる男の道。
30:20 浮気をする女のやり方も、これと同じだ。食べて口をぬぐい、「悪いことなんて何もしていない」と言う。
30:21 三つのことで地は震え、四つのことに耐えられない。
30:22 奴隷が王になること、愚か者が腹いっぱいになること、
30:23 嫌われている女が結婚すること、召し使いの女が女主人の座を奪うこと。
30:24 地の上では小さいのに、とても賢いものが四つある。
30:25 ありは力の弱い生き物だが、夏のうちに食べ物を蓄える。
30:26 岩だぬきは強くない生き物だが、岩の間に自分の巣を作る。
30:27 いなごには王がいないが、みな隊を組んで進んでいく。
30:28 やもりは手でつかまえられるほどなのに、王の宮殿にすみついている。
30:29 堂々と歩むものが三つ、堂々と進むものが四つある。
30:30 獣の中で最も強く、何ものの前にも引き下がらないライオン。
30:31 意気揚々と歩く雄鶏、雄やぎ、そして軍を従えた王。
30:32 もしあなたが高ぶって愚かなことをしたり、悪事をたくらんだりしたのなら、手で口をふさぎなさい。
30:33 乳をしぼればバターができ、鼻をしぼれば血が出る。同じように、怒りをあおれば争いが生まれる。
31:1 これはレムエル王の言葉。母が彼に語り聞かせた教えである。
31:2 どうしたの、わたしの子よ。わたしが産んだ子よ。わたしが誓いを立てて授かった子よ。
31:3 あなたの力を女たちに注いではいけない。王をも滅ぼす者たちに、あなたの歩みを渡してはいけない。
31:4 レムエルよ、王にふさわしくない。ぶどう酒を飲むのは王にふさわしくない。強い酒を求めるのは、国を治める者にふさわしくない。
31:5 飲めば、定められた法を忘れ、苦しむ人々の権利をゆがめてしまうからだ。
31:6 強い酒は、滅びゆく者に与えなさい。ぶどう酒は、心に深い苦しみを抱える者に。
31:7 飲めば、自分の貧しさを忘れ、もう苦しみを思い出さなくなるからだ。
31:8 口を開いて、自分では声を上げられない人のために語りなさい。見捨てられた人すべての権利を守るために。
31:9 口を開いて、正しく裁きなさい。貧しい人や困っている人の権利を守るのだ。
31:10 しっかりした妻を見つけられる人がいるだろうか。その価値は真珠よりもずっと高い。
31:11 夫は心から彼女を信頼している。だから、足りないものは何もない。
31:12 彼女は生きているかぎり、夫に良いことをして、決して悪いことはしない。
31:13 羊毛や亜麻を探し求め、喜んで自分の手を動かして働く。
31:14 彼女はまるで商人の船のようだ。遠くから食べ物を運んでくる。
31:15 まだ暗いうちに起きて、家族に食事を用意し、召使いの女たちにも分け前を与える。
31:16 畑に目をつけると、それを買い取る。自分で稼いだお金で、ぶどう畑を作る。
31:17 力を込めて身支度をととのえ、腕にしっかり力をつけて働く。
31:18 自分の商売がうまくいっているのを、彼女は実感している。夜になっても、その明かりは消えない。
31:19 片手を伸ばして糸巻きを取り、手のひらで紡ぎ車をしっかり握る。
31:20 貧しい人には手を差し出し、困っている人にも手を差し伸べる。
31:21 雪が降っても、家族のことを心配しない。家の者はみな、上等な赤い服を着ているからだ。
31:22 彼女は自分で敷物を作る。身につけている服は、上質の麻と紫の布だ。
31:23 夫は町の門のところで、みんなに知られている。土地の長老たちと並んで座る人だ。
31:24 彼女は亜麻の服を作って売り、帯を商人に卸す。
31:25 力と気品を身にまとい、これから来る日々を笑顔で見つめている。
31:26 口を開けば知恵の言葉が出て、その舌には慈しみの教えがある。
31:27 家族の暮らしぶりにいつも目を配り、怠けて過ごすことはない。
31:28 子どもたちは立ち上がって、彼女を幸いな人だとたたえる。夫も、彼女をほめる。
31:29 「立派に生きた女性は多いけれど、あなたはその誰よりもすぐれている。」
31:30 人を引きつける魅力ははかなく、美しさもすぐに消えていく。でも、主を敬う女性こそ、ほめたたえられる。
31:31 彼女の働きにふさわしい報いを、彼女に与えよう。その行いは、町の広場でみんなにほめたたえられる。
伝道の書
1:1 エルサレムの王で、ダビデの子であるコヘレトの言葉。
1:2 むなしい、むなしい、とコヘレトは言う。なんとむなしいことか。すべてはむなしい。
1:3 太陽の下で人がどれだけ苦労して働いても、それが何の得になるだろう。
1:4 一つの世代が去り、次の世代が来る。でも地は、いつまでも変わらずにある。
1:5 太陽は昇り、そして沈む。そしてまた、昇る場所へと急いで戻っていく。
1:6 風は南へ向かい、北へと巡る。ぐるぐると回りながら吹き、また元の道へと帰ってくる。
1:7 すべての川は海へと流れ込む。それでも海は満ちることがない。川は流れ込む場所へ、また戻っては流れていく。
1:8 すべてのことは、人を疲れさせる。それを語り尽くせる人はいない。目は見ても見飽きることがなく、耳は聞いても聞き足りることがない。
1:9 かつてあったことは、これからもある。かつて行われたことは、これからも行われる。太陽の下に、新しいものは何もない。
1:10 「見てごらん、これは新しい」と言えるものが、何かあるだろうか。それはずっと昔、わたしたちが生まれるよりも前から、すでにあったのだ。
1:11 昔のことは、誰も覚えていない。これから起こることも、後の時代の人たちは覚えていないだろう。
1:12 わたしコヘレトは、エルサレムでイスラエルの王だった。
1:13 わたしは知恵を使って、天の下で行われるすべてのことを調べ、探ろうと心を決めた。それは、神が人間に与えた、つらい務めだ。
1:14 わたしは、太陽の下で行われるすべての営みを見た。すると、どれもむなしく、風を追いかけるようなものだった。
1:15 曲がったものは、まっすぐにできない。足りないものは、数えることもできない。
1:16 わたしは心の中でこう考えた。「わたしは、エルサレムでわたしより前にいた誰よりも、大きな知恵を身につけ、増し加えてきた。わたしの心は、たくさんの知恵と知識を見てきた。」
1:17 そしてわたしは、知恵とは何か、また、狂気や愚かさとは何かを知ろうと心を注いだ。でも、これもまた風を追いかけるようなものだと分かった。
1:18 知恵が増えれば、悩みも増える。知識が増えれば、苦しみも増えるのだ。
2:1 わたしは心の中で言った。「さあ、今度は楽しみを試してみよう。思いきり楽しんでみよう。」でも、これもまたむなしかった。
2:2 笑いについては「ばかげている」と言い、楽しみについては「いったい何の役に立つのか」と言った。
2:3 わたしは心の中であれこれ考えた。知恵は手放さないようにしながら、酒で自分を元気づけてみよう、愚かさにも手を出してみよう、と。人間が、短い一生の間に、天の下で何をするのが良いのかを見きわめるまで。
2:4 わたしは大きな事業に取りかかった。自分のために家をいくつも建て、ぶどう畑を作った。
2:5 庭園や果樹園を造り、そこにあらゆる種類の実のなる木を植えた。
2:6 木々が茂る林に水を引くために、ため池をいくつも造った。
2:7 わたしは男女の奴隷を買い、家で生まれた奴隷も持っていた。牛や羊の群れも、エルサレムでわたしより前にいただれよりもたくさん持っていた。
2:8 銀や金も集め、王たちや国々の宝も手に入れた。歌う男や歌う女もかかえ、人を楽しませるもの、大勢の側女(そばめ)も持った。
2:9 こうしてわたしは、エルサレムでわたしより前にいただれよりも大きな者となり、豊かになった。それでも知恵はわたしから離れなかった。
2:10 目が欲しがるものは、何一つ拒まなかった。どんな楽しみも、自分に禁じることはしなかった。わたしの心が、すべての労苦を喜んでいたからだ。これこそ、すべての労苦から得たわたしの取り分だった。
2:11 それからわたしは、自分の手がしたすべての仕事と、苦労して成し遂げたことを振り返ってみた。すると、どれもみなむなしく、風を追うようなものだった。太陽の下には、何の得もない。
2:12 次にわたしは、知恵とは何か、また狂った行いや愚かさとは何かを、よく見きわめようとした。王の跡を継ぐ者に、いったい何ができるだろう。すでにされてきたこと以上のことは、何もできない。
2:13 そしてわたしは、光が闇にまさるように、知恵は愚かさにまさるのだとわかった。
2:14 知恵ある人は自分の目で先を見て歩むが、愚かな者は暗やみの中を歩く。けれども、その二人に同じ運命が訪れることを、わたしは知った。
2:15 わたしは心の中で思った。「愚かな者に起こることは、このわたしにも起こる。それなら、どうしてわたしはこんなに知恵を求めてきたのか。」そしてわたしは心の中で、これもまたむなしいと思った。
2:16 知恵ある人も愚かな者も、いつまでも記憶に残ることはない。時がたてば、どちらもみな忘れられてしまう。ああ、知恵ある人も愚かな者と同じように死んでいくのだ。
2:17 だからわたしは、生きることがいやになった。太陽の下で行われる仕事が、わたしには苦しく思えたからだ。どれもみなむなしく、風を追うようなものだ。
2:18 わたしは、太陽の下で苦労して積み上げたすべての労苦がいやになった。それを、あとに来る人に残していかなければならないからだ。
2:19 しかも、そのあとを継ぐ人が、知恵ある人なのか愚かな者なのか、だれにもわからない。それなのにその人は、わたしが太陽の下で知恵をしぼって苦労して積み上げたものを、すべて自分のものにするのだ。これもまたむなしい。
2:20 だからわたしは、太陽の下で重ねてきたすべての労苦に、望みを失ってしまった。
2:21 知恵と知識と技をつくして働く人がいる。それなのに、そのために何ひとつ苦労していない人に、すべてを分け前として譲らなければならない。これもまたむなしく、ひどく理不尽なことだ。
2:22 太陽の下であくせく働き、心をすり減らしても、人はいったい何を手に入れられるというのか。
2:23 毎日が苦しみで、その仕事は悩みばかり。夜になっても心は休まらない。これもまたむなしい。
2:24 食べて、飲んで、自分の労苦の中に喜びを見いだす。人にとって、これ以上に良いことはない。しかもこれさえ、神の手から与えられるものなのだと、わたしにはわかった。
2:25 だって、神をぬきにして、だれが食べ、だれが楽しむことができるだろうか。
2:26 神は、みこころにかなう人には、知恵と知識と喜びをお与えになる。だが罪を犯す者には、ためて積み上げる苦労を負わせ、それを神のみこころにかなう人に渡させるのだ。これもまたむなしく、風を追うようなものだ。
3:1 すべてのことには時がある。天の下のいとなみには、それぞれにふさわしい時がある。
3:2 生まれる時があり、死ぬ時がある。植える時があり、植えたものを引き抜く時がある。
3:3 殺す時があり、癒す時がある。壊す時があり、建てる時がある。
3:4 泣く時があり、笑う時がある。悲しむ時があり、踊る時がある。
3:5 石を投げ捨てる時があり、石を集める時がある。抱きしめる時があり、抱きしめるのをやめる時がある。
3:6 探す時があり、あきらめる時がある。保つ時があり、手放す時がある。
3:7 引き裂く時があり、縫い合わせる時がある。黙る時があり、話す時がある。
3:8 愛する時があり、憎む時がある。戦いの時があり、平和の時がある。
3:9 働く人は、どれだけ苦労しても、何を得られるのだろう。
3:10 わたしは、神が人に与えて取り組ませる仕事を見てきた。
3:11 神は、すべてをその時にかなって美しく造られた。そのうえ、人の心に永遠を思う思いを与えられた。それでも人は、神がなさるわざを、初めから終わりまで見きわめることはできない。
3:12 わたしにはわかった。人にとっては、生きているあいだ喜び、幸せに過ごすことよりほかに、良いことはないのだ。
3:13 人がみな、食べたり飲んだりして、その労苦のすべての中で幸せを味わうこと。それもまた、神からの贈り物だ。
3:14 わたしにはわかっている。神がなさることは、すべていつまでも続く。それに付け加えることも、そこから取り去ることもできない。神がそうされるのは、人が神を畏れるためだ。
3:15 今あることは、すでにあったこと。これからあることも、すでにあったことだ。神は、過ぎ去ったものを、もう一度呼び戻される。
3:16 さらにわたしは、この日の下でこんなことも見た。裁きの行われるはずの場所に、悪があった。正義のあるはずの場所に、悪があった。
3:17 わたしは心の中で言った。正しい人も悪い人も、神が裁かれる。すべての事にも、すべての行いにも、その時が定められているのだから。
3:18 わたしは心の中で言った。神がこうされるのは、人の子らをためすためだ。そして人が、自分も動物にすぎないと気づくためだ。
3:19 人の子らに起こることは、動物にも起こる。どちらにも同じことが起こるのだ。一方が死ぬように、もう一方も死ぬ。すべてのものに同じ息がある。人が動物にまさるところは、何もない。すべては空しいからだ。
3:20 すべては同じ場所へ行く。すべては塵から出て、すべては塵に帰る。
3:21 人の霊が上へ昇り、動物の霊が地の下へ降りていくのかどうか、だれが知っているだろう。
3:22 それでわたしにはわかった。人にとっては、自分の仕事を喜ぶことよりほかに、良いことはない。それが人に与えられた分だからだ。自分の後に何が起こるのか、それを見せてくれる者など、いないのだから。
4:1 わたしはあらためて、この世で行われているすべての虐げに目を向けた。虐げられている人たちは涙を流している。でも、その涙をぬぐってくれる人はいない。虐げる者の側には力があるのに、虐げられた人を慰めてくれる人はだれもいない。
4:2 だからわたしは、まだ生きている人よりも、すでに死んでしまった人のほうが幸せだと思った。
4:3 いや、その両方よりももっと幸せなのは、まだ生まれていない人だ。この世で行われている悪い行いを、まだ見ていないからだ。
4:4 わたしはまた気づいた。人のあらゆる苦労も、みごとな働きも、その中身は、となりの人への張り合いなのだ。これもまたむなしく、風を追いかけるようなものだ。
4:5 愚かな者は腕を組んだまま何もせず、自分の身をすり減らしていく。
4:6 両手いっぱいの富を苦労して抱えるより、片手いっぱいで心穏やかに過ごすほうがいい。あくせくするのは、風を追いかけるようなものだ。
4:7 わたしはまた、この世にあるむなしさに目を向けた。
4:8 ここにひとりの男がいる。仲間もなく、子も兄弟もいない。それなのに、その苦労には終わりがなく、どれだけ富を得ても満足しない。「いったいだれのために、わたしはこんなに働いて、自分の楽しみまで切り詰めているのだろう。」これもまたむなしく、つらいだけの仕事だ。
4:9 ひとりよりふたりのほうがいい。いっしょに苦労すれば、それだけよい報いが得られるからだ。
4:10 ひとりが倒れても、もうひとりが助け起こしてくれる。でも、ひとりぼっちで倒れたら大変だ。助け起こしてくれる人がだれもいないのだから。
4:11 ふたりでいっしょに寝れば、たがいに温め合える。でも、ひとりではどうして温まれるだろう。
4:12 ひとりなら襲われて負けても、ふたりなら立ち向かえる。三本より合わせた糸は、そう簡単には切れないのだ。
4:13 貧しくても賢い若者のほうが、年老いて愚かな王よりも良い。もう忠告を聞き入れられなくなった王よりは、ずっといい。
4:14 その若者は、牢屋から出て王になることもある。たとえこの国で、貧しく生まれていたとしても。
4:15 わたしは見た。太陽の下を生きて歩き回る人々がみな、王に代わって立つ、もうひとりの若者についていくのを。
4:16 彼に従う民の数はきりがなく、先に立っていた人たちも数えきれない。それなのに、後の世代の人々は彼を喜ばない。これもまた空しく、風を追いかけるようなものだ。
5:1 神の家に行くときは、足もとに気をつけよう。愚か者のようにいけにえをささげるより、近づいて聞くほうがいい。彼らは自分が悪いことをしているのに、それに気づいてすらいないのだから。
5:2 神の前では、軽々しく口を開いてはいけない。急いで言葉を出そうと、あせってはいけない。神は天におられ、あなたは地にいる。だから、言葉は少なくしよう。
5:3 気がかりが多いと夢を見るように、言葉が多いと愚か者の声になる。
5:4 神に何かを誓ったら、それを果たすのを先延ばしにしてはいけない。神は愚か者を喜ばないのだ。誓ったことは、必ず果たそう。
5:5 誓っておいて果たさないくらいなら、はじめから誓わないほうがいい。
5:6 自分の口のせいで罪を犯してはいけない。使いの者の前で「あれは間違いでした」などと言ってはいけない。どうして神を、あなたの言葉に怒らせ、あなたの手のわざを台無しにさせるようなことをするのか。
5:7 夢が多ければ、空しいことも言葉も多くなる。だから、あなたは神を恐れなさい。
5:8 貧しい人が虐げられ、正義や公正が踏みにじられているのを国のどこかで見ても、驚いてはいけない。高い地位の者の上にはさらに高い者がいて、その上にもっと高い者がいて、みな互いを見張っているのだから。
5:9 それでも、国にとって何よりの益はこれだ。王でさえ、耕された畑によって支えられているということ。
5:10 お金を愛する人は、どれだけお金を得ても満足しない。豊かさを愛する人は、どれだけ稼いでも満ち足りない。これもまた空しい。
5:11 財産が増えれば、それを食いつぶす者も増える。持ち主にとって何の得があるだろう。ただ自分の目で眺めるだけだ。
5:12 働く人の眠りは心地よい。食べるものが少なくても多くても関係ない。でも金持ちは、あり余るほど持っているせいで、かえって眠れない。
5:13 わたしはこの世で、ひどく辛い現実を見た。ためこんだ財産が、持ち主自身を不幸にするのだ。
5:14 その財産は、何かの不運な事業で失われてしまう。子どもが生まれても、その手に残してやれるものは何もない。
5:15 母の胎から裸で出てきたように、人は裸で帰っていく。来たときと同じだ。どれだけ苦労して働いても、手に持って行けるものは何もない。
5:16 これもまた、ひどく辛い現実だ。来たときとそっくり同じ姿で去っていく。風のために働いて、いったい何の得があるだろう。
5:17 その一生の間、暗闇の中で食べるようなものだ。いらだちも、病も、怒りも多い。
5:18 わたしが見つけた答えはこうだ。神が与えてくれたこの一生の間、この世でどれだけ働いても、その働きの中で食べたり飲んだりして幸せを味わう——それこそが良いこと、ふさわしいことだ。それが人に与えられた取り分なのだから。
5:19 神が富や財産を与え、それを楽しみ、自分の取り分を受け取り、働きの中で喜べるようにしてくれた——そういう人はみな幸いだ。それは神からの贈り物なのだ。
5:20 このような人は、自分の人生の日々をあれこれ思い悩むことがない。神が、その心を喜びで満たしてくださるからだ。
6:1 この世で、わたしはもう一つの悪を見た。それは人々に重くのしかかっている。
6:2 神が富や財産や名誉を与え、望むものは何一つ欠けていない人がいる。それなのに、神はそれを楽しむことを許さず、見知らぬ他人がそれを食いつくしてしまう。これはむなしい。ひどい苦しみだ。
6:3 たとえある人が百人の子をもうけ、長い年月を生き、その人生の日々がどれほど多くても、幸せに満たされず、しかもきちんと葬られることもなかったなら——わたしは言おう。死んで生まれた子のほうが、その人よりましだ。
6:4 その子は、むなしく来て、暗闇の中へ去っていく。その名も暗闇に包まれてしまう。
6:5 太陽を見ることもなく、何も知らない。それでも、その子のほうが安らぎを得ている。
6:6 たとえ千年を二度も生きたとしても、幸せを味わえなければ何になるだろう。結局、みな同じ場所へ行くのではないか。
6:7 人の働きはすべて、自分の口のためだ。それでも、その欲は満たされない。
6:8 賢い人が愚かな人よりまさっている点があるだろうか。どう生きればいいかを知っている貧しい人に、いったい何の得があるだろうか。
6:9 目の前にあるものを見て満足するほうが、あれこれ望んで心がさまようよりましだ。これもまたむなしく、風を追うようなものだ。
6:10 今あるものはみな、すでに名づけられている。人が何であるかも、もう分かっている。人は、自分より強い者と争うことなどできない。
6:11 言葉が増えれば増えるほど、むなしさも増えていく。それが人に何の得になるだろうか。
6:12 影のように過ぎていく、むなしい人生のわずかな日々の間に、人にとって何が良いことなのか、いったい誰に分かるだろうか。人が去ったあと、この世で何が起こるのか、誰がその人に告げられるだろうか。
7:1 良い評判は、高価な香油よりも価値がある。そして、死ぬ日は生まれる日よりも良い。
7:2 祝いの席に行くよりも、喪に服す家に行くほうが良い。死はすべての人の行き着く先であり、生きている者はそれを心に刻むからだ。
7:3 悲しみは笑いよりも良い。顔は曇っても、心はかえって良くなるからだ。
7:4 賢い人の心は喪の家にあり、愚かな人の心は楽しみの家にある。
7:5 賢い人にしかられるほうが、愚かな人の歌を聞くよりも良い。
7:6 鍋の下でいばらがぱちぱちと燃えるように、愚かな人の笑いもそんなものだ。これもまた空しい。
7:7 人をしいたげることは、賢い人さえ愚かにする。わいろは人の心をだめにする。
7:8 物事は、始まりよりも終わりのほうが良い。高ぶる心よりも、忍耐強い心のほうが良い。
7:9 すぐに腹を立ててはいけない。怒りは愚かな人の胸に宿るものだからだ。
7:10 「どうして昔のほうが今より良かったのか」と言ってはいけない。そんな問いは、賢い問いではないからだ。
7:11 知恵は、財産とともにあればなお良い。日の光を見るすべての人にとって、知恵は得になる。
7:12 知恵が身を守るのは、お金が身を守るのと同じだ。でも、知恵にはもっとすぐれた点がある。知恵は、それを持つ人を生かすのだ。
7:13 神のなさることをよく見てほしい。神が曲げたものを、だれがまっすぐにできるだろうか。
7:14 順調なときには喜べばいい。でも、うまくいかないときには、よく考えてみよう。神は、この二つを対になるように造られた。だから人は、自分の先に何が待っているのかを知ることができない。
7:15 わたしはこのむなしい人生の中で、いろいろなことを見てきた。正しく生きているのに滅んでしまう人がいる。悪いことをしているのに長生きする人がいる。
7:16 正しすぎる者になってはいけない。賢すぎる者にもなってはいけない。どうして自分を滅ぼすようなことをするのか。
7:17 悪すぎる者になってもいけないし、愚か者になってもいけない。どうして自分の時が来る前に死ぬようなことをするのか。
7:18 一方をしっかりつかみ、もう一方からも手を離さないのがいい。神を畏れる人は、そのどちらもうまくやっていけるからだ。
7:19 知恵は、賢い人を、町にいる十人の権力者よりも強くする。
7:20 この地上に、良いことだけをして一度も罪を犯さない正しい人など、一人もいないのだから。
7:21 人が言うことを、いちいち気にしてはいけない。そうすれば、あなたの使用人があなたの悪口を言うのを聞かずにすむ。
7:22 あなた自身、何度も人の悪口を言ってきたことを、心の中でよく知っているはずだから。
7:23 わたしは、これらすべてを知恵によって試してみた。「賢くなろう」と思った。でも、知恵はわたしから遠く離れていた。
7:24 あるものごとは遠く、あまりにも深い。だれがそれを見きわめられるだろうか。
7:25 わたしは心を向けて、知恵とものごとの仕組みを知り、探し、求めようとした。そして、悪が愚かさであり、愚かさが狂気であることも、はっきり知ろうとした。
7:26 そして、わたしが気づいたことがある。死よりも苦いものがある、ということだ。それは、罠や網のような女だ。その心は網、その手は鎖。神に喜ばれる人は彼女から逃れられるが、罪を犯す者は捕らえられてしまう。
7:27 見てほしい。これがわたしの見つけたことだ、と伝道者は言う。一つ一つを数え合わせて、その答えを見つけようとしたのだ。
7:28 わたしの魂はなおも探し続けたが、見つけられなかった。千人の中に一人の男は見つけた。でも、そのすべての中に、一人の女は見つけられなかった。
7:29 ただ一つ、わたしが見つけたことがある。それは、神は人をまっすぐな者として造ったのに、人々は多くの企みを探し求めた、ということだ。
8:1 賢い人のような者が、ほかにいるだろうか。ものごとの意味を解き明かせる者がいるだろうか。人の知恵はその顔を輝かせ、こわばった表情さえ和らげる。
8:2 わたしは言う。王の命令を守るのがよい。神に誓いを立てたのだから。
8:3 王の前を、あわてて立ち去ってはいけない。悪いことに固執してもいけない。王は望むことを、何でも行うのだから。
8:4 王の言葉には権威がある。「何をしているのか」と、王に問える者はいない。
8:5 命令を守る者は、悪い目にあわない。知恵ある心は、ふさわしい時とさばきをわきまえている。
8:6 どんなことにも、ふさわしい時とさばきがあるからだ。それなのに、人には不幸が重くのしかかっている。
8:7 人は、これから何が起こるか知らない。この先どうなるのか、だれが教えてくれるだろう。
8:8 風を引き止められる人がいないように、自分の息を引き止められる人もいない。死ぬ日を自分で決められる人もいない。この戦いから逃れられる者はいないし、悪も、それを行う者を救ってはくれない。
8:9 わたしはこのすべてを見た。太陽の下で行われるあらゆることに、心を向けてきた。人が人を支配して、相手を苦しめる、そんな時代もあった。
8:10 また、わたしはこんなことも見た。悪人が葬られ、人々に見送られていく。ところが、悪事を働いたその同じ町で、彼らは聖なる場所に出入りしていたのに、やがて忘れ去られてしまう。これもむなしい。
8:11 悪い行いへの裁きがすぐに下されないので、人々は平気で悪を重ねるようになる。
8:12 罪人が百度も悪事を働きながら、なお長生きすることもある。それでもわたしにはわかっている。神を恐れ、神の前でおそれ敬う人には、良いことがある。
8:13 しかし、悪人には良いことはない。その一生は影のように短く、長くは続かない。神を恐れないからだ。
8:14 地の上で行われることに、こんなむなしさもある。正しい人なのに、悪人が受けるはずの報いを受ける者がいる。悪人なのに、正しい人が受けるはずの報いを受ける者がいる。わたしは言った。これもまた、むなしい。
8:15 そこでわたしは、楽しむことをすすめる。太陽の下で人にとって、食べて、飲んで、楽しむこと以上に良いものはない。それだけが、神が太陽の下で与えてくださった一生の労苦の中で、いつも人に寄り添ってくれるのだ。
8:16 わたしは知恵を知ろうと心を向け、地の上で行われている営みを見きわめようとした。昼も夜も、目を閉じて眠ることもなく。
8:17 そしてわたしは、神のなさることすべてを見た。太陽の下で行われていることを、人はどうしても知り尽くすことができない。どんなに苦労して探し求めても、見つけ出せない。知恵ある人が「わかった」と言っても、実は知り尽くすことはできないのだ。
9:1 わたしはこのすべてを心に留め、じっくり考えてみた。正しい人も知恵ある人も、その行いも、みんな神の手の中にある。でも、愛されるのか憎まれるのか、人にはわからない。自分の前に何が待っているのか、だれも知らないのだ。
9:2 すべての人に、同じ運命が待っている。正しい人にも悪い人にも、良い人にも、清い人にも汚れた人にも、いけにえをささげる人にもささげない人にも、同じことが起こる。良い人も罪を犯す人も同じ。誓いを立てる人も、誓いを恐れて避ける人も同じなのだ。
9:3 太陽の下で起こることの中で、これはひどいことだ。すべての人に同じ運命が待っているのだから。しかも人の心は悪で満ちていて、生きている間は心に愚かさを抱えている。そしてその後は、死者のところへ行くのだ。
9:4 それでも、生きている人みんなの仲間でいるかぎり、望みはある。生きている犬のほうが、死んだライオンよりましなのだから。
9:5 生きている人は、自分が死ぬことを知っている。でも死んだ人は、もう何も知らない。もう何の報いもなく、その存在すら忘れられていく。
9:6 彼らの愛も憎しみも、ねたみも、とうに消えてしまった。太陽の下で起こるどんなことにも、彼らはもう永遠に関わることがないのだ。
9:7 だから、行って、喜んでパンを食べ、楽しい心でぶどう酒を飲みなさい。神はもう、あなたのすることを喜んで受け入れてくださっているのだから。
9:8 いつも真っ白な服を着て、頭には香油を欠かさないようにしなさい。
9:9 太陽の下で神が与えてくれた、はかない人生のあいだ、愛する妻とともに人生を楽しみなさい。それがこの人生であなたに割り当てられたもの、太陽の下で骨折って働くあなたの取り分なのだから。
9:10 何であれ、手がけられることは、力を尽くしてやりなさい。あなたが行こうとしている死者の世界には、働くことも、考えることも、知識も、知恵もないのだから。
9:11 わたしはまた、太陽の下でこう見た。足の速い人が競走に勝つとはかぎらず、強い人が戦いに勝つともかぎらない。知恵ある人がパンにありつくとも、賢い人が富を得るとも、才能ある人が好かれるともかぎらない。だれにも、時とめぐり合わせがふりかかるからだ。
9:12 しかも人は、自分の時を知らない。悪い網にかかる魚のように、わなにかかる鳥のように、人もまた、突然ふりかかる不運のときに、思いがけずとらえられてしまうのだ。
9:13 わたしは太陽の下で、こんな知恵も見た。それはわたしの心に深く残った。
9:14 小さな町があった。住む人はわずかしかいなかった。そこへ強大な王が攻めてきて、町を包囲し、まわりに大きな攻めやぐらを築いた。
9:15 その町に、貧しいけれど知恵のある一人の男がいた。彼はその知恵で町を救った。ところが、だれもこの貧しい男のことを思い出しもしなかった。
9:16 そこでわたしは思った。知恵は力にまさる、と。でも、貧しい人の知恵は見下され、その言葉は聞いてもらえない。
9:17 知恵ある人の言葉は、静かに語られても聞き入れられる。愚か者たちを率いる支配者の叫びよりも、ずっと。
9:18 知恵は武器にまさる。だが、たった一人の過ちが、多くの良いものを台なしにする。
10:1 死んだハエが一匹入れば、香料職人の作った油もくさって、あわ立つ。同じように、ほんの少しの愚かさが、知恵や名誉よりも重くのしかかる。
10:2 知恵ある人の心は右へ向かい、愚か者の心は左へ向かう。
10:3 愚か者は道を歩いているときでさえ、その心が抜けている。そして、出会う人みんなに、自分が愚か者だと言いふらしているようなものだ。
10:4 支配者があなたに怒りをぶつけてきても、自分の持ち場を離れてはいけない。落ち着いていれば、大きな過ちも収まるからだ。
10:5 わたしは太陽の下で、こんな悪いことも見た。それは、支配者から出る過ちのようなものだ。
10:6 愚か者が高い地位につけられ、金持ちが低いところに座らされているのだ。
10:7 わたしは、奴隷が馬に乗り、高官が奴隷のように地を歩いているのを見た。
10:8 穴を掘る者は、その穴に落ちる。石垣を壊す者は、蛇にかまれる。
10:9 石を切り出す者は、その石で傷を負う。木を割る者は、その木で危ない目にあう。
10:10 鉄の刃が鈍っているのに研がなければ、もっと力を使わなければならない。でも、知恵があれば、うまくやりとげられる。
10:11 まじないをかける前に蛇がかみついてしまえば、蛇使いの腕も役に立たない。
10:12 知恵ある人の口から出る言葉は、人に好かれる。でも、愚か者は自分の唇に飲み込まれてしまう。
10:13 愚か者の話は、はじめは愚かなことばかり。終わりには、たちの悪い狂気になる。
10:14 それでも愚か者は、いくらでも言葉を並べる。これから何が起こるかは、だれにもわからない。自分が去ったあとに何が起こるかを、だれが教えられるだろう。
10:15 愚か者は働いて疲れきる。町へ行く道さえ知らないのに。
10:16 地よ、あなたの王が子どもで、高官たちが朝から宴会をしているなら、あなたはわざわいだ。
10:17 地よ、あなたの王が立派な生まれで、高官たちがふさわしい時に、酔うためではなく力をつけるために食事をするなら、あなたは幸いだ。
10:18 怠けていると、屋根は落ちてくる。手を動かさずにいると、家は雨漏りする。
10:19 食事は楽しむために作られ、ぶどう酒は人生を陽気にしてくれる。そしてお金は、何にでも応えてくれる。
10:20 心の中でも、王をののしってはいけない。寝室の中でも、金持ちをののしってはいけない。空の鳥がその声を運び、翼を持つものがその言葉を告げてしまうからだ。
11:1 あなたのパンを水の上に流しなさい。長い日がたてば、それをまた見つけられるから。
11:2 七人に、いや八人にも分け与えなさい。この地にどんなわざわいが起こるか、あなたにはわからないのだから。
11:3 雲が雨で満ちれば、地の上にそれを降らせる。木が南に倒れても北に倒れても、倒れた場所にそのままとどまる。
11:4 風ばかり気にしている人は、種をまけない。雲ばかり見ている人は、刈り入れができない。
11:5 風がどの道を通っていくのか、あなたにはわからない。母の胎の中で、どうやって骨が育つのかもわからない。それと同じで、すべてを造る神のわざも、あなたにはわからないのだ。
11:6 朝には種をまき、夕方にも手を休めてはいけない。どちらがうまくいくのか、これなのかあれなのか、それとも両方とも良い結果になるのか、あなたにはわからないのだから。
11:7 光は甘い。太陽を見るのは、目に心地よいことだ。
11:8 たとえ何年も生きられたとしても、その一日一日を楽しめばいい。でも、暗い日々のことも忘れてはいけない。それはきっとたくさんあるのだから。これから来ることはすべて、むなしい。
11:9 若者よ、若いうちに楽しめ。若い日々のあいだ、心を喜ばせるといい。心の望むままに歩み、目に映るものを追いかければいい。でも、これらすべてについて、神があなたを裁きの場に連れて行くことを、忘れてはいけない。
11:10 だから、心から悩みを取り除き、体から痛みを遠ざけなさい。若さも青春も、あっという間に過ぎていくのだから。
12:1 若い日々のうちに、あなたを造った方を心に留めなさい。つらい日々が来る前に。「もう何の楽しみもない」と言うような年月が来る前に。
12:2 太陽も光も、月も星も暗くなる前に。雨のあとにまた雲が戻ってくるような日が来る前に。
12:3 その日には、家を守る者たちは震え、力ある男たちは腰をかがめる。粉をひく女たちは数が減って手を止め、窓からのぞく目たちは暗くなる。
12:4 通りに面した戸は閉ざされ、臼をひく音は小さくなる。鳥の声で目を覚まし、歌う娘たちの声はみな弱くなる。
12:5 人は高い所を怖がり、道を歩けば恐ろしいものばかりになる。アーモンドの木は花を咲かせ、いなごは重たそうに這い、欲望も消えていく。人は永遠の住みかへと去っていき、通りには泣き悲しむ人々が行き交うのだから。
12:6 銀の糸が断ち切られ、金の器が壊れる前に。泉のそばで水がめが砕け、井戸のそばで滑車が壊れる前に。
12:7 そして、ちりは元のとおり地に返り、その息を与えてくれた神のもとへ、息は返っていく。
12:8 「なんとむなしい、すべてがむなしい」と、伝道者は言う。「何もかも、むなしいのだ」
12:9 伝道者は知恵のある人だった。それだけでなく、人々に知識を教え続けた。じっくり考え、調べ、多くの格言を整えた。
12:10 伝道者は心に響く言葉を見つけようとした。そして、まっすぐな真実の言葉を書き記した。
12:11 知恵ある者の言葉は、牛を追う突き棒のようだ。しっかり打ち込まれた釘のようでもある。それらはみな、一人の羊飼いから与えられたものだ。
12:12 わが子よ、これ以外のことにも気をつけなさい。本はいくらでも作られ、きりがない。学びすぎると、体が疲れ果ててしまう。
12:13 すべてを聞いた今、結論はこうだ。神を敬い、その命令を守ること。これこそ、人としてすべきことのすべてだ。
12:14 神は、どんな行いも残らず裁きにかけるからだ。隠された事も、良いことも悪いことも、すべてをさばくのだ。
雅歌
1:1 歌の中の歌。ソロモンの歌。
1:2 あの人が、その口でわたしにキスしてくれたらいい。あなたの愛は、ぶどう酒よりもすてきだから。
1:3 あなたの香油は、いい香り。あなたの名前は、注がれたばかりの香油のよう。だから若い娘たちは、みんなあなたを慕う。
1:4 わたしを連れて行って。あなたのあとを追いかけて走りたい。王はわたしを、自分の部屋に招き入れてくれた。わたしたちは、あなたのことで喜び、楽しもう。あなたの愛を、ぶどう酒よりも心にとめよう。みんながあなたを慕うのも、あたりまえだ。
1:5 エルサレムの娘たちよ、わたしは肌が黒い。でも、美しい。ケダルの天幕のように、ソロモンの幕のように。
1:6 わたしが黒いからといって、じろじろ見ないで。日に焼けただけなんだから。母の息子たちがわたしに腹を立てて、ぶどう畑の番をさせた。それで、自分の畑は世話できなかった。
1:7 わたしの魂が愛する人、教えて。あなたはどこで羊を飼っているの。昼のあいだ、どこで群れを休ませているの。あなたの仲間たちの群れのそばで、顔を隠してさまよう女に、どうしてわたしがならなきゃいけないの。
1:8 女のなかでいちばん美しい人よ、もし分からないなら、羊の群れの足あとをたどって行けばいい。そして羊飼いたちの天幕のそばで、あなたの子やぎを飼えばいい。
1:9 わたしの愛する人よ、あなたはまるで、ファラオの戦車をひく雌馬のようだ。
1:10 飾りをつけたあなたの頬は、美しい。宝石をつらねた首も、美しい。
1:11 わたしたちはあなたに、銀をちりばめた金の飾りを作ってあげよう。
1:12 王が寝椅子にいるあいだ、わたしのナルドの香りが立ちのぼった。
1:13 わたしの愛する人は、わたしにとって胸もとの没薬の匂い袋。夜どおし、わたしの胸の間で過ごす。
1:14 わたしの愛する人は、わたしにとってエン・ゲディのぶどう畑に咲くヘナの花房。
1:15 ああ、あなたは美しい、わたしの恋人。ああ、あなたは美しい。あなたの目は鳩のよう。
1:16 ああ、あなたは美しい、わたしの愛する人。本当に素敵。わたしたちの寝床は、緑の草。
1:17 わたしたちの家の梁は杉の木、垂木は糸杉。
2:1 わたしはシャロンの野に咲く花、谷間に咲くゆり。
2:2 いばらの中に咲くゆりのように、わたしの恋人は娘たちの中でひときわ輝く。
2:3 森の木々の中に立つりんごの木のように、わたしの愛する人は若者たちの中でひときわ素敵。その木陰にわたしは喜んで座り、その実はわたしの口に甘い。
2:4 あの人はわたしを宴の家に連れて行った。わたしの上に高く掲げたその旗は、愛。
2:5 干しぶどうでわたしを支えて。りんごでわたしを元気づけて。わたしは恋に病んでいるから。
2:6 あの人の左手はわたしの頭の下にあり、右手はわたしを抱きしめる。
2:7 エルサレムの娘たちよ、野のかもしかや雌鹿にかけて誓ってほしい。愛がそうしたいと思うそのときまで、揺り起こしたり、目覚めさせたりしないで。
2:8 あの人の声。ほら、あの人が来る。山々を飛び越え、丘を跳ねながら。
2:9 あの人はかもしか、若い雄鹿のよう。ほら、わたしたちの壁の向こうに立って、窓からのぞき、格子ごしに見つめている。
2:10 あの人がわたしに語りかけた。「起きて、おいで。わたしの愛する人、美しい人。
2:11 見て。冬は過ぎ去り、雨の季節も終わって、行ってしまった。
2:12 地には花が咲き、歌の季節がやって来た。山鳩の声が、わたしたちの地に響いている。
2:13 いちじくの木は青い実をふくらませ、花をつけたぶどうの木はいい香りを放っている。起きて、おいで。わたしの愛する人、美しい人。」
2:14 岩の裂け目、崖の隠れ場所にいるわたしの鳩よ。あなたの姿を見せて。あなたの声を聞かせて。あなたの声は心地よく、あなたの姿は愛らしいから。
2:15 わたしたちのために、狐を捕まえて。ぶどう畑を荒らす小さな狐たちを。わたしたちのぶどう畑は、花ざかりだから。
2:16 あの人はわたしのもの、わたしはあの人のもの。あの人はゆりの花の中で羊を飼っている。
2:17 日が涼しくなって、影が逃げ去るまで。あの人よ、戻ってきて。険しい山々の上を行くかもしかのように、若い雄鹿のように。
3:1 夜ごと、ベッドの中でわたしは、魂が愛するあの人を探した。探しても、見つからなかった。
3:2 起き上がって、町を歩き回ろう。通りや広場をめぐって、魂が愛するあの人を探そう。探しても、見つからなかった。
3:3 町を見回る夜警たちが、わたしを見つけた。「魂が愛するあの人を、見かけませんでしたか」
3:4 彼らのそばを通り過ぎてすぐ、わたしは魂が愛するあの人を見つけた。あの人をつかまえて、離さなかった。母の家に、わたしを産んだ人の部屋に連れて行くまでは。
3:5 エルサレムの娘たちよ、野をかけるガゼルや雌鹿にかけて誓ってほしい。愛がそうしたいと望むときまで、それを無理に呼び覚まさないで。
3:6 荒れ野から立ちのぼってくる、あれは誰だろう。まるで煙の柱のよう。没薬や乳香、商人のあらゆる香料の粉で、よい香りをまとっている。
3:7 見て。あれはソロモンの輿だ。イスラエルの勇士の中から選ばれた六十人が、それを囲んでいる。
3:8 みな剣を手にした、戦い慣れた者たち。夜の恐れに備えて、腰に剣を差している。
3:9 ソロモン王は、レバノンの木で自分のための輿を造らせた。
3:10 その柱は銀、支えは金、座席は紫の布。内側は、エルサレムの娘たちの手で、愛を込めて整えられていた。
3:11 シオンの娘たちよ、出てきて、ソロモン王を見なさい。結婚の日、心が喜びにあふれるその日に、母が彼にかぶせた冠をつけた、その王を。
4:1 きみは美しい、いとしい人。ああ、きみは美しい。ベールの奥で、きみの瞳は鳩のよう。きみの髪は、ギレアドの山を駆けおりるヤギの群れのようだ。
4:2 きみの歯は、毛を刈られ、洗い場から上がってきた羊の群れのよう。どれも双子を連れていて、一頭も欠けていない。
4:3 きみのくちびるは、まっ赤な糸のよう。きみの口もとは愛らしい。ベールの奥で、きみの頬はザクロのひと切れのようだ。
4:4 きみの首は、ダビデの塔のよう。石を積んで築かれ、勇士たちの盾が千も掛けられている、あの塔のように美しい。
4:5 きみの二つの胸は、二頭の子鹿のよう。ユリの花の中で草をはむ、双子のかもしかのようだ。
4:6 風がそよぎ、影が消えていく夕暮れまで、わたしは没薬の山へ、乳香の丘へ行こう。
4:7 きみはどこもかしこも美しい、いとしい人。きみには少しの傷もない。
4:8 わたしといっしょに、レバノンから来ておくれ、花嫁よ。わたしといっしょに、レバノンから来ておくれ。アマナの頂から、セニルとヘルモンの頂から下りておいで。ライオンのすみかを、ヒョウのいる山々をあとにして。
4:9 きみはわたしの心を奪ってしまった、わたしの妹よ、花嫁よ。きみのたった一度のまなざしで、首かざりのひと粒だけで、きみはわたしの心を奪った。
4:10 きみの愛は、なんて美しいのだろう、わたしの妹よ、花嫁よ。きみの愛はぶどう酒よりも心地よく、きみの香油の香りは、どんな香辛料よりもかぐわしい。
4:11 きみのくちびるからは、蜜がしたたる、花嫁よ。きみの舌の下には、はちみつと乳がある。きみの衣の香りは、レバノンの香りのようだ。
4:12 きみは、閉ざされた庭、わたしの妹よ、花嫁よ。鍵をかけられた泉、封印された水源だ。
4:13 きみから伸びる若枝は、ざくろの実る園。最高の実がなり、ヘンナとナルドの花が咲く。
4:14 ナルドとサフラン、菖蒲とシナモン、乳香をつけるあらゆる木々、没薬とアロエ、そして最高の香料が、すべてそろっている。
4:15 きみは、庭にわき出る泉。こんこんと流れる生きた水の井戸。レバノンから流れ落ちる水だ。
4:16 北風よ、目を覚ませ。南風よ、吹いてきて。わたしの庭に吹きつけて、その香りをあたりに漂わせておくれ。わたしの愛する人が、自分の庭に来て、最高の実を食べてくれますように。
5:1 わたしは、自分の庭に来た。わたしの妹よ、花嫁よ。わたしは没薬を香料といっしょに摘み、はちみつを巣ごと食べ、ぶどう酒を乳といっしょに飲んだ。さあ、友よ、食べてくれ。愛する人たちよ、飲んで、酔いしれてくれ。
5:2 わたしは眠っていた。でも、心は目を覚ましていた。聞こえる、愛する人が戸をたたく音。「開けておくれ、わたしの妹よ、恋人よ、わたしの鳩よ、汚れのない人よ。わたしの頭は夜露にぬれ、髪は夜のしずくでぬれているんだ。」
5:3 わたしはもう服を脱いでしまった。どうして、また着られるだろう。足も洗ってしまった。どうして、また汚せるだろう。
5:4 愛する人が、戸のすきまから手を差し入れた。わたしの胸は、その人を思ってときめいた。
5:5 わたしは起き上がって、愛する人のために戸を開けようとした。わたしの手からは没薬がしたたり、指からは没薬の雫が、かんぬきの取っ手に流れ落ちた。
5:6 わたしは、愛する人のために戸を開けた。でも、愛する人はもう背を向けて、去っていた。あの人の言葉に、わたしの魂は抜け出るほどだった。わたしは探したけれど、見つからなかった。呼んだけれど、答えてくれなかった。
5:7 町を見回る夜警たちが、わたしを見つけた。彼らはわたしを打ち、傷つけた。城壁を守る番人たちは、わたしの上着を奪い取った。
5:8 エルサレムの娘たちよ、お願いだから約束して。もし愛する人を見つけたら、伝えてほしい。わたしは恋しさで、病んでしまうほどだと。
5:9 女の中でいちばん美しい人よ。あなたの愛する人は、ほかの人とどこがそんなに違うの。あなたの愛する人のどこが特別で、こんなにわたしたちに約束させるの。
5:10 わたしの愛する人は、輝くように白く、赤みを帯びている。一万人の中でも、ひときわ目立つ人。
5:11 その頭は、純金のよう。髪は波打っていて、烏のように黒い。
5:12 その目は、水の流れのほとりにいる鳩のよう。乳で洗われ、ふさわしくおさまっている。
5:13 その頬は、香草の花壇のよう。かぐわしい香りを漂わせている。その唇はゆりの花で、したたる没薬をこぼしている。
5:14 その腕は、宝石をはめこんだ金の棒のよう。その体は、サファイアで飾られた、みがき上げた象牙のよう。
5:15 その足は、純金の台の上に立てられた大理石の柱のよう。その姿はレバノンの山のようで、杉の木のように堂々としている。
5:16 その口は甘く、すべてが愛おしい。これがわたしの愛する人。これがわたしの友。エルサレムの娘たちよ。
6:1 女たちの中でいちばん美しいあなた。あなたの愛する人はどこへ行ってしまったの。どちらへ向かったの。わたしたちも一緒に探すから。
6:2 わたしの愛する人は、自分の庭へ下りていった。香り草の花壇のところへ。庭で群れを飼い、ゆりの花を摘むために。
6:3 わたしは愛する人のもの。愛する人はわたしのもの。あの人はゆりの花の間で群れを飼っている。
6:4 愛する人よ、あなたはティルツァのように美しい。エルサレムのように愛らしく、旗をかかげた軍勢のように堂々としている。
6:5 そのまなざしを、わたしからそらしてほしい。わたしを圧倒するから。あなたの髪は、ギルアドの山を駆けおりるやぎの群れのよう。
6:6 あなたの歯は、洗い場から上がってきた雌羊の群れのよう。どれもふたごを連れていて、子を失ったものは一つもいない。
6:7 ベールの向こうのあなたの頬は、ざくろのひとかけらのよう。
6:8 王妃は六十人、そばめは八十人、若い娘は数えきれないほどいる。
6:9 でも、わたしの鳩、清らかなあなたは、ただ一人。母にとってひとりだけの娘、産んだ人にとってかけがえのない子。娘たちは彼女を見て、幸せな人だと言った。王妃たちもそばめたちも、彼女をほめたたえた。
6:10 「夜明けのように現れるこの人はだれ。月のように美しく、太陽のようにまばゆく、旗をかかげた軍勢のように堂々としている。」
6:11 わたしはくるみの園へ下りていった。谷の若い緑を見るために。ぶどうの木が芽を出したか、ざくろが花を咲かせたかを見るために。
6:12 気づかないうちに、わたしの心はわたしを、高貴な民の戦車の間に置いていた。
6:13 戻っておいで、戻っておいで、シュラムの娘よ。戻っておいで、戻っておいで、あなたをよく見せておくれ。あなたたちは、どうしてマハナイムの踊りを見るように、シュラムの娘を見つめるのか。
7:1 なんて美しい足取りだろう、サンダルをはいたあなたの。気高い人の娘よ。丸みを帯びたあなたの腿は、まるで宝石。名工の手が作り上げた作品みたい。
7:2 あなたのおへそは丸い杯。混ぜ合わせたぶどう酒が絶えることはない。あなたのおなかは積み上げた小麦の山。まわりをゆりの花が囲んでいる。
7:3 あなたの二つの胸は、二頭の小鹿のよう。かもしかの双子の子のようだ。
7:4 あなたの首は象牙の塔のよう。あなたの目は、バト・ラビムの門のそばにあるヘシュボンの池のよう。あなたの鼻はレバノンの塔。ダマスコの方をじっと見張っている。
7:5 頭は高くそびえるカルメル山のよう。その豊かな髪は紫の布のよう。王さえも、その流れる髪にとらわれてしまう。
7:6 なんて美しく、なんて心地よいのだろう。喜びそのもののような、愛する人よ。
7:7 すらりとしたあなたの姿はナツメヤシの木のよう。あなたの胸は、その実の房のよう。
7:8 わたしは思った。あのナツメヤシに登り、実の房をつかもうと。あなたの胸がぶどうの房のようであってほしい。あなたの息の香りはりんごのように。
7:9 あなたの口づけは、最高のぶどう酒のよう。わたしの愛する人へとなめらかに流れ落ち、眠る人の唇の上をすべっていく。
7:10 わたしは愛する人のもの。あの人はわたしを求めてくれる。
7:11 さあ、愛する人よ、野へ出かけよう。村で夜を過ごそう。
7:12 朝早く起きて、ぶどう畑へ行こう。ぶどうの花が咲いたか、つぼみが開いたか、ざくろの花が咲いたか、見てみよう。そこでわたしは、あなたにわたしの愛をささげる。
7:13 恋なすびが甘い香りを放っている。わたしたちの戸口には、えりすぐりの実があふれている。新しいものも、古いものも。愛する人よ、みんなあなたのために取っておいたの。
8:1 あなたが、母の乳を吸って育ったわたしの兄弟だったらよかったのに。そうすれば、外であなたを見つけて口づけしても、だれにもさげすまれずにすむのに。
8:2 あなたの手を引いて、母の家へ連れて行きたい。母はわたしにいろいろ教えてくれる。そこでわたしは、香りをつけたぶどう酒を、ざくろのしぼり汁を、あなたに飲ませてあげる。
8:3 あの人の左手はわたしの頭の下にあり、右手はわたしを抱きしめてくれる。
8:4 エルサレムの娘たちよ、誓ってほしい。愛がそのときを迎えるまで、揺り起こしたり、呼びさましたりしないと。
8:5 荒れ野から上ってくるこの人はだれだろう。愛する人に寄りかかっている。りんごの木の下で、わたしはあなたを呼びさました。そこは、あなたの母があなたを産んだ場所。あなたを産んだ人が、産みの苦しみを味わった場所。
8:6 わたしを、あなたの心に押された印のように、あなたの腕に刻まれた印のように、そばに置いてほしい。愛は死のように強く、その激しい思いは死の世界のように厳しいから。それは燃えさかる炎、主の激しい炎のよう。
8:7 どんな大水も、愛を消すことはできない。どんな洪水も、愛を押し流すことはできない。もし人が、愛を手に入れようと家中の財産をすべて差し出したとしても、ただ軽く見られるだけだ。
8:8 わたしたちには、幼い妹がいる。まだ胸もふくらんでいない。求婚される日が来たら、この妹のために何をしてやろう。
8:9 もし妹が城壁なら、その上に銀の塔を建てよう。もし妹が扉なら、杉の板で囲って守ろう。
8:10 わたしは城壁。わたしの胸は塔のよう。だからあの人の目に、わたしは安らぎを見つけた者となった。
8:11 ソロモンは、バアル・ハモンにぶどう畑を持っていた。その畑を番人たちに貸し、それぞれが実りとして銀貨千枚を納めることになっていた。
8:12 でも、わたしのぶどう畑は、わたしのもの。わたしの前にある。ソロモンよ、あなたは銀貨千枚を取ればいい。実りの番をする者たちには二百枚を。
8:13 園に住むきみよ、仲間たちがきみの声に耳を澄ましている。わたしにも、その声を聞かせてほしい。
8:14 愛する人よ、急いで。かもしかのように、若い雄鹿のように、香りに満ちた山々の上を駆けめぐって。
イザヤ書
1:1 アモツの子イザヤが、ユダとエルサレムについて見た幻。ユダの王ウジヤ、ヨタム、アハズ、ヒゼキヤの時代のことである。
1:2 天よ、聞け。地よ、耳を傾けよ。主が語られるからだ。「わたしは子どもたちを育て、大きくした。それなのに、彼らはわたしに背いた。
1:3 牛は自分の飼い主を知り、ろばは主人の飼い葉おけを知っている。それなのにイスラエルは知らない。わたしの民は、何もわかろうとしない。」
1:4 ああ、罪ばかりの国。とがを重く背負った民。悪を行う者たちの子孫。だめにしてしまう子どもたち。彼らは主を捨て、イスラエルの聖なる方を見下し、背を向けて離れていった。
1:5 どこを打てば気がすむのか。おまえたちは、なおも逆らい続ける。頭は残らず病み、心はすっかり弱りきっている。
1:6 足の裏から頭のてっぺんまで、無事なところはどこにもない。切り傷、打ち傷、生々しい傷ばかりだ。しぼり出してもらえず、包帯も巻かれず、油で和らげてもらうこともない。
1:7 おまえたちの国は荒れ果て、町々は火で焼かれた。畑は、目の前でよそ者たちに食い荒らされている。まるで異国の民にひっくり返されたように、荒れ果ててしまった。
1:8 娘シオンだけが取り残された。ぶどう畑の見張り小屋のように、きゅうり畑の番小屋のように、敵に囲まれた町のように。
1:9 もし天の軍勢の主が、わたしたちにわずかな生き残りを残してくださらなかったら、わたしたちはソドムのようになり、ゴモラと同じになっていただろう。
1:10 主の言葉を聞け、ソドムの支配者たち。わたしたちの神の教えに耳を傾けよ、ゴモラの民よ。
1:11 「おまえたちがささげる、たくさんのいけにえ。それがわたしに何になるのか」と主は言われる。「雄羊の焼き尽くすささげ物も、肥えた家畜の脂も、もう十分だ。雄牛や子羊や雄やぎの血を、わたしは望まない。
1:12 おまえたちはわたしの前に出ようとやって来る。だが、わたしの庭を踏み荒らせと、いったい誰がおまえたちに求めたのか。
1:13 もう、むだなささげ物を持って来るな。香をたくのも、わたしにはうんざりだ。新月の祭りも安息日も、人を集める集会も、もう我慢できない。悪いことをしながら集まる、その集まりに耐えられない。
1:14 おまえたちの新月の祭りも、決められた祭りも、わたしは心から憎む。それはわたしの重荷になった。背負うのに、もう疲れ果てた。
1:15 おまえたちが手を広げて祈っても、わたしは目をそらす。どれだけ祈りを重ねても、わたしは聞かない。おまえたちの手は血にまみれているからだ。
1:16 身を洗って、きれいになれ。おまえたちの悪い行いを、わたしの目の前から取り除け。悪いことをやめろ。
1:17 善い行いを学べ。公正を求めよ。しいたげられている人を助けよ。親を亡くした子のために正しくさばき、未亡人のために弁護せよ。
1:18 「さあ、来い。とことん話し合おう」と主は言われる。「たとえおまえたちの罪が緋色のように赤くても、雪のように白くなる。紅のように赤くても、羊の毛のように白くなる。
1:19 もしおまえたちがその気になって、聞き従うなら、この地の良いものを食べられる。
1:20 だが、もし拒んで逆らうなら、剣に食い尽くされる。」主の口がこう語られたのだ。
1:21 ああ、忠実だったあの町が、どうして裏切りの女になってしまったのか。かつては公正で満ちていた。正義がそこに宿っていた。それが今では、人殺したちの町だ。
1:22 おまえの銀はかすになり、おまえのぶどう酒は水で薄められている。
1:23 おまえの指導者たちは反逆者で、盗人の仲間だ。みな、わいろを愛し、見返りを追い求める。親を亡くした子のために正しくさばかず、未亡人の訴えに耳を貸そうともしない。
1:24 だから、主、万軍の主、イスラエルの力ある方はこう言われる。「ああ、わたしは逆らう者たちを晴らし、敵に仕返しをする。
1:25 わたしは再び手をおまえに向け、灰汁で溶かすようにおまえのかすを取り除き、混じり物をすべて取り去る。
1:26 そして、おまえのさばき人たちを初めのように、相談役たちを最初のように立て直す。その後、おまえは義の町、忠実な町と呼ばれる。」
1:27 シオンは公正によってあがなわれ、悔い改めて立ち返る者は義によってあがなわれる。
1:28 しかし、反逆する者と罪を犯す者はともに打ち砕かれ、主を捨てる者は滅び去る。
1:29 おまえたちは、慕い続けてきた樫の木を恥じ、選んできた園のことで顔を赤らめる。
1:30 おまえたちは、葉のしおれる樫の木のようになり、水のない園のようになるからだ。
1:31 強い者は麻くずとなり、その働きは火花となる。二つはともに燃え上がり、消す者はいない。
2:1 アモツの子イザヤが、ユダとエルサレムについて見た言葉。
2:2 終わりの日に、主の家の山は山々の頂に堅く立ち、もろもろの丘よりも高くそびえる。そして、すべての国々がそこへ流れ寄ってくる。
2:3 多くの民がやって来て言う。「さあ、主の山に登ろう。ヤコブの神の家へ。神はご自分の道をわたしたちに教えてくださる。わたしたちはその道を歩もう。」教えはシオンから、主の言葉はエルサレムから出るからだ。
2:4 主は国々の間をさばき、多くの民の争いを裁く。彼らは剣を打ち直して鋤とし、槍を打ち直して鎌とする。国は国に向かって剣を上げず、もう戦いを学ぶことはない。
2:5 ヤコブの家よ、さあ、主の光の中を歩もう。
2:6 あなたは、ご自分の民、ヤコブの家を見捨てられた。彼らが東方の風習で満ち、ペリシテ人のように占いをし、異国の民と手を結んでいるからだ。
2:7 その国は銀と金で満ち、宝は限りなくあふれている。その国は馬で満ち、戦車も数えきれないほどある。
2:8 その国は偶像で満ちている。人々は自分の手で造ったものにひれ伏し、自分の指で造ったものを拝んでいる。
2:9 だから人はかがめられ、誰もが低くされる。彼らを赦してはならない。
2:10 岩の間に入り、土の中に身を隠せ。主の恐ろしさと、その輝かしい威光の前から逃れるために。
2:11 高ぶる人の目は伏せられ、おごり高ぶる者は低くされる。その日には、主おひとりだけが高く上げられる。
2:12 万軍の主の日が来る。その日は、すべて誇り高ぶる者、すべて思い上がった者に向けられ、彼らはみな低くされる。
2:13 高くそびえるレバノンの杉のすべてに、バシャンの樫の木のすべてに、
2:14 高い山のすべてに、そびえ立つ丘のすべてに、
2:15 高い塔のすべてに、堅固な城壁のすべてに、
2:16 タルシシュの船のすべてに、美しい船のすべてに、その日は向けられる。
2:17 高ぶる人は低くされ、おごり高ぶる者はかがめられる。その日には、主おひとりだけが高く上げられる。
2:18 そして偶像は、跡形もなく消えうせる。
2:19 人々は岩のほら穴や地の穴に逃げ込む。主への恐れと、その輝かしい威光の前から。主が立ち上がり、地を揺り動かすときに。
2:20 その日、人は自分が拝むために造った銀の偶像や金の偶像を、もぐらやこうもりに投げ捨てる。
2:21 主が立ち上がり、地を揺り動かすとき、主への恐れとその輝かしい威光の前から、岩の裂け目や崖の割れ目に逃げ込むために。
2:22 もう人間に頼るのはやめなさい。鼻で息をしているだけの存在に。そんな人に、いったいどれほどの値打ちがあるだろう。
3:1 見よ、万軍の主なる主が、エルサレムとユダから、頼りとなる支えをことごとく取り去ろうとしている。パンという支えも、水という支えも、すべて。
3:2 勇士も戦士も、裁判官も預言者も、占い師も長老も、
3:3 五十人隊の長も身分の高い人も、助言者も、腕のいい職人も、まじないに長けた者も、すべて取り去られる。
3:4 わたしは若者たちを彼らの指導者とし、子どもたちに彼らを治めさせる。
3:5 民は互いに虐げ合う。人は人を、隣人は隣人を。若者は年長者に、身分の低い者は尊ばれる者に、思い上がってふるまう。
3:6 そのとき人は、父の家で自分の兄弟をつかまえてこう言う。「お前は上着を持っている。わたしたちの指導者になってくれ。この廃墟を、お前が引き受けてくれ。」
3:7 その日、こう答える。「わたしには手当てできない。わたしの家にはパンもなく、着る物もない。わたしを民の指導者になどしないでくれ。」
3:8 エルサレムはつまずき、ユダは倒れた。彼らの言葉も行いも主に逆らい、栄光に輝く主の目に反抗しているからだ。
3:9 彼らの顔つきそのものが、彼らを訴えている。彼らはソドムのように罪をあらわにし、隠そうともしない。彼ら自身が災いだ。自分で自分に災いを招いたのだから。
3:10 正しい人に言え。「あなたは幸せだ」と。彼らは自分の行いの実を食べるのだから。
3:11 悪い者は災いだ。その手の行いに応じて報いを受けるのだから。
3:12 わたしの民よ。子どもがこれを虐げ、女たちがこれを支配している。わたしの民よ。あなたを導く者があなたを迷わせ、あなたの進むべき道を消してしまう。
3:13 主は立ち上がり、訴えを起こす。立って、もろもろの民を裁こうとされる。
3:14 主は裁きの場に来られる。民の長老たちと、その指導者たちを問いただすために。「あなたたちはぶどう畑を食い荒らした。貧しい人から奪った物が、あなたたちの家にある。
3:15 どういうつもりで、わたしの民を踏みにじり、貧しい人の顔をすりつぶすのか。」万軍の主なる神は、こう告げられる。
3:16 主はこう言われた。「シオンの娘たちは思い上がり、首を伸ばして歩き、目でこびを送る。気取った足取りで歩き、足首の飾りを鳴らしている。
3:17 だから主は、シオンの娘たちの頭を病でただれさせ、その恥ずかしい部分をあらわにされる。」
3:18 その日、主は飾りを取り去られる。足首の飾りも、額の飾りも、三日月形の飾りも。
3:19 耳飾りも、腕輪も、ベールも。
3:20 頭に巻く飾りも、足首の鎖も、飾り帯も、香水入れも、お守りも。
3:21 指輪も、鼻輪も。
3:22 晴れ着も、上着も、ケープも、手提げ袋も。
3:23 手鏡も、麻の下着も、ターバンも、ショールも。
3:24 そして、こうなる。よい香りの代わりに悪臭が漂い、飾り帯の代わりに縄が巻かれる。美しく整えた髪の代わりに丸坊主にされ、晴れ着の代わりに粗布をまとう。美しさの代わりに、焼き印の傷が残る。
3:25 あなたの男たちは剣に倒れ、勇士たちは戦いで倒れる。
3:26 都の門は嘆き悲しみ、都は空っぽになって地に座り込む。
4:1 その日、七人の女が一人の男にすがりついて言う。「食べ物は自分たちで用意する。服も自分たちで着る。だからどうか、あなたの名で呼ばせてほしい。わたしたちの恥を取り去ってほしい。」
4:2 その日、主が芽生えさせるものは、美しく輝く。地が実らせるものは、生き残ったイスラエルの人々にとって、誇りとなり、栄えとなる。
4:3 シオンに残された者、エルサレムに生き残った者は、聖なる者と呼ばれる。エルサレムで命ある者として名を記された者はみな、そう呼ばれる。
4:4 主はシオンの娘たちの汚れを洗い流し、エルサレムの中から流された血を、さばきの霊と焼き尽くす霊によって清め去る。
4:5 そして主は、シオンの山のすべての場所と、そこに集まる人々の上に、昼は雲と煙を、夜は燃える火の輝きを創造される。すべての栄光の上に、覆いがかけられるからだ。
4:6 その覆いは、昼は暑さを避ける陰となり、嵐や雨から身を守る隠れ場所となる。
5:1 わたしは、愛する人のために歌おう。その人のぶどう畑についての、恋の歌を。わたしの愛する人は、よく肥えた丘にぶどう畑を持っていた。
5:2 彼は土を掘り起こし、石を取り除き、最上のぶどうの木を植えた。その真ん中に見張りの塔を建て、ぶどうを搾る穴も掘った。そして良いぶどうが実るのを待った。でも、実ったのは酸っぱい野生のぶどうだった。
5:3 さあ、エルサレムに住む人々、ユダの人々よ。わたしと、わたしのぶどう畑の間を、どうか裁いてほしい。
5:4 わたしのぶどう畑のために、これ以上、何ができただろう。できることは、すべてやった。なのに、良いぶどうを待っていたのに、どうして酸っぱい野生のぶどうが実ったのか。
5:5 では、わたしがこのぶどう畑にこれから何をするか、教えよう。垣根を取り払う。すると畑は食い荒らされる。石垣を壊す。すると畑は踏みつけられる。
5:6 わたしはこの畑を荒れ果てさせる。枝は刈られず、土は耕されず、いばらとあざみが生い茂る。わたしは雲に命じて、そこに雨を降らせないようにする。
5:7 万軍の主のぶどう畑、それはイスラエルの家。主が心から慈しんで植えた木、それはユダの人々だ。主は公正を待ち望んだ。でも、そこにあったのは流血。正義を待ち望んだ。でも、聞こえてきたのは叫び声だった。
5:8 ああ、なんということだ。家に家を建て増し、畑に畑をつなげていく者たち。土地に余地がなくなるまで、そうやって、この地にただ自分たちだけで住もうとしている。
5:9 万軍の主が、わたしの耳にこう告げた。「必ず、多くの家は荒れ果てる。大きく立派な家も、住む人がいなくなる。」
5:10 十組の牛で耕すほどのぶどう畑から、とれるぶどう酒はたった一バテ。一ホメルの種をまいても、収穫はたった一エファしかない。
5:11 ああ、なんということだ。朝早くから起きて強い酒を追い求め、夜遅くまで飲み続けて、ぶどう酒に体を火照らせる者たち。
5:12 彼らの宴会には、竪琴も琴も、太鼓も笛も、ぶどう酒もそろっている。でも、主のなさることには目もくれず、その手の業を見ようともしない。
5:13 だから、わたしの民は、何もわからないまま捕らえられて連れ去られる。名高い人々は飢え、群衆は渇きで干からびる。
5:14 だから、よみは喉を広げ、口を限りなく大きく開ける。都のきらびやかさも、騒がしい群衆も、浮かれ騒ぐ者たちも、みなその中へ落ちていく。
5:15 こうして人は誰もが低くされ、力ある者もかがめられ、高ぶる者の目も伏せられる。
5:16 しかし万軍の主は、正しい裁きによって高くあげられる。聖なる神は、その義によって、聖なる方として現される。
5:17 そこでは子羊たちが自分の牧場のように草を食み、廃墟となった富める者たちの土地では、よそ者が食べ物をあさる。
5:18 ああ、なんということだ。むなしい綱で咎を引き寄せ、車のロープで罪を引きずってくる者たち。
5:19 彼らはこう言っている。「神よ、早く、急いでそのわざを行ってみせてほしい。それをこの目で見せてくれ。イスラエルの聖なる方の計画とやらを、近づけ、実現させてくれ。そうすればわたしたちにもわかるのだから。」
5:20 ああ、なんということだ。悪を良いと言い、良いものを悪と言う者たち。闇を光とし、光を闇とし、苦いものを甘いとし、甘いものを苦いとする者たち。
5:21 ああ、自分を賢いと思い込み、自分は物事がよくわかっていると信じ込んでいる者たち。
5:22 ああ、酒を飲むことにかけては勇者で、強い酒を調合することにかけては力自慢の者たち。
5:23 彼らはわいろをもらって悪人を正しいと言い張り、正しい人からはその正しさを奪い取る。
5:24 だから、炎の舌が刈り株を焼き尽くし、枯れ草が火の中で崩れ落ちるように、彼らの根は腐り、その花はほこりのように舞い上がる。彼らが万軍の主の教えを捨て、イスラエルの聖なる方の言葉を見下したからだ。
5:25 だからこそ、主の怒りはご自分の民に対して燃え上がった。主は彼らに手を伸ばして打たれた。山々は震え、彼らの死体はちまたの真ん中でごみのように転がった。それでもなお、主の怒りはおさまらず、その手はまだ伸ばされたままだ。
5:26 主は遠くの国々に向けて旗を掲げ、地の果てにいる者を口笛で呼び寄せる。すると見よ、彼らはたちまち、すばやくやって来る。
5:27 その中には疲れる者も、つまずく者もいない。だれもうとうとせず、眠りもしない。腰の帯はゆるまず、履き物のひもも切れない。
5:28 彼らの矢は鋭く、弓はすべて引き絞られている。馬のひづめは火打ち石のように硬く、戦車の車輪はつむじ風のようだ。
5:29 そのうなり声は雌ライオンのようで、若いライオンのようにほえたてる。うなりながら獲物をつかまえ、さらって行く。だれも助け出せない。
5:30 その日、彼らは海の轟きのように獲物に向かってうなる。地を見渡せば、見よ、闇と苦しみがあり、光さえも雲に閉ざされて暗くなっている。
6:1 ウジヤ王が死んだ年、わたしは主を見た。主は高く上げられた王座に座っていて、その衣の裾が神殿いっぱいに広がっていた。
6:2 その上には炎のような天使たちが立っていた。それぞれに六つの翼があった。二つで顔をおおい、二つで足をおおい、二つで飛んでいた。
6:3 彼らは互いに呼びかけ合って、こう叫んでいた。「聖なるかな、聖なるかな、聖なるかな、万軍の主。その栄光は地いっぱいに満ちている。」
6:4 その叫ぶ声で戸口の柱の土台が揺れ、神殿は煙で満たされた。
6:5 わたしは言った。「ああ、もうだめだ。わたしは滅ぼされる。わたしは唇の汚れた者で、しかも唇の汚れた民の中に住んでいる。それなのに、この目で王を、万軍の主を見てしまったのだから。」
6:6 すると、炎のような天使の一人がわたしのところへ飛んで来た。その手には、祭壇の上から火ばさみで取った、燃える炭があった。
6:7 天使はそれをわたしの口に触れさせて言った。「見なさい。これがあなたの唇に触れた。もうあなたの罪は取り去られ、あなたの過ちはゆるされた。」
6:8 そのとき、主の声が聞こえた。「だれを送ろうか。だれがわたしたちのために行ってくれるだろうか。」わたしは言った。「わたしがここにいます。わたしを送ってください。」
6:9 すると主は言った。「行って、この民にこう告げなさい。『あなたたちは聞くには聞くが、決して理解しない。見るには見るが、決してわからない。』
6:10 この民の心を鈍くし、その耳を遠くし、その目を閉ざせ。そうしなければ、彼らは目で見て、耳で聞いて、心で理解し、立ち返って、いやされてしまうからだ。」
6:11 わたしは言った。「主よ、いつまでですか。」主は答えた。「町々が荒れ果てて住む者がなくなり、家々に人がいなくなり、土地がすっかり荒れ果てるまでだ。
6:12 主は人々を遠くへ移し、この地の中には見捨てられた場所が広がる。
6:13 そこに十分の一が残ったとしても、それもまた焼き払われる。それでも、切り倒されても切り株が残るテレビンの木や樫の木のように、その切り株こそが聖なる種なのだ。」
7:1 ユダの王、ヨタムの子であり、ウジヤの孫であるアハズの時代のことだ。アラムの王レツィンと、レマルヤの子でイスラエルの王であるペカが、エルサレムを攻めるために攻め上ってきた。しかし、攻め落とすことはできなかった。
7:2 ダビデの家に、「アラムがエフライムと手を組んだ」という知らせが届いた。すると、王の心も民の心も、風に揺れる森の木々のように揺れ動いた。
7:3 主はイザヤに言った。「さあ、あなたの子シェアル・ヤシュブを連れて、アハズを迎えに行きなさい。上の池の水路の端、布をさらす畑に通じる大通りのところへ行くのだ。
7:4 そして、彼にこう言いなさい。『気をつけて、落ち着いていなさい。恐れてはいけない。あの二本のくすぶって煙を出す燃えさし、レツィンとアラム、それにレマルヤの子が激しく怒っても、心を弱らせてはいけない。
7:5 アラムとエフライム、そしてレマルヤの子は、あなたを害しようとたくらんで、こう言っている。
7:6 「ユダに攻め上って、これを脅かし、攻め破って自分たちのものにしよう。そして、タブアルの子をその王に立てよう」と。
7:7 しかし、主なる神はこう言われる。そのたくらみは成り立たず、実現することもない。
7:8 アラムの頭はダマスコ、ダマスコの頭はレツィンにすぎない。あと六十五年のうちに、エフライムは打ち砕かれ、もはや一つの民ではなくなる。
7:9 エフライムの頭はサマリア、サマリアの頭はレマルヤの子にすぎない。あなたがたがもし信じないなら、決して堅く立つことはできない。』」
7:10 主は再びアハズに語りかけて言われた。
7:11 「あなたの神である主に、しるしを求めなさい。深く、死者のいる所まで求めてもよいし、高く、天の上まで求めてもよい。」
7:12 しかし、アハズは言った。「わたしは求めません。主を試すようなことはしません。」
7:13 それでイザヤは言った。「ダビデの家よ、聞きなさい。あなたたちは人々をうんざりさせるだけでは足りず、わたしの神まで疲れさせるのか。
7:14 だから、主ご自身があなたたちにしるしを与える。見なさい。若い女が身ごもって男の子を産み、その子をインマヌエル（神はわたしたちと共におられる）と名づける。
7:15 その子はバターと蜂蜜を食べ、悪を退けて良いものを選ぶことを知るようになる。
7:16 その子が悪を退けて良いものを選ぶことを知るより前に、あなたが恐れている二人の王の地は見捨てられる。
7:17 主は、あなたとあなたの民、そしてあなたの父の家に、まだ来たことのないような日々をもたらす。それはエフライムがユダから離れて以来のことで、アッシリアの王がやって来る日々だ。」
7:18 その日、主は口笛を吹いて、エジプトの川の果てにいるハエと、アッシリアの地にいる蜂を呼び寄せる。
7:19 それらはみなやって来て、荒れた谷や岩の裂け目、すべてのいばらの茂みや水場に群がる。
7:20 その日、主は川の向こうから雇ったかみそり、すなわちアッシリアの王を使って、頭の毛と足の毛をそり落とし、ひげまでもそり取る。
7:21 その日、人は若い雌牛一頭と羊二匹を飼う。
7:22 それらがたくさんの乳を出すので、人はバターを食べる。この地に残された者はみな、バターと蜂蜜を食べることになる。
7:23 その日、千本のぶどうの木があって銀千枚の値打ちがあった場所は、どこもいばらとあざみだらけになる。
7:24 人々は弓矢を持ってそこに入る。国じゅうがいばらとあざみで覆われるからだ。
7:25 くわで耕していた丘も、どこもいばらとあざみを恐れて、もうだれも近づかなくなる。そこは牛を放し、羊が踏み歩く場所になる。
8:1 主はわたしに言われた。「大きな板を取り、その上に普通の筆で『マヘル・シャラル・ハシュ・バズ』と書きなさい。」
8:2 そしてわたしは、信頼できる証人として、祭司ウリヤと、エベレクヤの子ゼカリヤを立てた。
8:3 それからわたしは、預言者である妻のところに行った。彼女は身ごもって、男の子を産んだ。すると主はわたしに言われた。「その子を『マヘル・シャラル・ハシュ・バズ』と名づけなさい。
8:4 この子が『お父さん』『お母さん』と言えるようになる前に、ダマスコの富とサマリアの戦利品は、アッシリアの王の前に運び去られるからだ。」
8:5 主は再びわたしに語りかけて、こう言われた。
8:6 「この民は、静かに流れるシロアハの水を退けて、レツィンとレマルヤの子を喜んでいる。
8:7 だから見よ、主は彼らの上に、あの大河の激しく大量の水を襲いかからせる。それはアッシリアの王と、そのすべての威光だ。その水はすべての水路をあふれ、すべての岸を越えていく。
8:8 そしてユダに流れ込み、押し寄せて、首まで達する。その広げた翼は、あなたの国を端から端まで覆いつくす。神がわたしたちと共におられる方、インマヌエルよ。」
8:9 諸国の民よ、打ち砕かれて、おののけ。遠く離れた地の果てのすべての者よ、耳を傾けよ。武装するがいい、だが打ち砕かれる。武装するがいい、だが打ち砕かれる。
8:10 共に計略を立てるがいい、だがそれは打ち破られる。言葉を語るがいい、だがそれは実現しない。神がわたしたちと共におられるからだ。
8:11 主は力強い御手をわたしの上に置いて語り、この民の道を歩んではいけないと、わたしに強く命じてこう言われた。
8:12 「この民が『陰謀だ』と言うことすべてを、あなたがたは『陰謀だ』と言ってはならない。彼らが恐れるものを恐れてはならない。おびえてはならない。
8:13 万軍の主を、あなたがたは聖なる方とせよ。あなたがたが恐れるべきは主。おののくべきも主だ。
8:14 主は聖なる避け所となる。だが同時に、イスラエルの二つの家にとっては、つまずきの石、倒れさせる岩となり、エルサレムに住む者にとっては、仕掛けられた罠、わなとなる。
8:15 多くの者がその石につまずき、倒れて砕かれ、罠にかかって捕らえられる。」
8:16 この証しの言葉を束ね、この教えを、わたしの弟子たちのもとで封じておけ。
8:17 わたしは主を待つ。ヤコブの家から御顔を隠しておられる主を、じっと待ち望む。
8:18 見よ、わたしと、主がわたしに与えてくださった子どもたちは、イスラエルにおけるしるし、前ぶれなのだ。それはシオンの山に住まわれる万軍の主から与えられたものだ。
8:19 人々があなたがたに、「死者の霊を呼ぶ者や、ささやき、つぶやく霊媒に尋ねよ」と言うことがある。しかし、民は自分の神にこそ尋ねるべきではないか。生きている者のために、どうして死んだ者に尋ねるのか。
8:20 教えと証しに聞け。もし彼らがこの言葉どおりに語らないなら、それは彼らに夜明けの光がないからだ。
8:21 人々は苦しみ、飢えながら、この地をさまよう。飢えると、怒り狂い、自分の王と自分の神を呪って、顔を上に向ける。
8:22 そして地を見渡しても、そこにあるのは苦難と闇、苦しみの暗やみばかり。彼らは濃い闇の中へ追いやられる。
9:1 だが、苦しみの中にあったこの地に、闇はいつまでも続かない。かつて主はゼブルンの地とナフタリの地を軽んじられた。しかし後には、海沿いの道、ヨルダン川の向こう、異邦人のガリラヤを、栄えある地とされる。
9:2 暗やみの中を歩いてきた民は、大きな光を見た。死の影の地に住む人々の上に、光が輝いた。
9:3 あなたは国民を増やし、その喜びを大きくされた。人々はあなたの前で喜ぶ。刈り入れのときに喜ぶように、分捕り物を分け合うときに喜ぶように。
9:4 あなたが、彼らを押さえつける重荷のくびきを、その肩にかかる棒を、彼らを追い立てる者のむちを、ミディアンの日のように打ち砕かれたからだ。
9:5 地を踏み鳴らして進む兵士の履き物はすべて、血にまみれた衣とともに焼かれ、火の燃える薪となる。
9:6 ひとりの子どもがわたしたちのために生まれ、ひとりの男の子がわたしたちに与えられたからだ。主権はその肩にある。その名は「不思議な助言者、力ある神、永遠の父、平和の君」と呼ばれる。
9:7 その主権は増し、平和は限りなく続く。ダビデの王座の上に、その王国の上に。今から永遠に、公正と義によってこれを堅く立て、支える。万軍の主の熱い思いが、これを成し遂げる。
9:8 主はヤコブに向かって言葉を送られた。それはイスラエルの上に下った。
9:9 民はみな、それを思い知る。エフライムとサマリアに住む人々も。彼らは高ぶり、心おごって言う。
9:10 「れんがが崩れ落ちても、切り石で建て直そう。いちじく桑が切り倒されても、杉に植え替えよう。」
9:11 しかし主は、レツィンの敵を彼に立ち向かわせ、その敵たちをかき立てられた。
9:12 東からアラム、西からペリシテ。彼らは大きな口を開けてイスラエルを食い尽くした。それでも主の怒りは去らず、その手はなお伸ばされている。
9:13 それでも民は、自分を打った方に立ち帰らず、万軍の主を求めなかった。
9:14 だから主は、イスラエルから頭も尾も、しゅろの枝も葦も、一日のうちに切り落とされた。
9:15 頭とは、長老や身分の高い人のこと。尾とは、偽りを教える預言者のことだ。
9:16 この民を導く者たちは、人々を迷わせる。そして導かれる者たちは、飲み込まれてしまう。
9:17 だから主は、若者たちを喜ばず、みなしごややもめを憐れまない。だれもが神を敬わず、悪を行い、どの口も愚かなことばかり語るからだ。それでも主の怒りは去らず、その手はなお伸ばされている。
9:18 悪は火のように燃え上がり、いばらやあざみを焼き尽くす。森の茂みにも燃え広がり、煙となって渦を巻き、立ちのぼる。
9:19 万軍の主の怒りによって、地は焼け焦げる。民は火にくべる薪のようになり、だれも自分の兄弟を惜しまない。
9:20 右で奪い取っても、なお飢える。左で食らっても、満たされない。人はみな、自分の腕の肉を食う。
9:21 マナセはエフライムを、エフライムはマナセを食い合い、二つはそろってユダに襲いかかる。それでも主の怒りはおさまらず、なおもその手は伸ばされたままだ。
10:1 ああ、わざわいだ。不正な決まりを作る者たち、人を苦しめる法律を書き記す者たち。
10:2 彼らは弱い者たちを裁判で退け、わたしの民の貧しい人たちから正当な権利を奪う。未亡人を食いものにし、親のない子どもたちを略奪する。
10:3 だが、罰の日が来たら、おまえたちはどうするつもりだ。遠くから災いが襲ってくるとき、どうする。助けを求めて、だれのもとへ逃げるのか。おまえたちの富を、どこに置いておくのか。
10:4 捕らわれた者たちの下にうずくまるか、殺された者たちの中に倒れるしかない。それでも主の怒りはおさまらず、なおもその手は伸ばされたままだ。
10:5 ああ、アッシリアよ。おまえはわたしの怒りの杖、その手にあるのはわたしの憤りの棒だ。
10:6 わたしは神を無視する国に向けて、この者を送る。わたしを怒らせた民を攻めるよう、命じる。奪えるものを奪い、略奪し、通りの泥のように彼らを踏みつけさせるためだ。
10:7 しかし、アッシリアはそんなつもりではない。心の中でそう考えているわけでもない。その心にあるのは、ただ滅ぼすこと、多くの国々を絶やすことだけだ。
10:8 彼は言う。「わたしの将軍たちは、みな王のようなものではないか。
10:9 カルノはカルケミシュと同じではないか。ハマトはアルパドと、サマリアはダマスコと同じではないか。
10:10 わたしの手は偶像を拝む国々を次々に手に入れてきた。その国々の彫像は、エルサレムやサマリアの偶像よりも多かった。
10:11 サマリアとその偶像にしたように、エルサレムとその偶像にも、わたしは同じことをしないだろうか。」
10:12 主がシオンの山とエルサレムでなさるすべての働きを終えたとき、主はこう言う。「わたしはアッシリアの王を罰する。その高ぶった心が生んだ実と、思い上がったまなざしの誇りを。」
10:13 この王がこう言っているからだ。『わたしは自分の手の力でこれをやり遂げた。自分の知恵でやったのだ。わたしは賢いのだから。わたしは国々の境を取り払い、その財宝を奪い取った。力ある者のように、そこに住む民を引きずり下ろした。
10:14 国々の富を、まるで鳥の巣に手を伸ばすようにつかみ取った。人が置き去りにされた卵を集めるように、わたしは地のすべてを集めた。翼をばたつかせる者も、口を開いて鳴く者も、一羽もいなかった。』
10:15 斧が、それを使って切る人に向かって威張れるだろうか。のこぎりが、それを引く人に向かって偉そうにできるだろうか。それは棒が、自分を振り上げる人を振り回すようなものだ。ただの木にすぎない杖が、それを持つ人を持ち上げるようなものだ。
10:16 だから、万軍の主なる神は、アッシリアの肥え太った者たちに、やせ衰えをもたらす。その栄華のもとで、火が燃えるような炎を燃え上がらせる。
10:17 イスラエルの光は火となり、その聖なる方は炎となる。そして一日のうちに、アッシリアのいばらとやぶを焼き尽くす。
10:18 森と豊かな畑の栄えを、主は魂から肉体まで、ことごとく滅ぼし尽くす。それは病人が衰え果てていくようだ。
10:19 森に残る木はわずかになり、子どもでも数えて書き留められるほどになる。
10:20 その日には、イスラエルの残りの者、ヤコブの家の生き残った者は、もう自分たちを打った者に頼ることはしない。イスラエルの聖なる方である主に、心から寄りかかるようになる。
10:21 残りの者が帰ってくる。ヤコブの残りの者が、力ある神のもとへ帰ってくる。
10:22 あなたの民イスラエルが海の砂のように多くても、帰ってくるのはそのうちの残りの者だけだ。滅びはすでに決められ、義があふれ流れるように押し寄せる。
10:23 主なる万軍の神は、決められたとおりに、この地のただ中で、滅びを成し遂げるからだ。
10:24 だから、主なる万軍の神はこう言う。「シオンに住むわたしの民よ、アッシリアを恐れるな。彼はかつてのエジプトのように、棒であなたを打ち、あなたに向かって杖を振り上げるだろう。
10:25 もうほんの少しの間だけだ。あなたたちへの怒りは終わり、わたしの怒りは彼らの滅びに向かう。
10:26 主なる万軍の神は、彼に向かってむちを振るう。それはかつて、オレブの岩でミデヤンを打ち倒したときのようだ。主はまた、海に向かって杖を差し伸べ、かつてエジプトでしたように、それを高く上げる。
10:27 その日には、彼の重荷はあなたの肩から取り除かれ、彼のくびきはあなたの首から外される。そのくびきは、あなたが豊かに肥え太ったので、砕け落ちる。
10:28 アッシリアはアヤトに攻め込み、ミグロンを通り過ぎ、ミクマシュに武器をたくわえた。
10:29 彼らは峠を越えて、「ゲバを今夜の宿にしよう」と言う。ラマは震えおののき、サウルの町ギブアの人々は逃げ出す。
10:30 ガリムの娘よ、声を上げて叫べ。ライシャよ、耳をすませ。かわいそうなアナトトよ。
10:31 マデメナの人々は逃げ去り、ゲビムに住む人々は身を隠す。
10:32 きょう、彼はノブに立ち止まり、シオンの娘の山、エルサレムの丘に向かって、こぶしを振り上げる。
10:33 見よ。主なる万軍の神は、恐ろしい力で枝を切り落とす。高くそびえる木々は切り倒され、丈の高いものは低くされる。
10:34 主は森の茂みを斧で切り払い、レバノンの森も力ある方の前に倒れる。
11:1 エッサイの切り株から、一本の若枝が出てくる。その根から芽が出て、実を結ぶ。
11:2 その人の上に、主の霊がとどまる。それは知恵と理解の霊、助言と力の霊、そして主を知り、主を畏れる心の霊だ。
11:3 その人は、主を畏れることを喜びとする。目に見えるものだけで裁いたりはしない。耳で聞いたことだけで決めたりもしない。
11:4 貧しい人たちのことは、正しさをもって裁く。この地の弱い人たちのために、公平に判断を下す。その口のことばは、地を打つ杖のようだ。その唇の息で、悪い者を滅ぼす。
11:5 正しさが、その人の腰の帯となる。真実が、その人の腰を締める帯となる。
11:6 狼が子羊と一緒に暮らす。豹が子やぎと並んで横になる。子牛も若いライオンも、肥えた家畜も一緒にいて、小さな子どもがそれらを導く。
11:7 雌牛と熊が一緒に草を食べ、その子どもたちも並んで横になる。ライオンも牛のように、わらを食べる。
11:8 乳飲み子がコブラの穴のそばで遊び、乳離れした子が毒蛇の巣に手を伸ばす。
11:9 わたしの聖なる山では、どこでも、傷つけ合うことも、滅ぼし合うこともない。水が海を満たすように、この地は主を知る知識で満たされるからだ。
11:10 その日、エッサイの根から出たその人が、すべての民の旗として立つ。国々はその人を求め、その人のいる場所は栄光に輝く。
11:11 その日、主はもう一度手を伸ばして、残された自分の民を取り戻す。アッシリア、エジプト、パトロス、クシュ、エラム、シンアル、ハマテ、そして海の島々から連れ帰る。
11:12 主は国々に向けて旗を掲げ、追い散らされたイスラエルの人々を呼び集める。散らされたユダの人々を、地の四方の果てから集める。
11:13 エフライムのねたみは消え去り、ユダを敵とする者は絶たれる。エフライムはもうユダをねたまず、ユダもエフライムを苦しめない。
11:14 二人は西に向かい、ペリシテ人の丘に襲いかかる。ともに東の人々を奪い取る。エドムとモアブに手を伸ばし、アンモンの人々も従わせる。
11:15 主はエジプトの海の入り江を干上がらせ、大河の上に手を振りかざす。焼けつく風を送って川を七つの流れに打ち分け、人々が履き物のまま渡れるようにする。
11:16 こうして、アッシリアから残された主の民のために、一本の大きな道ができる。イスラエルがエジプトの地から上って来たあの日と同じように。
12:1 その日、あなたはこう言う。「主よ、あなたに感謝します。あなたはわたしに怒っていましたが、その怒りはおさまり、あなたはわたしを慰めてくださいました。
12:2 見よ、神はわたしの救い。わたしは信頼して、恐れない。主こそわたしの力、わたしの歌。主がわたしの救いとなってくださった。」
12:3 あなたがたは喜びながら、救いの泉から水をくむ。
12:4 その日、あなたがたはこう言う。「主に感謝しよう。その名を呼び求めよう。主がなさったことを、すべての民に知らせよう。主の名は高くあがめられていると告げ知らせよう。
12:5 主をたたえて歌おう。主はすばらしいことをなさった。これを地のすべてに知らせよう。
12:6 シオンに住む人よ、声をあげて喜び歌え。イスラエルの聖なる方が、あなたのただ中におられ、大いなる方だから。」
13:1 バビロンについての宣告。アモツの子イザヤが見たものである。
13:2 裸の丘の上に旗を掲げよ。大声で彼らを呼び、手を振って合図せよ。そうすれば彼らは、高貴な者たちの門へ攻め入る。
13:3 わたしは、自分のために選び分けた者たちに命じた。わたしの怒りを果たすために、勇士たちを呼び集めた。わたしの威光を誇り、勝ち誇って喜ぶ者たちを。
13:4 山々に、大群衆のようなざわめきが響く。国々や王国が集まってくる、そのどよめきが聞こえる。万軍の主が、戦いのために軍勢を招集しているのだ。
13:5 彼らは遠い国から、天の果てからやって来る。主と、その怒りの武器が、地のすべてを滅ぼすために来るのだ。
13:6 泣き叫べ。主の日が近い。それは全能者による破壊となって襲ってくる。
13:7 だから、すべての手は力を失い、すべての人の心はくじけて溶ける。
13:8 人々はおびえる。産みの苦しみのような激しい痛みが彼らを襲い、身をよじらせる。彼らは互いに顔を見合わせて驚き、その顔は炎のように赤く燃える。
13:9 見よ、主の日が来る。それは残酷で、憤りと激しい怒りに満ちている。地を荒れ果てさせ、そこから罪人たちを絶やすために来るのだ。
13:10 天の星々も、その星座も、光を放たない。太陽は昇っても暗く、月もその光を輝かせない。
13:11 わたしは世界を、その悪のために罰する。悪しき者たちを、その罪のために罰する。傲慢な者の高ぶりを終わらせ、横暴な者の高慢を打ち砕く。
13:12 わたしは人を、純金よりもまれな存在とし、人間を、オフィルの金よりも得がたいものとする。
13:13 だから、わたしは天を揺るがす。地はその場所から震え動く。万軍の主の激しい怒りによって、その燃えるような怒りの日に。
13:14 人々は、追われるかもしかのように、集める者のいない羊のようになる。それぞれ自分の民のもとへ向かい、それぞれ自分の国へと逃げていく。
13:15 見つかった者はみな突き刺され、捕らえられた者はみな剣で倒れる。
13:16 彼らの幼い子どもたちは、目の前で打ち砕かれる。家々は略奪され、妻たちは辱められる。
13:17 見よ、わたしは彼らに向かってメディア人を奮い立たせる。彼らは銀を気にもかけず、金を喜びもしない。
13:18 彼らの弓は若者たちを射倒す。生まれてくる子にも情けをかけず、幼い子らにも目をかけない。
13:19 バビロンは国々の中でいちばん輝かしく、カルデア人の誇り高い栄光だった。しかし、神がソドムとゴモラを滅ぼしたときのようになる。
13:20 そこには、いつまでも人が住むことはなく、代々にわたって誰も宿らない。アラブ人もそこに天幕を張らず、羊飼いも群れを休ませない。
13:21 そこには荒野の獣が伏し、家々はわめく生き物で満ちる。だちょうがそこに住みつき、雄やぎがそこで跳ねまわる。
13:22 ハイエナはその邸宅で吠え、ジャッカルは豪華な宮殿でうなる。その時はもう近づいていて、その日が延ばされることはない。
14:1 主はヤコブをあわれみ、もう一度イスラエルを選び、彼らを自分の土地に住まわせる。よそから来た人々も彼らに加わり、ヤコブの一族に結びつく。
14:2 いくつもの民が彼らを連れて、もとの場所へ送り届ける。イスラエルの一族は、主の土地で彼らを自分のものとし、男女の召し使いとする。こうして、かつて自分たちを捕らえた者たちを捕らえ、自分たちを苦しめた者たちを支配するようになる。
14:3 主があなたに、苦しみと不安、そしてあなたに課された過酷な労働から解放して、休みを与えるその日に、
14:4 あなたはバビロンの王をからかって、こう歌うだろう。「見よ、人を苦しめる者は倒れた。荒れ狂う者は消え去った。
14:5 主は悪しき者たちの杖を、支配者たちのむちを折られた。
14:6 その者は怒りにまかせて民を打ち、休みなく打ちのめした。憤りをもって国々を踏みつけ、容赦なく追い立てた。
14:7 今や全地は落ち着き、静けさを取りもどした。人々は喜びの声を上げている。
14:8 糸杉も、レバノンの杉の木々もあなたのことで喜んでいる。「お前が倒れてからは、もう木こりが上ってきて、わたしたちを切り倒すことはない」と。
14:9 地の下の死者の世界も、あなたが来るのを迎えようとざわめいている。それはあなたのために、地上のかつての指導者たち、亡霊たちを呼び起こし、国々の王たちをみな、その王座から立ち上がらせる。
14:10 彼らはみな声をそろえて、あなたに言う。「お前まで、わたしたちのように弱り果てたのか。お前もわたしたちと同じになったのか」と。
14:11 お前の栄華も、竪琴の音も、死者の世界へ落とされた。お前の下には うじが敷かれ、お前を覆うのは虫けらだ。
14:12 ああ、お前は天から落ちてしまった。明けの明星、暁の子よ。国々を打ち倒したお前が、地に切り倒されてしまった。
14:13 お前は心の中でこう言った。「わたしは天に昇る。神の星々よりも高く、自分の王座を据える。北の果て、神々が集う山の上に座るのだ。
14:14 雲の頂よりも高く昇り、いと高き方のようになろう」と。
14:15 だが、お前は死者の世界へ、穴の底へと落とされる。
14:16 お前を見る者は、じっと見つめて考え込む。「これがあの男か。地を震わせ、国々を揺るがし、
14:17 世界を荒れ野に変え、町々を打ち壊し、捕らえた者たちを家に帰さなかった、あの男なのか」と。
14:18 国々の王はみな、それぞれ自分の墓で、栄誉に包まれて眠っている。
14:19 だがお前は、自分の墓から投げ出された。忌み嫌われる若枝のように。剣で刺し貫かれて殺された者たちに覆われ、穴の石の底へ下っていく者たちのように、踏みつけられた死体のように。
14:20 お前は彼らと一緒に葬られることはない。自分の国を滅ぼし、自分の民を殺したからだ。悪を行う者の子孫は、永遠にその名を呼ばれることはない。
14:21 その子どもたちのために、殺される場所を用意せよ。父祖たちの罪のためだ。彼らが立ち上がって地を受け継ぎ、世界中を町で埋め尽くすことのないように。
14:22 「わたしは彼らに立ち向かう」と万軍の主は言われる。「わたしはバビロンから、その名も、生き残る者も、子も孫も断ち切る」と主は言われる。
14:23 「わたしはそこを、はりねずみの住みかとし、水たまりの地とする。そして滅びのほうきで、そこを掃き払う」と万軍の主は言われる。
14:24 万軍の主は誓ってこう言われた。「わたしが思い描いたとおりに必ず実現し、わたしが定めたとおりに必ず成る。
14:25 わたしはわたしの地でアッシリアを打ち砕き、わたしの山々で踏みつける。そのとき、彼のくびきは彼らから離れ、彼の重荷は彼らの肩から取り除かれる。」
14:26 これが、全地に対して定められた計画だ。これが、すべての国々に向かって差し伸べられた手だ。
14:27 万軍の主が定められたのだ。だれがそれをくつがえせるだろう。主の手は差し伸べられている。だれがそれを引き戻せるだろう。
14:28 アハズ王が死んだ年に、このお告げがくだった。
14:29 ペリシテよ、お前たちみな、喜ぶな。お前を打った鞭が折れたからといって。蛇の根からは毒蛇が出て、その実は、飛びかかる炎の蛇となるのだから。
14:30 最も貧しい者たちも養われ、乏しい者は安心して身を横たえる。しかしわたしは、飢えでお前の根を枯らし、お前の生き残りを殺す。
14:31 門よ、泣き叫べ。町よ、叫び声をあげよ。ペリシテよ、お前たちみな、おののき崩れ落ちる。北から煙が上ってくるからだ。その隊列に、遅れる者は一人もいない。
14:32 その国の使者たちに、何と答えればいいのか。「主がシオンを築かれた。その民のうちの苦しむ者たちは、そこに身を寄せる」と。
15:1 モアブについての宣告。一夜のうちに、モアブのアルは荒らされ、滅び去った。一夜のうちに、モアブのキルは荒らされ、滅び去った。
15:2 ディボンの人々は神殿へ、丘の上の聖所へ上って泣く。モアブはネボのために、メデバのために泣き叫ぶ。どの頭も剃られ、どのひげも切り落とされている。
15:3 町の通りでは、人々が粗布をまとう。屋根の上でも広場でも、だれもが泣き崩れ、声をあげて嘆く。
15:4 ヘシュボンとエルアレは叫び、その声はヤハツまで届く。だからモアブの兵士たちも叫び、その魂はおののいている。
15:5 わたしの心はモアブのために叫ぶ。逃げる者たちはツォアルまで、エグラト・シェリシヤまで落ちのびる。ルヒトの坂を泣きながら上り、ホロナイムへの道で滅びの叫びをあげる。
15:6 ニムリムの水は干上がってしまう。草は枯れ、緑は尽き、青いものは何も残っていない。
15:7 だから彼らは、たくわえた財産や積み上げたものを、柳の谷を越えて運び去る。
15:8 叫び声はモアブの国境をぐるりと巡る。その嘆きはエグライムまで、その嘆きはベエル・エリムまで届く。
15:9 ディモンの水は血で満ちている。だがわたしは、ディモンにさらに災いを加える。モアブの逃げのびた者にも、この地の生き残りにも、獅子を送る。
16:1 その地を治める者に、子羊を送りなさい。セラから荒れ野を通って、シオンの娘の山へと。
16:2 モアブの娘たちは、アルノン川の渡し場でさまよう。巣から追い出されて飛び回る鳥のように。
16:3 「どうすればいいか教えてほしい。正しく裁いてほしい。真昼でも、あなたの影を夜のように濃くして、追われている者たちをかくまってほしい。逃げてきた者を、敵に売り渡さないでほしい。
16:4 モアブよ、追われたわたしの民を、あなたのところに住まわせてほしい。滅ぼす者から、彼らを守る隠れ場になってほしい。」やがて、しいたげる者は消え、破壊は終わり、踏みにじる者はこの地からいなくなる。
16:5 そして一つの王座が、慈しみによって固く据えられる。ダビデの天幕で、一人の王が誠実にそこに座る。彼は正しく裁きを行い、公正を求め、すみやかに義を実現する。
16:6 わたしたちは、モアブの高慢さを聞いた。ひどく思い上がっている。その傲慢、その高ぶり、その怒り。でも、その自慢はすべて空しい。
16:7 だからモアブは、モアブのために泣き叫ぶ。みんなが泣き叫ぶ。キル・ハレセトのほし葡萄の菓子を思って、あなたたちは嘆く。すっかり打ちのめされて。
16:8 ヘシュボンの畑は枯れ、シブマのぶどうの木も枯れた。その見事な枝を、諸国の支配者たちが折り倒したのだ。その枝はヤゼルまで届き、荒れ野へと広がり、若枝は伸びて、海の向こうにまで達していた。
16:9 だからわたしは、ヤゼルと共に泣き、シブマのぶどうの木のために泣く。ヘシュボンよ、エルアレよ、わたしはあなたを涙でぬらす。あなたの夏の実りと収穫の上に、喜びの叫びの代わりに、戦いの声が落ちてきたからだ。
16:10 実り豊かな畑から、喜びも楽しみも消えた。ぶどう畑では歌う声もなく、歓声もあがらない。搾り場でぶどうを踏む者もいない。わたしが、その喜びの叫びをやめさせたのだ。
16:11 だからわたしの心は、モアブのために竪琴のように鳴り響く。わたしの内側は、キル・ヘレスのために震える。
16:12 モアブが高台に現れ、そこで疲れ果て、自分の聖所に来て祈っても、何の役にも立たない。
16:13 これが、主がかつてモアブについて語った言葉である。
16:14 そして今、主はこう語る。「雇い人が日数を数えるように、きっかり三年のうちに、モアブの栄光は、その大勢の民もろとも地に落ちる。生き残る者はほんのわずかで、力もない。」
17:1 ダマスコについての宣告。見よ、ダマスコは町でなくなり、崩れた瓦礫の山となる。
17:2 アロエルの町々は捨てられ、家畜の群れの場所となる。群れはそこに寝そべり、脅かす者は誰もいない。
17:3 エフライムから砦は消え、ダマスコから王国は消え、アラムの生き残りもいなくなる。彼らはイスラエルの人々の栄光と同じ運命をたどる、と万軍の主は言われる。
17:4 その日、ヤコブの栄光は衰え、肥えた体はやせ細る。
17:5 それは、刈り入れる者が立ち穂をかき集め、その腕で穂を刈り取るときのようだ。レファイムの谷で落ち穂を拾い集めるときのようだ。
17:6 そこに残るのは、わずかな取り残しだけ。オリーブの木を打つと、こずえに実が二つ三つ、よく実った枝に四つ五つ残るように、と、イスラエルの神である主は言われる。
17:7 その日、人は自分を造った方を仰ぎ、その目はイスラエルの聖なる方へと向けられる。
17:8 自分の手で造った祭壇を、もう仰ぐことはない。自分の指で造ったもの、アシェラの柱や香をたく台に、目を向けることもない。
17:9 その日、堅固だった町々は荒れ果てる。イスラエルの子らを前にして見捨てられた森や、山の頂の茂みのように、廃墟となる。
17:10 あなたは自分を救う神を忘れ、自分の力の岩を思い出さなかった。だから、うっとりするような園を造り、よその神のための苗を植える。
17:11 植えたその日に芽を出させ、その朝に花を咲かせても、刈り入れは消え去る。ただ病と、いやしようのない痛みだけが残る日に。
17:12 ああ、多くの民のざわめき。海がとどろくように、ざわめいている。国々の騒ぎは、大水がとどろくように鳴りひびく。
17:13 国々は大水のように押し寄せる。だが、神が叱りつけると、彼らははるか遠くへ逃げ去る。山の上のもみ殻が風に吹き散らされるように、つむじ風の前を転がる枯れ草のように、追い立てられる。
17:14 夕暮れには、見よ、恐怖が襲う。だが朝が来る前に、彼らはもういない。これが、わたしたちを略奪する者の受ける分、わたしたちを奪い取る者の定めだ。
18:1 ああ、羽音のざわめく地よ。クシュの川の向こうにある地よ。
18:2 この地は使者を海へ送り出す。パピルスの舟に乗せ、水の上を行かせる。行け、足の速い使者たち。背が高く、肌のなめらかな民のところへ。遠くの国々から恐れられる民のところへ。強くて、他を踏みにじる国、いくつもの川がその土地を分けて流れる、あの国のところへ。
18:3 世界に住むすべての者よ、この地に暮らすすべての者よ。山の上に旗が掲げられたら、それを見よ。ラッパが鳴り響いたら、それを聞け。
18:4 主はわたしにこう言われた。「わたしは静かに、自分のいる場所から見つめている。晴れた日の照りつける熱のように、刈り入れの暑さの中に降りる露の雲のように。」
18:5 刈り入れの前、花が散って、その花が実って熟しかけたぶどうになるころ、主は剪定ばさみでその若枝を切り落とし、伸びた枝を取り払い、切り捨てる。
18:6 それらはまとめて、山の猛禽と地の獣に投げ捨てられる。夏の間は猛禽がその上で過ごし、冬の間は地のすべての獣がその上で過ごす。
18:7 その時、背が高く、肌のなめらかな民から、遠くの国々から恐れられる民から、強くて、他を踏みにじる国、いくつもの川がその土地を分けて流れる、あの民から、万軍の主へ贈り物が運ばれてくる。万軍の主の名がある場所、シオンの山へと。
19:1 エジプトについての宣告。見よ、主は速く流れる雲に乗ってエジプトにやって来る。すると、エジプトの偶像は主の前で震え、エジプトの心はその中で溶けていく。
19:2 「わたしはエジプト人をエジプト人と争わせる。人は兄弟と戦い、隣人と戦う。町は町と、国は国と戦うようになる。
19:3 エジプトの気力はその中で失われ、わたしは彼らの立てた計画をのみ尽くす。彼らは偶像や、死者の霊に語りかける者、口寄せ、占い師のところへ頼りに行く。
19:4 わたしはエジプトを、厳しい主人の手に引き渡す。荒々しい王が彼らを支配する。」主、万軍の主がこう告げる。
19:5 海の水は尽き、川は干上がって乾ききる。
19:6 運河は悪臭を放ち、エジプトの流れは細り、干上がる。葦も茎の草も枯れてしまう。
19:7 ナイル川のほとり、川の岸辺の草地は枯れ、ナイル沿いにまいた作物もみな干上がり、吹き飛ばされて消えてしまう。
19:8 漁師たちは嘆き悲しむ。ナイル川に釣り針を投げる者はみな嘆き、水面に網を広げる者は力を失う。
19:9 麻をすいて織る者は恥じ入り、白い布を織る者も望みを失う。
19:10 国を支える柱となる者たちは打ちのめされ、賃金をもらって働く者はみな心を痛める。
19:11 ツォアンの首長たちは、まったくの愚か者だ。ファラオに仕える賢い助言者たちも、愚かな助言しかできない。あなたたちはどうしてファラオに「わたしは賢者の子、昔の王たちの子孫だ」と言えるのか。
19:12 では、あなたの賢者たちはどこにいるのか。彼らに告げさせるがいい。万軍の主がエジプトに対して何を計画したのか、知らせてみるがいい。
19:13 ツォアンの首長たちは愚かになり、ノフの首長たちは欺かれた。諸部族の隅の石とされた者たちが、エジプトを迷わせてしまった。
19:14 主はエジプトの中に、惑わす霊を注がれた。酔っぱらいが自分の吐いた物の上でよろめくように、彼らはエジプトを、そのすべての行いでふらつかせた。
19:15 頭も尾も、しゅろの枝も葦も、エジプトのためにできる仕事は、もう何もない。
19:16 その日、エジプトは女のようになる。万軍の主が振り上げる手を見て、震えおののく。
19:17 ユダの地は、エジプトにとって恐怖のもととなる。その名を聞かされる者はみな、万軍の主がエジプトに対して立てた計画を思って恐れる。
19:18 その日、エジプトの地にある五つの町が、カナンの言葉を話し、万軍の主に忠誠を誓うようになる。その一つは「滅びの町」と呼ばれる。
19:19 その日、エジプトの地の真ん中に、主のための祭壇が立つ。その国境のそばには、主のための石柱が立つ。
19:20 それは、エジプトの地で万軍の主のしるしとなり、証しとなる。人々が、虐げる者たちに苦しんで主に叫び求めると、主は彼らのために救い手を送る。その人は彼らを守り、助け出す。
19:21 その日、主はご自分をエジプトに知らせ、エジプトの人々は主を知るようになる。彼らはいけにえと供え物をささげて主を礼拝し、主に誓いを立てて、それを果たす。
19:22 主はエジプトを打つ。打っては、また癒やす。エジプトの人々が主のもとに立ち返ると、主は彼らの願いを聞き入れ、癒やしてくださる。
19:23 その日、エジプトからアッシリアへ通じる大きな道ができる。アッシリア人はエジプトへ、エジプト人はアッシリアへ行き来する。そしてエジプトは、アッシリアとともに主を礼拝する。
19:24 その日、イスラエルはエジプト、アッシリアに次ぐ第三のものとなり、地の真ん中で祝福となる。
19:25 万軍の主は彼らを祝福して、こう言われる。「わたしの民エジプト、わたしの手が造ったアッシリア、わたしが受け継ぐものイスラエルに、祝福あれ。」
20:1 アッシリアの王サルゴンが将軍タルタンをアシュドドに送った年のことである。タルタンはアシュドドを攻めて、これを占領した。
20:2 そのころ、主はアモツの子イザヤを通して語られた。「さあ、腰に着けた粗布を脱ぎ、足のはき物も脱ぎなさい。」イザヤはそのとおりにして、裸で、はだしで歩き回った。
20:3 主は言われた。「わたしのしもべイザヤは、三年の間、裸で、はだしで歩いてきた。それは、エジプトとクシュに対するしるし、前触れである。
20:4 それと同じように、アッシリアの王はエジプトの捕虜とクシュの捕らわれ人を引いて行く。若者も年寄りも、裸で、はだしで、尻をむき出しにされる。それはエジプトの恥となる。
20:5 人々は、頼みにしていたクシュと、誇りにしていたエジプトのことで、うろたえ、恥じ入る。
20:6 その日、この海辺に住む人々は言う。「見ろ、これがわたしたちの頼みの姿だ。アッシリアの王から助かろうとして、助けを求めて逃げ込んだ相手がこれだ。わたしたちは、どうやって逃げ延びられるだろうか。」
21:1 海の荒れ野についての告げ。ネゲブを吹き抜ける旋風のように、それは荒れ野から、恐ろしい地からやって来る。
21:2 つらい幻がわたしに告げられた。裏切る者は裏切り、奪う者は奪う。エラムよ、攻め上れ。メディアよ、包囲せよ。わたしは、この都が引き起こしたうめきをすべて終わらせる。
21:3 だから、わたしの腰は激しい痛みでいっぱいになり、子を産む女の陣痛のような苦しみがわたしを捕らえた。わたしは聞いて打ちのめされ、見ておびえた。
21:4 わたしの心は乱れ、恐怖がわたしを震え上がらせる。待ち望んでいた夕暮れが、わたしには恐ろしいものに変わってしまった。
21:5 食卓が整えられ、敷物が広げられ、人々は食べ、飲む。立ち上がれ、指導者たちよ。盾に油を塗れ。
21:6 主はわたしにこう言われた。「行って、見張りを立てよ。見えたことを報告させよ。」
21:7 見張りは、戦車と二頭立ての騎兵、ろばに乗る一隊、らくだに乗る一隊を見た。そして耳を澄まし、念入りに聞き入った。
21:8 すると見張りは獅子のように叫んだ。「主よ、わたしは物見の台に昼のあいだずっと立ち、夜通し持ち場に立ち続けています。」
21:9 見よ、人を乗せた戦車が、二頭立ての騎兵とともにやって来る。すると彼は答えて言った。「倒れた、倒れた、バビロンが。その神々の像はすべて砕かれ、地に打ち倒された。」
21:10 打ち場で打たれたわたしの民よ、脱穀された者よ。わたしは、イスラエルの神、万軍の主から聞いたことを、あなたたちに告げた。
21:11 ドマについての告げ。セイルからわたしに呼びかける声がする。「見張りよ、夜はどれくらい過ぎたか。見張りよ、夜はどれくらい過ぎたか。」
21:12 見張りは答える。「朝が来る。だが、また夜も来る。尋ねたいなら尋ねよ。そして、また戻って来い。」
21:13 アラビアについての告げ。デダンの隊商よ、あなたたちはアラビアの茂みの中で夜を過ごす。
21:14 テマの地に住む人々よ、渇いた人に水を持って行き、逃げて来た人にパンを差し出せ。
21:15 彼らは剣から逃げて来たのだ。抜かれた剣から、張られた弓から、激しい戦いから逃げて来たのだ。
21:16 主はわたしにこう言われた。「雇い人が数える一年のうちに、ケダルの栄えはすべて尽きる。
21:17 ケダルの勇士たち、弓を持つ者の残りは、ほんのわずかになる。」イスラエルの神、主がこう語られたのだ。
22:1 幻の谷についての告げ。いったいどうしたのか。あなたたちは皆、屋根の上に上っている。
22:2 騒ぎに満ちた町よ、ざわめく都よ、浮かれ騒ぐ町よ。あなたのところで倒れた者は、剣で殺されたのでも、戦いで死んだのでもない。
22:3 あなたの指導者たちは、皆いっしょに逃げ出し、弓も引かずに捕らえられた。あなたのところで見つかった者は、遠くへ逃げていたのに、皆いっしょに捕らえられた。
22:4 だからわたしは言う。「わたしから目をそらしてくれ。激しく泣かせてくれ。わたしの民、娘が打ち滅ぼされたのだ。無理になぐさめようとしないでくれ。」
22:5 万軍の主なる神が、幻の谷にもたらす日が来るからだ。それは、混乱と、踏みにじられることと、うろたえの日。城壁は崩され、助けを求める叫びが山々に届く。
22:6 エラムは矢筒を背負い、戦車と騎兵を率いて来る。キルは盾のおおいを取り払う。
22:7 えり抜きの谷は戦車で埋め尽くされ、騎兵たちは門の前に陣取った。
22:8 こうして、ユダを守るおおいは取り払われた。その日、あなたたちは「森の家」に蓄えた武器を頼りにした。
22:9 あなたたちは、ダビデの町の城壁にいくつも破れがあるのを見た。そして下の池の水を集めた。
22:10 エルサレムの家々を数え、城壁を固めるために家をこわした。
22:11 二つの城壁の間に貯水池を造り、古い池の水をそこにためた。でも、それをなさった方に目を向けず、はるか昔にこれを造られた方を見ようとしなかった。
22:12 その日、万軍の主なる神は呼びかけた。泣き、悲しみ、頭をそり、荒布を身にまとうようにと。
22:13 それなのに、あるのは喜びと楽しみだった。牛をほふり、羊を殺し、肉を食べ、ぶどう酒を飲んで、「食べよう、飲もう。どうせ明日は死ぬのだから」と言う。
22:14 万軍の主は、わたしの耳にこう告げられた。「この罪は、あなたたちが死ぬまで決してゆるされない。」万軍の主なる神が、そう言われる。
22:15 万軍の主なる神は、こう言われる。「さあ、あの執事のところへ行け。宮廷を取りしきるシェブナのところへ。
22:16 そして言え。『おまえはここに何を持ち、ここに誰がいるというのか。ここに自分の墓を掘るとは。高い所に墓を刻み、岩に自分の住みかを彫り込むとは。』
22:17 見よ、主はおまえを激しく投げ飛ばそうとしている。力ある者よ、おまえをがっちりとつかむ。
22:18 主はおまえをボールのように丸めて、広い地へと投げつける。おまえはそこで死ぬ。おまえが誇った立派な戦車も、そこにさらされる。おまえは主人の家の恥だ。
22:19 わたしはおまえをその地位から追い落とす。おまえはその立場から引きずり降ろされる。
22:20 その日、わたしはわたしのしもべ、ヒルキヤの子エルヤキムを呼ぶ。
22:21 わたしは彼におまえの上着を着せ、おまえの帯を締めてやり、おまえの権力を彼の手に渡す。彼はエルサレムに住む人々と、ユダの家の父となる。
22:22 わたしはダビデの家の鍵を彼の肩に置く。彼が開ければ、閉じる者はいない。彼が閉じれば、開く者はいない。
22:23 わたしは彼を、しっかりした場所に打ち込んだ杭のように固定する。彼は父の家にとって輝かしい座となる。
22:24 父の家のすべての誉れが彼に掛けられる。子も孫も、大きな器から小さな器まで、鉢から壺まで、すべてがそこにぶら下がる。」
22:25 その日、と万軍の主は言われる。しっかりした場所に打ち込まれた杭は抜け、切り倒されて落ちる。それに掛かっていた重荷もろとも断ち切られる。主がそう語られたのだ。
23:1 ティルスについての宣告。タルシシュの船よ、泣き叫べ。ティルスは荒らされ、家も港もなくなった。キティムの地から、その知らせが彼らに届いた。
23:2 海辺に住む者たちよ、黙れ。海を渡るシドンの商人たちが、おまえを満たしていた。
23:3 大いなる海を越えて、シホルの穀物、ナイルの実りがおまえの富となった。おまえは諸国民の交易の町だった。
23:4 恥じよ、シドンよ。海が、海の砦がこう言うからだ。「わたしは産みの苦しみを知らず、子を産まず、若者を育てず、娘を育てもしなかった。」
23:5 エジプトについての知らせが届いたときのように、ティルスの知らせが届くと、人々は身もだえする。
23:6 タルシシュへ渡れ。海辺に住む者たちよ、泣き叫べ。
23:7 これがあの、浮かれ騒いでいた町なのか。遠い昔からある古い町。その足が自らを遠くまで運び、よその地に住みつくことになる。
23:8 王冠を授ける町ティルス。その商人は君主で、貿易商は地の名だたる者たち。そのティルスに、だれがこんな計画を立てたのか。
23:9 万軍の主が、それを計画した。すべての輝きの誇りを汚し、地の名だたる者たちをみな辱めるためだ。
23:10 タルシシュの娘よ、ナイル川のように自分の地を通り過ぎて行け。もう、おまえを縛るものはない。
23:11 主は海の上に手を伸ばし、いくつもの王国を揺るがした。主はカナンについて命じた。その砦を滅ぼせ、と。
23:12 主は言った。「虐げられた者よ、シドンの娘よ。おまえはもう、浮かれ騒ぐことはない。立ち上がって、キティムへ渡れ。だが、そこでもおまえは休めない。」
23:13 見よ、カルデア人の地を。この民は、もう存在しない。アッシリアが、そこを荒れ野の獣のすみかにした。人々は攻めのやぐらを築き、その宮殿を取り壊し、廃墟にした。
23:14 泣き叫べ、タルシシュの船よ。おまえたちの砦が、破壊されたからだ。
23:15 その日、ティルスは七十年のあいだ忘れられる。一人の王の生涯ほどの年月だ。七十年が終わると、ティルスはあの遊女の歌のようになる。
23:16 「竪琴を取り、町を巡り歩け。忘れられた遊女よ。上手に奏で、たくさん歌え。もう一度、思い出してもらえるように。」
23:17 七十年が終わると、主はティルスを顧みる。ティルスはまた稼ぎに戻り、地の面にあるすべての国を相手に、淫らな商売をする。
23:18 だが、その儲けと稼ぎは、主にささげられる聖なるものとなる。蓄えられることも、しまい込まれることもない。その儲けは、主の前に住む者たちのものとなり、彼らは十分に食べ、りっぱな衣を着る。
24:1 見よ、主が地を荒れ果てさせ、何もない場所に変える。その表面をひっくり返し、そこに住む人々を散らしてしまう。
24:2 そのとき、祭司も民も同じ運命をたどる。主人も奴隷も、女主人も召し使いも同じだ。売る者も買う者も、貸す者も借りる者も、金を取り立てる者も返す者も、みな変わりはない。
24:3 地は根こそぎ荒らされ、すっかり奪い尽くされる。主がそう語られたからだ。
24:4 地は嘆き、しおれていく。世界は力を失い、枯れていく。地の高ぶった人々も、力を失っていく。
24:5 地はそこに住む人々のせいで汚された。人々が律法を破り、定めを勝手に変え、永遠の契約を壊してしまったからだ。
24:6 だから、のろいが地をむさぼり食い、そこに住む人々は罪を負う。だから、地に住む人々は焼き尽くされ、生き残る者はごくわずかになる。
24:7 新しいぶどう酒は嘆き、ぶどうの木はしおれる。楽しんでいた人たちも、みなため息をつく。
24:8 タンバリンの陽気な音はやみ、はしゃぐ人々の騒ぎも消えた。竪琴の楽しい響きもやんでしまった。
24:9 もう歌いながらぶどう酒を飲むことはない。強い酒も、飲む者には苦く感じられる。
24:10 混乱の町は打ち壊された。どの家も閉ざされ、だれも入れない。
24:11 通りではぶどう酒を求めて叫ぶ声が上がる。喜びはすっかり暗くなり、地の楽しさは消え去った。
24:12 町に残されたのは荒れ果てた姿だけ。門は打ち砕かれ、がれきとなった。
24:13 地の真ん中で、人々のあいだで、こういうことが起こる。オリーブの木が打ち落とされたあとのように、ぶどうの収穫が終わったあとの取り残しのように、わずかしか残らない。
24:14 生き残った人たちは声をあげて喜び歌う。主の輝かしさをたたえ、海の向こうから歓声をあげる。
24:15 だから、東の国々で主をあがめよ。海沿いの島々で、イスラエルの神である主の名をたたえよ。
24:16 地の果てから、わたしたちは歌声を聞いた。「正しい方に栄光あれ」と。でも、わたしは言った。「もうだめだ、もうだめだ。ああ、なんてことだ。裏切る者たちが裏切り、裏切る者たちがひどく裏切っている。」
24:17 地に住むあなたに、恐怖と落とし穴とわなが迫っている。
24:18 恐怖の声から逃げる者は落とし穴に落ち、その穴からはい上がる者はわなにかかる。天の窓が開かれ、地の土台が揺れ動くからだ。
24:19 地は完全に砕け、地はばらばらに裂け、地は激しく揺れ動く。
24:20 地は酔っぱらいのようによろめき、小屋のように揺れる。その背きの罪が重くのしかかり、地は倒れて、二度と起き上がれない。
24:21 その日、主は天では天の軍勢を、地では地の王たちを罰する。
24:22 彼らは囚人のように穴に集められ、牢に閉じ込められる。そして長い年月ののち、罰を受ける。
24:23 月は恥じ入り、太陽は顔を伏せる。万軍の主がシオンの山とエルサレムで王となり、その民の長老たちの前に輝きをあらわすからだ。
25:1 主よ、あなたはわたしの神。わたしはあなたをあがめ、あなたの名をたたえます。あなたはすばらしいことをなさったからです。ずっと昔に立てた計画を、ゆるがない真実として成しとげてくださいました。
25:2 あなたは町をがれきの山に変え、城壁で守られた都をくずれ落ちた廃墟にしました。よそ者たちのとりでは、もう二度と建て直されることはありません。
25:3 だから、強い民があなたをたたえ、非情な国々の都があなたを恐れます。
25:4 あなたは弱い人の砦、貧しい人が苦しむときの砦となってくださいました。嵐からの避け所、暑さをしのぐ日かげとなってくださいました。非情な者たちの荒々しい息は、壁に打ちつける嵐のようだからです。
25:5 乾いた土地の暑さのように、あなたはよそ者たちの騒ぎをしずめます。雲の影が暑さをやわらげるように、非情な者たちの歌声はやみます。
25:6 そして万軍の主は、この山で、すべての民のために祝宴を開いてくださる。上等な肉と、よく澄んだ古い酒。あぶらの乗った肉と、こしてきれいにした極上の酒でもてなす宴だ。
25:7 この山で主は、すべての民をおおっているベール、すべての国々をつつんでいる覆いを取り除いてくださる。
25:8 主は死を永遠にのみ込んでなくしてしまう。神である主は、すべての顔から涙をぬぐい取り、ご自分の民の恥を、地の全体から取り去ってくださる。主がそう語られたのだ。
25:9 その日、人々は言う。「見よ、この方こそわたしたちの神だ。わたしたちはこの方を待ち望んできた。この方が救ってくださる。この方こそ主だ。わたしたちはこの方を待ち望んできた。その救いを、喜び楽しもう。」
25:10 主の御手はこの山にとどまる。しかしモアブは、わらが肥だめの中で踏みつぶされるように、その場で踏みにじられる。
25:11 泳ぐ人が泳ごうとして両手を広げるように、モアブはその中で手を広げる。だが主は、その両手のたくみさもろとも、モアブの高ぶりを引きずり下ろす。
25:12 あなたの高くそびえる城壁のとりでを、主は打ちくずし、地に投げ倒し、ちりの中にたたきつける。
26:1 その日、ユダの地でこの歌が歌われる。「わたしたちには堅固な町がある。主は救いを城壁とし、とりでとしてくださる。」
26:2 門を開け。真実を守る正しい国の民が、入って来られるように。
26:3 心をあなたに寄せて揺るがない者を、あなたは深い平安に保ってくださる。その人があなたに信頼しているからだ。
26:4 いつまでも主に信頼せよ。主こそ、とこしえの岩だから。
26:5 主は高い所に住む者を引きずり下ろし、そびえ立つ町を低くされる。それを地にまで低くし、ちりの中に投げ落とされる。
26:6 その町を足が踏みつける。貧しい人の足が、弱い人の歩みが。
26:7 正しい人の道はまっすぐだ。あなたは正しい人の歩む道を、平らにならしてくださる。
26:8 主よ、わたしたちはあなたの裁きの道を歩みながら、あなたを待ち望む。あなたの名を、あなたを心に留めることを、魂から慕っている。
26:9 夜、わたしの魂はあなたを慕い、わたしの内なる霊は朝早くあなたを求める。あなたの裁きが地に行われるとき、世界に住む人々は義を学ぶからだ。
26:10 悪人は情けをかけられても、義を学ばない。正しさの地にいてもなお不正を行い、主の威光を見ようとしない。
26:11 主よ、あなたの手は高く上げられているのに、彼らはそれを見ない。どうか彼らに見させ、あなたが民を思う熱意を知って恥じ入らせてください。あなたの敵を焼く火が、彼らを飲み尽くしますように。
26:12 主よ、あなたはわたしたちに平安を定めてくださる。わたしたちの働きのすべても、あなたが成し遂げてくださったのだから。
26:13 わたしたちの神、主よ。あなた以外の主人たちがわたしたちを支配してきた。でも、わたしたちがその名を呼ぶのは、ただあなただけだ。
26:14 彼らは死んでしまい、もう生きることはない。亡霊となって、二度と立ち上がらない。あなたが彼らを罰して滅ぼし、その記憶さえすべて消し去ったからだ。
26:15 主よ、あなたはこの国民を増やしてくださった。国民を増やし、あなた自身は栄光を受けられた。そして地の果てまで、その境を広げてくださった。
26:16 主よ、彼らは苦しみの中であなたを求めた。あなたの懲らしめが下ったとき、声をひそめて祈りをささげた。
26:17 身ごもった女が産む時が近づき、陣痛に苦しんで叫ぶように、主よ、わたしたちもあなたの前でそうだった。
26:18 わたしたちは身ごもり、苦しんだ。でも、生まれたのは風だけだった。この地に救いをもたらすこともできず、世界に住む人々を倒すこともできなかった。
26:19 あなたの民の死んだ者たちは生き返る。彼らのなきがらは立ち上がる。土の中に眠る者たちよ、目を覚まして喜び歌え。あなたの露は朝の光の露、地は死者たちを生き返らせる。
26:20 わたしの民よ、行きなさい。自分の部屋に入り、戸を閉じなさい。ほんのしばらくの間、身を隠していなさい。怒りが過ぎ去るまで。
26:21 見よ、主はその住まいから出て来られる。地に住む人々の罪を罰するためだ。地は流された血をあらわにし、殺された者たちをもう覆い隠すことはない。
27:1 その日、主は激しく大きく強い剣をふるって、逃げる蛇レビヤタンを、くねる蛇レビヤタンを罰し、海にいる竜を殺す。
27:2 その日には、こう歌え。「素晴らしいぶどう畑よ」と。
27:3 わたし、主がその畑を守る。絶えず水をやり、だれも傷つけないように、昼も夜も見張っている。
27:4 わたしはもう怒ってはいない。だれかがいばらや茨を戦いに持ち出すなら、わたしはそれに向かって進み、まとめて焼き払うのに。
27:5 それとも、わたしを頼みとするがいい。わたしと仲直りし、わたしと平和を結ぶがいい。
27:6 これから来る日々に、ヤコブは根を張り、イスラエルは芽を出して花を咲かせ、世界中を実りで満たす。
27:7 主はヤコブを打たれた。だが、ヤコブを打った敵を打たれたのと同じようにではない。ヤコブは殺された。だが、ヤコブを殺した敵が殺されたのと同じようにではない。
27:8 あなたは彼らを追い出し、追放して責められた。東風の日に、激しい風で彼らを吹き飛ばされた。
27:9 だから、これによってヤコブの罪は償われる。その罪が取り除かれる実は、すべてこうして現れる。ヤコブが祭壇の石をことごとく砕けた石灰石のようにし、偶像の柱も、香をたく祭壇も、二度と立たなくなるときに。
27:10 城壁に囲まれた町は寂しく取り残され、荒れ野のように捨てられ、見放される。そこでは子牛が草をはみ、そこで寝そべり、木の枝を食い尽くす。
27:11 枝が枯れると、折り取られる。女たちがやって来て、それを燃やす。この民には分別がないからだ。だから、彼らを造った方は彼らを憐れまず、彼らを形づくった方は恵みを示さない。
27:12 その日、主はユーフラテス川の流れからエジプトの谷川まで、穀物を打ち集めるように打たれる。イスラエルの子らよ、あなたがたは一人また一人と拾い集められる。
27:13 その日、大きな角笛が吹き鳴らされる。すると、アッシリアの地で滅びかけていた人々や、エジプトの地へ追い散らされていた人々が帰って来る。そしてエルサレムの聖なる山で、主を礼拝する。
28:1 ああ、エフライムの酔っぱらいたちの誇る冠。それは災いだ。彼らの輝かしい美しさは、しぼんでいく花にすぎない。それは、酒に打ちのめされた者たちが住む、豊かな谷を見おろす丘の上にある。
28:2 見よ、主のもとには、強く力ある者がいる。その者は、雹をともなう嵐のように、すべてを打ち砕く暴風のように、あふれ流れる大水のように、力ずくでこの地に投げ倒す。
28:3 エフライムの酔っぱらいたちの誇る冠は、足で踏みつけられる。
28:4 豊かな谷を見おろす丘の上にある、その輝かしい美しさは、しぼんでいく花のようになる。それは夏が来る前に熟した、いちじくの実のようだ。見つけた者は、それを目にするやいなや、手に取ってすぐに飲み込んでしまう。
28:5 その日、万軍の主ご自身が、生き残ったご自分の民にとって、輝かしい冠となり、美しい王冠となる。
28:6 裁きの座に着く者には正しく裁く霊となり、門で戦いを押し返す者たちには力となる。
28:7 しかし、この者たちもぶどう酒でふらつき、強い酒で足をとられている。祭司も預言者も強い酒でふらつき、ぶどう酒に飲み込まれ、強い酒で足をとられている。幻を見てもふらつき、裁きを下しても足もとがおぼつかない。
28:8 どの食卓も吐いた物と汚物で埋め尽くされ、きれいな場所などどこにもない。
28:9 「あの男はいったい誰に知識を教えようというのか。誰に語りかけて分からせるつもりなのか。乳離れしたばかりの子か。乳房を離れたばかりの子にでも言うつもりか。
28:10 だって、あの男の言うことは、命令に命令、命令に命令、規則に規則、規則に規則、あちらに少し、こちらに少しと、そればかりじゃないか。」
28:11 それならば、主はもつれた唇と外国のことばで、この民に語りかけられる。
28:12 かつて主は彼らにこう言われた。「これが安らぎの場所だ。疲れた者を休ませよ。これこそ憩いだ。」それなのに、彼らは聞こうとしなかった。
28:13 だから、主のことばは彼らにとって、「命令に命令、命令に命令、規則に規則、規則に規則、あちらに少し、こちらに少し」となる。それは、彼らが歩いて行って後ろ向きに倒れ、打ち砕かれ、罠にかかって捕らえられるためだ。
28:14 だから、主のことばを聞け。エルサレムにいるこの民を治める、あざける者たちよ。
28:15 あなたたちはこう言った。「わたしたちは死と契約を結んだ。死の国とも取り決めをした。荒れ狂う洪水のような災いが押し寄せても、わたしたちには届かない。うそを避け所とし、偽りの中に身を隠したのだから。」
28:16 だから、主なる神はこう言われる。「見よ、わたしはシオンに一つの石を据える。それは試された石、尊い隅の親石、揺るがない土台だ。これに信頼する者は、あわてることはない。」
28:17 わたしは公正を測り縄とし、義を下げ振りとする。雹はうその避け所を吹き払い、水は隠れ場を押し流す。
28:18 あなたたちが死と結んだ契約は取り消され、死の国と交わした取り決めは無効になる。荒れ狂う洪水のような災いが押し寄せるとき、あなたたちはそれに踏みにじられる。
28:19 それは押し寄せるたびに、あなたたちをさらっていく。朝ごとに、昼も夜も押し寄せる。この知らせを聞いて悟るのは、ただ恐怖だけだ。
28:20 寝床は短すぎて、体を伸ばせない。かける布は狭すぎて、身を包めない。
28:21 主はペラツィム山でのように立ち上がり、ギブオンの谷でのように怒りを燃やされる。ご自分の業を行うために——それは思いもよらない業。ご自分の働きをなすために——それは見慣れない働きだ。
28:22 だから今、あざけるのをやめよ。さもないと、あなたたちを縛る鎖はさらに固くなる。わたしは、全地に下される滅びの定めを、万軍の主なる神から聞いたのだ。
28:23 耳を傾けて、わたしの声を聞け。心を留めて、わたしのことばを聞け。
28:24 種をまくために、農夫は一日中畑を耕し続けるだろうか。土を掘り起こし、ならし続けるだろうか。
28:25 地面をならしたら、農夫は黒クミンをまき、クミンを散らすではないか。そして小麦を列に植え、大麦を決められた場所に、スペルト小麦を畑の縁にまく。
28:26 神が農夫に正しいやり方を教え、導いてくれるからだ。
28:27 黒クミンは打穀機で打つのではないし、クミンの上で車の車輪を回すのでもない。黒クミンは棒でたたき、クミンは杖でたたいて実を落とす。
28:28 パンにする穀物は砕かなければならない。でも、いつまでも打ち続けるわけではない。車の車輪を転がしても、馬に引かせても、粉々にすりつぶしてしまうことはない。
28:29 これもまた、万軍の主から出たことだ。主の立てる計画は驚くほどで、その知恵はすぐれている。
29:1 災いだ、アリエルよ、アリエルよ。ダビデが宿営した町よ。年に年を重ね、祭りを一巡りさせるがいい。
29:2 だが、わたしはアリエルを苦しめる。町は嘆きと悲しみに包まれ、わたしにとって祭壇の炉のようになる。
29:3 わたしはあなたのまわりに陣を敷いて取り囲み、とりでを築いて包囲し、あなたに向かって攻めの櫓を立てる。
29:4 あなたは低くされ、地の底から声を出す。あなたの言葉は、ちりの中からかすかに聞こえる。あなたの声は地から出る亡霊のようになり、あなたの言葉はちりの中からささやくように漏れる。
29:5 だが、あなたを襲う無数の敵は、細かなちりのようになる。あなたを苦しめる暴虐な者の群れは、吹き飛ばされるもみ殻のようになる。そしてそれは、あっという間に、突然に起こる。
29:6 万軍の主が、雷と地震と大きな響きとともに、あなたを訪れる。つむじ風と嵐、すべてを焼き尽くす炎とともに。
29:7 そして、アリエルに攻め寄せるすべての国々の群れ、彼女とその砦を攻め、彼女を苦しめるすべての者は、夜に見る幻の夢のように消えてしまう。
29:8 腹を空かせた者が、食べている夢を見ても、目を覚ませば空腹のまま。渇いた者が、飲んでいる夢を見ても、目を覚ませば、なお疲れ果て、喉はからからのまま。シオンの山に攻め寄せるすべての国々の群れも、そのようになる。
29:9 立ち止まって、ぼう然とせよ。目をふさいで、見えなくなれ。彼らは酔っているが、ぶどう酒のせいではない。よろめいているが、強い酒のせいではない。
29:10 主が、あなたがたの上に深い眠りの霊を注ぎ、あなたがたの目を閉じさせたからだ。主は預言者を、あなたがたの指導者である先見者を、すっぽりと覆ってしまわれた。
29:11 あなたがたにとって、すべての幻は封じられた書物の言葉のようになった。人々がそれを字の読める者に渡して「これを読んでくれ」と頼んでも、その人は「封じられているから読めない」と答える。
29:12 その書物を字の読めない者に渡して「これを読んでくれ」と頼んでも、その人は「わたしは字が読めない」と答える。
29:13 主は言われた。「この民は口先でわたしに近づき、唇でわたしを敬う。だが、その心はわたしから遠く離れている。彼らがわたしを恐れ敬うのは、人が教えた決まりごとにすぎない。
29:14 だから見よ、わたしは再びこの民に不思議なことを行う。驚くほど、驚くべきことを。こうして、知恵ある者の知恵は滅び、賢い者の分別は消え去る。」
29:15 わざわいだ。自分の計画を主から深く隠そうとする者たち。暗やみの中で事を行い、「だれがわたしたちを見ているのか。だれがわたしたちを知っているのか」と言う者たち。
29:16 あなたがたは、なんとさかさまなことを考えているのか。粘土が、それをこねる陶器師と同じに見なされてよいだろうか。造られた物が、それを造った者について「あの人はわたしを造らなかった」と言えるだろうか。形づくられた物が、それを形づくった者について「あの人は何もわかっていない」と言えるだろうか。
29:17 もうしばらくすれば、レバノンは豊かな畑に変わり、その豊かな畑は森のように生い茂る。そうではないか。
29:18 その日、耳の聞こえない者が書物の言葉を聞き、目の見えない者の目は、暗やみと闇の中からものを見るようになる。
29:19 苦しむ人たちは、主にあってますます喜び、貧しい人たちは、イスラエルの聖なる方によって心から喜ぶ。
29:20 横暴な者は消え去り、人をあざける者は絶え、悪だくみに励む者はみな断ち切られるからだ。
29:21 彼らは、一言のことで人を罪ある者に仕立て、町の門で正しく訴える者を罠にかけ、根拠もなく正しい人を退ける。そういう者たちだ。
29:22 だから、アブラハムを救い出した主は、ヤコブの家についてこう言われる。「今、ヤコブは恥をかくことはない。もうその顔が青ざめることもない。
29:23 自分たちのただ中に、わたしの手で造った子どもたちを見るとき、彼らはわたしの名を聖なるものとする。ヤコブの聖なる方を聖なるものとし、イスラエルの神を畏れ敬うようになる。
29:24 心の迷っていた者は悟りを得て、不平を言っていた者は教えを学ぶようになる。」
30:1 「反抗する子どもたちに、災いあれ」と主は言われる。「彼らは計画を立てるが、それはわたしから出たものではない。同盟を結ぶが、わたしの霊によるものではない。こうして、罪に罪を重ねていく。
30:2 彼らはわたしに尋ねもせず、エジプトへ下って行く。ファラオの力に頼り、エジプトの陰に身を寄せようとしている。
30:3 しかし、ファラオの力はあなたがたの恥となり、エジプトの陰に身を寄せることは、あなたがたの屈辱となる。
30:4 彼らの高官たちはツォアンにいて、使者たちはハネスまで行き着くが、
30:5 みな、何の役にも立たない民のせいで恥をかく。その民は助けにも益にもならず、ただ恥と辱めをもたらすだけだ。」
30:6 ネゲブの動物たちについての宣告。使者たちは、雌獅子や雄獅子、まむしや飛びかける蛇のいる、苦しみと悩みの地を通り、ろばの背に財宝を載せ、らくだのこぶに宝を積んで、何の役にも立たない民のもとへ運んで行く。
30:7 エジプトの助けはむなしく、何の役にも立たない。だから、わたしはエジプトを「じっと座ったままのラハブ」と呼んだ。
30:8 さあ、行って、このことを彼らの前で板に書き記し、巻物に刻みつけよ。それが、来るべき日のために、いつまでも消えない証しとして残るように。
30:9 彼らは逆らってばかりの民、偽りを言う子ら、主の教えを聞こうとしない子らだからだ。
30:10 彼らは、先を見通す者たちに「見るな」と言い、預言する者たちに「わたしたちに正しいことを語るな。耳ざわりのいいことを語り、まやかしでもいいから預言してくれ。
30:11 その道から離れ、進む先から外れてくれ。イスラエルの聖なる方のことは、もうわたしたちに聞かせないでくれ」と言う。
30:12 だから、イスラエルの聖なる方はこう言われる。「あなたたちはこの言葉を退け、しいたげと欺きに頼り、それにすがっている。
30:13 だから、この罪はあなたたちにとって、崩れ落ちようとする壁の裂け目のようになる。高い壁がふくらみ、その崩れは突然、一瞬のうちにやって来る。
30:14 その壁は、陶器師の器のように無残に打ち砕かれ、少しも惜しまれない。砕けた破片の中には、炉から火を取ったり、水ためから水をくんだりできるかけら一つ、残らない。」
30:15 イスラエルの聖なる方、主なる神はこう言われる。「立ち帰って落ち着いていれば、あなたたちは救われる。静かにして信頼することが、あなたたちの力となる。」だが、あなたたちはそれを望まなかった。
30:16 あなたたちは言った。「いや、わたしたちは馬に乗って逃げる。」だから、あなたたちは逃げることになる。「わたしたちは速い馬に乗る。」だから、あなたたちを追う者はもっと速い。
30:17 一人に脅されて千人が逃げ、五人に脅されてあなたたちは逃げる。ついには、山の頂の旗ざおのように、丘の上の旗のように、ぽつんと残されるだけだ。
30:18 それでも主は、あなたたちに恵みを与えようと待っておられる。あなたたちを憐れもうと立ち上がられる。主は正義の神だからだ。主を待ち望む人は、みな幸いだ。
30:19 シオンに住む民、エルサレムに住む人よ。あなたはもう泣かなくていい。主は、あなたの叫ぶ声を聞いて、必ず恵みを注いでくださる。その声を聞いたとき、答えてくださる。
30:20 主は、あなたたちに苦しみのパンと乏しい水を与えられるかもしれない。それでも、あなたを教える方は、もう身を隠さない。あなたはその目で、教える方をはっきり見る。
30:21 右に行くときも左に行くときも、あなたの耳は後ろから聞こえる声を聞く。「これが道だ。これを歩きなさい。」
30:22 そのとき、あなたは銀をかぶせた偶像も、金でおおった像も、汚れたものとして捨てる。それを汚れた布のように投げ捨て、「消え失せろ」と言う。
30:23 主は、あなたが畑にまく種のために雨を降らせ、その土地から実るパンを与えてくださる。それは豊かでよく実る。その日、あなたの家畜は広々とした牧草地で草を食べる。
30:24 土を耕す牛やろばは、シャベルと箕でふるい分けた、味つけした飼料を食べる。
30:25 塔が倒れ、多くの人が殺されるその日、すべての高い山、すべての丘の上に、水がわき、流れがあふれる。
30:26 主がその民の傷を包み、打たれた痛手をいやすその日、月の光は太陽の光のようになり、太陽の光は七倍になる。まるで七日分の光がひとつに集まったようだ。
30:27 見よ、主の名が遠くからやって来る。燃えるような怒りを帯び、立ちのぼる煙のように重い。その唇は激しい憤りに満ち、その舌は焼き尽くす火のようだ。
30:28 主の息は、首まで達してあふれる激流のように、もろもろの国を滅びのふるいにかける。もろもろの民の口には、迷わせる手綱がはめられる。
30:29 だがあなたたちは、聖なる祭りを祝う夜のように歌をうたう。笛を吹きながら主の山へ、イスラエルの岩のもとへ上っていく人のように、心から喜ぶ。
30:30 主はその威厳ある声を響かせ、振り下ろす腕を見せられる。激しい怒りと、焼き尽くす火の炎、豪雨と嵐と雹をともなって。
30:31 主の声を聞いて、アッシリアは打ち砕かれる。主はその杖でアッシリアを打たれる。
30:32 主がアッシリアの上に罰の杖を振り下ろすたびに、太鼓と竪琴の音が鳴り響く。主は腕を振り上げて、彼らと戦われる。
30:33 焼き場はずっと前から用意されている。それはあの王のために整えられ、深く広く掘られている。火と大量のたきぎが積まれ、主の息が硫黄の流れのようにそれを燃え上がらせる。
31:1 助けを求めてエジプトへ下って行く者たちは、災いだ。彼らは馬をあてにし、戦車の数が多いこと、騎兵の力がとても強いことに頼りきっている。だが、イスラエルの聖なる方に目を向けず、主を求めようともしない。
31:2 しかし主もまた知恵に満ちておられ、必ず災いをもたらす。ご自分の言葉を取り消すことはない。悪を行う者たちの家に立ち向かい、悪事を働く者たちを助ける勢力に立ち向かわれる。
31:3 エジプト人はただの人間であって、神ではない。彼らの馬も肉にすぎず、霊ではない。主が手を伸ばせば、助ける者はつまずき、助けられる者は倒れ、みな一緒に滅びてしまう。
31:4 主はわたしにこう言われた。獲物にうなる獅子や若い獅子のように——羊飼いたちが大勢呼び集められても、その声にひるまず、その騒ぎに気圧されることもない——そのように、万軍の主は下って来て、シオンの山とその丘のために戦われる。
31:5 羽ばたく鳥のように、万軍の主はエルサレムを守られる。守り、救い出し、越え過ぎて助け出される。
31:6 イスラエルの人々よ、あなたたちがひどく背き離れた方のもとへ、立ち返りなさい。
31:7 その日、人はみな、自分の手で造った銀の偶像や金の偶像を投げ捨てる。それは、あなたたちが罪を犯して造ったものだ。
31:8 アッシリアは剣に倒れる。でも、それは人の剣ではない。人間のものではない剣が、彼を飲み込む。彼は剣の前から逃げ出し、その若者たちは強制労働につかされる。
31:9 彼の岩の要塞は恐怖のあまり崩れ去り、その将軍たちは旗を見ておびえて逃げる。主はこう言われる。主の火はシオンにあり、その炉はエルサレムにある。
32:1 見よ、一人の王が義によって治め、支配者たちは公正をもって治める。
32:2 そして一人ひとりが、風を避ける隠れ場のようになる。嵐を防ぐ覆いのように、乾いた地を流れる水路のように、疲れきった地にある大きな岩の陰のようになる。
32:3 見る者の目はもう閉じられず、聞く者の耳はしっかりと聞き取る。
32:4 あわてる者の心は物事をわきまえて理解し、どもる者の舌ははっきりと語るようになる。
32:5 愚か者がもう高潔な人と呼ばれることはなく、ずるい者が立派な人と言われることもない。
32:6 愚か者は愚かなことを口にし、心の中で悪をたくらむからだ。神を無視したふるまいをし、主について的外れなことを語る。飢えた人の魂を空っぽのままにし、渇いた人から飲み水を取り上げる。
32:7 ずるい者はどうか。その手口は悪いことばかりだ。うそを並べて貧しい人を破滅させようとたくらみ、困っている人が正しく訴えても、それをつぶそうとする。
32:8 でも、高潔な人は高潔なことを考え、その高潔さによって立つ。
32:9 何の心配もなく暮らす女たちよ、立ち上がって、わたしの声を聞け。安心しきっている娘たちよ、わたしの言葉に耳を傾けよ。
32:10 一年とすこしで、安心しきっているあなたたちは震えあがる。ぶどうの収穫がだめになり、実りの取り入れがやってこないからだ。
32:11 何の心配もない女たちよ、おののけ。安心しきっている者たちよ、震えよ。着ているものを脱いで裸になり、腰に粗布をまとえ。
32:12 胸を打って嘆け。美しい畑のために、実り豊かなぶどうの木のために。
32:13 わたしの民の土地には、いばらとおどろが生い茂る。喜びに満ちた家々、浮かれ騒ぐ町のすべてに。
32:14 宮殿は見捨てられ、にぎやかだった町も置き去りにされる。丘とやぐらは、いつまでも荒れ果てた洞穴となり、野ろばの遊び場、羊の群れの牧場になる。
32:15 しかし、ついに高いところから霊がわたしたちに注がれる。そのとき、荒れ野は実り豊かな畑となり、その畑は森と見なされるほどになる。
32:16 公正が荒れ野に宿り、義が実り豊かな畑に住みつく。
32:17 義が生み出すものは平和であり、義が実らせるものは、いつまでも続く静けさと安心だ。
32:18 わたしの民は平和な住まいに、安心できる家に、静かに休める場所に住む。
32:19 森には雹が降って森は倒れ、町は低く沈められる。
32:20 でも、あなたたちは幸いだ。すべての水辺に種をまき、牛やろばを自由に放って歩かせる人たちよ。
33:1 ああ、あなたには災いが来る。人から奪っても、自分は奪われたことのない者。人を裏切っても、裏切られたことのない者よ。あなたが奪い尽くしたとき、あなたも奪われる。あなたが裏切り終えたとき、あなたも裏切られる。
33:2 主よ、わたしたちを憐れんでください。わたしたちはあなたを待ち望んできました。朝ごとにわたしたちの力の腕となり、苦しみのときの救いとなってください。
33:3 とどろく声を前に、人々は逃げ去った。あなたが立ち上がると、国々は散り散りになった。
33:4 そしてあなたたちの分捕り物は、いなごが食いつくすように集められる。ばったが群がって襲うように、人々がそれに群がる。
33:5 主は高く上げられている。高い所に住んでおられるからだ。主はシオンを公正と義で満たしてくださった。
33:6 主は、あなたの生きる時代を支える確かな土台となり、救いと知恵と知識を豊かに与えてくださる。主を畏れること、それこそがあなたの宝だ。
33:7 見よ、勇士たちが外で叫んでいる。平和を求める使者たちが、激しく泣いている。
33:8 街道は荒れ果て、道を行く人もいなくなった。契約は破られ、町々は見捨てられ、人は誰ひとり大事にされない。
33:9 地は嘆き、しおれていく。レバノンは恥じて枯れ果てた。シャロンは荒れ野のようになり、バシャンとカルメルは葉を振り落とす。
33:10 「今こそ、わたしは立ち上がる」と主は言われる。「今こそ、わたしは高く上げられ、あがめられる。」
33:11 あなたたちがはらむのはもみ殻、産み出すのはわらくずだ。あなたたちの息は火となって、自分自身を焼き尽くす。
33:12 もろもろの民は焼かれて石灰のようになる。切り取られたいばらのように、火で焼き払われるのだ。
33:13 遠くにいる者よ、わたしがしたことを聞け。近くにいる者よ、わたしの力を知れ。
33:14 シオンにいる罪人たちはおびえ、神を無視する者たちは震えあがる。「わたしたちのうち、誰が焼き尽くす火のそばで生きられるのか。誰が永遠に燃え続ける炎のそばで生きられるのか。」
33:15 正しく歩み、まっすぐに語る者。人をしいたげて得た利益を退け、わいろを受け取るまいと手を振り払う者。人殺しの相談に耳をふさぎ、悪を見まいと目を閉じる者。
33:16 そういう人は高い所に住む。岩の砦がその隠れ家となる。パンは与えられ、水も絶えることがない。
33:17 あなたの目は、美しい姿の王を見る。はるか遠くまで広がる地を見渡すのだ。
33:18 あなたの心は、かつての恐怖を思い返す。「あの書記官はどこにいる。貢ぎ物を量った者はどこにいる。塔を数えた者はどこにいる。」
33:19 あの横暴な民を、あなたはもう見ることはない。聞き取れないほど難しい言葉を話す民、意味のわからない、なまりのある言葉を話す民を、見ることはない。
33:20 シオンを見よ。わたしたちが祭りに集まる町を。あなたの目は、エルサレムを見る。そこは安らかな住まい、決して動かされることのない天幕だ。その杭は永遠に抜かれず、その綱は一本も切れることがない。
33:21 そこでこそ、主は威光を帯びて、わたしたちとともにいてくださる。そこは幅の広い川と流れのある場所となる。だが、そこを櫂の舟が行くことはなく、大きな船も通ることはない。
33:22 主はわたしたちを裁く方。主はわたしたちに掟を定める方。主はわたしたちの王。この方こそ、わたしたちを救ってくださる。
33:23 敵の船の綱はゆるみ、帆柱を支えることも、帆を張ることもできない。そのとき、山のような分捕り物が分けられ、足の不自由な者までもが略奪の品を運び去る。
33:24 そこに住む者は、もう「わたしは病んでいる」とは言わない。そこに住む民は、その罪を赦されるのだ。
34:1 諸国の民よ、近づいて聞け。国々よ、耳を傾けよ。地と、それを満たすすべてのものよ、聞け。世界と、そこから生まれるすべてのものよ、聞け。
34:2 主はすべての国々に怒り、そのすべての軍勢に激しく憤っておられる。主は彼らを滅びに定め、虐殺に引き渡された。
34:3 殺された者は投げ捨てられ、その死体からは悪臭が立ちのぼる。山々は彼らの血で溶けて流れる。
34:4 天の万象は朽ち果て、天は巻物のように巻き取られる。天の万象はすべて枯れ落ちる。ぶどうの木から葉が枯れ落ちるように、いちじくの実がしなびて落ちるように。
34:5 わたしの剣は、天で存分に血を飲んだ。見よ、それはエドムの上に、わたしが滅びに定めた民の上に、裁きのために下る。
34:6 主の剣は血に満ち、脂で潤う。子羊と雄やぎの血、雄羊の腎臓の脂で潤う。主がボツラでいけにえをささげ、エドムの地で大いなる虐殺を行われるからだ。
34:7 野牛も彼らと共に倒れ、若い雄牛も強い雄牛と共に倒れる。その地は血を吸ってびしょ濡れになり、土は脂でこってりと潤う。
34:8 これは主が復讐を果たす日だ。シオンの訴えに報いを返す年だ。
34:9 エドムの川は溶けたタールに変わり、土は硫黄に変わる。その地は燃えさかるタールとなる。
34:10 その火は夜も昼も消えることがなく、煙はいつまでも立ちのぼる。その地は代々にわたって荒れ果て、そこを通り過ぎる者は永遠にいなくなる。
34:11 そこはペリカンやはりねずみのすみかとなり、ふくろうやからすが住みつく。主はその地に、混沌をはかる測りなわと、むなしさのおもりを張りめぐらされる。
34:12 王として立てる高貴な者は一人もおらず、君主たちもみな消え去る。
34:13 その宮殿にはいばらが生い茂り、砦にはあざみやとげのある雑草がはびこる。そこはジャッカルのすみかとなり、だちょうの住む場所となる。
34:14 荒野の獣と山犬が出くわし、野やぎは仲間を呼び合う。夜の魔物もそこにすみつき、休む場所を見つける。
34:15 そこにふくろうが巣を作って卵を産み、かえした雛を羽の陰に集める。とびもそこに、それぞれの相手と共に集まる。
34:16 主の書物をよく調べて読んでみよ。これらのうち一匹も欠けることはなく、どれも相手を失うことはない。主ご自身の口がこれを命じ、その霊がこれらを集めたからだ。
34:17 主は自らくじを引いてその地を彼らに割り当て、御手が測りなわで分け与えられた。彼らは永遠にその地を受け継ぎ、代々にわたってそこに住みつく。
35:1 荒れ野も、かわいた地も喜ぶ。砂漠は喜びおどり、花を咲かせる。サフランのように咲きほこる。
35:2 花はいっぱいに咲き、喜びおどり、大きな声で歌い、喜ぶ。レバノンのみごとさが、この地に与えられる。カルメルとシャロンの美しさも。人々は主の栄光を、わたしたちの神のみごとさを見る。
35:3 力を失った手を強くしなさい。がくがくする膝をしっかりさせなさい。
35:4 おびえている人たちに言いなさい。「強くありなさい。こわがることはない。見なさい、あなたたちの神が来る。悪に仕返しをし、報いを与えるために来る。神が来て、あなたたちを救ってくれる。」
35:5 そのとき、目の見えない人の目が開き、耳の聞こえない人の耳が開く。
35:6 そのとき、足の不自由な人は鹿のようにとびはね、口のきけない人は喜びの声をあげる。荒れ野に水がわき出し、砂漠に川が流れるからだ。
35:7 焼けつく砂地は池となり、かわいた地は水のわく泉となる。ジャッカルがすんでいた場所には、葦やパピルスがしげる草原ができる。
35:8 そこには広い道が通る。それは「聖なる道」と呼ばれる。汚れた者はそこを通れない。この道は、主のものとされた人たちのためのものだ。この道を歩けば、愚かな者でも迷うことはない。
35:9 そこにはライオンもいない。おそろしい獣も上がってこないし、見あたることもない。ただ、あがなわれた人たちがそこを歩く。
35:10 主に買いもどされた人たちは帰ってくる。喜びの歌をうたいながらシオンにやって来る。その頭には、いつまでも消えない喜びがある。喜びと楽しみがその人たちを満たし、悲しみと嘆きは消えていく。
36:1 ヒゼキヤ王の第十四年、アッシリアの王センナケリブがユダの城壁のある町々すべてに攻め上り、それらを占領した。
36:2 アッシリアの王は、大軍とともにラブ・シャケをラキシュからエルサレムのヒゼキヤ王のもとに送った。ラブ・シャケは、布をさらす畑へ通じる道沿いにある、上の池の水路のそばに立った。
36:3 すると、宮廷をつかさどるヒルキヤの子エルヤキム、書記官シェブナ、記録官であるアサフの子ヨアが、彼のところに出て行った。
36:4 ラブ・シャケは彼らに言った。「ヒゼキヤにこう伝えよ。偉大な王、アッシリアの王がこう言われる。『お前がそんなに頼りにしているものは、いったい何なのか。
36:5 お前は「戦いには作戦も力もある」と言うが、そんなものはただの口先だけの言葉だ。今、お前はいったい誰を頼りにして、わたしに反逆したのか。
36:6 そう、お前が頼りにしているのは、あの折れかけた葦の杖、エジプトだ。人がそれに寄りかかれば、手に刺さって突き抜けてしまう。エジプトの王ファラオは、頼りにする者すべてにとって、まさにそういうものだ。
36:7 それとも、お前は「わたしたちは自分たちの神、主を頼りにしている」と言うのか。だが、その主こそ、ヒゼキヤが高台の聖所や祭壇を取り除き、ユダとエルサレムの人々に「この祭壇の前でひれ伏して礼拝せよ」と命じたときの、その神ではないか。
36:8 さあ、今度はわたしの主人であるアッシリアの王と賭けをしてみろ。もしお前に乗り手をそろえられるなら、馬を二千頭くれてやろう。
36:9 それだけの力もないお前が、どうしてわたしの主人の家来の中でいちばん下っ端の隊長ひとりさえ、追い返せるだろうか。それなのにお前は、戦車や騎兵をエジプトに頼ろうとしている。
36:10 そもそも、わたしが主の許しもなくこの地を滅ぼそうと攻め上ってきたと思うのか。主ご自身がわたしに、「この地に攻め上って、それを滅ぼせ」と言われたのだ。』」
36:11 すると、エルヤキムとシェブナとヨアはラブ・シャケに言った。「どうか、わたしたちにはアラム語で話してください。わたしたちはそれが分かります。城壁の上にいる民に聞こえるように、ユダの言葉で話さないでください。」
36:12 しかしラブ・シャケは言った。「わたしの主人がわたしを送って、このことを話させたのは、お前の主人やお前だけに向けてだと思うのか。城壁の上に座っている、あの人々にも聞かせるためだ。彼らはお前たちと一緒に、自分の糞を食べ、自分の小便を飲むことになるのだから。」
36:13 そしてラブ・シャケは立ち上がり、ユダの言葉で大声で叫んだ。「偉大な王、アッシリアの王の言葉を聞け。
36:14 王はこう言っている。『ヒゼキヤにだまされるな。彼はお前たちを救い出すことなどできない。
36:15 ヒゼキヤの「主が必ず救ってくださる。この町がアッシリアの王の手に渡ることはない」という言葉を信じて、主に頼るな。』
36:16 ヒゼキヤの言うことを聞くな。アッシリアの王はこう言っている。『わたしと和解して、降参して出てこい。そうすれば、みんな自分のぶどうやいちじくを食べ、自分の井戸の水を飲むことができる。
36:17 やがてわたしが来て、お前たちを、自分の国のような土地へ連れて行こう。穀物とぶどう酒の実る土地、パンとぶどう畑のある土地へ。
36:18 ヒゼキヤが「主が救ってくださる」と言って、お前たちを惑わすことのないようにしろ。国々の神々のうち、自分の国をアッシリアの王の手から救い出した者がいたか。
36:19 ハマトやアルパドの神々はどこにいる。セファルワイムの神々はどこにいる。彼らはサマリアをわたしの手から救い出しただろうか。
36:20 これらの国々のすべての神々のうち、どの神が自分の国をわたしの手から救い出したというのか。それなのに、主がエルサレムをわたしの手から救い出せるとでもいうのか。』」
36:21 しかし人々は黙ったまま、一言も答えなかった。「彼に答えるな」という王の命令があったからだ。
36:22 そして、宮廷をつかさどるヒルキヤの子エルヤキム、書記官シェブナ、記録官アサフの子ヨアは、衣を引き裂いてヒゼキヤのもとに戻り、ラブ・シャケの言葉を彼に伝えた。
37:1 これを聞いたヒゼキヤ王は、自分の服を引き裂き、粗布を身にまとって、主の神殿に入った。
37:2 そして、宮廷をあずかるエルヤキム、書記官シェブナ、それに祭司たちの長老を、みな粗布をまとった姿で、アモツの子である預言者イザヤのもとへ送った。
37:3 彼らはイザヤにこう伝えた。「ヒゼキヤさまがこう言っておられます。『今日は苦しみと叱責と辱めの日だ。子どもが今にも生まれようとしているのに、産み出す力がない、そんな日だ。
37:4 あなたの神である主が、あの側近ラブ・シャケの言葉を聞いてくださるかもしれない。彼はアッシリアの王に遣わされ、生きておられる神をののしろうとしている。あなたの神である主がその言葉を聞いて、とがめてくださるかもしれない。だから、生き残っている者たちのために祈ってほしい。』」
37:5 こうして、ヒゼキヤ王の家来たちがイザヤのところにやって来た。
37:6 イザヤは彼らに言った。「あなたたちの主人にこう伝えなさい。主はこう言われる。『あなたが聞いた言葉を恐れるな。アッシリアの王の家来たちが、それでわたしをののしったのだ。
37:7 見よ、わたしは彼のうちに一つの霊を送り込む。すると彼はある知らせを聞いて、自分の国へ帰る。そしてわたしは、その国で彼を剣に倒れさせる。』」
37:8 ラブ・シャケは引き返し、アッシリアの王がリブナを攻めているところに着いた。王がラキシュをすでに引き払ったと聞いたからだ。
37:9 ところが王は、クシュの王ティルハカについて、「あなたと戦うために出て来た」という知らせを聞いた。それを聞くと、王はヒゼキヤのもとに使者を送って、こう言わせた。
37:10 「ユダの王ヒゼキヤにこう伝えよ。『あなたが頼りにしている神が、〈エルサレムはアッシリアの王の手に渡されない〉と言って、あなたをだますことのないようにせよ。
37:11 見よ、アッシリアの王たちがすべての国々を滅ぼし尽くしたことを、あなたも聞いているだろう。それなのに、あなただけが助かるというのか。
37:12 わたしの先祖たちが滅ぼした国々を、その神々は救い出しただろうか。ゴザン、ハラン、レツェフ、それにテラサルにいたエデンの人々を。
37:13 ハマトの王、アルパドの王、セファルワイムの町の王、そしてヘナやイワの王は、今どこにいるのか。』」
37:14 ヒゼキヤは使者たちの手からその手紙を受け取り、それを読んだ。そして主の神殿に上り、手紙を主の前に広げた。
37:15 ヒゼキヤは主にこう祈った。
37:16 「ケルビムの上に座しておられる、イスラエルの神、万軍の主よ。あなただけが、地上のすべての国々を治めるただひとりの神です。あなたが天と地を造られました。
37:17 主よ、耳を傾けて聞いてください。主よ、目を開いて見てください。生きておられる神をあざけるために送られた、センナケリブのすべての言葉を聞いてください。
37:18 主よ、確かにアッシリアの王たちは、すべての国々とその土地を滅ぼし、
37:19 その神々を火の中に投げ込みました。でも、それらは神ではなく、木や石でできた、人の手が造ったものにすぎません。だから滅ぼされたのです。
37:20 わたしたちの神、主よ、今どうか、わたしたちを彼の手から救ってください。そうすれば、地上のすべての国々は、あなただけが主であることを知るでしょう。」
37:21 すると、アモツの子イザヤはヒゼキヤのもとに人を送って、こう伝えた。「イスラエルの神、主はこう言われる。あなたはアッシリアの王センナケリブのことで、わたしに祈った。
37:22 だから、主が彼について語られた言葉はこうだ。『おとめであるシオンの娘は、あなたを見下し、あざ笑う。エルサレムの娘は、あなたの背後で頭を振る。
37:23 あなたは、いったい誰をののしり、けなしたのか。誰に向かって声を張り上げ、高慢に目を上げたのか。それはイスラエルの聖なる方に向かってだ。
37:24 あなたは家来たちを使って主をののしり、こう言った。『わたしはたくさんの戦車を率いて、山々の高みに登り、レバノンの奥深くまで行った。その一番高い杉を切り倒し、選りすぐりのいとすぎを切り倒す。わたしはその果ての高みに、一番茂った森に踏み入る。』
37:25 わたしは井戸を掘って、水を飲んだ。足の裏で、エジプトのすべての川を踏んで干上がらせた。』
37:26 あなたは聞いたことがないのか。わたしがずっと昔にこれを定め、大昔からこう計画していたことを。そして今、それをそのとおりにした。だからあなたは、堅固な城壁の町々を、石くれの山に変えることになったのだ。
37:27 そこに住む人々は力を失い、おびえて恥をかいた。彼らは野の草や、若い緑の芽のようなもの。屋根に生えた草や、伸びる前に枯れてしまう作物のようなものだ。
37:28 あなたが座るのも、出て行くのも、帰って来るのも、わたしは知っている。あなたがわたしに向かっていきり立っていることも、みんな知っている。
37:29 あなたがわたしに向かっていきり立ち、思い上がった言葉がわたしの耳に届いた。だからわたしは、あなたの鼻に輪をかけ、口にくつわをはめて、来た道を引き返させる。
37:30 ヒゼキヤよ、あなたへのしるしはこうだ。今年は自然に生えたものを食べ、二年目もそこから生えたものを食べる。そして三年目には、種をまいて刈り取り、ぶどう畑を作ってその実を食べるようになる。
37:31 ユダの家で生き残り、逃げのびた者たちは、また下に根を張り、上に実を結ぶ。
37:32 生き残った者はエルサレムから、逃げのびた者はシオンの山から出て来る。万軍の主の熱い思いが、これをなし遂げるのだ。
37:33 だから、主はアッシリアの王についてこう言われる。彼はこの町に入って来ない。ここに矢を射ることもない。盾を持って攻めることも、土手を築いて囲むこともない。
37:34 彼は来た道をそのまま引き返し、この町には入って来ない、と主は言われる。
37:35 わたしはこの町を守り、救い出す。それはわたし自身のため、そしてわたしのしもべダビデのためだ。」
37:36 それから主の使いが出て行き、アッシリアの陣営で十八万五千人を打ち倒した。人々が朝早く起きてみると、そこにはみんな死体が横たわっていた。
37:37 アッシリアの王センナケリブは陣を引き払って帰って行き、ニネベにとどまった。
37:38 ある日、センナケリブが自分の神ニスロクの神殿で礼拝していると、息子のアドラメレクとサルエツェルが剣で彼を打ち殺した。二人はアララトの地へ逃げ、代わりに息子のエサル・ハドンが王となった。
38:1 そのころ、ヒゼキヤは病気になり、死にかけていた。預言者アモツの子イザヤが彼のもとに来て、こう言った。「主はこう言われます。家のことを整えておきなさい。あなたは死ぬ。もう治らない。」
38:2 するとヒゼキヤは壁の方に顔を向け、主に祈った。
38:3 「ああ主よ、どうか思い出してください。わたしがまごころを尽くし、正直にあなたの前を歩んできたこと、そしてあなたの目に良いと見えることを行ってきたことを。」そう言って、ヒゼキヤは激しく泣いた。
38:4 すると、主の言葉がイザヤに臨んだ。
38:5 「行って、ヒゼキヤにこう伝えなさい。『あなたの父祖ダビデの神、主はこう言われる。わたしはあなたの祈りを聞き、あなたの涙を見た。だから、あなたの寿命に十五年を加えよう。
38:6 そして、あなたとこの町をアッシリアの王の手から助け出す。わたしがこの町を守る。』」
38:7 「これが、主があなたに与えるしるしだ。主は、約束したこのことを必ず実現される。
38:8 見なさい。アハズの階段に落ちて進んでいた日時計の影を、わたしは十段あと戻りさせる。」すると太陽は、すでに降りていた十段分だけ、階段をあと戻りした。
38:9 ユダの王ヒゼキヤが病気になり、そこから回復したときに書いた詩。
38:10 わたしは言った。「人生の半ばで、わたしは断ち切られるのか。残りの年月を奪われて、死の国の門をくぐるのか」と。
38:11 わたしは言った。「わたしはもう、生きている者の地で主を見ることはない。この世に住む人々とともに、人を見ることも二度とない」と。
38:12 わたしの命は、羊飼いの天幕のように畳まれ、引き抜かれて、わたしから去っていく。わたしは機を織る者のように、自分の命を巻き取った。主はわたしを機から断ち切られる。朝から夜までのうちに、あなたはわたしを終わらせる。
38:13 わたしは朝まで叫び続けた。獅子のように、主はわたしの骨をことごとく砕く。朝から夜までのうちに、あなたはわたしを終わらせる。
38:14 わたしは、つばめや鶴のように鳴き、鳩のようにうめいた。天を見上げて、わたしの目は弱りきった。主よ、わたしは苦しめられています。どうか、わたしの保証人となってください。
38:15 何を言えばいいのか。主はわたしに語り、そのとおりにされた。わたしは魂の苦しみを抱えて、生きるかぎりへりくだって歩もう。
38:16 主よ、人はこうしたことによって生き、わたしの霊もそのすべてによって生きます。どうか、わたしを癒やし、生かしてください。
38:17 見なさい。わたしが味わった激しい苦しみは、実はわたしの平安のためだった。あなたはわたしの魂を愛し、滅びの穴から救い出してくださった。わたしのすべての罪を、あなたの背後に投げ捨ててくださったからだ。
38:18 死の国はあなたに感謝せず、死はあなたを賛美できない。墓穴に下る者たちは、あなたの真実を望むことができない。
38:19 生きている者、生きている者こそ、今日のわたしのように、あなたに感謝する。父は子どもたちに、あなたの真実を伝えていく。
38:20 主はわたしを救ってくださる。だからわたしたちは、生きているかぎり、主の宮で弦の楽器に合わせて、わたしの歌を歌おう。
38:21 イザヤはこう言っていた。「いちじくの塊を持ってきて、腫れ物に塗りなさい。そうすれば、王は治る。」
38:22 またヒゼキヤはこう言っていた。「わたしが主の宮に上れるという、しるしは何だろうか。」
39:1 そのころ、バビロンの王で、バルアダンの子であるメロダク・バルアダンが、ヒゼキヤに手紙と贈り物を送ってきた。ヒゼキヤが病気になり、そして回復したと聞いたからだ。
39:2 ヒゼキヤは彼らを喜んで迎え、宝物の蔵を見せた。銀や金、香料や上等の油、武器の蔵のすべて、そして倉庫にあるすべてを見せた。宮殿でも、治めている領地のどこでも、ヒゼキヤが彼らに見せなかったものは一つもなかった。
39:3 すると預言者イザヤがヒゼキヤ王のところに来て、こう言った。「あの人たちは何と言いましたか。どこから来たのですか。」ヒゼキヤは答えた。「遠い国から、バビロンから来たのだ。」
39:4 イザヤは言った。「あなたの家で、彼らは何を見たのですか。」ヒゼキヤは答えた。「わたしの家にあるものは、すべて見た。倉庫の中で、彼らに見せなかったものは一つもない。」
39:5 イザヤはヒゼキヤに言った。「万軍の主の言葉を聞きなさい。
39:6 見なさい。こういう日が来る。あなたの家にあるすべてのもの、そして先祖が今日まで蓄えてきたものが、バビロンに運び去られる。何一つ残らない、と主は言われる。
39:7 あなたから生まれる息子たち、あなたがもうける子たちのうち、何人かは連れ去られ、バビロンの王の宮殿で宦官となる。」
39:8 ヒゼキヤはイザヤに言った。「あなたが語ってくれた主の言葉は、良いものだ。」そして、こう思った。「わたしが生きている間は、平和と安定が続くのだから。」
40:1 「慰めよ、わたしの民を慰めよ」と、あなたたちの神は言われる。
40:2 エルサレムに優しく語りかけ、こう呼びかけなさい。その苦しみの務めは終わった。その罪は償われた。すべての罪のために、主の手から二倍のものを受けたのだ、と。
40:3 呼びかける声がする。「荒れ野に、主の道を備えよ。荒れ地に、わたしたちの神のために、まっすぐな大路を通せ。
40:4 すべての谷は高くされ、すべての山と丘は低くされる。でこぼこの地は平らになり、険しい地は平野になる。
40:5 こうして主の栄光が現れ、すべての人が共にそれを見る。主の口が語られたのだ。」
40:6 「叫べ」と言う声がする。わたしは言った。「何を叫べばいいのか。」人はみな草のようだ。その美しさはみな、野の花のようなもの。
40:7 草は枯れ、花はしぼむ。主の息が吹きつけるからだ。確かに、人は草にすぎない。
40:8 草は枯れ、花はしぼむ。でも、わたしたちの神の言葉は、いつまでも変わらずに立ち続ける。
40:9 高い山に登れ、良い知らせを伝えるシオンよ。力いっぱい声をあげろ、良い知らせを伝えるエルサレムよ。声をあげて、恐れるな。ユダの町々に言え。「見よ、あなたたちの神を。」
40:10 見よ、主なる神は力を帯びて来られる。その腕で世界を治める。見よ、報いを携え、その働きの報酬を先立てて来られる。
40:11 羊飼いが群れを飼うように、主は民を養う。その腕で子羊を集め、ふところに抱いて運び、乳を飲ませる母羊をやさしく導く。
40:12 だれが手のくぼみで海の水を量り、手の幅で天を測ったのか。だれが地のちりを升で量り、山を秤にかけ、丘を天秤で量ったのか。
40:13 だれが主の霊を測り、その相談相手として主に教えたのか。
40:14 主はだれと相談して、悟りを得たのか。だれが主に正しい道を教え、知識を授け、分別の道を示したというのか。
40:15 見よ、国々は手桶からしたたる一滴のよう。秤の上のちりのように見なされる。見よ、主は島々を細かな粉のように持ち上げる。
40:16 レバノンの森も、たきぎには足りない。そこにいる獣も、焼き尽くすいけにえには足りない。
40:17 すべての国々は、主の前では無いに等しい。主にとっては、無よりも小さく、むなしいものと見なされる。
40:18 それなら、あなたたちは神をだれになぞらえるのか。どんな姿と比べられるというのか。
40:19 偶像を見てみよ。職人がそれを鋳て造り、金細工師が金でそれをおおい、銀の鎖を鍛えてつける。
40:20 そんな供え物すら出せない貧しい人は、腐らない木を選ぶ。そして腕のいい職人を探し、倒れない偶像を立ててもらうのだ。
40:21 あなたたちは知らないのか。聞いていないのか。初めから告げられていなかったのか。地の基が置かれたときから、悟らなかったのか。
40:22 主は地の大空の上に座しておられる。そこに住む人々は、主の目にはバッタのように小さい。主は天を薄い布のように広げ、住むための天幕のように張られる。
40:23 主は君主たちを無に帰し、地を治める者たちをむなしいものとされる。
40:24 彼らは植えられたばかり、種をまかれたばかりで、その幹はまだ地に根を張ってもいない。そこへ主が息を吹きかけると、彼らは枯れてしまう。嵐がわらのように彼らを吹き飛ばす。
40:25 「あなたたちは、わたしをだれになぞらえ、だれと等しいものとするのか」と、聖なる方は言われる。
40:26 目を高く上げて見よ。だれがこれらを創造したのか。主は星々の群れを数えて導き出し、そのすべてを名で呼ばれる。その力は強く、その勢いは大きく、一つも欠けることがない。
40:27 ヤコブよ、なぜこう言うのか。イスラエルよ、なぜこう語るのか。「わたしの歩む道は主に隠れていて見えない。わたしの受けるべき正しい扱いは、神に見過ごされている」と。
40:28 あなたは知らないのか。聞いていないのか。主は永遠の神、地の果てまでを創造された方。疲れることも、弱ることもない。その知恵は、はかり知れないほど深い。
40:29 主は疲れた者に力を与え、弱り果てた者に、あふれるほどの勢いを与えてくださる。
40:30 若者も疲れて弱り、たくましい青年もつまずいて倒れる。
40:31 でも、主を待ち望む人は、新しい力がわいてくる。ワシのように翼を広げて舞い上がり、走っても疲れず、歩いても弱ることがない。
41:1 島々よ、黙ってわたしの前に来なさい。国々の民よ、力を新たにせよ。近くに来て、話すがいい。さあ、いっしょに裁きの場に出よう。
41:2 だれが東から一人の者を呼び起こしたのか。義をもって彼を招き、その足もとに従わせた。だれが彼の前に国々を渡し、王たちを踏みつけさせたのか。彼の剣は敵をちりのようにし、彼の弓は敵を吹き飛ばされるわらのようにする。
41:3 彼は敵を追いかけ、まだ足を踏み入れたことのない道を、無事に進んで行く。
41:4 だれがこれをなしとげたのか。だれが初めから代々の人々を呼び出してきたのか。それは主であるわたし。わたしは初めであり、終わりに至るまで、わたしは変わらない。
41:5 島々はそれを見ておそれ、地の果てに住む人々はふるえ上がった。彼らは近づいて、集まって来る。
41:6 たがいに助け合い、仲間に「しっかりしろ」と声をかける。
41:7 職人は金細工師を励まし、金づちでならす者は、金床を打つ者を励ます。「継ぎ目はよくできた」と言い、像がぐらつかないように、くぎでしっかり打ちつける。
41:8 けれども、わたしのしもべイスラエルよ、わたしが選んだヤコブよ、わたしの友アブラハムの子孫よ。
41:9 わたしはあなたを地の果てからつかみ取り、その隅々から呼び出して、こう言った。「あなたはわたしのしもべだ。わたしはあなたを選んだ。決して見捨てはしない。」
41:10 おそれるな。わたしはあなたとともにいる。おびえるな。わたしはあなたの神だから。わたしはあなたを強くし、あなたを助け、正しいわたしの右の手であなたをしっかり支える。
41:11 見よ。あなたに怒りを燃やす者はみな、恥を受けてはずかしめられる。あなたと争う者は、消えてなくなり、滅びていく。
41:12 あなたと言い争う者を探しても、もう見つからない。あなたと戦う者は、まるでなかったかのように、跡形もなく消えてしまう。
41:13 わたしは主、あなたの神。わたしがあなたの右手をしっかりつかんで、こう言う。おそれるな。わたしがあなたを助ける。
41:14 おそれるな、虫けらのようなヤコブよ。少ない数のイスラエルの人々よ。わたしがあなたを助ける、と主は言われる。あなたを買い戻す者、それはイスラエルの聖なる方だ。
41:15 見よ。わたしはあなたを、鋭い歯のついた新しい脱穀の道具にする。あなたは山々を打ってこなごなにし、丘をもみがらのようにしてしまう。
41:16 あなたがそれをあおぐと、風が運び去り、つむじ風が吹き散らす。でもあなたは主を喜び、イスラエルの聖なる方を誇りにする。
41:17 苦しむ人、貧しい人が、水を求めても見つからず、のどが渇いて舌が干からびる。そのとき、わたし主が彼らに答える。イスラエルの神であるわたしは、彼らを見捨てない。
41:18 わたしは裸の丘に川を開き、谷の真ん中に泉をわかせる。荒れ野を水のたまる池に変え、かわいた地を水のわく所にする。
41:19 わたしは荒れ野に、杉やアカシア、ミルトスやオリーブの木を植える。荒れ地に、いとすぎや、もみ、つげの木をいっしょに生えさせる。
41:20 それはみんなが見て、知って、心にとめ、そして悟るためだ。これをしたのは主の手であり、イスラエルの聖なる方がこれを創造したのだと。
41:21 「あなたたちの訴えを持ち出してみよ」と主は言われる。「あなたたちの証拠を出してみよ」とヤコブの王は言われる。
41:22 それを持ってきて、これから起こることをわたしたちに告げてみよ。昔の出来事がどんなものだったか告げてみよ。わたしたちはよく考え、その結末を知ろう。あるいは、これから来ることを聞かせてみよ。
41:23 この先どうなるかを告げてみよ。そうすれば、あなたたちが神だとわかる。よいことでも悪いことでも、何かしてみよ。わたしたちは驚いて、いっしょにそれを見よう。
41:24 見よ。あなたたちは無に等しく、あなたたちのすることも何の値打ちもない。あなたたちを選ぶ者は、いとうべきものだ。
41:25 わたしは北から一人を奮い立たせた。彼はやって来る。日の昇る東から、彼はわたしの名を呼ぶ。彼は支配者たちを漆喰のように踏みつけ、陶工が粘土を踏むように踏みつける。
41:26 だれが初めからこれを告げて、わたしたちに知らせただろうか。だれが前もって告げて、「彼は正しい」とわたしたちに言わせただろうか。だれも告げなかった。だれも聞かせなかった。だれもあなたたちの言葉を聞かなかった。
41:27 わたしは真っ先にシオンに「見よ、彼らがいる」と告げ、エルサレムに良い知らせを伝える者を送る。
41:28 わたしが見回しても、だれもいない。彼らの中には、助言できる者が一人もいない。わたしが尋ねても、ひと言も答えを返せる者はいない。
41:29 見よ。彼らはみな無に等しく、そのすることは何の値打ちもない。彼らが鋳て造った像は、風のように空しいものだ。
42:1 見よ。これがわたしの支えるしもべ、わたしが選び、心から喜ぶ者だ。わたしは彼にわたしの霊を授けた。彼は諸国の民に公正をもたらす。
42:2 彼は叫ばず、声を張り上げない。通りでその声を聞かせることもない。
42:3 傷ついた葦を折ることなく、消えかけた灯心を消すこともない。彼は真実をもって、確かに公正をもたらす。
42:4 彼は衰えず、くじけない。地に公正を打ち立てるまで、決してやめない。島々は彼の教えを待ち望む。
42:5 天を創造して張り広げ、地とそこに生えるすべてのものを押し広げた方。地の上の人々に息を与え、そこを歩む者たちに霊を与える方。神である主はこう言われる。
42:6 わたしは主。わたしは正義をもってあなたを呼び、あなたの手を取る。わたしはあなたを守り、あなたを民との契約とし、諸国の民の光とする。
42:7 目の見えない人の目を開き、捕らわれた人を牢から連れ出し、暗やみに座る人々を牢屋から解き放つためだ。
42:8 わたしは主。それがわたしの名だ。わたしは自分の栄光を、ほかのだれにも渡さない。わたしへの賛美を偶像に渡すことはない。
42:9 見よ、前に告げたことはそのとおりに起こった。そして今、わたしは新しいことを告げる。それが芽を出す前に、あなたたちに聞かせよう。
42:10 主に向かって新しい歌を歌え。地の果てから主をたたえよ。海へ出て行く者たち、海に満ちるものすべて、島々とそこに住む人々よ。
42:11 荒れ野とその町々よ、声をあげよ。ケダルの人が住む村々よ。岩山に住む者たちよ、喜び歌え。山々の頂から叫び声をあげよ。
42:12 彼らは主に栄光をささげ、島々で主への賛美を告げ知らせよ。
42:13 主は勇士のように出て行き、戦う男のように熱い思いをかき立てる。ときの声をあげ、大声で叫び、敵を打ち負かす。
42:14 わたしは長い間、黙っていた。じっと口をつぐみ、こらえてきた。でも今、子を産む女のように、わたしは叫ぶ。あえぎ、激しく息をつく。
42:15 わたしは山や丘を荒れ地にし、そこの草をすべて枯らす。川を島に変え、池を干上がらせる。
42:16 わたしは目の見えない人を、彼らの知らない道に導く。歩いたことのない小道を歩ませる。彼らの前で暗やみを光に変え、でこぼこの道を平らにする。わたしはこれらのことを行い、彼らを見捨てはしない。
42:17 しかし偶像に頼る者、鋳物の像に「あなたたちがわたしたちの神だ」と言う者は、後ろに退けられ、深く恥じ入る。
42:18 耳の聞こえない者たちよ、聞け。目の見えない者たちよ、目を向けて見よ。
42:19 わたしのしもべほど、目の見えない者がいるだろうか。わたしが送る使者ほど、耳の聞こえない者がいるだろうか。わたしに委ねられた者ほど目の見えない者、主のしもべほど目の見えない者がいるだろうか。
42:20 あなたは多くのことを見ていながら、心に留めない。耳は開いているのに、聞こうとしない。
42:21 主はご自分の正しさのために、教えを大いなるものとし、輝かせることを望まれた。
42:22 だが、この民は略奪され、奪い取られた。みな穴に落とし込められ、牢に閉じ込められた。獲物のようにされても助け出す者はなく、奪われても「返せ」と言う者もいない。
42:23 あなたたちのうち、だれがこれに耳を傾けるだろうか。これから先のために、しっかり聞こうとする者はいるだろうか。
42:24 ヤコブを奪う者に渡し、イスラエルを略奪する者に引き渡したのは、だれだったのか。主ではなかったか。わたしたちは主に罪を犯し、その道を歩もうとせず、その教えに聞き従わなかった。
42:25 だから主は、燃えるような怒りと激しい戦いを彼らに注がれた。それは彼らの周りで火のように燃え上がったのに、彼らは気づかなかった。身を焼かれても、心に留めなかった。
43:1 しかし今、あなたを創造した主、ヤコブよ、あなたを形づくった方、イスラエルよ、その主はこう言われる。「恐れるな。わたしがあなたを買い戻した。わたしはあなたの名を呼んだ。あなたはわたしのものだ。
43:2 あなたが水の中を通るとき、わたしはあなたと共にいる。川を渡っても、あなたは押し流されない。火の中を歩いても、あなたは焼かれず、炎があなたを焼き尽くすことはない。
43:3 わたしはあなたの神、主、イスラエルの聖なる者、あなたを救う者だからだ。わたしはあなたの身代金としてエジプトを渡し、あなたの代わりにクシュとセバを与えた。
43:4 あなたはわたしの目に価高く、尊く、わたしはあなたを愛している。だから、わたしはあなたの代わりに人を与え、あなたの命の代わりに国々を与える。
43:5 恐れるな。わたしはあなたと共にいる。わたしは東からあなたの子孫を連れて来て、西からあなたを集める。
43:6 北に向かって『渡せ』と言い、南に向かって『引き止めるな』と言う。わたしの息子たちを遠くから、わたしの娘たちを地の果てから連れて来い。
43:7 わたしの名で呼ばれる者はみな、わたしの栄光のために創造した。わたしがその者を形づくり、造り上げたのだ。」
43:8 目がありながら見えない民、耳がありながら聞こえない人々を連れ出せ。
43:9 すべての国民が一つに集められ、もろもろの民が寄り集まる。彼らのうちのだれが、このことを告げられるだろうか。昔の出来事を、わたしたちに聞かせられるだろうか。証人を立てて、自分の正しさを示すがいい。それを聞いた人が『本当だ』と言えるように。
43:10 あなたたちはわたしの証人だと、主は言われる。わたしが選んだしもべもそうだ。それは、あなたたちが知り、わたしを信じ、わたしがその者であることを悟るためだ。わたしより前に神が造られたことはなく、わたしの後にも決していない。
43:11 わたし、このわたしが主である。わたしのほかに救う者はいない。
43:12 告げたのはわたしだ。救ったのもわたしだ。聞かせたのもわたしだ。あなたたちの間に、よその神などいなかった。あなたたちはわたしの証人だと、主は言われる。わたしこそが神だ。
43:13 きょうという日より前から、わたしはその者だ。わたしの手から救い出せる者はいない。わたしが行うことを、だれがくつがえせるだろうか。
43:14 あなたたちを買い戻す方、イスラエルの聖なる方、主はこう言われる。あなたたちのために、わたしはバビロンへ人を送り、逃げまどう彼らをみな引きずり下ろす。歓声を上げていたカルデア人も、その船もろともに。
43:15 わたしは主、あなたたちの聖なる者、イスラエルを創造した者、あなたたちの王だ。
43:16 海の中に道を、激しい水の中に通り道を設ける方、主はこう言われる。
43:17 戦車と馬、軍勢と勇士を引き出す方が、こう言われる。彼らはそろって倒れ、二度と起き上がれない。灯心が燃え尽きるように、彼らは消えてしまう。
43:18 昔のことを思い出すな。遠い過去のことにこだわるな。
43:19 見よ、わたしは新しいことを始める。それは今、芽生え始めている。あなたたちには分からないだろうか。わたしは荒れ野に道を通し、砂漠に川を流す。
43:20 野の獣も、山犬も、だちょうも、わたしをあがめる。わたしが荒れ野に水を、砂漠に川を与え、わたしが選んだ民に飲ませるからだ。
43:21 この民は、わたしが自分のために造った。彼らはわたしをたたえるためにいる。
43:22 それなのに、ヤコブよ、あなたはわたしを呼び求めなかった。イスラエルよ、あなたはわたしにうんざりしていた。
43:23 あなたは焼き尽くすいけにえの羊を、わたしのために持って来なかった。いけにえでわたしをあがめることもなかった。わたしは供え物のことであなたに重荷を負わせたことも、香のことであなたを疲れさせたこともない。
43:24 あなたは香りのよい菖蒲を、お金を出してわたしのために買うこともなく、いけにえの脂でわたしを満たすこともなかった。かえって、あなたは自分の罪でわたしに重荷を負わせ、自分の過ちでわたしを疲れさせた。
43:25 このわたしこそ、わたし自身のために、あなたの背きをぬぐい去る。あなたの罪を、もう思い出さない。
43:26 さあ、わたしに思い出させてくれ。共に裁きの場に立とう。あなたが正しいと言えるなら、申し立ててみるがいい。
43:27 あなたの最初の先祖は罪を犯した。あなたの代弁者たちも、わたしに背いた。
43:28 だからわたしは、聖なる務めを担う者たちをおとしめ、ヤコブを滅びに、イスラエルをそしりにゆだねた。
44:1 でも今、聞いてほしい。わたしのしもべヤコブ、わたしが選んだイスラエルよ。
44:2 あなたを造り、母の胎の中からあなたをかたち作り、あなたを助ける主が、こう言われる。「恐れるな、わたしのしもべヤコブ。わたしが選んだエシュルンよ。
44:3 わたしは、かわいた地に水を注ぎ、干からびた大地に流れを注ぐ。同じように、あなたの子孫にわたしの霊を注ぎ、あなたの子どもたちにわたしの祝福を注ぐ。
44:4 すると彼らは、草の中で伸びる若木のように、水辺に立つ柳のように育っていく。
44:5 ある人は『わたしは主のものだ』と言い、ある人はヤコブの名を名のる。ある人は自分の手に『主のもの』と書き、イスラエルの名を自分の名とする。」
44:6 イスラエルの王である主、これを買い戻す方、万軍の主が、こう言われる。「わたしは最初であり、わたしは最後だ。わたしのほかに神はいない。
44:7 わたしのような者がいるだろうか。いるなら声をあげ、それを告げ、わたしの前に並べ立ててみるがいい。わたしが昔から人々を置いたときのことも、これから起こることも。これから来ることを、彼らに告げてみるがいい。
44:8 恐れるな、おびえるな。わたしはずっと前から、あなたに聞かせ、告げてきたではないか。あなたたちはその証人だ。わたしのほかに神がいるだろうか。ほかに岩などいない。わたしはひとりも知らない。」
44:9 偶像を造る者は、みな役に立たない。彼らが大切にするものも、何の役にも立たない。その証人となる偶像は、見ることも知ることもできない。だから彼らは恥をかくことになる。
44:10 何の役にも立たない神を、いったい誰がかたち作り、偶像を鋳て造るというのか。
44:11 見よ、その仲間はみな恥をかく。職人たちも、しょせんただの人間だ。彼らがみな集まって立ってみても、おびえて、いっしょに恥をかくだけだ。
44:12 鉄を打つ職人は、道具を使い、炭火で熱し、ハンマーで形を整える。力のかぎり腕をふるって、それを造り上げる。やがて腹はへり、力もなくなる。水も飲まず、へとへとになる。
44:13 木を削る職人は、ものさしを当てて線を引き、とがった道具で形をしるし、かんなで削り、コンパスで印をつける。そうして人の姿に、美しい人間の形に彫り上げ、家に置くために造る。
44:14 彼は自分のために杉を切り倒し、糸杉や樫の木を選ぶ。森の木々の中でそれを育て、もみの木を植えると、雨がそれを大きくする。
44:15 それは人の燃料になる。人はその一部を取って体を暖め、火をおこしてパンを焼く。ところが同じ木で神を造り、それを拝む。偶像を造って、その前にひれ伏す。
44:16 半分は火で燃やし、その火で肉を焼いて食べ、こんがり焼いて満腹する。体も暖まって、こう言う。「ああ、暖かい。火が見える。」
44:17 そして残った木で神を、自分の偶像を造る。その前にひれ伏して拝み、祈って言う。「わたしを救ってください。あなたはわたしの神だから。」
44:18 彼らは何も知らず、何も分かっていない。目はふさがれて見えず、心はふさがれて悟れないからだ。
44:19 誰も心に留めず、考えもしなければ、こう言うだけの知恵もない。「わたしはこの木の半分を火で燃やし、その炭でパンを焼き、肉を焼いて食べた。それなのに残りで、忌まわしいものを造るのか。ただの木の切れはしにひれ伏すのか。」
44:20 そんな人は灰を食べているようなものだ。惑わされた心が、彼を迷わせている。彼は自分の魂を救えず、「わたしの右手にあるのは偽りではないか」とも言えない。
44:21 ヤコブよ、イスラエルよ、これらのことを思い出せ。あなたはわたしのしもべだ。わたしがあなたをかたち作った。あなたはわたしのしもべ。イスラエルよ、わたしはあなたを忘れない。
44:22 わたしはあなたの背きを雲のように、あなたの罪を霧のように消し去った。わたしのもとへ帰って来い。わたしがあなたを買い戻したのだから。
44:23 天よ、喜び歌え。主がこれをなさったのだ。地の底よ、叫び声をあげよ。山々よ、森よ、その中のすべての木よ、喜びの歌を歌え。主がヤコブを買い戻し、イスラエルによって栄光を現されるのだから。
44:24 あなたを買い戻す方、あなたを母の胎から造った主は、こう言われる。「わたしは主、すべてを造った者。ただひとりで天を張り広げ、ひとりで地を押し広げた者。」
44:25 わたしは、うそつきの占い師が見せるしるしを打ちくだき、まじない師を物笑いの種にする。知恵ある者を後ろへ引き戻し、その知識を愚かなものに変える。
44:26 わたしは、自分のしもべの言葉を実現させ、自分の使者たちの計画をなしとげる。エルサレムには「そこに人が住むようになる」と言い、ユダの町々には「建て直される。その廃墟をわたしが起こす」と言う。
44:27 わたしは深い海に「かわききってしまえ。あなたの流れをわたしがかわかす」と言う。
44:28 わたしはキュロスに「彼はわたしの羊飼い。わたしの望みをすべてかなえる」と言う。エルサレムには「建て直される」と言い、神殿には「その土台がすえられる」と言う。
45:1 主は、油を注いで選んだ人、キュロスにこう言われる。「わたしは彼の右手をしっかりつかんだ。彼の前で国々を従わせ、王たちの帯を解かせるためだ。彼の前で扉を開き、もう二度と閉じられないようにする。
45:2 わたしがあなたの前を進み、山々を平らにする。青銅の扉をこわし、鉄のかんぬきを断ち切る。
45:3 そして、暗やみの中の宝と、隠された場所にしまわれた財宝をあなたに与える。それは、あなたの名を呼ぶわたしこそ主であり、イスラエルの神だと、あなたが知るためだ。
45:4 わたしのしもべヤコブ、わたしが選んだイスラエルのために、わたしはあなたの名を呼び、あなたに称号を与えた。あなたはわたしを知らなかったのに。
45:5 わたしが主。ほかにはいない。わたしのほかに神はいない。あなたはわたしを知らなかったのに、わたしはあなたに力を帯びさせた。
45:6 それは、日の昇る東から西の果てまで、すべての人が知るためだ。わたしのほかには、だれもいない。わたしが主。ほかにはいない。」
45:7 光を造り、闇を創造する。平和をもたらし、わざわいを創造する。わたしが主。これらすべてを行う者だ。
45:8 天よ、上から義を滴らせよ。雲よ、義を降らせよ。地よ、開いて救いを実らせよ。義もいっしょに芽生えさせよ。わたしが主。これを創造した。
45:9 自分を造った方と言い争う者は、わざわいだ。土の器のかけらにすぎないのに。粘土が、自分を形づくる者に「何を造っているのか」と言うだろうか。作品が「あなたには手がない」と言うだろうか。
45:10 父親に「何を生むのか」と言い、母親に「何を産もうとしているのか」と言う者は、わざわいだ。
45:11 イスラエルの聖なる方、イスラエルを造った主はこう言われる。「これから起こることについて、あなたがたはわたしの子らのことをわたしに問いただすのか。わたしの手の業について、わたしに命令するのか。
45:12 わたしが地を造り、その上に人を創造した。わたしが、この手で天を張り広げ、その万象すべてに命じた。
45:13 わたしは義をもって彼を奮い立たせ、彼のすべての道をまっすぐにする。彼はわたしの町を建て直し、囚われの民を解き放つ。代金も報酬も受け取らずに。」万軍の主はそう言われる。
45:14 主はこう言われる。「エジプトの富、クシュの商品、背の高いセバの人々が、あなたのもとに移り、あなたのものとなる。彼らはあなたに従い、鎖につながれて進み、あなたの前にひれ伏して願う。『神はあなたのうちにおられる。ほかにはいない。この方のほかに神はいない』と。」
45:15 まことに、あなたは身を隠す神。イスラエルの神、救い主。
45:16 偶像を造る者たちは、みな恥を受け、辱められる。そろって恥じ入りながら去っていく。
45:17 しかしイスラエルは、主によって救われる。とこしえの救いだ。あなたがたは世々限りなく、恥を受けることも、辱められることもない。
45:18 天を創造した主、地を形づくり、これを造って堅く据えた神は、こう言われる。神は地を、むなしいものとしてではなく、人が住む場所として創造した。「わたしが主。ほかにはいない。」
45:19 わたしは隠れて語ったのではない。暗い地の片隅で語ったのでもない。ヤコブの子孫に「むなしくわたしを探せ」と言ったこともない。わたしは主。正しいことを語り、まっすぐなことを告げる。
45:20 集まって来い。そろって近づけ、国々から逃げのびた者たちよ。木の偶像を担ぎ、救うこともできない神に祈る者たちは、何も分かっていない。
45:21 さあ、告げてみよ。証拠を持ち出せ。みなで相談してみるがいい。だれが昔からこれを聞かせ、遠い昔から告げていたのか。この主であるわたしではないか。わたしのほかに神はいない。正しく、救う神は、わたしのほかにいない。
45:22 地の果てのすべての者よ、わたしに向き直れ。そうすれば救われる。わたしが神であり、ほかにはいないのだから。
45:23 わたしは自分にかけて誓った。わたしの口から出た正しい言葉は、取り消されることがない。すべての膝はわたしの前にかがみ、すべての舌はわたしにかけて誓う。
45:24 人々はこう言う。「主にこそ、義と力がある。」人はみな主のもとに来る。主に怒りを燃やしていた者は、みな恥を受ける。
45:25 イスラエルの子孫はみな、主によって義とされ、それを誇りとする。
46:1 ベルはかがみ込み、ネボは倒れ伏す。彼らの偶像は、獣や家畜に載せられて運ばれる。あなたがたが担いでいた像は、重い荷となって、疲れた獣にのしかかる。
46:2 神々はそろって倒れ伏し、かがみ込む。荷を救い出すこともできず、自分自身が捕らえられて連れ去られていく。
46:3 わたしに聞け、ヤコブの家よ。生き残ったイスラエルの家のすべての者よ。あなたがたは母の胎にいたときから、わたしに背負われ、生まれる前から、わたしに担がれてきた。
46:4 あなたがたが年老いても、わたしは変わらない。白髪になっても、わたしが背負う。わたしがあなたがたを造った。だからわたしが担い、わたしが背負い、救い出す。
46:5 あなたがたは、わたしをだれになぞらえ、だれと並べるのか。わたしをだれと比べて、似ていると言うのか。
46:6 人々は袋から金を惜しみなく出し、銀を秤で量る。そして金細工師を雇い、神を造らせる。その前にひれ伏し、拝む。
46:7 人々はそれを肩にかつぎ、運んで、置き場所に据える。すると偶像はそこに立ったまま、動くこともできない。だれかが助けを求めて叫んでも、答えない。苦しみから救い出すこともできない。
46:8 このことを思い出して、しっかりしなさい。背いてきた者たちよ、心に刻み直しなさい。
46:9 はるか昔の出来事を思い出しなさい。わたしこそ神であり、ほかにはいない。わたしは神であり、わたしのような者はいない。
46:10 わたしは初めから終わりを告げ、まだ起きていないことを、遠い昔から知らせてきた。わたしはこう言う。「わたしの計画は必ず実現し、望むことはすべて成し遂げる」と。
46:11 わたしは東から一羽の猛禽を呼び、遠い国からわたしの計画を実行する者を呼ぶ。わたしは語ったことを、必ずそのとおりにする。決めたことを、必ず成し遂げる。
46:12 わたしに聞きなさい。頑固な心の者たち、正しさから遠く離れている者たちよ。
46:13 わたしは自分の義を近づける。それは遠くない。わたしの救いは遅れない。わたしはシオンに救いを与え、イスラエルにわたしの栄光を授ける。
47:1 娘バビロンよ、下りてきて、ちりの上に座れ。娘カルデアよ、王座を失って地に座れ。もう二度と、あなたは「か弱く、上品な人」とは呼ばれない。
47:2 石臼を取って、粉をひけ。顔をおおう布を外し、スカートをたくし上げ、足をあらわにして、川を渡れ。
47:3 あなたの裸はさらされ、恥もあらわになる。わたしは復讐する。だれも容赦しない。
47:4 わたしたちを救い出す方、その名は万軍の主、イスラエルの聖なる方。
47:5 娘カルデアよ、黙って座り、暗闇の中に入れ。もう二度と、あなたは「もろもろの王国の女王」とは呼ばれない。
47:6 わたしは自分の民に怒り、自分のものである民をけがし、あなたの手に渡した。ところがあなたは、彼らにあわれみを示さず、年老いた者にまで重いくびきを負わせた。
47:7 あなたは言った。「わたしはいつまでも女王でいる」と。だから、これらのことを心に留めず、その行き着く先を考えもしなかった。
47:8 だから今、これを聞け。快楽にふけり、安心しきって座っているあなた。心の中でこう言っているあなた。「わたしがいる。わたしのほかにはだれもいない。わたしが未亡人になることはない。子を失うこともない」と。
47:9 ところが、その二つのことが、一瞬のうちに、たった一日でやってくる。子を失うことと、未亡人になることだ。あなたがどれだけ多くの魔術を使い、どれだけ強力な呪文を唱えても、それはそっくりそのまま、あなたに降りかかる。
47:10 あなたは自分の悪事を頼りにして、「だれもわたしを見ていない」と言った。あなたの知恵と知識が、あなたを迷わせた。そしてあなたは心の中で言った。「わたしがいる。わたしのほかにはだれもいない」と。
47:11 だから、わざわいがあなたに襲ってくる。それをどうやって払いのけるのか、あなたにはわからない。災難があなたの上に落ちてくる。それを取り除くことはできない。破滅が突然あなたを襲う。あなたはそれを予想することもできない。
47:12 さあ、あなたの呪文と、たくさんの魔術を続けてみるがいい。若いころから苦労して身につけてきたものだ。もしかしたら役に立つかもしれない。もしかしたら、だれかを怖がらせられるかもしれない。
47:13 あなたは、たくさんの助言に疲れ果てている。さあ、天を読み解く者たち、星を見つめる者たち、毎月何が起こるかを告げる者たちに、立ち上がってあなたを救わせてみるがいい。あなたに降りかかることから、救えるものなら。
47:14 見よ、彼らはわらのようだ。火が彼らを焼き尽くす。彼らは自分自身さえ、炎の力から救い出せない。これは体を温める炭火ではなく、そばに座って暖まる火でもない。
47:15 あなたのために働いた者たちは、あなたにとってこのようになる。若いころからのあなたの商売相手だ。彼らはみな、それぞれ自分の道へと迷い去っていく。あなたを救う者は、だれもいない。
48:1 これを聞け、ヤコブの家よ。あなたたちはイスラエルという名で呼ばれ、ユダの流れから生まれた者だ。主の名にかけて誓い、イスラエルの神の名を口にする。だが、そこに真実はなく、正しさもない。
48:2 あなたたちは自分を聖なる都の民と名のり、イスラエルの神に寄りかかっている。その名は万軍の主。
48:3 これから起こることを、わたしはずっと前から告げてきた。わたしの口から語り出し、あなたたちに聞かせた。そして突然それを行い、そのとおりになった。
48:4 あなたが強情なことを、わたしは知っていた。あなたの首は鉄の筋、額は青銅のように固い。
48:5 だから、そのことが起こる前に、わたしはずっと前からあなたに告げ、聞かせておいた。「これはわたしの偶像がやったことだ。わたしの刻んだ像、鋳た像が命じたのだ」と、あなたが言わないためだ。
48:6 あなたはそれを聞いた。さあ、すべてをよく見よ。あなたたちは、それを認めないのか。今からわたしは、新しいことをあなたに聞かせる。あなたの知らない、隠されていたことだ。
48:7 それは今つくり出されたことで、ずっと前からあったものではない。今日まで、あなたはそれを聞いたことがなかった。「そんなことは、とっくに知っていた」と、あなたが言わないためだ。
48:8 あなたはそれを聞いたこともなく、知ってもいなかった。あなたの耳は、昔からずっと開かれていなかった。あなたが必ず裏切ることを、わたしは知っていたからだ。あなたは生まれたときから、背く者と呼ばれてきた。
48:9 それでも、わたしは自分の名のために怒りを抑える。わたしがほめたたえられるために、あなたに対して怒りを抑え、あなたを滅ぼさずにおく。
48:10 見よ、わたしはあなたを練り清めた。ただし、銀を精錬するようにではない。苦しみという炉の中で、わたしはあなたを試し、選んだ。
48:11 わたしは自分のために、ただ自分のためにこれを行う。どうしてわたしの名を汚させておけるだろうか。わたしの栄光を、ほかのだれにも渡しはしない。
48:12 わたしに聞け、ヤコブよ。わたしが呼び出したイスラエルよ。わたしがその者だ。わたしは初めであり、また終わりである。
48:13 わたしの手が地の基を据え、わたしの右手が天を広げた。わたしがそれらを呼べば、みな共に立ち上がる。
48:14 みな集まって聞け。彼らのうちのだれが、こうしたことを告げただろうか。主が愛するその者は、バビロンに対して主の望みを果たし、その腕はカルデア人に向けられる。
48:15 わたしが、このわたしが語った。わたしが彼を呼び出したのだ。わたしが彼を連れて来た。だから彼はその道で成し遂げる。
48:16 わたしに近づいて、これを聞け。わたしは初めから、隠れて語ったことはない。それが起こるその時、わたしはそこにいた。そして今、主なる神が、その霊とともに、わたしを送られた。
48:17 あなたを買い戻す方、イスラエルの聖なる方、主はこう言われる。わたしはあなたの神、主である。わたしは、あなたのためになることを教え、あなたが進むべき道へ導く者だ。
48:18 ああ、あなたがわたしの命令に耳を傾けていたなら。あなたの平安は川のように、あなたの義は海の波のようになっていたのに。
48:19 あなたの子孫は砂のように、あなたから生まれる者は砂粒のように多くなっていた。その名がわたしの前から絶たれることも、消し去られることもなかっただろうに。
48:20 バビロンから出て行け。カルデア人のもとから逃げ出せ。喜びの声をあげて、これを告げ知らせよ。地の果てまで届かせて、こう言え。「主がその僕ヤコブを買い戻された」と。
48:21 主が彼らを砂漠を通して導いたとき、彼らは渇くことがなかった。主は彼らのために、岩から水を流れ出させた。岩を裂くと、水がほとばしり出たのだ。
48:22 悪しき者には平安がない、と主は言われる。
49:1 島々よ、わたしの言葉を聞け。遠くの国々よ、耳を傾けよ。主はわたしがまだ母の胎にいるときにわたしを呼び、母のおなかの中にいるときから、わたしの名を口にされた。
49:2 主はわたしの口を鋭い剣のようにし、御手の陰にわたしを隠された。わたしを磨き上げた矢にして、矢筒の中にしまい込まれた。
49:3 そして主はわたしに言われた。「あなたはわたしのしもべ、イスラエルだ。わたしはあなたによって栄光を現す。」
49:4 でも、わたしは言った。「わたしは無駄に骨を折り、むなしく、はかなく力を使い果たした。」それでも、わたしの正しさは主とともにあり、わたしへの報いは神とともにある。
49:5 今、主は言われる。わたしを母の胎にいるときからご自分のしもべとして形づくり、ヤコブを主のもとに連れ戻し、イスラエルを主のもとに集めさせる方が、こう言われるのだ。──わたしは主の目に尊ばれ、わたしの神がわたしの力となってくださった。
49:6 その主が言われる。「あなたがわたしのしもべとなって、ヤコブの諸部族を立て直し、生き残ったイスラエルの民を連れ帰らせるだけでは、まだ足りない。わたしはあなたを諸国の光とし、わたしの救いを地の果てにまで届かせる。」
49:7 イスラエルを買い戻す方、イスラエルの聖なる方である主は、人にひどく見下され、国々に忌み嫌われ、支配者たちに仕える者に向かって、こう言われる。「王たちは見て立ち上がり、君主たちはひれ伏す。それは、真実な方である主、あなたを選んだイスラエルの聖なる方のためだ。」
49:8 主はこう言われる。「わたしは恵みの時にあなたに答え、救いの日にあなたを助けた。わたしはあなたを守り、あなたを民のための契約とする。荒れ果てた地を元どおりにし、荒廃した相続地を人々に受け継がせるためだ。
49:9 そして、捕らわれ人には『出て来い』と言い、闇の中にいる者には『姿を現せ』と言う。彼らは道ばたでも草を食み、どの裸の丘も彼らの牧草地になる。
49:10 彼らは飢えることも渇くこともなく、焼けつく暑さや太陽に打たれることもない。彼らを憐れむ方が彼らを導き、水の湧く泉へと連れて行かれるからだ。
49:11 わたしはすべての山を道に変え、わたしの大路を高く盛り上げる。
49:12 見よ、この人々は遠くからやって来る。見よ、ある者は北から、ある者は西から、そしてある者はシニムの地からやって来る。」
49:13 天よ、喜び歌え。地よ、喜び踊れ。山々よ、歓声をあげよ。主がご自分の民を慰め、苦しむ者たちを憐れまれるからだ。
49:14 でもシオンは言った。「主はわたしを見捨てた。わたしの主は、わたしを忘れてしまった。」
49:15 母親が自分の乳飲み子を忘れるだろうか。自分のおなかを痛めて産んだ子を、憐れまずにいられるだろうか。たとえ母親が忘れても、わたしはあなたを忘れない。
49:16 見よ、わたしはあなたを手のひらに刻みつけた。あなたの城壁は、いつもわたしの目の前にある。
49:17 あなたの子らは急いで戻って来る。あなたを壊し、荒らした者たちは、あなたのもとから出て行く。
49:18 目を上げて、周りを見渡してみなさい。彼らはみな集まって、あなたのもとへやって来る。主は言われる。「わたしは生きている。あなたは必ず、彼らすべてを飾りのように身にまとう。花嫁が飾りを結びつけるように、彼らを身につけるのだ。」
49:19 荒れ果て、さびれ、廃墟となったあなたの地は、住む人であふれて狭くなる。あなたを飲み込んだ者たちは、遠く離れて行く。
49:20 かつて失ったと思っていた子らが、あなたの耳にこう言うようになる。「ここは狭すぎる。もっと場所を空けてほしい。わたしが住めるように。」
49:21 そのときあなたは心の中で言うだろう。「だれがわたしのために、この子らを産んでくれたのか。わたしは子を失い、独りぼっちだった。捕らわれ、追いやられていた。だれがこの子らを育ててくれたのか。見よ、わたしは独り残されていたのに、この子らはどこにいたのか。」
49:22 主なる神はこう言われる。「見よ、わたしは国々に向けて手を上げ、もろもろの民に向けて旗を掲げる。すると彼らは、あなたの息子たちを胸に抱いて連れて来て、娘たちを肩に担いで運んで来る。
49:23 王たちはあなたの養い親となり、王妃たちはあなたの乳母となる。彼らは顔を地につけてあなたにひれ伏し、あなたの足の塵をなめる。そのときあなたは知る。わたしが主であることを。わたしを待ち望む者は、決して恥を受けない。」
49:24 勇士から奪った獲物を、取り返せるだろうか。暴君に捕らわれた者を、救い出せるだろうか。
49:25 しかし、主はこう言われる。「そうだ、勇士に捕らわれた者も取り返される。暴君に奪われた獲物も救い出される。あなたと争う者とは、わたしが争う。あなたの子らを、わたしが救う。
49:26 あなたを苦しめた者には、自分の肉を食わせる。彼らは自分の血に、甘い酒のように酔いしれる。こうして、すべての人が知る。わたしがあなたを救う主であり、あなたを買い戻す者、ヤコブの力強い神であることを。」
50:1 主はこう言われる。「わたしがあなたたちの母を追い出したという、その離縁状はどこにあるのか。それとも、わたしが金を借りていた相手に、あなたたちを売り渡したとでもいうのか。いや、あなたたちが売られたのは、自分の罪のためだ。あなたたちの母が追い出されたのは、あなたたちの背きのためだ。
50:2 わたしが来たのに、なぜだれもいなかったのか。わたしが呼んだのに、なぜだれも答えなかったのか。わたしの手は短くて、あなたたちを救い出せないとでもいうのか。わたしには助け出す力がないとでもいうのか。見よ、わたしがひと言叱れば、海は干上がり、川は荒れ野となる。水がなくなって魚は腐り、渇いて死んでしまう。
50:3 わたしは天を暗闇で覆い、粗布をその衣とする。」
50:4 主なる神は、わたしに弟子の舌を与えてくださった。疲れた人を、ひと言で励ますすべを知るためだ。主は朝ごとに、朝ごとにわたしを目覚めさせ、弟子のように聞くよう、わたしの耳を開いてくださる。
50:5 主なる神は、わたしの耳を開いてくださった。わたしは逆らわず、後ろに引き下がりもしなかった。
50:6 わたしは打つ者に背中を向け、ひげを抜く者に頬をまかせた。侮辱されても、つばを吐きかけられても、顔を隠さなかった。
50:7 でも、主なる神が助けてくださる。だから、わたしは恥をかかされない。だから、わたしは顔を火打ち石のように硬く引きしめた。決して恥をかかないと分かっている。
50:8 わたしの正しさを認めてくださる方が、すぐそばにいる。だれがわたしと争えるのか。さあ、いっしょに立とう。わたしを訴える者がいるなら、近づいてくればいい。
50:9 見よ、主なる神が助けてくださる。だれがわたしを罪に定められるのか。彼らはみな、着物のように古びていく。虫が食い尽くしてしまう。
50:10 あなたたちの中で、主を敬い、そのしもべの声に聞き従う者はだれか。暗闇の中を歩み、光がまったくない者は、主の名に信頼し、自分の神に寄りかかればいい。
50:11 見よ、あなたたちはみな、火をおこし、松明を身にまとう者だ。だったら、自分でおこした火の光の中を、自分で燃やした松明とともに歩くがいい。しかし、これはわたしの手から下ることになる。あなたたちは苦しみのうちに横たわるのだ。
51:1 正しさを追い求め、主を捜し求める者たちよ、わたしに聞け。あなたたちが切り出された岩を見よ。あなたたちが掘り出された穴を見よ。
51:2 あなたたちの父アブラハムを見よ。あなたたちを産んだサラを見よ。彼がまだ一人だったとき、わたしは彼を呼び、祝福し、その数を増やした。
51:3 主はシオンを慰め、その荒れ果てたところをすべて慰めてくださる。その荒れ野をエデンのように、その砂漠を主の園のようにしてくださる。そこには喜びと楽しみがあふれ、感謝と歌声が響く。
51:4 わたしの民よ、わたしに耳を傾けよ。わたしの国民よ、わたしに耳を澄ませ。教えはわたしから出て、わたしの裁きは、諸国の民を照らす光となる。
51:5 わたしの正しさは近い。わたしの救いはすでに出て行き、わたしの腕が諸国の民を裁く。島々はわたしを待ち望み、わたしの腕に望みをかける。
51:6 目を上げて天を見よ。下にある地を見よ。天は煙のように消え去り、地は着物のようにすり切れる。そこに住む者も同じように死んでいく。しかし、わたしの救いはとこしえに続き、わたしの正しさは決してくじかれない。
51:7 わたしに耳を傾けよ。正しさを知る者たち、心にわたしの教えを抱く民よ。人のそしりを恐れるな。ののしられても、おびえるな。
51:8 彼らは、着物を食う虫のように食われ、羊毛を食う虫のように食われる。しかし、わたしの正しさはとこしえに続き、わたしの救いは代々に及ぶ。
51:9 目を覚ませ、目を覚ませ。力をまとえ、主の腕よ。大昔の日々のように、遠い昔の代々のように、目を覚ませ。ラハブを切り裂き、竜を刺し貫いたのは、あなたではなかったか。
51:10 海を、大いなる深淵の水を干上がらせ、海の底に、救い出された者たちが渡る道を通したのは、あなたではなかったか。
51:11 主に救い出された者たちは帰って来る。喜びの歌をうたいながらシオンにやって来る。とこしえの喜びが、その頭にある。彼らは楽しみと喜びを得て、悲しみと嘆きは逃げ去る。
51:12 わたしこそ、あなたを慰める者だ。それなのに、あなたは何者なのか。死ぬべき人間を恐れ、草にすぎない人の子におびえるとは。
51:13 天を張り広げ、地の基を据えた、あなたの造り主である主を、あなたは忘れてしまった。そして、あなたを滅ぼそうと構える、苦しめる者の怒りに、一日中いつもおびえている。だが、その苦しめる者の怒りは、いったいどこにあるのか。
51:14 身をかがめた捕らわれ人は、すぐに解き放たれる。穴の中で死ぬことはなく、パンが尽きることもない。
51:15 わたしは、あなたの神、主である。海をかき立て、その波をとどろかせる者。その名は万軍の主。
51:16 わたしは、あなたの口にわたしの言葉を授け、わたしの手の陰にあなたをかくまった。天を植え、地の基を据えるため、そしてシオンに『あなたはわたしの民だ』と言うためだ。
51:17 奮い立て、奮い立て。立ち上がれ、エルサレムよ。あなたは主の手から、その怒りの杯を飲んだ。人をよろめかせる杯を、その澱まで飲み干した。
51:18 彼女が産んだすべての息子の中に、彼女を導く者はいない。彼女が育てたすべての息子の中に、その手を取る者もいない。
51:19 この二つのことが、あなたに降りかかった。だれが、あなたのために嘆いてくれるだろう。荒廃と破滅、飢えと剣。だれが、あなたを慰めることができるだろう。
51:20 あなたの息子たちは気を失い、網にかかった羚羊のように、どの通りの角にも倒れている。彼らは主の怒りに、あなたの神の叱責に満たされている。
51:21 だから、これを聞きなさい。苦しみにあえぐ者よ。酒に酔ったのでもないのに、よろめいている者よ。
51:22 あなたの主、あなたの神、その民のために争ってくれる主は、こう言われる。「見よ、わたしはあなたの手から、人をよろめかせる杯を取り上げた。わたしの怒りの杯を、その澱まで、あなたはもう二度と飲むことはない。
51:23 わたしはそれを、あなたを苦しめた者たちの手に渡す。彼らはあなたに『ひれ伏せ。その上を通り過ぎるから』と言った。そしてあなたは、自分の背を地面のようにし、通り過ぎる者たちのための道のようにした。」
52:1 目を覚ませ、目を覚ませ。力をまとえ、シオンよ。美しい晴れ着を着よ、聖なる都エルサレムよ。もう二度と、割礼を受けていない汚れた者が、あなたのところに入って来ることはない。
52:2 ちりを振り払え。立ち上がって座れ、エルサレムよ。首の縄を解き放て、捕らわれの娘シオンよ。
52:3 主はこう言われる。「あなたたちは、ただ同然で売られた。だから、金を払わずに買い戻される。」
52:4 わたしの主なる神は、こう言われる。「わたしの民は、その昔、身を寄せて住むためにエジプトへ下って行った。そしてアッシリアは、理由もなく彼らを虐げた。
52:5 それなのに今、ここで、わたしに何が残されているだろうか——主は言われる——わたしの民は、ただ同然で連れ去られてしまった。彼らを支配する者たちはわめき叫び——主は言われる——一日中、絶えず、わたしの名は侮られている。
52:6 だから、わたしの民はわたしの名を知る。その日、彼らは知る。語っているのは、このわたしなのだと。見よ、ここにわたしがいる。」
52:7 山々の上を歩いてくる、良い知らせを伝える人の足は、なんと美しいのだろう。その人は平和を告げ、幸せな知らせを伝え、救いを告げる。そしてシオンに向かって「あなたの神が王となられた」と語る。
52:8 聞け、あなたの見張りの者たちが声を上げている。みんな一緒に喜びの声を上げている。主がシオンへ帰って来られるのを、彼らはこの目ではっきりと見るのだ。
52:9 エルサレムの廃墟よ、一緒に声を上げて、喜び歌え。主がその民を慰め、エルサレムを買い戻してくださったからだ。
52:10 主は、すべての国々の目の前で、聖なる御腕をあらわにされた。地の果てのすべての人が、わたしたちの神の救いを見る。
52:11 去れ、去れ、そこから出て行け。汚れたものには触れるな。その中から出て行き、身を清めよ。主の器を運ぶ者たちよ。
52:12 あなたたちは、あわてて出て行くのではない。逃げるように立ち去るのでもない。主があなたたちの先を歩き、イスラエルの神が、あなたたちのしんがりを守ってくださるからだ。
52:13 見よ、わたしのしもべは、うまく事を成し遂げる。彼は高く上げられ、あがめられ、この上なく高くされる。
52:14 多くの人が彼を見て、ぞっとしたように、彼の姿は、人とは思えないほど損なわれ、その顔かたちは、人の子とは見えないほどだった。
52:15 しかしその彼が、多くの国々に清めの水を振りかける。王たちは彼の前で、口を閉ざす。まだ語られていなかったことを、彼らは目にし、まだ聞いたことのなかったことを、彼らははっきりと悟るからだ。
53:1 わたしたちが聞いたことを、いったい誰が信じただろう。主の御力は、いったい誰に示されたのだろう。
53:2 彼は主の前で、若い芽のように、乾いた地に張った根のように育った。目を引くような姿も、輝きもなく、わたしたちが心引かれるような見た目でもなかった。
53:3 彼は見下され、人々から見捨てられた。悲しみの人で、痛みを知り尽くしていた。人が顔をそむけるように、彼は見下され、わたしたちも彼を気にとめなかった。
53:4 本当は、彼がわたしたちの痛みを引き受け、わたしたちの悲しみを背負っていた。それなのにわたしたちは、彼を神に打たれ、苦しめられている者だと思っていた。
53:5 でも彼が傷つけられたのは、わたしたちの罪のためだった。彼が打ち砕かれたのは、わたしたちの過ちのためだった。わたしたちに平安を与えるための罰を、彼が引き受けた。彼が受けた傷によって、わたしたちは癒やされた。
53:6 わたしたちはみんな、羊のように迷い出て、それぞれ自分勝手な道へ進んでいた。それなのに主は、わたしたちみんなの過ちを、彼一人に負わせた。
53:7 彼はひどく苦しめられた。それでも口を開かなかった。ほふり場へ引かれていく子羊のように、毛を刈る者の前で黙っている羊のように、彼は口を開かなかった。
53:8 彼は捕らえられ、裁かれて、連れ去られた。彼の運命を、誰が気にかけただろう。彼は生きている者の地から絶たれた。わたしの民の罪のために、彼は打たれたのだ。
53:9 彼は悪人たちと一緒に葬られるはずだった。それでも死んだとき、彼は富める者と共にいた。彼は暴力をふるったこともなく、その口には偽りもなかったのに。
53:10 しかし、彼を打ち砕き、苦しませたのは主の御心だった。彼が自分の命を罪の償いのささげ物とするなら、彼は自分の子孫を見て、長く生き、主の御心は彼の手によって成し遂げられる。
53:11 彼は自分が苦しんだ末に、その実りを見て、満ち足りる。わたしの正しいしもべは、その知ることによって、多くの人を義とする。彼が、その人たちの過ちを背負うからだ。
53:12 だからわたしは、多くの人を彼の分け前として与え、彼は強い者たちと共に戦利品を分ける。彼が自分の命を惜しまず死にわたし、罪人たちの一人に数えられたからだ。彼は多くの人の罪を背負い、罪人たちのためにとりなしをした。
54:1 喜びの声をあげなさい、子を産めない女よ、産んだことのないあなたよ。喜びの歌をあげ、大声で叫びなさい、産みの苦しみを知らないあなたよ。捨てられた女の子どもは、夫のある女の子どもよりも多いのだから、と主は言われる。
54:2 あなたの天幕を広く張りなさい。住まいの幕を惜しまず大きく広げなさい。綱を長く伸ばし、杭をしっかり打ち込みなさい。
54:3 あなたは右にも左にも広がっていく。あなたの子孫は多くの国々を受け継ぎ、荒れ果てた町々に人を住まわせる。
54:4 恐れなくていい。あなたはもう恥をかくことはない。おじけづくこともない。もう辱められることはないのだから。あなたは若いときの恥を忘れ、やもめだったときのそしりを、もう思い出すこともなくなる。
54:5 あなたを造った方が、あなたの夫だからだ。その名は万軍の主。あなたを買い戻す方はイスラエルの聖なる方。全地の神と呼ばれる方だ。
54:6 捨てられて心を痛める女を呼ぶように、主はあなたを呼ばれた。若いときに結ばれた妻が退けられたようなあなたを、と、あなたの神は言われる。
54:7 ほんのわずかの間、わたしはあなたを見捨てた。しかし、大きな憐れみをもって、あなたを呼び戻す。
54:8 怒りがあふれて、わたしはほんの一瞬、あなたから顔を隠した。しかし、いつまでも変わらない慈しみをもって、あなたを憐れむ、とあなたを買い戻す主は言われる。
54:9 これは、わたしにとってノアの洪水のときと同じことだ。あの水が二度と地をおおうことはないと、わたしは誓った。同じように、もう二度とあなたに怒らない、あなたを責めないと、わたしは誓う。
54:10 たとえ山が動き、丘が揺らぐことがあっても、わたしの慈しみがあなたから離れることはない。わたしの平和の契約が揺らぐこともない、とあなたを憐れむ主は言われる。
54:11 苦しみに打ちのめされ、嵐にもてあそばれ、慰められることのなかった女よ。見なさい。わたしはあなたの石を美しい漆喰の上に据え、サファイアであなたの土台を築く。
54:12 わたしはあなたの塔を紅玉で、門を輝く宝石でつくり、あなたの城壁のすべてを美しい宝石で飾る。
54:13 あなたの子どもたちはみな、主から教えを受ける。そして子どもたちには豊かな平和が与えられる。
54:14 あなたは正義の上に固く立てられる。虐げから遠く離れ、もう恐れることはない。恐怖からも遠ざかり、それがあなたに近づくことはない。
54:15 たとえ誰かがあなたを襲おうと集まっても、それはわたしの許したことではない。あなたに攻めかかる者は、かえって倒れる。
54:16 見なさい。炭火を吹きおこし、目的に合った道具をつくり出す鍛冶職人を、創造したのはわたしだ。そして、こわす者もわたしが創造した。
54:17 あなたを攻めるためにつくられた武器は、どれもうまくいかない。あなたを訴えて立ち上がる声を、あなたは論破する。これが主に仕える者たちへの恵みであり、彼らの義はわたしから来る、と主は言われる。
55:1 さあ、渇いている者はみな、水のところに来なさい。お金のない者も来なさい。来て、買って食べなさい。さあ、お金もいらず、代金もいらず、ぶどう酒と乳を買いなさい。
55:2 なぜあなたたちは、パンにもならないものにお金を払うのか。腹を満たさないもののために働くのか。よく聞きなさい、わたしの言うことを。そうすれば良いものを食べ、豊かなごちそうを心ゆくまで楽しめる。
55:3 耳を傾け、わたしのところに来なさい。聞きなさい。そうすればあなたの魂は生きる。わたしはあなたたちと永遠の契約を結ぶ。ダビデに約束した、変わらぬ慈しみを与える。
55:4 見なさい。わたしは彼を諸国の民への証人とし、諸国の民を導くリーダーとして立てた。
55:5 見なさい。あなたは知らない国を呼び寄せ、あなたを知らなかった国々があなたのもとへ走って来る。あなたの神である主、イスラエルの聖なる方が、あなたを輝かせたからだ。
55:6 主を求めなさい、出会えるうちに。呼び求めなさい、近くにおられるうちに。
55:7 悪い者は自分の道を捨て、悪事を企む者はその考えを捨てよ。そして主のもとに帰りなさい。主はその人をあわれんでくださる。わたしたちの神のもとに帰りなさい。神は惜しみなく赦してくださるから。
55:8 「わたしの考えは、あなたたちの考えとは違う。あなたたちの道は、わたしの道とは違う」と主は言われる。
55:9 「天が地よりも高いように、わたしの道はあなたたちの道より、わたしの考えはあなたたちの考えより、はるかに高い。」
55:10 雨や雪は天から降ってくると、そのまま天へは戻らない。地を潤し、芽を出させ、育てて、種をまく人に種を、食べる人にパンを与える。
55:11 それと同じで、わたしの口から出る言葉も、むなしくわたしのもとへ戻ってはこない。必ずわたしの望むことを成し遂げ、わたしが送り出した目的を果たす。
55:12 あなたたちは喜びながら出て行き、安らかに導かれて行く。山も丘もあなたたちの前で喜びの声をあげ、野の木々もみな手を打ち鳴らす。
55:13 とげのやぶの代わりに糸杉が生え、いらくさの代わりにミルトスの木が生える。それは主の名を高める記念となり、永遠に消えることのないしるしとなる。
56:1 主はこう言われる。「公正を守り、正しいことを行いなさい。わたしの救いが訪れるのは近く、わたしの義が現れるのも近いからだ。」
56:2 これを行う人は幸いだ。これをしっかり守り続ける人は幸いだ。安息日を守って汚さず、その手であらゆる悪を行わないようにする人は。
56:3 主のもとに集まってきた外国人は、「主はきっと、わたしをご自分の民から切り離される」と言ってはならない。宦官も、「わたしは枯れた木にすぎない」と言ってはならない。
56:4 主はこう言われるからだ。「わたしの安息日を守り、わたしの望むことを選び、わたしの契約をしっかり守る宦官たちに、
56:5 わたしは自分の家の中、その城壁の内に、息子や娘を持つよりも良い記念の場所と名を与える。永遠に消えることのない名を、その人に与える。
56:6 また、主のもとに集まり、主に仕え、主の名を愛し、主のしもべとなる外国人たち、安息日を守って汚さず、わたしの契約をしっかり守る者たちすべてを、
56:7 わたしの聖なる山に連れて行き、わたしの祈りの家で喜ばせる。彼らがささげる焼き尽くすいけにえも、そのほかのいけにえも、わたしの祭壇の上で喜んで受け入れられる。わたしの家は、すべての民の祈りの家と呼ばれるからだ。」
56:8 イスラエルの追い散らされた者たちを集める主なる神が、こう告げる。「わたしはすでに集めた者たちに加えて、さらに他の者たちも集める。」
56:9 野のすべての獣よ、来て食らえ。森のすべての獣よ、来い。
56:10 見張りの者たちはみな目が見えず、何もわかっていない。みな吠えることもできない、口のきけない犬だ。横になって夢を見て、眠るのが大好きだ。
56:11 この犬たちは欲が深く、満腹を知らない。彼らは羊飼いなのに、何もわきまえない。みな自分の思うままの道に向かい、ひとり残らず自分の利益ばかりを追い求める。
56:12 「さあ、酒を持ってこよう。強い酒をとことん飲もう。明日も今日と同じだ。いや、もっとすごい日になる」と、彼らは言う。
57:1 正しい人が滅びても、心に留める者はいない。慈しみに生きる人々が取り去られても、誰も気づかない。だが、正しい人は、これから来る災いから守られて取り去られるのだ。
57:2 その人は平安の中に入り、まっすぐに歩んだ者は、みな自分の寝床で安らかに休む。
57:3 だが、お前たちはここに近寄れ。占い女の息子たち、姦淫する者と遊女の子孫よ。
57:4 お前たちは、いったい誰をあざ笑っているのか。誰に向かって大きく口を開き、舌を突き出すのか。お前たちは背きの子、偽りの子孫ではないか。
57:5 樫の木の間で、青々と茂るすべての木の下で、欲情に身を焦がす者たち。谷間で、岩の裂け目の下で、自分の子どもたちを殺す者たちよ。
57:6 谷の滑らかな石ころ、それがお前の受ける分。そう、それこそがお前の取り分だ。お前はその石に、注ぎのぶどう酒をそそぎ、穀物のささげ物をささげた。こんなことをして、わたしが思い直すとでもいうのか。
57:7 お前は高くそびえ立つ山の上に、自分の寝床を設けた。そこまで登って行き、いけにえをささげた。
57:8 扉のうしろ、戸口の柱の陰に、お前は自分のしるしを立てた。わたしを捨てて、お前は裸になり、寝床に上がってそれを広げた。そして彼らと契りを結び、彼らの寝床を愛し、その裸を見つめた。
57:9 お前は油を携えて王のもとへ行き、香油をふんだんに塗りたくった。使者を遠くまで送り出し、死の国の底までおのれを落とした。
57:10 長い道のりに、お前は疲れ果てた。それでも「もう望みはない」とは言わなかった。自分の力がよみがえるのを感じ、弱り果てることはなかった。
57:11 お前はいったい誰を恐れ、おびえて、偽りを口にしたのか。わたしを思い出そうともせず、心に留めることもなかった。わたしが長い間、黙っていたからではないか。だからお前は、わたしを恐れないのだ。
57:12 わたしはお前の「正しさ」を、そしてお前の行いを、みなあばいてやる。それらはお前の何の役にも立たない。
57:13 お前が叫び求めるとき、お前が集めた偶像たちに救わせるがいい。だが、それらはみな風にさらわれ、ひと息で吹き飛ばされてしまう。しかし、わたしのもとに身を寄せる者は、この地を受け継ぎ、わたしの聖なる山を自分のものとする。
57:14 そして、こう言われる。「築け、築け、道を備えよ。わたしの民の道から、つまずきとなるものを取り除け。」
57:15 高くあがめられ、永遠に住まわれる方、その名を聖とされる方は、こう言われる。「わたしは高く聖なる所に住む。だが同時に、打ちひしがれ、へりくだった霊を持つ者とともに住む。へりくだった者の霊を生き返らせ、打ちひしがれた者の心を生き返らせるためだ。
57:16 わたしは、いつまでも争い続けるわけではない。いつまでも怒っているわけでもない。そうでなければ、人の霊はわたしの前で衰え果ててしまう。その命の息は、このわたしが造ったものなのだから。
57:17 その貪欲の罪のために、わたしは怒り、彼を打った。顔を隠して怒った。それでも彼は背き続け、自分の思いのままの道を進んで行った。
57:18 わたしは彼の歩んだ道を見た。だが、わたしは彼を癒やす。彼を導き、慰めを豊かに返そう。彼のために、そして彼とともに嘆く者たちのために。
57:19 わたしは、唇に語る言葉を造り出す。遠くにいる者にも、近くにいる者にも、平安あれ、平安あれ、と主は言われる。わたしは彼を癒やす。
57:20 だが、悪を行う者は、荒れ狂う海のようだ。静まることができず、その波は泥や汚れを巻き上げる。
57:21 悪を行う者に、平安はない、とわたしの神は言われる。
58:1 力のかぎり叫べ。ためらうな。ラッパのように声を張り上げよ。わたしの民に、その背きを告げ知らせよ。ヤコブの家に、その罪を告げよ。
58:2 彼らは毎日のようにわたしを求め、わたしの道を知りたいと願っているように見える。まるで正しいことを行い、神の定めを捨てなかった国民のように。正しい裁きをわたしに求め、神に近づくことを願っているかのようだ。
58:3 「どうしてわたしたちが断食しても、あなたは見てくださらないのですか。身を苦しめても、気づいてくださらないのですか」と彼らは言う。だが見よ。あなたたちは断食の日にも好きなことをして、雇った者をこき使っている。
58:4 見よ。あなたたちは争いといさかいのために断食し、こぶしで人を殴りつけている。今しているような断食では、あなたたちの声が天に届くことはない。
58:5 わたしが選ぶ断食とは、こんなものだろうか。人がただ一日、自分を苦しめること、葦のように頭を垂れ、粗布と灰の上に横たわること、それだろうか。あなたはこれを断食と呼び、主に喜ばれる日と呼ぶのか。
58:6 わたしが選ぶ断食とは、こういうものではないか。不正の鎖をほどき、くびきの縄を解き、しいたげられた人を自由にし、すべてのくびきを打ち砕くことだ。
58:7 それは、飢えている人に自分のパンを分け、住む場所のない貧しい人を家に迎え入れることではないか。裸の人を見たら服を着せ、同じ人間から目をそむけないことだ。
58:8 そうすれば、あなたの光は夜明けのように差し込み、あなたの傷はすぐにいやされる。あなたの前を正しさが進み、主の栄光がうしろを守ってくれる。
58:9 そのとき、あなたが呼べば主は答え、助けを求めれば「ここにいる」と言ってくださる。もしあなたが、人を押さえつけるくびきを取り除き、指をさして人を責めることや、悪意のある言葉をやめ、
58:10 飢えている人に心を注ぎ、苦しんでいる人を満たすなら、あなたの光は暗やみの中に昇り、あなたの闇は真昼のように明るくなる。
58:11 主はいつもあなたを導き、乾いた土地でもあなたの魂を満たし、あなたの骨を強くしてくださる。あなたは水をたっぷり吸った庭のように、水の絶えない泉のようになる。
58:12 あなたの仲間は、昔から荒れ果てていた場所を建て直し、代々くずれたままの土台を築き直す。あなたは「くずれた壁を直す者」「人が住めるように道を回復する者」と呼ばれる。
58:13 もしあなたが安息日に自分の用事を進める足を止め、わたしの聖なる日に好き勝手をせず、安息日を「喜びの日」と呼び、主の聖なる日を「尊い日」として大切にするなら、そして自分の思いどおりに動くのをやめ、好き勝手なことをせず、無駄なおしゃべりをやめるなら、
58:14 そのとき、あなたは主を喜びとする。わたしはあなたを地の高い所に立たせ、あなたの父ヤコブに約束された地の実りを食べさせる。これは主の口が語ったことだ。
59:1 見よ、主の手は短すぎて救えないわけではない。主の耳は遠すぎて聞こえないわけでもない。
59:2 そうではなく、あなたたちの悪が、あなたたちと神との間を引き裂いてしまったのだ。あなたたちの罪が神の顔を隠し、その声を届かなくさせている。
59:3 あなたたちの手は血で汚れ、指は悪にまみれている。唇は偽りを語り、舌は不正をつぶやく。
59:4 だれも正しさを求めて訴えず、だれも誠実に裁こうとしない。むなしいものに頼り、うそを語り、たくらみをはらんで、悪を生み出す。
59:5 彼らは毒蛇の卵をかえし、くもの巣を張る。その卵を食べる者は死に、卵をつぶせば毒蛇が飛び出す。
59:6 そのくもの巣は衣にはならず、自分の行いで身を覆うこともできない。彼らの行いは悪の行いであり、その手は暴力で満ちている。
59:7 彼らの足は悪へと走り、罪のない者の血を流そうと急ぐ。その思いは悪の思いばかり。行く道には破壊と滅びがある。
59:8 彼らは平和の道を知らず、その歩みに正義はない。自分の進む道を曲げてしまい、そこを歩く者はだれも平和を知ることがない。
59:9 だから正義はわたしたちから遠く離れ、正しさはわたしたちに追いつかない。光を待ち望んでも、あるのは闇。明るさを待っても、暗がりの中を歩いている。
59:10 わたしたちは目の見えない人のように壁を手さぐりし、目のない者のように手さぐりする。真昼だというのに、夕暮れのようにつまずく。健やかな者の中にいながら、死人のようだ。
59:11 わたしたちはみな、熊のようにうなり、鳩のように低く嘆き続ける。正義を待ち望んでも、それはなく、救いを待っても、遠く離れている。
59:12 わたしたちの背きは、あなたの前で数えきれないほど多く、わたしたちの罪はわたしたち自身を告発する。背きはいつもわたしたちと共にあり、自分の悪をよく知っている。
59:13 それは、主に背いて偽り、わたしたちの神に背を向けて離れ去ること。人を虐げ、逆らうことを口にし、偽りの言葉を心の中で思い描いては語り出すことだ。
59:14 こうして公正は後ろに押しやられ、正義は遠く離れて立ち尽くす。真実は広場で倒れ、まっすぐな正しさは入って来られない。
59:15 真実はどこにも見当たらず、悪から離れる者は、かえって食い物にされる。主はこれを見られ、公正のないことを嘆かれた。
59:16 主は、だれもいないのを見て、とりなす者が一人もいないことに驚かれた。それで、ご自分の腕で救いをもたらし、ご自分の義がご自分を支えた。
59:17 主は義をよろいのように身にまとい、救いのかぶとを頭にかぶられた。復讐の衣を身にまとい、熱情を上着のように羽織られた。
59:18 人々の行いに応じて、主は報いを返される。敵にはその怒りを、あだする者には報いを返し、島々にもその報いを返される。
59:19 こうして、西では人々が主の名を恐れ、日の昇る東ではその栄光を恐れる。敵が川のように押し寄せて来ても、主の霊がこれを追い払う。
59:20 そして、贖い主がシオンに来る。ヤコブの中で、背きから立ち返る者たちのもとに来る──主はそう告げられる。
59:21 主は言われる。「わたしが彼らと結ぶ契約はこうだ。あなたの上にあるわたしの霊、そしてあなたの口に置いたわたしの言葉は、あなたの口からも、あなたの子孫の口からも、その子孫の子孫の口からも、離れることはない。今も、そして永遠に」と主は言われる。
60:1 起きて、光を放ちなさい。あなたの光がやって来たのだから。主の栄光が、あなたの上に昇った。
60:2 見なさい。闇が地をおおい、深い暗やみが人々をおおう。でも、あなたの上には主が昇り、その栄光があなたの上に現れる。
60:3 国々はあなたの光をめざして歩み、王たちはあなたを照らす輝きをめざしてやって来る。
60:4 目を上げて、まわりを見なさい。みんなが集まって、あなたのところへ来る。あなたの息子たちは遠くからやって来て、娘たちは腰に抱かれて運ばれてくる。
60:5 そのとき、あなたはそれを見て、顔を輝かせる。心は高鳴り、喜びであふれて広がる。海のかなたの豊かさがあなたのものとなり、国々の富があなたのところへ運ばれてくるからだ。
60:6 らくだの群れがあなたをおおいつくす。ミディアンとエファの若いらくだたちだ。シェバの人々がみなやって来て、金と香を運び、主をたたえる知らせを告げる。
60:7 ケダルの羊の群れはみな、あなたのもとに集められ、ネバヨトの雄羊たちがあなたに仕える。それらはわたしの祭壇にささげられて受け入れられ、わたしは自分の輝かしい家を、さらに輝かせる。
60:8 雲のように飛び、巣へ帰る鳩のように飛んでくる、この人たちはだれだろう。
60:9 島々はわたしを待ち望み、タルシシュの船が先頭に立って、あなたの息子たちを遠くから連れて来る。彼らは銀や金を携え、あなたの神である主の名のため、イスラエルの聖なる方のためにやって来る。主があなたを輝かせたからだ。
60:10 外国の人々があなたの城壁を築き直し、その王たちがあなたに仕える。わたしは怒ってあなたを打ったが、恵みによって、あなたをあわれんだからだ。
60:11 あなたの門はいつも開かれ、昼も夜も閉じられることがない。国々の富があなたのもとに運び込まれ、その王たちが導かれて来るためだ。
60:12 あなたに仕えない国や王国は滅びる。その国々は、すっかり廃墟となるからだ。
60:13 レバノンの栄光があなたのもとに来る。糸杉、すずかけ、いとすぎがいっしょに運ばれ、わたしの聖なる場所を美しく飾る。わたしは、自分の足を置くその場所を、栄光で満たす。
60:14 あなたを苦しめた者たちの子孫は、身をかがめてあなたのもとに来る。あなたを見下していた者たちはみな、あなたの足もとにひれ伏す。そして、あなたを「主の都」「イスラエルの聖なる方のシオン」と呼ぶ。
60:15 あなたはかつて見捨てられ、憎まれ、だれも通り過ぎることのない町だった。でもわたしは、あなたをいつまでも続く誇りとし、代々の人々の喜びとする。
60:16 あなたは国々の乳を飲み、王たちの豊かさを吸い取る。こうしてあなたは、わたしが主であり、あなたを救い、買い戻す者、ヤコブの力強い方だと知る。
60:17 わたしは青銅の代わりに金を、鉄の代わりに銀を持って来る。木の代わりに青銅を、石の代わりに鉄を持って来る。わたしは平和をあなたの管理者とし、義をあなたを治める者とする。
60:18 あなたの地では、もう暴力の声は聞かれない。あなたの領土の中で、略奪や破壊が起こることもない。あなたは自分の城壁を「救い」と呼び、自分の門を「賛美」と呼ぶ。
60:19 もう昼の光として太陽が必要なくなり、月の輝きもあなたを照らさなくなる。主ご自身が、あなたを永遠に照らす光となり、あなたの神があなたの輝きとなるからだ。
60:20 あなたの太陽はもう沈まず、あなたの月は欠けることがない。主があなたを永遠に照らす光となり、あなたの悲しみの日々は終わるからだ。
60:21 あなたの民はみな正しい者となり、いつまでもこの地を受け継ぐ。彼らはわたしが植えた若枝、わたしの手が造ったもの。それによってわたしの栄光が現れる。
60:22 いちばん小さな者は千人となり、いちばん弱い者は強い国となる。わたしは主。その時が来たら、これをすみやかに実現する。
61:1 主なる神の霊が、わたしの上にある。主がわたしに油を注ぎ、苦しむ人たちに良い知らせを伝えるため、わたしを送り出したからだ。心の傷ついた人を手当てし、捕らわれた人には自由を、閉じ込められた人には解放を告げるために。
61:2 主が恵みを与える年を、わたしたちの神が敵に報いる日を告げ知らせ、悲しむすべての人を慰めるために。
61:3 シオンで悲しむ人たちのために、こうしてくださる。灰をかぶる代わりに美しい冠を、悲しみの代わりに喜びの油を、打ちひしがれた心の代わりに賛美の衣を与えるために。こうして彼らは「義の木」「主が植えた木」と呼ばれ、主の栄光を現すようになる。
61:4 彼らは、昔からの廃墟を建て直し、荒れ果てた場所を元どおりに起こす。長い年月、荒れ果てたままだった町々を新しくする。
61:5 よそから来た人たちが立って、あなたたちの羊の群れを飼う。外国の人たちが、あなたたちの畑を耕し、ぶどう畑の世話をする。
61:6 でもあなたたちは「主の祭司」と呼ばれ、「わたしたちの神に仕える者」と言われる。あなたたちは国々の富を食べ、その栄華を自分のものとして誇る。
61:7 恥を受けた代わりに、あなたたちは二倍の分け前を受ける。はずかしめの代わりに、自分の受け分を喜ぶ。だから彼らは自分の国で二倍のものを受け継ぎ、尽きることのない喜びが彼らのものとなる。
61:8 わたしは主。わたしは正しい裁きを愛し、奪い取ることや不正を憎む。だからわたしは、彼らの働きに真実をもって報い、彼らと永遠の契約を結ぶ。
61:9 彼らの子孫は国々の間で知られ、その末は多くの民の中で知られるようになる。彼らを見る人はみな、この人たちは主に祝福された民だと認める。
61:10 わたしは主にあって大いに喜ぶ。わたしの魂は、わたしの神にあって喜びおどる。神が救いの服をわたしに着せ、義の上着をわたしにまとわせてくれたからだ。花婿が美しい冠で身を飾り、花嫁が宝石で身を飾るように。
61:11 大地が芽を出させ、庭が種をまかれたものを育てるように、主なる神は、義と賛美を、すべての国々の前に芽生えさせる。
62:1 シオンのために、わたしは黙っていない。エルサレムのために、わたしは口を閉じない。この町の義が夜明けの光のように輝き出て、その救いが燃えるたいまつのようになるまで。
62:2 そうすれば、国々はあなたの義を見て、すべての王があなたの輝きを見る。あなたは新しい名で呼ばれる。主ご自身がその名をつけてくださる。
62:3 あなたは主の手の中で、美しい冠となる。あなたの神の手のひらの上で、王の頭を飾る冠となる。
62:4 もう「見捨てられた女」とは呼ばれない。あなたの土地も、もう「荒れ果てた地」とは呼ばれない。あなたは「わたしの喜び」と呼ばれ、あなたの土地は「結ばれた地」と呼ばれる。主があなたを喜び、あなたの土地は主のものとなるからだ。
62:5 若者が乙女と結ばれるように、あなたを造った方があなたと結ばれる。花婿が花嫁を喜ぶように、あなたの神はあなたを喜ぶ。
62:6 エルサレムよ、わたしはあなたの城壁の上に見張りを立てた。彼らは昼も夜も、決して黙らない。主に呼びかける者たちよ、あなたたちも黙ってはいけない。
62:7 主が休むことのないようにしなさい。主がエルサレムを建て直し、この地で人々にたたえられる町とするまで、祈り続けなさい。
62:8 主はその右の手、その力強い腕にかけて誓われた。「わたしはもう、あなたの穀物を敵の食べ物として渡さない。あなたが苦労して造ったぶどう酒を、よその者たちに飲ませはしない。
62:9 刈り入れた者がそれを食べて、主をたたえる。集めた者が、わたしの聖なる庭でそれを飲む。」
62:10 門を通れ、通り抜けよ。人々のために道を整えよ。街道を造れ、造り上げよ。石を取り除け。旗を高く掲げ、諸国の民に知らせよ。
62:11 見よ、主は地の果てまで告げ知らせた。「シオンの娘にこう伝えよ。『見よ、あなたの救い主が来る。見よ、その報いは主とともにあり、主が働いた実りは主の前にある。』」
62:12 人々は彼らを「聖なる民」「主に贖われた者たち」と呼ぶ。そしてあなたは「求められた町」「見捨てられない町」と呼ばれる。
63:1 エドムから来るこの人はだれだろう。ボツラから、真っ赤に染まった衣をまとって来る。豪華な装いに身を包み、あふれる力で進んでくる。「それはわたしだ。正義を語り、救う力を持つ者。」
63:2 どうしてあなたの装いは赤いのか。まるでぶどうを踏む人の衣のようだ。
63:3 「わたしはひとりでぶどうを踏んだ。どの民の中にも、わたしと共にいる者はいなかった。わたしは怒りのままに彼らを踏みつけ、憤りのままに踏みにじった。彼らの血がわたしの衣に飛び散り、わたしは着ているものをすべて汚した。
63:4 復讐の日を、わたしは心に決めていた。わたしが救い出す年が、もう来たのだ。
63:5 見回しても、助ける者はいなかった。支える者がいないことに、わたしは驚いた。それで、わたし自身の腕が救いをもたらし、わたしの憤りがわたしを支えた。
63:6 わたしは怒りのままに諸国の民を踏みつけ、憤りのままに彼らを酔わせ、彼らの血を地に流した。」
63:7 わたしは主の慈しみを語り伝えよう。主をほめたたえよう。主がわたしたちにしてくださったすべてのこと、イスラエルの家に注がれた大きな恵みを。主はあわれみと、あふれる慈しみによって、それを与えてくださった。
63:8 主は言われた。「まことに、彼らはわたしの民。裏切ることのない子どもたちだ。」こうして主は、彼らを救う者となられた。
63:9 彼らが苦しむとき、主も共に苦しんだ。御前にいる使いが彼らを救った。主は愛とあわれみによって彼らを救い出し、昔からずっと、彼らを抱き上げ、担ってこられた。
63:10 ところが彼らは逆らい、主の聖なる霊を悲しませた。それで主は、彼らの敵となり、自ら彼らと戦われた。
63:11 そのとき民は、昔の日々を、モーセの時代を思い起こした。群れの羊飼いたちとともに、彼らを海から導き上げた方はどこにいるのか。彼らのただ中に、聖なる霊を置いた方はどこにいるのか。
63:12 モーセの右手に、栄光に輝く腕を進ませた方はどこにいるのか。彼らの前で海を二つに分け、ご自分の名をとこしえに輝かせた方は。
63:13 深い淵を通って彼らを導いた方は。荒れ野を行く馬のように、彼らはつまずくことがなかった。
63:14 谷を下っていく家畜のように、主の霊は彼らを休ませた。こうしてあなたはご自分の民を導き、ご自分のために輝かしい名を打ち立てられた。
63:15 天から見下ろし、ご覧ください。あなたの聖なる、輝かしい住まいから。あなたの熱い思いと力強い御業は、どこにあるのですか。あなたの深い慈しみとあわれみは、わたしへと向かうのをこらえておられます。
63:16 あなたこそ、わたしたちの父です。アブラハムがわたしたちを知らず、イスラエルがわたしたちを認めなくても、主よ、あなたがわたしたちの父です。「わたしたちを救い出す方」、それが昔からのあなたの名です。
63:17 主よ、なぜあなたは、わたしたちをあなたの道から迷わせ、あなたを畏れ敬う心をかたくなにされるのですか。あなたに仕える者たちのために、あなたの受け継ぐ部族のために、帰って来てください。
63:18 あなたの聖なる民が、それを受け継いだのは、ほんのわずかの間だけだった。わたしたちの敵は、あなたの聖なる場所を踏みにじった。
63:19 わたしたちは、あなたがかつて治めたことのない者、あなたの名で呼ばれたこともない者のようになってしまった。
64:1 ああ、あなたが天を裂いて降りて来てくださったなら。あなたの前で、山々は震え崩れるだろうに。
64:2 火が枯れ枝を燃え立たせ、火が水を沸き立たせるように。あなたの敵にあなたの名を知らせ、国々があなたの前でおののくために。
64:3 あなたが、わたしたちの思いもよらない恐るべきことを行われたとき、あなたは降りて来られた。あなたの前で、山々は震え崩れた。
64:4 昔から、だれもそんなことを聞いたことがなく、耳にしたこともない。あなたのほかに、ご自分を待ち望む者のために働く神を、目にした者はいない。
64:5 あなたは、喜んで正しいことを行う者、あなたの道を歩みながらあなたを心に留める者を、迎えてくださる。ご覧ください、あなたは怒られ、わたしたちは罪を犯した。わたしたちは長い間、その罪の中にいる。それでも、わたしたちは救われるのだろうか。
64:6 わたしたちはみな、汚れた者のようになり、わたしたちの正しい行いはすべて、汚れた衣のようだ。わたしたちはみな、葉のように枯れ、わたしたちの過ちは風のように、わたしたちを運び去る。
64:7 あなたの名を呼ぶ者はなく、奮い立ってあなたにすがりつく者もいない。あなたが御顔をわたしたちから隠し、わたしたちを、自分の過ちの手に委ねて消え去らせてしまわれたからだ。
64:8 でも今、主よ、あなたはわたしたちの父だ。わたしたちは粘土で、あなたはそれを形づくる方。わたしたちはみな、あなたの手が造ったものだ。
64:9 主よ、どうか、そんなに激しく怒らないでください。いつまでもわたしたちの過ちを覚えていないでください。ご覧ください、わたしたちはみな、あなたの民だ。
64:10 あなたの聖なる町々は、荒れ果ててしまった。シオンは荒れ野となり、エルサレムは廃墟となった。
64:11 わたしたちの先祖があなたをほめたたえた、あの聖なる美しい神殿は、火で焼かれてしまった。わたしたちの大切なものはみな、廃墟となった。
64:12 主よ、これほどのことがあっても、まだ何もせず黙っておられるのですか。そこまでわたしたちを、ひどく苦しめられるのですか。
65:1 わたしは、尋ねもしなかった者たちに応じ、わたしを捜さなかった者たちに見つけられた。わたしの名を呼ばなかった民に、「ここにいる、ここにいる」と言った。
65:2 わたしは一日中、手を差し伸べてきた。逆らってばかりの民に。彼らは良くない道を、自分の思いのままに歩んでいる。
65:3 この民は、いつもわたしの目の前で、わたしを怒らせる。庭園でいけにえをささげ、れんがの上で香をたく。
65:4 彼らは墓場に座り込み、隠れた場所で夜を過ごす。豚の肉を食べ、その器には汚れた肉の煮汁が入っている。
65:5 そして言う。「そこにいろ、近寄るな。わたしはお前より聖なる者だ」と。こんな者たちは、わたしの鼻をつく煙、一日中燃え続ける火だ。
65:6 見よ、これはわたしの前に書き記されている。わたしは黙っていない。必ず報いる。彼らのふところに報いる。
65:7 お前たちの罪も、お前たちの先祖の罪も、まとめて報いる、と主は言われる。彼らは山の上で香をたき、丘の上でわたしをののしった。だからわたしは、彼らのしてきたことを、そのふところにきっちり量り返す。
65:8 主はこう言われる。「ぶどうの房にまだ新しい汁が残っていると、人は『それを捨てるな、そこに恵みがある』と言う。同じようにわたしも、わたしのしもべたちのために、すべてを滅ぼしはしない。
65:9 わたしはヤコブから子孫を、ユダからわたしの山々を受け継ぐ者を生み出す。わたしが選んだ者たちがそれを受け継ぎ、わたしのしもべたちがそこに住む。
65:10 シャロンは羊の群れの牧場となり、アコルの谷は牛の群れが休む場所となる。わたしを求めた、わたしの民のためにだ。
65:11 だが、お前たちは主を捨て、わたしの聖なる山を忘れ、「幸運の神」ガドのために食卓を整え、「運命の神」メニに混ぜ合わせた酒を満たして供える者たちだ。
65:12 だからわたしは、お前たちを剣に渡す。お前たちはみな、ほふり場にひざまずくことになる。わたしが呼んだのに、お前たちは答えず、わたしが語ったのに、聞こうとしなかったからだ。お前たちはわたしの目に悪いことを行い、わたしが望まないことを選んだ。
65:13 だから、主なる神はこう言われる。「見よ、わたしのしもべたちは食べる。だがお前たちは飢える。わたしのしもべたちは飲む。だがお前たちは渇く。わたしのしもべたちは喜ぶ。だがお前たちは恥を受ける。
65:14 見よ、わたしのしもべたちは心の底から喜んで歌う。だがお前たちは心の痛みで叫び、打ちくだかれた霊で泣きわめく。
65:15 お前たちは自分の名を、わたしが選んだ者たちの呪いの言葉として残す。主なる神はお前を殺し、ご自分のしもべたちには別の名を与える。
65:16 そうなれば、この地で祝福を願う者は、真実の神によって祝福を願い、この地で誓う者は、真実の神によって誓う。かつての苦しみは忘れ去られ、わたしの目から隠されるからだ。
65:17 見よ、わたしは新しい天と新しい地を創造する。以前のことは思い出されることもなく、心に上ることもない。
65:18 だから、わたしが創造するものを、いつまでも喜び、楽しめ。見よ、わたしはエルサレムを喜びとして、その民を楽しみとして創造する。
65:19 わたしはエルサレムを喜び、わたしの民を楽しむ。そこではもう、泣く声も、叫ぶ声も聞こえない。
65:20 そこにはもう、生まれて数日で死ぬ子も、生涯を全うできない老人もいない。百歳で死んでもまだ若者と言われ、百歳に届かない者は呪われた者とされる。
65:21 人々は家を建てて住み、ぶどう畑を作ってその実を食べる。
65:22 自分が建てた家に他人が住むことはなく、自分が植えたものを他人が食べることもない。わたしの民の一生は木のように長く、わたしが選んだ者たちは、自分の手で作り上げたものを存分に楽しむ。
65:23 彼らの働きがむだになることはなく、生んだ子が突然の災いに遭うこともない。彼らは主に祝福された者の子孫であり、その子孫もいつも彼らと共にいる。
65:24 彼らが呼びかける前に、わたしは答える。彼らがまだ話している間に、わたしは聞く。
65:25 狼と子羊は一緒に草を食べ、獅子は牛のようにわらを食べる。蛇のえさは土だ。わたしの聖なる山のどこででも、害を加える者も、滅ぼす者もいない、と主は言われる。
66:1 主はこう言われる。「天はわたしの王座、地はわたしの足台だ。あなたたちがわたしのために建てる家など、いったいどこにあるのか。わたしが休む場所など、どこにあるのか。」
66:2 これらすべては、わたしの手が造ったもの。こうしてすべてが存在するようになった、と主は言われる。わたしが目を留めるのは、へりくだって心の砕かれた者、わたしの言葉におののく者だ。
66:3 牛をほふる者は、人を殺す者と同じ。子羊をいけにえにする者は、犬の首を折る者と同じ。穀物のささげ物をする者は、豚の血をささげる者と同じ。香をたく者は、偶像を拝む者と同じ。彼らは自分勝手な道を選び、その魂は忌まわしいものを喜んでいる。
66:4 だからわたしも、彼らをひどい目に遭わせることを選び、彼らが恐れているものを彼らに臨ませる。わたしが呼んでも答える者はなく、わたしが語っても聞こうとしなかったからだ。彼らはわたしの目に悪いことを行い、わたしの望まないことを選んだ。
66:5 主の言葉におののく者たちよ、主の言葉を聞け。あなたたちを憎み、わたしの名のためにあなたたちを追い出した兄弟たちは、こう言っている。「主が栄光を現されるがいい。そうすれば、あなたたちの喜ぶ姿を見てやろう。」だが、恥を見るのは彼らのほうだ。
66:6 町から騒がしい声が聞こえる。神殿から声が聞こえる。それは、敵に報いを返す主の声だ。
66:7 産みの苦しみが来る前に、彼女は子を産んだ。陣痛が始まる前に、男の子を産み落とした。
66:8 こんなことを聞いたことがあるだろうか。こんなことを見たことがあるだろうか。国土がたった一日で生まれるだろうか。国民が一瞬で生まれるだろうか。ところがシオンは、産みの苦しみを覚えたと思うと、もう自分の子どもたちを産んだ。
66:9 わたしが産む時を迎えさせておいて、産ませないことがあるだろうか、と主は言われる。わたしが産ませる者なのに、胎を閉ざすことがあるだろうか、とあなたの神は言われる。
66:10 エルサレムを愛する者たちよ、みな、この都と共に喜べ。その喜びを分かち合え。この都のために嘆いていた者たちよ、みな、共に喜び踊れ。
66:11 あなたたちは、慰めに満ちたこの都の乳を吸って満ち足りる。あふれる栄光を心ゆくまで味わって楽しむのだ。
66:12 主はこう言われる。見よ、わたしは川のように平和をこの都に向けて注ぎ、あふれる流れのように国々の栄光を注ぐ。あなたたちは乳を飲み、腕に抱かれて運ばれ、膝の上であやされる。
66:13 母が子を慰めるように、わたしはあなたたちを慰める。あなたたちはエルサレムで慰めを受ける。
66:14 あなたたちはそれを見て心から喜び、その体は若草のように生き生きとよみがえる。主の御手はその僕たちに現れ、その怒りは敵に向けられることが知られる。
66:15 見よ、主は火をまとって来られる。その戦車はつむじ風のようだ。燃える怒りをぶつけ、火の炎をもって責め立てるために来られる。
66:16 主は火をもって、また剣をもって、すべての人をさばかれる。主に討たれる者は多い。
66:17 園に入るために身を清め、身を浄める者たち、その中心にいる一人にならって続く者たち、豚の肉や汚れたもの、ねずみを食べる者たちは、みな共に滅び去る、と主は言われる。
66:18 わたしは彼らの行いも思いも知っている。わたしは来て、すべての国民と、あらゆる言葉を話す民を集める。彼らは来て、わたしの栄光を見る。
66:19 わたしは彼らの間に一つのしるしを置く。そして、生き残った者たちを、いろいろな国へ送り出す。タルシシュ、プル、弓を引くルド、トバル、ヤワン、そして、まだわたしのうわさを聞いたことも、わたしの栄光を見たこともない、遠くの島々へ。彼らは国々の間で、わたしの栄光を伝える。
66:20 そして彼らは、すべての国から、あなたたちの兄弟姉妹を、主へのささげ物として連れて来る。馬や戦車、荷車やらば、らくだに乗せて、わたしの聖なる山エルサレムへ連れて来る、と主は言われる。イスラエルの人々が、清い器に入れたささげ物を主の神殿へ運んで来るように。
66:21 わたしは彼らの中からも、祭司やレビ人として選び取る、と主は言われる。
66:22 わたしが造る新しい天と新しい地が、わたしの前に立ち続けるように、あなたたちの子孫とその名も、いつまでも続く、と主は言われる。
66:23 そして、新月のたびごとに、また安息日のたびごとに、すべての人がわたしの前に来て、ひれ伏す、と主は言われる。
66:24 彼らは外に出て、わたしにそむいた者たちの死体を見る。その死体を食らううじは死なず、火も消えることがない。それはすべての人にとって、おぞましいものとなる。
エレミヤ書
1:1 ベニヤミンの地アナトトにいた祭司の一人、ヒルキヤの息子エレミヤの言葉。
1:2 主の言葉がエレミヤに届いたのは、アモンの息子でユダの王ヨシヤの時代、その治世の十三年目のことだった。
1:3 主の言葉はその後も、ヨシヤの息子でユダの王エホヤキムの時代を通して届き、ヨシヤの息子でユダの王ゼデキヤの治世の十一年目が終わるまで、つまりエルサレムの人々が捕らえられて連れ去られる第五の月まで続いた。
1:4 主の言葉がわたしに届いた。
1:5 「わたしがあなたを母の胎内でかたち造る前から、わたしはあなたを知っていた。あなたが生まれ出る前から、あなたを聖なる務めのために選び分け、国々への預言者として立てていた。」
1:6 わたしは言った。「ああ、主なる神よ。わたしは話し方を知りません。まだ若者にすぎないのです。」
1:7 すると主はわたしに言われた。「若者にすぎない、などと言ってはならない。あなたはわたしが送るところすべてに行き、わたしが命じることをすべて語るのだ。
1:8 彼らを恐れるな。わたしがあなたと共にいて、あなたを助け出すからだ。」——主はそう告げられる。
1:9 それから主は手を伸ばし、わたしの口に触れた。そして主はわたしに言われた。「見よ、わたしはわたしの言葉をあなたの口に授けた。
1:10 見よ、わたしは今日、あなたを国々と王国の上に立てる。引き抜き、壊し、滅ぼし、倒すため、また建て、植えるためだ。」
1:11 主の言葉がわたしに届いた。「エレミヤよ、何が見えるか。」わたしは答えた。「アーモンドの枝が見えます。」
1:12 すると主はわたしに言われた。「よく見た。わたしは自分の言葉を実現させるために、見張っているのだ。」
1:13 主の言葉が、二度目にわたしに届いた。「何が見えるか。」わたしは答えた。「煮え立った鍋が見えます。北のほうから、こちらへ傾いています。」
1:14 すると主はわたしに言われた。「北から災いが吹き出し、この地に住むすべての者に襲いかかる。
1:15 見よ、わたしは北の王国のすべての一族を呼び寄せる、と主は言われる。彼らはやって来て、それぞれの王座をエルサレムの門の入り口に据える。町を囲むすべての城壁に向かい、ユダのすべての町に向かって攻めかかる。
1:16 わたしは彼らのすべての悪に対して、わたしの裁きを言い渡す。彼らはわたしを捨て、ほかの神々に香をたき、自分の手で造ったものを拝んだからだ。
1:17 だからあなたは、腰に帯を締めて立ち上がり、わたしが命じることをすべて彼らに語りなさい。彼らを恐れてはならない。さもないと、わたしはあなたを彼らの前でおびえさせることになる。
1:18 見よ、わたしは今日、あなたを、この地のすべてに立ち向かう城壁の町とし、鉄の柱とし、青銅の城壁とする。ユダの王たち、その高官たち、祭司たち、そしてこの地の民に立ち向かわせるためだ。
1:19 彼らはあなたと戦う。だが、あなたに勝つことはできない。わたしがあなたと共にいて、あなたを救い出すからだ、と主は言われる。」
2:1 主の言葉がわたしに届いた。
2:2 「行って、エルサレムに聞こえるように呼びかけなさい。主はこう言われる。わたしは、あなたの若い頃の慈しみ、婚約のときの愛を覚えている。あなたは種もまかれない荒れ野を、わたしについて来た。
2:3 イスラエルは主にとって聖なるもの、主の収穫の初穂だった。これを食い荒らす者はみな罪に問われ、災いに見舞われる、と主は言われる。」
2:4 主の言葉を聞け、ヤコブの家よ、イスラエルの家のすべての一族よ。
2:5 主はこう言われる。あなたたちの先祖は、わたしのどこに不正を見つけたのか。それなのに、彼らはわたしから遠く離れ、むなしい偶像を追い求めて、自分もむなしくなった。
2:6 彼らはこう問わなかった。『わたしたちをエジプトの地から導き上り、荒れ野を通らせてくださった主は、どこにおられるのか』と。その荒れ野は、砂漠と穴だらけの地、乾ききって死の陰に覆われた地、だれも通らず、だれも住まない地だった。
2:7 わたしはあなたたちを、実り豊かな土地に導き入れた。その実りと恵みを食べさせるためだ。ところがあなたたちは、そこに入るとわたしの地を汚し、わたしが与えたこの地を、忌まわしいものにしてしまった。
2:8 祭司たちは『主はどこにおられるのか』と問わなかった。律法を扱う者たちもわたしを知らず、指導者たちはわたしに背いた。預言者たちはバアルの名によって預言し、何の役にも立たないものを追い求めた。
2:9 だからわたしは、改めてあなたたちを問いただす、と主は言われる。あなたたちの子孫のことも、問いただす。
2:10 キティムの島々に渡って、よく見てみよ。ケダルに人を送って、じっくり調べてみよ。こんなことが今までにあっただろうか。
2:11 自分たちの神々を取り替えた国が、ほかにあるだろうか。しかもその神々は、まことの神ですらないのに。それなのにわたしの民は、自分たちの栄光を、何の役にも立たないものと取り替えてしまった。
2:12 天よ、これに驚け。おののき、激しく打ちのめされよ、と主は言われる。
2:13 わたしの民は、二つの悪を行った。一つは、命の水がわき出る泉であるわたしを、捨てたこと。もう一つは、自分たちのために水ためを掘ったこと。それは水をためておけない、こわれた水ためだ。
2:14 イスラエルは奴隷なのか。家で生まれた召し使いなのか。それなのに、なぜ略奪の獲物になってしまったのか。
2:15 若いライオンたちが彼に向かってほえ、うなり声をあげた。そして彼の地を荒れ果てさせた。町々は焼かれ、住む者もいなくなった。
2:16 メンフィスとタフパンヘスの人々までもが、あなたの頭を打ち砕いた。
2:17 あなたがこうなったのは、自分のせいではないか。あなたの神である主が道を歩ませてくださっていたのに、その主を捨てたからだ。
2:18 それなのに今、あなたはなぜエジプトへの道を行き、ナイルの水を飲もうとするのか。なぜアッシリアへの道を行き、あの大河の水を飲もうとするのか。
2:19 あなた自身の悪が、あなたを罰する。あなたの裏切りが、あなたを責める。だからよく知り、目を開けて見なさい。あなたの神である主を捨てたこと、わたしを恐れる心を失ったことが、どれほど悪く、どれほど苦いことかを。万軍の主なる神はこう告げる。
2:20 ずっと昔、わたしはあなたの首の重い枠をこわし、あなたを縛る綱を断ち切った。それなのにあなたは「もう仕えない」と言った。そればかりか、どの高い丘の上でも、どの緑の木の下でも、あなたは身を横たえ、遊女のようにふるまった。
2:21 わたしはあなたを、選りすぐりのぶどうの木として植えた。すべてまことの種だった。それなのに、どうしてあなたは、わたしにとって別物の、腐ったぶどうの木に変わってしまったのか。
2:22 たとえあなたが灰汁で身を洗い、たくさんの石けんを使っても、あなたの罪の汚れはわたしの前にはっきり残っている、と主なる神は告げる。
2:23 どうしてあなたは「わたしは汚れていない。バアルの神々を追いかけたことはない」と言えるのか。谷での自分のふるまいを見なさい。自分が何をしたかをよく考えなさい。あなたは、あちこち走り回る、落ち着きのない若いらくだのようだ。
2:24 荒れ野に慣れた野ろばのように、欲情のままに風のにおいをかぐ。その盛りの欲を、だれが止められるだろう。その雌を求める者は、疲れることもいらない。発情の月になれば、たやすく見つけられるのだから。
2:25 はだしになるまで走り回るのをやめなさい。のどが渇くまで追い求めるのをやめなさい。それなのにあなたは言った。「もうむだだ。いや、わたしはよその神々を愛してしまった。だから、その後を追って行く」と。
2:26 盗人が捕まって恥をかくように、イスラエルの民も恥をかく。民も、その王たちも、高官たちも、祭司たちも、預言者たちもみなそうだ。
2:27 彼らは木に向かって「あなたはわたしの父だ」と言い、石に向かって「あなたがわたしを産んだ」と言う。彼らはわたしに顔ではなく背を向けた。それでいて、災いにあうと「立ち上がって、わたしたちを救ってください」と言う。
2:28 あなたが自分のために造った神々は、どこにいるのか。あなたが災いにあうとき、その神々に救えるものなら、立ち上がらせてみなさい。ユダよ、あなたの町の数だけ、あなたの神々もいるではないか。
2:29 どうしてあなたたちは、わたしに文句を言うのか。あなたたちはみな、わたしに背いたのだ、と主は告げる。
2:30 わたしがあなたたちの子らを打っても、むだだった。彼らは少しも懲りなかった。あなたたちの剣は、獲物を食い荒らす獅子のように、あなたたち自身の預言者たちをのみ込んだ。
2:31 今の時代の者たちよ、主の言葉に耳を傾けよ。わたしはイスラエルにとって、荒れ野だったのか。それとも暗闇の地だったのか。それなのに、なぜわたしの民は「おれたちは自由だ。もうあなたのところへは行かない」と言うのか。
2:32 おとめが自分の飾りを忘れるだろうか。花嫁が晴れ着を忘れるだろうか。それなのに、わたしの民は数えきれないほど長い間、わたしを忘れてしまった。
2:33 あなたは恋人を探すのが、なんと上手なことか。悪い女たちにさえ、自分のやり方を教え込むほどだ。
2:34 それだけではない。あなたの服のすそには、罪のない貧しい人たちの血までついている。その人たちは、家に押し入る盗人として捕まえたわけでもない。それなのに、あなたはこれらすべてのことをしたのだ。
2:35 それでもあなたは「わたしは潔白だ。主の怒りは、きっとわたしから去った」と言う。だが見よ、わたしはあなたを裁く。あなたが「わたしは罪を犯していない」と言うからだ。
2:36 あなたはなぜ、そんなに軽々しく道を変えて歩き回るのか。かつてアッシリアに裏切られて恥をかいたように、エジプトにも裏切られて恥をかくことになる。
2:37 あなたはそこからも、両手を頭にのせて出て行くことになる。あなたが頼りにしたものを主が退けたので、それによっては何一つうまくいかないからだ。
3:1 主は言われる。もし男が妻を離縁し、その女が彼のもとを去って別の男のものになったら、前の夫はもう一度その女のところへ戻るだろうか。そんなことをすれば、その土地はひどく汚れてしまうではないか。ところがあなたは、多くの恋人と身を汚したのに、それでもわたしのところへ戻ろうというのか、と主は告げる。
3:2 目を上げて、裸の丘を見渡してみよ。あなたが身を汚さなかった場所が、どこかにあるか。あなたは砂漠のアラビア人のように、道ばたに座って恋人を待った。あなたは淫らな行いと悪事で、この土地を汚したのだ。
3:3 だから雨は降らず、春の雨も来なかった。それでもあなたは遊女のように厚かましい顔をして、恥じることを拒んだ。
3:4 それなのに今、あなたはわたしに向かって、こう呼びかけるではないか。「わたしのお父さん、あなたはわたしの若いころからの親しい友です」と。
3:5 「主はいつまでも怒り続けるだろうか。永遠に恨みを抱き続けるだろうか」と。だが見よ、あなたはそう言いながら、できる限りの悪事を行ったのだ。
3:6 ヨシヤ王の時代に、主はわたしにこう言われた。「あなたは、背き去った女イスラエルがしたことを見たか。彼女はすべての高い山に登り、すべての茂った木の下へ行って、そこで淫らなことをした。」
3:7 わたしは思っていた。「これだけのことをしたのだから、彼女はわたしのところに戻ってくるだろう」と。だが、彼女は戻らなかった。その裏切り者の妹ユダは、それを見ていた。
3:8 背き去った女イスラエルが姦淫を重ねたので、わたしは彼女を追い出し、離縁状を渡した。それをわたしははっきり見た。それでも、裏切り者の妹ユダは恐れることなく、自分も出て行って淫らなことをした。
3:9 しかも彼女は淫らなことを軽々しく行い、石や木を相手に姦淫をして、この地を汚した。
3:10 それでもなお、裏切り者の妹ユダは心からわたしに立ち返らず、うわべだけだった、と主は言われる。
3:11 主はわたしに言われた。「背き去った女イスラエルのほうが、裏切り者のユダよりもまだ正しい。」
3:12 行って、北に向かってこの言葉を告げなさい。「戻って来なさい、背き去ったイスラエルよ、と主は言われる。わたしはもう怒りの顔をあなたたちに向けない。わたしは真実な者だから、いつまでも怒り続けはしない、と主は言われる。
3:13 ただ、自分の罪を認めなさい。あなたは自分の神である主に背き、すべての茂った木の下で異国の神々に身を任せ、わたしの声に聞き従わなかった、と主は言われる。
3:14 戻って来なさい、背いた子らよ、と主は言われる。わたしはあなたたちの主人なのだから。わたしはあなたたちを、町から一人、氏族から二人と選び取り、シオンへ連れて行く。
3:15 そして、わたしの心にかなう羊飼いたちをあなたたちに与える。彼らは知識と分別をもってあなたたちを養う。
3:16 その日、あなたたちがこの地で増え、数多くなったとき、人々はもう「主の契約の箱」と口にすることもない、と主は言われる。それが心に浮かぶことも、思い出すことも、恋しがることもなく、二度と作られることもない。
3:17 そのとき、人々はエルサレムを「主の御座」と呼ぶ。すべての国民が主の名のもとに、エルサレムへ集まって来る。彼らはもう、自分たちの悪い心の頑なさに従って歩むことはない。
3:18 その日、ユダの家はイスラエルの家と共に歩み、北の地から一緒にやって来て、わたしがあなたたちの先祖に受け継がせた地に入る。
3:19 わたしはこう言っていた。「どうすればあなたをわたしの子どもの一人として迎え、慕わしい地、どの国の宝よりも美しい、受け継ぎの地を与えられるだろうか」と。そしてわたしは思った。あなたはわたしを「お父さん」と呼び、わたしから離れて行くことはない、と。
3:20 しかし、妻が夫を裏切るように、イスラエルの家よ、あなたたちはわたしを裏切った、と主は言われる。
3:21 裸の丘の上で、声が聞こえる。イスラエルの子らが泣いて、あわれみを求める声だ。彼らは自分の道を曲げ、自分の神である主を忘れてしまったからだ。
3:22 「背き続ける子どもたちよ、帰って来なさい。わたしがあなたたちの背きをいやそう。」「はい、わたしたちはあなたのもとへ参ります。あなたはわたしたちの神、主だからです。
3:23 丘や山々でのにぎやかな祭りは、まことにむなしいものでした。イスラエルの救いは、まことにわたしたちの神、主のうちにあります。
3:24 わたしたちが若いころから、あの恥ずべきものは、先祖が苦労して得たものを食い尽くしてきました。彼らの羊や牛、息子や娘までも。
3:25 わたしたちは自分の恥の中に横たわり、はずかしめに覆われています。わたしたちも先祖も、若いころから今日まで、わたしたちの神、主に罪を犯し、わたしたちの神、主の声に聞き従わなかったからです。」
4:1 「イスラエルよ、もしあなたが帰るなら、わたしのもとへ帰りなさい、と主は言われる。もしあなたが、忌まわしいものをわたしの前から取り除き、もう迷い出ないなら、
4:2 そして『主は生きておられる』と、真実と公正と義をもって誓うなら、諸国の民は主によって祝福され、主を誇りとするだろう。」
4:3 主はユダの人々とエルサレムに、こう言われる。「あなたたちの荒れた畑を耕しなさい。いばらの中に種をまいてはならない。
4:4 ユダの人々、エルサレムに住む者たちよ、主のために心を割礼し、心を覆うものを取り除きなさい。さもないと、あなたたちの悪い行いのために、わたしの怒りが火のように燃え出て、だれにも消せなくなる。」
4:5 ユダに告げ、エルサレムに知らせて、こう言え。「国じゅうで角笛を吹き鳴らせ。声をかぎりに叫んで言え。『集まれ、城壁のある町へ逃げ込もう』と。
4:6 シオンへ向けて旗を掲げよ。急いで逃げよ、立ち止まるな。わたしが北から災いを、大いなる破滅をもたらすからだ。」
4:7 獅子が茂みから躍り出た。国々を滅ぼす者が動き出し、自分のいた場所から出て来た。あなたの国を荒れ地にするためだ。あなたの町々は廃墟となり、住む者もいなくなる。
4:8 だから、粗布を身にまとい、嘆き悲しんで泣き叫べ。主の激しい怒りが、まだわたしたちから去っていないからだ。
4:9 その日には――と主は言われる――王の心も高官たちの心もくじけ、祭司たちはぼう然とし、預言者たちは驚きあわてる。
4:10 そこでわたしは言った。「ああ、主なる神よ。あなたはこの民とエルサレムをすっかりだましてしまわれたのですか。『あなたたちは平安を得る』と言われたのに、剣は命にまで届いています。」
4:11 そのとき、この民とエルサレムに、こう告げられる。「荒れ野の裸の丘から、焼けつくような風がわたしの民の娘に向かって吹きつける。それはもみ殻を吹き分けるためでも、穀物をより分けるためでもない。
4:12 それよりも激しい風が、わたしのもとから吹いて来る。今こそわたしも、彼らにさばきを言い渡す。」
4:13 見よ、敵は雲のようにわき上がり、その戦車はつむじ風のようだ。その馬は鷲よりも速い。ああ、わたしたちは災いだ。滅ぼされてしまう。
4:14 エルサレムよ、あなたの心を悪から洗い清めなさい。そうすれば救われる。いつまで、あなたの中に悪い思いを住まわせておくのか。
4:15 ダンから知らせる声が響き、エフライムの山から災いを告げる声が聞こえる。
4:16 諸国の民に伝えよ。「見よ」と。エルサレムに向けて知らせよ。「攻め囲む者たちが遠い国からやって来る。彼らはユダの町々に向かって鬨の声をあげる」と。
4:17 畑を見張る者のように、彼らは周りを取り囲む。エルサレムがわたしに背いたからだ――と主は言われる。
4:18 こうなったのは、あなた自身の生き方と行いのせいだ。これがあなたの受ける悪の報いだ。ああ、なんと苦く、あなたの心にまで突き刺さることか。
4:19 ああ、腹が、腹が痛む。心臓の壁がうずく。胸が高鳴って、もう黙っていられない。角笛の音が聞こえるからだ。魂よ、あなたは戦いの雄叫びを聞いたのだ。
4:20 破壊の上に破壊が告げられる。国じゅうが荒らされたからだ。突然、わたしの天幕は倒され、一瞬で幕は引き裂かれた。
4:21 いつまでわたしは、あの旗を見なければならないのか。いつまで角笛の音を聞かなければならないのか。
4:22 わたしの民は愚かだ。彼らはわたしを知らない。分別のない子どもたちで、物事を悟る力もない。悪いことをするのには賢いのに、良いことをするすべを知らない。
4:23 わたしは地を見た。すると、それは形もなく、むなしく、荒れ果てていた。天を見上げても、その光はなかった。
4:24 わたしは山々を見た。すると、それは揺れ動き、すべての丘が震えていた。
4:25 わたしは見た。すると、そこには人ひとりいなかった。空の鳥もみな飛び去っていた。
4:26 わたしは見た。すると、実り豊かな地は荒れ野となり、その町々はすべて崩れ落ちていた。主の前で、燃えるような怒りの前で。
4:27 主はこう言われるからだ。「地はすべて荒れ果てる。だが、わたしはそれを滅ぼし尽くしはしない。」
4:28 これゆえ、地は嘆き悲しみ、上にある天は暗くなる。わたしがそう語り、そう心に定めたからだ。わたしは思い直さず、決してそこから引き返さない。
4:29 騎兵と弓を引く者の声に、町という町の人がみな逃げ出す。彼らは茂みに逃げ込み、岩場によじ登る。すべての町は見捨てられ、そこに住む者は一人もいなくなる。
4:30 荒らされてしまうあなたは、いったい何をしようというのか。真っ赤な衣をまとっても、金の飾りで身を着飾っても、目を化粧で大きく描いても、むだだ。あなたは美しく装っても意味がない。あなたに言い寄っていた者たちはあなたを見下し、あなたの命をねらうのだから。
4:31 わたしは、産みの苦しみにあえぐ女のような声を聞いた。初めての子を産む女のような、苦しみの叫びを。シオンの娘の声だ。彼女はあえぎながら両手を広げて言う。「ああ、もうだめだ。わたしの魂は、人殺したちの前で力尽きてしまった。」
5:1 エルサレムの通りを歩き回り、よく見て、確かめてほしい。広場を探し回って、もし一人でも、公正を行い、真実を求める人を見つけられるなら、わたしはこの町を赦そう。
5:2 彼らは「主は生きておられる」と言うが、その誓いは偽りだ。
5:3 主よ、あなたの目は真実を求めているのではないか。あなたは彼らを打ったのに、彼らは痛みも感じなかった。打ちのめしても、彼らは注意を受け入れようとしなかった。顔を岩よりも固くして、立ち返ることを拒んだ。
5:4 わたしは思った。「これはきっと貧しい人たちだ。何もわからないのだ。主の道を知らず、自分の神の定めを知らないのだから。」
5:5 だから、身分の高い人たちのところへ行って話そう。彼らなら主の道を知り、自分の神の定めを知っているはずだ。ところが、彼らもみな同じように、くびきを壊し、綱を引きちぎっていた。
5:6 だから、森からライオンが出てきて彼らを襲い、荒れ地の狼が彼らを引き裂く。ヒョウが彼らの町をねらっていて、外に出る者はみな引き裂かれる。彼らの罪は多く、背いて離れたことは数えきれないからだ。
5:7 どうしてあなたを赦せるだろうか。あなたの子らはわたしを捨て、神でもないものにかけて誓った。わたしが満ち足りるまで養ったのに、彼らは姦淫をし、遊女の家に群がった。
5:8 彼らは、よく肥えて盛りのついた馬のようだ。だれもが隣人の妻を求めていなないている。
5:9 これらのことを、わたしが罰しないでいられるだろうか、と主は言われる。このような国に、わたしが報復しないでいられるだろうか。
5:10 彼女のぶどう畑の畝に上って荒らせ。だが、絶やし尽くしてはならない。伸びた枝を取り払え。それらは主のものではないからだ。
5:11 イスラエルの家とユダの家は、わたしをひどく裏切ったのだから、と主は言われる。
5:12 彼らは主を偽って言った。「主など何もしない。わたしたちに災いは来ない。剣も飢えも見ることはない。」
5:13 預言者たちは風にすぎない。言葉など彼らのうちにはない。彼らが言うことは、その身に返るだけだ。」
5:14 だから、万軍の神、主はこう言われる。「あなたたちがこんなことを言うから、見よ、わたしはあなたの口に置くわたしの言葉を火とし、この民を薪とする。火は彼らを焼き尽くす。」
5:15 イスラエルの家よ、見よ、わたしは遠くから一つの国民をあなたたちに攻め寄せさせる、と主は言われる。それは力ある国、大昔からある国。あなたの知らない言葉を話す国で、彼らが何を言っているのか、あなたには聞き取れない。
5:16 その矢筒は、口を開いた墓のようだ。彼らはみな勇士だ。
5:17 彼らはあなたの収穫とパンを食い尽くす。あなたの息子や娘が食べるはずのものを。彼らはあなたの羊や牛を食い尽くし、ぶどうやいちじくの木を食い荒らす。あなたが頼りにしている城壁の町々を、剣で打ち壊す。
5:18 それでも、その日々にあっても、と主は言われる、わたしはあなたたちを絶やし尽くすことはしない。
5:19 こうして、あなたたちが「どうしてわたしたちの神、主はこんなことをすべてなさったのか」と言うとき、あなたはこう答えなさい。「あなたたちがわたしを捨て、自分の地で異国の神々に仕えたように、あなたたちは自分のものではない地で、よその者たちに仕えることになる。」
5:20 このことをヤコブの家に告げ、ユダに聞かせて言え。
5:21 愚かで、心のない民よ、これを聞け。目があっても見えず、耳があっても聞こえない者たちよ。
5:22 あなたたちはわたしを恐れないのか、と主は言われる。わたしの前で震えないのか。わたしは砂を海の境として置き、永遠の定めとした。海はそれを越えることができない。波がどれほど逆巻いても、勝つことはできず、どんなに鳴りとどろいても、それを越えることはできない。
5:23 しかし、この民の心は、そむき、逆らう心だ。彼らはそれて、離れ去ってしまった。
5:24 彼らは心の中でこう言うこともしない。「わたしたちの神、主を恐れよう。主は、秋の雨も春の雨も、時にかなって与え、刈り入れのために定められた週々を、わたしたちのために守ってくださる方だ。」
5:25 あなたたちの悪が、これらの恵みを遠ざけてしまった。あなたたちの罪が、良いものをあなたたちから奪ったのだ。
5:26 わたしの民の中に、悪者がいる。彼らは鳥を捕る者のように身をひそめ、わなを仕掛けて人を捕らえる。
5:27 鳥かごが鳥でいっぱいなように、彼らの家は偽りでいっぱいだ。だから彼らは大きくなり、豊かになった。
5:28 彼らは肥え太り、つやつやと輝いている。悪事にかけては、際限がない。みなしごの訴えを正しく裁こうともせず、それでいて栄えている。貧しい人の権利も、守ろうとしない。
5:29 こんなことを、わたしが罰しないでいられるだろうか、と主は言われる。このような国に、わたし自身が報いないでいられるだろうか。
5:30 驚くべきこと、恐ろしいことが、この地で起きている。
5:31 預言者は偽りを語り、祭司は預言者と手を組んで支配する。わたしの民は、それを喜んでいる。だが、その終わりに、あなたたちはどうするつもりなのか。
6:1 ベニヤミンの人々よ、エルサレムの中から逃げ出せ。テコアで角笛を吹き鳴らし、ベト・ハケレムに合図の火を上げよ。災いが北から迫っている。大いなる破滅が来る。
6:2 美しく、か弱い女――そのようなものに、わたしはシオンの娘をたとえた。
6:3 羊飼いたちが群れを連れて、彼女のところへやって来る。その周りに天幕を張りめぐらし、それぞれ自分の場所で群れを飼う。
6:4 「彼女に向かって、戦いの支度をせよ。立て、真昼のうちに攻め上ろう。」「ああ、残念だ。日が傾いてしまった。夕方の影が伸びてきた。」
6:5 「立て、夜のうちに攻め上ろう。彼女の宮殿を壊してしまおう。」
6:6 万軍の主はこう言われる。「木を切り倒し、エルサレムに向かって攻めの土手を築け。この町は罰せられるべき町だ。その中は、しいたげに満ちている。」
6:7 井戸が水を湧き出させるように、この町は次から次へと悪を湧き出させる。町の中では暴力と略奪の声が聞こえ、わたしの前にはいつも病と傷がある。
6:8 エルサレムよ、忠告を聞け。さもないと、わたしの心はあなたから離れてしまう。あなたを荒れ果てさせ、だれも住まない土地にしてしまう。
6:9 万軍の主はこう言われる。「ぶどうの実を摘み尽くすように、イスラエルの生き残りも摘み取られてしまう。ぶどうを収穫する人のように、もう一度その枝に手を伸ばせ。」
6:10 だれに語り、だれに警告すれば、聞いてもらえるのだろう。彼らの耳はふさがっていて、聞くことができない。主の言葉は彼らにとって、ばかにする対象でしかなく、少しも喜ばない。
6:11 だからわたしは、主の怒りで満ちている。もう抑えきれず、疲れ果てた。「その怒りを、通りにいる子どもたちに、集まっている若者たちに、いっせいに注ぎ出せ。夫も妻も捕らえられ、年寄りも、年老いて日を重ねた者も、みな捕らえられる。
6:12 彼らの家は他人のものとなり、畑も妻も、いっしょに奪われる。わたしがこの地に住む者たちに手を伸ばすからだ」と主は言われる。
6:13 身分の低い者から高い者まで、みな不正な利益をむさぼり、預言者から祭司まで、みな偽りを行っている。
6:14 彼らはわたしの民の傷を、いいかげんに手当てして、「平和だ、平和だ」と言う。だが、平和などないのに。
6:15 彼らは忌まわしいことをして恥ずかしくないのか。いや、少しも恥じず、赤面することさえ知らない。だから彼らは、倒れる者たちといっしょに倒れる。わたしが彼らを罰するとき、つまずき倒れると主は言われる。
6:16 主はこう言われる。「分かれ道に立って、よく見なさい。昔からの道を尋ね、どれが良い道かを問い、その道を歩め。そうすれば、あなたがたの魂は安らぎを得る。」しかし彼らは言った。「そこは歩かない。」
6:17 わたしはあなたがたの上に見張りを立てて言った。「角笛の音に耳を傾けよ。」しかし彼らは言った。「耳を傾けない。」
6:18 だから、国々よ、聞け。人々の集まりよ、彼らに何が起こるかを知れ。
6:19 地よ、聞け。見よ、わたしはこの民に災いをもたらす。それは彼ら自身の企みが生んだ実だ。彼らがわたしの言葉に耳を傾けず、わたしの教えを拒んだからだ。
6:20 シェバから届く乳香や、遠い国から来る良い香りの葦が、わたしに何になるだろう。あなたがたの焼き尽くすささげ物を、わたしは受け入れない。あなたがたのいけにえも、わたしを喜ばせない。
6:21 だから、主はこう言われる。「見よ、わたしはこの民の前につまずきの石を置く。父も子も共にそれにつまずき、隣人も友も滅びる。」
6:22 主はこう言われる。「見よ、北の国から一つの民がやって来る。大きな国が地の果てから立ち上がる。
6:23 彼らは弓と投げ槍を手にする。残忍で、あわれみを知らない。その声は海のようにとどろく。彼らは馬に乗り、戦う男のように隊列を組んで、あなたに攻めかかる。娘シオンよ。」
6:24 わたしたちはその知らせを聞いた。すると、手から力が抜けた。産みの苦しみのような激しい痛みが、わたしたちを襲った。
6:25 畑に出てはいけない。道を歩いてもいけない。敵が剣を持ち、恐怖が四方を取り囲んでいるからだ。
6:26 わたしの民の娘よ、粗布を身にまとい、灰の中を転げ回れ。ひとり子を失ったように嘆き、激しく泣き叫べ。滅ぼす者が突然、わたしたちに襲いかかるからだ。
6:27 わたしはあなたを、わたしの民の中で金属を試す者とした。あなたが彼らの歩む道を知り、調べるためだ。
6:28 彼らはみな、頑固に背く者だ。あちこちで悪口を言いふらす。彼らは青銅であり、鉄だ。みな、人を堕落させる者だ。
6:29 ふいごは激しく吹き、火は鉛を焼き尽くす。だが、精錬はむだに終わる。悪い者たちが取り除かれないからだ。
6:30 人々は彼らを「捨てられた銀」と呼ぶ。主が彼らを捨てられたからだ。
7:1 主からエレミヤに、こんな言葉があった。
7:2 「主の神殿の門に立って、そこでこの言葉を語りなさい。こう言うんだ。『主を礼拝しようとこの門から入ってくるユダの人たち、みんな、主の言葉を聞きなさい。』
7:3 イスラエルの神、全能の主はこう言われる。あなたたちの生き方と行いを正しなさい。そうすれば、わたしはあなたたちをこの場所に住まわせよう。
7:4 『ここは主の神殿だ、主の神殿だ、主の神殿だ』という偽りの言葉に頼ってはいけない。
7:5 あなたたちが本当に生き方と行いを正し、人と人との間で公正に裁き、
7:6 よそから来た人や、親のない子や、夫を亡くした女を苦しめず、罪のない人の血をこの場所で流さず、ほかの神々について行って自分を傷つけたりしないなら、
7:7 わたしはあなたたちを、この場所に、あなたたちの先祖に与えたこの地に、いつまでも住まわせよう。
7:8 でも見なさい。あなたたちは、何の役にも立たない偽りの言葉に頼っている。
7:9 盗み、人を殺し、不倫をし、偽って誓い、バアルに香をたき、あなたたちの知らないほかの神々について行っておきながら、
7:10 わたしの名がつけられているこの神殿に来て、わたしの前に立ち、『わたしたちは救われた』と言う。そうしてまた、この忌まわしいことをすべて繰り返すのか。
7:11 わたしの名がつけられているこの神殿が、あなたたちの目には強盗の巣にでも見えるのか。見なさい。わたしはそれをちゃんと見ている、と主は言われる。
7:12 だからシロにあるわたしの場所へ行ってみなさい。わたしが初めにそこにわたしの名を住まわせた場所だ。わたしの民イスラエルの悪のせいで、わたしがそこに何をしたか、その目で見なさい。
7:13 今、あなたたちはこうしたことをすべて行ってきた、と主は言われる。わたしは何度もくり返しあなたたちに語りかけた。それでもあなたたちは聞かず、呼びかけても答えなかった。
7:14 だからわたしは、わたしの名を持つこの家、あなたたちが頼りにしているこの家、そしてわたしがあなたたちと先祖に与えたこの場所に、シロにしたのと同じことをする。
7:15 そしてわたしは、あなたたちの同胞、つまりエフライムの子孫すべてを追い払ったように、あなたたちをわたしの前から追い払う。
7:16 だからあなたは、この民のために祈ってはならない。彼らのために叫び声も祈りもささげてはならない。わたしに願い出てもならない。わたしはあなたの言葉を聞かないからだ。
7:17 彼らがユダの町々やエルサレムの通りで何をしているか、あなたには見えないのか。
7:18 子どもたちは薪を集め、父親たちは火をおこし、女たちは粉をこねる。天の女王のために供え物のパンを作り、ほかの神々に酒を注いでささげ、わたしを怒らせようとしている。
7:19 だが、彼らが怒らせているのは、本当にわたしなのか、と主は言われる。むしろ自分自身を傷つけ、恥をかいているだけではないか。
7:20 だから、主なる神はこう言われる。見よ、わたしの怒り、わたしの激しい憤りが、この場所に注がれる。人にも家畜にも、野の木にも地の実りにも注がれる。それは燃え上がり、決して消えない。」
7:21 イスラエルの神、万軍の主はこう言われる。あなたたちの焼き尽くす供え物を、ほかのいけにえに加えて、その肉を自分たちで食べるがいい。
7:22 わたしがあなたたちの先祖をエジプトの地から導き出したとき、焼き尽くす供え物やいけにえについて、何かを語ったり命じたりしたわけではない。
7:23 わたしが命じたのは、ただ一つ、こういうことだ。わたしの声に聞き従いなさい。そうすればわたしはあなたたちの神となり、あなたたちはわたしの民となる。わたしが命じるとおりの道をすべて歩みなさい。そうすればあなたたちは幸せになる。
7:24 それなのに彼らは聞かず、耳を傾けようともしなかった。かたくなな悪い心のままに、自分勝手な考えで進み、前に進むどころか後ろへ下がってしまった。
7:25 あなたたちの先祖がエジプトの地を出た日から今日まで、わたしはわたしに仕える預言者たちを、あなたたちのもとへ何度も何度も、朝早くから繰り返し送り続けてきた。
7:26 それでも彼らはわたしに聞き従わず、耳を傾けようともしなかった。かえって強情になり、先祖たちよりもひどいことをした。
7:27 あなたがこれらの言葉をすべて語っても、彼らは聞こうとしない。呼びかけても、答えようとしない。
7:28 だから彼らにこう言いなさい。「これは、自分の神である主の声に聞き従わず、いくら注意されても受け入れようとしない民だ。真実は消えうせ、彼らの口から絶たれてしまった。」
7:29 髪を切り落として投げ捨てなさい。裸の丘の上で嘆きの歌をあげなさい。主がこの怒りの世代を退け、見捨てたからだ。
7:30 主はこう告げる。ユダの人々は、わたしの目に悪とされることを行った。わたしの名で呼ばれる神殿に、自分たちの忌まわしい偶像を置いて、そこを汚した。
7:31 彼らはベン・ヒノムの谷に、トフェトと呼ばれる祭壇を築いた。そこで自分の息子や娘を火で焼くためだ。そんなことをわたしは命じたことも、心に思い浮かべたこともない。
7:32 だから、見よ、その時が来る、と主は告げる。そのとき、この場所はもうトフェトともベン・ヒノムの谷とも呼ばれず、「虐殺の谷」と呼ばれるようになる。埋める場所がなくなるほど、人々はトフェトに死者を葬る。
7:33 この民の死体は、空の鳥や地の獣のえさとなる。しかも、それを追い払う者は誰もいない。
7:34 わたしはユダの町々とエルサレムの通りから、喜びの声も楽しみの声も、花婿の声も花嫁の声も消し去る。この地は廃墟となるからだ。
8:1 その時、と主は言われる。人々は、ユダの王たちの骨、高官たちの骨、祭司たちの骨、預言者たちの骨、そしてエルサレムに住む人々の骨を、墓から掘り出す。
8:2 そしてそれらを、太陽や月、天のすべての星の前にさらす。彼らが愛し、仕え、追い求め、慕い、ひれ伏して拝んできたものたちだ。その骨は集められることも、葬られることもない。地面にまき散らされた肥やしのようになる。
8:3 この悪い一族の生き残り、わたしが追いやった先の、残されたすべての場所にいる者たちは、みな生きることよりも死ぬことを選ぶ。万軍の主は言われる。
8:4 彼らにこう言いなさい。主はこう言われる。人は倒れたら、起き上がらないだろうか。離れて行ったら、戻って来ないだろうか。
8:5 それなのに、どうしてこの民、エルサレムは背き続けるのか。いつまでも離れたままだ。彼らは偽りにしがみつき、戻ろうとしない。
8:6 わたしは耳を傾けて聞いた。だが、彼らは正しいことを話さない。だれ一人、自分の悪を悔いて「わたしは何をしてしまったのか」と言う者がいない。みな、戦いに突き進む馬のように、それぞれ自分の道へ走って行く。
8:7 空を飛ぶこうのとりでさえ、自分の季節を知っている。山鳩も、つばめも、つるも、渡って来る時をきちんと守る。それなのに、わたしの民は主の定めを知らない。
8:8 どうしてあなたたちは「わたしたちは賢い。主の律法が手もとにある」と言えるのか。見なさい。学者たちの偽りの筆が、それを偽りに書き変えてしまった。
8:9 賢い者たちは恥をかき、うろたえ、捕らえられる。見なさい。彼らは主の言葉を捨てた。それで、いったいどんな知恵が彼らに残っているというのか。
8:10 だから、わたしは彼らの妻を他の者に与え、彼らの畑を新しい持ち主に渡す。身分の低い者から高い者まで、みなが自分の利益をむさぼり、預言者から祭司まで、みなが偽りを行っているからだ。
8:11 彼らはわたしの民の傷を、軽々しく手当てして、平和でもないのに「平和だ、平和だ」と言う。
8:12 彼らは忌まわしいことをしたのに、恥じてもいない。まったく恥じることなく、赤面することさえ知らない。だから彼らは、倒れる者たちと共に倒れる。わたしが罰するその時、彼らはつまずき倒れる、と主は言われる。
8:13 「わたしは彼らを刈り取ってしまう」と主は言われる。「ぶどうの木にぶどうはなく、いちじくの木にいちじくもない。葉さえも枯れてしまった。わたしが彼らに与えたものも、過ぎ去っていく。」
8:14 なぜ、わたしたちはこうして座っているのか。集まって、城壁のある町へ逃げ込もう。そして、そこで滅びよう。わたしたちの神、主が、わたしたちを滅びに定め、毒の水を飲ませようとされるからだ。わたしたちが主に対して罪を犯したからだ。
8:15 平和を待ち望んだのに、良いことは何もない。癒やしの時を待ったのに、来たのは恐怖だけだった。
8:16 敵の馬の鼻息が、ダンから聞こえてくる。その軍馬のいななきの音に、地はすべて震え上がる。彼らは攻めて来て、地とそこにあるすべてを、町とそこに住む人々を、食い尽くす。
8:17 「見よ、わたしはおまえたちの間に蛇を送る。まじないの効かない毒蛇を送る。それがおまえたちを噛む」と主は言われる。
8:18 わたしの悲しみは癒やされることがなく、心はわたしの内で弱り果てている。
8:19 聞け、遠い地から、わたしの民の叫び声が上がる。「主はシオンにおられないのか。シオンの王はそこにおられないのか。」なぜ彼らは、偶像や、むなしい異国の神々で、わたしを怒らせたのか。
8:20 「刈り入れの時は過ぎ、夏も終わった。それなのに、わたしたちは救われない。」
8:21 わたしの民が打ち砕かれ、わたしも打ち砕かれている。わたしは嘆き、恐怖に襲われている。
8:22 ギレアデに、傷を癒やす薬はないのか。そこに医者はいないのか。それなのに、なぜわたしの民の傷は癒やされないのか。
9:1 ああ、わたしの頭が水であったなら、わたしの目が涙の泉であったなら。そうすれば、殺されたわたしの民のために、昼も夜も泣き続けられるのに。
9:2 だれか、荒れ野に旅人の宿を用意してくれないだろうか。そうすれば、わたしは自分の民を捨てて、彼らのもとを去っていける。彼らはみんな不倫を重ね、裏切り者の集まりなのだから。
9:3 彼らは弓を引くように舌を引きしぼり、うそを放つ。この地で力を持っているのは、真実ではない。悪から悪へと進み、わたしのことを知ろうともしない、と主は言われる。
9:4 だれもが隣人に気をつけろ。どんな兄弟も信用するな。どの兄弟も人をだまし、どの隣人も陰口を言いふらして歩くのだから。
9:5 みんなが隣人をあざむき、だれも本当のことを言わない。彼らは舌にうそを教え込み、悪事にかけては疲れを知らない。
9:6 あなたは偽りのただ中に住んでいる。彼らは偽りにまみれて、わたしを知ろうとしない、と主は言われる。
9:7 だから、万軍の主はこう言われる。「見よ、わたしは彼らを火で溶かし、試すことにする。わたしの民のために、ほかにどうすればいいというのか。
9:8 彼らの舌は人を殺す矢だ。口では偽りを語る。口先では隣人に『平安を』と言いながら、心の中ではその隣人を待ちぶせしているのだ。
9:9 こんなことをしていて、わたしが彼らを罰しないでいられるだろうか、と主は言われる。こんな国に、わたしが仕返しをしないでいられるだろうか。」
9:10 わたしは山々のために泣き、声をあげて嘆く。荒れ野の牧草地のために悲しみの歌をうたう。そこは焼かれて荒れはて、通る人もいない。家畜の鳴き声も聞こえない。空の鳥も獣も、みな逃げ去ってしまった。
9:11 わたしはエルサレムを瓦礫の山にし、山犬のすみかにする。ユダの町々を、住む人もいない荒れ地にする。
9:12 だれか、このことを悟れるほど賢い者はいるだろうか。主の口が語りかけ、それを告げられる者はいるだろうか。なぜこの地は滅び、通る人もない荒れ野のように焼きつくされたのか。
9:13 主は言われた。「それは、彼らがわたしの与えた教えを捨て、わたしの声に従わず、その教えのとおりに歩まなかったからだ。
9:14 彼らは頑なな心のままに歩み、先祖から教えられたバアルの神々に従ってきたのだ。
9:15 だから、イスラエルの神、万軍の主はこう言われる。「見よ、わたしはこの民に苦よもぎを食べさせ、毒の水を飲ませる。
9:16 そして、彼ら自身も先祖も知らなかった国々の間に、彼らを散らす。滅ぼし尽くすまで、剣を送って追わせる。」
9:17 万軍の主はこう言われる。「よく考えなさい。泣き女を呼び寄せ、嘆きの歌の上手な女たちを呼びなさい。
9:18 急いで来させ、わたしたちのために嘆きの声を上げさせよう。わたしたちの目が涙を流し、まぶたから水があふれるように。」
9:19 シオンから、嘆きの声が聞こえる。「ああ、わたしたちは滅ぼされた。深く恥に打ちのめされた。この地を離れ、住まいを打ち壊されたのだから。」
9:20 女たちよ、主の言葉を聞け。あなたたちの耳に、主の口から出る言葉を受けとめよ。娘たちに嘆きの歌を教え、たがいに悲しみの歌を教えなさい。
9:21 死がわたしたちの窓をよじ登り、宮殿に入り込んできたからだ。街から子どもを、広場から若者を絶やすために。
9:22 主はこう言われる。「人の死体が、畑にまかれた糞のように倒れ、刈り取る者のあとに残された束のように転がる。だれも拾い集める者はいない。」
9:23 主はこう言われる。「知恵ある者は自分の知恵を誇るな。力ある者は自分の力を誇るな。富める者は自分の富を誇るな。
9:24 誇る者は、ただこのことを誇れ。わたしを悟り、わたしを知っていることを。わたしこそ主であり、この地で慈しみと公正と義を行う者だ。わたしはこれらを喜ぶ、と主は言われる。」
9:25 見よ、その日が来る、と主は言われる。わたしは、体だけ割礼を受けている者をみな罰する。
9:26 エジプト、ユダ、エドム、アンモンの人々、モアブ、そしてこめかみの毛を剃り、荒れ野に住むすべての者を罰する。国々はみな体に割礼を受けていないが、イスラエルの家もまた、みな心に割礼を受けていないからだ。」
10:1 イスラエルの家よ、主があなたがたについて語られる言葉を聞け。
10:2 主はこう言われる。「異国の民のやり方を身につけるな。天に現れるしるしにおびえるな。国々はそれらにおびえているが、あなたがたはそうするな。
10:3 異国の民のならわしは、むなしいものだ。人が森から木を切り出し、職人が斧でそれを削って作るだけのものだ。
10:4 それを銀や金で飾り立て、釘や金づちで打ちつけて、ぐらつかないようにする。
10:5 それらは、きゅうり畑のかかしのようで、口をきくこともできない。自分では歩けないから、運んでもらうしかない。そんなものを恐れるな。彼らは災いをもたらすこともできず、良いことをする力もないのだから。」
10:6 主よ、あなたのような方はほかにいません。あなたは偉大で、その名は力に満ちて偉大です。
10:7 国々の王よ、だれがあなたを恐れずにいられるでしょう。それこそ、あなたにふさわしいことです。国々のどんな知恵ある者の中にも、どんな王国の中にも、あなたのような方はいないのですから。
10:8 彼らはみな愚かで、思慮がない。むなしい偶像から教えを受けている。それはただの木でしかない。
10:9 タルシシュから運ばれた打ち延ばした銀、ウファズから来た金。それは職人と金細工師の手が作ったもの。青や紫の衣をまとっているが、すべて熟練した者が作ったものにすぎない。
10:10 しかし主こそ、まことの神。生ける神であり、永遠の王だ。その怒りに地は震え、国々はその憤りに耐えられない。
10:11 あなたがたは彼らにこう言え。「天と地を造らなかった神々は、地の上から、この天の下から消え去る。」
10:12 主は、力をもって地を造り、知恵をもって世界を据え、英知をもって天を張り広げられた。
10:13 主が声を発すると、天には水がざわめき、地の果てから雲がわき上がる。主は雨のために稲妻を光らせ、その倉から風を送り出す。
10:14 それにくらべて、人はみな愚かで、何も分かっていない。金属を鋳る職人はみな、自分の造った像に恥をかく。鋳た像は偽物で、その中に息はないからだ。
10:15 それらはむなしく、人をあざむく作り物にすぎない。裁きの時が来れば、滅びてしまう。
10:16 ヤコブが受け継ぐ神は、こんなものとは違う。この方こそ、すべてを造られた方。イスラエルはその所有の民だ。その名は万軍の主。
10:17 包囲の中にうずくまる者よ、荷物をまとめて、この地から立ち去れ。
10:18 主はこう言われる。「見よ、わたしは今度こそ、この地に住む者を投げ飛ばす。彼らを苦しめ、思い知らせる。」
10:19 ああ、わたしは傷ついた。この痛みは重い。でもわたしは思った。これはわたしの病、耐えるしかない、と。
10:20 わたしの天幕は荒らされ、綱はすべて断ち切られた。子どもたちはわたしのもとを去り、もういない。もう天幕を張ってくれる者も、幕を立ててくれる者もいない。
10:21 羊飼いたちは愚かで、主を求めなかった。だから彼らはうまくいかず、その群れはみな散らされてしまった。
10:22 聞け、知らせの声がする。北の国から、大きな地鳴りが近づいてくる。ユダの町々を荒れ果てさせ、山犬の住みかにするために。
10:23 主よ、わたしは知っています。人は自分の道を決められず、歩む者が自分の足取りを定めることはできない、と。
10:24 主よ、わたしを正してください。ただし、正しい裁きによって。あなたの怒りによってではありません。わたしを無にしてしまわないでください。
10:25 あなたを知ろうともしない国々に、あなたの怒りを注いでください。あなたの名を呼ぼうともしない民に、注いでください。彼らはヤコブを食い尽くし、のみ込み、滅ぼし、その住みかを荒れ果てさせたのですから。
11:1 主からエレミヤに、こう告げる言葉があった。
11:2 「この契約の言葉を聞け。そしてそれを、ユダの人々やエルサレムに住む人々に語れ。
11:3 彼らにこう言え。イスラエルの神である主はこう言われる。この契約の言葉に従わない者は、のろわれる。
11:4 この契約は、わたしがあなたたちの先祖をエジプトの地から、あの鉄を溶かす炉のような苦しみから連れ出したとき、彼らに命じたものだ。わたしはこう言った。『わたしの声に聞き従い、わたしが命じるとおりに、すべてを行え。そうすれば、あなたたちはわたしの民となり、わたしはあなたたちの神となる。』
11:5 こうしてわたしは、あなたたちの先祖に誓った約束を果たす。乳と蜜の流れる地を彼らに与えるという約束だ。それは今日のとおりだ。」わたしは答えて言った。「そのとおりです、主よ。」
11:6 主はわたしに言われた。「これらの言葉をすべて、ユダの町々とエルサレムの通りで叫んで伝えよ。『この契約の言葉を聞き、それを行え』と。
11:7 わたしはあなたたちの先祖に、エジプトの地から連れ出した日から今日まで、何度も繰り返し、真剣に警告してきた。『わたしの声に聞き従え』と。
11:8 それなのに彼らは聞かず、耳を傾けようともしなかった。それぞれが自分の悪い心の頑固さのままに歩んだ。だからわたしは、この契約に記されたすべての言葉を、彼らの上に下した。それは、行えと命じたのに彼らが行わなかったからだ。」
11:9 主はわたしに言われた。「ユダの人々とエルサレムに住む人々の間に、たくらみがあるのがわかった。
11:10 彼らは、わたしの言葉を聞くのを拒んだ昔の先祖たちの罪へと逆戻りした。ほかの神々につき従い、それに仕えた。イスラエルの家もユダの家も、わたしが彼らの先祖と結んだ契約を破ったのだ。
11:11 だから、主はこう言われる。見よ、わたしは彼らの上に、逃れることのできない災いを下す。彼らはわたしに助けを叫び求めるが、わたしは聞かない。
11:12 そのときユダの町々とエルサレムに住む人々は、自分たちが香をたいてきた神々のもとへ行き、助けを叫び求める。しかしその神々は、災いのときに彼らを救うことなど決してできない。
11:13 ユダよ、おまえの神々は、おまえの町の数ほどたくさんいる。エルサレムよ、おまえたちは通りの数だけ祭壇を築いた。あの恥ずべきもの、バアルに香をたくための祭壇を。
11:14 だからあなたは、この民のために祈ってはならない。彼らのために叫んだり、祈ったりしてはならない。彼らが災いのときにわたしを呼び求めても、わたしは聞かないからだ。
11:15 わたしの愛する者が、なぜわたしの家にいるのか。おまえは大勢とともに悪事を重ねてきたではないか。ささげ物の聖なる肉が、おまえから災いを取り除けるとでもいうのか。悪を行いながら、おまえは喜んでいる。
11:16 主はかつておまえを、青々と茂り、美しい実をつけるオリーブの木と呼ばれた。しかし主は、激しい嵐のような音とともに、その木に火をつけられた。枝はすべて焼け折れる。
11:17 おまえを植えられた万軍の主が、おまえに災いを告げられた。それは、イスラエルの家とユダの家が悪を行ったからだ。彼らはバアルに香をたき、わたしを怒らせた。」
11:18 主がわたしに知らせてくださったので、わたしは気づいた。そのとき主は、彼らのしわざをわたしに見せてくださった。
11:19 わたしは、屠り場へ引かれていくおとなしい子羊のようだった。彼らがわたしに向かって、こんなたくらみを立てているとは、少しも知らなかった。「木を実ごと切り倒してしまおう。生きている者の地から彼を断ち、その名を二度と思い出されないようにしよう」と。
11:20 しかし、正しく裁く万軍の主よ。あなたは人の心の奥底まで見抜かれる。彼らへのあなたの報いを、わたしに見せてください。わたしは自分の訴えを、あなたにゆだねたのですから。
11:21 それゆえ、主はこう言われる。おまえの命をねらい、「主の名によって預言するな。さもなければ、おれたちの手で殺してやる」と言うアナトトの人々について、こう言われる。
11:22 だから、万軍の主はこう言われる。見よ、わたしは彼らを罰する。若者たちは剣で死に、息子や娘たちは飢えで死ぬ。
11:23 彼らには、生き残る者は一人もいない。わたしがアナトトの人々に、罰の年に災いを下すからだ。
12:1 主よ、あなたは正しい。だから、わたしがあなたに訴えても、あなたが正しいことに変わりはない。それでも、わたしはあなたに問いたい。どうして悪人のやり方はうまくいくのか。どうして裏切り者はみな、安らかに暮らしているのか。
12:2 あなたが彼らを植えたから、彼らは根を張った。育って、実までつけている。彼らの口はあなたのすぐそばにあるのに、その心はあなたから遠く離れている。
12:3 でも主よ、あなたはわたしを知っている。わたしを見て、あなたへ向かうわたしの心を試している。どうか彼らを、ほふられる羊のように引き出してください。殺される日のために、より分けてください。
12:4 いつまで、この地は嘆き、どの畑の草も枯れたままなのか。そこに住む者たちの悪のせいで、獣も鳥も消えてしまった。彼らが「神はわたしたちの最期を見はしない」と言ったからだ。
12:5 歩く者と競争して疲れてしまうなら、どうやって馬と競えるのか。平和な地でさえ安心できないなら、ヨルダン川のほとりの茂みで、どうするつもりなのか。
12:6 あなたの兄弟も、父の家の者たちさえ、あなたを裏切った。彼らは背後で声を張り上げて、あなたを責め立てた。だから、彼らがあなたに調子のいいことを言っても、信じてはいけない。
12:7 わたしは自分の家を捨て、受け継いだ地を見放した。心から愛する者を、敵の手に渡した。
12:8 わたしの受け継いだ地は、森のライオンのようになった。わたしに向かってほえ立てる。だから、わたしはそれを憎んだ。
12:9 わたしの受け継いだ地は、まだらの猛禽のようになったのか。ほかの猛禽が、それを取り囲んでいる。行って、野のすべての獣を集めよ。連れて来て、食い尽くさせよ。
12:10 多くの羊飼いが、わたしのぶどう畑を荒らした。わたしの畑を踏みにじった。わたしの大切な畑を、荒れ果てた砂漠にしてしまった。
12:11 それは荒れ地にされた。荒れ果てて、わたしに向かって嘆いている。国じゅうが荒れ果てた。それを心にかける者が、だれもいないからだ。
12:12 荒野のむき出しの丘という丘に、荒らす者たちが押し寄せてきた。主の剣が、地の果てから果てまでを食い尽くす。だれ一人、平和を得られない。
12:13 彼らは麦をまいたのに、刈り取るのは茨だ。骨を折って働いても、何の得にもならない。主の激しい怒りのために、あなたたちは自分の収穫を恥じることになる。
12:14 主はこう言われる。「わたしの民イスラエルに受け継がせた土地に手を出す、悪い隣人たちすべてに、わたしは言う。見よ、わたしは彼らをその土地から引き抜く。そしてユダの家も、彼らの中から引き抜く。
12:15 だが、彼らを引き抜いたあとで、わたしは再び彼らをあわれむ。そして一人ひとりを、その受け継ぐ土地に、それぞれの国に連れ戻す。
12:16 もし彼らが、わたしの民のやり方をしっかり学び、かつてわたしの民にバアルの名にかけて誓うことを教えたように、今度は『主は生きておられる』とわたしの名にかけて誓うようになるなら、彼らはわたしの民の中で建て直される。
12:17 だが、もし聞き従わないなら、わたしはその国を根こそぎ引き抜き、滅ぼす」と主は言われる。
13:1 主はわたしにこう言われた。「行って、麻の帯を買い、それを腰に巻きなさい。ただし、水につけてはならない。」
13:2 わたしは主の言葉のとおりに帯を買い、腰に巻いた。
13:3 すると、ふたたび主がわたしに語りかけて、こう言われた。
13:4 「あなたが買って腰に巻いている、その帯を取りなさい。そして立って、ユーフラテス川へ行き、それを岩の割れ目に隠しなさい。」
13:5 わたしは行って、主が命じられたとおりに、それをユーフラテス川のほとりに隠した。
13:6 それから長い日々がたって、主はわたしに言われた。「立って、ユーフラテス川へ行きなさい。そして、あそこに隠すよう命じたあの帯を、そこから取ってきなさい。」
13:7 そこでわたしはユーフラテス川へ行き、地面を掘って、隠しておいた場所からその帯を取り出した。すると帯はだめになっていて、もう何の役にも立たなかった。
13:8 そのとき、主の言葉がわたしにあった。
13:9 主はこう言われる。「わたしはこのようにして、ユダの高ぶりと、エルサレムの大きな高ぶりを、だめにする。
13:10 この悪い民は、わたしの言葉を聞くことを拒み、頑固な心のままに歩み、ほかの神々に従って、それに仕え、それを拝んでいる。だからこの民は、何の役にも立たないこの帯のようになる。
13:11 帯が人の腰にぴったりつくように、わたしはイスラエルの全家とユダの全家を、わたしにぴったりつかせた。彼らがわたしの民となり、わたしの名となり、誉れとなり、栄えとなるためだった。主はこう告げる。ところが彼らは聞かなかった。
13:12 だから、あなたは彼らにこの言葉を告げなさい。イスラエルの神、主はこう言われる。『どの酒がめも、ぶどう酒でいっぱいになる。』すると彼らはあなたに言うだろう。『どの酒がめもぶどう酒でいっぱいになることくらい、わたしたちが知らないとでも思うのか。』
13:13 そのとき、あなたは彼らにこう言いなさい。主はこう言われる。「見よ、わたしはこの地に住むすべての者を、酔いで満たす。ダビデの王座に座る王たちも、祭司たちも、預言者たちも、エルサレムに住むすべての者もそうだ。
13:14 そして、彼らを互いにぶつけ合わせて砕く。父も子も一緒にだ。主はこう告げる。わたしは惜しまず、あわれまず、いつくしまず、彼らを滅ぼす。」
13:15 聞け、耳を傾けよ。高ぶってはならない。主が語られたのだから。
13:16 あなたたちの神、主に栄光を帰しなさい。主が闇をもたらす前に、あなたたちの足が暮れゆく山でつまずく前に。あなたたちは光を待ち望むが、主はそれを死の闇に変え、真っ暗な闇にしてしまう。
13:17 もし、あなたたちがそれを聞かないなら、わたしの魂はあなたたちの高ぶりのために、隠れた所で泣く。わたしの目は涙にあふれ、こぼれ落ちる。主の群れが捕らえられて連れ去られたからだ。
13:18 王と王母にこう言いなさい。「低い所に座りなさい。あなたたちの輝く冠が、頭から落ちてしまったのだから。」
13:19 南の町々は閉ざされ、開ける者はいない。ユダはすべて連れ去られ、そっくりそのまま捕らわれて連れて行かれる。
13:20 目を上げて、北から来る者たちを見なさい。あなたに与えられていた群れ、あの美しい羊の群れは、どこへ行ったのか。
13:21 主があなたを罰するとき、あなたは何と言うのか。あなた自身が、あの者たちをあなたを支配する者として仕込んだのだ。子を産む女のように、激しい痛みがあなたを襲うではないか。
13:22 あなたは心の中で、「どうしてこんなことがわたしに起こったのか」と言うだろう。それは、あなたの罪があまりに大きいからだ。だから、あなたの裾はまくり上げられ、かかとまでむき出しにされる。
13:23 クシュ人が自分の肌の色を変えられるだろうか。ひょうが自分の斑点を消せるだろうか。それができないのと同じで、悪に慣れきったあなたたちに、善を行うことなどできはしない。
13:24 だから、わたしは彼らを、荒れ野の風に吹き飛ばされるわらのように散らす。
13:25 これがあなたの受ける分、わたしがあなたに量り与えた取り分だ、と主は言われる。あなたがわたしを忘れ、偽りに頼ったからだ。
13:26 だから、わたし自身があなたの裾をまくり上げ、あなたの顔にかぶせる。あなたの恥がさらけ出される。
13:27 あなたの姦淫、欲望に燃えるいななき、恥知らずな淫らな行い。野の丘の上で、わたしはあなたの忌まわしい姿を見た。ああ、エルサレムよ、あなたはわざわいだ。あなたは清くならない。いったい、いつまでこのままなのか。
14:1 干ばつについて、主のことばがエレミヤにのぞんだ。それはこういうものだった。
14:2 ユダは悲しみに沈んでいる。町の門は元気を失い、人々は地にうずくまって嘆く。エルサレムから叫び声が上がっている。
14:3 有力者たちは召使いを水くみに行かせる。でも彼らが水ために来ても、水は見つからない。空っぽの器を持って帰るしかない。恥ずかしさに打ちのめされ、頭をかかえてうなだれる。
14:4 地に雨が降らないので、土はひび割れてしまった。農夫たちも望みを断たれ、頭をかかえてうなだれる。
14:5 野の雌鹿さえ、子を産んでもその子を置き去りにする。草がまったくないからだ。
14:6 野ろばは裸の丘に立ちつくし、ジャッカルのようにあえいで空気を吸う。食べる草がなく、その目は力を失っていく。
14:7 主よ、わたしたちの罪がわたしたち自身を責めています。それでも、あなたの名のために動いてください。わたしたちは何度もあなたに背を向けました。あなたに対して罪を犯したのです。
14:8 イスラエルの望みよ、苦しみのときの救い主よ。どうしてあなたは、この地の他所者のようになるのですか。一晩だけ泊まって去っていく旅人のようになるのですか。
14:9 どうしてあなたは、なすすべを失った人のように、助ける力のない勇士のようになるのですか。主よ、あなたはわたしたちのただ中におられ、わたしたちはあなたの名で呼ばれています。どうか、わたしたちを見捨てないでください。
14:10 主はこの民についてこう言われる。「この民はさまよい歩くことが大好きで、その足を止めようとしなかった。だから主は彼らを受け入れない。今、彼らの罪を思い起こし、その過ちを罰する。」
14:11 主はわたしに言われた。「この民のために、幸いを求めて祈ってはならない。
14:12 彼らが断食しても、わたしはその叫びを聞かない。焼き尽くすいけにえや穀物のささげ物をしても、わたしはそれを喜ばない。むしろわたしは、剣と飢えと疫病によって、彼らを滅ぼし尽くす。」
14:13 そこでわたしは言った。「ああ、主なる神よ。見てください。預言者たちはこの民に、『あなたたちが剣を見ることはない。飢えに襲われることもない。わたしはこの場所に、確かな平和を与える』と言っています。」
14:14 すると主はわたしに言われた。「あの預言者たちは、わたしの名を使って偽りを語っている。わたしは彼らを送っていないし、命じてもいないし、語りかけてもいない。彼らがあなたたちに告げているのは、偽りの幻、むなしい占い、自分の心が生み出した作り話にすぎない。
14:15 だから、わたしの名によって預言するあの者たちについて、主はこう言う。わたしは彼らを送っていないのに、彼らは『剣も飢えもこの地には来ない』と言っている。その預言者たちこそ、剣と飢えによって滅びる。
14:16 彼らが預言を語り聞かせている民も、飢えと剣のせいでエルサレムの通りに投げ出される。彼らも、その妻も息子も娘も、葬ってくれる者はいない。わたしは、彼ら自身の悪を彼らの上に注ぐ。
14:17 あなたは彼らにこの言葉を告げなさい。わたしの目は、夜も昼も涙を流してやまない。わたしの大切な娘である民が、大きな傷を負い、ひどい打撃で打ちのめされたからだ。
14:18 野に出れば、剣で殺された者たちがいる。町に入れば、飢えで病む者たちがいる。預言者も祭司も、自分たちの知らない地をさまよい歩いている。」
14:19 あなたはユダを本当に見捨ててしまったのですか。シオンを心から嫌われたのですか。なぜあなたは、わたしたちを打ち、癒やしてくれないのですか。平和を待ち望んでも、良いことは何もない。癒やしの時を待ち望んでも、あるのは恐れだけです。
14:20 主よ、わたしたちは自分の悪を、先祖の過ちを知っています。わたしたちはあなたに罪を犯しました。
14:21 あなたの名のために、わたしたちを退けないでください。あなたの栄光の座をはずかしめないでください。どうか思い起こしてください。わたしたちと結んだ約束を、破らないでください。
14:22 異教の国々のむなしい偶像に、雨を降らせることができるでしょうか。天が自分から雨を降らせるでしょうか。いいえ、それができるのは、わたしたちの神である主、あなただけです。だからわたしたちは、あなたを待ち望みます。これらすべてを造られたのは、あなたなのですから。
15:1 主はわたしにこう言われた。「たとえモーセとサムエルがわたしの前に立ってとりなしても、わたしの心はこの民に向かない。彼らをわたしの前から追い出し、去らせなさい。
15:2 そして彼らが『どこへ行けばいいのか』と聞いてきたら、こう言いなさい。主はこう言われる。『死に定められた者は死へ、剣に定められた者は剣へ、飢えに定められた者は飢えへ、捕らわれに定められた者は捕らわれへ行け』と。
15:3 わたしは彼らに四つのものを送る、と主は言われる。殺すための剣、引きずるための犬、そして食い尽くし、滅ぼすための空の鳥と地の獣だ。
15:4 わたしは彼らを、地のすべての国々にとって恐怖の的とする。それは、ユダの王ヒゼキヤの子マナセが、エルサレムで行ったことのためだ。
15:5 エルサレムよ、だれがおまえを哀れむだろうか。だれがおまえのために嘆いてくれるだろうか。だれがわざわざ立ち寄って、おまえの様子を尋ねてくれるだろうか。
15:6 おまえはわたしを捨てた、と主は言われる。おまえは背を向けて離れていく。だから、わたしは手を伸ばしておまえを滅ぼした。もう思いとどまるのに疲れた。
15:7 わたしは彼らを、この地の門で箕にかけてふるい分けた。わたしは我が民から子を奪い、彼らを滅ぼした。それでも彼らは自分の道から立ち返らなかった。
15:8 彼らのやもめは、海の砂よりも多くなった。わたしは真昼に、若者たちの母に対して、滅ぼす者を送り込んだ。突然、苦しみと恐怖を彼女の上に落とした。
15:9 七人の子を産んだ女も力を失い、息絶える。まだ昼のうちに、彼女の太陽は沈んだ。彼女は恥をかき、辱められた。生き残った者たちも、敵の前で剣に渡す、と主は言われる。」
15:10 ああ、お母さん、どうしてわたしを産んだのですか。わたしは国じゅうを相手に争い、言い争う者になってしまった。わたしは貸したことも借りたこともないのに、みんながわたしをのろう。
15:11 主は言われた。「わたしはきっと、おまえを良いことのために解き放つ。災いのとき、苦しみのときには、必ず敵のほうからおまえに願い出させる。
15:12 鉄を、それも北から来る鉄や青銅を、砕くことなどできるだろうか。
15:13 「おまえの財産も宝も、わたしは代価も取らずに奪わせる。おまえが国じゅうで犯した、すべての罪のためだ。
15:14 わたしはおまえを、敵とともに、知らない地へ送り込む。わたしの怒りの火が燃え上がり、おまえたちを焼き尽くすからだ。」
15:15 主よ、あなたはご存じです。わたしを思い出し、心にかけてください。わたしを追う者たちに、あだを討ってください。あなたが怒りを抑えているあいだに、わたしを取り去らないでください。あなたのために、わたしが辱めを受けていることを知ってください。
15:16 あなたの言葉が見つかったとき、わたしはそれを食べました。あなたの言葉は、わたしの喜び、心の楽しみとなりました。万軍の神、主よ、わたしはあなたの名で呼ばれているのですから。
15:17 わたしは、はしゃぐ者たちの集まりに座って、浮かれたりはしませんでした。あなたの手がわたしの上にあったので、ひとりぼっちで座っていました。あなたが、わたしを怒りで満たされたからです。
15:18 どうしてわたしの痛みは終わらず、傷は治らず、癒えることを拒むのですか。あなたはわたしにとって、あてにならない小川のように、涸れてしまう水のようになるのですか。
15:19 だから、主はこう言われた。「もしおまえが立ち帰るなら、わたしはおまえを立ち帰らせ、わたしの前に立たせる。もしおまえが、くだらないものの中から尊いものを取り出して語るなら、おまえはわたしの口となる。彼らのほうがおまえに立ち帰るのであって、おまえが彼らに立ち帰ってはならない。
15:20 わたしはおまえを、この民に対して、堅固な青銅の城壁とする。彼らはおまえと戦っても、勝つことはできない。わたしがおまえと共にいて、おまえを救い、助け出すからだ、と主は言われる。
15:21 わたしはおまえを、悪い者たちの手から助け出し、横暴な者たちの手から救い出す。」
16:1 主の言葉がわたしに届いた。
16:2 「あなたは結婚してはならない。この場所で息子や娘を持ってはならない。
16:3 この場所で生まれる息子や娘たち、彼らを産む母親、この地で彼らをもうける父親について、主はこう言われるからだ。
16:4 彼らはひどい病気で死ぬ。だれも嘆いてくれず、埋葬もされない。地面にころがる糞のようになる。剣と飢えで滅び、その死体は空の鳥や地の獣のえさになる。
16:5 主はこう言われる。「弔いのある家に入ってはならない。嘆きに行ってはならない。彼らのために悲しんではならない。わたしはこの民から、わたしの平安を取り上げたからだ。慈しみも、あわれみもだ、と主は言われる。
16:6 この地では、身分の高い者も低い者も死ぬ。彼らは埋葬されず、だれも嘆かない。彼らのために自分の体を傷つけたり、髪をそり落としたりする者もいない。
16:7 喪に服す人に、死者のことで慰めようとパンを差し出す者もいない。父や母を亡くした人に、慰めの杯を勧める者もいない。
16:8 宴会のある家に入ってはならない。彼らと座って飲み食いしてはならない。
16:9 イスラエルの神である万軍の主はこう言われるからだ。見よ、わたしはこの場所から、喜びの声と楽しみの声、花婿の声と花嫁の声を消し去る。あなたたちの目の前で、あなたたちの生きている間にだ。
16:10 あなたがこのすべての言葉をこの民に告げると、彼らはあなたに尋ねるだろう。『どうして主は、わたしたちにこんなに大きな災いを告げたのか。わたしたちの犯した過ちは何なのか。わたしたちの神である主に対して、どんな罪を犯したというのか』と。
16:11 そのときあなたは彼らにこう言いなさい。『それは、あなたたちの先祖がわたしを捨てたからだ、と主は言われる。彼らはほかの神々に従い、それに仕え、ひれ伏した。わたしを捨て、わたしの教えを守らなかった。
16:12 そしてあなたたちは、先祖よりもさらに悪いことをしている。見よ、あなたたちはそれぞれ、自分の悪い心の頑固さに従って歩み、わたしの言うことを聞こうとしない。
16:13 だからわたしは、あなたたちをこの地から放り出し、あなたたちも先祖も知らなかった地へ投げやる。あなたたちはそこで、昼も夜もほかの神々に仕えることになる。わたしはあなたたちに、もう何のあわれみもかけない。』
16:14 だから、見よ、こういう日が来る、と主は言われる。人々はもう、『イスラエルの人々をエジプトの地から連れ上った主は生きておられる』とは言わなくなる。
16:15 その代わりに、『イスラエルの人々を北の地から、また彼らが追いやられたすべての地から連れ上った主は生きておられる』と言うようになる。わたしは彼らを、先祖に与えた土地へ連れ戻すからだ。
16:16 見よ、わたしは多くの漁師を送る、と主は言われる。彼らは人々を魚のように釣り上げる。そのあとで、わたしは多くの狩人を送る。彼らは人々を、すべての山から、すべての丘から、岩のすき間からも狩り出す。
16:17 わたしの目は、彼らのすべての歩みに注がれている。彼らはわたしの前から身を隠せない。その罪も、わたしの目から隠れることはない。
16:18 わたしはまず、彼らの罪と過ちを二倍にして報いる。彼らがわたしの地を汚し、忌まわしい偶像の死体で、わたしの土地を満たしたからだ。
16:19 主よ、あなたはわたしの力、わたしの砦、苦しみの日の逃げ場です。地の果てから、国々の民があなたのもとに来て、こう言うでしょう。『わたしたちの先祖が受け継いだのは偽りばかりだった。むなしいもので、何の役にも立たなかった』と。
16:20 人間が自分のために神を造れるだろうか。そんなものは神ではないのに。
16:21 だから、見よ、わたしは今度こそ彼らに思い知らせる。わたしの手と力を思い知らせる。そして彼らは、わたしの名が主であることを知るだろう。
17:1 ユダの罪は、鉄の筆で書かれている。ダイヤモンドのように硬い先で、彼らの心という板に、そして祭壇の角に、深く刻み込まれている。
17:2 彼らの子どもたちは、青々とした木のそば、高い丘の上に立つ祭壇とアシェラの柱を、いつも思い起こしている。
17:3 野にそびえるわたしの山よ。あなたの財産とすべての宝を、わたしは奪い取らせる。国じゅうで罪を犯した、あの高台もろともに。
17:4 あなたは、わたしが与えた自分の土地を手放すことになる。そして、知りもしない国で、敵に仕えさせられる。あなたたちがわたしの怒りに火をつけたからだ。その火は、いつまでも燃え続ける。
17:5 主はこう言われる。人間を頼りにし、人の腕を力とし、心が主から離れてしまう者は、のろわれる。
17:6 そういう人は、荒れ野に生える低木のようだ。良いことが訪れても、それを見ることがない。人の住まない塩の荒れ地で暮らすことになる。
17:7 でも、主を頼りにする人は幸せだ。主がその人の拠りどころとなる。
17:8 その人は、水のほとりに植えられた木のようだ。流れに向かって根を伸ばす。暑さが来ても恐れることなく、葉はいつも青々としている。日照りの年にも心配せず、実を結び続ける。
17:9 人の心は、何よりもねじ曲がっていて、救いようがない。だれが、それを知り尽くせるだろう。
17:10 わたし、主は、心を探り、思いを試す。そして一人ひとりに、その生き方に応じて、その行いの実に応じて報いる。
17:11 自分で産まなかった卵を抱く鳥がいる。不正なやり方で富を得る者も、それと同じだ。人生の半ばでその富に見捨てられ、最後には愚か者となる。
17:12 初めから高く掲げられた、栄光の座。それが、わたしたちの聖所のある場所だ。
17:13 イスラエルの希望である主よ。あなたを捨てる者はみな、恥を受ける。あなたから離れ去る者は、地に名を刻まれる。命の水の泉である主を、捨ててしまったからだ。
17:14 主よ、わたしを癒やしてください。そうすれば、わたしは癒やされます。わたしを救ってください。そうすれば、わたしは救われます。あなたこそ、わたしの誇りなのですから。
17:15 見てください。人々はわたしに言っています。「主の言葉はどこにあるのか。さあ、実現させてみろ」と。
17:16 でもわたしは、あなたに従う羊飼いの務めから逃げ出そうとはしませんでした。災いの日を望んだこともありません。あなたはご存じです。わたしの口から出た言葉は、すべてあなたの前にありました。
17:17 どうか、わたしを恐怖に陥れないでください。あなたは、災いの日のわたしの避け所です。
17:18 わたしを追いつめる者たちが、恥を受けますように。わたしが恥を受けることのないように。彼らがうろたえますように。わたしがうろたえることのないように。彼らに災いの日をもたらし、二倍の破滅で打ち砕いてください。
17:19 主はわたしにこう言われた。「行って、民の子らの門に立ちなさい。ユダの王たちが出入りする門、そしてエルサレムのすべての門に立ちなさい。
17:20 そして人々に言いなさい。『主の言葉を聞け。ユダの王たち、ユダのすべての人々、そしてこれらの門から入るエルサレムの住民よ、みな聞け。
17:21 主はこう言われる。自分の身をよく気をつけよ。安息日に荷物を運ぶな。エルサレムの門から荷物を持ち込むな。
17:22 安息日に、自分の家から荷物を運び出すな。どんな仕事もするな。安息日を聖なる日として守れ。わたしがあなたたちの先祖に命じたとおりに。
17:23 しかし彼らは聞かず、耳を傾けようともしなかった。かえって強情になって、聞こうとせず、教えを受け入れようとしなかった。
17:24 主は言われる。もしあなたたちが、わたしの言うことをしっかり聞き、安息日にこの町の門から荷物を持ち込まず、安息日を聖なる日として守り、その日にどんな仕事もしないなら——
17:25 そうすれば、この町の門を通って、ダビデの位につく王たちや高官たちが入ってくる。彼らは戦車や馬に乗ってやって来る。王たちも、その高官たちも、ユダの人々も、エルサレムに住む人々もだ。そして、この町はいつまでも人の住む町であり続ける。
17:26 人々はユダの町々から、エルサレムの周りの地域から、ベニヤミンの地から、低地から、山地から、南のネゲブからやって来る。そして、焼き尽くすいけにえや、ほかのいけにえ、穀物のささげ物、香を持って、感謝のいけにえとともに、主の神殿に運んでくる。
17:27 しかし、もしあなたたちがわたしの言うことを聞かず、安息日を聖なる日として守らず、安息日にエルサレムの門から荷物を運び込むなら、わたしはその門に火を放つ。その火はエルサレムの宮殿を焼き尽くし、決して消えることはない。」
18:1 主からエレミヤに、こんな言葉があった。
18:2 「立って、陶器を作る職人の家へ下って行きなさい。そこで、わたしの言葉をあなたに聞かせよう。」
18:3 そこでわたしは陶器職人の家へ下って行った。すると、その職人はろくろを回して仕事をしていた。
18:4 ところが、粘土で作っていた器が、職人の手の中でうまくいかなくなった。すると職人は、それを作り直して、自分の思いどおりに別の器に仕上げた。
18:5 そのとき、主の言葉がわたしにあった。
18:6 「イスラエルの家よ、わたしはこの職人と同じように、あなたたちを扱えないだろうか。主はそう告げる。見なさい。粘土が職人の手の中にあるように、イスラエルの家よ、あなたたちもわたしの手の中にある。」
18:7 ある時、わたしがある国や王国について、引き抜き、壊し、滅ぼすと告げることがある。
18:8 しかし、もしその国が、わたしの告げた悪から立ち返るなら、わたしは下そうとしていた災いを思い直す。
18:9 また、ある時、わたしがある国や王国について、建て、植えると告げることがある。
18:10 しかし、もしその国がわたしの声に聞き従わず、わたしの目に悪とされることを行うなら、わたしは与えると言った幸いを思い直す。
18:11 だから今、ユダの人々とエルサレムに住む人々にこう言いなさい。『主はこう告げる。見なさい。わたしは今、あなたたちに災いを形づくり、あなたたちに向けて計画を練っている。だから、それぞれ悪い道から立ち返り、自分の歩みと行いを正しなさい。』
18:12 しかし、彼らは言う。『もう無駄だ。わたしたちは自分の計画のとおりに進む。それぞれ、頑なで悪い心のままに生きるのだ。』
18:13 だから、主はこう告げる。「諸国の民に尋ねてみなさい。こんなことを聞いた者がいるだろうか。おとめであるイスラエルは、身の毛もよだつことをした。
18:14 レバノンの雪が、岩山の斜面から消え去ることがあるだろうか。遠くから流れてくる冷たい水が、涸れてしまうことがあるだろうか。
18:15 それなのに、わたしの民はわたしを忘れ、むなしい偶像に香をたいた。そのために彼らは自分の道でつまずき、昔からの道を離れて、整えられていない脇道を歩むようになった。
18:16 こうして彼らの国は荒れ果て、いつまでも人々の嘲りの的となる。そばを通り過ぎる者は皆、驚きあきれて頭を振る。
18:17 東風のように、わたしは彼らを敵の前に吹き散らす。彼らの災いの日に、わたしは背を向け、顔を向けない。」
18:18 すると、彼らは言った。「さあ、エレミヤをやっつける計画を立てよう。祭司から教えが失われることも、知恵ある者から助言が、預言者から言葉が失われることもないのだから。さあ、彼を舌で打とう。彼の言うことには、いっさい耳を貸さないでおこう。」
18:19 主よ、わたしに耳を傾けてください。わたしと争う者たちの言い分を聞いてください。
18:20 良いことに悪いことで返してよいのですか。彼らはわたしの命をねらって落とし穴を掘りました。思い出してください。わたしはあなたの前に立ち、彼らのために良いことを願い、あなたの怒りを彼らから遠ざけようとしたのです。
18:21 だから、彼らの子どもたちを飢えに渡し、彼らを剣の力に引き渡してください。妻たちは子を失い、夫を失いますように。男たちは死に打たれ、若者たちは戦いで剣に倒れますように。
18:22 あなたが突然、彼らに略奪隊を送られるとき、家々から叫び声が上がりますように。彼らはわたしを捕らえようと落とし穴を掘り、わたしの足もとにわなを隠したからです。
18:23 主よ、あなたは彼らがわたしを殺そうとするたくらみを、すべてご存じです。彼らの罪を赦さないでください。彼らの過ちをあなたの前から消し去らないでください。彼らをあなたの前に倒れさせ、あなたの怒りのときに、彼らを処罰してください。
19:1 主はこう言われた。「行って、陶器師から素焼きの瓶を買いなさい。そして民の長老たちと祭司の長老たちを何人か連れて行きなさい。
19:2 そして、瀬戸物の門の入り口にあるベン・ヒノムの谷へ出て行き、そこで、わたしがあなたに告げる言葉を語りなさい。
19:3 こう言いなさい。『ユダの王たち、エルサレムに住む者たちよ、主の言葉を聞け。イスラエルの神、万軍の主はこう言われる。見よ、わたしはこの場所に災いをもたらす。それを聞く者は皆、耳鳴りがするほどだ。
19:4 なぜなら、彼らはわたしを捨て、この場所をよそよそしいものにし、ここで、彼らも先祖もユダの王たちも知らなかったほかの神々に香をたいたからだ。そして、この場所を罪のない者の血で満たした。
19:5 また、彼らはバアルの高き所を築き、自分の子どもたちを火で焼いて、バアルへの焼き尽くすいけにえとした。それはわたしが命じたことでも、口にしたことでもなく、心に思い浮かべたことすらないものだ。
19:6 だから、見よ、その日が来る、と主は言われる。そのとき、この場所はもはやトフェトとも、ベン・ヒノムの谷とも呼ばれず、殺戮の谷と呼ばれる。
19:7 わたしはこの場所で、ユダとエルサレムのはかりごとをむなしくする。彼らを敵の前で剣に倒れさせ、命をねらう者たちの手に渡す。そして、その死体を空の鳥や地の獣のえさにする。
19:8 わたしはこの町を、見るも無残な、あざけりの的とする。そばを通り過ぎる者はみな、そのすべての傷を見て息をのみ、あざけって口笛を鳴らす。
19:9 包囲され、敵や命をねらう者たちに追いつめられて苦しむとき、わたしは彼らに、自分の息子や娘の肉を食べさせる。人々は互いに、隣人の肉を食べるようになる。』
19:10 それから、あなたは一緒に行く者たちの目の前で、その壺を割れ。
19:11 そして、彼らにこう言え。万軍の主はこう言われる。人が陶器師の器を、二度と直せないほど粉々に割るように、わたしもこの民とこの町を割る。人々は葬る場所がなくなるまで、トフェトに死体を葬ることになる。
19:12 わたしはこの場所と、ここに住む者たちに、こうする、と主は言われる。この町をトフェトのようにする。
19:13 エルサレムの家々も、ユダの王たちの家々も、トフェトのように汚れた場所となる。彼らがその屋上で天のすべての星に香をたき、ほかの神々に酒をそそいだ、すべての家がそうなるのだ。」
19:14 エレミヤは、主が預言するために遣わされたトフェトから戻り、主の神殿の庭に立って、すべての民に言った。
19:15 万軍の主、イスラエルの神はこう言われる。見よ、わたしはこの町と、そのすべての周りの町々に、わたしが告げたすべての災いを下す。彼らが強情になって、わたしの言葉を聞こうとしなかったからだ。
20:1 祭司イメルの子パシュフルは、主の神殿の管理をまかされた責任者だった。彼は、エレミヤがこうしたことを預言しているのを聞いた。
20:2 そこでパシュフルは預言者エレミヤを打ちたたき、主の神殿にあるベニヤミンの上の門のところの足かせにつないだ。
20:3 翌日、パシュフルがエレミヤを足かせからはずすと、エレミヤは彼にこう言った。「主はあなたをパシュフルとは呼ばない。『まわりじゅうが恐怖』と呼ばれる。
20:4 主はこう言われるからだ。『わたしはあなたを、あなた自身にとっても、あなたを愛するすべての人にとっても、恐怖そのものにする。彼らは敵の剣に倒れ、あなたはそれを自分の目で見ることになる。わたしはユダのすべての人をバビロンの王の手に渡す。王は彼らをバビロンへ捕らえて行き、剣で打ち殺す。
20:5 またわたしは、この町のすべての富、そのすべての稼ぎ、すべての宝物、そしてユダの王たちのすべての財宝を、敵の手に渡す。彼らはそれを奪い取り、つかみ取って、バビロンへ運んで行く。
20:6 そしてあなた、パシュフルよ。あなたも、あなたの家に住むすべての者も、捕らえられて行く。あなたはバビロンへ連れて行かれ、そこで死に、そこに葬られる。あなたも、あなたが偽りを預言して聞かせたすべての者も、同じ運命をたどるのだ。』」
20:7 主よ、あなたはわたしをだましました。わたしはだまされました。あなたはわたしより強く、わたしを打ち負かしました。わたしは一日じゅう笑いものにされ、だれもがわたしをあざけります。
20:8 わたしは口を開くたびに叫び、「暴力だ、破壊だ」と訴えます。主の言葉のせいで、わたしは一日じゅう、辱めと嘲りの的になっているのです。
20:9 それで、「もう主のことは口にしない。もう主の名によって語らない」と、わたしは思いました。でも、その言葉はわたしの心の中で燃える火のようになり、骨の中に閉じ込められて、抑えようとしても抑えきれず、わたしはもう我慢できません。
20:10 わたしには、大勢の人がささやくのが聞こえます。「まわりじゅうが恐怖だ。あいつを訴えろ、おれたちが訴えてやる」と。わたしの親しい友人でさえ、みなわたしのつまずくのを待ちかまえて言うのです。「もしかしたらあいつはだまされるかもしれない。そうすれば勝って、仕返しをしてやれる」と。
20:11 でも、主は力強い勇士のようにわたしとともにいてくださいます。だから、わたしを追い回す者たちはつまずき、勝つことはできません。彼らはうまくいかず、大いに恥をかきます。その恥はいつまでも忘れられることがありません。
20:12 正しい者を試し、心の奥底まで見通される、万軍の主よ。あなたが彼らに仕返しをされるのを、わたしに見せてください。わたしは自分の訴えを、あなたにゆだねたのですから。
20:13 主に向かって歌え。主をほめたたえよ。主は貧しい人の魂を、悪を行う者の手から救い出してくださったのだから。
20:14 わたしが生まれたあの日は、のろわれてしまえ。母がわたしを産んだ日は、祝福されなくていい。
20:15 父に「あなたに男の子が生まれた」と知らせて、父を大いに喜ばせた、あの人はのろわれてしまえ。
20:16 その人は、主が容赦なく滅ぼされた町々のようになればいい。朝には叫び声を、真昼には戦いの雄たけびを聞くがいい。
20:17 その人が、わたしを母の胎の中で殺してくれなかったからだ。そうすれば、母のおなかがわたしの墓となり、胎はいつまでもわたしをはらんだままでいてくれただろうに。
20:18 どうしてわたしは母の胎から出てきたのだろう。苦しみと悲しみを見るためだったのか。わたしの日々は、恥のうちに終わっていく。
21:1 ゼデキヤ王が、マルキヤの子パシュフルと、祭司マアセヤの子ゼパニヤをエレミヤのもとに送ってきたとき、主からエレミヤに次の言葉があった。二人はこう言った。
21:2 「どうか、わたしたちのために主に尋ねてください。バビロンの王ネブカドレツァルが、わたしたちを攻めているのです。もしかしたら主は、これまでの数々の不思議なわざのように、わたしたちのために事を起こし、あの王を退かせてくださるかもしれません。」
21:3 エレミヤは彼らに答えた。「ゼデキヤにこう伝えなさい。
21:4 イスラエルの神、主はこう言われる。見よ、わたしは、あなたがたが城壁の外で攻めてくるバビロンの王とカルデア人と戦うために手にしている武器を、逆に向きを変えさせ、この町の真ん中に集める。
21:5 そして、わたし自身が、伸ばした手と強い腕をもって、怒りと憤りと激しい憤怒をもって、あなたがたと戦う。
21:6 わたしはこの町に住む者を、人も家畜も打つ。彼らは激しい疫病で死ぬ。
21:7 その後、主はこう言われる。わたしは、ユダの王ゼデキヤと、その家来たち、民、そしてこの町で疫病と剣と飢えを生き延びた者たちを、バビロンの王ネブカドレツァルの手に、彼らの敵の手に、彼らの命をねらう者たちの手に渡す。ネブカドレツァルは彼らを剣で打ち、あわれむことも、惜しむことも、いつくしむこともしない。
21:8 そして、この民にこう言え。主はこう言われる。見よ、わたしはあなたがたの前に、命に至る道と死に至る道を差し出す。
21:9 この町にとどまる者は、剣と飢えと疫病で死ぬ。しかし、外に出て、あなたがたを囲んでいるカルデア人に降伏する者は生き延びる。その命だけは助かり、戦利品のように自分のものとなる。
21:10 わたしはこの町に顔を向けた。それは災いのためで、幸いのためではない、と主は言われる。この町はバビロンの王の手に渡され、彼はそれを火で焼き払う。
21:11 また、ユダの王家にはこう告げよ。主の言葉を聞け。
21:12 ダビデの家よ、主はこう言われる。朝ごとに正しく裁きを行い、奪われた者を、しいたげる者の手から救い出せ。さもないと、あなたがたの悪い行いのために、わたしの怒りが火のように燃え上がり、だれも消せなくなる。」
21:13 谷に住む者、平地の岩よ、見よ、わたしはあなたに立ち向かう、と主は言われる。あなたがたは「だれがわたしたちに攻め下って来られるものか。だれがわたしたちの住みかに入って来られるものか」と言っている。
21:14 しかし、わたしはあなたがたの行いの実にしたがって、あなたがたを罰する、と主は言われる。わたしはその森に火をつける。火は周りのすべてを焼き尽くす。
22:1 主はこう言われる。「ユダの王の宮殿に下って行き、そこでこの言葉を語りなさい。
22:2 こう言うのだ。『ダビデの王座に座るユダの王よ、主の言葉を聞け。あなたも、あなたの家来たちも、この門から入って来る民も、みなだ。
22:3 主はこう言われる。公正と正義を行え。奪われた者を、しいたげる者の手から救い出せ。よそから来た人や、みなしごや、やもめを苦しめてはならない。乱暴をしてはならない。この場所で罪のない者の血を流してはならない。
22:4 もしあなたたちが本当にこの言葉のとおりに行うなら、ダビデの王座に座る王たちが、戦車や馬に乗って、この宮殿の門から入って来る。王も、その家来たちも、その民もだ。
22:5 しかし、もしあなたたちがこの言葉を聞かないなら、わたしは自分にかけて誓う——主の言葉——この宮殿は必ず廃墟となる。
22:6 主はユダの王の家についてこう言われる。あなたはわたしにとってギレアドのようであり、レバノンの頂のようだ。しかしわたしは必ずあなたを荒れ野にし、だれも住まない町々にする。
22:7 わたしはあなたに向けて、あなたを滅ぼす者たちを、それぞれ武器を持たせて送り出す。彼らはあなたの最良の杉の木を切り倒し、火に投げ込む。
22:8 多くの国の人々がこの町のそばを通り、たがいに言うだろう。『なぜ主はこの大きな町にこんなことをしたのだろう。』
22:9 そして答える。『彼らが自分たちの神、主との契約を捨てて、ほかの神々にひれ伏し、それに仕えたからだ。』」
22:10 死んだ者のために泣くな。彼のために嘆くな。むしろ、去って行く者のために激しく泣け。彼は二度と戻らず、生まれた地を見ることもないのだから。
22:11 主は、父ヨシヤに代わって王となった、ユダの王ヨシヤの子シャルムについてこう言われる。彼はこの場所を出て行き、もう二度とここへは戻らない。
22:12 彼は捕らえられて連れて行かれた場所で死に、この地を二度と見ることはない。
22:13 災いだ。正しくないやり方で自分の家を建て、不正なやり方で高殿を造る者。隣人をただ働きさせ、その報酬を払おうとしない者。
22:14 彼は言う。「自分のために広い家を建てよう。広々とした高殿も造ろう。」そして大きな窓を切り開き、杉の板を張り、朱色に塗る。
22:15 たくさんの杉を使って競い合えば、それで王だと言えるのか。お前の父は、食べたり飲んだりしながらも、公正と正義を行ったではないか。だから彼はうまくいった。
22:16 彼は貧しい人や困っている人の訴えを正しく裁いた。だからうまくいったのだ。それこそ、わたしを知るということではないか、と主は言われる。
22:17 だが、お前の目も心も、自分の不正な儲けのことしかない。罪のない者の血を流し、人を虐げ、しいたげることばかり考えている。
22:18 だから、ユダの王、ヨシヤの子エホヤキムについて、主はこう言われる。人々は彼のために嘆かない。「ああ、わたしの兄弟よ」「ああ、姉妹よ」と嘆く者もいない。「ああ、我が主よ」「ああ、陛下よ」と嘆く者もいない。
22:19 彼はろばのように葬られる。引きずられて、エルサレムの門の外へ放り出されるのだ。
22:20 レバノンに登って叫べ。バシャンで声を張り上げよ。アバリムからも叫べ。お前を愛する者たちが、みな打ち砕かれたのだから。
22:21 お前が安らかに暮らしていたとき、わたしは語りかけた。だがお前は「聞かない」と言った。若いころからずっとそうだった。わたしの声に従わなかったのだ。
22:22 お前の羊飼いたちはみな風に吹き飛ばされ、お前を愛する者たちは捕らえられて連れて行かれる。そのときお前は、自分のすべての悪のために恥じ、辱められる。
22:23 レバノンに住み、杉の木々に巣を作る者よ。産みの苦しみのような激しい痛みがお前を襲うとき、お前はどんなにうめくことか。
22:24 わたしは生きている、と主は言われる。ユダの王、エホヤキムの子コンヤが、たとえわたしの右手にはめた印の指輪であっても、わたしはお前をそこから引き抜く。
22:25 わたしはお前を、お前の命を狙う者たち、お前が恐れている者たちの手に渡す。バビロンの王ネブカドネツァルの手、カルデア人の手に渡す。
22:26 わたしはお前と、お前を産んだ母を、生まれ故郷ではない別の国へ放り出す。お前たちはそこで死ぬ。
22:27 そして、お前たちが帰りたいと切に願うその地に、二度と帰ることはない。
22:28 このコンヤという男は、誰からも軽んじられた、壊れた器なのか。誰も欲しがらない入れ物なのか。なぜ彼とその子どもたちは放り出され、知りもしない国へ投げ捨てられるのか。
22:29 地よ、地よ、地よ、主の言葉を聞け。
22:30 主はこう言われる。この男を「子のない者」と記録せよ。彼は生涯、栄えることがない。彼の子孫の中から、ダビデの王座に座り、再びユダを治める者は、一人も出ないからだ。
23:1 わたしの牧場の羊を滅ぼし、散らす羊飼いたちは、わざわいだ、と主は言われる。
23:2 だから、イスラエルの神である主は、わたしの民を飼う羊飼いたちについてこう言われる。お前たちはわたしの羊を散らし、追い払い、世話をしなかった。見よ、わたしはお前たちの悪い行いを罰する、と主は言われる。
23:3 わたしは、追い散らしたすべての国から、残った羊を集める。そして、もとの牧場に連れ戻す。羊たちは子を産み、増えていく。
23:4 わたしは羊たちの上に羊飼いを立て、彼らを養わせる。羊たちはもう恐れることも、おびえることもない。一匹も欠けることはない、と主は言われる。
23:5 見よ、その日が来る、と主は言われる。わたしはダビデのために、正しい若枝を起こす。彼は王となって治め、賢く振る舞い、この地に公正と義を行う。
23:6 その日、ユダは救われ、イスラエルは安らかに暮らす。彼はこう呼ばれる——「主はわたしたちの義。」
23:7 だから、見よ、こういう日が来る、と主は言われる。人々はもう、「イスラエルの人々をエジプトの地から連れ上った主は生きておられる」とは言わなくなる。
23:8 代わりにこう言う。「イスラエルの子孫を北の地から、また追いやったすべての国々から連れ上り、連れ帰った主は生きておられる。」そして彼らは自分たちの土地に住むようになる。
23:9 預言者たちのことで、わたしの心は内で砕け、骨はみな震える。わたしは酔った人、ぶどう酒に飲まれた人のようになっている。主のことで、その聖なる言葉のことで。
23:10 この地は姦淫する者であふれている。呪いのために地は嘆き悲しみ、荒れ野の牧草地は枯れてしまった。人々の走る道は悪く、その力は正しくない。
23:11 預言者も祭司も、みな神を恐れない。わたしの家の中にさえ、彼らの悪を見つけた、と主は言われる。
23:12 だから彼らの道は、暗闇の中の滑りやすい道のようになる。彼らは追い立てられ、そこに倒れる。わたしが彼らに災いをもたらすからだ。彼らが罰せられる年に、と主は言われる。
23:13 サマリアの預言者たちの中に、わたしは不快なものを見た。彼らはバアルによって預言し、わたしの民イスラエルを迷わせた。
23:14 しかしエルサレムの預言者たちの中に、わたしはもっとひどいものを見た。彼らは姦淫し、偽りの中を歩む。悪を行う者たちの手を強め、だれ一人その悪から立ち返らせない。彼らはみな、わたしにとってソドムのよう、その住民はゴモラのようだ。
23:15 だから、万軍の主は預言者たちについてこう言われる。「見よ、わたしは彼らに苦よもぎを食べさせ、毒の水を飲ませる。エルサレムの預言者たちから、神を恐れない思いが国じゅうに広がったからだ。」
23:16 万軍の主はこう言われる。「あなたたちに預言する預言者たちの言葉を聞くな。彼らはあなたたちを、むなしい望みで満たしている。彼らが語るのは自分の心に浮かんだ幻であって、主の口から出た言葉ではない。
23:17 彼らはわたしを軽んじる者たちに、『主が言われた。あなたたちは平安を得る』と言い続ける。また自分のかたくなな心のままに歩むすべての者に、『あなたたちに災いは来ない』と言う。
23:18 いったいだれが主の会議の場に立って、その言葉を見聞きしただろう。だれがその言葉に耳を傾け、聞き取っただろうか。」
23:19 見よ、主の激しい怒りが嵐となって出て行く。渦を巻く嵐が、悪い者たちの頭の上に襲いかかる。
23:20 主の怒りは、思いのすべてをやり遂げ、成し遂げるまで、収まることはない。あなたたちは終わりの日に、はっきりとそれを悟るだろう。
23:21 わたしはあの預言者たちを送っていない。それなのに、彼らは走り回っている。わたしは彼らに語っていない。それなのに、彼らは預言している。
23:22 もし彼らがわたしの会議の場に立っていたなら、わたしの言葉をわたしの民に聞かせ、彼らを悪い道から、悪い行いから立ち帰らせたはずだ。
23:23 わたしは近くにいるときだけの神なのか、と主は言われる。遠くにいるときの神ではないのか。
23:24 だれかが隠れた場所に身を隠したところで、わたしがその者を見ないでいられるだろうか、と主は言われる。天も地も、わたしが満たしているではないか、と主は言われる。
23:25 わたしの名を使って偽りを預言する者たちが、何と言っているかをわたしは聞いた。彼らは『夢を見た、夢を見た』と言っている。
23:26 いつまでこんなことが続くのか。偽りを預言する預言者たちの心の中に、自分の心のたくらみを預言する者たちの心の中に、いつまでこれがあるのか。
23:27 彼らは、互いに語り合う夢によって、わたしの民にわたしの名を忘れさせようとたくらんでいる。それは彼らの先祖が、バアルのせいでわたしの名を忘れたのと同じことだ。
23:28 夢を見た預言者は、その夢を語ればよい。わたしの言葉を受けた者は、わたしの言葉を忠実に語れ。麦とわらに、どんな関わりがあるのか、と主は言われる。
23:29 わたしの言葉は火のようではないか、と主は言われる。岩を打ち砕くハンマーのようではないか。
23:30 だから見よ、わたしは預言者たちに立ち向かう、と主は言われる。彼らは互いにわたしの言葉を盗み合っているのだ。
23:31 見よ、わたしは預言者たちに立ち向かう、と主は言われる。彼らは自分勝手に舌を動かして、『これは主のお告げだ』と語る者たちだ。
23:32 見よ、わたしは偽りの夢を預言する者たちに立ち向かう、と主は言われる。彼らはその夢を語り、偽りと軽はずみな言葉で、わたしの民を迷わせている。わたしは彼らを送ってはいないし、命じてもいない。彼らはこの民に、何の役にも立たない、と主は言われる。
23:33 この民、あるいは預言者や祭司が、あなたに『主の重荷とは何か』と尋ねたら、こう答えよ。『何の重荷のことか。わたしはあなたたちを見捨てる』と主は言われる。
23:34 『主の重荷』と口にする預言者や祭司、また民がいれば、わたしはその者とその家族を罰する。
23:35 あなたがたは互いに、友にも兄弟にも、こう言うがよい。『主は何と答えられたのか』『主は何と語られたのか』と。
23:36 だが、もう『主の重荷』とは口にしてはならない。その『重荷』とは、結局、それぞれが勝手に語る自分の言葉にすぎないからだ。あなたがたは、生きておられる神、わたしたちの神、万軍の主の言葉を、ねじ曲げてしまった。
23:37 預言者には、こう尋ねよ。『主はあなたに何と答えられたのか』『主は何と語られたのか』と。
23:38 しかし、あなたがたが『主の重荷』と言い張るなら、主はこう言われる。あなたがたが『主の重荷』というこの言葉を口にするからだ。わたしは、『主の重荷とは言うな』と伝えて送ったのに。
23:39 だから、見よ。わたしはあなたがたを重荷のように担ぎ上げ、あなたがたも、あなたがたと先祖に与えたこの都も、わたしの前から投げ捨てる。
23:40 わたしはあなたがたに、永遠の恥と、いつまでも忘れられることのない屈辱を負わせる。
24:1 主がわたしに見せてくださった。見ると、いちじくを盛った二つのかごが、主の神殿の前に置かれていた。これは、バビロンの王ネブカドネツァルが、ユダの王ヨヤキムの子エコンヤと、ユダの高官たち、それに職人や鍛冶屋をエルサレムから捕らえて、バビロンへ連れ去った後のことだった。
24:2 一つのかごには、とても良いいちじくが入っていた。初なりのいちじくのようだった。もう一つのかごには、とても悪いいちじくが入っていた。悪すぎて食べられないほどだった。
24:3 主がわたしに言われた。「エレミヤよ、何が見えるか。」わたしは答えた。「いちじくです。良いいちじくはとても良く、悪いのはとても悪くて、食べられないほどです。」
24:4 そして、主の言葉がわたしに臨んだ。
24:5 イスラエルの神、主はこう言われる。「この良いいちじくのように、わたしはユダから捕らえ移された人々を良いものとして見る。わたしが彼らを、この場所からカルデア人の地へ送り出したのは、彼らのためを思ってのことだ。
24:6 わたしは彼らに目をかけ、幸いを与えよう。そして、この地に連れ戻す。わたしは彼らを建て直し、壊しはしない。彼らを植えて、引き抜きはしない。
24:7 わたしは彼らに、わたしを知る心を与える。わたしが主であることを知る心だ。彼らはわたしの民となり、わたしは彼らの神となる。彼らは心をつくしてわたしのもとに帰ってくるからだ。
24:8 しかし、悪すぎて食べられない、あの悪いいちじくについて、主はこう言われる。「わたしは、ユダの王ゼデキヤと、その高官たち、そしてこの地に残ったエルサレムの生き残りや、エジプトの地に住む者たちを、そのいちじくのように扱う。
24:9 わたしは彼らを、地上のすべての国々にとって、身の毛のよだつもの、災いとする。わたしが彼らを追いやるすべての場所で、彼らは笑いものにされ、悪い例え話にされ、あざけられ、のろいの言葉に使われる。
24:10 わたしは彼らのもとに、剣と飢えと疫病を送る。そして、わたしが彼らと先祖たちに与えたこの土地から、彼らが絶え果てるまで、そうし続ける。」
25:1 ユダの王、ヨシヤの子エホヤキムの治世四年に、ユダのすべての民についての主の言葉がエレミヤにのぞんだ。それは、バビロンの王ネブカドネツァルの治世一年にあたる。
25:2 預言者エレミヤは、ユダのすべての民とエルサレムに住むすべての人に、こう語った。
25:3 ユダの王、アモンの子ヨシヤの治世十三年から今日まで、この二十三年間、主の言葉がわたしにのぞいてきた。だからわたしは、あなたたちに何度もくり返し語ってきた。それなのに、あなたたちは聞こうとしなかった。
25:4 主はまた、そのしもべである預言者たちを、あなたたちのもとへ何度もくり返し送ってこられた。それなのに、あなたたちは聞かず、耳を傾けようともしなかった。
25:5 預言者たちはこう告げた。「どうか、それぞれ自分の悪い生き方から立ち返り、悪い行いをやめなさい。そうすれば、主があなたたちと先祖に永遠に与えると約束した土地に、いつまでも住み続けられる。
25:6 ほかの神々を追い求めて仕えたり、拝んだりしてはならない。自分の手で作ったもので、わたしを怒らせてはならない。そうすれば、わたしはあなたたちに災いを下さない。」
25:7 それなのに、あなたたちはわたしに聞こうとしなかった、と主は言われる。かえって自分の手で作ったもので、わたしを怒らせ、自分自身に災いを招いた。
25:8 それゆえ、万軍の主はこう言われる。あなたたちがわたしの言葉に聞き従わなかったので、
25:9 見よ、わたしは北のすべての民族と、わたしのしもべであるバビロンの王ネブカドネツァルを呼び寄せる、と主は言われる。わたしは彼らをこの地と、そこに住む者たち、そして周りのすべての国々に攻めのぼらせる。わたしは彼らを滅ぼし尽くし、人々がぞっとして息をのむような、いつまでも続く廃墟にする。
25:10 わたしは彼らのところから、喜びの声も楽しみの声も、花婿の声も花嫁の声も消し去る。石臼をひく音も、ともし火の光も消えうせる。
25:11 この地全体は荒れ果てて、見る影もなくなる。そしてこれらの国々は、七十年のあいだバビロンの王に仕えることになる。
25:12 しかし七十年が満ちたとき、わたしはバビロンの王とその国民の罪を罰する、と主は言われる。カルデヤ人の地をも罰し、そこをいつまでも続く荒れ地にする。
25:13 わたしはこの本に書かれているすべての言葉を、その地に必ず下す。それはわたしがその地について語った言葉であり、エレミヤがすべての国々について預言したものだ。
25:14 彼ら自身もまた、多くの国々や強大な王たちに仕えさせられる。わたしは彼らのしわざと、その手が行ったことに応じて、報いを返す。
25:15 イスラエルの神である主は、わたしにこう言われた。「わたしの手からこの怒りのぶどう酒の杯を受け取れ。そして、わたしがあなたを送るすべての国々に、それを飲ませなさい。
25:16 彼らはそれを飲んで、ふらふらとよろけ、正気を失う。わたしが彼らの間に送る剣のためだ。」
25:17 そこでわたしは主の手からその杯を受け取り、主がわたしを送られたすべての国々に飲ませた。
25:18 まずエルサレムとユダの町々、その王たちと高官たちに飲ませた。それは、今日のように、彼らを荒れ果てさせ、見る者をぞっとさせ、あざけられ、のろわれる者とするためだ。
25:19 次に、エジプトの王ファラオと、その家臣たち、高官たち、そのすべての民に飲ませた。
25:20 また、そこに混じり住むすべての外国人、ウツの地のすべての王たち、ペリシテ人の地のすべての王たち、アシュケロン、ガザ、エクロン、そしてアシュドドの生き残りにも飲ませた。
25:21 エドム、モアブ、アンモン人にも、
25:22 ティルスのすべての王たち、シドンのすべての王たち、そして海の向こうの島々の王たちにも飲ませた。
25:23 デダン、テマ、ブズ、そして髪のもみあげをそり落とすすべての者にも、
25:24 アラビアのすべての王たち、砂漠に住む混血の民のすべての王たちにも飲ませた。
25:25 そして、ジムリのすべての王たち、エラムのすべての王たち、メディアのすべての王たちにも飲ませた。
25:26 さらに、北のすべての王たち、近くの者も遠くの者も、次から次へと、そして地の面にあるこの世のすべての国々にも飲ませた。そして最後に、シェシャクの王が飲むことになる。
25:27 主は言われた。「彼らにこう言え。イスラエルの神、万軍の主はこう言われる。飲め、酔え、吐け、倒れて、もう二度と立ち上がるな。わたしがおまえたちの間に送る剣のせいで。」
25:28 「もし彼らが、おまえの手から杯を受け取って飲むのを拒んだら、こう言え。万軍の主はこう言われる。おまえたちは必ず飲むことになる。
25:29 見よ、わたしの名で呼ばれる町にさえ、わたしは災いをくだし始める。それなのに、おまえたちが罰を免れるとでも思うのか。いや、免れることはできない。わたしは地に住むすべての者に剣を呼び寄せるからだ——万軍の主はこう告げる。」
25:30 だからおまえは、この言葉をすべて彼らに預言して、こう言え。「主は高い所からほえ、その聖なる住まいから声をとどろかせる。主はご自分の牧場に向かって激しくほえ、ぶどうを踏む者のように、地に住むすべての者に向かって叫び声をあげる。
25:31 そのとどろきは地の果てにまで届く。主が国々を相手に訴えを起こし、すべての人をさばくからだ。主は悪い者たちを剣に引き渡す——主はこう告げる。」
25:32 万軍の主はこう言われる。「見よ、災いが国から国へと広がっていく。大きな嵐が地の果てから巻き起こる。」
25:33 その日、主に殺された者たちは、地の端から端まで倒れている。だれも彼らのために嘆かず、集めることも、葬ることもしない。彼らは地の面の糞のようになる。
25:34 羊飼いたちよ、泣き叫べ。群れのかしらたちよ、灰の中を転げ回れ。おまえたちが屠られる日、散らされる日が満ちたからだ。おまえたちは上等な器のように倒れて砕ける。
25:35 羊飼いたちに逃げ場はなく、群れのかしらたちに逃れる道もない。
25:36 聞け、羊飼いたちの叫び、群れのかしらたちの泣き声を。主が彼らの牧場を荒らしているからだ。
25:37 平和だった牧場も、静まり返って荒れ果てた。主の激しい怒りのためだ。
25:38 主は若いライオンのように、そのねぐらを後にした。彼らの地は荒れ地となった。主の激しい怒りのため、その燃える怒りのためだ。
26:1 ユダの王、ヨシヤの子エホヤキムが治め始めたころ、主から次の言葉があった。
26:2 主はこう言われる。「主の神殿の庭に立ちなさい。そして、礼拝しようと主の神殿にやって来るユダのすべての町の人々に語りなさい。わたしがあなたに命じることを、一言も減らさずにすべて伝えなさい。
26:3 もしかしたら、彼らは耳を傾け、それぞれ悪い生き方から立ち返るかもしれない。そうすれば、わたしは彼らの悪い行いのために下そうと考えていた災いを思い直す。
26:4 彼らにこう言いなさい。主はこう言われる。もしあなたたちがわたしに聞き従わず、わたしが示した教えのとおりに歩まないなら、
26:5 わたしが繰り返し送り続けた預言者たち、わたしのしもべたちの言葉に聞き従わないなら――あなたたちは、これまでも聞かなかった――
26:6 わたしはこの神殿をシロのようにし、この町を地上のすべての国々にとって、のろいの代名詞とする。」
26:7 祭司たち、預言者たち、そして民全体は、エレミヤが主の神殿でこれらの言葉を語るのを聞いた。
26:8 主が民全体に語れと命じたことを、エレミヤがすべて語り終えたとき、祭司たちと預言者たち、そして民全体は彼を取り押さえて言った。「おまえは必ず死ぬ。
26:9 どうして主の名によって、『この神殿はシロのようになり、この町は廃墟となって住む者がいなくなる』などと預言したのか。」こうして民全体が、主の神殿でエレミヤのまわりに詰め寄った。
26:10 ユダの高官たちはこの出来事を聞くと、王宮から主の神殿に上って行き、主の神殿の「新しい門」の入り口に座った。
26:11 すると祭司たちと預言者たちは、高官たちと民全体に向かって言った。「この男は死刑に当たる。あなたたちが自分の耳で聞いたとおり、この町のことを預言したからだ。」
26:12 そこでエレミヤは、すべての高官たちと民全体に向かって言った。「あなたたちが聞いたこれらの言葉を、この神殿とこの町に向かって預言せよと、わたしを送ったのは主だ。
26:13 だから今、あなたたちの生き方と行いを改め、あなたたちの神、主の声に聞き従いなさい。そうすれば主は、あなたたちに下すと告げた災いを思い直してくださる。
26:14 わたし自身は、このとおりあなたたちの手の中にいる。あなたたちがよいと思い、正しいと思うとおりに、わたしを扱えばいい。
26:15 ただし、これははっきり知っておきなさい。もしあなたたちがわたしを殺すなら、罪のない者の血を、自分たち自身と、この町と、そこに住む人たちの上に招くことになる。これらの言葉をすべて、あなたたちの耳に語るために、主が本当にわたしを送ったのだから。」
26:16 すると高官たちと民全体は、祭司たちと預言者たちに言った。「この男は死刑に当たらない。わたしたちの神、主の名によって、わたしたちに語ったのだから。」
26:17 さらに、その地の長老たちの何人かが立ち上がり、集まった民全体に向かって言った。
26:18 「ユダの王ヒゼキヤの時代に、モレシェテ出身のミカが預言していた。彼はユダの民全体にこう言った。『万軍の主はこう言われる。シオンは畑のように耕され、エルサレムは石くれの山となり、神殿の建つ山は木の茂る丘となる。』
26:19 ユダの王ヒゼキヤやユダの民全体が、彼を死刑にしただろうか。そんなことはしなかった。ヒゼキヤは主を畏れ、主の顔をなだめようとした。それで主は、彼らに下すと告げていた災いを思い直された。それなのにわたしたちは、自分の魂に大きな災いを招こうとしている。」
26:20 また、主の名によって預言していた人が、もう一人いた。キルヤト・エアリム出身の、シェマヤの子ウリヤだ。彼もエレミヤとまったく同じように、この町とこの地に対して預言した。
26:21 ヨヤキム王とすべての勇士たち、そしてすべての高官たちは、彼の言葉を聞いた。王は彼を殺そうとした。ウリヤはそれを聞くと、恐れて逃げ、エジプトへ逃れた。
26:22 だがヨヤキム王は、エジプトへ人を送った。アクボルの子エルナタンと、その部下たちをエジプトへ送ったのだ。
26:23 彼らはウリヤをエジプトから連れ出し、ヨヤキム王のもとへ引いて来た。王は彼を剣で打ち殺し、その死体を庶民の墓に投げ捨てた。
26:24 しかしシャファンの子アヒカムがエレミヤを守った。それで彼は、殺そうとする民の手に渡されずにすんだ。
27:1 ユダの王、ヨシヤの子ヨヤキムが治め始めたころ、主から次の言葉がエレミヤにあった。
27:2 主はわたしにこう言われた。「縄と横木で軛を作り、それを自分の首にかけよ。
27:3 そして、エルサレムに来てユダの王ゼデキヤのもとを訪れる使者たちに託して、それをエドムの王、モアブの王、アンモン人の王、ティルスの王、シドンの王へ送れ。
27:4 その使者たちに、それぞれの主君へこう伝えるよう命じよ。イスラエルの神、万軍の主はこう言われる。あなたたちの主君にこう告げよ。
27:5 わたしは大いなる力と伸ばした腕で、地と、その上にいる人や動物を造った。そしてそれを、わたしの目にかなう者に与える。
27:6 今わたしは、これらすべての国を、わたしのしもべであるバビロンの王ネブカドネツァルの手に渡す。野の獣さえも彼に与えて、仕えさせる。
27:7 すべての国は彼に仕える。彼の子にも、孫にも仕える。やがて彼の国にも、その時が来るまでのことだ。そのときには、多くの国と強大な王たちが、今度は彼を従わせる。
27:8 だが、バビロンの王ネブカドネツァルに仕えず、その首をバビロンの王のくびきに差し出さない国や王国があれば、わたしはその国を、剣と飢えと疫病で罰する、と主は言われる。わたしが彼の手によってその国を滅ぼし尽くすまでだ。
27:9 だから、あなたたちは自分たちの預言者や占い師、夢を告げる者、まじない師、魔術師の言うことを聞いてはならない。彼らはあなたたちに、バビロンの王に仕えてはならない、と言っている。
27:10 彼らがあなたたちに預言しているのは偽りだ。それはあなたたちを自分の土地から遠く引き離すためのものだ。その結果、わたしはあなたたちを追い散らし、あなたたちは滅びることになる。
27:11 しかし、その首をバビロンの王のくびきに差し出し、彼に仕える国があれば、わたしはその国を自分の土地にとどまらせる、と主は言われる。その民はその土地を耕し、そこに住み続ける。」
27:12 わたしはユダの王ゼデキヤにも、これとまったく同じことを告げた。あなたたちの首をバビロンの王のくびきに差し出し、彼とその民に仕えなさい。そうすれば生きられる。
27:13 なぜあなたとあなたの民は、剣と飢えと疫病で死のうとするのか。主がバビロンの王に仕えない国について語られたとおりに。
27:14 バビロンの王に仕えてはならないと言う預言者たちの言葉を聞いてはならない。彼らがあなたたちに預言しているのは偽りだからだ。
27:15 わたしは彼らを送っていない、と主は言われる。それなのに彼らは、わたしの名を使って偽りの預言をしている。その結果、わたしはあなたたちを追い散らし、あなたたちも、あなたたちに預言するその預言者たちも、ともに滅びることになる。
27:16 わたしは祭司たちと、この民のすべてにも告げた。主はこう言われる。あなたたちの預言者の言葉を聞いてはならない。彼らは、主の家の器はまもなくバビロンから戻ってくる、とあなたたちに預言している。しかし、彼らがあなたたちに預言しているのは偽りだ。
27:17 彼らの言うことを聞いてはならない。バビロンの王に仕えなさい。そうすれば生きられる。なぜこの町が廃墟になってよいだろうか。
27:18 もし彼らが本当に預言者であり、主の言葉が彼らとともにあるのなら、万軍の主に願い出るがよい。主の家とユダの王の家とエルサレムに残っている器が、バビロンへ持ち去られないようにと。
27:19 万軍の主は、あの柱と、青銅の海と、台座と、この町に残っているそのほかの器についてこう言われる。
27:20 これらは、バビロンの王ネブカドネツァルが、ユダの王エホヤキムの子エコンヤを、ユダとエルサレムのすべての高官たちとともに、エルサレムからバビロンへ捕らえ移したとき、持ち去らなかったものだ。
27:21 イスラエルの神、万軍の主は、主の家とユダの王の家とエルサレムに残っている器について、こう言われる。
27:22 それらはバビロンへ運ばれ、わたしがそれらを顧みる日まで、そこにとどまる、と主は言われる。その日、わたしはそれらを運び上げ、この場所に戻す。
28:1 その同じ年、ユダの王ゼデキヤの治世の初め、第四年の第五の月に、ギブオン出身のアズルの子で預言者のハナンヤが、主の家で、祭司たちと民全員の前で、わたしにこう言った。
28:2 イスラエルの神、万軍の主はこう言われる。わたしはバビロンの王のくびきを打ち砕いた。
28:3 二年のうちに、わたしは、バビロンの王ネブカドネツァルがこの場所から取り去ってバビロンへ運んだ、主の家の器のすべてを、この場所に戻す。
28:4 また、ユダの王エホヤキムの子エコンヤと、バビロンへ連れて行かれたユダのすべての捕囚の民を、わたしはこの場所に戻す、と主は言われる。わたしがバビロンの王のくびきを打ち砕くからだ。
28:5 そこで預言者エレミヤは、主の家に立っている祭司たちと民全員の前で、預言者ハナンヤに言った。
28:6 預言者エレミヤは言った。アーメン。主がそのとおりにしてくださるように。あなたが預言した言葉を、主がそのとおりに果たし、主の家の器と、すべての捕囚の民を、バビロンからこの場所に戻してくださるように。
28:7 でも、今わたしがあなたと民全員に語るこの言葉を聞いてほしい。
28:8 昔から、わたしやあなたより前にいた預言者たちは、多くの国々や大きな王国について、戦争と災いと疫病を預言してきた。
28:9 でも、平和を預言する預言者については、その言葉が実現して初めて、その預言者が本当に主に送られた者だと分かるのだ。
28:10 すると預言者ハナンヤは、預言者エレミヤの首からくびきを取って、それを砕いた。
28:11 そしてハナンヤは民全員の前でこう言った。「主はこう言われる。わたしはこのように、二年のうちに、バビロンの王ネブカドネツァルのくびきを、すべての国々の首から砕く。」預言者エレミヤは、その場を立ち去った。
28:12 預言者ハナンヤが預言者エレミヤの首からくびきを砕いた後、主の言葉がエレミヤに臨んだ。
28:13 「行って、ハナンヤにこう言いなさい。主はこう言われる。あなたは木のくびきを砕いた。でも、その代わりに鉄のくびきを作ることになる。
28:14 イスラエルの神、万軍の主はこう言われる。わたしは、これらすべての国々の首に鉄のくびきをかけた。バビロンの王ネブカドネツァルに仕えさせるためだ。彼らは彼に仕える。わたしは野の獣まで彼に与えた。」
28:15 預言者エレミヤは預言者ハナンヤに言った。「聞きなさい、ハナンヤ。主はあなたを送ってはいない。それなのにあなたは、この民に偽りを信じ込ませた。
28:16 だから主はこう言われる。見よ、わたしはあなたを地の面から追い払う。あなたは今年、死ぬ。主に背くことを語ったからだ。」
28:17 こうして預言者ハナンヤは、その年の七月に死んだ。
29:1 これは、預言者エレミヤがエルサレムから送った手紙の言葉である。ネブカドネツァルがエルサレムからバビロンへ連れ去った、生き残った長老たちや、祭司、預言者、そしてすべての民に宛てたものだった。
29:2 それは、エコンヤ王と王の母、宮廷の役人たち、ユダとエルサレムの高官たち、そして職人や鍛冶屋がエルサレムを去った後のことだった。
29:3 手紙は、シャファンの子エルアサと、ヒルキヤの子ゲマルヤに託された。この二人は、ユダの王ゼデキヤがバビロンの王ネブカドネツァルのもとへ遣わした使者だった。手紙にはこう書かれていた。
29:4 イスラエルの神、万軍の主はこう言われる。わたしがエルサレムからバビロンへ連れて行かせた、すべての捕らわれの民に告げる。
29:5 家を建てて住みなさい。畑を作って、その実りを食べなさい。
29:6 妻をめとって、息子や娘をもうけなさい。息子には妻をめとらせ、娘は嫁がせて、彼らにも息子や娘を産ませなさい。その地で人数を増やし、減ってはならない。
29:7 わたしがあなたたちを連れて行かせた町のために、平和を願いなさい。その町のために主に祈りなさい。その町が平和であってこそ、あなたたちにも平和があるのだから。
29:8 イスラエルの神、万軍の主はこう言われる。あなたたちの間にいる預言者や占い師にだまされてはならない。彼らが見る夢に耳を貸してはならない。
29:9 彼らはわたしの名を使って、あなたたちに偽りを語っているのだ。わたしは彼らを送ってはいない、と主は言われる。
29:10 主はこう言われる。バビロンでの七十年が満ちたとき、わたしはあなたたちに心を向ける。そして、あなたたちをこの場所に連れ戻すという、わたしの約束を果たす。
29:11 わたしはあなたたちのために立てている計画を、よく知っているからだ、と主は言われる。それは平和をもたらす計画であって、災いのためではない。あなたたちに未来と希望を与えるためのものだ。
29:12 そのとき、あなたたちはわたしを呼び、来て、わたしに祈る。わたしはその祈りを聞く。
29:13 あなたたちがわたしを探し求めるなら、わたしを見つける。心を尽くしてわたしを求めるならば。
29:14 わたしはあなたたちに見つけられる、と主は言われる。わたしはあなたたちを元の暮らしに戻す。わたしがあなたたちを追いやったすべての国、すべての場所から、あなたたちを集める、と主は言われる。そして、わたしがあなたたちを引いて行かせたその場所へ、あなたたちを連れ戻す。
29:15 あなたたちはこう言っている。「主はバビロンでわたしたちのために預言者を立ててくださった」と。
29:16 しかし、主はこう言われる。ダビデの王座に座る王について、そしてこの町に住むすべての民、つまり、あなたたちと一緒に捕らえられて連れて行かれなかったあなたたちの兄弟たちについて、こう言われる。
29:17 万軍の主はこう言われる。見よ、わたしは彼らに剣と飢えと疫病を送る。そして彼らを、傷んで食べられないほど悪くなったいちじくのようにする。
29:18 わたしは剣と飢えと疫病で彼らを追いつめる。そして彼らを、地のすべての国が恐れおののくものとする。わたしが彼らを追いやったすべての国々で、彼らはのろいの言葉となり、恐怖の的となり、あざけりと辱めの的となる。
29:19 それは、彼らがわたしの言葉に聞き従わなかったからだ、と主は言われる。わたしは何度もくり返し、わたしのしもべである預言者たちを彼らに送った。それなのに、あなたたちは聞かなかった、と主は言われる。
29:20 だから、あなたたちは主の言葉を聞け。わたしがエルサレムからバビロンへ送った、捕らえられて連れて行かれたすべての者たちよ。
29:21 イスラエルの神、万軍の主は、わたしの名によってあなたたちに偽りを預言する、コラヤの子アハブとマアセヤの子ゼデキヤについて、こう言われる。見よ、わたしは彼らをバビロンの王ネブカドネツァルの手に渡す。王はあなたたちの目の前で彼らを打ち殺す。
29:22 バビロンにいるユダの捕らわれ人たちは、みな彼らのことを引き合いに出して、こうのろうようになる。「主が、バビロンの王が火で焼き殺したゼデキヤやアハブのように、あなたをしてくださるように」と。
29:23 それは、彼らがイスラエルで恥ずべきことを行い、隣人の妻と姦淫を犯し、わたしが命じてもいないのに、わたしの名によって偽りを語ったからだ。わたしはそれを知っており、その証人でもある、と主は言われる。
29:24 ネヘラム人シェマヤについては、あなたはこう言え。
29:25 「イスラエルの神、万軍の主はこう言われる。あなたは自分の名で、エルサレムにいるすべての民と、祭司マアセヤの子ゼパニヤ、そしてすべての祭司たちに、こう書いた手紙を送った。
29:26 『主はあなたを、祭司エホヤダに代わる祭司として立て、主の神殿の監督者とされた。それは、気が変になって預言者を気取る者がいれば、だれでも足かせと首かせにつなぐためだ。
29:27 それなのに、どうしてあなたは、あなたたちに預言しているアナトテ出身のエレミヤを、叱らずにいるのか。
29:28 現に彼は、バビロンにいるわたしたちにまで、こう言って手紙を送ってきた。「捕らわれの暮らしは長くなる。家を建てて住み、畑を作ってその実を食べなさい」と。』」
29:29 祭司ゼパニヤは、この手紙を預言者エレミヤの前で読み上げた。
29:30 そのとき、主の言葉がエレミヤに臨んだ。
29:31 「すべての捕らわれ人たちに、こう伝えよ。ネヘラム人シェマヤについて、主はこう言われる。わたしは遣わしてもいないのに、シェマヤはあなたたちに預言し、偽りを信じ込ませた。
29:32 だから、主はこう言われる。見よ、わたしはネヘラム人シェマヤとその子孫を罰する。彼の一族には、この民の中に生き残って住む者が一人もいなくなる。彼は、わたしが自分の民のためにする良いことを見ることはない、と主は言われる。彼が主に背くことを語ったからだ。」
30:1 主からエレミヤに、こんな言葉があった。
30:2 イスラエルの神、主はこう言う。「わたしがあなたに語ったことを、すべて巻物に書き記しなさい。
30:3 見よ、その日が来る、と主は言う。わたしは、わたしの民イスラエルとユダの暮らしを元どおりに立て直す。彼らを、わたしが先祖に与えた地に連れ帰る、と主は言う。彼らはその地を自分のものとする。」
30:4 これは、主がイスラエルとユダについて語った言葉である。
30:5 主はこう言う。「おびえて叫ぶ声が聞こえる。恐怖ばかりで、平安はない。
30:6 尋ねて、よく見てみよ。男が子を産むだろうか。それなのに、なぜどの男も、産みの苦しみにある女のように、手を腰に当てているのか。なぜ、どの顔も青ざめているのか。
30:7 ああ、その日は大いなる日だ。ほかに比べようもない。それはヤコブにとって苦しみの時。だが、彼はそこから救い出される。
30:8 その日には、と万軍の主は言う、わたしはあなたの首からくびきを折り、あなたを縛る縄を断ち切る。もう外国人があなたを奴隷にすることはない。
30:9 彼らは、自分たちの神である主に仕える。そして、わたしが彼らのために立てるダビデ王に仕える。
30:10 わたしのしもべヤコブよ、恐れるな、と主は言う。イスラエルよ、おびえるな。見よ、わたしは遠くからあなたを救い、捕らわれていた地からあなたの子孫を救い出す。ヤコブは帰ってきて、穏やかに、安らかに暮らす。だれもおびやかす者はいない。
30:11 わたしがあなたと共にいて、あなたを救うからだ、と主は言う。わたしは、あなたを散らした国々をことごとく滅ぼし尽くす。だが、あなたを滅ぼし尽くすことはしない。ただし、正しい裁きであなたを懲らしめる。罰しないままにしておくことは、決してない。
30:12 主はこう言う。「あなたの傷は治らない。あなたの打ち傷は重い。
30:13 あなたの訴えを取り上げ、傷の手当てをしてくれる者はいない。あなたを治す薬もない。
30:14 あなたの愛人たちは、みなあなたを忘れた。だれもあなたを気にかけない。わたしが敵のようにあなたを打ち、むごい罰を与えたからだ。あなたの咎が大きく、あなたの罪が重なっているからだ。
30:15 どうして自分の傷のことで泣き叫ぶのか。あなたの痛みは治らない。あなたの咎が大きく、あなたの罪が重なっているので、わたしはこれらのことをあなたにした。
30:16 だが、あなたを食い尽くす者は、みな食い尽くされる。あなたに敵対する者は、ひとり残らず捕らわれて連れて行かれる。あなたを略奪する者は略奪され、あなたを奪う者を、わたしは奪われるままにする。
30:17 わたしがあなたを回復させ、あなたの傷を治すからだ、と主は言う。人々があなたを『見捨てられた女』と呼び、『これがシオンだ、だれも気にかけない』と言ったからだ。
30:18 主はこう言う。見よ、わたしはヤコブの天幕を元通りにし、その住まいをあわれむ。町はその廃墟の上に建て直され、宮殿はあるべき場所に建つ。
30:19 そこから感謝の歌と、喜び楽しむ人々の声が上がる。わたしが彼らを増やすので、減ることはない。わたしが彼らを重んじるので、軽んじられることはない。
30:20 彼らの子孫は昔のようになり、彼らの集まりはわたしの前にしっかりと立つ。彼らを苦しめる者を、わたしはみな罰する。
30:21 彼らを治める者は彼ら自身の中から出て、支配者は彼らの間から現れる。わたしが彼を近づけるので、彼はわたしのもとに来る。いったいだれが、命をかけてわたしに近づこうとするだろうか、と主は言う。
30:22 あなたがたはわたしの民となり、わたしはあなたがたの神となる。
30:23 見よ、主の嵐が、怒りとなって吹き出す。荒れ狂う嵐が、悪者の頭の上に渦を巻いて襲いかかる。
30:24 主の燃える怒りは、心に思い定めたことをなし遂げるまで、退くことはない。終わりの日に、あなたがたはこれを悟る。
31:1 その時、主はこう告げる。わたしはイスラエルのすべての氏族の神となり、彼らはわたしの民となる。
31:2 主はこう言われる。剣を逃れて生き残った民は、荒れ野で恵みを見つけた。イスラエルが安らぎを求めて進むときに。
31:3 遠くから主はわたしに現れた。「わたしは永遠の愛であなたを愛してきた。だから、変わらぬ慈しみであなたを引き寄せてきた。」
31:4 おとめであるイスラエルよ、わたしは再びあなたを建て直す。あなたは建て直される。あなたはまたタンバリンで身を飾り、喜び踊る人々の輪に加わって出て行く。
31:5 あなたはまたサマリアの山々にぶどう畑を作る。植える者が植え、その実を楽しむ。
31:6 見張りの者たちがエフライムの山で叫ぶ日が来る。「さあ、立ち上がろう。シオンへ、わたしたちの神、主のもとへ上ろう。」
31:7 主はこう言われる。ヤコブのために喜び歌え。国々の先頭で声高く叫べ。告げ知らせ、賛美して言え。「主よ、あなたの民を救ってください。生き残ったイスラエルを。」
31:8 見よ、わたしは彼らを北の国から連れ帰る。地の果てから彼らを集める。その中には目の見えない人も、足の不自由な人も、身ごもった女も、産もうとしている女もいる。大きな群れとなって、彼らはここへ帰って来る。
31:9 彼らは泣きながら、憐れみを求めながら帰って来る。わたしは彼らを導いて連れ帰る。水の流れのほとりを通らせ、つまずくことのないまっすぐな道を歩ませる。わたしはイスラエルの父であり、エフライムはわたしの長子だからだ。
31:10 国々よ、主の言葉を聞け。遠くの島々にも告げ知らせて言え。「イスラエルを散らした方が、イスラエルを集め、羊飼いが群れを守るように彼を守られる。」
31:11 主はヤコブを買い戻し、彼より強い者の手から救い出されたからだ。
31:12 彼らは来て、シオンの高台で喜び歌う。主の恵みに向かって喜びに輝く。穀物、新しいぶどう酒、オリーブ油、羊や牛の群れの子ら。彼らの魂は水に潤された園のようになり、二度と衰えることはない。
31:13 そのとき、若い娘は踊って喜び、若者も老人も一緒に喜ぶ。わたしは彼らの悲しみを喜びに変え、慰め、嘆きの代わりに喜びを与える。
31:14 わたしは祭司たちの魂を豊かなもので満たし、わたしの民はわたしの恵みに満ち足りる、と主は言われる。
31:15 主はこう言われる。「ラマで声が聞こえる。激しい嘆きと泣き声だ。ラケルが子どもたちのために泣いている。子どもたちがもういないので、慰められることを拒んでいる。」
31:16 主はこう言われる。「泣くのをやめ、目から涙を止めなさい。あなたの労苦には報いがあるからだ、と主は言われる。彼らは敵の地から帰って来る。
31:17 あなたの未来には希望がある、と主は言われる。子どもたちは自分の地に帰って来る。」
31:18 わたしは確かに聞いた。エフライムがこう嘆くのを。「あなたはわたしを懲らしめました。わたしは、くびきに慣れない子牛のように懲らしめを受けました。わたしを立ち帰らせてください。そうすれば、わたしは立ち帰ります。あなたはわたしの神、主だからです。
31:19 わたしは離れてしまってから、悔い改めました。思い知らされてから、腿を打って悔やみました。若い時の恥を負っていたので、恥じ入り、顔を上げられませんでした。」
31:20 エフライムはわたしの大切な息子ではないか。かわいい子ではないか。彼のことを話すたびに、わたしはなお彼を思い出す。だから、わたしの心は彼を思って揺れ動く。わたしは必ず彼を憐れむ、と主は言われる。
31:21 自分のために道しるべを立て、標識を置きなさい。あなたが通ってきた大通りに心を向けなさい。帰って来なさい、おとめイスラエルよ。あなたのこれらの町に帰って来なさい。
31:22 いつまでさまよっているのか、背き続ける娘よ。主は地に新しいことを創造されたからだ。女が男を包み守る。
31:23 万軍の主、イスラエルの神はこう言われる。「わたしが彼らを連れ帰るとき、人々はユダの地とその町々で、再びこう言うようになる。『正義の住まい、聖なる山よ、主があなたを祝福してくださいますように。』
31:24 ユダとそのすべての町々には、農夫や、群れを連れて移動する人々が、一緒に住むようになる。」
31:25 わたしは疲れた魂を潤し、弱り果てたすべての魂を満たすからだ。
31:26 これを聞いて、わたしは目を覚まし、あたりを見た。わたしの眠りは心地よかった。
31:27 見よ、その日が来る──主の言葉。わたしはイスラエルの家とユダの家に、人の種と家畜の種を蒔く。
31:28 かつてわたしが彼らを見張って、引き抜き、壊し、打ち倒し、滅ぼし、災いを下したように、これからは彼らを見張って、建て、植える──主の言葉。
31:29 その日には、人々はもう「父が酸っぱいぶどうを食べたのに、子どもの歯が浮く」とは言わなくなる。
31:30 そうではなく、それぞれが自分の罪のために死ぬ。酸っぱいぶどうを食べた人の歯こそが浮くのだ。
31:31 見よ、その日が来る──主の言葉。わたしはイスラエルの家、そしてユダの家と、新しい契約を結ぶ。
31:32 それは、わたしが彼らの先祖の手を取り、エジプトの地から導き出した日に結んだ契約のようなものではない。わたしは彼らの夫であったのに、彼らはその契約を破った──主の言葉。
31:33 その日の後、わたしがイスラエルの家と結ぶ契約はこうだ──主の言葉。わたしは自分の律法を彼らの内に置き、彼らの心に書き記す。わたしは彼らの神となり、彼らはわたしの民となる。
31:34 もはや人々は、隣人や兄弟に『主を知れ』と教えることはない。小さな者から大きな者まで、みながわたしを知るようになるからだ──主の言葉。わたしは彼らの過ちを赦し、彼らの罪を二度と思い起こさない。
31:35 主はこう言われる。昼の光として太陽を与え、夜の光として月と星の定めを与える方。海をかき立て、その波をとどろかせる方。その名は万軍の主。
31:36 もしこれらの定めがわたしの前から消え去るなら、そのときこそ、イスラエルの子孫もわたしの前で国であることをやめる──主の言葉。
31:37 主はこう言われる。もし上にある天を測ることができ、下にある地の基を探り尽くすことができるなら、そのときこそ、わたしもイスラエルの子孫すべてを退ける。彼らがしてきたすべてのことのために──主の言葉。
31:38 見よ、その日が来る──主の言葉。都は主のために建て直される。ハナンエルの塔から角の門まで。
31:39 測り縄はさらにまっすぐ、ガレブの丘の方まで延び、それからゴアへと回っていく。
31:40 死体と灰の谷全体、そしてキドロンの谷川まで、東の馬の門の角までのすべての畑も、主のための聖なるものとなる。そこは二度と引き抜かれることも、壊されることもない。永遠に。
32:1 ユダの王ゼデキヤの第十年、主からエレミヤに臨んだ言葉。それはネブカドレツァルの第十八年のことだった。
32:2 そのころ、バビロンの王の軍はエルサレムを包囲していた。預言者エレミヤは、ユダの王の宮殿にある見張りの庭に閉じ込められていた。
32:3 ユダの王ゼデキヤが彼を閉じ込めたのだ。王はこう言った。「なぜお前はこんな預言をするのか。お前はこう言っている。『主はこう言われる。見よ、わたしはこの都をバビロンの王の手に渡す。王はこれを攻め取る。
32:4 ユダの王ゼデキヤはカルデア人の手から逃れられない。必ずバビロンの王の手に渡され、口と口で語り合い、その目でバビロンの王の目を見ることになる。
32:5 王はゼデキヤをバビロンへ連れて行く。ゼデキヤは、わたしが顧みるときまでそこにとどまる──主の言葉。お前たちがカルデア人と戦っても、勝つことはない。』」
32:6 エレミヤは言った。主の言葉がわたしに臨んで、こう告げた。
32:7 「あなたのおじシャルムの子ハナムエルが、あなたのところに来てこう言う。『アナトトにあるわたしの畑を買ってほしい。それを買い戻す権利は、あなたにあるのだから』」
32:8 はたして主が言われたとおり、おじの子ハナムエルが見張りの庭にいるわたしのところに来て、こう言った。「どうかアナトトにある、ベニヤミンの地のわたしの畑を買ってほしい。それを受け継ぎ、買い戻す権利はあなたにあるのだから、あなたが買い取ってほしい。」それでわたしは、これが主の言葉なのだと分かった。
32:9 そこでわたしは、おじの子ハナムエルからアナトトにあるその畑を買い取り、代金を量って渡した。銀十七シェケルである。
32:10 わたしは証書に署名して封印し、証人を立て、銀を天秤で量った。
32:11 そして買い取りの証書を受け取った。定めと決まりにしたがって封印したものと、封印していない写しの両方である。
32:12 わたしはこの買い取りの証書を、おじの子ハナムエルの前で、また証書に署名した証人たちの前で、さらに見張りの庭に座っているすべてのユダヤ人の前で、マフセヤの子であるネリヤの子バルクに渡した。
32:13 そして皆の前で、わたしはバルクにこう命じた。
32:14 「イスラエルの神である万軍の主はこう言われる。あなたはこれらの証書、つまり封印したこの買い取りの証書と封印していない証書を受け取り、素焼きの器に入れて、長く保たれるようにしなさい。
32:15 イスラエルの神である万軍の主はこう言われるからだ。人々は再びこの地で、家や畑やぶどう畑を買うようになる。」
32:16 わたしはこの買い取りの証書をネリヤの子バルクに渡したあと、主に祈ってこう言った。
32:17 「ああ、主なる神よ。あなたはその大きな力と伸ばした腕とで、天と地を造られました。あなたにできないことは何一つありません。
32:18 あなたは幾千代にも慈しみを注ぎ、また父たちの罪をその後の子どもたちのふところに報いられる方です。偉大で力ある神、その名は万軍の主。
32:19 あなたは深い知恵を持ち、大きな働きをなさる方です。あなたの目は人のすべての歩みに注がれ、それぞれにその生き方どおり、その行いの実にふさわしく報いてくださいます。
32:20 あなたはエジプトの地でしるしと不思議を行い、それは今日まで続いています。イスラエルの中でも、すべての人の間でも同じようになさり、こうしてご自分の名を今日のように知らしめられました。
32:21 あなたはしるしと不思議をもって、また強い手と伸ばした腕、大いなる恐れをもって、あなたの民イスラエルをエジプトの地から導き出されました。
32:22 そして、彼らの先祖に与えると誓われたこの地、乳と蜜の流れる地を、彼らにお与えになりました。
32:23 彼らは入って来てその地を自分のものとしました。けれども、あなたの声に聞き従わず、あなたの教えのとおりに歩みませんでした。あなたが命じられたことを、彼らは何一つ行いませんでした。だからあなたは、このすべての災いを彼らの上に招かれたのです。
32:24 ご覧ください。攻め寄せる土塁がこの都に迫り、都を攻め落とそうとしています。剣と飢えと疫病のために、この都は、これと戦うカルデア人の手に渡されようとしています。あなたが語られたことが今まさに起こり、あなたはそれをご覧になっています。
32:25 それなのに、主なる神よ、あなたはわたしにこう言われました。「畑を銀で買い取り、証人を立てよ」と。この都はカルデア人の手に渡されようとしているのに、です。」
32:26 すると、主の言葉がエレミヤに臨んだ。
32:27 「見よ、わたしは主、すべての生きるものの神である。わたしにできない事が、何かあるだろうか。
32:28 だから、主はこう言われる。見よ、わたしはこの都をカルデア人の手に、またバビロンの王ネブカドネツァルの手に渡す。彼はこの都を攻め落とす。
32:29 この都を攻めるカルデア人は攻め込み、この都に火を放って焼き払う。人々がその屋根の上でバアルに香をたき、ほかの神々に注ぎのささげ物をして、わたしを怒らせた家々も、ともに焼かれる。
32:30 イスラエルの人々もユダの人々も、若いころからずっと、わたしの目に悪いことばかりを行ってきた。イスラエルの人々は、その手のわざによってわたしを怒らせてばかりいた、と主は言われる。
32:31 この都は、建てられた日から今日に至るまで、わたしの怒りと憤りをかき立ててきた。だからわたしは、これをわたしの前から取り除く。
32:32 それは、イスラエルの人々とユダの人々が行った、あらゆる悪のせいだ。彼らはわたしを怒らせようと悪を行った。王たちも、高官たちも、祭司たちも、預言者たちも、ユダの人々も、エルサレムに住む者たちも、みなそうだった。
32:33 彼らはわたしに顔ではなく背を向けた。わたしは何度も繰り返し教えたのに、彼らは聞こうとせず、教えを受け入れようとしなかった。
32:34 わたしの名で呼ばれる家の中に、彼らは忌まわしい偶像を置いて、その家を汚した。
32:35 彼らはベン・ヒノムの谷にバアルを拝むための高台を築き、自分の息子や娘をモレクにささげようと、火の中を通らせた。わたしはそんなことを命じたことはなく、思いつきもしなかった。彼らはこの忌まわしいことを行って、ユダに罪を犯させたのだ。
32:36 それで今、イスラエルの神である主は、この都についてこう言われる。あなたがたは「この都は剣と飢えと疫病によって、バビロンの王の手に渡される」と言っている。
32:37 見よ、わたしは怒りと憤り、激しい憤りをもって彼らを追い散らした。その散らした先の、すべての国から、わたしは彼らを集める。そして彼らをこの場所に連れ戻し、安心して住まわせる。
32:38 彼らはわたしの民となり、わたしは彼らの神となる。
32:39 わたしは彼らに一つの心と一つの道を与える。彼らがいつまでもわたしを畏れるためだ。それは彼ら自身のため、そして後に続く子どもたちのためでもある。
32:40 わたしは彼らと永遠の契約を結ぶ。わたしは彼らに良いことをするのをやめず、決して彼らから離れない。また、彼らがわたしから離れないように、わたしを畏れる心を彼らのうちに置く。
32:41 わたしは彼らのために良いことをするのを喜ぶ。そして心を尽くし、魂を尽くして、まことに彼らをこの地に植える。
32:42 主はこう言われる。わたしがこの民に、この大きな災いをすべてもたらしたように、わたしは彼らに約束しているすべての良いことをもたらす。
32:43 畑がこの地で買われるようになる。あなたたちが『人も家畜もいない荒れ地で、カルデア人の手に渡された』と言っている、この地でだ。
32:44 人々はお金を払って畑を買い、証書に署名して封印し、証人を立てる。ベニヤミンの地でも、エルサレムの周りでも、ユダの町々でも、山地の町々でも、低地の町々でも、ネゲブの町々でもそうする。わたしが彼らの繁栄を元どおりにするからだ。主の言葉である。
33:1 エレミヤがまだ監視の庭に閉じ込められていたとき、主の言葉が二度目に彼に臨んだ。
33:2 地を造る主、それを形づくり、固く据える主——その名は主。この方はこう言われる。
33:3 わたしを呼べ。そうすればわたしは答える。そして、あなたの知らない、大きくて奥深いことを教えよう。
33:4 イスラエルの神、主はこう言われる。この町の家々と、ユダの王たちの家々について——それらは、攻め寄せる土塁と剣に立ち向かうために取り壊された。
33:5 人々はカルデア人と戦おうとして出て来る。しかしそれは、家々を人の死体で満たすことにしかならない。わたしが怒りと憤りで打ち殺した者たちの死体だ。わたしは彼らのあらゆる悪のために、この町から顔を隠したのだ。
33:6 だが見よ、わたしはこの町に癒やしと回復をもたらし、人々をいやす。そして、豊かな平和とまことを彼らに現す。
33:7 わたしはユダとイスラエルを元の幸せな状態に戻し、彼らを初めのように建て直す。
33:8 そして、彼らがわたしに対して犯したすべての罪から彼らを清め、わたしに背いて犯したすべての過ちを赦す。
33:9 この町は、わたしにとって喜びの名となり、地上のすべての国々の前で、ほめたたえと誉れとなる。国々は、わたしが彼らのためにするすべての良いことを聞き、わたしがこの町にもたらすすべての幸いと平和のために、恐れおののく。
33:10 主はこう言われる。あなたがたは「ここは人も獣もいない荒れ果てた場所だ」と言っている。しかしこの場所で、人も住む者も獣もいなくなったユダの町々とエルサレムの通りで、再び声が聞こえるようになる——
33:11 喜びの声と楽しみの声、花婿の声と花嫁の声だ。そして「万軍の主に感謝せよ。主は良い方、その慈しみはとこしえに続くのだから」と言って、主の家に感謝のささげ物を運ぶ人々の声が聞こえる。わたしがこの地の繁栄を初めのように元どおりにするからだ、と主は言われる。
33:12 万軍の主はこう言われる。人も獣もいない荒れ果てたこの場所と、そのすべての町々に、再び羊飼いが羊の群れを休ませる牧場ができる。
33:13 山地の町々、低地の町々、ネゲブの町々、ベニヤミンの地、エルサレムの周辺、そしてユダの町々で、羊の群れは再び、数える者の手のもとを通り過ぎていく、と主は言われる。
33:14 見よ、その時が来る、と主は言われる。わたしはイスラエルの家とユダの家に語った、あの良い約束を果たす。
33:15 その日、その時、わたしはダビデのために、義の若枝を芽生えさせる。彼はこの地に公正と義を行う。
33:16 その日、ユダは救われ、エルサレムは安らかに住む。そして、この町はこう呼ばれる——「主はわたしたちの義。」
33:17 主はこう言われるからだ。ダビデには、イスラエルの家の王座に座る者が絶えることはない。
33:18 またレビ人の祭司たちにも、わたしの前で焼き尽くすいけにえをささげ、穀物のささげ物を焼き、いけにえを供える者が、いつまでも絶えることはない。
33:19 そのとき、主の言葉がエレミヤに臨んだ。
33:20 主はこう言われる。「もしあなたたちが、昼とのわたしの契約と、夜とのわたしの契約を破ることができ、昼と夜が定まった時に来ないようにできるなら、
33:21 そのときには、わたしのしもべダビデとの契約も破られ、その王座に座る子が絶えることになる。わたしに仕えるレビ人の祭司たちとの契約も、同じように破られる。
33:22 天の星が数えきれず、海の砂が量りきれないように、わたしは、わたしのしもべダビデの子孫と、わたしに仕えるレビ人を増やす。」
33:23 また、主の言葉がエレミヤに臨んだ。
33:24 「あなたは、この民が何を言っているか気づかないのか。彼らは『主は、選んだはずの二つの氏族を退けてしまった』と言っている。こうして彼らはわたしの民を見下し、もはや一つの国民とは見なさない。
33:25 だが、主はこう言われる。もし昼と夜とのわたしの契約が立たず、天と地の定めをわたしが置かなかったのなら、
33:26 そのときには、わたしはヤコブの子孫と、わたしのしもべダビデを退け、アブラハム、イサク、ヤコブの子孫を治める者を、ダビデの子孫から選ばないだろう。しかし、わたしは彼らを元の状態に戻し、あわれむ。」
34:1 主からエレミヤに、次の言葉が届いた。それは、バビロンの王ネブカドネツァルが、自分の支配下にある地のすべての王国と、すべての民を率い、その全軍とともにエルサレムとそのすべての町を攻めていたときのことだった。主はこう言われた。
34:2 「イスラエルの神、主はこう言う。行って、ユダの王ゼデキヤにこう告げなさい。主はこう言われる。『わたしは今、この町をバビロンの王の手に渡す。彼はこの町を火で焼き払う。
34:3 あなたは彼の手から逃げられない。必ず捕らえられ、彼の手に引き渡される。あなたはバビロンの王とじかに顔を合わせ、その口から直接語りかけられる。そして、あなたはバビロンへ連れて行かれる。』
34:4 だが、ユダの王ゼデキヤよ、主の言葉を聞きなさい。主はあなたについてこう言われる。『あなたは剣で死ぬことはない。
34:5 あなたは安らかに死ぬ。人々は、あなたより前にいた先祖の王たちのために火をたいて弔ったように、あなたのためにも火をたく。そして「ああ、我らの主よ」と嘆いて、あなたのために泣く。わたしがこの言葉を語ったのだから』と主は言われる。」
34:6 預言者エレミヤは、エルサレムで、これらすべての言葉をユダの王ゼデキヤに語った。
34:7 そのとき、バビロンの王の軍は、エルサレムと、まだ残っていたユダの町々を攻めていた。ラキシュとアゼカにも攻め寄せていた。この二つは、ユダの町々の中でまだ残っていた城壁のある町だったからだ。
34:8 ゼデキヤ王が、エルサレムにいるすべての民と契約を結び、奴隷の解放を宣言したあと、主からエレミヤに次の言葉が届いた。
34:9 その契約とは、それぞれが自分の男奴隷や女奴隷であるヘブライ人の男女を自由にし、同胞であるユダヤ人を二度と奴隷として使わない、というものだった。
34:10 この契約に加わったすべての役人とすべての民は、それぞれ自分の男奴隷や女奴隷を自由にし、二度と奴隷として使わないという約束に従った。彼らは従って、奴隷たちを解放した。
34:11 ところがそのあと、彼らは考えを変えた。自由にしたはずの男奴隷や女奴隷を連れ戻し、再び奴隷として働かせたのだ。
34:12 そのとき、主からエレミヤに、主の言葉が次のように届いた。
34:13 主、イスラエルの神はこう言われる。「わたしは、あなたたちの先祖をエジプトの地、奴隷の家から導き出したとき、彼らと契約を結んで、こう言った。
34:14 『七年ごとに、あなたたちに売られた同胞のヘブライ人を、それぞれ自由にしなさい。その人が六年間あなたに仕えたら、自由の身にして去らせなさい』と。ところが、あなたたちの先祖はわたしの言うことを聞かず、耳を傾けようともしなかった。
34:15 ところが最近になって、あなたたちは考えを改め、わたしの目に正しいことを行った。それぞれが隣人に自由を宣言し、わたしの名で呼ばれるこの神殿で、わたしの前で契約を結んだ。
34:16 しかしそのあと、あなたたちはまた考えを変え、わたしの名を汚した。自由の身にしてやったはずの男奴隷や女奴隷を、それぞれ連れ戻し、再び自分たちの奴隷として服従させたのだ。
34:17 だから、主はこう言われる。あなたたちは、それぞれ同胞に、隣人に自由を宣言せよというわたしの言葉を聞かなかった。それなら見よ、わたしはあなたたちに『自由』を宣言する——主の言葉——剣と疫病と飢饉に向かう自由をだ。わたしはあなたたちを、地上のすべての国々にとって、身の毛のよだつものとする。
34:18 わたしの契約を破った者たち、わたしの前で結んだ契約の言葉を守らなかった者たちを、わたしは、彼らが二つに切り裂いてその切れ端の間を通り抜けた、あの子牛のようにする。
34:19 ユダの役人たち、エルサレムの役人たち、宦官たち、祭司たち、そしてその地のすべての民、つまり子牛の切れ端の間を通り抜けた者たち、
34:20 その彼らを、わたしは敵の手に、彼らの命をねらう者の手に渡す。彼らの死体は、空の鳥や地の獣の餌となる。
34:21 ユダの王ゼデキヤとその役人たちも、わたしは敵の手に、彼らの命をねらう者の手に、そしてあなたたちのもとから引き揚げていったバビロンの王の軍隊の手に渡す。
34:22 見よ、わたしは命じる——主の言葉——そして彼らをこの町に呼び戻す。彼らはこの町を攻め、これを占領し、火で焼き払う。わたしは、ユダの町々を、住む者のいない荒れ地とする。
35:1 ヨシヤの子、ユダの王ヨヤキムの時代のことだ。主からエレミヤに、こんな言葉があった。
35:2 「レカブ人の一族のところへ行って、話をしなさい。そして彼らを主の神殿に連れて来て、その一室に案内し、ぶどう酒を勧めなさい。」
35:3 そこでわたしは、ハバツィヌヤの子エレミヤの子ヤアザヌヤと、その兄弟たち、その子どもたち全員、そしてレカブ人の一族全員を連れて来た。
35:4 彼らを主の神殿に連れて行き、神の人イグダルヤの子ハナンの子たちの部屋に入れた。その部屋は高官たちの部屋のとなりにあり、門番であるシャルムの子マアセヤの部屋の上にあった。
35:5 わたしはレカブ人一族の人たちの前に、ぶどう酒でいっぱいの鉢と杯を並べ、こう言った。「さあ、ぶどう酒を飲んでください。」
35:6 すると彼らは答えた。「わたしたちはぶどう酒を飲みません。わたしたちの先祖レカブの子ヨナダブが、こう命じたからです。『あなたたちも、あなたたちの子孫も、いつまでもぶどう酒を飲んではならない。
35:7 家を建ててもいけない。種をまいてもいけない。ぶどう畑を作ってもいけないし、持ってもいけない。一生、天幕で暮らしなさい。そうすれば、あなたたちが仮住まいしているこの地で、長く生きられる。』
35:8 こうしてわたしたちは、先祖レカブの子ヨナダブが命じたことをすべて守ってきました。わたしたちも、妻も、息子も娘も、一生ぶどう酒を飲みません。
35:9 住むための家を建てることもせず、ぶどう畑も畑も種も持っていません。
35:10 わたしたちは天幕で暮らし、先祖ヨナダブが命じたことをすべて守り、そのとおりにしてきました。
35:11 ただ、バビロンの王ネブカドネツァルがこの地に攻め上ってきたとき、わたしたちはこう言ったのです。『さあ、エルサレムへ行こう。カルデア軍とアラム軍から逃れるためだ。』それで今、エルサレムに住んでいます。」
35:12 そのとき、主の言葉がエレミヤにあった。
35:13 イスラエルの神、万軍の主はこう言われる。「行って、ユダの人々とエルサレムに住む人々に伝えなさい。あなたたちは、わたしの言葉に耳を傾け、教えを受け入れようとしないのか、と主は言われる。
35:14 レカブの子ヨナダブは、子孫にぶどう酒を飲むなと命じた。その言葉は今も守られ、彼らは今日まで一滴も飲んでいない。父の命令に従ったからだ。それなのに、わたしは何度もくり返しあなたたちに語りかけたのに、あなたたちはわたしに聞こうとしなかった。
35:15 わたしはまた、しもべである預言者たちを次々とあなたたちのもとに送り、こう告げさせた。『さあ、それぞれ自分の悪い生き方を捨てて立ち返り、行いを改めなさい。ほかの神々について行って仕えてはならない。そうすれば、わたしがあなたたちと先祖に与えたこの土地に住み続けられる。』それでもあなたたちは耳を貸そうとせず、わたしに聞こうとしなかった。
35:16 レカブの子ヨナダブの子孫は、父が命じたことを守り続けた。しかし、この民はわたしに聞こうとしなかった。
35:17 だから、イスラエルの神、万軍の神である主はこう言われる。見よ、わたしは、ユダとエルサレムに住むすべての人に、あらかじめ告げておいた災いをことごとく下す。わたしが語りかけても彼らは聞かず、呼びかけても答えなかったからだ。」
35:18 そしてエレミヤはレカブの一族に言った。「イスラエルの神、万軍の主はこう言われる。あなたたちは父ヨナダブの命令に従い、その戒めをすべて守り、命じられたとおりにすべて行ってきた。
35:19 だから、イスラエルの神、万軍の主はこう言われる。レカブの子ヨナダブには、わたしの前に仕える者がいつまでも絶えることはない。」
36:1 ユダの王、ヨシヤの子ヨヤキムの治世の第四年のこと、主から次の言葉がエレミヤにあった。
36:2 「巻物を一つ用意しなさい。そして、わたしがヨシヤの時代からあなたに語りはじめた日から今日まで、イスラエルとユダ、そしてすべての国々について語ってきた言葉を、すべてそれに書き記しなさい。
36:3 そうすれば、ユダの人々は、わたしが彼らに下そうと考えているすべての災いを聞いて、もしかしたら、それぞれ自分の悪い生き方から立ち返るかもしれない。そのとき、わたしは彼らの罪と過ちを赦そう。」
36:4 そこでエレミヤはネリヤの子バルクを呼んだ。バルクは、主がエレミヤに語られた言葉をすべて、エレミヤの口述どおりに巻物に書き記した。
36:5 そしてエレミヤはバルクにこう指示した。「わたしは行動を禁じられていて、主の神殿へ入ることができない。
36:6 だから、あなたが行ってほしい。あなたがわたしの口述で巻物に書き記した主の言葉を、断食の日に神殿で、民に聞こえるように読み上げてほしい。町々からやって来るユダの人々みなにも聞こえるように読み上げるのだ。
36:7 もしかしたら、彼らの願いが主に届いて、それぞれが悪い生き方から立ち返るかもしれない。主がこの民に向けて告げられた怒りと憤りは、それほど大きいのだから。」
36:8 ネリヤの子バルクは、預言者エレミヤに命じられたとおりにすべて行い、主の神殿で巻物に書かれた主の言葉を読み上げた。
36:9 ユダの王、ヨシヤの子ヨヤキムの治世の第五年、第九の月に、エルサレムのすべての民と、ユダの町々からエルサレムにやって来たすべての民に向けて、主の前での断食が呼びかけられた。
36:10 バルクは主の神殿で、書記官シャファンの子ゲマルヤの部屋から、巻物に書かれたエレミヤの言葉を、すべての民に聞こえるように読み上げた。その部屋は上の庭にあり、主の神殿の新しい門の入り口の近くにあった。
36:11 シャファンの子ゲマルヤの子ミカヤは、巻物に書かれた主の言葉をすべて聞いた。
36:12 そこで彼は王宮に下りて行き、書記官の部屋に入った。すると、そこには高官たちがみな集まっていた。書記官エリシャマ、シェマヤの子デラヤ、アクボルの子エルナタン、シャファンの子ゲマルヤ、ハナンヤの子ゼデキヤ、そのほかの高官たちである。
36:13 ミカヤは、バルクが民に聞こえるように巻物を読み上げたときに聞いた言葉を、すべて彼らに伝えた。
36:14 そこで高官たちはみな、クシの子シェレムヤの子ネタンヤの子エフディをバルクのもとに送って、こう言わせた。「あなたが民に聞こえるように読み上げた巻物を持って、こちらへ来てほしい。」ネリヤの子バルクは巻物を手にして、彼らのところへ来た。
36:15 彼らはバルクに言った。「さあ、座って、わたしたちに聞こえるように読み上げてほしい。」そこでバルクは彼らに聞こえるように読み上げた。
36:16 彼らはその言葉をすべて聞くと、おびえて顔を見合わせ、バルクに言った。「わたしたちは必ずこの言葉をすべて王に伝えなければならない。」
36:17 そして彼らはバルクにたずねた。「教えてほしい。あなたはどうやって、この言葉をすべて書き記したのか。エレミヤが口述したのか。」
36:18 バルクは答えた。「そうです。エレミヤがこの言葉をすべてわたしに口で語り、わたしはそれをインクで巻物に書き記したのです。」
36:19 役人たちはバルクに言った。「さあ、あなたもエレミヤも、身を隠しなさい。どこにいるか、だれにも知られないように。」
36:20 彼らは巻物を書記官エリシャマの部屋に預けてから、王のいる中庭へ入って行った。そして、この出来事をすべて王に報告した。
36:21 王はユディを送って、巻物を取りに行かせた。ユディはそれを書記官エリシャマの部屋から取ってくると、王と、そばに立っていた役人たち全員の前で読み上げた。
36:22 時は九月で、王は冬用の部屋に座っていた。目の前の火鉢では火が燃えていた。
36:23 ユディが三段、四段と読むたびに、王は書記官の小刀でそこを切り取り、火鉢の火に投げ込んだ。こうして巻物は全部、火鉢の火で焼き尽くされてしまった。
36:24 それでも、王も、この言葉をすべて聞いていた家来たちも、だれ一人おびえることも、悲しんで服を引き裂くこともなかった。
36:25 エルナタンとデラヤとゲマルヤは、巻物を焼かないでほしいと王に強く願った。しかし王は、彼らの言うことを聞き入れなかった。
36:26 そればかりか王は、王子エラフメエルと、アズリエルの子セラヤと、アブデエルの子シェレムヤに、書記官バルクと預言者エレミヤを捕らえるよう命じた。しかし、主は二人を隠された。
36:27 王が、バルクがエレミヤの口述で書き記した言葉の巻物を焼いたあと、主の言葉がエレミヤにあった。
36:28 「もう一つ別の巻物を用意して、ユダの王エホヤキムが焼いた最初の巻物にあった言葉を、すべてそこに書き記しなさい。
36:29 そして、ユダの王エホヤキムについてこう伝えなさい。主はこう言われる。あなたはあの巻物を焼いて、こう言った。『どうして、バビロンの王が必ず攻めて来てこの地を滅ぼし、人も家畜も絶やす、などと書いたのか』と。
36:30 だから、ユダの王エホヤキムについて、主はこう言われる。彼には、ダビデの王座に座る者がいなくなる。彼の死体は投げ捨てられ、昼は暑さに、夜は霜にさらされる。」
36:31 わたしは、彼とその子孫と家来たちを、その罪のために罰する。そして、わたしが告げたすべての災いを、彼らの上に、エルサレムに住む人々の上に、そしてユダの人々の上にくだす。彼らはわたしの言葉を聞こうとしなかったからだ。」
36:32 そこでエレミヤは、もう一つ別の巻物を取り、それを書記官ネリヤの子バルクに渡した。バルクはエレミヤが語るとおりに、ユダの王エホヤキムが火で焼いたあの書物の言葉を、すべてそこに書き記した。さらに、それと同じような言葉が、たくさん書き加えられた。
37:1 ヨシヤの子ゼデキヤが、エホヤキムの子コンヤに代わって王となった。バビロンの王ネブカドレザルが、彼をユダの地の王に立てたのである。
37:2 しかし、彼も家来たちも、この国の民も、主が預言者エレミヤを通して語った言葉を聞こうとしなかった。
37:3 ゼデキヤ王は、シェレムヤの子エフカルと、祭司マアセヤの子ゼファニヤをエレミヤのもとに送って、こう言わせた。「どうか、わたしたちのために、わたしたちの神、主に祈ってください。」
37:4 そのころエレミヤは、まだ人々の間を自由に出入りしていた。まだ牢に入れられていなかったからである。
37:5 ちょうどそのとき、ファラオの軍隊がエジプトから出て来た。エルサレムを包囲していたカルデア人は、その知らせを聞いて、エルサレムから引き上げていった。
37:6 そのとき、主の言葉が預言者エレミヤに臨んだ。
37:7 「イスラエルの神、主はこう言われる。あなたたちをわたしのところへ送り、尋ねさせたユダの王に、こう伝えなさい。あなたたちを助けようと出て来たファラオの軍隊は、自分の国エジプトへ引き返す。
37:8 そしてカルデア人はまた戻って来て、この町を攻める。彼らは町を占領し、火で焼き払う。
37:9 主はこう言われる。『カルデア人はきっと自分たちから離れていく』と言って、自分をだましてはいけない。彼らは離れていかない。
37:10 たとえあなたたちが、攻めて来るカルデア人の軍隊をすべて打ち破り、傷ついた者だけが残ったとしても、彼らはそれぞれ自分の天幕から立ち上がり、この町を火で焼き払うだろう。」
37:11 カルデア人の軍隊が、ファラオの軍隊を恐れてエルサレムから引き上げていったとき、
37:12 エレミヤは、ベニヤミンの地で人々とともに自分の分の土地を受け取るため、エルサレムを出て行こうとした。
37:13 だが、ベニヤミンの門まで来たとき、そこにはイルイヤという見張りの隊長がいた。シェレムヤの子で、ハナンヤの孫である。彼は預言者エレミヤを捕らえて言った。「お前はカルデア人のところへ寝返るつもりだな。」
37:14 エレミヤは言った。「うそだ。わたしはカルデア人のところへ寝返ったりしない。」しかしイルイヤは聞き入れず、エレミヤを捕らえて、役人たちのところへ連れて行った。
37:15 役人たちはエレミヤに激しく怒り、彼を打ちたたいて、書記官ヨナタンの家に閉じ込めた。その家が牢にされていたからである。
37:16 こうしてエレミヤは、地下の牢の独房に入れられ、そこに長い間とどまることになった。
37:17 さて、ゼデキヤ王は人を遣わしてエレミヤを連れて来させた。そして王は自分の家でひそかに彼に尋ねた。「主から何か言葉があったか。」エレミヤは答えた。「あります。」そしてこう続けた。「あなたはバビロンの王の手に渡されます。」
37:18 さらにエレミヤはゼデキヤ王に言った。「わたしがあなたや家臣たち、そしてこの民に、どんな罪を犯したというのですか。あなたたちはわたしを牢に入れたのです。
37:19 それに、あなたたちの預言者はどこにいるのですか。『バビロンの王が、あなたたちやこの地に攻めて来ることはない』と、あなたたちに預言していたではありませんか。
37:20 でも今、わたしの主である王よ、どうか聞いてください。わたしの願いを聞き入れてください。わたしを書記官ヨナタンの家に戻さないでください。あそこで死んでしまわないように。」
37:21 そこでゼデキヤ王は命じて、エレミヤを監視の庭に置かせた。そして町のパンがなくなるまで、毎日パン屋の通りからパンを一つ彼に与えさせた。こうしてエレミヤは監視の庭にとどまった。
38:1 さて、マタンの子シェファテヤ、パシュフルの子ゲダルヤ、シェレムヤの子ユカル、マルキヤの子パシュフルは、エレミヤがすべての民に語っていた次の言葉を聞いた。
38:2 「主はこう言われる。『この町にとどまる者は、剣と飢えと疫病で死ぬ。しかしカルデア人のところへ出て行く者は生きのびる。自分の命を戦利品のように持って、生きのびるのだ。』
38:3 主はこう言われる。『この町は必ずバビロンの王の軍隊の手に渡され、占領される。』」
38:4 すると役人たちは王に言った。「どうかこの男を死刑にしてください。こんなことを言って、この町に残っている兵士たちや、民全体の気力をくじいているのです。この男は、この民の幸せではなく、災いを求めているのです。」
38:5 ゼデキヤ王は言った。「よかろう、彼はお前たちの手の中にある。王であるわたしも、お前たちに逆らっては何もできないのだから。」
38:6 そこで彼らはエレミヤを捕らえ、監視の庭にある王子マルキヤの穴に投げ込んだ。綱でエレミヤをつり降ろしたのだ。その穴には水はなく、泥だけがあった。エレミヤは泥の中に沈んでいった。
38:7 クシュ人の宦官エベド・メレクは、王の家に仕えていた。人々がエレミヤを穴に投げ込んだことを、彼は耳にした。ちょうどそのとき、王はベニヤミンの門に座っていた。
38:8 エベド・メレクは王の家を出て、王のところへ行き、こう言った。
38:9 「王さま。あの者たちは、預言者エレミヤにひどいことをしました。彼を穴に投げ込んだのです。町にはもうパンがありません。このままでは、エレミヤはあそこで飢えて死んでしまいます。」
38:10 そこで王はクシュ人エベド・メレクに命じた。「ここから三十人を連れて行き、預言者エレミヤが死なないうちに、穴から引き上げなさい。」
38:11 エベド・メレクは人々を連れて王の家に入り、宝物庫の下の部屋へ行った。そこで古い布切れやぼろ着を取り、綱で穴の中のエレミヤのところへ降ろした。
38:12 クシュ人エベド・メレクはエレミヤに言った。「この古い布切れやぼろ着を、綱の下、脇の下にあててください。」エレミヤはそのとおりにした。
38:13 人々は綱でエレミヤを引き上げ、穴から救い出した。エレミヤは監視の庭にとどまった。
38:14 ゼデキヤ王は人をやって、預言者エレミヤを主の神殿にある第三の入り口に連れて来させた。王はエレミヤに言った。「あなたに聞きたいことがある。何も隠さないでほしい。」
38:15 エレミヤはゼデキヤに言った。「もしお話しすれば、あなたはきっとわたしを殺すでしょう。助言しても、あなたは聞き入れないでしょう。」
38:16 ゼデキヤ王はひそかにエレミヤに誓った。「わたしたちにこの命を与えてくださった主は生きておられる。その主にかけて誓う。わたしはあなたを殺さない。あなたの命を狙うあの者たちの手に渡すこともしない。」
38:17 エレミヤはゼデキヤに言った。「イスラエルの神、万軍の神である主は、こう言われる。『もしあなたがバビロンの王の家臣たちのところへ降伏して出て行くなら、あなたの命は助かり、この町は火で焼かれない。あなたも家族も生き延びる。
38:18 だが、もしバビロンの王の家臣たちのところへ出て行かないなら、この町はカルデア人の手に渡され、火で焼かれる。あなたも彼らの手を逃れることはできない。』」
38:19 ゼデキヤ王はエレミヤに言った。「わたしは、すでにカルデア人の側に投降しているユダヤ人たちが怖いのだ。もし彼らの手にわたしが引き渡されたら、なぶりものにされるかもしれない。」
38:20 エレミヤは言った。「彼らがあなたを引き渡すことはありません。どうか、わたしがあなたに告げる主の声に聞き従ってください。そうすれば、あなたは幸せになり、命も助かります。
38:21 でも、もし降伏して出て行くのを拒むなら、主がわたしに示されたのは、次のことです。
38:22 見てください。ユダの王の家に残っているすべての女たちは、バビロンの王の家臣たちのところへ引き出されます。そして彼女たちはこう言うでしょう。『あなたの親しい友たちが、あなたをそそのかし、そして打ち負かした。あなたの足が泥にはまり込むと、彼らは背を向けて去って行った。』
38:23 あなたの妻たちも子どもたちも、みなカルデア人のところへ引き出されます。あなた自身も彼らの手を逃れることはできず、バビロンの王の手に捕らえられます。そしてこの町は火で焼かれるのです。」
38:24 ゼデキヤはエレミヤに言った。「このやり取りを、だれにも知られてはならない。そうすれば、あなたは死なずにすむ。
38:25 もし家臣たちが、わたしがあなたと話したと聞きつけ、あなたのところへ来て、『王に何を話したのか教えてくれ。隠さず話せば、殺しはしない。王はあなたに何と言ったのか』と問いつめたら、
38:26 こう答えなさい。『わたしは、ヨナタンの家に戻されて、そこで死ぬことがないようにと、王に願い出ていたのです。』」
38:27 はたして家臣たちは全員エレミヤのところへ来て問いつめた。エレミヤは、王が命じたとおりのことを彼らに答えた。すると彼らは何も言わずに引き下がった。あのやり取りは、だれにも漏れていなかったからである。
38:28 こうしてエレミヤは、エルサレムが攻め落とされる日まで、監視の庭にとどまっていた。エルサレムが攻め落とされたとき、彼はそこにいた。
39:1 ユダの王ゼデキヤの治世第九年の十月、バビロンの王ネブカドレツァルが全軍を率いてエルサレムに攻めてきた。そして町を包囲した。
39:2 そしてゼデキヤの第十一年の四月九日、町の城壁が破られた。
39:3 バビロンの王の将軍たちがみな入ってきて、真ん中の門に陣取った。ネルガル・サルエツェル、サムガル・ネボ、高官のサルセキム、そしてもう一人の高官ネルガル・サルエツェルをはじめ、バビロンの王の残りの将軍たち全員だった。
39:4 ユダの王ゼデキヤと兵士たちはみな、彼らを見ると逃げ出した。夜のうちに、王の庭園を通り、二つの城壁の間の門から町を出て、アラバの方へ向かった。
39:5 しかしバビロニアの軍勢が彼らを追いかけ、エリコの平原でゼデキヤに追いついた。彼らはゼデキヤを捕らえ、ハマトの地のリブラにいるバビロンの王ネブカドレツァルのもとへ連れていった。王はそこでゼデキヤに判決を言い渡した。
39:6 バビロンの王はリブラで、ゼデキヤの目の前で彼の息子たちを殺した。ユダの有力者たちもみな殺した。
39:7 さらにバビロンの王はゼデキヤの両目をつぶし、青銅の鎖でつないで、バビロンへ連れていった。
39:8 バビロニア軍は王の宮殿と民の家々を火で焼き払い、エルサレムの城壁を打ち壊した。
39:9 そして親衛隊長ネブザルアダンは、町に残っていた人々、投降して自分についてきた者たち、そのほか残っていた人々をみな、バビロンへ捕らえ移した。
39:10 しかし親衛隊長ネブザルアダンは、何も持たない貧しい人々をユダの地に残し、その日、彼らにぶどう畑や耕す畑を与えた。
39:11 バビロンの王ネブカドレツァルは、エレミヤのことについて、親衛隊長ネブザルアダンにこう命じていた。
39:12 「その者を引き取り、目をかけて世話をせよ。少しも害を加えてはならない。彼が言うとおりにしてやりなさい。」
39:13 それで、親衛隊長ネブザルアダンは、侍従長ネブシャズバン、宮廷長官ネルガル・サルエツェル、そしてバビロンの王の高官たち全員とともに、人を送った。
39:14 彼らは人を送ってエレミヤを監視の庭から連れ出し、シャファンの子アヒカムの子ゲダルヤに引き渡して、家に帰らせた。こうしてエレミヤは民の中で暮らした。
39:15 エレミヤがまだ監視の庭に閉じ込められていたとき、主の言葉が彼に臨んだ。
39:16 「行って、クシュ人エベド・メレクにこう伝えなさい。イスラエルの神、万軍の主はこう言われる。『見よ、わたしはこの町に、わたしの言葉のとおり災いをもたらす。良いことのためではない。その日、それはあなたの目の前で現実になる。
39:17 しかしその日、わたしはあなたを救い出す、と主は言われる。あなたは、恐れている者たちの手に渡されることはない。
39:18 わたしは必ずあなたを助け出す。あなたは剣に倒れることなく、自分の命を戦利品のように得る。あなたがわたしに信頼したからだ、と主は言われる。』」
40:1 親衛隊長ネブザルアダンがエレミヤをラマから釈放した後、主からエレミヤに臨んだ言葉。ネブザルアダンは、バビロンへ連れて行かれるエルサレムとユダのすべての捕らわれ人の中で、鎖につながれていたエレミヤを引き取った。そのときのことである。
40:2 親衛隊長はエレミヤを呼び寄せて、こう言った。「あなたの神、主が、この場所にこの災いを下すと告げられた。
40:3 そして主は、告げたとおりにそれを実行された。あなたたちが主に対して罪を犯し、その声に従わなかったからだ。だから、このことがあなたたちに起こったのだ。
40:4 さあ、今日わたしは、あなたの手の鎖を解いて自由にする。もしわたしと一緒にバビロンへ来るのがよければ、来なさい。わたしがあなたの面倒を見よう。だが、わたしと一緒にバビロンへ来るのが嫌なら、来なくてよい。見なさい、この地はすべてあなたの前に開かれている。あなたがよいと思い、正しいと思う所へ、どこへでも行きなさい。」
40:5 エレミヤがまだ立ち去らないうちに、彼はさらに言った。「バビロンの王がユダの町々を治めさせるために任命した、シャファンの子アヒカムの子ゲダルヤのもとに帰り、民の中で彼と一緒に暮らしなさい。あるいは、あなたがよいと思う所へ、どこへでも行きなさい。」そして親衛隊長は、彼に食料と贈り物を与えて送り出した。
40:6 エレミヤは、ミツパにいるアヒカムの子ゲダルヤのもとへ行き、その地に残された民の中で、彼と一緒に暮らした。
40:7 さて、野にいた軍の隊長たちとその部下は、バビロンの王がアヒカムの子ゲダルヤをこの地の総督に任命したこと、そして、バビロンへ捕らえ移されなかった国の貧しい人々――男や女や子どもたち――を彼にゆだねたことを聞いた。
40:8 そこで彼らは、ミツパにいるゲダルヤのもとへやって来た。ネタンヤの子イシュマエル、カレアハの子ヨハナンとヨナタン、タンフメトの子セラヤ、ネトファ人エファイの子たち、そしてマアカ人の子ザヌヤ、この者たちとその部下である。
40:9 シャファンの子アヒカムの子ゲダルヤは、彼らとその部下に誓って言った。「バビロニア人に仕えることを恐れなくてよい。この地に住み、バビロンの王に仕えなさい。そうすれば、あなたたちはうまくいく。
40:10 わたし自身はミツパにとどまり、わたしたちのところへやって来るバビロニア人の前に立つ。あなたたちは、ぶどう酒や夏の果物や油を集めて器にたくわえ、自分たちの取った町々に住みなさい。」
40:11 また、モアブやアンモン人の地やエドム、そのほかすべての国々にいたユダの人々もみな、バビロンの王がユダに生き残りの者を残したこと、そして、シャファンの子アヒカムの子ゲダルヤを彼らの上に立てたことを聞いた。
40:12 そこでユダの人々はみな、追いやられていたすべての場所から帰って来た。彼らはユダの地に、ミツパにいるゲダルヤのもとへやって来て、ぶどう酒や夏の果物を非常にたくさん集めた。
40:13 カレアハの子ヨハナンと、野にいた軍の隊長たちはみな、ミツパにいるゲダルヤのもとへやって来て、
40:14 彼に言った。「アンモン人の王バアリスが、あなたの命をねらってネタンヤの子イシュマエルを送り込んだことを、あなたはよく知っているのか。」しかし、アヒカムの子ゲダルヤは彼らの言うことを信じなかった。
40:15 カレアハの子ヨハナンは、ミツパでゲダルヤにひそかに言った。「どうか、わたしに行かせてください。ネタンヤの子イシュマエルを討ちます。だれにも気づかれません。なぜ彼にあなたの命をねらわせ、あなたのもとに集まったユダの人々をみな散らばらせ、ユダの生き残りの者を滅ぼさせるのですか。」
40:16 しかし、アヒカムの子ゲダルヤはカレアハの子ヨハナンに言った。「そんなことをしてはならない。あなたはイシュマエルについて偽りを言っているのだ。」
41:1 第七の月のことだった。ネタンヤの子で、エリシャマの孫にあたるイシュマエルが、ミツパにいるアヒカムの子ゲダルヤのところにやって来た。彼は王家の血を引く者で、王の高官たちと部下の十人を連れていた。そして彼らはミツパで一緒に食事をした。
41:2 すると、ネタンヤの子イシュマエルと、一緒にいた十人の男たちが立ち上がり、シャファンの孫、アヒカムの子ゲダルヤを剣で切りつけて殺した。ゲダルヤは、バビロンの王からこの地を任された人物だった。
41:3 イシュマエルはさらに、ミツパでゲダルヤと共にいたユダヤ人たち全員と、そこにいたバビロニアの兵士たちも切り殺した。
41:4 ゲダルヤが殺されて二日目、まだ誰もそのことを知らないでいた。
41:5 そこへ、シェケム、シロ、サマリアから八十人の男たちがやって来た。彼らはひげをそり、服を引き裂き、体を傷つけていた。手には穀物のささげ物と香を持ち、主の神殿に持って行こうとしていた。
41:6 ネタンヤの子イシュマエルは、彼らを迎えにミツパから出て行った。泣きながら歩いて行き、彼らに出会うと、こう言った。「アヒカムの子ゲダルヤのところへ来てください。」
41:7 彼らが町の中に入ると、ネタンヤの子イシュマエルは、一緒にいた男たちとともに彼らを殺し、その死体を穴の中に投げ込んだ。
41:8 しかし、その中の十人はイシュマエルに言った。「わたしたちを殺さないでください。畑には小麦、大麦、油、蜜を隠してあるのです。」それでイシュマエルは思いとどまり、彼らを仲間たちと一緒に殺すことはしなかった。
41:9 イシュマエルが、殺した人々の死体をすべて投げ込んだその穴は、かつてアサ王が、イスラエルの王バアシャを恐れて造ったものだった。ネタンヤの子イシュマエルは、そこをゲダルヤと共に殺した者たちの死体で満たした。
41:10 それからイシュマエルは、ミツパに残っていた民全員を捕虜にした。それは王の娘たちや、ミツパに残っていたすべての民で、護衛隊長ネブザルアダンがアヒカムの子ゲダルヤにゆだねた人々だった。ネタンヤの子イシュマエルは彼らを捕虜にして、アンモン人のところへ渡ろうと出発した。
41:11 ネタンヤの子イシュマエルが行ったすべての悪事を、カレアハの子ヨハナンと、彼と共にいた軍の隊長たち全員が聞いた。
41:12 彼らは全部の兵を率いて、ネタンヤの子イシュマエルと戦うために出て行き、ギブオンの大きな池のほとりで彼を見つけた。
41:13 イシュマエルと一緒にいた民は全員、カレアハの子ヨハナンと、彼と共にいた軍の隊長たち全員を見た。すると彼らは喜んだ。
41:14 イシュマエルがミツパから捕虜として連れて来た民は全員、向きを変えて引き返し、カレアハの子ヨハナンのところへ行った。
41:15 でもネタンヤの子イシュマエルは、八人の部下と一緒にヨハナンから逃げ出し、アンモン人のところへ行った。
41:16 こうしてカレアハの子ヨハナンと、彼と共にいた軍の隊長たち全員は、生き残った民全員を引き取った。それは、ネタンヤの子イシュマエルがアヒカムの子ゲダルヤを殺したあと、ミツパから捕虜にした人々で、ヨハナンがギブオンから取り戻した者たちだった。その中には戦いのできる兵士や、女や子ども、宮廷の役人たちがいた。
41:17 彼らは出発し、ベツレヘムのそばにあるゲルト・キムハムに滞在した。エジプトへ向かうためだった。
41:18 カルデア人を恐れてのことだった。ネタンヤの子イシュマエルが、バビロンの王がこの地の総督に任命したアヒカムの子ゲダルヤを殺したので、彼らはカルデア人を恐れていたのだ。
42:1 そのとき、軍の隊長たち全員と、カレアハの子ヨハナン、ホシャヤの子イザンヤ、そして身分の低い者から高い者まで民全員が進み出た。
42:2 そして預言者エレミヤにこう言った。「どうか、わたしたちの願いを聞き入れてください。わたしたちのため、この生き残った者全員のために、あなたの神である主に祈ってください。ご覧のとおり、わたしたちは大勢の中からほんのわずかしか残っていないのです。
42:3 あなたの神である主が、わたしたちの進むべき道と、なすべきことを示してくださるように。」
42:4 預言者エレミヤは彼らに答えた。「わかった。あなたがたの言うとおり、あなたがたの神である主に祈ろう。主があなたがたに答えられることは、何もかもあなたがたに伝える。一つも隠さない。」
42:5 すると彼らはエレミヤに言った。「もしあなたの神である主が、あなたを通してわたしたちに告げるとおりに行わなかったら、主が真実で信頼できる証人となって、わたしたちを裁いてくださいますように。
42:6 良いことでも悪いことでも、わたしたちはあなたを遣わす、わたしたちの神である主の声に従います。わたしたちの神である主の声に従えば、わたしたちはうまくいくのですから。」
42:7 十日たって、主の言葉がエレミヤに臨んだ。
42:8 エレミヤはカレアの子ヨハナンと、彼とともにいたすべての軍の隊長たち、そして身分の低い者から高い者まで、すべての民を呼び集めた。
42:9 そして彼らに言った。「あなたがたは、わたしをイスラエルの神である主のもとに遣わし、あなたがたの願いを主の前に届けさせた。その主がこう言われる。
42:10 『もしあなたがたがこの地にとどまるなら、わたしはあなたがたを建て、決して壊さない。あなたがたを植え、決して引き抜かない。わたしがあなたがたに下した災いを、思い直したからだ。
42:11 あなたがたはバビロンの王を恐れている。でも、その王を恐れてはならない。彼を恐れるな、と主は言われる。わたしがあなたがたとともにいて、あなたがたを救い、その手から助け出すからだ。
42:12 わたしはあなたがたをあわれむ。そして、王もあなたがたをあわれんで、あなたがたを自分たちの土地に帰らせる。』
42:13 しかし、もしあなたがたが、あなたがたの神である主の声に聞き従わず、『わたしたちはこの地にとどまらない』と言うなら、
42:14 また『いや、わたしたちはエジプトの地へ行く。そこでは戦いを見ることもなく、角笛の音を聞くこともなく、パンに飢えることもない。あの地に住もう』と言うなら、どうなるか。
42:15 だから今、主の言葉を聞け、ユダの生き残りの者たちよ。万軍の主、イスラエルの神はこう言われる。『もしあなたがたが、どうしてもエジプトへ行こうと決めて、そこに住みに行くなら、
42:16 あなたがたが恐れているあの剣は、エジプトの地であなたがたに追いつく。あなたがたが心配しているあの飢えは、エジプトまであなたがたを追いかけてくる。そして、あなたがたはそこで死ぬ。
42:17 エジプトへ行って、そこに住もうと決めた者はみな、剣と飢えと疫病で死ぬ。だれ一人、わたしが下す災いを生き延びて逃れる者はいない。
42:18 万軍の主、イスラエルの神はこう言われる。わたしの怒りと憤りがエルサレムに住む者たちに注がれたように、あなたがたがエジプトへ行くなら、わたしの憤りはあなたがたにも注がれる。あなたがたは、のろいの言葉となり、人々に恐れられ、ののしられ、辱められる。そして、二度とこの場所を見ることはない。』
42:19 ユダの残りの者たちよ、主はあなたがたについてこう言われた。『エジプトへ行ってはならない。』これははっきり覚えておきなさい。わたしはきょう、あなたがたにはっきりと警告したのだ。
42:20 あなたがたは、自分の身をあやまらせている。あなたがたは自分でわたしを、あなたがたの神、主のもとへ送ってこう言った。『わたしたちのために、わたしたちの神、主に祈ってください。わたしたちの神、主が言われることをすべて、そのまま伝えてください。そのとおりにします。』
42:21 そこで、わたしはきょう、それをあなたがたに伝えた。それなのにあなたがたは、あなたがたの神、主の声に、また主がわたしを通して伝えたことに、何一つ聞き従わなかった。
42:22 だから、これははっきり覚えておきなさい。あなたがたは、行って住もうとしているその場所で、剣と飢えと疫病で死ぬのだ。」
43:1 エレミヤは、彼らの神、主が語れと送り出されたことばを、すべての民に語り終えた。この主のことばをすべて語り終えたときのことである。
43:2 すると、ホシャヤの子アザルヤと、カレアハの子ヨハナン、そして高ぶった者たちがみな、エレミヤにこう言った。「あなたはうそをついている。わたしたちの神、主が、『エジプトへ行って、そこに住んではならない』と言えと、あなたを送ったのではない。
43:3 ネリヤの子バルクが、あなたをそそのかして、わたしたちに逆らわせているのだ。わたしたちをカルデア人の手に引き渡して殺させ、バビロンへ連れ去らせるためだ。」
43:4 こうして、カレアハの子ヨハナンと、軍の隊長たちみな、そしてすべての民は、ユダの地にとどまれという主の声に聞き従わなかった。
43:5 そして、カレアハの子ヨハナンと軍の隊長たちはみな、ユダの残りの者たち全員を連れて行った。彼らは、追い散らされていたあらゆる国から、ユダの地に住もうとして帰って来ていた者たちだった。
43:6 その中には、男たち、女たち、子どもたち、王の娘たち、そして親衛隊長ネブザルアダンが、シャファンの子アヒカムの子ゲダルヤに任せて残しておいたすべての人がいた。また、預言者エレミヤと、ネリヤの子バルクもいた。
43:7 こうして彼らはエジプトの地に入った。主の声に聞き従わなかったのだ。そして彼らはタフパンヘスまでやって来た。
43:8 そのタフパンヘスで、主の言葉がエレミヤに臨んで、こう告げられた。
43:9 「大きな石をいくつか手に取れ。そして、タフパンヘスにあるファラオの宮殿の入り口の、れんが敷きの中のしっくいに、それを埋めよ。ユダヤ人たちが見ている前で、そうするのだ。
43:10 そして彼らにこう言え。イスラエルの神、万軍の主はこう言われる。『見よ、わたしは使いを送り、わたしのしもべであるバビロンの王ネブカドネツァルを連れて来る。そして、わたしが埋めたこれらの石の上に、彼の王座を据える。彼はその上に王の天幕を張るだろう。
43:11 彼は攻めて来て、エジプトの地を打つ。死に定められた者は死に、捕らわれと定められた者は捕らわれに、剣に定められた者は剣に渡される。
43:12 わたしはエジプトの神々の神殿に火をつける。彼はそれらを焼き、神々を捕らえて運び去る。そして、羊飼いが自分の衣をまとうように、彼はエジプトの地をまとい、無事にそこから出て行く。
43:13 彼はエジプトの地にあるベテ・シェメシュの石柱を打ち砕き、エジプトの神々の神殿を火で焼き払う。』」
44:1 エジプトの地に住むすべてのユダヤ人について、主の言葉がエレミヤに臨んだ。彼らはミグドル、タフパンヘス、ノフ、そしてパテロスの地に住んでいた。その言葉はこうである。
44:2 「イスラエルの神、万軍の主はこう言われる。あなたたちは、わたしがエルサレムとユダのすべての町にもたらした災いを、すべて見てきた。見よ、それらは今日、廃墟となり、住む者もいない。
44:3 それは、彼らが悪を行って、わたしを怒らせたからだ。彼らは行って、ほかの神々に香をたき、それに仕えた。それは、彼ら自身もあなたたちも、あなたたちの先祖も知らなかった神々だ。
44:4 それでもわたしは、わたしのしもべである預言者たちを、朝早くから繰り返しあなたたちのもとへ送り、こう言い続けた。『どうか、わたしが憎むこの忌まわしいことをしないでほしい』と。
44:5 しかし彼らは聞かず、耳を傾けようともしなかった。悪から立ち返って、ほかの神々に香をたくのをやめることをしなかったのだ。
44:6 だから、わたしの激しい怒りは注ぎ出され、ユダの町々とエルサレムの通りで燃え上がった。そして、それらは今日のように、廃墟となり、荒れ果てた。」
44:7 今、イスラエルの神、万軍の神である主はこう言われる。「なぜあなたたちは、自分自身に対してこんな大きな悪を行うのか。ユダの中から、男も女も、幼子も乳飲み子も断ち切り、自分たちに一人の生き残りも残さないようにしている。
44:8 あなたたちは自分の手で造ったもので、わたしを怒らせている。移り住もうとやって来たこのエジプトの地で、ほかの神々に香をたいているのだ。こうして自分自身を断ち切り、地上のすべての国々の間で、のろいとそしりの的となろうとしている。
44:9 あなたたちは忘れてしまったのか。あなたたちの先祖の悪や、ユダの王たちの悪、その妻たちの悪、あなたたち自身の悪、そしてあなたたちの妻たちの悪を。彼らがユダの地とエルサレムの通りで行ったことを。
44:10 彼らは今日まで、へりくだることもなく、わたしを恐れることもなかった。わたしがあなたたちと、あなたたちの先祖の前に与えた律法と定めに従って歩むこともしなかった。
44:11 だから、イスラエルの神、万軍の主はこう言われる。「見よ、わたしはあなたたちに災いをもたらそうと顔を向け、ユダ全体を断ち切る。
44:12 わたしは、エジプトの地に行って住もうと決めたユダの残りの者を取り去る。彼らはみな滅び、エジプトの地で倒れる。剣と飢えによって滅ぼされ、小さな者から大きな者まで、剣と飢えで死ぬ。そして、のろいとなり、恐怖となり、ののしりとそしりの的となる。
44:13 わたしはエルサレムを罰したように、エジプトの地に住む者たちを、剣と飢えと疫病で罰する。
44:14 エジプトの地に住もうとやって来たユダの残りの者のうち、逃げ延びる者も生き残る者もいない。彼らは心から帰りたいと願っているユダの地に、戻ることはできない。わずかに逃げ延びる者のほかは、だれも帰れないのだ。」
44:15 すると、自分の妻たちがほかの神々に香をたいていることを知っていた男たちみんなと、そばに立っていた大勢の女たち、そしてエジプトの地のパトロスに住むすべての民が、エレミヤにこう答えた。
44:16 「あなたが主の名によってわたしたちに語った言葉に、わたしたちは従わない。
44:17 わたしたちは、自分の口から出た言葉のとおり、必ず天の女王に香をたき、彼女に注ぎのささげ物をする。わたしたちも、わたしたちの先祖も、王たちも高官たちも、ユダの町々とエルサレムの通りでそうしてきた。あのころは、パンに満ち足り、幸せで、災いにも遭わなかった。
44:18 でも、天の女王に香をたき、注ぎのささげ物をするのをやめてから、わたしたちはすべてに欠乏し、剣と飢えで滅んできた。」
44:19 「それに、わたしたちが天の女王に香をたき、彼女に注ぎのささげ物をするとき、彼女にかたどったお菓子を作り、注ぎのささげ物をするのは、夫たちの承知の上でしていることではないか。」
44:20 それでエレミヤは、こう答えた男も女もふくめ、すべての民に言った。
44:21 「ユダの町々とエルサレムの通りで、あなたたちも先祖も、王たちも高官たちも、この地の民も香をたいた。そのことを、主が思い起こさなかったとでも思うのか。主の心に上らなかったとでも。
44:22 あなたたちの悪い行いと、あなたたちがしてきた忌まわしいことのために、主はもう耐えることができなくなった。それであなたたちの国は、今日のように、住む者もない荒れ地となり、恐れられ、のろわれるものとなったのだ。
44:23 あなたたちが香をたき、主に罪を犯し、主の声に従わず、その教えにも、掟にも、定めにも従って歩まなかった。だから今日のように、この災いがあなたたちに降りかかったのだ。」
44:24 さらにエレミヤは、すべての民に、そしてすべての女たちに言った。「エジプトの地にいるユダのすべての人よ、主の言葉を聞け。
44:25 イスラエルの神、万軍の主はこう言われる。あなたたちも妻たちも、自分の口で言い、自分の手で成し遂げてこう言った。『わたしたちは、天の女王に香をたき、彼女に注ぎのささげ物をするという誓いを、必ず果たす』と。それなら、あなたたちの誓いをしっかり立て、その誓いを必ず果たすがよい。
44:26 だから、エジプトの地に住むユダのすべての人よ、主の言葉を聞け。主は言われる。見よ、わたしは自分の大いなる名にかけて誓う。エジプトの地じゅうのどこでも、ユダの人がだれ一人、『主なる神は生きておられる』と言って、わたしの名を口にすることは、もう二度とない。
44:27 見よ、わたしは彼らを見張っている。良くしてやるためではなく、災いを下すためだ。エジプトの地にいるユダの人はみな、剣と飢えによって、絶えてなくなるまで滅ぼされる。
44:28 剣を逃れて生き延びる者は、ほんのわずかしかいない。その者たちは、エジプトの地からユダの地へ帰る。そのとき、エジプトの地に来て寄留していたユダの生き残りはみな、わたしの言葉と彼らの言葉と、どちらが立つかを知るだろう。
44:29 主は言われる。これがあなたたちへのしるしだ。わたしはこの場所であなたたちを罰する。それは、あなたたちに災いを下すというわたしの言葉が、必ず立つことを、あなたたちが知るためだ。
44:30 主はこう言われる。見よ、わたしはエジプトの王ファラオ・ホフラを、その敵の手、命をねらう者の手に渡す。ユダの王ゼデキヤを、その敵で命をねらったバビロンの王ネブカドレツァルの手に渡したのと同じようにだ。」
45:1 ユダの王、ヨシヤの子ヨヤキムの治世第四年のこと。バルクはネリヤの子で、エレミヤが語る言葉を巻物に書き取っていた。そのとき、預言者エレミヤはバルクにこう告げた。
45:2 「イスラエルの神である主が、あなたについてこう言われる。バルクよ、
45:3 あなたはこう言った。『ああ、なんてつらいんだ。主はわたしの痛みの上に、さらに悲しみを加えられた。嘆きつづけて、もう疲れきってしまった。休まる時がまったくない』と。
45:4 主はこう言われる。バルクに、こう伝えなさい。主はこう言われる。見よ、わたしが建てたものを、わたし自身がこわす。わたしが植えたものを、わたし自身が引き抜く。この地のすべてに対してそうするのだ。
45:5 それなのに、あなたは自分のために大きなことを求めるのか。求めてはならない。見よ、わたしはすべての人に災いをくだそうとしている——主の言葉。だがあなたには、どこへ行っても、命だけは戦利品として与えよう。あなたは生きのびる。」
46:1 もろもろの国について、主の言葉が預言者エレミヤに臨んだ。
46:2 エジプトについて。ユーフラテス川のほとり、カルケミシュにいたエジプトの王、ファラオ・ネコの軍隊について。この軍は、ユダの王ヨシヤの子ヨヤキムの治世第四年に、バビロンの王ネブカドレツァルによって打ち破られた。
46:3 「大盾と小盾をそろえろ。前に出て、戦いにのぞめ。
46:4 馬に馬具をつけろ。騎兵たちよ、乗れ。かぶとをかぶって、位置につけ。槍をみがき、よろいを身につけろ。
46:5 なのに、これは何ということだ。彼らはおびえ、うしろへ逃げていく。勇士たちは打ちのめされ、うしろも見ずに、ひたすら逃げ去る。まわりじゅうが恐怖だ——主の言葉。
46:6 足の速い者も逃げきれない。勇士も助からない。北のほう、ユーフラテス川のほとりで、彼らはつまずき、倒れる。
46:7 ナイル川のように水かさを増して押し寄せてくるのは、いったい誰だ。川の水が荒れ狂うように、逆巻いてくるのは。
46:8 それはエジプトだ。ナイル川のように水かさを増し、川の水のように荒れ狂う。エジプトは言う。「おれは押し上がって、地を覆いつくす。町も、そこに住む者たちも、みんな滅ぼしてやる」と。
46:9 馬よ、突き進め。戦車よ、荒れ狂え。勇士たちよ、出て行け。盾をかまえるクシュとプトの兵よ、弓を引きしぼるルデの兵よ。
46:10 この日は、万軍の主なる神のものだ。復讐の日、敵に仕返しをする日だ。剣は食らいつくし、腹いっぱいになるまで、彼らの血をたっぷり飲みほす。これは、万軍の主なる神へのいけにえだからだ。北の地で、ユーフラテス川のほとりで。
46:11 ギルアデに上って行き、香油を手に入れろ。エジプトの娘、まだ嫁いでいない乙女よ。だが、どんなに薬を重ねても無駄だ。おまえが治ることはない。
46:12 おまえの恥は、国々じゅうに知れわたった。おまえの叫び声は、地を満たしている。勇士が勇士につまずき、二人そろって倒れたからだ。
46:13 バビロンの王ネブカドレツァルが攻めて来て、エジプトの地を打つことについて、主が預言者エレミヤに語った言葉。
46:14 エジプトで告げ知らせろ。ミグドルで、ノフで、タフパヌヘスで、伝えろ。「位置につけ。備えをしろ。おまえのまわりを、剣が食らいつくしているのだから」と言え。
46:15 なぜ、おまえの勇士たちは打ち倒されたのか。彼らが立っていられなかったのは、主が突き倒したからだ。
46:16 主は次々につまずかせ、兵たちは互いに折り重なって倒れた。彼らは言う。「立て、自分たちの民のところへ、生まれ故郷の地へ帰ろう。この人殺しの剣を逃れて」と。
46:17 そこで、彼らはこう呼んだ。「エジプトの王ファラオ、ただの騒がしい音。好機をむざむざ逃した者」と。
46:18 わたしは生きている——王である方の言葉。その名は万軍の主。山々の中にそびえるタボルのように、海のそばに立つカルメルのように、確かにその者はやって来る。
46:19 エジプトの娘よ、そこに住む者よ、荷物をまとめて、捕らわれの旅の支度をせよ。メンフィスは荒れ果て、焼かれて、住む者もいなくなるからだ。
46:20 エジプトは美しい雌の子牛。だが、北から虻が飛んでくる。確かに、やって来る。
46:21 雇われた兵たちも、その中で肥え太った子牛のようだ。彼らもまた背を向け、いっせいに逃げ出し、踏みとどまらなかった。彼らに災いの日が、罰せられる時がやって来たからだ。
46:22 エジプトの声は、這って逃げる蛇のようにシューッと鳴る。敵は軍勢を組んで進み、木こりのように斧を手にして攻めて来るからだ。
46:23 彼らはエジプトの森を切り倒す——主の言葉。どんなに数えきれないほど茂っていてもだ。敵はいなごよりも多く、数えることもできない。
46:24 エジプトの娘は恥を受け、北の民の手に渡される。
46:25 イスラエルの神、万軍の主は言う。「見よ、わたしはテーベの神アモンを罰する。ファラオも、エジプトも、その神々も、王たちも罰する。ファラオも、彼に頼る者たちもだ。
46:26 わたしは彼らを、命をねらう者たちの手に、バビロンの王ネブカドネツァルとその家来たちの手に渡す。だがその後、エジプトは昔のように人の住む地となる——主の言葉。
46:27 だが、わたしのしもべヤコブよ、恐れるな。イスラエルよ、おびえるな。見よ、わたしは遠くからあなたを救い出し、あなたの子孫を捕らわれの地から連れ帰る。ヤコブは帰って来て、穏やかに、安らかに暮らし、おびえさせる者はいなくなる。
46:28 わたしのしもべヤコブよ、恐れるな——主の言葉。わたしがあなたと共にいるからだ。わたしはあなたを追いやった先の国々をすべて滅ぼし尽くす。だが、あなたを滅ぼし尽くすことはしない。ただ、正しい裁きであなたを懲らしめる。決して罰せずにおくことはしない。」
47:1 ファラオがガザを攻める前に、主の言葉が預言者エレミヤに届いた。ペリシテ人についての言葉だ。
47:2 主はこう言われる。「見よ、北から水が押し寄せる。それはあふれる激流となり、地とそこにあるすべてを、町とそこに住む人々をのみ込む。人々は叫び、この地に住む者はみな泣きわめく。
47:3 たくましい馬のひづめが地を打つ音、戦車がとどろく音、その車輪の轟音に、父親たちは力が抜けて、自分の子どもを振り返ることさえできない。
47:4 ペリシテ人がみな滅ぼされる日が来たからだ。ティルスとシドンには、生き残って助けになる者が一人もいなくなる。主がペリシテ人を、カフトルの島から残った人々を、滅ぼそうとしているのだ。
47:5 ガザは頭をそって嘆き、アシュケロンは滅ぼされて黙り込む。平野に残った人々よ、いつまで自分の体を傷つけて嘆くのか。
47:6 ああ、主の剣よ。おまえはいつになったら静まるのか。さやに収まれ。休んで、じっとしていろ。
47:7 だが、どうして静まれるだろう。主が命令を下したのだ。アシュケロンと海辺の町々を討てと、主がそこへ剣を向けたのだから。」
48:1 モアブについて。イスラエルの神、万軍の主はこう言われる。「ネボは災いだ。滅ぼされてしまった。キルヤタイムは辱められ、攻め取られた。とりでは辱められ、打ち砕かれた。
48:2 モアブの誇りはもう消えた。ヘシュボンでは人々がモアブに災いをたくらんで、こう言う。『さあ、あの国を消し去ろう。』マドメンよ、おまえも黙らされる。剣がおまえを追いかける。
48:3 ホロナイムから叫び声が聞こえる。『破壊だ、大きな滅びだ』と。
48:4 モアブは打ち砕かれた。幼い子どもたちまで泣き叫ぶ。
48:5 人々は泣きながらルヒトの坂を登っていく。ホロナイムの下り坂では、滅びを嘆く叫びが敵の耳にまで届く。
48:6 逃げろ。自分の命を守れ。荒れ野の裸の木のようになれ。」
48:7 おまえは自分の力とたくわえた財産に頼っていた。だからおまえも捕らえられる。おまえの神ケモシュも、その祭司や役人たちと一緒に、捕虜として連れて行かれる。
48:8 破壊する者がすべての町に襲いかかる。どの町も逃げきれない。谷は荒らされ、高原の平地も滅ぼされる。主がそう言われたからだ。
48:9 モアブに翼をやれ。飛んで逃げられるように。その町々は荒れ果て、住む者は一人もいなくなる。
48:10 主の仕事を手を抜いてする者は、のろわれる。剣を血で汚すのをためらう者も、のろわれる。
48:11 モアブは若いころからずっと安穏として、静かに座っていた。ぶどう酒がおりの上に落ち着いたまま、器から器へ移し替えられることもなかった。捕虜として連れて行かれることもなかった。だからその味はそのまま残り、香りも変わらなかった。
48:12 しかし、見よ、その日が来る、と主は言われる。わたしはモアブに、酒をあける者たちを送る。彼らはモアブをあけて空にし、その器を空っぽにし、酒がめを打ち砕く。
48:13 そのときモアブは、自分の神ケモシュを恥じる。イスラエルの民が、頼りにしていたベテルの神を恥じたのと同じように。
48:14 どうしておまえたちは『おれたちは勇者だ、戦いに強い兵士だ』などと言えるのか。
48:15 モアブは荒らされ、その町々に敵が攻め上る。えり抜きの若者たちも、殺される場所へと下っていく。これが王の言葉だ。その名は万軍の主。
48:16 モアブの破滅は、もうすぐそこまで来ている。わざわいがものすごい速さで迫っている。
48:17 モアブの周りにいる者よ、みなモアブのために嘆け。その名を知る者はみな言え。『なんということだ。強い杖が折られ、美しい王のつえが砕かれた』と。
48:18 ディボンに住む娘よ、栄光の座から降りて、かわいた地に座れ。モアブを破壊する者がおまえに攻め上り、おまえの砦を打ち壊すからだ。
48:19 道のそばに立って、見張っていろ。アロエルに住む者よ。逃げて来る男や、のがれて来る女に聞け。『何があったのか』と。
48:20 モアブは砕かれて、恥をさらしている。泣き叫べ、大声を上げろ。アルノン川のほとりで知らせろ。モアブが荒らされた、と。
48:21 さばきが高原の地にやって来た。ホロンに、ヤハツに、メファアトに。
48:22 ディボンに、ネボに、ベテ・ディブラタイムに。
48:23 キルヤタイムに、ベテ・ガムルに、ベテ・メオンに。
48:24 ケリヨテに、ボツラに、そしてモアブの地のすべての町に、遠くの町にも近くの町にも、さばきが下る。
48:25 モアブの角は切り落とされ、その腕は折られた、と主は言われる。
48:26 モアブを酔わせろ。主に向かって高ぶったからだ。モアブは自分の吐いたものの中で転げ回り、笑いものになる。
48:27 モアブよ、おまえはイスラエルを笑いものにしたではないか。イスラエルが盗人の仲間にでもいたというのか。おまえはイスラエルのことを口にするたびに、あざけって頭を振ったのだ。
48:28 モアブに住む者よ、町を捨てて岩場に住め。谷の入り口の縁に巣を作る鳩のようになれ。
48:29 わたしたちはモアブの高慢を聞いた。モアブはとことん高ぶっている。その思い上がり、うぬぼれ、高慢、そして心の高ぶりを。
48:30 わたしはモアブの怒りを知っている、と主は言われる。それは中身がない。モアブの自慢話も、何一つ実を伴わない。
48:31 だから、わたしはモアブのために泣き叫ぶ。モアブ全体のために声をあげる。キル・ヘレスの人々のために嘆く。
48:32 シブマのぶどうの木よ、わたしはヤゼルが泣く以上に、あなたのために泣く。あなたの蔓は海を越え、ヤゼルの海にまで達していた。だが、あなたの夏の果実とぶどうの収穫に、破壊する者が襲いかかった。
48:33 喜びも楽しみも、実り豊かな畑からも、モアブの地からも消え去った。わたしは酒ぶねからぶどう酒を絶やした。もう喜びの声をあげてぶどうを踏む者はいない。叫び声はあっても、それは喜びの叫びではない。
48:34 ヘシュボンからエルアレ、そしてヤハツまで、人々は叫び声をあげる。ツォアルからホロナイム、エグラト・シェリシヤまで響きわたる。ニムリムの水さえも枯れ果ててしまうからだ。
48:35 わたしはモアブで、高き所で捧げ物をし、自分の神々に香をたく者を終わらせる、と主は言われる。
48:36 だから、わたしの心はモアブのために、笛の音のように嘆き鳴る。キル・ヘレスの人々のためにも、わたしの心は笛のように嘆く。彼らが蓄えた富が、すべて消え去ったからだ。
48:37 どの頭も剃られ、どのひげも切り落とされている。どの手も傷つけられ、腰には粗布をまとっている。
48:38 モアブのどの屋根の上でも、広場でも、どこもかしこも嘆き悲しむ声があがる。わたしがモアブを、だれも欲しがらない器のように砕いたからだ、と主は言われる。
48:39 モアブはなんと打ち砕かれたことか。人々は泣き叫ぶ。モアブはなんと恥じて背を向けたことか。モアブは周りのすべての者にとって、笑いものとなり、恐怖の的となった。
48:40 主はこう言われる。見よ、鷲のように舞い降り、モアブに向かってその翼を広げる者がいる。
48:41 町々は攻め取られ、砦は占領される。その日、モアブの勇士たちの心は、産みの苦しみにある女の心のようになる。
48:42 モアブは滅ぼされ、もはや一つの民ではなくなる。主に向かって高ぶったからだ。
48:43 モアブに住む者よ、恐怖と落とし穴と罠がお前を待っている、と主は言われる。
48:44 恐怖から逃げる者は落とし穴に落ち、落とし穴からはい上がる者は罠にかかる。わたしがモアブに、罰の年を臨ませるからだ、と主は言われる。
48:45 逃げる者たちは力尽きて、ヘシュボンの陰に立ち止まる。だがヘシュボンから火が出て、シホンの真ん中から炎が燃え上がる。それはモアブのこめかみを焼き、騒ぐ者たちの頭のてっぺんを焼き尽くす。
48:46 モアブよ、お前は災いだ。ケモシュの民は滅びた。お前の息子たちは捕らえられて連れ去られ、娘たちも捕らえられて連れて行かれた。
48:47 しかし終わりの日に、わたしはモアブを元の姿に戻す、と主は言われる。ここまでがモアブへのさばきである。
49:1 アンモン人について、主はこう言われる。イスラエルには息子がいないのか。跡を継ぐ者がいないのか。それなのになぜ、ミルコムがガドの地を奪い取り、その民がガドの町々に住んでいるのか。
49:2 だから見よ、その時が来る、と主は言われる。わたしはアンモン人のラバに、戦いのときの声を響かせる。ラバは荒れ果てた廃墟の丘となり、周りの町々は火で焼かれる。そのとき、イスラエルは自分を奪った者たちを奪い返す、と主は言われる。
49:3 ヘシュボンよ、泣き叫べ。アイは荒らされた。ラバの娘たちよ、叫べ。粗布を身にまとい、嘆き悲しみ、囲いの中を右往左往せよ。ミルコムは祭司たちや高官たちと一緒に、捕らわれて連れ去られるからだ。
49:4 背き続ける娘よ、なぜ谷を誇るのか。お前の谷は豊かに実る。だがお前は自分の宝に頼り、「だれがわたしを攻めて来るものか」と言う。
49:5 見よ、わたしはお前の周りのあらゆる所から、恐怖をお前に臨ませる、と万軍の主なる神は言われる。お前たちは一人残らず追い散らされ、逃げまどう者を集める者はだれもいない。
49:6 だがその後、わたしはアンモン人を元の姿に戻す、と主は言われる。
49:7 エドムについて、万軍の主はこう言われる。テマンには、もう知恵がないのか。賢い者たちから助言が消えてしまったのか。彼らの知恵は腐り果てたのか。
49:8 逃げろ、引き返せ、深い所に身をひそめろ、デダンに住む者たちよ。わたしはエサウに災いを臨ませる。彼を罰する時が来たのだ。
49:9 ぶどうを摘む者がお前の所に来ても、いくらかは摘み残していく。夜、盗人が来ても、ほしいだけ取れば気が済む。だが、そうはならない。
49:10 わたしがエサウを裸にしたからだ。その隠れ場をあばいたので、もう身を隠すことはできない。彼の子孫は滅ぼされ、兄弟も隣人も消え去り、彼はもういない。
49:11 お前の孤児を残していけ。わたしがその命を守る。お前のやもめたちは、わたしに頼ればいい。
49:12 主はこう言われる。見よ、杯を飲むはずのなかった者たちさえ、必ずそれを飲まされる。それなのに、お前だけが罰を免れるというのか。お前は免れない。必ずその杯を飲む。
49:13 わたしは自分にかけて誓う、と主は言われる。ボツラは恐怖の的となり、辱められ、荒れ果て、のろいの言葉となる。その町々はすべて、いつまでも廃墟のままとなる。
49:14 わたしは主から知らせを聞いた。使者が国々へ送られている。「集まれ、あの国を攻めろ。立ち上がって戦え。」
49:15 見よ、わたしはお前を国々の中で小さな者とし、人々に見下される者とする。
49:16 岩の裂け目に住み、丘の頂を押さえる者よ。お前が人に与える恐れと、心のおごりが、お前自身を惑わした。鷲のように高く巣を作っても、わたしはそこからお前を引きずり降ろす、と主は言われる。
49:17 エドムは恐怖の的となる。そばを通る者はみな、その痛ましい姿に驚き、あざけって口笛を吹く。
49:18 ソドムとゴモラ、そしてその周りの町々が滅ぼされたときのように、と主は言われる。そこにはだれも住まず、人の子が宿ることもない。
49:19 見よ、ライオンがヨルダン川のしげみから上ってくるように、彼はいつも水のあるあの牧場へと襲いかかる。だがわたしは、一瞬のうちに彼らをそこから追い払う。そして、わたしが選んだ者をその地の上に立てる。いったいだれがわたしのようであり、だれがわたしを呼びつけられるのか。わたしの前に立ちはだかれる羊飼いなど、どこにいるのか。
49:20 だから、主がエドムについて立てた計画を聞け。テマンに住む人々について思い巡らされたことを聞け。必ず、群れの小さな者までも引きずり去られ、その牧場は彼らもろとも荒れ果てる。
49:21 彼らが倒れる音に、地は揺れる。その叫び声は、紅海にまで響きわたる。
49:22 見よ、鷲が舞い上がり、翼を広げてボツラの上に襲いかかるように、敵が攻めてくる。その日、エドムの勇士たちの心は、産みの苦しみにあえぐ女の心のようになる。
49:23 ダマスコについて。ハマトとアルパドは打ちのめされる。悪い知らせを聞いて、力を失う。人々は海のように不安に揺れ、静まることができない。
49:24 ダマスコは弱り果て、背を向けて逃げ出す。恐れに取りつかれ、産みの女のような苦しみと痛みが、この町を襲う。
49:25 ああ、あんなに名高かった町、わたしの喜びだった町が、どうして見捨てられずにいられるだろう。
49:26 だからその日、若者たちは広場に倒れ、戦う男たちはみな声を失って死ぬ、と万軍の主は言われる。
49:27 わたしはダマスコの城壁に火を放つ。その火は、ベン・ハダドの宮殿を焼き尽くす。
49:28 ケダルと、バビロンの王ネブカドレツァルが打ち破ったハツォルの諸王国について。主はこう言われる。立ち上がれ、ケダルに攻め上れ。東の人々を襲って奪い取れ。
49:29 彼らの天幕と羊の群れは奪い取られる。幕やあらゆる道具、そしてらくだまで、敵は運び去る。人々は彼らに向かって叫ぶ。「どこもかしこも恐怖ばかりだ」と。
49:30 逃げよ、遠くへ散り去れ、深い所に身を隠せ、ハツォルに住む者たちよ、と主は言われる。バビロンの王ネブカドレツァルが、お前たちを攻める計画を立て、お前たちに向かって企てをめぐらしているからだ。
49:31 立ち上がれ、何の心配もなく安心して暮らすあの民に攻め上れ、と主は言われる。門もかんぬきもなく、ただひとりで暮らしている民だ。
49:32 彼らのらくだは奪われ、あふれるほどの家畜も戦利品となる。わたしは、こめかみの毛を刈った者たちを四方の風へ吹き散らす。あらゆる方角から、彼らに災いを引き寄せる、と主は言われる。
49:33 ハツォルはジャッカルの住みかとなり、いつまでも荒れ果てたままとなる。そこに住む者はなく、そこに宿る人もいない。
49:34 ユダの王ゼデキヤの治世の初めに、エラムについて、預言者エレミヤに主の言葉がこう臨んだ。
49:35 万軍の主はこう言われる。見よ、わたしはエラムの弓を折る。それは彼らの力の要だ。
49:36 わたしは天の四方の果てから四つの風をエラムに送り、この風のすべてに向かって彼らを吹き散らす。エラムから追い散らされた者が行き着かない国は、どこにもなくなる。
49:37 わたしはエラムを、敵の前で、彼らの命をねらう者の前でおののかせる。わたしは彼らに災いを、燃える怒りを下す、と主は言われる。わたしは剣を送り、彼らを滅ぼし尽くすまで追い続ける。
49:38 わたしはエラムに自分の王座を据え、そこから王と高官たちを滅ぼす、と主は言われる。
49:39 しかし終わりの日々に、わたしはエラムの繁栄を取り戻す、と主は言われる。
50:1 主が預言者エレミヤを通して、バビロンについて、つまりカルデア人の地について語った言葉。
50:2 国々に告げ知らせ、旗を高く掲げて宣言せよ。隠さずに知らせて、こう言え。「バビロンは陥落した。神ベルは恥をさらし、神マルドクは打ち砕かれた。バビロンの偶像は恥をさらし、その像は砕かれた」と。
50:3 なぜなら、北から一つの国がバビロンに攻め上ってくるからだ。その国はバビロンの地を荒れ果てさせ、そこに住む者は一人もいなくなる。人も家畜も、みな逃げ去ってしまう。
50:4 その日、その時、とわたし主は言う。イスラエルの人々とユダの人々がそろって帰ってくる。泣きながら歩き、自分たちの神である主を求めて進んでくる。
50:5 彼らはシオンへの道を尋ね、その方へ顔を向けて言う。「さあ、主のもとへ行き、主と結び合おう。永遠の契約を結び、それを決して忘れないようにしよう」と。
50:6 わたしの民は、迷い出た羊の群れだった。羊飼いたちが彼らを迷わせ、山々をさまよわせた。彼らは山から丘へと歩き回り、休む場所を忘れてしまった。
50:7 彼らを見つけた者はみな、彼らを食い尽くした。敵はこう言った。「わたしたちに罪はない。彼らのほうが主に対して罪を犯したのだ。主は彼らの正しい住みか、先祖たちの望みであったのに」と。
50:8 バビロンの中から逃げ出せ。カルデア人の地から出て行け。群れの先頭を進む雄やぎのようになれ。
50:9 見よ、わたしは大きな国々の連合軍を奮い立たせ、北の地からバビロンへ攻め上らせる。彼らはバビロンに向かって陣を敷き、そこからバビロンは攻め落とされる。彼らの矢は、腕のたつ戦士のようで、むなしく戻ることはない。
50:10 こうしてカルデアは略奪される。奪い取る者はみな、満ち足りる、とわたし主は言う。
50:11 わたしのものを奪ったお前たちよ。お前たちは喜び、はしゃいでいる。穀物を踏む若い雌牛のように跳ね回り、雄馬のようにいなないている。
50:12 だが、お前たちの母はひどく恥をかき、お前たちを産んだ者は面目を失う。見よ、バビロンは国々の中で最も取るに足りないものとなり、荒れ野となり、乾ききった砂漠となる。
50:13 主の怒りによって、そこに住む者はいなくなり、すべてが荒れ果てる。バビロンのそばを通る者はみな、その傷のひどさに驚き、あざ笑う。
50:14 弓を引く者たちよ、みなでバビロンを取り囲め。矢を惜しまず、バビロンに射かけよ。バビロンは主に罪を犯したのだから。
50:15 バビロンを取り囲んで、いっせいにときの声をあげよ。バビロンは降参した。その塔は崩れ落ち、城壁は打ち壊された。これは主の復讐なのだ。バビロンに復讐せよ。バビロンがしたとおりに、バビロンにやり返せ。
50:16 種をまく者も、刈り入れどきに鎌を握る者も、バビロンから断ち切れ。人を襲う剣を恐れて、人々はそれぞれ自分の民のもとへ向かい、自分の国へ逃げ帰る。
50:17 イスラエルは、追い散らされた一頭の羊だ。ライオンに追い立てられた。最初にアッシリアの王が食い尽くし、最後にバビロンの王ネブカドネザルが、その骨をかみ砕いた。
50:18 だから、イスラエルの神である万軍の主はこう言う。見よ、わたしはアッシリアの王を罰したように、バビロンの王とその国を罰する。
50:19 わたしはイスラエルを自分の牧場に連れ戻す。イスラエルはカルメルとバシャンで草をはみ、エフライムの山々とギレアドで、心ゆくまで満ち足りる。
50:20 その日、その時には、とわたし主は言う。イスラエルの罪を探しても、もう見つからない。ユダの罪を探しても、何も出てこない。わたしが生き残らせる者を、わたしが赦すからだ。
50:21 メラタイムの地に攻め上れ。そこと、ペコドに住む者たちを攻めよ。彼らを追って滅ぼし尽くせ、とわたし主は言う。わたしが命じたことを、すべてそのとおりに行え。
50:22 戦いの音が地に響く。大きな破壊の音が。
50:23 全地を打ち砕いたハンマーが、へし折られ、砕けてしまった。バビロンが国々の中で、こんなにも荒れ果てたものになるとは。
50:24 バビロンよ、わたしはお前にわなを仕掛けた。お前は気づかないうちに、かかってしまった。お前は見つけ出され、捕らえられた。主に立ち向かったからだ。
50:25 主は武器庫を開き、怒りの武器を取り出した。万軍の主なる神には、カルデア人の地でなすべき仕事があるからだ。
50:26 四方の果てから、バビロンに攻めのぼれ。その倉を開け放て。麦の山のように積み上げ、徹底的に滅ぼせ。何ひとつ残すな。
50:27 その雄牛をすべて殺せ。ほふり場へ引き下ろせ。彼らに災いあれ。その日が来たのだ。罰せられる時が来たのだ。
50:28 聞け、バビロンの地から逃げ延びた者たちの声を。彼らはシオンで告げ知らせる。わたしたちの神、主の報復を、主の神殿のための報復を。
50:29 射手たちをバビロンに呼び集めよ。弓を引く者をみな呼べ。町を囲んで陣を敷け。だれ一人逃がすな。その行いに応じて報い、したことすべてをそのまま返せ。バビロンは主に、イスラエルの聖なる方に対して高ぶったからだ。
50:30 だからその日、若者たちは広場で倒れ、兵士たちはみな滅ぼされる。主はそう告げる。
50:31 高ぶる者よ、見よ、わたしはお前に立ち向かう。万軍の主なる神はそう告げる。お前の日が来た。お前を罰する時が来たのだ。
50:32 高ぶる者はつまずいて倒れ、起こしてくれる者はだれもいない。わたしはその町々に火をつける。火は周りのすべてを焼き尽くす。
50:33 万軍の主はこう言う。イスラエルの人々もユダの人々も、共に虐げられている。彼らを捕らえた者たちはみな、しっかりとつかんで放そうとしない。
50:34 だが、彼らを救い出す方は強い。その名は万軍の主。主は彼らの訴えをしっかりと取り上げ、地に安らぎを与え、バビロンに住む者を震え上がらせる。
50:35 剣がカルデア人に下る、と主は告げる。バビロンに住む者に、その高官たちに、その知恵ある者たちに下る。
50:36 剣が偽りを語る者たちに下り、彼らは愚か者となる。剣が勇士たちに下り、彼らはおののく。
50:37 剣がバビロンの馬に、戦車に、その中にいるすべての寄せ集めの兵に下り、彼らは女のように弱くなる。剣がその宝物庫に下り、宝はすべて奪われる。
50:38 干ばつがその水に下り、川も泉も干上がる。そこは偶像だらけの地で、人々は恐ろしい像に夢中になって狂っているからだ。
50:39 だから、そこには荒れ野の獣と山犬が住みつき、だちょうが住む。もう二度と人が住むことはなく、代々にわたって人の暮らす場所ではなくなる。
50:40 神がソドムとゴモラ、その周りの町々をひっくり返したときのように、そこにはもう誰も住まず、人の子が身を寄せることもない、と主は告げる。
50:41 見よ、一つの民が北からやって来る。大きな国と多くの王が、地の果てから立ち上がる。
50:42 彼らは弓と投げ槍を手にする。残忍で、情けをかけない。その声は海のようにとどろき、馬に乗って来る。バビロンの娘よ、彼らは一人の戦士のように、おまえに向かって隊列を組む。
50:43 バビロンの王はその知らせを聞いて、手の力が抜けた。苦しみが彼をとらえ、産みの苦しみにある女のような痛みに襲われた。
50:44 見よ、ヨルダンの茂みから駆け上がる獅子のように、わたしは彼らを一瞬でその牧場から追い払う。そして、わたしが選んだ者をバビロンの上に立てる。いったい誰がわたしのようであり、誰がわたしを呼びつけられるのか。わたしの前に立てる羊飼いなど、いったい誰がいるのか。
50:45 だから、主がバビロンに対して立てた計画を、カルデアの地に対して思い巡らした考えを聞け。必ず、群れの中の小さな者たちさえ彼らを引きずり出す。必ず、主は彼らの牧場を荒れ果てさせる。
50:46 バビロンが陥落する物音に地は揺れ動き、その叫び声は国々の間に響き渡る。
51:1 主はこう言われる。「見よ、わたしはバビロンを攻める。わたしに逆らう者たちの真ん中に住む者たちを攻める。すべてを滅ぼす風を送り込む。
51:2 わたしはバビロンに、もみ殻をふるい分ける者たちを送る。彼らはバビロンをふるいにかけ、その地を空っぽにする。災いの日、四方からバビロンを襲うのだ。
51:3 射手に弓を引かせるな。よろいを着て立ち上がらせるな。バビロンの若者たちを容赦するな。その軍勢をすべて滅ぼし尽くせ。
51:4 彼らはカルデア人の地で刺し殺されて倒れ、その通りで傷つき倒れる。
51:5 イスラエルとユダは、その神である万軍の主に見捨てられてはいない。たとえ彼らの地が、イスラエルの聖なる方に対する罪で満ちていても。
51:6 バビロンの中から逃げ出せ。それぞれ自分の命を救え。バビロンの罪の巻き添えになって滅びるな。今は主が復讐をされる時。主はバビロンに、その報いをすべて返される。
51:7 バビロンは主の手にある金の杯だった。全世界を酔わせる杯だった。国々はその酒を飲み、それで国々はおかしくなった。
51:8 バビロンは突然倒れ、砕け散った。バビロンのために泣き叫べ。その痛みに効く薬を取ってこい。もしかしたら治るかもしれない。
51:9 わたしたちはバビロンを治そうとした。でも、治らなかった。バビロンを見捨てて、それぞれ自分の国へ帰ろう。バビロンへの裁きは天にまで届き、雲にまで高く上っているのだから。
51:10 主はわたしたちの正しさを明らかにしてくださった。さあ、シオンで語り伝えよう。わたしたちの神、主がなさったことを。
51:11 矢を研げ。盾を取れ。主はメディアの王たちの心を奮い立たせた。バビロンを滅ぼすこと、それが主の計画だからだ。これは主の復讐、主の神殿のための復讐なのだ。
51:12 バビロンの城壁に向けて旗を掲げよ。守りを固めよ。見張りを立てよ。伏兵を配置せよ。主は計画したことを、バビロンに住む者たちに語ったとおりに、そのまま成し遂げられるのだから。
51:13 豊かな水のほとりに住み、あふれるほどの財宝を持つ者よ。おまえの終わりが来た。おまえがむさぼり尽くす、その時が来たのだ。
51:14 万軍の主は、ご自身にかけて誓われた。「わたしは必ず、いなごの大群のように人々でおまえを満たす。彼らはおまえに向かって、勝ちどきの声をあげるのだ。」
51:15 主はその力で地を造り、その知恵で世界を築き、その英知で天を張り広げられた。
51:16 主が声をとどろかせると、天には水がざわめく。地の果てから雲を立ちのぼらせ、雨のために稲妻を放ち、その倉から風を吹き出させる。
51:17 人はみな愚かで、何もわかっていない。金細工職人はみな、自分の造った偶像に恥をかかされる。鋳て造った像は偽りで、その中に息などないのだから。
51:18 そんなものはむなしく、人をあざむくために造られたものにすぎない。裁きの時が来れば、みな滅びてしまう。
51:19 ヤコブの受け継ぐ神は、そんなものとは違う。この方こそ、すべてを造られた方。イスラエルはこの方が受け継ぐ民だ。その名は万軍の主。
51:20 おまえはわたしの鉄槌、戦いの武器だ。わたしはおまえで国々を打ち砕き、おまえで王国を滅ぼす。
51:21 わたしはおまえで馬とそれに乗る者を打ち砕き、おまえで戦車とそれを操る者を打ち砕く。
51:22 わたしはおまえで男も女も打ち砕き、おまえで老人も若者も打ち砕き、おまえで若い男も娘も打ち砕く。
51:23 わたしはおまえで羊飼いとその群れを打ち砕き、おまえで農夫とその牛の一組を打ち砕き、おまえで総督たちも高官たちも打ち砕く。
51:24 わたしは、バビロンとカルデアに住むすべての者に、彼らがシオンで行ったすべての悪の報いを、おまえたちの目の前で返す、と主は言われる。
51:25 見よ、破壊の山よ、わたしはおまえに立ち向かう、と主は言われる。おまえは全地を破壊してきた。わたしはおまえに手を伸ばし、岩々からおまえを転がり落とし、焼け尽きた山にする。
51:26 人々はおまえから、隅の石も土台の石も取ることはない。おまえは永遠に荒れ果てたままとなる、と主は言われる。
51:27 地に旗を掲げよ。国々の間でラッパを吹き鳴らせ。もろもろの国を集め、バビロンに立ち向かわせよ。アララト、ミンニ、アシュケナズの王国を呼び集めて攻めさせよ。司令官を立てて攻めさせ、群がるいなごのように馬を攻め上らせよ。
51:28 もろもろの国を集め、バビロンに立ち向かわせよ。メディアの王たち、その総督や高官たち、その支配下のすべての地を集めよ。
51:29 地は震え、身もだえする。バビロンに対する主の計画が実現するからだ。主はバビロンの地を、住む者もいない荒れ地にしようとしている。
51:30 バビロンの勇士たちは戦うのをやめ、砦の中に引きこもる。彼らの力は尽き果て、女のようになってしまった。バビロンの家々は焼かれ、その門のかんぬきは折られた。
51:31 走者が次の走者へと走り、使者が次の使者へと走る。バビロンの王に、都が端から端まで攻め取られたと知らせるためだ。
51:32 渡し場は占領され、葦の茂みは火で焼かれ、戦う男たちはおびえきっている。
51:33 イスラエルの神、万軍の主はこう言われる。バビロンの娘は、踏み固められる時の脱穀場のようだ。もう少しすれば、刈り入れの時がやって来る。
51:34 バビロンの王ネブカドネツァルはわたしを食い尽くし、打ち砕き、わたしを空っぽの器にした。彼は怪物のようにわたしを飲み込み、わたしのごちそうで腹を満たし、そしてわたしを吐き出した。
51:35 「わたしが受けた暴虐、わたしの肉に加えられた仕打ちは、バビロンの上に返れ」と、シオンに住む者は言う。「わたしの血の責めは、カルデアに住む者の上に返れ」と、エルサレムは言う。
51:36 それゆえ、主はこう言われる。見よ、わたしはおまえの訴えを取り上げて争い、おまえのために報復する。わたしはバビロンの海を干上がらせ、その水源を涸らす。
51:37 バビロンは石くれの山となり、ジャッカルの住みかとなる。人々があきれ、あざける場所となって、住む者は一人もいなくなる。
51:38 バビロンの人々はそろって若いライオンのようにほえ、子ライオンのようにうなっている。
51:39 彼らが熱くなっているとき、わたしは酒宴を用意して、彼らを酔わせる。彼らははしゃぎ回り、やがて永遠の眠りにつき、二度と目を覚まさない、と主は言われる。
51:40 わたしは彼らを、屠り場に引かれていく子羊のように、雄羊や雄やぎのように引き降ろす。
51:41 ああ、シェシャクは攻め取られてしまった。全地の誇りが捕らえられてしまった。ああ、バビロンは国々の間で、あきれ果てる姿になってしまった。
51:42 海がバビロンを襲い、押し寄せる波がその町をのみ込んだ。
51:43 その町々は荒れ果て、乾ききった砂漠となる。だれも住まず、人の子が通り過ぎることもない土地となる。
51:44 わたしはバビロンの神ベルを罰し、その口から、のみ込んだものを吐き出させる。もう国々がベルのもとへ流れ集まることはない。バビロンの城壁も崩れ落ちる。
51:45 わが民よ、その中から出て行け。それぞれ自分の命を守り、主の燃える怒りから逃れよ。
51:46 国中にうわさが流れても、気を落としたり、おびえたりしてはいけない。ある年にはこんなうわさ、次の年にはあんなうわさが流れる。国には暴虐がはびこり、支配者どうしが争う。
51:47 だから見よ、その日が来る。わたしはバビロンの偶像を罰する。その国じゅうが恥を受け、殺された者たちがみな、その中で倒れる。
51:48 すると天と地、そしてそこにあるすべてのものは、バビロンのことで喜び歌う。北から、これを滅ぼす者たちが攻めて来るからだ、と主は言われる。
51:49 バビロンもまた倒れなければならない。イスラエルの殺された者たちのために。全地の殺された者たちが、バビロンのために倒れたのだから。
51:50 剣を逃れた者たちよ、行け。立ち止まってはいけない。遠く離れていても、主を思い出せ。エルサレムを心にかけよ。
51:51 わたしたちは恥じ入っている。ののしりの声を聞いたからだ。恥辱がわたしたちの顔をおおった。よそ者たちが、主の家の聖なる場所に入り込んだからだ。
51:52 だから見よ、その日が来る、と主は言われる。わたしはバビロンの偶像を罰する。その国じゅうで、傷ついた者たちがうめく。
51:53 たとえバビロンが天まで昇っても、たとえ高い砦をどんなに固めても、わたしのもとから、これを滅ぼす者たちが攻めて来る、と主は言われる。
51:54 聞け、バビロンから叫び声が上がる。カルデア人の地から、大きな破壊の音が響く。
51:55 主がバビロンを滅ぼし、その大きなどよめきを消し去るからだ。敵は大水のように波打ってとどろき、そのざわめく声が上がる。
51:56 滅ぼす者がバビロンに攻めて来て、その勇士たちは捕らえられ、その弓は折られる。主は報いの神だ。必ず報いを返される。
51:57 わたしは、バビロンの高官たちや知者たち、総督や役人たち、勇士たちを酔わせる。彼らは永遠の眠りにつき、二度と目を覚まさない、と王は言われる。その名は万軍の主。
51:58 万軍の主はこう言われる。バビロンの厚い城壁は根こそぎ崩され、その高い門は火で焼かれる。もろもろの民が骨折っても、それはむだに終わり、国々は火のために力を使い果たし、疲れ果てる。
51:59 これは、預言者エレミヤが、ネリヤの子、マフセヤの孫であるセラヤに命じた言葉である。セラヤは、ユダの王ゼデキヤの治世の第四年に、王とともにバビロンへ行った。彼は宿営をつかさどる役人であった。
51:60 エレミヤは、バビロンに降りかかるすべての災いを、一つの巻物に書き記した。それは、バビロンについて書かれた、これらすべての言葉である。
51:61 エレミヤはセラヤにこう言った。「あなたはバビロンに着いたら、よく見て、これらの言葉をすべて声に出して読みなさい。
51:62 そして、こう言うのだ。『主よ、あなたはこの場所について告げられました。ここを滅ぼし、人も家畜も、だれ一人住む者がいなくなるようにする、と。ここは永遠に荒れ果てたままになる、と。』
51:63 この巻物を読み終えたら、それに石をくくりつけて、ユーフラテス川の真ん中に投げ込みなさい。
51:64 そして、こう言うのだ。『こうしてバビロンは沈み、二度と浮かび上がらない。わたしがこの都にもたらす災いのためだ。人々は疲れ果てる。』」ここまでがエレミヤの言葉である。
52:1 ゼデキヤは二十一歳で王となり、エルサレムで十一年のあいだ王であった。母の名はハムタルといい、リブナの出身で、エレミヤの娘であった。
52:2 彼は、ヨヤキムがしたことをすべてまねて、主の目に悪とされることを行った。
52:3 主が怒られたために、こうしたことがエルサレムとユダに起こった。ついに主は、彼らを御前から投げ捨てられた。そして、ゼデキヤはバビロンの王に反逆した。
52:4 ゼデキヤの治世の第九年、第十の月の十日、バビロンの王ネブカドレツァルは、全軍を率いてエルサレムに攻めて来た。彼らはこの都を包囲し、その周りに攻めるための土塁を築いた。
52:5 こうして、この都はゼデキヤ王の第十一年まで包囲され続けた。
52:6 第四の月の九日、都では飢えがひどくなり、その地の民には食べるパンがなくなった。
52:7 ついに都の城壁が破られた。すると兵士たちはみな、夜のうちに逃げ出した。王の庭園のそばにある、二つの城壁の間の門を通って都から出て行ったのだ。カルデア人が都を取り囲んでいたが、彼らはアラバの方へと落ちのびていった。
52:8 しかしカルデアの軍勢は王を追いかけ、エリコの平地でゼデキヤに追いついた。このとき彼の軍はみな散り散りになり、王のもとを離れてしまっていた。
52:9 こうして彼らは王を捕らえ、ハマトの地のリブラにいるバビロンの王のもとへ連れて行った。バビロンの王はそこでゼデキヤにさばきを言い渡した。
52:10 バビロンの王は、ゼデキヤの目の前でその息子たちを殺した。さらにリブラで、ユダの高官たちも残らず殺した。
52:11 そしてゼデキヤの両目をつぶし、青銅の足かせでつないで、バビロンへ連れて行った。バビロンの王は彼を牢に入れ、死ぬ日まで閉じ込めておいた。
52:12 第五の月の十日、それはバビロンの王ネブカドレツァルの第十九年のことだった。バビロンの王に仕える護衛隊長ネブザラダンが、エルサレムにやって来た。
52:13 彼は主の神殿と王宮、そしてエルサレムのすべての家を焼き払った。大きな建物はどれも残らず火で焼いた。
52:14 護衛隊長のもとにいたカルデアの全軍は、エルサレムを取り囲む城壁をすべて取り壊した。
52:15 護衛隊長ネブザラダンは、民の中の最も貧しい者たちの一部、都に残っていたそのほかの民、バビロンの王に降参して寝返った者たち、そして残っていた職人たちを、捕らえてバビロンへ連れて行った。
52:16 ただし護衛隊長ネブザラダンは、その地の最も貧しい者たちの一部を残し、ぶどう畑を世話する者、畑を耕す者とした。
52:17 また、主の神殿にあった青銅の柱、台座、そして神殿の中にあった「海」と呼ばれる青銅の大きな水盤を、カルデア人は打ち砕き、その青銅をすべてバビロンへ運び去った。
52:18 さらに彼らは、灰つぼ、十能、芯切りばさみ、鉢、皿、そして神殿の儀式で使われていた青銅の器を、すべて持ち去った。
52:19 さらに護衛隊長は、鉢、火皿、注ぎの鉢、大鍋、燭台、小皿、献酒用の杯を持ち去った。金でできたものは金として、銀でできたものは銀として、すべて運び去った。
52:20 主の神殿のためにソロモン王が造った二本の柱、一つの「海」、そして台座の下の十二頭の青銅の雄牛――これらの器に使われた青銅は、あまりに多くて量りきれなかった。
52:21 その柱について言えば、一本の高さは十八キュビト、周囲は十二キュビトの糸で測るほどで、厚さは指四本分、中は空洞だった。
52:22 柱の上には青銅の柱頭があり、一つの柱頭の高さは五キュビトだった。柱頭の周りには網目模様とざくろの飾りがめぐらされ、すべて青銅でできていた。もう一本の柱も、そのざくろの飾りも、これと同じだった。
52:23 ざくろは各面に九十六個あり、網目の周り全体では、合わせて百個あった。
52:24 護衛隊長は、祭司長セラヤ、次席の祭司ゼファニヤ、そして三人の門番を捕らえた。
52:25 また町の中からは、兵士たちを指揮していた宦官を一人、王のそば近くに仕えていた者のうち町にいた七人、その地の民を兵として召集する軍司令官づきの書記官、そして町の中にいたその地の民六十人を捕らえた。
52:26 護衛隊長ネブザラダンは彼らを捕らえ、リブラにいるバビロンの王のもとへ連れて行った。
52:27 バビロンの王はハマトの地のリブラで彼らを打ち殺した。こうしてユダの民は、自分たちの土地から捕らえ移された。
52:28 ネブカドネツァルが捕らえ移した民は、次のとおりである。第七年に、ユダヤ人三千二十三人。
52:29 ネブカドネツァルの第十八年に、エルサレムから八百三十二人。
52:30 ネブカドネツァルの第二十三年に、護衛隊長ネブザラダンがユダヤ人七百四十五人を捕らえ移した。その総数は、四千六百人であった。
52:31 ユダの王エホヤキンが捕らえ移されてから三十七年目のこと。その年の第十二の月の二十五日、バビロンの王エビル・メロダクは、王位についたその年に、ユダの王エホヤキンを牢から出して、その頭を上げさせた。
52:32 そして、エビル・メロダクはエホヤキンに優しく語りかけ、彼の席を、バビロンで一緒にいたほかの王たちの席よりも高い位置に置いた。
52:33 エホヤキンは牢で着ていた服を脱ぎ、生きているかぎり、いつも王の前で食事をした。
52:34 彼が食べる分は、生きているかぎり毎日欠かさず、バビロンの王から与えられた。それは、彼が死ぬ日まで続いた。
哀歌
1:1 ああ、あんなに人であふれていた町が、今はぽつんと座り込んでいる。多くの民をかかえ、国々の中でも大きかった町が、まるで夫を亡くした女のようだ。国々の中の女王だった町、あちこちの州を治めていた町が、今は奴隷に落とされている。
1:2 この町は夜になると激しく泣き、涙が頬を伝う。あんなに親しかった者たちの中に、慰めてくれる者は一人もいない。友だちはみな裏切り、敵になってしまった。
1:3 ユダは苦しみと重い労働に耐えきれず、捕らわれて連れ去られた。今は国々の中で暮らし、休む場所も見つからない。追いかける者たちがみな、逃げ場のない所で彼女に追いついた。
1:4 シオンへ続く道は嘆いている。祭りに来る人がもう誰もいないからだ。門はどこも荒れ果て、祭司たちはため息をつき、若い娘たちは悲しみに沈む。彼女自身も、心が苦しくてたまらない。
1:5 敵が上に立ち、彼女を攻めた者たちが栄えている。彼女の罪があまりに多かったので、主が彼女を苦しめたのだ。子どもたちは敵に追い立てられ、捕らわれて連れて行かれた。
1:6 シオンの娘から、輝きはすっかり消えてしまった。指導者たちは、草を食べる場所を見つけられない鹿のようになり、追いかける者の前で力尽きて逃げていった。
1:7 エルサレムは、苦しみとさすらいの日々の中で思い出す。昔、自分が持っていたすばらしいものすべてを。民が敵の手に落ち、助けてくれる者が誰もいなかったとき、敵は彼女を見て、その崩れ落ちた姿をあざ笑った。
1:8 エルサレムは重い罪を犯した。だから、汚れた者のように扱われるようになった。彼女を大切にしていた者たちも、今はみな見下している。彼女の恥ずかしい姿を見てしまったからだ。彼女自身もうめき声をあげ、顔をそむける。
1:9 彼女の汚れは、その裾にべったりとついている。それなのに、自分の行く末を考えようとしなかった。だから驚くほど落ちぶれてしまったのに、慰めてくれる者は一人もいない。「主よ、わたしの苦しみを見てください。敵がこんなに勝ち誇っているのです。」
1:10 敵は手を伸ばし、彼女の大切なものすべてを奪い取った。あなたが「あなたの集会に入ってはならない」と命じた異国の民が、彼女の聖なる場所に入り込むのを、彼女は見てしまった。
1:11 民はみなうめきながら、パンを求めてさまよっている。命をつなぐために、宝物を差し出して食べ物に換えた。「主よ、見てください。よく見てください。わたしはこんなに見下される者になってしまいました。」
1:12 そこを通り過ぎていくあなたたち、これが何でもないことだと言うのか。よく見てほしい。わたしの痛みほどの痛みが、ほかにあるだろうか。主が激しく怒るその日に、わたしに下されたこの痛みほどの痛みが。
1:13 主は高いところから火を送り、わたしの骨の奥まで焼き尽くした。わたしの足元に網を張り、後ろへ引き戻した。わたしを見捨て、一日中弱り果てさせた。
1:14 わたしの罪はくびきとなり、主の手で束ねられ、より合わされてわたしの首にのしかかる。主はわたしの力を奪い、立ち向かうことのできない者たちの手に、わたしを引き渡した。
1:15 主はわたしの中にいる勇士たちを、みな退けた。若者たちを打ち砕くために、わたしに向けて群れを呼び集めた。主はぶどうを踏むように、おとめであるユダの娘を踏みつけた。
1:16 これらのことのために、わたしは泣いている。わたしの目からは涙があふれ、流れて止まらない。わたしを慰め、魂を生き返らせてくれる人が、遠く離れてしまったからだ。敵が勝ち誇り、わたしの子どもたちは打ちのめされてしまった。
1:17 シオンは両手を差し伸べる。でも、慰めてくれる人は誰もいない。主はヤコブについて、周りの者たちが敵となるように命じた。エルサレムは、彼らの中で汚れたものとされてしまった。
1:18 主は正しい。わたしが主の言葉に逆らったのだから。すべての民よ、聞いてほしい。わたしの痛みを見てほしい。わたしの若い娘も若者も、捕らわれて連れ去られてしまった。
1:19 わたしは愛する者たちを呼んだ。でも、彼らはわたしを裏切った。祭司たちも長老たちも、命をつなごうと食べ物を探し求めながら、町の中で息絶えていった。
1:20 主よ、見てください。わたしは苦しんでいます。はらわたは煮えくり返り、心は内側でひっくり返っています。わたしがひどく逆らったからです。外では剣が人の命を奪い、家の中では死が待っています。
1:21 人々は、わたしがうめいているのを聞いています。でも、慰めてくれる人は誰もいません。敵はみな、わたしの災いを聞いて喜んでいます。あなたがこれをなさったからです。あなたが告げたその日を、どうか来させてください。そうすれば、彼らもわたしと同じようになるでしょう。
1:22 彼らの悪事がすべて、あなたの前に届きますように。そして、わたしのすべての罪のためにわたしになさったように、彼らにもしてください。わたしのうめきは多く、心は弱り果てているのですから。
2:1 ああ、主は怒って、娘シオンを暗い雲でおおってしまった。イスラエルの輝きを、天から地へ投げ落とした。怒りの日に、ご自分の足台さえ思い出さなかった。
2:2 主は容赦なく、ヤコブの住まいをことごとくのみ込んだ。激しい怒りで、娘ユダの砦を打ちこわし、地にたたきつけた。王国とその指導者たちを、はずかしめた。
2:3 主は燃える怒りで、イスラエルの角をすべて断ち切った。敵が攻めてきても、右の手を引っこめて助けなかった。燃えさかる炎のようにヤコブを焼き、まわりのすべてを焼きつくした。
2:4 主は敵のように弓を引きしぼり、まるで敵のように、右手を構えた。目に美しいものを、みな殺した。娘シオンの天幕に、火のような激しい怒りを注ぎ出した。
2:5 主は敵のようになった。イスラエルをのみ込み、その宮殿をすべてのみ込んだ。砦をこわし、娘ユダに、嘆きと悲しみをあふれさせた。
2:6 主は自分の仮小屋を、庭のように取りこわした。祭りの場も、こわしてしまった。主はシオンで、祭りも安息日も忘れさせた。激しい怒りで、王も祭司も退けた。
2:7 主は自分の祭壇を捨て、聖所を見放した。宮殿の城壁を、敵の手に渡した。敵は主の神殿で、祭りの日のように大声を上げた。
2:8 主は、娘シオンの城壁をこわそうと決めた。測りなわを張り、手をゆるめずに破壊した。とりでも城壁も嘆き、ともに力なく崩れ落ちた。
2:9 娘シオンの門は地に沈み、かんぬきは砕かれ、こわされた。王も指導者たちも、異国の民の中にいる。もう律法はなく、預言者たちも、主からの幻を得られない。
2:10 娘シオンの長老たちは、黙って地にすわりこんだ。頭にちりをかぶり、粗布を身にまとった。エルサレムのおとめたちは、頭を地まで垂れた。
2:11 わたしの目は、涙でかれてしまった。はらわたは焼けつくようだ。わたしの民、娘である町が打ち砕かれて、胸のうちは地に流れ落ちる。町の広場で、幼な子も乳飲み子も倒れていくからだ。
2:12 子どもたちは母親に、「パンはどこ、ぶどう酒はどこ」と言う。町の広場で、傷ついた者のように気を失い、母のふところで、その魂が注ぎ出されていく。
2:13 何を証しとして、あなたに告げよう。娘エルサレムよ、あなたを何にたとえよう。おとめである娘シオンよ、あなたを何になぞらえ、慰めよう。あなたの傷は海のように大きい。だれがあなたをいやせるのか。
2:14 あなたの預言者たちは、あなたのために、むなしく偽りの幻を見た。あなたの罪を暴くことはしなかった。そうすれば、あなたは元どおりにされたのに。彼らはあなたに、むなしく人を惑わすお告げを語っただけだった。
2:15 道を行く者はみな、あなたを見て手をたたく。娘エルサレムに向かって口笛を鳴らし、頭を振る。「これがあの町か。『美の極み、全地の喜び』と言われた町なのか」と。
2:16 敵はみな、あなたに向かって大きく口を開く。口笛を鳴らし、歯ぎしりして言う。「われらは町をのみ込んだ。ああ、待ち望んでいたのはこの日だ。ついに来た、この目で見た」と。
2:17 主は、計画したことを行われた。昔から告げていたことばを、なし遂げられた。容赦なく打ち壊し、あなたのことで敵を喜ばせ、あなたを苦しめる者の角を高く上げられた。
2:18 人々の心は、主に向かって叫んだ。娘シオンの城壁よ、昼も夜も、川のように涙を流せ。自分に休みを与えるな。あなたの目を、涙で潤ませ続けよ。
2:19 立ち上がれ。夜、見張りが始まるころに叫べ。主の前で、水のように心を注ぎ出せ。町かどごとで飢えに気を失っていく、あなたの幼な子たちの命のために、両手を主に差し伸べよ。
2:20 主よ、ご覧ください。目を留めてください。あなたは、だれにこんなことをなさったのか。女たちが、自分の産んだ子を、大事に育てた幼な子を食べていいのか。主の聖所で、祭司や預言者が殺されていいのか。
2:21 若者も老人も、通りの地に倒れ伏している。わたしのおとめたちも若者たちも、剣に倒れた。あなたは怒りの日に彼らを殺し、容赦なくほふられた。
2:22 あなたは、祭りの日に人を呼び集めるように、四方から恐怖を呼び寄せた。主の怒りの日に、逃れた者も生き残った者も、ひとりもいなかった。わたしが大事に育て上げた者たちを、敵は滅ぼし尽くした。
3:1 わたしは、神の怒りの杖に打たれ、苦しみを見た者だ。
3:2 神はわたしを追い立て、光のない闇の中を歩かせた。
3:3 そう、神は一日中、何度もわたしに手を向ける。
3:4 神はわたしの肉と皮をやせ衰えさせ、骨を砕いた。
3:5 わたしを取り囲む壁を築き、苦しみと重荷でわたしを閉じ込めた。
3:6 神はわたしを暗闇に住まわせた。ずっと昔に死んだ者のように。
3:7 わたしの周りに壁をめぐらせ、抜け出せないようにした。わたしの鎖を重くした。
3:8 わたしが叫び、助けを求めても、神はわたしの祈りをさえぎった。
3:9 切り石でわたしの道をふさぎ、行く道を曲げてしまった。
3:10 神はわたしにとって、待ち伏せする熊、隠れひそむ獅子のようだ。
3:11 わたしを道から引きずり出して引き裂き、荒れ果てたままに捨て置いた。
3:12 神は弓を引きしぼり、わたしを矢の的にした。
3:13 神は矢筒の矢を、わたしの体の奥深くに射込んだ。
3:14 わたしは民のみんなの笑いものになった。一日中、からかいの歌にされている。
3:15 神はわたしを苦い思いで満たし、にがよもぎを飲ませて酔わせた。
3:16 小石でわたしの歯を砕き、灰の中に押さえつけた。
3:17 わたしの魂は平安から遠ざけられ、幸せがどんなものか忘れてしまった。
3:18 だからわたしは言った。「わたしの力は消え失せた。主に置いていた望みも、もう消えた」と。
3:19 どうか思い出してください。わたしの苦しみとさすらいを、にがよもぎと毒のような日々を。
3:20 わたしの魂は今もそれを忘れず、うなだれて沈み込んでいる。
3:21 でも、これを心に思い返すと、また希望がわいてくる。
3:22 主の慈しみは決して尽きることがない。その憐れみは絶えることがない。だから、わたしたちは滅ぼし尽くされない。
3:23 それは朝ごとに新しい。あなたの真実は、なんと大きいことか。
3:24 「主こそ、わたしの受ける分だ」と、わたしの魂は言う。だから、わたしは主に望みをかける。
3:25 主は、主を待ち望む人に、主を求める魂に、良くしてくださる方だ。
3:26 主の救いを、黙って静かに待ち望むのは良いことだ。
3:27 若い日にくびきを負うのは、その人にとって良いことだ。
3:28 主がそれを負わせたのだから、その人は一人静かに座っていればいい。
3:29 口を土につけよ。もしかしたら、まだ望みがあるかもしれない。
3:30 打つ者に頬を向け、辱めを十分に受けよ。
3:31 主は、いつまでも見捨てることはないからだ。
3:32 たとえ主が悲しみを与えても、その豊かな慈しみによって、必ず憐れんでくださる。
3:33 主は、心から人を苦しめたり、悲しませたりするのではないからだ。
3:34 地に捕らわれた人々を、足の下で踏みにじること、
3:35 いと高き方の前で、人の正しい訴えを退けること、
3:36 人を裁判で不当に扱うこと。主は、それを良しとされない。
3:37 主が命じられたのでなければ、ただ口で言っただけで、そのとおりに事が起こるだろうか。
3:38 災いも幸いも、いと高き方の口から出るのではないか。
3:39 生きている人間が、どうして不平を言えるだろう。自分の罪の報いを受けているだけなのに。
3:40 自分の歩んできた道を調べ、よく確かめて、主のもとに帰ろう。
3:41 両手を上げるように、心も上げて、天におられる神に向かおう。
3:42 わたしたちは背き、逆らった。だからあなたは赦してくださらなかった。
3:43 あなたは怒りに身を包み、わたしたちを追いつめた。容赦なく殺された。
3:44 あなたは雲で身を覆い、わたしたちの祈りが届かないようにされた。
3:45 あなたはわたしたちを、国々の民の中で、ごみのように、くずのように扱われた。
3:46 敵はみな、わたしたちに向かって口を大きく開けた。
3:47 恐れと落とし穴がわたしたちを襲い、荒れ果てと破滅がやってきた。
3:48 わたしの民、娘が打ち砕かれたので、わたしの目からは涙が川のように流れ落ちる。
3:49 わたしの目は涙を流し続け、止まることがない。とぎれることもない。
3:50 主が天から見おろし、目を留めてくださるまで。
3:51 この町の娘たちがみな受けた仕打ちを見て、わたしの目は心を痛める。
3:52 理由もないのに、わたしを敵とする者たちは、鳥を追うようにわたしを追いつめた。
3:53 彼らは穴の中でわたしの命を絶とうとし、わたしの上に石を投げつけた。
3:54 水が頭の上まであふれ、わたしは「もうだめだ」と思った。
3:55 主よ、わたしは深い穴の底から、あなたの名を呼び求めた。
3:56 あなたはわたしの声を聞いてくださった。「わたしを楽にして」という叫びに、どうか耳をふさがないでください。
3:57 わたしが呼んだその日、あなたは近くに来て、「恐れるな」と言ってくださった。
3:58 主よ、あなたはわたしのために争ってくださり、わたしの命を救い出してくださった。
3:59 主よ、あなたはわたしが受けた不当な扱いを見てくださった。どうか、わたしのために正しく裁いてください。
3:60 あなたは、彼らのすべての仕返しと、わたしに対するすべての企みを見てくださった。
3:61 主よ、あなたは彼らがわたしをののしる声を聞いてくださった。わたしに向けられた彼らのすべての企みも。
3:62 わたしに立ち向かう者たちの唇と、そのつぶやきは、一日じゅうわたしに向けられている。
3:63 彼らが座るときも立つときも、どうか見てください。わたしは彼らのあざけりの歌にされているのです。
3:64 主よ、彼らの手が行ったことに応じて、彼らに報いてください。
3:65 彼らの心に苦しみを与え、あなたの呪いを彼らに下してください。
3:66 怒りをもって彼らを追いつめ、主の天の下から彼らを滅ぼし去ってください。
4:1 ああ、金は輝きを失い、純金は色あせてしまった。聖なる宝石が、どの街角にもまき散らされている。
4:2 シオンの尊い子らは、純金にも値するほどだったのに、ああ、今では土の器のように見なされている。陶工の手が作った、ただの器のように。
4:3 山犬でさえ乳房をふくませ、自分の子を育てる。それなのに、わたしの民の娘は、荒れ野のダチョウのように無情になってしまった。
4:4 乳飲み子の舌は、渇きのために上あごにはりついている。幼い子らはパンを求めるのに、それを分け与えてくれる人はいない。
4:5 おいしいものを食べていた者たちが、通りで飢え衰えている。緋色の衣に包まれて育った者たちが、ごみの山にすがりついている。
4:6 わたしの民の娘の罪は、ソドムの罪よりも重い。ソドムは一瞬にして滅ぼされ、だれの手も加えられなかったのに。
4:7 この都の貴い人々は、雪よりも清らかで、乳よりも白かった。その体は珊瑚よりも赤く、その姿はサファイアのように輝いていた。
4:8 だが今では、その顔はすすよりも黒くなり、通りで見分けもつかない。肌は骨にはりつき、干からびて木のようになってしまった。
4:9 剣で殺された者のほうが、飢えで死んだ者よりもましだった。飢えた者は、畑の実りが絶えて、刺されたように少しずつ衰え果てていったのだから。
4:10 心優しかった女たちの手が、自分の子どもを煮た。わたしの民の娘が滅びるとき、その子らが食べ物となったのだ。
4:11 主はその憤りを出し尽くし、燃える怒りを注ぎ出された。主はシオンに火をつけ、その土台までも焼き尽くされた。
4:12 地の王たちも、世界に住むすべての人も信じなかった。敵が、エルサレムの門から攻め込んでくるなんて。
4:13 それは、この都の預言者たちの罪と、祭司たちの過ちのせいだった。彼らは町の中で、正しい人たちの血を流したのだ。
4:14 その預言者や祭司たちは、目の見えない人のように通りをさまよい、血で汚れていた。だれもその衣に触れられないほどに。
4:15 「離れろ、汚れている」と人々は彼らに叫んだ。「離れろ、離れろ、触れるな」と。彼らが逃げてさまよい歩くと、諸国の人々は言った。「あの者たちは、もうここには住めない」と。
4:16 主ご自身が彼らを散らし、もう顧みてはくださらない。人々は祭司を敬わず、年老いた者たちにも情けをかけなかった。
4:17 わたしたちの目は、今も助けを求めて疲れ果てている。でも、それはむなしかった。わたしたちは、救ってくれない国を、ひたすら待ち望んでいたのだ。
4:18 敵はわたしたちの足取りを追い、通りを歩くこともできない。わたしたちの終わりが近づいた。定めの日々は満ち、ついに終わりが来たのだ。
4:19 わたしたちを追いかける者は、空を飛ぶ鷲よりも速かった。彼らは山々でわたしたちを追いつめ、荒れ野で待ち伏せしていた。
4:20 わたしたちのいのちの息とも言える人、主が選んで油を注いだ王も、彼らの落とし穴で捕らえられた。「この人の陰でなら、どんな国のもとでも生きていける」と、わたしたちは言っていたのに。
4:21 エドムの娘よ、ウツの地に住む者よ、喜んで、はしゃいでいるがいい。だが、その杯はおまえのところにも回ってくる。おまえも酔いつぶれ、裸をさらすことになる。
4:22 シオンの娘よ、おまえの罪の償いは終わった。主はもう、おまえを捕らえて連れ去りはしない。だがエドムの娘よ、主はおまえの罪を問いただし、おまえの過ちを暴き出す。
5:1 主よ、わたしたちに起きたことを思い出してください。目を向けて、わたしたちが受けた恥をご覧ください。
5:2 わたしたちの受け継いだ土地は、よそ者のものになった。わたしたちの家は、他国の人の手に渡った。
5:3 わたしたちは父を失った孤児となり、母たちは夫を亡くした女のようになった。
5:4 自分たちの水さえ、お金を払って飲む。自分たちのたきぎも、代金を払わないと手に入らない。
5:5 首に軛をかけられたまま追い立てられ、疲れ果てても、休むことは許されない。
5:6 パンで腹を満たすために、わたしたちはエジプトにもアッシリアにも手を差し出した。
5:7 わたしたちの先祖は罪を犯した。でも、その人たちはもういない。そして、彼らの犯した罪の重荷を、わたしたちが背負っている。
5:8 奴隷だった者たちが、わたしたちを支配している。その手から助け出してくれる人は、だれもいない。
5:9 荒れ野には剣を持つ者がいて、命がけでなければパンを手に入れられない。
5:10 飢えの激しさで、わたしたちの肌はかまどのように熱く焼けただれている。
5:11 シオンでは女たちが、ユダの町々では若い娘たちが、辱められた。
5:12 指導者たちは手で吊るされ、長老たちは敬われることもなかった。
5:13 若者たちは石臼をひかされ、少年たちはたきぎを背負ってよろめいた。
5:14 長老たちは町の門から姿を消し、若者たちは音楽を奏でなくなった。
5:15 わたしたちの心から喜びは消え、踊りは嘆きに変わってしまった。
5:16 わたしたちの頭から冠は落ちた。ああ、なんということだろう。わたしたちは罪を犯したのだ。
5:17 そのために、わたしたちの心は弱り果て、こうしたことのせいで、目はかすんでしまった。
5:18 荒れ果てたシオンの山を、今は狐がうろついている。
5:19 主よ、あなたは永遠に変わらず、その王座は代々続いていく。
5:20 それなのに、なぜあなたは、いつまでもわたしたちを忘れ、こんなにも長く見捨てているのか。
5:21 主よ、わたしたちをあなたのもとへ連れ戻してください。そうすれば、わたしたちは帰ります。わたしたちの日々を、昔のように新しくしてください。
5:22 それとも、あなたはわたしたちをすっかり見放し、激しく怒っているのですか。
エゼキエル書
1:1 第三十年の四月五日、わたしはケバル川のほとりで、捕らわれて連れて来られた人たちの中にいた。そのとき天が開け、わたしは神の幻を見た。
1:2 それは、ヨヤキン王が捕らわれてから五年目の、その月の五日のことだった。
1:3 カルデヤ人の地、ケバル川のほとりで、祭司ブジの子エゼキエルに、主の言葉がはっきりと臨んだ。そこで主の手が彼の上にあった。
1:4 わたしが見ていると、北から激しい風が吹いてきた。大きな雲があり、その中で火がひらめき、まわりには光が輝いていた。そして火の中心には、琥珀のように光り輝くものがあった。
1:5 その火の中に、四つの生き物のようなものがいた。その姿は人間に似ていた。
1:6 それぞれに四つの顔があり、四つの翼があった。
1:7 足はまっすぐで、足の裏は子牛のひづめのようだった。そして、磨いた青銅のように輝いていた。
1:8 四つの側面には、翼の下から人間の手が出ていた。四つの生き物には、みな顔と翼があった。
1:9 翼は互いにつながっていた。進むときに向きを変えることはなく、それぞれまっすぐ前に進んだ。
1:10 顔の形はこうだった。四つとも、人間の顔があり、右側には獅子の顔、左側には牛の顔、そして鷲の顔があった。
1:11 それぞれの顔と翼は、こうなっていた。翼は上のほうで分かれ、そのうち二つは互いにつながり、あとの二つはからだをおおっていた。
1:12 それぞれまっすぐ前に進んだ。霊が行こうとする方へ、彼らは進んだ。進むときに向きを変えることはなかった。
1:13 その生き物の姿は、燃える炭火のようだった。あるいは、たいまつのようにも見えた。その火は生き物たちの間を行き来していた。火は明るく輝き、その火から稲妻がほとばしり出ていた。
1:14 生き物たちは、いなずまのように、さっと行っては、さっと戻った。
1:15 わたしがその生き物たちを見ていると、四つの顔を持つ生き物のそばに、地の上に一つの車輪があった。
1:16 車輪の見た目と作りは、こうだった。かがやく宝石のような色で、四つとも同じ形をしていた。その見た目と作りは、車輪の中にもう一つ車輪があるかのようだった。
1:17 進むときは、四つのどの方向へも向きを変えずに進むことができた。動くときに向きを変えることはなかった。
1:18 その輪縁は高くそびえ、見ていて恐ろしいほどだった。そして四つとも、輪縁のまわり一面に目がついていた。
1:19 生き物たちが進むと、車輪もそのそばで進んだ。生き物たちが地から持ち上がると、車輪も持ち上がった。
1:20 霊が行こうとする方へ、生き物たちは進み、車輪もいっしょに持ち上がった。生き物の霊が車輪の中にあったからだ。
1:21 生き物が進むと、車輪も進み、生き物が止まると、車輪も止まった。生き物が地から持ち上がると、車輪もいっしょに持ち上がった。生き物の霊が車輪の中にあったからだ。
1:22 生き物たちの頭の上には、大空のようなものが広がっていた。それは目を見張るような水晶のような輝きで、彼らの頭の上に張り渡されていた。
1:23 その大空の下で、翼はまっすぐに伸び、互いに向き合っていた。それぞれ二つの翼で片側のからだをおおい、もう二つの翼で反対側のからだをおおっていた。
1:24 生き物たちが進むとき、わたしはその翼の音を聞いた。それは大水のとどろきのようで、全能者の声のようだった。大軍勢のどよめきのような騒がしい音だった。生き物たちが止まると、翼を垂れ下げた。
1:25 すると、彼らの頭の上に広がる大空の上から、声がした。生き物たちが止まって翼を垂れ下げたときのことだった。
1:26 彼らの頭の上に広がる大空の上には、サファイアのような青い石でできた、王座のようなものがあった。そしてその王座のようなものの上のほうには、人のような姿のものがいた。
1:27 わたしが見ると、その腰のあたりから上は、光り輝く金属のようで、周りをぐるりと火が包んでいるようだった。腰のあたりから下も火のようで、その周りは明るく輝いていた。
1:28 その周りの輝きは、雨の日に雲にかかる虹のようだった。これこそ、主の栄光の姿だった。わたしはそれを見て、顔を伏せて倒れた。すると、語りかける声が聞こえた。
2:1 その声はわたしに言った。「人の子よ、自分の足で立ちなさい。あなたに語ろう。」
2:2 そう語りかけられると、霊がわたしの中に入り、わたしを立ち上がらせた。そして、わたしに語りかける声が聞こえた。
2:3 その声はわたしに言った。「人の子よ、わたしはあなたをイスラエルの人々のもとに送る。わたしに逆らってきた、反逆の民のところへだ。彼らも先祖たちも、今日まで、わたしに背き続けてきた。
2:4 その子孫たちは、恐れを知らず、強情な者たちだ。それでも、わたしはあなたを彼らのもとに送る。あなたは彼らにこう言いなさい。『主なる神はこう言われる』と。
2:5 彼らが聞き入れても、聞き入れなくても——彼らは反逆の家なのだから——自分たちの間に預言者がいたことを、彼らはやがて知るだろう。
2:6 人の子よ、あなたは彼らを恐れてはならない。彼らの言葉も恐れてはならない。あなたの周りにあざみやいばらがあり、さそりの中で暮らすことになっても、彼らの言葉を恐れてはならない。彼らの顔におびえてはならない。彼らは反逆の家なのだから。
2:7 あなたは、わたしの言葉を彼らに語りなさい。彼らが聞き入れても、聞き入れなくても、語るのだ。彼らは反逆の民なのだから。
2:8 だが人の子よ、あなたはわたしが語ることを聞きなさい。あの反逆の家のように、逆らってはならない。口を開けて、わたしがあなたに与えるものを食べなさい。」
2:9 見ると、一つの手がわたしのほうに差し伸べられていた。その手には、巻物があった。
2:10 その方はそれをわたしの前に広げた。巻物は表にも裏にも文字で埋まっていて、そこには嘆きと悲しみと呪いの言葉が書かれていた。
3:1 その方はわたしに言った。「人の子よ、目の前にあるものを食べなさい。この巻物を食べて、行ってイスラエルの家に語りなさい。」
3:2 そこでわたしが口を開けると、その方はわたしにその巻物を食べさせた。
3:3 その方はわたしに言った。「人の子よ、わたしがあなたに与えるこの巻物を、腹いっぱいに食べ、体を満たしなさい。」わたしがそれを食べると、それは口の中で蜜のように甘かった。
3:4 その方はわたしに言った。「人の子よ、さあ、イスラエルの家のところへ行って、わたしの言葉を彼らに語りなさい。
3:5 あなたが送られるのは、聞き慣れない言葉や、分かりにくい言語を話す民のところではない。イスラエルの家のところだ。
3:6 聞き慣れない言葉や、分かりにくい言語を話す、あなたには言葉の通じない多くの民のところへ送るのではない。もしそういう民のところへ送ったなら、彼らはきっとあなたの言うことを聞いただろう。
3:7 でも、イスラエルの家はあなたの言うことを聞こうとしない。彼らはわたしの言うことさえ聞こうとしないからだ。イスラエルの家はみな、額が固く、心もかたくなだ。
3:8 見なさい。わたしはあなたの顔を、彼らの顔に負けないほど固くする。あなたの額を、彼らの額に負けないほど固くする。
3:9 わたしはあなたの額を、火打ち石よりも固い金剛石のようにする。彼らを恐れるな。その顔つきにおびえるな。彼らは反逆の家だからだ。」
3:10 その方はわたしに言った。「人の子よ、わたしがあなたに語る言葉をすべて、心に受け止め、耳でよく聞きなさい。
3:11 そして、捕らえ移された人たち、あなたの同胞のところへ行きなさい。彼らに語り、こう言うのだ。『主なる神はこう言われる』と。彼らが聞いても、聞かなくても、そうしなさい。」
3:12 すると、霊がわたしを持ち上げた。そのとき、わたしの後ろで大きなとどろきの音が聞こえた。「主の栄光を、そのおられる場所からほめたたえよ」という声だった。
3:13 それは、生き物たちの翼が互いに触れ合う音、そのそばにある車輪の音、大きなとどろきの音だった。
3:14 霊がわたしを持ち上げ、連れ去った。わたしは心が高ぶり、怒りに満ちたまま、苦い思いで進んで行った。主の手が、わたしの上に強く置かれていた。
3:15 こうしてわたしは、テル・アビブにいる捕らえ移された人たちのところに着いた。彼らはケバル川のほとりに住んでいた。わたしは彼らが住んでいるその場所に座り、七日の間、茫然としたまま彼らの中に座り続けた。
3:16 七日が終わったとき、主の言葉がわたしに臨んだ。
3:17 「人の子よ、わたしはあなたを、イスラエルの家の見張りとして立てた。だから、わたしの口から出る言葉を聞いて、わたしに代わって彼らに警告しなさい。
3:18 わたしが悪い者に『あなたは必ず死ぬ』と言うとき、もしあなたが警告せず、その悪い者が命を得られるように悪い生き方をやめるよう語らなければ、その悪い者は自分の罪のために死ぬ。しかしわたしは、その者の血の責任をあなたに問う。
3:19 でも、あなたが悪い者に警告しても、その人が悪い行いや悪い生き方をやめないなら、その人は自分の罪のために死ぬ。しかしあなたは、自分の命を救ったことになる。
3:20 また、正しい人が正しい生き方をやめて悪を行い、わたしがその前につまずきを置くとき、その人は死ぬ。あなたが警告しなかったから、その人は自分の罪のために死に、それまで行ってきた正しい行いも思い出されることはない。そしてわたしは、その者の血の責任をあなたに問う。
3:21 でも、あなたがその正しい人に罪を犯さないよう警告し、その人が罪を犯さなければ、その人は警告を受け入れたので必ず生きる。そしてあなたは、自分の命を救ったことになる。」
3:22 主の手がそこでわたしの上に臨んだ。主はわたしに言われた。「立って、平野に出て行きなさい。そこでわたしはあなたに語る。」
3:23 わたしは立って平野に出て行った。すると、そこに主の栄光が立っていた。それは、わたしがケバル川のほとりで見た栄光と同じだった。わたしはひれ伏した。
3:24 すると、霊がわたしの中に入り、わたしを立ち上がらせた。そして主はわたしに語りかけて言われた。「行って、自分の家に閉じこもりなさい。
3:25 人の子よ、見なさい。人々はあなたに縄をかけ、それであなたを縛る。だから、あなたは人々の中に出て行くことができない。
3:26 わたしはあなたの舌を上あごに付かせ、あなたを口のきけない者にする。だから、あなたは人々を責める者にはなれない。彼らは反逆の家だからだ。
3:27 でも、わたしがあなたに語りかけるとき、わたしはあなたの口を開く。そのとき、あなたは人々にこう言いなさい。『主なる神はこう言われる。聞く者は聞くがよい。聞くのをやめる者はやめるがよい。』彼らは反逆の家だからだ。」
4:1 人の子よ、あなたは一枚のレンガを取り、自分の前に置きなさい。そしてその上に一つの町、エルサレムを描くのだ。
4:2 それを包囲する様子を描きなさい。町に向かって攻撃用の壁を築き、土を盛った坂を築く。まわりに軍隊の陣地を置き、破城槌をぐるりと配置するのだ。
4:3 さらに鉄の平鍋を取り、それを鉄の壁として、あなたと町との間に立てなさい。あなたは顔を町に向け、町は包囲される。あなたがそれを攻める。これはイスラエルの人々への一つのしるしだ。
4:4 あなたは左を下にして横になり、その上にイスラエルの人々の罪を負いなさい。あなたがその姿勢で横になる日数だけ、彼らの罪を負うのだ。
4:5 わたしは彼らの罪の年数を、あなたのための日数として定めた。三百九十日だ。あなたはこうしてイスラエルの人々の罪を負う。
4:6 それが終わったら、今度は右を下にして横になり、ユダの人々の罪を四十日負いなさい。一日を一年として、わたしはあなたに定めた。
4:7 あなたは包囲されたエルサレムに顔をまっすぐ向け、腕をむき出しにして、その町に向けて預言しなさい。
4:8 見よ、わたしはあなたを縄で縛る。だからあなたは、包囲の日々が終わるまで、片側からもう一方へ寝返りを打つことはできない。
4:9 また、小麦、大麦、豆、レンズ豆、あわ、スペルト小麦を取り、それらを一つの器に入れて、自分のためのパンを作りなさい。あなたが横になっている日数、つまり三百九十日の間、それを食べるのだ。
4:10 食べる物の量は決まっている。一日に二十シェケル分の重さだけ、時間を決めて食べなさい。
4:11 水も量って飲みなさい。一日にヒンの六分の一だけ、時間を決めて飲むのだ。
4:12 それを大麦のパンとして焼いて食べなさい。しかも人々の見ている前で、人の糞を燃やしてそれを焼くのだ。
4:13 主は言われた。「イスラエルの人々は、わたしが追いやる国々で、こうして汚れたパンを食べることになる。」
4:14 わたしは言った。「ああ、主なる神よ。わたしはこれまで自分を汚したことは一度もありません。子どものころから今まで、自然に死んだ動物や、獣に裂かれた動物を食べたことはありません。汚れた肉を口にしたこともないのです。」
4:15 すると主はわたしに言われた。「よし、人の糞の代わりに牛の糞を使うことを許そう。それでパンを焼きなさい。」
4:16 主はさらにわたしに言われた。「人の子よ、わたしはエルサレムから食べ物の支えを断つ。人々はパンを量って、不安のうちに食べ、水を量って、おびえながら飲むようになる。
4:17 こうして人々はパンにも水にも事欠き、たがいに顔を見合わせて呆然とし、自分たちの罪のために衰え果てていく。」
5:1 人の子よ、鋭い刃物を取りなさい。それを床屋のかみそりとして、自分の頭と髭にあてて剃りなさい。そして、はかりを取って、その毛を量り分けなさい。
5:2 包囲の期間が終わったら、その三分の一を町の真ん中で火で焼きなさい。次の三分の一を取って、町の周りで刃物で打ちなさい。残りの三分の一を風に吹き散らしなさい。わたしは剣を抜いて、それを追いかける。
5:3 その毛の中から少しだけ取って、服のすそに包んでおきなさい。
5:4 そして、その中からまた少し取って、火の中に投げ込んで焼きなさい。そこから火が出て、イスラエルの全家に燃え広がる。
5:5 主なる神はこう言われる。「これがエルサレムだ。わたしはこの町を国々の真ん中に置いた。その周りには多くの国がある。
5:6 ところがエルサレムは、周りのどの国よりもひどく、わたしの定めに背いて悪を行い、わたしのおきてを捨て去った。彼らはわたしの定めを退け、わたしのおきてに従って歩まなかった。
5:7 だから、主なる神はこう言われる。あなたたちは周りの国々よりも激しく逆らい、わたしの定めに従って歩まず、わたしのおきても行わなかった。それどころか、周りの国々のならわしにさえ従わなかった。
5:8 だからこそ、主なる神はこう言われる。見よ、このわたし自身が、あなたに立ち向かう。国々が見ている前で、あなたの中でさばきを行う。
5:9 あなたのあらゆる忌まわしい行いのために、わたしは今までしたことのないこと、そして二度としないことを、あなたに対して行う。
5:10 それゆえ、あなたの中で父が子を食べ、子が父を食べるようになる。わたしはあなたにさばきを下し、生き残った者をみな、四方の風に吹き散らす。
5:11 だから、主なる神は言われる。わたしは生きている。あなたはあらゆる汚れた偶像と、あらゆる忌まわしい行いで、わたしの聖所を汚した。だからわたしも、あなたを容赦なく刈り取る。わたしの目はあわれみをかけず、決して惜しまない。
5:12 あなたのうち三分の一は疫病で死に、あなたの中で飢えて滅びる。三分の一はあなたの周りで剣に倒れる。残る三分の一を、わたしは四方の風に吹き散らし、抜き身の剣で追いかける。
5:13 こうしてわたしの怒りは尽き、彼らに向けた激しい憤りを収めて、わたしは気が済む。わたしが彼らに憤りをぶつけ終えたとき、彼らは、この主が熱い思いをもって語ったことを知る。
5:14 さらにわたしは、あなたを荒れ果てさせ、通り過ぎるすべての人の目の前で、周りの国々の物笑いの種とする。
5:15 怒りと憤り、そして激しい叱責をもってあなたにさばきを下すとき、あなたは周りの国々にとって、あざけりとののしりの的となり、見せしめとなり、恐れられる者となる。この主が語ったのだ。
5:16 わたしが、あなたたちを滅ぼすために、破滅をもたらす飢えという恐ろしい矢を放つとき、わたしはあなたたちへの飢えをいっそう激しくし、あなたたちのパンの支えを断ち切る。
5:17 わたしはあなたたちに、飢えと、人を襲う獣を送る。それらはあなたから子どもを奪う。疫病と流血があなたの中を通り過ぎ、わたしはあなたに剣を臨ませる。この主が語ったのだ。
6:1 主の言葉がわたしに臨んだ。
6:2 「人の子よ、イスラエルの山々に顔を向けて、そこに向けて預言しなさい。
6:3 こう言いなさい。『イスラエルの山々よ、主なる神の言葉を聞け。山々と丘に、谷川と谷に、主なる神はこう言われる。見よ、わたしはお前たちに剣を送り、お前たちが偶像を拝む高台を滅ぼす。
6:4 お前たちの祭壇は荒れ果て、香の柱は打ち砕かれる。わたしはお前たちの殺された者を、偶像の前に倒す。
6:5 イスラエルの人々の死体を偶像の前に置き、お前たちの骨を祭壇の周りにまき散らす。
6:6 お前たちが住むあらゆる所で、町は廃墟となり、高台は荒れ果てる。こうしてお前たちの祭壇は壊されて荒れ、偶像は打ち砕かれて消え、香の柱は切り倒され、お前たちが造ったものはすべて消し去られる。
6:7 殺された者がお前たちのただ中に倒れる。そのとき、お前たちはわたしが主であることを知る。
6:8 しかし、わたしは何人かを生き残らせる。お前たちが国々に散らされるとき、剣を逃れて諸国民の中に生き延びる者がいる。
6:9 逃れた者たちは、捕らえられて連れて行かれた国々で、わたしを思い起こす。わたしから離れて不貞を重ねた彼らの心、偶像を追い求めて色目を使った彼らの目に、わたしがどれほど心を痛めたかを。そして彼らは、自分が犯したすべての悪、すべての忌まわしい行いのために、自分自身を嫌うようになる。
6:10 そのとき、彼らはわたしが主であることを知る。わたしがこの災いを下すと告げたのは、むなしい言葉ではなかったのだ。
6:11 主なる神はこう言われる。「手を打ち鳴らし、足を踏み鳴らして、こう言え。『ああ、イスラエルの家のすべての悪しく忌まわしい行いよ。彼らは剣と飢えと疫病で倒れる。
6:12 遠くにいる者は疫病で死に、近くにいる者は剣で倒れる。生き残って包囲された者は飢えで死ぬ。こうして、わたしは彼らに怒りをぶつけ尽くす。
6:13 そのとき、彼らはわたしが主であることを知る。殺された者たちが偶像のあいだに、祭壇のまわりに横たわるとき。あらゆる高い丘の上、すべての山の頂、青々と茂った木の下、葉の茂ったすべての樫の木の下——彼らがあらゆる偶像に香ばしいささげ物をした、その場所すべてでだ。
6:14 わたしは彼らに向かって手を伸ばし、この地を荒れ果てさせる。荒れ野からディブラに至るまで、彼らの住むあらゆる場所を、荒涼とした地にする。こうして、彼らはわたしが主であることを知る。」
7:1 主の言葉がわたしに臨んだ。
7:2 「人の子よ、主なる神はイスラエルの地にこう言われる。終わりだ。終わりがこの地の四方の隅にやって来る。
7:3 今、終わりがおまえに臨む。わたしはおまえに怒りを送り、おまえの行いに従って裁く。おまえのすべての忌まわしい行いの報いを、おまえに返す。
7:4 わたしはおまえを惜しまず、あわれみもしない。おまえの行いの報いを、おまえに返す。おまえの忌まわしい行いは、おまえのただ中にとどまる。こうして、おまえたちはわたしが主であることを知る。」
7:5 主なる神はこう言われる。「災いだ。ただ一つの災いが、見よ、やって来る。
7:6 終わりが来た。終わりが来た。それはおまえに向かって目を覚ました。見よ、それがやって来る。
7:7 この地に住む者よ、おまえの番が来た。時が来た。その日が近い。混乱の日だ。山々に響く喜びの声ではない。
7:8 今、間もなくわたしは怒りをおまえに注ぐ。わたしの憤りをおまえにぶつける。おまえの行いにしたがっておまえを裁き、おまえの忌まわしい行いをすべて、おまえに報いる。
7:9 わたしはおまえを惜しまず、あわれみもしない。おまえの行いの報いを、おまえに返す。おまえの忌まわしい行いは、おまえのただ中にとどまる。こうして、おまえたちは打つ者であるわたしが主であることを知る。
7:10 見よ、その日だ。見よ、それがやって来る。おまえの番が来た。杖は芽を出し、高慢は花を咲かせた。
7:11 暴力は育って、悪の杖となった。彼らのうち、だれも残らない。その群衆も、その富も残らない。彼らのために嘆く者もいない。
7:12 時が来た。その日が迫った。買う者は喜ぶな。売る者は嘆くな。怒りがその群衆すべてに下るからだ。
7:13 売った者は、たとえ生きていても、売ったものを取り戻せない。この幻はその群衆すべてに向けられていて、取り消されない。だれも自分の罪の中で、いのちを保つことはできない。
7:14 彼らはラッパを吹き鳴らし、すべてを整えた。それでも、戦いに出る者はいない。わたしの怒りがその群衆すべてに下るからだ。
7:15 外には剣、内には疫病と飢えがある。野にいる者は剣で死に、町にいる者は飢えと疫病にのみ込まれる。
7:16 逃げのびる者は逃げのびて、山々へ行く。谷の鳩のように、みなが自分の罪のためにうめく。
7:17 すべての手は力を失い、すべての膝は水のように震える。
7:18 彼らは粗布を身にまとい、恐怖に包まれる。すべての顔は恥に覆われ、すべての頭は剃られる。
7:19 彼らは銀を通りに投げ捨て、金を汚れたもののように扱う。主の怒りの日には、銀も金も彼らを救えない。それで腹を満たすことも、飢えを満たすこともできない。それこそが彼らを罪へとつまずかせたものだからだ。
7:20 彼らは美しい飾りを誇りにし、それで忌まわしい像や、いとうべき偶像を造った。だからわたしは、それを彼らにとって汚れたものとする。
7:21 わたしはそれを、奪い取るために他国の者の手に渡し、この地の悪人たちの略奪にまかせる。彼らはそれを汚す。
7:22 わたしは彼らから顔をそむける。すると彼らはわたしの大切な場所を汚し、強盗どもがそこに押し入って、そこを汚す。
7:23 鎖を作れ。この地は流血の裁きで満ち、町は暴力で満ちているからだ。
7:24 わたしは最も残忍な国々を連れて来る。彼らは人々の家を奪い取る。わたしは強い者たちの誇りを終わらせ、彼らの聖なる場所は汚される。
7:25 恐怖が迫って来る。彼らは平安を求めるが、それは得られない。
7:26 災いの上に災いが重なり、悪い知らせに悪い知らせが続く。彼らは預言者に幻を求めるが、祭司からは教えが消え、長老たちからは助言が消える。
7:27 王は嘆き、指導者は絶望を身にまとう。この地の民の手は恐れて震える。わたしは彼らのしてきたとおりに彼らを扱い、彼ら自身の裁きの基準で彼らを裁く。こうして彼らは、わたしが主であることを知る。
8:1 第六年の第六の月の五日、わたしは自分の家にすわっていた。ユダの長老たちも、わたしの前にすわっていた。そのとき、そこで主なる神の手がわたしの上に下った。
8:2 わたしが見ると、火のように見える姿があった。その腰と見えるあたりから下は火で、腰から上は輝きのようで、光り輝く金属のように見えた。
8:3 その姿は手のようなものを伸ばして、わたしの髪の毛をつかんだ。すると霊がわたしを地と天の間に持ち上げ、神の幻の中でわたしをエルサレムへと運んで行った。そして、内側の門の入り口、北に向いた所に連れて行った。そこには、神のねたみを引き起こす、あの偶像が立っていた。
8:4 見ると、そこにはイスラエルの神の栄光があった。それは、わたしが平地で見た幻と同じ姿だった。
8:5 神はわたしに言われた。「人の子よ、目を上げて北の方を見なさい。」そこでわたしが目を上げて北の方を見ると、祭壇の門の北側、その入り口に、あのねたみを引き起こす偶像があった。
8:6 神はわたしに言われた。「人の子よ、あなたは彼らのしていることが見えるか。イスラエルの家がここで行っている、大きな忌まわしいことが。彼らはそれをして、わたしを聖所から遠ざけようとしている。だが、あなたはもっと大きな忌まわしいことを見るだろう。」
8:7 神はわたしを庭の入り口に連れて行った。見ると、壁に一つの穴があった。
8:8 神はわたしに言われた。「人の子よ、この壁を掘ってみなさい。」そこでわたしが壁を掘ると、そこに一つの入り口があった。
8:9 神はわたしに言われた。「入って行って、彼らがここで行っている、悪く忌まわしいことを見なさい。」
8:10 そこでわたしが入って見ると、あらゆる種類の這うものや汚れた獣、そしてイスラエルの家のすべての偶像が、壁一面にぐるりと描かれていた。
8:11 その前には、イスラエルの家の長老たちのうちの七十人が立っていた。シャファンの子ヤアザニヤも、彼らの中に立っていた。それぞれ手に香をたく器を持ち、立ちのぼる香の煙が濃く雲のようになっていた。
8:12 神はわたしに言われた。「人の子よ、あなたは見たか。イスラエルの家の長老たちが、めいめい自分の偶像を刻んだ部屋で、暗闇の中で行っていることを。彼らはこう言っている。『主はわたしたちを見ていない。主はこの地を見捨てた』と。」
8:13 そして神はわたしに言われた。「あなたはもっと大きな、彼らのしている恐ろしいことを見るだろう。」
8:14 それから神はわたしを、主の神殿の北向きの門の入り口に連れて行った。すると、そこには女たちが座って、タンムズのために泣いていた。
8:15 神はわたしに言われた。「人の子よ、あなたは見たか。あなたはさらに、これよりも大きな恐ろしいことを見るだろう。」
8:16 それから神はわたしを、主の神殿の内側の庭に連れて行った。すると、主の本殿の入り口、玄関と祭壇の間に、二十五人ほどの男たちがいた。彼らは主の本殿に背を向け、東を向いていた。そして東に向かって、太陽を拝んでいた。
8:17 神はわたしに言われた。「人の子よ、あなたは見たか。ユダの家は、ここで行っているこの恐ろしいことだけでは足りないのか。彼らはこの地を暴虐で満たし、わたしをくり返し怒らせている。見よ、彼らは枝を鼻に突きつけている。
8:18 だからわたしも怒りをもって対処する。わたしは目をかけず、あわれみもしない。彼らが大声でわたしに叫んでも、わたしは聞かない。」
9:1 それから神は大声で叫んで言われた。「この町を罰する者たちよ、近づけ。めいめい手に、滅ぼすための武器を持って。」
9:2 すると、六人の男が、北を向いた上の門の方からやって来た。めいめい手に、打ち砕くための武器を持っていた。その中に一人、亜麻布の衣を着て、腰に書記の筆入れを下げた男がいた。彼らは入って来て、青銅の祭壇のそばに立った。
9:3 そのとき、イスラエルの神の栄光が、それまで載っていたケルビムの上から立ちのぼって、神殿の敷居のところに移った。そして神は、亜麻布の衣を着て腰に書記の筆入れを下げた男を呼んで、
9:4 こう言われた。「町の中、エルサレムの中を歩き回れ。そして、この町で行われているすべての恐ろしいことのために嘆き、悲しんでいる者たちの額に、しるしをつけよ。」
9:5 そして、ほかの者たちには、わたしの聞いているところでこう言われた。「彼のあとについて町を歩き回り、打ち殺せ。目をかけるな。あわれむな。
9:6 老人も若者も、若い女も子どもも女たちも、ことごとく殺せ。だが、しるしのついている者にはだれにも近づくな。わたしの聖所から始めよ。」そこで彼らは、神殿の前にいた長老たちから始めた。
9:7 主は彼らに言われた。「神殿を汚し、その庭を、殺された者たちで満たせ。さあ、出て行け。」すると彼らは出て行き、町の中で打ち殺していった。
9:8 彼らが打ち殺している間、わたしひとりが残された。わたしはひれ伏して叫んだ。「ああ、主なる神よ。エルサレムに怒りを注いで、イスラエルの残りの者をみな滅ぼされるのですか。」
9:9 主はわたしに言われた。「イスラエルとユダの家の罪は、あまりにも大きい。この地は流された血で満ち、町は不正で満ちている。彼らが『主はこの地を見捨てた。主は見てなどいない』と言っているからだ。
9:10 だから、わたしも目をかけず、あわれまない。彼らのしてきたことを、その頭の上に返す。」
9:11 すると、亜麻布を着て、腰に書記の道具をつけたあの人が、報告して言った。「あなたが命じられたとおり、すべて行いました。」
10:1 わたしが見ていると、ケルビムの頭の上にある大空に、サファイアのような、王座の形に見えるものが現れた。
10:2 主は亜麻布を着たあの人に言われた。「ケルビムの下にある輪の間に入れ。そして、ケルビムの間にある燃える炭火を両手いっぱいにつかみ取り、町の上にまき散らせ。」その人は、わたしの見ている前で入って行った。
10:3 その人が入って行くとき、ケルビムは神殿の南側に立っていた。そして、雲が内側の庭を満たした。
10:4 主の栄光がケルビムの上から立ち上がり、神殿の敷居の上に移った。すると、神殿は雲で満ち、庭は主の栄光の輝きで満ちた。
10:5 ケルビムの翼の音は外側の庭まで聞こえた。それは、全能の神が語られるときの声のようだった。
10:6 主が亜麻布を着たあの人に、「輪の間、ケルビムの間から火を取れ」と命じられたとき、その人は入って行き、輪のそばに立った。
10:7 すると、一人のケルブがケルビムの間から手を伸ばし、ケルビムの間にある火に手を入れた。そしてそれをすくい取り、亜麻布を着たあの人の両手に渡した。その人は受け取って出て行った。
10:8 ケルビムの翼の下には、人間の手のような形のものが見えた。
10:9 わたしが見ると、ケルビムのそばに四つの輪があった。ケルブ一つに輪が一つずつ付いていた。その輪は、緑柱石のように輝いて見えた。
10:10 四つの輪はどれも同じ形をしていた。まるで輪の中にもう一つ輪があるかのようだった。
10:11 進むときは、前後左右どの方向へでも動けた。向きを変えずに進んだ。先頭が向いた方へ、そのまま付いて行き、進む間、向きを変えることはなかった。
10:12 その全身も、背中も、手も、翼も、そして四つの輪も、周り一面に目がびっしりと付いていた。
10:13 その輪は、わたしの聞いているところで「回るもの」と呼ばれていた。
10:14 それぞれに四つの顔があった。第一の顔はケルブの顔、第二は人の顔、第三は獅子の顔、第四は鷲の顔だった。
10:15 そしてケルビムは上へ昇った。これは、わたしがケバル川のほとりで見た、あの生き物だった。
10:16 ケルビムが進むと、輪もそのそばを進んだ。ケルビムが翼を上げて地から昇るときも、輪はそのそばを離れなかった。
10:17 ケルビムが止まれば輪も止まり、ケルビムが昇れば輪も一緒に昇った。生き物の霊が、その輪の中にあったからだ。
10:18 それから、主の栄光は神殿の敷居の上から離れ、ケルビムの上にとどまった。
10:19 ケルビムは翼を広げ、わたしの見ている前で地から昇っていった。彼らが出ていくとき、輪もそのそばにあった。そして彼らは主の神殿の東の門の入り口にとどまり、イスラエルの神の栄光が、その上、高いところにあった。
10:20 これは、わたしが以前ケバル川のほとりで、イスラエルの神の下に見た、あの生き物だった。わたしは、それがケルビムだと分かった。
10:21 それぞれに四つの顔があり、それぞれに四つの翼があった。翼の下には、人の手のようなものがあった。
10:22 その顔かたちは、わたしがケバル川のほとりで見た、あの顔と同じだった。姿もそのものだった。それぞれ、まっすぐ前に進んでいった。
11:1 そのとき、霊がわたしを持ち上げ、主の神殿の東の門、東を向いた門へと連れていった。すると門の入り口に、二十五人の男たちがいた。その中に、民の指導者であるアズルの子ヤアザンヤと、ベナヤの子ペラテヤの姿が見えた。
11:2 主はわたしに言われた。「人の子よ、これがこの町で悪をたくらみ、悪い計画を立てている者たちだ。
11:3 彼らはこう言っている。『家を建てる時は、まだ近づいていない。この町は鍋、わたしたちはその中の肉だ』と。
11:4 だから、彼らに預言せよ。預言せよ、人の子よ。」
11:5 すると、主の霊がわたしの上に降り、こう言われた。「言え。主はこう言われる。イスラエルの家よ、お前たちはそう言っている。だが、お前たちの心に浮かぶことを、わたしはよく知っている。
11:6 お前たちはこの町で殺す者を増やし、その通りを死体で満たした。
11:7 だから、主なる神はこう言われる。この町に転がした死体、それが肉だ。そして、この町が鍋だ。だが、お前たちはその中から引きずり出される。
11:8 お前たちは剣を恐れている。だから、わたしはお前たちの上に剣を送る、と主なる神は言われる。
11:9 わたしはお前たちをこの町の中から連れ出し、よそ者の手に引き渡す。こうして、お前たちを裁く。
11:10 お前たちは剣に倒れる。イスラエルの国境でわたしはお前たちを裁く。そのとき、お前たちは、わたしが主であることを知る。
11:11 この町がお前たちの鍋になることはない。お前たちがその中の肉になることもない。イスラエルの国境で、わたしはお前たちを裁く。
11:12 そのとき、お前たちは、わたしが主であることを知る。お前たちはわたしの掟に従って歩まず、わたしの定めを行わなかった。そのかわり、周りの国々のやり方をまねてきたのだ。」
11:13 わたしがこう預言していると、ベナヤの子ペラティヤが死んだ。わたしはひれ伏し、大声で叫んで言った。「ああ、主なる神よ。あなたはイスラエルの生き残りを、絶やしてしまわれるのですか。」
11:14 すると、主の言葉がわたしに臨んで、こう言われた。
11:15 「人の子よ。お前の兄弟たち、まさにお前の兄弟であり、お前と同じ血を引く者たち、そしてイスラエルの家のすべての人々のことだ。エルサレムに住む者たちは、彼らに向かってこう言っている。『お前たちは主から遠く離れてしまえ。この地はわたしたちのものとして与えられたのだ』と。
11:16 だから、こう言え。主なる神はこう言われる。確かにわたしは彼らを遠くの国々へ追いやり、あちこちの地に散らした。だが、彼らが行った先の地で、わたし自身がしばらくの間、彼らのための聖なる所となった。
11:17 だから、こう言え。主なる神はこう言われる。わたしはお前たちを諸国の民の中から集め、散らされた先の地から呼び集める。そして、お前たちにイスラエルの地を与える。
11:18 彼らはそこに帰って来て、この地から、忌まわしい偶像やおぞましいものをすべて取り除く。
11:19 わたしは彼らに一つの心を与え、彼らの中に新しい霊を授ける。彼らの体から石の心を取り除き、代わりに肉の心を与える。
11:20 それは、彼らがわたしの掟に従って歩み、わたしの定めを守り、それを行うためだ。こうして彼らはわたしの民となり、わたしは彼らの神となる。
11:21 しかし、忌まわしい偶像やおぞましいものに心を寄せて歩む者たちには、その行いをそのまま頭上に返す、と主なる神は言われる。」
11:22 それから、ケルビムがその翼を上げ、車輪もそれに合わせて動いた。イスラエルの神の栄光が、その上にあった。
11:23 主の栄光は町の中から上って行き、町の東にある山の上にとどまった。
11:24 そのとき、霊がわたしを引き上げ、幻の中で、神の霊によってわたしをカルデアの地、捕らわれの人々のところへ連れて行った。そして、わたしが見ていた幻はわたしから離れて消えた。
11:25 そこでわたしは、主が見せてくださったことをすべて、捕らわれの人々に語った。
12:1 主の言葉がわたしに臨んだ。
12:2 「人の子よ、お前は反逆の民の中に住んでいる。彼らは見る目があるのに見ようとせず、聞く耳があるのに聞こうとしない。彼らは反逆の民だからだ。
12:3 だから人の子よ、捕らわれて行く者の荷物を用意し、昼のうちに、彼らの見ている前で、それを担いで出て行け。お前のいる場所から別の場所へ、彼らの見ている前で移って行くのだ。反逆の民ではあっても、もしかしたら気づくかもしれない。
12:4 昼のうちに、彼らの見ている前で、捕らわれて行く者の荷物のように、お前の荷物を運び出せ。そして夕方には、彼らの見ている前で、捕らわれて連れて行かれる者のように出て行け。
12:5 彼らの見ている前で、壁に穴を開け、そこから荷物を運び出せ。
12:6 彼らの見ている前で、荷物を肩に担ぎ、暗くなってから運び出せ。顔を覆って、地面が見えないようにするのだ。わたしがお前を、イスラエルの民への一つのしるしとするからだ。」
12:7 わたしは命じられたとおりにした。昼のうちに、捕らわれて行く者の荷物のように、自分の荷物を運び出した。そして夕方には、手で壁に穴を開けた。暗くなってから、それを肩に担ぎ、彼らの見ている前で運び出した。
12:8 朝になると、主の言葉がわたしに臨んだ。
12:9 「人の子よ、反逆の家であるイスラエルの民が、お前に『何をしているのか』と言わなかったか。
12:10 彼らに言え。主なる神はこう言われる。この預言は、エルサレムにいる君主と、その中にいるすべてのイスラエルの民に関わるものだ。
12:11 こう言え。わたしはお前たちへのしるしだ。わたしがしたとおりのことが、彼らにも起こる。彼らは捕らわれ、捕虜となって連れて行かれる。
12:12 彼らの中にいる君主も、暗くなってから荷物を肩に担いで出て行く。人々は壁に穴を開けて、そこから彼を運び出す。彼は顔を覆い、自分の目でこの地を見ることができない。
12:13 わたしは彼に網を張り、彼はわたしのわなにかかる。わたしは彼をバビロン、カルデア人の地へ連れて行く。しかし彼はその地を見ることなく、そこで死ぬ。
12:14 彼の周りにいる者たち、彼を助ける者や兵士たちを、わたしはあらゆる方向へ散らす。そして剣を抜いて、彼らを追う。
12:15 わたしが彼らを国々の間に散らし、あちこちの国に追い散らすとき、彼らはわたしが主であることを知る。
12:16 しかしわたしは、彼らのうちのわずかな者を、剣と飢えと疫病から生き残らせる。それは、彼らが行った先の国々で、自分たちのすべての忌まわしい行いを語り伝えるためだ。こうして彼らは、わたしが主であることを知る。」
12:17 主の言葉がわたしに臨んだ。
12:18 「人の子よ、震えながらパンを食べ、おののきと不安のうちに水を飲め。
12:19 そして、その国の民にこう言え。エルサレムに住む人々、イスラエルの地に住む人々について、主なる神はこう言われる。彼らは不安のうちにパンを食べ、おびえながら水を飲むようになる。この地に住むすべての者の暴虐のせいで、地はその豊かさを奪われ、荒れ果てるからだ。」
12:20 人の住んでいた町々は廃墟となり、地は荒れ果てる。こうしてあなたがたは、わたしが主であることを知る。」
12:21 主の言葉がわたしに臨んだ。
12:22 「人の子よ、イスラエルの地であなたがたが口にしている、あのことわざは何なのか。『日々は長引くばかりで、幻はどれも実現しない』と言っているそうだが。
12:23 だから彼らにこう言え。主なる神はこう言われる。わたしはこのことわざをやめさせる。イスラエルで人々が二度とこれを口にすることはない。むしろ彼らにこう言え。その日は近づいた。どの幻も必ず実現する、と。
12:24 もう、イスラエルの家の中で、むなしい幻や、口当たりのいい偽りの占いが語られることはなくなる。
12:25 わたしは主だ。わたしが語る言葉は、必ずそのとおりに実現する。もう先延ばしにはならない。反逆の家よ、あなたがたの生きているこの時代に、わたしは言葉を語り、それを実行する、と主なる神は言われる。」
12:26 主の言葉がわたしに臨んだ。
12:27 「人の子よ、見よ。イスラエルの家はこう言っている。『彼が見ている幻は、ずっと先のことだ。彼が預言しているのは、遠い未来のことだ』と。
12:28 だから彼らにこう言え。主なる神はこう言われる。わたしの言葉は、もう一つも先延ばしにはならない。わたしが語る言葉は、必ず実現する、と主なる神は言われる。」
13:1 主の言葉がわたしに臨んだ。
13:2 「人の子よ、預言しているイスラエルの預言者たちに向かって預言せよ。自分の心から勝手に語る者たちに、こう言え。『主の言葉を聞け。』」
13:3 主なる神はこう言われる。「愚かな預言者たちは災いだ。彼らは自分の霊のままに突き進み、何も見ていないのに預言している。」
13:4 イスラエルよ、あなたの預言者たちは、廃墟をうろつくきつねのようだ。
13:5 あなたたちは、崩れた城壁の破れ口に上ることもせず、イスラエルの家のために石垣を築くこともしなかった。主の日の戦いで持ちこたえられるようにするためだったのに。
13:6 彼らが見るのは偽りの幻、告げるのは嘘の占いだ。主は彼らを送ってなどいないのに、『主の言葉だ』と言う。それでも彼らは、自分の語ったことが実現すると期待している。
13:7 あなたたちが見たのは偽りの幻ではないか。語ったのは嘘の占いではないか。わたしは何も語っていないのに、あなたたちは『主の言葉だ』と言っている。
13:8 だから、主なる神はこう言われる。あなたたちが偽りを語り、嘘の幻を見たので、わたしはあなたたちに立ち向かう、と主なる神は言われる。
13:9 偽りの幻を見て、嘘の占いを告げる預言者たちに、わたしの手は下る。彼らはわたしの民の集まりに加わることもなく、イスラエルの家の名簿に記されることもなく、イスラエルの土地に入ることもない。こうしてあなたたちは、わたしが主なる神であることを知る。
13:10 彼らはわたしの民を惑わした。平和などないのに『平和だ』と言ったのだ。民がもろい壁を築くと、彼らはそれを漆喰で塗り固める。
13:11 漆喰を塗る者たちに言え。その壁は倒れる。激しい雨が降り、大きな雹が落ち、暴風が吹きつけて壁を引き裂く。
13:12 壁が倒れたとき、あなたたちはこう言われるのではないか。『お前たちが塗った漆喰は、いったいどこにあるのか』と。
13:13 だから、主なる神はこう言われる。わたしは激しく怒って暴風を吹き荒れさせる。怒りのあまり激しい雨を降らせ、大きな雹を降らせて、すべてを打ち砕く。
13:14 あなたたちが漆喰で塗り固めた壁を、わたしは壊す。それを地面まで崩し、土台をむき出しにする。壁は倒れ、あなたたちもその下敷きになって滅びる。そのとき、あなたたちは、わたしが主であることを知る。
13:15 こうしてわたしは、壁と、それを漆喰で塗った者たちに、怒りを注ぎ尽くす。そしてあなたたちに言う。壁はもうない。それを塗った者たちも、もういない。
13:16 彼らはイスラエルの預言者たちだ。エルサレムについて預言し、平和などないのに『平和だ』という幻を語った者たちだ。主なる神は、こう告げる。
13:17 人の子よ、今度は、あなたの民の娘たちに顔を向けよ。彼女たちは自分の心のままに預言している。彼女たちに向かって預言し、
13:18 こう言え。主なる神はこう言われる。魂を狩ろうとして、すべての人の手首に呪いの帯を縫いつけ、あらゆる背丈の人の頭にベールをかぶせる女たちに、災いが下る。あなたたちは、わたしの民の魂を狩り、自分のためには魂を生かそうとするのか。
13:19 あなたたちは、ひとつかみの大麦とわずかなパンのために、わたしの民の前でわたしを汚した。死んではならない魂を死なせ、生きてはならない魂を生かした。偽りに聞き入るわたしの民に、うそをついたのだ。
13:20 だから、主なる神はこう言われる。わたしは、あなたたちが魂を鳥のように狩るのに使う、その呪いの帯に立ち向かう。それをあなたたちの腕から引きちぎり、あなたたちが鳥のように狩っている魂を解き放つ。
13:21 わたしはあなたたちのベールも引き裂き、わたしの民をあなたたちの手から救い出す。彼らはもう、あなたたちの手で狩られる獲物にはならない。そのとき、あなたたちは、わたしが主であることを知る。
13:22 あなたたちは、うそによって、正しい人の心を痛めつけた。わたしはその人を苦しめようとはしていないのに。そして悪い者を力づけ、その悪い道から立ち返って命を得ることを妨げた。
13:23 だから、あなたたちはもう、むなしい幻を見ることもなく、占いをすることもなくなる。わたしはわたしの民を、あなたたちの手から救い出す。そのとき、あなたたちは、わたしが主であることを知る。
14:1 イスラエルの長老たちの中の何人かが、わたしのところに来て、わたしの前に座った。
14:2 そのとき、主の言葉がわたしに臨んで、こう言われた。
14:3 「人の子よ、この者たちは偶像を心の中に迎え入れ、罪へとつまずかせるものを自分の目の前に置いている。それでも、わたしが彼らの問いに答えるとでもいうのか。
14:4 だから、彼らに告げてこう言いなさい。主なる神はこう言われる。イスラエルの家の者は誰であれ、偶像を心の中に迎え入れ、罪へとつまずかせるものを自分の前に置いたまま、預言者のもとに来るなら、わたし主は、その多くの偶像にふさわしく、自ら答える。
14:5 それは、イスラエルの家の心をとらえ直すためだ。彼らはみな、偶像のせいでわたしから離れてしまった。
14:6 だから、イスラエルの家に言いなさい。主なる神はこう言われる。立ち帰れ。偶像から離れ、あらゆる忌まわしいものに背を向けよ。
14:7 イスラエルの家の者であれ、イスラエルに身を寄せる外国人であれ、誰であれ、わたしから離れ去り、偶像を心の中に迎え入れ、罪へとつまずかせるものを自分の前に置いたまま、わたしのことを尋ねようと預言者のもとに来るなら、わたし主が自ら彼に答える。
14:8 わたしはその者に顔を向けて敵となり、見せしめとし、語り草とする。そして彼を、わたしの民の中から断ち切る。こうしてあなたがたは、わたしが主であることを知る。
14:9 もし預言者がだまされて何かを語ったとすれば、その預言者をだましたのはこのわたし、主である。わたしは手を伸ばして彼を打ち、わたしの民イスラエルの中から滅ぼす。
14:10 彼らは自分の罪の罰を負う。尋ねに来た者の罪も、預言者の罪も、同じように問われる。
14:11 それは、イスラエルの家が二度とわたしから迷い出ることなく、あらゆる背きで自分を汚すこともなくなるためだ。こうして彼らはわたしの民となり、わたしは彼らの神となる。主なる神がこう告げる。」
14:12 主の言葉が、再びわたしに臨んで、こう言われた。
14:13 「人の子よ、ある地がわたしに背き、不誠実な罪を犯したとする。そのとき、わたしはその地に手を伸ばし、パンの蓄えを断ち、飢えを送り込んで、人も家畜も絶やす。
14:14 たとえその地に、ノアとダニエルとヨブというあの三人がいても、彼らは自分の正しさによって自分の命を救えるだけだ。主なる神がこう告げる。
14:15 もしわたしが野の獣をその地に送り、獣がそこを荒らして人を奪い、獣を恐れてだれも通れない荒れ地になってしまうとする。
14:16 たとえこの三人がその地にいても、彼らは息子も娘も救えない。わたしは生きている、と主なる神は告げる。救われるのは彼ら自身だけで、その地は荒れ果てる。
14:17 あるいは、わたしがその地に剣を送り、「剣よ、この地を行き巡れ」と命じて、人も家畜も絶やすとする。
14:18 たとえこの三人がその地にいても、彼らは息子も娘も救えない。わたしは生きている、と主なる神は告げる。救われるのは彼ら自身だけだ。
14:19 あるいは、わたしがその地に疫病を送り、血を流して激しい怒りを注ぎ、人も家畜も絶やすとする。
14:20 たとえノアとダニエルとヨブがその地にいても、彼らは息子も娘も救えない。わたしは生きている、と主なる神は告げる。彼らは自分の正しさによって、自分の命を救えるだけだ。
14:21 主なる神はこう言う。まして、剣と飢えと野の獣と疫病という、わたしの四つの厳しい裁きを一度にエルサレムに送り、人も家畜も絶やすときは、その被害はどれほどだろうか。
14:22 それでも、そこには生き残る者たちがいる。連れ出される息子や娘たちだ。見よ、彼らはあなたたちのところへ出て来る。あなたたちは彼らの生き方と行いを見て、わたしがエルサレムに下した災い、その一つ一つについて慰められる。
14:23 あなたたちが彼らの生き方と行いを見るとき、彼らはあなたたちを慰める。そして、わたしがこの地に行ったすべてのことが、理由もなくしたことではなかったと、あなたたちは知る。主なる神がこう告げる。」
15:1 主の言葉がわたしに臨んだ。
15:2 人の子よ、ぶどうの木は、ほかのどんな木より値打ちがあるだろうか。森の木々に交じって生えている、その枝は。
15:3 そこから、何かを作るための木材が取れるだろうか。物を掛けるための杭ひとつでも、そこから取れるだろうか。
15:4 見てのとおり、それは薪として火にくべられる。火は両端を焼き、真ん中も黒焦げにする。それが何かの役に立つだろうか。
15:5 まだ傷ひとつなかったときでさえ、何の役にも立たなかった。まして火に焼かれて黒焦げになった今、どうして役に立つだろうか。
15:6 だから、主なる神はこう言われる。森の木々の中のぶどうの木を薪として火に渡したように、わたしはエルサレムに住む人々を火に渡す。
15:7 わたしは彼らに顔を向けて立ち向かう。彼らは一つの火から逃れても、また別の火に焼き尽くされる。わたしが彼らに顔を向けるとき、あなたたちは、わたしが主であることを知る。
15:8 わたしはこの地を荒れ果てさせる。彼らが裏切りの罪を犯したからだ。主なる神がそう告げられる。
16:1 主の言葉がわたしに臨んだ。
16:2 「人の子よ、エルサレムに、彼女がしてきた忌まわしいことを教えてやりなさい。
16:3 こう伝えなさい。主なる神はエルサレムにこう言われる。あなたの生まれも育ちも、カナン人の地だ。父はアモリ人、母はヘト人だった。
16:4 生まれたときのあなたはこうだった。へその緒を切ってもらえず、体をきれいにする水で洗ってもらえず、塩をすり込んでもらえず、布に包んでもらえなかった。
16:5 だれ一人あなたを見て、かわいそうに思い、こうしたことをしてくれる者はいなかった。それどころか、あなたは生まれたその日に、いらないものとして野原に投げ捨てられた。
16:6 わたしはあなたのそばを通りかかり、血にまみれてもがいているあなたを見た。そして血の中にいるあなたに言った。『生きなさい。』もう一度、血の中にいるあなたに言った。『生きなさい。』
16:7 わたしはあなたを、野の草のようにすくすく育てた。あなたは大きくなり、成長して、美しい年ごろになった。胸はふくらみ、髪は伸びた。それでも、あなたは裸のまま、何も身につけていなかった。
16:8 わたしは再びあなたのそばを通りかかり、あなたを見た。あなたはもう、愛される年ごろになっていた。わたしは自分の衣のすそを広げてあなたにかけ、その裸をおおった。そして、あなたに誓いを立て、契約を結んだ。こうしてあなたはわたしのものになった、と主なる神は言われる。
16:9 わたしはあなたを水で洗い、体についた血を洗い流し、オリーブ油を塗ってあげた。
16:10 刺繍をほどこした服を着せ、上質の革のくつをはかせた。上等な亜麻の布を巻き、絹をまとわせた。
16:11 さらに飾りで美しく整え、両手には腕輪を、首には首飾りをつけた。
16:12 鼻には鼻輪を、耳には耳輪をつけ、頭には美しい冠をのせた。
16:13 あなたは金と銀で身を飾り、上質の亜麻や絹、刺繍をほどこした服をまとった。上等の小麦粉と蜜と油を食べ、とても美しくなって、ついに女王の位にまでのぼりつめた。
16:14 あなたの美しさの評判は、国々にまで広まった。わたしがあなたに与えた輝きによって、その美しさは完全なものだったからだ。——主なる神の言葉である。
16:15 ところがあなたは、自分の美しさにたより、その評判を利用して淫らなことをした。通りすぎる者だれにでも身を任せ、あなたの体はその者のものとなった。
16:16 あなたは自分の服を持ち出し、色とりどりに飾った高台の祭壇を作って、その上で淫らなことをした。こんなことは、あってはならないし、これからもあってはならない。
16:17 あなたは、わたしが与えた金や銀で作った美しい飾りを持ち出し、男の姿をした像を作って、それと淫らなことをした。
16:18 刺繍をほどこした服を持ち出してその像に着せ、わたしの油と香をその前に供えた。
16:19 わたしがあなたに与えた食べ物、つまりあなたに食べさせた上等の小麦粉と油と蜜も、あなたはその像の前に供え、よい香りとしてささげた。まさにそのとおりのことが起きた。——主なる神の言葉である。
16:20 さらにあなたは、わたしとの間に生んだ息子や娘たちを連れて行き、偶像の食べ物として、それらにいけにえとしてささげた。あなたの淫らな行いだけでは、まだ足りなかったのか。
16:21 あなたはわたしの子どもたちを殺し、火の中を通らせて、それらにささげてしまった。
16:22 これほど忌まわしいことや淫らなことをしながら、あなたは自分の若いころ、裸のまま血にまみれてもがいていた日々を、思い出しもしなかった。
16:23 これほどの悪を重ねたあとで——ああ、あなたにわざわいが、わざわいが降りかかる。主なる神の言葉である——
16:24 あなたは自分のために台を築き、どの広場にも高い祭壇を作った。
16:25 どの道の曲がり角にも高い台を築き、あなたは自分の美しさを汚した。通りすがりの者すべてに足を広げ、淫らな行いをどこまでも重ねた。
16:26 あなたは隣の国エジプトの、体の大きな男たちと関係を持った。そうやって、わたしを怒らせようと、淫らな行いをますます増やしていった。
16:27 だから見よ、わたしは手を伸ばしてあなたを打ち、あなたへの割り当てを減らした。そして、あなたを憎む者たち——あなたのふしだらなやり方に恥じ入るペリシテ人の娘たちの、思うままに引き渡した。
16:28 それでも満足できず、あなたはアッシリアの男たちとも関係を持った。彼らと交わっても、なお満ち足りることはなかった。
16:29 さらにあなたは、商人の国カルデアにまで、淫らな行いを広げていった。それでもまだ満足しなかった。
16:30 なんと弱りきった心だろう——主なる神の言葉である——あなたは、恥知らずな売春婦のようなこれらすべてを、平気でやってのける。
16:31 どの道の曲がり角にも土を盛って台を築き、どの広場にも高い祭壇を作った。それでいてあなたは、代金をさげすむ点で、普通の売春婦とも違っていた。
16:32 夫がありながら、その夫の代わりに他人の男を迎え入れる、不倫の妻よ。
16:33 どんな売春婦にも、人は代金を払う。ところがあなたは、恋人たちみんなに自分から贈り物を渡し、まわりじゅうから自分のもとへ来てもらおうと、彼らを買収した。
16:34 あなたの淫らな行いは、ほかの女たちとは正反対だった。だれもあなたを求めて言い寄ったのではない。あなたのほうが代金を払い、あなたには代金が払われなかった。何もかもが逆さまだった。
16:35 だから、売春婦よ、主の言葉を聞け。
16:36 主なる神はこう言う。あなたは恋人たちと淫らなことをして、欲望をぶちまけ、裸をさらけ出した。忌まわしい偶像をすべて拝み、自分の子どもたちの血まで、その偶像に捧げた。こうしたことすべてのために——
16:37 だから、わたしはあなたが楽しんだ恋人たちをみんな集める。あなたが愛した者も、憎んだ者も、すべてだ。彼らをあなたのまわりに集め、あなたの裸を彼らの前にさらす。彼らはあなたの裸をすっかり見ることになる。
16:38 わたしはあなたを、姦通し、血を流した女として裁く。そして激しい怒りとねたみをもって、あなたを血に染める。
16:39 わたしはあなたを彼らの手に渡す。彼らはあなたの塚を壊し、高い台を打ち崩す。あなたの服をはぎ取り、美しい飾りを奪い取り、あなたを一糸まとわぬ裸のまま放り出す。
16:40 彼らは群衆を集めてあなたに立ち向かわせる。あなたを石で打ち、剣で切り裂く。
16:41 彼らはあなたの家々を火で焼き、大勢の女たちの見ている前で、あなたを罰する。こうしてわたしは、あなたの売春をやめさせる。あなたはもう二度と、代金を払うこともなくなる。
16:42 そのとき、わたしはあなたへの激しい怒りを鎮める。ねたみもあなたから離れる。わたしは静かになり、もう怒らない。
16:43 あなたは若かった日々を思い出さず、こうしたことすべてでわたしを怒らせた。だから、わたしはあなたのしたことを、あなた自身の頭に返す、と主なる神は言う。あなたは、あらゆる忌まわしい行いに加えて、こんな恥ずべきことまでしたのだ。
16:44 見よ、ことわざを使う者はみな、あなたについてこう言うだろう。『母がそうなら、娘もそうだ』と。
16:45 あなたは、自分の夫と子どもたちを嫌った母の娘だ。また、夫と子どもたちを嫌った姉妹たちの姉妹でもある。あなたたちの母はヒッタイト人、父はアモリ人だった。
16:46 あなたの姉はサマリアで、娘たちと一緒にあなたの左側に住んでいた。あなたの妹はソドムで、娘たちと一緒にあなたの右側に住んでいた。
16:47 あなたは彼女たちの生き方をまねるだけでは足りず、その忌まわしい行いをまねるだけでも足りなかった。あなたはあらゆることで、彼女たち以上に堕落してしまった。
16:48 わたしは生きている、と主なる神は言う。あなたの妹ソドムとその娘たちでさえ、あなたとあなたの娘たちがしたようなことは、していなかった。
16:49 見なさい。あなたの妹ソドムの罪はこうだった。ソドムとその娘たちは高慢で、たっぷり食べ、何の心配もなくのんびり暮らしていた。それなのに、貧しい人や困っている人には手を差し伸べなかった。
16:50 彼女たちは思い上がり、わたしの前で忌まわしいことをした。だからわたしは、それを見て彼女たちを取り除いた。
16:51 サマリアでさえ、あなたの罪の半分も犯さなかった。あなたは彼女たち以上に忌まわしい行いを重ね、あなたのしたあらゆる忌まわしい行いのせいで、姉や妹のほうがましに見えるほどだった。
16:52 だからあなたも、自分の恥を負いなさい。あなたは姉妹を裁いておきながら、彼女たち以上に忌まわしい罪を犯した。それで、彼女たちのほうがあなたより正しいことになる。あなたも恥じて、自分の恥を負いなさい。あなたのせいで、姉妹のほうが正しく見えるのだから。
16:53 しかしわたしは、彼女たちを元の状態に戻す。ソドムとその娘たちを、そしてサマリアとその娘たちを元に戻す。それとともに、彼女たちの間にいるあなたも元に戻す。
16:54 それは、あなたが自分のしたことすべてを恥じ、その恥を負うためだ。あなたがしたことは、かえって彼女たちの慰めになる。
16:55 あなたの姉妹、ソドムとその娘たちは元の状態に戻り、サマリアとその娘たちも元の状態に戻る。そしてあなたとあなたの娘たちも、元の状態に戻る。
16:56 あなたは高ぶっていたころ、妹ソドムの名を口にすることさえしなかった。
16:57 それは、あなた自身の悪が明るみに出る前のことだ。今やあなたは、アラムの娘たちや、その周りのすべての者、あなたを取り囲んでさげすむペリシテの娘たちに、あざけられている。
16:58 あなたは自分のみだらな行いと忌まわしい行いの報いを負う、と主は言う。
16:59 まことに、主なる神はこう言う。あなたがしたとおりに、わたしもあなたに報いる。あなたは誓いを軽んじ、契約を破ったからだ。
16:60 それでもわたしは、あなたが若かったころにあなたと結んだ契約を思い起こす。そして、あなたと永遠の契約を立てる。
16:61 あなたは自分の歩んできた道を思い起こし、恥じ入る。あなたより年上の姉たちと年下の妹たちをあなたが迎え入れるときに。わたしは彼女たちをあなたに娘として与える。ただし、それはあなたとの契約によるのではない。
16:62 そしてわたしは、わたし自身の契約をあなたと立てる。あなたは、わたしが主であることを知る。
16:63 それは、あなたが思い起こして恥じ、二度と口を開けなくなるためだ。あなたのしたすべてのことをわたしが赦すとき、あなたは恥ずかしさのあまり何も言えなくなる、と主なる神は言う。」
17:1 主の言葉がわたしに臨んだ。
17:2 人の子よ、イスラエルの家になぞをかけ、たとえを語りなさい。
17:3 そして言いなさい。主なる神はこう言う。大きな鷲がいた。翼は大きく、羽は長く、色とりどりの羽毛に覆われていた。その鷲はレバノンに来て、杉のこずえを取った。
17:4 鷲は若い枝の先を摘み取り、それを商人の地へ運び、商人の町に置いた。
17:5 それからその地の種を取って、よく肥えた畑に蒔いた。豊かな水のほとりに、柳のように植えた。
17:6 すると芽を出し、低く広がるぶどうの木になった。その枝は鷲のほうへ向かい、根は鷲の下にあった。こうしてぶどうの木となり、枝を伸ばし、若枝を出した。
17:7 もう一羽、大きな鷲がいた。翼は大きく、羽も豊かだった。すると、このぶどうの木は根をその鷲のほうへ曲げ、枝をその鷲のほうへ伸ばした。植えられた畑から、鷲に水をもらおうとしたのだ。
17:8 このぶどうの木は、豊かな水のほとりの良い畑に植えられていた。枝を出し、実をつけ、立派なぶどうの木になるためだった。
17:9 言え。主なる神はこう言われる。この木は栄えるだろうか。鷲はその根を引き抜き、実をむしり取って、枯らしてしまうのではないか。新しく出た若葉もみな枯れてしまう。根から引き抜くのに、強い力も大勢の人もいらない。
17:10 見よ、植えられてはいても、栄えるだろうか。東からの風が当たれば、すっかり枯れてしまうのではないか。生えていた畑の上で枯れてしまう。
17:11 主の言葉がわたしに臨んだ。
17:12 この反逆の家に言え。これが何を意味するか、あなたがたは分からないのか。言え。見よ、バビロンの王がエルサレムに攻めて来て、その王と高官たちを捕らえ、自分のところ、バビロンへ連れて行った。
17:13 そして王家の血筋の一人を取り、その者と契約を結び、誓わせた。さらに国の有力者たちも連れ去った。
17:14 それは、この国が低いままで、二度と立ち上がれないようにするためだった。契約を守ってこそ、この国は保たれるはずだった。
17:15 ところが、この王はバビロンの王に背いた。使者をエジプトに送り、馬と大勢の兵を求めたのだ。こんなことをする者が、うまくいくだろうか。逃げおおせるだろうか。契約を破っておいて、逃れられるだろうか。
17:16 わたしは生きている、と主なる神は言われる。自分を王にした者への誓いを軽んじ、その契約を破ったのだから、この王を王位につけた者のいるところ、つまりバビロンで、この王は死ぬ。
17:17 ファラオは、大軍と大勢の兵をもってしても、戦いでこの王を助けることはできない。敵が土塁を築き、攻めるための壁を築いて、多くの命を絶とうとするときにもだ。
17:18 この王は誓いを軽んじ、契約を破った。手を差し出して誓っておきながら、こういうことをすべてやったのだ。だから、逃れることはできない。
17:19 だから、主なる神はこう言われる。わたしは生きている。この者はわたしの誓いを軽んじ、わたしの契約を破った。だから、わたしはその報いをこの者の頭に返す。
17:20 わたしはこの者に網を投げかける。彼はわたしの罠にかかる。わたしは彼をバビロンに連れて行き、そこで、わたしに対して犯した裏切りを裁く。
17:21 彼の軍隊のうち、逃げようとする者はみな剣に倒れる。生き残った者は、四方に散らされる。そのとき、あなたがたは、わたしが主であり、わたしが語ったのだと知る。
17:22 主なる神はこう言われる。わたしは、高いレバノン杉のこずえから若枝を取り、その一番上の柔らかい芽を摘み取って、高くそびえる山に植える。
17:23 わたしは、それをイスラエルの高い山に植える。その若枝は枝を伸ばし、実を結び、立派な杉の木になる。あらゆる種類の鳥がその下に宿り、枝の陰に住む。
17:24 そのとき、野のすべての木は知る。わたしが主であり、高い木を低くし、低い木を高くし、みずみずしい木を枯らし、枯れた木を茂らせる者だと。わたしが主である。わたしは語り、そのとおりに行う。
18:1 主の言葉がわたしに臨んだ。
18:2 「あなたがたは、イスラエルの地についてこのことわざを口にしているが、どういうつもりなのか。『親が酸いぶどうを食べると、子どもの歯が浮く』と言っているが。
18:3 わたしは生きている、と主なる神は言われる。あなたがたは、イスラエルでもう二度とこのことわざを口にすることはない。
18:4 見よ、すべての命はわたしのものだ。親の命も子の命も、わたしのものだ。罪を犯した者、その者が死ぬ。
18:5 正しい人がいて、公正なことと正義を行うとする。
18:6 その人は、山の上で偶像へのいけにえの肉を食べず、イスラエルの民が拝む偶像に目を向けない。隣人の妻を汚さず、生理中の女性に近づかない。
18:7 その人はだれも虐げず、借金の担保を返し、人のものを奪い取ることをしない。自分のパンを飢えた人に分け、裸の人には服を着せる。
18:8 利息をつけて金を貸さず、もうけを取り立てることもしない。不正から手を引き、人と人との間で正しい裁きを行う。
18:9 わたしのおきてに従って歩み、わたしの定めを守って誠実に行う。この人は正しい。彼は必ず生きる、と主なる神は言われる。
18:10 しかし、その人に息子が生まれ、その息子が乱暴者で、人の血を流し、ここに挙げたような悪のどれかを行うとする。
18:11 父はこうした悪を一つもしなかった。それなのに息子は、山の上で偶像へのいけにえの肉を食べ、隣人の妻を汚す。
18:12 貧しい人や乏しい人を虐げ、人のものを奪い取り、担保を返さず、偶像に目を向け、忌まわしいことを行う。
18:13 利息をつけて金を貸し、もうけを取り立てる。こんな者が生きられるだろうか。生きられない。これほど忌まわしいことをすべて行ったのだから、彼は必ず死ぬ。その血の責任は彼自身にある。
18:14 しかし、その息子にまた息子が生まれ、父が犯したすべての罪を見たとする。彼はそれを見て、同じことをしない。
18:15 山の上で偶像へのいけにえの肉を食べず、イスラエルの民が拝む偶像に目を向けない。隣人の妻を汚さず、
18:16 だれも虐げず、担保を取り上げたりせず、人のものを奪い取ることもしない。自分のパンを飢えた人に分け、裸の人には服を着せる。
18:17 貧しい人に手を出さず、利息やもうけを取り立てない。わたしの定めを行い、わたしのおきてに従って歩む。この人は父の罪のために死ぬことはない。必ず生きる。
18:18 しかし父のほうは、人を苦しめて奪い取り、兄弟のものを奪い、民の間で良くないことを行った。だから彼は自分の罪のために死ぬ。
18:19 あなたたちはこう言う。「どうして子は父の罪を負わないのか」と。でも、子が公正で正しいことを行い、わたしの定めをすべて守って実行したのなら、その子は必ず生きる。
18:20 罪を犯した魂、それが死ぬのだ。子は父の罪を負わないし、父も子の罪を負わない。正しい人の正しさはその人自身のものとなり、悪い人の悪もその人自身のものとなる。
18:21 悪い人でも、自分の犯したすべての罪を離れて、わたしの定めをすべて守り、公正で正しいことを行うなら、その人は必ず生きる。死ぬことはない。
18:22 その人が犯した背きは、もう一つも思い出されることはない。自分が行った正しさによって、その人は生きる。
18:23 わたしが悪い人の死を喜ぶだろうか、と主なる神は言われる。むしろ、その人が自分の生き方を改めて生きることこそ、わたしは望んでいる。
18:24 逆に、正しい人が自分の正しさを離れて不正を行い、悪い人がするようなあらゆる忌まわしいことをするなら、その人は生きられるだろうか。それまで行ってきた正しさは、どれも思い出されない。その人は自分の裏切りと、自分の犯した罪のために死ぬ。
18:25 それなのに、あなたたちは「主のやり方は正しくない」と言う。イスラエルの家よ、聞きなさい。正しくないのはわたしのやり方だろうか。むしろ正しくないのは、あなたたちのやり方ではないか。
18:26 正しい人が自分の正しさを離れて不正を行い、そのために死ぬなら、その人は自分の行った不正のために死ぬのだ。
18:27 また、悪い人が自分の行ってきた悪を離れて、公正で正しいことを行うなら、その人は自分の魂を生かす。
18:28 その人は思い直して、自分の犯したすべての背きを離れる。だから必ず生きる。死ぬことはない。
18:29 それでもイスラエルの家は「主のやり方は正しくない」と言う。イスラエルの家よ、正しくないのはわたしのやり方だろうか。むしろ正しくないのは、あなたたちのやり方ではないか。
18:30 だから、イスラエルの家よ、わたしはあなたたち一人ひとりを、それぞれの生き方に従って裁く、と主なる神は言われる。立ち返りなさい。あなたたちのすべての背きから離れなさい。そうすれば、罪があなたたちをつまずかせて滅ぼすことはない。
18:31 あなたたちが犯してきたすべての背きを、自分から投げ捨てなさい。そして新しい心と新しい霊を持ちなさい。イスラエルの家よ、どうして死のうとするのか。
18:32 わたしは、死ぬ者が死ぬのを喜ばないからだ、と主なる神は言われる。だから立ち返って、生きなさい。
19:1 あなたは、イスラエルの君主たちのために、嘆きの歌をうたいなさい。
19:2 こう言うのだ。あなたの母は何だったのか。それは雌ライオンだった。ライオンたちの中に伏し、若いライオンたちの間で子どもを育てた。
19:3 その母は、子どもの一頭を育て上げた。子は若いライオンになり、獲物を捕らえることを覚え、人を食らうようになった。
19:4 国々はそのことを聞きつけた。若いライオンは彼らの落とし穴で捕らえられ、鉤で引かれてエジプトの地へ連れて行かれた。
19:5 母は、待ちくたびれて望みが絶たれたのを見ると、もう一頭の子どもを取り、若いライオンに育てた。
19:6 その子はライオンたちの間を歩き回り、若いライオンになった。獲物を捕らえることを覚え、人を食らうようになった。
19:7 彼は彼らの砦を荒らし、町々を廃墟にした。そのうなり声で、地とそこに満ちるものはおののいた。
19:8 すると周りの国々が、あちこちの地方から彼に向かって立ち上がった。彼らは彼に網を張り、その落とし穴で捕らえた。
19:9 鉤をかけて彼を檻に入れ、バビロンの王のもとへ引いて行った。彼を砦に閉じ込め、その声がもうイスラエルの山々で聞かれないようにした。
19:10 お前の母は、水のほとりに植えられたぶどうの木のようだった。豊かな水のおかげで実をよく結び、枝を茂らせていた。
19:11 そこには、支配者の杖となる強い枝があった。その丈は高く伸びて、茂った枝々の上にそびえ立ち、たくさんの枝をつけた高さで人目を引いた。
19:12 しかしその木は、怒りによって引き抜かれ、地に投げ捨てられた。東風がその実を枯らし、強い枝は折れて枯れ、火がそれを焼き尽くした。
19:13 今、その木は荒れ野に、乾いて水のない地に植えられている。
19:14 その枝の一本から火が出て、実を焼き尽くした。もう、支配する杖となる強い枝は残っていない。これは嘆きの歌であり、嘆きの歌となった。
20:1 第七年の五月十日のことだった。イスラエルの長老たちの何人かが、主のみこころを求めてやって来て、わたしの前に座った。
20:2 そのとき、主の言葉がわたしにこう告げられた。
20:3 「人の子よ、イスラエルの長老たちにこう伝えなさい。主なる神はこう言われる。あなたたちはわたしのみこころを求めに来たのか。わたしは生きている、と主なる神は言われる。わたしはあなたたちの求めに答えはしない。
20:4 人の子よ、あなたは彼らを裁くのか。裁くのか。それなら、彼らの先祖がしてきた忌まわしいことを、彼らに思い知らせなさい。
20:5 彼らにこう伝えなさい。主なる神はこう言われる。わたしがイスラエルを選んだ日、わたしはヤコブの家の子孫に向かって手を上げて誓い、エジプトの地で自分を彼らに知らせた。手を上げて、こう言ったのだ。『わたしはあなたたちの神、主である』と。
20:6 その日、わたしは彼らに向かって手を上げて誓った。彼らをエジプトの地から連れ出し、わたしが彼らのために探しておいた地へ導き入れると。それは乳と蜜の流れる地、どの国にもまさって美しい地だ。
20:7 そしてわたしは彼らに言った。『一人ひとり、自分が心ひかれている忌まわしい偶像を投げ捨てよ。エジプトの偶像で自分を汚してはならない。わたしはあなたたちの神、主である』と。
20:8 しかし彼らはわたしに逆らい、わたしの言うことを聞こうとしなかった。一人としてその忌まわしい偶像を捨てず、エジプトの偶像を手放そうともしなかった。それでわたしは、エジプトの地のただ中で彼らに激しい怒りを注ぎ、憤りをぶつけようと思った。
20:9 しかしわたしは、自分の名のために行動した。彼らが暮らしていた周りの国々の前で、わたしの名が汚されないためだ。わたしはその国々の目の前で、彼らをエジプトの地から連れ出すと知らせていたからだ。
20:10 こうしてわたしは彼らをエジプトの地から連れ出し、荒れ野へと導いた。
20:11 そしてわたしは彼らにわたしの掟を与え、わたしの定めを知らせた。それを行う人は、それによって生きる。
20:12 さらにわたしは、彼らに安息日を与えた。それは、わたしと彼らとの間のしるしとするためだ。わたしが彼らを聖なるものとする主であることを、彼らが知るためである。
20:13 でも、イスラエルの人々は荒れ野でわたしに逆らった。わたしの掟に従って歩まず、わたしの定めを退けた。それを行う人は、それによって生きるのに。そして安息日をひどく汚した。それでわたしは、荒れ野で彼らに怒りを注ぎ、滅ぼし尽くそうと思った。
20:14 しかしわたしは、自分の名のために行動した。わたしが彼らを導き出すのを見ていた国々の前で、その名が汚されないためだ。
20:15 またわたしは荒れ野で、彼らに向かって手を上げて誓った。わたしが与えた地、乳と蜜の流れる、すべての地の中でいちばん美しい地へ、彼らを導き入れないと。
20:16 彼らがわたしの定めを退け、わたしの掟に従って歩まず、安息日を汚したからだ。彼らの心は偶像のあとを追っていた。
20:17 それでもわたしは彼らを惜しみ、滅ぼさなかった。荒れ野で彼らを絶やすことはしなかった。
20:18 わたしは荒れ野で、彼らの子どもたちに言った。「あなたたちの親の掟に従って歩んではならない。彼らの定めを守ってはならない。彼らの偶像で自分を汚してはならない。
20:19 わたしはあなたたちの神、主である。わたしの掟に従って歩み、わたしの定めを守って行いなさい。
20:20 わたしの安息日を聖なるものとしなさい。それは、わたしとあなたたちとの間のしるしとなる。わたしがあなたたちの神、主であることを、あなたたちが知るためだ。」
20:21 しかし、その子どもたちもわたしに逆らった。わたしの掟に従って歩まず、わたしの定めを守り行わなかった。それを行う人は、それによって生きるのに。彼らは安息日を汚した。それでわたしは、荒れ野で彼らに怒りを注ぎ、その怒りを注ぎ尽くそうと思った。
20:22 しかしわたしは手を引き戻し、自分の名のために行動した。わたしが彼らを導き出すのを見ていた国々の前で、その名が汚されないためだ。
20:23 またわたしは荒れ野で、彼らに向かって手を上げて誓った。彼らを国々の中に散らし、あちこちの地にまき散らすと。
20:24 彼らがわたしの定めを行わず、わたしの掟を退け、安息日を汚し、その目が親たちの偶像を追っていたからだ。
20:25 それだけではない。わたしもまた、彼らに良くない掟と、それによっては生きられない定めを与えた。
20:26 そしてわたしは、彼らが初子をみな火の中に通らせてささげる、その供え物によって、彼らを汚れた者とした。それは、彼らを恐れおののかせ、わたしが主であることを彼らに知らせるためだった。
20:27 だから人の子よ、イスラエルの家に語り、こう言え。主なる神はこう言われる。あなたたちの親たちは、わたしに背いて不誠実なことをし、さらにこうして、わたしをののしった。
20:28 わたしが、彼らに与えると誓って手を上げたあの地に彼らを導き入れると、彼らは高い丘や茂った木を見つけるたびに、そこで自分たちのいけにえをささげ、腹立たしい供え物をささげ、なだめの香りを立ちのぼらせ、注ぎの供え物を注いだ。
20:29 わたしは彼らに言った。あなたたちが通っているその高き所は、いったい何なのか。その場所は、今日まで『高き所(バマ)』と呼ばれている。
20:30 だから、イスラエルの家に言え。主なる神はこう言われる。あなたたちは親たちのやり方で自分を汚し、彼らの忌まわしい偶像を追い求めて、淫らなことをしているのか。
20:31 あなたたちは供え物をささげ、自分の子らを火の中に通らせて、今日に至るまで、あらゆる偶像で自分を汚している。それなのに、イスラエルの家よ、わたしがあなたたちの求めに応じるとでもいうのか。わたしは生きている——主なる神は言われる——わたしは決してあなたたちの求めに応じはしない。
20:32 あなたたちが心に思い描いていること、『わたしたちは他の国々のようになり、あちこちの地の民族のように、木や石に仕えよう』ということは、決して実現しない。
20:33 わたしは生きている——主なる神は言われる——わたしは必ず、力強い手と、伸ばした腕と、注ぎ出される激しい怒りをもって、あなたたちを治める。
20:34 わたしはあなたたちを諸国の民の中から連れ出し、散らされていたあちこちの地から集める。力強い手と、伸ばした腕と、注ぎ出される激しい怒りをもって。
20:35 そしてあなたたちを諸国の民の荒れ野に連れて行き、そこで顔と顔を合わせて、あなたたちをさばく。
20:36 わたしがエジプトの地の荒れ野であなたたちの親たちをさばいたように、あなたたちをさばく——主なる神は言われる。
20:37 わたしはあなたたちを羊飼いの杖の下に通らせ、契約のきずなの中へ導き入れる。
20:38 そしてあなたたちの中から、反逆する者や、わたしに背く者を取り除く。彼らを寄留していた地から連れ出すが、イスラエルの地に入れることはない。こうしてあなたたちは、わたしが主であることを知る。
20:39 あなたたち、イスラエルの家よ、主なる神はこう言われる。「さあ、それぞれ自分の偶像に仕えるがいい。だが後になって、あなたたちはきっとわたしに聞き従うようになる。そしてもう、供え物や偶像で、わたしの聖なる名を汚すことはなくなる。」
20:40 わたしの聖なる山、イスラエルの高くそびえる山の上で、イスラエルの家はみな、その地でわたしに仕える——主なる神は言われる。そこでわたしは彼らを受け入れる。そこでわたしは、あなたたちのささげ物や初物、すべての聖なる供え物を求める。
20:41 わたしがあなたたちを諸国の民の中から連れ出し、散らされていたあちこちの地から集めるとき、わたしは香ばしい香りとして、あなたたちを喜んで受け入れる。そしてわたしは、諸国の民の目の前で、あなたたちを通して聖なる者とされる。
20:42 わたしがあなたたちを、あなたたちの親たちに与えると誓ったあの地、イスラエルの地へ導き入れるとき、あなたたちは、わたしが主であることを知る。
20:43 そこであなたたちは、自分が歩んできた道と、自分を汚したすべての行いを思い出す。そして、自分が犯したすべての悪のために、自分自身が嫌になる。
20:44 イスラエルの家よ、わたしがあなたたちの悪い道や腐った行いにふさわしくではなく、わたしの名のためにあなたたちを扱うとき、あなたたちは、わたしが主であることを知る——主なる神は言われる。
20:45 そのとき、主の言葉がわたしにこう告げられた。
20:46 「人の子よ、顔を南に向けなさい。南に向かって語りかけ、ネゲブの野の森に向かって預言しなさい。
20:47 ネゲブの森にこう言いなさい。「主の言葉を聞け。主なる神はこう言われる。見よ、わたしはあなたの中に火をつける。その火は、あなたの中の生きた木も枯れた木も、みな焼き尽くす。燃えさかる炎は消えることがない。南から北まで、あらゆる顔がその火で焼かれる。」
20:48 すべての人が、主であるわたしが火を放ったことを知る。その火は消されない。」
20:49 わたしは言った。「ああ、主なる神よ。人々はわたしのことを、『あの人はたとえ話ばかりしているだけじゃないか』と言っています。」
21:1 すると、主の言葉がわたしにこう告げられた。
21:2 「人の子よ、顔をエルサレムに向けろ。聖所に向かって語りかけ、イスラエルの地に預言しろ。
21:3 イスラエルの地にこう言うんだ。主はこう言われる。見ろ、わたしはお前に立ち向かう。剣をさやから抜き放ち、お前の中から正しい者も悪い者も断ち切る。
21:4 お前の中から正しい者も悪い者も断ち切るために、わたしの剣はさやから出て、南から北まで、すべての人に向かう。
21:5 こうしてすべての人が、剣をさやから抜き放ったのはわたし、主だと知る。その剣は二度と収められない。
21:6 人の子よ、お前はうめけ。腰が砕けるほど、激しい苦しみのなかで、人々の目の前でうめくんだ。
21:7 そして人々が『どうしてうめいているのか』とお前に聞いたら、こう答えろ。『一つの知らせのためだ。それがやって来る。すべての心はくずおれ、すべての手は力を失い、すべての気力はうせ、すべてのひざは水のように崩れる。見ろ、それはやって来る。必ずそうなる』と、主なる神は言われる。」
21:8 そのとき、主の言葉がわたしにこう告げられた。
21:9 「人の子よ、預言してこう言え。主はこう言われる。剣が、剣が研ぎ澄まされ、そして磨き上げられた。
21:10 虐殺のために研がれ、稲妻のようにきらめくために磨かれた。それでも、わたしたちは喜んでいられるだろうか。この剣は、わたしの子の王の杖さえ、ただの木ぎれのように見下している。
21:11 剣は磨かれ、手でしっかり握れるようになった。研ぎ澄まされ、磨き上げられて、人を殺す者の手に渡される。
21:12 人の子よ、叫べ、泣きわめけ。この剣はわたしの民に向けられ、イスラエルのすべての指導者に向けられているからだ。彼らはわたしの民とともに、剣に引き渡された。だから腿を打って嘆け。
21:13 必ず試しのときが来る。剣に見下されるあの王の杖さえ、もう残らないとしたら、どうなるのか。主なる神は言われる。
21:14 人の子よ、お前は預言しろ。手を打ち合わせろ。剣を二度、三度と振るわせろ。それは人を殺す剣、大いなる虐殺の剣、彼らを取り囲んで襲う剣だ。
21:15 人々の心がくずおれ、多くの者が倒れるように、わたしは彼らのすべての門に、きらめく剣を向けた。ああ、それは稲妻のように光るよう作られ、虐殺のために抜き放たれている。
21:16 剣よ、右を切り払え、左に構えろ。刃の向く先はどこであろうと、切りかかれ。
21:17 わたしもまた、両手を打ち合わせ、怒りをおさめる。わたし、主が語ったのだ。」
21:18 そのとき、主の言葉がわたしにこう告げられた。
21:19 「人の子よ、二つの道を描け。バビロンの王の剣がやって来る道だ。二つの道は同じ国から出ている。都へ向かう道の分かれ目に、道しるべを立てろ。
21:20 剣が来るように、道を定めろ。剣がアンモン人の町ラバへ向かう道、そしてユダの、城壁に囲まれたエルサレムへ向かう道だ。
21:21 バビロンの王が二つの道の分かれ目、その分岐点に立ち、占いをするからだ。彼は矢を振り、占いの像にたずね、いけにえの肝臓を見て占う。
21:22 彼の右手に、エルサレムを指す占いの結果が出る。破城槌を据え、殺せと号令をかけ、鬨の声を上げ、城門に向けて破城槌を並べ、土塁を盛り、やぐらを築くためだ。
21:23 エルサレムの人々には、これは偽りの占いに見える。彼らは固く誓いを立てた者たちだからだ。だが主は、彼らの罪を思い起こさせ、彼らを捕らえる。
21:24 だから、主なる神はこう言われる。おまえたちは自分の罪を思い起こさせた。おまえたちの背きはあらわになり、行いのすべてに罪が現れている。こうして自分の罪を思い起こさせたのだから、おまえたちは敵の手に捕らえられる。
21:25 そしておまえ、イスラエルの君主よ。汚れた悪しき者よ。おまえの日が来た。最後の裁きの時が来たのだ。
21:26 主なる神はこう言われる。かぶり物を取り去り、王冠を外せ。もはや、今のままではいられない。低い者は高くされ、高い者は低くされる。
21:27 廃墟に、廃墟に、廃墟にしてやる。この国も、もう元には戻らない。それを治める正しい資格を持つ者が来るまで、そうなのだ。わたしはその者に、それを与える。
21:28 人の子よ、預言してこう言え。主なる神は、アンモン人と、彼らのあざけりについてこう言われる。剣だ、剣が抜き放たれた。虐殺のために磨かれ、いなずまのようにきらめくために研ぎ澄まされている。
21:29 おまえについて人々が見る幻は偽り、おまえに告げられる占いは嘘だ。それでもこの剣は、殺される悪しき者どもの首に振り下ろされる。その者たちの日が来た。最後の裁きの時が来たのだ。
21:30 剣をさやに納めよ。おまえが造られた場所で、おまえの生まれ故郷の地で、わたしはおまえを裁く。
21:31 わたしはおまえに向かって怒りを注ぎ、憤りの火をおまえに吹きつける。そしておまえを、荒々しい者たち、滅ぼすことに長けた者たちの手に渡す。
21:32 おまえは火のたきぎとなり、おまえの血はこの地に流される。おまえはもう、だれからも思い出されることはない。主であるわたしが、こう語ったのだ。」
22:1 主の言葉が、わたしに届いた。
22:2 「人の子よ、おまえは裁くのか。あの血を流す町を裁くのか。それなら、その町がしてきた忌まわしい行いを、すべてはっきり示してやれ。
22:3 そして言え。主なる神はこう言われる。町よ、おまえは自分の中で血を流し、自分の滅びの時を招いている。偶像を造って、自分を汚してきた。
22:4 おまえは、流したその血によって罪を負い、造ったその偶像によって身を汚した。こうしておまえは自分の終わりの日を早め、その年月を迎えたのだ。だからわたしは、おまえを国々のさげすみとし、すべての地の笑いものとする。
22:5 近い国も遠い国も、おまえをあざ笑う。汚れた名を負い、混乱に満ちた町よ。
22:6 見よ、イスラエルの指導者たちは、それぞれ自分の力にまかせて、おまえの中で血を流してきた。
22:7 彼らはおまえの中で、父や母を軽んじ、よそから来た人を虐げ、みなしごややもめを苦しめた。
22:8 おまえはわたしの聖なるものを見下し、わたしの安息日を汚した。
22:9 おまえの中には、人を陥れて血を流させる中傷者がいる。山の上で偶像への供え物を食べ、おまえの中で淫らなことをする者もいる。
22:10 おまえの中で、父の妻と寝て父を辱める者がいる。生理で汚れている女を犯す者もいる。
22:11 隣人の妻と忌まわしいことをする者、嫁を淫らに汚す者、父の娘である自分の姉妹を犯す者がいる。
22:12 おまえの中で、人は賄賂を受け取って血を流させる。利息や高い利を取り立て、隣人を脅して不正にもうけをむさぼる。そしておまえは、このわたしを忘れてしまった、と主なる神は言われる。
22:13 だから見よ、わたしは手を打ち鳴らす。おまえがやった不正なもうけと、おまえの中で流された血のせいだ。
22:14 わたしがおまえに手を下すその日、おまえの心は耐えられるだろうか。おまえの手は力を保てるだろうか。わたし主が語り、そしてその通りに行う。
22:15 わたしはおまえを国々の間に散らし、あちこちの地にまき散らす。そうして、おまえの汚れをおまえの中から取り除く。
22:16 おまえは国々の目の前で、自らを汚す。そして、わたしが主であることを知る。」
22:17 主の言葉がわたしに臨んだ。
22:18 人の子よ、イスラエルの家は、わたしにとってかすのようになった。彼らはみな、炉の中の銅、すず、鉄、鉛だ。銀を溶かしたあとに残るかすにすぎない。
22:19 だから、主なる神はこう言われる。おまえたちがみな、かすになってしまったので、見よ、わたしはおまえたちをエルサレムの中に集める。
22:20 人が銀、銅、鉄、鉛、すずを炉の中に集め、火を吹きつけて溶かすように、わたしは怒りと憤りをもっておまえたちを集める。そして、そこに置いて溶かす。
22:21 わたしはおまえたちを集め、わたしの怒りの火をおまえたちに吹きつける。すると、おまえたちはその中で溶ける。
22:22 銀が炉の中で溶けるように、おまえたちもその中で溶ける。そして、わたし主が、おまえたちに憤りを注いだことを知る。
22:23 主の言葉がわたしに臨んだ。
22:24 人の子よ、その地に言え。おまえは、清められていない地、怒りの日に雨も降らない地だ。
22:25 この地の預言者たちは、その中で徒党を組んでいる。獲物を引き裂いて吼えるライオンのようだ。彼らは人の魂を食い尽くし、宝や大切なものを奪い取り、多くの女を未亡人にした。
22:26 祭司たちは、わたしの律法を破り、わたしの聖なるものを汚した。聖なるものと俗なるものを区別せず、汚れたものと清いものの違いも教えなかった。わたしの安息日から目をそむけ、こうしてわたしは彼らの間で汚された。
22:27 高官たちは、その中で獲物を引き裂く狼のようだ。血を流し、人の魂を滅ぼし、不正な利益を得ようとしている。
22:28 預言者たちは、そんな彼らのために、しっくいを上塗りしてごまかしている。偽りの幻を見、うそを占って、「主なる神はこう言われる」と言う。でも、主は何も語ってはいない。
22:29 この地の民は、暴力で人をしいたげ、物を奪い取った。貧しい人や困っている人を苦しめ、寄留者を不当にしいたげた。
22:30 わたしは彼らの中に、石垣を築き直し、この地のために破れ口に立って、わたしの前に立ちはだかる者を探した。この地を滅ぼさずにすむようにするためだ。でも、見つからなかった。
22:31 だから、わたしは彼らに憤りを注ぎ、怒りの火で彼らを焼き尽くした。彼らの行いを、その頭の上に報いた。主なる神は言われる。
23:1 主の言葉がわたしに臨んだ。
23:2 人の子よ、二人の女がいた。同じ母から生まれた姉妹だ。
23:3 二人はエジプトで淫らなことをした。若いころから体を売っていた。そこで乳房を押さえつけられ、処女の胸をもてあそばれた。
23:4 姉の名はオホラ、妹の名はオホリバ。二人はわたしのものとなり、息子や娘を産んだ。その名は、オホラがサマリア、オホリバがエルサレムを指す。
23:5 オホラは、わたしのものでありながら淫らなことをし、恋人たちに夢中になった。すぐ近くにいるアッシリアの者たちだ。
23:6 彼らは青い衣を着た総督や司令官で、みな魅力的な若者、馬に乗った騎兵だった。
23:7 オホラは、選りすぐりのアッシリアの男たちみんなに身を任せた。夢中になった相手すべての偶像で、自分を汚したのだ。
23:8 エジプト時代から続く淫らな習わしも、捨てはしなかった。若い頃に彼らはオホラと寝て、処女の胸をもてあそび、その欲望を彼女に注ぎ込んだからだ。
23:9 だからわたしは、彼女を恋人たちの手に、つまり夢中になっていたアッシリアの者たちの手に渡した。
23:10 彼らはオホラの裸をあらわにし、息子や娘を奪い、剣で彼女を殺した。こうして彼女は女たちの語り草となり、彼らの裁きを受けたのだ。
23:11 妹のオホリバは、これをずっと見ていた。それなのに、姉よりもひどく欲望におぼれ、姉以上に淫らなことをした。
23:12 オホリバもアッシリアの者たちに夢中になった。すぐ近くにいる総督や司令官、立派に着飾った者たち、馬に乗った騎兵、みな魅力的な若者だった。
23:13 わたしは、この妹も身を汚したのを見た。二人とも同じ道を進んだのだ。
23:14 オホリバは、さらに淫らな行いを重ねた。壁に描かれた男たちを見たのだ。朱色で描かれたカルデア人の姿だった。
23:15 彼らは腰に帯を締め、頭にはゆったりとしたターバンを巻いていた。みな将校のような姿で、生まれ故郷カルデアのバビロニア人そっくりだった。
23:16 オホリバはそれを目にするなり夢中になり、カルデアにいる彼らのもとへ使者を送った。
23:17 するとバビロニア人が彼女のもとに来て、愛の床に入り、欲望で彼女を汚した。彼女は彼らに汚されたが、やがて嫌気がさして離れていった。
23:18 こうして彼女が淫らな行いをあらわにし、裸をさらけ出したので、わたしは彼女に嫌気がさして離れた。姉に嫌気がさして離れたのと同じだった。
23:19 それでも彼女は淫らな行いをますます重ね、エジプトの地で娼婦のように振る舞った若い日々を思い返した。
23:20 彼女は、ろばのような体を持ち、馬のように精を漏らす愛人たちに欲情した。
23:21 こうしてあなたは、若い日の淫らさを思い返した。エジプトで胸をまさぐられ、乳房を握られた、あの若い日々を。
23:22 だからオホリバよ、主なる神はこう言われる。「見よ、わたしはあなたが嫌気がさして離れた愛人たちを奮い立たせ、あなたに立ち向かわせる。四方から彼らをあなたのもとに連れて来る。
23:23 バビロニア人、すべてのカルデア人、ペコデ、ショア、コアの人々、それに彼らと共にすべてのアッシリア人だ。みな魅力的な若者で、総督や長官、名だたる戦士や名士たちであり、みな馬に乗る者たちだ。
23:24 彼らは武器と戦車と車輪、そして大勢の民を率いてあなたに攻めかかる。大盾と小盾と兜で四方からあなたを取り囲む。わたしは彼らに裁きをゆだね、彼らは自分たちのやり方であなたを裁く。
23:25 わたしはあなたに妬みの怒りを向ける。彼らは激しい怒りをもってあなたを扱い、あなたの鼻と耳を削ぎ落とす。生き残った者は剣に倒れる。彼らはあなたの息子や娘を連れ去り、残された者は火に焼き尽くされる。
23:26 彼らはあなたの衣を剥ぎ取り、美しい装身具を奪い去る。
23:27 こうしてわたしは、あなたの淫らさと、エジプトの地から持ち込んだ淫行を終わらせる。あなたはもう彼らに目を向けず、エジプトを思い出すこともなくなる。
23:28 主なる神はこう言われるからだ。「見よ、わたしはあなたを、あなたが憎む者たちの手に、嫌気がさして離れた者たちの手に渡す。
23:29 彼らは憎しみをもってあなたを扱い、あなたが働いて得たものをすべて奪い、あなたを丸裸のまま置き去りにする。こうしてあなたの淫らな裸があらわにされ、あなたの淫らさと淫行がさらけ出される。
23:30 あなたがこうした目に遭うのは、異国の民を追いかけて淫らな行いをし、彼らの偶像で身を汚したからだ。
23:31 あなたは姉と同じ道を歩んだ。だからわたしは、姉が飲んだ杯をあなたの手に握らせる。
23:32 主なる神はこう言われる。「あなたは姉の杯を飲む。深くて大きな杯だ。あなたは笑いものにされ、あざけられる。その杯にはたっぷり入っているからだ。
23:33 あなたは酔いと悲しみで満たされる。それは恐れと荒れ果てをもたらす杯、姉サマリアの杯だ。
23:34 あなたはそれを飲み干し、最後の一滴までしゃぶり尽くす。そのかけらを噛み砕き、自分の胸をかきむしる。わたしがこう語ったのだと、主なる神は言われる。」
23:35 だから主なる神はこう言われる。「あなたはわたしを忘れ、わたしを背後に投げ捨てた。だからあなた自身が、自分の淫らさと淫行の報いを負うのだ。」
23:36 主はわたしに言われた。「人の子よ、あなたはオホラとオホリバをさばくのか。それなら、彼女たちの忌まわしい行いを突きつけよ。
23:37 彼女たちは姦淫を犯し、その手は血にまみれている。偶像と姦淫を犯し、わたしに産んだ自分の子どもたちさえ、偶像に食わせるために火の中を通らせた。
23:38 それだけではない。彼女たちはわたしにこんなことまでした。同じ日にわたしの聖所を汚し、わたしの安息日をないがしろにした。
23:39 偶像のために自分の子どもたちをほふったその同じ日に、彼女たちはわたしの聖所に入って来て、そこを汚した。見よ、彼女たちはわたしの家の中でこんなことをしたのだ。
23:40 そればかりか、彼女たちは遠くから来る男たちを呼び寄せた。使者を送ると、男たちはやって来た。あなたはその男たちのために体を洗い、目に化粧をし、飾りを身につけた。
23:41 あなたは立派な寝台に座り、その前には食卓が整えられていた。そしてその上に、わたしの香とわたしの油を置いた。
23:42 彼女のそばには、のんきに騒ぐ群衆の声があった。大勢の民に加えて、荒れ野から連れて来られた酔っぱらいたちもいた。彼らは女たちの腕に腕輪をはめ、その頭に美しい冠をのせた。
23:43 わたしは、姦淫に疲れ果てたその女について言った。「今も彼らは彼女と姦淫にふけり、彼女も彼らと交わるのか。」
23:44 彼らは、遊女のもとへ通うように、彼女のもとへ通った。こうして彼らは、みだらな女オホラとオホリバのもとへ通ったのだ。
23:45 しかし、正しい人たちが彼女たちを裁く。姦淫を犯した女として、また血を流した女として裁くのだ。彼女たちは姦淫を犯し、その手を血に染めているからだ。
23:46 神である主はこう言われる。「彼女たちに対して群衆を呼び集めよ。彼女たちを恐怖と略奪に引き渡せ。
23:47 群衆は彼女たちを石で打ち、剣で切り倒す。その息子や娘たちを殺し、家々を火で焼き払う。
23:48 こうしてわたしは、この地からみだらな行いを断ち切る。すべての女はこれを見て思い知らされ、二度とあなたたちのようなみだらなことをしなくなる。
23:49 彼女たちはあなたたちのみだらな行いの報いを受け、偶像を拝んだ罪を負う。そのとき、あなたたちは、わたしが神である主であることを知る。」
24:1 第九年の十月十日、主の言葉がわたしに臨んだ。
24:2 「人の子よ、この日の名を、まさに今日という日を書き記せ。バビロンの王が、今日この日、エルサレムを包囲したからだ。
24:3 逆らってばかりのこの民に、たとえを語れ。彼らに言え。神である主はこう言われる。『鍋を火にかけよ。火にかけ、水を注ぎ入れよ。
24:4 肉の切れをその中に集め入れよ。良い切れをすべて、腿も肩も入れよ。えり抜きの骨で満たせ。
24:5 群れの中から最良の羊を取り、鍋の下に骨を積み上げよ。よく煮立たせ、その中で骨まで煮よ。』
24:6 だから、神である主はこう言われる。『わざわいだ、血を流す町。さびのついた鍋、そのさびが落ちない鍋よ。中身を一切れずつ取り出せ。くじを引くまでもない。
24:7 その町が流した血は、まだ町の中にある。むき出しの岩の上に置かれたままだ。土をかけて隠そうと、地面に流したわけではなかった。
24:8 わたしは怒りを燃え上がらせ、復讐するために、その血をむき出しの岩の上に置いた。決して隠されることがないように。
24:9 だから、神である主はこう言われる。わざわいだ、血を流す町。わたしも薪の山を大きく積み上げる。
24:10 薪をたくさん積み、火をおこせ。肉を煮尽くし、香辛料をよく効かせ、骨まで焦がせ。
24:11 それから、空になった鍋を炭火の上に置け。鍋が熱くなり、その銅が焼けて、中の汚れが溶け、こびりついたさびが焼き尽くされるようにするためだ。
24:12 だが、いくら手を尽くしても無駄だった。厚くこびりついたさびは、火にかけても落ちなかった。
24:13 お前の汚れには、恥ずべき淫らさがある。わたしはお前を清めようとしたのに、お前は清くならなかった。だから、わたしの怒りをお前に注ぎ尽くすまで、お前は二度と清くならない。
24:14 わたし主が語った。それは必ず起こる。わたしはそれを実行する。手を引くことも、惜しむことも、思い直すこともしない。お前のやり方と行いに応じて、お前は裁かれる。神である主がそう告げる。
24:15 主の言葉がわたしに臨んだ。
24:16 「人の子よ。わたしは、お前の目の喜びであるものを、一撃で取り去る。だが、お前は嘆いても泣いてもならない。涙を流してもならない。
24:17 声を出さずに、ただ静かにうめけ。死んだ者のために喪に服してはならない。頭には飾りの布を巻き、足には靴をはけ。口ひげを覆ってはならない。弔いのパンを食べてはならない。」
24:18 朝、わたしは人々に語った。すると夕方、わたしの妻が死んだ。次の朝、わたしは命じられたとおりにした。
24:19 すると人々がわたしに言った。「これがわたしたちにとって何を意味するのか、教えてくれないのか。あなたがこんなことをするのは、どういうわけなのか。」
24:20 わたしは彼らに答えた。「主の言葉がわたしに臨んで、こう言われた。
24:21 イスラエルの人々にこう告げよ。主なる神はこう言われる。『見よ、わたしは自分の聖所を汚す。そこはお前たちが誇りとする力、目の喜び、魂が慕い大切にしているものだ。そして、お前たちが後に残してきた息子や娘たちは、剣に倒れる。
24:22 そのときお前たちは、わたしがしたとおりにする。口ひげを覆わず、弔いのパンも食べない。
24:23 頭には飾りの布を巻き、足には靴をはいたままにする。嘆くことも泣くこともなく、自分の罪の中で衰え果て、互いにうめき合う。
24:24 こうしてエゼキエルはお前たちのしるしとなる。彼がしたとおりに、お前たちもする。それが起こるとき、お前たちは、わたしが主なる神であることを知る。』
24:25 人の子よ。わたしが彼らから、その砦、彼らの誇りと喜び、目の喜び、魂が慕うもの、そして息子や娘たちを取り去る日、
24:26 その日、逃げ延びた者がお前のもとに来て、それをお前の耳に知らせる。
24:27 その日、お前の口は開かれ、逃げ延びた者に語りかける。もう黙ったままではいられない。こうしてお前は彼らのしるしとなり、彼らは、わたしが主であることを知る。」
25:1 そして、主の言葉がわたしに臨んだ。
25:2 「人の子よ、アンモン人の方へ顔を向けて、彼らに預言しなさい。
25:3 アンモン人にこう言いなさい。神である主の言葉を聞け。神である主はこう言われる。わたしの聖所が汚されたとき、イスラエルの地が荒れ果てたとき、ユダの人々が捕らえられて連れ去られたとき、あなたは『ざまあみろ』と言った。
25:4 だから、わたしはあなたを東の国の人々に渡し、彼らのものとする。彼らはあなたの中に宿営を張り、住まいを設ける。あなたの実を食べ、あなたの乳を飲む。
25:5 わたしはラバを、らくだの牧場とし、アンモン人の地を羊の群れの休み場とする。そのとき、あなたがたは、わたしが主であることを知る。
25:6 神である主はこう言われる。あなたはイスラエルの地に向かって手をたたき、足を踏み鳴らし、魂の底から悪意をこめて喜んだ。
25:7 だから、わたしはあなたに手を伸ばし、あなたを国々の略奪品として渡す。あなたを諸国の民から断ち、国々から滅ぼし尽くす。わたしはあなたを消し去る。そのとき、あなたは、わたしが主であることを知る。
25:8 神である主はこう言われる。モアブとセイルは、『見ろ、ユダの家もほかのすべての国々と同じだ』と言った。
25:9 だから、わたしはモアブの側面を、その国境にある町々から切り開く。それは、その国の誉れであるベテ・エシモト、バアル・メオン、キルヤタイムだ。
25:10 わたしはこれを、アンモン人とともに、東の国の人々に渡し、彼らのものとする。こうしてアンモン人は、もう国々の中で思い起こされることはなくなる。
25:11 わたしはモアブにさばきを下す。そして彼らは、わたしが主であることを知る。
25:12 神である主はこう言われる。エドムはユダの家に復讐し、彼らに報復して、大きな罪を犯した。
25:13 だから、主なる神はこう言われる。「わたしはエドムに手を伸ばし、そこから人も動物も断ち滅ぼす。テマンからその地を廃墟にし、デダンの人々は剣に倒れる。
25:14 わたしは、わたしの民イスラエルの手によって、エドムに復讐する。彼らはわたしの怒りと憤りのままにエドムを罰する。こうして彼らはわたしの復讐を知る」と、主なる神は言われる。
25:15 主なる神はこう言われる。「ペリシテ人は復讐をした。心の底からの侮りをもって復讐し、長年の憎しみのままに滅ぼそうとした。
25:16 だから、主なる神はこう言われる。「見よ、わたしはペリシテ人に手を伸ばす。ケレテ人を断ち滅ぼし、海辺に残った者たちを消し去る。
25:17 わたしは激しい怒りの罰をもって、彼らに大いなる復讐をする。わたしが彼らに復讐するとき、彼らはわたしが主であることを知る。」
26:1 第十一年の、その月の一日に、主の言葉がわたしに臨んだ。
26:2 「人の子よ、ティルスはエルサレムについてこう言った。『ざまあみろ。もろもろの民の門は破られた。今やそれはわたしのものになる。あの町が廃墟になったから、わたしは栄える』。
26:3 だから、主なる神はこう言われる。「ティルスよ、見よ、わたしはお前に立ち向かう。海がその波を打ち寄せるように、わたしは多くの国々をお前に攻め上らせる。
26:4 彼らはティルスの城壁を壊し、その塔を打ち倒す。わたしはその土くれまで削り取り、むき出しの岩にする。
26:5 ティルスは海の真ん中で、網を広げて干す場所となる。わたしがこう語ったのだと、主なる神は言われる。ティルスは国々の略奪の的となる。
26:6 本土にあるその周りの町々の人々は、剣で殺される。こうして彼らはわたしが主であることを知る。」
26:7 主なる神はこう言われる。「見よ、わたしはティルスに、バビロンの王ネブカドネツァルを北から攻め上らせる。彼は王の中の王だ。馬と戦車と騎兵、そして大勢の軍勢を率いてやって来る。
26:8 彼は本土にあるお前の周りの町々の人々を、剣で殺す。そしてお前に向けて攻めの塁を築き、土の坂を盛り上げ、大盾をかざして迫る。
26:9 彼はお前の城壁に破城槌を打ち込み、その塔を斧で打ち壊す。
26:10 おびただしい数の馬が巻き上げる砂ぼこりが、お前を覆いつくす。彼が破られた町に入り込むように、お前の城門へと攻め込むとき、騎兵と車輪と戦車の響きで、お前の城壁は揺れ動く。
26:11 彼は馬のひづめで、お前の通りをすべて踏みにじる。お前の民を剣で殺し、お前が誇る石の柱を地に倒す。
26:12 彼らはお前の財産を奪い、商品を略奪する。城壁を打ち壊し、立派な家々を取り壊す。そして石も木材も土くれも、みな海の中に投げ込む。
26:13 わたしはお前の歌のざわめきをやめさせる。竪琴の音も、二度と聞こえなくなる。
26:14 わたしはお前を、むき出しの岩にする。お前は網を広げて干す場所となり、二度と建て直されることはない。わたし主がこう語ったのだと、主なる神は言われる。
26:15 主なる神はティルスにこう言われる。お前が倒れる音で、傷ついた者がうめき、お前の中で虐殺が起こるとき、島々は震えないだろうか。
26:16 そのとき、海の君主たちは皆、王座から降り、上着を脱ぎ、刺繍の衣を脱ぎ捨てる。彼らは恐れに包まれ、地に座り込み、絶え間なく震えて、お前の姿にぼう然とする。
26:17 彼らはお前のために嘆きの歌を歌い、こう言う。「ああ、お前は滅びてしまった。海に生きる者たちでにぎわい、名高かった町よ。海の上で強大さを誇り、その住民とともに、周りに住むすべての者を恐れさせたお前が。
26:18 今や、お前が倒れる日に、島々は震え上がる。海にある島々は、お前の最期におびえる。」
26:19 主なる神はこう言われる。「わたしがお前を、人の住まない町々のように廃墟の町とし、深い海の水をお前の上にあふれさせ、大水でお前を覆うとき、
26:20 わたしはお前を、穴へ下って行く者たちとともに、はるか昔の人々のもとへ引き下ろす。そして、大昔から廃墟となった地、地の底に、穴へ下る者たちとともにお前を住まわせる。もう二度と、お前に人が住むことはない。しかしわたしは、生きている者たちの地に栄光を置く。
26:21 わたしはお前を、恐ろしい終わりに至らせる。お前はもう存在しなくなる。人々がお前を捜しても、永遠に、二度と見つけることはない」と主なる神は言われる。
27:1 主の言葉がわたしに臨んだ。
27:2 「人の子よ、お前はティルスのために嘆きの歌を歌い、
27:3 海の入り口に座り、多くの島々の民と交易する町、ティルスにこう告げよ。主なる神はこう言われる。ティルスよ、お前は『わたしは完璧なほど美しい』と言った。
27:4 お前の領土は海の真ん中にあり、お前を築いた者たちは、お前の美しさを完璧に仕上げた。
27:5 彼らはセニルのもみの木で、お前の船板をすべて造った。レバノンから杉を取ってきて、お前の帆柱を造った。
27:6 バシャンの樫の木で、お前の櫂を造った。キプロスの島々から運んだ木に象牙をはめ込んで、お前の甲板を造った。
27:7 お前の帆は、エジプトの色鮮やかな刺繍入りの上等な亜麻布で、それがお前の旗印だった。お前を覆う天幕は、エリシャの島々から来た青と紫の布だった。
27:8 シドンとアルワドの住民が、お前の漕ぎ手だった。ティルスよ、お前の中にいる熟練した者たちが、お前の船を操る者だった。
27:9 ゲバルの長老たちとその熟練した職人が、お前の中にいて、船の割れ目を修理していた。海のすべての船とその船乗りたちが、お前のもとに集まり、お前の商品を取り引きした。
27:10 ペルシア、ルド、プトの兵士たちが、お前の軍隊に加わり、お前のために戦った。彼らはお前の中に盾とかぶとを掛け、お前を輝かせた。
27:11 アルワドの人々とお前の軍勢が、お前の城壁の周りを固め、勇敢な戦士たちがお前の塔の上にいた。彼らはお前の城壁の周りに盾を掛け、お前の美しさを完璧に仕上げた。
27:12 タルシシュは、お前がありとあらゆる豊かな品を持っていたので、お前と取り引きした。銀、鉄、すず、鉛を差し出して、お前の商品を買った。
27:13 ヤワン、トバル、メシェクも、お前と商売をした。彼らは人間そのものと青銅の器を差し出して、お前の商品を手に入れた。
27:14 ベト・トガルマからは、馬、軍馬、らばを差し出して、お前の商品を買った。
27:15 デダンの人々も、お前と商売をした。多くの島々がお前の取引相手で、彼らは象牙と黒檀を、代金として持ってきた。
27:16 アラムは、お前が数多くの品を作っていたので、お前と取り引きした。トルコ石、紫の布、刺繍入りの布、上等な亜麻布、さんご、ルビーを差し出して、お前の商品を買った。
27:17 ユダとイスラエルの地も、お前と商売をした。彼らはミニトの小麦、きび、蜜、油、香油を差し出して、お前の商品を手に入れた。
27:18 ダマスコは、お前が数多くの品を作り、ありとあらゆる豊かな品を持っていたので、お前と取り引きした。ヘルボンのぶどう酒と真っ白な羊毛を差し出した。
27:19 ダンとヤワンは、加工した鉄を差し出して、お前の商品を買った。ウザルからも、加工した鉄、桂皮、菖蒲がお前の市場に運ばれた。
27:20 デダンは、鞍にかける上等な布でお前と商売をした。
27:21 アラビアとケダルの首長たちも、みなお前と取り引きした。彼らは子羊、雄羊、雄やぎを差し出して、お前と商売をした。
27:22 シェバとラマの商人も、お前と商売をした。彼らは最高級の香料、あらゆる宝石、金を差し出して、お前の商品を買った。
27:23 ハラン、カネ、エデン、シェバの商人、アシュル、キルマドも、お前と商売をした。
27:24 彼らは、お前の市場で、上等な衣、青い布、刺繍入りの布、色とりどりの織物のじゅうたんを、綱でしっかり束ねて差し出し、お前と取り引きした。
27:25 タルシシュの船が、お前の商品を運んだ。こうしてお前は海のただ中で、荷を満載し、この上なく栄えた。
27:26 だが、こぎ手たちがお前を大海原へ連れ出したとき、東からの風がお前を海のただ中で打ち砕いた。
27:27 お前の財産も、商品も、荷も、船乗りも、水先案内人も、船の修理をする者も、商いをする者も、お前の中にいる兵士も、乗り組んでいた者みんなも、お前が滅びる日に、海のただ中へ沈んでいく。
27:28 水先案内人たちの叫び声に、周りの土地は揺れ動く。
27:29 櫂を操る者も、船乗りも、海の水先案内人もみな、船から降りて陸に立つ。
27:30 そしてお前のことで声をあげ、激しく泣き叫ぶ。頭にちりをかぶり、灰の中を転げ回る。
27:31 お前のために髪をそり落とし、荒布を身にまとう。そしてお前のために、心を痛めて泣き、激しく嘆き悲しむ。
27:32 泣きながら、お前のために哀しみの歌を口にし、お前を嘆いて言う。「ティルスのような町が、ほかにあっただろうか。海のただ中で、今は滅び去ってしまった町よ」と。
27:33 お前の商品が海を越えて出て行ったとき、お前は多くの民を満たした。あふれるほどの富と商品で、地の王たちを豊かにした。
27:34 だが今、お前は海に打ち砕かれ、深い水の底に沈んだ。お前の商品も、乗っていた者たちもみな、お前と共に沈んでいった。
27:35 島々に住む人々はみな、お前のありさまに青ざめる。その王たちは恐れおののき、顔をひきつらせる。
27:36 諸国の商人たちは、お前を見て口笛を鳴らす。お前は恐怖の的となり、永遠に消え去ってしまった。
28:1 主の言葉がわたしに臨んだ。
28:2 「人の子よ、ティルスの君主に言え。主なる神はこう言われる。お前は心が高ぶって、『わたしは神だ。海の真ん中で、神の座に座っている』と言った。だがお前は人であって、神ではない。それなのに、自分の心を神の心のように思い上がらせている。
28:3 見よ、確かにお前はダニエルよりも知恵がある。どんな秘密も、お前には隠されていない。
28:4 お前は自分の知恵と賢さで富を築き、金や銀を蔵に蓄えてきた。
28:5 豊かな知恵と商売で富を増やし、その富ゆえに心が高ぶった。
28:6 だから、主なる神はこう言われる。お前が自分の心を神の心のように思い上がらせたので、
28:7 だから、わたしは異国の者、諸国のうちでも残忍な者たちをお前に向かわせる。彼らは剣を抜き、お前が誇る美しい知恵に切りかかり、お前の輝きを汚す。
28:8 彼らはお前を墓穴へ引きずり降ろす。お前は海の真ん中で、殺された者のように無残に死ぬ。
28:9 それでもお前は、自分を殺す者の前で「わたしは神だ」と言えるのか。お前を殺す者の手にかかれば、お前は神ではなく、ただの人間にすぎない。
28:10 お前は異国の者の手で、割礼のない者のように死ぬ。わたしがこう言ったのだ、と主なる神は言われる。
28:11 主の言葉がわたしに臨んだ。
28:12 人の子よ、ティルスの王のために嘆きの歌をうたい、彼にこう告げよ。主なる神はこう言われる。お前は完全さを刻んだ印のような者、知恵に満ち、美しさの極みだった。
28:13 お前は神の園であるエデンにいた。あらゆる宝石がお前を覆っていた。ルビー、トパーズ、ダイヤモンド、緑柱石、しまめのう、碧玉、サファイア、トルコ石、エメラルド、そして金。お前のために作られた飾りや彫り込みは、お前が造られた日に整えられていた。
28:14 お前は油を注がれた守護者、翼を広げるケルビムだった。わたしがお前をそうしたのだ。お前は神の聖なる山にいて、燃える石の間を歩いていた。
28:15 お前が造られた日から、お前の歩みには非の打ちどころがなかった。だが、ついにお前の中に不正が見つかった。
28:16 商売が盛んになるにつれ、お前の内側は暴虐で満ちていき、お前は罪を犯した。だからわたしは、お前を汚れた者として神の山から追い出し、燃える石の間から、守護者ケルビムであるお前を滅ぼした。
28:17 お前は自分の美しさに心が高ぶり、その輝きのために知恵を台無しにした。だからわたしはお前を地に投げ落とし、王たちの前にさらして見せ物にした。
28:18 数えきれない罪と、不正な商売によって、お前は自分の聖所を汚した。だからわたしは、お前の中から火を出させた。その火はお前を焼き尽くし、見ている者すべての目の前で、お前を地の上の灰にした。
28:19 諸国の民の中でお前を知る者は皆、お前を見て驚き恐れる。お前は恐怖の的となり、永遠に消え去ってしまう。
28:20 主の言葉がわたしに届いた。
28:21 「人の子よ、シドンに顔を向けて、その町に向けて預言せよ。
28:22 そして言え。主なる神はこう言われる。『シドンよ、わたしはお前に立ち向かう。わたしはお前の中で栄光を現す。わたしがお前を裁き、お前の中で聖なる者として現れるとき、人々はわたしが主であることを知る。
28:23 わたしはこの町に疫病を送り、その通りに血を流させる。剣が四方から襲いかかり、倒れた者が町の中に倒れる。そのとき彼らは、わたしが主であることを知る。
28:24 もうイスラエルの家にとって、刺すいばらや痛みを与えるとげが、周りにいて彼らを見下す者たちの中から出てくることはない。そのとき彼らは、わたしが主なる神であることを知る。
28:25 主なる神はこう言われる。わたしがイスラエルの家を、散らされていた諸国の民の中から集め、諸国の民の目の前で、彼らを通して聖なる者として現れるとき、彼らは、わたしがしもべヤコブに与えた自分たちの土地に住むようになる。
28:26 彼らはそこに安心して住み、家を建て、ぶどう畑を作る。周りにいて彼らを見下す者すべてをわたしが裁くとき、彼らは安心して暮らす。そして彼らは、わたしが彼らの神、主であることを知る。
29:1 第十年の十月十二日、主の言葉がわたしにこう告げられた。
29:2 「人の子よ、エジプトの王ファラオに顔を向けなさい。そして彼と、エジプト全体に向けて預言しなさい。
29:3 こう伝えるのだ。主なる神はこう言われる。エジプトの王ファラオよ、わたしはお前に立ち向かう。お前は、自分のいくつもの川の中に横たわる大きな怪物だ。お前はこう言った。『この川はわたしのものだ。わたしが自分のために造ったのだ』と。
29:4 だが、わたしはお前のあごに鉤（かぎ）をかける。お前の川の魚たちを、お前のうろこにぴたりとくっつける。そしてお前を川の中から引きずり上げる。うろこにくっついた川の魚もろとも引き上げるのだ。
29:5 わたしはお前を荒れ野に投げ捨てる。お前も、お前の川の魚たちもすべてだ。お前は野原に倒れたまま、集められることも、拾い上げられることもない。わたしはお前を、地の獣と空の鳥のえさにする。
29:6 そうすればエジプトに住む者は皆、わたしが主であることを知る。彼らはイスラエルの民にとって、葦（あし）でできた頼りない杖にすぎなかった。
29:7 彼らがお前を手でつかむと、お前は折れて、彼らの肩をすべて引き裂いた。彼らがお前に寄りかかると、お前は砕けて、彼らの腰をすべてぐらつかせた。
29:8 だから、主なる神はこう言われる。見よ、わたしはお前に剣を送り、お前のところから人も家畜も断ち切る。
29:9 こうしてエジプトの地は荒れ果て、廃墟となる。そして人々は、わたしが主であることを知る。お前が『この川はわたしのものだ。わたしが造ったのだ』と言ったからだ。
29:10 だから、わたしはお前とお前の川に立ち向かう。エジプトの地を、ミグドルからアスワン、さらにクシュとの境まで、まるごと廃墟にし、荒れ果てさせる。
29:11 そこには人の足も通らず、家畜の足も通らない。四十年の間、人が住むことはない。
29:12 わたしはエジプトの地を、荒れ果てた国々の中でも最も荒れた地とする。その町々は、廃墟となった町々の中で、四十年の間、荒れ果てたままになる。わたしはエジプト人をあちこちの民の中に散らし、さまざまな国へまき散らす。
29:13 主なる神はこう言われる。四十年が終わると、わたしはエジプト人を、彼らが散らされていた民の中から集める。
29:14 わたしはエジプトを元の姿に戻し、彼らを故郷であるパトロスの地に連れ帰る。そこで彼らは、小さく弱い国となる。
29:15 その国は、どの国よりも低い立場に置かれ、もう二度と、ほかの国々の上に立って威張ることはない。わたしが彼らを小さくするので、もう他の民を支配することはできない。
29:16 エジプトは、もう二度とイスラエルの人々が頼りにする相手ではなくなる。かつてイスラエルはエジプトに頼ろうと振り向いたが、それは自分たちの罪を思い起こさせるものだった。こうして彼らは、わたしが主なる神であることを知る。」
29:17 第二十七年の第一の月の一日、主の言葉がわたしに臨んだ。
29:18 人の子よ。バビロンの王ネブカドネツァルは、その軍隊にツロを攻める大変な仕事をさせた。兵士たちの頭はどれもすり切れて禿げ、肩はどれもすり傷だらけになった。それでも王も軍隊も、ツロを攻めたその働きに見合う報酬を、ツロから何も得られなかった。
29:19 だから、主なる神はこう言われる。見よ、わたしはエジプトの地をバビロンの王ネブカドネツァルに与える。彼はエジプトの富を運び去り、そのものを奪い、略奪する。それが彼の軍隊への報酬となる。
29:20 彼が働いた働きの報いとして、わたしはエジプトの地を彼に与えた。彼らはわたしのために働いたのだから、と主なる神は言われる。
29:21 その日、わたしはイスラエルの人々のために一つの角を芽生えさせる。そしてあなたには、彼らの中で語る口を開かせる。こうして彼らは、わたしが主であることを知る。
30:1 そのとき、主の言葉がわたしにこう告げられた。
30:2 「人の子よ、預言してこう言え。主なる神はこう言われる。泣き叫べ。『ああ、その日が来る』と。
30:3 その日が近い。主の日が近づいている。それは雲におおわれた日、諸国の民にさばきが下る時だ。
30:4 剣がエジプトを襲う。エジプトで人々が倒れるとき、クシュは激しい恐怖に襲われる。エジプトの民は連れ去られ、その土台は壊される。
30:5 クシュ、プト、ルド、各地から集まった人々、クブ、そして同盟を結んだ国の人々も、彼らとともに剣に倒れる。
30:6 主はこう言われる。エジプトを支えていた者たちは倒れ、誇っていた力は崩れ落ちる。ミグドルからセベネまで、人々は剣に倒れる。主なる神がそう告げる。
30:7 エジプトは、荒れ果てた国々の中でいちばん荒れ果て、その町々は廃墟となった町々の中に並ぶ。
30:8 わたしがエジプトに火を放ち、それを助ける者たちがみな打ち砕かれるとき、彼らはわたしが主であることを知る。
30:9 その日、わたしのもとから使者たちが船で出て行き、安心しきっているクシュをおびえさせる。エジプトが滅ぶその日、彼らは激しい恐怖に襲われる。見よ、それは必ず来る。
30:10 主なる神はこう言われる。わたしはバビロンの王ネブカドネツァルの手によって、エジプトの大勢の民を消し去る。
30:11 彼とその軍勢、諸国の中で最も残忍な者たちが、この地を滅ぼすために連れて来られる。彼らはエジプトに向かって剣を抜き、この地を殺された者たちで満たす。
30:12 わたしはナイルの流れを干上がらせ、この地を悪い者たちの手に売り渡す。よそ者たちの手によって、この地とそこにあるすべてを荒れ果てさせる。わたし主が語った。
30:13 主なる神はこう言われる。わたしは偶像を滅ぼし、メンフィスから神々の像を消し去る。エジプトの地には、もう君主はいなくなる。わたしはエジプトの地に恐れを送り込む。
30:14 わたしはパトロスを荒れ果てさせ、ツォアンに火を放つ。テーベにさばきを下す。
30:15 わたしはエジプトの守りの要であるペルシウムに、わたしの怒りを注ぐ。そしてテーベの大勢の民を断ち切る。
30:16 わたしはエジプトに火を放つ。ペルシウムは苦しみもだえ、テーベは破り開かれ、メンフィスは日中に敵に襲われる。
30:17 オンとピ・ベセトの若者たちは剣に倒れ、それらの町は捕らわれて連れて行かれる。
30:18 タフパンヘスでは、わたしがそこでエジプトのくびきを砕くとき、日は暗くなる。エジプトの誇る力はうせ、雲がこれをおおう。その周りの町々は捕らわれて連れて行かれる。
30:19 このように、わたしはエジプトにさばきを下す。そのとき彼らは、わたしが主であることを知る。」
30:20 第十一年の第一の月の七日、主の言葉がわたしに臨んだ。
30:21 「人の子よ、わたしはエジプトの王ファラオの腕を折った。見よ、その腕は治るように手当てされず、包帯を巻いて固定されることもない。剣を握れるほど強くされることもない。
30:22 だから、主なる神はこう言われる。見よ、わたしはエジプトの王ファラオに立ち向かう。その両腕を、丈夫なほうも、すでに折れたほうも折る。そして彼の手から剣を打ち落とす。
30:23 わたしはエジプトの人々を諸国の間に散らし、国々の中にまき散らす。
30:24 わたしはバビロンの王の腕を強くし、わたしの剣を彼の手に握らせる。しかしファラオの腕は折る。ファラオは、致命傷を負った者のように、彼の前でうめき苦しむ。
30:25 わたしはバビロンの王の腕を強くする。だがファラオの腕は力を失う。わたしがわたしの剣をバビロンの王の手に握らせ、彼がそれをエジプトの地に向けて振りかざすとき、人々は、わたしが主であることを知る。
30:26 わたしはエジプトの人々を諸国の間に散らし、国々の中にまき散らす。そのとき彼らは、わたしが主であることを知る。」
31:1 第十一年の三月一日、主の言葉がわたしに臨んだ。
31:2 人の子よ、エジプトの王ファラオと、その大勢の民にこう言いなさい。おまえは、その偉大さにおいて、いったい誰に似ているというのか。
31:3 見よ、アッシリアはレバノンの杉であった。枝は美しく、こんもりと木陰を作り、丈は高く、そのこずえは雲間にまで届いていた。
31:4 水がこの木を育て、深い淵がそれを高くそびえさせた。淵の流れは、木の植えられた周りをめぐり、その水路を野のすべての木々にまで送り出していた。
31:5 こうしてこの木の丈は、野のどの木よりも高くなった。豊かな水を受けて枝を伸ばし、大枝は数を増し、小枝は長く伸びていった。
31:6 その大枝には、空のあらゆる鳥が巣を作り、その枝の下では、野のあらゆる獣が子を産んだ。そしてその木陰には、大きな国々のすべてが住んでいた。
31:7 その大きさと、長く伸びた枝ゆえに、この木は美しかった。その根が豊かな水にまで届いていたからだ。
31:8 神の園の杉の木々も、この木にはかなわなかった。糸杉もその大枝には及ばず、すずかけの木もその枝には並ばなかった。神の園のどんな木も、その美しさでこの木に並ぶものはなかった。
31:9 わたしが、たくさんの枝でこの木を美しく造った。だから、神の園にあるエデンの木々はみな、この木をうらやんだ。
31:10 だから、主なる神はこう言う。この木は丈高くそびえ立ち、そのこずえを厚い雲の間にまで伸ばした。そして高くなったことで、心もおごり高ぶった。
31:11 だからわたしは、この木を諸国の権力者の手に渡した。その者は、この木の悪にふさわしく、必ず罰を下す。わたしはこの木を追い払った。
31:12 異国の者たち、諸国の中でも最も残忍な者たちが、この木を切り倒して捨てた。その枝は山々やすべての谷に落ち、大枝は地のすべての谷間で折れ砕けた。地のすべての民は、その木陰から去っていった。こうしてこの木は見捨てられた。
31:13 倒れたその幹の上には、空のあらゆる鳥がとまり、その枝の間には、野のあらゆる獣が住みついた。
31:14 これは、水辺に立つどんな木も、二度と丈高くそびえたり、そのこずえを厚い雲の間にまで伸ばしたりしないためだ。水を吸って育つ木々が、その高さを誇って立ち続けることのないためだ。彼らはみな死に定められ、穴へと下る人々とともに、地の底、人の子らの中へと落とされるのだから。
31:15 主なる神はこう言う。この木が死者の国へ下った日、わたしは嘆きを起こさせた。この木のために深い淵をおおい、その流れをせき止め、豊かな水を押しとどめた。この木のためにレバノンを暗く覆い、野のすべての木々をしおれさせた。
31:16 この木が倒れる音で、わたしは諸国を震え上がらせた。穴へと下る者たちとともに、この木を死者の国へ落としたときのことだ。すると、エデンの木々、レバノンのえり抜きの良い木々、水を吸って育つすべての木々が、地の底で慰められた。
31:17 それらの木もこの木とともに、剣で殺された者たちのいる死者の国へ下った。この木の腕となり、諸国の中でその木陰に住んでいた者たちも、いっしょに下った。
31:18 エデンの木々の中で、栄光と大きさにおいて、お前はいったい誰に似ているというのか。それほどの木であったお前も、エデンの木々とともに地の底へ落とされる。そして、剣で殺された者たちとともに、割礼を受けていない者たちの中に横たわるのだ。これがファラオと、その大群のことだ、と主なる神は言う。
32:1 第十二年の第十二の月の一日、主の言葉がわたしに臨んだ。
32:2 「人の子よ、エジプトの王ファラオのために嘆きの歌を歌い、彼にこう言いなさい。『お前は自分を国々の若い獅子だと思っていた。だが本当は、海の中の怪物だ。お前は川の中で暴れ、足で水をかき乱し、その流れを濁らせた。』
32:3 主なる神はこう言われる。『わたしは多くの民の群れを使って、お前の上にわたしの網を投げる。彼らはその網でお前を引き上げる。
32:4 わたしはお前を地に投げ捨て、野原に放り出す。そして空の鳥をみなお前の上にとまらせ、地のあらゆる獣をお前の肉で満腹にさせる。
32:5 わたしはお前の肉を山々にまき散らし、谷をお前の死骸で満たす。
32:6 わたしはお前の血で地を潤し、それを山々にまで届かせる。谷川もお前の血でいっぱいになる。
32:7 お前の命を消すとき、わたしは天を覆い、星々を暗くする。太陽を雲で覆い、月もその光を放たなくする。
32:8 天に輝く光をみな、お前の上で暗くし、お前の地を闇で覆う』と主なる神は言われる。
32:9 『わたしがお前の滅びを国々に伝え、お前の知らない土地にまで知らせるとき、多くの民の心を揺さぶる。
32:10 わたしのせいで、多くの民はお前を見て震え上がる。わたしが彼らの前で剣を振りかざすとき、王たちも恐怖に身をすくませる。お前が倒れるその日、彼らは一時も落ち着けず、それぞれ自分の命を思って震える。
32:11 主なる神はこう言われる。『バビロンの王の剣が、お前に襲いかかる。
32:12 わたしは勇士たちの剣によって、お前の大群を倒す。彼らはみな、国々の中で最も残忍な者たちだ。彼らはエジプトの誇りを打ち砕き、その大群はことごとく滅ぼされる。』
32:13 わたしは、豊かな水のほとりにいる家畜をすべて滅ぼす。もう人の足がその水をかき乱すことはなく、家畜のひづめが濁らせることもない。
32:14 そのとき、わたしはその水を澄ませ、川を油のように静かに流れさせる。主なる神はこう告げる。
32:15 わたしがエジプトの地を荒れ果てさせ、その地を満たすものをすべて奪い、そこに住む者を残らず打つとき、彼らはわたしが主であることを知る。
32:16 これは嘆きの歌だ。人々はこれを歌って嘆く。国々の娘たちがこれを歌い、エジプトとそのすべての大群のために嘆き悲しむ。主なる神はこう告げる。
32:17 第十二年の、その月の十五日、主の言葉がわたしに臨んだ。
32:18 人の子よ、エジプトの大群のために嘆け。エジプトを、力ある国々の娘たちとともに、地の底、墓穴に下る者たちのもとへ引き下ろせ。
32:19 お前は誰よりも美しいとでもいうのか。下って行け。そして、割礼を受けていない者たちとともに横たわれ。
32:20 彼らは剣で殺された者たちの中に倒れる。剣はすでに渡されている。エジプトとそのすべての大群を引きずり出せ。
32:21 力ある勇士たちが、死者の国の中からエジプトとその味方に語りかける。『あいつらも下って来た。割礼を受けていない者として、剣で殺された者として、横たわっている。』
32:22 そこにはアッシリアと、そのすべての軍勢がいる。彼らの墓はその周りにある。みな剣に倒れて殺された者たちだ。
32:23 その墓は穴の奥深くに設けられ、軍勢は墓の周りに横たわる。みな剣に倒れて殺された者たちだ。かつて生きている者たちの地に恐怖をまき散らした者たちだ。
32:24 そこにはエラムと、そのすべての大群がいて、墓の周りに横たわる。みな剣に倒れて殺された者たちだ。彼らは割礼を受けていない者として地の底へ下った。かつて生きている者たちの地に恐怖をまき散らしたが、今は墓穴へ下る者たちとともに、その恥を負っている。
32:25 殺された者たちの中に、エラムとそのすべての大群のために寝床が設けられた。墓は彼の周りにある。みな割礼を受けていない者で、剣に倒れて殺された者たちだ。かつて生きている者たちの地に恐怖をまき散らしたので、今は墓穴へ下る者たちとともに、その恥を負っている。こうしてエラムは、殺された者たちの中に置かれている。
32:26 そこにはメシェクとトバル、そしてそのすべての大群がいる。墓は彼らの周りにある。みな割礼を受けていない者で、剣に倒れて殺された者たちだ。かつて生きている者たちの地に恐怖をまき散らした者たちだ。
32:27 彼らは、割礼を受けていない者のうち倒れた勇士たちとともには横たわらない。その勇士たちは武器を携えて陰府へ下り、剣を頭の下に置かれた。だが、その罪は自らの骨の上にのしかかっている。生きている者たちの地で、人々に恐れられた勇士たちだったからだ。
32:28 だがあなたも、割礼を受けていない者たちの中で打ち砕かれ、剣に倒れて殺された者たちとともに横たわる。
32:29 そこにはエドムと、その王たち、すべての君主たちがいる。彼らは力があったのに、剣に倒れて殺された者たちとともに横たえられた。割礼を受けていない者たちや、墓穴へ下る者たちとともに横たわっている。
32:30 そこには北の君主たちがみないて、すべてのシドン人もいる。彼らは殺された者たちとともに下った。かつては力で恐怖を与えたのに、今は恥を受けている。割礼を受けていない者として、剣に倒れて殺された者たちとともに横たわり、墓穴へ下る者たちとともにその恥を負っている。
32:31 ファラオは彼らを見て、自分のすべての大群のことで慰められる。剣に倒れて殺されたファラオと、そのすべての軍勢だ、と主なる神は言われる。
32:32 わたしが生きている者たちの地に恐怖をまき散らしたからだ。ファラオとそのすべての大群は、割礼を受けていない者たちの中に、剣に倒れて殺された者たちとともに横たえられる、と主なる神は言われる。
33:1 そのとき、主の言葉がわたしにこう告げられた。
33:2 「人の子よ、あなたの同胞に語り、こう伝えなさい。わたしがある国に剣を送るとき、その国の人々は自分たちの中から一人を選び、見張りに立てるとする。
33:3 その見張りが、剣がこの国に迫って来るのを見て、角笛を吹き、人々に警告したとする。
33:4 その角笛の音を聞いても警告に従わない者がいて、剣が来てその命を奪ったなら、その死の責任は本人にある。
33:5 角笛の音を聞いたのに警告に従わなかったのだから、その死の責任は本人にある。だが、警告に従っていれば、自分の命を救えたはずだ。
33:6 しかし、見張りが剣の迫って来るのを見ながら角笛を吹かず、人々が警告を受けられなかったとする。そして剣が来て、その中の一人の命が奪われたなら、その人は自分の罪のために死ぬ。だが、わたしはその死の責任を見張りに問う。
33:7 人の子よ、わたしはあなたをイスラエルの家の見張りに立てた。だから、わたしの口から出る言葉を聞いたら、わたしに代わって彼らに警告しなさい。
33:8 わたしが悪い者に『悪い者よ、あなたは必ず死ぬ』と言うとき、あなたがその生き方を改めるよう警告しなかったなら、その悪い者は自分の罪のために死ぬ。しかし、わたしはその死の責任をあなたに問う。
33:9 だが、あなたが悪い者に、その生き方を捨てて立ち帰るよう警告したのに、その人が生き方を改めなかったなら、その人は自分の罪のために死ぬ。しかし、あなたは自分の命を救ったことになる。
33:10 人の子よ、イスラエルの家に言いなさい。あなたがたはこう言っている。『わたしたちの背きと罪はわたしたちの上にのしかかり、わたしたちはそのために衰えていく。どうして生きられるだろうか』と。
33:11 彼らにこう言いなさい。主なる神は言われる。わたしは生きている。わたしは悪い者が死ぬことを望まない。むしろ、悪い者がその生き方を改めて生きることを望む。立ち帰れ、立ち帰れ、あなたがたの悪い生き方から。イスラエルの家よ、どうして死のうとするのか。
33:12 人の子よ、あなたの同胞に言いなさい。正しい人であっても、背きを犯した日には、それまでの正しさが彼を救うことはない。悪い者であっても、悪から立ち帰った日には、その悪につまずくことはない。正しい人も、罪を犯した日には、それまでの正しさによって生きることはできない。
33:13 わたしが正しい人に『あなたは必ず生きる』と言っても、その人が自分の正しさに頼って悪を行うなら、それまでの正しい行いはどれも思い出されることはない。犯したその悪のために、その人は死ぬ。
33:14 また、わたしが悪い者に『あなたは必ず死ぬ』と言っても、その人が罪から立ち帰り、公正で正しいことを行うなら――
33:15 質に取ったものを返し、奪ったものを償い、命を与える掟に従って歩み、悪を行わないなら、その人は必ず生きる。死ぬことはない。
33:16 犯した罪はどれも、その人に対して思い出されることはない。公正で正しいことを行ったのだから、その人は必ず生きる。
33:17 それでもあなたの同胞は『主のやり方は公平でない』と言う。しかし、公平でないのは彼らのやり方のほうだ。
33:18 正しい人が自分の正しさから離れて悪を行うなら、その人はそのために死ぬ。
33:19 だが、悪い者が悪から立ち帰り、公正で正しいことを行うなら、そのことによって生きる。
33:20 それでもあなたがたは『主のやり方は公平でない』と言う。イスラエルの家よ、わたしは一人ひとりをその生き方に応じて裁く。」
33:21 わたしたちが捕らえ移されて十二年目の十月五日、エルサレムから逃げてきた者がわたしのところに来て、『町は陥落した』と告げた。
33:22 その逃げてきた者が来る前の晩、主の手がわたしの上に臨んでいた。そして朝、その人がわたしのところに来るまでに、主はわたしの口を開かれた。わたしの口は開かれ、わたしはもう黙ってはいなかった。
33:23 主の言葉がわたしに臨んだ。
33:24 人の子よ、イスラエルの地の廃墟に住む者たちはこう言っている。『アブラハムはたった一人だったのに、この地を受け継いだ。わたしたちは大勢いるのだから、この地はわたしたちのものとして与えられている』と。
33:25 だから、彼らにこう言いなさい。主なる神はこう言われる。「あなたたちは血のついたまま肉を食べ、偶像を見上げ、血を流している。それでこの地を自分のものにできると思うのか。
33:26 あなたたちは剣に頼り、身の毛もよだつことを行い、それぞれ隣人の妻を汚している。それでこの地を自分のものにできると思うのか。」
33:27 彼らにこう言いなさい。主なる神はこう言われる。「わたしは生きている。廃墟にいる者は剣に倒れ、野原にいる者は野の獣に食われるために渡す。要害や洞穴にいる者は疫病で死ぬ。
33:28 わたしはこの地を荒れ果てさせ、うつろな荒れ地にする。この地が誇っていた力は絶たれ、イスラエルの山々は荒れ果て、通り過ぎる者もいなくなる。
33:29 彼らが行ったすべての忌まわしいことのために、わたしがこの地を荒れ果てさせ、うつろな荒れ地にするとき、彼らはわたしが主であることを知る。」
33:30 人の子よ、あなたの民は、壁のそばや家の戸口であなたのうわさをしている。互いにこう言い合っている。『さあ、行って、主から出た言葉がどんなものか聞いてみよう』と。
33:31 彼らは群れをなしてあなたのところに来て、わたしの民として、あなたの前に座り、あなたの言葉を聞く。でも、それを実行しようとはしない。口ではうっとりと愛を語るが、心は自分の利益ばかりを追い求めているからだ。
33:32 彼らにとってあなたは、美しい声で上手に楽器を奏でて歌う、心地よい恋の歌のようなものだ。彼らはあなたの言葉を聞くが、それを実行しない。
33:33 しかし、そのことが起こるとき——見よ、それは必ず起こる——彼らは自分たちの間に預言者がいたことを、はっきりと知る。」
34:1 そのとき、主の言葉がわたしにこう告げられた。
34:2 「人の子よ、イスラエルの羊飼いたちに立ち向かって預言しなさい。彼らにこう告げなさい。主なる神はこう言われる。イスラエルの羊飼いたちよ、あなたたちはわざわいだ。自分のことばかり養ってきた。羊飼いなら、羊の群れを養うべきではないか。
34:3 あなたたちは脂肪を食べ、羊毛を身にまとい、よく肥えた羊を屠る。それなのに、群れを養おうとしない。
34:4 弱った羊を強くせず、病気の羊を治さず、傷ついた羊に包帯を巻かず、迷い出た羊を連れ戻さず、いなくなった羊を探しもしなかった。むしろ、力ずくで、乱暴に羊を支配した。
34:5 羊飼いがいないので、羊は散らされてしまった。散らされた羊は、野のあらゆる獣のえじきになった。
34:6 わたしの羊はすべての山をさまよい、すべての高い丘を歩きまわった。わたしの群れは地の全面に散らされたのに、探す者も、気にかける者もいなかった。
34:7 だから、羊飼いたちよ、主の言葉を聞け。
34:8 主なる神はこう言われる。わたしは生きている。わたしの羊は奪われ、野のあらゆる獣のえじきになった。羊飼いがいなかったからだ。わたしの羊飼いたちは、わたしの羊を探さず、自分のことばかり養って、わたしの羊を養わなかった。
34:9 だから、羊飼いたちよ、主の言葉を聞け。
34:10 主なる神はこう言われる。見よ、わたしは羊飼いたちに立ち向かう。わたしの羊を彼らの手から取り返し、もう群れを養わせない。羊飼いたちは、二度と自分のことばかり養えなくなる。わたしは彼らの口からわたしの羊を救い出す。もう羊は彼らのえじきにはならない。
34:11 主なる神はこう言われる。見よ、このわたしが自分で、わたしの羊を探し、世話をする。
34:12 羊飼いは、散らされた羊の中にいるとき、その群れを探し出す。それと同じように、わたしもわたしの羊を探し出す。雲が垂れこめる暗い日に散らされた、そのすべての場所から、わたしは羊を救い出す。
34:13 わたしは彼らを国々から連れ出し、いろいろな地から集めて、自分たちの土地に連れ帰る。そしてイスラエルの山々や谷、この地に人が住むすべての場所で、彼らを養う。
34:14 良い牧草地で、わたしは彼らを養う。イスラエルの高い山々が、彼らのいる場所になる。そこの心地よい場所で彼らは横になり、イスラエルの山々の豊かな牧草地で草を食べる。
34:15 わたし自身がわたしの羊を養い、休ませる、と主なる神は言われる。
34:16 わたしは、いなくなった羊を探し、追い散らされた羊を連れ戻す。傷ついた羊には手当てをし、弱った羊には力をつける。しかし、太った羊や強い羊は滅ぼす。わたしは正しくさばいて、彼らを養う。
34:17 わたしの羊よ、あなたたちについて、主なる神はこう言われる。見よ、わたしは羊と羊の間を、雄羊と雄やぎの間をさばく。
34:18 あなたたちは良い牧草地で草を食べたうえに、残りの牧草地まで足で踏みつけるのか。それでは足りないのか。澄んだ水を飲んだうえに、残りの水を足でかき乱すのか。
34:19 そのため、わたしの羊は、あなたたちが足で踏みつけたものを食べ、あなたたちが足でかき乱したものを飲むことになる。
34:20 だから、主なる神は彼らにこう言われる。見よ、このわたしが、太った羊とやせた羊の間をさばく。
34:21 あなたたちは、弱った羊を体や肩で押しのけ、角で突いて、ついには外へ追い散らしてしまった。
34:22 だから、わたしはわたしの羊を救う。羊はもう、えじきにはならない。わたしは羊と羊の間をさばく。
34:23 わたしは彼らの上に、ひとりの羊飼いを立てる。わたしのしもべダビデだ。彼が彼らを養い、彼らの羊飼いとなる。
34:24 わたし、主が彼らの神となり、わたしのしもべダビデが彼らの間で指導者となる。わたし、主がこう語った。
34:25 わたしは彼らと、平和の契約を結ぶ。国から危険な野獣を追い払う。すると彼らは荒れ野でも安心して住み、森の中でも眠れるようになる。
34:26 わたしは彼らと、わたしの丘のまわり一帯を祝福する。季節ごとに雨を降らせる。それは恵みの雨となる。
34:27 野の木は実をみのらせ、地は作物を生み出す。彼らは自分の土地で安心して暮らせる。わたしが彼らの首の重い横木をこわし、彼らを奴隷にしていた者たちの手から救い出すとき、彼らは、わたしが主であることを知る。
34:28 彼らはもう、ほかの国々のえじきにはならない。野の獣に食われることもない。安心して暮らし、おびえさせる者は誰もいなくなる。
34:29 わたしは彼らのために、豊かな実りの畑を育てる。彼らはもう、その地で飢えることはない。ほかの国々にはずかしめられることも、もうない。
34:30 こうして彼らは、彼らの神であるわたし、主が共にいることを知る。そして彼ら、イスラエルの民が、わたしの民であることを知る。主なる神がこう告げる。
34:31 あなたたちはわたしの羊、わたしが養う羊の群れ。あなたたちは人であり、わたしはあなたたちの神だ。主なる神がこう告げる。」
35:1 主の言葉がわたしにあった。
35:2 「人の子よ、セイルの山に顔を向けて、それに向かって預言せよ。
35:3 そして言え。主なる神はこう言う。セイルの山よ、わたしはお前に立ち向かう。お前に手を伸ばし、お前を見捨てられた荒れ地にする。
35:4 お前の町々を廃墟にし、お前自身も荒れ果てる。こうしてお前は、わたしが主であることを知る。
35:5 お前はずっと昔からイスラエルを憎み、彼らが災いに見舞われ、罪の裁きが終わりを迎えたそのとき、彼らを剣の力に引き渡した。
35:6 だから、わたしは生きている、と主なる神は告げる。わたしはお前を血の運命に定める。血がお前を追いかける。お前は流血を憎まなかったのだから、血がお前を追いかける。
35:7 わたしはセイル山を荒れ果てさせ、完全な荒れ地にする。そこを行き来する者を、ひとり残らず絶やす。
35:8 その山々を、殺された者たちで満たす。お前の丘にも、谷にも、すべての谷川にも、剣で倒された者たちが横たわる。
35:9 わたしはお前を、いつまでも続く荒れ地にする。お前の町々は、二度と人が住むことはない。こうしてお前たちは、わたしが主であることを知る。
35:10 お前はこう言った。「この二つの民、二つの国はおれのものだ。おれたちがそれを手に入れる」と。だが、そこには主がおられたのだ。
35:11 だから、わたしは生きている、と主なる神は告げる。お前が彼らを憎み、怒りとねたみをぶつけたそのとおりに、わたしもお前に報いる。お前を裁くとき、わたしは彼らの間で自分を知らせる。
35:12 そのとき、お前は知る。わたしが主であることを。わたしは、お前がイスラエルの山々に向かって言った悪口をすべて聞いていた。お前はこう言った。「あの山々は荒れ果てた。おれたちが食い尽くすために与えられたのだ」と。
35:13 お前たちは口を大きく開いてわたしに逆らい、次々とわたしへの言葉を吐き出した。わたしはそれをすべて聞いていた。
35:14 主なる神はこう言う。全地が喜ぶ中で、わたしはお前を荒れ地にする。
35:15 イスラエルの民の土地が荒れ果てたとき、お前はそれを喜んだ。だから、わたしも同じことをお前にする。セイル山よ、エドム全体よ、お前はまるごと荒れ地となる。こうして彼らは、わたしが主であることを知る。
36:1 人の子よ、イスラエルの山々に預言して、こう言え。イスラエルの山々よ、主の言葉を聞け。
36:2 主なる神はこう言う。敵はあなたたちについて、こう言った。『ざまあみろ。あの大昔からの高台も、今ではおれたちのものだ。』
36:3 だから預言して、こう言え。主なる神はこう言う。人々はあなたたちを荒れ果てさせ、まわりからむさぼり尽くした。あなたたちを残った国々のものにするためだ。こうしてあなたたちは人のうわさの種となり、笑いものにされた。
36:4 だから、イスラエルの山々よ、主なる神の言葉を聞け。主なる神は、山々と丘、谷川と谷、荒れ果てた廃墟、見捨てられた町々にこう言う。それらは、まわりの残った国々に略奪され、あざけられてきた。
36:5 だから主なる神はこう言う。わたしは燃える怒りをもって、残った国々と、エドムのすべてに向けて語った。彼らは心から喜び、心の底から見下しながら、わたしの地を自分たちのものとして奪い取り、その牧草地まで略奪したからだ。
36:6 だから、イスラエルの地について預言して、山々と丘、谷川と谷にこう言え。主なる神はこう言う。あなたたちが国々から受けた侮辱のために、わたしは怒りと憤りをもって語った。
36:7 だから主なる神はこう言う。わたしは手を上げて誓う。あなたたちのまわりの国々こそ、自分たちの侮辱を必ず受けることになる。
36:8 だが、イスラエルの山々よ、あなたたちは枝を伸ばし、わたしの民イスラエルのために実を結ぶ。彼らが帰って来る時が近いからだ。
36:9 見よ、わたしはあなたたちの味方だ。あなたたちの方を向く。あなたたちは耕され、種をまかれる。
36:10 わたしはあなたたちの上に、人を増やす。イスラエルの全家、そのすべてをだ。町々には人が住み、廃墟は建て直される。
36:11 わたしはあなたたちの上に、人と家畜を増やす。彼らは増え広がる。わたしはあなたたちを昔のように人の住む地とし、これまで以上に恵む。その時あなたたちは、わたしが主であることを知る。
36:12 わたしはあなたたちの上に、人を歩ませる。わたしの民イスラエルだ。彼らはあなたを受け継ぎ、あなたは彼らの相続地となる。あなたは二度と彼らから人を奪うことはない。
36:13 主なる神はこう言われる。人々はあなたに向かって、「お前は人を食らい、自分の民から子を奪う地だ」と言っている。
36:14 だからあなたは、もう人を食らうことはない。もう自分の民をつまずかせることもない、と主なる神は言われる。
36:15 わたしはもう、あなたに国々のあざけりを聞かせない。あなたはもう、もろもろの民のそしりを受けることもない。あなたはもう、自分の民をつまずかせることもない、と主なる神は言われる。
36:16 主の言葉がわたしに臨んだ。
36:17 人の子よ。イスラエルの家は自分の地に住んでいたが、その歩みと行いによって、その地を汚した。彼らの歩みは、わたしの目には、生理中の女性の汚れのようだった。
36:18 そこでわたしは、彼らの上に怒りを注いだ。彼らがこの地に流した血のため、また偶像でこの地を汚したためだ。
36:19 わたしは彼らを国々に散らし、諸国に追い散らした。彼らの歩みと行いに応じて、わたしは彼らを裁いた。
36:20 彼らは行った先の国々で、わたしの聖なる名を汚した。人々が彼らについて、「これは主の民なのに、その地から出て来た者たちだ」と言ったからだ。
36:21 しかしわたしは、自分の聖なる名を惜しんだ。イスラエルの家が、行った先の国々で汚した、その名を惜しんだのだ。
36:22 だから、イスラエルの家に言え。主なる神はこう言われる。イスラエルの家よ、わたしが事を行うのは、あなたたちのためではない。あなたたちが行った先の国々で汚した、わたしの聖なる名のためだ。
36:23 わたしは、あなたたちが国々の中で汚した、わたしの偉大な名を聖なるものとする。あなたたちを通して、国々の目の前でわたしが聖なる者であることを示すとき、彼らは、わたしが主であることを知る、と主なる神は言われる。
36:24 わたしはあなたたちを国々から連れ出し、すべての国から集め、あなたたちの地に連れて来る。
36:25 わたしは清らかな水をあなたたちに振りかける。そうすれば、あなたたちは清くなる。すべての汚れから、すべての偶像から、わたしはあなたたちを清める。
36:26 わたしはあなたたちに新しい心を与え、あなたたちの中に新しい霊を授ける。そして、あなたたちの体から石の心を取り除き、肉の心を与える。
36:27 わたしの霊をあなたたちの中に授ける。そして、あなたたちがわたしの掟に従って歩み、わたしの定めを守り行うようにする。
36:28 あなたたちは、わたしが先祖に与えた地に住む。あなたたちはわたしの民となり、わたしはあなたたちの神となる。
36:29 わたしはあなたたちを、すべての汚れから救う。わたしは穀物を呼び寄せて豊かに実らせ、あなたたちに飢えを起こさせない。
36:30 わたしは木の実と畑の作物を豊かにする。それは、あなたたちが二度と国々の間で飢えのはずかしめを受けないためだ。
36:31 そのとき、あなたたちは自分の悪い歩みと、良くない行いを思い出す。そして、自分の罪と、忌まわしい行いのために、自分自身がいやになる。
36:32 わたしがこれを行うのは、あなたたちのためではない、と主なる神は言われる。それを知っておきなさい。イスラエルの家よ、自分の歩みを恥じ、恥じ入りなさい。
36:33 主なる神はこう言われる。わたしがあなたたちを、すべての罪から清める日、わたしは町々に人を住まわせ、廃墟は建て直される。
36:34 これまで、通り過ぎる人みんなの目に荒れ地と映っていた土地が、耕されるようになる。
36:35 人々は言う。「荒れ果てていたこの土地が、エデンの園のようになった。廃墟となり、荒れ果て、壊されていた町々が、城壁で囲まれ、人が住むようになった。」
36:36 そのとき、あなたたちの周りに残る国々は、主であるわたしが、壊された所を建て直し、荒れ果てた所に植えたことを知る。主であるわたしが語り、そして行うのだ。
36:37 主なる神はこう言われる。「わたしは、これもまたイスラエルの人々の願いに応えて、彼らのために行おう。わたしは彼らの人口を、羊の群れのように増やす。
36:38 祭りのときにエルサレムに集まる羊の群れ、あの神にささげられる羊の群れのように、廃墟となった町々は人の群れで満ちあふれる。こうして彼らは、わたしが主であることを知る。」
37:1 主の手がわたしの上に置かれた。そして主はわたしをその霊によって連れ出し、ある谷の真ん中に立たせた。そこは骨でいっぱいだった。
37:2 主はわたしをその骨のあいだを、あちこちと通らせた。すると、谷の一面にとても多くの骨があり、しかもそれはすっかり乾いていた。
37:3 主はわたしに言われた。「人の子よ、この骨は生き返ることができるか。」わたしは答えた。「主なる神よ、あなたがご存じです。」
37:4 すると主はわたしに言われた。「この骨に向かって預言せよ。そして骨に言いなさい。『乾いた骨よ、主の言葉を聞け。』
37:5 主なる神は、この骨にこう言われる。『見よ、わたしはお前たちの中に霊を送り込む。すると、お前たちは生き返る。
37:6 わたしはお前たちの上に筋をつけ、肉を生やし、皮膚でおおう。そしてお前たちの中に霊を吹き込む。すると、お前たちは生き返る。こうしてお前たちは、わたしが主であることを知る。』」
37:7 わたしは命じられたとおり預言した。すると、預言している間に物音がして、地響きが起こった。そして骨と骨が近づき、つながり合った。
37:8 見ていると、その上に筋が生じ、肉が生え、皮膚がそれをおおった。でも、その中に霊はなかった。
37:9 すると主はわたしに言われた。「霊に向かって預言せよ。人の子よ、預言して霊に言いなさい。主なる神はこう言われる。『霊よ、四方から吹いて来て、この殺された者たちに吹きつけよ。すると彼らは生き返る。』」
37:10 わたしは命じられたとおり預言した。すると、霊が彼らの中に入り、彼らは生き返って自分の足で立った。とてもとても大きな軍勢だった。
37:11 主はわたしに言われた。「人の子よ、この骨はイスラエルの全家だ。見よ、彼らはこう言っている。『わたしたちの骨は乾いた。望みは消えた。わたしたちは断ち切られてしまった。』
37:12 だから預言して、彼らに言いなさい。主なる神はこう言われる。『見よ、わたしの民よ、わたしはお前たちの墓を開き、そこからお前たちを引き上げる。そしてお前たちをイスラエルの地に連れて行く。
37:13 わたしの民よ、わたしがお前たちの墓を開き、そこからお前たちを引き上げるとき、お前たちは、わたしが主であることを知る。
37:14 わたしはお前たちの中にわたしの霊を入れる。すると、お前たちは生き返る。そしてわたしはお前たちを自分の土地に住まわせる。こうしてお前たちは、主であるわたしがこれを語り、そのとおり行ったことを知る』と主は言われる。」
37:15 主の言葉がわたしに臨んで、こう言われた。
37:16 「人の子よ、一本の木を取り、その上に『ユダと、それに連なるイスラエルの人々のもの』と書け。それからもう一本の木を取り、その上に『ヨセフ―エフライムの木―と、それに連なるイスラエルの全家のもの』と書け。
37:17 そして、その二本を近づけて一本の木にせよ。すると、それはお前の手の中で一つになる。
37:18 お前の民の人々がお前にこう尋ねるだろう。『これがあなたにとって何を意味するのか、わたしたちに教えてくれないか。』
37:19 こう伝えよ。神である主はこう言われる。見よ、わたしはエフライムの手にあるヨセフの木と、それに連なるイスラエルの諸部族を取る。そして、それをユダの木の上に重ね、一本の木にする。こうして、それはわたしの手の中で一つになる。
37:20 お前が文字を書きつけたその二本の木を、彼らの目の前で、お前の手に持て。
37:21 そして彼らにこう伝えよ。神である主はこう言われる。見よ、わたしはイスラエルの人々を、彼らが行った先の国々の間から取り出す。四方から彼らを集め、彼ら自身の土地へ連れ帰る。
37:22 わたしは彼らを、この地で、イスラエルの山々の上で、一つの国民とする。一人の王が彼ら全員の王となる。彼らはもう二つの国民に分かれることはなく、二つの王国に分かれることも二度とない。
37:23 彼らはもう、偶像や忌まわしいもの、あらゆる背きによって、自分を汚すことはない。わたしは彼らを、罪を犯したすべての住まいから救い出し、彼らを清める。こうして彼らはわたしの民となり、わたしは彼らの神となる。
37:24 わたしのしもべダビデが彼らの王となる。彼ら全員に一人の羊飼いができる。彼らはわたしの定めに従って歩み、わたしのおきてを守り、それを行う。
37:25 彼らは、わたしがしもべヤコブに与えた地に住む。それはお前たちの先祖が住んでいた地だ。彼らと、その子どもたち、さらにその孫たちが、そこにいつまでも住む。わたしのしもべダビデは、永遠に彼らの指導者となる。
37:26 わたしは彼らと平和の契約を結ぶ。それは彼らとの永遠の契約となる。わたしは彼らを住まわせ、その数を増やし、わたしの聖所を彼らのただ中に、いつまでも置く。
37:27 わたしの住まいは彼らと共にある。わたしは彼らの神となり、彼らはわたしの民となる。
37:28 わたしの聖所が彼らのただ中に、いつまでもあるとき、諸国の民は、わたしが主であり、イスラエルを聖なるものとする者であることを知る。」
38:1 そのとき、主の言葉がわたしにこう告げられた。
38:2 「人の子よ、顔をゴグに向けなさい。ゴグはマゴグの地の者で、メシェクとトバルの国々を治める最高の指導者だ。彼に立ち向かって、こう預言しなさい。
38:3 主なる神はこう言われる。ゴグよ、メシェクとトバルを治める最高の指導者よ、わたしはお前に立ち向かう。
38:4 わたしはお前を引き戻す。お前の顎にかぎを掛けて、お前とその全軍を引き出す。馬も騎兵も、みごとな装いを身に着けた大群、大盾や小盾を構え、みな剣を握る者たちを引き出す。
38:5 彼らとともにいるのは、盾とかぶとを身に着けたペルシア、クシュ、プトの兵士たち。
38:6 さらにゴメルとその全軍、北の果てのベト・トガルマとその全軍。多くの民がお前とともにいる。
38:7 備えをせよ。お前も、お前のもとに集まった軍勢もみな、しっかり備えよ。そして彼らを率いる者となれ。
38:8 長い年月ののち、お前は召し出される。終わりの年に、お前はある国に攻め込む。そこは戦いから立ち直った国、多くの民の中から集められた人々が住む国だ。彼らはずっと荒れ果てていたイスラエルの山々に戻り、諸国の中から連れ出されて、今は安心して暮らしている。
38:9 お前は嵐のように攻め上り、雲のように地を覆う。お前も、お前の全軍も、お前とともにいる多くの民もそうする。
38:10 主なる神はこう言われる。その日、お前の心にはさまざまな思いが浮かび、悪い計画を練るようになる。
38:11 お前はこう言うだろう。『城壁のない村々の国に攻め上ろう。何の備えもなく安心して暮らす人々を襲おう。彼らはみな城壁もなく、かんぬきも門もない所に住んでいる。
38:12 そこで略奪をほしいままにし、獲物を奪おう。今は人が住みついた、かつての廃墟に手を伸ばそう。諸国から集められ、家畜や財産を手に入れ、世界の中心に住む民を襲おう。』
38:13 シェバとデダン、タルシシュの商人たち、そこの若い獅子たちはみな、お前にこう言う。『お前は物を奪おうとしてやって来たのか。獲物を奪おうとして軍勢を集めたのか。銀や金を運び去り、家畜や財産を奪い取り、多くの物を略奪しようというのか。』
38:14 だから、人の子よ、預言してゴグに言え。主なる神はこう言われる。その日、わたしの民イスラエルが安心して暮らしているとき、お前はそれに気づくのではないか。
38:15 お前は自分の場所、北の果てからやって来る。多くの民を率い、みな馬に乗り、大軍勢、強大な軍隊となって攻めて来る。
38:16 お前はわたしの民イスラエルに攻め上る。地を覆う雲のように。ゴグよ、終わりの日に、わたしはお前をわたしの地に攻め上らせる。それは、わたしがお前を通して諸国の目の前で自分の聖なることを示し、諸国がわたしを知るようになるためだ。
38:17 主なる神はこう言われる。お前こそ、わたしが昔、わたしの僕であるイスラエルの預言者たちを通して語った者ではないか。彼らは当時、幾年にもわたって、わたしがお前を彼らに攻め上らせると預言していた。
38:18 主なる神は言われる。その日、ゴグがイスラエルの地に攻めて来るその日、わたしの激しい憤りが込み上げる。
38:19 わたしは妬みと燃える憤りをもって言う。その日、イスラエルの地に大きな地震が起こる。
38:20 海の魚も、空の鳥も、野の獣も、地を這うすべてのものも、地の面にいるすべての人も、わたしの前でおののく。山々は崩れ、崖は落ち、すべての城壁は地に倒れる。
38:21 主なる神は言われる。わたしはわたしのすべての山々で、ゴグに向かって剣を呼び寄せる。人はみな剣を取り、互いに切り合う。
38:22 わたしは疫病と流血をもって彼を裁く。彼とその軍勢、彼と共にいる多くの民の上に、豪雨と雹、火と硫黄を降らせる。
38:23 こうしてわたしは自分の大いなることと聖なることを示し、多くの国々の目の前で自分を知らせる。そのとき彼らは、わたしが主であることを知る。
39:1 人の子よ、ゴグに向かってこう告げなさい。神である主はこう言われる。ゴグよ、わたしはお前に立ち向かう。お前はメシェクとトバルの民を率いる長だ。
39:2 わたしはお前を引き回し、引きずり出す。北の果てから連れ出し、イスラエルの山々へ攻め上らせる。
39:3 そこでわたしは、お前の左手から弓を打ち落とし、右手から矢を叩き落とす。
39:4 お前はイスラエルの山々で倒れる。お前も、お前の全軍も、お前と共にいる民もだ。わたしはお前を、あらゆる猛禽や野の獣のえさにする。
39:5 お前は野原に倒れる。わたしがそう語ったからだ、と神である主は言われる。
39:6 わたしはマゴグと、島々に安心して住む者たちに火を放つ。そのとき彼らは、わたしが主であることを知る。
39:7 わたしは自分の聖なる名を、わたしの民イスラエルの中に知らせる。もう二度と、この聖なる名を汚させはしない。こうして諸国の民は、わたしが主であり、イスラエルにおいて聖なる者であることを知る。
39:8 見よ、それは必ず来る。必ず起こる、と神である主は言われる。それこそ、わたしが語ってきたあの日だ。
39:9 イスラエルの町々に住む者たちは出て来て、武器を燃やす。小盾も大盾も、弓も矢も、こん棒も槍も、火にくべる。彼らはそれらを七年間、燃やし続ける。
39:10 彼らはもう野で木を集めることも、森で木を切ることもない。武器を燃やして火をたくからだ。彼らは自分たちから奪った者から奪い返し、自分たちから略奪した者を略奪する、と神である主は言われる。
39:11 その日、わたしはゴグに、イスラエルの中に墓場となる場所を与える。それは海の東にある「旅人の谷」だ。そこは通り抜ける旅人の行く手をふさぐ。人々はそこにゴグと、その大軍勢すべてを葬る。そして、その場所を「ゴグの大軍の谷」と呼ぶ。
39:12 イスラエルの人々は、地を清めるために、七か月かけて彼らを葬る。
39:13 地の民はみな、彼らを葬る。わたしが栄光を現すその日、それは民にとって誉れとなる、と神である主は言われる。
39:14 人々は、地を清めるために、専任の者を選び出す。その者たちは地を巡り、地の面に残された死体を、通り抜ける旅人と共に葬る。七か月が終わったころ、彼らはくまなく調べる。
39:15 この巡回する者たちが地を通り抜けるとき、だれかが人の骨を見つけたら、その傍らに目印を立てる。それは、葬る者たちがそれを「ゴグの大軍の谷」に葬るまでのしるしだ。
39:16 そこにある町の名も「大軍」と呼ばれる。こうして彼らは地を清める。
39:17 人の子よ、神である主はこう言われる。あらゆる鳥、あらゆる野の獣に言え。「集まれ、来い。四方から集まって来い。わたしがおまえたちのためにほふる、大きないけにえのところへ。イスラエルの山々の上で、大いなるいけにえをする。おまえたちは肉を食べ、血を飲む。
39:18 おまえたちは勇士たちの肉を食べ、地の君主たちの血を飲む。雄羊、子羊、雄やぎ、雄牛――みなバシャンで肥え太ったものだ。
39:19 わたしがおまえたちのためにほふるいけにえで、おまえたちは飽きるほど脂肪を食べ、酔うほど血を飲む。
39:20 こうしておまえたちは、わたしの食卓で、馬や戦車、勇士やあらゆる兵士を腹いっぱいに食べる」と神である主は言われる。
39:21 わたしは諸国の民の中に、わたしの栄光を現す。すべての国々は、わたしが行ったさばきと、わたしが彼らの上に置いた手を見る。
39:22 その日から後、イスラエルの家は、わたしが彼らの神、主であることを知る。
39:23 また諸国の民は、イスラエルの家が自分たちの罪のために捕らわれて行ったことを知る。彼らがわたしに背いたので、わたしは彼らから顔を隠し、敵の手に渡した。それで彼らはみな剣に倒れた。
39:24 わたしは彼らの汚れと背きにふさわしく彼らを扱い、彼らから顔を隠した。
39:25 だから、主なる神はこう言われる。今、わたしはヤコブを元どおりに回復させ、イスラエルの家全体を深くあわれむ。そして、わたしの聖なる名のために熱く立ち上がる。
39:26 彼らは自分たちが受けた恥と、わたしに背いて犯したすべての裏切りを、心に負うことになる。彼らが自分の土地に安心して住み、だれにもおびやかされなくなるときに。
39:27 わたしが彼らを諸国の民の中から連れ戻し、敵の国々から集めるとき、わたしは多くの国々の目の前で、彼らを通して自分が聖なる者であることを示す。
39:28 そのとき彼らは、わたしが彼らの神、主であることを知る。わたしは彼らを諸国へ捕らえ移したが、また彼らを自分の土地に集め、ひとりもそこに残しておかないからだ。
39:29 わたしはもう二度と彼らから顔を隠さない。わたしがイスラエルの家に、わたしの霊を注ぐからだ。主なる神がこう告げる。
40:1 わたしたちが捕らえ移されて二十五年目、年の初め、その月の十日、あの町が打ち倒されてから十四年目のこと。まさにその日、主の手がわたしの上に臨み、わたしをその場所へ連れて行った。
40:2 神の幻の中で、主はわたしをイスラエルの地へ連れて行き、とても高い山の上に立たせた。その山の上には、まるで町のような建物が南のほうに見えた。
40:3 主がわたしをそこへ連れて行くと、ひとりの人がいた。その姿は青銅のように輝いていて、手には麻のひもと測るための竿を持ち、門のところに立っていた。
40:4 その人はわたしにこう言った。「人の子よ、目でよく見て、耳でよく聞き、わたしがあなたに見せるすべてのことに心を向けなさい。あなたがここに連れて来られたのは、それをあなたに見せるためだ。あなたが見るすべてのことを、イスラエルの家に伝えなさい。」
40:5 見ると、その建物の外側をぐるりと囲む城壁があった。その人の手には測るための竿があり、その長さは六キュビト、ただし一キュビトは普通のキュビトに手のひら一つ分を加えたものだった。彼はその城壁の厚さを測ると、竿一本分あり、高さも竿一本分あった。
40:6 それから彼は、東を向いている門のところへ行き、その階段を上った。そして門の敷居を測ると、その幅は竿一本分あった。もう一つの敷居も、幅は竿一本分あった。
40:7 控え室はそれぞれ、長さが竿一本分、幅も竿一本分あった。控え室と控え室の間は五キュビトだった。そして門の内側、玄関の間のそばにある門の敷居は、竿一本分あった。
40:8 彼は門の内側にある玄関の間を測ると、竿一本分あった。
40:9 それから彼は門の玄関の間を測ると、八キュビトあった。その柱は二キュビトだった。玄関の間は建物の内側に面していた。
40:10 東を向いた門の控え室は、片側に三つ、もう片側に三つあった。三つとも同じ寸法で、両側の柱も同じ寸法だった。
40:11 彼は門の入り口の幅を測ると、十キュビトあった。門の長さは十三キュビトだった。
40:12 控え室の前には仕切りがあり、片側は一キュビト、もう片側の仕切りも一キュビトだった。控え室は片側が六キュビト、もう片側も六キュビトだった。
40:13 彼は門を、一方の控え室の屋根からもう一方の控え室の屋根まで測ると、幅は二十五キュビトあった。入り口は入り口と向かい合っていた。
40:14 彼は柱を六十キュビトに造った。門はその周り一帯で、庭の柱にまで達していた。
40:15 入り口の門の前面から、内側の門の玄関の間の前面まで、五十キュビトあった。
40:16 控え室にも、その柱にも、門の内側をぐるりと囲んで、格子のはまった窓があった。玄関の間の周りも同じだった。窓は内側に向かってぐるりと巡っていた。そして柱には、なつめやしの木が彫られていた。
40:17 それから彼はわたしを外側の庭に連れて行った。すると、そこには部屋がいくつもあり、庭の周りをぐるりと囲んで石畳が敷かれていた。その石畳に面して三十の部屋があった。
40:18 その石畳は門の脇にあり、門の長さに沿っていた。これは下の石畳だった。
40:19 彼は下の門の前面から、内側の庭の前面までの幅を、外側で測った。東側も北側も、百キュビトあった。
40:20 外側の庭に面した、北向きの門についても、彼はその長さと幅を測った。
40:21 その控え室は、片側に三つ、反対側に三つあった。柱と玄関の間は、最初の門と同じ寸法だった。長さは五十キュビト、幅は二十五キュビトだった。
40:22 その窓と玄関の間となつめやしの木は、東向きの門と同じ寸法だった。そこへは七段の階段で上った。玄関の間は、その階段を上った先にあった。
40:23 内側の庭にも門があり、北と東の門と向かい合っていた。彼が門から門までを測ると、百キュビトだった。
40:24 それから彼はわたしを南の方へ連れて行った。すると、南向きの門があった。彼はその柱と玄関の間を測ったが、これまでと同じ寸法だった。
40:25 この門にも、玄関の間にも、周りをぐるりと囲んで、ほかと同じような窓があった。長さは五十キュビト、幅は二十五キュビトだった。
40:26 そこへは七段の階段で上った。玄関の間は、その階段を上った先にあった。柱には、片側に一つ、反対側に一つ、なつめやしの木が彫られていた。
40:27 内側の庭にも、南に向かって門があった。彼が南に向かって門から門までを測ると、百キュビトだった。
40:28 それから彼はわたしを、南の門を通って内側の庭に連れて入った。そして南の門を測ったが、これまでと同じ寸法だった。
40:29 その控え室も、柱も、玄関の間も、これまでと同じ寸法だった。この門にも、玄関の間にも、周りをぐるりと囲んで窓があった。長さは五十キュビト、幅は二十五キュビトだった。
40:30 周りをぐるりと囲んで玄関の間があった。長さは二十五キュビト、幅は五キュビトだった。
40:31 玄関の間は外側の庭のほうを向いていた。柱にはなつめやしの飾りがあり、そこへ上る階段は八段あった。
40:32 それから彼はわたしを、東のほうから内側の庭に連れて入った。そして門を測ったが、これまでと同じ寸法だった。
40:33 その控え室も、柱も、玄関の間も、これまでと同じ寸法だった。この門にも、玄関の間にも、周りをぐるりと囲んで窓があった。長さは五十キュビト、幅は二十五キュビトだった。
40:34 玄関の間は外側の庭のほうを向いていた。柱には両側になつめやしの飾りがあり、そこへ上る階段は八段あった。
40:35 それから彼はわたしを北の門に連れて行った。そしてこれを測ったが、これまでと同じ寸法だった。
40:36 その控え室も、柱も、玄関の間も同じで、周りをぐるりと囲んで窓があった。長さは五十キュビト、幅は二十五キュビトだった。
40:37 柱は外側の庭のほうを向いていた。柱には両側になつめやしの飾りがあり、そこへ上る階段は八段あった。
40:38 門の柱のところに、入り口のある部屋があった。そこで、焼き尽くすいけにえを洗った。
40:39 門の玄関の間には、片側に二つ、もう片側に二つの台があった。その上で、焼き尽くすいけにえや、罪のためのいけにえ、償いのためのいけにえをほふった。
40:40 北の門の入り口へ上って行く外側の脇には二つの台があり、門の玄関の間の反対側の脇にも二つの台があった。
40:41 門の脇には、片側に四つ、もう片側に四つ、合わせて八つの台があり、その上でいけにえをほふった。
40:42 焼き尽くすいけにえのための四つの台は、切り石でできていた。長さは一・五キュビト、幅は一・五キュビト、高さは一キュビトだった。その上に、焼き尽くすいけにえやそのほかのいけにえをほふるための道具を置いた。
40:43 建物の内側には、ほふった肉を掛けるための、幅一手幅のかぎが、周りをぐるりと取りつけてあった。台の上には、ささげ物の肉が置かれていた。
40:44 内側の門の外、内庭には、歌う人たちのための部屋があった。北の門の脇にあって、南に向いていた。もう一つの部屋は東の門の脇にあって、北に向いていた。
40:45 その人はわたしに言った。「南に向いているこの部屋は、神殿の務めを担う祭司たちのためのものだ。
40:46 北に向いている部屋は、祭壇の務めを担う祭司たちのためのものだ。彼らはレビの子孫のうちのツァドクの子孫で、主に近づいて仕える者たちだ。」
40:47 その人は庭を測った。長さ百キュビト、幅百キュビトの正方形だった。祭壇は神殿の前にあった。
40:48 それからその人は、わたしを神殿の玄関の間へ連れて行き、その入り口の柱を測った。片側が五キュビト、もう片側も五キュビトだった。門の幅は、片側が三キュビト、もう片側も三キュビトだった。
40:49 玄関の間は、長さ二十キュビト、幅十一キュビトだった。そこへは階段を上って行くようになっていた。柱のそばには、片側に一本、もう片側に一本の円柱が立っていた。
41:1 それからその人は、わたしを本堂へ連れて行き、その入り口の柱を測った。厚さは、片側が六キュビト、もう片側も六キュビトだった。これが幕屋の幅だった。
41:2 入り口の幅は十キュビトで、入り口の両側の壁は、片側が五キュビト、もう片側も五キュビトだった。その人は本堂を測った。長さ四十キュビト、幅二十キュビトだった。
41:3 その人は奥へ入って行き、奥の入り口の柱を測った。厚さは二キュビトだった。入り口の高さは六キュビト、幅は七キュビトだった。
41:4 その人は本堂の奥にあるその部屋を測った。長さ二十キュビト、幅二十キュビトだった。そしてわたしに言った。「これは最も聖なる場所だ。」
41:5 その人は神殿の壁を測った。厚さは六キュビトだった。神殿の周りをぐるりと取り囲む脇部屋は、幅四キュビトだった。
41:6 脇部屋は、上へ上へと三段に重なり、それぞれの段に三十の部屋があった。神殿の壁の周りには、脇部屋を支えるための段が造られていて、そこに脇部屋がはめ込まれていた。だから脇部屋は神殿の壁そのものには差し込まれていなかった。
41:7 脇部屋は上の階へ行くほど広くなっていた。神殿を取り囲む段が、上へ上へと重なるにつれて幅を増していったからだ。だから神殿の幅は上の階ほど広がっていった。こうして人は一番下の階から中の階を通って一番上の階へと上っていけるようになっていた。
41:8 わたしはまた、神殿の周りに一段高くなった土台があるのを見た。脇部屋の土台は、一竿ぶん、つまり六キュビトの高さだった。
41:9 脇部屋の外側の壁は、厚さ五キュビトだった。脇部屋の建物と神殿との間には、空いた場所があった。
41:10 その空いた場所は、神殿の周りをぐるりと取り囲んでいて、幅二十キュビトだった。
41:11 脇部屋の入り口は、この空いた場所に向かって開いていた。一つは北向き、もう一つは南向きだった。空いた場所の幅は、周りをぐるりと五キュビトだった。
41:12 神殿の裏手にある空き地に面して、西側に一つの建物が建っていた。幅は七十キュビト。その建物の壁は、周りをぐるりと厚さ五キュビトで、長さは九十キュビトだった。
41:13 その人は神殿を測った。長さは百キュビトだった。空き地と、その建物と壁を合わせても、長さは百キュビトだった。
41:14 神殿の正面と、東側の空き地を合わせた幅も、百キュビトだった。
41:15 その人は、神殿の裏手にある空き地に面した建物の長さを測った。両側の回廊も入れて、長さは百キュビトだった。本堂の奥の間と、庭に面した玄関の間も同じだった。
41:16 敷居、格子のはまった窓、そして三方をぐるりと囲む回廊、これらは敷居のところから、床から窓までずっと、周りをぐるりと板張りにされていた。窓には覆いがついていた。
41:17 入り口の上から神殿の奥まで、内側も外側も、周りの壁一面にわたって、すべてに寸法どおりの飾りがほどこされていた。
41:18 そこにはケルビムとなつめやしの木が彫られていた。なつめやしの木は、ケルビムとケルビムの間に一本ずつあった。ケルビムにはそれぞれ二つの顔があった。
41:19 人の顔がこちら側のなつめやしの木に向き、若いライオンの顔があちら側のなつめやしの木に向いていた。これは神殿全体にわたって、周りをぐるりと彫られていた。
41:20 床から入り口の上まで、ケルビムとなつめやしの木が彫られていた。神殿の壁も同じだった。
41:21 神殿の入り口の柱は四角かった。聖所の正面も、同じような見た目だった。
41:22 祭壇は木でできていた。高さは三キュビト、長さは二キュビトあった。その角も、台も、壁も木でできていた。その人はわたしに言った。「これは主の前にある机だ。」
41:23 神殿と聖所には、それぞれ二つの扉があった。
41:24 扉にはそれぞれ二枚の戸がついていた。折りたたみ式の戸で、一方の扉に二枚、もう一方の扉にも二枚あった。
41:25 神殿の扉にも、壁と同じように、ケルビムとなつめやしの木が彫られていた。玄関の外側の正面には、木のひさしがついていた。
41:26 玄関の両脇の壁には、格子のはまった窓となつめやしの木が、こちら側にもあちら側にもあった。神殿の脇部屋と、ひさしも同じだった。
42:1 それから彼はわたしを外庭へ連れ出した。北へ向かう道を通ってである。そして、神殿の空き地に面し、北側の建物に向かい合った部屋へ、わたしを連れて行った。
42:2 その建物は北側に入口があり、長さは百キュビト、幅は五十キュビトだった。
42:3 内庭に属する二十キュビトの空間と向かい合い、外庭に属する石だたみと向かい合っていた。その建物は三階建てで、廊下が上下に重なっていた。
42:4 部屋の前には、幅十キュビトの通路があり、内側へと続いていた。奥行きは百キュビトだった。部屋の入口はどれも北を向いていた。
42:5 上の階の部屋は、ほかより狭かった。廊下が下の階や中の階よりも広く場所を取っていたからである。
42:6 というのも、この建物は三階建てで、庭にあるような柱を持っていなかった。だから上の階は、下の階や中の階よりも引っ込んでいた。
42:7 外側には、部屋に沿って一つの塀があった。外庭の側で、部屋の前に立っており、その長さは五十キュビトだった。
42:8 外庭に面した部屋の列の長さは五十キュビトだったが、神殿に面した側では長さが百キュビトあった。
42:9 これらの部屋の下には、東側から入る入口があった。外庭からこの部屋に入るための通路である。
42:10 東側では、庭の塀の厚みの中に、部屋が並んでいた。神殿の空き地に面し、北側の建物にも面していた。
42:11 部屋の前には通路があり、北側の部屋とそっくり同じ造りだった。長さも幅も同じで、出口も配置も入口も、すべて同じだった。
42:12 南側の部屋の入口も同じだった。通路の先に一つの入口があり、それは東を向いた塀に沿って続く道の入口で、そこから人が入るようになっていた。
42:13 その人はわたしにこう言った。「北側の部屋と南側の部屋、つまり神殿の空き地に面したこの部屋は、聖なる部屋だ。主のそば近くで仕える祭司たちは、ここで最も聖なるささげ物を食べる。そして最も聖なるささげ物、穀物のささげ物、罪のためのささげ物、賠償のためのささげ物を、ここに置く。この場所は聖なる場所だからだ。
42:14 祭司たちは中に入ったら、聖なる場所から外庭へ出るときには、必ずここで自分の務めの衣服を脱いで置いていく。その衣服は聖なるものだからだ。祭司たちは別の衣服に着替えてから、一般の人々のいる場所に近づく。」
42:15 その人は神殿の内側を測り終えると、東を向いた門からわたしを連れ出し、外周をぐるりと測った。
42:16 東側を測りざおで測ると、測りざおで五百さおあった。
42:17 北側を測ると、測りざおで五百さおあった。
42:18 南側を測ると、測りざおで五百さおあった。
42:19 そして西側に回って測ると、測りざおで五百さおあった。
42:20 こうしてその人は四方を測った。周りには塀がめぐらされ、長さも幅も五百さおあった。それは聖なるものと俗なるものとを分けるためのものだった。
43:1 それから、その人はわたしを門へ連れて行った。東を向いた門だった。
43:2 すると、イスラエルの神の栄光が東の方から近づいてきた。その音は大水のとどろきのようで、地はその栄光で輝いた。
43:3 その光景は、わたしが以前に見た幻とそっくりだった。あの町を滅ぼすために来たときに見た幻、そしてケバル川のほとりで見た幻と同じだった。わたしは顔を伏せてひれ伏した。
43:4 主の栄光は、東を向いた門を通って神殿に入った。
43:5 霊がわたしを引き上げ、内側の庭へ連れて行った。すると、主の栄光が神殿に満ちていた。
43:6 神殿の中から、だれかがわたしに語りかけるのが聞こえた。そのとき、ひとりの人がわたしのそばに立っていた。
43:7 その人はわたしに言った。「人の子よ、ここはわたしの王座のある場所、わたしが足を置く場所だ。わたしはここで、イスラエルの人々の中に永遠に住む。イスラエルの家は、もう二度とわたしの聖なる名を汚してはならない。民も王たちも、淫らな行いによって、また王たちの死体によって、それを汚してはならない。
43:8 彼らは自分たちの敷居をわたしの敷居のわきに、自分たちの門柱をわたしの門柱のわきに置いた。わたしと彼らの間には、壁が一枚あるだけだった。こうして彼らは、自分たちが行った忌まわしいことによって、わたしの聖なる名を汚した。だからわたしは怒って、彼らを滅ぼした。
43:9 今こそ、彼らはその淫らな行いと王たちの死体を、わたしから遠ざけよ。そうすれば、わたしは彼らの中に永遠に住む。
43:10 人の子よ、あなたはこの神殿のことをイスラエルの家に伝えよ。彼らが自分の罪を恥じるためだ。そして彼らに、その設計を測らせよ。
43:11 もし彼らが自分のしたことすべてを恥じるなら、この神殿の形と造り、出口と入り口、そのすべての形、すべての決まりと教えを、彼らに知らせよ。彼らの目の前でそれを書き記せ。そうすれば、彼らはそのすべての形と決まりを守り、それを実行するだろう。
43:12 これが神殿についての教えだ。山の頂にあるその境界の全域は、周りをぐるりと囲んで、最も聖なる場所となる。これが神殿についての教えだ。」
43:13 祭壇の寸法は、次のとおりだ。長いキュビトで測る。これは一キュビトに手のひらの幅を足したものだ。土台のくぼみは深さ一キュビト、幅も一キュビト。その周りの縁には一あたの高さの仕切りがある。これが祭壇の台座だ。
43:14 地面のくぼみから下の段までが二キュビト、その段の幅は一キュビト。小さいほうの段から大きいほうの段までが四キュビト、その段の幅は一キュビト。
43:15 その上のいけにえを焼く炉が四キュビト。この炉からは、上に向かって四本の角が突き出ている。
43:16 いけにえを焼く炉は、縦十二キュビト、横十二キュビトで、四辺が同じ長さの正方形だ。
43:17 その下の段は、縦十四キュビト、横十四キュビトで、四辺が同じ長さの正方形だ。その周りの縁は半キュビト、まわりのくぼみは一キュビトある。祭壇の階段は東を向いている。
43:18 そして、その人はわたしに言った。「人の子よ、主なる神はこう言われる。祭壇が造られる日には、そこでいけにえを焼いてささげ、その上に血を振りかけるための決まりが、次のとおりだ。
43:19 祭司たちには、雄の子牛を一頭、罪を清めるためのいけにえとして渡しなさい。祭司とは、わたしに仕えるためにわたしのそばに近づく、ツァドクの子孫であるレビ人たちのことだ、と主なる神は言われる。
43:20 そして、その子牛の血を取り、祭壇の四本の角、段の四隅、周りの縁に塗りなさい。こうして祭壇を清め、罪をあがなうのだ。
43:21 罪を清めるためのその子牛は、神殿の外の、聖なる場所の外にある決められた場所で焼きなさい。
43:22 二日目には、傷のない雄やぎを一頭、罪を清めるためのいけにえとしてささげなさい。子牛で祭壇を清めたのと同じように、これでも祭壇を清めるのだ。
43:23 祭壇を清め終えたら、傷のない雄の子牛を一頭と、群れの中から傷のない雄羊を一頭ささげなさい。
43:24 それらを主の前に連れて来なさい。祭司たちはその上に塩を振りかけ、それらを主にささげる焼き尽くすいけにえとするのだ。
43:25 七日間、毎日、罪を清めるためのいけにえとして雄やぎを一頭ささげなさい。さらに、傷のない雄の子牛を一頭と、群れの中から雄羊を一頭ささげるのだ。
43:26 七日間かけて祭壇の汚れを清め、それを聖なるものとして神にささげるのだ。
43:27 こうして七日が過ぎ、八日目から後は、祭司たちは祭壇の上で、あなたがたの焼き尽くすいけにえと和解のいけにえをささげる。そうすれば、わたしはあなたがたを喜んで受け入れる、と主なる神は言われる。」
44:1 それから彼は、わたしを聖所の外側の門、東を向いた門へと連れ戻した。その門は閉じられていた。
44:2 主はわたしに言われた。「この門は閉じたままにしておく。開けてはならない。だれもここから入ってはならない。イスラエルの神である主が、この門から入られたからだ。だから、閉じたままにしておくのだ。
44:3 ただし、君主だけはここに座り、主の前で食事をとることができる。彼はこの門の玄関を通って入り、同じ道を通って出て行く。」
44:4 それから彼は、わたしを北の門を通って神殿の正面へ連れて行った。見ると、主の栄光が主の神殿に満ちていた。わたしはうつ伏せにひれ伏した。
44:5 主はわたしに言われた。「人の子よ、心を留めなさい。目でよく見て、耳でよく聞くのだ。わたしが語る、主の神殿についてのすべての定めと、そのすべての教えを聞きなさい。そして、神殿の入り口と、聖所のすべての出口に心を留めなさい。
44:6 そして、反逆する者たち、イスラエルの人々に言いなさい。主なる神はこう言われる。イスラエルの人々よ、あなたがたの忌まわしい行いは、もうたくさんだ。
44:7 あなたがたは、心にも体にも割礼を受けていない外国人を、わたしの聖所に連れ込んだ。そうして、わたしの神殿を汚した。しかも、わたしにささげる食物として脂肪と血をささげながら、あらゆる忌まわしい行いによって、わたしの契約を破ったのだ。
44:8 あなたがたは、わたしの聖なるものを守る務めを果たさず、代わりに他の者を立てて、わたしの聖所であなたがたの務めを行わせた。
44:9 主なる神はこう言われる。心にも体にも割礼を受けていない外国人は、だれもわたしの聖所に入ってはならない。イスラエルの人々の間に住むどんな外国人であっても、入ってはならない。
44:10 しかしレビ人たちは、イスラエルが偶像を追い求めて迷い、わたしから離れて行ったとき、彼らもわたしから遠く離れて行った。だから彼らは、自分の罪の責任を負わなければならない。
44:11 彼らはわたしの聖所で仕える者となり、神殿の門を守り、神殿で仕える。彼らは民のために焼き尽くすいけにえや、その他のいけにえの動物をほふり、民の前に立って彼らに仕える。
44:12 彼らは民の偶像の前で民に仕え、イスラエルの人々を罪に落とすつまずきとなった。だからわたしは手を上げて誓う、と主なる神は言われる。彼らは自分の罪の責任を負わなければならない。
44:13 彼らはわたしに近づいて、祭司としてわたしに仕えることはできない。わたしの聖なるものにも、至聖所にある最も聖なるものにも、近づいてはならない。彼らは自分の恥と、自分が行った忌まわしい行いの責任を負わなければならない。
44:14 それでもわたしは彼らに、神殿を守る務めを与える。神殿でのすべての仕事と、そこで行われるすべてのことを担わせる。
44:15 しかし、ツァドクの子孫であるレビ人の祭司たちは、イスラエルの人々がわたしから離れて迷ったときも、わたしの聖所を守る務めを果たした。だから彼らこそ、わたしに近づいて仕える。彼らはわたしの前に立ち、脂肪と血をわたしにささげる、と主なる神は言われる。
44:16 彼らはわたしの聖所に入り、わたしの机に近づいて、わたしに仕える。彼らはわたしの務めを守る。
44:17 彼らが内庭の門に入るときは、亜麻布の衣を着なければならない。内庭の門や神殿の中で仕える間、羊毛のものを身につけてはならない。
44:18 頭には亜麻布のかぶり物をつけ、腰には亜麻布の下ばきをはく。汗が出るようなものを身につけてはならない。
44:19 彼らが外庭の、民のいる外庭に出て行くときは、務めのときに着ていた衣を脱ぎ、それを聖なる部屋に置いて、別の衣を着なければならない。その衣で民を聖なるものにしてしまわないためである。
44:20 彼らは頭をそってはならず、髪を伸ばし放題にしてもいけない。頭の髪は切りそろえておく。
44:21 祭司はだれも、内庭に入るときにぶどう酒を飲んではならない。
44:22 彼らは、やもめや離縁された女をめとってはならない。めとってよいのは、イスラエルの家の子孫である処女か、祭司の妻であったやもめだけである。
44:23 彼らはわたしの民に、聖なるものと俗なるものの区別を教え、汚れたものと清いものの見分け方を教える。
44:24 争いが起きたときは、彼らが裁判官として立ち、わたしの定めに従ってそれを裁く。わたしのすべての祭りにおいて、わたしの律法と掟を守り、わたしの安息日を聖なる日として守る。
44:25 彼らは死んだ人に近づいて身を汚してはならない。ただし、父、母、息子、娘、兄弟、あるいは夫のいない姉妹のためであれば、身を汚してもよい。
44:26 その人が清められたあとは、さらに七日を数える。
44:27 そして聖所に入る日、つまり聖所で仕えるために内庭に入る日には、その人は自分のための罪の供え物をささげる、と主なる神は言われる。
44:28 これが彼らの受け継ぐ分となる。わたしが彼らの受け継ぐ分だからである。イスラエルの中で彼らに所有地を与えてはならない。わたしが彼らの所有地だからである。
44:29 彼らは穀物の供え物、罪の供え物、償いの供え物を食べる。イスラエルの中で神にささげられたものは、すべて彼らのものとなる。
44:30 すべての初物の中で最も良いもの、そしてあなたがたのすべてのささげ物は、祭司のものとなる。また、最初にひいた粉を祭司に渡さなければならない。そうすれば、祝福があなたの家にとどまる。
44:31 祭司は、鳥でも獣でも、自然に死んだものや、かみ裂かれたものを食べてはならない。
45:1 あなたがたが地をくじで分けて、それぞれの受け継ぐ分とするとき、その地の一部を聖なるささげ物として主にささげなさい。長さは二万五千、幅は一万。その全域が聖なる地となる。
45:2 このうち、五百四方の正方形を聖所のための場所とする。その周りには、五十キュビトの空き地を設ける。
45:3 この区域から、長さ二万五千、幅一万を測り取りなさい。その中に聖所、つまり最も聖なる場所を置く。
45:4 これは地の中の聖なる部分で、聖所で仕える祭司たち、主に近づいて仕える者たちのものとなる。そこは彼らの家を建てる場所となり、また聖所のための聖なる場所となる。
45:5 また、長さ二万五千、幅一万の地は、神殿で仕えるレビ人のものとなり、彼らの所有地となる。そこには彼らの住む二十の部屋がある。
45:6 町の所有地としては、幅五千、長さ二万五千の地を、聖なるささげ物の地と並べて与えなさい。これはイスラエルの全家のものとなる。
45:7 君主には、聖なるささげ物の地と町の所有地の両側の土地を与える。それは聖なる地と町の地に接し、西側は西の端まで、東側は東の端まで伸びる。その長さは、部族の割り当て地の一つと同じで、西の境界から東の境界にまで及ぶ。
45:8 この土地が、イスラエルにおける君主の所有地となる。こうして、君主たちはもう二度とわたしの民を虐げることなく、この地を部族ごとにイスラエルの家に与える。
45:9 主なる神はこう言われる。「イスラエルの君主たちよ、もうたくさんだ。暴虐と略奪をやめ、公正と正義を行え。わたしの民を追い立てるのをやめよ」と主なる神は言われる。
45:10 正しいはかり、正しいエファ升、正しいバト升を使いなさい。
45:11 エファとバトは同じ量とし、どちらもホメルの十分の一とする。ホメルを基準の単位とする。
45:12 一シェケルは二十ゲラとする。二十シェケルと二十五シェケルと十五シェケルを合わせて、一マナとする。
45:13 これがあなたたちがささげる供え物である。小麦は一ホメルごとにエファ升の六分の一、大麦も一ホメルごとにエファ升の六分の一をささげなさい。
45:14 油の決められた分は、バト升で量る。一コルごとにバト升の十分の一をささげる。コルは十バトで、ホメルと同じ量である。十バトが一ホメルだからだ。
45:15 また、イスラエルの豊かな牧場で飼う羊の群れ二百頭ごとに、一頭をささげる。これらは穀物のささげ物、焼き尽くすささげ物、和解のささげ物として、人々の罪を償うためのものである。主なる神はこう言われる。
45:16 この国の民はみな、この供え物をイスラエルの君主に納めなさい。
45:17 君主には、祭りや新月の祭り、安息日など、イスラエルの民のすべての定められた祝いのときに、焼き尽くすささげ物、穀物のささげ物、注ぎのささげ物を用意する務めがある。君主は罪を清めるささげ物、穀物のささげ物、焼き尽くすささげ物、和解のささげ物を用意して、イスラエルの民の罪を償う。
45:18 主なる神はこう言われる。第一の月の一日に、傷のない若い雄牛を一頭取って、聖なる場所を清めなさい。
45:19 祭司はその罪を清めるささげ物の血を取り、神殿の入り口の柱と、祭壇の台の四隅、そして内側の庭の門の柱に塗る。
45:20 同じことを、その月の七日にも、うっかり過ちを犯した人や、知らずに罪を犯した人のために行う。こうして神殿を清めなさい。
45:21 第一の月の十四日には、過越の祭りを行う。七日間続く祭りで、その間はパン種を入れないパンを食べる。
45:22 その日、君主は自分自身と国の民すべてのために、罪を清めるささげ物として雄牛を一頭用意する。
45:23 祭りの七日間、君主は主に焼き尽くすささげ物をささげる。傷のない雄牛七頭と雄羊七頭を、七日間、毎日ささげる。また毎日、罪を清めるささげ物として雄やぎを一頭ささげる。
45:24 穀物のささげ物としては、雄牛一頭につきエファ升一杯、雄羊一頭につきエファ升一杯を用意する。また、エファ升一杯ごとに油をヒン升一杯添える。
45:25 第七の月の十五日、祭りのときにも、君主は七日間、同じようにする。罪を清めるささげ物も、焼き尽くすささげ物も、穀物のささげ物も、油も、同じようにささげる。
46:1 主なる神はこう言われる。内側の庭の東を向いた門は、働く六日の間は閉じておく。でも安息日には開き、新月の日にも開く。
46:2 君主は外から門の玄関を通って入り、門の柱のそばに立つ。祭司たちが君主の焼き尽くすささげ物と交わりのささげ物を用意する間、君主は門の敷居のところで礼拝し、それから出て行く。門は夕方まで閉じない。
46:3 国の民も、安息日や新月の日に、その門の入り口で主の前に礼拝する。
46:4 君主が安息日に主にささげる焼き尽くすささげ物は、傷のない子羊六頭と傷のない雄羊一頭とする。
46:5 穀物のささげ物は、雄羊一頭につきエファ升一杯とする。子羊のための穀物のささげ物は、君主が出せるだけでよい。また、エファ升一杯ごとに油をヒン升一杯添える。
46:6 新月の日には、傷のない若い雄牛一頭と、子羊六頭と雄羊一頭をささげる。これらはみな傷のないものとする。
46:7 穀物のささげ物は、雄牛一頭につきエファ升一杯、雄羊一頭につきエファ升一杯を用意する。子羊のためには、君主が出せるだけでよい。また、エファ升一杯ごとに油をヒン升一杯添える。
46:8 君主が入るときは、門の玄関を通って入り、同じ道から出て行く。
46:9 国の民が祭りのときに主の前に出るときは、北の門から入って礼拝した者は南の門から出て行く。南の門から入った者は北の門から出て行く。入ってきた門からは戻らず、まっすぐ向かい側の門から出て行く。
46:10 君主も民の中にいて、民が入るときにいっしょに入り、民が出るときにいっしょに出て行く。
46:11 祭りや定めの祝いのときの穀物のささげ物は、雄牛一頭につきエファ升一杯、雄羊一頭につきエファ升一杯とし、子羊のためには君主が出せるだけでよい。また、エファ升一杯ごとに油をヒン升一杯添える。
46:12 君主が自分から進んで、焼き尽くすささげ物や交わりのささげ物を主にささげるときは、東を向いた門を開けてもらう。そして安息日にするのと同じように、焼き尽くすささげ物と交わりのささげ物をささげる。それから出て行くと、彼が出た後で門は閉じられる。
46:13 一歳の傷のない子羊を、毎日、焼き尽くすささげ物として主にささげなさい。毎朝それをささげる。
46:14 それといっしょに、毎朝、穀物のささげ物をささげる。エファ升の六分の一の小麦粉に、それを湿らせるための油をヒン升の三分の一添える。これは主への穀物のささげ物で、絶やさずに続ける永遠の定めである。
46:15 こうして毎朝、子羊と穀物のささげ物と油をささげる。これは絶やすことのない焼き尽くすささげ物である。
46:16 主なる神はこう言われる。君主が自分の息子の一人に贈り物をするなら、それはその息子のもの、相続財産として彼らのものとなる。
46:17 しかし、自分の相続財産の中から家来の一人に贈り物をする場合、それは解放の年まで家来のものとなり、その後は君主に返る。君主の相続財産は、その息子たちのものとして残るのだ。
46:18 君主は民の相続地を取り上げて、彼らをその所有地から追い出してはならない。自分の息子たちには、自分の所有地の中から相続地を分け与える。こうすれば、わたしの民が一人一人その所有地を失って散らされることはない。
46:19 それから彼はわたしを、門のわきにある入口を通って、北を向いた祭司たちのための聖なる部屋へと連れて行った。すると、その奥の西のはしに一つの場所があった。
46:20 彼はわたしに言った。「ここは、祭司が償いのささげ物と罪のためのささげ物を煮る場所であり、穀物のささげ物を焼く場所だ。それらを外の庭に運び出して、その聖なる力が民に及ぶことがないようにするためだ。」
46:21 それから彼はわたしを外の庭に連れ出し、庭の四隅を通らせた。すると、庭のそれぞれの隅に、小さな庭があった。
46:22 庭の四隅には囲いのある庭があり、長さ四十キュビト、幅三十キュビトで、四つとも同じ大きさだった。
46:23 その四つの庭の内側には、ぐるりと石を積んだ列が巡らされ、その列の下には、周り一面に煮るためのかまどが作られていた。
46:24 彼はわたしに言った。「これらは調理場だ。神殿で仕える者たちが、ここで民のささげ物を煮るのだ。」
47:1 その人はわたしを神殿の入り口に連れ戻した。すると、神殿の敷居の下から水が東へ向かって流れ出ていた。神殿は東を向いていたからだ。水は神殿の南側の下から、祭壇の南を通って流れ下っていた。
47:2 それから彼はわたしを北の門から外へ連れ出し、外側をぐるりと回って、東を向いた外の門へと導いた。すると、水が南側からちょろちょろと湧き出ていた。
47:3 その人は手に測り縄を持って東へ進み、千キュビトを測ると、わたしを水の中を歩かせた。水はくるぶしまでの深さだった。
47:4 さらに千キュビトを測って、わたしを水の中を歩かせると、水は膝までになった。またさらに千キュビトを測って歩かせると、水は腰までになった。
47:5 また千キュビトを測ると、そこはもう渡れない川になっていた。水がかさを増し、泳がなければ渡れないほどの、越えられない川になっていたのだ。
47:6 彼はわたしに言った。「人の子よ、これを見たか。」そしてわたしを川岸へ連れ戻した。
47:7 戻ってみると、川の両岸には非常にたくさんの木が生えていた。
47:8 彼はわたしに言った。「この水は東の地方へ流れ出て、アラバの低地へ下り、海に注ぐ。海に流れ込むと、その水は生き返る。
47:9 この水が流れ込む所ではどこでも、群がるあらゆる生き物が生きる。魚も非常に多くなる。この水がそこへ流れ込むからだ。水は生き返り、この川が流れ込む所では、すべてのものが生きる。
47:10 その岸には漁師たちが立ち並ぶ。エン・ゲディからエン・エグライムまで、網を広げて干す場所となる。そこの魚は種類も多く、大海の魚のように非常に豊かになる。
47:11 しかし、その沼地や湿地は生き返らず、塩のまま残される。
47:12 川の両岸には、あらゆる種類の実のなる木が生える。その葉は枯れず、実も絶えることがない。毎月新しい実をつける。その水が聖所から流れ出ているからだ。実は食べ物となり、葉は薬となる。」
47:13 主なる神はこう言われる。これが、あなたがたがイスラエルの十二の部族に受け継がせる地の境界だ。ヨセフには二つの分け前を与えよ。
47:14 あなたがたは互いに等しくこの地を受け継ぐ。わたしが手を上げて、あなたがたの先祖に与えると誓った地だ。この地はあなたがたのものとなり、受け継ぐ財産となる。
47:15 これが地の境界だ。北側は、大海からヘトロンの道を通り、ツェダドの入り口に至る。
47:16 ハマト、ベロタ、シブライム——これはダマスコの境界とハマトの境界の間にある——そしてハウランの境界にあるハツェル・ハティコンまで。
47:17 境界は海からハツァル・エノンまで延び、ダマスコの境界に沿い、その北にはハマトの領域がある。これが北側だ。
47:18 東側は、ハウランとダマスコの間、そしてギルアデとイスラエルの地の間を流れるヨルダン川に沿って、その境界から東の海まで測る。これが東側だ。
47:19 南側は、南に向かって、タマルからメリバト・カデシュの水にまで至り、そこから川に沿って大海に注ぐ。これが南側、ネゲブの方だ。
47:20 西側は大海で、南の境界から、ハマトの入り口の向かいまでとなる。これが西側だ。
47:21 こうして、あなたがたはこの地をイスラエルの部族に従って分ける。
47:22 あなたがたはこの地をくじで分け、あなたがた自身と、あなたがたの中に住んで子をもうけた外国人のための、受け継ぐ財産とせよ。彼らをイスラエルの民の中に生まれた者と同じように扱え。彼らもあなたがたとともに、イスラエルの部族の間で地を受け継ぐ。
47:23 外国人が住んでいる部族——そこで、あなたがたは彼に受け継ぐ地を与えよ。主なる神は、こう告げる。
48:1 これが、各部族の名前だ。北の端から始まる。ヘトロンへの道に沿ってレボ・ハマトに向かい、ハツァル・エナンに至る。ダマスコの境の北側で、ハマトのわきを通る。この地は東の端から西の端まで、ダンのもの。一区画だ。
48:2 ダンの領地の隣は、東の端から西の端まで、アシェルのもの。一区画だ。
48:3 アシェルの領地の隣は、東の端から西の端まで、ナフタリのもの。一区画だ。
48:4 ナフタリの領地の隣は、東の端から西の端まで、マナセのもの。一区画だ。
48:5 マナセの領地の隣は、東の端から西の端まで、エフライムのもの。一区画だ。
48:6 エフライムの領地の隣は、東の端から西の端まで、ルベンのもの。一区画だ。
48:7 ルベンの領地の隣は、東の端から西の端まで、ユダのもの。一区画だ。
48:8 ユダの領地の隣、東の端から西の端までは、あなたたちがささげる特別な区画だ。幅は二万五千キュビト。長さはほかの部族の区画と同じで、東の端から西の端までとする。その真ん中に聖所を置く。
48:9 あなたたちが主にささげるこの区画は、長さ二万五千キュビト、幅一万キュビトだ。
48:10 この聖なる区画は、次の人たち、つまり祭司たちのものになる。北側は二万五千キュビト、西側は幅一万キュビト、東側は幅一万キュビト、南側は長さ二万五千キュビトだ。その真ん中に主の聖所を置く。
48:11 この区画は、聖別された祭司たち、つまりツァドクの子孫のものだ。彼らはわたしの務めを守り、イスラエルの人々が迷い出たときにも、レビ人のようには迷わなかった。
48:12 だからこの区画は、地からささげられるものの中でも彼らのための特別なもの、最も聖なるものとなる。レビ人の領地のすぐ隣にある。
48:13 レビ人には、祭司たちの区画のすぐ隣に、長さ二万五千キュビト、幅一万キュビトの土地を与える。全体で長さ二万五千キュビト、幅一万キュビトだ。
48:14 彼らはこの土地の一部でも売ってはならない。ほかの土地と交換してもいけないし、人手に渡してもいけない。これは地の中でも一番良いものであり、主のための聖なるものだからだ。
48:15 二万五千キュビトの長さに沿って残る幅五千キュビトの土地は、聖なるものではなく、町のために使う。人が住む場所や、まわりの空き地にする。町はその真ん中に置く。
48:16 町の広さは次のとおりだ。北側は四千五百キュビト、南側は四千五百キュビト、東側は四千五百キュビト、西側は四千五百キュビトだ。
48:17 町のまわりの空き地は、北へ二百五十キュビト、南へ二百五十キュビト、東へ二百五十キュビト、西へ二百五十キュビトとする。
48:18 聖なる区画に沿って残る土地は、長さが東へ一万キュビト、西へ一万キュビトだ。これは聖なる区画に沿っていて、そこで取れる作物は、町で働く人たちの食べ物になる。
48:19 町で働く人たちは、イスラエルのすべての部族から出て、その土地を耕す。
48:20 ささげる区画全体は、縦二万五千キュビト、横二万五千キュビトの正方形だ。あなたたちはこの四角い土地を、聖なる区画として、町の所有地とともにささげなさい。
48:21 聖なる区画と町の所有地の両側に残る土地は、君主のものになる。それは、聖なる区画の二万五千キュビトの端から東の境まで、また西側では二万五千キュビトの端から西の境までで、ほかの部族の割り当て地に沿っている。これが君主のものだ。聖なる区画と神殿の聖所は、その真ん中にある。
48:22 レビ人の所有地と町の所有地は、君主のものになる土地の真ん中にある。君主のものは、ユダの境とベニヤミンの境の間にあることになる。
48:23 残りの部族については、こうだ。東の端から西の端まで、ベニヤミンに一つの割り当て地。
48:24 ベニヤミンの境に沿って、東の端から西の端まで、シメオンに一つの割り当て地。
48:25 シメオンの境に沿って、東の端から西の端まで、イッサカルに一つの割り当て地。
48:26 イッサカルの境に沿って、東の端から西の端まで、ゼブルンに一つの割り当て地。
48:27 ゼブルンの境に沿って、東の端から西の端まで、ガドに一つの割り当て地。
48:28 ガドの境に沿って、南側、つまり南の端に向かう。その境はタマルから始まり、メリバト・カデシュの水を通り、川に沿って大海、つまり地中海まで達する。
48:29 これが、あなたたちがイスラエルの部族に相続地として割り当てる土地である。これがそれぞれの割り当て分だ、と主なる神は言われる。
48:30 次は、町の大きさである。北側は四千五百キュビト。
48:31 町の門には、イスラエルの部族の名がつけられる。北側には門が三つあり、ルベンの門が一つ、ユダの門が一つ、レビの門が一つ。
48:32 東側は四千五百キュビトで、門が三つある。ヨセフの門が一つ、ベニヤミンの門が一つ、ダンの門が一つ。
48:33 南側は四千五百キュビトで、門が三つある。シメオンの門が一つ、イッサカルの門が一つ、ゼブルンの門が一つ。
48:34 西側は四千五百キュビトで、門が三つある。ガドの門が一つ、アシェルの門が一つ、ナフタリの門が一つ。
48:35 町の周囲は全部で一万八千キュビト。そしてこの町の名は、その日から「主がそこにおられる」と呼ばれる。
ダニエル書
1:1 ユダの王エホヤキムが治めて三年目のこと。バビロンの王ネブカドネツァルがエルサレムに攻めてきて、町を包囲した。
1:2 主は、ユダの王エホヤキムと、神殿の器の一部を、ネブカドネツァルの手にお渡しになった。ネブカドネツァルはそれをシンアルの地へ持ち帰り、自分の神の宮に運び入れ、器を自分の神の宝物庫に納めた。
1:3 王は、宦官の長アシュペナズに命じた。イスラエルの人々の中から、王家の血筋の者や身分の高い家の若者を連れて来るように、と。
1:4 体に欠点がなく、見た目もよく、あらゆる知恵に通じ、知識があり、物事をよく理解し、王の宮殿で仕える力のある若者たちだ。そして、その者たちにカルデア人の文書とことばを学ばせようとした。
1:5 王は彼らのために、毎日、王の食卓の料理と、王が飲むぶどう酒を割り当てた。三年間そうして育て、そのあとで彼らのうちの何人かを王の前に仕えさせるためだった。
1:6 その中に、ユダ族出身のダニエル、ハナンヤ、ミシャエル、アザルヤがいた。
1:7 宦官の長は彼らに新しい名をつけた。ダニエルにはベルテシャツァル、ハナンヤにはシャデラク、ミシャエルにはメシャク、アザルヤにはアベデ・ネゴという名をつけた。
1:8 しかしダニエルは、王の料理と王の飲むぶどう酒で自分を汚すまいと心に決めた。そして、自分を汚さずにすむようにと、宦官の長に願い出た。
1:9 神は、ダニエルが宦官の長から慈しみと思いやりを受けられるようにしてくださった。
1:10 宦官の長はダニエルに言った。「わたしは、あなたたちの食べ物と飲み物をお決めになった王さまが怖いのだ。もし、同じ年ごろのほかの若者より、あなたたちの顔がやつれているのを王さまが見たら、どうなる。おまえたちのせいで、わたしは王さまに首をはねられてしまう。」
1:11 そこでダニエルは、宦官の長がダニエル、ハナンヤ、ミシャエル、アザルヤの世話係に任じた人に言った。
1:12 「どうか、わたしたちを十日間ためしてみてください。わたしたちには野菜だけを食べさせ、水だけを飲ませてください。
1:13 そのうえで、わたしたちの顔と、王さまの食べ物を食べているほかの若者たちの顔を、見比べてみてください。そして、あなたが見たとおりに、わたしたちに対応してください。」
1:14 世話係はこの願いを聞き入れ、四人を十日間ためしてみることにした。
1:15 十日たつと、四人の顔つきは、王の食べ物を食べているどの若者よりも良く、体も健康そうだった。
1:16 それで世話係は、彼らのための王の食べ物とぶどう酒を下げて、代わりに野菜を与えた。
1:17 この四人の若者に、神は学問と、あらゆる書物についての知識と知恵を授けた。ダニエルには、そのうえ、あらゆる幻や夢を読み解く力もあった。
1:18 王が命じた期限が来ると、宦官の長は彼らをネブカドネツァル王のところに連れて行った。
1:19 王が話してみると、その全員の中に、ダニエル、ハナンヤ、ミシャエル、アザルヤに並ぶ者はいなかった。こうして四人は、王に仕えることになった。
1:20 王が知恵や判断について何を尋ねても、四人の答えは、国じゅうのどんな占い師や魔術師よりも十倍すぐれていた。
1:21 ダニエルは、キュロス王の治世第一年まで、その地位にとどまった。
2:1 ネブカドネツァル王の治世の二年目、王はいくつもの夢を見た。その心はかき乱され、眠れなくなった。
2:2 王は、その夢が何なのかを解き明かさせようと、魔術師、まじない師、呪術師、それにカルデア人を呼び集めるよう命じた。彼らはやって来て、王の前に立った。
2:3 王は彼らに言った。「わたしは夢を見た。その夢が何なのか知りたくて、心が落ち着かないのだ。」
2:4 すると、カルデア人がアラム語で王に答えた。「王さま、どうかいつまでもご健勝でありますように。その夢を、家来であるわたしたちにお話しください。そうすれば、その意味を解き明かします。」
2:5 王はカルデア人に答えた。「わたしの決めたことは変わらない。もしその夢と、その意味をわたしに教えられないなら、お前たちは切り刻まれ、お前たちの家はごみの山にされる。
2:6 だが、もしその夢とその意味を教えるなら、わたしから贈り物や褒美、大きな名誉を受けることになる。だから、その夢とその意味をわたしに教えよ。」
2:7 彼らはもう一度答えた。「どうか王さま、その夢を、家来であるわたしたちにお話しください。そうすれば、その意味を解き明かします。」
2:8 王は答えた。「お前たちが時間かせぎをしているのは、よく分かっている。わたしの決めたことが変わらないと、見て取ったからだ。
2:9 もしその夢をわたしに教えられないなら、お前たちへの裁きはただ一つだ。お前たちは、時が変わるのを待とうと、示し合わせて偽りのでたらめをわたしの前で口にするつもりなのだ。だから、その夢を言ってみよ。そうすれば、お前たちがその意味も解き明かせると分かる。」
2:10 カルデア人は王の前で答えた。「王さまのお求めになることに答えられる者など、この地上に一人もいません。どんなに偉大で力ある王も、これまで魔術師やまじない師やカルデア人に、こんなことをお尋ねになったことはありません。
2:11 王さまがお求めになることは、あまりに難しいのです。人と共に住まない神々のほかに、それを王さまの前で明かせる者などいません。」
2:12 これを聞いて、王は怒り、激しく荒れ狂った。そして、バビロンの賢者たちをみな殺しにせよと命じた。
2:13 こうして命令が出され、賢者たちは殺されはじめた。ダニエルとその仲間たちも殺そうと、人々が捜し回った。
2:14 そこでダニエルは、王の親衛隊長アリオクに、慎重に、よく考えて話しかけた。アリオクは、バビロンの賢者たちを殺すために出て来ていた人物だ。
2:15 ダニエルは王の高官アリオクにたずねた。「どうして王さまは、こんなに急な命令を出されたのですか。」すると、アリオクはその事情をダニエルに話した。
2:16 ダニエルは王のところへ行き、時間をいただきたい、そうすれば夢の意味を解き明かします、と願い出た。
2:17 それからダニエルは家に帰り、この事情を仲間のハナンヤ、ミシャエル、アザルヤに話した。
2:18 そして、この秘密について天の神にあわれみを求めるよう頼んだ。自分たちが、バビロンの残りの賢者たちと一緒に殺されずにすむようにと。
2:19 すると、その夜の幻の中で、この秘密がダニエルに明かされた。ダニエルは天の神をほめたたえた。
2:20 ダニエルは言った。「神の名が、永遠から永遠までほめたたえられますように。知恵も力も、神のものだからだ。
2:21 神は時と季節を変え、王を退け、王を立てる。知恵ある者に知恵を与え、悟りのある者に知識を授ける。
2:22 神は、深く隠されたことを明らかにする。闇の中に何があるかを知り、光は神とともにある。
2:23 わたしの先祖の神よ、あなたに感謝し、あなたをほめたたえます。あなたはわたしに知恵と力を与え、今、わたしたちが求めたことを明らかにしてくださいました。王が求めたことを、わたしたちに知らせてくださったのです。」
2:24 そこでダニエルは、王がバビロンの賢者たちを殺すために任命したアリオクのところへ行った。そして、こう言った。「バビロンの賢者たちを殺さないでください。わたしを王さまの前に連れて行ってください。そうすれば、夢の意味を解き明かします。」
2:25 そこでアリオクは、急いでダニエルを王の前に連れて行った。そして、こう言った。「ユダから連れて来られた捕らわれの人の中に、王さまに夢の意味を解き明かせる者を見つけました。」
2:26 王は、ベルテシャツァルとも呼ばれるダニエルにたずねた。「あなたは、わたしが見た夢と、その意味を教えることができるのか。」
2:27 ダニエルは、王の前でこう答えた。「王さまがおたずねになっている秘密は、どんな賢者も、まじない師も、占い師も、王さまに解き明かすことはできません。
2:28 でも、天には秘密を明らかにする神がいます。その神が、これから先に何が起こるかを、ネブカドネツァル王に知らせてくださったのです。王さまが寝床で見た夢、頭に浮かんだ光景は、次のようなものでした。
2:29 王さま、あなたが寝床にいたとき、これから先どうなるのかという思いが心に浮かびました。すると、秘密を明らかにする神が、これから起こることをあなたに知らせてくださったのです。
2:30 この秘密がわたしに明らかにされたのは、わたしがほかのだれよりも知恵があるからではありません。それは、王さまにその意味を知らせるため、そしてあなたが心に抱いた思いを、あなた自身が理解するためなのです。
2:31 王さま、あなたは幻を見ていました。目の前に、一つの大きな像が立っていたのです。その像はとても大きく、まばゆく輝いていて、その姿は見る者を恐れさせるものでした。
2:32 その像の頭は純金でできていました。胸と両腕は銀、腹と両ももは青銅、
2:33 すねは鉄、足は一部が鉄、一部が粘土でできていました。
2:34 あなたが見ていると、一つの石が、人の手によらずに切り出されました。その石は像の鉄と粘土の足を打ち、それを砕きました。
2:35 すると、鉄も粘土も青銅も銀も金も、いっしょに砕けて、夏の脱穀場のもみ殻のようになりました。風がそれを吹き飛ばし、跡形もなくなってしまったのです。しかし、像を打ったその石は、大きな山となって、地の全体を満たしました。
2:36 これがその夢です。では、その意味を王さまの前で申し上げましょう。
2:37 王さま、あなたは王の中の王です。天の神が、あなたに国と、権力と、勢いと、栄光をお与えになりました。
2:38 そして、人の住むところすべてにおいて、野の獣も空の鳥も、神はあなたの手にゆだね、それらすべてを治めさせました。あなたこそ、あの金の頭です。
2:39 あなたの後に、あなたより劣るもう一つの国が起こります。さらに、青銅でできた第三の国が起こり、地の全体を治めます。
2:40 第四の国は、鉄のように強い国です。鉄がすべてを打ち砕き、粉々にするように、その国も、これらすべてを砕き、打ち壊します。
2:41 あなたが見た足と足の指は、一部が陶器の粘土、一部が鉄でした。これは、分かれた国であることを表しています。ただ、鉄が粘土に混じっているのをあなたが見たように、その国には鉄の強さも残っています。
2:42 足の指が一部は鉄、一部は粘土だったように、その国も、一部は強く、一部はもろい国となります。
2:43 鉄が粘土に混じっているのをあなたが見たように、人々は婚姻によって互いに交わろうとします。でも、鉄が粘土と混じり合わないように、彼らが一つに固く結びつくことはありません。
2:44 それらの王たちの時代に、天の神が一つの国を立てられます。その国は、決して滅びることがありません。その支配がほかの民に渡ることもありません。この国は、さきほどのすべての国を砕いて滅ぼし、永遠に立ち続けます。
2:45 人の手によらずに山から石が切り出され、その石が鉄も青銅も粘土も銀も金も砕いたのを、あなたは見ました。偉大な神が、これから起こることを王さまにお示しになったのです。この夢は確かであり、その意味も信頼できます。」
2:46 すると、ネブカドネザル王はひれ伏して、ダニエルを拝んだ。そして、彼に供え物とかおりの高い香をささげるようにと命じた。
2:47 王はダニエルに言った。「あなたたちの神は、まことに神々の神、王たちの主、そして秘密を明らかにする方だ。あなたがこの秘密を解き明かせたのだから。」
2:48 それから王は、ダニエルを高い位につけ、多くのすばらしい贈り物を与えた。そして、彼をバビロン全州を治める者とし、バビロンのすべての知者たちの長とした。
2:49 ダニエルは王に願い出て、シャデラク、メシャク、アベデネゴを、バビロン州の政務を担当する者に任命してもらった。ダニエル自身は、王の宮廷にとどまった。
3:1 ネブカドネザル王は、金の像を造った。高さは六十キュビト、幅は六キュビトあった。そして、それをバビロン州のドラの平野に立てた。
3:2 そして王は、各州の総督、長官、知事、参議官、財務官、裁判官、法律家など、州のすべての役人を呼び集めた。自分が立てた金の像のお披露目の式に、出席させるためだった。
3:3 それで、各州の総督、長官、知事、参議官、財務官、裁判官、法律家など、州のすべての役人が、ネブカドネザル王の立てた像のお披露目の式に集まった。そして、王が立てたその像の前に、立ち並んだ。
3:4 すると、伝令が大声で叫んだ。「すべての民族、国民、それぞれの言語を話す人々よ、あなたたちに命じる。
3:5 角笛、笛、琴、竪琴、ハープ、バグパイプなど、あらゆる楽器の音が鳴りひびいたら、その時、ひれ伏して、ネブカドネザル王が立てた金の像を拝みなさい。
3:6 ひれ伏して拝まない者は、だれでもすぐに、燃えさかる炎の炉の中に投げ込まれる。」
3:7 そういうわけで、すべての民は、角笛、笛、琴、竪琴、ハープなど、あらゆる楽器の音を聞くと、すべての民族、国民、それぞれの言語を話す人々みなが、ひれ伏して、ネブカドネザル王が立てた金の像を拝んだ。
3:8 ちょうどそのとき、何人かのカルデア人が進み出て、ユダヤ人たちを訴えた。
3:9 彼らはネブカドネザル王に言った。「王さま、どうかいつまでも生きられますように。
3:10 王さま、あなたはこう命じられました。角笛、笛、琴、竪琴、ハープ、バグパイプなど、あらゆる楽器の音を聞く者はみな、ひれ伏して金の像を拝まなければならない、と。
3:11 そして、ひれ伏して拝まない者は、だれでも燃えさかる炎の炉の中に投げ込まれる、と。
3:12 ところが、あなたがバビロン州の政務を任せたユダヤ人たち、シャデラク、メシャク、アベデネゴがいます。この者たちは、王さま、あなたを尊重していません。あなたの神々に仕えず、あなたが立てた金の像を拝もうともしないのです。」
3:13 すると、ネブカドネツァルは怒りに燃え、激しく腹を立てて、シャデラク、メシャク、アベデネゴを連れて来るよう命じた。それで、この者たちは王の前に引き出された。
3:14 ネブカドネツァルは彼らに言った。「シャデラク、メシャク、アベデネゴよ、本当なのか。おまえたちがわたしの神々に仕えず、わたしが立てた金の像を拝もうとしないというのは。
3:15 今からでも遅くない。角笛、笛、琴、竪琴、ハープ、バグパイプなど、あらゆる楽器の音を聞いたら、その場でひれ伏し、わたしが造った像を拝む用意があるか。もし拝まないなら、おまえたちはただちに燃えさかる炎の炉の中に投げ込まれる。いったいどんな神が、わたしの手からおまえたちを救い出せるというのか。」
3:16 シャデラク、メシャク、アベデネゴは王に答えた。「ネブカドネツァルさま、このことについては、あなたにお答えする必要はありません。
3:17 わたしたちが仕えている神は、燃えさかる炎の炉からわたしたちを救い出すことがおできになります。王さま、あなたの手からも救い出してくださいます。
3:18 たとえそうでなくても、王さま、はっきり知っておいてください。わたしたちは、あなたの神々には仕えません。あなたが立てた金の像も拝みません。」
3:19 すると、ネブカドネツァルは怒りに満たされ、シャデラク、メシャク、アベデネゴに向けた顔つきが変わった。彼は、炉をいつもの七倍に熱くするよう命じた。
3:20 そして、軍の中でも特に力の強い者たちに、シャデラク、メシャク、アベデネゴを縛り上げ、燃えさかる炎の炉に投げ込めと命じた。
3:21 そこで、この者たちは、上着もズボンも帽子も、そのほかの衣服も身につけたまま縛られ、燃えさかる炎の炉の中に投げ込まれた。
3:22 王の命令が厳しく、炉が異常なほど熱くなっていたので、シャデラク、メシャク、アベデネゴを運び上げた者たちは、その炎に焼き殺された。
3:23 こうして、シャデラク、メシャク、アベデネゴの三人は、縛られたまま燃えさかる炎の炉の中に落ちていった。
3:24 そのとき、ネブカドネツァル王は驚いて、あわてて立ち上がった。そして家臣たちに言った。「わたしたちは、三人の男を縛って火の中に投げ込んだのではないか。」彼らは王に答えた。「王さま、そのとおりです。」
3:25 王は言った。「見ろ。縄を解かれた四人の男が、火の中を歩いているではないか。しかも、少しも傷ついていない。その四人目の姿は、神々の子のようだ。」
3:26 それから、ネブカドネツァル王は燃えさかる炎の炉の入り口に近づいて言った。「最も高い神に仕えるシャデラク、メシャク、アベデネゴよ、外に出て来なさい。」すると、シャデラク、メシャク、アベデネゴは火の中から出て来た。
3:27 総督、長官、地方長官、そして王の顧問たちが集まって来て、その男たちを見た。火は彼らの体に何の力も及ぼさず、髪の毛一本も焦げず、上着も傷んでおらず、火のにおいさえしなかった。
3:28 ネブカドネツァルは言った。「シャデラク、メシャク、アベデネゴの神をほめたたえよう。この神は天使を送り、自分を信頼したしもべたちを助け出した。彼らは王であるわたしの命令に背き、自分たちの神以外のどんな神にも仕えず、ひれ伏すこともないと、自分の身を投げ出したのだ。」
3:29 「だから、わたしは命令する。どの民族、どの国、どの言葉の者であっても、シャデラク、メシャク、アベデネゴの神を悪く言う者は、体を切り裂かれ、その家は廃墟にされる。これほどまでに人を助け出せる神は、ほかにいないからだ。」
3:30 それから王は、バビロン州でシャデラク、メシャク、アベデネゴを高い位に就けた。
4:1 ネブカドネツァル王から、全世界に住むすべての民族、すべての国、すべての言葉の人々へ。あなたがたに豊かな平安があるように。
4:2 最も高い神がわたしにしてくださった数々のしるしと不思議を、みんなに知らせるのがよいと思った。
4:3 その神のしるしは、なんと偉大なことか。その不思議は、なんと力強いことか。その国は永遠に続く国。その支配は、いつの時代にも及ぶ。
4:4 わたしネブカドネツァルは、自分の家で何の心配もなく暮らし、宮殿で栄えていた。
4:5 ところがある夜、わたしは一つの夢を見て、怖くなった。ベッドに横になっているときに浮かんだ思いと、頭に見た幻に、ひどくおびえた。
4:6 それでわたしは命令を出し、バビロンの賢者たちを全員わたしのところに呼び寄せた。その夢が何を意味するのか、教えてもらうためだ。
4:7 すると、占い師や祈祷師、カルデアの学者や星占いをする者たちがやって来た。わたしは彼らに夢を話したが、だれもその意味を教えることができなかった。
4:8 最後に、ダニエルがわたしの前に来た。彼はわたしの神の名にちなんでベルテシャツァルと呼ばれ、聖なる神々の霊が宿っている。わたしは彼に夢を話した。
4:9 「占い師たちの長ベルテシャツァルよ。おまえの中に聖なる神々の霊が宿っていて、どんな秘密もおまえには解けないことを、わたしは知っている。わたしが見た夢の幻と、その意味を話してくれ。
4:10 ベッドに横になって見た幻は、こうだ。見ていると、地の真ん中に一本の木があった。その木はとても高かった。
4:11 その木は大きく育って強くなり、てっぺんは天に届くほどで、地の果てからでも見えるほどだった。
4:12 葉は美しく、実はたくさんなっていて、すべての生き物の食べ物になった。その木の下では野の獣が日陰で休み、枝には空の鳥が巣を作り、あらゆる生き物がその木から養われた。
4:13 ベッドに横になって幻を見ていると、見張り役の聖なる者が一人、天から下りて来た。
4:14 その者は大声で叫んで、こう言った。『この木を切り倒し、枝を払い落とせ。葉をむしり取り、実をまき散らせ。獣は木の下から逃げ去り、鳥は枝から飛び去れ。
4:15 ただし、切り株と根は地面に残しておけ。それを鉄と青銅の輪でしばり、野の若草の中に置け。天からの露に濡れさせ、地の草の中で、獣たちと一緒に暮らさせよ。』
4:16 『その心は人間のものから変えられ、代わりに獣の心が与えられる。そして七つの時が、その者の上を過ぎ去る。
4:17 この宣告は、見張りをする者たちが決めたこと。この求めは、聖なる者たちの言葉による。それは、いと高き方こそが人間の国を支配し、思いのままに誰にでもそれをお与えになり、最も低い者さえもその上に立てられることを、生きているすべての者が知るためだ。』
4:18 これが、わたし、ネブカドネツァル王が見た夢だ。ベルテシャツァルよ、あなたがその意味を解き明かしてくれ。わたしの国の知恵ある者は、誰一人その意味を教えられなかった。でも、あなたにはそれができる。あなたの中には聖なる神々の霊が宿っているからだ。」
4:19 それを聞いて、ベルテシャツァルと呼ばれるダニエルは、しばらくの間ぼう然として立ちつくし、心の中で思い悩んだ。王は言った。「ベルテシャツァルよ、この夢も、その意味も、あなたを悩ませないでほしい。」ベルテシャツァルは答えた。「王さま、どうかこの夢が、あなたを憎む者たちに向けられたものでありますように。その意味が、あなたの敵に向けられたものでありますように。
4:20 あなたがご覧になったあの木、大きく強く育ち、その高さは天にまで届き、地上のどこからでも見えたあの木、
4:21 葉は美しく茂り、実は豊かに実り、すべての生き物の食べ物がそこにあった木。その下には野の獣が住み、枝には空の鳥が巣を作っていた、あの木、
4:22 王さま、それはあなたのことです。あなたは大きく、強くなられました。あなたの偉大さは増し、天にまで届き、その支配は地の果てにまで及んでいます。
4:23 そして王さまは、天から下りて来た見張り役の聖なる者をご覧になりました。その者はこう言いました。『この木を切り倒して滅ぼせ。ただし、切り株と根は地面に残し、鉄と青銅の輪でしばって、野の若草の中に置け。天からの露に濡れさせ、野の獣たちと一緒に暮らさせよ。七つの時が、その者の上を過ぎ去るまで。』
4:24 王さま、その意味はこうです。これは、いと高き方が下された宣告であり、わたしの主君である王さまの身に及ぶものです。
4:25 あなたは人々の中から追い出され、野の獣たちと一緒に暮らすことになります。牛のように草を食べさせられ、天からの露に濡らされます。そして七つの時が、あなたの上を過ぎ去ります。それは、いと高き方こそが人間の国を支配し、思いのままに誰にでもそれをお与えになることを、あなたが知るためです。
4:26 そして、木の切り株と根を残しておけと命じられたのは、天こそが支配していることをあなたが悟ったうえで、あなたの国が再びあなたのものとして立てられるためです。
4:27 ですから王さま、どうかわたしの助言を受け入れてください。正しいことを行って罪を断ち切り、貧しい人にあわれみを示して悪から離れてください。そうすれば、あなたの安らかな日々は続いていくかもしれません。」
4:28 これらすべてのことが、ネブカドネザル王の身に起こった。
4:29 十二か月後、王はバビロンの王宮の屋上を歩いていた。
4:30 王は言った。「これこそ、わたしが自分の強大な力によって王の住まいとして建て、わたしの威光の輝きのために築いた、偉大なバビロンではないか。」
4:31 その言葉がまだ王の口にあるうちに、天から声が降ってきた。「ネブカドネザル王よ、あなたに告げる。王権はあなたから取り去られた。
4:32 あなたは人々の中から追い出され、野の獣たちと一緒に暮らすことになる。牛のように草を食べさせられ、七つの時が、あなたの上を過ぎ去る。それは、いと高き方こそが人間の国を支配し、思いのままに誰にでもそれをお与えになることを、あなたが知るためだ。」
4:33 その瞬間、この言葉はネブカドネザルの上に実現した。彼は人々の中から追い出され、牛のように草を食べ、体は天からの露に濡れた。そしてついに、髪の毛は鷲の羽のように伸び、爪は鳥のかぎ爪のようになった。
4:34 そして、その期間が終わったとき、わたしネブカドネザルは天に目を上げた。すると、わたしの正気が戻ってきた。わたしはいと高き方をたたえ、永遠に生きておられる方を賛美し、あがめた。その方の支配は永遠に続く支配であり、その王国は代々限りなく続く。
4:35 地に住むすべての人は、ないもののように取るに足りない。神は、天の軍勢に対しても、地に住む人々に対しても、思いのままに事を行われる。だれも神の手を止めて、「何をしているのですか」と言うことはできない。
4:36 そのとき、わたしの理性がもどってきた。そして、わたしの国の栄光のために、わたしの威厳と輝きももどってきた。わたしの相談役や高官たちがまたわたしをたずねてきて、わたしは国の王としてしっかり立て直され、前よりもさらに大きな力を持つようになった。
4:37 だから今、このわたしネブカデネザルは、天の王をほめたたえ、あがめ、敬う。この方のすることはすべて真実で、その道は正しい。そして、高ぶって歩む者を、この方は低くすることができる。
5:1 ベルシャツァル王は、千人の高官を招いて盛大な宴会を開いた。そして、その千人の前でぶどう酒を飲んでいた。
5:2 ベルシャツァルは酒を飲みながら、父ネブカドネツァルがエルサレムの神殿から持ち出した金と銀の器を持ってくるように命じた。王と高官たち、王の妻たちやそばめたちが、その器で酒を飲むためだった。
5:3 そこで、エルサレムにある神の宮の神殿から持ち出された金の器が運ばれてきた。王と高官たち、王の妻たちやそばめたちは、その器で酒を飲んだ。
5:4 彼らはぶどう酒を飲みながら、金・銀・青銅・鉄・木・石で造った神々をたたえた。
5:5 ちょうどそのとき、人間の手の指が現れて、王宮の壁の漆喰に文字を書き始めた。明かりの向かい側だった。王は、書いていくその手を見た。
5:6 すると王の顔色は変わり、恐ろしい思いにおそわれた。腰の関節はゆるみ、ひざはがくがくと震えてぶつかり合った。
5:7 王は大声で叫び、まじない師やカルデアの占星術師、占い師たちを呼び入れさせた。そしてバビロンの知者たちに言った。「この文字を読み、その意味を解き明かす者には、だれであろうと紫の衣を着せ、首に金の鎖をかけ、この国で第三の位につかせよう。」
5:8 そこで王の知者たちがみな入ってきた。しかし彼らは、その文字を読むことも、その意味を王に告げることもできなかった。
5:9 これを見て、ベルシャツァル王はますますおびえ、顔色は変わり果てた。高官たちも、どうしてよいかわからず取り乱した。
5:10 王と高官たちの声を聞いて、王妃が宴会の広間に入ってきた。そして王妃は言った。「王よ、いつまでもお元気でいらっしゃいますように。どうか思い悩まないでください。顔色を変える必要もありません。
5:11 この国には、聖なる神々の霊が宿っている人がいます。あなたの父上の時代に、その人のうちに、神々の知恵のような光と洞察と知恵があることがわかりました。父上であるネブカドネツァル王は、その人を、魔術師・まじない師・カルデアの占星術師・占い師たちの長に任命なさいました。
5:12 この人ダニエルには、すぐれた霊と知識と洞察力があり、夢を解き明かし、なぞを説き、難しい問題を解くことができると認められていました。王は彼にベルテシャツァルという名をつけられました。今すぐダニエルをお呼びください。きっと、その意味を解き明かしてくれるでしょう。」
5:13 こうしてダニエルが王の前に連れて来られた。王はダニエルに言った。「おまえが、あの父上がユダから連れて来た捕らわれの民、ユダの人ダニエルか。
5:14 おまえのことは聞いている。おまえのうちには神々の霊が宿っていて、光と洞察、そしてすぐれた知恵があるそうだな。
5:15 今、この文字を読んで、その意味をわたしに教えるようにと、知恵ある者や占い師たちを呼び寄せた。だが、彼らはこの言葉の意味を解き明かすことができなかった。
5:16 だが、おまえは意味を解き明かし、難しい問題を解くことができると聞いている。もしこの文字を読み、その意味をわたしに教えることができたなら、おまえに紫の衣を着せ、首には金の鎖をかけ、この国の第三の位に就かせよう。」
5:17 するとダニエルは王の前で答えた。「その贈り物はご自分のものになさってください。褒美はほかの方にお与えください。それでも、わたしはこの文字を王のために読み、その意味をお教えしましょう。
5:18 王よ、いと高き神は、あなたの父上ネブカドネツァルに、王としての位と偉大さ、栄光と威厳をお与えになりました。
5:19 神が与えたその偉大さゆえに、あらゆる民族・国民・言葉の人々が、彼の前で震えおののきました。彼は殺したい者を殺し、生かしたい者を生かし、上げたい者を上げ、下げたい者を下げました。
5:20 しかし彼の心が高ぶり、その霊が傲慢で頑なになると、彼は王座から引き下ろされ、栄光を取り上げられました。
5:21 彼は人々の中から追い出され、その心は獣のようにされ、野ろばと共に住み、牛のように草を食べ、体は天の露にぬれました。こうして彼はついに悟ったのです。いと高き神が人の国を支配し、御心のままにだれでも王として立てられる、ということを。
5:22 その子であるあなた、ベルシャツァルよ。あなたはこれらすべてを知っていながら、心を低くしませんでした。
5:23 それどころか、天の主に向かって高ぶり、その神殿の器を運び込ませ、あなたも高官たちも、あなたの妻やそばめたちも、それで酒を飲みました。そして、見ることも聞くことも知ることもない、銀や金、青銅や鉄、木や石で造った神々をたたえ、あなたの息を手に握り、あなたのすべての歩みを支配しておられる神を、あがめませんでした。
5:24 だから、神の前からあの手が送られ、この文字が書き記されたのです。
5:25 これが、書き記された文字だ。メネ、メネ、テケル、パルシン。
5:26 その言葉の意味はこうだ。メネ——神があなたの王国の日数を数え、それを終わらせた。
5:27 テケル——あなたは秤にかけられ、目方が足りないとわかった。
5:28 ペレス——あなたの王国は分けられ、メディアとペルシアに与えられる。」
5:29 すると、ベルシャツァルは命じて、ダニエルに紫の衣を着せ、金の鎖を首にかけさせた。そして、彼が王国で第三の位に就く支配者になる、と国じゅうに布告した。
5:30 その夜、カルデア人の王ベルシャツァルは殺された。
5:31 そして、メディア人ダレイオスが王国を受け継いだ。彼は六十二歳ぐらいだった。
6:1 ダレイオスは、王国全体を治めさせるために、百二十人の総督を国じゅうに立てることにした。
6:2 その上に三人の大臣を置き、ダニエルはその一人だった。総督たちがこの三人に報告をして、王が損害を受けないようにするためだった。
6:3 このダニエルは、ずばぬけた霊を持っていたので、ほかの大臣たちや総督たちよりも優れていた。それで王は、彼を王国全体の上に立てようと考えた。
6:4 そこで大臣たちや総督たちは、国の政務に関してダニエルを訴える口実を探した。しかし、どんな口実も落ち度も見つけられなかった。彼は忠実で、怠慢も落ち度も見当たらなかったからだ。
6:5 そこで、この者たちは言った。「ダニエルを訴える口実は、彼の神の律法に関してでなければ、何も見つけられそうにない。」
6:6 それから、この大臣たちや総督たちは、そろって王のもとに押しかけて、こう言った。「ダリヨス王、いつまでも生きられますように。
6:7 王国の大臣、長官、総督、参議、地方長官は、みんなで相談しました。王が一つの決まりを定め、こういう禁令を出してくださるように、と。これから三十日の間、王よ、あなた以外の神や人に願い事をする者はだれでも、ライオンの穴に投げ込まれる、というものです。
6:8 王よ、今この禁令を定め、文書に署名してください。メディアとペルシアの法律のように取り消せない、変えられないものにするのです。」
6:9 そこでダリヨス王は、その文書と禁令に署名した。
6:10 ダニエルは、その文書に署名がされたことを知った。それでも家に帰ると、屋上の部屋の窓をエルサレムのほうに開けて、いつものように一日に三度、ひざまずいて祈り、自分の神に感謝をささげた。それまでずっとしてきた通りだった。
6:11 すると、あの者たちは押しかけて来て、ダニエルが自分の神に祈り、願っているのを見つけた。
6:12 そこで彼らは王のところに行き、王の禁令についてこう言った。「王よ、あなたはこう署名なさったではありませんか。これから三十日の間、王よ、あなた以外の神や人に願い事をする者はだれでも、ライオンの穴に投げ込まれる、と。」王は答えた。「その通りだ。メディアとペルシアの法律のように、取り消せない。」
6:13 すると彼らは王に言った。「王よ、ユダから連れて来られた捕らわれの民の一人であるダニエルは、あなたのことも、あなたが署名した禁令も気にかけていません。今も一日に三度、自分の願い事をしています。」
6:14 これを聞いた王は、非常に心を痛めた。そしてダニエルを助けようと決心し、日が沈むまで彼を救い出そうと手を尽くした。
6:15 すると、あの者たちは王のもとに押しかけて来て言った。「王よ、ご存じのはずです。メディアとペルシアの法律では、王が定めた禁令や決まりは、どれも変えられないのです。」
6:16 そこで王が命じると、人々はダニエルを連れて来て、ライオンの穴に投げ込んだ。王はダニエルに言った。「あなたがいつも仕えているあなたの神が、あなたを救い出してくださるように。」
6:17 そして一つの石が運ばれて来て、穴の口の上に置かれた。王はそれに自分の印章と、高官たちの印章で封をした。ダニエルのことについて、何も変えられないようにするためだった。
6:18 その夜、王は宮殿に戻り、何も食べずに過ごした。楽しみになるものは何も運ばせず、一睡もできなかった。
6:19 翌朝、王は夜明けとともに起き出し、大急ぎでライオンの穴へ向かった。
6:20 穴に近づくと、王は悲痛な声でダニエルを呼んだ。「ダニエル、生きておられる神のしもべよ。あなたがいつも仕えているあなたの神は、あなたをライオンから救い出すことができただろうか。」
6:21 するとダニエルは王に答えた。「王よ、どうかいつまでもご健在で。
6:22 わたしの神が天使を送って、ライオンたちの口をふさいでくださったのです。だからライオンはわたしを傷つけませんでした。神の前で、わたしに罪がないと認められたからです。それに王よ、あなたに対しても、わたしは何も悪いことをしていません。」
6:23 王はこれを聞いて大喜びし、ダニエルを穴から引き上げるよう命じた。ダニエルは穴から引き上げられたが、体には傷一つ見つからなかった。神を信じていたからだ。
6:24 それから王は命じ、ダニエルを訴えた者たちを連れて来させた。そして彼らを、その子どもや妻もろとも、ライオンの穴に投げ込ませた。彼らが穴の底に着かないうちに、ライオンが襲いかかり、骨まですべて噛み砕いてしまった。
6:25 そこでダレイオス王は、世界中に住むすべての民族、すべての国民、あらゆる言葉を話す人々に、こう書き送った。「あなたがたに、豊かな平安がありますように。
6:26 わたしはここに命じる。わたしの国のどこにいても、人々はダニエルの神の前で、おそれおののかなければならない。この神こそ、生きておられる神。永遠に変わらずおられる方だ。その国は決してほろびず、その支配は終わりの時まで続く。
6:27 この神は救い出し、助け出す方。天でも地でも、しるしと不思議なわざを行う。ダニエルをライオンの力から救い出したのも、この神なのだ。」
6:28 こうしてこのダニエルは、ダレイオスの治世にも、ペルシア人キュロスの治世にも、栄えて活躍した。
7:1 バビロンの王ベルシャツァルの治世の第一年、ダニエルは寝床で夢を見た。眠っている間に、いくつもの光景が頭に浮かんだ。彼はその夢を書き留め、大事な点を記録した。
7:2 ダニエルはこう語った。「わたしは夜、幻の中で見た。すると、天の四方から風が吹き荒れ、大きな海をかき立てていた。
7:3 そして、四頭の大きな獣が海から上がってきた。どれも姿がそれぞれ違っていた。
7:4 一頭目はライオンのようで、鷲の翼を持っていた。見ていると、その翼はむしり取られ、獣は地面から持ち上げられ、人間のように二本の足で立たされた。そして人間の心が与えられた。
7:5 見ると、もう一頭、二番目の獣がいた。熊のような姿で、体の片側を持ち上げていた。口の中の歯の間には、三本の肋骨をくわえていた。その獣に、こう告げる声がした。「立ち上がれ。肉をたらふく食らえ。」
7:6 その後、さらに見ていると、もう一頭の獣がいた。ヒョウのような姿で、背中には鳥の翼が四つあった。その獣には頭が四つあり、支配する力が与えられた。
7:7 その後、夜の幻の中で、わたしはさらに見た。すると、四番目の獣がいた。恐ろしく、身の毛もよだつほどで、並外れて強かった。鉄の大きな歯を持ち、獲物を食らい、かみ砕き、残ったものを足で踏みつけた。この獣は、これまでのどの獣とも違っていて、十本の角を持っていた。
7:8 わたしがその角をじっと見ていると、その間から、もう一本の小さな角が生えてきた。すると、前からあった角のうち三本が、その小さな角の前で根こそぎ引き抜かれた。見ると、その角には人間の目のような目があり、大きなことを語る口があった。
7:9 なおも見ていると、いくつもの王座が据えられ、はるか昔からおられる方が座に着いた。その衣は雪のように白く、頭の髪は洗いたての羊毛のようだった。王座は燃える炎、その車輪は燃えさかる火だった。
7:10 火の川が、その方の前から流れ出ていた。千の千倍もの者がその方に仕え、一万の一万倍もの者がその前に立っていた。裁きの座が開かれ、いくつもの書物が開かれた。
7:11 それからわたしは、あの角が語る大きな言葉の声のせいで、じっと見続けた。見ていると、ついにその獣は殺され、体は滅ぼされ、燃える火の中に投げ込まれて焼かれた。
7:12 残りの獣たちは、支配する力を取り上げられた。だが、その命はしばらくの間、定められた時まで延ばされた。
7:13 夜の幻を、わたしはさらに見続けた。すると、人の子のような方が、天の雲に乗って来られた。その方は「昔からおられる方」のもとに進み、その前に導かれた。
7:14 この方に、支配する力と栄光と国が与えられた。あらゆる民族、あらゆる国、あらゆる言葉の人々が、この方に仕えることになった。その支配は永遠に続く支配で、消え去ることがない。その国は決して滅びない。
7:15 わたしダニエルは、心が深く乱れた。頭に浮かんだいくつもの幻が、わたしを不安でいっぱいにした。
7:16 そこでわたしは、そばに立っている一人に近づいて、このすべてが何を意味するのかをたずねた。すると、その者はわたしに答えて、いろいろなことの意味を教えてくれた。
7:17 「この四頭の大きな獣は、地上に立ち上がる四人の王だ。
7:18 だが、いと高き方の聖なる者たちが国を受け取り、その国を永遠に、いつまでもいつまでも保ち続ける。」
7:19 それからわたしは、四頭目の獣について本当のことを知りたいと思った。この獣はほかのどの獣とも違っていて、とても恐ろしかった。鉄の歯と青銅の爪を持ち、食い荒らし、かみ砕き、残ったものを足で踏みつけていた。
7:20 また、その頭にあった十本の角についても知りたかった。さらに、あとから生えてきた一本の角のことも。その角が出てくると、前にあった三本が抜け落ちた。その角には目があり、大きなことを語る口があって、その姿はほかの角よりも大きく見えた。
7:21 見ていると、その角は聖なる者たちに戦いをいどみ、彼らを打ち負かしていた。
7:22 だが、ついに「昔からおられる方」が来られて、いと高き方の聖なる者たちのために裁きが下された。そして、その時が来て、聖なる者たちが国を受け継いだ。
7:23 その者はこう言った。「四頭目の獣は、地上に現れる四番目の国だ。この国はほかのどの国とも違っていて、世界じゅうを食い尽くし、踏みにじり、かみ砕く。
7:24 十本の角は、この国から立ち上がる十人の王だ。そのあとに、もう一人の王が立ち上がる。この王はそれまでの王たちとは違っていて、三人の王を倒してしまう。
7:25 その王は、いと高き方に逆らって大きなことを言い、いと高き方の聖なる者たちを苦しめ続ける。そして、定められた時と決まりを変えようとする。聖なる者たちは、一つの時と、二つの時と、半分の時のあいだ、その手に渡されてしまう。
7:26 しかし、裁きの場が開かれる。すると、その王の支配権は取り上げられ、最後まで徹底的に滅ぼされ、消し去られてしまう。
7:27 そして、天の下にあるすべての国々の王権と支配と大いなる力は、いと高き方の聖なる者である民に与えられる。その国は永遠に続く国であり、すべての支配者がこの民に仕え、従うようになる。」
7:28 話はここまでだ。わたしダニエルは、心の中でひどく思い悩み、顔色まで変わってしまった。だが、わたしはこのことを胸の内にしまっておいた。
8:1 ベルシャツァル王が治めて三年目のこと、わたしダニエルに一つの幻が示された。以前わたしに示されたものに続く幻だった。
8:2 その幻の中で、わたしはこう見た。見ていると、わたしはエラム州にあるシュシャンの城にいた。さらに幻の中で見ていると、わたしはウライ川のほとりにいた。
8:3 わたしが目を上げて見ると、川のほとりに一頭の雄羊が立っていた。その羊には二本の角があった。角はどちらも長かったが、片方がもう片方より長く、その長いほうがあとから伸びてきたものだった。
8:4 わたしが見ていると、その雄羊は西へ、北へ、南へと突き進んでいった。どんな獣も、その前に立ちはだかることはできず、その手から救い出せるものは一つもなかった。雄羊は思いのままにふるまい、勢いを増していった。
8:5 わたしがそれを考えていると、一頭の雄やぎが西のほうからやって来た。それは地面に触れないほどの速さで、地の全面を進んで来た。その雄やぎには、両目のあいだに目立つ一本の角があった。
8:6 雄やぎは、あの二本の角を持つ雄羊、つまりわたしが川のほとりに立っているのを見たあの羊のところまで来ると、猛烈な勢いでそれに向かって突進した。
8:7 雄やぎが雄羊のところまで来るのを、わたしは見た。雄やぎは激しく怒って雄羊に打ちかかり、その二本の角を打ち砕いた。雄羊には、もうそれに立ち向かう力がなかった。雄やぎは雄羊を地に投げ倒し、踏みつけた。雄羊をその力から救い出せるものは、一つもなかった。
8:8 こうして雄やぎは、非常に強大になった。しかし、その勢いが頂点に達したとき、あの大きな角が折れてしまった。そして、その代わりに、天の四方に向かって、四本の目立つ角が生えてきた。
8:9 そのうちの一本から、また別の小さな角が生えてきた。それは南へ、東へ、そして美しい国へと、ぐんぐん伸びて大きくなっていった。
8:10 その角は、天の軍勢に届くほど大きくなった。そして、その軍勢や星のいくつかを地に投げ落とし、踏みつけた。
8:11 それどころか、その角は、天の軍勢を率いる君にまで高ぶった。そして、その君にささげる、日ごとのささげ物を取り上げ、聖所のある場所を投げ倒した。
8:12 人々の反逆のせいで、軍勢は日ごとのささげ物とともに、その角に引き渡された。角は真理を地に投げ捨て、思うままにふるまって栄えた。
8:13 そのとき、ひとりの聖なる者が話しているのが聞こえた。すると、もうひとりの聖なる者が、その話している者に尋ねた。「幻に示されたこのことは、いつまで続くのか。日ごとのささげ物が取り上げられ、荒廃をもたらす反逆が行われ、聖所と軍勢が踏みにじられるままにされるのは、いつまでなのか。」
8:14 その者はわたしに言った。「二千三百の夕と朝が過ぎるまでだ。そのあとで、聖所はもとどおりに清められる。」
8:15 わたしダニエルがこの幻を見て、その意味を知ろうとしていたとき、見よ、人のような姿のものが、わたしの前に立っていた。
8:16 すると、ウライ川の岸のあいだから、人の声が聞こえた。その声はこう呼びかけた。「ガブリエル、この人に幻の意味を悟らせなさい。」
8:17 ガブリエルは、わたしの立っているところに近づいてきた。彼が来ると、わたしは恐ろしくなって、うつ伏せに倒れた。すると彼はわたしに言った。「人の子よ、悟りなさい。この幻は、終わりの時に関わることなのだ。」
8:18 彼がわたしに話しているあいだ、わたしは地面にうつ伏せたまま、深い眠りに落ちてしまった。しかし彼はわたしに触れ、わたしを立ち上がらせた。
8:19 そして彼は言った。「これから、神の怒りが終わるときに何が起こるのかを、あなたに教えよう。この幻は、定められた終わりの時に関わることだからだ。
8:20 あなたが見た二本の角を持つ雄羊は、メディアとペルシャの王たちのことだ。
8:21 毛深い雄やぎは、ギリシャの王のことだ。その両目のあいだにある大きな角は、最初の王を表している。
8:22 その角が折れて、代わりに四本の角が生えてきたのは、その国から四つの王国が起こることを意味している。ただし、最初の王ほどの力はない。
8:23 これらの王国の終わりのころ、悪事が極まったとき、一人の王が現れる。その顔つきは険しく、たくみに人をあざむく者だ。
8:24 彼の力は強大になる。だが、それは彼自身の力によるものではない。彼はおそろしいほどの破壊を行い、何をしても成功する。強い者たちを滅ぼし、神の民をも滅ぼす。
8:25 彼はずる賢く立ち回り、その手であざむきを成功させる。心の中で高ぶり、人々が油断しているすきに、多くの者を滅ぼす。さらに彼は、君主たちの君主にさえ立ち向かう。しかし最後には、人の手によらずに打ち砕かれる。
8:26 告げられた、夕と朝についての幻は真実だ。しかしあなたは、この幻を秘めておきなさい。それは、はるか先の日々に関わることだからだ。」
8:27 わたしダニエルは、その後しばらく、ぐったりして病気になってしまった。それから起き上がり、王の仕事を続けた。だが、この幻のことでわたしは打ちのめされたままで、その意味を理解できる者はいなかった。
9:1 メディア人アハシュエロスの子ダレイオスが、カルデヤ人の国を治める王になった。その第一年のことである。
9:2 その治世の第一年、わたしダニエルは、いくつかの書物を読んでいた。そして、主が預言者エレミヤに語られた年数のことを、そこから読み取った。それによれば、エルサレムの荒廃が終わるまでには、七十年かかるということだった。
9:3 そこでわたしは、主なる神に顔を向けて祈り求めた。断食をし、粗い布を身にまとい、灰をかぶって、祈りと願いをささげたのだ。
9:4 わたしは自分の神である主に祈り、罪を告白してこう言った。「ああ、主よ。あなたは偉大で、畏れ多い神です。あなたを愛し、あなたの戒めを守る人には、契約を守り、変わらぬ慈しみを注いでくださいます。
9:5 わたしたちは罪を犯しました。悪を行い、背きました。あなたに反抗し、あなたの戒めと定めからそれてしまいました。
9:6 あなたの名によって、わたしたちの王や指導者、先祖、そして国のすべての民に語りかけた預言者たち――あなたのしもべである彼らの言葉に、わたしたちは耳を傾けませんでした。
9:7 主よ、正しいのはあなたです。恥を受けるべきなのは、わたしたちのほうです。それは今日のとおりです。ユダの人々も、エルサレムに住む人々も、イスラエルのすべての人も――近くにいる者も、あなたに背いた罪のために追いやられて遠くの国々にいる者も、みな同じです。
9:8 主よ、恥を受けるのはわたしたちです。わたしたちの王も、指導者も、先祖も、みなあなたに罪を犯したからです。
9:9 けれども、わたしたちの神である主には、あわれみと赦しがあります。わたしたちは、その主に反抗してしまったのに。
9:10 わたしたちは、自分の神である主の声に聞き従いませんでした。主がしもべである預言者たちを通して与えてくださった教えに、従って歩もうとしなかったのです。
9:11 イスラエルの民はみな、あなたの律法を破り、あなたの声を聞こうとせず、そむき去りました。だから、神のしもべモーセの律法に書かれている、あののろいと誓いのさばきが、わたしたちの上に注がれたのです。わたしたちがあなたに罪を犯したからです。
9:12 こうして主は、わたしたちとわたしたちを治めた者たちに向けて語られたことばを、そのとおりに実行されました。大きな災いをわたしたちの上に下されたのです。エルサレムに起こったようなことは、天の下のどこにも起きたことがありませんでした。
9:13 モーセの律法に書かれているとおり、このすべての災いがわたしたちの上に降りかかりました。それでもわたしたちは、自分の罪から立ち返り、あなたの真理を悟ろうとして、わたしたちの神である主に願い求めることをしませんでした。
9:14 だから主は、この災いをじっと見張っていて、わたしたちの上に下されました。わたしたちの神である主は、なさることすべてにおいて正しい方だからです。それなのに、わたしたちはその声に聞き従いませんでした。
9:15 今、わたしたちの神、主よ。あなたは力強い御手で、ご自分の民をエジプトの地から導き出し、今日に至るまで名をあげてこられました。わたしたちは罪を犯し、悪いことをしてしまいました。
9:16 主よ、あなたのすべての正しさにふさわしく、どうかあなたの怒りと憤りを、あなたの町エルサレム、あなたの聖なる山から離してください。わたしたちの罪と、わたしたちの先祖の悪いおこないのために、エルサレムとあなたの民は、まわりのすべての人々の物笑いの種となっているのです。
9:17 今、わたしたちの神よ。しもべの祈りと願いを聞いてください。そして、荒れ果てたあなたの聖所に、御顔の光を輝かせてください。主よ、あなたご自身のために。
9:18 わたしの神よ、耳を傾けて聞いてください。目を開いて、わたしたちの荒れ果てたありさまと、あなたの名で呼ばれるこの町をご覧ください。わたしたちがあなたの前に願いをささげるのは、自分たちが正しいからではなく、あなたの大きなあわれみにすがってのことです。
9:19 主よ、聞いてください。主よ、赦してください。主よ、心を向けて、行ってください。ためらわないでください。わたしの神よ、あなたご自身のために。この町も、この民も、あなたの名で呼ばれているのですから。」
9:20 わたしがなおも語り、祈り、自分の罪と、わたしの民イスラエルの罪を告白し、わたしの神の聖なる山のために、わたしの神である主の前に願いをささげていたとき、
9:21 わたしがなおも祈りのことばを口にしていると、はじめに幻の中で見たあの人、ガブリエルが、すばやく飛んできて、夕方のささげ物のころ、わたしにふれた。
9:22 彼はわたしに教え、語りかけて言った。「ダニエルよ、わたしは今、あなたに悟りの知恵を授けるために出て来た。
9:23 あなたが願い始めたそのとき、みことばが出された。わたしはそれを告げるために来たのだ。あなたは深く愛されているのだから。だから、このことばをよく考え、幻の意味を悟りなさい。
9:24 あなたの民と、あなたの聖なる町には、七十週の時が定められている。それは、そむきの罪を終わらせ、罪に決着をつけ、悪をつぐない、永遠の義をもたらし、幻と預言を封じ、最も聖なるものに油をそそぐためである。
9:25 だから、これを知り、よく悟りなさい。エルサレムを元どおりにして建て直せという命令が出されてから、油そそがれた者、すなわち君主が現れるまで、七週ある。そのあと、六十二週の間に、エルサレムは広場と堀を備えて建て直される。しかし、それは苦しみの時代のことだ。
9:26 そして、六十二週の後、油そそがれた者は断ち切られ、彼には何も残らない。次に来る君主の民が、この町と聖なる場所を滅ぼす。その終わりは洪水のように押し寄せ、戦いが終わるまで、定められた荒廃が続く。
9:27 彼は多くの者と、一週の間、固い契約を結ぶ。しかし、その週の半ばで、彼はいけにえとささげ物をやめさせる。そして、憎むべきものの翼の上に、荒らす者が現れる。定められた終わりがその荒らす者の上に注がれるまで、それは続く。」
10:1 ペルシアの王キュロスの治世第三年、ベルテシャツァルとも呼ばれるダニエルに、一つのことばが示された。そのことばは真実で、大きな戦いのことだった。ダニエルはそのことばを理解し、その幻の意味を悟った。
10:2 そのころ、わたしダニエルは三週間の間、嘆き悲しんでいた。
10:3 わたしはおいしい物を食べず、肉もぶどう酒も口にせず、三週間が終わるまで、体に香油もつけなかった。
10:4 第一の月の二十四日、わたしは大きな川、すなわちチグリス川のほとりにいた。
10:5 目を上げて見ると、亜麻布の衣を着た一人の人がいた。腰にはウファズの純金の帯を締めていた。
10:6 その体は宝石のように輝き、顔は稲妻のよう、目は燃えるたいまつのようだった。腕と足は磨いた青銅のように光り、語る声は大群衆のざわめきのようだった。
10:7 この幻を見たのは、わたしダニエルだけだった。いっしょにいた人たちは、それを見なかった。でも激しい恐れに襲われて、みんな逃げて身を隠した。
10:8 こうしてわたしは一人だけ残されて、この大きな幻を見た。すると力がすっかり抜けてしまった。顔は死人のように青ざめ、体には力が残っていなかった。
10:9 それでもわたしは、その人の語る声を聞いた。その声を聞いたとき、わたしは深い眠りに落ちて、うつ伏せに地面に倒れた。
10:10 すると、一つの手がわたしに触れ、わたしを揺り動かして、両手と両膝をつかせた。
10:11 その人はわたしに言った。「ダニエル、深く愛されている人よ、わたしがあなたに語る言葉をよく聞いて、理解しなさい。そして立ち上がりなさい。わたしは今、あなたのもとに送られてきたのだ。」この言葉を聞いて、わたしは震えながら立ち上がった。
10:12 その人は続けて言った。「恐れることはない、ダニエル。あなたが理解しようと心を定め、あなたの神の前で自分を低くした、その最初の日から、あなたの言葉は聞き届けられていた。わたしは、その言葉のために来たのだ。
10:13 でも、ペルシア王国を治める君が、二十一日間わたしの前に立ちはだかった。すると、最も高い君の一人ミカエルが、わたしを助けに来てくれた。それでわたしは、ペルシアの王たちのところにとどまっていた。
10:14 わたしは、終わりの日にあなたの民に起こることを、あなたに理解させるために来た。この幻は、まだ先の日々にかかわるものだからだ。」
10:15 その人がこう語っている間、わたしは顔を地面に向けて、何も言えなくなっていた。
10:16 すると、人の姿をしたものが、わたしの唇に触れた。わたしは口を開いて話し始め、目の前に立つ方に言った。「わたしの主よ、この幻のために激しい苦しみに襲われ、力が残っていません。
10:17 このわたしのようなしもべが、どうして主であるあなたと話せるでしょうか。今のわたしには力が残っておらず、息さえもなくなっています。」
10:18 すると、人の姿をしたものが再びわたしに触れ、わたしを力づけてくれた。
10:19 そして、こう言った。「恐れることはない。とても愛されている人よ。安心しなさい。強くなりなさい。しっかりしなさい。」こう語りかけられると、わたしは力を取り戻し、こう言った。「わたしの主よ、どうか話してください。あなたが力づけてくださったのですから。」
10:20 すると、その方は言った。「わたしが何のためにあなたのところへ来たか、分かっているか。わたしは今から戻って、ペルシアを治める者と戦う。わたしが出ていくと、次はギリシアを治める者がやって来る。
10:21 でも、その前に、真理の書に記されていることをあなたに伝えておこう。これらのことで、わたしと共に立ち向かってくれる者は、あなたたちを守る者ミカエルのほかにはいない。
11:1 わたしは、メディア人ダレイオスの治世の第一年に立ち上がり、彼を支え、守る者となった。
11:2 さあ、今から真理をあなたに伝えよう。ペルシアには、さらに三人の王が立つ。そして四人目の王は、ほかのだれよりも大きな富を築く。彼はその富で力をつけると、すべての者をあおり立てて、ギリシアの国に立ち向かわせる。
11:3 それから、一人の強い王が立ち上がる。彼は大きな力で支配し、思いどおりに事を行う。
11:4 ところが、彼が勢いを増したとき、その王国は壊され、天の四方に分け散らされる。彼の子孫に受け継がれることも、彼が支配したような形で残ることもない。その王国は根こそぎ引き抜かれ、子孫以外の者たちのものになるのだ。
11:5 南の王は強くなる。しかし、その将軍の一人が、彼よりもさらに強くなり、大きな力で支配する。その支配は非常に大きなものになる。
11:6 何年かたつと、彼らは手を結ぶ。和解のために、南の王の娘が北の王のもとへ嫁ぐ。しかし、彼女はその力を保つことができず、王も、その力も長くは続かない。彼女は、彼女を連れて来た者たちや、彼女の父、そして彼女を支えた者たちともども、その時代に見捨てられてしまう。
11:7 しかし、彼女の一族から一人が立ち上がり、その父の跡を継ぐ。彼は軍を率いて攻め上り、北の王の要塞に攻め込み、彼らと戦って勝利する。
11:8 彼はその神々の像や鋳造した偶像、そして銀や金の高価な器を戦利品としてエジプトに持ち帰る。そのあと数年間、彼は北の王に手を出さずにいる。
11:9 北の王は南の王の国に攻め込むが、結局は自分の国へ引き返す。
11:10 北の王の息子たちは戦いを起こし、大軍を集める。その一人が洪水のように押し寄せ、国々を通り抜けて進み、さらに攻め上って南の王の要塞にまで迫る。
11:11 これに南の王は激しく怒り、出て行って北の王と戦う。北の王は大軍を繰り出すが、その軍勢は南の王の手に渡される。
11:12 その大軍を打ち破ると、南の王は思い上がる。数え切れないほどの敵を倒すが、その勝利も長くは続かない。
11:13 北の王はまた戻って来て、前よりも大きな軍勢を整える。そして何年かたつと、大軍と多くの物資を率いて攻め込んで来る。
11:14 その時代には、多くの者が南の王に反旗をひるがえす。あなたの民の中の乱暴な者たちも、幻を成就させようとして立ち上がるが、失敗に終わる。
11:15 北の王が攻めて来て、土を盛って攻め寄せ、城壁で固めた町を攻め落とす。南の軍勢はこれに立ち向かえず、選び抜かれた兵たちにも、持ちこたえる力はない。
11:16 攻めて来る者は思いのままにふるまい、誰も彼の前に立ちはだかることができない。彼は美しい地に居座り、それを意のままに滅ぼす力を持つ。
11:17 彼は全王国の力をもって攻め入ろうと決意し、南の王と和解を結ぶ。その国を内側から壊すため、自分の娘を嫁がせる。しかし、そのたくらみは成功せず、思いどおりにはならない。
11:18 そのあと彼は海沿いの国々に目を向け、その多くを攻め取る。しかし、ある指揮官が彼のおごりを止めさせ、そのおごりを彼自身に返す。
11:19 それから彼は自分の国の砦に目を向ける。しかし、つまずいて倒れ、そのまま姿を消してしまう。
11:20 彼の跡には、王国の栄えを保つために重い税を取り立てる者が立つ。しかしその者は、わずかな日のうちに滅ぼされる。怒りによってでも、戦いによってでもない。
11:21 その跡には、卑しい者が立つ。人々は彼に王としての栄誉を認めていなかった。しかし彼は不意にやって来て、甘い言葉で王国を手に入れる。
11:22 洪水のような大軍も、彼の前に押し流され、打ち砕かれる。契約を結んだ指導者もまた同じだ。
11:23 彼は同盟を結んでも、それを裏切ってだまし討ちにする。わずかな民を率いて力を伸ばし、強くなっていく。
11:24 彼は不意に、その州の最も豊かな地に攻め入る。そして、父祖たちも、そのまた先祖たちもしなかったことをする。奪った物や戦利品や財産を、味方に惜しみなく分け与えるのだ。さらに、要塞を落とそうとたくらみをめぐらす。ただし、それも定められた時までのことだ。
11:25 彼は大軍を率い、力と勇気をふるい起こして南の王に立ち向かう。南の王も、非常に大きく強い軍を率いて戦いに立ち上がる。しかし、南の王は持ちこたえられない。彼に対してたくらみがめぐらされるからだ。
11:26 彼の食卓で食事をする者たちが、彼を破滅させる。彼の軍は押し流され、多くの者が討たれて倒れる。
11:27 二人の王は、互いに悪をたくらむ。一つの食卓につきながら、嘘を語り合う。しかし、それはうまくいかない。終わりの時は、定められたときまで、まだ来ないからだ。
11:28 こうして彼は多くの財産を手にして自分の国へ帰る。その心は聖なる契約に敵対している。彼は思うままにふるまい、そして自分の国へ帰って行く。
11:29 定められた時に、彼は再び南へ攻め入る。しかし、この後のときは、前のときのようにはならない。
11:30 キティムの船が彼に向かって来るからだ。それで彼は打ちのめされ、引き返す。そして聖なる契約に激しい怒りを向け、思うままにふるまう。さらに引き返して、聖なる契約を捨てた者たちに味方する。
11:31 彼のもとから軍勢が立ち上がり、要塞である聖所を汚す。そして毎日のささげ物を取り除き、荒廃をもたらす忌まわしいものを据える。
11:32 契約を破る者たちを、彼は甘い言葉でそそのかす。しかし、自分の神を知る民は強く立ち、行動する。
11:33 民の中で悟りのある者たちは、多くの人を教え導く。しかし彼らは、剣と炎に倒れ、捕らわれ、奪われる。それが長く続く。
11:34 彼らが倒れるとき、少しばかりの助けが与えられる。だが、多くの者が心にもない言葉で彼らに加わる。
11:35 悟りのある者の中にも、倒れる者が出る。それは終わりのときまで、彼らを試し、より分け、清く磨くためだ。定められた時が、まだ先にあるからだ。
11:36 王は思うままにふるまう。自分を高く上げ、すべての神々の上に自分を大きく見せる。そして神々の神に向かって、とんでもないことを口にする。彼は、怒りが終わりを迎えるまで栄える。定められたことは、必ず行われるからだ。
11:37 彼は、先祖の神々を顧みない。女たちの慕うものにも、どんな神にも心を向けない。自分をすべてのものの上に高く上げるからだ。
11:38 その代わりに、彼は要塞の神をあがめる。先祖の知らなかった神を、金や銀、宝石や高価な品々であがめる。
11:39 彼は、その異国の神の力を借りて、堅固な要塞に攻めかかる。彼を認める者には大きな栄誉を与え、多くの人を治めさせ、代償として土地を分け与える。
11:40 終わりのときに、南の王が彼に攻めかかる。すると北の王が、戦車と騎兵と多くの船を率いて、嵐のように彼に襲いかかる。彼はいくつもの国に攻め入り、洪水のように押し流して通り過ぎる。
11:41 彼は美しい国にも攻め入り、多くの国が倒れる。しかし、エドムとモアブ、それにアンモン人の主だった者たちは、彼の手からのがれる。
11:42 彼は多くの国に手を伸ばす。エジプトの地も、のがれることはできない。
11:43 彼は金や銀の宝物、そしてエジプトのあらゆる貴重な物を思いのままにする。リビア人とクシュ人も彼につき従う。
11:44 しかし、東と北から届く知らせが彼を不安にさせる。それで彼は激しい怒りに燃えて出て行き、多くの人を滅ぼし、絶やそうとする。
11:45 彼は海と、聖なる美しい山との間に、自分の宮殿の天幕を張る。しかし、彼は最期を迎え、助ける者はだれもいない。
12:1 そのとき、あなたの民を守って立つ大いなる君ミカエルが立ち上がる。それは苦しみのときで、国が始まって以来、いまだかつてなかったほどの苦難となる。しかしそのとき、あなたの民のうち、あの書に名を記されている者は、みな救い出される。
12:2 地のちりの中で眠っている多くの者が目を覚ます。ある者は永遠のいのちを受け、ある者は恥を受けて、永遠に忌み嫌われる。
12:3 賢く生きた者たちは、大空の輝きのように光り、多くの人を正しい道へ導いた者たちは、いつまでも星のように輝く。
12:4 だが、ダニエルよ、あなたはこの言葉を秘め、終わりのときまで、この書を封じておきなさい。多くの人が行き来し、知識は増していく。
12:5 それから、このわたし、ダニエルが見ていると、ほかに二人の者が立っていた。一人は川のこちらの岸に、もう一人は川の向こうの岸にいた。
12:6 その一人が、川の水の上にいる、亜麻布の衣を着た人に尋ねた。「この驚くべき出来事が終わるまで、あとどれくらいかかるのですか。」
12:7 すると、川の水の上にいる、あの亜麻布の衣を着た人が、右手と左手を天に上げ、永遠に生きておられる方にかけて誓うのが聞こえた。「それは、一つの時と、二つの時と、半分の時のあいだ続く。聖なる民の力が打ち砕かれ、それが終わったとき、これらすべてのことも終わる。」
12:8 わたしはそれを聞いたが、意味が分からなかった。それで尋ねた。「わたしの主よ、これらのことの行き着く先は、どうなるのですか。」
12:9 すると、その人は言った。「ダニエルよ、もう行きなさい。この言葉は、終わりのときまで閉じられ、封じられているのだ。
12:10 多くの人は、清められ、白くされ、練り鍛えられる。だが、悪い者たちは悪いことを続け、その誰一人として悟ることはない。悟るのは、知恵ある者たちだけだ。
12:11 毎日ささげるいけにえが取り除かれ、荒廃をもたらす忌まわしいものが据えられるときから、千二百九十日がある。
12:12 待ち望んで、千三百三十五日にたどり着く人は幸いだ。
12:13 だが、あなたは終わりのときまで進んでいきなさい。あなたは安らかに眠り、終わりの日に起き上がって、自分の受ける分を受け取るのだ。」
ホセア書
1:1 ユダの王ウジヤ、ヨタム、アハズ、ヒゼキヤの時代、そしてイスラエルの王、ヨアシュの子ヤラベアムの時代に、ベエリの子ホセアに臨んだ主の言葉。
1:2 主が最初にホセアを通して語ったとき、主はホセアにこう言った。「さあ、行きなさい。淫らな女を妻にめとり、その女との間に生まれる子どもたちを引き取りなさい。この地は主から離れて、ひどく淫らなことをしているのだから。」
1:3 そこで彼は行って、ディブライムの娘ゴメルを妻にした。彼女は身ごもって、男の子を産んだ。
1:4 主はホセアに言われた。「その子をイズレエルと名づけなさい。もう少ししたら、わたしはイズレエルで流された血の責任をエヒウの家に問い、イスラエルの家の王国を終わらせるからだ。
1:5 その日、わたしはエズレルの谷でイスラエルの弓を折る。
1:6 ゴメルはまた身ごもって、今度は女の子を産んだ。主はホセアに言われた。「その子をロ・ルハマ（愛されない者）と名づけなさい。わたしはもう、イスラエルの家をあわれむことはない。彼らをこれ以上ゆるさないからだ。
1:7 ユダの家族のことは、わたしはあわれむ。そして、彼らの神である主によって、彼らを救う。弓や剣や戦い、馬や騎兵によって救うのではない。
1:8 ゴメルはロ・ルハマの乳離れがすむと、また身ごもって男の子を産んだ。
1:9 「その子をロ・アンミ(『わたしの民ではない』の意)と名づけなさい。あなたたちはわたしの民ではなく、わたしもあなたたちのものではないからだ」と主は言われた。
1:10 でも、イスラエルの人々の数は、海の砂のように、量ることも数えることもできないほど多くなる。そして、「あなたたちはわたしの民ではない」と言われたその場所で、「あなたたちは生きている神の子どもだ」と言われるようになる。
1:11 ユダの人々とイスラエルの人々は、一つに集められる。そして、自分たちのために一人の指導者を立て、その地からのぼって来る。イズレエルの日は、それほど大いなるものとなるからだ。
2:1 兄弟たちには「アンミ(わたしの民)」と呼びかけ、姉妹たちには「ルハマ(慈しまれる者)」と呼びかけなさい。
2:2 あなたたちの母親を問いただせ、問いただせ。彼女はもうわたしの妻ではなく、わたしも彼女の夫ではないのだから。彼女には、その顔から淫らな行いを、その胸の間から姦淫を取り除かせよ。
2:3 そうしないと、わたしは彼女を裸にはぎ取り、生まれた日のような姿にさらす。彼女を荒れ野のようにし、乾いた地のようにして、渇きで死なせる。
2:4 その子どもたちも、わたしはあわれまない。母親が淫らなことを重ねて産んだ子どもたちだからだ。
2:5 母親は淫らな行いに走り、彼らを身ごもった女は恥ずべきことをした。母親はこう言ったのだ。「わたしは恋人たちを追いかけていく。パンと水、羊毛と麻、オリーブ油と飲み物をくれるのは、あの人たちだから。」
2:6 だから、わたしはあなたの行く道をいばらでふさぐ。まわりに壁をめぐらせて、彼女が通り道を見つけられないようにする。
2:7 彼女は恋人たちを追いかける。でも、追いつけない。探し回る。でも、見つけられない。そして、こう言うだろう。「もとの夫のところへ帰ろう。あの頃のほうが、今よりずっと良かったのだから。」
2:8 彼女は気づいていなかった。穀物も、新しいぶどう酒も、オリーブ油も、彼女に与えたのは、このわたしなのだ。銀を豊かに増やし、金を与えたのもわたしだった。それなのに彼女は、それをバアルのために使ったのだ。
2:9 だから、わたしは考えを変える。時が来たら、わたしの穀物を取り返し、季節が来たら、わたしの新しいぶどう酒も取り返す。彼女の裸を覆うために与えた羊毛も麻も、わたしは取り上げる。
2:10 今、わたしは恋人たちの目の前で、彼女の恥をさらけ出す。だれも彼女をわたしの手から救い出すことはできない。
2:11 わたしは彼女の楽しみをすべて終わらせる。祭りも、新月の祝いも、安息日も、すべての祝いの日も、なくしてしまう。
2:12 わたしは彼女のぶどうの木といちじくの木を荒らす。それは彼女が「愛人たちがくれた報酬だ」と言っていたものだ。わたしはそれらを森に変え、野の獣に食い荒らさせる。
2:13 わたしは、彼女がバアルの神々に香をたいた、あの日々のことで彼女を罰する。彼女は鼻輪や宝石で身を飾り、恋人たちのあとを追いかけ、わたしのことは忘れてしまった。主はそう告げる。
2:14 だから、わたしは彼女を誘い出し、荒れ野へ連れて行く。そして、その心に優しく語りかける。
2:15 わたしはそこで、彼女にぶどう畑を返す。そして、アコルの谷を希望への入り口にする。彼女はそこで、若かったころのように、エジプトの地から出てきた日のように歌う。
2:16 その日には、あなたはわたしを「わたしの夫」と呼び、もう「わたしのバアル」とは呼ばない、と主は言われる。
2:17 わたしは彼女の口から、バアルという神々の名を取り除く。その名が口にされることは、もう二度とない。
2:18 その日、わたしは彼らのために、野の獣や空の鳥、地を這う生き物と契約を結ぶ。弓も剣も戦いも、この地から断ち切る。そして彼らを安心して横たわらせる。
2:19 わたしは永遠にあなたと結ばれる。正しさと公正、変わらぬ慈しみと憐れみをもって、わたしはあなたと結ばれる。
2:20 わたしは真実をもって、あなたをわたしの妻とする。そうして、あなたは主を知るようになる。
2:21 その日には、わたしは応える、と主は言われる。わたしは天に応え、天は地に応える。
2:22 畑は穀物とぶどう酒とオリーブ油にこたえ、それらはイズレエルにこたえる。
2:23 わたしはこの地に、彼女をわたしのものとして種のようにまく。愛されなかった者を、わたしは愛する。わたしの民ではなかった者に、「あなたはわたしの民だ」と言う。すると彼は「あなたはわたしの神だ」と言う。
3:1 主はわたしにこう言われた。「もう一度行きなさい。ほかの男に愛されながら、浮気を重ねる女を、あなたは愛しなさい。イスラエルの人々はほかの神々のほうを向き、干しぶどうのお菓子を大好きだ。それでも主が彼らを愛するのと同じように、あなたはその女を愛しなさい。」
3:2 わたしは銀十五シェケルと大麦一ホメル半を払って、彼女を買い取った。
3:3 わたしは彼女に言った。「あなたは長い間、わたしのもとにとどまりなさい。ほかの男と関係を持ってはいけない。わたしもあなたのそばにいるから」
3:4 イスラエルの人々は、これから長い間、王もなく、指導者もなく、いけにえもなく、石の柱もなく、エポデもテラフィムもないまま過ごすことになる。
3:5 その後、イスラエルの子らは戻ってくる。そして自分たちの神である主と、その王ダビデを求める。終わりの日に、彼らは主のもとへ、その恵みへと、おそれおののきながら向かってくる。
4:1 イスラエルの人々よ、主の言葉を聞け。主は、この地に住む者たちを訴えておられる。この地には、誠実さがなく、慈しみもなく、神を知ることもないからだ。
4:2 あるのは、呪いの誓いとうそ、人殺しと盗みと姦淫ばかり。歯止めがきかず、流血に流血が続いている。
4:3 だから、この地は嘆き、そこに住むものはみな衰えていく。野の獣も空の鳥も、海の魚さえも、消え去っていく。
4:4 だが、たがいに争ってはならない。たがいを責めてもならない。おまえの民は、祭司に食ってかかる者のようだ。
4:5 おまえは昼につまずき、預言者も夜、おまえとともにつまずく。わたしはおまえの母を滅ぼす。
4:6 わたしの民は、神を知らないために滅びていく。おまえが知ることを拒んだから、わたしもおまえを拒み、わたしに仕える祭司の座から退ける。おまえが自分の神の教えを忘れたから、わたしもおまえの子らを忘れる。
4:7 彼らは数が増えるほど、ますますわたしに罪を犯した。だからわたしは、彼らの栄光を恥に変える。
4:8 彼らはわたしの民の罪をむさぼり食い、その悪へと心を向けている。
4:9 それゆえ、民も祭司も同じようになる。わたしは彼らのふるまいを罰し、その行いに応じて報いる。
4:10 彼らは食べても満足せず、みだらなことをしても子孫は増えない。主を捨てて、主に従うのをやめたからだ。
4:11 酒と新しいぶどう酒、それに淫らな行いは、人の心を奪う。
4:12 わたしの民は木ぎれにお告げを求め、杖が答えを告げると信じている。淫らな心が彼らを迷わせ、彼らは神のもとを離れて淫らなことをしたのだ。
4:13 山々の頂で彼らはいけにえをささげ、丘の上、樫や柳やテレビンの木の下で香をたく。木陰が心地よいからだ。だから、あなたたちの娘は身を売り、あなたたちの嫁は不倫をする。
4:14 わたしは、あなたたちの娘が売春をしても罰しない。嫁が不倫をしても罰しない。男たち自身が遊女のもとへ通い、神殿の娼婦といっしょにいけにえをささげているからだ。分別のない民は、こうして滅びていく。
4:15 イスラエルよ、あなたが淫行にふけっても、ユダに罪を犯させてはならない。ギルガルへ行ってはならない。ベテ・アベンへのぼってはならない。「主は生きておられる」と言って誓ってはならない。
4:16 イスラエルは、頑固な雌牛のように頑固だ。そんな彼らを、主が広い野原にいる子羊のように養えるだろうか。
4:17 エフライムは偶像にべったりだ。もう放っておけ。
4:18 彼らは酒におぼれ、次から次へと不倫にふけっている。その指導者たちは、誉れよりも恥を愛している。
4:19 風はその翼に彼らを包み込んだ。彼らは自分たちの祭壇のせいで恥を受ける。
5:1 祭司たちよ、これを聞け。イスラエルの家よ、耳を傾けよ。王の家よ、心をとめよ。さばきはあなたたちに下る。あなたたちはミツパでわなをしかけ、タボルの山に網を張ったからだ。
5:2 彼らは反逆を重ね、殺りくの穴を深く掘った。だが、わたしは彼らすべてを正す者だ。
5:3 わたしはエフライムを知っている。イスラエルはわたしから隠れることはできない。エフライム、あなたは今、身を売る女のように神を裏切った。そのイスラエルは汚れてしまった。
5:4 彼らの行いは、彼らが自分たちの神のもとへ帰るのを妨げる。心の中に淫らな霊が住みついていて、主を知ろうとしないからだ。
5:5 イスラエルの高ぶりは、その顔に向かってイスラエル自身を告発している。イスラエルとエフライムは自分の罪でつまずき、ユダも彼らと共につまずく。
5:6 彼らは羊の群れや牛の群れを引き連れて、主を探し求めに行く。でも、主は見つからない。主が彼らのもとを去ってしまったからだ。
5:7 主に背いて、彼らはよその子どもを産んだ。だから今、新月の祭りが、彼らを畑もろとも食い尽くす。
5:8 ギベアで角笛を吹き鳴らせ。ラマでラッパを鳴らせ。ベテ・アベンで大声で叫べ。ベニヤミンよ、敵はおまえのすぐ後ろにいる。
5:9 エフライムは罰の日に荒れ果てる。わたしはイスラエルの部族たちに、必ず起こることをはっきり告げる。
5:10 ユダの指導者たちは、境界線を勝手に動かす者のようになった。だからわたしは、水のように激しい怒りを彼らに注ぐ。
5:11 エフライムは、むなしいものを追いかけると決めて、その通りに歩んだ。だから虐げられ、押しつぶされ、正しい裁きを奪われる。
5:12 わたしはエフライムにとって、しみのような存在になる。ユダの家にとっては、腐れのようになる。
5:13 エフライムは自分の病に気づき、ユダは自分の傷に気づいた。そこでエフライムはアッシリアに向かい、大王のもとに助けを求めて人を送った。でも、その王はあなたたちを治すことはできない。あなたたちの傷をいやすこともできない。
5:14 わたしはエフライムにとって、獅子のような存在になる。ユダの家にとっては、若い獅子のようになる。わたしが、このわたしが引き裂いて去り、獲物をさらって行く。だれも助け出すことはできない。
5:15 わたしは自分のところへ帰り、そこにとどまろう。彼らが自分の罪を認め、わたしを求めるようになるまで。彼らは苦しみの中で、わたしを必死に探し求める。
6:1 「さあ、主のもとに帰ろう。主はわたしたちを引き裂いたが、癒やしてくださる。打たれたが、傷を包んでくださるからだ。
6:2 主はふつか後、わたしたちを生き返らせ、三日目に立ち上がらせてくれる。そしてわたしたちは、主の前で生きる。
6:3 わたしたちは主を知ろう。主を知ることを追い求めよう。主は必ず現れる。夜明けの光のように。冬の雨のように、わたしたちのところに来てくださる。春の雨のように、大地を潤してくださる。」
6:4 エフライムよ、あなたをどうしたらいいのか。ユダよ、あなたをどうしたらいいのか。あなたたちの慈しみは朝の霧のよう。すぐに消えていく朝露のようだ。
6:5 それだから、わたしは預言者たちを通して彼らを切り倒し、わたしの口の言葉で彼らを打ち殺した。わたしのさばきは、輝き出る光のように現れる。
6:6 わたしが喜ぶのは、いけにえではなく、変わらぬ愛だ。焼き尽くすいけにえよりも、神を知ることだ。
6:7 彼らはアダムで契約を破り、その場所でわたしを裏切った。
6:8 ギレアデは悪事を働く者たちの町。血の足跡で汚れている。
6:9 盗賊が人を待ち伏せするように、祭司の一団は徒党を組み、シケムへ向かう道で人を殺す。彼らはそんな恐ろしいことをしている。
6:10 イスラエルの家で、わたしはぞっとするものを見た。そこでエフライムは淫らな行いにふけり、イスラエルは汚れてしまった。
6:11 ユダよ、あなたにも刈り入れの時が定められている。わたしが民を元の暮らしへと連れ戻すとき、それはやって来る。
7:1 わたしがイスラエルを癒やそうとすると、エフライムの罪とサマリアの悪事があらわになる。彼らは偽りを行い、家の中には泥棒が入り込み、外では強盗の一団が襲いかかる。
7:2 でも彼らは、わたしが彼らの悪をすべて覚えていることを、心に留めない。今、その行いが彼らを取り囲み、わたしの目の前にさらされている。
7:3 彼らは悪事で王を喜ばせ、偽りで君たちを喜ばせる。
7:4 彼らはみな姦淫にふける者だ。パン職人が熱く燃やすかまどのようだ。職人は生地をこねてから、それがふくらむまで、火をかき立てるのをやめるだけだ。
7:5 王が即位を祝う日、家来たちはぶどう酒の熱で王を病気にさせた。そして王は、人をあざける者たちと手を取り合った。
7:6 彼らは待ち伏せしながら、その心をかまどのように熱くする。彼らの怒りは夜通しくすぶり、朝になると炎のように燃え上がる。
7:7 みな、かまどのように熱く燃え、自分たちを治める者たちを焼き尽くす。王たちはみな倒れる。それなのに、彼らの中にはわたしを呼び求める者が一人もいない。
7:8 エフライムは、まわりの国々の中に入り混じっている。エフライムは、片面しか焼けていない、裏返されていないパンだ。
7:9 外国の者たちが彼の力を食い尽くしても、彼はそれに気づかない。白髪が混じり始めても、彼はそれに気づかない。
7:10 イスラエルの誇りが、彼ら自身に不利な証言をしている。それでも彼らは、自分たちの神である主のもとに帰らず、こんなことがあっても主を求めようとしない。
7:11 エフライムは、考えなしのおろかなハトのようだ。エジプトに助けを求め、アッシリアへと出かけていく。
7:12 彼らが飛び立つとき、わたしは網を投げてかぶせ、空の鳥のように引き落とす。彼らの群れに聞かせたとおり、わたしは彼らを懲らしめる。
7:13 わざわいだ、彼らは。わたしから離れてさまよい出たのだから。破滅が彼らを襲う。わたしに背いて罪を犯したのだから。わたしは彼らを買い戻そうとしているのに、彼らはわたしについて偽りを語っている。
7:14 彼らは心からわたしを呼び求めず、ただ寝床の上でわめくだけだ。穀物と新しいぶどう酒を求めて身を傷つけ、わたしから離れていく。
7:15 わたしは彼らを鍛え、その腕を強くしてやった。それなのに、彼らはわたしに逆らって悪いことをたくらむ。
7:16 彼らは立ち帰るが、いと高き方には向かわない。彼らは狂った弓のようだ。彼らの指導者たちは、その舌がまき散らす怒りのために剣に倒れる。これはエジプトの地で、人々の笑いものとなる。
8:1 ラッパを口にあてよ。主の家に、はげたかのように敵が襲いかかる。彼らがわたしの契約を破り、わたしの律法にそむいたからだ。
8:2 「わが神よ、われわれイスラエルはあなたを知っています」と、彼らはわたしに叫ぶ。
8:3 イスラエルは良いものを投げ捨てた。だから敵に追われることになる。
8:4 彼らは王を立てた。でも、わたしが立てたのではない。彼らは高官を選んだ。でも、わたしはそれを知らない。彼らは銀や金で、自分たちのために偶像を造った。だから、それは断ち切られる。
8:5 サマリヤよ、わたしはあなたの子牛を退ける。わたしの怒りは彼らに向かって燃えている。彼らはいつになったら清くなれるのか。
8:6 これは工人が造ったもので、神ではない。サマリアの子牛は打ち砕かれて粉々になる。
8:7 彼らは風を蒔いて、つむじ風を刈り取る。立っている穀物には穂がなく、実を結ばない。たとえ実っても、それは他国の者が食い尽くす。
8:8 イスラエルはのみ込まれてしまった。今や彼らは国々の中で、だれにも必要とされない、価値のない器のようになった。
8:9 彼らはひとりぼっちで歩く野生のろばのように、アッシリアへのぼって行った。エフライムは贈り物をして恋人を買った。
8:10 たとえ彼らが国々に贈り物をして味方を集めても、わたしはまもなく彼らを一つに集める。彼らは大王とその高官たちが負わせる重荷に、じきに苦しみ始める。
8:11 エフライムは罪を犯すために多くの祭壇を築いた。だから、その祭壇こそが彼にとって罪を犯す場所になった。
8:12 わたしは彼のために、多くの律法を書き記した。でも彼らは、それを見慣れないもののように思った。
8:13 彼らはいけにえを好み、肉をささげて食べる。しかし主はそれを喜ばない。今、主は彼らの悪を思い起こし、その罪を罰する。彼らはエジプトに帰ることになる。
8:14 イスラエルは自分の造り主を忘れ、たくさんの神殿を建てた。ユダは、守りを固めた町をどんどん増やした。でもわたしは、その町々に火を送り込む。その火が、砦のような館を焼き尽くす。
9:1 イスラエルよ、ほかの国々のように喜び踊るのはやめなさい。あなたは自分の神を捨てて、他の神々と関係を持ったのだから。麦を打つ場のあちこちで、その報酬を愛したのだから。
9:2 打ち場と酒ぶねは彼らを養わない。新しいぶどう酒もなくなってしまう。
9:3 彼らは主の地に住むことはない。エフライムはエジプトに帰り、アッシリアで汚れた物を食べることになる。
9:4 主に向かってぶどう酒を注ぐこともなく、彼らのいけにえが主に喜ばれることもない。それは喪に服す者のパンのようで、それを食べる者はみな汚れる。彼らのパンはただ自分の腹を満たすだけで、主の家に入ることはできない。
9:5 あなたがたは祭りの日、主の祝いの日に、どうするつもりなのか。
9:6 見よ、彼らは滅びから逃げて行く。だが、エジプトが彼らを集め、メンフィスが彼らを葬る。彼らが大切にした銀の宝は、いらくさが生い茂って奪い、彼らの天幕には茨がはびこる。
9:7 刑罰の日が来た。報いの日が来た。イスラエルはそれを思い知る。「預言者は愚か者だ、霊に動かされた者はおかしくなっている」と。あなたたちの罪があまりに多く、敵意があまりに大きいからだ。
9:8 預言者は、わたしの神とともにエフライムを見張る者だ。でも、その行く先には鳥を捕るわなが仕掛けられ、その神の家にも憎しみが待っている。
9:9 彼らはギベアの時代のように、深く堕落した。神は彼らの悪を忘れず、その罪を罰する。
9:10 わたしはイスラエルを、荒れ野で見つけたぶどうのように見た。あなたたちの先祖を、いちじくの木にその季節の初めに実った初なりのように見た。ところが彼らはバアル・ペオルへ行き、あの恥ずべき偶像に身をゆだねた。そして自分たちが愛したものと同じように、忌まわしい者となった。
9:11 エフライムの栄光は、鳥のように飛び去ってしまう。子を産むことも、身ごもることも、みごもることもなくなるのだ。
9:12 たとえ子どもを育てても、わたしはその子を奪い、ひとり残らずいなくさせる。わたしが彼らから離れるとき、彼らにわざわいが降りかかる。
9:13 エフライムを見ると、まるでよく手入れされた牧場に植えられたように見えた。でもエフライムは、その子どもたちを人殺しの手に引き渡すことになる。
9:14 主よ、彼らに与えてください。でも、何を与えたらいいのでしょう。子を宿せない胎と、かれた乳房を、彼らに与えてください。
9:15 ギルガルで彼らはとことん悪事を働いた。だから、わたしはそこで彼らを憎むようになった。彼らのおこないがあまりに悪いので、わたしは彼らを自分の家から追い出す。もう二度と愛さない。彼らの指導者たちはみな、わたしにそむく者だ。
9:16 エフライムは撃たれ、その根は枯れて、実を結ぶことはない。たとえ子を産んでも、わたしは彼らが大切にする子どもたちを殺す。
9:17 わたしの神は彼らを退ける。彼らが聞き従わなかったからだ。彼らは国々の間をさまよう者となる。
10:1 イスラエルは、よく茂って実をたくさんつけるぶどうの木だ。でも実が増えれば増えるほど、その分だけ祭壇を増やしていった。土地が豊かになればなるほど、立派な石の柱を建てていった。
10:2 彼らの心は偽りに満ちている。今こそ、彼らは罪を負う。主は彼らの祭壇を打ち壊し、彼らの石の柱を砕く。
10:3 今、彼らは言う。「わたしたちには王がいない。主を敬わなかったからだ。でも、王がいたところで、わたしたちに何をしてくれるだろう」と。
10:4 彼らは口先だけの約束をする。偽りの誓いを立てて契約を結ぶ。だから不正な裁きが、畑のうねに生える毒草のようにはびこる。
10:5 サマリアの住民は、ベテ・アベンの子牛のことでおびえる。その民は子牛のために嘆き悲しむ。子牛を拝む祭司たちも、かつては誇っていたその栄光が奪われたからだ。
10:6 その子牛はアッシリアへ運ばれ、大王ヤレブへの贈り物にされる。エフライムは笑いものになり、イスラエルは自分の意見を恥じることになる。
10:7 サマリアの王は滅ぼされる。水面に浮かぶ木切れのように、押し流されてしまう。
10:8 イスラエルの罪であるアベンの高き所は破壊される。いばらとあざみがその祭壇に生い茂る。そのとき人々は山に向かって「わたしたちをおおってくれ」と言い、丘に向かって「わたしたちの上に倒れかかってくれ」と言う。
10:9 イスラエルよ、あなたはギベアの日から罪を犯し続けてきた。人々はそこに立ちつくした。ギベアで悪を行う者たちに、戦いが襲いかからないだろうか。
10:10 わたしは思いのままに、彼らを罰する。彼らが二つの罪のために縛られるとき、多くの民が集まって、彼らに攻めかかる。
10:11 エフライムは、よく訓練された若い雌牛だ。脱穀するのが大好きだった。だからわたしは、その美しい首をそのままにしておいた。でも今、わたしはエフライムにくびきをかける。ユダには畑を耕させ、ヤコブには土をならす作業をさせる。
10:12 種を蒔け、正義のために。慈しみに従って刈り取れ。新しい畑を耕せ。今こそ主を求めるときだ。主が来て、あなたたちに義を雨のように降らせてくださるまで。
10:13 あなたがたは悪を耕し、不義を刈り取り、偽りの実を食べてきた。それは自分の力を頼りにし、大勢の兵士を頼りにしたからだ。
10:14 あなたたちの民の中に戦いの騒ぎが起こり、あなたたちの砦はどれも打ち破られる。シャルマンが戦いの日にベト・アルベルを破壊したように。母親たちは子どもたちの上で打ち砕かれた。
10:15 イスラエルの家よ、あなたたちのひどい悪のせいで、ベテルはあなたたちにこのようにする。夜が明けるとき、イスラエルの王は完全に滅ぼされる。
11:1 わたしはイスラエルがまだ幼かったころ、彼を愛した。そして、わが子をエジプトから呼び出した。
11:2 わたしが呼びかければ呼びかけるほど、彼らはますますわたしから離れていった。そしてバアルたちにいけにえをささげ、刻んだ像に香をたいた。
11:3 わたしはエフライムに歩くことを教え、腕に抱いて育てた。でも彼らは、自分を癒やしていたのがわたしだと気づかなかった。
11:4 わたしは人間の綱、愛のきずなで彼らを引き寄せた。わたしは彼らにとって、頬にあてがわれたくびきを持ち上げて外してやる者のようになり、身をかがめて彼らに食べさせた。
11:5 彼らはエジプトの地に帰る。アッシリアが彼らの王となる。彼らがわたしのもとに帰ることを拒んだからだ。
11:6 つるぎは町々で荒れ狂い、町の門のかんぬきを打ち砕く。そして、自分たちの企みのせいで、彼らを滅ぼし尽くす。
11:7 わたしの民は、わたしから離れていこうとしている。彼らは高いところにいる神を呼び求めても、だれ一人その方をあがめようとはしない。
11:8 エフライムよ、どうしてあなたを見捨てられるだろう。イスラエルよ、どうしてあなたを敵に渡せるだろう。どうしてあなたをアデマのようにできるだろう。どうしてあなたをゼボイムのように扱えるだろう。わたしの心は激しく揺れ動く。あわれみが胸いっぱいに燃え上がる。
11:9 わたしは激しく怒っても、それを最後までぶつけることはしない。もう二度とエフライムを滅ぼしはしない。わたしは神であって、人間ではないからだ。わたしはあなたのただ中にいる聖なる者。怒りのために襲いかかることはしない。
11:10 主に従って歩む。主は、ししがほえるように声を上げられる。主が声を上げると、子らは震えながら西から帰って来る。
11:11 彼らはエジプトから鳥のように、アッシリアの地から鳩のように、急いで飛んで来る。わたしは彼らをその家に帰らせる、と主は言われる。
11:12 エフライムは偽りでわたしを取り囲み、イスラエルの家は欺きでわたしを囲んだ。でもユダはなお神とともに歩み、聖なる方に忠実であり続けている。
12:1 エフライムは風を追い求め、一日中、東風を追いかけている。偽りと暴力ばかりを増やし、アッシリアと同盟を結んでは、オリーブ油をエジプトに送っている。
12:2 主はユダを訴えられる。ヤコブをその歩みにしたがって罰し、その行いにしたがって報いられる。
12:3 ヤコブは母の胎にいたとき、兄弟のかかとをつかんだ。そして大人になると、神と争った。
12:4 彼は御使いと争って勝ち、泣いてあわれみを求めた。彼はベテルで神に出会い、その場所で神はわたしたちと語られた。
12:5 主は、天の軍勢を従える神。その名は主である。
12:6 だから、あなたは自分の神のもとに帰りなさい。慈しみと公正を守り、いつもあなたの神を待ち望みなさい。
12:7 商人は手に偽りのはかりを持ち、人をだまし取ることを好む。
12:8 エフライムは言った。「わたしは金持ちになった。自分の力で富を築いたんだ。どれだけ稼いでも、わたしには罪となるような不正など、だれにも見つけられはしない。」
12:9 わたしは、あなたがエジプトの地にいたときからの、あなたの神、主だ。わたしはもう一度、祭りのころのように、あなたを天幕に住まわせる。
12:10 わたしは預言者たちに語りかけ、いくつもの幻を見せた。そして預言者たちを通して、たとえを使って語った。
12:11 ギレアデが悪なら、人々はむなしい者になってしまった。ギルガルでは雄牛をいけにえにささげ、その祭壇は、畑の畝に積み上げた石の山のようだ。
12:12 ヤコブはアラムの地へ逃げた。イスラエルは妻を得るために働き、妻のために羊を飼った。
12:13 一人の預言者によって、主はイスラエルをエジプトから導き出した。そして一人の預言者によって、イスラエルは守られたのだ。
12:14 エフライムは、主をひどく怒らせた。だから主は、彼が流した血の責任を彼に負わせ、その恥辱を彼に返す。
13:1 エフライムが物を言うと、人々は恐れおののいた。彼はイスラエルの中で自分を高く持ち上げた。でも、バアルを拝んで罪を犯し、死んでしまった。
13:2 そして今も彼らはますます罪を重ねている。自分たちの銀で鋳物の像を造り、巧みに偶像をこしらえる。それはみな職人の手による作り物だ。人々はこれについて言う。「いけにえをささげる者は、子牛の像に口づけせよ」と。
13:3 それゆえ、彼らは朝の霧のように消えていく。すぐに乾いてしまう朝露のようだ。脱穀場からもみ殻が風に吹き飛ばされるように、煙が窓から消えていくように、彼らは消え去る。
13:4 わたしは、あなたをエジプトの国から連れ出した、あなたの神、主である。あなたはわたしのほかに神を知ってはならない。わたしのほかに救い主はいないのだ。
13:5 荒野で、かわいた地で、わたしはあなたを知った。
13:6 彼らは草を食べて満腹になった。満ち足りると、心がおごり高ぶった。だから、わたしを忘れてしまった。
13:7 わたしは彼らにとって、ししのような存在になる。ひょうのように道ばたで、彼らをうかがう。
13:8 わたしは子を奪われた熊のように彼らに襲いかかり、その胸を引き裂く。そこで雌ライオンのように彼らを食い尽くし、野の獣のように引き裂く。
13:9 イスラエルよ、あなたが滅びるのは、あなたを助けるわたしに逆らったからだ。
13:10 あなたを助けるあなたの王は、今どこにいるのか。あなたのすべての町であなたを救う王は。そして、あなたが「王と指導者たちを与えてくれ」と言った、あなたを治める者たちはどこにいるのか。
13:11 わたしは怒りをもって、あなたに王を与えた。そして激しい憤りとともに、その王を取り去った。
13:12 エフライムの不義は包み込まれ、その罪はしまい込まれている。
13:13 子を産む女の激しい痛みが、彼を襲う。でも彼は、知恵のない子だ。生まれる時が来ても、産道から出てこようとしない。
13:14 死の力から、わたしは彼らを買い戻す。死から、わたしは彼らを救い出す。死よ、おまえの疫病はどこにある。よみよ、おまえの滅びはどこにある。あわれみは、わたしの目から隠されている。
13:15 彼が兄弟たちの中でどれだけ栄えても、東の風がやって来る。荒野から、主の風が吹き上がってくる。それでその水源はかれ、泉は干上がる。その風は、あらゆる宝を納めた蔵をかすめ奪っていく。
13:16 サマリアは自分の神に背いた。だから、その罪の報いを受けることになる。人々は剣に倒れ、幼い子どもたちは地面にたたきつけられ、身ごもった女たちは腹を裂かれる。
14:1 イスラエルよ、あなたの神である主のもとに帰りなさい。あなたは自分の罪でつまずいてしまったのだから。
14:2 言葉を持って、主のもとに帰ろう。主にこう言おう。「すべての罪を赦し、わたしたちを快く受け入れてください。そうすれば、わたしたちは唇でささげる賛美をあなたに贈ります。」
14:3 アッシリアはわたしたちを救えない。わたしたちはもう馬に乗って戦うこともしない。自分の手で造ったものに、もう「わたしたちの神」と呼びかけることもしない。あなたのもとでこそ、みなしごはあわれみを受けるのだから。
14:4 わたしは彼らの背きをいやし、心から彼らを愛する。わたしの怒りは、もう彼らから去ったからだ。
14:5 イスラエルにとって、わたしは朝露のようになる。彼はゆりのように花を咲かせ、レバノン杉のように根を張る。
14:6 その若枝は伸びひろがり、その美しさはオリーブの木のように、その香りはレバノンのようになる。
14:7 その陰に住む人々は帰って来る。彼らは穀物のようによみがえり、ぶどうの木のように花を咲かせる。その名はレバノンのぶどう酒のように広まる。
14:8 エフライムよ、偶像など、もうおまえに何の関わりがあるだろう。答え、見守るのはこのわたしだ。わたしは青々と茂る糸杉。おまえの実りは、このわたしから生まれる。
14:9 誰が賢く、これらのことを悟るだろうか。誰が聡明で、それを理解するだろうか。主の道はまっすぐで、正しい人はその道を歩む。でも、それに背く者はつまずく。
ヨエル書
1:1 これは、主がペトエルの子ヨエルに語った言葉である。
1:2 年老いた人たちよ、これを聞け。この地に住むすべての人よ、耳を傾けよ。こんなことが、あなたたちの時代に、あるいは先祖の時代にあっただろうか。
1:3 このことを、あなたたちの子どもに語り伝えよ。子どもはその子どもに、その子どもはさらに次の世代に伝えていくのだ。
1:4 かみ食らういなごが残したものを、群れなすいなごが食い尽くした。群れなすいなごが残したものを、若いいなごが食い尽くした。若いいなごが残したものを、食い荒らすいなごが食い尽くした。
1:5 酔っぱらいたちよ、目を覚まして泣け。ぶどう酒を飲むすべての人よ、声をあげて泣け。新しいぶどう酒が、あなたたちの口から絶たれてしまったからだ。
1:6 一つの民が、わたしの地に攻め上ってきた。強大で、数えきれないほどだ。その歯はライオンの歯、その牙は雌ライオンの牙だ。
1:7 この民は、わたしのぶどうの木を荒らし、いちじくの木を切り裂いた。皮をむいて投げ捨て、枝を白くむき出しにした。
1:8 若くして夫を失い、粗布をまとって嘆く女のように、声をあげて嘆き悲しめ。
1:9 主の神殿には、ささげる穀物も、注ぐぶどう酒も絶えてしまった。主に仕える祭司たちは嘆いている。
1:10 畑は荒らされ、大地は嘆く。穀物はだめになり、新しいぶどう酒は枯れ、オリーブ油も尽きてしまった。
1:11 農夫たちよ、恥じよ。ぶどう畑を耕す人たちよ、声をあげて泣け。小麦も大麦も、畑の収穫がすべて失われてしまったからだ。
1:12 ぶどうの木は枯れ、いちじくの木はしおれた。ざくろも、なつめやしも、りんごも、畑の木はみな枯れてしまった。こうして、人々の喜びも枯れ果ててしまったのだ。
1:13 祭司たちよ、粗布を身にまとって嘆け。祭壇に仕える者たちよ、声をあげて泣け。わたしの神に仕える者たちよ、来て、粗布をまとったまま夜を過ごせ。あなたたちの神の家に、もう穀物のささげ物も注ぎのささげ物も届かなくなったからだ。
1:14 断食の日を定め、みんなを集めて祈りの集会を開け。長老たちを呼び、この地に住む人すべてを、あなたたちの神、主の家に集めよ。そして、主に向かって叫び求めよ。
1:15 ああ、その日が来る。主の日が近い。それは、全能の神からの破壊としてやって来る。
1:16 見よ、わたしたちの目の前で食べ物は絶たれてしまった。わたしたちの神の家から、喜びも楽しみも消えてしまった。
1:17 種は土くれの下で干からび、倉は荒れ果て、穀物の蔵はこわれた。穀物がすっかり枯れてしまったからだ。
1:18 家畜たちはなんとうめいていることか。牛の群れは、草を食べる場所がなくて途方に暮れ、羊の群れまで苦しんでいる。
1:19 主よ、わたしはあなたに叫び求めます。火が荒れ野の牧草を焼き尽くし、炎が野の木をすべて焼いてしまったのです。
1:20 野の獣たちさえ、あなたを求めてあえいでいます。川の水は干上がり、火が荒れ野の牧草を焼き尽くしたからです。
2:1 シオンで角笛を吹き鳴らせ。わたしの聖なる山で警報を鳴らせ。この地に住む人々よ、みんな震えおののけ。主の日が来る。もうすぐそこまで来ている。
2:2 それは闇と暗黒の日。厚い雲におおわれた、真っ暗な日だ。夜明けの光が山々に広がるように、大きくて強い軍勢が広がってくる。こんな軍勢は、これまで一度もいなかったし、これから先も、何世代たっても二度と現れない。
2:3 彼らの前を火が焼き尽くし、彼らの後ろを炎が燃え上がる。来る前はエデンの園のようだった地が、通り過ぎた後は荒れ果てた砂漠になる。彼らから逃げ切れるものは、何一つない。
2:4 その姿は馬のよう。まるで騎兵のように駆けてくる。
2:5 戦車がとどろくような音を立て、山々の頂を跳び越えていく。刈り株を焼く炎がはぜるような音を立て、戦いに備えて整列した強い軍勢のように進んでくる。
2:6 彼らを前にして、人々はもだえ苦しむ。すべての顔が青ざめる。
2:7 彼らは勇士のように駆け、兵士のように城壁をよじ登る。それぞれがまっすぐ自分の道を進み、隊列を乱すことがない。
2:8 たがいに押し合うこともなく、めいめいが自分の道をまっすぐ進む。武器の中に突っ込んでいっても、傷つくことなく突き進む。
2:9 彼らは町になだれ込み、城壁の上を駆け、家々によじ登り、泥棒のように窓から入り込む。
2:10 彼らの前で地は震え、天は揺れ動く。太陽も月も暗くなり、星々もその輝きを失う。
2:11 主は、その軍勢の先頭に立って声をとどろかせる。その陣営はあまりにも大きく、み言葉を実行する者は力強い。主の日は大いなる日、あまりにも恐ろしい日だ。だれがそれに耐えられるだろう。
2:12 「しかし今からでも遅くない」と主は言われる。「心を尽くしてわたしのもとに帰ってこい。断食し、涙を流し、嘆き悲しみながら。」
2:13 衣を引き裂くのではなく、心を引き裂け。あなたたちの神、主のもとに帰ってこい。主は情け深く、あわれみに満ちておられる。怒るのに遅く、慈しみは限りない。わざわいを下すことを思い直してくださる方だ。
2:14 もしかしたら主は思い直し、あわれみをかけて、あとに恵みを残してくださるかもしれない。あなたたちの神、主にささげる穀物とぶどう酒を。
2:15 シオンで角笛を吹き鳴らせ。断食を呼びかけ、みんなを集める日を告げよ。
2:16 民を集め、集会を整えよ。年寄りを呼び集め、幼な子も乳飲み子も集めよ。花婿はその部屋から、花嫁も新婚のへやから出てこい。
2:17 神殿の玄関と祭壇の間で、主に仕える祭司たちは泣いて、こう祈れ。「主よ、あなたの民を惜しんでください。あなたのものである民を、笑いものにしないでください。よその国々の支配にゆだねないでください。どうして人々に『彼らの神はどこにいるのか』と言わせておけるでしょう。」
2:18 すると主は、ご自分の地のために立ち上がり、その民をあわれまれた。
2:19 主は民に答えて言われた。「見よ、わたしはあなたたちに穀物とぶどう酒とオリーブ油を送る。あなたたちは満ち足りる。もう二度と、あなたたちをよその国々の笑いものにはしない。
2:20 北から来た軍勢を、あなたたちから遠く追いやる。乾ききった荒れ果てた地へ追い払う。その前面は東の海に、後方は西の海に向かう。そして悪臭が立ちのぼり、腐ったにおいが上がってくる。あれほど大それたことをしたからだ。
2:21 大地よ、恐れるな。喜び、楽しめ。主が大いなることをなさったからだ。
2:22 野の獣たちよ、恐れるな。荒れ野の牧草地は緑によみがえり、木は実をみのらせ、いちじくもぶどうも豊かに実るからだ。
2:23 シオンの人々よ、あなたたちの神、主を喜び、楽しめ。主は正しく雨を降らせ、あなたたちに秋の雨を与えてくださった。前のように、秋の雨と春の雨を降らせてくださる。
2:24 打ち場は麦であふれ、しぼり場はぶどう酒とオリーブ油であふれかえる。
2:25 あの何年もの間、いなごの群れ——大いなご、若いいなご、食い荒らすいなご、かみつくいなご——が食い荒らしたものを、わたしはあなたたちに取り戻してやる。それは、わたしがあなたたちに送り込んだ、わたしの大軍だった。
2:26 あなたたちは十分に食べて満ち足り、あなたたちの神、主の名をたたえる。主は、あなたたちのために驚くようなことをしてくださったからだ。わたしの民は、二度と恥をかくことがない。
2:27 そしてあなたたちは、わたしがイスラエルのただ中にいることを知る。わたしこそ、あなたたちの神、主であり、ほかに神はいない。わたしの民は、二度と恥をかくことがない。
2:28 その後、わたしはすべての人にわたしの霊を注ぐ。あなたたちの息子や娘は預言し、老人は夢を見、若者は幻を見る。
2:29 その日わたしは、男女の召し使いにも、わたしの霊を注ぐ。
2:30 わたしは天と地に不思議なしるしを現す。血と、火と、立ちのぼる煙の柱を。
2:31 主の大いなる恐ろしい日が来る前に、太陽は暗くなり、月は血のように赤くなる。
2:32 主の名を呼び求める者は、だれでも救われる。主が言われたとおり、シオンの山とエルサレムには、のがれ場がある。生き残る者、つまり主が呼び出す者たちが、そこにいるのだ。
3:1 見よ、その日、その時、わたしはユダとエルサレムをもとの姿に取り戻す。
3:2 わたしはすべての国々を集め、ヨシャファトの谷へ連れ下る。そしてそこで、彼らを問いただす。わたしの民、わたしが受け継ぐイスラエルのことで、彼らをさばくのだ。国々はわたしの民を各地に散らし、わたしの土地を勝手に分け合った。
3:3 彼らはわたしの民をくじ引きで分け、少年を売って遊女の代金にし、少女を売ってぶどう酒を買い、それを飲んだ。
3:4 ティルスとシドンよ、ペリシテのすべての地方よ、おまえたちはわたしにとって何だというのか。おまえたちはわたしに仕返しをするつもりか。もしそうするなら、わたしはすぐさま、そのやり方をおまえたち自身の頭に返してやる。
3:5 おまえたちはわたしの銀と金を奪い、わたしの大切な宝物を自分たちの神殿に運び込んだ。
3:6 ユダの人々とエルサレムの人々をギリシア人に売り渡し、彼らを自分たちの土地から遠くへ引き離した。
3:7 見よ、わたしは、おまえたちが彼らを売り飛ばした場所から、彼らを呼び起こす。そして、おまえたちのやり方を、おまえたち自身の頭に返してやる。
3:8 わたしはおまえたちの息子や娘を、ユダの人々の手に売り渡す。彼らはそれをさらに、遠くの国、シェバの人々に売る。主がこう語られたのだ。
3:9 国々の間で、こう告げ知らせよ。「戦いの備えをせよ。勇士たちを奮い立たせよ。兵士たちはみな進み出て、攻め上れ。
3:10 すきの刃を打ち直して剣とし、枝を刈るかまを打ち直して槍とせよ。弱い者も『わたしは勇士だ』と言え。」
3:11 周りのすべての国々よ、急いで来て、そこに集まれ。主よ、あなたの勇士たちをそこに下してください。
3:12 国々は奮い立ち、ヨシャファトの谷へ攻め上れ。わたしはそこに座して、周りのすべての国々をさばくのだから。
3:13 かまを入れよ。刈り入れの時が来た。来て、踏みつぶせ。酒ぶねはいっぱいで、しぼり場からあふれている。彼らの悪がそれほど大きいのだ。
3:14 おびただしい群衆が、さばきの谷に押し寄せる。さばきの谷に、主の日が近づいているのだ。
3:15 太陽も月も暗くなり、星もその輝きを失う。
3:16 主はシオンからほえ、エルサレムから声をとどろかせる。すると天も地も震える。だが主は、その民の避け所、イスラエルの人々の砦となる。
3:17 そのとき、あなたたちは知る。わたしがあなたたちの神、主であり、わたしの聖なる山シオンに住んでいることを。エルサレムは聖なる都となり、よそ者が二度とそこを通り抜けることはない。
3:18 その日、山々は甘いぶどう酒をしたたらせ、丘は乳を流す。ユダの谷川はどこも水で満ち、主の家から泉がわき出て、シティムの谷をうるおす。
3:19 エジプトは荒れ果て、エドムは荒れ野となる。彼らがユダの人々に暴力をふるい、その地で罪のない者の血を流したからだ。
3:20 しかしユダには、いつまでも人が住み、エルサレムは代々続いていく。
3:21 わたしは、まだ償わせていない彼らの流された血を、必ず償わせる。主はシオンに住まわれる。
アモス書
1:1 テコアの羊飼いのひとりだったアモスの言葉。ユダの王ウジヤの時代、そしてイスラエルの王、ヨアシュの子ヤロブアムの時代、あの大地震の二年前に、アモスがイスラエルについて示された幻である。
1:2 アモスはこう言った。主はシオンから吼え、エルサレムから声をとどろかせる。すると羊飼いの牧草地は枯れ、カルメル山の頂もしおれてしまう。
1:3 主はこう言われる。ダマスコは罪を重ねに重ねた。だからわたしは、下した罰を取り消さない。彼らは鉄の打穀機でギレアデを踏みにじったからだ。
1:4 わたしはハザエルの家に火を送る。その火はベン・ハダドの宮殿を焼き尽くす。
1:5 わたしはダマスコの城門のかんぬきを打ち砕く。アベンの谷に住む者を絶ち、ベテ・エデンで王の杖を握る者を断つ。アラムの民は捕らえられ、キルへ引いて行かれる、と主は言われる。
1:6 主はこう言われる。ガザは罪を重ねに重ねた。だからわたしは、下した罰を取り消さない。彼らは民をまるごと捕らえて連れ去り、エドムに売り渡したからだ。
1:7 わたしはガザの城壁に火を送る。その火はその宮殿を焼き尽くす。
1:8 わたしはアシュドドに住む者を絶ち、アシュケロンで王の杖を握る者を断つ。エクロンに向けて手を下し、生き残ったペリシテ人も滅びる、と主なる神は言われる。
1:9 主はこう言われる。ティルスは罪を重ねに重ねた。だからわたしは、下した罰を取り消さない。彼らは民をまるごと捕らえてエドムに売り渡し、兄弟としての約束を思い出そうともしなかったからだ。
1:10 わたしはティルスの城壁に火を送る。その火はその宮殿を焼き尽くす。
1:11 主はこう言われる。エドムは罪を重ねに重ねた。だからわたしは、下した罰を取り消さない。彼は剣を手に自分の兄弟を追い、あわれみの心を捨て去った。怒りにまかせていつまでも人を引き裂き、憤りをずっと持ち続けたからだ。
1:12 わたしはテマンに火を送る。その火はボツラの宮殿を焼き尽くす。
1:13 主はこう言われる。アンモン人は罪を重ねに重ねた。だからわたしは、下した罰を取り消さない。彼らは自分たちの領土を広げようとして、ギレアドの妊婦の腹を切り裂いたからだ。
1:14 わたしはラバの城壁に火を送る。その火はその宮殿を焼き尽くす。戦いの日には叫び声が上がり、嵐の日には激しい風が吹き荒れる。
1:15 彼らの王は、家来たちと一緒に捕虜となって連れ去られる。主はそう言われる。
2:1 主はこう言われる。モアブは罪を重ねに重ねた。だからわたしは、下した罰を取り消さない。モアブはエドムの王の骨を焼いて、石灰にしてしまったからだ。
2:2 わたしはモアブに火を送る。その火はケリオトの宮殿を焼き尽くす。モアブは戦いの騒ぎの中で死んでいく。叫び声が上がり、角笛が鳴り響く中で。
2:3 わたしはモアブから支配者を断ち、その高官たちもみな一緒に殺す。主はそう言われる。
2:4 主はこう言われる。ユダは罪を重ねに重ねた。だからわたしは、下した罰を取り消さない。彼らは主の教えを退け、その定めを守らなかった。先祖たちが従ってきた偽りの神々に惑わされたからだ。
2:5 わたしはユダに火を送る。その火はエルサレムの宮殿を焼き尽くす。
2:6 主はこう言われる。イスラエルは罪を重ねに重ねた。だからわたしは、下した罰を取り消さない。彼らは金のために正しい人を売り、一足のサンダルのために貧しい人を売ったからだ。
2:7 彼らは弱い者の頭を地の塵に踏みつけ、苦しむ人たちを道から押しのける。父と息子が同じ女のもとに通い、わたしの聖なる名を汚す。
2:8 どの祭壇のそばでも、質に取った服の上に寝そべる。罰金として取り立てたぶどう酒を、自分たちの神の宮で飲む。
2:9 だが、わたしこそ彼らの前でアモリ人を滅ぼした。アモリ人は杉のように背が高く、樫の木のように強かった。それでもわたしは、上の実も下の根も残さず滅ぼした。
2:10 わたしはあなたたちをエジプトの地から連れ出した。四十年のあいだ荒れ野を導き、アモリ人の地を継がせた。
2:11 あなたたちの息子の中から預言者を、若者の中から神にささげられた者を立てた。イスラエルの人々よ、そのとおりではないか、と主は言われる。
2:12 それなのに、あなたたちは神にささげられた者にぶどう酒を飲ませ、預言者には『語るな』と命じた。
2:13 見よ、わたしはあなたたちを押しつぶす。刈り取った麦を満載した車が、地面を押しつぶすように。
2:14 足の速い者も逃げ場を失い、強い者も力を出せず、勇士も自分の命を救えない。
2:15 弓を構える者も持ちこたえられず、足の速い者も逃げきれず、馬に乗る者も自分の命を救えない。
2:16 勇士の中で最も勇ましい者さえ、その日には裸で逃げ出す、と主は言われる。
3:1 イスラエルの人たちよ、主があなたたちについて語ったこの言葉を聞きなさい。わたしがエジプトの地から導き出した、あの一族すべてに向けての言葉だ。
3:2 地上のすべての民族の中で、わたしが選んで深く関わったのは、あなたたちだけだ。だからこそ、わたしはあなたたちのすべての罪を問いただす。
3:3 二人の人が示し合わせもせずに、いっしょに歩くだろうか。
3:4 獲物もいないのに、ライオンが森でほえるだろうか。何も捕らえていないのに、若いライオンが巣穴でうなり声をあげるだろうか。
3:5 しかけもないのに、鳥が地面のわなにかかるだろうか。何も捕らえていないのに、わなが地面からはね上がるだろうか。
3:6 町で警報の角笛が鳴れば、人々はおびえないだろうか。町に災いが起これば、それは主がなさったことではないだろうか。
3:7 まことに、主なる神は、その計画を自分のしもべである預言者たちに明かさずには、何一つなさらない。
3:8 ライオンがほえた。だれが恐れずにいられるだろう。主なる神が語った。だれが語らずにいられるだろう。
3:9 アシュドドの宮殿と、エジプトの地の宮殿に向かって、こう告げなさい。「サマリアの山々に集まって、その町の中にある大きな混乱と、しいたげられている人々を見よ」と。
3:10 彼らは正しいことを行うすべを知らない、と主は言う。彼らは自分の宮殿に、暴力と略奪でためこんだものを積み上げている。
3:11 だから、主なる神はこう言う。「敵がこの地を取り囲む。敵はあなたの力を引きずり下ろし、あなたの宮殿は奪い取られる。」
3:12 主はこう言う。「羊飼いがライオンの口から、羊の足二本か、耳のかけらだけを取り返すように、サマリアに住むイスラエルの人たちも、寝台のすみや、ダマスコの長いすの一部だけを残して助け出される。」
3:13 聞け。そして、ヤコブの家に向かって証言せよ、と主なる神、万軍の神は言う。
3:14 わたしがイスラエルの罪を罰するその日、ベテルの祭壇も罰する。祭壇の角は切り落とされ、地に落ちる。
3:15 冬の家も夏の家も、わたしは打ち壊す。象牙で飾った家は滅び、多くの家がなくなる、と主は言う。
4:1 この言葉を聞け。サマリアの山にいるバシャンの雌牛たちよ。弱い者を虐げ、貧しい者を踏みつけ、自分の主人に「持ってきて。飲もう」と言う者たちよ。
4:2 主なる神は、その聖なる名にかけて誓った。「見よ、お前たちにこんな日がやって来る。人々はお前たちを鉤で引っかけ、残った者を釣り針で引きずっていく。
4:3 お前たちは、城壁の破れ目から一人ずつまっすぐ引き出され、ハルモンへ放り出される、と主は言う。」
4:4 ベテルに行って罪を犯せ。ギルガルに行って、もっと罪を重ねよ。朝ごとにいけにえを持ってこい。三日ごとに十分の一のささげ物を持ってこい。
4:5 種を入れたパンを感謝のささげ物として焼き、進んでささげる物を大声で触れ回れ。イスラエルの人たちよ、お前たちはそうするのが大好きなのだから、と主なる神は言う。
4:6 「わたしは、お前たちのどの町でも歯を何もつかないきれいなままにし、どこででもパンをなくした。それでも、お前たちはわたしのところに帰ってこなかった、と主は言う。
4:7 わたしはまた、収穫まであと三か月というときに、お前たちから雨を取り上げた。ある町には雨を降らせ、別の町には降らせなかった。ある畑には雨が降り、雨の降らない別の畑は枯れてしまった。
4:8 二つ三つの町の人たちが、水を飲もうとよろよろと一つの町にたどり着いた。それでも足りなかった。それでも、お前たちはわたしのところに帰ってこなかった、と主は言う。
4:9 わたしは、熱風と病害でお前たちを打った。お前たちの畑やぶどう畑、いちじくの木やオリーブの木が実っても、いなごが食い荒らした。それでも、お前たちはわたしのところに帰ってこなかった、と主は言う。
4:10 わたしは、エジプトのときのように疫病をお前たちに送った。お前たちの若者を剣で殺し、馬を奪い去った。お前たちの陣営から立ちのぼる死のにおいを、お前たちの鼻をつくほどにした。それでも、お前たちはわたしのところに帰ってこなかった、と主は言う。
4:11 わたしは、神がソドムとゴモラを滅ぼしたように、お前たちを滅ぼした。お前たちは、火の中から拾い出された燃えさしのようになった。それでも、お前たちはわたしのところに帰ってこなかった、と主は言う。
4:12 だから、イスラエルよ、わたしはお前にこうする。わたしがお前にこうするからには、イスラエルよ、お前の神を迎える覚悟をせよ。
4:13 見よ、山を形づくり、風を創造し、人にその思いを告げる方。夜明けを暗やみに変え、地の高い所を踏み歩く方。その名は、万軍の神なる主。
5:1 イスラエルの家よ、聞け。わたしがお前たちのために口にする、この嘆きの歌を。
5:2 おとめイスラエルは倒れて、二度と立ち上がれない。自分の土地に投げ捨てられ、起こしてくれる者もいない。
5:3 主なる神はこう言う。イスラエルの家よ、千人を送り出した町には百人が残り、百人を送り出した町には十人が残る。
5:4 主はイスラエルの家にこう言う。わたしを求めよ。そうすれば生きる。
5:5 ベテルを求めるな。ギルガルに行くな。ベエル・シェバに足を運ぶな。ギルガルは必ず捕らえられて連れ去られ、ベテルは無に帰すのだから。
5:6 主を求めよ。そうすれば生きる。そうしないと、主は火のようにヨセフの家に燃え移る。その火はすべてを焼き尽くし、ベテルには消せる者もいない。
5:7 公正を苦よもぎのように苦いものに変え、正義を地に投げ捨てる者たちよ。
5:8 すばるとオリオンの星々を造り、深い闇を朝に変え、昼を夜へと暗くする方。海の水を呼び集めて地の面に注ぐ方。その名は主。
5:9 主は強い者にたちまち破壊を下し、砦にも滅びをもたらす。
5:10 彼らは町の門で正しく訴える者を憎み、真実を語る者を嫌う。
5:11 だから、あなたたちは貧しい者を踏みつけ、その人から麦の取り立てをしている。切り石で家を建てても、そこに住むことはない。見事なぶどう畑を作っても、そのぶどう酒を飲むことはない。
5:12 わたしはあなたたちの多くの背きと、重い罪をよく知っている。あなたたちは正しい者を苦しめ、わいろを受け取り、門で貧しい者を退けている。
5:13 だから、賢い者はこのような時には黙っている。悪い時代だからだ。
5:14 悪ではなく、良いものを求めよ。そうすれば生きる。そうすれば、あなたたちが言うとおり、万軍の神である主が共にいてくださる。
5:15 悪を憎み、良いものを愛せ。門で公正を打ち立てよ。そうすれば、万軍の神である主は、ヨセフの生き残った者たちをあわれんでくださるかもしれない。
5:16 だから、万軍の神である主、わたしの主はこう言う。どの広場でも嘆きの声があがり、どの通りでも人々は「ああ、ああ」と叫ぶ。農夫は泣くために呼び出され、泣き女は嘆きの声をあげるために呼ばれる。
5:17 どのぶどう畑でも嘆きの声があがる。わたしがあなたの間を通り過ぎるからだと、主は言う。
5:18 主の日を待ち望む者たちよ、あなたたちはわざわいだ。なぜ主の日を望むのか。主の日は闇であって、光ではない。
5:19 それは、ライオンから逃げた人が熊に出くわすようなものだ。やっとの思いで家に入り、壁に手をついたら、今度は蛇にかまれる。
5:20 主の日は闇であって、光ではないではないか。真っ暗で、輝きなど少しもない。
5:21 わたしはあなたたちの祭りが憎い、うんざりだ。あなたたちの集まりのにおいをかぐ気にもならない。
5:22 たとえあなたたちが焼き尽くすいけにえをささげても、わたしは受け入れない。穀物のささげ物も気に入らないし、よく肥えた家畜の和解のいけにえにも、目を向けない。
5:23 あなたの歌の騒がしさを、わたしの前から取り去れ。竪琴の調べも、わたしは聞きたくない。
5:24 それよりも、公正を水のように、正義を絶えず流れる川のように、あふれさせよ。
5:25 イスラエルの民よ、あなたたちは荒れ野で過ごした四十年の間、わたしにいけにえや穀物のささげ物をささげてきただろうか。
5:26 それなのにあなたたちは、自分たちで造った偶像をかついできた。王とあがめるシクトの像、星の神カイワンの像を。
5:27 だから、わたしはあなたたちをダマスコの向こうへ捕らえ移す、と主は言う。その名は万軍の神。
6:1 わざわいだ。シオンで何の心配もなく暮らす者たち、サマリアの山で安心しきっている者たちよ。国々の頂点に立つ国の名士とされ、イスラエルの人々が頼ってくる者たちよ。
6:2 カルネに渡って行って、見てみろ。そこから大きな町ハマトへ行き、ペリシテ人のガトへ下ってみろ。これらの国は、お前たちの国より良いだろうか。彼らの領土のほうが、お前たちの領土より広いだろうか。
6:3 お前たちは、わざわいの日を遠くに追いやりながら、暴力の支配を自分に近づけている。
6:4 象牙をはめこんだ寝台に横たわり、長いすの上に体を伸ばし、群れの中から子羊を、囲いの中から子牛を取って食べる。
6:5 竪琴に合わせて即興で歌い、ダビデのように、自分のために楽器を次々と考え出す。
6:6 大きな鉢でぶどう酒を飲み、最高の油を体に塗る。それなのに、ヨセフの一族が滅びかけていることを、少しも心に痛めない。
6:7 だから今、彼らは真っ先に捕らえられ、遠くへ連れて行かれる。寝そべって騒いでいた者たちの宴は、終わりを迎える。
6:8 主なる神は、ご自分にかけて誓われた。万軍の神、主は言われる。「わたしはヤコブの誇りを忌みきらい、その宮殿を憎む。だからわたしは、この町とその中にあるすべてのものを敵に引き渡す。」
6:9 もし一つの家に十人が残っていても、その人たちも死ぬ。
6:10 死んだ者の親戚、つまり遺体を焼く者が、その人を引き取り、骨を家の外へ運び出す。そのとき、家の奥にいる者に「まだほかにだれか一緒にいるか」と尋ねる。相手が「もういない」と答えると、その人はこう言う。「黙れ。主の名を口にしてはならない。」
6:11 見よ、主が命じられる。すると大きな家は打ち砕かれて粉々になり、小さな家は割れて壊れる。
6:12 馬が岩の上を走るだろうか。牛でそこを耕すだろうか。ところがお前たちは、公正を毒に変え、正義の実を苦よもぎに変えてしまった。
6:13 お前たちは、取るに足りないことを喜んでいる。そして『自分の力で角を手に入れたではないか』と言っている。
6:14 見よ、イスラエルの家よ、わたしはお前たちに向かって一つの国を立ち上がらせる——万軍の神、主は言われる。その国は、ハマトの入り口からアラバの谷まで、お前たちを苦しめる。
7:1 主なる神は、わたしにこう見せてくださった。見よ、二番草が生え始めるころ、主はいなごの群れを造っておられた。それは、王が刈り取った後に生えてくる二番草の時期だった。
7:2 いなごが地の草を食い尽くしてしまったとき、わたしは言った。「主なる神よ、どうか赦してください。ヤコブはどうやって立ち直れるでしょう。こんなに小さいのに。」
7:3 主は、このことについて思い直された。「それは起こらない」と主は言われた。
7:4 主なる神は、わたしにこう見せてくださった。見よ、主なる神は、火によって裁こうと呼びかけられた。火は大いなる深い水を焼き尽くし、地をも焼き尽くそうとした。
7:5 わたしは言った。「主なる神よ、どうかやめてください。ヤコブはどうやって立ち直れるでしょう。こんなに小さいのに。」
7:6 主は、このことについて思い直された。「これも起こらない」と主なる神は言われた。
7:7 主はわたしに、こう見せてくださった。見よ、主が、下げ振りで測って造った壁の上に立っておられた。その手には下げ振りがあった。
7:8 主はわたしに言われた。「アモスよ、何が見えるか。」わたしは答えた。「下げ振りです。」すると主は言われた。「見よ、わたしは、わたしの民イスラエルの真ん中に下げ振りを下ろす。もう二度と、彼らを見逃すことはしない。
7:9 イサクの聖なる高台は荒れ果て、イスラエルの聖所は廃墟となる。わたしは剣を取って、ヤロブアムの家に立ち向かう。」
7:10 ベテルの祭司アマツヤは、イスラエルの王ヤロブアムに使いを送って、こう言った。「アモスが、イスラエルの家のただ中で、あなたに反逆をたくらんでいます。この国は、彼の言葉すべてには耐えられません。
7:11 アモスはこう言っているのです。『ヤロブアムは剣で死に、イスラエルは必ず自分の土地から連れ去られる。』」
7:12 アマツヤはアモスに言った。「幻を見る者よ、出て行け。ユダの地へ逃げるがいい。あそこでパンを食べ、あそこで預言していろ。
7:13 だが、ベテルでは二度と預言するな。ここは王の聖所、王国の神殿なのだから。」
7:14 アモスはアマツヤに答えた。「わたしは預言者ではない。預言者の弟子でもない。わたしは牛飼いで、いちじく桑を手入れする者だ。
7:15 その群れを追っていたわたしを、主は連れ出された。そして主はわたしに言われた。『行って、わたしの民イスラエルに預言せよ。』
7:16 だから今、主の言葉を聞け。あなたはこう言う。『イスラエルに向かって預言するな。イサクの家に向かって語りかけるな。』
7:17 だからこそ、主はこう言われる。『お前の妻は町で遊女となり、お前の息子や娘は剣で倒れる。お前の土地は測り縄で分けられ、お前自身は汚れた地で死ぬ。そしてイスラエルは必ず自分の土地から連れ去られる。』」
8:1 主なる神は、わたしにこんな幻を見せた。見ると、そこに熟した夏の果物を盛ったかごがあった。
8:2 主は言った。「アモス、何が見えるか。」わたしは答えた。「熟した果物のかごです。」すると主はわたしに言った。「わたしの民イスラエルに、終わりが来た。もう二度と、彼らを見逃すことはしない。」
8:3 その日、神殿の歌は嘆きの叫びに変わる、と主なる神は告げる。いたるところに死体が転がり、人々は黙ってそれを投げ捨てる。
8:4 これを聞け。貧しい人を踏みつけ、この地の弱い者を消し去ろうとする者たちよ。
8:5 お前たちはこう言っている。「新月の祭りは、いつ終わるのか。そうすれば穀物を売れるのに。安息日は、いつ終わるのか。そうすれば麦を売り出せるのに。」そして升を小さくして量をごまかし、代金のおもりを重くし、いんちきな天秤で人をだます。
8:6 金を払えば貧しい人を買い取り、サンダル一足の値で弱った人を手に入れる。くず麦さえも売りつける。
8:7 主はヤコブの誇りにかけて誓った。「わたしは、彼らのしたことを決して忘れない。」
8:8 これらのことのために、地は震えないだろうか。そこに住むすべての人は嘆き悲しむ。地全体がナイル川のように盛り上がり、エジプトの川のように波打っては沈んでいく。
8:9 その日、わたしは真昼に太陽を沈ませ、明るい日中に地を暗くする、と主なる神は告げる。
8:10 わたしはお前たちの祭りを嘆きに変え、すべての歌を悲しみの叫びに変える。すべての腰に粗布をまとわせ、すべての頭を丸坊主にする。わたしはその日を、ひとり息子を失ったときのような嘆きとし、その終わりを、苦い一日とする。
8:11 見よ、その日が来る、と主なる神は告げる。わたしはこの地に飢えを送る。それはパンに飢えることでも、水に渇くことでもない。主の言葉を聞けない飢えだ。
8:12 人々は海から海へとさまよい、北から東へと歩き回る。主の言葉を探し求めて。でも、それは見つからない。
8:13 その日、美しい若い娘たちも、若者たちも、渇きで気を失う。
8:14 サマリアの罪にかけて誓う者たち、「ダンよ、お前の神は生きている」「ベエル・シェバへの道は生きている」と言う者たち――彼らは倒れ、二度と立ち上がれない。
9:1 わたしは、主が祭壇のそばに立っておられるのを見た。主は言われた。「柱の頭を打て。敷居が揺れるように。そしてそれを、すべての者の頭に打ち砕け。残った者は剣で殺す。逃げる者はひとりも逃げ切れず、生き延びる者もひとりも助からない。
9:2 たとえ彼らが地の底の死者の世界に掘り進んでも、わたしの手はそこから彼らをつかみ出す。たとえ天に登っても、そこから引きずり降ろす。
9:3 たとえカルメル山の頂に隠れても、わたしはそこで探し出してつかまえる。たとえわたしの目を逃れて海の底に身を隠しても、わたしはそこで蛇に命じ、蛇は彼らをかむ。
9:4 たとえ敵に捕らえられて連れて行かれても、わたしはそこで剣に命じ、剣は彼らを殺す。わたしは彼らに目を向ける。恵みのためではなく、災いのために。」
9:5 万軍の主なる神。その方が地に触れると、地は溶ける。そこに住むすべての者は嘆く。地はナイル川のようにすべて盛り上がり、エジプトのナイル川のように沈む。
9:6 その方は天に自分の高殿を築き、地の上に大空の丸天井を据える。海の水を呼び集め、地の面に注ぐ。その名は主。
9:7 イスラエルの人々よ、あなたたちはわたしにとって、クシュの人々と何も変わらない、と主は言われる。わたしはイスラエルをエジプトの地から導き上げた。でも、それと同じように、ペリシテ人をカフトルから、アラム人をキルから導き上げたのだ。
9:8 見よ、主なる神の目は、この罪深い王国に注がれている。わたしはこの国を地の面から消し去る。でも、ヤコブの家をすべて滅ぼし尽くすことはしない、と主は言われる。
9:9 見よ、わたしは命じる。イスラエルの家を、すべての国々の中でふるいにかける。ふるいで穀物をふるうように。それでも、小さな石一つ地に落ちることはない。
9:10 わたしの民の中の罪人は、みな剣で死ぬ。「災いがわたしたちに追いつくことも、ふりかかることもない」と言っている者たちだ。
9:11 その日、わたしは倒れたダビデの小屋を建て直す。その破れを修理し、崩れたところを起こし、昔のように建て直す。
9:12 こうして彼らは、エドムの生き残りと、わたしの名で呼ばれるすべての国々を、自分のものとする。これを行う主は、そう言われる。
9:13 見よ、その日が来る、と主は言われる。そのとき、耕す者は刈り入れる者に追いつき、ぶどうを踏む者は種をまく者に追いつく。山々からは甘いぶどう酒がしたたり、すべての丘がその流れであふれる。
9:14 わたしは、わたしの民イスラエルを元の暮らしに戻す。彼らは荒れ果てた町々を建て直して、そこに住む。ぶどう畑を作ってそのぶどう酒を飲み、園を作ってその実を食べる。
9:15 わたしは彼らを、彼らの地に植える。もう二度と、わたしが与えたその地から引き抜かれることはない、とあなたの神、主は言われる。
オバデヤ書
1:1 オバデヤが見た幻。エドムについて、主なる神はこう言われる。わたしたちは主から知らせを聞いた。使者が国々に送られて、こう告げた。「立ち上がれ。さあ、エドムに攻め込もう。」
1:2 見よ、わたしはあなたを国々の中で小さな者にする。あなたはひどく見下される。
1:3 あなたの心の高ぶりが、あなたを欺いた。岩の裂け目に住み、高い所を住まいとする者よ。あなたは心の中で言う。「だれがわたしを地に引きずり下ろせるものか。」
1:4 たとえ鷲のように高く舞い上がり、星々の間に巣を作ったとしても、わたしはそこからあなたを引きずり下ろす、と主は言われる。
1:5 泥棒があなたのところに来たら、夜盗が押し入ったら——ああ、あなたはなんとひどく荒らされることか——それでも彼らは、必要なだけ盗んで済ませるのではないか。ぶどうを摘む者が来ても、摘み残しを少しは残すのではないか。
1:6 ああ、エサウはなんと徹底的に探られ、隠していた宝まで見つけ出されてしまうことか。
1:7 あなたの同盟者はみな、あなたを国境まで追い返した。仲の良かった者たちがあなたを欺き、あなたを打ち負かした。あなたのパンを食べていた者たちが、あなたの足もとに罠をしかける。あなたには、それを見抜く力がない。
1:8 その日には、と主は言われる、わたしはエドムから知恵ある者を消し去り、エサウの山から分別を消し去るのではないか。
1:9 テマンよ、あなたの勇士たちはうちのめされる。こうしてエサウの山にいる者は、みな殺されて絶たれる。
1:10 兄弟ヤコブに振るった暴虐のために、あなたは恥に包まれ、永遠に絶たれる。
1:11 よそ者がヤコブの財産を奪い去り、異国の者が門から入り込み、エルサレムをくじで分け合った、あの日。あなたはそばに立って、ただ傍観していた。あなたも彼らの仲間と同じだった。
1:12 あなたは、兄弟の不幸の日を平気で眺めているべきではなかった。ユダの人々が滅びる日に、喜んではならなかった。苦難の日に、大口をたたいてはならなかった。
1:13 わたしの民の門から入ってはならなかった。彼らの災いの日に。あなたも、その災難をながめてはならなかった。彼らの災いの日に。その財産に手を伸ばしてはならなかった。彼らの災いの日に。
1:14 逃げ出す者を討ち取ろうと、分かれ道に立ちふさがってはならなかった。苦難の日に、生き残った者を敵に引き渡してはならなかった。
1:15 主の日が、すべての国々に近づいているのだから。あなたがしたことは、そのままあなたに返ってくる。あなたの仕打ちは、自分の頭にはね返るのだ。
1:16 あなたたちがわたしの聖なる山で飲んだように、すべての国々もいつまでも飲み続ける。飲んで、飲み干して、まるで初めから存在しなかったかのようになる。
1:17 しかしシオンの山には、逃れる者たちが残る。そこは聖なる場所となる。ヤコブの家は、自分たちの受け継ぐべきものを取り戻す。
1:18 ヤコブの家は火となり、ヨセフの家は炎となる。エサウの家は刈られた枯れ草だ。彼らは枯れ草に燃え移り、焼き尽くす。エサウの家には、生き残る者は一人もいなくなる。主がそう語られたのだ。
1:19 ネゲブに住む人々はエサウの山を、低地の人々はペリシテの地を受け継ぐ。人々はエフライムの野とサマリアの野を受け継ぎ、ベニヤミンはギレアデを受け継ぐ。
1:20 この要塞から捕らえ移されたイスラエルの人々は、ツァレファトまでのカナン人の地を手に入れる。スファラドにいるエルサレムからの捕らわれ人は、ネゲブの町々を受け継ぐ。
1:21 救う者たちがシオンの山に上り、エサウの山を裁く。そして、王国は主のものとなる。
ヨナ書
1:1 主の言葉が、アミタイの子ヨナに届いた。
1:2 「さあ、あの大きな町ニネベへ行きなさい。そして、町に向かって語りなさい。彼らの悪が、わたしのところまで上ってきたからだ。」
1:3 ところがヨナは、主のもとから逃げようとして、タルシシュへ向かった。ヨッパに下って行くと、ちょうどタルシシュ行きの船が見つかった。ヨナは料金を払って船に乗り込み、人々といっしょに、主のもとを離れてタルシシュへ行こうとした。
1:4 すると主は、海に激しい風を送りこんだ。海は大あらしになり、船は今にも壊れそうになった。
1:5 船乗りたちはおびえ、それぞれ自分の神に助けを求めて叫んだ。そして、船を軽くしようと、積み荷を海に投げ捨てた。でもヨナは、船底に下りて横になり、ぐっすり眠りこんでいた。
1:6 船長がヨナのところに来て言った。「どうして眠っていられるんだ。起きて、あなたの神に祈ってくれ。もしかしたら、その神がわたしたちを心にかけて、助けてくれるかもしれない。そうすれば死なずにすむ。」
1:7 船乗りたちは互いに言った。「さあ、くじを引こう。だれのせいでこんな災いにあっているのか、はっきりさせよう。」そうしてくじを引くと、くじはヨナに当たった。
1:8 そこで彼らはヨナに言った。「教えてくれ。だれのせいで、この災いがわたしたちにふりかかっているんだ。あなたの仕事は何だ。どこから来た。国はどこで、どの民族の出身なんだ。」
1:9 ヨナは答えた。「わたしはヘブライ人だ。海と陸を造られた、天の神である主を敬っている。」
1:10 これを聞いて、人々はますますおびえた。そして言った。「なんてことをしてくれたんだ。」ヨナが主のもとから逃げていることを、彼らはすでに本人から聞いて知っていたのだ。
1:11 海はますます荒れていった。そこで彼らはヨナに言った。「海が静まるように、あなたをどうすればいいんだ。」
1:12 ヨナは答えた。「わたしを持ち上げて、海に投げ込んでくれ。そうすれば、海は静まるはずだ。この大あらしがあなたたちを襲っているのは、わたしのせいだと分かっているから。」
1:13 人々は必死で船をこいで、陸に戻ろうとした。でも、どうにもならなかった。海がますます荒れ狂って、彼らに襲いかかってきたからだ。
1:14 そこで彼らは主に叫んで言った。「お願いです、主よ。この男の命のことで、わたしたちを滅ぼさないでください。罪のない人の血を流した責任を、わたしたちに負わせないでください。あなたは主として、思いのままになさる方なのですから。」
1:15 そして彼らはヨナを持ち上げ、海に投げ込んだ。すると海は、荒れるのをやめて静まった。
1:16 これを見て、人々は主をひどく恐れた。そして主にいけにえをささげ、誓いを立てた。
1:17 主は大きな魚を用意して、ヨナをのみ込ませた。ヨナは三日三晩、その魚のお腹の中にいた。
2:1 ヨナは魚の腹の中から、自分の神である主に祈った。
2:2 こう言った。「苦しみの中から、わたしは主を呼び求めた。すると、主は答えてくださった。死者の世界の底から助けを叫ぶと、あなたはわたしの声を聞いてくださった。
2:3 あなたはわたしを深い海に投げ込んだ。大海のただ中に。逆巻く流れがわたしを取り巻き、あなたの波もうねりも、みなわたしの上を越えていった。
2:4 わたしは思った。「わたしはあなたの目の前から追い払われてしまった。」それでも、わたしはもう一度、あなたの聖なる神殿を仰ぎ見よう。
2:5 水はわたしを包み込み、命にまで迫った。深い淵がわたしを取り巻き、海草がわたしの頭にまといついた。
2:6 わたしは山々のふもとまで沈んでいった。地はその門を閉ざして、わたしを永遠に閉じ込めた。それでもあなたは、わたしの命を滅びの穴から引き上げてくださった。わたしの神、主よ。
2:7 わたしの魂が力を失って消えていくとき、わたしは主を思い出した。わたしの祈りはあなたのもとへ、あなたの聖なる神殿へと届いた。
2:8 むなしい偶像にすがる者たちは、自分に注がれる慈しみを自分から手放してしまう。
2:9 でもわたしは、感謝の声をあげてあなたにいけにえをささげる。わたしが誓ったことを、必ず果たす。救いは主のもとにある。
2:10 そして主が魚に命じると、魚はヨナを陸地に吐き出した。
3:1 主の言葉が、再びヨナに臨んだ。
3:2 「立って、あの大きな町ニネベへ行きなさい。そして、わたしがあなたに告げる言葉を、その町に伝えなさい。」
3:3 ヨナは立ち上がり、主の言葉のとおりニネベへ向かった。ニネベはとても大きな町で、歩いて回るのに三日かかるほどだった。
3:4 ヨナは町に入り、一日分歩きながら、こう叫んで告げた。「あと四十日で、ニネベは滅ぼされる。」
3:5 すると、ニネベの人々は神を信じた。彼らは断食を呼びかけ、身分の高い者から低い者まで、みな粗布を身にまとった。
3:6 この知らせがニネベの王のもとに届くと、王は王座から立ち上がり、王の衣を脱ぎ捨て、粗布をまとって灰の上に座った。
3:7 そして王は、ニネベ中にこう布告させた。王と高官たちの命令だった。「人も家畜も、牛も羊も、何も口にしてはならない。草を食べず、水も飲んではならない。
3:8 人も家畜も粗布をまとい、神に向かって必死に叫べ。みな、自分の悪い行いと、その手の暴力から立ち返れ。
3:9 もしかしたら、神は思い直して、激しい怒りをおさめてくださるかもしれない。そうすれば、わたしたちは滅びずにすむ。」
3:10 神は彼らの行いを見て、彼らが悪い道から立ち返ったのを認めた。それで神は、彼らに下すと言っていた災いを思い直し、それを実行しなかった。
4:1 しかし、このことはヨナをひどく不快にさせ、彼は激しく怒った。
4:2 ヨナは主に祈って言った。「ああ、主よ。わたしがまだ自分の国にいたとき、言っていたとおりではありませんか。だからこそ、わたしは先回りしてタルシシュへ逃げようとしたのです。あなたが、恵み深くあわれみに満ち、怒るのに遅く、慈しみにあふれ、災いを思い直される神だと、わたしは知っていたからです。
4:3 だから今、主よ、どうかわたしの命を取ってください。生きているより、死んだほうがましです。」
4:4 すると主は言った。「あなたが怒るのは、正しいことなのか。」
4:5 ヨナは町を出て、町の東側に座った。そこに自分のための小屋を作り、その日陰に座って、町がどうなるかを見届けようとした。
4:6 すると、神である主は一本の植物を用意した。それはヨナの上に伸びて、彼の頭に日陰を作り、彼を不快さから救うためだった。ヨナはその植物を見て、とても喜んだ。
4:7 しかし翌日の夜明け、神は一匹の虫を送った。虫がその植物をかじると、植物は枯れてしまった。
4:8 そして日が昇ると、神は焼けつくような東風を送った。太陽がヨナの頭に照りつけたので、彼は気を失いそうになった。ヨナは死にたいと願って言った。「生きているより、死んだほうがましだ。」
4:9 すると神はヨナに言った。「あなたがこの植物のことで怒るのは、正しいことなのか。」ヨナは答えた。「怒るのは当然だ。死ぬほど怒っている。」
4:10 主は言った。「あなたはこの植物を惜しんでいる。自分で育てたわけでも、大きくしたわけでもないのに。それは一晩で生え、一晩で枯れたものだ。
4:11 それなら、このニネベという大きな町を、わたしが惜しまないでいられるだろうか。そこには右も左もわきまえない人が十二万人以上もいて、たくさんの家畜もいるのだ。」
ミカ書
1:1 主の言葉が、モレシェテの人ミカにのぞんだ。ユダの王ヨタム、アハズ、ヒゼキヤの時代のことだ。ミカはサマリアとエルサレムについて、この幻を見た。
1:2 すべての民よ、聞け。地よ、そこに満ちるすべてのものよ、耳を傾けよ。主なる神が、あなたたちを訴える証人となる。主はその聖なる神殿から語られる。
1:3 見よ、主がそのおられる場所から出て来られる。降りて来て、地の高い所を踏みつけられる。
1:4 山々は主の足もとで溶け、谷は裂ける。火にあたる蝋のように、坂を流れ落ちる水のように。
1:5 これはすべて、ヤコブの背きのため、イスラエルの家の罪のためだ。ヤコブの背きとは何か。サマリアではないか。ユダの高き所とは何か。エルサレムではないか。
1:6 だからわたしはサマリアを、野原に積まれた石くれの山にする。ぶどう畑を植える場所にする。その石を谷に投げ落とし、土台をむき出しにする。
1:7 サマリアの彫像はすべて打ち砕かれ、神に献げられた物はみな火で焼かれる。その偶像を、わたしはすべて荒れ果てさせる。それらは遊女の稼ぎで集められたのだから、また遊女の稼ぎへと戻っていく。
1:8 このことのために、わたしは嘆き、泣き叫ぶ。服も履き物もなく、裸で歩き回る。ジャッカルのように吠え、だちょうのように悲しみの声をあげる。
1:9 サマリアの傷は、もう治らない。それがユダにまで及び、わたしの民の門にまで、エルサレムにまで届いたのだ。
1:10 ガトでこのことを告げるな。泣くな。ベト・レアフラで、ちりの中を転げ回れ。
1:11 シャフィルに住む者よ、裸で、恥をさらして立ち去れ。ツァアナンに住む者は、外に出て来ない。ベト・エツェルの嘆きが、あなたたちから立つ場所を奪い取る。
1:12 マロトに住む者は、良いことを待ちわびて身もだえする。だが災いが主のもとから下って、エルサレムの門にまで来たからだ。
1:13 ラキシュに住む者よ、戦車に早馬をつなげ。あなたはシオンの娘にとって、罪の始まりとなった。イスラエルの背きの罪が、あなたのうちに見つかったからだ。
1:14 だからあなたは、モレシェト・ガトに別れの贈り物を渡すことになる。アクジブの町々は、イスラエルの王たちを欺くものとなる。
1:15 マレシャに住む者よ、わたしはあなたのもとに征服者を送る。イスラエルの栄光はアドラムまで落ちのびる。
1:16 あなたが大切にしてきた子どもたちのために、髪をそり落とせ。はげ鷹のように頭をそり上げよ。子どもたちは捕らえられ、あなたのもとから連れ去られたからだ。
2:1 ああ、寝床の上で悪だくみをして、悪を働く者たち。朝の光が差すとすぐ、それを実行する。自分たちにその力があるからだ。
2:2 彼らは畑をほしがっては奪い取り、家をほしがっては取り上げる。人とその家を、人とその受け継ぐ土地を、力ずくで奪う。
2:3 だから、主はこう言われる。「見よ、わたしはこの一族に災いを下そうとしている。あなたたちは、そこから首を引き抜くことができない。もう二度と、いばって歩くことはできない。それは災いの時だからだ。
2:4 その日、人々はあなたたちのことで嘲りの歌を歌い、こう嘆く。『わたしたちは何もかも奪われた。主はわたしの民の分け前を、他人のものにしてしまう。ああ、主はそれをわたしから取り上げ、わたしたちの畑を裏切り者に分け与える。』
2:5 だから、主の集まりの中で、くじを引いて土地を分ける者は、あなたにはいなくなる。
2:6 「預言するな」と、彼らは預言する者に言う。「そんなことを預言するな。恥がわたしたちに追いつくことはない。」
2:7 ヤコブの家よ、こんなことを言っていいのか。「主の霊は、もう我慢の限界なのか。これが主のすることなのか」と。わたしの言葉は、正しく歩む者には良いことをもたらすではないか。
2:8 だが、このごろあなたたちは、わたしの民に敵として襲いかかっている。安心して通り過ぎる人、戦いを避けて帰る人から、服も上着もはぎ取る。
2:9 あなたたちは、わたしの民の女たちを、心地よい家から追い出す。その幼い子どもたちからは、わたしが与えた誉れを、いつまでも奪い取る。
2:10 立ち去れ。ここはもう、あなたたちの休む場所ではない。この地は汚れていて、あなたたちを滅ぼす。その滅びは激しいのだ。
2:11 もし誰かが、でたらめと嘘を並べて、「ぶどう酒と強い酒について預言してやろう」と言ったなら、この民はその男こそを、お気に入りの預言者としてありがたがるだろう。
2:12 ヤコブよ、わたしは必ずあなたたちをみな集める。イスラエルの生き残りを、必ず一つに集める。囲いの中の羊のように、牧場の群れのように、わたしは彼らを一緒に置く。人が多くて、そこはざわめくだろう。
2:13 道を切り開く者が、彼らの先頭に立って進む。彼らは門を破って通り抜け、そこから出て行く。彼らの王が先頭を進み、主が彼らの先頭に立つ。
3:1 わたしは言った。ヤコブの指導者たち、イスラエルの家の長たちよ、聞け。正しい裁きを知るのは、あなたたちの務めではないか。
3:2 あなたたちは良いことを憎み、悪いことを愛している。わたしの民の皮をはぎ取り、骨から肉をそぎ取る。
3:3 あなたたちはわたしの民の肉を食らい、その皮をはぎ取り、骨を砕く。鍋で煮る肉のように、釜の中の肉のように、彼らを切り刻む。
3:4 その時、彼らは主に助けを求めて叫ぶ。だが主は答えない。彼らが悪いことをしてきたから、その時、主は彼らから顔を隠す。
3:5 主はこう言われる。わたしの民を惑わす預言者たちについてだ。彼らは食べ物にありつければ「平安がある」と言う。だが、口に何も入れてくれない相手には、戦いをしかける。
3:6 だから、あなたたちには夜が訪れ、幻を見ることはなくなる。闇が訪れ、占うこともできなくなる。預言者たちの上に太陽は沈み、その昼は暗くなる。
3:7 先を見通すと言う者たちは恥をかき、占い師たちは面目を失う。彼らはみな、口もとを覆って黙り込む。神が何も答えてくれないからだ。
3:8 だがわたしは違う。わたしは力に満ちている。主の霊と、正しい裁きと、強さに満ちている。ヤコブにその背きを、イスラエルにその罪を、はっきり告げるためだ。
3:9 これを聞け。ヤコブの家の頭たち、イスラエルの家の指導者たちよ。あなたたちは正しい裁きを憎み、まっすぐなものを何もかもねじ曲げている。
3:10 血を流してシオンを建て、不正でエルサレムを築いている。
3:11 この町の頭たちはわいろをもらって裁き、祭司たちは代金をもらって教え、預言者たちは金をもらって占う。それでいて主に寄りかかり、こう言う。「主はわたしたちの真ん中におられるのだから、災いがわたしたちに降りかかることはない」と。
3:12 だから、あなたたちのせいで、シオンは畑のように耕され、エルサレムは瓦礫の山となる。神殿のある山も、木の茂る丘になってしまう。
4:1 終わりの日には、こうなる。主の神殿のある山は、どの山よりも高くそびえ、すべての丘の上に高く上げられる。そして、多くの民がそこへ流れのように集まってくる。
4:2 多くの国々が来て、こう言う。「さあ、主の山へ、ヤコブの神の家へ登ろう。主がその道をわたしたちに教えてくださる。わたしたちはその道を歩もう」と。教えはシオンから、主の言葉はエルサレムから出るからだ。
4:3 主は多くの民の間を裁き、遠くの強い国々の争いを正しく解決する。すると彼らは剣を打ち直して鋤にし、槍を打ち直して剪定ばさみにする。国は国に向かって剣を上げず、もう戦いを学ぶこともなくなる。
4:4 だれもが自分のぶどうの木の下、いちじくの木の下に座り、脅かす者は一人もいなくなる。万軍の主が、そう口を開いて語られたのだ。
4:5 ほかのすべての民は、それぞれ自分の神の名によって歩む。でもわたしたちは、わたしたちの神である主の名によって、いつまでも永遠に歩んでいく。
4:6 その日には、と主は言われる。わたしは足の萎えた者を集め、追い散らされた者を寄せ集める。わたしが苦しめた者たちを、集める。
4:7 わたしは足の萎えた者を、生き残る者とする。追い散らされた者を、強い国とする。主はシオンの山で、今から永遠に、彼らを治められる。
4:8 そしてあなた、羊の群れを見張るやぐらよ。シオンの娘の砦の丘よ。あなたのところに、かつての支配が戻ってくる。王国が、エルサレムの娘のものとなる。
4:9 今、あなたはなぜ大声で叫ぶのか。あなたの中に、王はいないのか。あなたの相談役は、いなくなってしまったのか。産みの女のように、陣痛があなたを捕らえているのか。
4:10 シオンの娘よ、産みの女のように、もだえ苦しめ。あなたは今、町を出て、野に住むことになる。バビロンまで行くことになる。だが、そこであなたは救い出される。そこで主が、あなたを敵の手から買い戻してくださる。
4:11 今、多くの国々が、あなたに向かって集まっている。彼らは言う。「シオンを汚してしまえ。この目で、ざまを見てやろう」と。
4:12 でも彼らは、主の思いを知らない。その計画を理解していない。主が、麦束を打ち場に集めるように、彼らを集められたのだ。
4:13 シオンの娘よ、立ち上がって、麦を打て。わたしはあなたの角を鉄とし、ひづめを青銅とする。あなたは多くの民を踏み砕く。わたしは彼らが奪い取ったものを主にささげ、その富を、全地の主にささげる。
5:1 今、軍隊の娘よ、隊を組んで集まれ。敵はわたしたちを包囲した。彼らは杖で、イスラエルを裁く者の頬を打つ。
5:2 でも、あなた、ベツレヘム・エフラタよ。あなたはユダの氏族の中で小さい。それでも、あなたの中からわたしのために一人が出て、イスラエルを治める者となる。その出どころは古く、はるか昔の日々にさかのぼる。
5:3 だから主は、産みの苦しみにある女が子を産むときまで、彼らを引き渡しておく。そのあと、その兄弟たちの残りが、イスラエルの人々のもとに帰ってくる。
5:4 彼は立って、主の力により、その神である主の名の威厳によって、群れを飼う。人々は安心して暮らす。今や彼が地の果てにまで大いなる者となるからだ。
5:5 そして、これが平和をもたらす。アッシリアがわたしたちの地に攻め込み、わたしたちの宮殿を踏みにじるとき、わたしたちは彼に立ち向かって、七人の羊飼い、八人の指導者を立てる。
5:6 彼らは剣でアッシリアの地を、その門のところでニムロデの地を治める。アッシリアがわたしたちの地に攻め込み、わたしたちの国境を踏みにじるとき、彼はわたしたちを救い出す。
5:7 ヤコブの残りの者は、多くの民の中にあって、主から降りる露のように、草の上に降るにわか雨のようになる。それは人を当てにせず、人の子らを待つこともない。
5:8 ヤコブの残りの者は、国々の中、多くの民の中にあって、森の獣の中のライオンのように、羊の群れの中の若いライオンのようになる。それは通り過ぎるとき、踏みつけ、引き裂き、だれも助け出せない。
5:9 あなたの手は敵に向かって高く上がり、あなたの敵はみな断ち切られる。
5:10 その日、わたしはあなたの中から馬を絶やし、あなたの戦車を滅ぼす、と主は言われる。
5:11 わたしはあなたの地の町々を絶やし、あなたの砦をすべて壊す。
5:12 わたしはあなたの手から呪術を絶やす。あなたのもとに占い師はいなくなる。
5:13 わたしはあなたの中から刻んだ偶像と石の柱を絶やす。あなたはもう、自分の手で造ったものにひれ伏すことはない。
5:14 わたしはあなたの中から、木で作った神々の柱を引き抜き、あなたの町々を壊す。
5:15 わたしは怒りと憤りをもって、言うことを聞かなかった国々に報復する。
6:1 主が言われることを聞きなさい。「立って、山々の前で訴えを述べよ。丘々にあなたの声を聞かせよ。」
6:2 山々よ、主の訴えを聞け。大地の変わらぬ土台よ、耳を傾けよ。主はご自分の民を訴え、イスラエルと言い争っておられる。
6:3 「わたしの民よ、わたしがあなたに何をしたというのか。どんなことであなたを疲れさせたのか。答えてみなさい。
6:4 わたしはあなたをエジプトの地から連れ出し、奴隷の家から救い出した。そして、モーセとアロンとミリアムを、あなたの先に立って行かせた。
6:5 わたしの民よ、思い出しなさい。モアブの王バラクが何をたくらんだか。ベオルの子バラムが彼にどう答えたか。シティムからギルガルまでの間に起きたことを。それは、主が正しいことをしてくださったと、あなたが知るためだ。」
6:6 わたしは何を持って主の前に行き、天におられる神の前にひれ伏せばいいのだろう。焼き尽くすいけにえや、一歳の子牛を持って、御前に行けばいいのか。
6:7 主は、何千頭もの雄羊や、何万もの川のように流れる油を喜ばれるだろうか。わたしの背きのために、長子をささげればいいのか。わたしの魂の罪のために、わが身から生まれた子をささげればいいのか。
6:8 主は、良いことが何かを、あなたに示された。人よ、主があなたに求めておられるのは、これだけだ。正義を行い、慈しみを愛し、へりくだってあなたの神と共に歩むこと。
6:9 主の声が町に向かって呼びかける。あなたの名を畏れることこそ、真の知恵だ。杖の裁きに耳を傾けよ。だれがそれを定めたのかを。
6:10 悪者の家には、まだ不正にためこんだ財宝があるのか。人をだますあの小さすぎる升が、まだあるのか。それは呪わしいものだ。
6:11 ごまかしのはかりや、重さをいつわる分銅を袋に入れて使う者を、わたしはどうしてきよいと認められるだろうか。
6:12 この町の金持ちは暴力で満ちている。住む人々はうそをつき、その口の中の舌は、人をあざむいてばかりだ。
6:13 だから、わたしもあなたを打って、病に倒す。あなたの罪のために、あなたを荒れ果てさせる。
6:14 あなたは食べても、満腹にならない。腹の中はいつも飢えたままだ。あなたは物を運び出そうとしても、救い出せない。救い出せたものも、わたしは剣に渡す。
6:15 あなたは種をまいても、刈り取れない。オリーブの実を踏んでも、その油を身につけられない。ぶどうを踏んでも、そのぶどう酒を飲めない。
6:16 あなたはオムリのおきてを守り、アハブの家のすることをすべてまね、彼らの言いなりに歩んできた。だから、わたしはあなたを荒れ果てさせ、そこに住む人々をあざけりの的にする。あなたたちは、わたしの民が受ける恥をになうことになる。
7:1 ああ、わたしはなんて惨めなんだろう。まるで夏の果物を取り入れたあとのようだ。ぶどうを摘み取ったあとの、わずかな取り残しのようだ。食べられる房はひとつも残っていない。初なりのいちじくを、わたしの魂は求めているのに。
7:2 神を敬う誠実な人は、この地から消えてしまった。まっすぐに生きる正しい人など、どこにもいない。だれもが血を流そうと待ち伏せている。それぞれ網を張って、自分の兄弟さえ獲物のように狙っている。
7:3 彼らの手は悪事にたけている。役人は賄賂を求め、裁判官は見返りをほしがる。有力者は思うままの欲望を口にする。そうやってみなで手を組み、悪だくみを仕上げていく。
7:4 彼らの中で一番良い者でも、いばらのようだ。一番正しい者でも、とげの垣根より鋭い。あなたの見張りが告げていた日、あなたが罰せられる日が来る。今こそ、彼らは混乱する。
7:5 友を信じるな。親しい仲間を頼るな。あなたのふところで眠る妻にさえ、うっかり口を開くな。
7:6 息子は父を軽んじ、娘は母に逆らって立ち上がる。嫁は姑に歯向かう。人の敵は、自分の家族なのだ。
7:7 でもわたしは、主を待ち望む。わたしを救ってくださる神を、待ち続ける。わたしの神は、必ず聞いてくださる。
7:8 わたしの敵よ、わたしのことで喜ぶな。倒れても、わたしは必ず立ち上がる。暗闇の中に座っていても、主がわたしの光になってくださる。
7:9 わたしは主に罪を犯した。だから主の怒りを受け止めよう。主がわたしのために訴えを取り上げ、正しい裁きをしてくださるまで。主はわたしを光の中へ連れ出し、その義をわたしに見せてくださる。
7:10 そのとき、わたしの敵はそれを見て、恥に包まれる。「お前の神、主はどこにいる」とわたしに言った、あの敵がだ。わたしはこの目で、敵の最期を見る。今や敵は、通りの泥のように踏みつけられる。
7:11 あなたの城壁を築き直す日が来る。その日には、あなたの境界は遠くまで広がる。
7:12 その日、人々があなたのもとへやって来る。アッシリアからも、エジプトの町々からも。エジプトから大河まで、海から海まで、山から山まで、みなやって来る。
7:13 そして、地はそこに住む人々のせいで荒れ果てる。彼らの行いが生んだ結果だ。
7:14 あなたの杖で、あなたの民を導いてください。あなたのものであるその羊の群れを。彼らは森の中、豊かな畑の真ん中に、ひとり離れて住んでいます。どうか昔のように、バシャンとギレアドで草をはませてください。
7:15 あなたがエジプトの地を出た、あのころのように、わたしは彼らに不思議なわざを見せよう。
7:16 国々はそれを見て、自分たちの力すべてを恥じる。彼らは手で口をふさぎ、耳も聞こえなくなる。
7:17 彼らは蛇のように、地を這うもののように、ちりをなめる。おののきながら、砦から出てくる。わたしたちの神、主のもとへ、恐れながらやって来る。あなたを恐れるのだ。
7:18 あなたのような神が、ほかにいるだろうか。あなたは罪を赦し、生き残った民の背きを見過ごしてくださる。いつまでも怒り続けることはない。慈しみを喜ぶ方だからだ。
7:19 あなたは再びわたしたちを憐れみ、わたしたちの罪を踏みつけてくださる。わたしたちのすべての罪を、海の深みに投げ込んでくださる。
7:20 あなたはヤコブにまことを、アブラハムに慈しみを与えてくださる。遠い昔、わたしたちの先祖に誓われたとおりに。
ナホム書
1:1 ニネベについての宣告。エルコシュの人ナホムが見た幻を記した書。
1:2 主は、ねたむほど激しい神。悪に報復する神だ。主は仕返しをし、燃えるように怒る。自分に立ち向かう者に報復し、敵にはいつまでも怒りを向ける。
1:3 主は怒るのに時間をかけ、大きな力を持つ方。それでも、罪ある者を決して見のがさない。主の通り道はつむじ風と嵐の中にあり、雲はその足がまき上げる砂ぼこりだ。
1:4 主は海をしかりつけて干上がらせ、すべての川を枯らす。バシャンもカルメルもしおれ、レバノンの花もしおれてしまう。
1:5 山々は主の前で揺れ動き、丘は溶けて崩れる。主の前で地はもち上がる。世界も、そこに住むすべての人も。
1:6 だれが主の激しい怒りの前に立てるだろう。だれが燃えさかる怒りに耐えられるだろう。主の怒りは火のように注ぎ出され、岩さえ打ち砕かれる。
1:7 主は良い方だ。苦しみの日の避け所となってくれる。主は、自分のもとに身を寄せる者を、よく知っていてくれる。
1:8 しかし主は、あふれる洪水でニネベのある場所を消し去る。そして敵を、闇の中へと追い立てる。
1:9 おまえたちは主に対して、いったい何をたくらむのか。主はそれをすっかり終わらせる。災いが二度と起こることはない。
1:10 彼らはからみ合ったいばらのようになり、酒におぼれて酔いつぶれる。そして、すっかり乾いた刈り株のように焼き尽くされる。
1:11 ニネベよ、おまえの中から出て来た者がいる。主に対して悪をたくらみ、よこしまなことをはかる者が。
1:12 主はこう言う。「たとえ彼らが力にあふれ、数多くいても、必ず刈り取られ、消え去る。ユダよ、わたしはおまえを苦しめてきたが、もう二度と苦しめない。」
1:13 今、わたしはおまえの上にある彼のくびきを砕き、おまえを縛る縄を断ち切る。
1:14 主はおまえについてこう命じた。「おまえの名を継ぐ者は、もう二度と現れない。おまえの神々の神殿から、刻んだ像も鋳た像も取り除く。わたしはおまえの墓を用意する。おまえは取るに足りない者だからだ。」
1:15 見よ、山々の上に、よい知らせを伝える人の足がある。その人は平和を告げている。ユダよ、祭りを行い、誓ったことを果たしなさい。もう悪い者があなたのところを通り過ぎることはない。彼は完全に断ち切られたからだ。
2:1 おまえに襲いかかる者が攻め上って来た。とりでを守れ、道を見張れ、腰に力を込め、ありったけの力をふりしぼれ。
2:2 主はヤコブの誉れを、イスラエルの誉れと同じように取り戻される。略奪する者たちが彼らを奪い尽くし、そのぶどうの枝を荒らしたからだ。
2:3 彼の勇士たちの盾は赤く染まり、兵士たちは緋色の装いをまとう。戦車は、備えの日に火のように輝き、槍が激しく振りかざされる。
2:4 戦車は通りを狂ったように走り回り、広場を行き交う。その姿はたいまつのようで、稲妻のように駆けめぐる。
2:5 彼は高官たちを呼び集めるが、彼らは進みながらつまずく。城壁へと急ぐと、そこにはもう防護のおおいが構えられている。
2:6 川の門は開かれ、宮殿は崩れ落ちる。
2:7 女王は裸にされ、引かれて連れ去られる。侍女たちは鳩のように嘆き、胸を打って悲しむ。
2:8 ニネベは、昔から水をたたえた池のようだった。でも今、人々は逃げ去っていく。「止まれ、止まれ」と叫ぶ声がしても、振り返る者は一人もいない。
2:9 銀を奪え、金を奪え。蓄えは尽きることがなく、美しい宝物がいくらでもある。
2:10 町は荒らされ、空っぽにされ、廃墟となる。人々の心はくじけ、膝は震え、体はわなないて、顔はみな青ざめる。
2:11 獅子の住みかは、今どこにあるのか。若い獅子が餌を食べていた場所はどこか。かつては雄獅子も雌獅子も子獅子も、何にもおびえずそこを歩き回っていたのに。
2:12 獅子は子のために獲物を引き裂き、雌のために獲物を絞め殺した。ほら穴を獲物で満たし、住みかを引き裂いた肉でいっぱいにした。
2:13 「見よ、わたしはお前に立ち向かう」と万軍の主は言われる。「わたしはお前の戦車を焼いて煙にし、剣がお前の若い獅子を食い尽くす。わたしはお前の獲物を地から絶ち、お前の使者の声は二度と聞かれなくなる。」
3:1 ああ、血にまみれた町。うそと略奪であふれ、獲物を奪う手を止めることがない。
3:2 むちが鳴り、車輪がとどろく。馬は駆け、戦車は跳ねる。
3:3 騎兵が突っ込み、剣がきらめき、槍が光る。倒れた者は数えきれず、死体は山のよう。しかばねに果てはなく、人々はその死体につまずく。
3:4 これはみな、あの遊女の度を越したふしだらのせいだ。美しく、あでやかで、魔術をあやつる女。彼女はふしだらで国々を売り飛ばし、魔術で人々を売り渡した。
3:5 「見よ、わたしはお前を敵とする」と万軍の主は言われる。「わたしはお前のすそをまくり上げて顔にかぶせ、国々にお前の裸をさらし、諸国にお前の恥を見せる。
3:6 わたしはお前に汚物を投げつけ、辱め、見せ物にする。
3:7 お前を見る者はみな、お前から逃げ出してこう言うだろう。『ニネベは滅びた。だれがこの町を悲しむだろう』。わたしはどこから、お前を慰める者を探し出せばいいのか。」
3:8 お前はテーベよりもましだとでもいうのか。あの町はナイルの流れのほとりにあり、まわりを水に囲まれていた。海がとりでとなり、水が城壁となっていた。
3:9 クシュとエジプトが、その果てしない力だった。プトとリビアも、その助けとなっていた。
3:10 それでもテーベは捕らえられ、囚われの身となって連れ去られた。幼い子どもたちは、どの街角でもたたきつけられて砕かれた。人々はその高官たちをくじで分け合い、身分の高い者はみな鎖につながれた。
3:11 ニネベよ、お前も酔いつぶれ、身を隠すことになる。お前も敵から逃れる場所を探し求めるのだ。
3:12 お前のとりではみな、初なりの実をつけたいちじくの木のようだ。揺さぶられれば、実は食べる者の口の中に落ちてしまう。
3:13 見よ、お前の兵士たちは、お前の中でもう女のように弱くなっている。国の門は敵に向かって大きく開け放たれ、火がその門のかんぬきを焼き尽くした。
3:14 包囲に備えて水をくんでおけ。とりでを固めよ。粘土の中に入り、土をこね、れんがの型をしっかり握れ。
3:15 だが、そこでお前は火に焼き尽くされ、剣に断ち切られる。若いバッタが食い荒らすように、お前は食い尽くされるのだ。若いバッタのように数を増やせ。いなごのように群れをなせ。
3:16 お前は商人たちを天の星よりも多く増やした。だが若いバッタは、食い荒らすと飛び去ってしまう。
3:17 お前の見張りたちはいなごのようで、役人たちはバッタの群れのようだ。寒い日には石垣にとまっているが、日が昇ると飛び去り、どこへ行ったのか、その居場所さえだれも分からない。
3:18 アッシリアの王よ、お前の羊飼いたちは眠りこけ、有力者たちは横たわったまま動かない。お前の民は山々に散らされ、集める者はだれもいない。
3:19 お前の傷は和らぐことがなく、その打ち傷は治らない。お前のうわさを聞く者はみな、お前に向かって手をたたいて喜ぶ。お前の絶え間ない残虐から、いったいだれが逃れられただろうか。
ハバクク書
1:1 預言者ハバククが幻の中で受け取った、重い知らせ。
1:2 主よ、いつまでですか。わたしは助けを求めて叫んでいるのに、あなたは聞いてくれない。「暴力だ」と叫んでいるのに、あなたは救ってくれない。
1:3 どうしてわたしに不正を見せ、苦しみを見つめさせるのですか。目の前には暴れと暴力があふれ、争いといさかいが絶えません。
1:4 だから律法は力を失い、正義はいつまでも実現しない。悪い者が正しい者を取り囲むので、正義はねじ曲げられて出てくる。
1:5 国々をよく見て、目をこらせ。そして、あぜんとするがいい。わたしはお前たちの時代に、ひとつのことを行う。人から聞かされても、お前たちには信じられないほどのことだ。
1:6 見よ、わたしはカルデア人を立ち上がらせる。あの残忍で、せっかちな民だ。彼らは地を広く行き巡り、自分のものでない住まいを奪い取る。
1:7 彼らは恐ろしく、身の毛のよだつ相手だ。何が正しいか、どうふるまうかは、自分たちで勝手に決める。
1:8 その馬はひょうよりも速く、夕暮れの狼よりも荒々しい。騎兵は勢いよく駆け、遠くからやって来る。獲物にとびかかる鷲のように飛んでくる。
1:9 彼らはみな暴力を働くためにやって来る。その顔はまっすぐ前だけを向き、捕虜を砂のようにかき集める。
1:10 彼らは王たちをあざ笑い、君主たちを笑いものにする。どんな城塞も鼻で笑い、土を盛り上げてそれを攻め取る。
1:11 そして風のように吹き抜けて過ぎ去り、罪を重ねる。自分の力を、自分の神としているのだ。
1:12 主よ、わたしの神、わたしの聖なる方よ。あなたは昔からおられるではありませんか。わたしたちは死にはしない。主よ、あなたは彼らをさばきのために立て、岩なる方よ、あなたは彼らを懲らしめのために備えられた。
1:13 あなたの目はあまりに清く、悪を見ていられない。人の苦しみを黙って見過ごすこともできないはずだ。それなのに、なぜ裏切り者たちをそのままにしておかれるのですか。悪人が自分より正しい者を飲み込んでいるのに、なぜ黙っているのですか。
1:14 あなたは人を、海の魚のようにされた。治める者もなく、地を這う虫のようにされたのです。
1:15 彼はそのすべてを釣り針で釣り上げ、網で引き寄せ、引き網の中にかき集める。だから彼は喜び、大はしゃぎする。
1:16 だから彼は自分の網にいけにえをささげ、引き網に香をたく。その網のおかげで、彼の分け前は豊かになり、食べ物はたっぷり手に入るからだ。
1:17 それなのに彼は、いつまでも網を空にしては獲物を取り続け、情け容赦なく国々を殺し続けるのですか。
2:1 わたしは自分の見張り場に立ち、とりでの上に身を置いて見張ろう。主がわたしに何を語られるのか、わたしの訴えにどう答えられるのかを、しっかり見きわめるために。
2:2 すると主はわたしに答えて言われた。「この幻を書き記せ。板の上にはっきりと刻め。読む者が急いで走れるように。
2:3 この幻は、定められた時のためのものだ。それは終わりに向かって急ぎ、決して偽ることはない。たとえ遅れているように見えても、待っていなさい。それは必ず来る。遅れることはない。
2:4 見よ、思い上がった者の心はまっすぐではない。しかし、正しい者はその信仰によって生きる。」
2:5 しかも、酒は人を欺く。高慢な男は落ち着くことがない。彼はその欲望を陰府のように大きく広げ、死のように、決して満足することがない。すべての国を自分のもとに集め、すべての民を自分のところにかき集める。
2:6 これらの民は皆、彼をあざけって風刺の歌をうたい、なぞかけの言葉を浴びせるのではないか。こう言うのだ。「自分のものでもない物をかき集める者は、わざわいだ。いつまでこんなことを続けるのか。質に取った物を山のように積み上げる者よ。」
2:7 お前にかみつく者たちが、突然立ち上がるのではないか。お前を揺さぶる者たちが目を覚ます。そしてお前は、彼らに奪われる獲物となる。
2:8 お前が多くの国々を略奪したからだ。だから、生き残った民が皆、お前を略奪する。人の血を流し、地や町、そこに住むすべての者に暴虐を働いたからだ。
2:9 わざわいだ、自分の家のために不正な利益をむさぼる者は。災いの手から逃れようと、高い所に巣を作る者は。
2:10 お前は多くの民を滅ぼして、自分の家に恥をもたらすことをたくらんだ。そうしてお前は、自分の魂に対して罪を犯している。
2:11 石が壁から叫び、梁が木組みからそれに答えるからだ。
2:12 わざわいだ、血を流して町を建て、不正によって都を築く者は。
2:13 見よ、これは万軍の主から出たことではないか。国々の民が労苦して築いたものは火の餌食となり、人々が疲れ果ててしたことは、むなしく消えていく。
2:14 水が海を覆うように、地は主の栄光を知る知識で満たされるからだ。
2:15 わざわいだ、隣人に酒を飲ませる者は。毒を注いで酔いつぶし、その裸を見ようとする者は。
2:16 お前は栄光ではなく、恥に満たされる。今度はお前が飲んで、裸をさらすがいい。主の右の手の杯がお前に回ってきて、恥辱がお前の栄光を覆う。
2:17 レバノンに働いた暴虐がお前を覆い、獣を滅ぼしたことがお前を恐れさせる。人の血を流し、地や町、そこに住むすべての者に暴虐を働いたからだ。
2:18 彫像が何の役に立つというのか。職人が彫っただけのもの、鋳物の像は、偽りを教えるものにすぎない。造った者が自分の作ったものに頼っても、それはものも言えない偶像を造るだけだ。
2:19 災いだ、木に向かって「起きろ」と言い、ものも言えない石に「目を覚ませ」と言う者は。それが何かを教えてくれるとでもいうのか。見ろ、金や銀で覆われているだけで、その中に息など少しもない。
2:20 しかし主は、その聖なる神殿におられる。全地よ、主の前で静まれ。
3:1 預言者ハバククの祈り。シグヨノトに合わせて。
3:2 主よ、わたしはあなたのうわさを聞いて、恐れました。主よ、この時代のただ中で、あなたの働きを新たにしてください。この時代のただ中で、それを知らせてください。怒りのときにも、あわれみを忘れないでください。
3:3 神はテマンから来られ、聖なる方はパランの山から来られる。セラ。その栄光は天を覆い、その賛美は地に満ちる。
3:4 その輝きは光のようだ。その手からは光線がほとばしり、そこにこそ神の力が隠されている。
3:5 その前を疫病が進み、その足もとから熱病が出て行く。
3:6 神は立って地を測り、見渡して国々を揺り動かす。すると、とこしえの山々は砕け、永遠の丘は低くひれ伏す。神の道はとこしえに続く。
3:7 苦しみのなかで、わたしはクシャンの天幕を見た。ミディアンの地の幕が、震えている。
3:8 主よ、あなたが怒りを燃やしたのは、川に対してだったのか。あなたの怒りは川に向けられたのか。あなたの激しい怒りは海に向けられたのか。あなたは馬にまたがり、勝利の戦車を駆っていくというのに。
3:9 あなたは弓をむき出しにし、たくさんの矢を放つ用意をした。誓いのとおりに。セラ。あなたは大地を裂き、川を流れさせる。
3:10 山々はあなたを見て、身もだえした。激しい水の流れが押し寄せる。深い淵は声をあげ、その手を高く上げた。
3:11 太陽も月も、その住まいで動きを止めた。飛び交うあなたの矢の光に、きらめくあなたの槍の輝きに。
3:12 あなたは怒りをもって地を踏み進み、激しい怒りで国々を踏みつける。
3:13 あなたは自分の民を救うために出て行った。あなたが選んだ人を救うために。あなたは悪しき者の家の頭を打ち砕き、土台から首まで、すべてをむき出しにした。セラ。
3:14 あなたは敵の頭を、彼ら自身の矢で刺し貫いた。彼らはわたしたちを追い散らそうと、嵐のように攻めてきた。隠れた場所で貧しい者を食い尽くそうとするように、勝ち誇っていた。
3:15 あなたは馬を駆って海を踏み越え、大水を巻き上げた。
3:16 わたしはこれを聞いて、腹の底が震えた。その音に、唇がわなないた。骨は朽ちるようで、足もとが崩れそうに震えた。それでもわたしは静かに待つ。わたしたちに攻め寄せる民に、苦難の日が来るのを。
3:17 いちじくの木が花を咲かせなくても、ぶどうの木に実がならなくても、オリーブの実りがなくなり、畑が食物を生まなくても、羊が囲いから絶え、牛が小屋からいなくなっても、
3:18 それでもわたしは、主にあって喜び踊る。わたしを救う神を、喜び祝う。
3:19 主なる神は、わたしの力。主はわたしの足を鹿のようにし、高い所を歩かせてくださる。指揮者に。わたしの弦の楽器に合わせて。
ゼパニヤ書
1:1 主の言葉が、ゼファニヤに臨んだ。ユダの王アモンの子ヨシヤの時代のことである。ゼファニヤはクシの子で、クシはゲダルヤの子、ゲダルヤはアマルヤの子、アマルヤはヒゼキヤの子だった。
1:2 「わたしは、この地の面からすべてのものを一つ残らず消し去る」と主は言われる。
1:3 「わたしは人も動物も消し去る。空の鳥も海の魚も消し去る。悪人たちと、彼らをつまずかせるものもろともに。わたしは人をこの地の面から絶ち滅ぼす」と主は言われる。
1:4 「わたしはユダと、エルサレムに住むすべての人に手を伸ばす。そして、この場所から偽りの神バアルの名残を絶ち、偶像に仕える祭司たちの名を、祭司たちもろとも消し去る。
1:5 屋上で天の星々を拝む者たち、主を拝んで主に誓いながら、自分たちの王ミルコムにも誓う者たちも絶ち、
1:6 主に従うのをやめて背を向けた者たち、主を求めようとも、尋ねようともしない者たちも絶つ」
1:7 主なる神の前で、静まれ。主の日が近いからだ。主はいけにえを備え、招いた客を聖別された。
1:8 「主がいけにえをささげるその日、わたしは高官たちと王子たち、そして外国の衣装を身にまとうすべての者を罰する。
1:9 その日、わたしは敷居を飛び越えるすべての者を罰する。彼らは暴力と偽りで主人の家を満たしている。
1:10 その日には——と主は言われる——魚の門から叫び声が上がり、第二地区から嘆きの声が起こり、丘々から大きな崩れの音が響く。
1:11 臼の街に住む者たちよ、嘆き叫べ。商人たちはみな滅ぼされ、銀を量る者たちもみな絶たれるからだ。
1:12 その時、わたしはともし火を手に、エルサレムをくまなく捜す。そして、ぶどう酒の澱のように沈んで、安心しきった者たちを罰する。彼らは心の中でこう言っている。『主は良いこともしないし、悪いこともしない』と。」
1:13 彼らの財産は奪われ、家は荒れ果てる。家を建てても、そこに住むことはない。ぶどう畑を作っても、そのぶどう酒を飲むことはない。
1:14 主の大いなる日が近い。すぐそこまで来ていて、とても速くやって来る。聞け、主の日の叫び声を。それは激しく、勇士でさえそこで泣き叫ぶ。
1:15 その日は怒りの日。苦しみと悩みの日、荒廃と滅びの日、闇と暗黒の日、雲と濃い霧の日。
1:16 角笛が鳴り響き、ときの声が上がる日。堅固な町々と高い塔に向かって。
1:17 わたしは人々を苦しめる。彼らは目の見えない人のように、さまよい歩く。主に対して罪を犯したからだ。彼らの血は塵のようにまき散らされ、その肉は糞のように投げ捨てられる。
1:18 主の怒りの日には、彼らの銀も金も、彼らを救うことはできない。主のねたみの火が、地をすべて焼き尽くす。主は地に住むすべての者に、突然、恐ろしい終わりをもたらすのだ。
2:1 集まれ、身を寄せ集めよ。恥を知らない民よ。
2:2 定めが実現する前に——その日はもみ殻のように吹き飛んで過ぎ去る——主の燃える怒りがあなたたちに臨む前に、主の怒りの日があなたたちに来る前に。
2:3 主を求めよ。その裁きに従って生きてきた、地のすべてのへりくだる者たちよ。義を求めよ。へりくだる心を求めよ。そうすれば、主の怒りの日に、身を守られるかもしれない。
2:4 ガザは見捨てられ、アシュケロンは荒れ果てる。アシュドドは真昼に追い出され、エクロンは根こそぎにされる。
2:5 わざわいだ、海辺に住む者たち、ケレテ人の民よ。主の言葉があなたたちに向けられている。カナンよ、ペリシテ人の地よ。わたしはあなたを滅ぼし、住む者を一人もいなくする。
2:6 海辺は牧草地となり、羊飼いのための野となり、羊の群れの囲いとなる。
2:7 その地は、ユダの家の生き残った者たちのものとなる。彼らはそこで羊を飼い、夕方にはアシュケロンの家々で横になって休む。彼らの神、主が彼らを心にかけ、その豊かさを取り戻してくださるからだ。
2:8 わたしはモアブのあざけりと、アンモン人ののしりの言葉を聞いた。彼らはわたしの民をあざけり、その国境を侵そうと大きな口をたたいた。
2:9 だから、イスラエルの神、万軍の主は言われる。「わたしは生きている。モアブはソドムのように、アンモン人はゴモラのようになる。いらくさの茂る地、塩の穴となり、いつまでも荒れ果てたままだ。わたしの民の生き残った者たちが彼らを奪い、生き残ったわたしの国民が彼らの土地を受け継ぐ。」
2:10 これは、彼らの高ぶりに対する報いだ。彼らが万軍の主の民をあざけり、思い上がったからだ。
2:11 主は、彼らにとって恐ろしい方として現れる。主は地のすべての神々を飢えさせ、その力を奪う。そして、国々の島々に住むすべての人が、それぞれ自分のいる場所から主にひれ伏して拝む。
2:12 クシュ人よ、あなたたちもまた、わたしの剣で殺される。
2:13 主は北に向かって手を伸ばし、アッシリアを滅ぼす。ニネベを荒れ果てさせ、砂漠のように乾ききった地にする。
2:14 その真ん中に家畜の群れが伏し、あらゆる獣が集まる。ペリカンもはりねずみも、その柱の頭で夜を過ごす。窓では鳥の声が鳴り響き、敷居は荒れ果てる。杉の板張りがむき出しにされるからだ。
2:15 これが、あの浮かれ騒いだ町だ。安心しきって暮らし、心の中で「わたしがいる、わたしのほかにはだれもいない」と言っていた。それがどうして、こんなに荒れ果ててしまったのか。獣が伏す場所となり、そばを通り過ぎる者はみな、あざ笑って口笛を吹き、手を振る。
3:1 ああ、逆らってばかりで、汚れきった町。人を虐げるこの町に、わざわいが来る。
3:2 この町は、呼びかけを聞こうとしなかった。注意されても、受け入れなかった。主に頼ろうとせず、自分の神に近づこうともしなかった。
3:3 町の中にいる高官たちは、うなる獅子のようだ。裁判官たちは、夕方の狼のよう。朝までに骨ひとつ、残しはしない。
3:4 預言者たちは軽はずみで、裏切り者ばかり。祭司たちは聖なるものを汚し、律法を踏みにじった。
3:5 その町の中に、正しい主がおられる。主は不正を行わない。朝ごとに、必ず正しい裁きを光のもとに示し、一度も欠けることがない。それでも、不正な者は恥を知らない。
3:6 わたしは多くの国々を滅ぼした。その隅々の塔は荒れ果てた。通る者がいなくなるほど、街路を廃墟にした。町々は壊され、人ひとりおらず、住む者もいなくなった。
3:7 わたしは言った。「きっとおまえはわたしを恐れ、注意を受け入れるだろう。そうすれば、わたしがどれほど罰しても、おまえの住まいが絶たれることはない」と。それなのに彼らは、朝早くから、あらゆる悪い行いにますますふけった。
3:8 だから、わたしを待て、と主は言われる。わたしが立ち上がり、証人として現れる日を待て。わたしは決めている。国々を集め、王国を寄せ集めて、その上にわたしの怒りを、燃えさかる激しい怒りをすべて注ぐと。わたしのねたみの火によって、地はすべて焼き尽くされる。
3:9 その時、わたしは諸国の民の唇を、清いものに変える。みなが主の名を呼び、心を合わせて主に仕えるようになるためだ。
3:10 クシュの川の向こうから、わたしを慕う者たち、散らされたわたしの民が、わたしへのささげ物を携えてくる。
3:11 その日には、おまえはもう恥じることがない。わたしに背いて重ねてきた、あらゆる行いのためにも。その時わたしは、おまえの中から、高ぶって浮かれる者たちを取り除く。おまえは、わたしの聖なる山で、二度と高ぶることはない。
3:12 わたしはおまえの中に、苦しみを負った、へりくだった民を残す。彼らは主の名に身を寄せる。
3:13 イスラエルの生き残った者たちは、もう悪いことをしない。うそもつかない。人をだます言葉が、その口から出ることもない。彼らは羊のように草を食べ、身を横たえて休む。おびえさせる者は、もういない。
3:14 娘シオンよ、喜びの声をあげろ。イスラエルよ、大声で叫べ。娘エルサレムよ、心のすべてで喜び、はしゃげ。
3:15 主は、おまえへの裁きを取り消した。おまえの敵を追い払った。イスラエルの王である主が、おまえの中にいる。おまえはもう、わざわいを恐れることはない。
3:16 その日、エルサレムにこう告げられる。「恐れるな。シオンよ、力を落とすな。
3:17 おまえの神、主がおまえの中にいる。その方は勇士で、おまえを救う。おまえのことを喜んで、大よろこびする。その愛によって、おまえを静かに包む。おまえのことで、喜びの歌をうたう。」
3:18 祭りに集えず嘆いていた者たちを、わたしはおまえのもとから集める。彼らにとって、それは重荷であり、恥だった。
3:19 見よ、その時わたしは、おまえを苦しめる者たちすべてを、こらしめる。足の悪い者を救い、追い散らされた者を集める。彼らが恥を受けてきたすべての地で、わたしは彼らを、ほめたたえられ、名を知られる者にする。
3:20 その時、わたしはおまえたちを連れ帰る。おまえたちを集める、その時に。おまえたちの目の前で、わたしがおまえたちを元どおりにするとき、わたしはおまえたちを、地のすべての民の間で、名を知られ、ほめたたえられる者にする、と主は言われる。
ハガイ書
1:1 ダレイオス王の第二年、第六の月の一日、預言者ハガイを通して、主の言葉が、ユダの総督であるシェアルティエルの子ゼルバベルと、大祭司であるヨツァダクの子ヨシュアに届いた。
1:2 天の軍勢を率いる主はこう言われる。「この民は、『主の家を建て直す時は、まだ来ていない』と言っている。」
1:3 それから、預言者ハガイを通して、主の言葉が届いた。
1:4 「この家が壊れたまま放っておかれているのに、あなたがたは板張りの立派な家に住んでいる。今はそんなことをしている時なのか。」
1:5 今、天の軍勢を率いる主はこう言われる。「自分の生き方をよく考えてみなさい。
1:6 あなたがたは多くの種をまいたのに、収穫はわずかだ。食べても満腹にならず、飲んでも満足せず、着ても暖かくならない。働いて賃金をもらっても、それは穴のあいた財布に入れるようなものだ。」
1:7 天の軍勢を率いる主はこう言われる。「自分の生き方をよく考えてみなさい。
1:8 山に登り、木を切り出してきて、この家を建てなさい。そうすれば、わたしはそれを喜び、栄光を受ける、と主は言われる。」
1:9 「あなたがたは多くを期待したのに、実際はわずかだった。それを家に持ち帰っても、わたしが吹き飛ばした。なぜか。それは、わたしの家が壊れたまま放っておかれているのに、あなたがたがそれぞれ自分の家のことで忙しく走り回っているからだ、と天の軍勢を率いる主は言われる。
1:10 だから、あなたがたの上にある天は露を降らせず、地は作物を実らせなかった。
1:11 わたしは、この地と山々に、穀物やぶどう酒、オリーブ油に、地が生み出すすべてのものに、そして人にも家畜にも、あなたがたが苦労して得たすべてのものに、干ばつを呼び寄せたのだ。」
1:12 そこで、シェアルティエルの子ゼルバベルと、大祭司であるヨツァダクの子ヨシュア、そして残った民はみな、彼らの神である主の声と、預言者ハガイの言葉に聞き従った。彼らの神である主が、ハガイを送ったからだ。こうして民は主を恐れた。
1:13 そこで、主の使者ハガイは、主から託されたメッセージを民に伝えた。「わたしはあなたがたと共にいる」と主は言われる。
1:14 そして主は、ユダの総督であるシェアルティエルの子ゼルバベルの心と、大祭司であるヨツァダクの子ヨシュアの心、そして残った民みなの心を奮い立たせた。彼らはやって来て、自分たちの神である万軍の主の家で工事を始めた。
1:15 それは、ダレイオス王の第二年、第六の月の二十四日のことだった。
2:1 第七の月の二十一日、主の言葉が預言者ハガイを通してこう告げられた。
2:2 「ユダの総督であるシェアルティエルの子ゼルバベルと、大祭司であるヨツァダクの子ヨシュア、そして残った民に、こう伝えなさい。
2:3 『あなたがたの中で、この神殿がかつて栄光に満ちていたころの姿を見た者が、まだ残っているだろうか。今、あなたがたの目には、これがどう映っているか。まるで無いも同然に見えるのではないか。
2:4 でも今、ゼルバベルよ、強くあれ』と主は言われる。『大祭司であるヨツァダクの子ヨシュアよ、強くあれ。この地の民もみな、強くあれ』と主は言われる。『そして働け。わたしがあなたがたと共にいるからだ』と万軍の主は言われる。
2:5 『あなたがたがエジプトを出たとき、わたしがあなたがたと結んだ約束のとおり、わたしの霊はあなたがたの間にとどまっている。恐れることはない。』
2:6 万軍の主はこう言われるからだ。『もうしばらくすれば、わたしは天と地を、海と乾いた地を揺り動かす。
2:7 わたしはすべての国々を揺り動かす。そして、すべての国々の宝物が運び込まれる。わたしはこの神殿を栄光で満たす』と万軍の主は言われる。
2:8 『銀はわたしのもの、金もわたしのものだ』と万軍の主は言われる。
2:9 『この新しい神殿の栄光は、前の神殿の栄光よりも大きくなる』と万軍の主は言われる。『そしてこの場所に、わたしは平和を与える』と万軍の主は言われる。」
2:10 ダレイオス王の第二年、九月二十四日、主の言葉が預言者ハガイにこう臨んだ。
2:11 「万軍の主はこう言われる。祭司たちに、律法についてこう尋ねなさい。
2:12 『もし人が、聖別された肉を服のすそに包んで運び、そのすそがパンや煮物、ぶどう酒や油、そのほかどんな食べ物に触れたら、それは聖なるものになるだろうか。』」すると祭司たちは答えて言った。「いや、ならない。」
2:13 ハガイはさらに言った。「では、死体に触れて汚れた人が、これらのどれかに触れたら、それは汚れるだろうか。」祭司たちは答えて言った。「汚れる。」
2:14 そこでハガイは答えて言った。「主はこう言われる。『わたしの前では、この民も、この国も同じことだ。彼らの手が作るものもみな同じ。彼らがそこでささげるものも汚れている。
2:15 だから今、よく考えてみなさい。今日から先のことを。主の神殿で、石の上に石が積まれる前のことを思い返してみなさい。
2:16 あのころ、二十升とれるはずの麦の山に行っても、十升しかなかった。五十桶くもうと搾り場に行っても、二十桶しかなかった。
2:17 わたしはあなたがたの手の働きすべてを、立ち枯れやカビ、そして雹で打った。それでもあなたがたは、わたしのもとに帰らなかった』と主は言われる。
2:18 『だから今、よく考えてみなさい。今日から先のことを。九月二十四日、主の神殿の土台が据えられた日から、これから先どうなるかを、よく考えてみなさい。
2:19 倉にはもう種が残っているだろうか。ぶどうの木も、いちじくの木も、ざくろの木も、オリーブの木も、まだ実をつけていない。しかし今日から、わたしはあなたがたを祝福する』。」
2:20 その月の二十四日、主の言葉が再びハガイに臨んだ。
2:21 『ユダの総督ゼルバベルに告げなさい。「わたしは天と地を揺り動かす。
2:22 わたしはもろもろの王国の王座をくつがえし、国々の王国の力を打ち砕く。戦車とそれに乗る者をくつがえし、馬もそれに乗る者も倒れる。みな、たがいの剣で討ち合うのだ。
2:23 万軍の主は言われる。その日、わたしのしもべ、シェアルティエルの子ゼルバベルよ、わたしはあなたを選び取り、印章の指輪のようにする。わたしがあなたを選んだからだ」』と、万軍の主は言われる。
ゼカリヤ書
1:1 ダレイオス王の第二年、第八の月に、主の言葉が預言者ゼカリヤに臨んだ。ゼカリヤはベレクヤの子で、ベレクヤはイドの子である。主はこう言われた。
1:2 「主は、あなたたちの先祖に激しく怒った。
1:3 だから、人々にこう伝えなさい。万軍の主はこう言われる。『わたしのところに帰って来なさい。そうすれば、わたしもあなたたちのところに帰る』と、万軍の主は言われる。
1:4 あなたたちの先祖のようになってはいけない。昔の預言者たちは彼らに、万軍の主はこう言われる、と呼びかけた。『悪い生き方と悪い行いから離れて、立ち帰りなさい』と。しかし彼らは聞こうとせず、わたしに耳を傾けなかった、と主は言われる。
1:5 あなたたちの先祖はどこにいるのか。今はもういない。預言者たちも、いつまでも生きてはいない。
1:6 しかし、わたしがしもべである預言者たちに命じた言葉と定めは、あなたたちの先祖に必ず追いついたではないか。すると彼らは立ち帰って、こう言った。『万軍の主は、わたしたちの生き方と行いにふさわしく、しようと決めたとおりに、わたしたちにされた』と。」
1:7 ダレイオス王の第二年、第十一の月、すなわちシェバトの月の二十四日に、主の言葉が預言者ゼカリヤに臨んだ。ゼカリヤはベレクヤの子で、ベレクヤはイドの子である。ゼカリヤはこう言った。
1:8 わたしは夜、幻を見た。すると、一人の人が赤い馬に乗っていた。その人は、谷底のミルトスの木々の間に立っていた。その後ろには、赤い馬、栗毛の馬、白い馬がいた。
1:9 わたしは尋ねた。「ご主人様、これは何ですか。」すると、わたしと話していた御使いが言った。「これが何か、あなたに見せてあげよう。」
1:10 ミルトスの木々の間に立っていたその人が答えて言った。「これらは、地を巡り歩くために主が送った者たちだ。」
1:11 彼らは、ミルトスの木々の間に立っている主の御使いに答えて言った。「わたしたちは地を巡り歩きました。すると、地はすべて静まり、落ち着いていました。」
1:12 すると、主の御使いが言った。「万軍の主よ、いつまであなたはエルサレムとユダの町々をあわれまないのですか。あなたはこの七十年の間、これらの町に怒っておられます。」
1:13 すると主は、わたしと話していた御使いに、優しい言葉、慰めの言葉で答えられた。
1:14 わたしと話していた御使いは、わたしにこう言った。「次のことを叫んで伝えなさい。万軍の主はこう言われる。『わたしはエルサレムとシオンを深く思い、激しく心を燃やしている。
1:15 そして、安穏としている国々に、わたしは激しく怒っている。わたしが少しだけ怒ったとき、彼らはさらにひどい災いを加えたからだ。
1:16 だから、主はこう言われる。わたしはあわれみをもってエルサレムに帰る。そこにわたしの家が建て直され、測りなわがエルサレムの上に張られる、と万軍の主は言われる。
1:17 さらにこう叫んで伝えなさい。万軍の主はこう言われる。わたしの町々は再び豊かさにあふれる。主は再びシオンを慰め、再びエルサレムを選ぶ。』」
1:18 わたしが目を上げて見ると、四本の角があった。
1:19 わたしは、わたしと話していた御使いに尋ねた。「これは何ですか。」すると御使いは言った。「これは、ユダとイスラエルとエルサレムを散らした角だ。」
1:20 それから主は、わたしに四人の鍛冶職人を見せられた。
1:21 わたしは尋ねた。「この者たちは何をしに来たのですか。」すると御使いは言った。「あの角は、だれも頭を上げられないほどにユダを散らした角だ。だが、この者たちはその角をおびえさせ、打ち倒すために来た。ユダの地に向かって角を上げ、その民を散らした国々の角を打ち倒すのだ。」
2:1 わたしがまた目を上げて見ると、一人の人がいた。その手には測りなわを持っていた。
2:2 わたしは尋ねた。「どこへ行くのですか。」すると彼はわたしに言った。「エルサレムを測りに行く。その幅と長さがどれくらいか見るためだ。」
2:3 すると、わたしと話していた御使いが出て行った。そして、もう一人の御使いが彼を迎えに出て来た。
2:4 最初の御使いは彼に言った。「走って行って、あの若者にこう伝えなさい。『エルサレムは、城壁のない開けた町のように人が住む。その中に住む人と家畜が、とても多くなるからだ。』」
2:5 主はこう言われる。『わたし自身が、エルサレムを取り囲む火の城壁となる。そして、その中で栄光となる。』」
2:6 「さあ、さあ、北の地から逃げ出せ」と主は言われる。「わたしはあなたがたを、天の四方の風のように広く散らしたのだから」と主は言われる。
2:7 「さあ、シオンよ、逃れよ。バビロンの娘のもとに住んでいる者よ。」
2:8 万軍の主はこう言われる。主は栄光を現した後、あなたがたを略奪した国々のもとへ、わたしを送られた。あなたがたに触れる者は、主の目のひとみに触れる者だからだ。
2:9 見よ、わたしは彼らに向かって手を振り上げる。すると彼らは、自分が奴隷にしていた者たちの略奪品となる。そのとき、あなたがたは、万軍の主がわたしを送られたことを知る。
2:10 「娘シオンよ、喜び歌え。楽しめ。見よ、わたしは来て、あなたの中に住む」と主は言われる。
2:11 その日、多くの国々が主のもとに連なり、わたしの民となる。わたしはあなたの中に住む。
2:12 そのとき、あなたは、万軍の主がわたしをあなたのもとへ送られたことを知る。主はユダを、聖なる地における自分の受け継ぐ分とされる。そして、再びエルサレムを選ばれる。
2:13 すべての人よ、主の前で静まれ。主が、その聖なる住まいから立ち上がられたからだ。
3:1 主はわたしに、大祭司ヨシュアの姿を見せた。ヨシュアは主の使いの前に立っていた。そしてサタンがその右に立ち、ヨシュアを訴えようとしていた。
3:2 すると主はサタンに言った。「サタンよ、主がお前を叱る。エルサレムを選ばれた主が、お前を叱る。この人は、火の中から取り出された燃えさしではないか。」
3:3 ヨシュアは汚れた服を着て、使いの前に立っていた。
3:4 使いは、そばに立つ者たちに言った。「彼から汚れた服を脱がせなさい。」そしてヨシュアに言った。「見なさい。わたしはお前の罪を取り除いた。お前に晴れ着を着せよう。」
3:5 わたしは言った。「きれいな冠を彼の頭にかぶせてください。」すると彼らは、きれいな冠をヨシュアの頭にかぶせ、服を着せた。主の使いはそのそばに立っていた。
3:6 主の使いは、ヨシュアにこう告げた。
3:7 「万軍の主はこう言われる。もしお前がわたしの道を歩み、わたしの務めを守るなら、お前はわたしの家を治め、わたしの庭を守る。そしてわたしは、ここに立つ者たちの間を歩く場所をお前に与える。
3:8 大祭司ヨシュアよ、聞きなさい。お前も、お前の前に座っている仲間たちも聞きなさい。彼らはこれから起こることのしるしとなる人々だ。見なさい。わたしはわたしのしもべ、「若枝」と呼ばれる者を連れて来る。
3:9 見なさい。わたしがヨシュアの前に置いた石。この一つの石には七つの目がある。わたしはその石に文字を刻む、と万軍の主は言われる。わたしは一日のうちに、この地の罪を取り除く。
3:10 その日には、と万軍の主は言われる。お前たちは互いに、ぶどうの木の下、いちじくの木の下へと招き合う。」
4:1 わたしと話していた天使が戻ってきて、眠っている人を起こすように、わたしを揺り起こした。
4:2 そして天使はわたしに聞いた。「何が見えるか。」わたしは答えた。「純金でできた燭台が見えます。てっぺんには油をためる鉢があり、その上に七つのともし火皿がのっています。その七つのともし火皿には、管が七本ずつ付いています。
4:3 燭台のそばには、オリーブの木が二本あります。一本は鉢の右側に、もう一本は左側に立っています。」
4:4 わたしは、わたしと話していた天使にたずねた。「ご主人様、これは何ですか。」
4:5 すると、わたしと話していた天使は答えた。「これが何か、あなたにはわからないのか。」わたしは言った。「いいえ、ご主人様、わかりません。」
4:6 天使は答えて、わたしにこう言った。「これは、主がゼルバベルに告げる言葉だ。『武力によらず、力によらず、ただわたしの霊によって成る。』万軍の主はそう言われる。
4:7 大いなる山よ、お前は何者か。ゼルバベルの前では、お前も平地になる。彼が最後の石を運び出すと、人々は『恵みあれ、この石に恵みあれ』と歓声をあげる。」
4:8 主はまた、わたしにこう語られた。
4:9 「ゼルバベルの手が、この神殿の土台を据えた。彼の手が、それを完成させる。そのとき、あなたたちは知る。万軍の主がわたしをあなたたちに送ったことを。
4:10 小さな始まりの日を、だれが見下すのか。人々は喜んで、ゼルバベルの手にある下げ振りを見る。——この七つは、全地を行き巡る主の目である。」
4:11 それから、わたしは天使にたずねた。「燭台の右と左にある、この二本のオリーブの木は何ですか。」
4:12 わたしはもう一度たずねた。「二本の金の管のわきにあって、そこから金色の油を注ぎ出している、この二本のオリーブの枝は何ですか。」
4:13 彼はわたしに言った。「これが何か、あなたにはわからないのか。」わたしは答えた。「わかりません、ご主人様。」
4:14 すると彼は言った。「これは、油を注がれた二人。全地の主のそばに立つ者たちだ。」
5:1 わたしがまた目を上げて見ると、そこには一つの巻物が飛んでいた。
5:2 彼はわたしに聞いた。「何が見えるか。」わたしは答えた。「巻物が飛んでいます。長さは二十キュビト、幅は十キュビトです。」
5:3 すると彼はわたしに言った。「これは、全地の面に出て行くのろいだ。盗む者はみな、この巻物のとおりに取り除かれる。偽って誓う者もみな、この巻物のとおりに取り除かれる。
5:4 わたしはこれを送り出す、と万軍の主は言われる。これは盗人の家に入り、わたしの名によって偽って誓う者の家に入る。そしてその家の中にとどまり、木も石もろとも、その家を焼き尽くす。」
5:5 それから、わたしと話していた天使が出て来て、こう言った。「さあ、目を上げて見なさい。出て来るこれは何か。」
5:6 わたしは聞いた。「これは何ですか。」すると彼は言った。「出て来るこれは一つのエファ升だ。」そして言った。「これは、全地における彼らの罪の姿だ。」
5:7 すると、鉛の丸いふたが持ち上げられた。そして、そのエファ升の中には一人の女が座っていた。
5:8 彼は言った。「これは悪だ。」そして彼女をエファ升の中に押し戻し、鉛のふたをその口にかぶせた。
5:9 わたしがまた目を上げて見ると、二人の女が出て来た。その翼は風をはらんでいた。翼はコウノトリの翼のようだった。彼女たちはそのエファ升を、地と天の間に持ち上げた。
5:10 わたしは、わたしと話していた天使に聞いた。「彼女たちはあのエファ升をどこへ運んで行くのですか。」
5:11 彼はわたしに言った。「シンアルの地に、それを納める家を建てるためだ。家が整えられると、エファ升はそこの台の上に据えられる。」
6:1 わたしがまた目を上げて見ると、四台の戦車が二つの山の間から出て来た。その山は青銅の山だった。
6:2 一台目の戦車には赤い馬、二台目の戦車には黒い馬がいた。
6:3 三台目の戦車には白い馬、四台目の戦車にはまだらの強い馬がいた。
6:4 わたしは、わたしと話していた天使に尋ねた。「主よ、これらは何ですか。」
6:5 天使は答えて言った。「これらは天の四つの霊だ。全地の主の前に立っていたところから出て行くのだ。」
6:6 黒い馬は北の国へ出て行き、白い馬はそのあとを追って出て行き、まだらの馬は南の国へ出て行った。
6:7 力強い馬が出て行き、地を巡り歩こうとした。天使は「行け、地を巡り歩け」と言った。そこで彼らは地を巡り歩いた。
6:8 それから天使はわたしを呼んで、こう言った。「見なさい。北の国へ出て行った馬は、北の国でわたしの霊を安らがせた。」
6:9 主の言葉がわたしに臨んだ。
6:10 「捕らわれの地から帰って来た人々、ヘルダイ、トビヤ、エダヤから贈り物を受け取りなさい。その日のうちに、バビロンから帰って来た彼らが泊まっているゼファニヤの子ヨシヤの家へ行きなさい。
6:11 そして銀と金を受け取り、それで冠を作って、大祭司であるエホツァダクの子ヨシュアの頭にかぶらせなさい。
6:12 彼にこう言いなさい。『万軍の主はこう言われる。見よ、その名を若枝という人がいる。彼は自分のいる所から芽を出し、主の神殿を建てる。
6:13 彼こそが主の神殿を建てる。彼は威光を身にまとい、王座に着いて治める。その王座には祭司もいて、二人の間には平和の一致が保たれる。』
6:14 この冠は、ヘレム、トビヤ、エダヤ、そしてゼファニヤの子ヘンを記念するものとして、主の神殿に納められる。
6:15 遠くにいる人々もやって来て、主の神殿を建てる。そうすれば、あなたがたは万軍の主がわたしをあなたがたのもとに送られたことを知る。これは、あなたがたが自分の神である主の声にしっかり聞き従うなら、必ず実現する。」
7:1 ダレイオス王の第四年、九月であるキスレウの月の四日に、主の言葉がゼカリヤに臨んだ。
7:2 そのころベテルの人々は、シャルエツェルとレゲム・メレク、そしてその供の者たちを送り、主に願い求めさせた。
7:3 彼らは万軍の主の神殿にいる祭司たちと預言者たちにこう尋ねた。「わたしたちは五月になると、今まで何年もしてきたように、断食して泣き悲しむべきでしょうか。」
7:4 すると、万軍の主の言葉がわたしに臨んだ。
7:5 「この地のすべての民と祭司たちにこう言いなさい。あなたがたはこの七十年の間、五月と七月に断食して嘆いてきた。でも、それは本当にわたしのための断食だったのか。
7:6 食べるときも飲むときも、あなたがたはただ自分のために食べ、自分のために飲んでいるだけではないか。
7:7 エルサレムがまだ栄えて人が住み、その周りの町々にも、南の地にも低地にも人が住んでいたころ、主は先の預言者たちを通してこの同じ言葉を告げていたではないか。」
7:8 また、主の言葉がゼカリヤに臨んだ。
7:9 「万軍の主はこう言われる。真実にもとづいて正しく裁き、たがいに慈しみと憐れみをもって接しなさい。
7:10 やもめや孤児、寄留者や貧しい人を虐げてはならない。心の中で、たがいに悪をたくらんではならない。」
7:11 しかし彼らは聞こうとせず、そむいて肩を向け、耳をふさいで聞き入れなかった。
7:12 彼らは心を石のように固くして、律法にも、万軍の主がその霊によって先の預言者たちを通して送った言葉にも、耳を傾けようとしなかった。だから、万軍の主の激しい怒りが下ったのである。
7:13 わたしが呼びかけても彼らが聞かなかった。それと同じように、彼らが呼んでも、わたしは聞かない、と万軍の主は言われる。
7:14 わたしは彼らを、彼らの知らないあらゆる国々の間へ、つむじ風のように吹き散らした。こうして彼らのあとに残された地は、行き来する者もなく荒れ果てた。彼らは、この麗しい地を荒れ地にしてしまったのだ。
8:1 また、万軍の主の言葉がのぞんで、こう告げられた。
8:2 万軍の主はこう言われる。わたしはシオンのために激しく心を燃やしている。彼女のために、燃えるような激しい思いを抱いている。
8:3 主はこう言われる。わたしはシオンに帰り、エルサレムの中に住む。エルサレムは「真実の町」と呼ばれ、万軍の主の山は「聖なる山」と呼ばれる。
8:4 万軍の主はこう言われる。エルサレムの広場には、また老人や老女が腰を下ろすようになる。みな年を重ね、手には杖を持っている。
8:5 町の広場は、そこで遊ぶ男の子や女の子でいっぱいになる。
8:6 万軍の主はこう言われる。そのとき、この民の残りの者の目には、それが信じがたいことに見えるかもしれない。しかし、わたしの目にも、それが信じがたいことだろうか、と万軍の主は言われる。
8:7 万軍の主はこう言われる。「見よ、わたしは東の国から、また日の沈む西の国から、わたしの民を救い出す。
8:8 彼らを連れ帰り、エルサレムの中に住まわせる。彼らはわたしの民となり、わたしは真実と正義をもって彼らの神となる。」
8:9 万軍の主はこう言われる。「万軍の主の家、つまり神殿を建てるために、その土台が据えられた日から、預言者たちの口を通してこれらの言葉を聞いている者たちよ。今、しっかり手を強くしなさい。
8:10 その日々の前には、人が働いても賃金はなく、家畜を使っても稼ぎはなかった。敵のせいで、出入りする者に安全はなかった。わたしがすべての人を、互いに敵対させたからだ。
8:11 しかし今は、わたしはこの民の残りの者に対して、以前の日々のようにはしない、と万軍の主は言われる。
8:12 平和の種がまかれる。ぶどうの木は実を結び、地は作物を生み出し、天は露を降らせる。わたしはこの民の残りの者に、これらすべてを受け継がせる。
8:13 ユダの家、イスラエルの家よ。あなたがたが諸国の間で呪いとなっていたように、今度はわたしがあなたがたを救い、あなたがたは祝福となる。恐れるな。しっかり手を強くしなさい。」
8:14 万軍の主はこう言われる。「あなたがたの先祖がわたしを怒らせたとき、わたしはあなたがたに災いを下そうと決め、思い直さなかった、と万軍の主は言われる。
8:15 それと同じように、わたしは今、エルサレムとユダの家に良いことをしようと決めている。恐れるな。
8:16 あなたがたが行うべきことはこれだ。互いに真実を語り合いなさい。町の門では、真実と、平和をもたらす公正な裁きを行いなさい。
8:17 互いに心の中で悪をたくらんではならない。偽りの誓いを好んではならない。これらはすべて、わたしが憎むものだからだ、と主は言われる。」
8:18 万軍の主の言葉が、わたしにこう臨んだ。
8:19 万軍の主はこう言われる。「第四の月の断食、第五の月の断食、第七の月の断食、第十の月の断食は、ユダの人々にとって、喜びと楽しみ、心弾む祭りとなる。だから、真実と平和を愛しなさい。」
8:20 万軍の主はこう言われる。「これからも、多くの民、たくさんの町に住む人々がやって来る。
8:21 ある町に住む人々が、別の町へ行ってこう言う。『さあ、行こう。主にお願いし、万軍の主を求めよう。』『わたしも行く。』
8:22 こうして、多くの民や強い国々が、エルサレムにやって来て、万軍の主を求め、主にお願いする。」
8:23 万軍の主はこう言われる。「その日には、あらゆる言葉を話す国々から、十人の人が、一人のユダヤ人の服のすそをつかんでこう言う。『わたしたちも、あなたがたと一緒に行かせてほしい。神があなたがたと共におられると聞いたから。』」
9:1 これは託宣。主の言葉が、ハドラクの地に臨み、ダマスコにとどまる。イスラエルのすべての部族と同じように、すべての人の目が、主に注がれるからだ。
9:2 それに隣り合うハマトも同じだ。ティルスとシドンもそうだ。彼らはとても賢いのだが。
9:3 ティルスは自分のために要塞を築き、銀をちりのように、金を通りの泥のように積み上げた。
9:4 だが見よ、主はティルスから財産を奪い取り、その力を海に打ち込む。町は火に焼き尽くされる。
9:5 アシュケロンはそれを見て恐れる。ガザも激しくもだえ苦しみ、エクロンも同じだ。頼みの綱が枯れてしまったからだ。ガザからは王が消え、アシュケロンには人が住まなくなる。
9:6 アシュドドには混じり者の民が住みつく。わたしはペリシテ人の誇りを断ち切る。
9:7 わたしは彼の口から血を取り除き、その歯の間から忌まわしい供え物を取り去る。こうして生き残った者もわたしたちの神のものとなり、ユダの一族のようになる。エクロンもエブス人のように、わたしの民に加えられる。
9:8 わたしは自分の家のまわりに陣を敷き、行き来する軍勢から守る。もう二度と、虐げる者が彼らを襲うことはない。今、わたしがこの目で見ているからだ。
9:9 シオンの娘よ、大いに喜べ。エルサレムの娘よ、歓声をあげよ。見よ、あなたの王があなたのもとに来る。彼は正しく、勝利をもたらす方。へりくだって、ろばに乗ってくる。雌ろばの子である、若いろばに乗って。
9:10 わたしはエフライムから戦車を、エルサレムから軍馬を絶やす。戦いの弓も断ち切られる。この王は国々の民に平和を告げる。その支配は海から海へ、大河から地の果てにまで及ぶ。
9:11 あなたについても、あなたと結んだ契約の血によって、わたしは水のない穴から、捕らわれた者たちを解き放つ。
9:12 望みを抱く捕らわれ人たちよ、砦に帰れ。今日、わたしは告げる。あなたに二倍のものを返すと。
9:13 わたしはユダを弓のように引き絞り、エフライムをその矢としてつがえる。シオンよ、わたしはあなたの子らを奮い立たせ、ギリシャよ、あなたの子らに立ち向かわせる。わたしはあなたを、勇士の剣のようにする。
9:14 主は彼らの上に現れ、その矢は稲妻のように飛び出す。主なる神は角笛を吹き鳴らし、南から吹く嵐に乗って進む。
9:15 万軍の主は彼らを守る。彼らは敵を食い尽くし、投石の石を踏みにじる。彼らは飲んで、ぶどう酒に酔ったように叫ぶ。供え物を受ける鉢のように、祭壇の四隅のように、満たされる。
9:16 その日、彼らの神である主は、ご自分の民を羊の群れのように救う。彼らは王冠の宝石のように、主の地の上で輝く。
9:17 ああ、なんと素晴らしく、なんと美しいことか。穀物は若者を、新しいぶどう酒は若い娘を、生き生きと育てる。
10:1 春の雨の季節には、主に雨を求めなさい。雷雲を作るのは主だ。主は人々に激しい雨を降らせ、畑の一つ一つに草を与えてくださる。
10:2 偶像は無意味なことを語り、占い師はうそを見て、まやかしの夢を告げる。その慰めはむなしい。だから人々は羊のようにさまよい、羊飼いがいないので苦しんでいる。
10:3 わたしの怒りは羊飼いたちに向かって燃え、指導者たちを罰する。万軍の主が自分の群れ、ユダの家を顧み、彼らを戦いでの誇り高い軍馬のようにするからだ。
10:4 その中から隅の石が出て、留めの杭が出て、戦いの弓が出る。その中から、すべての支配者がともに出て来る。
10:5 彼らは勇士のようになり、戦いで通りの泥を踏みつける。主が共におられるから、彼らは戦い、馬に乗る敵を打ち負かす。
10:6 わたしはユダの家を強くし、ヨセフの家を救う。彼らをあわれむので連れ戻し、まるで見捨てたことなどなかったかのようにする。わたしは彼らの神、主であり、彼らに答えるからだ。
10:7 エフライムは勇士のようになり、その心はぶどう酒を飲んだように喜ぶ。子どもたちもそれを見て喜び、その心は主にあって喜び踊る。
10:8 わたしは彼らに口笛で合図をして、集める。わたしが彼らを買い戻したからだ。彼らは以前のように数多くなる。
10:9 わたしは彼らを諸国の民の間にまき散らす。それでも遠い国で、彼らはわたしを思い出し、子どもたちとともに生き延びて帰って来る。
10:10 わたしは彼らをエジプトの地から連れ戻し、アッシリアから集める。ギレアドとレバノンの地に連れて行くが、そこに収まりきらないほどになる。
10:11 主は苦しみの海を渡り、海の波を打つ。ナイルの淵はすべて干上がる。アッシリアの高ぶりは打ち砕かれ、エジプトの王の杖は取り去られる。
10:12 わたしは主にあって彼らを強くする。彼らは主の名によって歩む、と主は告げる。
11:1 レバノンよ、扉を開け。火がおまえの杉の木を焼き尽くす。
11:2 糸杉よ、泣き叫べ。杉の木が倒れ、堂々とした大木が荒らされたからだ。バシャンの樫の木よ、泣き叫べ。深い森が倒されたからだ。
11:3 羊飼いたちの泣き叫ぶ声が聞こえる。彼らの誇りが荒らされたからだ。若い獅子のほえる声が聞こえる。ヨルダン川沿いの茂みが荒らされたからだ。
11:4 わたしの神、主はこう言われる。「屠られる運命の羊の群れを飼え。
11:5 その羊を買う者は、殺しても罪に問われない。売る者は『主をほめたたえよ、わたしは豊かになった』と言う。羊飼いたちも、その羊を哀れもうとしない。
11:6 わたしはもう、この地に住む人々を哀れまない、と主は言われる。見よ、わたしは一人ひとりを、それぞれ隣人の手と王の手に渡す。彼らはこの地を打ち砕く。それでもわたしは、彼らの手から救い出さない。」
11:7 それでわたしは、屠られる運命の羊の群れ、とりわけ弱い羊たちを飼った。わたしは二本の杖を取り、一本を「恵み」と名づけ、もう一本を「結びつき」と名づけた。そしてわたしは羊の群れを飼った。
11:8 わたしは一か月のうちに、三人の羊飼いを取り除いた。わたしは彼らに我慢できなくなり、彼らもまたわたしをひどく嫌った。
11:9 それでわたしは言った。「わたしはもう、おまえたちを飼わない。死ぬものは死ぬがいい。滅びるものは滅びるがいい。残ったものは、互いにその肉を食い合うがいい。」
11:10 わたしは自分の杖「恵み」を取り、それを折った。すべての民と結んでいた契約を破るためだ。
11:11 契約はその日に破られた。わたしを見守っていた弱い羊たちは、これが主の言葉だと知った。
11:12 わたしは彼らに言った。「もしそれでよければ、わたしの賃金を払ってくれ。だめなら、やめておけばいい。」すると彼らは、わたしの賃金として銀貨三十枚を量って渡した。
11:13 すると主はわたしに言われた。「それを陶器師に投げ与えよ。わたしが彼らに値づけされた、その見事な値をな。」わたしは銀貨三十枚を取り、それを主の宮の中の陶器師に投げ与えた。
11:14 それからわたしは、もう一本の杖「結びつき」を折った。ユダとイスラエルの間の兄弟のつながりを断つためだ。
11:15 主はまたわたしに言われた。「今度は、愚かな羊飼いの道具を取れ。
11:16 見よ、わたしはこの地に一人の羊飼いを立てる。彼は、いなくなった羊を気にかけず、迷った子羊を探さず、傷ついたものを手当てせず、元気なものを養おうともしない。かえって、よく肥えた羊の肉を食らい、そのひづめまで引きはがす。
11:17 羊の群れを見捨てる、役立たずの羊飼いよ、わざわいだ。剣が彼の腕を、その右の目を打つ。彼の腕はすっかり萎え、右の目は完全に見えなくなる。」
12:1 イスラエルについての、主の言葉の宣告。天を広げ、地の基を据え、人の中に霊を形づくられた主は、こう言われる。
12:2 「見よ、わたしはエルサレムを、周りのすべての民をふらつかせる杯とする。エルサレムが包囲されるとき、ユダもまた同じ目にあう。
12:3 その日、わたしはエルサレムを、すべての民にとって重い石とする。それを持ち上げようとする者はみな、深く傷を負う。地のすべての国々が、エルサレムに攻め寄せて集まってくる。
12:4 その日、とわたしは告げる、わたしはすべての馬をおびえさせ、その乗り手を狂わせる。だが、ユダの家にはわたしの目を開いて見守り、諸国の民の馬はみな、目を見えなくして打つ。
12:5 そのときユダの一族の長たちは、心の中でこう言う。『エルサレムに住む人々は、その神である万軍の主によって、わたしたちの力だ。』
12:6 その日、わたしはユダの一族の長たちを、たきぎの中の火鉢のように、麦の束の中の燃える松明のようにする。彼らは右も左も、周りのすべての民を焼き尽くす。こうしてエルサレムは、なおもとの場所に、エルサレムに住み続ける。
12:7 主はまず、ユダの家々を救う。それは、ダビデの家の誉れと、エルサレムに住む人々の誉れが、ユダよりも大きくならないためだ。
12:8 その日、主はエルサレムに住む人々を守る。その日、彼らの中で最も弱い者もダビデのようになり、ダビデの家は神のように、彼らの前を進む主の使いのようになる。
12:9 その日、わたしはエルサレムに攻めてくるすべての国々を、滅ぼそうとする。
12:10 わたしはダビデの家と、エルサレムに住む人々の上に、恵みと祈りの霊を注ぐ。すると彼らは、自分たちが突き刺したわたしを見つめる。そして、ひとり子を失った人のように、その人のために嘆き、初めての子を失った人のように、激しく悲しむ。
12:11 その日、エルサレムには大きな嘆きが起こる。それは、メギドの平野でのハダド・リモンの嘆きのようだ。
12:12 この地は嘆く。氏族ごとに、それぞれ別々に嘆く。ダビデの家の一族は別に、その妻たちも別に。ナタンの家の一族は別に、その妻たちも別に。
12:13 レビの家の一族は別に、その妻たちも別に。シムイの一族は別に、その妻たちも別に。
12:14 残りのすべての氏族も、それぞれ別々に嘆き、その妻たちも別に嘆く。
13:1 その日、ダビデの家とエルサレムに住む人々のために、一つの泉が開かれる。罪と汚れを洗い清めるための泉だ。
13:2 万軍の主は言われる。その日、わたしは偶像の名を地から消し去る。もう誰もそれを思い出さなくなる。にせ預言者たちと汚れた霊も、地から取り除く。
13:3 それでもなお預言する者がいれば、その父と母は、自分の子にこう言う。「お前を生かしてはおけない。主の名を使って嘘を語ったのだから。」そして預言するその子を、産みの親である父と母が刺し殺す。
13:4 その日、預言者たちは皆、自分が見たと言い張る幻を恥じるようになる。人をだますために、預言者らしい毛皮の外套を着ることもしなくなる。
13:5 そして、こう言う。「わたしは預言者ではない。土を耕す農夫だ。若い頃から人に奴隷として売られ、働いてきたのだ。」
13:6 すると、だれかがその人に尋ねる。「では、あなたの体にあるその傷は何なのか。」その人は答える。「友の家で受けた傷だ。」
13:7 万軍の主は言われる。「剣よ、目を覚ませ。わたしの羊飼いに向かって立ち上がれ。わたしの仲間である者に向かって。羊飼いを打て。そうすれば羊は散らされる。わたしはこの手を、小さな者たちに向ける。」
13:8 主は言われる。全地でこうなる。三分の二の者は切り倒され、死に絶える。しかし三分の一は生き残る。
13:9 わたしはこの三分の一を火の中にくぐらせる。銀を精錬するように精錬し、金を試すように試す。彼らはわたしの名を呼び、わたしは彼らに答える。わたしは「これはわたしの民だ」と言い、彼らは「主はわたしの神だ」と言う。
14:1 見よ、主の日がやって来る。その日、あなたから奪い取られた物が、あなたのただ中で分け合われる。
14:2 わたしはすべての国々を集め、エルサレムに攻め込ませて戦わせる。都は占領され、家々は略奪され、女たちは辱められる。町の半分の人は捕虜として連れ去られる。だが、残りの民は町から絶やされずに残される。
14:3 それから主が出て行き、それらの国々と戦う。戦いの日に戦うときのように。
14:4 その日、主の足がオリーブ山の上に立つ。この山はエルサレムの東にある。オリーブ山はその真ん中から東と西に裂け、とても大きな谷ができる。山の半分は北へ、もう半分は南へ動く。
14:5 あなたたちは、わたしの山々の谷へ逃げる。その谷はアツァルにまで届くからだ。ユダの王ウジヤの時代に、地震を避けて逃げたときのように、あなたたちは逃げる。そして、わたしの神である主が来られる。すべての聖なる者たちも、あなたと共に来る。
14:6 その日には、光もなく、寒さで凍りつくこともなくなる。
14:7 それはただ一つの日となる。この日を知っているのは主だけだ。昼でもなく、夜でもない。夕暮れになっても、なお光がある。
14:8 その日、エルサレムから命の水が湧き出る。その半分は東の海へ、もう半分は西の海へと流れる。夏も冬も、それは絶えることがない。
14:9 そして主は、全地を治める王となられる。その日、主はただひとり、その名もただ一つとなる。
14:10 全地は、ゲバからエルサレムの南のリモンまで、平地のように変わる。だがエルサレムは高くそびえ、もとの場所にとどまる。ベニヤミンの門から、もとの門の場所、そして隅の門まで、さらにハナンエルのやぐらから王のぶどう搾り場まで、人々が住む。
14:11 人々はそこに住む。もう二度と、滅ぼし尽くされることはない。エルサレムは安心して住める町となる。
14:12 エルサレムに攻め込んだすべての民を、主はこの災いで打たれる。立ったままで、その肉は腐り落ちる。目は眼窩の中で、舌は口の中で腐り落ちる。
14:13 その日、主は彼らの中に大きなパニックを起こす。人々は互いの手をつかみ合い、相手に手を上げて襲いかかる。
14:14 ユダもまた、エルサレムで戦う。まわりのすべての国の富がかき集められる。金も銀も衣類も、ありあまるほどだ。
14:15 同じ災いが、馬にも、らばにも、らくだにも、ろばにも、その陣営にいるすべての家畜にも及ぶ。人を襲ったのと同じ災いだ。
14:16 エルサレムに攻め込んだすべての国のうち、生き残った者はみな、毎年エルサレムに上って来る。王である万軍の主を礼拝し、仮庵の祭りを祝うためだ。
14:17 地上のどの一族でも、エルサレムに上って来て、王である万軍の主を礼拝しないなら、その者たちの上には雨が降らない。
14:18 もしエジプトの一族が上って来ないなら、彼らの上にも雨は降らない。仮庵の祭りを祝いに上って来ない国々を主が打つ、あの災いが彼らを襲う。
14:19 これがエジプトへの罰であり、仮庵の祭りを祝いに上って来ないすべての国への罰となる。
14:20 その日、馬の鈴には「主に聖なるもの」と記される。主の家の鍋も、祭壇の前の鉢のように聖なるものとなる。
14:21 エルサレムとユダにあるすべての鍋が、万軍の主に聖なるものとなる。いけにえをささげる者はみな来て、その鍋を使い、その中で肉を煮る。その日、万軍の主の家には、もう商人は一人もいなくなる。
マラキ書
1:1 イスラエルに向けられた、主の言葉。マラキを通して告げられた宣告である。
1:2 「わたしはあなたたちを愛してきた」と主は言われる。それなのに、あなたたちは言う。「どんなふうに愛してくれたというのか」と。エサウはヤコブの兄ではないか、と主は言われる。それでもわたしはヤコブを愛し、
1:3 エサウを退けた。彼の山々を荒れ地に変え、その受け継ぐ土地を荒野の山犬に明け渡した。
1:4 エドムはこう言うかもしれない。「わたしたちは打ちのめされた。でも、廃墟をもう一度建て直す」と。しかし万軍の主はこう言われる。「彼らが建てても、わたしが壊す。人々は彼らを『悪の国』と呼び、主がいつまでも怒り続ける民と呼ぶ。」
1:5 あなたたちは、それを自分の目で見る。そして言うだろう。「主はイスラエルの国境を越えて、大いなる方だ」と。
1:6 「子は父を敬い、しもべは主人を敬う。もしわたしが父なら、わたしへの敬いはどこにあるのか。もしわたしが主人なら、わたしへの畏れはどこにあるのか」と万軍の主は言われる。「わたしの名を見くびる祭司たち、あなたたちに言っているのだ。それなのに、あなたたちは言う。『どうやってあなたの名を見くびったというのか』と。
1:7 あなたたちは、わたしの祭壇に汚れたパンを供えている。それなのに言う。『どうやってあなたを汚したというのか』と。それは、あなたたちが『主の食卓など軽んじてよいものだ』と言っているからだ。
1:8 目の見えない動物をいけにえとして供えても、それは悪くないというのか。足の悪いものや病気のものを供えても、悪くないというのか。それを自分の総督に差し出してみるがいい。彼はあなたを喜ぶだろうか。あなたを受け入れるだろうか」と万軍の主は言われる。
1:9 「さあ今、神に願い求めてみるがいい。わたしたちをあわれんでくださいと。こんなことをしたのは、あなたたち自身の手だ。それでも神は、あなたたちを受け入れるだろうか」と万軍の主は言われる。
1:10 「あなたたちの中に、いっそ神殿の扉を閉ざしてくれる者がいてほしい。そうすれば、あなたたちがわたしの祭壇にむだに火をともすこともない。わたしはあなたたちを喜ばない」と万軍の主は言われる。「あなたたちの手からの供え物を、わたしは受け入れない。
1:11 日の昇るところから沈むところまで、わたしの名は国々の間で大いなるものとなる。どこででも、わたしの名のために香がたかれ、きよい供え物がささげられる。わたしの名は国々の間で大いなるものだからだ」と万軍の主は言われる。
1:12 「それなのに、あなたたちはそれを汚している。『主の食卓は汚れている。そこに供えられる食べ物など軽んじてよいものだ』と言っているからだ。」
1:13 「あなたたちはこうも言う。『ああ、うんざりだ』と言って、それを鼻であしらう」と万軍の主は言われる。「そして、奪い取ったものや、足の悪いもの、病気のものを連れてきて、それを供え物としてささげる。わたしがそれをあなたたちの手から受け入れるとでも思うのか」と主は言われる。
1:14 「群れの中に雄の家畜がいて、それをささげると誓っておきながら、傷ものを主にささげる。そんなごまかす者は呪われる。わたしは大いなる王だからだ」と万軍の主は言われる。「わたしの名は、国々の間で恐れられているのだ。」
2:1 「さて祭司たち、今度はあなたたちへの命令だ。」
2:2 「もしあなたたちが聞き従わず、心に留めてわたしの名をあがめようとしないなら」と万軍の主は言われる。「わたしはあなたたちにのろいを送り、あなたたちの受ける祝福をのろいに変える。いや、すでにのろっている。あなたたちが心に留めないからだ。
2:3 見よ、わたしはあなたたちのために、その子孫を叱りつける。あなたたちの祭りのいけにえの糞を、あなたたちの顔になすりつける。あなたたちは、その糞と一緒に運び去られる。
2:4 こうしてあなたたちは、わたしがこの命令をあなたたちに送ったのは、わたしとレビとの契約を保つためだと知る」と万軍の主は言われる。
2:5 「わたしとレビとの契約は、いのちと平安を約束するものだった。わたしはそれを彼に与え、彼が敬うようにした。彼はわたしを畏れ、わたしの名の前でおののいた。
2:6 彼の口には真実の教えがあり、その唇に不正は見られなかった。彼は平安と正しさのうちにわたしと共に歩み、多くの人を罪から立ち返らせた。
2:7 祭司の唇は知識を守り、人々はその口から教えを求める。祭司は、万軍の主の使者だからだ。
2:8 でもあなたたちは、その道から外れてしまった。あなたたちの教えは多くの人をつまずかせ、レビとの契約を壊してしまった、と万軍の主は言われる。
2:9 だからわたしも、あなたたちを民みんなの前で、さげすまれ、見下される者にした。あなたたちがわたしの道を守らず、教えにおいてえこひいきをしたからだ。
2:10 わたしたちには皆、一人の父がいるのではないか。一人の神がわたしたちを創造したのではないか。それなのに、なぜ互いに裏切り合い、先祖たちの契約を汚すのか。
2:11 ユダは裏切った。イスラエルとエルサレムで、忌まわしいことが行われた。ユダは、主が愛される聖なるものを汚し、異教の神の娘をめとったのだ。
2:12 こんなことをする者を、主はヤコブの天幕から断ち切られる。それがだれであろうと、万軍の主にささげ物を持ってくる者であっても、変わらない。
2:13 あなたたちは、もう一つこんなこともしている。主の祭壇を涙で覆い、泣き、うめいている。主がもう、あなたたちのささげ物に目を向けず、あなたたちの手から喜んで受け取ってくださらないからだ。
2:14 それなのにあなたたちは、「どうしてですか」と言う。それは、主があなたと、あなたが若いころに結婚した妻との間で、証人となられたからだ。あなたはその妻を裏切った。彼女はあなたの連れ合い、契約を結んだ妻なのに。
2:15 神は二人を一つにされたのではないか。体においても霊においても、二人は神のものだ。その一つとされた神が求めておられるのは、神を敬う子孫だ。だから自分の霊に気をつけなさい。若いころに結婚した妻を裏切ってはならない。
2:16 イスラエルの神である主は言われる。「わたしは離縁を憎む。人が自分の衣を暴力で覆うことを憎む」と万軍の主は言われる。だから自分の霊に気をつけ、裏切ってはならない。
2:17 あなたたちは、自分の言葉で主を疲れさせた。それなのに、「どうやって主を疲れさせたのですか」と言う。それは、あなたたちがこう言っているからだ。「悪を行う者はみな、主の目には良い者で、主は彼らを喜んでおられる」と。あるいは、「正しい裁きをする神はどこにいるのか」と。
3:1 「見よ、わたしは自分の使者を送る。その使者は、わたしの前に道を整える。そして、あなたがたが求めている主が、突然その神殿にやって来る。あなたがたが待ち望んでいる契約の使者が、今、やって来る」と、万軍の主は言われる。
3:2 だが、彼が来るその日に、だれが耐えられるだろう。彼が現れるとき、だれが立っていられるだろう。彼は金属を精錬する者の火のようであり、洗濯する人が使う灰汁(あく)のようだからだ。
3:3 彼は座って、銀を精錬し、清める者となる。レビの子らを清め、金や銀のように精錬する。そうして彼らは、正しい心で主にささげ物を持って来るようになる。
3:4 そのとき、ユダとエルサレムのささげ物は、昔の日々のように、遠い昔の年月のように、主に喜ばれる。
3:5 「わたしはさばきのために、あなたがたに近づく。そしてすぐさま証人となって、告発する。魔術を使う者、姦通する者、偽って誓う者、雇い人の賃金をだまし取る者、やもめや孤児を虐げる者、よその国から来た人を不当に扱う者、そしてわたしを恐れない者たちを」と、万軍の主は言われる。
3:6 「わたしは主であり、変わることがない。だから、ヤコブの子らであるあなたがたも、滅ぼし尽くされることはない。
3:7 あなたがたは先祖の時代から、わたしの掟を離れ、それを守らなかった。わたしのもとに帰って来なさい。そうすれば、わたしもあなたがたのもとに帰る」と、万軍の主は言われる。「それなのに、あなたがたは言う。『どうやって帰れというのか』と。
3:8 人が神のものを盗むだろうか。それなのに、あなたがたはわたしのものを盗んでいる。あなたがたは言う。『どうやってあなたのものを盗んだのか』と。それは、十分の一のささげ物と、奉納物についてだ。
3:9 あなたがたはのろいを受けている。あなたがた、この国民みなが、わたしのものを盗んでいるからだ。
3:10 十分の一のささげ物を、すべて宝物倉に持って来なさい。わたしの家に食物があるようにするためだ。こうして、この事でわたしを試してみなさい」と、万軍の主は言われる。「わたしが天の窓を開いて、受けきれないほどの祝福を、あなたがたに注がないかどうか。
3:11 わたしはあなたがたのために、食い荒らすものを叱りつける。それはあなたがたの土地の実りをだめにしない。畑のぶどうの木も、実を落とすことはない」と、万軍の主は言われる。
3:12 「そうすれば、すべての国民があなたがたを幸せ者と呼ぶ。あなたがたが、喜びに満ちた国となるからだ」と、万軍の主は言われる。
3:13 「あなたがたは、わたしに逆らってきついことばを口にしてきた」と、主は言われる。「それなのに、あなたがたはこう言う。『わたしたちが、あなたに逆らって何を言ったというのか』と。
3:14 あなたがたは言った。『神に仕えても、むだだ。その務めを守っても、万軍の主の前で嘆き悲しんで歩いても、何の得になるというのか。
3:15 今では、わたしたちは高慢な者を幸せ者と呼んでいる。悪を行う者が栄え、神を試す者さえも、罰を逃れているではないか』と。
3:16 そのとき、主を畏れる者たちが、互いに語り合った。主は耳を傾けて、それを聞かれた。そして主の前には、主を畏れ、その名を大切に思う者たちのために、記録の書が書き記された。
3:17 「彼らはわたしのものとなる」と、万軍の主は言われる。「わたしが事を行うその日、彼らはわたしの宝となる。人が、自分に仕える息子をいたわるように、わたしは彼らをいたわる。
3:18 そのときあなたがたは、正しい者と悪い者の違い、神に仕える者と仕えない者の違いを、もう一度はっきりと見分けるようになる。」
4:1 万軍の主は言われる。見よ、炉のように燃える日がやって来る。その日、高ぶる者も悪を行う者も、みなわらのようになる。やって来るその日は彼らを焼き尽くし、根も枝も残さない。
4:2 しかし、わたしの名を敬うあなたたちには、義の太陽がのぼる。その翼には、人をいやす力がある。あなたたちは外に飛び出し、牛舎から放たれた子牛のようにはねまわる。
4:3 あなたたちは悪人を踏みつける。わたしが事を行うその日、彼らはあなたたちの足の裏の下で、灰のようになる」と、天の軍勢の主は言われる。
4:4 モーセの律法を思い出しなさい。わたしがホレブで、イスラエルのみんなのために、わたしのしもべモーセに与えた、あの定めと決まりを心に留めておきなさい。
4:5 主の大いなる恐ろしい日が来る前に、わたしは預言者エリヤをあなたたちに送る。
4:6 父の心を子に、子の心を父に向けさせる。わたしが来て、この地を破滅ののろいで打つことがないようにするためだ。」
マタイによる福音書
1:1 アブラハムの子孫、ダビデの子孫であるイエス・キリストの系図。
1:2 アブラハムはイサクの父になり、イサクはヤコブの父になり、ヤコブはユダとその兄弟たちの父になった。
1:3 ユダはタマルによってパレスとザラをもうけた。パレスはエスロンをもうけ、エスロンはアラムをもうけた。
1:4 アラムはアミナダブの父。アミナダブはナアソンの父。ナアソンはサルモンの父。
1:5 ラハブによって生まれたのがボアズ。そのボアズにルツによって生まれたのがオベデ。オベデからエッサイが生まれた。
1:6 ダビデはウリヤの妻によってソロモンをもうけた。
1:7 ソロモンはレハブアムの父、レハブアムはアビヤの父、アビヤはアサの父。
1:8 アサはヨサファトの父。ヨサファトはヨラムの父。ヨラムはウジヤの父。
1:9 ウジヤはヨタムの父。ヨタムはアハズの父。アハズはヒゼキヤの父。
1:10 ヒゼキヤはマナセの父。マナセはアモンの父。アモンはヨシヤの父。
1:11 ヨシヤは、バビロンへの移住のころ、エコニヤとその兄弟たちの父となった。
1:12 バビロンへ移されたのち、エコニヤはサラティエルの父となった。サラティエルはゼルバベルの父、
1:13 ゾロバベルはアビウデの父。アビウデはエリヤキムの父。エリヤキムはアゾルの父。
1:14 アゾルはサドクの父。サドクはアキムの父。アキムはエリウデの父。
1:15 エリウデはエレアザルの父。エレアザルはマタンの父。マタンはヤコブの父。
1:16 ヤコブはマリアの夫ヨセフの父になった。そのマリアから、キリストと呼ばれるイエスが生まれた。
1:17 アブラハムからダビデまでが全部で十四代、ダビデからバビロン捕囚までが十四代、そしてバビロン捕囚からキリストまでが十四代になる。
1:18 イエス・キリストの誕生は、こうして起こった。母マリアはヨセフと婚約していた。でも、二人がまだ一緒に暮らし始める前に、聖霊の働きによって子を宿していることがわかった。
1:19 ヨセフはマリアの夫だったが、正しい人だった。だからマリアのことを世間にさらしたくなくて、こっそり離縁しようと決めた。
1:20 ヨセフがこう思い悩んでいたとき、主の天使が夢に現れて言った。「ダビデの子孫ヨセフ、こわがらずにマリアを妻として迎えなさい。その子がおなかに宿ったのは、聖霊の働きによるものだから。
1:21 彼女は男の子を産む。その子をイエスと名づけなさい。イエスは自分の民を、彼らの罪から救う者となるからだ。」
1:22 すべてこれらのことが起こったのは、主が預言者を通して語られたことが実現するためだった。
1:23 「見よ、おとめが身ごもって男の子を産む。その子はインマヌエルと呼ばれる。」これは「神はわたしたちと共におられる」という意味だ。
1:24 ヨセフは眠りからさめると、主の使いに命じられたとおりにして、妻を迎え入れた。
1:25 しかし、子が生まれるまで彼女を知ることはなかった。そして、その子をイエスと名づけた。
2:1 イエスは、ヘロデ王の時代に、ユダヤのベツレヘムで生まれた。すると、東の国から来た博士たちがエルサレムにやって来て、こう言った。
2:2 「ユダヤ人の王としてお生まれになった方は、どこにいるのですか。わたしたちは東の空でその方の星を見て、拝みに来たのです」
2:3 ヘロデ王はこの話を聞いて動揺した。エルサレムの人々もみな、同じように不安になった。
2:4 ヘロデは民の祭司長たちと律法学者たちを全員集めて、救い主メシアはどこで生まれるのかと問いただした。
2:5 「それはユダヤのベツレヘムです。預言者がこう書いています。
2:6 『ユダの地、ベツレヘムよ、あなたはユダの指導者たちの中で、決して最も小さい町ではない。あなたの中から一人の指導者が現れ、わたしの民イスラエルを羊飼いのように導くのだから』」
2:7 そこでヘロデは、星の学者たちをこっそり呼び寄せた。そして、星が現れた時期を彼らから詳しく聞き出した。
2:8 ベツレヘムに送り出すとき、ヘロデはこう言った。「行って、その子どものことを詳しく調べてほしい。見つかったら、わたしに知らせてくれ。わたしも行って、その子を拝みたいのだ。」
2:9 見よ、彼らが東の空で見た星が、彼らの先に立って進んでいった。そして幼子のいる場所の上まで来て、そこにとどまった。
2:10 その星を見て、彼らはあふれるほどの大きな喜びに包まれた。
2:11 家に入ると、母マリアと一緒にいる幼子に会った。そして、ひれ伏してその子を礼拝した。それから宝の箱を開けて、黄金、乳香、没薬を贈り物としてささげた。
2:12 夢の中で「ヘロデのところへは戻るな」と警告を受けた。それで彼らは別の道を通って、自分たちの国へ帰って行った。
2:13 彼らが帰って行ったあと、主の使いが夢でヨセフのところに現れて言った。「起きなさい。子どもとその母を連れて、エジプトに逃げなさい。そして、わたしが知らせるまで、そこにとどまっていなさい。ヘロデがこの子を捜し出して、殺そうとしているのだ。」
2:14 ヨセフは起きて、夜のうちに幼な子とその母を連れてエジプトへ向かった。
2:15 ヘロデが死ぬまで、そこにとどまっていた。これは、主が預言者を通して語った「わたしはエジプトから、わたしの子を呼び出した」という言葉が実現するためだった。
2:16 ヘロデは、占星術師たちにだまされたと気づいて、激しく怒った。そして人を送り、占星術師たちから聞き出した時期をもとに、ベツレヘムとその周辺一帯にいる二歳以下の男の子を、一人残らず殺させた。
2:17 そのとき、預言者エレミヤによって語られたことが実現した。
2:18 ラマで声が聞こえた。激しく嘆き、泣きわめく声だ。ラケルが子どもたちのことで泣いている。もう子どもたちがいないので、慰められることさえ拒んでいる。
2:19 へロデが死んだ後、ヨセフがエジプトにいたとき、主の使いが夢の中に現れた。
2:20 「起きなさい。子どもとその母を連れて、イスラエルの地に行きなさい。子どもの命をねらっていた人たちは、もう死んだのだから」
2:21 ヨセフは起きて、幼な子とその母を連れてイスラエルの地に帰った。
2:22 しかし、アケラオが父ヘロデの後を継いでユダヤの王になったと聞いて、ヨセフはそこへ行くのが怖くなった。そして夢でお告げを受けたので、ガリラヤ地方へ向かった。
2:23 ナザレという町に行って住んだ。これは預言者たちが「彼はナザレ人と呼ばれる」と語ったことが実現するためだった。
3:1 そのころ、バプテスマのヨハネが現れ、ユダヤの荒れ野でこう宣べ伝えた。
3:2 「悔い改めなさい。天の国が近づいたのだから」
3:3 荒野で叫ぶ者の声がする。「主の道を準備しろ。その通り道をまっすぐにせよ」——預言者イザヤが語ったのは、この人のことだった。
3:4 らくだの毛皮を着て、腰には革のベルトを締めていた。食べ物はイナゴと野生のはちみつだった。
3:5 エルサレムとユダヤ全土、そしてヨルダン川沿い一帯の人々が、みんなヨハネのところに出てきた。
3:6 自分の罪を告白しながら、ヨルダン川でヨハネからバプテスマを受けた。
3:7 まむしの子らよ。パリサイ派やサドカイ派の人たちが大勢、洗礼を受けようとやって来るのを見て、ヨハネは彼らに言った。「これから来る神の怒りから逃げろと、いったい誰が教えたのか。
3:8 だから、悔い改めにふさわしい実を結べ。
3:9 それに、「自分たちの父はアブラハムだ」なんて心の中で思わないでほしい。よく聞いてほしい。神はこの石ころからでも、アブラハムの子どもを起こすことができるのだ。
3:10 斧はもう木の根もとに置かれている。だから、良い実を結ばない木はすべて切り倒されて、火の中に投げ込まれるのだ。
3:11 わたしは、あなたたちが心を入れ替えて生き方を変えたしるしとして、水であなたたちにバプテスマを授けている。でも、わたしのあとから来る人は、わたしよりも力のあるかただ。わたしは、そのかたの履き物を持つ値打ちさえない。そのかたは、聖霊と火であなたたちにバプテスマを授ける。
3:12 兄弟姉妹よ。その方は箕を手に持ち、脱穀場をすっかりきれいにする。麦は倉に集め入れ、殻は消えない火で焼き尽くすのだ。
3:13 そのとき、イエスはガリラヤからヨルダン川にやって来た。ヨハネから洗礼を受けるためだった。
3:14 ヨハネはそれをやめさせようとして言った。「わたしこそ、あなたから洗礼を受けなければならないのに、あなたがわたしのところに来られるのですか。」
3:15 イエスは答えた。「今はそうさせてほしい。すべての義を実現するのは、わたしたちにとってふさわしいことなのだ。」すると、ヨハネは受け入れた。
3:16 イエスはバプテスマを受けると、すぐに水から上がった。すると、天が開けた。そしてイエスは、神の霊が鳩のように自分の上に降りてくるのを見た。
3:17 これはわたしの愛する子。わたしの心にかなう者である。
4:1 さて、イエスは霊に導かれて荒れ野へ行った。悪魔に試されるためだった。
4:2 四十日四十夜、断食をした。そのあと、空腹を覚えた。
4:3 「もしお前が神の子なら、この石がパンになるように命じてみろ」
4:4 「イエスは答えた。『こう書いてある。人はパンだけで生きるのではない。神の口から出る一つ一つの言葉で生きるのだ』」
4:5 それから悪魔は、イエスを聖なる都に連れて行った。そして神殿のいちばん高い所にイエスを立たせて、
4:6 「もしお前が神の子なら、飛び降りてみろ。こう書いてあるからだ。『神はあなたのために天使たちに命じる。あなたの足が石にぶつからないよう、彼らはその手であなたを支える』」
4:7 「主であるあなたの神を試してはならない」と、また聖書にはこう書いてある。
4:8 次に悪魔は、イエスを非常に高い山へ連れて行った。そして、この世のすべての国々と、その栄華を見せて、
4:9 「もしひれ伏してわたしを拝むなら、これを全部あなたにあげよう」と悪魔は言った。
4:10 「サタンよ、離れろ。聖書にこう書いてある。『あなたの神である主を礼拝し、ただその方だけに仕えなさい』」
4:11 そこで悪魔はイエスを離れていった。すると天使たちが来て、イエスの世話をした。
4:12 イエスは、ヨハネが捕まったと聞いて、ガリラヤへ引き上げた。
4:13 ナザレを離れ、ゼブルンとナフタリの地方にある湖のほとりの町カファルナウムに来て住んだ。
4:14 預言者イザヤによって語られたことが実現するためであった。
4:15 「ゼブルンの地、ナフタリの地、海沿いの道、ヨルダン川の向こう、異民族の住むガリラヤ。
4:16 暗黒の中に住む民は大いなる光を見た。死の地、死の陰に住む人々に、光が昇った」
4:17 「悔い改めなさい。天の国が近づいたのだから」——このときからイエスは、こう宣べ伝えはじめた。
4:18 さて、イエスがガリラヤ湖のほとりを歩いていると、二人の兄弟を見かけた。ペトロと呼ばれるシモンと、その兄弟アンデレである。二人は湖で網を打っていた。漁師だったのだ。
4:19 「ついて来なさい。あなたたちを、人をとる漁師にしよう。」イエスはそう声をかけた。
4:20 すると彼らは、すぐに網を捨ててイエスについて行った。
4:21 そこからさらに進むと、イエスはほかの二人の兄弟を見かけた。ゼベダイの子ヤコブと、その兄弟ヨハネだ。二人は父ゼベダイと一緒に舟の中で網を直していた。イエスは彼らを呼んだ。
4:22 すぐに彼らは舟と父親を残して、イエスについて行った。
4:23 イエスはガリラヤ全土を巡り歩いた。あちこちの会堂で教え、御国の福音を宣べ伝え、人々のあらゆる病気や患いをいやしていった。
4:24 そこで、イエスのうわさはシリア全域に広まった。人々は、いろいろな病気や苦しみに悩む人、悪霊にとりつかれた人、てんかんの人、体がまひした人など、あらゆる病人をイエスのところに連れてきた。イエスは、その人たちをいやした。
4:25 ガリラヤ、デカポリス、エルサレム、ユダヤ、そしてヨルダン川の向こうから、大勢の群衆がやってきて、イエスについて行った。
5:1 イエスは大勢の群衆を見て、山に登った。腰を下ろすと、弟子たちがそばに来た。
5:2 そこでイエスは口を開き、彼らに教え始めた。
5:3 心の貧しい人々は、幸いである。天の国はその人たちのものだから。
5:4 悲しむ人々は、幸いである。その人たちは慰められるから。
5:5 柔和な人々は、幸いである。その人たちは地を受け継ぐから。
5:6 義に飢え渇く人々は、幸いである。その人たちは満たされるから。
5:7 あわれみ深い人々は、幸いである。その人たちはあわれみを受けるから。
5:8 心の清い人々は、幸いである。その人たちは神を見るから。
5:9 平和をつくる人々は、幸いである。その人たちは神の子と呼ばれるから。
5:10 義のために迫害される人々は、幸いである。天の国はその人たちのものだから。
5:11 わたしのために人々があなたがたをののしり、迫害し、うそをついてありもしない悪口をあれこれ言うとき、あなたがたは幸いである。
5:12 喜びなさい。大いに喜びなさい。天には大きな報いが用意されているから。あなたがたより前の預言者たちも、同じように迫害されたのだ。
5:13 あなたがたは地の塩だ。でも、塩の塩気がなくなったら、どうやってその味を取り戻せるだろう。もう何の役にも立たず、外に捨てられて人々に踏みつけられるだけだ。
5:14 あなたがたは、世の光だ。山の上にある町は隠れることができない。
5:15 あかりをつけて、それを器の下に隠す人はいない。むしろ燭台の上に置く。そうすれば、家にいるみんなを照らすことができる。
5:16 あなたがたの光も、同じように人々の前で輝かせなさい。人々があなたがたの良い行いを見て、天におられるあなたがたの父をあがめるようになるためだ。
5:17 律法や預言者を無効にするためにわたしが来た、なんて思わないでほしい。無効にするためではなく、実現するために来たのだから。
5:18 天地が消え去るまでは、律法から一点一画たりとも消え去ることはない。すべてが実現するまで、そのすべては残るのだ。本当のことを言う。
5:19 だから、これらの戒めの中でいちばん小さなものを一つでも破り、そう教える人は、天の国でいちばん小さい者と呼ばれる。でも、それを実行し、そう教える人は、天の国で大きい者と呼ばれる。
5:20 あなたがたの義が律法学者やファリサイ派の人たちの義を超えていなければ、あなたがたは決して天の国に入れない。だから、よく聞いてほしい。
5:21 殺してはならない。人を殺した者は裁判にかけられる。昔の人たちがこう言われていたのを、あなたたちは聞いている。
5:22 でも、わたしはあなたがたに言う。兄弟に腹を立てる者は、だれでも裁きを受ける。兄弟に「ばか」と言う者は、最高法院に引き渡される。「愚か者」と言う者は、燃える地獄に投げ込まれる。
5:23 だから、祭壇に供え物をささげようとして、そこで「兄弟姉妹が自分に対して何か恨みを抱いている」と思い出したなら、
5:24 その供え物を祭壇の前に置いたまま、まず相手のところへ行って仲直りをしなさい。それから戻ってきて、供え物をささげればいい。
5:25 あなたを訴えようとしている相手とは、まだ一緒に裁判所へ向かう道の途中にいるうちに、早く仲直りをしておきなさい。そうしないと、その相手はあなたを裁判官に引き渡し、裁判官は係の者に引き渡して、あなたは牢屋に入れられてしまう。
5:26 最後の一コドラントを払い終えるまで、あなたは決してそこから出られない。はっきり言っておく。
5:27 『姦淫してはならない』と言われていたのを、あなたたちは聞いている。
5:28 だが、わたしはあなたがたに言う。だれでも、欲望を持って女を見る者は、心の中ですでにその女と姦淫を犯したのである。
5:29 もしあなたの右目が罪へと誘うなら、えぐり出して捨てなさい。体の一部を失っても、全身が地獄に投げ込まれるよりはましなのだから。
5:30 もしあなたの右手が罪へと誘うなら、切り落として捨てなさい。体の一部を失っても、全身が地獄に投げ込まれるよりはましなのだから。
5:31 妻を離縁する者は、妻に離縁状を渡さなければならない。
5:32 だが、わたしはあなたがたに言う。妻を離縁する者は、だれでも——不倫のためでない限り——妻に姦淫を犯させることになる。そして、離縁された女と結婚する者も、姦淫を犯すのである。
5:33 また、こう言われていたのを、あなたたちは聞いている。昔の人たちに命じられた言葉だ。「偽って誓ってはいけない。誓ったことは、必ず主に対して果たしなさい。」
5:34 しかし、わたしはあなたたちに言う。いっさい誓ってはいけない。天にかけて誓うな。天は神の王座なのだから。
5:35 またこの世界を指して誓うのもだめだ。ここは神が足を乗せる台だから。エルサレムを指して誓うのもだめだ。そこは大王の都だから。
5:36 またあなたの頭にかけて誓ってもいけない。あなたは自分の髪の毛一本さえ、白くも黒くもできないのだから。
5:37 あなたたちの言葉は、「はい」なら「はい」、「いいえ」なら「いいえ」でいい。それ以上のことは、悪いものから出てくる。
5:38 目には目を、歯には歯を、と命じられていた。あなたたちも聞いてきたはずだ。
5:39 しかし、わたしはあなたたちに言う。悪い者に手向かってはいけない。だれかがあなたの右の頬を打つなら、左の頬も向けなさい。
5:40 あなたを訴えて下着を取ろうとする人には、上着もあげなさい。
5:41 だれかに、一マイル歩けと無理やり言われたら、その人といっしょに二マイル歩きなさい。
5:42 求める人には与えなさい。あなたから借りたい人を、断ってはいけない。
5:43 隣人を愛し、敵を憎め、と言われてきたのを、あなたたちは聞いている。
5:44 わたしはあなたたちに言う。敵を愛しなさい。そして、あなたたちを迫害する人たちのために祈りなさい。
5:45 天の父の子となるためだ。父は悪い人にも良い人にも太陽をのぼらせ、正しい人にも正しくない人にも雨を降らせてくださる。
5:46 あなたがたが自分を愛してくれる人を愛したところで、どんな報いがあるだろうか。そんなことは、あの取税人でもしているではないか。
5:47 兄弟姉妹にだけあいさつしたところで、それの何がすごいのだろう。そんなことは、神を知らない人たちだってしているじゃないか。
5:48 神である父が完全であるように、あなたたちも完全な者になりなさい。
6:1 自分の善い行いを、人に見せびらかすためにわざと人前でしないよう、気をつけなさい。そんなことをすれば、天にいるあなたがたの父から報いを受けることはできない。
6:2 だから、困っている人に施しをするときは、偽善者たちのように自分の前でラッパを吹き鳴らすな。彼らは人にほめられたくて、会堂や通りでそうしている。よく言っておく。彼らはもう自分への報いを受け取ってしまっている。
6:3 あなたが人に施しをするときは、右手のしていることを左手に知らせてはいけない。
6:4 そうすれば、あなたの施しは人に隠れたものとなる。すると、隠れたことを見ておられるあなたの父が、あなたに報いてくださる。
6:5 祈るときには、偽善者たちのようになってはいけない。彼らは人に見せようとして、会堂や大通りの角に立って祈るのが好きなんだ。よく言っておく。彼らはもう自分の報いをちゃんと受け取ってしまっている。
6:6 あなたは祈るとき、自分の部屋に入りなさい。そして戸を閉めて、隠れたところにおられるあなたの父に祈りなさい。すると、隠れたところで見ておられるあなたの父が、あなたに報いてくださる。
6:7 祈るときは、まわりの人たちのようにダラダラと同じ言葉をくり返してはいけない。彼らは、たくさん言葉を並べれば聞き入れられると思っているのだ。
6:8 だから、彼らのまねをしてはいけない。あなたがたの父である神は、あなたがたが求める前から、何が必要かをちゃんと知っているのだから。
6:9 天にいるわたしたちの父よ、あなたの名が聖なるものとされますように。
6:10 御国が来ますように。み心が天で行われているとおり、この地でも行われますように。
6:11 わたしたちに必要な日ごとの食べ物を、きょうも与えてください。
6:12 わたしたちの負い目をおゆるしください。わたしたちも、自分に負い目のある人をゆるしました。そのように、ゆるしてください。
6:13 わたしたちを誘惑に負けないように守り、悪いものから救い出してください。
6:14 もしあなたたちが、ほかの人のあやまちを許すなら、天におられるあなたたちの父も、あなたたちを許してくださる。
6:15 もし人をゆるさないなら、あなたたちの父も、あなたたちのあやまちをゆるしてはくれない。
6:16 断食をするときは、暗い顔をした偽善者のまねをしてはいけない。彼らは断食していることを人に見せようとして、わざと顔をやつれさせる。よく言っておく。彼らはもう自分の報いを受け取ってしまっている。
6:17 あなたが断食をするときは、頭に油をつけ、顔を洗いなさい。
6:18 断食をしていることが人に気づかれないためだ。ただ、隠れたところにいるあなたの父にだけ知られればいい。すると、隠れたことを見ているあなたの父が、あなたに報いてくれる。
6:19 あなたがたは、自分のために地上に宝をためこんではいけない。地上では、虫が食い、さびがつき、どろぼうが押し入って盗んでいく。
6:20 天に、自分のために宝をたくわえなさい。天では、虫も食わず、さびもつかず、どろぼうが押し入って盗んでいくこともない。
6:21 あなたの宝のある所に、あなたの心もあるからだ。
6:22 目はからだのランプだ。だから、あなたの目が澄んでいれば、全身も明るくなる。
6:23 しかし、目が悪ければ、あなたの全身は暗くなる。だから、あなたの中にある光が消えて暗闇になっているなら、その暗さはどれほどのものだろう。
6:24 誰も、二人の主人に仕えることはできない。一方を憎んで、もう一方を愛するか、一方につき従って、もう一方を軽んじるからだ。あなたたちは、神とお金の両方に仕えることはできない。
6:25 何を食べようか、何を飲もうかと自分の命のことで、何を着ようかと自分の体のことで、あれこれ心配するのはやめなさい。命は食べ物より大切で、体は着る物より大切なのだから。
6:26 空の鳥をよく見てごらん。種をまくことも、刈り入れることも、倉にたくわえることもしない。それでも、あなたがたの天の父は鳥たちを養ってくださる。あなたがたは、鳥よりもずっと大切な存在ではないか。
6:27 自分の寿命を、少しでも延ばすことなんてできるだろうか。
6:28 野の花がどうして育つのか、よく見てみるといい。花は働きもせず、糸をつむぐこともしない。
6:29 しかし、言っておく。あの栄華をきわめたソロモンでさえ、この花の一つほどにも着飾ってはいなかった。
6:30 きょうは生えていて、あすは炉で焼かれてしまう野の草さえ、神はこんなに美しく装ってくださる。それなら、あなたたちにはなおのことよくしてくださるはずだ。ああ、信じる心の弱い人たちだ。
6:31 だから、「何を食べよう」「何を飲もう」「何を着よう」と心配するな。
6:32 これらはみな、神を知らない人たちが必死に追い求めているものだ。でも、あなたがたの天の父は、あなたがたにこれらすべてが必要なことを知っている。
6:33 まず神の国と神の義を求めなさい。そうすれば、これらのものはすべて与えられる。
6:34 だから、明日のことを心配するのはやめなさい。明日のことは、明日が心配してくれる。その日の苦労は、その日だけで十分だ。
7:1 人をさばくな。そうすれば、あなたも神にさばかれない。
7:2 人をさばくと、自分もそのさばきでさばかれる。人をはかると、自分もそのはかりではかられるのだ。
7:3 なぜ、兄弟姉妹の目にある小さなちりは見えるのに、自分の目にある大きな丸太には気づかないのか。
7:4 自分の目に大きな丸太が入っているのに、どうして兄弟姉妹に「君の目からそのゴミを取らせて」なんて言えるだろう。
7:5 偽善者よ。まず自分の目から丸太を取り除きなさい。そうすれば、はっきり見えるようになって、きょうだいの目からちりを取り除くことができる。
7:6 聖なるものを犬に与えてはいけない。真珠を豚の前に投げてはいけない。豚はそれを足で踏みつけ、向き直ってあなたたちにかみついてくるだろう。
7:7 求めなさい。そうすれば与えられる。探しなさい。そうすれば見つかる。たたきなさい。そうすれば開かれる。
7:8 すべて求める者は受け取り、探す者は見つけ、たたく者には開かれる。
7:9 あなたたちの中に、自分の子どもがパンをほしがっているのに、石をわたす人がいるだろうか。
7:10 魚を求めたのに、蛇を渡すだろうか。
7:11 あなたがたは悪い者なのに、自分の子どもには良いものを与えることを知っている。それなら、天におられるあなたがたの父は、求める者にどれほど良いものを与えてくださるだろうか。
7:12 だから、人にしてほしいと思うことは、すべて自分も人にしてあげなさい。これが律法と預言者の教えなのだ。
7:13 狭い門から入りなさい。滅びに通じる門は大きく、その道は広い。そこから入って行く人はたくさんいる。
7:14 命にいたる門は狭く、そこに続く道も細い。それを見つける人は少ない。
7:15 偽預言者に注意しなさい。彼らは羊の皮をかぶってあなたたちのところにやって来るが、その内側は、獲物をねらうおおかみだ。
7:16 その実で、あなたがたは彼らを見分ける。いばらからぶどうを、あざみからいちじくを摘む人がいるだろうか。
7:17 すべての良い木は良い実をつける。でも、悪い木は悪い実をつける。
7:18 良い木が悪い実をならせることはないし、悪い木が良い実をならせることもない。
7:19 良い実をつけない木は、どれも切り倒されて火の中に投げ込まれる。
7:20 その実によって、あなたがたは彼らを見分けることができる。
7:21 わたしに向かって『主よ、主よ』と言う人がみな天の国に入れるわけではない。わたしの天の父が望むことを実際に行う人が入れるのだ。
7:22 その日、多くの人がわたしにこう言うだろう。「主よ、主よ、わたしたちはあなたの名によって神の言葉を語り、あなたの名によって悪霊を追い出し、あなたの名によっていくつもの奇跡を行ったではありませんか。」
7:23 そのとき、わたしは彼らにはっきりこう言う。「わたしはあなたたちを一度も知らなかった。悪いことをしてきた者たち、わたしから離れて行け」
7:24 わたしのこれらの言葉を聞いて、その通りにする人は、みんな岩の上に自分の家を建てた賢い人に似ている。
7:25 雨が降り、川があふれ、風が吹いて、その家に襲いかかった。それでも家は倒れなかった。岩を土台にしていたからだ。
7:26 わたしのこれらの言葉を聞いても、その通りにしない人は、みんな砂の上に自分の家を建てた愚かな人に似ている。
7:27 雨が降り、川があふれ、風が吹いて、その家に襲いかかった。すると家は倒れてしまった。しかも、そのくずれ方はひどかった。」
7:28 イエスがこれらの話をし終えると、群衆はその教えに深く驚いた。
7:29 それは、彼らの律法学者たちのようにではなく、権威を持つ者として教えていたからである。
8:1 イエスが山を下りると、大勢の群衆がついてきた。
8:2 「主よ、あなたにその気持ちがあるなら、わたしをきれいにできます。」ちょうどそのとき、重い皮膚病の人がイエスのところに来て、ひれ伏して言った。
8:3 イエスは手を伸ばして彼にさわり、「そうしよう。きれいになれ」と言われた。すると、その人の重い皮膚病はすぐにきよめられ、治った。
8:4 イエスは彼に言った。「このことは誰にも話さないように。ただ祭司のところへ行って、自分の体を見せなさい。そして、モーセが命じた供え物をささげなさい。それが人々への証拠になる」
8:5 さて、イエスがカペナウムに入ると、ひとりの百人隊長が近づいてきて、こう願い出た。
8:6 「主よ、うちの召使いが家で寝込んでいます。体がまひして、ひどく苦しんでいるんです」
8:7 「わたしが行って、治してあげよう」イエスはそう言った。
8:8 百人隊長は答えた。「主よ、あなたをわたしの家にお迎えするような資格は、わたしにはありません。でも、ひと言そう言ってくださるだけでいいのです。そうすれば、わたしの僕は治ります。
8:9 百人隊長は続けた。「わたし自身も上官の下にいる人間です。でも、わたしの下には部下の兵士がいます。その一人に『行け』と言えば行きますし、別の者に『来い』と言えば来ます。奴隷に『これをやれ』と言えば、その通りにします」
8:10 イエスはこれを聞いて驚き、ついてくる人たちに言った。「本当のことを言う。イスラエルの中でも、これほどの信仰を持つ人に会ったことがない。
8:11 「あなたたちに言っておく。多くの人が東や西からやって来て、天の国でアブラハム、イサク、ヤコブと一緒に食卓に着く。
8:12 この国の子らは外の暗闇に追い出される。そこで泣きわめき、歯ぎしりすることになる。」
8:13 百人隊長に、イエスは言った。「帰りなさい。あなたが信じたとおりになるように。」すると、ちょうどその時、しもべの病気は治った。
8:14 ペテロの家に着いたイエスは、彼のしゅうとめが熱を出して寝込んでいるのを見た。
8:15 そこでイエスが彼女の手にさわると、熱が引いた。彼女は起き上がって、イエスをもてなした。
8:16 夕方になると、人々は悪霊に取りつかれた大勢の人をイエスのところに連れてきた。イエスは言葉だけで悪霊を追い出し、病気の人をみんな治した。
8:17 彼は、わたしたちの弱さを引き受け、わたしたちの病を担った。
8:18 イエスは自分のまわりに大勢の群衆が集まっているのを見て、弟子たちに向こう岸へ渡るように命じた。
8:19 「先生、あなたが行くところなら、どこへでもついていきます。」そう言って、ひとりの律法学者が近づいてきた。
8:20 きつねには穴があり、空の鳥には巣がある。でも、人の子には頭を休める場所さえない。
8:21 また、弟子のひとりがイエスに言った。「主よ、まず、父を葬りに行かせてください」
8:22 「わたしについてきなさい。死んだ人を葬るのは、死んだ人たちに任せておきなさい」とイエスは言った。
8:23 それから、イエスが舟に乗り込むと、弟子たちもあとに続いた。
8:24 すると、湖で突然激しい嵐が起こった。舟は波にのみ込まれそうになった。でも、イエスは眠っていた。
8:25 「主よ、助けてください。わたしたちはおぼれてしまいます」と言って、弟子たちはイエスに近づいて起こした。
8:26 「なぜそんなに怖がるのか。信じる心が足りないな。」それからイエスは起き上がって、風と海をしかりつけた。すると、すっかり静かになった。
8:27 「いったいこの人は何者なんだ。風も海も、言うことを聞くなんて。」人々はそう言って驚いた。
8:28 ガダラ人の地がある向こう岸に着くと、悪霊に取りつかれた二人の男が墓場から出てきて、イエスに向かってきた。ひどく凶暴で、だれもその道を通れないほどだった。
8:29 「神の子よ、いったい何の用があるんだ。まだその時でもないのに、ここに来てわたしたちを苦しめるのか」
8:30 さて、そこから少し離れた所では、たくさんの豚の群れがえさを食べていた。
8:31 「もしわたしどもを追い出すなら、あの豚の群れの中に送ってください」と、悪霊たちはイエスに願った。
8:32 そこでイエスが「行け」と言うと、悪霊たちは出て行って豚の中に入った。すると、群れ全体が崖を一気に駆け下り、湖へ飛び込んで水の中でおぼれ死んだ。
8:33 飼っていた者たちは逃げ出し、町へ行って、悪霊にとりつかれていた人たちのことなど、何もかもを人々に伝えた。
8:34 町中の人たちがイエスに会おうと出てきた。そしてイエスを見ると、この地方から出て行ってほしいと願った。
9:1 さて、イエスは舟に乗って海を渡り、自分の町に帰った。
9:2 わたしのところに、人々が中風の人を寝床に寝かせたまま運んできた。イエスは彼らの信仰を見て、その人に言った。「子よ、しっかりしなさい。あなたの罪は赦された。」
9:3 「この男は神を冒とくしている」
9:4 イエスは彼らの考えを見抜いて、こう言った。「どうして、あなたたちは心の中で悪いことを考えているのか。
9:5 あなたの罪は赦された、と言うのと、起きて歩け、と言うのと、どちらが簡単だろう。
9:6 人の子が地上で罪を赦す力を持っていることを、あなたたちに知ってほしい。」そう言うと、イエスは体がまひして動けない人にこう言った。「起き上がって、自分の寝床を担いで、家に帰りなさい。」
9:7 彼は起き上がり、家に帰って行った。
9:8 群衆はそれを見て怖くなり、こんな大きな力を人にお与えになった神をたたえた。
9:9 イエスはそこを通りかかったとき、マタイという人が収税所に座っているのを見かけた。イエスが「わたしについて来なさい」と声をかけると、マタイは立ち上がってイエスについて行った。
9:10 それから、イエスが家で食事をしていたときのことである。大勢の取税人や罪人たちもやって来て、イエスや弟子たちと一緒に食卓を囲んでいた。
9:11 パリサイ派の人たちはこれを見て、弟子たちに言った。「なぜあなたたちの先生は、取税人や罪人と一緒に食事をするのか」
9:12 丈夫な人に医者はいらない。医者が必要なのは病気の人だ。
9:13 「わたしが求めるのは、あわれみであって、いけにえではない」とはどういう意味か、行って学んできなさい。わたしが来たのは、正しい人を招くためではなく、罪人を招くためだからだ。
9:14 そのとき、ヨハネの弟子たちがイエスのところに来て、こう言った。「わたしたちもファリサイ派の人たちも、よく断食をしています。それなのに、どうしてあなたの弟子たちは断食をしないのですか」
9:15 花婿が一緒にいる間、招待客が悲しんだりするだろうか。でも、花婿が奪い去られる日が来る。その時、彼らは断食をする。
9:16 だれも、真新しい布切れで古い服のつぎを当てたりはしない。そんなことをすれば、あてた布が服を引っぱって、破れはもっとひどくなるからだ。
9:17 だれも新しいぶどう酒を古い革袋に入れたりしない。もしそんなことをしたら、革袋は破れて酒は流れ出てしまうし、革袋もだめになる。新しいぶどう酒は新しい革袋に入れるものだ。そうすれば、どちらも長もちする」
9:18 これらのことを話していると、一人の会堂の管理者が来て、イエスの前にひざまずいて言った。「わたしの娘がたった今死んでしまいました。でも、来て娘に手を置いてやってください。そうすれば娘は生き返ります。」
9:19 そこで、イエスは立ち上がって彼について行った。弟子たちも一緒に行った。
9:20 すると、十二年間も出血が止まらない女がイエスの後ろから近づいてきて、その服のふさにそっと触れた。
9:21 わたしは、あの人の服にさわりさえすれば治る、と心の中で思っていたからだ。
9:22 イエスは振り返り、その女性を見て言った。「娘よ、安心しなさい。あなたの信仰があなたを救ったのだ。」すると女性は、その時から治った。
9:23 それからイエスは、その指導者の家に着いた。笛を吹く人たちや、騒いでいる群衆を見て、
9:24 「あちらへ行っていなさい。この子は死んだんじゃない。ただ眠っているだけだ。」すると人々はイエスをあざ笑った。
9:25 群衆が外に出されると、イエスは中に入って少女の手を取った。すると少女は起き上がった。
9:26 そのうわさは、その地方全体に広まった。
9:27 二人の盲人が叫びながらイエスについてきた。「ダビデの子よ、わたしたちをあわれんでください」と。
9:28 家に着くと、目の見えない人たちがイエスのところに来た。イエスは彼らに言った。「わたしにこれができると信じるか。」彼らは答えた。「はい、主よ。」
9:29 そこでイエスは彼らの目にさわって言った。「あなたがたの信じたとおりになるように」
9:30 すると、ふたりの目が見えるようになった。イエスは強い口調で命じた。「このことは、だれにも知られないように気をつけなさい」
9:31 でも、彼らは出て行って、その地方全体にイエスのことを言い広めた。
9:32 彼らが出て行くと、人々が悪霊にとりつかれて口のきけない人をイエスのところに連れてきた。
9:33 悪霊が追い出されると、口のきけなかった人が話し始めた。群衆はこれを見て驚き、「こんなことがイスラエルで起きたことは、今まで一度もない」と言った。
9:34 「彼は悪霊たちのかしらの力で悪霊を追い出しているんだ」ファリサイ派の人たちはそう言った。
9:35 マタイは町や村をすべて巡り歩き、それぞれの会堂で教え、御国の福音を宣べ伝え、あらゆる病気や患いをいやしていった。
9:36 羊飼いのいない羊のように弱り果てて、うちひしがれている群衆を見て、イエスは深くあわれんだ。
9:37 収穫はたくさんある。でも、それを刈り取る働き手が少ない。
9:38 だから、収穫の主にお願いしなさい。その収穫のために働く人を送り出してください、と。
10:1 わたしはイエスは十二人の弟子を呼び寄せ、彼らに汚れた霊を追い出す力を与えた。そして、あらゆる病気や弱った体を治す力も授けた。
10:2 十二人の使徒の名前は、次のとおり。まず、ペテロと呼ばれるシモンとその兄弟アンデレ、それにゼベダイの子ヤコブとその兄弟ヨハネ、
10:3 ピリポとバルトロマイ、トマスと取税人マタイ、アルパヨの子ヤコブとタダイ。
10:4 熱心党のシモン。それにイスカリオテのユダ。このユダが、イエスを裏切ることになる。
10:5 十二人を派遣するとき、イエスは彼らにこう命じた。「外国人の住む地域へは行くな。サマリア人の町にも入るな。
10:6 むしろ、迷い出たイスラエルの民のところに行きなさい。
10:7 天の国が近づいた、と伝えなさい。
10:8 病人を治し、死んだ人を生き返らせ、重い皮膚病の人をきよめ、悪霊を追い出しなさい。あなたたちはただで受けたのだから、ただで与えなさい。
10:9 財布に金貨や銀貨、銅貨を入れて持って行ってはいけない。
10:10 袋も、下着の替えも、履き物も、杖も持って行ってはいけない。働く人が食べ物をもらうのは当然のことだから。
10:11 どの町や村に入っても、そこで信頼できる人を探しなさい。そして、あなたたちがその土地を去るまで、その人の家にとどまりなさい。
10:12 その家に入るときは、平安を祈ってあいさつしなさい。
10:13 もし平安を受けるにふさわしい家なら、あなたたちの平安がその家に注がれる。ふさわしくなければ、その平安はあなたたちのところに戻ってくる。
10:14 もしあなたたちを受け入れず、あなたたちの言葉に耳を傾けない人がいたら、その家や町を出ていくとき、足についたちりを払い落としなさい。
10:15 確かに言っておく。裁きの日には、あの町よりもソドムとゴモラの地のほうが、まだ軽く済むのだ。
10:16 見よ、わたしはあなたたちを、狼の群れの中に羊を送り込むように、遣わす。だから、蛇のように賢く、鳩のように純真でありなさい。
10:17 人々に気をつけなさい。彼らはあなたたちを裁判の場に引き渡し、会堂であなたたちをむち打つからだ。
10:18 またあなたがたは、わたしのために総督や王たちの前に引き出される。それは、その人たちと外国の人々に対してあかしをするためだ。
10:19 彼らがあなたたちを引き渡したとき、どう話すか、何を話そうかと心配しなくていい。話すべきことは、その時にあなたたちに与えられるからだ。
10:20 あなたがたが話すのではない。あなたがたの中にいて話すのは、あなたがたの父の霊だからだ。
10:21 兄弟は兄弟を、父は子を、死に渡す。子も親に逆らって立ち上がり、殺してしまう。
10:22 わたしの名のせいで、あなたたちはすべての人に憎まれる。でも、最後まで耐え抜いた者は救われる。
10:23 一つの町で迫害されたら、次の町へ逃げなさい。よく聞いてほしい。あなたたちがイスラエルの町を回りきらないうちに、人の子はやって来る。
10:24 弟子は師より上ではないし、しもべも主人より上ではない。
10:25 弟子が師のようになり、しもべが主人のようになれば、それで十分だ。家の主人がベルゼブルと呼ばれたのなら、その家の者たちはなおさらひどく言われるだろう。
10:26 だから、彼らを恐れることはない。覆い隠されたもので、明らかにされないものはない。隠れているもので、知られずに終わるものはない。
10:27 わたしが暗がりであなたたちに話すことを、明るい場所で話しなさい。耳もとで聞いたことを、屋根の上から言い広めなさい。
10:28 からだを殺しても、たましいを殺すことのできない者たちを恐れてはいけない。むしろ、たましいもからだも、両方とも地獄で滅ぼすことのできる方を恐れなさい。
10:29 二羽のすずめは一アサリオンで売られているよね。でも、そのうちの一羽さえ、あなたがたの父の許しがなければ地に落ちることはない。
10:30 またあなたがたの髪の毛の一本一本まで、神は数え尽くしている。
10:31 それだから、恐れることはない。あなたがたは、たくさんのすずめよりもずっと大切なのだから。
10:32 だから、人々の前でわたしを自分の主だと言い表す人のことを、わたしも天にいる父の前で、この人はわたしのものだと言い表す。
10:33 でも、人々の前でわたしを知らないと言う者を、わたしも天にいるわたしの父の前で、この人を知らないと言う。
10:34 平和ではなく、剣を投げ込むために来た。地上に平和をもたらすために来たと思ってはいけない。
10:35 わたしが来たのは、人をその父と、娘をその母と、嫁をそのしゅうとめと仲たがいさせるためだ。
10:36 わたしの敵は、自分の家族になる。
10:37 わたしよりも父や母を愛する人は、わたしにふさわしくない。わたしよりも息子や娘を愛する人は、わたしにふさわしくない。
10:38 自分の十字架を背負ってわたしについて来ない者は、わたしにふさわしくない。
10:39 自分の命をしっかりつかんでいる人は、それを失う。でも、わたしのために自分の命を手放す人は、それを見つける。
10:40 あなたがたを受け入れる人は、わたしを受け入れている。そしてわたしを受け入れる人は、わたしを送った方を受け入れているのだ。
10:41 預言者を預言者として受け入れる人は、預言者と同じ報いを受ける。正しい人を正しい人として受け入れる人は、正しい人と同じ報いを受ける。
10:42 わたしの弟子だからという理由で、この小さな者の一人に、たとえ冷たい水一杯でも飲ませてあげる人は、よく聞いてほしい、その報いを失うことは決してない。」
11:1 イエスはこのように十二人の弟子たちに指示を与え終えると、彼らの町々で教え、また福音を伝えるために、そこを立ち去った。
11:2 ヨハネは牢の中で、キリストがしていることを聞いた。それで自分の弟子たちを送って、
11:3 「あなたが、来ることになっているあの方なのですか。それとも、わたしたちはほかの人を待つべきでしょうか。」
11:4 イエスは答えた。「行って、あなたたちが見て聞いていることをヨハネに伝えなさい。
11:5 目の見えない人が見えるようになり、足の不自由な人が歩き、重い皮膚病の人がきよめられ、耳の聞こえない人が聞こえるようになる。死んだ人が生き返り、貧しい人には良い知らせが伝えられている。
11:6 わたしにつまずかない人は幸いだ。」
11:7 彼らが帰って行くと、イエスは群衆にヨハネのことを話しはじめた。「あなたたちは何を見に荒野へ出て行ったのか。風に揺れる葦か。
11:8 では、何を見に行ったのか。上等な服を着た人か。そんな上等な服を着ている人たちは、王さまの家にいる。
11:9 では、何を見に行ったのか。預言者か。そうだ、あなたたちに言うが、預言者よりもさらにすぐれた者だ。
11:10 この人こそ、こう書かれている人だ。「見なさい。わたしはあなたの前に使いを送る。その人があなたの道を、あなたの前に整える。」
11:11 はっきり言っておく。女から生まれた者の中で、バプテスマのヨハネより偉大な人は現れなかった。それでも、天の国でいちばん小さい者のほうが、彼よりも偉大なのだ。
11:12 バプテスマのヨハネが活動を始めたころから今に至るまで、天の国は激しく攻められていて、激しく攻める者たちがそれを奪い取ろうとしている。
11:13 すべての預言者と律法が預言してきたのは、ヨハネの時までだ。
11:14 そして、もしあなたたちが受け入れる気があるなら、この人こそ、来ることになっているエリヤなのだ。
11:15 耳のある人は聞きなさい。
11:16 今の時代を何にたとえたらいいだろう。今の人たちは、広場にすわって、ほかの子たちに呼びかける子どもに似ている。
11:17 『笛を吹いてあげたのに、あなたたちは踊らなかった。悲しみの歌を歌ったのに、あなたたちは泣いてくれなかった』
11:18 ヨハネがやって来て、食べも飲みもしなかった。すると人々は「あれは悪霊に取りつかれている」と言う。
11:19 人の子が来て、食べたり飲んだりしていると、人々は「見ろ、あの男は大食いの大酒飲みだ。取税人や罪人の仲間だ」と言う。でも、知恵が正しいことは、その行いが証明する。
11:20 そのころイエスは、いちばん多くの奇跡を見せた町々を責めはじめた。人々が心を入れかえなかったからだ。
11:21 「災いだ、コラジンよ。災いだ、ベツサイダよ。あなたたちの間で行われた数々の奇跡が、もしティルスとシドンで行われていたら、その町の人たちはとっくの昔に、粗い布を身にまとい、灰をかぶって、心を入れ替えていたはずだ。
11:22 でも、あなたたちに言っておく。さばきの日には、ツロとシドンの方が、あなたたちよりまだ楽なはずだ。
11:23 また、カファルナウム、あなたは天まで上げられるとでも思っているのか。あなたは陰府にまで落とされる。あなたの町で行われた数々の奇跡が、もしソドムで行われていたら、その町は今日まで残っていたはずだ。
11:24 さばきの日には、ソドムの地の方が、おまえよりまだ楽なはずだ。」
11:25 そのとき、イエスはこう言った。「天と地の主である父よ。あなたをたたえます。あなたはこれらのことを、知恵のある人や賢い人には隠し、幼い子どもたちに示してくださいました。
11:26 父よ、これがあなたの望んだことだったのです。
11:27 すべては父からわたしにゆだねられている。父のほかに子を知る者はなく、子と、子が父を示そうとして選んだ人のほかに、父を知る者はいない。
11:28 すべて疲れ果て、重荷を負っている人は、わたしのところに来なさい。わたしがあなたがたを休ませてあげよう。
11:29 わたしは柔和で、心のへりくだった者だ。だから、わたしのくびきを負って、わたしから学びなさい。そうすれば、あなたがたの心に安らぎが得られる。
11:30 わたしのくびきは負いやすく、わたしの荷は軽いのだから」
12:1 そのころ、ある安息日に、イエスは麦畑の中を通っていた。弟子たちは腹が空いていたので、麦の穂を摘んで食べはじめた。
12:2 ファリサイ派の人たちがこれを見て、イエスに言った。「見てください。あなたの弟子たちが、安息日にしてはいけないことをしています。」
12:3 だがイエスは彼らに言った。「あなたたちは読んだことがないのか。ダビデが自分の供の者たちと一緒に空腹になったとき、何をしたか。
12:4 ダビデは神の家に入り、供えのパンを食べた。それは祭司のほかは、ダビデ自身も供の者たちも食べてはいけないパンだった。
12:5 それとも、律法の中でこう読んだことはないのか。祭司たちは安息日に神殿で働いて安息日の決まりを破っているのに、罪には問われない。
12:6 言っておく。この神殿よりも大切なものが、ここにある。
12:7 『わたしが求めるのは、いけにえではなく、あわれみだ』という言葉の意味を、もし分かっていたなら、あなたたちは罪のない人たちを責めたりしなかっただろう。
12:8 人の子は安息日の主なのだから。」
12:9 イエスはそこを去って、彼らの会堂に入った。
12:10 そこに、片手の不自由な人がいた。人々はイエスを訴える口実を探していて、「安息日に病気を治すのは、律法で許されているのか」と尋ねた。
12:11 イエスは彼らに言った。「たとえば、あなたたちの中に羊を一匹飼っている人がいるとする。その羊が安息日に穴に落ちたら、手を伸ばして引き上げてやらないだろうか。
12:12 人は羊よりも、どれほど価値があるだろう。だから、安息日に良いことをするのは正しいのだ。」
12:13 そこでイエスはその人に言った。「手を伸ばしなさい。」彼が手を伸ばすと、その手はもう片方の手のように元どおり健康になった。
12:14 パリサイ派の人たちは出て行って、どうやってイエスを殺そうかと相談した。
12:15 イエスはそれを知って、その場を立ち去った。すると大勢の人がついてきたので、イエスは彼ら全員を治した。
12:16 そして、自分のことを人々に言い広めないようにと、彼らに強く言い聞かせた。
12:17 それは、預言者イザヤを通して語られた、次の言葉が実現するためだった。
12:18 「見よ、わたしが選んだわたしのしもべ。わたしが愛し、心から喜んでいる者。わたしはこの人に自分の霊を授ける。この人は、諸国の民に正義を告げ知らせる。
12:19 争ったり、叫んだりしない。大通りでその声を聞く人もいない。
12:20 傷ついた葦を折ることもなく、くすぶる灯心を消すこともない。正義を勝利へと導くまで、彼はそうし続ける。
12:21 そして異邦人は、その名に望みをかける。」
12:22 そのとき、悪霊にとりつかれて目が見えず、口もきけない人が、イエスのところに連れてこられた。イエスがその人を治すと、話せるようになり、目も見えるようになった。
12:23 群衆はみな驚いて、「もしかして、この人がダビデの子なのだろうか」と言い合った。
12:24 だが、それを聞いたファリサイ派の人たちはこう言った。「この人が悪霊を追い出せるのは、悪霊の親玉ベルゼブルの力を借りているからにすぎない。」
12:25 イエスは彼らの心の中を見抜いて、こう言った。「どんな国でも、内側で分かれて争えば滅びてしまう。どんな町も家も、内側で争えば立ち行かない。
12:26 もしサタンがサタンを追い出しているなら、サタンは仲間割れしていることになる。それでは、どうやってサタンの国は成り立つのだろうか。
12:27 わたしがベルゼブルの力で悪霊を追い出しているのなら、あなたたちの仲間はだれの力で追い出しているのか。だから、その仲間たちがあなたたちを裁くことになる。
12:28 でも、わたしが神の霊の力で悪霊を追い出しているのなら、神の国はもうあなたたちのところに来ているのだ。
12:29 それとも、こう考えてみてほしい。まず力の強い人を縛り上げなければ、どうやってその家に押し入って家財を奪い取れるだろうか。縛ってはじめて、その家をすっかり奪い取ることができるのだ。
12:30 わたしの味方でない者は、わたしに敵対している。わたしといっしょに集めない者は、散らしているのだ。
12:31 だから、あなたがたに言っておく。人が犯すどんな罪も、神を汚すどんな言葉も、赦される。でも、聖霊を汚す言葉だけは赦されない。
12:32 また、人の子に逆らうことを言う者は、赦される。でも、聖なる霊に逆らうことを言う者は、赦されない。この世でも、次に来る世でも、赦されないのだ。
12:33 木を良いものとすれば、その実も良くなる。木を悪いものとすれば、その実も悪くなる。木のよしあしは、その実でわかるのだから。
12:34 まむしの子らよ。あなたたちは悪い人間なのに、どうして良いことを話せるだろう。心にあふれているものが、口から出てくるのだから。
12:35 善い人は良いものを蓄えた心から良いものを出し、悪い人は悪いものを蓄えた心から悪いものを出す。
12:36 言っておくが、人は口にしたどんなにつまらない言葉についても、裁きの日にその責任を問われることになる。
12:37 あなたは自分の言葉によって正しいとされ、また自分の言葉によって罪ありとされるのだから。」
12:38 そのとき、律法学者やパリサイ派の人たちの中の何人かがイエスに言った。「先生、あなたがしるしを見せてくれませんか」
12:39 イエスは答えられた。「今の時代の人たちは悪く、神に背いている。奇跡のしるしを求めているが、彼らに与えられるしるしは、預言者ヨナのしるしのほかにはない。
12:40 ヨナが三日三晩、大きな魚のお腹の中にいた。それと同じように、人の子も三日三晩、地の中にいることになる。
12:41 ニネベの人々は、今の時代の人々と一緒に裁きの場に立って、この人たちを罪に定める。ニネベの人々はヨナの語る言葉を聞いて、心を入れ替えたからだ。見てほしい。ここにヨナよりも偉大な者がいる。
12:42 南の国の女王が、今の時代の人々と一緒にさばきの場に立って、彼らを罪に定める。この女王ははるか地の果てから、ソロモンの知恵を聞くためにやって来たからだ。でも見なさい。ここには、そのソロモンよりも偉大な者がいる。
12:43 汚れた霊が人から出ていくと、休める場所を探して、水のない所をさまよう。でも、見つからない。
12:44 そこで、悪霊はこう考える。「出てきた元の家に戻ろう。」そして戻ってみると、その家は空っぽで、掃除も整理も行き届いていた。
12:45 それから出て行って、自分よりもたちの悪い七つの霊を連れてくる。そして中に入り込んで、そこに住みつく。こうしてその人の後の状態は、初めよりももっとひどくなる。よこしまな今の時代の人たちも、こんなふうになるのだ。」
12:46 イエスがまだ群衆に話していると、そこに、イエスの母と兄弟たちがやってきた。イエスと話そうとして、外に立っていたのだ。
12:47 それで、ある人がイエスに言った。「見てください。あなたのお母さんと弟さんたちが、あなたと話したくて外に立っています。」
12:48 イエスは、それを知らせてくれた人にこう答えた。「わたしの母とは、だれのことだろう。わたしの兄弟とは、だれのことだろう。」
12:49 そして、弟子たちの方に手を伸ばして言った。「見なさい、ここにわたしの母がいる。わたしの兄弟姉妹がいる。
12:50 天にいるわたしの父が望むことを行う人は、だれでもわたしの兄弟であり、姉妹であり、母なのだ」
13:1 その日、イエスは家を出て、湖のほとりに座っていた。
13:2 大勢の群衆がイエスのまわりに集まってきた。だからイエスは舟に乗って腰を下ろし、群衆はみな岸に立っていた。
13:3 イエスはたとえを使って、たくさんのことを話した。「よく聞いてほしい。種をまく人が、種をまきに出かけた。
13:4 種をまいていると、ある種は道ばたに落ちた。すると鳥がやってきて、食べてしまった。
13:5 ほかの種は土の少ない石地に落ちた。そこは土が浅かったので、すぐに芽を出した。
13:6 でも太陽が昇ると、その芽は焼けてしまった。根がなかったので、枯れてしまった。
13:7 ほかの種はいばらの中に落ちた。すると、いばらが伸びてきて、その種をふさいでしまった。
13:8 でも、ほかの種は良い地に落ちて、実をつけた。あるものは百倍、あるものは六十倍、あるものは三十倍にもなった。
13:9 耳のある人は聞きなさい。」
13:10 それから、弟子たちがイエスのところに来て、こう尋ねた。「どうして人々にはたとえで話すのですか」
13:11 天の国の秘密を知ることが許されているのは、あなたたちだ。でも、あの人たちには許されていない。
13:12 持っている人には、さらに与えられて、豊かになる。でも持っていない人からは、持っているものまで取り上げられてしまう。
13:13 だから、わたしはこの人たちにたとえで話す。彼らは見ても見えず、聞いても聞こえず、理解もしないからだ。
13:14 こうして、イザヤが語った預言が彼らの上に実現した。「あなたたちは、聞くには聞くが、決して理解しない。見るには見るが、決して分からない。
13:15 この民の心が鈍くなっているからだ。彼らは耳が遠く、目を閉じてしまった。目で見て、耳で聞いて、心で理解して、立ち返ることがないように。そうならなければ、わたしが彼らをいやすのに。
13:16 でも、あなたたちの目は幸いだ。ちゃんと見えているのだから。あなたたちの耳も幸いだ。ちゃんと聞こえているのだから。
13:17 はっきり言っておく。多くの預言者や正しい人たちが、あなたたちが今見ていることを見たいと願った。でも見られなかった。あなたたちが今聞いていることを聞きたいと願った。でも聞けなかったんだ。
13:18 だから、種をまく人のたとえ話を聞いてほしい。
13:19 だれでも御国の言葉を聞いても、それがわからないと、悪い者がやってきて、その人の心にまかれたものを奪い取ってしまう。道ばたにまかれた種とは、こういう人のことだ。
13:20 石地にまかれたものというのは、こういう人のことだ。その言葉を聞くと、すぐに喜んで受け入れる。
13:21 しかし、自分の中に根がないので、長続きしない。教えを信じたせいで困難や迫害が起きると、すぐに信仰を捨ててしまう。
13:22 いばらの中にまかれた種とは、こういう人のことだ。その人はメッセージを聞く。でも、この世の心配ごとや、お金がもたらす誘惑がそのメッセージをふさいでしまう。だから実を結ばなくなる。
13:23 良い土に蒔かれた種とは、こういう人のことだ。神の言葉を聞いて、その意味をちゃんと理解する人。そういう人は実を結び、ある人は百倍、ある人は六十倍、ある人は三十倍の実をみのらせるんだ」
13:24 イエスはまた、別のたとえを人々に話した。「天の国は、自分の畑に良い種をまいた人にたとえられる。
13:25 人々が眠っている間に、その人の敵がやって来た。敵は麦の中に毒麦をまいて、去っていった。
13:26 やがて麦が芽を出して実をつけたとき、毒麦も現れた。
13:27 ご主人様、畑にまいたのは良い種じゃなかったんですか。それなのに、どうして毒麦が生えてきたんでしょう。
13:28 主人は言った。「敵の仕業だ。」すると召使いたちが言った。「では、行って抜き集めましょうか。」
13:29 だが彼は言った。「いや、毒麦を抜こうとして、麦まで一緒に抜いてしまうかもしれない。
13:30 収穫まで、両方とも一緒に育つままにしておきなさい。収穫のときになったら、刈り取る人たちにこう言おう。まず毒麦を集めて、束にして燃やしなさい。でも麦のほうは集めて、わたしの倉に入れなさい」
13:31 天の国は、からし種のようなものだ。ある人がそれを取って、自分の畑にまいた。
13:32 それはどんな種よりも小さい。でも成長すると、どの野菜よりも大きくなり、木になる。そして空の鳥がやってきて、その枝に巣を作るほどだ。」
13:33 またイエスは、別のたとえを話した。「天の国は、パン種のようなものだ。女がそれを取って、三サトンの粉に混ぜ込む。すると、生地全体がふくらんでくる。」
13:34 イエスはこれらすべてのことを、たとえを使って群衆に語った。たとえを使わずに語ることは何もなかった。
13:35 わたしは口を開いて、たとえで語る。世界が造られたときから隠されてきたことを語り出す。これは、預言者が語ったことが実現するためだった。
13:36 そのあとイエスは群衆をあとに残して、家に入った。すると弟子たちがそばに来て、こう言った。「畑の毒麦のたとえを説明してください。」
13:37 イエスは答えて言われた。「良い種をまくのは、人の子だ。
13:38 畑は世である。良い種とは、天の国の子どもたちのこと。毒麦は、悪い者の子どもたちだ。
13:39 それをまいた敵は、悪魔だ。収穫のときとは、世の終わりのこと。刈り取る者たちは、天使である。
13:40 だから、毒麦が集められて火で焼かれるように、世界の終わりにもそうなる。
13:41 人の子は自分の使いたちを送り出す。そして、人をつまずかせるものと、悪いことをする者たちを、みんな御国から集め出す。
13:42 炉の火の中に投げ込む。そこでは、人々が泣きわめき、歯ぎしりする。
13:43 そのとき、正しい人たちは、父である神の御国で太陽のように輝く。耳のある者は聞きなさい。
13:44 天の国は、畑に隠された宝のようなものだ。ある人がそれを見つけると、また隠しておく。そして喜びのあまり、帰って持ち物をすべて売り払い、その畑を買うのだ。
13:45 天の国は、良い真珠を探している商人にもたとえられる。
13:46 高価な真珠を一つ見つけると、その人は行って持ち物をすべて売り払い、それを買った。
13:47 天の国は、海に投げ入れられて、あらゆる種類の魚を集める網にも似ている。
13:48 網がいっぱいになると、人々は岸に引き上げた。そして座って、良いものは入れ物に集め、悪いものは外に捨てた。
13:49 世の終わりにも、同じことが起こる。天使たちが来て、正しい人たちの中から悪い人たちをより分け、
13:50 炉の火の中に投げ込む。そこでは、人々が泣きわめき、歯ぎしりする。
13:51 あなたたちは、これがみんなわかったか。」彼らは「はい」と答えた。
13:52 そこでイエスは言った。「だから、天の国について学んだ学者はみんな、倉から新しいものと古いものを取り出す家の主人のようなものだ。」
13:53 イエスはこれらのたとえを話し終えると、そこを立ち去った。
13:54 イエスは自分の故郷に戻り、そこの会堂で人々を教えた。すると人々は驚いて言った。「この人は、こんな知恵とこれほどの力あるわざを、いったいどこで身につけたんだ。
13:55 この人は大工の息子じゃないか。母親はマリアといって、弟たちはヤコブ、ヨセフ、シモン、ユダだろう。
13:56 それに、妹たちもみんな、わたしたちと一緒にここで暮らしているじゃないか。それなのに、この人はこういうことを全部、どこで身につけたんだろう。」
13:57 人々はイエスに反発した。でも、イエスは彼らに言った。「預言者はどこででも敬われる。ただ、自分の故郷と自分の家では別だ。」
13:58 だが、人々が信じようとしなかったので、そこでは奇跡をたくさんはなさらなかった。
14:1 そのころ、領主ヘロデはイエスのうわさを耳にした。
14:2 家来たちにこう言った。「あれはバプテスマのヨハネだ。死んだのに生き返ったんだ。だから、あんな力が彼の中で働いているんだ」
14:3 ヘロデは、自分の兄弟ピリポの妻ヘロディアのことで、ヨハネを捕まえて縛り、牢に入れていたのだ。
14:4 ヨハネがヘロデに、「あの女性を妻にするのは許されない」と言い続けていたからである。
14:5 ヘロデはヨハネを殺したかったが、群衆をこわがった。人々がヨハネを預言者と認めていたからだ。
14:6 ヘロデの誕生日の祝いのとき、ヘロディアの娘がみんなの前で舞を披露した。それを見てヘロデは喜んだ。
14:7 だから彼は、彼女が願うものは何でもあげると誓って約束した。
14:8 少女は母親にそそのかされて、こう言った。「バプテスマのヨハネの首をお盆に載せて、ここに持ってきてください。」
14:9 王は困ったが、いったん誓ってしまった手前、それに同席している客の手前もあって、それを与えるように命じた。
14:10 そして人を送り、牢の中でヨハネの首を切らせた。
14:11 その首は盆に載せて運ばれ、少女に手渡された。少女はそれを母親のところに持って行った。
14:12 それを聞いたヨハネの弟子たちがやって来て、遺体を引き取って葬った。そして、イエスのところに行って知らせた。
14:13 イエスはこの知らせを聞くと、舟に乗ってそこを離れ、ひとりで人けのない場所へ行った。でも、群衆はそれを聞きつけ、町々から歩いてあとを追ってきた。
14:14 イエスは舟から上がると、大勢の群衆を見て、深くあわれに思った。そして、その中の病人たちを治した。
14:15 夕方になって、弟子たちがイエスのところに来て言った。「ここは何もない寂しい場所だし、もう時間も遅くなりました。群衆を解散させてください。みんなで村へ行って、自分の食べ物を買えるように」
14:16 でも、イエスは言った。「行かせる必要はない。あなたたちが、この人たちに食べ物をあげなさい」
14:17 弟子たちは言った。「ここには、パン五つと魚二匹しかありません」
14:18 イエスは言われた。「それをここに持ってきなさい。」
14:19 そして群衆に命じて草の上に座らせ、五つのパンと二匹の魚を手に取った。そして天を見上げ、神に感謝の祈りをささげてパンを裂き、弟子たちに渡した。弟子たちはそれを群衆に配った。
14:20 みんなが食べて、お腹いっぱいになった。残ったパンくずを集めると、かご十二個分にもなった。
14:21 食べたのは、女性や子供を別にして、男性だけでおよそ五千人だった。
14:22 そしてすぐに、イエスは弟子たちを無理に舟に乗せ、自分が群衆を帰らせている間に、先に向こう岸へ行かせた。
14:23 群衆を解散させると、イエスは祈るために、ひとりで山に登った。夕方になっても、そこにたったひとりでいた。
14:24 舟はもう岸から遠く離れ、波にもまれていた。向かい風だったからだ。
14:25 夜が明ける少し前、イエスは湖の上を歩いて弟子たちのほうへ向かった。
14:26 弟子たちは、イエスが湖の上を歩いているのを見て、動揺した。「あれは幽霊だ」と言って、恐ろしさのあまり叫び声をあげた。
14:27 でもイエスはすぐに声をかけた。「大丈夫だ。わたしだ。こわがることはない」
14:28 ペテロが答えた。「主よ、あなたなのですね。それなら、水の上を歩いてそちらへ行くよう、わたしに命じてください」
14:29 イエスが「おいで」と言うと、ペテロは舟から下りて水の上を歩き、イエスのところへ向かった。
14:30 でも、強い風を見て怖くなり、おぼれかけたので、「主よ、助けてください」と叫んだ。
14:31 イエスはすぐに手を伸ばして彼をつかまえ、こう言った。「信じる心が足りないね。どうして疑ったんだ」
14:32 ふたりが舟に乗り込むと、風はやんだ。
14:33 舟の中にいた人たちはイエスの前にひざまずいて、こう言った。「あなたは本当に神の子だ」
14:34 それから、彼らは湖を渡ってゲネサレの地に着いた。
14:35 その土地の人々はイエスだと気づき、あたりの地域一帯に人を送った。そして病気の人をみんなイエスのところに連れてきた。
14:36 そして人々は、せめてイエスの服のふさにでも触れさせてほしいと願った。触れた人はみんな治った。
15:1 そのころ、エルサレムからファリサイ派の人たちと律法学者たちがイエスのところに来て、こう言った。
15:2 「なぜあなたの弟子たちは、昔から伝わる先祖の教えを破るのですか。食事の前に手を洗わないではありませんか。」
15:3 イエスは答えた。「では、あなたがたはなぜ、自分たちの言い伝えのために神の戒めを破っているのか。
15:4 神はこう言われた。「父と母を敬いなさい。」また「父や母をののしる者は、必ず死ななければならない。」
15:5 だが、あなたたちはこう言っている。「父や母に向かって、『あなたに差し上げるはずのものは、神への供え物にしました』と言う人は、
15:6 父を敬わなくてもいい」と教えている。こうしてあなたたちは、自分たちの言い伝えのせいで、神の言葉を無効にしてしまった。
15:7 偽善者たちよ。イザヤはあなたたちについて、こう見事に言い当てていた。
15:8 『この民は口先ではわたしを敬う。でも、その心はわたしから遠く離れている。
15:9 人々にわたしを拝ませても、むなしいだけだ。彼らが教えるのは、人間が作った決まりごとにすぎないのだから』」
15:10 そこでイエスは群衆を呼び寄せて言った。「よく聞いて、その意味を理解しなさい。
15:11 口に入るものが人を汚すのではない。口から出るものが人を汚すのだ」
15:12 そのとき、弟子たちがイエスのそばに来て言った。「パリサイ派の人たちがあの言葉を聞いて、すごく気分を害したのをご存じですか」
15:13 わたしの天の父が植えなかった木は、みな根こそぎにされる。
15:14 そのままにしておきなさい。彼らは目の見えない案内人だ。そして、目の見えない人が目の見えない人を案内したら、二人とも穴に落ちてしまう。
15:15 ペテロが答えた。「さっきのたとえの意味を、わたしたちに説明してください。」
15:16 イエスは言われた。「あなたたちも、まだわからないのか。
15:17 まだ分からないのか。口に入るものは、みな腹を通って、外へ出されるだけだ。
15:18 でも、口から出るものは心の中から出てくる。そして、それが人を汚すのだ。
15:19 悪い考えは心の中から出てくる。人殺し、不倫、みだらな行い、盗み、うその証言、人を傷つける悪口も。
15:20 これらが人を汚すものだ。でも、手を洗わずに食事をしても、人が汚れることはない」
15:21 そして、イエスはそこを去って、ティルスとシドンの地方へ行った。
15:22 すると、その地方に住むカナン人の女がやってきて、叫び続けた。「主よ、ダビデの子よ、わたしをあわれんでください。娘が悪霊にとりつかれて、ひどく苦しんでいるのです」
15:23 でもイエスは、その女性に一言も答えなかった。すると弟子たちがそばに来て、「あの人を追い払ってください。ずっと後ろで叫び続けているんですから」と頼んだ。
15:24 イエスは答えた。「わたしが送られたのは、迷い出た羊のようなイスラエルの人たちのところだけなんだ。」
15:25 でも、女は来てイエスの前にひざまずき、「主よ、どうかわたしを助けてください」と言った。
15:26 イエスは答えた。「子どもたちのパンを取り上げて、子犬に投げ与えるのはよくない。」
15:27 でも、女は言った。「そのとおりです。でも、子犬だって、飼い主の食卓から落ちるパンくずは食べるんです。」
15:28 そこでイエスは彼女に答えた。「あなたの信仰は本当に大きい。あなたの願いどおりになるように。」すると、その時から娘は治った。
15:29 イエスはそこを去って、ガリラヤ湖のほとりへ行った。そして山に登り、そこにすわった。
15:30 大勢の群衆が、足の不自由な人、体の不自由な人、目の見えない人、口のきけない人、そのほか多くの人を連れて、イエスのところにやって来た。そして、その人たちをイエスの足もとに寝かせた。すると、イエスは彼らを治した。
15:31 群衆は、口のきけない人が話し、体の不自由な人が治り、足の不自由な人が歩き、目の見えない人が見えるようになったのを見て驚いた。そしてイスラエルの神をたたえた。
15:32 イエスは弟子たちを呼び寄せて言った。「この群衆がかわいそうだ。もう三日もわたしと一緒にいるのに、食べる物が何もない。空腹のまま帰らせたくはない。途中で動けなくなってしまうかもしれないから。」
15:33 弟子たちは言った。「こんな人里離れた場所で、これほど大勢の群衆をおなかいっぱいにできるほどのパンを、どこで手に入れればいいのでしょう」
15:34 イエスは弟子たちに「パンはいくつある?」と尋ねた。すると弟子たちは「七つです。それに小さい魚が少しあります」と答えた。
15:35 そこでイエスは群衆に、地面にすわるようにと言った。
15:36 七つのパンと魚を取り、感謝の祈りをささげてからそれを裂き、弟子たちに渡した。弟子たちはそれを群衆に配った。
15:37 みんなが食べて、お腹いっぱいになった。残ったパンくずを集めると、かご七個分にもなった。
15:38 食べたのは、女性や子供を別にして、男性だけで四千人だった。
15:39 そこでイエスは群衆を帰らせ、舟に乗ってマガダンの地方へ向かった。
16:1 パリサイ派とサドカイ派の人たちがイエスのところに来た。イエスを試そうとして、天からのしるしを見せてほしいと迫った。
16:2 夕方になると、あなたたちは「空が赤いから、明日は晴れだ」と言う。
16:3 また朝には、『空が赤黒く曇っているから、今日は荒れる』と言う。あなたたちは空模様は見分けられるのに、時のしるしは見分けられないのか。
16:4 邪悪で不誠実な今の時代は、しるしを求める。でも、ヨナのしるしのほかに、しるしは与えられない。」そう言って、イエスは彼らを残して立ち去った。
16:5 弟子たちは向こう岸に着いたが、パンを持って来るのを忘れていた。
16:6 でも、イエスは彼らに言った。「気をつけなさい。ファリサイ派とサドカイ派のパン種に注意しなさい」
16:7 弟子たちは、「パンを持ってこなかったからだ」と言って、たがいに話し合った。
16:8 イエスはそれに気づいて言った。「信仰の薄い人たちだね。どうして『パンがないからだ』なんて、みんなで言い合っているのか。
16:9 まだわからないのか。五つのパンを五千人に分けたとき、パンくずを何かご分回収したか、覚えていないのか。
16:10 また、四千人に七つのパンを分けたときは、パン切れをどれだけのかごに集めたか。
16:11 わたしが言ったのは、パンのことではない。どうしてそれがわからないのか。気をつけなさい。ファリサイ派とサドカイ派のパン種に。」
16:12 そのとき弟子たちは、イエスが注意しろと言ったのはパンのパン種のことではなく、パリサイ派とサドカイ派の教えのことだったと分かった。
16:13 イエスはピリポ・カイザリヤの地方にやって来た。そこで弟子たちに尋ねた。「人々は、人の子のことをだれだと言っているだろうか」
16:14 弟子たちは答えた。「バプテスマのヨハネだと言う人もいれば、エリヤだと言う人もいます。エレミヤだとか、預言者の一人だと言う人もいます」
16:15 「では、あなたたちはわたしをだれだと言うのか。」
16:16 シモン・ペテロが答えた。「あなたこそ、生きておられる神の子キリストです」
16:17 イエスは答えた。「シモン、ヨナの子よ、あなたは幸いだ。これをあなたに明かしたのは、人間ではない。天におられるわたしの父だ。
16:18 だから、わたしもあなたに言う。あなたはペテロ。そして、わたしはこの岩の上にわたしの教会を建てる。死の国の力も、それに打ち勝つことはない。
16:19 わたしは、あなたに天の国のかぎを渡す。あなたが地上でつなぐことは天でもつながれ、あなたが地上で解くことは天でも解かれる。」
16:20 そのときイエスは、自分がキリストであることをだれにも言わないようにと、弟子たちに強く命じた。
16:21 この時から、イエスは弟子たちにはっきりと伝えはじめた。自分はエルサレムに行かなければならない。そこで長老や祭司長、律法学者たちからひどく苦しめられ、殺され、そして三日目によみがえることになる、と。
16:22 ペテロはイエスをわきへ連れて行き、いさめ始めた。「主よ、とんでもない。そんなことが、あなたの身に起こるはずがありません」
16:23 でもイエスは振り向いて、ペテロに言った。「下がれ、サタン。あなたはわたしをつまずかせる者だ。あなたは神のことではなく、人のことを考えている」
16:24 それからイエスは弟子たちに言った。「わたしについて来たい人は、自分を捨て、自分の十字架を背負って、わたしについて来なさい。
16:25 自分の命を守ろうとする人は、それを失う。でも、わたしのために命を捨てる人は、それを見つける。
16:26 たとえ世界中のすべてを手に入れても、自分のいのちを失ってしまったら、何の意味があるだろう。人は自分のいのちと引き換えに、いったい何を差し出せるだろうか。
16:27 人の子は、父の栄光を帯びて、天使たちとともにやって来る。そしてそのとき、それぞれのおこないに応じて報いを与えるのだ。
16:28 よく聞いてほしい。ここに立っている人の中には、人の子が王として来るのを見るまで、決して死なない人がいる。」
17:1 六日後、イエスはペトロと、ヤコブと、その兄弟ヨハネだけを連れて、高い山に登った。
17:2 すると、彼らの目の前でイエスの姿が変わった。顔は太陽のように輝き、服は光のように白くなった。
17:3 すると、モーセとエリヤがふたりの前に現れて、イエスと語り合っていた。
17:4 ペテロがイエスに言った。「主よ、わたしたちがここにいられるのは、すばらしいことです。もしよろしければ、ここに小屋を三つ建てます。一つはあなたのため、一つはモーセのため、一つはエリヤのためです。」
17:5 イエスがまだ話しているとき、突然、輝く雲が彼らを包んだ。すると雲の中から声がした。「これはわたしの愛する子。わたしの心にかなう者だ。この子の言うことを聞きなさい」
17:6 弟子たちはこれを聞いて、うつ伏せに倒れ込み、ひどくおびえた。
17:7 イエスは近づいてきて、彼らに手を触れて言った。「起きなさい。恐れることはない」
17:8 ふと目を上げると、そこにはイエスだけがいて、ほかにはだれもいなかった。
17:9 一行が山を下りているとき、イエスは彼らに命じた。「人の子が死者の中からよみがえるまでは、いま見たことをだれにも話してはいけない。」
17:10 弟子たちはイエスに尋ねた。「では、律法の先生たちは、どうしてエリヤが先に来るはずだと言っているのですか」
17:11 イエスは答えた。「確かに、まずエリヤが来て、すべてを元どおりに整える。
17:12 でも、あなたがたに言っておく。エリヤはもう来たのだ。それなのに人々は彼だと気づかず、好き勝手に彼を扱った。人の子も同じように、彼らから苦しみを受けることになる。」
17:13 そのとき弟子たちは、イエスがバプテスマのヨハネのことを言っていたのだと分かった。
17:14 さて、彼らが群衆のところに戻ると、一人の人がイエスのそばに来て、その前にひざまずいて言った。
17:15 「主よ、わたしの息子をあわれんでください。ひどい発作に苦しんでいます。何度も火の中や水の中に倒れてしまうのです。
17:16 それで、その子をお弟子さんたちのところに連れてきました。でも、治すことができなかったんです」
17:17 イエスは答えた。「ああ、なんて信じない、ねじ曲がった世代なんだ。いつまでわたしはあなたたちと一緒にいればいいのか。いつまであなたたちに耐えればいいのか。その子をここに、わたしのところに連れてきなさい」
17:18 イエスがその子にひそんでいた悪霊をしかりつけると、悪霊は出て行った。そしてその子は、その時から治った。
17:19 それから、弟子たちはそっとイエスのところに来て、こう言った。「どうしてわたしたちには、あの霊を追い出せなかったのですか」
17:20 イエスは言われた。「あなたがたの信仰が足りないからだ。よく聞いてほしい。もしからし種一粒ほどの信仰があれば、この山に『ここからあそこへ移れ』と言えば、その通りに移る。あなたがたにできないことは何もない。
17:21 でも、こういう種類のものは、祈りと断食によらなければ出て行かない。」
17:22 彼らがガリラヤに集まっていたとき、イエスはこう言った。「人の子は人々の手に引き渡される。
17:23 そして人々はイエスを殺してしまう。でも三日目に、イエスは生き返る。」これを聞いて、弟子たちはひどく悲しんだ。
17:24 一行がカペナウムに着くと、神殿税を集める人たちがペテロのところに来て言った。「あなたたちの先生は、神殿税を納めないのですか。」
17:25 ペテロは「納めています」と答えた。そして家に入ると、イエスのほうが先に口を開いて言われた。「シモン、あなたはどう思う。この世の王たちは、だれから税や貢ぎ物を取り立てるのだろう。自分の子どもたちからか、それともよその人たちからか。」
17:26 ペテロが「よその人からです」と答えると、イエスは言われた。「では、子は納めなくてもいいわけだ。
17:27 でも、彼らをつまずかせないようにしよう。だから、湖に行って釣り針を垂らしなさい。最初に釣れた魚を取って口を開けると、銀貨が一枚見つかる。それを取り出して、わたしとあなたの分として彼らに納めなさい。」
18:1 そのとき、弟子たちがイエスのところに来て、こう尋ねた。「天の国では、いったいだれがいちばん偉いのですか」
18:2 そこでイエスは、一人の子どもを呼び寄せ、みんなの真ん中に立たせた。
18:3 「よく聞いてほしい。心を入れかえて子どものようにならなければ、天の国に入ることは決してできない。
18:4 だから、この子どものように自分を低くする人が、天の国でいちばん偉いのだ。
18:5 そして、こんな子どもの一人でも、わたしの名のもとに受け入れる人は、わたしを受け入れるのだ。
18:6 わたしを信じるこの小さな人たちの一人でも、罪へと引きずり込む者がいる。そういう人は、大きな石臼を首にかけられて深い海に沈められるほうが、まだましだ。
18:7 この世界は、人をつまずかせる誘惑があるから不幸だ。そういう誘惑は必ずやってくる。でも、それをもたらす人は不幸だ。
18:8 もし手や足のせいで罪を犯してしまうなら、それを切って捨てなさい。両手両足がそろったまま消えることのない火に投げ込まれるより、片手や片足になっても本当の命に入るほうが、ずっといい。
18:9 もし片方の目のせいで罪を犯してしまうなら、その目をえぐり出して捨ててしまいなさい。両目がそろったまま燃えさかる地獄に投げ込まれるより、片目で命に入るほうがいい。
18:10 気をつけなさい。この小さな者たちの一人でも、見下してはいけない。よく聞いてほしい。彼らを見守る天使たちは天にいて、いつも天におられるわたしの父の顔を見ているのだから。
18:11 人の子は、いなくなった人を救うために来たのだ。
18:12 あなたたちはどう思う？ある人が羊を百匹飼っていて、そのうちの一匹が迷い出てしまったとする。その人は九十九匹を山に残して、迷った一匹を捜しに行くのではないだろうか。
18:13 見つかったなら、はっきり言っておく。その人は、迷わなかった九十九匹よりも、その一匹のことをずっと喜ぶ。
18:14 そのように、この小さな者たちの一人が滅びることは、天におられるあなたがたの父の望みではない。
18:15 もし、あなたの兄弟姉妹があなたに対して罪を犯したら、行って二人だけのところで指摘しなさい。相手がそれを聞き入れてくれたら、あなたは兄弟姉妹を取り戻したことになる。
18:16 もし聞き入れないなら、ほかに一人か二人を一緒に連れて行きなさい。二人か三人の証人の証言によって、すべてのことが確認されるためだ。
18:17 もし兄弟姉妹がその人たちの言うことも聞かないなら、教会に伝えなさい。教会の言うことさえ聞かないなら、その人を、神を知らない人や取税人と同じように扱いなさい。
18:18 よく言っておく。あなたたちが地上でつなぐことは天でもつながれ、あなたたちが地上で解くことは天でも解かれる。
18:19 もう一度言っておく。あなたがたのうちの二人が、どんな願い事についても地上で心を一つにするなら、天にいるわたしの父はそれをかなえてくださる。
18:20 二人でも三人でも、わたしの名のもとに集まっているところには、わたしもその中にいるのだ。」
18:21 そのとき、ペテロがイエスのところに来て言った。「主よ、兄弟がわたしに対して罪を犯したら、何回まで赦せばいいのでしょうか。七回まででしょうか」
18:22 イエスは言った。「七回までとは言わない。七回を七十倍するまでだ。
18:23 だから、天の国はこんなふうにたとえられる。ある王が、自分の家来たちと貸し借りの清算をしようとした。
18:24 決算が始まると、一万タラントもの借金がある家来が王のところに連れて来られた。
18:25 しかし、返せるものがなかったので、主人はその男自身も、妻も子どもたちも、持っているものすべても売り払って返すように命じた。
18:26 それでこの家来はひれ伏して、「もう少し待ってください。全部お返ししますから」と必死に願った。
18:27 主人はそのしもべをかわいそうに思い、彼を解放して、借金も帳消しにしてやった。
18:28 その僕は外に出て、自分と同じ主人に仕える仲間の一人に出会った。その仲間は彼に百デナリの借りがあった。僕はその仲間をつかまえ、首をしめて「借りているものを返せ」と言った。
18:29 その仲間はひれ伏して、「もう少し待ってくれ。必ず返すから」と頼んだ。
18:30 しかしその仲間は聞き入れず、その人を引っぱって行き、借りを返すまで牢に入れてしまった。
18:31 その男の仲間の召し使いたちは、このなりゆきを見て、とても心を痛めた。そして主人のところへ行き、起きたことをすべて残らず話した。
18:32 『悪い家来だ。おまえが頼んできたから、あの借金を全部帳消しにしてやったんだ。
18:33 わたしがあなたを許してあげたように、あなたも自分の仲間を許してあげるべきではなかったのか。
18:34 主人は激しく怒った。そして、借金をすべて返し終えるまで、その男を牢役人に引き渡した。
18:35 だからあなたたち一人ひとりも、心から兄弟を赦さないなら、わたしの天の父もあなたたちに同じようになさるのだ。
19:1 イエスはこれらの話を語り終えると、ガリラヤを離れ、ヨルダン川の向こう側にあるユダヤ地方へ行った。
19:2 すると、大勢の群衆がイエスについてきた。イエスはそこで彼らを治した。
19:3 パリサイ派の人たちがイエスのところに来た。イエスをわなにかけようとして、こう質問した。「どんな理由であっても、夫が妻を離縁するのは律法で認められているのでしょうか」
19:4 イエスは答えた。「あなたたちは読んだことがないのか。創造者は初めから、人を男と女に造った。
19:5 そして、こう言われた。『だから、人は父と母を離れて妻と結ばれ、二人は一体となる』。
19:6 彼らはもう二人ではなく、一つの体だ。だから、神が結び合わせたものを、人が引き離してはならない」
19:7 「では、なぜモーセは、離縁状を渡して妻を離縁してよいと定めたのですか」
19:8 モーセは、あなたたちの心がかたくなだから、妻を離縁することを許した。でも、初めからそうだったわけではない。
19:9 そこでわたしはあなたがたに言う。妻を離縁して別の女性と結婚する者は、姦淫を犯すことになる。ただし、妻の不貞が理由の場合は別だ。そして、離縁された女性と結婚する者も、姦淫を犯すことになる。
19:10 弟子たちはイエスに言った。「夫婦の関係がそういうものなら、結婚しない方がましです。」
19:11 その言葉を受け入れられるのはすべての人ではない。それが与えられている人だけだ。
19:12 というのも、生まれつき結婚できない人もいれば、人の手で結婚できない体にされた人もいる。そして、天の国のために自分から結婚しない道を選んだ人もいる。これを受け入れられる人は、受け入れなさい。
19:13 そのとき、イエスに手を置いて祈ってもらおうと、人々が子どもたちを連れてきた。でも、弟子たちはその人たちをしかった。
19:14 「イエスはこう言った。『子どもたちを来させなさい。わたしのところに来るのを邪魔してはいけない。天の国は、こういう人たちのものなんだ』」
19:15 子供たちに手を置いてから、そこを去って行かれた。
19:16 先生、永遠の命を得るためには、どんな良いことをすればいいのでしょうか。
19:17 「なぜ、良いことについてわたしに尋ねるのか。良い方はただひとりだけだ。もし命に入りたいなら、戒めを守りなさい。」
19:18 「どの戒めですか」と男は聞いた。イエスは答えた。「『殺してはならない。不倫をしてはならない。盗んではならない。うその証言をしてはならない。
19:19 父と母を敬いなさい。そして、自分を愛するように、あなたの隣人を愛しなさい。
19:20 この青年はイエスに言った。「それはみんな守ってきました。あと何が足りないのでしょう。」
19:21 「もし完璧になりたいのなら、帰って持ち物をすべて売り、貧しい人たちに施しなさい。そうすれば、天に宝を持つことになる。それから、わたしに従って来なさい」とイエスは彼に言った。
19:22 この言葉を聞くと、青年は悲しみながら立ち去った。たくさんの財産を持っていたからだ。
19:23 「よく聞いてほしい。お金持ちが天の国に入るのは難しい」イエスは弟子たちにそう言った。
19:24 富んでいる人が神の国に入るより、らくだが針の穴を通る方が簡単だ。もう一度言っておく。
19:25 「では、いったいだれが救われるのだろう。」弟子たちはこれを聞いて、ひどく驚いてそう言った。
19:26 人にはできない。でも、神には何でもできる。
19:27 そのとき、ペテロがイエスに言った。「見てください。わたしたちは何もかも捨てて、あなたについてきました。それで、わたしたちは何がもらえるのでしょうか」
19:28 イエスは彼らに言った。「よく聞いてほしい。すべてが新しく生まれ変わるとき、人の子が栄光の座につく。そのとき、わたしについてきたあなたがたも十二の座について、イスラエルの十二の部族をさばくことになる。
19:29 すべて、わたしの名のために家や兄弟、姉妹、父、母、妻、子ども、畑を捨てた人は、その百倍を受け取り、永遠のいのちを受け継ぐことになる。
19:30 でも、多くの先の者はあとになり、あとの者は先になる。
20:1 天の国は、こんなふうに言える。ある家の主人が、自分のぶどう畑で働く人を雇うために、朝早く出かけて行った。
20:2 労働者たちと一日一デナリの約束をすると、彼らを自分のぶどう園に送った。
20:3 それから午前九時ごろ、また出かけて行った。すると、市場で何もしないで立っている別の人たちがいた。
20:4 あなたたちも、ぶどう園で働きに行ってくれ。ちゃんとそれにふさわしい分を払うから」
20:5 そこで彼らは出かけて行った。主人は昼の十二時ごろと午後三時ごろにも出て行って、同じようにした。
20:6 五時ごろにもまた出て行くと、そこにまだ立っている人たちがいた。イエスは彼らに言った。「なぜ一日中、何もしないでここに立っているのか」
20:7 『雇ってくれる人が、だれもいなかったんです』と彼らは答えた。すると主人は言った。『あなたたちも、あのぶどう園に行きなさい』
20:8 夕方になると、ぶどう園の主人は世話役に言った。「働いた人たちを呼んで、賃金を払ってやりなさい。最後に来た人から始めて、最初に来た人まで順番にね」
20:9 五時ごろに雇われた人たちが来て、それぞれ一デナリを受け取った。
20:10 最初に来た人たちは、もっともらえるだろうと思っていた。でも彼らも、一人一デナリずつだった。
20:11 もらったとき、彼らは畑の主人に文句を言い始めた。
20:12 この最後の者たちは一時間しか働かなかったのに、あなたはこの人たちを、一日じゅう汗を流し、暑さの中で重労働に耐えたわたしたちと同じ扱いにしました。
20:13 『友よ、あなたに悪いことをしているわけじゃない。わたしと一デナリで約束したよね。
20:14 「これを持って帰りなさい。わたしは最後に来たこの人にも、あなたと同じだけ払ってあげたいんだ」
20:15 自分の物を自分の思いどおりにして、何が悪いんだ？それとも、わたしが気前よくするのを見て、ねたましく思うのか」
20:16 「このように、あとの者が先になり、先の者があとになる。」
20:17 エルサレムへ上る途中、イエスは十二人の弟子だけを別に呼び寄せて、こう言った。
20:18 「いいか、わたしたちはこれからエルサレムへ上って行く。そこで人の子は祭司長たちや律法学者たちに引き渡される。彼らは人の子に死刑を宣告し、
20:19 彼をあざける者、むち打つ者、十字架につける者たちに引き渡すのだ。異邦人たちの手に。でも三日目に、彼は復活する」
20:20 そのとき、ゼベダイの息子たちの母親が、息子たちを連れてイエスのところに来た。そしてひざまずき、あることをお願いしようとした。
20:21 「何がしてほしいのか」とイエスが尋ねると、彼女は言った。「あなたが王になるとき、わたしのこの二人の息子を、一人はあなたの右に、もう一人は左にすわらせてください」
20:22 イエスは答えた。「あなたたちは、自分が何を求めているのか分かっていない。わたしがこれから飲もうとしている杯を、あなたたちは飲むことができるか。」彼らは「できます」と答えた。
20:23 「あなたたちは確かに、わたしの杯を飲むことになる。でも、わたしの右や左にすわらせることは、わたしが決めることではない。それは、わたしの父が用意してくださった人たちのものなのだ。」
20:24 十人はそれを聞いて、この二人の兄弟に腹を立てた。
20:25 そこでイエスは弟子たちを呼び寄せて言った。「知ってのとおり、この世の国々では支配者が人々を上から抑えつけ、権力者が力でその民を押さえつけている。
20:26 あなたがたの間では、そうであってはならない。あなたがたの間で偉くなりたい者は、みんなに仕える者になりなさい。
20:27 あなたがたの間で一番になりたい人は、みんなに仕える者になりなさい。
20:28 「人の子」が来たのも、仕えてもらうためではなく、仕えるため。そして多くの人の身代わりとして、自分の命を差し出すためなのだ。
20:29 エリコを出て行くとき、大勢の群衆がイエスについて来た。
20:30 すると、道ばたに二人の目の見えない人がすわっていた。彼らはイエスが通って行かれると聞いて、「主よ、ダビデの子よ、わたしたちをあわれんでください」と叫んだ。
20:31 群衆は二人を静かにさせようとして注意した。でも二人はますます大声で叫んだ。「主よ、ダビデの子よ、わたしたちをあわれんでください。」
20:32 「わたしに何をしてほしい?」
20:33 「主よ、目を開けてほしいのです」と彼らは言った。
20:34 イエスは深くあわれんで、彼らの目に触れた。すると二人はすぐに見えるようになり、イエスについて行った。
21:1 エルサレムに近づき、オリーブ山のふもとのベテパゲまで来たとき、イエスはふたりの弟子を送り出した。
21:2 「向こうの村に行きなさい。すると、ロバがつながれていて、そばに子ロバがいるのがすぐに見つかる。それをほどいて、わたしのところに引いてきなさい。
21:3 だれかに何か言われたら、「主がお入り用なのです。すぐにお返しします」と言いなさい。
21:4 これは、預言者が語ったことが実現するために起こった。その預言はこう告げている。
21:5 「シオンの娘に告げなさい。見なさい、あなたの王があなたのところに来る。その王は柔和で、ろばに乗り、荷を負うろばの子に乗って来る」
21:6 弟子たちは出て行って、イエスが命じたとおりにした。
21:7 ろばと子ろばを引いてきた。その上に自分たちの上着をかけると、イエスはそれにお乗りになった。
21:8 群衆の多くは自分の上着を道に敷いた。ほかの人たちは木の枝を切ってきて、道に敷いた。
21:9 ダビデの子に、ホサナ。主の名によって来られる方に、祝福を。いと高きところに、ホサナ。
21:10 エルサレムに入ると、町中が大騒ぎになった。人々は「これは、いったい何者なんだ」と言った。
21:11 群衆は「この人は、ガリラヤのナザレ出身の預言者イエスだ」と言った。
21:12 イエスは神殿の境内に入り、そこで売り買いをしていた人たちを、みんな追い出した。そして両替人の台や、鳩を売る者の椅子をひっくり返した。
21:13 「こう言われた。『わたしの家は、祈りの家と呼ばれる』と書いてある。それなのに、あなたたちはそこを強盗の巣にしている」
21:14 宮の境内で、目の見えない人や歩けない人がイエスのところに来た。イエスは彼らを治した。
21:15 祭司長たちや律法学者たちは、イエスがなさった数々の驚くべきことを見た。さらに、神殿の境内で「ダビデの子に、ホサナ」と叫んでいる子どもたちを見て、腹を立てた。
21:16 「あの子たちが何を言っているのか、聞こえていますか。」イエスは言った。「聞いている。あなたたちは、『幼い子どもや乳飲み子の口に、あなたは賛美を用意された』という言葉を読んだことがないのか。」
21:17 それから、イエスは彼らを残して都を出た。そしてベタニアへ行き、そこで夜を過ごした。
21:18 朝早く、イエスは町に帰る途中で空腹を覚えた。
21:19 いちじくの木が道ばたに一本あるのを見て、イエスはそこに近づいた。でも、葉っぱしかなくて、実は何もついていなかった。そこでイエスはその木に言った。「もう二度と、おまえに実がなることはない。」すると、いちじくの木はたちまち枯れてしまった。
21:20 弟子たちはこれを見て驚き、「いちじくの木は、どうしてこんなにすぐ枯れてしまったんだろう」と言った。
21:21 イエスは答えた。「はっきり言っておく。もしあなたたちに信仰があって、疑いさえしなければ、このいちじくの木に起きたことができるだけではない。この山に『動いて海に飛び込め』と言っても、そのとおりになる。
21:22 祈るとき、信じて求めるものは、何でもみな与えられる。」
21:23 イエスが神殿に入って教えていると、祭司長たちと民の長老たちがそばに来て言った。「あなたは何の権威があって、こんなことをしているのか。だれがその権威をあなたに与えたのか。」
21:24 そこでイエスは彼らに答えた。「わたしも一つだけ質問しよう。それに答えてくれたら、わたしも、何の権威でこういうことをするのか教えよう。
21:25 ヨハネのバプテスマは、どこから来たものだった。天からか、それとも人からか。」すると彼らは、こう考え合った。「もし『天からだ』と言えば、『それなら、どうしてヨハネを信じなかったのか』と言われる。
21:26 でも、「人からだ」と言えば、群衆が怖い。みんなヨハネを預言者だと思っているのだから。
21:27 そこで彼らはイエスに、「わたしたちにはわかりません」と答えた。するとイエスも言った。「では、わたしも、何の権威によってこれらのことをしているのか、あなたたちには言わない。」
21:28 「あなたたちはどう思うだろうか。ある人に息子が二人いた。父親は兄のところへ行って言った。『子よ、今日、ぶどう園へ行って働いてくれ』。
21:29 「いやだ」と答えた。でも、あとで気が変わって、出かけて行った。
21:30 弟のところにも行って、同じように言った。すると弟は「行きます」と答えたのに、実際には行かなかった。
21:31 この二人のうち、父の望みどおりにしたのはどちらか。」彼らは「兄のほうです」と答えた。イエスは彼らに言われた。「よく聞きなさい。あなたたちより先に、取税人や娼婦のほうが神の国に入る。
21:32 ヨハネがあなたたちのところに来て、正しい生き方の道を示した。それなのに、あなたたちは彼を信じなかった。でも、取税人や娼婦たちは彼を信じた。あなたたちはそれを見ても、あとになってさえ考えを改めず、彼を信じようとしなかった。
21:33 もう一つのたとえを聞いてほしい。ある家の主人がいた。彼はぶどう園を作り、まわりに垣根をめぐらせ、その中にぶどうをしぼる穴を掘り、見張りのやぐらを建てた。そしてそれを農夫たちに貸して、旅に出かけた。
21:34 収穫の時期が近づくと、その実を受け取るために、僕たちを農夫たちのところへ送った。
21:35 農夫たちはその僕たちを捕まえ、一人を袋叩きにし、もう一人を殺し、さらにもう一人を石で打ち殺した。
21:36 また、はじめよりも多くの召使いを送った。だが、農夫たちは彼らにも同じことをした。
21:37 しかし最後に、主人は自分の息子を彼らのところへ送った。「わたしの息子なら敬ってくれるだろう」と思ったのだ。
21:38 農夫たちは、その息子を見てこう言い合った。「あれは跡取りだ。さあ、殺して、あいつの財産を奪おう」
21:39 彼らは息子をつかまえ、ぶどう園の外に放り出して殺した。
21:40 このぶどう園の主人が帰ってきたら、その農夫たちをどうするだろうか」
21:41 彼らはイエスに言った。「その悪人たちを、ひどいやり方で滅ぼすはずだ。そして、ぶどう園は、季節ごとに収穫を納めてくれる別の農夫たちに貸すだろう」
21:42 イエスは彼らに言った。「あなたたちは聖書でこう読んだことがないのか。『家を建てる者たちが捨てた石、それが一番大事な礎の石になった。これは主がなさったことで、わたしたちの目には驚くべきことだ』。
21:43 だから、あなたたちに言っておく。神の国はあなたたちから取り上げられ、それにふさわしい実を結ぶ民に与えられる。
21:44 この石の上に落ちる人は粉々に砕ける。そして、この石が誰かの上に落ちれば、その人を押しつぶしてしまう」
21:45 祭司長たちやファリサイ派の人たちは、イエスのこれらのたとえ話を聞いて、自分たちのことを言っているのだと気づいた。
21:46 イエスを捕まえようとしたが、群衆を恐れた。人々がイエスを預言者だと思っていたからだ。
22:1 イエスはまた、たとえを使って彼らに語りかけた。
22:2 天の国は、ある王にたとえられる。王は自分の息子のために結婚式の祝宴を催した。
22:3 王は召使いたちを送って、宴会に招いておいた人たちを呼ばせた。でも、その人たちは来ようとしなかった。
22:4 王はまた別の家来たちを送って、こう言った。「招いた人たちに伝えなさい。『準備はできました。牛も肥えた家畜もほふって、何もかも整いました。さあ、婚礼の宴に来てください』と。」
22:5 でも、招待された人たちは気にも留めず、それぞれ出かけて行った。ひとりは自分の畑へ、もうひとりは自分の商売へと。
22:6 残りの人たちは、その家来たちを捕まえて、ひどい仕打ちをしたあげく、殺してしまった。
22:7 そこで王は激しく怒った。軍隊を送ってその人殺したちを滅ぼし、彼らの町を焼き払った。
22:8 それから王は僕たちに言った。「宴会の準備はできている。でも、招いていた人たちは、それにふさわしくなかった。
22:9 だから、大通りに出て行って、出会った人はだれでも婚礼の宴に招きなさい。」
22:10 それで、僕たちは通りに出て行って、出会った人を善い人も悪い人もみんな集めてきた。こうして、披露宴の会場は客でいっぱいになった。
22:11 王は客たちの様子を見ようと入ってきた。すると、そこに婚礼の礼服を着ていない人がいるのに気づいた。
22:12 王はその人に言った。「友よ、どうして礼服を着ないで、ここに入ってきたのか。」その人は何も言えなかった。
22:13 すると、王は召使いたちに言った。「この男の手と足を縛って、外の暗やみに放り出せ。そこで人々は泣きわめき、歯ぎしりすることになる。」
22:14 招かれる人は多いが、選ばれる人は少ない。
22:15 そのとき、パリサイ派の人たちが集まって、どうやってイエスを言葉のわなにかけようかと相談した。
22:16 そして、彼らは自分の弟子をヘロデ党の者たちといっしょにイエスのところに送り、こう言わせた。「先生、わたしたちは知っています。あなたは真実な方で、神の道を真理に基づいて教えておられます。だれの顔色もうかがわず、人を分け隔てなさいません。
22:17 だから教えてください。あなたはどう思いますか。ローマ皇帝に税金を納めるのは正しいことですか、それともいけないことですか」
22:18 イエスは彼らの悪意を見抜いて言った。「偽善者たち、どうしてわたしを試すようなことをするのか。
22:19 税に納めるお金を見せてほしい。」すると彼らはデナリ銀貨を一枚持ってきた。
22:20 「これは、だれの顔で、だれの名前だ」
22:21 「皇帝のものです」と彼らは答えた。するとイエスは言った。「では、皇帝のものは皇帝に、神のものは神に返しなさい」
22:22 彼らはこれを聞いて驚いた。そしてイエスを残して立ち去った。
22:23 その日、復活などないと主張していたサドカイ派の人たちがイエスのところに来て、こう質問した。
22:24 「先生、モーセはこう言いました。『もし、ある人が子どものないまま死んだら、その弟は兄の妻と結婚して、兄のために子孫を残さなければならない』。
22:25 わたしたちのところに、七人の兄弟がいました。長男は結婚しましたが、子どもができないまま亡くなり、妻を弟に残しました。
22:26 次男も三男も、七人目まで同じことになった。
22:27 最後に、その女も死んだ。
22:28 では復活のとき、彼女は七人のうちだれの妻になるのでしょうか。みんなが彼女を妻にしたのですから」
22:29 イエスは答えて言われた。「あなたたちは聖書も神の力も知らない。だから思い違いをしているのだ。
22:30 復活のとき、人々は結婚もしないし、結婚させられることもない。天にいる神の使いのような存在になるのだ。
22:31 死者の復活については、神があなたたちに語られた言葉を、あなたたちは読んだことがないのか。
22:32 わたしはアブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神である』神は死んだ者の神ではなく、生きている者の神なのだ」
22:33 群衆はこれを聞いて、イエスの教えに驚いた。
22:34 さて、パリサイ派の人たちは、イエスがサドカイ派の人たちを黙らせたと聞いて、一緒に集まった。
22:35 そのうちの一人、律法の専門家が、イエスをためそうとして質問した。
22:36 「先生、律法の中でいちばん大切な戒めはどれですか」
22:37 イエスは言われた。「『心を尽くし、いのちを尽くし、思いを尽くして、あなたの神である主を愛しなさい。』
22:38 これがいちばん大切な、第一の戒めだ。
22:39 二つ目もそれと同じくらい大切だ。「自分を愛するように、あなたのとなりの人を愛しなさい。」
22:40 この二つの戒めに、律法と預言者の教え全体がかかっている。
22:41 パリサイ派の人たちが集まっていたとき、イエスは彼らに尋ねた。
22:42 「あなたたちは、キリストのことをどう思う。だれの子だろうか。」彼らは「ダビデの子です」と答えた。
22:43 イエスは言われた。「では、どうしてダビデは聖霊に導かれてキリストを主と呼んでいるのだろうか。彼はこう言っている。
22:44 主はわたしの主に言われた。「あなたの敵をあなたの足もとに従わせるまで、わたしの右に座っていなさい」
22:45 だから、ダビデがキリストを主と呼んでいるのなら、どうしてキリストがダビデの子でありうるのだろうか。」
22:46 だれもイエスに一言も答えられなかった。そしてその日以来、もうだれも、あえてイエスに質問しようとはしなくなった。
23:1 そのとき、イエスは群衆と弟子たちに語りかけた。
23:2 律法の専門家やファリサイ派の人たちは、モーセの後を継ぐ教師の立場にある。イエスはこう言った。
23:3 だから、彼らがあなたたちに言うことは、すべて守って実行しなさい。でも、彼らのすることをまねてはいけない。彼らは口で言うだけで、自分では実行しないからだ。
23:4 重い荷物をまとめて人々の肩にのせる。でも、それを動かすのに自分は指一本さえ貸そうとしない。
23:5 彼らがすることは、どれも人に見せるためのものだ。聖句を入れた小箱を大きくしたり、衣のふさを長くしたりする。
23:6 宴会では上座、会堂では上席に座るのが大好きだ。
23:7 広場であいさつされることや、人々から「先生」と呼ばれることが大好きなのだ。
23:8 でも、あなたたちは「先生」と呼ばれてはいけない。あなたたちの先生はただひとりだけで、あなたたちはみな兄弟姉妹なのだから。
23:9 また、地上のだれのことも「父」と呼んではいけない。あなたがたの父はただひとり、天にいる父だけだからだ。
23:10 また、「先生」と呼ばれてもいけない。あなたがたの先生はただひとり、キリストだからだ。
23:11 だが、あなたたちの中でいちばん偉い者は、みんなに仕える者になりなさい。
23:12 だれでも自分を高くする者は低くされ、自分を低くする者は高くされる。
23:13 偽善な律法学者、ファリサイ派の人たち。あなたたちは不幸だ。人々の前で天の国を閉ざしているからだ。自分も入らないし、入ろうとしている人たちも入らせない。
23:14 偽善者である律法学者とパリサイ派の人たち、あなたたちはなんて不幸なんだ。あなたたちは夫を亡くした女性たちの家を食い物にしておきながら、見せかけのために長い祈りをする。だから、もっと重い裁きを受けることになる。
23:15 律法学者とパリサイ派の人たち、あなたたち偽善者は不幸だ。あなたたちは一人の改宗者をつくるために、海を越え陸を巡り歩く。そして改宗者ができると、その人を自分たちより二倍もひどい地獄の子にしてしまう。
23:16 「案内する目が見えない人たち、あなたたちは不幸だ。あなたたちはこう言う。『神殿にかけて誓っても、それは無効だ。でも神殿の金にかけて誓ったなら、それは守らなければならない』と。
23:17 愚か者、盲目な者たち。金と、その金を神聖なものにする神殿と、どちらが大事なのか。
23:18 祭壇にかけて誓うなら、それは無効だ。でも、その上のささげ物にかけて誓うなら、それは果たさなければならない』と言う。
23:19 盲目な人たちよ。供え物と、その供え物を神聖なものにする祭壇と、どちらが大事なのか。
23:20 だから、祭壇にかけて誓う人は、祭壇と、その上にあるすべてのものにかけて誓っているのだ。
23:21 神殿にかけて誓う人は、神殿と、そこに住んでおられる方にかけて誓っているのだ。
23:22 そして、天にかけて誓う人は、神の王座と、そこに座っておられる方にかけて誓っているのだ。
23:23 偽善な律法学者、ファリサイ派の人たち。あなたたちはひどい目にあう。あなたたちはミント、いのんど、クミンといった香草まできっちり十分の一を納めている。それなのに、律法の中でもっと大切なこと、つまり正義とあわれみと信仰はほったらかしにしている。十分の一を納めるのもいい。でも、そっちこそおろそかにしてはいけなかったんだ。
23:24 盲目な案内人よ。あなたたちは小さな虫は濾して取り除くのに、らくだは丸ごとのみ込んでいる。
23:25 律法学者とパリサイ人たち、偽善者のあなたたちは不幸だ。あなたたちはコップや皿の外側はきれいにする。でも内側は、人から奪い取った物と欲望でいっぱいだ。
23:26 目の見えないパリサイ人よ。まず杯の内側をきれいにしなさい。そうすれば、外側もきれいになる。
23:27 偽善者の律法学者、ファリサイ派の人たち、あなたたちはひどい目にあう。あなたたちは白く塗った墓みたいだ。外側はきれいに見えるけど、中は死んだ人の骨や、あらゆる汚れたものでいっぱいだ。
23:28 それと同じで、あなたたちも外側は人に正しく見えるけれど、内側は偽善と不法でいっぱいなのだ。
23:29 偽善な律法学者、ファリサイ派の人たち、あなたたちは不幸だ。あなたたちは預言者の墓を建て、正しい人たちの記念碑を飾り立てている。
23:30 『もしわたしたちが先祖の時代に生きていたら、預言者たちを殺すことに加わったりはしなかったのに』と。
23:31 だから、あなたたちは預言者を殺した者の子孫だと、自分で認めているようなものだ。
23:32 あなたたちも、先祖が始めたことをやり遂げて、その悪の枡を満たすがいい。
23:33 蛇よ、まむしの子らよ。おまえたちは、どうやって地獄の裁きから逃げられるというのか。
23:34 だから、わたしはあなたたちのところに預言者や知恵ある人たち、教師たちを送る。その中のある者を、あなたたちは殺し、十字架につけるだろう。またある者を、自分たちの会堂でむち打ち、町から町へと追い回すだろう。
23:35 それは、正しかったアベルの血から、あなたたちが聖所と祭壇の間で殺したバラキヤの子ザカリヤの血まで、この地上で流されたすべての正しい人の血の責任が、あなたたちに降りかかるためだ。
23:36 よく言っておく。これらのことの報いは、すべて今の時代の人たちに降りかかる。
23:37 エルサレム、エルサレム。預言者たちを殺し、あなたのもとに送られた人たちを石で打ち殺す町よ。めんどりが翼の下にひなを集めるように、わたしは何度あなたの子どもたちを集めようとしたことか。それなのに、あなたたちはそれを拒んだ。
23:38 見よ、おまえたちの家は見捨てられ、荒れ果てる。
23:39 よく言っておく。あなたたちは、「主の名によって来られる方に、祝福があるように」と言う時が来るまで、これからもう二度とわたしを見ることはない。
24:1 イエスは宮を出て歩いていた。すると弟子たちが近寄ってきて、宮の建物を指し示した。
24:2 イエスは弟子たちに答えた。「これらの建物がみんな見えるだろう。よく聞いてほしい。石一つでも崩されずに、そのまま積み上がったまま残ることはない。すべて崩れてしまう。」
24:3 イエスがオリーブ山にすわっていると、弟子たちがそっとそばに来て言った。「教えてください。そういうことは、いつ起こるんですか。そして、あなたがまた来られるときや、世界の終わりには、どんなしるしがあるんですか」
24:4 イエスは彼らに答えて言った。「だれにもだまされないように気をつけなさい。
24:5 多くの人がわたしの名を名乗って現れる。「わたしはキリストだ」と言って、大勢の人をだますだろう。
24:6 これから戦争のことや、戦争のうわさを聞くだろう。でも、あわてないように気をつけなさい。そういうことは必ず起こる。でも、それがまだ終わりというわけではない。
24:7 民は民に、国は国に敵対して立ち上がる。あちこちで飢きんが起こり、地震が起こる。
24:8 でも、これらはすべて、産みの苦しみの始まりにすぎない。
24:9 そのとき人々は、あなたがたを苦しみに引き渡し、殺すだろう。あなたがたは、わたしの名のせいで、すべての国の人々に憎まれる。
24:10 そのとき、多くの人が信仰につまずく。そして、たがいに裏切り、憎み合うようになる。
24:11 また、多くのにせ預言者が現れて、多くの人をだますようになる。
24:12 また、不法がはびこるために、多くの人の愛が冷えていく。
24:13 でも、最後まで耐え抜く人は救われる。
24:14 この御国の福音は、すべての民族への証しとして、世界中に宣べ伝えられる。それから、終わりが来る。
24:15 預言者ダニエルが語った、「荒らす忌まわしいもの」が、神聖な場所に立っているのを見たら――読者はよく考えてほしい――
24:16 そのとき、ユダヤにいる人たちは山へ逃げなさい。
24:17 屋上にいる人は、家から物を取り出そうとして下におりてはいけない。
24:18 畑にいる人は、上着を取りに戻ってはいけない。
24:19 その日には、妊娠している女の人や、赤ちゃんに乳を飲ませている女の人は、本当につらい思いをする。
24:20 逃げるのが冬や安息日にならないように祈りなさい。
24:21 そのとき、世界の始まりから今まで一度もなかったような、そしてこの先も決して起こらないような、大きな苦しみが襲うからだ。
24:22 もしその日数が縮められなかったら、生き残る人は一人もいないだろう。でも、選ばれた人たちのために、その日数は縮められる。
24:23 そのとき、だれかがあなたたちに『見て、キリストはここにいる』とか『あそこにいる』と言っても、信じてはいけない。
24:24 偽キリストや偽預言者が現れて、大きなしるしや不思議なわざを行う。できるなら神に選ばれた人たちさえもだまそうとする。
24:25 見なさい。前もって言っておく。
24:26 だから、たとえ人々が「見て、あの人は荒れ野にいる」と言っても、出て行ってはいけない。「見て、あの人は奥の部屋にいる」と言っても、信じてはいけない。
24:27 いなずまが東から西へと空を走りぬけるように、人の子が現れるときもそうなる。
24:28 死体のあるところには、はげ鷹が集まる。
24:29 その日の苦しみの後、すぐに太陽は暗くなり、月は光を放たなくなる。星は空から落ち、天空の力は揺り動かされる。
24:30 そのとき、人の子のしるしが空に現れる。地上のすべての民族は嘆き悲しみ、人の子が大きな力と栄光に包まれ、天の雲に乗って来るのを見るのだ。
24:31 天使たちを送り出す。大きなラッパの音とともに。そして、選ばれた人たちを世界中から集める。天のはてからはてまで、四方から。
24:32 いちじくの木から、このたとえを学んでほしい。枝が柔らかくなって葉が出てくると、夏が近いことがわかる。
24:33 そのように、あなたたちも、これらのことがすべて起こるのを見たら、人の子がすぐそこ、戸口まで来ていると知りなさい。
24:34 よく聞いてほしい。これらのことが全部起こるまで、今の時代の人々が滅びてしまうことは決してない。
24:35 天と地は消えてなくなる。でも、わたしの言葉が消えることは決してない。
24:36 その日、その時のことは、だれも知らない。天にいる天使たちも知らないし、子も知らない。ただ父だけが知っている。
24:37 ノアの時代がそうだったように、人の子が来るときもそれと同じだ。
24:38 洪水が起こる前のこと。ノアが箱舟に入るその日まで、人々は食べたり飲んだり、結婚したり嫁がせたりしていた。
24:39 洪水が襲ってきて、みんなをさらっていくまで、彼らは何も気づかなかった。人の子が来るときも、同じようになる。
24:40 そのとき、二人の人が畑にいると、一人は連れて行かれ、もう一人は残される。
24:41 ふたりの女が臼をひいていると、ひとりは連れて行かれ、ひとりは残される。
24:42 だから、目を覚ましていなさい。あなたたちの主がいつ来るのか、あなたたちには分からないのだから。
24:43 あなたたちに言っておく。もし家の主人が、どろぼうが夜のいつ来るかを知っていたら、ずっと見張っていて、家に押し入られるようなことはさせなかったはずだ。
24:44 だから、あなたがたも用意をしておきなさい。人の子は、思いがけない時にやって来るのだから。
24:45 主人が家の使用人たちを任せて、決まった時間に食事を出す仕事をさせるとしたら、その主人に忠実で賢い使用人とは、いったいだれだろう。
24:46 主人が帰ってきたとき、そんなふうに働いているのを見てもらえるなら、その召使いは幸いである。
24:47 本当のことを言う。主人はそのしもべに、自分の全財産の管理を任せることになる。
24:48 もし、その悪い僕が「主人の帰りは遅い」と心の中で思い、
24:49 仲間の召使いたちをたたきはじめ、酒飲みたちと一緒に飲み食いしていたら、
24:50 その僕の主人は、思いがけない日、気づかない時に帰ってくる。
24:51 彼を厳しく罰し、うわべだけの者たちと同じ扱いをする。人々はそこで泣き叫び、歯ぎしりをすることになる。
25:1 そのとき、天の国はこんなふうにたとえられる。十人の娘がそれぞれ自分のともし火を手に取って、花婿を迎えに出かけて行った。
25:2 そのうち五人は愚かで、五人は賢かった。
25:3 思慮の浅い者たちは、あかりは持っていたが、その火をともし続けるための油を用意していなかった。
25:4 でも、賢い娘たちは、自分のあかりと一緒に、入れものに油も入れて持って行った。
25:5 花婿がなかなか来なかったので、彼女たちはみんな眠気がさして、寝入ってしまった。
25:6 真夜中に、「花婿が来た。迎えに出なさい」と叫ぶ声がした。
25:7 そのとき、おとめたちはみな起き上がって、それぞれ自分のあかりを整えた。
25:8 でも、油断していた女たちは、賢い女たちに言った。「あなたたちの油を少し分けて。わたしたちのあかりが消えそうなの」
25:9 でも、賢い娘たちはこう答えた。「わたしたちとあなたたちの分を合わせたら、きっと足りなくなる。それより、お店に行って自分の分を買ってきたら。」
25:10 彼女たちが買いに行っている間に、花婿が到着した。準備のできていた娘たちは、花婿と一緒に婚宴の会場に入り、戸が閉められた。
25:11 でも、そのあとで残りの娘たちもやってきて、こう言った。「ご主人様、ご主人様、開けてください」
25:12 でも彼はこう答えた。「はっきり言っておく。わたしはあなたたちを知らない。」
25:13 だから、目を覚ましていなさい。その日、その時がいつなのか、あなたたちにはわからないのだから。
25:14 天の国は、こんなふうにたとえられる。旅に出ようとしている人が、自分の使用人たちを呼んで、財産を預けた。
25:15 それぞれの力に応じて、一人には五タラント、もう一人には二タラント、もう一人には一タラントを渡して、すぐに旅に出た。
25:16 五タラントを預かった人は、すぐに出かけてそのお金で商売をし、さらに五タラントをもうけた。
25:17 二タラント預かった人も同じように、それを増やして倍の四タラントにした。
25:18 でも、一タラントを預かった人は、出かけて行って地面を掘り、主人のお金をそこに隠した。
25:19 だいぶ時間がたってから、そのしもべたちの主人が帰ってきた。そして、彼らと清算を始めた。
25:20 すると、五タラントを預かった人が進み出て、さらに五タラントを差し出して言った。「ご主人様、あなたはわたしに五タラントを預けてくださいました。ご覧ください、ほかに五タラントをもうけました」
25:21 主人は言った。「よくやった。いい働きをする、信頼できる部下だ。少しのことに忠実だったから、これからは多くのことを任せよう。さあ、わたしと一緒に喜びを分かち合おう」
25:22 二タラント預かった人も進み出て言った。「ご主人様、あなたはわたしに二タラント預けてくれました。ご覧ください、それをもとに、さらに二タラントもうけました」
25:23 主人は言った。「よくやった。いい働きをする、信頼できる部下だ。少しのことに忠実だったから、これからは多くのことを任せよう。さあ、わたしと一緒に喜びを分かち合おう」
25:24 そして、一タラントを預かった者も進み出て言った。「ご主人様、あなたが厳しい人だということは分かっていました。種をまいていない所で刈り取り、散らしていない所からかき集める方だと。
25:25 それで、こわくなって、いただいたお金を地面に埋めて隠しておきました。どうぞ、これがあなたのお金です。」
25:26 主人は答えた。「怠け者の悪い僕だ。わたしがまいていない所で刈り取り、散らしていない所からかき集めることを知っていたのか。
25:27 だから、わたしのお金を銀行に預けておくべきだったんだ。そうすれば、わたしが帰ってきたとき、利子までつけて返してもらえたのに。
25:28 だから、そのお金をこの人から取り上げて、十タラント持っている人に渡しなさい。
25:29 持っている人はさらに与えられて、あり余るほど豊かになる。でも、持っていない人は、その持っているものまで取り上げられる。
25:30 この役に立たない召使いを外の暗闇に放り出せ。そこで泣き叫び、歯ぎしりすることになる」
25:31 人の子が栄光に包まれて、すべての天使を従えてやって来る。そのとき、人の子は栄光の王座に座る。
25:32 すべての国民がイエスの前に集められる。そしてイエスは、羊飼いが羊とヤギを分けるように、人々を二つに分ける。
25:33 羊を自分の右に、やぎを左に置く。
25:34 そのとき、王は右側にいる人たちにこう言う。『さあ、わたしの父に祝福された人たち。世界が始まったときからあなたたちのために用意されてきた御国を、受け継ぎなさい。
25:35 わたしが空腹だったとき、あなたたちは食べさせてくれた。のどが渇いていたとき、飲ませてくれた。旅の途中で行き場がなかったとき、迎え入れてくれた。
25:36 裸のときには服を着せてくれた。病気のときには見舞いに来てくれた。牢屋にいたときには訪ねてきてくれた。』
25:37 そのとき、正しい人たちはこう答える。『主よ、いつわたしたちは、あなたがお腹を空かせているのを見て食べさせ、のどが渇いているのを見て飲ませたでしょうか。
25:38 旅人でいるあなたを見て家に泊め、裸でいるあなたを見て服を着せたなんて、いつのことでしょう。
25:39 それに、いつあなたが病気をしていたり、牢屋にいるのを見て、会いに行ったでしょうか』。
25:40 そして、王は答える。「本当に言っておく。あなたたちがわたしの兄弟である、この最も小さい人たちのひとりにしたことは、わたしにしてくれたことなのだ。」
25:41 それから、王は左側にいる人たちにも言う。『わたしから離れなさい。神にのろわれた者たち。悪魔とその手下のために用意された、消えることのない火の中へ行きなさい。
25:42 わたしが空腹だったとき、あなたたちは食べさせてくれなかった。のどが渇いていたとき、飲ませてくれなかった。
25:43 旅人だったときに、宿を貸してくれなかった。裸だったときに、服を着せてくれなかった。病気のときや、牢屋にいたときも、見に来てくれなかった』。
25:44 そのとき、彼らもこう答える。「主よ、いつわたしたちは、あなたが空腹だったり、のどが渇いていたり、旅の途中だったり、服がなかったり、病気だったり、牢屋にいたりするのを見て、何もお世話をしなかったのでしょうか。」
25:45 そのとき、王は答える。「はっきり言っておく。この最も小さい人たちのひとりにしなかったことは、わたしにしなかったのと同じだ。」
25:46 そして彼らは永遠の罰を受け、正しい人たちは永遠のいのちに入る。」
26:1 イエスはこれらの言葉をすべて語り終えると、弟子たちに言った。
26:2 あなたがたも知っているとおり、二日後には過越の祭りが始まる。そして人の子は、十字架につけられるために引き渡される。
26:3 そのとき、祭司長たちや民の長老たちが、カヤパという大祭司の家の中庭に集まった。
26:4 そして、策略を使ってイエスを捕まえて殺そうと相談した。
26:5 しかし、彼らはこう言った。「祭りの間はやめておこう。民衆の中で暴動が起きるといけないから」
26:6 イエスがベタニアで、以前ハンセン病だったシモンの家にいたときのことだ。
26:7 ひとりの女性が、とても高価な香油の入った石膏のつぼを持って、イエスに近づいた。そして、食事の席についていたイエスの頭に、その香油を注いだ。
26:8 それを見た弟子たちは腹を立てて言った。「どうしてこんな無駄なことを。
26:9 それを高く売って、そのお金を貧しい人たちに分けることができたのに」
26:10 イエスはそれに気づいて言った。「なぜこの人を困らせるのか。この人はわたしにいいことをしてくれたんだ。
26:11 貧しい人たちは、いつもあなたたちのそばにいる。でも、わたしはいつも一緒にいるわけじゃない。
26:12 この人がわたしの体にこの香油を注いだのは、わたしを葬る準備をするためなんだ。
26:13 はっきり言っておく。世界中どこでも、この良い知らせが伝えられる場所では、この人がしたことも語り継がれ、いつまでも忘れられないだろう」
26:14 そのとき、十二人の弟子の一人で、イスカリオテのユダと呼ばれる者が、祭司長たちのところへ行った。
26:15 こう言った。「あの男をあなたたちに引き渡したら、いくらもらえますか。」すると彼らは、銀貨三十枚を数えて渡した。
26:16 その時から、ユダはイエスを引きわたす機会をうかがっていた。
26:17 除酵祭の最初の日、弟子たちがイエスのところに来て言った。「過越の食事の準備をしたいのですが、どこでしたらいいですか」
26:18 イエスはこう答えた。「町に入って、あの人のところへ行き、こう伝えなさい。『先生がこう言っています。わたしの時が近づいた。あなたの家で、弟子たちと一緒に過越の食事をしたい』」
26:19 弟子たちはイエスに言われたとおりにして、過越の食事の準備をした。
26:20 夕方になると、イエスは十二人の弟子と食事の席に着いた。
26:21 食事をしているとき、イエスは言った。「はっきり言っておく。あなたたちの中の一人が、わたしを裏切ろうとしている。」
26:22 弟子たちはひどく悲しくなって、一人ひとり「主よ、まさかわたしのことでは」とイエスに言いはじめた。
26:23 わたしと一緒に鉢に手を入れている者、それがわたしを裏切る。
26:24 たしかに、人の子は聖書に書いてあるとおりに去っていく。でも、人の子を裏切るその人は、不幸だ。その人は、生まれてこなかったほうがよかった。
26:25 それを裏切ろうとしていたユダが答えて言った。「先生、まさか、わたしではないでしょう。」イエスは言われた。「いや、あなただ。」
26:26 一同が食事をしているとき、イエスはパンを取り、神に感謝の祈りをささげてからそれを裂いた。そして弟子たちに分け与えて言った。「取って食べなさい。これはわたしのからだだ。」
26:27 また、杯を取って感謝の祈りをささげ、弟子たちに渡してこう言った。「みんな、この杯から飲みなさい。
26:28 これは、多くの人の罪がゆるされるために流される、わたしの血。神との約束を結ぶ血だ。
26:29 はっきり言っておく。わたしは今からもう、このぶどうから造ったものを飲むことはない。わたしの父の国であなたたちといっしょに、新しく飲むその日まではね。」
26:30 賛美の歌を歌ってから、みんなでオリーブ山へ出かけた。
26:31 そのとき、イエスは弟子たちに言った。「今夜、あなたたちは皆わたしにつまずく。こう書いてあるからだ。『わたしは羊飼いを打つ。すると、羊の群れは散り散りになる。』
26:32 でも、わたしは復活したあと、あなたたちより先にガリラヤへ行く。」
26:33 でもペテロはイエスに言った。「たとえほかのみんながあなたのことでつまずいても、わたしは絶対につまずきません。」
26:34 イエスは彼に言われた。「よく聞いてほしい。今夜、鶏が鳴く前に、あなたは三度わたしを知らないと言う」
26:35 ペテロは言った。「たとえあなたと一緒に死ぬことになっても、あなたなんて知らないなんて、決して言いません。」ほかの弟子たちもみな、同じように言った。
26:36 ゲツセマネという場所に着いた。それからイエスは弟子たちに言った。「わたしが向こうへ行って祈っている間、ここにすわっていなさい。」
26:37 ペテロとゼベダイの二人の息子を連れて行った。そのとき、イエスは深く悲しみ、もだえ始めた。
26:38 そのとき、イエスは彼らに言った。「わたしは、死ぬほど深く悲しんでいる。ここにいて、わたしといっしょに目を覚ましていてほしい」
26:39 イエスは少し進んで行き、地面にひれ伏して祈った。「父よ、できることなら、この杯をわたしから取り去ってください。でも、わたしの思いどおりにではなく、あなたの思いどおりにしてください」
26:40 それからイエスは弟子たちのところに戻ってきた。すると、彼らは眠っていた。イエスはペテロに言った。「あなたたちは、ほんの一時間もわたしと一緒に起きていられなかったのか。
26:41 誘惑に負けないように、目を覚まして祈っていなさい。心では強く願っていても、体は弱いものだ。」
26:42 また二度目に行って、こう祈った。「父よ、この杯を、わたしが飲むしかないのなら、どうかあなたの望みどおりになりますように。」
26:43 またイエスが戻ってみると、弟子たちは眠っていた。まぶたが重くなっていたのだ。
26:44 それでイエスは弟子たちをそのままにして、また離れて行き、三度目も同じ言葉で祈った。
26:45 そのあと、イエスは弟子たちのところに戻って言った。「まだ眠っているのか。休んでいるのか。見なさい、その時が来た。人の子は罪人たちの手に引き渡される。
26:46 立て、行こう。見ろ、わたしを裏切る者が来た。」
26:47 そしてイエスがまだ話しているとき、十二弟子の一人であるユダがやって来た。祭司長たちや民の長老たちに送られた大勢の群衆も、剣や棒を手にして一緒についてきた。
26:48 裏切ろうとしていた者は、彼らに合図を決めていた。「わたしが口づけするのが、その人だ。その人を捕まえろ」と。
26:49 そしてすぐにイエスに近寄り、「先生、こんばんは」と言って、イエスに口づけした。
26:50 イエスは彼に言った。「友よ、何をしに来たのか。」すると人々が進み出て、イエスに手をかけて捕らえた。
26:51 すると、イエスと一緒にいた人のひとりが、手を伸ばして剣を抜いた。そして大祭司の家来に切りかかり、その片方の耳を切り落とした。
26:52 剣をもとの場所に納めなさい。剣を取る者はみな、剣で滅びるのだから。
26:53 それとも、わたしが父に願えば、父はすぐに十二軍団以上もの天使を送ってくださる。それができないと思っているのか。
26:54 でも、そうなったら「こうならなければならない」と書いてある聖書の言葉は、どうやって実現するのだろう」
26:55 そのとき、イエスは群衆に言った。「あなたたちは強盗を捕まえるみたいに、剣や棒を持ってわたしを捕まえに来たのか。わたしは毎日、神殿に座って教えていた。それなのに、あなたたちはわたしを捕まえなかった。
26:56 これはすべて、預言者たちが書いたことが実現するために起こったのだ。」そのとき、弟子たちはみなイエスを見捨てて逃げ去った。
26:57 さて、イエスを捕らえた者たちは、大祭司カヤパのところにイエスを連れて行った。そこには律法学者や長老たちが集まっていた。
26:58 ペテロは遠くからイエスのあとをついて行き、大祭司の家の中庭まで来た。そして中に入り、成り行きを見届けようと、警備の者たちと一緒に座っていた。
26:59 祭司長たちと最高法院の全員は、イエスを死刑にするために、イエスに不利な偽りの証言を探していた。
26:60 だが、偽りの証言をする者が大勢出てきたのに、証拠はつかめなかった。最後に二人の者が進み出て
26:61 こう証言した。「この男は、『わたしは神の神殿を壊して、三日で建て直すことができる』と言いました」
26:62 そこで大祭司が立ち上がって、イエスに言った。「何も答えないのか。この人たちがおまえに不利な証言をしているが、どうなんだ。」
26:63 イエスは黙ったままだった。すると大祭司はイエスに言った。「生きておられる神に誓って、はっきり答えろ。おまえは神の子キリストなのか」
26:64 イエスは言った。「あなたの言うとおりだ。だが、あなたたちに言っておく。これからあなたたちは、人の子が力ある方の右に座り、天の雲に乗って来るのを見ることになる。」
26:65 そのとき、大祭司は自分の服を引き裂いてこう言った。「こいつは神を冒とくした。もう証人なんて必要ない。あなたたちも今、この冒とくの言葉を聞いただろう。
26:66 あなたたちの考えはどうか。」すると彼らは答えた。「この男は死刑に当たる。」
26:67 それから、彼らはイエスの顔につばを吐きかけ、こぶしで殴った。手のひらでたたく者もいて、
26:68 「言い当ててみろ、キリスト。おまえを殴ったのは誰だ」
26:69 ペテロは外の中庭にすわっていた。すると、一人の女中が近づいてきて言った。「あなたも、あのガリラヤ人イエスと一緒だったでしょう。」
26:70 ペテロはみんなの前でそれを打ち消した。「何を言っているのか、わからない」と。
26:71 そう言って門の方へ出て行くと、別の女中が彼を見て、そこにいる人たちに言った。「この人はナザレのイエスと一緒にいた」
26:72 それでペテロはまた否定し、誓ってこう言った。「そんな人は知らない。」
26:73 しばらくして、そばに立っていた人たちがペテロに近づいてきて言った。「確かに、あなたも彼らの仲間だ。言葉づかいでそれがわかる」
26:74 ペテロは「そんな人は知らない」と言って、激しく呪いの言葉を口にし、誓いはじめた。するとすぐ、鶏が鳴いた。
26:75 ペテロは、イエスが「鶏が鳴く前に、あなたは三度わたしを知らないと言う」と言われた言葉を思い出した。そして外に出て、激しく泣いた。
27:1 夜が明けると、祭司長たちと民の長老たちは全員で集まり、イエスを殺すための相談をした。
27:2 イエスを縛って引いていき、総督ピラトに引き渡した。
27:3 そのとき、イエスを裏切ったユダは、イエスに有罪の判決が下ったのを見て後悔した。そして銀貨三十枚を祭司長たちや長老たちに返そうとして、
27:4 「わたしは罪を犯した。罪のない人を売って、死に追いやってしまった。」でも彼らは言った。「それがわたしたちに何の関係がある。自分でなんとかしろ。」
27:5 それで、彼はその銀貨を聖所に投げ込んで立ち去り、首をつって死んだ。
27:6 祭司長たちはその銀貨を拾い上げて言った。「これは血の代金だから、神殿の献金箱に入れるわけにはいかない」
27:7 そこで彼らは相談して、その金で陶器職人の畑を買い、外国人のための墓地にした。
27:8 だから、この畑は今も「血の畑」と呼ばれている。
27:9 そのとき、預言者エレミヤが語った言葉が実現した。「彼らは銀貨三十枚を受け取った。それは、イスラエルの人々が値をつけた、あの値をつけられた人の代金だ。
27:10 主が命じられたとおり、それを陶器職人の畑を買うために使った。」
27:11 さて、イエスは総督の前に立った。総督はイエスに「おまえがユダヤ人の王なのか」と尋ねた。イエスは「そのとおりだ」と答えた。
27:12 祭司長や長老たちから訴えられている間、イエスは何もお答えにならなかった。
27:13 すると、ピラトはイエスに言った。「これだけ多くのことであなたを訴えているのが、あなたには聞こえないのか。」
27:14 でも、イエスはどんな問いにも一言も答えなかった。それには総督もひどく驚いた。
27:15 祭りのたびに、総督は群衆が望む囚人を一人、釈放するのが習わしだった。
27:16 ときに、バラバと呼ばれる評判の囚人がいた。
27:17 それで、彼らが集まると、ピラトは言った。「おまえたちは、どちらを釈放してほしいのか。バラバ・イエスか、それとも、キリストと呼ばれるイエスか」
27:18 ピラトには、人々がねたみからイエスを引きわたしたことが、よくわかっていたのだ。
27:19 ピラトが裁判の席に着いていたとき、彼の妻が使いを送ってこう伝えた。「あの正しい人には関わらないでください。わたしは今日、あの人のことで夢の中でひどく苦しんだのです。」
27:20 だが祭司長たちと長老たちは、バラバの方を釈放してほしい、イエスは殺してほしいと願い出るよう、群衆を説得した。
27:21 総督は彼らに言った。「二人のうち、どちらを釈放してほしいのか。」彼らは「バラバのほうを」と答えた。
27:22 ピラトは言った。「では、キリストと呼ばれるこのイエスはどうすればいい。」すると全員が言った。「十字架につけろ。」
27:23 ピラトは言った。「いったい、この人がどんな悪いことをしたのか。」しかし、人々はますます激しく叫んだ。「十字架につけろ。」
27:24 ピラトは、もう何を言っても無駄で、かえって暴動になりそうなのを見て、水を持ってこさせ、群衆の前で手を洗ってこう言った。「この人の血について、わたしには責任がない。あとはお前たちの問題だ。」
27:25 すると、民衆全体が答えて言った。「その血の責任は、わたしたちと、わたしたちの子どもたちが引き受ける」
27:26 そこでピラトは、彼らのためにバラバを釈放した。そしてイエスをむち打たせたうえで、十字架につけるために引き渡した。
27:27 それから、総督の兵士たちはイエスを官邸の中に連れて行き、部隊の全員をイエスのまわりに集めた。
27:28 そして、イエスの服を脱がせて、赤いマントを着せた。
27:29 いばらで冠を編んでイエスの頭にかぶらせ、右手には葦の棒を持たせた。そしてイエスの前にひざまずくと、「ユダヤ人の王様、ばんざい」とばかにして言った。
27:30 それから、イエスにつばを吐きかけ、葦の棒を取り上げて、その頭を何度もたたいた。
27:31 こうしてイエスをさんざんからかったあと、上着をはぎ取って元の服を着せ直した。そして、十字架につけるために引いていった。
27:32 彼らは出て行く途中で、シモンというクレネ人に出会った。そして、イエスの十字架を無理やり背負わせた。
27:33 ゴルゴタと呼ばれる場所に着いた。ゴルゴタとは「どくろの場所」という意味だ。
27:34 彼らはイエスに、苦い胆汁を混ぜたぶどう酒を飲ませようとした。でもイエスはそれを少し口にすると、飲もうとしなかった。
27:35 彼らはイエスを十字架につけた。そして、くじを引いてその服を分け合った。
27:36 そこに座って、イエスの見張りをしていた。
27:37 頭の上には、罪状を書いた札が掲げられた。そこにはこう書かれていた。「これはユダヤ人の王イエスである。」
27:38 そのとき、イエスと一緒に二人の強盗が十字架につけられた。一人はイエスの右に、もう一人は左に。
27:39 道を通りかかった人たちは、頭を振りながらイエスをののしった。
27:40 こう言った。「神殿を壊して三日で建て直す者よ。もし神の子なら、自分を救ってみろ。十字架から降りてこい」
27:41 祭司長たちも同じように、律法学者や長老たちと一緒になってイエスをからかい、こう言った。
27:42 「他人は救ったのに、自分は救えない。あれがイスラエルの王なのか。今すぐ十字架から降りてみろ。そうしたら信じてやろう。
27:43 神を頼りにしているのだから、その神が助けたいと思うなら、今、助ければいい。あの男は『わたしは神の子だ』と言っていたのだから」
27:44 一緒に十字架につけられた強盗たちまでも、同じようにイエスをののしった。
27:45 昼の十二時になると、闇が地上全体をおおい、それが午後三時まで続いた。
27:46 午後三時ごろ、イエスは大声で叫んだ。「エリ、エリ、レマ、サバクタニ。」これは「わたしの神、わたしの神、どうしてわたしを見捨てたのですか」という意味である。
27:47 それを聞いて、そこに立っていた何人かが言った。「この人はエリヤを呼んでいるんだ。」
27:48 すると、そのうちのひとりがすぐに走って行った。海綿を取り、酸っぱいぶどう酒を含ませて葦の棒につけ、イエスに飲ませようとした。
27:49 ほかの人たちは言った。「待て。エリヤが彼を助けに来るかどうか、見てみよう」
27:50 イエスはもう一度大声で叫んで、息を引き取った。
27:51 すると、神殿の幕が上から下まで真っ二つに裂けた。地面は激しく揺れ、岩が割れた。
27:52 また墓が開き、眠りについていた多くの聖なる人たちの体が生き返った。
27:53 そしてイエスが生き返ったあと、彼らは墓から出て聖なる都に入り、多くの人の前に姿を現した。
27:54 百人隊長と、いっしょにイエスを見張っていた人たちは、地震やいろいろな出来事を見て、ひどく怖くなった。そして、「この人は本当に神の子だった」と言った。
27:55 また、そこには遠くから見守る大勢の女性たちもいた。ガリラヤからイエスについて来て、イエスの世話をしてきた人たちだった。
27:56 その中には、マグダラのマリア、ヤコブとヨセフの母マリア、そしてゼベダイの息子たちの母がいた。
27:57 夕方になると、アリマタヤ出身の金持ちがやって来た。ヨセフという名前で、彼自身もイエスの弟子だった。
27:58 この人がピラトのところへ行き、イエスの遺体を渡してほしいと願い出た。すると、ピラトは渡すようにと命じた。
27:59 ヨセフは遺体を受け取り、きれいな亜麻布に包んだ。
27:60 岩を掘って造った自分の新しい墓に納めた。そして墓の入り口に大きな石をころがして、その場を去った。
27:61 そこにはマグダラのマリアと、もう一人のマリアがいた。二人は墓の方を向いて座っていた。
27:62 その翌日、つまり安息日の準備の日の翌日、祭司長たちとファリサイ派の人たちがピラトのところに集まった。
27:63 「長官、思い出したのですが、あの人をだます男は、まだ生きていたとき『三日後に自分は生き返る』と言っていました。
27:64 だから、三日目まで墓をしっかり見張るように命令してください。そうしないと、弟子たちが来て遺体を盗み出し、『あの人は死者の中から生き返った』と人々に言いふらすかもしれません。そうなれば、あとの惑わしは前よりもっとひどいものになります」
27:65 ピラトは彼らに言った。「番兵を連れて行きなさい。行って、あなたたちにできるかぎり厳重に守らせなさい。」
27:66 彼らは行って、石に封印をし、番兵を置いて墓を厳重に守らせた。
28:1 安息日が終わり、週の最初の日の明け方、マグダラのマリアと、もうひとりのマリアが、墓を見に行った。
28:2 すると、大きな地震が起こった。主の天使が天から降りてきて、墓に近づき、石をわきへ転がして、その上に座ったのだ。
28:3 その姿はいなずまのように輝き、着ている服は雪のように真っ白だった。
28:4 見張りをしていた番兵たちは、恐ろしさのあまり震え上がり、死人のようになった。
28:5 天使は女たちに言った。「こわがらなくていい。あなたたちが十字架につけられたイエスを探していることは、わたしにはわかっている。
28:6 ここにはいない。前に言っていたとおり、生き返ったんだ。さあ、遺体が置かれていた場所を見てごらん。
28:7 急いで行って、弟子たちに『イエスは死者の中から復活した。そして、あなたたちより先にガリラヤへ行く。そこで会える』と伝えなさい。これだけは伝えておく」
28:8 女たちは怖さと大きな喜びを抱えて、急いで墓を離れ、弟子たちに知らせようと走り出した。
28:9 すると、イエスが彼女たちの前に現れて、「おはよう」と声をかけた。彼女たちは近寄って、イエスの足を抱きしめ、ひれ伏して礼拝した。
28:10 そのとき、イエスは彼女たちに言った。「こわがらなくていい。行って、わたしの兄弟たちに伝えなさい。ガリラヤに行くように、と。そこでわたしに会える」
28:11 彼女たちが向かっている間に、見張りの兵士のうちの何人かが町に戻り、起きたことのすべてを祭司長たちに報告した。
28:12 祭司長たちは長老たちと集まって相談した。そして兵士たちに多額のお金を渡し、
28:13 「『弟子たちが夜中にやって来て、わたしたちが眠っている間にイエスを盗み出した』と言うんだ。
28:14 万一この話が総督の耳に入っても、わたしたちが総督にうまく話をつけて、あなたたちに迷惑がかからないようにする。」
28:15 彼らはそのお金を受け取り、教えられたとおりにした。そしてこの話は、今日に至るまでユダヤ人の間に広まっている。
28:16 十一人の弟子たちはガリラヤへ向かった。そして、イエスが指定していた山に登った。
28:17 そして、彼らはイエスに会って、ひれ伏して礼拝した。でも、疑う者もいた。
28:18 イエスは弟子たちに近づいて、こう言った。「わたしには、天と地のすべてを支配する権威が与えられている。
28:19 だから、あなたがたは行って、すべての国の人々をわたしの弟子にしなさい。そして、父と子と聖霊の名によって彼らにバプテスマを授け、
28:20 わたしがあなたたちに命じておいたことを、すべて守るように教えなさい。そして、これを忘れないでほしい。わたしは世界の終わりまで、いつもあなたたちと共にいる。」
マルコによる福音書
1:1 イエス・キリストについての良い知らせは、ここから始まる。
1:2 預言者イザヤの書に、こう書いてある。「見なさい、わたしはあなたより先に使者を送る。その使者が、あなたの道を整える。
1:3 荒れ野で叫ぶ声がする。『主の道を準備しなさい。主が通る道をまっすぐにしなさい。』」
1:4 そのとおり、洗礼者ヨハネが荒れ野に現れた。そして「心を入れ替えて洗礼を受けなさい。そうすれば罪を赦してもらえる」と宣べ伝えた。
1:5 すると、ユダヤ全土の人々や、エルサレムの住民が皆、ヨハネのもとへ出て行った。そして自分の罪を告白し、ヨルダン川でヨハネから洗礼を受けた。
1:6 ヨハネはラクダの毛の衣を着て、腰には革の帯を締めていた。そしていなごと野の蜜を食べていた。
1:7 ヨハネはこう宣べ伝えた。「わたしより力のある方が、わたしの後から来る。わたしはかがんで、その方の履物のひもをほどく値打ちもない。
1:8 わたしはあなたたちに水で洗礼を授けた。でもその方は、聖霊であなたたちに洗礼を授ける。」
1:9 そのころ、イエスがガリラヤのナザレからやって来た。そしてヨルダン川で、ヨハネから洗礼を受けた。
1:10 水から上がるとすぐ、イエスは天が裂けて、霊が鳩のように自分へ降ってくるのを見た。
1:11 すると天から声がした。「あなたは、わたしの愛する子。わたしはあなたを心から喜ぶ。」
1:12 それからすぐ、霊はイエスを荒れ野へ追いやった。
1:13 イエスは四十日間、荒れ野にいて、サタンに試された。野の獣たちと一緒にいたが、天使たちがイエスに仕えていた。
1:14 ヨハネが捕らえられた後、イエスはガリラヤへ行き、神の良い知らせを伝え始めた。
1:15 「時が満ちた。神の御国はすぐそこまで来ている。心を入れ替えて、この良い知らせを信じなさい」と語った。
1:16 イエスはガリラヤ湖のほとりを歩いていて、シモンと、その兄弟アンデレを見かけた。二人は漁師で、湖に網を打っていた。
1:17 イエスは二人に言った。「わたしについて来なさい。あなたたちを、人をとる漁師にしよう。」
1:18 すると二人はすぐに網を捨てて、イエスについて行った。
1:19 少し進むと、イエスはゼベダイの子ヤコブと、その兄弟ヨハネを見かけた。二人は舟の中で網を繕っていた。
1:20 イエスはすぐに二人を呼んだ。すると二人は、父ゼベダイを雇い人たちと一緒に舟に残して、イエスについて行った。
1:21 それから一行はカファルナウムに入った。イエスは安息日になるとすぐに会堂に入り、教え始めた。
1:22 人々はその教えに驚いた。イエスが、律法学者のようにではなく、権威を持つ者として教えていたからだ。
1:23 ちょうどそのとき、会堂に汚れた霊にとりつかれた人がいて、叫び出した。
1:24 「ナザレのイエス、いったいわたしたちに何をしようというのか。わたしたちを滅ぼしに来たのか。わたしはあなたが誰なのか知っている。神の聖なる方だ。」
1:25 イエスはその霊を叱りつけて言った。「黙れ。この人から出て行け。」
1:26 すると汚れた霊は、その人を激しくけいれんさせ、大声で叫びながら出て行った。
1:27 みんなは驚いて、こう言い合った。「これはどういうことだ。権威のある新しい教えだ。あの人が命令すると、汚れた霊さえ言うことを聞くなんて。」
1:28 こうしてイエスのうわさは、あっという間にガリラヤ地方のすみずみにまで広がっていった。
1:29 それから一行は会堂を出て、すぐにヤコブとヨハネを連れて、シモンとアンデレの家に行った。
1:30 シモンのしゅうとめが熱を出して寝込んでいたので、人々はさっそくそのことをイエスに伝えた。
1:31 イエスがそばに行き、手を取って起こすと、熱は引いた。そして彼女は、みんなをもてなし始めた。
1:32 夕方になり、日が沈むと、人々は病気の人や悪霊にとりつかれた人をみな、イエスのもとに連れて来た。
1:33 町中の人が、戸口に集まってきた。
1:34 イエスは、いろいろな病気で苦しむ大勢の人をいやし、たくさんの悪霊を追い出した。そして悪霊たちが口をきくのを許さなかった。悪霊たちが、イエスが誰なのかを知っていたからだ。
1:35 翌朝、まだ暗いうちに、イエスは起きて外に出た。そして人けのない場所に行き、そこで祈っていた。
1:36 シモンとその仲間は、イエスを追って捜しに出かけた。
1:37 そして、イエスを見つけると言った。「みんながあなたを捜しています。」
1:38 イエスは言った。「近くのほかの町へ行こう。そこでも教えを伝えるためだ。わたしは、そのために出てきたのだから。」
1:39 こうしてイエスは、ガリラヤ全体を回り、あちこちの会堂で教えを伝え、悪霊を追い出した。
1:40 ある日、重い皮膚病の人がイエスのところに来た。そしてひざまずいて願った。「その気になってくださるなら、わたしをきれいにできるはずです。」
1:41 イエスは深くあわれに思い、手を伸ばしてその人にさわった。そして言った。「そうしよう。きれいになれ。」
1:42 すると、たちまち病気は消え、その人はきれいになった。
1:43 イエスはその人を強く戒め、すぐに帰らせた。
1:44 そして言った。「いいか、このことは誰にも言うな。ただ祭司のところに行って、体を見せなさい。そして、モーセが命じたとおりに、きれいになったことのささげ物をしなさい。人々への証明のためだ。」
1:45 ところがその人は出て行くと、この出来事をあちこちで言いふらし始めた。それで、イエスはもう公然と町に入ることができなくなり、外の人けのない場所にとどまっていた。それでも人々は、あちこちからイエスのところにやって来た。
2:1 それから数日後、イエスはまたカファルナウムに戻ってきた。すると、家にいるといううわさが広まった。
2:2 たくさんの人が集まってきて、戸口のあたりまで、もう人が入る余地もないほどになった。イエスは、その人たちに神の言葉を語っていた。
2:3 そこへ、体の動かない人が運ばれてきた。四人の男が、その人をかついでイエスのところへ連れてこようとしたのだ。
2:4 でも、人が多すぎてイエスに近づけない。そこで彼らは、イエスがいる場所の屋根をはがして穴をあけ、その人が寝ている担架をつり降ろした。
2:5 イエスは、その人たちの信仰を見て、体の動かない人に言った。「わが子よ、あなたの罪は赦された。」
2:6 ところが、そこには律法学者たちが何人か座っていて、心の中でこう考えていた。
2:7 「この人は、どうしてこんなことを言うんだ。神を冒とくしている。罪を赦せるのは、神おひとりだけじゃないか。」
2:8 彼らが心の中でそう考えているのを、イエスはすぐに見抜いた。そして言った。「どうして、そんなことを心の中で考えているのか。
2:9 体の動かない人に『あなたの罪は赦された』と言うのと、『起きて、担架をかついで歩きなさい』と言うのと、どちらが簡単だろうか。
2:10 人の子が地上で罪を赦す権威を持っていることを、あなたたちに見せてあげよう。」そう言って、体の動かない人に向かって言った。
2:11 「あなたに言う。起きなさい。担架をかついで、家に帰りなさい。」
2:12 すると、その人はすぐに起き上がり、担架をかついで、みんなの前を出ていった。これを見た人々はみな驚き、神をたたえて言った。「こんなことは、今まで一度も見たことがない。」
2:13 イエスはまた湖のほとりに出ていった。すると、大勢の人が集まってきたので、イエスはその人たちに教えた。
2:14 通りがかりに、イエスはアルファイの子レビが収税所に座っているのを見て、「わたしについて来なさい」と言った。するとレビは立ち上がって、イエスについて行った。
2:15 イエスがレビの家で食事をしていると、大勢の徴税人や罪人が、イエスや弟子たちと一緒に食卓についていた。こういう人たちが大勢いて、イエスについて来ていたのだ。
2:16 ファリサイ派の律法学者たちは、イエスが罪人や徴税人と一緒に食事をしているのを見て、弟子たちに言った。「どうしてあの人は、徴税人や罪人と一緒に食事をするのか。」
2:17 これを聞いて、イエスは言った。「医者を必要とするのは、健康な人ではなく、病気の人だ。わたしが来たのは、正しい人を招くためではなく、罪人を招くためだ。」
2:18 ヨハネの弟子たちとファリサイ派の人たちは、断食をしていた。人々がイエスのところに来て言った。「ヨハネの弟子やファリサイ派の弟子は断食をするのに、どうしてあなたの弟子は断食をしないのですか。」
2:19 イエスは言った。「花婿が一緒にいる間、結婚式に招かれた客が断食などするだろうか。花婿が一緒にいる間は、断食などできない。
2:20 でも、花婿が奪い去られる日が来る。その日には、彼らも断食することになる。」
2:21 新しい布の切れはしを古い服に縫いつける人はいない。そんなことをすれば、新しい布が古い服を引っぱって破り、破れはもっとひどくなる。
2:22 また、新しいぶどう酒を古い皮袋に入れる人もいない。そんなことをすれば、ぶどう酒が皮袋を破って、ぶどう酒も皮袋もだめになってしまう。新しいぶどう酒は、新しい皮袋に入れるものだ。」
2:23 ある安息日のこと、イエスは麦畑を通っていった。すると弟子たちが、歩きながら麦の穂を摘み始めた。
2:24 ファリサイ派の人たちがイエスに言った。「見なさい。どうして彼らは、安息日にしてはいけないことをするのか。」
2:25 イエスは彼らに言った。「あなたたちは、ダビデが困って腹を空かせたとき、供の者たちと一緒に何をしたか、読んだことがないのか。
2:26 ダビデは、アビアタルが大祭司だったころ、神の家に入って、供え物のパンを食べた。それは祭司のほかは食べてはいけないものなのに、一緒にいた者たちにも分け与えたのだ。」
2:27 そして、イエスはこう言った。「安息日は人のためにできたものだ。人が安息日のためにあるのではない。
2:28 だから、人の子は安息日の主でもあるのだ。」
3:1 イエスはまた会堂に入った。そこに、片手の萎えた人がいた。
3:2 人々はイエスを見張っていた。安息日にその人をいやすかどうか、じっと見ていたのだ。イエスを訴える口実にしようとしていた。
3:3 イエスは、その手の萎えた人に言った。「立って、真ん中に出てきなさい。」
3:4 そして人々に言った。「安息日にしてよいのは、善いことか、それとも悪いことか。命を救うことか、それとも殺すことか。」しかし、彼らは黙っていた。
3:5 イエスは怒って彼らを見回した。そして、その心のかたくなさを深く悲しみながら、その人に言った。「手を伸ばしなさい。」その人が手を伸ばすと、手は元どおりになった。
3:6 ファリサイ派の人たちは出ていって、すぐにヘロデ派の人たちと、どうやってイエスを殺すか相談し始めた。
3:7 イエスは弟子たちと一緒に、そこを離れて湖のほうへ行った。すると、ガリラヤから大勢の人々がついて来た。ユダヤ、
3:8 エルサレム、イドマヤ、ヨルダン川の向こう側、それにティルスやシドンのあたりからも、大勢の人がやって来た。イエスがしていることを聞いて、集まって来たのだ。
3:9 イエスは、群衆に押しつぶされないように、小舟を用意しておくよう弟子たちに言った。
3:10 イエスが多くの人を治したので、病気で苦しむ人たちがみな、触れようとして押し寄せてきたからだ。
3:11 また、汚れた霊たちは、イエスを見るたびにその前にひれ伏し、「あなたは神の子だ」と叫んだ。
3:12 でもイエスは、自分のことを言いふらさないようにと、彼らを強く戒めた。
3:13 それからイエスは山に登り、これと思う人たちを呼び寄せた。彼らはイエスのところに来た。
3:14 そして十二人を選び、彼らを使徒と名づけた。自分のそばに置くため、また、彼らを送り出して教えを宣べ伝えさせるためだった。
3:15 さらに、悪霊を追い出す力を持たせるためでもあった。
3:16 こうしてイエスは十二人を選んだ。シモンにはペトロという名をつけた。
3:17 ゼベダイの子ヤコブと、その兄弟ヨハネ。この二人にはボアネルゲス、つまり「雷の子ら」という名をつけた。
3:18 それにアンデレ、フィリポ、バルトロマイ、マタイ、トマス、アルファイの子ヤコブ、タダイ、それに熱心党のシモン。
3:19 それに、後にイエスを裏切ることになるイスカリオテのユダである。
3:20 それからイエスが家に入ると、また大勢の人が集まってきた。そのせいで、食事をとる暇もないほどだった。
3:21 これを聞いた身内の人たちは、イエスを取り押さえようとやって来た。「あの人はどうかしてしまった」と言っていたからだ。
3:22 また、エルサレムから下ってきた律法学者たちはこう言った。「あの男はベルゼブルに取りつかれている。悪霊のかしらの力を借りて、悪霊を追い出しているのだ。」
3:23 そこでイエスは彼らを呼び寄せ、たとえを使って話した。「どうしてサタンがサタンを追い出せるだろう。
3:24 一つの国が内輪で分かれて争えば、その国は立ち行かなくなる。
3:25 一つの家が内輪で分かれて争えば、その家は立ち行かなくなる。
3:26 それと同じで、もしサタンが自分に逆らって立ち、内輪でもめているなら、サタンは立ち行かず、もう終わりだ。
3:27 強い人の家に押し入って家財を奪おうとしても、まずその強い人を縛り上げなければ、誰にもできない。縛って初めて、その家のものを奪えるのだ。
3:28 はっきり言っておく。人が犯すどんな罪も、神をののしるどんな言葉も、すべて赦される。
3:29 しかし、聖霊をののしる者は、いつまでも赦されることがない。永遠に消えない罪を負うことになる。」
3:30 イエスがこう言ったのは、人々が「あの人は汚れた霊に取りつかれている」と言っていたからだ。
3:31 そこへ、イエスの母と兄弟たちがやって来た。そして外に立ったまま、人を使いにやってイエスを呼んでもらった。
3:32 イエスの周りには、大勢の人が座っていた。その人たちがイエスに言った。「ご覧ください。あなたのお母さんと兄弟たちが、外であなたを捜しています。」
3:33 するとイエスは答えた。「わたしの母や兄弟とは、いったいだれのことだろう。」
3:34 そして、周りに座っている人たちを見回して言った。「見なさい。ここにいる人たちが、わたしの母、わたしの兄弟だ。
3:35 神が望むことを行う人こそ、わたしの兄弟であり、姉妹であり、母なのだ。」
4:1 イエスはまた、湖のほとりで教え始めた。とても大勢の人が集まってきたので、イエスは舟に乗り込み、湖の上に座った。人々はみな、岸辺に立って湖の方を向いていた。
4:2 イエスはたとえを使って、いろいろなことを教えた。その教えの中で、こう語った。
4:3 「よく聞きなさい。種をまく人が、種まきに出かけた。
4:4 まいているうちに、ある種は道ばたに落ちた。すると鳥がやって来て、食べてしまった。
4:5 ほかの種は、土の少ない石だらけの場所に落ちた。土が浅かったので、すぐに芽を出した。
4:6 しかし日が昇ると焼けてしまい、根がなかったので枯れてしまった。
4:7 ほかの種は、いばらの中に落ちた。すると、いばらが伸びてきてふさいでしまい、実を結ばなかった。
4:8 また、ほかの種は良い土に落ちた。芽を出して育ち、実を結んだ。三十倍、六十倍、百倍にもなった。」
4:9 そしてイエスは言った。「聞く耳のある人は、聞きなさい。」
4:10 イエスがひとりになったとき、そばにいた人たちが、十二人の弟子といっしょに、このたとえの意味をたずねた。
4:11 イエスは彼らに言った。「あなたがたには、神の国の秘密が与えられている。でも、外にいる人たちには、すべてがたとえで語られる。
4:12 それは、彼らがいくら見ても本当には見えず、いくら聞いても本当には分からないためだ。彼らが立ち返って、赦されることのないようにするためだ。」
4:13 そしてイエスは言った。「このたとえが分からないのか。それでは、どうしてほかのすべてのたとえが分かるだろうか。
4:14 種をまく人は、言葉をまいているのだ。
4:15 道ばたに落ちた種とは、こういう人たちのことだ。言葉がまかれても、聞いたとたんにサタンがやって来て、その人の中にまかれた言葉を奪い取ってしまう。
4:16 同じように、石だらけの場所にまかれた種とは、こういう人たちだ。言葉を聞くと、すぐに喜んで受け入れる。
4:17 でも、自分の中に根がなく、長続きしない。言葉のために苦しみや迫害が起こると、すぐにつまずいてしまう。
4:18 また、いばらの中にまかれた種とは、こういう人たちだ。彼らは言葉を聞くけれども、
4:19 でも、この世の心配ごとや、富の誘惑、そのほかいろいろな欲望が入り込んできて、その言葉をふさいでしまう。それで、実らなくなるんだ。
4:20 そして、良い土地にまかれた種とは、こういう人たちだ。言葉を聞いて受け入れ、実を結ぶ。三十倍、六十倍、百倍の実をつけるんだ。」
4:21 イエスはまた、こう言った。「明かりを持ってくるのは、ますや寝台の下に置くためだろうか。燭台の上に置くためじゃないか。
4:22 隠れているものは、必ず明るみに出る。秘められているものも、必ずあらわになるんだ。
4:23 聞く耳のある人は、聞きなさい。」
4:24 さらに、イエスは言った。「自分が何を聞いているか、よく気をつけなさい。あなたたちが人に量るその同じはかりで、あなたたちも量られる。しかも、もっと多く与えられるんだ。
4:25 持っている人は、さらに与えられる。でも、持っていない人は、持っているものまで取り上げられてしまう。」
4:26 イエスはまた、こう言った。「神の国は、こんなふうだ。ある人が畑に種をまく。
4:27 そして、夜は眠り、朝は起きる。そうしているうちに、種は芽を出して育っていく。でも、その人にはどうしてそうなるのか分からない。
4:28 土はひとりでに実を結ばせる。まず芽が出て、次に穂が出て、それから穂の中に豊かな実がなる。
4:29 実が熟すと、その人はすぐに鎌を入れる。刈り入れの時が来たからだ。」
4:30 イエスはまた言った。「神の国を、何にたとえようか。どんなたとえで表そうか。
4:31 それは、からし種のようなものだ。畑にまくときには、地上のどんな種よりも小さい。
4:32 でも、まかれると芽を出して育ち、どんな野菜よりも大きくなる。大きな枝を張って、その陰に空の鳥が巣を作れるほどになるんだ。」
4:33 イエスは、このようなたとえをたくさん使って、人々が聞いて受け止められるように、みことばを語った。
4:34 たとえを使わずに話すことはなかった。でも、弟子たちだけになると、すべてを解き明かして説明した。
4:35 その日の夕方になって、イエスは弟子たちに言った。「向こう岸へ渡ろう。」
4:36 そこで弟子たちは群衆をあとに残し、イエスが乗っているそのままの舟で連れ出した。ほかの舟も一緒だった。
4:37 すると、激しい突風が起こった。波が次々と舟に打ち込んで、舟はもう水でいっぱいになりそうだった。
4:38 その間、イエスは舟の後ろのほうで、枕をして眠っていた。弟子たちはイエスを起こして言った。「先生、わたしたちがおぼれ死んでも、どうでもいいんですか。」
4:39 イエスは起き上がって風をしかりつけ、湖に向かって言った。「静まれ。おとなしくなれ。」すると風はやみ、すっかり凪になった。
4:40 イエスは弟子たちに言った。「どうしてそんなにこわがるのか。まだ信仰がないのか。」
4:41 弟子たちはひどくおびえて、互いに言い合った。「いったいこの方はどなたなんだ。風も湖も、言うことを聞くとは。」
5:1 こうして彼らは湖の向こう岸に着いた。そこはゲラサ人の地方だった。
5:2 イエスが舟から降りると、すぐに、汚れた霊に取りつかれた一人の男が墓場から出てきて、イエスの前に立ちはだかった。
5:3 この男は墓場を住みかにしていた。もう誰も、鎖を使ってさえ彼をつなぎとめておくことができなかった。
5:4 これまで何度も足かせや鎖でつながれたが、そのたびに彼は鎖を引きちぎり、足かせを打ち砕いてしまった。誰にも彼を押さえつける力はなかった。
5:5 そして夜も昼もずっと、墓場や山の中で叫び続け、石で自分の体を傷つけていた。
5:6 ところが、遠くからイエスを見ると、男は走り寄ってひれ伏した。
5:7 そして大声で叫んだ。「いと高き神の子イエス、あなたはわたしに何をしようというのですか。神にかけてお願いします。どうかわたしを苦しめないでください。」
5:8 イエスが「汚れた霊よ、この人から出て行け」と言われたからだ。
5:9 イエスが「お前の名は何というのか」と尋ねると、男は答えた。「わたしの名はレギオン。わたしたちは大勢だからです。」
5:10 そして、自分たちをこの地方の外に追い出さないでほしいと、しきりにイエスに願った。
5:11 ちょうどそこでは、山のふもとで豚の大きな群れがえさを食べていた。
5:12 汚れた霊たちはイエスに願った。「わたしたちをあの豚に送り込んでください。あの中に入れるように。」
5:13 イエスがそれを許すと、汚れた霊たちは出ていって、豚の中に入った。すると群れは崖を駆け下り、湖へなだれ込んだ。二千匹ほどの豚が、湖の中でおぼれ死んだ。
5:14 豚を飼っていた人たちは逃げ出し、町や村でこのことを伝えた。人々は、何が起きたのかを見に来た。
5:15 そしてイエスのところに来て、あの男を見た。大勢の悪霊に取りつかれていた男が、服を着て、正気に返って座っていたのだ。それを見て、人々は怖くなった。
5:16 見ていた人たちは、悪霊に取りつかれていた男に何が起きたのか、また豚のことを、人々に話して聞かせた。
5:17 すると人々は、この地方から出て行ってほしいと、イエスに願い始めた。
5:18 イエスが舟に乗り込もうとすると、悪霊に取りつかれていた男が、一緒にいさせてほしいと願った。
5:19 でも、イエスはそれを許さず、こう言った。「家に帰って、あなたの家族のところに行きなさい。そして、主があなたにどれほど大きなことをしてくださったか、どんなにあわれんでくださったかを伝えなさい。」
5:20 男は立ち去り、イエスが自分にしてくださったことを、デカポリス地方で言い広め始めた。人々はみな驚いた。
5:21 イエスが舟でまた向こう岸へ渡ると、大勢の群衆がそのまわりに集まってきた。イエスは湖のそばにいた。
5:22 そこへ、会堂の責任者の一人でヤイロという名の人が来た。イエスを見ると、その足もとにひれ伏し、
5:23 しきりに願った。「わたしの幼い娘が死にかけています。どうか来て、娘に手を置いてやってください。そうすれば娘は助かって、生きられます。」
5:24 そこで、イエスはその人と一緒に出かけた。大勢の群衆もあとについて行き、イエスに押し迫った。
5:25 その中に、十二年間も出血が止まらない女の人がいた。
5:26 彼女は多くの医者にかかって、さんざん苦しめられ、財産をすべて使い果たしていた。それでも少しもよくならず、かえって悪くなる一方だった。
5:27 この女の人は、イエスのことを聞いていた。それで群衆にまぎれて後ろから近づき、イエスの服にさわった。
5:28 「あの方の服にさわりさえすれば、きっと治る」と思っていたからだ。
5:29 すると、すぐに出血が止まった。そして、あの苦しみから解放されたことを、体で感じ取った。
5:30 イエスもすぐに、自分の中から力が出ていったことに気づいた。そして群衆の中で振り返り、「わたしの服にさわったのはだれか」と言った。
5:31 弟子たちは言った。「群衆がこんなに押し合っているのが見えるでしょう。それなのに、『だれがさわったのか』とおっしゃるのですか。」
5:32 それでもイエスは、そうした女の人を見つけようと、あたりを見回した。
5:33 女の人は、自分の身に何が起きたかを知って、恐ろしくなり、震えながら進み出た。そしてイエスの前にひれ伏し、ありのままをすべて話した。
5:34 イエスは彼女に言った。「娘よ、あなたの信仰があなたを救った。安心して行きなさい。もう苦しみから解放され、元気でいなさい。」
5:35 イエスがまだ話しているうちに、会堂の責任者の家から人々が来て言った。「あなたの娘さんは亡くなりました。もう先生を煩わせることはないでしょう。」
5:36 しかしイエスは、その言葉を気にとめず、会堂の責任者に言った。「こわがらなくていい。ただ信じなさい。」
5:37 そしてイエスは、ペトロとヤコブ、そしてヤコブの兄弟ヨハネのほかは、だれもついて来ることを許さなかった。
5:38 一行が会堂の責任者の家に着くと、イエスは、人々が取り乱し、大声で泣きわめいているのを見た。
5:39 イエスは中に入って、人々に言った。「なぜ取り乱して泣いているのか。子どもは死んだのではない。眠っているだけだ。」
5:40 すると人々はイエスをあざ笑った。しかしイエスは全員を外に出し、子どもの父と母、そして連れて来た弟子たちだけを連れて、子どものいる部屋に入った。
5:41 そして子どもの手を取って言った。「タリタ、クム。」これは「少女よ、あなたに言う、起きなさい」という意味である。
5:42 すると少女はすぐに立ち上がり、歩き始めた。もう十二歳だったのだ。それを見た人々は、あまりのことに、すっかり驚いてしまった。
5:43 イエスは、このことをだれにも知らせないようにと、彼らに強く命じた。そして、少女に食べ物を与えるようにと言った。
6:1 イエスはそこを出て、自分の故郷に帰った。弟子たちもついて行った。
6:2 安息日になると、イエスは会堂で教え始めた。それを聞いた大勢の人は驚いて言った。「この人はどこでこんなことを身につけたのだろう。この知恵はいったい何だ。その手で、こんな数々の奇跡まで起こしている。
6:3 この人は、あの大工ではないか。マリアの息子で、ヤコブ、ヨセ、ユダ、シモンの兄ではないか。妹たちも、ここでわたしたちと一緒に暮らしているではないか。」こうして人々は、イエスにつまずいた。
6:4 イエスは彼らに言った。「預言者が敬われないのは、自分の故郷、自分の親族、自分の家の中だけだ。」
6:5 そのため、イエスはそこでは何一つ奇跡を起こすことができず、ただ何人かの病人に手を置いていやしただけだった。
6:6 そして、人々が信じようとしないことに、イエスは驚いた。それからイエスは、近くの村々を回って教えて歩いた。
6:7 そして、イエスは十二人の弟子を呼び寄せ、二人ずつ組にして送り出しはじめた。そのとき、汚れた霊を追い出す力を彼らに授けた。
6:8 そして、こう命じた。「旅には杖一本のほかは何も持って行ってはいけない。パンも、袋も、お金も、帯に入れて持って行ってはいけない。
6:9 履くのはサンダルだけ。下着も二枚は着てはいけない。」
6:10 さらにイエスは言った。「どこかの家に入ったら、その土地を離れるまで、ずっとその家にとどまりなさい。
6:11 もし、あなたたちを受け入れず、話も聞こうとしない場所があれば、そこを出るとき、足の裏についた土を払い落としなさい。それが、彼らへの警告のしるしになる。」
6:12 こうして弟子たちは出かけて行き、人々に、心を入れかえるようにと伝えた。
6:13 そして、たくさんの悪霊を追い出し、大勢の病人にオリーブ油を塗っていやした。
6:14 さて、イエスの名は広く知れわたっていたので、ヘロデ王もそのうわさを耳にした。人々は、「バプテスマを授けていたヨハネが、死者の中から生き返ったのだ。だから、あの人にはこんな力がはたらいているのだ」と言っていた。
6:15 また、ほかの人たちは「あの人はエリヤだ」と言い、別の人たちは「昔の預言者の一人のような預言者だ」と言っていた。
6:16 しかし、これを聞いたヘロデは言った。「わたしが首をはねた、あのヨハネが生き返ったのだ。」
6:17 実は、ヘロデは以前、自分で人をやってヨハネを捕らえ、牢につないでいた。それは、弟フィリポの妻ヘロディアのためだった。ヘロデがこの女を自分の妻にしていたからだ。
6:18 ヨハネはヘロデに、「あなたが弟の妻を自分のものにするのは、許されないことだ」と、ずっと言い続けていたのだった。
6:19 一方、ヘロディアはヨハネを恨んでいて、殺したいと思っていた。でも、それができなかった。
6:20 ヘロデがヨハネを恐れていたからだ。ヘロデは、ヨハネが正しくて清らかな人だと知っていて、彼を守っていた。ヨハネの話を聞くと、ひどく戸惑いながらも、それでも喜んで耳を傾けていた。
6:21 そんなある日、いい機会がやってきた。ヘロデが自分の誕生日に、重臣たちや将校たち、ガリラヤの有力者たちを招いて宴会を開いたのだ。
6:22 そこへ、ヘロディアの娘が入ってきて踊り、ヘロデや客たちを喜ばせた。王は少女に言った。「欲しいものを何でも言いなさい。あげよう。」
6:23 そして、こう誓った。「お前が願うものなら何でも、わたしの国の半分まででもあげよう。」
6:24 少女は出て行って、母親に聞いた。「何をお願いすればいい?」すると母親は言った。「洗礼者ヨハネの首よ。」
6:25 少女はすぐに大急ぎで王のところへ戻り、こう願った。「今すぐ、洗礼者ヨハネの首をお盆にのせてください。」
6:26 王はひどく心を痛めた。でも、誓ったことでもあり、客たちの手前もあって、少女の願いを断ろうとはしなかった。
6:27 王はすぐに死刑執行人を送り、ヨハネの首を持ってくるよう命じた。執行人は出て行って、牢の中でヨハネの首をはねた。
6:28 そして、その首をお盆にのせて持ってくると、少女に渡した。少女はそれを母親に渡した。
6:29 これを聞いたヨハネの弟子たちは、やって来て遺体を引き取り、墓に納めた。
6:30 さて、使徒たちがイエスのもとに集まってきた。そして、自分たちがしたことや教えたことを、すべてイエスに報告した。
6:31 イエスは弟子たちに言った。「さあ、あなたたちだけで人のいない静かな場所へ行って、少し休みなさい。」大勢の人が次々とやって来ては去っていくので、二人には食事をする時間さえなかったのだ。
6:32 そこで彼らは舟に乗り、自分たちだけで人のいない静かな場所へ向かった。
6:33 ところが、多くの人が彼らの去っていくのを見て、それがイエスたちだと気づいた。そして、すべての町から歩いてそこへ駆け集まり、彼らより先に着いてしまった。
6:34 イエスは舟から上がって大勢の群衆を見ると、深くあわれに思った。彼らが羊飼いのいない羊のようだったからだ。そして、多くのことを教え始めた。
6:35 そのうちに時刻もだいぶ遅くなった。弟子たちがイエスのそばに来て言った。「ここは人のいない寂しい場所ですし、もう時間も遅くなりました。
6:36 みんなを解散させてください。まわりの里や村へ行って、自分たちで何か食べる物を買えるようにしましょう。」
6:37 するとイエスは答えて言った。「あなたたちが、みんなに食べる物をあげなさい。」弟子たちは言った。「わたしたちが出かけて行って、二百デナリものパンを買い、みんなに食べさせるのですか。」
6:38 イエスは言った。「パンはいくつあるのか。行って見てきなさい。」弟子たちは確かめてから言った。「五つです。それに魚が二匹あります。」
6:39 そこでイエスは、みんなを組ごとに分けて、青草の上に座らせるよう弟子たちに命じた。
6:40 人々は百人ずつ、五十人ずつ、列を作って座った。
6:41 イエスは五つのパンと二匹の魚を取り、天を見上げて神に感謝の祈りをささげた。そして、パンを裂いては弟子たちに渡し、みんなに配らせた。二匹の魚も、全員に分けてあげた。
6:42 みんなは食べて、満腹になった。
6:43 みんなが食べたあと、パンと魚の余りを集めると、かごに十二杯分もあった。
6:44 パンを食べた人は、男だけで五千人もいた。
6:45 そのあとすぐ、イエスは弟子たちを舟に乗せ、先に向こう岸のベツサイダへ行かせた。その間に、自分は群衆を解散させた。
6:46 そして人々と別れると、祈るために山へ登った。
6:47 夕方になると、舟は湖の真ん中にいて、イエスはひとりで陸にいた。
6:48 弟子たちは向かい風に苦しみながら、必死で舟をこいでいた。それを見たイエスは、夜明け前ごろ、湖の上を歩いて彼らのところへ近づいてきた。そのまま通り過ぎようとしていた。
6:49 弟子たちは、イエスが湖の上を歩いているのを見て、幽霊だと思い、叫び声をあげた。
6:50 みんながイエスを見て、おびえていたからだ。でもイエスはすぐに声をかけた。「安心しなさい。わたしだ。こわがることはない。」
6:51 そして舟に乗り込んで彼らのところへ行くと、風はやんだ。弟子たちは、あまりのことに、ただ驚くばかりだった。
6:52 彼らはパンの出来事の意味がまだ分かっておらず、心がかたくなになっていたのだ。
6:53 こうして湖を渡り切ると、彼らはゲネサレトの地に着き、舟をつないだ。
6:54 舟から下りると、人々はすぐにイエスだと気づいた。
6:55 そして人々はその地方一帯を走り回り、イエスがいると聞いた場所へ、病人を床に乗せて運び始めた。
6:56 村でも町でも田舎でも、イエスが入って行く先々で、人々は病人を広場に寝かせた。そして、せめてイエスの服のすそにでも触れさせてほしいと願った。触れた人はみな、いやされた。
7:1 さて、ファリサイ派の人たちと、エルサレムから来た数人の律法学者が、イエスのもとに集まってきた。
7:2 彼らは、イエスの弟子の何人かが汚れた手、つまり洗っていない手で食事をしているのを見た。
7:3 ファリサイ派の人たちも、ほかのユダヤ人もみな、先祖から伝わる言い伝えを大事に守っていて、念入りに手を洗わないと食事をしない。
7:4 また市場から帰ったときも、体を洗い清めてからでないと食事をしない。ほかにも、杯や水差し、銅の器などを洗い清めるといった、受け継いできた決まりをたくさん守っていた。
7:5 そこでファリサイ派の人たちと律法学者は、イエスにたずねた。「あなたの弟子たちは、どうして先祖の言い伝えに従って歩まず、汚れた手で食事をするのですか。」
7:6 イエスは彼らに言った。「イザヤは、あなたたち偽善者について、こう見事に預言している。書いてあるとおりだ。『この民は口先ではわたしを敬うが、その心はわたしから遠く離れている。
7:7 わたしを敬うといっても、その礼拝はむなしい。人間が作った決まりを、まるで神の教えのように教えているのだから。』
7:8 あなたたちは神の戒めを捨てて、人間の言い伝えを固く守っている。」
7:9 さらにイエスは言った。「あなたたちは、自分たちの言い伝えを守るために、うまいやり方で神の戒めを退けている。
7:10 モーセはこう言った。『父と母を敬いなさい。』また、『父や母をののしる者は、必ず死ななければならない。』
7:11 それなのにあなたたちはこう言う。もし人が父や母に、『あなたにあげるはずのものは、コルバン、つまり神への供え物です』と言えば、
7:12 その人はもう、父や母のために何もしなくてよいとしている。
7:13 こうして、あなたたちは受け継いできた自分たちの言い伝えのせいで、神の言葉を無にしている。しかも、そういうことをたくさんやっているのだ。」
7:14 それからイエスは、再び群衆を呼び寄せて言った。「みんな、わたしの言うことを聞いて、よく理解してほしい。
7:15 人の外から入って、その人を汚すものは何もない。むしろ、人の中から出てくるものが、人を汚すのだ。」
7:16 〔聞く耳のある人は聞きなさい。〕
7:17 イエスが群衆から離れて家に入ると、弟子たちがこのたとえについてたずねた。
7:18 イエスは言った。「あなたたちも、そんなに分からないのか。外から人の中に入るものは、その人を汚すことができない。それが分からないのか。
7:19 それは心に入るのではなく、腹に入って、外へ出ていくだけだ。」こう言って、イエスはすべての食べ物をきれいなものとされた。
7:20 イエスはさらに言った。「人の中から出てくるもの、それが人を汚すのだ。
7:21 内側から、つまり人の心から、悪い考えが出てくるからだ。淫らな行い、盗み、殺人、
7:22 不倫、貪り、悪意、ごまかし、みだらな行い、ねたみ、悪口、高慢、愚かさ。
7:23 こうした悪いものはすべて内側から出てきて、人を汚すのだ。」
7:24 それからイエスはそこを立って、ティルスの地方へ行った。ある家に入り、だれにも知られたくなかったが、隠れていることはできなかった。
7:25 それどころか、汚れた霊にとりつかれた幼い娘を持つ女が、すぐにイエスのことを聞きつけ、やって来て足もとにひれ伏した。
7:26 この女はギリシア人で、生まれはシリア・フェニキアだった。娘から悪霊を追い出してほしいと、イエスに願った。
7:27 イエスは言った。「まず子どもたちを満腹にさせよう。子どもたちのパンを取り上げて、小犬に投げてやるのはよくないのだから。」
7:28 すると女は答えた。「主よ、でも食卓の下の小犬も、子どもたちのパンくずを食べます。」
7:29 イエスは言った。「そう言うなら、帰りなさい。悪霊はあなたの娘から出て行った。」
7:30 女が家に帰ると、子どもは寝床に横たわっていて、悪霊はもう出て行ったあとだった。
7:31 それからイエスは再びティルスの地方を出て、シドンを通り、デカポリス地方の真ん中を抜けて、ガリラヤ湖へ来た。
7:32 人々が、耳が聞こえず、うまく話せない人をイエスのところへ連れて来た。そして、その人に手を置いてやってほしいと願った。
7:33 イエスはその人を群衆から離れて、ふたりだけのところへ連れて行った。そして両耳に指を入れ、唾をつけてその舌にさわった。
7:34 それから天を見上げ、深く息をついて、その人に言った。「エッファタ。」これは「開け」という意味だ。
7:35 すると、その人の耳が開き、舌のもつれもほどけて、はっきり話せるようになった。
7:36 イエスは、このことをだれにも言わないようにと命じた。でも、命じれば命じるほど、人々はますます言い広めた。
7:37 人々は非常に驚いて言った。「この方のすることは、何もかもすばらしい。耳の聞こえない人を聞こえるようにし、話せない人を話せるようにしてくださるのだから。」
8:1 そのころ、また大勢の群衆が集まっていた。彼らは食べる物を持っていなかった。イエスは弟子たちを呼んで言った。
8:2 「わたしは、この群衆がかわいそうでならない。もう三日もわたしと一緒にいるのに、食べる物がないのだ。
8:3 このまま空腹で家に帰らせたら、途中で動けなくなってしまう。遠くから来ている人もいるのだから。」
8:4 弟子たちは答えた。「こんな人里離れた所で、この人たちを満腹にできるだけのパンを、どこで手に入れられるでしょう。」
8:5 イエスが「パンはいくつあるか」と尋ねると、彼らは「七つです」と答えた。
8:6 イエスは群衆に、地面に座るように命じた。そして七つのパンを取り、感謝の祈りをささげてからそれを裂き、配るようにと弟子たちに渡した。弟子たちはそれを群衆に配った。
8:7 また、小さな魚も少しあった。イエスはそれについても感謝の祈りをささげ、これも配るようにと言った。
8:8 みんなは食べて満腹した。そして、余ったパン切れを集めると、七つのかごいっぱいになった。
8:9 そこには四千人ほどの人がいた。イエスは彼らを解散させた。
8:10 そしてすぐに、イエスは弟子たちと一緒に舟に乗り、ダルマヌタの地方へ行った。
8:11 すると、ファリサイ派の人々がやって来て、イエスと議論を始めた。天からのしるしを求めて、イエスを試そうとしたのだ。
8:12 イエスは心の中で深くため息をついて言った。「どうして今の時代の人たちはしるしを求めるのか。はっきり言っておく。今の時代の人たちには、決してしるしは与えられない。」
8:13 そして、イエスは彼らを後に残し、再び舟に乗って向こう岸へ去って行った。
8:14 弟子たちはパンを持ってくるのを忘れていた。舟の中には、一つのパンしか持ち合わせていなかった。
8:15 イエスは彼らに、こう注意した。「ファリサイ派の人たちのパン種と、ヘロデのパン種に、よく気をつけなさい。」
8:16 すると、弟子たちは「これはパンを持っていないからだ」と互いに話し合った。
8:17 それに気づいたイエスは、彼らに言った。「どうして、パンがないなどと話し合っているのか。まだ分からないのか。理解できないのか。あなたがたの心は、そんなに鈍くなっているのか。
8:18 目があるのに見えないのか。耳があるのに聞こえないのか。あなたがたは、覚えていないのか。」
8:19 わたしが五つのパンを裂いて五千人に配ったとき、パンのくずを集めて、いくつのかごがいっぱいになった。」弟子たちは「十二です」と答えた。
8:20 「では、七つのパンを四千人に配ったときは、くずを集めて、いくつのかごがいっぱいになった。」彼らは「七つです」と答えた。
8:21 するとイエスは言った。「まだ分からないのか。」
8:22 それから、彼らはベツサイダに着いた。人々が一人の目の見えない人をイエスのところに連れて来て、この人にさわってほしいと願った。
8:23 イエスはその人の手を取って、村の外へ連れ出した。そして、その目につばをつけ、両手を当てて、「何か見えるか」とたずねた。
8:24 その人は顔を上げて言った。「人が見えます。でも、木のようなものが歩いているように見えます。」
8:25 イエスがもう一度その目に両手を当てると、その人ははっきり見えるようになった。目が治って、すべてがくっきりと見えたのだ。
8:26 イエスはその人を家に帰らせて、こう言った。「村には入らないように。」
8:27 イエスは弟子たちと一緒に、フィリポ・カイサリアの村々へ出かけた。その道の途中で、イエスは弟子たちにたずねた。「人々はわたしのことを、だれだと言っているのか。」
8:28 弟子たちは答えた。「バプテスマのヨハネだと言う人もいます。エリヤだと言う人もいれば、預言者の一人だと言う人もいます。」
8:29 するとイエスは言った。「では、あなたがたはわたしをだれだと言うのか。」ペテロが答えた。「あなたはキリストです。」
8:30 すると、イエスは自分のことをだれにも言わないようにと、弟子たちに強く命じた。
8:31 それからイエスは、弟子たちにこう教え始めた。人の子は多くの苦しみを受け、長老たちや祭司長、律法学者たちに捨てられ、殺され、そして三日後によみがえることになっている、と。
8:32 イエスは、このことを包み隠さずはっきりと話した。すると、ペテロはイエスをわきへ連れて行き、いさめ始めた。
8:33 しかしイエスは振り返り、弟子たちを見て、ペテロをしかった。「わたしの後ろに引き下がれ、サタン。あなたは神のことではなく、人間のことを思っているからだ。」
8:34 それからイエスは、弟子たちといっしょに群衆を呼び寄せて言った。「わたしについて来たい者は、自分を捨て、自分の十字架を背負って、わたしに従いなさい。
8:35 自分の命を救おうとする者は、それを失う。しかし、わたしのため、そして良い知らせのために命を失う者は、それを救うのだ。
8:36 人が全世界を手に入れても、自分の命を失ったら、何の得になるだろうか。
8:37 人は自分の命と引き換えに、いったい何を差し出せるというのか。
8:38 この、神に背いた罪深い時代にあって、わたしとわたしの言葉を恥じる者は、人の子もまた、父の栄光に包まれ、聖なる天使たちとともに来るとき、その者を恥じるだろう。」
9:1 そしてイエスは彼らにこう言った。「本当のことを言う。ここに立っている人の中には、神の国が力とともに実現するのを見るまで、決して死なない者がいる。」
9:2 それから六日後、イエスはペトロとヤコブとヨハネだけを連れて、高い山に登った。ほかにはだれもいなかった。すると、彼らの目の前でイエスの姿が変わった。
9:3 服は真っ白に輝いた。この世のどんな職人にも、あれほど白くすることはできないほどだった。
9:4 そして、エリヤがモーセといっしょに彼らの前に現れ、イエスと語り合っていた。
9:5 ペトロが口を開いてイエスに言った。「先生、わたしたちがここにいるのは、すばらしいことです。小屋を三つ建てましょう。一つはあなたに、一つはモーセに、一つはエリヤに。」
9:6 何を言えばいいのか、ペトロにはわからなかった。三人はすっかりおびえていたのだ。
9:7 すると、雲がわき起こって彼らをおおった。そして雲の中から声がした。「これはわたしの愛する子。この子の言うことを聞きなさい。」
9:8 彼らが急にあたりを見回すと、もうだれもいなかった。ただイエスだけが、自分たちといっしょにいた。
9:9 山を下りながら、イエスは彼らに、見たことをだれにも話してはいけないと命じた。人の子が死者の中からよみがえるときまでは、と。
9:10 彼らはこの言葉を心に留めた。そして「死者の中からよみがえる」とはどういうことかと、たがいに話し合った。
9:11 そして彼らはイエスにたずねた。「律法学者たちは、まずエリヤが来るはずだと言っています。どうしてですか。」
9:12 イエスは答えた。「たしかに、まずエリヤが来て、すべてを元どおりに整える。ではなぜ、人の子について、多くの苦しみを受け、見下されると書かれているのだろうか。
9:13 でも、あなたたちに言っておく。エリヤはもう来たんだ。そして人々は、彼について書かれているとおり、思いのままに彼を扱った。」
9:14 さて、イエスたちが弟子たちのところへ戻ると、大勢の人が弟子たちを取り囲んでいた。そして律法学者たちが弟子たちと言い合っていた。
9:15 群衆はイエスを見ると、みんなすぐに驚いて、走り寄ってあいさつした。
9:16 イエスは彼らにたずねた。「何を言い合っているのか。」
9:17 すると群衆の中の一人が答えた。「先生、息子を連れてきました。この子には、口をきけなくする霊が取りついているのです。
9:18 その霊は、どこであれ息子を捕まえると、地面に叩きつけます。すると息子は口から泡をふき、歯ぎしりし、体をこわばらせるのです。それであなたの弟子たちに、この霊を追い出してほしいと頼みました。でも、彼らにはできませんでした。」
9:19 イエスは彼らに答えた。「ああ、信じようとしない今の人たちよ。いつまでわたしはあなたたちと一緒にいればいいのか。いつまで我慢すればいいのか。その子をわたしのところへ連れてきなさい。」
9:20 そこで人々はその子をイエスのところへ連れてきた。すると霊はイエスを見るなり、すぐに子どもを激しくひきつけさせた。子どもは地面に倒れ、泡をふきながら転げ回った。
9:21 イエスはその子の父親にたずねた。「こうなってから、どれくらいたつのか。」父親は答えた。「小さいころからです。
9:22 霊は息子を殺そうとして、何度も火の中や水の中に投げ込みました。でも、もし何かおできになるなら、わたしたちをあわれんで、助けてください。」
9:23 イエスは彼に言った。「『もしできるなら』と言うのか。信じる者には、どんなことでもできる。」
9:24 その子の父親はすぐに叫んで言った。「信じます。信じきれないわたしを助けてください。」
9:25 イエスは、群衆が駆け寄って来るのを見て、その汚れた霊をしかりつけて言った。「口をきけなくし、耳を聞こえなくする霊よ。わたしが命じる。この子から出て行け。もう二度と入るな。」
9:26 すると霊は叫び声をあげ、その子を激しくけいれんさせてから出て行った。子どもはまるで死んだようになり、多くの人が「死んでしまった」と言うほどだった。
9:27 でもイエスがその手を取って起こすと、子どもは立ち上がった。
9:28 イエスが家に入ったあと、弟子たちはそっと尋ねた。「どうしてわたしたちには、あの霊を追い出せなかったのですか。」
9:29 イエスは言った。「この種のものは、祈りによってでなければ、決して出て行かせることはできない。」
9:30 それから彼らはそこを出て、ガリラヤを通って行った。イエスは、それを誰にも知られたくなかった。
9:31 弟子たちにこう教えていたからだ。「人の子は人々の手に引き渡され、殺される。そして殺されて三日後によみがえる。」
9:32 でも弟子たちは、この言葉の意味が分からなかった。しかも、こわくて尋ねることもできなかった。
9:33 彼らはカファルナウムに来た。家に入ってから、イエスは弟子たちに尋ねた。「道で何を言い合っていたのか。」
9:34 弟子たちは黙っていた。道で、誰がいちばん偉いかと言い争っていたからだ。
9:35 イエスは座って十二人を呼び、こう言った。「いちばん先になりたい者は、みんなのいちばん後になり、みんなに仕える者になりなさい。」
9:36 そして一人の子どもを連れて来て、みんなの真ん中に立たせ、その子を抱き寄せて言った。
9:37 「わたしの名のために、こういう子どもの一人を受け入れる人は、わたしを受け入れているのだ。そしてわたしを受け入れる人は、わたしではなく、わたしを送った方を受け入れているのだ。」
9:38 ヨハネがイエスに言った。「先生、ある人があなたの名を使って悪霊を追い出しているのを見ました。わたしたちの仲間ではないので、やめさせようとしました。」
9:39 イエスは言った。「やめさせてはいけない。わたしの名で奇跡を行う者が、その後すぐにわたしの悪口を言うことなんてできないのだから。
9:40 わたしたちに反対しない人は、わたしたちの味方なのだ。
9:41 よく言っておく。あなたたちがキリストのものだからといって、水を一杯でも飲ませてくれる人は、必ずその報いを受ける。
9:42 そして、わたしを信じるこの小さな者の一人をつまずかせる人は、大きな石臼を首にかけられて海に投げ込まれる方が、まだましだ。
9:43 もしあなたの手があなたをつまずかせるなら、切り捨ててしまいなさい。両手がそろったまま地獄の、消えることのない火の中に落ちるより、片手になっても命に入る方がいい。
9:44 〔地獄では、彼らを食らううじは死なず、火も消えることがない。〕
9:45 もし足があなたをつまずかせるなら、切り捨ててしまいなさい。両足がそろったまま地獄に投げ込まれるより、片足になっても命に入る方がいい。
9:46 そこでは、うじがつきず、火も消えることがない。
9:47 もし目があなたをつまずかせるなら、えぐり出してしまいなさい。両目がそろったまま地獄に投げ込まれるより、片目になっても神の国に入る方がいい。
9:48 そこでは、彼らを食う虫は死なず、火も消えることがない。
9:49 だれもが火によって塩づけされるのだ。
9:50 塩はよいものだ。でも塩が塩けをなくしたら、どうやって塩けを取り戻せるだろう。あなたたちは自分の中に塩を持ち、互いに平和に過ごしなさい。」
10:1 イエスはそこを立って、ユダヤ地方、そしてヨルダン川の向こう側へ行った。すると、また大勢の人が集まってきた。イエスはいつものように、その人たちに教えた。
10:2 すると、ある人たちがイエスを試そうとして、「夫が妻と離婚するのは許されることですか」と尋ねた。
10:3 イエスは答えた。「モーセはあなたたちに、何と命じましたか。」
10:4 彼らは言った。「モーセは、離婚状を書いて妻を離婚させることを認めました。」
10:5 イエスは彼らに言った。「モーセがその命令を書いたのは、あなたたちの心がかたくなだからだ。
10:6 しかし、世界が造られた初めから、神は人を男と女に造った。
10:7 だから、人は父と母を離れて、妻と結ばれる。
10:8 そして、二人は一つの体になる。だから、もう二人ではなく、一つの体なのだ。
10:9 こうして神が結び合わせたものを、人が引き離してはならない。」
10:10 家に戻ってから、弟子たちはこのことについて、またイエスに尋ねた。
10:11 イエスは言った。「妻と離婚して別の女性と結婚する者は、その妻を裏切って不倫の罪を犯すことになる。
10:12 また、妻が夫と離婚して別の男性と結婚するなら、その妻も不倫の罪を犯すことになる。」
10:13 そのころ、人々が子どもたちをイエスのところに連れてきた。イエスに触れてもらうためだった。でも弟子たちは、その人たちを叱った。
10:14 これを見て、イエスは怒って言った。「子どもたちをわたしのところに来させなさい。邪魔をしてはいけない。神の国は、こういう者たちのものだ。
10:15 よく聞きなさい。子どものように神の国を受け入れない者は、決してそこに入ることはできない。」
10:16 そしてイエスは子どもたちを抱き寄せ、頭に手を置いて祝福した。
10:17 イエスが旅に出ようとしていると、一人の男が走り寄ってきた。そしてひざまずいて尋ねた。「善い先生、永遠の命を受け継ぐには、何をすればいいのでしょうか。」
10:18 イエスは言った。「どうしてわたしを善いと言うのか。善い方は、神おひとりのほかにはいない。
10:19 おきては知っているだろう。『人を殺してはいけない。不倫をしてはいけない。盗んではいけない。うその証言をしてはいけない。だまし取ってはいけない。父と母を敬いなさい。』」
10:20 男は言った。「先生、それはみんな、子どもの頃からずっと守ってきました。」
10:21 イエスは彼を見つめ、いとおしく思って言った。「あなたに足りないものが一つある。行って、持っているものを全部売り払い、貧しい人たちに分けてあげなさい。そうすれば、天に宝を持つことになる。それから、わたしについて来なさい。」
10:22 この言葉を聞いて、彼は表情を曇らせ、悲しみながら去っていった。たくさんの財産を持っていたからだ。
10:23 イエスは辺りを見回して、弟子たちに言った。「お金を持っている人が神の国に入るのは、なんと難しいことか。」
10:24 弟子たちは、その言葉に驚いた。でもイエスは、また言った。「子たちよ、神の国に入るのは、なんと難しいことか。
10:25 ラクダが針の穴を通り抜ける方が、お金持ちが神の国に入るよりも簡単なんだ。」
10:26 弟子たちはますます驚いて、互いに言い合った。「それなら、いったい誰が救われるんだ。」
10:27 イエスは彼らを見つめて言った。「人にはできないことだ。でも、神にはできる。神には、何でもできるのだから。」
10:28 すると、ペテロがイエスに言い始めた。「ご覧ください。わたしたちは何もかも捨てて、あなたについて来ました。」
10:29 イエスは言った。「はっきり言っておく。わたしのため、また福音のために、家や兄弟姉妹、母や父、子どもや畑を捨てた人で、
10:30 今この時に、迫害も受けながら、その百倍の家や兄弟姉妹、母、子ども、畑を受け、そして来たるべき世で永遠のいのちを受けない者は、一人もいない。
10:31 でも、先にいる多くの人が後になり、後にいる人が先になる。」
10:32 一行は、エルサレムへの道を上っていった。イエスは先頭に立って進んでいた。弟子たちは驚き、ついて行く人たちは怖くなった。イエスはまた十二人を呼び寄せて、これから自分の身に起こることを話し始めた。
10:33 「よく聞きなさい。わたしたちはエルサレムへ上っていく。そこで人の子は、祭司長たちや律法学者たちに引き渡される。彼らは人の子に死刑を宣告し、異邦人の手に引き渡す。
10:34 人々は人の子をあざけり、つばを吐きかけ、むちで打ち、そして殺す。しかし人の子は、三日後によみがえる。」
10:35 そこへ、ゼベダイの息子ヤコブとヨハネがイエスのところに来て言った。「先生、お願いしたいことがあります。それをかなえてください。」
10:36 イエスは言った。「何をしてほしいのか。」
10:37 二人は言った。「あなたが栄光を受けるとき、わたしたちを、一人はあなたの右に、もう一人は左にすわらせてください。」
10:38 でもイエスは言った。「あなたたちは、自分が何を求めているのか分かっていない。わたしが飲む杯を、あなたたちは飲めるのか。わたしが受けるバプテスマを、あなたたちは受けられるのか。」
10:39 二人は言った。「できます。」イエスは言った。「確かに、あなたたちはわたしが飲む杯を飲み、わたしが受けるバプテスマを受けることになる。
10:40 でも、わたしの右や左にすわることは、わたしが決めることではない。その席は、備えられた人たちのものだ。」
10:41 これを聞いたほかの十人は、ヤコブとヨハネのことで腹を立て始めた。
10:42 そこでイエスは彼らを呼び寄せて言った。「知ってのとおり、この世で支配者と見なされている人たちは、人々を上から押さえつける。偉い人たちは、その力を振りかざす。
10:43 でも、あなたたちの間ではそうであってはならない。あなたたちの中で偉くなりたい者は、みんなに仕える者になりなさい。
10:44 あなたたちの中で一番になりたい者は、すべての人の奴隷になりなさい。
10:45 人の子も、仕えてもらうためではなく、仕えるために来た。そして、多くの人を救い出す代わりの代金として、自分の命を与えるために来たのだ。」
10:46 それから、彼らはエリコに着いた。イエスが弟子たちや大勢の群衆といっしょにエリコを出ようとしていたとき、ティマイの息子でバルティマイという目の見えない物ごいが、道ばたにすわっていた。
10:47 そして、ナザレのイエスが来たと聞くと、彼は叫び始めた。「ダビデの子イエスよ、わたしをあわれんでください。」
10:48 多くの人が彼をしかりつけ、黙らせようとした。でも彼は、ますます大声で叫んだ。「ダビデの子よ、わたしをあわれんでください。」
10:49 イエスは立ち止まって、「あの人を呼びなさい」と言った。そこで人々は、その目の見えない人を呼んで言った。「安心しなさい。さあ、立って。イエスがあなたを呼んでいるよ。」
10:50 すると彼は上着を脱ぎ捨て、はね起きてイエスのところへ来た。
10:51 イエスは彼に声をかけた。「何をしてほしいの？」目の見えない人は言った。「先生、もう一度見えるようになりたいんです。」
10:52 イエスは言った。「行きなさい。あなたの信仰があなたを救ったんだ。」すると彼はすぐに見えるようになり、道を行くイエスについて行った。
11:1 さて、彼らはエルサレムに近づき、オリーブ山のふもとにあるベテパゲとベタニアまで来た。そこでイエスは、二人の弟子を送り出して、
11:2 こう言った。「向こうに見える村へ行きなさい。中に入るとすぐに、まだだれも乗ったことのない子ロバがつないであるのを見つける。それをほどいて、引いて来なさい。
11:3 もしだれかに『どうしてそんなことをするんだ』と言われたら、『主がお入り用なのです。すぐにここへ返します』と言いなさい。」
11:4 二人が出かけて行くと、表通りに面した戸口の外に、子ロバがつないであるのを見つけた。それで、それをほどいた。
11:5 すると、そこに立っていた何人かが言った。「その子ロバをほどいて、何をしているんだ。」
11:6 二人がイエスに言われたとおりに答えると、彼らは行かせてくれた。
11:7 弟子たちは子ロバをイエスのところに連れて来た。そして自分たちの上着をその上にかけると、イエスはロバに乗った。
11:8 多くの人が自分の上着を道に敷いた。ほかの人たちは野で切ってきた葉のついた枝を敷いた。
11:9 前を歩く人も後ろに続く人も、大声で叫んでいた。「ホサナ。主の名によって来られる方に、祝福があるように。
11:10 いま来ようとしている、わたしたちの父ダビデの国に、祝福があるように。いと高きところに、ホサナ。」
11:11 こうしてイエスはエルサレムに入り、神殿に行った。そしてすべてのものを見回したが、もう時間も遅くなっていたので、十二人の弟子と一緒にベタニアへ出て行った。
11:12 翌日、彼らがベタニアを出たとき、イエスは空腹を覚えた。
11:13 そして、葉の茂ったいちじくの木を遠くから見つけ、何か実がないかと近寄って行った。しかし、そばまで行っても、葉のほかには何も見つからなかった。いちじくの季節ではなかったからだ。
11:14 イエスはその木に向かって言った。「これからもう、だれもお前から実を食べることがないように。」弟子たちはこれを聞いていた。
11:15 それから、彼らはエルサレムに着いた。イエスは神殿に入ると、そこで売り買いしている人たちを追い出し始めた。そして両替人の台や、鳩を売る者の椅子をひっくり返した。
11:16 また、境内を通って物を運ぶことを、だれにも許さなかった。
11:17 そして、彼らにこう教えた。「こう書いてあるではないか。『わたしの家は、すべての民の祈りの家と呼ばれる。』それなのに、あなたたちはそこを強盗の巣にしてしまった。」
11:18 祭司長たちや律法学者たちはこれを聞いて、どうやってイエスを殺そうかと考え始めた。イエスを恐れていたからだ。群衆がみな、その教えに驚いていたのだ。
11:19 夕方になると、イエスたちは町の外に出て行った。
11:20 朝、通りかかると、あのいちじくの木が根元から枯れているのが見えた。
11:21 ペトロはそのことを思い出して、イエスに言った。「先生、見てください。呪われたいちじくの木が、枯れています。」
11:22 イエスは答えた。「神を信じなさい。
11:23 はっきり言っておく。だれでもこの山に『動いて海に飛び込め』と言い、心の中で少しも疑わず、その言葉どおりになると信じるなら、そのとおりになる。
11:24 だから言っておく。祈り求めるものは何でも、すでに与えられたと信じなさい。そうすれば、そのとおりになる。
11:25 また、立って祈るときは、だれかに対して思うことがあれば、赦しなさい。そうすれば、天におられるあなたたちの父も、あなたたちの過ちを赦してくださる。」
11:26 でも、もしあなたたちが人をゆるさないなら、天にいるあなたたちの父も、あなたたちのあやまちをゆるしてはくれない。」
11:27 一行は、またエルサレムに来た。イエスが境内を歩いていると、祭司長たちや律法学者たち、長老たちがやって来た。
11:28 そして、イエスに言った。「何の権威があって、こんなことをしているのか。だれが、こんなことをする権威をあなたに与えたのか。」
11:29 イエスは言った。「わたしも一つ尋ねよう。答えてくれれば、何の権威があってこんなことをしているのか、教えよう。
11:30 ヨハネの洗礼は、天から来たものか、それとも人から出たものか。答えてくれ。」
11:31 彼らは互いに話し合った。「どう答えよう。『天から』と言えば、『では、なぜヨハネを信じなかったのか』と言うだろう。
11:32 でも、『人から』と言えばどうなる。」彼らは群衆が怖かった。みんながヨハネを本物の預言者だと思っていたからだ。
11:33 そこで彼らはイエスに、「わからない」と答えた。するとイエスは言った。「では、わたしも、何の権威があってこんなことをしているのか教えない。」
12:1 それからイエスは、たとえで話しはじめた。「ある人がぶどう畑を作った。まわりに垣根をめぐらし、ぶどうをしぼるための穴を掘り、見張りの塔を建てた。そして、それを農夫たちに貸して旅に出た。
12:2 収穫の時期になると、その人は農夫たちのところに一人の僕を送った。ぶどう畑の実の分け前を受け取らせるためだ。
12:3 ところが農夫たちは、その僕を捕まえて殴りつけ、何も持たせずに追い返した。
12:4 そこで主人は、また別の僕を送った。彼らはその僕の頭を殴り、ひどく辱めた。
12:5 主人はさらにもう一人を送ったが、彼らはその僕を殺した。ほかにも大勢の僕を送ったが、農夫たちはある者を殴り、ある者を殺した。
12:6 主人にはもう一人、愛する息子がいるだけだった。最後にその息子を送り、『わたしの息子なら、敬ってくれるだろう』と思った。
12:7 ところが農夫たちは、こう相談し合った。『あれが跡取りだ。さあ、殺してしまおう。そうすれば、この畑はおれたちのものになる。』
12:8 そして息子を捕まえて殺し、ぶどう畑の外へ放り出した。
12:9 さて、ぶどう畑の持ち主はどうするだろうか。自分で乗り込んできて農夫たちを滅ぼし、畑を別の人たちに与えるだろう。
12:10 あなたたちは、聖書のこの言葉を読んだことがないのか。『家を建てる者たちが捨てた石、それが一番大切な隅の石になった。
12:11 これは主がなさったことで、わたしたちの目には驚くべきことだ。』」
12:12 彼らはイエスを捕まえようとした。この話は自分たちに向けて語られたと気づいたからだ。でも群衆を恐れて、イエスをそのままにして立ち去った。
12:13 さて、彼らはイエスの言葉じりを捕らえようと、ファリサイ派とヘロデ派の何人かをイエスのところへ送り込んだ。
12:14 彼らは来て言った。「先生、あなたは真実な方で、だれにも遠慮しないと、わたしたちは知っています。人の顔色をうかがわず、ありのままに神の道を教えておられるからです。ところで、ローマ皇帝に税金を納めることは許されているでしょうか、いないでしょうか。納めるべきですか、納めなくてよいですか。」
12:15 イエスは彼らの見せかけを見抜いて言った。「なぜわたしを試すのか。デナリ銀貨を一枚持ってきて見せなさい。」
12:16 彼らが持ってくると、イエスは言った。「これはだれの顔で、だれの名前が刻まれているのか。」彼らは「皇帝のものです」と答えた。
12:17 するとイエスは言った。「皇帝のものは皇帝に、神のものは神に返しなさい。」彼らはイエスにすっかり驚いた。
12:18 さて、復活などないと言っているサドカイ派の人たちが、イエスのところへ来て尋ねた。
12:19 「先生、モーセはわたしたちにこう書き残しました。ある人の兄が死んで、妻を残し、子どもがいなかった場合、その弟が兄の妻をめとって、兄のために子孫を残さなければならない、と。
12:20 さて、七人の兄弟がいました。長男が妻をめとりましたが、子どもを残さずに死にました。
12:21 次男がその女性をめとりましたが、やはり子どもを残さずに死にました。三男も同じでした。
12:22 こうして七人とも子どもを残しませんでした。最後にその女性も死にました。
12:23 復活のとき、みんなが生き返ったら、彼女はだれの妻になるのでしょうか。七人ともその女性を妻にしたのですから。」
12:24 イエスは言った。「あなたたちが間違っているのは、聖書も神の力も知らないからではないか。
12:25 死んだ人が生き返るときには、結婚することも、めとられることもない。天にいる天使のようになるのだ。
12:26 死んだ人が生き返ることについては、モーセの書の、燃える柴のくだりを読んだことがないのか。神はモーセにこう言われた。『わたしはアブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神である。』
12:27 神は死んだ者の神ではなく、生きている者の神なのだ。あなたたちは大きく間違っている。」
12:28 律法学者の一人が近づいてきた。彼らが議論しているのを聞き、イエスがうまく答えたのを見て、こう尋ねた。「すべての掟の中で、どれが一番大切なのですか。」
12:29 イエスは答えた。「第一の掟はこれだ。『イスラエルよ、聞け。わたしたちの神である主は、唯一の主である。
12:30 あなたは心を尽くし、命を尽くし、思いを尽くし、力を尽くして、あなたの神である主を愛しなさい。』
12:31 第二の掟はこれだ。『隣人を自分自身のように愛しなさい。』この二つより大切な掟は、ほかにない。」
12:32 すると律法学者はイエスに言った。「先生、おっしゃる通りです。神は唯一であって、そのほかに神はいない、と言われたのは本当です。
12:33 そして心を尽くし、知恵を尽くし、力を尽くして神を愛すること、また隣人を自分自身のように愛することは、どんな焼き尽くす供え物やいけにえよりも大切です。」
12:34 イエスは、彼が賢く答えたのを見て言った。「あなたは神の国から遠くない。」それからは、もうだれもあえてイエスに質問しようとはしなかった。
12:35 イエスは神殿で教えながら、こう言った。「律法学者たちは、どうしてキリストはダビデの子だと言うのか。
12:36 ダビデ自身が、聖霊に導かれてこう言っている。『主は、わたしの主に言われた。「わたしの右に座りなさい。あなたの敵をあなたの足の下に置くまで。」』
12:37 ダビデ自身がキリストを主と呼んでいる。それなら、どうしてキリストがダビデの子でありうるのか。」大勢の群衆は、喜んでイエスの話に耳を傾けていた。
12:38 イエスは教えの中でこう言った。「律法学者に気をつけなさい。彼らは長い衣をまとって歩き回るのを好み、広場であいさつされることを好む。
12:39 会堂では上席に、宴会では上座に座りたがる。
12:40 彼らはやもめの家を食い物にし、見せかけのために長い祈りをする。こういう者たちは、より厳しい裁きを受けることになる。」
12:41 イエスは献金箱の向かいに座って、群衆がお金を箱に入れる様子を見ていた。多くの金持ちがたくさん入れていた。
12:42 そこへ、一人の貧しいやもめがやって来て、レプトン銅貨を二枚入れた。それはごくわずかな額だった。
12:43 そしてイエスは弟子たちを呼び寄せて言った。「はっきり言っておく。この貧しいやもめは、献金箱にお金を入れたどの人よりも、たくさん入れたのだ。
12:44 みんなは、有り余る中から入れた。でもこの人は、乏しい中から、持っていたものすべて、生活費の全部を入れたのだ。」
13:1 イエスが神殿を出て行くとき、弟子の一人が言った。「先生、見てください。なんてすごい石でしょう。なんて立派な建物でしょう。」
13:2 するとイエスは言った。「この大きな建物を見ているのか。ここでは石一つほかの石の上に残らず、すべて崩されてしまう。」
13:3 それからイエスがオリーブ山で神殿の向かいに座っていると、ペトロ、ヤコブ、ヨハネ、アンデレが、そっとイエスにたずねた。
13:4 「教えてください。それはいつ起こるのですか。そして、それがすべて実現しようとするとき、どんなしるしがあるのですか。」
13:5 イエスは彼らに話しはじめた。「気をつけなさい。だれにもだまされないように。
13:6 多くの者がわたしの名を使って現れ、『わたしはその者である』と言って、大勢の人をだますだろう。
13:7 戦争が起こったり、戦争のうわさを聞いたりしても、あわててはいけない。そういうことは必ず起こる。でも、それで終わりというわけではない。
13:8 民族は民族に、国は国に敵対して立ち上がる。あちこちで地震が起こり、飢きんも起こる。これらは、生みの苦しみの始まりにすぎない。
13:9 あなたがたは、自分のことに気をつけていなさい。人々はあなたがたを捕らえて裁判にかけ、会堂でむち打つだろう。また、わたしのために、総督や王たちの前に立たされる。それが、彼らへの証しとなる。
13:10 そして福音はまず、すべての民族に宣べ伝えられなければならない。
13:11 人々があなたがたを捕らえて引いていくとき、何を話そうかと前もって心配してはいけない。そのとき与えられる言葉を、そのまま話しなさい。話すのはあなたがたではなく、聖霊なのだから。
13:12 兄弟は兄弟を、父は子を裏切って死に追いやる。子は親に逆らって立ち上がり、親を死なせる。
13:13 そして、あなたがたはわたしの名のために、すべての人から憎まれる。でも、最後まで耐え忍ぶ人は救われる。
13:14 荒廃をもたらす、あの忌まわしいものが、立ってはならない場所に立っているのを見たら——読む人は、この意味を悟ってほしい——そのとき、ユダヤにいる人々は山へ逃げなさい。
13:15 屋上にいる人は、下りてはいけない。家の中の物を取り出そうと、中に入ってもいけない。
13:16 畑にいる人は、上着を取りに戻ってはいけない。
13:17 その日、身ごもっている人や、乳飲み子をかかえている人は、ほんとうに気の毒だ。
13:18 それが冬に起こらないように祈りなさい。
13:19 その日々は、大きな苦しみのときになる。神がこの世界を造った初めから今まで、こんな苦しみは一度もなかったし、これからも決してない。
13:20 もし主がその期間を短くしなかったら、だれ一人助からなかっただろう。でも主は、自分が選んだ人たちのために、その期間を短くしてくれたのだ。
13:21 そのとき、だれかがあなたたちに『見て、キリストはここにいる』とか『あそこにいる』と言っても、信じてはいけない。
13:22 にせのキリストやにせの預言者が現れて、しるしや不思議なわざを見せるからだ。できるなら、神に選ばれた人たちさえもだまそうとする。
13:23 だから、あなたたちは気をつけていなさい。わたしはすべてを前もって話しておいた。
13:24 しかしその日々、あの苦しみのあとで、太陽は暗くなり、月は光を放たなくなる。
13:25 星は空から落ち、天にある力あるものは揺り動かされる。
13:26 そしてそのとき、人々は、人の子が大きな力と栄光をまとって雲に乗って来るのを見る。
13:27 そのとき人の子は天使たちを送り、地の果てから天の果てまで、四方から、選ばれた人たちを集める。
13:28 いちじくの木からたとえを学びなさい。枝が柔らかくなって葉が出はじめると、夏が近いとわかる。
13:29 同じように、あなたたちも、こうしたことが起こるのを見たら、それが戸口のすぐそばまで近づいていると知りなさい。
13:30 はっきり言っておく。これらのことがすべて起こるまで、今の時代の人たちがいなくなることは決してない。
13:31 天と地は消えてなくなる。でも、わたしの言葉が消えることは決してない。
13:32 その日、その時のことは、だれも知らない。天にいる天使たちも、子も知らない。ただ父だけが知っている。
13:33 気をつけて、目を覚ましていなさい。その時がいつ来るのか、あなたたちにはわからないのだから。
13:34 それは、旅に出る人のようなものだ。その人は家をあとにするとき、しもべたちにそれぞれの仕事を任せ、門番には目を覚ましているようにと言いつけた。
13:35 だから、目を覚ましていなさい。家の主人がいつ帰ってくるのか、あなたたちにはわからない。夕方か、真夜中か、鶏が鳴くころか、朝早くか、それはわからないのだ。
13:36 主人が突然帰ってきて、あなたたちが眠っているのを見つける、そんなことのないように。
13:37 あなたたちに言うこのことを、わたしはすべての人に言う。目を覚ましていなさい。」
14:1 過越の祭りと種なしパンの祭りまで、あと二日となっていた。祭司長たちや律法学者たちは、イエスをこっそり捕らえて殺す方法を探していた。
14:2 彼らはこう言っていた。「祭りの間はやめておこう。民衆が騒ぎ出すといけないから。」
14:3 イエスがベタニアで、重い皮膚病を患ったシモンの家にいて食事をしていたときのことだ。一人の女性がやって来た。純粋なナルドから作った、とても高価な香油の入った石膏のつぼを持っていた。彼女はそのつぼを割り、香油をイエスの頭に注いだ。
14:4 すると、その場にいた何人かが腹を立てて、こう言い合った。「どうして香油をこんなにむだにするのか。
14:5 この香油を売れば、三百デナリ以上になって、貧しい人たちに分けてあげられたのに。」そう言って、彼らはその女性を厳しく責めた。
14:6 でも、イエスは言った。「そのままにしておきなさい。どうしてこの人を困らせるのか。この人は、わたしにとても良いことをしてくれたのだ。」
14:7 貧しい人たちは、いつもあなたたちのそばにいる。だから、その気になれば、いつでも手を差し伸べてあげられる。でも、わたしはいつまでも一緒にいるわけじゃない。
14:8 この人は、自分にできることをしてくれた。わたしの体に前もって香油を塗って、埋葬の準備をしてくれたのだ。
14:9 はっきり言っておく。世界のどこであれ、この良い知らせが伝えられるところでは、この人のしたことも語られて、いつまでも忘れられないだろう。
14:10 さて、十二人の弟子の一人、ユダ・イスカリオテが、イエスを引き渡そうとして、祭司長たちのところへ出かけていった。
14:11 祭司長たちはそれを聞いて喜び、ユダにお金を渡すと約束した。それでユダは、イエスをうまく引き渡すきっかけをうかがうようになった。
14:12 種なしパンの祭りの最初の日、つまり過越の子羊をほふる日、弟子たちがイエスに言った。「過越の食事をなさるのに、どこに準備しに行けばいいですか。」
14:13 そこでイエスは、弟子を二人送り出して言った。「町に入りなさい。すると、水がめを運んでいる男の人が出迎えるから、その人について行きなさい。
14:14 そして、その人が入っていく家の主人にこう言いなさい。『先生が、弟子たちと一緒に過越の食事をする部屋はどこですか、と言っています。』
14:15 すると、その主人が二階の広い部屋を見せてくれる。そこはもう準備が整っているから、そこでわたしたちの食事の用意をしなさい。」
14:16 弟子たちは出かけて町に入り、イエスが言ったとおりのことを見つけた。そして、過越の食事の用意をした。
14:17 夕方になると、イエスは十二人と一緒にやって来た。
14:18 みんなが席についいて食事をしていると、イエスは言った。「はっきり言っておく。あなたたちの中の一人、わたしと一緒に食べている者が、わたしを裏切る。」
14:19 弟子たちは悲しくなって、次々にイエスに尋ねた。「まさか、わたしのことですか。」
14:20 イエスは言った。「十二人のうちの一人だ。わたしと一緒に同じ皿にパンを浸している者だ。
14:21 人の子は、聖書に書いてあるとおりに去って行く。でも、人の子を裏切るその人は、不幸だ。その人は、生まれてこなかったほうがよかった。」
14:22 みんなが食事をしていると、イエスはパンを取り、感謝の祈りをささげてから、それを裂いて弟子たちに渡して言った。「取りなさい。これはわたしの体だ。」
14:23 それから杯を取り、感謝の祈りをささげてから弟子たちに渡すと、みんながその杯から飲んだ。
14:24 そしてイエスは言った。「これはわたしの血だ。多くの人のために流される、契約の血だ。
14:25 はっきり言っておく。わたしはもう二度と、ぶどうから造ったものを飲まない。神の御国で新しく飲むその日まではね。」
14:26 それから、みんなで賛美の歌をうたってから、オリーブ山へ出かけて行った。
14:27 イエスは弟子たちに言った。「あなたたちはみんな、わたしのことでつまずいて離れていく。聖書にこう書いてあるからだ。『わたしは羊飼いを打つ。すると羊たちは散らされる。』
14:28 でも、わたしは復活したあと、あなたたちより先にガリラヤへ行く。」
14:29 すると、ペトロがイエスに言った。「たとえみんながつまずいても、わたしはつまずきません。」
14:30 イエスは言った。「はっきり言っておく。あなたは今日、今夜、鶏が二度鳴く前に、三度わたしのことを知らないと言うだろう。」
14:31 でも、ペトロは強く言い張った。「たとえあなたと一緒に死ぬことになっても、あなたを知らないなんて絶対に言いません。」ほかのみんなも同じように言った。
14:32 それから、彼らはゲツセマネという場所に着いた。イエスは弟子たちに言った。「わたしが祈っている間、ここに座っていなさい。」
14:33 そして、ペトロとヤコブとヨハネを連れて行った。イエスはひどく動揺し、苦しみ始めた。
14:34 そして彼らに言った。「わたしの心は、死にそうなほど深く悲しんでいる。ここにいて、目を覚ましていなさい。」
14:35 イエスは少し進んで地面にひれ伏し、できることなら、この時が自分から過ぎ去るようにと祈った。
14:36 そして言った。「アッバ、父よ。あなたには、どんなことでもできます。この杯をわたしから取りのけてください。でも、わたしが望むことではなく、あなたが望むことが行われますように。」
14:37 イエスは戻って来て、弟子たちが眠っているのを見つけた。そしてペトロに言った。「シモン、眠っているのか。一時間も目を覚ましていられなかったのか。
14:38 誘惑に負けないように、目を覚まして祈っていなさい。心では望んでいても、体は弱いものだ。」
14:39 イエスはもう一度離れて行き、同じ言葉で祈った。
14:40 そして戻って来ると、また弟子たちが眠っているのを見つけた。彼らはまぶたが重くなっていて、イエスに何と答えたらいいのか分からなかった。
14:41 イエスは三度目に戻って来て、彼らに言った。「まだ眠って休んでいるのか。もういい。時が来た。見なさい、人の子は罪人たちの手に引き渡される。
14:42 立ちなさい、行こう。見なさい、わたしを裏切る者が近づいて来た。」
14:43 そしてイエスがまだ話しているうちに、十二人の一人であるユダがやって来た。いっしょに、剣や棒を持った群衆もいた。彼らは祭司長たちや律法学者たち、長老たちのところから送られて来た人たちだった。
14:44 イエスを裏切ろうとしていたユダは、前もって彼らに合図を決めていた。「わたしが口づけするのがその人だ。捕まえて、しっかり見張って連れて行け。」
14:45 そして到着すると、ユダはすぐにイエスに近づき、「先生」と言って口づけした。
14:46 すると人々はイエスに手をかけて、捕まえた。
14:47 そばにいた人の一人が剣を抜き、大祭司の召使いに切りつけて、その耳を切り落とした。
14:48 イエスは彼らに言った。「まるで強盗を捕まえるように、剣や棒を持ってわたしを捕まえに来たのか。
14:49 わたしは毎日、神殿であなたたちといっしょにいて教えていた。それなのに、あなたたちはわたしを捕まえなかった。でも、これは聖書のことばが実現するためなのだ。」
14:50 すると弟子たちはみな、イエスを見捨てて逃げてしまった。
14:51 ひとりの若者が、素肌に亜麻布を一枚まとってイエスについて行っていた。人々はその若者を捕まえようとした。
14:52 すると若者は亜麻布を脱ぎ捨てて、裸で逃げて行った。
14:53 人々はイエスを大祭司のところへ連れて行った。そこには祭司長たち、長老たち、律法学者たちがみな集まって来た。
14:54 ペテロは遠くからイエスのあとについて行き、大祭司の家の中庭まで入って行った。そして召使いたちといっしょに座り、火にあたって体を温めていた。
14:55 祭司長たちと最高法院の全員は、イエスを死刑にするために不利な証言を探した。でも、見つからなかった。
14:56 多くの者がイエスについて偽りの証言をしたが、その証言は食い違っていたからだ。
14:57 何人かが立ち上がり、イエスについてこう偽りの証言をした。
14:58 「わたしたちは、この人がこう言うのを聞きました。『わたしは人の手で造ったこの神殿を壊し、三日のうちに、人の手によらない別の神殿を建てる』と。」
14:59 しかし、それでも彼らの証言は食い違っていた。
14:60 そこで大祭司が真ん中に立ち、イエスに問いただした。「何も答えないのか。この人たちがお前に不利な証言をしているではないか。」
14:61 しかし、イエスは黙ったまま、何もお答えにならなかった。大祭司はもう一度尋ねた。「お前は、ほめたたえられる方の子、キリストなのか。」
14:62 イエスは言われた。「わたしは、それである。あなたたちは、人の子が力ある方の右に座り、天の雲とともに来るのを見るだろう。」
14:63 すると大祭司は自分の服を引き裂いて言った。「これ以上、証人が何の役に立とうか。
14:64 今の冒涜の言葉を聞いたはずだ。あなたたちはどう思うか。」すると全員が、イエスを死刑に当たる罪ありと決めつけた。
14:65 そして何人かが、イエスに唾を吐きかけ、その顔をおおって、こぶしで殴りはじめた。そして「言い当ててみろ」と言った。役人たちもイエスを引き取り、平手で打った。
14:66 ペテロが下の中庭にいると、大祭司に仕える女中の一人がやって来た。
14:67 女中はペテロが火にあたっているのを見ると、じっと見つめて言った。「あなたも、あのナザレのイエスと一緒にいたでしょう。」
14:68 でもペテロは打ち消した。「何のことか、わたしにはさっぱりわからない。」そして彼は入り口の方へ出て行った。すると、にわとりが鳴いた。
14:69 女中は彼を見て、そばに立っている人たちにまた言いはじめた。「この人は、あの仲間の一人よ。」
14:70 でもペテロはまた打ち消した。しばらくすると、そばにいた人たちがまたペテロに言った。「確かにお前はあの仲間だ。ガリラヤの人だし、話し方も同じだからな。」
14:71 するとペテロは、呪いの言葉まで口にし、誓って言いはじめた。「あなたたちの言うその人のことなど、わたしは知らない。」
14:72 するとすぐに、にわとりが二度目に鳴いた。ペテロは、イエスが「にわとりが二度鳴く前に、あなたは三度わたしを知らないと言う」と言った言葉を思い出した。そして、泣き崩れた。
15:1 朝になるとすぐ、祭司長たちは長老たちや律法学者たち、それに最高法院の全員と相談した。そしてイエスを縛って引いて行き、ピラトに引き渡した。
15:2 ピラトはイエスに尋ねた。「お前がユダヤ人の王なのか。」イエスは答えて言った。「あなたがそう言っている。」
15:3 祭司長たちは、イエスをいろいろと訴えた。
15:4 ピラトはまたイエスに尋ねた。「何も答えないのか。ほら、あの人たちがこんなにお前を訴えているぞ。」
15:5 それでもイエスは、もう何も答えなかった。ピラトはそれに驚いた。
15:6 ところで、祭りのたびにピラトは、人々が願い出る囚人を一人、釈放するのが常だった。
15:7 そのころ、バラバという男が捕まって牢につながれていた。彼は暴動を起こした仲間たちと一緒にいて、その暴動で人を殺していた。
15:8 群衆が集まってきて、いつものように囚人を釈放してほしいと願い始めた。
15:9 ピラトは彼らに答えて言った。「お前たちのために、ユダヤ人の王を釈放してほしいのか。」
15:10 ピラトは、祭司長たちがねたみからイエスを引き渡したことに気づいていたのだ。
15:11 しかし祭司長たちは、むしろバラバの方を釈放してもらおうと、群衆をあおり立てた。
15:12 ピラトはもう一度、彼らに言った。「では、お前たちがユダヤ人の王と呼ぶこの男を、どうしてほしいのか。」
15:13 すると群衆はまた叫んだ。「十字架につけろ。」
15:14 ピラトは言った。「いったいこの男が、どんな悪いことをしたというのか。」しかし彼らは、ますます激しく叫んだ。「十字架につけろ。」
15:15 ピラトは群衆を満足させようと思い、バラバを釈放した。そしてイエスをむち打たせたうえで、十字架につけるために引き渡した。
15:16 兵士たちはイエスを、総督官邸と呼ばれる建物の中庭に連れて行った。そして部隊全体を呼び集めた。
15:17 彼らはイエスに紫の衣を着せ、いばらで冠を編んで頭にかぶせた。
15:18 そして「ユダヤ人の王、ばんざい」と言って、からかいのあいさつを始めた。
15:19 そして彼らは葦の棒でイエスの頭をたたき、つばを吐きかけ、ひざまずいて拝むふりをした。
15:20 こうしてさんざんからかったあと、紫の衣を脱がせ、元の服を着せた。そして十字架につけるために、イエスを外へ引き出した。
15:21 ちょうどそのとき、畑から帰る途中のキレネ人シモンという人が通りかかった。アレクサンドロとルフォスの父だ。兵士たちは彼を無理やりつかまえ、イエスの十字架を運ばせた。
15:22 そして彼らはイエスを、ゴルゴタという場所に連れて行った。「どくろの場所」という意味だ。
15:23 彼らは没薬を混ぜたぶどう酒をイエスに飲ませようとした。でもイエスは受け取らなかった。
15:24 そして彼らはイエスを十字架につけた。それからイエスの服を分け合い、だれが何を取るか、くじを引いて決めた。
15:25 イエスを十字架につけたのは、午前九時のことだった。
15:26 イエスの罪状を記した札には、「ユダヤ人の王」と書かれていた。
15:27 彼らはイエスといっしょに、二人の強盗も十字架につけた。一人はイエスの右に、もう一人は左に。
15:28 こうして、「彼は罪人たちの一人に数えられた」と聖書に書いてある言葉が実現した。
15:29 そこを通りかかった人々は、頭を振りながらイエスをののしった。「おい、神殿を壊して三日で建て直す人よ、
15:30 十字架から降りて、自分を救ってみろ。」
15:31 同じように、祭司長たちも律法学者たちといっしょにイエスをからかって、こう言い合った。「他人は救ったのに、自分は救えないのか。
15:32 キリスト、イスラエルの王なら、今すぐ十字架から降りてこい。それを見たら、わたしたちも信じよう。」いっしょに十字架につけられた者たちも、イエスをののしった。
15:33 昼の十二時になると、あたり一面が暗くなった。それは午後三時まで続いた。
15:34 午後三時に、イエスは大声で叫んだ。「エロイ、エロイ、レマ、サバクタニ。」これは「わたしの神、わたしの神、どうしてわたしをお見捨てになったのですか」という意味である。
15:35 そばに立っていた何人かは、これを聞いて言った。「見ろ、エリヤを呼んでいる。」
15:36 すると、ひとりが走って行き、スポンジに酸っぱいぶどう酒を含ませ、それを葦の棒の先につけてイエスに飲ませようとした。そして言った。「待て。エリヤが降ろしに来るかどうか、見てみよう。」
15:37 しかしイエスは、大きな声を上げて、息を引き取った。
15:38 すると、神殿の幕が上から下まで真っ二つに裂けた。
15:39 イエスの正面に立っていた百人隊長は、イエスがこのように息を引き取るのを見て言った。「本当に、この人は神の子だった。」
15:40 また、遠くから見ている女たちもいた。その中には、マグダラのマリア、小ヤコブとヨセの母マリア、それにサロメがいた。
15:41 この女たちは、イエスがガリラヤにいたころから従って、その世話をしていた人々である。ほかにも、イエスといっしょにエルサレムに上って来た女たちが大勢いた。
15:42 やがて夕方になった。その日は準備の日、つまり安息日の前日だった。
15:43 そこへ、アリマタヤ出身のヨセフという人がやって来た。議会の有力な議員で、彼自身も神の国が来るのを待ち望んでいた。ヨセフは思い切ってピラトのところへ行き、イエスの遺体を引き取りたいと願い出た。
15:44 ピラトは、イエスがもう死んだと聞いておどろいた。そこで百人隊長を呼び寄せて、イエスが死んでからどれくらいたつのかとたずねた。
15:45 百人隊長から報告を受けて確かめると、ピラトは遺体をヨセフに渡した。
15:46 ヨセフは亜麻布を買ってきた。そしてイエスを十字架から降ろすと、その布で包み、岩をくりぬいて造った墓に納めた。それから墓の入り口に大きな石を転がして、ふさいだ。
15:47 マグダラのマリアと、ヨセの母マリアは、イエスがどこに納められるのかをじっと見ていた。
16:1 安息日が終わると、マグダラのマリアと、ヤコブの母マリア、それにサロメは、香料を買った。イエスの遺体に塗るためだった。
16:2 そして週の初めの日、朝早く、日がのぼるころに、彼女たちは墓へ向かった。
16:3 その道々、彼女たちは「墓の入り口から、だれがあの石を転がしてくれるだろう」と話し合っていた。
16:4 ところが、目を上げて見ると、あの石はもう転がしてあった。とても大きな石だったのに。
16:5 墓の中に入ると、白い長い衣を着た若者が右側にすわっていた。彼女たちはひどくおどろいた。
16:6 すると、その若者は言った。「おどろかなくていい。あなたたちは、十字架につけられたナザレのイエスを探しているのだろう。イエスはよみがえった。ここにはいない。ほら、納められていた場所はここだ。」
16:7 でも、行って、イエスの弟子たちに、それにペテロにこう伝えなさい。『イエスはあなたたちより先にガリラヤへ行かれる。前に言われたとおり、そこでイエスに会える。』」
16:8 彼女たちは墓から出て、逃げ出した。ふるえが止まらず、我を忘れていたのだ。そしてこわくて、だれにも何も言わなかった。それから彼女たちは、命じられたことをすべて、ペテロとその仲間に手短に伝えた。その後、イエス自身も彼らを通して、東から西まで、永遠の救いを告げる聖なる、朽ちることのないメッセージを送り出した。アーメン。
16:9 イエスは週の初めの日の朝早く、よみがえった。そしてまず、マグダラのマリアの前に姿を現した。かつてイエスが七つの悪霊を追い出してあげた女性だ。
16:10 マリアは行って、イエスといっしょにいた人たちに知らせた。彼らは悲しんで泣いていた。
16:11 でも彼らは、イエスが生きていて、マリアがその姿を見たと聞いても、信じなかった。
16:12 その後、イエスは彼らのうちの二人に、別の姿で現れた。二人は歩いて田舎へ向かっているところだった。
16:13 二人は戻って、ほかの人たちに知らせた。それでも彼らは、二人のことも信じなかった。
16:14 その後、イエスは十一人が食事をしているときに現れた。そして、彼らが信じようとせず、心をかたくなにしていたことをきびしく責めた。よみがえったイエスを見た人たちの言葉を、信じなかったからだ。
16:15 そしてイエスは彼らに言った。「世界中どこへでも行って、すべての人に良い知らせを伝えなさい。
16:16 信じてバプテスマを受ける者は救われる。でも、信じない者は罪に定められる。
16:17 信じる人たちには、こういうしるしがついてくる。わたしの名によって悪霊を追い出し、新しい言葉で話す。
16:18 蛇を手でつかんでも、死ぬような毒を飲んでも、決して害を受けない。病人に手を置けば、その人は元気になる。」
16:19 こうして主イエスは、彼らにこう話したあと、天に上げられ、神の右の座に着いた。
16:20 弟子たちは出て行って、あらゆるところで福音を宣べ伝えた。主は彼らとともに働き、彼らの語る言葉が本物であることを、それにともなうしるしによって証明された。
ルカによる福音書
1:1 わたしたちの間で実現した出来事について、これまでに多くの人が物語をまとめようとしてきた。
1:2 それは、初めから自分の目で見て、その言葉に仕えてきた人たちが、わたしたちに語り伝えてくれたとおりのものだ。
1:3 そこでわたしも、すべてを初めから丁寧に調べたうえで、あなたのために順を追って書くことにした。尊敬するテオフィロさん、
1:4 あなたが教えられた事がらが確かなものだと、はっきり分かってもらうためだ。
1:5 ユダヤの王ヘロデの時代のことだ。アビヤの組に属する、ザカリヤという名の祭司がいた。妻はアロンの家系の出で、名をエリサベツといった。
1:6 二人とも神の前に正しい人で、主の戒めと定めをすべて守り、非のうちどころのない生き方をしていた。
1:7 けれども、二人には子どもがいなかった。エリサベツが子を産めない体で、二人ともすでに年をとっていたからだ。
1:8 さて、ザカリヤが自分の組の番に当たり、神の前で祭司の務めを果たしていたときのことだ。
1:9 祭司の慣習に従ってくじを引くと、主の神殿に入って香をたく役目が彼に当たった。
1:10 香をたくその時間、大勢の人々はみな外で祈っていた。
1:11 すると、主の使いがザカリヤに現れ、香をたく祭壇の右側に立った。
1:12 それを見たザカリヤは動揺し、恐ろしくてたまらなくなった。
1:13 すると、天使はザカリヤにこう言った。「こわがらなくていい、ザカリヤ。あなたの祈りは聞き届けられた。妻のエリサベツが、あなたに男の子を産む。その子をヨハネと名づけなさい。
1:14 あなたには喜びとよろこびがあふれ、大勢の人がこの子の誕生を喜ぶだろう。
1:15 この子は主の前で偉大な者となるからだ。ぶどう酒も強い酒もいっさい飲まず、母のお腹にいるときから聖霊に満たされる。
1:16 そして、イスラエルの多くの人々を、彼らの神である主のもとへ立ち返らせる。
1:17 この子はエリヤの霊と力を受けて主の前に先立って進み、父親たちの心を子どもたちへと向けさせ、逆らう者たちを正しい人の考え方へと立ち返らせる。こうして、主のために整えられた民を用意するのだ。」
1:18 ザカリヤは天使に言った。「どうして、そんなことがわかるのですか。わたしはもう年老いていますし、妻も年をとっているのに。」
1:19 天使は答えた。「わたしはガブリエル。神の前に立つ者だ。あなたに話し、この良い知らせを伝えるために送られてきた。
1:20 いいか、あなたは口がきけなくなり、これらのことが実現する日まで話せなくなる。わたしの言葉を信じなかったからだ。その言葉は、時が来れば必ず実現する。」
1:21 人々はザカリヤを待っていて、彼が聖所の中でこんなに手間取っているのを不思議に思っていた。
1:22 ところが、出てきたザカリヤは人々に話すことができなかった。それで人々は、彼が聖所の中で幻を見たのだと気づいた。ザカリヤは身ぶりで示すばかりで、口がきけないままだった。
1:23 そして、務めの期間が終わると、ザカリヤは自分の家に帰っていった。
1:24 それから間もなく、妻のエリサベツは身ごもり、五か月のあいだ人目を避けて過ごし、こう言った。
1:25 「主は今、こうしてわたしに目を向けてくださった。人々の間でわたしが受けてきた恥を、取り去ってくださったのだ。」
1:26 エリサベツが身ごもって六か月目に、神は天使ガブリエルを、ガリラヤのナザレという町に送った。
1:27 ダビデの家系のヨセフという人と婚約していた、一人の処女のところへである。その処女の名前はマリヤといった。
1:28 天使はマリヤのところに来て言った。「おめでとう、恵みを受けた人。主があなたと共におられます。」
1:29 マリヤはこの言葉にひどく戸惑い、これはいったい何のあいさつなのだろうと考え込んだ。
1:30 すると天使は言った。「こわがらなくていい、マリヤ。あなたは神から恵みを受けたのです。
1:31 いいですか、あなたは身ごもって男の子を産みます。その子をイエスと名づけなさい。
1:32 その子は偉大な人になり、いと高き神の子と呼ばれます。神である主は、その子に父ダビデの王座をお与えになります。
1:33 その子はヤコブの家をいつまでも治め、その御国が終わることはありません。」
1:34 マリヤは天使に言った。「どうしてそんなことがあるのでしょう。わたしはまだ男の人を知らないのに。」
1:35 天使は答えた。「聖なる霊があなたに降り、いと高き神の力があなたをおおいます。だから、生まれてくる子は聖なる者、神の子と呼ばれます。
1:36 見なさい、あなたの親せきのエリサベツも、あの年になって男の子を身ごもっています。子どもができないと言われていた人なのに、もう六か月です。
1:37 神にできないことは何もないのだから。」
1:38 マリヤは言った。「わたしは主に仕える者です。あなたの言葉のとおり、この身に起こりますように。」すると、天使は彼女のもとを去っていった。
1:39 そのころ、マリヤは立って、山あいにあるユダの町へと急いで向かった。
1:40 そしてザカリヤの家に入り、エリサベツにあいさつした。
1:41 エリサベツがマリヤのあいさつを聞いたとき、おなかの中の子がおどった。エリサベツは聖なる霊に満たされ、
1:42 大きな声で叫んだ。「あなたは女の中で特別に祝福された人。あなたのおなかの子も祝福されています。
1:43 わたしの主の母が、わたしのところに来てくださるなんて。どうしてこんなことが起きるのでしょう。
1:44 だって、あなたのあいさつの声がわたしの耳に届いたとたん、おなかの中の子が喜んでおどったのです。
1:45 主から告げられたことは必ずそのとおりになる。そう信じた人は、なんて幸せなのでしょう。」
1:46 マリヤは言った。「わたしの心は主をあがめ、
1:47 わたしを救ってくださる神を思って、わたしの魂は喜びにあふれます。
1:48 神は、身分の低いこのわたしに目を留めてくださったのだから。今からは、どの時代の人もわたしを幸せな者と呼ぶでしょう。
1:49 力あるお方が、わたしに大きなことをしてくださったからです。その名は聖なるもの。
1:50 神を敬う人には、どの時代までも神の憐れみが注がれます。
1:51 神はその腕で力をふるい、心の中で高ぶっている人たちを追い散らしました。
1:52 権力を持つ者を王座から引きずり降ろし、身分の低い人を高く引き上げました。
1:53 飢えた人を良いもので満たし、豊かな人を何も持たせずに追い返しました。
1:54 神は、僕であるイスラエルに手を差し伸べ、憐れみを忘れませんでした。
1:55 わたしたちの先祖に、つまりアブラハムとその子孫にいつまでもと約束してくださった、そのとおりに。」
1:56 マリヤは三か月ほどエリサベツのところに滞在し、それから自分の家に帰った。
1:57 さて、エリサベツは出産の時が来て、男の子を産んだ。
1:58 近所の人たちや親族は、主がエリサベツに大きな憐れみをかけてくださったと聞いて、一緒に喜んだ。
1:59 八日目に、人々はその子に割礼を施すためにやって来た。そして、父親の名をとって、その子をザカリヤと呼ぼうとした。
1:60 すると母親が、「いいえ、この子はヨハネと呼びます」と言った。
1:61 すると人々は彼女に、「あなたの親族には、そんな名前の人は一人もいませんよ」と言った。
1:62 そして父親のザカリヤに、この子を何と名づけたいのか、身振りで尋ねた。
1:63 ザカリヤは書く板を持ってこさせて、「この子の名はヨハネ」と書いた。すると、みんな驚いた。
1:64 その瞬間、彼の口が開き、舌も自由になって、話し始め、神をほめたたえた。
1:65 近所の人たちはみんな恐れを感じた。そして、この出来事はすべて、ユダヤの山あいの地方じゅうで語り伝えられた。
1:66 聞いた人たちはみんな、それを心に留めて、「この子はいったいどんな人になるのだろう」と言い合った。事実、主の手がこの子とともにあったのだ。
1:67 父親のザカリヤは聖霊に満たされ、こう預言した。
1:68 「イスラエルの神である主をほめたたえよう。主は自分の民のもとを訪れ、その民を救い出してくださった。
1:69 主は、僕ダビデの家系から、わたしたちのために力強い救い主を起こしてくださった。
1:70 それは、大昔から聖なる預言者たちの口を通して語られていたとおりだ。
1:71 わたしたちを敵から、そして憎む者すべての手から救い出すためだ。
1:72 主はこうして、わたしたちの先祖に憐れみを示し、その聖なる契約を思い起こしてくださった。
1:73 それは、わたしたちの父アブラハムに立てた誓いのとおりだ。神はこう約束してくださった。
1:74 わたしたちを敵の手から救い出し、恐れることなく神に仕えられるようにする。
1:75 そして生きているかぎり、神の前で清く正しくあれるようにする、と。
1:76 幼子よ、あなたは、いと高き神の預言者と呼ばれる。主に先立って行き、その道を準備するからだ。
1:77 罪が赦されることによって、神の民に救いを知らせるためだ。
1:78 これはみな、わたしたちの神の深い憐れみによる。その憐れみによって、高いところから曙の光がわたしたちを訪れる。
1:79 そして、闇の中、死の陰に座っている人々を照らし、わたしたちの足を平和の道へと導いてくれる。」
1:80 さて、幼子は成長し、心も強くなっていった。そして、イスラエルの前に現れるその日まで、荒れ野で過ごした。
2:1 そのころ、皇帝アウグストゥスから、国中のすべての人を登録させるようにという命令が出た。
2:2 これは、クレニオがシリアの総督だったときに行われた、最初の住民登録だった。
2:3 それで人々はみな、登録のために、それぞれ自分の町へと向かった。
2:4 ヨセフもまた、ガリラヤのナザレの町から、ユダヤにあるベツレヘムという町へ上って行った。ベツレヘムはダビデゆかりの町で、ヨセフがダビデの家系に属していたからだ。
2:5 婚約者のマリアと一緒に登録するためだった。マリアは身ごもっていた。
2:6 二人がそこにいる間に、マリアの出産の日がやって来た。
2:7 マリアは初めての子となる男の子を産んだ。そして、その子を布でくるみ、飼い葉おけに寝かせた。泊まる宿に、二人のための場所がなかったからだ。
2:8 そのあたりの野原では、羊飼いたちが夜通し、自分たちの羊の群れの番をしていた。
2:9 すると、主の使いが彼らの前に現れ、主の栄光が周りを照らした。羊飼いたちはひどくおびえた。
2:10 でも、その使いは言った。「こわがらなくていい。わたしは、すべての人にとって大きな喜びとなる知らせを、あなたたちに伝えに来たのだから。
2:11 きょう、ダビデの町で、あなたたちのために救い主が生まれた。この方こそ、主キリストだ。
2:12 これが、あなたたちへのしるしだ。布にくるまれ、飼い葉おけに寝ている赤ちゃんが見つかるだろう。」
2:13 すると突然、その使いのそばに、天の大軍勢が現れた。彼らは神をたたえて言った。
2:14 「いと高きところでは、神に栄光がありますように。地の上では、神に愛される人々に平和がありますように。」
2:15 天使たちが彼らを離れて天に帰っていくと、羊飼いたちは互いに言った。「さあ、ベツレヘムまで行こう。主がわたしたちに知らせてくれた、この出来事を見てこよう。」
2:16 そして急いで行って、マリアとヨセフ、そして飼い葉おけに寝ている赤ちゃんを見つけた。
2:17 その子を見て、羊飼いたちは、この子について自分たちに告げられたことを人々に知らせた。
2:18 羊飼いたちの話を聞いた人はみな、驚いた。
2:19 でも、マリアはこれらのことをすべて心に納めて、思いめぐらしていた。
2:20 羊飼いたちは、聞いたこと、見たことすべてについて、神をあがめ、たたえながら帰っていった。すべては、告げられたとおりだった。
2:21 八日がたって、その子に割礼をほどこす日になると、彼はイエスと名づけられた。母の胎に宿る前に、天使が告げていた名前だった。
2:22 そして、モーセの律法にしたがって、きよめの期間が満ちると、両親はイエスを主にささげるため、エルサレムに連れて行った。
2:23 主の律法にこう書かれているとおりだ。「母の胎を開く初めての男の子はみな、主にささげられた聖なるものと呼ばれる。」
2:24 また、主の律法で言われているとおりに、山鳩一つがい、または家鳩のひな二羽を、いけにえとしてささげるためだった。
2:25 さて、エルサレムにシメオンという人がいた。この人は正しく、神を敬う人で、イスラエルが慰められる日を待ち望んでいた。そして、聖なる霊がこの人の上にあった。
2:26 聖なる霊は、彼にこう告げていた。あなたは、主が遣わすキリストを見るまでは決して死なない、と。
2:27 彼は霊に導かれて神殿に入った。ちょうど、両親が幼子イエスを連れて来たときだった。両親は、律法の決まりどおりにするために来たのだ。
2:28 シメオンはイエスを腕に抱き、神をほめたたえてこう言った。
2:29 「主よ、あなたのお言葉どおり、今、このしもべを安らかに去らせてくださいます。
2:30 わたしのこの目が、あなたの救いを見たのですから。
2:31 この救いを、あなたはすべての民の前に用意してくださいました。
2:32 それは、他の国々の人々を照らす光であり、あなたの民イスラエルの栄光です。」
2:33 父と母は、イエスについて語られるこの言葉に驚いていた。
2:34 シメオンは二人を祝福し、母マリアにこう言った。「見なさい。この子は、イスラエルの多くの人を倒れさせ、また立ち上がらせるために定められています。そして、反対を受けるしるしとなります。
2:35 ――あなた自身も、剣で心を刺し貫かれるでしょう――こうして、多くの人の心の思いが明らかにされるのです。」
2:36 また、アンナという女預言者がいた。アシェル族のファヌエルの娘である。この人はかなりの高齢だった。娘のとき結婚してから七年、夫とともに暮らし、
2:37 その後は夫を亡くし、八十四歳になる今まで、ずっとやもめとして過ごしてきた。彼女は神殿を離れることなく、夜も昼も断食して祈り、神に仕えていた。
2:38 ちょうどそのとき、彼女もそこにやって来て、神に感謝をささげた。そして、エルサレムの救いを待ち望んでいるすべての人に、この子のことを語った。
2:39 両親は、主の律法に定められたことをすべて終えると、ガリラヤにある自分たちの町ナザレに帰って行った。
2:40 幼子はすくすくと成長し、たくましくなり、知恵に満ちていった。そして、神の恵みがその子の上にあった。
2:41 イエスの両親は、毎年、過越の祭りにエルサレムへ行っていた。
2:42 イエスが十二歳になった年も、二人はいつものように祭りに合わせて都に上った。
2:43 祭りの期間が終わって帰る途中、少年イエスはエルサレムに残っていた。でも、両親はそれに気づかなかった。
2:44 イエスも一行の中にいるものと思い込み、一日分の道のりを進んでしまった。それから、親類や知り合いの間を捜し歩いた。
2:45 けれども見つからなかったので、二人はイエスを捜しながらエルサレムへ引き返した。
2:46 そして三日後、二人はイエスを見つけた。神殿で教師たちの真ん中に座り、彼らの話を聞いたり、質問したりしていたのだ。
2:47 イエスの話を聞いていた人たちはみな、その理解の深さと受け答えに驚いていた。
2:48 両親はイエスを見て、はっとした。母は言った。「どうしてこんなことをしたの。お父さんもわたしも、心配しながらあなたを捜していたのよ。」
2:49 イエスは言った。「どうしてわたしを捜したの。わたしが自分の父の家にいるのは、当たり前のことだと知らなかったの。」
2:50 でも二人には、イエスの言葉の意味がわからなかった。
2:51 それからイエスは両親と一緒にナザレに帰り、二人に従って暮らした。母はこれらの出来事を、すべて心にしまっていた。
2:52 こうしてイエスは知恵を増し、体も成長していった。そして神にも人にも愛された。
3:1 皇帝ティベリウスが治めて十五年目のことだ。このときユダヤはポンティオ・ピラトが総督として治め、ガリラヤはヘロデが領主だった。その弟フィリポはイトラヤとトラコニティスの地方を、リサニアはアビレネを、それぞれ領主として治めていた。
3:2 大祭司はアンナスとカイアファだった。そのころ、荒れ野にいたザカリヤの子ヨハネに、神の言葉が下った。
3:3 そこでヨハネはヨルダン川の周りの地方をすべて回り、こう宣べ伝えた。罪を赦してもらうために、心を入れかえて、その印にバプテスマ(洗礼)を受けなさい、と。
3:4 これは預言者イザヤの書に書いてあるとおりだ。「荒れ野で叫ぶ者の声がする。主の道を用意しろ。主の通る道をまっすぐにしろ。
3:5 谷はすべて埋められ、山や丘はすべて低くされる。曲がった道はまっすぐになり、でこぼこの道は平らになる。
3:6 そして、すべての人が神の救いを見る。」
3:7 ヨハネのところには、洗礼を受けようと大勢の人が出て来た。ヨハネは彼らにこう言った。「マムシの子たちよ。もうすぐ来る神の怒りから逃げろと、いったい誰が教えたのか。
3:8 だったら、心を入れかえたことが行いにあらわれるような実を結びなさい。『自分たちにはアブラハムという先祖がいる』などと思いはじめてはいけない。よく聞きなさい。神はその気になれば、こんな石ころからでもアブラハムの子孫を起こすことができるのだ。
3:9 斧はもう、木の根元に置かれている。だから、良い実を結ばない木はみな切り倒され、火の中に投げ込まれるのだ。」
3:10 すると群衆は、「では、わたしたちはどうすればいいのですか」とヨハネにたずねた。
3:11 ヨハネは答えた。「下着を二枚持っている人は、一枚も持っていない人に分けてあげなさい。食べ物を持っている人も、同じようにしなさい。」
3:12 取り立ての仕事をする人たちも洗礼を受けに来て、「先生、わたしたちはどうすればいいのですか」とたずねた。
3:13 ヨハネは彼らに言った。「決められた以上のお金を取り立ててはいけない。」
3:14 兵士たちも、「では、わたしたちはどうすればいいのですか」とたずねた。ヨハネは答えた。「脅して誰かからお金を巻き上げたり、うその訴えで金を取ったりしてはいけない。自分の給料で満足しなさい。」
3:15 人々は今か今かと待ち望んでいて、みな心の中で、「もしかしてこの人こそ救い主ではないか」とヨハネのことを思いめぐらしていた。
3:16 そこでヨハネは、みんなに向かってこう答えた。「わたしは水であなたたちに洗礼を授けている。でも、わたしよりも力のある方がやって来る。わたしはその方の履き物のひもをほどく値打ちさえない。その方は、聖霊と火であなたたちに洗礼を授ける。
3:17 その方は手に箕を持っていて、脱穀場をすっかりきれいにする。そして麦を集めて倉に納め、殻は消えることのない火で焼き尽くすのだ。」
3:18 こうしてヨハネは、ほかにもたくさんのことを語って人々を励まし、良い知らせを伝えた。
3:19 領主ヘロデは、兄弟の妻ヘロディアのことや、これまで自分がしてきた数々の悪事について、ヨハネから責められていた。
3:20 それなのにヘロデは、さらにもう一つの悪を重ねた。ヨハネを捕まえて牢に閉じ込めたのだ。
3:21 さて、民衆がみな洗礼を受けていたころ、イエスも洗礼を受けた。そして祈っていると、天が開けて、
3:22 聖霊が鳩のような姿をとって、イエスの上に降りてきた。すると天から声がした。「あなたはわたしの愛する子。わたしはあなたを心から喜ぶ。」
3:23 イエスが宣教を始めたのは、およそ三十歳のときだった。人々からはヨセフの子と思われていた。ヨセフはエリの子、
3:24 エリはマタトの子、マタトはレビの子、レビはメルキの子、メルキはヤナイの子、ヤナイはヨセフの子、
3:25 ヨセフはマタティアの子、マタティアはアモスの子、アモスはナホムの子、ナホムはエスリの子、エスリはナガイの子、
3:26 ナガイはマハトの子、マハトはマタティアの子、マタティアはセメインの子、セメインはヨセクの子、ヨセクはヨダの子、
3:27 ヨダはヨハナンの子、ヨハナンはレサの子、レサはゼルバベルの子、ゼルバベルはシャルティエルの子、シャルティエルはネリの子、
3:28 ネリはメルキの子、メルキはアディの子、アディはコサムの子、コサムはエルマダムの子、エルマダムはエルの子、
3:29 エルはヨシュアの子、ヨシュアはエリエゼルの子、エリエゼルはヨリムの子、ヨリムはマタトの子、マタトはレビの子、
3:30 レビはシメオンの子、シメオンはユダの子、ユダはヨセフの子、ヨセフはヨナムの子、ヨナムはエリアキムの子、
3:31 エリアキムはメレアの子、メレアはメンナの子、メンナはマタタの子、マタタはナタムの子、ナタムはダビデの子、
3:32 ダビデはエッサイの子、エッサイはオベデの子、オベデはボアズの子、ボアズはサラの子、サラはナアソンの子、
3:33 ナアソンはアミナダブの子、アミナダブはアデミンの子、アデミンはアルニの子、アルニはエスロムの子、エスロムはパレスの子、パレスはユダの子、
3:34 ユダはヤコブの子、ヤコブはイサクの子、イサクはアブラハムの子、アブラハムはテラの子、テラはナホルの子、
3:35 ナホルはセルグの子、セルグはレウの子、レウはペレグの子、ペレグはエベルの子、エベルはサラの子、
3:36 サラはカイナンの子、カイナンはアルパクサドの子、アルパクサドはセムの子、セムはノアの子、ノアはラメクの子、
3:37 ラメクはメトシェラの子、メトシェラはエノクの子、エノクはヤレドの子、ヤレドはマハラルエルの子、マハラルエルはカイナンの子、
3:38 カイナンはエノスの子、エノスはセツの子、セツはアダムの子、アダムは神の子である。
4:1 さて、イエスは聖霊に満たされて、ヨルダン川から戻ってきた。そして聖霊に導かれるまま、荒れ野へ入っていった。
4:2 そこで四十日のあいだ、悪魔に試された。その間、イエスは何も食べなかった。だから、その日々が終わるころには、すっかり空腹になっていた。
4:3 すると悪魔が言った。「もしお前が神の子なら、この石にパンになれと言ってみろ。」
4:4 イエスは答えた。「聖書にはこう書いてある。『人はパンだけで生きるのではない。』」
4:5 それから悪魔は、イエスを高い所へ連れて行った。そして一瞬のうちに、この世のすべての国々を見せた。
4:6 そして言った。「この国々を支配する力と、その栄光を、全部お前にやろう。これはわたしにゆだねられていて、わたしが望む相手に与えられるものだ。
4:7 だから、お前がわたしの前にひざまずいて拝むなら、すべてはお前のものになる。」
4:8 イエスは答えた。「聖書にはこう書いてある。『あなたの神である主を拝み、ただこの方だけに仕えなさい。』」
4:9 さらに悪魔は、イエスをエルサレムへ連れて行き、神殿のいちばん高い所に立たせて言った。「もしお前が神の子なら、ここから飛び降りてみろ。
4:10 聖書にはこう書いてある。『神はあなたのために天使たちに命じて、あなたを守らせる。』
4:11 またこうも書いてある。『天使たちは両手であなたを支える。あなたの足が石に打ちつけられないように。』」
4:12 イエスは答えた。「聖書にはこう言われている。『あなたの神である主を試してはならない。』」
4:13 悪魔はあらゆる誘惑を終えると、次の機会が来るまでイエスから離れていった。
4:14 イエスは霊の力に満ちてガリラヤに戻った。すると、そのうわさが周りの地方全体に広がった。
4:15 イエスは会堂で教え、みんなから尊敬された。
4:16 それからイエスは、育った町ナザレに来た。そしていつものように、安息日に会堂へ入り、聖書を朗読しようと立ち上がった。
4:17 預言者イザヤの書が手渡された。イエスがその巻物を開くと、こう書かれた箇所が見つかった。
4:18 「主の霊がわたしの上にある。貧しい人たちに良い知らせを伝えるため、主はわたしに油を注いだ。そしてわたしを送り出した。捕らえられた人たちには自由を、目の見えない人たちには見えるようになることを告げ、しいたげられた人たちを解放するために。
4:19 主の恵みの年が来たことを告げるために。」
4:20 イエスは巻物を閉じ、係の者に返して座った。会堂にいる人たちはみな、イエスをじっと見つめていた。
4:21 そしてイエスは話しはじめた。「あなたたちが今聞いたこの聖書の言葉は、今日、実現した。」
4:22 人々はみなイエスをほめ、その口から出てくる恵みに満ちた言葉に驚いた。そして言った。「この人はヨセフの息子ではないか。」
4:23 イエスは言った。「あなたたちはきっと、『医者よ、自分を治せ』ということわざをわたしに言うだろう。そして、『カファルナウムでやったと聞いたことを、あなたの故郷のここでもやってみせろ』と言うだろう。
4:24 さらにイエスは言った。「はっきり言っておく。どんな預言者も、自分の故郷では受け入れられないものだ。」
4:25 でも、ほんとうのことを言おう。エリヤの時代、イスラエルにはたくさんのやもめがいた。そのころ空が閉じて三年六か月も雨が降らず、国じゅうがひどい飢えに見舞われた。
4:26 それでもエリヤは、そのだれのところにも送られなかった。ただ、シドン地方のサレプタにいた一人のやもめのところにだけ送られたのだ。
4:27 また、預言者エリシャの時代、イスラエルにはたくさんの重い皮膚病の人がいた。それでも、そのだれもきよくされなかった。ただ、シリア人のナアマンだけがきよくされたのだ。
4:28 これを聞いた会堂にいた人たちは、みな怒りでいっぱいになった。
4:29 そして立ち上がってイエスを町の外へ追い出し、町が建っている丘のがけっぷちまで連れて行った。そこから突き落とそうとしたのだ。
4:30 しかしイエスは、人々の真ん中を通り抜けて、去って行った。
4:31 それからイエスは、ガリラヤの町カファルナウムに下って行った。そして安息日に人々を教えていた。
4:32 人々はその教えに驚いた。イエスの言葉には力があったからだ。
4:33 その会堂に、汚れた悪霊にとりつかれた男がいた。彼は大声で叫んだ。
4:34 「ああ、ナザレのイエス、あなたはわたしたちに何をするつもりだ。わたしたちを滅ぼしに来たのか。わたしはあなたがだれか知っている。神の聖なる方だ。」
4:35 イエスはその悪霊を叱って言った。「黙れ。この人から出て行け。」すると悪霊は、その男をみんなの真ん中に倒したが、何の傷も負わせずに出て行った。
4:36 人々はみな驚き、たがいに言い合った。「今の言葉は何なんだ。イエスは権威と力で汚れた霊たちに命令する。すると霊たちは出て行くのだ。」
4:37 こうしてイエスのうわさは、その地方のすみずみまで広がっていった。
4:38 イエスは会堂を出て、シモンの家に入った。シモンのしゅうとめが高い熱で苦しんでいたので、人々はイエスに、彼女を助けてほしいと願った。
4:39 イエスが枕もとに立って熱を叱ると、熱は引いた。彼女はすぐに起き上がって、みんなをもてなし始めた。
4:40 日が沈むころ、いろいろな病気で苦しむ人をかかえていた人たちがみな、その病人をイエスのところに連れて来た。イエスは一人ひとりに手を置いて、彼らをいやした。
4:41 また、多くの人から悪霊も出て行った。悪霊たちは「あなたは神の子だ」と叫んだ。でもイエスは悪霊たちを叱って、話すのを許さなかった。イエスがキリストだと知っていたからだ。
4:42 朝になると、イエスは町を出て、さびしい場所へ行った。群衆はイエスを捜し回り、いる所まで来て、自分たちのもとから去らないように引き止めようとした。
4:43 でもイエスは彼らに言った。「ほかの町々にも、神の御国の福音を伝えなければならない。わたしはそのために送られたのだから。」
4:44 そしてイエスは、ユダヤの会堂で教えを宣べ伝え続けた。
5:1 ある日、イエスはゲネサレ湖のほとりに立っていた。すると大勢の人が神の言葉を聞こうとして、イエスに押し寄せてきた。
5:2 そのとき、イエスは湖のほとりに二そうの舟があるのに気づいた。漁師たちは舟を降りて、網を洗っていた。
5:3 イエスはその一そう、シモンの舟に乗り込んだ。そして、岸から少し漕ぎ出してほしいと頼んだ。それから舟に座って、集まった人々を教えた。
5:4 話し終えると、イエスはシモンに言った。「舟を沖に出しなさい。そして網を下ろして、魚をとりなさい。」
5:5 するとシモンは答えた。「先生、わたしたちは一晩じゅう働いたのに、何もとれませんでした。でも、あなたがそう言うなら、網を下ろしてみます。」
5:6 そのとおりにすると、おびただしい数の魚がかかった。網が破れそうになるほどだった。
5:7 そこで彼らは、もう一そうの舟にいる仲間に、手伝いに来てほしいと合図した。仲間が来て、二そうの舟いっぱいに魚を積むと、舟は沈みそうになった。
5:8 これを見たシモン・ペトロは、イエスの足もとにひれ伏して言った。「主よ、わたしから離れてください。わたしは罪深い人間です。」
5:9 とれた魚のあまりの多さに、シモンも一緒にいた者たちもみな、驚きに包まれていたのだ。
5:10 シモンの仲間だったゼベダイの子ヤコブとヨハネも同じだった。すると、イエスはシモンに言った。「こわがらなくていい。これからあなたは、人間をとる漁師になる。」
5:11 彼らは舟を陸に引き上げると、すべてを捨ててイエスについて行った。
5:12 イエスがある町にいたときのことだった。そこに、全身が重い皮膚病におかされた人がいた。その人はイエスを見ると、地にひれ伏して願った。「主よ、あなたさえよければ、わたしをきよくすることがおできになります。」
5:13 イエスは手を伸ばして彼にさわり、こう言った。「そうしよう。きよくなりなさい。」すると、その重い皮膚病はすぐに消えた。
5:14 イエスは彼に、このことをだれにも話さないようにと命じた。そして言った。「祭司のところに行って、体を見せなさい。そして、あなたがきよくなったことのために、モーセが命じたとおりのささげ物をしなさい。それが人々への証しになる。」
5:15 でも、イエスのうわさはますます広まっていった。大勢の人が、話を聞くため、また病気を治してもらうために集まってきた。
5:16 けれども、イエスはよく人のいない所にしりぞいて、祈っていた。
5:17 ある日、イエスが教えていたときのことだった。そこには、ガリラヤやユダヤのすべての村、そしてエルサレムからやって来たファリサイ派の人たちや律法の教師たちがすわっていた。そして、病気を治す主の力がイエスとともにあった。
5:18 すると、何人かの男たちが、体のまひした人を寝床にのせて運んできた。彼らはその人を中に運び入れ、イエスの前に置こうとした。
5:19 でも、人が多くて運び入れる道が見つからなかった。そこで彼らは屋根に上がり、瓦をはがして、寝床にのせたままその人を人々の真ん中、イエスの前へつり下ろした。
5:20 イエスは彼らの信仰を見て、こう言った。「あなたの罪は赦された。」
5:21 すると、律法学者たちやファリサイ派の人たちは考え始めた。「神を冒とくするこの男は、いったい何者だ。神おひとりのほかに、だれが罪を赦せるというのか。」
5:22 イエスは彼らが心の中で考えていることを見抜いて、こう言った。「なぜ、心の中でそんなことを考えているのか。
5:23 『あなたの罪は赦された』と言うのと、『起きて歩きなさい』と言うのと、どちらが簡単だろうか。
5:24 だが、人の子が地上で罪を赦す権威を持っていることを、あなたたちに知ってほしい。」そう言って、イエスはまひした人に言った。「あなたに言う。起きなさい。自分の寝床を持って、家に帰りなさい。」
5:25 すると、その人はすぐにみんなの前で立ち上がり、寝ていた寝床を持って、神をたたえながら家に帰っていった。
5:26 これを見た人たちはみんな、あっけにとられた。そして神をたたえ、恐れに包まれてこう言った。「わたしたちは今日、信じられないことを見た。」
5:27 その後、イエスは出かけていき、レビという名前の取税人が収税所に座っているのを見て、「わたしについてきなさい」と言った。
5:28 するとレビは、何もかも捨てて立ち上がり、イエスについていった。
5:29 レビは自分の家で、イエスのために盛大な宴会を開いた。取税人をはじめ、大勢の人が一緒に食卓についていた。
5:30 すると、ファリサイ派の人たちや彼らの側の律法学者たちが、イエスの弟子たちに不満をぶつけた。「どうして、あなたたちは取税人や罪人と一緒に飲んだり食べたりするのか。」
5:31 イエスは彼らに答えた。「医者を必要とするのは、健康な人ではなく、病気の人だ。
5:32 わたしが来たのは、正しい人を招くためではなく、罪人を招いて、その生き方を変えさせるためだ。」
5:33 人々はイエスに言った。「ヨハネの弟子たちは、よく断食をして祈っている。ファリサイ派の弟子たちも同じだ。それなのに、あなたの弟子たちは飲んだり食べたりしている。」
5:34 イエスは彼らに言った。「花婿が一緒にいるのに、結婚式に招かれた客に断食をさせられるだろうか。
5:35 でも、やがて花婿が奪い取られる日が来る。その日には、彼らも断食することになる。」
5:36 イエスはさらに、彼らにたとえを話した。「新しい服を切り取って、古い服に継ぎを当てる人はいない。そんなことをすれば、新しい服は破れてしまうし、新しい服から取った継ぎは古い服には合わない。
5:37 新しいぶどう酒を古い革袋に入れる人もいない。そんなことをすれば、新しいぶどう酒が革袋を破ってしまう。ぶどう酒は流れ出て、革袋もだめになる。
5:38 新しいぶどう酒は、新しい革袋に入れなければならない。
5:39 それに、古いぶどう酒を飲んだ人は、新しいものを欲しがらない。『古いほうがいい』と言うのだ。」
6:1 ある安息日のこと、イエスは麦畑を通り抜けていた。すると弟子たちは麦の穂を摘み取り、手でもみながら食べはじめた。
6:2 それを見て、ファリサイ派の何人かが言った。「なぜ、安息日にしてはいけないことをするのか。」
6:3 イエスは彼らに答えた。「ダビデが仲間と一緒に空腹になったとき、何をしたか、あなたたちは読んだことがないのか。
6:4 ダビデは神の家に入り、祭司のほかは食べてはいけない供えのパンを取って食べ、一緒にいた者たちにも分け与えたのだ。」
6:5 そして、イエスは彼らに言った。「人の子は安息日の主なのだ。」
6:6 別の安息日のこと、イエスは会堂に入って教えていた。そこに、右手のなえた人がいた。
6:7 律法学者たちやファリサイ派の人たちは、イエスが安息日に病気を治すかどうか、じっと見ていた。訴える口実を見つけようとしていたのだ。
6:8 でもイエスは、彼らの考えを見抜いていた。そして、手のなえた人に言った。「立って、真ん中に出てきなさい。」その人は立ち上がって、そこに立った。
6:9 それからイエスは彼らに言った。「あなたたちに聞きたい。安息日にしていいのは、良いことか、悪いことか。命を救うことか、それとも滅ぼすことか。」
6:10 そして、その場の全員をぐるりと見回してから、その人に言った。「手を伸ばしなさい。」その人がそうすると、手は元どおりになった。
6:11 すると彼らは怒りでいっぱいになり、イエスをどうしてやろうかと、たがいに話し合った。
6:12 そのころ、イエスは祈るために山へ出かけた。そして、夜を徹して神に祈り続けた。
6:13 朝になると、イエスは弟子たちを呼び寄せ、その中から十二人を選んだ。そして彼らを使徒と名づけた。
6:14 選ばれたのは、ペトロと名づけたシモン、その兄弟アンデレ、それにヤコブ、ヨハネ、フィリポ、バルトロマイ、
6:15 マタイ、トマス、アルファイの子ヤコブ、それに熱心党と呼ばれたシモン、
6:16 ヤコブの子ユダ、そして裏切り者となったユダ・イスカリオテである。
6:17 イエスは彼らと一緒に山を下り、平らな場所に立った。そこには大勢の弟子たちと、ユダヤ全土やエルサレム、それに海沿いのティルスとシドンから来た、たくさんの人々が集まっていた。
6:18 みんな、イエスの話を聞き、病気を治してもらおうとやって来たのだ。汚れた霊に苦しめられていた人たちも、治してもらった。
6:19 群衆はみんな、イエスにさわろうとした。イエスから力が出て、みんなを治していたからだ。
6:20 イエスは弟子たちに目を向けて、こう言った。「貧しい人々は、幸いである。神の国はあなたがたのものだから。
6:21 今飢えている人々は、幸いである。満たされるようになるから。今泣いている人々は、幸いである。笑うようになるから。
6:22 人の子のために、人々があなたがたを憎み、仲間はずれにし、ののしり、あなたがたの名を悪いものとして退けるとき、あなたがたは幸いである。
6:23 その日には、喜んでおどりなさい。天では、あなたがたへの報いが大きいからだ。彼らの先祖も、預言者たちに同じことをしたのだ。
6:24 でも、金持ちの人々は不幸だ。あなたがたは、もう慰めを受けてしまったからだ。
6:25 今満腹している人々は、不幸だ。飢えるようになるから。今笑っている人々は、不幸だ。悲しみ、泣くようになるから。
6:26 すべての人にほめられるとき、あなたがたは不幸だ。彼らの先祖も、にせ預言者たちに同じことをしたのだ。
6:27 でも、聞いているあなたがたに、わたしは言う。敵を愛しなさい。あなたがたを憎む人には、よくしてあげなさい。
6:28 あなたがたをのろう人を祝福しなさい。あなたがたをひどく扱う人のために祈りなさい。
6:29 あなたの頬を打つ人には、もう一方の頬も向けなさい。上着を奪う人には、下着まで拒まないであげなさい。
6:30 求める人にはだれにでも与えなさい。あなたのものを奪う人から、取り返そうとしてはいけない。
6:31 自分がしてほしいと思うことを、人にもそのとおりにしてあげなさい。
6:32 自分を愛してくれる人を愛したところで、何の手柄になるだろうか。罪人でさえ、自分を愛してくれる人を愛している。
6:33 自分に良くしてくれる人に良くしたところで、何の手柄になるだろうか。罪人でも同じことをしている。
6:34 返してもらえると当てにしている相手に貸したところで、何の手柄になるだろうか。罪人でも、同じだけ取り戻そうとして、罪人に貸している。
6:35 でも、あなたがたは敵を愛しなさい。人に良くし、何も当てにせずに貸しなさい。そうすれば、あなたがたの受ける報いは大きく、いと高き方の子となる。神は、恩を知らない者や悪い者にも、やさしくしてくださるからだ。
6:36 あなたがたの父が思いやり深いように、あなたがたも思いやり深くありなさい。
6:37 人を裁いてはいけない。そうすれば、あなたがたも裁かれない。人を責めてはいけない。そうすれば、あなたがたも責められない。許しなさい。そうすれば、あなたがたも許される。
6:38 与えなさい。そうすれば、あなたがたにも与えられる。しっかり詰め込み、揺すって、あふれるほどのたっぷりの量を、あなたがたのふところに入れてもらえる。あなたがたが人を量るその量りで、あなたがたも量り返されるからだ。」
6:39 イエスは、彼らにこんなたとえも話された。「目の見えない人が、目の見えない人を導けるだろうか。二人とも穴に落ちてしまうのではないか。
6:40 弟子は先生より上ではない。しかし、十分に学んだ人はみな、自分の先生のようになる。
6:41 なぜ、あなたは兄弟の目にある木くずは見えるのに、自分の目にある丸太には気づかないのか。
6:42 自分の目にある丸太が見えていないのに、どうして兄弟に『兄弟よ、目の木くずを取らせてほしい』と言えるのか。偽善者よ、まず自分の目から丸太を取り除きなさい。そうすれば、はっきり見えて、兄弟の目の木くずを取り除ける。」
6:43 良い木が悪い実をつけることはない。それと同じで、悪い木が良い実をつけることもない。
6:44 木はどれも、その実を見れば何の木かわかる。とげのある茂みからいちじくは採れないし、いばらからぶどうは採れない。
6:45 良い人は、心にためた良いものの中から良いものを出す。悪い人は、悪いものの中から悪いものを出す。人の口は、心にあふれているものを話すからだ。
6:46 あなたたちは、なぜわたしを『主よ、主よ』と呼ぶのに、わたしの言うことを行わないのか。
6:47 わたしのところに来て、わたしの言葉を聞き、そのとおりに行う人がみな、どんな人に似ているか教えよう。
6:48 その人は、家を建てるときに深く掘り下げ、岩の上に土台をすえた人に似ている。洪水になって川の水がその家に襲いかかっても、家はびくともしなかった。しっかり建てられていたからだ。
6:49 でも、わたしの言葉を聞いても行わない人は、土台なしに地面の上に家を建てた人に似ている。川の水が襲いかかると、家はたちまち倒れ、めちゃくちゃに壊れてしまった。」
7:1 イエスは、これらの言葉をすべて人々に話し終えると、カファルナウムに入った。
7:2 そこに、ある百人隊長がいた。彼が大切にしていた部下が病気で、死にかけていた。
7:3 百人隊長はイエスのことを聞き、ユダヤ人の長老たちを送って、来て部下を助けてほしいと願った。
7:4 長老たちはイエスのところに来ると、熱心に願って言った。「あの方は、あなたにそうしていただくだけのことをした人です。
7:5 わたしたちの民族を愛して、会堂まで建ててくれたのです。」
7:6 そこでイエスは、彼らといっしょに出かけた。ところが、家からもう遠くないところまで来たとき、百人隊長は友人たちを送ってこう言わせた。「主よ、わざわざ来ていただかなくて大丈夫です。わたしは、あなたを自分の家にお迎えできるような者ではありません。
7:7 だから、わたし自身があなたのところへ行こうとも思いませんでした。ただ、ひと言おっしゃってください。そうすれば、わたしの僕は治ります。
7:8 わたし自身も、上に立つ人の下に置かれている人間ですが、その下には部下の兵士たちがいます。その一人に『行け』と言えば行き、別の者に『来い』と言えば来ます。僕に『これをしろ』と言えば、その通りにします。」
7:9 これを聞いて、イエスはその人に感心した。そして、ついて来ていた群衆の方を振り返って言った。「言っておく。これほどの信仰は、イスラエルの中でも見たことがない。」
7:10 使いに出された人たちが家に戻ってみると、あの僕はすっかり元気になっていた。
7:11 それからまもなく、イエスはナインという町へ出かけた。弟子たちと大勢の群衆もいっしょだった。
7:12 町の門に近づくと、ちょうど死んだ人が運び出されるところだった。それは、ある母親のひとり息子だった。しかも彼女はやもめで、その母親のそばには町の大勢の人たちがついていた。
7:13 主はその母親を見て、深く心を動かされ、こう言った。「泣かなくていい。」
7:14 そして近づいて棺に手をかけると、担いでいた人たちが立ち止まった。イエスは言った。「若者よ、あなたに言う。起きなさい。」
7:15 すると、死んでいた人が起き上がって、話し始めた。イエスは彼を母親に返した。
7:16 人々はみな恐れに包まれ、神をたたえて言った。「わたしたちの間に偉大な預言者が現れた。」「神がご自分の民を心にかけてくださった。」
7:17 そして、イエスについてのこの話は、ユダヤ全土とその周辺の地域すべてに広まった。
7:18 さて、ヨハネの弟子たちは、これらすべてのことをヨハネに知らせた。すると、ヨハネは弟子の中から二人を呼び寄せた。
7:19 そして、その二人を主のもとに送って、こう尋ねさせた。「あなたは、これから来ることになっている方ですか。それとも、わたしたちは別の方を待つべきでしょうか。」
7:20 二人はイエスのところに来て言った。「バプテスマのヨハネが、わたしたちをあなたのもとに送ってこう尋ねさせました。『あなたは、これから来ることになっている方ですか。それとも、わたしたちは別の方を待つべきでしょうか。』」
7:21 ちょうどそのとき、イエスは多くの人を病気や苦しみ、悪い霊から解放し、目の見えない大勢の人が見えるようにしてあげていた。
7:22 そしてイエスは二人にこう答えた。「行って、自分たちが見たこと、聞いたことをヨハネに伝えなさい。目の見えない人が見えるようになり、足の不自由な人が歩き、重い皮膚病の人がきよめられ、耳の聞こえない人が聞こえるようになっている。死んだ人が生き返り、貧しい人には良い知らせが伝えられている。
7:23 わたしにつまずかない人は幸いだ。」
7:24 ヨハネの使いが帰ると、イエスは群衆にヨハネについて話し始めた。「あなたたちは、何を見に荒れ野へ出て行ったのか。風に揺れる葦か。
7:25 そうでなければ、何を見に出て行ったのか。柔らかい服を着た人か。豪華な服を着て、ぜいたくに暮らしている人なら、王の宮殿にいる。
7:26 では、何を見に出て行ったのか。預言者か。そうだ、言っておく。その預言者よりもさらにすぐれた人だ。
7:27 この人こそ、こう書かれている人物だ。『見よ、わたしはあなたの前に使いを送る。その者が、あなたの前で道を整える。』
7:28 言っておく。女から生まれた者の中で、ヨハネよりも偉大な人はいない。それでも、神の御国でいちばん小さい者は、彼よりも偉大だ。」
7:29 これを聞いた民衆はみな、徴税人たちも含めて、ヨハネのバプテスマを受けていたので、神は正しいと認めた。
7:30 しかし、ファリサイ派の人々や律法の専門家たちは、ヨハネのバプテスマを受けず、自分たちに対する神の御心を退けた。
7:31 「では、今の時代の人たちを何にたとえようか。彼らは何に似ているだろう。
7:32 広場に座って、たがいに呼びかけ合う子どもたちに似ている。『笛を吹いてあげたのに、君たちは踊らなかった。悲しい歌を歌ってあげたのに、泣かなかった』と言うようなものだ。
7:33 というのも、バプテスマのヨハネが来て、パンも食べず、ぶどう酒も飲まずにいると、君たちは『あれは悪霊に取りつかれている』と言う。
7:34 人の子が来て、食べたり飲んだりしていると、『見ろ、大食いの大酒飲みだ。徴税人や罪人の仲間だ』と言う。
7:35 でも、知恵が正しいことは、その子どもたちみんなによって証明される。」
7:36 さて、あるファリサイ派の人がイエスに、いっしょに食事をしてほしいと頼んだ。それでイエスはその人の家に入り、食卓に着いた。
7:37 すると、その町に住む一人の女がいた。彼女は罪深い暮らしをしていた。この女は、イエスがファリサイ派の人の家で食事をしていると知り、香油の入った石膏のつぼを持ってやって来た。
7:38 そして後ろからイエスの足もとに立ち、泣きながら、涙でその足をぬらしはじめた。そして自分の髪でそれをぬぐい、足に何度も口づけして、香油を塗った。
7:39 イエスを招いたファリサイ派の人はこれを見て、心の中で思った。「この人がもし預言者なら、自分にさわっているのがどんな女か、分かるはずだ。この女は罪深い者なのに。」
7:40 するとイエスは、その人に答えて言った。「シモン、あなたに言いたいことがある。」その人は「先生、どうぞ話してください」と言った。
7:41 「ある金貸しに、二人の借り主がいた。一人は五百デナリ、もう一人は五十デナリの借金があった。
7:42 二人とも返すことができなかったので、金貸しは両方とも借金を帳消しにしてやった。さて、この二人のうち、どちらがより深くその金貸しを愛するだろうか。」
7:43 シモンは答えた。「たくさん帳消しにしてもらったほうだと思います。」イエスは言った。「そのとおりだ。」
7:44 そして女のほうを振り返り、シモンに言った。「この女の人が見えるだろう。わたしがあなたの家に入ったとき、あなたは足を洗う水もくれなかった。でもこの人は、涙でわたしの足をぬらし、自分の髪でふいてくれた。
7:45 あなたはわたしにあいさつの口づけもしてくれなかった。でもこの人は、わたしが入って来たときから、ずっとわたしの足に口づけしてやまない。
7:46 あなたはわたしの頭に油を塗ってくれなかった。でもこの人は、わたしの足に香油を塗ってくれた。
7:47 だから、あなたに言っておく。この人の多くの罪は赦された。それは、この人が深く愛したからだ。しかし、少ししか赦されなかった者は、少ししか愛さない。」
7:48 そしてイエスは、その女の人に言った。「あなたの罪は赦された。」
7:49 すると、いっしょに食事をしていた人たちは、心の中でこう言い始めた。「罪さえ赦すこの人は、いったい何者なのか。」
7:50 イエスは女の人に言った。「あなたの信仰が、あなたを救った。安心して行きなさい。」
8:1 それからイエスは、町や村を次々にめぐり歩いた。神の御国のことを宣べ伝え、その良い知らせを人々に届けたのだ。十二人の弟子たちも一緒だった。
8:2 悪い霊や病気を治してもらった何人かの女性も一緒だった。その一人が、七つの悪霊を追い出してもらったマグダラの女と呼ばれるマリアだ。
8:3 ほかにも、ヘロデの家令クザの妻ヨハナや、スサンナ、それに大勢の女性がいた。彼女たちは自分の財産を使って、一行の世話をしていた。
8:4 大勢の群衆が集まり、町々から人々がイエスのもとにやって来た。そこでイエスは、一つのたとえを使って話しはじめた。
8:5 「種をまく人が、種をまきに出かけた。まいているうちに、ある種は道ばたに落ちた。すると踏みつけられ、空の鳥が食べてしまった。
8:6 別の種は岩の上に落ちた。芽は出たけれど、水気がないので枯れてしまった。
8:7 別の種はいばらの真ん中に落ちた。いばらも一緒に伸びてきて、その種をふさいでしまった。
8:8 別の種は良い土に落ちた。芽が出て育ち、百倍もの実を結んだ。」イエスはこう話すと、声を張り上げて言った。「聞く耳のある人は聞きなさい。」
8:9 弟子たちは、このたとえはどういう意味なのかとイエスにたずねた。
8:10 イエスは答えた。「あなたたちには、神の御国の秘密を知ることが許されている。でも、ほかの人たちにはたとえで話す。それは、彼らが見ても見えず、聞いても理解しないためだ。
8:11 このたとえの意味はこうだ。種とは、神の言葉のことだ。
8:12 道ばたに落ちた種とは、こういう人たちのことだ。彼らは言葉を聞く。でもそのあとに悪魔が来て、その心から言葉を奪い取ってしまう。彼らが信じて救われることのないようにするためだ。
8:13 岩の上に落ちた種とは、こういう人たちのことだ。彼らは言葉を聞くと、喜んで受け入れる。でも根がないので、しばらくは信じても、試練が来ると離れてしまう。
8:14 いばらの中に落ちた種とは、こういう人たちのことだ。彼らは言葉を聞く。でも歩んでいくうちに、暮らしの心配やお金や快楽にふさがれてしまい、実を結ばない。
8:15 良い土に落ちた種とは、こういう人たちのことだ。彼らは正しく素直な心で言葉を聞き、それをしっかり守って、じっと耐えながら実を結ぶ。
8:16 明かりをつけて、それを器でおおったり、寝台の下に置いたりする人はいない。入って来る人に光が見えるように、明かりは台の上に置くものだ。
8:17 隠されているもので、あらわにならないものはない。秘められているもので、知られず、明るみに出ないものはない。
8:18 だから、どう聞くかに気をつけなさい。持っている人はさらに与えられ、持っていない人は、持っていると思っているものまで取り上げられるからだ。」
8:19 さて、イエスの母と兄弟たちがイエスのところに来た。でも群衆のせいで、そばに近づくことができなかった。
8:20 そこでイエスに伝えられた。「あなたのお母さんと兄弟たちが、あなたに会いたいと外に立っています。」
8:21 でもイエスは答えた。「わたしの母、わたしの兄弟とは、神の言葉を聞いて、それを行う人たちのことだ。」
8:22 ある日のこと、イエスは弟子たちと一緒に舟に乗り、こう言った。「湖の向こう岸へ渡ろう。」そして彼らは漕ぎ出した。
8:23 渡っている間に、イエスは眠ってしまった。すると突風が湖に吹き下ろし、舟は水でいっぱいになりかけて、危険な状態になった。
8:24 弟子たちは近づいてイエスを起こし、「先生、先生、おぼれてしまいます」と言った。イエスは起き上がって、風と荒れる水をしかりつけた。すると風も波もおさまり、すっかり静かになった。
8:25 そしてイエスは弟子たちに言った。「あなたたちの信仰はどこにあるのか。」彼らは恐れ、驚いて、互いに言い合った。「いったいこの方はどなたなのだろう。風にも水にも命じると、風も水も従うなんて。」
8:26 それから彼らは、ガリラヤの向かい側にあるゲラサ人の地方に着いた。
8:27 イエスが陸に上がると、その町から来た一人の男が出迎えた。彼は悪霊に取りつかれていて、長い間、服も着ず、家にも住まず、墓場で暮らしていた。
8:28 その男はイエスを見ると、叫び声をあげてその前にひれ伏し、大声で言った。「いと高き神の子イエス、あなたはわたしに何のご用ですか。お願いです、どうかわたしを苦しめないでください。」
8:29 というのも、イエスがその汚れた霊に、男から出ていくように命じていたからだ。この霊は何度も男を襲っていた。人々は彼を鎖と足かせでつないで見張っていたが、彼はそれを引きちぎり、悪霊によって荒れ野へ追い立てられていたのだった。
8:30 イエスが「お前の名は何というのか」と尋ねると、その男は「レギオン」と答えた。たくさんの悪霊が彼の中に入っていたからだ。
8:31 そして悪霊たちは、自分たちを底なしの淵へ行けと命じないでほしいと、イエスに願い続けた。
8:32 ちょうどそこでは、たくさんの豚の群れが山で餌を食べていた。悪霊たちは、その豚の中に入らせてほしいとイエスに願った。イエスがそれを許すと、
8:33 悪霊たちは男から出て、豚の中に入った。すると群れは崖を駆け下って湖へ飛び込み、おぼれ死んだ。
8:34 豚を飼っていた人たちは、この出来事を見て逃げ出し、町や村にふれ回った。
8:35 人々は何が起きたのか見に出てきた。そしてイエスのところに来ると、悪霊が出ていったあの男が、服を着て正気に戻り、イエスの足もとに座っているのを見つけた。人々は恐ろしくなった。
8:36 それを見ていた人たちは、悪霊に取りつかれていた男がどのようにして救われたのかを、人々に伝えた。
8:37 すると、ゲラサ地方の人たちはみんな、自分たちのところから出ていってほしいとイエスに頼んだ。ひどく怖くなったからだ。それでイエスは舟に乗って、もと来たところへ帰っていった。
8:38 悪霊が出ていったあの男は、いっしょに連れていってほしいとイエスに願った。でもイエスは、こう言って彼を帰らせた。
8:39 「家に帰りなさい。そして、神があなたにどれほどのことをしてくれたか、みんなに話しなさい。」男は出ていき、イエスが自分にどれほどのことをしてくれたかを、町じゅうにふれ回った。
8:40 イエスが帰ってくると、群衆は喜んで迎えた。みんながイエスを待っていたからだ。
8:41 そこへ、ヤイロという名の男がやって来た。この人は会堂を管理する立場にあった。彼はイエスの足もとにひれ伏し、自分の家に来てほしいと願った。
8:42 十二歳ほどのひとり娘がいて、その子が死にかけていたのだ。イエスが向かう途中も、群衆が押し寄せてもみくちゃにした。
8:43 そこに、十二年ものあいだ出血が止まらない女性がいた。医者に全財産を使い果たしたのに、だれにも治してもらえなかった。
8:44 彼女はイエスのうしろから近づき、その服のふさに触れた。すると、たちまち出血が止まった。
8:45 イエスは言った。「わたしに触れたのはだれか。」みんなが「わたしではない」と言うので、ペトロが言った。「先生、群衆が周りに押し寄せて、もみ合っているのですよ。」
8:46 でもイエスは言った。「だれかがわたしに触れた。力がわたしから出ていったのが分かったのだ。」
8:47 女性は、隠しきれないと分かって、震えながら進み出た。そしてイエスの前にひれ伏し、なぜ触れたのか、そしてどうやってすぐに治ったのかを、みんなの前で打ち明けた。
8:48 イエスは彼女に言った。「娘よ、あなたの信仰があなたを救った。安心して行きなさい。」
8:49 イエスがまだ話しているうちに、会堂長の家から人が来て言った。「お嬢さんは亡くなりました。もう先生を煩わせないでください。」
8:50 でもイエスはそれを聞いて、彼に答えた。「こわがらなくていい。ただ信じなさい。そうすれば娘は救われる。」
8:51 家に着くと、イエスはペトロとヨハネとヤコブ、それに子どもの父親と母親のほかは、だれも中に入れなかった。
8:52 みんなは泣いて、その子のために嘆き悲しんでいた。でもイエスは言った。「泣かなくていい。この子は死んだのではない。眠っているのだ。」
8:53 人々は、その子が死んだことを知っていたので、イエスをあざ笑った。
8:54 でもイエスは、その子の手を取って呼びかけた。「さあ、起きなさい。」
8:55 すると、その子の霊が戻ってきて、すぐに起き上がった。イエスは、この子に食べ物をあげるようにと言った。
8:56 両親はびっくりした。でもイエスは、起きたことをだれにも話さないようにと二人に命じた。
9:1 イエスは十二人の弟子を呼び集めた。そして、あらゆる悪霊を抑え、病気を治す力と権威を彼らに与えた。
9:2 それから、神の国を宣べ伝え、病人を治すために彼らを送り出した。
9:3 そのとき、イエスはこう言った。「旅には何も持って行ってはいけない。杖も、袋も、パンも、お金も。下着も二枚は持つな。
9:4 どこかの家に入ったら、その町を出るまでずっとそこにとどまりなさい。
9:5 もし迎え入れてくれない人たちがいたら、その町を出るときに足についた砂ぼこりを払い落としなさい。それは、彼らへの警告のしるしになる。」
9:6 こうして弟子たちは出かけて行き、村から村へと巡りながら、いたるところで良い知らせを伝え、病気を治していった。
9:7 さて、この地方の領主ヘロデは、起きていることをすべて耳にして、とまどっていた。ある人たちは「ヨハネが死者の中から生き返ったのだ」と言い、
9:8 ほかの人たちは「エリヤが現れたのだ」と言い、また別の人たちは「昔の預言者の一人がよみがえったのだ」と言っていたからだ。
9:9 ヘロデは言った。「ヨハネなら、わたしが首をはねた。それなのに、こんなうわさで聞くこの人は、いったい何者なのだ。」そして、イエスに会ってみたいと思った。
9:10 使徒たちは戻ってくると、自分たちがしたことをすべてイエスに報告した。イエスは彼らを連れて、ベツサイダという町へひそかに退いた。
9:11 ところが群衆はそれを知って、あとを追ってきた。イエスは彼らを喜んで迎え入れ、神の国について語り、治してもらう必要のある人たちを治した。
9:12 日が傾きはじめたころ、十二人がイエスのところに来て言った。「群衆を解散させてください。まわりの村や里へ行って、泊まる場所や食べ物を見つけられるように。わたしたちは、こんな何もない場所にいるのですから。」
9:13 でもイエスは彼らに言った。「あなたがたが、この人たちに食べ物をあげなさい。」弟子たちは答えた。「わたしたちには、パンが五つと魚が二匹しかありません。この人たち全員のために食べ物を買いに行けというのなら、別ですが。」
9:14 そこには、男だけでおよそ五千人がいたのだ。イエスは弟子たちに言った。「みんなを、五十人ぐらいずつのまとまりにして座らせなさい。」
9:15 弟子たちはそのとおりにして、全員を座らせた。
9:16 イエスは五つのパンと二匹の魚を取り、天を見上げて感謝の祈りをささげ、それを裂いて、群衆に配るようにと弟子たちに渡していった。
9:17 みんなが食べて、お腹いっぱいになった。そして、残ったパンくずを集めると、十二のかごがいっぱいになった。
9:18 あるとき、イエスがひとりで祈っていた。弟子たちもそばにいた。イエスは彼らに尋ねた。「群衆は、わたしのことを誰だと言っているだろうか。」
9:19 弟子たちは答えた。「バプテスマのヨハネだと言う人もいれば、エリヤだと言う人もいます。また、昔の預言者のひとりが生き返ったのだと言う人もいます。」
9:20 イエスは言った。「では、あなたがたは、わたしのことを誰だと言うのか。」ペテロが答えた。「あなたは、神が遣わした救い主です。」
9:21 するとイエスは、このことを誰にも話してはいけないと、彼らに強く命じた。
9:22 そしてこう言った。「人の子は、多くの苦しみを受けなければならない。長老たちや祭司長たち、律法学者たちに退けられ、殺され、そして三日目によみがえるのだ。」
9:23 それからイエスは、みんなに向かって言った。「わたしについて来たいと思う人は、自分を捨て、毎日、自分の十字架を背負って、わたしについて来なさい。
9:24 自分の命を救おうとする人は、それを失う。でも、わたしのために自分の命を失う人は、それを救うことになる。
9:25 たとえ全世界を手に入れても、自分自身を失ったり、だめにしてしまったら、何の得になるだろうか。
9:26 わたしと、わたしの言葉を恥ずかしく思う人がいれば、人の子も、その人を恥ずかしく思う。人の子が、自分の栄光と、父の栄光と、聖なる天使たちの栄光に包まれて来るときにね。
9:27 はっきり言っておく。ここに立っている人の中には、神の御国を見るまでは決して死なない人たちがいる。」
9:28 この話をしてから八日ほどたったころ、イエスはペテロとヨハネとヤコブを連れて、祈るために山に登った。
9:29 祈っていると、イエスの顔の様子が変わり、着ている服は、まぶしいほど真っ白に輝いた。
9:30 すると、二人の人がイエスと話していた。それはモーセとエリヤだった。
9:31 二人は栄光に包まれて現れ、イエスがエルサレムでやり遂げようとしている、この世からの旅立ちについて語り合っていた。
9:32 ペテロと仲間たちは、ひどく眠くなっていた。でも、はっと目を覚ますと、イエスの栄光と、そばに立っている二人の人を見た。
9:33 二人がイエスのそばを離れようとしたとき、ペテロがイエスに言った。「先生、わたしたちがここにいるのは、すばらしいことです。だから、小屋を三つ建てましょう。あなたに一つ、モーセに一つ、エリヤに一つ。」自分でも何を言っているのか、わかっていなかった。
9:34 ペテロがこう言っていると、雲が現れて、みんなを覆った。そして、その雲の中に包まれていくと、弟子たちは怖くなった。
9:35 すると、雲の中から声がした。「これはわたしの子、わたしが選んだ者だ。この子の言うことを聞きなさい。」
9:36 その声がやむと、そこにはイエスだけがいた。弟子たちは黙っていて、見たことを、そのころは誰にも話さなかった。
9:37 翌日、彼らが山を下りると、大勢の群衆がイエスを出迎えた。
9:38 すると、群衆の中の一人の男が叫んだ。「先生、お願いです。わたしの息子を見てやってください。この子は、わたしのたった一人の子どもなんです。
9:39 霊が取りつくと、この子は急に叫びだします。霊はこの子をひきつけさせ、口から泡を吹かせるんです。そして、なかなか離れずに、この子を痛めつけます。
9:40 その霊を追い出してくださいと、あなたのお弟子さんたちにお願いしたのですが、できませんでした。」
9:41 イエスは答えた。「ああ、信じようとしない、ねじ曲がった時代の人たちだ。いつまでわたしは、あなたたちと一緒にいて我慢すればいいのか。あなたの息子をここに連れて来なさい。」
9:42 その子が来る途中にも、悪霊はその子を引き倒し、激しくひきつけさせた。でも、イエスが汚れた霊を叱りつけると、その子は治った。そして、イエスはその子を父親に返した。
9:43 人々はみな、神の偉大さに驚いた。みんながイエスのすることすべてに驚いている中で、イエスは弟子たちに言った。
9:44 「これから言うことを、よく聞いて覚えておきなさい。人の子は、人々の手に引き渡されようとしている。」
9:45 でも、弟子たちにはこの言葉の意味が分からなかった。それは彼らに隠されていて、理解できないようになっていたのだ。そして、彼らはその言葉についてイエスに尋ねるのを怖がった。
9:46 さて、弟子たちの間で、誰が一番偉いのかという議論が起こった。
9:47 イエスは、彼らの心の中の考えを知っていた。それで、一人の子どもの手を取り、自分のそばに立たせて、
9:48 言った。「わたしの名のためにこの子どもを受け入れる人は、わたしを受け入れるのだ。そして、わたしを受け入れる人は、わたしを送った方を受け入れるのだ。あなたたちみんなの中で一番小さい者こそ、偉いのだから。」
9:49 すると、ヨハネが言った。「先生、わたしたちは、ある人があなたの名を使って悪霊を追い出しているのを見ました。それで、わたしたちの仲間ではないので、やめさせようとしました。」
9:50 でも、イエスは彼に言った。「やめさせてはいけない。あなたたちに敵対しない人は、あなたたちの味方なのだから。」
9:51 さて、イエスが天に上げられる日が近づいてきた。そこでイエスは、エルサレムに向かうと固く心に決めた。
9:52 そして、先に使いの者を送り出した。彼らは出かけて行き、イエスのために準備をしようと、サマリア人の村に入った。
9:53 しかし、村人たちはイエスを受け入れなかった。イエスがエルサレムを目指して進んでいたからだ。
9:54 これを見て、弟子のヤコブとヨハネが言った。「主よ、天から火を降らせて、彼らを焼き尽くしましょうか。」
9:55 でも、イエスは振り向いて、二人を叱った。
9:56 そして、一行は別の村へ向かった。
9:57 彼らが道を進んでいると、ある人がイエスに言った。「あなたがどこへ行かれても、ついて行きます。」
9:58 すると、イエスは彼に言った。「きつねには穴があり、空の鳥には巣がある。でも、人の子には枕する場所さえないのだ。」
9:59 また、イエスは別の人に言った。「わたしについて来なさい。」すると、その人は言った。「主よ、まず父を葬りに行かせてください。」
9:60 でも、イエスは言った。「死んだ人を葬ることは、死んだ人たちに任せておきなさい。あなたは行って、神の御国を伝えなさい。」
9:61 また、別の人も言った。「主よ、あなたについて行きます。でも、まず家の人たちに別れを告げに行かせてください。」
9:62 すると、イエスは言った。「すきに手をかけてから後ろを振り返る人は、誰も神の御国にふさわしくない。」
10:1 その後、主はほかに七十二人を選び、二人ずつ組にして、自分が行こうとしているすべての町や場所へ、先に送り出した。
10:2 そして、彼らに言った。「収穫はたくさんある。でも、働く人が少ない。だから、収穫の主人にお願いしなさい。刈り入れのために働く人を送ってくださいと。
10:3 さあ、行きなさい。いいか、わたしはあなたたちを、狼の群れの中に送り出す子羊のように送り出す。
10:4 財布も、袋も、履き物も持って行ってはいけない。途中で誰にも、あいさつをして立ち止まってはいけない。
10:5 どこかの家に入ったら、まず『この家に平安がありますように』と言いなさい。
10:6 もし、そこに平安を受けるにふさわしい人がいれば、あなたたちの祈った平安はその人の上にとどまる。でも、そうでなければ、その平安はあなたたちのところへ戻ってくる。
10:7 そして、その家に泊まりなさい。出される物を食べたり飲んだりしていい。働く人が報酬を受けるのは当然のことだから。あちこちの家を渡り歩いてはいけない。
10:8 どこかの町に入って、そこの人たちが迎え入れてくれたら、出された物を食べなさい。
10:9 その町の病人を治し、人々にこう伝えなさい。『神の国があなたたちのすぐそばまで来ている』と。
10:10 でも、どこかの町に入って、迎え入れてもらえなかったら、その町の大通りに出て、こう言いなさい。
10:11 『あなたたちの町でわたしたちの足についたほこりさえ、ここで払い落として返す。それでも、これだけは知っておきなさい。神の国はもうそばまで来ている』と。
10:12 言っておく。裁きの日には、あの町よりもソドムのほうがまだ軽く済むだろう。
10:13 コラジンよ、あなたは不幸だ。ベツサイダよ、あなたは不幸だ。あなたたちの間で行われた奇跡が、もしティルスとシドンで行われていたら、その町の人たちはとっくに荒布をまとい、灰をかぶって座り、心を入れ替えていたはずだ。
10:14 だから裁きのときには、ティルスとシドンのほうが、あなたたちよりまだ軽く済むだろう。
10:15 カファルナウムよ、あなたは天まで高く上げられるとでも思っているのか。いや、あなたは陰府の底まで落とされるのだ。
10:16 あなたたちの言葉を聞く人は、わたしの言葉を聞くのだ。あなたたちを拒む人は、わたしを拒む。そして、わたしを拒む人は、わたしを送った方を拒むのだ。」
10:17 さて、七十二人が喜んで帰って来て、こう言った。「主よ、あなたのお名前を使うと、悪霊さえもわたしたちに従います。」
10:18 イエスは彼らに言った。「わたしは、サタンが稲妻のように天から落ちるのを見ていた。
10:19 いいか、わたしはあなたたちに、蛇やサソリを踏みつけ、敵のあらゆる力に打ち勝つ権威を与えた。だから、何一つあなたたちを傷つけることはできない。
10:20 でも、悪霊があなたたちに従うからといって、それを喜んではいけない。むしろ、あなたたちの名前が天に書き記されていることを喜びなさい。」
10:21 そのとき、イエスは聖霊に満たされて喜びにあふれ、こう言った。「父よ、天と地の主よ、あなたをほめたたえます。あなたはこれらのことを、知恵ある人や賢い人には隠して、幼い子どもたちに明らかにしてくださいました。そうです、父よ。それが、あなたの願いにかなったことだったからです。
10:22 すべてのものが、父からわたしにゆだねられています。子がどういう者なのかは、父のほかにだれも知りません。父がどういう方なのかは、子のほか、そして子が明らかにしようと思う相手のほか、だれも知りません。」
10:23 それから、イエスは弟子たちのほうを向いて、彼らだけにこう言った。「あなたたちが見ているものを見る目は、幸いだ。
10:24 言っておくが、多くの預言者や王たちが、あなたたちが今見ているものを見たいと願った。それなのに見ることができなかった。あなたたちが今聞いていることを聞きたいと願ったのに、聞くことができなかったのだ。」
10:25 すると、ある律法の専門家が立ち上がり、イエスを試そうとして言った。「先生、永遠のいのちを受け継ぐには、何をすればいいのでしょうか。」
10:26 イエスは彼に言った。「律法には何と書いてあるか。あなたはそれをどう読んでいるか。」
10:27 彼は答えた。「心を尽くし、たましいを尽くし、力を尽くし、思いを尽くして、あなたの神である主を愛しなさい。また、あなたの隣人を自分自身のように愛しなさい、とあります。」
10:28 イエスは言った。「その通りだ。それを実行しなさい。そうすれば、あなたは生きる。」
10:29 しかし彼は、自分は正しいと見せたくて、イエスに言った。「では、わたしの隣人とは、だれのことですか。」
10:30 イエスは答えて言った。「ある人が、エルサレムからエリコへ下る道を歩いていた。すると強盗に襲われ、身ぐるみをはがされ、殴られたうえで、半殺しにされたまま置き去りにされた。
10:31 たまたま一人の祭司が、その道を下って来た。でも、その人を見ると、反対側を通って行ってしまった。
10:32 同じように、神殿で仕えるレビ人も、その場所に来て、その人を見たのに、反対側を通り過ぎて行った。
10:33 ところが、旅をしていた一人のサマリア人は、その人のところに来て、その姿を見ると、かわいそうでたまらなくなった。
10:34 そばに近寄り、傷にオリーブ油とぶどう酒を注いで、包帯を巻いた。そして自分のロバに乗せ、宿屋まで連れて行って介抱した。
10:35 次の日、彼はデナリ銀貨を二枚取り出して宿屋の主人に渡し、こう言った。「この人の世話をしてください。もっとお金がかかったら、帰りに払います。」
10:36 さて、強盗に襲われたこの人にとって、隣人になったのは、この三人のうちのだれだと思うか。」
10:37 律法の専門家は言った。「その人に思いやりをかけた人です。」するとイエスは言った。「行って、あなたも同じようにしなさい。」
10:38 それから、一行が旅を続けていると、イエスはある村に入った。すると、マルタという名の女性が、イエスを家に迎え入れた。
10:39 彼女にはマリアという姉妹がいた。マリアはイエスの足もとに座って、その話に聞き入っていた。
10:40 ところがマルタは、次から次へと出てくるもてなしの仕事に追われていた。そして、イエスのそばに来て言った。「主よ、妹がわたし一人に働かせているのを、何とも思われないのですか。手伝ってくれるように、妹に言ってください。」
10:41 主は答えて言った。「マルタ、マルタ。あなたは多くのことに心を配り、思い悩んでいる。
10:42 でも、必要なことはわずか、いや、たった一つだけだ。マリアはその良いほうを選んだ。それは彼女から取り上げられることはない。」
11:1 イエスはある場所で祈っていた。祈り終えると、弟子の一人がこう言った。「主よ、ヨハネが弟子たちに教えたように、わたしたちにも祈り方を教えてください。」
11:2 そこでイエスは言った。「祈るときは、こう言いなさい。『父よ、あなたの名が聖なるものとされますように。あなたの国が来ますように。
11:3 わたしたちに必要な糧を、毎日与えてください。
11:4 わたしたちの罪を赦してください。わたしたちも、自分に負い目のある人をみな赦していますから。わたしたちを誘惑に引き込まないでください。』」
11:5 そしてイエスは言った。「あなたたちの誰かに友達がいるとする。その友達のところへ真夜中に行って、こう頼んだとしよう。『ねえ、パンを三つ貸してくれないか。
11:6 旅の途中の友達がうちに来たのに、出せるものが何もないんだ。』
11:7 すると、その友達は家の中から答える。『面倒をかけないでくれ。もう戸は閉めたし、子どもたちも一緒に寝ているんだ。今さら起きて渡すことなんてできないよ。』
11:8 でも、言っておく。友達だからという理由では起きて渡さなくても、しつこく頼まれるので、結局は起き上がって、必要なものをぜんぶ与えるだろう。
11:9 だからわたしは言う。求めなさい。そうすれば与えられる。探しなさい。そうすれば見つかる。戸をたたきなさい。そうすれば開かれる。
11:10 求める人はみな受け取り、探す人は見つけ、戸をたたく人には開かれるのだから。
11:11 あなたたちの中に、子どもが魚を欲しがっているのに、魚の代わりに蛇を渡す父親がいるだろうか。
11:12 卵を欲しがっているのに、さそりを渡す父親がいるだろうか。
11:13 だからあなたたちは、悪い者であっても、自分の子どもに良い物を与えることを知っている。まして天の父は、求める人に聖霊を与えてくださるはずだ。」
11:14 イエスは、口をきけなくする悪霊を追い出していた。悪霊が出て行くと、口のきけなかった人が話し始めた。それを見て群衆は驚いた。
11:15 でも、その中には「あの人は、悪霊たちのかしらベルゼブルの力で悪霊を追い出しているのだ」と言う者もいた。
11:16 また、イエスを試そうとして、天からのしるしを求める者もいた。
11:17 イエスは彼らの考えを見抜いて、こう言った。「どんな国でも、内輪で争えば荒れ果ててしまう。一つの家も、内輪で争えば倒れてしまう。
11:18 もしサタンも内輪で争っているのなら、その国はどうやって立っていられるだろうか。あなたたちは、わたしがベルゼブルの力で悪霊を追い出していると言うが、
11:19 もしわたしがベルゼブルの力で悪霊を追い出しているのなら、あなたたちの仲間は何の力で追い出しているのか。だから、彼ら自身があなたたちを裁くことになる。
11:20 でも、わたしが神の指で悪霊を追い出しているのなら、神の国はもうあなたたちのところに来ているのだ。
11:21 強い男が武器を持って自分の屋敷を守っているときは、その財産は安全だ。
11:22 しかし、もっと強い者が襲ってきてその男を打ち負かすと、頼みにしていた武具をすべて奪い取り、分捕った物を分け合う。
11:23 わたしの味方でない者は、わたしに敵対している。わたしと一緒に集めない者は、散らしているのだ。
11:24 汚れた霊は、人から出て行くと、水のない場所をさまよって休む所を探す。でも見つからないので、こう言う。『出てきた自分の家に戻ろう。』
11:25 そして戻ってみると、家は掃除され、きちんと片づけられている。
11:26 すると、その霊は出かけて行き、自分よりもっと悪い七つの霊を連れてくる。そして中に入り込んで、そこに住みつく。こうして、その人の後の状態は、初めよりもひどくなるのだ。」
11:27 イエスがこう話していると、群衆の中の一人の女性が声を上げて言った。「あなたを宿した胎、あなたに乳を飲ませた乳房は、幸いです。」
11:28 でも、イエスは言った。「いや、それよりも、神の言葉を聞いて、それを守る人々は、幸いである。」
11:29 群衆がますます増えてくると、イエスは話し始めた。「今の時代の人々は、悪い者たちだ。しるしを求めるが、ヨナのしるしのほかには、どんなしるしも与えられない。
11:30 ヨナがニネベの人々にとってしるしとなったように、人の子も今の時代の人々にとって、そのしるしとなるからだ。
11:31 南の国の女王は、裁きのとき、今の時代の人々と共に立ち上がり、彼らを罪に定める。この女王は、ソロモンの知恵を聞くために、地の果てからやって来たからだ。しかし見なさい、ここにはソロモンよりも偉大な者がいる。
11:32 ニネベの人々は、裁きのとき、今の時代の人々と共に立ち上がり、彼らを罪に定める。ニネベの人々は、ヨナの説教を聞いて悔い改めたからだ。しかし見なさい、ここにはヨナよりも偉大な者がいる。
11:33 明かりをともして、それを地下室や入れ物の下に置く人はいない。むしろ、明かり台の上に置く。中に入って来る人たちに、その光が見えるようにするためだ。
11:34 体の明かりは、あなたの目だ。目が澄んでいれば、体全体が明るくなる。でも、目が濁っていれば、体も暗くなる。
11:35 だから、あなたの中にある光が、暗闇になっていないか、よく気をつけなさい。
11:36 もしあなたの体全体が光で満ちていて、少しも暗い部分がなければ、体はすっかり明るくなる。ちょうど、明かりがその輝きであなたを照らすときのようにだ。」
11:37 イエスが話し終えると、あるファリサイ派の人が、食事をいっしょにと誘った。それでイエスは家に入り、席に着いた。
11:38 ところがそのファリサイ派の人は、イエスが食事の前にまず手を洗い清めなかったのを見て、驚いた。
11:39 すると主は彼に言った。「あなたたちファリサイ派の人は、杯や皿の外側はきれいにする。でも、あなたたちの内側は、奪い取ることと悪意でいっぱいだ。
11:40 考えの足りない人たちだ。外側を造った方は、内側も造ったのではないか。
11:41 だから、器の中にあるものを、困っている人に分け与えなさい。そうすれば、あなたたちにとってすべてがきれいになる。
11:42 でも、あなたたちファリサイ派の人は不幸だ。ミントやヘンルーダなど、あらゆる野菜は十分の一をきちんと納める。それなのに、正しい裁きと神への愛はおろそかにしている。こちらこそ行うべきなのに、あちらもおろそかにしてはいけなかったのだ。
11:43 あなたたちファリサイ派の人は不幸だ。会堂では上座を好み、広場ではあいさつされるのを好むからだ。
11:44 あなたたちは不幸だ。人目につかない墓のようなものだからだ。人々はその上を歩いても、それと気づかない。」
11:45 すると、律法の専門家の一人が答えて言った。「先生、そんなことを言うと、わたしたちまで侮辱することになります。」
11:46 イエスは言った。「あなたたち律法の専門家も不幸だ。人々に、背負いきれないほど重い荷物を負わせておきながら、自分は指一本その荷物に触れようとしないからだ。
11:47 あなたたちは不幸だ。預言者たちの墓を建てているが、その預言者たちを殺したのは、あなたたちの先祖だからだ。
11:48 つまりあなたたちは、先祖のしたことの証人となり、それをよしとしているのだ。先祖が預言者たちを殺し、あなたたちがその墓を建てているのだから。
11:49 だから、神の知恵もこう言っている。『わたしは彼らのもとに預言者たちや使徒たちを送る。だが彼らは、そのうちのある者を殺し、ある者を迫害するだろう。』
11:50 こうして、世界が造られたときから流されてきたすべての預言者たちの血の責任が、今の時代の人々に問われることになる。
11:51 アベルの血から、祭壇と神殿の間で殺されたザカリヤの血に至るまで、その責任がだ。そうだ、はっきり言っておく。その責任は、今の時代の人々に問われる。
11:52 あなたたち律法の専門家は不幸だ。知識の鍵を取り上げてしまったからだ。自分は入ろうとせず、入ろうとする人たちまで邪魔したのだ。」
11:53 イエスがそこを出て行くと、律法学者たちやファリサイ派の人たちは激しく詰め寄り、いろいろなことについてしつこく問い詰め始めた。
11:54 イエスの言葉じりをとらえようと、待ち構えていたのだ。
12:1 そうしているうちに、数えきれないほどの群衆が集まってきて、たがいに踏みつけ合うほどだった。イエスはまず弟子たちに話し始めた。「ファリサイ派の人たちのパン種に気をつけなさい。それは偽善のことだ。
12:2 隠されているもので、あらわにされないものはない。秘められているもので、知られずに終わるものはない。
12:3 だから、あなたたちが暗やみで話したことは、明るいところで聞かれることになる。奥の部屋で耳もとにささやいたことは、屋根の上で言いふらされることになる。
12:4 わたしの友であるあなたたちに言っておく。体を殺しても、その後はもう何もできない者たちを恐れてはいけない。
12:5 だれを恐れるべきか、教えよう。殺したあとで、地獄に投げ込む権威を持っている方を恐れなさい。そうだ、はっきり言っておく。この方を恐れなさい。
12:6 すずめ五羽が、二アサリオンというわずかなお金で売られているではないか。それでも、その一羽さえ、神に忘れられることはない。
12:7 それどころか、あなたたちの髪の毛さえ、一本残らず数えられている。だから恐れることはない。あなたたちは、たくさんのすずめよりも、はるかに価値があるのだ。
12:8 言っておく。人々の前でわたしを認める者はみな、人の子も、神の天使たちの前でその人を認める。
12:9 でも、人々の前でわたしを知らないと言う者は、神の天使たちの前で知らないと言われる。
12:10 また、人の子に逆らう言葉を口にする者は、みな赦される。でも、聖霊を汚す者は赦されない。
12:11 人々があなたたちを会堂や役人や権力者の前に引き出しても、どう弁明しようか、何を言おうかと心配してはいけない。
12:12 言うべきことは、そのとき聖霊が教えてくれるからだ。」
12:13 すると、群衆の中の一人がイエスに言った。「先生、わたしの兄弟に、遺産をわたしと分けるよう言ってください。」
12:14 でもイエスは言った。「あなた、だれがわたしを、あなたたちの裁判官や遺産の分配人にしたのか。」
12:15 そして、みんなに言った。「よく気をつけて、どんな欲にも警戒しなさい。人の命は、財産があり余っているかどうかで決まるものではないからだ。」
12:16 それから、イエスはこんなたとえ話をした。「ある金持ちの畑が、豊かに実った。
12:17 そこで彼は、心の中で考えた。『どうしよう。作物をしまっておく場所がない。』
12:18 そして言った。『こうしよう。倉を取り壊して、もっと大きいのを建てよう。そこに穀物や財産を、ぜんぶしまっておこう。』
12:19 そして自分に言うんだ。「もう心配ない。何年分もの蓄えがあるんだから。ゆっくり休んで、飲んで食べて、楽しもう。」』
12:20 でも神は彼に言った。『愚か者。おまえの命は、今夜のうちに取り上げられる。そうしたら、ためこんだ物はいったい誰のものになるのか。』
12:21 自分のためにばかり財産をためこんで、神から見て豊かでない人は、こうなるんだ。」
12:22 それからイエスは弟子たちに言った。「だから言っておく。何を食べようかと自分の命のことで悩んだり、何を着ようかと体のことで悩んだりしてはいけない。
12:23 命は食べ物より大切だし、体は着る物より大切なんだ。
12:24 カラスのことを考えてみなさい。種をまくことも、刈り取ることもない。しまっておく倉も納屋もない。それでも神は、カラスを養っている。あなたたちは、鳥よりもずっと価値がある。
12:25 それに、あなたたちの中で、いくら悩んだところで、自分の寿命を少しでも延ばせる人がいるだろうか。
12:26 そんなささいなことさえできないのに、どうして残りのことで悩むのか。
12:27 野の花がどう育つか、考えてみなさい。働くことも、糸をつむぐこともしない。でも言っておく。あの栄華をきわめたソロモンでさえ、この花の一つほどにも美しく着飾ってはいなかった。
12:28 今日は野に生えていて、明日は炉に投げ込まれる草でさえ、神はこんなふうに装ってくださる。まして、あなたたちのことはなおさらだ。信じる心の弱い人たちよ。
12:29 だから、何を食べようか、何を飲もうかと探し求めてはいけない。あれこれ思いわずらうのをやめなさい。
12:30 こういう物はみんな、世の人たちが必死に求めているものだ。でも、あなたたちの父である神は、それがあなたたちに必要なことを、ちゃんと知っている。
12:31 むしろ、神の御国を求めなさい。そうすれば、こういう物はみんな添えて与えられる。
12:32 恐れることはない、小さな群れよ。あなたたちの父である神は、喜んで御国をあなたたちに与えてくださるのだから。
12:33 持ち物を売って、貧しい人に施しなさい。古くならない財布を、天に尽きることのない宝を、自分のために用意しなさい。そこには盗人も近づかず、虫も食い荒らさない。
12:34 あなたの宝のあるところに、あなたの心もあるのだ。
12:35 いつでも動けるように腰に帯を締め、明かりをともし続けていなさい。
12:36 主人が婚宴から帰って来て戸をたたいたら、すぐに開けようと待っている人たちのようでありなさい。
12:37 主人が帰って来たとき、目を覚ましているのを見つけてもらえる僕たちは幸いである。はっきり言っておく。その主人は帯を締めて、僕たちを食卓に着かせ、そばに行って給仕してくれる。
12:38 夜の半ばに帰って来ても、明け方近くに帰って来ても、そうして待っているのを見つけてもらえるなら、その僕たちは幸いである。
12:39 このことを覚えておきなさい。もし家の主人が、どの時間に泥棒が入るかを知っていたら、家に押し入られるのを許しはしなかっただろう。
12:40 あなたたちも用意していなさい。思いがけない時に、人の子は来るのだから。」
12:41 すると、ペテロが言った。「主よ、このたとえは、わたしたちに向けて話しているのですか。それとも、みんなに向けてですか。」
12:42 主は言われた。「主人が召し使いたちの上に立てて、時間どおりに食べ物を配らせる、忠実で賢い管理人とは、いったいだれだろうか。
12:43 主人が帰って来たとき、こうして働いているのを見つけてもらえる召し使いは、幸いである。
12:44 本当に言っておく。主人はその召し使いに、自分の全財産を任せるようになる。
12:45 でも、もしその召し使いが心の中で、『主人はなかなか帰って来ない』と思って、ほかの召し使いや女中を殴りはじめ、飲んだり食べたりして酔っぱらっていたら、どうだろう。
12:46 その召し使いの主人は、思いがけない日、気づかない時に帰って来る。そして彼を厳しく罰し、信じない者たちと同じ運命にするだろう。
12:47 主人の望みを知っていながら、その準備もせず、望みどおりにもしなかった召し使いは、ひどく打たれる。
12:48 でも、知らずに打たれるようなことをした者は、少しだけ打たれる。多くを与えられた者は、多くを求められる。多くを任された者は、それだけ多くを要求されるのだ。
12:49 わたしは地上に火を投げ込むために来た。その火がもう燃えていたらと、どんなに願っていることか。
12:50 わたしには受けなければならない洗礼がある。それがなしとげられるまで、どんなに苦しい思いでいることか。
12:51 わたしが地上に平和をもたらすために来たと思っているのか。そうではない。むしろ対立をもたらすために来たのだ。
12:52 これからは、一つの家で五人が対立し、三人が二人と、二人が三人と分かれて争うことになる。
12:53 父は息子と、息子は父と、母は娘と、娘は母と、しゅうとめは嫁と、嫁はしゅうとめと、対立するようになる。」
12:54 イエスはまた、群衆にも言われた。「あなたたちは西に雲がわき上がるのを見ると、すぐに『雨が降る』と言う。すると、そのとおりになる。
12:55 また、南風が吹くと、あなたたちは『暑くなる』と言う。すると、そのとおりになる。
12:56 偽善者たち。あなたたちは空や地の様子を見分けることは知っている。それなのに、どうして今というこの時を見分けることができないのか。
12:57 どうして、何が正しいかを自分で判断しないのか。
12:58 あなたを訴える人と一緒に役人のところへ行くときは、その途中で、なんとかその人と話をつけてしまいなさい。そうしないと、その人はあなたを裁判官のところへ引きずって行き、裁判官はあなたを看守に引き渡し、看守はあなたを牢に入れてしまう。
12:59 言っておく。あなたは最後の一円まで返し終えるまで、そこから決して出られない。」
13:1 ちょうどそのとき、ある人たちがやって来て、ガリラヤの人たちのことをイエスに伝えた。ピラトが彼らの血を、彼らのささげ物に混ぜたという話だった。
13:2 イエスは答えて言われた。「そんな目にあったからといって、このガリラヤの人たちが、ほかのどのガリラヤ人よりも罪深かったと思うのか。
13:3 そうではない。言っておく。あなたたちも、心を入れ替えて神に立ち帰らなければ、みな同じように滅びる。
13:4 それとも、シロアムの塔が倒れて下敷きになって死んだ、あの十八人はどうか。彼らが、エルサレムに住むほかのどの人よりも罪深かったと思うのか。
13:5 そうではない。言っておく。あなたたちも、心を入れ替えて神に立ち帰らなければ、みな同じように滅びる。」
13:6 それから、イエスはこのたとえを話された。「ある人が、自分のぶどう畑にいちじくの木を植えていた。そして実を探しに来たが、見つからなかった。
13:7 そして、ぶどう畑の世話をする人にこう言った。『見なさい。もう三年も、わたしはこのいちじくの木に実を探しに来ているのに、一つも見つからない。切り倒してしまいなさい。土地の無駄づかいだ。』
13:8 すると、その人は答えた。『ご主人様、今年もう一年、このままにしておいてください。まわりを掘って、肥やしをやってみます。
13:9 それで来年、実がなればいいですし、だめならそのときは切り倒してください。』」
13:10 ある安息日、イエスは会堂の一つで教えていた。
13:11 すると、そこに十八年間も病の霊に取りつかれた女性がいた。腰が曲がってしまい、どうしても身を伸ばすことができなかった。
13:12 イエスは彼女を見ると、呼び寄せて言った。「あなたは、その病から解放された。」
13:13 そして両手を彼女の上に置くと、彼女はたちまち体をまっすぐに起こし、神をたたえた。
13:14 ところが、会堂を管理する人は、イエスが安息日に病気を治したことに腹を立てた。そして人々にこう言った。「働くべき日は六日ある。だから、治してもらいたいなら、その日のうちに来なさい。安息日にではなく。」
13:15 主は彼にこう答えた。「偽善者たちよ。あなたたちはみな、安息日でも自分の牛やろばを小屋から解いて、水を飲ませに引いて行くではないか。
13:16 この女性はアブラハムの娘なのに、サタンに十八年間も縛られてきたのだ。安息日だからといって、この束縛から解いてやってはいけないのか。」
13:17 こう言うと、イエスに反対していた人たちはみな恥じ入った。一方、群衆はみな、イエスがなさったすばらしいことすべてを見て喜んだ。
13:18 そこで、イエスは言った。「神の国は何に似ているだろうか。何にたとえたらいいだろうか。
13:19 それは、からし種のようなものだ。ある人がそれを取って、自分の畑にまいた。すると成長して木になり、空の鳥がその枝に巣を作った。」
13:20 イエスはまた言った。「神の国は何にたとえたらいいだろうか。
13:21 それは、パン種のようなものだ。ある女性がそれを取って、小麦粉三サトンに混ぜ込むと、やがて全体がふくらんだ。」
13:22 イエスは町や村を巡り、教えながらエルサレムへの旅を続けた。
13:23 すると、ある人がイエスに尋ねた。「主よ、救われる人は少ないのでしょうか。」イエスは人々に言った。
13:24 「狭い戸口から入るように、力を尽くしなさい。言っておくが、多くの人が入ろうとしても、入れないのだ。
13:25 家の主人がいったん立ち上がって戸を閉めてしまうと、あなたがたは外に立ち、戸をたたいて『主よ、開けてください』と言い始める。だが主人は、『おまえたちがどこの者か、わたしは知らない』と答えるだろう。
13:26 そのときあなたがたは、『わたしたちはあなたと一緒に飲み食いしましたし、あなたはわたしたちの町の通りで教えてくださったのに』と言い始める。
13:27 しかし主人は言う。『おまえたちがどこの者か、わたしは知らない。悪を行う者たちよ、みなわたしから離れて行け。』
13:28 あなたがたは、アブラハム、イサク、ヤコブ、そしてすべての預言者が神の国にいるのに、自分たちは外に追い出されているのを見て、泣いて歯ぎしりすることになる。
13:29 そして人々が、東から西から、また北から南からやって来て、神の国で食卓に着く。
13:30 こうして、今は最後にいる者が最初になり、今は最初にいる者が最後になるのだ。」
13:31 ちょうどそのとき、何人かのファリサイ派の人たちがイエスのところに来て言った。「ここを出て、よそへ行ってください。ヘロデがあなたを殺そうとしています。」
13:32 するとイエスは言った。「あのキツネのところへ行って、こう伝えなさい。『いいか、わたしは今日も明日も悪霊を追い出し、病気を治す。そして三日目にすべてをやり遂げる。』
13:33 とにかく、わたしは今日も明日も、その次の日も進んで行かなければならない。預言者がエルサレムの外で死ぬことなど、あってはならないからだ。
13:34 エルサレム、エルサレム。預言者たちを殺し、自分のもとに送られた人たちを石で打ち殺す町よ。めんどりがひなを翼の下に集めるように、わたしは何度もあなたの子らを集めようとした。それなのに、あなたがたはそれを拒んだ。
13:35 見なさい。あなたがたの家は見捨てられて、荒れ果てたままになる。あなたがたに言っておく。あなたがたは、『主の名によって来る方に祝福があるように』と言う日が来るまで、決してわたしを見ることはない。」
14:1 ある安息日のこと、イエスはファリサイ派のある指導者の家に食事に行った。人々はイエスをじっと見張っていた。
14:2 そこに、体がむくむ病気にかかった人がイエスの前にいた。
14:3 イエスは律法の専門家やファリサイ派の人たちに向かって言った。「安息日に病気を治すことは、律法で許されているか、それとも許されていないか。」
14:4 彼らは黙っていた。そこでイエスはその人の手を取って癒やし、帰らせた。
14:5 そして彼らに言った。「あなたがたのうち、自分の子や牛が井戸に落ちたら、安息日だからといって、すぐに引き上げない人がいるだろうか。」
14:6 彼らはこれに対して、何も答えることができなかった。
14:7 イエスは、招かれた人たちが上座を選んでいるのに気づいて、こんなたとえを話した。
14:8 「誰かに結婚披露宴に招かれたら、上座に座ってはいけない。あなたより身分の高い人が招かれているかもしれないからだ。
14:9 そうなると、あなたとその人を招いた主人がやって来て、『この方に席を譲ってください』と言うだろう。そのときあなたは、恥をかきながら末席に着くことになる。
14:10 招かれたら、むしろ末席に行って座りなさい。そうすれば、招いてくれた主人が来て、『友よ、もっと上の席へどうぞ』と言ってくれる。そのとき、同席している人みんなの前で、あなたは面目を保てるのだ。
14:11 だれでも自分を高くする者は低くされ、自分を低くする者は高くされるのだから。」
14:12 それからイエスは、自分を招いてくれた人にも言った。「昼食や夕食の会を開くときは、友人や兄弟、親戚や裕福な隣人を呼んではいけない。その人たちもあなたを招き返して、お返しをされてしまうかもしれないからだ。
14:13 宴会を開くときは、むしろ貧しい人や、体の不自由な人、足の悪い人、目の見えない人を招きなさい。
14:14 そうすれば、あなたは幸いである。その人たちはお返しができないからだ。正しい人たちが復活するとき、あなたは神から報いを受けるのだ。」
14:15 これを聞いて、同席していた一人がイエスに言った。「神の国で食事をする人は、幸いです。」
14:16 するとイエスは言った。「ある人が盛大な宴会を開いて、大勢の人を招いた。
14:17 宴会の時刻になると、その人は召使いを送って、招いておいた人たちにこう伝えさせた。『さあ、おいでください。もう準備ができています。』
14:18 ところが、みんな同じように断り始めた。最初の人はこう言った。『畑を買ったので、見に行かなければなりません。どうか、わたしのことは許してください。』
14:19 別の人はこう言った。『牛を五組買ったので、それを確かめに行くところなんです。どうか、わたしのことは許してください。』
14:20 また別の人は言った。『結婚したばかりなので、行くことができません。』
14:21 召使いは戻って、このことを主人に報告した。すると主人は怒って、召使いにこう言った。『すぐに町の広い通りや路地に出て行って、貧しい人、体の不自由な人、目の見えない人、足の不自由な人を、ここに連れて来なさい。』
14:22 召使いは言った。『ご主人様、おっしゃったとおりにしました。でも、まだ席が空いています。』
14:23 主人は召使いに言った。『それなら、町の外の道や垣根のところまで出て行って、無理にでも人々を連れて来なさい。わたしの家をいっぱいにするためだ。
14:24 言っておくが、最初に招かれていた人たちは、だれ一人、わたしの食事を口にすることはない。』」
14:25 大勢の群衆がイエスといっしょに歩いていた。イエスは振り返って、彼らにこう言った。
14:26 「わたしのところに来る人で、自分の父や母、妻や子ども、兄弟や姉妹、それに自分の命さえも憎まない者は、わたしの弟子になることはできない。
14:27 自分の十字架を背負ってわたしについて来ない者は、わたしの弟子になることはできない。
14:28 あなたがたのうち、塔を建てようとする人がいたら、まず座って費用を計算し、完成させるだけのお金があるかどうか確かめるのではないか。
14:29 そうしないと、土台を築いただけで完成させられず、見ていた人がみんな、その人をばかにし始めることになる。
14:30 『この人は建て始めたのに、完成させられなかった』と言って。
14:31 あるいは、こう考えてみてほしい。ほかの王と戦いに行こうとする王がいたとする。その王はまず座って、こう考えないだろうか。二万の兵で攻めてくる相手に、自分の一万の兵で立ち向かえるだろうか、と。
14:32 もし勝てそうにないなら、相手がまだ遠くにいるうちに使者を送り、和平の条件を求めるはずだ。
14:33 それと同じだ。あなたがたのうちだれでも、自分の持ち物すべてを手放す覚悟がなければ、わたしの弟子ではいられない。
14:34 塩は良いものだ。でも、その塩の塩けが抜けてしまったら、どうやって塩けを取り戻せるだろう。
14:35 そうなれば、畑にも肥やしにも役に立たず、外に捨てられるしかない。聞く耳のある人は聞きなさい。」
15:1 さて、取税人や罪人たちがみな、イエスの話を聞こうとして近づいてきていた。
15:2 すると、ファリサイ派の人々や律法学者たちは、こう言って不満をもらした。「この人は罪人を受け入れて、一緒に食事までしている。」
15:3 そこでイエスは、彼らにこのたとえを話した。
15:4 「あなたがたのうちのだれかが、羊を百匹持っていて、そのうちの一匹を見失ったとしよう。その人は九十九匹を野原に残して、見失った一匹を、見つけるまで探し歩くのではないだろうか。
15:5 そして見つけたら、喜んでその羊を自分の肩に担ぎ上げる。
15:6 家に帰ると、友人や近所の人たちを呼び集めて、こう言うだろう。『わたしと一緒に喜んでください。見失った羊が見つかったのです。』
15:7 言っておく。それと同じように、天では、悔い改める一人の罪人のことを、悔い改める必要のない九十九人の正しい人たち以上に喜ぶのだ。
15:8 あるいは、こう考えてみよう。銀貨を十枚持っている女の人が、そのうちの一枚をなくしたとしたら、どうするだろう。明かりをつけ、家の中を掃いて、見つかるまで念入りに探すのではないだろうか。
15:9 そして見つけたら、友人や近所の人たちを呼び集めて、こう言うだろう。『わたしと一緒に喜んでください。なくした銀貨が見つかったのです。』
15:10 言っておく。それと同じように、悔い改める一人の罪人のことを、神の天使たちも喜ぶのだ。」
15:11 イエスはさらに、こう話した。「ある人に、二人の息子がいた。
15:12 弟のほうが父親に言った。『お父さん、財産のうち、わたしの取り分をください。』それで父親は、二人に財産を分けてやった。
15:13 それから何日もたたないうちに、弟は自分のものを全部まとめて、遠い国へ旅立った。そしてそこで、放蕩の限りを尽くして財産を使い果たしてしまった。
15:14 何もかも使い切ってしまったころ、その国全体をひどい飢饉が襲った。そして弟は、食べる物にも困り始めた。
15:15 そこで、その国に住むある人のところに身を寄せた。するとその人は、彼を畑にやって豚の世話をさせた。
15:16 彼は、豚が食べているいなご豆でもいいから腹を満たしたいと思うほどだった。でも、それさえだれもくれなかった。
15:17 そのとき、彼はようやく我に返って言った。『お父さんのところでは、雇い人でさえあり余るほどのパンがあるのに、わたしはこんな所で飢え死にしそうだ。
15:18 よし、立ち上がって、お父さんのところへ帰ろう。そして、こう言おう。お父さん、わたしは天に対して罪を犯し、あなたにも罪を犯しました。
15:19 もう、あなたの子と呼ばれる資格はありません。どうか、雇い人の一人として扱ってください。』
15:20 こうして彼は立ち上がり、父のところへ向かった。まだ遠く離れていたのに、父は彼を見つけた。そして、かわいそうにたまらなくなり、走り寄って首を抱きしめ、何度もキスをした。
15:21 子は父に言った。『お父さん、わたしは天に対して罪を犯し、あなたにも罪を犯しました。もう、あなたの子と呼ばれる資格はありません。』
15:22 でも父は、召し使いたちに言った。『急いで一番いい服を持ってきて、この子に着せなさい。手には指輪をはめ、足には靴をはかせなさい。
15:23 それから、よく太らせた子牛を引いてきて、ほふりなさい。みんなで食べて、お祝いをしよう。
15:24 このわたしの子は死んでいたのに、生き返ったのだ。いなくなっていたのに、見つかったのだ。』こうして、みんなでお祝いを始めた。
15:25 ところで、兄のほうは畑にいた。帰ってきて家に近づくと、音楽や踊りの音が聞こえてきた。
15:26 そこで、召し使いの一人を呼んで、何が起きているのかとたずねた。
15:27 召し使いは言った。『弟さんが帰ってこられたんです。無事に戻ってきたので、お父さんがよく太らせた子牛をほふったんですよ。』
15:28 すると兄は腹を立てて、家に入ろうとしなかった。それで父が出てきて、なだめようとした。
15:29 でも兄は父に言い返した。『いいですか、わたしはこんなに長い年月あなたのために働いて、一度も言いつけにそむいたことはありません。それなのに、あなたは友だちと楽しむための子やぎ一匹さえ、くれたことがなかった。
15:30 それなのに、あなたのあの子が帰ってきたら、あなたはあの子のために、よく太らせた子牛をほふってやった。娼婦たちと一緒にあなたの財産を食いつぶしたあの子のためにね。』
15:31 すると父は言った。『子どもよ、おまえはいつもわたしと一緒にいる。わたしのものは全部おまえのものだ。
15:32 でも、喜んで祝うのは当然じゃないか。おまえのこの弟は、死んでいたのに生き返った。いなくなっていたのに、見つかったんだから。』」
16:1 イエスは弟子たちにも、こんな話をした。「あるお金持ちがいて、財産の管理をまかせている使用人がいた。ところがこの使用人が、主人の財産を無駄づかいしていると告げ口された。
16:2 そこで主人は彼を呼んで言った。『おまえのことで、こんな話を聞いたぞ。どういうことだ。管理してきた仕事の帳簿を出しなさい。もう、まかせておくわけにはいかない。』
16:3 使用人は心の中で考えた。『どうしよう。主人は管理の仕事を取り上げようとしている。土を掘る力はないし、物ごいをするのは恥ずかしい。
16:4 そうだ、いい手がある。仕事を辞めさせられたとき、人々が自分の家に迎え入れてくれるようにしておこう。』
16:5 そこで彼は、主人にお金を借りている人たちを一人ずつ呼び寄せた。まず最初の人に言った。『あなたは、わたしの主人にどれだけ借りがありますか。』
16:6 その人は答えた。『オリーブ油、百バトスです。』すると彼は言った。『さあ、あなたの借用書を受け取って、早く座って、五十と書き直しなさい。』
16:7 それから、別の人に聞いた。「あなたはどれくらい借りがある?」その人は「小麦を百コロス」と答えた。管理人は言った。「これがあなたの証書だ。八十と書き直しなさい」
16:8 主人は、この不正な管理人を、うまくやったとほめた。この世の人たちは、自分たちの仲間とうまくやっていくことにかけては、光の子たちよりも賢いのだ。
16:9 だから、あなたたちに言っておく。不正にまみれたお金を使ってでも、友だちをつくりなさい。そうすれば、お金がなくなったとき、その友だちがあなたたちを永遠の住まいに迎え入れてくれる。
16:10 ごく小さなことに誠実な人は、大きなことにも誠実だ。ごく小さなことにいい加減な人は、大きなことにもいい加減だ。
16:11 だから、もしあなたたちが不正なお金に誠実でなかったら、だれが本当の富をあなたたちに任せるだろう。
16:12 他人のものに誠実でなかったら、だれがあなたたち自身のものをあなたたちに与えるだろう。
16:13 どんな召使いも、二人の主人に仕えることはできない。一方を憎んで、もう一方を愛するか、一方に尽くして、もう一方を軽く見るか、どちらかだからだ。あなたたちは、神とお金の両方に仕えることはできない。」
16:14 お金を愛するファリサイ派の人たちは、これをぜんぶ聞いて、イエスをあざ笑った。
16:15 そこで、イエスは彼らに言った。「あなたたちは、人の前では自分を正しい者に見せている。でも、神はあなたたちの心を知っている。人の間で価値が高いとされるものは、神の前では忌み嫌われるものなのだ。
16:16 律法と預言者たちの時代は、ヨハネまでだった。それからは、神の国が伝えられ、だれもがそこに入ろうと必死になっている。
16:17 でも、律法の小さな一画が消えるより、天と地が消えてなくなるほうが、まだたやすいのだ。
16:18 自分の妻を離縁して別の女性と結婚する者は、姦淫を犯している。夫から離縁された女性と結婚する者も、姦淫を犯している。」
16:19 ある金持ちがいた。彼はいつも紫の衣と上質な麻の服を着て、毎日はでに贅沢な暮らしを楽しんでいた。
16:20 その金持ちの家の門の前には、ラザロという名の貧しい男が寝かされていた。全身できものだらけだった。
16:21 ラザロは、金持ちの食卓から落ちるくずでもいいから食べて、腹を満たしたいと思っていた。それどころか、犬までやってきて、彼のできものをなめていた。
16:22 やがて、この貧しい男は死に、天使たちに運ばれてアブラハムのそばに連れて行かれた。金持ちも死んで葬られた。
16:23 金持ちは死後の苦しみの世界で、もだえ苦しみながら目を上げた。すると、はるか遠くにアブラハムが見え、その人のそばにラザロがいた。
16:24 そこで彼は叫んだ。『父アブラハムよ、どうか私をあわれんでください。ラザロを送って、指先を水にひたし、私の舌を冷やさせてください。私はこの炎の中で苦しくてたまらないのです。』
16:25 だがアブラハムは言った。『子よ、思い出しなさい。おまえは生きている間に良いものをたっぷり受け取り、ラザロは反対に悪いものばかりを受けた。でも今、彼はここで慰められ、おまえは苦しんでいる。
16:26 それに、私たちとおまえたちの間には大きな深い溝があって、動かせないようにされている。だから、ここからそちらへ渡ろうとしてもできないし、そちらからこちらへ越えて来ることもできないのだ。』
16:27 金持ちは言った。『それなら父よ、お願いです。ラザロを私の父の家へ送ってください。
16:28 私には兄弟が五人います。彼らまでこの苦しみの場所に来ることがないように、はっきり警告してほしいのです。』
16:29 アブラハムは言った。『彼らにはモーセと預言者たちがいる。その言葉に耳を傾ければいい。』
16:30 金持ちは言った。『いいえ、父アブラハムよ。でも、だれかが死んだ者の中から彼らのところへ行けば、きっと悔い改めるはずです。』
16:31 アブラハムは言った。『モーセと預言者たちの言葉に耳を傾けないのなら、たとえだれかが死んだ者の中から生き返っても、彼らは聞き入れないだろう。』
17:1 イエスは弟子たちに言った。「人をつまずかせるものは、必ずやって来る。でも、それをもたらす人は不幸だ。
17:2 この小さな者の一人をつまずかせるくらいなら、首に大きな石臼をかけられて海に投げ込まれたほうが、その人にとってはましなくらいだ。
17:3 だから気をつけなさい。もしあなたの兄弟が罪を犯したら、注意しなさい。そして悔い改めたら、赦しなさい。
17:4 一日に七回あなたに罪を犯しても、七回『悔い改めます』と言って戻ってくるなら、赦してあげなさい。」
17:5 使徒たちは主に言った。「わたしたちの信仰を増してください。」
17:6 主は言った。「もしあなたがたに、からし種ほどの信仰があれば、この桑の木に『根こそぎ抜けて、海に植われ』と言っても、その通りになるだろう。
17:7 あなたがたのだれかに、畑を耕したり羊の世話をしたりする召使いがいるとする。その召使いが畑から帰ってきたとき、『さあ、すぐに来て食事の席につきなさい』と言うだろうか。
17:8 むしろ、『私の食事を用意しなさい。そして帯を締めて、私が食べて飲み終わるまで給仕しなさい。あなたが食べたり飲んだりするのは、その後でいい』と言うのではないか。
17:9 召使いが言いつけられたことをしたからといって、主人は感謝するだろうか。
17:10 あなたがたも同じだ。言いつけられたことをすべてやり終えたら、『わたしたちは取るに足りない召使いです。しなければならないことをしただけです』と言いなさい。」
17:11 さて、イエスはエルサレムへ向かう途中、サマリアとガリラヤの間を通って行った。
17:12 ある村に入ると、重い皮膚病にかかった十人の男たちがイエスを出迎えた。彼らは遠くに立って、
17:13 そして声を張り上げて言った。「イエスさま、先生、わたしたちをあわれんでください。」
17:14 イエスは彼らを見て言った。「祭司たちのところへ行って、体を見せなさい。」彼らはその途中で、体がきれいに治った。
17:15 その中の一人は、自分が治ったのを見て、大きな声で神をたたえながら引き返してきた。
17:16 そしてイエスの足もとにひれ伏して、感謝した。この人はサマリア人だった。
17:17 イエスは言った。「きれいに治ったのは十人ではなかったか。あとの九人はどこにいるのか。
17:18 神に栄光を帰すために戻ってきたのは、この外国人のほかにはいなかったのか。」
17:19 そしてその人に言った。「立って、行きなさい。あなたの信仰があなたを救った。」
17:20 さて、神の国はいつ来るのかとファリサイ派の人たちに聞かれたとき、イエスはこう答えた。「神の国は、目に見えるかたちで来るものではない。
17:21 『ほら、ここにある』とか『あそこにある』などと言えるものでもない。実は、神の国はあなたがたの間にあるのだ。」
17:22 それから弟子たちに言った。「あなたがたが、人の子の日を一日でも見たいと願う時が来る。でも、それを見ることはできない。
17:23 人々は『ほら、あそこだ』『ほら、ここだ』と言うだろう。でも、行ってはいけない。追いかけてもいけない。
17:24 稲妻がひらめいて、空の端から端まで輝くように、人の子もその日にはそのように現れる。
17:25 でも、人の子はまず多くの苦しみを受けなければならない。そして、今の時代の人たちに拒まれることになる。
17:26 ノアの時代に起きたことと同じことが、人の子が現れる時代にも起きる。
17:27 ノアが箱舟に入るその日まで、人々は食べたり飲んだり、結婚したり嫁いだりしていた。そこに洪水が来て、全員を滅ぼした。
17:28 ロトの時代も同じだった。人々は食べたり飲んだり、物を売り買いし、畑に苗を植え、家を建てていた。
17:29 でも、ロトがソドムを出たその日、火と硫黄が空から降ってきて、全員を滅ぼした。
17:30 人の子が姿を現す日も、それと同じだ。
17:31 その日、屋上にいる人は、家の中の荷物を取りに下りてはいけない。畑にいる人も同じで、あとを振り返ってはいけない。
17:32 ロトの妻のことを思い出しなさい。
17:33 自分の命を守ろうとする人は、それを失う。でも、命を失う人は、それを保つ。
17:34 言っておく。その夜、二人が同じ寝床にいると、一人は連れて行かれ、もう一人は残される。
17:35 二人の女が一緒に臼をひいていると、一人は連れて行かれ、もう一人は残される。
17:36 畑に二人の男がいれば、一人は連れて行かれ、もう一人は残される。」
17:37 すると弟子たちが尋ねた。「主よ、それはどこでですか。」イエスは言った。「死体のある場所には、はげ鷹も集まってくる。」
18:1 イエスは弟子たちに、いつでも祈り続けて、あきらめてはいけないということを教えるために、一つのたとえ話をした。
18:2 「ある町に、一人の裁判官がいた。神を恐れず、人のことも気にかけない人だった。
18:3 その同じ町に、一人の未亡人がいた。彼女は何度もこの裁判官のところに来て、『相手を裁いて、わたしを守ってください』と訴えた。
18:4 裁判官はしばらくの間、取り合おうとしなかった。でも、しばらくして心の中でこう考えた。『わたしは神も恐れないし、人のことも気にかけない。
18:5 それでも、この未亡人はうるさくて仕方がない。裁いてやろう。そうしないと、いつまでも来て、わたしをうんざりさせるだろう』」
18:6 そして主は言った。「この不正な裁判官が何と言っているか、よく聞きなさい。
18:7 まして神は、昼も夜も叫び求めている、選ばれた人たちのために裁きをしてくださらないだろうか。彼らのことを、いつまでもほうっておくだろうか。
18:8 言っておく。神はすぐに彼らのために裁きをしてくださる。しかし、人の子が来るとき、はたして地上に信仰を見いだせるだろうか。」
18:9 また、自分は正しいと信じ込んで、ほかの人たちを見下している人たちに向けて、イエスはこんなたとえ話をした。
18:10 「二人の人が祈るために神殿に上って行った。一人はファリサイ派の人で、もう一人は取税人だった。
18:11 ファリサイ派の人は立って、心の中でこう祈った。『神さま、感謝します。わたしはほかの人たちのように、奪い取ったり、不正をしたり、不倫をしたりしません。あそこにいる取税人のようでもありません。
18:12 わたしは週に二回断食し、手に入れるものすべてから十分の一を差し出しています。』
18:13 でも取税人は遠くに立ったまま、目を天に上げることさえせず、胸を打ちながらこう言った。『神さま、罪人のわたしを、どうかあわれんでください。』
18:14 言っておく。神に正しいと認められて家に帰ったのは、この人のほうで、あのファリサイ派の人ではない。自分を高くする人はみな低くされ、自分を低くする人は高くされるのだ。」
18:15 人々は、赤ちゃんにも触れてもらおうとして、イエスのところに連れて来た。それを見た弟子たちは、彼らを叱った。
18:16 でもイエスは子どもたちを呼び寄せて、こう言った。「子どもたちがわたしのところに来るのを、そのままにしておきなさい。じゃまをしてはいけない。神の国は、こういう者たちのものだからだ。
18:17 本当に言っておく。子どものように神の国を受け入れる人でなければ、決してそこに入ることはできない。」
18:18 すると、ある議員がイエスにたずねた。「善い先生、永遠のいのちを受け継ぐには、何をすればいいのでしょうか。」
18:19 イエスは言った。「どうしてわたしを善いと言うのか。善い方は、神おひとりのほかにだれもいない。
18:20 戒めはあなたも知っているはずだ。『不倫をするな。人を殺すな。盗むな。うその証言をするな。父と母を敬え。』」
18:21 その人は言った。「それはみんな、子どものころから守ってきました。」
18:22 これを聞いてイエスは言った。「あなたに足りないことが、まだ一つある。持っているものをすべて売り払って、貧しい人たちに分け与えなさい。そうすれば、天に宝を持つことになる。それから、わたしについて来なさい。」
18:23 しかしその人は、これを聞いてひどく悲しんだ。とても大きな財産を持っていたからだ。
18:24 その姿を見てイエスは言った。「財産を持っている人が神の国に入るのは、なんと難しいことか。
18:25 ラクダが針の穴を通る方が、お金持ちが神の国に入るよりも簡単なくらいだ。」
18:26 これを聞いた人たちは言った。「それなら、いったい誰が救われるのですか。」
18:27 イエスは言った。「人にはできないことも、神にはできるのだ。」
18:28 するとペトロが言った。「ご覧ください。わたしたちは自分のものをすべて捨てて、あなたについて来ました。」
18:29 イエスは彼らに言った。「はっきり言っておく。神の国のために、家や妻、兄弟、両親、子どもを捨てた人はみな、
18:30 この世で何倍もを受け取り、次に来る世では永遠のいのちを受け取る。」
18:31 イエスは十二人を呼び寄せて言った。「さあ、わたしたちはこれからエルサレムに上って行く。そこで、預言者たちが人の子について書いたことが、すべてそのとおりになる。
18:32 人の子は異邦人に引き渡され、ばかにされ、ひどい仕打ちを受け、つばを吐きかけられる。
18:33 そして、むち打たれたうえで殺される。しかし三日目によみがえる。」
18:34 しかし弟子たちには、この話が何一つ分からなかった。その意味は彼らには隠されていて、イエスが何を言っているのか理解できなかったのだ。
18:35 イエスがエリコに近づいたころ、ひとりの目の見えない人が道ばたに座って物ごいをしていた。
18:36 その人は、大勢の人が通って行く音を聞いて、これは何ごとかと尋ねた。
18:37 人々は「ナザレのイエスが通っているんだ」とその人に教えた。
18:38 すると彼は大声で叫んだ。「イエスさま、ダビデの子よ、わたしをあわれんでください」
18:39 先を歩いていた人たちは、静かにしろと彼をしかった。でも彼は、ますます大声で叫び続けた。「ダビデの子よ、わたしをあわれんでください」
18:40 イエスは立ち止まり、その人を連れて来るように命じた。彼が近づくと、イエスは尋ねた。
18:41 「何をしてほしいのか」すると彼は言った。「主よ、目が見えるようになりたいのです」
18:42 イエスは言った。「見えるようになれ。あなたの信仰が、あなたを救ったのだ」
18:43 すると彼は、たちまち目が見えるようになった。そして神をほめたたえながら、イエスについて行った。これを見た人々もみな、神をたたえた。
19:1 イエスはエリコに入り、町を通り抜けようとしていた。
19:2 そこにザアカイという名の男がいた。彼は取税人のかしらで、金持ちだった。
19:3 彼はイエスがどんな人か、ひと目見ようとした。でも背が低かったので、人ごみにさえぎられて見ることができなかった。
19:4 そこで彼は先の方へ走って行き、いちじく桑の木に登った。イエスがそこを通るはずだったので、そこから見ようとしたのだ。
19:5 イエスはその場所まで来ると、上を見上げて言った。「ザアカイ、急いで下りて来なさい。きょうはぜひ、あなたの家に泊まりたい」
19:6 ザアカイは急いで下りて来て、喜んでイエスを迎え入れた。
19:7 これを見て、人々はみな不満げにつぶやいた。「あの人は、罪深い男の家に泊まりに入って行った」
19:8 でもザアカイは立ち上がって、主に言った。「主よ、ごらんください。わたしは財産の半分を貧しい人たちに差し上げます。それに、もしだれかから何かをだまし取っていたら、その四倍にして返します」
19:9 イエスは彼に言った。「きょう、救いがこの家に訪れた。この人もまた、アブラハムの子なのだから。
19:10 人の子は、いなくなったものを探し出して救うために来たのだ」
19:11 人々がこの話を聞いているとき、イエスは続けて一つのたとえを話した。エルサレムが近づいていて、人々は神の御国がすぐにでも現れると思っていたからだ。
19:12 イエスは言った。「ある身分の高い人が、王の位を受けて帰って来るために、遠い国へ旅立った。
19:13 彼は自分の家来を十人呼んで、十ミナのお金を渡し、こう言った。『わたしが帰って来るまで、これで商売をしなさい』
19:14 ところが、その国の人たちは彼を憎んでいた。それで、後から使いを送ってこう言わせた。『わたしたちは、この人に王になってほしくない』
19:15 さて、彼は王の位を受けて帰って来た。そして、お金を渡しておいた家来たちを呼び寄せさせた。それぞれがどれだけもうけたかを知るためだ。
19:16 最初の者が進み出て言った。『ご主人さま、あなたの一ミナで、十ミナもうかりました』
19:17 主人は言った。『よくやった、良い家来だ。おまえはほんの小さなことに忠実だった。だから十の町を治める権限を持ちなさい』
19:18 次の者が来て言った。『ご主人さま、あなたの一ミナで、五ミナできました』
19:19 主人はこの家来にも言った。『おまえは五つの町を治めなさい』
19:20 ところが、別の家来が来て言った。『ご主人さま、これがあなたの一ミナです。布に包んでしまっておきました。
19:21 あなたが怖かったんです。あなたは厳しい人で、預けてもいないものを取り立て、まいてもいないものを刈り取るんですから』
19:22 主人は言った。『この悪い家来め。おまえ自身の言葉でおまえをさばこう。わたしが預けてもいないものを取り立て、まいてもいないものを刈り取る厳しい人間だと、知っていたのか。
19:23 それなら、どうしてわたしのお金を銀行に預けておかなかったのか。そうすれば、帰ってきたとき、利子をつけて受け取れたのに』
19:24 そして、そばにいる人たちに言った。『その一ミナをこの家来から取り上げて、十ミナ持っている者に渡しなさい』
19:25 すると、その人たちは言った。『ご主人さま、その人はもう十ミナ持っています』
19:26 『言っておく。持っている者にはさらに与えられる。でも、持っていない者からは、持っているものまで取り上げられるのだ。
19:27 それから、わたしが王になるのを拒んだ、あの敵たちをここに連れてきなさい。そして、わたしの目の前で殺してしまいなさい』」
19:28 こう話し終えると、イエスは先頭に立って、エルサレムへと上っていった。
19:29 そして、オリーブ山と呼ばれる山のふもとにあるベトファゲとベタニアに近づいたとき、イエスは二人の弟子を送り出して、
19:30 こう言った。「向こうの村へ行きなさい。村に入ると、まだ誰も乗ったことのない子ろばがつないであるのを見つける。それをほどいて、連れてきなさい。
19:31 もし誰かに『どうしてほどくのか』と聞かれたら、『主がお入り用なのです』と答えなさい。」
19:32 送り出された二人が行ってみると、イエスが言ったとおりだった。
19:33 彼らが子ろばをほどいていると、その持ち主たちが言った。「どうして子ろばをほどくのか。」
19:34 二人は答えた。「主がお入り用なのです。」
19:35 そして子ろばをイエスのところへ連れてきた。二人は自分の上着を子ろばの背にかけ、イエスをそれに乗せた。
19:36 イエスが進んでいくと、人々は自分の上着を道に敷いていった。
19:37 イエスがオリーブ山の下り坂にさしかかったとき、大勢の弟子たちがみんなで喜び、これまでに見たすべての力あるわざのことで、大きな声で神を賛美し始めた。
19:38 こう言ったのだ。「主の名によって来られる王に、祝福があるように。天には平和、いと高きところには栄光があるように。」
19:39 すると、群衆の中にいた何人かのファリサイ派の人たちが、イエスに言った。「先生、弟子たちを叱ってください。」
19:40 イエスは答えた。「あなたたちに言っておく。この人たちが黙っても、石が叫びだすだろう。」
19:41 イエスはエルサレムに近づき、都を見ると、その姿を見て泣いた。
19:42 そして言った。「もしお前も、この日に、平和をもたらすものが何かを知っていたら――。でも今、それはお前の目から隠されている。
19:43 いつか、こんな日がお前に来る。敵が土手を築いてお前を囲み、周りをぐるりと取り巻いて、どこにも逃げ道がなくなる。
19:44 そしてお前を地面にたたきつけ、城壁の中にいるお前の子どもたちも打ち倒す。石一つさえ積み重なったまま残さないだろう。神がお前のもとを訪れた、その時にお前が気づかなかったからだ。」
19:45 それからイエスは神殿に入り、そこで商売をしている人たちを追い出しはじめた。
19:46 そして言った。「こう書いてある。『わたしの家は祈りの家となる。』それなのに、お前たちはそこを強盗の隠れ家にしてしまった。」
19:47 イエスは毎日、神殿で教えていた。祭司長たちや律法学者たち、そして民の指導者たちは、イエスを殺そうとねらっていた。
19:48 でも、どうすればいいのか、その手立てが見つからなかった。民がみな、イエスの話に夢中になって聞き入っていたからだ。
20:1 ある日、イエスが神殿で民を教え、良い知らせを伝えていると、祭司長たちや律法学者たちが、長老たちといっしょに近づいてきた。
20:2 そしてイエスに言った。「教えてくれ。お前は何の権威があって、こんなことをしているのか。だれがその権威をお前に与えたのか。」
20:3 イエスは答えた。「わたしも一つ聞きたい。答えてほしい。
20:4 ヨハネのバプテスマは、天から来たものか、それとも人から出たものか。」
20:5 すると彼らは、こう言い合った。「もし『天から』と言えば、『では、どうして彼を信じなかったのか』と言われる。
20:6 でも、もし『人から』と言えば、民はみんなでわたしたちに石を投げつけるだろう。みんな、ヨハネは預言者だと信じ切っているのだから。」
20:7 すると彼らは、どこから来たものか分からない、と答えた。
20:8 イエスは言った。「では、わたしも、何の権威でこういうことをしているのか、あなたたちには言わない。」
20:9 それからイエスは、民に向かってこのたとえを話し始めた。「ある人がぶどう畑を作り、それを農夫たちに貸して、長い間旅に出た。
20:10 そして収穫の時期になると、ぶどう畑の実の分け前を受け取るために、農夫たちのところへ一人の使用人を送った。ところが農夫たちは、その使用人を袋叩きにして、何も持たせずに追い返した。
20:11 主人はまた別の使用人を送った。だが彼らは、その使用人も袋叩きにし、辱めた上で、何も持たせずに追い返した。
20:12 主人はさらに三人目を送った。ところが彼らは、この使用人にも傷を負わせて、外に放り出した。
20:13 そこでぶどう畑の主人は言った。「どうしたものか。よし、わたしの愛する息子を送ろう。息子なら、彼らも敬ってくれるかもしれない。」
20:14 ところが農夫たちは、その息子を見ると、互いにこう相談した。「あれは跡取りだ。殺してしまおう。そうすれば、財産はおれたちのものになる。」
20:15 そして彼らは、息子をぶどう畑の外に放り出して殺した。さて、ぶどう畑の主人は、農夫たちをどうするだろうか。
20:16 主人はやって来て、この農夫たちを滅ぼし、ぶどう畑をほかの人たちに与えるだろう。」これを聞いた人々は言った。「そんなことがあってはならない。」
20:17 でもイエスは彼らをじっと見つめて言った。「では、こう書かれているのは、どういう意味だろうか。『家を建てる者たちが捨てた石、それが土台の隅の石になった。』
20:18 その石の上に落ちる者はみな砕かれ、その石が誰かの上に落ちれば、その人を押しつぶしてしまう。」
20:19 律法学者たちと祭司長たちは、まさにその時、イエスに手をかけて捕らえようとした。でも民衆を恐れた。このたとえ話が自分たちに向けられたものだと、気づいたからだ。
20:20 そこで彼らはイエスから目を離さず、正しい人のふりをしたスパイたちを送り込んだ。イエスの言葉じりを捕らえて、総督の支配と権力のもとに引き渡すためだった。
20:21 彼らはイエスに尋ねた。「先生、わたしたちは分かっています。あなたが語り、教えることは正しく、だれかをえこひいきすることなく、ほんとうのこととして神の道を教えておられることを。
20:22 わたしたちが皇帝に税金を納めるのは、正しいことですか。それとも、いけないことですか。」
20:23 でもイエスは、彼らの悪だくみを見抜いて、こう言った。
20:24 「デナリ銀貨を一枚見せてほしい。これには、だれの顔と名前が刻まれている?」彼らは答えた。「皇帝です。」
20:25 それでイエスは言った。「では、皇帝のものは皇帝に、神のものは神に返しなさい。」
20:26 彼らは民衆の前で、イエスの言葉じりを捕らえることができなかった。そしてその答えに驚いて、黙り込んでしまった。
20:27 それから、復活などないと主張するサドカイ派の人たちが何人か、イエスのところに来て尋ねた。
20:28 「先生、モーセはわたしたちにこう書き残しました。『ある人の兄弟が、妻がいるのに子どもを残さずに死んだら、残された兄弟がその妻をめとり、死んだ兄弟のために子孫を残さなければならない。』
20:29 ところで、ここに七人の兄弟がいました。長男は妻をめとりましたが、子どもがないまま死にました。
20:30 続いて次男も、
20:31 三男もその人をめとりましたが、同じでした。こうして七人みんなが、子どもを残さずに死んでいったのです。
20:32 最後に、その女の人も死にました。
20:33 では、生き返りのとき、その人はいったいだれの妻になるのでしょう。七人みんなが彼女を妻にしたのですから。」
20:34 イエスは彼らに言った。「この世の人たちは結婚し、めとったり嫁いだりする。
20:35 でも、次の世に入るのにふさわしいとされ、死んだ人の中から生き返らせてもらえる人たちは、結婚することも、めとったり嫁いだりすることもない。
20:36 その人たちはもう死ぬこともない。天使のような存在であり、生き返った者として、神の子どもだからだ。
20:37 死んだ人が生き返ることは、モーセも柴のところで示している。そこで彼は、主のことを『アブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神』と呼んでいる。
20:38 神は死んだ者の神ではなく、生きている者の神だ。神にとっては、すべての人が生きているのだから。」
20:39 すると、律法学者の何人かが答えて言った。「先生、よくぞ言ってくださいました。」
20:40 彼らはもう、それ以上あえて何も質問しようとはしなかった。
20:41 今度は、イエスのほうから彼らに言った。「どうして人々は、救い主をダビデの子だと言うのだろう。
20:42 ダビデ自身が、詩編の中でこう言っている。『主は、わたしの主にこう言われた。わたしの右に座りなさい。
20:43 わたしがあなたの敵を、あなたの足の下に置くまで。』
20:44 こうして、ダビデは救い主を『主』と呼んでいる。それなのに、どうして救い主がダビデの子だと言えるだろう。」
20:45 人々がみんな聞いているとき、イエスは弟子たちに言った。
20:46 「律法学者たちに気をつけなさい。彼らは長い衣を着て歩き回るのが好きで、広場であいさつされることや、会堂で上席に座ること、宴会で上座に着くことを好む。
20:47 彼らは、夫を亡くした女性たちの家を食い物にし、見せかけのために長い祈りをする。こういう者たちは、いっそう重い裁きを受けることになる。」
21:1 イエスが目を上げると、金持ちたちが献金箱に献金を入れているのが見えた。
21:2 そして、夫を亡くした貧しい女性が一人、そこに小さな銅貨を二枚入れるのも見えた。
21:3 イエスは言った。「本当のことを言う。この貧しい女性は、ほかのだれよりも多く入れたのだ。
21:4 みんなは、あり余っている中から献金を入れた。でも、この女性は、乏しい中から、暮らしのためのお金をすべて入れたのだから。」
21:5 ある人たちが神殿について、美しい石や奉納品で飾られていると話していると、イエスは言った。
21:6 「あなたたちが見ているこれらのものだが、いつか、積み重なった石が一つも残らず、すべて崩される日が来る。」
21:7 そこで弟子たちはイエスに尋ねた。「先生、それはいつ起こるのですか。そして、それが起ころうとするとき、どんなしるしがあるのですか。」
21:8 イエスは言った。「だまされないように気をつけなさい。多くの者がわたしの名を名乗ってやって来て、『わたしがその者だ』とか『その時が近づいた』とか言う。でも、彼らについて行ってはいけない。
21:9 戦争や暴動のことを聞いても、おびえてはいけない。まず、こうしたことが起こる必要があるからだ。でも、それですぐに終わりが来るわけではない。」
21:10 それからイエスは彼らに言った。「民族は民族に、国は国に立ち向かう。
21:11 大きな地震が起こり、あちこちで飢きんや疫病がある。そして、恐ろしい出来事や、天からの大きなしるしが現れる。
21:12 だが、こうしたことがすべて起こる前に、人々はあなたたちに手をかけ、迫害する。あなたたちを会堂や牢に引き渡し、わたしの名のために、王や総督たちの前に引き出す。
21:13 それは、あなたたちが証しをする機会となる。
21:14 だから、どう弁明しようかと前もって考えておくまいと、心に決めておきなさい。
21:15 わたしがあなたたちに、口とちえを与える。あなたたちに敵対する者は、だれ一人それに逆らうことも、言い返すこともできない。
21:16 あなたたちは、親やきょうだい、親族や友人からさえも裏切られる。そして、あなたたちのうちの何人かは殺される。
21:17 わたしの名のために、あなたたちはすべての人から憎まれる。
21:18 しかし、あなたたちの髪の毛一本さえも決して失われることはない。
21:19 耐え忍ぶことで、あなたたちは自分の命を勝ち取る。
21:20 エルサレムが軍隊に取り囲まれるのを見たら、その町が荒れ果てる時が近づいたのだと知りなさい。
21:21 そのときユダヤにいる人は山へ逃げなさい。都の中にいる人はそこから立ち去りなさい。地方にいる人は都に入ってはいけない。
21:22 それは、書かれていることがすべて実現する、報いの日だからだ。
21:23 その日、身ごもっている女性や乳飲み子を抱える女性は、なんとつらいことだろう。この地に大きな苦しみが臨み、この民に怒りが下るからだ。
21:24 人々は剣で倒され、捕らえられてあらゆる国へ連れて行かれる。そしてエルサレムは、異国の民に踏みにじられる。異国の民に許された時が満ちるまで、それは続く。
21:25 太陽や月や星に、しるしが現れる。地上では、荒れ狂う海のとどろきに、国々がなすすべもなく苦しむ。
21:26 人々は、世界に何が起ころうとしているのかと、恐れと不安で気を失う。天のもろもろの力が揺り動かされるからだ。
21:27 そのとき人々は、人の子が大いなる力と栄光を帯びて、雲に乗って来るのを見る。
21:28 こうしたことが起こり始めたら、身を起こし、顔を上げなさい。あなたたちの贖い、つまり解き放たれる時が近づいているからだ。」
21:29 それからイエスは、たとえを話した。「いちじくの木や、ほかのすべての木を見てごらん。
21:30 芽が出れば、あなたたちはそれを見て、もう夏が近いと自分でわかる。
21:31 同じように、あなたたちもこうしたことが起こるのを見たら、神の国が近いと知りなさい。
21:32 はっきり言っておく。すべてのことが起こるまで、今の時代の人々は決していなくならない。
21:33 天と地は消えてなくなる。でも、わたしの言葉は決して消えてなくならない。
21:34 気をつけなさい。食べすぎや飲みすぎ、暮らしの心配で心が鈍くなり、あの日が突然あなたたちに襲いかかることのないように。
21:35 その日は、地の全面に住むすべての人に、わなのように襲いかかるのだから。
21:36 だから、いつも目を覚まして祈っていなさい。これから起ころうとしているこうしたことすべてから逃れる力を持ち、人の子の前に立つことができるように。」
21:37 イエスは昼の間は神殿で教え、夜になると出て行って、オリーブ山と呼ばれる山で過ごした。
21:38 民はみな、その話を聞こうと、朝早くから神殿にいるイエスのもとへ集まってきた。
22:1 種なしパンの祭り、いわゆる過越の祭りが近づいていた。
22:2 祭司長たちと律法学者たちは、どうやってイエスを殺そうかと考えていた。でも民衆をおそれていた。
22:3 そんなとき、サタンが、十二人の一人でイスカリオテと呼ばれるユダの中に入り込んだ。
22:4 ユダは祭司長たちや神殿の警備隊長たちのところへ行き、どうやってイエスを引き渡そうかと相談した。
22:5 彼らは喜び、ユダにお金を渡すことに決めた。
22:6 ユダはそれを承知して、群衆のいないところでイエスを引き渡す機会をねらいはじめた。
22:7 そして、種なしパンの日が来た。過越の子羊をほふる日だった。
22:8 イエスはペトロとヨハネを送り出して、こう言った。「行って、みんなで食べる過越の食事の準備をしてほしい。」
22:9 二人は言った。「どこに準備すればいいですか。」
22:10 イエスは答えた。「よく聞いてほしい。町に入ると、水がめを運んでいる男が出会うはずだ。その人について行き、入っていく家までついて行きなさい。
22:11 そして、その家の主人にこう言うんだ。『先生が、あなたにこう言っています。弟子たちと過越の食事をする部屋はどこですか、と。』
22:12 すると主人は、席の整った二階の広い部屋を見せてくれる。そこで準備をしなさい。」
22:13 弟子たちが出かけて行くと、イエスが言ったとおりになっていた。それで二人は過越の食事を準備した。
22:14 食事の時間になると、イエスは席に着いた。使徒たちも一緒だった。
22:15 そしてイエスは言った。「わたしは、この過越の食事をあなたたちと一緒にとることを、心から待ち望んでいた。わたしが苦しみを受ける前に、どうしても一緒に食べたかったんだ。
22:16 はっきり言っておく。この食事は、神の御国で本当の意味が実現するときまで、わたしはもう口にすることはない。」
22:17 それからイエスは杯を取り、感謝の祈りをささげてこう言った。「これを取って、みんなで分け合いなさい。
22:18 言っておくが、これから神の御国が来るときまで、わたしはもうぶどうから作ったものを飲むことはない。」
22:19 また、イエスはパンを取り、感謝の祈りをささげてから、それを裂いて弟子たちに渡してこう言った。「これは、あなたたちのために与えられるわたしの体だ。わたしを思い出すために、これを続けてほしい。」
22:20 食事のあと、杯も同じようにして言った。「この杯は、あなたたちのために流されるわたしの血によって結ばれる、新しい契約だ。
22:21 しかし、見なさい。わたしを裏切ろうとしている者の手が、わたしと同じこの食卓にある。
22:22 人の子は、定められたとおりに去っていく。でも、その人の子を裏切るあの者は、なんと不幸なことか。」
22:23 すると弟子たちは、自分たちのうちでいったい誰がそんなことをしようとしているのか、互いに問いただし始めた。
22:24 さらに、自分たちの中で誰がいちばん偉いのかということで、弟子たちの間で言い争いが起こった。
22:25 イエスは彼らに言った。「この世の国々の王たちは、人々を支配する。権力をふるう者たちは、『恩人』と呼ばれている。
22:26 でも、あなたたちはそうであってはいけない。あなたたちの中でいちばん偉い人は、いちばん若い人のようになりなさい。人を導く人は、仕える人のようになりなさい。
22:27 食卓につく人と、給仕する人と、どちらが偉いだろうか。食卓につく人ではないか。でも、わたしはあなたたちの中で、給仕する人のようにしている。
22:28 あなたたちは、わたしが試練を受けている間、ずっとわたしと一緒にいてくれた人たちだ。
22:29 だから、父がわたしに御国を委ねてくださったように、わたしもあなたたちに御国を委ねる。
22:30 あなたたちは、わたしの御国で、わたしの食卓について食べたり飲んだりする。そして王座に座り、イスラエルの十二の部族をさばくことになる。」
22:31 「シモン、シモン。よく聞きなさい。サタンは、あなたたちを麦のようにふるいにかけたいと願い出た。
22:32 でも、わたしはあなたのために祈った。あなたの信仰がなくならないようにと。だから、あなたが立ち直ったら、兄弟たちを力づけてやりなさい。」
22:33 すると彼は言った。「主よ、わたしはあなたと一緒なら、牢屋にでも、死にでも行く覚悟ができています。」
22:34 イエスは言った。「ペテロ、言っておく。今日、鶏が鳴くまでに、あなたは三度、わたしなど知らないと言うだろう。」
22:35 それからイエスは彼らに言った。「わたしがあなたたちを、財布も袋も履物も持たせずに送り出したとき、何か足りないものがあったか。」彼らは「いいえ、何もありませんでした」と答えた。
22:36 イエスは言った。「でも今は、財布を持っている人は、それを持って行きなさい。袋も同じだ。剣を持っていない人は、上着を売って剣を買いなさい。
22:37 言っておく。わたしについてこう書かれていることが、実現しなければならない。『彼は犯罪者たちの仲間に数えられた』。そう、わたしについて書かれたことは、いま実現しようとしているのだ。」
22:38 弟子たちは「主よ、見てください。ここに剣が二本あります」と言った。イエスは「それで十分だ」と言った。
22:39 それからイエスは外に出て、いつものようにオリーブ山へ向かった。弟子たちもついて行った。
22:40 その場所に着くと、イエスは彼らに言った。「誘惑に負けないように祈っていなさい。」
22:41 そしてイエスは、石を投げれば届くくらいの所まで一人で離れて行き、ひざまずいて祈った。
22:42 「父よ、もしよければ、この杯をわたしから取り除いてください。でも、わたしの願いではなく、あなたの望みがかないますように。」
22:43 すると、天から一人の天使が現れて、イエスを力づけた。
22:44 イエスは苦しみもだえ、いっそう必死に祈った。その汗は血のしたたりのように地面に落ちた。
22:45 祈り終えて立ち上がり、弟子たちのところへ戻ると、彼らは悲しみのあまり眠り込んでいた。
22:46 イエスは言った。「どうして眠っているのか。起きて、誘惑に負けないように祈っていなさい。」
22:47 イエスがまだ話しているうちに、群衆がやって来た。十二人の一人、ユダと呼ばれる者が先頭に立っていた。ユダはイエスに口づけしようとして近づいた。
22:48 イエスは言った。「ユダ、口づけで人の子を裏切るのか。」
22:49 イエスのそばにいた人たちは、これから何が起こるかを見て言った。「主よ、剣で切りかかりましょうか。」
22:50 そして、そのうちの一人が大祭司の召使いに切りかかり、右の耳を切り落とした。
22:51 でもイエスは言った。「やめなさい。もういい。」そして、その耳にさわって、彼を治した。
22:52 それからイエスは、自分を捕まえに来た祭司長や神殿の警備隊長や長老たちに言った。「まるで強盗を捕まえるみたいに、剣や棒を持って出てきたのか。
22:53 わたしは毎日、神殿であなたたちと一緒にいた。それなのに、あなたたちはわたしに手を出さなかった。でも今が、あなたたちの時だ。闇が力をふるう時だ。」
22:54 人々はイエスを捕まえて連れて行き、大祭司の家に引き入れた。ペテロは遠くからついて行った。
22:55 人々が庭の真ん中で火をたいて一緒に座っていると、ペテロもその中にまじって座った。
22:56 すると、一人の召使いの女が、火のそばに座っているペテロを見つめて言った。「この人も、あの人と一緒にいたわ。」
22:57 でもペテロは打ち消して言った。「いや、わたしはあの人を知らない。」
22:58 少しすると、別の人がペテロを見て言った。「お前もあの仲間の一人だろう。」でもペテロは言った。「いや、違う。」
22:59 それから一時間ほどたつと、また別の人が強く言い張った。「間違いない。この男もあの人と一緒にいた。ガリラヤの出身だからな。」
22:60 でもペテロは言った。「何を言っているのか、わたしにはわからない。」そして、彼がまだ話しているうちに、すぐに鶏が鳴いた。
22:61 主は振り返って、ペテロを見つめた。ペテロは、主が「今日、鶏が鳴く前に、あなたは三度わたしを知らないと言うだろう」と言ったその言葉を思い出した。
22:62 そして外に出て、激しく泣いた。
22:63 イエスを見張っていた男たちは、イエスをからかい、殴った。
22:64 そして目隠しをして、こう問いただした。「言い当ててみろ。今、お前を打ったのは誰だ。」
22:65 そのほかにも、たくさんの侮辱の言葉をイエスに浴びせた。
22:66 夜が明けると、民の長老たち、つまり祭司長や律法学者たちが集まった。そしてイエスを自分たちの議会に連れて行き、こう言った。
22:67 「お前がキリストなら、わたしたちにそう言ってみろ。」イエスは答えた。「わたしが言っても、あなたたちは信じないだろう。
22:68 わたしが尋ねても、あなたたちは答えないだろう。
22:69 だが今から後、人の子は、力ある神の右に座ることになる。」
22:70 すると皆が言った。「では、お前は神の子なのか。」イエスは答えた。「あなたたちの言うとおり、わたしはそうである。」
22:71 彼らは言った。「これ以上、どんな証しがいるだろうか。わたしたち自身が、この男の口から直接聞いたのだから。」
23:1 そして群衆はいっせいに立ち上がり、イエスをピラトのところへ連れて行った。
23:2 そして彼らはイエスを訴え始めた。「この男は、わたしたちの国民を惑わしています。皇帝に税金を納めてはいけないと言い、自分こそ王である救い主だと言っているのです。」
23:3 ピラトはイエスに尋ねた。「おまえがユダヤ人の王なのか。」イエスは答えた。「それは、あなたが言っていることだ。」
23:4 そこでピラトは祭司長たちと群衆に言った。「わたしには、この人に罪は見当たらない。」
23:5 でも彼らは、なおも強く言い張った。「この男は、ガリラヤからここまで、ユダヤ全土で教えを説いて、民衆を扇動しているのです。」
23:6 これを聞いたピラトは、「この人はガリラヤの出身なのか」と尋ねた。
23:7 そして、イエスがヘロデの管轄下にあると分かると、ヘロデのところへ送った。ヘロデもちょうどそのころ、エルサレムに来ていたのだ。
23:8 イエスを見て、ヘロデはとても喜んだ。前々からイエスに会いたいと思っていたのだ。うわさをいろいろ聞いていて、イエスが何かしるしを行うのを見たいと期待していたからだ。
23:9 そこでヘロデはあれこれと質問を重ねたが、イエスは何ひとつ答えなかった。
23:10 祭司長たちと律法学者たちはそばに立って、激しくイエスを訴え続けた。
23:11 ヘロデも兵士たちといっしょにイエスをばかにし、あざけった。そして派手な衣を着せて、ピラトのもとへ送り返した。
23:12 この日、ヘロデとピラトは仲直りして友だちになった。それまで二人は、互いに敵対していたのだ。
23:13 ピラトは、祭司長たちや議員たち、それに民衆を呼び集めて、
23:14 こう言った。「あなたたちは、この人を『民衆を惑わしている』と言って、わたしのところへ連れて来た。でも、あなたたちの前で調べてみたが、訴えているような罪は、この人には何も見つからなかった。
23:15 ヘロデも同じだ。だから、彼はこの人をわたしたちに送り返してきたのだ。見なさい、この人は死刑にあたるようなことは何もしていない。
23:16 だから、むちで打ってから釈放することにする。」
23:17 祭りのたびに、ピラトは囚人を一人、人々のために釈放することになっていた。
23:18 すると、みんながいっせいに叫んだ。「その男を消してしまえ！わたしたちにはバラバを釈放しろ！」
23:19 このバラバは、町で起きた暴動と殺人のことで、牢に入れられていた男だった。
23:20 ピラトは、イエスを釈放したいと思って、もう一度、人々に呼びかけた。
23:21 だが人々は、「十字架につけろ、十字架につけろ」と叫び続けた。
23:22 ピラトは三度目にこう言った。「いったい、この人がどんな悪いことをしたというのだ。死刑にあたる罪は、この人には何も見つからなかった。だから、むちで打ってから釈放する。」
23:23 しかし人々は、イエスを十字架につけろと大声で求め続け、その声はますます激しくなっていった。
23:24 そこでピラトは、彼らの要求どおりにすることを決めた。
23:25 そして、暴動と殺人で牢に入れられていたあの男を、人々の求めるまま釈放した。そしてイエスのほうは、彼らの思いのままに引き渡した。
23:26 人々はイエスを引いていった。その途中、畑から帰ってくるキレネ人シモンという男をつかまえ、十字架を背負わせて、イエスの後ろから運ばせた。
23:27 大勢の人たちがイエスについていった。その中には、イエスのことを思って胸を打ちたたき、泣き悲しむ女たちもいた。
23:28 イエスは彼女たちのほうを振り向いて言った。「エルサレムの娘たち、わたしのために泣かなくていい。それより、自分自身のために、そして自分の子どもたちのために泣きなさい。
23:29 見なさい。こう言われる日が来る。『子を産めない女、一度も子を産まなかったおなか、乳を飲ませたことのない胸は幸いだ』と。
23:30 そのとき、人々は山に向かって『わたしたちの上に倒れかかってくれ』と言い、丘に向かって『わたしたちを覆い隠してくれ』と言いはじめる。
23:31 生木でさえこんなことをするなら、枯れ木にはいったい何が起こるだろうか。」
23:32 ほかにも二人の犯罪人が、イエスといっしょに処刑されるために引かれていった。
23:33 そして「されこうべ」と呼ばれる場所に着くと、人々はそこでイエスを十字架につけた。犯罪人たちも、一人は右に、もう一人は左に、いっしょに十字架につけた。
23:34 イエスは言った。「父よ、彼らを赦してください。自分たちが何をしているのか分かっていないのです。」人々はイエスの服を分け合い、くじを引いて取り合った。
23:35 民衆は立って見ていた。議員たちもあざ笑って言った。「あいつは他人を救った。もし神が選んだキリストなら、自分を救ってみろ。」
23:36 兵士たちもイエスをからかった。近づいてきて、酸いぶどう酒を差し出し、
23:37 こう言った。「おまえがユダヤ人の王なら、自分を救ってみろ。」
23:38 イエスの頭の上には、「これはユダヤ人の王」と書いた札も掲げてあった。
23:39 十字架にかけられた犯罪者の一人が、イエスをののしって言った。「おまえはキリストじゃないのか。自分を、それにおれたちも救ってみろ。」
23:40 でも、もう一人はその男をたしなめて言った。「おまえは神を恐れないのか。同じ刑罰を受けている身なのに。
23:41 おれたちは当然だ。自分のやったことの報いを受けているんだから。でも、この人は何も悪いことをしていない。」
23:42 そして言った。「イエスさま、あなたが御国においでになるとき、わたしのことを思い出してください。」
23:43 イエスは彼に言った。「はっきり言っておく。あなたは今日、わたしといっしょに楽園にいる。」
23:44 もう昼の十二時ごろだった。すると、全地が暗くなり、それが午後三時まで続いた。
23:45 太陽の光が消えたのだ。そして、神殿の幕が真ん中から二つに裂けた。
23:46 イエスは大きな声で叫んだ。「父よ、わたしの霊をあなたの手にゆだねます。」こう言って、息を引き取った。
23:47 この出来事を見た百人隊長は、神をほめたたえて言った。「本当に、この人は正しい人だった。」
23:48 この光景を見に集まっていた群衆はみな、起こったことを見て、胸を打ちながら帰って行った。
23:49 イエスを知っていた人たちはみな、遠くに立っていた。ガリラヤからイエスについて来た女たちも、これらのことを見つめていた。
23:50 ここに、ヨセフという名の人がいた。ユダヤの議会の議員で、善良で正しい人だった。
23:51 彼は、議会の決定やその行いに賛成してはいなかった。ユダヤのアリマタヤという町の出身で、神の御国を待ち望んでいた。
23:52 この人がピラトのところへ行き、イエスの遺体を引き取りたいと願い出た。
23:53 そして遺体を取り降ろし、麻の布で包んで、岩を掘って造った墓に納めた。そこにはまだ誰も葬られたことがなかった。
23:54 その日は準備の日で、安息日が始まろうとしていた。
23:55 ガリラヤからイエスについて来た女たちは、ヨセフのあとについて行き、墓と、イエスの遺体がどのように納められたかを見届けた。
23:56 そして家に帰り、香料と香油を用意した。それから、掟に従って安息日は休んだ。
24:1 週の初めの日の明け方早く、女たちは用意しておいた香料を持って墓に行った。
24:2 すると、墓の入り口をふさいでいた石が、わきに転がしてあるのを見つけた。
24:3 中に入ってみると、イエスの遺体が見当たらなかった。
24:4 そのことで女たちが途方に暮れていると、まばゆく光る服を着た二人の人が、そばに現れた。
24:5 女たちは恐ろしくなって、顔を地面に伏せた。すると二人は言った。「どうして、生きている方を死んだ者の中に探すのですか。
24:6 その方はここにはいない。よみがえったのだ。まだガリラヤにいたころ、あなたたちにこう話したのを思い出しなさい。
24:7 『人の子は必ず、罪深い人たちの手に渡され、十字架につけられ、三日目によみがえる』と話したでしょう。」
24:8 すると女たちは、イエスの言葉を思い出した。
24:9 そして墓から帰って、十一人の弟子とほかのみんなに、この出来事をすべて知らせた。
24:10 それはマグダラのマリア、ヨハナ、ヤコブの母マリア、それに一緒にいた女たちだった。彼女たちは、このことを使徒たちに話した。
24:11 でも使徒たちには、その話がたわごとのように思えて、女たちの言うことを信じなかった。
24:12 ところがペテロは立ち上がり、墓へ走って行った。かがんで中をのぞくと、遺体を包んでいた亜麻布だけが置いてあった。彼は、起こったことに驚きながら家に帰った。
24:13 ちょうどその日、弟子のうちの二人が、エルサレムから十一キロほど離れたエマオという村へ向かっていた。
24:14 二人は、起こったすべての出来事について話し合っていた。
24:15 そうして話し合ったり、意見を交わしたりしていると、イエス自身が近づいて来て、一緒に歩き始めた。
24:16 でも二人の目はさえぎられていて、それがイエスだとはわからなかった。
24:17 イエスは二人に言った。「歩きながら、そんなに話し合っているのは、何のことですか。」すると二人は、暗い顔をして立ち止まった。
24:18 クレオパという名の一人が答えた。「エルサレムに滞在していて、この数日あそこで起きたことを知らないのは、あなただけですよ。」
24:19 イエスが「どんなことですか」と聞くと、二人は答えた。「ナザレのイエスのことです。あの人は神の前でも、人々の前でも、行いも言葉も力に満ちた預言者でした。
24:20 それなのに、わたしたちの祭司長や指導者たちは、あの人を引き渡して死刑にし、十字架につけてしまったんです。
24:21 わたしたちは、あの人こそイスラエルを救い出してくれる方だと期待していました。しかもそれだけでなく、そのことが起きてから、今日でもう三日目になります。
24:22 そのうえ、仲間の女性たちがわたしたちを驚かせたんです。彼女たちは朝早くお墓に行ったのですが、
24:23 イエスの遺体が見つからなかった、と言って帰ってきました。そのうえ、天使たちの姿を見た、その天使たちがイエスは生きていると告げた、と言うんです。
24:24 それで、仲間の何人かがお墓に行ってみると、確かに女性たちの言ったとおりでした。でも、イエスの姿は見当たりませんでした。」
24:25 するとイエスは二人に言った。「ああ、わかっていない人たちだ。預言者たちが語ったことを、なかなか信じられずにいるんですね。
24:26 救い主は、こうした苦しみを受けてから栄光に入るはずだったのではないですか。」
24:27 そしてイエスは、モーセからすべての預言者に至るまで、聖書全体にわたって、自分について書かれていることを二人に説き明かした。
24:28 こうして一行は、目指していた村に近づいた。イエスはなおも先へ進もうとするそぶりを見せた。
24:29 すると二人は、「わたしたちと一緒に泊まってください。もう夕方で、日も暮れかけていますから」と言って、しきりに引き止めた。それでイエスは、一緒に泊まるために家に入った。
24:30 そして一緒に食卓に着くと、イエスはパンを取り、感謝の祈りをささげてから、それを裂いて二人に渡した。
24:31 すると二人の目が開かれて、それがイエスだと分かった。しかしイエスは、その姿が見えなくなった。
24:32 二人は語り合った。「道を歩きながらあの方が話してくださったとき、聖書を解き明かしてくださったとき、わたしたちの心は内で燃えていたじゃないか」
24:33 そして二人はすぐに立ち上がり、エルサレムに引き返した。すると十一人の弟子たちと、その仲間が集まっていた。
24:34 みんなは言った。「主は本当に復活された。そしてシモンに現れたんだ」
24:35 二人も、道で起きたことや、パンを裂いたときにあの方がイエスだと分かったことを話した。
24:36 こう話しているとき、イエス自身が彼らの真ん中に立った。
24:37 彼らはおびえ、恐ろしくなって、幽霊を見ているのだと思った。
24:38 するとイエスは言った。「どうしてそんなに動揺しているのか。どうして心にいろいろな迷いが起こるのか。
24:39 わたしの手と足を見なさい。まさにわたし自身だ。触ってみなさい。よく見なさい。霊には肉も骨もないが、見てのとおり、わたしにはそれがある」
24:40 そう言って、イエスは彼らに手と足を見せた。
24:41 彼らは喜びのあまり、まだ信じられず、驚いていた。するとイエスは言った。「ここに何か食べ物はないか」
24:42 彼らは、焼いた魚を一切れイエスに渡した。
24:43 そして、それを受け取って、彼らの目の前で食べた。
24:44 それからイエスは言った。「まだ一緒にいたころ、わたしはあなたたちにこう話した。モーセの律法と預言者の書、それに詩編に、わたしについて書かれていることは、すべて実現しなければならない、と。」
24:45 そう言って、イエスは彼らの心を開き、聖書を理解できるようにした。
24:46 そしてイエスは言った。「こう書いてある。キリストは苦しみを受け、三日目に死者の中からよみがえる。
24:47 そして、罪を悔い改めれば赦されるという知らせが、イエスの名によって、エルサレムから始まって、すべての民族に宣べ伝えられる。
24:48 あなたたちは、これらのことの証人だ。
24:49 見なさい。わたしは、父が約束されたものをあなたたちに送る。だから、上からの力を受けるまで、あなたたちはこの町にとどまっていなさい。」
24:50 それからイエスは、彼らをベタニアの近くまで連れて行き、両手を上げて祝福した。
24:51 そして祝福している間に、イエスは彼らから離れ、天へと上げられていった。
24:52 彼らはイエスを礼拝し、大きな喜びに包まれてエルサレムへ帰って行った。
24:53 そして、いつも神殿にいて、神をほめたたえていた。
ヨハネによる福音書
1:1 初めに言葉があった。言葉は神とともにあった。言葉は神であった。
1:2 この言葉は、初めに神とともにあった。
1:3 すべてのものは、この言葉によってできた。できたもので、この言葉によらないものは一つもない。
1:4 この言葉の中に、いのちがあった。そのいのちは、人々を照らす光であった。
1:5 光は闇の中で輝いている。闇は光に打ち勝つことができなかった。
1:6 神から送られた一人の人が現れた。その名はヨハネといった。
1:7 彼は証しをするために来た。光について証しをして、すべての人が彼を通して信じるようになるためである。
1:8 彼自身は光ではなかった。ただ、光について証しをするために来たのである。
1:9 すべての人を照らすまことの光が、世に来ようとしていた。
1:10 その光は世にあった。世はこの光によってできたのに、世は光を知らなかった。
1:11 光は自分のところに来たのに、その人たちは光を受け入れなかった。
1:12 しかし、光を受け入れた人、その名を信じた人には、神の子となる資格が与えられた。
1:13 この人たちは、血によってでも、肉の望みによってでも、人の意志によってでもなく、神によって生まれたのである。
1:14 言葉は人となり、わたしたちの間に住んだ。わたしたちはその栄光を見た。それは父のもとから来た、ただひとりの子としての栄光であり、恵みと真理に満ちていた。
1:15 ヨハネは彼について証しをし、声を張り上げて言った。「わたしが前に話したのは、この方のことだ。『わたしの後から来る方は、わたしより先におられたから、わたしよりまさっている』と。」
1:16 わたしたちはみな、この方の満ちあふれる豊かさの中から、恵みの上にさらに恵みを受けた。
1:17 律法はモーセを通して与えられた。しかし、恵みと真理はイエス・キリストを通して現れた。
1:18 神を見た人は、いまだかつて一人もいない。父のふところにいる、ただひとりの子である神が、神を知らせてくださったのである。
1:19 これは、ヨハネの証しである。エルサレムのユダヤ人たちが、祭司やレビ人たちを送って、「あなたは、どなたですか」とヨハネに尋ねさせたときのことだ。
1:20 ヨハネは包み隠さず、はっきりと認めた。「わたしはキリストではない」と言い切った。
1:21 彼らは尋ねた。「では、あなたは何者ですか。エリヤですか。」ヨハネは「違う」と言った。「あの預言者ですか」と聞かれると、「いいえ」と答えた。
1:22 そこで彼らは言った。「では、いったいあなたはだれなのですか。わたしたちを送った人たちに、答えを返さなければなりません。自分では、自分をどんな者だと思っているのですか。」
1:23 ヨハネは答えた。「わたしは、荒れ野で叫ぶ声だ。『主の道をまっすぐに整えよ』と叫んでいる。」預言者イザヤが言ったとおりである。
1:24 さて、使いとして送られてきたのは、ファリサイ派の人たちだった。
1:25 彼らはヨハネに尋ねた。「あなたがキリストでも、エリヤでも、あの預言者でもないのなら、どうして洗礼を授けているのですか。」
1:26 ヨハネは答えた。「わたしは水で洗礼を授けている。しかし、あなたがたの間には、あなたがたの知らない方が立っている。
1:27 その方は、わたしの後から来られる。わたしは、その方の履物のひもを解く値打ちさえない。」
1:28 これらのことは、ヨルダン川の向こう側のベタニアで起こった。ヨハネが洗礼を授けていた場所である。
1:29 その翌日、ヨハネはイエスが自分の方へ来られるのを見て、こう言った。「見なさい。世界の罪を取り除く、神の子羊だ。
1:30 この方こそ、わたしが『わたしの後から一人の人が来られる。その方はわたしより先におられたから、わたしよりまさっている』と言っていた、その方だ。
1:31 わたし自身、この方がどなたか知らなかった。でも、この方がイスラエルに現れるためにこそ、わたしは来て、水で洗礼を授けているのだ。」
1:32 そしてヨハネは、こう証言した。「わたしは、霊が鳩のように天から降って、この方の上にとどまるのを見た。
1:33 わたし自身、この方がどなたか知らなかった。でも、水で洗礼を授けるためにわたしを送った方が、こう言われた。『霊が降って、ある人の上にとどまるのを見たら、その人こそ、聖なる霊で洗礼を授ける方だ』。
1:34 わたしはそれを見た。だから、この方こそ神に選ばれた方だと証言する。」
1:35 その翌日、ヨハネはまた、二人の弟子といっしょに立っていた。
1:36 そして、イエスが歩いているのに目をとめて、こう言った。「見なさい。神の子羊だ。」
1:37 その二人の弟子は、ヨハネがそう言うのを聞いて、イエスについて行った。
1:38 イエスは振り向いて、二人がついて来るのを見て、たずねた。「何を求めているのか。」二人は言った。「ラビ、どこに泊まっておられるのですか。」ラビとは、「先生」という意味の言葉である。
1:39 イエスは言った。「来なさい。そうすればわかる。」そこで二人はついて行き、イエスが泊まっている場所を見て、その日はいっしょに過ごした。時刻は午後四時ごろだった。
1:40 ヨハネの言葉を聞いてイエスについて行った二人のうちの一人は、シモン・ペトロの兄弟アンデレだった。
1:41 アンデレはまず、自分の兄弟シモンを見つけて、こう言った。「わたしたちはメシアに出会った。」メシアとは、「キリスト」という意味である。
1:42 そして、シモンをイエスのところに連れて行った。イエスはシモンを見つめて言った。「あなたはヨハネの子シモンだ。これからは、ケファと呼ばれることになる。」ケファとは、「ペトロ」という意味である。
1:43 翌日、イエスはガリラヤへ行こうとしていた。そして、フィリポを見つけて言った。「わたしについて来なさい。」
1:44 フィリポは、ベツサイダの町の出身だった。アンデレやペトロと同じ町である。
1:45 フィリポはナタナエルを見つけて、こう言った。「わたしたちは、モーセが律法に書き、預言者たちも書いた、あの方に出会った。ナザレ出身の、ヨセフの子イエスだ。」
1:46 すると、ナタナエルは言った。「ナザレから、何か良いものが出るだろうか。」フィリポは言った。「来て、自分の目で見てごらん。」
1:47 イエスは、ナタナエルが自分のほうへ来るのを見て、彼についてこう言った。「見なさい。本物のイスラエル人だ。心に偽りがない。」
1:48 ナタナエルは言った。「どうして、わたしのことを知っているのですか。」イエスは答えた。「フィリポがあなたを呼ぶ前に、あなたがいちじくの木の下にいるのを、わたしは見ていた。」
1:49 ナタナエルは答えた。「先生、あなたは神の子です。あなたはイスラエルの王です。」
1:50 イエスは答えた。「いちじくの木の下であなたを見た、と言ったから信じるのか。あなたは、これよりもっと大きなことを見ることになる。」
1:51 そして、こう続けた。「はっきり言っておく。あなたがたは、天が開けて、神の天使たちが人の子の上を上ったり下りたりするのを見ることになる。」
2:1 三日目に、ガリラヤのカナで結婚式があった。イエスの母もそこにいた。
2:2 イエスも弟子たちも、その結婚式に招かれていた。
2:3 ぶどう酒が足りなくなったとき、イエスの母がイエスに言った。「ぶどう酒がなくなってしまったの。」
2:4 イエスは母に言った。「お母さん、それはわたしにどうしろと言うのですか。わたしの時はまだ来ていません。」
2:5 それでも母は、召し使いたちにこう言った。「この人が言うとおりに、何でもしてあげてください。」
2:6 そこには、石でできた水がめが六つ置いてあった。ユダヤ人が体を清める儀式に使うもので、それぞれ八十リットルから百二十リットルほど入る大きさだった。
2:7 イエスは召し使いたちに言った。「この水がめに水をいっぱい入れなさい。」彼らは、かめのふちまでいっぱいに水を満たした。
2:8 そしてイエスは言った。「では、それをくんで、宴会の世話役のところへ持って行きなさい。」彼らは持って行った。
2:9 世話役は、ぶどう酒に変わった水を味わった。でも、それがどこから来たのかは知らなかった。水をくんだ召し使いたちは知っていた。世話役は花婿を呼んで、
2:10 こう言った。「だれでも、まず良いぶどう酒を出して、客が十分に飲んで酔いがまわってから、質の落ちるものを出すものだ。それなのに、あなたは今まで良いぶどう酒をとっておいたんですね。」
2:11 これが、イエスが行った最初のしるしである。ガリラヤのカナでのことだった。こうしてイエスはご自分の栄光を現し、弟子たちはイエスを信じた。
2:12 その後、イエスは母や兄弟たち、弟子たちといっしょにカファルナウムへ下って行き、そこに数日のあいだ滞在した。
2:13 さて、ユダヤ人の過越の祭りが近づいていた。それでイエスはエルサレムへ上って行った。
2:14 そして神殿の境内で、牛や羊や鳩を売っている人たちや、両替をして座っている人たちを見つけた。
2:15 イエスは縄でむちを作り、羊も牛も、みんなまとめて境内から追い出した。両替人のお金をまき散らし、その台をひっくり返した。
2:16 そして、鳩を売っている人たちに言った。「これを、ここから運び出しなさい。わたしの父の家を、商売の家にするな。」
2:17 弟子たちは、「あなたの家を思う熱い思いが、わたしを食い尽くす」と書いてあるのを思い出した。
2:18 すると、ユダヤ人たちがイエスに言った。「こんなことをするからには、どんなしるしをわたしたちに見せてくれるのか。」
2:19 イエスは答えて言った。「この神殿を壊してみなさい。わたしは三日で建て直す。」
2:20 そこでユダヤ人たちは言った。「この神殿を建てるのに四十六年もかかったんだ。それなのに、あなたは三日で建て直すというのか。」
2:21 しかし、イエスが言っていたのは、ご自分の体という神殿のことだった。
2:22 だから、イエスが死者の中からよみがえったとき、弟子たちは、イエスがこう言っていたのを思い出した。そして、聖書と、イエスが語った言葉を信じた。
2:23 イエスが過越祭のあいだエルサレムにいたとき、多くの人が、イエスの行っていたしるしを見て、その名を信じた。
2:24 しかし、イエスご自身は、そんな彼らに自分をゆだねることはしなかった。すべての人のことを知っていたからだ。
2:25 イエスには、人について誰かに教えてもらう必要などなかった。人の心の中に何があるかを、自分でわかっていたからだ。
3:1 さて、ファリサイ派に属する一人の人がいた。名前をニコデモといい、ユダヤ人の議員だった。
3:2 この人がある夜、イエスのもとにやって来て言った。「先生、わたしたちはあなたが神のもとから来られた教師だと分かっています。神が共におられなければ、あなたのなさっているようなしるしを、だれも行うことはできませんから。」
3:3 イエスは答えて言われた。「はっきり言っておく。人は新しく生まれなければ、神の御国を見ることはできない。」
3:4 ニコデモは言った。「年をとった人が、どうやってもう一度生まれることができるのですか。もう一度母親のおなかに入って生まれるなんて、できるはずがありません。」
3:5 イエスは答えられた。「はっきり言っておく。人は水と霊とによって生まれなければ、神の御国に入ることはできない。
3:6 肉から生まれたものは肉であり、霊から生まれたものは霊である。
3:7 『あなたがたは新しく生まれなければならない』とわたしが言ったからといって、驚くことはない。
3:8 風は思いのままに吹く。あなたはその音を聞いても、それがどこから来てどこへ行くのかは分からない。霊から生まれた者もみな、それと同じだ。」
3:9 ニコデモは答えて言った。「どうすれば、そんなことが起こり得るのですか。」
3:10 イエスは答えて言われた。「あなたはイスラエルの教師なのに、こんなことも分からないのか。
3:11 はっきり言っておく。わたしたちは知っていることを話し、見たことを証ししている。それなのに、あなたがたはわたしたちの証しを受け入れない。
3:12 地上のことを話しても、あなたがたは信じない。それなら、天上のことを話したところで、どうして信じるだろうか。
3:13 天から降って来た者、つまり人の子のほかには、だれも天に上った者はいない。
3:14 そして、モーセが荒れ野で蛇を高く上げたように、人の子も高く上げられなければならない。
3:15 それは、信じる者がみな、人の子によって永遠の命を得るためである。」
3:16 神は、実にこの世を愛して、ひとり子をお与えになった。それは、御子を信じる者が一人も滅びることなく、永遠の命を得るためである。
3:17 神が御子をこの世に送られたのは、世をさばくためではなく、御子によって世が救われるためである。
3:18 御子を信じる者はさばかれない。しかし、信じない者はすでにさばかれている。神のひとり子の名を信じなかったからである。
3:19 さばきとは、こういうことだ。光がこの世に来たのに、人々は光よりも闇の方を愛した。自分の行いが悪かったからである。
3:20 悪いことをする者はみな、光を憎み、光の方に来ようとしない。自分の行いが明るみに出されるのをいやがるからだ。
3:21 しかし、真理を行う者は光の方に来る。自分の行いが神によってなされたということが、はっきり示されるためである。
3:22 その後、イエスは弟子たちとユダヤ地方へ行った。そこで彼らと一緒に過ごし、洗礼（バプテスマ）を授けていた。
3:23 一方、ヨハネもサリムの近くのアイノンで洗礼を授けていた。そこには水が豊かにあったからだ。人々は次々とやって来て、洗礼を受けていた。
3:24 ヨハネはまだ牢に入れられていなかったのである。
3:25 そのころ、ヨハネの弟子たちとひとりのユダヤ人との間で、清めのことをめぐって議論が起こった。
3:26 そこで彼らはヨハネのところに来て言った。「先生、ヨルダン川の向こう岸であなたと一緒にいた人、あなたが証しをしたあの人が、今、洗礼を授けています。しかも、みんながあの人のところへ行っているのです。」
3:27 ヨハネは答えた。「人は、天から与えられるのでなければ、何ひとつ受け取ることはできない。
3:28 『わたしはキリストではない。あの方の前に遣わされた者だ』とわたしが言ったことは、あなたたち自身が証ししてくれる。
3:29 花嫁を迎えるのは花婿だ。花婿の友人はそばに立ち、その声を聞いて、心から喜ぶ。だから、わたしの喜びは今、満ちあふれている。
3:30 あの方は大きくなり、わたしは小さくなっていく。そうでなければならないのだ。
3:31 上から来る方は、すべてのものの上におられる。地から出た者は地に属し、地のことを語る。天から来る方は、すべてのものの上におられる。
3:32 その方は、自分が見たこと、聞いたことを証しする。それなのに、その証しを受け入れる者はいない。
3:33 しかし、その証しを受け入れた者は、神が真実であるということを、はっきりと認めたのだ。
3:34 神が遣わした方は、神の言葉を語る。神が霊を惜しみなく、限りなくお与えになるからだ。
3:35 父は子を愛し、すべてのものを子の手にゆだねられた。
3:36 子を信じる者は永遠の命を持つ。しかし、子に従おうとしない者は命を見ることがなく、神の怒りがその上にとどまり続ける。」
4:1 ヨハネよりも多くの弟子をつくり、洗礼を授けているイエスのことを、ファリサイ派の人たちが耳にした。イエスはそれを知った。
4:2 （しかし、バプテスマを授けていたのはイエス自身ではなく、弟子たちだった）
4:3 ユダヤを離れて、もう一度ガリラヤへ向かった。
4:4 しかしイエスは、サマリアを通って行かなければならなかった。
4:5 イエスはサマリアのスカルという町にやって来た。この町は、ヤコブが息子のヨセフに与えた土地の近くにあった。
4:6 そこにはヤコブの井戸があった。イエスは旅に疲れて、その井戸のそばに腰を下ろした。昼の十二時ごろだった。
4:7 ひとりのサマリアの女が水をくみに来た。イエスはその人に言った。「水を飲ませてほしい」
4:8 弟子たちは食べ物を買いに町へ行っていたのである。
4:9 「するとサマリアの女は言った。『あなたはユダヤ人なのに、どうしてサマリアの女のわたしに水を飲ませてほしいなんて言うんですか』」——ユダヤ人はサマリア人と付き合いがなかったからだ。
4:10 イエスは答えた。「もしあなたが、神が与えようとしている贈り物のことを知り、そして『水を飲ませてほしい』と頼んでいるのがだれなのかを知っていたら、あなたのほうからその人に頼んだはずだ。そうすれば、その人はあなたに、いのちを与える水をあげただろう。」
4:11 女はイエスに言った。「あなたには水をくむ物がないし、この井戸は深いんです。それなのに、どこからその生きた水を手に入れるんですか。
4:12 あなたは、この井戸をくださったわたしたちの父祖ヤコブより偉いのですか。ヤコブ自身も、その子どもたちも、家畜も、この井戸から水を飲んだのです」
4:13 この水を飲む人はみんな、また喉がかわく。
4:14 わたしが与える水を飲む人は、いつまでも渇くことがない。それどころか、わたしが与える水はその人の中で泉となり、永遠の命へと湧き上がる。
4:15 女はイエスに言った。「あなた、その水をわたしにください。そうすれば、もう渇くこともないし、水をくみにここへ来なくてもよくなりますから」
4:16 イエスは彼女に言った。「行って、あなたの夫を呼んで、ここに連れてきなさい」
4:17 女は答えて言った。「わたしには夫はいません。」イエスは言った。「夫はいない、というのは本当だ。
4:18 あなたには夫が五人いた。それに、今いっしょにいる人も夫ではない。あなたが言ったことは本当だ。」
4:19 女はイエスに言った。「あなたは預言者なんですね。
4:20 わたしたちの先祖は、この山で礼拝してきました。それなのに、あなたがたユダヤ人は、礼拝すべき場所はエルサレムにあると言います。」
4:21 イエスは彼女に言った。「わたしを信じなさい。この山でもなく、エルサレムでもない場所で、あなたたちが父を礼拝する時が来る。
4:22 あなたがたは知らないものを拝んでいる。でも、わたしたちは知っているかたを礼拝している。救いはユダヤ人から来るからだ。
4:23 しかし、まことの礼拝をする人たちが、霊とまことで父を礼拝する時が来る。いや、もう来ている。父はそういう礼拝をする人たちを求めているからだ。
4:24 神は霊だ。だから神を礼拝する人は、霊とまことをもって礼拝しなければならない。」
4:25 わたしはイエスに言った。「キリストと呼ばれるメシアが来ることは、知っています。その方が来れば、わたしたちに何もかも知らせてくれるはずです。」
4:26 イエスは女に言った。「あなたと話しているこのわたしが、それだ。」
4:27 ちょうどそのとき、弟子たちが戻ってきた。イエスが女性と話しているのを見て、みんな驚いた。でも、「何を求めているのですか」とも「なぜその人と話しているのですか」とも、だれ一人尋ねなかった。
4:28 この女は水がめをそこに置いたまま、町へ行った。そして人々に言った。
4:29 「わたしがしてきたことを全部言い当てた人がいる。さあ、見に来て。もしかしたら、この人がキリストなのかもしれない」
4:30 人々は町を出て、イエスのところへ向かった。
4:31 その間に、弟子たちがイエスに「先生、何か食べてください」とすすめた。
4:32 「わたしには、あなたがたの知らない食べ物がある」
4:33 弟子たちは互いに言い合った。「だれかが食べ物を持ってきたのだろうか。」
4:34 わたしの食べ物とは、わたしを送ってくださった方の望みを行い、その仕事を成し遂げることだ。
4:35 あなたたちは「収穫まではあと四か月ある」と言っているよね。でも、わたしは言う。目を上げて畑を見てごらん。作物はもう実って、収穫を待っている。
4:36 刈り取る人は報酬を受け取り、永遠の命に至る実を集めている。それは、種をまく人も刈り取る人も、一緒に喜ぶためだ。
4:37 『種をまく人と刈り取る人は別だ』ということわざがあるが、それはここで本当になる。
4:38 わたしは、自分たちが苦労して育てたわけでもない作物を刈り取るために、あなたたちを送り出した。苦労したのはほかの人たちだ。あなたたちは、その人たちの苦労の実を受け取っているんだ。」
4:39 この町に住んでいたサマリアの人たちの多くは、イエスを信じた。「あの人は、わたしがしてきたことを何もかも言い当てた」と証言した女性の言葉がきっかけだった。
4:40 サマリア人たちはイエスのところに来て、自分たちのところに滞在してほしいと願った。それでイエスは、そこに二日間とどまった。
4:41 そして、さらに多くの人々が、イエスの言葉を聞いて信じた。
4:42 そして女に言った。「わたしたちが信じるのは、もうあなたが話してくれたからではない。自分たちで直接聞いて、この人こそ本当に世界を救う方だと分かったからだ」
4:43 ふつかの後、イエスはそこを去ってガリラヤへ向かった。
4:44 イエス自身が、「預言者は自分の故郷では敬われないものだ」とはっきり語っていたからである。
4:45 ガリラヤに着くと、ガリラヤの人たちはイエスを歓迎した。彼らも祭りに行っていて、その祭りのあいだにイエスがエルサレムでしたことを、すべて見ていたからだ。
4:46 イエスはもう一度、ガリラヤのカナに行った。そこは、かつて水をぶどう酒に変えた場所だ。そのころ、カファルナウムに、ある役人がいた。その息子が病気で苦しんでいた。
4:47 この人は、イエスがユダヤからガリラヤに来られたと聞いて、イエスのところへ行った。そして、カペナウムに下って来て、死にかけている息子を治してほしいと願った。
4:48 「しるしや不思議を見ないかぎり、あなたたちは決して信じない」イエスは彼にそう言った。
4:49 「主よ、どうか子どもが死んでしまう前に来てください」と、その役人はイエスに言った。
4:50 イエスは言った。「行きなさい。あなたの息子は生きる。」その人はイエスの言葉を信じて、帰って行った。
4:51 その下って行く途中、召使いたちが彼に出会い、「お子さんは元気になりました」と伝えた。
4:52 そこで父親は、息子がよくなり始めた時刻を召使いたちに尋ねた。すると彼らは、「きのうの午後一時に熱が下がりました」と答えた。
4:53 イエスが「あなたの息子は助かる」と言ったのは、まさにその時刻だった。父親はそれに気づいた。そして、彼自身も家族みんなも信じた。
4:54 これは、イエスがユダヤからガリラヤに来てなされた二つ目のしるしである。
5:1 こののち、ユダヤ人の祭りがあった。それでイエスはエルサレムに上って行った。
5:2 エルサレムには、羊の門のそばに池がある。ヘブライ語でベテスダと呼ばれる池で、そこには五つの回廊があった。
5:3 その廊の中には、大勢の病人が横たわっていた。目の見えない人、足の不自由な人、体の動かない人たちだった。
5:4 というのも、主の天使がときどきこの池に降りてきて、水を動かすことがあったからだ。そして水が動いたあと、真っ先に入った人は、どんな病気にかかっていても治った。
5:5 三十八年ものあいだ、病気で苦しんでいる人がそこにいた。
5:6 イエスはその人が横になっているのを見た。そして、もう長い間その状態が続いているのを知って、こう言った。「よくなりたいか」
5:7 病気の人はイエスに答えた。「先生、水が動くとき、わたしを池に入れてくれる人がいないんです。自分で行こうとしても、ほかの人が先に降りて行ってしまうんです」
5:8 イエスは彼に言った。「起きて、あなたのマットを持ち上げて、歩きなさい。」
5:9 すると、この人はすぐに元気になり、床を取り上げて歩き出した。その日は安息日だった。
5:10 「今日は安息日だ。布団を持ち歩くのは、ルールで許されていない。」
5:11 わたしを治してくれた人が、「マットを持って歩きなさい」とわたしに言ったのです。
5:12 「起き上がって歩けと言った人は、だれだ」
5:13 でも、治してもらったこの人は、それがだれなのかわからなかった。その場には大勢の人がいて、イエスはそっとその場を離れていたからだ。
5:14 そののち、イエスは神殿の境内でその人を見つけて、こう言った。「よかったね、君はもう元気になった。これからはもう罪を犯してはいけない。そうしないと、もっとひどいことが起きるかもしれないから。」
5:15 彼はそこを出て行った。そして、自分を治してくれたのはイエスだと、ユダヤ人たちに伝えた。
5:16 そのためユダヤ人たちは、イエスがこうしたことを安息日にしたといって、イエスを責め立てた。
5:17 わたしの父は今も働いている。だから、わたしも働くのだ。
5:18 このためにユダヤ人たちは、ますますイエスを殺そうとするようになった。イエスが安息日の決まりを破っただけでなく、神を自分の父と呼んで、自分を神と等しい者としたからだ。
5:19 よくよく言っておく。子は自分からは何もできない。父がしていることを見て、そのとおりにするだけだ。父がすることを、子も同じようにする。」
5:20 父は子を愛していて、自分がすることをすべて子に見せている。そればかりか、これよりももっと大きなわざを子に見せるだろう。それを見て、あなたたちは驚くことになる。
5:21 父が死んだ人たちをよみがえらせて命を与えるように、子もまた、与えたいと思う人に命を与える。
5:22 父はだれをも裁かない。裁きのすべてを、子に任せたからだ。
5:23 すべての人が父を敬うように、子をも敬うためである。子を敬わない者は、子を送った父をも敬わない。
5:24 わたしははっきり言っておく。わたしの言葉を聞いて、わたしを送った方を信じる人は、永遠の命を持っている。その人は裁かれることがなく、すでに死から命へと移っているのだ。
5:25 よくよく言っておく。死んだ者たちが神の子の声を聞く時が来る。今もう来ている。そして聞いた者は生きる。
5:26 父はいのちを自分のうちに持っている。それと同じように、子にも自分のうちにいのちを持つことをお与えになった。
5:27 そして、この方に、さばきを行う権威をお与えになった。人の子だからである。
5:28 墓の中にいる人たちがみな、彼の声を聞く時が来る。だから、このことに驚いてはいけない。
5:29 善を行った人々は、いのちを受けるためによみがえる。悪を行った人々は、さばきを受けるためによみがえる。それぞれ、墓から出てくるのだ。
5:30 わたしは、自分からは何もできない。ただ、父から聞くとおりに裁く。だから、わたしの裁きは正しい。自分の思いではなく、わたしを送った方の思いを求めているからだ。
5:31 もし、わたしが自分で自分のことを証しするなら、その証しは本当ではない。
5:32 わたしについて証しをしてくれる方はほかにいる。そして、その方がわたしについてする証しが本当であることを、わたしは知っている。
5:33 あなたがたはヨハネのもとへ人を送った。すると彼は真理についてあかしをした。
5:34 わたしは人からの証しを受けない。でも、こう言うのは、あなたがたが救われるためだ。
5:35 ヨハネは燃えて輝くともし火だった。あなたたちは、しばらくの間その光を喜び楽しもうとした。
5:36 わたしには、ヨハネの証しよりも力ある証しがある。父がわたしに与えて、やり遂げるようにと任せてくださった仕事、つまり今わたしがしているこの働きそのものが、父がわたしを送ったことを証ししているのだ。
5:37 またわたしを送ってくださった父ご自身が、わたしについて証ししてくださった。あなたたちはこれまで、その声を聞いたことも、その姿を見たこともない。
5:38 神が送った者をあなたがたは信じない。だから神の言葉が、あなたがたの内にとどまっていない。
5:39 聖書を調べなさい。あなたたちは、その中に永遠の命があると思っているからだ。でも、その聖書こそ、わたしについて証しをするものなのだ。
5:40 わたしのもとに来れば命を得られるのに、あなたたちは来ようとしない。
5:41 わたしは、人からほめられることを求めない。
5:42 わたしは知っている。あなたたちの心には、神を愛する愛がないのだ。
5:43 わたしは父の名によって来た。それなのに、あなたたちはわたしを受け入れない。もし別の人が自分自身の名によって来たら、あなたたちはその人を受け入れるのだろう。
5:44 わたしたちの誉れを認め合うだけで、ただひとりの神からの栄光を求めようとしないあなたたちが、どうして信じることができるだろうか。
5:45 わたしがあなたたちのことを父に訴える、なんて思わないでほしい。あなたたちを訴えるのは、あなたたちが望みをかけているモーセなのだ。
5:46 もし本当にモーセを信じているなら、わたしのことも信じるはずだ。モーセはわたしについて書いたのだから。
5:47 モーセの書いたものを信じないのなら、どうしてわたしの言葉を信じられるだろうか。」
6:1 そののち、イエスはガリラヤ湖、つまりテベリアス湖の向こう岸へ渡った。
6:2 大勢の群衆がイエスについて行った。病人たちになさっていたしるしを見たからだ。
6:3 イエスは山に登り、弟子たちとそこに座った。
6:4 ユダヤ人の祭りである過越が近づいていた。
6:5 イエスは顔を上げた。すると、大勢の人の群れが自分のほうへ来るのが見えた。そこでイエスはフィリポに言った。「この人たちに食べさせるパンを、どこで買えばいいだろう」
6:6 これはピリポを試すために言ったことだった。イエスは自分が何をしようとしているか、ちゃんとわかっていたからだ。
6:7 フィリポはイエスに答えた。「みんなが少しずつ食べるだけでも、二百デナリ分のパンでは足りません」
6:8 弟子のひとり、シモン・ペテロの兄弟アンデレがイエスに言った。
6:9 「ここに、大麦のパンを五つと魚を二匹持っている少年がいます。でも、こんなにたくさんの人の中では、それが何になるでしょう」
6:10 イエスは「みんなを座らせてあげて」と言った。その場所には草がたくさん生えていた。それで人々は座った。男の人だけで五千人ほどいた。
6:11 そこでイエスはパンを取り、感謝の祈りをささげてから、すわっている人々に配った。魚も同じようにして、みんなが望むだけ分け与えた。
6:12 人々がじゅうぶんに食べ終わると、イエスは弟子たちに言った。「余ったパンくずを集めなさい。少しもむだにしないためだ。」
6:13 そこで彼らはそれを集めた。すると、大麦のパン五つを食べて余ったパンくずは、十二のかごいっぱいになった。
6:14 人々はイエスの行ったこのしるしを見て、こう言った。「この人こそ、世に来るはずの預言者だ。本当に間違いない」
6:15 イエスは、人々が来て自分を無理やり連れて行き、王にしようとしているのに気づいた。それで、たったひとりでまた山に退いた。
6:16 夕方になると、弟子たちは湖のほとりに下りて行った。
6:17 舟に乗り込んで、湖の向こう岸のカファルナウムへ向かった。もうあたりは暗くなっていたのに、イエスはまだ彼らのところに来ていなかった。
6:18 強い風が吹きつけてきて、湖は荒れはじめた。
6:19 四、五十メートルほど漕ぎ出したころ、イエスが湖の上を歩いて舟に近づいてくるのが見えた。それで弟子たちは怖くなった。
6:20 わたしだ。恐れることはない。
6:21 そこで彼らは、イエスを喜んで舟に迎え入れた。すると舟は、目指していた岸にすぐ着いた。
6:22 その翌日、湖の向こう岸に残っていた群衆は、そこには小舟が一そうしかなかったこと、そしてイエスが弟子たちと一緒にその舟に乗り込まず、弟子たちだけが出ていったことに気づいた。
6:23 しかし、テベリヤから数隻の小舟がやって来て、主が感謝の祈りをささげたあとに人々がパンを食べた場所の近くに着いた。
6:24 群衆は、イエスも弟子たちもそこにいないと知ると、自分たちも小舟に乗り込み、イエスを探しにカファルナウムへ向かった。
6:25 「先生、いつここにいらしたんですか。」彼らはイエスに海の向こう岸で出会って、そう尋ねた。
6:26 イエスは答えた。「はっきり言っておく。あなたがたがわたしを探しているのは、しるしを見たからではない。パンを食べて満腹したからだ。
6:27 朽ちてなくなる食べ物のためではなく、いつまでも残る食べ物のために働きなさい。それは永遠の命につながる食べ物で、人の子があなたたちに与えるものだ。父である神が、人の子にそのことを認める印を押されたのだから。」
6:28 神のわざを行うために、わたしたちは何をすればいいのでしょうか。
6:29 わたしたちに答えて、イエスは言った。「神が望んでいるのは、こういうことだ。神が送った者を、あなたたちが信じることだ。」
6:30 「わたしたちが実際に見てあなたを信じられるように、どんなしるしを見せてくれるんですか。何をしてくれるんですか。」
6:31 わたしたちの先祖は、荒れ野でマナを食べました。『神は天からのパンを彼らに与えて食べさせた』と書いてあるとおりです」
6:32 わたしはこう答えた。「よくよく言っておく。天からのパンをあなたがたに与えたのは、モーセではない。天からの本物のパンをあなたがたに与えるのは、わたしの父なのだ。
6:33 神のパンとは、天から降りてきて、この世に命を与えるものだからだ。」
6:34 「主よ、そのパンをこれからもずっとわたしたちに下さい。」
6:35 わたしは命のパンである。わたしのもとに来る人は決して飢えることがなく、わたしを信じる人は決して渇くことがない。」
6:36 しかし、前にも言ったように、あなたたちはわたしを見たのに信じない。
6:37 父がわたしに与えてくださる人は、みなわたしのところに来る。そして、わたしのところに来る人を、わたしは決して追い返したりはしない。
6:38 わたしが天から下りてきたのは、自分の思いのままに行動するためではない。わたしを送った方の望みをかなえるためだ。
6:39 わたしを送ったかたの望みは、こうだ。わたしにゆだねてくださった人を、わたしがひとりも失わず、終わりの日によみがえらせることである。
6:40 わたしの父が望んでいるのは、こうだ。子を見て信じる人がみな、永遠の命を得ること。そして、わたしはその人たちを終わりの日によみがえらせる。」
6:41 ユダヤ人たちは、イエスが「わたしは天から下ってきたパンである」と言ったので、イエスについて不平を言い始めた。
6:42 ヨセフの子で、わたしたちはその父親も母親も知っている、あのイエスじゃないか。それなのに、どうして今になって『わたしは天から下ってきた』なんて言うんだ。」
6:43 イエスは彼らに答えた。「そんなふうに不平を言い合うのはやめなさい。
6:44 父がその人を引き寄せてくれなければ、だれもわたしのところに来ることはできない。わたしを送った父が、そうしてくれるんだ。そしてわたしは、終わりの日にその人を生き返らせる。
6:45 父たちに神が伝えたことを記した書には、こう書いてある。「彼らはみな、神から教えを受ける。」父から聞いて学んだ者は、みなわたしのところに来る。
6:46 神から出た者だけが父を見た。それ以外にはだれも父を見たことがない。
6:47 よくよく言っておく。信じる者は永遠の命を持っている。
6:48 わたしは命のパンである。
6:49 あなたがたの先祖は荒野でマナを食べたけれど、死んでしまった。
6:50 これは、天から下ってくるパンだ。これを食べる人は、決して死なない。
6:51 わたしは、天から下ってきた、命を与える生きたパンだ。このパンを食べる人はだれでも、永遠に生きる。世界を生かすためにわたしが与えるパン、それはわたしの肉のことだ。
6:52 ユダヤ人たちは激しく言い合った。「どうやってこの人は、自分の肉を食べさせることができるんだ」
6:53 わたしはあなたたちにはっきり言う。人の子の肉を食べ、その血を飲まなければ、あなたたちの中に命はない。
6:54 わたしの肉を食べ、わたしの血を飲む人は、永遠の命を持っている。わたしはその人を終わりの日によみがえらせる。
6:55 わたしの肉は本当の食べ物、わたしの血は本当の飲み物だからだ。
6:56 わたしの肉を食べ、わたしの血を飲む人は、わたしの中にいて、わたしもその人の中にいる。
6:57 生ける父がわたしを送り、わたしがその父によって生きているように、わたしを食べる者も、わたしによって生きる。
6:58 このパンは、天から下ってきたパンだ。先祖たちはマナを食べたが、それでも死んでしまった。でも、このパンを食べる人は、いつまでも生きる。
6:59 これらのことは、イエスがカファルナウムの会堂で教えていたときに語った言葉である。
6:60 これを聞いた弟子たちの多くは、こう言った。「これはひどい話だ。いったいだれが、こんなことを聞いていられるだろう。」
6:61 イエスは、弟子たちがこのことで不満を言っているのを心の中で見抜いて、彼らに言った。「あなたたちは、これにつまずいているのか。
6:62 それでは、もし人の子が、もといた所へ上っていくのを見たら、どうなるのか。
6:63 霊こそが人を生かす。肉は何の役にも立たない。わたしがあなたがたに話した言葉は、霊であり、命である。
6:64 しかし、あなたがたの中には信じない者がいる。」イエスは、だれが信じないのか、そしてだれが自分を裏切るのかを、初めから知っていたのだ。
6:65 だからイエスは言われた。「こういうわけで、わたしはあなたたちに言ったんだ。父が与えてくれた人でなければ、わたしのところに来ることはできない、と。」
6:66 それ以来、弟子たちの多くはイエスから離れていき、もう一緒に行動しなくなった。
6:67 そこでイエスは、十二人の弟子たちに言った。「あなたたちも離れて行きたいのか」
6:68 シモン・ペテロが答えた。「主よ、わたしたちは、いったいだれのところに行けばいいのでしょう。永遠の命の言葉を持っているのは、あなたです。
6:69 わたしたちはすでに信じ、そして知っています。あなたこそが、神が送られた聖なる方だと。」
6:70 イエスは彼らに答えた。「あなたたち十二人を選んだのは、このわたしだ。それなのに、あなたたちの中の一人は悪魔だ。」
6:71 これは、シモンの子で、イスカリオテのユダのことを言っていた。十二人の弟子の一人でありながら、このユダがイエスを裏切ろうとしていたのだ。
7:1 そののち、イエスはガリラヤを回っておられた。ユダヤ人たちが自分を殺そうとしていたので、ユダヤは回りたくなかったのだ。
7:2 仮庵祭が近づいていた。
7:3 そこで、イエスの兄弟たちがイエスに言った。「ここを出てユダヤに行ったらどうですか。そうすれば、あなたの弟子たちも、あなたがしている働きを見ることができます。
7:4 自分の存在を世に知ってもらいたいと思う人で、こっそり物事を行う人はいない。こうしたことをしているのなら、堂々と世に自分を示しなさい」
7:5 兄弟たちさえ、イエスを信じていなかったからだ。
7:6 わたしの時はまだ来ていない。でも、あなたたちの時はいつでも整っている。
7:7 世はあなたたちを憎むことはできない。でも、わたしのことは憎んでいる。わたしが、世の行いは悪いと指摘しているからだ。
7:8 あなたがたこそ祭りに行けばいい。わたしはこの祭りには行かない。わたしの時がまだ来ていないからだ。
7:9 これらのことを言った後、イエスはガリラヤにとどまった。
7:10 兄弟たちが祭りに出かけたあとで、イエスも祭りに向かった。ただし、人目につかないよう、こっそりと。
7:11 ユダヤ人たちは祭りのあいだ、「あの人はどこにいるんだ」と言って、イエスを捜していた。
7:12 群衆の中では、イエスについていろいろなうわさが飛び交っていた。「いい人だよ」と言う人もいれば、「いや、あの人は群衆をだましている」と言う人もいた。
7:13 しかし、ユダヤ人たちを恐れて、イエスのことを表立って口にする人はいなかった。
7:14 祭りの半ばになって、イエスは神殿に上って教え始めた。
7:15 この人は学問をしたこともないのに、どうしてこんなに詳しいのだろう。
7:16 わたしの教えは、わたし自身のものではない。わたしを送られた方のものだ。
7:17 神のみこころを行おうとする人なら、だれでも分かる。わたしが語っているこの教えが神から来たものか、それともわたし自身が勝手に話しているだけなのかが。
7:18 自分の考えで語る者は、自分の栄光を求めている。でも、自分を送った方の栄光を求める者は本物であり、その人の中に偽りはない。
7:19 モーセはあなたたちに律法を与えたはずだ。それなのに、あなたたちの中でその律法を守っている者は一人もいない。どうしてわたしを殺そうとするのか。
7:20 群衆は答えた。「あなたは悪霊に取りつかれている。いったい誰があなたを殺そうとしているんだ」
7:21 イエスは彼らに答えた。「わたしはたった一つのことをしただけだ。それなのに、あなたたちはみんな驚いている。
7:22 モーセはあなたたちに割礼を授けた。（本当はモーセから始まったものではなく、先祖たちから伝わったものだけれど。）そしてあなたたちは、安息日にも人に割礼を施している。
7:23 もし、モーセの律法が破られないように、安息日にも人は割礼を受けるのに、わたしが安息日に人の全身を治したからといって、どうしてそんなに怒るのか。
7:24 うわべで人を判断してはいけない。正しく判断しなさい」
7:25 「この人は、みんなが殺そうとしている人じゃないか。
7:26 見よ、彼は公然と語っているのに、だれも何も言わない。もしかすると議員たちは、この人が本当にキリストだと認めたのだろうか。
7:27 わたしたちは、この人がどこの出身か知っている。でも、キリストが現れるときは、どこから来るのか、だれにもわからないはずだ」
7:28 イエスは神殿で教えながら、大声でこう言った。「あなたたちは、わたしのことも、わたしがどこから来たのかも知っている。でも、わたしは自分の考えで来たのではない。わたしを送った方は本物だ。あなたたちは、その方を知らない。
7:29 わたしはそのかたを知っている。わたしはそのかたのもとから来た者で、そのかたがわたしを送られたからだ。」
7:30 そこで人々はイエスを捕まえようとした。でも、だれも手を出さなかった。イエスの時がまだ来ていなかったからだ。
7:31 群衆の中には、イエスを信じた人も大勢いた。彼らは言った。「メシアが来ても、この人がやったより多くのしるしを起こせるだろうか。」
7:32 群衆がイエスについてこんなうわさをしているのを、ファリサイ派の人たちは耳にした。それで祭司長たちとファリサイ派の人たちは、イエスを捕まえようとして、警備の者たちを送った。
7:33 イエスは言った。「わたしはもう少しの間、あなたたちと一緒にいる。それから、わたしを送った方のところへ行く。
7:34 あなたたちはわたしを捜す。でも、見つけられない。わたしがいる所に、あなたたちは来ることができない」
7:35 そこでユダヤ人たちは互いに言った。「わたしたちが見つけられないなんて、この人はどこへ行くつもりなんだろう。ギリシャ人の中に散らばって住んでいる人たちのところへ行って、ギリシャ人に教えるつもりなのだろうか。
7:36 「『わたしを捜すが、見つけることはできない。わたしがいる所に、あなたたちは来ることはできない』と彼は言ったが、この言葉はどういう意味なのだろう」
7:37 祭りの最後の一番大切な日、イエスは立ち上がって、大声で言った。「渇いている人は、だれでもわたしのところに来て飲みなさい。
7:38 わたしを信じる者は、聖書に書いてあるとおり、その人の内から生きた水の川が流れ出る。」
7:39 イエスを信じる人たちが、やがて受けることになる霊のことを言ったのである。イエスがまだ栄光を受けていなかったので、霊はまだ与えられていなかったのだ。
7:40 群衆の中には、この言葉を聞いて「この人は本当にあの預言者だ」と言う者もいた。
7:41 「この人こそキリストだ」と言う人もいれば、「キリストがガリラヤから出てくるわけがない」と言う人もいた。
7:42 ダビデの子孫から、またダビデがいたベツレヘムの村から現れると、聖書に書いてあるじゃないか」
7:43 群衆の間に、イエスのことで意見が真っ二つに分かれた。
7:44 だが、その中にはイエスを捕まえようとする者もいた。しかし、だれも彼に手を出さなかった。
7:45 さて、下役たちが祭司長やファリサイ派の人たちのところに戻ってきた。すると、祭司長たちは下役たちに言った。「どうして、あの男を連れてこなかったんだ」
7:46 下役たちは答えた。「あの人のように語った人は、今まで一人もいませんでした。」
7:47 パリサイ派の人たちは答えた。「あなたたちまでだまされているのか。
7:48 役人やパリサイ派の人たちの中で、彼を信じた人が一人でもいただろうか。
7:49 律法を知らないこの群衆は、呪われているんだ」
7:50 ニコデモが彼らに言った。以前イエスのところに来たことのある、彼ら自身の仲間の一人である。
7:51 ニコデモは言った。「わたしたちの律法では、まず本人の言い分を聞き、その人が何をしたのかを確かめないうちは、人を裁いたりしないはずだ。」
7:52 彼らはニコデモに答えた。「あなたもガリラヤの出身なのか。よく調べてみればいい。ガリラヤから預言者は出ない。それがわかるはずだ」
7:53 そして、人々はそれぞれ自分の家に帰って行った。
8:1 イエスはオリーブ山へ行った。
8:2 朝早く、イエスはまた神殿に入った。すると、人々がみんなイエスのところに集まってきた。イエスは座って、彼らに教え始めた。
8:3 すると、律法学者やファリサイ派の人たちが、不倫の現場で捕まえられた女性を連れてきた。そして、みんなの前に立たせて、イエスに言った。
8:4 「先生、この女は不倫の真っ最中に、現場を押さえられました。」
8:5 モーセは律法の中で、こういう女を石で打ち殺せと命じています。あなたはどう考えますか。」
8:6 彼らがこう言ったのは、イエスをためして、訴える口実を見つけるためだった。でもイエスは身をかがめて、指で地面に何かを書いていた。
8:7 彼らがしつこく問い続けるので、イエスは身を起こして言った。「あなたたちの中で、一度も罪を犯したことのない人が、まずこの女に石を投げなさい。」
8:8 そして、イエスはまた身をかがめて、地面に何かを書き続けた。
8:9 これを聞いた者たちは、年長者から始めて、一人また一人とその場を去って行った。そしてイエスだけが残され、女はそのまま真ん中に立っていた。
8:10 「女よ、あの人たちはどこにいる。あなたを罰する者は、だれもいなかったのか。」
8:11 わたしもあなたを罰しない。行きなさい。これからはもう罪を犯さないように。」
8:12 わたしは、この世を照らす光である。わたしについて来る人は、暗やみの中を歩くことがない。命の光を持つようになる。
8:13 「するとファリサイ派の人々がイエスに言った。『あなたは自分で自分のことを証ししている。その証しは本物じゃない』」
8:14 イエスは彼らに答えて言われた。「わたしが自分について証しをするとしても、その証しは真実だ。なぜなら、わたしは自分がどこから来て、どこへ行くのかを知っているからだ。でも、あなたたちは、わたしがどこから来て、どこへ行くのかを知らない。
8:15 あなたがたは肉によって人をさばく。でも、わたしはだれもさばかない。
8:16 しかし、もしわたしがさばくとしても、そのさばきは正しい。なぜなら、わたしはひとりではなく、わたしと、わたしを送った父が一緒にいるからだ。
8:17 あなたがたの律法にも、「二人の証言は真実である」と書いてある。
8:18 わたしは自分のことを証しする。そして、わたしを送ってくださった父も、わたしのことを証ししてくださる」
8:19 そこで彼らはイエスに言った。「あなたの父はどこにいるのか。」イエスは答えた。「あなたたちは、わたしのことも、わたしの父のことも知らない。もしわたしを知っていたなら、わたしの父のことも知っていたはずだ」
8:20 イエスはこれらのことを、神殿の中で教えていたとき、さいせん箱のそばで語った。でも、だれもイエスを捕まえなかった。イエスの時が、まだ来ていなかったからだ。
8:21 わたしは去って行く。あなたがたはわたしを捜すだろう。でも、自分の罪を抱えたまま死ぬことになる。わたしが行く所に、あなたがたは来ることができない。
8:22 ヨハネの人々は言った。「わたしが行く所に、あなたたちは来られないと言うが、まさか自殺でもするつもりなのか。」
8:23 わたしはこう言った。「あなたたちは下の世界に属している。でも、わたしは上の世界から来た。あなたたちはこの世界に属している。でも、わたしはこの世界には属していない。
8:24 わたしはあなたたちに、あなたたちは自分の罪のまま死ぬことになると言った。もしわたしがその者であることを信じないなら、あなたたちは自分の罪のまま死ぬことになるからだ。」
8:25 「あなたは、いったい誰なんだ」と彼らは尋ねた。イエスは答えた。「それは初めからずっと、あなたたちに話してきたことだ。
8:26 わたしはあなたたちについて、言いたいことも、裁くべきこともたくさんある。でも、わたしを送った方は真実な方だ。わたしはその方から聞いたことを、そのまま世界に向かって語っている。」
8:27 彼らは、イエスが父について語っていたことを理解していなかった。
8:28 そこでイエスは言った。「あなたたちが人の子を上げてしまったとき、初めてわかる。わたしがその者であること、そして自分から何かをしているのではなく、父が教えてくれたとおりに話しているということが。
8:29 わたしを送ったかたは、わたしと一緒にいてくださる。わたしをひとりにされることはない。わたしがいつも、そのかたに喜ばれることをしているからだ。
8:30 これらのことを話していると、多くの人がイエスを信じた。
8:31 もしあなたたちがわたしの言葉のとおりに生き続けるなら、あなたたちは本当にわたしの弟子だ。
8:32 そして、あなたたちは真理を知る。その真理が、あなたたちを自由にする。」
8:33 わたしたちはアブラハムの子孫だ。今まで誰かの奴隷になったことなんて一度もない。それなのに、どうして『あなたたちは自由になる』なんて言うのか。
8:34 イエスは彼らに答えた。「はっきり言っておく。罪を犯す人はみな、罪の奴隷なのだ。
8:35 奴隷はいつまでもその家にいられるわけではない。でも、息子はずっとそこにいる。
8:36 だから、もし子があなたたちを自由にするなら、あなたたちは本当に自由になる。
8:37 わたしは、あなたがたがアブラハムの子孫だと知っている。それなのに、あなたがたはわたしを殺そうとしている。わたしの言葉が、あなたがたの中に入る場所がないからだ。
8:38 わたしは父のもとで見てきたことを話している。あなたたちも、自分の父から聞いたことをやっているのだ。」
8:39 彼らは答えた。「わたしたちの父はアブラハムです。」イエスは言った。「あなたたちがアブラハムの子なら、アブラハムと同じことをするはずだ。
8:40 でも今、あなたたちはこのわたしを殺そうとしている。神から聞いた真理をあなたたちに語ってきた、この人間を。アブラハムはそんなことをしなかった。
8:41 あなたたちは、自分の父親と同じことをしているんだ。」すると彼らは言った。「わたしたちは、いかがわしい関係から生まれた者ではない。わたしたちにはただひとりの父がいる。それは神だ。」
8:42 神はあなたたちにこう言われた。いや、イエスは彼らにこう言われた。「もし神があなたたちの父であるなら、あなたたちはわたしを愛するはずだ。わたしは神のもとから出て、ここに来ているのだから。わたしは自分の考えで来たのではない。神がわたしを送られたのだ。」
8:43 どうしてわたしの話すことがわからないのか。それは、わたしの言葉を受け入れることができないからだ。
8:44 あなたたちは、悪魔である父から出た者だ。その父の望むことを実行しようとしている。悪魔は初めから人殺しで、真理の側に立ったことがない。彼のうちには真理がないからだ。悪魔は偽りを言うとき、自分の本性から話している。偽り者であり、その偽りを生み出す父だからだ。
8:45 だが、わたしが真理を語っているからこそ、あなたたちはわたしを信じない。
8:46 あなたがたのうち、だれがわたしに罪があると責められるだろうか。わたしは真理を語っているのに、なぜあなたがたはわたしを信じないのか。
8:47 神から出た者は神の言葉に聞き従う。あなたたちがそれを聞かないのは、神から出た者ではないからだ。
8:48 ユダヤ人たちはイエスに答えた。「あなたはサマリア人で、悪霊に取りつかれている。わたしたちがそう言うのも当然じゃないか」
8:49 イエスは答えた。「わたしは悪霊に取りつかれてなんかいない。わたしは父を大切にしているのに、あなたたちはわたしを軽んじている。
8:50 わたしは自分の栄光を求めてはいない。それを求める方がほかにいる。その方が、さばきをなさる。
8:51 よくよく言っておく。わたしの言葉を守る人は、いつまでも決して死ぬことがない。」
8:52 ユダヤ人たちは言った。「あなたが悪霊に取りつかれていることが、今わかった。アブラハムは死んだし、預言者たちも死んだ。それなのにあなたは、『わたしの言葉を守る人は、決して死を味わうことがない』と言う。
8:53 あなたは、わたしたちの父アブラハムより偉いというのか。アブラハムは死に、預言者たちも死んだ。あなたは自分をいったい何者だと思っているのか。」
8:54 イエスは答えた。「もしわたしが自分で自分に栄光を与えているのなら、その栄光には何の意味もない。わたしに栄光を与えてくださるのは、わたしの父だ。あなたたちが『わたしたちの神だ』と言っている、その方のことだ。
8:55 あなたたちはその方を知らない。でも、わたしは知っている。もし「知らない」と言うなら、わたしもあなたたちと同じ嘘つきになってしまう。でも、わたしはその方を知っているし、その言葉を守っている。
8:56 あなたたちの父アブラハムは、わたしのこの日を見られると思って大喜びした。そして実際にそれを見て、喜んだのだ」
8:57 ユダヤ人たちはイエスに言った。「あなたはまだ五十歳にもなっていないのに、アブラハムを見たというのか。」
8:58 イエスは言われた。「はっきり言っておく。アブラハムが生まれる前から、わたしはいる。」
8:59 そこで人々は石を拾い上げ、イエスに投げつけようとした。しかしイエスは身を隠し、神殿から出て行った。
9:1 イエスは道を歩いているとき、生まれつき目の見えない人を見かけた。
9:2 弟子たちがイエスに尋ねた。「先生、この人が生まれつき目が見えないのは、だれかが罪を犯したせいですか。本人ですか、それとも両親ですか」
9:3 イエスは答えた。「この人が悪いことをしたからでも、両親が悪いことをしたからでもない。神のわざがこの人に現れるためだ。
9:4 わたしたちは、わたしを送った方の働きを、昼の間にしなければならない。夜が来る。そうなると、だれも働けなくなる。
9:5 わたしは世にいる間、世の光である。」
9:6 イエスはそう言うと、地面につばをはき、そのつばで泥を作り、それを目の見えないその人の目に塗った。
9:7 「シロアム（『送られた者』という意味）の池に行って、目を洗いなさい。」そこでその人は行って、目を洗った。すると、目が見えるようになって帰って来た。
9:8 近所の人たちや、彼が物ごいをしていたのを前から見て知っていた人たちが言った。「これは、すわって物ごいをしていた人ではないか。」
9:9 ある人たちは「あの人だ」と言い、別の人たちは「いや、似ているだけだ」と言った。でも本人は「わたしがその人だ」と言った。
9:10 では人々は彼にたずねた。「どうやって目が見えるようになったんだ？」
9:11 その人は答えた。「イエスっていう人が、泥を作ってわたしの目に塗って、『シロアムに行って洗いなさい』って言ったんです。それで行って洗ったら、見えるようになりました。」
9:12 それで、人々は彼に「その人はどこにいるのか」と言った。彼は「知りません」と答えた。
9:13 人々は、その、以前は目の見えなかった人を、ファリサイ派の人たちのところへ連れて行った。
9:14 さて、イエスが泥をつくって彼の目を開けたのは、安息日のことだった。
9:15 パリサイ派の人たちも、どうやって見えるようになったのかと、その人に問いただした。彼は答えた。「あの方がわたしの目に泥を塗って、わたしがそれを洗ったら、見えるようになったんです」
9:16 ある人たちは言った。「あの人は安息日を守っていない。だから神から来た人ではない。」でも、ほかの人たちはこう言った。「罪人に、どうしてこんなしるしが行えるだろう。」こうして、ファリサイ派の人たちの間で意見が分かれた。
9:17 そこで彼らは、その盲人にもう一度たずねた。「目を開けてもらったあなた自身は、あの人のことをどう思うんだ?」男は答えた。「あの方は預言者だと思います。」
9:18 ユダヤ人たちは、その人がもともと目が見えなかったのに見えるようになったということを、まだ信じなかった。それで、見えるようになったその人の両親を呼び出して、
9:19 これがあなたたちの息子ですか。生まれつき目が見えなかったと、あなたたちが言っている子です。それなら、どうして今は見えているのですか。
9:20 両親は答えた。「この子がわたしたちの息子で、生まれつき目が見えなかったことは知っています。
9:21 でも、どうして今見えるようになったのか、それはわからない。だれがあの子の目を開けてくれたのかも、わたしたちは知らない。本人に聞いてください。もう大人なんだから、自分のことは自分で話せるはずです。」
9:22 両親がこう答えたのは、ユダヤ人たちを恐れていたからだ。イエスをキリストだと認める者がいれば、その人を会堂から追い出す。ユダヤ人たちはすでにそう決めていたのだ。
9:23 それで、彼の両親は「もう大人ですから、本人に聞いてください」と言ったのだ。
9:24 それで人々は、目が見えなかったその人をもう一度呼んで言った。「神に栄光を帰しなさい。あの男が罪びとであることは、わたしたちにはわかっているんだ。」
9:25 すると彼は答えた。「あの方が罪深い人かどうか、わたしにはわかりません。ただ一つだけわかっていることがあります。わたしは目が見えなかったのに、今は見えるということです」
9:26 それで彼らはたずねた。「その人はおまえに何をしたんだ。どうやっておまえの目を見えるようにしたんだ」
9:27 彼はこう答えた。「もう話したのに、聞いてくれませんでしたよね。どうしてもう一度聞きたいんですか。あなたたちも、あの人の弟子になりたいんですか」
9:28 そこで彼らは彼をののしって言った。「おまえはあの男の弟子だ。でも、わたしたちはモーセの弟子だ。
9:29 わたしたちは、神がモーセに語られたことは知っている。でも、あの人がどこから来たのかは知らない」
9:30 その人は答えた。「これは驚きです。あの方がどこから来たのか、あなたたちにはわからない。それなのに、あの方はわたしの目を開けてくれたのです。
9:31 わたしたちは知っている。神は罪を犯す者の願いは聞かないが、神を敬い、その思いのとおりに生きる人の願いは聞いてくださる、ということを。
9:32 生まれつき目の見えない人の目を開けた人がいるなんて、世界が始まって以来、聞いたことがない。
9:33 もしこの人が神のもとから来たのでなければ、何一つできなかったはずだ。」
9:34 彼らは言い返した。「おまえは生まれたときから罪にまみれていたくせに、わたしたちに教えようというのか。」そして彼を外へ追い出した。
9:35 イエスは、その人が外に追い出されたことを耳にした。そして彼を見つけると、こう言った。「あなたは人の子を信じるか」
9:36 その人は答えた。「主よ、その方はどなたですか。わたしはその方を信じたいのです」
9:37 イエスは言われた。「あなたはもうその人に会っている。今あなたと話しているのが、その人だ。」
9:38 彼は「主よ、信じます」と言って、イエスの前にひざまずいた。
9:39 そこでイエスは言われた。「わたしがこの世に来たのは、さばくためだ。目の見えない人たちが見えるようになり、見えている人たちが見えなくなるためだ。」
9:40 イエスと一緒にいたパリサイ人たちがこれを聞いて、イエスに言った。「それでは、わたしたちも目が見えないのか」
9:41 イエスは彼らに言った。「もしあなたたちが見えないのなら、罪はなかっただろう。でも今、あなたたちは『見える』と言い張っている。だから、その罪は残ったままなのだ。」
10:1 よくよく言っておく。羊を囲う柵に、門から入らないで、別のところをよじ登って入ってくる者は、盗人であり、強盗だ。
10:2 門から入る者は、羊飼いだ。
10:3 門番は羊飼いのために門を開ける。羊は羊飼いの声を聞く。羊飼いは自分の羊を名前で呼んで、外へ連れ出す。
10:4 自分の羊をぜんぶ外に出すと、羊飼いはその先頭に立って歩く。羊はあとについて行く。羊飼いの声を知っているからだ。
10:5 ほかの人にはついて行かない。むしろ、その人から逃げていく。知らない人の声だからだ。」
10:6 イエスはこのたとえを人々に話した。でも彼らは、イエスが何のことを話しているのか、まったく分からなかった。
10:7 それでイエスは、もう一度言った。「よく聞いてほしい。わたしは羊の門である。
10:8 わたしより前に来た者は、みんな盗人であり、強盗だ。でも、羊は彼らの言うことを聞かなかった。
10:9 わたしは門である。わたしを通って入る者は救われる。そして自由に出入りして、牧草にありつくことができる。
10:10 盗人が来るのは、盗んだり、殺したり、壊したりするためでしかない。わたしが来たのは、人々が命を得るため、しかもあふれるほど豊かに得るためだ。
10:11 わたしは、良い羊飼いである。良い羊飼いは、羊のために自分の命を投げ出す。
10:12 羊飼いではなく、雇われて働くだけの人は、羊が自分のものではないから、狼が来るのを見ると羊を置き去りにして逃げてしまう。すると狼は羊をかみ殺し、群れを追い散らす。
10:13 彼は雇われているだけで、羊のことなど気にかけていないからだ。
10:14 わたしは良い羊飼いである。わたしは自分の羊を知っていて、羊もわたしを知っている。
10:15 父がわたしを知っておられ、わたしも父を知っている。それと同じだ。だから、わたしは羊たちのために命を投げ出す。
10:16 わたしには、この囲いに入っていない別の羊もいる。その羊たちも導かなければならない。彼らもわたしの声を聞き、こうして群れは一つ、羊飼いも一人になる。
10:17 父がわたしを愛してくださるのは、わたしが自分の命を捨てるからだ。命を捨てるのは、それをもう一度受け取るためだ。
10:18 だれかがわたしから命を奪うのではない。わたしが自分から、進んで捨てるのだ。わたしには命を捨てる力があり、それをもう一度受け取る力もある。これは、わたしが父から受けた指図なのだ。」
10:19 これらの言葉のせいで、ユダヤ人たちの間にまた対立が生まれた。
10:20 大勢の人がこう言った。「あいつは悪霊に取りつかれて、おかしくなっている。どうしてそんな話を聞くんだ。」
10:21 ほかの人たちは言った。「悪霊に取りつかれた人は、こんなことを言わない。悪霊に、目の見えない人の目を開けることなんてできるだろうか。」
10:22 そのころ、エルサレムで神殿奉献祭が行われていた。冬のことだった。
10:23 イエスは神殿の中の、ソロモンの回廊と呼ばれる場所を歩いていた。
10:24 ユダヤ人たちはイエスを取り囲んで言った。「いつまでわたしたちをじらすつもりですか。あなたがキリストなら、はっきりそう言ってください。」
10:25 イエスは彼らに答えた。「もう話したのに、あなたたちは信じようとしない。わたしが父の名によって行っていること、それがわたしについて証ししている。
10:26 でも、あなたたちは信じない。わたしの羊ではないからだ。
10:27 わたしの羊はわたしの声を聞き分ける。わたしはその羊たちを知っていて、羊たちはわたしについて来る。
10:28 わたしは彼らに永遠の命を与える。だから彼らは決して滅びることがなく、彼らをわたしの手から奪い取る者もいない。
10:29 わたしの父がわたしに与えてくださったものは、何よりも大切だ。だれも父の手からそれを奪い取ることはできない。
10:30 わたしと父とは一つだ。」
10:31 それで、ユダヤ人たちはまた石を手に取った。イエスを打ち殺すためだった。
10:32 イエスは彼らに答えた。「わたしは父から示された、たくさんのよい行いをあなたたちに見せてきた。その中のどの行いのために、わたしを石で打ち殺そうとするのか。」
10:33 ユダヤ人たちは答えた。「いいことをしたからって、あなたを石で打ち殺そうとしているんじゃない。神を汚したからだ。あなたはただの人間なのに、自分を神としているからだ。」
10:34 イエスは彼らに答えた。「あなたたちの律法に、『わたしは言った、あなたたちは神々である』と書いてあるではないか。
10:35 神の言葉を託された人々が「神々」と呼ばれているのなら――そして聖書の言葉が破られることはありえない――
10:36 父がご自分のものとして選び、世に送られた者がいる。そのわたしが「わたしは神の子だ」と言ったからといって、どうして「神を汚している」と言うのか。
10:37 もしわたしが父のわざを行っていないのなら、わたしを信じなくていい。
10:38 でも、もし行っているなら、たとえわたしを信じなくても、そのわざを信じてほしい。そうすれば、父がわたしのうちにおられ、わたしも父のうちにいることが、はっきりとわかるはずだ。
10:39 それで、彼らはまたイエスを捕まえようとした。でも、イエスはその手をすり抜けて去って行った。
10:40 イエスはまた、ヨルダン川の向こう岸へ行った。そこは、ヨハネが最初に洗礼を授けていた場所だ。イエスはそこにとどまった。
10:41 多くの人がイエスのところにやってきて、こう言い合った。「ヨハネは一つもしるしを行わなかった。でも、ヨハネがこの人について言ったことは、全部本当だった」
10:42 そして、そこで多くの人がイエスを信じた。
11:1 さて、病気の人がいた。名前はラザロといい、マリアとその姉妹マルタが住む村ベタニアの人だった。
11:2 このマリアは、主に香油を塗り、自分の髪で主の足をぬぐったあの女性である。病気になったラザロは、彼女の兄弟だった。
11:3 姉妹たちはイエスのところに使いを送って、こう伝えた。「主よ、あなたが愛しておられる人が病気なのです」
11:4 この病気は死んで終わるものじゃない。神の栄光のためのものだ。それによって、神の子が栄光を受けるためなんだ。
11:5 イエスは、マルタとその姉妹、そしてラザロを愛していた。
11:6 ラザロが病気だと聞いても、イエスはそのときは、いた場所にそのまま二日間とどまった。
11:7 それから、イエスは弟子たちに言った。「もう一度ユダヤに行こう。」
11:8 弟子たちは言った。「先生、たった今もユダヤ人たちはあなたを石で打ち殺そうとしていたのに、またあそこに行くのですか」
11:9 イエスは答えた。「昼間は十二時間あるだろう。昼のうちに歩けば、つまずくことはない。この世の光が見えているからだ。
11:10 でも、夜に歩けば、つまずいてしまう。その人の内には光がないからだ。」
11:11 イエスはこう話したあと、こう続けた。「わたしたちの友だちのラザロは眠ってしまった。でも、わたしは彼を起こしに行く」
11:12 それを聞いて、弟子たちは言った。「主よ、眠っているだけなら、よくなりますよ。」
11:13 イエスはラザロが死んだことを言っていた。でも弟子たちは、ただ眠って休んでいることを言っているのだと思った。
11:14 それでイエスは、はっきりと言った。「ラザロは死んだ。
11:15 わたしがその場にいなかったことを、あなたたちのために喜んでいる。それはあなたたちが信じるようになるためだ。さあ、彼のところへ行こう」
11:16 するとデドモ、つまり「双子」と呼ばれるトマスが、ほかの弟子たちにこう言った。「わたしたちも行こう。そして先生と一緒に死のうじゃないか」
11:17 さて、イエスがそこに着くと、ラザロはもう四日も墓の中に置かれていた。
11:18 ベタニアはエルサレムの近くにあり、その距離はおよそ三キロだった。
11:19 大勢のユダヤ人が、兄弟を亡くしたマルタとマリアを慰めようと、二人のところに来ていた。
11:20 マルタは、イエスが来ると聞いて、迎えに出た。でも、マリアは家で座っていた。
11:21 主よ、もしここにいてくださったら、わたしの兄弟は死ななかったはずです。
11:22 でも、あなたが神に願うことなら何でも、神はそのとおりにかなえてくださる。それを、わたしは今でも知っています。
11:23 イエスはマルタに言った。「あなたの兄弟は生き返る。」
11:24 マルタは言った。「終わりの日の復活のとき、兄が生き返ることはわかっています。」
11:25 イエスはマルタに言った。「わたしはよみがえりであり、命である。わたしを信じる人は、死んでも生きる。
11:26 そして、生きていてわたしを信じる者は、決して死ぬことがない。あなたは、これを信じるか。」
11:27 マルタはイエスに言った。「はい、主よ。あなたが世に来るはずのキリスト、神の子だと、わたしは信じています。」
11:28 マルタはこう言うと、その場を離れ、姉妹のマリアを呼んだ。そして「先生が来ている。あなたを呼んでいるよ」とそっと伝えた。
11:29 マリアはこれを聞くと、すぐに立ち上がってイエスのところへ向かった。
11:30 イエスはまだ村には入っていなかった。マルタが出迎えたその場所に、まだとどまっていた。
11:31 そこで、家の中でマリヤに寄り添い、慰めていたユダヤ人たちは、彼女が急いで立ち上がって出て行くのを見た。そして、お墓に泣きに行くのだろうと思い、あとを追った。
11:32 マリアは、イエスのいる所まで来た。そしてイエスを見るなり、その足もとにひれ伏して言った。「主よ、もしあなたがここにいてくださったら、わたしの兄弟は死ななかったのに」
11:33 イエスは、マリアが泣き、一緒に来たユダヤ人たちも泣いているのを見て、心を深く揺さぶられ、激しく胸を痛めた。
11:34 「どこに埋葬したのですか」とイエスは尋ねた。人々は言った。「主よ、来て見てください。」
11:35 イエスは涙を流した。
11:36 だからユダヤ人たちは言った。「見てごらん、こんなにも彼を愛していたのだ。」
11:37 しかし、彼らの中には、「盲人の目を開けたこの人が、ラザロを死なせないようにはできなかったのか」と言う者もいた。
11:38 イエスはまた、心の中で激しく胸を締めつけられながら、墓へやって来た。それは洞穴で、入り口には石が置かれていた。
11:39 イエスは言った。「その石を取りのけなさい。」すると、死んだラザロの姉妹マルタが言った。「主よ、もう臭っています。亡くなって四日も経っていますから。」
11:40 イエスは彼女に言った。「もし信じるなら神の栄光を見る、とあなたに言ったではないか」
11:41 人々は石を取りのけた。イエスは天を見上げて言った。「父よ、わたしの願いを聞いてくださって、ありがとうございます。
11:42 わたしは、あなたがいつでもわたしの願いを聞いてくださることを知っています。でも、こう言うのは、周りに立っている人々に、あなたがわたしを送ってくださったことを信じてもらうためです」
11:43 こう言ってから、大きな声で叫んだ。「ラザロ、出てきなさい」
11:44 死んでいた人が、手も足も布で巻かれたまま出てきた。顔も布で包まれていた。イエスは人々に言った。「ほどいてやりなさい。そして帰らせてあげなさい。」
11:45 マリアのところに来て、イエスがなさったことを見たユダヤ人の多くは、イエスを信じた。
11:46 しかし、そのうちの何人かはファリサイ派の人たちのところへ行って、イエスがしたことを話した。
11:47 祭司長たちとファリサイ派の人たちは最高法院の会議を招集して、こう言った。「どうする。あの男が、たくさんのしるしを起こしているのに。
11:48 このままにしておいたら、みんなが彼を信じるようになる。そうなれば、ローマ人がやってきて、わたしたちの神殿も国も奪ってしまうだろう」
11:49 だが、その中のひとり、その年の大祭司だったカヤパが、彼らに言った。「あなたたちは何もわかっていない。
11:50 ひとりの人が国民の代わりに死ぬほうが、国民全体が滅びるよりも、あなたたちにとっていいはずだ。それが分かっていない」
11:51 これは彼が自分の考えで言ったのではない。彼はその年の大祭司だったので、イエスがこの国民のために死ぬことになると預言したのだ。
11:52 散らばっている神の子たちを一つに集めるためでもあった。しかも、この国民のためだけではない。
11:53 それで、この日から彼らはイエスを殺そうと計画を立てるようになった。
11:54 そこでイエスは、もうユダヤ人たちの間を公然と歩くことはせず、そこを去って、荒れ野に近い地方へ向かった。そしてエフライムという町に入り、弟子たちと一緒にそこに滞在した。
11:55 過越の祭りが近づいていた。ユダヤ人の大切な祭りだ。多くの人が身を清めるために、祭りの前に地方からエルサレムへと上って行った。
11:56 人々はイエスを捜しながら、神殿の境内に立って互いに言い合った。「どう思う？あの人は祭りには来ないんじゃないか」
11:57 祭司長たちとパリサイ派の人たちは、イエスを捕まえるための指令を出していた。イエスの居場所を知っている者がいたら届け出るように、というものだ。
12:1 過越の祭りの六日前、イエスはベタニアに来た。そこは、イエスが死んだ人の中から生き返らせたラザロが住んでいる村だった。
12:2 イエスのために、そこで夕食が用意された。マルタは給仕をしていた。ラザロは、イエスと一緒に食卓についていた人たちの一人だった。
12:3 そこでマリアは、とても高価な純粋なナルドの香油を三百グラムほど持ってきた。それをイエスの足に塗り、自分の髪の毛でその足をぬぐった。すると、香油の良い香りが家じゅうに広がった。
12:4 ところが、弟子のひとりで、あとでイエスを裏切ることになるイスカリオテのユダが言った。
12:5 なぜこの香油を三百デナリで売って、貧しい人たちに配らなかったのか。
12:6 ユダがこう言ったのは、貧しい人たちを気にかけていたからではない。実は彼は盗人で、お金の入った財布を預かっていて、その中身をくすねていたのだ。
12:7 イエスは言った。「そのままにさせておきなさい。この人は、わたしが葬られる日のためにそれを取っておいたのだ。
12:8 貧しい人たちはいつもあなたたちのそばにいる。でも、わたしはいつも一緒にいるわけじゃない」
12:9 そこで、大勢のユダヤ人がイエスはそこにいると知って、集まってきた。イエスに会うためだけではなく、イエスが死んだ人の中から生き返らせたラザロも見るためだった。
12:10 祭司長たちは、ラザロも殺そうと相談した。
12:11 それは、ラザロのことで多くのユダヤ人が彼らのもとを離れ、イエスを信じるようになっていたからだ。
12:12 翌日、祭りに来ていた大勢の群衆は、イエスがエルサレムに向かっていると聞いて、
12:13 しゅろの枝を手に取り、イエスを迎えに出て行った。そして叫んだ。「ホサナ。主の名によって来られる方に、祝福があるように。イスラエルの王に」
12:14 イエスはろばの子を見つけて、その上に乗った。それは、こう書いてあるとおりだった。
12:15 「シオンの娘よ、恐れるな。見よ、あなたの王が、ろばの子に乗ってやって来る」
12:16 弟子たちは、最初はこの意味がわからなかった。でも、イエスが栄光を受けたとき、これがイエスについて書かれていたことであり、人々がそのとおりのことをイエスにしたのだと思い出した。
12:17 イエスがラザロを墓から呼び出して、死んだラザロを生き返らせたとき、その場に一緒にいた群衆は、この出来事を人々に語り伝えた。
12:18 群衆がイエスを迎えに出たのは、イエスがこのしるしを行ったと聞いていたからだ。
12:19 だからパリサイ派の人たちは互いに言った。「見ろ、何をやってもむだじゃないか。世界中があの男についていってしまったんだ」
12:20 祭りで礼拝するために都に上ってきた人々の中に、数人のギリシア人がいた。
12:21 ガリラヤのベツサイダ出身のピリポのところに来た。そして、「先生、イエスにお会いしたいのですが」と頼んだ。
12:22 ピリポはアンデレのところへ行って、このことを伝えた。それでアンデレはピリポと一緒にイエスのところへ行き、二人でイエスに話した。
12:23 イエスは彼らにこう答えた。「人の子が栄光を受ける時が来た。
12:24 はっきり言っておく。一粒の麦は、地に落ちて死ななければ、たった一粒のままだ。でも、死ねば、たくさんの実を結ぶ。
12:25 自分の命を愛する人は、それを失う。でも、この世で自分の命を惜しまない人は、それを守って永遠の命へと至る。
12:26 もしわたしに仕えたいと思う人がいるなら、その人はわたしについて来なさい。そうすれば、わたしがいる場所に、わたしに仕える者も一緒にいることになる。わたしに仕える人を、父は大切にしてくださる。
12:27 今わたしは、心が激しく揺さぶられている。何と言えばいいのだろう。「父よ、この時からわたしを救い出してください」と言おうか。いや、わたしはまさにこのために、この時を迎えたのだ。
12:28 父よ、あなたの名前の栄光を現してください。」すると、天から声が聞こえた。「わたしはすでに栄光を現した。そしてもう一度、栄光を現す。」
12:29 すると、そばに立っていた群衆がこれを聞いて、「雷が鳴ったんだ」と言った。でも、ほかの人たちは「天使が彼に話しかけたんだ」と言った。
12:30 イエスは答えた。「この声が聞こえたのは、わたしのためではなく、あなたがたのためだ。
12:31 今こそ、この世界がさばかれる時だ。今こそ、この世界を支配する者が外に追い出される。
12:32 わたしは地上から上げられるとき、すべての人をわたしのもとへ引き寄せる。」
12:33 これは、自分がどんな死に方で死ぬことになるかを示して、言った言葉だった。
12:34 すると群衆はイエスに答えた。「わたしたちは律法で、キリストはいつまでも生き続けると教わってきました。それなのに、どうしてあなたは、人の子は上げられなければならない、と言うのですか。その人の子とは、いったいだれのことですか」
12:35 もう少しの間だけ、光はあなたたちと一緒にいる。光がある間に歩きなさい。そうすれば、闇に飲み込まれずにすむ。闇の中を歩く人は、自分がどこへ向かっているのか分かっていない。
12:36 光がある間に、その光を信じなさい。そうすれば、あなたたちは光の子になれる。」イエスはこう話すと、その場を去って、人々の前から姿を隠した。
12:37 これほど多くのしるしを人々の前で行ったのに、彼らはイエスを信じなかった。
12:38 それは、預言者イザヤの次の言葉が実現するためだった。「主よ、わたしたちが伝えたことを、いったい誰が信じたでしょうか。主の御力は、いったい誰に示されたでしょうか」
12:39 だから、彼らは信じることができなかった。イザヤはこうも言っている。
12:40 神は彼らの目を見えなくし、心をかたくなにされた。彼らが目で見て、心で理解し、立ち返って、わたしにいやされることのないためである。
12:41 イザヤがこう言ったのは、イエスの栄光を見たからだ。そして、イエスについて語ったのである。
12:42 それでも、指導者たちの中にもイエスを信じた人は多かった。でも、パリサイ派の人たちを気にして、それを表には出さなかった。会堂から追い出されるのが怖かったのだ。
12:43 彼らは、神からの栄光よりも、人からの栄光の方を愛したのだ。
12:44 わたしを信じる人は、わたしを信じるのではなく、わたしを送った方を信じるのだ。
12:45 わたしを見る人は、わたしを送ってくださった方を見ているのだ。
12:46 わたしは光としてこの世に来た。わたしを信じる人がだれも、暗やみの中にとどまらないためだ。
12:47 もし、わたしの言葉を聞いてそれを守らない人がいても、わたしはその人を裁かない。わたしが来たのは、この世を裁くためではなく、この世を救うためだからだ。
12:48 わたしを拒み、わたしの言葉を受け入れない人には、その人をさばくものがある。わたしが語ったその言葉が、終わりの日にその人をさばくのだ。
12:49 わたしは自分から語ったのではない。わたしを送ってくださった父ご自身が、何を言うべきか、何を語るべきかを、わたしに命じられたのだ。
12:50 わたしは、この命令が永遠のいのちだと知っている。だから、わたしが語ることは、父がわたしに言われたとおりに語っているのだ」
13:1 過越の祭りの前のことである。イエスは、この世を去って父のもとへ行く自分の時が来たことを知っていた。イエスはこの世にいる自分の者たちを愛し、最後まで愛し抜かれた。
13:2 夕食の席でのことだった。悪魔はすでに、シモンの子であるイスカリオテのユダの心に、イエスを裏切ろうという思いを入れていた。
13:3 イエスは、父がすべてをご自分の手にゆだねたこと、そして自分が神のもとから来て、神のもとへ帰ろうとしていることを知っていた。
13:4 夕食の席から立ち上がり、上着を脱いだ。そして手ぬぐいを取って腰に巻いた。
13:5 それからイエスは、たらいに水を入れ、弟子たちの足を洗い始めた。そして、腰に巻いた手ぬぐいでその足をふいていった。
13:6 さて、シモン・ペテロの番になった。ペテロはイエスに言った。「主よ、あなたがわたしの足を洗ってくださるのですか」
13:7 イエスは彼に答えた。「わたしがしていることは、今のあなたにはわからない。でも、あとでわかるようになる」
13:8 ペテロはイエスに言った。「わたしの足を洗うなんて、絶対にやめてください。」イエスは答えた。「わたしがあなたを洗わなければ、あなたはわたしと何のつながりも持てなくなる。」
13:9 シモン・ペテロは言った。「主よ、それなら足だけじゃなくて、手も頭も洗ってください」
13:10 イエスは彼に言われた。「体を洗った人は、足だけ洗えばいい。あとは全身きれいなんだ。あなたたちもきれいだ。でも、みんながそうというわけではない。」
13:11 イエスは自分を裏切ろうとしている者を知っていた。だから、「みんながきれいなわけではない」と言ったのである。
13:12 こうして弟子たちの足を洗い終えると、イエスは上着を着て、また席に戻った。そして彼らに言った。「わたしが今あなたがたにしたこと、その意味がわかるだろうか。
13:13 あなたがたはわたしを「先生」「主」と呼んでいる。それは正しい。わたしはそのとおりだからだ。
13:14 だから、主であり先生であるわたしがあなたたちの足を洗ったのだから、あなたたちも互いに足を洗い合うべきだ。
13:15 わたしがあなたたちにした通りに、あなたたちも同じようにする。そのために、わたしは手本を示したのだ。
13:16 よくよく言っておく。使用人が主人よりえらいわけではないし、送られた者が送った者よりえらいわけでもない。
13:17 これらのことがわかったなら、そのとおりに実行しよう。そうすれば、あなたたちは幸せになる。
13:18 わたしは、あなたたち全員のことを言っているのではない。わたしは自分が選んだ人たちを知っている。でも、こう書かれた聖書のことばが実現するためなんだ。『わたしのパンを食べていた者が、わたしに逆らってかかとを上げた。』
13:19 これから、そのことが起こる前に、あなたたちに話しておく。実際に起こったとき、わたしがその者であると信じるためだ。
13:20 よくよく言っておく。わたしが送る人を受け入れる人は、わたしを受け入れるのだ。そしてわたしを受け入れる人は、わたしを送ってくださった方を受け入れるのだ。
13:21 イエスはこう言ったあと、心を深くかき乱された。そして、はっきりとこう告げた。「よく聞いてほしい。あなたたちのうちの一人が、わたしを裏切ろうとしている。」
13:22 弟子たちは、イエスがだれのことを言っているのかわからず、互いに顔を見合わせた。
13:23 弟子の一人で、イエスに愛されていた者が、イエスのすぐそばで食卓についていた。
13:24 それでシモン・ペテロは、その弟子に「だれのことを言っているのか聞いてくれ」と合図した。
13:25 その弟子はイエスの胸に寄りかかったまま、「主よ、それはだれのことですか」と尋ねた。
13:26 イエスは答えた。「わたしがパンを一切れ浸して渡す人が、その人だ。」そして、パンを一切れ浸して、シモンの子であるイスカリオテのユダに渡した。
13:27 この一切れのパンを受け取った、そのとき、サタンがユダの中に入った。イエスはユダに言った。「しようとしていることを、今すぐしなさい。」
13:28 その意味を、食卓を囲んでいた人たちはだれも分からなかった。イエスがなぜユダにそう言ったのか、だれも気づかなかったのだ。
13:29 ある人たちは、ユダが会計を任されていたので、イエスが「祭りに必要なものを買っておきなさい」と言ったか、あるいは貧しい人たちに何か施すように言ったのだと思っていた。
13:30 ユダは、そのパンを受け取ると、すぐに出て行った。もう夜だった。
13:31 今、人の子は栄光を受けた。そして、人の子によって神も栄光を受けた。
13:32 神が人の子によって栄光をお受けになったのなら、神も御自身によってその方に栄光をお与えになる。しかも、すぐにお与えになる。
13:33 子たちよ、わたしはもう少しの間だけ、あなたがたと一緒にいる。あなたがたはわたしを捜すだろう。でも、前にユダヤ人たちに言ったとおり、今あなたがたにも言っておく。「わたしが行く所に、あなたがたは来ることができない。」
13:34 わたしは、あなたがたに新しい戒めを与える。互いに愛し合いなさい。わたしがあなたがたを愛したように、あなたがたも互いに愛し合いなさい。
13:35 互いに愛し合うなら、それによって、あなたたちがわたしの弟子だと、すべての人にわかる。
13:36 シモン・ペテロがイエスに言った。「主よ、どこへ行かれるのですか。」イエスは答えた。「わたしが行くところに、あなたは今はついて来ることができない。でも、あとになってついて来ることになる。」
13:37 ペテロは言った。「主よ、どうして今はついて行けないのですか。あなたのためなら、わたしは命だって捨てます。」
13:38 イエスは答えた。「わたしのために命を捨てるって言うのか。よく聞いてほしい。鶏が鳴く前に、あなたは三度、わたしなんて知らないと言うことになる」
14:1 「あなたがたは心を乱してはいけない。神を信じ、そしてわたしを信じなさい。」
14:2 わたしの父の家には、住む場所がたくさんある。もしなかったら、あなたたちのために場所を用意しに行くなんて言わない。
14:3 わたしは行って、あなたたちのために場所を用意する。そして、また戻ってくる。あなたたちをわたしのところに迎えて、わたしがいる場所に、あなたたちも一緒にいられるようにするためだ。
14:4 わたしがこれから行く場所へ、その道をあなたたちは知っている。」
14:5 トマスがイエスに言った。「主よ、あなたがどこへ行くのか、わたしたちにはわかりません。どうして、その道がわかるでしょうか」
14:6 イエスは彼に言われた。「わたしは道であり、真理であり、命である。わたしを通してでなければ、だれも父のもとに行くことはできない。
14:7 もしあなたがたがわたしを知っていたなら、わたしの父のことも知っていたはずだ。でも、今からはあなたがたは父を知っている。もう父を見ているんだ。」
14:8 ピリポがイエスに言った。「主よ、わたしたちに父を見せてください。そうすれば、それで十分です。」
14:9 イエスは言った。「フィリポ、こんなに長い間、いっしょにいるのに、まだわたしがわからないのか。わたしを見た人は、父を見たんだ。それなのに、どうして『父をわたしたちに見せてください』と言うのか。
14:10 わたしが父の中にいて、父がわたしの中にいる。それが信じられないのか。わたしがあなたたちに話している言葉は、わたしが自分から話しているのではない。わたしの中にいる父が、そのわざを行っているんだ。
14:11 わたしが父の中にいて、父がわたしの中にいる。それを信じなさい。もし信じられないなら、わたしがしてきたわざそのものを見て信じなさい。
14:12 よくよく言っておく。わたしを信じる者は、わたしがしているわざを、その人もするようになる。それだけでなく、もっと大きなわざをする。わたしが父のもとへ行くからだ。
14:13 わたしの名によって願うことは、何でもかなえてあげよう。父が子によって栄光をお受けになるためである。
14:14 わたしの名によって何かを願うなら、わたしがそれをかなえてあげよう。
14:15 もしわたしを愛しているなら、わたしの命令を守りなさい。
14:16 わたしは父にお願いする。すると父は、もう一人の助け手をあなたたちに送ってくださる。その方は、いつまでもあなたたちと一緒にいてくれる。
14:17 真理の霊である。世はこの霊を受け入れることができない。見ようともせず、知ろうともしないからだ。でも、あなたがたはこの霊を知っている。この霊があなたがたと共にいて、これからもあなたがたの内にいるからだ。
14:18 わたしは、あなたたちを置き去りにはしない。あなたたちのところに戻って来る。
14:19 もうしばらくすると、世はもうわたしを見なくなる。でも、あなたたちはわたしを見る。わたしが生きているから、あなたたちも生きる。
14:20 その日、あなたがたにはわかる。わたしは父の中におり、あなたがたはわたしの中におり、わたしもあなたがたの中にいる、ということが。
14:21 わたしの命令を持っていて、それを守る人。それが、わたしを愛する人だ。わたしを愛する人は、わたしの父に愛される。わたしもその人を愛し、その人にわたし自身を現す」
14:22 ユダがイエスに言った。イスカリオテのユダではない、もう一人のユダだ。「主よ、どうしてわたしたちにはご自分を現そうとして、世には現そうとしないのですか。」
14:23 イエスはこう答えた。「わたしを愛する人は、わたしの言葉を守る。すると、わたしの父はその人を愛し、わたしたちはその人のところに行って、一緒に暮らすようになる。
14:24 わたしを愛さない人は、わたしの言葉を守らない。あなたたちが聞いているこの言葉は、わたしのものではなく、わたしを送られた父のものだ。
14:25 これらのことは、あなたがたと一緒にいる間に話しておいた。
14:26 しかし、助け主、つまり父がわたしの名によって送ってくださる聖なる霊が、あなたたちにすべてのことを教え、わたしが話したすべてのことを思い出させてくれる。
14:27 わたしは平安をあなたがたに残していく。わたしの平安をあなたがたに与える。わたしが与えるのは、世が与えるものとは違う。だから、心を乱してはいけない。おびえてはいけない。
14:28 わたしはあなたたちに、「わたしは去って行くが、またあなたたちのところへ戻って来る」と言った。あなたたちはそれを聞いたはずだ。もしわたしを愛しているなら、わたしが父のもとへ行くことを喜んでくれるだろう。父はわたしより偉大な方だからだ。
14:29 今わたしは、そのことが起こる前にあなたがたに話しておいた。それは、そのとおりになったとき、あなたがたが信じるためだ。
14:30 わたしがあなたたちと話せるのは、もうあとわずかだ。この世を支配する者がやって来るからだ。でも、あいつはわたしを思いどおりにはできない。
14:31 しかし、わたしが父を愛していることを、世が知るためだ。だからわたしは、父が命じたとおりのことをする。さあ、立って。ここから出かけよう。
15:1 わたしはまことのぶどうの木、わたしの父はその木を育てる農夫である。
15:2 わたしにつながっている枝で、実を結ばないものはすべて、父が取り除く。そして実を結ぶものはすべて、もっとたくさん実を結ぶように、手入れしてきれいにする。
15:3 あなたがたは、わたしが話した言葉によって、すでにきれいになっている。
15:4 わたしの中にとどまりなさい。そうすれば、わたしもあなたがたの中にとどまる。枝は、ぶどうの木につながっていなければ、自分だけでは実をつけられない。それと同じで、あなたがたもわたしの中にとどまっていなければ、実を結べない。
15:5 わたしはぶどうの木で、あなたたちはその枝だ。わたしにつながっている人、そしてわたしがその人の中にいれば、その人は豊かに実を結ぶ。わたしから離れていたら、あなたたちは何一つできないからだ。
15:6 人がわたしにつながっていなければ、枝のように外に投げ捨てられて枯れてしまう。人々はそれを集め、火に投げ入れて燃やしてしまう。
15:7 あなたがたがわたしにつながり、わたしの言葉があなたがたの内にとどまっているなら、望むことを何でも求めなさい。そうすれば、そのとおりになる。
15:8 あなたがたが豊かに実を結び、わたしの弟子となる。それによって、わたしの父は栄光をお受けになる。
15:9 父がわたしを愛してくださったように、わたしもあなたがたを愛してきた。わたしの愛の中にとどまりなさい。
15:10 もしわたしの命令を守るなら、あなたがたはわたしの愛の中にとどまる。それは、わたしが父の命令を守り、父の愛の中にとどまっているのと同じだ。
15:11 わたしがこれらのことを話したのは、わたしの喜びがあなたがたの中にもあって、あなたがたの喜びが満ちあふれるためだ。
15:12 わたしの命令はこれである。わたしがあなたがたを愛したように、あなたがたも互いに愛し合いなさい。
15:13 友のために自分の命を捨てること。これ以上に大きな愛はない。
15:14 あなたがたは、わたしが命じることを行うなら、わたしの友だ。
15:15 わたしはもう、あなたがたを僕とは呼ばない。僕は主人が何をしているのか知らないからだ。でも、わたしはあなたがたを友と呼ぶ。父から聞いたことを、すべてあなたがたに伝えたからだ。
15:16 あなたがたがわたしを選んだのではない。わたしがあなたがたを選んだ。そして、あなたがたを立てた。それは、あなたがたが出かけて行って実を結び、その実がいつまでも残るためだ。そうすれば、あなたがたがわたしの名によって父に求めるものは何でも、父が与えてくださる。
15:17 これらのことを命じるのは、あなたがたが互いに愛し合うためだ。
15:18 もしこの世があなたたちを憎むなら、あなたたちより先にわたしを憎んだことを、知っておいてほしい。
15:19 もしあなたたちがこの世に属していたなら、この世は自分の仲間として愛したはずだ。でも、あなたたちはこの世に属していない。むしろ、わたしがあなたたちをこの世から選び出した。だから、この世はあなたたちを憎むのだ。
15:20 わたしがあなたがたに言ったことばを思い出しなさい。『しもべは主人よりも上ではない』。人々はわたしを迫害した。だから、あなたがたのことも迫害する。人々がわたしのことばを守ったなら、あなたがたのことばも守るだろう。
15:21 彼らはわたしの名のせいで、あなたがたにこういうことをみんなするんだ。わたしを送った方を知らないからだ。
15:22 わたしが来て彼らに話さなかったなら、彼らに罪はなかっただろう。でも今となっては、彼らは自分の罪について言いのがれることはできない。
15:23 わたしを憎む者は、わたしの父をも憎んでいるのだ。
15:24 もし、ほかのだれもしなかったことを、わたしが彼らの間でしていなかったら、彼らに罪はなかっただろう。でも実際には、彼らはそれを見たのに、わたしのことも、わたしの父のことも憎んだのだ。
15:25 それは、彼らの律法に「彼らは理由もなくわたしを憎んだ」と書いてある言葉が実現するためだった。
15:26 わたしが父のもとからあなたたちに送る助け主、つまり父のもとから来る真理の霊が来るとき、その方がわたしについて証しをする。
15:27 あなたがたも、初めからわたしと一緒にいたのだから、証しをするのだ。
16:1 これらのことを話したのは、あなたがたが信仰につまずかないためだ。
16:2 人々はあなたたちを会堂から追い出す。それだけじゃない。あなたたちを殺す者が、それを神への奉仕だと思い込む時が来る。
16:3 彼らがこうしたことをするのは、父もわたしも知らないからだ。
16:4 わたしがこれらのことを話したのは、その時が来たときに、わたしがすでに話しておいたと、あなたがたが思い出すためだ。最初からこれを話さなかったのは、わたしがあなたがたと一緒にいたからだ。
16:5 今わたしは、わたしを送ったかたのところへ行こうとしている。それなのに、あなたたちの中には「どこへ行くのか」とたずねる者が一人もいない。
16:6 わたしがこれらのことを話したので、あなたがたの心は悲しみでいっぱいになっている。
16:7 しかし、本当のことを言おう。わたしが去って行くことは、あなたがたにとって益になる。もしわたしが去らなければ、助け主はあなたがたのところに来ないからだ。でも、わたしが行けば、その助け主をあなたがたのもとに送る。
16:8 それが来ると、罪について、義について、そして裁きについて、世の人が間違っていたことを明らかにする。
16:9 罪について、とは、人々がわたしを信じないことだ。
16:10 義については、わたしが父のもとに行き、あなたがたがもうわたしを見なくなるからだ。
16:11 この世を支配する者は、すでに裁かれたからだ。
16:12 わたしには、あなたがたに話しておきたいことが、まだたくさんある。でも、あなたがたは今それを受けとめきれない。
16:13 でも、真理の霊が来ると、その方があなたたちをすべての真理へと導いてくれる。その方は自分から語るのではなく、聞いたことをそのまま語り、これから起こることをあなたたちに伝えるからだ。
16:14 聖霊はわたしに栄光をもたらしてくれる。わたしのものを受け取って、それをあなたがたに伝えてくれるからだ。
16:15 父が持っておられるものはすべて、わたしのものだ。だから、聖霊はわたしのものを受け取って、それをあなたがたに伝えるのだと言ったのだ。
16:16 しばらくすると、あなたがたはもうわたしを見なくなる。だがまたしばらくすると、わたしに会える。
16:17 そこで弟子たちのうちの何人かが、たがいに言い合った。「イエスがわたしたちに言っている、あの言葉はどういう意味なんだろう。『もうしばらくすると、あなたたちはわたしを見なくなる。でも、またしばらくするとわたしに会える』とか、『わたしは父のところへ行く』とか」
16:18 「『しばらくすれば』って、どういう意味なんだろう。何を言っているのか、さっぱりわからない。」
16:19 イエスは、彼らが質問したがっているのに気づいて、こう言った。「『しばらくするとあなたたちはわたしを見なくなる。でも、またしばらくするとわたしに会える』と言ったことで、互いに問いかけ合っているのか。
16:20 よくよく言っておく。あなたがたは泣き、悲しむが、この世は喜ぶ。あなたがたは深く悲しむことになる。でも、その悲しみは喜びに変わる。
16:21 子を産むとき、女は苦しむ。その時が来たからだ。でも赤ちゃんが生まれると、その苦しみをもう思い出さない。一人の人がこの世に生まれた、という喜びでいっぱいになるからだ。
16:22 わたしのわたしのようにあなたがたも、今は悲しんでいる。でも、わたしはもう一度あなたがたと会う。そのとき、あなたがたの心は喜びであふれる。その喜びを、あなたがたから奪い取れる者はいない。
16:23 その日には、あなたがたはわたしに何も尋ねなくなる。よくよく言っておく。あなたがたが父にわたしの名によって求めるものは何でも、父はあなたがたに与えてくださる。
16:24 今までは、あなたがたはわたしの名によって何も求めてこなかった。求めなさい。そうすれば与えられる。あなたがたの喜びが満ちあふれるためだ。
16:25 わたしはこれらのことを、たとえを使って話してきた。でも、もうたとえでは話さない。父のことをはっきりと伝える時が来る。
16:26 その日、あなたがたはわたしの名によって求める。わたしがあなたがたのために父にお願いしてあげよう、とは言わない。
16:27 父ご自身があなたがたを愛している。それは、あなたがたがわたしを愛し、わたしが神のもとから来たことを信じたからだ。
16:28 わたしは父のもとから出て、この世に来た。そして今、この世を去って、父のもとに帰る。」
16:29 弟子たちは言った。「今ははっきり話してくださって、たとえを使わずに語ってくださっていますね。
16:30 あなたはすべてを知っておられ、だれかに質問される必要もない。今、それがわかりました。だから、わたしたちはあなたが神のもとから来られたと信じます。」
16:31 イエスは彼らに答えた。「今、あなたがたは信じているのか。
16:32 見よ、あなたがたが散らされて、それぞれ自分の家に帰り、わたしを一人だけ残していく時が来る。いや、もう来ている。でも、わたしは一人ではない。父がわたしと一緒にいてくれるからだ。
16:33 わたしがこれらのことを話したのは、あなたがたがわたしにあって平安を得るためだ。あなたがたは、この世では苦しみがある。でも、勇気を出しなさい。わたしはすでに世に勝っている。」
17:1 父よ、時が来ました。あなたの子があなたの栄光をあらわすことができるように、その子に栄光を与えてください。
17:2 あなたが子に、すべての人を治める権威をお与えになったのは、子が、あなたから任された人みんなに、永遠のいのちを与えるためです。
17:3 わたしたちの永遠の命とは、唯一のまことの神であるあなたと、あなたが送ってくださったイエス・キリストを知ることである。
17:4 わたしは、あなたがわたしにさせようと任せてくださった仕事をやり遂げ、この地上であなたの栄光を現しました。
17:5 父よ、今、あなたのそばで、わたしを栄光に輝かせてください。世界が造られる前に、わたしがあなたと共に持っていた、あの栄光で。
17:6 わたしは、あなたが世から選んでわたしに与えてくれた人たちに、あなたのことを示しました。彼らはあなたのものでしたが、あなたはわたしに与えてくれました。そして彼らは、あなたの言葉を守りました。
17:7 いま彼らは、あなたがわたしにくださったものがすべて、あなたから来たものだと知っています。
17:8 わたしは、あなたからもらった言葉を彼らに伝えた。彼らはそれを受け入れ、わたしがあなたのもとから来たことを本当に理解した。そして、あなたがわたしを送ってくださったことを信じたのだ。
17:9 わたしは、その人たちのためにお願いする。世のためではなく、あなたがわたしにくださった人たちのためだ。その人たちは、あなたのものだからだ。
17:10 わたしのものはすべてあなたのもの、あなたのものはわたしのもの。そして、わたしは彼らによって栄光を受けた。
17:11 わたしはもうこの世にはいなくなる。でも、彼らはこの世に残る。わたしはあなたのもとへ行く。聖なる父よ、あなたがわたしに授けてくださった御名によって、彼らを守ってください。わたしたちが一つであるように、彼らも一つになるためです。
17:12 わたしが彼らと一緒にいた間、あなたがわたしにくださった御名によって、彼らを守ってきた。しっかり守ったから、彼らのうち一人も滅びなかった。ただ一人、滅びの子だけは別だ。それは聖書のことばが実現するためだった。
17:13 今わたしはあなたのもとへ行きます。まだこの世にいる間にこう話しているのは、わたしの喜びが彼らの心にあふれるほど満ちるためです。
17:14 わたしはあなたの言葉を彼らに伝えました。でも世は彼らを憎みました。わたしが世に属していないように、彼らも世に属していないからです。
17:15 わたしがお願いするのは、彼らをこの世界から連れ出すことではない。悪い者から守ってほしいということだ。
17:16 わたしが世に属していないように、この人たちも世に属していない。
17:17 真理によって、彼らを聖なる者としてください。あなたの言葉は真理です。
17:18 あなたがわたしを世に送ってくださったように、わたしも彼らを世に送りました。
17:19 だからわたしは、彼らのために自分をささげます。彼らも真理によって、聖なる者とされるためです。
17:20 わたしがお願いするのは、この人たちのためだけではない。この人たちの言葉を聞いてわたしを信じるようになる人たちのためにも、お願いする。
17:21 父よ、みんなが一つになりますように。あなたがわたしの内におられ、わたしがあなたの内にいるように、彼らもわたしたちの内にいますように。そうすれば、あなたがわたしを送ったことを、世が信じるようになる。
17:22 わたしは、あなたからいただいた栄光を、この人たちにも与えました。わたしたちが一つであるように、この人たちも一つになるためです。
17:23 わたしが彼らの中にいて、あなたがわたしの中にいる。それは、彼らが完全に一つとなるためだ。そして、あなたがわたしを送り、わたしを愛したのと同じように彼らも愛したことを、世が知るためだ。
17:24 父よ、あなたがわたしにくださった人たちが、わたしのいる所にわたしと一緒にいてほしい。世界が造られる前からあなたがわたしを愛して、わたしに与えてくださった栄光を、その人たちにも見てほしいのだ。
17:25 正しい父よ、この世はあなたを知りません。でも、わたしはあなたを知っています。そして、この人たちも、あなたがわたしを送ってくださったことを知っています。
17:26 そして、わたしはあなたの名を彼らに知らせてきた。これからも知らせていく。あなたがわたしを愛してくれたその愛が彼らの中にあり、わたしも彼らの中にいるためだ」
18:1 これらのことを話し終えると、イエスは弟子たちといっしょに、ケデロンの谷の向こうへ出て行った。そこには園があり、イエスは弟子たちとその中に入った。
18:2 イエスを裏切ったユダも、その場所を知っていた。イエスが弟子たちと一緒に、何度もそこに集まっていたからだ。
18:3 ユダは、一隊の兵士と、祭司長やファリサイ派の人たちが送り込んだ役人たちを引き連れ、たいまつや明かりや武器を持って、そこへやって来た。
18:4 でもイエスは、自分の身にこれから起こることをすべてわかっていた。それで進み出て、彼らに言った。「だれを捜しているのか」
18:5 彼らは「ナザレのイエスだ」と答えた。イエスは言った。「わたしがそれである。」イエスを裏切ろうとしていたユダも、彼らと一緒に立っていた。
18:6 だから、イエスが「わたしはその者である」と言うと、彼らは後ずさりして、地面に倒れた。
18:7 そこでイエスはもう一度たずねた。「だれを捜しているのか。」彼らは「ナザレのイエスを」と答えた。
18:8 イエスは答えた。「わたしがそれだと言ったはずだ。わたしを捜しているのなら、この人たちは行かせてやってくれ」
18:9 それは、イエスが前に語った「あなたがわたしに与えてくださった人たちの中で、わたしは一人も失わなかった」という言葉が実現するためだった。
18:10 シモン・ペテロは剣を持っていた。それを抜いて大祭司の召使いに切りかかり、右の耳を切り落とした。その召使いの名前はマルコスといった。
18:11 イエスはペテロに言った。「剣をさやに納めなさい。父がわたしに下さったこの杯を、飲まずにいられるだろうか」
18:12 それで、一隊の兵士と司令官、そしてユダヤ人の下役たちがイエスを捕らえ、縛り上げた。
18:13 まず、イエスをアンナスのところへ連れて行った。アンナスは、その年に大祭司を務めていたカイアファのしゅうとだった。
18:14 カヤパは、ひとりの人が民全体のために死ぬほうがいいと、ユダヤ人たちに助言した人物だった。
18:15 シモン・ペテロと、もう一人の弟子がイエスについて行った。この弟子は大祭司の知り合いだったので、イエスと一緒に大祭司の屋敷の中庭に入った。
18:16 ペテロは外の門の前に立っていた。それで大祭司の知り合いであるもうひとりの弟子が外に出て、門番の女に話して、ペテロを中に入れた。
18:17 すると、門番の女がペテロに言った。「あなたも、あの人の弟子の一人じゃないの？」ペテロは「いや、違う」と答えた。
18:18 寒い日だったので、召し使いたちや下役たちは炭火をおこし、その周りに立って暖まっていた。ペテロも彼らに交じって立ち、暖まっていた。
18:19 大祭司はイエスに、弟子たちのことや教えのことを尋ねた。
18:20 イエスはこう答えた。「わたしはこの世に対して、ずっと堂々と話してきた。ユダヤ人がみんな集まる会堂や神殿で、いつも教えていたんだ。隠れて何かを話したことは一度もない。
18:21 なぜわたしに聞くのか。わたしが話したことは、それを聞いた人たちに聞けばいい。わたしが何を言ったか、その人たちが知っているのだから」
18:22 イエスがこう言うと、そばに立っていた警備の者の一人が、「大祭司にそんな口の利き方をするのか」と言って、イエスを平手で打った。
18:23 イエスは答えた。「もし悪いことを言ったのなら、どこが悪いのか証明してほしい。でも正しいことを言ったのなら、どうしてわたしを打つのか。」
18:24 アンナスはイエスを縛ったまま、大祭司カヤパのところへ送った。
18:25 シモン・ペテロは立って火にあたっていた。すると人々が彼に言った。「あなたも、あの人の弟子の一人ではないのか。」ペテロはそれを打ち消して、「いや、違う」と言った。
18:26 大祭司の召し使いの一人で、ペテロに耳を切り落とされた人の親戚が言った。「あなたが園であの人と一緒にいるのを、わたしは見たじゃないか。」
18:27 ペテロはまた打ち消した。するとすぐに、鶏が鳴いた。
18:28 それで人々は、イエスをカヤパのところから総督官邸へ連れて行った。もう明け方だった。彼らは自分たちがけがれないように、そして過越の食事ができるように、官邸の中には入らなかった。
18:29 ピラトは彼らのところに出てきて、こう言った。「あなたたちは、この人にどんな罪があると訴えているのか」
18:30 彼らはピラトに答えた。「この人が悪いことをしていなかったら、あなたに引き渡したりはしませんでした。」
18:31 そこでピラトは言った。「あなたたちがこの人を引き取って、自分たちの律法で裁けばいい。」ユダヤ人たちは答えた。「わたしたちには、人を死刑にする権限がありません。」
18:32 それは、イエスが自分がどんな死に方をするのかを示して語った言葉が、そのとおりになるためだった。
18:33 ピラトはもう一度官邸に入り、イエスを呼び出して聞いた。「おまえがユダヤ人の王なのか」
18:34 イエスは答えた。「あなたがそう言うのは、自分の考えからなのか。それとも、ほかの人たちがわたしのことをそう言ったのか。」
18:35 ピラトは答えた。「わたしがユダヤ人だとでも言うのか。あなたを引き渡したのは、あなたの同胞と祭司長たちだ。いったい何をしたんだ」
18:36 イエスは答えた。「わたしの国はこの世のものではない。もしこの世のものだったら、わたしに仕える者たちが戦って、わたしがユダヤ人たちに引き渡されないようにしただろう。でも実際、わたしの国はこの世のものではないのだ」
18:37 そこでピラトはイエスに言った。「では、あなたは王なのか。」イエスは答えた。「わたしが王だと、あなたが言っている。わたしは真理を証しするために生まれ、そのためにこの世に来た。真理から出た者はみな、わたしの声に耳を傾ける。」
18:38 ピラトはイエスに言った。「真理とは何なのか。」そう言うと、彼はまたユダヤ人たちのところへ出て行って、こう告げた。「わたしには、この人に罪など何一つ見つけられない。
18:39 過越祭には、わたしが囚人を一人あなたたちのために釈放するのが決まりになっている。どうだろう、この「ユダヤ人の王」を釈放してほしいか。
18:40 彼らはまた叫んだ。「その男じゃない。バラバを釈放しろ」バラバは強盗だった。
19:1 それでピラトは、イエスを捕えて、むちで打たせた。
19:2 兵士たちはイバラで冠を編んでイエスの頭にかぶせ、紫の上着を着せた。
19:3 兵士たちはイエスに近づいては、「ユダヤ人の王さま、ばんざい」と言った。そして、平手で何度もたたいた。
19:4 ピラトはもう一度外に出て、人々に言った。「さあ、この人をあなたたちの前に連れ出す。わたしはこの人に何の罪も見つけられない。それを知ってほしいのだ。」
19:5 イエスは、いばらの冠をかぶり、紫の上着を着たまま外に出てきた。ピラトは人々に言った。「見よ、この人だ」
19:6 祭司長たちや警備の者たちはイエスを見ると、「十字架につけろ、十字架につけろ」と叫んだ。ピラトは彼らに言った。「あなたたちが引き取って、十字架につければいい。わたしには、この人に罪は見つからない。」
19:7 ユダヤ人たちはピラトに答えた。「わたしたちには律法がある。その律法によれば、この男は死罪だ。自分を神の子としたのだから」
19:8 ピラトはこの言葉を聞いて、ますます怖くなった。
19:9 ピラトはもう一度官邸に戻り、イエスに尋ねた。「おまえはどこから来たのか。」しかし、イエスは何も答えなかった。
19:10 ピラトは言った。「わたしに何も言わないのか。わたしには、おまえを釈放する権限も、十字架につける権限もある。それを知らないのか」
19:11 イエスは答えた。「あなたには、わたしに対する権威など何もない。それが上から与えられていなければね。だから、わたしをあなたに引き渡した者の罪のほうが大きいのだ。」
19:12 それでピラトはイエスを釈放しようとした。でもユダヤ人たちは叫んで言った。「もしこの人を釈放したら、あなたはカエサルの味方ではありません。自分を王とする者はみな、カエサルに反逆しているのです。」
19:13 ピラトはこの言葉を聞くと、イエスを外へ連れ出した。そして「敷石」（ヘブライ語でガバタ）と呼ばれる場所で、裁判の席に着いた。
19:14 その日は過越祭の準備の日で、時刻は昼の十二時ごろだった。ピラトはユダヤ人たちに言った。「見なさい。あなたたちの王だ。」
19:15 彼らは叫んだ。「消せ、消してしまえ、十字架につけろ。」ピラトは言った。「あなたたちの王を、わたしが十字架につけるのか。」祭司長たちは答えた。「わたしたちに王はいない。皇帝のほかには。」
19:16 そこでピラトは、十字架につけるために、イエスを彼らに引き渡した。こうして彼らはイエスを引き取った。
19:17 イエスは自分で十字架を背負って、「されこうべの場所」と呼ばれるところへ出て行った。そこはヘブライ語でゴルゴタと言う。
19:18 彼らはそこでイエスを十字架につけた。イエスの両側には、ほかに二人の男が十字架につけられ、イエスはその真ん中にいた。
19:19 ピラトは罪状書きを書いて、十字架に取りつけた。そこにはこう書いてあった。「ナザレのイエス、ユダヤ人の王」
19:20 イエスが十字架につけられた場所は都に近かったので、多くのユダヤ人がこの罪状書きを読んだ。それはヘブライ語、ラテン語、ギリシャ語で書かれていた。
19:21 ユダヤ人の祭司長たちはピラトにこう言った。「『ユダヤ人の王』とは書かないでください。『この男は、自分はユダヤ人の王だと言った』と書いてください。」
19:22 ピラトは答えた。「わたしが書いたものは、書いたままにしておく」
19:23 兵士たちはイエスを十字架につけると、その上着を取って四つに分け、それぞれが一つずつ受け取った。だが下着は別だった。それは縫い目がなく、上から下まで一枚に織られたものだった。
19:24 そこで兵士たちは互いに言った。「これは裂かないで、だれのものになるか、くじで決めよう。」こうして、「彼らはわたしの服を分け合い、わたしの衣をくじ引きにした」と語る聖書のことばが実現した。兵士たちは、まさにそのとおりのことをしたのである。
19:25 十字架のそばには、イエスの母と、その母の姉妹、それにクロパの妻マリアと、マグダラのマリアが立っていた。
19:26 イエスは母と、そのそばに立っている愛する弟子とを見て、母に言った。「お母さん、そこにいるのがあなたの子です。」
19:27 それからこの弟子に言われた。「見なさい。この人があなたの母です。」そのときから、この弟子はイエスの母を自分の家に引き取った。
19:28 そののち、イエスはすべてがすでに成し遂げられたことを知り、聖書のことばが実現するために、「渇く」と言った。
19:29 そこには、酸っぱいぶどう酒でいっぱいの器が置いてあった。人々はこのぶどう酒を海綿にたっぷり含ませ、それをヒソプの茎の先につけて、イエスの口もとに差し出した。
19:30 イエスはそのぶどう酒を口にすると、「すべてが完了した」と言った。そして頭を垂れ、息を引き取った。
19:31 ユダヤ人たちにとって、その日は安息日の準備の日だった。しかもその安息日は特別に大切な日だった。だから彼らは、遺体を安息日に十字架の上に残したくなかった。そこでピラトに、十字架にかけられた者たちの足を折って、遺体を取りおろしてほしいと願い出た。
19:32 そこで兵士たちがやって来て、まずイエスと一緒に十字架につけられた一人の足を折り、次にもう一人の足を折った。
19:33 しかし兵士たちは、イエスのところに来て、すでに死んでいるのを見た。だから、その足は折らなかった。
19:34 でも、兵士のひとりが槍でイエスのわき腹を突き刺した。すると、すぐに血と水が流れ出た。
19:35 それを見た人が証しをした。その証しは真実だ。その人は、自分が本当のことを語っていると知っている。あなたたちにも信じてほしいから、こうして証しをするのだ。
19:36 これらのことが起こったのは、「その骨は一本も折られない」という聖書の言葉が実現するためだった。
19:37 彼らは自分たちが突き刺した者を見る。
19:38 そのあと、アリマタヤ出身のヨセフという人が、イエスの遺体を引き取らせてほしいとピラトに願い出た。彼はイエスの弟子だったが、ユダヤ人たちを恐れて、そのことを隠していた。ピラトが許可したので、彼は来てイエスの遺体を引き取った。
19:39 それから、ニコデモもやって来た。以前、夜にイエスのところを訪ねた、あの人である。彼は、没薬と沈香を混ぜ合わせたものを、三十キロほど持ってきた。
19:40 ヨセフとニコデモはイエスの体を引き取り、ユダヤ人の埋葬の習慣にならって、香料といっしょに亜麻布で巻いた。
19:41 イエスが十字架にかけられた場所には園があった。そしてその園には、まだだれも葬られたことのない新しい墓があった。
19:42 その日はユダヤ人の準備の日で、しかもその墓が近くにあった。だから、そこにイエスを納めた。
20:1 週の初めの日、朝早く、まだ暗いうちに、マグダラのマリアは墓へ行った。すると、墓の入り口をふさいでいた石が取りのけられていた。
20:2 マグダラのマリアは走って、シモン・ペテロと、イエスが愛していたもう一人の弟子のところへ行き、こう言った。「だれかが主をお墓から運び出してしまいました。どこに置いたのか、わたしたちにはわかりません。」
20:3 そこでペトロともうひとりの弟子は出かけて、墓へ向かった。
20:4 ふたりは一緒に走っていた。でも、もうひとりの弟子の方がペテロより速く走り、先に墓に着いた。
20:5 そして身をかがめてのぞき込むと、亜麻布が置いてあるのが見えた。でも、中には入らなかった。
20:6 そこでシモン・ペテロも、あとについて着いた。彼は墓の中に入り、亜麻布が置いてあるのを見た。
20:7 そして、イエスの頭を包んでいた布は、亜麻布と一緒に置かれてはいなかった。少し離れた場所に、丸めて置いてあった。
20:8 先に墓に着いたもう一人の弟子も、中に入った。そして、それを見て信じた。
20:9 彼らは、イエスが死者の中からよみがえらなければならない、という聖書のことばをまだ理解していなかったのだ。
20:10 それで、弟子たちは自分の家に帰って行った。
20:11 でも、マリアは墓の外に立って泣いていた。そして泣きながら、身をかがめて墓の中をのぞいた。
20:12 白い衣を着た二人の天使が、イエスの体が置かれていた場所にすわっているのを見た。一人は頭の方に、もう一人は足の方に。
20:13 すると、その天使たちがマリヤに言った。「どうして泣いているのですか。」マリヤは答えた。「だれかがわたしの主を運び去ってしまったんです。しかも、どこに置いたのかもわからないんです。」
20:14 そう言って後ろを振り返ると、イエスが立っているのが見えた。でも、それがイエスだとは気づかなかった。
20:15 イエスは彼女に言った。「なぜ泣いているのですか。だれを捜しているのですか。」マリアは、その人を庭の番人だと思って言った。「あなたがあの方を運び去ったのなら、どこに置いたのか教えてください。わたしがあの方を引き取ります。」
20:16 イエスが「マリア」と声をかけた。彼女は振り返って、ヘブライ語で「ラボニ」と言った。「先生」という意味だ。
20:17 イエスは彼女に言われた。「わたしにさわってはいけない。わたしはまだ、父のもとに上っていないのだから。それより、わたしの兄弟たちのところへ行って、こう伝えなさい。『わたしは、わたしの父であり、あなたがたの父でもある方、わたしの神であり、あなたがたの神でもある方のところへ上っていく』と。」
20:18 マグダラのマリアは弟子たちのところへ行き、「わたしは主に会いました」と伝えた。そして、イエスが自分に語ったことを弟子たちに話した。
20:19 その日、すなわち週の初めの日の夕方のことだった。弟子たちはユダヤ人の指導者たちを恐れて、自分たちのいる家の戸をすべて閉めていた。そこへイエスが来て、彼らの真ん中に立ち、「あなたがたに平和があるように」と言った。
20:20 そう言うと、イエスは自分の手とわき腹を弟子たちに見せた。弟子たちは主を見て、喜びにあふれた。
20:21 イエスはもう一度言った。「あなたがたに平安があるように。父がわたしを送ったように、わたしもあなたがたを送る。」
20:22 そう言うと、イエスは彼らに息を吹きかけて言った。「聖なる霊を受けなさい。
20:23 あなたがたが赦す罪は、だれの罪でも赦される。あなたがたが赦さずにおく罪は、そのまま残る。」
20:24 十二人の弟子の一人で、「双子」と呼ばれるトマスは、イエスが来たとき、みんなと一緒にいなかった。
20:25 ほかの弟子たちが「わたしたちは主に会ったんだ」とトマスに言った。でもトマスはこう答えた。「あの方の手に釘のあとを見て、その釘あとに自分の指を入れ、わき腹にこの手を入れてみなければ、わたしは決して信じない。」
20:26 八日後、弟子たちはまた家の中にいて、トマスも一緒にいた。戸には鍵がかかっていたのに、イエスが入ってきて真ん中に立ち、「あなたがたに平安があるように」と言った。
20:27 それからトマスに言った。「あなたの指をここに当てて、わたしの手を見なさい。手を伸ばして、わたしの脇に入れてみなさい。信じない者ではなく、信じる者になりなさい。」
20:28 トマスはイエスに答えた。「わたしの主、わたしの神」
20:29 イエスは彼に言った。「あなたはわたしを見たから信じたのか。見ないで信じる人々は、幸いである。」
20:30 イエスは弟子たちの前で、ほかにもたくさんのしるしを行った。それはこの本には書かれていない。
20:31 これらのことを書いたのは、イエスこそが救い主キリスト、神の子であると、あなたがたに信じてほしいからだ。そして信じることで、イエスの名によっていのちを得てほしいからである。
21:1 そののち、イエスはテベリヤ湖のほとりで、もう一度ご自分を弟子たちに現された。その現し方は、こうだった。
21:2 シモン・ペテロ、「ふたご」と呼ばれるトマス、ガリラヤのカナ出身のナタナエル、ゼベダイの息子たち、それに他の弟子が二人、みんな一緒にいた。
21:3 シモン・ペテロが「わたしは漁に行く」と言うと、みんなは「わたしたちも一緒に行く」と答えた。そして出かけて舟に乗った。でも、その夜は何もとれなかった。
21:4 夜が明けはじめたころ、イエスが岸辺に立っていた。でも弟子たちは、それがイエスだとは気づかなかった。
21:5 イエスは声をかけた。「みんな、何か食べるものはあるかい。」彼らは「ありません」と答えた。
21:6 イエスは言った。「舟の右側に網を投げてみなさい。そうすれば、とれるはずだ。」そこで彼らが網を投げると、あまりにたくさんの魚がかかって、もう網を引き上げることができなかった。
21:7 イエスが愛しておられた、あの弟子がペテロに言った。「あの方は主だ。」シモン・ペテロは、それが主だと聞くと、裸同然だったので上着をはおって、海に飛び込んだ。
21:8 ほかの弟子たちは、魚がかかった網を引きながら、舟で戻ってきた。陸からそれほど離れていない、二百キュビトほどの所にいたからだ。
21:9 陸に上がってみると、炭火がおこしてあった。その上に魚がのっていて、パンもあった。
21:10 イエスは彼らに言った。「今とったばかりの魚を持っておいで。」
21:11 シモン・ペテロが舟に乗り込み、網を陸へ引き上げた。網は大きな魚でいっぱいだった。その数は百五十三匹。これだけたくさんの魚が入っても、網は破れていなかった。
21:12 イエスは彼らに言った。「さあ、朝ごはんを食べなさい。」弟子たちは、それが主だと分かっていたので、だれも「あなたはどなたですか」と尋ねようとはしなかった。
21:13 イエスは来て、パンを取って彼らに配った。魚も同じようにされた。
21:14 イエスが死んでよみがえったあと、弟子たちの前に現れたのは、これで三度目だった。
21:15 食事のあと、イエスはシモン・ペテロに言った。「ヨハネの子シモン、あなたはこの人たちよりも深く、わたしを愛しているか。」ペテロは答えた。「はい、主よ。わたしがあなたを愛していることは、あなたがご存じです。」イエスは言った。「わたしの小羊を飼いなさい。」
21:16 またイエスは二度目にこう言った。「ヨハネの子シモン、あなたはわたしを愛しているか。」ペテロは答えた。「はい、主よ。あなたを大切に思っていることは、あなたがご存じです。」イエスは言った。「わたしの羊を世話しなさい。」
21:17 イエスは三度目に言った。「ヨハネの子シモン、わたしを愛しているか。」ペテロは、イエスが三度も「わたしを愛しているか」と言ったので、悲しくなった。そしてイエスに言った。「主よ、あなたは何もかもご存じです。わたしがあなたを愛していることも、わかってくださっています。」イエスは彼に言った。「わたしの羊を飼いなさい。
21:18 はっきり言っておく。あなたは若かったころ、自分で帯を締めて、行きたいところへ歩いて行った。でも年をとると、あなたは両手を伸ばし、ほかの人がその帯を締めて、行きたくないところへ連れて行く。」
21:19 これは、ペテロがどんな死に方で神の栄光をあらわすことになるかを示すために言われた言葉だ。そしてこう言ってから、「わたしについてきなさい」と言われた。
21:20 ペテロが振り返ると、イエスに愛されていた弟子がついて来るのが見えた。この弟子は、あの夕食のときにイエスの胸元に寄りかかって、「主よ、あなたを裏切るのはだれですか」と尋ねた人だ。
21:21 ペテロはこの弟子を見て、イエスに言った。「主よ、この人はどうなるのですか」
21:22 イエスはペテロに言った。「わたしが戻って来るまで彼に生きていてほしいと、わたしが思ったとしても、あなたには関係ないことだ。あなたは、わたしに従ってきなさい」
21:23 それで、この弟子は死なないといううわさが、仲間たちの間に広まった。でもイエスは、彼が死なないと言ったのではない。「わたしが戻るまで彼に生きていてほしいと、わたしが望んだとしても、あなたには関係ないことだ」と言っただけだった。
21:24 この弟子が、これらのことを証しし、書いた人である。そして、その証しが真実であることを、わたしたちは知っている。
21:25 イエスがなさったことは、このほかにもたくさんある。もしそれをいちいち書いていったら、書かれた本はこの世界にも収まりきらないだろう。わたしはそう思う。
使徒行伝
1:1 テオフィロさん、わたしは最初の書で、イエスが行い、また教え始めたすべてのことを書きました。
1:2 それは、イエスが天に上げられた日までのことです。イエスは上げられる前、自分が選んだ使徒たちに、聖霊によって指示を与えました。
1:3 イエスは苦しみを受けて死んだ後、使徒たちの前に生きた姿で現れ、自分が生きていることを数多くの確かなしるしで示しました。四十日にわたって彼らに姿を見せ、神の国について語りました。
1:4 そして、彼らと一緒にいるとき、イエスはこう命じました。「エルサレムを離れず、父が約束してくださったものを待ちなさい。それは、あなたがたがわたしから聞いたことだ。
1:5 ヨハネは水で洗礼を授けたが、あなたがたはもうすぐ、聖霊によって洗礼を受けることになる。」
1:6 さて、集まっていた使徒たちはイエスに尋ねた。「主よ、イスラエルのために国を建て直してくださるのは、今なのですか。」
1:7 イエスは答えた。「いつ、どんな時にそれが起こるかは、あなたがたが知ることではない。それは父が、ご自分の権限でお定めになったことだ。
1:8 しかし、聖霊があなたがたに降ると、あなたがたは力を受ける。そして、エルサレムやユダヤ全土、サマリア、さらに地の果てにまで至るところで、わたしのことを伝える証人となる。」
1:9 こう言うと、イエスは彼らが見ている前で天に上げられ、雲に包まれて見えなくなった。
1:10 イエスが上っていくとき、彼らはじっと空を見つめていた。すると、白い服を着た二人の人がそばに立っていた。
1:11 そして言った。「ガリラヤの人たち、なぜ空を見上げて立っているのか。あなたがたのもとから天に上げられたこのイエスは、天に上っていくのを見たのと同じように、また戻って来る。」
1:12 それから彼らは、オリーブ山と呼ばれる山からエルサレムに帰った。その山はエルサレムの近くにあり、安息日に歩いてよい距離のところにあった。
1:13 彼らは町に入ると、泊まっていた二階の部屋に上がった。そこにはペトロとヨハネ、ヤコブとアンデレ、フィリポとトマス、バルトロマイとマタイ、アルファイの子ヤコブ、熱心党のシモン、そしてヤコブの子ユダがいた。
1:14 この人たちはみな、女性たちや、イエスの母マリア、それにイエスの兄弟たちと一緒に、心を合わせて祈り続けていた。
1:15 そのころ、ペトロが仲間たちの中に立って話した。そこには百二十人ほどの人が集まっていた。
1:16 「兄弟姉妹のみなさん、聖書のあの言葉は実現するはずのものでした。それは、イエスを捕まえた者たちを手引きしたユダについて、聖霊がダビデの口を通して前もって語っていた言葉です。
1:17 ユダはわたしたちの仲間の一人に数えられ、この務めを分け与えられていました。
1:18 ところが彼は、不正なやり方で得た報酬で畑を手に入れた。そしてまっさかさまに倒れて体が真ん中から裂け、内臓がすべて飛び出してしまったのです。
1:19 このことはエルサレムに住む人みんなに知れ渡り、その畑は彼らの言葉で「アケルダマ」、つまり「血の畑」と呼ばれるようになりました。
1:20 詩編にはこう書いてあります。『彼の住まいは荒れ果て、そこに住む者はいなくなれ。』また、『彼の役目はほかの者が引き継げ。』
1:21 だから、わたしたちの中から一人を選ぶ必要があります。主イエスがわたしたちと共に過ごしておられた間、ずっと行動を共にしてきた人の中からです。
1:22 それは、ヨハネが洗礼を授けていたころから、イエスがわたしたちのもとから天に上げられた日までのことです。その一人が、わたしたちと一緒にイエスの復活の証人となるのです。」
1:23 そこで人々は二人を立てた。一人はバルサバと呼ばれ、ユストとも呼ばれていたヨセフ、もう一人はマティアだった。
1:24 そして彼らは祈って言った。「すべての人の心を知っておられる主よ。この二人のうち、あなたがお選びになったのはどちらか、示してください。
1:25 ユダが見捨てて自分の行き着く場所へ去ってしまった、この務め、つまり使徒としての働きを引き継ぐのはどちらでしょうか。」
1:26 そして人々はくじを引いた。くじはマティアに当たり、こうして彼は十一人の使徒に加えられた。
2:1 五旬祭の日が来て、一同は同じ場所に集まっていた。
2:2 すると突然、激しい風が吹きつけるような音が天から響いてきた。そしてその音は、彼らが座っていた家中に満ちた。
2:3 また、炎のような舌が分かれて現れ、一人ひとりの上にとどまった。
2:4 すると一同は聖霊に満たされ、霊が語らせるままに、いろいろな国の言葉で話し始めた。
2:5 さて、エルサレムには、天下のあらゆる国から来た、信仰深いユダヤ人たちが住んでいた。
2:6 この音が起こると、大勢の人が集まってきた。そして、めいめいが自分の国の言葉で話されているのを聞いて、とまどった。
2:7 人々は驚き、不思議に思って言い合った。「見なさい、話しているこの人たちは、みんなガリラヤの出身ではないか。
2:8 それなのに、どうしてわたしたちは、めいめい自分が生まれ育った国の言葉で聞いているのだろう。
2:9 ここには、パルティア、メディア、エラムの人、メソポタミア、ユダヤ、カッパドキア、ポントス、アジアに住む人、
2:10 フリギアやパンフィリア、エジプト、それにキレネの近くのリビア地方から来た人、ローマから来て住んでいる人、
2:11 ユダヤ人も、ユダヤ教に改宗した人もいる。クレタやアラビアの人もいる。その全員が、神のすばらしい働きを自分たちの言葉で語っているのを聞いているのだ。」
2:12 人々はみな驚き、とまどって、互いに言い合った。「これはいったい、どういうことなのだろう。」
2:13 だが、あざ笑ってこう言う者もいた。「あの連中は、甘い酒に酔っているだけだ。」
2:14 すると、ペトロが十一人と共に立ち上がり、声を張り上げて語りかけた。「ユダヤの人たち、そしてエルサレムに住むみなさん、どうか、このことを知ってほしい。わたしの言葉に耳を傾けてください。
2:15 この人たちは、あなたがたが思っているように酔っているのではありません。今はまだ、朝の九時なのですから。
2:16 そうではなく、これは預言者ヨエルが語っていたことなのです。
2:17 神はこう言われる。『終わりの日に、わたしはすべての人に、わたしの霊を注ぐ。あなたがたの息子や娘は預言し、若者は幻を見、老人は夢を見る。
2:18 その日には、わたしに仕える男にも女にも、わたしの霊を注ぐ。すると、彼らは預言する。』
2:19 わたしは、上では天に不思議なわざを、下では地にしるしを見せる。それは、血と火と立ちのぼる煙だ。
2:20 主の大いなる輝かしい日が来る前に、太陽は暗くなり、月は血のように赤くなる。
2:21 そして、主の名を呼び求める者は、だれでも救われる。』
2:22 イスラエルのみなさん、この言葉を聞いてください。ナザレのイエスは、神があなたがたに証しされた方です。神はこのイエスを通して、あなたがたの間で力あるわざと不思議としるしを行われました。あなたがた自身がよく知っているとおりです。
2:23 このイエスは、神があらかじめ定めた計画と、すべてをご存じの神のお考えによって、あなたがたに引き渡されました。あなたがたは、律法を知らない者たちの手を借りて、このイエスを十字架につけ、殺したのです。
2:24 しかし神は、イエスを死の苦しみから解き放って、よみがえらせました。イエスが死に捕らえられたままでいるなど、あり得ないことだったからです。
2:25 ダビデは、イエスについてこう言っています。『わたしはいつも、目の前に主を見ていた。主がわたしの右におられるので、わたしは決して揺るがされない。
2:26 だから、わたしの心は喜び、舌は喜びの声をあげた。この肉も、望みのうちに安らぐ。
2:27 あなたは、わたしのたましいを死者の世界に捨て置かず、あなたの聖なる者を朽ち果てるままにはされないからだ。
2:28 あなたは、いのちの道をわたしに教えてくださった。あなたのみ前で、わたしを喜びで満たしてくださる。』
2:29 兄弟のみなさん、わたしたちの先祖ダビデについて、はっきり言わせてください。ダビデは死んで葬られ、その墓は今日まで、わたしたちのところに残っています。
2:30 ダビデは預言者でした。そして、神が誓って、自分の子孫の一人をその王座につけると約束してくださったことを、彼は知っていました。
2:31 ダビデはこの先を見通して、キリストの復活について語ったのです。『そのたましいは死者の世界に見捨てられず、その体も朽ち果てることはなかった』と。
2:32 このイエスを、神は生き返らせてくださいました。わたしたちはみな、そのことの証人です。
2:33 こうしてイエスは神の右に上げられ、約束された聖霊を父から受け取り、それをわたしたちに注いでくださいました。あなたがたが今見て、また聞いているのは、このことなのです。
2:34 ダビデ自身は天に上ったわけではありません。それでも、彼はこう言っています。『主はわたしの主に言われた。わたしの右に座りなさい。
2:35 わたしがあなたの敵を、あなたの足台とするまで。』
2:36 ですから、イスラエルの民はみな、はっきりと知ってください。あなたがたが十字架につけたこのイエスを、神は主とし、キリストとされたのです。」
2:37 これを聞いた人々は、心を強く突き刺されました。そしてペテロやほかの使徒たちに言いました。「兄弟のみなさん、わたしたちはどうすればいいのでしょうか。」
2:38 ペテロは答えました。「悔い改めなさい。そして一人ひとりが、イエス・キリストの名によってバプテスマ（洗礼）を受けなさい。そうすれば、あなたがたの罪は赦されます。そして、贈り物として聖霊を受けるのです。
2:39 この約束は、あなたがたと、あなたがたの子どもたち、そして遠くにいるすべての人たちのためのものです。わたしたちの神である主が、呼び寄せてくださるすべての人のためのものなのです。」
2:40 ペテロはこのほかにも、たくさんの言葉で語り、人々に強くすすめました。「この曲がった時代の人々から離れて、救われなさい。」
2:41 その言葉を受け入れた人たちは、バプテスマを受けました。そしてこの日、およそ三千人が仲間に加わりました。
2:42 彼らはひたすら、使徒たちの教えを守り、たがいに交わり、いっしょにパンを裂き、祈り続けました。
2:43 人々はみな、おそれを感じました。そして使徒たちを通して、多くの不思議なわざとしるしが行われました。
2:44 信じた人たちはみな一つになって集まり、持ち物をすべて分け合っていました。
2:45 彼らは土地や財産を売っては、それぞれの必要に応じて、みんなに分け与えていました。
2:46 毎日、心を一つにして神殿に集まり続け、家々でパンを裂きました。そして、喜びと素直な心で食事をともにしました。
2:47 神を賛美し、人々みんなから好意を寄せられていました。そして主は、救われる人たちを日ごとに仲間に加えてくださいました。
3:1 ある日、ペテロとヨハネは、午後三時の祈りの時間に神殿へ上っていきました。
3:2 そこには、生まれつき足の不自由な男の人がいました。彼は毎日運ばれてきて、「美しの門」と呼ばれる神殿の門のそばに置かれていました。神殿に入る人たちにお金を恵んでもらうためです。
3:3 その人は、神殿に入ろうとしているペテロとヨハネを見て、お金を恵んでほしいと頼みました。
3:4 ペテロはヨハネといっしょに、その人をじっと見つめて言いました。「わたしたちを見なさい。」
3:5 男の人は、何かもらえると思って、二人をじっと見ました。
3:6 すると、ペテロは言いました。「わたしには銀も金もありません。でも、わたしが持っているものをあなたにあげます。ナザレのイエス・キリストの名によって、歩きなさい。」
3:7 そして、ペテロはその人の右手をつかんで、立ち上がらせました。すると、たちまちその人の足とくるぶしがしっかりして、力が入りました。
3:8 その人はおどり上がって立ち、歩き出しました。そして、二人といっしょに神殿に入り、歩き回ったり、おどったりしながら、神をほめたたえました。
3:9 人々はみな、その人が歩きながら神をほめたたえているのを見ました。
3:10 そして、この人が神殿の「美しの門」でお金を求めて座っていた、あの物ごいだと気づきました。人々は、その身に起こったことに、驚いてぼう然としました。
3:11 その人がペテロとヨハネにすがりついていると、人々はみな驚いて、「ソロモンの廊」と呼ばれる回廊にいる二人のところへ、どっと駆け寄ってきました。
3:12 これを見て、ペテロは人々に語りかけました。「イスラエルの人たち。どうして、このことに驚くのですか。どうして、まるでわたしたちが自分の力や信心でこの人を歩かせたかのように、じっと見つめるのですか。
3:13 アブラハム、イサク、ヤコブの神、わたしたちの先祖の神は、そのしもべイエスに栄光をお与えになりました。あなたがたは、このイエスを引き渡し、ピラトが釈放しようと決めたのに、その前でこの方を拒んだのです。
3:14 あなたがたは、この聖なる正しい方を拒み、代わりに人殺しをした男を釈放してほしいと願いました。
3:15 そして、いのちの源である方を殺したのです。しかし神は、この方を死者の中からよみがえらせました。わたしたちは、そのことの証人です。
3:16 この人は、あなたがたも見て知っているとおりです。イエスの名を信じる信仰によって、その名がこの人を強くしました。イエスによって与えられた信仰が、あなたがた全員の前で、この人をすっかり治したのです。
3:17 さて、兄弟姉妹のみなさん。あなたがたが知らずにあのことをしたのは、わたしにはわかっています。あなたがたの指導者たちも同じでした。
3:18 しかし神は、すべての預言者たちの口を通して、「キリストは苦しみを受ける」と前もって告げていました。そして、こうしてそのとおりに実現なさったのです。
3:19 だから、心を入れかえて神に立ち返りなさい。そうすれば、あなたがたの罪はぬぐい去られます。
3:20 そして、主のもとから元気を取り戻すときがやってきて、あなたがたのためにあらかじめ選ばれていたキリスト、イエスを、神が送ってくださるのです。
3:21 このイエスは、すべてが元どおりに立て直されるときまで、天にとどまることになっています。それは、神がはるか昔から聖なる預言者たちの口を通して語ってきたとおりです。
3:22 モーセはこう言いました。「あなたがたの神である主は、あなたがたの兄弟の中から、わたしのような一人の預言者を立てられる。その人が語ることは、何もかもすべて聞き従いなさい。
3:23 その預言者に聞き従わない者はだれでも、民の中から絶やされる。」
3:24 サムエルをはじめ、その後に続いて語ったすべての預言者たちも、みなこの時代のことを告げていました。
3:25 あなたがたは、その預言者たちの子であり、神があなたがたの先祖と結んだ約束を受け継ぐ者です。神はアブラハムにこう言われました。「あなたの子孫によって、地上のすべての民族が祝福を受ける。」
3:26 神はまず、あなたがたのためにご自分のしもべを立て、あなたがた一人ひとりをそれぞれの悪から立ち返らせて、あなたがたを祝福するために、その方を送ってくださったのです。
4:1 ペトロとヨハネが人々にこう話していると、そこへ祭司たちと神殿の警備隊長、それにサドカイ派の人たちがやって来た。
4:2 二人が人々に教え、イエスのことを通して、死んだ人がよみがえるのだと語っていたので、彼らはひどく腹を立てていた。
4:3 そして二人を捕まえて、次の日まで牢に入れておいた。もう夕方になっていたからだ。
4:4 しかし、その話を聞いた多くの人が信じた。その数は、男性だけでおよそ五千人にのぼった。
4:5 次の日、指導者たちと長老たち、律法学者たちがエルサレムに集まった。
4:6 大祭司のアンナスをはじめ、カイアファ、ヨハネ、アレクサンドロ、それに大祭司の一族の者たちもみな集まっていた。
4:7 彼らは二人を真ん中に立たせて、こう問いただした。「おまえたちは、いったい何の力によって、また誰の名によって、こんなことをしたのか。」
4:8 すると、ペトロは聖霊に満たされて、こう答えた。「民の指導者、そして長老のみなさん。
4:9 わたしたちが今日ここで取り調べを受けているのは、体の不自由な人にした良い行いのこと、つまりこの人がどうやって治ったのか、ということですね。
4:10 それなら、みなさん全員、そしてイスラエルのすべての人に知っておいてほしい。この人が治って、みなさんの前に元気に立っているのは、ナザレのイエス・キリストの名によるものです。あなたがたが十字架につけて殺し、神が死者の中からよみがえらせた、あのイエスです。
4:11 このイエスこそ、『あなたがた家を建てる者たちが役に立たないと捨てた石、それが一番大切な土台の石になった』と言われている、その石なのです。
4:12 この方のほかに、救いはどこにもありません。世界中を探しても、わたしたちを救うことができる名は、この名のほかに人には与えられていないのです。」
4:13 指導者たちは、ペテロとヨハネが堂々と話すのを見て驚いた。二人が学問もない、ふつうの人だとわかったからだ。そして、この二人がイエスと一緒にいた人たちだと気づいた。
4:14 しかも、治った本人が二人のそばに立っているのを見ては、何も言い返すことができなかった。
4:15 そこで彼らは二人に議会の外へ出るように命じ、こう話し合った。
4:16 「あの二人をどうしたらいいだろう。あの人たちを通してはっきりとしたしるしが起きたことは、エルサレムに住む人みんなが知っている。わたしたちにはそれを否定できない。
4:17 でも、これ以上人々の間に広まらないように、あの名で誰にも二度と話すなと、二人をおどしておこう。」
4:18 そして二人を呼び戻し、イエスの名で語ることも教えることも、いっさいしてはならないと命じた。
4:19 でも、ペテロとヨハネはこう答えた。「神に従うより、あなたがたに従うほうが、神の前で正しいことなのか。それはあなたがたが判断してください。
4:20 わたしたちは、自分が見たこと、聞いたことを話さずにはいられないのです。」
4:21 彼らはさらに二人をおどしたうえで、釈放するしかなかった。人々の手前、二人を罰する理由が何も見つからなかったからだ。みんなが、この出来事のことで神をたたえていたのだ。
4:22 この治しのしるしが起きた相手の男性は、四十歳を超えていた。
4:23 釈放された二人は、仲間のところへ帰り、祭司長たちや長老たちが言ったことを、すべて話して聞かせた。
4:24 それを聞いた人たちは、心を一つにして神に声を上げた。「主よ、あなたは天と地と海、そしてそこにあるすべてのものを造られた方です。
4:25 あなたは聖霊によって、あなたのしもべである、わたしたちの先祖ダビデの口を通してこう言われました。『なぜ、国々は怒り立ち、人々はむなしいことを企てるのか。
4:26 地の王たちは立ち上がり、支配者たちは集まって、主とそのキリストに逆らった。』
4:27 事実、この町で、ヘロデとポンティオ・ピラトは、異邦の民やイスラエルの民と一緒になって、あなたが油を注がれた聖なるしもべイエスに逆らって集まりました。
4:28 そして、あなたの手とご計画があらかじめ定めておられたことを、すべて行ったのです。
4:29 主よ、今、彼らの脅しをご覧ください。そして、あなたのしもべたちが、大胆にあなたの言葉を語れるようにしてください。
4:30 あなたの手を伸ばして病を治し、あなたの聖なるしもべイエスの名によって、しるしや不思議なわざが起こるようにしてください。」
4:31 彼らが祈り終えると、集まっていた場所が揺れ動いた。そして、彼らは皆、聖霊に満たされ、大胆に神の言葉を語りだした。
4:32 信じた人々の群れは、心も思いも一つだった。だれ一人、自分の持ち物を自分のものだと言わず、すべてを分け合って共有していた。
4:33 使徒たちは大きな力で、主イエスがよみがえったことを証しした。そして、大きな恵みが彼ら全員の上にあった。
4:34 彼らの中には、生活に困る者は一人もいなかった。土地や家を持っている人はみな、それを売り、その代金を持ってきて、
4:35 使徒たちの足もとに置いた。そのお金は、必要としている人に、それぞれ必要に応じて分け与えられた。
4:36 ヨセフという人がいた。使徒たちからバルナバと呼ばれていた人で、この名は「励ましの子」という意味である。彼はレビ族の人で、キプロス島の生まれだった。
4:37 彼は畑を持っていたが、それを売り、その代金を持ってきて、使徒たちの足もとに置いた。
5:1 ところが、アナニアという人が、妻サッピラと一緒に、自分の土地を売った。
5:2 そして、妻も承知の上で、その代金の一部を自分のために取っておき、残りを持ってきて使徒たちの足もとに置いた。
5:3 すると、ペテロが言った。「アナニア、どうしてあなたは、サタンに心を支配されて、聖霊を欺き、土地の代金の一部を自分のものにしたのか。
5:4 売る前は、それはあなたのものだったではないか。売った後も、その代金はあなたの自由になったはずだ。それなのに、どうしてこんなことを考えたのか。あなたは人を欺いたのではなく、神を欺いたのだ。」
5:5 アナニアはこの言葉を聞くと、倒れて息絶えた。それを聞いた人はみな、ひどく恐ろしくなった。
5:6 若者たちが立ち上がって、彼を布に包み、運び出して葬った。
5:7 それから三時間ほどたって、彼の妻が、何が起こったのか知らずに入ってきた。
5:8 ペテロは彼女に言った。「教えてほしい。あなたたちは土地をこの値段で売ったのか。」彼女は「はい、その値段です」と答えた。
5:9 ペテロは言った。「どうしてあなたたちは、示し合わせて主の霊を試そうとしたのか。見なさい。あなたの夫を葬った人たちが、もう戸口まで来ている。彼らはあなたも運び出すだろう。」
5:10 すると、彼女はすぐにペテロの足もとに倒れて、息絶えた。若者たちが入ってきて、彼女が死んでいるのを見つけ、運び出して夫のそばに葬った。
5:11 教会全体と、これを聞いた人はみな、ひどく恐ろしくなった。
5:12 使徒たちの手によって、多くのしるしと不思議なことが人々の間で行われた。そして、信じる人たちはみな、心を一つにして、ソロモンの回廊に集まっていた。
5:13 ほかの人たちは、だれも彼らの仲間に加わろうとはしなかった。でも、民衆は彼らを高く尊敬していた。
5:14 それでも、主を信じる人は男も女もますます増えて、その数はどんどん大きくなっていった。
5:15 そのため、人々は病人を大通りまで運び出し、寝台や敷物の上に寝かせた。ペテロが通りかかるとき、せめてその影だけでも、だれかにかかるようにと願ったのだ。
5:16 エルサレム周辺の町々からも、大勢の人が集まってきた。病人や、汚れた霊に苦しめられている人たちを連れてきたのだ。そして、みんな癒された。
5:17 すると、大祭司と、その仲間であるサドカイ派の人たちが立ち上がった。彼らはねたみでいっぱいになり、
5:18 使徒たちを捕らえて、公の牢に入れた。
5:19 ところが、夜になると、主の使いが牢の扉を開けて、彼らを外へ連れ出して言った。
5:20 「行きなさい。神殿に立って、この命の言葉をすべて、人々に語りなさい。」
5:21 これを聞いた使徒たちは、夜明けごろ神殿に入って教え始めた。一方、大祭司とその仲間はやってきて、議会と、イスラエルの民の長老たち全員を召集した。そして、使徒たちを連れてこさせるために、牢へ人を送った。
5:22 ところが、役人たちが行ってみると、牢の中に使徒たちはいなかった。それで、戻ってきて報告した。
5:23 「牢はしっかりと閉ざされていて、番人も戸口に立っていました。でも、開けてみると、中にはだれもいませんでした。」
5:24 これを聞いて、神殿の警備隊長と祭司長たちは、いったいこれはどうなるのだろうと、ひどく困惑した。
5:25 そこへある人が来て、こう知らせた。「見てください。牢に入れたあの人たちが、神殿に立って人々に教えていますよ。」
5:26 そこで警備隊長は部下たちと出かけて行き、使徒たちを連れて来た。ただし、手荒なことはしなかった。人々に石を投げつけられるのを恐れたからだ。
5:27 使徒たちを連れて来ると、最高法院の真ん中に立たせた。そして大祭司が問いただした。
5:28 「あの名を使って教えてはならないと、あれほどきつく命じておいたはずだ。それなのに、おまえたちはエルサレム中に自分たちの教えを広めてしまった。しかも、あの男が殺された責任をわたしたちに負わせようとしている。」
5:29 すると、ペトロとほかの使徒たちは答えた。「人ではなく、神に従うべきです。
5:30 わたしたちの先祖の神は、イエスをよみがえらせました。あなたがたが十字架にかけて殺した、あのイエスをです。
5:31 神はこのイエスを、導き手として、また救い主として、ご自分の右に高く上げられました。イスラエルが心を入れ替えて神に立ち帰り、罪を赦されるためです。
5:32 わたしたちは、この出来事の証人です。そして、神がご自分に従う者たちにお与えになった聖霊も、証人です。」
5:33 これを聞いた人々は激しく怒り、使徒たちを殺そうとした。
5:34 ところが、最高法院の中の一人が立ち上がった。ガマリエルという名のファリサイ派の人で、律法の教師として民全体から尊敬されていた。彼は、使徒たちをしばらく外に出すように命じてから、
5:35 議員たちにこう言った。「イスラエルの皆さん、あの人たちをどう扱うのか、よく考えたほうがいい。
5:36 少し前のことだが、テウダスという男が現れて、自分は大した者だと言い張った。四百人ほどの男たちが彼につき従った。しかし、彼は殺され、従っていた者たちもみな散り散りになって、跡形もなくなってしまった。
5:37 この男の後にも、住民登録のあった頃、ガリラヤ出身のユダという男が現れて、民をそそのかし、自分に従わせた。しかし、彼も滅び、従っていた者たちもみな散り散りになってしまった。
5:38 だから今、あなたたちに言っておく。あの人たちには関わらず、放っておきなさい。もしあの計画や活動が人間から出たものなら、いずれ自然に滅びるだろう。
5:39 しかし、もし神から出たものなら、あなたたちにそれを滅ぼすことはできない。それどころか、神に逆らって戦う者になってしまうかもしれない。」議員たちは、この意見に従った。
5:40 そして使徒たちを呼び入れ、鞭で打ってから、イエスの名によって語ってはならないと命じ、釈放した。
5:41 使徒たちは、イエスの名のために辱めを受けるにふさわしい者とされたことを喜びながら、最高法院を後にした。
5:42 そして毎日、神殿でも家々でも、イエスこそキリストだと教え、その良い知らせを伝えることをやめなかった。
6:1 そのころ、弟子の数が増えていくにつれて、ギリシア語を話すユダヤ人たちが、ヘブライ語を話す人たちに不満を漏らすようになった。日々の食事の分配で、自分たちのやもめがないがしろにされていたからだ。
6:2 そこで十二人は弟子たち全員を呼び集めて、こう言った。「わたしたちが神の言葉を後回しにして、食事の世話に追われるのはよくない。
6:3 だから兄弟姉妹たち、あなたたちの中から、評判がよく、聖霊と知恵に満ちた人を七人選んでほしい。その務めは、その人たちに任せよう。
6:4 わたしたちは、祈りと、言葉を伝える務めに専念することにする。」
6:5 この提案は、みんなに喜んで受け入れられた。そして人々は、信仰と聖霊に満ちた人ステファノをはじめ、フィリポ、プロコロ、ニカノル、ティモン、パルメナ、それにアンティオキア出身で以前ユダヤ教に改宗したニコラオを選んだ。
6:6 人々はこの七人を使徒たちの前に立たせた。使徒たちは祈って、彼らの上に手を置いた。
6:7 こうして、神の言葉はますます広まっていった。エルサレムでは弟子の数がとても増え、祭司たちも大勢、この信仰を受け入れるようになった。
6:8 さて、ステファノは恵みと力に満ちていて、人々の間で数々の驚くべきしるしや奇跡を行っていた。
6:9 ところが、「解放された奴隷たちの会堂」と呼ばれる会堂に属する人たちや、キレネやアレクサンドリア出身の人たち、それにキリキアやアジア州から来た人たちの中から、何人かが立ち上がってステファノと議論を始めた。
6:10 しかし彼らは、ステファノが語るときの知恵と、彼に働く霊に、とても太刀打ちできなかった。
6:11 そこで彼らは何人かの男たちを裏で操って、こう言わせた。「わたしたちは、この男がモーセと神を冒とくする言葉を語るのを聞きました。」
6:12 こうして彼らは、民衆や長老たち、律法学者たちをあおり立て、ステファノのところへ押しかけて彼を捕らえ、最高法院へ引いていった。
6:13 そして偽りの証人たちを立てて、こう言わせた。「この男は、この聖なる場所と律法に逆らう言葉を語るのをやめようとしません。
6:14 わたしたちは、この男がこう言うのを聞きました。『あのナザレのイエスは、この場所を打ちこわし、モーセがわたしたちに伝えた慣習を変えてしまう』と。」
6:15 最高法院に座っていた人たちはみな、ステファノをじっと見つめた。すると、その顔はまるで天使の顔のように見えた。
7:1 すると大祭司が「これは事実なのか」と尋ねた。
7:2 ステファノは答えた。「兄弟のみなさん、そして父祖のみなさん、聞いてください。わたしたちの父アブラハムがまだハランに住む前、メソポタミアにいたとき、栄光の神が彼の前に現れました。
7:3 そして神はこう言われたのです。『あなたの国と親族のもとを離れ、わたしが示す地へ行きなさい。』
7:4 そこでアブラハムはカルデア人の地を出て、ハランに住みました。そして父が亡くなった後、神は彼をこの地へ移されました。今あなたがたが住んでいる、この地です。
7:5 神はこの地で、アブラハムに相続財産を何も与えませんでした。足を踏み入れるだけの土地さえも。それでも神は、この地を彼とその子孫のものとして与えると約束されたのです。アブラハムにはまだ子どもがいなかったのに。
7:6 神はこうも語られました。『あなたの子孫は、よその国で他人として暮らすことになる。人々は彼らを奴隷にし、四百年のあいだ苦しめるだろう。
7:7 だが、彼らを奴隷にしたその国を、わたしは裁く』と神は言われました。『そのあと彼らはそこを出て、この場所でわたしを礼拝するようになる。』
7:8 そして神はアブラハムに、割礼という契約のしるしを与えました。こうしてアブラハムはイサクをもうけ、八日目にその子に割礼を施しました。イサクはヤコブを、ヤコブは十二人の族長をもうけたのです。
7:9 その族長たちは、弟のヨセフをねたんで、エジプトへ奴隷として売り渡しました。しかし神はヨセフとともにおられました。
7:10 神はヨセフをすべての苦しみから救い出し、エジプトの王ファラオの前で恵みと知恵を与えられました。それでファラオは、ヨセフをエジプト全土と王家全体を治める者に任命したのです。
7:11 やがてエジプトとカナンの全土に飢きんが起こり、大きな苦しみが襲いました。わたしたちの父祖たちは、食べ物を見つけられなくなりました。
7:12 しかしヤコブは、エジプトに穀物があると聞いて、わたしたちの父祖たちを最初にそこへ送り出したのです。
7:13 二度目に来たとき、ヨセフは自分が兄弟たちであることを打ち明けた。それでヨセフの家族のことが、ファラオにも知られるようになった。
7:14 そこでヨセフは人をやって、父ヤコブと親族全員を呼び寄せた。その数は全部で七十五人だった。
7:15 こうしてヤコブはエジプトへ下って行った。そしてヤコブも、わたしたちの先祖も、そこで死んだ。
7:16 その遺体はシケムへ運ばれ、アブラハムがシケムのハモルの子たちから銀を払って買っておいた墓に納められた。
7:17 神がアブラハムに約束されたことが実現する時が近づくにつれて、民はエジプトでどんどん増えていった。
7:18 やがて、ヨセフのことを知らない別の王がエジプトに立った。
7:19 この王はずる賢い手を使って、わたしたちの民族を苦しめた。生まれた赤ん坊が育たないように、それを捨てさせて先祖たちをひどい目にあわせたのだ。
7:20 モーセが生まれたのは、ちょうどそのころだった。彼は神の目にとても美しい子で、三か月のあいだ父の家で育てられた。
7:21 そして捨てられたとき、ファラオの娘が彼を拾い上げ、自分の子として育てた。
7:22 モーセはエジプト人のあらゆる知恵を教え込まれ、言葉でも行いでも力のある人になった。
7:23 四十歳になったとき、モーセは自分の同胞であるイスラエルの人たちを訪ねてみようと思い立った。
7:24 そして、そのうちのひとりが不当な扱いを受けているのを見て、その人をかばい、痛めつけられているその人のために仕返しをして、エジプト人を打ち倒した。
7:25 モーセは、自分の手を通して神が同胞を救い出そうとしていることを、みんなが分かってくれるだろうと思っていた。でも、彼らは分からなかった。
7:26 その翌日、モーセは仲間どうしで争っている二人のところに来て、仲直りさせようとしてこう言った。「きみたちは兄弟じゃないか。どうしてお互いを傷つけ合うんだ。」
7:27 すると、隣人を傷つけていたほうがモーセを突き飛ばして言った。「だれがあんたを、おれたちの支配者や裁判官にしたんだ。
7:28 きのうエジプト人を殺したみたいに、おれも殺す気か。」
7:29 この言葉を聞いて、モーセは逃げた。そして、ミディアンの地でよそ者として暮らし、そこで二人の息子をもうけた。
7:30 それから四十年がたったとき、シナイ山のあたりの荒れ野で、燃える柴の炎の中に天使がモーセの前に現れた。
7:31 モーセはそれを見て、その光景に驚いた。よく見ようと近づくと、主の声が聞こえてきた。
7:32 「わたしは、あなたの先祖の神、アブラハムとイサクとヤコブの神である。」モーセは震え上がり、とても見つめる勇気がなかった。
7:33 主はモーセに言った。「足の履き物を脱ぎなさい。あなたが立っているその場所は、聖なる土地だからだ。
7:34 わたしは、エジプトにいるわたしの民が苦しめられているのを、確かに見た。彼らのうめき声も聞いた。だから、彼らを助け出すために降りてきた。さあ、あなたをエジプトへ送ろう。」
7:35 『だれがあんたを支配者や裁判官にしたんだ』と言って人々が拒んだ、このモーセ。その彼を、神は、柴の中で現れた天使の手によって、支配者として、また救い出す者として送られたのだ。
7:36 このモーセが、エジプトの地で、また紅海で、さらに四十年にわたる荒れ野で、数々の不思議なわざとしるしを行い、人々を導き出したのである。
7:37 このモーセこそ、イスラエルの人々にこう言った人だ。「神は、あなたがたの兄弟たちの中から、わたしのような預言者を、あなたがたのために立ててくださる。」
7:38 このモーセこそ、荒れ野の集まりの中で、シナイ山で語りかけた天使や、わたしたちの先祖と共にいた人だ。そして、わたしたちに伝えるための生きた言葉を受け取ったのである。
7:39 けれども、わたしたちの先祖はモーセに従おうとせず、かえって彼を退け、心の中ではエジプトへ引き返してしまった。
7:40 そしてアロンにこう言った。「わたしたちの先頭に立って導いてくれる神々を造ってください。エジプトから連れ出してくれたあのモーセが、どうなったのか分からないのですから。」
7:41 そのころ、人々は子牛の像を造り、その偶像にいけにえをささげ、自分の手で造ったものを喜んで祝った。
7:42 すると神は背を向け、彼らが天の星々を拝むままにされた。預言者たちの書にこう書いてあるとおりだ。「イスラエルの家よ、あなたがたは四十年の間、荒れ野でわたしにいけにえや供え物をささげたか。
7:43 それどころか、あなたがたはモロクの幕屋と、あなたがたの神レファンの星、つまり拝むために造った像を担ぎ回った。だから、わたしはあなたがたをバビロンの向こうへ移す。」
7:44 わたしたちの先祖は、荒れ野で証しの幕屋を持っていた。それは、モーセに語りかけた方が、彼が見せられた型のとおりに造るよう命じたものだった。
7:45 わたしたちの先祖は、この幕屋を受け継ぎ、ヨシュアと共に、神が先祖の前から追い払った異邦の民の土地を占領したとき、そこへ運び入れた。それはダビデの時代まで続いた。
7:46 ダビデは神の前で恵みを受け、ヤコブの神のために住まいを設けたいと願い出た。
7:47 けれども、その神のために家を建てたのはソロモンだった。
7:48 しかし、いと高き方は、人の手で造った建物の中に住まわれるわけではない。預言者もこう言っている。
7:49 「天はわたしの王座、地はわたしの足を置く台。あなたたちは、わたしのためにどんな家を建てられるのか、と主は言われる。わたしが休む場所など、どこにあるのか。
7:50 これらすべてを造ったのは、このわたしの手ではないか。」
7:51 「あなたたちは強情で、心も耳も神に閉ざしている。いつも聖霊に逆らってばかりだ。先祖たちがそうだったように、あなたたちもそうだ。
7:52 預言者たちの中で、あなたたちの先祖が迫害しなかった者がいるだろうか。彼らは、正しい方が来ることを前もって告げた人たちを殺した。そして今、あなたたちはその正しい方を裏切り、殺す者となった。
7:53 あなたたちは、天使たちを通して律法を受け取ったのに、それを守らなかった。」
7:54 これを聞くと、人々は腹の底から怒り、ステファノに向かって歯ぎしりした。
7:55 しかしステファノは聖霊に満たされ、天をじっと見つめた。すると、神の栄光が見え、イエスが神の右に立っておられるのが見えた。
7:56 そして彼は言った。「見なさい。天が開けて、人の子が神の右に立っておられるのが見える。」
7:57 すると人々は大声で叫び、耳をふさいで、いっせいにステファノに襲いかかった。
7:58 そして彼を町の外に引きずり出し、石を投げつけた。証人たちは、自分の上着を脱いで、サウロという若者の足もとに置いた。
7:59 人々が石を投げ続ける中、ステファノは祈って言った。「主イエスよ、わたしの霊を受け取ってください。」
7:60 そして、ひざまずいて大声で叫んだ。「主よ、この罪を彼らに負わせないでください。」こう言うと、ステファノは息を引き取った。
8:1 サウロは、ステファノが殺されることに賛成していた。その日、エルサレムの教会に対して激しい迫害が始まった。それで、使徒たちのほかは、みんなユダヤとサマリアの各地に散らされていった。
8:2 信仰深い人たちがステファノを葬り、彼のために激しく嘆き悲しんだ。
8:3 一方、サウロは教会を荒らし回っていた。家々に押し入っては、男も女も引きずり出し、次々と牢に入れていったのだ。
8:4 散らされた人たちは、あちこちを巡り歩いて、神の言葉を伝えていった。
8:5 フィリポはサマリアの町に下って行き、そこの人々にキリストのことを伝えた。
8:6 群衆は、フィリポの話に耳を傾け、彼が行う奇跡を目にして、心を一つにして聞き入った。
8:7 汚れた霊に取りつかれていた多くの人からは、その霊が大声で叫びながら出て行った。また、体のまひした人や足の不自由な人も、大勢いやされた。
8:8 こうして、その町は大きな喜びに包まれた。
8:9 さて、その町にはシモンという男が以前からいた。彼は魔術を使ってサマリアの人々を驚かせ、自分は偉大な者だと言っていた。
8:10 身分の低い者から高い者まで、みんなが彼に注目し、「この人こそ、『偉大な力』と呼ばれる神の力だ」と言っていた。
8:11 人々が彼に注目していたのは、長い間その魔術に驚かされ続けてきたからだ。
8:12 しかし、フィリポが神の国とイエス・キリストの名について福音を伝えると、人々はそれを信じ、男も女も洗礼を受けた。
8:13 シモン自身も信じて洗礼を受けた。そして、いつもフィリポについて回った。次々と起こるしるしや大きな奇跡を見て、驚いてばかりいた。
8:14 エルサレムにいる使徒たちは、サマリアの人々が神の言葉を受け入れたと聞いた。それで、ペトロとヨハネを彼らのもとに送った。
8:15 二人は下って行き、サマリアの人々が聖霊を受けられるようにと祈った。
8:16 というのも、聖霊はまだ彼らのだれの上にも降っていなかったからだ。彼らはただ、主イエスの名によって洗礼を受けていただけだった。
8:17 そこで、二人が彼らの上に手を置くと、彼らは聖霊を受けた。
8:18 使徒たちが手を置くことで霊が与えられるのを見て、シモンは二人にお金を差し出し、
8:19 こう言った。「わたしにもその力をください。だれでもわたしが手を置いた人が、聖霊を受けられるように。」
8:20 すると、ペトロは彼に言った。「あなたのお金なんか、あなたと一緒に滅んでしまえばいい。神の贈り物をお金で手に入れられると思っているのだから。
8:21 あなたには、このことに関わる資格も権利もない。あなたの心が、神の前でまっすぐではないからだ。
8:22 だから、この悪い思いを捨てて心を入れ替え、主に祈りなさい。そうすれば、あなたの心のたくらみも、もしかしたら赦されるかもしれない。
8:23 わたしには分かる。あなたは苦い妬みに満ち、悪に縛られている。」
8:24 シモンは答えて言った。「あなたがたが言われたことが、どれ一つわたしの身に起こらないように、わたしのために主に祈ってください。」
8:25 そこで二人は、主の言葉をはっきりと証しして語り終えると、エルサレムへ帰って行った。その途中、サマリアの多くの村で良い知らせを伝えた。
8:26 さて、主の天使がフィリポに言った。「立って、南へ向かいなさい。エルサレムからガザへ下る道だ。」そこは寂しい荒れ野の道だった。
8:27 フィリポは立って出かけた。すると、一人のエチオピア人がいた。その人は宦官で、エチオピア人の女王カンダケに仕える高官だった。女王の財産をすべて管理する立場にあり、礼拝のためにエルサレムへ来ていた。
8:28 そして帰る途中、馬車に乗って預言者イザヤの書を読んでいた。
8:29 霊がフィリポに言った。「あの馬車に近づいて、そばを離れずについて行きなさい。」
8:30 フィリポが走り寄ると、その人が預言者イザヤの書を読んでいるのが聞こえた。そこでフィリポは尋ねた。「読んでいることの意味が、分かりますか。」
8:31 するとその人は答えた。「導いてくれる人がいなければ、どうして分かるでしょう。」そして、馬車に乗って一緒に座ってほしいと、フィリポに頼んだ。
8:32 その人が読んでいた聖書の箇所は、こうだった。「屠り場へ引かれて行く羊のように、毛を刈る者の前で黙っている子羊のように、彼は口を開かなかった。
8:33 彼は低くされ、正しい裁きも奪われた。彼の世代のことを、だれが語り伝えられるだろう。彼のいのちが、地上から取り去られるのだから。」
8:34 宦官はフィリポに答えて言った。「教えてください。預言者はだれについてこう言っているのですか。自分についてですか、それともほかのだれかについてですか。」
8:35 フィリポは口を開き、この聖書の箇所から始めて、イエスの良い知らせを彼に伝えた。
8:36 道を進んで行くうちに、水のある所に来た。すると宦官が言った。「見てください、水です。わたしが洗礼を受けるのに、何のさまたげがあるでしょう。」
8:37 ピリポは言った。「心から信じているなら、受けてもかまいません。」すると彼は答えた。「わたしは、イエス・キリストが神の子だと信じます。」
8:38 そしてフィリポは車を止めさせた。フィリポと宦官の二人は水の中に入り、フィリポは彼に洗礼を授けた。
8:39 二人が水から上がると、主の霊がフィリポを連れ去った。宦官はもう二度と彼の姿を見ることはなかった。でも宦官は喜びながら旅を続けた。
8:40 一方フィリポは、アゾトの町に姿を現した。そして各地を巡り、すべての町で良い知らせを伝えながら、カイサリアまでやって来た。
9:1 さて、サウロはあいかわらず、主の弟子たちを脅し殺そうと意気込んでいた。彼は大祭司のところへ行き、
9:2 ダマスコの会堂あての手紙を求めた。この道を信じている者を、男でも女でも見つけしだい縛り上げ、エルサレムへ連れて来るためだった。
9:3 旅を続けてダマスコの近くまで来たとき、突然、天からの光が彼のまわりを照らした。
9:4 サウロは地面に倒れた。そして、こう語りかける声を聞いた。「サウロ、サウロ、なぜわたしを迫害するのか。」
9:5 サウロは言った。「あなたはどなたですか、主よ。」すると答えがあった。「わたしは、あなたが迫害しているイエスである。
9:6 さあ、立ち上がって町に入りなさい。あなたがしなければならないことが、そこで告げられる。」
9:7 サウロと一緒に旅をしていた人たちは、言葉を失って立ち尽くしていた。声は聞こえるのに、だれの姿も見えなかったのだ。
9:8 サウロは地面から起き上がった。でも、目を開けても何も見えなかった。それで人々は彼の手を引いて、ダマスコの町へ連れて行った。
9:9 サウロは三日のあいだ目が見えないままで、食べることも飲むこともしなかった。
9:10 さて、ダマスコにアナニアという名の弟子がいた。主が幻の中で彼に語りかけた。「アナニア。」彼は答えた。「はい、主よ。ここにおります。」
9:11 主は言った。「立って、『まっすぐ』と呼ばれる通りへ行きなさい。そしてユダの家で、タルソス出身のサウロという人を探しなさい。今、彼は祈っている。
9:12 そして彼は、アナニアという名の人が入って来て、自分の上に手を置き、目が見えるようにしてくれる、という幻を見たのだ。」
9:13 アナニアは答えた。「主よ、わたしはこの人のことを、大勢の人から聞いています。エルサレムで、あなたの聖なる人たちにどれほどひどいことをしてきたか。
9:14 しかも、この町でも、あなたの名を呼び求める人たちをみな捕らえる権限を、祭司長たちから受けているのです。」
9:15 けれども主は彼に言った。「行きなさい。あの人は、わたしが選んだ器なのだ。異邦人や王たち、そしてイスラエルの人々の前で、わたしの名を運んでいく者だ。
9:16 わたしの名のために、彼がどれほど苦しまなければならないかを、わたしは彼に示すつもりだ。」
9:17 そこでアナニアは出かけて行き、その家に入った。そしてサウロの上に手を置いて言った。「兄弟サウロ、主が、あなたが来る途中の道で現れたイエスが、わたしを送ってくださいました。あなたがもう一度目が見えるようになり、聖霊に満たされるためです。」
9:18 すると、すぐにサウロの目からうろこのようなものが落ち、目が見えるようになった。そして彼は立ち上がって、バプテスマを受けた。
9:19 そして食事をとると、元気を取り戻した。サウロは数日の間、ダマスコにいる弟子たちと一緒に過ごした。
9:20 そしてすぐに、あちこちの会堂でイエスのことを語り始めた。「この方こそ神の子だ」と。
9:21 それを聞いた人はみな驚いて、こう言った。「この男は、エルサレムでこの名を呼び求める人たちを、めちゃくちゃにしていたやつじゃないか。しかもここには、そういう人たちを縛り上げて祭司長たちのところへ連れて行くために来たはずだ。」
9:22 でもサウロはますます力を増して、ダマスコに住むユダヤ人たちをやり込めた。イエスこそキリストだと、はっきり論証したのだ。
9:23 それからかなりの日がたったころ、ユダヤ人たちはサウロを殺そうと相談した。
9:24 でも、その企ては本人に知られてしまった。彼らはサウロを殺そうと、昼も夜も町の門を見張っていた。
9:25 そこである夜、弟子たちはサウロをかごに入れ、町の城壁づたいに吊り下ろして逃がした。
9:26 サウロはエルサレムに着くと、弟子たちの仲間に加わろうとした。でもみんな彼を恐れて、彼が本当に弟子になったとは信じなかった。
9:27 ところがバルナバがサウロを引き受けて、使徒たちのところへ連れて行った。そして、サウロが旅の途中で主を見たこと、主が彼に語りかけたこと、さらにダマスコでイエスの名によって堂々と語ったことを、みんなに説明した。
9:28 こうしてサウロは彼らと行動を共にし、エルサレムの中を自由に出入りしながら、主の名によって堂々と語った。
9:29 そして、ギリシア語を話すユダヤ人たちとも語り合い、議論した。でも彼らはサウロを殺そうとねらった。
9:30 それを知った兄弟たちは、サウロをカイサリアまで連れて下り、そこからタルソスへ送り出した。
9:31 こうして教会は、ユダヤとガリラヤとサマリアの全域で平和を保ち、力をつけていった。そして主を敬いながら歩み、聖霊に励まされて、人数を増やしていった。
9:32 さて、ペトロはあちこちを巡り歩いて、リダに住む信者たちのところにも下って行った。
9:33 そこで、アイネアという人に出会った。八年間も床についたまま、体がまひして動けない人だった。
9:34 ペトロは彼に言った。「アイネア、イエス・キリストがあなたを治してくださる。起きて、自分の寝床を整えなさい。」すると、彼はすぐに起き上がった。
9:35 リダとシャロンに住む人たちはみな、その姿を見て、主に立ち返った。
9:36 ヤッファに、タビタという女性の弟子がいた。名前はギリシア語でドルカス、つまり「かもしか」という意味だ。彼女はいつも良い行いをし、困っている人に施しをしていた。
9:37 ところが、ちょうどそのころ、彼女は病気になって亡くなってしまった。人々は遺体を洗い、二階の部屋に安置した。
9:38 リダはヤッファに近かった。弟子たちは、ペトロがリダにいると聞き、二人の男を送って頼んだ。「すぐにわたしたちのところへ来てください。」
9:39 ペトロは立って、彼らと一緒に出かけた。着くと、人々は彼を二階の部屋へ案内した。やもめたちがみな、泣きながらペトロを囲み、ドルカスが一緒にいたころに作ってくれた下着や上着を見せた。
9:40 ペトロはみんなを外に出し、ひざまずいて祈った。そして遺体のほうを向いて言った。「タビタ、起きなさい。」すると彼女は目を開け、ペトロを見て起き上がった。
9:41 ペトロは手を貸して彼女を立たせた。それから信者たちややもめたちを呼び、生き返った彼女を見せた。
9:42 このことはヤッファ中に知れわたり、多くの人が主を信じた。
9:43 ペトロはしばらくの間、ヤッファで、皮なめし職人のシモンという人の家に泊まった。
10:1 さて、カイサリアにコルネリウスという名の男がいた。イタリア隊と呼ばれる部隊の百人隊長だった。
10:2 彼は信仰深く、家族みんなと一緒に神を敬っていた。困っている人たちに惜しみなく分け与え、いつも神に祈っていた。
10:3 ある日の午後三時ごろ、彼は幻をはっきりと見た。神の天使が入ってきて、「コルネリウス」と呼びかけたのだ。
10:4 コルネリウスは天使をじっと見つめ、怖くなって言った。「何でしょうか、主よ。」天使は答えた。「あなたの祈りと施しは、神の前に立ちのぼり、覚えられている。
10:5 さあ今、ヤッファに人を送って、ペトロと呼ばれるシモンという人を招きなさい。
10:6 その人は、海のそばに家を持つ皮なめし職人のシモンのところに泊まっている。」
10:7 天使が去ると、コルネリウスは召使いを二人と、いつもそばで仕えている信仰深い兵士を一人呼んだ。
10:8 そして、すべてのことを話して聞かせ、彼らをヤッファへ送り出した。
10:9 翌日、彼らが旅を続けて町に近づいたころ、ペトロは昼の十二時ごろ、祈るために屋上に上がった。
10:10 彼は空腹を覚え、何か食べたくなった。ところが、食事の用意がされている間に、彼は我を忘れたような状態になった。
10:11 すると、天が開いて、大きな布のようなものが四隅をつるされたまま地上へ降りてくるのが見えた。
10:12 その中には、地上のあらゆる四つ足の動物や、地をはうもの、空の鳥がいた。
10:13 すると、彼にこう語りかける声が聞こえた。「ペテロ、立ちなさい。ほふって食べなさい。」
10:14 でもペテロは言った。「主よ、とんでもないことです。わたしは今まで、汚れたものや清くないものを食べたことは一度もありません。」
10:15 すると、もう一度、声が聞こえた。「神が清めたものを、あなたが汚れていると言ってはならない。」
10:16 こういうことが三度あって、その布のようなものはすぐに天へ引き上げられた。
10:17 ペテロが、今見た幻はいったいどういう意味なのだろうと、一人で戸惑っていると、ちょうどそのとき、コルネリオから送られてきた人たちが、シモンの家を尋ね当てて門の前に立っていた。
10:18 そして声をかけ、「ペテロと呼ばれるシモンは、こちらに泊まっていますか」と尋ねた。
10:19 ペテロがまだその幻について考え込んでいると、霊が彼に言った。「見なさい、男たちがあなたを捜している。
10:20 だから、立って下に降り、その人たちと一緒に行きなさい。ためらってはいけない。わたしが彼らを送ったのだから。」
10:21 ペテロは下に降りて、その人たちに言った。「わたしが、あなたがたの捜している者です。どんな用件で来られたのですか。」
10:22 彼らは答えた。「わたしたちは、百人隊長のコルネリオのところから来ました。あの方は正しい人で、神を敬い、ユダヤ人みんなから評判のよい人です。そのコルネリオが、聖なる天使から、あなたを家に招いて話を聞くようにとお告げを受けたのです。」
10:23 そこでペテロは彼らを中に招き入れ、泊めてやった。翌日、ペテロは立って彼らと一緒に出かけた。ヨッパの兄弟たちも何人か一緒に行った。
10:24 その次の日、彼らはカイサリアに入った。コルネリオは、親族や親しい友人たちを呼び集めて、彼らを待っていた。
10:25 ペテロが家に入ろうとすると、コルネリオが出迎えて、その足もとにひれ伏して拝んだ。
10:26 でもペテロは彼を助け起こして言った。「立ってください。わたしも、あなたと同じただの人間です。」
10:27 そしてペテロは彼と話しながら中に入り、大勢の人が集まっているのを見つけた。
10:28 ペテロは彼らに言った。「ご存じのとおり、ユダヤ人が外国人と付き合ったり、その家を訪ねたりするのは、わたしたちの掟では許されないことです。でも神は、どんな人のことも、汚れているとか、けがれているとか言ってはいけない、とわたしに示してくださいました。
10:29 だから、呼ばれたとき、わたしは何も反対せずにやって来たのです。それで聞きますが、どういうわけでわたしを呼んだのですか。」
10:30 するとコルネリオは言った。「四日前のちょうど今ごろ、午後三時に、わたしは家で祈っていました。すると突然、まぶしい服を着た人がわたしの前に立って、
10:31 こう言ったのです。『コルネリオ、あなたの祈りは聞き入れられた。あなたのしてきた施しも、神の前で覚えられている。
10:32 だからヨッパに人をやって、ペテロと呼ばれるシモンを招きなさい。その人は、海べにある皮なめし職人シモンの家に泊まっている。』
10:33 それですぐに、あなたのところへ人をやりました。よく来てくださいました。今、わたしたちはみんな、神の前にこうして集まっています。主があなたにお命じになったことを、すべて聞かせていただくためです。」
10:34 そこでペテロは話し始めた。「わたしは今、本当のことがよく分かりました。神は人を分け隔てなさらない方です。
10:35 どの国の人であっても、神を敬い、正しいことを行う人を、神は受け入れてくださいます。
10:36 神は、イエス・キリストによる平和を伝える言葉を、イスラエルの人々に送ってくださいました。このイエス・キリストこそ、すべての人の主なのです。
10:37 みなさんも、ユダヤ全土で起こった出来事を知っているはずです。それはヨハネがバプテスマを説いたあと、ガリラヤから始まりました。
10:38 神が、ナザレのイエスに聖霊と力を注がれたことです。イエスはあちこちを回って人々に良いことをし、悪魔に苦しめられている人たちをみな癒やしました。神が一緒におられたからです。
10:39 わたしたちは、イエスがユダヤ人の地とエルサレムで行ったすべてのことの証人です。人々はそのイエスを木にかけて殺しました。
10:40 しかし神は、三日目にイエスを死者の中からよみがえらせ、はっきりと人々の前に現してくださいました。
10:41 ただし、すべての人にではなく、神があらかじめ選んでおいた証人、つまりわたしたちにです。わたしたちは、イエスが死者の中からよみがえったあと、一緒に食べたり飲んだりしました。
10:42 そしてイエスは、わたしたちにこう命じました。生きている人にも死んだ人にも、神が裁く者としてお立てになったのはこのイエスだと、人々に宣べ伝え、しっかり証しするように、と。
10:43 預言者たちもみな、イエスについてこう証ししています。イエスを信じる人はだれでも、その名によって罪をゆるされる、と。」
10:44 ペテロがまだこの言葉を話している間に、聞いていたすべての人の上に聖霊が下りました。
10:45 ペテロと一緒に来ていたユダヤ人の信者たちは、みな驚きました。聖霊という贈り物が、ユダヤ人以外の人たちにも注がれたからです。
10:46 その人たちが、いろいろな言葉で話し、神をほめたたえているのが聞こえたのです。そこでペテロはこう言いました。
10:47 「この人たちは、わたしたちと同じように聖霊を受けました。だれがこの人たちに水のバプテスマを受けさせるのを止められるでしょうか。」
10:48 そしてペテロは、イエス・キリストの名によってバプテスマを受けるよう、その人たちに命じました。すると彼らは、もう数日いてほしいとペテロに頼みました。
11:1 使徒たちと、ユダヤ地方にいる信者たちは、外国の人たちも神の言葉を受け入れたと聞いた。
11:2 そして、ペトロがエルサレムに上ってくると、割礼を受けた信者たちが彼を責めた。
11:3 「あなたは割礼を受けていない人たちの家に上がり込んで、一緒に食事までした」と言うのだ。
11:4 そこでペトロは、初めから順を追って、こう説明し始めた。
11:5 「わたしはヨッパの町で祈っていた。すると、われを忘れたような状態になり、幻を見た。大きな布のようなものが四隅をつり下げられて、天から降りてきて、わたしのところまで来たのだ。
11:6 その中をじっと見つめると、地上の四本足の動物、野の獣、地をはうもの、空の鳥が見えた。
11:7 そして、『ペトロ、立って、それを殺して食べなさい』と、わたしに言う声も聞こえた。
11:8 でも、わたしは言った。『主よ、とんでもありません。清くないものや汚れたものは、これまで一度も口にしたことがありません。』
11:9 すると、天からの声が再び答えた。『神が清めたものを、あなたが汚れていると言ってはいけない。』
11:10 こういうことが三度あって、すべてのものがまた天へ引き上げられた。
11:11 すると、ちょうどそのとき、カイサリアからわたしのもとに送られてきた三人の男が、わたしたちのいる家の前に立った。
11:12 そして聖霊は、ためらわずに彼らと一緒に行くようにと、わたしに告げた。ここにいる六人の兄弟も、わたしと一緒に来てくれた。こうして、わたしたちはあの人の家に入ったのだ。
11:13 その人は、天使が自分の家に立って、こう言うのを見たと、わたしたちに話してくれた。「ヨッパに人を送って、ペトロと呼ばれるシモンを呼び寄せなさい。
11:14 そのシモンが、あなたとあなたの家族全員が救われる言葉を、あなたに語ってくれる。」
11:15 そして、わたしが話し始めると、初めにわたしたちに下ったのと同じように、聖霊が彼らの上にも下った。
11:16 そのとき、わたしは主の言葉を思い出した。主はこう言われた。「ヨハネは水で洗礼を授けたが、あなたがたは聖霊によって洗礼を授けられる。」
11:17 こうして神は、わたしたちが主イエス・キリストを信じたときと同じ贈り物を、彼らにも与えられたのだ。それなら、わたしがいったい何者で、神を妨げることなどできるだろうか。
11:18 これを聞いた人々は静かになり、神をたたえて言った。「それでは、神はユダヤ人以外の人々にも、命へと導く悔い改めを与えてくださったのだ。」
11:19 さて、ステファノのことで起きた迫害のために散らされた人々は、フェニキア、キプロス、アンティオキアまで渡り歩いたが、ユダヤ人以外のだれにも言葉を語ろうとはしなかった。
11:20 しかし、その中にキプロス出身やキレネ出身の人が何人かいて、彼らはアンティオキアに来ると、ギリシア語を話す人々にも語りかけ、主イエスの良い知らせを伝えた。
11:21 主の手が彼らとともにあり、大勢の人が信じて主に立ち返った。
11:22 このことがエルサレムにある教会の耳に入り、教会はバルナバをアンティオキアに送り出した。
11:23 バルナバは到着して、神の恵みが働いているのを見ると喜んだ。そして、心を固く決めて主から離れずにいるようにと、みんなを励ました。
11:24 バルナバは、聖霊と信仰に満ちた立派な人だった。こうして、大勢の人が主のもとに加えられた。
11:25 それから、バルナバはサウロを探しにタルソスへ向かった。
11:26 そして見つけ出すと、アンティオキアへ連れて来た。二人は丸一年、教会に集まって大勢の人を教えた。弟子たちが「クリスチャン」と呼ばれるようになったのは、このアンティオキアが最初だった。
11:27 そのころ、何人かの預言者がエルサレムからアンティオキアへ下って来た。
11:28 その中の一人、アガボという人が立ち上がり、聖霊に示されて、世界中がひどい飢きんに見舞われると告げた。これは、クラウディウス帝の時代に実際に起こった。
11:29 そこで弟子たちは、それぞれ自分にできる範囲で、ユダヤに住む兄弟姉妹に支援を送ろうと決めた。
11:30 そして実際にそうして、バルナバとサウロに託して、教会の長老たちのもとに届けた。
12:1 そのころ、ヘロデ王が教会の何人かに手を出し、ひどい仕打ちを始めた。
12:2 そして、ヨハネの兄弟ヤコブを剣で殺した。
12:3 それがユダヤ人に喜ばれるのを見て、ヘロデはさらにペトロも捕らえた。それは、種なしパンの祭りの時期だった。
12:4 ヘロデはペトロを捕まえて牢に入れ、四人ずつ四組の兵士に見張らせた。過越の祭りのあとで、民の前に引き出すつもりだったのだ。
12:5 こうしてペトロは牢に閉じ込められていた。でも、教会は彼のために、必死になって神に祈り続けていた。
12:6 ヘロデがペトロを引き出そうとしていた前の晩、ペトロは二本の鎖につながれ、二人の兵士のあいだで眠っていた。戸口の前でも番兵たちが牢を見張っていた。
12:7 すると突然、主の天使が現れ、牢の中が光で照らされた。天使はペトロのわき腹をたたいて起こし、「早く起きなさい」と言った。すると、鎖が彼の両手から外れて落ちた。
12:8 天使は言った。「帯を締めて、サンダルを履きなさい。」ペトロがそのとおりにすると、天使は「上着を羽織って、わたしについて来なさい」と言った。
12:9 ペトロは外に出て、天使について行った。でも、天使がしていることが本当に起きているとは分からなかった。幻を見ているのだと思っていたのだ。
12:10 彼らは第一と第二の見張り所を通り抜け、町に通じる鉄の門まで来た。門はひとりでに開いた。外に出て一つの通りを進むと、天使は急にペトロのそばを離れた。
12:11 ペトロは我に返って言った。「今、本当に分かった。主が天使を送って、ヘロデの手から、そしてユダヤの民が待ち望んでいたすべてのことから、わたしを救い出してくださったのだ。」
12:12 こうして気づいたペトロは、マルコと呼ばれるヨハネの母マリアの家に行った。そこには大勢の人が集まって祈っていた。
12:13 ペトロが門の戸をたたくと、ロデという召し使いの女の子が応対に出てきた。
12:14 彼女はペトロの声だと分かると、うれしさのあまり門を開けもせず、家の中に駆け込んで、ペトロが門の前に立っていると知らせた。
12:15 みんなは彼女に言った。「あなた、どうかしてるよ。」でも彼女は本当だと言い張った。すると、みんなは「それはペトロの天使だ」と言った。
12:16 でもペトロはたたき続けた。彼らが門を開けると、そこにペトロがいたので、みんなびっくりした。
12:17 ペトロは手で静かにするよう合図して、主がどのようにして自分を牢から連れ出してくださったかを話した。そして「このことをヤコブと兄弟姉妹たちに伝えてください」と言い、家を出てほかの場所へ行った。
12:18 朝になると、兵士たちの間で大変な騒ぎが起きた。ペトロはいったいどうなったのか、というわけだ。
12:19 ヘロデはペトロを捜させたが、見つからなかった。それで番兵たちを取り調べたうえで、処刑するように命じた。その後、ヘロデはユダヤからカイサリアに下って、しばらくそこに滞在した。
12:20 さて、ヘロデはティルスとシドンの人々にひどく腹を立てていた。そこで彼らはそろって彼のもとにやって来た。まず王の侍従ブラストを味方につけ、和解を願い出た。自分たちの地方が王の国から食糧を得ていたからだ。
12:21 決められた日に、ヘロデは王の衣装を着て王座に座り、人々に向かって演説を始めた。
12:22 すると民衆は「これは神の声だ。人間の声ではない」と叫んだ。
12:23 その瞬間、主の使いがヘロデを打った。栄光を神に帰さなかったからだ。ヘロデは虫にむしばまれて息絶えた。
12:24 こうして、神の言葉はますます広がり、多くの人に伝わっていった。
12:25 バルナバとサウロは、その務めを果たすと、マルコと呼ばれるヨハネを連れて、エルサレムから帰って行った。
13:1 アンティオキアの教会には、預言者や教師がいた。バルナバ、ニゲルと呼ばれるシメオン、キレネ人のルキオ、領主ヘロデと共に育ったマナエン、そしてサウロである。
13:2 彼らが主に礼拝をささげ、断食をしていると、聖霊がこう告げた。「わたしが選んで呼んだ働きのために、バルナバとサウロをわたしのために選び出しなさい。」
13:3 そこで人々は断食して祈り、二人の上に手を置いてから、送り出した。
13:4 こうして二人は聖霊に送り出され、セレウキアに下り、そこから船でキプロスへ渡った。
13:5 サラミスに着くと、二人はユダヤ人の会堂で神の言葉を伝えた。ヨハネも助手として一緒にいた。
13:6 二人は島全体を巡り、パフォスまで来た。そこで、バルイエスという名のユダヤ人の魔術師で、偽預言者の男に出会った。
13:7 この魔術師は、地方総督のセルギオ・パウロのそばにいた。総督は賢い人で、バルナバとサウロを呼び寄せ、神の言葉を聞きたいと願った。
13:8 ところが、魔術師のエリマ——彼の名前はそういう意味だ——は二人に立ちはだかり、総督を信仰から引き離そうとした。
13:9 しかし、パウロとも呼ばれるサウロは、聖霊に満たされ、エリマをじっと見つめて
13:10 言った。「あらゆる偽りと悪だくみに満ちた者、悪魔の子、あらゆる義の敵よ。おまえは主のまっすぐな道を曲げるのを、いつになったらやめるのか。
13:11 今、見るがいい。主の手がおまえの上に下る。おまえは目が見えなくなり、しばらくの間、太陽を見ることができなくなる。」すると、たちまちエリマの上に霧と闇がかかり、彼は手を引いてくれる人を探して歩き回った。
13:12 これを見た総督は、主の教えに驚き、信じた。
13:13 パウロの一行はパフォスから船出し、パンフィリア地方のペルゲに着いた。ここでヨハネは二人と別れ、エルサレムへ帰って行った。
13:14 しかし、パウロたちはペルゲを通り抜け、ピシディア地方のアンティオキアに着いた。そして安息日に会堂に入り、席に着いた。
13:15 律法と預言者の書が朗読されたあと、会堂の管理者たちが二人に人をやって言った。「兄弟たち、もし皆さんに人々を励ます言葉があれば、話してください。」
13:16 そこでパウロは立ち上がり、手で合図をして言った。「イスラエルの人たち、そして神を敬うみなさん、聞いてください。
13:17 このイスラエルの民の神は、わたしたちの先祖を選び、彼らがエジプトの地で他国人として暮らしていたとき、その民を大きくしてくださった。そして力強い御腕で、彼らをそこから導き出された。
13:18 そして、およそ四十年の間、荒れ野で彼らを我慢強く支えてくださった。
13:19 そして神は、カナンの地にいた七つの民族を滅ぼし、その土地を彼らに受け継がせてくださった。
13:20 ここまで、およそ四百五十年のことだった。その後、預言者サムエルが現れるまで、神は民を導く指導者たちを立ててくださった。
13:21 それから人々は王をほしがった。すると神は、ベニヤミン族のキスの子サウロという人を、四十年の間、彼らに与えられた。
13:22 そして神はサウロを退け、代わりにダビデを立てて彼らの王とされた。神はダビデについて、こう証しされた。『わたしはエッサイの子ダビデを見つけた。彼はわたしの心にかなう者で、わたしの望むことをすべて行う。』
13:23 神は約束のとおり、このダビデの子孫から、イスラエルに救い主イエスを送ってくださった。
13:24 イエスが来られる前に、ヨハネはイスラエルのすべての民に呼びかけ、心を入れ替えたしるしとして洗礼を受けるように伝えていた。
13:25 そしてヨハネは自分の働きを終えようとするとき、こう言っていた。『あなたがたは、わたしを誰だと思っているのか。わたしはその方ではない。でも、わたしの後から来る方がおられる。わたしは、その方の足の履物のひもを解く値打ちもない。』
13:26 兄弟のみなさん、アブラハムの子孫の方々、そしてあなたがたの中で神を敬うみなさん。この救いの言葉は、わたしたちに送られたのです。
13:27 エルサレムに住む人々とその指導者たちは、イエスがどういう方か分からなかった。安息日ごとに読まれる預言者たちの言葉も理解しなかった。そして、イエスを罪ありと決めることで、かえってその預言のとおりのことを実現させてしまったのだ。
13:28 彼らはイエスに死刑にあたる理由を何一つ見つけられなかったのに、ピラトに願って、イエスを殺してもらったのだ。
13:29 そして、イエスについて書かれていたことがすべて実現すると、人々はイエスを木から降ろし、墓に納めた。
13:30 しかし神は、イエスを死者の中からよみがえらせた。
13:31 そのイエスは、ガリラヤからエルサレムまで一緒に上ってきた人たちの前に、何日にもわたって姿を現した。その人たちは今、人々に対してイエスの証人となっている。
13:32 わたしたちも、こうしてあなたたちに良い知らせを伝えている。神が先祖たちに約束したこと、
13:33 その約束を、神はイエスをよみがえらせることで、その子であるわたしたちに実現してくれた。詩編の第二編にもこう書かれているとおりだ。「あなたはわたしの子。わたしは今日、あなたを生んだ。」
13:34 さらに神は、イエスを死者の中からよみがえらせ、もう二度と朽ち果てることのないようにした。それについては、こう語られている。「わたしはあなたたちに、ダビデに約束した確かな祝福を与える。」
13:35 だから、別のところでもこう言われている。「あなたは、あなたの聖なる者を朽ち果てさせることはない。」
13:36 ダビデは、生きていた時代に神の計画のために尽くしたあと、眠りについて先祖たちのそばに葬られ、その体は朽ち果てた。
13:37 しかし、神がよみがえらせた方は、朽ち果てることがなかった。
13:38 だから、兄弟姉妹よ、知っておいてほしい。このイエスを通して、あなたたちに罪の赦しが告げ知らされているのだ。
13:39 モーセの律法によっては義と認められなかったすべてのことについても、信じる者はみな、このイエスによって義と認められる。
13:40 だから気をつけなさい。預言者たちが語ったことが、あなたたちの身に起こらないように。
13:41 「見よ、人を見下す者たち。驚き、そして滅び去れ。わたしはあなたたちの時代に、一つのことを行う。それは、だれかが説明しても、あなたたちが決して信じないようなことだ。」
13:42 パウロたちが会堂を出ていくとき、人々は、次の安息日にもこの話をしてほしいと願った。
13:43 集会が終わると、多くのユダヤ人や、神を敬う改宗者たちが、パウロとバルナバについて来た。二人は彼らに語りかけ、神の恵みの中に生き続けるようにと励ました。
13:44 次の安息日には、町のほとんど全員が、主の言葉を聞こうと集まってきた。
13:45 でも、ユダヤ人たちはその群衆を見て、ねたみでいっぱいになった。そして、パウロの話に反対し、口ぎたなくののしった。
13:46 すると、パウロとバルナバは堂々とこう言った。「神の言葉は、まずあなたたちに語られなければならなかった。でも、あなたたちはそれを拒み、自分には永遠のいのちを受ける資格がないと決めてしまった。だから、わたしたちはこれから、ほかの国々の人たちのところへ向かう。
13:47 主はわたしたちに、こう命じているのだ。『わたしはあなたを、多くの国々を照らす光とした。あなたが、地の果てにまで救いをもたらすためだ。』」
13:48 これを聞いて、ほかの国々の人たちは喜び、主の言葉をたたえた。そして、永遠のいのちに定められていた人たちは、みな信じた。
13:49 こうして、主の言葉はその地方全体に広まっていった。
13:50 ところが、ユダヤ人たちは、神を敬う身分の高い女性たちや、町の有力者たちをあおり立てた。そして、パウロとバルナバを迫害するようにしむけ、二人を自分たちの地域から追い出した。
13:51 そこで二人は、彼らへの抗議のしるしに足のちりを払い落とし、イコニオンへ向かった。
13:52 一方、弟子たちは喜びと聖霊に満たされていた。
14:1 イコニオンでも、二人はいつものようにユダヤ人の会堂に入って話をした。その話し方はとても力強く、ユダヤ人もギリシア人も大勢が信じた。
14:2 でも、信じようとしないユダヤ人たちは、他の民族の人々をあおり立て、兄弟たちに悪い感情を抱かせた。
14:3 それでも二人は長い間そこにとどまり、主に支えられて大胆に語り続けた。主は二人の手を通してしるしや不思議なわざを起こし、恵みの言葉が本物だと証ししてくださった。
14:4 町の人々は二つに分かれた。ある人たちはユダヤ人の側につき、ある人たちは使徒たちの側についた。
14:5 そして、他の民族の人々もユダヤ人も、その指導者たちといっしょになって、二人をひどい目にあわせ、石を投げつけようと動き出した。
14:6 それに気づいた二人は、リカオニア地方の町リストラとデルベ、そしてその周辺の地域へ逃げのびた。
14:7 そこでも二人は福音を伝え続けた。
14:8 リストラに、足の不自由な一人の男がすわっていた。生まれつき足がきかず、一度も歩いたことのない人だった。
14:9 この人がパウロの話を聞いていた。パウロはじっと彼を見つめ、この人には治してもらえるという信仰があると見抜いて、
14:10 大きな声で言った。「自分の足で、まっすぐ立ちなさい。」すると、その人は飛び上がって歩き出した。
14:11 群衆は、パウロがしたことを見て、リカオニアの言葉で声を張り上げた。「神々が人間の姿になって、わたしたちのところに降りて来たんだ。」
14:12 そして、バルナバをゼウス、パウロをヘルメスと呼んだ。パウロが話の中心になっていたからだ。
14:13 町の外にあるゼウス神殿の祭司が、雄牛と花輪を門の前まで持って来た。そして群衆と一緒に、二人にいけにえをささげようとした。
14:14 これを聞いた使徒バルナバとパウロは、自分の服を引き裂き、群衆の中に飛び込んで、大声で叫んだ。
14:15 「皆さん、どうしてこんなことをするんですか。わたしたちも、あなたたちと同じ人間です。わたしたちは、こんなむなしいものから離れて、生きている神に立ち返るように、あなたたちへのいい知らせを伝えているんです。この神は、天と地と海、そしてその中のすべてのものを造った方です。
14:16 この方は、過ぎ去った時代には、すべての民族がそれぞれの道を歩むままにしておかれました。
14:17 それでも、ご自分のことを示す証拠を残さなかったわけではありません。神は恵みを与え、天から雨を降らせ、実りの季節を与えて、あなたたちの心を食べ物と喜びで満たしてくださったのです。」
14:18 こう言って、二人はやっとのことで、群衆が自分たちにいけにえをささげるのをやめさせた。
14:19 ところが、アンティオキアとイコニオンからユダヤ人たちがやって来た。彼らは群衆を説き伏せ、パウロに石を投げつけた。そして、死んだと思って、町の外へ引きずり出した。
14:20 でも、弟子たちが彼を囲むと、パウロは立ち上がって町に入った。そして翌日、バルナバと一緒にデルベへ出発した。
14:21 二人はその町でいい知らせを伝え、多くの人を弟子にした。それから、リストラ、イコニオン、アンティオキアへと引き返した。
14:22 そして、弟子たちの心を強くし、信仰を持ち続けるように励ました。「わたしたちが神の御国に入るには、多くの苦しみを通らなければならない」と語った。
14:23 また、二人はそれぞれの教会で弟子たちのために長老を選び、断食して祈り、彼らを、信じてきた主にゆだねた。
14:24 それから、二人はピシディアを通り抜けて、パンフィリアに着いた。
14:25 二人はペルガで神の言葉を語り、それからアタリアに下って行った。
14:26 そこから船でアンティオキアに帰った。ここは、二人がやり遂げた働きのために、神の恵みにゆだねられて送り出された場所だった。
14:27 アンティオキアに着くと、二人は教会の人たちを集めて、神が自分たちと共にしてくださったことを残らず報告した。そして、神が外国の人たちにも信仰の扉を開いてくださったことを伝えた。
14:28 そして二人は、弟子たちと一緒にしばらくの間そこに滞在した。
15:1 さて、ユダヤから下ってきた何人かが、兄弟姉妹たちにこう教えていた。「モーセの慣習にしたがって割礼を受けなければ、あなたたちは救われない。」
15:2 これをめぐって、パウロやバルナバとその人たちとの間に激しい対立と論争が起こった。そこで、この問題についてエルサレムの使徒たちや長老たちのところへ行くように、パウロとバルナバ、そして仲間の何人かが選ばれた。
15:3 こうして教会に送り出された一行は、フェニキアとサマリアを通り抜けながら、外国の人たちが神に立ち返ったことをくわしく語った。それを聞いて、すべての兄弟姉妹は大いに喜んだ。
15:4 エルサレムに着くと、一行は教会と使徒たち、長老たちに迎えられ、神が自分たちと共にしてくださったことを残らず報告した。
15:5 ところが、ファリサイ派の中から信者になっていた人たちが立ち上がり、こう言った。「外国の人たちにも割礼を受けさせ、モーセの律法を守るように命じなければならない。」
15:6 そこで、使徒たちと長老たちは、この問題について話し合うために集まった。
15:7 議論が長く続いたあと、ペトロが立ち上がって、みんなに言った。「兄弟のみなさん、ご存じのとおり、神はずっと前に、あなたがたの中からわたしを選ばれました。わたしの口を通して、外国の人たちが福音の言葉を聞いて信じるようにするためです。
15:8 そして、人の心を見抜かれる神は、わたしたちと同じように彼らにも聖霊を与えて、彼らを受け入れていることを示してくださいました。
15:9 神はわたしたちと彼らとの間に何の差別もつけず、信仰によって彼らの心をきよめてくださったのです。
15:10 それなのに、どうして今、あなたがたは神を試すようなことをするのですか。わたしたちの先祖もわたしたち自身も負いきれなかった重荷を、なぜ弟子たちの首に負わせようとするのですか。
15:11 わたしたちは、主イエスの恵みによって救われると信じています。それは彼らも同じです。」
15:12 すると、集まっていた人たちはみな静かになった。そして、バルナバとパウロが、神が自分たちを通して外国の人たちの間で行われた数々のしるしや不思議を語るのに、じっと耳を傾けた。
15:13 二人が話し終えると、ヤコブが答えて言った。「兄弟のみなさん、聞いてください。
15:14 神が最初にどのように心を配って、外国の人たちの中からご自分の名を負う民を選び取られたか、シメオンが話してくれました。
15:15 預言者たちの言葉も、このことと一致しています。こう書かれているとおりです。
15:16 『このあと、わたしは戻って来て、倒れたダビデの家を建て直す。その壊れた部分を建て直し、元どおりにする。
15:17 それは、残された人たちが、そしてわたしの名で呼ばれるすべての外国の人たちが、主を求めるようになるためだ。これらのことを行う主が、そう言われる。
15:18 これらのことは、昔から知らされていた。』
15:19 だから、わたしはこう考える。神に立ち返る外国の人たちに、余計な負担をかけるべきではない。
15:20 ただ、偶像に供えて汚れたもの、性的な乱れ、絞め殺した動物の肉、そして血を避けるように、手紙で伝えよう。
15:21 モーセの教えは、昔からどの町でも語り継がれ、安息日ごとに会堂で読まれてきたのだから。」
15:22 そこで、使徒たちと長老たちは、教会全体とともに、自分たちの中から人を選び、パウロやバルナバといっしょにアンティオキアへ送ることにした。選ばれたのは、バルサバと呼ばれるユダと、シラスだった。二人は、信者たちの中で指導的な立場にある人だった。
15:23 そして、二人に次のような手紙を託した。「使徒と長老である兄弟たちから、アンティオキア、シリア、キリキアにいる外国人の兄弟姉妹たちへ、ごあいさつを送ります。
15:24 わたしたちの中のある人たちが、こちらから出て行って、あなたがたを言葉で不安にさせ、心を乱したと聞きました。でも、彼らはわたしたちが指示したわけではありません。
15:25 そこでわたしたちは、心を一つにして人を選び、わたしたちの愛するバルナバとパウロといっしょに、あなたがたのもとへ送ることにしました。
15:26 この二人は、わたしたちの主イエス・キリストの名のために、自分の命をかけてきた人たちです。
15:27 それで、ユダとシラスも送ります。彼らも、同じことを直接口で伝えてくれるでしょう。
15:28 聖霊とわたしたちは、次の欠かせないこと以外に、あなたがたへこれ以上の負担をかけないことにしました。
15:29 つまり、偶像に供えられたもの、血、絞め殺した動物の肉、そして性的な乱れを避けることです。これらを避けていれば、それでいいのです。では、お元気で。」
15:30 こうして一行は送り出され、アンティオキアへ下って行った。そして信者たちを集めて、その手紙を手渡した。
15:31 人々はそれを読んで、その励ましに喜んだ。
15:32 ユダとシラスも預言者だったので、たくさんの言葉で兄弟姉妹たちを励まし、力づけた。
15:33 二人はしばらくそこで過ごしたあと、兄弟姉妹たちに見送られ、平安のうちに、自分たちを送り出した人たちのもとへ帰って行った。
15:34 しかし、シラスだけはそこに残ることにした。
15:35 一方、パウロとバルナバはアンティオキアにとどまり、ほかの多くの人たちと一緒に、主の言葉を教え、宣べ伝えていた。
15:36 何日かたって、パウロはバルナバにこう言った。「もう一度戻って、わたしたちが主の言葉を伝えたすべての町の兄弟姉妹たちを訪ね、みんながどうしているか見てこよう。」
15:37 バルナバは、マルコと呼ばれるヨハネも一緒に連れて行きたいと思っていた。
15:38 でもパウロは、パンフィリアで自分たちから離れ、一緒に働こうとしなかったこの人を連れて行くべきではないと考えた。
15:39 それで二人は激しく対立し、別々の道を行くことになった。バルナバはマルコを連れてキプロスへ船出し、
15:40 パウロはシラスを選び、兄弟姉妹たちから主の恵みにゆだねられて出発した。
15:41 そして、シリアとキリキアを通りながら、教会を力づけていった。
16:1 パウロはデルベに、それからリストラにも着いた。そこにテモテという弟子がいた。母親はユダヤ人の信者で、父親はギリシア人だった。
16:2 テモテは、リストラとイコニオンの信者たちから評判のいい人だった。
16:3 パウロは彼を旅に連れて行きたいと思った。それで、その地方に住むユダヤ人たちのことを考えて、テモテに割礼を受けさせた。彼の父親がギリシア人だと、みんなが知っていたからだ。
16:4 彼らは町々を回りながら、エルサレムにいる使徒たちと長老たちが決めた項目を人々に伝え、それを守るように教えた。
16:5 こうして、各地の教会は信仰を強められ、その人数も日ごとに増えていった。
16:6 彼らはフリギアとガラテヤの地方を通っていった。聖霊が、アジア州でみことばを語ることを止めたからだ。
16:7 ミシアの近くまで来て、ビティニアに入ろうとした。でも、イエスの霊がそれを許さなかった。
16:8 そこで彼らはミシアを通り過ぎ、トロアスに下っていった。
16:9 その夜、パウロは幻を見た。一人のマケドニア人が立っていて、「マケドニアに渡ってきて、わたしたちを助けてください」と願っていた。
16:10 パウロがこの幻を見たとき、わたしたちはすぐにマケドニアへ向かおうとした。神がわたしたちを呼んで、その人たちに福音を伝えさせようとしているのだと分かったからだ。
16:11 わたしたちはトロアスから船出し、まっすぐサモトラケに向かった。そして翌日、ネアポリスに着いた。
16:12 そこからフィリピに行った。フィリピはマケドニア州のこの地方でおもだった町で、ローマの植民都市だった。わたしたちは、この町に何日か滞在した。
16:13 安息日に、わたしたちは町の門を出て、川のほとりに行った。そこに祈りの場所があると思ったからだ。そして腰を下ろし、集まってきた女性たちに話をした。
16:14 その中に、リディアという女性がいた。ティアティラの町の出身で、紫の布を売る商人だった。彼女は神を敬う人で、話に耳を傾けていた。主が彼女の心を開いてくださったので、パウロの語ることにしっかり聞き入った。
16:15 そして彼女は、家族といっしょに洗礼を受けた。それから、こう言ってわたしたちに頼んだ。「わたしを主を信じる者だと認めてくださるなら、どうかわたしの家に来て泊まってください。」こうして、わたしたちに強く願い込んだ。
16:16 ある日、わたしたちが祈りの場所へ向かっていると、一人の女奴隷に出会った。彼女には占いの霊が取りついていて、占いで主人たちに大きな利益をもたらしていた。
16:17 彼女はパウロとわたしたちのあとをついてきて、大声で叫んだ。「この人たちは、いと高き神に仕える者だ。あなたたちに救いの道を伝えているのだ。」
16:18 彼女は何日もこれを続けた。パウロはうんざりして、振り向いて霊に言った。「イエス・キリストの名によって命じる。この女から出て行け。」すると霊は、その場ですぐに出て行った。
16:19 彼女の主人たちは、もうけの望みがなくなったのを見て、パウロとシラスを捕まえ、広場へ引いていって、役人たちの前に連れ出した。
16:20 そして二人を高官たちの前に引き出して、こう言った。「この人たちはユダヤ人で、わたしたちの町を混乱させています。
16:21 ローマ人であるわたしたちが受け入れることも、行うことも許されない習慣を広めているのです。」
16:22 群衆も一緒になって二人を責めたてた。高官たちは二人の服をはぎ取り、むちで打つように命じた。
16:23 何度もむちで打ったあと、二人を牢に入れ、看守にしっかり見張るように命じた。
16:24 この命令を受けた看守は、二人を牢の奥に入れ、両足を木の枷につないだ。
16:25 真夜中ごろ、パウロとシラスは祈りながら神をたたえる歌を歌っていた。ほかの囚人たちも、それに聞き入っていた。
16:26 すると突然、大きな地震が起きた。牢の土台が揺れ動くほどだった。そのとたん、すべての戸が開き、みんなの鎖も外れてしまった。
16:27 看守は目を覚まし、牢の戸が開いているのを見た。囚人たちが逃げてしまったと思い込み、剣を抜いて自害しようとした。
16:28 だがパウロが大声で叫んだ。「自分を傷つけてはいけない。わたしたちはみんなここにいる。」
16:29 看守は明かりを持ってこさせ、中に飛び込んだ。そして震えながら、パウロとシラスの前にひれ伏した。
16:30 それから二人を外に連れ出して言った。「先生方、救われるためには、どうすればいいのでしょうか。」
16:31 二人は答えた。「主イエスを信じなさい。そうすれば、あなたも家族も救われます。」
16:32 そして看守とその家にいたすべての人に、主の言葉を語った。
16:33 看守はその夜のうちに二人を引き取り、傷を洗ってやった。そして、彼自身も家族もみんな、すぐに洗礼を受けた。
16:34 それから二人を自分の家に案内し、食事を用意した。そして神を信じるようになった喜びで、家族そろって満たされた。
16:35 朝になると、高官たちは下役たちを送り、「あの人たちを釈放せよ」と伝えた。
16:36 看守はこの言葉をパウロに伝えた。「あなたがたを釈放するようにと、高官たちが言ってきました。だから今、ここを出て、安心して行ってください。」
16:37 ところがパウロは下役たちにこう言った。「わたしたちはローマ市民なのに、裁判もせず、みんなの前でむち打ち、牢に入れたのです。それなのに今度は、こっそり追い出そうというのですか。そうはいきません。高官たち自身がここに来て、わたしたちを連れ出すべきです。」
16:38 下役たちがこの言葉を高官たちに伝えると、二人がローマ市民だと聞いて、高官たちは恐ろしくなった。
16:39 そして自分たちで出向いて二人に謝り、牢から連れ出して、町から出て行ってほしいと頼んだ。
16:40 牢を出た二人はリディアの家に行った。そして仲間たちに会って励まし、町を出発した。
17:1 それからアンフィポリスとアポロニアを通って、テサロニケに着いた。そこにはユダヤ人の会堂があった。
17:2 パウロはいつものように会堂に入り、三回の安息日にわたって、聖書をもとに人々と語り合った。
17:3 そして聖書を解き明かしながら、こう説明した。「キリストは必ず苦しみを受け、死んでよみがえるはずでした。わたしがあなたがたに伝えているこのイエスこそ、そのキリストなのです。」
17:4 すると、そのうちの何人かが納得して、パウロとシラスの仲間に加わった。神をあがめるギリシア人も大勢加わり、有力な女性たちも少なからず加わった。
17:5 ところがこれをねたんだユダヤ人たちは、広場にたむろするならず者を何人か引き入れ、群衆を集めて町を騒がせた。そしてヤソンの家に押しかけ、二人を群衆の前に引き出そうと捜した。
17:6 しかし二人が見つからないので、ヤソンと何人かの仲間を町の役人たちのところへ引きずって行き、こう叫んだ。「世界中を騒がせてきた連中が、ここにもやって来たのです。
17:7 そのヤソンが、この連中を家に迎え入れたのです。しかもこの連中はみんな、皇帝の決まりに逆らって、イエスという別の王がいると言っているのです。」
17:8 これを聞いた群衆と町の役人たちは、動揺した。
17:9 そして役人たちは、ヤソンとほかの者たちから保証金を取ったうえで、彼らを釈放した。
17:10 仲間たちはすぐ、その夜のうちにパウロとシラスをベレアへ送り出した。二人はベレアに着くと、ユダヤ人の礼拝堂に入って行った。
17:11 ここの人たちは、テサロニケの人たちよりも素直だった。彼らは大いに関心を持って言葉を受け入れ、それが本当にそのとおりなのか、毎日聖書を調べた。
17:12 その結果、彼らのうちの多くが信じた。身分の高いギリシア人の女性たちや、男性たちも少なからず信じた。
17:13 ところがテサロニケのユダヤ人たちは、ベレアでもパウロが神の言葉を伝えていると知って、そこにも押しかけ、群衆を扇動して騒ぎを起こした。
17:14 そこで仲間たちは、すぐにパウロを海のほうへ送り出した。シラスとテモテはベレアに残った。
17:15 パウロを案内した人たちは、彼をアテネまで連れて行った。そして、シラスとテモテにできるだけ早く来てほしいという言づけを受け取って、帰って行った。
17:16 パウロはアテネで二人を待っていた。だが、町が偶像でいっぱいなのを見て、心を痛めた。
17:17 そこでパウロは礼拝堂で、ユダヤ人や神をあがめる人たちと語り合い、また広場でも毎日、居合わせた人たちと語り合った。
17:18 エピクロス派やストア派の哲学者たちも何人か、パウロと議論を始めた。ある者は「このおしゃべりは、いったい何を言おうとしているのか」と言い、別の者は「どうやら、よその神々を宣伝しているらしい」と言った。パウロがイエスと復活のことを伝えていたからである。
17:19 そして彼らはパウロを連れて、アレオパゴスという議会に引っぱっていった。そして言った。「あなたが語っているその新しい教えが、どんなものなのか、教えてもらえないか。
17:20 あなたはわたしたちの耳に、聞きなれないことを吹き込んでいる。だから、それがどういう意味なのか知りたいのだ。」
17:21 アテネの人たちは、そこに住む外国人もふくめて、みんな新しい話をしたり聞いたりすることばかりに時間を使っていた。
17:22 そこでパウロは、アレオパゴスの真ん中に立って言った。「アテネの皆さん。あなたがたは、あらゆる点でとても信心深いと、わたしは見ています。
17:23 町を歩きまわって、あなたがたが拝んでいるものをよく見ていたら、こう刻まれた祭壇まで見つけました。『知られざる神へ』。あなたがたはそれと知らずにこの神を拝んでいます。わたしは、その神をあなたがたに伝えます。
17:24 世界とその中のすべてのものを造った神。この方こそ、天と地の主です。だから、人の手で造った神殿には住みません。
17:25 また、何かが足りないかのように、人の手で世話をされることもありません。むしろ神ご自身が、すべての人に命と息と、あらゆるものを与えているのです。
17:26 神は一人の人からすべての民族を造り、地の全面に住まわせました。そして、それぞれの時代を定め、住む場所の境も決めました。
17:27 それは人々が神を求め、手さぐりでもして、神を見つけられるようにするためです。実際、神はわたしたち一人ひとりから、そう遠くにはいません。
17:28 わたしたちは神の中で生き、動き、存在しているのですから。あなたがたの詩人の何人かも、こう言っています。『わたしたちは神の子孫だ』と。
17:29 わたしたちが神の子孫であるなら、神を、金や銀や石、つまり人の技と考えでかたどったものと同じだ、と考えてはいけません。
17:30 神は、こうした無知の時代を大目に見てきました。しかし今は、どこにいるどんな人にも、心を入れかえるようにと命じています。
17:31 神は、この世界を義によってさばく日を決めているからです。そのさばきを行うのは、神が選んだ一人の人です。神はその人を死者の中から復活させることで、すべての人にその証拠を示したのです。」
17:32 死者の復活のことを聞くと、ある人たちはあざ笑い、またある人たちは「そのことについては、また聞かせてもらおう」と言った。
17:33 こうしてパウロは、その場を去っていった。
17:34 しかし、何人かの人たちはパウロについて行き、信じるようになった。その中には、アレオパゴスの議員ディオニシオや、ダマリスという女性、そのほかの人たちもいた。
18:1 その後、パウロはアテネを離れてコリントへ行った。
18:2 そこで、アキラという名前のユダヤ人に出会った。ポントス生まれのこの人は、少し前にイタリアから来ていた。皇帝クラウディウスが、すべてのユダヤ人にローマを出て行くよう命じたからだ。パウロは、妻のプリスキラといっしょにいたこの夫婦のもとを訪ねた。
18:3 二人はパウロと同じ職業だったので、パウロは彼らのところに住み込んで、いっしょに働いた。彼らはテント作りを仕事にしていたのだ。
18:4 そしてパウロは、安息日ごとに会堂で語り合い、ユダヤ人にもギリシア人にも語りかけて、信じさせようとした。
18:5 シラスとテモテがマケドニアから下って来ると、パウロは語ることに専念し、イエスこそキリストだと、ユダヤ人たちにはっきりと証しした。
18:6 しかし彼らが反抗し、口ぎたなくののしったので、パウロは服のちりを払い落として、彼らに言った。「あなたがたが滅びても、その責任はあなたがた自身にある。わたしには関係ない。今からは、ほかの国の人たちのところへ行く。」
18:7 パウロはそこを離れて、神を敬うティティオ・ユストという人の家に入った。その家は、会堂のすぐ隣にあった。
18:8 会堂長のクリスポは、家の者全員とともに主を信じた。また、多くのコリントの人たちも、これを聞いて信じ、洗礼を受けた。
18:9 ある夜、主が幻の中でパウロに言った。「恐れることはない。語り続けなさい。黙ってはいけない。
18:10 わたしがあなたと共にいる。だれもあなたに襲いかかって傷つけることはない。この町には、わたしの民がたくさんいるのだから。」
18:11 そこでパウロは一年半のあいだ腰を据えて、人々の間で神の言葉を教えた。
18:12 ガリオがアカイアの地方総督だったとき、ユダヤ人たちは一団となってパウロに襲いかかり、彼を裁判の座に引いて行った。
18:13 そして言った。「この男は、律法に反するやり方で神を礼拝するように、人々をそそのかしています。」
18:14 パウロが口を開こうとすると、ガリオがユダヤ人たちに言った。「ユダヤの人たち、これが何か不正な行いか悪質な犯罪なら、あなたがたの訴えを聞くのも当然だろう。
18:15 だが、問題が言葉や名前、それにあなたがた自身の律法についてのことなら、自分たちで解決しなさい。わたしは、そんなことの裁判官になるつもりはない。」
18:16 そして、彼らを裁判の座から追い払った。
18:17 すると人々は皆、会堂長のソステネを捕まえて、裁判の座の前で殴りつけた。だが、ガリオはこれにまったく関心を示さなかった。
18:18 パウロはその後もしばらく滞在してから、兄弟姉妹たちに別れを告げて、船でシリアへ向かった。プリスキラとアキラも一緒だった。パウロは誓いを立てていたので、その前にケンクレアイで髪を切っていた。
18:19 一行はエフェソに着いた。パウロは二人をそこに残し、自分は会堂に入ってユダヤ人たちと論じ合った。
18:20 人々はもっと長くいてほしいと頼んだが、パウロは応じなかった。
18:21 別れを告げ、「神が望まれるなら、また戻ってきます」と言って、エフェソから船出した。
18:22 カイサリアに着くと、エルサレムに上って教会に挨拶し、それからアンティオキアへ下って行った。
18:23 しばらくそこで過ごしてから、また旅に出た。ガラテヤ地方やフリギアを次々とめぐって、弟子たちをみな力づけていった。
18:24 そのころ、アポロという名のユダヤ人がいた。アレクサンドリア生まれで、話がうまく、聖書に詳しい人だった。この人がエフェソにやって来た。
18:25 彼は主の道を教えられていて、心を燃やしてイエスのことを正確に語り、教えていた。ただし、ヨハネの洗礼しか知らなかった。
18:26 彼は会堂で大胆に語り始めた。それを聞いたプリスキラとアキラは、彼を招き入れ、神の道をもっと正確に説明してあげた。
18:27 アポロがアカイアへ渡りたいと思ったので、兄弟姉妹たちは彼を励まし、向こうの弟子たちに彼を歓迎してくれるよう手紙を書いた。到着すると、彼は恵みによって信じた人々を大いに助けた。
18:28 彼は公の場で力強くユダヤ人たちを論破し、イエスこそキリストであることを聖書から示したのである。
19:1 アポロがコリントにいたころ、パウロは内陸の地方を通ってエフェソにやって来た。そこで何人かの弟子に出会った。
19:2 パウロは彼らに尋ねた。「あなたがたは信じたとき、聖霊を受けましたか。」すると彼らは答えた。「いいえ。聖霊がおられることさえ、聞いたことがありません。」
19:3 パウロは言った。「では、どんなバプテスマ（洗礼）を受けたのですか。」彼らは答えた。「ヨハネのバプテスマです。」
19:4 そこでパウロは言った。「ヨハネは、心を入れ替えて神に立ち返る印としてバプテスマを授けました。そして、自分の後に来る方を信じるようにと人々に語ったのです。その方こそイエスです。」
19:5 これを聞いて、彼らは主イエスの名によってバプテスマを受けた。
19:6 そしてパウロが彼らの上に手を置くと、聖霊が彼らに下った。すると彼らはいろいろな言葉で語りだし、預言をした。
19:7 その人たちは、みなで十二人ほどだった。
19:8 それからパウロは会堂に入り、三か月の間、堂々と語り続けた。神の国について論じ、人々を説得しようとしたのだ。
19:9 しかし、中には心をかたくなにして信じようとせず、大勢の前でこの道のことを悪く言う者たちがいた。そこでパウロは彼らのもとを離れ、弟子たちを別に集めて、毎日ティラノの講堂で語り合った。
19:10 これが二年間続いた。そのおかげで、アジア州に住むユダヤ人もギリシャ人も、みな主の言葉を聞くことになった。
19:11 神は、パウロの手を通して、並外れた奇跡を次々に行われた。
19:12 パウロの体に触れた手ぬぐいや前掛けを病人のところに持って行くだけで、その病気は去り、悪霊も出て行ったほどだった。
19:13 ところで、あちこちを巡り歩いて悪霊を追い出すユダヤ人たちの中にも、主イエスの名を使ってみようとする者たちがいた。彼らは悪霊に取りつかれた人に向かって、「パウロが宣べ伝えているあのイエスの名によって、お前たちに命じる」と言うのだった。
19:14 こんなことをしていたのは、ユダヤ人の祭司長スケワという人の七人の息子たちだった。
19:15 すると悪霊が答えて言った。「イエスのことは知っている。パウロのこともよく分かっている。だが、お前たちはいったい何者だ。」
19:16 そして悪霊に取りつかれた男が彼らに飛びかかり、みんなを押さえつけて、力ずくでねじ伏せた。そのため彼らは裸にされ、傷を負って、その家から逃げ出したのだった。
19:17 このことは、エフェソに住むユダヤ人にもギリシャ人にも、みなに知れ渡った。そして人々はみな恐れを抱き、主イエスの名がますますあがめられるようになった。
19:18 信じた人の多くがやって来て、自分のしてきたことを打ち明け、包み隠さず話した。
19:19 また、魔術を行っていた者が大勢、自分の本を持ち寄って、みなの前で焼き捨てた。その値段を計算してみると、銀貨五万枚にもなった。
19:20 こうして主の言葉は力強く広まり、勢いを増していった。
19:21 これらのことが終わると、パウロはマケドニアとアカイアを通ってエルサレムへ行こうと心に決めた。そして、「そこへ行ったあとは、ローマも見なければならない」と言った。
19:22 そこで、彼を助けていた二人、テモテとエラストをマケドニアに送り出し、自分はもうしばらくアジア州にとどまった。
19:23 ちょうどそのころ、この道をめぐって、かなり大きな騒動が起こった。
19:24 というのは、デメトリオという名の銀細工師がいて、アルテミス神殿の模型を銀で作り、職人たちにかなりの儲けをもたらしていたのだ。
19:25 デメトリオは、その職人たちと、同じような仕事をしている者たちを集めて、こう言った。「みなさん、わたしたちがこの仕事で豊かな暮らしをしていることは、よくご存じでしょう。
19:26 ところが、あのパウロという男は、『人の手で造ったものは神ではない』と言って、大勢の人を丸め込み、考えを変えさせている。しかもそれは、このエフェソだけでなく、アジア州のほとんど全体に広がっている。あなたがたも、それを見たり聞いたりしているはずだ。
19:27 このままでは、わたしたちの商売の評判が地に落ちるだけではない。偉大な女神アルテミスの神殿までもが軽んじられ、アジア州全体、いや世界中が拝んでいるこの女神の威光さえ、失われてしまいかねないのだ。」
19:28 これを聞いた人々は、怒りで胸をいっぱいにして、「エフェソのアルテミスは偉大だ」と叫び始めた。
19:29 町中が大混乱に陥った。人々は、パウロの旅の仲間であるマケドニア人のガイオとアリスタルコを捕まえ、いっせいに劇場へと押し寄せた。
19:30 パウロは群衆の中に入って行こうとしたが、弟子たちが止めた。
19:31 また、パウロの友人だったアジア州の役人たちも、劇場には入らないようにと、人をやって頼んだ。
19:32 集まった人々は、口々に違うことを叫んでいた。集会は大混乱で、ほとんどの人は、自分たちがなぜ集まっているのかさえ分かっていなかった。
19:33 ユダヤ人たちがアレクサンドロという男を前に押し出したので、群衆の中の何人かが彼にあれこれ指図した。アレクサンドロは手で合図をして、人々に弁明しようとした。
19:34 しかし、彼がユダヤ人だと分かると、みんなが声をそろえて、二時間ほども「エフェソのアルテミスは偉大だ」と叫び続けた。
19:35 そこで、町の書記官が群衆を静めて、こう言った。「エフェソのみなさん、このエフェソの町が、偉大なアルテミスと、天から落ちて来たご神体を守る町だということを、知らない人などいるでしょうか。
19:36 これはだれにも否定できない事実です。だから、あなたがたは落ち着いて、軽はずみなことをしてはいけません。
19:37 あなたがたが連れて来たこの人たちは、神殿の物を盗んだわけでもなく、わたしたちの女神を悪く言ったわけでもありません。
19:38 だから、もしデメトリオと仲間の職人たちがだれかに訴えたいことがあるなら、裁判の日はあるし、総督もいます。そこで互いに訴え合えばいいのです。
19:39 それ以外に何か求めたいことがあるなら、正式な議会で解決すればいいでしょう。
19:40 今日の騒ぎのことで、わたしたちが暴動の罪に問われる危険もあるのです。しかも、こんな騒ぎについて、説明できるような理由は何もありません。」
19:41 書記官はこう言って、集まった人々を解散させた。
20:1 騒ぎがおさまると、パウロは弟子たちを呼び集めて励まし、別れのあいさつをして、マケドニアへ向けて出発した。
20:2 そして、その地方を巡り歩き、多くの言葉で人々を励ましながら、ギリシアにやって来た。
20:3 そこで三か月を過ごした。ところが、シリアへ船出しようとしていたとき、ユダヤ人たちが彼を狙う計画を立てた。そこでパウロは、マケドニアを通って帰ることにした。
20:4 彼に同行したのは、ベレアの人でピロの子ソパトロ、テサロニケの人アリスタルコとセクンド、デルベの人ガイオ、それにテモテ、そしてアジア州の人テキコとトロフィモだった。
20:5 この人たちは先に行って、トロアスでわたしたちを待っていた。
20:6 わたしたちは種なしパンの祭りが終わってから、フィリピを船で出発した。そして五日かけてトロアスの彼らのところに着き、そこで七日間過ごした。
20:7 週の初めの日、わたしたちはパンを裂くために集まっていた。パウロは翌日出発するつもりだったので、人々に話し続け、真夜中まで語り続けた。
20:8 わたしたちが集まっていた階上の部屋には、たくさんの明かりがともっていた。
20:9 エウテコという若者が窓のところに腰かけていたが、パウロの話が長く続くうちに、深い眠りに引き込まれていった。そしてすっかり眠り込んでしまい、三階から下に落ちてしまった。抱き起こしてみると、もう死んでいた。
20:10 パウロは下に降りて行き、彼の上にかがみ込んで抱きかかえ、こう言った。「心配しなくていい。この子はまだ生きている。」
20:11 そして再び上に上がり、パンを裂いて食べた。それから夜が明けるまで長い間語り合い、出発した。
20:12 人々は生き返った少年を連れて帰り、この上なく慰められた。
20:13 わたしたちは先に船に乗り込み、アソスに向けて出航した。そこでパウロを乗せることになっていたのだ。パウロ自身は陸路で行くつもりで、そう決めていた。
20:14 パウロがアソスでわたしたちと落ち合うと、わたしたちは彼を船に乗せて、ミティレネに着いた。
20:15 そこから船出して、翌日キオス島の沖に着いた。その次の日にはサモス島に立ち寄り、さらに次の日にはミレトスに着いた。
20:16 パウロはエフェソに寄らずに通り過ぎることに決めていた。アジア州で時間を取られたくなかったからだ。できれば五旬祭の日までにエルサレムに着こうと、彼は急いでいた。
20:17 パウロはミレトスからエフェソに使いを送り、教会の長老たちを呼び寄せた。
20:18 彼らがパウロのところに来ると、パウロはこう言った。「わたしがアジア州に足を踏み入れた最初の日から、あなたがたと一緒にいた間ずっと、どのように過ごしてきたか、あなたがた自身がよく知っています。
20:19 わたしはいつも謙遜の限りを尽くし、涙を流しながら、そしてユダヤ人たちの陰謀によって降りかかった数々の苦難の中で、主に仕えてきました。
20:20 あなたがたの役に立つことは何一つ隠さず、公の場でも家々でも、あなたがたに伝え、教えてきました。
20:21 ユダヤ人にもギリシア人にも、神に立ち帰ること、そしてわたしたちの主イエスへの信仰を、はっきりと証ししてきたのです。
20:22 そして今、わたしは霊に促されるようにしてエルサレムへ向かおうとしています。そこで自分の身に何が起こるのか、わたしには分かりません。
20:23 ただ、行く先々の町で聖霊がわたしに告げています。投獄と苦難がわたしを待っている、と。
20:24 でも、わたしは自分の命を少しも惜しいとは思っていません。自分の走るべき道を走り抜き、主イエスから受けた務めを果たせるなら、それでいいのです。その務めとは、神の恵みの福音を伝えることです。
20:25 そして今、はっきり分かっています。御国を宣べ伝えながら共に過ごしてきたあなたがた皆が、もう二度とわたしの顔を見ることはないでしょう。
20:26 だから、今日はっきり言っておきます。だれの血についても、わたしには責任がありません。
20:27 なぜなら、神のご計画のすべてを、わたしはためらわずにあなたがたに伝えてきたからです。
20:28 あなたがたは、自分自身と群れ全体に気をつけてください。聖霊はあなたがたを、その群れを見守る監督者として立てたのです。神がご自分の血をもって手に入れた、神の教会を羊飼いのように守り育てるためです。
20:29 わたしには分かっています。わたしが去った後、どう猛な狼があなたがたの中に入り込み、群れを容赦なく襲うでしょう。
20:30 さらに、あなたがた自身の中からも、真理をゆがめて語る者たちが現れ、弟子たちを引き込んで自分の後に従わせようとするでしょう。
20:31 だから、目を覚ましていてください。わたしは三年の間、昼も夜も、涙を流しながら一人ひとりに注意し続けました。そのことを忘れないでください。
20:32 そして今、わたしはあなたがたを神に、そしてその恵みの言葉にゆだねます。この言葉には、あなたがたを育て上げ、聖なるものとされたすべての人と共に受け継ぐものを与える力があります。
20:33 わたしは、だれの銀も金も衣服もほしがりませんでした。
20:34 あなたがた自身が知っているとおり、わたしはこの手で働いて、自分に必要なものも、一緒にいる仲間に必要なものも満たしてきました。
20:35 わたしはあらゆることで、あなたがたに手本を示してきました。こうして一生懸命働いて、弱い人たちを助けなければならないのです。そして、主イエスご自身が言われた言葉を忘れないでください。「受けるよりも与えるほうが幸いだ。」
20:36 こう話し終えると、パウロは皆と一緒にひざまずいて祈った。
20:37 皆は声を上げて泣き、パウロの首を抱いて何度も口づけした。
20:38 特に、もう二度と自分の顔を見ることはないと言われた言葉に、皆は深く悲しんだ。そして、パウロを船まで見送った。
21:1 わたしたちは人々と別れて船を出し、まっすぐな航路でコス島に着いた。翌日にはロドス島へ、そこからパタラへと進んだ。
21:2 そこでフェニキアへ渡る船を見つけ、それに乗り込んで出航した。
21:3 やがてキプロス島が見えてきたが、それを左手に見ながら通り過ぎ、シリアへ向かって進み、ティルスに上陸した。船がそこで積み荷を降ろすことになっていたからだ。
21:4 わたしたちは弟子たちを捜し当て、そこに七日間滞在した。彼らは霊に動かされて、エルサレムには行かないようにとパウロに何度も言った。
21:5 滞在の日々を終えると、わたしたちは出発して旅を続けた。人々はみな、妻や子どもたちも一緒に、町の外まで見送ってくれた。そして浜辺にひざまずいて祈り、
21:6 互いに別れのあいさつを交わした。それからわたしたちは船に乗り込み、彼らは家へ帰っていった。
21:7 わたしたちはティルスからの航海を終えて、プトレマイスに着いた。そこで兄弟姉妹にあいさつをし、一日彼らのもとに滞在した。
21:8 翌日、わたしたちはそこを出てカイサリアに着いた。そして福音を伝える人フィリポの家に入り、そこに泊まった。彼は例の七人のひとりだった。
21:9 フィリポには、結婚していない四人の娘がいて、みな預言をしていた。
21:10 わたしたちが何日もそこに滞在していると、アガボという名の預言者がユダヤから下って来た。
21:11 彼はわたしたちのところに来ると、パウロの帯を取って自分の足と手を縛り、こう言った。「聖霊がこう言われる。『この帯の持ち主を、エルサレムのユダヤ人たちはこのように縛り、外国人の手に引き渡す。』」
21:12 これを聞いて、わたしたちも土地の人々も、エルサレムには行かないようにとパウロに頼んだ。
21:13 すると、パウロはこう答えた。「なぜ泣いて、わたしの心をくじくのですか。わたしは主イエスの名のためなら、エルサレムで縛られるだけでなく、死ぬ覚悟までできているのです。」
21:14 パウロが聞き入れてくれないので、わたしたちは「主のみこころが行われますように」と言って、それ以上は黙った。
21:15 それから何日かたって、わたしたちは旅の支度をして、エルサレムへ上って行った。
21:16 カイサリアの弟子たちも何人か、わたしたちといっしょに来た。彼らは、わたしたちを泊めてくれるムナソンという人のところへ案内してくれた。ムナソンはキプロス島の出身で、古くからの弟子だった。
21:17 エルサレムに着くと、兄弟姉妹たちはわたしたちを喜んで迎えてくれた。
21:18 翌日、パウロはわたしたちといっしょにヤコブのところへ行った。長老たちも全員集まっていた。
21:19 パウロは彼らにあいさつをすると、自分の働きを通して神が外国の人々の間でなさったことを、一つ一つ詳しく話した。
21:20 それを聞いた人々は神をあがめた。そして、パウロにこう言った。「兄弟、あなたも知っているとおり、ユダヤ人の中には信じるようになった人が何万人もいます。しかも、みんな律法を熱心に守る人たちなのです。
21:21 ところが、あなたについてこんなうわさが伝わっています。あなたは外国に住むユダヤ人みんなに、モーセの教えを捨てるようにと教えている、子どもに割礼を受けさせるな、昔からのしきたりに従うな、と言っている、というのです。
21:22 では、どうしたらいいでしょう。あなたが来たことは、必ず彼らの耳に入ります。
21:23 そこで、わたしたちの言うとおりにしてください。ここに、誓いを立てている男が四人います。
21:24 この人たちを連れて行き、いっしょに身を清めてください。そして、彼らが頭をそれるように、費用を出してあげてください。そうすれば、あなたについてのうわさは事実ではなく、あなた自身もきちんと律法を守って生活していることが、みんなにわかるでしょう。
21:25 ただ、信じるようになった外国人については、わたしたちはすでに手紙で決めたことを伝えてあります。偶像に供えた肉と、血と、絞め殺した動物の肉と、性的な乱れを避けること、それだけです。」
21:26 そこでパウロは、その男たちを連れて、翌日いっしょに身を清め、神殿に入った。そして、清めの期間がいつ終わり、いつ一人ひとりのためのささげ物がなされるかを、神殿に届け出た。
21:27 七日間が終わろうとしていたとき、アジア州から来たユダヤ人たちが、神殿にいるパウロを見つけた。彼らは群衆全体をあおり立て、パウロに手をかけて、
21:28 こう叫んだ。「イスラエルの人たち、助けてくれ。この男は、どこでもだれにでも、わたしたちの民と律法とこの場所に逆らうことを教えている。おまけに、ギリシア人まで神殿に連れ込んで、この聖なる場所を汚したんだ。」
21:29 というのも、彼らは前に、エフェソ出身のトロフィモがパウロといっしょに町にいるのを見ていた。それで、パウロがこの男を神殿に連れ込んだと思い込んだのだ。
21:30 町全体が騒ぎ出し、人々が駆け集まってきた。そしてパウロを捕まえ、神殿の外へ引きずり出した。すぐに門は閉ざされた。
21:31 人々がパウロを殺そうとしていたとき、エルサレム中が大混乱だという知らせが、ローマ軍の千人隊長のもとに届いた。
21:32 隊長はすぐに、兵士たちと百人隊長たちを引き連れて、群衆のところへ駆け下りて行った。人々は隊長と兵士たちを見ると、パウロを殴るのをやめた。
21:33 そこで隊長は近づいてパウロを捕らえ、鎖二本でつなぐように命じた。そして、この男はだれで、何をしたのかと尋ねた。
21:34 しかし群衆の中では、めいめいが勝手なことを叫んでいた。騒ぎがひどくて確かなことがわからなかったので、隊長はパウロを兵営に連れて行くように命じた。
21:35 パウロが階段にさしかかると、群衆があまりに激しく迫ってきたので、兵士たちは彼をかつぎ上げて運ばなければならなかった。
21:36 大勢の民があとについて来て、「あの男を殺せ」と叫び続けていたのだ。
21:37 パウロが兵営に連れ込まれようとしたとき、彼は隊長に言った。「少し話をしてもいいでしょうか。」すると隊長は言った。「ギリシア語が話せるのか。
21:38 では、おまえはあのエジプト人ではないのか。少し前に反乱を起こして、四千人の暗殺者を荒れ野に引き連れて行った、あの男ではないのか。」
21:39 パウロは答えた。「わたしはユダヤ人で、キリキア州のタルソ出身です。決して名もない町の市民ではありません。どうかお願いします。人々に話をさせてください。」
21:40 隊長がそれを許すと、パウロは階段の上に立ち、手を振って人々を静めた。あたりがすっかり静まると、彼はヘブライ語で語りかけた。
22:1 「兄弟のみなさん、そして父たちよ、これから話すわたしの弁明を聞いてください。」
22:2 パウロがヘブライ語で語りかけているのを聞くと、人々はいっそう静かになった。そこでパウロは続けた。
22:3 「わたしはユダヤ人で、キリキア州のタルソで生まれました。しかし育ったのはこの町で、ガマリエルという先生のもとで、先祖代々の律法を厳しく教え込まれました。そして、今日ここにいるみなさんと同じように、神のために熱心に生きてきたのです。
22:4 わたしはこの道を信じる人たちを、死に至らせるほど激しく迫害しました。男も女も縛り上げ、次々と牢に送り込んだのです。
22:5 このことは、大祭司も長老たちの会議も証言してくれるはずです。わたしは彼らからダマスコの仲間たちへの手紙まで受け取り、そこにいる信者たちを縛り上げてエルサレムに連れ帰り、罰するために出かけて行きました。
22:6 ところが、旅を続けてダマスコに近づいた昼ごろ、突然、天からまばゆい光がわたしの周りを照らしたのです。
22:7 わたしは地面に倒れました。そして、『サウロ、サウロ、どうしてわたしを迫害するのか』とわたしに語りかける声を聞いたのです。
22:8 わたしは『主よ、あなたはどなたですか』と答えました。すると、その方はこう言われました。『わたしは、あなたが迫害しているナザレのイエスである。』
22:9 一緒にいた人たちは、その光は見たものの、わたしに語りかけている方の声は聞き取れませんでした。
22:10 わたしが『主よ、わたしはどうすればいいのですか』と尋ねると、主はこう言われました。『立ち上がって、ダマスコに行きなさい。あなたがすべきことは、すべてそこで告げられる。』
22:11 でも、あの光のまばゆい輝きのせいで、わたしは何も見えなくなっていました。それで、一緒にいた人たちに手を引かれて、ダマスコにたどり着いたのです。
22:12 そこに、アナニアという人がいました。律法を忠実に守る信仰深い人で、その町に住むユダヤ人みんなから信頼されていました。
22:13 彼はわたしのところに来て、そばに立ってこう言いました。『兄弟サウロ、もう一度目が見えるようになりなさい。』すると、その瞬間、わたしは目が見えるようになり、彼を見上げました。
22:14 アナニアはこう続けました。『わたしたちの先祖の神が、あなたを選ばれました。神のご意志を知り、正しい方を見て、その口から語られる声を聞くためです。
22:15 あなたは、自分が見たこと、聞いたことを、すべての人にその方の証人として伝えることになるからです。
22:16 さあ、何をためらっているのですか。立ち上がって洗礼を受け、その方の名を呼び求めて、あなたの罪を洗い流してもらいなさい。』
22:17 その後、わたしはエルサレムに戻りました。そして神殿で祈っていると、我を忘れたような状態になり、
22:18 主がわたしにこう語りかけるのを見たのです。『急ぎなさい。すぐにエルサレムを出て行きなさい。この町の人たちは、わたしについてのあなたの証しを受け入れないからだ。』
22:19 わたしは言いました。『主よ、あの人たちはよく知っています。わたしが、あなたを信じる人たちをあちこちの会堂で捕らえては牢に入れ、打ちたたいていたことを。
22:20 あなたのことを証しした人ステファノが殺されて血を流したときも、わたしはそばに立って、それに賛成し、彼を殺す人たちの上着の番までしていたのです。』
22:21 すると主はわたしに言われました。『行きなさい。わたしはあなたを、遠くにいる外国の人たちのところへ送るのだから。』」
22:22 人々はここまではパウロの話を聞いていた。しかしこの言葉を聞くと、声を張り上げて叫んだ。「こんな男は地上から消してしまえ。生かしておいてはいけない。」
22:23 人々は大声でわめき、上着を投げ捨て、ちりを空中にまき散らした。
22:24 そこで千人隊長はパウロを兵営の中に入れるように命じた。そして、人々がなぜこれほど彼に向かって叫ぶのか、その理由を知ろうとして、鞭で打って取り調べるように言った。
22:25 兵士たちが鞭打つためにパウロを革ひもで縛り上げると、パウロはそばに立っていた百人隊長に言った。「ローマ市民である者を、しかも裁判にもかけずに鞭で打ってもいいのですか。」
22:26 これを聞いた百人隊長は、千人隊長のところへ行って報告した。「どうなさるおつもりですか。あの人はローマ市民ですよ。」
22:27 千人隊長はパウロのところに来て言った。「言ってくれ。あなたはローマ市民なのか。」パウロは「そうです」と答えた。
22:28 すると千人隊長は言った。「わたしは大金を払って、この市民権を手に入れたのだ。」パウロは言った。「わたしは生まれながらのローマ市民です。」
22:29 それで、パウロを取り調べようとしていた者たちは、すぐに彼から手を引いた。千人隊長も、パウロがローマ市民だと分かり、しかも彼を縛っていたことに気づいて、恐ろしくなった。
22:30 翌日、千人隊長は、ユダヤ人がパウロを訴えている本当の理由を知ろうとして、彼の縄を解いた。そして祭司長たちと最高法院の全員を集めるように命じ、パウロを連れて行って、彼らの前に立たせた。
23:1 パウロは議会の人々をじっと見つめて言った。「兄弟のみなさん、わたしは今日まで、神の前でまったくやましいところのない良心をもって生きてきました。」
23:2 すると大祭司アナニアは、そばに立っている者たちに、パウロの口を打つように命じた。
23:3 それでパウロは彼に言った。「白く塗った壁のようなあなたを、神が打たれる。あなたは律法に従ってわたしを裁くために座っていながら、その律法を破って、わたしを打てと命じるのか。」
23:4 そばに立っていた者たちが言った。「神の大祭司をののしるのか。」
23:5 パウロは言った。「兄弟のみなさん、彼が大祭司だとは知りませんでした。『あなたの民の指導者を悪く言ってはならない』と書いてありますから。」
23:6 パウロは、議会の一方がサドカイ派、もう一方がファリサイ派だと気づき、声を張り上げて言った。「兄弟のみなさん、わたしはファリサイ派で、ファリサイ派の家に生まれた者です。わたしが裁かれているのは、死者の復活という希望のためなのです。」
23:7 パウロがこう言うと、ファリサイ派とサドカイ派の間に対立が起こり、その場は真っ二つに分かれた。
23:8 サドカイ派は、復活も天使も霊もないと言い、ファリサイ派はそのどれもあると認めているからだ。
23:9 大きな叫び声が上がった。ファリサイ派の律法学者の何人かが立ち上がり、激しく主張した。「わたしたちは、この人に何も悪いところを見つけられない。もし霊か天使が彼に語りかけたのなら、どうだろう。」
23:10 対立がますます激しくなったので、千人隊長はパウロが彼らに引き裂かれてしまうのを恐れた。そして兵士たちに、下りて行って彼らの中からパウロを力ずくで連れ出し、兵営に連れて行くように命じた。
23:11 その夜、主がパウロのそばに立って言われた。「勇気を出しなさい。あなたはエルサレムでわたしのことを証ししたように、ローマでも証しをしなければならない。」
23:12 朝になると、ユダヤ人たちは集まって陰謀を企て、パウロを殺すまでは食べも飲みもしないと誓いを立てた。
23:13 この陰謀を企てたのは、四十人以上の者たちだった。
23:14 彼らは祭司長たちと長老たちのところへ行って、こう言った。「わたしたちは、パウロを殺すまでは何も口にしないと固く誓いを立てました。もし破れば、のろいを受けてもかまいません。
23:15 だから、あなたがたは議会と一緒に千人隊長に願い出て、パウロをあなたがたのところへ連れて来させてください。彼のことをもっとくわしく調べたいふりをするのです。わたしたちのほうは、パウロがここに近づく前に殺す準備を整えておきます。」
23:16 ところが、パウロの姉妹の息子がこの待ち伏せの計画を耳にした。彼は兵営に行って中に入り、パウロに知らせた。
23:17 そこでパウロは百人隊長の一人を呼んで言った。「この若者を千人隊長のところへ連れて行ってください。伝えたいことがあるのです。」
23:18 百人隊長はその若者を連れて千人隊長のところへ行き、こう言った。「囚人のパウロがわたしを呼んで、この若者をあなたのところへ連れて行くように頼みました。あなたに話したいことがあるそうです。」
23:19 千人隊長は若者の手を取り、人のいないところへ連れて行って、そっと尋ねた。「わたしに伝えたいこととは何だい。」
23:20 若者は言った。「ユダヤ人たちが、明日パウロを議会に連れて来てほしいと、あなたに願い出ることを申し合わせています。もっとくわしく取り調べたいふりをするつもりです。
23:21 でも、その言葉に従わないでください。彼らのうち四十人以上の者が、パウロを待ち伏せしているのです。彼らは、パウロを殺すまでは食べも飲みもしないと誓いを立てました。今もう準備を整えて、あなたの返事を待っているのです。」
23:22 そこで千人隊長は、「このことをわたしに知らせたと、だれにも言うな」と命じて、若者を帰らせた。
23:23 それから千人隊長は、百人隊長を二人呼んで言った。「今夜の九時にカイサリアへ向かえるよう、歩兵二百人、騎兵七十人、槍を持つ兵二百人を用意しろ。
23:24 パウロを乗せる馬も用意して、総督フェリクスのところへ無事に送り届けるのだ。」
23:25 そして千人隊長は、次のような手紙を書いた。
23:26 「クラウディウス・リシアより、尊敬する総督フェリクス様へ。ごあいさつ申し上げます。
23:27 この男はユダヤ人たちに捕まえられ、あやうく殺されそうになっていました。しかしわたしは、彼がローマ市民だと知り、部隊を率いて駆けつけ、助け出しました。
23:28 そして、彼らが何を理由に彼を訴えているのか知ろうと思い、彼をユダヤ人たちの議会に連れて行きました。
23:29 調べてみると、彼らの律法をめぐる問題で訴えられているだけで、死刑や投獄に値するようなことは何もしていませんでした。
23:30 ところが、この男を殺そうとする計画があると知らせを受けたので、すぐに彼をあなたのもとへ送ります。訴える者たちにも、あなたの前で彼について申し立てるよう命じておきました。」
23:31 そこで兵士たちは、命じられたとおりにパウロを引き取り、夜のうちにアンティパトリスまで連れて行った。
23:32 翌日、騎兵たちにパウロを任せて先へ進ませ、自分たちは兵営に戻った。
23:33 騎兵たちはカイサリアに着くと、手紙を総督に渡し、パウロも引き渡した。
23:34 総督は手紙を読み、パウロがどの州の出身かを尋ねた。そして、キリキアの出身だと分かると、
23:35 「お前を訴える者たちが来たら、詳しく調べよう」と言った。そして、ヘロデの官邸でパウロを見張っておくように命じた。
24:1 五日後、大祭司アナニアが、何人かの長老たちと、テルティロという弁護士を連れて下って来た。そして、パウロを訴えるために総督のところに出向いた。
24:2 パウロが呼び出されると、テルティロは訴えを始めてこう言った。「わたしたちは、あなたのおかげで大きな平安を保っています。そして、あなたの深い配慮によって、この国のためにさまざまな改善が行われています。
24:3 フェリクス閣下、わたしたちはそれを、いつでもどこでも、心から感謝して受け止めています。
24:4 でも、あなたのお時間を長く取らせるわけにはいきません。どうか寛大なお心で、わたしたちの話を手短に聞いてください。
24:5 実は、わたしたちはこの男が、まるで疫病のような厄介者だと知りました。世界中のユダヤ人の間で騒ぎを引き起こし、ナザレ人という一派の首謀者でもあります。
24:6 この男は神殿まで汚そうとしました。それで、わたしたちは彼を捕らえたのです。
24:7 ところが、司令官のルシアが割り込んできて、彼を無理やりわたしたちの手から奪い取り、
24:8 あなたご自身が彼を取り調べれば、わたしたちが訴えているすべてのことを、確かめることができるでしょう。」
24:9 ユダヤ人たちもこの訴えに加わり、その通りだと言い立てた。
24:10 総督がパウロに話すよう合図すると、パウロは答えた。「あなたが長年にわたって、この国の裁判官を務めてこられたことを、わたしは知っています。だから、安心して自分のことを弁明します。
24:11 あなたご自身で確かめられるように、わたしが礼拝のためにエルサレムに上ってから、まだ十二日しかたっていません。
24:12 そして、わたしが神殿で誰かと言い争ったり、群衆を扇動したりしているのを、彼らは見ていません。会堂でも、町のどこでも、そんなことはしていません。
24:13 今わたしを訴えているそのことを、彼らはあなたに証明することもできないのです。
24:14 ただ、これだけは認めます。わたしは、彼らが「分派」と呼んでいるこの道に従って、先祖の神に仕えています。そして、律法に書かれていることも、預言者たちが書き記したことも、すべて信じています。
24:15 正しい人も正しくない人も、いつか必ず死者の中から生き返る。わたしはそのことを神に望みをかけて待っています。この人たち自身も、同じ望みを持っているのです。
24:16 だからわたしはいつも、神に対しても人に対しても、うしろめたいところのない心でいられるよう努めています。
24:17 さて、わたしは何年かぶりに、同胞のために募金を届け、供え物をささげようとエルサレムに来ました。
24:18 そのために神殿で身を清めていたところを、彼らはわたしを見つけたのです。そのとき、群衆もいなければ、騒ぎもありませんでした。
24:19 そこにいたのは、アジア州から来た数人のユダヤ人でした。わたしに何か訴えることがあるのなら、彼らこそここに来て、あなたの前で告発すべきなのです。
24:20 それができないなら、ここにいるこの人たちに言わせてください。わたしが最高法院の前に立ったとき、いったいどんな不正を見つけたというのですか。
24:21 ただ一つ、彼らの中に立ってわたしが叫んだ、あの一言だけは別かもしれません。『死者がよみがえるということで、わたしは今日、あなたがたの前で裁かれているのです』と。
24:22 フェリクスはこの道について詳しく知っていたので、裁きを先延ばしにした。そして言った。「千人隊長のルシアが下って来たら、あなたたちの件について判断を下そう。」
24:23 それから百人隊長に命じて、パウロを見張らせた。ただし、ある程度の自由は与え、身の回りの世話をする仲間たちを妨げないようにと指示した。
24:24 数日後、フェリクスはユダヤ人である妻ドルシラを連れてやって来た。そしてパウロを呼び寄せ、キリスト・イエスへの信仰について話を聞いた。
24:25 しかし、パウロが義と節制、そしてやがて来る裁きについて語ると、フェリクスは怖くなって言った。「今日はもう帰ってよい。また折を見て、あなたを呼ぶことにしよう。」
24:26 その一方でフェリクスは、パウロから金をもらえるのではないかと期待していた。だから何度もパウロを呼び出しては、話し込んでいた。
24:27 こうして二年が過ぎ、フェリクスの後任としてポルキオ・フェストがやって来た。フェリクスはユダヤ人に気に入られようとして、パウロを牢につないだままにしておいた。
25:1 さて、フェストは着任すると、その三日後にカイサリアからエルサレムへ上った。
25:2 すると、祭司長たちやユダヤ人の有力者たちが、パウロを訴え出た。そしてフェストにこう願った。
25:3 パウロをエルサレムに呼び寄せてほしいと頼んだのだ。彼らは、その道の途中でパウロを待ち伏せして殺すつもりでいた。
25:4 しかしフェストは、パウロはカイサリアに留め置かれており、自分も間もなくそこへ戻る予定だと答えた。
25:5 そして言った。「あなたたちのうちの有力者が、わたしと一緒に下って行けばよい。あの男に何か不都合な点があるなら、そこで訴えればいい。」
25:6 フェストは彼らのもとで八日か十日ほど過ごしてから、カイサリアへ下って行った。そして翌日、裁判の席に着き、パウロを連れて来るように命じた。
25:7 パウロが姿を現すと、エルサレムから下って来たユダヤ人たちが彼を取り囲み、いくつもの重い罪をぶつけて訴えた。しかし、それを証明することはできなかった。
25:8 パウロは弁明して言った。「わたしはユダヤ人の律法に対しても、神殿に対しても、皇帝に対しても、何も悪いことをしていません。」
25:9 しかしフェストは、ユダヤ人に気に入られたいと思い、パウロにこう答えた。「エルサレムへ上って行き、そこでこの件について、わたしの前で裁判を受けたいか。」
25:10 するとパウロは言った。「わたしは今、皇帝の裁判の席に立っています。ここでこそ、わたしは裁かれるべきです。あなたもよくご存じのとおり、わたしはユダヤ人に対して何も悪いことをしていません。
25:11 もしわたしが罪を犯し、死刑に当たるようなことをしたのなら、死ぬことを拒みはしません。しかし、この人たちの訴えにまったく根拠がないのなら、だれもわたしを彼らに引き渡すことはできません。わたしは皇帝に上訴します。」
25:12 そこでフェストは、陪席の者たちと相談したうえで、こう答えた。「皇帝に上訴したのだな。では、皇帝のもとへ行くがよい。」
25:13 それから何日かして、アグリッパ王とベルニケがカイサリアにやって来て、フェストにあいさつをした。
25:14 二人が幾日もそこに滞在していたので、フェストはパウロのことを王に持ち出して言った。「ここに、フェリクスが囚人として残していった男が一人います。
25:15 わたしがエルサレムに行ったとき、ユダヤ人の祭司長たちや長老たちがこの男のことを訴え出て、有罪の判決を求めてきました。
25:16 そこでわたしは彼らにこう答えました。訴えられている者が、告発する者たちと直接顔を合わせ、その罪について弁明する機会を与えられる前に、その人を引き渡すのはローマ人のやり方ではない、と。
25:17 そういうわけで、彼らがここに集まったとき、わたしは少しも延ばさず、翌日には裁判の席に着き、その男を連れて来るように命じました。
25:18 ところが、告発する者たちは立ち上がっても、わたしが思っていたような悪事については、何一つ訴えを持ち出しませんでした。
25:19 ただ、彼ら自身の宗教についての、いくつかの論点で彼と言い争っていただけでした。それに、死んだはずのイエスという人のことで、パウロはその人が生きていると言い張っていたのです。
25:20 わたしは、こうした問題をどう調べたらよいか分からなかったので、パウロに、エルサレムに行って、そこでこれらの件について裁判を受ける気があるかどうか尋ねました。
25:21 けれどもパウロは、皇帝の判断を仰ぐまで身柄を留め置いてほしいと願い出ました。そこでわたしは、彼を皇帝のもとに送るときまで、そのまま拘留しておくように命じたのです。」
25:22 すると、アグリッパがフェストゥスに言った。「わたしも、その男の話をぜひ聞いてみたいものです。」フェストゥスは答えた。「では、明日お聞きになれます。」
25:23 そして翌日、アグリッパとベルニケは、盛大な装いでやって来た。そして、軍の指揮官たちや町のおもだった人々と一緒に広間に入った。フェストゥスが命じると、パウロが連れて来られた。
25:24 フェストゥスは言った。「アグリッパ王、そしてここにご一緒くださっている皆さん。ご覧のこの男のことで、ユダヤ人が大勢そろって、エルサレムでもここでも、わたしに訴えてきました。この男はもう生かしておいてはいけない、と叫んでいたのです。
25:25 しかし、わたしが調べたところ、彼は死に当たるようなことは何もしていませんでした。それに、彼自身が皇帝に訴え出たので、わたしは彼を送ることに決めました。
25:26 ところが、この男について、陛下に書き送れるような確かなことが、わたしには何もありません。そこで、皆さんの前に、特にアグリッパ王、あなたの前に彼を引き出しました。取り調べをしたうえで、何か書けることが得られればと思ったのです。
25:27 囚人を送るのに、その罪状も示さないというのは、わたしには筋の通らないことに思えるからです。」
26:1 アグリッパはパウロに言った。「あなた自身のことを話してよろしい。」そこでパウロは手を差し伸べて、弁明を始めた。
26:2 「アグリッパ王よ、わたしはユダヤ人たちから訴えられているすべてのことについて、今日あなたの前で弁明できることを、幸いに思っています。
26:3 特に、あなたはユダヤ人の慣習や論争の問題のすべてに詳しいからです。ですから、どうか忍耐強くわたしの話を聞いてください。
26:4 わたしが若いころからどんな生き方をしてきたかは、初めから自分の民の間で、またエルサレムで過ごしてきたので、ユダヤ人ならだれもが知っています。
26:5 彼らはずっと前からわたしを知っていて、その気になれば証言できるはずです。わたしが、わたしたちの宗教の中でも最も厳しい派に従い、ファリサイ派の一人として生きてきたことを。
26:6 そして今、わたしがここで裁判にかけられているのは、神がわたしたちの先祖に約束してくださったことに望みをかけているからです。
26:7 わたしたちの十二の部族は、その約束が実現することを望んで、昼も夜も熱心に神に仕えています。王よ、わたしはこの望みのために、ユダヤ人たちから訴えられているのです。
26:8 神が死んだ人を生き返らせるということが、なぜあなたがたには信じられないことだと思われるのでしょうか。
26:9 わたし自身も、かつてはナザレのイエスの名に逆らって、あらゆることをすべきだと思い込んでいました。
26:10 そして、実際にエルサレムでそうしました。祭司長たちから権限をもらって、神を信じる多くの人々を牢に閉じ込め、彼らが殺されるときには、それに賛成の一票を投じたのです。
26:11 また、あちこちの会堂で何度も彼らを罰し、無理やり神を冒とくする言葉を言わせようとしました。彼らに激しく怒り狂って、遠くの町々にまで追いかけて迫害したのです。
26:12 こうしたことをしている中で、わたしは祭司長たちから権限と委任を受けて、ダマスコへ向かっていました。
26:13 王よ、真昼のことでした。旅の途中、わたしは空から太陽よりもまぶしい光がさすのを見たのです。その光は、わたしと連れの者たちのまわりを照らしました。
26:14 わたしたちはみな地面に倒れました。そのとき、ヘブライ語でわたしにこう語りかける声が聞こえたのです。「サウロ、サウロ、どうしてわたしを迫害するのか。とがった棒をけるようなことをすれば、傷つくのはあなた自身だ。」
26:15 わたしは言いました。「主よ、あなたはどなたですか。」すると主は言われました。「わたしは、あなたが迫害しているイエスである。
26:16 さあ、起きて、自分の足で立ちなさい。わたしがあなたに現れたのは、あなたを奉仕者、そして証人に選ぶためだ。あなたは、今日見たこと、これからわたしがあなたに見せることを証しするのだ。
26:17 わたしは、この民や異邦人からあなたを助け出す。そして、あなたを彼らのもとへ送る。
26:18 それは、彼らの目を開き、暗やみから光へ、サタンの支配から神へと立ち返らせるためだ。こうして彼らは、わたしを信じる信仰によって、罪をゆるされ、聖なる者とされた人々の中で受け継ぐべきものを受けるのだ。」
26:19 アグリッパ王よ、こういうわけで、わたしはこの天からの幻に背きませんでした。
26:20 まずダマスコの人々に、それからエルサレムとユダヤ全土の人々に、さらに異邦人にも、わたしは伝えました。悔い改めて神に立ち返り、その悔い改めにふさわしい行いをするようにと。
26:21 こうしたことのために、ユダヤ人たちは神殿でわたしを捕らえ、殺そうとしたのです。
26:22 しかし、わたしは今日まで神の助けをいただいて、こうして立っています。そして、身分の低い人にも高い人にも証しをしてきました。わたしが語るのは、預言者たちやモーセが、これから起こると告げていたこと以外の何ものでもありません。
26:23 つまり、キリストは苦しみを受け、死者の中から最初によみがえって、この民にも異邦人にも光を告げ知らせる、ということです。」
26:24 パウロがこう言って弁明していると、フェストゥスが大声で言った。「パウロ、お前は気が変になっている。学びすぎておかしくなったのだ。」
26:25 するとパウロは言った。「フェストゥス閣下、わたしは気が変になってなどいません。真実で、理にかなったことを話しているのです。
26:26 王はこうしたことをよくご存じです。だから、王の前でこそ、わたしは遠慮なくお話ししています。これらのことは、どれ一つとして王の目からもれてはいないはずです。だって、これは片隅でこっそり起きたことではないのですから。
26:27 アグリッパ王よ、あなたは預言者たちの言葉を信じておられますか。信じておられると、わたしにはわかっています。」
26:28 するとアグリッパはパウロに言った。「君は、こんな短い言葉で、わたしをキリスト者にしようというのか。」
26:29 パウロは言った。「短い言葉でも、長い話でも、どちらでもかまいません。わたしはただ神に祈るのです。あなただけでなく、今日この話を聞いている皆さんが、わたしと同じようになってほしい、と。もちろん、この鎖は別ですが。」
26:30 そこで、王と総督、それにベルニケ、そして同席していた人々が立ち上がった。
26:31 彼らは席をはずして、たがいに話し合った。「あの男は、死刑や投獄に当たるようなことは何もしていない。」
26:32 アグリッパはフェストゥスに言った。「あの男は、皇帝に上訴していなければ、釈放されていたはずだ。」
27:1 わたしたちがイタリアへ船で向かうことが決まると、パウロとほかの何人かの囚人は、ユリウスという名前の百人隊長にゆだねられた。彼は皇帝直属の部隊の隊長だった。
27:2 わたしたちはアドラミティオンの船に乗り込んだ。この船はアジア州の沿岸の港に寄っていく予定だった。こうして出航した。テサロニケ出身のマケドニア人アリスタルコも、いっしょにいた。
27:3 翌日、わたしたちはシドンに着いた。ユリウスはパウロに親切にしてくれて、友人たちのところへ行って世話を受けることを許してくれた。
27:4 それからそこを出航したが、向かい風だったので、キプロス島の島かげを通って進んだ。
27:5 そして、キリキアとパンフィリアの沖の海を渡り、リキア州のミラに着いた。
27:6 そこで百人隊長は、イタリアへ向かうアレクサンドリアの船を見つけ、わたしたちをそれに乗せた。
27:7 何日ものあいだ船はなかなか進まず、やっとのことでクニドスの沖まで来た。しかし風にはばまれて、それ以上進めなかった。それでサルモネの沖から、クレタ島の島かげを通って進んだ。
27:8 海岸沿いにやっとのことで進み、「良い港」と呼ばれる場所にたどり着いた。その近くにはラサイアという町があった。
27:9 かなりの時間が過ぎていた。断食の時期もすでに終わっていて、航海はもう危険になっていた。そこでパウロは、みんなに注意して言った。
27:10 「みなさん、この航海は危険だと思います。積み荷や船だけでなく、わたしたちの命まで失う、大きな損害になるでしょう。」
27:11 しかし百人隊長は、パウロの言うことよりも、船長や船主の言うことのほうを信じた。
27:12 その港は冬を越すのに適していなかった。それで、大半の人は、そこを出て、なんとかフェニクスまで行って冬を越そうと決めた。フェニクスはクレタ島の港で、南西と北西に開けていた。
27:13 南風がおだやかに吹きはじめた。それで、思ったとおりに進められると考えた人々は、いかりを上げて、クレタ島の海岸すれすれに進んでいった。
27:14 ところが、まもなく島のほうから、「エウラキロン」と呼ばれる激しい暴風が吹きおろしてきた。
27:15 船は巻き込まれ、風に向かって進むことができなくなった。それで、わたしたちは流されるままにするしかなかった。
27:16 そして、カウダという小さな島の陰に入った。そこでやっと、救命ボートを何とか確保することができた。
27:17 それを船に引き上げると、人々は綱を使って船体を下から巻いて縛った。さらに、シルティスの浅瀬に乗り上げるのをおそれて、船具を降ろし、そのまま流されていった。
27:18 わたしたちはひどく暴風にもまれた。それで翌日、人々は積み荷を海に捨てはじめた。
27:19 三日目には、自分たちの手で船の道具まで投げ捨てた。
27:20 太陽も星も何日も見えないまま、激しい暴風が襲いつづけた。とうとう、わたしたちは助かる望みをすっかり失ってしまった。
27:21 人々は長いあいだ、何も食べていなかった。そのとき、パウロがみんなの中に立ってこう言った。「みなさん、クレタ島を出ないで、わたしの言うことを聞くべきでした。そうすれば、こんな被害も損害も受けずにすんだのです。
27:22 でも今、元気を出してください。あなたがたのうち、命を失う人は一人もいません。失われるのは船だけです。
27:23 というのは、わたしが仕えているわたしの神、その神が送った天使が、昨夜わたしのそばに立って、
27:24 こう言ったのです。『パウロ、こわがることはない。あなたは必ず皇帝の前に立つことになる。そして、神は情け深く、あなたと一緒に航海している人たち全員の命を、あなたに与えてくださった。』
27:25 だから、みなさん、元気を出してください。わたしは神を信じています。だから、わたしに告げられたとおりのことが必ず起こると信じています。
27:26 ただ、わたしたちはどこかの島に乗り上げることになります。」
27:27 十四日目の夜になった。わたしたちの船は、アドリア海であちこちに流されていた。真夜中ごろ、船乗りたちは、どこかの陸地が近づいてきたと感じた。
27:28 そこで水の深さを測ってみると、二十尋あった。少し進んでからもう一度測ると、十五尋だった。
27:29 岩場に乗り上げてしまうのがこわくて、船乗りたちは船尾から錨を四つ投げ入れ、早く朝になるようにと祈った。
27:30 ところが船乗りたちは、船から逃げ出そうとした。船首から錨を下ろすふりをして、小舟を海に降ろしたのだ。
27:31 そこでパウロは、百人隊長と兵士たちに言った。「あの人たちが船に残っていなければ、あなたがたは助かりません。」
27:32 すると兵士たちは、小舟のロープを切って、海に流してしまった。
27:33 夜が明けかけたころ、パウロはみんなに食事をとるようにすすめて言った。「あなたがたは、何も食べずに待ち続けて、今日でもう十四日になります。
27:34 だから、どうか食事をとってください。それが、あなたがたが助かるために必要なのです。あなたがたのだれ一人、髪の毛一本さえ失うことはありません。」
27:35 こう言うと、パウロはパンを取り、みんなの前で神に感謝をささげた。そして、それを裂いて食べ始めた。
27:36 すると、みんなも元気を取り戻し、食事をとった。
27:37 船に乗っていたのは、全部で二百七十六人だった。
27:38 みんなは十分に食事をとると、麦を海に投げ捨てて船を軽くした。
27:39 夜が明けても、そこがどこの陸地なのか、だれにもわからなかった。ただ、砂浜のある入り江が目に入った。できれば、そこに船を乗り入れようと考えた。
27:40 そこで、いかりを切り離して海に捨て、同時にかじを縛っていた綱をゆるめた。そして、風を受けて前の帆を上げ、砂浜へと船を進めた。
27:41 ところが、潮の流れがぶつかる浅瀬に乗り上げてしまった。船首は砂に食い込んで動かなくなり、船尾は激しい波で壊れ始めた。
27:42 兵士たちは、囚人を殺そうと考えた。だれかが泳いで逃げるといけないからだ。
27:43 しかし、百人隊長はパウロを助けたいと思い、その計画をやめさせた。そして、泳げる者にはまず海に飛び込んで陸に上がるように命じ、
27:44 残りの者には、板や船の壊れた部分につかまって上がるように命じた。こうして、全員が無事に陸にたどり着いた。
28:1 わたしたちは無事に助かってから、その島がマルタと呼ばれていることを知った。
28:2 島の人々は、わたしたちにとても親切にしてくれた。雨が降り出して寒かったので、火をたいて、わたしたち全員を迎え入れてくれたのだ。
28:3 パウロがたきぎをひと束集めて火にくべると、一匹のまむしが熱さのせいに這い出してきて、彼の手に噛みついた。
28:4 島の人々は、まむしが彼の手にぶら下がっているのを見て、互いに言い合った。「この人はきっと人殺しだ。海からは助かったのに、正義の女神が生かしてはおかないのだ。」
28:5 しかしパウロは、その生き物を火の中に振り落とし、何の害も受けなかった。
28:6 人々は、彼の体が腫れ上がるか、急に倒れて死ぬだろうと思っていた。ところが、いくら待っても彼に何も変わったことが起こらないのを見て、考えを変え、「この人は神さまだ」と言い出した。
28:7 その辺りに、島の長官でポプリオという人の土地があった。彼はわたしたちを迎え入れ、三日間、心をこめてもてなしてくれた。
28:8 ちょうどそのころ、ポプリオの父親が熱と赤痢で寝込んでいた。パウロはその人のところへ行き、祈って手を置き、いやした。
28:9 これがきっかけで、島にいたほかの病人たちもやって来て、次々にいやされた。
28:10 人々はさまざまな品でわたしたちに敬意を表し、出航のときには必要な物を積み込んでくれた。
28:11 三か月後、わたしたちは、この島で冬を越していたアレクサンドリアの船で出航した。船首には双子の神々の像が飾られていた。
28:12 そしてシラクサに寄港し、三日間そこに滞在した。
28:13 そこから海岸沿いに進んで、レギオンに着いた。一日たつと南風が吹いてきて、二日目にはポテオリに着いた。
28:14 そこで兄弟姉妹たちに出会い、勧められて一週間その人たちのところに滞在した。こうして、わたしたちはローマへ向かった。
28:15 ローマの兄弟姉妹たちは、わたしたちのことを聞いて、アピオ・フォロやトレス・タベルネまで迎えに来てくれた。パウロは彼らを見て神に感謝し、勇気づけられた。
28:16 ローマに入ると、パウロは、見張りの兵士とともに自分だけで住むことを許された。
28:17 三日後、パウロはユダヤ人の指導者たちを呼び集めた。みんなが集まると、彼はこう言った。「兄弟のみなさん、わたしは同胞に対しても、先祖から伝わる慣習に対しても、何一つ背くことをしていません。それなのに、エルサレムで捕らえられ、囚人としてローマ人の手に引き渡されたのです。
28:18 ローマ人はわたしを取り調べたうえで、釈放しようとしました。わたしには死刑に当たる罪が何もなかったからです。
28:19 ところがユダヤ人たちが反対したので、わたしはやむを得ず皇帝に上訴することにしました。とはいえ、自分の同胞を訴えようというわけではありません。
28:20 こういうわけで、わたしはみなさんに会って話がしたいとお願いしたのです。わたしがこの鎖につながれているのは、イスラエルが抱く希望のためなのですから。」
28:21 すると、彼らはパウロに言った。「わたしたちは、あなたについての手紙をユダヤから受け取っていません。こちらに来た同胞のだれかが、あなたについて悪い知らせや悪口を伝えたということもありません。
28:22 ただ、あなたがどう考えているのか、あなた自身の口から聞きたいと思っています。この派については、どこでも反対されているということを、わたしたちは知っているからです。」
28:23 彼らは日を決めて、パウロの宿泊先に前よりも大勢でやって来た。パウロは朝から晩まで、神の御国について語り、証しをした。そして、モーセの律法と預言者の書に基づいて、イエスのことを彼らに納得させようとした。
28:24 パウロの話を受け入れる者もいれば、信じない者もいた。
28:25 彼らは互いに意見が合わず、帰ろうとしていた。そのとき、パウロが最後にひとこと言った。「聖霊は、預言者イザヤを通して、あなたがたの先祖にこう語った。まさにその通りだ。
28:26 『この民のところへ行って、こう言いなさい。あなたがたは聞くには聞くが、決して理解しない。見るには見るが、決して分からない。
28:27 この民の心は鈍くなり、耳は聞こえにくくなり、目は閉じてしまった。目で見て、耳で聞いて、心で理解し、立ち返って、わたしにいやしてもらうことがないように、と。』
28:28 だから、はっきり知ってほしい。神のこの救いは、ほかの国の人々にも送られた。彼らはきっと聞き入れる。」
28:29 パウロがこう話し終えると、ユダヤ人たちは、激しく言い合いながら帰って行った。
28:30 パウロは、自分で借りた家に丸二年間住み続けた。そして、訪ねて来る人をみな受け入れた。
28:31 彼は少しも妨げられることなく、大胆に神の御国を宣べ伝え、主イエス・キリストのことを教え続けた。
ローマ人への手紙
1:1 わたしは、キリスト・イエスに仕える者パウロ。神から使徒として召され、神の福音を伝えるために選び出された。
1:2 この福音は、神が預言者たちを通して、聖なる聖書の中であらかじめ約束していたものである。
1:3 御子についてのものだ。御子は、人としてはダビデの子孫として生まれ、
1:4 死者の中からの復活により、聖なる霊にしたがって、力ある方として神の子と定められた。それがわたしたちの主イエス・キリストである。
1:5 わたしたちはこのイエスによって、恵みと使徒としての役目を受けた。それは、あらゆる民族の人々を信仰による従順へと導くためであり、その名の栄光のためである。
1:6 あなたたちも、そのすべての国民の中にいて、イエス・キリストのものとなるように招かれている。
1:7 すべてのローマにいる、神に愛され、聖なる者として召された人たちへ。わたしたちの父である神と主イエス・キリストから、恵みと平安があなたがたにありますように。
1:8 まず初めに、あなたがた一人ひとりのことで、イエス・キリストを通してわたしの神に感謝している。あなたがたの信仰が全世界に伝えられているからだ。
1:9 わたしが心をこめて、御子についての福音を伝えることで仕えている神が、その証人だ。わたしが祈るたびに、いつもあなたがたのことを絶えず思い起こしていることを、神が知っていてくださる。
1:10 わたしは、あなたがたのところに行けるよう、神のみこころによって道が開かれることを、いつも祈りの中で願っている。
1:11 わたしはあなたたちに会いたくてたまらない。会って、あなたたちがしっかり立てるように、霊による恵みの賜物を分けてあげたいのだ。
1:12 これによって、あなたがたとわたしが、たがいの信仰によって、いっしょに励まし合うことになる。
1:13 兄弟姉妹の皆さん、知っておいてほしいことがある。わたしは何度も、あなたたちのところへ行こうと思ってきた。でも、今まで妨げられてきたのだ。ほかの異邦人たちの間でそうだったように、あなたたちの間でも実りを得たいと思っている。
1:14 ギリシャ人にも、それ以外の人々にも、知恵のある人にも、ない人にも、わたしは果たすべき責任がある。
1:15 わたしは、ローマにいるあなたがたにも、ぜひ福音を伝えたいと思っている。
1:16 わたしは、この福音を恥ずかしいとは思わない。福音は、信じるすべての人を救う神の力だからだ。まずユダヤ人に、そしてギリシア人にも。
1:17 神の義は、この福音の中で明らかにされる。それは初めから終わりまで、ただ信仰による。「正しい者は信仰によって生きる」と書いてあるとおりだ。
1:18 なぜなら、神の怒りが天から現れるからだ。真理を不正によって押さえつけている人々の、神を敬わないすべての行いと、あらゆる不正に対して。
1:19 神について知りうることは、彼らの中ではっきりしている。神みずからが、それを彼らに示したからだ。
1:20 神の見えない性質、つまり神の永遠の力と神性は、世界が造られたときから、造られたものを通してはっきりと見て取れる。だから、彼らには弁解の余地がない。
1:21 彼らは神を知っていた。それなのに、神として栄光をたたえることも、感謝することもしなかった。むしろその考えはむなしくなり、鈍くなった心は暗くなってしまった。
1:22 わたしたちは自分を賢いと言いながら、愚かになってしまった。
1:23 神の栄光を、朽ちることのない神ではなく、朽ちてしまう人間や、鳥や、四つ足の動物や、地をはう生き物に似せた像と取り替えてしまったのだ。
1:24 だから神は、彼らが心の欲望のままに汚れた行いへと進むのを、そのままにされた。こうして彼らは、たがいの体を辱め合うことになった。
1:25 そして彼らは、神についての真理を偽りと取り替えてしまった。そして、造り主ではなく造られたものをあがめ、それに仕えたのだ。造り主こそ、永遠にほめたたえられるべき方。アーメン。
1:26 男も同じだ。彼らのうちの女たちは、自然な関係を捨てて、自然に反するものに変えてしまった。
1:27 同じように、男たちも女との自然な関係を捨て、互いへの欲望に燃え上がった。男が男と恥ずべきことを行い、その道を外れた生き方にふさわしい報いを、自分自身の身に受けたのだ。
1:28 そこで、彼らが神を認めようとしなかったので、神は彼らを、してはならないことをする、ゆがんだ心のままにされた。
1:29 あらゆる不正、悪、貪欲、意地の悪さに満ちている。ねたみ、人殺し、争い、欺き、悪だくみでいっぱいだ。人の陰口を言い、
1:30 彼らは陰口をたたき、神を憎み、人をばかにし、高慢で、自分を誇り、悪事を次々と考え出し、親に逆らう。
1:31 理解できず、約束を破り、情け容赦もなく、あわれみの心もない者たちだ。
1:32 そういう者たちは、こうしたことをする人には死がふさわしいという神の定めを知っている。それでも、自分でそれをするだけでなく、それをする人たちを認めて応援さえするのだ。
2:1 だから、人をさばくあなたには、言い逃れができない。あなたは他人をさばくことで、自分自身に罪を宣告している。さばくあなたも、同じことをしているのだから。
2:2 わたしたちは知っている。このようなことを行う者に対して、神のさばきが真理にもとづいて下ることを。
2:3 あなたは、そういうことをする人たちを裁きながら、自分でも同じことをしている。それなのに、神の裁きから逃げきれると思っているのか。
2:4 神の恵み深さ、忍耐、寛容がどれほど豊かか、あなたは軽く見ている。神のその恵み深さがあなたを心の向き直りへと導こうとしていることを、あなたは知らないのだ。
2:5 あなたのかたくなな、悔い改めようとしない心のせいで、あなたは自分に怒りをためこんでいる。それは、神の正しいさばきが現れる、あの怒りの日のためだ。
2:6 神は一人ひとりに、その行いにしたがって報いる。
2:7 善を忍耐強く行い、栄光と誉れと朽ちないものを求める人には、永遠のいのちが与えられる。
2:8 党派心を持ち、真理に従わず、不義に従う人たちには、神の怒りと激しい憤りが下る。
2:9 悪を行うすべての人には、まずユダヤ人に、そしてギリシャ人にも、苦しみと悩みがふりかかる。
2:10 善を行うすべての人には、栄光と誉れと平安が与えられる。まずユダヤ人に、そしてギリシャ人にも。
2:11 神の前では、人はえこひいきされないからだ。
2:12 律法を知らずに罪を犯した人は、律法とは関係なく滅びる。律法のもとで罪を犯した人は、律法によって裁かれる。
2:13 律法を聞くだけの人が神の前で正しいとされるのではない。律法を実行する人こそ、正しいと認められるのだ。
2:14 異邦人は律法を持っていない。それでも、その律法が命じることを生まれつき行うことがある。そういう人たちは、律法を持たなくても、自分自身が自分にとっての律法なのだ。
2:15 彼らは律法の要求が心に記されていることを、行いによって示している。彼らの良心もそれを一緒に証しし、心の中の考えは、あるいは互いを責め、あるいは弁明する。
2:16 その日、神はイエス・キリストを通して、人が心の奥に隠していることを裁く。わたしが伝える福音は、そう教えている。
2:17 もしあなたが自分をユダヤ人と名乗り、律法を心のよりどころにして、神を誇りにしているなら、
2:18 御心を知っている。律法に教えられて、何が大切かを見分けることができる。
2:19 あなたは律法の中に知識と真理の形を持っているとして、自分は目の見えない人の案内役、闇の中にいる人の光、
2:20 愚かな人を教え、幼い者を導く教師だと。あなたは律法の中に、知識と真理を形にしたものを持っていると思っている。
2:21 「盗んではいけない」と説きながら、自分では盗むのか。
2:22 「姦淫するな」と言いながら、自分は姦淫している。偶像を嫌いながら、神殿から物を盗んでいる。
2:23 律法を誇りながら、律法を破って神を辱めている。
2:24 「神の名は、あなたがたのせいで、ほかの国の人々の間で悪く言われている」と聖書に書いてあるとおりだ。
2:25 割礼には、もちろん意味がある。ただし、それはあなたが律法を守っている場合の話だ。でも、あなたが律法を破っているなら、その割礼は無割礼と変わらなくなってしまう。
2:26 もし割礼を受けていない人が律法の求めることを守るなら、その人は割礼を受けていなくても、割礼を受けた者とみなされるのではないだろうか。
2:27 それは、律法をきちんと守っている、生まれつき割礼を受けていない人が、あなたを裁くことになるからだ。あなたは、聖書の教えと割礼を持っていながら、律法を破っているのだから。
2:28 ユダヤ人とは、外見だけでユダヤ人である人のことではない。また割礼とは、体に外から加える割礼のことでもない。
2:29 そうではなく、内側でユダヤ人である人こそ、本当のユダヤ人だ。割礼も、文字ではなく心の、つまり霊による割礼こそが本物だ。そういう人は、人からではなく神からほめられる。
3:1 ユダヤ人であることに、いったいどんな優れた点があるのだろう。割礼を受けていることに、どんな利点があるのだろう。
3:2 まず第一に、神の言葉が彼らに委ねられたということだ。
3:3 もし彼らのうちに信じない者がいたとしても、それがどうだというのか。彼らの不信仰が、神の真実を無効にするとでもいうのか。
3:4 断じてそうではない。むしろ、たとえすべての人が偽り者であっても、神は真実な方であるべきだ。聖書にこう書いてあるとおりだ。「あなたが語るとき、あなたは正しいと認められ、裁きを受けるとき、あなたは勝利する。」
3:5 もしわたしたちの不義が神の義をきわ立たせるとしたら、どう言えばいいのだろう。怒りを下す神は不正だとでも言うのか。（これは人間の理屈で言っているのだが。）
3:6 断じてそうではない。もしそうなら、神はどうやってこの世界をさばくことができるだろうか。
3:7 しかし、もしわたしの偽りによって神の真実がいっそうはっきり示され、それが神の栄光になるのなら、どうしてわたしは今もなお罪人としてさばかれるのだろうか。
3:8 善をもたらすために悪をしよう、なんてこともあり得ない。わたしたちがそう言っていると悪口を言う人や、実際にそう主張する人たちがいる。でも、彼らが罰せられるのは当然だ。
3:9 ユダヤ人もギリシア人も、みんな罪の下にある。それはもう証明したとおりだ。
3:10 義人はいない。ひとりもいない。
3:11 悟る人はいない。神を求める人はいない。
3:12 すべての人が正しい道から離れ、みんなそろって役に立たない者になってしまった。善を行う人はいない。ひとりもいない。
3:13 彼らののどは、開いた墓だ。舌で人をだまし、くちびるには毒蛇の毒がある。
3:14 彼らの口はのろいと苦い言葉で満ちている。
3:15 彼らの足は血を流すために素早く動く。
3:16 彼らの道には破壊と悲惨がある。
3:17 そして、彼らは平和の道を知らない。
3:18 彼らの目には、神を恐れる気持ちがまったくない。
3:19 わたしたちが知っているとおり、律法が語ることはすべて、律法のもとにいる人たちに向けて語られている。それは、すべての口がふさがれ、世界中のすべての人が神の前で責任を問われるようになるためだ。
3:20 律法を守ることによって神の前で正しいと認められる人は、一人もいないからだ。律法によって明らかになるのは、自分が罪を犯しているという自覚だけである。
3:21 でも今、律法とは関係なく、神の義が現された。それは律法と預言者たちも証ししているものだ。
3:22 その神の義は、イエス・キリストを信じる信仰によって、信じるすべての人に与えられる。そこに区別はない。
3:23 すべての人は罪を犯し、神の栄光を受けられなくなっているからだ。
3:24 そして、キリスト・イエスによる贖いを通して、神の恵みにより、ただで義と認められる。
3:25 神はこのキリストを、その血によって罪を償ういけにえとして立て、それを信じる信仰によって受け取れるようにされた。それは、これまで人が犯してきた罪を見逃してこられたことについて、ご自身の義を示すためだった。
3:26 神はこれまで忍耐して罪を見逃してこられた。そして今この時に、ご自分の義を示された。それは、神ご自身が正しくあり、同時にイエスを信じる者を義と認める方であるためだ。
3:27 でも、だったらどこに自分を誇る余地があるのか。まったくない。どんな原理によってそうなったのか。行いの原理によってか。いや、そうではなく、信仰の原理によってだ。
3:28 わたしたちは、こう考えている。人が神に正しいと認められるのは、律法を守る行いによるのではなく、信仰によるのだ。
3:29 神はユダヤ人だけの神なのだろうか。異邦人の神でもあるのではないか。そうだ、異邦人の神でもある。
3:30 神は唯一だ。その神が、割礼を受けた人も信仰によって、割礼を受けていない人も同じ信仰によって、正しい者と認めてくださる。
3:31 律法は信仰によって無効になるのか。そんなことはない。むしろ、わたしたちは律法を確立するのだ。
4:1 それでは、肉の面でのわたしたちの先祖アブラハムについては、どう言えばいいのだろうか。
4:2 アブラハムが自分の行いによって義と認められたのなら、彼には誇るものがある。でも、神の前では誇れない。
4:3 聖書は何と言っているだろうか。「アブラハムは神を信じた。それが彼の義と認められた」とあるとおりだ。
4:4 働く人がもらう報酬は、恵みではなく、当然もらうべき報いとして支払われる。
4:5 しかし、働きがなくても、神を信じる人がいる。罪深い者を正しいと認めてくださる神を信じる人だ。その信仰こそが、義と認められる。
4:6 ダビデもまた、行いとは関係なく神から義と認められる人の幸いについて、こう語っている。
4:7 「罪をゆるされ、不法をおおわれた人々は、幸いである。
4:8 罪を主に数え入れられることのない人は、幸いである。」
4:9 アブラハムの信仰が義と認められた、とわたしたちは言う。では、この幸せは割礼を受けた者だけのものなのか。それとも、割礼を受けていない者にも及ぶのか。
4:10 では、どういう時にそう認められたのだろうか。割礼を受けてからだろうか、それともまだ受けていない時だろうか。受けてからではなく、まだ受けていない時のことだった。
4:11 そしてアブラハムは、割礼というしるしを受けた。それは、まだ割礼を受けていないときに、信仰によって義と認められていたことを証明する印だった。こうして彼は、割礼を受けていなくても信じるすべての人の父となった。その人たちも義と認められるためである。
4:12 わたしたちの父アブラハムは、まだ割礼を受けていないときに信仰を持っていた。神はその信仰の足あとをたどって歩む人々の父にもなるためだった。つまり、ただ割礼を受けているというだけでなく、そういう人々の父となるためである。
4:13 世界を受け継ぐという約束がアブラハムとその子孫に与えられたのは、律法によってではない。信仰による義によってである。
4:14 もし律法に基づく者たちが相続人であるのなら、信仰はむなしいものになり、約束も無効になってしまう。
4:15 律法は怒りを引き起こす。そして、律法のないところには、それを破ることもない。
4:16 このようなわけで、約束は信仰によるのだ。それは恵みによるものであり、すべての子孫にこの約束が確かなものとなるためだ。律法に立つ人だけでなく、アブラハムの信仰に生きる人にも、そうなるのだ。このアブラハムは、わたしたちすべての者の父である。
4:17 「あなたを多くの民族の父とした」と書いてあるとおりだ。アブラハムは、この神を信じた。死んだ者を生き返らせ、存在しないものを存在するものとして呼び出す神である。
4:18 彼は望みえない状況でも、なお望みを持って信じた。「あなたの子孫はこのようになる」と言われていたとおり、多くの民族の父となったのだ。
4:19 およそ百歳になり、自分の体はもう死んだも同然で、サラの胎も子を宿せないとわかっていた。それでもアブラハムの信仰は弱らなかった。
4:20 神の約束を前にしても、彼は不信仰になって疑うことはなかった。むしろ信仰によって強くされ、神に栄光を帰した。
4:21 アブラハムは、神が約束したことは実現させる力も持っていると、はっきり確信していた。
4:22 だから、彼は義と認められた。
4:23 アブラハムのためだけに「彼は義と認められた」と書かれたのではない。
4:24 わたしたちのためでもある。わたしたちの主イエスを死者の中からよみがえらせた方を信じるわたしたちも、義と認められるのだ。
4:25 わたしたちの罪のために死に渡され、わたしたちが正しい者とされるために復活させられたのだ。
5:1 わたしたちは、こうして信仰によって義と認められた。だから、わたしたちの主イエス・キリストによって、神との間に平和を得ている。
5:2 わたしたちはまた、このイエスを通して、いま立っているこの恵みへと、信仰によって導き入れられた。そして、神の栄光にあずかる希望を胸に、喜んでいる。
5:3 それだけではない。わたしたちは苦しみの中でも喜んでいる。苦しみが忍耐を生み出すと知っているからだ。
5:4 忍耐は練達を生み出し、練達は希望を生み出す。
5:5 希望はわたしたちを失望させない。神がわたしたちに与えてくださった聖霊によって、神の愛がわたしたちの心に注ぎ込まれているからだ。
5:6 わたしたちがまだ弱かったころ、キリストは、定められた時に、神を無視して生きる者たちのために死んでくださった。
5:7 わたしたちのうち、正しい人のために死ぬ人はほとんどいない。善い人のためなら、思いきって死ぬ人もいるかもしれないが。
5:8 まだ罪人だったわたしたちのために、キリストは死んでくれた。神はそうやって、わたしたちへの愛をはっきり示している。
5:9 わたしたちは、今、キリストの血によって義と認められた。だから、キリストによって神の怒りから救われる。これは、いっそう確かなことだ。
5:10 わたしたちは神に敵対していた。それでも、神の子の死によって神と和解させてもらえた。だとすれば、和解した今、その子のいのちによって救われるのは、なおさら確実なことだ。
5:11 そればかりではない。わたしたちは、今や和解を与えてくださったわたしたちの主イエス・キリストによって、神を喜んでいる。
5:12 この世に、ひとりの人を通して罪が入り込んだ。そして罪を通して死が入り込んだ。こうして、すべての人が罪を犯したので、死はすべての人に広がった。
5:13 律法が与えられる前にも、罪はこの世にあった。でも律法がなければ、罪は罪として問われることはない。
5:14 しかし、アダムからモーセまでの間も、死はずっと支配し続けた。アダムのように神の命令を破って罪を犯したわけではない人たちさえ、その支配を免れなかった。このアダムは、これから来る方を指し示す型なのだ。
5:15 恵みという贈り物は、あの過ちとは同じではない。もし一人の過ちのせいで多くの人が死んだのなら、神の恵みと、一人の人イエス・キリストの恵みによって与えられる贈り物は、なおさら豊かに多くの人にあふれたはずだ。
5:16 ひとりの人が犯した罪の結果と、この贈り物は違う。裁きの場合は、ひとりの罪から、罪ありとする判決が下された。でも恵みの場合は、多くの人の罪過から、義とされる結果になったのだ。
5:17 もし一人の人の罪によって、その一人を通して死が支配するようになったのなら、なおさらのこと、あふれるほどの恵みと、義という贈り物を受け取る人たちは、一人のイエス・キリストを通して、いのちの中で支配するようになる。
5:18 だから、こういうことだ。一人の罪によってすべての人が有罪とされたように、一人の正しい行いによって、すべての人にいのちを与える義がもたらされる。
5:19 ひとりの人が神に従わなかったことで、多くの人が罪人とされた。それと同じように、ひとりの人が神に従ったことで、多くの人が正しい者とされるのだ。
5:20 律法が入り込んできたのは、罪が増し加わるためだった。でも、罪が増したところには、恵みがそれをはるかに超えてあふれた。
5:21 罪が死によって支配していたように、恵みもまた、義によってわたしたちを支配し、わたしたちの主イエス・キリストを通して、永遠のいのちへと導くためだ。
6:1 では、こう言うべきだろうか。「恵みが増えるように、罪の中にとどまり続けよう」と。
6:2 絶対にそんなことはない。罪に対して死んだわたしたちが、どうしてまだ罪の中で生きていけるだろうか。
6:3 それとも、あなたがたは知らないのだろうか。キリスト・イエスに結ばれるために洗礼を受けたわたしたちは、みな、彼の死にあずかるために洗礼を受けたのだ。
6:4 だから、わたしたちはこの洗礼によって、キリストの死にあずかり、キリストとともに葬られた。それは、キリストが父の栄光によって死者の中から復活したように、わたしたちも新しいいのちを生きるためである。
6:5 もしわたしたちが、キリストと結びついてその死と同じ姿になったのなら、必ず復活とも同じ姿になる。
6:6 わたしたちはこう知っている。わたしたちの古い自分は、キリストといっしょに十字架につけられた。それは、罪に支配された体が力を失い、わたしたちがもう罪の奴隷にならないためだ。
6:7 死んだ者は、罪から解放されているからだ。
6:8 もしわたしたちがキリストと共に死んだのなら、キリストと共に生きることにもなる。わたしたちはそう信じている。
6:9 キリストは死者の中から復活した以上、もう二度と死ぬことはない。死はもう、キリストを支配できないのだ。
6:10 キリストが死んだのは、罪に対してただ一度だけ死んだのだ。でも生きている今は、神に対して生きている。
6:11 罪に対しては死んだ者であり、キリスト・イエスにあって神に対しては生きている者だ。あなたがたも、自分自身をそのように考えなさい。
6:12 だから、罪にあなたたちの体を支配させてはいけない。あなたたちの体はいつか死ぬものだ。その体を罪に明け渡して、体の欲望に従ってはいけない。
6:13 自分の体の一部を、悪の道具として罪に差し出してはいけない。むしろ、死者の中から生かされた者として、自分自身を神に差し出しなさい。そして自分の体を、義の道具として神に差し出しなさい。
6:14 罪があなたたちを支配することはない。あなたたちは律法の下ではなく、恵みの下にいるからだ。
6:15 では、どうなるのか。わたしたちは律法の下ではなく、恵みの下にいる。だから罪を犯してもいいのだろうか。絶対にそんなことはない。
6:16 あなたがたは知らないのか。だれかに従うためにその奴隷として自分を差し出せば、あなたがたは自分が従うその相手の奴隷になる。それが罪の奴隷なら行き着く先は死であり、従順の奴隷なら行き着く先は義だ。
6:17 でも、神に感謝しよう。あなたたちは以前、罪の奴隷だった。でも、伝えられた教えの型に、心から従うようになった。
6:18 罪から解放され、義の奴隷になったのだ。
6:19 わたしは、あなたがたが人として弱いので、わかりやすい言い方をする。かつてあなたがたは、自分の体の各部分を、汚れと悪の奴隷として差し出し、どんどん悪へと進んでいった。それと同じように、今度は自分の体の各部分を、義の奴隷として差し出しなさい。そうして、聖なる者になっていくのだ。
6:20 あなたがたが罪の奴隷だったときは、義に対しては自由だった。
6:21 では、その実がなった。しかし、あなたがたは今、それを恥じている。そんな実からいったい何が得られただろうか。行き着く先は死だ。
6:22 でも今は違う。あなたがたは罪から解放され、神に仕える者となった。その実として、あなたがたは清められていき、たどり着く先は永遠のいのちだ。
6:23 罪が支払う報酬は死。でも神が与えてくれる贈り物は、わたしたちの主イエス・キリストのもとにある永遠の命だ。
7:1 兄弟姉妹よ、あなたがたは知らないのだろうか。わたしは律法を知っている人たちに話しているのだが、律法は人を、その人が生きているあいだだけ支配するのだ。
7:2 夫のいる女性は、夫が生きている間は、律法によって夫に縛られている。でも夫が死ねば、夫に関するその律法から解放される。
7:3 夫が生きている間に、その妻がほかの男のものになれば、彼女は不倫の女と呼ばれる。でも夫が死ねば、彼女はその律法から解放される。だから、ほかの男のものになっても、不倫の女にはならない。
7:4 だから、わたしの兄弟姉妹たち。あなたがたも、キリストのからだをとおして、律法に対して死んだのだ。それは、あなたがたが別の方、つまり死者の中からよみがえった方のものとなるためだ。こうして、わたしたちは神のために実を結ぶのだ。
7:5 罪の欲望が、律法によってわたしたちの体の中で働いていた。そして、死に至る実を結ばせていた。というのも、わたしたちが古い自分のままで生きていたころは、そうだったのだ。
7:6 でも今は、わたしたちを縛っていたものに対して死んだので、律法から解放された。だから、古い文字にではなく、新しい霊によって仕えるのだ。
7:7 それでは、どう言えばいいのだろう。律法は罪なのか。そんなことは決してない。むしろ、律法がなければ、わたしは罪というものを知らなかった。律法が「欲しがってはならない」と言わなければ、わたしは欲望というものを知らなかったのだ。
7:8 罪は、その戒めをきっかけにして、わたしの中にありとあらゆる欲望を引き起こした。律法がなければ、罪は死んでいるからだ。
7:9 わたしはかつて、律法とは関係なく生きていた。でも、その戒めが来たとき、罪が生き返った。
7:10 わたしは死んだ。命に導くはずのその戒めが、かえってわたしを死に導くものだと分かった。
7:11 罪は戒めにつけこみ、この戒めを利用してわたしをだまし、わたしを殺したのだ。
7:12 だから、律法そのものは聖なるものだ。そして戒めも、聖であり、正しく、善いものだ。
7:13 では、その善なるものがわたしにとって死になったのだろうか。決してそうではない。死をもたらしたのは罪なのだ。罪が罪であることをはっきり示すために、その善なるものを使ってわたしに死をもたらした。それは、戒めを通して罪がどこまでも罪深いものだと明らかになるためだった。
7:14 わたしたちは、律法は霊的なものだと知っている。でも、わたしは肉に属する人間だ。罪に売り渡されて、その奴隷になっている。
7:15 わたしは自分のしていることが分からない。自分がしたいと思うことはせず、かえって自分が嫌っていることをしているからだ。
7:16 もし自分が望まないことをしているなら、律法は正しいと、わたし自身も認めていることになる。
7:17 だから、それをしているのは、もはやわたしではない。わたしの内に住んでいる罪である。
7:18 わたしのうちに、つまりこの肉のうちには、良いものが住んでいない。それはわかっている。良いことをしたいという思いはあるのに、それを実際に行うことはできないからだ。
7:19 わたしは自分が望んでいる善は行わず、望んでいない悪を行っている。
7:20 もし自分の望まないことをしているなら、それをしているのはもうわたしではなく、わたしの中に住んでいる罪なのだ。
7:21 だから、こういう法則があるのがわかる。善をしたいと思っているこのわたしに、いつも悪がぴったりくっついている、という法則だ。
7:22 神の律法を心から喜んでいる。わたしの内側にある本当の自分は、そう感じている。
7:23 でも、わたしの体の中には別の法則があるのが見える。それは心の法則と戦い、体の中にある罪の法則のとりこに、わたしを引きずり込んでいくのだ。
7:24 わたしは、なんとみじめな人間なのだろう。この死のからだから、いったいだれがわたしを救い出してくれるのだろうか。
7:25 わたしたちの主イエス・キリストによって、神に感謝します。つまり、わたし自身は、心では神の律法に仕えているのに、肉では罪の律法に仕えているのだ。
8:1 だから、キリスト・イエスと結ばれている人には、もう罪に定められることはない。
8:2 キリスト・イエスにある、いのちを与える御霊の原理が、罪と死の原理からあなたを解放したからだ。
8:3 神は、律法にできなかったことをしてくださった。律法は、わたしたちの弱い肉のせいで、それができなかった。神は、罪の肉と同じ姿をとらせて、罪を扱うために、自分の子を送った。そして、その肉において罪をさばいたのだ。
8:4 律法が求めるものが、わたしたちのうちで満たされるためだった。わたしたちは、肉ではなく霊に従って生きているのだから。
8:5 肉に従って生きる人は、肉が求めることばかりを考える。でも、霊に従って生きる人は、霊が求めることを考える。
8:6 肉に従う思いは死につながる。でも御霊に従う思いは、いのちと平安をもたらす。
8:7 肉の思いは神に敵対している。神の律法に従わないし、従うこともできないからだ。
8:8 だから、自分の欲望のままに生きる人は、神を喜ばせることができない。
8:9 だがあなたたちは、肉ではなく霊の中にいる。神の霊があなたたちの中に住んでいるならそうだ。もしキリストの霊を持たない人がいるなら、その人はキリストのものではない。
8:10 もしキリストがあなたがたの内におられるなら、体は罪のせいで死んでいても、霊は義のゆえに生きている。
8:11 もし、イエスを死者の中からよみがえらせた方の霊があなたがたの内に住んでいるなら、キリスト・イエスを死者の中からよみがえらせた方は、あなたがたの内に住んでいるその霊によって、あなたがたの死ぬべき体をも生かしてくださる。
8:12 だから、兄弟姉妹。わたしたちには果たすべき責任がある。でもそれは、肉に従って生きるという、肉に対する責任ではない。
8:13 もし肉の思いのままに生きるなら、あなたたちは死ぬ。でも、御霊の力で体の悪い行いを殺すなら、あなたたちは生きる。
8:14 神の霊に導かれている人はみな、神の子である。
8:15 あなたがたが受けたのは、人をふたたび恐れさせる、奴隷の霊ではない。あなたがたが受けたのは、神の子にしてくれる霊だ。その霊によって、わたしたちは「アバ、父よ」と呼びかける。
8:16 霊そのものが、わたしたちの霊とともに、わたしたちが神の子どもであることを証ししてくれる。
8:17 もし子どもなら、受け継ぐ者でもある。神から受け継ぐ者であり、キリストとともに受け継ぐ者だ。キリストと苦しみをともにするなら、栄光もともにするためだ。
8:18 わたしは思う。今のこの時代の苦しみは、これからわたしたちに現される栄光とは比べものにならない。
8:19 被造物は、神の子どもたちが姿を現すその時を、今か今かと待ちわびている。
8:20 被造物が空しさに縛られたのは、自分から望んだからではない。そうさせた方によるものだ。しかも希望をもって、
8:21 被造物自身も、いつか朽ちていく滅びの束縛から解放され、神の子どもたちが手にする栄光に満ちた自由へと導き入れられる。
8:22 被造物のすべてが、今この時まで、いっしょにうめき、いっしょに産みの苦しみを味わっている。わたしたちはそのことを知っている。
8:23 それだけではない。聖霊という最初の贈り物を受けているわたしたち自身も、心の中でうめきながら、神の子とされること、つまりこの体が買い戻されて自由になることを待ち望んでいる。
8:24 わたしたちは、この希望によって救われた。でも、目に見えている希望は希望ではない。今見えているものを、どうしてなお望んだりするだろうか。
8:25 まだ見ていないものを望んでいるなら、わたしたちはそれを、じっと待ち続ける。
8:26 霊もまた同じように、弱いわたしたちを助けてくれる。わたしたちは、何をどう祈ればいいのかわからない。でも、霊みずからが、言葉にならないうめきをもって、わたしたちのためにとりなしてくれるのだ。
8:27 心を探る方は、御霊が何を思っているのかを知っている。御霊は、神の御心にそって、神の民のためにとりなしてくれるからだ。
8:28 神を愛する人たち、つまり神の計画にそって招かれた人たちのためには、すべてのことが協力して良い方向に働く。わたしたちはそのことを知っている。
8:29 神は、あらかじめ知っていた人たちを、御子と同じ姿になるようにと、前もって選んでおいた。それは、御子が多くの兄弟姉妹の中で長男となるためだ。
8:30 あらかじめ定めた人たちを、神は召し出した。召し出した人たちを、神は正しい者と認めた。そして正しい者と認めた人たちに、神は栄光を与えた。
8:31 では、これらのことをどう考えればいいだろう。神がわたしたちの味方なら、だれがわたしたちに立ち向かえるだろう。
8:32 ご自身の御子さえ惜しまず、わたしたちすべてのために引き渡してくださった方だ。その方が、御子と一緒にすべてのものを、わたしたちに与えてくださらないはずがあるだろうか。
8:33 だれが、神に選ばれた者たちを訴えるだろうか。神が、彼らを正しい者としてくださるのだ。
8:34 だれがわたしたちを罪ある者だと決めつけるのか。キリスト・イエスは死んで、いや、よみがえって、今は神の右にいて、わたしたちのために神にとりなしてくださっている。
8:35 だれが、キリストの愛からわたしたちを引き離せるだろうか。苦しみか、行きづまりか、迫害か、飢えか、着るものもない貧しさか、危険か、剣か。
8:36 あなたのために、わたしたちは一日中、死にさらされている。ほふられる羊のように見られているのだ。
8:37 でも、これらすべてのことの中で、わたしたちは、わたしたちを愛してくださったかたによって、圧倒的な勝利をおさめている。
8:38 わたしは確信している。死も、いのちも、天使も、目に見えない力ある存在も、今あるものも、これから来るものも、どんな力も、
8:39 高いところにあるものも、深いところにあるものも、そのほかどんな造られたものも、わたしたちを神の愛から引き離すことはできない。この愛は、わたしたちの主であるイエス・キリストのうちにある。
9:1 わたしはキリストにあって真実を語っている。うそはつかない。聖霊に照らされたわたしの良心も、それが本当だと証明してくれている。
9:2 わたしには深い悲しみがあり、心の痛みが絶えることがない。
9:3 わたし自身が呪われ、キリストから引き離されてもかまわない。もしそれで、わたしの兄弟たち、つまり血のつながった同胞が救われるのなら、それでいい。
9:4 彼らはイスラエルの民だ。神の子とされる特権も、栄光も、いくつもの契約も、律法が与えられたことも、礼拝も、数々の約束も、彼らのものだ。
9:5 先祖たちも彼らのものだ。人としてのキリストも、彼らの中から生まれた。そのキリストは、すべてのものの上におられる神であり、永遠にほめたたえられる方だ。アーメン。
9:6 しかし、神の言葉が無効になったわけではない。イスラエルから出た人が、みながイスラエルなのではないからだ。
9:7 アブラハムの子孫だからといって、全員がその子どもというわけではない。むしろ、「イサクから生まれる者が、あなたの子孫と呼ばれる」のである。
9:8 つまり、肉から生まれた子がそのまま神の子になるわけではない。神が約束して生まれた子こそが、アブラハムの子孫として認められるのだ。
9:9 約束の言葉とは、こうだ。「来年の今ごろ、わたしはまた来る。そのとき、サラには子が生まれている。」
9:10 それだけではない。リベカも、一人の人、つまりわたしたちの父イサクによって子どもを身ごもった。
9:11 まだ二人は生まれてもおらず、善いことも悪いこともしていなかった。それでも、神の選びに基づく計画がゆるがずに続くために、
9:12 兄が弟に仕えるようになる——これは、行いによってではなく、召してくださる方によって決まる。だから彼女はこう告げられたのだ。
9:13 「わたしはヤコブを愛し、エサウを憎んだ」と書いてあるとおりだ。
9:14 では、どう考えればいいのだろう。神に不正があるというのか。絶対にそんなことはない。
9:15 神はモーセにこう言われた。「わたしは、あわれもうと思う者をあわれみ、いつくしもうと思う者をいつくしむ。」
9:16 だから、それは人が望むかどうかでも、努力するかどうかでもない。ただ、あわれみをかけてくださる神による。
9:17 聖書は、ファラオにこう言っている。「わたしがあなたを立たせたのは、まさにこのためだ。あなたを通してわたしの力を見せ、わたしの名を世界中に告げ知らせるためだ。」
9:18 だから神は、あわれもうと思う人をあわれみ、かたくなにしようと思う人を、かたくなにするのだ。
9:19 では、あなたはこう言うだろう。「それなら、神はなぜまだ人を責めるのか。だれも神の思いに逆らえないのに。」
9:20 ああ、人よ。神に言い返すあなたは、いったい何者なのか。作られたものが、作った者に「どうしてわたしをこんなふうに作ったのか」と言えるだろうか。
9:21 陶器を作る職人は、同じ土のかたまりから、あるうつわを特別なもの、別のうつわをありふれたものに作る権利があるのではないか。
9:22 神は怒りを示し、ご自分の力を知らせようと思われた。それなのに、滅びることになっていた怒りの器を、豊かな寛容さで耐え忍ばれたとしたら、どうだろう。
9:23 あわれみの器にはご自分の栄光の富を知らせようとされた。それは、栄光にあずかるようにと、神があらかじめ用意しておいた器なのだ。
9:24 神はこのあわれみの器として、わたしたちを召してくださった。それもユダヤ人の中からだけでなく、外国人の中からも召してくださったのだ。
9:25 ホセア書にもこう書いてある。「わたしは、わたしの民でなかった者を、わたしの民と呼ぶ。愛されなかった者を、愛される者と呼ぶ。」
9:26 「あなたたちはわたしの民ではない」と告げられたその場所で、彼らは「生きている神の子ら」と呼ばれるようになる。
9:27 また、イザヤはイスラエルについてこう叫んでいる。「たとえイスラエルの子らの数が海辺の砂のように多くても、救われるのは残された者だけだ。
9:28 主は、地上でその言葉を完全に、しかもすみやかに実行される。」
9:29 そして、イザヤは前にこう言っていた。「もし、天の軍勢を率いる主が、わたしたちに子孫を残してくださらなかったら、わたしたちはソドムのようになり、ゴモラと同じ姿になっていただろう。」
9:30 では、わたしたちはどう言えばいいのだろう。義を追い求めていなかった外国人が、義を、つまり信仰による義を手に入れた。
9:31 でも、義の律法を追い求めていたイスラエルは、その律法にたどり着けなかった。
9:32 なぜだろうか。信仰によってではなく、行いによって手に入れようとしたからだ。彼らは、あのつまずきの石につまずいてしまった。
9:33 「見よ、わたしはシオンに、つまずきの石、人をつまずかせる岩を置く。でも、その方に信頼を置く者は、決して失望させられることがない」と書いてあるとおりだ。
10:1 兄弟姉妹のみなさん。わたしが心から願い、彼らのために神に祈っているのは、彼らが救われることだ。
10:2 わたしは、彼らが神に対して熱心であることは認める。でも、その熱心は正しい知識に基づいたものではない。
10:3 神の義を知らないまま、自分の義を打ち立てようとして、彼らは神の義に従わなかったのだ。
10:4 キリストは律法の終わりだ。信じる人すべてが義とされるためである。
10:5 モーセは、律法によって義を得る道について、こう書いている。「律法を行う人は、それによって生きる。」
10:6 でも、信仰による義はこう言っている。「心の中で、『だれが天に上るだろうか』と言ってはいけない。」それは、キリストを引き降ろすことだ。
10:7 それとも「だれが深い底に降りて行くのか」と言ってはいけない。それは、キリストを死者の中から引き上げるということだ。
10:8 では、なんと言っているのか。「その言葉はあなたのすぐそばにある。あなたの口にあり、あなたの心にある。」これこそ、わたしたちが宣べ伝えている信仰の言葉なのだ。
10:9 もしあなたが「イエスは主だ」と口で告白し、神がイエスを死者の中から復活させたと心で信じるなら、あなたは救われる。
10:10 心の中で信じて義とされ、口で告白して救われる。
10:11 聖書はこう言っている。「彼を信じる者はだれも、失望させられることがない。」
10:12 ユダヤ人とギリシャ人の間に区別はない。同じ主がすべての人の主であり、その方を呼び求める人すべてを豊かに恵んでくださるからだ。
10:13 主の名を呼び求める人は、だれでも救われる。」
10:14 では、信じたことのない方を、どうやって呼び求めるのだろう。聞いたことのない方を、どうやって信じるのだろう。そして、伝える人がいなければ、どうやって聞くことができるのだろう。
10:15 送られなければ、どうして伝えることができるだろう。聖書にこう書いてあるとおりだ。「良い知らせを伝える人の足は、なんと美しいことか。」
10:16 でも、すべての人が福音に聞き従ったわけではない。イザヤもこう言っている。「主よ、わたしたちが伝えたことを、だれが信じたでしょうか」
10:17 だから信仰は聞くことから生まれ、聞くことはキリストについての言葉によって生まれるのだ。
10:18 でも、わたしは言おう。彼らは聞かなかったのだろうか。いや、聞いた。「その声は全地に響きわたり、その言葉は世界の果てにまで届いた。」
10:19 だが、わたしは言おう。イスラエルは分からなかったのだろうか。まず、モーセがこう言っている。「わたしは、国民でもない者を使って、あなたがたにねたみを起こさせる。分からず屋の国民を使って、あなたがたを怒らせる。」
10:20 わたしを求めていなかった人たちに、わたしは見つけられた。わたしをたずねなかった人たちに、わたしは自分をあらわした。
10:21 イスラエルについては、神はこう言っている。「わたしは一日じゅう、言うことを聞かず、口ごたえばかりする民に向かって、この手を差し伸べ続けた。」
11:1 では、わたしは問いたい。神はご自分の民を見捨ててしまったのだろうか。決してそんなことはない。わたし自身もイスラエル人で、アブラハムの子孫であり、ベニヤミン族の者なのだから。
11:2 神は、あらかじめ選んでおいたご自分の民を見捨てたりはしなかった。聖書がエリヤについて何と言っているか、あなたたちは知らないのだろうか。エリヤはイスラエルを神に訴えて、こう言った。
11:3 主よ、あの人たちはあなたの預言者たちを殺し、あなたの祭壇を壊しました。残されたのはわたし一人。その上、あの人たちはわたしの命まで狙っているのです。
11:4 でも、そのとき神は彼に何と答えたか。「バアルにひざをかがめなかった七千人を、わたしは自分のために残しておいた。」
11:5 それと同じように、今この時代にも、恵みによって選ばれ、残された人たちがいる。
11:6 でも、恵みによるのなら、もう行いによるのではない。そうでなければ、恵みはもう恵みではなくなってしまう。
11:7 では、どうなるのか。イスラエルは求め続けているものを手に入れられなかった。それを手に入れたのは、選ばれた者たちだ。そして、残りの者たちはかたくなになった。
11:8 「神は彼らに、ぼんやりとした心と、見えない目と、聞こえない耳とをお与えになった。それは今日この日まで続いている。」と書いてあるとおりだ。
11:9 ダビデもこう言っている。「彼らの食卓は、罠となり、落とし穴となり、つまずきとなり、報いとなれ。
11:10 彼らの目は暗くなって、見えなくなってしまえ。彼らの背中は、いつまでも折れ曲がったままでいるがいい」
11:11 そこで、わたしは問いたい。彼らがつまずいたのは、そのまま倒れてしまうためだったのだろうか。決してそうではない。むしろ、彼らのあやまちのおかげで、救いが他の国々の人たちに届いた。イスラエルの人たちに、その人たちをうらやましく思わせるためだ。
11:12 しかし、彼らのあやまちが世界を豊かにし、彼らの失敗が他の国々を豊かにしたのなら、彼ら全員が立ち返ったときには、どれほど大きな恵みがもたらされることだろう。
11:13 さて、あなたがた外国人に言っておきたい。わたし自身、外国人への使徒なのだから、この務めを誇りに思っている。
11:14 なんとかして同胞に対抗心を起こさせ、そのうちの何人かでも救いたいのだ。
11:15 もし彼らが退けられたことで世界が神と和解できたのなら、彼らが受け入れられることは、死んだ者が生き返るようなものではないだろうか。
11:16 もし練り粉のはじめの一片が神のものなら、練り粉全体もそうだ。根が神のものなら、枝もそうだ。
11:17 でも、もしその枝の一部が折り取られ、野生のオリーブであるあなたがそこに接ぎ木されて、根から流れる豊かな養分をいっしょに受けているとしたら——
11:18 その枝に対して、あなたは誇ってはいけない。もし誇るなら、覚えておいてほしい。あなたが根を支えているのではなく、根があなたを支えているのだ。
11:19 では、あなたはこう言うだろう。「枝が折り取られたのは、わたしが接ぎ木されるためだったんだ」と。
11:20 彼らは信じなかったから折り取られ、あなたは信じているから立っている。だから、思い上がってはいけない。むしろ、恐れなさい。
11:21 もし神が元々の枝を惜しまなかったのなら、あなたを惜しむこともないだろう。
11:22 だから、神のやさしさと厳しさをよく考えてみてほしい。神は倒れた人たちには厳しいけれど、あなたにはやさしい。ただし、そのやさしさにとどまり続けるなら、の話だ。そうでなければ、あなたも切り取られてしまう。
11:23 でも、彼らも不信仰にとどまり続けなければ、また接ぎ木される。神には、彼らをもう一度接ぎ木する力があるのだから。
11:24 もしあなたが、もともと野生のオリーブの木から切り取られ、本来の性質に逆らって栽培種の良いオリーブに接ぎ木されたのなら、まして本来の枝であるこの人たちが、自分のもとの木に接ぎ木されるのは、どれほどたやすいことだろう。
11:25 兄弟姉妹たち、この隠された真理をぜひ知っておいてほしい。自分は賢いと思い込まないためだ。イスラエルの一部の人たちの心がかたくなになっている。でもそれは、ほかの国々の人たちがみな神のもとに入るときまでのことだ。
11:26 こうして、イスラエルはみな救われる。こう書いてあるとおりだ。「救う方がシオンから来て、ヤコブから神を無視する心を取り除く。
11:27 これが、彼らの罪を取り除くときに、わたしが彼らと結ぶ契約である。」
11:28 福音の面から見れば、彼らはあなたがたのために神に敵対する者となった。でも、神の選びという面から見れば、先祖たちのゆえに神に愛されている者だ。
11:29 神の贈り物と招きは、取り消されることがないからだ。
11:30 あなたたちも、かつては神に従わなかった。でも今は、彼らが従わなかったおかげで、あわれみを受けている。
11:31 彼らも今は神に従わなくなっている。でもそれは、あなたがたが受けたあわれみによって、彼ら自身も今、あわれみを受けるためなのだ。
11:32 神はすべての人をあわれもうとして、すべての人を不従順のなかに閉じ込めたのだ。
11:33 ああ、なんと深いことか。神の豊かさ、その知恵と知識の深さは。神の裁きは、人にはとても理解しきれない。神の進む道は、たどることさえできない。
11:34 だれが主の心を知っていただろうか。だれが主の相談相手になっただろうか。
11:35 だれが、先に神に与えて、お返しを受けるのか。
11:36 すべては神から始まり、神によって成り立ち、神へと向かっている。この神に、栄光がいつまでもありますように。アーメン。
12:1 だから、兄弟姉妹たち、神があなたがたにこれほどの深いあわれみをかけてくれたのだから、わたしはあなたがたに願う。自分の体を、神に喜ばれる、生きた聖なる供え物としてささげてほしい。それこそが、あなたがたのなすべき本当の礼拝なのだ。
12:2 この世に合わせるのをやめなさい。むしろ、心を新しくして、あなた自身が変えられていきなさい。そうすれば、神が何を望んでいるのか、何が良いことで、神に喜ばれ、そして完全なのかを見分けられるようになる。
12:3 わたしは、自分に与えられた恵みによって、あなたたち一人ひとりに言う。自分を過大に評価して思い上がってはいけない。むしろ、神がそれぞれに分け与えてくださった信仰の量りに応じて、慎み深く考えなさい。
12:4 からだは一つでも、たくさんの部分がある。そして、その一つ一つが同じ働きをするわけではない。
12:5 わたしたちも、数は多いけれど、キリストによって一つの体になっている。そして一人ひとりは、たがいに体の一部なのだ。
12:6 わたしたちは、与えられた恵みによって、それぞれ違った賜物を持っている。それが預言なら、信仰に応じて預言しよう。
12:7 奉仕の賜物を与えられているなら奉仕をし、教える賜物を与えられているなら教えなさい。
12:8 勧める人は、人を励ますことに。分け与える人は、惜しみなく。人をまとめる人は、熱心に。人を思いやる人は、明るい心で。
12:9 愛には偽りがあってはならない。悪を憎み、善に固く結びつきなさい。
12:10 兄弟姉妹として、互いに心から愛し合いなさい。そして、相手を自分より上に立てて、進んで敬い合いなさい。
12:11 熱心で、なまけることなく、心を燃やして、主に仕えなさい。
12:12 希望を持って喜び、苦しみに耐え、絶えず祈り続けなさい。
12:13 聖なる人々が困っているときは助け合い、来客をもてなすことを心がけなさい。
12:14 あなたを迫害する人たちを祝福しなさい。祝福するのであって、のろってはいけない。
12:15 喜んでいる人と一緒に喜び、泣いている人と一緒に泣きなさい。
12:16 互いに同じ思いを持ちなさい。高いことを望まず、かえって身分の低い人たちと一緒に歩みなさい。自分は賢いなどと思い上がってはいけない。
12:17 だれに対しても、悪に悪で仕返しをしてはいけない。すべての人の前で、良いと認められることを心がけなさい。
12:18 できることなら、あなたの側で、すべての人と平和に暮らしなさい。
12:19 愛する人たちよ、自分で仕返しをしてはいけない。それは神の怒りに任せなさい。こう書いてある。「復讐はわたしのすること。わたしが報いる」と主は言われる。
12:20 でも、あなたに敵がいて、その人が飢えているなら、食べさせてあげなさい。のどが渇いているなら、飲ませてあげなさい。そうすれば、あなたはその人の頭に燃える炭火を積むことになる。
12:21 悪に負けてはいけない。むしろ、善によって悪に勝ちなさい。
13:1 すべての人は、上に立つ権威に従うべきだ。神によらない権威は存在しないし、いま存在している権威はどれも、神によって立てられたものだからだ。
13:2 だから、権威に逆らう人は、神が定めたことに逆らっている。逆らう人は、自分で自分にさばきを招くことになる。
13:3 支配者を恐れているのは、悪いことをする人だ。正しいことをしている人なら、恐れることはない。あなたは権力を恐れずにいたいだろうか。それなら、正しいことをしなさい。そうすれば、権力者からほめられる。
13:4 彼は、あなたに良いことをもたらすための、神に仕える者だからだ。でも、もしあなたが悪いことをするなら、恐れたほうがいい。彼が剣を帯びているのは、意味のないことではないからだ。彼は神に仕える者であり、悪いことをする者に怒りをもって罰を下すのだ。
13:5 だから、従わなければならない。ただ罰を避けるためだけでなく、良心のためにも従うべきなのだ。
13:6 あなたがたが税金を納めるのも、同じ理由からだ。彼らは神に仕える者であり、まさにこの務めに専念しているのである。
13:7 すべての人に、支払うべきものをきちんと支払おう。税金を納めるべき相手には税金を、関税を納めるべき相手には関税を、敬うべき相手には敬いを、うやまうべき相手には尊敬を払おう。
13:8 誰に対しても、借りを残してはいけない。ただ、互いに愛し合うこと、これだけは別だ。人を愛する者は、律法をすべて果たしたことになる。
13:9 「姦淫するな、殺すな、盗むな、欲しがるな」という戒め、そのほかどんな戒めがあっても、それはすべて「隣人を自分と同じように愛しなさい」という一つの言葉にまとめられる。
13:10 愛は隣人に悪いことをしない。だから、愛は律法を完成させるものなのだ。
13:11 そして、あなたがたは今がどんな時かをわかっている。もう眠りから目を覚ますべき時が来ているのだ。わたしたちが信じ始めたころよりも、救いは今、いっそう近づいているのだから。
13:12 夜は更けて、朝が近づいている。だから、闇の行いを脱ぎ捨てて、光の武具を身につけよう。
13:13 昼間を歩くように、節度をもって歩もう。どんちゃん騒ぎや泥酔ではなく、みだらな行いや放縦ではなく、争いやねたみではなく。
13:14 主イエス・キリストを身にまといなさい。自分の欲を満たそうとして、生まれつきの欲望に気を配るのはやめなさい。
14:1 信仰の弱い人を受け入れなさい。その人の考え方をめぐって議論をふっかけるためではない。
14:2 ある人は、何を食べても大丈夫だと信じている。でも、信仰の弱い人は野菜だけを食べる。
14:3 食べる人は食べない人を見下してはいけない。食べない人も食べる人を非難してはいけない。神はその人を受け入れてくださったのだから。
14:4 あなたは、他人の使用人を裁くいったい何者なのか。その人が仕事を続けられるかどうかは、主人が決めることだ。そして、その人はちゃんと立っていられる。主人にはその人を立たせる力があるからだ。
14:5 ある人はある日が別の日よりも大切だと考え、別の人はどの日も同じだと考える。それぞれが自分の心の中で、しっかりと確信を持っていればいい。
14:6 日を大切にする人は、主のためにそうしている。食べる人も、主のために食べている。神に感謝して食べるからだ。食べない人も、主のために食べないのであり、その人も神に感謝している。
14:7 だれひとり、自分のためだけに生きている人はいない。自分のためだけに死ぬ人もいない。
14:8 生きるにしても、わたしたちは主のために生き、死ぬにしても、主のために死ぬ。だから、生きるにしても死ぬにしても、わたしたちは主のものなのだ。
14:9 キリストが死んで、また生き返ったのは、死んだ人にも生きている人にも主となるためだった。
14:10 それなのに、あなたはなぜ自分の兄弟姉妹を裁くのか。なぜ見下すのか。わたしたちはみな、神のさばきの座の前に立つことになるのだから。
14:11 「主はこう言われる。わたしは生きている。すべての人がわたしの前にひざをかがめ、すべての舌が神をたたえる」と書いてあるからだ。
14:12 だから、わたしたち一人一人は、自分のことについて申し開きをすることになる。
14:13 だから、もう互いに批判し合うのはやめよう。むしろ、兄弟姉妹の前に、つまずきのもとになるもの、妨げになるものを置かない。そう心に決めよう。
14:14 わたしは主イエスにあって知っている。いや、確信している。それ自体で汚れているものは何一つない。ただ、それを汚れていると考える人にとってだけ、それは汚れているのだ。
14:15 もし食べ物のことで兄弟姉妹を悲しませているなら、あなたはもう愛によって歩んではいない。あなたの食べ物のことで、その人を滅ぼしてはいけない。その人のためにも、キリストは死んでくださったのだ。
14:16 だから、あなたがたにとって良いものを、悪く言われるようなことにしてはいけない。
14:17 神の国は食べたり飲んだりすることではない。義と、平和と、聖霊によって与えられる喜びである。
14:18 こうしてキリストに仕える人は、神に喜ばれ、人にも認められる。
14:19 だから、平和につながることや、互いを高め合うことを、追い求めていこう。
14:20 食べ物のことで、神の働きを壊してはいけない。たしかに、すべての物はきれいだ。でも、食べることで人をつまずかせるなら、それはその人にとって悪いことになる。
14:21 肉を食べず、酒を飲まないほうがいい。あなたの兄弟姉妹をつまずかせたり、傷つけたり、弱らせたりするようなことは、いっさいしないほうがいいのだ。
14:22 あなたが持っている信仰は、神の前で、自分の心のうちに持っていなさい。自分が良いと判断したことで、自分を責めることのない人は幸いである。
14:23 疑いながら食べる人は、罪に定められる。信仰にもとづいて食べていないからだ。信仰にもとづかないことは、すべて罪なのだ。
15:1 わたしたち強い者は、強くない人たちの弱さを引き受けるべきだ。自分の満足だけを求めてはいけない。
15:2 わたしたち一人ひとりは、隣人の益となり、その成長を支えるために、相手を喜ばせよう。
15:3 キリストでさえ、自分を喜ばせることはしなかった。むしろ、こう書いてある。「あなたをののしる人々のののしりが、わたしに降りかかった。」
15:4 聖書に昔から書かれてきたことは、すべてわたしたちに教えるために書かれた。それは、聖書が与えてくれる忍耐と励ましによって、わたしたちが希望を持ち続けるためである。
15:5 どうか、忍耐と励ましを与えてくださる神が、あなたがたにキリスト・イエスにならって、たがいに同じ思いを持たせてくださいますように。
15:6 そして、心を一つにし、声を合わせて、わたしたちの主イエス・キリストの父である神をたたえるようになるためだ。
15:7 だから、キリストがあなたがたを受け入れてくれたように、あなたがたも互いに受け入れ合いなさい。それが神の栄光につながるのだ。
15:8 わたしは言う。キリストは、神の真実を明らかにするために、割礼を受けた人々に仕える者となった。それは、先祖たちに与えられた約束を確かなものとするためであり、
15:9 異邦人もあわれみを受けて神をあがめるようになるためだ。聖書にこう書かれているとおりだ。「だからわたしは、異邦人の中であなたをたたえ、あなたの名をほめ歌う。」
15:10 異邦の人々よ、主の民と一緒に喜べ。
15:11 またこうも言われている。「すべての国の人々よ、主をたたえよ。すべての民よ、主をほめたたえよ。」
15:12 エッサイの根から一つの芽が出て、すべての民を治めるために立ち上がる。すべての民は、その人に望みをかける。
15:13 どうか、希望の源である神が、信じるあなたがたを、あらゆる喜びと平安で満たしてくださいますように。そして聖霊の力によって、あなたがたが希望にあふれますように。
15:14 兄弟姉妹のみなさん。わたしは、あなたがた自身のことをこう確信している。あなたがたは善意にあふれ、あらゆる知識に満たされ、たがいに教え合うこともできる、と。
15:15 でも、わたしは、あなたたちが一度知ったことを思い出せるようにと、ところどころかなり思いきって書いた。それは、神がわたしに与えてくださった恵みによるものだ。
15:16 わたしがこの恵みを受けたのは、いろいろな国の人々のためにキリスト・イエスに仕える者となるためだ。神の福音を伝える祭司として働き、いろいろな国の人々を神へのささげ物として差し出す。そのささげ物が、聖霊によって聖なるものとされ、神に喜ばれるものとなるためだ。
15:17 だからわたしは、神に仕えるこの働きについて、キリスト・イエスにあって誇ることができる。
15:18 わたしは、キリストがわたしを通してなさったこと以外は、あえて話すつもりはない。キリストは、わたしの言葉と行いによって、ユダヤ人以外の人々を神に従わせるために働いてくださった。
15:19 しるしと不思議の力によって、また神の霊の力によって、それを成し遂げてくださった。こうしてわたしは、エルサレムから始めて、その周辺をめぐり、イリリコにまで至るまで、キリストの福音をくまなく伝え尽くしてきたのだ。
15:20 わたしがいつも目標にしてきたのは、キリストの名がまだ知られていない場所で福音を伝えることだ。すでに他の人が築いた土台の上に建てるようなことは、したくなかったからだ。
15:21 でも、こう書いてある。「彼のことを知らされていなかった人々が見る。聞いたことのなかった人々が悟る。」そのとおりだ。
15:22 だから、わたしはあなたたちのところへ行こうとして、何度も引き止められてきた。
15:23 でも今は、この地方でもう働く場所がなくなった。それに、あなたたちのところへ行きたいと、何年も前から強く願ってきた。
15:24 その途中であなたがたに会いたいと思っている。そしてしばらくの間あなたがたと一緒に過ごして心が満たされたら、あなたがたに送り出してもらってスペインへ向かうつもりだ。
15:25 でも今は、エルサレムにいる信者たちのために働こうとして、そこへ向かっている。
15:26 マケドニアとアカイアの人たちが、エルサレムにいる信者のうち、貧しい人たちを助けたいと、心から願ったからだ。
15:27 彼らは確かに、それを喜んでした。でも同時に、彼らはエルサレムの人たちに借りがある。異邦人が彼らの霊的な恵みを分けてもらったのなら、物質的なもので彼らを助けるのは当然だからだ。
15:28 だから、わたしはこの務めをやり遂げ、彼らにこの実をしっかり手渡したうえで、あなたがたのところを通ってスペインへ行くつもりだ。
15:29 あなたたちのところへ行くときには、キリストの満ちあふれる祝福を携えて行くことになる。わたしはそう確信している。
15:30 兄弟姉妹たち、わたしたちの主イエス・キリストによって、そして御霊が与えてくれる愛によって、あなたがたにお願いする。わたしのために、神への祈りで、わたしと一緒に力を尽くして戦ってほしい。
15:31 ユダヤにいる、信じようとしない人たちからわたしが守られ、そしてエルサレムに向けたわたしの奉仕が、そこの信じる人たちに喜んで受け入れられますように。
15:32 神の望みどおりに、わたしは喜びをもってあなたがたのところへ行き、あなたがたと共に安らぎを得られるように。
15:33 平和の神が、あなたがたみんなと共にいてくださいますように。アーメン。
16:1 ケンクレアイにある教会で奉仕している、わたしたちの姉妹フィベを、あなたがたに紹介したい。
16:2 どうか、この人を主にある姉妹として、聖なる人たちにふさわしく迎え入れてほしい。そして、彼女が必要としていることがあれば、どんなことでも手を貸してあげてほしい。彼女はこれまで、多くの人を支え、このわたし自身も支えてくれたのだから。
16:3 プリスカとアクラによろしく伝えてほしい。二人はキリスト・イエスのためにわたしと共に働いてくれた仲間だ。
16:4 彼らは、わたしの命を救うために、自分の首を差し出してくれた。わたしだけでなく、外国人の教会すべてが、彼らに感謝している。
16:5 またあなたたちは、彼らの家に集まる教会にもよろしく伝えてほしい。わたしの大切なエパイネトにもよろしく。彼は、アジア州で最初にキリストを信じた人だ。
16:6 あなたがたのために本当に一生懸命働いてくれたマリアに、よろしく伝えてほしい。
16:7 アンドロニコとユニアによろしく。二人はわたしの同胞で、いっしょに牢に入れられたこともある仲間だ。使徒たちの間でもよく知られていて、わたしより先にキリストを信じるようになった人たちだ。
16:8 主にあって、わたしの愛するアムプリアトによろしく。
16:9 キリストにあってわたしたちと共に働いてくれたウルバノ、そして愛するスタキスにも、よろしく伝えてください。
16:10 キリストにあって本物だと認められたアペレに、よろしく。アリストブロの家の人たちに、よろしく。
16:11 同族のヘロデオンによろしく。ナルキソの家の人たちのうち、主につながっている人たちにもよろしく。
16:12 主のために働いてくれたトリファイナとトリフォサに、よろしく伝えてほしい。主のために本当に力を尽くして働いた、愛するペルシスにも、よろしく伝えてほしい。
16:13 主にあって選ばれた人、ルフォスによろしく。それに彼のお母さんにも。彼女はわたしにとっても母のような人だ。
16:14 アスンクリト、フレゴン、ヘルメス、パトロバ、ヘルマス、それにこの人たちと一緒にいる兄弟姉妹によろしく伝えてほしい。
16:15 ピロロゴとユリアに、ネレオとその姉妹、それにオルンパと、彼らと一緒にいるすべての聖なる人たちに、よろしく伝えてほしい。
16:16 互いに、聖なる口づけであいさつを交わしなさい。キリストのすべての教会があなたがたによろしくと言っている。
16:17 兄弟姉妹たち、お願いがある。あなたがたが学んだ教えに反して、仲間割れを引き起こし、人をつまずかせる者たちに気をつけてほしい。そういう人たちからは離れなさい。
16:18 こういう人たちは、わたしたちの主キリストではなく、自分の欲に仕えている。そして口当たりのいい言葉やほめ言葉で、何も疑わない素直な人たちの心をだましているのだ。
16:19 あなたがたの従順は、すべての人に知れ渡っている。だから、わたしはあなたがたのことを喜んでいる。でも、こう願っている。あなたがたが善にはさとく、悪には染まらないでいてほしい。
16:20 平和をくださる神は、まもなくサタンをあなたがたの足の下に打ち砕いてくださる。わたしたちの主イエス・キリストの恵みが、あなたがたとともにありますように。
16:21 わたしの同労者テモテ、それに同胞のルキオ、ヤソン、ソシパテロが、あなたがたによろしくと言っている。
16:22 この手紙を書いているわたしテルティオも、主にあってあなたがたにあいさつを送る。
16:23 ガイオからもよろしく。わたしを泊めてくれていて、教会全体もこの人の家に集まっている。町の会計係のエラストと、兄弟のクアルトからもよろしく。
16:24 わたしたちの主イエス・キリストの恵みが、あなたがた全員とともにありますように。アーメン。
16:25 神は、あなたがたをしっかりと立たせることができる方だ。それは、わたしが伝える福音、つまりイエス・キリストを宣べ伝えるメッセージによる。そしてそれは、はるか昔からずっと隠されてきた奥義が、今あらわにされたことによる——
16:26 でも今、その秘密は明らかにされた。預言者たちの書によって示され、永遠の神の命令にしたがって、すべての民族に知らされた。人々が信じて従うようになるためである。
16:27 唯一の知恵ある神に、イエス・キリストを通して、栄光がいつまでもありますように。アーメン。
コリント人への第一の手紙
1:1 神の望みによってキリスト・イエスの使徒として召されたわたしパウロと、兄弟のソステネから。
1:2 コリントにある神の教会、つまりキリスト・イエスによって聖なる者とされ、聖なる者として召されたあなたがたへ。また、わたしたちの主イエス・キリストの名を、どこにいても呼び求めるすべての人へ。この主は、その人たちの主であり、わたしたちの主でもある。
1:3 わたしたちの父である神と、主イエス・キリストからの恵みと平和が、あなたがたにありますように。
1:4 わたしは、あなたがたのことでいつも神に感謝している。キリスト・イエスによってあなたがたに与えられた、神の恵みのことで。
1:5 あなたがたはキリストにあって、すべての点で豊かにされた。どんな言葉にも、どんな知識にも恵まれている。
1:6 それは、キリストについての証しが、あなたがたの間でしっかりと根づいたからだ。
1:7 だから、あなたがたには神からの賜物が何一つ欠けていない。そして、わたしたちの主イエス・キリストが現れる日を待ち望んでいる。
1:8 その主は、最後まであなたがたをしっかり支えてくださる。そうすれば、わたしたちの主イエス・キリストの日に、あなたがたは非難されるところのない者でいられる。
1:9 神は真実な方だ。この神が、御子イエス・キリスト、わたしたちの主との交わりへと、あなたがたを招いてくださった。
1:10 兄弟姉妹よ、わたしたちの主イエス・キリストの名によってお願いする。みんなが同じことを語り、あなたがたの間に分裂がないようにしてほしい。同じ思い、同じ考えで、一つに結び合わされていてほしい。
1:11 わたしの兄弟姉妹よ、クロエの家の人たちから、あなたがたのことで知らせがあった。あなたがたの間で争いが起きているというのだ。
1:12 つまり、こういうことだ。あなたがたはそれぞれ、「わたしはパウロにつく」「わたしはアポロに」「わたしはケファに」「わたしはキリストに」と言っている。
1:13 キリストは分けられてしまったのか。あなたがたのために十字架につけられたのは、パウロだったのか。あなたがたはパウロの名によって洗礼を受けたのか。
1:14 わたしは、あなたがたのうち、クリスポとガイオのほかにはだれにも洗礼を授けなかった。そのことを感謝している。
1:15 それは、わたしの名によって洗礼を受けたと、だれにも言われないためだ。
1:16 そういえば、ステファナの家の人たちにも洗礼を授けた。そのほかはだれかに授けたかどうか、覚えていない。
1:17 キリストがわたしを送ったのは、洗礼を授けるためではなく、良い知らせを伝えるためだ。しかも、言葉の知恵にたよってではない。キリストの十字架がむなしいものにならないためだ。
1:18 十字架の言葉は、滅んでいく者にとっては愚かなものだ。でも、救われるわたしたちにとっては、神の力なのだ。
1:19 こう書いてある。「わたしは知恵ある者の知恵を滅ぼし、賢い者の賢さを無にする。」
1:20 知恵ある者はどこにいるのか。学者はどこにいるのか。この世の論客はどこにいるのか。神は世の知恵を愚かなものにしたではないか。
1:21 世は、神の知恵のなかにありながら、自分の知恵では神を知ることができなかった。だから神は、愚かに見えるこの宣べ伝えられる言葉によって、信じる者を救おうとされたのだ。
1:22 ユダヤ人はしるしを求め、ギリシア人は知恵を追い求める。
1:23 でもわたしたちは、十字架につけられたキリストを宣べ伝える。それはユダヤ人にとってはつまずきであり、異邦人にとっては愚かなことだ。
1:24 けれども、神に招かれた人たちにとっては、ユダヤ人であれギリシア人であれ、このキリストこそ神の力であり、神の知恵なのだ。
1:25 神の愚かさは、人の知恵よりも賢く、神の弱さは、人の強さよりも強いからだ。
1:26 兄弟姉妹よ、自分たちが招かれたときのことを考えてみてほしい。人の目から見て賢い人は多くなかったし、力のある人も、家柄のよい人も多くはなかった。
1:27 でも神は、世の中で愚かだとされているものをあえて選ばれた。賢い者に恥をかかせるためだ。世の中で弱いとされているものを選ばれたのも、強い者に恥をかかせるためだった。
1:28 神は、世の中で身分が低いとされ、見下されているもの、取るに足らないものを選ばれた。ひとかどのものとされているものを、無力にするためだ。
1:29 だれ一人、神の前で誇ることがないようにするためだ。
1:30 あなたたちがキリスト・イエスにつながっているのは、神のおかげだ。このキリストは、神からわたしたちに与えられた知恵となり、また、義と、聖なる者とされることと、贖いとなってくださった。
1:31 それは、聖書に「誇る者は主を誇れ」と書いてあるとおりだ。
2:1 兄弟姉妹よ、わたしがあなたたちのところへ行ったとき、神からの証しを、すぐれた話しぶりや知恵をもって伝えたわけではなかった。
2:2 わたしはあなたたちの間で、イエス・キリスト、それも十字架につけられたキリストのほかは、何も知るまいと心に決めていたからだ。
2:3 そのうえわたしは、弱く、おそれ、ひどく震えながら、あなたたちのところにいた。
2:4 わたしの語る言葉も、宣べ伝える内容も、人を丸め込むような知恵の言葉によるものではなかった。むしろ、神の霊と力がはっきりと示されることによるものだった。
2:5 それは、あなたたちの信仰が、人の知恵ではなく、神の力によって支えられるためだ。
2:6 とはいえ、わたしたちも、成熟した人たちの間では知恵を語る。ただし、それはこの世の知恵ではないし、滅びゆくこの世の支配者たちの知恵でもない。
2:7 むしろ、わたしたちが語るのは、神の知恵だ。それは、これまで隠されてきた、秘められた知恵だ。神は世界が始まる前から、わたしたちを栄光へと導くために、この知恵を用意しておられた。
2:8 この世の支配者たちは、だれ一人この知恵を理解しなかった。もし理解していたら、栄光の主を十字架につけたりはしなかったはずだ。
2:9 しかし、こう書かれているとおりだ。「目が見たこともなく、耳が聞いたこともなく、人の心に思い浮かんだこともないもの。それを、神はご自分を愛する人たちのために用意してくださった。」
2:10 そのすべてを、神は霊を通してわたしたちに明らかにしてくださった。霊は、あらゆることを探り、神の深いところまで見きわめるからだ。
2:11 人のことは、その人の中にある霊のほかに、だれが知っているだろう。同じように、神のことは、神の霊のほかにだれも知らない。
2:12 わたしたちが受けたのは、この世の霊ではなく、神から来る霊だ。それは、神がわたしたちに惜しみなく与えてくださったものを、はっきりと知るためだ。
2:13 だから、わたしたちはそれを語るとき、人の知恵が教える言葉を使わない。霊が教える言葉を使う。こうして、霊に属することを、霊に属する言葉で説き明かしていく。
2:14 霊を持たない人は、神の霊に属することを受け入れない。その人にとって、それは愚かなことに思えるからだ。しかも、それは霊によってしか見きわめられないので、その人には理解できない。
2:15 けれども、霊を持つ人は、すべてを見きわめる。そして、その人自身は、だれからも見きわめられることがない。
2:16 「いったいだれが、主の思いを知り、主に助言できるだろうか。」でも、わたしたちはキリストの思いを持っている。
3:1 兄弟姉妹のみなさん、わたしはあなたがたに、神の霊に生きる人として語ることができなかった。肉に生きる人、キリストにあってまだ幼い子どものように語るしかなかったのだ。
3:2 わたしはあなたがたに乳を飲ませた。固い食べ物ではなかった。あなたがたには、まだそれが無理だったからだ。いや、今でもまだ無理だ。
3:3 あなたがたは、今もまだ肉に従って生きているからだ。あなたがたの間には、ねたみや争いがある。それなら、肉に従って生き、ただの人間のやり方で歩んでいることになるのではないか。
3:4 一人が「わたしはパウロにつく」と言い、別の人が「わたしはアポロにつく」と言う。それなら、あなたがたはただの人間と同じではないか。
3:5 では、アポロとは何なのか。パウロとは何なのか。あなたがたを信仰に導いた、仕える者にすぎない。それぞれ、主から与えられた役割を果たしただけだ。
3:6 わたしは植え、アポロは水をやった。でも、成長させたのは神だ。
3:7 だから、植える者も水をやる者も、たいしたものではない。大切なのは、成長させてくださる神だ。
3:8 植える者と水をやる者とは、一つだ。そして、それぞれが自分の働きに応じて、自分の報いを受ける。
3:9 わたしたちは、神のもとで共に働く者だ。そしてあなたがたは、神の畑であり、神の建物なのだ。
3:10 神がわたしに与えてくださった恵みによって、わたしは熟練した建築家のように土台を据えた。そして別の人が、その上に建てている。ただし、どのように建てるかは、それぞれがよく気をつけなければならない。
3:11 なぜなら、すでに据えられている土台のほかに、だれも新しい土台を据えることはできないからだ。その土台とは、イエス・キリストだ。
3:12 もしだれかが、この土台の上に、金や銀、宝石、木、草、わらを使って建てるなら、
3:13 そのとき、それぞれの仕事がはっきりと見えてくる。その日が来れば、明らかになるからだ。すべては火の中で正体を現す。その火が、一人ひとりの仕事がどんなものかを試すのだ。
3:14 もしだれかが土台の上に建てたものが、その火に耐えて残れば、その人は報いを受ける。
3:15 もしだれかの仕事が焼けてしまえば、その人は損をする。でも、本人は救われる。ただし、火の中をくぐり抜けるようにして、かろうじて救われるのだ。
3:16 あなたがたは、自分が神の神殿であることを知らないのか。神の霊が、あなたがたの中に住んでいるのだ。
3:17 もしだれかが神の神殿を壊すなら、神はその人を滅ぼす。神の神殿は聖なるものだからだ。そして、その神殿とは、あなたがたのことだ。
3:18 自分をだましてはいけない。もしあなたがたの中に、自分はこの世で賢いと思っている人がいるなら、その人は愚か者になりなさい。そうすれば、本当に賢くなれる。
3:19 なぜなら、この世の知恵は、神の前では愚かだからだ。こう書いてある。「神は、賢い者たちを、その巧妙な策略ごと捕らえる。」
3:20 また、こうも書いてある。「主は、賢い者たちの考えが、むなしいものだと知っておられる。」
3:21 だから、だれも人間を誇りにしてはいけない。すべては、あなたがたのものなのだから。
3:22 パウロも、アポロも、ケファも、世界も、命も、死も、今あるものも、これから来るものも、すべてはあなたがたのものだ。
3:23 そして、あなたがたはキリストのもの、キリストは神のものなのだ。
4:1 だから、わたしたちのことは、キリストに仕える者、そして神の秘められた計画を任された管理者だと考えてほしい。
4:2 そして、管理者に求められるのは、忠実であることだ。
4:3 わたしにとって、あなたたちや人間の法廷にさばかれることは、少しも問題ではない。いや、わたしは自分自身をさばくことさえしない。
4:4 やましいことは何も思い当たらない。でも、だからといって正しいと認められるわけではない。わたしをさばくのは主だ。
4:5 だから、時が来る前に何かをさばいてはいけない。主が来られるまで待ちなさい。主は闇に隠れたものを明るみに出し、人の心の思いを明らかにされる。そのとき、それぞれが神からほめられる。
4:6 兄弟姉妹よ、わたしはこれらのことを、あなたたちのために、わたし自身とアポロに当てはめて語ってきた。「書かれていることを越えてはならない」ということを、わたしたちの例から学んでほしかったからだ。そうすれば、あなたたちが一方をかつぎ上げ、もう一方を見下して高ぶることもなくなる。
4:7 いったい、だれがあなたを他の人より優れていると認めたのか。あなたが持っているもので、もらったのではないものが何かあるだろうか。もらったのなら、なぜもらっていないかのように自慢するのか。
4:8 あなたたちはもう満ち足りている。もう豊かになった。わたしたちを抜きにして、王になったつもりでいる。いっそ本当に王になっていればいい。そうすれば、わたしたちも一緒に王になれるのだから。
4:9 わたしはこう思う。神はわたしたち使徒を、死刑を宣告された者のように、いちばん最後に引き出して見せ物にされた。わたしたちは、この世界にとって、また天使にとっても人間にとっても、見せ物になっているのだ。
4:10 わたしたちはキリストのために愚か者だ。でも、あなたたちはキリストにあって賢い。わたしたちは弱いが、あなたたちは強い。あなたたちは尊敬されているが、わたしたちは見下されている。
4:11 今この時まで、わたしたちは飢え、渇き、着るものにも事欠き、殴られ、住む場所もない。
4:12 自分の手で働いて、苦労している。ののしられれば祝福し、迫害されれば耐える。
4:13 悪く言われれば、おだやかに語りかける。わたしたちは今この時まで、世界のごみのようにされ、すべての人のかすのようにされてきた。
4:14 こう書いているのは、あなたたちに恥をかかせるためではない。わたしの愛する子どもとして、注意しているのだ。
4:15 たとえキリストにあって一万人の指導者がいても、父親は多くはいない。キリスト・イエスにあって、福音を通してあなたたちを生んだのは、このわたしだからだ。
4:16 だから、あなたたちにお願いする。わたしにならう者になってほしい。
4:17 そのために、テモテをあなたたちのところへ送った。彼は主にあって、わたしの愛する忠実な子だ。彼は、キリスト・イエスにあるわたしの生き方を、あなたたちに思い起こさせてくれる。それは、わたしがどこででも、どの教会でも教えているとおりだ。
4:18 ところが、あなたたちの中には、わたしが来ないと思い込んで、思い上がっている者がいる。
4:19 でも、主が望まれるなら、わたしはすぐにあなたたちのところへ行く。そして、思い上がっている者たちの言葉ではなく、その力を見きわめよう。
4:20 神の御国は、言葉ではなく力にあるからだ。
4:21 あなたたちはどうしてほしいのか。むちを持って行こうか。それとも、愛と、やさしい心をもって行こうか。
5:1 実際、あなたがたの間で性的な不品行があると言われている。しかも、それは神を知らない人たちの間でさえないようなもので、父の妻を自分のものにしている者がいるというのだ。
5:2 それなのに、あなたがたは思い上がっている。むしろ深く悲しんで、そんなことをした者を自分たちの間から取り除くべきだったのに。
5:3 わたしは体はそこにいなくても、霊ではあなたがたと共にいる。そして、その場にいる者と同じように、こんなことをしでかした者について、すでに裁きを下している。
5:4 わたしたちの主イエスの名によって、あなたがたがわたしの霊と共に集まり、わたしたちの主イエスの力がそこにあるとき、
5:5 その者をサタンに引き渡しなさい。肉が滅ぼされて、その霊が主の日に救われるためだ。
5:6 あなたがたが誇っているのは、良くないことだ。少しのパン種が、こねた粉の全体を膨らませてしまうことを、知らないのか。
5:7 古いパン種をきれいに取り除きなさい。そうすれば、あなたがたは新しい、パン種の入っていない生地になれる。実際、あなたがたはもうパン種のない者なのだ。わたしたちの過越の子羊であるキリストが、すでにいけにえとしてささげられたのだから。
5:8 だから、わたしたちはお祝いをしよう。古いパン種、つまり悪意と悪という種を使わずに、混じり気のない純粋な心と真実という、パン種の入っていないパンで祝おう。
5:9 わたしは前の手紙で、性的に不品行な人たちと交わってはいけない、と書いた。
5:10 それは、この世の不品行な人たちや、欲深い人、人をだまし取る人、偶像を拝む人と、いっさい関わるな、という意味ではない。もしそうなら、あなたがたはこの世から出て行かなければならなくなる。
5:11 わたしが書いたのは、こういうことだ。仲間だと自分で名乗っていながら、性的に不品行だったり、欲深かったり、偶像を拝んだり、人をののしったり、酒におぼれたり、人をだまし取ったりする者がいるなら、そういう者とは関わってはいけない。一緒に食事をすることさえ、してはいけない。
5:12 外部の人たちを裁くことが、わたしと何の関係があるだろうか。あなたがたが裁くべきなのは、内部の人たちではないか。
5:13 外部の人たちは、神が裁く。だから、その悪い者を、あなたがたの中から取り除きなさい。
6:1 あなたがたの中に、仲間ともめごとがあるとき、聖なる人たちの前ではなく、正しくない人たちの前で裁いてもらおうとする者がいる。よくそんなことができるものだ。
6:2 それとも、知らないのか。聖なる人たちは、いつか世を裁くことになる。その世をあなたがたが裁くというなら、あなたがたはごく小さな争いごとを裁く資格さえない、というのか。
6:3 知らないのか。わたしたちは天使さえ裁くことになるのだ。それなら、日常のことなど、なおさら裁けるはずではないか。
6:4 だから、日常のもめごとについて裁くことがあるなら、どうして教会の中で軽んじられている人たちを、裁判官の席に座らせるのか。
6:5 恥ずかしいことだと思って、あえて言う。あなたがたの中には、仲間同士の争いを裁ける賢い人が、一人もいないのか。
6:6 それどころか、仲間が仲間を訴えている。しかも、それを信じていない人たちの前でしているのだ。
6:7 そもそも、あなたがたが互いに訴え合っていること自体、すでに完全な負けなのだ。どうして、むしろ不当な扱いを受けたままでいないのか。どうして、むしろだまし取られたままでいないのか。
6:8 それどころか、あなたがた自身が不当なことをし、人からだまし取っている。しかも、それを仲間に対してしているのだ。
6:9 知らないのか。正しくない者は、神の御国を受け継ぐことはない。だまされてはいけない。性的に不品行な者、偶像を拝む者、姦淫をする者、男娼となる者、男どうしで交わる者、
6:10 盗む者、欲深い者、酒におぼれる者、人をののしる者、人をだまし取る者は、神の御国を受け継ぐことはない。
6:11 あなたがたの中にも、以前はそういう者がいた。でも、あなたがたは洗いきよめられ、聖なる者とされ、そして主イエスの名と、わたしたちの神の霊によって、義と認められたのだ。
6:12 「わたしには、何をする自由もある。」でも、すべてが益になるわけではない。「わたしには、何をする自由もある。」でも、わたしは何かに支配されたりはしない。
6:13 「食べ物はお腹のため、お腹は食べ物のため。」でも、神はそのどちらも滅ぼされる。からだは、性的な乱れのためにあるのではなく、主のためにある。そして主は、からだのためにいてくださる。
6:14 その神は、主を死から復活させた。そして、その力によって、わたしたちも復活させてくださる。
6:15 あなたがたのからだは、キリストのからだの一部だ。それを知らないのか。そのキリストの一部を、わたしが取って、遊女のからだの一部にしてしまってよいだろうか。とんでもない。
6:16 遊女と交わる人は、その相手とからだが一つになる。それを知らないのか。「二人は一つのからだになる」と言われているとおりだ。
6:17 でも、主と結ばれた人は、主と一つの霊になる。
6:18 性的な乱れから逃げなさい。人が犯すほかのどんな罪も、からだの外にあるものだ。でも、性的に乱れる人は、自分自身のからだに対して罪を犯している。
6:19 あなたがたのからだは、あなたがたの中にいる聖霊が住まう神殿だ。それを知らないのか。この聖霊は、神から与えられたものだ。あなたがたは、もう自分自身のものではない。
6:20 あなたがたは、代価を払って買い取られたのだ。だから、自分のからだで神をあがめなさい。
7:1 さて、あなたがたが手紙に書いてきたことについて答えよう。男が女性に触れないのは良いことだ。
7:2 でも、みだらな行いを避けるために、男はそれぞれ自分の妻を持ち、女もそれぞれ自分の夫を持ちなさい。
7:3 夫は妻に対して、夫としての務めを果たしなさい。妻も同じように、夫に対して務めを果たしなさい。
7:4 妻の体は妻だけのものではなく、夫のものでもある。同じように、夫の体も夫だけのものではなく、妻のものでもある。
7:5 互いを拒んではいけない。ただし、祈りに専念するために、二人で話し合って一定の期間だけそうするのはかまわない。そのあとは、また一緒になりなさい。自分を抑えられなくなって、サタンに誘惑されないためだ。
7:6 これは命令ではなく、こうしてもいいという許しとして言っている。
7:7 わたしとしては、すべての人がわたしのようであってほしい。でも、人にはそれぞれ神から与えられた賜物があって、ある人はこういう生き方をし、別の人はああいう生き方をするのだ。
7:8 次に、結婚していない人や、夫を亡くした人に言う。わたしのように独りでいるのは、その人たちにとって良いことだ。
7:9 でも、自分を抑えられないなら、結婚しなさい。欲情に燃えるよりは、結婚するほうがいいからだ。
7:10 結婚している人たちには、こう命じる。命じるのはわたしではなく、主だ。妻は夫と別れてはいけない。
7:11 もし別れてしまったら、再婚せずにいるか、夫と仲直りしなさい。そして夫も、妻を離縁してはいけない。
7:12 その他の人たちには、わたしが言う。主ではなく、わたしだ。ある信者の男性に、信仰を持たない妻がいて、その妻が一緒に暮らすことを望んでいるなら、離縁してはいけない。
7:13 また、ある女性に信仰を持たない夫がいて、その夫が一緒に暮らすことを望んでいるなら、離縁してはいけない。
7:14 信仰を持たない夫は、信じる妻と結ばれていることで神のものとされ、信仰を持たない妻も、信じる夫と結ばれていることで神のものとされているからだ。そうでなければ、あなたたちの子どもは汚れていることになる。でも実際には、神のものとされている。
7:15 でも、信仰を持たない相手が離れていくのなら、離れさせなさい。そういう場合には、信じる男性も女性も、しばられることはない。神はわたしたちを、平和のうちに生きるように招いてくださったのだから。
7:16 妻よ、あなたが夫を救えるかどうか、どうしてわかるだろう。夫よ、あなたが妻を救えるかどうか、どうしてわかるだろう。
7:17 ともかく、主が一人ひとりに分け与えてくださったとおりに、そして神が招いてくださったときの姿のままに、それぞれ生きていきなさい。わたしはどの教会でも、こう指示している。
7:18 割礼を受けた状態で招かれた人は、その跡を消そうとしなくていい。割礼を受けていない状態で招かれた人は、割礼を受けなくていい。
7:19 割礼を受けているかどうかは、どちらも問題ではない。大切なのは、神の命令を守ることだ。
7:20 それぞれ、招かれたときの立場のままでいなさい。
7:21 奴隷の身分で招かれたのなら、それを気にしなくていい。もし自由になれるのなら、むしろその機会を生かしなさい。
7:22 主に招かれたとき奴隷だった人は、主によって自由にされた人だ。同じように、招かれたとき自由だった人は、キリストの奴隷だ。
7:23 あなたたちは、代価を払って買い取られた。だから人の奴隷になってはいけない。
7:24 兄弟姉妹よ、それぞれ招かれたときの立場のままで、神とともに生きていきなさい。
7:25 さて、結婚していない人たちについて。これについては、主からの命令を受けているわけではない。でも、主のあわれみを受けて信頼できる者とされたわたしとして、自分の考えを伝えておきたい。
7:26 今は危機の時代だ。だからわたしは、今のままでいるのがいいと思う。
7:27 妻と結ばれているなら、離れようとしてはいけない。妻がいないなら、探し求めなくていい。
7:28 でも、もし結婚しても、それは罪ではない。結婚していない女性が結婚しても、罪ではない。ただ、結婚する人たちは、この世の暮らしの中で苦労を抱えることになる。わたしは、あなたたちにそんな思いをさせたくないのだ。
7:29 兄弟姉妹よ、わたしが言いたいのはこういうことだ。残された時間は短い。これからは、妻のいる人も、いないかのように生きなさい。
7:30 泣いている人も、泣いていないかのように。喜んでいる人も、喜んでいないかのように。物を買った人も、自分のものにしていないかのように生きなさい。
7:31 この世と関わっている人も、それにのめり込まないように。今あるこの世界のかたちは、過ぎ去っていくのだから。
7:32 わたしは、あなたたちに余計な心配をせずにいてほしい。結婚していない人は、どうすれば主に喜ばれるかと、主のことに心を向ける。
7:33 でも、結婚している人は、どうすれば妻に喜ばれるかと、この世のことに心を向ける。
7:34 こうして心が二つに分かれてしまう。結婚していない女性や、まだ結婚していない娘は、体も心も主のものとしてささげようと、主のことに心を向ける。でも、結婚している女性は、どうすれば夫に喜ばれるかと、この世のことに心を向ける。
7:35 こう言うのは、あなたたち自身のためを思ってのことだ。あなたたちを縛りつけるためではない。むしろ、あなたたちがきちんとした生き方をして、心を乱されずに主に仕えられるようにと願っているのだ。
7:36 もし、婚約している娘に対して自分がふさわしくないことをしていると思う人がいて、その相手が結婚にふさわしい年ごろになり、どうしても結婚すべきだというなら、その人は思うとおりにすればいい。それは罪ではない。二人は結婚しなさい。
7:37 でも、心の中でしっかりと決心している人がいる。無理に迫られてのことではなく、自分の思いをきちんとコントロールできていて、その相手と結婚させないでおこうと心に決めているなら、その人はそれでいい。
7:38 つまり、その相手と結婚させる人も正しいことをしているし、結婚させない人はもっと良いことをするのだ。
7:39 妻は、夫が生きているかぎり夫に結ばれている。でも、夫が亡くなれば、自分の望む相手と結婚してかまわない。ただし、それは主にある相手とだ。
7:40 だが、わたしの考えでは、そのまま独りでいるほうが幸せだ。わたしも神の霊をいただいていると思う。
8:1 さて、偶像に供えられた肉のことだが、わたしたちはみな知識を持っている、ということはわかっている。でも、知識は人を高ぶらせる。一方、愛は人を育てる。
8:2 自分は何かを知っていると思っている人は、本当に知るべきことを、まだ知ってはいない。
8:3 でも、神を愛している人は、その神に知られているのだ。
8:4 そこで、偶像に供えられた肉を食べることについてだが、わたしたちはこう知っている。この世に偶像の神など実在しないし、唯一の神のほかに神はいない、と。
8:5 たとえ、天にでも地にでも、神々と呼ばれるものがあるとしても——実際、多くの神々、多くの主と呼ばれるものがいるわけだが——
8:6 わたしたちには、ただひとりの神、父がおられるだけだ。すべてのものはこの父から出ていて、わたしたちもこの父のために生きている。そして、ただひとりの主、イエス・キリストがおられるだけだ。すべてのものはこの主を通して造られ、わたしたちもこの主を通して生きている。
8:7 でも、この知識をみんなが持っているわけではない。中には、今までずっと偶像に慣れ親しんできた人たちがいる。彼らはその肉を、今でも偶像に供えられたものとして食べてしまう。すると、その良心は弱いために、汚れてしまうのだ。
8:8 でも、食べ物がわたしたちを神の前に立たせてくれるわけではない。食べても何かが増えるわけではないし、食べなくても何かが減るわけでもない。
8:9 ただ、気をつけてほしい。あなたのこの自由が、弱い人たちをつまずかせるものにならないように。
8:10 考えてみてほしい。知識を持っているあなたが偶像の神殿で食事をしているのを、だれかが見たとしよう。その人の良心は弱いのに、「自分も偶像に供えられた肉を食べていいんだ」と、かえって背中を押されてしまうのではないか。
8:11 そうなると、あなたのその知識のせいで、弱い人が滅びてしまう。キリストがそのために死んでくださった、あの兄弟がだ。
8:12 こんなふうに兄弟姉妹に対して罪を犯し、その弱い良心を傷つけるとき、あなたはキリストに対して罪を犯しているのだ。
8:13 だから、もし食べ物がわたしの兄弟をつまずかせるなら、その兄弟をつまずかせないために、わたしは肉を一生食べない。
9:1 わたしは自由ではないのか。使徒ではないのか。わたしたちの主イエスを、この目で見たのではないか。あなたたちは、主にあってわたしが働いた成果ではないか。
9:2 たとえほかの人たちにとって使徒でないとしても、少なくともあなたたちにとっては使徒だ。あなたたち自身が、主にあって、わたしが使徒であることの証しなのだから。
9:3 わたしを問いただそうとする人たちへの、わたしの弁明はこうだ。
9:4 わたしたちには、食べたり飲んだりする権利がないとでもいうのか。
9:5 ほかの使徒たちや主の兄弟たち、そしてケファ（ペテロ）のように、信者である妻を連れて歩く権利が、わたしたちにはないとでもいうのか。
9:6 それとも、働かないで生活できる権利がないのは、わたしとバルナバだけだというのか。
9:7 考えてみてほしい。自分の給料で戦いに行く兵士がいるだろうか。ぶどう畑を作って、その実を食べない人がいるだろうか。羊の群れを飼っていて、その乳を飲まない人がいるだろうか。
9:8 これは、ただ人間の理屈で言っているのではない。律法だって、同じことを言っているのだ。
9:9 モーセの律法にはこう書いてある。「脱穀している牛に口輪をはめてはならない。」神が気にかけているのは、本当に牛のことだろうか。
9:10 そうではなく、わたしたちのために言われているのではないか。もちろん、わたしたちのために書かれたのだ。耕す人は収穫を期待して耕し、脱穀する人は分け前をもらえると期待して働くべきだからだ。
9:11 わたしたちがあなたがたに霊的な種をまいたのなら、その代わりに生活に必要なものを受け取ったとしても、大したことではないだろう。
9:12 ほかの人たちがあなたがたに頼る権利を持っているのなら、なおさらわたしたちにはその権利があるはずだ。しかし、わたしたちはこの権利を使わなかった。むしろ、どんなことでも我慢している。キリストの福音の邪魔になるようなことを、少しでもしたくないからだ。
9:13 神殿の仕事をする人たちが、神殿の物で生活していることを、あなたがたは知らないのか。祭壇に仕える人たちは、祭壇にささげられた物の分け前を受け取っているのだ。
9:14 それと同じように、主は、福音を伝える人たちが福音によって生活するようにと定められた。
9:15 だが、わたしはこうした権利を一つも使ったことがない。そして、今こう書いているのも、そうしてもらいたいからではない。そんなことになるくらいなら、死んだほうがましだ。この誇りを、誰にも奪わせはしない。
9:16 福音を伝えているからといって、それは誇れることではない。伝えずにはいられない務めが、わたしにのしかかっているからだ。もし福音を伝えなければ、わたしは不幸だ。
9:17 もし自分から進んでこれをしているのなら、報酬を受けるだろう。しかし、進んでではないとしても、わたしはこの務めを任されているのだ。
9:18 では、わたしの報酬とは何だろうか。それは、福音を伝えるときに、それを無償で伝えることだ。つまり、福音を伝える上で当然与えられている権利を、あえて使わないということなのだ。
9:19 わたしはだれにも縛られない自由な立場にある。それでも、より多くの人を得るために、自分からすべての人の奴隷になった。
9:20 ユダヤ人を得るために、ユダヤ人にはユダヤ人のようになった。律法のもとにある人を得るために、自分は律法のもとにいるわけではないのに、律法のもとにある人にはそのようになった。
9:21 律法を持たない人を得るために、その人たちにはそのようになった。とはいえ、わたしは神の律法を無視しているのではなく、キリストの律法のもとにある。
9:22 弱い人を得るために、弱い人には弱い人のようになった。すべての人を、なんとかして一人でも多く救うために、わたしはすべての人にすべてのものとなった。
9:23 こうしたことをすべて、わたしは福音のためにしている。わたし自身も福音の恵みにあずかりたいからだ。
9:24 知らないのだろうか。競技場で走る人はみな走るが、賞を受けるのは一人だけだ。だから、あなたたちも賞を得られるように走りなさい。
9:25 競技をする人はみな、あらゆる面で自分を厳しく節制する。彼らは朽ちてしまう冠を受けるためにそうするが、わたしたちは朽ちない冠を受けるためにそうするのだ。
9:26 だから、わたしはあてもなく走るようなことはしない。空を打つようなボクシングはしない。
9:27 むしろ、自分の体を打ちたたいて従わせている。ほかの人に福音を伝えておきながら、自分自身が失格者になってしまわないためだ。
10:1 兄弟姉妹よ、知っておいてほしいことがある。わたしたちの先祖はみな、あの雲に導かれ、みな海の中を通り抜けた。
10:2 そしてみな、雲の中と海の中で、モーセにつく者としてバプテスマを受けた。
10:3 みな同じ、神からの食べ物を食べ、
10:4 みな同じ、神からの飲み物を飲んだ。彼らについて来た神の岩から飲んだのだ。その岩とはキリストだった。
10:5 でも、その大半を神は喜ばれなかった。彼らは荒れ野で倒れ、死んでいったのだ。
10:6 これらのことは、わたしたちへの警告として起きた。彼らが悪をむさぼったように、わたしたちが悪をむさぼることのないためだ。
10:7 彼らの中のある者たちのように、偶像を拝む者になってはいけない。こう書かれているとおりだ。「民は座って食べたり飲んだりし、立ち上がって遊びにふけった。」
10:8 また、彼らの中のある者たちがしたように、性的に乱れた生き方をしてはいけない。そのために、一日で二万三千人が倒れて死んだ。
10:9 また、彼らの中のある者たちがしたように、キリストを試すようなことをしてはいけない。そのために、彼らは蛇にかまれて滅んだ。
10:10 また、彼らの中のある者たちがしたように、不平を言ってはいけない。そのために、彼らは滅ぼす者の手で滅ぼされた。
10:11 これらのことは、彼らへの戒めとして起こり、そして時代の終わりに生きるわたしたちへの警告として書き記された。
10:12 だから、自分は大丈夫だと思っている人こそ、倒れないように気をつけなさい。
10:13 あなたたちが直面する誘惑は、どれも人がふつうに経験するものばかりだ。神は真実な方だ。あなたたちが耐えられないほどの誘惑に遭わせることはない。むしろ、誘惑と一緒に、それに耐えられるよう逃げ道も用意してくださる。
10:14 だから、愛する人たち、偶像を拝むことから逃げなさい。
10:15 わたしは、分別のある人に話すつもりで言う。今から言うことを、自分でよく考えて判断してほしい。
10:16 わたしたちが感謝して受けるあの祝福の杯は、キリストの血にあずかることではないか。わたしたちが裂いて分け合うパンは、キリストの体にあずかることではないか。
10:17 パンは一つ。だからわたしたちは大勢でも一つの体だ。みんなが一つのパンを分け合っているのだから。
10:18 この世のイスラエルの民を見てみなさい。ささげ物を食べる人たちは、祭壇にあずかる仲間になっているではないか。
10:19 では、わたしは何を言おうとしているのか。偶像に供えた肉に何か意味があるとか、偶像そのものに何か力があるとか、そういうことではない。
10:20 そうではなく、人々がささげ物をするとき、それは神にではなく悪霊にささげているのだ。わたしは、あなたたちが悪霊とかかわる仲間になってほしくない。
10:21 主の杯を飲みながら、同時に悪霊の杯を飲むことはできない。主の食卓につきながら、同時に悪霊の食卓につくこともできない。
10:22 それとも、わたしたちは主のねたみを引き起こそうというのか。わたしたちは主より強いとでもいうのか。
10:23 「何をしてもかまわない」と言う。でも、すべてが役に立つわけではない。「何をしてもかまわない。」でも、すべてが人を成長させるわけではない。
10:24 だれも自分の利益ばかりを求めず、ほかの人の利益を求めなさい。
10:25 肉市場で売っているものは、良心のことで何も詮索せずに、何でも食べてよい。
10:26 「地とそこに満ちるものはすべて、主のものだ」からだ。
10:27 信じていない人があなたを食事に招き、あなたが行きたいと思うなら、出されたものは何でも、良心のことで何も詮索せずに食べなさい。
10:28 でも、もしだれかが「これはお供え物です」と言ったら、それを教えてくれた人のため、また良心のために、食べてはいけない。
10:29 良心といっても、あなた自身の良心のことではなく、その相手の良心のことだ。どうしてわたしの自由が、ほかの人の良心によって裁かれなければならないのか。
10:30 わたしが感謝して食べているのに、その食べ物のことで、どうして悪く言われなければならないのか。
10:31 だから、食べるにも飲むにも、何をするにも、すべて神の栄光のためにしなさい。
10:32 ユダヤ人にも、ギリシア人にも、神の教会にも、つまずきを与えないようにしなさい。
10:33 わたしも、すべてのことで、すべての人を喜ばせようとしている。自分の利益ではなく、多くの人の利益を求めているのだ。その人たちが救われるためである。
11:1 わたしがキリストを見習っているように、あなたたちもわたしを見習ってほしい。
11:2 さて、あなたたちをほめたい。あなたたちは、何ごとにつけてもわたしのことを覚えていて、わたしが伝えた教えをそのまま守ってくれているからだ。
11:3 ただ、これだけは知っておいてほしい。すべての男の頭はキリストであり、女の頭は男であり、キリストの頭は神である。
11:4 男はみな、頭に何かをかぶって祈ったり預言したりすると、自分の頭をはずかしめることになる。
11:5 反対に、女はみな、頭に何もかぶらずに祈ったり預言したりすると、自分の頭をはずかしめることになる。それは、髪をそり落としているのと同じことだ。
11:6 女が頭に何もかぶらないのなら、いっそ髪を切ってしまえばいい。でも、女にとって髪を切ったりそり落としたりするのが恥ずかしいことなら、頭に何かをかぶるべきだ。
11:7 男は頭に何もかぶるべきではない。男は神のかたちであり、神の栄光を映すものだからだ。一方、女は男の栄光を映すものである。
11:8 というのも、男が女から出たのではなく、女が男から出たのだ。
11:9 また、男が女のために造られたのではなく、女が男のために造られたのだ。
11:10 だから女は、天使たちのことも考えて、頭に権威のしるしをのせておくべきなのだ。
11:11 とはいえ、主にあっては、女は男なしにはありえないし、男も女なしにはありえない。
11:12 女が男から出たように、男も女から生まれてくる。そして、すべては神から出ているのだ。
11:13 自分たちで考えてみてほしい。女が頭に何もかぶらないで神に祈るのは、ふさわしいことだろうか。
11:14 自然そのものが、あなたがたに教えているのではないか。男が長い髪をしているのは、その人にとって恥ずかしいことだ。
11:15 でも、女が長い髪をしているのは、その人の栄光だ。長い髪は、かぶり物の代わりに女に与えられているのだから。
11:16 もしこのことで言い争いたい人がいても、わたしたちにはそんな習慣はないし、神の諸教会にもない。
11:17 さて、次のことを命じるにあたって、わたしはあなたがたをほめるわけにはいかない。あなたがたの集まりが、良い方向にではなく、かえって悪い方向に向かっているからだ。
11:18 まず第一に、あなたがたが教会として集まるとき、その中に仲間割れがあると聞いている。わたしも、それはある程度は本当だと思っている。
11:19 あなたがたの間には、派閥のようなものもきっと出てくるだろう。それは、本物と認められる人たちが、あなたがたの中ではっきりと分かるようになるためだ。
11:20 だから、あなたがたが一つの場所に集まっても、そこで食べているものは、主の食事とは言えない。
11:21 というのも、食事のとき、めいめいが自分の分を先に食べてしまうからだ。その結果、お腹をすかせている人がいる一方で、酔っぱらっている人もいる。
11:22 食べたり飲んだりする家が、あなたがたにはないというのか。それとも、神の教会を見下して、何も持っていない人たちに恥をかかせているのか。あなたがたに何と言えばいいのだろう。このことであなたがたをほめればいいのか。いや、ほめはしない。
11:23 わたしがあなたがたに伝えたことは、わたし自身が主から受けたものだ。主イエスは、裏切られたその夜、パンを取り、
11:24 感謝の祈りをささげてからそれを裂き、こう言われた。「これは、あなたがたのためのわたしの体である。わたしを覚えて、これを行いなさい。」
11:25 杯についても同じようにされた。食事のあとで杯を取り、こう言われた。「この杯は、わたしの血によって結ばれる新しい契約である。飲むたびに、わたしを覚えて、これを行いなさい。」
11:26 だから、あなたがたはこのパンを食べ、この杯を飲むたびに、主が来られるときまで、主の死を告げ知らせるのだ。
11:27 だから、ふさわしくないままに主のパンを食べたり、主の杯を飲んだりする人は、主の体と血を汚す罪を負うことになる。
11:28 だれでも、まず自分自身をよく調べてから、そのパンを食べ、その杯を飲みなさい。
11:29 主の体をわきまえずに食べたり飲んだりする人は、自分自身にさばきを招くことになるのだ。
11:30 そのために、あなたがたの中には体の弱い人や病気の人が多く、亡くなった人も少なくない。
11:31 もし、わたしたちが自分自身をきちんと見きわめていたなら、さばかれることはないだろう。
11:32 しかし、わたしたちは主にさばかれることで、世とともに罪に定められないように、正しく導かれているのだ。
11:33 だから、わたしの兄弟姉妹よ、食事のために集まるときは、互いに待ち合わせなさい。
11:34 空腹の人は、家で食べなさい。あなたがたが集まって、それがさばきを招くことにならないためだ。そのほかのことは、わたしがそちらに行ったときに、きちんと整えよう。
12:1 さて、兄弟姉妹のみなさん、霊が与える賜物について、あなたがたにはぜひ知っておいてほしい。
12:2 あなたがたも知っているとおり、まだ神を知らなかったころ、あなたがたは誘われるまま、ものを言えない偶像のところへ引き寄せられていた。
12:3 だから、はっきり言っておきたい。神の霊によって語る人はだれも「イエスはのろわれよ」とは言わない。そして、聖霊によらなければ、だれも「イエスは主です」と言うことはできない。
12:4 賜物にはいろいろな種類がある。でも、それを与える霊は同じ一つの霊だ。
12:5 奉仕にもいろいろな種類がある。でも、仕える相手である主は同じ方だ。
12:6 働きにもいろいろな種類がある。でも、すべての人の中ですべてを行う神は同じ方だ。
12:7 一人ひとりに霊の現れが与えられるのは、みんなの役に立つためだ。
12:8 ある人には霊によって知恵の言葉が与えられ、ほかの人には同じ霊によって知識の言葉が与えられる。
12:9 また、ある人には同じ霊によって信仰が、ほかの人には同じ一つの霊によって病気をいやす賜物が与えられる。
12:10 ある人には奇跡を行う力が、ある人には預言が、ある人には霊を見分ける力が、ある人にはいろいろな種類の異言が、ある人にはその異言を解き明かす力が与えられる。
12:11 これらはすべて、同じ一つの霊の働きだ。霊はそれぞれの人に、思いのままに賜物を分け与える。
12:12 体は一つでも、多くの部分から成り立っている。そして、体の部分は多くあっても、全体で一つの体だ。キリストも、それと同じだ。
12:13 わたしたちはみな、一つの霊によってバプテスマを受け、一つの体となった。ユダヤ人もギリシア人も、奴隷も自由な人も、みな一つの霊を飲ませてもらったのだ。
12:14 体は一つの部分ではなく、多くの部分から成り立っている。
12:15 もし足が「わたしは手ではないから、体の一部ではない」と言ったとしても、それで体の一部でなくなるわけではない。
12:16 もし耳が「わたしは目ではないから、体の一部ではない」と言ったとしても、それで体の一部でなくなるわけではない。
12:17 もし体全体が目だったら、どこで聞くのだろう。もし全体が耳だったら、どこでにおいをかぐのだろう。
12:18 でも実際には、神がそれぞれの部分を、思いのままに体の中に置いてくださった。
12:19 もし全部が一つの部分だったら、体はどこにあるだろう。
12:20 でも実際には、部分は多くあっても、体は一つなのだ。
12:21 目が手に向かって「おまえは必要ない」とは言えない。頭が足に向かって「おまえたちは必要ない」とも言えない。
12:22 それどころか、弱く見える体の部分こそ、なくてはならないものだ。
12:23 そして、あまり見栄えがしないと思う部分にこそ、わたしたちはより丁寧に気を配る。人目にさらしたくない部分は、いっそう大切に扱う。
12:24 見栄えのする部分には、そんな心配はいらない。神は体を組み合わせ、劣って見える部分にこそ、より大きな心遣いを与えてくださった。
12:25 こうして、体の中で仲間割れが起きず、それぞれの部分が互いに同じように気にかけ合うためだ。
12:26 一つの部分が苦しめば、すべての部分がいっしょに苦しむ。一つの部分が大切にされれば、すべての部分がいっしょに喜ぶ。
12:27 あなたがたは、キリストの体だ。そして、一人ひとりがその一部なのだ。
12:28 神は教会の中に、いろいろな役割を置いてくださった。まず使徒、次に預言者、三番目に教師。それから奇跡を行う力、病気を治す賜物、人を助ける働き、まとめて導く働き、さまざまな種類の言葉を語る力だ。
12:29 みんなが使徒なのだろうか。みんなが預言者なのだろうか。みんなが教師なのだろうか。みんなが奇跡を行う力を持っているのだろうか。
12:30 みんなが病気を治す賜物を持っているのだろうか。みんなが不思議な言葉を語るのだろうか。みんなが、その言葉を解き明かせるのだろうか。
12:31 だから、もっと大きな賜物を熱心に求めなさい。そして、わたしはあなたがたに、それらすべてにまさる道を示そう。
13:1 たとえわたしが人の言葉、さらには天使の言葉を話せたとしても、愛がなければ、わたしはただうるさく鳴る銅鑼や、やかましく響くシンバルにすぎない。
13:2 たとえ預言する力を持ち、あらゆる奥義とあらゆる知識を知り尽くし、山を動かすほどの信仰をすべて持っていたとしても、愛がなければ、わたしは何者でもない。
13:3 たとえ全財産を人に分け与え、自分の体さえ焼かれるために差し出したとしても、愛がなければ、わたしには何の得にもならない。
13:4 愛は忍耐強く、親切だ。愛はねたまない。愛は自慢せず、高ぶらない。
13:5 礼儀に反することをせず、自分の利益を求めず、いらだたず、相手のした悪いことをいつまでも数え上げない。
13:6 不正を喜ばず、真実をいっしょに喜ぶ。
13:7 どんなことでも受け止め、どんなときも信じ、どんなときも望みを失わず、どんなことにも耐える。
13:8 愛は決して終わらない。預言はやがてすたれ、異言はやみ、知識もすたれる。
13:9 わたしたちが知っていることは一部だけで、預言することも一部にすぎないからだ。
13:10 でも、完全なものが来たら、その一部にすぎないものはすたれてしまう。
13:11 わたしも幼い子どもだったころは、子どものように話し、子どものように考え、子どものように判断していた。でも、大人になったとき、子どものやり方はやめた。
13:12 今、わたしたちが見ているのは、鏡に映るぼんやりした姿のようなものだ。でもそのときには、顔と顔を合わせて見ることになる。今わたしが知っているのは一部だけだが、そのときには、わたしが完全に知られているのと同じように、わたしも完全に知るようになる。
13:13 こうして、信仰と希望と愛、この三つはいつまでも残る。その中でいちばん大切なのは、愛だ。
14:1 愛を追い求めなさい。そして、霊による賜物を熱心に願いなさい。とりわけ、預言できるように願いなさい。
14:2 異言を話す人は、人に向かって話しているのではなく、神に向かって話している。だれにも理解できないのに、霊によって神秘を語っているからだ。
14:3 でも、預言する人は、人に向かって話し、その人を成長させ、励まし、慰める。
14:4 異言を話す人は自分自身を成長させるが、預言する人は教会を成長させる。
14:5 わたしはあなたがた全員に異言を話してほしいと思っている。でも、それ以上に、預言できるようになってほしい。異言を話す人がそれを説き明かして教会を成長させるのでなければ、預言する人のほうが、異言を話す人よりまさっている。
14:6 だから、兄弟姉妹よ、もしわたしがあなたがたのところへ行って異言を話すだけなら、あなたがたに何の役に立つだろう。示されたことや知識、預言や教えを伝えるのでなければ、何にもならない。
14:7 笛や竪琴のような、命のない楽器でさえそうだ。もし音に区別がなければ、笛の音なのか竪琴の音なのか、どうやってわかるだろう。
14:8 ラッパがはっきりしない音を出したら、いったい誰が戦いの準備をするだろう。
14:9 あなたがたも同じだ。舌でわかりやすい言葉を話さなければ、何を話しているのか、どうやって伝わるだろう。それでは空気に向かって話しているようなものだ。
14:10 世界にはいろんな種類の言葉があって、意味を持たない言葉は一つもない。
14:11 だから、もしわたしがその言葉の意味を知らなければ、話している人にとってわたしは外国人になり、話している人もわたしにとって外国人になる。
14:12 あなたがたも同じだ。霊的な賜物を熱心に求めているのだから、教会を成長させるために、それがあふれるほど豊かになるように求めなさい。
14:13 だから、異言を話す人は、それを説き明かせるように祈りなさい。
14:14 もしわたしが異言で祈るなら、わたしの霊は祈っていても、わたしの理性は実を結ばない。
14:15 では、どうすればいいのだろう。わたしは霊で祈り、理性でも祈ろう。霊で賛美し、理性でも賛美しよう。
14:16 もしあなたが霊だけで神をたたえても、その内容がわからない人は、あなたの感謝に対してどうやって「アーメン」と言えるだろう。あなたが何を言っているのか、その人にはわからないのだから。
14:17 あなたの感謝はりっぱでも、もう一人の人は成長できない。
14:18 わたしは、あなたがた誰よりも多く異言を話すことを、神に感謝している。
14:19 でも、教会の集まりでは、わたしは異言で一万の言葉を話すよりも、自分の理解で五つの言葉を話したい。ほかの人たちにも教えてあげられるからだ。
14:20 兄弟姉妹、考え方において子どものようであってはいけない。悪に対しては幼な子でいなさい。でも、考え方においては大人になりなさい。
14:21 律法にはこう書いてある。「わたしは、外国の言葉で、外国人の唇によって、この民に語りかける。それでも、彼らはわたしの言うことを聞こうとしない」と主は言われる。
14:22 だから異言は、信じている人たちのためではなく、信じていない人たちのためのしるしだ。一方、預言は、信じていない人たちのためではなく、信じている人たちのためのものだ。
14:23 だから、もし教会全体が一つの場所に集まって、みんなが異言で話していたら、そこに何も知らない人や信じていない人が入ってきたとき、彼らは「あなたたちは気が変になっている」と言うのではないだろうか。
14:24 でも、もしみんなが預言していたら、そこに信じていない人や何も知らない人が入ってきたとき、その人はみんなの言葉によって自分の罪を示され、みんなの言葉によって問われることになる。
14:25 その人の心の隠れた思いがあらわになる。そして、その人はひれ伏して神を礼拝し、「本当に、神はあなたたちの中におられる」と告白するのだ。
14:26 では、兄弟姉妹、どうすればいいのだろう。あなたがたが集まるとき、ある人は賛美の歌を、ある人は教えを、ある人は神からの示しを、ある人は異言を、ある人はその解き明かしを持っている。そのすべてを、たがいの成長のために用いなさい。
14:27 異言を話す人がいるなら、二人か、多くても三人で、順番に話しなさい。そして、だれか一人がそれを解き明かしなさい。
14:28 でも、解き明かす人がいないなら、その人は教会の中では黙っていなさい。そして、自分自身と神に向かって話しなさい。
14:29 預言する人は、二人か三人が話し、ほかの人たちはその内容を見きわめなさい。
14:30 もし、座っているほかの人に神からの示しが与えられたら、最初に話していた人は黙りなさい。
14:31 みんなが一人ずつ順番に預言できる。そうすれば、みんなが学べるし、みんなが励まされる。
14:32 預言する人の霊は、その預言する人自身がちゃんとコントロールできるものだ。
14:33 神は混乱の神ではなく、平和の神だからだ。聖なる人たちのすべての教会でそうであるように。
14:34 女性たちは教会の中では黙っていなさい。話すことは許されていない。律法も言っているとおり、従う立場にありなさい。
14:35 もし何か学びたいことがあるなら、家で自分の夫に聞きなさい。女性が教会で話すのは、恥ずかしいことだからだ。
14:36 それとも、神の言葉はあなたがたから出たとでもいうのか。あるいは、あなたがただけに届いたとでもいうのか。
14:37 自分は預言者だ、あるいは霊の人だと思う人がいるなら、わたしがあなたがたに書いていることは主の命令だと、はっきり認めなさい。
14:38 もしそれを認めない人がいるなら、その人自身も認められない。
14:39 だから、わたしの兄弟姉妹よ、預言することを熱心に求めなさい。そして、異なる言葉で話すことも禁じてはいけない。
14:40 ただし、すべてのことを、きちんと、秩序をもって行いなさい。
15:1 さて、兄弟姉妹たち。わたしがあなたがたに伝えた福音、あの良い知らせについて、あらためて思い起こしてほしい。あなたがたはそれを受け取り、その上に今も立っている。
15:2 あなたがたが救われるのも、この福音による。わたしが伝えたそのことばを、しっかり守り続けているならばだ。そうでなければ、あなたがたが信じたことは無駄になってしまう。
15:3 わたしは、自分も受け取ったいちばん大切なことを、まずあなたがたに伝えた。それは、キリストがわたしたちの罪のために死なれたということ。これは聖書に書かれているとおりだ。
15:4 そして葬られたこと、さらに三日目によみがえらされたこと。これも聖書に書かれているとおりだ。
15:5 キリストはケファに姿を現し、それから十二人の弟子たちに現れた。
15:6 その後、五百人以上の兄弟姉妹に一度に現れた。その多くは今も生きているが、すでに眠りについた者もいる。
15:7 それからヤコブに現れ、続いてすべての使徒たちに現れた。
15:8 そして最後に、月足らずで生まれたような者であるわたしにも、現れてくださった。
15:9 わたしは使徒たちの中でいちばん小さな者だ。使徒と呼ばれる資格もない。神の教会を迫害したのだから。
15:10 けれども、今のわたしがあるのは神の恵みによる。わたしに注がれたその恵みは、無駄にはならなかった。わたしはだれよりも懸命に働いた。いや、働いたのはわたしではなく、わたしとともにあった神の恵みだ。
15:11 だから、わたしであれ、ほかの使徒たちであれ、わたしたちはこう宣べ伝えている。そして、あなたがたもこう信じたのだ。
15:12 ところで、キリストが死者の中からよみがえらされたと宣べ伝えられているのに、あなたがたの中のある人たちは、どうして「死者の復活などない」と言うのか。
15:13 もし死者の復活がないのなら、キリストもよみがえらされなかったことになる。
15:14 そしてキリストがよみがえらされていないのなら、わたしたちの宣べ伝えていることは空しく、あなたがたの信仰も空しい。
15:15 それどころか、わたしたちは神について偽りを語る証人だということになる。神がキリストをよみがえらせたと、神に反して証言したことになるからだ。もし本当に死者がよみがえらされないのなら、神はキリストをよみがえらせてなどいないことになる。
15:16 なぜなら、もし死者がよみがえらされないのなら、キリストもよみがえらされなかったはずだ。
15:17 そしてキリストがよみがえらされていないのなら、あなたがたの信仰はむなしく、あなたがたは今もなお自分の罪の中にいることになる。
15:18 そればかりか、キリストを信じて眠りについた人たちも、滅びてしまったことになる。
15:19 もしわたしたちがこの世の命だけのためにキリストに望みをかけているのなら、わたしたちはすべての人の中で最もあわれな者だ。
15:20 しかし今、キリストは確かに死者の中からよみがえらされた。眠りについた人たちの中で、最初の実として。
15:21 というのも、一人の人によって死が来たように、一人の人によって死者の復活も来たからだ。
15:22 アダムにあってすべての人が死ぬように、キリストにあってすべての人が生かされることになる。
15:23 ただし、それぞれ順序がある。最初の実であるキリスト、次に、キリストが来られるときに、キリストに属する人たちだ。
15:24 それから、終わりが来る。そのとき、キリストはすべての支配、すべての権威と力を滅ぼし、御国を父である神に引き渡される。
15:25 キリストは、すべての敵を自分の足の下に置くまで、王として治めなければならないからだ。
15:26 最後の敵として滅ぼされるのが、死だ。
15:27 「神は、すべてのものをキリストの足の下に従わせた」からだ。でも、「すべてのものが従わされた」と言われるとき、すべてをキリストに従わせた方自身は、その中に含まれない。これははっきりしている。
15:28 すべてのものがキリストに従わされると、そのとき御子自身も、すべてをご自分に従わせた方に従われる。こうして、神がすべてにおいてすべてとなるためだ。
15:29 もしそうでないなら、死んだ人たちのためにバプテスマを受ける人は、どうなるのだろう。死者がまったく復活しないのなら、なぜその人たちのためにバプテスマを受けるのか。
15:30 それに、なぜわたしたちは、いつも危険にさらされているのか。
15:31 わたしは毎日死んでいる。これは、わたしたちの主キリスト・イエスにあってわたしが抱いている、あなたがたを誇る思いにかけて、はっきり言えることだ。
15:32 もし、ただの人間の思いでエフェソで野獣と戦ったのなら、それがわたしに何の得になるだろう。死者が復活しないのなら、「食べよう、飲もう。どうせ明日は死ぬのだから」ということになる。
15:33 だまされてはいけない。「悪い付き合いは、良い習慣を台なしにする」のだ。
15:34 正気に戻り、正しく生きなさい。もう罪を犯してはいけない。あなたがたの中には、神を知らない人がいる。恥ずかしいことだが、あえてこう言う。
15:35 でも、こう言う人がいるだろう。「死者はどのようにして復活するのか。どんな体で来るのか」と。
15:36 愚かな人だ。あなたが蒔くものは、死ななければ生き返らない。
15:37 蒔くとき、あなたが蒔くのは、これからできあがる体そのものではない。麦であれ、ほかの何かであれ、ただの種粒を蒔くだけだ。
15:38 でも神は、その種に、思いのままの体を与える。それぞれの種に、それにふさわしい体を与えるのだ。
15:39 肉といっても、どれも同じではない。人間の肉があり、動物の肉があり、鳥の肉があり、魚の肉がある。それぞれ違う。
15:40 天にある体もあれば、地にある体もある。でも、天にある体の輝きと、地にある体の輝きは違う。
15:41 太陽の輝きがあり、月の輝きがあり、星の輝きがある。しかもその輝きは、星ごとに違う。
15:42 死者の復活も、これと同じだ。朽ちるものとして蒔かれ、朽ちないものとしてよみがえる。
15:43 みじめなものとして蒔かれ、栄光あるものとしてよみがえる。弱いものとして蒔かれ、力あるものとしてよみがえる。
15:44 生まれつきの体として蒔かれ、霊の体としてよみがえる。生まれつきの体があるなら、霊の体もあるのだ。
15:45 こう書いてあるとおりだ。「最初の人アダムは、生きるものとなった。」その最後のアダムは、命を与える霊となった。
15:46 でも、先に来るのは霊のものではない。まず生まれつきのものが来て、そのあとに霊のものが来る。
15:47 最初の人は地の土から造られた者。二番目の人は天から来た者だ。
15:48 土から造られた者と同じように、地に属する人たちもそうだ。そして天から来た者と同じように、天に属する人たちもそうなる。
15:49 わたしたちは土からできた者の姿を身につけてきた。だから同じように、天から来た者の姿も身につけることになる。
15:50 兄弟姉妹、わたしが言いたいのはこういうことだ。肉と血でできた体は、神の国を受け継ぐことができない。朽ちるものは、朽ちないものを受け継げないのだ。
15:51 よく聞いてほしい。あなたたちに一つの奥義を伝えよう。わたしたちは、みんなが死ぬわけではない。でも、みんなが変えられる。
15:52 それは一瞬のうち、まばたきする間に起こる。最後のラッパが鳴るときのことだ。ラッパが鳴り響くと、死んだ人たちは朽ちない者としてよみがえり、わたしたちも変えられる。
15:53 なぜなら、この朽ちる体は朽ちないものを着なければならず、この死ぬべき体は死なないものを着なければならないからだ。
15:54 この朽ちる体が朽ちないものを着て、この死ぬべき体が死なないものを着るとき、こう書かれている言葉が実現する。「死は勝利にのみ込まれた。」
15:55 「死よ、おまえの勝利はどこにあるのか。死よ、おまえのとげはどこにあるのか。」
15:56 死のとげとは罪であり、罪の力とは律法だ。
15:57 でも、神に感謝しよう。神は、わたしたちの主イエス・キリストによって、わたしたちに勝利を与えてくださる。
15:58 だから、わたしの愛する兄弟姉妹よ、しっかりと立って、動かされないでほしい。いつも主の働きに励みなさい。あなたたちの労苦が、主にあってむだにならないことを、あなたたちは知っているのだから。
16:1 さて、神の民のために献金を集める件だけど。ガラテヤの諸教会に指示したとおり、あなたたちもやってほしい。
16:2 毎週日曜日に、それぞれが収入に応じていくらかを取り分け、手元にためておいてほしい。わたしが行ってから集め始めることのないようにするためだ。
16:3 わたしがそちらに着いたら、あなたたちが認めた人たちに紹介状を持たせ、あなたたちの贈り物をエルサレムに届けさせよう。
16:4 わたし自身も行ったほうがよければ、その人たちはわたしと一緒に行くことになる。
16:5 わたしはマケドニアを通ってから、あなたたちのところへ行くつもりだ。マケドニアは通り抜けるだけだからね。
16:6 でも、あなたたちのところには、できればしばらく滞在したい。冬を越すことになるかもしれない。そうすれば、わたしが次にどこへ行くにしても、あなたたちに送り出してもらえるからね。
16:7 今は通りがかりに少し会うだけにはしたくないんだ。主が許してくださるなら、しばらくあなたたちのところに腰を落ち着けたいと思っている。
16:8 でも、五旬節まではエフェソに残るつもりだ。
16:9 というのも、大きく実り多い働きの扉がわたしに開かれているし、反対する者も大勢いるからだ。
16:10 テモテがそちらに着いたら、あなたたちのところで不安なく過ごせるよう気を配ってほしい。彼はわたしと同じように、主の働きをしているのだから。
16:11 だから、だれも彼を軽く見てはいけない。わたしのところへ戻れるよう、安心して送り出してほしい。わたしは仲間たちと一緒に、彼が来るのを待っている。
16:12 兄弟アポロのことだけど、仲間たちと一緒にあなたたちのところへ行くよう、わたしは何度も勧めた。でも、今は行く気がまったくなかった。都合のよい時が来れば、彼は行くだろう。
16:13 目を覚ましていなさい。信仰にしっかり立ち、勇気を持って、強くありなさい。
16:14 何をするにも、すべてを愛をもって行いなさい。
16:15 兄弟姉妹よ、お願いがある。あなたたちも知っているとおり、ステファナの家の人たちはアカイアで最初に信じた人たちで、神の民に仕えることに自分をささげてきた。
16:16 だから、こういう人たちや、一緒に働き、労してくれるすべての人に、あなたたちも従ってほしい。
16:17 ステファナとフォルトナトとアカイコが来てくれて、わたしはうれしい。あなたたちがそばにいてくれない分を、この人たちが埋めてくれたのだから。
16:18 彼らはわたしの心を元気づけ、あなたたちの心も元気づけてくれた。だから、こういう人たちを大切にしてほしい。
16:19 アジアの諸教会が、あなたたちによろしくと言っている。アクラとプリスカ、そして彼らの家に集まる教会も、主にあって心からよろしくと伝えている。
16:20 ここにいる兄弟姉妹みんなが、あなたたちによろしくと言っている。あなたたちも、きよい口づけをもって互いにあいさつを交わしなさい。
16:21 わたしパウロが、自分の手であいさつを書く。
16:22 もし主を愛さない者がいるなら、その人はのろわれよ。主よ、来てください。
16:23 主イエスの恵みが、あなたたちとともにありますように。
16:24 キリスト・イエスにあって、わたしの愛が、あなたたちみんなとともにあるように。
コリント人への第二の手紙
1:1 神の御心によってキリスト・イエスの使徒となったパウロと、兄弟テモテから、コリントにある神の教会へ。そして、アカイア全土にいるすべての聖なる人たちへ。
1:2 わたしたちの父である神と、主イエス・キリストから、恵みと平安があなたがたにありますように。
1:3 わたしたちの主イエス・キリストの父である神をほめたたえよう。この方は、あわれみに満ちた父であり、あらゆる励ましを与えてくださる神だ。
1:4 神は、どんな苦しみのときにもわたしたちを励ましてくださる。だからわたしたちも、あらゆる苦しみの中にいる人たちを励ますことができる。神ご自身から受けたその励ましによって、他の人を励ませるのだ。
1:5 キリストのために受ける苦しみがわたしたちにあふれているのと同じように、キリストによって受ける励ましもあふれているからだ。
1:6 わたしたちが苦しみを受けるなら、それはあなたがたの励ましと救いのためだ。わたしたちが励まされるなら、それもあなたがたを励ますためだ。その励ましは、わたしたちが受けているのと同じ苦しみを、あなたがたが耐え抜くときに力となって働く。
1:7 だから、あなたがたについてのわたしたちの望みは揺るがない。あなたがたが同じ苦しみを共にしているように、同じ励ましも共にすることを、わたしたちは知っているからだ。
1:8 兄弟姉妹よ、アジア州でわたしたちが受けた苦しみについて、ぜひ知っておいてほしい。わたしたちは耐えられないほど重くのしかかられ、力の限界をはるかに超えて、生きる望みさえ失うほどだった。
1:9 わたしたちは心の中で、死を宣告されたようなものだと感じていた。でもそれは、自分自身ではなく、死んだ者を生き返らせてくださる神に頼るためだった。
1:10 神は、これほど大きな死の危険からわたしたちを救い出してくださった。そして、これからも救い出してくださる。わたしたちはこの神に望みをかけている。神はこれからも救ってくださると。
1:11 あなたがたも祈りによって、わたしたちのために力を合わせてほしい。そうすれば、多くの人の祈りに応えてわたしたちに与えられた恵みのために、多くの人がわたしたちのことで感謝をささげることになる。
1:12 わたしたちが誇りとしているのは、これだ。良心が証ししてくれること、つまり、わたしたちがこの世で、そして特にあなたがたに対して、神から出た清さと誠実さをもって歩んできたということ。それは人間的な知恵によるのではなく、神の恵みによるものだった。
1:13 わたしたちがあなたがたに書くのは、あなたがたが読んで理解できることばかりだ。ほかのことは書いていない。そして、あなたがたが最後まですべてを理解してくれることを、わたしは望んでいる。
1:14 あなたがたはもう一部は分かってくれている。わたしたちの主イエスが来られるその日に、あなたがたがわたしたちの誇りであるように、わたしたちもあなたがたの誇りなのだと。
1:15 こう確信していたから、わたしはまずあなたがたのところへ行こうと思っていた。そうすれば、あなたがたは二度めの恵みを受けることになる。
1:16 つまり、あなたがたのところを通ってマケドニアへ行き、マケドニアからまたあなたがたのところへ戻って、それからあなたがたに送り出してもらってユダヤへ向かう、という計画だった。
1:17 こう計画したからといって、わたしが軽い気持ちで動いたとでも言うのだろうか。それとも、この世の人のように、同じ口で「はい、はい」と言いながら「いいえ、いいえ」と言うような、いい加減な計画を立てたとでも言うのだろうか。
1:18 神は真実な方だ。だから、わたしたちがあなたがたに語る言葉に、「はい」と「いいえ」が入りまじることはない。
1:19 わたしと、シルワノと、テモテとが、あなたがたに宣べ伝えた神の子イエス・キリスト。この方は「はい」であると同時に「いいえ」であるようなお方ではなかった。この方においては、いつも「はい」だけがあった。
1:20 神が約束されたことは、どれもみな、この方において「はい」となる。だからわたしたちは、この方を通して「アーメン」と言い、神に栄光をささげるのだ。
1:21 わたしたちをあなたがたとともにキリストのうちにしっかりと立たせ、わたしたちに油を注いでくださったのは、神だ。
1:22 神はまた、わたしたちに証印を押し、その保証として、わたしたちの心に御霊を与えてくださった。
1:23 わたしは自分の命をかけて、神を証人として呼び求める。わたしがまだコリントへ行かずにいるのは、あなたがたをかばうためだ。
1:24 とはいえ、わたしたちはあなたがたの信仰を支配しようとしているのではない。あなたがたの喜びのために、ともに働く者なのだ。あなたがたは信仰によって、しっかりと立っているのだから。
2:1 だからわたしは、あなたたちのところへ、もう悲しい思いをさせに行くことはやめようと、心に決めた。
2:2 もしわたしがあなたたちを悲しませるなら、わたしを喜ばせてくれるのは、いったい誰だろう。わたしに悲しまされた、そのあなたたちのほかにいないのに。
2:3 だから、わたしはあのことを書いた。わたしが行ったとき、本来なら喜ばせてくれるはずのあなたたちから、かえって悲しみを受けることのないようにだ。わたしの喜びは、あなたたち全員の喜びでもあると、みんなを信じているから。
2:4 わたしは深い苦しみと心の痛みの中で、たくさんの涙を流しながら、あなたたちに書いた。あなたたちを悲しませるためではない。わたしがあなたたちに、どれほど深い愛を持っているかを知ってほしかったからだ。
2:5 もし誰かが悲しみをもたらしたのなら、その人はわたしを悲しませたのではなく、ある意味であなたたち全員を悲しませたのだ。言い過ぎにならないように、こう言っておく。
2:6 そういう人には、多くの人から受けたあの罰で、もう十分だ。
2:7 だから今は逆に、その人を赦し、励ましてあげるべきだ。深すぎる悲しみに、その人がのみ込まれてしまわないようにだ。
2:8 だからお願いする。その人への愛を、はっきり示してあげてほしい。
2:9 わたしがあの手紙を書いたのは、あなたたちがどんなことにも従ってくれる人かどうか、その本気を確かめたかったからでもある。
2:10 あなたたちが誰かを赦すなら、わたしも赦す。わたしが何かを赦したのなら、それはあなたたちのために、キリストの前で赦したのだ。
2:11 それは、サタンにつけ込まれないためだ。わたしたちは、そのたくらみを知らないわけではないのだから。
2:12 さて、わたしはキリストの良い知らせを伝えるために、トロアスへ行った。そこでは、主によって働きの扉が開かれていた。
2:13 でも、わたしの心は落ち着かなかった。兄弟テトスに会えなかったからだ。それで、その人たちに別れを告げて、マケドニアへ向かった。
2:14 しかし、神に感謝する。神はいつも、キリストによってわたしたちを勝利の行進に加えてくださる。そして、わたしたちを通して、キリストを知るという香りを、どこででも漂わせてくださるのだ。
2:15 わたしたちは、神に献げられるキリストの良い香りだ。救われていく人々の中でも、滅びていく人々の中でも。
2:16 滅びていく人々にとっては、死から死へと導く香り。救われていく人々にとっては、命から命へと導く香りだ。こんな務めを、いったい誰が果たせるだろう。
2:17 わたしたちは、神の言葉を売り物にする多くの者たちとは違う。むしろ、純粋な心で、神のもとから来た者として、神の前で、キリストにあって語っているのだ。
3:1 わたしたちは、また自分を売り込もうとしているのだろうか。それとも、ある人たちのように、あなたたちへの推薦状や、あなたたちからの推薦状が必要なのだろうか。
3:2 あなたたち自身が、わたしたちの推薦状だ。それはわたしたちの心に書かれていて、すべての人に知られ、読まれている。
3:3 あなたたちが、わたしたちの働きから生まれたキリストの手紙であることは、はっきりしている。この手紙は、インクではなく、生きた神の霊によって書かれた。石の板ではなく、人の心という板に書かれたのだ。
3:4 わたしたちは、キリストによって、神の前でこのような確信をもっている。
3:5 自分の力で何かをやり遂げられると、わたしたち自身が誇れるわけではない。わたしたちにそれをする力があるのは、神から来ているのだ。
3:6 その神が、わたしたちを新しい契約に仕える者としてふさわしくしてくださった。それは文字によるものではなく、霊によるものだ。文字は人を殺すが、霊は命を与えるからだ。
3:7 さて、人を死に導くこの務めは、石に文字で刻まれたものだった。それでも栄光に包まれて始まり、イスラエルの人々はモーセの顔を見つめることができなかった。その顔が、やがて消えていく栄光で輝いていたからだ。
3:8 だとすれば、霊による務めは、なおさら栄光に満ちているはずではないか。
3:9 人を罪に定める務めにさえ栄光があったのなら、人を義とする務めは、はるかに大きな栄光にあふれているはずだ。
3:10 かつて栄光に輝いていたものも、今ではその栄光を失っている。それをはるかに超える栄光が現れたからだ。
3:11 消えていくものにさえ栄光があったのなら、いつまでも残るものには、なおさら大きな栄光がある。
3:12 わたしたちには、このような希望がある。だから、少しもためらわずに大胆に語る。
3:13 モーセのようにはしない。彼は自分の顔に覆いをかけた。消えていく輝きの終わりを、イスラエルの人々に見られないようにするためだった。
3:14 しかし、彼らの心はかたくなになった。今日に至るまで、古い契約が読まれるとき、同じ覆いがかかったままだ。その覆いは取り除かれていない。キリストによってこそ、それは取り去られるのに。
3:15 今日でも、モーセの書が読まれるたびに、彼らの心には覆いがかかっている。
3:16 けれども、主のもとに立ち返るなら、その覆いは取り除かれる。
3:17 ここでいう主とは、霊のことだ。そして、主の霊がいるところには、自由がある。
3:18 わたしたちはみな、覆いを取り除かれた顔で、鏡のように主の栄光を映し出している。そして、栄光から栄光へと、主と同じ姿へ造り変えられていく。これは、霊である主の働きによるのだ。
4:1 だから、わたしたちはこの働きを任されている。それは神があわれんでくださったからだ。だから、決してくじけない。
4:2 むしろ、恥ずべき隠れた行いを、わたしたちはきっぱり捨てた。ずる賢くふるまったりせず、神の言葉をねじ曲げたりもしない。ただ真理をありのままに示すことで、神の前で、すべての人の良心に対して自分自身を証しするのだ。
4:3 でも、もしわたしたちの伝える良い知らせにおおいがかかっているとしたら、それは滅びに向かっている人たちにとっておおわれているのだ。
4:4 この世を支配する神が、信じない人たちの心を見えなくしてしまった。だから彼らは、キリストの栄光を伝える良い知らせの光を、見ることができない。そのキリストこそ、神の姿そのものなのだ。
4:5 わたしたちは自分自身を宣べ伝えているのではない。主であるイエス・キリストを宣べ伝えているのだ。そして自分自身は、イエスのために働くあなたがたのしもべにすぎない。
4:6 「闇の中から光が輝き出よ」と言われた神が、わたしたちの心の中で輝いてくださった。それは、イエス・キリストの顔に現れた神の栄光を知る、その光を与えるためだ。
4:7 わたしたちは、この宝を土でできた器の中に持っている。それは、この計り知れない力が神から出たものであって、わたしたちから出たものではないことを示すためだ。
4:8 わたしたちはあらゆる面で追いつめられている。でも、行きづまってはいない。途方に暮れることはあっても、絶望はしない。
4:9 追われても、見捨てられてはいない。打ち倒されても、滅ぼされてはいない。
4:10 わたしたちはいつも、イエスの死をこの身に負って生きている。それは、イエスのいのちもまた、わたしたちのこの身に現れるためだ。
4:11 生きているわたしたちは、イエスのためにいつも死に引き渡されている。それは、イエスのいのちが、わたしたちの死ぬべき身に現れるためだ。
4:12 こうして、死はわたしたちの中で働き、いのちはあなたがたの中で働いている。
4:13 わたしたちは、聖書に書かれているのと同じ信仰の霊を持っている。「わたしは信じた。だから語った」とあるとおり、わたしたちも信じている。だから、語るのだ。
4:14 イエスをよみがえらせた神が、イエスとともにわたしたちもよみがえらせ、あなたがたと一緒に御前に立たせてくださる。わたしたちは、それを知っている。
4:15 すべては、あなたがたのためだ。恵みがより多くの人に広がり、感謝があふれて、神の栄光となるためなのだ。
4:16 だから、わたしたちは落胆しない。たとえ外側の人が衰えていっても、内側の人は日ごとに新しくされている。
4:17 今受けている苦しみは、軽くて、ほんの一時のものだ。でもそれは、比べものにならないほど重く、永遠に続く栄光を、わたしたちにもたらしてくれる。
4:18 わたしたちは、見えるものではなく、見えないものに目を注いでいる。見えるものは一時的だが、見えないものは永遠に続くからだ。
5:1 わたしたちは知っている。地上にあるこの住まい、つまり仮のテントのようなこの体が壊されても、神が備えてくださった建物が、わたしたちにはある。それは人の手によらない、天にある永遠の住まいだ。
5:2 わたしたちは、この体の中でうめきながら、天から与えられる住まいを上から着せてもらうことを、切に願っている。
5:3 それを着れば、裸のままで見出されることはない。
5:4 この幕屋のような体の中にいるわたしたちは、重荷を負ってうめいている。今の体を脱ぎ捨てたいからではなく、その上に天の住まいを着たいからだ。そうして、死ぬべきものが、いのちにのみ込まれるためだ。
5:5 わたしたちをこのことのために造ってくださったのは、神だ。そして神は、その保証として霊をわたしたちに与えてくださった。
5:6 だから、わたしたちはいつも心強い。そして、知っている。この体を住まいとしている間は、主のもとから離れているということを。
5:7 わたしたちは、目に見えるものによってではなく、信仰によって歩んでいるからだ。
5:8 だから心強い。そしてむしろ、この体から離れて主のもとに住むことを願っている。
5:9 だから、体を住まいとしていても、そこを離れていても、わたしたちが目指すのはただ一つ、主に喜ばれる者でいることだ。
5:10 なぜなら、わたしたちは皆、キリストの裁きの座の前に立たなければならないからだ。そこで一人ひとりが、体を持って生きている間にしたことに応じて、その報いを受ける。良いことをしたか、悪いことをしたかに応じてだ。
5:11 こうして、主を恐れるとはどういうことかを知っているから、わたしたちは人々を説得しようとしている。わたしたちがどんな者かは、神にはすっかり分かっている。そして、あなたがたの心にもはっきり分かってもらえると願っている。
5:12 これは、また自分を売り込もうとしているのではない。むしろ、わたしたちのことを誇れるきっかけを、あなたがたに与えているのだ。心ではなく見かけを誇る人たちに、あなたがたが答えられるようにするためだ。
5:13 もしわたしたちが正気を失っていたのなら、それは神のためだった。もし正気でいるのなら、それはあなたがたのためだ。
5:14 というのも、キリストの愛がわたしたちを突き動かしているからだ。わたしたちはこう確信している。一人の方がすべての人のために死んでくださった。だから、すべての人が死んだのだ。
5:15 その方がすべての人のために死んでくださったのは、生きている人たちが、もはや自分のためではなく、自分たちのために死んでよみがえってくださった方のために生きるようになるためだ。
5:16 だから、わたしたちは今からはもう、だれのことも人間的な見方で判断しない。かつてはキリストのことも人間的な見方でとらえていたが、今はもうそうしない。
5:17 だから、だれでもキリストのうちにあるなら、その人は新しく造られた者だ。古いものは過ぎ去り、見よ、すべてが新しくなったのだ。
5:18 これらはすべて、神から出ている。神はキリストによってわたしたちをご自分と和解させ、そしてこの和解のための働きをわたしたちに任せてくださった。
5:19 つまり、神はキリストのうちにあって、世をご自分と和解させ、人々の罪を問うことをなさらなかった。そして、この和解を伝える言葉を、わたしたちに委ねてくださったのだ。
5:20 だから、わたしたちはキリストに代わって立てられた使者だ。神がわたしたちを通して呼びかけておられる。わたしたちはキリストに代わってお願いする。どうか神と和解してほしい。
5:21 神は、罪を知らなかったキリストを、わたしたちのために罪とされた。それは、わたしたちがキリストのうちにあって、神の義となるためだった。
6:1 わたしたちは神とともに働く者として、あなたがたにお願いする。神の恵みをむだに受け取らないでほしい。
6:2 神はこう言っておられる。「恵みの時に、わたしはあなたの願いを聞き、救いの日に、あなたを助けた。」見よ、今こそ恵みの時、今こそ救いの日だ。
6:3 わたしたちは、この働きが非難されないように、どんなことでも人のつまずきになるようなことはしない。
6:4 むしろ、どんな場面でも、自分たちが神に仕える者であることを示している。あふれる忍耐をもって、苦しみのなかでも、追いつめられても、行き場のないときも、
6:5 むちで打たれても、牢に入れられても、暴動のなかでも、休みなく働き、眠れない夜を過ごし、食べ物もないなかでも、それを示している。
6:6 清さ、知識、辛抱強さ、親切、聖なる霊、そして偽りのない愛によって、それを示すのだ。
6:7 さらに、真実の言葉によって、神の力によって、右手にも左手にも持つ義の武器によって、それを示すのだ。
6:8 栄光のときも、辱めのときも、悪く言われるときも、よく言われるときも、変わらない。わたしたちは人をだます者のように見られても、真実な者であり、
6:9 知られていないようでいて、よく知られている。死にかけているようでいて、見よ、こうして生きている。罰を受けているようでいて、殺されはしない。
6:10 悲しんでいるようでいて、いつも喜んでいる。貧しいようでいて、多くの人を豊かにする。何も持っていないようでいて、すべてを持っている。
6:11 コリントの人たち、わたしたちはあなたがたに向かって口を開き、包み隠さず語ってきた。心も広く開いている。
6:12 わたしたちのなかで、あなたがたが窮屈な思いをすることはない。窮屈にさせているのは、あなたがた自身の心のほうだ。
6:13 子どもに語るように言うが、お返しに、あなたがたも心を広く開いてほしい。
6:14 信じていない人たちと、つり合わないくびきを共に負ってはいけない。義と不法に、どんな関わりがあるだろう。光と闇に、どんな交わりがあるだろう。
6:15 キリストとベリアルに、どんな調和があるだろう。信じる人と信じない人に、分け合えるものなど何があるだろう。
6:16 神の神殿と偶像に、どんな一致があるだろう。わたしたちこそ、生きておられる神の神殿なのだ。神はこう言われた。「わたしは彼らのなかに住み、彼らのなかを歩む。わたしは彼らの神となり、彼らはわたしの民となる。」
6:17 だから、彼らのなかから出て行き、離れなさい、と主は言われる。汚れたものに触れてはならない。そうすれば、わたしはあなたがたを受け入れ、
6:18 あなたがたの父となる。あなたがたはわたしの息子、娘となる、と全能の主は言われる。
7:1 愛する人たち。わたしたちにはこれらの約束が与えられている。だから、体と心を汚すものすべてから自分をきよめ、神を畏れながら、聖なる生き方を完成させていこう。
7:2 どうか、わたしたちに心を開いてほしい。わたしたちは、だれにも不当なことをしていない。だれも傷つけていないし、だれからもだまし取っていない。
7:3 こう言うのは、あなたがたを責めるためではない。前にも言ったとおり、あなたがたはわたしたちの心の中にいて、共に死に、共に生きる仲間なのだ。
7:4 わたしはあなたがたを心から信頼しているし、あなたがたのことを大いに誇りに思っている。わたしは深く励まされ、どんな苦しみの中にあっても、喜びであふれている。
7:5 マケドニアに着いてからも、わたしたちの体は少しも休まらなかった。あらゆる方向から苦しみに押されていた。外には争いがあり、内には恐れがあった。
7:6 でも、打ちひしがれた者を励ましてくださる神は、テトスが来てくれたことで、わたしたちを励ましてくださった。
7:7 励まされたのは、彼が来てくれたことだけによるのではない。彼自身が、あなたがたから受けた励ましを伝えてくれたからでもある。あなたがたがわたしに会いたがっていること、嘆き悲しんでいること、わたしのために熱心になってくれていること――それを聞いて、わたしはますます喜んだ。
7:8 たとえあの手紙であなたがたを悲しませたとしても、わたしは後悔していない。一時は後悔もした。あの手紙が、しばらくの間あなたがたを悲しませたのはわかっているからだ。
7:9 でも今は喜んでいる。あなたがたが悲しんだからではなく、その悲しみがあなたがたを心の向き直りへと導いたからだ。あなたがたは神のみこころにそって悲しんだのであり、わたしたちのせいで何かを失うことはなかった。
7:10 神のみこころにそった悲しみは、後悔することのない心の向き直りを生み、救いへと導く。しかし、この世の悲しみは死をもたらすだけだ。
7:11 見てほしい。神のみこころにそって悲しんだことが、あなたがたのうちにどれほどの真剣さを生み出したことか。それだけでなく、弁明し、憤り、恐れ、会いたいと願い、熱心になり、正しさを求める心まで生み出した。あなたがたはあらゆる点で、この件について自分たちが潔白であることを示したのだ。
7:12 だから、わたしがあなたがたに手紙を書いたのは、不当なことをした人のためでも、それをされた人のためでもない。あなたがたがわたしたちのことをどれほど真剣に思っているか、それが神の前ではっきりと示されるためだった。
7:13 だから、わたしたちは励まされた。それだけでなく、この励ましに加えて、テトスの喜びを見て、わたしたちはいっそう大きな喜びを感じた。テトスの心が、あなたがた全員によって元気を取りもどしたからだ。
7:14 わたしは彼に、あなたがたのことを誇っていた。でも、それで恥をかくことはなかった。わたしたちがあなたがたに話したことがすべて真実だったように、テトスに対して誇ったこともまた、そのとおり本当のことになったのだ。
7:15 テトスは、あなたがた全員が従ってくれたこと、そして恐れおののきながら自分を迎えてくれたことを思い出すたびに、あなたがたをますます深く慕っている。
7:16 わたしは、どんなことでもあなたがたを信頼できる。それがうれしい。
8:1 兄弟姉妹よ、わたしたちは、マケドニアの諸教会に与えられた神の恵みを、あなたがたに知らせたい。
8:2 彼らは、苦しみの中で激しく試された。それでも、あふれるほどの喜びと、どん底の貧しさの中から、惜しみなく与える豊かな心があふれ出たのだ。
8:3 わたしは証言する。彼らは力に応じて、いや、力以上に、自分から進んで与えた。
8:4 そして、聖なる民を助けるこの働きに加わり、その恵みにあずかれるようにと、わたしたちに熱心に願い出たのだ。
8:5 しかもそれは、わたしたちの期待をはるかに超えていた。彼らは神のみこころにそって、まず自分自身を主にささげ、そしてわたしたちにもささげてくれたのだ。
8:6 そこでわたしたちは、テトスに頼んだ。すでにこの恵みのわざを始めていた彼が、あなたがたのところでもそれをやりとげてくれるようにと。
8:7 でも、あなたがたはすべてにおいて豊かだ。信仰にも、語る言葉にも、知識にも、あらゆる熱心さにも、そしてわたしたちがあなたがたに寄せる愛にも。だから、この恵みのわざにも豊かであってほしい。
8:8 これは命令として言っているのではない。ほかの人たちの熱心さを引き合いに出して、あなたがたの愛が本物かどうかを確かめたいのだ。
8:9 あなたがたは、わたしたちの主イエス・キリストの恵みを知っている。主は豊かであったのに、あなたがたのために貧しくなられた。その貧しさによって、あなたがたが豊かになるためだ。
8:10 この件について、わたしの考えを言おう。それがあなたがたのためになるからだ。あなたがたは一年前から、実行することだけでなく、それを願うことも、いち早く始めていた。
8:11 だから今、それをやりとげてほしい。願う気持ちが強かったように、持っているものの中から、それを実現させてほしい。
8:12 進んでする気持ちさえあれば、その人が持っているものに応じて受け入れられる。持っていないものが求められるわけではない。
8:13 ほかの人が楽をして、あなたがたが苦しむようにということではない。公平になるためだ。
8:14 今のこの時、あなたがたのあり余っているものが、彼らの足りないものを補う。そうすれば、いつか彼らのあり余っているものが、あなたがたの足りないものを補うことになる。こうして公平になるのだ。
8:15 「多く集めた者も余ることがなく、少なく集めた者も足りないことがなかった」と書いてあるとおりだ。
8:16 あなたがたのために、テトスの心に同じ熱心さを与えてくださった神に感謝する。
8:17 テトスは、わたしたちの願いを受け入れてくれた。それだけでなく、いっそう熱心になって、自分から進んであなたがたのところへ出かけて行ったのだ。
8:18 わたしたちは、彼といっしょにひとりの兄弟を送った。この人は、福音のことですべての教会から高く評価されている。
8:19 それだけではない。この人は、わたしたちがこの恵みの働きを進めるとき、旅をともにする者として諸教会から選ばれたのだ。この奉仕は、主ご自身の栄光のためであり、わたしたちの熱意を示すためでもある。
8:20 わたしたちは、この多額の献金を扱うにあたって、だれからも非難されないように気をつけている。
8:21 主の前だけでなく、人の前でも正しくあろうと心がけているからだ。
8:22 わたしたちは、もうひとりの兄弟も彼らといっしょに送った。この人は、いろいろな場面で何度も熱心さを確かめてきた人だ。しかも今は、あなたがたを深く信頼しているので、ますます熱心になっている。
8:23 テトスについて言えば、彼はわたしの仲間であり、あなたがたのために働く協力者だ。ほかのふたりの兄弟について言えば、彼らは諸教会から送られた使者であり、キリストの栄光を映す者たちだ。
8:24 だから、あなたがたの愛の証しを、そしてわたしたちがあなたがたを誇りにしてきたことが本当だったことを、彼らに、そして諸教会の前で、はっきり示してほしい。
9:1 聖なる人々を助けるこの奉仕については、あなたがたに改めて書く必要はないだろう。
9:2 あなたがたの熱意は、よく知っている。わたしはそれをマケドニアの人たちに誇って、「アカイアの人たちは去年から準備ができている」と話してきた。あなたがたの熱心さは、多くの人を奮い立たせたのだ。
9:3 それでも、この件であなたがたを誇ってきたことがむだにならないように、兄弟たちを送ることにした。わたしが言っていたとおり、準備を整えておいてほしいからだ。
9:4 もしマケドニアの人たちがわたしといっしょに行って、あなたがたの準備ができていないのを見たら、こんなに信頼していたのに、わたしたちは恥をかくことになる。いや、あなたがたこそ恥をかくことになるだろう。
9:5 そこでわたしは、兄弟たちに頼んで、あなたがたのところへ先に行ってもらうことが必要だと考えた。前から約束していた贈り物を、しぶしぶ出したものではなく、心からの贈り物として、あらかじめ整えておいてもらうためだ。
9:6 覚えておいてほしい。わずかしか種をまかない人は、わずかしか刈り取れない。たっぷり種をまく人は、たっぷり刈り取ることができるのだ。
9:7 一人ひとりが、心で決めたとおりに出せばいい。しぶしぶでもなく、仕方なくでもなく。神は、よろこんで与える人を愛してくださるからだ。
9:8 神は、あらゆる恵みをあなたがたにあふれるほど注ぐことができる。そうすれば、あなたがたはいつでも、何においても、必要なものすべてを満たされて、あらゆる良い働きにあふれるほど力を注げるようになる。
9:9 こう書いてあるとおりだ。「その人は惜しみなく分け与え、貧しい人たちに施した。その義はいつまでも変わらずに続く。」
9:10 種をまく人に種を与え、食べるためのパンを与えてくださる神は、あなたがたにも種をたっぷり与え、それを増やし、あなたがたの義が実らせる収穫を豊かにしてくださる。
9:11 こうしてあなたがたは、何においても豊かにされ、心から惜しみなく与えられるようになる。そしてそれは、わたしたちを通して、神への感謝を生み出すのだ。
9:12 この奉仕の働きは、神の民の足りないものを満たすだけではない。多くの人があふれるほど神に感謝をささげることにもつながっていく。
9:13 この奉仕によってあなたがたの真実が証しされ、人々は神をたたえるだろう。あなたがたがキリストの福音を告白し、それに従っていること、そして彼らにも、すべての人にも惜しみなく分け合っていることを見て、神をあがめるのだ。
9:14 そして人々は、あなたがたのために祈り、あなたがたを慕うようになる。あなたがたに注がれた、神のあふれるほどの恵みのゆえに。
9:15 言葉にできないほどすばらしい神の贈り物に、感謝しよう。
10:1 さて、このわたし、パウロ自身が、キリストの柔和と優しさにならって、あなたがたにお願いする。わたしは、面と向かっているときはあなたがたに弱腰なのに、離れていると強気になる、と言われている。
10:2 お願いだから、そちらに行ったときに、強気に出なくてすむようにしてほしい。わたしたちを、この世のやり方で生きている者だと決めつける一部の人たちには、思いきって強く出るつもりでいるのだから。
10:3 確かにわたしたちは生身の人間として生きている。でも、この世のやり方で戦っているのではない。
10:4 わたしたちの戦いの武器は、この世のものではない。神の力によって、どんな要塞さえも打ち壊すことができる。わたしたちは、間違った理屈を打ち砕き、
10:5 神を知ることに逆らって立ちはだかる、どんな高慢な壁も倒していく。そして、あらゆる思いをとりこにして、キリストに従わせるのだ。
10:6 そして、あなたがたが完全に従うようになったとき、いっさいの不従順を正す用意ができている。
10:7 あなたがたは、うわべだけを見ている。自分はキリストのものだと確信している人がいるなら、その人はもう一度考えてほしい。その人がキリストのものであるように、わたしたちもまた、キリストのものなのだ。
10:8 たとえ、わたしたちの権威について少しばかり誇りすぎたとしても、わたしは恥じることはない。この権威は、あなたがたを打ち倒すためではなく、育てるために、主が与えてくださったものだからだ。
10:9 ただ、手紙であなたがたをおどしていると思われたくはない。
10:10 というのも、こう言う人がいるからだ。「彼の手紙は重々しくて力強いが、実際に会ってみると弱々しく、話もたいしたことがない。」
10:11 そういう人は、こう考えるべきだ。離れているとき手紙の言葉で示すわたしたちの姿と、そちらに行ったときの行動とは、まったく同じなのだ。
10:12 わたしたちは、自分を売り込む人たちの仲間に入ったり、自分を彼らと比べたりする気はない。彼らは、自分で自分をものさしにして測り、自分どうしを比べ合っている。それでは、何もわかっていないというものだ。
10:13 でも、わたしたちは限度を超えて自慢したりはしない。神がわたしたちに割り当ててくださった範囲、その基準にそって語るだけだ。そしてその範囲は、あなたがたのところにまで届いている。
10:14 あなたがたのところまで届いていないのに、無理に自分を引き延ばしているわけではない。実際、わたしたちはキリストの福音を携えて、あなたがたのところにまでちゃんと到達したのだから。
10:15 だから、他の人が苦労した働きを、自分の手柄のように限度を超えて自慢したりはしない。むしろ、あなたがたの信仰が成長するにつれて、わたしたちの活動の範囲もあなたがたの間で大きく広がっていくことを願っている。
10:16 そうすれば、あなたがたのさらに向こうの地域にも福音を伝えられる。すでに他の人が働いて整えた場所を、自分の成果のように自慢することもない。
10:17 誇る者は、主を誇りなさい。
10:18 自分で自分を推薦する人が認められるのではない。主が認めてくださる人こそ、本物なのだ。
11:1 わたしの少しばかりの愚かさを、我慢して聞いてほしい。いや、ぜひ我慢して聞いてほしいのだ。
11:2 というのも、わたしはあなたがたのことを、神のような熱い思いで大切に思っているからだ。わたしはあなたがたを、清らかな処女として、ただひとりの夫であるキリストに引き合わせる約束をした。
11:3 でも心配なのだ。あの蛇が悪知恵でエバをだましたように、あなたがたの心も、キリストへの真っすぐで純粋な思いから引き離され、だめにされてしまうのではないか、と。
11:4 なぜなら、だれかがやって来て、わたしたちが伝えたのとは別のイエスを語ったり、あなたがたが受けたのとは違う霊を受けさせたり、受け入れたのとは違う福音を伝えたりしても、あなたがたはあっさり我慢して受け入れてしまうのだから。
11:5 でも、わたしはあの「大使徒」たちに少しも引けを取っていないと思っている。
11:6 たとえ話し方が下手だとしても、知識のほうはそうではない。このことは、あらゆる場面で、あらゆる形で、あなたがたにはっきり示してきたとおりだ。
11:7 それとも、わたしは罪を犯したのだろうか。あなたがたを高く引き上げようとして、自分を低くしたことが。神の福音を無償であなたがたに伝えたのだから。
11:8 あなたがたに仕えるために、わたしはほかの教会から報酬を受け取った。いわば、よその教会から奪ったようなものだ。
11:9 あなたがたのところにいて生活に困ったときも、だれにも負担をかけなかった。足りない分は、マケドニアから来た兄弟たちが補ってくれたからだ。こうしてわたしは、あらゆる面であなたがたの重荷にならないようにしてきたし、これからもそうするつもりだ。
11:10 わたしの内にあるキリストの真理にかけて言う。アカイア地方で、この誇りをだれにも封じさせはしない。
11:11 なぜか。あなたがたを愛していないからだろうか。いや、そうではない。神がご存じだ。
11:12 でも、わたしは今していることをこれからも続ける。わたしたちと同じ土俵に立ちたいと機会をねらっている者たちから、その機会を奪ってしまうためだ。彼らは自分の誇るところで、わたしたちと同じだと認められたがっているのだから。
11:13 そういう者たちは、にせの使徒であり、人をだます働き手だ。キリストの使徒であるかのように、自分を装っているにすぎない。
11:14 でも、驚くことではない。サタン自身でさえ、光の天使のように自分を装うのだから。
11:15 だから、サタンに仕える者たちが、義に仕える者のように装ったところで、たいしたことではない。彼らの最後は、その行いにふさわしいものとなる。
11:16 もう一度言っておく。わたしを愚か者だと思わないでほしい。でも、もしそう思うのなら、愚か者としてでもいいから受け入れてほしい。わたしにも少しだけ誇らせてもらいたいのだ。
11:17 これから言うことは、主にならって言うのではない。誇りを胸に、いわば愚か者になったつもりで言うことだ。
11:18 多くの人が人間的なことを誇っているのだから、わたしも誇ることにしよう。
11:19 あなたたちは賢い人なのに、愚か者を喜んで大目に見てくれる。
11:20 現に、だれかがあなたたちを奴隷のように扱っても、食い物にしても、巻き上げても、いばり散らしても、顔を殴りつけても、あなたたちは平気で我慢しているのだ。
11:21 言うのも恥ずかしいが、その点ではわたしたちは弱かったと認めよう。でも、だれかが何かを堂々と誇るなら――愚か者になったつもりで言うが――わたしも堂々と誇ろう。
11:22 彼らはヘブライ人か。わたしもそうだ。イスラエル人か。わたしもそうだ。アブラハムの子孫か。わたしもそうだ。
11:23 彼らはキリストに仕える者か。気が変になったように聞こえるだろうが、わたしはもっとそうだ。働きははるかに多く、牢に入れられたことも多く、打たれたことは数えきれず、死ぬような目にも何度も遭った。
11:24 ユダヤ人から、四十に一つ足りない鞭打ちを、五回も受けた。
11:25 棒で打たれたことが三度、石を投げつけられたことが一度、船が難破したことが三度あった。まる一日、海に漂ったこともある。
11:26 たびたびの旅では、川の危険、強盗の危険、同胞からの危険、異邦人からの危険、町での危険、荒れ野での危険、海の危険、偽りの仲間による危険があった。
11:27 苦労し、骨を折り、たびたび眠れない夜を過ごした。飢えと渇きに苦しみ、何度も食べ物にありつけず、寒さに震え、着る物もなかった。
11:28 こうした外側のことは別としても、わたしには日々押し寄せてくる重荷がある。すべての教会のことを気にかける心配だ。
11:29 だれかが弱っているなら、わたしも弱さを感じずにいられない。だれかがつまずかされているなら、わたしの心も焼けつくように痛む。
11:30 どうしても誇らなければならないのなら、わたしは自分の弱さを誇ろう。
11:31 主イエスの父である神、永遠にほめたたえられるべき方は、わたしが嘘をついていないことを知っておられる。
11:32 ダマスコでは、アレタ王の任命した総督が、わたしを捕まえようとして町を見張っていた。
11:33 でもわたしは、かごに入れられて城壁の窓から吊り下ろされ、その手をのがれたのだ。
12:1 誇っても仕方がない。それでも、誇らなければならないのなら、主が見せてくださった幻と啓示のことを話そう。
12:2 わたしは、キリストにある一人の人を知っている。その人は十四年前、第三の天にまで引き上げられた。それが体のままだったのか、体を離れてだったのか、わたしにはわからない。神がご存じだ。
12:3 そう、わたしはこの人を知っている。体のままだったのか、体を離れてだったのかはわからない。神がご存じだ。
12:4 この人は楽園にまで引き上げられ、人が口にすることを許されていない、言葉にできない言葉を聞いたのだ。
12:5 この人のことなら、わたしは誇ろう。でも自分自身のことでは、弱さ以外には誇らない。
12:6 もし誇りたいと思っても、わたしは愚か者にはならない。本当のことを話すのだから。ただ、わたしは控えておく。だれかが、わたしを見て聞く以上に、わたしのことを高く評価しないようにするためだ。
12:7 あの啓示があまりにもすばらしかったので、わたしが思い上がることのないように、わたしの体に一つのとげが与えられた。それはサタンの使いで、わたしを打ちたたくためのものだ。わたしが思い上がらないためだった。
12:8 このことで、わたしは三度、主に願った。これを取り去ってくださいと。
12:9 すると主はこう言われた。「わたしの恵みは、あなたに十分だ。わたしの力は、弱さの中でこそ完全に発揮されるのだから。」だから、わたしはむしろ、自分の弱さを喜んで誇ろう。キリストの力がわたしに宿るように。
12:10 だから、わたしはキリストのために、弱さも、侮辱も、困難も、迫害も、行き詰まりも喜んでいる。弱いときにこそ、わたしは強いのだから。
12:11 わたしは愚か者になってしまった。でも、あなたたちがそうさせたのだ。本当は、あなたたちがわたしを推薦してくれるべきだった。わたしは、あの「大使徒」たちに少しも劣ってはいない。たとえ自分は取るに足りない者だとしても。
12:12 使徒であることのしるしは、あらゆる忍耐をもって、しるしと不思議と力あるわざによって、あなたたちの間で確かに行われた。
12:13 あなたたちが、ほかの教会より劣っている点が何かあるだろうか。ただ一つ、わたしがあなたたちに負担をかけなかったことだけだ。この不公平を、どうか許してほしい。
12:14 さあ、わたしは三度目にあなたたちのところへ行こうとしている。でも、負担はかけない。わたしが求めているのは、あなたたちの持ち物ではなく、あなたたち自身だからだ。子どもが親のために蓄えるのではなく、親が子どものために蓄えるべきなのだ。
12:15 わたしは、あなたたちのたましいのために、喜んで自分のすべてを使い、使い果たそう。こんなにあなたたちを愛しているのに、愛されるのは少しだけなのだろうか。
12:16 まあ、いいだろう。わたしはあなたたちに負担をかけなかった。それでも、「抜け目のないやつで、うまくだまして取り込んだ」というわけだ。
12:17 わたしがあなたたちのところへ送った人のだれかを通して、あなたたちからお金をだまし取ったことがあっただろうか。
12:18 わたしはテトスに頼んで、あの兄弟を一緒に送った。テトスがあなたたちからだまし取っただろうか。わたしたちは同じ思いで歩んだのではないか。同じ足跡をたどったのではないか。
12:19 これまでずっと、あなたたちは「わたしたちが自分の言い訳をしているのだ」と思ってきたのだろう。でも、わたしたちは神の前で、キリストにあって語っている。愛する人たち、これはすべて、あなたたちを成長させるためなのだ。
12:20 というのも、わたしは心配しているのだ。そちらに行ったとき、あなたたちが期待どおりの姿でなく、わたしのほうもあなたたちの望まない者だと思われるのではないか、と。そこには争いやねたみ、怒りや自分勝手な対立、悪口やかげ口、思い上がりや混乱があるのではないか。
12:21 そして、もう一度そちらに行くとき、わたしの神があなたたちの前でわたしを打ちのめし、わたしが多くの人のことで嘆くことになるのではないか。以前に罪を犯しながら、その汚れた行い、みだらな行い、放縦な行いを悔い改めていない人たちのことで。
13:1 あなたたちのところへ行くのは、これで三度目になる。「すべてのことは、二人か三人の証人の証言によって確定する」とある。
13:2 二度目にそちらにいたときにも言ったが、今は離れていながら、前もって言っておく。以前に罪を犯した人たちにも、そのほかのすべての人にも言う。もう一度行ったときには、容赦しない。
13:3 あなたたちは、わたしの中でキリストが語っているという証拠を求めているのだから。キリストはあなたたちに対して弱いのではなく、あなたたちの間で力を発揮している。
13:4 たしかにキリストは、弱さのうちに十字架につけられた。でも、神の力によって生きている。わたしたちも、キリストにあって弱い。でも、あなたたちに対しては、神の力によってキリストとともに生きるのだ。
13:5 自分自身をよく調べてみなさい。信仰のうちにあるのかどうか。自分を試してみなさい。イエス・キリストが自分の内におられることが、わからないのだろうか。もしわからないなら、あなたたちは試験に落ちた者だ。
13:6 でも、わたしたちが試験に落ちた者ではないと、あなたたちにわかってもらえると思っている。
13:7 わたしたちは、あなたたちが少しも悪いことをしないようにと、神に祈っている。それは、わたしたちが試験に合格した者だと見られるためではない。あなたたちに良いことをしてほしいからだ。たとえわたしたちが試験に落ちた者のように見えても、それでかまわない。
13:8 だって、わたしたちは真理に逆らっては何もできない。真理のためにしか動けないのだ。
13:9 だから、わたしたちが弱くても、あなたたちが強ければ、わたしたちは喜ぶ。そして、あなたたちがすっかり整えられることを祈っている。
13:10 だからこそ、離れている間にこうして書いておく。あなたたちのところに行ったとき、きびしく接しなくてすむようにだ。主がわたしに与えてくださった権威は、壊すためではなく、育てるためのものなのだから。
13:11 最後に、兄弟姉妹たち、喜びなさい。整えられなさい。励まし合いなさい。心を一つにしなさい。平和に過ごしなさい。そうすれば、愛と平和の神が、あなたたちとともにいてくださる。
13:12 聖なる口づけをもって、たがいにあいさつを交わしなさい。神のものとされた人たちみんなが、あなたたちによろしくと言っている。
13:13 主イエス・キリストの恵みと、神の愛と、聖霊の交わりが、あなたたちすべてとともにありますように。
ガラテヤ人への手紙
1:1 パウロから。わたしは使徒だ。でも、人から選ばれたのでも、人を通してなったのでもない。イエス・キリストと、そのイエスを死者の中から復活させた父なる神によって、使徒になったのだ。
1:2 そして、わたしといっしょにいる兄弟姉妹みんなから。ガラテヤの教会のみなさんへ。
1:3 父なる神と、わたしたちの主イエス・キリストからの恵みと平安が、あなたがたにありますように。
1:4 キリストは、わたしたちの罪のために、ご自分をささげてくださった。わたしたちの神であり父である方の望みにしたがって、今の悪い時代からわたしたちを救い出すためだ。
1:5 この神に、いつまでも、永遠に栄光がありますように。アーメン。
1:6 わたしは驚いている。あなたがたは、キリストの恵みによってあなたがたを招いてくださった方から、こんなにも早く離れて、別の福音に乗り換えようとしているからだ。
1:7 別の福音といっても、ほんとうはそんなものはない。ただ、あなたがたを混乱させて、キリストの福音をゆがめようとしている人たちがいるだけだ。
1:8 でも、たとえわたしたちであっても、天から来た天使であっても、わたしたちが伝えた福音と違うものをあなたがたに伝えるなら、その者はのろわれるべきだ。
1:9 前にも言ったが、今もう一度言う。あなたがたが受け取った福音と違うものをだれかが伝えるなら、その者はのろわれるべきだ。
1:10 では、わたしは今、人に認められようとしているのだろうか。それとも神にだろうか。人に気に入られようとしているのだろうか。もし今もまだ人に気に入られようとしているなら、わたしはキリストに仕える者ではない。
1:11 兄弟姉妹よ、あなたがたに知っておいてほしい。わたしが伝えたこの福音は、人から出たものではない。
1:12 わたしはこれを、人から受け取ったのでも、人に教わったのでもない。イエス・キリストご自身が明らかにしてくださって、初めて受け取ったのだ。
1:13 あなたがたは、わたしがかつてユダヤ教徒として送っていた生き方を聞いている。わたしは神の教会を徹底的に迫害し、それを滅ぼそうとしていた。
1:14 そしてユダヤ教のことでは、同じ年ごろの同胞の多くよりも進んでいた。先祖から受け継いだ教えに、だれよりも熱心だったのだ。
1:15 けれども、母の胎にいるときからわたしを選び出し、その恵みによって呼び出してくださった神が、こう願われた。
1:16 それは、御子をわたしのうちに示して、異邦人の間でその方を伝えさせることだった。そのとき、わたしはすぐに、だれか人に相談することはしなかった。
1:17 わたしより前に使徒となっていた人たちに会うため、エルサレムへ上ることもしなかった。むしろアラビアへ行き、それからまたダマスコに戻ったのだ。
1:18 その後、三年たってから、わたしはケファに会うためにエルサレムへ上り、彼のもとに十五日間滞在した。
1:19 ほかの使徒には、だれにも会わなかった。ただ、主の兄弟ヤコブだけには会った。
1:20 わたしがここに書いていることは、神の前で言うが、うそではない。
1:21 それから、わたしはシリアとキリキアの地方へ行った。
1:22 ユダヤにあるキリストを信じる諸教会は、わたしの顔をまだ知らなかった。
1:23 ただ、「かつて自分たちを迫害していたあの人が、以前は滅ぼそうとしていたこの信仰を、今は伝えている」と聞いていただけだった。
1:24 そして人々は、わたしのことで神をたたえていた。
2:1 それから十四年たって、わたしはバルナバといっしょに、もう一度エルサレムへ上った。テトスも連れて行った。
2:2 上って行ったのは、神からの示しがあったからだ。そしてわたしは、自分が外国の人たちに伝えている福音を、みんなに説明した。ただ、おもだった人たちには、別に個人的に話した。これまでの自分の働きが、そして今の働きが、むだになってしまわないためだった。
2:3 けれども、わたしといっしょにいたテトスでさえ、ギリシア人だったのに、割礼を受けるよう強制されることはなかった。
2:4 この問題が起きたのは、こっそりまぎれ込んできたにせの仲間たちのせいだった。彼らは、わたしたちがキリスト・イエスにあって持っている自由を、こっそり探りに入り込んできた。わたしたちをまた奴隷のようにしばりつけるためだ。
2:5 でもわたしたちは、一瞬たりとも彼らに屈して従いはしなかった。福音の真理が、あなたがたのもとにそのまま保たれるためだ。
2:6 そして、おもだった人だと見られていた人たち——彼らが実際どういう人だったかは、わたしには関係ない。神は人を分けへだてなさらないからだ——そのおもだった人たちも、わたしに何かをつけ加えることはなかった。
2:7 それどころか、彼らはこう分かってくれた。ペテロが割礼を受けた人たちへの福音をまかされたように、わたしは割礼を受けていない人たちへの福音をまかされている、と。
2:8 ペテロのうちに働いて、彼を割礼を受けた人たちへの使徒とされた神は、わたしのうちにも働いて、外国の人たちへの使徒としてくださったのだ。
2:9 そして、わたしに与えられた恵みを知って、柱と見られていたヤコブ、ケパ、ヨハネは、わたしとバルナバに、仲間として右手を差し出してくれた。わたしたちは外国の人たちのところへ、彼らは割礼を受けた人たちのところへ行く、ということだった。
2:10 ただ一つ、貧しい人たちのことを忘れないように、とだけ言われた。それはわたし自身も、ずっと心がけてきたことだった。
2:11 ところが、ケパがアンティオキアに来たとき、わたしは面と向かって彼に反対した。彼には責められるべきところがあったからだ。
2:12 というのは、ヤコブのところから何人かが来る前、ケパは外国の人たちといっしょに食事をしていた。ところが、その人たちが来ると、彼は割礼を受けた人たちを恐れて、少しずつ身を引き、外国の人たちから離れていったのだ。
2:13 ほかのユダヤ人たちも、ケパといっしょになって、こうして本心を隠した行動をとった。その結果、バルナバまでもが彼らの見せかけに引きずられてしまった。
2:14 でも、彼らが福音の真理に向かってまっすぐ歩んでいないのを見て、わたしはみんなの前でケパにこう言った。「あなたはユダヤ人なのに、ユダヤ人らしくではなく、外国の人のように暮らしている。それなのにどうして、外国の人たちにユダヤ人らしく生きるよう強いるのですか。」
2:15 わたしたちは生まれながらのユダヤ人で、外国人のような「罪人」ではない。
2:16 でも、人が義と認められるのは律法を行うことによってではなく、ただイエス・キリストへの信仰によるのだと、わたしたちは知っている。だからこそ、わたしたち自身もキリスト・イエスを信じた。律法を行うことによってではなく、キリストへの信仰によって義と認められるためだ。律法を行うことによって義と認められる人は、だれ一人いないのだから。
2:17 では、キリストにあって義と認められようとした結果、わたしたち自身も「罪人」だと分かったとしたら、キリストは罪に仕える者だということになるのだろうか。決してそんなことはない。
2:18 もしわたしが、いったん壊したものをもう一度建て直すなら、自分こそ律法を破る者だと証明することになる。
2:19 というのは、わたしは律法によって律法に対して死んだからだ。それは、神に対して生きるためだった。わたしはキリストとともに十字架につけられた。
2:20 生きているのは、もはやわたしではない。キリストがわたしの内に生きておられるのだ。今わたしが肉において生きているこの命は、わたしを愛し、わたしのために自分を差し出してくださった神の子を信じる信仰によって生きているのだ。
2:21 わたしは神の恵みを無にはしない。もし義が律法によって得られるのなら、キリストは無駄に死なれたことになるからだ。
3:1 物分かりの悪いガラテヤの人たち。だれにだまされたのか。あなたたちの目の前に、十字架につけられたイエス・キリストが、はっきりと描き出されていたのに。
3:2 一つだけ教えてほしい。あなたたちが霊を受けたのは、律法を守る行いによってか、それとも聞いて信じたことによってか。
3:3 そんなに物分かりが悪いのか。霊によって始めたのに、今になって自分の力で仕上げようとするのか。
3:4 あんなに多くのことを経験したのは、むだだったのか。ほんとうにむだになるのだろうか。
3:5 あなたたちに霊を与え、あなたたちの間で力ある働きをなさる神は、それを律法を守る行いのゆえにするのか、それとも聞いて信じたことのゆえにするのか。
3:6 アブラハムのことを考えてみてほしい。彼は神を信じた。それで、その信仰が義と認められたのだ。
3:7 だから、こう知ってほしい。信仰による人たち、この人たちこそがアブラハムの子どもなのだ。
3:8 聖書は、神が信仰によって異邦の人たちを義と認めると前もって知って、アブラハムにこの良い知らせを先に告げていた。「あなたによって、すべての民族が祝福される。」
3:9 こうして、信仰による人たちは、信仰の人アブラハムとともに祝福を受けるのだ。
3:10 律法を守る行いにたよる人は、みな、のろいのもとにいる。こう書いてあるからだ。「律法の書に記されたすべてのことを守り続けて、そのとおりに行わない者は、みな、のろわれる。」
3:11 律法によって神の前で義と認められる人はだれもいない。それははっきりしている。「義とされた人は信仰によって生きる」からだ。
3:12 律法は信仰によるものではない。「これらを行う人は、それによって生きる」とあるとおりだ。
3:13 キリストは、わたしたちのためにのろわれた者となって、律法ののろいからわたしたちを買い取ってくださった。「木にかけられた者は、みなのろわれる」と書いてあるからだ。
3:14 それは、アブラハムに与えられた祝福がキリスト・イエスによって外国の人々にも及ぶためであり、わたしたちが信仰によって、約束された御霊を受けるためだ。
3:15 兄弟姉妹よ、身近な例で話そう。人と人の間で交わした約束でも、いったん正式に決まれば、だれもそれを取り消したり、付け加えたりできない。
3:16 さて、約束はアブラハムと、その子孫に向けて語られた。「子孫たち」と、多くの人を指すようには言われていない。「あなたの子孫に」と、一人を指して言われている。それはキリストのことだ。
3:17 わたしが言いたいのはこうだ。神がすでに正式に決めた約束を、四百三十年後にできた律法が無効にして、その約束を打ち消すことはできない。
3:18 もし受け継ぐものが律法によるのなら、それはもう約束によるものではない。しかし神は、約束によって、それをアブラハムに与えてくださったのだ。
3:19 では、律法は何のためにあるのか。それは、違反があることをはっきりさせるために、後から加えられたものだ。約束を受けたあの子孫が来るまでの間のもので、天使たちを通し、一人の仲介者の手によって定められた。
3:20 仲介者は、一方だけのために立つのではない。しかし、神は一人だ。
3:21 では、律法は神の約束に反するものなのか。決してそうではない。もし、いのちを与えられる律法が与えられていたのなら、義はほんとうに律法によって得られたはずだ。
3:22 しかし聖書は、すべてのものを罪の下に閉じ込めた。それは、イエス・キリストを信じる信仰によって、約束が、信じる人々に与えられるためだ。
3:23 この信仰が来る前、わたしたちは律法のもとで見張られ、やがて現される信仰の時まで閉じ込められていた。
3:24 こうして律法は、わたしたちをキリストへと導く付き添い役となった。それは、わたしたちが信仰によって義と認められるためだ。
3:25 でも、この信仰が来た今、わたしたちはもう付き添い役のもとにはいない。
3:26 あなたたちはみな、キリスト・イエスにある信仰によって、神の子だからだ。
3:27 キリストに結ばれる洗礼を受けたあなたたちはみな、キリストを身にまとったのだ。
3:28 ユダヤ人もギリシア人もない。奴隷も自由な人もない。男も女もない。あなたたちはみな、キリスト・イエスにあって一つだからだ。
3:29 そして、あなたたちがキリストのものなら、アブラハムの子孫であり、約束にもとづく相続人なのだ。
4:1 わたしが言いたいのは、こういうことだ。相続人は、まだ幼いあいだは、すべての持ち主であっても奴隷と変わらない。
4:2 父親が定めた時が来るまで、後見人や管理人のもとに置かれるからだ。
4:3 わたしたちも同じだった。まだ幼かったころは、この世を支配するもろもろの力のもとで奴隷になっていた。
4:4 でも、時が満ちると、神はご自分の子を送られた。その子は女から生まれ、律法のもとに生まれた。
4:5 それは、律法のもとにいる人々を買い取って自由にし、わたしたちを神の子として迎えるためだった。
4:6 そして、あなたたちが神の子だから、神はご自分の子の霊をわたしたちの心に送られた。その霊は「アッバ、父よ」と叫ぶ。
4:7 だから、あなたはもう奴隷ではなく、子だ。そして子なら、神によって受け継ぐ者でもある。
4:8 でも、あの頃のあなたたちは神を知らず、本当は神でもないものの奴隷になっていた。
4:9 ところが今、あなたたちは神を知った。いや、むしろ神に知られている。それなのに、どうしてまたあの無力で貧しいこの世の力に逆戻りするのか。もう一度その奴隷になりたいのか。
4:10 あなたたちは特定の日や月、季節や年にこだわっている。
4:11 あなたたちのことが心配だ。あなたたちのために苦労してきたのが、むだになってしまうのではないか。
4:12 兄弟姉妹よ、お願いだから、わたしのようになってほしい。わたしもあなたたちのようになったのだから。あなたたちは、わたしに悪いことをしたわけではない。
4:13 知ってのとおり、わたしが最初にあなたたちに福音を伝えたのは、体が弱っていたからだった。
4:14 わたしの体はあなたたちにとって試練だったのに、あなたたちはそれを見下したり、嫌がって突き放したりしなかった。それどころか、神の使いのように、キリスト・イエスそのもののように、わたしを迎え入れてくれた。
4:15 あの喜びは、どこへ行ってしまったのか。あの頃のあなたたちなら、できることなら自分の目をえぐり出してでもわたしに与えただろう。わたしはそう断言できる。
4:16 それなのに、本当のことを言ったせいで、わたしはあなたたちの敵になってしまったのか。
4:17 あの人たちがあなたたちに熱心なのは、よい心からではない。あなたたちをわたしから引き離して、あなたたちが自分たちに熱心になるように仕向けたいだけだ。
4:18 よいことのために熱心になってもらうのは、いつでもよいことだ。わたしがそばにいるときだけでなく、いつもそうであってほしい。
4:19 わたしの子どもたちよ。あなたたちの中にキリストの姿ができあがるまで、わたしはもう一度、産みの苦しみを味わっている。
4:20 できることなら、今すぐそばに行って、話し方も変えたい。あなたたちのことが、どうしたらいいのか分からなくなっているのだ。
4:21 律法のもとで生きたいと思っている人たちに聞きたい。あなたたちは、その律法が何と言っているか、ちゃんと聞いていないのか。
4:22 こう書いてある。アブラハムには二人の息子がいた。一人は奴隷の女から、もう一人は自由な女から生まれた。
4:23 奴隷の女から生まれた子は、ふつうの人としての生まれ方で生まれた。でも、自由な女から生まれた子は、神の約束によって生まれたのだ。
4:24 これはたとえとして読むことができる。二人の女は、二つの契約を表している。一つはシナイ山から出た契約で、生まれてくる子どもを奴隷にする。それがハガルだ。
4:25 このハガルは、アラビアにあるシナイ山を指している。そして、今のエルサレムに対応している。今のエルサレムは、その子どもたちとともに奴隷の状態にあるからだ。
4:26 でも、天にあるエルサレムは自由だ。これがわたしたちの母である。
4:27 こう書いてある。「喜べ、子を産めない女よ。声をあげて叫べ、産みの苦しみを知らない女よ。夫のいる女よりも、捨てられた女のほうが、たくさんの子どもを持つのだから。」
4:28 兄弟姉妹よ。あなたたちはイサクと同じように、約束によって生まれた子どもなのだ。
4:29 でも、あの時、ふつうの人としての生まれ方で生まれた子が、霊によって生まれた子をいじめた。今も同じことが起きている。
4:30 しかし、聖書は何と言っているだろうか。「奴隷の女とその息子を追い出しなさい。奴隷の女の息子は、自由な女の息子といっしょに財産を受け継ぐことは決してないのだから。」
4:31 だから兄弟姉妹よ。わたしたちは奴隷の女の子どもではなく、自由な女の子どもなのだ。
5:1 この自由を得させるために、キリストはわたしたちを自由にしてくれた。だから、しっかり立っていよう。もう二度と、奴隷のくびきをつけられてはいけない。
5:2 よく聞いてほしい。わたしパウロが、あなたたちにはっきり言う。もし割礼を受けるなら、キリストはあなたたちにとって何の役にも立たなくなる。
5:3 割礼を受ける人みんなに、もう一度はっきり言っておく。その人は律法の全部を守る義務を負うことになる。
5:4 律法によって義とされようとするあなたたちは、キリストとの関係が切れてしまい、恵みから落ちてしまったのだ。
5:5 でもわたしたちは、信仰によって、御霊の力で、義を与えられるという希望を待ち望んでいる。
5:6 キリスト・イエスにあっては、割礼を受けているかどうかは何の意味もない。大切なのは、愛を通してはたらく信仰だけだ。
5:7 あなたたちは、うまく走っていた。それなのに、だれがあなたたちを邪魔して、真理に従えなくさせたのか。
5:8 そんな説得は、あなたたちを招いてくださった方から出たものではない。
5:9 少しのパン種が、練り粉のかたまり全体をふくらませてしまう。
5:10 あなたたちが違う考えを持つことは決してないと、わたしは主にあって確信している。でも、あなたたちをかき乱している者は、それがだれであろうと、そのさばきを負うことになる。
5:11 兄弟姉妹よ。もしわたしが今も割礼を宣べ伝えているのなら、どうして今もなお迫害されているのだろうか。もしそうなら、十字架のつまずきは消えてしまっているはずだ。
5:12 あなたたちをかき乱している者たちは、いっそ自分自身を切り取ってしまえばいい。
5:13 兄弟姉妹よ。あなたたちは自由になるために招かれた。でも、その自由を、自分勝手な欲望を満たすための口実にしてはいけない。むしろ、愛によって互いに仕え合いなさい。
5:14 律法全体は、たった一つの言葉の中に完全にまとめられている。それは「あなたの隣人を自分自身のように愛しなさい」ということだ。
5:15 でも、もし互いにかみ合い、食い合っているなら、気をつけなさい。互いに滅ぼし合ってしまうから。
5:16 わたしはこう言いたい。霊によって歩みなさい。そうすれば、肉の欲望を満たすことは決してない。
5:17 肉は霊に逆らって望み、霊は肉に逆らって望むからだ。この二つは互いに対立している。だから、あなたたちは自分のしたいと思うことができなくなる。
5:18 でも、もし霊に導かれているなら、あなたたちは律法の下にはいない。
5:19 肉のわざは、はっきりと目に見えている。それは、不品行、汚れ、みだらな行い、
5:20 偶像礼拝、まじない、敵意、争い、ねたみ、怒り、利己的な野心、仲間割れ、分派、
5:21 うらやみ、酒に酔うこと、どんちゃん騒ぎ、そしてこれらに類することだ。前にも言ったように、今もあなたたちに警告しておく。こういうことをする者は、神の御国を受け継ぐことはない。
5:22 でも、霊が結ぶ実は、愛、喜び、平和、寛容、親切、善意、信仰、
5:23 柔和、自制だ。こうしたものを禁じる律法など、どこにもない。
5:24 キリストのものとなった人たちは、肉を、その情熱や欲望もろとも十字架につけてしまったのだ。
5:25 わたしたちが霊によって生きているのなら、その霊に歩調を合わせて進んでいこう。
5:26 うぬぼれて、たがいに張り合ったり、たがいにねたんだりするのはやめよう。
6:1 兄弟姉妹よ。もしだれかが、うっかり何か過ちに陥ってしまったら、霊に導かれているあなたたちが、穏やかな心でその人を立ち直らせてあげてほしい。ただし、自分も同じように誘惑されないよう、気をつけながら。
6:2 たがいに重荷を担い合いなさい。そうすれば、キリストの律法を実現することになる。
6:3 自分は何者かだと思い込んでいる人がいても、実は何者でもないのなら、その人は自分をだましているだけだ。
6:4 だれもが、自分自身の行いをよく確かめるべきだ。そうすれば、ほかの人と比べるのではなく、自分だけを見つめて誇れるようになる。
6:5 人はそれぞれ、自分の荷を負っていくのだから。
6:6 神の言葉を教わっている人は、教えてくれる人と、良いものをすべて分かち合いなさい。
6:7 思い違いをしてはいけない。神をあなどることはできない。人は自分がまいた種を、そのまま刈り取ることになるのだから。
6:8 自分の欲望のためにまく人は、その欲望から滅びを刈り取る。でも、霊のためにまく人は、霊から永遠のいのちを刈り取る。
6:9 だから、良いことをするのに疲れてしまってはいけない。あきらめずに続けていれば、時が来たときに必ず刈り取れるのだから。
6:10 そういうわけで、機会があるうちに、すべての人に良いことをしよう。とくに、同じ信仰を持つ仲間には、なおさらそうしよう。
6:11 見てほしい。わたしは今、こんなに大きな字で、自分の手であなたがたに書いている。
6:12 うわべだけを良く見せたい人たちが、あなたがたに割礼を受けさせようと迫っている。それは、キリストの十字架のために迫害されるのを避けたいだけなのだ。
6:13 割礼を受けている人たち自身も、律法を守ってはいない。それでもあなたがたに割礼を受けさせたいのは、あなたがたの体のことを自慢したいからだ。
6:14 でも、わたしにとっては、わたしたちの主イエス・キリストの十字架のほかに誇るものなど、決してあってはならない。この十字架によって、世はわたしに対して十字架につけられ、わたしも世に対して十字架につけられたのだ。
6:15 割礼を受けているかどうかは、どちらも問題ではない。大切なのは、新しく造られることだ。
6:16 この基準に従って歩むすべての人に、平安とあわれみがありますように。そして、神のイスラエルの上にも。
6:17 これからは、だれもわたしを困らせないでほしい。わたしは自分の体に、イエスの焼き印を帯びているのだから。
6:18 兄弟姉妹よ、わたしたちの主イエス・キリストの恵みが、あなたがたの霊とともにありますように。アーメン。
エペソ人への手紙
1:1 神の望みによってキリスト・イエスの使徒となったパウロから、エフェソにいる、神のものとされた人たち、キリスト・イエスを信じて誠実に生きる人たちへ。
1:2 わたしたちの父である神と、主イエス・キリストから、恵みと平安があなたがたにありますように。
1:3 わたしたちの主イエス・キリストの父である神をほめたたえよう。神はキリストにあって、天にあるあらゆる霊的な恵みで、わたしたちを祝福してくださった。
1:4 神は世界が造られる前から、キリストにあってわたしたちを選んでくださった。それは、わたしたちが神の前で聖く、傷のない者となるためだ。
1:5 愛をもって、神はイエス・キリストを通して、わたしたちをご自分の子とすることを、前もって決めておられた。それは神が喜びとし、心から望まれたことだった。
1:6 それはすべて、神が愛する方によってわたしたちに惜しみなく与えてくださった、栄光に満ちた恵みがたたえられるためだ。
1:7 このキリストによって、わたしたちは、流された血のおかげで解き放たれ、罪をゆるされている。神の豊かな恵みによるものだ。
1:8 神はこの恵みを、あらゆる知恵と理解とともに、わたしたちに満ちあふれるほど注いでくださった。
1:9 そして神は、それまで隠されていたご自分の望みを、わたしたちに知らせてくださった。これは神が喜びとして、キリストにあって前もって計画されていたことだ。
1:10 それは、時が満ちたときに実現する計画だ。天にあるものも地にあるものも、すべてをキリストのもとに一つにまとめる、という計画である。
1:11 このキリストにあって、わたしたちは神のものとして選ばれ、受け継ぐ者とされた。すべてをご自分の望みのままに導かれる神が、その計画にそって、前もってそう定めておられたのだ。
1:12 それは、いち早くキリストに望みを置いたわたしたちが、神の栄光をたたえて生きるためだ。
1:13 あなたがたも、真理の言葉、つまり救いの知らせを聞いた。そしてキリストを信じた。すると、約束されていた聖なる霊が、あなたがたにも証印として押された。
1:14 この霊は、わたしたちが受け継ぐものの保証だ。神のものとされた人々が完全に自由にされ、神の栄光がたたえられる、その日までの手付金なのだ。
1:15 だからわたしも、あなたがたが主イエスを信じ、神のものとされたすべての人を愛していると聞いて、
1:16 あなたがたのことを感謝せずにはいられない。祈るたびに、あなたがたのことを思い起こしている。
1:17 わたしたちの主イエス・キリストの神、栄光の父が、あなたがたに知恵と啓示の霊を与えてくださるように。そうして、あなたがたが神をますます深く知るようにと祈っている。
1:18 また、あなたがたの心の目が明るく開かれて、次のことがわかるように。神が招いてくださったことにどんな望みがあるのか。神のものとされた人々が受け継ぐものが、どれほど栄光に満ちて豊かなのか。
1:19 そして、信じるわたしたちに向けて働く神の力が、どれほどとてつもなく大きいのか。それは、神がその強大な力を働かせて、
1:20 キリストのうちに現された力だ。神はキリストを死者の中から復活させ、天でご自分の右の座に着かせた。
1:21 すべての支配、権威、力、主権の上に、また、この世だけでなく来るべき世でも呼ばれるあらゆる名の上に、キリストを高く置かれたのだ。
1:22 神はすべてのものをキリストの足もとに従わせ、キリストを、すべてのものの上に立つ頭として教会に与えられた。
1:23 教会はキリストのからだであり、すべてのものをすべてにおいて満たす方が、満ちあふれるところなのだ。
2:1 あなたたちは、かつては罪を犯し、神に背いていた。その罪のために、あなたたちは死んでいた。
2:2 その頃のあなたたちは、この世のやり方に流されて生きていた。空中を支配する者、つまり今も神に従わない人たちの中で働いている霊に、従って生きていたのだ。
2:3 実は、わたしたちもみな同じだった。かつては自分の欲望のままに生き、体と心の望むことを行っていた。だから生まれつき、ほかの人たちと同じように、神の怒りを受けるべき者だった。
2:4 しかし神は、あわれみに満ちたお方だ。わたしたちを深く愛してくださった。その大きな愛によって、
2:5 罪のために死んでいたわたしたちを、キリストと共に生かしてくださった。あなたたちが救われたのは、神の恵みによるのだ。
2:6 そして神は、キリスト・イエスにあって、わたしたちをキリストと共によみがえらせ、共に天の場所に座らせてくださった。
2:7 それは、これから来る時代に向けて、あふれるほど豊かな恵みを示すためだった。キリスト・イエスにあってわたしたちに向けられた、神のいつくしみによる恵みを。
2:8 あなたたちが救われたのは、恵みによる。信仰を通して救われたのだ。それは自分の力で得たものではなく、神からの贈り物だ。
2:9 自分の行いによるのではない。だから、だれも誇ることはできない。
2:10 わたしたちは神の作品だ。良い行いをするために、キリスト・イエスにあって造られた。神は前もって、わたしたちがその良い行いをして生きるように、備えてくださったのだ。
2:11 だから、覚えておいてほしい。あなたたちは生まれからいえば、ユダヤ人ではない。手で体に印を刻んだ人たち、いわゆる「割礼のある者」から、「割礼のない者」と呼ばれていた。
2:12 その頃のあなたたちは、キリストと関わりがなかった。イスラエルの民の一員でもなく、神が約束の中で結んだ契約とも無縁だった。この世で希望もなく、神もない者だったのだ。
2:13 でも今は違う。かつて遠く離れていたあなたたちが、キリスト・イエスにあって、そのキリストが流した血によって、神の近くに引き寄せられたのだ。
2:14 キリストご自身が、わたしたちの平和だ。キリストは二つのものを一つにし、両者を隔てていた壁、つまり敵意を、自分の体をもって壊した。
2:15 こまかな規定からなる律法を、廃止したのだ。それは、二つのものを自分にあって一つの新しい人へと造り上げ、平和を生み出すためだった。
2:16 そして十字架によって、その二つを一つの体として神と和解させるためだった。キリストは十字架の上で、両者の敵意を滅ぼしたのだ。
2:17 こうしてキリストは来て、遠く離れていたあなたたちにも、近くにいた人たちにも、平和を告げ知らせた。
2:18 このキリストによって、わたしたちは両方とも、一つの霊に導かれて、父である神のもとに近づくことができる。
2:19 だから、あなたたちはもう、よそ者でもよそから来た者でもない。神の民と同じ国の一員であり、神の家族なのだ。
2:20 あなたたちは、使徒たちや預言者たちという土台の上に建てられている。その建物の要となる隅の石は、キリスト・イエスご自身だ。
2:21 このキリストにあって、建物全体が組み合わされ、主にある聖なる神殿へと成長していく。
2:22 このキリストにあって、あなたたちも共に建て上げられ、霊によって神が住まわれる場所となっていくのだ。
3:1 だから、わたしパウロは、あなたがた——ユダヤ人ではない人々——のために、キリスト・イエスの囚人となっている。
3:2 神があなたがたのためにわたしにゆだねてくださった、恵みを配るこの務めのことは、あなたがたも聞いているはずだ。
3:3 この秘められた計画は、神が示してくださったことによって、わたしに明らかにされた。すでに少しだけ書いたとおりだ。
3:4 それを読めば、キリストの秘められた計画について、わたしがどれだけ理解しているかが、あなたがたにも分かるはずだ。
3:5 この計画は、前の時代には人々に知らされていなかった。でも今は、神の霊によって、神に選ばれた使徒たちや預言者たちに明らかにされた。
3:6 その計画とは、こういうことだ。ユダヤ人ではない人々も、良い知らせを通して、キリスト・イエスにあって、ユダヤ人と一緒に神の財産を受け継ぐ者となり、同じ体の一部となり、神の約束を共に受け取る者となる。
3:7 わたしは、神が働かせてくださる力によって、また神が与えてくださった恵みという贈り物によって、この良い知らせに仕える者となった。
3:8 すべての神の民の中で最も小さな者にすぎないわたしに、この恵みが与えられた。それは、キリストの、はかりしれない豊かさを、ユダヤ人ではない人々に伝えるためだ。
3:9 そして、すべてを造られた神のうちに大昔からずっと隠されてきた、この秘められた計画がどんなものかを、すべての人にはっきりと示すためだ。
3:10 それは今、教会を通して、天にいる支配者たちや権威者たちに、神の限りなく豊かな知恵が知らされるためだ。
3:11 これは、神がわたしたちの主キリスト・イエスにあって成し遂げられた、永遠の計画にそったものだ。
3:12 このキリストにあって、わたしたちはキリストへの信仰によって、確信をもって、大胆に神のもとへ近づくことができる。
3:13 だから、お願いする。わたしがあなたがたのために苦しみを受けていることで、がっかりしないでほしい。それはむしろ、あなたがたの栄光なのだ。
3:14 こういうわけで、わたしは父の前にひざをかがめる。
3:15 天と地にあるすべての家族は、この父から名前をいただいている。
3:16 どうか父が、その栄光の豊かさにしたがって、神の霊によってあなたがたの内なる人を力強くしてくださいますように。
3:17 そして、信仰によってキリストがあなたがたの心に住んでくださいますように。また、あなたがたが愛に根ざし、愛を土台として、
3:18 すべての信じる者たちとともに、その幅と長さと高さと深さがどれほどのものかを、しっかりとつかみ取る力を持てますように。
3:19 そして、人の理解をはるかに超えたキリストの愛を知ることができますように。こうして、神ご自身に満ちあふれるすべてのもので、あなたがたが満たされますように。
3:20 どうか、わたしたちのうちに働く力によって、わたしたちが求めることや思うことすべてを、はるかに超えて行うことのできる方に、
3:21 教会において、またキリスト・イエスにあって、栄光が世々限りなく、いつまでもありますように。アーメン。
4:1 だから、主のために囚われの身となっているわたしから、あなたがたにお願いしたい。神があなたがたを招いてくださった、その招きにふさわしく生きてほしい。
4:2 いつも謙虚で、穏やかでいてほしい。忍耐強く、愛をもって互いを受け入れ合いなさい。
4:3 霊によって一つにされていることを、平和という結びつきの中でしっかり保つように努めなさい。
4:4 体は一つ、霊は一つだ。あなたがたが招かれたときにいだいた希望も、一つだった。
4:5 主は一つ、信仰は一つ、洗礼は一つ。
4:6 すべての人の神であり父である方も、一つだ。この方はすべてのものの上におられ、すべてのものを通して働き、すべてのものの中におられる。
4:7 そして、わたしたち一人ひとりに恵みが与えられている。それは、キリストが分け与えてくださる贈り物の量に応じたものだ。
4:8 だから、こう言われている。「高いところへ昇ったとき、その方は捕らえた者たちを引き連れ、人々に贈り物を与えた。」
4:9 この「昇った」という言葉は、その方がまず地の低いところにまで下ったということでなくて、何を意味するだろうか。
4:10 下ったその方こそ、すべての天よりもさらに高く昇った方だ。それは、すべてのものを満たすためだった。
4:11 そしてこの方は、ある人を使徒として、ある人を預言者として、ある人を伝道者として、ある人を牧者また教師として、人々に与えてくださった。
4:12 それは、神の民を整えて奉仕の働きにつかせ、キリストの体を築き上げていくためだ。
4:13 そうして、わたしたちは皆、信仰において、また神の子を深く知ることにおいて一つになり、成熟した一人の人となる。つまり、キリストの満ちあふれる豊かさにふさわしい背丈にまで達するのだ。
4:14 もう子どものようではいられない。子どもは、人の悪だくみやずる賢い言葉、人を迷わせるたくらみによって、いろいろな教えの風に吹かれ、波にもてあそばれるように、あちこちへ揺さぶられてしまう。
4:15 そうではなく、愛のうちに真理を語りながら、あらゆる面で成長し、かしらであるキリストへとつながっていくのだ。
4:16 この方から、体全体は、それぞれの節々によってしっかりと組み合わされ、結び合わされる。そして、一つ一つの部分がそれぞれの役割にふさわしく働くことで、体は成長し、愛のうちに自分自身を築き上げていくのだ。
4:17 そこで、わたしは主にあってはっきりと言う。もう、神を知らない人々のように生きてはいけない。彼らはむなしい心のままに生きている。
4:18 彼らの思いは暗くなり、神のいのちから切り離されている。それは、彼らのうちにある無知のせいであり、心がかたくなになっているせいだ。
4:19 彼らは何も感じなくなり、自分を放縦にゆだね、あくなき欲望のままに、ありとあらゆる汚れた行いにふけっている。
4:20 でも、あなたがたがキリストについて学んだのは、そんなことではなかったはずだ。
4:21 あなたがたは確かにキリストのことを聞き、イエスにある真理のとおりに、キリストにあって教えられたのだから。
4:22 つまり、あなたがたはこれまでの生き方を捨て、古い自分を脱ぎ捨てるようにと教えられた。古い自分は、人を欺く欲望によって、どんどん朽ちていくものだ。
4:23 そして、心の奥底から新しくされ続け、
4:24 新しい自分を身につけるようにと教えられた。この新しい自分は、神にかたどって造られ、真理から生まれる義と聖さを備えているのだ。
4:25 だから、うそを捨てなさい。一人ひとりが、隣の人に本当のことを話そう。わたしたちは、たがいに同じ体の一部なのだから。
4:26 怒ることがあっても、罪を犯してはいけない。太陽が沈むまで、怒りをかかえたままでいないように。
4:27 悪魔につけ入るすきを与えてはいけない。
4:28 盗んでいた人は、もう盗んではいけない。むしろ、自分の手でまじめに働いて、良いことをしよう。そうすれば、困っている人に分けてあげることができる。
4:29 口から悪い言葉を出してはいけない。むしろ、必要に応じて人を育てるような、良い言葉を話そう。それは、聞く人に恵みを与える。
4:30 神の聖なる霊を悲しませてはいけない。あなたがたは、この霊によって、贖い（買い戻され自由にされること）の日のために証印を押されているのだから。
4:31 あらゆるとげとげしさ、激しい怒り、腹立ち、わめき声、そしてののしりを、すべての悪意とともに、あなたがたの中から取り除きなさい。
4:32 たがいに親切にし、思いやりを持ちなさい。神がキリストによってあなたがたを赦してくださったように、あなたがたもたがいに赦し合いなさい。
5:1 だから、神を見習おう。あなたたちは神に愛された子どもなのだから。
5:2 そして、愛のうちに生きよう。キリストがわたしたちを愛し、わたしたちのために自分をささげてくれたように。それは神へのささげもの、いけにえとなり、神が喜ぶ香りとなった。
5:3 あなたたちの間では、性的な乱れや、どんな汚れも、むさぼりも、口にすることさえあってはならない。それが、神のものとされた人にふさわしい生き方だ。
5:4 下品なことや、くだらないおしゃべり、下劣な冗談も、ふさわしくない。むしろ、感謝を口にしよう。
5:5 よく覚えておいてほしい。性的に乱れた者、汚れた者、むさぼる者、つまり偶像を拝む者は、キリストと神の御国を受け継ぐことはできない。
5:6 だれにも、むなしい言葉でだまされてはいけない。こうしたことのために、神の怒りは、従おうとしない者たちに下るのだから。
5:7 だから、そんな者たちの仲間になってはいけない。
5:8 あなたたちは、以前は暗やみだった。でも今は、主にあって光となっている。光の子どもらしく生きよう。
5:9 光が実らせるのは、あらゆる善と、義と、真実だからだ。
5:10 何が主に喜ばれるのかを、見きわめながら生きよう。
5:11 実を結ばない暗やみのわざには加わらず、むしろ、それを明るみに出しなさい。
5:12 彼らがこっそりやっていることは、口にするのも恥ずかしいことなのだから。
5:13 でも、光に照らされると、すべてがありのままに見えてくる。
5:14 明るみに出されたものは、みんな光そのものになるからだ。だからこう言われている。「眠っている人よ、目を覚ませ。死んだ状態から起き上がれ。そうすれば、キリストがあなたを照らしてくれる。」
5:15 だから、自分がどう生きているか、よく気をつけなさい。愚かな人としてではなく、賢い人として生きよう。
5:16 与えられた時間を大切に使いなさい。今は悪い時代なのだから。
5:17 だから、考えなしの生き方をせず、主が何を望んでいるのかをしっかり理解しなさい。
5:18 酒に酔ってはいけない。それは身を持ちくずすもとだ。そうではなく、聖霊に満たされなさい。
5:19 詩や賛美の歌、心からわき上がる歌をおたがいに語り合い、心の中で主に向かって歌い、たたえなさい。
5:20 そして、わたしたちの主イエス・キリストの名によって、いつも、すべてのことについて、父である神に感謝しなさい。
5:21 キリストを敬う心をもって、おたがいに仕え合いなさい。
5:22 妻たちよ、主に従うように、自分の夫に従いなさい。
5:23 キリストが教会のかしらであるように、夫は妻のかしらだからだ。キリストは、そのからだである教会を救う方でもある。
5:24 教会がキリストに従うように、妻もすべてのことで夫に従いなさい。
5:25 夫たちよ、妻を愛しなさい。キリストが教会を愛して、そのために自分のいのちを捧げたように。
5:26 キリストがそうしたのは、教会を聖なるものにするためだった。ことばを通して、水で洗いきよめたのだ。
5:27 それは、輝くばかりに美しい教会を、自分のものとして迎えるためだった。しみも、しわも、そういったものが一つもなく、聖なる、傷のない教会にするためだ。
5:28 それと同じように、夫も自分の妻を、自分のからだのように愛さなければならない。妻を愛する人は、自分自身を愛しているのだ。
5:29 自分のからだを憎む人など、これまで一人もいない。だれもが自分のからだを養い、大切にする。キリストが教会をそうするのと同じだ。
5:30 わたしたちは、キリストのからだの一部なのだから。
5:31 「だから人は父と母を離れて、妻と結ばれ、二人は一つのからだになる。」
5:32 この奥深い真理は、とても大きい。わたしはこれを、キリストと教会のことだと言っているのだ。
5:33 とにかく、あなたがた一人ひとりも、自分の妻を自分自身のように愛しなさい。妻も、夫を大切に敬いなさい。
6:1 子どもたち、主に従う者として、あなたたちの親の言うことを聞きなさい。それが正しいことだ。
6:2 「あなたの父と母を敬いなさい。」これは、約束がついた最初の戒めだ。
6:3 「そうすれば、あなたは幸せになり、この地で長く生きる。」
6:4 父親たちよ、子どもをいらだたせてはいけない。主の教えと導きによって、大切に育てなさい。
6:5 奴隷の人たちよ、この世の主人には、恐れおののきながら、まっすぐな心で従いなさい。キリストに従うのと同じようにしなさい。
6:6 人に気に入られようとして、見ているときだけ働くのではいけない。キリストのしもべとして、心から神の望むことをしなさい。
6:7 人に仕えるのではなく主に仕えるつもりで、喜んで働きなさい。
6:8 良いことをすれば、奴隷であっても自由な身であっても、それぞれが主からその報いを受けることを、あなたたちは知っているのだから。
6:9 主人たちよ、あなたたちも同じように、奴隷たちに接しなさい。おどすのをやめなさい。彼らとあなたたちの主は天におられ、その方は人を分け隔てしないことを、あなたたちは知っているのだから。
6:10 最後に言う。主にあって、その大きな力によって、強くなりなさい。
6:11 神の武具をすべて身につけなさい。そうすれば、悪魔のたくらみに立ち向かうことができる。
6:12 わたしたちが戦う相手は、人間ではない。もろもろの支配者、権威ある者たち、この暗やみの世界を支配する者たち、そして天にいる悪の霊たちだ。
6:13 だから、神の武具をすべて身につけなさい。そうすれば、悪の日に立ち向かい、すべてをやり遂げて、なお立ち続けることができる。
6:14 だから、しっかり立ちなさい。真理を帯のように腰に巻き、義を胸当てとして身につけなさい。
6:15 そして、平和を告げる良い知らせをいつでも伝えられるように、その備えを靴として足にはきなさい。
6:16 これらすべてに加えて、信仰を盾として取りなさい。それがあれば、悪い者が放つ火の矢を、すべて消し止めることができる。
6:17 また、救いをかぶととして受け取り、御霊の剣、つまり神の言葉を手に取りなさい。
6:18 どんなときも御霊によって祈り、あらゆる祈りと願いをささげなさい。そのために、いつも目をさまして、ねばり強く、すべての聖なる人々のために祈り続けなさい。
6:19 わたしのためにも祈ってほしい。わたしが口を開くとき、大胆に、良い知らせの奥深い真理を伝えられるよう、語る言葉が与えられるように。
6:20 この良い知らせのために、わたしは鎖につながれながらも使者としての務めを果たしている。だから、語るべきことを、恐れずに大胆に話せるように祈ってほしい。
6:21 わたしの様子や、どうしているかを、あなたがたにも知ってもらいたい。それはすべて、テキコが伝えてくれる。彼は愛する兄弟であり、主にあって忠実に仕える者だ。
6:22 わたしは、まさにこのためにテキコをあなたがたのもとへ送った。わたしたちの様子を知ってもらい、彼によってあなたがたの心を励ましてもらうためだ。
6:23 父である神と主イエス・キリストが、兄弟姉妹に平和を、そして信仰とともに愛を与えてくださるように。
6:24 変わることのない愛をもって、わたしたちの主イエス・キリストを愛するすべての人に、恵みがありますように。
ピリピ人への手紙
1:1 キリスト・イエスに仕える者、パウロとテモテから。ピリピにいる、キリスト・イエスに結ばれたすべての神の民へ。監督たちと執事たちにも、この手紙を送ります。
1:2 わたしたちの父である神と、主イエス・キリストからの恵みと平安が、あなたがたにありますように。
1:3 わたしはあなたがたのことを思い出すたびに、いつもわたしの神に感謝しています。
1:4 祈るときはいつも、あなたがた一人ひとりのために、喜びをもって祈っています。
1:5 最初の日から今に至るまで、あなたがたが福音を伝える働きに共に加わってくれたからです。
1:6 わたしは確信しています。あなたがたの中で良い働きを始めてくださった神は、キリスト・イエスの日まで、その働きを必ずやり遂げてくださいます。
1:7 あなたがたみんなのことをこう思うのは、当然のことです。あなたがたはいつもわたしの心の中にいるからです。わたしが牢につながれているときも、福音を弁護し、しっかり打ち立てているときも、あなたがたはみんな、わたしと共に神の恵みにあずかる仲間なのです。
1:8 わたしがキリスト・イエスの深い愛をもって、あなたがた全員をどれほど慕っているか、神が証人になってくださいます。
1:9 そして、わたしはこう祈っています。あなたがたの愛が、正しい知識とあらゆる判断力に支えられて、いよいよ豊かにあふれるように。
1:10 そうすれば、あなたがたは本当に大切なものを見分けられるようになります。そして、キリストの日まで、汚れなく、とがめられるところのない者でいられます。
1:11 イエス・キリストによって与えられる、義の実に満たされて、神の栄光と誉れをあらわすようになるのです。
1:12 さて、兄弟姉妹よ、知っておいてほしいことがあります。わたしの身に起きたことは、かえって福音を前へ進めることになったのです。
1:13 その結果、わたしが牢につながれているのはキリストのためだ、ということが、親衛隊の全員にも、ほかのすべての人にも知れ渡りました。
1:14 そして、わたしが捕らえられているのを見て、多くの兄弟姉妹が主にあってますます確信を深め、いっそう恐れずに神の言葉を語るようになったのです。
1:15 確かに、ねたみや争いの気持ちからキリストを宣べ伝える人もいます。でも、善意から伝える人もいます。
1:16 一方の人たちは、愛からそうしています。わたしが福音を弁明するためにここに置かれていることを、知っているのです。
1:17 もう一方の人たちは、純粋な気持ちからではなく、自分の利益を求めてキリストを伝えています。捕らえられているわたしを、もっと苦しめようと思っているのです。
1:18 だから、どうだと言うのでしょう。見せかけであれ、本心であれ、どんな形にせよキリストが伝えられているのです。わたしはそれを喜んでいます。これからも喜び続けます。
1:19 というのも、あなたがたの祈りと、イエス・キリストの霊の助けによって、このことが結局わたしの救いになると、分かっているからです。
1:20 わたしが待ち望み、望みをかけているのは、どんなことでも恥をかくことなく、いつものように今も堂々と語ることです。そして、生きるにしても死ぬにしても、わたしのこの身によってキリストがあがめられることです。
1:21 わたしにとって、生きることはキリストであり、死ぬことは益なのです。
1:22 けれども、この体で生き続けることが、実りある働きになるのなら、どちらを選べばいいのか、わたしには分かりません。
1:23 わたしは、二つの思いの間で板挟みになっています。この世を去ってキリストと共にいたい、という願いがあります。そのほうがはるかに良いからです。
1:24 でも、この体のまま生き続けるほうが、あなたがたのためにはもっと必要なのです。
1:25 こう確信しているので、わたしには分かっています。わたしはこの世にとどまり、あなたがたみんなと共に生き続けるのです。あなたがたが信仰において成長し、喜びをもてるようになるためです。
1:26 そうすれば、わたしがもう一度あなたがたのところへ行くことで、あなたがたはキリスト・イエスにあって、わたしのことでますます誇れるようになります。
1:27 ただ、キリストの福音にふさわしく生きてください。そうすれば、わたしが行ってあなたがたに会うときも、離れているときも、あなたがたのことをこう聞けるでしょう。あなたがたが一つの心でしっかりと立ち、福音の信仰のために心を合わせて共に戦っている、と。
1:28 そして、反対する者たちにどんなことがあっても、おびえないでください。それは、彼らには滅びの、あなたがたには救いのしるしなのです。しかも、これは神から来るものです。
1:29 なぜなら、あなたがたにはキリストのために生きる恵みが与えられているからです。それはキリストを信じることだけでなく、キリストのために苦しむことでもあるのです。
1:30 あなたがたは、以前わたしのうちに見た、そして今も聞いているのと同じ戦いを、たたかっているのです。
2:1 だから、もしキリストにあって励ましがあるなら、愛による慰めがあるなら、御霊による交わりがあるなら、深い思いやりとあわれみがあるなら、
2:2 どうか、わたしの喜びを満たしてください。同じ思いをもち、同じ愛をもち、心を合わせ、一つの思いになってください。
2:3 何をするにも、自分勝手な思いや、むなしい見栄からするのはやめましょう。むしろ、へりくだって、相手を自分よりすぐれた者だと考えてください。
2:4 それぞれ自分のことばかりでなく、ほかの人のことにも目を向けてください。
2:5 キリスト・イエスがもっていたのと同じ思いを、あなたがたも自分のうちにもってください。
2:6 キリストは、神と同じあり方でありながら、神と等しくあることに、しがみつこうとはしませんでした。
2:7 それどころか、自分を空っぽにして、奴隷の姿を取り、人間と同じ者になりました。人としての姿をもって現れ、
2:8 自分を低くして、死に至るまで従いました。しかも、十字架の上での死にまで。
2:9 だから神は、キリストを最も高い所まで引き上げ、あらゆる名にまさる名を与えました。
2:10 それは、イエスの名のもとに、天にいるものも、地にいるものも、地の下にいるものも、すべてがひざをかがめ、
2:11 すべての舌が「イエス・キリストは主である」と公に告白して、父なる神の栄光をあらわすためです。
2:12 だから、愛する人たち、あなたがたはいつも従ってきました。わたしがそばにいるときだけでなく、いない今はなおさら、恐れおののきながら、自分の救いを実現するよう努めてください。
2:13 なぜなら、あなたがたのうちに働いて、神のよしとされることを望ませ、そのとおり実行させてくださるのは、神だからです。
2:14 何をするにも、不平を言ったり、言い争ったりせずにしてください。
2:15 そうすれば、あなたがたは責められることのない純粋な者、傷のない神の子どもになれます。曲がってねじれたこの時代の中で、あなたがたは世界を照らす星のように輝いています。
2:16 いのちの言葉をしっかり握りしめながら。そうすれば、キリストの日に、わたしは誇ることができます。わたしが走ってきたことも、苦労してきたことも、むだではなかったと。
2:17 たとえ、あなたがたの信仰のいけにえと奉仕のために、わたしの命が注ぎ出されることになっても、わたしは喜びます。あなたがたみんなと共に喜びます。
2:18 同じように、あなたがたも喜んでください。そして、わたしと共に喜んでください。
2:19 さて、わたしは主イエスにあって、近いうちにテモテをそちらへ送りたいと思っています。あなたがたの様子を知って、わたしも元気づけられたいからです。
2:20 テモテのように、あなたがたのことを心から本気で気にかけてくれる人は、ほかにいません。
2:21 みんな、自分のことばかり求めていて、イエス・キリストのことを求めていないのです。
2:22 でも、テモテがどんな人か、あなたがたは知っています。子が父を助けるように、彼はわたしと共に、福音のために働いてきました。
2:23 だから、わたしの状況がどうなるか見きわめられ次第、すぐに彼を送りたいと思っています。
2:24 そして、わたし自身も近いうちにそちらへ行けると、主にあって確信しています。
2:25 それでも、今はエパフロディトをあなたがたのもとへ送る必要があると考えました。彼はわたしの兄弟であり、共に働き、共に戦ってくれた仲間です。また、あなたがたが送ってくれた使いとして、わたしの必要のために尽くしてくれた人です。
2:26 彼は、あなたがたみんなに会いたがっていました。そして、自分が病気になったことをあなたがたが聞いたと知って、ひどく心を痛めていたのです。
2:27 実際、彼は死にかけるほどの重い病気でした。でも、神は彼をあわれんでくださいました。彼だけでなく、わたしのこともあわれんでくださったのです。悲しみの上にさらに悲しみが重なることのないように。
2:28 そういうわけで、わたしは急いで彼を送ります。あなたがたがもう一度彼に会って喜び、わたしの心も少しでも軽くなるためです。
2:29 だから、主にあって、心から喜んで彼を迎えてください。そして、彼のような人を大切にしてください。
2:30 彼は、キリストの働きのために、命を投げ出して死ぬところまでいったのです。あなたがたがわたしのためにできなかった奉仕を、彼が代わりに埋め合わせようとしてくれたからです。
3:1 最後に、わたしの兄弟姉妹たち、主にあって喜びなさい。同じことをくり返し書くのは、わたしには面倒なことではないし、あなたがたにとっては安全な備えになる。
3:2 あの犬たちに気をつけなさい。悪い働き手たちに気をつけなさい。体を切り刻むだけの、あの割礼派に気をつけなさい。
3:3 本当の割礼を受けているのは、わたしたちのほうだ。わたしたちは神の霊によって礼拝し、キリスト・イエスを誇りとし、自分の肉には頼らない。
3:4 とはいえ、わたしにも肉に頼れる理由はある。もしほかに、肉に頼れると思う人がいるなら、わたしはそれ以上だ。
3:5 わたしは生まれて八日目に割礼を受け、イスラエルの民に属し、ベニヤミン族の出で、ヘブライ人の中のヘブライ人だ。律法についてはファリサイ派だった。
3:6 その熱心さのあまり、教会を迫害していた。律法が求める義については、非のうちどころのない者だった。
3:7 しかし、わたしにとって得だったこれらのものを、キリストのゆえに、今では損だと思うようになった。
3:8 いや、それだけではない。わたしの主キリスト・イエスを知ることのすばらしさに比べれば、すべてが損だと思っている。キリストのために、わたしはすべてを失った。そして、それらをゴミくずと思っている。キリストを得るためだ。
3:9 そして、キリストの中にいる者と認められたい。自分自身の義、つまり律法から来る義ではなく、キリストを信じる信仰によって与えられる義、信仰にもとづいて神から来る義を持つ者として。
3:10 こうしてわたしは、キリストご自身を知り、その復活の力を知り、その苦しみを分かち合いたい。キリストの死と同じ姿にされることで、
3:11 どうにかして、死者の中からの復活にたどり着きたいのだ。
3:12 わたしは、すでにそれを手に入れたわけでも、すでに完全になったわけでもない。ただ、それをつかもうとして走り続けている。キリスト・イエスが、わたしをつかんでくださったからだ。
3:13 兄弟姉妹よ、わたしは、まだそれを手に入れたとは思っていない。ただ一つ、うしろにあるものは忘れ、前にあるものへと全身を伸ばして、
3:14 ゴールを目指して走り続けている。神がキリスト・イエスにあって天から招いてくださる、その賞を受け取るためだ。
3:15 だから、成熟したわたしたちは、みなこう考えよう。もし何か違う考え方をしているなら、神がそのこともあなたがたに示してくださる。
3:16 ただ、わたしたちがここまでたどり着いた、その同じ道に沿って進んで行こう。
3:17 兄弟姉妹よ、みんなでわたしにならってほしい。そして、わたしたちを手本として、そのように生きている人たちに目を向けなさい。
3:18 というのも、キリストの十字架に敵対して生きている人が、大勢いるからだ。彼らのことは、これまで何度もあなたがたに話してきた。そして今も、涙ながらに言う。
3:19 彼らの行き着く先は滅びだ。自分の腹を神とし、恥ずべきことを栄光とし、地上のことばかりを考えている。
3:20 でも、わたしたちの国籍は天にある。そこから救い主が来られるのを、わたしたちは待ち望んでいる。主イエス・キリストだ。
3:21 キリストは、わたしたちの弱く卑しい体を、ご自分の栄光の体と同じ姿に造り変えてくださる。すべてのものを従わせることさえできる、その力によって。
4:1 だから、わたしの愛する兄弟姉妹よ。わたしはあなたたちに会いたくてたまらない。あなたたちはわたしの喜びであり、誇りだ。愛する人たち、こうして主にしっかりと立っていてほしい。
4:2 エウオディアさん、そしてシンティケさん、あなたたちにお願いする。主にある者として、思いを一つにしてほしい。
4:3 そう、あなたにも頼みたい。忠実な仲間よ、この二人を助けてあげてほしい。彼女たちはクレメンスや、ほかの協力者たちと一緒に、福音を広めるためにわたしと共に力を尽くしてくれた。その人たちの名前は、いのちの書に記されている。
4:4 いつも主にあって喜んでいなさい。もう一度言う。喜んでいなさい。
4:5 あなたたちの思いやりのある態度を、すべての人に知ってもらいなさい。主が来られる時は近い。
4:6 何も心配しなくていい。どんなことでも、感謝しながら祈り、願い求めて、あなたたちの願いを神に伝えなさい。
4:7 そうすれば、人の思いをはるかに超えた神の平安が、キリスト・イエスにあって、あなたたちの心と考えを守ってくれる。
4:8 最後に、兄弟姉妹よ。真実なこと、尊いこと、正しいこと、清いこと、愛すべきこと、評判のよいこと、すべて優れたことや、ほめるべきことに、心を向けなさい。
4:9 わたしから学び、受け取り、聞き、また見てきたことを、そのまま実行しなさい。そうすれば、平安の神があなたたちと共にいてくださる。
4:10 わたしは主にあって、とても大きな喜びを感じた。ようやく今、あなたたちがわたしを気にかける心を、もう一度花開かせてくれたからだ。あなたたちはずっと気にかけてくれていたのに、それを表す機会がなかっただけなのだ。
4:11 足りないから言っているのではない。わたしは、どんな状況でも満ち足りていることを学んだからだ。
4:12 わたしは貧しく過ごす道も知っているし、豊かに過ごす道も知っている。満腹のときも空腹のときも、豊かなときも乏しいときも、どんな場合にも、どんなことにも対応できる秘訣を身につけている。
4:13 わたしを強くしてくれる方によって、わたしはどんなことにも立ち向かえる。
4:14 それでも、あなたたちがわたしの苦しみを分かち合ってくれたのは、本当にありがたいことだった。
4:15 フィリピの人たち、あなたたち自身も知っているとおり、福音を伝え始めたころ、わたしがマケドニアを出たとき、支援のやり取りでわたしと関わってくれた教会は、あなたたちのほかにひとつもなかった。
4:16 テサロニケにいたときも、あなたたちは一度ならず二度までも、わたしの必要なものを送ってくれた。
4:17 贈り物そのものを求めているのではない。わたしが求めているのは、あなたたちの帳簿に積み重なっていく実なのだ。
4:18 わたしは何もかも受け取って、満ち足りている。エパフロディトを通してあなたたちからの品を受け取り、必要な以上に十分だ。それは、よい香りのささげ物であり、神が喜んで受け入れてくださる供え物だ。
4:19 わたしの神は、キリスト・イエスにあって、栄光のうちにあるご自分の豊かさに従って、あなたたちに必要なものをすべて満たしてくださる。
4:20 わたしたちの父である神に、世々限りなく栄光がありますように。アーメン。
4:21 キリスト・イエスにある一人ひとりに、よろしく伝えてほしい。わたしと一緒にいる兄弟姉妹も、あなたたちによろしくと言っている。
4:22 ここにいるすべての人が、あなたたちによろしくと言っている。特に、皇帝の家に仕える人たちがそうだ。
4:23 主イエス・キリストの恵みが、あなたたちの霊とともにありますように。
コロサイ人への手紙
1:1 神の望みによってキリスト・イエスの使徒となったパウロと、兄弟テモテから、
1:2 コロサイにいる、神のものとされた人たち、キリストにつながって忠実に生きる兄弟姉妹へ。わたしたちの父である神からの恵みと平和が、あなたがたにありますように。
1:3 わたしたちは、あなたがたのために祈るとき、いつもわたしたちの主イエス・キリストの父である神に感謝している。
1:4 キリスト・イエスへのあなたがたの信仰と、神のものとされたすべての人たちに向けているあなたがたの愛のことを聞いたからだ。
1:5 その信仰と愛は、あなたがたのために天にたくわえられている希望から生まれている。あなたがたは、真理の言葉である福音、つまり良い知らせを通して、この希望のことを前々から聞いていた。
1:6 この福音は、あなたがたのところに届いている。そしてそれは、世界中で実を結び、広がっているのと同じように、あなたがたの間でもそうなっている。あなたがたが神の恵みを聞き、それがほんとうのことだと知った、あの日からずっとそうだ。
1:7 あなたがたは、この恵みを、わたしたちの愛する仲間エパフラスから学んだ。彼は、わたしたちのために働く、キリストの忠実な奉仕者だ。
1:8 その彼が、御霊によって生まれたあなたがたの愛のことを、わたしたちに知らせてくれたのだ。
1:9 だからわたしたちも、そのことを聞いたあの日から、あなたがたのために祈ることをやめずにいる。あなたがたが、あらゆる知恵と御霊による理解をもって、神の望みを深く知るようになってほしい、と願っているのだ。
1:10 そうして、主にふさわしく歩み、あらゆる面で主に喜ばれる者となってほしい。すべての良い行いのなかで実を結び、神を知ることにおいて成長していってほしい。
1:11 そして、神の栄光に満ちた力によって、あらゆる力で強くされ、どんなことも喜びをもって耐え、辛抱できるようになってほしい。
1:12 また、父である神に感謝できるようになってほしい。神は、光の中にある、神のものとされた人たちへの受け継ぐ分を、あなたがたが受けられるようにしてくださったのだ。
1:13 神は、わたしたちを闇の支配から救い出し、愛する御子が治める御国へと移してくださった。
1:14 この御子によって、わたしたちは自由にされ、罪を赦されている。
1:15 御子は、目に見えない神の姿そのものだ。すべての造られたものより先に生まれた方であり、そのすべての上に立つ方だ。
1:16 なぜなら、天にあるものも地にあるものも、目に見えるものも見えないものも、すべては御子によって造られたからだ。王座も、支配する力も、あらゆる権威も、すべては御子を通して、御子のために造られた。
1:17 御子はすべてのものより先に存在し、すべてのものは御子によって支えられ、成り立っている。
1:18 また、御子はその体である教会の頭だ。御子は初めであり、死者の中から最初に復活した方だ。こうして、御子はすべてにおいて第一の座を占めることになった。
1:19 神は、御子のうちにご自分のすべてを満ちあふれさせることをよしとされた。
1:20 そして、御子を通してすべてのものをご自分と和解させることをよしとされた。天にあるものも地にあるものも、御子が十字架で流した血によって平和をもたらし、和解させたのだ。
1:21 あなたがたも、かつては神から離れ、悪い行いによって心の中で神に敵対していた。
1:22 しかし今、神は御子の肉の体において、その死によってあなたがたを和解させてくださった。それは、あなたがたを聖なる、傷のない、非難されるところのない者として、御前に立たせるためだ。
1:23 ただし、あなたがたが信仰にしっかりと根ざし、土台の上に堅く立ち、聞いた福音の希望から動かされないでいるならばのことだ。この福音は、天の下のすべての造られたものに宣べ伝えられた。そして、わたしパウロは、この福音に仕える者となったのだ。
1:24 今、わたしはあなたがたのために苦しむことを喜んでいる。そして、キリストの体である教会のために、キリストの苦しみのまだ足りない分を、自分の身をもって補っているのだ。
1:25 わたしは、神から与えられた務めに従って、この教会に仕える者となった。それは、あなたがたのために、神の言葉を余すところなく伝えるためだ。
1:26 この言葉は、はるか昔から、すべての時代と世代を通じて隠されてきた奥義だ。でも今、それは神の聖なる人々に、はっきりと示された。
1:27 神は、この奥義がどれほど栄光に満ちた豊かなものかを、彼らに知らせようとされた。しかも、それはあらゆる民族に向けられている。その奥義とは、あなたがたの内におられるキリストであり、栄光の希望だ。
1:28 わたしたちは、このキリストを宣べ伝えている。すべての人に注意を与え、あらゆる知恵を尽くして、すべての人を教えている。それは、すべての人をキリストにあって成熟した者として、神の前に立たせるためだ。
1:29 この目標のために、わたしは労苦している。わたしの内に力強く働くキリストの力によって、全力で奮闘しているのだ。
2:1 あなたがたに知ってほしい。わたしが、あなたがたのため、またラオディキアの人々のため、さらにまだ直接顔を合わせたことのないすべての人のために、どれほど激しく戦っているかを。
2:2 それは、彼らの心が励まされ、愛によって一つに結び合わされるためだ。そして、豊かな確信に満ちた理解に達し、神の奥義であるキリストを深く知るためだ。
2:3 このキリストのうちに、知恵と知識のすべての宝が隠されている。
2:4 こう言うのは、だれかがもっともらしい言葉であなたがたをだますことのないようにするためだ。
2:5 わたしは体は離れていても、心はあなたがたと共にいる。そして、あなたがたが秩序正しく生き、キリストへの信仰にしっかりと立っているのを見て、喜んでいる。
2:6 だから、あなたがたはキリスト・イエスを主として受け入れたのだから、このキリストにあって歩み続けなさい。
2:7 キリストに根を下ろし、その上に築き上げられ、教えられたとおり信仰にしっかりと立ちなさい。そして、あふれるほど感謝しながら生きなさい。
2:8 気をつけなさい。むなしい哲学やまやかしで、あなたがたをとりこにする者がいないように。それは人間の言い伝えや、この世を支配する力に従ったもので、キリストに従うものではない。
2:9 なぜなら、キリストのうちにこそ、神の本質がすべて、体をもって満ちあふれているからだ。
2:10 そして、あなたがたはキリストにあって、満たされている。キリストは、すべての支配や権威の頭なのだ。
2:11 このキリストにあって、あなたがたは割礼を受けた。それは人の手によるものではなく、罪に支配された肉の体を脱ぎ捨てる、キリストによる割礼だ。
2:12 洗礼によって、あなたがたはキリストと共に葬られた。そして、キリストを死者の中からよみがえらせた神の力を信じる信仰によって、あなたがたもキリストと共によみがえらされたのだ。
2:13 あなたがたは、罪の中に死んでいて、肉の割礼も受けていなかった。しかし神は、そんなあなたがたを、キリストと共に生かしてくださった。わたしたちのすべての罪を赦して。
2:14 神は、わたしたちを責め立てる、規則の書かれた証文を消し去ってくださった。それはわたしたちに不利なものだったが、神はそれを取りのけ、十字架に釘づけにしてしまわれた。
2:15 そしてキリストは、もろもろの支配や権威から力を奪い取り、それらを公然とさらしものにして、十字架によって勝利の行進をされたのだ。
2:16 だから、食べ物や飲み物のことで、あるいは祭りや新月や安息日のことで、だれにもあなたがたを裁かせてはならない。
2:17 これらは、来たるべきものの影にすぎない。本体はキリストにある。
2:18 だれにも、あなたがたから賞を横取りさせてはならない。そういう者は、うわべの謙遜や天使礼拝にふけり、自分が見た幻にこだわり、肉の思いによってむやみに思い上がっている。
2:19 そういう者は、頭であるキリストとしっかり結びついていない。この頭から、体全体が節々と筋によって養われ、つなぎ合わされ、神が与える成長によって成長していくのだ。
2:20 あなたがたはキリストとともに死んで、この世を支配する力から解き放たれた。それなのに、どうしてまだこの世に生きているかのように、規則に縛られているのか。
2:21 「触れるな、味わうな、さわるな」というような規則にだ。
2:22 こうしたものはみな、使えばなくなってしまうものだ。しょせん人間の命令や教えにすぎない。
2:23 こうした教えは、勝手な信心や謙遜、体を痛めつけることで、いかにも知恵があるように見える。でも実際には、肉の欲望を抑える力など何もない。
3:1 だから、あなたがたはキリストとともによみがえらされたのだから、上にあるものを求めなさい。そこにはキリストがいて、神の右の座についている。
3:2 地上のものではなく、上にあるものに心を向けなさい。
3:3 あなたがたはすでに死んだのだ。そして、あなたがたのいのちは、キリストとともに神のうちに隠されている。
3:4 あなたがたのいのちであるキリストが現れるとき、あなたがたもキリストとともに、栄光のうちに現れる。
3:5 だから、あなたがたのうちにある地上的なものを、死んだものとしなさい。すなわち、みだらな行い、汚れ、情欲、悪い欲望、そして貪欲だ。貪欲は偶像礼拝にほかならない。
3:6 こうしたことのために、神に従おうとしない者たちの上に、神の怒りが下るのだ。
3:7 あなたがたも、以前はこうしたことの中で生きていて、そのように歩んでいた。
3:8 でも今は、あなたがたもそういうものをすべて捨て去りなさい。怒り、激しい怒り、悪意、人をののしる言葉、口から出る恥ずべき言葉を。
3:9 互いにうそをついてはいけない。あなたがたはもう、古い自分をその行いとともに脱ぎ捨てて、
3:10 新しい自分を身につけたのだ。この新しい自分は、造り主のかたちにならって新しくされ、造り主を本当に知るようになっていく。
3:11 そこにはもう、ギリシア人もユダヤ人もなく、割礼を受けた者も受けていない者もなく、未開の人もスキタイ人も、奴隷も自由な人もない。キリストがすべてであり、すべての人のうちにおられる。
3:12 だから、神に選ばれ、聖なる者とされ、愛されている者として、あなたがたは深い思いやり、親切、へりくだり、柔和、そして忍耐を身につけなさい。
3:13 互いに我慢し合い、だれかに対して不満があっても、互いに赦し合いなさい。主があなたがたを赦してくださったように、あなたがたもそうしなさい。
3:14 そして、これらすべての上に、愛を身につけなさい。愛は、すべてを一つに結びつけて完成させるものだ。
3:15 キリストがくださる平和が、あなたがたの心を支配するようにしなさい。あなたがたは、一つのからだとして、この平和へと招かれたのだ。そして、感謝する者になりなさい。
3:16 キリストの言葉を、あなたがたのうちに豊かに住まわせなさい。あらゆる知恵をもって互いに教え、注意し合い、詩と賛美と霊的な歌をもって、感謝しながら心から神に向かって歌いなさい。
3:17 そして、何をするにも、言葉であれ行いであれ、すべてを主イエスの名によって行い、イエスを通して父である神に感謝しなさい。
3:18 妻たちよ、夫に従いなさい。それが主にある者としてふさわしいことだ。
3:19 夫たちよ、妻を愛しなさい。妻に対してとげとげしくなってはいけない。
3:20 子どもたちよ、どんなことでも親の言うことを聞きなさい。それが主に喜ばれることだからだ。
3:21 父親たちよ、子どもをいらだたせてはいけない。子どもが気力を失ってしまうといけないからだ。
3:22 奴隷たちよ、どんなことでもこの世の主人に従いなさい。人に気に入られようとして見ているときだけ働くのではなく、まごころをこめて、主を恐れながら働きなさい。
3:23 何をするにも、人に対してではなく主に対してするように、心をこめて働きなさい。
3:24 あなたがたは知っているはずだ。受け継ぐべき財産を、主から報いとして受け取ることを。あなたがたが仕えているのは、主キリストなのだ。
3:25 不正を行う者は、自分がした不正の報いを受ける。そこにえこひいきはない。
4:1 主人たちよ、奴隷たちに正しく公平に接しなさい。あなたがたにも、天に主人がいることを知っているはずだ。
4:2 祈り続けなさい。感謝しながら、目を覚まして祈りなさい。
4:3 わたしたちのためにも祈ってほしい。神がわたしたちに言葉を語る扉を開いてくださり、キリストの奥義を語れるように、と。わたしはこの奥義のために、今こうしてつながれている。
4:4 そして、語るべきことをはっきりと語れるように、祈ってほしい。
4:5 教会の外の人たちに対しては、知恵をもってふるまいなさい。与えられた機会をむだにしてはいけない。
4:6 あなたがたの言葉は、いつも恵みにあふれ、塩で味つけされたものでありなさい。そうすれば、一人ひとりにどう答えたらよいかがわかる。
4:7 わたしの様子については、ティキコがすべて知らせてくれる。彼は愛する兄弟であり、主にあって忠実に仕え、共に働く仲間だ。
4:8 彼をあなたがたのところに送るのは、まさにこのためだ。わたしたちの様子を知ってもらい、あなたがたの心を励ましてもらうためだ。
4:9 彼といっしょに、忠実で愛する兄弟オネシモも行く。彼はあなたがたの仲間だ。二人が、こちらの様子をすべて知らせてくれる。
4:10 わたしといっしょに捕らわれているアリスタルコが、あなたがたによろしくと言っている。バルナバのいとこマルコもだ。マルコについては、もし彼がそちらに行ったら受け入れるようにと、すでに伝えてあるとおりだ。
4:11 ユストと呼ばれるイエスもよろしくと言っている。ユダヤ人の中で、神の国のためにいっしょに働いてくれるのは、この人たちだけだ。彼らはわたしの大きな支えになってくれた。
4:12 あなたがたの仲間で、キリスト・イエスに仕えるエパフラスも、よろしくと言っている。彼はいつも、あなたがたのために祈りのなかで力を尽くしている。あなたがたが成熟した者として堅く立ち、神が望むことすべてを確信できるようにと祈っているのだ。
4:13 わたしは彼のために証言する。彼はあなたがたのために、またラオデキアとヒエラポリスの人たちのために、本当に苦労している。
4:14 愛する医者ルカと、デマスも、あなたがたによろしくと言っている。
4:15 ラオデキアの兄弟姉妹に、またニンファと、その家に集まる教会の人たちに、よろしく伝えてほしい。
4:16 この手紙をあなたがたのところで読み終えたら、ラオデキアの教会でも読んでもらいなさい。そして、ラオデキアから届く手紙も、あなたがたも読みなさい。
4:17 そしてアルキポにこう言ってほしい。「主から任された務めを、しっかり果たすように気をつけなさい。」
4:18 このあいさつは、わたしパウロが自分の手で書いている。わたしが捕らわれていることを、忘れないでほしい。恵みが、あなたがたとともにありますように。
テサロニケ人への第一の手紙
1:1 パウロとシルワノ、そしてテモテから。父である神と主イエス・キリストのもとにあるテサロニケの教会へ。あなたがたに恵みと平安がありますように。
1:2 わたしたちは、いつもあなたがた全員のことを神に感謝している。祈るときにはいつも、あなたがたのことを心にとめている。
1:3 わたしたちの父である神の前で、あなたがたのことを思い起こしているのだ。信仰から生まれる行い、愛から生まれる労苦、そしてわたしたちの主イエス・キリストに望みを置いて耐え忍ぶ姿を。
1:4 神に愛されている兄弟姉妹よ。わたしたちは、あなたがたが神に選ばれていることを知っている。
1:5 というのも、わたしたちが伝えた福音は、ただの言葉としてあなたがたに届いたのではない。力とともに、聖霊とともに、そして深い確信とともに届いたのだ。わたしたちがあなたがたのために、あなたがたの間でどんなふうにふるまったかは、あなたがた自身が知っている。
1:6 そしてあなたがたは、わたしたちに、また主にならう者となった。激しい苦しみのただ中でも、聖霊が与える喜びとともに、この言葉を受け入れたからだ。
1:7 こうしてあなたがたは、マケドニアとアカイアにいるすべての信じる人たちの手本となった。
1:8 あなたがたのところから、主の言葉が響き渡っていったのだ。それはマケドニアとアカイアだけではない。あなたがたの神への信仰は、あらゆる場所に広まっていった。だから、わたしたちがもう何かを語る必要もないほどだ。
1:9 人々のほうから、わたしたちのことを語ってくれている。わたしたちがあなたがたのところでどんなふうに迎え入れられたか、そしてあなたがたがどのように偶像から離れて神に立ち返り、生きたまことの神に仕えるようになったかを。
1:10 さらに、神の子が天から来られるのを待ち望むようになったかを、人々は語っている。神がその子を死者の中からよみがえらせたのだ。それがイエスであり、来ようとしている怒りからわたしたちを救い出してくださる方なのだ。
2:1 兄弟姉妹のみなさん、あなたたち自身がよく知っているとおり、わたしたちがあなたたちのところへ行ったことは、無駄ではなかった。
2:2 知ってのとおり、わたしたちはその前にフィリピで苦しみを受け、ひどい扱いをされた。それでも神に支えられ、激しい反対の中でも勇気を出して、神の福音をあなたたちに語った。
2:3 わたしたちの語りかけは、間違った教えから出たものでも、汚れた動機からでも、人をだますためでもない。
2:4 むしろ、わたしたちは神に認められ、福音を任せてもらった者として語っている。人に気に入られようとするのではなく、わたしたちの心を見抜く神に喜ばれようとして語っているのだ。
2:5 あなたたちも知っているとおり、わたしたちは一度も口先だけのお世辞を言ったことはないし、欲を隠して近づいたこともない。神が証人だ。
2:6 人からほめられることも求めなかった。あなたたちからも、ほかのだれからもだ。
2:7 キリストの使徒として、あなたたちに負担をかけることもできた。それでもわたしたちは、あなたたちの間でやさしくふるまった。母親が自分の子を大切に育てるように。
2:8 こうしてわたしたちは、あなたたちをいとおしく思い、神の福音だけでなく、自分の命さえ喜んで分け与えたいと思った。あなたたちが、それほど愛おしい存在になっていたからだ。
2:9 兄弟姉妹のみなさん、あなたたちはわたしたちの労苦を覚えているはずだ。だれにも負担をかけまいと、昼も夜も働きながら、神の福音をあなたたちに伝えた。
2:10 わたしたちが、信じているあなたたちに対して、どれほど清く、正しく、非のない態度でふるまったか、あなたたち自身が証人であり、神も証人だ。
2:11 知ってのとおり、わたしたちは父親が自分の子に接するように、あなたたち一人ひとりに接した。
2:12 あなたたちを励まし、慰め、強くうながしたのだ。それは、あなたたちを御国と栄光に招いてくださる神にふさわしく歩んでほしいからだ。
2:13 だから、わたしたちも絶えず神に感謝している。あなたたちは、わたしたちから神の言葉を聞いて受け取ったとき、それを人間の言葉としてではなく、本当のとおり神の言葉として受け入れてくれた。この言葉は、信じているあなたたちの中で今も働いているのだ。
2:14 兄弟姉妹よ、あなたたちは、ユダヤにある、キリスト・イエスにつながる神の教会にならう者となった。あの人たちがユダヤ人から苦しめられたのと同じように、あなたたちも自分の同胞から同じ苦しみを受けたからだ。
2:15 そのユダヤ人たちは、主イエスと預言者たちを殺し、わたしたちを追い出した。神に喜ばれず、すべての人に敵対している。
2:16 そして、異邦人が救われるようにとわたしたちが語るのを、じゃまし続けている。こうして、彼らはいつも自分の罪を積み重ねているのだ。しかし、神の怒りはついに彼らの上に及んだ。
2:17 兄弟姉妹よ、わたしたちは少しの間あなたたちと引き離された。離れていたのは姿だけで、心は離れていない。それでいっそう、強く望んで、あなたたちの顔をひと目見たいと願ってきた。
2:18 だから、あなたたちのところへ行こうとした。このわたし、パウロは何度も行こうとした。でも、サタンがそれをじゃました。
2:19 わたしたちの主イエスが来られるとき、その前で、わたしたちの希望、喜び、誇りの冠となるのは、いったいだれだろうか。ほかでもない、あなたたちではないか。
2:20 そう、あなたたちこそ、わたしたちの栄光であり、喜びなのだ。
3:1 だからわたしたちは、もうこれ以上がまんできなくなった。それで、自分たちだけがアテネに残ることにしたのだ。
3:2 そして、わたしたちの兄弟であり、キリストの福音を伝える神の協力者であるテモテを、あなたがたのところへ送った。あなたがたの信仰を強くし、励ますためだ。
3:3 こうした苦しみのなかで、だれも動揺しないようにと思ったからだ。わたしたちがこういう目にあうように定められていることは、あなたがた自身がよく知っている。
3:4 あなたがたと一緒にいたとき、わたしたちはこれから苦しみにあうと前もって言っておいた。そして、そのとおりになったことも、あなたがたは知っている。
3:5 だからわたしも、もうがまんできなくなって、あなたがたの信仰がどうなっているかを知るために、テモテを送った。もしかしたら、あの誘惑する者があなたがたを誘惑し、わたしたちの苦労がむだになってしまったのではないかと心配したからだ。
3:6 ところが今、テモテがあなたがたのところから帰ってきて、あなたがたの信仰と愛について、うれしい知らせを伝えてくれた。あなたがたがいつもわたしたちのことをなつかしく思い、わたしたちがあなたがたに会いたいと願っているのと同じように、あなたがたも会いたいと思ってくれている、と。
3:7 兄弟姉妹よ、だからわたしたちは、いろいろな困難と苦しみのなかにあっても、あなたがたの信仰によって励まされた。
3:8 あなたがたが主にあってしっかり立っているなら、わたしたちは今、生き生きとしていられるのだ。
3:9 あなたがたのおかげで、わたしたちの神の前で、わたしたちは大きな喜びに満たされている。その喜びのために、いったいどんな感謝を神にささげたらいいのだろう。
3:10 わたしたちは昼も夜も、あなたがたの顔を見て、あなたがたの信仰に足りないところを補うことができるようにと、心から祈り続けている。
3:11 どうか、わたしたちの父である神ご自身と、わたしたちの主イエスが、あなたがたのところへ行く道を開いてくださるように。
3:12 そして、わたしたちがあなたがたを愛しているのと同じように、あなたがたも、たがいに、そしてすべての人に対する愛を、主がますます豊かにしてくださるように。
3:13 こうして、わたしたちの主イエスが、ご自分に属するすべての聖なる者たちとともに来られるとき、あなたがたの心は、わたしたちの父である神の前で、清く、非の打ちどころのないものとして、しっかりと支えられるのだ。
4:1 最後に、兄弟姉妹たち。わたしたちは主イエスにあって、あなたがたにお願いし、勧める。どのように歩んで神に喜ばれるべきかを、あなたがたはわたしたちから受け取り、実際にそのとおり歩んでいる。だから、それをますます深めていってほしい。
4:2 わたしたちが主イエスによってどんな指示を与えたか、あなたがたは知っているのだから。
4:3 神が望んでおられるのは、あなたがたが聖なるものとされることだ。つまり、性的な不品行から離れることだ。
4:4 あなたがた一人ひとりが、自分の体を、聖さと敬いをもって保つすべを身につけ、
4:5 神を知らない異邦人のように、欲望のとりこになってはならない。
4:6 また、このことで、だれも一線を越えて、自分の兄弟をだましてはならない。主は、こうしたことすべてに対して罰を下す方だからだ。このことは、前もってあなたがたに告げ、はっきりと警告しておいたとおりだ。
4:7 神がわたしたちを招いたのは、汚れた生き方のためではなく、聖なる生き方のためなのだ。
4:8 だから、これを拒む者は、人を拒むのではなく、あなたがたにご自分の聖なる霊を与えてくださる神を拒んでいるのだ。
4:9 兄弟姉妹としての愛については、あなたがたに書き送る必要はない。あなたがた自身、たがいに愛し合うことを、神から教えられているからだ。
4:10 実際あなたがたは、マケドニア全土のすべての兄弟姉妹に対して、そのとおりにしている。それでも、兄弟姉妹たち、あなたがたにお願いする。それをますます深めていってほしい。
4:11 そして、落ち着いた生活を送り、自分のことに専念し、自分の手で働くことを心がけてほしい。これは、わたしたちがあなたがたに命じておいたことだ。
4:12 そうすれば、外の人たちに対してもきちんとした生き方ができ、だれにも頼らずにすむ。
4:13 兄弟姉妹たち、すでに眠りについた人たちについて、あなたがたに知っておいてほしいことがある。希望を持たないほかの人たちのように、あなたがたが悲しまないためだ。
4:14 わたしたちは、イエスが死んで、そして復活したと信じている。それなら同じように、神はイエスを信じて眠りについた人たちを、イエスといっしょに連れて来てくださる。
4:15 わたしたちは、主のことばに基づいてあなたがたにこう伝える。主が来られるときまで生き残っているわたしたちが、すでに眠りについた人たちより先になることは決してない。
4:16 主ご自身が、号令とともに、天使長の声とともに、神のラッパの響きとともに、天から降りて来られる。すると、キリストを信じて死んだ人たちが、まず最初によみがえる。
4:17 それから、生き残っているわたしたちが、その人たちといっしょに雲の中へと引き上げられる。そして空中で主にお会いする。こうして、わたしたちはいつまでも主とともにいることになる。
4:18 だから、このことばで互いに励まし合ってほしい。
5:1 兄弟姉妹たち、その時期や時について、あなたがたに書き送る必要はない。
5:2 主の日が、夜中に来る泥棒のようにやって来ることを、あなたがた自身がよく知っているからだ。
5:3 人々が「平和だ、安全だ」と言っているとき、まさにそのとき、突然の破滅が彼らに襲いかかる。それは、身ごもった女性に陣痛が来るのと同じだ。彼らは決して逃げられない。
5:4 でも、兄弟姉妹たち、あなたがたは暗やみの中にいるのではない。だから、その日が泥棒のようにあなたがたを襲うことはない。
5:5 あなたがたはみな、光の子であり、昼の子だからだ。わたしたちは夜のものでも、暗やみのものでもない。
5:6 だから、ほかの人たちのように眠っていないで、目を覚まして、しらふでいよう。
5:7 眠る人は夜に眠り、酔う人は夜に酔う。
5:8 でも、わたしたちは昼のものだ。だから、しらふでいよう。信仰と愛を胸当てとして身につけ、救われる望みをかぶととしてかぶって。
5:9 神はわたしたちを、怒りにあわせるためではなく、わたしたちの主イエス・キリストによって救いを受けさせるために定めてくださったのだから。
5:10 主は、わたしたちのために死んでくださった。それは、目を覚ましていても眠っていても、わたしたちが主とともに生きるためだ。
5:11 だから、あなたがたが今しているように、互いに励まし合い、互いを築き上げなさい。
5:12 兄弟姉妹たち、お願いがある。あなたがたの間で苦労して働き、主にあってあなたがたを導き、注意してくれる人たちを、大切にしてほしい。
5:13 その働きのために、その人たちを愛をもって心から尊敬してほしい。そして、互いに仲良く、平和に過ごしなさい。
5:14 兄弟姉妹たち、あなたがたにお願いする。なまけている人には注意し、気落ちしている人を励まし、弱い人を支え、すべての人に対して忍耐強くありなさい。
5:15 だれも、悪に悪で仕返しをしないように気をつけなさい。むしろ、いつも互いに、そしてすべての人に、良いことをするよう努めなさい。
5:16 いつも喜んでいなさい。
5:17 絶えず祈りなさい。
5:18 どんなことにも感謝しなさい。これこそ、キリスト・イエスにあって神があなたがたに望んでおられることだ。
5:19 御霊の火を消してはいけない。
5:20 預言のことばを軽く見てはいけない。
5:21 すべてのことを見きわめて、良いものはしっかりと持っていなさい。
5:22 どんな種類の悪からも遠ざかっていなさい。
5:23 平和の神ご自身が、あなたがたを隅々まできよめてくださいますように。そして、わたしたちの主イエス・キリストが来られるとき、あなたがたの霊も、心も、体も、まるごと責められるところのない者として守られていますように。
5:24 あなたがたを招いてくださる方は真実な方だ。だから、必ずそうしてくださる。
5:25 兄弟姉妹よ、わたしたちのために祈ってほしい。
5:26 きよい口づけをもって、すべての仲間にあいさつをしなさい。
5:27 主にかけてあなたがたに強くお願いする。この手紙を、すべての兄弟姉妹に読んで聞かせてほしい。
5:28 わたしたちの主イエス・キリストの恵みが、あなたがたとともにありますように。
テサロニケ人への第二の手紙
1:1 パウロとシルワノ、そしてテモテから。わたしたちの父である神と主イエス・キリストのうちにある、テサロニケの教会へ。
1:2 わたしたちの父である神と主イエス・キリストから、恵みと平安があなたがたにありますように。
1:3 兄弟姉妹のみなさん、わたしたちはいつもあなたがたのことで神に感謝しなければなりません。そうするのが当然です。あなたがたの信仰はぐんぐん成長し、一人ひとりが互いに注ぐ愛もあふれているからです。
1:4 だからわたしたちは、神のいくつもの教会で、あなたがたのことを誇りに思って語っています。あなたがたが受けているすべての迫害と苦しみの中で示している、その忍耐と信仰を。
1:5 それは、神のさばきが正しいことのあらわれです。あなたがたはこの神の御国のために苦しんでいるのであり、その御国にふさわしい者と認められるのです。
1:6 神は正しい方です。だから、あなたがたを苦しめる者たちには苦しみで報い、
1:7 苦しめられているあなたがたには、わたしたちとともに安らぎを与えてくださいます。それは、主イエスが力ある天使たちを従えて、天から姿を現すときのことです。
1:8 主は燃える炎の中に現れ、神を知ろうとしない者たち、わたしたちの主イエスの福音に従おうとしない者たちに、罰をお与えになります。
1:9 その人たちは、主の御前とその力ある栄光から締め出され、永遠の滅びという罰を受けることになります。
1:10 その日、主はご自分のものとされた人々のうちに栄光を現し、信じたすべての人々の間で驚きをもって仰がれるために来られます。あなたがたも、わたしたちの証しを信じたのですから、その中にいるのです。
1:11 だからわたしたちは、いつもあなたがたのために祈っています。わたしたちの神が、あなたがたをその招きにふさわしい者としてくださるように。そして、善を求めるすべての思いと、信仰から出る働きを、力によって満たしてくださるように。
1:12 それは、わたしたちの神と主イエス・キリストの恵みによって、わたしたちの主イエスの名があなたがたのうちに栄光を受け、あなたがたも主のうちに栄光を受けるためです。
2:1 さて、兄弟姉妹たち。わたしたちの主イエス・キリストが再び来られること、そしてわたしたちがそのもとに集められることについて、お願いがある。
2:2 「主の日はもう来てしまった」という話を聞いても、簡単に心を揺さぶられたり、動揺したりしないでほしい。それが預言によるものでも、だれかの言葉でも、わたしたちが書いたとされる手紙によるものでも、惑わされてはいけない。
2:3 どんな形であれ、だれにもだまされないように。その日が来る前に、まず神に背く動きが起こり、あの滅びの子、無法者が姿を現すからだ。
2:4 この者は、神と呼ばれるものや人が拝むものすべてに反抗し、その上に自分を高くする。ついには神の神殿に座り込み、自分こそ神だと見せつけるのだ。
2:5 わたしがまだあなたがたと一緒にいたころ、こういうことを話していたのを覚えていないだろうか。
2:6 そして今、彼を押しとどめているものが何かを、あなたがたは知っている。定められた時に、彼が姿を現すためだ。
2:7 無法の力は、すでにひそかに働き始めている。ただ、今それを押しとどめている者が取り除かれるまでのことだ。
2:8 その時、あの無法者が姿を現す。しかし主イエスは、その口から出る息でこの者を滅ぼし、来られるときの輝きで、跡形もなく消し去ってしまう。
2:9 この無法者が現れるとき、その背後にはサタンの働きがある。あらゆる力と、しるしと、偽りの不思議なわざをともなって現れる。
2:10 そして、滅びていく人々を、悪のあらゆる偽りで惑わす。彼らが滅びるのは、自分を救ってくれるはずの真理を愛そうとせず、受け入れなかったからだ。
2:11 だから神は、彼らに惑わす力を送り、偽りを信じ込ませる。
2:12 真理を信じず、悪を喜んだ者すべてが、こうしてさばきを受けることになるのだ。
2:13 でも、わたしたちは、主に愛されているあなたたちのことで、いつも神に感謝せずにはいられない。神があなたたちを、最初の実りとして選び、救いへと導いてくれたからだ。その救いは、御霊によって清められ、真理を信じることで実現する。
2:14 神は、わたしたちが伝えた福音を通して、あなたたちをこの救いへと招いてくれた。それは、わたしたちの主イエス・キリストの栄光を、あなたたちが受け取るためだ。
2:15 だから兄弟姉妹よ、しっかり立っていてほしい。そして、わたしたちが口で伝え、手紙で書いて教えたことを、そのまま守り続けてほしい。
2:16 わたしたちの主イエス・キリストご自身と、わたしたちの父である神が、あなたたちを支えてくれますように。神はわたしたちを愛し、恵みによって、尽きることのない励ましと確かな希望を与えてくれた。
2:17 どうか、あなたたちの心を励まし、あらゆる良い行いと良い言葉において、あなたたちを強くしてくれますように。
3:1 最後に、兄弟姉妹よ、わたしたちのために祈ってほしい。あなたたちのところでそうだったように、主の言葉が速く広がり、栄光を受けますように。
3:2 そして、道を外れた悪い人たちから、わたしたちが救い出されますように。だれもが信仰を持っているわけではないからだ。
3:3 でも、主は真実な方だ。主はあなたたちを強くし、悪い者から守ってくれる。
3:4 わたしたちが命じることを、あなたたちは今も行っているし、これからも行ってくれる。わたしたちは主にあって、あなたたちをそう信じている。
3:5 どうか主が、あなたたちの心を、神の愛へ、そしてキリストの忍耐へと導いてくれますように。
3:6 兄弟姉妹よ、わたしたちの主イエス・キリストの名によって、あなたたちに命じる。だらしない生き方をして、わたしたちから受け継いだ教えに従わない仲間からは、距離を置きなさい。
3:7 わたしたちにならうには、どうすればいいか。それはあなたたち自身がよく知っている。わたしたちは、あなたたちと一緒にいたとき、だらしない生き方はしなかった。
3:8 だれかの食べ物をただでもらうこともなかった。あなたたちのだれにも負担をかけないように、昼も夜も、苦労して働きづめだった。
3:9 もちろん、あなたたちに養ってもらう権利がなかったわけではない。ただ、あなたたちがならうべき手本を、自分たちで示したかったのだ。
3:10 あなたたちと一緒にいたときも、わたしたちはこう命じていた。「働きたくない者は、食べてもいけない」と。
3:11 というのも、あなたたちの中に、だらしない生き方をしている人がいると聞いているからだ。何も仕事をせず、よけいなことにばかり首をつっこんでいるという。
3:12 そういう人たちに、わたしたちは主イエス・キリストにあって命じ、また強く勧める。落ち着いて働き、自分で稼いだものを食べなさい。
3:13 兄弟姉妹よ、あなたたちは、正しいことをするのに疲れてしまってはいけない。
3:14 もし、この手紙でわたしたちが言うことに従わない人がいたら、その人をよく心に留めておきなさい。その人が恥じ入るように、付き合うのをやめなさい。
3:15 でも、その人を敵のように思ってはいけない。仲間として、諭してあげなさい。
3:16 どうか、平和の源である主ご自身が、いつでも、どんなときでも、あなたたちに平和を与えてくれますように。主が、あなたたち全員とともにいてくれますように。
3:17 この挨拶は、わたしパウロが自分の手で書いている。これがどの手紙にも共通するしるしで、わたしはいつもこう書くのだ。
3:18 わたしたちの主イエス・キリストの恵みが、あなたたち全員とともにありますように。
テモテへの第一の手紙
1:1 わたしパウロは、キリスト・イエスの使徒です。これは、わたしたちの救い主である神と、わたしたちの希望であるキリスト・イエスの命令によるものです。
1:2 信仰による本当の子であるテモテへ。父である神と、わたしたちの主キリスト・イエスからの恵みと、あわれみと、平安が、あなたにありますように。
1:3 マケドニアへ向かうとき、わたしはあなたに、エフェソにとどまるようにと頼みました。それは、ちがう教えを説く人たちがいたので、そんなことはやめるように命じてほしかったからです。
1:4 作り話や、どこまでも続く系図に夢中にならないよう注意してください。そういうものは、議論を引き起こすだけで、信仰によって進められる神の計画には役立たないのです。
1:5 この命令が目指すのは、愛です。きよい心と、やましさのない良心と、うわべだけでない信仰から生まれる愛です。
1:6 ところが、ある人たちはこれを見失い、わき道にそれて、中身のない議論に走ってしまいました。
1:7 彼らは律法の教師になりたがっています。でも、自分が何を言っているのか、何を自信たっぷりに主張しているのか、自分でも分かっていないのです。
1:8 わたしたちは知っています。律法は、正しく用いるならば、よいものです。
1:9 つまり、こういうことです。律法は、正しい人のために定められているのではありません。それは、法を無視する人、従おうとしない人、神を敬わない人、罪を犯す人、聖なるものを大切にしない人、俗っぽい人、父を殺す人、母を殺す人、人を殺す人、
1:10 みだらなことをする人、同性と関係を持つ人、人を奴隷として売り買いする人、うそをつく人、偽って誓う人、そのほか健全な教えに反するすべての人のために定められているのです。
1:11 この教えは、祝福に満ちた神の栄光を告げる福音にかなっています。そして、わたしはその福音をゆだねられたのです。
1:12 わたしを強くしてくださった、わたしたちの主キリスト・イエスに感謝しています。この方はわたしを信頼できる者と見て、務めに就かせてくださったからです。
1:13 わたしは以前、神を口ぎたなくののしり、信じる人たちを迫害し、乱暴を働く者でした。でも、あわれみを受けたのです。それは、まだ信じておらず、何も分からずにしたことだったからです。
1:14 そして、わたしたちの主の恵みは、キリスト・イエスにある信仰と愛とともに、あふれるほど豊かに注がれました。
1:15 「キリスト・イエスは、罪人を救うためにこの世に来られた」――この言葉は本当で、だれもが受け入れるにふさわしいものです。わたしは、その罪人の中で一番の者です。
1:16 それでも、わたしはあわれみを受けました。それは、まずこのわたしに対して、キリスト・イエスがどこまでも忍耐してくださることを示すためです。こうしてわたしは、これからこの方を信じて永遠のいのちを受ける人たちの、手本となったのです。
1:17 永遠の王であり、朽ちることなく、目に見えない、ただひとりの神に、誉れと栄光がいつまでもありますように。アーメン。
1:18 わたしの子テモテよ。あなたについて前もって語られた預言のとおり、この命令をあなたにゆだねます。その預言を支えとして、りっぱに戦い抜いてほしいのです。
1:19 信仰と正しい良心を持ち続けてください。中には、この良心を捨ててしまい、信仰を難破させた人たちがいます。
1:20 その中には、ヒメナオとアレクサンドロがいます。わたしは彼らをサタンに引き渡しました。神を口ぎたなくののしってはいけないと、思い知らせるためです。
2:1 そこで、まずお願いしたいことがある。すべての人のために、願い、祈り、とりなし、感謝をささげてほしい。
2:2 王たちのためにも、責任ある立場にいるすべての人のためにも祈ってほしい。わたしたちが、神を敬い、まじめに、穏やかで落ち着いた毎日を送れるようにするためだ。
2:3 これは良いことで、わたしたちの救い主である神に喜ばれることだ。
2:4 神は、すべての人が救われて、真理を知るようになることを願っておられる。
2:5 神はただひとりだ。そして、神と人との間を仲立ちする方もただひとり、人であるキリスト・イエスだ。
2:6 この方は、すべての人のための身代金として、自分自身を差し出してくださった。定められた時にそれが証しされたのだ。
2:7 わたしは、そのことを伝える者、また使徒として立てられた。これは本当のことで、うそは言っていない。わたしは、信仰と真理を、あらゆる国の人々に教える者なのだ。
2:8 だから、わたしはこう望んでいる。男たちはどこででも、怒りや言い争いを捨て、清い手を上げて祈ってほしい。
2:9 同じように女たちにも望む。慎み深く、控えめな態度で、きちんとした身なりをしてほしい。編んだ髪や金、真珠や高価な服で飾り立てるのではなく、
2:10 神を敬うと言っている女性にふさわしく、良い行いで自分を飾ってほしい。
2:11 女性は、静かに、素直に従う心で学びなさい。
2:12 女性が教えたり、男性の上に立って支配したりすることを、わたしは許さない。むしろ、静かにしていてほしい。
2:13 というのも、最初に造られたのはアダムで、それからエバだった。
2:14 そして、だまされたのはアダムではない。だまされて罪を犯したのは女性のほうだった。
2:15 でも女性は、子を産むことを通して救われる。信仰と愛と清さを保ち、慎み深く生きていくなら。
3:1 これは信頼できる言葉だ。指導者の役目を求める人がいるなら、その人はすばらしい働きを望んでいるのだ。
3:2 だから、指導者はこういう人でなければならない。人から非難されるところがなく、一人の妻の夫であり、自分をわきまえ、慎み深く、礼儀正しく、人をよくもてなし、教えることができる人。
3:3 酒におぼれず、乱暴でなく、むしろ穏やかで、争いを好まず、お金に執着しない人。
3:4 自分の家庭をきちんと治め、子どもたちを心から敬う態度でしっかり育てている人。
3:5 自分の家庭を治めることも知らない人が、どうして神の教会の世話をできるだろうか。
3:6 また、信仰に入ったばかりの人でもいけない。高慢になって、悪魔と同じ裁きを受けてしまわないためだ。
3:7 また、教会の外の人たちからも良い評判を得ている人でなければならない。そうでないと、悪口を言われ、悪魔の罠にはまってしまうからだ。
3:8 同じように、奉仕の働きを担う人たちも、まじめで信頼できる人でなければならない。二枚舌を使わず、お酒におぼれず、汚いお金もうけに走らない人だ。
3:9 きよい良心をもって、信仰の奥深い真理をしっかり守っている人だ。
3:10 この人たちも、まず見極められてから奉仕に就くべきだ。責められるところがないとわかってからだ。
3:11 同じように、女性たちも、まじめで、人をおとしめるうわさを流さず、何事にも節度があり、すべてにおいて忠実な人でなければならない。
3:12 奉仕を担う人は、一人の妻の夫であり、子どもたちや自分の家庭をきちんと導いている人であるべきだ。
3:13 よく奉仕した人は、自分にとって良い立場を得る。そして、キリスト・イエスへの信仰について、堂々と語れる大きな確信を持つようになる。
3:14 わたしは近いうちにあなたのところへ行けると思っているが、こうして書き送っている。
3:15 もし行くのが遅れても、神の家でどうふるまうべきかをあなたに知っておいてほしいからだ。この家とは、生きておられる神の教会であり、真理を支える柱であり土台なのだ。
3:16 だれもが認めるように、わたしたちの信仰が明かす真理は本当に偉大だ。キリストは肉体をもって現れ、霊によって義と認められ、天使たちに見られ、いろいろな国の人々に宣べ伝えられ、世界中で信じられ、栄光のうちに天に上げられた。
4:1 でも、霊ははっきりと言っている。終わりの時代が近づくと、信仰から離れていく人たちが出てくる。人をだます霊や、悪霊の教えに心を引き寄せられてしまうのだ。
4:2 そういう教えは、嘘つきな者たちの見せかけからやってくる。彼らの良心は、焼きごてを当てられたように何も感じなくなっている。
4:3 彼らは結婚を禁じ、ある種の食べ物を食べてはいけないと命じる。でも、その食べ物は、信じて真理を知っている人たちが感謝して受け取るようにと、神が造ったものなのだ。
4:4 神が造ったものはどれも良いもので、感謝して受け取るなら、捨てるべきものは何一つない。
4:5 神の言葉と祈りによって、それは聖なるものとされるからだ。
4:6 このことを兄弟姉妹に教えてあげれば、あなたはキリスト・イエスの良い奉仕者になれる。あなた自身が信仰の言葉と、これまで学んできた良い教えによって養われていくのだ。
4:7 くだらない作り話や、迷信じみた話は相手にしないように。それよりも、神を敬う生き方ができるよう、自分を鍛えなさい。
4:8 体を鍛えることも少しは役に立つ。でも、神を敬う生き方はすべてに役立つ。それは、今の命と、これから来る命の両方を約束してくれるからだ。
4:9 この言葉は信頼できるもので、だれもが受け入れるに値する。
4:10 わたしたちが苦労し、非難されながらも働いているのは、このためだ。わたしたちは、生きておられる神に望みを置いている。この神は、すべての人の、とりわけ信じる人たちの救い主なのだ。
4:11 これらのことを命じ、教えなさい。
4:12 あなたが若いからといって、だれにも見下させてはいけない。むしろ、言葉でも、ふるまいでも、愛でも、信仰でも、清さでも、信じる人たちの手本になりなさい。
4:13 わたしが行くまで、聖書を朗読して聞かせること、励ますこと、教えることに力を注ぎなさい。
4:14 あなたの内にある賜物を、おろそかにしてはいけない。それは、長老たちがあなたに手を置いたとき、預言の言葉を通してあなたに与えられたものだ。
4:15 これらのことに励み、それに打ち込みなさい。あなたの成長が、みんなにはっきりと分かるようになるためだ。
4:16 自分自身にも、教えることにも、よく気をつけなさい。ずっとそれを続けなさい。そうすれば、あなたは自分自身も、あなたの話を聞く人たちも救うことになる。
5:1 年配の男性を厳しく責めてはいけない。むしろ、父親に対するように優しく話しかけなさい。若い男性には、兄弟に対するように接しなさい。
5:2 年配の女性には母親に対するように、若い女性には姉妹に対するように、まったく清い心で接しなさい。
5:3 本当に身寄りのない未亡人を、大切にしなさい。
5:4 でも、未亡人に子や孫がいるなら、その人たちがまず、自分の家族を敬うことを学ぶべきだ。そして、育ててくれた親や祖父母に恩を返すべきだ。それこそが、神に喜ばれることなのだ。
5:5 本当に身寄りがなく、ひとりぼっちになった未亡人は、神に望みを置いている。そして、昼も夜も、絶えず神に願い、祈っている。
5:6 でも、快楽にふけって生きている未亡人は、生きていても、もう死んでいるのと同じだ。
5:7 こうしたことも、しっかり伝えなさい。だれからも非難されることがないようにするためだ。
5:8 もし自分の家族、特に身内の世話をしない人がいるなら、その人は信仰を捨てたのと同じだ。信じていない人よりも、なお悪い。
5:9 名簿に加える未亡人は、六十歳以上で、一人の夫だけに連れ添ってきた人でなければならない。
5:10 そして、良い行いで知られている人だ。つまり、子どもを育て、旅人をもてなし、信じる仲間の足を洗い、困っている人を助け、あらゆる善い行いに励んできた人のことだ。
5:11 でも、若い未亡人は名簿に加えてはいけない。彼女たちは、欲望に流されてキリストから離れると、また結婚したくなるからだ。
5:12 そうして、最初に立てた誓いを破ったという責めを受けることになる。
5:13 そのうえ、暇を持て余して、家から家へと渡り歩くことを覚えてしまう。ただ怠けるだけでなく、うわさ話をしたり、他人のことに口を出したり、言うべきでないことまで口にするようになる。
5:14 だから、わたしは若い未亡人には、結婚して子どもを産み、家庭を切り盛りしてほしいと思う。そうすれば、わたしたちを敵に回す者に、悪口を言う口実を与えずにすむ。
5:15 実際、すでに道を外れて、サタンについていった人もいるのだ。
5:16 信じている女性が、身内に未亡人をかかえているなら、その人が世話をすべきだ。教会に負担をかけてはいけない。そうすれば、教会は本当に身寄りのない未亡人を助けることができる。
5:17 よく指導している長老たちは、二倍の敬意を受けるにふさわしい。特に、神の言葉を語り、教えることに力を尽くしている人は、なおさらだ。
5:18 聖書にはこう書いてある。「脱穀している牛に口輪をはめてはならない。」また、「働く人が報酬を受けるのは当然だ。」
5:19 長老に対する訴えは、二人か三人の証人がいなければ受け付けてはいけない。
5:20 罪を犯し続けている人は、みんなの前で正しなさい。そうすれば、ほかの人たちも恐れを抱くようになる。
5:21 神と、キリスト・イエスと、選ばれた天使たちの前で、あなたに強く求める。先入観を持たずにこれらのことを守り、えこひいきで物事を行わないでほしい。
5:22 だれかに軽々しく手を置いてはいけない。ほかの人の罪に加わってもいけない。自分自身を清く保ちなさい。
5:23 これからは水ばかり飲まないで、胃のために、そしてたびたび起こる体の不調のために、少しぶどう酒を用いなさい。
5:24 ある人たちの罪ははっきり見えていて、さばきへと先立って行く。でも、ある人たちの罪は、あとからついて来る。
5:25 同じように、良い行いもはっきり見えている。そうでないものも、隠しておくことはできない。
6:1 重い務めのもとで奴隷として働いている人はみな、自分の主人を十分に敬うべきだと考えなさい。神の名と教えが悪く言われないためだ。
6:2 主人が信じている人である場合は、その主人が兄弟姉妹だからといって軽く見てはいけない。むしろ、いっそう熱心に仕えなさい。その良い働きから益を受ける主人は、信じる者であり、愛されている人たちなのだから。これらのことを教え、勧めなさい。
6:3 だれかが違うことを教えて、わたしたちの主イエス・キリストの健全な言葉と、神を敬う生き方にかなった教えに従わないなら、
6:4 その人は思い上がっていて、何もわかっていない。議論や言葉の争いに病的にのめり込んでいる。そこから、ねたみ、争い、悪口、悪意ある疑いが生まれ、
6:5 心が腐り、真理を失った人たちの、絶え間ない衝突が生まれる。彼らは、神を敬う生き方をもうけの手段だと考えている。
6:6 でも、満ち足りる心を伴う、神を敬う生き方こそ、大きな利益をもたらす。
6:7 わたしたちは、何ひとつ持たずにこの世に生まれてきた。だから、何ひとつ持って出ていくこともできない。
6:8 食べる物と着る物があれば、それで満足しよう。
6:9 でも、金持ちになりたいと願う人たちは、誘惑や罠に落ちる。愚かで有害な、たくさんの欲望に引きずり込まれる。その欲望が、人を破滅と滅びに沈めてしまう。
6:10 お金への執着は、あらゆる悪の根っこだからだ。それを追い求めるうちに、信仰から迷い出て、多くの苦しみで自分を刺し貫いてしまった人たちもいる。
6:11 でも、神に仕えるあなたは、こうしたものから逃げなさい。そして、義、神を敬う生き方、信仰、愛、忍耐、柔らかな心を追い求めなさい。
6:12 信仰の戦いを、りっぱに戦い抜きなさい。永遠のいのちをしっかりつかみなさい。あなたはそのいのちへと招かれ、多くの証人の前で、りっぱな告白をしたのだから。
6:13 すべてのものにいのちを与える神の前で、そしてポンティオ・ピラトの前でりっぱな告白をされたキリスト・イエスの前で、あなたに命じる。
6:14 わたしたちの主イエス・キリストが現れるその時まで、この命令を、汚れなく、非難されるところなく守りなさい。
6:15 その時を、神はふさわしい時に示してくださる。神は、たたえられるべき唯一の主権者、王の王、主の主であり、
6:16 ただひとり、死ぬことのない方。近づくこともできない光の中に住み、だれひとり見たことがなく、見ることもできない方だ。この方に、誉れと永遠の力がありますように。アーメン。
6:17 今のこの世で富んでいる人たちに命じなさい。思い上がってはいけない。頼りにならない富にではなく、わたしたちが楽しめるように、すべてのものを豊かに与えてくださる神に望みを置きなさい、と。
6:18 善い行いをし、良い働きに富み、惜しみなく分け与え、進んで人と分かち合う人になりなさい、と。
6:19 そうすれば、未来に向けて自分のために良い土台を積み上げ、本当の命をしっかりつかむことになる。
6:20 テモテよ、あなたにゆだねられたものを大切に守りなさい。俗っぽい無駄な議論や、まちがって「知識」と呼ばれているものからの反論を避けなさい。
6:21 それを主張して、信仰から的をはずしてしまった人たちもいる。恵みが、あなたがたとともにありますように。
テモテへの第二の手紙
1:1 パウロから。わたしは神の望みによって、キリスト・イエスの使徒となった。それは、キリスト・イエスにあるいのちの約束を伝えるためだ。
1:2 愛する我が子テモテへ。父である神と、わたしたちの主キリスト・イエスから、恵みとあわれみと平安があなたにありますように。
1:3 わたしは神に感謝している。先祖から受け継いだこの信仰を、きれいな良心をもって仕えてきた神だ。祈りの中で、わたしは昼も夜も絶えずあなたのことを思い起こしている。
1:4 あなたが流した涙を覚えていて、また会いたくてたまらない。会えたら、わたしは喜びでいっぱいになるだろう。
1:5 あなたの中にある、偽りのない信仰を思い出す。その信仰は、まずあなたのおばあさんロイスと、お母さんユニケの中に生きていた。そして今はあなたの中にも生きていると、わたしは確信している。
1:6 だから、あなたに思い出してほしい。わたしが手を置いたときにあなたに与えられた、神からの賜物を、もう一度燃え立たせてほしいのだ。
1:7 神がわたしたちに与えてくださった霊は、おくびょうな霊ではない。力と愛と、自分をコントロールする心の霊だ。
1:8 だから、わたしたちの主を証しすることを恥ずかしがってはいけない。主のために囚われの身となっているわたしのことも、恥じてはいけない。むしろ、神の力によって、この良い知らせのために、わたしと一緒に苦しみを引き受けてほしい。
1:9 神はわたしたちを救い、聖なる者として召してくださった。それはわたしたちの行いによるのではなく、神ご自身の計画と恵みによる。この恵みは、永遠の昔から、キリスト・イエスにあってわたしたちに与えられていたものだ。
1:10 そしてその恵みは今、わたしたちの救い主キリスト・イエスが現れたことによって、はっきりと示された。キリストは死を打ち破り、良い知らせを通して、いのちと、朽ちることのない命を明るく照らし出してくださった。
1:11 わたしはこの良い知らせを伝えるために、宣べ伝える者、使徒、そして教師として立てられた。
1:12 だからこそ、わたしは今こうして苦しんでいる。でも、それを恥だとは思わない。わたしは自分が信頼している方をよく知っているし、こう確信しているからだ。その方は、わたしがゆだねたものを、あの日まで守り抜くことができる、と。
1:13 わたしから聞いた健全な言葉を、模範として持ち続けなさい。キリスト・イエスにある信仰と愛をもって、そうしなさい。
1:14 あなたにゆだねられたその大切なものを、わたしたちの内に住んでくださる聖霊によって守りなさい。
1:15 あなたも知っているとおり、アジア州にいる人たちはみな、わたしから離れてしまった。フュゲロとヘルモゲネもそうだ。
1:16 オネシフォロの家族に、主が憐れみを注いでくださるように。彼は何度もわたしを元気づけてくれたし、わたしが鎖につながれていることを恥じなかった。
1:17 それどころか、ローマに来たときには、熱心にわたしを捜し回って、見つけ出してくれた。
1:18 どうか主が、あの日に、彼に主からの憐れみを見いだせるようにしてくださるように。彼がエフェソでどれほど多くのことで仕えてくれたか、あなたのほうがよく知っている。
2:1 だから、わたしの子よ、キリスト・イエスにある恵みによって強くなりなさい。
2:2 そして、多くの証人の前でわたしから聞いたことを、信頼できる人たちにゆだねなさい。ほかの人たちにも教えることのできる人たちにだ。
2:3 キリスト・イエスの立派な兵士として、わたしと共に苦しみを耐え忍びなさい。
2:4 兵役についている者は、日常生活のことに巻き込まれたりはしない。自分を兵士に取り立ててくれた人を喜ばせるためだ。
2:5 競技をする人も、ルールに従って競わなければ、勝利の冠を受けることはない。
2:6 苦労して働く農夫こそ、まず最初に収穫の分け前にあずかるべきだ。
2:7 わたしの言っていることをよく考えてほしい。主は、すべてのことについて、あなたに理解する力を与えてくださる。
2:8 イエス・キリストのことを、いつも心に留めていてほしい。ダビデの子孫として生まれ、死者の中からよみがえった方だ。これがわたしの伝える福音だ。
2:9 この福音のために、わたしは苦しみを受けている。まるで犯罪者のように、鎖につながれてさえいる。でも、神の言葉はつながれてはいない。
2:10 だからわたしは、選ばれた人たちのために、すべてを耐え忍んでいる。その人たちも、キリスト・イエスによる救いを受け、永遠の栄光にあずかってほしいからだ。
2:11 次の言葉は信頼できる。「もしわたしたちがキリストと共に死んだのなら、共に生きることにもなる。
2:12 もし耐え忍ぶなら、共に王として治めることにもなる。もしわたしたちがキリストを知らないと言うなら、キリストもわたしたちを知らないと言われる。
2:13 もしわたしたちが真実でなくても、キリストは真実であり続ける。ご自分を偽ることはできないからだ。」
2:14 これらのことを、人々に思い起こさせなさい。そして、言葉の言い争いをしないよう、神の前で強く命じなさい。そんな争いは何の役にも立たず、聞いている人たちをだめにするだけだ。
2:15 あなたは、神に認められる者となるよう努めなさい。恥じることのない働き手として、真理の言葉をまっすぐに扱いなさい。
2:16 俗っぽくむなしい議論は避けなさい。そういうものは、人をますます神から遠ざけていくからだ。
2:17 彼らの言葉は、傷口をむしばむ病のように広がっていく。ヒメナオとフィレトが、まさにそうだ。
2:18 この二人は真理から外れてしまい、復活はもう起きたなどと言って、何人かの信仰をくつがえしている。
2:19 でも、神が据えた土台はしっかりと立っていて、決して揺るがない。そこには、こんな刻印がある。「主は、自分に属する者を知っている。」そして「主の名を口にする者はみな、不正から離れなさい。」
2:20 大きな家には、金や銀でできた器だけでなく、木や土でできた器もある。そして、大切に使われる器もあれば、ふだん使いの粗末な器もある。
2:21 だから、もし自分をきれいにして、こうしたものから離れるなら、その人は大切に使われる器になる。聖なるものとされ、主人の役に立ち、あらゆる良い働きのために備えられた器だ。
2:22 若さにありがちな欲望からは逃げなさい。そして、きれいな心で主を呼び求める人たちとともに、義と信仰と愛と平和を追い求めなさい。
2:23 愚かで無知な言い争いには関わってはいけない。それが争いを生むと、あなたは知っているはずだ。
2:24 主に仕える者が争ってはいけない。だれに対してもやさしく、よく教え、じっと忍耐する人であるべきだ。
2:25 反対する人たちは、おだやかに正してあげなさい。そうすれば神が、彼らに悔い改める心を与えて、真理を知るようにしてくださるかもしれない。
2:26 そして、彼らは正気を取り戻し、悪魔のわなから抜け出せる。彼らは悪魔に捕らえられて、その思いのままにされていたのだ。
3:1 でも、これだけは知っておいてほしい。終わりの時代には、厳しい時期がやってくる。
3:2 人々は自分だけを愛し、お金に執着し、自慢ばかりで、思い上がる。人をののしり、親に逆らい、感謝を忘れ、神を敬わなくなる。
3:3 情がなく、和解を拒み、人を陥れるうそを言い、自分を抑えられず、乱暴で、善いことを嫌う。
3:4 人を裏切り、後先を考えず、うぬぼれる。そして、神よりも快楽を愛するようになる。
3:5 こういう人たちは、信仰を持っているように見せかけるだけで、その中身にある力を否定している。だから、そんな人たちには近づかないように。
3:6 その中には、人の家にもぐり込んで、心の弱い女性たちを思いのままにあやつる者がいる。相手は罪を積み重ね、さまざまな欲望に振り回されている女性たちだ。
3:7 彼女たちはいつも学んでいるのに、真理を本当に理解するところまでは決してたどり着けない。
3:8 かつてヤンネとヤンブレがモーセに逆らったように、この人たちも真理に逆らっている。考え方がすっかりゆがみ、信仰においては失格だ。
3:9 でも、彼らがこれ以上のさばることはない。あの二人の愚かさが皆に明らかになったように、この人たちの愚かさも、誰の目にもはっきりするからだ。
3:10 けれども、あなたはわたしの教えにも、生き方にも、目指すものにも、信仰にも、忍耐にも、愛にも、耐え抜く姿にも、ずっとついてきてくれた。
3:11 アンティオキア、イコニオン、リストラでわたしが受けた迫害や苦しみにも、あなたは寄り添ってくれた。わたしはそんな迫害に耐えたが、そのすべてから主が救い出してくださった。
3:12 実際、キリスト・イエスにあって信仰深く生きようとする人は、みな迫害を受ける。
3:13 悪い人間やペテン師は、ますます悪くなっていく。人をだまし、自分もだまされながら。
3:14 でも、あなたは学んで確信したことから離れないでいなさい。それをだれから学んだのか、あなたは知っているのだから。
3:15 それに、あなたは幼いころから聖なる書物に親しんできた。その書物は、キリスト・イエスへの信仰による救いへとあなたを導く知恵を与えてくれる。
3:16 聖書はすべて、神の息が吹き込まれたものだ。だから、教えるため、誤りを指摘するため、間違いを正すため、義にかなった生き方へと導くために役立つ。
3:17 それは、神に仕える人が十分に整えられ、どんな良い働きにもしっかり備えられるためだ。
4:1 生きている者と死んだ者とをさばこうとしておられる神と、キリスト・イエスの前で、そしてその現れと御国にかけて、わたしは厳かに命じる。
4:2 み言葉を宣べ伝えなさい。時が良くても悪くても、いつでも備えていなさい。あくまでも忍耐強く、ていねいに教えながら、誤りを指摘し、注意し、励ましなさい。
4:3 というのも、人々が健全な教えに耐えられなくなる時が来るからだ。彼らは自分の欲望のままに、耳に心地よいことを語ってくれる教師を、次々と自分のまわりに集めるようになる。
4:4 そして、真理には耳を傾けなくなり、作り話のほうへとそれていく。
4:5 でも、あなたはどんなときも冷静でいなさい。苦しみに耐え、福音を伝える働きをし、自分に任された務めを最後までやり遂げなさい。
4:6 わたし自身は、もういけにえの酒のように注ぎ出されようとしている。この世を去る時が近づいているのだ。
4:7 わたしは良い戦いを戦い抜き、走るべき道を走りきり、信仰を守り通した。
4:8 あとは、義の冠がわたしのために用意されている。正しい裁判官である主が、あの日にそれをわたしに授けてくださる。それはわたしだけでなく、主が現れるのを待ち望んできたすべての人にも与えられるのだ。
4:9 できるだけ早く、わたしのところに来てほしい。
4:10 デマスはこの世を愛して、わたしを見捨て、テサロニケへ行ってしまった。クレスケンスはガラテヤへ、テトスはダルマテヤへ行った。
4:11 わたしのそばにいるのはルカだけだ。マルコを連れて、いっしょに来てほしい。彼はわたしの務めのために役に立つからだ。
4:12 テキコはエペソへ送った。
4:13 トロアスでカルポのところに置いてきた上着を、来るときに持ってきてほしい。それから書物も、特に羊皮紙のものを頼む。
4:14 銅細工人のアレクサンドロは、わたしにひどいことをたくさんした。主が、彼のしたことに応じて報いてくださる。
4:15 あなたも彼に気をつけなさい。彼はわたしたちの語ることに激しく逆らったのだから。
4:16 最初の弁明のとき、だれもわたしの味方をしてくれなかった。みんなわたしを見捨てた。どうか、そのことで彼らが責められませんように。
4:17 でも、主はわたしのそばに立って、力を与えてくださった。わたしを通して福音が余すところなく告げ知らされ、すべての国の人々がそれを聞くためだ。こうして、わたしは獅子の口から救い出された。
4:18 主は、わたしをあらゆる悪のわざから救い出し、天にある御国へと無事に導き入れてくださる。主に栄光が世々限りなくありますように。アーメン。
4:19 プリスカとアクラ、それにオネシフォロの家族によろしく伝えてほしい。
4:20 エラストはコリントに残った。トロフィモは病気だったので、ミレトに残してきた。
4:21 冬が来る前に、なんとかここへ来てほしい。エウブロ、プデス、リノス、クラウディア、そしてすべての兄弟姉妹が、あなたによろしくと言っている。
4:22 主が、あなたの霊とともにいてくださいますように。恵みが、あなたがたとともにありますように。
テトスへの手紙
1:1 パウロから。わたしは神に仕える者であり、イエス・キリストの使徒だ。神に選ばれた人々の信仰のため、そして神を敬う生き方に結びついた真理を、人々が知るために選ばれた。
1:2 それはすべて、永遠のいのちへの希望に支えられている。この永遠のいのちは、決して偽ることのない神が、時の始まる前のはるか昔に約束してくださったものだ。
1:3 そして神は、定められた時が来ると、その約束のことばを、人々に伝える宣教を通して明らかにされた。わたしは、わたしたちの救い主である神の命令によって、それを伝える務めをまかされている。
1:4 信仰をともにする、わたしの本当の子であるテトスへ。父である神と、わたしたちの救い主キリスト・イエスからの恵みと平安が、あなたにありますように。
1:5 わたしがあなたをクレタ島に残してきたのは、まだ整っていないことをきちんと整えて、それぞれの町で長老を任命してもらうためだ。わたしが指示したとおりにね。
1:6 長老になる人は、人から非難されるところがなく、一人の妻を大切にする夫で、子どもたちも信仰を持っていて、放蕩を責められたり、親に従わなかったりすることがない人でなければならない。
1:7 教会を任される監督は、神の家を管理する者として、非難されるところがない人であるべきだ。わがままでなく、すぐに怒らず、酒におぼれず、乱暴でなく、お金を汚いやり方でもうけようとしない人。
1:8 むしろ、客をあたたかくもてなし、善いことを愛し、慎み深く、正しく、神を大切にし、自分をきちんとコントロールできる人でなければならない。
1:9 そして、教えられたとおりの信頼できるみことばをしっかりと守っている人であるべきだ。そうすれば、健全な教えによって人々を励ますこともできるし、それに反対する人たちの誤りを正すこともできるからだ。
1:10 というのも、言うことを聞かない人、中身のないおしゃべりをする人、人をだます人がたくさんいるからだ。特に、割礼にこだわるユダヤ人の中にそういう人が多い。
1:11 こういう人たちは黙らせなければならない。彼らは恥ずべきお金もうけのために、教えてはいけないことを教えて、家族まるごと信仰をめちゃくちゃにしてしまうからだ。
1:12 彼ら自身の中の一人、彼ら自身の預言者がこう言っている。「クレタ人はいつもうそつきで、たちの悪いけもの、なまけ者の食いしんぼうだ。」
1:13 この証しは本当だ。だから、彼らを厳しく正しなさい。そうすれば、彼らは健全な信仰を持てるようになる。
1:14 そして、ユダヤ人の作り話や、真理に背を向ける人たちの言いつけに、耳を貸さないようになる。
1:15 きれいな心の人には、すべてがきれいなものに見える。でも、汚れていて信じない人には、何一つきれいなものがない。それどころか、彼らは考え方も良心も汚れてしまっている。
1:16 彼らは神を知っていると口では言う。でも、その行いでは神を否定している。彼らは神に嫌われる者で、神に従わず、どんな善い行いにも役に立たない。
2:1 でも、あなたは違う。健全な教えにふさわしいことを語りなさい。
2:2 年配の男性には、節度を持ち、まじめで、自分をわきまえ、信仰と愛と忍耐において健全であるように伝えなさい。
2:3 同じように、年配の女性には、神に仕える者らしくふるまうように伝えなさい。人の悪口を言わず、お酒におぼれず、良いことを教える人でありなさい。
2:4 そうすれば、若い女性たちに、夫を愛し、子どもを愛するよう教えることができる。
2:5 自分をわきまえ、心が清く、家庭をよく守り、優しく、自分の夫に従うように。神の言葉が悪く言われないためだ。
2:6 同じように、若い男性たちにも、自分をわきまえるよう勧めなさい。
2:7 あなた自身が、すべてにおいて良い行いの手本になりなさい。教えるときは、まじめでまっすぐな態度をとりなさい。
2:8 非難されることのない健全な言葉を語りなさい。そうすれば、反対する人も、わたしたちについて悪いことを何も言えず、恥じ入るだろう。
2:9 奴隷には、自分の主人に従い、すべてにおいて喜ばれるようにと伝えなさい。口答えせず、
2:10 物を盗まず、どんなときも誠実さを示すように。そうすれば、わたしたちの救い主である神の教えを、あらゆる点で輝かせることになる。
2:11 というのも、すべての人を救う神の恵みが現れたからだ。
2:12 その恵みは、わたしたちにこう教えている。神を無視する生き方や、この世的な欲を捨て、今のこの時代を、慎み深く、正しく、神を大切にして生きるようにと。
2:13 そして、あの祝福に満ちた希望を待ち望むように。それは、偉大な神であり、わたしたちの救い主であるイエス・キリストの栄光が現れることだ。
2:14 キリストは、わたしたちのために自らをささげてくださった。それは、あらゆる悪からわたしたちを買い戻し、良い行いに熱心な、ご自分の民として清めるためだ。
2:15 これらのことを語りなさい。人々を励まし、注意を与えなさい。どんなときも、はっきりとした権威をもって。だれにも軽んじられてはならない。
3:1 人々にこう思い出させてほしい。国を治める人や権力を持つ人たちに従い、その言うことをよく聞くこと。そして、どんな良いことにもすぐ取りかかれるよう、準備しておくこと。
3:2 だれのことも悪く言わず、争わず、おだやかに、すべての人にやさしく接することだ。
3:3 わたしたち自身も、昔はそうだった。愚かで、言うことを聞かず、道に迷い、いろいろな欲望や快楽の奴隷になっていた。悪意やねたみの中で毎日を過ごし、人から嫌われ、おたがいに憎み合っていた。
3:4 でも、わたしたちの救い主である神が、その優しさと、人への愛を現してくださった。
3:5 神がわたしたちを救ってくださったのは、わたしたちが正しい行いをしたからではない。ただ神のあわれみによって救ってくださったのだ。それは、新しく生まれ変わらせる洗いと、聖霊による新しい命によるものだった。
3:6 神はこの聖霊を、わたしたちの救い主イエス・キリストを通して、わたしたちの上に豊かに注いでくださった。
3:7 こうしてわたしたちは、神の恵みによって義と認められ、永遠の命を望みながら、それを受け継ぐ者となったのだ。
3:8 この言葉は信頼できる。わたしはあなたに、これらのことをはっきりと伝えてほしいと思っている。そうすれば、神を信じている人たちが、良い行いに励もうと心がけるようになる。これらのことは良いことで、人々の役に立つのだ。
3:9 でも、くだらない議論や、延々と続く先祖の話、律法をめぐる言い争いや争いには関わってはいけない。そういうものは何の役にも立たないし、むなしいだけだ。
3:10 分裂を引き起こす人には、一度、二度と注意しなさい。それでも聞かないなら、もう相手にしなくていい。
3:11 そういう人は、もう道を外れていて、罪を犯し続けている。自分で自分を裁いているのだ。
3:12 アルテマスかティキコを君のところに送ったら、できるだけ早くニコポリスにいるわたしのところに来てほしい。この冬はそこで過ごすことにしたんだ。
3:13 律法に詳しいゼナスとアポロが旅を続けられるよう、しっかり支度を整えて送り出してほしい。何も足りないものがないようにね。
3:14 わたしたちの仲間も、良い行いに励むことを身につけてほしい。人の切実な必要にこたえられるように。そうすれば、実を結ばない人生にはならない。
3:15 わたしと一緒にいる人みんなが、君によろしくと言っている。信仰によってわたしたちを愛してくれる人たちにも、よろしく伝えてほしい。恵みが、あなたがた一人ひとりとともにありますように。
ピレモンへの手紙
1:1 キリスト・イエスの囚人となっているパウロと、兄弟テモテから、わたしたちの愛する友であり、共に働く仲間であるフィレモンへ。
1:2 また、姉妹アピアと、共に戦う仲間アルキポ、そしてあなたの家に集まる人たちへ。
1:3 わたしたちの父である神と、主イエス・キリストから、恵みと平安があなたがたにありますように。
1:4 わたしは、祈るときにいつもあなたのことを思い出し、わたしの神に感謝している。
1:5 主イエスと、神のものとされたすべての人たちに対して、あなたが愛と信仰を持っていると聞いているからだ。
1:6 そして、あなたが信仰を分かち合うことが、わたしたちのうちにあってキリストへとつながるすべての良いものを深く知ることによって、力を発揮するようにと祈っている。
1:7 兄弟よ、あなたの愛から、わたしは大きな喜びと励ましを受けた。あなたのおかげで、神のものとされた人たちの心が元気を取り戻したからだ。
1:8 だから、わたしはキリストにあって、あなたがすべきことを堂々と命じることもできる。
1:9 でも、愛にもとづいて、むしろお願いしたい。年老いたパウロ、しかも今はキリスト・イエスのために囚われの身となっている、このわたしがだ。
1:10 お願いしたいのは、わたしの子オネシモのことだ。わたしが牢につながれている間に、この子はわたしの子となった。
1:11 オネシモは以前、あなたにとって役に立たない者だった。でも今は、あなたにとってもわたしにとっても、役に立つ者となっている。
1:12 そのオネシモを、あなたのもとに送り返す。彼はわたしの心そのものだ。
1:13 本当は、わたしのそばに引き止めておきたかった。福音のために牢につながれているわたしの世話を、あなたの代わりにしてもらうためだ。
1:14 でも、あなたの同意なしには、何もしたくなかった。あなたの親切が、仕方なくするものではなく、自分から進んでするものであってほしいからだ。
1:15 オネシモがしばらくの間あなたから離れたのは、もしかすると、あなたが彼を永遠に取り戻すためだったのかもしれない。
1:16 もう奴隷としてではなく、奴隷以上の者、つまり愛する兄弟として取り戻すためだ。わたしにとって特にそうだが、あなたにとってはなおさらだろう。人としても、主にあってもだ。
1:17 だから、もしあなたがわたしを仲間だと思ってくれているなら、わたしを迎えるように彼を迎えてほしい。
1:18 もし彼があなたに何か悪いことをしたり、借りがあったりするなら、それはわたしのつけにしておいてほしい。
1:19 わたしパウロが、自分の手でこう書いている。わたしが払う。あなたが自分自身をもわたしに借りていることは、あえて言わないでおこう。
1:20 そうだ、兄弟よ。主にあって、あなたのおかげで喜ばせてほしい。キリストにあって、わたしの心を休ませてほしい。
1:21 あなたが応じてくれると信じて、わたしはこの手紙を書いた。あなたがわたしの言う以上のことをしてくれると分かっているからだ。
1:22 それと同時に、わたしの泊まる部屋も用意しておいてほしい。あなたたちの祈りによって、わたしがあなたたちのところへ帰らせてもらえると期待しているからだ。
1:23 キリスト・イエスのために、わたしと一緒に囚われの身になっているエパフラスが、あなたによろしくと言っている。
1:24 わたしと一緒に働く仲間のマルコ、アリスタルコ、デマス、ルカも、同じようによろしくと言っている。
1:25 主イエス・キリストの恵みが、あなたたちの霊とともにありますように。
ヘブル人への手紙
1:1 はるか昔、神は預言者たちを通して、いろいろな時に、いろいろな方法で、わたしたちの先祖に語りかけてきた。
1:2 でも、この終わりの時代には、御子を通してわたしたちに語りかけた。神はこの御子を、すべてのものを受け継ぐ者として立て、御子を通してこの世界を造られた。
1:3 御子は神の栄光の輝きであり、神という存在そのものを写し出す姿である。そして力に満ちた言葉によって、すべてのものを支えている。御子はわたしたちの罪をきよめる働きを成しとげたあと、天の高いところで、偉大な神の右の座に着いた。
1:4 こうして御子は、天使たちよりはるかにすぐれた者となった。受け継いだ名も、天使たちのものとは比べものにならないほどすばらしい。
1:5 神が天使のだれかに、こう言ったことがあるだろうか。「あなたはわたしの子。きょう、わたしがあなたを生んだ。」また、こうも言っている。「わたしは彼の父となり、彼はわたしの子となる。」
1:6 さらに神は、その長男である御子をこの世に送り出すとき、こう言っている。「神の天使たちは、みな彼を礼拝せよ。」
1:7 天使たちについては、こう言っている。「神は、天使たちを風とし、仕える者たちを燃える炎とする。」
1:8 ところが御子については、こう言っている。「神よ、あなたの王座は永遠に続く。あなたの御国を治める杖は、正しさの杖である。
1:9 あなたは義を愛し、不正を憎んだ。だから神、あなたの神は、あなたを選び、喜びの油を注いだ。あなたの仲間のだれよりも豊かに。」
1:10 またこうも言っている。「主よ、あなたは初めに地の土台を据え、その手で天を造られた。
1:11 それらは滅びる。でも、あなたはいつまでも変わらずにいる。すべては衣のように古びていく。
1:12 あなたはそれらを上着のように巻き取る。それらは衣のように取り替えられる。でも、あなたは変わることがなく、あなたの年月は尽きることがない。」
1:13 それに、神は天使のだれに向かって、こう言ったことがあるだろうか。「わたしの右に座っていなさい。あなたの敵をあなたの足台とするまで。」
1:14 天使はみな、仕えるための霊ではないか。救いを受け継ぐ人たちのために、奉仕するよう送られているのだ。
2:1 だから、わたしたちは聞いたことに、いっそう真剣に心を向けなければならない。そうしないと、そこから流されてしまうからだ。
2:2 天使を通して語られた言葉が確かなもので、あらゆる違反や不従順が当然の報いを受けたのなら、
2:3 これほど大きな救いをないがしろにして、どうしてわたしたちが逃れられるだろうか。この救いは、まず主によって語られ、それを聞いた人たちによって、確かなものとしてわたしたちに伝えられた。
2:4 しかも神は、しるしや不思議、さまざまな力あるわざ、そしてご自分の望みのままに分け与える聖霊の賜物によって、いっしょに証ししてくださった。
2:5 神は、わたしたちが今語っている来たるべき世界を、天使たちに従わせたわけではない。
2:6 むしろ、ある人がどこかでこう証ししている。「人とは何なのか。あなたが心に留めてくださるとは。人の子とは何なのか。あなたが目を向けてくださるとは。」
2:7 あなたは彼を、天使たちより少しの間だけ低いものとした。そして栄光と誉れの冠を彼にかぶせ、
2:8 すべてのものを彼の足の下に従わせた。」神はすべてを彼に従わせたとき、彼に従わないものは何ひとつ残さなかった。でも、今はまだ、すべてが彼に従っている様子はわたしたちには見えない。
2:9 でも、わたしたちが見ているのはイエスだ。天使たちより少しの間だけ低いものとされたイエスが、死の苦しみを受けたことによって、今は栄光と誉れの冠をかぶせられている。神の恵みによって、すべての人のために死を味わうためだった。
2:10 すべてのものはこの神のために、またこの神によって存在する。その神が、多くの子たちを栄光へと導くために、彼らを救いへ導く先駆者を苦しみを通して完全な者とされた。それはふさわしいことだった。
2:11 人を聖なる者とする方も、聖なる者とされる人たちも、みな同じひとりの方から出ている。だからイエスは、彼らを兄弟姉妹と呼ぶことを恥じない。
2:12 こう言っている。「わたしはあなたの名を、わたしの兄弟姉妹たちに告げ知らせる。人々の集まりの中で、あなたをほめ歌う。」
2:13 またこうも言っている。「わたしはこの方に信頼を置く。」さらにこう言っている。「見よ、わたしと、神がわたしに与えてくださった子たちがここにいる。」
2:14 その子たちは血と肉を持つ人間だ。だからイエスご自身も同じように血と肉を持つ者となった。それは、その死によって、死を支配する力を持つ者、つまり悪魔を滅ぼすためだ。
2:15 そして、死を恐れるあまり、生きているあいだずっと奴隷のように縛られていた人たちを解放するためだった。
2:16 もちろんイエスは、天使たちを助けるために来たのではない。アブラハムの子孫を助けるために来たのだ。
2:17 だからイエスは、あらゆる点で兄弟姉妹たちと同じにならなければならなかった。それは、神の前で、あわれみ深い、そして忠実な大祭司となり、民の罪を償うためだった。
2:18 イエスご自身、試みを受けて苦しまれた。だからこそ、試みを受けている人たちを助けることができるのだ。
3:1 だから、聖なる兄弟姉妹たち、天からの招きをともに受けたあなたたちに言いたい。わたしたちが信じ、告白しているイエスに目を向けてほしい。この方こそ、神から送られた使者であり、わたしたちの大祭司なのだ。
3:2 モーセが神の家全体で忠実だったように、イエスも自分を立ててくださった方に忠実だった。
3:3 家を建てた人が、その家よりも大きな栄誉を受ける。それと同じように、イエスはモーセよりもはるかに大きな栄光を受けるにふさわしい方とされた。
3:4 どんな家にも、それを建てた人がいる。そして、すべてのものを造られたのは神だ。
3:5 モーセは、神の家全体で忠実だった。でもそれは、仕える者としてであり、後に語られることを証しするためだった。
3:6 一方、キリストは、御子として神の家を治めておられる。そして、その家とはわたしたちのことだ。ただし、わたしたちが希望から生まれる確信と誇りを、しっかり持ち続けるならば。
3:7 だから、聖霊はこう言っている。「今日、もし神の声を聞くなら、
3:8 心をかたくなにしてはならない。荒野で神を試したあの日、反抗したときのように。
3:9 あなたたちの先祖はそこでわたしを試し、四十年もの間、わたしのわざを見てきた。
3:10 だからわたしは、あの世代に怒りを感じてこう言った。『彼らはいつも心が迷っている。わたしの道を知ろうとしなかった』と。
3:11 そこでわたしは怒って誓った。『彼らを、わたしの安息に決して入らせない』と。」
3:12 兄弟姉妹たち、気をつけてほしい。あなたたちの中に、信じようとしない悪い心を持ち、生きておられる神から離れてしまう者が出ないように。
3:13 だから、「今日」と呼ばれている間、毎日互いに励まし合ってほしい。あなたたちの中に、罪の巧みなごまかしにだまされて、心をかたくなにする者が出ないように。
3:14 わたしたちは、最初に抱いた確信を最後までしっかり持ち続けるなら、キリストにあずかる者となっているのだ。
3:15 こう言われているとおりだ。「今日、あなたたちが神の声を聞くなら、反抗したあの時のように、心をかたくなにしてはならない。」
3:16 いったい、聞いていながら反抗したのは誰だったのか。モーセに導かれてエジプトを出た、あの人たち全員ではないか。
3:17 では、神が四十年もの間、怒りを覚えたのは誰に対してだったのか。罪を犯し、荒れ野で倒れて死んでいった、あの人たちに対してではないか。
3:18 また、神が「わたしの安息に決して入らせない」と誓ったのは誰に対してだったのか。神に従おうとしなかった、あの人たちに対してではないか。
3:19 こうしてわたしたちには分かる。彼らが安息に入れなかったのは、信じなかったからだ。
4:1 だから、気をつけよう。神の安息に入るという約束はまだ残っているのに、あなたたちの中に、そこに入りそこなったと思われる者が出ないように。
4:2 わたしたちも、あの人たちと同じように良い知らせを聞いた。でも、聞いた言葉は彼らの役に立たなかった。それを聞いても、信仰によって受け入れなかったからだ。
4:3 信じたわたしたちは、その安息に入る。神がこう言ったとおりだ。「わたしは怒って誓った。『彼らを、わたしの安息に決して入らせない』と。」神の働きは、世界が造られたときからすでに仕上がっていたのに。
4:4 というのは、七日目について、ある箇所でこう言われているからだ。「神は七日目に、すべての働きを終えて休まれた。」
4:5 そして、この箇所でもまた、こう言われている。「彼らを、わたしの安息に決して入らせない。」
4:6 こういうわけで、その安息に入る人たちが残されている。そして、先に良い知らせを聞いた人たちは、神に従わなかったために入れなかった。
4:7 だから神は、あらためて「今日」という日を定めて、ずっと後になってダビデを通してこう語られた。それは前に言われたとおりだ。「今日、もし神の声を聞いたなら、心をかたくなにしてはいけない。」
4:8 もしヨシュアが彼らに安息を与えていたのなら、神はその後で、別の日について語ることはなかったはずだ。
4:9 こういうわけで、神の民には安息の休みがまだ残されている。
4:10 神の安息に入った人は、神がご自分の働きを終えて休まれたように、自分の働きを終えて休むからだ。
4:11 だから、わたしたちはその安息に入るように努めよう。あの人たちと同じように、神に従わないことでつまずいてしまわないためだ。
4:12 神の言葉は生きていて、力がある。どんな両刃の剣よりも鋭く、心と魂の境目まで、関節と骨の髄までも刺し通す。そして、心の中の思いや考えを見分ける。
4:13 神の前では、隠せるものは何一つない。すべてが裸のまま、神の目の前にさらけ出されている。わたしたちはこの神に、いつか申し開きをするのだ。
4:14 さて、わたしたちには、もろもろの天を通って行かれた偉大な大祭司、神の子イエスがいる。だから、わたしたちが告白している信仰を、しっかりと守り続けよう。
4:15 この大祭司は、わたしたちの弱さを分かってくれないような方ではない。むしろ、あらゆる点でわたしたちと同じように試みに遭われた。それでいて、罪は犯さなかった。
4:16 だから、わたしたちは思い切って、恵みが与えられる神の座に近づこう。そこであわれみを受け、ちょうど必要なときに助けとなる恵みをいただくためだ。
5:1 大祭司はみな、人々の中から選ばれ、人々のために神の前に立つ役目を与えられている。罪を償うためのささげ物やいけにえを、神にささげるためだ。
5:2 大祭司自身も弱さを抱えている。だから、何も知らずに道を踏み外す人たちにも、穏やかに寄り添うことができる。
5:3 そしてその弱さがあるからこそ、彼は民のためだけでなく、自分自身のためにも、罪を償うささげ物をしなければならない。
5:4 この栄誉は、自分で勝手に手に入れられるものではない。アロンがそうだったように、神に召された者だけがそれを受けるのだ。
5:5 同じように、キリストも大祭司になる栄光を自分から求めたわけではない。神がキリストにこう語りかけたのだ。「あなたはわたしの子。きょう、わたしはあなたを生んだ。」
5:6 別のところでも、神はこう言っている。「あなたは永遠に祭司である。メルキゼデクと同じように。」
5:7 キリストは地上で生きていたあいだ、自分を死から救うことのできる方に、大きな叫びと涙をもって祈り、願い求めた。そして、神を畏れ敬うその心のゆえに、聞き入れられた。
5:8 キリストは子であったのに、さまざまな苦しみを通して、従うことを学んだ。
5:9 こうして完全な者とされ、自分に従うすべての人にとって、永遠の救いをもたらす方となった。
5:10 そして神から、メルキゼデクと同じ大祭司と呼ばれたのだ。
5:11 このことについては、話したいことがたくさんある。でも、あなたたちは聞く力が鈍くなっているので、説明するのは難しい。
5:12 本当なら、あなたたちはもう人に教える立場になっていていいはずだ。それだけの時間がたっている。それなのに、神の言葉のいちばん初めの基本を、もう一度だれかに教えてもらう必要がある。固い食べ物ではなく、乳を必要とする状態に逆戻りしているのだ。
5:13 乳ばかり飲んでいる人は、まだ赤ちゃんだ。だから、正しい生き方についての教えをまだよく理解できていない。
5:14 でも固い食べ物は、大人のためのものだ。そういう人たちは、経験を積んで感覚を鍛え、良いことと悪いことを見分けられるようになっている。
6:1 だから、キリストについての初歩の教えはもう卒業して、成熟へと進んで行こう。もう一度、土台を築き直すのはやめよう。つまり、死んだ行いから離れて心を入れ替えることや、神を信じる信仰、
6:2 いろいろな洗いの教え、手を置いて祈ること、死者がよみがえること、そして永遠の裁きといった、土台の話は繰り返さない。
6:3 神が許してくださるなら、わたしたちはそうやって先へ進もう。
6:4 というのも、一度光を受けた人たちがいる。彼らは天からの贈り物を味わい、聖なる霊をともに受け、
6:5 神の言葉のすばらしさや、来たるべき世界の力を味わった。
6:6 それなのに離れ落ちてしまった人たちを、もう一度立ち返らせて心を入れ替えさせることはできない。そういう人は、神の子を自分でもう一度十字架にかけ、みんなの前でさらしものにしているからだ。
6:7 何度も降り注ぐ雨を吸い込み、耕してくれる人たちのために役立つ作物を実らせる土地は、神からの祝福を受ける。
6:8 でも、いばらやあざみばかりを生えさせる土地は、使いものにならず、やがて呪われる。最後は焼かれるだけだ。
6:9 愛する人たち。わたしたちはこんなふうに話しているけれど、あなたたちについては、もっと良いこと、救いにつながることを確信している。
6:10 神は不公平な方ではない。あなたたちの働きや、神の名のために示してきた愛を、忘れたりはしない。あなたたちは神を信じる仲間たちに仕えてきたし、今も仕え続けているのだ。
6:11 わたしたちが願っているのは、あなたたち一人ひとりが同じ熱心さを持ち続けて、最後まで希望を確かなものにしていくことだ。
6:12 そうすれば、あなたたちは怠けてしまうことなく、信仰と忍耐によって約束を受け継ぐ人たちにならう者となれる。
6:13 神はアブラハムに約束したとき、自分より大きな者にかけて誓うことができなかったので、自分自身にかけて誓った。
6:14 「わたしは必ずあなたを祝福し、あなたの子孫を必ず増やす」と。
6:15 こうしてアブラハムは、忍耐強く待ち続けた末に、約束されたものを手に入れた。
6:16 人は、自分より大きな者にかけて誓う。そして、その誓いはすべての言い争いを終わらせ、話を確かなものにする。
6:17 神は、約束を受け継ぐ人たちに、ご自分の計画が決して変わらないことをいっそうはっきり示そうとして、誓いによってそれを保証してくださった。
6:18 それは、決して変わらない二つのこと——そこで神が嘘をつくことなどありえない——によって、わたしたちが強い励ましを受けるためだ。危険を逃れて神のもとに駆け込んだわたしたちが、目の前に置かれた希望をしっかりつかむためである。
6:19 この希望は、わたしたちの魂にとって錨のようなものだ。確かで、揺らぐことがなく、幕の奥にまで入っていく。
6:20 その奥には、わたしたちのために先駆けとなって、イエスが入ってくださった。イエスはメルキゼデクと同じ位について、永遠に大祭司となられたのだ。
7:1 このメルキゼデクはサレムの王で、いと高き神の祭司だった。彼は、王たちを打ち破って帰るアブラハムを出迎え、祝福した。
7:2 そしてアブラハムは、手に入れたすべてのものの十分の一を彼に分け与えた。メルキゼデクという名は、まず「義の王」という意味であり、さらに「サレムの王」、つまり「平和の王」という意味でもある。
7:3 彼には父もなく、母もなく、家系の記録もない。生まれた日もなければ、命の終わりもない。神の子に似せられて、いつまでも祭司であり続ける。
7:4 この人がどれほど偉大か、考えてみてほしい。あの先祖アブラハムでさえ、戦利品の中から十分の一を彼に与えたのだ。
7:5 レビの子孫のうち、祭司の務めを受け継ぐ者たちは、律法に従って民から、つまり自分の兄弟たちから十分の一を取るように命じられている。その兄弟たちも、同じアブラハムの子孫であるのに。
7:6 ところがメルキゼデクは、この人たちの家系に属していないのに、アブラハムから十分の一を受け取り、約束を受けている当のアブラハムを祝福した。
7:7 だれもが認めるとおり、より低い者が、より高い者から祝福を受ける。
7:8 一方では、いつか死ぬ人間が十分の一を受け取っている。でももう一方では、生きていると証しされている人が受け取っているのだ。
7:9 言ってみれば、十分の一を受け取る立場のレビでさえ、アブラハムを通して十分の一を納めたことになる。
7:10 というのも、メルキゼデクがアブラハムを迎えたとき、レビはまだ生まれておらず、先祖アブラハムの体の中にいたからだ。
7:11 さて、もしレビ族の祭司制度によって完全に到達できたのなら——民はこの制度のもとで律法を与えられた——どうしてこの上、アロンの系統ではなく、メルキゼデクと同じ系統の、別の祭司が立てられる必要があっただろうか。
7:12 祭司制度が変われば、律法も必然的に変わることになるからだ。
7:13 このことが言われている方は、別の部族に属している。その部族からは、祭壇に仕えた者は一人もいない。
7:14 わたしたちの主がユダ族から出たことは、はっきりしている。この部族について、モーセは祭司のことを何も語らなかった。
7:15 このことは、メルキゼデクと同じような、別の祭司が立てられたのを見れば、いっそうはっきりする。
7:16 この方が祭司になったのは、血筋に基づく戒めを定めた律法によるのではなく、決して滅びないいのちの力によるのだ。
7:17 なぜなら、こう証しされているからだ。「あなたは永遠に、メルキゼデクと同じ系統の祭司である。」
7:18 こうして、前の戒めは、弱く役に立たないために、廃止される。
7:19 律法は何一つ完全にすることができなかった。でも、それに代わって、もっとすぐれた希望が与えられた。この希望によって、わたしたちは神に近づくのだ。
7:20 しかも、このことは誓いなしに行われたのではない。ほかの祭司たちは、誓いなしに祭司になった。
7:21 でも、この方は誓いを伴って祭司になった。神がこの方について、こう言われたからだ。「主は誓われた。その心を変えることはない。『あなたは永遠に祭司である。』」
7:22 それだけに、イエスは、もっとすぐれた契約の保証となられたのだ。
7:23 また、以前の祭司たちは、大勢いた。死によって、その務めを続けられなくなったからだ。
7:24 でも、この方は永遠に生き続けるので、変わることのない祭司の務めを持っている。
7:25 だから、この方は、自分を通して神に近づく人々を、完全に救うことができる。いつも生きていて、その人たちのためにとりなしてくださるからだ。
7:26 このような大祭司こそ、わたしたちにふさわしい。聖なる方であり、悪がなく、汚れがなく、罪人たちから引き離され、天よりも高くされた方だ。
7:27 この方は、ほかの大祭司たちのように、毎日いけにえをささげる必要がない。彼らは、まず自分の罪のために、それから民の罪のためにささげていた。でも、この方は、自分自身をささげることで、ただ一度ですべてを成し遂げたのだ。
7:28 律法は、弱さを持つ人間を大祭司に任命する。でも、律法のあとに与えられた誓いの言葉は、永遠に完全な者とされた御子を、大祭司とするのだ。
8:1 今まで話してきたことの要点はこうだ。わたしたちには、これほどすばらしい大祭司がいる。この方は天で、偉大な神の王座の右に座っている。
8:2 そして、聖なる場所で、まことの幕屋で仕えている。この幕屋は、人間ではなく主が建てたものだ。
8:3 どんな大祭司も、供え物やいけにえをささげるために任命される。だから、この大祭司にも何かささげるものが必要だった。
8:4 もしこの方が地上にいたなら、祭司にはならなかっただろう。律法に従って供え物をささげる祭司たちが、すでにいるからだ。
8:5 この祭司たちが仕えているのは、天にあるものの写しであり、影にすぎない。モーセが幕屋を建てようとしたとき、こう告げられたとおりだ。「よく注意して、山であなたに示された型のとおりに、すべてを作りなさい。」
8:6 でも今、イエスはそれよりはるかにすぐれた務めを受けている。それは、この方が結ぶ契約が、前の契約よりもずっとすぐれているからだ。この新しい契約は、もっとよい約束の上に立てられている。
8:7 もし最初の契約に欠けたところがなかったなら、二つ目の契約が求められることはなかったはずだ。
8:8 ところが神は、人々を責めてこう言っている。「主は言われる。見よ、その日が来る。わたしはイスラエルの家、そしてユダの家と、新しい契約を結ぶ。
8:9 それは、彼らの先祖と結んだ契約とは違う。わたしが彼らの手を取って、エジプトの地から連れ出したときの契約だ。彼らはわたしの契約を守り続けなかった。だからわたしも、彼らを顧みなかった、と主は言われる。
8:10 主は言われる。その日の後、わたしがイスラエルの家と結ぶ契約はこうだ。わたしは自分の律法を彼らの思いに授け、彼らの心に書きしるす。わたしは彼らの神となり、彼らはわたしの民となる。
8:11 もう互いに教える必要はない。だれも隣人に、また兄弟に『主を知れ』と言わなくてよい。小さな者から大きな者まで、みんながわたしを知るようになるからだ。
8:12 わたしは彼らの不正を赦し、彼らの罪を二度と思い出さない。」
8:13 神は「新しい契約」と言うことで、最初の契約を古いものとした。そして、古びて年を取っていくものは、まもなく消えてなくなる。
9:1 さて、最初の契約にも、礼拝についての決まりがあり、この世に属する聖所があった。
9:2 まず幕屋が設けられ、その手前の部屋には、燭台と机と、そこに供えられたパンが置かれていた。この部屋は「聖所」と呼ばれる。
9:3 そして、二枚目の垂れ幕の奥には、「最も聖なる場所」と呼ばれる部屋があった。
9:4 そこには金の香壇と、全体を金でおおった契約の箱があった。箱の中には、マナを入れた金のつぼと、芽を出したアロンの杖と、契約が刻まれた石の板が納められていた。
9:5 その箱の上には、栄光に輝くケルビムがいて、翼を広げて、罪が赦される「贖いの座」を覆っていた。だが、これらのことを今ここで一つ一つ語ることはできない。
9:6 これらがこのように整えられると、祭司たちはいつも手前の部屋に入り、礼拝の務めを行っていた。
9:7 だが、奥の部屋には、大祭司だけが年に一度入る。しかも必ず血を携えて入り、その血を、自分のためと、民が知らずに犯した罪のためにささげた。
9:8 このことを通して、聖霊は次のことを示していた。最初の幕屋が立っているかぎり、最も聖なる場所への道はまだ開かれていない、ということだ。
9:9 この幕屋は、今の時代を指し示すたとえだ。そこでは供え物やいけにえがささげられるが、それらは礼拝する人の良心を完全にきよめることはできない。
9:10 それらは食べ物や飲み物、さまざまな洗いきよめに関わる定めにすぎず、体に関する決まりでしかない。新しい秩序が来るときまで課せられていたものだ。
9:11 しかしキリストは、すでに実現したすばらしいものの大祭司として来られた。そして、人の手で造られたのではない、もっと大きく、もっと完全な幕屋を通ってこられた。それは、この世界に属するものではない。
9:12 しかも、やぎや子牛の血によってではなく、ご自分の血によって、ただ一度だけ、最も聖なる場所に入られた。こうして、永遠の贖いを成し遂げられたのだ。
9:13 考えてみてほしい。やぎや雄牛の血、あるいは若い雌牛を焼いた灰は、汚れた人にふりかけられると、その人の体を清め、聖なるものにする。
9:14 それなら、キリストの血はどれほどのことができるだろう。キリストは、永遠の霊によって、傷のない完全なささげ物として、ご自分を神にささげられた。その血は、わたしたちの心を、死んだ行いから清めてくれる。そして、生きておられる神に仕えることができるようにしてくれるのだ。
9:15 だからこそ、キリストは新しい契約の仲立ちとなられた。それは、最初の契約のもとで犯された罪から人々を買い戻すために、ご自分の死をもって成し遂げられたことだ。こうして、神に招かれた人たちは、約束された永遠の恵みを受け継ぐことができる。
9:16 遺言というものがある場合、それを残した人が死んだことが証明されなければならない。
9:17 遺言が効力を持つのは、その人が死んでからだ。残した人が生きているあいだは、まだ何の力もない。
9:18 だから、最初の契約も、血が流されなければ成り立たなかった。
9:19 モーセは、律法にあるすべての戒めを民全体に語ったあと、子牛の血を水とともに取り、赤い羊毛とヒソプの枝を使って、その血を巻物にも民全体にもふりかけた。
9:20 そして、こう言った。「これは、神があなたたちに命じた契約の血だ。」
9:21 さらにモーセは、同じように、幕屋にも、礼拝に使うすべての器具にも血をふりかけた。
9:22 律法によれば、ほとんどすべてのものは血によって清められる。そして、血が流されなければ、罪が赦されることはない。
9:23 こうして、天にあるものの写しである地上のものは、これらの血によって清められる必要があった。しかし、天にあるものそのものは、それよりもすぐれたささげ物によって清められなければならなかった。
9:24 というのも、キリストが入られたのは、人の手で造られた聖なる場所ではないからだ。それは本物の写しにすぎない。キリストは天そのものに入られた。そして今、わたしたちのために、神の前に姿を現してくださっているのだ。
9:25 また、キリストは何度もご自分をささげるために天に入られたのではない。大祭司は、自分のものではない動物の血を持って、年ごとに聖なる場所に入る。キリストはそれとは違うのだ。
9:26 もしそうなら、世界が造られたときから何度も苦しまなければならなかったはずだ。しかし実際には、キリストは今、時代の終わりに、ただ一度だけ姿を現された。ご自分をささげることで、罪を取り除くためだ。
9:27 人には一度だけ死ぬことが定められていて、その後に裁きを受ける。
9:28 それと同じように、キリストも多くの人の罪を背負うために、ただ一度だけささげられた。そしてもう一度、今度は罪とは関係なく、ご自分を待ち望んでいる人たちを救うために姿を現される。
10:1 律法には、これから来るすばらしいものの影があるだけで、その実物の姿はない。だから、年ごとに絶えず同じささげ物をくり返しても、神に近づこうとする人たちを完全にすることは決してできない。
10:2 もしできるのなら、ささげ物はもう終わっていたはずだ。礼拝する人たちが一度きよめられて、もう罪の意識を感じなくなっていたはずだからだ。
10:3 ところが実際には、そのささげ物によって、年ごとに罪が思い起こされるのだ。
10:4 雄牛や雄やぎの血では、罪を取り除くことなどできないからだ。
10:5 だから、キリストはこの世に入られるとき、こう言われた。「あなたは、いけにえもささげ物も望まれなかった。その代わりに、わたしのために体を用意してくださった。
10:6 焼き尽くすささげ物も、罪のためのささげ物も、あなたは喜ばれなかった。
10:7 そこでわたしは言った。『神よ、わたしはここにいます。巻物の書にわたしのことが書いてあるとおり、あなたの望みをかなえるために来ました。』」
10:8 まず「あなたはいけにえも、ささげ物も、焼き尽くすささげ物も、罪のためのささげ物も望まれず、喜ばれなかった」と言われている。これらは律法にしたがってささげられるものだ。
10:9 そして「わたしはここにいます。あなたの望みをかなえるために来ました」と言われた。つまりキリストは、最初のものを取り消して、二番目のものを打ち立てられたのだ。
10:10 この神の望みにしたがって、イエス・キリストがただ一度、ご自分の体をささげてくださった。だからわたしたちは、神のものとしてきよめられている。
10:11 祭司はみな、毎日立って務めを果たし、何度も同じいけにえをささげている。でも、そのいけにえは決して罪を取り除くことができない。
10:12 ところがこの方は、罪のためにただ一度いけにえをささげ、それでずっと有効なものとして、神の右の座に着かれた。
10:13 そしてそれからは、敵が自分の足台とされるまで待っておられる。
10:14 この方はただ一度のささげ物によって、きよめられる人たちを、いつまでも完全なものとしてくださったのだ。
10:15 霊もまた、わたしたちにこう証ししている。まずこう言われている。
10:16 「あの日々の後、わたしが彼らと結ぶ契約はこうだ、と主は言われる。わたしは自分の律法を彼らの心に授け、彼らの思いに書き記す。」
10:17 そして、こう続く。「わたしはもう、彼らの罪も不法も思い出さない。」
10:18 これらが赦されているところでは、もう罪のためのささげ物はいらないのだ。
10:19 だから兄弟姉妹よ。わたしたちは、イエスの血によって、堂々と聖所に入っていける。
10:20 イエスは、垂れ幕――つまりご自分の体――を通って、わたしたちのために新しい、生きた道を開いてくださった。
10:21 そして、神の家を治める偉大な祭司がいてくださる。
10:22 だから、確かな信仰を持って、真心から神に近づこう。わたしたちの心は、汚れた良心からきよめられ、体は清い水で洗われているのだから。
10:23 希望の告白を、ぐらつくことなくしっかり守り抜こう。約束してくださった方は、真実な方だから。
10:24 そして、互いに気を配り合って、愛と善い行いへと励まし合おう。
10:25 ある人たちの習慣のように集まりから離れたりせず、むしろ励まし合おう。あの日が近づいているのがわかるのだから、なおさらそうしよう。
10:26 真理を知ったうえで、なお知りながら罪を犯し続けるなら、罪のためのささげ物はもう残されていない。
10:27 残るのはただ、さばきを待つ恐ろしさと、神に逆らう者たちを焼き尽くそうとする激しい火だけだ。
10:28 モーセの律法を破った者は、二、三人の証人がいれば、あわれみを受けることなく死刑になった。
10:29 それなら、神の子を踏みつけ、自分がきよめられたその契約の血を汚れたものとみなし、恵みの霊を侮った者は、どれほど重い罰に値すると思うか。
10:30 わたしたちは、こう言われた方を知っている。「復讐はわたしのもの、わたしが報いる。」また、「主はご自分の民をさばかれる。」
10:31 生きておられる神の手に落ちるのは、恐ろしいことだ。
10:32 あなたがたは、以前の日々を思い出してほしい。光を受けたあのころ、あなたがたは苦しみとの激しい戦いに耐え抜いた。
10:33 あるときは、人前でののしられ、迫害されて見せ物にされ、またあるときは、そのような目にあっている人たちの仲間になった。
10:34 牢につながれた人たちと苦しみをともにし、自分の財産を奪われても喜んで受け入れた。もっとすぐれた、いつまでも消えない財産を持っていると知っていたからだ。
10:35 だから、あなたがたの確信を捨ててはいけない。それには大きな報いがある。
10:36 あなたがたに必要なのは、耐え忍ぶことだ。神のみこころを行って、約束されたものを受け取るためだ。
10:37 「もうほんの少しすれば、来られる方が来られる。遅れることはない。
10:38 わたしの正しい者は、信仰によって生きる。もし尻込みするなら、わたしはその人を喜ばない。」
10:39 でも、わたしたちは尻込みして滅びる者ではない。信仰によっていのちを得る者だ。
11:1 信仰とは、望んでいることが必ず実現すると確信することだ。まだ目に見えないものを、確かにあると受け止めることだ。
11:2 昔の人たちは、この信仰によって神に認められた。
11:3 この世界が神の言葉によって造られたことを、わたしたちは信仰によって理解する。だから、目に見えるものは、目に見えるものから造られたのではない。
11:4 信仰によって、アベルはカインよりもすぐれたささげ物を神にささげた。その信仰によって、彼は正しい人だと認められた。神が彼のささげ物を良しとされたからだ。アベルは死んでしまったが、今もその信仰を通して語りかけている。
11:5 信仰によって、エノクは死を経験することなく天に移された。神が彼を移されたので、その姿は見あたらなくなった。移される前から、彼は神に喜ばれていたと認められていた。
11:6 信仰がなければ、神に喜ばれることはできない。神に近づく人は、神がおられること、そして神を求める人には報いてくださることを、信じなければならないからだ。
11:7 信仰によって、ノアはまだ見えない事について神から警告を受けた。そして神を敬い、自分の家族を救うために箱舟を造った。この信仰によって、彼は世を裁き、信仰による義を受け継ぐ者となった。
11:8 信仰によって、アブラハムは神の呼びかけに従った。彼はやがて受け継ぐことになる土地へ出て行くよう命じられ、どこへ行くのかも知らないまま出発した。
11:9 信仰によって、彼は約束された土地に、よそ者のように住んだ。同じ約束を共に受け継ぐイサクやヤコブと一緒に、天幕で暮らした。
11:10 アブラハムは、しっかりとした土台のある都を待ち望んでいたからだ。その都を設計し、造られたのは神である。
11:11 信仰によって、アブラハム自身も、そしてサラも、子をもうける力を与えられた。もう年をとっていたのに、そうなった。約束してくださった方は、必ず約束を守る、と信じたからだ。
11:12 こうして、死んだも同然の一人の人から、空の星のように数えきれず、海辺の砂のように無数の子孫が生まれたのだ。
11:13 この人たちはみな、信仰を持ったまま死んでいった。約束されたものを手に入れることはなかったが、はるか遠くにそれを見て、喜んで迎え、自分たちは地上ではよそ者であり、旅人なのだと、はっきり認めていた。
11:14 こういうことを言う人は、自分の本当の故郷を探し求めているのだと、自分で示しているのだ。
11:15 もし彼らが、出てきたあの故郷のことを思っていたのなら、帰る機会はいくらでもあっただろう。
11:16 でも実際には、彼らはもっとすばらしい故郷、つまり天にある故郷を憧れていた。だから神は、彼らの神と呼ばれることを恥とされない。神が、彼らのために都を用意してくださったからだ。
11:17 信仰によって、アブラハムは試されたとき、イサクをささげた。約束を受けていた彼が、自分のたった一人の息子をささげようとしたのだ。
11:18 この息子については、「イサクから生まれる者が、あなたの子孫と呼ばれる」と言われていたのに。
11:19 アブラハムは、神には死んだ者さえ生き返らせる力がある、と考えていた。だから彼は、いわば死からイサクを取り戻したようなものだった。
11:20 信仰によって、イサクはこれから起こることを見すえて、ヤコブとエサウを祝福した。
11:21 信仰によって、ヤコブは死を迎えるとき、ヨセフの二人の息子をそれぞれ祝福し、杖の先に寄りかかって神を礼拝した。
11:22 信仰によって、ヨセフは最期のとき、イスラエルの人々がエジプトを出ていくことを語り、自分の遺骨をどうするか指示を残した。
11:23 信仰によって、モーセは生まれたとき、両親の手で三か月の間かくまわれた。美しい子だと分かったからで、両親は王の命令を恐れなかったのだ。
11:24 信仰によって、モーセは成長すると、ファラオの娘の息子と呼ばれることを拒んだ。
11:25 神の民と一緒に苦しむほうを選び、罪の楽しみを一時だけ味わうことを退けたのだ。
11:26 彼はキリストのために受ける辱めを、エジプトのどんな財宝よりも大きな富だと考えた。与えられる報いを見つめていたからだ。
11:27 信仰によって、モーセはエジプトを出た。王の怒りを恐れなかった。目に見えない方を見ているかのように、じっと耐え抜いたのだ。
11:28 信仰によって、モーセは過越の食事をし、血を振りかけた。長子を滅ぼす者が、イスラエルの子たちに手を出さないようにするためだ。
11:29 信仰によって、人々は乾いた地を行くように紅海を渡った。エジプト人も同じようにしようとしたが、のみ込まれてしまった。
11:30 信仰によって、エリコの城壁は崩れ落ちた。七日の間、人々がその周りを回った後のことだ。
11:31 信仰によって、遊女ラハブは、従わなかった者たちと一緒に滅ぼされずにすんだ。彼女が偵察者たちを平和に迎え入れたからだ。
11:32 これ以上、何を言えばいいだろう。ギデオン、バラク、サムソン、エフタ、それにダビデやサムエル、預言者たちのことを語っていたら、時間がいくらあっても足りない。
11:33 彼らは信仰によって国々を征服し、義を行い、約束されたものを手に入れ、ライオンの口をふさぎ、
11:34 燃えさかる火を消し止め、剣で殺されずに逃れ、弱かったのに強くされ、戦いで力を発揮し、外国の軍隊を敗走させた。
11:35 女たちは、死んだ身内が生き返って戻ってくるのを受け取った。一方で、拷問を受けても釈放を受け入れなかった人たちもいた。もっとすぐれた復活にあずかるためだ。
11:36 また別の人たちは、あざけられ、むち打たれ、さらには鎖につながれ、牢に入れられることも経験した。
11:37 石で打ち殺され、のこぎりで切り裂かれ、剣で殺された人たちもいた。羊やヤギの皮を身にまとってさまよい、貧しさの中で、苦しめられ、ひどい扱いを受けた。
11:38 この世は、そんな彼らにはふさわしくなかった。彼らは荒れ野をさまよい、山や、洞穴や、地の裂け目で暮らした。
11:39 この人たちはみな、その信仰を高く評価された。それでも、約束されたものを受け取ることはなかった。
11:40 神が、わたしたちのために、もっとすぐれたものを用意してくださっていたからだ。わたしたちを抜きにして、彼らだけが完成に達することのないように、というわけだ。
12:1 だから、わたしたちもこれほど多くの証人たちに、雲のように囲まれている。それなら、あらゆる重荷と、まとわりついて離れない罪を脱ぎ捨てよう。そして、目の前に置かれた競走を、忍耐強く走り抜こう。
12:2 信仰の創始者であり、完成者でもあるイエスから、目を離さないでいよう。イエスは、その先に用意された喜びのために、恥をものともせず、十字架を耐え忍んだ。そして今、神の王座の右に座っておられる。
12:3 罪人たちからこれほどの反抗を受けながら、耐え抜いたこの方のことを、よく考えてみてほしい。そうすれば、あなたがたは疲れ果てて、心が折れることもない。
12:4 あなたがたは罪と戦ってきた。それでも、まだ血を流すほどまで抵抗したことはない。
12:5 そして、あなたがたに我が子として語りかけている、あの励ましの言葉を忘れてしまっている。「わたしの子よ、主の訓練を軽く見てはいけない。主に叱られても、気を落としてはいけない。
12:6 主は、愛する者を訓練する。そして、受け入れるすべての子を、むちで打たれるのだから。」
12:7 訓練として、これに耐えなさい。神はあなたがたを、我が子として扱っておられるのだ。父親に訓練されない子など、いるだろうか。
12:8 でも、もしあなたがたが訓練を受けていないとしたら――それはすべての子が受けているものなのに――あなたがたは正式な子ではなく、私生児だということになる。
12:9 それに、わたしたちを訓練してくれた肉の父親がいて、わたしたちは彼らを敬っていた。それなら、なおさらのこと、わたしたちの霊の父に従って生きるべきではないだろうか。
12:10 肉の父親は、ほんの短い間、自分が良いと思うままに訓練した。でも神は、わたしたちの益のために、その聖さを分け与えようとして訓練してくださるのだ。
12:11 どんな訓練も、その最中は喜ばしいものではなく、つらく感じられる。けれども後になると、それによって鍛えられた人たちに、義という平安に満ちた実を結ばせてくれる。
12:12 だから、垂れ下がった手と、弱った膝を、まっすぐに立て直しなさい。
12:13 そして、自分の足でまっすぐな道を歩みなさい。そうすれば、なえた足も、道を踏みはずすことなく、むしろいやされるだろう。
12:14 すべての人と平和に過ごすように努め、また聖さを追い求めなさい。聖さがなければ、だれも主を見ることはできない。
12:15 気をつけていなさい。だれかが神の恵みから取り残されることのないように。また、苦い根が生え出て人々を悩ませ、それによって多くの人が汚されることのないように。
12:16 だれも、みだらな者や、俗っぽい者にならないように。エサウのように。彼は、たった一度の食事のために、長子としての権利を売り渡してしまった。
12:17 あなたがたも知っているとおり、彼は後になって、その祝福を受け継ごうとしたが、退けられた。涙を流して求めたのに、悔い改めのやり直す機会は見つからなかったのだ。
12:18 あなたがたが近づいているのは、手で触れられる山ではない。燃える火や、黒雲や、暗やみや、あらしでもない。
12:19 ラッパの響きや、語りかける声にも近づいているのではない。その声を聞いた人たちは、これ以上自分たちに語らないでほしい、と願い出た。
12:20 「動物でさえ、その山に触れたら、石で打ち殺されなければならない」という命令に、彼らは耐えられなかったのだ。
12:21 その光景があまりにも恐ろしかったので、モーセでさえ「わたしは怖くて震えている」と言ったほどだった。
12:22 でも、あなたがたが近づいているのは、シオンの山、生きている神の都、天にあるエルサレムだ。数え切れないほどの天使たちが、喜びに満ちて集まっている。
12:23 天に名を登録された長子たちの集まりに、あなたがたは近づいている。すべての人を裁く神のもとに、そして、完全なものとされた正しい人たちの霊のもとに近づいているのだ。
12:24 また、新しい契約の仲介者であるイエスのもとに、そして、アベルの血よりもすぐれたことを語りかける、注がれた血のもとに近づいている。
12:25 語りかける方を拒まないように気をつけなさい。地上で警告した方を拒んだ人たちが逃れられなかったのなら、天から語りかける方に背を向けるわたしたちは、なおさら逃れられない。
12:26 あのとき、神の声は地を揺り動かした。でも今、神はこう約束している。「わたしはもう一度、地だけでなく、天をも揺り動かす。」
12:27 この「もう一度」という言葉は、揺り動かされるもの、つまり造られたものが取り除かれることを示している。それは、揺り動かされないものが残るためなのだ。
12:28 だから、揺り動かされることのない御国を受け取るわたしたちは、感謝しよう。その恵みによって、敬いと畏れをもって、神に喜ばれるように仕えていこう。
12:29 わたしたちの神は、すべてを焼き尽くす火だからだ。
13:1 兄弟姉妹として、これからも愛し合っていこう。
13:2 旅人をもてなすことを忘れてはいけない。そうやって、それと気づかずに天使をもてなした人たちもいたのだから。
13:3 牢につながれている人たちを、自分も一緒につながれているつもりで心にかけよう。ひどい扱いを受けている人たちのことも、自分も同じ体を持つ者として気づかってあげよう。
13:4 結婚はだれにとっても尊いものであり、夫婦の床は汚してはならない。神は、性的に乱れた人や不倫をする人をさばかれるからだ。
13:5 お金を愛する生き方をせず、今持っているもので満足しよう。神ご自身がこう言われたのだから。「わたしは決してあなたを見捨てない。あなたを見放すことも絶対にない。」
13:6 だからわたしたちは、安心してこう言える。「主はわたしを助けてくださる。だから恐れない。人がわたしに何をしようとも。」
13:7 あなたがたを導いてくれた人たち、神の言葉を語ってくれた人たちのことを思い出そう。その生き方がどんな実を結んだかをよく見て、その信仰を見習おう。
13:8 イエス・キリストは、昨日も今日も、そして永遠に変わることがない。
13:9 いろいろな風変わりな教えに振り回されてはいけない。心を支えるのは、恵みによってであって、食べ物のきまりによってではない。それにこだわった人たちは、何の得もしなかった。
13:10 わたしたちには祭壇がある。その祭壇のものを食べる資格は、幕屋で仕える人たちにはない。
13:11 動物の血は、罪のためのささげ物として大祭司によって聖所へ運び込まれるが、その体は宿営の外で焼かれてしまう。
13:12 だからイエスも、ご自分の血によって民を聖なるものとするために、町の門の外で苦しみを受けられた。
13:13 だから、わたしたちも宿営の外に出て、イエスのところへ行こう。イエスが受けた辱めを、自分も引き受けながら。
13:14 わたしたちには、この地上にいつまでも続く町はない。だからこそ、これから来る町を探し求めている。
13:15 だから、イエスを通して、いつも神に賛美のささげ物をささげよう。それは、神の名をたたえる唇の実だ。
13:16 そして、善い行いと分かち合いを忘れてはいけない。こうしたささげ物こそ、神が喜んでくださるものだから。
13:17 あなたがたを導く人たちに従い、その言葉を聞き入れなさい。彼らは、いつか神に報告する者として、あなたがたの魂を守るために眠らずに見張っているのだから。彼らがこの務めを、嘆きながらではなく喜んで果たせるようにしなさい。そうでなければ、あなたがたのためにならない。
13:18 わたしたちのために祈ってほしい。わたしたちは、すべてにおいて正しく生きたいと願っていて、やましいところのない良心を持っていると確信している。
13:19 特にお願いしたいのは、わたしが一日でも早くあなたがたのところへ帰れるように、祈ってほしいということだ。
13:20 平和の神は、羊の大牧者であるわたしたちの主イエスを、永遠の契約の血によって死者の中から復活させてくださった。
13:21 その神が、あなたがたをあらゆる善いもので整え、御心を行えるようにしてくださいますように。そして、イエス・キリストを通して、神に喜ばれることをわたしたちのうちに行ってくださいますように。栄光が、世々限りなくイエス・キリストにありますように。アーメン。
13:22 兄弟姉妹よ、お願いする。この励ましの言葉を、どうか受け入れてほしい。ほんの手短に書き送っただけなのだから。
13:23 わたしたちの兄弟テモテが釈放されたことを、知っておいてほしい。彼が早く来れば、いっしょにあなたがたに会いに行くつもりだ。
13:24 あなたがたを導くすべての人たちと、神のものとされたすべての人たちに、よろしく伝えてほしい。イタリアから来た人たちも、あなたがたによろしくと言っている。
13:25 恵みが、あなたがたすべてとともにありますように。
ヤコブの手紙
1:1 神と主イエス・キリストに仕える者、ヤコブから。世界じゅうに散らばって暮らす十二の部族のみなさんへ。ごきげんよう。
1:2 わたしの兄弟姉妹たち。いろいろな試練にぶつかったときは、それを心からの喜びと考えてほしい。
1:3 あなたがたの信仰がためされると、そこから忍耐が生まれる。それを知っているからだ。
1:4 その忍耐を、最後までやりとげさせなさい。そうすれば、あなたがたは何ひとつ欠けることのない、成熟した完全な人になる。
1:5 もし知恵が足りない人がいるなら、神に願いなさい。神は、だれにでも惜しみなく、とがめることもなく与えてくださる。だから、その人は必ず与えられる。
1:6 ただし、少しも疑わずに、信じて願いなさい。疑う人は、風に吹かれて揺れ動く海の波のようなものだ。
1:7 そういう人は、主から何かをいただけるなどと思ってはいけない。
1:8 心が二つに分かれた人は、何をするにも安定しないからだ。
1:9 身分の低い兄弟姉妹は、自分が高く上げられていることを誇りなさい。
1:10 逆に、豊かな人は、自分が低くされることを誇りなさい。豊かな人は、草の花のように消えていくからだ。
1:11 太陽が昇って照りつけると、草は枯れ、その花は散り、美しい姿は失われてしまう。それと同じように、豊かな人も、あれこれ動きまわっているうちにしぼんでいくのだ。
1:12 試練にじっと耐える人は、幸いである。そういう人はためされて本物と認められ、いのちの冠を受け取るからだ。それは、神が、ご自分を愛する人たちに約束されたものだ。
1:13 誘惑にあっているとき、「神に誘惑されている」と言ってはいけない。神は悪に誘惑されることがなく、ご自分でだれかを誘惑することもないからだ。
1:14 人が誘惑にあうのは、自分の欲望に引きずられ、おびき寄せられるからだ。
1:15 そして欲望がはらむと罪を生み、罪が育ちきると死を生み出す。
1:16 わたしの愛する兄弟姉妹よ、思い違いをしてはいけない。
1:17 良い贈り物、完全な贈り物はすべて、上から、光を造られた父のもとから降ってくる。この父には、移り変わりも、揺れ動いて生まれる影もない。
1:18 父はご自分の意志で、真理のことばによってわたしたちを生んでくださった。それは、わたしたちが、造られたすべてのものの中で最初の実となるためだ。
1:19 わたしの愛する兄弟姉妹よ、よく覚えておきなさい。だれもが、聞くのに早く、話すのに遅く、怒るのに遅くありなさい。
1:20 人の怒りは、神の義を生み出さないからだ。
1:21 だから、あらゆる汚れと、あふれるほどの悪を捨て去りなさい。そして、あなたがたのうちに植えつけられた、たましいを救うことのできることばを、素直に受け入れなさい。
1:22 ただ聞くだけで、自分をごまかす人になってはいけない。ことばを実行する人になりなさい。
1:23 ことばを聞くだけで実行しない人は、鏡に自分の生まれつきの顔を映して見る人のようだ。
1:24 自分の姿をよく見ても、立ち去ったとたん、自分がどんな姿だったかをすぐに忘れてしまうのだ。
1:25 でも、自由を与える完全な律法をじっと見つめ、それを守り続ける人は違う。聞いてすぐ忘れる人ではなく、実際に行う人だ。そういう人は、その行いによって幸いになる。
1:26 自分は信仰があると思っていても、自分の舌を制御できず、心の中で自分をごまかしているなら、その人の信仰は無意味だ。
1:27 父である神の前で、清く汚れのない信仰とはこういうものだ。それは、困っている孤児や未亡人を訪ねて世話をすること、そして世の汚れに染まらないよう自分を守ることだ。
2:1 わたしの兄弟姉妹たち。栄光に満ちたわたしたちの主イエス・キリストを信じているなら、人を見た目で差別してはいけない。
2:2 たとえば、あなたたちの集まりに、金の指輪をはめ、立派な服を着た人が入ってきたとする。同じところに、汚れた服を着た貧しい人も入ってきたとしよう。
2:3 そのとき、立派な服を着た人には気をつかって「どうぞ、こちらの良い席へ」と言い、貧しい人には「あなたはそこに立っていなさい」とか「わたしの足もとに座りなさい」と言ったとする。
2:4 それなら、あなたたちは自分たちの間で人を差別し、悪い考えで人を裁く者になっているのではないか。
2:5 わたしの愛する兄弟姉妹たち、よく聞いてほしい。神は、この世で貧しい人たちを選んで、信仰において豊かな者とし、神を愛する人たちに約束された御国を受け継ぐ者としてくださったのではないか。
2:6 それなのに、あなたたちは貧しい人を軽んじている。あなたたちを苦しめ、裁判所へ引っぱっていくのは、金持ちたちではないか。
2:7 その金持ちたちこそ、あなたたちが呼ばれるときのあの尊い名を、悪く言っているのではないか。
2:8 もしあなたたちが、聖書にある「自分を愛するように、あなたの隣人を愛しなさい」という、王にふさわしい最も大切な律法を本当に守っているのなら、それは立派なことだ。
2:9 でも、もし人を差別するなら、あなたたちは罪を犯していることになる。そして律法によって、掟を破る者だと明らかにされてしまう。
2:10 なぜなら、律法全体を守っていても、その中のたった一つでもつまずけば、すべてを破ったのと同じことになるからだ。
2:11 「姦淫してはならない」と言われた方は、「殺してはならない」とも言われた。だから、たとえ姦淫はしなくても、人を殺せば、あなたは律法を破る者になる。
2:12 だから、自由をもたらす律法によって裁かれる者らしく、語り、行動しなさい。
2:13 あわれみを示さなかった者には、あわれみのない裁きが下る。あわれみは、裁きに向かって勝ち誇るのだ。
2:14 わたしの兄弟姉妹たち、もしだれかが「信仰がある」と口では言っても、その行いがないなら、何の役に立つだろう。そんな信仰が、その人を救えるだろうか。
2:15 たとえば、兄弟や姉妹が着る物もなく、その日の食べ物にも困っているとする。
2:16 それなのに、あなたたちのだれかが「元気で。温かくして、お腹いっぱい食べてね」と言うだけで、体に必要な物を何も与えないなら、何の役に立つだろう。
2:17 それと同じで、信仰も、行いがともなわなければ、それだけでは死んでいる。
2:18 しかし、こう言う人もいるだろう。「あなたには信仰があり、わたしには行いがある」と。それなら、行いのないあなたの信仰を見せてほしい。わたしは自分の行いによって、信仰を見せよう。
2:19 あなたは神がただひとりだと信じている。それはいいことだ。でも、悪霊たちだってそう信じて、恐れて震えている。
2:20 浅はかな人よ、行いのともなわない信仰が役に立たないことを、知りたいのか。
2:21 わたしたちの父祖アブラハムは、息子イサクを祭壇にささげたとき、その行いによって義と認められたのではないか。
2:22 わかるだろう。信仰は彼の行いとともに働き、その行いによって信仰は完成されたのだ。
2:23 そして、「アブラハムは神を信じた。それが彼の義と認められた」という聖書のことばが実現し、彼は神の友と呼ばれた。
2:24 このように、人が義と認められるのは行いによるのであって、信仰だけによるのではない。
2:25 同じように、遊女ラハブも、使いの者たちを迎え入れ、別の道から逃がしてやったとき、その行いによって義と認められたのではないか。
2:26 たましいのない体が死んでいるように、行いのともなわない信仰も死んでいるのだ。
3:1 わたしの兄弟姉妹たち、みんながこぞって教える人になろうとしてはいけない。教える者はより厳しく裁かれる。それを忘れないでほしい。
3:2 わたしたちはみんな、多くの点で失敗する。もし言葉で失敗しない人がいれば、その人は完全な人だ。体全体をきちんと制御できる人だ。
3:3 馬を思いどおりに動かすために、その口にくつわをかける。すると馬の体全体を操ることができる。
3:4 船を見てほしい。あんなに大きくて、激しい風に押されていても、ごく小さなかじひとつで、操縦する人の思うままの方向に動かされていく。
3:5 同じように、舌も体のごく小さな一部だ。それなのに大きなことを言って威張る。見てほしい。ほんの小さな火が、あんなに大きな森を燃やしてしまう。
3:6 舌も火だ。舌はわたしたちの体の一部でありながら、不義に満ちた一つの世となっている。体全体を汚し、人生のすべてを焼き尽くす。そしてその火は地獄から燃え移ってくるのだ。
3:7 どんな種類の獣も鳥も、爬虫類も海の生き物も、人間によって飼いならされてきたし、今も飼いならされている。
3:8 けれども舌を飼いならせる人は誰もいない。舌は休むことのない悪であり、死をもたらす毒に満ちている。
3:9 わたしたちはこの舌で、主である父をたたえる。ところが同じ舌で、神に似せて造られた人をのろうのだ。
3:10 同じ口から、祝福とのろいが出てくる。わたしの兄弟姉妹たち、こんなことがあってはならない。
3:11 泉が同じ湧き口から、甘い水と苦い水を出したりするだろうか。
3:12 わたしの兄弟姉妹たち、いちじくの木がオリーブの実をならせたり、ぶどうの木がいちじくをならせたりできるだろうか。同じように、塩水が甘い水を出すこともできない。
3:13 あなたたちの中で、知恵があり、物事をよくわきまえている人はだれだろう。その人は、正しい生き方によって、知恵から生まれる柔和さのうちに、自分の行いを示せばいい。
3:14 でも、もし心の中に苦々しいねたみや自分勝手な野心があるなら、誇ってはいけない。真理に逆らって嘘をついてはいけない。
3:15 そのような知恵は、上から下ってくるものではない。地に属し、人間的な思いから出た、悪霊のようなものだ。
3:16 ねたみや自分勝手な野心があるところには、混乱と、ありとあらゆる悪い行いがあるからだ。
3:17 でも、上から来る知恵は、まず第一に清い。そして、平和を好み、優しく、聞き分けがよく、あわれみと良い実に満ちていて、えこひいきをせず、うわべを飾らない。
3:18 そして、義という実は、平和をつくる人たちによって、平和のうちに蒔かれる。
4:1 あなたたちの間の争いやけんかは、どこから来るのだろう。それは、あなたたちの体の中で戦っている欲望から来るのではないか。
4:2 あなたたちは欲しがるのに、手に入らない。だから人を殺す。ねたむのに、得られない。だから争い、けんかをする。手に入らないのは、あなたたちが求めないからだ。
4:3 求めても得られないのは、求め方が間違っているからだ。自分の欲望のために使おうとして求めているのだ。
4:4 神を裏切る者たち。この世と親しくなることは、神に敵対することだと知らないのか。だから、この世の友になろうとする人は、だれでも神の敵になるのだ。
4:5 それとも、聖書が意味もなくこう言っていると思うのか。「神は、わたしたちの内に住まわせた霊を、ねたむほどに慕っておられる」と。
4:6 しかし、神はさらに大きな恵みを与えてくださる。だから、こう書かれている。「神は高ぶる者に敵対し、へりくだる者には恵みを与えられる。」
4:7 だから、神に従いなさい。そして、悪魔には立ち向かいなさい。そうすれば、悪魔はあなたたちから逃げていく。
4:8 神に近づきなさい。そうすれば、神もあなたたちに近づいてくださる。罪を犯している者たち、その手を洗いなさい。心が二つに割れている者たち、その心をきよめなさい。
4:9 苦しみ、悲しみ、泣きなさい。笑いを悲しみに、喜びを暗い顔に変えなさい。
4:10 主の前でへりくだりなさい。そうすれば、主があなたたちを高く引き上げてくださる。
4:11 兄弟姉妹よ、たがいに悪口を言ってはいけない。仲間の悪口を言ったり、仲間を裁いたりする人は、律法の悪口を言い、律法を裁いているのだ。もし律法を裁くなら、あなたは律法を行う者ではなく、裁く者になっている。
4:12 律法を定め、裁くことができる方は、ただひとりだけだ。人を救うことも、滅ぼすこともできる方だ。それなのに、隣人を裁くあなたは、いったい何者なのか。
4:13 さあ、こう言っている人たちよ。「きょうか、あす、あの町へ行って、そこで一年を過ごし、商売をしてもうけよう」と。
4:14 でも、あなたたちは、あすのことさえ分かっていない。あなたたちの命とは、いったい何なのか。ほんの少しの間だけ現れて、すぐに消えていく霧のようなものだ。
4:15 むしろ、こう言うべきだ。「主のみこころなら、わたしたちは生きて、あれこれのことをしよう」と。
4:16 それなのに、あなたたちは自分の思い上がりを誇っている。そんな誇りは、すべて悪いものだ。
4:17 だから、良いことだと分かっていながら、それをしないなら、それはその人にとって罪になる。
5:1 さあ、金持ちたち、よく聞いてほしい。これから降りかかってくる苦しみを思って、声をあげて泣きわめきなさい。
5:2 あなたたちの富は腐り、着ている服も虫に食われてしまった。
5:3 金や銀もさびついてしまった。そのさびが、あなたたちを告発する証拠になる。そして火のように、あなたたちの肉を食い尽くすだろう。あなたたちは終わりの時だというのに、財産をため込んでいたのだ。
5:4 見なさい。あなたたちの畑で刈り入れをした働き手たちに、あなたたちは賃金を払わずにいた。その未払いの賃金が叫んでいる。刈り入れをした人たちの叫び声は、全能の主の耳に届いている。
5:5 あなたたちはこの地で、ぜいたくをし、好き放題に楽しんできた。屠られる日を前にして、自分の心を太らせていたのだ。
5:6 あなたたちは正しい人を罪に定め、殺した。その人は、あなたたちに手向かいもしなかった。
5:7 だから兄弟姉妹よ、主が来られる日まで、じっと耐えて待ちなさい。見なさい。農夫は、大地が実らせる大切な作物を待っている。秋の雨と春の雨が降るまで、辛抱強く待ち続けるのだ。
5:8 あなたたちも同じように、じっと耐えて待ちなさい。心をしっかり保ちなさい。主が来られる日は、もう近づいているのだから。
5:9 兄弟姉妹よ、たがいに不平を言い合ってはいけない。あなたたちが裁かれないためだ。見なさい。裁く方は、もう戸口の前に立っておられる。
5:10 兄弟姉妹よ、主の名によって語った預言者たちを、手本にしなさい。彼らは苦しみに耐え、じっと待ち続けたのだ。
5:11 見なさい。最後まで耐え抜いた人たちを、わたしたちは幸いだと言う。あなたたちはヨブが耐え抜いたことを聞いているし、主が最後にどうしてくださったかも知っている。主はとても情け深く、あわれみに満ちた方なのだ。
5:12 わたしの兄弟姉妹よ、何よりもまず、誓いを立ててはいけない。天にかけても、地にかけても、そのほかの何にかけても誓ってはならない。あなたたちは、そうならそうと、違うなら違うと言えばいい。裁きを受けることにならないためだ。
5:13 あなたたちの中で、つらい思いをしている人はいるか。その人は祈りなさい。喜んでいる人はいるか。その人は賛美の歌を歌いなさい。
5:14 あなたたちの中で、病気の人はいるか。その人は教会の長老たちを呼びなさい。長老たちは主の名によってその人にオリーブ油を塗り、その人のために祈ってあげなさい。
5:15 信仰から出た祈りは、病んでいる人を救う。主がその人を立ち上がらせてくださる。もしその人が罪を犯していたとしても、その罪は赦される。
5:16 だから、互いに罪を打ち明け合い、癒されるように互いのために祈りなさい。正しい人の祈りは、大きな力となって働く。
5:17 エリヤはわたしたちと同じ、弱さを持った人間だった。それでも、雨が降らないようにと真剣に祈ると、三年半のあいだ地に雨が降らなかった。
5:18 そしてもう一度祈ると、天は雨を降らせ、地は実りを生み出した。
5:19 わたしの兄弟姉妹よ、あなたたちの中のだれかが真理から迷い出てしまい、それをだれかが連れ戻したとする。
5:20 覚えておきなさい。罪を犯した人を間違った道から連れ戻す人は、その人の魂を死から救い出し、たくさんの罪をおおうことになるのだ。
ペテロの第一の手紙
1:1 イエス・キリストの使徒ペトロから。ポント、ガラテヤ、カパドキア、アジア、ビティニアの各地に散らされ、この世で仮住まいのように生きている、神に選ばれた人たちへ。
1:2 あなたたちが選ばれたのは、父である神が前もってそう決めていたからだ。神の霊があなたたちを聖なるものとし、あなたたちがイエス・キリストに従い、その血を注ぎかけられるためだ。あなたたちの上に、恵みと平安がますます豊かにありますように。
1:3 わたしたちの主イエス・キリストの父である神をほめたたえよう。神はその大きなあわれみによって、わたしたちを新しく生まれさせてくれた。イエス・キリストが死者の中から復活したことで、わたしたちには生きた希望が与えられたのだ。
1:4 そして、朽ちることも、汚れることも、色あせることもない財産が用意されている。それはあなたたちのために、天に大切に保管されている。
1:5 あなたたちは信仰によって、神の力に守られている。それは、終わりの時に現れる準備が整っている救いを受けるためだ。
1:6 だから、あなたたちは大いに喜んでいる。今しばらくは、いろいろな試練にあって悲しむこともあるかもしれない。
1:7 でも、それはあなたたちの信仰が本物だと証明されるためだ。金でさえ火で試されるが、いずれは消えてなくなる。あなたたちの信仰は金よりもずっと価値がある。その信仰は、イエス・キリストが現れるとき、賞賛と栄光と誉れをもたらすことになる。
1:8 あなたたちはイエスを見たことがないのに、愛している。今も見えていないのに、信じている。そして、言葉では言い表せない、栄光に満ちた喜びにあふれている。
1:9 信じ続けた結果として、あなたたちは自分のたましいの救いを受け取っているのだ。
1:10 この救いについては、預言者たちが熱心に調べ、探し求めていた。彼らは、あなたたちに与えられる恵みについて予告していたのだ。
1:11 彼らの内にいたキリストの霊は、キリストが受ける苦しみと、その後にくる栄光を前もって告げていた。預言者たちは、その霊がいつ、どんな時のことを指し示しているのかを調べていた。
1:12 そして彼らは、自分たちのためではなく、あなたたちのためにこのことを伝えているのだと知らされた。それが今、天から送られた聖なる霊によって福音を伝える人たちを通して、あなたたちに告げ知らされたのだ。天使たちさえ、この救いをのぞき込みたいと願っている。
1:13 だから、いつでも動けるように心を引き締めなさい。気を確かに保ち、イエス・キリストが現れるときにあなたたちにもたらされる恵みに、すべての望みをかけなさい。
1:14 素直に従う子どもとして、以前、何も知らなかったころの欲望に、もう自分を合わせてはいけない。
1:15 むしろ、あなたたちを招いてくださった方が聖なる方であるように、あなたたち自身も、すべての生き方において聖なる者になりなさい。
1:16 「わたしが聖なる者だから、あなたたちも聖なる者でありなさい」と書いてあるとおりだ。
1:17 また、人をえこひいきせず、それぞれの行いに応じて公平に裁く方を「父」と呼んでいるのなら、この地上に仮に住んでいる間、その方を畏れて生きなさい。
1:18 あなたたちは知っているはずだ。あなたたちが先祖から受け継いだむなしい生き方から救い出されたのは、銀や金のような、朽ちてしまうもので買い戻されたからではない。
1:19 傷もしみもない子羊のようなキリストの、尊い血によって救い出されたのだ。
1:20 キリストは、世界が造られる前から選ばれていた。そして今、この終わりの時代に、あなたたちのために姿を現された。
1:21 あなたたちは、このキリストによって神を信じている。神はキリストを死者の中からよみがえらせ、栄光をお与えになった。だから、あなたたちの信仰と望みは神に向かっている。
1:22 あなたたちは真理に従うことで自分の心を清め、うわべだけでない、心からの兄弟姉妹への愛を持つようになった。だから、互いに心から、熱く愛し合いなさい。
1:23 あなたたちは新しく生まれた。それは朽ちてしまう種からではなく、朽ちることのない種から、つまり、生きていて、いつまでも変わらない神の言葉によって生まれたのだ。
1:24 こう書いてある。「人はみな草のようで、その栄えはすべて草の花のようだ。草は枯れ、花は散る。
1:25 でも、主の言葉はいつまでも変わらない。」この言葉こそ、あなたたちに伝えられた福音、つまり良い知らせなのだ。
2:1 だから、あらゆる悪意、あらゆるごまかし、見せかけの態度、ねたみ、そしてすべての悪口を捨てなさい。
2:2 生まれたばかりの赤ちゃんのように、混じりけのない、霊的な乳を強く求めなさい。それを飲んで成長し、救いへと向かうためだ。
2:3 あなたたちは、主がどんなに良い方かを、すでに味わったのだから。
2:4 主のもとに来なさい。主は生きた石だ。人には捨てられたが、神にとっては選ばれた、価値ある石なのだ。
2:5 あなたたち自身も、生きた石として、霊の家に築き上げられていく。そして聖なる祭司となり、イエス・キリストを通して、神に喜ばれる霊のささげ物を献げるのだ。
2:6 聖書にこう書いてあるからだ。「見よ、わたしはシオンに、選ばれた、価値ある一つの隅の親石を置く。これを信じる者は、決して失望させられることがない。」
2:7 だから、信じているあなたたちにとって、この石は価値がある。しかし信じない者にとっては、こうなる。「家を建てる者たちが捨てた石、それがいちばん大切な隅の石になった。」
2:8 また、「つまずかせる石、ころばせる岩」となった。彼らは言葉に従わず、つまずく。そうなるように定められていたのだ。
2:9 しかし、あなたたちは選ばれた民、王に仕える祭司、聖なる国民、神ご自身のものとされた民だ。それは、あなたたちを闇の中から、驚くばかりの光の中へと呼び入れてくださった方の、すばらしさを伝えるためだ。
2:10 あなたたちは、かつては神の民ではなかったが、今は神の民だ。かつてはあわれみを受けていなかったが、今はあわれみを受けている。
2:11 愛する人たち。あなたたちは、この世では旅人であり、仮住まいの者だ。だから、あなたたちにお願いする。心と戦う肉の欲を遠ざけなさい。
2:12 まわりの人たちの中で、立派に生きなさい。そうすれば、あなたたちを悪人呼ばわりする人も、あなたたちの良い行いを目にして、神が訪れてくださるその日に、神をたたえるようになる。
2:13 だから、主のために、人が立てたすべての制度に従いなさい。国の最高権力者である王であっても、
2:14 また、王から送られてくる知事たちであっても、従いなさい。彼らは、悪を行う者を罰し、善を行う者をほめるために送られているのだ。
2:15 善い行いをすることで、何も分かっていない愚かな人たちの口を封じる。それが神の望みだからだ。
2:16 あなたたちは自由な者として生きなさい。ただし、その自由を悪の言い訳に使ってはいけない。神に仕える者として生きなさい。
2:17 すべての人を敬いなさい。信じる仲間を愛しなさい。神を畏れなさい。王を敬いなさい。
2:18 使用人として働く人たち。心から敬って、主人に従いなさい。善良で優しい主人だけでなく、意地の悪い主人にも従いなさい。
2:19 不当な扱いを受けて苦しんでも、神を思ってじっと耐えるなら、それは価値のあることだ。
2:20 考えてみなさい。悪いことをして打たれ、それを耐えたところで、何の名誉になるだろうか。でも、善いことをして苦しみ、それでも耐えるなら、それは神に喜ばれることだ。
2:21 あなたたちは、そのために召されたのだ。キリストもあなたたちのために苦しみ、その足あとをたどれるように、模範を残してくださった。
2:22 この方は、罪を犯したことがなく、その口には偽りもなかった。
2:23 ののしられても、ののしり返さず、苦しめられても、おどし返さなかった。ただ、正しく裁いてくださる方に、すべてをゆだねた。
2:24 この方は、わたしたちの罪をその身に負って、十字架の上でその罪を背負ってくださった。わたしたちが罪に対して死に、義のために生きるためだ。この方の傷によって、あなたたちはいやされたのだ。
2:25 あなたたちは、迷い出た羊のようだった。でも今は、自分のたましいを導く羊飼いであり、見守ってくださる方のもとに帰ってきたのだ。
3:1 同じように、妻たちよ、自分の夫に従いなさい。そうすれば、たとえ神の言葉に従わない夫がいても、妻の生き方を見て、言葉がなくても心を動かされるだろう。
3:2 あなたたちの、神を敬う清らかな生き方を目にするからだ。
3:3 あなたたちの美しさは、髪を編んだり、金の飾りを着けたり、りっぱな服を着たりする、外側のものであってはならない。
3:4 そうではなく、心の奥に隠れた人がら、つまり穏やかで静かな心の、朽ちることのない美しさこそ、あなたたちの飾りであるべきだ。それは神の前で、とても価値のあるものだ。
3:5 昔、神に望みを置いていた聖なる女性たちも、こうして自分を美しくしていた。自分の夫に従いながら。
3:6 サラがアブラハムに従い、彼を「主人」と呼んだように。あなたたちも善を行い、どんなことにもおびえないなら、サラの子となるのだ。
3:7 同じように、夫たちよ、思いやりをもって妻と暮らしなさい。妻はより弱い器だとわきまえて敬い、いのちという恵みをともに受け継ぐ者として大切にしなさい。そうすれば、あなたたちの祈りがさまたげられることはない。
3:8 最後に、みな心を一つにしなさい。思いやりを持ち、兄弟姉妹として愛し合い、あわれみ深く、へりくだりなさい。
3:9 悪に悪を返さず、ののしりにののしりを返さず、むしろ祝福しなさい。あなたたちは、祝福を受け継ぐために招かれたのだから。
3:10 「いのちを愛し、幸せな日々を送りたいと願う人は、舌で悪を語るのをやめ、くちびるでうそを言うのをやめよ。
3:11 悪から離れて善を行い、平和を求め、それを追い求めよ。
3:12 主の目は正しい人たちに注がれ、その耳は彼らの祈りに傾けられる。しかし主の顔は、悪を行う者たちに立ち向かう。」
3:13 もし善に熱心になるなら、いったいだれがあなたたちに害を加えるだろうか。
3:14 でも、たとえ義のために苦しむことがあっても、あなたたちは幸いだ。彼らの脅しにおびえてはいけない。動揺してもいけない。
3:15 心の中でキリストを主としてあがめなさい。そして、あなたたちのうちにある希望について説明を求める人には、だれにでもいつでも答えられるように備えておきなさい。
3:16 ただし、やさしく、敬う心をもって、また正しい良心を保って答えなさい。そうすれば、キリストにあるあなたたちの良い生き方をののしる人たちは、あなたたちの悪口を言ったことで恥じ入ることになる。
3:17 もし神が望まれるのなら、善を行って苦しむほうが、悪を行って苦しむよりもずっとよい。
3:18 キリストも、罪のために一度だけ苦しまれた。正しい方が正しくない者たちのために苦しみ、あなたたちを神のもとへ導くためだった。キリストは肉体では死なれたが、霊においては生かされた。
3:19 そしてその霊において、キリストは捕らえられている霊たちのところへ行き、宣べ伝えた。
3:20 彼らは昔、ノアの時代に神が忍耐して待っておられたとき、従わなかった者たちだ。その間に箱舟が造られ、そこに入ったわずかな人、つまり八人だけが水を通って救われた。
3:21 この水が指し示すバプテスマは、今あなたたちを救う。それは体の汚れを洗い落とすことではなく、正しい良心を求めて神に誓うことだ。そして、イエス・キリストの復活によって救うのだ。
3:22 キリストは天に上り、神の右におられる。天使たちも、もろもろの権威も力も、すべてキリストに従わされている。
4:1 だから、キリストは肉体で苦しみを受けた。あなたたちも同じ覚悟で自分を武装しなさい。肉体で苦しみを受けた人は、罪との関わりを断ち切ったのだ。
4:2 こうしてこれからは、残りの人生を人間の欲望のままにではなく、神の望みにそって生きるのだ。
4:3 神を知らない人たちが好むように生きた時間は、もう十分すぎるほどだ。あなたたちはこれまで、みだらな行い、欲望、酒におぼれること、どんちゃん騒ぎ、飲み会、そして許されない偶像礼拝にふけってきた。
4:4 彼らは、あなたたちがもう自分たちと一緒に同じ乱れた遊びに突き進まないのを見て、不思議がり、悪口を言う。
4:5 しかし彼らは、生きている人も死んだ人もさばこうと構えているお方に、その報告をしなければならない。
4:6 死んだ人たちにも良い知らせが伝えられたのは、このためだ。人間の基準では肉体においてさばかれても、神の前では霊において生きるためなのだ。
4:7 すべての終わりが近づいている。だから心を落ち着けて、頭を冷やし、祈りなさい。
4:8 何よりもまず、たがいに深く愛し合いなさい。愛は多くの罪をおおうからだ。
4:9 不平を言わずに、たがいをもてなしなさい。
4:10 それぞれが神から受けた賜物を、たがいのために使いなさい。神のさまざまな恵みを預かる、よい管理者としてだ。
4:11 語る人は、神の言葉を語るように語りなさい。仕える人は、神が与えてくださる力によって仕えなさい。すべてにおいてイエス・キリストを通して神が栄光を受けるためだ。栄光と力が、世々かぎりなく神にありますように。アーメン。
4:12 愛する人たち。あなたたちを試すために燃えさかる試練が起きても、それを何か思いがけないことが起きたかのように、不思議がってはいけない。
4:13 むしろ、あなたたちはキリストの苦しみを分かち合っているのだから、喜びなさい。それは、キリストの栄光が現れるときに、あなたたちも大きな喜びにあふれるためだ。
4:14 キリストの名のためにののしられるなら、あなたたちは幸いである。栄光の霊、つまり神の霊が、あなたたちの上にとどまっているからだ。
4:15 あなたたちの中のだれも、人殺しや泥棒や悪事を働く者として、あるいは他人のことに口出しする者として、苦しみを受けることのないように。
4:16 しかし、キリストを信じる者として苦しみを受けるなら、恥じることはない。むしろ、この名によって神をあがめなさい。
4:17 今は、神の家からさばきが始まる時だからだ。もしそれがまずわたしたちから始まるなら、神の福音に従わない人たちの行き着く先は、どうなるのだろう。
4:18 正しい人がやっとのことで救われるのなら、神を敬わない者や罪人は、いったいどうなるのだろう。
4:19 だから、神の望みに従って苦しみを受ける人たちは、善い行いを続けながら、自分の魂を、真実な創造者にゆだねればよい。
5:1 そこで、あなたたちの中の長老たちに、わたしはお願いする。わたし自身も同じ長老であり、キリストの苦しみを見た証人であり、やがて現れる栄光にあずかる者でもある。
5:2 あなたたちにゆだねられた、神の羊の群れを世話しなさい。いやいやではなく、神が望まれるように、進んで世話をするのだ。恥ずべき利益のためではなく、心から喜んで世話をしなさい。
5:3 ゆだねられた人たちを支配者のように押さえつけるのではなく、群れの手本になりなさい。
5:4 そうすれば、大牧者が現れるとき、あなたたちは、しぼむことのない栄光の冠を受ける。
5:5 同じように、若い人たちは、年長者に従いなさい。そして、みなたがいに、へりくだる心を身につけなさい。「神は高ぶる者に立ち向かい、へりくだる者には恵みを与えてくださる」からだ。
5:6 だから、神の力強い御手の下で、自分を低くしなさい。そうすれば、神は時が来れば、あなたたちを高く上げてくださる。
5:7 あなたたちの心配ごとを、何もかも神にゆだねなさい。神があなたたちのことを、気にかけていてくださるからだ。
5:8 気を引きしめて、目を覚ましていなさい。あなたたちの敵である悪魔が、ほえたけるライオンのように、だれかを食い尽くそうと探し回っている。
5:9 信仰にしっかり立って、この敵に立ち向かいなさい。世界中にいるあなたたちの仲間も、同じ苦しみを通っていることを知っているはずだ。
5:10 あらゆる恵みの源である神は、あなたたちを、キリストにあるご自分の永遠の栄光へと招いてくださった。しばらくの間、苦しみを通ったあなたたちを、神ご自身が立ち直らせ、支え、強くし、しっかりとした土台の上に据えてくださる。
5:11 神に、力が、世々限りなくありますように。アーメン。
5:12 わたしが信頼している誠実な兄弟シルワノの手を借りて、わたしはあなたたちに短く書き送った。これこそ神のまことの恵みだと、あなたたちを励まし、はっきり伝えるためだ。この恵みの中に、しっかり立っていなさい。
5:13 あなたたちと共に選ばれた、バビロンにいる人たちが、あなたたちによろしくと言っている。わたしの子マルコも、よろしくと言っている。
5:14 たがいに愛のこもった口づけであいさつを交わしなさい。キリストにあるあなたたちすべてに、平安がありますように。
ペテロの第二の手紙
1:1 イエス・キリストに仕える者であり、使徒でもあるシメオン・ペテロから。わたしたちの神であり救い主であるイエス・キリストの義によって、わたしたちと同じ尊い信仰を与えられた人たちへ。
1:2 神と、わたしたちの主イエスを深く知ることによって、恵みと平安があなたがたに豊かに増し加えられますように。
1:3 イエスは、神としての力によって、いのちと、神を敬う生き方に必要なものを、すべてわたしたちに与えてくださった。それは、ご自身の栄光とすばらしさによってわたしたちを招いてくださった方を、深く知ることを通してである。
1:4 そしてこの栄光とすばらしさを通して、尊く、この上なく大きな約束をわたしたちに与えてくださった。それは、あなたがたがこの約束によって神の性質にあずかる者となり、欲望によって世に広がる腐敗から逃れるためである。
1:5 だからこそ、あらゆる努力を尽くして、あなたがたの信仰に徳を、徳に知識を加えなさい。
1:6 知識に自制を、自制に忍耐を、忍耐に、神を敬う心を加えなさい。
1:7 そして神を敬う心に兄弟姉妹への思いやりを、その思いやりに愛を加えなさい。
1:8 これらの性質があなたがたのうちに備わり、増し加わっていくなら、わたしたちの主イエス・キリストを深く知る歩みにおいて、あなたがたが役に立たない者、実を結ばない者になることはない。
1:9 しかし、これらを持っていない人は、目が見えない。近くのものしか見えず、自分の過去の罪がきよめられたことを忘れてしまっているのだ。
1:10 だから兄弟姉妹よ、いっそう努力して、自分が神に招かれ、選ばれていることを確かなものにしなさい。そうしていれば、決してつまずくことはない。
1:11 そうすれば、わたしたちの主であり救い主であるイエス・キリストの永遠の御国に入る道が、あなたがたのために豊かに開かれる。
1:12 だからわたしは、あなたがたがこれらのことをすでに知っていて、今持っている真理にしっかり立っているとしても、いつもこれを思い起こさせようと思う。
1:13 わたしは、この体という幕屋にいるかぎり、あなたがたにこれを思い起こさせて、目を覚まさせておくのが正しいことだと思っている。
1:14 わたしたちの主イエス・キリストがはっきり示してくださったとおり、わたしがこの幕屋を脱ぎ捨てる時が間近に迫っているのを知っているからだ。
1:15 だから、わたしが世を去った後も、あなたがたがいつでもこれらのことを思い出せるように、力を尽くそうと思う。
1:16 わたしたちが、主イエス・キリストの力と来臨をあなたがたに伝えたのは、巧みに作られた作り話を追いかけた結果ではない。わたしたちは、この目でキリストの偉大さを見た者たちなのだ。
1:17 キリストは、父なる神から誉れと栄光をお受けになった。あの偉大な栄光の中から、こう告げる声がキリストに向かって届いたのだ。「これはわたしの愛する子。わたしはこの子を心から喜ぶ。」
1:18 わたしたちは聖なる山でキリストと一緒にいて、この声が天から届くのを、自分の耳で聞いた。
1:19 こうして、わたしたちには預言の言葉がいっそう確かなものとなった。あなたがたはこの言葉に、暗い場所を照らす灯として目を向けているが、それは良いことだ。夜が明けて明けの明星があなたがたの心の中に昇るその時まで、そうしていなさい。
1:20 何よりもまず、このことを知っておいてほしい。聖書のどんな預言も、自分勝手に解釈していいものではない。
1:21 預言は、人の意志によって語られたことは一度もないからだ。人々が聖霊に動かされて、神から出た言葉を語ったのである。
2:1 でも、あの民の中には偽預言者もいた。それと同じように、あなたたちの中にも偽の教師が現れる。彼らはこっそりと、人を滅びに導く誤った教えを持ち込む。しかも、自分たちを買い取ってくれた主人さえ否定するのだ。こうして彼らは、自分自身に突然の滅びを招くことになる。
2:2 多くの人が彼らのふしだらな生き方についていく。そのせいで、真理の道が悪く言われることになる。
2:3 彼らは欲深く、作り話であなたたちを食いものにしようとする。でも、彼らへのさばきはずっと前から決まっていて、止まることはない。彼らを待つ滅びは、居眠りなどしていない。
2:4 神は、罪を犯した天使たちさえ見逃さなかった。それどころか、彼らを暗い穴に落とし、鎖につないで、さばきの時まで閉じ込めておかれた。
2:5 神は、大昔の世界も見逃さなかった。神を無視する人々の世界に洪水を起こしたのだ。でも、正しさを人々に語り伝えていたノアは、ほかの七人とともに守られた。
2:6 神は、ソドムとゴモラの町を灰にして滅ぼし、有罪と決めた。これから神を無視して生きる者たちへの、見せしめとするためだった。
2:7 その一方で、神は正しい人ロトを救い出した。ロトは、無法者たちのふしだらな生き方に、ひどく苦しめられていたのだ。
2:8 この正しい人はそういう者たちの中で暮らし、彼らの無法な行いを来る日も来る日も目にし、耳にして、正しい心を痛め続けていた。
2:9 こういうわけで、主は神を敬う人を試練から救い出す方法を知っておられる。そして、正しくない者たちを、さばきの日に罰するために閉じ込めておかれる。
2:10 とくに、汚れた欲望のままに肉に従って歩み、主人としての権威をあなどる者たちがそうだ。彼らは大胆で自分勝手で、栄光ある存在をののしっても平気でいる。
2:11 天使たちは彼らよりもずっと力も強さも上なのに、主の前でそういう存在をののしって責め立てたりはしない。
2:12 ところが彼らは、理性のない動物のようだ。生まれつき捕らえられ、滅ぼされるためのものにすぎない。彼らはよく知りもしないことをののしっている。そして、その動物と同じように滅ぼされることになる。
2:13 彼らは、自分が悪いことをしたむくいとして、害を受けることになる。彼らは、真っ昼間から遊びふけるのを楽しみと考えている。彼らはしみであり、傷だ。あなたたちと食事をともにしながら、自分の偽りを楽しんでいる。
2:14 その目は、いつも不倫の相手を求めていて、罪を犯すのをやめられない。彼らは、心の定まらない人たちを誘惑する。その心は、欲ばることに慣れきっている。彼らは、のろいを受けた子どもたちだ。
2:15 彼らはまっすぐな道を捨て、迷い出てしまった。そして、ボソルの子バラムの道をたどった。バラムは、不正で得るもうけを愛した人だ。
2:16 しかしバラムは、自分の悪い行いをとがめられた。ものを言わないロバが、人間の声で話しだし、この預言者の狂った行いをやめさせたのだ。
2:17 この者たちは、水のかれた泉であり、嵐に吹き飛ばされる霧だ。彼らには、真っ暗な闇が用意されている。
2:18 彼らは、大げさで中身のない言葉を口にする。そして、肉の欲望やみだらな行いをえさにして人を誘う。その相手は、まちがった生き方をする人たちから、やっと逃げ出したばかりの人たちだ。
2:19 彼らはその人たちに自由を約束する。ところが自分自身は、滅びの奴隷なのだ。人は、自分を打ち負かすものの奴隷になるからだ。
2:20 彼らは、わたしたちの主であり救い主であるイエス・キリストを知って、この世の汚れから逃れた。それなのに、また汚れにからめとられ、打ち負かされてしまうなら、その人の後の状態は、初めよりももっと悪くなる。
2:21 正しい道を知ったうえで、自分に伝えられた聖なる教えに背を向けてしまうくらいなら、初めからその道を知らなかったほうが、彼らにとってよかったのだ。
2:22 彼らの身には、あのことわざのとおりのことが起こった。「犬は、自分が吐いたもののところへ戻る。」また「豚は、体を洗ってもらっても、また泥の中を転げ回りに戻る。」これは本当のことわざだ。
3:1 愛する人たち。これは、わたしがあなたがたに書き送る二通目の手紙だ。どちらの手紙でも、わたしは思い起こさせることで、あなたがたの純真な心を奮い立たせようとしている。
3:2 つまり、昔の聖なる預言者たちが前もって語った言葉と、あなたがたの使徒たちを通して伝えられた、主であり救い主である方の命令を思い出してほしいのだ。
3:3 まず知っておいてほしい。終わりの日には、あざける者たちが現れる。彼らは自分勝手な欲望のままに生き、こうあざ笑う。
3:4 「あの方が来るという約束はどうなったんだ。先祖たちが眠りについてから、すべては世界が造られた初めのまま、何も変わらずに続いているじゃないか。」
3:5 彼らはわざと忘れている。天ははるか昔からあり、大地も神の言葉によって、水から、また水を通して造られたということを。
3:6 そして、その水によって、当時の世は洪水に飲み込まれて滅びてしまった。
3:7 でも、今の天と地は、同じ言葉によって火のために取っておかれている。神を敬わない者たちがさばかれ、滅ぼされるその日まで、保たれているのだ。
3:8 愛する人たち。このことだけは忘れないでほしい。主のもとでは、一日は千年のようであり、千年は一日のようだ。
3:9 主は約束を果たすのが遅いのではない。遅いと思っている人もいるが、そうではない。主はあなたがたに対して忍耐しておられるのだ。だれ一人滅びることなく、すべての人が悔い改めるようになることを願っておられるからだ。
3:10 しかし、主の日は盗人のように突然やって来る。その日、天は激しい音を立てて消え去り、すべての要素は焼けて崩れ落ち、地とそこで行われたすべてのことがあらわにされる。
3:11 こうしてすべてが崩れ去るのだから、あなたがたはどれほど聖なる生き方をし、神を敬って生きるべきだろうか。
3:12 神の日が来るのを待ち望み、その到来を早めるように生きてほしい。その日、天は燃えて崩れ去り、すべての要素は焼けて溶けてしまう。
3:13 でも、わたしたちは神の約束にしたがって、新しい天と新しい地を待ち望んでいる。そこには義が宿っている。
3:14 だから、愛する人たち、こうしたことを待ち望んでいるのだから、神の前で汚れなく、非難されるところもなく、平和のうちにいるところを見てもらえるように努めてほしい。
3:15 そして、わたしたちの主が忍耐しておられるのは、救いのためだと考えてほしい。わたしたちの愛する兄弟パウロも、与えられた知恵にしたがって、あなたがたに同じことを書き送っている。
3:16 パウロはどの手紙の中でも、こうしたことについて語っている。その手紙には理解しにくいところもあって、無知で心の定まらない人たちは、ほかの聖書と同じようにそれを曲げて解釈し、自分自身を滅びに引き込んでいる。
3:17 だから、愛する人たち、あなたがたはこのことを前もって知っているのだから、気をつけてほしい。悪い者たちの迷いに引きずられて、自分の堅い立場から落ちてしまわないように。
3:18 むしろ、わたしたちの主であり救い主であるイエス・キリストの恵みと知識のうちに成長してほしい。この方に、今も、そして永遠の日に至るまで、栄光がありますように。アーメン。
ヨハネの第一の手紙
1:1 初めからあったもの、わたしたちが聞いたもの、自分の目で見たもの、じっと見つめ、この手で触れたもの。それは、命の言葉についてのことだ。
1:2 その命が現れた。わたしたちはそれを見た。だから証しし、あなたたちに伝える。それは永遠の命であり、父とともにあって、わたしたちに現れたのだ。
1:3 わたしたちが見て、聞いたことを、あなたたちにも伝える。あなたたちも、わたしたちと交わりを持つためだ。わたしたちの交わりは、父と、その子イエス・キリストとの交わりでもある。
1:4 こうしたことを書くのは、わたしたちの喜びが満ちあふれるためだ。
1:5 わたしたちがイエスから聞いて、あなたたちに伝える知らせは、こうだ。神は光であり、神の中には闇がまったくない。
1:6 もし、神と交わりを持っていると言いながら、闇の中を歩んでいるなら、わたしたちは嘘をついていて、真理を生きていない。
1:7 でも、神が光の中におられるように、わたしたちも光の中を歩んでいるなら、互いに交わりを持つことができる。そして、神の子イエスの血が、すべての罪からわたしたちを清めてくれる。
1:8 もし、自分には罪がないと言うなら、わたしたちは自分を欺いていて、真理はわたしたちの中にない。
1:9 もし、自分の罪を認めるなら、神は真実で正しい方だから、わたしたちの罪を赦し、すべての悪からわたしたちを清めてくださる。
1:10 もし、自分は罪を犯していないと言うなら、わたしたちは神を嘘つきにしてしまう。そして、神の言葉はわたしたちの中にない。
2:1 わたしの子どもたちよ。あなたたちが罪を犯さないように、わたしはこれらのことを書いている。でも、もし誰かが罪を犯しても、父のもとにわたしたちを弁護してくれる方がいる。正しい方、イエス・キリストだ。
2:2 この方こそ、わたしたちの罪を取り除く、その償いそのものだ。しかも、わたしたちの罪だけでなく、世界中すべての人の罪のためでもある。
2:3 神の命令を守っているなら、それによってわたしたちは、自分が神を知っていることが分かる。
2:4 「神を知っている」と言いながら、その命令を守らない人は、うそつきだ。その人の中に真理はない。
2:5 でも、神の言葉を守っている人の中では、神の愛が本当に完成している。それによって、わたしたちが神の中にいることが分かる。
2:6 神の中にとどまっていると言う人は、イエスが生きたとおりに、自分も生きなければならない。
2:7 愛する人たちよ。わたしが書いているのは、新しい命令ではない。あなたたちが初めから受けてきた、古い命令だ。その古い命令とは、あなたたちが聞いてきた言葉のことだ。
2:8 それでいて、わたしはあなたたちに新しい命令を書いている。それは、キリストにおいても、あなたたちにおいても、本当のことだ。なぜなら、闇は過ぎ去りつつあり、本物の光がすでに輝いているからだ。
2:9 「自分は光の中にいる」と言いながら、兄弟姉妹を憎んでいる人は、今もなお闇の中にいる。
2:10 兄弟姉妹を愛している人は、光の中にとどまっている。その人の中には、つまずかせるものは何もない。
2:11 でも、兄弟姉妹を憎んでいる人は、闇の中にいて、闇の中を歩いている。自分がどこへ向かっているのかも分からない。闇がその目を見えなくしてしまったからだ。
2:12 子どもたちよ。わたしがあなたたちに書くのは、イエスの名によって、あなたたちの罪が赦されたからだ。
2:13 父たちよ。わたしがあなたたちに書くのは、あなたたちが初めからおられる方を知っているからだ。若者たちよ。わたしがあなたたちに書くのは、あなたたちが悪い者に打ち勝ったからだ。
2:14 子どもたちよ。わたしがあなたたちに書いたのは、あなたたちが父を知っているからだ。父たちよ。わたしがあなたたちに書いたのは、あなたたちが初めからおられる方を知っているからだ。若者たちよ。わたしがあなたたちに書いたのは、あなたたちが強く、神の言葉があなたたちの中にとどまっていて、悪い者に打ち勝ったからだ。
2:15 世も、世にあるものも、愛してはいけない。世を愛する人がいれば、その人の中に父への愛はない。
2:16 なぜなら、世にあるものはすべて、つまり肉の欲、目の欲、そして暮らしを誇る高ぶりは、父から出たものではなく、世から出たものだからだ。
2:17 世も、その欲も、過ぎ去っていく。でも、神が望むことを行う人は、いつまでもとどまる。
2:18 子どもたちよ。今は終わりの時だ。あなたたちは、キリストに敵対する者が来ると聞いていた。ところが今、そういう者が大勢現れている。それで、今が終わりの時だと分かる。
2:19 彼らはわたしたちのところから出ていった。でも、もともとわたしたちの仲間ではなかった。もし仲間だったなら、わたしたちと一緒にとどまっていたはずだ。彼らが出ていったのは、みんながわたしたちの仲間ではないと、はっきり示されるためだった。
2:20 しかし、あなたたちは聖なる方から注がれたものを受けていて、みな真理を知っている。
2:21 わたしがあなたたちに書いたのは、あなたたちが真理を知らないからではない。むしろ、あなたたちが真理を知っていて、偽りはすべて真理から出たものではないと知っているからだ。
2:22 偽り者とはいったい誰か。それは、イエスがキリストであることを否定する者だ。こういう者こそ、キリストに敵対する者であり、父と子を否定する者だ。
2:23 子を否定する人は、だれも父を持っていない。子を認める人は、父も持っている。
2:24 あなたたちは、初めから聞いてきたことを、自分の中にとどめておきなさい。初めから聞いてきたことがあなたたちの中にとどまっているなら、あなたたちも子の中に、そして父の中にとどまることになる。
2:25 そして、これこそがキリスト自身がわたしたちに約束してくれたものだ。それは永遠のいのちだ。
2:26 わたしがこれらのことを書いたのは、あなたたちを惑わそうとしている者たちについて知らせるためだ。
2:27 あなたたちについて言えば、キリストから受けた注ぎ（聖霊による導き）が、あなたたちの中にとどまっている。だから、だれかに教えてもらう必要はない。その注ぎがすべてのことについてあなたたちに教えてくれるからだ。それは本物であって、偽りではない。だからその教えのとおりに、あなたたちはキリストの中にとどまりなさい。
2:28 さあ、子どもたちよ、キリストの中にとどまっていなさい。そうすれば、キリストが現れるとき、わたしたちは堂々としていられる。キリストが来られるその日に、恥じ入って身を引くこともない。
2:29 キリストが正しい方だとわかっているなら、義を行う人がみな、キリストから生まれた者だということも、あなたたちにはわかるはずだ。
3:1 見てほしい。父がわたしたちに、どれほど大きな愛を注いでくれたことか。わたしたちは神の子どもと呼ばれ、そして実際にそうなのだ。世がわたしたちを知らないのは、世が父を知らなかったからだ。
3:2 愛する人たち。わたしたちは今、神の子どもだ。これから自分がどうなるのかは、まだ明らかにされていない。でも、こういうことはわかっている。キリストが現れるとき、わたしたちはキリストのような者になる。ありのままのキリストを、見ることになるからだ。
3:3 キリストにこの望みをかけている人はみな、キリストが清いのと同じように、自分自身を清くする。
3:4 罪を犯す人はみな、律法にも背いている。罪とは、律法に背くことだからだ。
3:5 あなたたちも知っているとおり、キリストは、わたしたちの罪を取り除くために現れた。そのキリストの中に、罪はまったくない。
3:6 キリストの中にとどまっている人はみな、罪を犯し続けることはない。罪を犯し続ける人はみな、キリストを見たこともなく、知ったこともないのだ。
3:7 子どもたちよ、だれにもだまされてはいけない。正しいことを行う人は、キリストが正しいのと同じように、正しい人なのだ。
3:8 罪を犯し続ける人は、悪魔の側にいる。悪魔は初めからずっと罪を犯しているからだ。神の子が現れたのは、この悪魔のしわざを打ち壊すためだった。
3:9 神から生まれた人はみな、罪を犯し続けることはない。神のいのちがその人の中にとどまっているからだ。神から生まれたのだから、その人は罪を犯し続けることができない。
3:10 こうして、だれが神の子どもで、だれが悪魔の子どもかがはっきりする。正しいことを行わない人はみな、神から出た者ではない。兄弟姉妹を愛さない人も同じだ。
3:11 あなたたちが初めから聞いてきたメッセージは、これだ。わたしたちは互いに愛し合おう、ということ。
3:12 カインのようであってはいけない。彼は悪い者の側にいて、自分の弟を殺した。なぜ殺したのか。自分の行いは悪く、弟の行いは正しかったからだ。
3:13 兄弟姉妹よ、世があなたたちを憎んでも、おどろくことはない。
3:14 わたしたちは、死から命へと移ったことを知っている。兄弟姉妹を愛しているからだ。愛さない人は、死の中にとどまったままだ。
3:15 兄弟姉妹を憎む人はみな、人殺しだ。あなたたちも知っているとおり、人殺しはだれも、自分の中に永遠の命をとどめてはいない。
3:16 愛とは何か。わたしたちはこうして知った。キリストが、わたしたちのために自分の命を捨ててくださったのだ。だからわたしたちも、兄弟姉妹のために命を捨てるべきなのだ。
3:17 もし世の富を持っているのに、困っている兄弟姉妹を見て、その人に心を閉ざすなら、どうして神の愛がその人の中にとどまっていると言えるだろうか。
3:18 子どもたちよ、言葉や口先だけで愛するのはやめよう。行いと真実をもって愛そう。
3:19 こうして、わたしたちは自分が真理から出た者だと分かる。そして神の前で、心を安心させることができる。
3:20 たとえ自分の心が自分を責めても、大丈夫だ。神はわたしたちの心よりも大きく、すべてを知っておられるのだから。
3:21 愛する人たちよ、もし心がわたしたちを責めないなら、わたしたちは堂々と神の前に出ることができる。
3:22 そして、求めるものは何でも神から与えられる。わたしたちが神の命令を守り、神に喜ばれることを行っているからだ。
3:23 その命令とはこうだ。神の子イエス・キリストの名を信じること。そして、キリストが命じてくださったとおり、互いに愛し合うこと。
3:24 神の命令を守る人は神の中にとどまり、神もその人の中にとどまってくださる。神がわたしたちの中にとどまっておられることは、神が与えてくださった霊によって分かる。
4:1 愛する人たちよ、どんな霊でも信じてはいけない。その霊が神から出たものかどうか、確かめなさい。偽の預言者がたくさん世に出てきているからだ。
4:2 神の霊はこうして見分けられる。イエス・キリストが人となってこの世に来られたと認める霊は、みな神から出たものだ。
4:3 だが、イエスを認めない霊は、どれも神から出たものではない。それは反キリストの霊だ。それが来ると聞いていただろう。その霊は、もう今、世に来ているのだ。
4:4 子どもたちよ、あなたがたは神から出た者だ。そして、あの偽預言者たちに打ち勝った。あなたがたの中におられる方が、世にいる者より大きいからだ。
4:5 彼らは世から出た者だ。だから、世のことを語り、世は彼らの言うことに耳を傾ける。
4:6 わたしたちは神から出た者だ。神を知っている人は、わたしたちの言うことを聞く。神から出ていない人は、わたしたちの言うことを聞かない。こうして、わたしたちは真理の霊と偽りの霊とを見分けるのだ。
4:7 愛する人たち、わたしたちは互いに愛し合おう。愛は神から出ているからだ。愛する人はみな神から生まれ、神を知っている。
4:8 愛さない人は、神を知らない。神は愛だからだ。
4:9 神はこうして、その愛をわたしたちに示された。神は、ひとり子を世に送ってくださった。その子によって、わたしたちが生きるためだ。
4:10 愛とはこういうことだ。わたしたちが神を愛したのではない。神がわたしたちを愛し、その子を送ってくださった。わたしたちの罪を償うためだ。
4:11 愛する人たち、神がこれほどまでにわたしたちを愛してくださったのだから、わたしたちも互いに愛し合うべきだ。
4:12 神を見た人は、これまでだれもいない。でも、わたしたちが互いに愛し合うなら、神はわたしたちの中におられ、その愛はわたしたちの中で完全なものになる。
4:13 神がわたしたちにご自分の霊を与えてくださった。だから、わたしたちが神の中にとどまり、神がわたしたちの中におられることが分かるのだ。
4:14 そして、わたしたちはそれを見た。だから証しする。父は、子を世の救い主として送ってくださった。
4:15 イエスが神の子であると告白する人はだれでも、その人の中に神がおられ、その人も神の中にとどまる。
4:16 わたしたちは、神がわたしたちに向けてくださっている愛を知り、信じている。神は愛だ。愛の中にとどまる人は神の中にとどまり、神もその人の中におられる。
4:17 こうして、愛はわたしたちの中で完全なものになった。だから、わたしたちは裁きの日にも堂々としていられる。この世で、わたしたちもキリストと同じようになっているからだ。
4:18 愛には恐れがない。完全な愛は恐れを追い出す。恐れは罰を思わせるものだからだ。恐れる人は、愛の中で完全なものになっていない。
4:19 わたしたちが愛するのは、神が先にわたしたちを愛してくださったからだ。
4:20 「神を愛している」と言いながら、自分の兄弟姉妹を憎む人がいるなら、その人は嘘つきだ。目に見える兄弟姉妹を愛せない人が、目に見えない神を愛せるはずがない。
4:21 神を愛する人は、自分の兄弟姉妹も愛しなさい——これが、わたしたちが神から受けた命令だ。
5:1 イエスがキリストだと信じる人はみな、神から生まれた者だ。そして、生んでくださった方を愛する人は、その方から生まれた者も愛する。
5:2 神を愛し、その命令を実行するとき、わたしたちが神の子どもたちを愛していることがわかる。
5:3 神を愛するとは、その命令を守ることだ。そして、神の命令は重荷ではない。
5:4 神から生まれた者はみな、世に打ち勝つからだ。世に打ち勝つ力、それがわたしたちの信仰だ。
5:5 世に打ち勝つ人とは、いったい誰だろう。イエスが神の子だと信じる人、その人だけだ。
5:6 水と血を通して来られた方、それがイエス・キリストだ。水だけでなく、水と血によって来られた。そして、それを証しするのは霊だ。霊は真理だからだ。
5:7 証しするものは三つある。
5:8 霊と水と血だ。この三つは、一つのことを指し示している。
5:9 わたしたちは人の証しでも受け入れる。でも、神の証しはそれよりも重い。これこそ神の証しであり、神がご自分の子について証しされたものだからだ。
5:10 神の子を信じる人は、この証しを自分の内に持っている。神を信じない人は、神を偽り者にしている。神がご自分の子について語られた証しを、信じていないからだ。
5:11 その証しとはこうだ。神はわたしたちに永遠の命を与えてくださった。そして、この命は神の子の中にある。
5:12 神の子を持つ人は、この命を持っている。神の子を持たない人は、命を持っていない。
5:13 これらのことを書いたのは、神の子の名を信じているあなたたちに、自分が永遠の命を持っていると知ってほしいからだ。
5:14 そして、わたしたちが神に対して持っている確信とはこうだ。何であれ、神の望みにそって願うなら、神は聞いてくださる。
5:15 そして、願うことを神が聞いてくださると分かっているなら、神に願ったものはもう手に入っていると分かる。
5:16 もし誰かが、自分の兄弟姉妹が罪を犯しているのを見ても、それが死に至る罪でないなら、その人のために願いなさい。そうすれば神は、死に至らない罪を犯しているその人に、命を与えてくださる。死に至る罪もある。それについては、願いなさいとは言わない。
5:17 不正はすべて罪だ。でも、死に至らない罪もある。
5:18 わたしたちは知っている。神から生まれた人はみな、罪を犯し続けることはない。神から生まれた方がその人を守ってくださり、悪い者は手を触れることができない。
5:19 わたしたちは知っている。わたしたちは神に属している。でも、世全体は悪い者の支配のもとにある。
5:20 そして、こうも知っている。神の子が来て、まことの方を知るための理解力を、わたしたちに与えてくださった。わたしたちは、そのまことの方の内にいる。その子イエス・キリストの内にいるのだ。この方こそ、まことの神であり、永遠の命だ。
5:21 子どもたちよ。偶像から自分を守りなさい。
ヨハネの第二の手紙
1:1 長老のわたしから、選ばれた婦人とその子どもたちへ。わたしはあなたがたを真理のうちに愛しています。わたしだけでなく、真理を知っている人たちもみな、あなたがたを愛しています。
1:2 それは、わたしたちのうちにとどまり、いつまでもわたしたちと共にある真理があるからです。
1:3 父である神と、父の子イエス・キリストから、恵みとあわれみと平和が、真理と愛のうちに、わたしたちと共にありますように。
1:4 あなたの子どもたちの中に、真理のうちに歩んでいる人たちがいるのを知って、わたしはとても喜びました。それは、わたしたちが父から受けた命令のとおりです。
1:5 そして今、婦人よ、あなたにお願いします。これは新しい命令を書いているのではなく、初めからわたしたちが持っていた命令です。それは、たがいに愛し合うということです。
1:6 愛とは、神の命令にしたがって歩むことです。そして、これがその命令です。あなたがたが初めから聞いてきたとおり、愛のうちに歩みなさい。
1:7 なぜなら、人をだます者が大勢、世に出てきたからです。彼らは、イエス・キリストが人となって来られたことを認めません。こういう者こそ、人をだます者であり、反キリストです。
1:8 気をつけなさい。わたしたちが働いて得たものを失わないため、また、報いをすべて受け取るためです。
1:9 だれでも先へ進みすぎて、キリストの教えのうちにとどまらない人は、神を持っていません。この教えのうちにとどまる人は、父と子の両方を持っています。
1:10 もしだれかがあなたがたのところに来て、この教えを持ってこないなら、その人を家に迎え入れてはいけません。あいさつの言葉をかけてもいけません。
1:11 その人にあいさつをする人は、その悪い行いに加わることになるからです。
1:12 あなたがたに書きたいことは、たくさんあります。でも、紙とインクで書きたくはありません。あなたがたのところに行って、直接顔を合わせて話したいと思っています。それは、わたしたちの喜びが満ちあふれるためです。
1:13 選ばれたあなたの姉妹の子どもたちが、あなたによろしくと言っています。
ヨハネの第三の手紙
1:1 長老のわたしから、親愛なるガイオへ。わたしは心から、あなたを愛している。
1:2 愛する友よ。あなたの魂が元気であるように、あなたがすべてにおいて元気で、健康であるよう祈っている。
1:3 何人かの兄弟姉妹がやって来て、あなたが真理に生きていること、真理に沿って歩んでいることを証ししてくれた。それを聞いて、わたしはとても喜んだ。
1:4 わたしの子どもたちが真理に生きていると聞くこと。これ以上の喜びは、わたしにはない。
1:5 愛する友よ。あなたは兄弟たち、しかも見ず知らずの人たちのために、まっすぐに尽くしている。
1:6 その人たちは、あなたの愛について教会のみんなの前で証ししてくれた。神にふさわしいやり方で、彼らを次の旅へ送り出してあげてほしい。
1:7 彼らは、キリストの名のために旅立った。信仰を持たない人たちからは、何も受け取らなかったのだ。
1:8 だから、わたしたちはこういう人たちを支えるべきだ。そうすれば、わたしたちも真理のために共に働く仲間となれる。
1:9 わたしは教会に手紙を書いた。ところが、みんなの上に立ちたがるディオトレフェスは、わたしたちを受け入れようとしない。
1:10 だから、わたしがそちらに行ったら、彼のしていることを問いただすつもりだ。彼はひどい言葉でわたしたちのことを悪く言いふらしている。それだけでは足りず、自分は兄弟たちを迎え入れないばかりか、迎え入れようとする人たちを妨げ、教会から追い出しているのだ。
1:11 愛する友よ。悪をまねてはいけない。まねるなら善のほうだ。善を行う人は神から出た人であり、悪を行う人は神を見たことがない。
1:12 デメトリオについては、みんなが良い証しをしているし、真理そのものも証ししている。わたしたちも証しする。わたしたちの証しが本当だということは、あなたも知っているはずだ。
1:13 あなたに書きたいことはたくさんあった。でも、インクとペンで書くのはやめておく。
1:14 もうすぐあなたに会えるだろうから、そのときに直接顔を合わせて話そう。あなたに平安がありますように。こちらの友人たちがよろしくと言っている。そちらの友人たちにも、一人ひとりよろしく伝えてほしい。
ユダの手紙
1:1 イエス・キリストに仕える者であり、ヤコブの兄弟であるユダから。父である神に愛され、イエス・キリストのために守られ、招かれたあなたがたへ。
1:2 あなたがたの上に、あわれみと平和と愛が、あふれるほど豊かにありますように。
1:3 愛する皆さん。わたしは、わたしたちが共にいただいた救いについて、ぜひ書きたいと思っていた。でも今は、こう勧めるためにどうしても書く必要を感じている。神のものとされた人々に、ただ一度だけ伝えられたあの信仰のために、力を尽くして戦ってほしい。
1:4 というのも、ある人たちがこっそり紛れ込んできたからだ。彼らは昔から、この裁きを受けると書き記されていた者たちで、神を敬おうとしない。わたしたちの神の恵みを、好き放題にふるまう口実に変えてしまい、わたしたちのただひとりの主であり支配者であるイエス・キリストを否定している。
1:5 あなたがたはもうすべてを知っているが、それでも思い出してほしいことがある。イエスは民をエジプトの地から救い出したが、その後、信じなかった者たちを滅ぼした。
1:6 また、自分の立場を守らず、本来いるべき住まいを捨てた天使たちがいる。神は彼らを、あの大いなる日の裁きのために、暗闇の中で永遠に解けない鎖につないでおられる。
1:7 ソドムとゴモラ、そしてその周りの町々も同じだ。彼らも同じように、みだらな行いにふけり、不自然な欲望を追い求めた。そして今、永遠の火の罰を受け、見せしめとして示されている。
1:8 それなのに、この者たちも同じことをしている。彼らは夢に酔いしれ、自分の体を汚し、権威を認めず、栄光ある者たちをののしっている。
1:9 天使のかしらであるミカエルでさえ、モーセの体をめぐって悪魔と言い争ったとき、あえて相手をののしって裁くようなことはせず、「主がおまえを叱ってくださるように」と言っただけだった。
1:10 ところが、この者たちは自分に理解できないことをののしる。そして、理性を持たない動物のように本能で分かることによって、自分自身を滅ぼしている。
1:11 彼らにはわざわいが待っている。カインの道を歩み、報酬ほしさにバラムの迷いへと突き進み、コラのように逆らって滅びたからだ。
1:12 この者たちは、あなたがたの愛の会食に潜む暗礁だ。何も恐れずにあなたがたと一緒に飲み食いし、自分のことだけを養っている。彼らは、風に吹き流される、雨を降らせない雲だ。実りの季節なのに実をつけない木、二度死んで根こそぎ引き抜かれた木だ。
1:13 彼らは、自分の恥を泡のように吹き出す海の荒波だ。さまよう星であり、その者たちには真っ暗な闇が永遠に用意されている。
1:14 アダムから七代目にあたるエノクも、この者たちについてこう預言した。「見よ、主は無数の聖なる者たちを引き連れて来られる。
1:15 すべての人をさばくためだ。そして、神を敬わない者たちすべてを責めるためだ。彼らが神を無視して行ったすべての行いと、神を敬わない罪人たちが主に逆らって語ったすべての暴言について、責めるためだ。」
1:16 この者たちは、不平を言い、文句ばかりこぼす。自分の欲望のままに生き、その口は大げさなことを語る。そして、得をするために人にへつらう。
1:17 でも、愛する人たち、思い出してほしい。わたしたちの主イエス・キリストの使徒たちが前もって語っていた言葉を。
1:18 使徒たちはこう言っていた。「終わりの時には、あざける者たちが現れる。彼らは自分の欲望のままに生き、神を敬わない。」
1:19 この者たちは、分裂を引き起こす者だ。自分の本能のままに生き、霊を持っていない。
1:20 でも、愛する人たち、あなたがたは自分自身を、最も聖なる信仰の上に築き上げなさい。聖霊によって祈りなさい。
1:21 神の愛の中に自分を保ちなさい。そして、永遠のいのちへと導く、わたしたちの主イエス・キリストのあわれみを待ち望みなさい。
1:22 迷っている人たちを、あわれみなさい。
1:23 ほかの人たちは、火の中から引き出して救いなさい。また、ほかの人たちには、恐れを抱きながらあわれみをかけなさい。肉によって汚れた服さえも憎みながら。
1:24 さて、あなたがたをつまずきから守り、その栄光の前に、傷のない者として大きな喜びとともに立たせることのできる方に――
1:25 わたしたちの唯一の神、わたしたちを救ってくださる方に――わたしたちの主イエス・キリストを通して、栄光と偉大さ、力と権威が、世界が始まる前も、今も、いつまでもありますように。アーメン。
ヨハネの黙示録
1:1 これはイエス・キリストが示してくれた、これから必ず起こることの啓示である。神はそれをキリストに与え、キリストに仕える人たちに見せるためだった。キリストはご自分の使いである天使を送り、しもべヨハネにこのことを知らせた。
1:2 ヨハネは、自分が見たすべてを、神の言葉とイエス・キリストの証しとして書き残した。
1:3 この預言の言葉を朗読する人と、それを聞いて、そこに書かれていることを守る人々は、幸いである。定めの時が近づいているからだ。
1:4 ヨハネから、アジア州にある七つの教会へ。今おられ、昔からおられ、これから来られる方から、そしてその王座の前にある七つの霊から、恵みと平安があなたがたにありますように。
1:5 また、忠実な証人であり、死者の中から最初によみがえった方であり、地上の王たちを治める方であるイエス・キリストから、恵みと平安がありますように。キリストはわたしたちを愛し、その血によって、わたしたちを罪から解き放ってくださった。
1:6 そして、わたしたちを御国の民とし、父である神に仕える祭司としてくださった。このキリストに、栄光と力がいつまでもありますように。アーメン。
1:7 見よ、この方が雲とともに来られる。すべての目がこの方を見る。この方を突き刺した者たちも見る。そして地上のすべての民族が、この方のことで嘆き悲しむ。そのとおり、アーメン。
1:8 「わたしはアルファであり、オメガである」と、神である主は言われる。今おられ、昔からおられ、これから来られる方、すべてを支配する全能の方である。
1:9 わたしはヨハネ。あなたがたの兄弟姉妹であり、イエスにあって、苦しみも、御国も、忍耐もともに分かち合う者だ。わたしは、神の言葉とイエスの証しのために、パトモスという島にいた。
1:10 主の日に、わたしは霊に満たされた。すると、後ろのほうから、ラッパのような大きな声が聞こえた。
1:11 その声はこう言った。「あなたが見ることを巻物に書き記し、七つの教会に送りなさい。エフェソ、スミルナ、ペルガモン、ティアティラ、サルディス、フィラデルフィア、ラオディキアの教会だ。」
1:12 わたしは、語りかけてくる声のほうを見ようとして振り返った。振り返ると、金の燭台が七つ見えた。
1:13 そして、その燭台の真ん中に、人の子のような方がいた。足まで届く長い衣を着て、胸には金の帯を締めていた。
1:14 その頭も髪も、白い羊毛のように、雪のように白かった。目は燃える炎のようだった。
1:15 足は、炉で熱せられて輝く青銅のようで、声は、大量の水がとどろくような響きだった。
1:16 右手には七つの星を持ち、口からは鋭い両刃の剣が突き出ていた。顔は、真昼に照りつける太陽のように輝いていた。
1:17 わたしはその方を見たとき、死んだようにその足もとに倒れ込んだ。すると、その方は右手をわたしの上に置いて、こう言った。「恐れることはない。わたしは最初であり、最後である。
1:18 また、生きている者である。わたしは一度死んだが、見なさい、今は世々限りなく生きている。そして、死と死者の世界の鍵を持っている。
1:19 だから、あなたが見たこと、今あること、そしてこれから起ころうとしていることを書き記しなさい。
1:20 わたしの右手に見た七つの星と、七つの金の燭台の秘密を教えよう。七つの星は七つの教会の使者であり、七つの燭台は七つの教会である。」
2:1 エフェソにある教会の使者に、こう書き送りなさい。右手に七つの星を持ち、七つの金の燭台の間を歩く方が、こう言われる。
2:2 わたしは、あなたの行いを知っている。あなたの労苦と忍耐も知っている。あなたは悪い者たちをそのままにしておけない。使徒だと自称しているのに実はそうではない者たちを試し、彼らが偽り者だと見抜いた。
2:3 あなたは忍耐し、わたしの名のために耐えてきた。そして、疲れ果てることはなかった。
2:4 けれども、あなたには一つ言いたいことがある。あなたは最初の愛を捨ててしまった。
2:5 だから、自分がどこから落ちてしまったのかを思い出しなさい。悔い改めて、最初のころの行いに戻りなさい。もし悔い改めないなら、わたしはあなたのところへ行き、あなたの燭台をその場所から取りのけてしまう。
2:6 だが、あなたには良いところもある。あなたはニコライ派の者たちの行いを憎んでいる。それは、わたしも憎んでいることだ。
2:7 耳のある者は、霊が諸教会に言うことを聞きなさい。勝利を得る者には、神の楽園にあるいのちの木の実を食べさせよう。
2:8 スミルナにある教会の使者に、こう書き送りなさい。最初の者であり、最後の者である方、いったん死んで、また生き返った方が、こう言われる。
2:9 わたしは、あなたの苦しみと貧しさを知っている。けれども、あなたは本当は豊かだ。また、自分はユダヤ人だと言いながら実はそうではない者たち、サタンの集まりにすぎない者たちが、あなたをののしっていることも知っている。
2:10 これから受けようとしている苦しみを、何も恐れることはない。見なさい。悪魔はあなたがたのうちの何人かを牢に投げ込もうとしている。それは、あなたがたを試すためだ。あなたがたは十日の間、苦しみを受ける。死ぬまで忠実でありなさい。そうすれば、わたしはあなたにいのちの冠を与えよう。
2:11 耳のある者は、霊が諸教会に言うことを聞きなさい。勝利を得る者は、決して第二の死によって害を受けることはない。
2:12 ペルガモンにある教会の使者に、こう書き送りなさい。鋭い両刃の剣を持つ方が、こう言われる。
2:13 わたしは、あなたがどこに住んでいるかを知っている。そこはサタンの王座がある場所だ。それでもあなたは、わたしの名をしっかり守り、わたしへの信仰を捨てなかった。わたしの忠実な証人アンティパスが、サタンの住むあなたがたの町で殺されたときも、そうだった。
2:14 でも、いくつか言っておきたいことがある。あなたのところには、バラムの教えを守っている者たちがいる。バラムはバラクにこう教えた。イスラエルの民をつまずかせ、偶像に供えた物を食べさせ、みだらなことをさせるようにと。
2:15 同じように、あなたのところにもニコライ派の教えを守っている者たちがいる。
2:16 だから、悔い改めなさい。そうしなければ、わたしはすぐにあなたのところへ行き、わたしの口の剣で彼らと戦う。
2:17 耳のある者は、霊が諸教会に言うことを聞きなさい。勝利を得る者には、隠されているマナを与えよう。また白い石を与えよう。その石には新しい名が記されていて、それを受け取る者のほかは、だれも知らない名だ。
2:18 また、ティアティラにある教会の使者に、こう書き送りなさい。燃える炎のような目を持ち、その足が磨かれた真鍮のように輝く、神の子が、こう言われる。
2:19 わたしは、あなたの行いを知っている。あなたの愛、信仰、奉仕、そして忍耐を知っている。あなたの近ごろの行いが、初めのころよりもまさっていることも知っている。
2:20 でも、一つ言っておきたいことがある。あなたは、あの女イゼベルを放っておいている。彼女は自分を預言者だと名乗り、わたしのしもべたちを教え、惑わして、みだらなことをさせ、偶像に供えた物を食べさせている。
2:21 わたしは、彼女が悔い改めるようにと時間を与えた。それなのに、彼女はみだらな生き方を悔い改めようとしない。
2:22 見なさい。わたしは彼女を病の床に投げ込む。彼女と姦淫する者たちも、その行いを悔い改めなければ、大きな苦しみの中に投げ込む。
2:23 また、彼女の子たちを死によって滅ぼす。こうしてすべての教会は、わたしが人の思いと心をさぐる者であることを知るだろう。わたしは、あなたがた一人ひとりに、その行いに応じて報いる。
2:24 しかし、ティアティラにいるほかのあなたがたに言う。この教えを受け入れず、彼らが言う「サタンの深み」を知らなかったあなたがたには、これ以上ほかの重荷を負わせることはしない。
2:25 ただ、あなたがたが持っているものを、わたしが来るまでしっかり守りなさい。
2:26 勝利を得る者、そして最後までわたしの行いを守り通す者には、国々の民を治める権威を与える。
2:27 その者は鉄の杖で彼らを治める。粘土の器を砕くように、打ち砕くのだ。
2:28 それは、わたしも父から受けた権威と同じである。わたしはその者に、明けの明星を与える。
2:29 耳のある者は、霊がすべての教会に告げることを聞きなさい。
3:1 サルディスにある教会の使いに、こう書き送りなさい。神の七つの霊と七つの星を持つ方が、こう言われる。「わたしはあなたの行いを知っている。あなたは生きていると言われているが、実は死んでいる。
3:2 目を覚ましなさい。そして、死にかけている残りのものを力づけなさい。わたしは、あなたの行いが、わたしの神の前で完全なものだとは認めていないからだ。
3:3 だから、あなたがどのように受け、また聞いたかを思い出しなさい。それを守り、悔い改めなさい。もし目を覚まさないなら、わたしは盗人のように来る。いつあなたのところに来るのか、あなたには決してわからない。
3:4 しかし、サルディスにも、自分の衣を汚さなかった少数の人がいる。その人たちは白い衣を着て、わたしとともに歩む。彼らはそれにふさわしいからだ。
3:5 勝利を得る者は、このように白い衣を着せられる。わたしは、その者の名をいのちの書から決して消さない。そして、父の前と、その御使いたちの前で、その者の名をはっきりと言い表す。
3:6 耳のある者は、霊がすべての教会に告げることを聞きなさい。」
3:7 フィラデルフィアにある教会の御使いに、こう書き送りなさい。聖なる方、真実な方、ダビデの鍵を持つ方が言う。この方が開けば、だれも閉じることはできない。この方が閉じれば、だれも開けることはできない。
3:8 わたしは、あなたの行いを知っている。見なさい。わたしは、あなたの前に、だれも閉じることのできない開いた戸を置いた。あなたには少しばかりの力しかないが、それでもわたしの言葉を守り、わたしの名を否まなかった。
3:9 見なさい。サタンの集まりに属する者たち、自分をユダヤ人だと言いながら、実はそうではなく、うそをついている者たちのことだ。わたしは彼らに、あなたの足もとに来てひれ伏させ、わたしがあなたを愛してきたことを思い知らせる。
3:10 あなたは、忍耐について語ったわたしの言葉を守った。だからわたしも、地上に住む人々を試すために、全世界に来ようとしている試練のときから、あなたを守る。
3:11 わたしはすぐに来る。あなたが持っているものをしっかり握っていなさい。だれにも、あなたの冠を奪われないためだ。
3:12 勝利を得る者を、わたしは、わたしの神の神殿の柱にする。その者は、もう決してそこから外に出ることはない。わたしはその者に、わたしの神の名と、わたしの神の都の名を書きつける。それは、わたしの神のもとから、天から下って来る新しいエルサレムだ。さらにわたしは、わたしの新しい名も、その者に書きつける。
3:13 耳のある者は、霊がすべての教会に告げることを聞きなさい。」
3:14 ラオディキアにある教会の御使いに、こう書き送りなさい。アーメンである方、忠実で真実な証人、神が造られたすべてのものの源である方が言う。
3:15 わたしは、あなたの行いを知っている。あなたは冷たくもなく、熱くもない。いっそ、冷たいか熱いかであってほしい。
3:16 そういうわけで、あなたは熱くも冷たくもなく、なまぬるいので、わたしはあなたを口から吐き出そうとしている。
3:17 あなたは、「わたしは豊かだ。富を築いた。何も必要ない」と言っている。しかし、あなた自身が実はみじめで、あわれで、貧しく、目が見えず、裸であることに気づいていない。
3:18 そこで、あなたに勧める。豊かになるために、火で精錬された金をわたしから買いなさい。また、裸の恥をさらさないよう、身にまとうための白い衣を買いなさい。そして、見えるようになるために、目に塗る薬を買いなさい。
3:19 わたしは、愛する者をみな叱り、きびしく育てる。だから、本気になって、悔い改めなさい。
3:20 見なさい。わたしは戸の外に立って、たたいている。だれでも、わたしの声を聞いて戸を開けるなら、わたしはその人のところに入って、一緒に食事をする。その人もわたしと一緒に食事をするのだ。
3:21 勝ち取る者を、わたしは自分の座る王座にともに座らせる。それは、わたしも勝ち取って、父とともにその王座に座ったのと同じだ。
3:22 耳のある者は、霊がいくつもの教会に語ることを聞きなさい。」
4:1 その後、わたしは見た。すると、天に戸が開かれていた。そして、以前ラッパのように響いてわたしに語りかけた、あの最初の声がこう言った。「ここに上って来なさい。この後に起こるはずのことを、あなたに見せよう。」
4:2 すると、たちまちわたしは霊に満たされた。すると、天に一つの王座が置かれていて、その王座には、座っている方がいた。
4:3 その座っている方は、碧玉や赤めのうのように輝いていた。そして、王座のまわりには、エメラルドのように見える虹があった。
4:4 また、王座のまわりには二十四の座があり、そこに二十四人の長老が座っていた。彼らは白い衣を身にまとい、頭には金の冠をかぶっていた。
4:5 王座からは、いなずまと、いろいろな声と、雷が出ていた。また、王座の前では七つのともし火が燃えていた。これは神の七つの霊である。
4:6 王座の前には、水晶のように透きとおったガラスの海のようなものがあった。そして、王座の中央とそのまわりには、四つの生き物がいた。彼らは前も後ろも目でびっしりとおおわれていた。
4:7 第一の生き物はライオンのようで、第二の生き物は雄牛のよう、第三の生き物は人間のような顔をしていて、第四の生き物は空を飛ぶ鷲のようだった。
4:8 この四つの生き物には、それぞれ六つの翼があり、翼のまわりにも内側にも、目がびっしりとついていた。彼らは昼も夜も休むことなく、こう言い続けていた。「聖なる、聖なる、聖なるかな。全能者である神、主。かつておられ、今もおられ、これから来られる方。」
4:9 生き物たちは、王座に座っておられる方、永遠に生きておられる方に、栄光と誉れと感謝をささげる。そのたびに、
4:10 二十四人の長老は、王座に座っておられる方の前にひれ伏し、永遠に生きておられる方を礼拝する。そして、自分の冠を王座の前に投げ出して、こう言う。
4:11 「わたしたちの主であり神である方。あなたこそ、栄光と誉れと力を受けるにふさわしい方です。あなたがすべてのものを造られたからです。すべては、あなたの望みによって存在し、造られたのです。」
5:1 それから、わたしは見た。王座に座っておられる方の右手に、一つの巻物があった。それは表にも裏にも文字が書かれ、七つの封印でしっかりと閉じられていた。
5:2 また、力強い天使が大きな声でこう叫んでいるのを見た。「この巻物を開き、封印を解くのにふさわしいのは、だれか。」
5:3 しかし、天にも、地にも、地の下にも、その巻物を開くことも、中を見ることもできる者は、だれもいなかった。
5:4 巻物を開き、中を見るのにふさわしい者が、だれも見つからなかった。それで、わたしは激しく泣いた。
5:5 すると、長老の一人がわたしに言った。「泣くのはやめなさい。見なさい。ユダ族から出たライオン、ダビデの子孫である方が、勝利を収めた。だから、その方が巻物を開き、七つの封印を解くことができる。」
5:6 そして、わたしは見た。王座と四つの生き物の中央、そして長老たちの真ん中に、一頭の子羊が立っていた。それはほふられたような姿をしていた。子羊には七つの角と七つの目があった。この目は、全世界に送り出された神の七つの霊である。
5:7 子羊は進み出て、王座に座っている方の右の手から巻物を受け取った。
5:8 子羊が巻物を受け取ると、四つの生き物と二十四人の長老は、子羊の前にひれ伏した。彼らはそれぞれ竪琴と、香が満ちた金の鉢を持っていた。この香とは、神を信じる人たちの祈りである。
5:9 そして、彼らは新しい歌を歌った。「あなたこそ、その巻物を受け取り、封印を解くにふさわしい方です。あなたはほふられ、その血によって、あらゆる部族、言語、民族、国民の中から、人々を買い取り、神のものとしてくださいました。
5:10 そして、その人たちを、わたしたちの神に仕える御国とし、祭司としてくださいました。彼らは地上を治めるのです。」
5:11 そして、わたしは見た。王座と生き物たちと長老たちの周りには、大勢の天使がいて、その声が聞こえた。その数は数億、いや、数え切れないほどだった。
5:12 天使たちは大きな声で言った。「ほふられた子羊こそ、力と富と知恵と勢い、誉れと栄光と賛美を受けるにふさわしい方だ。」
5:13 また、わたしは聞いた。天と地、地の下と海、そのすべてにいるあらゆる被造物が、こう言っていた。「王座に座っている方と子羊に、賛美と誉れと栄光と力が、いつまでも、永遠にありますように。」
5:14 すると、四つの生き物は「アーメン」と言い、長老たちはひれ伏して礼拝した。
6:1 小羊が七つの封印のうち一つ目を開いた。そのとき、わたしは見た。四つの生き物の一つが、雷のような声で「来なさい」と言うのが聞こえた。
6:2 見ると、白い馬がいた。それに乗っている者は弓を持っていた。彼には冠が与えられ、勝利者として、さらに勝利を重ねるために出ていった。
6:3 小羊が二つ目の封印を開いたとき、二番目の生き物が「来なさい」と言うのが聞こえた。
6:4 すると、別の馬が出てきた。今度は火のように赤い馬だった。それに乗っている者には、地上から平和を奪い、人々が互いに殺し合うようにする力が与えられた。そして彼には大きな剣が与えられた。
6:5 小羊が三つ目の封印を開いたとき、三番目の生き物が「来なさい」と言うのが聞こえた。見ると、黒い馬がいた。それに乗っている者は、手に天秤を持っていた。
6:6 そして、四つの生き物の真ん中から、こう言う声のようなものが聞こえた。「小麦は一升で一デナリ、大麦は三升で一デナリ。だが、オリーブ油とぶどう酒には手を出すな。」
6:7 小羊が四つ目の封印を開いたとき、四番目の生き物が「来なさい」と言う声が聞こえた。
6:8 見ると、青ざめた馬がいた。それに乗っている者の名は「死」といい、そのうしろには陰府が従っていた。彼らには地上の四分の一を支配する力が与えられた。剣と飢えと疫病で、また地の獣によって、人々を殺す力だった。
6:9 小羊が五つ目の封印を開いたとき、わたしは見た。祭壇の下に、殺された人たちの魂があった。彼らは神の言葉のために、また自分たちが立てた証しのために殺されたのだった。
6:10 彼らは大声で叫んだ。「聖なるまことの主よ。いつまでですか。あなたはいつになったらさばきを行い、地に住む者たちに、わたしたちの血の復讐をしてくださるのですか。」
6:11 すると、彼らひとりひとりに白い衣が与えられた。そしてこう告げられた。「もうしばらくの間、休んでいなさい。あなたたちと同じように殺されるはずの仲間たち、あなたたちの兄弟姉妹の数が満ちるまで待ちなさい。」
6:12 小羊が六つ目の封印を開いたとき、わたしは見た。すると、大きな地震が起こった。太陽は毛織りの喪服のように黒くなり、月は全体が血のように赤くなった。
6:13 そして、空の星が地上に落ちた。まるで、いちじくの木が強い風にゆさぶられて、まだ熟していない実を振り落とすように。
6:14 空は巻物が巻き取られるように消え去り、山も島も、ことごとくもとの場所から動かされた。
6:15 地上の王たち、身分の高い者たち、軍を率いる者たち、金持ちや権力者たち、そして奴隷も自由な者も、みな洞穴や山の岩かげに身を隠した。
6:16 そして、山々や岩に向かって叫んだ。「わたしたちの上に倒れかかって、隠してくれ。王座にすわる方の顔から、そして小羊の怒りから、わたしたちを隠してくれ。
6:17 その怒りの大いなる日が来たのだ。だれが、それに耐えて立っていられるだろうか。」
7:1 その後、わたしは四人の天使が地の四隅に立っているのを見た。彼らは地の四方の風をおさえ、地にも海にも、どんな木にも風が吹きつけないようにしていた。
7:2 また、別の天使が日の昇る東の方から上って来るのを見た。その天使は、生きておられる神の印を持っていた。そして、地と海をそこなう力を与えられていた四人の天使に向かって、大声で叫んだ。
7:3 「わたしたちが、わたしたちの神に仕える者たちの額に印を押してしまうまでは、地も海も木も、そこなってはならない。」
7:4 そして、わたしは印を押された者たちの数を聞いた。イスラエルの子らのすべての部族の中から、十四万四千人が印を押されていた。
7:5 ユダの部族から、印を押された者が一万二千人。ルベンの部族から一万二千人。ガドの部族から一万二千人。
7:6 アシェルの部族から一万二千人。ナフタリの部族から一万二千人。マナセの部族から一万二千人。
7:7 シメオンの部族から一万二千人。レビの部族から一万二千人。イッサカルの部族から一万二千人。
7:8 ゼブルンの部族から一万二千人。ヨセフの部族から一万二千人。ベニヤミンの部族から一万二千人が、印を押されていた。
7:9 その後、わたしが見ていると、だれにも数えきれないほどの大勢の群衆がいた。あらゆる国民、部族、民族、言語の人々だ。彼らは白い衣を着て、手にはなつめやしの枝を持ち、王座の前と子羊の前に立っていた。
7:10 そして、大きな声で叫んでいた。「救いは、王座に座っておられるわたしたちの神と、子羊のものだ。」
7:11 すべての天使は、王座と長老たちと四つの生き物を囲んで立っていた。そして、王座の前でひれ伏し、顔を地につけて神を礼拝した。
7:12 こう言った。「アーメン。賛美と栄光と知恵と感謝と誉れと力と勢いが、いつまでも限りなく、わたしたちの神にありますように。アーメン。」
7:13 すると、長老の一人がわたしに問いかけた。「この白い衣を着た人たちは、いったいだれなのか。どこから来たのか。」
7:14 わたしは答えた。「わたしの主よ、あなたこそご存じです。」すると、彼はわたしに言った。「この人たちは、あの大きな苦難をくぐり抜けて来た者たちだ。自分の衣を、子羊の血で洗って白くしたのだ。
7:15 だから、彼らは神の王座の前にいて、昼も夜も、その神殿で神に仕えている。そして、王座に座っておられる方が、彼らの上に幕屋を張って共に住んでくださる。
7:16 彼らはもう飢えることも、渇くこともない。太陽も、どんな暑さも、彼らを打つことはない。
7:17 王座の中央におられる子羊が、彼らの羊飼いとなって、いのちの水の泉へと導いてくださるからだ。そして、神は彼らの目から涙をことごとくぬぐい取ってくださる。」
8:1 子羊が七つ目の封印を開けた。すると、天が静まりかえった。三十分ほど、何の音もしなかった。
8:2 それから、神の前に立つ七人の天使が見えた。彼らに七つのラッパが渡された。
8:3 また、別の天使がやって来て、祭壇のそばに立った。金の香炉を手にしていた。この天使にたくさんの香が渡された。神の民すべての祈りとともに、王座の前にある金の祭壇にささげるためだった。
8:4 香の煙は、神の民の祈りとともに、天使の手から立ちのぼって神の前に届いた。
8:5 天使はその香炉を取り、祭壇の火で満たして、地に投げつけた。すると、雷鳴がとどろき、いろいろな音が響き、稲妻が光り、地が揺れた。
8:6 そして、七つのラッパを持つ七人の天使が、ラッパを吹く準備をした。
8:7 第一の天使がラッパを吹いた。すると、血の混じった雹と火が現れ、地に投げつけられた。地の三分の一が焼け、木の三分の一が焼け、青草はすべて焼けてしまった。
8:8 第二の天使がラッパを吹いた。すると、火で燃える大きな山のようなものが、海に投げ込まれた。海の三分の一が血に変わり、
8:9 海にいる命ある生き物の三分の一が死に、船の三分の一がこわされた。
8:10 第三の天使がラッパを吹いた。すると、たいまつのように燃える大きな星が、天から落ちてきた。それは川の三分の一と、水の湧き出るところに落ちた。
8:11 その星の名は「苦よもぎ」という。水の三分の一が苦くなり、その水のせいで多くの人が死んだ。水が苦くなってしまったからだ。
8:12 第四の天使がラッパを吹いた。すると、太陽の三分の一、月の三分の一、星の三分の一が打たれた。それで、それらの三分の一が暗くなった。昼はその三分の一が光を失い、夜も同じように暗くなった。
8:13 また、わたしは見た。一羽のわしが空高くを飛びながら、大きな声でこう言うのを聞いた。「わざわいだ、わざわいだ、わざわいだ。地に住む人々よ。まだラッパを吹こうとしている三人の天使が、これから鳴らすラッパの音のせいで。」
9:1 第五の天使がラッパを吹いた。すると、わたしは一つの星が天から地に落ちてきたのを見た。その星には、底なしの穴に通じる井戸の鍵が渡された。
9:2 星がその底なしの穴を開けると、大きなかまどの煙のような煙が、穴から立ちのぼった。その穴の煙のせいで、太陽も空も暗くなった。
9:3 そして、その煙の中から、いなごが地上へ出てきた。いなごには、地のさそりが持つのと同じ力が与えられた。
9:4 いなごは、こう命じられた。地の草も、緑のものも、木も、どれも傷つけてはならない。ただ、額に神の印を押されていない人々だけを攻めよ、と。
9:5 また、いなごには、その人々を殺すことは許されず、五か月のあいだ苦しめることだけが許された。その苦しみは、さそりが人を刺したときの苦しみのようだった。
9:6 そのころ、人々は死を求める。でも、決して見つけられない。死にたいと願っても、死のほうが彼らから逃げていく。
9:7 そのいなごの姿は、戦いのために備えられた馬に似ていた。頭には金の冠のようなものをつけ、顔は人間の顔のようだった。
9:8 髪は女の髪のようで、歯はライオンの歯のようだった。
9:9 胸には鉄の胸当てのようなものをつけ、その羽の音は、たくさんの馬が戦いへと駆けていく戦車の音のようだった。
9:10 また、さそりのような尾と針を持っていた。その尾に、五か月のあいだ人々を傷つける力があった。
9:11 いなごたちには、王として底なしの穴の使いが立っていた。その名は、ヘブライ語でアバドン、ギリシア語ではアポリオンという。
9:12 第一のわざわいは過ぎ去った。見よ、このあとにまだ二つのわざわいがやって来る。
9:13 第六の天使がラッパを吹いた。すると、神の前にある金の祭壇の角から、一つの声が聞こえた。
9:14 その声は、ラッパを持つ第六の天使にこう言った。「大きな川ユーフラテスのほとりにつながれている、四人の天使を解き放て。」
9:15 すると、その四人の天使が解き放たれた。彼らは、人類の三分の一を殺すために、定められた年、月、日、時にそなえて用意されていた天使たちだった。
9:16 騎兵の軍勢の数は、二億だった。わたしは、その数を聞いた。
9:17 幻の中で、わたしは馬とそれに乗る者たちをこのように見た。乗り手たちは、火のように赤く、青く、硫黄のように黄色い胸当てを着けていた。馬の頭はライオンの頭のようで、その口からは火と煙と硫黄が出ていた。
9:18 この三つの災いによって、人類の三分の一が殺された。馬の口から出る火と煙と硫黄によってである。
9:19 馬の力は、その口と尾にあった。尾は蛇に似ていて、頭がついており、それで人々を傷つけたのである。
9:20 これらのわざわいで殺されずに生き残った人々は、それでも自分の手で造ったものを悔い改めなかった。悪霊や、金・銀・青銅・石・木で造られた偶像を拝むのをやめようとしなかった。それらは、見ることも聞くことも歩くこともできないのに。
9:21 また、彼らは自分たちが犯した殺人も、魔術も、みだらな行いも、盗みも悔い改めなかった。
10:1 それから、わたしはもう一人の強い天使が天から降りてくるのを見た。その天使は雲をまとい、頭には虹をのせていた。顔は太陽のようで、足は火の柱のようだった。
10:2 手には開かれた小さな巻物を持っていた。そして右足を海の上に、左足を陸の上に置いた。
10:3 そして、ライオンがほえるような大きな声で叫んだ。すると、それにこたえて七つの雷が鳴りひびいた。
10:4 七つの雷が語ったとき、わたしはそれを書きとめようとした。すると、天から声が聞こえてきて、こう言った。「七つの雷が語ったことは封じておきなさい。書きとめてはいけない。」
10:5 それから、わたしが見たあの天使、海と陸の上に立っている天使が、右手を天に向かって上げた。
10:6 そして、永遠に生きておられる方、天とその中のすべてのもの、地とその中のすべてのもの、海とその中のすべてのものを造られた方にかけて、こう誓った。「もう時間の猶予はない。
10:7 第七の天使がラッパを吹き鳴らすその日には、神の秘められた計画が完成する。それは、神がご自分のしもべである預言者たちに告げていたとおりだ。」
10:8 すると、さっき天から聞こえたあの声が、また、わたしに語りかけてこう言った。「行って、海と陸の上に立っている天使の手にある、開かれた巻物を受け取りなさい。」
10:9 そこで、わたしはその天使のところへ行き、小さな巻物をくださいと言った。すると天使はこう言った。「これを取って、食べてしまいなさい。あなたのお腹の中では苦くなるが、口の中では蜜のように甘いはずだ。」
10:10 わたしは天使の手から小さな巻物を受け取り、食べてしまった。すると口の中では蜜のように甘かったが、食べてしまうと、お腹の中は苦くなった。
10:11 そして、こう告げられた。「あなたは、もう一度、多くの民族、国民、言語、王たちについて預言しなければならない。」
11:1 そして、わたしは杖のような測りざおを渡された。すると、こう言われた。「立って、神の神殿と祭壇を測りなさい。そこで礼拝している人たちも数えなさい。
11:2 でも、神殿の外の庭は測らなくていい。そこは残しておきなさい。そこは異邦人に与えられたからだ。彼らは四十二か月のあいだ、聖なる都を踏みにじる。
11:3 わたしは、わたしの二人の証人を遣わそう。彼らは荒布をまとって、千二百六十日のあいだ預言する。」
11:4 この二人は、地の主の前に立つ二本のオリーブの木であり、二つの燭台である。
11:5 もし彼らを傷つけようとする者がいれば、その口から火が出て、敵を焼き尽くす。彼らを傷つけようとする者は、こうして殺されるしかない。
11:6 この二人には、天を閉じる力がある。だから、預言をしているあいだは雨が降らない。また、水を血に変える力も、望むときにはいつでも、あらゆる災いで地を打つ力も持っている。
11:7 そして、二人が証しを終えると、底なしの淵から上ってくる獣が彼らと戦い、打ち勝って、殺してしまう。
11:8 彼らの死体は、大きな都の大通りにさらされる。この都は、たとえて言えばソドムとかエジプトと呼ばれ、彼らの主が十字架につけられた場所でもある。
11:9 さまざまな民族、部族、言葉、国の人々が、三日半のあいだ、その死体を見る。人々は、彼らの死体を墓に葬らせようとしない。
11:10 地に住む人々は、この二人のことで喜び、祝い合い、互いに贈り物を送り合う。この二人の預言者が、地に住む人々を苦しめたからだ。
11:11 しかし、三日半が過ぎると、神からのいのちの霊が二人の中に入り、彼らは立ち上がった。それを見ていた人々は、激しい恐れに襲われた。
11:12 そのとき、二人は天から大きな声がこう告げるのを聞いた。「ここに上ってきなさい。」すると、二人は雲に包まれて天に上っていった。敵たちは、それをじっと見ていた。
11:13 そのとき、大きな地震が起きた。都の十分の一が崩れ落ち、この地震で七千人が死んだ。生き残った人々は恐れおののき、天の神に栄光を帰した。
11:14 二つ目の災いは過ぎ去った。見よ、三つ目の災いがすぐにやって来る。
11:15 そして、七人目の天使がラッパを吹いた。すると、天で大きな声がいくつも響いた。「この世界の御国は、わたしたちの主とそのキリストのものとなった。主は世々限りなく支配される。」
11:16 すると、神の前で自分の座についていた二十四人の長老が、ひれ伏して神を礼拝した。
11:17 そして、こう言った。「今おられ、昔からおられた主なる神、すべてを治める方よ。わたしたちはあなたに感謝します。あなたはその大いなる力を手に取り、王として支配を始められたからです。
11:18 諸国の民は怒り狂いました。しかし、今やあなたの怒りの時が来ました。死んだ者たちがさばかれる時、あなたのしもべである預言者たち、聖なる人々、そしてあなたの名を畏れる者たちに、身分の低い者にも高い者にも報いが与えられる時です。また、地を滅ぼす者たちを滅ぼす時が来たのです。」
11:19 それから、天にある神の神殿が開かれ、その神殿の中に神の契約の箱が現れた。そして、いなずまがひらめき、さまざまな声ととどろき、地震が起こり、大粒の雹が降った。
12:1 そして、天に大きなしるしが現れた。一人の女がいて、太陽を身にまとい、足の下に月を置き、頭には十二の星の冠をかぶっていた。
12:2 彼女は身ごもっていて、出産の苦しみと痛みのために叫んでいた。
12:3 すると、もう一つのしるしが天に現れた。見よ、火のように赤い大きな竜がいた。七つの頭と十本の角を持ち、七つの頭にはそれぞれ冠をかぶっていた。
12:4 竜の尾は、天の星の三分の一を引きずり降ろし、地へ投げ落とした。そして竜は、今にも子を産もうとしている女の前に立った。彼女が子を産んだら、その子を食べてしまおうとしていたのだ。
12:5 女は男の子を産んだ。この子は、鉄の杖ですべての国々を治めることになっている。その子は、神のもと、神の王座へと引き上げられた。
12:6 女は荒れ野へ逃げた。そこには、神が彼女のために用意しておいた場所があった。その場所で、彼女は千二百六十日の間、養われることになっていた。
12:7 さて、天で戦いが起こった。ミカエルとその配下の天使たちが、竜と戦ったのだ。竜もその手下の天使たちも応戦した。
12:8 でも竜は勝てなかった。もはや天に、彼らの居場所はなくなった。
12:9 こうして、あの巨大な竜は投げ落とされた。古い蛇、悪魔とかサタンとか呼ばれる者、全世界を惑わす者である。竜は地上へ投げ落とされ、その手下の天使たちも一緒に投げ落とされた。
12:10 そのとき、わたしは天で大きな声がこう告げるのを聞いた。「今こそ、わたしたちの神の救いと力と御国が来た。神が立てたキリストの権威も現れた。わたしたちの仲間を訴えていた者が、投げ落とされたからだ。この者は、昼も夜も、神の前で仲間を訴え続けていた。
12:11 仲間たちは、子羊の血と、自分たちが立てた証しの言葉によって、この者に打ち勝った。彼らは死をも恐れず、自分の命を惜しまなかった。
12:12 だから、天よ、そこに住むすべての者よ、喜べ。だが、地と海には災いが来る。悪魔が、激しい怒りを抱いてお前たちのところへ降りて来たからだ。自分に残された時間がわずかだと、悪魔は知っているのだ。」
12:13 竜は、自分が地上へ投げ落とされたと知ると、男の子を産んだあの女を追いかけた。
12:14 すると女に、大きな鷲の二つの翼が与えられた。蛇の前から逃れて荒れ野へ、自分の場所へ飛んで行くためだ。彼女はそこで、一年と二年、そして半年の間、養われることになっていた。
12:15 蛇は女を押し流そうとして、口から川のような水を吐き出し、彼女に襲いかからせた。
12:16 しかし地が女を助けた。地はその口を開いて、竜が口から吐き出した川を飲み込んだ。
12:17 竜は女に激しく怒り、女の残りの子孫と戦うために出て行った。この子孫とは、神の命令を守り、イエスの証しを保っている者たちのことである。そして竜は、海辺の砂の上に立った。
13:1 そして、一匹の獣が海から上がってくるのがわたしに見えた。角が十本、頭が七つあり、その角には十の冠、頭には神を汚す名前がついていた。
13:2 わたしが見たその獣は、ヒョウに似ていた。足はクマの足のようで、口はライオンの口のようだった。あの竜が、自分の力と王座と大きな権威を、この獣に与えた。
13:3 獣の頭の一つは、死ぬほどの深い傷を負っているように見えた。でも、その致命傷は治っていた。世界中の人が驚いて、この獣に従った。
13:4 人々は、獣に権威を与えた竜を拝んだ。そして獣も拝んで、こう言った。「この獣にかなう者がいるだろうか。だれがこの獣と戦えるだろうか。」
13:5 獣には、大きなことを語り、神を汚す言葉を吐く口が与えられた。また、四十二か月のあいだ活動する権威も与えられた。
13:6 獣は口を開いて神を汚し、その名と、神が住む所、つまり天に住む人たちを汚した。
13:7 獣には、神の民と戦って打ち勝つことが許された。また、あらゆる部族、民族、言語、国民を支配する権威も与えられた。
13:8 こうして、地に住むすべての人が獣を拝む。ただし、世界が造られる前から、ほふられた子羊のいのちの書に名前が記されている者たちは別だ。
13:9 耳のある者は聞きなさい。
13:10 捕らえられて連れて行かれる運命の者は、連れて行かれる。剣で殺される運命の者は、剣で殺される。ここに、神の民の忍耐と信仰がある。
13:11 それから、別の獣が地から上がってくるのが見えた。子羊のような角が二本あり、竜のように話した。
13:12 この獣は、最初の獣がもつすべての権威を、その獣の前で振るう。そして、地と、そこに住む人たちに、致命傷が治ったあの最初の獣を拝ませる。
13:13 この獣は、目を見張るようなしるしを行った。人々の目の前で、天から地へ火を降らせたりもした。
13:14 そして、最初の獣の前で行うことを許されたしるしを使って、地に住む人たちをだました。獣は、地に住む人たちにこう命じた。剣で傷を受けながらも生き返った、あの最初の獣の像を造れ、と。
13:15 さらに、その獣の像に息を吹き込む力も与えられた。それで像は口をきけるようになり、像を拝まない者はみな殺されるようにした。
13:16 また、身分の低い者も高い者も、富む者も貧しい者も、自由な人も奴隷も、すべての人の右手か額に刻印を受けさせた。
13:17 こうして、この刻印、つまり獣の名か、その名を表す数字を持っていなければ、だれも物を買うことも売ることもできないようにした。
13:18 ここに知恵が必要だ。考える力のある人は、獣を表す数字の意味を解き明かしてほしい。それは人間を表す数字であり、その数字は六百六十六である。
14:1 それから、わたしは見た。子羊がシオンの山の上に立っていた。子羊とともに十四万四千人がいて、その額には子羊の名と、子羊の父の名が書かれていた。
14:2 そして、天から響く声を聞いた。それは大水がとどろくような声、大きな雷のような声だった。わたしが聞いたその声は、竪琴を奏でる人たちが竪琴を鳴らしているようでもあった。
14:3 彼らは、王座の前と、四つの生き物、そして長老たちの前で、新しい歌のようなものを歌っていた。この歌は、地から買い取られた十四万四千人のほかは、だれも覚えることができなかった。
14:4 この人たちは、女によって身を汚したことがなく、純潔を保った者たちである。子羊が行くところなら、どこへでもついて行く。彼らは人々の中から買い取られ、神と子羊にささげられた最初の実である。
14:5 その口には偽りがなく、彼らは傷のない者たちである。
14:6 それから、わたしは見た。別の天使が大空の高いところを飛んでいた。天使は永遠に変わらない良い知らせを携え、地に住む人たち、あらゆる国、部族、言葉、民族にそれを伝えようとしていた。
14:7 天使は大きな声で言った。「神を恐れ、神に栄光をささげなさい。神が裁きを行う時が来たからだ。天と地、海と水の湧き出る泉を造った方を拝みなさい。」
14:8 続いて、第二の天使が言った。「倒れた、倒れた、大バビロンが。自分の淫らな行いという激しいぶどう酒を、すべての国々に飲ませたのだ。」
14:9 続いて、第三の天使が大きな声で言った。「獣とその像を拝み、額か手にその刻印を受ける者は、だれでも、
14:10 神の怒りのぶどう酒を飲むことになる。それは、神の憤りの杯に、混ぜ物なしで注がれたぶどう酒だ。そういう者は、聖なる天使たちと子羊の前で、火と硫黄で苦しめられる。
14:11 その苦しみの煙は、永遠に立ちのぼり続ける。獣とその像を拝む者、その名の刻印を受ける者は、昼も夜も休むことがない。」
14:12 ここに、聖なる者たちの忍耐がある。彼らは、神の命令とイエスへの信仰を守り続ける者たちである。
14:13 それから、わたしは天から語りかける声を聞いた。その声は言った。「書き記しなさい。今から後、主のうちにあって死ぬ人々は、幸いである。」「そのとおり」と霊は言う。「彼らは労苦から解放されて休む。彼らの行いが、彼らとともについて行くからだ。」
14:14 それから、わたしは見た。すると、白い雲があり、その雲の上に、人の子のような方が座っていた。頭には金の冠をかぶり、手には鋭い鎌を持っていた。
14:15 すると、もう一人の天使が神殿から出て来て、雲の上に座っている方に大きな声で叫んだ。「あなたの鎌を入れて、刈り取ってください。刈り取る時が来ました。地の作物は、もう実って熟しているのです。」
14:16 そこで、雲の上に座っている方が鎌を地に投げ入れると、地は刈り取られた。
14:17 それから、もう一人の天使が、天にある神殿から出て来た。この天使もまた、鋭い鎌を持っていた。
14:18 すると、さらにもう一人の天使が祭壇から出て来た。この天使は火を司る権威を持っていた。彼は、鋭い鎌を持つ天使に大きな声で呼びかけた。「あなたの鋭い鎌を入れて、地のぶどうの木から実った房を刈り集めてください。ぶどうが、もう熟しているのです。」
14:19 そして、その天使は鎌を地に投げ入れ、地のぶどうを刈り集めた。そして、それを神の怒りの大きな酒ぶねに投げ込んだ。
14:20 その酒ぶねは町の外で踏まれた。すると、酒ぶねから血が流れ出し、それは馬のくつわに届くほどになり、千六百スタディオン（約三百キロ）にわたって広がった。
15:1 それから、わたしは天に、もう一つのしるしを見た。大きく、驚くべきしるしだった。七人の天使がいて、七つの災いを持っていた。この災いが最後のものだった。これによって、神の怒りが果たされるからである。
15:2 また、わたしは火の混じったガラスの海のようなものを見た。そして、あの獣と、その像と、その名を表す数とに打ち勝った人々が、そのガラスの海のほとりに立っていた。彼らは神から与えられた竪琴を手にしていた。
15:3 そして、神のしもべモーセの歌と、子羊の歌を歌っていた。「主なる神、全能の方よ。あなたのなさることは大きく、驚くべきものです。すべてを治める王よ。あなたの道は正しく、真実です。
15:4 主よ、あなたを恐れず、あなたの名をあがめない者などいるでしょうか。あなただけが聖なる方だからです。すべての国の人々が来て、あなたの前にひれ伏すでしょう。あなたの正しい裁きが、はっきりと現れたからです。」
15:5 その後、わたしが見ていると、天にある神殿、すなわち証しの幕屋が開かれた。
15:6 すると、七つの災いを持つ七人の天使が、その神殿から出て来た。彼らは清く輝く亜麻布をまとい、胸には金の帯を締めていた。
15:7 すると、四つの生き物のうちの一つが、七人の天使に、金の鉢を七つ手渡した。その鉢は、永遠に生きておられる神の怒りで満ちていた。
15:8 神殿は、神の栄光とその力から立ちのぼる煙で満たされた。そして、七人の天使が持つ七つの災いが終わるまで、だれも神殿に入ることができなかった。
16:1 それから、わたしは神殿から大きな声が聞こえるのを聞いた。その声は七人の天使にこう言った。「行って、神の怒りが入った七つの鉢を地に注げ。」
16:2 そこで、最初の天使が出て行き、自分の鉢を地に注いだ。すると、獣の刻印を受け、その像を拝んでいた人々に、ひどく悪性の腫れ物ができた。
16:3 第二の天使が自分の鉢を海に注いだ。すると、海は死者の血のようになり、海の中の生き物はすべて死んだ。
16:4 第三の天使が自分の鉢を川と水の源に注いだ。すると、それらは血になった。
16:5 そして、わたしは水をつかさどる天使がこう言うのを聞いた。「今おられ、かつておられた聖なる方よ、あなたは正しい方です。あなたがこのように裁かれたからです。
16:6 彼らは、あなたのものである人々や預言者たちの血を流しました。だから、あなたは彼らに血を飲ませたのです。それは当然のことです。」
16:7 そして、わたしは祭壇がこう言うのを聞いた。「そのとおりです。全能者である神、主よ。あなたの裁きは真実で、正しいものです。」
16:8 第四の天使が自分の鉢を太陽に注いだ。すると、太陽は火で人々を焼くことを許された。
16:9 人々は激しい熱に焼かれた。そして、これらの災いを支配する権威を持つ神の名をののしった。それでも、悔い改めて神に栄光を帰そうとはしなかった。
16:10 第五の天使が自分の鉢を獣の座に注いだ。すると、獣の国は暗闇に包まれた。人々は苦しみのあまり、自分の舌をかんだ。
16:11 そして、自分たちの苦しみと腫れ物のせいで、天の神をののしった。それでも、自分たちの行いを悔い改めなかった。
16:12 第六の天使が自分の鉢を大きな川、ユーフラテスに注いだ。すると、その水は干上がった。東から来る王たちのための道を整えるためだった。
16:13 そして、わたしは、竜の口と獣の口と偽預言者の口から、カエルのような三つの汚れた霊が出て来るのを見た。
16:14 これらは悪霊の霊で、さまざまなしるしを行う。そして、全世界の王たちのところへ出て行く。全能者である神の大いなる日の戦いのために、王たちを集めるのだ。
16:15 「見よ、わたしは盗人のように来る。目を覚まして、自分の衣を身に着けている人は、幸いである。裸で歩き回って、恥ずかしいところを見られることがないからだ。」
16:16 そして、汚れた霊たちは、ヘブライ語でハルマゲドンと呼ばれる場所に王たちを集めた。
16:17 第七の天使が自分の鉢を空中に注いだ。すると、神殿の中の玉座から大きな声が出て、こう言った。「事は成し遂げられた。」
16:18 すると、稲妻と、さまざまな音と、雷鳴が起こった。そして、大きな地震が起こった。それは、人が地上に現れて以来、一度も起きたことのないほど大きな地震だった。
16:19 その大きな都は三つに裂けた。そして、諸国の町々も崩れ落ちた。神は大バビロンを忘れてはいなかった。神は、その激しい怒りのぶどう酒が入った杯を、この都に飲ませることにした。
16:20 すべての島は逃げ去り、山々も消えてなくなった。
16:21 そして、一タラントほどもある大きな雹が、天から人々の上に降ってきた。人々は、この雹の災いのせいで神をののしった。その災いがあまりにもひどかったからだ。
17:1 それから、七つの鉢を持つ七人の天使のうちのひとりがやって来て、わたしにこう言った。「こっちに来なさい。大きな水のほとりに座っている、あの大淫婦への裁きを見せてあげよう。
17:2 地上の王たちはこの女と関係を持ち、地に住む人々は、この女の淫らな行いのぶどう酒に酔いしれてきた。」
17:3 そして天使は、わたしを霊によって荒れ野へ連れて行った。すると、一人の女が緋色の獣にまたがっているのが見えた。その獣は全身に神をののしる名で覆われ、七つの頭と十本の角を持っていた。
17:4 その女は紫と緋色の衣をまとい、金や宝石や真珠で身を飾っていた。手には金の杯を持ち、その中は、忌まわしいものと、この女の淫らな行いの汚れでいっぱいだった。
17:5 額には、こういう名が書かれていた。それは秘められた意味を持つ名だった。「大バビロン。地上のすべての淫らな者と、忌まわしいものたちの母。」
17:6 さらにわたしは、この女が聖なる人々の血と、イエスのために命をささげた証人たちの血に酔っているのを見た。この女を見て、わたしはひどく驚いた。
17:7 すると天使はわたしに言った。「なぜ驚くのか。わたしがこの女と、女を乗せている獣の秘められた意味を教えよう。七つの頭と十本の角を持つ、あの獣のことだ。
17:8 あなたが見た獣は、かつていたが、今はいない。やがて底なしの深い淵から上ってきて、そのまま滅びへと向かう。地上に住む人々のうち、世界が造られる前から命の書に名を記されていない者たちは、その獣を見て驚くだろう。この獣は、かつていたが、今はいない。それなのに、また現れるからだ。
17:9 ここに、知恵のある考えが求められる。七つの頭とは、この女が座っている七つの丘のことだ。それはまた、七人の王でもある。
17:10 そのうち五人はすでに倒れ、一人は今いる。残る一人はまだ現れていない。そして現れても、しばらくの間しかとどまれない。
17:11 かつていたが今はいない、あの獣そのものが八人目の王だ。しかも、あの七人から出た者であり、そのまま滅びへと向かう。
17:12 あなたが見た十本の角とは、十人の王のことだ。彼らはまだ国を受けていないが、あの獣とともに、王としての権威をわずか一時だけ受け取る。
17:13 彼らは心を一つにして、自分たちの力と権威を獣にゆだねる。
17:14 彼らは子羊に戦いをいどむ。しかし子羊は彼らに勝つ。子羊はすべての主の主、すべての王の王だからだ。子羊とともにいる者たちも、招かれ、選ばれ、忠実な者たちだ。」
17:15 さらに天使はわたしに言った。「あなたが見た、あの淫らな女が座っている水は、さまざまな民族や群衆、国々や言葉のことだ。
17:16 あなたが見た十本の角と、あの獣は、この淫らな女を憎むようになる。そして女からすべてを奪って裸にし、その肉を食い、火で焼き尽くす。
17:17 神が彼らの心に、御自分の思いを実行させ、心を一つにして、彼らの国を獣にゆだねさせるからだ。それは、神の言葉がすべて実現するまで続く。
17:18 あなたが見たあの女とは、地上の王たちを支配している、あの大きな都のことだ。」
18:1 その後、わたしはもう一人の天使が天から下りて来るのを見た。この天使は大きな力を持っていて、その栄光で地上が明るく照らされた。
18:2 天使は力強い声でこう叫んだ。「倒れた。大いなるバビロンが倒れた。そこは悪霊たちのすみかとなり、あらゆる汚れた霊の巣、あらゆる汚れた鳥の巣、あらゆる汚れた、忌み嫌われる獣の巣となってしまった。
18:3 すべての国々が、この都の激しい欲望のぶどう酒を飲まされたからだ。地上の王たちはこの都と関係を持ち、地上の商人たちはこの都のぜいたくのおかげで金持ちになった。」
18:4 それから、わたしはもう一つの声が天から響くのを聞いた。「わたしの民よ、あの都から出て来なさい。あの都の罪に加わってはいけない。あの都が受ける災いを、いっしょに受けないためだ。
18:5 あの都の罪は積み重なって天にまで届き、神はその悪い行いを忘れずに覚えておられる。
18:6 あの都がしたとおりに、あの都に仕返しをしなさい。その行いに応じて、倍にして返しなさい。あの都が注いだ杯に、倍の量を注いでやりなさい。
18:7 あの都が自分を誇り、ぜいたくにふけった分だけ、同じだけ苦しみと悲しみを与えなさい。あの都は心の中でこう言っているからだ。『わたしは女王としてこの座にいる。未亡人ではないし、悲しみを味わうことなど決してない。』
18:8 だから、一日のうちにあの都をいくつもの災いが襲う。死と悲しみと飢えだ。そして火で焼き尽くされる。あの都を裁く神である主は、力ある方だからだ。
18:9 あの都と関係を持ち、いっしょにぜいたくにふけった地上の王たちは、あの都が焼かれる煙を見て、泣き、嘆き悲しむ。
18:10 彼らはあの都の苦しみを恐れ、遠くに立ったまま、こう言う。「ああ、なんということだ。大いなる都、力ある都バビロンよ。たった一時間で、おまえに裁きが下ってしまった。」
18:11 地上の商人たちも、あの都のために泣き、嘆き悲しむ。もう誰も、彼らの商品を買ってくれなくなったからだ。
18:12 その商品とは、金、銀、宝石、真珠、上質の亜麻布、紫の布、絹、緋色の布、あらゆる種類の香木、象牙でできたあらゆる器、最高級の木や青銅や鉄や大理石でできたあらゆる器、
18:13 シナモン、香辛料、香、香油、乳香、ぶどう酒、オリーブ油、上等な小麦粉、小麦、牛、羊、馬、馬車、奴隷、そして人間の命までも。
18:14 「お前の心が欲しがっていた果実は、お前のもとから去ってしまった。ぜいたくで輝かしいものは何もかも、お前のもとから消え失せ、もう二度と見つからない。」
18:15 これらの商品を扱い、あの都で富を築いた商人たちは、彼女の苦しみを恐れて遠くに立ち、泣き、悲しみながら、
18:16 こう言う。「ああ、なんということだ。あの大いなる都よ。上質の亜麻布、紫の布、緋色の布を身にまとい、金や宝石や真珠で身を飾っていたのに。
18:17 たった一時間で、これほどの富が消え失せてしまうとは。」そして、すべての船長、沿岸を行き来する者、船員、海で働くすべての人が、遠くに立ち、
18:18 あの都が焼ける煙を見て、こう叫んだ。「あの大いなる都のような都が、ほかにあっただろうか。」
18:19 そして彼らは頭にちりをかぶり、泣き、悲しみながら叫んだ。「ああ、なんということだ。あの大いなる都よ。海に船を持つ者はみな、あの都の繁栄によって富を得たのに。たった一時間で、廃墟になってしまうとは。」
18:20 天よ、あの都のことで喜べ。神の民よ、使徒たちよ、預言者たちよ、喜べ。神が、お前たちに代わってあの都を裁いてくれたのだから。
18:21 それから、一人の力ある天使が、大きな臼のような石を持ち上げ、海に投げ込んで言った。「大いなる都バビロンも、これと同じように激しく投げ落とされ、もう二度と見つからなくなる。
18:22 竪琴を弾く者、歌う者、笛を吹く者、ラッパを吹く者の音は、もうお前の中で聞こえない。どんな技を持つ職人も、もうお前の中には見つからない。臼をひく音も、もうお前の中で聞こえない。
18:23 ともし火の光も、もうお前の中で輝かない。花婿と花嫁の声も、もうお前の中で聞こえない。お前の商人たちは地上の権力者だったのに。お前の魔術によって、すべての国民が惑わされたのだから。
18:24 そして、預言者たちや神の民の血、地上で殺されたすべての人の血が、あの都の中に見つかったのだ。」
19:1 その後、わたしは天で、大群衆の大きな声のような響きを聞いた。彼らはこう言っていた。「ハレルヤ。救いと栄光と力は、わたしたちの神のものだ。
19:2 神の裁きは真実で、正しいからだ。神は、あの大淫婦を裁かれた。彼女は淫らな行いで地を汚していた。神は、自分に仕える者たちが流された血の復讐を、彼女に果たされたのだ。」
19:3 群衆はもう一度言った。「ハレルヤ。彼女の煙は、永遠に立ちのぼり続ける。」
19:4 すると、二十四人の長老と四つの生き物がひれ伏し、王座に座っておられる神を拝んで言った。「アーメン。ハレルヤ。」
19:5 そして、王座から一つの声が出て、こう言った。「わたしたちの神を賛美せよ。神に仕えるすべての者よ。神を恐れる者たちよ。小さな者も、大きな者も。」
19:6 それからわたしは、大群衆の声のような、大水のとどろきのような、激しい雷のような響きを聞いた。それはこう言っていた。「ハレルヤ。わたしたちの主である神、全能の方が、王として支配されるからだ。
19:7 喜ぼう。大いに喜び踊ろう。神に栄光をささげよう。小羊の婚礼の時が来て、花嫁は自分を整えたのだから。
19:8 花嫁は、輝く清い麻の衣を着ることを許された。」この麻の衣は、聖なる人々の正しい行いである。
19:9 すると、その者がわたしに言った。「書きなさい。小羊の婚礼の食事に招かれた人々は、幸いである。」また、こう言った。「これらは神の真実の言葉である。」
19:10 わたしは、彼を拝もうとして、その足もとにひれ伏した。すると、彼はわたしに言った。「やめなさい。わたしは、あなたや、イエスの証しを持っているあなたの兄弟姉妹と同じ、ただ一緒に仕える者にすぎない。神を拝みなさい。イエスの証しこそ、預言の霊だからだ。」
19:11 それから、わたしは天が開かれているのを見た。すると、白い馬が現れた。それに乗っている方は、「忠実」「真実」と呼ばれ、義をもって裁き、また戦う。
19:12 その目は燃える炎のようで、頭にはたくさんの王冠をかぶっていた。また、彼自身のほかにはだれも知らない名が、そこに記されていた。
19:13 また、彼は血に染まった衣をまとっていた。その名は「神の言葉」と呼ばれる。
19:14 天の軍勢が、白い馬に乗って彼に従っていた。彼らは、真っ白で清らかな、上質の麻の衣を身にまとっていた。
19:15 その口からは、鋭い剣が出ている。それで諸国の民を打つためだ。彼は鉄の杖で人々を治める。また彼は、全能の神の激しい怒りを表すぶどう酒をしぼる、搾り場を踏む。
19:16 その衣と、ももには、こう名が記されていた。「王の王、主の主。」
19:17 それから、わたしは一人の天使が太陽の中に立っているのを見た。天使は大声で、空高く飛ぶすべての鳥に叫んだ。「さあ、集まりなさい。神の大きな宴会に。
19:18 王たちの肉、指揮官たちの肉、勇士たちの肉、馬と乗り手たちの肉を食べるためだ。自由な者も奴隷も、身分の低い者も高い者も、すべての人の肉を食べるためだ。」
19:19 それから、わたしは見た。あの獣と、地上の王たち、そして彼らの軍勢が集まっていた。馬に乗っている方と、その軍勢に戦いをしかけるためだ。
19:20 その獣は捕らえられた。獣の前でしるしを行い、それによって、獣の刻印を受けた者たちや、獣の像を拝んだ者たちを惑わした、あの偽預言者も一緒に捕らえられた。二人は生きたまま、硫黄で燃える火の池に投げ込まれた。
19:21 残りの者たちは、馬に乗っている方の口から出る剣で殺された。そして、すべての鳥がその肉で満腹になった。
20:1 それから、わたしは一人の天使が天から降りてくるのを見た。その手には底なしの深い穴のかぎと、大きな鎖を持っていた。
20:2 天使は、あの古い蛇である竜、つまり悪魔とかサタンと呼ばれるものを取り押さえ、千年の間つないでおいた。
20:3 そして竜を底なしの穴に投げ込んで閉じ込め、その上に封印をした。千年が終わるまで、竜がもう二度と世界の国々を惑わさないようにするためだった。この後、竜は少しの間だけ解き放たれることになっている。
20:4 また、わたしはいくつかの王座を見た。そこには人々が座り、裁く権威が彼らに与えられていた。さらにわたしは、イエスを証ししたことと神の言葉のために、首をはねられた人たちの魂を見た。彼らは、あの獣もその像も拝まず、額にも手にもその刻印を受けなかった人たちだ。彼らは生き返り、キリストとともに千年の間、王として治めた。
20:5 残りの死者たちは、千年が終わるまで生き返らなかった。これが最初の復活である。
20:6 この最初の復活にあずかる人々は、幸いである。そして聖なる者とされている。この人たちには、二度目の死が力を持つことはない。彼らは神とキリストに仕える者となり、キリストとともに千年の間、王として治めるのだ。
20:7 千年が終わると、サタンはその牢から解き放たれる。
20:8 そして地の四方にいる国々、つまりゴグとマゴグを惑わそうと出て行き、彼らを戦いのために集める。その数は海辺の砂のように多い。
20:9 彼らは地上いっぱいに広がって攻め上り、神の民の陣営と、神に愛された都を取り囲んだ。すると天から火が降ってきて、彼らを焼き尽くした。
20:10 彼らを惑わしていた悪魔は、火と硫黄の燃える池に投げ込まれた。そこには、あの獣と偽預言者もいる。彼らは昼も夜も、永遠に苦しめられ続ける。
20:11 また、わたしは大きな白い王座と、そこに座っている方を見た。地も天も、その方の前から逃げ去り、跡形もなく消えてしまった。
20:12 そして、わたしは死者たちが、身分の高い者も低い者も、王座の前に立っているのを見た。いくつかの書物が開かれ、もう一つの書物、つまりいのちの書も開かれた。死者たちは、その書物に記されていることに従い、それぞれの行いに応じて裁かれた。
20:13 海は、その中にいた死者たちを差し出した。死も、死者の世界も、その中にいた死者たちを差し出した。そして、一人ひとりが自分の行いに応じて裁かれた。
20:14 それから、死も死者の世界も、火の池に投げ込まれた。この火の池が、第二の死である。
20:15 いのちの書に名前が記されていない者は、みな火の池に投げ込まれた。
21:1 また、わたしは新しい天と新しい地を見た。最初の天と最初の地は消え去り、海ももうなくなっていた。
21:2 そして、聖なる都、新しいエルサレムが、神のもとを離れて天から下ってくるのを見た。それは、花婿を迎えるために美しく着飾った花嫁のようだった。
21:3 そのとき、王座から大きな声がして、こう言うのが聞こえた。「見よ、神の住まいが人々とともにある。神は人々とともに住み、人々は神の民となる。神ご自身が彼らとともにいて、その神となる。
21:4 神は、彼らの目から涙をことごとくぬぐい取ってくださる。もう死はない。悲しみも、嘆きも、痛みもない。これまでのものは、すべて消え去ったからだ。」
21:5 すると、王座に座っている方が言われた。「見よ、わたしはすべてを新しくする。」そして、こう言われた。「書きしるしなさい。これらの言葉は信頼できる、真実な言葉だ。」
21:6 さらに、その方はわたしにこう言われた。「すべては成し遂げられた。わたしはアルファであり、オメガである。初めであり、終わりである。渇いている者には、いのちの水の泉から、価なしに飲ませよう。
21:7 勝利を得る者は、これらすべてを受け継ぐ。わたしはその者の神となり、その者はわたしの子となる。
21:8 しかし、おくびょうな者、信じない者、けがれた者、人殺し、みだらなことをする者、まじないをする者、偶像を拝む者、うそをつくすべての者、その行き着く先は、火と硫黄の燃える池だ。それが第二の死である。」
21:9 それから、最後の七つの災いで満ちた七つの鉢を持つ、あの七人の天使のひとりが来て、わたしにこう語りかけた。「来なさい。子羊の妻となる花嫁を見せよう。」
21:10 そして天使は、わたしを霊によって大きな高い山へ連れて行き、聖なる都エルサレムを見せてくれた。都は、神のもとを出て、天から降りてくるところだった。
21:11 都は神の栄光に満ちていた。その輝きは、この上なく高価な宝石のようで、水晶のように透きとおった碧玉のようだった。
21:12 都には大きな高い城壁があり、十二の門があった。それぞれの門には十二人の天使がいて、門には名前が書きしるされていた。それは、イスラエルの十二の部族の名前だった。
21:13 東に三つの門、北に三つの門、南に三つの門、西に三つの門があった。
21:14 都の城壁には十二の土台があり、その土台には、子羊の十二人の使徒の名前が書かれていた。
21:15 わたしに語りかけていた天使は、都と、その門と、城壁とを測るために、金の物差しとなる竿を持っていた。
21:16 都は四角い形をしていて、縦と横の長さは同じだった。天使がその竿で都を測ると、縦も横も高さも、どれも同じで、一万二千スタディオンあった。
21:17 また、城壁を測ると、その厚さは百四十四ペーキュスあった。これは人間の物差しによるもので、天使が使っていたものと同じだ。
21:18 城壁は碧玉で造られていて、都そのものは、澄んだガラスのように透きとおった純金でできていた。
21:19 都の城壁の土台は、あらゆる宝石で美しく飾られていた。一つ目の土台は碧玉、二つ目はサファイア、三つ目は玉髄、四つ目はエメラルド、
21:20 五つ目はサードオニクス、六つ目は赤めのう、七つ目はクリソライト、八つ目はベリル、九つ目はトパーズ、十個目はクリソプレーズ、十一個目はヒヤシンス石、十二個目はアメジストだった。
21:21 また、十二の門は十二の真珠でできていて、それぞれの門が一つの真珠からできていた。そして都の大通りは、透きとおったガラスのような純金だった。
21:22 わたしは、都の中に神殿を見なかった。全能者である主なる神と、あの子羊こそが、この都の神殿だからだ。
21:23 この都には、それを照らす太陽も月もいらない。神の栄光が都を照らしていて、子羊がその明かりだからだ。
21:24 さまざまな民が、この都の光の中を歩む。地上の王たちも、自分の栄光をこの都に携えてくる。
21:25 都の門は、昼の間、決して閉じられることがない。そこには夜がないからだ。
21:26 人々は、さまざまな民の栄光と誉れを、この都に携えてくる。
21:27 しかし、汚れたものは何一つ、この都に入ることができない。忌まわしいことをする者も、偽りを行う者も入れない。入れるのは、子羊のいのちの書に名が記されている人たちだけだ。
22:1 それから、天使はわたしに命の水の川を見せてくれた。水晶のように輝くその川は、神と子羊の王座から流れ出ていた。
22:2 川は町の大通りの真ん中を流れていた。その両岸には命の木が立っていて、年に十二回、毎月実をみのらせていた。そしてその葉は、あらゆる民族を癒やすためのものだった。
22:3 もう、のろわれるものは何一つない。神と子羊の王座がその町にあり、神に仕える者たちは神を礼拝する。
22:4 彼らは神の顔を見る。そして神の名が、彼らの額に記される。
22:5 もう夜はない。だから、ともしびの光も太陽の光もいらない。神である主が、彼らを照らしてくださるからだ。彼らは世々かぎりなく、王として治める。
22:6 それから、天使はわたしにこう言った。「これらの言葉は信頼できる、真実なものだ。預言者たちに霊を与える神である主が、ご自分の天使を送り、まもなく必ず起こることを、神に仕える者たちに示された。
22:7 見よ、わたしはすぐに来る。この書物の預言の言葉を守る人は、幸いである。」
22:8 これらのことを聞き、また見たのは、わたしヨハネである。聞き終わり、見終わったとき、わたしはそれを見せてくれた天使の足もとにひれ伏して、礼拝しようとした。
22:9 すると天使はわたしに言った。「やめなさい。わたしはあなたや、あなたの仲間である預言者たち、そしてこの書物の言葉を守る人たちと同じ、ともに仕える者だ。神を礼拝しなさい。」
22:10 さらに天使はわたしに言った。「この書物の預言の言葉を封じ込めてはいけない。その時が近いからだ。
22:11 不正を行う者は、そのまま不正を行い続けるがいい。汚れた者は、そのまま汚れているがいい。正しい者は、そのまま義を行い続けなさい。聖なる者は、そのまま聖くあり続けなさい。」
22:12 「見よ、わたしはすぐに来る。報いを携えて来て、それぞれの行いに応じて、一人ひとりに与える。
22:13 わたしはアルファであり、オメガである。最初であり、最後である。初めであり、終わりである。
22:14 自分の衣を洗う人々は、幸いである。彼らは命の木の実を食べる資格を持ち、門を通って都に入ることができる。
22:15 しかし外に残されるのは、犬のような者たち、魔術を使う者、みだらなことをする者、人を殺す者、偶像を拝む者、そして偽りを愛し、偽りを行うすべての者だ。
22:16 わたし、イエスは、天使を送った。数々の教会のために、あなたがたにこれらのことを証しさせるためだ。わたしはダビデの根であり、その子孫である。輝く明けの明星である。」
22:17 霊と花嫁は言う。「来てください。」これを聞く人も言いなさい。「来てください。」渇いている人は来なさい。望む人は、命の水を、ただで受け取りなさい。
22:18 この書物の預言の言葉を聞くすべての人に、わたしははっきり告げる。これに何かをつけ加える者がいれば、神はその人に、この書物に書かれている災いをつけ加えられる。
22:19 また、この預言の書物の言葉から何かを取り除く者がいれば、神はその人から、この書物に書かれている命の木と聖なる都に入る分を取り除かれる。
22:20 これらのことを証しする方が言われる。「そうだ、わたしはすぐに来る。」アーメン。主イエスよ、来てください。
22:21 主イエスの恵みが、すべての人とともにあるように。
